人気クリエイターがファンに素に近いリアルな姿の写真を有料で公開するアプリ「Roll」

米国時間1月18日、新アプリRoll(ロール)が発売された。このアプリはクリエイターがファンに対して、より素に近いありのままの姿を公開し、それにより簡単にお金を稼げるようにするというものだ。すでに、Instagram (インスタグラム)の親しい友達向けストーリーやSnapchat(スナップチャット)のプライベートアカウント、Discord (ディスコード)の秘密サーバーへのアクセスを通し、メインのページに載せるほど作り込まれてはいないものの、やはりそれなりに外向けでブランド力のあるものを公開することで一部のクリエイターは課金を行っている。こういったものではクリエイターのPatreon(パトレオン)が介されているが、Rollはこの戦術を合理化し、すべてをRollアプリで完結できるようにしている。同アプリはiOSとAndroidで利用可能だ。

「お気に入りのクリエイターのカメラロールにアクセスできる、というのが弊社の謳い文句です」と創業者兼CEOのErik Zamudio(エリック・ザムディオ)氏はいう。「購読したファンは他では決して見ることのできないクリエイターのコンテンツを見ることができるのです。クリエイターはこれにより、最もリアルな自分自身を表現できるのではないでしょうか」。

もちろん、実際にクリエイターのカメラロールにアクセスできるようになるわけではない。そんなことが起きたらそれこそ大問題である。Rollはクリエイターがよりカジュアルな方法でファンとつながりながら、お金を稼ぐ機会を提供しようとしているのである。ソーシャルメディアへの投稿が仕事だとしても、カメラロールにあるものすべてをアップロードしているわけではない。上手くできたオムレツの写真、失敗した自撮り、気に入ったミームのスクリーンショット、散歩中に見かけた変なものなどさまざまな写真が存在し、こういった写真は慎重に計画されたInstagramのグリッドにはフィットしなくとも、Rollのようなプラットフォームではその魅力を発揮するかもしれない。本物のカメラロールと同様、Rollの投稿に「いいね!」を付けたりコメントを付けたりすることはできない。

クリエイターはRollで月額5ドル(約570円)から50ドル(約5700円)の間で課金することができ、収益の80%を受けとれる仕組みだ。ザムディオ氏によるとほとんどのクリエイターが5ドル程度の課金を選んでいるが、より専門性の高いコンテンツを作っているクリエイターなら高めの価格設定でもいけるだろう。例えばTikTok(ティックトック)のシェフが特別なレシピを動画で紹介すれば、月に数枚の舞台裏写真を投稿する人よりもより高い料金を請求することができるはずだ。OnlyFans(オンリーファンズ)のような競合他社とは異なり、Rollはアダルトコンテンツを許可していない。

携帯電話でRollのアカウントを開いている人気クリエイターのタナ・モジョ氏(画像クレジット:Roll)

ローンチ時には約20名のクリエイターが登録されているが、クリエイター向けポータルを一般公開するまでの間、毎週10〜15名のスターを追加していく予定だという。現在、ミュージシャンのDillon Francis(ディロン・フランシス)氏「Stranger Things(ストレンジャー・シングス)」の俳優Noah Schnapp(ノア・シュナップ)氏の他、Tana Mongeau(タナ・モジョ)氏、Sommer Ray(ソマー・レイ)氏、Stassie Karanikolaou(スタッシー・カラニコラウ)氏などのソーシャルメディアパーソナリティ、そしてユーチューバーのDavid Dobrik(デビッド・ドブリック)氏などが登録されている。

ドブリック氏が写真ベースのソーシャルスタートアップに関わるのは今回が初めてではない。ドブリック氏は後にDispo(ディスポ)となったアプリDavid’s Disposable(デビッズ・ディスポーザブル)を共同設立したことがある。ザムディオ氏をはじめとするRollのスタッフ3人もDavid’s Disposableの構築に貢献したのだが、ザムディオ氏はアプリがDispoにリブランドされる直前の2020年半ばに退社しており、また同氏や同僚が去った理由については回答を避けている。

2021年3月に発売され、大きな話題となったアプリDispoだが、そのわずか1週間後、Insider(インサイダー)がドブリック氏のYouTubeいたずらグループ「Vlog Squad」のメンバーに関する性的暴行疑惑を報じた。ドブリック氏のチャンネル用にグループセックスに関するビデオを撮影しているときに起きたこの暴行疑惑。Vlog Squadの元メンバーで黒人のSeth Francois(セス・フランソワ)氏はドブリック氏のビデオで経験した人種差別についてまとめたYouTubeビデオを投稿し、ドブリック氏のセットで性的暴行を受けたとも話している。Insiderの記事が掲載された直後、ドブリック氏はDispoの役員を退任している。

このような論争の中、Dispoの初期の投資家であるSpark Capital(スパーク・キャピタル)、Seven Seven Six(セブンセブンシックス)、Unshackled(アンシャックルド)などは、アプリへの投資から得られるであろう利益を全額、性的暴行の被害者のために取り組む団体に寄付することを約束した。ドブリック氏はさまざまなブランドとの契約を失ったものの、YouTubeの登録者数は1880万人から1830万人に減少しただけで、今でも週に3本の動画を投稿し、それぞれ約600万から1000万回の再生回数を記録し続けている。そして今回再びドブリック氏が消費者向けテクノロジーに舞い戻るわけだが、この物議を醸したユーチューバーは、Dispoの共同創業者には違いないものの、RollにとってはRollアプリを利用するクリエイターの1人に過ぎないとザムディオ氏は伝えている(同社の宣伝コンテンツにも登場する)。

「Rollをサポートしてくれた大物クリエイターは、デビッドが初めてではありません」とザムディオ氏はTechCrunchに話している。「これは絶対に誤解されたくないことですが、デビッドがDispoを辞めて今ここで別のことをやっている、というようなことではないのです。彼は創業メンバーの1人ではありません」。

後に、ザムディオ氏はさらにメールで詳しく説明してくれた。「デビッドはクリエイティブで賢い人物です。他のすばらしいクリエイターとともに、彼を起用できることをうれしく思います。私たちは全メンバーを対等な立場で見ており、彼らの意見を大切にしています。デビッドはDispoに関わっていたので、Dispoと関連付けられるのは当然かと思いますが、前にも伝えたように彼は(創設者やチームメンバーではなく)単にRollのクリエイターです」。

DispoとRollはありのままの投稿を促すという点で似たDNAを持っている。Dispoでは使い捨てカメラの性質を真似て、翌朝まで撮った写真を見ることができない。ただしDispoがソーシャルネットワークであるのに対し、Rollはクリエイターのマネタイズプラットフォームである。

「David’s Disposableが大成功した後、私たちはクリエイターエコノミーの世界を掘り下げるようになりました」とザムディオ氏はTechCrunchに話している。「そして多くのクリエイターと親しくなり、彼らが経験していることをより深く知るようになるにつれ、みんながコンテンツを有料化したいと考えていることがわかったのです」。

これまでRollは、Airwing Ventures(エアウィング・ベンチャーズ)のDan Beldy(ダン・ベルディ)氏が率いるエンジェル投資家ラウンドで50万ドル(約5700万円)を調達している。

画像クレジット:

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Dragonfly)

アップル、オランダのマッチングアプリの代替決済システム使用に手数料27%を請求へ

裁判所の命令により、マッチングアプリの開発者はオランダでApple(アップル)のアプリ内課金システムを使用する必要はなくなった。また、これらの課金決済はAppleによって処理されないため、Appleはデジタル購入の際に通常の30%の手数料を取ることはない。しかし、サードパーティの決済システムを利用する開発者は、依然として手数料を支払わなければならない。Appleは27%の手数料を請求する予定だ。

オランダの反トラスト法問題を把握していない人のために説明すると、オランダ消費者市場庁はもともと、Appleが非常に特殊なケース、つまりマッチングアプリ開発者が販売する「superlike」や「boost」といったデジタルコンテンツでオランダの競争規則に違反していると指摘していた。

これは、Appleのアプリ内課金システムにとって、別の新たな脅威となる。韓国では、デジタル決済に関する新法に基づき、Appleはサードパーティーの決済システムを認めることに同意した。また、米国と欧州では、いくつかの訴訟が進行中だ。

オランダに関しては、Appleは外部決済を認めることはユーザーの利益にならないと主張し、反トラスト法に基づく決定について上訴している。

「これらの命令がユーザーの最善の利益になるとは思えません。当社はACM(消費者市場庁)の決定を受け、高等裁判所に上訴しました。これらの変更がユーザーの体験を損ない、プライバシーとデータセキュリティに新たな脅威をもたらすことを懸念しています。一方、当社は本日開始する、義務付けられた変更を行う義務があり、近日中にさらなる情報を提供する予定です」と同社は1月に述べた。

オランダの競争当局は、Appleが裁判所命令に従う最初の期限を過ぎていることからすでに500万ユーロ(約6億5000万円)の罰金を科しており、同社に選択の余地はあまりない。

Appleは現地時間2月4日、マッチングアプリの開発者がオランダで代替決済システムを利用する方法を説明するドキュメントページを更新した。これはかなり技術的なものに関する文書で、開発者がどのように代替支払いオプションを提供できるかを説明している。

しかし、Appleがアプリ開発者に手数料を請求する予定であることも書かれている。基本的に、Appleが取引を扱わないため、開発者はApp Storeの手数料を3%カットされる。しかし同社は、提供するさまざまなサービスに対して27%の手数料を請求することは、まだ正当だと考えている。

ACMの命令に従い、サードパーティのアプリ内決済プロバイダをリンクアウト、または使用する権利を付与されたマッチングアプリは、取引にかかる手数料をAppleに支払うことになります。Appleは、付加価値税控除後のユーザが支払う価格に対して27%の手数料を請求します。これは、決済処理および関連する活動に関連する価値を除いた率です。開発者は、サードパーティの決済プロバイダーによって処理された売上について、オランダの付加価値税(VAT)など、適用される税金の徴収と送金に責任を負います。

アプリ開発者は毎月、App Storeでホストされているアプリに関連するデジタル売上を報告する必要がある。その後、Appleは27%の手数料の請求書を送付する。

つまり、開発者はAppleの決済システムを回避することで、追加でかなりの収益を得ることはない。しかし、それだけではない。サードパーティの決済システムには技術的な費用もいくらか発生する。

マッチングアプリではよくあることだが、複数の国にユーザーを持つアプリ開発者の場合、同じアプリのバイナリを提出することはできない。開発チームは、オランダ語のアプリとオランダ語ではないアプリの2種類のバイナリをまとめて提出しなければならない。

Appleは、サードパーティの決済システムを使用することを可能な限り難しく、高価にしたいと考えている。ほとんどの開発者は、Appleのアプリ内課金APIを使い続ける可能性がある。

「Appleのアプリ内課金システムを使い続けたいマッチングアプリの開発者は、そうすることができ、追加で何かを行う必要ありません」とAppleは書いている。

しかし、それは同社がただ時間を稼いでいるように感じられる。App Storeは依然として、さまざまな管轄区域で独占禁止法の厳しい監視下に置かれている。Appleは、最初の裁判所命令や競争促進的な改革を回避する方法を見つけるだろう。しかし、規制当局が本当にAppleのアプリ開発者向け手数料を下げたいのであれば、もっと賢くなるはずだ。

 画像クレジット:TechCrunch

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

500以上のモバイルアプリが「メタバース」というバズワードを使って新規ユーザーにアピール

真の「metaverse(メタバース)」はまだ存在しないかもしれないが、そのことは、モバイルアプリストアで自社のアプリやゲームを宣伝するために、マーケティング担当者がこのバズワードを使うことを止めはしない。Sensor Tower(センサー・タワー)が米国時間2月3日に発表した新しいデータによると、アプリのタイトルや説明文に「metaverse」という言葉を含むモバイルアプリは現在552個あり、このウェブの次の進化に対する消費者の関心を引きつけることを期待しているようだ。また、その多くがここ数カ月の間に追加されたものであると同社は指摘している。

App StoreとGoogle Playのグローバルアプリランキングのアプリ全体で、2021年11月から2022年1月の間に、合計86のアプリがタイトルまたは説明文に「metaverse」への言及を追加したことが、Sensor Towerのデータで示されている。

