広告ターゲティング事業が脅かされつつあるフェイスブック、事業主向けに数々の新機能を発表

Facebook(フェイスブック)は米国時間9月16日、事業主向けにいくつかの新製品および新機能を発表した。これは、Apple(アップル)が新たなプライバシー機能を導入し、モバイル機器ユーザーがiOSアプリ上での追跡をオプトアウトできるようになったことから、Facebookの広告ターゲティング事業が脅かされていることを受けてのものといえるだろう。この巨大ソーシャルネットワーキング企業は、アップルのプライバシー方針変更が、Facebook広告から顧客を獲得している中小企業に影響を与えると繰り返し主張してきたが、アップルの変更を一切止めることはできなかった。それどころか、市場はユーザーのプライバシーに重点を置いた新しい時代へと移行しており、パーソナライゼーションやターゲティングは、よりオプトインな体験、つまりユーザーに許可する意思の表示を求めるようになっている。そのため、Facebookは企業広告について新たな方法で対処する必要があったのだ。

関連記事
Facebookがアプリ追跡と広告ターゲティング制限に対してアップル批判を強化
Facebookがニュースフィードの投稿に企業の関連コンテンツを表示するテストを米国で開始

Facebookは、消費者を追跡する機能が低下した(追跡されることを自ら選択する消費者はほとんどいないという調査結果が出ている)ことから、企業が自社製品やサービスに関連があるユーザーに、より訴求できるようにする新機能をいくつか導入する。これには、顧客へのリーチ、顧客への広告、Facebookアプリによる顧客とのチャット、リード(見込み客)の生成、顧客の獲得などを可能にするアップデートが含まれる。

Facebookは2021年4月、ニュースフィードの投稿の下に表示される、美容、フィットネス、服飾など、興味のあるトピックをタップして、関連する他の企業のコンテンツを探索する方法のテストを開始した。この機能により、ユーザーは自分が好きそうな新しい企業に出会うことができ、Facebookは特定の種類のコンテンツを好むユーザーのデータセットを、独自に作成することができる。将来的には、この機能を広告ユニットにして、企業が料金を支払って上位表示させることも可能になるかもしれない。

しかし当面は、この機能を米国内のより多くのユーザーに拡大するとともに、Facebookはオーストラリア、カナダ、アイルランド、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、南アフリカ、英国で開始を予定している。

画像クレジット:Facebook

Facebookは、企業がもっと容易に顧客とチャットできるようにしたいとも考えている。企業はすでに、Messenger(メッセンジャー)、Instagram Direct(インスタグラム・ダイレクト)、WhatsApp(ワッツアップ)といった、Facebookが所有するさまざまなチャットプラットフォームで、人々にメッセージを送るよう促す広告を購入することができるが、今後は利用可能なすべてのメッセージングプラットフォームを選択できるようになり、会話が発生する可能性が最も高い場所に基づいて、広告に表示されるチャットアプリがデフォルトで設定されるようになる。

画像クレジット:Facebook

この取り組みの一環として、同社はWhatsAppをInstagramに結びつけることにした。多くの企業がInstagramで宣伝したり、ショップを運営したりしているのに、顧客とのコミュニケーションや質問への回答は、WhatsAppに依存していると、Facebookは説明している。そこで同社は、企業がInstagramのプロフィールに、WhatsAppのClick-to-Chat(クリック・トゥ・チャット)ボタンを追加できるようにした。

特にこの変更は、Facebookが別々のアプリをより密接に結びつけようとする動きを象徴するものだ。その背景には、規制当局が独占禁止の懸念から、Facebookの解体を検討しているという現在の状況がある。すでに同社は、MessengerとInstagramのメッセージングサービスを相互に接続しており、さらに最近では、MessengerをFacebookのプラットフォーム自体に直接統合し始めている。これらのことから、解体はさらに複雑なものになるだろう。

画像クレジット:Facebook

また、それに関連した変更として、企業は近日中に、Instagramアプリからクリックするだけで、直接ユーザーをWhatsAppに送り、チャットを始めることができる広告を作成できるようにもなる(Facebookはすでにこのような広告を提供している)。

今回のニュースとは別に、FacebookはWhatsApp内に新しいビジネスディレクトリを設けることも発表した。これによって消費者は、同チャットプラットフォーム上でもショップやサービスを探せるようになる。

その他の変更は、Facebook Business Suite(フェイスブック・ビジネス・スイート)のアップデートとして導入される。これを利用する企業は「Inbox(受信箱)」でeメールを管理したり、リマーケティングメールを送信できるようになる他、新たに導入される「File Manager(ファイルマネージャー)」を使って簡単に投稿コンテンツを作成・管理することや、異なるバージョンの投稿をテストして、どの投稿が最も効果的かを比較することもできるようになる。

画像クレジット:Facebook

それ以外にテストが行われる新製品としては、Instagramにおける有料の有機的なリードジェネレーション(見込み客生成)ツールや、Messengerで会話を始める前に顧客にいくつかの質問に答えてもらう見積もり依頼、そして小規模事業主がFacebook広告の利用を始めるために提供される特典などがある。これにはFacebook広告クーポン、会計ソフトウェア「QuickBooks(クイックブックス)」とグラフィックツール「Canva Pro(キャンバ プロ)」の3カ月間無料アクセスなどが含まれる。

画像クレジット:Facebook

また、Facebookは「Work Accounts」と呼ばれるもののテストも開始する。これにより事業主は、個人のFacebookアカウントとは別に、この仕事用アカウントでBusiness Manager(ビジネス・マネージャー)などの企業用製品にアクセスできるようになる。企業は従業員に代わってこれらのアカウントを管理したり、シングルサインオンなどの企業向け機能を利用することも可能になる。

Work Accountsは、年内に少数の企業を対象としてテストを行い、2022年には利用可能な範囲を拡大していく予定であると、Facebookは述べている。

その他の広告に関する取り組みとしては、クリエイターや地元企業のコンテンツをより多く取り入れることや、ユーザーが閲覧するコンテンツをコントロールできる新機能などが計画されているというが、これらの変更点については現時点では詳細が明らかにされていない。

今回発表された新機能のほとんどは、すでに展開が始まっているか、近日中に導入される予定だ。

画像クレジット:Sean Gallup / Getty Images

原文へ

(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

システム障害に対応するエンジニアのための共同作業ノートブック「Fiberplane」

アムステルダムを拠点とするFiberplane(ファイバープレーン)は、Googleドキュメントのグループ編集に似た方法で、SRE(サイト・リライアビリティ・エンジニア)がインシデントに取り組むための共同作業ノートブックを構築している。このアーリーステージのスタートアップ企業は現地時間9月16日、シードラウンドにおける750万ユーロ(約9億7000万円)の資金調達を発表した。

この投資ラウンドは、Crane Venture Partners(クレーン・ベンチャー・パートナーズ)とNotion Capital(ノーション・キャピタル)が共同で主導し、Northzone(ノースゾーン)、System.One(システムワン)、Basecase Capital(ベースケース・キャピタル)が参加した。

通称Mies(ミース)と呼ばれているMicha Hernandez van Leuffen(ミシャ・ヘルナンデス・ファン・ロイフェン)氏は、Fiberplaneの創業者でCEOだ。以前起ち上げたスタートアップのWerker(ワーカー)が2017年にOracle(オラクル)に買収されたことをきっかけに、ヘルナンデス・ファン・ロイフェン氏はより大きな会社の一員となり、そこで(どこの会社でも起こる)障害への対応に苦労している人々を目にした。

関連記事:WerckerをOracleが買収、コンテナベースのデベロッパープラットホームに既存大手も着目

「私たちは常にメトリクス、ログ、トレースの間を行ったり来たりして、私はいつもこれを宝探しと呼んでいるのですが、機能停止やダウンタイムの根本的な原因を突き止めていました」と、ヘルナンデス・ファン・ロイフェン氏は筆者に語ってくれた。

同氏はこの経験から、インシデント対応に関するいくつかの重要な洞察が得られたという。1つ目は、すべてのインシデントデータを集めておく集中的な場所が必要だということ。2つ目は、分散したシステムを管理する分散したチームが、しばしば異なるタイムゾーンを越えて、リアルタイムに協力する必要があるということだ。

2020年8月にOracleを退職した同氏は、DevOps(デブオプス)チームやSREに、組織内の他のチームがGoogleドキュメントやNotion(ノーション)などのツールで行っているのと同じようなグループ編集機能を与えることができないかと考え始め、新会社のアイデアを具体化させていった。

同氏がFiberplaneで作り上げたものは、SREがさまざまな種類のデータを取り込み、インシデントを解決するために共同作業を始めるためのコラボレーションノートブックだ。同時にこのノートブックには、何が起き、どのように問題を解決したかという自然な監査証跡を残すことができる。Googleドキュメントを複数の人が編集できるように、このノートブックにもさまざまな人が参加できるようにすることで、当初の構想を実現している。

複数の人が関わっているFiberplaneのコラボレーションノートの例(画像クレジット:Fiberplane)

しかし、彼はそこで止まるつもりはない。長期的なビジョンとしては、SREやDevOpsチームが障害のあらゆる側面に対応できる運用プラットフォームを目指している。「これは私たちの出発点です。しかし、ここからさらに拡大して、いわばSREのワークベンチとして、インフラを指揮・管理できるものにしたいと考えています」と、同氏は述べている。

現在、Fiberplaneでは13名の従業員が働いており、今も成長を続けている。彼らは、今の彼らがそうであるように、多様性のある会社を作るための方法を模索しており、より多様な候補者を見つけるための具体的な戦略を検討している。

「私たちは多様な人材を雇用するために、当社のトップ・オブ・ザ・ファネルのプロセスを再検討しているところです。当社の取り組みとしては、社会的弱者のコミュニティに求人情報を掲載したり、求人情報の記述をジェンダーデコーダにかけたり、求人情報の公開期間を長くしたりしています」と、Fiberplaneのマーケティングマネージャーを務めるElena Boroda(エレナ・ボロダ)氏は述べている。

ヘルナンデス・ファン・ロイフェン氏はアムステルダムを拠点としているが、同社は英国、ベルリン、コペンハーゲン、そして米国でも人材を雇用しているという。従業員の大半がアムステルダムに住んでいるため、オフィスが再開される際にはアムステルダムを中心拠点とする計画だ。

画像クレジット:lemono / Getty Images

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

システム障害に対応するエンジニアのための共同作業ノートブック「Fiberplane」

アムステルダムを拠点とするFiberplane(ファイバープレーン)は、Googleドキュメントのグループ編集に似た方法で、SRE(サイト・リライアビリティ・エンジニア)がインシデントに取り組むための共同作業ノートブックを構築している。このアーリーステージのスタートアップ企業は現地時間9月16日、シードラウンドにおける750万ユーロ(約9億7000万円)の資金調達を発表した。

