DJIが米政府の懸念払拭目的に組立工場をカリフォルニアに設置へ

Huawei(ファーウェイ)やZTEなど中国のメーカーへの圧力の高まりを受け、深セン拠点のドローン大手DJIは間違いなく懸念材料を抱えている。2017年後半に米移民・関税執行局はDJIのカメラを搭載したドローンがデータを中国に送っているかもしれない、との懸念を示した。

数週間前、米国土安全保障省は中国の商用ドローンについて同様に注意を喚起した。その一方で、先週開かれた「ドローンセキュリティ:イノベーションの促進とサプライチェーンリスクの抑制」という名称のヒアリングで、National Defense大学のHarry Wingo氏は上院の交通小委員会で「米国の地理空間情報が前代未聞のレベルで中国のデータセンターに送られている。これは文字通り、中国企業に我々の国土を上空から眺めさせている」と述べた。

DJIはTechCrunchへの文書で以下のように反論している。

ドローン産業は米国の中小事業者、そして米国全体の経済にとってなくてはならない原動力になりつつあるため、この産業の主要素に影響を及ぼす決断は事実に基づくことが不可欠だ。小委員会のヒアリングで示されたチェックされていない根拠のない推測や不正確な情報が、米国全体のドローン産業をリスクのある状態に追いやり、経済成長を妨げて社会保護や救命のためにDJIのドローンを使用している公的機関を無力にすることを我々は深く懸念している。

文書では論点についてさらに細かく述べている。

・ドローン操縦者が意図的に共有を選択していない限り、DJIドローンはフライトのログや写真、ビデオを共有しない。DJIドローンはフライトデータを中国やその他のところに自動送信しない。データは完全にドローン内とパイロットのモバイルデバイスにとどまる。DJIは受け取っていない顧客のデータを送信することはできない。

・デリケートなフライトを操作するパイロットが特別に用心できるよう、DJIのプロフェッショナルパイロットアプリは全てのインターネット接続を断つ設定がビルトインされている。一部のテック企業のように、DJIは顧客のデータを売ってそれで収益をあげたりはしない。

・DJIはパスワードとデータの暗号機能を製品のデザインに含めている。これにより顧客はドローンや保存データに安全にアクセスできる。米国のドローンユーザーがデータ共有を選択する場合、データは米国のクラウドサーバーにアップロードされるだけだ。

・DJIは、世界のセキュリティ研究者が不測のセキュリティ問題を特定できるよう、Bug Bounty Programを展開している。そして我々はプロダクトをテストするために独立したセキュリティ専門家を雇っている。こうしたことは、顧客が我々のプロダクトを安心して使えるようにするために我々が行っている取り組みの一部にすぎない。

憶測の高まりを受け、DJIは一部の製品の組み立てを米国で行おうとしている。米政府の規則にさらにそぐうようにするため、米国で販売されるドローンのモデルをカリフォルニア州セアリトスにある倉庫で製造する。

DJIはTechCrunchに以下のように述べている。

DJIは米国への投資、そして政府関係者や救急部署、公的サービスに特異なセキュリティ、安全、調達のニーズに対応するカスタマイズされたソリューションを提供することに専心している。2015年にパロアルトに研究・開発施設を設置して以来続いている我々の米国への長期的なコミットメントの一部として、新たな生産施設をカリフォルニアに設置し、米国貿易協定へのコンプライアンスを満たすことにした。この新たな投資は米国におけるDJIの存在を大きなものにし、これにより我々は今まで以上に顧客にサービスを提供して雇用を創出し、米国ドローン経済を強化できる。我々のアプリのレビューでは米税関・国境警備局に喜んで協力する。

DJIはカリフォルニアでのプロダクト組み立てで貿易協定をこれまで以上に満たすことにつながることを期待している。これは、Mavic Proドローンを政府当局の使用向けにしたDJI Government Editionのリリースに備えた動きとなる。

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(翻訳:Mizoguchi)

NASAの火星用ヘリコプターが2020年のミッションに向けて最終テストへ

NASAの火星用ヘリコプターであるMars Helicopterは、この赤い惑星を探検する未来の人類にとっても重要な実験だ。それはNASAの2020年の火星ミッションに積載され、地球以外の大気における大気よりも重い重量物の飛行試験に向かう。最後の一連のテストに合格した同機は今、2020年7月の火星打ち上げを目指して最後の準備作業に入っている。

この重量4ポンド(約1.8kg)で自動操縦のテスト用ヘリコプターは、火星探査車Mars 2020に乗って火星まで運ばれ、地球からの数か月に及ぶ長旅を経て、予定では2021年2月18日に、探査車が火星のジェゼロ・クレータ(Jezero Crater)に着地した後に展開される。ヘリコプターはカメラを搭載し、電源としてソーラーパネルがある。今回はそのほかのセンサーや科学的機器類はいっさいなく、火星で果たしてドローンを飛ばせるか?という唯一の疑問に答えることだけを目的とする。将来の実験では、地上車である探査車にはできなかったデータを集めるためにセンサーが載ったりするだろう。

これまでMars Helicopterは、打ち上げと着地をシミュレートする激しい振動環境や、火星の表面のような過酷な温度条件、そして電気系統と機械系統の完成度をテストされてきた。現在はソーラーパネルも取り付けられ、ローターの試運転も経て、あとは現実に近い条件での最終的なストレステストが残っているだけだ。

NASAのMars 2020ミッションは最短でも1火星年、地球上の687日間行われ、新設計のコンパクトカーサイズの探査車には、火星の表面よりも下の岩石や土を採取する新しいコアサンプリング(円柱状標本採取)ドリルが搭載される。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

アマゾンの最新型配達ドローンはヘリと飛行機のハイブリッド式

本日(現地時間6月6日)、ラスベガスで開かれている第1回re:Marsカンファレンスにて、アマゾンが最新の完全電動式配達ドローンを初めて披露した。ドローンと聞いて思い浮かべる形とは、ずいぶん違うと感じられるのではないだろうか。しかしこれは、画期的な六角形のハイブリッドデザインだ。可動部分が非常に少なく、ブレードを保護するシュラウドは、ヘリコプターのように垂直に離陸したあと、飛行機のように飛ぶための翼にもなる。

アマゾンによれば、これらのドローンは、正確な時期はまだわからないものの、数カ月以内に配達を開始するという。

しかし、もっとも重要な点は、このドローンにはセンサーがぎっしり埋め込まれていて、複数のコンピューターモジュールからなるシステムが、さまざまな機械学習モデルを実行してドローンの安全性を保つというところにある。今回の発表では、アマゾンが内部で開発した視覚、温度、超音波センサーについて、そしてそれらを使ってどのようにして自律飛行システムがドローンを着陸地点へ導くかについて、初めて一般に明かされた。開発の最大の焦点は、できる限り安全なドローンを作ることであり、独力で安全を保てる能力を持たせることだった。ネットワークの接続が途絶えた状態で未知の状況に遭遇しても、適切に安全に対処できる。

飛行機モードの姿は、ちょっとTIEファイターに似ている。中心の胴体部分にすべてのセンサーと航行技術が埋め込まれ、ここに荷物も格納される。この新型ドローンの最大航続距離は15マイル(約24キロメートル)、最大積載重量は5ポンド(約2.27キログラム)となっている。

今回の新型モデルのデザインは、初期のものから大きく変化している。私は、今日の発表に先立って前のデザインを見る機会があったのだが、正直言って、もっとそれに近いデザインになるものと想像していた。ひとつ前のバージョンを洗練させた、ほぼソリのような形だ。

