【コラム】未来の交通でも、自律走行車ではなく人間が運転するべきだ

高度に自動化された航空機を指揮するパイロットのように、自動化のレベルにかかわらず、すべての旅客輸送車両には人間のオペレーターが搭乗しなければならない。議会は、ほとんど規制されていない自律走行車(AV)技術の急速かつ性急な出現に対する適切な連邦政府の対応について議論しており、この安全基準を確認する機会を得ている。

毎日、米国中の交通機関では、第一線の労働者がバス、電車、バンを安全に運行している。彼らは緊急事態に対応し、身体障害者や高齢者のためのアクセシビリティを確保し、致命的なパンデミック時に乗客の安全を可能な限り確保している。これらの労働者は、乗客を乗せた車両を運転しながら、これらの職務を同時にこなすよう訓練されている。

ハイテク業界の中には「完全な」自律走行車で人間のオペレーターをなくすことができると主張する人がいるが、どのレベルの自動化でも彼らに取って代わることはできない。これは、議会とバイデン政権がテーブルから取り除かなければならない危険な考えである。

運輸労働者は、進化する輸送技術の最前線に身を置き取り組んでいる。私たちにとってイノベーションは生き方であり、何十年にもわたって次世代車両やシステムの実装に貢献してきた。しかし、今日私たちが目にしているのは、単なるイノベーションではなく、実証されていない、規制も不十分な無人運転車を道路に普及させることなのだ。

このような自動車を地域社会に氾濫させている技術や企業の利害関係者は、単に最高の安全基準で管理されておらず、厳格な連邦政府の監督や執行にも直面していないだけなのだ。この状況を変えなければならない。

AV業界のビジネスは、連邦政府の適切な規制の精査や重要な安全データの透明性基準を満たすことなく、売上と利益を追求するという、たった1つの目的に沿って設計されている。これらの企業は、自社のAV技術が安全かどうか、交通利用者や公共の利益を損なうかどうか、重要な公平性の目標を達成するかどうか、労働組合の良い仕事をなくすかどうかについて、白日の下にさらされる対話から逃れているのだ。その価値を証明する責任は、彼らにあるのだ。

とはいえ、政府が道路や交通機関へのこれらの自動車の普及を承認する前に、私たちは話し合いを持ち、強力な政策を制定しなければならない

今日のAVパイロットプログラムでは、最終的に段階的に廃止する予定のドライバーを、オペレーターではなく「モニター」と呼ぶ企業さえある。これは労働者に対する侮辱であり、乗客に対する策略である。彼らはモニターではなく、旅の安全を確保するために存在するプロなのだ。高度に自動化された商業用車両が、有資格のオンボードオペレーターを排除することがあってはならない、それは、高度3万フィート上空の民間航空機に自動操縦機能を持たせ、コックピットのパイロットを排除しようとするのと同じことだ。議会で可決される新しいAV法は、すべての旅客輸送事業において、人間のオペレーターの搭乗を義務付ける必要がある。

また、AVをどのように、あるい導入するかどうかを規制するために、明確なタイムラインをもって連邦政府の行動を義務づける法案も必要だ。これらの指示は、無人運転車が最高の安全基準を満たすことを保証するための基盤を確立しなければならない。「完全な自動運転」機能についてのTesla(テスラ)の主張をめぐって国家運輸安全委員会とTeslaの間で大きな論争があったことを受けて、配備される車両には人間の介入と制御能力を備えることが要求されなければならない。また、基準を厳格化し、運輸省による連邦政府の自動車安全要件の免除や放棄の発行に厳しい制限を設ける必要がある。今日、私たちの道路で目にするAVの実験車が、厳格な安全規制の対象になっていないことを知ったら、ほとんどのアメリカ人は恐怖を感じるだろう。

Pete Buttigieg(ピート・ブティジェッジ)運輸長官は、発表されたばかりのイノベーション原則を通じて、議論をAV業界のニーズから労働者や乗客のニーズへとシフトさせる重要なステップを踏み出した。ブティジェッジ氏はスキル、トレーニング、および「組合の選択」へのアクセスを拡大することによって「労働者に力を与える」政策を約束し、労働者が「イノベーションを形成するテーブルに座る」ことを保証している。これは、誰かを裕福にするのではなく、労働者と広範な公的利益を中心に据えた、大きな変化を意味する。議会はAV法案にこのアプローチを採用するのが賢明であろう。

労働者の席を確保することは、賢明な政策改革によって達成することができる。労働組合の多い交通機関は、AVのテストや配備が計画されたとき、労働者に事前通知をするよう要求されるべきだ。早期に労働者の視点を得ることで、貴重な経験と専門知識をプロセスに呼び込み、AVアプリケーションが安全で、単に従業員を排除して、その技術を奪うための道具ではないことを保証することができる。

労働者の声を高めるこの新しいアプローチは、願望ではなく、むしろ連邦政府の明確な政策の問題であるべきだ。それは、この委員会のAV法案と運輸省の政策に固定されるべきであり、雇用への影響、訓練の必要性、安全性、そして新しい技術の導入を可能にしてきた労使交渉プロセスを通じて管理されるべきものなのだ。

議会とバイデン政権は、技術企業や大企業の利益動機ではなく、労働者と公共の利益が、我々の輸送システムと道路におけるAV技術の未来を推進することを保証し、断固として行動するチャンスを持っているのだ。

編集部注:執筆者のJohn Samuelsen(ジョン・サミュエルセン)氏は、全米運輸労働者組合の国際会長

画像クレジット:Jae Young Ju / Getty Images

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(文:John Samuelsen、翻訳:Yuta Kaminishi)

半導体産業は台湾にとって「切り札」にも「アキレス腱」にもなる

TechCrunch Global Affairs Projectは、テックセクターと世界の政治がますます関係を深めていっている様子を調査した。

2021年10月上旬の4日間にわたって、約150機の中国軍用機が台湾の領空を侵犯し、台湾と米国からの批判を招いた。このように台湾海峡で緊張が高まる中、台湾の祭英文総統は米国軍は台湾兵士と台湾国内で軍事演習を行っていると発表した。これに対し中国の外務省は、台湾の独立を支援すれば軍事衝突をもたらすだけだと警告した。10月末、米国国務長官Antony Blinken(アントニー・J・ブリンケン)氏が中国外相Wang Yi(王毅)と会見して、台湾地域での現状変更の動きを控えるよう要請したまさにその日に、さらに8機の中国軍用機(うち6機はJ-16戦闘機)が台湾の領空を侵犯した。

1979年、米国は、中華民国(台湾)が中国本土、つまり中華人民共和国の一部であることを承認した。このときから中台関係の変遷が始まり、現在の状態に至る。中国は長期にわたって台湾併合を望んでおり(中国は台湾をならずもの国家と考えている)、軍事侵攻によって強制併合する可能性を決して除外していないが、米国が台湾を軍事的に防衛するかどうかについて戦略的にあいまいな態度をとってきたため、台湾併合を阻止されてきた形になっている。そして近年、台湾が半導体産業で重要な役割を果たすようになってきたため、状況はさらに複雑化の度を増している。

世界の半導体産業における台湾の重要性

台北本拠の調査会社TrendForce(トレンドフォース)によると、台湾の半導体受託製造業者は、2020年時点で、世界のファウンドリ市場の63%のシェアを獲得しているという。詳細を見ると、世界最大の受託チップ製造業者Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(TSMC)だけで世界のファウンドリ市場の54%のシェアを確保している。さらに最近のデータによると、Fab 14B P7で停電が発生し製造がストップしたにもかかわらず、TSMCは依然として、2021年の第2四半期で世界のファウンドリ市場の約53%を占めている。

台湾のファウンドリ(TSMCを含む)はほとんどのチップを製造しているが、それに加えて、携帯電話から戦闘機まで、すべてのハイテク機器に内蔵されている世界最先端のチップも製造している。実際、TSMCは世界の最先端チップの92%を製造しており、台湾の半導体業界は間違いなく世界で最も重要視されている。

そして、当然、米国と中国の両国も台湾製の半導体に依存している。日経の記事によると、TSMCは、F-35ジェット戦闘機に使用されているコンピューターチップ、Xilinx(ザイリンクス)などの米国兵器サプライヤ向けの高性能チップ、DoD(国防総省)承認の軍用チップなども製造している。米軍が台湾製のチップにどの程度依存しているのかは不明だが、米国政府がTSMCに対して米国軍用チップの製造工場を米国本土に移転するよう圧力をかけていることからも台湾製チップの重要さの程度が窺える。

米国の各種産業も台湾製半導体に依存している。iPhone 12、MacBook Air、MacBook Proといった各種製品で使用されているAppleの5ナノプロセッサチップを提供しているのはTSMC一社のみだと考えられている。iPhone 13やiPad miniなどのAppleの最新ガジェット内蔵のA15 BionicチップもTSMC製だ。TSMCの顧客はもちろんAppleだけではない。Qualcomm(クアルコム)、NVIDIA(エヌビディア)、AMD、Intel(インテル)といった米国の大手企業もTSMCの顧客だ。

中国も外国製チップに依存しており、2020年現在、約3000億ドル(約34兆円)相当を輸入している。当然、台湾は最大の輸入元だ。中国は外国製チップへの依存度を縮小すべく努力を重ねているが、その需要を国内のみで賄えるようになるのはまだまだ先の話だ。中国の最先端半導体メーカーSemiconductor Manufacturing International Corporation(SMIC)の製造プロセスは、TSMCより数世代遅れている。SMICは現在7ナノ製造プロセスのテスト段階に入ったところだが、TSMCはすでに3ナノ製造プロセスまで進んでいる。

このため、中国の企業は台湾製チップに頼らざるを得ない。例えば中国の先進テック企業Huawei(ファーウェイ)は、2020年現在、TSMCの2番目の大手顧客であり、5ナノと7ナノのプロセッサの大半をTSMCに依存している考えられている。具体的な数字を挙げると、ファーウェイはTSMCの2021年の総収益の12%を占めている。

軍事衝突という形をとらない戦い

2022年前半に起こったことを見るだけで、半導体業界がいかに脆弱かが分かる。比較的落ち着いていた時期でも、停電の影響もあって、TSMCは世界シェアを1.6%失い、継続中の半導体不足に拍車をかけることになった。地政学的な要因による半導体生産量の低下ははるかに大きなものになるだろう。

最悪のシナリオはいうまでもなく、台湾海峡での軍事衝突だ。軍事衝突が起これば、半導体チップのサプライチェーンは完全に分断されてしまう。だが、他にも考えられるシナリオはある。台湾はよく分かっているが、中国に大量にチップを輸出することで、台湾の経済成長は促進されるものの、中国の技術発展も支援していることになる。台湾が、例えば米国との自由貿易協定に署名するなどして、中国への輸出依存度を減らすべく具体的な対策を講じるなら、中国への半導体チップの輸出を打ち切ってしまう可能性がある。

これは中国にとっては耐えられないシナリオだ。考えてみて欲しい。TSMCがトランプ政権の厳しい対中禁輸措置に応えてファーウェイからの新規注文を拒絶して以来、ファーウェイは5ナノ製造プロセスを使用したハイエンドのKirin 9000チップセットの製造を停止せざるを得なくなった。こうしてハイエンドチップが不足すると、ファーウェイはまもなく、5G対応のスマートフォンの製造を継続できなくなるだろう、とある社員はいう

台湾製のチップがまったく入ってこなくなると、中国のテック産業全体の継続的な成長に疑問が生じることになる。そうなると、中国は激怒するだけでなく、国内の安定も脅かされるため、中国政府に台湾武力侵攻の強い動機を与えることになるだろう。

逆に、米国に台湾製チップが入ってこなくなるシナリオも考えられる。「平和的な併合」のシナリオ(武力侵攻なしで台湾が中国に統合されるシナリオ)が実現すれば、台湾のファウンドリは中国政府の支配下に入ることになり、米国にとって戦略的な問題が生じる。中国政府はファウンドリに対してチップの輸出を禁止したり、輸出量を制限するよう要請できる。そうなると、米国は、米軍の最先端の軍事機器のモバイル化に必要なチップが手に入らなくなる。

TSMCが米国企業に対するチップの輸出を停止または制限すると、米国企業は現在のファーウェイのような状況に陥る可能性が高い(中国では「使用できるチップがない」という意味の「无芯可用」という新しいフレーズが登場している)。米国が台湾に侵攻して中国と台湾を再分割する可能性は低いものの、報復として制裁措置を課すなどの対抗手段を検討するかもしれない。そうなれば米中間の緊張がさらに高まることになる。

いうまでもなく、こうしたシナリオが現実化すればグローバルなサプライチェーンは分断され、全世界に深刻な状況を招くことになる。

台湾の半導体産業は国を守る盾か、それともアキレス腱か

台湾は間違いなく、半導体業界における支配的な地位と、それが米国と中国に対する影響力を与えている現在の状況を享受しているが、米中両国は現状に大いに不満を抱いており、両国とも自国に有利な状況になるようさまざまな手段を講じている。たとえば米国は、米国内にチップ製造工場を建設するようTSMCに要請している。一方中国は、TSMCから100人以上のベテラン技術者やマネージャーを引き抜いて、最先端のチップ製造を自国で行うという目標に向けて取り組みを強化している。

これは台湾の将来にとって決して好ましいことではない。台湾が海外での半導体生産量を増やすと、台湾に対する国際的な注目は弱まるかもしれない。が、同時に米国が台湾を軍事的に保護する動機も弱まってしまう。サプライチェーンが広域に分散するほど、中国が台湾を軍事力で併合するための主要な障害が軽減されることにもなる。台湾にとってこれは、難しいが、存続に関わる問題だ。

こうした不確実な要因はあるものの、台湾の地位は少なくとも短期的には安泰のようだ。米中両国の競争相手の製造プロセスはまだ数年は遅れている状態であるし、彼らが追いついてきたとしても、工場は稼働するまでに数年の計画と投資が必要になることはよく知られている。現状に何らかの変化がない限り、米中両国とも、少なくとも短期的には、台湾製チップなしでやっていけるとは考えられない。今確実に言えることは、米中両国は、対台湾戦略において、従来にも増して台湾の半導体産業の役割を考慮する必要があるということだ。

