フィリピンの決済ゲートウェイPayMongoが約35.6億円のシリーズB調達、東南アジア地域での拡大狙う

PayMongoの創業者たち。CTOのJaime Hing III(ハイメ・ヒンIII)氏、CEOのFrancis Plaza(フランシス・プラザ)氏、CCOのLuis Sia(ルイス・シア)氏

マニラに拠点を置くフィンテック企業で、加盟店のデジタル決済を可能にするオンライン決済プラットフォームのPayMongo(ペイモンゴ)は、周辺地域での事業拡大を視野に入れ、シリーズBラウンドで3100万ドル(約35億5800万円)を調達したと発表した。参加した投資家には、Justin Mateen(ジャスティン・マティーン)氏のJAM Fund、ICCP-SBI Venture Partners、Lisa Gokongwei(リサ・ゴコンウェイ)氏のKaya Foundersに加え、既存投資家のGlobal Founders CapitalとSOMA Capitalが名を連ねている。今回のラウンドには、Qonto、Viva Wallet、Billie、Scalableといった欧州のフィンテック創業者らも参加したとのこと。

これでPayMongoの累計調達額は4600万ドル(約52億7900万円)弱に達した。前回の資金調達は2020年に発表された1200万ドル(約13億7700万円)のシリーズAで、米国の決済サービス大手であるStripe(ストライプ)がリードした

同社はあらゆる規模の企業を対象としているが、特に零細企業、中小企業をターゲットとしており、銀行カード、デジタルウォレット、店頭取引など、さまざまな形態の支払いを受け付けることを可能にする。同社の製品には、PayMongo決済APIやeコマースプラグインなどがある。今回調達した資金は、PayMongoの現在の決済インフラをさらに発展させ、払い出し、資金貸し出し、BNPL(後払い)、サブスクリプションや定期支払いなどの金融サービスの追加に充てられる。

PayMongoの製品ロードマップの一部には、より多様な金融サービスの運営を可能にする新しいライセンスの取得が含まれている。同時に、地域的な拡大も模索しているという。

共同創業者兼CEOのFrancis Plaza(フランシス・プラザ)氏は、TechCrunchにメールでこう語った。「まだまだフィリピンで、やるべきことがたくさんあります。現在の需要の増加に対応し、積極的な製品ロードマップを実現するために、チームの規模を2倍以上にすることを見込んでいます。それと並行して、2021年に取りかかり始めた、東南アジア地域での事業拡大に向けた初期調査と足固めを開始しました」。

フィリピンには他にも、DragonPay、PesoPay、PayMaya、Paynamicsといったデジタル決済ゲートウェイがある。プラザ氏はTechCrunchへのメールで、PayMongoは2019年に設立されて以来、SMBや高成長のスタートアップ・企業にフォーカスすることで差別化を図っていると語った。

それ以上に、当社のプラットフォームを利用している何千もの企業と協力しながら、マーチャントが簡単に支払いを受けられるだけでなく、他の金融サービスにアクセスして成長できるような、より多くの製品やサービスを構築することを目指しています」と同氏。「送金機能から、残高の保存、クレジットへのアクセスまで、そして顧客にとっての支払い方法の選択肢を広げることができます」。プラザ氏はさらに、いくつかの新しい製品やサービスを、すでに加盟店とともにベータ版としてテストしていると付け加えた。

Tinder(ティンダー)やJAM Fundの創業者であるJustin Mateen(ジャスティン・マティーン)氏は声明で次のように述べた。「PayMongoの最初の投資家の一人として、私は彼らがひと握りの企業の決済を簡素化したところから、今では何千もの加盟店が日々の業務で頼りにしている会社になるまでの道のりを見てきました。彼らの成長にワクワクするとともに、デジタル経済を通じてより大きな経済機会を生み出すチームを再びサポートできることを嬉しく思っています」。

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(文:Catherine Shu、翻訳:Den Nakano)

スウェーデンのVoltaが全電動トラック生産開始に向け562億円の評価額で約300億円調達

スウェーデンの電気自動車スタートアップVolta Trucks(ボルタトラックス)は、ガソリンを大量に消費し、不恰好な既存のトラックよりも安全で二酸化炭素排出量が少ない、より優れた都市部用の配送車両やその他のトラックを製造できると考えている。同社は、2022年後半のVolta Zeroトラック商業生産開始に向けた大詰め作業を行うために、大きな資金調達を完了させた。

同社はシリーズCラウンドで2億3000万ユーロ(約300億円)を調達した。同ラウンドでは同社を4億9000万ドル(562億円)強と評価したと思われる。健全な顧客リストを持つVoltaはこの資金を、最初のトラックが組立ラインを離れる前にエンジニアリングと事業運営に充てる予定だ。都市部の貨物輸送用に設計された初の全電動商用貨物車両になると同社がうたうVolta Zeroの予約受注額は現在12億ユーロ(約1562億円)を超え、台数にして5000台超と発表している。Voltaの広範な事業戦略は、トラックの販売とトラッキング・アズ・ア・サービスモデルによる車両の提供の両方に基づくものとなる。

2021年9月の同社の3700万ユーロ(約48億円)のシリーズBをリードしたニューヨーク拠点のLuxor Capitalが、今回のラウンドも主導している。不動産投資会社のByggmästare Anders J Ahlström(Volta同様ストックホルムに拠点を置いている)、サプライチェーンサービス大手のAgility、B-FLEXION(旧Waypoint Capital)も参加した。Voltaは評価額を公表していないが、Pitchbookのデータによると現在4億9000万ドル強で、この数字は今回、同社に近い関係者にも確認したものだ。

Voltaの成長と、同社がこれまでに3億2500万ドル(約373億円)超という多額の資金を調達したことは、自動車業界における大きな変化の一部だ。新しい製造技術、新しいバッテリー技術、新しいエネルギーインフラに取り組むスタートアップは、より安全でクリーンな技術で現状をディスラプトする新しい自動車を製造する絶好の機会を目にしている。

おそらくTesla(テスラ)が乗用車で収めたような電気自動車分野での成功に驚いた投資家は、これらのベンチャー企業に資本と、そして潜在的な顧客に信頼性を与えるべく資金を投入している。これらはすべて、自動車を次の技術革新の波に乗せるために不可欠な構成要素だ。技術革新で、Voltaのようなトラックは、車両やそれを利用する企業が新たなレベルの生産性を発揮できるよう、膨大なデータを収集・処理できるハードウェアプラットフォームとなる。

少なくとも理論上はそうだ。そこにたどり着くプロセスは、どうしても当初のバラ色のプロジェクトより遅くなり、コストも高くなる。これこそが、この分野の企業にとって大規模な資金調達を行い、市場投入のために戦略的投資家を集めることが重要である理由だ。

Voltaの2022年のロードマップには、Volta Zeroの設計を検証するためのプロトタイプ製造のエンジニアリングと生産事業への投資が含まれる予定だ。

交通渋滞、狭い道路、自転車などのマイクロモビリティ利用者の急増のために、配達トラックは珍しくないが危険なものでもあるロンドンやパリのような都市で行う試験運行を早期顧客に展開する。そうした環境のためにこれらの都市はVoltaのトラックにとって理想的なマーケットだ。同社は、ガス排出量が減るだけでなく(初の車両の電動航続距離は150〜200キロメートルで、2025年までに120万トンのCO2を削減するとしている)、ドライバーの視界も大幅に改善される(ドライバーが前席中央に座った場合220度)。ただし、当初は自動運転機能は搭載されないようだ。

「将来的には自動運転も視野に入れていますが、街中で使用する配達車両として設計していて、車内の荷物を車両から最終目的地まで届ける必要があります。そのため、この車両の目的には常に人の関与が必要で、自動運転はこのタイプの車両にはあまり関連性がありません」と広報担当者は述べた。

Voltaは、今回調達した資金の一部を使って、引き続き7.5トンおよび12トンの小さめの完全電動Volta Zero派生モデル(最初のモデルは16トン)の開発を行い、そしてゆくゆくは18トンの大型モデルも開発する。

同社はオーストリアに生産施設を建設中で、2023年に5000台、2024年に1万4000台、2025年には最大2万7000台のトラックを生産する計画だ。

Volta TrucksのCEOであるEssa Al-Saleh(エッサ・アルサレー)氏は声明で「応募者多数で成功したシリーズC資金調達ラウンドの終了は、外部が当社の旅路を肯定的にとらえていることを示しています」と述べた。「商用車分野の革新者および破壊者として、当社は業界をリードするペースで取り組み、大きな野望を抱いています。本日、シリーズC資金調達ラウンドを終了し、2億3000万ユーロを調達しました。これにより、当社がスタートアップから完全電気トラックメーカーに移行する中で、すべての目標を達成するための財務的な余裕が生まれました。5000台を超える車両と12億ユーロを超える受注は、当社の先駆的な製品とサービスの提供が、顧客から求められ、必要とされているという確信を当社と投資家に与えるものです」。

画像クレジット:Volta Trucks

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

一般の人がIPOや追加資金調達に投資しやすくする英PrimaryBidが218.5億円調達

フィンテックの発展により、投資などの金融サービスが、より多くの消費者にとってますます身近なものになっている。このたび、このコンセプトの限界に挑戦している大手企業の1つが、旺盛な需要と今後の大きな可能性を信じて、大規模な資金調達を発表した。上場しようとする企業や、資金調達を行う上場企業が、従来の株式売却と並行して個人投資家(つまり専門家ではなく普通の人々)に株式を提供できるよう支援するPrimaryBid(プライマリービッド)が、このほど1億9000万ドル(約218億5000万円)を調達したのだ。

PrimaryBidの共同創業者であるAnand Sambasivan(アナンド・サンバシバン)CEOによると、ロンドンに拠点を置くこのスタートアップは、調達した資金を利用して、企業に提供する製品の開発を継続する計画だという。たとえばSPACベースの株式公開や、リテール債への投資などが含まれる。さらに同社は新たな地域への進出を計画しており、特に米国にオフィスを開設することを視野に入れている。米国では、その市場に上場している企業と協力するために規制当局の承認を得るプロセスの途中で、2022年後半か2023年にはローンチする予定だ。

PrimaryBidは現在、約60のチャネルと提携して投資を可能にしており、その中には現在一般人が投資を行うために利用している証券会社や投資アプリも含まれている。そして今でもその数は増え続けている。

サンバシバン氏によると、同社の使命は、一般の人々に銀行や他の大規模なプロの投資家と並んでIPOに直接投資する機会を提供し、株式公開の理念に「公共性」を取り戻すことだ。

サンバシバン氏はいう「もし今、公開市場が発明されたら、100年前のようになるでしょうか?いいえ、そうはなりません。サービスはAPIで相互運用され、モバイルアプリを使って、投資へのアクセスがさらに簡単になるでしょう。これは、アップグレードが必要なシステムなのです」。