アマゾンのひとつ前の世代のドローン。ずいぶん形が違う。

想像を少しばかり上回る要素に加えて、アマゾンが、今回、本当に強調したがっていたのは、このドローンのために独自開発した一連のセンサーと安全機能だ。

この発表の前に、私はアマゾンの「Prime Air」プロジェクト部長Gur Kimchiに会い、ここ数年間のアマゾンの進歩の様子と、この新型ドローンのどこが特別なのかを聞いた。

「私たちの感知と回避の技術により、このドローンの自律的な安全性が実現しました」と彼は話してくれた。「自律的安全性とわざわざ呼ぶのは、機体の外に安全機能を持たせるアプローチと区別するためです。我々の場合、安全機能は機体に搭載されています」

Kimchiはまた、ドローンのソフトウェアとハードウェアのスタックは、実質的にすべてアマゾン内部で開発したことを力説していた。「原材料からハードウェア、ソフトウェア、構成、工場、サプライチェーン、果ては配達に至るまで、この飛行機のテクノロジーをすべて私たちが管理しているのです」と彼は言う。「そしてついに、飛行機自体が自己の管理能力を備え、外の世界に対処する力を持つに至りました。そこがユニークなところです」

(JORDAN STEAD / Amazon)

ひとつ明らかなのは、開発チームができる限りシンプルな操縦翼面を目指したことだ。ドローンには、飛行機の基本的な操縦翼面が4つと、6つのローターがある。それだけだ。やはりアマゾンが内部で開発した、すべてのセンサーのデータを評価するオートパイロットは、6自由度の機構をあやつり機体を目的地に導く。中央に斜めに取り付けられた箱には、このドローンのほとんどの頭脳が収まり、配達する荷物が搭載されるが、回転することはなく、機体に固定されている。

どれくらいの騒音を発するかは不明だ。Kimchiはただ、安全基準以内であり、重要なのはノイズプロファイルだと繰り返すだけだった。彼はそれを、歯医者のドリルとクラシック音楽の違いに例えていた。いずれにせよ、家の庭に近づけばすぐに気付くほどの音は立てるのだろうと思われる。

ドローンの周囲の状況を把握するために、この新型ドローンには数多くのセンサーと複数の機械学習モデルが使われている。それらはすべて独立して機能し、ドローンの飛行エンベロープ(その独特な形状と操縦翼面のおかげで、通常のドローンよりもずっと柔軟性が高い)と環境を常に監視する。これには、周囲の状況を知るための通常のカメラと赤外線カメラの映像も含まれる。機体のすべての側面にはいくつものセンサーが備えられていて、遠くの物体も認識できる。たとえば、接近してくる航空機や、着陸時に近くにある障害物などだ。

このドローンは、多様な機械学習モデルも多数使用している。たとえば周囲の航空機の飛行状況を検知して適切に対処するためのモデルや、着陸ゾーンの中に人がいることを感知したり、そこに引かれた線を確認するモデルなどだ(線の検知は往々にして困難な傾向にあるため、この問題は本当に難しい)。それを解決するために、開発チームは写真測量モデル、分割モデル、そしてニューラルネットワークを使用している。「おそらく私たちは、この分野でもっとも先端的なアルゴリズムを有しています」とKimchiは主張していた。

着陸ゾーンに障害物や人を検知すると、当然、ドローンは配達を中止、または延期する。

「この飛行機の機能でとってもっとも重要なものは、一度もプログラムされたことのない想定外の出来事に遭遇したときに、的確で安全な判断ができることです」とKimchiは言う。

開発チームはまた、VSLAM(視覚的に自己位置推定と環境地図作成を同時に行う技術)で、事前にその地域の情報を受けていなくても、またGPSの情報が一切得られない状況でも、ドローンが現在の周囲の地図を作ることを助けている。

「そうした知覚力とアルゴリズムの多様性の組み合わせが、私たちのシステムに他に類を見ない安全性を与えていると考えています」とKimchi。ドローンが配達先まで飛行し、また倉庫に戻ってくるまでの間、すべてのセンサーとアルゴリズムが常に合意している必要がある。そのうちのひとつでも問題を検知したなら、ドローンはミッションを中止する。「進んでも大丈夫だと、システムのあらゆる部分が合意していなければなりません」とKimchiは話していた。

私たちの会話の中で、Kimchiが再三力説していたのは、アマゾンのアプローチは冗長性を超えているということだった。同じハードウェアのインスタンスをひとつのボードに複数搭載するという冗長性は、航空の世界ではきわめて当たり前のコンセプトだ。Kimchiによれば、互いに完全に独立した多様なセンサーを備えることも、また重要であるとのこと。たとえば、このドローンには迎え角センサーがひとつしか付いていないが、別の方式で同等の値を取得できるものがいくつも搭載されている。

しかし、そのハードウェアが実際にどのようなものかを詳細に公開する気は、まだアマゾンにはないようだ。ただ、Kimchiが私に話してくれたところによれば、使われているオペレーションシステムもCPUアーキテクチャーも、単独ではないという。

それらすべてのセンサー、AIの知性、ドローンの設計そのものが統合されて、全体のユニットが機能する。ところが、物事がうまく運ばなくなることもある。ローターがひとつ停止した程度のことは簡単に対処できる。今ではごく当たり前の機能だ。しかしこのドローンは、2つのローターが停止した場合にも対処できる。通常のドローンと異なり、必要な場合は、飛行機のように滑空できるからだ。着陸地点を探す段になると、AIが働いて、人や物から遠く離れた安全に着陸できる場所を探す。周囲の環境について事前の知識がなくても、そのように行動することになっている。

その着陸地点を特定するために、開発チームでは、実際にAIシステムを使って5万件以上の設定を評価した。コンピューターによる流体力学シミュレーションだけでもAWS(アマゾンウェブサービス)の演算時間にして3000万時間も費やした(画期的な高度に最適化されたドローンの開発に、大規模な自前のクラウドが使えるのは得なことだ)。もちろん、すべてのセンサーについて数え切れないほどのシミュレーションを行い、センサーの位置や感知範囲の可能性を探り(カメラのレンズもいろいろ試し)、最適なソリューションを割り出した。「最適化とは、多様なセンサーの組み合わせと、機体への取り付け方のどれが正しいかを見極めることです」とKimchiは説明した。「そこには常に、冗長性と多様性とがあり、そのどちらにも、物理的な領域(音響対光子)とアルゴリズムの領域とがあります」

また開発チームは、HILシミュレーションを何千回も実行し、あらゆる飛行機能が動作し、シミュレートされた環境をすべてのセンサーが感知しているかを確認した。ここでもKimchiは、それを可能にした秘密の情報を明かしてはくれなかった。

さらに彼らは、当然のことながら、モデルの評価のための現実の飛行テストも行っている。「分析用モデルやコンピューター内のモデルも、細部に至るまで大変によく出来ていますが、現実世界に適合するよう調整されてはいません。現実世界は、究極のランダムイベント発生装置ですからね」と彼は言う。

このドローンが最初にどこで運用されるかは、まだ明らかにされていない。それも、アマゾンが公表を差し控えている秘密のひとつだ。だが、数カ月以内には発表されるだろう。アマゾンは、少し前からイギリスでのドローン配達を開始している。それは当然の選択だ。しかし、アマゾンがアメリカ以外の国を敢えて選ぶ理由も見あたらない。規制の問題がまだ流動的なアメリカが候補になる可能性は低いとは言え、それまでに解決されることも考えられる。いずれにせよ、一時はブラックフライデー商戦の見世物のようにも思えたこれが、自宅の庭に着陸する日は意外に近いかも知れない。

