支払日の前に給与を現金化できるActivehoursがシリーズAで2200万ドルを調達

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次の給料小切手を受け取るまでに、2週間待つ必要がなかったらどうだろうか?

働いたあと、すぐにその分の給料が受け取れるとしたらどうだろうか?

給料担保金融業者とは違い、そのために手数料を支払う必要がなかったとしたら?その代わりに、気が向いたときに寄付をするだけでよかったとしたら?

これらがPalo Altoを拠点とするActivehoursが提供する価値である。創業から4年の同社は、ペイロールの常識を覆そうとする企業だ。そして同社は現地時間9日、Matrix PartnersがリードするシリーズAで2200万ドルを調達したと発表した。

同社のサービスはどこかATMにも似ている。ユーザーは同サービスを利用することで給与を支払日前に現金化することができ、その資金を予期せぬクルマの故障による修理費用や、期限が迫った支払いなどに充てることができる。銀行や高金利の給料担保金融業者とは違い、厄介な当座貸越手数料を支払う必要もない。このサービスには金利もかからないが、Activehoursのサービスに満足したときには寄付することが奨励されている。

Activehoursはユーザーの信用情報をチェックしていない。社会保障番号を聞くこともない。普通預金口座を持っていて仕事があれば、誰でもサービスを利用することが可能だ。どのような企業に務めていてもActivehoursを利用することは可能だが、同社はSears Holdings(SearsとKmartの親会社)をはじめとする企業と提携を結んでいる。これらの提携企業に勤めるユーザーは通常よりスムーズにActivehoursを利用することができ、未受領の給与を給与小切手が届くまえに現金化することができる。また、同社はUberとも提携を結んでおり、UberドライバーはActivehoursに自分の銀行口座番号とUberのアカウント情報を提供することで、勤務後すぐに給与を受け取ることが可能だ。

Activehoursのおもしろい機能は、プラットフォームに参加するユーザーが他の誰かの代わりに「チップ」を支払うことも可能だということだ。そして、この機能は完全に匿名で利用することができる。イメージとしては、高速道路の料金所で自分の通行料と一緒に後ろにいるクルマの分まで支払うようなものだ。

今回の調達ラウンドをリードしたMatrix PartnersのDana Stalderは、「Activehoursは、バリスタや本屋の店員、銀行の窓口係などに向けたサービスです」と語る。「クレジットカードでリボルビングローンを組んでいるアメリカ人は全体の50%です ― それに加えて、リボルビングローンを利用していない層も大勢取り込めます」。

とはいえ、手数料が無料?金利もナシ?そのようなビジネスが成り立つのだろうか。特にビジネスをスケールさせようとするなら尚さらだ。Stalderの話しによれば、Activehours CEOのRam Palaniappanがビジネスモデルのプレゼンテーションを行ったとき、Stalderもこれと同じ質問をしたそうだ。しかし、実際にユーザーは寄付をしてくれているのだと、その時Palaniappanは言った ― しかも、今では1万2000社以上の従業員が利用するサービスとなったActivehoursの売上予測をするのに十分なほど、寄付が集まっているというのだ。

Stalderは「私は本当に寄付だけでこのビジネスが成立するのかどうか疑問に思っていましたが、Ramは確かにそれが成立しうることを証明したのです」と話す。

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それはつまるところ、ロイヤルティの力なのだとStalderは言う。このことは、無期限に有給休暇を取ることができたとしても、実際にはそれまでよりも少ない休暇を取る傾向にあるということに似ている。

残念なことに、Activehoursは寄付の平均単価を公開してはいない。しかし、人々の働き方はいま急速に変化しつつあり、個人として企業と業務委託契約を結ぶ人々がこれまで以上に増えている。Activehoursはそのような状況に即したサービスであるようにみえる。実際、2020年までにアメリカ国民の40%がフリーランスとして働くようになるという調査結果をIntuitが発表している。

それに加えてPalaniappanは、現在のような2週間毎の給与の支払い方式は、時代遅れの帳簿記入システムが生んだ過去の遺産なのだと話す。

気になるのは、Activehoursがユーザーにとって良いサービスなのかどうかという点だ。たとえば、Activehoursを利用しすぎたあまりに、いざ家賃を支払う時に十分な資金が無くなってしまっていたらどうだろうか?その点についてPalaniappanは、Activehoursには予算管理の機能も備わっているため、そのような落とし穴にはまる心配はないという。また、給与小切手の額面全額を現金化することはできない仕組みにもなっている。

さらにStalderとPalaniappanは、両者ともにある点についても言及している。人々の働き方が変化し、細分化された契約取引が増えるようになれば、人々は自分たちの財政状況をより上手くコントロールすることが可能になると彼らは主張しているのだ。そして、その中心的な役割を担うのがモバイルなのだという。

彼らの主張は正しいのかもしれない。確かに、Activehoursと同じような理由からこの分野に参入した競合も存在する。PayActivFlexWageなどがその例だ。これらの企業は両社ともに、給与の支払日を待たずにそれを現金化できるというサービスを展開している。

どちらにしろ、全体で何十億ドルにもなる当座貸越手数料の支払いに苦しむ人々が彼らのサービスを試してみる気になる可能性はある。

今回の調達ラウンドをリードしたMatrix Partnersに加え、新規投資家のMarch Capitalや既存投資家のRibbit Capital、Fellicis Venturesの他、いくつかのアーリステージ投資家も本ラウンドに参加している。

Activehoursは、これまでにードラウンドで410万ドルを調達している。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

日本のCAMPFIREが約3億円を調達:レンディング事業参入とAIの研究開発へ

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クラウドファンディング・プラットフォーム「CAMPFIRE」を運営する株式会社CAMPFIREは本日、第三者割当増資を実施し、合計で3億3000万円を調達したと発表した。

今回の資金調達に参加した投資家は以下の通りだ:D4V1号投資事業有限責任組合、GMOインターネット株式会社、SMBCベンチャーキャピタル株式会社、East Ventures、株式会社iSGSインベストメントワークス、株式会社サンエイトインベストメント、株式会社セプテーニ・ホールディングス、株式会社ディー・エヌ・エー、株式会社フリークアウト・ホールディングス、ほか個人投資家3名。

また今回の資金調達に伴い、お金のデザインを立ち上げた谷家衛氏が取締役会長に、フリークアウト・ホールディングス代表取締役の佐藤裕介氏が社外取締役に、富士山マガジンサービスCTOの神谷アントニオ氏が社外取締役に、データサイエンティスト・オブ・ザ・イヤーの原田博植氏が執行役員CIOに就任する。

支援金の総額は16億円

CAMPFIREがクラウドファンディング・プラットフォームを立ち上げたのは2014年6月のこと。その後、2016年2月に共同代表である家入一真氏が代表取締役に就任し、同時期にサービス手数料をそれまでの20%から5%にまで大幅に引き下げた。同社によれば、この手数料率は国内最安値の水準であり、これがCAMPFIREの特徴1つでもある。

実際、手数料率を引き下げた頃から掲載プロジェクトへの「支援金」が急速に伸びた。現在の支援金総額は16億円で、過去4年間の支援金総額を2016年の1年で上回るほどに急成長している。

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レンディング事業への参入と、人工知能のR&D

今回調達した資金を利用して、CAMPFIREはレンディング事業への参入と、機械学習を中心とした人工知能の研究開発を行う。

レンディング事業への参入を決めた背景について代表取締役の家入一真氏は、「現状の購入型のビジネスモデルにとらわれないところにチャレンジしたかった。お金をよりなめらかに流通させることが目的」と語る。

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CAMPFIRE代表取締役の家入一真氏

もう1つの資金の使い道は、人工知能の研究開発だ。家入氏によれば、CAMPFIREはこれまでにも機械学習の研究開発を進めていたという。

具体的にはプロジェクトの審査にこのテクノロジーを利用しているようだ。家入氏は、「機械学習を利用して目視による審査を自動化することで、手数料を下げることができると考えた。これから参入するレンディングビジネスでは難しいとは思うが、これまでの購入型のクラウドファンディングでは審査をほぼ全自動化することも可能だと考えている」と話す。

機械学習の活用方法はもう1つある。それは、掲載するプロジェクトの「見た目」の改善だ。プロジェクトの支援金額はタイトル付け方や本文の構成によって大きく左右される。CAMPFIREはこれまでに同社に蓄積されたデータを分析し、支援を受けやすいタイトルの付け方やコンテンツの構成方法を提案していく。

国内におけるクラウドファンディングの市場規模は約480億円。CAMPFIREによれば、そのうちの8割が貸付型であり、今後は数千億円規模の成長が見込まれるという。CAMPFIREが次に狙う領域はここだ。

自宅でできる腸内フローラ検査サービスのサイキンソー、総額2.7億円を調達

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人間の腸内に住み着くさまざまな細菌の集合体「腸内細菌叢(そう)」、別名・腸内フローラ。健康な人も含め、あらゆる人の体に存在する腸内フローラについての研究は、ここ5年ほどで大きく進み、腸内フローラを構成する細菌のパターンを分析することによって、体質や生活習慣、特定の病気になりやすい/なりにくいといったことが分かるようになってきた。

この腸内フローラを自宅で、郵送で検査できる個人向けサービス「Mykinso(マイキンソー)」を提供するスタートアップ、サイキンソーは12月28日、総額2.7億円の第三者割当増資を発表した。引受先はREVICキャピタルとAGSコンサルティングが運営する、地域ヘルスケア産業支援ファンド、ほか事業会社だ。

腸内フローラ分析を支えるビッグデータ解析

腸内フローラ研究の近年の目覚ましい進展は、実は遺伝子解析テクノロジーの向上とリンクしている。ゲノムを読むために利用されてきたビッグデータ解析の技術を、腸内菌のDNA調査に応用することで、従来の技術では乳酸菌やビフィズス菌など、ごく少数の特定の菌の動向しか把握できなかった腸内フローラの環境の全体像が分かるようになり、そこから腸内フローラのパターンが、病気の発症に関わる重要なデータであることも分かってきている。

サイキンソー代表取締役の沢井悠氏は前職で、遺伝子解析を手がけていたバイオベンチャー、ジナリスの取締役経営企画室長として参画していた。残念ながらジナリスは2016年7月に破産しているが、遺伝子解析については、ジーンクエストやDeNAライフサイエンスのMYCODEといった検査キットが提供され、個人向けにもサービスが広がっている。