画像クレジット:Sensor Tower

この時期は、Facebook(フェイスブック)が企業名を「Meta(メタ)」に変更し、今後10年にわたって「metaverse」技術に多額の投資を行う計画を発表した後にあたる。MetaとなったFacebookは、metaverseをすでに構築したとは主張していないが、この言葉はすぐに、人々が仮想の自分自身として相互に作用する、ほぼすべての没入型オンライン環境を表すものとして、よりカジュアルに使われるようになった。スタートアップは、自分たちをmetaverse企業であると表現し始めた。ゲームプラットフォームRoblox(ロブロックス)はmetaverseの先駆けとして注目された。ソーシャルクリプトプラットフォーム(実際にはMMORPGに金融要素を加えたもの)もmetaverseと呼ばれ、metaverse用不動産が殺到したことなどがあった。

例えば、友人やコネクション、バーチャルな「もの」がすべてあなたと一緒に移動するデジタルワールド間の移動を可能にするために構築される必要がある新しい業界標準といったmetaverseが存在するための実際の技術的要件には、マーケティング担当者はあまり関心がなかったようだ。

Facebookが10月28日にmetaverseの取り組みを発表した後「metaverse」という言葉を参照したアプリの数は、11月までに前月比66%増となった。11月末時点で、この単語を含むように更新されたアプリは29個で、10月の11個のアプリの2倍以上になっている。

Sensor Towerはまた、どのようなアプリがmetaverseのトレンドにのっているのかを分析した。その結果、多くのアプリが「metaverse」という言葉とともに、例えば「Crypto」「NFTs」「AR」「VR」など、他の人気のある技術用語も参照していることがわかった。

画像クレジット:Sensor Tower

このうち「metaverse」と並んでよく目にするのが「Crypto」で、23%のアプリ(合計144アプリ)がこの言葉を挙げている。Web3のクリプトコミュニティが最近、誇大広告に大きく依存していることを考えると、これは驚くべきことではないし、それが存在する前に何かを「metaverse」と呼ぶことは、確かに誇大広告の定義そのものだ。「NFTs」は2番目に人気のある用語で、調査対象グループの18%、つまり合計118のアプリに登場した。「AR」と「VR」という用語は「metaverse」アプリの11%と9%にそれぞれ見受けられた。

画像クレジット:Sensor Tower

また「metaverse」という言葉は、ゲームや暗号金融アプリだけでなく、意外にもさまざまなアプリで使われていた。

しかし、モバイルゲームのパブリッシャーがこのキーワードを率先して採用し、現在ゲームカテゴリの107のアプリがこの用語を参照しており、それは調査対象のアプリの19%に相当する。この用語が登場する2番目に大きなカテゴリは「金融」で「metaverse」アプリの101個を占めた。以下、ソーシャル(70アプリ)、エンターテインメント(57アプリ)、ブック(37アプリ)、ライフスタイル(33アプリ)、ツール(26アプリ)、ビジネス(25アプリ)、アート&デザイン(13アプリ)、教育(11アプリ)の順となった。

これらのアプリに「metaverse」という言葉が追加されたことが、ユーザーの取り込みに役立っているのかどうかについては、まだあまり明らかになっていない。ユーザーがアプリストアで「metaverse」という言葉を検索することを狙って採用されたことは明らかだが、この市場で成功したアプリは、そうでないアプリよりも優れたユーザー体験を提供しているに過ぎないのだろう。

画像クレジット:BlackSalmon / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Yuta Kaminishi)

モバイルアプリのテストをノーコードで自動化するWaldoが約17.2億円を調達

「ノーコード」でテストを自動化するツールのWaldo(ウォルドー)が1500万ドル(約17億1800万円)を調達した。モバイルアプリの開発チームはWaldoを使ってスクリプトのコードを1行も書くことなくテストをセットアップし、継続的インテグレーション(CI、Continuous Integration)パイプラインにシームレスに統合できる。

このシリーズAラウンドを主導したのはInsight PartnersのJoshua Zelman(ジョシュア・ゼルマン)氏で、Matrix PartnersとFirst Round Capitalも参加した。他にNicolas Dessaigne(ニコラ・デセーニュ)氏、Ben Porterfield(ベン・ポーターフィールド)氏、Tyler Gaffney(タイラー・ギャフニー)氏、Keenan Rice(キーナン・ライス)氏といったビジネスエンジェルも投資した。Waldoは今回得た資金で従業員を増員し、Go-To-Market戦略を固めていく考えだ。

Waldoをよく理解するために、まずはモバイルのテストについて考えてみよう。小規模な開発チームは通常、実際にテストをすることに多くの部分を頼っている。スマートフォンを数モデル所有し、アプリの開発ビルドをそのデバイスで実行する。うまくいかないことがあればバグを見つけて修復する。

アプリやチームが大規模になると、手作業でのテストでは追いつかなくなる。テスト用のスクリプトを書くことはできるが、それは開発の時間がさらにかかる厄介なタスクだ。資金が十分にあってテスト用スクリプトに開発の時間を使うことができるか、時間が経つにつれて開発者がそのスクリプトを放置してしまうかの、どちらかだ。

Waldoは3つ目のやり方があると考えた。この4年間、同社はセットアップもメンテナンスも簡単なテスト用プラットフォームを開発してきた。開発者はWaldoのプロダクトを使い始めるときに、アプリのパッケージ(開発環境で作成した.ipaまたは.apkのファイル)をこのプラットフォームにアップロードする。

するとWaldoはそのアプリをブラウザウインドウで実行する。これはそのアプリのライブバージョンで、開発者はローカルのエミュレータと同様に操作できる。ボタンをタップし、ログイン画面でパスワードを入力し、画面を指でスワイプするような操作だ。

Waldoはテストのステップをすべて記録する。このテストを本番環境で使用すれば、Waldoは同じステップを実行して問題があれば、つまりテストの最後のステップまで到達しなければ、アラートを出す。テストはCIワークフローから直接トリガーされる。つまりGitリポジトリに新しいコードをコミットすれば、アプリは自動でWaldoに送られる。

画像クレジット:Waldo

時間が経っても適切に動作するのは、Waldoが画面の構造を理解するからだ。例えば、開発者はテストに戻って画面のエレメントを特定することができる。同社の共同創業者でCEOのAmine Bellakrid(アミン・ベラクリド)氏は筆者に対し「ウェブページでウェブインスペクタを開き、HTMLを見ていると想像してみてください」と説明した。

このようにすれば、開発者は画面の類似性は一定のしきい値以上であると判断し、一部のエレメントを手動で構成できる。例を挙げると、テキストボックスを選択することができれば他の言語でも大丈夫だと考えられる。

時間をかけてテストをパスしたり失敗したりするように調整した後は、実際にエンド・ツー・エンドのテスト用プラットフォームを利用できる。Waldoはユーザーインターフェイスだけを見ているのではなく、アプリを操作して分析のためにイベントをチェックする。例えばWaldoのテストを本番サーバに対して実行すれば、問題なくログインできたことによりWaldoはサーバが適切に動作していると判断する。

裏側ではWaldoはアプリをパッケージし直し、コードを追加してアプリに関する情報を抽出できるようにする。その後、アプリをサーバ上のシミュレータで実行する。Waldoはエミュレータからも情報を取得する。

ベラクリド氏は「我々のゴールはパイプラインをなくすことです。我々はアプリをApp Storeに提出する前の最後のテストです」と述べた。Waldoの顧客で健康保険アプリのAlanにはQAチームがない。開発者がQAを担当して欲しいと考えているからだ。一方、こちらも保険会社であるLemonadeにはすでにQAチームがあるが、Waldoのようなプロダクトを利用することで時間を節約しワークフローを改善できる。

ベラクリド氏は「モバイルではスピードが勝敗を分けます」という。テストは多くのモバイル開発チームのボトルネックだ。Waldoのテストを組み込むことで、幅広いテストをカバーしアプリを迅速にリリースできるようになる。

画像クレジット:Waldo

画像クレジット:Daniel Romero

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(文:Romain Dillet、翻訳:Kaori Koyama)

Apple News、初のデイリーローカルニュースレターをベイエリアの読者向けに配信開始

Apple News(アップル・ニュース)は、初のデイリーローカルニュースレターをベイエリア向けに導入した。他の都市への提供拡大も積極的に検討している。ベイエリアのデイリーローカルニュースレターは、日刊の地方紙を思わせるもので、地元ニュース、スポーツ、政治、食事などの分野にわたって主な最新ニュースを掲載している。これらの記事はSan Francisco Chronicle(サンフランシスコ・クロニクル)、SF Gate(SFゲート)、Eater SF(イーターSF)、KQED、The Oaklandside(オークランドサイド)など、数多くの出版物から編集されたものだ。

このニュースレターに掲載される記事はすべて、アルゴリズムによって選択されるのではなく、Apple Newsの編集者によって監修されている。これは、クリックベイトのような価値の低いコンテンツの再循環を減らすためだ。Apple Newsは、このベイエリア向けニュースレターを、地域における1日の終わりのダイジェストとして、注目すべきニュースや身の回りで起こっていることに関する情報を伝えるものだと考えている。デイリーローカルニュースレターは、より多くの読者に全米のニュースを配信するApple Newsのデイリーニュースレターに追加される。

Twitter(ツイッター)のRevue(レヴュー)買収や、Facebook(フェイスブック)のニュースレタープラットフォーム「Bulletin(ブレティン)」など、多くのテクノロジー系企業がニュースレターをサービスの一環として追加している時期に、アップルはこのサービスを開始した。ニュースレタープラットフォームのトップ企業であるSubstack(サブスタック)がシリーズBの時点で6億5000万ドル(約743億円)の評価を受けたことでも、旧来型のニュースメディアの市場規模が大きいことがわかる。これには、新聞社のウェブサイトの使い勝手が低下していることも、少なくとも部分的な原因になっている。

もしアップルがより多くのデイリーローカルニュースレターを展開することになれば、いくつかの市場から選ばれることになるだろう。現在、Apple Newsはサンフランシスコ、ベイエリア、ニューヨーク、ヒューストン、ロサンゼルス、サンディエゴ、サクラメント、マイアミ、シャーロット、サンアントニオ、ワシントンD.C.という11の市場でローカルニュースを提供している。アップルは、今後さらに多くの都市でローカルニュース機能を開始する予定だと述べている。

アップルがローカルニュース機能に力を入れるということは、Flipboard(フリップボード)やSmartNews(スマートニュース)のような、米国の何千もの都市でローカルニュースを提供している他のニュースアグリゲーターサービスとのさらなる競争に、目を向けていることを示している。

関連記事:スマートニュースのローカルニュース機能が米国6000以上の都市で利用可能に

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Mozilla、モバイルおよびデスクトップのVPNに新プライバシー機能を展開

Mozilla(モジラ)は、モバイルとデスクトップVPNサービスの新しいアップデートを展開すると、米国時間2月1日に発表した。Mozilla VPN 2.7では、Firefoxの人気アドオンの1つであるマルチアカウントコンテナーをデスクトッププラットフォームに導入し、AndroidとiOS版のVPNサービスにもマルチホップ機能を導入している。

Firefoxのマルチアカウントコンテナーにより、ユーザーは仕事、ショッピング、バンキングなど、オンライン活動の異なる部分を分離することができる。仕事のメールをチェックするために新しいウィンドウや別のブラウザを開く必要がなく、その活動をコンテナータブに分離することができ、他のサイトがウェブ上の活動を追跡するのを防ぐことができる。同社は、このアドオンとMozillaのVPNを組み合わせることで、ユーザーの区分されたブラウジング活動にさらなる保護層を追加し、ユーザーの位置情報にもさらなる保護を追加することができると述べている。

「例えば、仕事で出張中、フランスのパリで仕事のメールをチェックするためにコンピュータを使用しているが、ニューヨークの個人の銀行口座もチェックしたいとします。そこで、マルチアカウントコンテナーに加え、Mozilla VPNの追加プライバシーと30カ国の400以上のサーバーから選択することで、仕事と個人の財務のオンライン活動を分離することができます」と、Mozillaは新しい発表についてブログ投稿に書いた。

2021年、Mozillaは、1つのVPNサービスではなく、2つのVPNサーバを使用することができるマルチホップ機能をデスクトップで発表したが、今回、それがモバイル上でも展開されることになった。この機能は、最初にエントリのVPNサーバー、そして出口のVPNサーバーを介してあなたのオンラインアクティビティをルーティングすることによって動作する。Mozillaは、VPNサービスのAndroidとiOSバージョンにこの機能をもたらすことは、ブラウジング時にユーザーにさらなるプライバシーを与えると言っている。同社は、この機能は、プライバシーについて特に注意したい人々に有用であり、政治活動家や敏感なトピックについて書いているジャーナリストにも有用であることを指摘している。