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(翻訳:金井哲夫)

DJIがエンタープライズ向けのドローン搭載用コンピューターを発表

DJIは米国時間5月28日、最新バージョンとなるドローン用のオンボードコンピューター「Manifold 2」を発表した。第2世代となるこのデバイスは、研究から日常的な検査まで、さまざまなエンタープライズ向け用途にプログラムが可能だ。

Manifold 2はIntel(インテル)のCore i7か、Nvidia(エヌビディア)のJetson TX2を搭載し、DJIのドローン「Matrice 210」「Matrice 600シリーズ」の内蔵センサーと統合される。またUSBやUART、CANといったさまざまなポートを搭載し、ユーザーは処理性能向上のために複数のデバイスを接続することが可能だ。

このシステムは基本的に、ドローンに数多くの必要な処理を任せ、リアルタイムでのデータや画像処理といった複雑なタスクを可能にする。また、障害物を避けるようにシステムをプログラムしたり、あるいはアクセスできない場所を自律的に飛行する事もできる。

このシステムはDJIのサイトから、インテルバージョンが1379ドル(約15万円)、Nvidiaバージョンが1099ドル(約12万円)にて入手可能。これは既成品のドローンをより活用したいと考える企業にとって、魅力的な提案だ。また、日常的な検査や高所での退屈、あるいは危険な作業のための技術が必要になるにつれ、より重要度の増すカテゴリとなるだろう。

すべての企業がカスタムドローンをソリューションを開発するノウハウを持っているわけではないので、多くの企業がDJIによりアクセスしやすいソリューションを求めていることは間違いない。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

ドローンだらけの未来の空に備えよう

このところの数カ月間に起こったいくつかの度重なる事件によって、一般の人にはドローンの危険性が強く印象付けられることとなった。昨年4月には、サウジアラビアの首都の、許可されていない領域に迷い込んだおもちゃのドローンが撃墜される事件が起き、政変が起こったのではないかと噂されるに至った。また8月には、ベネズエラの大統領に対するドローンによる攻撃事件も発生した。さらに12月の下旬には、英国のガトウィック空港に複数のドローンが侵入したとの情報により、36時間に渡って滑走路が閉鎖され、約1000便がキャンセルされて計14万人の乗客が影響を受けた。それ以降も、数カ月の間に、ダブリンドバイなど、いくつかの空港で、ドローンが原因となって旅客機の運行の遅れが発生している。ガトウィック空港の事件だけでも、航空業界に9000万ドル(約99億円)もの損害を与えたと推定されている。

今挙げたのは特に目立った事件だが、そうした事件を通しても、ドローンが世界中いたるところに広まっていることがわかる。そういう意味で、もっと影響力が大きかったのは、当局がスーパーボウルのために取った航空の保安措置だった。スタジアムの周辺一体が飛行禁止にされたにもかかわらず、スーパーボール当日が近づくにつれて、「洪水」のような勢いでドローンが押し寄せてきていると、PBS(米国公共放送サービス)はレポートしていた。

こうした事件は、空の地図を作り、空の治安を維持することが、単なる理屈ではなく現実的な課題であるという結論を突きつけるものだ。ちょうどGoogleが、初期のインターネットに散らばるノイズのような情報を取り上げ、整備して理解可能なものとし、さらにナビゲート可能なものとしたように、これだけドローンが一般に普及した今、われわれは空を把握して理解する必要があるだろう。

上に挙げた例のほとんどは、いわば「悪いドローン」の問題だ。つまり、敵対的とみなすことができるドローンに関した問題である。しかし、どのような機体が上空を飛んでいるのかを理解することは、「良いドローン」の問題にとっても不可欠なこと。ドローンは、主に威嚇的な存在として注目されるようになってきたが、やがてもっと良性なコンテキストでも話題の中心となるはずだ。たとえば農業、天気予報、配達、それに都市計画といった分野での活躍が期待される。その転換点はすぐにやってくるだろう。2018年のはじめ、FAA(米連邦航空局)は、登録されたドローンの数が、初めて100万台を突破したと発表した。それらのほとんどは、愛好家が所有するものだが、当局は商用のドローンも、2022年までに4倍に増えると予想している。今後ある時点で、「良いドローン」同士が衝突しないようにするためのシステムが不可欠なものとなるだろう。

空を把握し理解する必要がある

数の比較で考えてみよう。FAAによれば、米国内には約500の航空管制塔があって、1日あたり4万3000の飛行機のフライトを調停している。また、常に5000の航空機が上空を飛行していることになる。約2万人の航路輸送システムの専門家や航空管制官の働きによって、それら5000の航空機が互いに衝突せずに運行されている。そこから考えて、潜在的には何十万、あるいは何百万台も、同時に飛行しているドローンがぶつからないようにするため、どれだけの設備と労力が必要となるのだろう。これは大きな火急の問題なのだ。

このようなエコシステムの秩序の確保という課題に取り組むため、近年、非常に多くの企業が出現してきた。すでにかなりの額の投資家の資本が、ドローンでいっぱいになった空を把握するためのさまざまなアプローチに投資されてきた。例えば、ポイントセンサーによるソリューションを提供するEchodyneIris Automation、あるいはドローン管理システムを開発するKittyhawkAirMapUniflyといった会社だ。「悪いドローン」に対するソリューションとしては、レーザーや、地上から発射するバズーカ砲、といったものから、マルウェアを利用するもの、巨大な網によるシールドまで、さまざまなソリューションが編み出されている。

その中で、最も興味深いアプローチは、「良いドローン」と「悪いドローン」の両方の課題に対処できる統一的なもの。善意のドローンを識別して、非道なドローンから守るものだ。この場合、認識することが理解への第一歩であり、それによってこそ適切な対処が可能となる。実のところ、これは確実なデータレイヤーを確保するところから始めなければならないことを意味している。通常はレーダー探知システムから収集できるデータだ。そのデータレイヤーによって、どんな機体が、どこを飛んでいるのかを把握できる。

そうしたデータを入手することで、各機体の性質を理解することが可能となる。具体的には、良性のものか、悪意を持ったものか、ということだ。その識別によって、最後のステップ、行動することができるようになる。良性のドローンであれば、正しい目的地に導き、他のドローンと衝突しないようにする。悪意のあるドローンに対する「行動」とは、上に挙げた刺激的なソリューションの1つを動員することだ。つまり、マルウェアやレーザー、あるいは防御用のドローンを使って潜在的な脅威を無力化することも考えられる。

フル装備のアプローチは、シームレスな対応を定常化するのに役立つが、なんと言っても重要なのはデータレイヤーだ。ドローンが社会の主流となるのは、もう少し先のことになるだろうが、インフラやセキュリティのフレームワークの作成を、実際に必要となる前に、一歩先んじで開始しておくことには大きな意義がある。今のうちからデータを収集しておくことで、将来のドローンを見据えた確かな基準を築くことができる。そしてその基盤の上に、新たなソリューションを提供する参入者が現れる可能性も生まれる。さらに言えば、これは客観的に見ても正しいことのように思われる。25年前の携帯電話ネットワークを思い出してみればわかるだろう。早期に導入した人たちが、検知と防御のシステムを採用するという決定を下したことが、導入をためらっていた人たちにも利益をもたらすことになった。つまりガトウィック空港がインフラを整備すると、ヒースロー空港も、その恩恵を受けるということだ。