SoftBankがVision Fund 2を通じて、今回のシリーズCラウンドを主導しており、以前からの投資家も匿名で参加している(2020年10月に行われた5000万ドル[57億4000万円]のシリーズBラウンドには、London Stock Exchange Group、Draper Esprit、OMERS Ventures、Fidelity International Strategic Ventures、ABN AMRO Ventures、Pentech、Outward Venturesなどが参加している)。

サンバシバン氏によれば、PrimaryBidは評価額を公表していないものの、PitchBookに掲載された1月の報告の時点では、評価額6億5000万ドル(約746億5000万円)で1億5000万ドル(約172億3000万円)が確保されていたという。これは、その当時Sky News(スカイ・ニュース)が、このラウンドの噂を最初に流し、プレマネーの評価額を5億ドル(約574億3000万円)としたことを受けたものと思われる。もしこうした数字が正確ならば、現在のPrimaryBidの評価額は6億9千万ドル(約792億5000万円)前後になるだろう。

シリーズB以降PrimaryBidは、一般の人々の投資の世界にもっと参加したいという欲求に後押しされて成長を続けている。同社によると、過去18カ月間で、約150件のIPOや追加株式発行に対して、個人投資家向けの投資を支援したという。これまでは主に英国で展開してきたが、現在はフランスでも活動を開始し、投資家であるABN AMROの協力を得て、オランダでのビジネス展開も視野に入れている。同社がてがけた大規模な株式売却には、Deliveroo(デリバールー)、PensionBee(ペンションビー)の売却や、英国での株式売却を通じて行われた2021年のMCG Group(Soho House[ソーホー・ハウス])の米国でのIPOなどがある。

サンバシバン氏は「資本市場に大きな足がかりを得ました 」とインタビューで答えている。「(私たちが戦っているのは)一般の人々がもはや公開市場から排除されているという考えです。上場する優良企業の中には株主に対する強い思い入れをもつ企業もありますが、それをIPOに反映できてこなかったのです。企業は皆、熟考した上でしっかりと一般の人々を含めることに価値を見出していて、私たちはプラットフォームを通じてそれを実現する手段を提供しています。私たちは持続的な成長を遂げていますし、私たちがやっていることは重要すぎて失敗することはできないと信じています」。

PrimaryBidは、他の一連の動きも手伝って、長い間形作られてきた関心の波に乗っているところだ。Robinhood(ロビンフッド)やRevolut(リボルト)のような金融アプリや、ヨーロッパで人気の高い新しい投資アプローチETFの成長は、一般消費者が興味を持ったり、良いリターンをもたらしてくれるかもしれないと考える公開企業や通貨(暗号資産を含む)への投資をずっと容易にした。これまでは、こうした投資は証券会社やプロの投資家が相手にする富裕層にしかできなかったことだ。

2021年のGamestop(ゲームショップ)の株式騒動のような出来事は、投資大衆化の落とし穴もあらわにしたかもしれないが、それでも一般投資家の力がいかに大きくなったかを浮き彫りにしている。そうした大衆化の波が、IPOや追加株式発行に押し寄せるのは時間の問題だったのだ。

B2C企業が株式公開や資金調達の一環としてユーザーに株式を提供することには強い動機がある。なぜなら、顧客たちは自分が信頼しすでに利用している企業を、とりわけ支援したいと考えるからだ。それは、これからも増える一方だ(例えばRedditのCEOは、同社が上場する際には個人投資家に株式を提供したいと述べている)。

しかし、企業や投資家自身がそうした市場の需要から恩恵を受けるのは、なにも消費者向けのビジネスに限った話ではないとサンバシバン氏は指摘する。実際、PrimaryBidが扱ってきた取引のうち、B2Cは10%程度に過ぎないという。

SoftBank Investment AdvisersのパートナーであるAnthony Doeh(アンソニー・ドー)氏は「PrimaryBidは、これまでは機関投資家やプロ投資家向けに発行されていた株式に、誰でも簡単にアクセスできるようにすることで、資本市場におけるインクルーシブ性を強化しています」と声明の中で述べている。そしてさらに「このチームは、株式発行企業のための独自のコミュニティIPOプラットフォームの開発を含む、参加者の拡大という課題に対して、テクノロジー、データ、『エコシステムフレンドリー』なアプローチを組み合わせたプラットフォームを構築したと考えています。私たちは、彼らとパートナーを組めることに興奮していますし、私たちのグローバルなネットワークと専門知識が彼らのビジネスに大きな価値を付加できると信じています」と語っている。

画像クレジット:ALotOfPeople / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:sako)

新たな「ポストサブスクリプションSaaS」の時代に向けて見積から収益へのアプローチを改善するSubskribe

ほとんどのサブスクリプション型SaaSの価格戦略では、一定のシート数のみ使える無料版、より多くのシート数が使えるプロ版、そして大企業を対象としたエンタープライズ版が用意されている。

しかし、その中間に位置する企業、つまり、無料版の10シートの範囲を少しだけ超えるが、プロ版を使う価値があるほどの急成長は望めない企業はどうすればいいのだろうか?

Subskribe(サブスクライブ)は「見積りから収益まで」のプロセスに柔軟性をもたらすスタートアップ企業だ。これまで営業担当者は、ソフトウェアの見積を作成する際に、情報がさまざまな場所に散らばっていると、それらを調整して、サブスクリプションや単発のサービスを請求することが難しい時があった。

同社は、Google(グーグル)に勤務していたDurga Pandey(デュルガ・パーンデー)氏が、元Zuora(ズオラ)のエンジニアリングディレクターだったYibin Guo(イーピン・グオ)氏、元Okta(オクタ)ビジネステクノロジー担当シニアディレクターだったPrakash Raina(プラカシュ・ライナ)氏とともに、2020年に設立した。

「誰もがリカーリングの収益モデルを好みますが、顧客は月額10ドル(約1150円)払えるなら5000ドル(約57万円)のライセンス料を払いたいとは思いません」と、パーンデーCEOはTechCrunchに語った。「この10年間で、SaaSのビジネスモデルは大きく変わりました。以前は、Netflix(ネットフリックス)のサブスクリプションに似ていました。現在のソフトウェアの販売方法は、400分で毎月40ドル(約4600円)を支払う携帯電話のプランによく似ています」。

これに対し、Subskribeのテクノロジーは、適応性の高い見積 – 収益システムとして設計されており、営業担当者は、使用量の増加に応じて割引率を高めたり、創造的なアップセルやクロスセルを追加して、より効果的な取引を構成することができる。

画像クレジット:Subskribe

見積もりから請求までのプロセスの各部分は、ダイナミックオーダーの同じリポジトリーを参照するため、端から端まで統一された体験となる。その結果、企業は自社の成長に合わせて最適化された取引を得ることができ、結局より少ない費用で済むようにもなると、パーンデー氏は続けた。

同社は米国時間2月17日、少数の顧客とともに正式にサービスを開始した。同社は8VCが主導したシリーズAラウンドと、Slow Ventures(スロー・ベンチャーズ)が主導したシードラウンドで、1840万ドル(約21億1000万円)の資金を調達している。このラウンドには、Amplitude(アンプリチュード)、Asana(アサナ)、Coupa(クーパ)、Dialpad(ダイアルパッド)、Okta(オクタ)、Plaid(プレイド)、UiPath(ユニパス)などの企業の財務・業務担当上級幹部が参加した。

パーンデー氏は、この新たな資金をエンジニアリングチームの拡大に充てる他、顧客基盤の拡大と製品開発にも注力することを計画している。

Subskribeは販売開始からまだ4カ月しか経っていないため、同氏は成長の指標についてあまり語ることができなかったが、しかし顧客のパイプラインには契約間近の大手企業がいくつかあると述べている。

「私たちの目標は、この分野におけるデファクトプレイヤーとしての地位を確立し、お客様がお金を稼ぐためのプロセスをあまり気にしなくて済むようになる製品を提供することです」と、パーンデー氏は付け加えた。

画像クレジット:Subskribe / Subskribe co-founders Prakash Raina, Durga Pandey and Yibin Guo

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

折りたたみ電動バイクのシェアリングサービスShaeroが3億円調達、2022年夏に200ステーション開設を目指す

折りたたみ電動バイクのシェアリングサービスShaeroが3億円調達、2022年夏に200ステーション開設を目指す

折りたたみ電動バイクのシェアリングサービス「Shaero」(シェアロ。Android版iOS版)を運営するシェアード・モビリティ・ネットワークスは2月21日、第三者割当増資による総額3億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は国内投資家。累計調達額は6億円となった。調達した資金により、2022年夏に200ステーション、2023年夏には600ステーション開設を目指す。

今後は、東京を中心とした関東エリアで拡大するとともに、地方都市へのシェアロの展開や、より幅広い年齢層の方が乗れる小型EVによるシェアリングサービスの開発を行っていく予定という。

Shaeroは、2021年9月にサービスを開始。2022年2月16日時点で、東京23区を中心に65ステーション設置が完了している。利用したい際には、専用アプリをダウンロードし、まずは無料の会員登録を行う(利用には原動機付自転車の運転免許証が必要)。アプリから貸出可能なバイクのある最寄りのステーションを検索してその場で予約、あとは15分以内に乗りに行けばいい。返却は、目的地周辺の返却可能なステーションを予約して、バイクを戻せば完了。起動の方法や折りたたみ方法、充電方法などの細かい手順は、アプリを見ながらワンステップずつ確認できる。

2019年7月設立のシェアード・モビリティ・ネットワークスは、環境負荷の少ない電動⾞両(EV)を⽤いて、都市部を中⼼にシェアリングサービスのネットワークを構築することで、都市部のラストワンマイルの移動⼿段として新しい選択肢を提供することを⽬的としているという。都市部の混雑する移動の緩和に加え、将来的には地方での生活の足となるような新たな交通手段として利用してもらえるよう考えているそうだ。移動手段を変化させることで、個々のライフスタイルをより自由に、環境的にもより持続可能な暮らしを実現させるとしている。

「水路を民主化」したいNavierの水中翼レジャーボートは約3480万円

正直、ボートが実際いくら程度するのかをググったほど見当もつかなかったのだが、30万ドル(約3480万円)もする製品でレクリエーションを「民主化」しようなどと宣伝しているのを見ると、ギロチンを磨きたくなるのは筆者だけだろうか。ロベスピエール的な冗談はさておき、Navier(ナビエール)には一目置いてしまった。同社の次世代ボートはかなりかっこいい。ハイドロフォイル(水中翼)によって水面を軽やかに移動することができ、大型のバッテリーパックと電気モーターを搭載しているため、電動船としては最長クラスの航続距離を誇っている。同社によると航続距離は75海里で、これは約690 ハロン(86マイル/139 km)に相当する。

同社は、Global Founders Capital(グローバル・ファウンダーズ・キャピタル)と、Comcast Ventures(コムキャスト・ベンチャーズ)の元MDであるDaniel Gulati(ダニエル・グラティ)氏が運営する新しいファンドTreble(トレブル)の共同主導により、720万ドル(約8億3000万円)のシード資金調達を完了したとを発表。今回の資金調達には、Next View Ventures(ネクストビュー・ベンチャーズ)、Liquid2 Ventures(リキッド2ベンチャーズ)、Soma Capital(ソーマ・キャピタル)、Precursor Ventures(プレカーサー・ベンチャーズ)に加え、複数のエンジェルも参加している。