沢井氏は、研究が進む腸内フローラの解析についても「遺伝子検査サービスと同じようにサービスが提供できるのでは」と考え、2014年11月にサイキンソーを設立。2015年秋からは、郵送検査型の腸内フローラ検査キット・Mykinsoの提供を開始した。Mykinsoでは、腸内フローラを解析するためだけでなく、顧客の問診アンケートと解析データを突き合わせ、体質や生活習慣を読み解くためにも、マイニングをはじめとしたビッグデータ解析を利用しているという。

調達によりデータ収集と開発を強化

Mykinsoはサービス開始から1年少々経過した現時点で、累計約2000キットを出荷。個人向けに検査キットを販売するほか、企業向けに、機能性食品などの摂取による腸内フローラの変化を検査結果としてデータ提供したり、医師らヘルスケア専門職向けに、生活習慣改善のための提案材料となるようなデータやアドバイスの提供を行う「Mykinso Pro」も展開している。サイキンソー取締役の小河原大輔氏によれば「検査キットは個人向けのものと同じだが、Mykinso Proでは、ビッグデータを統計的に見やすくする機能をSaaSとして提供している」とのことだ。

今回の資金調達によりサイキンソーでは、腸内フローラのデータ取得を加速させ、生活習慣病や消化器疾患の発症リスク評価に、もっと活用できる質・量の情報を得たい、としている。沢井氏は「現在はキットを販売することによりデータも蓄積する形を取っているが、事例として腸内フローラデータを使いたいというところ(企業や調査機関)には、戦略的に検査サービスを提供していきたい」と話す。また、Mykinsoのサービス向上を図るため、開発も強化するという。「データそのものの質に加え、データを見やすくするためのインターフェイスの質も上げていく」(小河原氏)

「直近では、今後1年以内に検査件数1万件に到達することが目標だ。桁が上がることで、サービスのステージが変わると考えている。ただ数を集めればよい、ということでもなく、我々としては質の良いデータを集めて、数と質を追求していく」(沢井氏)

サイキンソー代表取締役の沢井悠氏(左)、取締役の小河原大輔氏(右)

サイキンソー代表取締役の沢井悠氏(左)、取締役の小河原大輔氏(右)

腸に良い生活習慣を普及させたい

「日本人の生活習慣は、生活習慣病との関連で海外でも注目されている。日本人の腸内フローラと問診アンケートのデータを集めた上で分析を進め、アジアやヨーロッパなどの海外でもサービス提供することには、意味があると考えている」と、沢井氏は海外進出にも意欲を見せる。

「腸に良い生活習慣を普及させることが、Mykinso事業の中長期的な目的」と語る沢井氏。「健康で長生きできる環境を人々に提供するために、腸内フローラの検査にとどまらず、食べ物の提案や、相談に対するアドバイスなども将来的に展開することを考えている」(沢井氏)

Mykinsoの検査キット販売価格は、1万8000円(税抜)と決して安くはない。遺伝子や腸内フローラの解析ではなく、血液検査のカテゴリーになるが、KDDIの提供するスマホdeドックやケアプロのセルフ健康チェックなど、健康状態をセルフチェックするという目的だけであれば、より安価なサービスも存在している。

こうした“健康セルフチェック”関連の競合サービスについて尋ねたところ、沢井氏は「検査にもクオリティがあって、我々は質の高いデータを取ることに重きを置いてきたので、現状ではこの価格で提供している。ただ今後は、検査キット自体の販売価格は抑えて、生活習慣改善のアドバイスといった周辺サービスをより強化して、そちらで付加価値を出していくことはあり得る」と話してくれた。

ヘルスケア関連の情報提供といえば、このところDeNAの「WELQ」で正確性に欠ける記事が掲載されていた件が問題になっていたが、このあたりの情報の正確性や医療倫理についても質問してみた。「我々が生活習慣改善のための指導を情報提供する場合には、医師などの専門家の監修を受けている。AIに頼るのではなく、正しい、質の高い指導やサービスを提供している」(沢井氏)。腸に良い生活習慣を普及させる、という目的からぶれる動きは考えていない、ということのようだ。

個人からの引き合いだけでなく、医療機関からの紹介でキットを提供することも増えているというMykinso。「医療機関やヘルスケア関連の専門職の方々とも連携して、情報提供を強化していきたい」と沢井氏は言う。「現在利用している方からは、腸内フローラが可視化できて面白い、と言われている。お腹の悩みを継続的に抱える人に利用してもらって『助かった』という声もある。もっとアドバイスがほしい、という期待もいただいているので、応えていきたい」(沢井氏)

野菜の栽培に最適な土壌を整えるー、農業IoT「ゼロアグリ」が4億円を調達

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美味しい野菜を多く収穫しようと思うなら、気温や湿度、土壌環境を知り尽くし、毎日作物に最適な水と肥料が行き渡るように調整しなければならない。水や肥料は多すぎても、少なすぎても品質の良い野菜は実らず、最適なバランスを習得するには何十年もの経験が必要だ。農家の負担を減らすため、ルートレック・ネットワークスはIoTとアルゴリズムで最適な水分と肥料を自動で計算し、農場への供給を可能にするシステム「ゼロアグリ」を開発している。本日ルートレック・ネットワークスはグロービス・キャピタル・パートナーズ、エッジキャピタル、テックアクセルベンチャーズ、オイシックスより総額4億円の資金調達を実施したことを発表した。

「ゼロアグリ」は養液土耕栽培で用いることができる、かん水と施肥の自動化システムだ。養液土耕栽培とは、ビニールハウス内で地表か地面の中に点滴チューブを設置し、そこから必要な水と肥料を作物に与えて育てる方法を指す。

これまで農家は与える水と肥料の量を経験と勘に頼って決めていたとルートレック・ネットワークスの代表取締役、佐々木伸一氏は話す。「農家ではその日の温度や湿度、作物の育ち具合などを確かめ、与えるべき水や肥料の量を調整していました。彼らの体自体がセンサーになっているのです」。水やりの作業だけでも数時間かかるが、与える水の量を決めるために作物の状態を見て回ったり、外の気温や湿度を確かめる手間も多くかかっているという。

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ゼロアグリは、農地に設置する日射センサー、土壌センサー、温湿度センサー、そして農地に水と肥料を与える液肥タンクと連携している。ゼロアグリはセンサーのデータを元に自動で液肥タンクを制御するため、かん水と施肥作業を大幅に削減することができるという。タブレット端末でデータを確認し、そこから手動で水と肥料の量を調整することも可能だ。

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農業分野では就農人口が減少し、就農者の高齢化が進んでいると佐々木氏は話す。就農人口の平均年齢は67歳で、この人たちが引退してしまうと、彼らの持つ農業の経験や知見も失われてしまう。ゼロアグリは、農家が培っていた経験や勘を栽培アルゴリズムに反映することで、技術継承が途絶えることを防ぎたい考えだ。また、農業の経験が浅い人でもすぐに収益が上げられるよう栽培をサポートすることにもなると佐々木氏は話す。

佐々木氏は2005年にルートレック・ネットワークスを創業し、機器間の通信技術(M2M)を用いた燃料電池運用管理や車両運用管理システムなどを開発していた。農業が直面する様々な課題に対し、こうしたテクノロジーを活用できないかと考え、2010年から農業分野に参入した。

農業は特にICTの利活用に対して保守的と佐々木氏は言う。その一因について佐々木氏は「農業を営む人は経営者だからです。生産した作物が収入に直結します。堅いビジネスをしようと思うと、新しいものを取り入れづらくなります」と説明する。

当初手がけたサービスは農場に関するデータを可視化するものだったが、それだけでは農家には受け入れられなかったと佐々木氏は話す。取得したデータを示すだけでなく、それを活かして次のアクションに結びつけられるサービスでなければならないと感じたという。そのためには農学の知識が必要と考え、2011年から明治大学と栽培アルゴリズムの共同開発を始めた。ルートレック・ネットワークスは現在、明治大学黒川農場の実験ハウスでゼロアグリの開発を行っているという。

ゼロアグリの価格は基本システム120万円で運用費が年間12万円だ。これは農家が1年半から2年ほどで回収できる価格だそうだ。ゼロアグリはトマトやピーマン、キュウリ、ナスなどの果菜類を中心に21品目に対応している。

現在では50件以上の農家がゼロアグリを導入しているという。かん水作業の削減、使用する肥料や農薬の量の削減に加え、収穫量の増加、作物の品質の向上につながった実績が増えていると佐々木氏は話す。

今回調達した資金は「ゼロアグリ」のアルゴリズムのさらなる研究開発、そして営業力の強化に充てる計画だ。また、日本と気候が似ているアジア地域でも展開も進めていくと佐々木氏は話している。

係争中のクラウド会計「freee」が33.5億円を追加調達、佐々木CEOが競合提訴の背景も語る

freee創業者で代表取締役の佐々木大輔氏

freee創業者で代表取締役の佐々木大輔氏

クラウド会計サービスを提供する「freee」がシリーズDラウンドとして33.5億円の追加増資を今日発表した。第三者割当による資金調達で、引受先は未来創生ファンド、DCM Ventures、SBIインベストメント、Salesforce Ventures、日商エレクトロニクス、日本生命保険相互会社、Japan Co-Investのファンドおよび事業会社。今回の増資で2012年7月創業のfreeeの累計資金調達額は96億円となる。未来創生ファンドは2015年の設立。2016年11月現在、トヨタ、三井住友銀行など17社が出資していて、2016年5月末時点で運用額は216億円。

前回のfreeeの資金調達は2015年8月の35億円で、このときのバリュエーションは約300億円。今ラウンドのバリュエーションは約400億円。また今回新たにSBIインベストメントが出資者に加わっている。

調達資金の用途としては開発、マーケティング、営業と全ての面の強化というが、freee創業者で代表の佐々木大輔CEOはTechCrunch Japanの取材に対して3つの点でサービス拡充を進めると話す。

会計、税務、労務を統合して「クラウドERP」へ進化

1つは2016年5月に発表した中堅企業向け「クラウドERP」を推進すること。freeeは企業の財務会計クラウドサービスとして発展してきたが、2014年には「クラウド給与計算」をリリース。労務管理まで含めて50〜500人規模の中堅企業向けに、管理会計分野にまで適用領域を広げていく方向性だ。これまで大企業では生産管理まで含めた本格的ERPとしてオラクルやSAPといったアプリケーションが導入されてきた。「ERPという考え方は数十人規模でも使ったほうが圧倒的に効率化できます。ただ、SAPとかオラクルといったERPアプリケーションは(高価すぎて)1000人規模の企業でも導入していません。われわれfreeeは基本利用料4000円で1ユーザー当たり300円といった価格帯です」(佐々木CEO)