結論を言えば、ドローンだらけの空の問題の解決に必死になって取り組まなければなければならない理由は山ほどある。放っておけば、良くない結果を招くであろうと考えられる理由が山積みだからだ。ゴールドマンサックスが1000億ドル(約11兆円)規模になると予想する市場に向けて道を整備することは、途方もない機会に違いない。ドローンの持つ潜在的な悪だけでなく、ポジティブな可能性に向けて計画するのは、できるだけ早い方がいい。

画像クレジット:Alexandr Junek Imaging sroShutterstock

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

筑波大発の水中ドローンスタートアップFullDepthがDrone Fundなどから3.4億円を調達

地球上の表面積の7割を占める海は、生命の起源や地震活動のメカニズムといった多くの謎の手がかりを秘め、水産物や鉱物、エネルギーなど資源の宝庫でもある。だが海中の実態については、ほとんどが明らかになっていない。

「陸上に比べて海の理解は遅れている。マイクロプラスチックによる汚染や地球温暖化などの問題にも関与する海のことを、もっと分かるようにしたい」そう語るのは、水中ドローンを自社開発し、サービスを提供するFullDepth(フルデプス)代表取締役の伊藤昌平氏だ。

筑波大学発のスタートアップである同社は5月27日、約3.4億円の資金調達を明らかにした。第三者割当増資は4月、Drone Fundをリードインベスターとし、Beyond Next Ventures三井住友海上キャピタルおよび筑波総研の運営する各ファンドを引受先となって実施済みだ。

FullDepth(旧社名:空間知能化研究所)は2014年6月の創業。2016年3月にエンジェルラウンドで資金調達を行い、深海探査機の開発に着手した。試作機による実証実験を進め、2017年6月にはシリーズAラウンドで1.9億円を調達。2018年6月には、自社開発の水中ドローン「DiveUnit 300」の製品化を実現し、同機の保守・運用、保険、取得データの蓄積・活用までをパッケージにしたサービスを提供開始した。

サービス開始から2019年4月末までに約50カ所、延べ約65日にわたり、ダムや防波堤といったインフラの点検や、水産設備の保守管理などで活用されているという。

DiveUnit 300は水深300メートルまで潜航可能な小型の水中ドローン(ROV)。バッテリーで駆動する本体は船上のPCとテザーケーブルで接続され、内蔵カメラによる映像をリアルタイムで確認することができる。

DiveUnit 300は人の手で水中に投入できる

同社が開発したクラウドサービスを使って、遠隔地でも映像や各種センサーによる取得データの確認が可能。機体の操作指示もリモートで行えば、現場へ足を運ぶ人数を減らすことができ、コスト削減にもつながる。

モニタリングの様子

また、今まで潜水士が潜るには危険で調査ができなかったような場所での調査も可能にした。潜水士が一度に潜れる時間の限界(水深20メートルで1人30分、1日2回までなど)もあるため、かさみがちだった点検工期も、いったんドローンが広域をチェックして、必要があれば人が詳細に調べる、といった切り分けもできるようになり、大きく削減できるようになった、と伊藤氏はいう。

前回の資金調達では製品化実現に向けて投資を行ったFullDepth。今回は「顧客の課題解決のため、製品の量産を図るとともに、組織を強化する」と伊藤氏は調達資金の使途について説明している。

また、海に囲まれた日本は「水中のインフラや養殖いけす、定置網などの水産設備については進んでいる」と伊藤氏。これらの調査・点検に関するノウハウを持って、海外展開も始めたいと述べている。

同社は、水深1000メートルまで使用できる実証実験機「Tripod Finder」も保有している。今後、深度を深める開発に取り組まないのか尋ねたところ、伊藤氏は「まずは1プロダクト(DiveUnit 300)の量産に集中して、これでできることを増やす。クラウドを使ってデータを蓄積することでできるサービスも検討している」と回答。

具体的には、Google ストリートビューやスマートフォンのGPSによる行動解析データと同様に、海中の深度や温度といったデータを、水中ドローンを潜航させて取得・蓄積することで、何らかのサービスにつなげたい、ということだった。

伊藤氏は「顧客の課題に合わせて深度を追求することもあり得るが、浅いところでも分からなくて困っているということはまだまだ多いので、それをまずは分かるようにする。顧客自身が『何が分からないのかが分からない』ということもある段階なので、一つ一つ身近なところから精査しながら、事業に取り組んでいく」と話していた。

DJIは今後のドローンほぼ全機種に航空機接近感知機能を実装する

米国時間5月22日、ワシントンD.C.で行われたイベントでDJIが、ドローンによる人身事故を防ぐ計画を発表した。そのリストのトップにあるのは、AirSense技術を重量250グラム以上のすべての機種に実装することだ。それを来年の1月1日から有効にする。

この機能はAutomatic Dependent Surveillance-Broadcast(ADS-B)信号を受信して、ヘリや飛行機の圏域内ならドローンの操縦者に警報する。航空機が発するその信号は数マイル先からでも検出できるので、地上のドローン操縦者よりも早く気づく。DJIによると、これはこれまでで最大のADS-Bのデプロイメントだそうだ。

ADS-B受信機をドローンに載せる前には、空港でドローン関連の問題が度々起きている。1月にはヒースローの近傍で滑走路近くにドローンが目撃された。ドローンの保有者が爆発的に増えているので、多くの政府が危険な接近を避けるための法整備に苦労している。

計画は10項目から成り、そのトップが上記ADS-B受信機だが、そのすべてを挙げると以下のようになる:

  1. 250g以上のすべての新機種にADS-Bレシーバーを搭載する
  2. ドローンの長距離飛行をしている操縦者のための新しい自動警報を開発する
  3. DJIの社内に安全性標準化グループを作り規制当局と顧客の要求に対応する
  4. 航空機産業の各種業界団体はドローンのインシデントを報告するためのスタンダードを開発すべきである
  5. すべてのドローンメーカーがジオフェンシングと遠隔識別機能をインストールすべきである
  6. 政府は遠隔識別機能を必ず有すべし
  7. 政府は新人ドローン操縦者のためのユーザーフレンドリーな知識試験を行うべきである
  8. 政府は危険な制限空域を明確に指定すべきである
  9. 地方行政は、明確で深刻なドローンの脅威への対応能力と権能を持つべきである
  10. 政府は安全でないドローン運用を取り締まる法執行能力を強化すべきである

ここでのDJIは、当然ながらきわめて先見的だ。同社は消費者用ドローンの大手だから、今後は行政や消費者団体などからの監督が厳しくなるだろう。上のリストはやるべきことを、ドローンのメーカーと政府に割り振っている。ただしもちろん、どんな安全策も、実効の鍵を握るのはドローンの操縦者自身だ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Flying STARは地上を走り空を飛ぶ小さな変身ドローンだ

災害救助などの場面を考えると地上走行と飛行が同時にできるデバイスがあれば便利だということは明らかだ。しかし従来のドローンは走るか飛ぶかどちらかしかできないのが普通だった。そこでどちらもできるFlying STARが登場した。メカニズムは呆れるほど簡単なので「今までこれを誰も考えつかなかったのはなぜだ?」と思う読者もいるかもしれない。

イスラエルのベングリオン大学の研究者が考案したFlying STARは、飛行・折り畳み・自動走行ロボットだ。アイディアはローターも車輪も回転するという初歩的な事実に気づいた結果生まれたという。それなら両者を兼用させる手だてがあるのではないか?