編集部注:本稿の執筆者Ciel Qi(シエル・チー)氏は、Rhodium Groupの中国プラクティスのリサーチアシスタントで、ジョージタウン大学のセキュリティ研究プログラム(テクノロジーとセキュリティ専攻)の修士課程に在籍している。また、ハーバード大学神学部で宗教、倫理、政治学の修士号を取得している。

画像クレジット:Evgeny Gromov / Getty Image

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(文:Ciel Qi、翻訳:Dragonfly)

テクノロジーへの取り締まりが、今後の米国・中国間の競争の運命を握る

TechCrunch Global Affairs Projectは、テックセクターと世界の政治がますます関係を深めていっている様子を調査した。

今、テクノロジー大手は苦境に立たされている。野心的なテクノロジー企業はかつて、中国で比較的独立して活動できる数少ない企業の1つだった。以前、Alibaba(アリババ)のJack Ma(ジャック・マー)氏やDidi(ディディ)のJean Liu(ジーン・リュー)氏のようなテックリーダーは、ダボス会議で主役級の存在感を放つ、中国イノベーションの世界的なシンボルとなっていた。しかし今は違う。

2020年マー氏が中国の規制当局を批判する発言をした後、Alibabaの記録的なIPOは延期され、また同氏は数カ月間、事実上「行方不明」となっていた。Tencent(テンセント)は反トラスト法違反で多額の罰金を科せられている。2020年以降、両社はそれぞれの企業価値の約20%を失い、その総額は3000億ドル(約35兆円)以上に達している。Didiの株価は中国のアプリストアからの削除命令を受けた後、40%も下落している。最近では中国の規制当局がEdTechやゲーム業界に新たな規制を課し、さらには暗号資産を全面的に禁止している。

米国テクノロジー業界の重鎮らは自由を手にしているようにも見えるが、実際は彼らや彼らのビジネスも政府の監視下に置かれている。Lina Khan(リナ・カーン)氏、Tim Wu(ティム・ウー)氏、Jonathan Kanter(ジョナサン・カンター)氏といった反トラスト法を擁護する有力者たちがいずれもバイデン政権で要職に就いており、また米国議会ではプライバシーや年齢制限など、テクノロジー企業を規制する新たな法案が検討されている。

北京でもワシントンでも(そして何年もテクノロジー企業と戦ってきたブリュッセルでも)「大手テクノロジー企業はあまりにも強力になりすぎて責任を取れなくなっている」というコンセンサスがますます明確になってきている。政府はイデオロギーの違いを超えて、公共の利益の名のもとに何らかのコントロールを行わなければならないと考えている。今、創業者、経営者、投資家にとって、政治的リスクがかつてないほど高まっているわけだ。

しかし、表面的には似たような取り締まりに見えても、両国の反トラスト法戦略の意味するところはこれ以上ないほど相違している。中国では、反トラスト法の取締りは与党である共産党の指揮棒に運命が委ねられている。しかし米国の反トラスト法のムーブメントは一様ではない。

米国がまだ始めたばかりのことに対して中国は断固たる行動を取っている。しかし、データプライバシーや子どものスクリーンタイムの制限を謳う中国政府の取り組みは、その真の目的である政治的・経済的な完全支配のための布石にすぎない。事実上独立した市民社会が存在しない中国では、テクノロジー産業は共産党以外に権力を持つことができる数少ない場所の1つとなっていた。しかしこれまで以上に抑圧的な習近平政権では、このような独立した力の源が受け入れられることはない(香港を参照)。党の方針に従わなければ中国国家の強大さに直面するぞというメッセージは明確である。

さらに、中国はパワーの拡大を目指している。中国はかねてより次世代技術の支配を目指しており「China Standards 2035」プロジェクトの一環として、5GやAI、再生可能エネルギー、先進製造業など、数多くの重要な産業や分野の標準化の設定を積極的に進めている。これを実現するための主要戦略として、中国は国際的な基準設定団体を水面化に支配しようと試みていたのだが、北京はこれらのテクノロジーを開発する企業をコントロールすることも同様に重要であると気づいたのである。Huawei(ファーウェイ)、Xiaomi(シャオミ)、TikTok(ティックトック)の3社は、欧米の政治家が懸念しているような積極的なスパイ活動は行っていないかもしれないが、彼らの利用が広がれば広まるほど、中国の規格が世界のデフォルトになっていくことになる。

関連記事:国際的な技術標準での優位性を狙う中国の次の計画

ジャック・マー氏の運命と中国の5GリーダーであるHuaweiの創業者一族の運命を対比してみるといい。Huaweiは中国のテクノロジーを世界の多くの国でデフォルトの5Gキットとすることに成功。これにより中国の技術的信頼性が高まり、いくらマー氏が共産党員でもこの功績の比較にはならない。Huaweiは当然北京との親密さを売りにしており、Huaweiを選ぶことは中国への信任投票の代名詞となっているが、その分のリスク存在する。米国は、Huaweiと中国の治安機関との関係を懸念して同社に対する反対運動を実施。その結果、Huaweiが米国の対イラン制裁に違反したとして、同社創業者の娘でCFOのMeng Wanzhou(孟晩舟)氏がカナダで逮捕されるに至ったのである。

しかし、忠誠心が報われないわけではない。北京は2人のカナダ人を逮捕し、彼らの拘留を利用して晩舟氏の釈放に向けた取引を成功させた。例えHuaweiが以前は北京に忠誠を誓っていなかったとしても、今は確実に誓っているだろう。中国の他のテクノロジー大手にとっての教訓になったのではないだろうか。

中国の弾圧により投資は冷え込み、人材は浪費され、恐らく中国の強力なテクノロジー部門を築いてきた起業家精神も失われたことだろう。しかし、権力を振るってテクノロジー企業を屈服させることには間違いなく成功している。

北京が国益のためにテクノロジー大手を弾圧する一方で、米国が自国のテクノロジー大手を取り締まっている理由は一体何なのだろうか?米国の独禁法取締官はテクノロジーパワーの肥大化を懸念しているかもしれないが、より競争力のある部門がどうあるべきかという戦略的ビジョンを持っているとは信じ難い。米国の大手テクノロジー企業はその規模が米国の競争力に不可欠であるという主張をすることがあるが、彼らも政府も、自分たちが「アメリカンパワー」の作用因子であるとは考えていない。実際、米国議会がテクノロジー企業と中国のどちらをより敵視しているのか、判断に迷うほどである。

反トラスト法を支持する人々は、Google(グーグル)やApple(アップル)といった企業を解体するか、少なくとも規制することで全体的な競争力が高まり、それが政治や米国のテクノロジー分野に広く利益をもたらすと信じている。AmazonからAWSを、 Facebook(フェイスブック)からInstagram(インスタグラム)を切り離すことで、消費者にはメリットがもたらされるかもしれないが、これがテクノロジーに関する米国の優位性を維持することにどうつながるだろうか?それはまったく不明である。

これまでの米国におけるハンズオフ型の資本主義システムは、オープンでフラット、民主的であり、世界の歴史上最高のイノベーターを生み出してきた。同産業は政府が支援する研究の恩恵を受けてきたが、政府との関係の「おかげ」ではなく、むしろ政府との関係があったにもかかわらず、成功を遂げることができたのだ。米国企業が世界的に信頼されているのは(ほぼ)そのためであり、政権の動向に左右されることなく、法の支配を遵守することが知られているからなのである。

テクノロジーにおける米国と中国間の競争は、この前提を根底に検証されなければならない。政府から独立して運営されている分散型かつ非協調的な産業が、超大国によって編成された一産業に対して優位性を維持できるのか?

筆者はそれでも米国の(そして同盟国の)イノベーションは、これまで通り成功し続けると楽観視している。開放性は創意工夫を生むのである。米国の研究とスタートアップはどの国にも劣っておらず、そして競争に適切に焦点を当てることで、発展が到来するのである。

しかしだからといって、少なくとも限定的な国家戦略がまったく不必要というわけではない。米国に中国のような産業政策が必要だと言っているわけではない。結局のところ、中国のトップダウンモデルは壮大な無駄を生み出し、それが何十年にもわたって中国経済を圧迫することになる可能性があるのだ。企業を強制的に壊してしまうような露骨なやり方では、かえって害になることが多いだろう。

その代わりに米国の議員たちは、反トラスト法に関するヨーロッパの見解に賛同しつつある今、大西洋をまたいだグローバルな競争基準の賢明なフレームワークを開発すべきだ。新設されたU.S.-EU Trade and Technology Council(米欧通商技術評議会)とQuad(日米豪印戦略対話)のテクノロジーワーキンググループが協力を促進し、フェアプレーを維持する善意の民主的テクノロジーブロックを作るための基礎を築くべきなのである。

商業的なアウトカムに影響を与えることなく、政府が支援を行うというこのような中間的な方法には前例がある(冷戦時代に生まれたシリコンバレーの例など)。米国のテクノロジー産業の起業家精神を阻害することなく、ガードレールを提供するためにはこの方法が最適だ。

議会や行政がテクノロジー競争をどう扱うかを検討する際、現在の弊害を是正するだけではなく、米国のテクノロジーそのものの未来を描くことを念頭に置くべきである。なんと言っても米国経済のリーダーシップがかかっているのだから。

編集部注:本稿の執筆者Scott Bade(スコット・ベイド)はTechCrunch Global Affairs Projectの特別シリーズエディターで、外交問題についての定期的な寄稿者。Mike Bloomberg(マイク・ブルームバーグ)の元スピーチライターで、「More Human:Designing a World Where People Come First」の共著者でもある。

画像クレジット:Anson_iStock / Getty Images

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(文:Scott Bade、翻訳:Dragonfly)

がん患者のためのデジタルサポートと研究開発向けのSaaSを提供する英Vinehealth、米国でのローンチを目指して6.2億円調達

2018年にロンドンで設立されたデジタルヘルスのスタートアップVinehealth(ヴィネヘルス)は、がん患者のためのパーソナル化されたサポートを提供すると同時に、薬の開発や臨床試験を含む患者報告アウトカム(PRO:Patient Reported Outcome)データの収集を容易にするアプリを構築した。同社は米国進出の準備を進める中、550万ドル(約6億2000万円)のシードラウンドを完了した。

共同創業者でCTOのGeorgina Kirby(ジョージナ・カービー)氏が「後期シード」と呼ぶこのラウンドは「今後12〜18カ月の間に」予定されているシリーズAに先立って行われたもので、Talis Capital(タリス・キャピタル)がリードし、既存投資家のPlayfair Capital(プレイフェア・キャピタル)とAscension(アセンション)が参加した。

AXA PPP Healthcare(AXA PPPヘルスケア)の元CEOであるKeith Gibbs(キース・ギブズ)氏をはじめ、多くのエンジェル投資家もこのラウンドに参加している。Newhealth(ニューヘルス)のパートナーPam Garside(パム・ガーサイド氏)、Wired(ワイアード)の創刊者兼編集者David Rowan(デビッド・ローワン)氏が率いるVoyagers Health-Tech Fund(ボイジャーズ・ヘルス-テック・ファンド)、ヘルスケア起業家でPI Capital(PIキャピタル)の創業者David Giampaolo(デビッド・ジャンパオロ)氏、Speedinvest(スピードインベスト)とAtomico Angel(アトミコ・エンジェル)のベンチャーパートナーDeepali Nangia(ディーパリ・ナンジア氏)、Bristol Myers Squibb(ブリストル・マイヤーズ・スクイブ)のVP兼元医療ディレクターFaisal Mehmud(ファイサル・メフムード)氏、King’s College London(キングス・カレッジ・ロンドン)とKing’s College Hospital NHS Foundation Trust(キングスカレッジ病院NHS財団トラスト)およびGuy’s and St Thomas’ NHS Trust(ガイズ&聖トーマスNHS財団トラスト)のコラボレーションであるKHP MedTech Innovations(KHPメドテック・イノベーション)が名を連ねている。

このスタートアップは、2019年に創業者たちがEntrepreneur First(アントレプレナー・ファースト)のデモデーにピッチしたとき、私たちが「注目すべき」と評した企業だ。同社は、行動科学とAIを組み合わせて、患者にタイムリーなサポートとナッジ(薬の服用を促すリマインダーなど)を提供することで、患者が自分の治療をより簡単に自己管理できるようにしている。

Vinehealthのプラットフォームは、患者が症状に関するフィードバックを提供したり、治療の副作用を報告したりする際に、臨床医が患者をリモートで監視できるチャネルとしても機能する。

このアプリは2020年1月に公開されて以来、これまでに約1万5000回ダウンロードされている。カービー氏が確認したところによると、そのダウンロード数はこれまですべて利用に及んでおり、純粋な患者サポートと試験・研究の両方が含まれているという。

同社の患者支援アプリは、がん患者が自分でダウンロードできるように無料で提供されている。現在は英国とアイルランドで利用可能となっている。

製薬業界向けには、VinehealthはそのプラットフォームをSaaSとして提供しており、製薬会社が試験のために患者を募集したり、研究開発や医薬品開発のためにPROを集めたりするのを支援している。

「私たちは最初から製薬業界に注力してきました。トラクションを豊富に獲得しており、多くの機会を見出しています」とカービー氏は語る。「患者支援プログラムと臨床試験は極めて類似性が高い(プロダクト)です【略】製薬業界向けのものは、薬の開発プロセスの一部であるという点で異なりますが、ソフトウェアの提供という観点では、そのプロセスを通じて患者が必要とするものであり、非常に類似しています。そのため、こうしたライフサイエンスのオファリングに的を絞っています」。

同氏は、Vinehealthがヘルスケアサービスに直接売り込む調達ルートを進んではいないことを強調した。つまり基本的には、患者への支援ソフトウェアの無償提供にライフサイエンス研究が資金を提供する、という考え方だ(ただし、現時点では製薬業界の顧客名を公表することはできない)。