一方中小企業ではこれまで、弥生やOBIC、OBCといったベンダーの個別パッケージをWindowsサーバーに入れて組み合わせて使うとか、Excelで何とかするといったケースが多かっただろう。オンプレミスの部門サーバーがクラウド(SaaSアプリ)へ移行するタイミングで、業務パッケージや個別開発の市場をディスラプトしているのがfreeeという構図だ。

給与計算や労務管理もサポートできるようになると、「社員が勤怠情報を入れると、それがそのまま財務会計に入っていくような仕組みが実現できます」(佐々木CEO)という。弥生会計で入力した会計データをNTTデータの達人シリーズという申告アプリと繋ぐといったように異なるアプリ間でインポート作業が発生するといったこともなくなるという。

2017年の年明けには法人税申告も可能な「クラウド申告freee」をリリース予定であるなど、会計→税務→労務というようにfreeeはクラウド上で対象領域を広げている。従来のオンプレミスの会計ソフトと比較したとき、金融機関連携による情報量の差も大きいと佐々木CEOは指摘する。これまでパッケージソフトの世界ではデータを手入力していた情報が、freeeでは銀行振込の詳細データがそのままクラウドに入ってきて残る。「どこの会社に売掛金がいくらあるかぐらいは今までも分かりましたが、じゃあ、この数字は合ってるのかと確認するような作業、これがクラウド上の共同作業でできるようになるのです」(佐々木CEO)。

もともとfreeeは会計や税務のプロよりも、むしろ対象ユーザーは個人事業主や規模の小さな事業者にいる経営者だという言い方をしてきた。この点については「小さな会社のほうが変わりやすい。その突き上げで世の中が変わってくるものです」(佐々木CEO)とボトムアップによる変化の構図を指摘する。実際、最近では200人規模のグループ企業の事業再生で会計の見える化のためにfreeeを導入した事例などもあるという。freee自身も、社員数270人と規模が拡大しつつあるが、経費精算はクラウドで自動化されているため経理の専任は1名。煩雑な事務作業がなく「分析ばかりやっている」という。

サービス拡充の2つ目はボトムアップの構図とも関係するが、税理士・会計事務所向け機能と、サポート体制の強化。経営分析やリスク分析機能の開発を進めるほか、地方支社の増設と人員増強を進めるという。

資金調達による投資強化の3点目はAIを活用した経営分析、未来予測。そして経理業務における人間のミスの自動検知だ。作業漏れやダブリ、ミスといったものを正しく処理する提案機能を2018年末までにサービスに入れていくという。

マネーフォワード提訴は「独自技術への投資を促すため」

freeeといえば12月8日に同業のスタートアップ企業であるマネーフォワードに対して、「MFクラウド会計」の差止請求訴訟を東京地方裁判所に提起した、と発表したことで業界を驚かせた。関係者が驚いた理由は2つある。

1つは、スタートアップ企業同士が問題を法廷へ持ち込むほど協議が不調に終わるというのが日本ではきわめて珍しいこと。この点について佐々木CEOの言い分は次の通りだ。

photo02「自動仕訳のコンセプトはfreeeの原点となるもので、プロダクトのリリース前から出願していたものです。われわれはゼロワンのイノベーションにフォーカスしてやってきています。ここはコストがかかるところです。そうやって出てきた良いものについてリスペクトするようお願いをしているということです。世の中の技術の発展を阻害しよういうつもりは全くなく、ライセンスを拒むものでもありません。囲い込みをしようとは思っていません」

ライセンスを拒まない、というのは、つまり正しくライセンスを受けるのであれば当該技術を使って構わないという意味だ。マネーフォワード側は権利侵害を否定しているが、もし仮に裁判で侵害が認められた場合には自動仕訳の特許についてマネーフォワードが対価を支払って利用するということになる、ということだ。

ただ、ソフトウェア産業で先行する米国では、むしろ特許は必要悪とみられる風潮が強い。特に近年、大手テック系企業の訴訟は減ってきている。むしろ特許は核兵器のように牽制力や抑止力として機能しているように見える。

佐々木CEOは「パテント・トロールが流行ったので悪いイメージがあるのかもしれません。でも米国の状況とは違います」と説明する。例えばGoogleが2011年にモトローラを125億ドルで買収したのは、膨大な量の特許を買うことが目的だったと言われている。独自技術に投資しているGoogleのような企業にしてみたら、抑止力として特許ポートフォリオを保持するために必要なものだった。ただ、その後Googleが濫訴しているわけではない。つまりシリコンバレーのネット系、モバイル系企業は独自技術を開発しつつ、クロスライセンスや牽制をするなどして均衡状態になっている。これは日本でも電機産業や自動車産業といったオールドエコノミーがやってきたことだが、現状の日本のスタートアップ業界はそんな状況になっていない。もっと日本のスタートアップ業界は独自技術をそれぞれが開発するべきだ、というのが佐々木CEOの主張だ。「独自技術にみんなが投資するようになればイノベーションは生まれていきます」。

佐々木CEOはゼロワンの技術開発に投資しやすい環境を作っていくのも重要だとしていて、「スタートアップ業界でもクロスライセンスが増えると良いのではないか」と話す。

産業史的な視点でみれば、佐々木CEOの言い分には説得力がある。一方、もう1つの論点については疑問の声が大きいのではないだろうか。それはfreeeの自動仕訳の特許が、そもそも特許が成立するほどの技術に思えないというソフトウェア・エンジニアたちの声だ。

freeeの特許にある「自動仕訳」とは、取引情報に含まれる文字列などから「対応テーブル」と「優先順位」に基いて仕訳項目を自動判別するというもの(参考リンク)。一方マネーフォワードが8月にアップデートした「勘定科目提案機能」は機械学習ベースのもの。つまり実装が異なる。freeeのようにルールベースのほうが実際的で精度が高い可能性もあるし、モデルと利用データの質・量次第では機械学習のほうが精度が良いのかもしれない。ここは実装次第の勝負なので両社ともに競うべきところのように思われる。

文字列をみて賢く自動仕訳する、というのはソフトウェア・エンジニアであれば誰でも思いつくことだろう。機械学習のライブラリは掃いて捨てるほどあり、やってみるだけならインターンの大学生の夏のプロジェクトレベルの話ですらある。2013年にさかのぼって考えてみれば、いまと事情が違うかもしれない。今ほど機械学習のことでネット系エンジニアたちは騒いでいなかったし、多くのライブラリは存在しなかった。であればなおさら、機械学習を適用した自動仕訳というマネーフォワードの実装に対して、2013年の権利を持ち出してfreeeが侵害を主張するのは無理があるのではないだろうか。

実際、マネーフォワード側は「当社技術は、本件特許とは全く異なるものと判断しており、フリー株式会社の主張は失当であり、特許侵害の事実は一切ないものと判断している」とのコメントを発表している

もっとも、この辺りは特許明細が主張する内容と、実際の技術詳細についての比較を行った上で法廷で議論すべきことだろう。freeeによる提訴は10月21日。12月8日には東京地裁で第1回弁論が行われ、1月20日には答弁が予定されている。今後2社の訴訟がどう推移するかは分からないが、1年から2年で何らかの結論がでるものと見られる。

フリートマネジメントのAutomileが750万ドルを調達

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 Nylander

フリートマネジメントのAutomileは現地時間23日、シリーズAで750万ドルを調達したと発表した。本調達ラウンドでリード投資家を務めたのはSaaStrで、その他にもSalesforce Ventures、Niklas Zennstrom、Dawn Capital、Point Nine Capitalなどが参加している。

Automileは車両のダッシュボードの中に取り付け可能な四角いデバイスを提供しており、ユーザーはそれを取り付けることで車両の走行距離やルートのトラッキングをすることが可能になる。このデバイス自体は無料で提供されるが、車両1台につき月額5.90ドルから19ドルのサービス利用料が発生する。

最上位のプランでは、走行距離のロギング、各種統計の表示、費用のマネジメントツール、リアルタイムのロケーション・トラッキング、事故が発生したことを知らせるアラート、リスク軽減ツール、メンテナンスが必要になる時期の予測機能などを利用できる。Automileはこれまでに6000社のユーザーを獲得しており、SamsungやNestléなども同社のサービスを利用している。しかし、主要顧客は配管工事、清掃、石油、農業、コンクリート工事の分野に属する企業だという。

「マーケットで動き回るものすべてが私たちの事業領域です」と話すのはAutomile CEOのJens Nylanderだ。

企業向け(特に修理業者、工事業者、農業分野向け)のロジスティクスビジネスは、テクノロジーがまだ浸透しきっていない分野である。Berg Insightの調べでは、米国にある商業車両のほとんど(約80%)には、まだフリートマネジメント・ツールが搭載されていない。

Nylanderによれば、Verizonが今年8月に買収したFleetmaticsなどを除き、企業向けのロジスティクス分野に注力するスタートアップは、ほとんどいないという(ディスクロージャー:VerizonはTechCrunchの親会社)。Nylanderによれば、AutomileとFleetmaticとの違いはデバイス取り付けの難易度だ。Fleetmaticが提供するデバイスの取り付けは専門のスタッフが行う必要がある一方で、Automileのデバイスはユーザー自身が簡単に取り付けることができる。

Automileが予想する今年度の収益は300万ドルで、これは昨年の80万ドルから上昇している。同社は今回調達した資金を利用してヨーロッパ地域へのさらなる拡大を目指すとともに、Palo Altoのエンジニアリングチームを強化していく予定だ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

オンラインショップ向けのパーソナライゼーション・ツールDynamic Yieldが2200万ドルを調達

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ショップのWebサイトなどを顧客別にパーソナライズすることができるツールのDynamic Yieldは現地時間20日、シリーズCで2200万ドルを調達したと発表した。

CEOのLiad Agmonによれば、彼がDynamic Yieldを2011年に立ち上げた理由は、既存のパーソナライゼーション・ツールは「さまざまな問題に対して個別のソリューションを提供する」ものが多かったからだという。

