中国の警察に歩行特徴認識テクノロジー導入――50m離れて後ろ向きでも個人を特定可能

中国には世界中でいちばたくさんのCCTVカメラが設置されている。 1億7000万台のビデオカメラのネットワークが存在するということだ。中国の警察はGoogle Glass的なスマートメガネを装着して人混みの中から容疑者を特定している。しかもこの恐るべき監視能力がさらにレベルアップされた。新しいテクノロジーは歩き方や体格から特徴を抽出して人物を特定できる。

APの報道によれば、この歩行特徴認識(gait recognition)テクノロジーはすでに北京と上海の警察で使用されており、カメラの映像が後ろ向きだったり顔が見えなかったりしても個人を特定できるという。

開発したのは中国のAIスタートアップ、Watrix(银河水滴科技)で、同社は最近のラウンドで1億4500万ドルの資金を調達し、システムのアップグレードを図っている。 ファウンダー、CEOの黃永禎(Huang Yongzhen)は APのインタビューに対し、このシステムは50メートルの距離から個人を特定できると答えた。既存の顔認識テクノロジーと組み合わせることにより、繁華な地区における警察の監視能力は大幅にアップするものとみられる。

捜査当局が犯罪者を発見するのに役立つことは言うまでもないが、残念ながらこのテクノロジーのインパクトはそれにとどまらない。中国ではこれまでもハイテク監視テクノロジーが民衆の弾圧のような邪悪な目的で利用されてきたことが記録されている。

ことに最近、中国政府はデータベースと顔認識テクノロジーを少数民族の統制のために利用しているとして非難されている。 新疆地域に住むムスリムのウィグル人1000万人は自宅や勤務先など特定の場所から出るとただちに当局によって監視されるとBloombergは報じている

中国政府は新疆で100万人のムスリムを「再教育施設」に収容しているとして強く批判されている。新疆の諸都市は地理的に北京よりバグダッドに近く、民族、宗教間の対立による不安定な情勢がしばしば伝えられてきた。中国政府が最新の個人認識テクノロジーをこの地区に投入してきたことにはこうした背景がある。歩行認識テクノロジーがが新疆にも導入されるかどうか、現時点では情報がない。しかし今はまだだとしても近い将来導入されるのではないかという推測はできる。

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滑川海彦@Facebook Google+

Xiaomiから30ドルのワイヤレンス・イヤフォン――けっこういいんじゃないか?

このイヤフォン、いいんじゃないか? そう考える理由がいくつかある。中国のXiaomi(小米)の消費者向け製品はスマートフォン以外でも概して信頼性が高いし、徹底的な低価格化はフィットネス・モニターのような分野を大きく変革してきた。

われわれの姉妹メディアのEngadgetがXiaomiが 30ドルでAirDotsを売り出していることを発見した。これはAppleのAirPodsやGoogleのPixel Budsのライバルを目指して開発されたワイヤレンス・イアフォンで価格がこうしたライバルよりはるかに安い。ワイヤレンス・イヤフォンの普及を妨げているのはなんといっても価格の高さだ。ここにきてXiaomiは、少なくとも価格については非常に安くできることを実証した。

AirDotsは今のところ中国市場向けのようで、199元、つまり29ドルからとなっており、内蔵バッテリーで5時間連続作動する。接続はBluetooth 5.0で充電能力があるケースが付属する。

私自身はまだ試していないが、この価格だけでも十分魅力的だ。音質はまた別の話になる。しかし29ドルといえばジャックで接続する多くのイヤフォンより安い。これなら十分ワイヤレンス・イヤフォンに移る理由になると思う。

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滑川海彦@Facebook Google+

TikTokのByteDanceが世界最大のスタートアップに――Uberを抜く会社評価額で資金調達完了

オンライン広告ネットワークやTikTokなどのサービスを運営する中国のByteDanceがUberを抜いて会社評価額で世界最大のスタートアップとなった。

ForbesBloombergは同社が750億ドルの会社評価額で30億ドルの資金調達を完了したと報じている。TechCrunchの取材に対し、事情に通じた情報源はこの報道が事実であると確認し、会社評価額はプレマネー、つまり資金調達を実施する前の評価額だと述べた。つまり今回のラウンドで得た30億ドルを加えるとByteDanceの評価額は780億ドルとなる。これは配車サービスの巨人、Uberの直近の会社評価額720億ドルを抜くものだ。ただUberはf評価額1200億ドルで来年上場するものとみられる。.

ByteDance にコメントを求めたが回答は得られていない。

TechCrunchはByteDanceがアメリカのベンチャーキャピタルKKR、General Atlanticに加えて日本のSoftBankと新たな資金調達ラウンドに関して協議していることを8月に報じている。 BloombergはこのラウンドでSoftBankが18億ドル程度を出資し、その一部でセカンダリーマーケットで既存の投資家の株式を買取ると報じた。この記事はラウンドは完了しておらず新たな投資家の参加によって資金調達総額がさらに跳ね上がる可能性を指摘していた。

ByteDanceは多様なデジタルメディアを運営しているが、中でも有名なプラットフォームは 今日头条(今日頭條、Toutiao)だろう。これはAIを活用したニュース・サービスで1億2000万のユーザーがおり、中国最大級のダウンロードを集めたアプリとなっている。またByteDanceが運営するYouTube的な短編ビデオ共有サイト、TikTokはライバルの動画サイト、Music.lyと統合された。ByteDanceはMusica.lyを昨年 10億ドルで買収していた。

TikTokが人気があるのは中国だけではない。TikTok-Music.lyの統合は世界的な動画共有プラットフォームとなることを目指す戦略の一環だ。ByteDanceは今日頭條方式のサービスを世界で展開している。ただし、中国内のサービスと国際的サービスの間に慎重に障壁が設けられており、
TikTok(月間5億ユーザー)とその中国版の抖音(Douyin、月間3億ユーザー)はまったく別のサービスとして運営されている。これは主として検閲の影響を考慮したものだ。

ByteDanceはBATと呼ばれるBaidu、Alibaba、Tencentなどの先発企業を押しのけて中国のインターネットでトップクラスの地位を築くという離れ業に成功した。しかしアメリカのテクノロジー企業もByteDanceの動向には注目している。「模倣は最高の賛辞」といいう言葉があるがGoogleは中国向けにo今日頭條に似たニュースアプリを開発中だ(検閲に対応する点が議論を呼んでいる)。一方、TechCrunchはFacebookはTikTokクローンを準備していると報じた。

ただしByteDanceにとってすべてが順風満帆ではない。中国政府はオンラインメディアに対しても厳しい検閲を行っており、メディアやアプリストアが一時停止される制裁を受けている。これにともない同社のメディア審査チームは6000人から1万人に急増した。しかしこうした逆風も一時的な傷みだろうし、政府から厳しい視線が注がれるのも同社の影響力の重要性を物語っていると考えるべきだろう。

〔日本版〕11月15日、16日に渋谷ヒカリエで開催されるTechCrunch Tokyo 2018TikTok日本法人の西田副社長が登壇する。

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滑川海彦@Facebook Google+

中国からトランプへお返し: iPhoneをやめてHuaweiにしたら

The South China Morning Postによると、中国外務省のスポークスウーマンHua Chunying(华春莹)が、トランプの安全でないiPhoneに対するスパイ行為に関する、昨日(米国時間10/24)のおそろしい記事を否定して、それを“フェイクニュース”と呼んだ。彼女は大統領のためにとくに言葉を選んで、Huaweiのハンドセットに換えるよう提案し、それがだめなら通信をやめたら、と言った。

その語調はときにはネット上の‘荒らし’のようにもなり、そのスポークスパーソンは、“この記事を見ると、オスカーの脚本賞を必死で狙ってる人たちが書いたように思える”、とも言った。

[政府支給のスマートフォンしか使ってない]

昨日(きのう)のThe New York Timesの記事は、“アメリカの諜報機関の職員によると、その機関は、中国とロシアが大統領の携帯電話の外国政府の内部の人間からの通話を盗聴し、また外国の政府職員間の通信を傍受していることを(そのアメリカの諜報機関が)知った”、と言っている。

Trumpは今朝Twitterで反撃し、記事を訂正しようとしたが、そんな時間はない、とも言い、それは“soooo wrong”(ものすごく間違ってる)だ、と付言した。さらに大統領は、その記事(私物のiPhone)と違って、政府支給のスマートフォンしか使っていない、と言っている。

Huaの声明はさらに一歩進んで、アメリカがHuaweiのハンドセットやそのほかの中国製のネットワーキング機器を、政府によるスパイ行為への懸念から禁じていることを、猛然と攻撃している。

画像クレジット: BRENDAN SMIALOWSKI/AFP

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Teslaは来年からModel 3の生産の一部を中国で行う

水曜日に、この2年で初めて利益の出た四半期を迎えたことを報告したTeslaは、その収益の流れを、北米以外の顧客にも新しいModel 3を届けることで拡大しようとしている。その計画の一部には、中国における製造計画の加速も含まれている。

Teslaの収益は、第3四半期で急上昇し、68億ドルに達した(利益は3億1200万ドルである)。これは、生産ボトルネックや直近の物流問題を抱えてはいたものの、みな新しいModel 3のおかげである。同社は、米国とカナダでの販売を通じて、黒字化のマイルストーンを達成することができた。この結果、2つの巨大な市場がテーブルに課題として残された。欧州と中国である。

