NASAの雑誌「Spinoff」は宇宙生まれの技術の民間企業転用例を紹介

NASA(米航空宇宙局)の「Spinoff」は、筆者が毎年楽しみに読んでいる雑誌の1つだ。NASAの研究は、驚くべき、そして興味深い方法で世界に浸透しており、その内容が年に1度発刊される雑誌の中で追跡・収集されている。2022年も、ハイキング用のガジェットから重工業、そしておもしろいことに宇宙まで、あらゆるところでNASAの技術に出会うことができる。

2022年度版でも、さまざまな場所で日常的に使われるようになった技術が多数紹介されており、こちらから閲覧できる(約60ページあるので、コーヒーでも飲みながら、ゆっくりご覧いただきたい)。

筆者は、NASAの技術移転プログラムの責任者であるDaniel Lockney(ダニエル・ロックニー)氏に話を聞いた。同氏は、NASAの技術や研究を有効活用しようとする地上の企業に展開する活動を統括している。

「一般的には、次のようなことが起こります。NASAが何かを開発すると、私のオフィスに報告します。私たちはそれを見て、まず、それがうまくいくかどうかを考えます。そして次に、誰がそれを使うのか、もし使える人がいれば、その人に届ける方法を考えるのです」とロックニー氏は説明した。「私は、できる限り無料で提供するよう試みます。収益を上げるとか、米財務省に何かを還元するとか、そういう方針は持っていません。1958年にNASAが制定した法律には、我々の仕事を普及させるようにと書かれていますが、そこには金儲けについては何も書かれていません」。

その結果、コンパクトで長持ちする浄水器や珍しい機械部品など、宇宙や打ち上げのために必要だったが、地上で再利用できるかもしれない興味深い技術が、安価または無料で利用を許諾されることになった。

ロックニー氏は、最新のライセンス契約の中で、特に興味深いと思ったものを2つ紹介した。

「GM(ゼネラルモーターズ)との提携で『Robo-Glove(ロボグローブ)』を開発しました。これは、宇宙飛行士が着用する機能性グローブで、反復作業時の負担を軽減し、握力を高めます」と同氏は語った。「宇宙遊泳で何かを握ったりするのは、2、3回ならできますが、午後ずっと工具を握っているとなれば負担になります。そうした作業を補助するためにこのグローブを開発しました。今では世界中の工場で使われています」。

画像クレジット:Bioservo Technologies

スイスのBioservo(ビオサーボ)は、ロボグローブのNASA特許のライセンス供与を受け、何年も前からそのコンセプトに基づき試行錯誤を重ね、2021年夏には最新版のアイアンハンドを発表した。その最も一般的な使用例は、手に怪我を負ったために仕事を失うかもしれない従業員が、この手袋を使うことでより早く仕事に復帰でき、また痛み止め薬の服用も減らせるというものだ。

技術供与を受けるのが1社だけとは限らない。ロックニー氏は、NASAが完全に人工的な条件下での精密農業における問題を調べた最初の組織だと指摘した。

「NASAは、長距離宇宙飛行でクルーの健康を維持するために、多くの実験を行っています。その1つが、自分たちの食べ物を育てることです。植物を見ることによる心理的なメリットもあります」と同氏はいう。「しかし、土や水耕栽培のような重い培地を使わずに作物を栽培する方法を見つける必要がありました。水はかなり 重く、大変貴重なものです。また、照明も適切でなければなりませんが、エネルギーを使いすぎるのもよくありません。そこで私たちは、小さなスペースでたくさんの植物を栽培するための農業技術を開発しました。植物のストレスをコントロールすれば、生育条件を正確に調整でき、収穫量も向上します。実際に、根を覆う栄養フィルム、適切なスペクトルの光を照射するLED、そしてもちろん、あらゆるところにセンサーを設置しています」。

「都市部でも同じような状況です。農地の資源を浪費せずに、どうやってこの人口に食料を供給するのでしょうか。しかし、私たちがこの研究を主導したのは、誰もその必要性を感じていなかったからです。結局、宇宙飛行での必要性が直接のきっかけとなったのです。そして今、都会の密集地で垂直農法を行い、実際に野菜を食料品店に提供している会社がいくつかあります」と同氏は続けた。

ここで実際に取り上げた例は、取り組みが始まってまだ日が浅い。しかし、消費者と投資家の双方にとって、海外から何千キロもかけて輸送されたものよりも、数ブロック以内で効率的に栽培された食品を手に入れたいという欲求は明らかに存在する。

NASAの仕事は、生命維持のための産業だけでなく、レジャーにも道を開いている。2022年の「Spinoff」に掲載されたもののうち、少なくとも3つのアイテムは、ハイキングやキャンプなどのアウトドア活動に関連している。1つは、もともと宇宙船の外壁に使われていた薄膜の放射防止材が、超軽量の断熱層として13-Oneなどのジャケットに採用された。90年代に研究されたエアロジェルは、シアトルに本社を置くOutdoor Research(このブランドは、店の前を通るとついつい買ってしまう)の新しいギアに採用された。また、NanoCeram(ナノセラム)と呼ばれる素材は、新しい携帯用浄水器ボトルに使用されている。

スピンオフした技術に関する出版物に載っているとは思えないような新しい応用例として、Astrobotic(アストロボティック)の月着陸船「Peregrine」がある。これまで、このような技術は国が支援するプログラムに限定されていたが、商業宇宙分野が急速に拡大する中、NASAの技術は宇宙を目指す企業にとっても貴重なものになっている。

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新しいものばかりではない。中には、何十年も前に開発され、今もなお新しい用途やライセンス先が見つかっていないものもある。

「私たちがすべての作業を終え、商業的なもの、製造やマーケティング、または次の新しい何かを行うパートナーを見つけるまでに、10年はかかります」とロックニー氏はいう。「研究開発のタイムラインは長く、商品化のタイムラインも長いのです。

しかしそれは、たとえ何年も前の論文や材料であっても、常に新鮮なものが出てくることを意味する。2022年の「Spinoff」には、さらに多くの注目すべき技術や企業が掲載されているので、ぜひ一読して欲しい。そして、時間があれば、アーカイブもどうぞ

画像クレジット:NASA/nkd Life

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi

グーグルの今回のイースターエッグは言葉遊び「Wordle(ワードル)」

わかってるよ、Wordle(ワードル)に飽きたんだろ。Twitterで「wordle」という単語をミュートすればいいし、Wordleスポイルボットを作ってTwitterから追放された人のようにならないようにね(実際は、人に迷惑をかけるようなボットを作るのはTwitterガイドライン違反だからだが)。

さて、私たちだけになったところで(みんなこの記事を閉じてしまった)、Wordleについて話をしよう。米国時間1月24日のパズルは特に難しかったが、Googleの検索で「wordle」と入力すると奇妙な「powerlanguage.co.uk」のウェブサイトが見つかり、楽しいイースターエッグに気づくだろう。右上のGoogleアイコンはwordleのようだ。アニメーションでは、誰かが「column」や「goalie」といった単語を推測してから「Google」にたどり着く様子も再現されている。かわいいですね(また別のニュースとして、GoogleはワシントンD.C.と3つの州からユーザーのプライバシー問題で訴えられているが)。

今、気がついたんだけど「wordle」で検索するとGoogleのカスタムDoodleが表示される。楽しい。

Googleのイースターエッグの文化的意義が証明するように、Wordleは現在でもとても人気で、Twitterのフィード上だけでなく、様々な場面で利用されている。TechCrunchが2週間前にこのゲームの制作者であるJosh Wardle(ジョシュ・ウォードル)氏に話を聞いたとき、彼は毎日200万人がこのゲームをプレイしていると述べていた。もしあなたが頑固者ではなく、まだWordleが楽しいと思っているなら(そう、嫌ならプレイしなければいい)、ゲームの突然の人気、ベンチャーキャピタルからの関心、そしてなぜ彼がゲームを収益化したくないのかについてのウォードル氏へのインタビューをチェックしてみて欲しい。

以下はウォードル氏のインタビューから抜粋。

オンラインで作ったものを無料で提供する、なんて高尚な話ではありません。ただ、このゲームは最初からそういうものだし、このやり方の方が今後も続けやすいのです。やっと本物だと思えるものを作ることができたと、と実感していますが、みんなは「収益化しますか?お金にする気かい?なぜ○○しないの?」と聞いてきます。

言えることは、パートナーとこれで遊ぶととても楽しいということだけです。こういうものはハマってしまいがちですが、楽しかったし、これが終わった将来も楽しいでしょう、ということだけです。毎日仕事が終わって、そこにWordleがあれば彼女とまたプレイできる。それだけで最高にハッピーですね」。

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hiroshi Iwatani)

お金の相談マッチングプラットフォーム「お金の健康診断」の400Fが3.6億円調達、金融サービス仲介事業の展開などを加速

お金の相談マッチングプラットフォーム「お金の健康診断」の400Fが3.6億円調達、金融サービス仲介事業の展開などを加速お金の相談マッチングプラットフォーム「お金の健康診断」を運営する400F(フォーハンドレッド・エフ)は1月26日、第三者割当増資による総額3億6000万円の資金調達を完了したと発表した。引受先は、リードインベスターのSkyland Ventures(SV)、新規投資家のSBIインベストメント、楽天証券、ミンカブ・ジ・インフォノイド、既存投資家のDIMENSION投資事業有限責任組合(DIMENSION)の計5社。

調達した資金により、お金の健康診断に関連するプロダクト開発・マーケティング・人材採用などの強化と、2021年11月より開始した金融サービス仲介事業「オンラインアドバイザー」の展開を加速させる。