実現までにはいくつもの困難があったが、David Zarroukが率いるチームは現代の軽量、強力なドローン部品の助けを借りて空陸ハイブリッドの実現に向けて努力を重ねた。その結果、必要なときには一般のドローンのように空を飛び、着陸した後、ローターを載せた4本のアームを下に曲げ、動力を車輪に伝えて地上を走り出すロボットが完成した。

もちろんドローンの下部に車輪を取り付けてもよかったわけだが、ベングリオン大学のチームのアイディアのほうがいくつも点で優れていた。まず第一に、ローターを駆動するモーターがそのまま車輪を駆動するのでメカニズムがはるかにシンプルで効率的だ。もちろん車輪駆動の場合にはローターの場合よりモーターの回転数を低くする必要があった。しかしアームを下向きに曲げる方式はホイールベースと地上最低高を大きくし、安定性と走破性をアップさせる。不整地を走行する場合に非常に有利になる。

下のビデオでFSTARが空を飛び、着陸し、トランスフォーマーのようにアームを動かして地上走行モードに変身するところを観察できる。これはモントリオールで開幕するIEEEのロボティクスとオーテメーションに関するコンベンション向けに用意された。

Flying STARはごくわずかのエネルギー消費量で毎秒2.43メートル走行し、障害物を乗り越えたり階段を上ったりできる。そしてもちろん空を飛べる。開発チームのリーダー、Zarroukはプレスリリースで以下のように述べている。

我々は地上を走り空を飛ぶこのタイプのロボットについて、利用範囲を広げるために大型版、ミニ版を開発する計画だ。またアルゴリズムの改善とスピード、コストの削減にも取り組んでいく。

見てのとおり、現在はプロトタイプでプロダクト化するまでには数多くの作業が必要だろう。しかし実用化されれば撮影やパッケージ配送などの一般的商業用途に加えて農業用、災害救援用、軍・警察用としても利用できるはずだ。

【Japan編集部追記】地上走行中もデバイスのローターは回転しているので車輪とローターで動力を切り替えることはしていないようだ。正面から見た映像ではローター下部にモーターが設置され、ギアトレーンで回転数を落として車輪に動力を伝えている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Google系の配達ドローンWingが6月にフィンランドでパイロット事業

ゆっくりと、しかし確実に、翼(Wing)は広がりつつある。つい先月、かつてはGoogleのドリーム企画(Moonshot、人間を月に打ち上げるような途方もない企画)だったこの製品が、オーストラリアの首都キャンベラの一部で荷物の配達を開始した。そして今度はフィンランドに飛び、首都ヘルシンキで仕事を始める。

ドローンの配達は6月に始まるが、それは昨年暮れに発表したように、まさにフィンランドでは春の時期だ。オーストラリアの場合と同じく、今回もパイロット事業と位置づけられていて、特定の品物を一定の地域へ届ける。ヘルシンキの場合は、いちばん人口の多いVuosaari(ヴオサーリ)地区だ。

Wingは、Mediumのページにこう書いている。

VuosaariはWingにとって、いろんな点でやる気満々になる地区だ。ヘルシンキでいちばん人口が多く、三方向が海で住宅地と緑の森が混在し、大きな国際貿易港もある。今回は集合住宅への配達サービスを初めて行うが、人口密度の高いVuosaariはそれにふさわしい場所だ。

このパイロット事業には2社のパートナーがいる。高級食材のスーパーマーケットのHerkku Food Markと、カフェのCafe Monamiだ。サーモンサンドイッチやペーストリーもドローンで届くのだ。

Wingも書いているが、ヘルシンキは今、マイカーへの依存を減らして公共交通機関を充実させようとしている。Wingにとっても、好機だろう。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

米軍の最新秘密兵器は巨大な空飛ぶナイフで敵を斬る

先週のウォールストリートジャーナル紙(WSJ)の記事が明らかにした米軍の秘密兵器は、特定の標的の破壊を狙う攻撃において、一般市民の犠牲者を減らすことを目的としている。空中のドローンからヘルファイヤー空対地ミサイルを発射する、といった従来のやり方と違ってこの変種ミサイルは弾頭も爆薬も積まない。どうして?それは従量100ポンド(約45kg)の金属を標的上に落とし、6つの巨大なナイフでそれらを切り刻む。

WSJの記事によると、オバマ政権時代に開発されたこの武器は、特定の状況でのみ使用される。R9Xと呼ばれ、ヘルファイヤーのような通常の爆発性ミサイルでは市民に死者が出るような高精度の作戦向けに設計された。

WSJ紙は、R9Xが実際に使われた2つの作戦を確認できた。ひとつは、1月の国防総省の作戦でJamal al-Badawi(ジャマル・アルバダウィ)を殺し、もうひとつは2年前にシリアで、アルカイダのリーダーAhmad Hasan Abu Khayr al-Masri(アハマド・ハサン・アブ・ハイル・アル・マスリ)に死をもたらした。

「忍者爆弾」(Ninja Bbomb)とあだ名で呼ばれるこの兵器は、米軍が使う初めての金属と重力を利用する殺傷兵器ではない。朝鮮戦争でもベトナム戦でも、米軍は「Lazy Dog」と呼ばれる爆弾を使った。それは何百もの長さ約5cmの発射体を空から雨のように降らせ、それらの高速性が殺傷能力を持った。

多くの場合その効果は気色悪いが、あとに不発弾のようなものを残さない。その余禄(と呼んでよいのなら)は、100ポンドの鋭利な金属を敵の頭上に落とすことによって一般市民の犠牲者を最小化するこの兵器の特徴の、これまた不気味なついでの一部と言えるかもしれない。

関連記事: Palantir wins $800 million contract to build the US Army’s next battlefield software system(Palantirが戦場用次世代ソフトウェアで8億ドルの受注、未訳)

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

超小型ドローンで屋内設備を点検、Liberawareが1.3億円をDrone Fundらから調達

産業用小型ドローンによる事業を展開するLiberaware(リベラウェア)は4月24日、Drone FundおよびFFGベンチャーファンドを引受先として、総額1億3000万円の第三者割当増資を実施したと発表した。

Liberawareが展開するのは、小型ドローンの開発・販売と、ドローンにまつわるさまざまなサービスだ。特に今年の4月からは、屋内の点検用ドローンをレンタルするサービスも開始している。

煙突やボイラー、天井裏、ダクト内や配管などの点検を大規模な工業施設で行う場合、狭い場所や粉塵・高音などの過酷な環境下で、足場を組んで作業する必要がある。Liberawareではリモートで作業を行うことができる、超小型の産業用ドローンを開発し、製造。クラウド型の点検ソリューションとパッケージにして提供している。

同社では今回の資金調達により、これら小型産業用ドローンを活用した点検ソリューションの開発・提供を加速させるとしている。

Liberawareは2016年8月の設立。今回の資金調達は、同社にとってプレシリーズAラウンドに当たり、Drone Fund、ORSO、Aerial Lab Industriesから実施した、前回2018年2月の資金調達に続くものとなる。

Google系のWingがドローン配達にてFAA認可を取得

GoogleのX Labから誕生したドローン配達スタートアップのWing Aviationは、FAA(連邦通信委員会)から初めて商品の商業配達に関する認可を受けた。ドローンがブリトーを配達する日は、そう遠くないはずだ。

Wingはここ数年間テストを続けており、数千回の飛行をくり返す中で、ドローン配達の安全性と効率性を実証してきた。その多くは、初めて同社の商業配達が実施されたオーストラリアのキャンベラ郊外で実施された。また、フィンランドなど他の数カ国でもプロジェクトが進められている。

Wingの初のオペレーションはヴァージニア州のブラックスバーグとクリスティアンバーグにて、連邦政府と自治体の協力の元で年内に開始される。FAAの認可だけでは、一般向けのドローン配達は実施できないのだ。