これらの新しいアップデートは、Mozilla が最近、Android 版 Firefox Focus にクロスサイトトラッキングに対抗するために使用する Total Cooke Protection (トータルクッキープロテクション)の提供を開始したことに続くものだ。Total Cookie Protection の目的は、毎日訪れるサイトや検索している製品などの情報を企業が収集するクロスサイト・トラッキングを緩和することだ。Mozillaは2021年、Firefox Relayを発表した。これは、ユーザーのアイデンティティを保護するために、ユーザーの実際の電子メールアドレスを隠すための製品だ。

画像クレジット:David Tran / Getty Images

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(文:Aisha Malik、翻訳:Yuta Kaminishi)

全メンバーにとってベストな会議日時を教えてくれるチーム向けカレンダーアプリ「Rise」

チームワークに特化したカレンダーアプリに取り組む新しいスタートアップ、Rise(ライズ)を紹介する。Riseは、あなたが計画していることを確認、あなたのチームが今何をしているかをチェックし、さらに重要なこととして、チーム全体にとってできるだけ都合のよいミーティングをスケジュールするのを助ける。

現在プライベートベータ版であるRiseは、Lachy Groom(レイチーグルーム)、Stewart Buttlefield(スチュワート・バトルフィールド)、Adriaan Mol(アドリアン・モル)、そしてビジネスエンジェルたちの長いリストから300万ドル(約3億4500万円)を調達した。

上のスクリーンショットを見る限り、Riseは多くのカレンダーアプリと同じように見える。しかし、主な差別化機能は、スケジュール管理エンジンで、そのおかげで次の会議の最適な開始時間について考える必要がない。Calendly(カレンダリー)のリンクは必要ないのだ

アカウントを作成すると、Riseはあなたにとっての完璧な1週間を設定するよう求める。つまり、あなたの1週間の青写真のようなものだ。例えば、午前中のミーティングは苦手という人もいるだろう。逆に、ミーティングに適した時間帯を設定することもできる。Riseは、1週間をミーティングタイムとフォーカスタイムに分ける。

チームがRiseに登録したら、コマンドバーを開いて「来週、サムとサラとミーティング」などと入力すれば、新しいミーティングを作成することができる。アプリは自動的に情報を解析し、あなたが他の2人のチームメンバーと新しいミーティングを予定したいことを理解する。

Riseは、すべての参加者の空き時間、タイムブロック、およびプリファレンスをチェックする。裏側では、各時間帯のランキングアルゴリズムがあり、Riseは最も良いランキングの結果を選ぶ。その結果、チームメンバー全員が集中するための時間を取り戻すことができる。

このスタートアップは、SaaS(Software-as-a-Service)方式で、毎月のサブスクリプションを提供したいと考えている。チームはRiseを使い始める前に、自分のアカウントをRiseに接続し、Riseをずっと使っていたらどれだけ時間を節約できたかを見ることができる。

もしRiseが多くの企業にカレンダーを使うように説得できれば、社外の人とのミーティングにおもしろいネットワーク効果が期待できるかもしれない。例えば、Riseを使っている2つの会社の間で、関係者全員にとって適切なタイミングで、Riseが自動的にミーティングをスケジュールしてくれるかもしれない。

Riseを使用していない人とのミーティングのスケジュールに関しては、明白な解決策はない。Calendlyは、忙しい人が空き時間のリンクを共有するための一般的なオプションであり、Riseはこの面でいくつかの既存の競合があることを認識している。

「空室状況をすばやくコピー&ペーストしたり、カレンダーのランディングページを作成したりと、類似の製品にあるような、明らかに追加できることがいくつかあります。しかし、そのような機能を提供するすばらしい製品もすでにあり、本当に10倍の飛躍を遂げるのは難しいでしょう」と、Riseの共同設立者であるRick Pastoor(リック・パストーア)氏は私に語ってくれた。

パストーア氏は「GRIP(グリップ)」というプロダクティヴィティについての本も書いており、オランダで好評を得ている。その著書は75000 部以上も売れている。Riseは、最近出現しているカレンダーのスタートアップの新しい波の一部で、Cron(クロン)、Hera(ヘラ)、Amie(アミー)などと競合することになる。

Riseは、時間管理に関する意見を述べることで、競合他社に差をつけられると考えている。「私たちは、ノブやオプションでいっぱいのコックピットを作りたいとは思いません。私たちは、ユーザーやチームが最も重要なことに到達するのを助けたいのです。そのためには、最初のインプットが必要ですが、実は、スケジュールを指定しなくても、時間管理を確実に把握できるようになれば、すぐにでも、それらを移動させたいと思っています」とパストーア氏は述べている。

画像クレジット:Rise

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(文:Romain Dillet、翻訳:Yuta Kaminishi)

「思いつき」をShazamのように広範な知識ベースと検索、照合、整理してくれるメモアプリ「Weavit」

同名の新しいアプリで「Shazam for your thoughts(あなたのインスピレーションをShazamのように検索)」しようと試みるWeavit(ウィービット)。同社はボタンを押すだけで自分の考えをすばやくメモツールに取り込み、それをより広範な知識ベースのコンテンツと照合するという、今までになかった手段をユーザーに提供する。Weavitアプリでは、メモを連絡先、会議、トピック、その他のウェブリンクにリンクさせ、アイデアや思いつきを、構造化して整理しなくても、書き留めておくことができる。

Weavitの創業者によると、これは脳の働きに似ている、という。

共同創業者であるKomal Narwani(コマル・ナルワニ)氏は次のように説明する。「私たちの頭の中にあるアイデアは、いずれもまったく構造化されておらず、すでにあるノートには収まりません」「思いついたことを吐き出し、機械に整理してもらえば、後からその情報を取り出し、きちんと整理し直すことができます」。

このアプリでは、アイデアをタイプ(あるいは口述)してWeavitのデータベースに入力する。

アプリは自然言語処理(NLP)技術を用いて、メモの中の特定の項目を、人や場所、イベントなど、アプリにすでに存在するトピックにリンクさせる。例えばCESで誰かに会ったと入力すると、「CES」はイベントとして認識され、「CES」が含まれる他のコンテンツにリンクされる(Weavitは6000万以上のWikipediaのトピックに接続され、このようなリンクをサポートしている)。さらに、メモに出てくる人を特定し、その人の会社、過去に会った場所や会議などにリンクさせることもできる。

画像クレジット:Weavit

このような自動リンクにより、自分の既存の知識をベースにしてアイデアを書き留めることが容易になる。Weavitはハッシュタグや@メンションなどの一般的なツールもサポートしているので、必要に応じて手動でリンクさせることも可能だ。

Weavitの共同創業者、Emmanuel Lefort(エマニュエル・ルフォート)氏は、過去の銀行勤務の経験からこのメモアプリのアイデアを思いついた。銀行では、営業担当者が顧客に金融商品を販売する際、パーソナルネットワークの中にある潜在的な情報を十分に利用できていなかった。そこで同氏は、CRM(顧客関係管理)ツールに入力しなくても、自動的に情報を結びつけることができる手段があれば面白いかも、と考えたのだ。

まだ初期段階にあるWeavitでは、ユーザーのコンテンツを社内のような分散型ネットワークに接続することはできない。これはもっと長期的な目標である。

その代わり、Weavitのアプリに記録されたものはすべて非開示で暗号化されている(データは転送中も暗号化されるという)。

Weavitは今のところiOS版のみ。まだテストの初期段階で、アクセスコードを持つユーザーだけが利用できる。

このアプリを試したいTechCrunchの読者は、コード「braincrunch」を使ってほしい。

画像クレジット:Weavit

Markdownベースの知識管理ツールであるRoam ResearchObsidianのような、グラフデータベースを搭載した(あるいはグラフデータベースに似た)ツールがある中で、ナルワニ氏によると、Weavitはより親しみやすいアプリとしてニッチを埋めることができるという。これらの生産性アプリは、より複雑で強力である反面、特に技術的な知識を持たない一般のユーザーにとっては複雑で導入が難しい。これに対し、Weavitは、仕事や研究に関するメモだけでなく、おすすめの映画や子供の先生の名前、後で見たい特定のテーマに関するウェブサイトなど、日常的な情報を記憶し、整理してリンクしてくれる。

2020年、WeavitはFluxus Ventures(フルクサスベンチャーズ)が主導したシードラウンドで125万ドル(約1億4000万円)を調達。香港を拠点に6人がフルタイムで活動している。

最低限の機能だけを備えたアプリのプロトタイプは2021年から公開されていたが、同社はユーザーからのフィードバックをもとにアプリを再編成して、2021年12月に再ローンチした。つまり、現在公開されているバージョンは、まだApp Storeに公開されてから数週間しか経っていない。同社によると、新バージョンのWeavitは、最初の10日間で1500件のサインアップを獲得したという。

Weavitチームはウェブアプリにも取り組んでいて、ブラウジング中に画像やウェブページをキャプチャするChromeの拡張機能が間もなくリリース予定。自分の考えやアイデア、インスピレーションだけでなく、ウェブ上のコンテンツも収集できるようになる。チームはAndroidアプリも開発中である。

画像クレジット:Weavit

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

Google Playにゲームやアプリのお得情報を表示する「Offers」タブが追加

Googleは、Google Playでユーザーがゲームやアプリのさまざまな売買取引を見つけやすくするために「Offers」タブを導入する、と米国時間01/27にGoogleが発表した。旅行やショッピング、メディア、フィットネス、エンターテインメントなどに関する売買取引がこのタブにまとめられている。タブの提供は数週間後に米国とインドとインドネシア、その他の国は2022年の後半になる。

タブには「あなたのお好きなアプリの提供」というコーナーがあり、ユーザーは自分に合った特典を見つけられる。提供方法も数種類あり、ユーザーはそこから見つける。例えば売りたいゲームや、マジックオーブやトークンなどゲーム内のアイテムの、制限時間内の提供などもある。また、ごほうびの表示では、アプリに無料のデリバリーや無料の乗車などがあると、それらがごほうびになる。その他の取引科目としては、貸借や売買によるムービーや本の提供がある。また、新しいアプリの30日無料試用や、その他のアイテムの無料提供もある。

Google PlayのプロダクトマネージャーDavid Winer(デビッド・ウィナー)氏は、ブログで「2012年からGoogle Playは、あなたのお好きなアプリやゲームやデジタルコンテンツを見つけて楽しむためのワンストップショップでした。今週立ち上げる『Offers』は、Google Play Storeアプリの新しいタブです」と述べている。

OffersタブはGoogle Playアプリの下の方のナビゲーションバーにある。現在のところ、どんな特典があるかな?と探すのに便利な場所だ。Googleによると、人気上位アプリやゲームの開発者とパートナーして、新しい特典を頻繁に追加していきたいそうだ。

画像クレジット:Google

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hiroshi Iwatani)

【コラム】10代によるテスラ車のハックを教訓にするべきだ

Tesla(テスラ)をハックした19歳のDavid Colombo(デビッド・コロンボ)が騒がれるのは、当然といえば当然の話だ。彼はサードパーティソフトウェアの欠陥を利用して、13カ国にわたる世界的EVメーカーの車両25台にリモートアクセスした。ハッカーは、遠隔操作でドアのロックを解除し、窓を開け、音楽を流し、それぞれの車両を始動させることができたと話している。

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コロンボ氏が悪用した脆弱性はTeslaのソフトウェアのものではなく、サードパーティのアプリに存在するもので、そのためできることに限界があり、ハンドルやアクセルそして加速も減速もできなかった。しかし彼はドアを開け、クラクションを鳴らし、ライトを制御し、ハッキングした車両から個人情報を収集した。

サイバーセキュリティのプロにとって、このようなリモートでのコードの実行や、アプリキーを盗むのは日常茶飯事だが、私が恐れるのは、情報漏洩の開示に慣れてしまい、今回の件がコネクテッドカーのエコシステム全体の関係者にとって貴重な学習の機会であることが見逃されてしまうことだ。

今回のハッキングは、サイバーセキュリティの初歩的な問題であり、率直にいって起きてはならない過ちだ。コロンボ氏がTwitterのスレッドを投稿して通知した翌日に、Teslaが突然数千の認証トークンを非推奨にしたことから、問題のサードパーティ製ソフトウェアは、セルフホスティングのデータロガーだった可能性があるのだという。一部のTwitterユーザーの中にはこの説を支持する人もおり、アプリの初期設定によって、誰でも車両にリモートアクセスできる可能性が残されていることを指摘している。これは、コロンボ氏による最初のツイートで、脆弱性は「Teslaではなく、所有者の責任」と主張したこととも符合する。