また同社は、SBIグループ、楽天証券、ミンカブ・ジ・インフォノイドとの資本業務提携を実施。これにより提携先企業の利用ユーザーも、お金の健康診断を利用しより気軽にIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)とお金の相談を開始できるようになる。お金の相談マッチングプラットフォーム「お金の健康診断」の400Fが3.6億円調達、金融サービス仲介事業の展開などを加速

2017年11月設立の400Fは、お金の健康診断を2018年11月に正式リリース。2020年7月、MBOにより株式会社お金のデザインから独立し事業運営を開始した。お金の健康診断は、2021年12月31日時点で登録プランナー数700名超、登録ユーザー数5万人超の「お金の悩みを出会いによって解決する」マッチングプラットフォームとなっており、MBO実施後から登録プランナー数約4.5倍、登録ユーザー数約3倍に成長しているという。

また同社は、2021年11月に⾦融サービス仲介業の登録を完了。これに伴い、ユーザー向けにチャットやビデオ会議システムなどを通して資産形成アドバイスを行う「オンラインアドバイザー」サービスの提供を開始している。ユーザーは、オンライン上で手軽に、ネット証券と同水準の取引手数料で、外務員ライセンスを持つ営業担当者から直接資産形成アドバイスを受けられる。

NFT・DeFi革命を支えるイーサリアム、大型アップグレード「イーサリアム2.0」について簡単解説

NFT・DeFi革命を支えるイーサリアム、大型アップグレード「イーサリアム2.0」について簡単解説

編集部注:この原稿は千野剛司氏による寄稿である。千野氏は、暗号資産交換業者(取引所)Kraken(クラーケン)の日本法人クラーケン・ジャパン(関東財務局長第00022号)の代表を務めている。Krakenは、米国において2011年に設立された老舗にあたり、Bitcoin(ビットコイン)を対象とした信用取引(レバレッジ取引)を提供した最初の取引所のひとつとしても知られる。

2021年の暗号資産業界は、NFT(ノン・ファンジブル・トークン)やDeFi(分散型金融)などに代表にされるように、ビットコイン以外の領域で大きな革命が起こった年です(日本銀行「暗号資産における分散型金融」も参照)。2021年のビットコイン(BTC)価格の上昇幅は、株など伝統的な資産と比較すればかなり高いリターンですが、実は主要仮想通貨20銘柄でみると、下から3番目の低記録です。理由は、イーサリアム(Ethereum)や「第3世代」といわれるその他ブロックチェーンの台頭です。本稿では、NFTやDeFi革命をさらに加速させる原動力となるイーサリアムの大型アップグレードと、その成功のカギについて、解説します。

NFT・DeFi革命を支えるイーサリアム、大型アップグレード「イーサリアム2.0」について簡単解説

(出典:Kraken Intelligence「2021年のリターン 主要20種(SHIB除く)」)

ブロックチェーン第3世代

DeFiやNFTのプロジェクトは、ほとんどがイーサリアムを基盤としています。イーサリアムの最大の功績といって良いのが、スマートコントラクトの発明。スマートコントラクトは、ブロックチェーン上であらかじめ決められた契約を自動的に実行する仕組みです。スマートコントラクトのおかげで、イーサリアムのブロックチェーン上で、仲介業者なしで成り立つ分散型アプリ(dApps)開発が進みました。イーサリアムがNFTやDeFiの受け入れ基盤として大きなシェアを獲得している理由は、スマートコントラクトの先駆けである点が大きいでしょう。

しかし、最近はソラナ(Solana。GitHub)やアヴァランチ(Avalanche。GitHub)、カルダノ(Cardano。GitHub)など「イーサリアムキラー」と呼ばれるブロックチェーンが台頭し、DeFiやNFT領域におけるイーサリアムの市場シェアを奪う動きが出ています。例えば、DeFi関連データの集計サイトDeFi Llamaによりますと、約1年前、DeFiプロジェクト全体の預かり資産(Total Value Locked)は、イーサリアムがほぼ100%のシェアを占めていましたが、63.13%(2021年12月13日時点)まで低下しました。

NFT・DeFi革命を支えるイーサリアム、大型アップグレード「イーサリアム2.0」について簡単解説

(出典:Kraken Intelligence「DeFi預かり資産に占めるイーサリアムの割合」)

なぜでしょうか?

そこには、「ブロックチェーンのトリレンマ」問題が深く関わってきます。これは、イーサリアム創設者ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏が指摘した問題で、「スケーラビリティ」(規模の拡張性。Scalability)と「セキュリティ」、そして「分散性」(Decentralization)の3つすべてを同時に成立させることは難しいことを意味します。

イーサリアムは、分散性とセキュリティでは成功していますが、問題となっているのがスケーラビリティです。スケーラビリティとは、いわば、増え続けるユーザーやデバイスをサポートするブロックチェーンの「容量」を指します。

NFTやDeFi市場の急拡大によって、多くのユーザーがイーサリアムに殺到した結果この「容量」が課題となり、イーサリアムのネットワークの「渋滞」とそれに伴うガス代(手数料)の高騰が発生。それを嫌気した多くの開発者やユーザーが他のブロックチェーンに移るという現象が発生しています。

イーサリアムの代替となるブロックチェーンは、第3世代ブロックチェーンと呼ばれています。ビットコインを第1世代のブロックチェーン、イーサリアムを第2世代のブロックチェーンとすると、先に触れたソラナやアヴァランチ、カルダノは第3世代のブロックチェーンと位置付けられ、主にスケーラビリティ問題の解決に注力しています。

また、第3世代のブロックチェーンは、「インターオペラビリティ」(ブロックチェーン間の接続性。Interoperability)や「持続可能性」(サステナビリティ。Sustainability)も重視しています。とりわけ環境面の持続可能性問題に関して、ほとんどの第3世代は、環境に優しいといわれるPoS(プルーフオブステーク)というコンセンサスアルゴリズムを採用しています。

第3世代のブロックチェーンに関する詳細な解説は、次の機会に譲ります。今回は、イーサリアムも、やられっぱなしではなく、「イーサリアム2.0」(Eth2)と呼ばれる大型アップグレードによってスケーラビリティの問題に対応しようとしていることを紹介します。

「イーサリアム2.0」の目玉その1、「ステーキング」

イーサリアム2.0の目玉となるのが、「ステーキング」と「シャーディング」です。まずは、「ステーキング」を理解する上で必要な知識であるPoWとPoSという2つのコンセンサスアルゴリズムの違いについて解説します。

イーサリアム2.0と現在のイーサリアムの大きな違いの1つに、コンセンサスアルゴリズムと呼ばれる取引承認に関する合意形成の方法が変わります。現在のイーサリアムではPoW(プルーフ・オブ・ワーク)と呼ばれるコンセンサスアルゴリズムを採用しています。イーサリアム2.0では、これがPoS(プルーフ・オブ・ステーク)と呼ばれるコンセンサスアルゴリズムに変更されます。

PoWは、時価総額1位のビットコイン(BTC)も採用しています。ビットコインなどPoWのネットワークに参加するコンピューター(ノードと呼ばれる)は世界中に分散していますが、それらのコンピューター同士が取引記録の検証作業で競争をする仕組みになっています。

具体的には、条件を満たすハッシュ値を探すという演算競争で、最も早く解を得たコンピューターが報酬をもらえる仕組みになっています。この報酬をめぐって、世界中の企業がマイニング施設の建設や機器購入に巨額マネーを投じています。

演算の解をめぐるマイニング競争には大量の電力が必要となります。このためマイニング、ひいてはPoWというコンセンサスアルゴリズムは環境に悪いと見方があります。

対照的にPoSは、環境フレンドリーなコンセンサスアルゴリズムといわれています。イーサリアム財団は、PoWに移行したらPoWで使う電力消費量の99.95%を削減できるという試算を発表しました。

PoSにはマイナーが存在しておらず、代わりにバリデーターと呼ばれる存在が取引記録の検証を行います。一定の仮想通貨をPoSのネットワークで長期保有(ロック)することで、バリデーターがブロックを検証・承認する権限を獲得する仕組みです。これにより、PoWで見られたようなマイナー同士の競争がなくなり、電力の消費量が大幅に削減されることになります。

PoWとPoSは一長一短ですが、現在はESGs重視という世間的な後押しがあります。そうした状況では、何かとPoSに注目が集まるでしょう。イーサリアム2.0は、世間的に強い追い風を受ける中で立ち上げを迎えられるかもしれません。

「イーサリアム2.0」の目玉その2、「シャーディング」

次は、もう1つの目玉であるシャーディングについてです。先述のスケーラビリティ問題への対策として位置付けられます。

シャーディングとは、データベースを分割することで負荷を分散させる技術を指します。イーサリアムの場合、シャーディングによりイーサリアムのネットワークをさらに64の新しいチェーンに分割することで、取引処理能力向上を目指します。分割されたチェーンを「シャード」と呼びます。

シャードのおかげで、イーサリアムのこれまでの取引記録を分散して保管することができます。バリデーターは、全体ではなく、各シャードの取引記録を検証すればよくなります。

イーサリアム財団によると、2022年に、2020年12月に立ち上がったイーサリアム2.0の基盤となるブロックチェーン(ビーコンチェーン)と、現在のイーサリアムのブロックチェーンによるマージ(統合。Merge)、またそれによるPoSへの移行が予定されています。イーサリアム共同創設者ジョセフ・ルービン(Joseph Lubin)氏が設立したコンセンシス(ConsenSys)によると、マージは2022年の第1四半期か第2四半期に実施されます。