FAAのリリースには、「Wingは食品の配達を始める前に、地域のコミュニティとコンタクトを取りフィードバックを集め、将来のオペレーションを告知する」と記載されている。これは、自分の空域を騒音を立てる小さな航空機が通過するかどうかを選択できる、という意味だ。

今回の申請では渋滞時にもすばやく食事を配達できることになるが、それ以外にもさまざまな計画がある。例えば救急救命士が迅速に医療品を配達したり、あるいは医療機関同士で輸血用の血液を輸送する、などが想定されている。

現在TechCrunchはWingの計画について問い合わせており、詳細がわかり次第記事をアップデートする予定だ。

 

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

Parrotのドローン新製品はサーマルカメラ搭載、各分野のプロフェッショナル狙う

Parrotはここ数年間で、Bluetoothヘッドフォンやスピーカーからドローンへ、という興味深い転身を遂げた。同社のANAFIブランドのドローンは、DJIのヒット機Mavicと十分対抗できる位置にいると思うが、でも同社は、ホビイストや一般消費者をちょっと超えたところで勝負したいらしい。

同じクラスの他機との主要な差別化要因は、この記事のタイトルにもあるように、Flirのサーマルカメラを搭載したことだ。そのANAFI Thermalと呼ばれるドローンは、高解像度の画像の上に感熱層をかぶせた画像を撮る。

これによってこのフランスの企業は、そのドローンの市場を監視や検査を必要とするさまざまな業務用分野にも広げたいと願っている。ちょっと思いつくユースケースとしては、消防、ソーラーパネルの検査、建設業界などが思い浮かぶ。たとえばビルの壁の断熱性や熱漏れをチェックできるだろう。

そのほかに4K HDRのカメラも搭載しており、その性能は21メガピクセル、3倍ズームだ。ジンバルに載っていて上下も90度、角度を変えられる。これまた、ビルの点検などに適しているのではないだろうか。電池寿命は26分で、前よりやや良くなった。電池3つが同梱されている。

ANAFI Thermalは、1900ドルで来月発売される。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

オーストラリアでドローンによる日用品の配達サービスが開始

Alphabet傘下のWing(ウイング)は、オーストラリアの首都キャンベラ周辺の3つの地域でドローンによる配達サービスを開始した。 同社は過去18か月間に3000回ものテストを実施し、「対象となる限定された住宅」への展開を開始する。

同サービスはグレース、パーマストン、フランクリンのエリアで利用可能。その他エリアは「今後数週間から数カ月のうちに」追加される予定だ。配達の対象となる商品は食品や飲み物、医薬品など。

同社ではKickstart Expresso、Capital Chemist、Pure Gelato、Jasper + Myrtle、Bakers Delight、Guzman Y Gomez、Drummond Golfなど、食料品・日用品、ゴルフ用品などのパートナーと提携し、「ほんの数分」でのデリバリーを約束している。

同社は、今のところ、主に地元の企業と提携し、当面はAmazonに対抗するようなアプローチで配達事業を行なっていく見込みだ。配達に参加しようとしている地元の商人のための応募フォームも準備されている。 現時点ではこのプログラムはまだ発表されたばかりだが、小売店にとっては良い宣伝効果になるのではないか。

Wingは、事業をできるだけ円滑に進めるため、地元の人々とのコミュニケーションを重視していると述べている。

「Wingは、地元の政策立案者、規制当局、そして地域社会と協力することで、サービスを拡大、新たな経済的機会を開拓し、都市の連携をより強固なものにできると信じている」「キャンベラのコミュニティとの対話を続け、Wingのサービスを拡大していく予定だ」と同社は綴っている。 

(本稿は米国版TechCrunchの記事を翻訳・編集したものです)

[US版TechCrunchの記事はこちら]

海洋ドローンのSofarは海のDJIになれるのか?

暗い深海の下には何が潜んでいるのだろう? SolarCityの共同創業者であるPeter Rive氏は、一般の人や科学コミュニティによる探索を手助けしたいと願っている。彼は、新しいスタートアップSofar Ocean Technologiesに対する700万ドル(約7億7000万円)のシリーズAの資金調達を主導した。同社は水中ドローンメーカーOpenROVと、海中センサーを開発するSpoondriftとの合弁によって誕生した。その合併を仕組んだのも彼だ。彼らは協力して、1080pでの撮影が可能なTridentドローンと、太陽電池で動作するSpotterセンサーを組み合わせ、海中および海面上のデータを収集できるようにした。それらを使えば、素晴らしいビデオ映像を撮ったり、波動と天候の変化を追跡したり、釣りやダイビングに適したスポットを見つけたり、船舶やインフラの損傷を調べたり、海洋牧場の様子を監視したり、場合によっては密輸業者を捕まえるのに役立つこともあるだろう。

SofarのTridentドローン(左)とSpotterセンサー(右)

「空を飛ぶドローンは、私たちがよく知っているものを、異なった視点で見せてくれます。海洋ドローンは、私たちが本当にまったく知らないものを見せてくれるのです」と、元Spoondriftの、そして今はSofarのCEO、Tim Janssen氏は語った。「Tridentドローンは、科学者がフィールドワークに使用するために設計されたものですが、今では誰でも使えます。これによって、未知の領域に踏み込むことが可能となります」。

Rive氏は、DIY的な海洋探査が生態系におよぼす影響を心配しているものの、すでに海には競合するドローンがひしめいている。たとえば、プロの研究調査用として開発された、ずっと高価なSaildrone、DeepTrekker、SeaOtter-2などのデバイスや、コンシューマー用としても800ドル(約8万8000円)のRobosea Biki、1000ドル(約11万円)のFathom ONE、5000ドル(約55万円)のiBubbleなどがある。1700ドル(19万円弱)のSofar Tridentは、海上に浮かんだブイにケーブルで接続して電源を供給する必要があるが、3時間の潜水時間と毎秒2mという潜行速度を実現している。価格的にはちょうど中間あたりに位置する。しかし、Sofarの共同創立者、David Lang氏に言わせれば、Tridentはシンプルで頑丈、耐久性の点で、他よりも優れている。問題は、Sofarが水のDJIになることができるかどうかだ。この分野のリーダーになれるのかどうか。それとも、単なる一種のコモディティ化されたハードウェアメーカーとして、模造品の中に溺れてしまうのか。

左から、Peter Rive(Sofarの会長)、David Lang(OpenROVの共同創立者)、Tim Janssen(Sofarの共同創立者兼CEO)

Spoondriftは2016年に創立され、気象データを追跡することのできる手軽な価格のセンサーを開発するとして、35万ドル(約3850万円)を調達した。「このブイがSpottersです。驚くほど簡単に設置でき、非常に軽く、扱いも楽です。釣り糸を使って、手で水中に潜らせることもできます。それにより、ほとんどどんな状態でも設置することが可能になります」と、MetOcean SolutionsのAitanaForcén-Vázquez博士は説明した。

OpenROV(ROVは、Removable Operated Vehicleの略)は7年前に設立され、True VenturesとNational Geographicから、130万ドル(約1億4300万円)の資金を調達した。「船を持っている人なら、みんな船体検査に使える水中ドローンを持つべきでしょう。そして、すべてのドックは、風と天候のセンサーを備えた自前の測候所を設けるべきです」と、Sofarの新しい会長、Rive氏は主張している。