この投資ラウンドは、Crane Venture Partners(クレーン・ベンチャー・パートナーズ)とNotion Capital(ノーション・キャピタル)が共同で主導し、Northzone(ノースゾーン)、System.One(システムワン)、Basecase Capital(ベースケース・キャピタル)が参加した。

通称Mies(ミース)と呼ばれているMicha Hernandez van Leuffen(ミシャ・ヘルナンデス・ファン・ロイフェン)氏は、Fiberplaneの創業者でCEOだ。以前起ち上げたスタートアップのWerker(ワーカー)が2017年にOracle(オラクル)に買収されたことをきっかけに、ヘルナンデス・ファン・ロイフェン氏はより大きな会社の一員となり、そこで(どこの会社でも起こる)障害への対応に苦労している人々を目にした。

関連記事:WerckerをOracleが買収、コンテナベースのデベロッパープラットホームに既存大手も着目

「私たちは常にメトリクス、ログ、トレースの間を行ったり来たりして、私はいつもこれを宝探しと呼んでいるのですが、機能停止やダウンタイムの根本的な原因を突き止めていました」と、ヘルナンデス・ファン・ロイフェン氏は筆者に語ってくれた。

同氏はこの経験から、インシデント対応に関するいくつかの重要な洞察が得られたという。1つ目は、すべてのインシデントデータを集めておく集中的な場所が必要だということ。2つ目は、分散したシステムを管理する分散したチームが、しばしば異なるタイムゾーンを越えて、リアルタイムに協力する必要があるということだ。

2020年8月にOracleを退職した同氏は、DevOps(デブオプス)チームやSREに、組織内の他のチームがGoogleドキュメントやNotion(ノーション)などのツールで行っているのと同じようなグループ編集機能を与えることができないかと考え始め、新会社のアイデアを具体化させていった。

同氏がFiberplaneで作り上げたものは、SREがさまざまな種類のデータを取り込み、インシデントを解決するために共同作業を始めるためのコラボレーションノートブックだ。同時にこのノートブックには、何が起き、どのように問題を解決したかという自然な監査証跡を残すことができる。Googleドキュメントを複数の人が編集できるように、このノートブックにもさまざまな人が参加できるようにすることで、当初の構想を実現している。

複数の人が関わっているFiberplaneのコラボレーションノートの例(画像クレジット:Fiberplane)

しかし、彼はそこで止まるつもりはない。長期的なビジョンとしては、SREやDevOpsチームが障害のあらゆる側面に対応できる運用プラットフォームを目指している。「これは私たちの出発点です。しかし、ここからさらに拡大して、いわばSREのワークベンチとして、インフラを指揮・管理できるものにしたいと考えています」と、同氏は述べている。

現在、Fiberplaneでは13名の従業員が働いており、今も成長を続けている。彼らは、今の彼らがそうであるように、多様性のある会社を作るための方法を模索しており、より多様な候補者を見つけるための具体的な戦略を検討している。

「私たちは多様な人材を雇用するために、当社のトップ・オブ・ザ・ファネルのプロセスを再検討しているところです。当社の取り組みとしては、社会的弱者のコミュニティに求人情報を掲載したり、求人情報の記述をジェンダーデコーダにかけたり、求人情報の公開期間を長くしたりしています」と、Fiberplaneのマーケティングマネージャーを務めるElena Boroda(エレナ・ボロダ)氏は述べている。

ヘルナンデス・ファン・ロイフェン氏はアムステルダムを拠点としているが、同社は英国、ベルリン、コペンハーゲン、そして米国でも人材を雇用しているという。従業員の大半がアムステルダムに住んでいるため、オフィスが再開される際にはアムステルダムを中心拠点とする計画だ。

画像クレジット:lemono / Getty Images

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

GMがシボレー・ボルトEVの生産停止を10月中旬まで延長

General Motors(ゼネラルモーターズ)は、オリオン組立工場の操業停止を少なくとも10月中旬まで延長する。先日発表したシボレー・ボルトEVおよびEUVの安全性のためのリコールに関連したバッテリーパックの不足によるものだ。Bloomberg(ブルームバーグ)が最初に報じたところによると、同社は10月11日の週まで同工場を休止する意向だ。

同社は声明で「今回の直近のスケジュール調整は、新型コロナウイルスに関連した国際市場からの半導体供給の制約により、部品不足が続いていることが原因です」と述べた。「私たちのチームは、需要は高いものの生産能力に制約のある車両への影響を最小限に抑えるために、創造的な解決策を見つけられると確信しています。状況は依然として複雑で非常に流動的ですが、GMは引き続き、需要の高いフルサイズトラックの生産を優先します」。

GMは先週、8月23日に始まったミシガン州の組立工場(オリオン組立工場)の操業停止を9月20日まで延長すると発表したが、遅れの原因への解決策がまだ見つかっていないことは明らかだ。その一方で、バッテリーサプライヤーであるLG Chem(LG化学)と協力し、製造工程と生産スケジュールの更新を継続するとしている。

関連記事
GMがシボレー・ボルトEVの生産中断をさらに2週間延長
米幹線道路交通安全局が火災リスクのあるシボレー・ボルトを屋外に駐車するようオーナーに警告

同社は7月、火災の危険性があるとしてシボレー・ボルトのリコールを開始した。米高速道路交通安全局は同社の顧客に対し、予防措置として住宅や他の車両から離れた場所にクルマを駐車するよう勧告している

GMは先週、フルサイズトラックとフルサイズSUVの生産を今週までに開始すると発表したが、チップ不足のため、北米の他の5つの組立工場でも生産を減速すると発表した。同社によると、シボレー・シルバラード1500とGMCシエラ1500モデルを生産しているフォートウェイン組立工場およびシラオ組立工場のような一部の工場は、世界的な半導体不足の影響を一時的に受けた後、9月13日時点ですでにフル生産に戻っている。

シボレー・トラバースとビュイック・アンクレイブを製造しているミシガン州のランシング・デルタ・タウンシップ組立工場は、9月27日の週にさらに1週間の稼働停止を予定しており、10月4日の週に生産を再開する。同工場は7月19日から操業を停止している。シボレー・カマロとキャディラック・ブラックウイングの生産停止も27日の週まで延長され、以前に発表されたキャディラック CT4とCT5の生産停止も同様だ。カマロの生産停止は9月13日から、CT4とCT5の生産停止は5月10日からだ。

また、カナダのCAMI組立工場、メキシコのサン・ルイ・ポトシ組立工場、ラモス組立工場で生産しているエクイノックス、ブレイザー、GMCテレインの生産も10月11日の週に延期された。ブレイザーは8月23日、エクイノックスは8月16日から、それぞれ生産を停止している。

キャデラックXT4は、2月8日から生産を停止していたが、来週からカンザス州のフェアファックス組立工場で生産を再開する。GMによると、同じくフェアファックスで2月8日から生産を停止しているシボレー・マリブの生産は、10月25日の週まで停止する予定だ。

画像クレジット:Veanne Cao

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

ツイッターのクリエイター向け機能「スーパーフォロー」、開始から2週間の売上はわずか66万円

Twitter(ツイッター)のクリエイター向けプラットフォーム「Super Follows(スーパーフォロー)」の幸先は芳しくない。公開から2週間の米国iOS売上は6000ドル(約66万円)ほどだった。Sensor Tower(センサータワー)提供のデータによる。そしてカナダでの売上はわずか600ドル(約6万6000円)ほどだった。収益のごく一部は、別のアプリ内購入の仕組みである「Ticketed Spaces(チケット制スペース)」による可能性もあるが、社外からこの部分を調べる方法はない。

Twitterが最初にスーパーフォローの計画を発表したのは、2月のAnalyst Dayイベントで、新たな収益ストリームを生み出す将来の取り組みの詳細を数多く予告していた。

関連記事
Twitterが同社初となる有料クリエイターサブスク機能「スーパーフォロー」発表、サービスの構造が劇的に変わる可能性
ツイッターがクリエイターのための収益化ツール「Super Follows」「Ticketed Spaces」を導入

現在、Twitterのビジネスは大きく広告に依存しており、スーパーフォローは同社の収益多様化に向けた数少ない方法の1つだ。Twitterはクリエイターがライブイベントを 有料で提供するTicketed Spaces(チケット制スペース)を提供している他、米国外ではパワーユーザー向けのプレミアム商品、Twitter Blue(ツイッター・ブルー)のテストを開始している

画像クレジット:Twitte

しかしクリエイターがターゲットのスーパーフォローは、主要ユーザー層に最も強くアピールするはずだ。

これは、クリエイターがフォロワーを集め、サブスクリプションを通じて直接収益を生むクリエイター経済を育てることで、Twitter自身の広告やブランド契約への依存を減らす試みの一環でもある。クリエイターたちがこのビジネスのために使うプラットフォームは、収益のごく一部を受け取ってクリエイターツール開発費に宛てる(Twitterの場合、取り分はわずか3%)。

この機能は、すでに有名人と一般の人々が同じタイムラインで、親しく付き合い会話しているプラットフォームであるTwitterにとって理に適っているように思えた。スーパーフォローは、ファンがお気に入りのクリエイター(ミュージション、アーティスト、コメディアン、インフルエンサー、ライター、ゲーム、あるいはその他のエキスパート)にもっと近づけるようにすることでアクセスを増やす。クリエイターは月額サブスクリプション価格を2.99ドル(約330円)、4.99ドル(約550円)、9.99ドル(約1100円)のいずれかに設定して、ファンに「舞台裏」コンテンツなどのボーナスを提供する。それらは、追加のツイートやQ&Aその他サブスクライバーとのやり取りで受け渡される。

画像クレジット:Twitter

サービス開始時点でTwitterは、スーパーフォローを少数のクリエイターに開放した。美容・スキンケアに特化したアカウント、@MakeupforWOC、星占いのアカウント、@TarotByBronx、スポーツ専門の@KingJosiah54、ライターの@myeshachou、インターネットパーソナリティーでポッドキャスターの@MichaelaOkla、スピリチュアルヒーラー@kemimarie、ミュージックチャートをツイートする@chartdata、Twitchストリーマーの@FaZeMew@VelvetIsCake@MackWood1@GabeJRuizおよび@Saulsrevenge、ユーチューバーの@DoubleH_YT@LxckTVおよび@PowerGotNow,そして暗号トレーダーの@itsALLrisky@moon_shine15などの面々だ。Twitterは、スーパーフォローを利用できるクリエイターは100人以下がと言っている。

クリエイション側の利用は限定されているが、クリエイターのサブスクライブはそうではない。米国またはカナダのTwitter iOSユーザーなら、支援したいクリエイターのアカウントをいくつでも「スーパーフォロー」できる。米国には 2021年第2四半期時点で、収益可能なデイリーアクティブユーザーが3700万人いる。もちろんiOSユーザーはその一部にすぎない。