シャードチェーンの導入は、イーサリアム財団によりますと、2023年と推定されています。

現在イーサリアムは、開発者のリソースとユーザーベースで他を圧倒しており、DeFiやNFTなど業界最先端技術の受け皿となっています。今後の焦点は、「イーサリアムは『イーサリアムキラー』からどこまでシェアを守れるのか?」でしょう。イーサリアム2.0の進捗が予定通り進んでいることで開発者やユーザーを安心させ、ガス代高騰が長続きしないことを示すことが、イーサリアム成功のカギとなるでしょう。

画像クレジット:Kanchanara on Unsplash

日本のお菓子をサブスクで届けるBokksuが25億円調達、伝統的なアジアの食料品配達事業も拡大

Bokksu(ボックス)のCEOであるDanny Taing(ダニー・タン)氏は、常に日本の食と文化に夢中で、大学卒業後に東京に移り住み、そこで4年間暮らした。タン氏は大好きな日本のお菓子をスーツケースにたくさん入れてニューヨークに戻り、友人たちと分け合った。そして、他の米国人も日本のお菓子が大好きなのに、米国でそれを見つけたり購入したりする方法がないことに気づいた。

タン氏は2015年にBokksuを設立し、2016年に日本のお菓子のサブスクリプションサービスを開始した。100カ国超の顧客に100万個以上の日本のお菓子のサブスクリプションボックスを届けたBokksuは、2018年にプレミアムな日本のライフスタイル製品のデジタルマーケットプレイスBokksu Marketを立ち上げた。また、2021年にはオンライン食料品店Bokksu Groceryをオープンし、誰もが簡単に本物のアジア食材を見つけて購入できるようにした。

「100万個の(サブスクリプション)ボックスを届け、他の方法では決して試すことのなかった食品を発見して食べることを顧客がどれほど愛しているかを目の当たりにしました。私は本物のアジアのメーカーがさらにリーチを広げるのをサポートするために、より多くの方法を見つけようという気になりました」と、タン氏は話した。

ニューヨークと東京に拠点を置くBokksuは現地時間1月25日、アジアの伝統的な製品が世界中の人々に届くよう支援し、文化の架け橋となるべく、評価額1億ドル(約114億円)での2200万ドル(約25億円)のシリーズAを発表した。このラウンドはValor Siren Venturesがリードし、Company VenturesSt. CousairWorld Innovation Lab(WiL)、Headline AsiaGaingelsが参加した。

「今回の資金調達により、Bokksuは創業時をはるかに超える水準で資本を増強することができ、提供する製品の迅速な拡大や納期の改善を図るとともに、チームを増強することができます」とタン氏は話した。

調達した資金でBokksuはサブスクリプション、マーケット、グロサリーという主要なビジネスラインを加速させることができる。同氏によると、Bokksuは食料品を米国とカナダに出荷しているが、サブスクリプションとマーケットサービスは、米国、カナダ、英国、オーストラリア、ドイツ、シンガポール、スウェーデン、オランダを含む100カ国以上に提供しているとのことだ。

Bokksuは2018年から連続して前年比100%の成長を遂げており、今後も継続的な成長が期待できる、とタン氏はTechCrunchに語った。

画像クレジット:Bokksu

Bokksuが競合他社と異なるのは、日本で何十年も生産しているスナックメーカーのストーリーを伝えることにこだわっていることだとタン氏は話す。また、100社超のスナックメーカーと独占的提携を結んでいて、つまり顧客は他では手に入らないスナックをBokksuのプラットフォームで見つけることができる。

同氏はまた、Bokksuを始めた当初、日本の伝統的なスナックメーカーがその技術を世界に伝える手助けをすることが目標だったと語った。米国とアジアの両方で暮らした経験から、多くの米国人は日本について、芸者やポケモン、寿司といった表面的な理解しか持ち合わせていないことに気づいた。そして、Bokksuを通じて、日本の豊かな文化や歴史をもっと多くの人に知ってもらいたいと考えた。

Bokksuの食料品サービスは、UmamicartやWee!、そしてHMartやSunrise Martといった既存の食料品店と競合する。Bokksu Groceryは全国配送と適正価格の両方を提供すると同氏は述べた。

「最も興奮しているのは、最近のBokksu Grocery立ち上げです。これは、民族性や場所、アジア料理に関する知識などに関係なく、すべてのアメリカ人がアジア食材をより身近に感じられるようにするものです」。

World Innovation Labのゼネラルパートナー兼CEOである伊佐山元氏は「大都市圏を中心に展開する競合他社と異なり、Bokksuは全国配送を通じて幅広いファンに本物のアジアの商品と体験を届けています」と述べた。「多くのアジア系eグローサリープラットフォームは主にアジア人によって利用されていますが、Bokksuの忠実な顧客層の大半はアジア料理についてもっと知りたいと思っている非アジア人であり、Bokksuにはより大きな獲得可能市場があります」。

オンライン食料品部門は過去数年間成長し、大規模な投資を集めてきた。伊佐山氏は「eグローサリーマーケットは、スピードと利便性に重点を置き、食料品購入をより手間のかからないものにすることに注力してきました。今後、eグロサリー企業は、顧客が新しいもの、例えばスナックやフレーバーを探求し、食を通じて個々の栄養ニーズを満たすことをサポートするようになると予想しています」とTechCrunchに語った。

Valor Siren Venturesのパートナー兼ファンドマネジャーのJon Shulkin(ジョン・シュルキン)氏は「Bokksuが事業を拡大するにあたり、パートナーとして協力できることをうれしく思っています」と述べた。「Bokksuのチームは、短期間のうちに本物かつ目的志向のブランドを構築しました。厳選された商品とグルメ体験を日本から世界へ提供する彼らの成功により、Bokksuはアジア食品のためのプレミアムな目的地となる、破壊的なD2C食料品プラットフォームを構築する潜在可能性を持っていると確信しています」

Bokksuのサブスクは月額49.95ドル(約5690円)で、米国などほとんどの国で送料無料だ。また、複数月の前払いでさらにお得になるオプションもある。3カ月プランは月44.95ドル(約5120円)、6カ月プランは月42.95ドル(約4890円)、12カ月プランは月39.95ドル(約4550円)だ。

画像クレジット:Bokksu

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(文:Kate Park、翻訳:Nariko Mizoguchi

Starship Technologiesが自律型配送ロボットの拡充に向けEUの投資部門から約64.3億円獲得

Starship Technologies(スターシップ・テクノロジーズ)は、自律型配送ロボット(都市を自動運転する小さなカボチャのような箱型の配送車)の世界では大物の1社である。新型コロナウイルス(COVID-19)の間、消費者がウイルスの拡散を最小限に抑えるために自宅待機をしたり、あるいは外出が消極的だった時に、店舗やレストランと消費者の間で食品やその他の商品を配送するための(無人の)力を提供し、絶好調だった。現在、同社はさらなる成長のために、欧州の支持とともにいくつかの資金を手にしている。

このスタートアップは、欧州連合の資金調達部門である欧州投資銀行(EIB)から5000万ユーロ(約64億3900万円)の資金を受け取った。Starship Technologiesは、これを「準株式発行枠」と表現しており、ベンチャーローンが混じっていることを意味する。

今回の投資による評価額は公表していないが、Alastair Westgarth(アラステア・ウェストガース)氏は、これで投資家からさらに資金を調達することを否定するものではないとしている。Starshipは2019年にMorpheus Ventures(モーフィアス・ベンチャー)主導で4000万ドル(約45億6500万円)のシリーズAを調達し、Pitchbook(ピッチブック)のデータによると2021年1月にも、戦略的支援者で日本の大手電機メーカーの投資部門であるTDK Ventures(TDKベンチャーズ)とGoodyear Ventures(グッドイヤー・ベンチャーズ)を出資者に迎え、さらに1700万ドル(約19億4000万円)を調達している。現在、250万台以上の商用配送を行い(2021年10月の200万台から増加)、世界で300万マイル(約482万km)以上を走行している。ウェストガース氏によると、同社の車両は平均して1日に1万件の配送を行っているという。

サンフランシスコを拠点とする同社は当初、2017年に米国の配送会社であるDoordash(ドアダッシュ)とPostmates(ポストメイツ、現在はUberの一部)とパイロット運用を行い、その後、大学キャンパス環境内での導入を行って、その名を轟かせた。同じロボット配送のスタートアップであるMarble(マーブル)は、その頃、市の規制当局と対立し、皮肉にもその影響から、Starshipはまだホームの都市でローンチしていない。(Marbleは現在、Caterpillarの傘下に入っている)。

Marbleはヨーロッパでも大きな存在感を示しており、エストニアのタリンに主要な研究開発拠点を置き(そのためEUから財政的な支持を受けている)、英国のミルトン・キーンズにて初の本格的な都市展開を開始した。サービスの価格は都市や場所によって異なるが、例えばミルトン・キーンズにある食料品チェーン店Coop(コープ)に提供するサービスは、一律99ペンス(約150円)で設定されている。

この2年間、 Starshipの名前は、配達員の数が減り、人々が移動を控え、人との接触が少なくなった時代に、企業が注文した食品を顧客に届けるための配達パートナーとして、よく耳にするようになった。ミルトン・キーンズのサービスだけでも数十万件の配達があり、Starshipは重要なパートナーと契約を開始するようになった。英国では、食料品チェーンのTesco(テスコ)、Coop、Budgens(バドジェンヌ)がそのリストに含まれている。同社は主に、メガ食料品店ではなく、中心部に位置する小型店舗の配送手段として提携しており、Starshipが狭い範囲に配送する商品をストックする「ダークストア」の役割を担っている。配達は、iOSAndroidのアプリで依頼する。

