‘ネット中立性を救え”抗議活動にAmazon, Kickstarter, Reddit, YCなど60社あまりが参加

ネット中立性(net neutrality)という規則を廃止しようとする、今のFCC(連邦通信委員会)の提案をめぐって議論が沸き起こっているが、7月12日にはAmazon, Etsy, Github, Kickstarter, Reddit, Y Combinatorなども参加する大規模な抗議集会(あるいは何らかのネット上の抗議行動)が行われる。

運動のWebサイトにはすでに60社以上の参加企業が載っており、さらに多くの参加を呼びかけている。

集会を企画したのはネット上の三つの人権団体、Fight for the Future, freepress, そしてDemand Progressだ。一部は、2012年の法案SOPAとPIPAに反対する、ネット上の抗議活動にも参加している。その5年前の抗議活動では、50000あまりのWebサイトがそのホームページをブラックアウトして抗議の意思を示し、議会の再審議に導いた。

関係者は、そのときと同じように、2017年のネット中立性の危機が回避されることを、期待している。

運動のWebサイトには、こう書かれている: “FCCはインターネットの中立性を破壊して、大手のケーブル企業に、ネット上で私たちが見るものをコントロールさせようとしている。彼らが言うとおりになれば、帯域制限や通信のブロック、検閲、割増料金などの行為が、プロバイダー間で一般化するだろう。7月12日には、インターネットが一堂に集まって、その阻止を目指す”。

“私たちは、あなたのサイトのフォロワーやビジターなど、誰もが簡単に運動に参加できるためのツールを提供する。これまでも私たちは、一致団結して、SOPAのときのブラックアウトやインターネットの牛歩化などにより、インターネット全体の意思を示し、検閲や腐敗を防いできた。今は、それをもう一度やるべき時だ!”。

5月に報じたように、今年の夏の終わりに票決される予定のFCCの新しい規則案は、ブロードバンドを連邦通信法第Ⅱ章が適用される通信サービスの分類から外そうとしている。それによって、ISP(インターネットサービスプロバイダー)を規制する/しない強力かつ広範な権限がFCCの手中に転がり込む。

それによってISPやケーブルプロバイダーは、少なくとも理屈の上では、自由勝手に、帯域制限や通信のブロック、オンラインサービスの検閲、特定コンテンツへのアクセスの割増課金などができるようになる。彼らは、ネット上のコンテンツに対して、強権を揮えるようになる。

運動を支援するY Combinatorの社長Sam Altmanは、抗議活動に参加する理由として、ケーブルやワイヤレスの企業が市場の勝者と敗者を恣意的に決めるという、“途方もなく強大な権力を”持ってしまいかねないからだ、と述べている

FCCの規則改正案を詳しく知りたい人は、この記事をご覧いただきたい。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

iOS 11では、UberやWazeのようなアプリが位置情報を常時収集できなくなる

Appleは今週のWWDCで、iOS 11の発表に重点を置き、ファイル管理、iMessage、QRコードのスキャンなど様々な機能を紹介した。しかし明示的に発表されなかった新機能もいくつかある。その一つは多くのユーザーに歓迎されると思われるもので、アプリによる位置情報データの利用をユーザーが制限できるようにセキュリティー設定が改訂される。

UberやWazeなどのアプリは、ユーザーに対してアプリが動作していない時でも端末の位置情報のフルアクセスを強要して批判を浴びている。昨年本誌が報じたように、これはアプリが密かにユーザーの個人情報を収集する可能性があることを意味している。しかしUberなどは問題提起に耳を貸さなかった

iOS 11の新しい設定機能が提供されれば、その心配もなくなるはずだ。「このAppの使用中のみ許可」の設定を全アプリで選択できるようになる ―― デベロッパーのJoe DuvallやTwitterユーザーの@tfoil2@chengyinliuら、鋭い観察力の持ち主が見つけた。従来この設定項目 ―― 名前の通りに機能する ―― はデベロッパーのオプションであり、多くの著名なアプリが提供していなかった。

Uberの例が下にあるが、これはユーザーのプライバシー保護に大きく貢献するに違いない。ユーザーによっては端末のバッテリー寿命を延ばす効果もあるかもしれない。

[iOS 11では、位置情報利用の「このアプリを使用中のみ」が全アプリに付いた! よくやった。]

現在iOS 11はデベロッパーにのみ提供されているので、この変更の与える影響は限られているが、9月にiOS 11が一般公開されれば、位置情報の利用を細かく制御できるこの新しい項目を、多くのiPhoneユーザーが利用できるようになる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

95%のVCが目標未達――投資エコシステムの現在とこれから

【編集部注】執筆者のTomer Deanはテルアビブを拠点に活動する連続起業家で、Bllushの共同ファウンダー兼CEO。

最近、イスラエルの有名ベンチャー投資家と話す機会があった。最初はシード資金の調達を考えている私のスタートアップについて話していたが、そのうちベンチャーキャピタル(VC)についてのマクロな話や、いかにVCという仕組みが機能していないかということに話題が移っていった。

「95%のVCが儲かっていない」と彼は言い放ち、しばらく経ってからようやく、私はこの言葉の意味を理解した。

正確に言うと、95%のVCは、彼らにとっての投資家(リミテッドパートナー=LP)が負うリスクや手数料、非流動性に見合ったリターンをあげられていないのだ。

いったい誰が儲けているのか?

3倍のリターン(1億ドルのファンドであれば3億ドルのリターン)を生み出すVCファンドであれば、「ベンチャー投資のリターン」をあげている妥当な投資対象として認められる。下の円グラフは、どのくらいの割合のVCがこの基準に達しているかを示している。実際はグラフが示す通り、緑でハイライトされたほんのわずかな数のVCしか基準を満たせていないのだ。残りの95%は収支がとんとん、もしくは赤字を出している(インフレを考慮に入れるのもお忘れなく)。

出典: Money Talks, Gil Ben-Artzy

この事実はなかなか受け入れがたいが、実際に数字を確認してみると納得がいく。本記事では、ほかの業界にいる人からは理想化されがちなVCの世界で起きている、この理解しがたい現象を解き明かしていきたい。それでは、早速はじめよう。

前提条件

まずは、成功と失敗の定義と前提条件を確認してみよう。

成功=年率12%のリターン

VCの資金源であるLPは、銀行や政府系機関、年金ファンドをはじめとする従来の投資家であることが多い。彼らからすると、株式や不動産のように手数料が安く、流動性があって、年率7〜8%のリターンが”安全に”得られる他のオプションへの投資に比べ、5000万ドルをスタートアップファンドに投じるというのは”リスキー”に映る。リターンが12%であればリスクをとる価値も生まれてくるが、それ以下だと彼らはリスクに見合った投資だとは考えなくなる。

つまり…

運用期間が10年のファンドであれば、出資額の3倍のリターンが必要

VCには年率12%のリターンが必要というのは既に示した通りだ。そして、ほとんどのファンドに関し、積極的に投資を行うのは3〜5年間だが、運用期間は10年に設定されている。調査を見るかぎり、最近は12〜14年程度の運用期間が一般的なようだが、VCにチャンスをあげるためにも今回は10年のままにしておこう。年12%のリターンは、複利の力によってどんどん大きくなる。計算式は以下の通りだ。

パレートの法則も忘れないでほしい。リターンの80%は、全体の20%にあたるスタートアップから生まれる。

現実問題として、スタートアップの経営は難しく、損益分岐点に到達するのさえ大変なことだ。利益を生み出すのも難しいし、毎年利益を伸ばしていくとなるともっと大変だ。10社のスタートアップがあったとしても、後述の通り大成長してエグジットを果たし、VCにリターンをもたらすのは、そのうちたった1、2社だ(残りのスタートアップの中からも少額でエグジットを果たす企業が出るかもしれないが、全体のリターンに対する影響はあまりない)。

それでは計算に入っていこう

10社のスタートアップと運用期間10年で資金を3倍にしなければならないファンドを思い浮かべてみてほしい。ファンドの規模は1億ドルで、それぞれのスタートアップに合計1000万ドルずつ投資しながら、最終的には3億ドルのリターンを狙っているとする。さらに、VCはシリーズAから投資に加わりシリーズBにも参加したため、各企業の株式の25%を非参加型優先株で保有しているとしよう。

以下では、10社あるスタートアップの10年後の姿を変化させながら、それぞれの違いを見ていきたい。

全てのスタートアップが「そこそこ」うまくいって5000万ドルでエグジットした場合

緑色の棒がエグジットの規模、紫色の棒がVCの持つ25%分の株を売却したときの金額を表している。

10社全てが5000万ドルでエグジットした場合、VCのリターンは1社あたり1250万ドルで、総額は10×1250万ドル=1億2500万ドルとなる。目標は3億ドルだったのでこれでは足りない。もっとうまくいった場合を考えてみよう。

半分はそのままで、もう半分のエグジット額が上昇した場合

次の例では、5社が5000万ドルでエグジット(1社あたりのリターンは1250万ドル)し、残りの5社は1億ドルでエグジットを果たしたとしよう。ファウンダーたちは一夜にして百万長者になり、彼らの写真は新聞にも掲載されるだろう。しかしVCの状況は違う。この場合のリターンは、(5×1250万ドル)+(5×2500万ドル)=1億8750万ドルとなり、まだ3億ドルには届きそうもない。

おおかたは「平均的」な成績で、1社だけ大成功した場合

先程の例とほぼ同じ状況で、1社だけがスター企業になった場合を考えてみよう。上の例では1億ドルで売却されたこのスタートアップが、今回は5億ドルでエグジットしたとする。5社のエグジット額は依然として5000万ドルで、4社が1億ドル、最後の1社が5億ドルだ。するとVCのリターンは、(5×1250万ドル)+(4×2500万ドル)+(1×1億2500万ドル)=2億8750万ドルになる。もう少しで目標達成だ!