最近の自動車サイバーセキュリティ規格SAE/ISO-21434と国連規則155は、自動車メーカー(通称、OEM)に車両アーキテクチャ全体に対する脅威分析とリスク評価(threat analysis and risk assessment、TARA)の実施を義務化している。これらの規制により、OEMは車両のサイバーリスクと暴露の責任を負う。つまり、そこが最終責任になる。

Teslaのような洗練されたOEM企業が、サードパーティのアプリケーションにAPIを開放するリスクを看過していたのは、少々らしくないような気もする。しかし低品質のアプリは十分に保護されていない可能性があり、今回のケースのように、ハッカーがその弱点を突いてアプリを車内への橋渡しとして使用することが可能になる。サードパーティ製アプリの信頼性は、自動車メーカーに委ねられている。自動車メーカーの責任として、アプリを審査するか、少なくとも認証されていないサードパーティアプリプロバイダーとのAPIのインターフェイスをブロックする必要がある。

たしかに、OEMが検査し承認したアプリストアからアプリをダウンロードし、アップデートすることは消費者の責任でもある。しかしOEMの責任の一部は、そのTARAプロセスでそうしたリスクを特定し、未承認アプリの車両へのアクセスをブロックすることにある。

私たちKaramba Securityは、2021年に数十件のTARAプロジェクトを実施したが、OEMのセキュリティ対策には大きなばらつきが散見された。しかながらOEMは、顧客の安全性を維持し、新しい規格や規制に対応するためにできるだけ多くのリスクを特定し、生産前に対処することを最重要視している点で共通している。

ここでは、私たちが推奨するOEMメーカーが採用すべきベストプラクティスを紹介する。

  1. 秘密と証明書を保護する – 広義のなりすましや身分詐称を確実に失敗させる(ファームウェアを置き換える、認証情報を詐称するなど)
  2. アクセスや機能をセグメント化する(ユーザーに対して透過的な方法で) – たとえ1つのポイントが失敗しても、被害は限定的になる
  3. 自分自身で継続的にテストする(あるいは他の人にやってもらうために報奨金プログラムを立ち上げる) – 見つけたものはすぐに修正する
  4. インフォテインメント、テレマティクス、車載充電器などの外部接続システムを堅牢化し、リモートコード実行攻撃から保護する
  5. APIをクローズアップする。未許可の第三者には使用させないこと。このような習慣があれば、今回の攻撃は免れたはずだ

消費者に対しては、OEMのストア以外からアプリを絶対にダウンロードしないことをアドバイスしている。どんなに魅力的に見えても、非公認アプリは運転者や乗客のプライバシーを危険にさらしていることがある。

EVは楽しいものだ。高度な接続性を有し、常に更新されすばらしいユーザー体験を提供しれくれる。しかし、EVは自動車であり、スマートフォンではない。自動車がハッキングされると、ドライバーの安全とプライバシーを危険にさらすことになる。

編集部注:本稿の執筆者Assaf Harel(アサフ・アレル)氏は、Karamba Securityで研究とイノベーション活動を指揮し、革新的な製品とサービスの広範なIPポートフォリオを監督している。

画像クレジット:SOPA Images/Getty Images

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(文:Assaf Harel、翻訳:Hiroshi Iwatani)

長年にわたり物議を醸す犯罪追跡アプリのCitizenが災害対策アプリのHarborを買収

犯罪監視アプリのCitizen(シチズン)は米国時間1月26日、防災アプリや技術を扱うHarbor(ハーバー)を買収すると発表した。Citizenにとって初めての買収だが、同社は金額などを明らかにしていない。

「公共安全の変革は大規模な事業です。私たちのミッションをグローバルに加速させるために、すばらしいチームと一連の製品が必要となります。Harborの買収は、その技術、製品、チームを含め、私たちにとって大きな喜びです」とCitizenの創業者でCEOのAndrew Frame(アンドリュー・フレーム)氏はプレスリリースで述べた。

公開されている911(日本の110番に相当)の記録簿をもとに、スタッフが検証したデータによると、Citizenは米国内の60都市で毎日2000万件以上の緊急通報を配信しているという。以前は、ユーザーがCitizenに直接事件を報告することができたが、現在は同社のウェブサイトで、代わりに911に電話するように勧めている。

1年半ほど前にシードラウンドで500万ドル(約5億7500万円)を調達したHarborは、火災や地震などの危機に備えるプロセスをゲーム化した。2020年10月にスタートしたこのアプリは、ユーザーに郵便番号の入力を求める。そして、どのような災害が自分に降りかかる可能性が高いかを教えてくれる(ちょっと恐い感じがするが)。

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Harborはユーザーに、数分でできる準備作業を毎週提示する。処理すべき大量の緊急事態リストを一度に押しつけることはしない。最初は煙探知機のチェックや非常持ち出し袋の準備などから始まり、徐々にCPR(心肺蘇生法)の習得など、より時間のかかる安全対策に取り組んでもらう。

「私たちのチームがCitizenと、同社が掲げる世界をより安全な場所にするという使命に参加できることは、これ以上ない幸せです」とHarborのCEOであるDan Kessler(ダン・ケスラー)氏は話す。同氏は、Citizenに最高事業責任者として加わる。「モバイルセーフティーに関わる新しい技術カテゴリーを構築し続けるために、私たちが一緒にできることはたくさんあります」。

この買収は、Citizenがユーザーに、近隣で起きた事件に関して不安を煽るような警告を送らずに、安全を維持する方法を提供するのに役立つ可能性がある。同社は最近、月額20ドル(約2300円)のサービスProtectを開始した。ユーザーは、危険を感じるものの911に電話するほどではない場合に、Citizenのエージェントに連絡できる。同社はTechCrunchに、Protectのユーザー数は現在10万人だと述べた。

現在、無料アプリ全体で1000万人のユーザーを抱えるCitizenは、長年にわたってさまざまな論争に巻き込まれてきた。2016年から、このアプリ(以前は「Vigilante」と呼ばれていた)は、危険や身体的被害につながる可能性のある活動を奨励したとして、App Storeから削除された(このアプリの開発で示唆したのは、一般人は犯罪の問題に「グループで」アプローチすることだと、同社は立ち上げ時に記している)。

またこのアプリは、後日無実と判明した放火犯容疑者の情報に対して3万ドル(約345万円)を支払うと提案したり、通報があった犯罪の現場を調べるために民間の警備員を送ろうとしたことでも、非難を浴びたことがある。

画像クレジット:Bloomberg / Contributor / Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi

透明性の高いソフトウェアサプライチェーン構築を支援するCodenotaryが約14.2億円調達

開発チームが透明性の高いソフトウェアサプライチェーンを簡単に構築できるサービスを提供するCodenotary(オープンソースでイミュータブルで人気のimmudbの開発元でもある)は米国時間1月24日、Bluwat、Elaiaなどの新規および既存の投資家から1250万ドル(約14億2000万円)のシリーズBラウンドを調達したことを発表した。この新ラウンドにより、2021年7月に行われた550万ドル(約6億2000万円)のシリーズAラウンドを含め、同社の資金調達総額は1800万ドル(約20億2000万円)に達した。

Codenotaryは、以前Qumranetを共同設立したCEOのMoshe Bar(モシェ・バー)氏とCTOのDennis Zimmer(デニス・ジマー)氏によって設立され、DevOpsサイクルにおけるすべてのコンポーネントを識別・追跡できるよう支援する。つまり、サプライチェーンに対する攻撃やLog4jのような脆弱性がある場合、企業がこれらのライブラリがどこで使われているかを把握し、潜在的な被害の広がりを最小限に抑えることがはるかに容易になる。これらの情報はすべて、改ざん不可能な履歴システムを提供する台帳データベースであるimmudb上にあるため(ブロックチェーンを頼らずに)、ユーザーはこれらの情報を完全に信頼することができるはずだ。Codenotaryをソフトウェアのサプライチェーンに追加すると、サービスはそれに基づいて自動的に部品表を作成する。

画像クレジット: Codenotary

バー氏によると「私たちのミッションは、オープンソースでも、エンタープライズの内製でも、企業のどのようなアプリケーション開発でも、そのすべての成果物を信頼できるようにすることだ。会社を始めたときは、誰がどこを担当しているか、彼らがいつ何をしたかなど、すべての開発関連情報が安全で不正アクセスが起こり得ないことを目指した」という。当時、Codenotaryにはそのような要求を満たすデータベースがなかったので、チームがそれを自作した。バー氏によると、immudbはブロックチェーンから得られるものと同じような暗号検証を、はるかにパフォーマンスの良いデータベースの形で提供する。

 

「Codenotaryは、DevOpsサイクルにおけるすべてのコンポーネントを迅速に識別・追跡し、無数のアプリケーションの信頼性と完全性を回復するためのソリューションを提供しています」と、同社の初期投資家であるスイスのBluwat AGのシニアパートナーであるPascal Blum(パスカル・ブルーム)氏はいう。「Codenotaryの主要なイミュータブルデータベースであるimmudbと組み合わせることで、同社はこの新たな市場でリーダーの地位を獲得しています」。

現在、同サービスの顧客は100社を超え、そのほとんどを公表することはできないが、世界最大級の銀行も含まれていると同チームはいう。

CTOのジマー氏によると、Codenotaryの顧客の多くは、まずソフトウェアパイプラインにこのサービスを導入し、ソースから製品までのソフトウェアの出所を証明できるようにする。その顧客層は、小規模なソフトウェア開発会社から大規模なERP企業までさまざまで、例えば、新しいリリースにかけた品質保証作業を公開したり、自社のソフトウェアを使用する外部顧客に部品表を提供するために、このサービスを利用することが多いと、同氏は指摘している。バー氏が付け加えたように、こうした問題を最前線で考えているのは、金融機関や政府機関であることが多い。

Codenotaryは、今回の資金調達により、製品開発を加速させ、マーケティングと販売を世界的に拡大する計画だという。

画像クレジット:boonchai wedmakawand/Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

アップル、パンデミックの影響を受け続ける一部デベロッパーに対してアプリ内購入免除の特例措置を再度延長

パンデミックはまだ終わっていない、とAppleはいう。同社は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のためにバーチャル開催を強いられた一部サービスのための、アプリデベロッパーがアプリ内購入システムを回避することを認めるというCOVID時代のApp Store猶予措置を再び延長した。具体的にAppleは「有料オンライングループサービス」を提供するアプリはアプリ内購入を利用しなければならないとするApp Store Reviewガイドライン3.1.1の適用を引き続き延期する。

影響を受けているデベロッパー(元来のビジネスモデルが、バーチャルではなく、対面イベントを中心に作られていた)は、パンデミック中、アプリ内購入を使用しなくてはならないというAppleの要件に従わずにすんでいる。

当初Appleは,1対1のサービスに限りアプリ内購入要件を免除した。医者と患者による医療相談や、教師と生徒の個人指導、不動産屋と顧客の物件ツアー、トレーナーと顧客のフィットネストレーニングなどだ。しかしAppleはその後すぐ、グループサービスのイベントから手数料の徴収を続けることは世界的パンデミック下で小企業に害を及ぼすとMeta(Facebook)から批判された

もちろんFacebookには別の思惑があった。自社の決済システムで手数料を免除していたFacebook Pay(フェイスブック・ペイ)を、Appleのアプリ内購入の代わりに使うことをAppleに認めさせたかったのだ。一時的にせよ、Appleがそれを認めれば、Facebookは何千何万人のユーザーを自社の決済エコシステムに引き込むことができる。

そうではなく、Appleは自社の手数料をオンライングループサービスに対しても一時的に免除した。オンラインセミナーやグループ・ヨガクラスなど、1対少人数や1対多人数のイベントも含まれる。これによってAppleは、パンデミックの打撃を受けている小企業から利益を上げているというMetaの批判に答え、かつFacebook Payには何の利益も与えない。

しかしパンデミックが長引くにつれAppleは、猶予期間が過ぎて対象企業がAppleのアプリ内購入システムに戻る期限を延期せざるを得なくなった。2020年11月、Appleは猶予期間を2021年6月までに延長した。そして2021年4月、同社は期限を2021年12月31日まで延期した。2021年11月、Appleは期限が迫っていることをデベロッパーに再通知した。