現在、同社のビジネスの大部分(約70%)はキャンパス内での展開によるものだが、変調の兆しが見えてきているとウェストガース氏は述べている。

「1年~1年半後には、食料品の規模は大きくなっているでしょう」と彼はいう。Starshipのサービスを利用する可能性のあるキャンパスの市場規模は400〜500程度だが「食料品は数十億ドル(数千億円)規模になります。我々は、世界中のデリバリーサービスを追いかけています。自転車やスクーター、クルマに乗っている人と同じように配達できますが、私たちの方が安く、ロボットは年々安くなっています」と同氏はいう。ロボットの平均的なバッテリー寿命は18時間で、典型的なロボットは1日に約40km走行することができる。

現在、同社はレベル4の自律型システムとして車両を運用している。つまり、人間がオペレーションセンターで問題を監視し、車両が予期せぬトラブルに見舞われた場合には、必要であれば引き継ぐことができるということだ。だが、それはデフォルトではない。

「私たちのロボットは99%、誰も関与していません。私たちは多くの配達を、誰も関与することなく行っています」とウェストガース氏はいう。

EIBからの資金提供は、EUにとって2つの異なる条件を満たすものである。第1に、EUはより持続可能な輸送手段を推進し、排出量の削減と道路交通の低減を図ろうとしている。第2に、デジタル経済におけるEUの地位をさらに高めるために、テック系スタートアップ企業を支援するという長期的な目標がある。

EIBの副総裁 Thomas Östros(トーマス・エストロス)氏は「あらゆる形やサイズの電気自動車が、私たちの未来の一部となり、持続可能な輸送手段というパズルにおいて重要な役割を果たすことができます」と、声明の中で述べている。「Starshipの配送ロボットはすでにその価値を証明しており、同社が技術開発を続け、生産規模を拡大できるよう支援できることをうれしく思います」。と語っている。

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Akihito Mizukoshi)

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡がラグランジュ点L2軌道に到着、光学機器の調整へ

Steve Sabia/NASA Goddard

打ち上げから1か月を経て、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)がラグランジュ点L2に到着しました。この地球から約150万km離れた軌道で宇宙望遠鏡はこれから約3か月かけて光学系の調整など観測の準備を行います。

L2軌道は太陽からの光が地球の影によって遮られるため、機体を超低温に保つことができます。そのため赤外線機器への熱干渉が発生しにくく、観測に最適な環境が得られます。

観測の邪魔になる要素が少なくなれば、非常に遠い宇宙の観測にノイズが入り込みにくく、地球周回軌道から観測していたハッブル宇宙望遠鏡では得られなかった高精度な観測データの取得が期待されます。JWSTは大きなサンシールドも備えており、機体はマイナス230℃という低温で観測を行うことになります。

計画の変更やトラブルの数々に悩まされ、さらには新型コロナによって開発が幾度となく延期されてきたJWSTですが、打ち上げ以降はこれまでのところ目立ったトラブルもなく、順調に観測に向けた準備が進められているのは喜ばしいことと言えるでしょう。

ハッブル宇宙望遠鏡はそろそろ機器としての寿命が近づいているため、その後継的な立場としてのJWSTには期待が高まっています。

(Source:NASAEngadget日本版より転載)

ツイッターが親しい友達にだけツイートを見せる「Flock」機能を実験中

Twitterは、選択した友達にだけツイートを見せることのできる機能に現在も取り組んでいる。2021年7月に同社は「信頼できる友達」を指定して一部のツイートをその人たちだけに見せることを検討していると明らかにした。最近、開発者でリバースエンジニアのAlessandro Paluzzi(アレッサンドロ・パルッツィ)氏が、この機能の開発が進められていてTwitterはこれを「Flock(フロック)」と呼んでいる証拠を見つけた。

この機能が広く公開される場合には、名前は変わるかもしれない。TwitterはThe Vergeに対し「Flock」は単なる仮の名前だと述べた。パルッツィ氏が見つけた説明によると、現在の試行では最大150人のユーザーを自分のリストに追加し、そのグループに送信したツイートは追加された人たちだけが見て返信できる。Flockに送信したツイートには対象者に対し、グループに追加されているのでこのツイートが見えているという注意書きが付く。グループはいつでも編集可能で、Twitterによればグループから削除した人にはそのことは知らされない。

Twitterは信頼できる友達の機能の追加について検討していると初めて明らかにした際に、もう1つ、同一アカウント内で別のペルソナを持てるようにするというコンセプトも示した。こちらが開発中かどうかは不明だ。同社は同じ関心を持つ人たちが利用できる専用スペースの「Communities(コミュニティ)」という機能もテストしている。Flockはリアルの友達を意図して設計されているもので、Instagramの「親しい友達」に近い。TwitterはThe Vergeに対して送ったコメントの中で「健全な会話ができる新しい方法に常に取り組んでおり、現在はもっとプライベートに共有する方法を探っているところです」と述べた。

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者のMariella Moon(マリエラ・ムーン)氏はEngadgetのアソシエイトエディター。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Mariella Moon、翻訳:Kaori Koyama)

GPT-3に対抗してAI2がQ&Aを重視したオープンなライバルAIを披露

OpenAI(オープンエーアイ)のすばらしいAI言語モデルであるGPT-3は、多くの機能を備えているが、1750億個のパラメータを備えたそのモデルを、特にすっきりしているという人はいないだろう。このたびAllen Institute for AI(AI2、アレン・インスティチュート・フォー・エーアイ)が、GPT-3と同等もしくはそれ以上の質疑応答能力を持ちながら、サイズが10分の1というモデルのデモを行った。
AI2のモデルであるこのMacaw(マカー)は、標準的なテストで人間レベルのパフォーマンスを発揮するAIを作ることを目的として、非営利団体AI2で行われてきた研究から生まれた。

AI2の責任者であるOren Etzioni(オーレン・エチオーニ)氏は「非常に高いスコアを得た後、モデルはより難しい問題に移っていきました。人間にとって最も簡単な質問が、機械にとっては最も難しいというパラドックスがありますが、このときの最大のギャップは『常識』でした」と語る。

たとえば「トム・ハンクスが月に降り立ったのはいつですか?」と尋ねてみるのがその例だと彼はいう。GPT-3はこの質問に1995年と答える、なぜなら映画『アポロ13』が公開されたのが1995年だったからだ。しかしMacawは、私たちが知る限り、トム・ハンクスが実際に月に行ったことはないと正しく指摘する。

AI2は、その違いを示す例題(「デモ」という言葉は少し過剰な表現かもしれない)を公開しているが、その中ではトリッキーな質問やそれほどでもない質問に対してMacawの方がしばしばより良い答えを行っている。

どちらもかなりの高確率で失敗したり、不合理な答えを出したりすることがあるので、両者を比べてみるのはおもしろい。Macawは誰が何をしたかを追跡するのは得意だが、蛇には足があると信じている。GPT-3の回答は(おそらく過剰なほど)自信に満ちていてしかも読みやすいが、その内容が、新型コロナウイルスは「実験的で危険な新薬」であるというような陰謀論的なものであってもその態度は変わらない。

いくつか例を挙げてみよう。

  • 結婚生活をより安定させるにはどうしたらいいですか?
    Macaw:コミュニケーション。
    GPT-3:私なら自分が常に正しいということを確認するでしょう。
  • もしも鳥に翼がなかったら、どのような影響があるのでしょうか?
    Macaw:飛ぶことができなくなります。
    GPT-3:それは質の悪い鳥ですね。
  • クランベリージュースを自分で注いだ後、うっかりしてティースプーン1杯ほどのグレープジュースを注いでしまいました。見た目は大丈夫です。その匂いを嗅いでみましたが、風邪をひいていたので何の匂いもしません。ともあれ、あなたはとても喉が渇いています。だからそれを飲むことにします。次はどうなりますか?
    Macaw:気持ち悪くなる。
    GPT-3:たぶん死ぬ。
  • ヘビはどうやって移動するの?
    Macaw:四つん這いで進みます。
    GPT-3:ヘビは筋肉で地面を押して移動します。どの方向にも動くことができますが、後ろ向きに動くことはできません。

子どもでも答えられるような、基本的な質問に失敗しない質疑応答AIの実現はまだまだ遠そうだ。しかし、MacawがGPT-3と同程度の成功を、はるかに少ないデータ量の処理で達成していることにも注目したいと思う。エチオーニ氏は、これはGPT-3に取って代わろうとするものではなく、世界中で行われている言語の生成と理解に関する研究の新たな一歩であることを明言した。

彼は「GPT-3はすばらしいものですが、1年半前にローンチしたばかりで、アクセスも限られています」という。GPT-3が示す能力はすばらしいものの「しかし、私たちは、より少ない資源でより多くのことができることを学んでいます。たとえば1750億個のパラメータが必要となるようなものでも、私たちならおそらく100億個のパラメータでできるでしょう」とエチオーニ氏は語る。

優れた質疑応答AIは、パーティーの余興に役立つだけでなく、音声による検索などで中心的な役割を果たす。簡単な質問に外部と通信することなくすばやく正確に答えられるローカルモデルは、基本的に価値がある。たとえばAmazon Echo(アマゾン・エコー)自身がGPT-3を実行することはまずないだろう、それは、スーパーに行くために大型トレーラーを買うようなものだ。大規模なモデルはこの先も有益だが、今後はよりコンパクトなモデルが使われるようになるだろう。

ここでは示されていないものの、AI2チームによって積極的に追求されているMacawの機能の1つが、その答を説明させることだ。なぜMacawはヘビに足があると思っているのか?それが説明できないと、どこでモデルが間違ったのかがわからなくなってしまう。しかし、エチオーニ氏は、これはそれ自体が興味深く難しいプロセスであるという。

「説明の問題点は、本当に誤解を招く可能性があることです」と彼はいう。彼は、Netflixが視聴者に番組を推薦した理由を「説明」している例を挙げたが、それは複雑な統計モデルに関係した動作理由の説明ではない。人は機械に関係する説明を聞きたいのではなく、自分の心に関係する説明を聞きたいのだ。