収益化に関しては、製薬会社のニーズに応えることに焦点が置かれている。Vinehealthは患者中心のアプリとして見られることも同様に切望しており、より良い患者アウトカムを促進する重要な臨床医サポートの役割を果たすことを目指している。

「どのブラウザからでもアクセス可能なウェブダッシュボードを用意しています。患者をリモートで追跡したいと考えている臨床医や医師は、調査研究の実施を通じて、あるいは臨床試験の中でも、それを行うことができます」とカービー氏。「こうした医師や看護師はデータをリアルタイムで見ることができる一方、それをケア経路の適切なポイントのいずれかに送り込むことも可能になっています。もちろん、彼らは1日中ダッシュボードの前に座っているということはありませんが、特定の危険信号を確認してどの患者を最初に診察すべきかを把握することや、そのようなリアルタイムのデータを使ってより良い臨床判断を下す方法を知ることは、通常(隔週や月ごとの患者追跡)よりも非常に有益な場合があります」。

「これまでに得たことのないコンテキストと豊富な長期的データを提供するものです」と同氏は付け加えた。

Vinehealthは従来の紙ベースの質問票をデジタル化した。がん患者が臨床チームを訪問する際、症状を報告し、より広範なフィードバックを提供するために記入するよう一般的に求められるものだ。

その前提は、レガシープロセスを専用のユーザーフレンドリーなデジタルインターフェイスに移行することで、より良い患者の自己管理、治療アウトカム、そしてがんとともに生きる人々の生活の質の向上をサポートすることにある。アプリ経由でデータを報告するのが相対的に簡単であることに加えて、同社はそこにより幅広いサポートパッケージを組み合わせている(アプリにサポートコンテンツを提供するために慈善団体Macmillan[マクミラン]およびBowel Cancer UK[バウエル・キャンサーUK]と協力している)。

例えば、A/BテストとAIを利用して、適切なリソースを抽出するためのパーソナライズされたタイムリーなレコメンデーションの設定、患者の薬の服用に対する注意喚起や動機づけの最善方法の決定、がん治療のための複雑な投薬レジームとなり得るものの管理などを行っている、とカービー氏は説明する。

Vinehealthのアプリラッパーは、患者にPROを提供するよう促すポジティブなフィードバックを施すこともできる。

カービー氏は、患者がPROのデータを効果的に追跡すれば、生存率が最大20%上昇する可能性があるというエビデンスを挙げている。「より良い自己管理は、生存に多大なインパクトを与える可能性があります」と同氏は話す。「私たちは生存率の改善だけではなく、生活の質の向上も提示したいのです」。

行動科学とデータ駆動型サポートを融合したVinehealthのアプローチは、共同創業者たちの専門知識を組み合わせたものだ。

「レイナ(Rayna Patel[レイナ・パテル]氏、共同創業者兼CEO)の経歴はまさに行動科学にあり、私の経歴はデータ科学にあります」とカービー氏は語る。「私たちが協働を始めたとき、ここで双方を有効に活用できると考えました。データを使用することで、人々がどのような状況に置かれているかを把握し、そのナッジが最も効果的なのはどこかを特定することができます。また、行動科学を利用して、適切なタイミングで重要なポイントを的確な言葉で提供することで、人々が習慣を身につけ、よりコントロールできるようになり、何が起こっているのかを実際に理解し、自分のケアのためにより良い決定を下せるようになります」。

「アプリにはいくつかのナッジがあります。大小さまざまです。実際に効果があり、患者に見過ごされてしまうことのない、特定の方法で提供される薬のナッジやリマインダーを開発しています。特定の症状や、それが何につながるのかを記録するためのナッジであり、特定の支援コンテンツを形成するものです。特定のレベルで懸念を記録していくことができます。ここには、具体的な症状や薬の副作用に対処するのに本当に役立つ支援コンテンツがあるのです」。

「時によって、タイミング、言葉の使い方、そしてそのナッジを届けることに関する要素に配慮します」と同氏は言い添えた。「一度にあまりにも多くのことを変えようとすると、何も変えられないという研究結果が出ています。ですから私たちは、どのように患者を少しずつ動かしていくか、どのように患者がより良い習慣を身につける手助けをするのか、またそれをどのくらいの頻度で行うのかについて、慎重に検討を重ねています」。

カービー氏によると、AIを利用して、将来的には予測症状のログ記録など、より高度な提案をプラットフォームに組み込むことも目標に据えているという。例えば「この特定の患者に対して、この特定の薬で何が起こり得るか」といったことだ。

現在のところ、Vinehealthは腫瘍学に特化し、患者に合わせてカスタマイズされたコンテンツレコメンドシステムを構築している。患者の診断に合わせて調整し、患者の継続的なインプットに適応し、他の同様の患者が閲覧し支持しているコンテンツを考慮に入れていくものである。

研究面では、9つのNHSトラストと300人の患者が関与する進行中の研究がこれまでに同プラットフォームで利用された中で最大の研究であり、これはVinehealth自身が行っている研究の一部でもあるとカービー氏は述べている。

健康データはもちろん非常に機密性が高く、Vinehealthが医療情報を処理してサービスを提供し、個別化された治療サポートを行うためには、患者支援プロダクトのユーザーに求められる同意とは別に、第三者による研究目的のための同意が求められることをカービー氏は認めている。

「そのデータは誰とも共有されないものです。ただし、明示的に同意した場合を除きます。プラットフォームにサインアップするだけで、臨床試験の一環としてデータを共有することに同意することにはなりません。これはまったく別の同意です」と同氏はいう。

「私たちはそれを極めて明確にしており、いかなる形であっても共有を隠すことを望んではいません。それは患者にとって真に明白かつ明確でなければなりません。最終的には誰もが患者をサポートしたいと考えています。患者が臨床試験に参加する機会を増やし、そのデータを収集し、例えば自宅で関連する副作用に苦しんでいて、製薬会社に戻ることがないような状況でもそのデータをフィードバックできる方法を提供したいと思っているのです。だからこそ私たちは、自分たちが何をしているのか、なぜそれをしているのかを真に明確にし、患者に選択肢を提供していこうと努めています」。

将来的には、同スタートアップは、患者から提供され、純粋に集計されたインサイトに基づいて「適切に匿名化された」データセットを提供できるようになるかもしれないことをカービー氏は示唆した。例えば、特定の薬剤の特定の副作用を経験している人口統計学的グループをハイライトすることができるかもしれない。しかし現時点では「臨床試験と患者支援プログラムに重点を置いているため」それは行っていないと同氏は付け加えた。

短期的には、Vinehealthは米国でのローンチを通じた成長に向けて準備を進めており(「2022年の早い時期」に実現したいと考えている)、18人強のチームは今後6カ月ほどで倍増する見込みで、最初の米国人雇用者はすでに確定している。

「資金調達を行って以来の私たちの主要な焦点は、優秀なチームを採用して成長させ、チームを築き上げることに時間を投資すること、そして全員がミッションに整合し、この新規市場に参入できる拡張性の高いプロダクトを私たちが実際に構築しているのだと明確に認識することに置かれています」とカービー氏。「スタートアップを立ち上げるには優秀な人材が必要です。優れたテクノロジーを持つことはできますが、優秀な人材がいなければ意味がありません」。

Talis CapitalのプリンシパルであるBeatrice Aliprandi(ビアトリス・アリプランディ)氏は声明の中で次のように述べている。「レイナ(・パテル氏)やジョージナ(・カービー氏)と提携することを非常に楽しみにしています。私たちは、ヘルスケアのアウトカムが財務的なアウトカムと直接的な相関関係にあるという独自のバリュープロポジションを考慮して、投資を行う数カ月前からVinehealthの成長に注目していました。これは患者、病院、製薬会社にとってWin-Win-Winの関係であり、医療業界ではほとんど見られないものです」。

「最初のミーティングから、創業者たちのレジリエンスとミッション主導の姿勢はすぐに明らかになり、そのことがこのオポチュニティを非常に魅力的なものにしました。レイナもジョージナも、がん患者の生活と生存を改善することへの極めて強い動機を持っていることは間違いありません。チームとして、彼らはVinehealthを成功に導くための専門知識、スキル、動機の独自の組み合わせを備えています」。

画像クレジット:David Albatev / under a license

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

【コラム】技術支配をめぐる世界的な衝突が激化、敵対国はルール・制限・終わりがない戦略的競争とスパイ活動を展開している

国家の支援を受けた企業スパイ活動に関しては、一見無関係に見える行動を、無作為なもの、重要でないもの、あるいは意味のないものであると一蹴しがちである。

次のことを考えてみて欲しい。中国は、AI、バイオテクノロジー、自動運転車、量子コンピューティング、半導体への数十億ドル(数千億円)規模の投資でシリコンバレーを席巻している。これらの領域の基礎研究開発に巨額の資金を投じているのである。米国に本拠を置く大学の教授たちが中国の研究機関とのつながりを隠しているのではないかという懸念が高まっており、2021年12月にはハーバード大学の教授が連邦法違反で有罪判決を受けたばかりである。

また、これらのセクターに属するテクノロジーCEOの多くが認識しているように、中国とつながりのある企業は、国民、ネットワーク、システムに不正アクセスをしようと絶え間ない活動を続けている。悪意のある行為者たちは、大小を問わず企業に侵入し、エマージングテクノロジー(将来実用化が期待される先端技術)の進歩に関する情報を入手するために、非従来型の情報収集活動を組み込んだ混合オペレーションを採用している。

中国が軍事部門と民間部門を問わず、テクノロジーセクター全体の支配権を獲得しようと世代的な取り組みを行っていることを理解すると、パズルのピースが適切な位置に配置され始める。

今日、私たちの敵対国は、ルールのない、制限のない、終わりのない戦略的競争とスパイ活動という、致命的で深刻なゲームを展開している。近年中国は、自国の戦略目標を推進する目的で、外国の技術とそれに従事する科学者、技術者、企業を分析し、標的にし、獲得するグローバルなシステムを構築してきた。

米国と西側諸国は、この脅威にようやく気づき始めたところである。米国家防諜安全保障センター(National Counterintelligence and Security Center、NCSC)は最近になって「中国は、米国やその他の国々から技術やノウハウを得る目的で、さまざまな合法的、準合法的、違法な方法を用いている」ことを認めている。

一方、米連邦捜査局(Federal Bureau of Investigation、FBI)は、10時間に1件の割合で中国政府の行動に関する捜査に着手していると報告している。カナダ政府は、政府の資金が敵対的な研究開発プログラムを支援していないことを確認する目的で、すべての科学者へのスクリーニングの実施を義務づける方針である。そして日本は先ごろ、経済スパイ活動に対するサプライチェーン、知的財産、重要インフラの安全性の確保を視野に入れ、内閣レベルのポストである経済安全保障担当大臣を新設した。

NATOでさえ最近、この戦いに介入し、同盟国に中国からの投資を阻止するよう呼びかけており、同盟の設立条約には回復力のある「重要なインフラと産業」が謳われていると指摘した。これは歴史的な宣言といえよう。今日の地政学的な戦いにおいて、企業は好むと好まざるとにかかわらず、その最前線に置かれている。

これを受けて、ワシントン、ブリュッセル、東京は、中国のアーリーステージのテック系スタートアップ、特に「エマージング」や「フロンティア」領域の技術を開発するスタートアップのアクセス制限に対する取り組みを徐々に強化する公算が大きい。これはテック系スタートアップやベンチャーファンドの資金調達にも影響を与えるであろう。米国政府はすでに、FIRRMAおよび2018年輸出管理改革法(Export Control Reform Act of 2018)の形で、米国の技術への中国によるアクセスを阻止または取り消す手段を導入している。規制当局はこれらのツールを本格的に用いて、アーリーステージのテック企業への投資、M&A、技術移転を見直す予定である。

しかし、これでは十分とはいえない。自由世界の政府と企業は、脅威に対抗するために、積極的、持続的、かつ効果的な措置を講じなければならない。

最初のステップは、西側諸国政府がこの難題に立ち向かい、産業を戦場として認識することである。そうすることで、企業の取締役会の考え方の変化が促進されるであろう。過去10年間、多くの米国企業が、欧米の価値観を前進させる上で、名目上の利害関係でグローバル精神を採用してきた経緯がある。

次のステップでは、この競争に勝つために不可欠な戦略的産業とエマージングテクノロジーについて、政府が定義する必要がある。米国商務省(U.S. Department of Commerce、DOC)は、2018年輸出管理改革法で、この方向に一歩踏み出した。企業に同様のことを要求することは、重要なノウハウや知的財産が敵対国に拡散することのない統一された官民ブロックを確保する上で、不可欠である。研究開発のための資金を増やし、パブリックセクターを含む市場を創出することは、企業が負担する短期的なコストを相殺することにつながるであろう。

最後に、米国が欧州とアジアの同盟国の参加を促し、投資審査と輸出管理のための統一的な法的枠組みを構築しない限り、既存の、そして今後予定されている法的、政策的処方箋はすべて無意味なものとなる。これは米国にとって真のリーダーシップを発揮する機会であり、難局に際してうまく対処し、自由世界を結集させなければならない。

結果的に、この地政学的な対立は、一部のITエグゼクティブ、スタートアップ創業者、ベンチャーキャピタリストの間にフラストレーションを生み出すことになる。これは、戦略的競争が、あるレベルでは、人、資本、アイデアの自由な流れというテック世界のモットーに反するからである。

しかし、こうしたアイデアを生み出したのは、西洋の価値観と法の支配である。それらは、私たちの継続的な利益のためだけではなく、将来の世代のためにも、私たちが保護するに値するものであるといえよう。

編集部注:本稿の執筆者Greg Levesque(グレッグ・レベスク)氏とEric Levesque(エリック・レベスク)氏はともに企業が技術、人材、サプライチェーンを地政学的脅威から守るための実用的なデータを提供するStriderの共同設立者。

画像クレジット:David Sacks / Getty Images

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(文:Greg Levesque、Eric Levesque、翻訳:Dragonfly)