悲しいかな、オミクロン株の影響によってAppleは再度期限を延ばすことになった。

現在同社は、対象デベロッパーは2022年6月30日まで、Appleのアプリ内購入システムに戻ることを猶予されるとしている。この日は、失った収入源を取り戻し始められることが確実だとAppleが期待している日付に違いない。

さらに同社は、アカウント作成が可能なアプリ内にアカウント削除機能を実装する期限も延長したことを示した。「この要件の実装の複雑さ」が理由だ。つまり、もともと時間がかかり実装が困難な変更が、店舗の閉鎖や新型コロナによる従業員の病休や子どもの家庭でのバーチャル授業などによって、いっそう大変になっているということだ。

この延長は、先週末Appleのデベロッパーサイトの投稿で静かに発表された。それはAppleのアプリ内購入ビジネスモデルがさまざまな角度から攻撃されているさなかだった。同社のEpic Games(エピックゲームズ)と裁判は現在上訴中であり、つい最近オランダ規制当局からは、デベロッパーのサードパーティー決済に自社のアプリ内購入インフラストラクチャーの使用を強制していることは反トラスト法に違反しているとして罰金を課された。さらに同社は、最近韓国でもアプリ内決済をめぐる同様の規則に従わざるを得なかった

関連記事:オランダ当局がアップルに約6.4億円の罰金、出会い系アプリの独占禁止法違反で

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

コロナ禍での友達同士の出会いを支援するアプリ「Flox」がNYの大学生に人気

新成人の困難に勝るものはないが、ロックダウンの中、人格形成期を過ごした大学生の年齢のZ世代にとって、有意義な友達づくりはさらに難しくなる可能性がある。パンデミック中はコロンビア大学のリモート授業に参加していたJamie Lee(ジェイミー・リー)氏は、この隔離がいかに同級生、特にクラスメイトと一度も顔を合わせることなく通学する2~3年生に影響したかに気づいた。

「ミドルスクールでInstagramをダウンロードしてから、オンラインで常に私自身を個人として表現してきましたが、オンラインでリアルに自己表現するのをとても不安に感じました」と、リー氏はいう。「『それじゃ、どうやってみんなとリアルにつながる方法を探そうか?』という考えを受け入れたかったのです。そして一番リアルな存在である友人と一緒に行うのが最善策だと思いました」。

2020年夏、リー氏はFlox(フロックス)のノーコードのベータ版を立ち上げた。人々が会うのを助けるアプリである。プロフィールを作成してマッチするTinder(ティンダー)、Hinge(ヒンジ) 、Bumble(バンブル)のようなもので、グループとしてサインインしてから他の友人グループとつながるだけでよい。

「利用者からはオンラインで体験したものの中で一番楽しいとのフィードバックをもらいました。私にとってはターニングポイントでした。これはとても本気のものになり得る、これをやるなら今だと思いました」とリー氏はいう。

そうして彼女はアプリに全力を挙げるため、コロンビア大学卒業まであと1年を残して中退した。

画像クレジット:Flox

2021年2月、リー氏と2人のフルタイム勤務のエンジニアは(彼女のチームの範囲では)約250人の利用者を対象にアルファテストを実施し、ニューヨークシティだけで学部生と最近の卒業生にプライベートなベータテストを開発した。これまでに順番待ちの利用者は2万人に達したが、リー氏は2021年11月頃にFloxを順番待ちしている大学生の年齢のニューヨーカーにも公開し始めると述べた。後に他の都市にも拡大する。さらに、FloxはHoneycomb Asset Management (ハニーコムアセットマネジメント)が主導しBBG Ventures(BBGベンチャーズ)とBanana Capital(バナナキャピタル)が参加した120万ドル(約1億3662億円)の資金調達ラウンドを終えた。

「正直なところ、最初のラウンドは驚くほど難しかったです。私はプエルトリコ人であり中国人です。当時21歳で、これに関する経歴もないし、コロンビアも退学しました」とリー氏は述べた。「こういう会話に入る上で、そもそもみなさんから私に関するご意見があるに違いないと思います。ピッチミーティングではもっとZuck(ザック)のようになれと言われました」。

リー氏は彼女自身の年齢層の人々のためにプラットフォームを開発する創設者として、賢いやり方でアプリを市場に出した。利用者にはリアルに感じて欲しいと考えた。そこで、TikTok(ティックトック)利用者でもあるオーディエンスに会い、アプリの販促用の動画を投稿したところ三つの投稿で閲覧数は180万回とバズった。

「トイレにも1人で行けないのに」リー氏はあるTikTokでいう。「なぜ1人で出会いアプリを使っているの?」。

@jamietylerlee

WELCOME TO FLOX. Waitlist early access in bio #startup #entrepreneur #app #friends #dating #fyp #selfimprovement #watchmegrow #tech #foryou

♬ original sound – Jamie Lee

Floxはグループ基準のソーシャルネットワーキングを試みる初のアプリではない。Tinderは友人とグループに参加し、他のグループとマッチする機能を持つTinder Social(ティンダーソーシャル)にこのアイデアを反映していた。しかし2016年の前途多難なスタートのあとたった1年ほどでこの機能は終了した。不注意にも、自身の連絡先からTinderのアカウントを持っている人を特定できたからである。リー氏は、Tinder SocialがうまくいかなかったのはTinderがすでに出会い(ナンパ)アプリとしてのブランドを確立していて、利用者1人がそのプロフィールを持っていると、同じバージョンの自分を友人やデート相手となる可能性がある人に見せることになったからだと考えている。

「個人に焦点を当てることはやめたいと考えています。それはデートを指すからです」とリー氏。「グループのアイデンティティを受け入れたいと思います。そうすればフロックは『アパートメント11』と呼ばれるかもしれません。グループを構成している人々よりも、誰がグループを立ち上げているかを見られます。強調されることを入れ替えているのです」。新たな人に会うことに焦点を置きながら、リー氏はFloxのグループ(フロック)を作る友人同士も近付くことを望んでいる。

Bumbleも出会いアプリとして始まったが、友達を作りビジネスパートナーを見つけるモードもある。リー氏は、Bumble BFF(バンブルBFF)をFloxのインスピレーションとして言及するが、彼女がアプリを使用したとき、ほとんどの人が新しく友達を作るよりもルームメイトを探しているように見えた。

画像クレジット:Flox

「Z世代は最も孤独で、不安で、落ち込んだ世代です。友人が必要な人はとてもたくさんいます」。リー氏は述べた。「しかし、『一対一の友情アプリを使用すること』にともなう社会的スティグマがあります。不運にも、一対一で友達を探すとき、相手や、あなたがBumble BFFを使用していることを知っているかもしれない誰かに、あなたが友人がおらず、希望する立ち位置に自らを置いていないことを示唆することがよくあります。そのため、私達のFloxの目標は、より快適に、安全に、楽しくすること、そして友人探しの裏にある社会的スティグマを取り除くことです」。

このアプリは、人は現在の友人に無視されると、新たな人と会うことを最も心地よく感じるというリー氏の仮説に依存する。しかし集団力学によって安全の層が新たに備わる。Floxは出会いアプリではないが、リー氏は一部の人がその目的でアプリを使用することを知っている。しかし、グループの中の人と出会うことで、他人と一対一で会うことにつきまとうリスクの軽減に役立つ可能性がある。

「2~3年前に住んでいた街で、出会いアプリで散々な目に遭いました。私はその出来事を報告しましたが何も措置が取られず、そのプラットフォームでは守られている感覚を得られませんでした」とリー氏はいう。「2020年、利用者と初めてお話ししたとき、利用者は『出会いアプリで他者に会うのは不安。一対一では安全ではないと感じるから。』と言っていました。そのため、私達はもっと心地よく、安全に人と会えるこの環境を提供したいのです」。

Floxの最近のシードラウンドにより、リー氏はアプリを構築し、利用者をどんどん増やし続けることを願っている。同時に、アプリ体験が既存の利用者にとって肯定的でリアルな物であり続けるよう慎重に進めたいとしている。

画像クレジット:Flox

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Dragonfly)

ケニア政府、デジタル金融機関のデータプライバシー問題で厳重な取り締まり

2021年10月下旬、ケニアの国会で新しい法律が可決された。同法は、顧客の守秘義務に違反した事業者の許可を取り消す権限を金融規制当局に与える条項を追加している。これにともない、デジタル金融機関は、融資不履行者の個人データを第三者と共有することで、同国において免許取り消しのリスクを負うことになる。

典型的に融資アプリは、連絡先を含む借り手の電話データを収集し、メッセージへのアクセスを要求してモバイルマネー取引の履歴をチェックする。クレジットスコアリングやローン支払いの要件として参照されるものだ。悪質な金融機関はその後、借り手が債務不履行に陥った際に、実行された融資を回収する目的で、収集された連絡先情報の一部を使用する。複数の報道によると、デジタル金融機関は、友人や家族に電話をするなどして借り手に借金の返済を強要するような、デット・シェイミング(debt-shaming、債務の状態をさらしあげることによって、はずかしめたり、非難するような行為)手法に訴えているという。

今回の法改正は、高額の無担保ローンを提供する悪質なデジタル金融機関から市民を保護するためにケニアの議員が講じている多数の対策に追加されることになる。これにより、規制当局であるCentral Bank of Kenya(ケニア中央銀行)は、一定の自主規制期間の後、独立したデジタル金融機関(銀行と提携していない)の業務を監督する権限が付与される。今後は、ケニアで事業を行うにはライセンスを取得する必要が出てくる。これまでは登録するだけだったが、それが悪質なアプリの急増を招くことになった。

このケニア中央銀行に関する2021年改正法案では、規制当局に対し、金利に上限を設けたり「データ保護法または消費者保護法の条件」に違反したデジタル金融機関のライセンスを一時停止または取り消す権限も与えている。

ケニアのデータ保護法では、企業はデータを収集する理由を顧客に開示するよう義務付けられている。また、借り手の機密情報が不正な第三者によって侵害されないよう保証する。この動きの背景には、消費者向けロビー活動が、顧客情報をデータやマーケティング企業と共有しているとしてローンアプリを非難していることがある。

デジタル金融機関はまた、プロダクトに関するすべての情報を開示することが求められ、これには価格設定の詳細、債務不履行者に対する罰則、債務回復の手段などが含まれる。これは、プロダクトやサービスの購入に関するすべての条件を消費者に開示することを販売者に義務付けている消費者保護法に沿ったものだ。ほぼすべての融資アプリが、ケニアでの借金を回収するためにデット・シェイミング手法を用いていることが明らかになっている。

ケニアにはおよそ100ものモバイル融資アプリがあり、その中には中国の大手ブラウジング企業Opera(オペラ)が所有するOkashやOpesaも含まれている。両社ともケニアで略奪的な融資戦術を用いているとの主張に直面している。OkashやOpesaをはじめとする数十のローンアプリが、法外な金利と搾取的な条件を設定していたことが判明した。例えば、Google Play Storeのポリシーでは60日ローンと規定されていながら、OkashやOpesaは30日ローンとなっていた。中国の2つのローンアプリの金利は法外で、年間876%に達している。銀行の年間金利にしても20%は滅多に超えない。サンフランシスコに拠点を置くBranch International Ltd.(ブランチ・インターナショナル)やPayPal(ペイパル)が支援するTalaなどの他のアプリでも、年利がそれぞれ156~348%、84~152.4%と、恐喝的なレートが使われていることが判明した。

月額約4000万ドル(約45億円)を支出する25のデジタル金融機関を代表する金融機関ロビー団体がTechCrunchに語ったところによると、メンバーは金利の上限設定について懸念を表明したが、特に彼らのフィードバックが受け入れられたことを受けて、新しい法律には満足しているという。同団体は、最低資本金規制や預金割り当ての撤廃、新技術や新プロダクトの規制権限の委譲を求めてロビー活動を行ってきた。

Digital Lenders Association of Kenya(ケニアデジタル金融業協会)の会長であるKevin Mutiso(ケビン・ムティソ)氏は次のように述べている。「この分野が規制され、中央銀行(規制当局)へのアクセスが可能になり、紛争規制の仕組みも導入されることを喜ばしく思っています。しかし、私たちが懸念しているのは価格統制であり、これにはあまり感心していません。金利の上限を設定した瞬間に融資は行われなくなります。私たちは神経質になっていますが、それは公正なことです」。

しかしムティソ氏によると、規制が整備されれば、金融機関は規制当局をはじめとするパートナーと協力して融資をより強固なものにすることができ、同国の融資市場の拡大に役立つという。