一方、Dynamic Yieldではあらゆる問題に対処できる総合ツールを提供している。このツールが提供する機能には、A/Bテスト、メッセージング、パーソナライズされた商品リコメンデーション、そして、モバイルアプリやモバイルWeb、Eメール、オンライン広告などから取得したデータによって「顧客情報を全方位から把握できる」機能などがある。

一見ささいに思えることであっても、それを顧客ごとにパーソナライズすることで収益を増加させることができるとAgmonは話す。彼が私に見せてくれた例では、Webサイトのヘッダー画像を顧客の性別にあわせて入れ替えるだけでショップの収益が増加したことが分かる ― 彼が言うように、「1回目のデートと同じで、第一印象が重要だ」ということだ。

Dynamic Yieldによれば、Eコマース、メディア、ゲーミング、旅行業界が同社の主要顧客だ。Under Armour、Rolling Stone、Sephora、CWなどが同社のツールを利用している。それらの顧客企業が抱えるユーザーは5億人を超すという。

本調達ラウンドを合わせ、同社がこれまでに調達した金額は合計で3600万ドル以上である。このラウンドでリード投資家を務めたのはVertexとClalTechだ。その他にも、新規投資家のBaidu、Global Founders Capital、そして既存投資家のBessemer Venture Partners、Marker LLP、Innovation Endevorsなども本ラウンドに参加している。また、Vertexに所属するAviad Arielと、ClalTechに所属するDaniel Shinarの2名がDynamic Yieldの取締役に就任する予定だ。

Baiduの資本参加は特筆すべき点だろう。これについてAgmonは、今回のラウンドによってBaiduとDynamic Yieldの関係がより一層深まったと話している ― 結局のところ、パーソナライズされたWeb体験を提供することでオンライン広告の効果がより高まるということだ。

「近年、Web、モバイル、そしてEメールのパーソナライゼーションはマーケッターにとって欠かせない武器となっています」。そう語るのは、Baidu USAのバイスプレジデント兼ジェネラル・マネージャーであるAlex Chengだ。「トラフィック獲得は重要である一方で、顧客は商品を購入する前にその商品のことを調べ、さまざまなインターフェイスを通してブランドとの交流を深めています。それゆえに、Webとモバイルにおけるシームレスで包括的なカスタマー・エクスペリエンスこそが、ビジネスのROIを左右する重要な要素となっているのです。私たちはDynamic Yieldが創りあげたテクノロジーに感銘を受けており、同社のプラットフォームはすべての広告主にメリットを与えるものだと信じています」。

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(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

衛星インターネットのOneWebがソフトバンクなどから12億ドルを調達

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衛星を利用したインターネットをめぐる闘いが激しさを増している。Teslaが何千もの衛星を利用したインターネットサービスを開始するための許可を米国政府に求めたと報じられてから約1週間後、そのライバルのOneWebが新たに12億ドルを調達したことを発表した。同社は2019年までにサービス開始を目指す。

今後数年間のうちに衛星インターネットを利用できる人は限られているだろうが、すでにこの分野には多額の資金が流れ込んでいる。OneWebはこれまでに、Airbus、Qualcomm、Virgin、Boeing、Coca Colaなどから5億ドルを調達している。今回の調達ラウンドをリードしたのは日本のソフトバンクで、同社からの出資金額は10億ドルだ。

今回調達した資金は、今年初めに発表されたフロリダにある衛星製造工場の「サポート」に利用される。このプロジェクトでは1週間に15機もの衛星を製造することを目指しており、その開発コストは「他社が衛星を製造するのにかかるコストの、何分の1にも満たないコスト」だとOneWebは話す。フロリダの製造工場が完成するのは2018年を予定しており、これにより今後4年間で3000人の雇用が創出されるという。

先日、ソフトバンクはアメリカに資金を投入して雇用を創出すると約束している。今回の出資によって同社はその約束を果たしたと言えるだろう。ドナルド・トランプ次期大統領との会見後、ソフトバンク CEOの孫正義氏は米国のスタートアップに500億ドルを投資し、アメリカ国内に5万人の雇用を創出すると約束しているのだ。その資金はソフトバンク本体から出資されるだけでなく、サウジアラビア政府が出資するPIFと共同で設立した1000億ドル規模のVision Fundを通して行なわれる予定だ。

「私は今月初めにトランプ次期大統領と会見し、アメリカへの投資と雇用の創出という私のコミットメントを共有しました」と孫氏は話す。「この出資はそのコミットメントの第一ステップです。アメリカは常にイノベーションとテクノロジー開発の中心地であり、当社が真のグローバル・エコシステムの創出に参加し、アメリカの成長に寄与できることを大変嬉しく思います」。

OneWebの長期的な目標は、衛星を利用して世界中に安価なインターネットを提供することだ。これにより、既存のインターネットがもつカバレッジを低いコストで広げることができ、現状のネットワークではカバーされていない国や地域でもインターネットを利用することができる。OneWebが掲げる高尚な目標は様々あるなかで、同社は2020年までにすべての学校へインターネットアクセスを提供することを目指している。また、OneWebのインターネットはIoTやコネクテッドカーなど、誕生したばかりのテクノロジーを普及させることにも役立つだろうと同社は話す。

OneWebの創業者兼会長のGreg Wylerは、同社のWebサイト上でこのように語る。「今回調達した資金、そして昨年に大きく進展した技術開発の進捗度を踏まえ、私たちがこれまでに掲げてきたものよりも大きな目標をここで発表したいと思います:当社は2027年までに情報格差をこの世から無くし、すべての人々に安価なインターネットアクセスを提供します」。

同社は2018年初めに10機の衛星を打ち上げてテストを行ったあと、その6ヶ月後には72機の低軌道衛星を打ち上げる予定だ。すべてが上手くいけば、2019年にはOneWebが提供する遅延の少ないインターネットが利用できるようになる。

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(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

ライドシェアリングで新たなユニコーンが誕生:Careemが楽天などから3億5000万ドルを調達

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2016年も残すところあと少しだが、ライドシェアリング業界に誕生したもう1つのユニコーン企業を紹介する時間はまだ残されている。エマージング市場におけるUberのライバル企業Careemは、楽天とSaudi Telecom Company(STC)がリードするラウンドで3億5000万ドルを調達したことを発表し、世界中の脚光をあびることとなった。

今回の資金調達により、ドバイを拠点とするCareemのバリュエーションは10億ドルとなる。STCが発表したところによれば、同社はCareemの発行済株式数の10%を1億ドルで取得するという。

4年前に創業したCareemは現在、11カ国47都市でビジネスを展開しており、そのほとんどがトルコ、パキスタン、北アフリカ諸国など中東の国々だ。同社が「Captains」と呼ぶドライバーの数は15万人にものぼり、すでに600万人のユーザーを獲得している。Crunchbaseによれば、Careemがこれまでに調達した合計金額は7200万ドルであり、今回の調達ラウンド(シーリズD)は同社にとって大きなステップアップだったと言えるだろう。

今回調達した資金は、主にマーケット拡大のための費用に充てられるようだ。先日Careemはトルコへの進出を発表したばかりであるが、その他にも、12月中にパキスタン、サウジアラビア、エジプトの15都市にもビジネスを拡大すると発表している。これにより100万人の雇用を創出することを目指すだけでなく、R&Dにも一定の資金を投下していくとのこと。今年の夏、Careemは中東地域における「交通関連のテクノロジー・インフラストラクチャーを加速する」ための1億ドル規模の研究計画を発表している。

Careemの共同創業者兼CEOであるMudassir Sheikhaは、プレスリリースのなかで「楽天やSTCのような世界クラスの戦略的パートナーをもつことができ、身の引き締まる思いです」とコメントしている。「彼らとのパートナーシップは新しいCareemを支える大きな力となるだけでなく、彼らがもつグローバル・テクノロジー業界におけるリーダーシップとローカルマーケットにおける豊かな経験によって、この地域に住むすべての人々の生活を改善するという私たちの目標にさらに一歩近づくことができました」。

Careemに投下される資金はこの3億5000万ドルだけではない。同社によれば、今回の調達金額はCareemが現在交渉中の5億ドル規模の資金調達の一部でしかない。この資金調達が完了するまでの具体的なタイムフレームは公表されていない。

本調達ラウンドには、UberのライバルであるLyftと南アフリカのCabifyにも出資する楽天と、中東最大の通信企業であるSTCの他にも、Abraaj Group、Al Tayyar Group、Beco Capital、El Sewedy Investments、Endure Capital、Lumia Capital、SQM Frontier、Wamda Capitalなどが参加している。

STCはこれまでにも、STC Ventures(同ファンドはSTCとは独立して運営されており、STCも主要LPの1つとして参加している)を通してCareemの株式をすでに取得している。しかし今回の調達ラウンドは、STC本体が「イノベーティブなデジタル企業への投資戦略」の一環として直接Careemの株式を取得するというものだ。

Uberがビジネスを展開する都市には中東諸国の都市も含まれているが、それだけではなく、同社とこの地域には財政的なつながりもある。Uberは今年6月、サウジアラビア政府が出資するPublic Investment Fund(PIF)から約620億ドルのバリュエーションで35億ドルを調達したと発表している。その当時、中東地域におけるUberドライバーは39万5000人だった。女性による運転が禁止されているサウジアラビアでは、Uberを利用する乗客の約8割が女性だという。

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楽天がオンライン・レンディングのKreditechに1040万ドルを出資

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ビッグデータによる審査を行うレンディングサービスを展開し、これまでにPeter Thiel、Blumberg、世界銀行のIFCなどからの資金調達を完了しているKreditechは現地時間15日、新しい戦略的パートナーの発表と資金調達を発表した。本調達ラウンドで同社に1040万ドルを出資したのは、日本のEコマース巨大企業、楽天だ。この出資は楽天が昨年にローンチしたRakuten Fintech Fundを通して行なわれた。この調達ラウンドは同ファンドによる出資の中では最大のもので、ドイツ企業に出資が行なわれたのは今回が初めてだ。

Kreditechはバリュエーションを公表していないが、私が理解するところでは、同社のバリュエーションは上昇中であり、現在は約3億ユーロ(約3億1300万ドル)といったところだろう。

Kreditechは今年初めに1億500万ドルの資金調達を完了しており、さらに、それと同規模の資金調達を近々予定していることを考えれば、今回の調達規模は比較的小さいものだと言えるだろう。しかし、この戦略的パートナーシップによってKreditechは、同社のビジネスをさらに強化することができる。