水曜日にTeslaは、2018年末までに、欧州と中国でModel 3の受注を開始すると発表した。またModel 3の欧州への出荷を、来年の初めには開始すると語っている。

水曜日に株主に送ったレターの中で、Teslaは「欧州における中型プレミアムセダン市場の規模は、米国の2倍以上です」と述べている。「これが来年早々に、Model 3を欧州に持ち込めることに興奮している理由なのです」。

また同社は中国向けのタイムラインをさらに加速し、来年にはModel 3生産の一部を中国に持ち込むと述べている。

Teslaはその業績レポートの中で「Model 3の生産の一部を2019年中には中国に移し、現地調達と製造を通じて徐々にローカリゼーションのレベルを上げることを目指している」と述べている。「中国での生産は、中国国内の顧客のみに向けられたものとなります」。

Teslaは今月の初めに、中国内での急速な工場建設の計画を発表した。だが、さらに新しい内容が加わっているようだ。「Model 3の生産の一部」という言い回しは重要なフレーズだ。これは、製造業の世界では完全ノックダウン(CKD)として知られている用語を指している可能性がある。CKDは基本的にある製品(例えばModel 3)の組み立て前の部品キットである。これは、外国への出荷時に関税を回避するために使われる戦略である。

Teslaは上海に工場を建設する予定だが、建設はまだ始まっていない。

同社は10月に、上海の臨港ある約210エーカーの土地の権利を確保した。Teslaにとって米国外初の工場予定地である。

Teslaは10月初めに出したその生産並びに物流レポートの中で、海運会社を使って車両を輸送するコストと関税、地元で生産された電気自動車への補助金の欠如などが、中国で同社にとって不利に働くと述べている。テスラは、第3四半期の業績レポートの中で、これらのコスト制約を再確認している。

Teslaは7月に上海政府と、1年に50万台の電気自動車を生産できる工場を建設する契約を結んだ 。建設が始まったあと、Teslaが車両を生産できるまでには約2年かかる。その契約締結時にTeslaのスポークスマンは「工場が完全に機能を始め、中国内の顧客に年間約50万台の車両を生産できるようになるには、2〜3年かかるでしょう」と語っていた。

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(翻訳:sako)

中国が米国のバイオテクノロジーの未来に資金を供給している

【編集部注】著者のArman TabatabaiはTechCrunchのコンサルタント

中国のVCは、中国最大の健康問題を解決するために、米国のスタートアップに何十億ドルもの投資を行っている

シリコンバレーは健康ブームの只中にいて、それは「東洋」医学によって推進されている。

米国の医療投資に関しては、今年は過去最高の年となったが、北京と上海の投資家たちは、米国のライフサイエンス企業やバイオテクノロジー企業にとって徐々に最大の取引相手となっている。実際、Pitchbookによれば、今年中国のVCは、中国内で行うよりも多い、300を超える投資を米国のライフサイエンス企業やバイオテック企業に対して行っている。メリーランド州に本拠を置く、炎症や自己免疫疾患の治療法を探るViela Bio社の場合は、中国の3社が主導したシリーズAで、2億5000万ドルの調達が行われた。

中国の食欲旺盛な新規資金は、中国国内にも流れ込んでいる。中国の医療スタートアップにとってもビジネスは活況を呈しており、今年はこれまでにないベンチャー投資の年になりそうだ。100社以上の企業が40億ドル以上の投資を受けている。

中国の投資家たちが、その戦略をライフサイエンスならびにバイオテックへとシフトするにつれて、中国は未来の世界の主要な健康機関に対して、大きな影響を及ぼす医療投資のリーダーの地位を、確かに獲得しつつある。

中国のVCたちは健全なリターンを求める

私たちは直接触れるものや、楽しませてくれるものについて語ることが大好きだ。そしてまた、9桁(1億ドル)の小切手がしばしば中国を出入りする様子をみることができるために、私たちはTencentやAlibabaなどに支援された、インターネット大企業やゲームリーダー、そして最新のメディアプラットフォームに目を奪われがちだ。

しかし、もしお金の流れを追っているならば、中国のトップベンチャーファームたちが、その関心を国内の不十分な医療システムに向けて来ていることは明らかだ。

中国の戦略転換における明確なリーダーの1つがSequoia Capital Chinaだ。同社は、今年だけでも複数の数十億ドルレベルのIPOに関わった(その1その2その3)最も著名なベンチャーファームである。

歴史的にみると、かつてのSequoiaは医療分野にあまり関心を持ってこなかった医療分野は、同社の最も小さな投資カテゴリーの1つであり、2015年から2016年にかけてはわずかに3件の医療関連の取引に参加しただけである。投資金額全体に占める割合は4%に過ぎない。

しかし最近は、ライフサイエンスがSequoiaを魅了していると、同社の広報担当者は語っている。Sequoiaは、2017年には6つの医療関連取引に参加し、2018年は既に14件に参加している。同社は現在、中国で最も活発な医療投資家のとしての位置に立っていて、医療分野そのものは、2番めに大きな投資領域になった。最近では、ライフサイエンスやバイオテクノロジー企業が、投資活動のほぼ30%を占めるようになっている。

Pitchbook、Crunchbase、およびSEC Edgarから集計された、2015-18年の医療関連投資データ

現在の中国の医療の中で、変革を必要とする領域が不足することはない。そして中国のVCたちによって、幅広い戦略が採用されている。インフルエンザへのアプローチを行う投資家たちがいる一方、高血圧糖尿病、および他の慢性疾患のための革新的治療法に焦点を当てている投資家たちもいるという具合だ。

例えば、Chinese Journal of Cancerによれば、 2015年には世界の肺がん診断の36%が中国で下されたが、中国国内でのがんの生存率は世界平均よりも17%低い。Sequoiaはその視点を中国の高いがん罹患率と低い生存率に向けていて、過去2年の投資のおよそ70%が、がんの検出と治療に焦点を当てたものになっている。

この動きの一部は、上海に本社を置き、革新的な免疫療法がん治療法を開発しているJW Therapeutics社に対して行われた、9000万ドルのシリーズA投資などによっても促進されている。同社は、中国のVCが国際的な経験と世界で学んだことを用いて、どのように国内の医療スタートアップを育てようとしているのかを示す典型例である。

米国のJuno Therapeuticsと中国のWuXi AppTecによるジョイントベンチャーとして設立されたJWは、Junosのがん免疫療法薬のトップ開発者としての経験と、医薬品の研究開発と開発サイクルのすべての側面に力を注ぎ、世界をリードする契約研究機関の一つとしてのWuXiの知見が、結集したものだ。

特にJWは、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)技術を用いた細胞ベースの免疫療法の、次世代がん治療に焦点を当てている(おっと失礼…!)健康情報サイトWebMDの熱心な読者や、背景医学知識が高校1年の化学レベルで止まってしまっている私たちのために言い添えておくならば、CAR-Tは基本的に体自身の免疫システムを利用して、攻撃対象のがん細胞を探す。

過去に現れたバイオテクノロジースタートアップたちは、しばしば動物の体内で作製された遺伝子改変抗体を使用していた。その抗体は効果的に「警察官」として行動し、悪性細胞の活動を止めたり静かにさせるために、「悪い奴」特定して取り付く。CAR-Tはその代わりに、身体のネイティブな免疫細胞を改変し、悪い奴直接攻撃して殺すようにするのだ。

中国のVCたちは、革新的なライフサイエンスやバイオテクノロジーのスタートアップに幅広く投資している(写真提供:Eugeneonline、Getty Images)

中国の新しい医療リーダーたちの国際的および学際的な系統は、組織自体にだけでなく、そうしたシーンを運営している側にも適用される。

JWの舵取りの位置に座るのはJames Liである。このJWの共同創業者兼CEOは、これまでの人生の中で、世界最大のバイオ医薬品会社(AmgenやMerckなど)の、中国内での展開の責任者の地位に就いていたこともある。またLiはかつて、シリコンバレーの有名投資家のKleiner Perkinsと、パートナーを組んでいたこともあった。

JWは知見と専門知識を取り入れることによって得られる利益を体現している。そして同国の賢明な資本がますます海外へと流れる中で、医療の未来を牽引する企業を見定める活動と言うことができるだろう。

GVとFounders Fundが、シリコンバレーの競争力を保つことを狙う

中国の有力ベンチャーキャピタルによる多額の投資にもかかわらず、シリコンバレーは米国の医療分野での投資を倍増させている。(AFP PHOTO / POOL / JASON LEE)

医療における革新は国境を超えている。残念なことに、病気と死は普遍的なもので、ある国で行われた画期的な発見が、世界中の命を救うことが可能である。

中国のライフサイエンス産業ブームは、高い評価額を残し国境を越えた投資や、中国の輸入規制は改善されてきた。

こうして、中国のベンチャーファームたちは、徐々に海外のイノベーションを探すようになって来ている。革新的な技術を提供できるより成熟した米国企業や、アジアに持ち帰ることができるより進んたプロセスに対して投資することで、拡大の機会を狙っている。