「規制の欠如は市場を予測不能にしていました。今なら私たちに何ができ、何ができないかがわかります。また、私たちはより良い債務回収慣行を持つことになります」とムティソ氏は語る。

「この法律により、ケニアは世界でナンバーワンのフィンテック市場になると私たちは考えています。なぜなら金融機関や借入者から期待されることなど、今はすべてが明らかだからです。私たちはまた、顧客、特にMSME(零細・中小企業)にとってより良いプロダクトを目にすることになるでしょう」と同氏は続けた。

これらのアプリは無担保ローンを提供しているため、当座の現金を求めている借り手や、口座履歴などの前提条件により銀行から締め出されることが多い借り手にとって魅力的なものとなっている。

デジタルクレジットは簡単に利用できるが、保有期間が短いために高額である。また、アクセスが容易なために複数のアプリからの借り入れが発生し、債務の逼迫やクレジットスコアの低下につながり、将来的に銀行からクレジットを取得する借り手の能力に影響を与える。

Kenya Bankers Association(ケニア銀行協会)の調査によると、利便性とアクセスの容易さが、クレジットにアクセスするプラットフォームを決定する際に顧客が考慮する主な理由であることが示されている。

この調査では、自営業者は通常のクレジットよりもデジタルを好むことが明らかになった。これは、彼らが業務を行っている間に経験する流動性の変化に起因するものであり、緊急時にもローンアプリが好まれることが指摘されている。

新しい法律では、規制当局に対し、クレジットコストを設定する際にデジタル金融機関が準拠する価格パラメータを決定する権限が与えられている。

法外な金利はケニアに限ったことではない。インドでは、融資アプリに週当たり60%もの高い金利が設定されていることが判明した。南アジアの国では、融資回収業者による嫌がらせの後に自殺した人々の報告があった。

西アフリカ諸国でも、地域最大の市場の1つであるナイジェリアを含め、融資アプリが急増している。

調査と政策提言を行うConsultative Group to Assist the Poor(CGAP、貧困層支援協議グループ)の報告書でも、タンザニアの2000万人もの借り手のデジタルローンのデフォルト率と延滞率が高いことが明らかになった。ほとんどの借り手は緊急事態や投資のためではなく、日々の必要性のために融資を利用している、と同報告書には記されている。

「これらの数字を減らすために規制当局ができる最も重要なことの1つは、融資条件の透明性を向上させ、顧客が情報に基づいた意思決定をしやすくすることです」とCGAPは述べている

同組織は、融資アプリを管理するためのより厳格な規則について勧告し、金融機関に融資条件の透明性を呼びかけた。

画像クレジット:Tala

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(文:Annie Njanja、翻訳:Dragonfly)

【コラム】暗号資産の規制が米国でスーパーアプリが生まれるきっかけになるかもしれない

今や、中国社会の大部分が「スーパーアプリ」と呼ばれるものに依存するようになった。診察の予約からタクシーの配車、ローンの申し込みに至るまで、さまざまなタスクを1つのプラットフォームでこなすWeChat(ウィーチャット)などのアプリのことだ。

米国ではこのようなワンストップショップが勢いに乗ることはなかったが、ついに米国でもそのときが来たのかもしれない。フィンテック業界、とりわけ暗号資産を専門とするプラットフォームからスーパーアプリが誕生する可能性が高いのだ。

株価の高騰と金利の記録的な低下、近い将来に起きるインフレへの不安などが重なり、暗号資産は急速に人気を集めている。米国政府が暗号資産を全面的に規制することを決定した場合(現在、米国議会はこの議題を検討している)、暗号資産の正当性はさらに高まるかもしれない。

今後、暗号資産の発行体が規制当局と連携し、消費者を保護しながら金融および投資に関する新たなオポチュニティを生み出すための妥協案を見いだせた場合、Coinbase(コインベース)などの暗号資産専用プラットフォームの他、PayPal(ペイパル)、Venmo(ヴェンモ)、Stripe(ストライプ)など、最近になって暗号資産による決済機能を追加したサービスが米国版のスーパーアプリに進化する可能性がある。消費者が暗号資産を安全かつ正当なもの、そして使いやすいものとして見ることができれば、これがスーパーアプリの基盤となり得るだろう。

関連記事:オンライン決済の巨人「Stripe」が暗号資産市場に再参入

これらの暗号資産アプリや決済アプリを拡大し、他のアプリやサービスと統合すれば、さまざまなタスクが便利になるはずだ。結局のところ、人は銀行に行くときにだけ資金管理のことを考えているわけではない。そもそも銀行口座を持っていない人も存在する。人は、買い物や旅行をするとき、診察料を払うときにも資金管理について考えており、こうしたアプリはそれぞれの人に必要な金融サービスを各個人に合わせて提供する助けとなるだろう。

暗号資産による決済を他のタスクと統合することは、金融業界を一般に広く行き渡るものに変えるという面でも大きなカギとなるだろう。暗号資産を普及させることで、十分なサービスを受けていないコミュニティの他、信用履歴がなくクレジットカードやローンの申し込みが困難な人に対し、より幅広い金融サービスを提供できるようになるからだ。

スーパーアプリの台頭

WeChatは2011年に中国国内のメッセージングアプリとしてサービスを開始したが、2013年には決済プラットフォームとしての機能を果たし、その後まもなく買い物や食料配達、タクシーの配車といったさまざまなサービスを展開するようになった。

今や、WeChatは何百万もの種類のサービスを提供しており、その大部分は、各企業がWeChat内で動作するミニアプリを開発し、そのミニアプリを通してサービスを提供する形となっている。10億人以上のユーザー数を誇るAliPay(アリペイ)の仕組みも同様だ。これら2つのアプリは、過去10年間で中国を現金主義経済からデジタル決済に大いに依存する経済へと変換したとして評価されている。デビットカードやクレジットカードが普及する中間段階を飛び越えた形での進化だ。

この仕組みはインドネシアをはじめ、同地域の他の国でも普及が進んでいる。ここでカギとなるのは、スーパーアプリのサービスの多くに、決済手段を含む金融サービスが搭載されているという点だ。

米国と欧州でも、こうしたアプリの使用は急増している。Apple(アップル)やFacebook(フェイスブック)、Google(グーグル)などの大手テック企業が決済サービスを追加し、VenmoやSquare(スクエア)といった複数の決済アプリがさらに普及するようになった一方で、スーパーアプリの出現はいまだに見られていない

その理由の1つは、データプライバシーに関する規制だ。米国、そして特に欧州におけるプライバシー規制によってアプリ間のデータ共有が制限されているため、アリペイなどのスーパーアプリにミニアプリを自動統合するようなエコシステムの構築が困難となっている。

また、以前から米国に充実したインターネットエコシステムがあることも理由の1つだ。フェイスブックなどの人気ソーシャルメディアやペイパルなどの決済サイトがスマートフォンの誕生以前から存在したため、1つのアプリが複数のサービスを提供する代わりに、これらのプラットフォームがそれぞれ別のアプリを展開する結果となっている。一方中国では、インターネットの大半がモバイルファーストで、スマートフォンの出現以降に進化している。米国市場は長きにわたり、各タスクについて別個のプラットフォームを使用する形態に慣れていたというわけだ。

しかし、アナリストの多くは、さまざまなアプリやテック企業がサービスの種類を拡大している点(例えばTikTok(ティックトック)はショッピング機能を追加し、Snapchat(スナップチャット)はゲーム用のミニアプリを統合し、Appleは決済業界に参入)を指摘し、米国でもいずれスーパーアプリが台頭するか、たとえそうでなくても今より多機能の大型アプリが出現するだろうと述べている。1つのアプリにサービスを追加し、ユーザーのリテンションを維持する方法を見いだすことができれば、あるアプリでのユーザーの挙動を別のアプリと共有せずに済むため、プライバシー規制を回避することにもなる。

米国では、アジア市場のように1つまたは2つのアプリが群を抜いて市場を支配することは考えにくいものの、アプリの巨大化、そして包括的なものへの変化が進んでいることは明らかだ。

DeFiの進化

一方、過去10年間で暗号資産が生み出したものは決済アプリとスーパーアプリだけではない。ビットコインという1つの製品から誕生した暗号資産は、今や総合的なピア・ツー・ピアの金融システム、いわゆるDeFi(ディーファイ、分散型金融)へと進化した。これには、Ethereum(イーサリアム)やDogecoin(ドージコイン)など複数の通貨が含まれ、システム上でユーザーによるお金の投資、売買、消費、貸し出しが可能となっている。

新型コロナウイルス感染症の拡大によって経済の先行きが不透明になり、また従来の金融機関のなかにも暗号資産関連のサービスを一部提供する機関が増えたことで暗号資産の人気がさらに上昇している反面、暗号資産はいまだに主要の金融システムや金融セクターから除外されており、高い危険性があることを多くの専門家から指摘されている。暗号資産の発行体もまた、分散型の金融製品を生み出すという目標から外れるとして、規制に長らく抵抗してきた。

しかし、この状況には変化が生じ始めており、一部の暗号資産プラットフォームが規制の遵守に関心を示すようになっている。

例えば、Coinbaseはユーザーがコインを他人に預け入れた場合に利子を獲得できるという製品の提供を計画していた。ところが、米国証券取引委員会によるガイダンスの提供がなかったにもかかわらず、同委員会から「Coinbaseが製品をリリースした場合は同社を提訴する」との警告が発せられ、この計画を断念するに至った。事実、暗号資産の発行体は、一部の規制に従うことで自社の製品の正当性が高まり、より多くの人に幅広い目的で使用してもらうことができると認め始めているのだ。この流れには、最近、Stablecoin(ステーブルコイン)をはじめとする新たな暗号資産製品が市場に現れたことで、従来の通貨の価値が議論されていることも関係している。

暗号資産の規制については、米国証券取引委員会の委員長Gary Gensler(ゲーリー・ゲンスラー)氏をはじめ、一部の議員や暗号資産業界の人物が賛成の立場を表明しており、規制の実現は近づいていると考えられる。

暗号資産が米国初のスーパーアプリを後押しする存在に

暗号資産の発行体が政府関係者と連携し、イノベーションを制限することなく消費者を保護するような規制を定めることができた場合、暗号資産は長年動きのなかった米国のスーパーアプリの開発を促す要素となる可能性が高い。

Coinbaseが米国証券取引委員会と連携し、互いに調整しながら質の高い規制を定めることができたならどうだろうか。法令をもとにCoinbaseが、ユーザーが暗号資産として信頼できる、存続可能かつ認定された金融手段であることを立証し、魅力的な収益創出のオポチュニティとなる新規の金融製品のみならず、日常シーンでも使用できるツールとして成長させることができる。規制によって通貨に安定性が生まれれば、隠れた価値を持つ資産としてだけでなく、買い物に便利なツールとして変化させることができるだろう。現時点では日常生活で暗号資産を使おうとした場合、トランザクション時間の長さや手数料の高さ通貨価値の変動の大きさなどがユーザーエクスペリエンスに摩擦を生むことになるが、こうした規制により、面倒な一部の手順を排除することも可能だ。

規制のフレームワークを作成することで暗号資産の需要は圧倒的に増加し、飲食業から小売業に至るまで、暗号資産を使った決済処理への対応を希望する企業が突如として増えるだろう。そうなれば、既存の暗号資産決済アプリへの統合が加速し、それらがスーパーアプリに進化していくと考えられる。従来の通貨を銀行に預金する代わりに、これらのアプリで暗号資産の預金をする人も増え、経済、そして金融のエコシステム全体が根元から覆るだろう。

銀行はいつでも大衆が望む製品を生み出してきたが、暗号資産および分散型金融の業界はまぎれもなく、人が必要とする製品とサービスを提供してきた。現に、規制や法的な環境がはっきりしない今でさえ、何百万もの人が暗号資産を使用しているのだ。

中国では、クレジットカードのサービスを十分に受けられない市場で現金の代替手段が必要となり、そのニーズを満たすべく、ユビキタスかつ統合型のデジタル決済が急速に進化した。同じように、暗号資産ベースのスーパーアプリは従来の決済手段に代わって、あるいはそれに加えて、暗号資産を安全かつ効率的に使用することを望む消費者や企業のニーズを満たすものとなるだろう。

暗号資産が無規制のグレーゾーンにとどまる限り、そのプラットフォームもスーパーアプリに進化することなく、業界外の経済や日常生活から除外されたままとなってしまう。そうなれば、米国はモバイルファーストかつデジタルファーストな、革新的で新しい金融エコシステムを構築するチャンスを逃すことになるのである。