「2020年にスタートして以来、船舶のランニングコストを90%削減した新タイプの水上船を作ることを目標として掲げています」。Navierの共同創業者兼CEOであるSampriti Bhattacharyya(サムプリティ・バッタカリヤ)博士は説明する。「水中翼の電動化、高度な複合材、インテリジェントなソフトウェアを組み合わせることで、船舶のランニングコストを桁違いに削減できると考えています。これによりまったく新しいスケーラブルな輸送システムや、これまで不可能だった水上輸送システムが可能になります。世界の46%が沿岸部の都市に住んでいるわけですから、かなり大きな潜在市場があると考えています」。

「民主化」の意味を尋ねてみると、それはボートの購入をという意味ではなく、運用コストに関してだと回答した同社。従来の化石燃料で動くボートはクルマの15倍近い運用コストがかかるため、それがボートが移動手段として普及しない原因だと同社は話している。燃料と労働力という2つの主要要因がコストを上げている原因であると言い、そのため電動水中翼船技術による燃料費の削減と、ボートの自律化による人件費の削減を実現しようとしているのである。

同社が最初に市場に投入する予定の製品は、レクリエーションボート市場に向けた「Navier 27」(通称N27)だ。

めちゃくちゃかっこよくないか?(画像クレジット:Navier)

「レクリエーショナルボートは、釣りやウォータースポーツ、友人とのクルージングなど、非常に幅広いアクティビティに活用してもらえます。つまり、ボートを使用して水上で楽しむあらゆるアクティビティのためです」。CTOのReo Baird(レオ・ベアード)氏は、私がボートの知識をまったく持っていないことを考慮して馬鹿丁寧に説明してくれた。レクリエーション用のボートというのは同社にとっては第一歩に過ぎず、将来的にはその効率性を生かして浮動式のロボタクシーを作りたいと考えている。「我々は高効率な水上船のプラットフォームを構築しているのです。このプラットフォームを利用して水上のロボタクシーとして機能させることが長期的な目標です。そのためには、燃料費や人件費などのコストを削減する必要があります」。

「コスト、スピード、利便性で勝負できるボートを作ることができれば、まったく新しい交通手段を切り開くことができます」とバッタカリヤ氏は説明する。「例えばサンフランシスコのベイエリアを考えてみてください。現在、10のターミナルと5つのルートがありますが、より小さなマリーナに行くことができるボートを作れば、ターミナルの数は10から65に増えるでしょう。すると一気に2000ものルートが使えるようになり、これですべてが解決します。イーストベイのリッチモンドからサンフランシスコまで、クルマで1時間ではなく、海を渡って15分で行けるようになるのです」。

効率化は3つの要素によって実現される。主な節約源は水中翼技術によるもので、船がスピードに乗っているときは船体が水から浮き上がり、小さな翼でクルージングしているような状態になる。これによりモーターが水を押し出す必要がなくなり、抵抗が減って効率が上がるという仕組みである。この技術は1950年代頃から旅客船に搭載されていたもので、紛れもなくクールな技術ではあるのだが、トレーラーに積むのが難しく、また浅い海には向いていない上に水中翼の効果を得るためにはかなりの速度で移動しなければならないため、レクリエーションボート向けにはあまり一般的でない技術なのである。

「発進時の正確な最低速度は公表していませんが、時速15〜18マイル(24〜29km)の範囲内です」とベアード氏は話している。

CTOのレオ・ベアード氏とCEOのサムプリティ・バッタカリヤ博士(画像クレジット:Navier)

その他にも、主に軽量の複合素材を使用することで効率性を上げている(フォイリング中にボートを水面から持ち上げるのが容易になる)。また、抵抗と重量をさらに減らすためのスマートなデザインも効率性に貢献している。

「弊社にはすばらしいチームがあります。MIT(マサチューセッツ工科大学)出身者が何人もいますし、弊社の主任造船技師のPaul Bieker(ポール・ビーカー)は、Larry Ellison(ラリー・エリソン)がアメリカズカップで優勝したときの船を担当した人物です」。バッタカリヤ氏は同社が伝説的な造船関係者と協力してN27を設計していると説明する。「Navierは単にアップグレードされた電気製品ではなく、私たちはこれまでのボートのあり方を根本的に見直しているのです。ハイドロフォイルが波の上をフォイルするので船酔いも起きませんし、圧倒的に優れた乗り心地を実現します」。

同社によると、約1カ月半前に予約を開始して以来、最初の15隻がすぐに完売したとのことだ。このクールなボートに興味を持つさまざまな顧客層から現在も数百件の問い合わせを受けているという。しかし、現在はメイン州の造船所で試作品を制作中で、最初の消費者向けの船は2023年頃に生産ラインから出荷される予定とされているため、手に入れるにはまだしばらくかかりそうだ。同社は米国での製造を計画している。

Navierは、ボートビルダーのLyman-Morse(ライマン・モース)と提携し、このNavier 27の生産を実現している。同モデルの最初の2隻の船体は、現在メイン州の施設で建設中だ。2024年までに400台以上の生産を計画しており、Navierのウェブサイトではその年のボートを予約するためのウェイティングリストに登録することが可能だ。

フランス人ネタを繰り返したい訳ではないが、ちなみに同社名は水中翼船の製造を可能にするための重要な数学である「ナビエ・ストークス方程式」を考え出したコンビの一方、Claude-Louis Navier(アンリ・ナビエ)に由来しているという。

画像クレジット:Navier

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

水素の力で家庭の暖房を脱炭素化するModern Electronが約34.7億円を調達

地球上のエネルギーの多くが熱を生み出すために使われているが、実際はそれだけでなく、莫大な量のエネルギーが無駄に使われ、またCO2などの副産物が大気中に放出されている。こういった状況を変えるため、家庭やビル内で排出量を回収してクリーンな水素を生成するという新たなシステムを開発したのがModern Electron(モダンエレクトロン)だ。今回同社はシリーズBで3000万ドル(約34億7000万円)を調達しており、この資金を使ってその名を世に広める計画である。

住宅やマンション、オフィスなどの暖房には天然ガスを使うのが一般的だ。ガスを燃やすと、熱、二酸化炭素、水が発生するというとてもシンプルなプロセスで、熱はそのまま使用され、その他のものは捨てられていくという仕組みである。

しかし、Modern Electronの共同創業者兼CEOであるTony Pan(トニー・パン)によると、これはとても便利な方法ではあるものの、理想的ではない(確かに石油や石炭に比べればはるかにましなのだが)。

「熱を得るためだけに燃料を燃やすというのは、物理学的に見ても非常に無駄が多いシステムです。天然ガスや石炭、バイオ燃料を発電所で燃やすとしたら、まず電気を作るはずです。電気は熱の約4倍の価値があるからです。しかしなぜそうしないかというと、発電所の技術を商業施設や住宅のレベルまで縮小することができないからです。この損失は100年前から知られていました。熱と電気を生み出すことができれば、それは世紀の発明と言えるでしょう」。

2つの新しい技術を組み合わせることで、パン氏はその世紀の発明を実現したいと考えている。

1つ目の技術は熱電変換器と呼ばれるもので、シアトル地区を拠点とするModern Electronが初めに取り組んだものである。ソーダ缶ほどの大きさで、火炉で発生した熱を電気に変える、コンパクトかつ効率的な変換器だという。

もう1つは、デビューを目前に現在もまだ開発中の「Modern Electron Reserve(モダンエレクトロンリザーブ)」と呼ばれるもので、大部分がCH4(メタン)である天然ガスを、燃やすのではなく固体の炭素(黒鉛)と水素ガスに還元するというものだ。ガスが炉に送られて燃やされると熱とエネルギーに変換され、その後黒鉛は回収されて廃棄または再利用されるという仕組みである。

画像クレジット:Modern Electron

私もそうだったのだが、ここに複数の変換やプロセスを導入すると、熱力学的にシステム全体の効率に重大な影響を及ぼすのではないかと疑う読者もいるかもしれない。

「もちろんコストがかからないという訳ではありません」とパン氏。「CO2を大気中に放出しないために、その発熱反応(ガスを燃やすこと)を起こさせません。しかし、それを熱と電力に使えば、電力は熱よりも価値が高いため経済的には互角になります。つまり、余分なコストを補助することができるのです」。

実際、ユーザーにとってガスの使用量が増えることはない。通常なら他の形で家から出ていたエネルギーがシステムに残り、電力需要を簡単にカバーできるのである。

この反応で生成される炭素については、ちょっとした発想の転換が必要だ。現在の暖房システムは魔法のようなもので、スイッチを入れれば家が暖まり、請求書が届く。ところがModern Electronの技術を搭載したシステムを使っていると、毎日1〜2kgの黒鉛(純粋な炭素の粉)が出てくることになる(約1リットル、ちりとり1杯分)。

黒鉛の山。そう、あなたの炉からこれが毎日放出されるのである(画像クレジット:Modern Electron)

こんなものを捨てなきゃいけないのは気持ち悪い、とお思いだろうか。しかし実際、すでに我々は毎日これを大気中に放出しているのである。パン氏はこれを「空の巨大なゴミ捨て場」と呼ぶが、我々は最初からずっと、この炭素を空気中に捨てていたのである。同社の開発により、自分の二酸化炭素排出量をより簡単に見ることができるようになったというだけだ(ただしこぼさないように注意が必要)。

この純粋な炭素の粉は鉛筆の削りカスのようなもので、いわゆる毒性はない。固形物のため、たとえどこかのゴミ捨て場に置かれていたとしても、数百年、数千年の間炭素を有効に封じ込めることが可能だ。さらに、オフィスや病院のように多くの熱を使う施設では、十分な量の炭素固形物が生産されるため、回収に便利な場所に置いてそれを利用できる産業に売ることもできるようになるだろう。

Modern Electronは暖房と電気システム全体を置き換えようとしているわけではない。例えば熱をほとんど必要としない夏場の民家では、それに応じて発電量も少なくなるとパン氏は指摘する(送電網の柔軟性を確保するために電気システムを多少変更する必要があるが、全面的な変更ではないという)。

画像クレジット:Modern Electron

使用する熱の脱炭素化というのが同社の目的であり、一から構築するのではなく既存のHVAC(冷暖房空調設備)業者と統合したいと同社は考えている。熱電変換器は容積を増やすことなくすぐに取り付けられ、ガスから水素への変換器も他の小型機器のサイズ感と何ら変わらない。家庭だけでなく、ガスを大量に消費するほどの規模でありながらも大規模な産業インフラやBloom(ブルーム)のような燃料電池技術を利用するほどではない建物にも脱炭素化の大きなチャンスがあるとパン氏は話している。例えば熱需要の高い中規模の産業や、蒸気生産業もそれに該当するだろう。