4月には、また別の中国の有力VCであるQiming Venture Partnersが、米国の早期段階医療に焦点を当てた1億2000万ドルのファンドを設立した。Qimingは医療スペースへの参加を拡大しており、2017-18年の間には24社に投資している。

この分野に飛び込んできた新しいVCたちは、(中国からの投資と同時に、米国の医療分野への投資額を倍増させてきた)ベイエリアの有力な投資家たちを恐れさせてはいない。

米国で最も影響力のあるVCのパートナーディレクトリには、元医師や医療に通じたVCたちが徐々に増えている。そのため最高の医療ベンチャーを発見したり、米国内でのベンチャー資金の流れにより大きな影響を与えることができる。

そのリストの一番上に載るのが、GV(旧Google Ventures)のゼネラルパートナーであるKrishna Yeshwantである。彼こそが同社の医療業界への積極的な参入を率いている人物だ。

TechCrunch Disrupt NY 2017のKrishna Yeshwant(GV)

医師でもあるYeshwantの関心は、リアルタイムの患者ケアへの洞察から、がんや神経変性疾患のための抗体と治療技術などの、多くの医学領域に広がっている。

PitchbookとCrunchbaseのデータによれば、Krishnaは過去2年間における、GVの最も活発なパートナーであり、総額10億ドル以上の投資に参加している。

Yeshwantその他の努力によって、医療業界はGoogleのベンチャーキャピタル部門にとって最も重要な投資分野の1つになり、2015年には投資額の15%だったのに比べて、2017年には約30%を占めている。

医療投資に対するGVの接近は、新しい方向を切り拓いたが、ライフサイエンスもまた同社のDNAの一部なのだ。他の多くの有名なシリコンバレーValley投資家と同様に、GVの創設者であるBill Marisも、長い間医療スタートアップに情熱を傾けていた。2016年にGVを去った後、Marisはバイオテクノロジー、ヘルスケア、ライフサイエンスに特化した自身のファンドSection32を立ち上げた

同じように、ライフサイエンスと医療投資は、Founders Fundのような大手米国ファンドの重要事項として取り上げられてきた。Founders Fundは少なくとも2015年以降、その提供資金のうちの25%以上をこの分野に一貫して割り当てて来ている。

とはいえ、この潮流は変化する可能性がある。対米外国投資委員会(CFIUS)によって最近行われた監視の強化は、米国の医療領域に対する中国の資本流入に対して、厳しい影響を及ぼす可能性があるのだ。

その拡大された権限の下でCFIUSは、バイオテックの研究開発を含む、27の重要な産業リストに分類される技術に関係し、生産、設計、テストに対して海外の事業者が関わるあらゆる投資と取引に関して、レビューを行う(そして阻止する可能性もある)。

拡張されたルールの真の意味は、CFIUSがどれほど積極的に、どのくらいの頻度で、その力を行使するかによって異なってくる。しかし、長いレビュープロセスと規制によるブロックの恐れは、中国の投資家の負担を大幅に増大させ、中国の資金流入を効果的に差し止める可能性がある。

CFIUSの動向がどうであれ、米国の医療市場における中国の積極的なプレゼンスは、シリコンバレーの主流となることを押し留めてはいない。中国の医療革新への取り組みは、中国の医療システムの厳しい崩壊と政府の後押しを受けた投資環境の改善によって、ますます強くなっている。

VCたちは悲惨な医療システムをターゲットにしている

中国の医療分野における欠陥は、歴史的にみると厄介な結果へとつながっている。現在、政府は支援政策を通じた投資のテコ入れをしている。(写真 Alexander Tessmer / EyeEm、Getty Imagesより)

彼らは成功したスタートアップたちが、解決を必要とする本当の問題を特定していると語る。非効率による傷害、悪い結果、そして消費者の複合した欲求不満など、中国の医療産業は問題を山積させている

一部の富裕層以外の市民は、混雑し人手不足にあえぐ都市部の中心の病院へ、大変な思いをして長距離を通うことを強いられている。受付エリアは名ばかりで、あらゆる空き場所はあっという間に、心配し、具合が悪く、恐れでへたり込む多くの人たちで埋め尽くされる。待ち時間は長く、数日に及ぶこともある。

そして患者がやっと診察受けられる段になっても、多くの場合には、過労か経験の浅いスタッフの診察を受けることになり、後に続く果てしない患者の列を相手にするために出入りを急かされる。

かつては、患者への診断が下されても、治療の方法は限られそしてあまり効果がなかった。なぜならば輸入に関する法律と、価格の問題により、世界的に認可されている薬が手に入らなかったからだ。

想像できるように、診察と治療が不十分であると、結果的に問題が生じる。世界銀行からの最近の報告書によると、心臓病、脳卒中、糖尿病、そして慢性肺疾患は中国の死因の80%を占めている。

不正行為、誤魔化し、不誠実な問題の繰り返しが、人びとの積み重なる不満を増幅させている。

ワクチンの誤った取扱によって病気が広がった過去の事件にも関わらず、中国のワクチン危機は今年の始めにある限界点に達した。25万人もの子供たちが、効果がない虚偽の狂犬病予防接種を行われていたことが発覚した。そして検査官がそれを何ヶ月も前に発見しながら見て見ぬふりをしていた事実も発覚したのだ。

医療に対する大衆の信用を破壊することは、深刻で、潜在的に不安定な影響を生み出す。また、中国の保健医療インフラの、ほぼすべての面に非効率性が浸透しているため、そこには大きな変化の機会がある。

これらの問題に対応して、中国政府は、医療革新の追求に重点を置いた。そのためには、医療スタートアップたちの成功のチャンスを引き上げると共に、投資家たちのコストとリスクを削減する政策を展開した。

数十億ドルの公的投資がライフサイエンス分野に流れ込み、特許研究助成金、そしてジェネリック医薬品の承認プロセスが容易になり、中国におけるライフサイエンスやバイオテクノロジー企業の設立が、より簡単になった。

中国のベンチャーキャピタリストたちにとっては、財政的インセンティブと高い成長を遂げる地方の医療セクターに加えて、薬物輸入法の緩和が、海外のイノベーションを通じて、中国の医療システムを改善する機会を拓いた。

世界的なヘルスケアへの関心が高まることで流動性も改善した。さらに、香港証券取引所が最近、まだ収益を上げていないバイオテクノロジー企業の上場を許可する変更を発表した

中国の主要機関で実施された変更は、効果的に中国の健康分野投資家たちに、より幅広い機会、より速い企業成長、より速い流動性、そして確実性の向上を、より低いコストで達成させた。

しかしながら、中国の医療システムの構造的および規制上の変化は、より多くの成長を伴った、より多くの医療スタートアップにつながったが、必ずしも質を向上させたわけではなかった。

米国と西側の投資家たちは、北京の同業者たちのような国境を越えるアプローチをとってはいない。業界の人びとと話してみたところ、中国のシステムのいい加減さやその他の理由によって、多くの米国投資家たちは海外のライフサイエンス企業に投資することに、疲れてしまったという。

そしてシリコンバレーが同様に、米国の強力な大学システムから生み出されるスタートアップに焦点を当てることで、バブル的評価が懸念され始めている。

しかし、世界中で何十億ドルもの投資を行う中国は、その国内の医療システムにあいた大きな穴を塞ぎ、自身を国際医療イノベーションの次世代リーダとして確立することを決意しているのだ。

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(翻訳:sako)

Tesla、ギガファクトリー3の建設で中国と合意

Teslaは、約210エーカー(85万平方メートル)の土地を上海臨港地区に確保した。同社初の米国外工場の予定地だ。

Tesla幹部、および上海市経済情報委員会、上海臨港地区開発管理団体、上海臨港グループの首脳らが参加して、水曜日に中国で調印式典を行った。

「Teslaのミッションは世界の維持可能エネルギーへの移行を、全電動車だけでなく、スケーラブルなクリーンエネルギー生成や蓄電製品を通じて促進することだ」とTeslaの国際営業担当VP、Robin Reiが声明で言った。「上海で獲得したこの場所は、Tesla初の国外ギガファクトリーとして、高度で持続可能な開発による次世代製造拠点に向けての重要な礎になるだろう」

この土地移転はTeslaにとって重要な一歩である。最近同社は、コスト上昇によりいわゆるギガファクトリー3の建設を加速する必要に迫られていると語った。Teslaは10月始めの製造・配送レポートで、関税や外洋貨物船の輸送コスト、さらには現地生産の電気自動車に与えられる金銭的インセンティブがないなどの理由により、中国で同社が不利な立場にあることを予告した。

水曜日にTeslaは、プロジェクトは北米でのModel 3生産で学んだ教訓を生かし、「資本の効率化と急成長」を期待していることを改めて宣言した。

Teslaは7月、同社が年間50万台の電気自動車の生産能力を持つという工場を作る計画について上海市当局と合意に達した。工事が始まってからTesla車の製造が可能になるまで、約2年かかる。「工場がフル稼働して年間50万台の車を製造できるようになるにはさらに2~3年が必要」とTesla広報が当時話した。

この上海工場事業は、海外企業による完全所有施設の建設、運用を認めるという中国政府の転換を意味している。従来海外企業が中国に工場を作るためには、現地パートナーと50-50のジョイントベンチャーを作る必要があった。