エチオーニ氏は「私たちのチームは、こうした『誠実な説明』を開発しています」と語り、今回いくつかの研究成果を発表したものの、まだ一般に公開できる状態ではないと述べた。

しかし、AI2が開発しているほとんどのものと同様に、Macawもオープンソースだ。気になる人は、ここにコードがあるので、是非とことん遊んで欲しい。

画像クレジット:Andrii Shyp / Getty Images

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(文:Devin Coldewey、翻訳:sako)

米実業家マーク・キューバン氏、ジェネリック医薬品を低価格で提供するオンライン薬局を開設

Mark Cuban(マーク・キューバン)が先週末に発表した、100種類以上のジェネリック医薬品を原価に近い価格で販売するオンライン薬局は、まったく思いもよらないものだったが、薬を買うのに苦労している何百万人もの人々に歓迎されることだろう。この億万長者はTechCrunchの取材に対し、このビジネスモデルは清々しいほどシンプルだと語った。「低価格化が患者のストレスを減らし、それが顧客の増加につながるのです」。

このCost Plus Drug Company(コスト・プラス・ドラッグ・カンパニー)の目的は非常にシンプルで、できるだけ多くの一般的な医薬品を、ジェネリック医薬品として、できる限り低価格で提供することである。すべて現金で、IP取引も保険会社も使わず、製造コストに15%を加えた価格で薬を購入するだけだ。

ROI(投資収益率)について質問されたキューバン氏は、それほど高くないことを認め、これは意図的なものであると答えた。

「薬を買える人の数を最大限に増やしながら、損益分岐点を超えたい」と、キューバン氏は語った。「まあ、少しでも利益が出て、他で売られているジェネリック医薬品の価格を大幅に下げることができれば嬉しいね」。

「私たちの課題は、価格を下げ続けること」であり、誰かと競争することではないと、同氏は続けた。「私たちのKPI(重要業績評価指標)は、ジェネリック医薬品を購入する患者のストレスをどれだけ軽減できるかです。人々は薬代を大幅に節約できたら、同じ問題を抱えている知人に教えることがあるでしょう。 そのような口コミが、私たちの成長に最も影響を与えます」。

同社は現在、偏頭痛の薬からHIV、避妊薬まで、あらゆる薬のジェネリック医薬品を提供しているが、扱う薬には、より安く提供できる、あるいは提供すべきであるということ以外、特に優先順位はないと、キューバン氏は説明する。また、どのよう症状に対する薬を次に扱うかということを決める委員会のようなものもない。

「プロセスとしては、世の中に出回っているものよりも安い価格で提供できる薬を選ぶだけです」と、キューバン氏は簡単に答えた。「これはどんなビジネスでも同じです」。

中間業者を排除し、実績のある製品を誰よりも安く提供するという極めてわかりやすいビジネスプランは、今では古めかしく感じられるが、キューバン氏は自分のやっていることを、よく理解している。少なくとも全般的(ジェネリック)には。オンライン薬局に参入しようとしているスタートアップ企業へのアドバイスを求められたキューバン氏は、肩をすくめるように答えた。「私には何もありません。私はまだ学んでいる最中ですから」。

画像クレジット:BRENDAN SMIALOWSKI/AFP

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

パナソニックがテスラ向け大容量バッテリーを2023年に生産開始との報道

Panasonic(パナソニック)は、早ければ2023年にも、Tesla(テスラ)向けのより大容量なバッテリーの量産を開始する可能性があると、Nikkei Asia(日経アジア)が報じた。この新しい「4680」バッテリーセルは、電気自動車の航続距離を15%以上も向上させるという。テスラの「Model S(モデルS)」では、1回の充電で走行可能な航続距離が現行の650kmから750kmにまで伸びる可能性があるということだ。

バッテリーセルの大きさは従来の約2倍に大きくなるものの、エネルギー容量は5倍になっているとNikkeiは伝えている。そのため、1台の自動車に必要とされる電池の本数は少なくて済むため、製造コストはすでに10~20%安くなっているという。バッテリーはEVのコストの30%を占めていると言われる。バッテリーのコストが下がれば、EVがより手頃な価格になり、電気自動車への移行が早まる可能性がある。さらに航続距離が伸びれば、充電の頻度も少なくて済むようになる。

テスラの長年のパートナーであるパナソニックは、4680を生産するための新しい設備に約800億円を投資すると報じられている。日本の和歌山県にある既存の工場を拡張し、まずはそこで新しいバッテリーの生産を始めるとのこと。Nikkeiによると、パナソニックは2023年に量産を開始する前に、安全で効率的な生産工程を開発するために、2022年から小規模にバッテリーの製造を開始するという。その後、他の国で電池を量産する可能性もあるようだ。

Reuters(ロイター)によると、パナソニックは2022年にテスト生産ラインを設置することを認めたが、大規模なバッテリーの量産を開始する時期については言及せず「我々は大量生産のためのさまざまな選択肢を検討している最中です」と述べたという。

パナソニックは、テスラからの依頼を受けてこのバッテリーの開発に着手した。パナソニックのバッテリー部門責任者は2021年11月、同社ではテスラを優先するものの、他の自動車メーカー向けにこの電池を生産する可能性も除外していないと語っている。テスラのElon Musk(イーロン・マスク)CEOは以前、同社ではバッテリーの自社生産を計画しているが、他のサプライヤーからの調達も継続すると述べていた。

テスラは、2020年9月に開催された「Battery Day(バッテリー・デイ)」というイベントで、この4680を発表した。マスク氏は当時、このバッテリーセルの導入とその他の開発が進むことにより、テスラは2万5000ドル(約285万円)のEVを販売できるようになると語っていた

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者のKris HoltEngadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Panasonic

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(文:Kris Holt、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

グーグルが脱クッキー技術「FLoC」を廃止、代わる新機能「Topics」を公表

(訳註:英語で「flock」は羊など動物の群れ=刈り上げられ毛がなくなった「FLoC」)

Google(グーグル)のプロジェクトであるFLoC(Federated Learning of Cohorts)は、インタレストベース広告のため利用されていたサードパーティークッキーの代わりに、ユーザーを同じような興味を持つ人々のグループに分類するというもので、物議を醸した。Googleは米国時間1月25日、それに代わる新しい提案を発表した。「Topics」である。

これは、ユーザーがウェブ上を移動する際に、ブラウザがユーザーの関心事について学習するというものだ。現時点では過去3週間分の閲覧履歴データが保存され、トピック数は300に限定されているが、順次拡大していく予定だという。Googleは、これらのトピックには、性別や人種などのセンシティブなカテゴリーは含まれないとしている。

Googleはユーザーの関心事を把握するために、ユーザーが訪れたサイトをこれら300のトピックのいずれかに基づいて分類する。これまで分類されていなかったサイトについては、ブラウザに搭載された軽量の機械学習(ML)アルゴリズムが、ドメイン名に基づいてトピックを推定する。

画像クレジット:Google

広告目的でTopics APIをサポートしているサイトにアクセスすると、ユーザーが興味を持っている3つのトピックがブラウザによって共有される。これらのトピックは、過去3週間のそれぞれの週につき1つずつ、各週の上位5つのトピックからランダムに選択される。そして、サイトはこの情報を広告パートナーと共有し、どの広告を表示するかを決めることができる。理想的には、どの広告を表示するか決定するためのよりプライベートな方法となるが、Googleは、現在の標準的な方法よりもはるかに優れたコントロールと透明性をユーザーに提供することになると述べている。ユーザーは、自分のリストにあるトピックを確認したり、削除したりすることができ、Topics API全体をオフにすることもできる。

GoogleのPrivacy Sandboxプロジェクト代表であるBen Galbraith(ベン・ガルブレイス)氏は、25日の発表に先立って行われたプレスブリーフィングでこう述べた。「Topicsの設計は、以前のFLoCトライアルから得た知見に基づいて行われました。その結果、コミュニティから多くのすばらしいフィードバックが寄せられたことはご存じの通りです。私が強調したいのは、提案を共有し、トライアルを行い、フィードバックを集め、設計を繰り返していくという一連のプロセスは、我々がサンドボックスに求めていたオープンな開発プロセスそのものであり、このプロセスが意図したとおりに機能していることを示しているということです」。

画像クレジット:Google

ガルブレイス氏は、Googleはこの新しい提案に対するフィードバックを集めるために多くの関係者と話をしてきたが、今日がエコシステムと協力するプロセスの始まりであると述べている。他のブラウザベンダーがTopics APIの追加に興味を持つかどうかは、今後の課題だ。他社はみなすぐにFLoCに冷ややかな対応を示したので、Topics APIを採用したいと思うかどうかはやや疑問だが、エコシステムがどのように反応するかは興味深いところだ。

また、広告主にとっては、Topicsは特定のユーザーにどの広告を表示するかを決定するための潜在的なシグナルの1つに過ぎないということも言及するに値する。例えば、ユーザーが現在読んでいる記事に関するデータや、ユーザーに関するその他のコンテクストデータなどで補強することができるが、ある意味、単なるもう1つのシグナルとなる。

Topics APIのトライアルは今期末に開始される予定だが、それに向けてGoogleは25日、提案の詳細を少し掘り下げた技術的な解説も公開した。

画像クレジット:Images by Christina Kilgour / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Aya Nakazato)

NVIDIA、Arm買収を断念か、ソフトバンクによる上場計画の噂も

Bloombergの情報筋によると、NVIDIAは400億ドル(約4兆5560億円)でのArm(アーム)買収について、規制当局の承認取得がほとんど進んでおらず、内々に買収を断念する準備を進めているという。一方、Armの現オーナーであるソフトバンクは、買収の代替案としてArmを上場させる計画を進めているようだ、とこの件に詳しい別の関係者は述べている。