もう次は何がくるかおわかりだろう。ユニコーン企業の登場だ!

十分な利益をあげるには、爆発的な成長を遂げた企業が1社必要になる。10社のうち9社が5000万ドル、1社が10億ドルで売れればいい感じだ。(9×1250万ドル)+(1×2億5000万ドル)=3億6250万ドルでついに目標達成! これでみんながハッピーになれる。

しかし、このシナリオは本当に起こり得るのだろうか? 本当に10社全てが無事エグジットできるのか? 100%のエグジット率はさすがにありえないだろう。もっと現実的なシナリオは、10社中5社が完全な失敗に終わり、3社が小〜中規模のエグジットを果たし(上記の通り全体的なリターンへの影響は軽微)、1社か2社がユニコーン企業として10億ドル以上の規模でエグジットするくらいだろう。

現実的なケース

5社が潰れ、3社が2500万ドル、1社が2億ドル、そしてスーパースター的な存在の1社が10億ドルでエグジットしたとする。

そうするとリターンは、(5×0ドル)+(3×600万ドル)+(1×5000万ドル)+(1×2億5000万ドル)=3億1800万ドルとなる。

試行錯誤の結果、ようやく現実的なシナリオで目標を達成できた。しかし、各ファンドのポートフォリオに、少なくとも1社のユニコーン企業が含まれているという前提は妥当なのだろうか? 恐らく現実は異なるだろう。どうやらほとんどのVCの状況は、私たちが議論してきた「現実的なケース」よりも悪く、上位5%(4分の1にも達しない!)というほんの一握りの優れたVCだけが上記のような状況にあるようだ。さらに、もしもファンドの規模が時折見かけるような10億ドルといったスケールだとすると、さらに数字は悪化し、3倍のリターンを達成できる確率も低くなる。

では、どのVCもうまくやっているように見えるのは何故なのか?

「うまくやっている」の定義にもよるが、3倍のリターンを実現できないでいる残りの95%は、投資活動ではなく手数料で全てを賄っているのだ。ほとんどのVCは、投資家から受け取る手数料(ファンド額の2%)を主要な収入源としており、それだけで十分やっていける(1億ドル規模のファンドであれば、年間手数料は200万ドルになる)。

つまり、もしも投資成績が芳しくなくても(ほとんどの場合そうなのだが)、彼らの収入は手数料によって保証されているということだ。もし手数料だけでは十分じゃないとしても、投資先の企業が1社でもエグジットを果たせば、彼らには利益の20%がボーナスとして入ってくる。うまくいったときは全員がハッピーだが、うまくいかなくてもVCには最低ラインが保証されているのだ。起業家の私にもそんな保証があればいいのだが。

まだ望みはある

ファンドとして許容範囲のリターンを得るためには、次なるUber、Facebook、Airbnbを見つける以外に方法がないという事実を、私はまだ受け入れられないでいる。もしもこれが現実なのであれば、ユニコーンになれそうなスタートアップ以外には、VCが投資しなくなってしまう。5億ドル以下の水準でのエグジットを求めている「普通の」企業が入り込む余地はないということだ。少なくともVCにとっては。

数字だけを見ると、無謀なゴールを掲げているファウンダーしか成功をおさめられないような気がしてくる。VCも自分たちの生き残りに必死で、なんとか次のファンドに繋げようとしていることを考えるとなおさらだ。泣き目を見るだけのLPのことは、もはや触れるまでもない。彼らこそが、手数料を払って自分のお金をリスクに晒し、10年後(実際に現金化するには15年かかるが)の運用終了時に気が落ち込むようなリターンを受け取ることになる人たちなのだ。

これ以外に何か方法はないのだろうか? 前提について考え直してみれば、何かわかるかもしれない。前提は以下のように考え直すことができるし、むしろそうあるべきなのだ。

    • なぜ運用期間は10年なのか。6年ではダメなのか? 運用期間を10年から6年に短縮すれば、求められるリターンも3倍よりは現実的な2倍に下がる。VCも目標額が3億ドルから2億ドルに下がることで、プレッシャーがかなり軽減されるだろう。以前よりも短い期間でどうやっていけばいいのだろうか? シリーズA企業を10社探しだすのに1〜2年、投資先の成長に4〜5年にかけ、投資直後から常にM&Aを勧めるようにしてはどうだろうか。しかし、VCは投資先のエグジットを完全にコントロールできるわけではなく、(UberやAirbnbのように)ファウンダーが主導権を握っているため、この方法で現金化が早まるというのは考えづらい。
    • 従来の投資家のことは忘れて、”クラウド”に移行する。きっと、12%ものリターンを約束しなくても資金を調達できるはずだ。何百社ものスタートアップに分散投資して、年率8%のリターンを安定的に出している10億ドル超の規模のファンドがあったとしたら、興味を持つ投資家はいないのだろうか? 目標年率が12%から8%に下がれば、求められるリターンも3分の1減る。さらに、寛容な投資関連法(Jobs Act)によって、今後さらにP2Pネットワークやクラウドファンディングの仕組みを利用する投資家が増えてくるだろう。これが8%の年率と合わされば、投資家の顔ぶれにもきっと違いが出てくるはずだ。この程度のリターンであれば、株を購入して保管するだけでいいと言う人もいるかもしれない。しかし、普通の株式投資では、ベンチャー投資独特の「ディスラプションによる興奮」の瞬間を味わえないのだ。
    • もっと多くのスタートアップに少額投資する。今日の前提として、VCは全ラウンドを合計して20〜25%の株式と引き換えにスタートアップに投資するのだが、もちろんVCにはそれだけの資金力がある。そしてエグジットのことを考え、彼らは1社1社に大きく賭けるのだ。そこで、例えばシード投資の数を増やして、10社それぞれに1000万ドルずつ投資するのではなく、50社に100万ドルずつ投資してはどうだろうか。そして、その3分の1にシリーズAで300万ドルずつ投資し、約1億ドルの投資に対して各スタートアップの株式の10%を受け取るとする。シリーズAをクローズした企業の半分が1億ドルでエグジットすれば、VCのリターンは1億2000万ドル(8社x1億ドルx0.15%=1億2000万ドル)となるという計算だ。
    • 方向性を合わせる。VCとLPの利害関係は一致していない。現状のスタンダードだと、VCは「2%+20%」の原則に沿って報酬を受け取っている。つまりVCの収益は、ファンドの規模の2%に設定されている手数料(給与のようなもの)と、エグジット額の20%のボーナスから成り立っているのだ。そのため、VCが十分なリターンを生み出すのに”失敗”したとしても、彼らの給与は保証されている。その一方で、LPはVCが素晴らしい成績を残さないと(稀にしか起きないが)リターンを得られない。結果として、両者の方向性にズレが生じてきてしまうのだ。古くさい「2%+20%」ルールから脱却し、もっとVCとLPが一丸となれるような報酬体系を築いていかなければならない。VCにも自分たちの食い扶持を稼がせなければいけないということだ。
    • VCをもっと厳しく選ぶ。VCにとっては耳の痛い話かもしれないが、巷にいるVCの多くは廃業するべきだ。パフォーマンスの低いファンドには、追加資金が集まらないようにしなければならない。今の状態だと、その負担がLPにかかってしまっている。LPもLPで、単にリターン率(IRR)をチェックするだけでなく、パブリック・マーケット・エクイバレント(PME)から、各ファンドと市場全体のパフォーマンスを比較しなければいけない。例えば、あるファンドの2014年のIRRが13%だったとして、同じ年の市場全体のリターンが14%だったとすると、そのファンドは高パフォーマンスだったと言えるのか? もちろん言えない。LPはもっと頭を使って実際のリターンをチェックしながら、先が見込めないファンドに何度も追加投資するようなことがあってはならない。

以上をまとめると、ベンチャーキャピタルとは大変なビジネスだということだ。LPはベンチャー投資のリスクや手数料、流動性の低さに見合うだけのリターンを得られないでいる。また、起業家は高評価額でエグジットを果たすために、自分の会社をスケールさせるのに苦しんでいる。経験の浅いファウンダーが、事業をゼロから立ち上げ、10億ドル規模まで成長させるための方法を知っているわけがない。だからこそ、企業が成長する過程ではさまざまな変化があるのだろう。そしてVCも約束したリターンを生み出すのに苦戦しており、実際には一握りのVCしか投資家の期待に応えられていない。

しかし、VCだけがある種の保証で守られている。運用成績がパッとしなくても、彼らの給与は手数料でカバーされるのだ。さらにフィードバックサイクルが長いため、ネガティブな情報が業界全体に広がる前に、もう何個かファンドを組成できて(VCが収入源を獲得できて)しまう。

その一方で、LPと起業家にはセーフティネットが準備されていない。私たちの生死は投資のリターンにかかっている。つまり、VCではなくLPと起業家こそがリスクを背負っている主体なのだ。

参考情報:

以下の皆さまに感謝致します。

この記事を書き上げるにあたり、とてもためになるアドバイスやフィードバックをくれたGil Ben-Artzy。記事の校正をしてくれたDiane Mulcahy(Kauffman Foundationのプライベート・エクイティ部門ディレクター)。VC業界の基礎を網羅したZell Entrepreneurship Programで、何時間にもおよぶ授業を通じてVCについて教えてくださったLiat AaronsonとAyal Shenhav博士。そして、記事を形にするのを手伝ってくれたTechCrunchのJonathan Shieber。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