ワシントン州による調査後、「Sold By Amazon」での価格操作に対してアマゾンは2.6億円を支払い、プログラムも終了

Amazon(アマゾン)は、225万ドル(約2億6000万円)を支払い、中断していた販売プログラムを永久に停止しなければならない。同社が実質的な価格操作を行っていたとする、ワシントン州司法長官による調査および訴訟を受けたものだ。

「Sold By Amazon」は基本的に次のような仕組みだった。Amazonがサードパーティの販売者と連絡を取り、商品の最低価格について合意する。Amazonがそれ以上の値段でその商品を売れば、利益を分配する。ある意味、卸売りで大量に仕入れて転売するのとあまり変わらない。しかし、Amazonがストアで商品の価格や見せ方を激しく変えるその手法のために、実際にはまったく異なったことが起こった。

州司法長官室の説明によると、Amazonは結局、他の小売業者に合わせてその商品の価格を上げ、売り手が割引を提供するのを防いでいた。その結果、購入者は、Amazonが好きなように価格を設定できるAmazon自社ブランドの購入に走ることが多かった。

Sold by Amazonに登録されている商品の大半は、価格が人為的に高く設定されたままになっていた。

価格が上昇すると、一部の販売者は、プログラム対象製品の売上とそれによる利益が著しく減少した。価格上昇に直面したネットユーザーは、Amazonの自社ブランド商品、特にプライベートブランド商品を購入することを選択することもあった。その結果、消費者が「Sold by Amazon」プログラムに登録された商品に高い値段を払うか、あるいはAmazonで提供される同一または類似の商品を購入するかにかかわらず、Amazon自身の利益が最大化されることになった。

これは売り手にとって不利な取引に聞こえる。だが、より根本的には、ワシントン州のBob Ferguson(ボブ・ファーガソン)司法長官は、この行為は州の反トラスト法に違反していると主張した。Amazonは店舗かもしれないが、自社の商品も販売しており、問題のサードパーティの販売業者とは競合関係にある。そして、競合する2社が商品のコストをコントロールする密約を結ぶことは、価格操作の定義とほぼ同じだ。

Amazonはファーガソン司法長官の見解に反論し、すべては顧客のためであり、完全に対等だと述べた。また「司法長官の調査とは無関係なビジネス上の理由」でプログラムを停止したと主張している。「私たちはプログラムが合法的であったと強く信じていますが、この問題が解決されることを歓迎します」と同社はTechCrunchに声明で述べた。

それにしても、2018年から拡大していたプログラムが、独禁法当局が嗅ぎ回った直後にほぼ停止してしまうとは、何という偶然だろうか。「調査は2020年3月に開始し、Amazonは6月にプログラムを停止した」と、州司法長官室のDan Jackson(ダン・ジャクソン)氏は述べた。おそらく、単にタイミングの問題だったのだろう。

とにかく、Amazonは法廷で争うよりも、225万ドルの支払い(これは州司法長官室の反トラスト部門の財源に直接充てられる)と、同社がこのプログラムの再開をいかなる形であっても禁じることを求める同意協定に同意した。

「Amazonのような巨大企業が利益を上げるために価格を固定すると、消費者が損をします。今日の措置は、製品の革新と消費者の選択を促進し、ワシントン州および全米の販売者にとって市場の競争力を高めるものです」とファーガソン司法長官は述べた。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi

実在する不動産をNFTとして購入可能に、Propyが米国でプラットフォームの展開を開始

2021年、初期のブロックチェーンスタートアップであるPropy(プロピー)が、このテクノロジーを使って現実の不動産販売をスムーズに行えるようにするために、スマートコントラクトの概念を導入することを計画しているという記事を掲載した。同社は実際にNFT(非代替性トークン)としてアパートを販売し、NFTを使って法的手続きを効果的に処理することに成功している。ただし、そのアパートはウクライナにあるものだった。同社は今回、この概念をそっくりそのまま、法律的な問題がまったく異なる米国で展開を始める。

関連記事:キエフのアパートが収集可能なNFTとして初オークション、ブロックチェーンスタートアップPropyが企画

同社は現在、米国で不動産を担保としたNFTを起ち上げることによって、このプロセス全体をさらに拡大し、文字通り不動産の所有権をNFTに変えるための技術的・法的な枠組みに取り組んでいる。

このテクノロジーは、所有者や仲介業者に向けて販売されることになっており、Propyは不動産NFT化サービスの一環として、2月8日にフロリダ州にある2つの住宅用物件をオークションにかける予定だ。

その仕組みは次のようになっている。Propyによると、購入の記録は変更不可能なブロックチェーン上に置かれ、所有権を示す法的文書へのアクセスを提供する。これによって、買い手はコストを削減でき、購入のプロセスが短時間で簡単になるため、わずか数分で物件を購入することができる。

Propyの計画は、このサービスをグローバルに拡大し、ブロックチェーン技術を使って不動産を購入するための単一のフレームワークを提供することである。

うまくいけば、買い手はフロリダ州にある投資用不動産を手に入れ、所有権がNFTに関連づけられた米国にある実体の所有者となることができる。フラクショナル・オーナーシップではなく、担保にして借り入れが可能なDeFi資産となるのだ。

Propyの共同創業者でCEOのNatalia Karayaneva(ナタリア・カラヤネバ)氏は、次のように述べている。「私たちはPropyで、必要なすべてのスマートコントラクトと、米国内のあらゆる不動産物件のトークン化を可能にする互換性のある法的枠組みを開発してきました。NFTの販売額は2021年12月に40億ドル(約4600億円)に達しましたが、実物資産がその市場のかなりの部分を占めるようになるでしょう」。

2021年、PropyはウクライナでNFTを介してアパートを販売した。現在までに1600万ドル(約18億5000万円)以上の資金をベンチャー・キャピタルから調達しており、Tim Draper(ティム・ドレイパー)氏やMichael Arrington(マイケル・アーリントン)氏などから支援を受けている。

スマートコントラクトは、バーモント州アリゾナ州でこれを認める法案が可決されるなど、ますます法的効力を持つ記録になりつつある。

Propyに競合する会社はいくつかある。RealT(リアルT)はフラクショナル不動産投資プラットフォームで、世界中の投資家がトークンベースのブロックチェーンネットワークを通じて米国の不動産市場に投資することができる。SafeWire(セーフワイヤ)、かつてのSafeChain(セーフチェーン)は、不動産会社、エージェント、顧客、業界が、ハッカーの介入によって直面する通信詐欺の課題に取り組んでいる。しかし、同社はClosingLock(クロージングロック)に買収された。

画像クレジット:Andrii Yalanskyi / Getty Images

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

米消費者の2021年ソーシャルメディア詐欺被害額は約888億円、2017年の18倍に増加

米連邦取引委員会(FTC)の新しい報告書によると、ソーシャルメディアで詐欺に遭う米国の消費者が増えており、2021年に消費者は7億7000万ドル(約888億円)をソーシャルメディア詐欺で失い、同年の詐欺被害総額の約4分の1を占めていることが明らかになった。また、この数字は2017年に報告されたソーシャルメディア詐欺被害額4200万ドル(約48億円)から18倍に増えており、暗号資産やオンラインショッピングが関係する新しいタイプの詐欺が流行したためだと、FTCは指摘している。これにより、多くの若い消費者が詐欺に遭うようになり、現在、18〜39歳の成人は、40歳以上の成人に比べて2.4倍多く詐欺に遭っている。

スキャマー(詐欺師)たちは、ソーシャルメディアが詐欺を行うのに最も収益性の高い場所の1つであることを明確に認識している。9万5000人超の詐欺被害者が、最初にソーシャルメディアでコンタクトがあったと答えており、この数は2020年の2倍超、2017年の19倍にのぼる。

画像クレジット:FTC

2021年に詐欺でお金を失ったとFTCに報告した人の4人に1人以上が、詐欺のきっかけとなった投稿、メッセージ、広告を最初に見たのはソーシャルメディア上だったと回答した。連絡方法が明記されていない報告を除くと、2021年の詐欺による損失の26%をソーシャルメディアでの詐欺が占め(7億7000万ドル、約888億円)、次いでウェブサイトやアプリが19%(5億5400万ドル、約639億円)、そして電話が18%(5億4600万ドル、約629億円)だった。しかし、個人の損失額の中央値は、ソーシャルメディア詐欺の468ドル(約5万4000円)に対し、電話詐欺が1110ドル(約12万8000円)と最も多い。

ソーシャルメディア詐欺が最も多く発生しているのは、Facebook(フェイスブック)とInstagram(インスタグラム)であることがデータから読み取れる。

オンラインロマンス詐欺の場合、ユーザーの3分の1以上が、スキャマーからの最初の働きかけがFacebookまたはInstagram上でのものだったと報告している。具体的には、Facebookが23%、Instagramが13%だ。これらの詐欺は、一見無邪気な友達申請から始まり、甘い言葉、そして金銭の要求へと続くと報告書にはある。

一方、2021年の投資詐欺の半数以上(54%)は、ソーシャルメディアプラットフォームから始まっていて、スキャマーは偽の投資機会を宣伝したり、人々と直接つながって投資を促したりしている。ここではInstagramがスキャマーに人気で、投資詐欺の36%を占め、次いでFacebookが28%、そしてメッセージングアプリのWhatsApp(ワッツアップ)とTelegram(テレグラム)がそれぞれ9%と7%だった。

そしていまでは投資詐欺の大部分に暗号資産が関わっていることも明らかになった。2021年、FTCに報告されたソーシャルメディア投資詐欺の64%で暗号資産が支払い方法となっている。決済のアプリやサービスが使われたのは13%、次いで銀行振り込みや銀行決済が9%だった。

画像クレジット:FTC

ロマンス詐欺と投資詐欺が引き続き金額ベースで最大の被害で、過去最高を記録してもいるが、FTCへの報告数が最も多い詐欺は、消費者がソーシャルメディアで初めて見たものを購入しようとするものだ。ほとんどの場合、被害者はFacebookやInstagramで販売されているものを見て、購入しようとしていた。

2021年にソーシャルメディア詐欺で失ったお金についてFTCに届けのあった報告の45%は、オンラインショッピングに関連するものだった。そのうちの70%近くは、ソーシャルメディア上の広告を見て注文したものの、その後商品が届かなかったというものだった。また、広告から「そっくり」ウェブサイトに誘導され、本物のオンライン小売業者から購入したかのように騙されるというケースもあった。このような詐欺のうち、10件中9件はFacebookとInstagramがプラットフォームとして使われている、とレポートにはある。

オンラインショッピング詐欺の増加は、消費者がお金を失うというだけでなく、eコマースのエコシステム全体とソーシャルメディア企業のビジネスにとっても決定的な意味を持つ。近年、FacebookとInstagramは、オンラインショッピングをサービスの中核とするために多額の投資を行っており、広告主とターゲットとなる顧客を結びつけることを約束している。Meta(メタ)が所有するアプリには独自の「ショップ」セクションがあり、消費者は商品を閲覧して、外部のウェブサイトに移動することなく直接精算することができる。しかし、これらのプラットフォームで紹介されているオンライン小売業者の正当性に消費者が警戒心を抱くようになれば、将来的にソーシャルメディアからの買い物を躊躇するようになるかもしれない。

Metaにとって、消費者の購買行動の変化は、過去数年よりも現在の方が大きな問題となっている。というのも、同社の大規模な広告ビジネスは、消費者が追跡を拒否できるようにしたApple(アップル)のiOSのプライバシー変更によって影響を受けているからだ。広告のパーソナライズ機能の低下による市場の変化を予測して、Metaは自社のプラットフォーム内で消費者のショッピングに基づくより多くのファーストパーティデータを取得できるアプリ内ショップを作成し、収益の多様化を進めている。また、サブスクリプションやチップなど、クリエイターエコノミーからの新しい収入も開拓している。

FTCは、2021年のソーシャルメディア詐欺のうち、投資、ロマンス、eコマースで70%を占めているが、それ以外にもソーシャルプラットフォームに関連した詐欺の種類があると述べている。ただし、報告書ではこれらをカテゴリー別に分けてはいない。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

米国は半導体不足の解消からほど遠いとライモンド米商務省長官が警告

米商務省は米国時間1月25日、半導体市場の供給不足がどの程度広がっているかを把握するために150社を対象に行った調査の結果を発表した。自動車産業と医療産業は、この供給不足の影響を大きく受けている。

この調査結果を受けて行われた記者会見においてGina Raimondo(ジーナ・ライモンド)商務長官は、問題を厳しい言葉で表現し「半導体の供給問題に関しては、まだ脱却したとは言えない」と指摘。さらに「この問題は2022年後半まで、いや、もっと長く続きそうだ」と述べた。

ライモンド氏は、現在下院が起草しているU.S. Innovation and Competition Act(USICA)に、米国内での半導体生産増強のための520億ドル(約5兆9236億円)の資金が含まれていることを挙げ、議会の通過を強く要請した。

調査では、2019年から2021年にかけて需要が17%増加したことを指摘しており、この数字は今後さらに増加することが予想される。さらに、予期せぬ事態に直面した場合、破滅的な結果をもたらす可能性がある薄利多売についても述べている。

チップの在庫の中央値は、2019年の40日から5日未満に減少している。この在庫は、主要産業ではさらに少なくなってしまう。つまり、新型コロナウイルスの流行や自然災害、政情不安によって海外の半導体施設がわずか数週間でも混乱すれば、米国内の製造施設が閉鎖される可能性があり、米国の労働者とその家族が危険にさらされることになる。

ほとんどの製造施設は現在90%以上の生産能力で稼働しており、上工場を増やさなければこれ以上生産量を増やすことは不可能だという。特にIntelは、オハイオ州の2工場への大規模な投資を発表しているが、最初の工場が稼働するのは2025年だ。おそらく、現在行われている措置の多くは、将来の供給不足を回避することを目的としているのだろう。

「2021年初頭からの進展にもかかわらず、半導体不足は続いている。「半導体のサプライチェーンが複雑であることが一因だ。生産者は常に需要を明確に把握しているわけではなく、チップ消費者は必要なチップがどこで生産されているのかを常に把握しているわけではない。こうした障壁が、ソリューションの開発を難しくしている」と商務省の調査報告では述べられている。

画像クレジット:Joshua Roberts/Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ヨーロッパは量子システムの開発をめぐる競争で大国に伍することできるだろうか?