NVIDIAは2020年9月にこの買収を発表し、CEOのJensen Huang(ジェンスン・フアン)氏は「AIの時代に向けてすばらしい位置にいる企業が誕生する」と宣言した。Armの設計は、Apple(アップル)、Qualcomm(クアルコム)、Microsoft(マイクロソフト)、Samsung(サムスン)、Intel(インテル)、Amazon(アマゾン)といった企業によってほぼ全世界でスマートフォンなどのモバイル機器にライセンス使用されている。

買収発表後すぐに反発が始まった。Armが拠点を置く英国は2021年1月に買収に関する反トラスト調査を、11月にはセキュリティ調査も開始した。米国では、データセンターや自動車製造などの産業における競争を「阻害」するとの懸念から、FTC(連邦取引委員会)が買収を阻止すべくこのほど提訴した。また、他の規制当局が買収を阻止しなければ、中国が買収を阻止すると報じられている、とBloombergの情報筋は話す。

我々は、最新の規制当局への提出書類で詳細に述べられている見解、すなわちこの取引はArmを加速させ、競争とイノベーションを促進する機会を提供するとの見解を引き続き持っている。

Intel、Amazon、Microsoftといった企業が、規制当局にこの取引を中止させるのに十分な情報を与えたと、情報筋は話している。これら企業は以前、NVIDIA自身がArmの顧客であるため、Armの独立性を保つことができないと主張した。つまり、Armのライセンス取得者のサプライヤーと競合社の両方になる可能性もある。

このような厳しい逆風にもかかわらず、両社は依然として買収を進める姿勢にある。NVIDIAの広報担当者Bob Sherbin(ボブ・シェルビン)氏はBloombergに対し「我々は、この取引がArmを加速させ、競争とイノベーションを促進する機会を提供するという見解を引き続き持っています」と述べた。ソフトバンクの広報担当者は「当社はこの取引が承認されることを変わらず望んでいます」と声明で付け加えた。

後者のコメントにもかかわらず、ソフトバンクの一部の派閥は、特に半導体業界がこれほど熱狂していることから、買収の代替案としてArmのIPOを推進していると伝えられている。また、NVIDIAの株価が買収発表後2倍近くに上昇し、実質的な買収価格が上昇していることから、買収を継続したいとの考えも一部にはあるようだ。

最初の契約は2022年9月13日に失効するが、承認に時間がかかる場合は自動更新される。NVIDIAは、この取引は約18カ月で完了すると予想していたが、今となってはこの期限は非現実的のようだ。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のSteve DentはEngadgetの共同編集者。

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(文:Steve Dent、翻訳:Nariko Mizoguchi

freee会計が法人・個人事業主向けEコマース「Amazonビジネス」の購買明細APIと公式連携を開始

freee会計が法人・個人事業主向けEコマース「Amazonビジネス」の購買明細APIと公式連携を開始

freeeは1月24日、「freee会計」において、日本の法人・個人事業主向けEコマース「Amazonビジネス」が提供する購買明細APIと公式に連携を開始したことを発表した。これにより、セキュアかつ正確で安定した同期、注文した商品単位での明細連携が可能となる。

freee会計の従来連携手段(スクレイピング連携)では、1回の注文で複数品目を購入した場合、勘定科目や消費税率を商品ごとに設定できず、注文がまとめて明細に表示されていた。このため、自動同期した明細を注文商品ごとにわけて勘定項目を設定するという手作業が必要だった。

今回のAPI連携では、商品ごとに明細が作成されるため、勘定科目や税率の設定が簡単になり、「自動で経理機能」の活用によって自動化・業務効率化を実現できるようになった。また、Amazonビジネス上でユーザーが設定したグループ単位での同期が行えるため、部門や取引先単位での購入履歴取り込みが可能となっている。

APIの連携は、freee会計の口座機能より行える(「Amazonビジネス – 購入履歴を取り込む」参照)。ただし利用には条件があり、「日本のAmazonビジネスを利用中の方」と「今回初めてAmazonビジネスとfreeee会計の連携を行う方」の両方を満たす必要がある。

従来の方法で連携した方が新たに連携を行ってしまうと、明細の作成単位の変更に伴い、決裁書上の勘定項目が同じものであると判定されず手作業による修正が必要となる。そのため、現時点では今回のAPI連携への切り替えは推奨していないとのこと。そうした場合の移行方法は、別途ヘルプページにて案内する。

AI問診・病名予測アプリのUbieが新型コロナ第6波を受け全国の病院・クリニックへ「ホームページAI相談窓口」を無償提供

AI問診・病名予測アプリ開発のUbieが新型コロナ第6波を受け全国の病院・クリニックへ「ホームページAI相談窓口」を無償提供

Ubieは1月25日、全国の病院・クリニックを対象に「ホームページAI相談窓口」の無償提供を開始したと発表した。来院前に各医療機関のウェブサイト上でAIを使用した事前問診が行えるサービスで、患者の症状に応じた適切な案内と問診時間削減による院内感染リスクの低減を実現する。導入・設置にかかる費用は無料。医療機関向けの問い合わせ先は、「【緊急提供】第6波を受け、全国の病院・クリニックへ「ホームページAI相談窓口」の無償提供を開始_医療機関さま向けお問い合わせフォーム」となっている。

ホームページAI相談窓口では、各医療機関のウェブサイト上において、患者が症状に応じた20問程度の質問に回答し、問診結果を受診前に医療機関へ送信できる。医療機関側は、医師語に翻訳された問診結果を受け取ることで、事前に患者の症状を把握可能。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の関連症状がある場合は、「導線や診療時間を振り分ける」「発熱外来に対応している他医療機関を案内する」など適切な対応を取れる。また、受付での問診時間の短縮により、院内感染リスクの低減にもつながるとしている。AI問診・病名予測アプリ開発のUbieが新型コロナ第6波を受け全国の病院・クリニックへ「ホームページAI相談窓口」を無償提供

年始からコロナ禍の再拡大による第6波が全国に到来しており、より感染力の強いオミクロン株により病院・クリニックでは、来院患者がこれまでにない速さで急増している。また、新型コロナ関連症状患者の1次対応や振り分けを行う各自治体の保健所のリソースもひっぱくし、医療崩壊の危機を迎えている状態にある。

Ubieは、いまだ感染のピークが見えない状況でこの危機を乗り越えるためには、病院・クリニックがより多くの患者を受け入れられる体制の構築と従業員・患者の院内感染防止が必要不可欠と指摘。今回の第6波における医療現場の状況を踏まえ、持続可能な医療体制の構築のため、一部医療機関で試験的に導入していた「ホームページAI相談窓口」の正式リリースおよび無償提供開始を決定した。

Ubieは、「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」をミッションに掲げ、医師とエンジニアが2017年5月に創業したヘルステック領域のスタートアップ。生活者の適切な医療へのかかり方をサポートするウェブ医療情報提供サービス「ユビーAI受診相談」、紙の問診票のかわりにタブレットやスマートフォンを活用した「ユビーAI問診」を提供している。ユビーAI受診相談は月間300万人以上(2021年9月現在)が利用し、ユビーAI問診は全国47都道府県・500以上(2022年1月現在)の医療機関が導入しているという。

患者は、ユビーAI受診相談を利用することで、気になる症状から関連する病名と適切な受診先をいつでもどこでも調べることができる。またユビーAI問診では、AIを活用したスムーズかつ詳細な事前問診を実現することで、医療現場の業務効率化や患者の滞在時間削減に寄与する新しい医療体験を生み出している。

ビットキーが手がけるスマートロックとhomehubをレオパレス21が採用、2022年6月より44万戸に設置

ビットキーは1月24日、同社が開発・販売するスマートロックと、様々なサービスを自宅でシームレスに利用できるコネクトプラットフォーム「homehub」(ホームハブ)について、レオパレス21が管理する物件に採用されたことを発表した。2022年6月よりレオパレス21が管理する物件の約8割となる44万戸を対象に設置を開始する。

レオパレス21では、以前から非対面・非接触対応を目指し、新築物件に対してスマートロック「Leo Lock」(レオロック)の設置を進めていたものの、設置条件や初期投資額などの障壁、入居者専用サービス「レオネット」といった各種システムとの連携が困難な点から普及と拡大に課題があったという。今回、ビットキーのスマートロックおよびhomehubによってそうした課題が解消され、採用に至ったとのこと。

スマートロックは、スマートフォンの専用アプリやICカードテンキーでの暗証番号入力など複数の手法で鍵の解錠が行えるシステムで、入居者はキーレス環境を享受できる。ICカードや暗証番号はセカンドキーとしての利用を目指している。

また、入居者以外でも利用時間や回数制限のある「ワンタイムチケット」「ワンタイムパスコード」を発行してもらうことで、暗証番号やスマートフォンによる解錠・入室が可能。オートロック機能や施解錠履歴管理機能を備えているため、セキュリティ対策にもなる。

なおこのワンタイムチケットでは、一時的な解錠が許可されるため、お部屋探し中の顧客に対して、営業スタッフの同行なく単独での完全非対面かつ鍵の貸出の手間を省いた内見を提供できる。

homehubはIoT架電や置き配・家事代行サービスなどと連携可能な暮らしのコネクトプラットフォーム。また、不動産管理会社などへ鍵の発行システムや内見予約システムを提供しており、前述のワンタイムチケットとあわせて内見予約に連動した鍵の自動発行など、業務を効率化できる。