具体的には、それは2段階に分けられる。

Kreditech CFOのRene Griemensが話してくれたところによれば、楽天はルクセンブルクで金融業の営業ライセンスを取得済みであり、同社はその地域の顧客に提供するサービスの範囲を拡大したいと願っている。現在、楽天はフランスでPriceMinisterを、そしてドイツではRakuten.deを展開中であり、これらのサービスのユーザーがクレジットで大きな買い物ができるような仕組みを作ろうとしているのだ。

Rakuten Fintech FundのマネージングパートナーであるOskar Mielczarek de la Mielは、「楽天が掲げるグローバル・イノベーションのビジョンとは、最先端のテクノロジーとアントレプレナーシップによって社会に貢献することです。インターナショナルな市場で、信用供与を通して個人がもつ力を高めるというKreditechのユニークなビジネスモデルを見て、私たちはワクワクする思いでした」と語る。「ビッグデータを利用したユニークな審査モデルとテクノロジーの専門知識をもつKreditechは、すでに市場から広く認められる存在となっています。彼らに楽天が資本参加することで、Kreditechのサービスをさらに拡大することができます」。

この業務提携は、Kreditechが展開中のサービスの1つである「POSローンサービス」の強化にもつながる。これにより、ユーザーは同サービスを通して高額な商品を購入することが可能になる(ポーランドではすでに、Nasper傘下のPayUと共同して同様のサービスを開始している)。

Eコマースのマーケットプレイスとは別に、すでに楽天は静かに銀行業を開始している ― だからこそ、楽天はFintechスタートアップ専用のファンドを設立し、新しいパートナーシップの機会を探しているのだ。また、楽天がKreditechのレンディングサービスを同社のプラットフォームに統合する可能性もある。オンラインショップにおける商品の支払いでKreditechのサービスを利用できるようにするのだ。

Griemensによれば、同社は今後、ヨーロッパだけではなくアジア各国にビジネスを拡大することも視野に入れている。特にアジアの新興国がターゲットだ。今のところ、Kreditechはアジアにおけるプレゼンスをもっておらず、楽天とのパートナーシップがアジア進出の助けになるだろうと同社は考えている。

Kreditechの創業者兼CEOであるAlexander Graubner-Müllerは、「伝統的な金融サービスを利用できない層の経済的自由をテクノロジーを利用して改善するという、私たちのビジョンに楽天は投資してくれました」と語る。さらにCFOのRene Griemensは、「Kreditechと楽天は単に資本的な協力関係にあるだけでなく、私たちはこのパートナーシップがもつ将来的なチャンスを共に描いています。アジアで強力なマーケットポジションをもつ楽天は、私たちのアジア進出の助けとなってくれることでしょう」と加えた。

これまでにも、楽天はRakuten Fintech Fundを通して様々なスタートアップに出資をしている。送金サービスのAzimoへの出資ラテンアメリカのUberと呼ばれるCabifyが1200万ドルを調達したシリーズBへの参加英国のCurrency CloudのシリーズCへの参加、そして、ビットコインのBitnetへの出資(その後、楽天はBitnetを買収している)などがその例だ。

Kreditechはこれまでに合計で1億5200万ユーロを調達済みだ。

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モバイルなコミュニティを創り出すAmino Appsが1920万ドルを調達

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モバイルのオンラインフォーラムを再発明するスタートアップ、Amino Appsは現地時間15日、シリーズBで1920万ドルを調達したと発表した。

ニューヨークを拠点とするAmino Appsは元々、アニメやドラマ「Doctor Who」などのトピックにそれぞれフォーカスした個別のアプリを製作していた。しかし今年の初め、同社はユーザー自身がさまざまなトピックを立ち上げてコミュニティを作れるアプリをローンチしている。現在、同アプリには25万件以上のコミュニティが存在しており、ビーガン、スターウォーズ、バレエなど様々なトピックがカバーされている。規模の大きいものになると、10万人のユーザーが参加するコミュニティもある。

Aminoでは、クオリティの高いコミュニティが検索上位に表示されるようになっている ― 今となっては膨大な数のコミュニティが存在するようになったので、この仕組みは必要なのかもしれない。コミュニティのリーダーたちがAminoに申請することで、彼らのコミュニティをAmino認定コミュニティとして認めてもらうことができる。必ず申請しなければいけないということではないが、認定コミュニティとして認められればアプリの検索上位に表示され、アプリ内の「Explore」というキュレーション・セクションにも表示されるというメリットがある。

コミュニティの人気が高まってくると、そのコミュニティ専用のスタンドアローン・アプリが製作されることもある。Aminoはすでに、そのようなアプリを250個ローンチしている。CEOのBen Andersonは、メインのAminoアプリは「インキュベーター」であると説明する。そのインキュベーターで育てられたコミュニティは、その後スタンドアローンのアプリとして生まれ変わり、Aminoのことを知らないユーザーにもリーチできるという仕組みだ。

Andersonによれば、現在のアプリダウンロード数は1300万件で、ユーザーは平均して1日あたり60分をAminoに費やしているという。

昨年、AminoはシリーズAで650万ドルを調達している。今回のシリーズBにおけるリード投資家はGV(以前のGoogle Ventures)で、その他にも、Venrock、Union Square Ventures、Box Groupなどの既存投資家や、Time Warner Investments、Goodwater Capitalなどの新規投資家も本調達ラウンドに参加している。

以前のAminoアプリとは違い、現在では単にテキストを投稿すること以外の機能も備えられていて、ユーザはアプリ内で投票を行ったり、プロフィールをカスタマイズすることも可能だ。Andersonによれば、同社は今後も新しい機能やフォーマットを追加していくそうだ。

「この世に存在する、すべての興味関心事に対応するプロダクトを創りたいと思っています」と彼は話す。「私たちは今後もこの戦略に賭け、シームレスなコミュニティーション方法を数多く提供していきたいと思っています」。

今のところ、Amino Appsは同アプリから収益を得ていない。しかし、将来的にはコミュニティのリーダーが収益を生み出せるような仕組みを作っていきたいとAndersonは話す。例えば、リーダーがデジタル・ステッカーを販売したり、コミュニティ内に広告を表示したり、Eコマースの機能を取り入れたりすることが考えられる。そして、Aminoがその収益の一部を得るという方法だ。

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営業アシスタントAIのConversicaがシリーズBで3400万ドルを調達

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見込み客から何らかのコンタクトがあれば、営業員の出番だ。通常、自己紹介もかねた挨拶メールを送ることから始めることだろう。人工知能システムのConversicaは、このようなコンタクト初期のメールを自動化し、その後に人間の営業員に引き継ぐというシステムを開発している。現地時間14日、同社は3400万ドルの資金調達を完了したと発表した。

本調達ラウンドのリード投資家は、Providence Strategic Growthだ。その他にも、Tobo Capital、Wellington Financial LP、Recruit Strategic Partners、そしてシリーズAにも参加したKennet Partnersなどが参加している。これにより、本調達ラウンドをあわせた合計調達金額は5600万ドルとなる。

Conversica CEOのAlex Terryは、「Conversicaは会話型AIプラットフォームです」と話す。同社の主力プロダクトは、AIを利用した営業アシスタントだ。このアシスタントは人間ではないものの、自分の名前はもちろん、専用のメールアドレスを持ち、まるで人間のように企業の代表として顧客と接することができる。

Conversicaの役割は、企業のホワイトペーパーをダウンロードしたり、企業が主催したコンファレンスに参加したり、Webサイトから問い合わせがあった顧客とのコミュニケーションだ。コンタクト済みの顧客情報は営業部門に手渡され、営業プロセスが開始する。リストに顧客の名前が表示され、営業員がそれぞれの顧客の担当につくことになる。通常であれば、AIによる初期コンタクトはその後、各企業ごとに定められたワークフローへと移行する。

Conversicaの目標は、このような営業タスクを人間にとって自然な形で自動化することである。「連絡している相手がAIアシスタントであるとは気づかないでしょう。自然なコミュニケーションなのです」とTerryは話す。ConversicaのAIアシスタントは、顧客からの質問に答えたり、質問に答えられない場合には人間の営業員による電話へ顧客を引き継ぐことなどができる。

Conversicaには様々なAI関連技術が利用されている。その1つが自然言語処理(NLP)で、この技術によってAIアシスタントは顧客の言葉を「読む」ことができる。見込み客が発した言葉の背後にある意味を理解するのだ。

2つ目は推論エンジンだ。これにより、アシスタントは顧客の言葉に含まれるキーワードを探すだけでなく、そこから顧客が求めていることを正確に理解することが可能になる。言葉の内容を理解し、その内容の裏側にある感情を理解するという考え方だ。例えば、AIアシスタントが「すぐには売上につながらない」と判断した場合には、後々アプローチできるようにその顧客を「後から連絡するリスト」に加えることもできる。

最後に、このAIアシスタントは顧客からのメールの内容に対応した自然な返答を生み出すことができる。「このシステムには様々なテクノロジーが利用されています。よくある”自動応答システム”よりも、はるかに優れたカスタマーエクスペリエンスを生み出すのです」とTerryは語る。

これまでにConversicaは1000社以上のユーザーを獲得しており、同社は今後、このAI技術をカスタマーサポートの分野にも適用することを目指している。このプロダクトは現在開発中だ。

Terryによれば、Conversicaの従業員は現在140名で、年間の経常収益は1800万ドルにものぼるという。

同社は今回調達した資金を利用して、営業部門とマーケティング部門の人員を強化していく。それに加えて、新たなソフトウェア・パッケージとの統合や、パートナーシップの拡大も目指す。そして、おそらく2018年頃にはグローバル展開を開始する予定だ。

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(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

“ペット系”スタートアップのシロップ、CAVやiSGSから資金調達——保護犬猫マッチングサービス強化

左からエウレカ共同創業者 取締役副社長COO兼CFOの西川順氏、シロップ共同創業者兼代表取締役の大久保泰介氏(と社員犬のコルク)、シロップ共同創業者兼CTOの市川俊介氏、iSGSインベストメントワークスの五嶋一人氏、サイバーエージェント・ベンチャーズの竹川祐也氏