LGBTQコミュニティ向けのAirbnb、Misterb&bが850万ドルを調達

ターゲットを絞った小規模な企業が、Airbnbの競合として生き残っていくだけの余地はまだ残っているのだろうか? この問いにイエスと答えようとしているのが、フランス発のスタートアップMisterb&bだ。この度、Project AVentechから850万ドルを調達した同社は、LGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クィア)ユーザーに特化した民泊プラットフォームを運営している。

名前からもわかる通り、もともとMisterb&bは男性の同性愛者向けサービスとして始まったのだが、今ではLGBTQコミュニティ全体を包括するようなプラットフォームに変わろうとしている。Airbnbも、いわゆるゲイ・タウン(同性愛者が集まる地域)の物件をたくさん扱っているが、ホストの素性についてユーザーは事前に判断することができない。

Misterb&bファウンダーのMatthieu Jostは、パートナーとの旅行時にホスト絡みで苦い経験をしたこともあり、この状況に警鐘を鳴らしている。さらに、同性愛が禁じられている国への旅行となると、リスクは一層高まってくる。

しかし、Misterb&bを利用する人たちは、全員がこの状況を理解しているので、わざわざホストに嘘をつく必要もない。また、現地で直接情報収集するタイプの人であれば、地元に住むホストにオススメ情報を尋ねるのが1番だろう。

現在彼らは135か国でサービスを展開しており、ホストの数は10万人にのぼる。ウェブサイトの見た目や雰囲気はかなりAirbnbに近いので、ユーザーが利用時に戸惑うこともない。

ここで、冒頭の問いについてもう一度考えてみたい。まず、Airbnbはこれまでに幅広い層をターゲットにした全方位型のサービスへと成長した。今となっては、彼らは潰れるには大きすぎるほどのサイズにまで成長し、別の企業がAirbnbを丸々代替するようなことは恐らくないだろう。しかし、Airbnbが力を入れていない分野やターゲットが存在するというのも事実で、新興企業にもまだ勝機が残されている。

だからこそ、Onefinestayは超ハイエンド版のAirbnbとして成功をおさめ、後にAccorHotelsに1億7000万ドルで買収されたのだ。Misterb&bも、ターゲットを絞りながら業界を先導する企業の類似サービスを提供しているスタートアップの良い例だ。

以上より、民泊市場には複数の企業がやっていけるだけの余地が残されていると個人的には考えている。市場が細分化しすぎない限りは、選択肢が増えるという意味で消費者には喜ばしいことだろう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

アーティスト向け収益管理プラットフォームのStem――運営元が800万ドルを調達

音楽配信サービスが一般に広がり、SpotifyやYouTube、Apple Musicなど、楽曲の流通チャンネルも増えてきたが、アーティストへの支払いプロセスにはまだ問題が残っている。

同じ曲に複数人のアーティストが関わっていると状況はさらに複雑化し、それぞれのプラットフォームでの収益から、誰にいくら支払うべきなのかというのがわかりづらくなってしまう。さらにアーティストは収入が予測しづらいという問題を抱えており、Milana RabkinをはじめとするStemの共同ファウンダーはそこに商機を見出した。そして同社は、アーティスト向け収益管理プラットフォームの更なる改善を目指し、この度Evolution MediaとAspect Venturesが中心となったラウンドで800万ドルを調達した。今回のラウンドには、他にも複数の戦略的投資家と既存株主のUpfront Venturesが参加していた。

Stemでは、各音楽配信サービスからの収益がエスクロー口座のようなものに一旦集められるようになっている。その後、事前に決められた割合に応じて、それぞれのアーティストに収益が分配される。Rabkinによれば、ある楽曲の制作に関わった全てのアーティストや共同制作者は、予めそれぞれが受け取る収益の割合に合意しなければならない。その後楽曲がアップロードされ、代表となるアーティストがそれぞれの分け前をプラットフォーム上で設定すると、従来のプロセスよりもかなり速く支払いが行われる。作品の公開後、だいたい30〜60日程度で収益データを確認できるようになるとRabkinは話す。

「これまでに誕生したフィンテック関連のツールは、小規模事業者のビジネスを支えるようなものばかりでした」とRabkinは語る。「アーティストやクリエイターも彼らと何ら変わりないはずなのですが、クリエイティブな人たちのニーズに合ったツールはこれまで存在しませんでした。IntuitはMintで小規模事業者の手助けをしていますが、収入が不安定で収益源の追跡が難しいアーティストの状況は彼らとは違うのです。Mintのアカウントに銀行口座を紐付けるだけであれば簡単なことですが、iTunesやYouTube、Spotifyといったサービスとの連携となると話は別です」

Stemが取り組もうとしている別の問題が、発表したコンテンツから収益をあげられない可能性のある共同制作者への支払いの徹底だ。業界経験の少ない人たちをはじめに、アーティストの中には純粋に販促やマーケティングの目的でコンテンツを公開する人たちもいるのだ。彼らがツアー資金を貯めるので手一杯にならなくてもいいように、Stemは新人アーティストも最初から収益を得られるような仕組みを構築しようとしているのだとRabkinは言う。

それぞれのプラットフォームからStemが収集するデータ自体に価値を見出す人もいるかもしれない。アーティストであれば、当該データからファンの情報を調べ、ターゲットの好みにあった楽曲制作に取り組むことができる。ツアーの計画や他のマーケティング施策に役立つ情報が得られる可能性もある。しかし、ここに収益関連の情報が加わることで、これまでよりもハッキリとファンのエンゲージメント度合いを掴めるようになるだろう。

「サプライチェーンと深く関係しているロイヤルティーの問題は、音楽業界の中でもなかなか解決の目処が立っていませんでした」とRabkinは話す。「しかし、新たなフレームワークや関係データベース内のデータを正規化するための素晴らしいツールが最近誕生しました。そのおかげで、昔は不可能だった方法で支払いに関する情報を簡単に追跡できるようになったのです」

また、Stemはアーティストへの支払いを管理するためにデータやお金を一か所に集めているだけなので、音楽配信サービスとは競合しないと彼女は言う。今のところは同社がこの収集プロセスを担当しているが、今回調達した資金を使って、Stemは既存のツールを音楽配信サービスの運営企業が使えるような形に変えていこうとしている。

そうは言っても、この業界でも今後競争の激化が予想されている。Kobaltも先月、7億7500万ドルの評価額で7500万ドルを調達したばかりだ。さらに、iTunesやSpotifyといったサービスが将来的にアーティスト向けのツールを簡略化することで、Stemのようなサービスがなくても各アーティストにきちんと支払いが行われるようになるかもしれない。しかし、シームレスなツールを構築することで、Frank OceanやChildish Gambino、DJ Jazzy Jeff、Anna Wise、Chromatics、Poolsideなど、さまざまなアーティストを顧客に迎えられることをRabkinは祈っている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

オンライン学習のCourseraが評価額8億ドル、6400万ドル調達――元イェール学長のCEOに聞く

伝統的なスタイルの高等教育のコストが上がる一方、コンピューティングのコストは下がり続けている。そこでオンライン教育サービスはますます繁栄することになる。このトレンドを象徴するように、分野のリーダー、Courseraが今日(米国時間6/7)、シリーズDのラウンドで6400万ドルの資金を調達することに成功したと発表した。

私はCouseraのCEO、Rick Levinにインタビューすることができた。 Levinは2014年に同社に加わる前はイェール大学の学長を務めており、経済学者としても著名だ。Levinによれば、今回調達した資金はCourseraのビジネスを3つの分野で拡大するために用いられるという。

一つは学習のパーソナル化、効率化を図るために人工知能などの新しいテクロジーを開発すること、二つ目は正規の学位を授与できるような長期にわたる学習体系を確立すること(現在は主として比較的短いコースや単発のコース)、3つ目は企業としてだけでなくNPOとしても新しい分野を開発し、多様な学習ニーズに応えていくことだという。

Levinはインタビューで「Courseraは今回のラウンドにおける会社評価額を公表していないと」と述べたが、私は別途事情に通じた筋から会社評価額は8億ドル前後だったという情報を得ている。前回のラウンドでの評価額は5億ドルだったから大幅なアップだ。

オンライン教育マーケットの熱気を示すもう一つの兆候は資金調達の規模そのものだ。私は数日前から情報を得てこの記事を準備していたが、昨夜遅くなってから「Courseraはラウンドの締め切り直前に新しい投資家を追加した」という至急のメモ受け取った。

全投資家のリストは印象的だ。おなじみのKleiner Perkins Caufield Byers (KPCB)に加えてGSV Asset Management、New Enterprise Associates (NEA)、 Learn Capitalが既存投資家で、これにThe Lampert Foundation (医療、教育、チャリティー分野で著名)が新規に加わった。今回のラウンドを含めるとCourseraは2億1000万ドル以上を調達したことになる。

Courseraの創立は2012年〔共同ファウンダーはAndrew NgとDaphne Koller〕。さまざまな分野を通じて世界の登録ユーザーは合計2600万人だ。提供される学習コースは180分野で2000種類、ビジネス、コンピューティング、イノベーション、会計の分野で修士号を授与している。エンタープライズ向け、NPO向けコースもあり、150の大学と提携している。

2600万のユーザーの大半は短期コースの受講者だが、Levinは長期コースも急速に拡大されており、将来はCourseraの主要事業の一つになると期待していると述べた。現在、BCG、BNY Mellon、L’Oreal、PayPal、Air France、KLMなど50社程度がCourseraに学習コースを提供している。また公務員やNPO職員などの学習者はアメリカを始めとして、パキスタン、エジプト、マレーシア、シンガポールから参加している。【略】