それでもTwitterには、スーパーフォローのプラットフォーム開始時点で数百数千万人の「潜在」顧客がいた。現在の収益は、アプリ内購入ランキング上位の多くが、低い価格設定でコンテンツを提供しているクリエイターのものであることを踏まえると、利用しているのはわずか数千人程度のようだ。

画像クレジット:Twitte

Sensor Towerは、TwitterのiOSにおける米国消費者利用額である6000ドルは、9月最初の2週間(9月1~14日)に測定されたという。この期間前の8月25~31日、米国のTwitter iOSユーザーは100ドル(約1万1000円)しか消費していない。これはユーザーがチケット制スペースに支払った金額を表す数字だ。言い換えると、iOS消費者の利用合計6000ドルに占めるチケット制スペースの割合はごくわずかである可能性が高い。

スーパーフォローをサブスクライバーが利用できるもう1つの市場であるカナダでは、9月1~14日のTwitterのiOSアプリ内購入収益はわずか600ドルだった(これにはカナダとオーストラリアでテスト中のTwitter Blueのサブスクリプション収益も含まれている)。

全世界では、同じ期間にiOSのTwitterユーザーは9000ドル(約98万9000円)を消費しており、これにもチケット制スペースとTwitter Blueのテストによる収益が含まれる(クリエイターに直接支払う方法であるTwitterのTip Jarはアプリ内購入を経由していない)。

ハッシュタグの利用やコンテンツのリツイートのように、元々ユーザーがやっていたことを観察して開発された他のプロダクトと異なり、最近のTwitterの新機能の多くは、プラットフォーム上でのユースケースを再定義しようとしている。数多く売り込んでいる製品ラッシュの中でTwitterは、クリエイター向けだけでなく、eコマース読むコンテンツの整理ニュースレターのサブスクリプションコミュニティのソーシャル化オーディオによるチャットコンテンツの事実検証トレンドのフォローよりプライベートな会話などを提供している。

関連記事:Twitterがカードを利用した新しいオンライン通販機能をテスト中

スーパーフォローの遅いスタートは、何かを決めるにはまだ早すぎるというTwitterのポジションを示している。それも一理あるが、利用状況を追跡して、新しいプロダクトが幸先の良いスタートを切ったかどうか確認する価値があるだろう。

「これはスーパーフォローの始まりにすぎません」とTwitterの広報担当者がSensor Towerの数字に関するコメント要求に答えて言った。「私たちの最終目標はクリエイターが成功するための準備を整えることです。そのためにこの1巡目のでは少人数のクリエイターたちと密に働くことで、スーパーフォローで最高の体験が得られることを、広く公開する前に確認します」。

さらに広報担当者は、Twitterのスーパーフォローはクリエイターがスケールに合わせて収益を増やせるように設定されていることも指摘した。

「スーパーフォローでは、クリエイターは生涯の収益が5万ドル(約549万6000円)になるまで、アプリ内購入手数料差し引き後収益の最大97%を受け取れます。5万ドルを超えてからは、アプリ内購入手数料差し引き後収益の最大80%%を受け取れます」と広報担当者はいう。

画像クレジット:Twitter

原文へ

(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

オンラインで登記申請書類を作成し法務局に行かずに申請できる「AI-CON登記」が「役員の氏名変更登記申請」に対応

オンラインで登記申請書類を作成し法務局に行かずに申請できる「AI-CON登記」が「役員の氏名変更登記申請」に対応

リーガルテックサービスの開発・運営を行うGVA TECHは9月16日、オンライン商業登記支援サービス「AI-CON登記」において、新たに「役員の氏名変更登記申請」に対応したと発表した。

AI-CON登記は、会社の登記情報をアップロードし、変更内容などの最低限の情報を入力するだけで、登記申請書類や添付書類を自動作成できるサービス。作成された書類に押印し、収入印紙(登録免許税)を貼って法務局に郵送することで登記申請が完了する。決算期や人事異動、株主総会が増えるシーズンに利用される機会が多く、2019年1月のサービス提供開始以来4000社以上の企業が利用しているという。

AI-CON登記では、以前から株式会社の役員変更登記申請に対応しており、今回新たに「役員の氏名変更登記申請」もサポートした。従来AI-CON登記では、取締役・代表取締役・監査役の役員変更のうち、就任・重任・退任・辞任には対応していたが、氏名変更には対応していなかった。今回の追加により、役員としての立場は変えずに氏名変更をできるようになった。

また、2015年2月27日から登記記録上の役員の氏名に、婚姻前の氏も併記できるようになっている。AI-CON登記で氏名変更・就任を行う際は、婚姻前の旧姓を記録することの申し出も一緒に行えるようになった。

AI-CON登記で対応している登記種類

・株式会社の役員の新任
・株式会社の役員の辞任
・株式会社の役員の重任・退任
・株式会社の本店移転登記(管轄内外)
・株式会社の募集株式発行(増資)登記
・代表取締役の住所変更登記
・株式会社の役員の氏名変更
・株式会社の商号変更登記
・株式会社の目的変更登記
・株式会社の株式分割登記
・株式会社のストックオプション発行登記
※役員変更では、取締役・代表取締役・監査役の変更に対応

高級感とテクノロジーが両立したデザインを追求する自動車メーカーたち、「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」開催

2021年の夏はモントレー、デトロイト、そして夏の終わりには英国オックスフォードで恒例のカーイベントが開催され、自動車コレクターが集結して高級車やビンテージカーを鑑賞し、オークションを楽しんだ。

2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの影響で多くのカーイベントが中止。2021年は屋外に高級車を集めたイベントが復活し、7月の「Goodwood Festival of Speed(グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード)」、8月の「Monterey Car Week(モントレー・カーウィーク)」「Woodward Dream Cruise(ウッドワード・ドリーム・クルーズ)」、そして9月上旬に開催された「Salon Privé(サロン・プリヴェ)」などのイベントでは、魅力的なクーペや派手なハイパーカーだけではなく、さまざまなクルマが展示された。

COVID-19の変異株「デルタ」の流行にもかかわらず集まった観客と、豪華な会場に並んだ自動車に対する彼らの反応は、ビンテージカー、そして未来の超高級車に対する抑えきれない興奮を反映したものだった。

Gooding & Company(グッディングアンドカンパニー)のオークション・スペシャリスト、Angus Dykman(アンガス・ダイクマン)氏は「現地で参加できるオークションの需要が高まっていました」「私たちは現地でのセールスに強い関心があり、ビジネスは活発です。皆がさまざまな自動車を応援してくれました」と話す。

カリフォルニア州ペブルビーチの「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス2021」に出品されたPorsche 917(2021年8月15日)(画像クレジット: Getty Images、撮影:David Paul Morris / Bloomberg)

この屋外の展示には、新興自動車メーカーも歴史あるブランドも、未来を反映させた最新の自動車を顧客に提示する必要がある、という緊迫感があった。高級車メーカーにとって、8月のモントレーは、次世代モデルのデザインをアピールできる重要なイベントだ。Bentley(ベントレー)、Bugatti Automobiles(ブガッティ・オートモービルズ)、Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)などの老舗の自動車メーカーに加え、新規参入のRimac Automobili(リマックアウトモビリ)やLucid Group(ルシードグループ)もモントレーでの存在感のアピールに資金を投じた。

ビンテージカーでもコンテンポラリーカーでも、その一貫したテーマは新しい顧客を惹きつける見事なデザインである。

マイクロチップが不足し、車両数も限られている中、カーコレクターは生産開始前から新型車の予約を行っていた。各ブランドのトップもコレクターたちと交流を図り、ペブルビーチでは、Ford Motor(フォード・モーター)のJim Farley(ジム・ファーレイ)CEO、メルセデス・ベンツ米国プレジデントのDimitris Psillakis(ディミトリス・プシラキス)氏、Aston Martin(アストンマーティン)のTobias Moers(トビアス・モアーズ)CEO、Lamborghini(ランボルギーニ)のMaurizio Reggiani(マウリツィオ・レッジャーニ)CTOなど、少なくとも十数名の経営幹部が目撃された。

現地時間2021年8月13日(金)、米国カリフォルニア州カーメルで開催された「The Quail, A Motorsports Gathering(ザ・クエイル、ア・モータースポーツギャザリング)」で、ブガッティ・オートモービルズのSAS Bolideを鑑賞する参加者たち(画像クレジット:David Paul Morris / Bloomberg via Getty Images)

モアーズ氏は、アストンが建設した大きなスタンドからビンテージカーショーを見下ろし「私たちのラグジュアリーカービジネスに関していえば、この場所が最適です」と話す。「ここでは、これまで会ったことのない新しい顧客に出会うことができます。私たちのブランドは、F1(フォーミュラワン)でかつてないほどの注目を集めています」。

同社は未来のレース仕様のアストンを展示。F1マシンを中心に、ValkyrieやValhallaなど、アストンの今後の方向性を示す指標となっている。

「これは私たちのメッセージです」とモアーズ氏。「2020年は、誰もがアストンは終わったと思っていたでしょう。そこにLawrence Stroll(ローレンス・ストロール)氏が乗り込んできて、多額の投資をしてくれました。私たちは復活し、お客様との関係はかつてなく強化されています」。英国で多くの地域がロックダウンされている中、同社はベントレー、フォード、Porsche(ポルシェ)から新しい部門長を採用した。

モアーズ氏自身もパンデミックの最中に新しいCEOとして就任しているが、同氏は北米の従業員、ディーラー、顧客と初めて顔合わせをした。

Mercedes-AMG(メルセデスAMG)出身のモアーズ氏は自信に満ちた経営者で、電動化の経験が自分の強みになると考えている。同氏は「アストンは超高級車を開発しており、その美しさは昔から有名でした。新しい技術を使えば、もうどこにも妥協する必要はありません」と語る。

ペブルビーチの観客を魅了することも重要だが、同氏はアストンの中国でのビジネス、そしてメルセデスのエンジニアリングをアストンの事業拡大にどのように利用するかという点にも注目している。

「中国では北米とは異なり、18歳~30代の若い顧客層に対応する必要があります。それから60代以上。その間の購買層は今のところ存在しません。中国のペースは信じられません。世界の富豪層の増加という点では、中国とアジアがトップだと思います」。

アストンにとっての未来とは、電動化と車内のユーザーエクスペリエンスの再考であり、これはメルセデス・ベンツの前世代の技術を採用するという過去の計画を破棄することを意味する。