EUでは新たにできる炉やボイラーに対する水素対応が義務付けられることとなったため、タイミングは良い(古い炉も比較的簡単に変換できる)。しかし、天然ガスからの切り替えに必要な規模の水素経済が世界的に実現する兆しは未だない。その場で変換作業ができ、損失はほとんどなくメリットも大きいため、この技術が無数の建物に熱を送るための新たなデフォルトになる日がいつか来るかもしれない。スタートアップとしては出だしも好調で、だからこそ同社は継続的な投資を得ることができたのだろう。

3000万ドルのBラウンドでは、Google X(グーグルエックス)の元責任者であるTom Chi(トム・チー)氏が共同設立したファンドのAt One Ventures(アットワン・ベンチャーズ)をはじめ、Extantia(エクスタンティア)、Starlight Ventures(スターライト・ベンチャーズ)、Valo Ventures(ヴァロ・ベンチャーズ)、Irongrey(アイロングレイ)、Wieland Group(ウィーランド・グループ)などが新たに参加している。また、以前からの投資家であるBill Gates(ビル・ゲイツ)氏(財団ではなく個人)とMetaPlanet(メタプラネット)も投資を継続・拡大している。

今回の資金は製品開発の継続の他、大手HVAC企業とのパイロットテストに使われる予定で、来年には運用が開始されているはずだとパン氏は話している。また、特にシアトル地域では人材を募集していると同氏は付け加えている。

もしModern Electronの技術が主流になり、石油や石炭からの脱却が進めば、天然ガスがよりクリーンで実行可能な(そしてすでに世界的に大きな存在感を示している)太陽光や風力などの再生可能エネルギーの補完物になる日が来るのかもしれない。

画像クレジット:Modern Electron

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

3Dプリントで「弾力性とエネルギー効率の高い住宅」を建てるICONが213億円調達、評価額は約2300億円に近づく

3Dプリントで家を作るICON(アイコン)は、Tiger Global Managementがリードするラウンドで1億8500万ドル(約213億円)を追加調達した。TechCrunchの独占情報だ。

この資金調達は、2021年8月に発表されたICONの2億700万ドル(約238億円)のシリーズBの延長線上にあるという。

オースチンに拠点を置く同社は、今回の資金調達について認めたものの、バリュエーションなどの詳細についてはコメントを拒否した。しかし、取引に詳しい匿名の情報筋はTechCrunchに対し、同社の評価額は「今や20億ドル(約2300億円)に近づいて」おり、一部の既存投資家も追加で資金を投入したと語った。

広報担当者は電子メールでこ「私たちは、世界クラスの投資家、役員、あらゆるレベルの組織と引き続き提携する機会をとてもうれしく思っています」と述べている。

これまでの投資家には、Norwest Venture Partners、8VC、Bjarke Ingels Group(BIG)、BOND、Citi Crosstimbers、Ensemble、Fifth Wall、LENx、Moderne Ventures、Oakhouse Partnersなどが含まれている。これらの投資家のうち、どこが今回の延長ラウンドに参加したかは明らかではない。今回の資金調達で、ICONは総額4億5100万ドル(約519億円)を株式で調達したことになる。

ICONは2017年末に創業。2018年3月のSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト、毎年3月にオースティンで行なわれる大規模イベント)期間中に、米国で初めて許可された3Dプリントの家を発売した。350平方フィート(32.5平方メートル)の家のプリントには(25%の速度で)約48時間かかった。ICONがあえてコンクリートを素材に選んだのは、共同創業者でCEOのJason Ballard(ジェイソン・バラード)氏がいうように「地球上で最も弾力性のある素材の1つ」だからだ。

同社は前回の資金調達時、米国とメキシコの全域で、3Dプリントによる住宅や建造物を20数軒引き渡したと発表した。その半数以上は、ホームレスや慢性的な貧困状態にある人々のための住宅だ。例えば2020年、ICONは非営利団体のパートナーであるNew Storyとともに、メキシコで3Dプリントによる住宅を納入した。また、テキサス州オースティンでは、非営利団体Mobile Loaves & Fishesと共同で、長期にわたりホームレスとなっている人々のための住宅を完成させた。

2021年初頭には、テキサス州オースティンのデベロッパー3Strandsのために、米国初の3Dプリント住宅を販売し、住宅市場の主流に躍り出た。

そして2021年10月、ICONは、米国最大の住宅メーカーの1つであるLennarとの提携を発表した。Lennarは投資家として、ベンチャー部門を通じてスタートアップのLENxに投資している。両社が「これまでで最大の3Dプリント住宅のコミュニティ」と表現する100軒の住宅を建設する計画で、2022年中に着工する予定だ。ICONのロボット工学、ソフトウェア、高度な材料が用いられる。

ICONは、その3Dプリント技術により、従来の建築方法よりも早く、廃棄物も少なく、設計の自由度が高い「弾力性とエネルギー効率の高い住宅」を実現できると宣伝している。米国では多くの都市で深刻な住宅不足に陥っている。手頃な価格の住宅、特にオースティンのように住宅価格の中央値が過去1年間で46%も上昇したような市場では、その必要性がこれまで以上に顕著になっている。

今週初め、Homeboundは、Khosla VenturesがリードするシリーズC資金調達ラウンドで7500万ドル(約86億円)を調達し、その技術で住宅在庫不足に対処する独自の取り組みに着手したことを発表した。

画像クレジット:ICON

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

ロボットが昼食のサラダボウルを調理してくれるようになる日は近い

Hyphen(ハイフン)という企業については、8月に同社がステルス状態から脱した際に、筆者のニュースレター(翻訳されているので是非ご覧いただきたい)で簡単に紹介した。食事の準備を自動化することは、今後、大きな意味を持つことになるだろう。新型コロナウイルス感染症が流行し始めた初期の頃、多くの人がそう予想した。外出自粛要請やウイルス感染への不安が拡がった時、多くのレストランオーナーは、最終的にどの程度のプロセスを自動化できるだろうかと考えていた。

だが、多くの人がそれは一時的な問題になると考えていたのではないだろうか。ウイルス感染拡大から2年が経過した今、人々の「一時的なもの」に対する予想は、多少変化したと言ってもいいだろう。しかし、一部の地域では感染拡大が収まっているものの、低賃金であることが多い外食産業の人材確保は、依然として問題となっている。

このような理由により、業務用厨房の自動化を実現する企業には、多くの投資家から関心が集まっている。数年前から盛り上がっていたロボットによるフードデリバリーに、この分野も追いつきつつあるようだ。当初は、自動化が比較的容易な食品に、特に注目が集まるだろう。ピザは、そのシンプルさと、そして多くの人がピザを好むという事実から、当面は間違いなく最初に選ばれる対象となるはずだ。

サラダボウルも有力な候補だ。サラダボウルは完結型の料理で、コンピューターの画面から離れられる時間がますます減っている労働者にとって、手軽なランチの選択肢として人気が高まっている。

Hyphenが提供する「Makeline(メイクライン)」は、カウンターの下で行われるベルトコンベアのようなプロセスを通して、ボウルの調理を自動化するモジュール式のソリューションだ。そのカウンターの下に収められているという仕様は、とりわけ興味深い。このような企業の多くは、自動化を外に向けて見せるものと位置づけているからだ。見方によっては、ロボットが自分のランチを作ってくれるというのは、クールな、あるいは少なくとも斬新な、アイデアだと思われるかもしれない。しかし、Hyphenのシステムは、人間が顔を出して顧客と対話するというような、人間を前面に出すことを前提としている。

サンノゼを拠点とするHyphenは先日、2400万ドル(約27億6000万円)のシリーズA資金調達を実施したことを発表した。Tiger Global(タイガー・グローバル)が主導したこのラウンドによって、Hyphenの資金調達総額は3440万ドル(約39億6000万円)に達した。この新たな資金は、研究開発の強化、生産設備の増強、市場の拡大など、ロボット関連の資金調達に予想されるとおりの用途に使われる。同社は、今後2年間でMakelineシステムを5つの市場に展開することを想定しているというが、具体的な内容についてはまだ発表していない。

画像クレジット:Hyphen

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ペット向けの遠隔医療プラットフォーム「Dutch」が事業拡大に向けて約23億円調達

バーチャル獣医サービスを提供するプラットフォームDutchが、Forerunner VenturesとEclipse VenturesがリードするシリーズAの投資ラウンドで2000万ドル(約23億円)を調達した。サンフランシスコの同社のこの最新のラウンドは、立ち上げから7カ月後であり、調達総額は2500万ドル(約29億円)になる。Dutchは専門の獣医師を起用して、ペットとその家族にデジタルのヘルスプラットフォームを提供し、誰にとっても利用しやすいペットケアを目指している。

このプラットフォームは2021年7月に、創業者でCEOのJoe Spector(ジョー・スペクター)氏の個人的な体験がヒントになって創業された。スペクター氏がTechCrunchに語ったところによると、彼の兄が飼っていた病気かもしれない犬が放置されているのを見て、もっと簡単に治療を受けることができる現代的な動物病院が必要だと感じた。彼によると、ペットの症状が見てわかるほど重くなってから医療の必要性を意識する飼い主が多く、そんなときでも1回の受診と1回の治療費で済ませようとすることが多いが、これからの飼い主は、そんなことをすべきでない。

「何千万人もの米国人の1人として、妻と私は子犬の世話を引き受けた。ロックダウンの間、自分たちや子どものためにはテレメディスン(遠隔医療)を利用しましたが、私たちの新しい子犬に医療が必要になれば獣医の元まで連れて行く必要があります。それにはお金だけでなく、時間もかかります。人間は、赤ちゃんでさえ医師とオンラインでチャットして処方箋をもらえるのに、ペットはそれができない。日常的でよくある軽い病気なら、もっと現代的で利用しやすい、そしてクオリティが高くて信頼できる獣医さんへのニーズがあるのだと気がつきました」。

Dutchはサービス開始以来、100名の獣医師と2万5000匹以上のペットにサービスを提供している。このプラットフォームを利用するには、ペットの飼い主にいくつかの情報を提供してもらい、その後、ビデオ通話の時間を設定することができる。初回訪問を終えたら、プラットフォームを通じていつでも獣医師と再接続することができる。Dutchの獣医師チームは、かゆみ、震えや震え、脱毛、1人でいることへの恐怖、食事や栄養、新しい場所や人への恐怖、皮膚の赤みや炎症、嘔吐など、数多くの問題を解決することができる。

画像クレジット:Dutch

新たな資金の用途としてスペクター氏が考えているのは、同社の知財保護の確立、そしてペットたちの医療履歴をデータベースに保存して飼い主が閲覧したり、ペットのデータや処方を共有できるようにしたいという。また、獣医だけでなく薬剤師のネットワークを大きくして、同日または翌日配達を可能にすること。さらにまた、多様な人材の協力を求めて顧客獲得ツールを作り、同時に、現在の獣医ネットワークをもっと拡張したいとのことだ。