一部では伝統的教育は窓から投げ捨てるべきだと主張されているが、もちろん伝統的教育には価値も将来もあると信じる人々も多い。オンライン教育の価値についてはこれまで激しい議論交わされてきた(たとえばこちら)。もちろんオンライン教育プログラムのすべてが成功だったわけではない。

私の見るところ、もっとも興味ありまた持続可能なビジネスになる可能性が高いのは既存の大学に取って代わろうとするのではなく、補完しようとするサービスだ。こうしたサービスは費用、時間その他の制約により既存の教育機関で学ぶことが困難な人々に新たな学習のチャンスを提供するものだ。

若い層を対象としたオンライン学習サービスとしては最近11億ドルの会社評価額を得た中国のYuanfudao〔猿輔導〕や同じく中国のサービスで、昨年突然登場して1億ドルを調達したVIPKid、 またアメリカで昨年10億ドルの評価額を得たAge of Learningなどが興味あるスタートアップだろう。

LevinによればCourseraは「何もかもいちどき革新するようなディスラプティブな存在とは考えていない」という。「われわれのMBAコース受講者の平均年齢は37歳で、大半は既婚者で子供がおり定職に就いている。これからイリノイ大学のような名門校に入学しようとしている若者ではない<」ということだ。しかしCourseraの歴史はまだ浅い。先ごろ最初の修士号取得者を出したばかりだ。Courseraのディスラプティブな面が今後どのように発揮されていくか注目だ。

画像: starmanseries/Flickr UNDER A CC BY 2.0 LICENSE

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ネット上で初めて性の健康コンサルを提供するBiem、45ドルと高いが有資格の専門家が対応、検査も受けられる

性の健康、という話題は、あまり人気がない。性やデートにテクノロジーが大々的に関わっている今日ですら、ネット上に性の健康に関する情報は乏しい。そこを突いたのが、Biemだ。

Biemのアプリとサービスを使って、性に関する保健医療の専門家と気軽に話をしたり、検査を受けたりできる。またユーザーはこのアプリとサービスに対しては匿名のまま、コンサルの結果や試験結果で異状が明らかになったら、そのことを性的パートナーに通知できる。

協同ファウンダーのBryan Stacyは、STD(性行為感染症)の検査には恐怖や不安が伴うことを感じ、それを緩和するためにBiemを創った。

“性の健康について教育されていないから、みんな怖がるんだ”、と彼は言う。“でも恐怖に負けて知識や情報が不足したら、本人の命にかかわることもある。精巣癌やクラミジアも、知識がなければ重症になるまで放置される。アメリカでSTD患者が異様に多いのも、みんな恐怖に負けて、正しい知識を得ようとしないからだ。われわれの目標は、みんなが性の健康について平然淡々と会話できるようになること。恐怖に圧倒されたり、複雑な検査や医療にびびったりしないようになることだ”。

このサービスはすでにニューヨークでは臨床段階であり、国の規制をクリアすれば全国展開できる。今同社は、シリーズAの資金調達中だ。

とてもシンプルなシステムで、アプリ経由で性の健康に関する有資格の専門家と話をすると45ドル、オプションとして検査も受けられる。

“検査は自宅または、うちのパートナーの検査部門で受けられる”、とStacyは語る。“診断はすべて、FDAとCLEAの規格に準拠している。伝承等による自己検査や、商品化されている検査キットは、FDAの規準に合わないし、正確でもない。しかも、専門家の判断がないので、今後の処置について正しい指針が得られない”。

同社は、デートアプリとパートナーして、性の健康やその診断についてコミュニケーションと理解を広めたい、と考えている。性を楽しむにしても、そこに恐怖や不安や混乱がないようにしたいものだ。

〔参考:性の健康、日本の関連機関

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

企業が大量のフリーランサーを効果的に管理できるプラットホームShortlistが$1.5Mを調達

フリーランサーの管理は、今でもほとんどの企業が、Excelのスプレッドシートを全社的に共有して行っている。Shortlistは、単一のプラットホーム上でフリーランサーやフリーの契約社員と彼らへの支払いを管理できるようにして、その仕事をもっと効率化したい、と願っている。2015年にMartin Konrad(CEO)とJoey Fraiser(COO)が創業した同社は今日(米国時間6/6)、150万ドルのシード資金を獲得したことを発表した。その投資家はImpulse VC, FundersClub, Alchemist Accelerators、そしてCiscoのイノベーション部門のVP Maciej Kranzなど数名のエンジェルたちだ。

ユーザーから見てShortlistの実体は、会社が自分のニーズに応じて作ったフリーランサーたちのリストだ〔例: 上図〕。Shortlistは大企業の顧客が多くて、彼らは多くの場合大量のフリーランサーとフリーの(独立系の)契約社員を常時抱えている。ただし同社は、中小企業の顧客も少なくはない。

Konradによると、契約社員の数は年々増加している(いわゆるギグ・エコノミー(gig economy)が社会問題になったりしている)。しかし、ほとんどの企業が、彼らを有効に管理するためのツールを持っていない。Shortlistは、フリーランサーの新規採用から、そのバックグラウンドチェック、担当プロジェクトの決定、仕事の割り振りなどの処理を自動化する。

同社の現在の顧客の中には、Publicis Groupe, CBRE, Hays, Roche, AKQA, Western Governors Universityといった有名どころもいる。Konradによると、現在多い業種はメディア、コンテンツ制作プロダクション、高等教育などだ。現在、毎月前月比で20から30%の増加率で顧客は増えている。同社のプラットホーム上で彼らが管理している契約社員の数は、25000人を超えている。

今回新たに得た資金は製品開発、中でもそのプラットホームの経費と給与の管理の部分の改良に充てたい、とKonradは語る。ただし請求書や報酬の支払いの管理、税務関係の書式、タイムシート(出退勤時間記録)、フリーランサーたちの仕事効率のチェック、などの機能は、今でもすでに揃っている。

現時点では、契約社員を募集して雇うのは個々の顧客企業の仕事だが、今後はShortlist自身がフリーランサーたちのマーケットプレースの機能を持った方が良さそうだ、とKonradは考えている。

同社は最近、B2B専門のアクセラレーターAlchemistを卒業した。そのおかげで、Shortlistが、将来顧客になりそうな多くの企業に紹介され、また投資家も見つけることができた。現在、同社の社員は15名で、これまで230万ドルの資金を調達している。

Shortlistの利用は、フリーランサー/独立系契約社員の数が1000名未満、社内のユーザー数が100未満なら無料だ。フリーランサー自身やベンダーのアクセスも、当然無料だ。有料のエンタープライズプロダクトになると、シングルサインオンや、カスタムブランドとそれらの統合化、そして支払いや税の書式(フォーム)などの機能が提供される。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Candeeがライブコマースに参入、インフルエンサーが商品を紹介する「Live Shop!」

 

動画ストリーミングの新しいかたちとして注目を集めるライブコマース(動画コマース)。中国の動画配信プラットフォームでは、すでに個人が自撮りの動画を配信し、視聴者からデジタルギフトを受け取ったり、商品を販売したりなんてことが進んでいるようだ。例えば淘宝(タオバオ)上では、1回の生放送で視聴者数が数千人、年間売上二桁億円、なんていうライブコマースの事例もあるようだ。そんな動画コマースの波が日本にもやってきた。モバイル向け動画の制作などをてがけるCandeeは6月7日、ライブコマースアプリ「Live Shop!」の正式提供を開始した。

Live Shop!は、「ライブ配信× コマース× インタラクティブ」をうたうライブコマースアプリ。「ゆうこす」こと菅本裕子さんをはじめとしたインフルエンサーやモデルが、それぞれ自身のチャンネルを開設。定期的にライブ配信を行う。ユーザーはライブ配信中にコメントやスタンプを送ってリアルタイムのコミュニケーションを行ったり、配信者が紹介するファッションアイテムなどをリアルタイムに購入したりできる。

Candeeは2015年の設立。LINEの動画配信アプリ「LINE LIVE」内の番組をはじめとして、これまで1300本以上(ライブ配信は500本以上)の動画の制作、配信を手がけてきた。2016年12月にはYJキャピタルやTBSイノベーションパートナーズ、gumiを引受先とした総額12億円の資金調達を実施。さらに2017年5月には、ライブ配信に特化した映像制作会社のアポロ・プロダクションを完全子会社化するなどしている。

「これまでのクライアントワークでは、圧倒的なスピードで動画制作のトライアンドエラーを繰り返すことで、コンテンツ制作のノウハウを内部で持つようになった。ネット全盛の時代でも、プロのコンテンツが勝つ。マーケットについてはソーシャルゲームも参考にした。1人でなく、誰かと楽しむという流れは、動画にもやってくる。ソーシャルなビデオプラットフォームを作っていく」——Candee代表取締役副社長COOの新井拓郎氏は新サービスについてこう語る。

前述の通り、同社はLINE LIVEの人気番組「さしめし」をはじめとして、数多くのライブ配信動画を制作してきた。キャスティングやコンテンツの制作力に加えて、ソーシャルな動画プラットフォーム運営、自社での商品在庫の管理まで、ワンストップで実現することが、同社の強みになると語る(ディー・エヌ・エーがノンプロモーションで展開する「ラッフィー」などもあるが、こちらはあくまで動画プラットフォームのみの提供となっている)。Live Shop!は2月頃に企画を立ち上げ、4月にはテストローンチ(App Storeでのアプリ公開)。そして今回の正式公開に至った。