TechCrunch Global Affairs Projectは、テックセクターと世界の政治がますます関係を深めていっている様子を調査した。

量子情報科学はテックセクターの研究分野において長いこと低迷を続けてきた。しかし、近年の進歩はこの分野が地政学的に重要な役割を担っていることを示している。現在、数カ国が独自の量子システムの開発を強力に推進しており、量子をめぐる競争は新たな「宇宙開発」といった様相を呈している。

米国と中国が開発競争の先頭を行く中、ヨーロッパの国々はなんとか遅れを取り戻さねば、というプレッシャーを感じており、いくつかの国々、そしてEU自体も大いに力をいれてこの領域への投資を推進している。しかしヨーロッパのこうした努力は、米国と中国という2つの技術大国に太刀打ちするには、遅きに失したということはないだろうか?また断片的でありすぎるということはないだろうか?

米国と中国:量子システムの開発、そしてそれを超えた競争

量子コンピューティングは、もつれや重ね合わせといった量子物理学(つまり、原子と亜原子スケールでの物理学)の直感に反する性質を利用しようとするもので、量子コンピューターはレーザーあるいは電場と磁場を使用して粒子(イオン、電子、光子)の状態を操作する。

量子システムの開発で最も抜きん出ているのは米国と中国で、どちらも量子「超越性」(従来のコンピューターでは何百万年もかかるような数学的問題を解く能力)を達成したと主張している。

中国は2015年以降、量子システムの開発を進めているが、これはEdward Snowden(エドワード・スノーデン)氏が米国の諜報活動について暴露し、米国の諜報活動の範囲に関する不安が広がった時期と重なっている。中国では米国の諜報能力に危機感を抱き、量子通信への取り組みを強化した。中国が量子研究にどれだけの研究費を費やしているかについて、さまざまな推測がなされていて定かではないが、同国が量子通信、量子暗号、ハードウェア、ソフトウェアにおける特許を最も多く持つ国であるということははっきりしている。中国が量子コンピューターに対する取り組みを始めたのは比較的最近のことだが、その動きはすばやい。中国科学技術大学(USTC)の研究者らが2020年12月、そして2021年6月にも「量子超越性」を達成したと、信用に足る発表を行っているのだ。

米国では、中国が2016年に衛星による量子通信技術を持つことを実証したことを受け、量子技術で中国にリードを許しかねないということに気がついた。そこで、Donald Trump(ドナルド・トランプ)前大統領は2018年、12億ドル(約1370億円)を投じてNational Quantum Initiative(国家量子プロジェクト)を開始した。そして、これがおそらく最も重要なことだが、大手テック企業が独自の量子研究に莫大な研究費を注ぎ込み始めた。1990年代に2量子ビットの初代コンピューターを発表したIBMは、現在量子コンピュータ「Quantum System One」を輸出している。Googleは、IBMに比べるとこの分野では新参であるものの、2019年に超伝導体をベースにした53量子ビットの量子プロセッサーで量子超越性を達成したと発表している。

量子技術開発がもたらす地政学的影響

中国、米国、そして他の諸国を開発競争に駆り立てているのは、量子コンピューティングに遅れをとった場合に生じるサイバーセキュリティ、技術、経済的リスクへの恐れである。

まず、完全な機能を発揮できる状態になった量子コンピューターを使えば、悪意を持つ人物が現在使用されている公開暗号キーを破ることが可能だ。従来のコンピューターが2048ビットのRSA暗号化キー(オンラインでの支払いを安全に行うために使用されている)を解読するのに300兆年かかるのに対し、安定した4000量子ビットを備えた量子コンピューターなら理論上、わずか10秒で解読することができる。このようなテクノロジーが10年を待たずして実現する可能性があるのだ。

第2に、ヨーロッ諸政府は、米国と中国の量子システムの開発競争に巻き込まれることで被る被害を恐れている。その最たるものが、量子テクノロジーが輸出規制の対象になることである。これらは同盟諸国間で調整されるだろう。米国は、冷戦時代、ロシアの手にコンピューター技術が渡るのを恐れてフランスへの最新のコンピューター機器の輸出を禁止した。このことを、ヨーロッパ諸国は記憶している。この輸出禁止を受け、フランスでは国内でスーパーコンピューター業界を育成し支援することになった。

今日、米国と提携するヨーロッパ側のパートナーは、テクノロジーにまつわる冷戦の中で、第三の国々を通じた重要なテクノロジーへのアクセスや第三の国々とのテクノロジーの取り引きに苦労するようになるのではないかと懸念している。米国は、規制品目を拡大するだけでなく、ますます多くの中国企業を「企業リスト」に加え(2021年4月の中国スーパーコンピューティングセンターなど)、それらの企業へのテクノロジーの輸出を、米国以外の企業からの輸出も含め阻む構えだ。そして規制がかけられたテクノロジーが増えるなか、ヨーロッパの企業は自社の国際バリューチェーンが被っている財政上の影響を感じている。近い将来、量子コンピューターを作動させるのに必要なテクノロジー(低温保持装置など)が規制下に置かれる可能性もある

しかし中国に対する懸念もある。中国は、知的財産権や学術面での自由の問題など、諸国の技術開発に対し別の種類のリスクをもたらしており、また中国は経済的強制に精通した国である。

第3のリスクは、経済上のリスクである。量子コンピューティングのような世の中を作り変えてしまうような破壊力を持ったテクノロジーは業界に巨大な影響をもたらすだろう。「量子超越性」の実証は、科学ショーを通した一種の力の見せあいだが、ほとんどの政府、研究所、スタートアップが達成しようと取り組んでいるのは実は「量子優位性」(従来のコンピューターを実用面で上回るメリットを提供できるよう、コンピューティング能力を上げること)である。

量子コンピューティングは、複雑なシュミレーション、最適化、ディープラーニングなどでのさまざまな使い道があると考えられ、今後の数十年で大きな利益をもたらすビジネスになる可能性が高い。何社かの量子スタートアップがすでに上場され、これに伴い量子への投資フィーバーが起きつつある。ヨーロッパは21世紀の重要な領域でビジネスを成り立たせることができなくなることを恐れている。

ヨーロッパの準備体制はどうか?

ヨーロッパは、世界的量子競争においては、その他の多くのデジタルテクノロジーとは異なり、好位置に付けている。

英国、ドイツ、フランス、オランダ、オーストリア、スイスは大規模な量子研究能力を持ち、スタートアップのエコシステムも発達している。これらの国々の政府やEUは量子コンピューティングのハードウェアやソフトウェア、および量子暗号に多額の投資を行っている。実際に英国では、米国や中国よりずっと早い2013年に、National Quantum Technologies Program(国家量子テクノロジープログラム)を立ち上げている。2021年現在、ドイツとフランスは量子研究および開発への公共投資でそれぞれ約20億ユーロ(約2600億円)と18億ユーロ(約2340億円)を投じるなど、米国に追随する形となっている。Amazonは、フランスのハードウェアスタートアップAlice & Bobが開発した自己修正量子ビットテクノロジーに基づいた量子コンピューターを開発してさえいる。

では、ヨーロッパが米国や中国を本当の意味で脅かす立場になるのを妨げているものはなんだろうか?

ヨーロッパの問題として1つ挙げられるのは、 スタートアップの出現を促すのではなく、それらを保持することである。最も有望なヨーロッパのスタートアップは、ベンチャー資金が不十分なことから、ヨーロッパ大陸では伸びない傾向がある。ヨーロッパのAIの成功話には注意が必要だ。多くの人は、最も有望な英国のスタートアップであるDeepMindをGoogle(Alphabet)がいかに買収したかを覚えているだろう。これと同じことが、資金を求めてカリフォルニアに移った英国の大手スタートアップであるPsiQuantumで繰り返されている。

このリスクを解消するために、ヨーロッパ諸国政府やEUはヨーロッパの「技術的主権」を打ち立てることを目標に新興の破壊的創造性を備えたテクノロジーに関するいくつかのプロジェクトを立ち上げた。しかし、ヨーロッパはヨーロッパが生み出したテクノロジーを導入しているだろうか?ヨーロッパの調達規則は米国の「バイ・アメリカン法」と比較して、ヨーロッパのサプライヤーに必ずしも優位に働くわけではない。現在EU加盟国は、ドイツが最近IBMマシンを導入したように、より高度な、あるいは安価なオプションが存在する場合、ヨーロッパのプロバイダーを利用することに乗り気ではない。こうしたあり方は現在ブリュッセルで交渉が続いている、公的調達市場の開放性に相互主義の原則を導入するための新しい法案、International Procurement Instrument(国際調達法)が可決されれば、変わるかもしれない。

政府だけでなく、民間企業も、どのように投資し、どこと提携し、どのようにテクノロジーの導入を行っていくかの選択を通し、今後の量子業界を形作っていく上で、重要な役割を担うだろう。1960年代、70年代にIBMシステムを選択するという決定をしたことが、その後の世界的コンピューティング市場の形成に長期的な影響を及ぼした。量子コンピューティングにおいて同様の選択をすることは、今後何十年にもわたってその領域を形作ることになる可能性があるのだ。

現在、ヨーロッパは、ヨーロッパに世界的なテックファームがほとんどないことについて不満に思っているが、これは早い段階でテクノロジーをサポートし導入することが重要であることを示している。ヨーロッパが今後量子をめぐって米国や中国に対抗していくためには現在の勢いを維持するだけではなく、増強して行かなければならないのだ。

編集部注:本稿の執筆者Alice Pannier(アリス・パニエ)氏はフランス国際関係研究所(IFRI)の研究員で、Geopolitics of Techプログラムを担当。最新の報告書は、欧州における量子コンピューティングについて考察したもの。また、欧州の防衛・安全保障に関する2冊の本と多数の論文を執筆している。

画像クレジット:Olemedia / Getty Images(Image has been modified)

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(文:Alice Pannier、翻訳:Dragonfly)

インド太平洋に注目が集まる中、欧州-大西洋で急成長する技術同盟が形成される

TechCrunch Global Affairs Projectは、テックセクターと世界の政治がますます関係を深めていっている様子を調査した。

2021年9月29日から30日にかけて、ピッツバーグの製鉄所を改造したシードアクセラレーター施設で、バイデン政権の閣僚3名とEUの高官2名が集まり、米欧貿易・技術協議会(TTC)を設立した。TTCが定着すれば、インド太平洋のQuadに対する欧州・大西洋の応答となるかもしれない。これは発展途上の技術同盟であり、新しい民主的な技術協定の構成要素となるだろう。

政治中心のワシントンで技術と外交の結びつきを見ると、すべての注目がインド太平洋、特に中国に向けられているように見える。しかし、データ、ソフトウェア、ハードウェアの分野では、米欧関係も同様に、あるいはそれ以上に重要な技術回廊であり続けている。ちなみに、欧州・大西洋間のデータ転送量は、米国・アジア間のデータ転送量よりも55%多い。

TTCの設立により、欧州大西洋のパートナーシップは、この巨大な民主的デジタル回廊を活用するための戦略的な場を得た。特に米国、中国、EUの3つが主役となっている世界的な技術の地政学競争を考慮するとなおさらだ。

17ページにわたるピッツバーグTTCの声明には、今後の作業のためのロードマップと、技術基準、安全なサプライチェーン、データガバナンス、海外直接投資(FDI)の審査、グリーンテクノロジー、人権侵害におけるテクノロジーの悪用、開放経済などの重要な問題に取り組む一連のワーキンググループの概要が記されている。中国という言葉は一度も出てこなかったが、共同声明には「非市場経済」「軍民融合」「権威主義の政府」による「社会的スコアリング」の使用など、中国を表す言葉がふんだんに盛り込まれている。

3つの分野が際立っている。第一に、米国とEUは技術標準に対するアプローチを再考中だ。中国では「三流の企業が製品を作り、二流の企業が技術を作り、一流の企業が規格を作る」という言葉が流行っている。中国政府は9月に「標準化戦略」を発表した。これは中国の技術標準の国際化、規格の採用促進、規格開発における民間企業の取り組みの強化に焦点を置くものだ。

米国とEUは、どのようにして標準が地政学的な目的に利用されうるのかに注目している。米国とEUは、中国共産党と親しい企業が国際標準化機構(ISO)や国際電気通信連合(ITU)のような規格設定機関を植民地化してしまったことで、民間企業に標準を設定させるというモデルが地に落ちたという認識を深めている。このような中国の世界における攻撃的な動きを受けて、米国の技術標準担当機関であるNIST(アメリカ国立標準技術研究所)とEU当局との対話が復活した。両者はTTCを利用して、民間企業との連携を含めた標準化戦略を調整したいと考えている。

第二に、新型コロナウイルス感染症による混乱と米中の技術的緊張により、欧州・大西洋の技術サプライチェーンの脆弱性が明らかになった。特に半導体においては、エンティティリストによる制限、チップ王である台湾のTSMCが不安定な状況である影響を受けていた。世界のチップ製造における米国のシェアは、1990年の37%から2020年には12%にまで縮小している。また、EUでは1990年の44%から現在は8%と、さらに劇的に減少している。ワシントンとブリュッセルは、この傾向を変えようと尽力している。米国議会は先に、520億ドル(約5兆9639億円)規模のCHIPS法を可決したが、来るべき欧州半導体法では、930億ユーロ(約1兆2067億円)規模のHorizon Europe基金、EUの7500億ユーロ(約97兆3017億円)規模の新型コロナウイルス感染症復興基金、および各国の半導体産業の協調的な取り組みを活用できる。