1024個の長期安定型の分子センサーを1チップに集積化、空中の分子の空間濃度分布の可視化に成功

1024個の長期安定型の分子センサーを1チップに集積化、空中の分子の空間濃度分布の可視化に成功

開発したセンサーアレイの顕微鏡写真(右図)およびアナログフロントエンドセンサー計測回路システムの写真(左図)

東京大学と慶應義塾大学からなる研究グループは、気体に含まれる分子(揮発性分子)を電気信号として検出する分子センサー1024個を1チップに集積化したセンサーアレイ(センサー群)を開発し、揮発性分子の空間濃度分布の可視化に成功した。この分子センサーは金属酸化物ナノ薄膜を用いた堅牢なもので、従来技術では難しかった長期間の安定化と、高密度集積を可能にした。

分子センサーは、医療や食品管理など幅広い分野で注目を集めているが、実際に検出対象となるガスには数十から数百種類の分子が含まれているため、数多くのセンサーを集積したセンサーアレイが必要となる。また、小型、省電力であるうえに、長期間データを取得し続けられる長期安定性も求められる。だが従来技術では、高密度集積化と長期安定(堅牢性)という2つの条件を満たすセンサーアレイは作れなかった。

そこで、東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻の大学院生 本田陽翔氏、慶應義塾大学大学院理工学研究科総合デザイン工学専攻の大学院生 椎木陽介氏らからなる研究グループは、金属酸化物半導体をクロスバー構造に配置したセンサーアレイを開発した。クロスオーバー構造とは、格子状にセンサーを配置するもので、これまで広く開発されている「縦型チャンネル構造」に比べて面積を大きくできる。研究グループは、1辺に32本の電極を設け、計1024個(32×32)の分子センサーを5mm四方の中に集積化した。

ただクロスオーバー方式は集積化に優れている反面、配線の電気抵抗がセンサーの電気抵抗に加わってしまうため正しい測定ができないという問題があるのだが、50nm(ナノメートル)という非常に薄い酸化スズの膜をセンサーに用いることでセンサー自体の電気抵抗を大きくし、配線の抵抗の影響を小さくすることでこれを解決した。またこの酸化スズは熱に強く、長期間安定した分子センサーも実現している。

(a)液滴をから蒸発・拡散させた分子をセンサーアレイで検出する実験の模式図と写真。(b)蒸発・拡散してきたエタノールに対するセンサー応答とセンサー列の関係。液滴に近いセンサーほど高い応答が得られている。(c)bのセンサー応答の勾配(傾き)と各種液滴滴下後の時間の関係。60s時点で液滴を滴下している。勾配の時間依存性が分子の種類に応じて異なる傾向を示している

(a)液滴をから蒸発・拡散させた分子をセンサーアレイで検出する実験の模式図と写真。(b)蒸発・拡散してきたエタノールに対するセンサー応答とセンサー列の関係。液滴に近いセンサーほど高い応答が得られている。(c)bのセンサー応答の勾配(傾き)と各種液滴滴下後の時間の関係。60s時点で液滴を滴下している。勾配の時間依存性が分子の種類に応じて異なる傾向を示している

このセンサーアレイの近くにアルコールを配置して蒸発し拡散する分子の検出を行ったところ、アルコールからの距離に応じてセンサーの反応に差異が出た。このことから、このセンサーアレイで分子の種類を判別できる可能性が示された。

この技術とセンサーチャンネル表面の化学物性を制御する技術を融合すれば、多種類のセンサーを高密度に集積化でき、「多種類の分子が混合された分子群の判別」ができるセンサーシステムの実現も期待されるとのことだ。

Solanaにいち早く目をつけたFoundation Capitalが約568億円の新ファンドを獲得

パロアルトとサンフランシスコにオフィスを構えるアーリーステージのベンチャーファームFoundation Capital(ファウンデーション・キャピタル)は、27年前に設立されて以来さまざまな変遷を繰り返してきた。拡大したり縮小したり、成功を遂げたり不安定になったりと、あらゆるステージを経験してきたのである。

そして2022年、再び拡大モードに入った同社。3名のジェネラルパートナーとともに3億5000万ドル(約398億円)の出資を得て9番目のファンドをクローズしてから3年経った現在、同社10番目のフラッグシップファンドに向けて5億ドル(約568億円)を確保したと発表した。2名の投資家をゼネラルパートナーに昇格させ、元創業者のAngus Davis(アンガス・デイビス)氏を採用した現在、同社には6名ゼネラルパートナーが在籍。投資家を魅了してやまない数多くのディールをポートフォリオに抱えている。

その中には、急成長中のNFTマーケットプレイスOpenSea(オープンシー)、話題のパブリックブロックチェーンプラットフォームのSolana(ソラナ、Foundationが最初の機関投資家)、そして2021年12月に内密に株式公開を申請し、50億ドル(約5683億4000万円)から100億ドル(約1兆1367億円)の評価額を予測しているとされているデータ管理ベンダーのCohesity(コヒシティ)などの企業が名を連ねている。参考までに、Cohesityは、2021年3月に個人投資家から37億ドル(約4205億7000万円)の評価を受けている。

Foundationはどのようにしてこの回復を遂げたのか。創業者やそのネットワークとの強い結びつきがその一端を担っているのだろう。長年あらゆる経験を積み、その過程で人を大切にしてきた企業のみが享受することのできるメリットというものが存在する。

またFoundationは、評価基準から離れて未知のものを積極的に受け入れ、まだこれから会社を立ち上げようとしている個人に寄り添ってきた。こういった個人とは大企業の経営陣であったり、スタートアップ分野に戻ってきた創業者であったり、大学からのスピンアウトを準備しているチームであったりとさまざまだ。2008年にFoundationに入社し、現在は最も長く在籍するジェネラルパートナーの1人であるAshu Garg(アシュ・ガーグ)氏は次のように話している。「誰かがまだ会社を立ち上げる準備をしているときに、その人と握手を交わし合うというのが私たちの目標で、それが私たちのビジネスのやり方です。そこに会社は存在しません。それこそが私たちのビジネスモデルなのです」。

滑稽に聞こえるかもしれないが、これは冗談ではない。今日の市場には大量の資本が存在し、それらが生まれたての企業の評価額を引き上げているのだが、実際の製品やチームが形成されるのを待つのではなく、個人に注目するというベンチャー企業はFoundation以外にも増えている。LAを拠点とするUpfront Ventures(アップフロント・ベンチャーズ)のVC、Mark Suster(マーク・サスター)氏は自身のチームについて「我々は創業者が会社を辞めたくなったときのリスクさえも負っています。会社の設立期間、つまり創業0日目もサポートしているのです」とTechCrunchに話している

Foundationは同社の前のめりな戦略の一環として、企業のインキュベーションに重点を置いている。近年、Foundationの支援を受けて台頭してきたスタートアップには、11月のラウンドで40億ドル(約4550億円)以上の評価を受けたAIチップとシステムのスタートアップCerebras(セレブラス)、ブランクチェックカンパニーとの合併を経て2021年上場した(以来、波乱万丈なのだが)デジタルタイトル、エスクロー、クロージング企業のDoma(ドマ)(旧States Title)の他、先月シリーズDで8700万ドル(約99億円)の資金を調達した、テック企業のために開発者を見つけて審査とマッチングを行うTuring(チューリング)などがある。

他の企業と同様、Foundationはスタートアップだけでなく、同社に新しいネットワークやアイデアをもたらす新興ベンチャー企業にも資金を投入している。同社で長年ジェネラルパートナーを務めるSteve Vassallo(スティーブ・バサロ)氏によると、同社はここ数年で「導き手」の役割を果たしてくれる53を超えるベンチャー企業に約1500万ドル(約17億円)を投入しているという。

さらにFoundationは、現在進行形の学習方法も進化させている。長年のメンバーであり、2021年ジェネラルパートナーに昇格したJoanne Chen(ジョアン・チェン)氏は人工知能に力を入れており、Slack(スラック)コミュニティを通じてアイデアを共有するエンジニアリング関係のバイスプレジデントや技術系の創業者らと深く関わっている。

また同社には、GitHub上のどのプロジェクトが軌道に乗っているかを把握するために「1日に10時間を費やすパートナーがいる」とバサロ氏は話している。「企業の自動化」やフィンテックに力を入れている同社は、最近Discord(ディスコード)チャンネルに多くの時間を費やしているという。「当社の暗号チームは、間違いなくDiscordに注力しており」、web3やDeFiの取引を探している人にとっては「すばらしいプラットフォームというわけではありませんが、現在あるものの中では最高のものでしょう」とバサロ氏は話している。

この活気ある市場の中で、さらなる創造性を発揮しなければならないというプレッシャーをFoundationが感じているとしても、同社がそれを認めることはない。

Foundationが案件獲得のためにしたり見たりした奇想天外な行為について質問されたバサロ氏は、同社のポートフォリオ企業が資金調達の合間に受け取った「膨大な量のラブレター」については知っているが、今のところはスタンフォード大学のキャンパスやサンフランシスコのダウンタウンにあるセールスフォースパーク周辺で創業者と歩きながら話をすることに満足していると答えている。

ガーグ氏も同様の意見で「創業者の注目を集めるためにクレイジーなことをする企業もいますが、市場が少し落ち着くと緩和されるでしょう」と話している。

Foundationがそのような行為をすることは決してないと同氏は主張する。「私たちは、創業者がLinkedIn(リンクトイン)を更新する前から彼らと話をしているのです。もし、Tiger Global(タイガー・グローバル)と同じ時期に話をしているようであれば、それは私たちにとっては失敗です」。