Candee執行役員の椙原誠氏(左)とCandee代表取締役副社長COOの新井拓郎氏

Candee執行役員の椙原誠氏(左)とCandee代表取締役副社長COOの新井拓郎氏

ライブコマースはコミュニティに近い

番組を担当するのはCandeeがキャスティングしたインフルエンサーが中心。商品はいわゆる“プチプラ”、つまり低価格帯のファッションアイテムやメイクグッズが中心となる。プラットフォームの一般開放は予定しないが、今後はモデルやインフルエンサーのほか、アパレルブランドなどの参加を呼びかけていく。「映像活用したコンテンツはあるが、マネタイズできるプラットフォームは少ない。それができれば、プラットフォームに入ってくる人も増えてくる」(新井氏)

動画自体はアーカイブされるのでいつでも視聴できるが、商品購入に関してはライブ配信中に限定する。これは出演者とのインタラクティブなコミュニケーション、ライブの価値にこだわるためだという。出演者はインフルエンサーなどが中心。すでにそれなりの規模のファンがいることもあり、コミュニケーションの延長線上での購買が多いという。配信は長くて1時間程度。メイクのハウツーやファッションの紹介、料理に挑戦するなど、さまざまな企画を準備している。

「ユーザーからの質問にも出演者が回答するので、視聴者に納得感を持ってもらえる。番組の尺が30分から1時間ていどなので、衝動買いできるような単価の安い商品が売れている。通常のECであれば能動的に動かないと商品を購入できないが、ライブコマースだと、『憧れの○○さん(モデルやインフルエンサー)が紹介している』という、これまでとは違う切り口での販売ができる」(Candee執行役員の椙原誠氏)

僕もプレローンチ時の動画を見たのだが、出演者がファンの質問に回答しつつ商品を紹介し、「購入した」というコメントにお礼をする、というのがリアルタイムに行われるというのは、ファンにとっては嬉しいものになると感じた。新井氏は「コミュニティサービスに近い。ある種ファンになって、結果商品を買う、というもの。ライブの物販に近いかも知れない。ライブTシャツを買うのに素材はこだわらない。出てくる人の距離感で商品を購入している」と語る。

Candeeでは、今夏をめどに、月間60〜80点程度の商品の販売を目指す。すでにアンケート機能や抽選販売機能を導入しているが、今後はオークションやクイズといった機能も追加していく。また現在支払い手段はクレジットカードに限定されているが、Apple Payや後払いなど手段も拡大していく。さらにイベント企画、タレントマネジメントなどをてがけるアソビシステムとも提携。今後同社所属のタレントらも動画に出演する予定だ。

國光氏が語るソーシャルビデオプラットフォーム構想

6月7日、イベント「Infinity Ventures Summit 2017 Spring Kobe」内で、gumi代表取締役であり、Candee取締役会長の國光宏尚氏がこのLive Shop!についてプレゼンテーションを行っている。國光氏は新井氏、椙原氏同様に、「ソーシャルゲームが流行した理由はみんなでやって楽しいから。動画も一緒にみんなで見る方が楽しいはず」と説明した上で、(1)スマートフォンファースト、(2)ソーシャル、(3)インタラクティブ——という要素を持った動画による「ソーシャルビデオ革命」が起こると語った。Candeeではソーシャルビデオのプラットフォームを作り、今後さまざまなカテゴリの動画コンテンツを提供する計画だが、Live Shop!でチャレンジするEC領域はその第1弾という扱いだ。

また國光氏は2020年以降のメディアについて語った。2020年にはモバイル通信はより高速な5Gとなり、動画はより精細な4K・8Kとなっていく。だがテレビに関してはチューナーを変えない限り現状の4K・8Kの品質を得ることができない。スマホの方が明らかにテレビより画像が良くなる。いったん上(の品質)を見ると、ユーザーはもう戻れない——そんな背景もあって、2020年以降、「いよいよ通信が放送を飲み込む」(國光氏)とした。

gumi代表取締役であり、Candee取締役会長の國光宏尚氏

BragiのDash Proは、洗練されていてスマートなAirPods対抗製品

もしAirPodsがいいなとは思っているものの、Appleの白い筒型形状は人間工学的に自分の耳にうまく合わないと思っているのなら、良い別の選択肢が現れた。その価格に見合う価値はある筈だ。BragiのDash Proは、ヘッドセット専業会社による完全ワイヤレスイヤホンの最新版だ。そして同社が最初の2つのプロダクトから、多くのことを学んだことがわかるプロダクトとなっている。

Dash Proの価格は、米国内に於けるAirPod価格の2倍以上である329ドルだが、それは単なるワイヤレスイヤホン以上のものとしてデザインされている。スタンドアロンで使用するためのオンボードストレージ、彼らの言う所の4Dジェスチャーコントロールインターフェース(頭の動きでコントロールを行う)、そしてiTranslateのサポートなどが含まれる(iTranslateはiOSアプリをインストールしてプロサブスクリプションを行っていれば、話し言葉をイヤホンを通して翻訳してくれる)。

私はBragi Dash Proの最初の1組を数週間に亘って試用し、その結果とても感銘を受けた。Bragi HeadphoneのようにDash Proは基本がしっかりしている。ペアリングも、音質も、脱落防止も、そして安定した接続を維持するという点でも。そのような堅実なパフォーマンスに関しては、以前リリースされたDashでは、ほとんどのレビューアが不満を感じていた点である。よってBragiがそのことを改善したのはとても素晴らしいことだ。

しかし、それだけがDash Proの全てではない。ワイヤレスオーディオの自由を真に求めている人たちにとって私が本当にお勧めしたいのは、それ以外の機能だ。オンボードストレージとフィットネストラッキング機能は非常に上手く、しかも手間要らずに動作する。もしこの機能を有効にすれば、Bragiのオンボードセンサーを使用してユーザーの運動を自動的に検出してくれる。さらにiTranslateの機能は、少々面倒なところはあるものの(同時通訳ではなく、話したものを逐次通訳する)、旅行中に役立つ程度には効果的だ。

Bragi Dash Proの(頭の動きによる)モーションコントロールは一般ユーザにとってはそれほど魅力的ではないかもしれないが、もしユーザーの手が塞がっていていてタッチベースのコントロールを行えない場合には特に便利である。また、タッチセンシティブなコントロールがやりにくいアクティビティの最中や、雨の中を走る際や(これらは耐水性があり、水泳にも使用できる)、フードがイヤホンに当たり続けるので後述のオーディオ透過性をロックアウトする必要がある場合などに便利だ。

Dash Proは以前の商品のもう一つの弱点にも対処した。利用可能時間を5時間ほどに伸ばすことができたのだ。それは私の試用体験で実証できたもので、一日を通しての利用時間として十分なものだ。また、内蔵バッテリーを使って最大5回の追加充電の行えるケースも付属している。これも他のヘッドフォンたちには見られない大きな特典だ。旅行中にこれらを使用すると、劇的な違いが生じる。

最後に、Bragiのオーディオ透過性は、一度体験するとこれまでそれなしでやっていたことに驚くとても素晴らしい機能だ。基本的には外部の音をそのまま聞かせる機能で、最新版では自転車に乗っている際の風切り音などを魔法のように消し去る機能も追加されている。このことが意味するのは、ちょっとした用足しや、人と会話するときや、その他の場合に、イヤホンを外す必要がないということだ。つまりポケットの中でイヤホンをさぐり当てる必要がなくなる。

Bragiは、以前のDashに対する様々な批判を十分に受けた。しかし同社はそうした批判の大部分に応えて、素晴らしい結果を生み出した。Dash Proはワイヤレスイヤホンの偉大なプロダクトであり、将来が楽しみなコンピューティングプラットフォームの芽生えを感じさせるものだ。平均価格よりも高い値札を受け入れられるなら、これこそが私が今お勧めしたいワイヤレスイヤホンだ。

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(翻訳:Sako)

たった5円から資産運用――TORANOTECがおつり投資サービス「トラノコ」をローンチ

投資というと難しそうだし、そもそも元手を用意しなければならないという印象を持っている人が多いかもしれない。TORANOTECはわずか5円からでも投資を始められるサービスでそうした投資のイメージを払拭したい考えだ。TORANOTECは本日、おつりを資産運用に回すサービス「トラノコ」をローンチした。

トラノコを利用するにはまず投資口座を開設する。次におつりデータを取得するため、クレジットカード、電子マネー、銀行口座の情報を登録する。Zaim、マネフォワード、Moneytreeの家計簿アプリを利用しているなら、そうしたアプリからデータを連携させることも可能だ。

資産運用に回すおつりは、実際のおつりではなく、買い物の度に生じる「おつり相当額」を計算している。おつりの設定は100円、500円、1000円から選べる。おつりを100円と設定した場合、180円の買い物をした時のおつりは20円になる。500円に設定しているなら、おつりは320円だ。

おつりは月に1回合算し、引き落とし口座からその分の金額が資産運用に回る仕組みだ。トラノコで月に投資する金額の上限を設定したり、投資額を追加したりすることも可能だ。

おつりの相当額を計算して投資に回すという仕組みは、ウェルスナビが提供している資産運用アプリ「マメタス」とほぼ一緒だ。ただ、トラノコでのおつりの運用先はロボアドバイザーではなく、ファンドという点で異なる。

TORANOTECの100%子会社であるTORANOTEC投信投資顧問は3つのファンドを運用していて、ユーザーはその3つのファンドからおつりの運用先を選ぶ仕組みだ。ファンドは安定重視、バランス重視、リターン重視の3種類ある。

TORANOTECの取締役シニア・マネージング・ディレクターを務める藤井亮助氏は、ロボアドバイザーではなく、人が運用するファンドを用いている理由について、もともとTORANOTECのチームメンバーは金融機関での経験が豊富にあり、人の方が経済環境が新しい局面に差し掛かった時でも対応しやすいこともあるためと説明する。

最低投資額が5円からであることと料金体系もトラノコの特徴と藤井氏は言う。通常、ファンドは1口単位で購入する仕組みだが、トラノコのファンドは1口1円に設定しているため、少額での投資が可能なのだそうだ。