左からエウレカ共同創業者で取締役副社長COO兼CFOの西川順氏、シロップ共同創業者兼代表取締役の大久保泰介氏(と社員犬のコルク)、シロップ共同創業者兼CTOの市川俊介氏、iSGSインベストメントワークス代表取締役 代表パートナーの五嶋一人氏、サイバーエージェント・ベンチャーズ シニア・ヴァイス・プレジデントの竹川祐也氏

ペットを軸にしたサービスを展開するスタートアップのシロップ。同社は12月15日、サイバーエージェント・ベンチャーズ、iSGSインベストメントワークス、エウレカ共同創業者で取締役副社長COO兼CFOのの西川順氏ほか個人投資家を割当先とした第三者割当増資を実施した。金額は非公開だが、関係者によると数千万円規模と見られる。

シロップは2015年3月の設立。同年7月にペットとの思い出を保存・管理するアルバムアプリ「HONEY」をリリース。12月からはペットの健康管理やしつけなどの情報を伝えるメディア「ペトこと」を公開している。また2016年11月には保護犬猫と飼いたい人を結ぶマッチングサービス「OMUSUBI(おむすび)」の提供を開始した。

OMUSUBIでは、シロップが独自の基準で認定した保護団体の保護する犬猫情報のみを掲載。サイトを見て飼いたいと思った犬猫がいれば、サイト上で申請を行うことができる。その後譲渡会や面談、トライアル飼育期間を経て正式に譲渡を行う。譲渡自体には団体が任意で設定した譲渡金(寄付)がかかるが、一般社団法人「つむぎ」(12月設立予定)と提携する動物病院やペットサロンのサービスを割引料金で受けることができるとしている。

同社では今回調達した資金をもとに、OMUSUBIのサービス改善、機能開発を進めることで、殺処分問題(2015年度で犬猫合わせて8万匹以上が殺処分されているのだそう)の解決とペットを保護犬猫から飼う文化の醸成につなげるとしている。ただ正直なところ、それだけではビジネスが回るかというと難しそうだ。同社ではOMUSUBIによってペットの殺処分問題解決や保護犬猫を飼うという文化を醸成していく一方、2017年以降はペットのヘルスケア領域の課題解決に取り組むことで本格的なマネタイズを進めるとしている。

具体的には、来年夏頃をめどにHONEYとペトことのアップデートを行うほか、ペットのライフログを集積し、最適なタイミングで最適な情報や物品を提供する「飼育のトータルサポートサービスを提供していく」(シロップ)としている。

選ばれたエンジニアのみが加入できるマーケットプレイスのCodementorが160万ドルを調達

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Codementor(法人名はPeer Idea Inc.)は現地時間14日、シードラウンドで160万ドルを調達したと発表した。同社のオンライン教育ビジネスをフリーランス・ディベロッパー向けのマーケットプレイスへと進化させるためだ。

マウンテンビューに拠点を置き、台湾に開発オフィスを設けるCodementorは、シアトルのアクセラレーターであるTechStarsの卒業生だ。本調達ラウンドでリード投資家を務めたのはWI Harperだ。Codementorはこれまでに、Techstars500 Startups、そして個人投資家などから120万ドルを調達している。

Codementorの創業者兼CEOであるWeiting Liuは、「創業した当初のCodementorは、コーディング・ブートキャンプのようなものでした。しかし、オンデマンドでメンターを提供するというサービスは、既存のオンライン学習サービスの隙間にあるギャップを埋めることができる1つのピースなのではないか、ということに気がついたのです」と語る。

WI HaperのパートナーであるYvonne Chenは、今後Codementorはマッチング・アルゴリズム強化に注力すべきだと話す。同社のマッチング・アルゴリズムでは、助けが必要なプログラマーやフリーランスの人材を求める企業と、能力のあるエンジニアを自動でマッチングさせることができる。

「成功するための鍵となるのは流動性です」とChenは語る。「様々な専門分野を持つディベロッパーとマッチングさせるまでの時間を短縮するために、経営資源を投下するのです。これが実現すれば、今後10年間におけるエンジニアリング人材と企業との協働のあり方を、大きく変えることができるかもしれません」。

Codementorには現在、助けを求める1万5000人のプログラマーと5000人のベテラン・ディベロッパーがいる。彼らの専門分野となるプログラミング言語は様々だ。

Codementorのメンターとして認定されるためには、ビデオ面接に合格する必要があり、他のディベロッパーから高い評価をつけられた者でなければならない。他のディベロッパーから高い評価を受けた上位2%のメンターのみが、Codementorで仕事を受注できるという仕組みだ。

Codementorの競合となるのは、数多くあるフリーランス・マーケットプレイスや、ソフトエンジニア向けの求人を掲載している求人サイトなどだ。その一部の名前をあげただけでも、Freelancer.com、GitHub Jobs、Guru.com、Upwork、Topitalなど、様々なサービスがある。

Weitingは、招待されたエリート・フリーランサーしか加入できないマーケットプレイス、そして、それにメンターシップを組み合わせた同社のハイブリット・モデルこそが競合他社との違いであり、それこそがエンジニアの卵やベテラン・エンジニアたちを惹きつける要因になると主張している。

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(翻訳: 木村拓哉 /Website /Facebook /Twitter

VRゲームのSurviosがMGM、電通ベンチャーズなどから5000万ドルを調達

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ハリウッドとVRの恋愛関係が続いている。

VRゲームのSurviosは現地時間13日、合計2回のラウンドを通して総額5000万ドルを調達したと発表した。2回のうち1回のラウンドでリード投資家を務めたMGMがその大部分を出資している。もう片方のラウンドにおけるリード投資家はLux Capitalだ。その他にも、Shasta Ventures、Danhua Capital、Shanda Holdings、Felicis Ventures、電通ベンチャーズも本ラウンドに参加している。

Surviosは今回のラウンドについて多くを語っていない。特にMGMの資本参加に関連する情報については口を閉ざしている。その中でSurviosは、このパートナーシップによって同社は「バーチャルリアリティのコンテンツ製作業界で主導権を得るという目標に、私たちを近づけてくれる」とコメントしている。本ラウンドにより、MGM CEOのGary Barberが同社の取締役に就任している。

2015年、MGMはインタラクティブな動画製作を手掛けるInterludeにも出資している。Interludeが製作する動画のエンディングは、ユーザーの行動によって変わるようになっている。

オンデマンドの動画サービスやストリーミングビデオが人気を集め、以前よりも映画館に行って映画を観るという人が少なくなった今、ハリウッド業界はバーチャルリアリティの出現をチャンスと捉えている。映画館ならではのプレミアムでアーケード型の映画鑑賞体験を復活させるためだ。

現在、ハイエンドのVRシステムは約1000ドル以上で販売されている。Surviosが発売するVRゲームの「Raw Data」はHTC Viveでプレイすることができるゲームだ。HTC Viveの販売価格は799ドルで、ハイエンドなゲームPC環境を必要とするシステムだ。コンシューマー向けヘッドセットの普及はアナリストの予想よりも遅れている。知名度の高いヘッドセットの販売価格は、まだ高いままだ。

Survios CEOのNathan Burbaは「ローケーション・ベースのエンターテイメントがもっと普及してほしいと思います」とTechCrunchとの取材の中で話す。「(ロケーション・ベースのエンターテイメントは)人々を媒体に誘い込むには欠かせない方法です。それが普及することで、私たちがリリースする作品の上に追加的な収益構造を築くことが可能になるのです」。

Surviosの「Raw Data」は、現存する様々なゲームタイトルの中でも、素晴らしい販売記録を最速で樹立したタイトルの1つだ。同タイトルはSteamストアのHTC Viveコーナーにリリースされてから1ヶ月あまりで100万ドル以上の収益をあげている。

今回調達した資金の用途は様々ある中で、同社はこの資金を利用してゲームタイトルの追加やゲームジャンルの拡充を目指すと話している。

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(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

Jay-Zも出資する「プライベートジェットのUber」、JetSmarterが1億500万ドルを調達

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プライベートジェットのマーケットプレイスを展開するJetSmarterは現地時間12日、シリーズCで1億500万ドルを調達したと発表した。JetSmarter CEOのSergey Petrossovによれば、プレマネー・バリュエーションは15億ドルだったという。

今回の大型ラウンドで調達した資金を使用して、同社はアジアとラテンアメリカ地域へのビジネス拡大を目指す。同時に、アメリカ国内のフライト数とルート数の拡大も予定している。

先日TechCrunchでも紹介したJetSmarterのアプリでは、同社のマーケットプレイス上にあるプライベートジェットの予約をすることができる。ユーザーに付き添う人の数が多ければ、ジェットを貸し切りで利用することも可能だ。

アプリのダウンロード自体は誰でもできるが、実際にJetSmarterのサービスを利用する前には、軽いバックグラウンドチェックと、「コア・メンバーシップ」として初年度に1万5000ドルを支払う必要がある。メンバーシップに加入したユーザーは以後、さまざまな経路を飛行するプライベートジェットを「無料で」予約することができるが、メンバー以外の人が同乗する場合には同乗者用の運賃を支払う必要がある。ジェットを貸し切る場合にも料金が発生する。

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JetSmarterのアーリーステージから出資をするサウジアラビアの王族メンバーと、ヒップ・ホップ界のスターであるShawn “Jay-Z” Carterは、今回のラウンドで出資比率をさらに高めている。

本ラウンドから資本参加している新規投資家は、アブダビを拠点とするエクイティファンドのJetEdge、ロンドンのKZ Capital、そして、名称非公開のカタールのプライベート・エクイティファンドと戦略的投資家たちだ。

現在、JetSmarterのサービスはビジネス旅行や観光旅行のハブであるニューヨーク、シカゴ、フォートローダーデール、ラスベガス、アトランタ、ロンドン、パリ、モスクワ、ドバイ、ミラノなど、50の地域で利用することができる。Petrossovによれば、同社は2017年の終わりまでに80から100の地域でサービスを展開することを目指している。

また、JetSmarterはアメリカ国内におけるフライト数の拡大も目指しており、フロリダ-ボストン間、ニューヨーク-ワシントンD.C.間、サンフランシスコ-シアトル間のルートなどを今後追加していく予定だ。

今回の資金調達の発表にあわせて、XOJETのプレジデント兼CEOであり、プライベート・エクイティファンドのTPGでシニアアドバイザーを務めるBradley Stewartが、JetSmarterの取締役に就任したことも発表されている。JetSmarterは以前からXOJETと業務提携しており、このパートナーシップによって同社は北米地域のフライト数を拡大することができた。