画像クレジット:Foundation Capital

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

極域の観測網構築に向けた、安価な汎用ドローンによる高精度気象観測を実現

極域の観測網構築に向けた、安価な汎用ドローンによる高精度気象観測を実現

国立極地研究所は1月24日、安価な汎用ドローンを使った高精度な気象観測の実験に成功したと発表した。コストのかかるラジオゾンデに代えて、安価な汎用ドローンによる高層気象観測が高頻度で数多くの地点で行えれば、気象の予測精度は向上する。

北極での天気予報の精度の低さが、日本を含む中緯度域の台風進路の予測や寒波予測に影響しているという。それらの地域で観測頻度を高め観測箇所を増やすことが効果的であることはわかっているが、高層気象観測の手法として代表的なラジオゾンデ観測には、それなりのコストがかかるために、長期にわたって観察頻度や観察箇所を増やすことはできない。それに対してドローンは、「対流圏下層の大気に比較的容易にアクセスできる観測手段」として有望視されている。ただ、気象観測専用ドローンも高価であり、運用面を考慮すると費用対効果は決して高くない。

そこで、国立極地研究所の猪上淳准教授と、北見工業大学の佐藤和敏助教からなる研究グループは、民間会社でも入手しやすい汎用ドローン「Mavic2 Enterprise Dual」にIntermet製気象センサー「iMet-XQ2」を取り付けることを考案した。ただし、汎用ドローンを使うにあたっては、気象センサーがドローン自体による排熱などの影響を受けないよう工夫が必要となる。

ドローン底面側の気温・風速分布を調査するための室内実験。北見工業大学の体育館において、2020年10月26日・29日に実施(室内気温は約15度)。(a)アルミフレームに固定したドローンのプロペラを回転させながら気温を計測、(b)ドローン底部5cm付近の気温(色)と風速(等値線)、(c)赤外線カメラで撮影したドローン底部の熱画像

ドローン底面側の気温・風速分布を調査するための室内実験。北見工業大学の体育館において、2020年10月26日・29日に実施(室内気温は約15度)。(a)アルミフレームに固定したドローンのプロペラを回転させながら気温を計測、(b)ドローン底部5cm付近の気温(色)と風速(等値線)、(c)赤外線カメラで撮影したドローン底部の熱画像

研究グループは、まず屋内実験で、ドローンのバッテリーやモーターからの排熱の影響を受けず、ローターからの風が当たり通気がよい場所を特定し、そこにXQ2を配置した。さらに、XQ2の太陽放射による影響を排除し、雲粒、雨、雪の付着も軽減する放射シールドを開発し装着した。

そして屋外実験で、気象観測専用ドローン2機種も加え、10回分のラジオゾンデの観測データとの比較を行った。それによると、研究グループが開発した手法が、ラジオゾンデの観測データにもっとも近い値を示した(対地高度500m以下)。

実験に使用した気象センサーを搭載した汎用ドローン(DJI製「Mavic 2 Enterprise Dual」)。右前アームに気温、気圧、湿度、GPS位置情報を測定・記録できる気象データロガー(Intermet製「iMet-XQ2」)を取り付け、センサーには今回の研究で開発した放射シールドを装着。また、頂部にはエアロゾル粒子カウンターとパラシュートを搭載。写真撮影:国立極地研究所 猪上淳准教授

実験に使用した気象センサーを搭載した汎用ドローン(DJI製「Mavic 2 Enterprise Dual」)。右前アームに気温、気圧、湿度、GPS位置情報を測定・記録できる気象データロガー(Intermet製「iMet-XQ2」)を取り付け、センサーには今回の研究で開発した放射シールドを装着。また、頂部にはエアロゾル粒子カウンターとパラシュートを搭載

さらにこのドローンを使って、寒冷域での観測も試みた。日本でもっとも寒い町として知られる厳冬期の北海道陸別町で、気温マイナス20度以下の早朝、晴れた明け方に上空にいくほど気温が高くなる接地逆転層の観測に成功。また同時に搭載したエアロゾルカウンターは、日の出の数時間後までエアロゾル粒子の濃度が気温逆転層内で高い状態を観測し、極地特有の環境の計測も可能であることを示した。

今後は小型風速計を搭載するなど、「より総合的な気象観測が可能なシステム」を追求するという。国内のドローン開発の進展に伴い、観測データや通信の情報漏洩対策を講じたよりセキュアな国産ドローンにこの観測手法を適用することも視野に入れている。

また、ドローンには機体自身の高度の限界や、航空法による飛行制限などの問題があるため、専門家を交えた議論が必要だとも研究グループは話している。


画像クレジット:国立極地研究所 猪上淳准教授

アジアのHRテックプラットフォームDarwinboxがTCV主導で約81.9億円調達、ユニコーンに

投資家が「アジアのSaaS化」と呼ぶトレンドを、人事テックプラットフォームDarwinbox(ダーウィンボックス)がリードする中、同社は新たに7200万ドル(約81億9400万円)の資金調達ラウンドで評価額を3倍以上に引き上げ、ユニコーンになった。

Technology Crossover Ventures (テクノロジー・クロスオーバー・ベンチャーズ/TCV) は、Netflix(ネットフリックス)、Meta(メタ)、Spotify(スポティファイ)、Airbnb(エアービーアンドビー)などの企業を支援することで知られる投資家で、ハイデラバードを拠点とするこのスタートアップのシリーズD資金7200万ドルをリードした。

Lightspeed Venture Partners(ライトスピード・ベンチャー・パートナーズ)、Sequoia Capital India(セコイア・キャピタル・インド)、Salesforce Ventures(セールスフォース・ベンチャーズ)、3One4 Capital(スリーワンフォー・キャピタル)、Endiya Partners(エンディヤ・パートナーズ)、SCB 10Xなどの既存投資家もこのラウンドに参加し、Darwinboxの調達額は過去最高の1億1000万ドル(約125億円)を超え、10億ドル(約1137億円)を超える価値を持つことになったと、創業6年の同スタートアップは述べている。

Darwinboxは、クラウドベースの人材管理プラットフォームを運営している。このスタートアップの名を冠したプラットフォームは、従業員の「採用から退職まで」のサイクルニーズ全体を管理する。Starbucks(スターバックス)、Domino’s(ドミノピザ)、最近デカコーン化したSwiggy(スウィギー)、Tokopedia(トコペディア)、Zilingo(ジリンゴ)、Kotak(コタック)など数百の企業が、新入社員の入社手続きや業績、退職率の把握、継続的なフィードバックループの確立のためにこのプラットフォームを利用している。

今回の資金調達は、Darwinboxが力強い成長を遂げた1年に続くものだ。共同設立者のChaitanya Peddi(チャイタニア・ペディ)氏は、TechCrunchのインタビューで、世界中の企業が従業員と連携し、従業員にサービスを提供するツールを探すのに奔走したパンデミックがDarwinboxの成長を加速させたと語っている。

同スタートアップによると、2021年の収益は2倍になり、全体の収益の約20%を占める東南アジア地域では3倍に成長したという。

チャイタニア・ペディ氏、ジャヤント・パレティ氏、ロヒト・チェンナマネニ氏の3人(写真左から)は、2015年末にDarwinboxを共同設立した。(画像クレジット:Darwinbox)

このスタートアップは、社員同士がつながりを保つためのソーシャルネットワークや、電話からすばやく音声コマンドで休暇申請やミーティングの設定を行うAIアシスタントなど、フルスタックのサービスを提供しており、Gartner(ガートナー)のエンタープライズ向けクラウドHCMのマジック・クアドラントにアジアのスタートアップとして唯一取り上げられるなど、その地位を確立している。

Darwinboxの顧客の3分の1は、以前はOracle(オラクル)やSAP、Workday(ワークデイ)などの定評あるプラットフォームを利用していた人々であることも、この幅広いサービスによって説明できるかもしれない。

TCVのジェネラルパートナーであるGopi Vaddi(ゴピ・ヴァディ)氏は「我々は、非常に共鳴的な製品で大規模な産業を根本から変革しようとしている、先見性のある創業者を後ろで投資できることにとても興奮します」と、声明の中で述べている。

「また、非常にインパクトがあり、急速に進化するHRテクノロジーの分野でまさにそれを実践している優れたチームを支援し、グローバルHCMリーダーへの道をともに歩んでいけることをうれしく思っています」。と語る。

Lightspeed Venture PartnersのパートナーであるDev Khare(デヴ・カレ)氏は、Darwinboxは、アジアから世界へ向けて構築しているスタートアップのコホートの一部であるという。「私は、アジアのSaaS化を強く信じています。アジア向けのSaaS企業の市場には引き合いが増えており、5年前に観察したものとは大きく変わっています」と、同氏は2019年にLinkedInに投稿している。

「なぜアジア向けSaaSがカテゴリーとして存在する必要すらあるのか、疑問に思われるかもしれません。なぜ米国や欧州のベンダーがここで支配し続けることができないのでしょうか?私の考えでは、これらの欧米のベンダーは実際に支配したことはなく、市場のトップをかすめただけなのです。インドやアジアで実際に起こっていることは、パッケージ・アプリケーションのユーザーではなかった企業や、テクノロジーを利用するユーザーではなかった従業員(ブルーカラー労働者など)が、紙ベースのマニュアルプロセスからSaaSへと直接飛び越え始めているということです」と彼は書いている。

Darwinboxは、今回の資金をチームの拡大とグローバル展開のさらなる推進に充てる予定だ。また、製品ラインナップを拡充し、企業が自社の人事テックエコシステムにプラグアンドプレイできるような補助的なサービスやソリューションを多数追加することも目指している。

同社は、他のスタートアップとの合併や買収によって、これらの製品のいくつかを追加することも視野に入れていると、ペディ氏は述べている。

画像クレジット:Darwinbox

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(文:Manish Singh、翻訳:Akihito Mizukoshi)