将来的には、会員特典を充実させるとともに、ペットの状態に合わせて顧客がコミュニケーション方法を選べるようにする予定だと、スペクター氏はいう。

「私たちにとっての究極の目標は、ペットの健康を消費者の手に委ねることです」と、スペクター氏はいう。「消費者を中心に考え、できるだけ多くのサービスを消費者の手元で、消費者の時間に合わせて提供することに力を注ぎたいと思います。商品提供や価格の透明性を高め、高い価値とカスタマイズ性を実現したい」。

DutchのシリーズA投資は、昨年発表されたJimmy Fallon(ジミー・ファロン)氏の支援による500万ドル(約5億7000万円)のシードラウンドに続くものだ。このシードラウンドはForerunner Venturesが主導し、Bling CapitalとTrust Venturesが参加している。

画像クレジット:Dutch

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hiroshi Iwatani)

遠隔地採用のスタートアップDeelの新機能は企業が暗号資産でペイロールを蓄えるオプション

2019年、Alex Bouaziz(アレックス・ブアジズ)氏とShuo Wang(シュオ・ワン)氏は、企業がコンプライアンスに基づいて世界中の人材を遠隔地から雇用し、給与を支払うことを目指すスタートアップ、Deel(ディール)を設立した。

2人のミッションは真剣そのものであり、リモートワークがこれからは主流になるというビジョンは、新型コロナの大流行よりも先にあり、新型コロナは同社の提供するサービスへの需要を一層高めることになった。

Deelは、企業が現地法人を介さずに5分以内に従業員や契約社員を雇用することを可能にすると主張している。また「ワンクリックで」で150以上の通貨でチームへの支払いが可能だとのことだ。

「私たちは、企業がどこでも誰でも雇用できるようにしたいのです」とブアジズ氏はTechCrunchに語っている。「才能はどこにでもありますが、チャンスはそうではありません。だから、我々はそれを少し平準化し、企業が誰でも採用できるようにしたいのです。ただ、もっと重要なのは、出身地に関係なく、彼らにふさわしい経験を提供することです」と語る。

ブアジズ氏は、これまで「一度もオフィスで働いたことがない」と告白するなど、確実に有言実行している。

ブアジズ氏とワン氏は、明らかに何かを掴んでいた。10月のDeelは、シリーズDで4億2500万ドル(約489億円)を調達し、55億ドル(約6331億円)と評価された。ブアジズ氏は12月に、2021年の同社が「400万ドル(約4億6000万円)から5000万ドル(約57億5500万円)以上のARRになり、60カ国以上で50人から550人以上に……そして6億ドル(約690億円)以上を調達した」と公に語っており、その成長ぶりは驚くほど透明である。

2021年、Deelは契約者向けに「Crypto Withdrawals(クリプト・ウィズドローワル)」を開始し、Deelを通じて支払われた人は、支払いの一定割合をビットコイン、イーサリアム、USDC、ソラナとダッシュで直接Coinbaseアカウントに引き出し、ほぼ瞬時に出金できるようになった。

しかし、これまでDeelを利用する雇用主は、遠隔地の従業員への支払いに暗号資産を使用するオプションを持っていなかった。

現在、このスタートアップはその使命をさらに一歩進め、企業に暗号資産で給与資金を確保する方法を提供しようとしている。まず、ブアジズ氏によると「最も急速に成長しているステーブルコインであり、ドルに固定されているため、変動する余地が少ない」ことからUSDCを利用することにした。企業がインターナショナルなチームに対して暗号資産を使って支払いを行うことは、Coinbase(コインベース)、Shopify(ショッピファイ)、Dropbox(ドロップボックス)など、Deelの6000を超える既存顧客の多くに歓迎されそうなオプションである。

Deelチームによると「柔軟性は、どこで雇うかだけでなく、どのようにチームに支払うかということでもあるはずです」とのことだ。

共同創業者のシュオ・ワン氏、アレックス・ブアジズ氏(画像クレジット:Deel)

この新しい製品機能は、暗号資産で資金を引き出すことを労働力に任せるのに対して、雇用者がUSDCでチームに即座に支払うことができるようになるという点で「Crypto Withdrawals」とは異なるものだと同社は述べている。

具体的には、USDCで資金を保有している企業は、グローバルチームの給与や支払いをまかなうために、Coinbaseのアカウントを介してDeelに直接支払いを行うことができる。企業がDeelにお金を払い込むと、契約者は暗号資産を含む150以上の通貨で出金することができる。

Deelによると、企業が主に暗号資産で業務を行っている場合、従業員に支払う前に、例えば米ドルに変換するための為替手数料を支払うことを心配する必要もない。暗号資産で直接支払えばいいのだ。

「これは、取引手数料や通貨手数料が少ないエンド・ツー・エンドの暗号資産支払い体験であり、さらに、企業や請負業者が銀行口座にお金を保持する必要性を排除します」と述べている。

Deelにとって、この動きは暗号資産の主流化における次のステップだ。

「これは暗号資産企業にとって画期的なことです」とBouazizは述べている。

Deelによると、この動きは、会社の暗号資産残高を使用してチームに支払いを行いたい企業と、暗号資産で支払いを受けたいというチームメンバーの両方からの「急増」した需要によって促されたとのことだ。例えば、同スタートアップによると、暗号資産給与支払いに対する需要は前月比10%増となった。

その他、同社が発表した愉快な統計データをいくつか紹介しよう。2021年の7月から12月の間に、支払いの2%が暗号資産で引き出された。2021年12月にDeel経由で約470万ドル(約5億4100万円)が暗号資産で従業員に支払われ、2021年11月から49%増加した。興味深いことに、暗号資産の出金の地域別内訳は、ラタム(52%)、EMEA(ヨーロッパ、中東およびアフリカ、34%)、NAM(北米)(7%)、APAC(アジア太平洋、7%)とのこと。

画像クレジット:cokada / Getty Images

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Akihito Mizukoshi)

【コラム】創業者の派手な発言は会社のためになっているのか?

1年前には、2014年に設立されたチェックアウトテクノロジー企業であるBolt(ボルト)というブランドも、その創業者であるRyan Breslow(ライアン・ブレスロー)氏もほとんど知る者はいなかった。ブレスロー氏は一見すると典型的なシリコンバレー型人物で、スマートで意志が強く、スタンフォード大学を中退してわずか2年で起業したのだ。

それが2022年1月から始まった一連の派手な発言により、Boltは突然注目の企業となり、ブレスロー氏も記者や投資家、創業者の注目を集めることとなった。

疑問は、これほどまでの論争を引き起こすことがBoltのためになっているのかということだ。

ブレスロー氏の最新の宣言は、今週の米国時間2月14日にTwitterで発表された。すでに他の企業よりも従業員にストックオプションを行使するための期間を長く提供しているBoltが、すべての従業員に対してストックオプションを行使するために会社からお金を借りる機会を提供するというものだ。この前例のない「過激」な提案は、一般社員が株式を購入する際にも、上級管理職と同じように税制上の優遇措置を与えるというものだ(早めに株を買っておけば、株の価値が上がり続ける限り、理論的には税金を減らすことができる)。

この動きを称賛する創業者は多く、その中には、継続的な収入源を持つ企業に先行投資を行うことで急成長を遂げているPipe(パイプ)の創業者でCEOのHarry Hurst(ハリー・ハースト)氏も含まれている。「はい、当然ですね!自分たちも2020年に同じことをしましたが、すばらしいものでした。正しいやり方です」とハースト氏はツイートした。

しかし、このアイデアは斬新でも賢明でもないと主張した人も多い。このような融資は、会社の株価が下落した場合、従業員を非常に不安定な財政状態に置く可能性があるというのだ。

GGV Capital,のマネージングディレクターであるJeff Richards(ジェフ・リチャーズ)氏もその1人だ。昨日コメントを求められたリチャーズ氏は我々にメールでこう返信してきた「通常は創業者の『アドバイス』スレッドにコメントすることは避けているのですが、今回は黙っていられませんでした。これは文字通り、創業者仲間に与えることのできるアドバイスの中でも最悪のものの1つです。多くの人が、ローンを抱えた社員が避けられない負の局面に対処することを助けるという、悪夢のようなシナリオを経験しています。これはただ悲しいことなのです。最も重要なのは、ライアン氏のツイートに関わらず、これは『新しい』ことではないということです。たくさんの企業がすでにこれを行っています。優れた企業がそれをしなくなったのには理由があります。それはひどいアイデアだったからです」。

SecfiのエクイティアドバイザリーシニアディレクターであるVieje Piauwasdy(ビジェ・ピアワジー)氏も同意見だ。ただしSecfiは中立な立場ではない。同社はストックオプションファイナンスの会社であり、ノンリコースローンを提供している。これは、後から一気に返済することを条件に、前もって従業員にお金を渡すというものだ。だが、PriceWaterhouseCoopers(プライスウォーターハウスクーパース)に5年間勤務した経験を持つSecfiのピアワジー氏は、ブレスロー氏が提案しているようなローンは「非常にリスクが高い」と指摘する。

「Boltが成功することを祈るだけです」とピアワジー氏はいう。「ライアン(ブレスロー氏)は、Boltが従業員の味方であることを望んでいます。しかし、将来を予測することはできません。もし、株式の価値がゼロになったとしても、何らかの形でリコースローンを返済しなければならないのです」。

27歳のブレスロー氏は2月14日月曜日のツイートで、VCが「これは災難だというだろう」と予測したが、従業員への株式ローンに関する大げさなスレッドは、これまでプレスロー氏が行ってきた他の発言を象徴しているようだ。2週間前には、やはり賞賛と軽蔑の両方を集めたスレッドで、彼は決済会社のStripe(ストライプ)がY Combinator(YC、ワイコンビネーター)のメッセージボードを支配しているという間違った非難を行い、YCはStripeのライバルたちに資金を提供する気がない(実際にはYCは提供を行っている)と主張し、Lyft(リフト)をYCの仲間だと言った(LyftはYCのアクセラレータープログラムには参加していない)。

このツイートの嵐への反響を受けて、ブレスロー氏はCEOを退任し、かねてから計画していたというエグゼクティブチェアマンに就任した。

明らかにブレスロー氏はこの勝負に賭けている。Boltは2022年1月、BlackRock、General Atlantic、Willoughby Capitalなどの有力企業から110億ドル(約1兆3000億円)の評価額の下に資金調達を完了しており、ブレスローはその25%の株式を保有していると言われている。しかし、ブレスロー氏のツイッターゲームが、顧客や投資家から会社の評価を得るためにどのように役立っているのかはわかりにくい。投資家は、140億ドル(約1兆6000億円)の評価額で会社にさらに資金を投入しようとしているとも報じられている。