中国の習近平国家主席は、海外自動車メーカーの共同事業規則を2022年までに廃止すると言った。Teslaはこの規則変更の恩恵を受ける最初の事例となる。

契約は、Teslaが臨港地区で完全所有の工場を建設、運用することを認めている。新工場では、研究開発、製造、および営業活動が行われる。

しかし、依然として中国政府は関与するだろう。協力契約の下、中国政府とTeslaは電気自動車技術と産業の発展を協力して推進することになっている。上海市はGigafactory 3を支援すると言っているが、それが意味するところの詳細は希薄だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Bloombergの中国スパイチップのスクープはどこまで信頼できるか――ハイテク・エスピオナージュの闇を探る

昨日(米国時間10/4)、Bloombergが報じたスクープはインターネットに鋭い亀裂をもたらした。一方の陣営はこの記事は正確であり、Bloombergの記者はかつてない規模の外国のハイテク・スパイがアメリカのハイテク産業に浸透し、途方もない損害をもたらしていることを暴露したというものだ。他の陣営は、そうではない、多くの人々がデタラメの騙されているのだという。

中国のスパイがアメリカのデータセンターで用いられているサプライチェーンに浸透し、Supermicroのマザーボードに鉛筆の芯の先端ほどの微小なチップを仕込んで情報を盗み出しているというのがBloombergの記事だ。SupermicroのボードはAppleからAmazonまでアメリカ中のデータセンターで用いられているという。

Apple、Amazon、Supermicro、それに中国政府はそろってこの報道を強く否定した。AppleとSupermicroはその後独自の否定声明を出している。これはめったにないことで、各社とも「なにも隠していない」と強調したいのだろう。声明は公開されており、一読することをお勧めする。

では国家機密の報道という闇の世界へようこそ。

私は過去5年間(最近はCBSで)主にサイバーセキュリティーに関する報道を担当してきた。CBSではサイバーセキュリティー関していくつかのスクープを発表している。これにはアメリカ政府が監視活動に役立てるため脆弱性を調査できるようプロダクトのソースコードを明かすようテクノロジー企業に秘密に圧力をかけていた件も含まれる。昨年私はNSAが5年間に5回もデータ漏えいを起こしていたことを突き止めた。発見した秘密情報は政府のアメリカ市民に対する情報収集活動は当初予想されたよりはるかに広汎であることを示していた。

私はBloombergのスクープに対して態度を決めかねている。

どんな分野であろうと事実を求めようとするジャーナリストが諜報コミュニティーから確実な情報を得るのは不可能に近い。スパイや外交官にとって機密情報を資格のない相手に明かすのは刑務所で長い時間を過ごすリスクを冒すことになる。事実、あるものは今も服役している

セキュリティー担当記者がスクープできるのはトップクラスの情報源を握っているか、途方もないツキに恵まれているかどちらかだ――たいていの場合は後者だが。

当然読者は「スパイからのリーク」には用心深くなる。しかし一方、Bloombergは1990年以来、報道機関として高い評価を得てきた。調査は綿密で、重大なスクープなら10以上のソースから情報を得るのが普通だ。情報源は政府の内外にあり、証拠によって十分に裏付けのある記事を発表してきた。

とはいえ、こうしたスクープのソースは匿名であるのが普通だ。そもそも知る資格がなかったり、公開が禁じられている秘密情報であるなどの理由で情報源が法律的責任を追求される可能性があるからだ。しかしこれはアカウンタビリティーを難しいものにする。「事情に詳しい筋によれば」といった表現を好む記者はいない。記事が弱くなるからだ。記事に情報提供者の氏名が明記するのは記事が事実であるとことに責任を持つためだ。

一方で記事の対象となった企業からの否定声明は(これ自体Bloombergが正確に全文報道している)記事の内容が事実でないという証明にはならない。こうした声明は法務部を通して発表され、法律や諸規則に従っていることを主張している。証拠に基づいた報道を「言った、言わない」の水掛け論に持ち込もうという意図の場合もある。

そこでBloombergの記事に対して判断を下すのは読者に委ねられる。ジャーナリストはいかほどでも事実を報じることができるが、それを信じるか否かは結局読者だ。

Bloombergの記事に対するAppleの異議は、「指摘の内容があいまいだ」という点にある。しかし公平に言って、これほど重大なニュースであれば、最初から手の内をすべて見せることはあり得ない。しかしソースが他のニュースメディアに情報を流すのを防ぎながらさらに詳しい情報を得ようとする。情報源がライバルのメディアにも情報を流すというのは、スクープの価値を下げて報道の過熱を防ごうという意図で政府機関もときおり使うテクニックだ。

しかし記事で名指しされた企業、Apple、Amazon等も事情を知らず、闇の中にいる可能性がある。 外国政府による企業に対するスパイ行為に対するカウンターインテリジェンス活動が進行している場合、企業内でその事実をかすかにでも知ることになるのは一握りの人間だけなのは間違いない。アメリカの監視活動および対敵情報を所管する法律はこのような活動について「知る資格がある」人間を厳しく制限している。これは通常、企業の最高法務責任者に限られる。CEOや社長などその上司にはこの情報は知らされない。これは会社の経営陣が株主や市場に対して虚をつくことになるのを防止するためだ。

この点については2013年にエドワード・スノーデンが秘密文書多数を公開したときのことを考えてみるのがよい。

Apple他(この際はAmazonは含まれていなかった)のテクノロジー企業が関連したNSAのデータ収集プロジェクト、PRISMの存在が暴露された後、名指しされた企業はいっせいに強い言葉で関与を否定した。トップは知らなかったのだろうか? 半分は, イェスだ。しかしこうした場合、企業はチェリーピッキング、つまり自分たちに都合のいい部分だけに議論を限定することで、嘘をつかずに記事に反論することができる。 たとえば「アメリカ政府はPRISMでテクノロジー企業のサーバーから直接情報を入手している」という部分について、対象企業は「事実ではない」と否定した。しかし間接的アクセスまで否定したわけではなかった。そう主張すれば嘘になっただろう。

Bloombergの記事の批判者はチップのデザイン、スペック、機能などの技術的詳細を始めもっと情報が必要だと要求しいるがこれは正しい。元NSAの専門家、でRendition Infosecのファウンダーに転じたJake Williamsは、私の取材に答えて、問題の記事は「信頼できると思う。しかしもし事実でないと判明しても、(サプライチェーンを通じてサーバーに侵入する)能力は存在している。ネットワークが侵入されていないかどうかチェックできるようにする体制が必要なことは変わりない」と述べた。

私は当初この問題をカバーするのをためらった。問題があまりに複雑であり、、記事が衝撃的な事実を主張しているのに私には実否を確認できる手段がなかったからだ。Bloombergのチームがこの1年近くかけて探り出した問題について数時間で判断を下すのは難しい。Bloombergが記事発表の常道を踏んでいたすれば、こうしたカバーストーリーの場合、公表以前に数しれないほどの編集、推敲、ファクトチェックを受けていたはずだ。記者はいわば壁に頭をぶつけ、もうこれ以上何も報告するものがない状態になる。それから出版される。

もちろんBloombergももっとうまくやることはできただろう。たとえばNew York Timesが最近トランプ大統領のビジネスの税金問題でその取材過程をオープンにしたのがよい例だ。 Bloombergは結論を導き出すにあたって取材プロセスの透明性をさらに高めるべきだろう。ジャーナリズムは独占であってはならない。誰もが検証可能なオープンなものでなければならない。取材過程のオープンさを欠けばそれだけ読者の信用を失うことになる。

そこがこのような問題の報道で困難な部分だ。Bloombergの記事は、公平に言って、きわめて綿密に取材されており情報源も質が高いと思われる。しかし私が(他の読者もそうだと思うが)記事の内容を信用するかどうかはBloombergと取材チームを信用するかどうかにかかってくる。

フェイクニュースが溢れている現在、ジャーナリズムの未来のためにも、Bloombergの記事が決定的に間違っていたといった結果に終わらないよう私は望んでいる。

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滑川海彦@Facebook Google+

Amazonが中国のサーバー事業を処分したのはそれらが侵犯されたかららしい

昨年Amazonが中国の物理的サーバー事業を売り払ったのは、その事業部門が中国政府によるスパイ活動の被害を受けたかららしい。〔関連記事。〕

それは、今日(米国時間10/4)のBloombergの記事からの推測だ。その記事によると、中国政府がSupermicro製のマザーボードに小さなチップを忍ばせて、複数のアメリカ企業に侵入した。それらのマザボードは、被害企業のサーバーに搭載され、リモートのスパイたちにデータへのアクセスを与えていた。その長い記事は、小さいが重要なパラグラフで、昨年11月のAmazonの中国における事業活動に触れている…このアメリカ企業は、物理サーバービジネスを地元のパートナーBeijing Sinnetに20億人民元(約3億ドル)で売却したのだ。.