「私たちは、メルセデスのインフォテイメント(情報とエンターテインメントを組み合わせた造語)やHMI(ヒューマンマシンインターフェース)を使用しないと決めました。未来を見据えてHMIを構築するなら、もう少し魅力的なものが必要です」とモアーズ氏。同社はメルセデスのMBUXインフォテイメントを取り入れずに、ランボルギーニやApple(アップル)と仕事をしているイタリアのサプライヤー、ART(アート)と一緒に新しいインフォテイメントシステムを構築しているという。

アストンマーティンは、電動化という業界の要求に応えるため、メルセデスのV8エンジン技術を利用して効率化を図る計画だ。

パワー、情熱、テクノロジー

Audi skysphere concept(画像クレジット:Tamara Warren)

ペブルビーチでは、自動車メーカーの経営者たちの間で、コンプライアンス基準を満たすために新しい動力源を開発する一方で、顧客の自動車に対する情熱を維持し、最新の車内エクスペリエンスで新しい顧客を惹きつけるというテーマが浮上した。

1社でできることではない。オーダーメイドの小さな超高級車ブランドは、エンジンや電子プラットフォームの供給を大手自動車メーカーや親会社の投資に頼っている。また、開発には競争力のある人材が必要だ。その上で、これらの小さなブランドは、大企業とは異なる独自性を強く打ち出す必要がある。

ランボルギーニのレッジャーニCTOは次のように話す。「将来に向けて一年前から開発が続けられている最も重要で高価なものの1つが、電子プラットフォームと呼ばれるものです」「ユーザーが電子プラットフォームに触ることはできません。電子プラットフォームはまさしく自動車の神経系(nervous system)です。私たちはグループ内でこれを使おうとしています。そうすれば、従来の車両に使用されていたパーツの多くや、識別できなかったシステムやコンポーネントを使用することが可能になります」。

ランボルギーニはVolkswagen Group(フォルクスワーゲングループ)の傘下にあり、ブガッティ、ベントレー、Audi(アウディ)、ポルシェなどの主要な競合車もフォルクスワーゲングループの企業である。

「グループで共有できるものは利用していますが、私たちは他とは違うことをしようとしています」とレッジャーニ氏。ランボルギーニはAmazon Alexaとのパートナーシップに着手した最初の自動車ブランドであり、顧客にAlexaが受け入れられたことで将来的な思考への扉が開かれたと話す。「『音』は、音声認識のフィルターを構成する手段です。未来を想像してみてください。トラブルが発生してランプが点灯しているときに、Alexaに『どうすればいいか教えて』と尋ねたとします。Alexaは、車を停め、サービスアシスタントを呼ぶようにと教えてくれます。そして人工知能が訓練されます」。同氏は、サウンドデザインと音声の新しい使い方を構築するためのデータ収集に取り組んでいるという。

しかし、目の肥えたランボルギーニの顧客には、高価なテクノロジーも時代遅れにならないような魅力的なデザインで魅せる必要がある。「デザインはランボルギーニを購入する1つ目の理由です」とレッジャーニ氏は話す。「しかし、従来のようにデザインが良ければそれでいい、というわけではありません。今や多くが、美学の中にエンジニアリングを統合したデザインになっています。車を構成する部品の1つ1つに機能性が求められます。そして空気力学と冷却の融合。PHEV(プラグインハイブリッドEV)の登場で、冷却系はますます複雑になりました。バッテリーマネジメントも今後ますます複雑になるでしょう。それらすべての要件を満足するクールなデザインが必要です」。

今という時代のテクノロジーとデザイン

モントレー・カーウィークに展示されたビンテージカーと比較すると、特にモータースポーツカーでは、空気力学と重量配分が常に車の設計原理を支配し、進歩を促してきたことがわかる。しかし、現代におけるテクノロジーとデザインとは、スピード、電動化、ADAS(先進運転支援システム)、コネクティビティなどが、時代を超越する洗練されたシステムに収められていることを意味する。レッジャーニ氏は「最も重要なポイントの1つは、必ず感動を呼び起こすデザインであることで、これは譲れない条件です」と話す。

未来をデザインするということは、その方向性を伝えることだ。急速に変化する世界で、高級車メーカーはそのペースに必死で追いつこうとしているが、これは非常に難しい課題である。モントレー・カーウィークに参加しなかったTesla(テスラ)は、同社のAIの発表をこの週に合わせて行った。テスラでさえも電動化を進化させようとしている。

モントレーで、完璧に手入れされ、限られた数しか生産されず、それゆえに数億円もの価値があるビンテージカーを運転することは魅惑的な体験だ。筆者は1957年式Mercedes-Benz 300 SLというエレガントなマニュアルトランスミッション(MT)オープンカーを太平洋沿いの道路で試乗し、(パンデミックにより入場料が高額な)この神聖な世界を少しだけ垣間見ることができた。

グッドウッド、ウッドワード、そして今週末に終了したサロン・プリヴェも同様に魅力的だったが、豪華な屋外イベントが終了した今、自動車業界は、輸送機関の未来に焦点を当てたショーに視線を移したようだ。

現地時間9月7日にミュンヘンで開幕したIAAモビリティ(旧フランクフルト・モーターショー)では、旧態依然の自動車ショーのイメージを一新しようとする自動車メーカーの姿勢が感じられ、より臨場感のある体験を楽しむことができる。展示されているEVのモデルやコンセプトの数々は、進化のスピードは金銭では予測できないものの1つであることを思い出させてくれる。

画像クレジット:David Paul Morris/Bloomberg / Getty Images

原文へ

(文:Tamara Warren、翻訳:Dragonfly)

循環経済を重視してCO2排出量の削減を目指すBMW Neue Klasseのラインナップ

BMW Groupは、米国時間9月2日、走行車両の全世界の二酸化炭素排出量を2030年までに、2019年レベルから50%、車両の全ライフサイクルの二酸化炭素排出量を2019年レベルから40%削減するという目標に向けて尽力する意向を発表した。これらの目標は、持続可能性の高い車両ライフサイクルを達成する循環経済の原則を重視する計画も含め、同社のNeue Klasse(新しいクラス)と呼ばれる新ラインナップ(2025年までに発売予定)で明らかになる。

3月に発表されたBMWの「新しいクラス」と呼ばれる計画は、同社が1962年から1977年までに生産したセダンとクーペのラインナップ、つまりBMWのスポーツカーメーカーとしての地位を確固たるものにしたラインナップを根本的に見直すものだ。同社によると、この新しいラインナップの目玉は「一新されたITおよびソフトウェアアーキテクチャ、新世代の高性能電気ドライブトレインとバッテリー、車両の全ライフサイクルに渡って持続可能性を達成するまったく新しいアプローチ」だという。

「Neue Klasseは、CO2削減の取り組み姿勢を一段と明確にし、世界の平均気温上昇を1.5度に抑える目標を達成するための明確な進路に沿って進むという当社の決意を表明するものです」とBMW AGの取締役会長 Oliver Zipse(オリバー・ジプス)氏は今回の発表で述べた。「CO2削減の取り組みは法人の活動を判断する大きな要因となっています。地球温暖化対策では、自動車メーカー各社の自社製車両の全ライフサイクルにおけるCO2排出ガスの削減量が決め手となります。当社がCO2排出量の大幅な削減について透明性が高くかつ野心的な目標を設定している理由もそこにあります。実際の削減量はScience Based Targets(科学的根拠に基づく目標)イニシアチブによって評価され、効果的で測定可能な貢献度として示されます」。

BMWによると、同グループのCO2総排出量の70%は、車両の利用段階で発生したものだという。これは、BMWの販売車両の大半が未だにガソリン車であるという事実からすると納得がいく。2021年上半期のBMWの総販売台数に占める電気自動車またはプラグインハイブリッド車の割合は11.44%であった(2021年上半期収益報告書による)。同社は、2021年末までに、ハイブリッド車を含め100万台のプラグイン(コンセント充電型)車両を販売するという目標を表明している。第2四半期終了時点で、約85万台を売り上げているが、車両利用段階でのCO2排出量を半分にするという目標を達成するには、CO2排出量が低いかゼロの車両の販売量を大幅に増やす必要がある。同社にはすでにi3コンパクトEVシリーズを販売しており、2021年後半には、i4セダンとiX SUVという2つのロングレンジ(長航続距離)モデルが発売され、2022年にはさらに別のモデルも投入される予定だ。GMやボルボと違い、BMWはガソリン車を廃止する計画をまだ発表しておらず、最初から電気自動車として設計されたラインナップの販売も開始していない。

今回の発表は、BMWが、Volkswagen(フォルクスワーゲン)、Audi(アウディ)、Porsche(ポルシェ)など、ドイツの他の自動車メーカーとともに、1990以来、排出ガスカルテルに関与していたことを認めた2カ月後に行われた。これらのメーカーは、EUの排出ガス規制で法的に必要とされる基準を超えて有害なガス排出量を削減できるテクノロジーを持ちながら、共謀してそれを隠ぺいしていた。EUは4億4200万ドル(約486億円)の制裁金を課したが、BMWの第2四半期の収益が60億ドル(約6599億円)近くになることを考えると、軽いお仕置き程度に過ぎない。

関連記事:EUがBMWとVWに約1110億円の制裁金、90年代からの排ガスカルテルで

また、2021年8月に発表されたEUの「Fit for 55」エネルギーおよび気候パッケージでは、世界全体のCO2ガス排出量の目標削減量が、2030年までに40%から55%に上方修正された。これは、自動車メーカーが電気自動車への移行ペースを早める必要があることを意味し、BMWもその点は認識している。欧州委員会では他にも、CO2ガス排出量を2030年までに60%削減し、2035年までには100%カットするという提案事項も検討されているという。これは、その頃までには、ガソリン車を販売することがほぼ不可能になることを意味する。

BMWによるとNeue Klasseによって、電気自動車が市場に出る勢いがさらに加速されるという。同社は、今後10年で、完全電気自動車1000万台を販売することを目標にしている。具体的には、 BMW Group全体の販売台数の少なくとも半分を完全電気自動車にし、Miniブランドは2030年以降、完全電気自動車のみを販売することになる。BMWは、循環経済重視の一環として、Neue Klasse計画による再生材料の利用率向上と、再生材料市場を確立するためのより良い枠組みの促進も目指している。同社によると、再生材料の利用率を現在の30%から50%に高めることが目標だというが、具体的な時期までは明言していない。

BMWによると、例えばiXのバッテリー再生ニッケルの使用率はすでに50%に達しており、バッテリーの筐体での再生アルミニウムの使用率も最大30%になるという。目標はこれらの数字を上げていくことだという。また、BMWは、BASFおよびALBAグループとの提携プロジェクトで自動車の再生プラスチックの使用量を試験的に増やす試みも行っている。