Spotterは海洋に関する大規模なデータ収集の道を切り開く

Sofarは、Rive氏の使命を達成するためにも成長する必要がある。その使命とは、気候変動の進行や、その他の生態系の問題に関して、より多くのデータを収集するのに十分なセンサーを海洋に設置するというもの。「私たちには、この海について、わずかな知識しかありません。データが足りないからです。大げさなシステムを海に配置するのは、非常に高く付きます。センサーと船舶だけで、数百万ドル(数億円)はかかるでしょう」と、彼は訴える。みんなにGPSセンサー付きのカメラを持たせれば、より良い地図が手に入る。低コストのセンサーを民家の屋上に設置することができれば、大量の気象予報データが得られる。同じことがSpotterで可能になる。一般的な海洋センサーが10万ドル(約1100万円)もするのに対し、たった4900ドル(約54万円)で済むからだ。

Sofarのハードウェアを購入した人は、必ずしも同社とデータを共有する必要はない。しかしRive氏によれば、多くのオーナーが進んでそうしているという。仲間の研究者と共有できるように、データの可搬性の向上をずっと求めていたのだ。同社は、将来的にはそうしたデータを収益化につなげることができると考えている。それが、Riva氏本人や、その他の投資家、つまりTrue VenturesとDavid Sacks氏のCraft Venturesからの資金を得ることができた要因の一つだ。その資金によって、データビジネスを構築することになるだろう。また、Tridentドローンが、行くべきでない場所に行かないようにするための保護機能をSofarが開発することも可能になる。ロンドンのGatwick空港が、不法侵入したドローンのために閉鎖されたことを思い出せば、その重要性は明白だろう。

Spotterが収集した天候や、その他の気候データは、スマホに転送できる

「当社の究極の使命は、人類と海を結びつけることです。私たちは心からの自然保護主義者なのです」と、Rive氏は締めくくる。「商業化がさらに進み、多くのビジネスが参入してきたら、そうした活動が海にとっての利益につながるのかどうか、話し合う必要が出てくるでしょう。地球を守るためには、モラルの羅針盤を正しい方向に向けておくことが重要になるはずです」。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Salesforce Ventures初のハードウェア投資先はエンタープライズドローンのKespry

業務用のユーザーにサブスクリプション方式でドローンサービスを提供しているKespryは米国時間3月27日、Salesforce Venturesからの資金調達を発表した。それは、Salesforceのベンチャー部門としては初めてのハードウェア方面への投資だ。これによりSalesforceとKespryとのパートナーシップが実現し、前者の保険業界向けツールに後者のドローンサービスが統合されることになった。資金の調達額は公表されていないが、Salesforce Venturesのそのほかの投資に比べて相当大きいと思われる。

2013年に創業されたKespryは、主に鉱業や骨材業界(砂利、砕石など)に強く、ドローンで撮影した画像から採掘容積を求める。その他に同社は、最近では建設や保険、エネルギー部門にも顧客を広げている。

CEOのGeorge Mathew氏によると、Kespryの現在の顧客は300社あまりで内200社以上が鉱業と骨材業界、そして40社以上が過去1年以内の新規登録ユーザーだ。

今は、ドローンも人気の盛りを過ぎたかもしれないが、同社のように初期にニッチ市場を見つけた企業は好調だ。CEOはこう言う。「今では活用範囲が広がっているからドローンビジネスは活気があり、また変化も激しい。うちはもっぱら商用利用に目をつけてきたから、産業界の非常に難しい課題にも対応できる。しかしドローンで大規模で有効なビジネスモデルを見つけるのは容易じゃないから、問題を抱えているドローン企業もある」。

彼によるとKespryが好調な主な理由は、そのサブスクリプションモデルと顧客にエンドツーエンドのハードウェアとソフトウェアのソリューションを提供していることだ。

Salesforceからの投資は、ある業界イベントでCEOのMarc Benioff氏にたまたま会ったことがきっかけだ。Salesforceは保険業界向けの業種特定型アプリケーションを目指していたから、当然そこにはKespryの役割もあった。「大きな災害などのあとには保険会社への支払い請求がどっと押し寄せる。すると保険会社は、大量の土地や建物の被害の査定を短期間でしなければならない。明らかにそれは、ドローンの出番であり、その需要は今きわめて多い」とMathew氏は言う。そんな場合Salesforceのツールを使って査定官を現場に送り込むが、彼ら請求査定官は今度はKespryのサービスを利用してドローンを飛ばし、家の屋根がどれぐらい壊れているかなどを調べる。

KespryはSaleforceとのパートナーシップの一環として後者のPledge 1%プログラムに登録している。それは、社員の全労働時間の1%を企業の社会的責任とチャリティ努力に投ずるという企画だ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

UPSがドローンスタートアップのMatternetと組んで医療サンプルを輸送

無人ドローンによる配達がUPSネットワークで採用される。ドローンスタートアップのMatternetとの提携によって、UPSは医療サンプルの無人ドローンによる配達をノースカロライナ州レイリーのWakeMed病院で開始した。

連邦航空局およびノースカロライナ州運輸支局の認可を受け、UPSとMatternetは医療サンプルの定期空中輸送を日々運用する。これまでWakemed病院は自動車輸送に頼っていたため交通渋滞による遅延の恐れがあった。

ドローンによる配送では、まず医療専門家が医療サンプルや血液サンプルなどの検体をドローンに載せる。その後ドローンは事前に決められた経路を飛んでWakeMed病院の本院および中央病理検査研究所に送られる。

UPSとMatternetはその後プログラムを分析し、全米のその他の病院での輸送を改善するためにドローンを利用する方法を検討することができる。以前UPSは、Ziplineと提携して遠隔地域の医療輸送をテストしたことがある

「無人航空システムは顧客ニーズを的確に捉え、ネットワークの効率を高めることでわれわれのビジネスが成長する機会を与えてくれる」とUPSの先端技術グループ担当VPであるBala Ganesh氏が声明で語った。

ドローンを配置することでコスト削減と効率化が見込める。Matternetは、昨年8月にFAAの無人航空機システム統合パイロットプログラム(IPP)の一環としてテスト飛行を実施した。

これ以前にMatternetは1600万ドルの資金調達ラウンドをBoeingのベンチャーキャピタル部門であるBoeing HorizonX Venturesのリードで完了した。最近FAAは、同局の無人航空機パイロットプログラムの一環として、米国病院のドローン輸送業者としてMatternetを指名した。2015年にMatternetは、スイス、チューリッヒで血液と病理サンプルを検査機関に運ぶテストを初めて実施した。

以来Matternetはスイスでの運用を拡大し、人口密集地域を1700回以上飛行し、850回以上患者サンプルを輸送した。

「UPSと共に、当社は米国の医療におけるオンデマンド輸送の現状をドローン配達ネットワークによって変革することを目標にしている」とMatternetのCEOであるAndreas Raptopoulso氏が声明で語った。「我々の技術によって、病院システムは医療物資をこれまでにないスピードで輸送することが可能になり、患者治療の改善と経費の節減に役立つことが期待できる」

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

鳥やコウモリのように「そこらへん」に止まれるドローン

ドローンはいろんなことで便利に使えるが、その便利さは彼らが空中にとどまれる時間に制限されることが多い。もっと軽くなるべきかもしれない。でも、上図のようなかぎ爪をつけたドローンなら、どこにでもとまったり自分をひっかけたりして電池の無駄遣いを防ぎ、飛行時間を延ばせるだろう。

そのかぎ爪は、この記事の最後でご紹介するように、ものすごく多国籍の研究者チームが鳥やコウモリからヒントを得て作った。チームは、鳥などの空を飛ぶ動物が、自分がとまりたい面の性質に合わせて独自の脚やかぎつめを発達させていることに気づいた。どこかに座ることもあれば、どこかにぶら下がることもある。羽根をたたんで、どこかに寄りかかることもある。

研究者たちは、こう書いている。

これらのどんな場合でも、動物の足の適切な形をした部分が環境中の面と対話をして、飛ぶ努力を減らしたり、完全にとまったりする。私たちの目標は、このような、「とまる」(Perching)という行為を無人航空機にさせることだ。

え、ドローンを鳥のように木にとまらせるの?まさか!