トラノコの利用料金は3ヶ月の無料期間の後、月額利用料300円と運用報酬年0.3%がかかる。「月額利用料が固定のため、資産が大きくなっても変わらず、長くつづけるほど利用者にとってお得になる」と藤井氏は説明する。

トラノコは分かりやすい料金体系を採用することで、ユーザーにとってコツコツ続けやすいサービスを目指しているという。

TORANOTECは2016年8月に創業し、2016年12月にはニッセイ・キャピタル、セブン銀行、リアルワールドから出資受けたことを発表している。金額は公開されていない。

現在トラノコはウェブ版でのみ提供しているが、今後アプリの開発も視野に入れているという。

Twitterなどの動画をAIで収集・配信するSpecteeがAP通信社と提携、世界へ動画配信を開始

事件や事故、災害など、SNSに投稿された動画や画像を、報道機関がニュースなどで取り上げることが増えている。その影には、TwitterやFacebookなどの動画・画像をAIを使って自動収集し、権利処理も行った上で、報道機関向けにいち早く配信するサービスがある。日本ではデータセクションJX通信社、そしてSpecteeがこうしたサービスを提供している。

そのSpecteeが6月7日、世界規模のニュース配信ネットワーク、AP通信社と動画配信に関して事業提携したと発表した。APが展開する映像配信サービス「AP Video Hub」を通じて、世界のテレビ局や新聞社などの報道機関に、Specteeが収集した映像を提供していくという。APへの映像提供では、国内唯一のコンテンツ・プロバイダーとしての契約になる。

Specteeは、SNSなどに投稿される情報をリアルタイムに収集し、配信するサービス「Spectee」(旧サービス名・Newsdeck)を、現在約100社の報道機関向けに提供。今回のAPとの提携により、権利処理を行った動画を、国内の提携先報道機関だけでなく、世界の報道機関向けに提供可能となる。

Specteeではこれまでにも、日・英・スペイン語など複数言語で、世界中の投稿者との交渉や権利処理、事実確認を行ってきたノウハウがあるとのことで、配信動画は国内のものだけでなく、海外の動画も対象。「世界の報道機関に、安全に迅速にUGC(User Generated Contents・一般ユーザーによるコンテンツ)動画を届けていく」とリリースでコメントしている。

また今後、Spectee独自のネットワークで収集し、自社制作した動画もあわせて配信を予定しているそうだ。

中小企業のメールによるターゲット・マーケティングを助けるAutopilotが$12Mを調達

これまでのお客さんからもっと稼げるのに、なんで新しいお客さんを追うの?、とAutopilotはあなたに問う。同社は企業の、既存の顧客へのマーケティングを助ける。

同社はこのほど、Blackbird VenturesやSalesforce Venturesなどから成る投資団から、1200万ドルを調達した。そのほかの投資家として、Rembrandt Venture PartnersやSouthern Cross Venture Partnersも投資に参加した。同社の調達総額は、これで3200万ドルになる

CEOのMike Sharkeyはこう語る: “中小企業のお役に立ちたい。こんなターゲティング技術は、これまで費用が高すぎて中小企業は手が出なかったからね”。

しかしユーザーは、中小企業ばかりではない。およそ2300の顧客の中には、最近契約したMicrosoftやAtlassian、Lyftなどもいる。なお、同社の料金は年会費制だ。

Autopilotは、選んだターゲットに新製品やディスカウントを案内するメールを送る。その基本方針は、送るメールをなるべく少なくすることだ。Sharkeyはこう言う、“信号の強いメッセージを少なめに送ることが、集客のコツだ”。送るべき相手とタイミングは、同社のアルゴリズムが決めている。

熱心なユーザーを対象とするウェビナーやイベントも開催している。またInsightsと名付けたサービスで、顧客のマーケティング目標の追跡〜達成管理を提供している。

Rembrandt VenturesのゼネラルパートナーScott Irwinが、Autopilotに投資した理由を語る: “マーケティングにデータをどう生かすか、という大きな問題に挑戦しているからね。そして中小企業の市場は、なんといっても数が多い”。

ファウンダーはすでにスタートアップ経営の経験者で、Sharkeyはオーストラリア出身だが、スタートアップを創業してそれをHomeAwayに売ったこともある。オーストラリアのテクノロジーコミュニティと縁は深いが、兄弟たちと一緒にサンフランシスコに移ったのは、Autopilotにとって良い市場を選びたかったからだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

VRチャットサービスの「cluster.」が優勝——IVSのピッチコンテストLaunch Pad

6月5日〜7日にかけて兵庫県で開催中の招待制イベント「Infinity Ventures Summit 2017 Spring Kobe」。7日の朝には同イベントで恒例となっているピッチコンテスト「Launch Pad」が開催された。1社6分間のプレゼンテーションに審査を通過した14社のスタートアップが挑戦した。1位となったのはVRチャットサービスの「cluster.」だった。2位はネイルプリントサービスの「INAIL」、3位のWiFi接続サービス「タウンWiFi」、4位ビザ申請サービス「one visa」、5位飲み会マッチングサービス「LION Project」だった。登壇企業のサービスは以下の通り。

Popshoot:「よろペイ

お金の立て替えや貸し借りについての「メモ」を記録していく機能を軸にした個人間決済アプリ。ユニークなURLを発行し、貸し借りの相手がそのURLにアクセスすることでクレジットカード決済ができる。今後は店舗での支払い機能などを導入したり、独自のローンを提供することも検討する。詳細はこちら

タウンWiFi:「タウンWiFi

公衆WiFiの接続サービス。事前にWiFiサービスを選択すれば、接続可能なエリアに入るだけで自動的に対象のWiFiに接続できる。世界6カ国・200万スポットをカバーしており、累計200万ダウンロード、100万MAU(月間アクセスユーザー)。8月にはアジア、10月にはヨーロッパに展開する。今後は有料WiFiのアクセス権利販売、接続情報に合わせたプッシュ広告サービスでマネタイズを進める。

アスツール:「Smooz

ブラウザアプリ。レンダリングエンジンは標準のWebkitだが、高度なタブ操作や、履歴を元にレコメンデーションを行う検索、独自のソーシャルブックマークといった機能を提供することで、標準ブラウザであるSafari以上の体験を提供する。1人あたりのエンゲージメントは1日80ページ、起動回数5.6回。マネタイズは検索画面でのネイティブ広告、プレミアム機能の月額課金を準備中。現在日本、iOSのみで提供しているが、8月からAndroid版、海外対応を進める。詳細はこちら

ookami:「PLAYER!

スポーツエンタテインメント体験アプリ。スポーツの試合情報をリアルタイムに掲載。また観戦中の感想を投稿し、ほかのユーザーでコミュニケーションを取ることができる。試合の情報などはプッシュ通知を行うことで、試合の観戦を忘れるのを防ぐ。ビジネスモデルは広告に加えて、スポーツ動画の提供などを準備中。今後は観戦の熱量をアイコンで投稿できる「歓声エンジン」を導入する予定だ。詳細はこちら

クラスター:「cluser.

「引きこもりを加速する」を掲げるVRチャットサービス。数千人の同時接続が可能で、チケッティングサービスなども備える。VRデバイス(HTC Vive、Oculus Lift)だけではなく、PCでのアクセスも可能。また今後はスマートフォンでのアクセスも可能になる予定だ。5月31日に正式版をリリース。開発者の加藤直人氏は、同大大学院を中退後3年間“引きこもり”を体験していた。エイベックスなどと提携しており、今後はVR×ライブのイベントを展開していく予定だという。詳細はこちら

HoloEyes:「HoloEyes

CTスキャン、MRIの画像データ(匿名化)を元にVRデータを作成、VR、MRデバイスなどで操作して、さまざまな角度から閲覧したり、手術のミーティングなどに利用できる。すでにNTT東日本関東病院と東京都立墨東病院でも実証実験を実施している。年間50件まで100万円で提供中。データは症例の論文発表にも利用許諾している、今後はそのデータ閲覧サービスも準備しているという。
BIT:「INAIL」

自動ネイルプリントサービス。通常ネイリストが手書きでネイルを行う場合、2時間、8000円程度のコストがかかるが、このスピードとコスト削減を実現する。操作はタッチパネル。デザインを選択すれば、1本15秒程度(ネイリストなら15分程度)で高精細なネイルを実施できる。ハードウェアは独自開発。爪の形状を認識し、インクジェットプリンタと同じ仕組みでプリントを行う。マネタイズはハードの初期導入、データの月額課金、インクカートリッジの販売。今後ハードウェアの小型化、低価格化を進める。今後は海外展開も視野に入れる。

ネイン:「APlay PULSE

スマートフォンに届く通知を、音声で聞くことができるBluetoothイヤフォン。音楽や通話で利用するだけでなく、メールや天気予報、Twitterの投稿までを音声で確認できる。またボタンを押しながら放すことで、音声での入力を実現する。あらかじめ利用したいアプリを選択すれば、あとはそのアプリの通知が音声プッシュされる。現在Kickstarterでクラウドファンディングを展開中。今後はデバイスの9軸センサーをもとにした、音声によるナビゲーションサービスも提供することを検討する。

Cansell:「Cansell

「キャンセル不可」で提供されている宿泊予約の権利を売買できるサービス。出品された予約は審査をを実施し、予約の実在確認、予約金額の正当性確認、名義変更可否の確認を行うことで安全性を高めている。2016年9月にベータ版をローンチ。ビジネスは売買成立時の手数料15%。今後は旅行に限らず、さまざまな領域でのキャンセル、途中解約などの領域に参入。「権利の二次流通」を実現するとしている。詳細はこちら