その商行為は最初、AWSは中国を去る、という記事にされたが、その後Amazonは、中国におけるクラウドサービスは操業を続ける、と明言した。物理サーバー事業を売ったのは、外国企業の操業と設備機器の保有に関する中国の法律に従うため、とされた。

中国がそのサイバーセキュリティの法律で海外企業に制約を課し、データへの前例のないほどのアクセスを政府に与えていることは確かだが、しかしBloombergの記事は、Amazonの中国のサーバー事業が処分されたのは、それらの物理サーバーが侵害されたからだ、と主張している。

顕著な例外は、AWSの中国内のデータセンターだった。AWSの操業について詳しい情報筋によると、そのデータセンターはSupermicro製のサーバーを満載していた。Elementalの一件を覚えているAmazonのセキュリティチームは、北京のAWSの設備を調べて、そこでも改造マザーボードが使われていることを見つけた。それらの一部は、前のものよりも精巧な設計だった。その犯行チップが非常に薄くて、他の部品が取り付けられているガラス繊維の層の間に隠せるものもあった。実際にチップの写真を見たことのある人物が、そう言っている。その最新世代のチップは、尖った鉛筆の先よりも小さかったそうだ。

Amazon側の情報筋の一人は、“それは重傷の手足を切断するような”決断だった、と言っている。

Amazonも、記事に挙げられているその他のアメリカ企業も、Bloombergの記事の内容を否定している。

AmazonのBloombergに対する声明文は、こう言っている: “Amazonがサプライチェーンの侵害や悪質なチップ、ハードウェアの改変などについて、Elementalの買収時に知っていたことはありえない。また、中国のデータセンターでサーバーに悪質チップや改変があることを知っていたとか、AWSがFBIの捜査に協力したり、悪質チッに関するデータを提供した、とする説も嘘である”。

[中国がサーバーのマザーボードにスパイチップを載せてAppleなどアメリカ企業に侵入か]

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

中国がサーバーのマザーボードにスパイチップを載せてAppleなどアメリカ企業に侵入か

これは、これまでで最大の、国民国家による企業スパイ事件ではないだろうか。Bloombergの今日(米国時間10/4)のびっくり仰天記事によると、中国政府が、Appleを含む30以上のアメリカ企業のサーバーへのアクセスを取得した。

Bloombergによると、アメリカで使われているサーバーのマザーボードを提供しているSupermicroが被害に遭い、中国政府と関係のあるグループが同社のサプライチェーンに侵入して、鉛筆の先ぐらいの大きさの小さなチップをマザーボードに取り付けた。そしてそのマザーボードは、アメリカで使われ始めた。

その目的は、Bloombergの説では、企業のシステムへの入り口を取得してIP(知財)やそのほかの機密情報を盗むことだ。サーバーそのものの能力は限られているが、それが“秘密の入り口”になることにより、中国にいるスパイたちがリモートでデバイスの動作を変え、情報にアクセスする。

そのことを知ったアメリカ政府は、チップの背後にいるスパイたちをスパイしたが、Bloombergの記事によると、現在分かっているかぎりでは、この攻撃によって既知の消費者データはまったく盗まれていない。しかしそれでもこれは、中国政府によるこれまででもっとも衝撃的なスパイ活動のひとつだ、と言える。

記事によると、そのチップはAmazonが見つけてFBIに報告した。それは、同社が2015年にElemental Systemsを買収したときの事前調査でたまたま発見された。Elemental社はアメリカ政府との広範な契約があり、またAppleは、ピーク時には最大7000台のSupermicro製サーバーを動かしていた、とされる。Bloombergによると、Amazonは1か月以内にそれらのサーバーをすべて排除した。Appleは2016年にSupermicroとの関係を絶ったが、その原因がセキュリティ問題だ、とするThe Informationの主張を否定した。

一方AmazonはElemental Systemsの…一説では5億ドルの…買収を完了し、その直前には同社のソフトウェアをAWSのクラウドへ切り替えた。他方Supermicroは今年の8月に、四半期決算報告書の提出を怠ったため、Nasdaqで売買を保留扱いにされた。今後は、改善の期限切れによる上場停止の可能性もある。

[中国のチップスパイ記事は究極の弱点がサプライチェーンであることを示している(未訳)]

Amazon, Apple, Supermicro, そして中国外務省は、Bloombergの記事を、激しくて長い声明で否定している。彼らの反論のリストが、ここにある。同紙は、ニュースソースは現場知識のある17名以上の個人情報筋だ、と主張している。それらには、6名のアメリカの政府職員と、Appleの4名の“インサイダー”が含まれる。

Bloombergの元記事を、ぜひ読むべきだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

8億ユーザーを誇る中国最大のストリーミングサービスTencent Musicが、米国でIPOを申請

今年は、大部分を、あるいは実質的に、中国の大企業に所有されている多くのテック企業が株式公開を果たしている。例えばBaiduのiQiyiサービス、Xiaomiの支援を受けたHuamiやViomiの名前などが挙げられる。そして今度は沢山の予想が出される中で、Tencentの音楽部門であるTencent Music が公開の動きを見せ始めた。

TME(Tencent Music Entertainment )が、突然米国での公開に向けて最初の書類を提出したのだ(取引所は指定されていない)。最初の調達目標額は10億ドルだが、それは変更される可能性がある。今年初めのSpotifyのIPOのデータから考えれば、Tencent Musicは少なくとも120億ドルの評価額が付くはずだ。このため現在の目標学から、どれほど高い目標額が設定されることになるかが興味の対象となる。

Tencentの4つのストリーミングサービスであるQ Music、Kugou Music、Kuwo Music、そしてWeSingを擁し、Tencentの子会社でもあるTMEを、スタートアップと呼ぶことははばかられる。これらには、オーソドックスなストリーミングサービスやカラオケアプリ、そしてライブストリーミングサービスなどが含まれている。それらは一般に、中国トップ4の音楽アプリであると認識されており、月間ユーザーは8億人以上だと言われている。

Apple MusicやSpotifyあるいはPandoraとは異なり、TMEは収益性の高いビジネスであるが、その総売上額や収益化の方法はそうした「西洋の兄弟たち」とは全く異なったものである。Spotifyやその類似サービスたちは、サブスクリプションと広告付き無料サービスで成り立っているが、Tencent Musicはその売上の大部分を、ソーシャルアクティビティ、広告、そして楽曲販売から得ている。

Tencent Musicの2017年の売上は17億ドル(110億人民元)で、1億9900万ドル(13億人民元)の利益をもたらした。既に2018年上期には、13億ドル(86億人民元)の売上と、2億6300万ドル(17億人民元)の利益が計上されている。サブスクリプションの比率は売上のわずか30%であり、残りはライブストリーマーに送られるバーチャルギフトや、プレミアムメンバーシップから得られている。


この成功の大部分は、Tencentのサービスとの連携に由来するものだ。特に10億人のユーザーを抱えるWeChat、そしてQQなどの寄与が大きいが、Tencent Videoの存在も大きい。これはTencent Musicのサービスたちがユーザーにリーチするための手段を提供し、友人グラフやネットワークを通しての拡散を可能にする。それによってマーケティング費用は抑えられ、最終的な利益を上げるのに役立っている。売上に対するTencent Musicのコストは60%で、これはユーザーを呼び込むために、より多くの仕事を行わなければならないSpotifyの75〜80%とは対照的だ。

興味深いことに、Tencent Musicはその目見書の中で、サブスクリプションによる売上が、時間とともに増加することを期待していると指摘している。

「2018年第2四半期の課金率は3.6%であり、これはiResearchによって挙げられている、中国のオンラインゲームやビデオサービスや、世界的にみたオンラインミュージックサービスに対する課金率の数字に比べて遥かに低い。このことが意味することは、この先大いに成長する余地があるということである」と同社は書いている。

だが、中国内における違法コピーの氾濫を考えると、それを額面通りに受け取ることは難しい。業界関係者は、その状況は変化していると主張している。それは自分たちのための発言ではあるが、Tencent Musicの代替「ソーシャル」収益モデルが、この先のサブスクリプションベースのサービスと食い合いになるかどうかは明らかではない。

いずれにしても、同社は西側からも学ぶことができるかも知れない。Spotifyは昨年の株式交換を通してTencentの9.1%を保有していて、反対にTencentはSpotifyの7.5%を保有している。このことによって、Spotifyは東南アジアでTencentの所有するJoox(TMEの一部ではない)と競合はしているものの、双方からのシナジー効果が期待される。

現段階での重要なポイントは、Tencent Musicが中国のトップストリーミング企業であり、それが中国の主要なメッセージングプラットフォームであるWeChatに依存しているということだ。 それは幸先が良い事実だが、目論見書の中で何度も繰り返されているように、音楽の収益化は中国の中ではまだ新しい概念であるため、参考にできる事例はほとんど存在していない。

それでもこれは、中国のテック企業にしては珍しく大量に現金を失っていないIPOの例である(大量の累積赤字を抱えたままIPOを行ったNioの例を考えて欲しい)。Tencentとのコネクションを考えると、人気が出る可能性は高い。

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(翻訳:sako)

写真クレジット:Qilai Shen/Bloomberg

流動性が中国のスタートアップの利点だ

【編集部注】著者のArman TabatabaiはTechCrunchのリサーチコンサルタント

今年になって中国のハイテク企業のIPOラッシュが見出しを賑わしているが、何より興味深いのは、彼らがそこに辿り着く速さだ。

従来は「公開する」という行為は、沢山の眠らない夜たちと会社の立ち上げの犠牲となった誕生日祝いたちの喜ばしい集大成だった。長い登山の頂点に、創業者とベンチャーキャピタルたちはようやく労働の成果を見ることになるのだ。