我々は、回転翼で飛ぶ無人航空機のために、外部動力で動作するモジュール構造の着陸装置を設計した。それは、動力式の握り部(Gripper、グリッパー)モジュールと、それの指に装着される接触部(Contact、コンタクト)モジュールから成る。

モジュール構造にしたために、とまったり休んだりするために使える構造物の形状や種類の範囲が、単純に鳥の脚やかぎつめを模倣する場合に比べて大きく広がった。

関節のある足のような単体で複雑な構造物を避けて、チームはドローンに、3Dプリントで作った特殊な形状の静的モジュール複数と、ひとつの大きなグリッパーを与えた。

ドローンはLiDARなどの奥行き検知センサーを使って自分のまわりを調べる。近くにある面の性質も検知して、自分がとまれる面の例を収めたライブラリとマッチングする。

上図右上のような四角いエッジでもAのようにとまれる。柱ならBのようにバランスをとる。

柱があってそこにとまりたければ、その柱を上からつかむ(上図下左)。水平方向の棒なら、握ってぶら下がったり、必要なら起き上がったりする。棚のようなものなら、小さな穴を開けて自分をその隅に固定する(上図A)。そのとき、モーターは完全に停止できる。これらのコンタクトモジュールは、ミッションの性質や状況に応じて形を変えられる。

率直に言ってこれは全体的に、プロトタイプにしてはできすぎだ。難しいのは停泊に使える面の認識と、正しく着地するための姿勢制御だろう。でも現状ですでに、十分実用性がある。業務用や軍用なら、これでも十分ではないか。数年後にはこれが、すべてのドローンの標準装備になるかもしれない。

このシステムを説明しているペーパーは、Science Robotics誌に載っている。省略してもよい人は一人もいないと思うから執筆者全員を挙げると、エール大学と香港科学技術大学とスウェーデン王立工科大学のKaiyu Hang氏、Ximin Lyu氏、Haoran Song氏、Johannes A. Stork氏、Aaron M. Dollar氏、Danica Kragic氏、そしてFu Zhang氏だ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

農業用ドローンのナイルワークスが16億円を調達、“空からの精密農業”推進へ

農業用ドローンを手がけるナイルワークスは3月14日、INCJ、住友化学、住友商事、クミアイ化学工業、未来創生ファンド、Drone Fundを引受先とする第三者割当増資により、総額で約16億円を調達したことを明らかにした。

2015年創業のナイルワークスは「空からの精密農業」をビジョンに掲げる日本発のドローンスタートアップ。2017年10月にも産業革新機構などから8億円を調達していて、累計の調達額は約24億円になる。

同社ではセンチメートル精度でドローンを完全自動飛行する技術を保有していて、この技術を取り入れた農業用ドローンの開発や生育診断サービスの事業化を進めている。

作物上空30~50cmの至近距離をドローンが飛ぶことで、薬剤の飛散量を大幅に抑えられるのが特徴。搭載したカメラから作物の生育状態を1株ごとにリアルタイムで診断し、散布する肥料・農薬の量を最適化する技術にも取り組む。

事前に圃場の形を測量することで、タブレットから開始ボタンを押せば経路に沿って離陸から散布、着陸までを自動で行うため、特別な操縦スキルも不要だ。

ナイルワークスによると、2018年夏には全国各地で75回におよぶ実証実験を実施。農作業の省力化を検証し、地域や水稲の品種ごとの生育データをもとに診断技術を磨いてきた。

並行してVAIOを委託先とした量産化体制を住友商事と共に構築し、量産化モデル第1弾である新型機「Nile-T19」の開発にも着手。2019年6月の販売開始に向けて準備を進めているという。

同社では今後も各出資企業・ファンド・組合と連携しながら「保有する技術を水稲以外の作物に展開し、日本のみならず海外にも進出することで、精密農業のリーダーになることを目指します」としている。

安曇野FINISHドローン誕生か、エアロネクストとVAIOが量産化に向けてタッグ

エアロネクストは3月12日、VAIOと産業用ドローンの量産化について共同で事業化を検討することを発表した。

エアロネクストは2017年4月設立のスタートアップ。ドローン重心制御技術「4DGravity」を保有しており、従来はソフトウェア中心だったドローン本体の姿勢維持をハードウェアレベルで実現することで、より安定したドローンの飛行を可能としている。

VAIOは、ソニーが販売していた「VAIO」ブランドのPCの製造・販売を一部の技術者を含めて2014年に引き継いだ企業。同社が製造するVAIOの各モデルは、長野県安曇野市の工場で綿密な最終チェックが実施される、いわゆる「安曇野FINISH」モデルとして出荷される。現在同社の主力事業は、法人向けPCの販売と電子機器の受託生産(EMS)だ(Engadget日本語版参考記事:VAIOの里で見た謎の安曇野フィニッシュと億単位のテスト環境にVAIOの真髄を見た)。

今回の提携についてエアロネクストからは以下の回答が得られた。

TechCrunch(TC):VAIOとの提携は先日の小橋工業との提携と同様のものなのでしょうか?
エアロネクスト:小橋工業と同様に重要な提携先となります。4D Gravityは産業ドローンの標準技術だと考えていますので、今後もさまざまなドローンメーカーでの採用・搭載を予定しています。

TC:PC製造とEMSを得意とするVAIOを組む理由を教えてください。
エアロネクスト:これまでのEMS事業においてロボットに加え、IoT関連の製造に対しても意欲的に取り組んでいらっしゃるということが最大の理由です。また、PC事業・EMS事業それぞれにおいて豊富な経験と実績を有するVAIOと組むことで、より安定した飛行を実現できる産業ドローンの開発に取り組めると考えています。

TC:安曇野工場は「安曇野FINISH」でおなじみですが、御社のドローンも安曇野FINISHとなるのでしょうか。
エアロネクスト:それも一つの可能性ですが、現時点では未定です。さまざまな選択肢の中からベストな生産体制の決定がされる予定です。

TC:具体的にはどのような用途で使う産業用ドローンを量産されるのでしょうか。
エアロネクスト:市場の立ち上がりと市場規模を見据えつつ、産業用途全般で検討していきますが、現時点では未定です。

TC:どのようなドローンサービスを事業化されるのでしょうか。
エアロネクスト:VAIOにはPCに加えて様々な電子機器、IoT製品の設計・製造の経験と、高品位・高品質なモノづくり、ブランド力があります。4D Gravityテクノロジーを使った新たな商品開発、用途別サービスの検討を共同で進める中で、シナジー効果が期待できるサービスを実用化する予定です。

TC:量産化のメド、事業化のメドを教えてください。
エアロネクスト:量産計画についてはこれからになります。決定次第、発表いたします。

TC:量産台数の目標を教えてください。
エアロネクスト:上記同様量産計画についてはこれからになります。決定次第、発表いたします。

エアロネクストは先日、岡山を拠点とする農耕機具メーカーである小橋工業との提携を発表したばかり。今回の提携は詳細をこれから詰めていくようだが、画期的なドローン技術を擁するエアロネクストと、製品の品質管理の定評のあるVAIOが組むことで、どのような産業用ドローンが生まれるの楽しみだ。