Matcher:「Matcher

採用手段としてのOB訪問のメリット最大化をうたう。自社の社員と、「○○についてやってみませんか」といったプラン、会う場所をサイト上に登録。あとは学生ユーザーからの問い合わせを待つだけ。サービス開始から15カ月、学生ユーザー数は1万人。2000社が登録。リクルートでは新卒30人の採用に寄与したという。今後は学生のデータを閲覧してスカウトを行う機能を提供。スカウト機能は現在40社のスタートアップが利用するという。

Scouty:「Scouty

競争の激しいエンジニア採用。その転職潜在層にアプローチするスカウトサービス。SNSやGithubをはじめとしたネット上のオープンデータを取得人工知能で予測退職度を判断し、公開メールアドレスを通じてスカウトを行う。スキルやキーワードをもとに、80万人の人材からオススメの10人をピックアップする。5月にオープンベータ版をローンチ。すでに複数のテック企業に導入実績がある。ビジネスは月額10万円と採用時に年収の10%を課金する。詳細はこちら

Residence:「one visa

企業が採用する外国人の在留資格の申請・管理サービス。外国人雇用企業は前年度比13%(年間2万社)、その雇用のためのビザ取得は平均18種類の書類、申請の待ち時間は約4時間、行政書士の代理申請で10万円と非常に高額。これを解決するのがone visa。社員のビザ取得に向けて、人事が社員を招待し、必要な情報を入力すれば、書類を自動作成する。また代理申請もサービス上から可能だ。6月5日よりオープン版を後悔。月額費用と都度課金でサービスを提供する。今後は世界のビザ取得の支援サービスも準備中だ。詳細はこちら

ディライテッド:「RECEPUTIONIST

iPadを活用した無人受付システム。受付にiPadを設置、あらかじめ発行しておいたコードを入力することで(事前登録していない場合は担当者を検索も可能)、担当者を呼び出し可能だ。呼び出しにはSlack等を利用するため、電話や特別なシステムを導入する必要はない。10人以下の利用は無料。それ以上は登録者数に応じて従量課金。今後は遅延等を伝えるメッセージ送信機能なども提供するほか、スケジューラー、労務管理システム、名刺管理ツール等との連携も進める。詳細はこちら

ハイパーエイト:「LION Project

「キャバクラ版Uber」をうたうサービス。暇な女性と飲みたい男性をマッチングするCtoCサービス。男性側が時間やエリア、人数を選択してリクエスト。10分以内に条件に合うメンバーが集まれば飲み会の開催となる。過去実績では、深夜2時以降を除きマッチング確度95%だという。料金は60分5000円、延長は30分2500円。女性は対面面接(合格率20%)、男性との相互評価を実施し、点数が一定値以下になると男女とも利用できない。飲み会の手数料25%でマネタイズする。

「クラウドファンディングだけでなく、あらゆる資金ニーズに応える」CAMPFIREが6億円調達で事業拡大

CAMPFIRE代表取締役の家入一真氏

クラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」を手がけるCAMPFIREが6月7日、ジャフコおよびSBIホールディングス傘下のSBIインベストメントがそれぞれ運営する投資ファンドを引受先とした、総額6億円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。CAMPFIREはこれまで累計10億円の資金を調達している。

CAMPFIREでは今回調達した資金をもとに、既存のクラウドファンディング事業に加え、仮想通貨(3月にローンチした「FIREX」)、個人間決済(6月ローンチ予定の「polca」)、インベストメント(2016年末に公言していたソーシャルレンディング事業)の事業領域拡大、人材確保を進めるという。

国内クラウドファンディングサービスの先駆者であるCAMPFIRE、2016年2月に体制変更や手数料の大幅値下げ(20%から5%に。現在ではさらに8%に変更)を実施したが、2016年末までの流通総額は約24億円程度となっていた。そして2017年は流通総額35億円を目指しており、現状、目標を超えるペースで流通総額を拡大しているという(2016年1〜3月期と2017年同期で比較すると、流通総額が12倍になっているという)。体制変更時に3人だったスタッフも68人にまで拡大した。

「手数料の変更で使いやすくなったが、それだけではダメだ、となって考えてきた。例えば一昨年まではなかったオールイン(目標未達でもリターンを受けられるプラン)やファンクラブなどの機能も追加したし、音楽やファッション、ローカルといった領域ごとに切り出して、企画などもやっていった結果ではないか」——CAMPFIRE代表取締役社長の家入一真氏は語る。

家入氏は「CAMPFIREはあくまでプラットフォーマーである」というスタンスは崩さないが、一方で著名アーティストや地方自治体などと組んだ企画を、自社からある程度仕掛けていったのだという。その結果生まれた事例のひとつ、「湯〜園地計画」では、別府市が温泉をテーマにしたテーマパークのプロジェクトを立ち上げ、見事に3300万円以上を集めることに成功した。この成功事例が契機となって、地方自治体からの問い合わせも急増した。

今後は進捗の遅れているというインベストメント事業にも注力していく。5月には子会社で第二種金融商品取引業の登録が完了しており、今後は金融庁とも話し合いながら、スキームを整えていくという。「これまでは『クラウドファンディングのCAMPFIRE 』だった。だがこれからは、『クラウドファンディングもやっている、あらゆる資金ニーズに答えられるCAMPFIRE』を目指す。誰もがネット上で声を上げられる世界を目指していく」(家入氏)

AppleのHomePodが棚でほこりをかぶらない理由

Appleは、安易なネーミングと型破りな売り込みとともに、そのスマートスピーカーをデビューさせたが、このデバイスを安易に軽視する傲慢な人々はいずれつけを払うことになる。Appleは、AmazonやGoogleとは異なり、人とコンピューターの対話手段として知性をもつ箱を売ることに将来性がないことを知っている。人々が欲しいのは製品でありテクノロジーではない。

HomePodの発表は、Appleにとってここ数年でもっともスタートアップ的な行動だ。この会社は、巨大なホームスピーカー市場と急成長のスマートスピーカー分野を同時に破壊しようとしている。ハードウェアを目的を達成するための手段ではなくチャンスとして扱うことで、Appleは結局棚でほこりをかぶることになるマニア向け製品以上のものを作った。

はっきり言って、Siriは遅れている。WWDC 2017以前から遅れていて、WWDC 2017の後もまだ遅れている。Appleはこの知的アシスタントを最先端水準にするべく機械学習の専門家を採用し、大型買収を実行して必要な技術レベルを確保しようとしている。HomePodをAIの有用性を見せるためのハードウェアではなく、オーディオソリューションとして宣伝するのも当然だ。しかし、最終的にはどちらでもよいことだ。

Appleが、プロダクトファースト、プラットフォームは二の次のアプローチを取るのにはわけがある。パーソナルアシスタントは収益化にはまだまだ時期が早すぎる ―― AmazonはAlexaを収入源ではないと何年も言い続けている。一方ホームスピーカー市場は明確に定義されている。私は市場規模の推定が大嫌いだが、ワイヤレス・オーディオ市場は500億ドルを優に超えると推定されている。

昨年のTechCrunch Disrupt New York 2016で、AmazonのEcho担当VP、Mike Georgeはこのデバイスの典型的な利用場面は何かと聞かれ、音楽だと答えた。これが興味深いのは、Echoのハードウェアで最大の差別化要素は遠方界マイクロホンだからだ。音声インターフェース内蔵で音楽を聞くのに使われることがいちばん多いハードウェア機器を設計する際、スピーカーを最優先項目にすることは理にかなっている。

Echoの最終的な価値提案は、遠くの声をスマホより高精度で検知することだ。ちなみにEchoはAlexaの音声認識や自然言語をすべて内部で処理している。

Appleは人工知能を、製品ポートフォリオ全体に正しく取り入れる必要がある。これは人工知能が不可欠な先進技術だからであり、GoogleやAmazonに対抗して昔ながらの音声命令に答えるためではない。そして、この会社がそれを成し遂げることを疑う理由はほとんどない。AppleはAIを使えずに取り残される哀れな8000億ドル企業ではない。機械学習はあらゆるApple製品に使われている ―― Spotlight検索、メール、iMessageなどリストは続く。

AppleがWWDCでHomePodを紹介したとき、ひとつ奇妙だったのは音質を強調したことだ。従来のAppleのやり方は使いやすさ重視だった ―― スピーカーがペアで動作することやiPhoneとのペアリングが簡単なこと。おそらくこれは349ドルという価格を正当化しようとするAppleの試みなのだろう。そう、Appleだから価格は高く、V2が出てV1が値下げされるまで買うのは大変だ ―― この戦略はまだ有効だ。

今回の発表は、ホーム用のAirPodsと考えるのが適切だ。将来、AirPodもHomePodもSiriとの高度な統合による恩恵を受けるだろう ―― しかしSiriのためにAirPodやMacBookやiPhoneを買う人はいない。HomePodを信じることは、ホームオーディオ市場を信じ、Appleのプロダクトファースト戦略の遂行能力を信じることを意味している。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ディープラーニングをApache Sparkのクラスターで分散化、サーバーレスでそれができるDatabricksのServerless Platform

今日(米国時間6/6)のSpark Summitの幕開けで最初にボールを蹴ったDatabricksは、Apache Sparkのためのサーバーレスプラットホームを発表した。クラスター管理に費やす時間を短くしたいと願うデベロッパーにとって、良いニュースだ。デベロッパーの仕事をより単純化しようとする動きは、このイベントの全体を貫く大きなテーマでもあった。同社はServerless Platformに加えて、Sparkでディープラーニングフレームワークをより使いやすくするためのライブラリDeep Learning Pipelinesも披露した。