しかし、米国の企業たちに比べると中国企業たちは、遥かに速くその頂点に辿り着いているように見える。初期のベンチャー資金投資からわずか2、3年で公開に向かうのだ。しかもしばしば営業実績がほとんどないままに。

今年最も注目されている中国のテックIPOのうちの20件を分析してみると、ベンチャー資金投資からIPOまでの平均期間はわずか3〜5年であった。例えば電子商取引プラットフォームのPinduoduoの場合、そのシリーズAから3年以内に16億ドルを調達している。あるいは、最近のIPOであるEVメーカーNIOの場合、シリーズAの後わずか3年半で10億ドルを調達し、その最初の車を6月に出荷し始めたばかりだ。

NASDAQ、Pitchbook、そしてCrunchbaseから編集された2018年の中国IPOデータ

これは、2018年に公開されたDropbox、Eventbrite、DocuSign(いずれも最初の投資から10年以上かかってIPOが行われた)といった、ベンチャーキャピタル支援を受けた米国の企業たちが要した、10年単位のタイムラインの半分以下の期間である。

市場の成熟度、政府の関与、既存の技術大企業からの支援の違いの全てが、間違いなくこうしたことを引き起こす要因となっているが、それでも中国企業の流動性(liquidity:現金化のしやすさ)へのスピードは驚異的である。

より速い流動性の達成は、リターン、資金調達、再投資のサイクルを加速する

流動性へのスピードは、スタートアップエコシステムの健全性にとって重要な指標である。より早い流動性の獲得によって、より早い資金調達、より早い再投資、より速いスタートアップ構築、そして速やかに公の流動性が再び生み出されるという、好循環が作り出される。加速されたサイクルは、現金化の約束その他の理由により、より早期のリターンを欲しているパートナーを抱えたファンドたちに特にアピールする。

ベンチャーリターンは資本と時間の関数であることに注意することが重要だ。それ故に、より速いエグジットが同じ投資額に対してより多くのリターンをもたらす。たとえば、100万ドルを投資し、10年後に500万ドルでエグジットをした場合の内部収益率(IRR:VCのパフォーマンスを評価するためによく使われる指標)は20%となる。だが、もし同じエグジットを5年で達成できた場合にはIRRは50%となる。

流動性は、グローバルベンチャーキャピタルの流れに対する中国の影響力が強まってきたために、重要な考慮事項となった。中国のハイテクエコシステムでは、より多くの寵児たちが成熟し、恒常的に多くの素晴らしいエグジットが続いている。中国での投資はVCたちにとってより真剣に考えるべきものになるだろう。たとえそれが米国内で会社を生み出すのに比べて、ただ必要な時間、資源、苦労するエネルギーを最小限に抑えるだけのものであったとしても。

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(翻訳:sako)

中国のDidi Chuxingが10社対象のタクシー呼び出しサービスを日本で展開

中国のDidi Chuxingは自分の国で火消しに追われているが、海外では新しい市場を開拓中で、今度日本ではタクシーの予約サービスを始めることになった。

すでに人口900万の都市大阪と関西国際空港などの周辺地区でサービスを開始しており、そのDidi Japanは乗客を地元のタクシー会社10社のドライバーとリンクする。Didiによるとそれは、AIを利用する配車と車両管理システムにより効率を上げている。

時価総額560億ドルのDidiは、SoftBankとのパートナーシップにより日本に進出した。SoftBankはもちろん、他の投資家たちと共に同社に投資もしている。Didiによると、今後は京都、福岡、東京などの大都市にサービスを拡張する計画だ。

同社のサービスはライセンスを持つタクシーに限定され、私有の車のライドシェアは日本では禁じられている。しかし日本では、従来型のタクシーがビッグビジネスである。売上(取引総額)は130億ドルで、世界第三位のタクシー市場だ。タクシー免許車両はおよそ24万台ある。

Uberも日本で似たようなタクシーサービスを試みているが、この分野はもっと大きな選手がいる。

JapanTaxiは、川鍋一朗が経営するライドシェアスタートアップで、彼は日本最大のタクシー会社日本交通のトップであり、タクシー企業の全国団体全タク連の会長でもある。JapanTaxi株式会社は、最近の6900万ドルの投資ラウンドでトヨタがリード投資家になるなど、ビッグネームの支援者がいる。

さらにまた、人気のメッセージングアプリLineがライドシェアを初めており、そしてアメリカ市場でUberのライバルであるLyftが、日本進出を検討している

Didiは、旅行者と地元民の両方に訴求することによって競合に抜きん出ることをねらっている。日本を訪れる観光客の関心を引くために、外国(中国、メキシコ、オーストラリア、香港、台湾など)のDidiアプリのユーザーが日本の通常のDidiアプリを使える“ローミングパスポート”という機能を作り出した。

SoftBankとDidiは2月に合弁事業を発表したから、日本進出はそのときから匂っていた。そしてこれは、Didiが今年行なう5つ目の拡張だ。同社は昨年末に40億ドルの資金を調達し、その資金をAIと同社のコアテクノロジー、および国際市場に投入した。

Didiのグローバル展開は、ブレーキを踏むことなく着実に行われている。メキシコオーストラリアには支社の形で進出し、またブラジルではユーザーのライバル99を10億ドルで買収、そして台湾はフランチャイズ方式で進出した。そのほか、投資や株式保有の形でのグローバル化もある。それらは、アメリカではUber、インドではOla、東南アジアではGrab、中東ではCareem、そしてヨーロッパとアフリカではTaxifyなどなどだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Googleを辞めた研究員がProject Dragonflyの人権違反懸念で上院に書簡を送った

上院の通商科学運輸委員会に宛てた書簡で、元Googleの研究員Jack Poulsonが、8月の終わりに同社を辞めた理由を詳しく述べている。今週初めに送られたその小文は、Project Dragonfly(蜻蛉プロジェクト)に対する、増大する懸念を詳述している。それは、中国市場に有意に参入しようとするGoogleの試みだ。

書簡は上院が、データに関する懸念に関してGoogleの新任プライバシー最高責任者(chief privacy officer) Keith Enrightを喚問しようとしていたときに届いた。Dragonflyも、委員会の議題に上(のぼ)る予定だったと思われる。そのプロジェクトは“喫緊の道徳的倫理的問題を喚起する”、と書かれた先月の別の書簡には、1400名近くのGoogle社員が署名していた。

Poulsonは自分の書簡に、“注目すべきは、Project Dragonflyが、同社のAI Principles(AI原則)がリリースされた同時期に進められていたことだ”、と書いている。Poulsonによると、“人権団体や調査報道記者、Googleの社員、そして多くの国民の理解によれば、Project DragonflyはAI Principlesの、‘その目的が広く受け入れられている人権の原則に背反している、技術の設計や展開には手を染めない’とする原則に、真っ向から違反している”、という。

Poulsonは、社内で特に問題になった4点を挙げている。そのリストには、検索のクエリに(質問者の)電話番号を伴わせることや、中国政府と共同開発した“人権”、“学生の抗議”、“ノーベル賞”などの検索ワードのブラックリスト、などがある。Poulsonは、大気の質に関するデータの政府によるコントロール、そして“内部的なプライバシーレビュープロセスの壊滅的不履行”、なども挙げている。

最近の新聞報道によれば、GoogleのCEO Sundar Pichaiは、Googleの中国進出計画や、検索の偏りをめぐって、共和党議員への説明を求められている。

画像クレジット: TechCrunch

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

DJI Mavic Pro、ビデオレビュー

DJIは先週ブルックリンで開催されたプレスイベントでハイエンド・ドローンの最新モデル、Mavic 2を発表した。今回のアップデートではカメラ周りに重点が置かれている。

Pro(1449ドル)はハッセルブラッドのカメラ(1インチ撮像素子)を搭載しており映像作家の利用に耐える。Zoom(1249ドル)はその名のとおりコンシューマー向けドローンとしては初めてのズームレンズ搭載モデルだ。

現行Mavic同様、折りたたみ式のコンパクトなデザインで、カメラは3軸安定化ジンバルに搭載されている。カメラを交換できるモジュラー式ジンバルが搭載されるのではないかという噂があったが、今回は見送られた。ドローンの最高追尾速度は72km/hだという。障害を感知して空中で停止する機能がある。ただテストではドローンが視界から離れたときにクラッシュを経験した。

〔日本版〕DJIの日本向けプレスリリースによればProが189,000円(税込)、Zoomが162,000円(税込)だという。TechCrunchでのフルレビューはこちら

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滑川海彦@Facebook Google+

TouchPalキーボードで大ブレークした中国のCootekがニューヨーク証券取引所で$100MのIPO

TouchPalキーボードアプリで有名な中国のモバイルインターネット企業Cootekが、アメリカで上場する。先週SECに提出されたF-1フォームによると、調達目標額は1億ドルだ。

上海で2008年にTouchPalをローンチした同社は2012年3月にCootekという名前で法人化し、SECへの提出書類によると現在の一日のアクティブユーザーは1億3200万、6月現在でその前年同期比増加率は75%、としている。また広告収入は同じ6月までの6か月で453%増加している。