BMWが称する総合リサイクリングシステムの一環として「ALBA Groupは BMW Group製の寿命末期車両を解析して、車両間でのプラスチックの再利用が可能かどうかを確認している」という。「第2段階として、BASFは分類前の廃棄物をケミカルリサイクル処理して熱分解油を取得できないかどうか調べています。こうして得られた熱分解油はプラスチック製の新製品に利用できます。将来的には、例えばドアの内張りパネルやその他の部品を廃棄車の計器パネルを利用して製造できる可能性があります」。

リサイクリングプロセスを簡素化するため、BMWは、車両の初期段階設計の考え方も取り入れている。材料は、製品寿命が終わったときに容易に分解 / 再利用できるように組み立てる必要がある。BMWでは、再利用可能な材料に戻すことができるように車内インテリアを単一の素材で製造することが多くなっているという。

「例えば車内の配線システムは、車両内のケーブルハーネスで鉄と銅を混在させないようにして、容易に取り外しできるようにする必要があります」と同社は述べている。「鉄と銅が混在していると、再生鉄での鉄の必須特性が失われるため、自動車業界の高い安全性要件を満たすことができなくなるからです」。

また、循環経済では、高品質の車両を使用する必要がある。そうすることで、パーツを容易にリサイクルまたは修理できるため、結果として全材料数が削減されるからだ。

今回の発表で、BMWは車両のライフサイクルについて透明性を高めることを約束している。同社は、他のほとんどの大手自動車メーカーと同様、ライフ・サイクル・アセスメント(生産から回収再利用までの過程で環境に対する影響度を評価する手法)を公開しているが、業界の標準があるわけではない。このため、異種の車両を比較することが難しい場合がある。車両の全ライフサイクルを把握することは、CO2排出量の削減目標を達成するのにますます重要になっている。バッテリーと車両を製造するために必要なすべての材料を取得するためにサプライチェーンおよび製造段階で発生する排出ガスについての調査結果がようやく明らかになってきているが、この調査により、EV化の動きがライフサイクル全体のCO2排出量を却って増やす可能性があることが明らかになるかもしれない。

「内包二酸化炭素の数値化は大変難しく、特にEVでは非常に複雑で不確実です」とManhattan InstituteのシニアフェローMark Mills(マーク・ミルズ)氏は最近のTechCrunchの記事に書いている。「EVは走行中には何も排出しないが、生涯総炭素排出量の約80%は、バッテリーを製造する際のエネルギーおよび自動車を動かすための電力を発電する際のエネルギーから発生している。残りは、車の非燃料部品の製造によるものである。従来型の自動車の場合は、生涯総炭素排出量の約80%が走行中に燃焼した燃料から直接発生する二酸化炭素で、残りは自動車の製造とガソリンの生産にかかる内包二酸化炭素から発生する」。

関連記事:【コラム】材料、電池、製造の炭素排出量を積み上げたEVの本当のカーボンコスト

画像クレジット:BMW Group

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

【コラム】9.11から20年、制限のないデータ収集がもたらす米国の新たな悲劇

2001年9月11日朝。米国の成人のほとんどは、自分がその時どこにいたかを鮮明に覚えているだろう。筆者はホワイトハウスのウェストウィング2階で、米国国家経済会議のスタッフ会議に出席していた。シークレットサービスが突然部屋に入ってきて「すぐに部屋を出てください。ご婦人方はハイヒールを脱いで!」と叫んだことは忘れられない。

そのちょうど1時間前、私は全米経済会議のホワイトハウス技術顧問として、9月13日にオーバルオフィスで予定されている大統領との会談に向けて最終的な詳細を副参謀長に説明していた。そして、米国政府のプライバシー保護法案を議会に提出するために、大統領のサインを得る準備が整った。カリフォルニア州のプライバシー保護法の国家版ともいえるこの法案は、それよりも強力で、情報を共有する際には対象となる市民の選択による同意を得て市民のデータを保護するなど、データの収集方法や使用方法を規定するものだった。

しかし、その日の朝、世界は一変した。私たちはホワイトハウスから避難し、その日は悲劇に次ぐ悲劇が発生した。米国、そして世界中に衝撃が走った。あの日、ワシントンD.C.にいた私たちは、悲しみ、連帯感、不信感、力強さ、決意、緊迫、そして希望など、人間の感情のすべてを目の当たりにし、自ら体験することとなった。

当日については多くのことが語られているが、筆者はその翌日のことを少し振り返ってみようと思う。

9月12日、オフィスに国家経済会議のスタッフが集まったとき、当時の上司であるLarry Lindsey(ラリー・リンゼイ、Lawrence Lindsey)が私たちに言った言葉を今でも覚えている。「今ここにいることを不安に思う人がいるかもしれません。私たちは全員が標的なのだから。愛国心や信仰心をアピールするつもりはありません。しかし、この部屋にいる皆が経済学者である以上、私はみなさんの合理的な自己利益に訴えます。今、私たちが逃げ出してしまえば、他の人たちも同じように逃げ出すでしょう。誰が私たちの社会の要を守ることができるでしょうか?私たちは国を守ります。この国の誇りとなるように行動してください。そして、安全と安心という自由への献身を放棄しないでください」。

9.11の悲劇に対して、国が一丸となったこと、そして米国政府の対応については多くのことを誇りに思っている。しかし、私はサイバーセキュリティとデータプライバシーの専門家として、まず、ラリーが言ったこと、その後の数年間で学んだ多くの重要な教訓、特に社会の要を守るということについて振り返りたい。

あの日の記憶は未だに鮮明だが、20年が経過し、9.11同時多発テロに至るまでの数カ月間にデータが果たした(果たさなかった)致命的ともいえる役割が解明されている。不幸なことに、すぐそばにあったはずの情報データはバラバラに保管されており、何千人もの命を救うことができたかもしれない点と点をつなぐことはできなかった。データのサイロ化によって、情報を安全に共有する仕組みがあれば見つけられたはずのパターンが見えなくなっていたのだ。

その後、私たちは「こんなことは二度とごめんだ」と自らに言い聞かせ、当局は、市民の自由だけでなくデータのセキュリティにも重大な影響を与えることを考慮せずに、収集できる情報の量を増やすことに邁進した。そして、CIAや法執行機関による20年間の監視要請が詰め込まれた愛国者法が施行された。司法省とともに愛国者法を交渉する場にいた私がはっきりと言えるのは、次のテロ攻撃を防ぎ、私たちの人々を保護するという意図は理解できるものの、その結果として広範囲に及んだ悪影響は明白であった、ということだ。

国内での盗聴や大規模な監視が当たり前になり、個人のプライバシーやデータの安全性、国民の信頼が少しずつ損なわれていった。これはデータプライバシーに対する危険な前例となったが、その一方で、このレベルの監視ではテロとの戦いにおいてわずかな成果しか得られなかった。

残念なことに、個人のプライバシー保護を強固にするはずであった、まさに9月11日の週に議会に提出する予定だった米国政府のプライバシー法案は、頓挫してしまった。

その後数年が経ち、大量の監視データを安価かつ簡単に収集・保管できるようになり、テクノロジー関連やクラウド関連の大手企業が急速に規模を拡大し、インターネットを支配するようになった。官民を問わずより多くのデータが収集されるようになり、個人の機密データが公に晒されるようになったが、このようなアクセスの拡大に対処できる、有効性のあるプライバシー保護措置は講じられなかった。

巨大なテクノロジー企業やIoTデバイスが、私たちの行動、会話、友人、家族、身体に関するデータポイントを集める20年後の現在、私たちは過剰なまでに野放図なデータ収集とアクセスに翻弄されている。原因がランサムウェアであろうとクラウドバケットの設定ミスであろうと、大規模で代償が大きいデータ漏えいでさえも新聞の一面で取り上げられないほど頻繁に発生している。この結果は社会の信頼の喪失だ。人権であるはずのプライバシーだが、それが守られていないことは誰もが知っている。

このことは、アフガニスタンでの人道的危機を見れば明らかだ。一例を挙げてみよう。連合軍を支援したアフガニスタン市民の生体情報データが入った米軍のデバイスがタリバンに奪われてしまった。このデータがあれば、タリバンは対象となる個人や家族を容易に特定し、追跡できる。機密性の高い個人情報が悪人の手に渡るという最悪のシナリオであり、私たちはそれを防ぐための十分な努力をしてこなかった。

決して許されることではない。20年経った今、私たちは再び「こんなことは二度とごめんだ」とつぶやいている。私たちは9.11の経験を、情報データをどのように管理、共有、保護したらいいかを再認識する機会とするべきだったが、未だにそれを正しく理解していない。20年前も現在も、データの管理方法は生死を決する。

進歩がないわけではない。2021年、ホワイトハウスと米国国防総省は、サイバーセキュリティとゼロトラスト(すべてが完全には信頼できないことを前提とする考え方)のデータ保護にスポットライトを当て、米国政府のデータシステムを強化する行動を促す大統領令を出した。私たちには、このような機密データを保護しながら共有もできるようにするために必要な技術がある、というのは良いニュースだろう。データが本来データを持つべきではない人の手に渡ることを防ぐ緊急時対応策も用意されている。しかし、残念なことに、私たちのアクションはまだ十分ではない。データの安全な管理という問題の解決が遅れれば遅れるほど、罪のない人々の命が失われていく。

私たちには、次の20年を見据えて信頼を回復し、データプライバシーの管理方法を変革する機会がある。何よりもまず、私たちは何らかのガードを設置することが必要だ。そのためには、個人に自分自身のデータ管理の自律性をデフォルトで持たせることのできるプライバシー保護の枠組みを構築しなければならない。

つまり、各個人による自らのデータの所有と管理を可能にするためには、公的機関や民間企業がIDとデータを結びつけ、データの所有権を各個人に戻すという技術的な裏方の作業を行う必要がある。簡単にできることではない……しかし、不可能なことではなく、米国市民、米国居住者、世界中の同盟国の人々を守るために必要なことだ。

このようなデータ保護の導入を促進するためには、相互運用性と柔軟性を備えた、無料でアクセスできるオープンソースソリューションのエコシステムが必要である。既存のプロセスやソリューションにデータ保護とプライバシーを重ね合わせることで、政府機関は、個人のプライバシーを損なうことなく、データを安全に収集・集計して全体像を明らかにすることができる。今の私たちはこのような技術がある。今こそそれを活用するときだ。

大量のデータが収集・保管されている現在、米国のデータが悪用される機会は格段に増えている。タリバンに奪われたデバイスは、現在危険に直面しているデータのごく一部に過ぎない。2021年に入ってからも、国家レベルのサイバー攻撃は増加の一途をたどっている。人命を脅かすこのサイバー攻撃は、決してなくなることはない。

2001年9月12日のラリーの言葉は、今でも心に残っている。今、私たちが手を引いたら、誰が社会の要を守れるだろうか。人々の自由を損なうことなく、プライバシーを守り抜くことができるかどうかは、官民のテクノロジーリーダーである私たちにかかっている。