JetSmarterと競合関係にあるのは、定額制の「飛び放題」サービスを提供するSurAir、JetSmarterと同じくメンバーシップ制を採用しているWheelsUpStrataJetなどがある。

Jay-Zも出資していたBlackJetやBeaconなどの同業他社が失敗していくなか、JetSmarterはプライベートジェット業界で急速に成長を続けている。

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JetSmarter CEOのSergey Petrossov

「私たちは同業他社とは違います。JetSmarterでは予測アルゴリズムを利用して需要を予測し、それを地域ごとに把握しています。これにより、各マーケットが供給過剰の状態になるのを防ぎ、そこにある需要にちょうど見合った分だけフライトを供給することができるのです。他社はフライトを過剰に供給してしまう場合もあり、座席利用率が20%ということもあります。私たちはジェットを回送させることはありません。そして、フライトの座席利用率は90%です」とPetrossovは語る。

JetSmarterは自社でジェットを所有していない。その代わりに、自社でパイロットを雇い、ジェットのオーナー、オペレーター、キャリアと共同でジェットの管理と整備を行うことで、規制の多い航空業界のコンプライアンスに対応している。

Petrossovや投資家は、ソフトウェアを活用して固定資産をできるだけ減らしたJetSmarterのビジネスモデルを「空のUber」と比喩することが多い。

同社はUberと同じく、サービスの「オンデマンド性」を強化していきたいと考えている。メンバーシップに加入していないユーザーでも数種類のフライトを利用できるような仕組みだ。可能性として、メンバー以外のユーザーが1マイルあたり1ドルの運賃でボストン-ニューヨーク間のプライベート・フライトを利用できるようなサービスが考えられるだろう。

Petrossovは、「私たちがやろうとしているのは、空の旅の楽しさを復活させることなのです」と語る。

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(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

お酒の在庫管理を助けるIoTデバイスのNectarが455万ドルを調達

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全国のバーは、誤ったお酒の管理の仕方のせいで何十億ドルもの損失を出している。それに加えて、お酒を注ぎ過ぎたり、お酒をこぼしたり、お酒が盗まれるなんてこともある。

IoTデバイスのNectarは、Palo Altoにある歯医者のオフィスに拠点を構えるスタートアップだ(よりによって、なぜそんな場所なのかと思ってしまうが)。同社は現地時間8日、シードラウンドで455万ドルを調達したと発表した。本ラウンドに参加した投資家は、Joe Lonsdale(8vVC + Palantir)、Lior Susan(Eclipse Ventures)、そしてModelo Group(酒造場)の創業家メンバーなどだ。同社は今回調達した資金を利用して、ホスピタリティー業界や消費財業界向けのIoTデバイスの開発を完了する予定だ。

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どんなプロダクトなんだ!?!?!?

私はNectarの本社を訪れ、共同創業者のAayush PhumbhraとPrabhanjan “PJ” Gurumoanの2人に取材をすることにした。この取材は、同社のプロダクトに対するちょっとしたデューデリジェンスの意味も込められている。同プロダクトの詳細はまだ公表されておらず、この記事でもまだ詳しいことはお伝えすることはできない。ただ、彼らが解決しようとしている社会的な課題はしっかりと定義されており、彼らのアプローチは科学的で、かつ「痛み」の少ない低侵襲なアプローチである ― この2つの単語が同じ文の中にあることは稀だ。

お酒の入ったボトルがもつ価値は、その仕入れ価格とイコールではない。そのボトルは将来の売上を生み出すものなのだ。ラフロイグ(お酒の一種)が750ミリリットル入ったボトルを40ドルで購入し、顧客に提供するときに注ぐお酒の量が1杯あたり44ミリリットルだった場合、そのボトルには17杯分のお酒が入っていることになる。コストの5倍の値段でお酒を提供する場合、40ドルで買ったボトルは将来200ドルの収益と、160ドルの利益を生み出す可能性をもっている。大規模のバーになると、そういったボトルを何百本もストックしている店もある。だから、少しの「お酒の注ぎすぎ」でも、それを合計すると何千ドルもの損失につながってしまうのだ。

現存するソリューションでは、バーのオーナーにかかる負担は大きく、彼らは毎日のルーティン以外の作業を追加でこなさなければならない。そのようなシステムの中には、高価な重量計を利用して在庫のトラッキングを行うものもあれば、スマートフォンのカメラを利用するものもある。だが結局のところ、そのようなシステムはすべて、オーナーに負担を強いる「侵襲性の高い」ソリューションなのだ。

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在庫を管理するための、マンパワーを利用した古びたシステム

何百万ドルもの費用と従業員のマンパワーを利用して、バーのオーナーたちが自分たちで課題を解決しようとしていることは言うまでもない。右のチャートにあるように、様々な従業員がお酒の在庫管理に関わっている。ある人は発注すべきお酒の種類を一覧化し、またある人はマーケットのトレンドを把握するために何日もの時間を費やしている。それに加えて、他の従業員の仕事に漏れがないかチェックするためだけに存在する役割もある。

Nectarが開発中のプロダクトは、Amazon Dashと似た役割をもつデバイスだ。発注プロセスにある様々な障害を取り除き、在庫情報をリアルタイムに把握できる効率的な方法を提供することが、このデバイスの目的だ。NectarとDashの違いは、デバイスがトラッキングする情報の量だ。洗濯用洗剤「Tide」を注文できるDashを利用するとき、「洗剤が減ってきているから注文しなければ」と考えるのは人間だ。一方でNectarでは、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせることで在庫状況のトラッキングをし、その情報を元にしてシームレスにお酒を発注できるシステムを開発しようとしている。

創業者のPhumbhraとGurumohanの2人は、これまでにもスタートアップを立ち上げた経験をもつ連続起業家だ。Phumbhraは過去に、教科書レンタルサービスのCheggを共同創業してIPOを経験し、Gurumohanはエンゲージメント・プラットフォームのGenwiを立ち上げている。2人ともお酒はあまり飲まないということだが、お酒を注ぐという作業から解放されるために、それ専用のロボットを製作したのだとか。

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Nectarの共同創業者の2人

Nectarによれば、バーやレストランのために在庫管理の手助けをすることが彼らの短期的な目標ということだが、長期的な目標は業界全体の需要予測をすることだという。そのためには、従来のプロセスをオンラインに移行することによって得られるデータが重要な役割を持つ。他の商品とは違って、アルコール飲料であるコニャックをFacebookのNews Feedから注文することは(まだ)できない。Nectarがデータを利用してお酒の需要予測をすることができれば、酒造業者にとって非常に魅力的な情報を提供できることになる。同社のプロダクトの詳細は、まもなく公開される予定だ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

TV視聴アプリのMolotovがコンテンツをクラウドに保存できる新機能と、2330万ドルの資金調達を発表

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フランスを拠点とするMolotovがローンチしたのは5ヶ月前だが、プロダクトのコアとなる機能はまだ利用することができなかった。今後、Molotovのユーザーは気になるTV番組や映画をブックマークして、後から視聴することが可能になる。また、新機能のリリースに加えて同社は2330万ドルを調達したことも同時に発表している。

私はこれまでにもMolotovを紹介する記事をいくつか執筆してきたが、このプロダクトは2016年で最高のTV視聴方法だということを、もう一度述べておきたい。実際、私がApple TVを利用する際にこのアプリは無くてはならないものとなった。

フランスのユーザーからの注目を集めているMolotovだが、現在のところ同プロダクトを利用できるのはフランス国内のみとなっている。だが、それでもMolotovの事をチェックしておく価値はある。様々なスタートアップやTVネットワークがMolotovと似たサービスをそれぞれのマーケットで展開しつつあるのだ。同アプリはフランスのApp Storeから「アプリオブザイヤー」の称号を獲得し、フランスのPlay Storeでも「ベストアプリオブザイヤー」としてノミネートされたアプリの1つだ。

良く統合されたMolotovのインターフェイスでは、その時に放送中のTV番組を視聴できることはもちろん、時間を巻き戻して番組の始まりから視聴を初めたり、放送後から数日たった番組であれば、過去に放送された番組を視聴することもできる。

しかし、もしユーザーがある番組を保存しておいて、6ヶ月後に観たいと思っている場合はどうだろうか?VHSで番組を録画できた時代には、そのニーズを満たすことは簡単だった。しかし、TV番組を携帯電話やコンピューターで観るようになった現代では、それは難しい。

Molotovを利用すれば、気になる番組をブックマークしてクラウドに保存しておくことができる。この機能が各種の法律に抵触しないことを確かめるために数ヶ月もの時間を費やしたが、ついにMolotovはその新機能をリリースすることとなった。一度ブックマークした番組は、様々なデバイスを利用して後から視聴することができる ― 必要なのはログイン名とパスワードだけだ。

ただし、このブックマーク機能を禁止しているTVネットワークもある。C8, CStar, I-Téléなどを運営するCanal+や、BFM TVなどを運営するNextRadioTV、そしてArteなどがその例だ。また、TF1などが製作した番組では放送中の番組を巻き戻して視聴することはできない。MolotovがTV業界にとって急進的なプロダクトであることは間違いないだろう。

コンテンツのプロバイダーたちは今でも、自分たちで何らかのソリューションを開発し、それによって大量の視聴者を獲得できると思っている。だが、Molotovが素晴らしいのは、それぞれのTVネットワークごとに存在する12ものアプリをダウンロードする必要や、どの番組がどのネットワークで放送されている番組なのか覚えておく必要がないという点だ。Molotovを使えば、フランスで放送されている全てのコンテンツを検索することができるのだ。

同社は本日、既存投資家のIdinvest、名称非公開の新規投資家とエンジェル投資家、そしてSky(この出資はすでに発表されている)とTDFから2330万ドルを調達したことも発表している。

現在、MolotovはiPhone、iPad、Androidデバイス、macOS、Windows、Linuxに加えて、比較的新しい機種のLGとSamsung製のTVで利用することができるだけでなく、Chromecastにも対応している。基本料金は無料だが、プレミアム会員になることで追加のチャンネルを加えたり、クラウドのストレージ容量を増やすことができる。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