ブレスロー氏の今回の発言は、非常に厳しい市場において求職者を惹きつけることを目的としたものである可能性が高いが、同時に、このチェックアウトスタートアップの中で誰が本当の責任者なのかということについて混乱を招くシグナルを、潜在的な求職者に送っているに違いない(また、同社の新CEOである元アマゾン幹部のMaju Kuruvilla(マジュ・クルブラ)氏にも、どのようなシグナルが送られているのかも気になるところだ)。

今週初めにブレスロー氏に話を聞こうとしたみたところ、彼は当面「オフライン」だという返答だった。それでも、ブレスロー氏はツイッターで話題を振りまくことをやめないだろう。今や書類上では米国最年少の億万長者であるブレスロー氏は、そのツイートの最後に、読者にフォローを求めた上で、スタートアップの作り方についての「過激な」アイデアを発表することを約束すると語っている。彼のプロフィールには、2月9日のツイートが貼り付けられていて、その使命が強調されている。

その内容は「先月はすごかった。30日でフォロワーが5万人増えた。ちなみに、フォロワー数が4000人になるのには8年かかった。教訓:自分の真実を語ると聞く人は喜ぶ」というものだ。

画像クレジット:Bet_Noir / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:sako)

Apache Arrowを商用化するデータ多用化企業Voltron Dataが約127億円調達

Voltron Dataは2021年、NVIDIAとUrsa ComputingおよびBlazingSQLの元社員たちと、Apache Arrowの共同創業者がローンチした。このグループが集まったのは、Arrowをサービスとする企業を作って、オープンソースのプロジェクトを自分で管理するのが難しい企業を助けるためだ。

Voltron Dataの共同創業者でCEOのJosh Patterson(ジョシュ・パターソン)氏によると、同社はスタンダードを広めるための企業であり、Apache Arrowで、データとアナリティクスを標準化することの威力とその認識を広めていきたい、という。

「私たちの目標は、データアナリティクスのこれまでのエコシステムに取り付いて、それをスタンダードに基づいて改善することです。これまで私たちが他の業界で何度も見てきたのは、彼ら自身がアクセラレータになってより効率的な方法を普及し、共通のビルディングブロックで業界全体を改善していく動きです。私たちが特に普及したいのも、データアナリティクスのエコシステムにおけるモジュール化と組み立て構成方式の技術です」とパターソン氏はいう。

このスタンダードの部分が、Apache Arrowの重要な役割だ。このプロジェクトのウェブサイトのFAQには、「Apache Arrowは、大きなデータセットを処理したり転送するハイパフォーマンスアプリケーションを作るためのソフトウェア開発プラットフォームで、分析アルゴリズムの性能と、異なるシステム間やプログラミング言語間でデータを移送するときの効率の両方の改善を目指している」とある。

パターソン氏によると、データとアナリティクスが進化すると開発者は、日に日に増えていく、さまざまな言語を用いた多数のシステムを互いに接続しなければならない。その巨大な難題をArrowは解決する。「このシステムとあのシステムを接続したいとき、一体何をするのか。そのためのグルーコードのリライトなんて、誰もやりたくない。そしてそんなときが、Arrowの出番だ。Arrowは今、複数のシステムを接続するためのデファクトスタンダードになっている」とパターソン氏はいう。

このオープンソースツールの人気はとても大きくて、同社によるとこれまで、毎月4200万回ダウンロードされている。SnowflakeやDatabricks、Google、Microsoftなども採用している。オープンソースのプロジェクトにしてはすごい人気であるため、Voltronのようにこれの商用化を目指す企業が現れても不思議ではない。

それに、VCたちがこのプロジェクトにお金を投じているのも当然だ。同社はシードとAラウンドで1億1000万ドル(約126億7000万円)を獲得したが、いくら投資インフレと言われる時代であっても、それはすごい額だ。

パターソン氏によると、それは明確な実用目的のあるお金だ。同社が解決を目指す問題は相当な難題であり、どれも複数の顔を持っている。そこで同社としては、それをできるだけ速くやるために投資が必要だ。

「このオープンソースプロジェクトは、パワーユーザーやエキスパートしか使わない沈滞状態になってほしくない。次の世代のユーザーやシステムビルダーやライブラリビルダーにも、その魅力が伝わって欲しい。私たちは問題点を解明して、もっと多くのツールとライブラリを作り、誰でもすぐ使えるという状態をもっと完成させたい」とパターソン氏は語る。

同社は現在、最初の商用製品を作っている。現時点で詳細はあまり語られないが、それはApache Arrowのマネージドバージョンで、オープンソース本体には触りたくないユーザーが対象だ。

同社のワークフォースは世界中に分散していて、現在100名近くの被雇用者がおり、求人も積極的に行っている。パターソン氏自身も黒人で、ダイバーシティとインクルージョンの完備した企業にしたいという。「インクルーシブは我が社にとってとても重要で、これまでのように、人種やジェンダーや性的指向がさまざまな人が入ってきて欲しい。私たちでは、誰もが認めてもらえるし誰もが力を発揮できるんだ」と。

現状は、同社従業員の20%がアフリカ系米国人、15%がヒスパニック、15%がアジア系、そしておよそ20%が女性だ。今後の成長とともに、さらにダイバーシティを充実していきたいという。

調達した資金は、2200万ドル(約25億3000万円)がシードラウンド、8800万ドル(約101億3000万円)がシリーズAだ。AラウンドをリードしたのはWalden Catalyst、これにBlackRockやAnthos Capital、Battery Ventures、Coatue、GV、Lightspeed Venture Partners、Nepenthe Capital、Redline、The Factoryが参加した。シードはBlack RockとWaldenがリードし、LightspeedとGVとThe Factoryが参加している。

画像クレジット:myshkovsky/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

企業のESGデータをシムシティのようなプラットフォームでビジュアルに表現する「Actual」

企業がどのように「ネットゼロ」経済に移行していくかについての膨大なデータを処理しようとするのは、骨の折れる作業だ。数字のみのインターフェイスは、どんなにギークなCEOであっても辟易するだろう。それを視覚的に、しかも正確に表現できたらどうだろう?

それがアイデアの芽となって生まれたActual(アクチュアル)は、膨大なデータを扱いやすいインターフェースで、しかも正確に表示するよう設計された、シムシティのようなプラットフォームだ。

Actualはこのたび、Buckley Ventures、Hyper、Wndrco、Sequoia Scout、Signalfire Scout、Craft Scoutから500万ドル(約5億7000万円)のシード資金を調達したことを発表した。環境に配慮した素材で知られる靴・アパレルのAllbirds(オールバーズ)、Giga(ギガ)、VF Corp(世界的なアパレル・フットウェア企業)、New Zealand Merino、ZQRXなどの企業が、ESGマンデートを把握するためにActualを利用しているという。

LinkedIn(リンクトイン)やAirbus(エアバス)の元社員によって設立され、サンフランシスコを拠点とするこのプラットフォームは、都市計画、ゲームデザイン、データビジュアライゼーション、科学的計画を組み合わせて、環境、社会、ガバナンス計画のモデル化と実行を行うとしている。

Actualの共同設立者であり社長のKarthik Balakrishnan(カーティック・バラクリシュナン)氏は、声明の中でこう述べている。「我々は、企業や社会的責任に関する誓約を実行しない企業が後れをとる段階に来ています。投資家はすでに、ESGスコアの高い企業を好んでおり、企業が『クリーンでない』場合、資本へのアクセスが制限されます。Actualは、企業が規制を満たすために既存のオペレーションを適合させアップデートする様々なESGシナリオを迅速にモデル化し、遅滞なく実装できるように設計されています」。

Actualは、Heighten(Microsoft / LinkedInが買収)の元CEOであるRajesh Chandran(ラジェッシュ・チャンドラン)氏、Coin(Fitbitが買収)とAltiscope(現在はAirbus UTMとして知られる)の元共同設立者であるKarthik Balakrishnan(カーティック・バラクリシュナン)博士、LinkedInの元ソフトウェアエンジニアでローズ奨学生のDerek Lyon(デレク・ライオンズ)博士が共同で設立した。

デレク・ライオンズCTOは、電話で次のように語ってくれた。「現在存在するESGツールを見ると、その多くはいわゆる『データファースト』です。つまり、多くのデータを収集することに重点を置き、カーボンAPIのようなものに入力し、それらの情報をすべて使用して、企業のESGフットプリントの現状を非常に正確に把握しようとしているのです」。

「当社のアプローチは『モデルファースト』と呼ばれるものです。顧客企業がが現在持っているデータを、たとえそれが不鮮明なものであっても、または単なる推定値であっても、それらを実際のモデルにプラグインし、ビジネスロジックや、多くの変革に重要な基礎的なサイエンスやエンジニアリングと結びつけることを可能にするモデルを構築することに注力しています。そしてそのモデルを使って、将来的に変化するであろうシナリオをモデル化することができるのです」。

画像クレジット:Actual HQ

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

自治体にオンデマンド輸送のテックを提供するカナダのRideCoがソフトウェアの拡張へ約18億円調達

自治体にオンデマンド輸送のテックを提供しているカナダのRideCo(ライドコー)は、2000万カナダドル(約18億円)のシリーズAラウンドをクローズした。RideCoの共同創業者でCEOのPrem Gururajan(プレム・グルラジャン)氏によると、新たに調達したこの資金は製品のさらなる開発に充てられ、エンジニアリングチーム、顧客サービス、営業とマーケティングチームの大幅拡大にも使われる。

Via(ビア)を最大の競合相手とするRideCoは、ソフトウェア・アズ・ア・サービスのビジネスモデルを展開している。自前の車両と、Remix買収で獲得した輸送プラニングのテックを提供しているViaとは異なり、RideCoは輸送機関や運行オペレーターに基本的なソフトウェアとアプリを提供し、そうした機関やオペレーターがRideCoの最大の顧客である自治体にオンデマンドの輸送オプションを提供できるようにする。RideCoはまた、従業員の送迎をダイナミックに行う方法を探している企業にもサービスを提供している。

このソフトウェアは、バスやその他の車両のためにダイナミックルートを作成し、需要に応じて次のピックアップ場所とドロップ場所に向かわせる。サンアントニオ、ロサンゼルス、そして直近ではラスベガスといった都市が、こうした機能を利用して、ファーストマイルとラストマイルの輸送へのアクセス問題に取り組んでいる。これは、いまだに固定ルート輸送システムが中心となっているほとんどの都市に共通する問題だ。

「例えば、サンアントニオでは、人口密度が高いため交通の便が良い地域がある一方で、人口密度が低い地域も多く、そうしたところではファーストマイルとラストマイルへのアクセスに問題があります。そうした場合、固定ルート輸送はうまく機能しません」とグルラジャン氏はTechCrunchに語った。

ダイナミックシャトルやバスは、人々が乗車をオーダーする場所や降ろして欲しい場所に実際に行くことでそうした問題を解決し、都市にこれまでよりもモビリティを生み出すことができる。

「当社のサービスを利用している自治体では、ライトレールや高速バスレーンがあり、バスが満員になるような需要がある高頻度コリドーにつながる中・低密度地域でダイナミックトランジットを利用することができます」。