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しかし、これまでは産業政策が競合するのではないかという懸念があったかもしれないが、欧州委員会のマルグレーテ・ベスタガー副委員長と米国商務長官のジーナ・レモンド氏は、ピッツバーグで技術面での「補助金競争を避けたい」点を強調した。実際、TTCが「中長期的」に「半導体に関する専用トラック」を設けていることは、ハイエンド半導体の生産における協力という、より野心的な共同アジェンダのための滑走路となる。すべての状況を勘案すると、両当局は調和するべきであり、ピッツバーグの声明では本件が「バランスのとれた、双方にとって同等の関心事」であることが強調されている。欧州最大の未開発地域のプロジェクトである「メガファブ」プロジェクトを核とした欧米のコンソーシアムの実現を想像するのは難しいことではない。

第三に、Huawei(ファーウェイ)の5G機器に対する規制、リトアニアでのXiaomi(シャオミ)の電話検閲機能に関する新たな事実、Tencent(テンセント)のような欧州各地での企業の買い占めなどを受け、双方は重要な技術の海外流出をどのように管理するかを厳しく検討している。輸出規制、FDIの審査、信頼できるベンダーなど、すべての要素が検討されている。これまでEUと米国は、核、化学、生物などの伝統的な分野に加え、サイバー分野でもデュアルユース品(軍事転用可能品)の輸出規制を実施してきた。

しかし最近の発展により、デジタル空間を管理する上で、特に投資審査や信頼できるベンダーについての新たな課題が生まれている。規制当局は、民主的なデータ空間をどのようにして維持し、AI、半導体、5G、ゲーム、AR/VR技術、そしておそらくはデジタルサービスやスマートフォンなどの分野における研究やIPをいかに保護するかについても悩まされている。産業安全保障局(BIS)や対米外国投資委員会(CFIUS)などの米国の機関にとっては、EU加盟国が審査や市場アクセス制限の機能を拡大していく中で、欧州の機関と情報を共有するチャンネルを作ることがますます重要になってくるだろう。

これが成功すれば、TTCは、米国とEUがテクノロジー企業を管理する世界的なルールブックを作成する装置となる可能性がある。近年、EUはデジタル技術の規制を単独で行わざるを得ないと感じ、データ保護、コンテンツの調整、オンラインプラットフォームの市場力などの分野で主導権を握っている。

ワシントンの一部の人々は、米国が意味のある規制を行わない中での欧州の努力を評価しているが(ワシントンは、トランプ政権下では技術外交政策にまったく関与しておらず、オバマ政権下ではビッグテックに捕われていたと認識されている)、このいわゆる「ブリュッセル効果」は、特にデータフローとデジタル独占禁止法の将来に関して緊張を生んでいる。

2020年の裁判所のGDPRに基づく判決により、欧州の個人情報を米国に持ち込むための主要な「パスポート」であるプライバシーシールドが無効になったため、大西洋間の自由なデータの流れは無視されたままだ。反トラストの面では、Meta(Facebook)、Amazon、Google、Appleなどの大手企業が、オンラインプラットフォームの市場支配を規制するEUの法律を緩和させようと激しく争っている。バイデン政権自体は、まだ明確な立場を決めていない。

さらに広く見れば、欧州の多くの人々は、パートナーとしての米国に懐疑的だ。スノーデン事件(欧州の指導者に対するNSAの広範なハッキングを公表した)、トランプ大統領の2016年の選挙、ケンブリッジ・アナリティカ事件、そして最近ではフェイスブック内部文書が、地政学的なものだけでなく、デジタル的なものも含めて、欧州と大西洋の関係を疎遠なものにしている。最近のドイツ外交問題評議会の調査では、クラウドコンピューティングでは92.7%、AIでは79.8%、ハイパフォーマンスコンピューティングでは54.1%のヨーロッパ人が米国企業に過度に依存していると考えていた。欧州関係者の54%は、米中の技術的対立の中で独立性を保ちたいと考えているのに対し、46%は米国に近づきたいと考えていた。

一方で、欧州の二大勢力であるフランスとドイツがTTCに力を貸すのかという問題がある。近年、フランスとドイツが「技術的主権」という考え方を支持していることから、欧州の大国がTTCの成功にどれだけ尽力するのかが疑問視されている。

欧米の関係は、石炭と鉄鋼の産業時代に築かれたものだが、半導体とAIのデジタル時代になった今、TTCは世界中で台頭する技術権威主義に欧州大西洋同盟が立ち向かえるようにするための橋渡し役だ。両者ともそれをわかっている。それが最も悩ましいことなのかもしれない。

編集部注:本稿の執筆者Tyson Barker(タイソン・バーカー)氏はドイツ外交問題評議会(DGAP)のテクノロジー&グローバル・アフェアーズ・プログラムの責任者。以前はAspen Germanyに勤務し、副所長兼フェローとして、同研究所のデジタルおよび大西洋横断プログラムを担当した。それ以前は、米国務省の欧州・ユーラシア局でシニアアドバイザーを務めるなど、数多くの役職を歴任している。

画像クレジット:metamorworks / Getty Images(Image has been modified)

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(文:Tyson Barker、翻訳:Dragonfly)

農業助成金の申請支援を起点に金融サービスの巨人を目指すFarmRaise

左からFarmRaise共同ファウンダーでCEOのジェイス・ハフナー氏、プロダクト責任者のアルバート・アベディ氏、COOのサミ・テラティン氏(COO)

何かから始めなくてはならない。Jayse Hafner(ジェイス・ハフナー)氏とSami Tellatin(サミ・テラティン)氏がスタンフォード大学のMBAで出会い、米国の農業をもっと効率的にすれば国のためになりすごいビジネスにもなるという信念を共有したとき、2人は助成金から始めようと決めた。

バージニア州の牛牧場で育ったハフナー氏は、助成金の申請が、たとえ家族の牧場の持続可能な作業慣習を改善するためであってさえ、複雑で時間のかかる手続きであることを身を持って知っていた。一方、テラティン氏は、大学で生物工学を学び、USDA(米国農務省)で3年間農業経済を研究した。彼女もまた、助成金がもっと簡単に手に入れば農業従事者はもっと良い選択ができるはずだと感じていた。

FarmRaise(ファーム・レイズ)は、現在社員12名のカリフォルニア州サンディエゴを拠点とする設立2年の会社だ。2人がパロアルト拠点のPear VCのアクセラレーター・プログラムで知り合ったもう1人の共同ファウンダーであるAlbert Abedi(アルバート・アベディ)氏と力を合わせて以来、会社は目覚ましい進展を遂げてきた。

ハフナー氏によると、同社のプラットフォームにはすでに1万カ所の農場が登録している。それは口コミとちょっとした検索エンジンのマジック、そしてなによりも、Cargill(カーギル)やCorteva(コーテバ、2018年にDuPont[デュポン]をスピンアウト)などの炭素排出量削減目標をもつ農業の巨人と提携して、低炭素排出農業に関連する助成金申請でFarmRaiseの支援を受けるよう農業従事者に薦めてきたおかげだ。

FarmRaiseのプラットフォームでは、農場の詳細な実態を尋ね、FarmRaiseが彼らに代わってさまざまな助成金プログラムに手早く申請できるようにデータを構成する。そこに投資家が加わったことで、さらに勢いが増している。同社はつい最近、720万ドル(約8億2000円)のシードラウンドをSusa Venturesのリードで完了した。

しかし、多くのスタートアップと同じく、非常に広範囲に渡る金融サービス企業を目指しているFarmRaiseにとって、助成金(国も民間も)は出発点に過ぎない、とハフナー氏はいう。農場が十分なデータを渡せば、FarmRaiseは融資、器具の割引購入、さらには節税対策の支援も行うことができる、と同氏は話した。

これらのサービスの多くは第三者を経由して提供され、FarmRaiseは仲介手数料を受け取る仕組みだと彼女はいう。FarmRaiseは車輪の再発明をするつもりはない。しかし、農場が頼りにできる「フルスタック(複数業務に精通した)」のリソースが存在しない理由などない、と彼女は付け加えた。また、多様なサービスを提供することによって、助成金の申請結果を待つ間(6~12カ月かかるものもある)も利用者を満足させることができる。

自分たちにとって助成金は「くさび」だとハフナー氏はいう。「物語の終わりではありません」。

現在FarmRaiseは、人員を追加し、対象となる助成金を増やして、月額料金と獲得した助成金の10%を請求している現行サービスに顧客が確実に満足することに注力している。

正しく手続きを進めることが重要だ。助成金は大きなチャンスだとハフナー氏は言い、理由の1つとして農務省の助成金が「爆発的に増えている」ことを挙げた。

彼女は、新型コロナウイルスの蔓延によるサプライチェーン崩壊に苦しむ農家を支援するために「数百億ドル(数兆円)」規模の資金を配布したトランプ政権の政策を示した。

バイデン政権もFarmRaiseを勇気づけていると感じるとハフナー氏は付け加えた。「重点的な保護基金拡大が見られ、今後倍増する可能性が高いと見ています」。「持続可能な農業は、農家の利益性を高めるだけでなく、炭素排出量を抑制して気候変動対策に寄与します。そこには本当に限りなくたくさんの恩恵があるのです」。

同社のシードラウンドには、他にCendana Capital、Ulu Ventures、Pear、Better Tomorrow Ventures、Incite Ventures、およびFinancial Ventures Studioが参加した。

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(文:Connie Loizos、翻訳:Nob Takahashi / facebook

【コラム】暗号資産の規制が米国でスーパーアプリが生まれるきっかけになるかもしれない

今や、中国社会の大部分が「スーパーアプリ」と呼ばれるものに依存するようになった。診察の予約からタクシーの配車、ローンの申し込みに至るまで、さまざまなタスクを1つのプラットフォームでこなすWeChat(ウィーチャット)などのアプリのことだ。

米国ではこのようなワンストップショップが勢いに乗ることはなかったが、ついに米国でもそのときが来たのかもしれない。フィンテック業界、とりわけ暗号資産を専門とするプラットフォームからスーパーアプリが誕生する可能性が高いのだ。

株価の高騰と金利の記録的な低下、近い将来に起きるインフレへの不安などが重なり、暗号資産は急速に人気を集めている。米国政府が暗号資産を全面的に規制することを決定した場合(現在、米国議会はこの議題を検討している)、暗号資産の正当性はさらに高まるかもしれない。

今後、暗号資産の発行体が規制当局と連携し、消費者を保護しながら金融および投資に関する新たなオポチュニティを生み出すための妥協案を見いだせた場合、Coinbase(コインベース)などの暗号資産専用プラットフォームの他、PayPal(ペイパル)、Venmo(ヴェンモ)、Stripe(ストライプ)など、最近になって暗号資産による決済機能を追加したサービスが米国版のスーパーアプリに進化する可能性がある。消費者が暗号資産を安全かつ正当なもの、そして使いやすいものとして見ることができれば、これがスーパーアプリの基盤となり得るだろう。

関連記事:オンライン決済の巨人「Stripe」が暗号資産市場に再参入

これらの暗号資産アプリや決済アプリを拡大し、他のアプリやサービスと統合すれば、さまざまなタスクが便利になるはずだ。結局のところ、人は銀行に行くときにだけ資金管理のことを考えているわけではない。そもそも銀行口座を持っていない人も存在する。人は、買い物や旅行をするとき、診察料を払うときにも資金管理について考えており、こうしたアプリはそれぞれの人に必要な金融サービスを各個人に合わせて提供する助けとなるだろう。

暗号資産による決済を他のタスクと統合することは、金融業界を一般に広く行き渡るものに変えるという面でも大きなカギとなるだろう。暗号資産を普及させることで、十分なサービスを受けていないコミュニティの他、信用履歴がなくクレジットカードやローンの申し込みが困難な人に対し、より幅広い金融サービスを提供できるようになるからだ。

スーパーアプリの台頭

WeChatは2011年に中国国内のメッセージングアプリとしてサービスを開始したが、2013年には決済プラットフォームとしての機能を果たし、その後まもなく買い物や食料配達、タクシーの配車といったさまざまなサービスを展開するようになった。

今や、WeChatは何百万もの種類のサービスを提供しており、その大部分は、各企業がWeChat内で動作するミニアプリを開発し、そのミニアプリを通してサービスを提供する形となっている。10億人以上のユーザー数を誇るAliPay(アリペイ)の仕組みも同様だ。これら2つのアプリは、過去10年間で中国を現金主義経済からデジタル決済に大いに依存する経済へと変換したとして評価されている。デビットカードやクレジットカードが普及する中間段階を飛び越えた形での進化だ。

この仕組みはインドネシアをはじめ、同地域の他の国でも普及が進んでいる。ここでカギとなるのは、スーパーアプリのサービスの多くに、決済手段を含む金融サービスが搭載されているという点だ。

米国と欧州でも、こうしたアプリの使用は急増している。Apple(アップル)やFacebook(フェイスブック)、Google(グーグル)などの大手テック企業が決済サービスを追加し、VenmoやSquare(スクエア)といった複数の決済アプリがさらに普及するようになった一方で、スーパーアプリの出現はいまだに見られていない

その理由の1つは、データプライバシーに関する規制だ。米国、そして特に欧州におけるプライバシー規制によってアプリ間のデータ共有が制限されているため、アリペイなどのスーパーアプリにミニアプリを自動統合するようなエコシステムの構築が困難となっている。

また、以前から米国に充実したインターネットエコシステムがあることも理由の1つだ。フェイスブックなどの人気ソーシャルメディアやペイパルなどの決済サイトがスマートフォンの誕生以前から存在したため、1つのアプリが複数のサービスを提供する代わりに、これらのプラットフォームがそれぞれ別のアプリを展開する結果となっている。一方中国では、インターネットの大半がモバイルファーストで、スマートフォンの出現以降に進化している。米国市場は長きにわたり、各タスクについて別個のプラットフォームを使用する形態に慣れていたというわけだ。

しかし、アナリストの多くは、さまざまなアプリやテック企業がサービスの種類を拡大している点(例えばTikTok(ティックトック)はショッピング機能を追加し、Snapchat(スナップチャット)はゲーム用のミニアプリを統合し、Appleは決済業界に参入)を指摘し、米国でもいずれスーパーアプリが台頭するか、たとえそうでなくても今より多機能の大型アプリが出現するだろうと述べている。1つのアプリにサービスを追加し、ユーザーのリテンションを維持する方法を見いだすことができれば、あるアプリでのユーザーの挙動を別のアプリと共有せずに済むため、プライバシー規制を回避することにもなる。