編集部注:本稿の執筆者David Donovan(デビッド・ドノヴァン)氏は、デジタルコンサルタント会社Publicis Sapientの米大陸におけるグローバル金融サービスプラクティスを率いており、元Fidelity Investmentsの幹部。

画像クレジット:loveshiba / Getty Images

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(文:David Donovan、翻訳:Dragonfly)

友だちと写真をホーム画面で共有できるアプリ「Locket Widget」、米App Store上位にランクイン中

新ソーシャルアプリLocket Widget(ロケットウィジェット)が、1月10日あたりから米App Storeのチャートで上位に躍り出ている。このアプリは、iOSのホーム画面のウィジェットに友人のライブ写真を表示するという巧妙なものである。つまり、通常ならニュースや天気、励みになる格言、iPhoneギャラリーからの写真などが表示されるAppleのウィジェットシステムを、プライベートなソーシャルネットワークプラットフォームにしてしまうのだ。

Apple Worldwide Developer Conference(アップル世界開発者会議)の学生奨学金受賞者で、カリフォルニア大学サンタバーバラ校を卒業したばかりのMatt Moss(マット・モス)氏が考案したこのアプリ。Hawkeye Labs(ホークアイ・ラボ)というユーザーリサーチとテストのためのプラットフォームを構築していたときに思いついたものだという。

Locketはもともと個人的なサイドプロジェクトであり、メインフォーカスではなかったと同氏は認めている。

「2021年の夏、彼女の誕生日プレゼントとして作ったものです。彼女は秋には学校に戻る予定で、遠距離になってしまうところだったため、自分のホーム画面に彼女の小さな写真が表示できれば、繋がりを持つという意味でも良い方法だなと感じたのです」。

1〜2週間でこのアプリを作り上げた同氏は、その後半年間にわたって恋人と1日平均5枚の写真を送り合うなど、かなり頻繁にアプリを使用した。Locketでは送受信した写真が履歴に残るため、写真を振り返って見る楽しみもある。

やがて2人の友人たちがこれに気づき、自分たちも恋人や家族、友人同士で使いたいと言い出したため、モス氏はLocketをApp Storeで一般公開することにした。

元旦に発表されて以来、今朝の時点での登録ユーザー数は200万人を超えている。Apptopia(アプトピア)のApp Storeのデータによると、米国時間1月9日の時点でLocketは米国のApp Storeで総合1位となり、その前日にはソーシャルネットワーキングアプリ部門で1位となっている。Apptopiaの報告によると、これまでのところ全世界でのインストール数は約100万で、そのうち約31%が米国からのものだという。ただしこのデータは1月11日までのものである。

Locketが急速に普及したのは、TikTok(ティックトック)のおかげだとモス氏は考えている。Locketの企業アカウントに動画を公開し、アプリを実際に使用している様子をアピールした結果、同氏の動画はわずか数日で10万回もの再生回数を記録。その後、他のTikTokユーザーも、同アプリとLocketのオリジナルビデオで使用されたカスタムサウンドを使った独自のコンテンツを作り始めたのである。

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その結果、同アプリは若いTikTokユーザー層の間で爆発的に広がった。実際、英国のTikTokユーザーが作ったある動画は、1日で500万回再生を突破したとモス氏は話している。

アプリ開発者がローンチ時にTikTokを活用してインストールを促進するというのはよくあることだが、同アプリでは有料のインフルエンサーを起用してのマーケティング活動は一切行われておらず、またTikTokなどで有料広告を出したこともないとモス氏は伝えている。

TikTokでの露出のおかげで、現在LocketはiPhoneの無料アプリチャートで1位を維持しており、またアーリーアダプターらがアプリをダウンロードするよう友人たちにも呼びかけたため、さらなるインストール数を獲得し続けている。

アプリの利用を開始するには、App StoreからLocketをダウンロードした後、電話番号の認証とサインアップが必要だ。

するとアプリがiPhoneの連絡先とカメラへのアクセスを要求してくるのだが、理想的にはアドレス帳へのアクセスなしで、独立型の招待システムから友人を招待できるようにすることができたら、よりプライバシーに配慮したアプローチとなるだろう。アプリをより使いやすくするためにもこの仕組みの変更を検討しているとモス氏は話しているが、Locketが連絡先を保存したり、電話番号を使って自動的に招待を送信したりするようなことはなく、友人に送るテキストをカスタマイズできるiMessageのウィンドウがポップアップ表示されるだけだという。

しかし、連絡先を取り込むという要求を拒否した場合、アプリがまったく使えなくなるということが判明した。

Locketで友達を招待して追加したら、iOSのホーム画面に同アプリのウィジェットを追加する。友人が画像を追加するたびに、それが自分のウィジェットに表示される。逆も同様で、アプリを起動して自分の写真を追加すれば、いつでも友人のウィジェットに送ることができる。

画像クレジット:Locket

このアプリは、ただこれだけのことなのである。派手なカメラフィルターやエフェクトはなく、Camera Rollから画像をアップロードすることもできない。最大5人までの友人や恋人と、写真をリアルタイムで共有するためだけに設計されているのである。

App Storeでトップの座を掴んだモス氏は現在、次のステップを検討中だ。サブスクリプションモデルの導入、ウィジェットの追加の他、いずれはAndroid版もサポートする予定である。外部からの投資を受けるかどうかはまだわからない。

「いろいろと検討しています。どうなるか楽しみです」と同氏。

しかし同氏は、Locketは現在の写真ウィジェットという体験を超えていく可能性もあると考えている。ユーザーが今後より多くの写真を共有することで、時間をかけてアプリ内の機能も成長していくのだろう。

「親しい友人や家族だけの空間というのは、かなり有意義なものだと感じています。特に若い人たちは、広告中心、指標中心のアプリに少し疲れているようです」。

「Instagram(インスタグラム)で1000人の友だちがいたり、Snapchat(スナップチャット)で100人の友だちと画像を送ったりしなければならなかったりと、アプリの巨大なソーシャルサークルにはまってしまい、結局は疲れきってしまうのです。そのため5人、10人の親しい友人だけに向けたものを作り、スマートフォンをアプリではなく人のための、よりパーソナルなものすることができれば、そこには大きなニーズが存在すると感じています」。

ウィジェットでの写真共有エクスペリエンスを提供しているのはLocketが初めてではない。2020年に登場したMagnets(マグネッツ)というアプリも同様のアイデアだが、ここではウィジェットを介して友人にテキストメッセージを送ることもできる。この分野で競合するアプリには、Ekko(エコー)、Widgetgram(ウィジェットグラム)、Lettie(レティ)、Tile Widget(タイルウィジェット)、Fave(フェーブ)などがあるが、どれもまだマイナーである。

Locketは現在iOSで無料でダウンロードが可能だ。一部のユーザーがウィジェットの動作方法を理解していなかったり、開始プロセスに戸惑ったりしていたようで、星3.4つの評価しか得られていない。同アプリの話題が絶頂に達していたころに問題が発生し、後者の問題が頻発していたようだが、我々はその後Locketをテストし、問題が解決されていることを確認している。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

MetaのWorkplaceがWhatsAppを統合、コミュニケーション機能拡充へ

もともと企業の従業員がコミュニケーションをとるためのソーシャルネットワークとして構築された、Facebook(現Meta)のアプリWorkplace(ワークプレイス)には700万人以上のユーザーがいる。特にフロントライン、デスクレス、デスクベースの従業員が混在する多国籍組織で、経営陣が従業員全員とつながりを保ち、従業員が互いに仕事についてチャットできる手段として支持されている。そして今、その利便性をさらに高めるためにさらなる機能を追加する。Workplaceは、Metaが所有する数十億人のユーザーを抱える人気のメッセージングアプリWhatsApp(ワッツアップ)との統合を間もなく追加し、Workplaceの顧客がメッセージングアプリを使ってお知らせをクロスポストしたり、その他のデータを従業員と共有したりできるようにする予定だ。

WhatsAppの機能は、2022年後半に稼働する見込みだ。メッセージング・コミュニケーションが最初の立ち上げの一部のようだが、同社は他の種類のWorkplaceや生産性機能をWhatsAppに統合する方法にも取り組んでいて、例えば、2020年11月にWorkplaceで最初にローンチされた、シフトワーカー同士がシフトを交換し、マネージャーとその計画システムをループ内に保つ方法であるShift Coverを統合することも検討している。

Workplaceの責任者Ujjwal Singh(ウッジワル・シン)氏は、正確な時期について具体的には述べなかった。どのように機能するかについて「詳細を詰めている」ところであり、いくつかの決定はまだなされておらず、焦点はその消費者向けアプリのDNAにあるものを法人向けサービスとしていかに活用するかだと説明している。

「これはしばらく前から取り組んでいたことです」とシン氏はインタビューで語り、この2社はFacebook傘下の同じ安定した会社だが、例えば2021年のWhatsApp API拡張など、WhatsAppが行ってきた異なるビジネスの発表の内容が最初に整う必要があったことを指摘した。また、顧客と一緒になって機能を構築してきた。「消費者向けアプリに出るものには気をつけたいのです。企業が安全に使える方法でやりたかったのです」。

WhatsAppにビジネス用途を、Workplaceに機能性を持たせるという動きは、どちらも久々の試みだが、両製品の幅広い戦略、そしてMetaの戦略全体と合致している。

Metaでは、顧客向けサービスとバックエンドの両方で、さまざまなアプリをより密接に連携させるというミッションを何年も前から掲げている。その戦略には、MessengerとInstagramのメッセージ機能を統合し、消費者がアプリを横断してコミュニケーションできるようにしたことも含まれている。また、WhatsApp for Businessを利用している企業は、例えばFacebookでコンタクトを開始し、WhatsApp上で直接会話を続けることができるようにするなど、ビジネス / 商業的な側面にも重点を置いている。このような取り組みは議論の余地がないわけではないが、それでも徐々に展開されてきた。

これにより、各プラットフォームの利用が増えるだけでなく、広告を出したり、WhatsApp for Businessのようなプレミアム製品を利用したりと、一般的にMetaでより多くの商業活動を行おうと企業に思わせる。また、Metaを単なるアプリ間の広告をベースとするコンシューマー向け製品とするだけではなく、Metaのためにより大きなユースケースを構築する可能性もある。

Workplace は当初、Slack(スラック)の台頭に対するFacebooの対抗策として始まった。多くの人がすでに仕事以外のやり取りに(そして仕事でも)Facebook を使っていて、社員も仕事の雑談や計画にFacebookが使えることを証明しているのに、なぜ新興企業に美味しいとこ取りをさせるのか、と考えた。

長期的に見ると、この最初の理論はFacebookの思惑どおりにはいかなかったようだ。当初、Workplaceを生産性向上のハブとして位置づけるために、Slackに見られるような多くの統合を導入し、ナレッジワーカー向けのコラボレーションやコミュニケーションに関する多くのネイティブ機能を追加した。しかし、最近では、やや焦点が変わってきているようだ。

まず、SlackやMicrosoft(マイクロソフト)のTeamsといった製品が引き続き存在し、評判を高めている。この変化に追随するように、Workplaceはこれらのプラットフォームとより密接に連携するようになった(直近では、動画機能などでTeamsを統合した)。第二に、Workplaceは「デスクレス」と呼ばれる、1日中コンピュータの前に座っているのではなく、携帯電話を主な手段として上司や同僚、組織全体とやり取りをするフロントラインワーカーや接客ワーカーに、新たなユーザーを見出した。

「米国外の多くのフロントラインワーカーは、仕事をこなすのにWhatsAppのような消費者向けツールを使っています」とシン氏は話す。「シフト管理にWhatsAppを使うのはその一部に過ぎない、というデータも持っています。データによると、フロントラインワーカーは意思決定をする経営陣から切り離されていると感じているようです。それがこの統合の重要なポイントです」。ここで同氏が言っているのは、同社が米国時間1月20日に発表した、Workplaceがどのように発展しているかを裏づける新しい調査についてだ。半数強(54%)のフロントラインワーカーが、組織の本部とつながっていると感じていると回答していることがわかった。これは、そのギャップを埋める方法としてWorkplaceやWhatsAppを構築することにチャンスを見出した理由の1つだ。