まずはデータに対する国民の信頼を回復しよう。今からでも遅くはない。20年後、私たちはこの10年間を、個人のプライバシー権を保護・支持する上でのターニングポイントとして振り返ることになるだろうか。それとも、またしても「こんなことは二度とごめんだ」と思っているのだろうか。

編集部注:本稿の執筆者John Ackerly(ジョン・アッカーリー)氏はVirtru Corporationの共同創立者兼CEO。以前は、Lindsay Goldberg LLCの投資家、ホワイトハウスの技術政策アドバイザー、米国商務省の政策・戦略計画ディレクターを務めていた。

画像クレジット:Mark Rainwater/Eye Em / Getty Images

原文へ

(文:John Ackerly、翻訳:Dragonfly)

マイキャン・テクノロジーズが1.89億円調達、新型コロナやデング出血熱などウイルス感染症の重症化予測キット開発を加速

マイキャン・テクノロジーズが1.89億円調達、新型コロナやデング出血熱などウイルス感染症の重症化予測キット開発を加速

バイオ領域スタートアップのマイキャン・テクノロジーズは9月17日、第三者割当増資による合計1億8900万円の資金調達を発表した。引受先は、リアルテックファンド3号投資事業有限責任組合(リアルテックジャパン)、グロービス・アルムナイ・グロース・インベストメント1号ファンド(グロービス)、京都市スタートアップ支援2号投資事業有限責任組合並びにこうべしんきんステップアップ投資事業有限責任組合(フューチャーベンチャーキャピタル)、360ipジャパンファンド1号投資事業有限責任組合(360ipジャパン)。

調達した資金により、iPS細胞由来不死化ミエロイド系細胞(iMylc細胞)製品を使用した感染症の重症化予測キットの製品開発を加速させる。特に、デング出血熱や新型コロナウイルス感染症などのウイルス感染症に焦点を当て、体内にある抗体の質を測定することで重篤化を予測する新しいタイプの重症化予測キットを重点的に開発する。

マイキャン・テクノロジーズは、再生医療技術を用いてヒトiPS細胞などから誘導した不死化ミエロイド系細胞(Mylc細胞。免疫細胞の1つ。単球・樹状細胞などが含まれる)を作製・供給する技術を有している。大量製造により安定的・継続的な供給が可能なため、研究用細胞として、デングウイルスや新型コロナウイルスなどの感染症や、免疫の研究などに使用されているという。

Mylc細胞は、ヒトの免疫反応を生体に近い状態で再現することが可能な細胞。ウイルスや微生物が存在すると、Mylc細胞に感染し微生物が増殖したり、逆にMylc細胞が防御のため炎症性サイトカイン(IL-6など)を産生したり、生体で起こる反応を示す。このような免疫反応において、被検体(血液・血清など、検査対象の抗体)があると、感染・防御の反応性が大きく異なることがわかってきたという。そこで同社は、これら反応を基にした、再生医療の技術を活用した世界初のウイルス感染症重症化予測キットの開発・製品化を目指すとしている。

2016年7月設立のマイキャン・テクノロジーズは、再生医療の技術を使用した研究用血球細胞の提供を通じ、治療薬・ワクチン開発を支援してきた。今後は、より患者に近い製品も開発・提供したいと考えているという。同社の独自技術を用いて重症化を予測する検査薬事業を展開することで、「感染症に怯えず暮らせる社会」実現にむけてさらに一層貢献するとしている。

今週の記事ランキング(2021.9.12〜9.16)

今週もTechCrunch Japanで最もよく読まれた5つの記事を紹介しよう。今週の1位は、「アマゾンがようやくKindleソフトウェアを大幅にアップデート、より読書しやすいデザインに」というニュースだ。他のランキングについても振り返ってみよう。

Lucid Airが航続距離約837kmを達成、テスラを凌ぎ市販EVトップに

2021年中に上場を予定している電気自動車メーカーのLucid Group(ルシード・グループ)は、米国時間9月16日、同社が発売する高級セダン「Air(エアー)」の仕様の1つが、EPA(米国環境保護庁)による航続距離(一度のフル充電で走行可能な距離)で、520マイル(約837キロメートル)を達成したと発表した。この「Lucid Air Dream Edition Range(ルシード・エアー・ドリーム・エディション・レンジ)」の公的機関による評価は、長くこのカテゴリーで優位を保ってきたTesla(テスラ)を押しのけるものだ。

関連記事:EVのLucid MotorsがSPAC合併で上場へ、2021年下期に北米でLucid Airの販売開始

Lucid Airの公式EPA航続距離は、テスラのいくつかのモデルと同等かそれ以上になることが期待されてきた。今回の発表は、Lucidに自画自賛する権利を与えるだけでなく、77400ドル(約850万円)から16万9000ドル(約1860万円)の間でさまざまなバージョンのAirを提供するという同社の戦略についても、少しだけ明らかにしている。

Lucidは当初、実質的に最初のフラッグシップモデルとなる「Lucid Air Dream Edition」の1バージョンのみを販売する計画だった。だが、現在はこの「Dream Edition」にも、最高出力933馬力で19インチ・タイヤを装着した場合の航続距離が520マイルの「Dream Edition Range」と、よりパワフルな1111馬力を発生するものの、同じく19インチのタイヤ装着車で航続距離が471マイル(約758キロメートル)に留まる「Lucid Air Dream Edition Performance(ルシード・エアー・ドリーム・エディション・パフォーマンス)」という2種類の仕様が設定されている。

Lucid GroupのCTO兼CEOであるPeter Rawlinson(ピーター・ローリンソン)氏によれば、この航続距離は同社の900Vバッテリーとバッテリー管理システム、小型化されたドライブユニット、そして電気ドライブトレイン技術の組み合わせで実現したとのこと。ローリンソン氏は、この数値が他のあらゆるEVを凌ぐ新記録だと確信していると言及している。

現在はすでに予約が締め切られている2種類のDream Editionの他に、LucidはEPA航続距離516マイル(約830キロメートル)を記録した「Lucid Air Grand Touring(ルシード・エアー・グランド・ツーリング)」を含む、いくつかのバリエーションの生産・販売を計画している。Dream Editionの価格は両モデルとも16万9000ドル(約1860万円)、最高出力800馬力のGrand Touringは13万9000ドル(1530万円)からとなっている。他にも目標航続距離が406マイル(約653キロメートル)で620馬力の「Lucid Air Touring(ルシード・エアー・ツーリング)」が9万5000ドル(1040万円)から、さらに出力を480馬力に抑えた廉価版「Lucid Air Pure(ルシード・エアー・ピュア)」が7万7400ドル(約850万円)からという価格で発売になる予定だ。

関連記事
Lucid Motorsがオール電化セダン「Air」の全テクノロジーを披露、主要音声アシスタントはAmazon Alexa
Lucid Motorsが中古EV用バッテリーをエネルギー貯蔵システムに再利用へ

画像クレジット:Lucid Motors

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

1980年代に大ヒットした8bitコンピューターの名機「ZX Spectrum」開発者クライブ・シンクレア氏死去

1980年代に大ヒットした8bitコンピューターの名機「ZX Spectrum」開発者クライブ・シンクレア氏死去

David Levenson/Getty Images

1980年代に大ヒットした8ビットホームコンピューター、シンクレアZXシリーズを開発・発売したクライブ・シンクレア卿が9月16日に81歳で死去しました。

日本では発売されなかったシンクレアZXシリーズですが、英国ではZX80、ZX81、ZX Spectrumといった機種を発売し、累計500万台以上を売り上げる大ヒット作となりました。フロッピーディスクドライブやモデムなど多数の周辺機器がサードパーティから発売され、また他社による互換機も数多く作られたのも特色と言えるでしょう。ソフトウェアも少なくとも2万3000本以上が作られ、現在もコミュニティによってその数は増加しているとされます。

1980年代に大ヒットした8bitコンピューターの名機「ZX Spectrum」開発者クライブ・シンクレア氏死去

Sinclair

1984年に発売したビジネスコンピューターシンクレアQLは、個人向けながらモトローラのMC68000系CPUを搭載した意欲作でしたが売上げは不振におわり、その損失のせいでシンクレア氏はシンクレアブランドとコンピューター事業を売却しています。

シンクレア氏が特にコンピューター分野に残した功績は大きなもので、ZXシリーズは決してゲームには向いていないハードウェアであったにもかかわらず数多くのゲームが開発・移植されるなど、当時のプログラマーのゆりかごのような役目を果たしました。失敗に終わったQLにしても、後にLinuxを生み出すリーナス・トーバルズ氏が大学生時代にこのマシンでプログラミングを学んだと語っています。

シンクレアはPCだけでなく、1972年には世界初のポケット電卓を開発したり、1985年にはSinclair Vehiclesで電気自動車C5を発売しています。C5は大人1人が乗れる大きさの電動三輪でしたが、世の中がシンクレアに数十年遅れていたのか、ヒットにはつながりませんでした。いまや自動車業界は電動化まっしぐらといった状況。シンクレア氏の先見の明は際立ちすぎていたのかもしれません。合掌。

(Source:The GuardianEngadget日本版より転載)

電動ピックアップトラックのRivianが無料充電とLTE通信を利用できるメンバープログラムを発表

イリノイ州ノーマルの工場でピックアップトラック「R1T」の組立ラインが動き出したRivian(リビアン)は、2021年9月中のデビューに向けて同社初のEVの準備を進めている。米国時間9月16日、同社は近々設立予定の充電ネットワーク、Adventure Networkand WaypointsでRivianオーナーが無料充電できるメンバーシッププログラムを開始した。

さらに同社は、Rivianメンバーが1マイル走る毎に、相当する風力、太陽光などの再生可能エネルギーを購入するマッチングプログラム、および4G LTE接続の無制限アクセスを約束した。

プログラムには、山道で溝にはまった時や緊急充電が必要な時、会社が代車を手配するRivian off-Roadside Assistanceも含まれている。将来、新しいドライブモード、コミュニティ集会、車室内コンテンツなどの追加特典を提供することも約束している。Rivian新車にはサービスの12カ月間無料使用権がついてくる。その後特典を利用したい人は料金を払う必要がある。同社は料金をいくらにするつもりか言わなかったので、追加情報のために問い合わせている。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のIgor Bonifacic(イゴー・ボニファシック)氏はEngadgetのコントリビューティング・ライター。

関連記事:アマゾンも出資するRivianが電動ピックアップトラック「R1T」の量産第1号車を出荷

画像クレジット:Rivian

原文へ

(文:Igor Bonifacic、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アップルは社内メモでテキサス州の妊娠中絶法に対する法的な異議申し立てを監視していると発表