乗客はアプリで車両を確認でき、事前予約やリアルタイムでの乗車予約、あるいは出勤日の毎日午前9時といった定期的な乗車予約も可能だ。

Eclipse VenturesがリードしたRideCoのシリーズAは、創業以来7年間で初の機関投資家からの資金調達だ。グルラジャン氏によると、これはいくつかの要因のためで、まずRideCoは最初の数年間、中核となるテクノロジーの構築と、特定のユースケースを解決するためのベータ版顧客とのテストに注力していた。

RideCoは、製品を市場に投入する準備ができたとき、まだ製品と市場の適合性がないことに気がついた。

「市場に出てみると、この製品に興味を持つ顧客はいましたが、全体として市場はまだ準備ができていませんでした」と同氏は話した。「アプリ主導の交通機関であるものにはまだ不安があったようですが、2018年末ごろからすべてが変わり始めました。サンアントニオのような大都市との契約がいくつかあり、それらはコスト削減と住民のモビリティ向上の観点で大成功を収めました」。

それ以来、RideCoはカルガリーやヒューストンのような大都市からオンタリオ州コブールのような小さな町まで、米国とカナダのあちこちの都市に進出している。パンデミックで交通機関が、乗客の需要パターンの変化に柔軟に対応することや、近代的ですぐに反応するネットワークへの要望に応える新しい方法を考え始めたことも、RideCoの成長を加速させたとグルラジャン氏はいう。

この1年間で、RideCoの顧客数は2倍になったが、同社はその成長の基盤を明らかにしていない。

主要な競合相手であるViaが、オンデマンド輸送のプロバイダーというよりも、総合的な輸送技術プロバイダーとして提供するサービスを多様化させている中で、RideCoはオンデマンド輸送の提供を強化している。技術の類似性から2021年に互いに特許侵害訴訟を起こしたこの2社は同じ年に設立されたが、ViaはRideCoよりもはるかに多くの市場シェアを獲得している。

RideCoは、黎明期にあるこの業界で、まだシェアを切り開くことができるかもしれない。米国とカナダの交通機関の約16%がすでにオンデマンド交通を提供しており、この数値は他の共有モビリティの形態とともに増え続けると予想される。RideCoは、現在の勢いを維持する必要がある。

画像クレジット:RideCo

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

タブレット洗剤のBlueland、使い捨てプラスチック削減促進へ約23億円調達

あなたが家で使っている掃除用洗剤の99%は水だ。そう、家の蛇口から出てくるのと同じものだ。水を運ぶなら自治体の水道システムの方が良いだろうという過激な発想で、Blueland(ブルーランド)は、使い捨てプラスチックを減らし、工場から小売店へ、そして小売店から自宅へと水を輸送する愚かさに歯止めをかけるべく、成功したタブレット型掃除用製品のライン拡大のため、2000万ドル(約23億円)を調達した。

2019年に立ち上げられたこのブランドは、さまざまな掃除用洗剤の市場にタブレット(錠剤)という形態を初めて持ち込んだ。同社の製品は、使い捨てプラスチックを永遠に排除することを約束する。創業以来40件の特許(および出願中の特許)を積み上げ、急速な成長を続けるために品揃えを増やしている。同社は2021年1年間で400%以上成長し、顧客生涯価値(LTV)が80%増加した。これは主に、製品ラインの拡大によるものだ。

今回の2000万ドルの資金調達は、消費者ブランドに特化したベンチャーキャピタルPrelude Growth Partnersがリードした。Bluelandはこれまでに、Justin Timberlake(ジャスティン・ティンバーレイク)氏、Adrian Grenier(エイドリアン・グレニアー)氏、Rent the RunwayのJennifer Fleiss (ジェニファー・フライス)氏、SweetgreenのNicolas Jammet(ニコラス・ジャメット)氏、Thrive MarketのNick Green(ニック・グリーン)氏など、業界関係者や著名人から3500万ドル(約39億円)を調達した。

「事業を始めた頃を振り返ると、共同創業者のジョンと私は、使い捨てのプラスチックパッケージをなくすというミッションに取り組んでいました。実は、それは決して掃除用洗剤に関するものではありませんでした。私たちは、自分たちが始められる可能性のあるカテゴリーや形態を幅広く検討しました。当時は懐疑的な意見が多かったですね」とBluelandの共同創業者でCEOのSarah Paiji Yoo(サラ・パイジ・ユー)は笑う。「20人くらいの投資家に、誰もエコに関心なんてない、人々が地球のために行動を変えることはない、と言われ続けた気がします」。

同社はエコを声高にアピールしている。Bコーポレーション(環境や社会に配慮した事業を行う会社)として認定され、クライメート・ニュートラル認証も受けた。1000万個以上の製品を出荷し、顧客ベースを100万人以上に拡大した企業としては、驚くべき偉業だ。その過程で、すでに10億本のペットボトルが埋め立てられるのを防いだと同社は見積もっている。

「Bluelandの高性能な製品と使い捨てプラスチックの廃止という使命は、掃除用品のカテゴリーで消費者の比類ない支持を得る結果となりました。同社は、この分野で最も急成長しているブランドの1つで、並外れた需要と極めて強いロイヤリティを有しています」とPrelude Growth Partnersの共同創業者でマネージング・パートナーのAlicia Sontag(アリシア・ソンタグ)氏は話す。「サラとジョンがBluelandを象徴的で強力なブランドへと成長させるために協力できることをうれしく思います」。

Bluelandの共同創業者サラ・パイジ・ユー氏とジョン・マスカリ氏(画像クレジット:Blueland)

ここに至るまでに、同社は技術面で大きな投資をしなければならなかった。一般的なCPG(消費者向けパッケージ商品)メーカーは製造委託先を利用し、配合も委託者任せになる。Bluelandは別の道を歩まなければならなかった。自社の仕様に合う製造委託先を見つけることができなかったからだ。

「当初、すべてを自分たちで配合しようと思っていたわけではありませんでしたが、受託製造業者を利用できるほどの余裕はありませんでした。洗浄スプレーの90%は水であることを知り、従来のやり方では意味がないと判断しました。十数社の洗剤メーカーを回りましたが、どこも私たちに頭が3つあるような、バカにしたような目で見ていました」とユー氏は振り返る。「彼らは、タブレットを作る機械を持たず、ほとんどの原料を液体で仕入れるため、私たちが必要とするものを作ることができなかったのです。それがきっかけで、奔走することになりました。製菓メーカーからビタミン剤メーカーまで、あらゆるメーカーと連絡を取り合いました。乾燥した形態で製造するメーカーなら私たちを助けてくれるのではないかと考えたのです。分かったことは、自分たちの手で製品を作らなければならないということでした。共同創業者も私も化学者ではありませんが、世界最大のナチュラルクリーニングブランドの1つであるMethod(メソッド)の配合担当ディレクターを招聘することができました。私たちは、ハンドソープからスプレー式クリーナー、洗濯用洗剤、食器用洗剤まで、さまざまな洗剤にタブレット型をいち早く市場に導入したのです。その結果、すべての製品で使い捨てのプラスチックを使用しない洗剤のトップブランドとなることができました」。

画像クレジット:Blueland

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Nariko Mizoguchi

Z世代向け音楽療法アプリのSpokeがAda Ventures主導で約1.7億円のラウンドを獲得

Spokeのチーム(画像クレジット:Spoke)

CalmやEndelといったアプリは「機能的な音」として知られるようになりつつある新しい世界を模索している。Calm(カーム)や各社が瞑想や睡眠の領域でそれを行っている一方、750万ドル(約8億6400万円)を調達したEndel(エンデル)は、仕事やその他の活動を強化するための「機能的な音」を作り出している。そして今、新しいスタートアップが「機能的音楽」と呼ぶものを立ち上げようとしており、その次の段階を後押しする機関投資家の支援を獲得している。

Spoke(スポーク)は「マインドフルネス効果」と称する音楽を生成する新しいアプリである。このアプリは、現代音楽アーティストや科学的アドバイザーとの18カ月にわたる研究開発に基づいており(臨床試験も予定されている)、主に「中高年向け」のマインドフルネスアプリやムーブメントを敬遠しがちなZ世代、もしくは25歳以下の年齢層を対象とした、マインドフルネスの要素と音楽を組み合わせたものだ。

このたび、英国を拠点とするAda Ventures(エイダ・ベンチャーズ)が110万ポンド(約1億7200万円)のプレシード投資を行い、英国の著名なエンジェル投資家が多数参加している。

AIを使って音を生成するEndelとは異なり、Spokeは臨床心理学者、セラピスト、神経科学者のチームによって訓練されたアーティストを採用し、ユーザーが望む精神状態になるように音楽を制作しており、同社は、これには治療行為と同じ効果があると主張している。

「Spokeは、音楽文化とメンタルヘルスという一見相反する世界を結びつけるものです」と、Spokeの創設者で共同CEOのAriana Alexander-Sefre(アリアナ・アレクサンダー=セフレ)氏は声明で述べている。「音楽業界は、リスナーやアーティストのメンタルヘルスにすばらしい役割を果たすことができ、根本的に変わる必要があると私たちは考えています。メンタルヘルスのアプリはたくさんありますが、十分なサービスを受けられていない世代がいます。これは私たちの第一歩です。私たちの使命は、音楽がいかにパワフルであるか、そして業界がいかに進化しなければならないかを示すことです」と語る。

Spokeによると、現在Jordy(ジョーディ)、VIC、Jamilah Barry(ジャミラ・バリー)を含む25以上のアーティストと協力しているとのことだ。おわかりかもしれないが、これらのアーティストは、瞑想アプリのような快適な世界とはかけ離れた存在であることが多い。

アレクサンダー=セフレ氏は、自ら命を絶った若者を知って、このアプリに取り組む気になったのだという。「私はこのことをとても身近に体験してきました。私が知っている最年少の若者はわずか15歳で、このことは当然、その子の身近な人たちに人生を変えるような影響を与えます」と語る。

彼女は私にこう言った。「私の最初のビジネスは、ライブ音楽とウェルビーイング体験を融合させたイベント会社でした。私は、ウェルビーイングの空間では、同じ人しか見かけないことに気づいたのです。通常、年配の女性、中流階級の女性です。ところが2017年、私の弟の親友が自ら命を絶ちました。そして、翌年中に友人の兄弟2人も命を絶ちました」。

「起こったことを本当に代謝するのに1年ぐらいかかりました。明らかに、起こったことは受け入れがたいことです。でも、それ以上に胸が痛むのは、弟とその友人たちが、学校のセラピーやカウンセリングを拒否していることだと思います。私は当時、福祉関係の仕事をしていましたが、何百万人もの人々が使っているこれらのツールのどれもが、この若者たちに文化的にフィットしていないことがわかったのです。そして、イギリスとアメリカでは、自殺者の80%が男性であり、静かな流行が起きていることを知りました。また、マインドフルネスの分野を大衆化させたと思われるCalmやHeadspaceは、25歳以上の女性に多く利用されていることもわかりました」と語る。