米国では、アジア市場のように1つまたは2つのアプリが群を抜いて市場を支配することは考えにくいものの、アプリの巨大化、そして包括的なものへの変化が進んでいることは明らかだ。

DeFiの進化

一方、過去10年間で暗号資産が生み出したものは決済アプリとスーパーアプリだけではない。ビットコインという1つの製品から誕生した暗号資産は、今や総合的なピア・ツー・ピアの金融システム、いわゆるDeFi(ディーファイ、分散型金融)へと進化した。これには、Ethereum(イーサリアム)やDogecoin(ドージコイン)など複数の通貨が含まれ、システム上でユーザーによるお金の投資、売買、消費、貸し出しが可能となっている。

新型コロナウイルス感染症の拡大によって経済の先行きが不透明になり、また従来の金融機関のなかにも暗号資産関連のサービスを一部提供する機関が増えたことで暗号資産の人気がさらに上昇している反面、暗号資産はいまだに主要の金融システムや金融セクターから除外されており、高い危険性があることを多くの専門家から指摘されている。暗号資産の発行体もまた、分散型の金融製品を生み出すという目標から外れるとして、規制に長らく抵抗してきた。

しかし、この状況には変化が生じ始めており、一部の暗号資産プラットフォームが規制の遵守に関心を示すようになっている。

例えば、Coinbaseはユーザーがコインを他人に預け入れた場合に利子を獲得できるという製品の提供を計画していた。ところが、米国証券取引委員会によるガイダンスの提供がなかったにもかかわらず、同委員会から「Coinbaseが製品をリリースした場合は同社を提訴する」との警告が発せられ、この計画を断念するに至った。事実、暗号資産の発行体は、一部の規制に従うことで自社の製品の正当性が高まり、より多くの人に幅広い目的で使用してもらうことができると認め始めているのだ。この流れには、最近、Stablecoin(ステーブルコイン)をはじめとする新たな暗号資産製品が市場に現れたことで、従来の通貨の価値が議論されていることも関係している。

暗号資産の規制については、米国証券取引委員会の委員長Gary Gensler(ゲーリー・ゲンスラー)氏をはじめ、一部の議員や暗号資産業界の人物が賛成の立場を表明しており、規制の実現は近づいていると考えられる。

暗号資産が米国初のスーパーアプリを後押しする存在に

暗号資産の発行体が政府関係者と連携し、イノベーションを制限することなく消費者を保護するような規制を定めることができた場合、暗号資産は長年動きのなかった米国のスーパーアプリの開発を促す要素となる可能性が高い。

Coinbaseが米国証券取引委員会と連携し、互いに調整しながら質の高い規制を定めることができたならどうだろうか。法令をもとにCoinbaseが、ユーザーが暗号資産として信頼できる、存続可能かつ認定された金融手段であることを立証し、魅力的な収益創出のオポチュニティとなる新規の金融製品のみならず、日常シーンでも使用できるツールとして成長させることができる。規制によって通貨に安定性が生まれれば、隠れた価値を持つ資産としてだけでなく、買い物に便利なツールとして変化させることができるだろう。現時点では日常生活で暗号資産を使おうとした場合、トランザクション時間の長さや手数料の高さ通貨価値の変動の大きさなどがユーザーエクスペリエンスに摩擦を生むことになるが、こうした規制により、面倒な一部の手順を排除することも可能だ。

規制のフレームワークを作成することで暗号資産の需要は圧倒的に増加し、飲食業から小売業に至るまで、暗号資産を使った決済処理への対応を希望する企業が突如として増えるだろう。そうなれば、既存の暗号資産決済アプリへの統合が加速し、それらがスーパーアプリに進化していくと考えられる。従来の通貨を銀行に預金する代わりに、これらのアプリで暗号資産の預金をする人も増え、経済、そして金融のエコシステム全体が根元から覆るだろう。

銀行はいつでも大衆が望む製品を生み出してきたが、暗号資産および分散型金融の業界はまぎれもなく、人が必要とする製品とサービスを提供してきた。現に、規制や法的な環境がはっきりしない今でさえ、何百万もの人が暗号資産を使用しているのだ。

中国では、クレジットカードのサービスを十分に受けられない市場で現金の代替手段が必要となり、そのニーズを満たすべく、ユビキタスかつ統合型のデジタル決済が急速に進化した。同じように、暗号資産ベースのスーパーアプリは従来の決済手段に代わって、あるいはそれに加えて、暗号資産を安全かつ効率的に使用することを望む消費者や企業のニーズを満たすものとなるだろう。

暗号資産が無規制のグレーゾーンにとどまる限り、そのプラットフォームもスーパーアプリに進化することなく、業界外の経済や日常生活から除外されたままとなってしまう。そうなれば、米国はモバイルファーストかつデジタルファーストな、革新的で新しい金融エコシステムを構築するチャンスを逃すことになるのである。

編集部注:本稿の執筆者David Donovan(デビッド・ドノヴァン)氏は、デジタルコンサルタント会社Publicis Sapientの米大陸におけるグローバル金融サービスプラクティスを率いており、元Fidelity Investmentsの幹部。

画像クレジット:loveshiba / Getty Images

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(文:David Donovan、翻訳:Dragonfly)

テック大企業をターゲットにした米国初の独禁法案が現実味を帯びてきた

テック企業が自社の製品やサービスを優遇することを防ぐ米上院の大型の法案が、議会における重要なハードルを通過し、法制定に一歩近づいた。

上院司法委員会は米国時間1月20日「American Innovation and Choice Online Act(米国のオンラインでのイノベーションと選択のための法案)」を採決し、注目を集める反トラスト法案を上院本会議での採決へと前進させた。この法案は、5人の共和党議員が上院民主党議員に加わって法案を推進し、16対6で委員会を通過した。

同法案は、テックプラットフォームが「自社の製品やサービスを優遇したり、ライバル企業に不利益を与えたり、プラットフォーム上の競争に重大な損害を与えるような形でプラットフォームを利用する企業を差別したり」することを禁止する。また、支配的なプラットフォームが他のサービスとの相互運用性を妨げたり、プラットフォーム上の他社のデータを活用して競合することも禁じられる。

こうした目的を達成するため「American Innovation and Choice Online Act」は、反トラスト法執行機関に「強力で柔軟な手段」を与え「民事罰、広範な差止命令、緊急暫定措置、役員報酬の没収の可能性」などを認めている。

上院司法委員会競争政策・反トラスト・消費者権利小委員会の委員長Amy Klobuchar(エイミー・クロブシャー)上院議員(民主・ミネソタ州選出)は、この法案を「インターネットの夜明け以来」上院議場に向かう初のテック大企業競争法案だと称賛している。この法案は、1月20日には進行を妨げなかったものの、最終的な文言に影響を与える可能性がある、いくつかの修正で変更が見られるかもしれない。

混み合い、ほとんど失速している立法議題に盛り込むために上り坂をのろのろと進んでいる一方で、法案の勢いは顕著で、これを受けてGoogle(グーグル)とApple(アップル)は今週初めにコメントで意見を述べている。

「毎日、何百万人もの米国人が新しい情報を見つけて、物事を成し遂げるためにGoogle検索、Maps、Gmailのようなオンラインサービスを使用しています」と Alphabet(アルファベット)のグローバル問題担当社長兼最高法務責任者Kent Walker(ケント・ウォーカー)氏はブログ投稿に書いた。「……下院と上院で議論されている法案は、そうしたサービス、他の人気オンラインサービスを壊す可能性があり、その結果、今ほどに有用かつ安全なものでなくなり、そして米国の競争力を損ないます」。

Appleはまた、上院司法委員長Dick Durbin(ディック・ダービン)氏、共和党の有力委員Chuck Grassley(チャック・グラスリー)氏、反トラスト小委員会委員長クロブチャー氏と小委員会の有力メンバーMike Lee(マイク・リー)氏に手紙を書き、介入を模索した。

「ソーシャルメディアに関する複数の論争、長い間無視されてきた子どもへのリスクに関する内部告発、重要なインフラを妨害するランサムウェア攻撃を目撃した激動の年を経て、議会が米国人の個人デバイスのプライバシーとセキュリティの保護をはるかに困難にする措置を取るとしたら、それは皮肉です」とAppleの政府問題担当シニアディレクターのTim Powderly(ティム・パウダリー)氏は書いている。「残念ながら、これらの法案はそうなりそうなものです」。

2社は、別の法案「Open App Markets Act(オープンアプリ市場法)」とともに、この法案が消費者セキュリティに害を及ぼすと主張した。オープンアプリ市場法案は、OSを管理する企業にサードパーティーのアプリやアプリストアを認めさせ、開発者が消費者に対して、同じソフトをより安い価格で入手できる場所を教えることを認めるというものだ。

関連記事:モバイルアプリのアプリストア支配の打破で上院が新法案

1月17日の週に、Yelp(イェルプ)、DuckDuckGo(ダックダックゴー)、Sonos(ソノス)、Spotify(スポティファイ)、Proton(プロトン)、Match Group(マッチグループ)、スタートアップアクセラレーターのY Combinator(Yコンビネーター)を含むテック企業グループと、ベンチャーキャピタル企業のInitialized Capital(イニシャライズド・キャピタル)が、反自社優遇法案への賛成を表明した。

「米国や世界各国の政府の調査から、支配的なテック企業が、競争、消費者、イノベーションを阻害するゲートキーパーの地位を獲得して市場に定着させるために、多くの反競争的な自己優遇戦術を使用していることが明らかになっています」と、各社は記している。「The American Innovation and Choice Online Actは…デジタル市場の競争を回復し、消費者が望むサービスを選択できるよう、障壁を取り除くために自社優遇をターゲットにしています」。

テック産業の規制は、議会で超党派の協力を促す珍しい問題であり、そうした法案の進捗がまだ這うようなものだとしても、テック産業がそのビジネスに対する新しい規制を予想すべきものだ。

この法案は、上院議員のエイミー・クロブシャー氏(民主・ミネソタ州選出)とチャック・グラスリー氏 (共和・アイオワ州選出)が提出し、Dick Durbin氏 (ディック・ダービン、民主・イリノイ州選出)、Lindsey Graham氏(リンゼイ・グラハム、共和・サウスカロライナ州選出)、Richard Blumenthal氏(リチャード・ブルーメンソール、民主・コネチカット州選出)、John Kennedy氏(ジョン・ケネディ、共和・ ルイジアナ州選出)、Cory Booker氏(コリー・ブッカー、民主・ニュージャージー州選出)、Cynthia Lummis氏(シンシア・ルミス、共和・ワイオミング州選出)、Mark Warner氏(マーク・ウォーナー、民主・バージニア州選出)、Mazie Hirono氏(メイジー・ヒロノ、民主・ハワイ州選出)、Josh Hawley氏(ジョシュ・ホーリー、共和・ミズーリ州選出)、Sheldon Whitehouse氏(シェルダン・ホワイトハウス、民主・ロードアイランド州選出)およびSteve Daines氏(スティーブ・デインズ、共和・モンタナ州選出)が共同スポンサーになっている。

下院版の法案は、下院反トラスト小委員会の委員長David N. Cicilline氏(デイビッド・シシリー二、民主・ロードアイランド州選出)と有力委員のKen Buck氏(ケン・バック、共和・コロラド州選出)が主導し、すでに委員会を通過して投票の準備が整っている。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nariko Mizoguchi

世界的チップ不足の中、インテルは2.3兆円でオハイオ州に2つの半導体工場を建設

Intel(インテル)は米国時間1月21日、オハイオ州コロンバス郊外に2つのチップ製造施設を建設する計画を明らかにした。この計画はまだ初期段階だが、現在も続く世界的なチップ不足に対処するため、あるいは少なくとも将来起こりうる問題に対処するために、最終的に200億ドル(約2兆2750億円)を投じて工場を建設する。

同社は、最初の工場について、すぐさま計画に着手し、年内に建設を開始するという大まかなスケジュールを描いている。工場は2025年に稼働し、40年ぶりの新製造拠点となる予定だ。計画通りに進めば、このプロジェクトの敷地は1000エーカー(約4平方キロメートル)となる見込みで、最大で8つのチップ工場を建設できるほどの広さだ。

CEOのPat Gelsinger(パット・ゲルシンガー)氏はニュースリリースで「本日の投資は、米国が半導体製造のリーダーシップを回復するための取り組みをIntelが主導する、もう1つの重要な方法となります。Intelの取り組みは、より強靭なサプライチェーンの構築に役立ち、今後何年にもわたって高度な半導体への確実なアクセスを保証するものです。Intelは、世界の半導体産業を強化するために、最先端の機能と能力を米国に戻そうとしているのです」と述べた。

同社の発表によると、建設段階では7000人の雇用を創出し、稼働後は3000人を常時雇用する。バイデン政権下のホワイトハウスは、1月20日に発表した声明の中で、今回のニュースを「アメリカ経済の強さを示すもう1つのサイン」として宣伝している

オハイオ州リッキング郡に建設される2つの最先端Intelプロセッサー工場の初期計画を示す予想図。2022年1月21日に発表されたこの200億ドルのプロジェクトは、広さ約1000エーカーで、単一の民間投資としてはオハイオ州史上最大となる。2022年後半に着工し、2025年末に製造を開始する予定(画像クレジット:Intel)

ホワイトハウスはまた、機会に乗じて、新型コロナウイルス感染症によって世界的にサプライチェーンが逼迫する中で、国内の研究開発と製造の加速を目指す政策をアピールした。サプライチェーン逼迫は一部の人には政権の敗北として映っている。

「この進展を加速させるため、大統領は議会に対し、半導体を含む重要なサプライチェーンのための米国のR&Dおよび製造を強化する法案を可決するよう促しています」と政権は書いている。「上院は6月に米国イノベーション・競争法(USICA)を可決し、政権は上下両院と協力してこの法案を完成させているところです。この法案にはCHIPS for America Actへの全資金拠出が含まれており、民間部門の投資をさらに促進し、米国の技術面でのリーダーシップを継続させるために520億ドル(約5兆9110億円)を拠出します」。