米国時間9月16日、Apple(アップル)は社員専用のメッセージボードで、同社が最近テキサス州で成立した、同社のいう「特異な制限のある妊娠中絶法」に対する法的異議申し立てを監視していると述べた。AppleはTechCrunchに対して、そのメッセージは本物だと認めている。

「我々は、テキサス州独特の制限がある中絶法に異議を唱える法的手続きを積極的に監視しています。その間、Appleの福利厚生は包括的であり、従業員が自分の州で医療を受けられない場合は州外に出て医療を受けることができることを思い出してほしい」と、署名のないメモには書かれている。

この新法は、州内で行われる大部分の中絶を実質的に禁止するもので、現在、様々な方法で法的に争われている。ここ数日、テクノロジー業界内外の企業が相次いでこの法律に反対する姿勢を見せている。Salesforceは、テキサス州でのリプロダクティブケア(性と生殖に関するケア)へのアクセスに懸念を抱く従業員に対し、同法施行後の移動を提案している。また、テキサス州を拠点とするMatch GroupとBumbleは、州外でのケアを必要とする従業員の旅費を負担するという申し出を行っている。

このメッセージでは、法案に積極的に反対するためにAppleのさらなる行動については詳しく述べられていないが、Appleは「従業員がリプロダクティブヘルスに関して自分で決断する権利」を支持していると述べている。

Appleはテキサス州オースチンの数千人規模のキャンパスを持ち、その他にも州内にさまざまな製造工場やApple Storeを展開している。

メッセージの全文は以下のとおりだ。

女性のリプロダクティブヘルスケアについてのメッセージ

Appleでは、従業員がリプロダクティブヘルス(性と生殖に関する健康)について自ら決定する権利を支持しています。

私たちは、テキサス州の独特な制限のある人工妊娠中絶法に異議を唱える法的手続きを積極的に監視しています。一方で、Appleの福利厚生は包括的であり、従業員が自分の州で医療を受けられない場合は州外に出て医療を受けることができることをお伝えしたいと思います。あなた自身やあなたの扶養家族のケアについてサポートが必要な場合は、医療保険会社が秘密裏に支援してくれます。

みなさんの健康と幸福はAppleの最優先事項です。みなさんとみなさんの家族がAppleが提供する医療サービスを受けられるよう、今後もできる限りの努力を続けていきます。

画像クレジット:Olly Curtis/Future/Getty Images

原文へ

(文:Matthew Panzarino、翻訳:Hiroshi Iwatani)

オープンソースでオープンエンドなアプローチによる新時代の企業向けエンタープライズAPI管理ツールのTykが約38.4億円調達

APIは今日、多くの企業のITシステムの歯車を回す役割を果たしている。しかし、APIの数や使用方法が増えるにつれて、APIがどのように連携しているか(あるいは連携していないか)を追跡することは複雑になり、何か問題が発生した場合には致命的な問題になる可能性がある。この問題を解決する革新的な方法を開発したスタートアップ企業が、そのアプローチを採用する大企業の支持を得て、資金調達を発表した。

Tykは、GraphQLを使用する普遍的なインタフェースにより、ITシステム内部の複数のエンタープライズAPIにアクセスして管理する方法を開発した。同社はこのほど3500万ドル(約38億4000万円)の資金を調達して、新たな雇用と、現在ユーザーに提供しているツールの強化と拡張に投じようとしている。Tykは、APIとそれらが作り出すデータを管理する方法を彼らの造語で「universal data graph(ユニバーサルデータグラフ)」と呼び、今ではそのツールを、Starbucks(スターバックス)やSociete Generale(ソシエテジェネラル)、Domino’s(ドミノピザ)などおよそ1万社がAPIの管理に利用している。

今回の資金調達ラウンドはScottish Equity Partners(SEP)がリードし、MMC Venturesが参加した。後者は、Tykが最初の5年間、自己資金で2019年に最初の資金調達をしたときの投資家だった。Tykはロンドンの企業だが、実体はかなり分散しており、たとえば共同創業者の1人は現在、ニュージーランドに住んでいる。今後の雇用と成長も、分散型で行くつもりだ。資金調達額はこれまでの合計で4000万ドル(約43億9000万円)ほどだ。

Tykは「タイク」と発音し、「ちびっこ」とか「がき」という意味がある。最初は共同創業者で現CEOであるMartin Buhr(マーティン・ビュール)氏の、オープンソースのサイドプロジェクトとして始まった。当時、彼の仕事のメインは一種の「ロードテスト」(負荷試験)だった。

現在のITはサービス指向のアーキテクチャに変わっており、社内のアプリケーションに接続するためにもAPIを利用している。そこで彼が考えたのは、コードに対する考え方を変えて、それらがAPIのコントロールにも使えるようにすることだ。さらにまた、ビュール氏が見たかぎりでは、当時市場にあったAPI管理プラットフォーム(有名だったのはKongやGoogleに買収されたApigee、RedHatが買収し今やIBMの一部である3scale、今ではSalesforceの一部であるMuleSoftなど)には、彼が求める柔軟性がなかった。「だから自分で作ることにした」とビュール氏はいう。

関連記事:Google、API開発の上場企業、Apigeeを6億2500万ドルで買収へ

それはオープンソースのツールとして作られ、他社の技術者たちもそれを使い始めた。関心はさらに増して、利用に興味を持った大手企業から「なぜ有料にしないのか」という質問を受けるようになった。それは、ここでビジネスが成立する可能性があることを示す確かな兆候であり、有料にすればさらに信用を得られるということでもある。

「そこで、ゲートウェイをオープンソースにして管理の部分をライセンス方式にしました」とビュール氏はいう。それにより、James Hirst(ジェームズ・ハースト)氏を共同創業者とするスタートアップ、Tykが生まれた。数年前に、あるデジタルエージェンシーでビュール氏と一緒に仕事をしていたハースト氏は、同社のCOOになった。

Tykを作った動機は、複雑化する環境下で働く顧客に向けた独自のセールスポイントとして残った。

「Tykへの関心に火をつけたものは、これまでのAPI管理ツールに対する不満です」とビュール氏はいう。現在のアプリケーションの主流であるアーキテクチャは複数のクラウドと複数のコンテナを使う複雑なアーキテクチャであるため、もっと優れた管理を必要としている。「いまはまさにコンテナ化やKubernetesやマイクロサービスの台頭期です。それに対して私たちのマルチデータでマルチベンダーのクラウドモデルへのアプローチは、極めて柔軟性に富み、分割に対して自己回復力があり、それは他社にできなかったことです」とビュール氏は語る。

「私たちはデベロッパーの世界に入り込んで本物の価値を提供していますが、何を選ぶかは彼らが決めることです。しかし私たちは、市場の明確な変化に対応しています」とさらにハースト氏はいう。たとえばTykが挑戦する次の課題は、複数のAPI間に衝突があるときの、管理層の対応だ。

ビュール氏は「マイクロサービスを使っているチームが致命的な変更を行ったときは、それを明示的にシステムに報告したい。計画では、その問題にフラグを立てて、それに対するテストを行いたい。そのやり方はだめだ、と言ってその理由も指摘したい」という。

Tykの顧客リストはそれが公表される前から企業の関心を呼び、今後のユーザーが一気に増大することを予感させる。SEPのディレクターMartin Brennan(マーティン・ブレナン)氏は、声明で次のように述べている。「MartinとJamesはワールドクラスのチームを作り、今度の資金によってTykはそのAPI管理プラットフォームの成長を加速できるでしょう。特に重要なのは、2021年の初期にローンチしたGraphQLによるUniversal Data Graphプロダクトです。チームが彼らのグローバルな意欲を実現していくとき、そのお手伝いができることは喜ばしい」。

このラウンドで、SEPのパートナーであるKeith Davidson(キース・デイビッドソン)氏が役員ではないディレクターとしてTykの取締役会に加わる。

画像クレジット:alphaspirit/Getty Images

原文へ

(文:Ingrid Lunden、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Reach CapitalによるEdTech投資好調の内訳

Reach Capital(リーチ・キャピタル)は、Jennifer Carolan(ジェニファー・キャロラン)氏とShauntel Garvey(ショーンテル・ガービー)氏が共同設立したサンフランシスコ拠点のベンチャーキャピタルで、教育分野にユニコーンが続出する何年も前からEdTechだけに焦点を絞ってきた。珍しい女性主導のVC会社は2021年2月、同社にとって3つ目のファンドを組成し、過去最大規模となる1億6500万ドル(約131億3000万円)のビークルを作った。そしてこれまでのファンドのリターンを見ると、今再活性化されているこの分野への先行投資が実を結んでいることがわかる。

関連記事:この1年で急激に変化する教育に特化した3つめのファンドをReach Capitalが組成

Reach Capitalの2番目のファンドは、2017年に完了した8200万ドル(約90億1000万円)のビークルで、2021年第2四半期時点の純内部収益率(IRR)72.1%を計上した。TechCrunchが入手したLP(有限責任組合員)向けデータによる。ファンドの投資先は、Paper(ペーパー)、Winnie(ウィニー)、今やユニコーンとなったHandshake(ハンドシェイク)とOutschool(アウトスクール)などで、同期のファンドのトップ25%よりも2桁パーセンテージポイント上位にランクされた。Cambridge Associates(ケンブリッジ・アソシェーツ)のデータによると、同四半期の同期のファンドトップ25%の純IRRは47.64%だった。

一方、Reach Capitalの最初のファンドは、組成された2015年の同期ファンドのトップ25%より2桁ポイント低かった。

Reach Capitalの2番目のファンドのリターンが、主としてペーパーゲイン(会計上のみの収益)であり、純IRRは企業価値の上昇に基づいていることに注意されたい。このVCが後続ラウンドに重きを置いている事実を踏まえると、そのIRRはある瞬間の業績を切り取ったスナップショットだ。最近Reachは、初のキャッシュ・イグジットを行い、投資先企業であるEllevation(エレベーション)がCurriculum Associates(カリキュラム・アソシエーツ)と合併したが、上記データには反映されていない。

花開くスタートアップの数々は、Reach IからReach II にかけての実績が改善された理由を説明できるかもしれない。インパクトレポートによると、Reach IIは3200万ドル(約35億2000万円)を14の主要企業に投資した。Newsela(ニューセラ)、Handshake(ハンドシェイク)、Outschool(アウトスクール)をはじめとするすべての投資先が企業価値10億ドル(約1098億8000万円)を超え、ユニコーンになっている。同VCはPaperにも資金を投じ、最近同社はIVPのリードで9桁(1億ドル)ラウンドを完了した。これらの企業に早くから目をつけ、EdTechブームの勢いに乗るところを見守ってきたことで、Reachの立ち位置が検証された。