長期的には、このWhatsAppの統合と、同社がデスクレスワーカーにサービスを提供するために行っている幅広い動きは、BlinkYoobicのようにフロントラインの従業員と彼らの職場における特定の要件や機能をターゲットとした新しいアプリの波の中にWorkplaceを位置づけるものだ。Facebookがこのままシンプルなメッセージングコミュニケーションツールにとどまるのか、それともそうしたユーザーに特化した機能を構築し始めるのか、注目されるところだ。この分野は競争が激しい。2021年に2億ドル(約228億円)を調達したWhen I Work、7100万ドル(約81億円)を調達したHomebase、ホームサービスのプロに焦点を当てたWorkizWorkWhile、(2021年にSquareが買収したCrew、(2021年9月に上場申請した)Justworksなどが顧客争奪戦を繰り広げている。

画像クレジット:xPACIFICA / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

「App Storeの詐欺師」と非難された音楽アプリAmpMeが週10ドルの料金を引き下げ

Apple(アップル)がApp Storeの収益の大幅な増加を喧伝していたのとほぼ同じ時期に、開発者であり著名なApp Store批評家でもあるKosta Eleftheriou(コスタ・エレフテリオ)氏は、App Storeに潜む新たな詐欺師と思われる存在を明らかにした。エレフテリオ氏はTwitter(ツイッター)で、音楽同期アプリ「AmpMe(アンプミー)」の利益に言及する投稿を行った。同アプリは、ユーザーの音楽を複数のデバイス、例えば友人たちのスマートフォンやBluetoothスピーカー、コンピュータースピーカーとの間で同期させることで、音楽のボリュームを高めるとうたっている。AmpMeはこの基本的なサービスに週10ドル(約1150円)という信じがたい金額を請求しており、App Storeでフェイクレビューを使ったプロモーションを展開していた。

AmpMeのiOSアプリは、一部の機能の利用にはサブスクリプションを必要としないが、音楽を他のデバイスと同期させたい場合には必要になる。ユーザーがこのアプリをダウンロードした主な理由はおそらく後者であろう。

エレフテリオ氏は、このサービスが同氏のいう「不合理な週10ドル(年間約520ドル[約6万円])」で価格設定されていることを指摘している。ほとんどのアプリ内サブスクリプションと同じように、このサブスクリプションも自動更新される。また、Appleはサブスクリプションの簡単な登録と継続を可能にしているが、キャンセルについては、App StoreまたはiPhoneの設定アプリからアクセスできるアカウントページの「サブスクリプション」セクションからのみ可能となっている。アプリ自体の中でキャンセルすることはできない。

AmpMeは少なくとも料金についてはユーザーを欺こうとしていなかった。登録ページには、無料トライアル提供期間は3日間であり、その後は週9.99ドルのサブスクリプションで提供されることが明記されている。

だがこのアプリがApp Storeのルールに抵触した部分は、潜在顧客へのマーケティングの仕方にあった。

AmpMeは大量のフェイクレビューを購入していた。それはナンセンスな名前に関連する5つ星の評価が多いことからも明らかである。例えば、Nicte VidelerqhjgdやElcie Zapaterbpmtlのような名前は、誰かがキーボードのボタンをマッシュ(ランダムに打つこと)したような感じがある。だがこうしたレビュアーが「すごくいい!」とか「超便利」あるいは「他の音楽アプリは要らない!」などのポジティブなフィードバックを残したことは確かである。

(興味深いことに、これらのレビュアーは他のアプリにも5つ星のレビューを残しているが、すべて同じ日に投稿されていた。実に疑わしい)

フェイクレビューによって同アプリのApp Storeでの総合評価は星4.3となり、まともで便利な音楽同期ツールのような印象を与えた。一方で、本物のレビューは、App Storeの正規ユーザーが法外な価格や基本機能、あるいは明らかなフェイクレビューについて不満を述べていたが、スパムによってかき消された。

Appleは何年もの間、この見かけ倒しのアプリに対策を講じてこなかった。さらに悪いことに、App Storeのエディトリアルコレクションを通じて何度もプロモーションを行っていたとエレフテリオ氏は指摘している。

同氏が今回の件から導き出した結論は、AppleはApp Storeの詐欺師の取り締まりに手ぬるいだけではなく、詐欺アプリの収益のポテンシャルのために、実際にそうする意欲を削がれている可能性があるというものである(これ以外に考えられる結論は、App Storeを消費者のために安全に保つことに関してAppleは無能であるというものだが、これも実によろしくない様相である)。

エレフテリオ氏はAppfiguresのデータを引用し、App StoreでのAppleの手数料控除後の生涯収益として、AmpMeがこれまでに1300万ドル(約14億8900万円)を得ていることを伝えている。

別の企業はこの数字をさらに高くしている。Apptopia(アップトピア)はTechCrunchに対し、2018年10月にアプリ内課金による収益化を開始して以来、1600万ドル(約18億3300万円)の収益を上げたと語っている。そのうち1550万ドル(約17億7600万円)がApp Store経由で、50万ドル(約5730万円)がGoogle Play経由であった。アプリ内購入収益の大部分(75%)は米国の消費者からのもので、これまでに3350万のライフタイムインストールを記録しており、そのうちの38%は米国からとなっている。

TechCrunchに寄せられた回答の中で、AmpMeは今回提起された主張の一部に異議を唱えた。

同社によると、ユーザーは年間520ドル、つまり週10ドルのサブスクリプション料金の合計に相当する金額を支払っていないという。有料ユーザー全体の平均年間サブスクリプション収益は約75ドル(約860円)であると同社は説明する。これは、ユーザーが無料トライアルを利用した後、ある程度の時間を置いて購読をキャンセルしていることを示している。AmpMeはまた、内部的には、このことが自社の価格設定の透明性とオプトアウト手続きの容易さに対する信念を強めたことにも言及した。

しかし同社は、なぜApp Storeのリスティングがフェイクレビューで埋め尽くされたのかについて適切な回答を示さず、代わりに匿名のサードパーティに責任を転嫁した。

「私たちは、多くのスタートアップがそうであるように、マーケティングとアプリストアの最適化を支援する外部のコンサルタントを何年にもわたって雇ってきました。さらなる監視が必要であり、それが私たちが現在取り組んでいることです」と匿名のAmpMe担当者から送られた声明文には記されている(eメールの署名は「AmpMeチーム」となっていた)。

さらに同社は、この最近のフィードバックに対応するものとして、同アプリの新バージョンをより低い価格でリリースすることを明らかにした。

「私たちは常にAppleのサブスクリプションガイドラインを遵守しており、その高い基準が確実に満たされるように継続的に取り組んでいます」とメールには書かれている。「また、コミュニティからのフィードバックを尊重し、その価値を重んじています。したがって、より低価格の新しいバージョンのアプリは、すでにレビュー用としてApp Storeに提出されています」。

このバージョンは現在公開されており、毎週のサブスクリプション料金は9.99ドルから4.99ドル(約570円)に引き下げられている。

エレフテリオ氏は米国時間1月13日、フェイクレビューが手動で削除されているようであるとTechCrunchに語った。

米国時間1月10日の午前11時に、同氏はこのアプリのレビュー数が5万4080件であったことを伝えていた。AmpMeかなり悪評立った後、11日午後9時までに同アプリのレビュー数は5万3028件に減少した。12日の午前7時までにレビュー数は再び減少し、5万693件になった。しかし、アプリ全体の評価はあまり影響を受けていない。これは、偽のApp Storeユーザーが投稿したレビューが削除されている一方で、5つ星の評価が付けられているがレビュー内容やレビュワーの名前が表示されていないレビューは削除されていないことが考えられる。つまり、クリーンアッププロセスは、同アプリがフェイクレビューを購入したことを明らかにするものではないということである。

また同じように興味深いのは、AmpMeのCEOであるカナダのテクノロジー起業家Martin-Luc Archambault(マルタン=リュック・アルシャンボー)氏である。同氏が開発し、ソフトウェアからアドウェアに転換した「Wajam(ワジャム)」は、カナダのプライバシーコミッショナー事務局(OPC)によって過去に調査され、同意なしにユーザーデータを収集してカナダのインターネットプライバシー法に違反したことが判明した。また、複数の方法を用いてウイルス対策ソフトウェアによる検出を回避したと当時の報道は伝えている。OPCが調査結果を発表した際、アルシャンボー氏は問題のカナダのユーザーデータは破棄され、Wajamはその資産を中国企業に売却したと主張していた。OPCの報告書によると、同アドウェアはその存続期間中に何百万回もインストールされたという。

つまり、これはフェイクレビューを買うことに反対する人の話とは思えない。

AmpMeは当初の声明以降の追加質問に回答しておらず、Appleにもコメントを求めているが回答は得られていない。

Crunchbase(クランチベース)のデータによると、AmpMeはこれまでに1000万ドル(約11億4600万円)のVC資金を調達している。

画像クレジット:AmpMe

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

アップルがポッドキャストに有名人が推薦する番組を紹介する「Listen With」コレクションを導入

Apple Podcast(アップル・ポッドキャスト)は、ユーザーが番組を発見するための新しい方法を提供するために「Listen With(リッスン・ウィズ)」という新しいシリーズの展開を開始した。

同社によると、このListen Withは、人気アーティスト、作家、映画監督、ジャーナリスト、インフルエンサーなど、著名なポッドキャスターが聴いている番組を共有することで、ユーザーが新しい番組を発見できるようにするものだという。アップルのチームが監修した各コレクションには、いくつかの番組と、その番組が選ばれた理由についての引用文が掲載されている。現在は米国とカナダで提供されており、Apple Podcastアプリの「ブラウズ」セクションで見ることができる。

最初のコレクションは、作家であり、ライフコーチであり、元僧侶でもあるJay Shetty(ジェイ・シェッティ)氏のものだ。同氏はコレクションの中で、Pushkin Industries(プーシキン・インダストリーズ)社のMaya Shankar(マヤ・シャンカール)氏による「A Slight Change of Plans(計画のわずかな変更)」、Ramble(ランブル)の「Anything goes with Emma Chamberlain(エマ・チェンバレンの何でもあり)」、NPR社の「How I Built This with Guy Raz(ガイ・ラズの私はどうやってこれを築き上げたか)」、Cadence13(ケイデンス13)の「We Can Do Hard Things with Glenn Doyle(グレノン・ドイルの困難なこともできる)」、Oprah(オプラ)の「SuperSoul(スーパーソウル)」をレコメンドしている。

Listen Withはアップルにとって3つ目のシリーズだ。同社は2021年、米国の新進気鋭のポッドキャスト制作者を紹介する「Spotlight(スポットライト)」というシリーズを起ち上げた。アップルのチームは、毎月新しいポッドキャストクリエイターを選んで特集し、Apple Podcastアプリで目立つように表示したり、ソーシャルメディアなどで宣伝したりしている。そしてもう1つ、アップルはCommon Sense Media(コモンセンス・メディア)との提携による「Kids & Family(キッズ&ファミリー)」コレクションも用意している。

関連記事:アップルが新進気鋭のポッドキャスト製作者に光を当てる「Apple Podcasts Spotlight」発表

Listen Withの起ち上げに加えて、アップルは2021年4月に開始したポッドキャストのサブスクリプションに関するインサイトを公開した。サブスクリプションを開始すると、ポッドキャストの総視聴者数が増加することを、同社は明らかにした。アップルは、Apple Podcastで既存の聴取者を持つ上位の50の番組が、サブスクリプション開始後の4週間で総聴取者数が増加したと指摘する。パフォーマンスの高いクリエイターでは、リスナーの10%以上がサブスクリプションに登録しているとのこと。Apple Podcastサブスクリプションの開始以来、サブスクリプションの5つに1つが10%以上の加入率を享受しているという。

関連記事:アップルがポッドキャストの有料定額サービス開始を発表、米国では番組あたり約53円から

ポッドキャストプラットフォームの拡大に取り組んでいる企業は、決してアップルだけではない。例えば、Spotify(スポティファイ)はこれまで、Anchor(アンカー)、the Ringer(ザ・リンガー)、Gimlet Media(ギムレット・メディア)、Megaphone(メガフォン)といったポッドキャスト企業に8億ドル(約915億円)以上を投じている。SiriusXM(シリウスXM)は、ポッドキャスト管理・分析プラットフォームのSimplecast(シンプルキャスト)、広告技術プラットフォームのAdsWizz(アズウィズ)、ポッドキャストアプリのStitcher(ステッチャー)を買収した。その一方でAmazon(アマゾン)も、ポッドキャストネットワークのWondery(ワンダリー)を買収している

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hirokazu Kusakabe)