彼女は何千時間にも及ぶリサーチを行い「若者はヨガの先生や専門家のお坊さんのような人の話を聞くことには興味がない」けれど、ミュージシャンのような文化的リーダーには興味があることがわかった。「私が話をしたほぼすべての若者にとって、ミュージシャンが最も影響力があることがわかりました。音楽産業がウェルネスの世界にまったく入ってきていないのは、とても皮肉なことだと思いました。実際、ミュージシャンというのは、精神衛生上、最も悪い状態にある人たちです。レーベルは彼らの面倒を見てくれないのです。そこで、マインドフルネスの新しい文化として、この科学的なインパクトが証明されたマインドフルネスと、セラピー的なガイダンスを組み合わせるというアイデアを思いついたのです。Spokeは、現在のマインドフルネス・アプリの実用性と、音楽アプリのエンターテインメント性を融合させ、パーソナライズされた体験を提供するものです」と語る。

Ada Venturesの創業パートナーであるCheck Warner(チェック・ワーナー)氏は「Spokeは、若い男性のためのメンタルヘルス・セラピーという、重要かつ完全に未開拓の市場に取り組んでいます。若者、特に若い男性が精神的な問題と戦っているという日々のニュースはとても悲しく、Spokeが取り組んでいる問題の大きさと重要性を常に思い起こさせてくれます。Spokeのユニークな製品は、音楽やラップを神経科学と組み合わせることで、不安や鬱を軽減する効果のある瞑想の製品を作り出しています」と語る。

アレクサンダー=セフレ氏の共同創業者兼共同CEOは、かつてアプリ出版社Zolmo(ゾルモ)を設立した連続起業家、Michael Maher(マイケル・メア)氏だ。

Spokeのクリエイティブ・チームには、リード・アーティストのLemzi(レムジー)とエグゼクティブ・プロデューサーのDaniel Miles(ダニエル・マイルズ)氏がいる。Lemziは、イースト・ロンドンを拠点とするラップ/ヒップホップ・アーティストだ。マイルズ氏は、Ivor Novello(アイヴァー・ノヴェロ)にノミネートされたプロデューサーで、以前はSony Music(ソニー・ミュージック)と契約していた。

Ada Venturesの他、プレシードラウンドには、Bethnal Green Ventures(ベスナル・グリーン・ベンチャーズ)とエンジェル投資家のNikhil Shah(ニヒル・シャー)氏(Mixcloud共同創業者)、Marla Shapiro(マーラ・シャピロ)氏(HERmesa創業者)、Toby Moore(トビー・ムーア)氏(Space Ape Games共同創業者)、Ascension Ventures(アセンション・ベンチャーズ)のCFOのEmma Blackburn(エマ・ブラックバーン)氏、スーパーエンジェルのEd Zimmerman(エド・ジマーマン)氏らが参加している。Metail(メテイル)の創業者であるTom Adeyoola(トム・アデユーラ)氏も投資しており、現在はSpokeの会長を務めている。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Akihito Mizukoshi)

ロボット遠隔制御サービスHATSを開発するキビテクが1.5億円調達、システム開発や実証実験推進・エンジニア採用強化

ロボット遠隔制御サービス「HATS」などを開発しているキビテクは2月16日、第三者割当増資による1億5000万円の資金調達を2022年1月に行ったと明らかにした。引受先は、リード投資家のSpiral Capital Japan Fund 2号投資事業有限責任組合、また九州オープンイノベーション1号投資事業有限責任組合。

調達した資金は、システムの開発推進とともに、エンジニア採用の強化と実証実験にあて、さらなる事業の加速化を図る。コロナ禍により、非対面・非接触や遠隔操作での搬送ニーズの需要が高まっていることから、ロボット導入DX化の課題解決、ロボットのマーケット拡大に貢献するという。

キビテクが開発中のHATS(Highly Autonomous Teleoperation Service)は、様々なロボットにアドオンすることで遠隔制御を実現するサービス。各ロボットにキビテクが開発した装置をアドオンしたうえでシステムに接続することで、遠隔オペレーターがロボットを制御可能となる。

自律ロボットの場合、予想外の出来事に対応できず、頻繁な停止で作業効率が低下するなどの課題があることから、ロボット導入に踏み切ることができない現場や、導入後のロボット運用に課題を感じている現場に役立つサービスを目指すという。

またHATSの場合、現場ごとに違う様々な課題・状況に応じて人がロボットを補完する半自動化が実現でき、現場フローに沿った柔軟な対応が行える。人ならではとされていた、ロボットでは難しい作業や業界の解決に取り組むとしている。

知能ロボットの開発を行うスタートアップ「キビテク」は、東京大学の人型ロボット研究室JSK(情報システム工学研究室)出身者が主となり、2011年11月に設立。ロボット遠隔制御システムの開発・販売やロボットシステム受注開発を事業として手がけている。また、ロボティクス技術の活用とロボット遠隔オペレーターという新しいリモートでの働き方を提案し、社会課題の解決とともに、現場の人手不足といった課題の解決を目指している。

エンジニアの満足度を重視して生産性を上げるパフォーマンス管理ダッシュボード「Okay」

雇用主が「大辞職時代」における労働者の減少を何とかしようと模索し、在宅勤務の従業員をつなぎとめようとする中、Okay(オーケー)の共同創業者兼CEOであるAntoine Boulanger(アントワン・ブーランジェ)氏は「ナレッジワーカーにとって、生産性と従業員満足度の区別がなくなってきている」ことから、同社の定量的かつ共感的なマネジメント手法への需要が伸びているという。

TechCrunchでは2年前、エンジニアリングマネージャーが効果的で積極的に従事しているチームを率いるためのエンジニアリング可視化ツール「Okay」を紹介した。当時Okayは、Y Combinator(YC、Yコンビネータ)から220万ドル(約2億5000万円)の新規資金を調達したばかりだった。ブーランジェ氏は、共同創業者のTomas Barreto(トーマス・バレット)氏とともに、Boxでの出会いをきっかけにOkayを立ち上げたと語っていた。

「この2、3年で見られたのは、完全にリモート化されたチームをどのように管理すればよいのかという、人々、マネージャー、チームにとっての移行期でした」とブーランジェ氏は付け加えた。「人々は、より多くの可視性を求めており、チームで何が起こっているのかを理解したいと考えています。パンデミック初期には会議が増えましたが、人々はさまざまなことに慣れ、今はオフィスに戻ろうとする中で、同じような移行が再び起きています」。

Okayの一連のツールは、社内で構築されたツールの大部分を置き換えることを目的としており、エンジニアが生産性を感じて仕事に取り組めない原因となっている、中断された作業や不十分なツーリングの状況を把握できるようにする。同社の製品は、Googleカレンダー、GitHub、PagerDuty、CircleCIなどのソフトウェアを含む、企業の既存ツールと統合することができる。

過去1年間で、SourcegraphやmParticleなどの顧客を含め、売上と顧客数が約10倍に増加した。これは、アウトプットを測るのではなく、開発プロセスのボトルネックを特定することに焦点を当てた、エンジニアリングの生産性に対するアプローチによるものだとブーランジェ氏は考えている。

この勢いをさらに加速させるために、Okayは新たに440万ドル(約5億円)の資金を調達した。今回はKleiner Perkins(クライナー・パーキンス)が主導し、Stripe(ストライプ)のCEOであるPatrick Collison(パトリック・コリソン)氏、Plaid(プレイド)、Brex(ブレックス)、Instacart(インスタカート)の幹部らが参加した。

今回の資金調達は、統合オプションの数の拡大、新機能の追加、人材採用などに充てられる。ブーランジェ氏は、より大きな企業をサポートすることを目指している。同社が注力しているのは数百人のエンジニアを抱える企業がいる市場だが、いずれは数千人のエンジニアを擁する企業をサポートできるようにしたいとのこと。

同氏はこうも語っている。「複雑なデータを扱う製品の構築に3年を費やしたため、シニアチームにはこれに取り組んでもらい、お客様とのパートナーシップを築いてきました。エンジニアリングチーム、市場参入のための努力、そしてデザインをさらに倍増させたいと考えています。興奮しているエリアの1つは、クエリを共有する方法を確立し、社内の誰もがデータを共有できるようにすることです」。

画像クレジット:Okay

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(文:Christine Hall、翻訳:Aya Nakazato)

香港のイベントプラットフォームEventXがシリーズBで約2.8億円調達、HTCとVRで協力も視野に

EventXのCEOであるSum Wong(サムウォン)氏(画像クレジット:EventX)

各国が新型コロナ規制を緩和するにつれ、人々の活動は対面式に戻りつつある。しかし、バーチャルイベント分野は、少なくともアジアにおいては、投資家を魅了し続けている。香港を拠点とするイベント管理プラットフォームEventXは、香港時間2月16日、シリーズBでさらに800万ドル(約9億2000万円)を調達し、このラウンドで確保した総額を1800万ドル(約20億8000万円)に引き上げた。

今回の資金調達は、Hillhouse Capital(高瓴資本)のアーリーステージ投資部門であるGL Ventures(高瓴創投)が主導した。これまでの投資家には、Hillhouse Capitalの元パートナーが設立した投資会社Gaocheng Capital(高成资本)や、近年VRに力を入れている台湾の大手電機メーカーHTCなどが含まれている。EventXは、ポストマネー評価額を公表していない。

今回のシリーズBは、EventXが設立されてから8年後に実施された。これは、中国本土のバーンレートが高いインターネット企業に比べて、異例の忍耐強い資金調達ペースだ。同社は、ユーザー登録のサポートから参加者のバーチャル名刺交換まで、現実のイベントを管理することからスタートした。2020年に新型コロナウイルスが出現したとき、デジタル化のチャンスだと考え、ウェビナーやバーチャル展示会などのライブイベントをサポートするHopin(ホピン)のような新サービスを開発した。現在では、主催者がイベントを通じて新たな顧客やパートナーを開拓するリード生成機能も備えている。

対面式イベントを封じるパンデミック規制のおかげで、Hopinは最近の記憶では最も急速に成長した企業の1つとなった。しかし先週、ロンドンを拠点とする同スタートアップは、ポストコロナにバーチャルイベントへの需要が鈍化すると判断し、スタッフの12%を解雇したと報じられた。パンデミックはEventXにも恩恵をもたらし、同社プラットフォームの2021年第4四半期のオンライン参加者数は120%増加した。また、ライブイベントが元通りになったとしても、同社は長年続いてきたオフラインビジネスを維持することができると考えています。

これまでに、同社はアジアを中心に100以上の都市でイベントの開催を支援し、そのプラットフォームには500万人以上の参加者が訪れている。同社の100人のチームは、香港、シンガポール、日本、韓国、台湾に分散している。

同社は今回の資金を、買収、製品開発、人材採用、アジア(特に台湾と東南アジア)での事業拡大に充てる予定だ。また、投資家であるHTCと協力して、イベント体験にVRソリューションを導入することも視野に入れている。

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)