AIを利用しているTouchPalは指をすべらせるグライドタイピングと予想テキスト機能があり、Cootekの一番人気のアプリだが、ほかにも15のアプリがあり、それらはたとえばフィットネスアプリのHiFitとManFITや、バーチャルアシスタントのTaliaなどだ。同社は独自のAI技術とビッグデータ技術により、ユーザーとインターネットから集めた言語データを分析する。そしてそこから得られるインサイトを利用して、ライフスタイルやヘルスケア、エンターテインメントなどのアプリを開発している。15のアプリを合計すると、月間平均ユーザーは2220万、一日では730万となる(6月現在)。

TouchPalそのものの平均ユーザーは、2018年6月の全月で1億2540万だった。一人のアクティブユーザーが一日に72回、このアプリを立ち上げている。現在、110の言語をサポートしている。

Cootekの主な売上源はモバイルの広告だ。同社によると、売上は2016年の1100万ドルから2017年には3730万ドル、その対前年増加率は238.5%だった。利益は6月までの6か月で350万ドル、1年前には1620万ドルの損失だった。

Cootekはニューヨーク証券取引所でチッカーシンボルCTKで上場する計画だ。IPOで得られた資金はユーザーベースの拡大と、AIおよび自然言語処理への投資、広告のパフォーマンスの改善に充てられる。上場の引き受け証券企業はCredit Suisse, BofA Merrill Lync, そしてCitiだ。

画像クレジット: Cootek

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

巨大AI企業SenseTimeがビデオ技術のMoviebookへ$199Mの投資をリード、その戦略的意図は…

SenseTimeは、45億ドルあまりの評価額で6億2000万ドルを調達し、評価額が世界最高のAI企業として知られているようだが、同社はしかし投資家でもある。この中国企業は今週、オンラインのビデオサービスをサポートする技術を開発している北京のMoviebookへのシリーズD、13億6000万人民元(1億9900万ドル)のラウンドをリードした。

Moviebookはこの前2017年に、シリーズCで5億人民元(7500万ドル)を調達した。今回のシリーズDは、SB China Venture Capital(SBCVC)が、Qianhai Wutong, PAC Partners, Oriental Pearl, およびLang Sheng Investmentらと共に参加した。〔SB==Softbank〕

SenseTimeによると、同社は投資と共にMoviebookとのパートナーシップも契約し、二社がさまざまなAI技術で協力していく。たとえば、エンターテインメント産業におけるAIの利用増大をねらった拡張現実技術などだ。

SenseTime Group Ltd.のオブジェクト検出/追跡技術が、2018年4月4日に東京で行われたArtificial Intelligence Exhibition & Conference(人工知能エキシビション&カンファレンス)でデモされた。このAIエキスポは4月6日まで行われた。写真撮影: Kiyoshi Ota/Bloomberg

声明の中でSenseTimeの協同ファウンダーXu Bingは、両社は、放送やテレビとインターネットのストリーミングなどからの大量のビデオデータを利用して、未来の多様な商機を開拓していく、と述べている。彼はまた、AIなどの新しい技術をエンターテインメント産業に導入していくことの持つポテンシャルを、強調している。

このような戦略的投資をSenseTimeが行なうのはこれが初めてではないが、今回がいちばん重要だろう。同社はこれまで、51VR, Helian Health, そしてリテールの巨人SuningからのスピンアウトSuning Sportsなどに投資している。

SenseTime自身は投資家たちから16億ドルあまりを調達しており、その投資家はAlibaba, Tiger Global, Qualcomm, IDG Capital, Temasek, Silver Lake Partnersなど、きわめて多様だ。

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郵送でもフィッシングは可能――中国のハッカー、マルウェア入りCDで政府機関を攻撃

単純だが効果的なソーシャル・エンジニアリングの手法だ。中国のハッカーは政府機関に対してマルウェアを入れたCDを郵送するという攻撃を行っていいるという。DHS(国土安全保障省)が組織したMS-ISAC(Multi-State Information Sharing and Analysis Center)はこれに関する情報を公開して警戒を呼びかけている。

非常に単純なトリックで、中国の消印が押された封筒でCDが同梱された無意味な書簡が政府機関に届けられる。このCDのWordファイルにはスクリプト・ベースのマルウェアが仕込まれている。誰かがこのファイルにアクセスするとマルウェアが起動し、おそらくはシステムが乗っ取られるのだろう。セキュリティー専門家、Brian Krebsは次のように書いている

MS-ISACは予備的調査の結果として、CDには普通話中国語のMicrosoft Word (.doc)ファイルが複数含まれており、一部のファイルにはVisual Basicスクリプトで書かれたマルウェアが付属していると発表した。MS-ISACによれば、アメリカ政府や自治体の公文書館、史学協会、文化教育機関などにそれぞれの宛名を付したこうした郵便物が届いているという。これらの機関で誰かが実際にCDを公的なコンピューター・システムに接続したかどうかは不明だ。

なんであれ頼まないのに勝手に送り付けられてきたストレージデバイスをコンピューターに挿入してはならない。とはいえ、このマルウェア攻撃は多少の技術的知識とCD-ROMを製作、郵送する金さえあれば簡単に実行できることもはっきりしている。もっとも、いまだにCDドライブのあるコンピューターを使っている犠牲者を選ばねばならないのは欠点だ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

中国製ロボット掃除機に脆弱性――ハッカーに家中を覗かれる可能性あり

スマートホーム製品というのはなるほどそこそこ便利だが、家に呼び入れたデバイスのWiFiを誰かが悪用しようと考える可能性があることは知っておく必要がある。

しかし多くのユーザーはロボット掃除機もこのカテゴリーに入るとは考えなかっただろう。

エンタープライズ・セキュリティーを提供する企業、Positive Technologiesの研究者2人はDongguan Diqee 360シリーズのロボット掃除機に存在するセキュリティー上の脆弱性に関して詳しい情報を公開した。このロボット掃除機は広東省東莞市のスマートホーム・デバイスのメーカー、Diqee
Intelligence(缔奇智能)の製品で、 WiFiと360度カメラを備えている。これにより家の中を動き回って監視するダイナミック・モニタリングが可能だというのが売りだ。しかしこの機能に悪用の危険性があるといいう。

CVE-2018-10987として知られるリモートでコードが実行される脆弱性により、デバイスのMACアドレスを知っているハッカーはシステム管理者の権限を乗っ取ることができる。今回のレポートによれば、脆弱性はREQUEST_SET_WIFIPASSWD関数内に存在する。この関数を使用するためには認証が必要だが、デフォルトのユーザー名/パスワードはadmin/888888という弱いものだった。

脆弱性が確認されたのはDongguan Diqee 360ロボット掃除機だが、研究者は同じビデオ・モジュールを使っている他のデバイス、屋外監視カメラやスマートドアホン、デジタルビデオレコーダーなどにもこの脆弱性があるのではないかと懸念している。Diqeeではロボット掃除機を他のブランドでも販売しており、研究者はこうしたOEM製品にも同様の脆弱性があるだろうと考えている。

Positive Technologiesはロボット掃除機には別のリモートコード脆弱性、CVE-2018-10988も存在することを発見したが、これを悪用するためには掃除機のSDカードスロットに物理的にアクセスする必要がある。

ロボット掃除機には「プライバシーカバー」が付属する。Diqeeによればこれは物理的にカメラを覆って情報のリークを防ぐものだ。Positive Technologiesはメーカーに脆弱性について通報したが、今のところまだ修正パッチは発行されていない。TechCrunchではDiqeeに取材を試みているが、この記事を執筆している時点では回答がない。

Positive Technologiesのサイバーセキュリティー責任者、Leigh-Anne Gallowayは「このロボット掃除機を含め、IoTデバイスはすべて乗っ取られてボットネットに組み込まれ、DDoS攻撃の足場に利用される可能性がある。しかしまだそれなら所有者に直接の被害は及ばない。ところがナイトビジョン・ウェブカメラ、スマートフォンによるナビゲーション、WiFiをハッカーが悪用すれば所有者を密かに監視することが可能になる。最大の監視能力を持った、いわば車輪付き盗聴器だ」と述べた。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

中国で加速するオリジナル番組制作――Baidu、Alibaba、Tencentが続々参入

【編集部注】筆者のHugh Harsonoは元金融アナリストで、現在はアメリカ陸軍に所属している。

近年オリジナルコンテンツ市場が賑わいを見せており、その主役は制作スタジオをはじめとする従来の主要コンテンツプロバイダーから、インターネット時代のスタートアップへと移行しつつある。彼らはオリジナルコンテンツを制作することで、事業ポートフォリオの拡大や限定コンテンツの配信を通じた有料会員数の増加を狙っているようだ。

アメリカでは、同市場の覇権を握るAmazonやNetflix、Huluが『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』『高い城の男』『侍女の物語』など評論家も絶賛するシリーズを投入しており、他の大手テック企業も彼らに必死で追いつこうとしている。たとえばAppleはスティーブン・スピルバーグ監督と契約を結び、『世にも不思議なアメージング・ストーリー』のリニューアル版の制作を予定しているほか、Facebookはオリジナルコンテンツの制作に最大10億ドルを投入Googleは将来的にTVシリーズの1エピソードあたりの制作費を最大300万ドルまで引き上げると発表しており、Disneyも独自のストリーミングサービス向けにオリジナルコンテンツを制作しようとしている。