今、クラウドベースのデータ処理技術がどんどん進歩している中で、DatabricksはオープンソースのApache Sparkプロジェクトの商用サービスだ。同社のエンジニアたちはもっぱら、Sparkのエコシステムを支えるツール類を作っている。今日発表された製品も、その一部だ。

大企業における意思決定がますますデータ駆動型になりつつある今日、これから取り組もうとする新しいユーザーにとっては、データパイプラインとクラウドインフラストラクチャの扱いが、目の前に山のようにそびえる大きな課題に見えてしまう。そこに登場したサーバーレスの技術とは、サーバーなしでデータを操作するという意味では決してなく、エンドユーザーがサーバーなどの低レベルの問題にいっさい関わりあうことなく、コンピューティングリソースの管理されたプールから適当なものを選んで、単純に今やるべき仕事をする、という単純化簡素化された新しいタスク構造を指す。

“SQLはステートレスだから扱いも楽だが、データサイエンスにはステートがあるから、それをサーバーレスにするのは難しい”、とDatabricksのCEO Ali Ghodsiは説明する。

ServerlessがDatabricksの幅ないし広さを表すとするなら、Deep Learning Pipelinesはその深さへの挑戦だ。TensorFlowなど、現存するディープラーニングフレームワークは“使いやすい”とはお世辞にも言えないが、でも昔の(AI言語とも呼ばれた)LISPなどに比べたら相当に使いやすい。そのためディープラーニングは今、ますます多くのワークフローに導入されつつある。

“Sparkなどを使ってTensorFlowのタスクを分散化しようとすると、手作業でグラフを作り、どのマシンがどの部分の処理を担当するか、いちいち決めなければならない”、とGhodsiは言う。“100台のマシンを相手にそれを人間がやるとすると、ものすごくたいへんな作業になる”。

Databricksの今度のオープンソースのライブラリを使ってデベロッパーは、ディープラーニングのモデルをSQLのファンクションに変換できる。ユーザーは学習をSpark MLlib Pipelinesで転送し、Sparkの分散コンピューティングが提供する利点を享受する。

なお、Ghodsiによると、DatabricksのStructured Streamingが一般公開された。このAPIは、シーケンシャルデータのストリーミングを処理する。同社によると、Structured Streamingの開発工程では、レイテンシーの最小化が最優先された。それによって、異状検出などのアプリケーションを動かす顧客にとって、費用低減とスピードの向上が実現した。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Tesla Model 3、来月出荷へ――生産は順調だがオプションはほとんど選べない

Teslaによれば、Model 3の最初の量産ロットは予定通り来月出荷されるという。オンライン発注のためのコンフィグレーターも同時に公開される。しかし少なくとも当初は、Model3のコンフィグレーターにはほとんど選択肢がない模様だ。TeslaのCEO、イーロン・マスクが火曜日の株主総会で述べたところによれば、「選べるのは色とホイールのサイズ」だけだ。

将来は選択肢が増やされる予定だが、マスクによれば選択肢の限定はModel Xを教訓にしたのだという。Model Xではあまりに選択肢が多かったため、製造過程が著しく複雑化してしまったという。Model3の車種構成が当初限定されたものになっているのは生産台数をアップするための意図的なものだ。生産過程に問題がないことが明らかになれば、ユーザーの選択肢は徐々に増やされる。

Teslaには大量の注文残が存在していることをマスクは認めた。これが構成要素を限定して生産効率を優先する大きな理由だ。マスクによれば「仮に今日Mode 3を予約しても納車されるのは来年の末になる」という。しかしマスクは「生産ラインは拡張を続けているので予約をためらう必要はない」と付け加えた。

〔日本版〕Model 3のホイールサイズは18インチと19インチになるという。オプションリストにグラスルーフがあるが当初は選択できないようだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

FacebookやTwitterを追随、AppleのiMessageもカスタマーサポートの窓口に

AppleはiMessageプラットフォームに企業を呼び寄せるため、iMessage上でカスタマーの質問に答えたり、カスタマーサービスを提供したり、さらには決済まで完結できるようにする。WWDCでの発表ではなく、Appleの開発者向けサイトにこの新サービスについての概要が記載されていた。これは「Business Chat(ビジネスチャット)」という名前で、iPhone、iPad、Apple Watchで利用可能になる。

ビジネスチャットの詳細はまだ開示されていない。Appleのウェブサイトによると、6月9日のWWDCのセッションで公表するという。

ビジネスチャットは、AppleがFacebookやTwitterが席巻するソーシャルネットワーク領域に踏み込む動きのように思える。Twitterは最近、カスタマーサービスの領域に注力し、ウェルカム・メッセージクイック返信カスタムプロフィール位置情報共有チャットボットなどの新ツールを提供してきた。

一方、Facebookには現在12億人の月間ユーザーがいて、Facebookページの運用の一環として企業がMessengerを使えるようにした。Messengerで、企業ユーザー名の使用、自動挨拶機能、会社のMessengerアカウントを告知するための短く覚えやすいリンク、チャットボット、決済といった機能を提供している

数日後に詳細は公表されるものの、Apple Developerのウェブサイトからビジネスチャットに関してある程度知ることができる。まず、ビジネスチャットはiOSと深く連携していて、Appleが提供するネイティブアプリ内で利用できる。コンシューマーが会社情報を検索する時、グーグルのように電話番号を提示するのではなく、iMessage上ですぐにチャットできるようになるということだ。

AppleはSafari、地図、スポットライト、Siriから会社の連絡先を検索し、会話を始めることができると説明している。それに加え、ビジネスチャットは他の決済ができるApple Payやカレンダーといった他サービスとも連携する。企業は自社のiMessageアプリで会話に参加することができる。

ウェブサイトに掲載している画像には、カスタマーがおすすめのiPadについてAppleのサポート担当者に質問している様子が写っている。他のiMessageチャットの形式と似ているが、画面上部に濃いグレーのバナーがあり、吹き出しも通常の青色ではなく、薄いグレーだ。

また、問い合わせ先のアップルという名称の横には認証マークと思われるチェックマークがついている。この認証バッジはTwitterで普及したものだが、FacebookやInstagramといった他のソーシャルプラットフォームでも見かけるようになった。これは、ブランドや公人のアカウントが公式のものであることを示している。

iOS 11は今年の秋にリリースする予定だが、ビジネスチャットもそれと同時に利用できるようになることが予想される。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website

工場のためのアプリプラットフォームTulipが1300万ドルを調達


大規模なOEMの工場内ではロボットと自動化の時代が始まっているが、こうした工場の中で働く実際の人間たちは、ほとんどテクノロジーから忘れられて来た。しかし、工場エンジニア、オペレーター、そしてマネージャーたちのためのソフトウェアプラットフォームのTulipが、すべてを変えようとしている。

その目的を達成するために、TulipはNEAの主導したシリーズAで1300万ドルを調達した。ラウンドにはPitango Venture Capitalやその他の既存投資家たちも名を連ねている。また契約の一部として、NEAパートナーのDayna Graysonが、同社の取締役会に加わる予定だ。

ロボットやオートメーションの登場によってメーカーが製品を作る方法が変わったとしても、こうした工場で働く人たちが、工場内プロセスを詳細化したりデバッグしたりするために使っているのは、原始的なツールである場合が多い。例えばクリップボードやストップウォッチ、そしてExcelのスプレッドシートなども使われているが、こうしたものはリアルタイムとは言い難く、洞察を自動的に引き出すこともなく、単に手動で貴重なデータを集めているだけだ。

そこがTulipの狙う場所だ。

Tulipは、プロトコルに関係なく、センサー、カメラ、およびその他のIoTハードウェアたちが、中心的なバックエンドシステムの中で相互に通信できるようにするソフトウェアプラットフォームを提供する。このタイプのソフトウェアに慣れていない人びと(工場のオペレータやエンジニアたちなど)は、様々な”If/Then”(もし〜ならば〜する)部品を、プラグアンドプレイすることができる。こうすることで工場フロア内の問題になっているエリアに関する鳥瞰イメージを得て、課題を素早く修正することが可能になる。

Tulipを通じて、メーカーはインタラクティブな作業指示、自動データ収集、品質管理、監査、マシン監視、トレーニングを実装することができる。

たとえば、Tulipを使えば、フロアマネージャーたちは、フロアを見回りつつオペレーターやエンジニアたちの肩越しに覗き込むことなしに、データ収集と洞察に集中することができる。特定のワークベンチや特定のツールに取り付けられたセンサーや、組立ライン上のカメラが、全体プロセスの中で何が起きているかを自動的に検知することが可能だ。このことによりマネージャーたちは、手作業によるデータ収集/入力なしに、プロセスを洗練する作業が助けられる。

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CEO兼創業者のNatan Linder(MITでのインターフェイスの研究からスピンアウトしてTulipを構築した)はこう語る「私たちはこうしたオペレーター、エンジニア、マネージャーたちが、情報に基づく合理的な動きをすることができるようにしているのです」。「そして更には、Tulipはリーダーボード(順位表)の仕組みを使って、従業員たちが自分のパフォーマンスについて動的に知ることができるようにしています、このことが仕事を一種のゲームに変えるのです」。

Tulipによれば、グローバルメーカーのJabilに於ける最初の4週間の導入実績値で、生産性は10%以上上がり、手動の組み立て作業による品質問題は60%減少したとのことだ(なおこの分析はDeloitteによって行われたものである)。

同社は完全な価格表を公開していないが、作業台単位のSaaSモデルで顧客に課金する。

Tulipは、新しい調達資金を利用して、プロダクト、デザイン、そして研究チームを成長させ、顧客サポートを強化する予定だ。

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(翻訳:Sako)