関連記事:放課後クラスのマーケットプレイスOutschoolがEdTech界で最も新しいユニコーン企業に

Reach IIのポートフォリオの多様性は業界標準を超えているが、それでもファウンダーは白人男性に偏っている。投資先の約74%は男性が設立した企業で、女性が設立した企業は26%であるとレポートにかかれている。ファウンダーの約62%が白人、20%がアジア系、14%がラテンアメリカ系、4%が中東系を自認している。Reach Capital IIのポートフォリオに黒人ファンダーはいない。

Reachの見事なリターンは、ベンチャー投資が大きなブームだった時に起こった。多くの投資家とファウンダーは、リターンが同時期のシード・ステージ・ファンドとして魅力的かどうかを陰で話し合っていた。ある投資戦略家は、この環境下ではまったくないわけではないものの、リターン・パーセンテージは「クレイジーな高さ」だと言っていた。

「上位25%はもちろん、おそらく上位10%に入るでしょう」とその人物はいう。「暗号化分野は別で、それと比べればごく普通ですが」。別のシードステージ投資家は、Fred Wilson(フレッド・ウィルトン)氏の最近のブログ記事、「Cash on Cash vs IRR」(キャッシュ・オン・キャッシュ vs IRR)を挙げて、ファンド実績データが保有期間によって歪められる可能性を示唆した。

それでもReachのリターンは、VC業界で最も多様なパートナーシップが、スタートアップ世界で最も再活性化されている分野で実績を上げていることを示す印象的な事例だ。提出書類によると、Reachは5000万ドル(約54億9000万円)のオポチュニティファンドのために資金を調達している。同社は最近大規模な雇用も進めており、Cowboy Ventures(カウボーイ・ベンチャーズ)のJomayra Herrera(ジョメイラ・ヘレラ)氏をパートナーに、EdSurge(エドサージ)の Tony Wan(トニー・ワン)氏をインベスター・コンテンツ責任者にそれぞれ就任させた。

関連記事:この1年で急激に変化する教育に特化した3つめのファンドをReach Capitalが組成

画像クレジット:Malte Mueller / Getty Images

原文へ

(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Nob Takahashi / facebook

コモディティ取引のデジタル化を進めるOpen Mineralが約36億円を調達

2018年に、コモディティ取引に透明性を取り込むことを目指しているOpen Mineral (OM)がどのようにして225万ドル(約2億5000万円)を調達したかを取り上げた。いやはや、長い道のりだった。そしていま、ようやくその時が来た。スイス拠点の同社はMubadala Investment CompanyがリードしたシリーズCラウンドで3300万ドル(約36億円)を調達した。既存投資家のXploration Capital、Emerald Technology Venturesに加えて、新規投資家のStatkraftとLingfeng Capitalも参加した。

Open Mineralは、サプライチェーン業者の活動を強固なものにするのに資金を使う、と話す。コモディティ取引マーケットは2000億ドル(約22兆円)の価値があり、今日でもいまだに紙の書類が飛び交っておりデジタル化が進行中だ。

Open Mineralのプラットフォームには世界の金属・鉱業の企業900社超が登録しており、コモディティサプライチェーンにわたってOpen Mineralの価格設定アルゴリズムを使用していると同社は話す。

業界のデジタル化と同様、売り手と買い手に「自然に優しい」ESG(環境、社会、ガバナンス)指標を組み込むためにサードパーティのプロバイダーと協業している、とも語る。

同社はまた「物理的な金属一次産品の取引をより効率的でよく情報が提供されたものに、そして収益性の高いものにする」自動化された材料ブレンド/製錬の最適化ソリューションを開発したと主張する。これらは炭素低排出への移行に影響を及ぼす、とのことだ。

CEOで共同創業者のBoris Eykher(ボリス・イーカー)氏は声明で次のように述べた。「金属取引産業の未来はデジタルデータと分析にあり、マーケット参加者がこれまでよりも迅速にコミュニケーションを取り、そしてすばやくデータ駆動の決定を行うことができます。eBayが買い手と売り手に多くの選択肢を提供して小売購入を刷新したように、当社はOpen Mineralプラットフォームのキュレートされ、信頼できる環境で物理的なコモディティ生産者のために同じことを行います」。

MubadalaでロシアとCISの投資の責任者を務めるFaris Al Mazrui(ファリス・アル・マズルイ)氏は「Open Mineralはデータ分析テクノロジーを活用することでコモディティ取引事業をディスラプトしています。卑金属商品の買い手と売り手はより効率的に取引し、そして恩恵を受けるためにユニークな専用データハブを利用することができます」。

画像クレジット:Open Mineral

原文へ

(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

Folkは営業以外のチームにも役立つ新しい連絡先関係管理ツール

Folk(フォーク)」は、欧州のスタートアップスタジオであるeFounders(eファウンダーズ)から起ち上げられた新しい生産性向上ツールだ。このスタートアップは、Accel(アクセル)が大勢のビジネス・エンジェルを集めて行ったシード資金調達ラウンドで、330万ドル(約3億6000万円)を調達した。

専門的な環境での連絡先や人間関係の管理を行うツールと聞いても、他のいくつもの企業がすでに解決してしまっていると思うかもしれない。このようなCRMと呼ばれる考え方に基づいて、いくつもの製品や企業が登場している。人気の高いCRMプラットフォームには、Salesforce(セールスフォース)やHubSpot(ハブスポット)などがある。あなたの営業チームもきっとCRMを愛用していることだろう。

しかし、CRMとは具体的にどのような意味なのだろうか?それはCustomer relationship management(顧客関係管理)だ。もしあなたが顧客を持たないチームで仕事をしているのであれば、CRMは最も適切なツールとはいえない。例えば、広報チームはジャーナリストと、物流チームはサプライヤーと、イベントチームはさまざまな種類のパートナーを相手に仕事をしている。

これらのチームでは、おそらくCRMを使っていないだろう。代わりに共有のスプレッドシートに頼っていたり、情報がサイロ化してしまったりということがよくあるはずだ。Folkは、企業のこのような営業以外のチームのための関係管理ツールになりたいと思っている。

同社はこの新しいコンタクトツールのカテゴリーに名前を付けようと考えて、Extended Relationship Manager、略して「xRM」と呼ぶことにした。「xRMの『x』は『誰でも』を意味します。これは顧客の管理だけでなく、例えば、ジャーナリスト、サプライヤー、パートナーなどの管理にも使用できるのです」と、FolkのThibaud Elziere(ティボー・エルジエール)CEOは声明の中で述べている。

画像クレジット:Folk

Folkは視覚的にはスプレッドシートのように見える。ユーザーは特定の情報を持つ列を追加することができ、タグを使ってプロジェクトの進捗状況を把握することもできる。Airtable(エアテーブル)と同じように、表示をフィルタリングしたり、データを並べ替えたり、表をさまざまな方法でソートすることなどもできる。

連絡先をクリックすると、専用の連絡先ページが開く。これによって快適にデータを変更したり、より多くの情報を見ることができる。コメントの追加したり、連絡先を同僚に割り当てたり、その連絡先とのやり取りを見返したりもできる。

画像クレジット:Folk

Folkにミーティングの予定を入力したり、メールのやり取りをコピー&ペーストしたりする必要はない。Folkは、Gmailや Googleカレンダーのアカウントから自動的にデータを引き出すからだ。これによって、チームの誰かがパートナーと密に連絡を取り合っているかどうかを、チーム全体で確認することができる。いくつかの連絡先をチームの他のメンバーと共有し、個人的な連絡先は自分だけが見られるようにするという選択も可能だ。

今回の投資ラウンドには、Accelに加えて、企業の運営に関わるような35人の投資家も参加している。どこの会社のどんな役職にある人物が投資しているかは、この記事の最後に掲載した表で確認できる。

FolkのCEOであるティボー・エルジエール氏が、eFoundersの共同設立者でもあることも注目に値するだろう。このスタートアップスタジオからは、Front(フロント)、Aircall(エアコール)、Spendesk(スペンデスク)など、いくつもの人気の高いSaaSツールが誕生している。エルジエール氏が使っているFolkの画面には、Folkを商業的に成功させるために活用できる幅広い連絡先のネットワークが、インプットされているに違いない。

Folkのシードラウンドに参加したビジネスエンジェルのリスト

 

画像クレジット:Jostaphot / Getty Images

原文へ

(文:Romain Dillet、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

オフィスでの新型コロナ感染リスク率を表示するATMOの空気モニタリングデバイス

2015年、TechCrunchは電子機器の見本市であるCESで発表されたのち、数々の賞を受賞した小型で革新的なポータブル大気質モニター「Atmotube(アトモチューブ)」を紹介した

Vera Kozyr(ヴェラ・コザー)氏が共同で設立したATMOは、企業向けの室内空気環境モニタリングシステム「Atmocube(アトモキューブ)」を発表した。Atmocubeは、オフィス内の空気環境が極めて重要となるポストCOVID時代に向けられており、小型で持ち運びができる以前の製品(この製品もまだ販売されてはいる)と異なり、目立つことでオフィスワーカーに良い空気環境であると安心感が与えられるようにもなっている。

その鍵となるのが、さまざまな指標とともに「Atmocube」の画面に表示される二酸化炭素レベルの測定値だ。

このデバイスには最大14個のセンサーが搭載されており、CO2、ホルムアルデヒド、PM1(空気中の小さな粒子)、PM2.5、オゾンなどの各種環境パラメータや相対湿度、温度、気圧、環境騒音、光量、色温度などを測定する。

ATMOによると、この新デバイスは、粒子状物質、湿度、CO2のレベルに基づいて、ウイルスの空気感染スコアを計算し、閉ざされた空間でウイルス疾患が感染する確率を推定する「スコア」を導き出すという。もちろん、これを検証するには独立したテストが必要だが、WHOが新型コロナウイルスは換気の悪い、あるいは混雑した室内環境で感染する可能性があると勧告しているのは事実だ。

「大気汚染は、気づかないうちに自分自身や健康に影響を及ぼすので危険です。私たちは、人々が自分の吸い込んでいるものを知り、その結果として変化を起こす助けになることを目指しています。企業がオフィスに戻る際には、室内の空気環境に関する情報を透明化し、従業員がその情報にアクセスできるようにするツールが必要です。多くの空気環境モニターは隠されることを前提に設計されています。そこで私たちは暖房、換気、および空調のパフォーマンス(HVAC)の安全性を強調する、より透明性の高いインターフェースを備えたデバイスを作り、オフィスにいる人々とビルのオーナーの間に信頼関係を築くことを目指しました」とコザー氏はいう。

この分野には、AirThingsAwair OmniKaiterraなどが参入しており、ATMOだけが唯一のプレイヤーではない。

関連記事:オフィスの新型コロナ対策を支援する空気品質監視プラットフォームのOpenSensorsが4.1億円調達

画像クレジット:Atmocube

原文へ

(文:Mike Butcher、翻訳:Yuta Kaminishi)