同様に中国のオリジナルコンテンツ市場も、ネット大手のBaidu、Alibaba、Tencentが支配権を握っている。欧米諸国に住む人は、これらの企業名や彼らが制作しているテレビシリーズにあまり馴染みがないかもしれないが、徐々に中国産のコンテンツも世界に向けて配信されはじめていることを考えると、この状況は近いうちに変わってくるだろう。

中国とアジア諸国の違い

世界はもとよりアジアの他の国々と比べても、中国には数々のユニークな点がある。たとえばモバイルデバイス上でのメディア消費量の増加や、テレビの視聴ボリュームの増大、爆発的な成長を遂げつつある映画・テレビ業界の存在などがその一例だ。

eMarketerによれば、近いうちに中国の成人は1日あたり約3時間をモバイルデバイス上で過ごすようになるとされている。これは1日あたりのメディア消費時間の41.6%にあたり、さらに彼らはもう40%にあたる時間をテレビの視聴に費やしているのだ。このモバイル中心の生活スタイルが今後数年のうちに視聴時間が急増するであろうとされているデジタル動画と組み合わさることで、人口と同じように動画の消費量も増えていくだろう。

さらに中国のテレビ業界もここ数年で前例がないほどの成長を遂げた。実際のところ、国内の映画業界とテレビ業界を合わせると350億ドル以上の規模に達すると言われるなか、テレビ関連の売上がその88%を占めているのだ。中国ではIP放送の利用者も増えており、2017年には利用者数が1億人を突破。オリジナルコンテンツ市場の盛り上がりをさらに後押ししている。ほかにも、昨年12月には国内のスタジオが集結しChinese TV Drama Export Allianceという団体が立ち上げられ、グローバル市場でのプレゼンス向上やNetflixなどのストリーミング企業に対する中国語コンテンツの売り込みに今後力を入れていくようだ。

中国オリジナルコンテンツ界の巨人

ネット系コングロマリットのBaiduは中国のオリジナルコンテンツ市場を支える一社。特に同社の傘下でストリーミングサービスを運営するiQiyiはひときわ存在感を放っている。国内のストリーミングサービスとしては最大級のiQiyiは、アメリカでのIPOを通して22.5億ドル以上を調達しており、その月間ユーザー数は4億2100万人、デイリーユーザー数は1億2600万人を超える。そして規模やリーチを背景に、同社のオリジナルコンテンツは国内で大きな人気を呼んでいる。

同社が制作したリアリティ番組『Rap of China』『Street Dance of China』『Hot Blood Dance Crew』は、中国政府によるヒップホップカルチャーやタトゥーに関するメディア規制をものともせず、何百万人もの視聴者を熱狂させた。なかでも『Rap of China』は、最近アメリカのヒップホップトリオMigosとパートナーシップを締結しており、今後欧米の人々の目に触れる機会もでてくるだろう。

リアリティ番組以外のオリジナルコンテンツも負けてはいない。推理ドラマの『Burning Ice』や『Tientsin Mystic』はセカンドシーズンの制作が決まったと同時に、今年Netflixを通じてアメリカでも放送されることになった。ほかにも『The Lost Tomb』『Evil Minds』『Unforgiven』などの人気シリーズはいずれも何百万人以上もの視聴者を抱えている(注:『The Lost Tomb』と『Evil Minds』は政府の検閲によりiQiyiのウェブサイトから削除された)。

特に中国では、オリジナルコンテンツ市場の成長に伴い、仮想現実(VR)や人工知能(AI)など関連分野にも大きな影響が出てくるだろう。

Baiduと並んでこの市場で活躍するのが、ストリーミングサービスYoukuを展開するAlibabaだ。Youkuはタブレットやルータ、テレビボックスなどYoukuブランドのハードウェアを含む強固な流通ネットワークを通して、5億人以上のユニークユーザーにコンテンツを届けている。Youkuのサービスはすでに消費者の生活の一部となっていることから、彼らのオリジナルコンテンツも国中の視聴者にリーチできるのだ。

人気シリーズ『Day and Night』に関連し、Youkuは2017年終わりにNetflixと契約を結び、同番組は中国語のテレビシリーズとしては初めて世界中に配信されることとなった。ほかにも有名なコンテンツとしては、歴史ドラマの『The Advisors Alliance』『Oh My General』、人気コミックが原作のファンタジードラマ『Rakshasa Street』などがある。Youkuは短いビデオクリップとオリジナルコンテンツのどちらでも人気作品を生み出していることから、中国のオリジナルテレビコンテンツの制作においてはマーケットリーダー的な存在だと言える。

そして最後がネット界の巨人Tencentだ。WeChatの成功で知られる同社だが、Tencent Videoの平均デイリーアクティブユーザー数は1億3700万人以上と言われており、Tencentのオリジナルコンテンツも市場での重要度が増してきている。

Tencent Videoの人気シリーズとしては、1日で2億回もの再生数を叩き出し、これまでに何十億回も再生されたアクションアドベンチャードラマ『Candle in the Tomb』や、同名の人気小説がベースの歴史ロマンス『Rule the World』がある上、同社は『The Tomorrow Children』のようなバラエティ番組の制作も手がけている。さらに直近では、小説『The Tibet Code』や『Mystery of the Antiques』、日本ではおなじみのマンガ『テニスの王子様』を原作としたテレビシリーズの制作が予定されている。Tencentは今後もオリジナルコンテンツへの投資を拡大していこうとしており、向こう数年で同社のポートフォリオはさらに拡大していくだろう。

中国にはこれまでに名前が挙がったiQiyi、Youku、Tencent Video以外のプレイヤーももちろん存在する。たとえば人気コンテンツプロバイダーのSohu TVもオリジナルコンテンツ市場に参入し、人気ドラマ『Indelible Designation』や推理シリーズの『Medical Examiner Dr. Qin』の制作に携わっているほか、『Saturday Night Live』風の番組の制作も予定されている。

人気動画プラットフォームのMango TVも、コメディ番組の『Fashion Rivers』やドラマ『Gold Matchmaker』、インタラクティブな『Big Brother』風の番組『Perfect Holiday』などさまざまな番組を制作している。SohuやMango、そして彼らが提供するコンテンツからも、中国のデジタル化を推進する上で、オリジナルテレビ番組がどのくらい大きな役割を担っているかがわかる。

一方、その他のアジア諸国では……

規模では差がありつつも、オリジナルコンテンツ市場が盛り上がっているのは中国だけではない。アジアの他の国々もインターネットを普及させるにあたり、モバイルファーストなアプローチをとってきたため、モバイルデバイス上でテレビを視聴する人の数は増え続けている。

タイではLINEが運営するLINE TVがモバイルテレビ市場を席巻しており、自社のストリーミングプラットフォーム向けにオリジナルコンテンツの制作も計画している。さらにLINE TVはすでに現地のテレビ番組制作会社とパートナーシップを結んでおり、もともとの出発点であるYouTubeのようなサービスから、Netflix、Huluのようなサービスへと変化つつある。

インドネシアでは、ライドシェアのGo-Jekがオリジナルコンテンツ市場への参入を画策している。先日、同社は制作会社Go-Studioの立ち上げを発表。Go-StudioはサブスクリプションサービスGo-Play向けのコンテンツを制作していくとのこと。さらにGo-JekはVICE Mediaともパートナーシップを締結し、2019年を目標にオリジナル映画『When We Dance』(監督:Joko Anwar)の制作を予定している。

オリジナルコンテンツ市場がスタートアップに与える影響

特に中国では、オリジナルコンテンツ市場の成長に伴い、仮想現実(VR)や人工知能(AI)など関連分野にも大きな影響が出てくるだろう。Baidu、Alibaba、TencentはいずれもVRやAI分野へ積極的に投資しており、今後ハードとソフトが上手く絡み合ったテレビ番組が一般家庭でも楽しめるようになってもおかしくない。たとえば、VRヘッドセットを使ってテレビ番組内のキャラクターの視点で物語を楽しめるようになったり、ユーザーの視聴傾向をもとにAIがオススメのハロウィーンのコスチュームを提案してくれたりといったこともありえるだろう。

このような未来を実現するにあたり、オリジナルコンテンツ市場の成長はその第一歩と言え、国内の巨大企業のリーチや影響力、そして成長を続けるテレビ業界は今後さらに重要な役割を担うことになるだろう。

まとめ

オリジナルのテレビ番組制作には計り知れないほどの可能性がある。というのも、オリジナルコンテンツ市場自体の成長もさることながら、先述の通りアジアではモバイルデバイス上でテレビ番組を楽しむ人の数は急増しつつあるのだ。その結果、中国のトップ企業も単に同市場に目を向けるだけでなく、自らオリジナルコンテンツの制作に乗り出し、視聴者獲得のために高品質なシリーズをリリースするまでになった。

オンライン限定シリーズや視聴者の数はかなりのスピードで増加し、今では年に何百という数の番組が公開され、何十億回も再生されている。中国のコンテンツが海外でも同じように評価されるかどうかはまだわからないが、今のところ中国のオリジナルコンテンツ市場が減速する様子はなく、中国企業にとってはグローバル市場への飛躍もありえる有力な収益源として今後も注目されることだろう。

Image Credits: Kevin Thrash / Getty Images

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(翻訳:Atsushi Yukutake