両党はまた、米国でチップを製造することのセキュリティ上の利点を宣伝した。これは間違いなく、前政権の主要ターゲットとなったHuawei(ファーウェイ)などのメーカーに対する監視の強化にちなんだものだ。Intelは「オハイオ州の拠点はまた、米政府特有のセキュリティとインフラのニーズに対応する最先端のプロセス技術も提供します」と述べている。

今回のニュースは、IntelがSamsung(サムスン)などの企業との競争激化に対処する一方で、Apple(アップル)などの企業がファーストパーティーの設計を優先してIntel製チップの採用を取りやめることを選択した中でのものでもある。

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

米民主党議員、ターゲティング広告を大幅に制限する新プライバシー法案を提出

米連邦議会の民主党議員3人が米国時間1月18日、Facebook(フェイスブック)やGoogle(グーグル)、大量に蓄積した個人情報を活用しターゲティング広告で収益を上げているその他のデータブローカー企業に不利益をもたらし、オンライン広告のあり方を劇的に変えようとする新しい法案を提出した。

この法案「Banning Surveillance Advertising Act(監視広告禁止法)」は、カリフォルニア州のAnna Esho(アンナ・エシュー)議員とイリノイ州のJan Schakowsky(ジャン・シャコウスキー)議員によって下院に、ニュージャージー州のCory Booker(コリー・ブッカー)議員によって上院に提出された。テック企業がユーザーに広告を提供する方法を大幅に制限し、個人情報の使用を全面的に禁止するものだ。

この法案が可決された場合「人種、性別、宗教などの保護された区分情報、およびデータブローカーから購入した個人データ」に基づくターゲティングはすべて禁止される。ただしプラットフォームは、都市や州レベルの一般的な位置情報に基づいて広告を表示することができ、また、ユーザーが利用しているコンテンツに基づく「コンテキスト広告」も認められる。

この法律が施行されれば、米連邦取引委員会(FTC)と州検事総長が違反行為を取り締まる権限を有することになり、故意に違反した場合には1件につき最高5000ドル(約57万円)の罰金が科される。

エシュー議員はこう述べている。「『監視広告』のビジネスモデルは、広告ターゲティングを可能にするために個人情報を収集し囲い込むという不適切な行為を前提としています。この悪質な慣行は、オンラインプラットフォームが社会に多大なコストをかけてユーザーのエンゲージメントを追い求めることを可能にし、誤った情報、差別、ライバル陣営を支持する有権者の弾圧、プライバシーの侵害など、多くの害悪を助長しています」。

本日、私は「監視広告禁止法」を@RepAnnaEshooと@RepSchakowskyとともに提出しました。この法律により、広告主は個人のオンライン行動を利用して利益を得ることを止めざるを得なくなり、その結果、私たちのコミュニティはより安全になります。

ブッカー上院議員は、ターゲット広告モデルを「略奪的で侵略的」と呼び、ソーシャルメディアプラットフォーム上で偽情報や過激主義を悪化させる慣行であると強調した。

また、検索エンジンのDuckDuckGo(ダックダックゴー)や、ProtonMailを開発したProton(プロトン)など、プライバシーに配慮した企業が、Electronic Privacy Information Center(EPIC、電子プライバシー情報センター)、Anti-Defamation League(名誉毀損防止同盟)、Accountable Tech、Common Sense Media(コモン・センス・メディア)などの団体とともにこの法案を支持した。

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画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Aya Nakazato)

センサーを使わないスポーツコーチングMustardが野球以外のゴルフやサッカーなども対象に

ロサンゼルスのスポーツ訓練プラットフォームMustardが今週、375万ドル(約4億3000万円)の資金調達ラウンドを発表した。Lake Nona Sports & Health Tech Fundがリードしたこの最新の調達は、2020年後期の170万ドル(約1億9000万円)のラウンドに続くもので、同社の調達総額はこれで600万ドル(約6億9000万円)になった。

新たな投資家はMark Cuban(マーク・キューバン)氏、OneTeam Partners、Ronnie Lott(ロニー・ロット)氏、Justin Rose(ジャスティン・ローズ)氏、Major League Soccer Players Association、そしてUnited States Women’s National(Soccer)Team Players Associationで、彼らが、同社の既存の投資家たちのリストに加わることになる。すでにクォーターバックのDrew Brees(ドリュー・ブリーズ)氏や伝説のピッチャーNolan Ryan(ノーラン・ライアン)などの大物もいる。

ブリーズ氏は、特別にTechCrunchに対して次のように方ってくれた。「未来のオリンピック選手やMLBのピッチャー、あるいは、自分が情熱を注いでいるさまざまなスポーツで州の高校チャンピオンになれる若いアスリートはたくさんいる。私の場合、それはフットボールだった。しかしながら残念なことに、若いアスリートは私が受けてきたようなタイプの指導を受ける機会がない人がとても多い。Mustardなら現在のような不均衡状態を解消して、エリートのトレーニングを若くて向上心に富む意欲的なアスリートに提供できるはずです。同社のミッションをサポートできることを誇りに思っています」。

画像クレジット:Mustard

今回、投資家の顔ぶれが多様化したのは、指導を野球以外にも広げたいためだ。「Mustard」という奇妙な名前も、同社のルーツすなわち野球を示している(「put a little mustard」豪速球を投げる)。今後、ゴルフ、サッカー、フットボールといったスポーツを追加していく。野球と同じく、ゴルフは比較的静止した状態から動き始めるので、野球からのジャンプもやさしいだろう。同社によると、資金の一部は、対象スポーツを増やすための指導者の増員に充てたいという。

CEOのRocky Collis(ロッキー・コリス)氏はプレスリリースで次のように語っている。「新しい投資家は、米国の主要スポーツ界における経験と人脈を、大きくさせるものです。我々は野球以外のメジャースポーツに手を広げることで、アスリートはどこでも、そのリソースに関係なく、上達のための個人的なレシピで学ぶことができるようになります」。

Mustardは、センサーを使わずにデータを取得するアプローチをとっているため、他の製品との差別化を図ることができている。この技術は比較的参入障壁が低く、元Major League Baseball Advanced Media(MLBAM)の社員を含むチームを通じて、スマートフォンのカメラを使って与えられた動作の力学的な情報を収集する。そこから、アプリが「レポートカード」という形でフィードバックを行う。

画像クレジット:Mustard

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Blink Chargingが米国とカナダのGMのディーラーにEV充電器を供給へ

電気自動車用充電器メーカーのBlink Charging(ブリンク・チャージング)は、米国とカナダのGeneral Motors(ゼネラルモーターズ)のディーラーにEV充電器を提供することを発表した。同スタートアップは設備ソリューション・プロバイダーのABM(エービーエム)と組んで、同社の新しいレベル2EV充電器IQ 200をGMに供給する。

Blinkは決して小さなEV充電器メーカーではないが、これまではChargepoint(チャージポイント)、EVBox(イービーボックス)、Tesla(テスラ)、さらにはShellと比べても市場シェアは小さかった。Blinkによると、同社は13か国に約3万台のEV充電器を展開しており、GMとの契約は、さらなる規模拡大とブランド認知度の向上という同社の目標にひと役買うだろう。

ただしこれはGMにとってBlinkとの初めての契約ではない。2021年4月、GMは充電ネットワーク7社(Blink、ChargePoint、EV Connect、EVgo、FLO、Greenlots、SemaConnect)をGMのモバイルアプリに統合し、顧客が容易に充電場所を探せるようにする計画を発表した。今回は、GMが2030年までにEV販売でTeslaのシェアを狙って売上を倍増する計画の中、Blinkが選ばれたようだ。

2021年5月にGMから最初の注文を受けたBlinkは、設置を担当するABMを通じて一部のGMディーラー向けに充電器の出荷をすでに開始している。今後数カ月間必要に応じて追加の充電ステーションに向けた準備ができていると同社はいう。契約には充電ステーション数の目標や大規模展開の日程は書かれておらず、これはディーラーからの注文ごとの設置が基本であるためだ。これまでにBlinkは「GMディーラーから1000件近く、計1505台の充電器の注文を受けている」と同社の広報担当者は述べた。

GMとの契約に同社からの出資は含まれていないとBlinkはいう。GMディーラーは、Blink製品を購買パートナーのABMを通じて、ディーラー機器購入価格で購入する。

BlinkのIQ 200充電器は、車両基地向けに設計されており、1つの共有回路上で最大20台の充電器を電力網に負荷をかけすぎることなく利用できる。80アンペアの充電器は、100アンペア回路上で高速レベル2充電が可能で、出力は19.2kW、充電1時間あたり最大65マイル(約104.6 km)走行できる。設置方法には壁かけ型、ポール型、および自立スタンドがある。

2022年のCESでBlinkは次世代レベル2充電器のMQ 200を発表しており、第1四半期末までに提供される予定だ。Blinkは、出荷可能になった時にGMがこの新型充電器を受け取るかどうかの質問には答えていない。MQ 200は高速かつ高機能で、Blink充電器をクラウドや、新しいBlink Fleet Management Portal(Blink車両管理ポータル)に接続するソフトウェアが付いてくるため、デーラー業務に最適だ。

関連記事:CESに登場したEV充電企業は家庭での充電を高速化、V2G、コネクティビティを推進

画像クレジット:GM

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nob Takahashi / facebook

米国で1日早く家庭用新型コロナ検査キットの注文を受け付け開始

米国の人々は、予想より1日早く、米国郵政公社(USPS)のウェブサイトから無料の家庭用新型コロナ検査キットを注文できるようになった。先にバイデン政権は、米国時間1月19日から注文をすることができるようになると述べていた。発表の時点では、COVIDtests.govはプレースホルダ・サイトだった、現在はUSPSにユーザーを誘導して、そこで注文をするようになっている。

各家庭では、4種類の迅速抗原検査をそれぞれ1セットずつ申し込むことができる。USPSは2022年1月末からキットの発送を開始し、通常、注文から7日から12日以内に発送する予定だ。

CNNのホワイトハウス特派員Kaitlan Collins(ケイトラン・コリンズ)氏によると、このサイトはベータ版の一部として1日早く公開された。政府関係者は、サイトのトラブルシューティングを行い、1月19日の正式な立ち上げがスムーズに行われることを望んでいる。案の定、この記事を書いている時点では、サイトの読み込みに問題がある人もいるようで、すぐに注文ができないかもしれない。
COVIDtests.govのサイトでは、テストに関するいくつかの詳細な情報を提供している。30分以内に結果が出るはずで、どこでも受けられる。いつテストを受けるか、また、結果に基づいて何をすべきかについてのガイダンスも提供されている。また、検査会場や自宅での検査に対する保険の払い戻しに関する資料も掲載されている。

バイデン政権は、米国人に配布するために、家庭用の迅速な新型コロナ検査キットを10億個購入すると発表した。そのうちの半分は今週中に注文できるようになる見込みである。ホワイトハウスは、その目的は、特に検査の需要が高く、しばしば店頭で見つけるのが難しいことを考えると、誰もが必要なときに検査が利用できるようにすることであると述べた。

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者のKris HoltはEngadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Jorg Greuel / Getty Images

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(文:Kris Holt、翻訳:Yuta Kaminishi)

ロシア当局が悪名高いランサムウェア集団「REvil」を摘発、活動停止に

ロシア連邦保安庁(FSB)は現地時間1月14日、悪名高いランサムウェア集団「REvil」を摘発し、その活動を停止させたと発表した

この前例のない動きは、ロシア国外で活動する他のランサムウェア集団に対するメッセージとなることは間違いなく、ロシア当局はモスクワ、サンクトペテルブルク、リペツクの各地域で、REvilのメンバーとみられる14人が所有する25の建物を家宅捜索した。

2021年7月に活動を停止し、その後、9月に復活に失敗したREvilは、Colonial Pipeline(コロニアル・パイプライン)、JBS Foods(JBSフーズ)、米国のテクノロジー企業Kaseya(カセヤ)を標的とした攻撃など、過去12カ月間で最も被害が大きかった攻撃のいくつかを指揮したとみられている。

関連記事:ランサムウェア犯罪組織「REvil」、そのデータリークブログが乗っ取られて再び姿を消す

FSBは、4億2600万ルーブル(約6億4000万円)超と50万ユーロ(約6500万円)、60万ドル(約6800万円)の現金、暗号資産ウォレット、コンピューター、高級車20台を押収したと発表した。

FSBは声明で、米当局の要請を受けて捜査を行い、その結果は通知された、と述べている。

拘束されたランサムウェアのメンバーは「支払手段の違法な流通」の疑いでロシアの法律に基づいて起訴された。ロシア当局は、容疑者の名前を公表していない。

「FSBとロシア内務省による共同捜査の結果、組織的な犯罪コミュニティは存在しなくなり、犯罪目的に使用されていた情報インフラは無力化された」とFSBは声明で説明している。

今回のサプライズの摘発のニュースは、7月の米国のテクノロジー企業Kaseyaに対するランサムウェア攻撃を指揮したとして、米司法省がランサムウェア集団REvilにつながる22歳のウクライナ人を起訴してからちょうど2カ月後に発表された。また、欧州警察機構(Europol)が調整役を担った作戦により、2021年には他に7人のREvilメンバーも逮捕された。7月にはバイデン大統領がロシアに追従するよう促し、ロシアのVladimir Putin(ウラジーミル・プーチン)大統領にこれらの犯罪組織を崩壊させるための行動をとるよう圧力をかけた。

FSBがとった行動は、1月14日にウクライナの外務省、国家安全保障・防衛評議会、政府閣僚のウェブサイトを含む政府ウェブサイトが大規模なサイバー攻撃でダウンしたわずか数時間後に行われたものでもある。当局者は、結論を出すのは時期尚早だとしながらも、ロシアによるウクライナに対するサイバー攻撃の「長い記録」を指摘した。

画像クレジット:FSB / public

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(文:Carly Page、翻訳:Nariko Mizoguchi