Jason Goldbergが次に仕掛けるソーシャル・アプリの「Pepo」がシードラウンドで235万ドルを調達

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人々から注目を浴びた数々のスタートアップ(Fab.comFabulisJobster)の創業、そして、事業の失敗やピボット(HemFab.comFabulisJobster)などで有名なJason Goldbergは、今年初めにPepoを創業してもう一度闘いの舞台に立つことになった。ソーシャル・メッセージングアプリのPepoでは、特定の興味に関する情報を掲載したり、その情報を読んでリアクションを残すことができる。そして今日(現地時間6日)、Pepoはシードラウンドで235万ドルを調達したと発表した。

起業家が一度でも失敗すれば、投資家に必ず悪い印象を残すことになると考えている読者がいれば、Goldbergのストーリーによく耳を傾けてみてほしい。

今回のラウンドに参加した投資家たちは、かつてGoldbergが創業したデザイン・マーケットプレイスのFab.comに、合計で約3億ドルもの資金を出資した者たちだ(Fab.comはその後PCHに投げ売りされることになる)。今回のラウンドでリード投資家を務めたのはTencentで、この他にもGreycroft、Vectr、Correlationなども本ラウンドに参加している。Goldberg自身も今回の出資に加わっている。

かつてFab.comに出資していた投資家や、同社の取締役だった者のなかで、今回のラウンドに参加しているのは、TencentのJames Mitchell、OrienteのGeoff Prentice(前職はAtomico)、Allen Morgan、David Bohnett、Howard Morgan、Nishith Shahなどの投資家たちだ。先週TechCrunchが実施した取材によれば、10名いたFab.comの元取締役のうち7名が今回のラウンドに参加していることになる。

彼らがもう一度Goldbergを支援しようと決断しただけでも驚くべきことだが、実際には、彼らから最初に提示された金額は、最終的に合意に達した金額よりも高かったそうだ。(Pepoのチームメンバーは、かつてGoldbergと共にFab.com、Jobster、Socialmedianなどのスタートアップを運営していた)。

「より大きな金額での出資も提案されましたが、ゆっくりとしたペースで進めていくことにしました」とGoldbergは話す ― 彼が今日登壇していたTechCrunch Disrupt Londonでの会話だ。同社がアプリを最初に公開したのは今年2月で、それ以降の運営資金はGoldberg自身が負担していたという。

なぜ投資家たちは、3億ドルもの資金を燃やし尽くした張本人であるGoldbergにもう一度賭けてみる気になったのだろうか。考えられる理由の1つは、逆境にも負けないGoldbergの精神力だろう。彼は、自分が犯した失敗をとてもフランクに、そしてオープンに語る人物だ。

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また、ソーシャルの要素を加えたデザイン・マーケットプレイスであるFab.comと、(少なくも今は)ソーシャルにEコマースの要素を少し加えたPepoは、まったく異なる分野のプロダクトだということも理由の1つとして考えられるだろう。

そして、少なくとも今のところはPepoが順当な成長を続けているというのが3つ目の理由だ。

Goldbergによれば、同社はマーケティング活動をほとんど行っていないにもかかわらず、「Cooking」カテゴリーでは1万2000ビュー、「food food food」では4000ビュー、「Global Gay Travelers」では1万8000ビューを記録しているという。Pepoを新しく利用するユーザーの50%が、その後毎週Pepoを利用するようになるそうだ。加えて彼は、多くのダウンロード数よりもエンゲージメントの方が重要なのだと語っている(多くの場合、ダウンロード数はユーザーからの興味を継続的に惹きつけていることを表す指標ではない)。

Pepoのコンテンツは数種類のカテゴリーに分けられている。Pepo側が設定したカテゴリーもあれば、ユーザーが作ったカテゴリーもある。

Pepoでは、観光地、ホテルに備え付けのジム(創業者のJason自身が作成)、料理、食べ物関連、ファッション、テクノロジーなど様々なカテゴリーがカバーされている。それぞれのカテゴリー内では、Pinterestのような形で、テーマに関連する写真や動画、リンクなどが流れてくる。ユーザーはアイコンなどを利用してコンテンツに反応したり、質問をすることができる仕組みだ。

アプリの完成度について聞かれれば、「まだアーリーステージの段階だ」と私は答えるだろう:料理カテゴリーを例にすると、アプリには様々なユーザーから投稿された料理の写真が並んでいるが、レシピや作り方についての情報はほとんどない。また、そのような情報をユーザーが簡単に加えられるようなツールも不足している。

このアプリにはPinterest、Facebook、Instagramなどの強力な競合がおり、特定のグループ向けのコミュニケーションツールを構築して失敗した企業もいる(Snapguideの失敗は、そのような例のほんの一部だ)。それについてGoldbergは、Pepoは「自分が情熱を捧げるプロジェクト」なのだと話す。何か新しいことに挑戦するための理由付けは数多くあるが、そのどれにも劣らない強力な理由だ。

Goldbergは技術的な挑戦やチャンスへの対応の仕方に関して、人情味にあふれる意見を持っている。Pepoを創業したきっかけについて聞かれた彼は、自分のお気に入りのスナックを見つけようとインターネットで検索したときの経験がきっかけだったと話す。

「Pepoのアイデアは、私が情熱を捧げるものの1つを追い求めていた時に生まれました。アボカドトーストです」と彼は語る。

「昨年のクリスマス、私は夫と一緒にシドニーに旅行に行きました。その時、私たちはアボカドトーストが食べたくて仕方がありませんでした。Googleで検索してみましたが、そこで見つけたスタティックな情報に私たちは満足することができませんでした。Facebookでも美味しいアボカドトーストを食べられる場所を教えてほしいという投稿をしましたが、投稿はどんどん下に流れていってしまい、情報を知っている人にそのポストがリーチすることはありませんでした。その経験から私が思ったのは、自分たちと同じようにアボカドトーストが大好きな人と即座につながることができ、世界中にいるアボカドトースト愛好者とメッセージのやり取りもできるような場所があるべきだということでした。つまり、自分の友達や、そのまた友達、近くにいる人たち、ユニークなものに対する情熱や専門知識を持つ人たちなどと、即座につながることができ、情報が消えることがなく、いつでも検索可能なメッセージング・プラットフォームです。そのようなサービスにおいて、美味しいアボカドトーストを探すことは、無数に存在する使い方の1つでしかないのです」。

今後、無料アプリのPepoはスポンサーチャンネルを開設したり、「ネイティブ広告」などを利用したマネタイズ方法を検討していく。Pepoのスポンサーチャンネルを開設するため、Goldbergは様々なブランドと話を進めている最中であり(ブランド名は明かさなかった)、これが実現すればPepoのコンテンツ強化につながるだろう。また、Pinterestなどと同様に、ブランドにモバイルメディアへ露出する機会を提供することにもなる。

Goldbergが好んで話に取り上げるのが、Twitterの共同創業者がローンチしたMediumだ。「Mediumはパブリッシャーやライターたちにフォーカスしており、それが上手くいっているおかげで、パブリッシング分野においてはFacebookなどの動向を気にする必要がありません」と彼は話す。「私たちは、ユーザーが特定の分野に関わるコンテンツを書いたり、写真を投稿したりすることができるベストな場所を提供していきます。特定の話題について話したり、ユーザーが情熱を捧げるものについて話しあったりする際に、ユーザーから最も選ばれるプラットフォームになりたいと思っています」。

彼がDisrupt Londonに登壇したときの様子は、この動画で観ることができる:

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

少ないデータ通信量でハイクオリティな360度ビデオストリーミングを可能にするVisbitが320万ドルを調達

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バーチャル・リアリティは多くの人々を巻き込む革命だ。PC部品の製造業者は、ハードウェアがもつスペックのリミットをもう一度引き上げなければならず、この革命は彼らをもう一度復興させるきっかけとなるだろう。また、ISPはユーザーがストレスなくVRコンテンツを楽しめるように、従来より高速のダウンロード速度を提供するという圧力がかけられるようになる。

それが実現するにはまだ時間がかかる。だが、今回紹介するVisbitはVR業界に”今”存在するギャップを埋め、VRコンテンツがユーザーのデータ通信量を使いきってしまうことがないように、速度の遅いインターネットでもハイクオリティな360度ビデオのストリーミングができるソリューションを生み出した。

カルフォルニア州にあるSunnyvaleを拠点とする同社は現地時間6日、Presence Capital、ZhenFund、Colopl Next、Amino Capital、Eversunny Limitedなどが参加したシードラウンドで320万ドルを調達したと発表した。本ラウンドにはアメリカと中国のVCが入り混じっており、これは同社がもつグローバルな野望の表れだ。

Visbitは今回調達した資金を利用して、現存する技術よりも大幅に少ないデータでハイクオリティな360度VRビデオのストリーミングを可能にするという彼らのプロダクトを、より早い段階で市場に送りだす構えだ。

同社のテクノロジーはFacebookの「ダイナミック・ストリーミング」技術に似ている。ダイナミック・ストリーミングとは、360度ビデオをストリーミングする際にユーザーが向いている方向だけを高解像度で描写するという技術だ。ユーザーが360度ビデオ内で視線を動かすと、Facebookは”ダイナミックに”ストリーミング映像の解像度を調整し、ユーザーが向いている方向の映像だけを最大の解像度で描写するのだ。これにより、4Kビデオのストリーミングに対応していないインターネット環境でもハイクオリティな映像体験を楽しむことができる。

ダイナミック・ストリーミングが機能するのはFacebookのプラットフォームだけだ。その一方でVisbitは、「Visbit View-Optimized Streaming(VVOS)」と呼ばれる同プロダクトのライセンスを360度ビデオのコンテンツ製作者に販売する予定だ。そうすることで、コンテンツの製作者は任意のプラットフォームでこの技術を利用できるようになる。現在のところ、同プロダクトはモバイル・プラットフォーム上の4Kビデオや8Kビデオのストリーミングにフォーカスしている。Gear VRなどのプラットフォームがその例だ。

共同創業者兼CEOのChangyin(CY)Zhouは、以前にはGoogle XとMicrosoft Researchでコンピュータービジョンとビデオ・プロセッシング技術に携わっていた。

4Kの360度ビデオをストレスなくストリーミングするために通常必要とされるインターネット速度と比べると、VVOSを利用した場合に必要なインターネット速度は、その半分だ。

つい先日、VisbitはVRコンテンツ企業やスタジオ向けにクローズドなプライベート・ベータ版を公開しており、今後このベータプログラムへの参加企業を増やしていく予定だ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter