Amazonプライムデー、7月16日正午にスタート――例年に増して強力、時間も延長、ジャンルも拡大

Amazonの例年のイベント、Prime Day〔日本のプライムデー〕は、過去最大規模となり今月16日にスタートする。太平洋時間では12PM、東部時間3PMスタートだ〔日本では12PMから〕。 対象品目は数百万種類になるという。またこれまでの30時間がさらに延長され、36時間にわたって開催される。「Prime Day 2018は時間も過去最長になり、新しいジャンルも開拓される」とAmazonでは述べている。

Prime Dayはアメリカ、イギリス、スペイン、メキシコ、日本、イタリー、ドイツ、フランス、中国、カナダ、ベルギー、オーストリアなどの国々で実施されるほか、今年は新たにオーストラリア、シンガポール、オランダ、ルクセンブルクが加わった。

これまでと同様、Amazonでは家電、アパレルはもちろん、スマートテレビ、スマートホーム、キッチン、生鮮食品、おもちゃ、家具から学用品、その他日常生活の必需品などありとあらゆるカテゴリーを網羅している。

当然だがAmazonはPrime Dayで自社製品の売り込みに力をいれており、すでにその一部を先行セールで販売している。Amazonによれば、Echo、Fire TV、Fireタブレットは「過去最安」となるという〔「ほしい物リスト」に追加しておけばセール開始時に通知を受けられる〕。

今年のPrime Dayの品揃えが拡大された原因の一つはAmazonがさらに多数のハードウェアブランドを所有するようになったことだ。たとえば、スマートドアホンのRing を今年買収している。、スマートカメラとスマートドアホンのBlink買収 は昨年12月だった。 Amazonでは自社製のEcho DotやAmazon Cloud Camと並んでこうしたメーカーのスマート・ホームセキュリティシステム販売する。

またこうしたセキュリティーデバイスに加えて〔アメリカでは〕傘下のWhole Foodsスーパーマーケットから生鮮食品も販売される。

何百種類ものアイテムでプライム会員は通常の割引に加えて10%のプライムデー・ディスカウント〔ポイント還元〕を受けることができる。また一部のブランドではPrime
Dayを期に新製品や新しいコンテンツの販売を予定している。また多数の商品についてすでに先行セールを開始している。

AmazonではPrime Day開始後、スポットセール製品を50%増やすという。また専用アプリを使えば、 セールのお知らせを受け取ることができる。【略】

Prime Dayはもともと年会費を支払うPrime会員の契約を増やすために始められたイベントだが、今では1億人ものメンバーを持つようなった。しかも品揃えがいちばん豊富なため、ブラックフライデーセールやサイバーマンデーセールを上回り、今やAmazon最大のセールだ。たとえばPrime
Day 2017は前年の6割アップでAmazon史上最大の売上を記録している。

今年は昨年に倍加する努力を注いだイベントになっており、各種のデバイス、〔アメリカでは〕Whole Foodsの食品まで幅広く揃えているという。今年もAmazon最大のセールスイベントになるとみられていてる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Amazonが本社のあるシアトルで初めてピックアップロケーションを‘開店’、物理店展開多様化

Amazonがやることは何でもシアトルが最初だろう、と思いがちだが、でもどうやら、このオンラインリテーラーの本社所在都市にはまだ、顧客が自分宛の荷物をそこまで取りに行くピックアップロケーションがなかったようだ。

ロケーションはAmazonの小さな荷受センターで、お客はそこに荷物を取りに来たり、返品に来たりする。しかしそれだけではなく、当日限定の品物がいろいろあって、買い物もできる。シアトルのロケーションは14333 Aurora Ave. Nにあって、市の北部地区にサービスする。

アメリカ北西部の最初のロケーションは、シアトルの南に隣接するポートランドの“Amazon@DowntownPortland”で、昨年の9月にオープンした。ただしシアトルにはAmazonFreshの生鮮ピックアップロケーションが二つと、未来のレジ無しコンビニAmazon Goがあり、今後も未来的実験的な施設はシアトルに置かれるのかもしれない。

Amazonのピックアップロケーションは単独店でスタッフもいるから、多くの都市のコンビニなどにすでにあるAmazon Lockersとは違う。またこれらのピックアップロケーションは、Prime会員に同日〜翌日配達を提供し、人間のスタッフがおり、返品用には荷造り資材をくれる。Amazonのピックアップロケーションもコンビニ等のLockersも、どちらもPrime会員でなくても利用できるが、ピックアップロケーションではPrime会員が、事前のオーダーなしで一定の買い物ができる。

昨年Amazonは、学生を対象に“Instant Pickup”という擬似店舗を小規模に展開した。これは、コンビニ+Amazonの荷受センター+スマホ充電が主な機能で、飲み物や多少のアメニティも売っている。今それは、カ州バークリー、ロサンゼルス、アトランタ、オハイオ州コロンバス、メリーランドなどの大学キャンパスにある(計5店)。

そして今回のシアトルのような、学生ではなく一般向けの、スタッフの数も多いピックアップロケーションは、Amazonによると、今全米に30以上ある。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Microsoftが社内チーム+パートナー数社で独自のレジ無し小売店技術を開発中か

今朝(米国時間6/14)のReuters(ロイター通信)の記事によると、Amazonの話題を喚(よ)んだ物理店におけるレジ不要(cashierless)技術に、Microsoftが挑戦するようだ。その記事によると、Microsoftはお客がショッピングカートに入れた物を調べる技術を開発中だが、その技術的詳細や他社製品との違いについては触れていない。

でもそれは、Amazonなどの既存のシステムと似たものになるのではないか。たぶん。

AmazonのコンビニエンスストアAmazon Goは、商品棚に取り付けたセンサーやカメラ、そしてAIの複雑なネットワークを使って、お客が自分のバッグに入れた物を追跡する。またStandard Cognition, AiFi, AVA Retailなどの類似システムは、それぞれ独自の機械視覚技術によりレジ代替システムを作っている。AVAを含む6社は、MicrosoftのパートナーとしてMicrosoftのクラウド上で、それぞれ独自の店頭技術を作っている。

Microsoftの社内にも10〜15名のチームがBusiness AIグループの一員として小売店技術を研究開発している。上述の記事によると、その中にはAmazon Goからスカウトしたコンピュータービジョンのスペシャリストもいるそうだ。そのチームは、ショッピングカートにカメラを付けたり、スマートフォンを使うさまざまな決済方法をすでにテストしたそうだ。

これらの開発努力の焦点は、技術それ自体だけでなく、資金力のない零細小売店でも採用できる安価な技術を目指さなくてはならない。

Microsoftはすでにリテイラーに対するマーケティング活動を開始しており、彼らにサンプル的な技術を見せている。WalmartもMicrosoftの見込み客に含まれているようだ。ただし店舗側はReutersの記事に対しコメントを提供していない。

この分野でMicrosoftがAmazonに勝つ気なら、新しい独自のレジ無し店でますます既存小売店をいためつけようとしているAmazonに、彼らが対抗できるための技術を提供すべきだろう。そう、金持ちの巨大テクノロジー企業Amazon vs. 貧乏小売店の味方Microsoft、という構図だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

オーストラリアの人たちは7月からAmazonのアメリカのサイトで買い物できなくなる

7月からは、オーストラリアの人はAmazonのアメリカのサイトで買い物ができなくなる。今日(米国時間5/30)の同社の発表によると、オーストラリアからの買い物客は自国のサイトAmazon.com.auへリダイレクトされ、同社の国際的なサイトであるAmazon.comはオーストラリアの住所に発送をしない。この変更は7月1日に施行される新しい税制への対応で、それによると年商75000AUD(オーストラリアドル)以上の企業から消費者が少額品目を輸入すると、それに対し10%のGoods and Services Tax(商品およびサービス税, GST)がかかる。

“Amazon税”と呼ばれるこの新しい施策は、Amazonなどの大きな海外eコマース企業が、すでにすべての販売品目でGSTを払っているオーストラリアの小売企業に与える、影響への懸念により導入された。これまでは、海外小売企業から買った品目が1000ドル以上だった場合に限りGSTが適用されていたが、それに対し地元企業は、それではAmazonやeBayなど海外の競合他社にとって不公平に有利だ、と主張していた。

Amazonのオーストラリアサイトは昨年12月に開設され、今では6000万品目を扱っているという。それはAmazonのアメリカサイトの推定5億品目の足元にも及ばない。その埋め合わせとしてオーストラリアの顧客は、Amazon.comが新たに設けたGlobal Storeで400万品目にアクセスできていた。

本誌TechCrunchに宛てたメールでAmazonのスポークスパーソンは次のように述べている:

“7月1日に施行されるオーストラリアのGST法の改正により、オーストラリアの顧客のための国際的ショッピングオプションが変わる。

これによって顧客にご不便が生ずるとしたらそれは残念だが、われわれは複数の国際的サイトのあるグローバル企業として、その税制への有効な対応策を検討せざるをえない。そしてその検討に基づき、われわれはオーストラリアの顧客を弊社の国際的サイトからamazon.com.auへリダイレクトし、今日からそこで、従来Amazon USのGlobal Storeで売られていた製品をお買い上げいただくことになる。これによってわれわれは、われわれの顧客に、国際的な特選製品へのアクセスを提供し続けることができ、そしてまた、Amazonのサイトで売られ海外から発送される製品に対してはGSTが課税されるという、新しい税制へのコンプライアンスを維持できる。”

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ヴィーガン・ミールキットのPurple Carrotに大手食品系Fresh Del Monteが$4Mを投資

Purple Carrotが今朝(米国時間5/7)、Fresh Del Monte Produceからの戦略的投資で400万ドルを調達したことを発表した。

2014年に創業された同社は、完全に植物性の(ヴィーガン(vegan)の)ミールキットを会員に届ける。同社は最初、フードライターのMark Bittmanをチーフ・イノベーション・オフィサー(chief innovation officer)として迎え(その後Bittmanは2016年に去る)、またフットボールのスター選手でいちご嫌いで悪名高いTom BradyとパートナーしてTB12ミールキットを立ち上げるなど、セレブを起用するマーケティングを展開した。

Crunchbaseによると、Purple Carrotはこれまでに600万ドルを調達している。同社によると今回の新たな資金はサプライチェーンの改良と小売チャネルの拡大、そして製品種別の多様化に充てたい、としている。

Purple CarrotのファウンダーでCEOのAndy Levittは、資金調達の発表声明の中でこう述べている: “Fresh Del Monteから戦略的投資を得たことは弊社のビジネスモデルのしっかりとした正当性を表している。菜食の普及努力は、この惑星とその上に住む人間をどちらもより健康にしていくための、弊社独自の目的指向の活動努力だ”。

Fresh Del Monteはパイナップルなどで有名なDel Monteの子会社だが、既存の食品企業がミールデリバリのスタートアップに投資する例は、これまでにもいくつかある。たとえば昨年は、Unilever(ユニリバー)がSun Basketを支援し、NestléはFreshlyの7700万ドルのラウンドをリードした。

画像クレジット: Purple Carrot

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

SquareがWebサイト作成サービスWeeblyを買収、オフライン小売顧客のオンライン化をサポート

Squareが、Webサイト作成サービスWeeblyを現金+株式3億6500万ドルで買収する合意に達した、と発表した

Squareは決済ソフトウェアと関連ハードウェア(レジなど)で有名だが、最近は買収により他分野にも事業を拡大している。たとえば食材宅配のCaviarや、企業向けのケータリングサービスZestyなどだ。

Weeblyは、使いやすいWebサイト構築ツールだ。ぼくみたいに個人が使うだけでなく、同社は最近、中小企業やeコマース企業の顧客開拓にも力を入れている

強力な競合他社のひとつであるSquarespaceは昨年末に、17億ドルの評価額で2億ドルを調達している

Squareによると、Weeblyの買収によって、オンラインとオフラインでビジネスを構築しようとしている起業家に、総合的なソリューションを提供できるようになる。またWeeblyの有料会員62万5000人/社の40%が海外なので、Squareのグローバル展開の足場にもなる。

SquareのCEO Jack Dorseyは、買収を発表するプレスリリースで、“SquareとWeeblyは、起業家の力になり彼らの支えになっていくことへの情熱を共有している。Squareはその旅路をインパーソン(in-person,実物人間)なソリューションから始めたが、Weeblyはオンラインから始めた。それ以降両社はともに、この二つのチャネルを橋渡しするサービスを構築してきたが、これからはさらに遠くまで、しかも早い歩みで、進んでいけるだろう”、と述べている。

Weeblyは2007年に、今もCEOのDavid Rusenko(上図)とChris Fanini、そしてDan Veltrが作った。Crunchbaseによると同社はこれまで、Sequoia Capital, Tencent Holdings, Baseline Ventures, Floodgate, Felicis, Ron Conway, Y Combinatorなどから3570万ドルを調達している。

Squareによると、買収価額にはWeeblyのファウンダーと社員のための、4年間の権利が確定する株式も含まれる。

アップデート:電話会議による記者発表でSquareの役員たちは、同社の企業買収は今後もより積極的に続くのか、と尋ねられた。CFOのSarah Friarはそれに対し、それは今後の出会いの質による、と答えた。今回のWeeblyの場合は、両社の協働関係が長年続いており、彼女によると、“Davidたちの起業家観がとても良い。企業文化という点でも、両社は似合いの仲である”、という。

Friarは、Weeblyの買収をSquareが今後さらに大々的に買収をしていく意思の現れと取るべきでない、と釘を差した。同社は今後も、“何かを自分で作ったり、パートナーを作ったりがメインになる”、と。

Weeblyのチームは、その多くがSquareに加わる。Rusenkoによると、買収を発表する全社集会を終えたばかりだ、という。

Rusenkoは曰く、“今は、とても高揚している。本当の共有と相互尊敬がこれにはある”。そしてチームには、“今後も末永くこのミッションを続けられることが、とても嬉しい”、と告げたそうだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Amazonが次に征服を狙う業界はアパレルだ

【編集部注】著者のSunny DhillonはSignia Venture Partnersのパートナーである。

Amazonが、昨年末にトールキンの叙事詩「指輪物語」のテレビ放映権を2億5千万ドルで買収したと発表した際に、私はそれがAmazonによる「全てを支配する」単一プラットフォームへの、情け容赦ない追求姿勢を強調したものだと書いた。 そして今やAmazonは「中つ国の物語」を制作するために5億ドルもの投資を行っている。史上最高に金のかかったTVシリーズとなるのだ。ほどなくジェフ・ベゾスが、エミー賞で最高の栄誉を受け取ることになったとしても驚きはしない。

しかし、ハリウッドだけがAmazonが攻略を狙う唯一の業界ではない。アパレル業界に対してAmazonが抱く大きな野望を考えれば、ニューヨークファッションウィークで、アナ・ウィンターの隣にジェフ・ベゾスを見る日も遠くないかもしれない。

ファッション業界の800ポンド(約363キロ)のゴリラ

従来の小売業が引き続き弱り続ける中、商業ファッションブランドへの直接コマースは増え続けている。以前私は、Stitch FixWarby Parker、Everlane、そしてAllbirds などを、直販モデルで成功できることを証明した革新的企業の例として紹介した。D2C(Direct to Consumer:顧客直販)コマースの王者として、Amazonはそのファッションオペレーションを、15年にわたって調整し続けてきている。

もともとAmazonがアパレルに参入したのは2002年のことである。2009年にはオンラインシューズ販売業者のZapposを12億ドルで買収した。これはその当時史上最高額での買収だった。しかし、ファッションを支配しようとする同社の追求は、歴史的にいくつかの障害に直面してきた。その中心となる障害は、人びとはまず商品を試着したいという欲求から、オンラインでアパレルを購入することを信用していなかったこと、そしてAmazon自身がクールなブランドではないと思われていることだった。

しかし逆風は止み、いまや追い風が吹いている。アパレルのオンラインショッピングが認知され、いまや消費財部門でもっともオンライン化が進んでいる分野となった。多くの女性が衣料をオンラインで購入しているのだ。衣服をオンラインで購入する人の割合は、小売一般におけるオンラインの利用率のおよそ2倍である(17%対10%)。一方Amazonは、返品無料、より良い写真、より良い品揃えを提供する形でアパレル戦略を磨いてきた。現在同社は、取引総量としては最大のアパレル小売業者である。ミッション終了?いや、まだまだだ。

プライベートブランド「Fashion House」の開発

Amazon提供のファッション写真

かつてBonobosのCEOAndy Dunnは「他人の品物を大量に売ることは、巨額の資金を要求される利益の薄いゲームだ。結局その点でジェフ・ベゾスを打ち負かすことは難しい」と語った。これは事実だが、アパレルに関しては、Bezosは他人の品物を売るということよりも、さらに大きな野心を持っている。とはいえ、現在Amazonが中心的にやっていることは他人の品物を売ることだ。

Coresight Researchの分析によると、米国のアマゾンファッションサイトに掲載されている品物の約14%がAmazon自身によるものであり、残りの86%がサードパーティによるものだ。Amazonには、そのパイのシェアを高めるための高いインセンティブが与えられている。同社にとって、アパレルは極めて利益率の良いカテゴリだからである。過去10年を見れば、最も良いときには粗利率は40%にも達している。さらに、米国のプライムメンバーたちはAmazonでのアパレルの購入に引き込まれている。昨年はほぼ3分の2のメンバーがアパレルを購入しているのだ。

プライベートブランドが充実するにつれて、Amazonは明らかに、Amazon Essentialsブランドを通して、電池やおむつに相当する勢いでアパレルも売ろうとしているのだ。9月にはサイハイベルベットブーツ(太腿の高さまであるヴェルヴェットブーツ)の販売を開始したが、Coresightの分析によれば、Amazonはより高価格のカテゴリに注力しているという。

最近の「指輪物語」の権利取得が、若く裕福な消費者の眼をさらに惹きつける試みであり、Whole Foodsの買収がその胃袋をガッチリ掴もうという試みだとすると、Amazonはさらに彼らの衣服もおさえたいと考えているのだ。ホットなデジタルネイティブ向けのブランド(たち)を買収することは、そうしたことを達成する近道だ。Walmart は既にこの戦略を、Bonobos、Modclothなどを買収することで追求している。AmazonもEverlaneのような人気のブランドをその店舗に並べることで、同様の方策を模索しているようだ。とはいえAmazonがその「なんだかダサい」イメージを拭い去るにはそれなりの時間はかかるだろう。

ファッション(パワー)ハウスになる

Echo Lookは、Amazonがファッション世界の支配を、真剣に考えているサインの1つだ

昨年Amazonは、アパレル事業を加速し、オンラインショッピングの経験を可能な限り簡単にするようにデザインされた多くのイノベーションを投入した。たとえばPrime Wardrobeは、Stitch Fixに似たサービスである。自宅で3つ以上のアイテムを試着することが可能で、気に入らないものは料金支払い済みのラベルのついたパッケージを使って無料で送り返すことができる。

また同社は「ハンズフリーカメラ兼スタイルアシスタント」と名付けた、新しいAlexa搭載機器Echo Lookも発売した。カメラを追加したことで、機械学習と人間のスタイリストからのフィードバックを組み合わせて、所有者の衣服の選択を記録しコメントすることができる。このアドバイスは、レコメンデーションの形もとるため、Amazon Fashionの収益を伸ばす役割も果たすこともできる(特にそのプライベートブランドに関して)。

AmazonはEcho Lookのための様々な機能を、繰り返しリリースしてきている。その中にはキュレーションされたコンテンツや、クラウドソーシング(つまり人間だ!)スタイルのフィードバックも含まれている。 さらに同社は、服をデザインするためのAIアルゴリズムを作成し、仮想的に服を試着できるARミラーの特許も取得した。このようなARミラーの価値は、最近ロレアルがModiFaceを買収したことによって裏打ちされた。ModiFaceは美容ARの分野で似たようなアプリケーションを支えるテクノロジーを開発している企業だ。

これらの動きをすべて分析することで、Amazonのアパレル戦略の全貌が見えてくる。まず、衣服の売られ方を学ぶために、たくさんの服を販売する。そして、より高い粗利益を生み出すために、自分自身で作った服を売り始める。そして今では、Prime Wardrobeを用いてロックインを高め、顧客がAmazon自身の服を買わない可能性のあるポイントを潰す(もちろんその過程で個人の嗜好データは収集している)。そしてEcho Lookをデータ収集と声コマースのポータルとして利用する(おまけに、曖昧な購買要求を、自社のプライベートブランドの在庫へと誘導することも可能だ)。もしこの戦略が成功すれば、Amazonには、非常に利益率の高いセールスをもたらす深いデータの堀が与えられることになるだろう。他のファッション小売業者やブランドがそれを真似することは極めて難しいものとなる。

Beszosはこの問(「それが上手くいくと思っているのか?」)を口にする必要すらない。

Amazonは、クラウドサービス、音声アシスタント、Amazon Goに代表される実店舗、そしてもちろん「オンラインなんでもストア」としてのこれまでの役割など、ますます重要になる分野でますます支配的になっている。同社は、アパレルもこの成長するリストの項目に加える覚悟を固めている。人びとが衣料を買う方法を(またもや)変え、その顧客がますますAmazonの掌の上で買い物をするように誘導するのだ。そしてAmazon Fashionが、Amazon Studios(映像作品を作成する部門)からの何らかの手助けを得ることも表明されている。Bezosはかつて、「ゴールデングローブ賞を獲得すれば、より多くの靴を売ることに」と語った。もし彼がそのやりかたを貫くならば、Amazonはこの先何年も、両者を押し進めて行くことだろう。

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(翻訳:sako)

Amazon Primeの会員が全世界で1億を超えた、巨大市場インドが貢献か

Amazonが今日(米国時間4/18)リリースした例年の株主宛て書簡でJeff Bezosは、自画自賛の大盤振る舞いをしているが、それも無理からぬことだ。そこにはありとあらゆる大きな数字が並んでいるが、たぶんその中でいちばん目立つ数字は‘1億’だ。AmazonのPrime会員の数が全世界でこの数を超えたのだ。その送料無料サービスが始まってから、今年で13年になる。

でも、それは意外ではない。最近料金の値上げはあったが、同社はこのサービスのインセンティブを今でもコンスタントに増やし続けている。そのリストの中には、ビデオや音楽、Kindleの本、そしてBezosが所有するWashington Post紙の6か月無料購読、等へのアクセスがある。様子から察するに、もうすぐWhole Foodsのお買い得も加わるのだろう。ひとつひとつはささやかでも、これだけ集まれば強い!

Bezosによると、Prime商品の全世界の売上は2017年に50億点を超えた。最近Primeを始めたインドは、今のところAmazonにとって最大の成長市場であり、書簡によると初年度の入会会員数は、“Amazonの歴史上これまでのどの地域よりも多い”。最近の同社はインドへの投資を増やしており、2月には音楽サービスを開始、そして今週は、同社のAndroid向けブラウザーの“軽量バージョン”をリリースした。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

もしもFacebookが月額11ドルになったなら

Facebookの広告をなくすために金を払えといわれたら、あなたは広告の価値を認めるのか、いっそう不快に感じるのかどちらだろうか。Facebookが広告のない購読オプションを検討するなか、彼らがいくら収入をあげるかということ以上に深い疑問が湧いてくる。Facebookは、ソーシャルネットワーキングを使うための代償方法をユーザーに選ばせる機会を与えられている。しかし、選択が人々を幸せにするとは限らない。

2月に私は、Facebookがユーザーを広告主に売る代りにユーザーに月額購読料を払わせることでデータプライバシー問題の反発を和らげられるかを考察した。重要なポイント以下の通り。

  • Mark Zuckerbergは、月額料金を払えない人たちを含め、Facebookは誰もが無料で利用できるべきだと主張する。つまり有料購読はオプトインであり、全員が支払いを強制されるものではない。
  • ビジネスモデルの一部をユーザーの滞在時間を最大化することから切り離すことによって、Facebookは広告収入を犠牲にすることなく、ユーザーに質の高い時間の使い方を提供できる。
  • 月間購読料金はFacebookの広告収入を補てんする必要がある。2017年、Facebookは米国とカナダで2億3900万人のユーザーから199億ドルの収益を上げた。つまり、平均的ユーザーは毎月7ドル払わなくてはいけない計算になる。

しかし私の分析は、払える人だけが広告をなくせることをユーザーに伝える心理的副作用や、広告主が普遍的リーチを失うこと、および実際に誰が金を払うのかという現実を無視している。さらに一方では、有償化することによってユーザーのターゲット広告に対する嫌悪を引き起こすおそれがあることも無視している。

全員にとって良いことはなにか?

Zuckerbergは議会で、Facebookが有料購読を始める可能性について2度聞かれているので、この話には意味がある。Zuckerbergは広告支援アプリのメリットを認めながらも、ユーザーがプレミアム版を買えるようにする可能性を否定していない。「料金を払えば広告を表示しない、というオプションを今すぐ提供するつもりはない」とZuckerbergは言い、後に詳しくこう説明した。「総合的には、広告体験がいちばん良いと思っている。一般に人はサービスに金を払わなくてすむのがいいと考えている。世界にはサービスに金を払えない人もいるので、広告モデルはわれわれのミッションにいちばん合っていると思う」。

しかし「今すぐ」という言葉に、いつかは購読料を払えるようになるかもしれないというかすかな希望が見える。

Facebook CEO・ファウンダーのMark Zuckerbergは米国下院エネルギー・商業委員会のFacebookに関する公聴会で証言している。2018年4月11日(写真:SAUL LOEB/AFP/Getty Images)

しかし、広告をなくす以外にわれわれは何に金を払うことになるだろうか。すでにFacebookは、プライバシーを心配するユーザーが広告そのものを見なくなるのではなく、一部の広告ターゲティングからオプトアウトすることを可能にしている。無料のインターネットサービス標榜するZuckerbergを考えると、Facebookが高価値なサービスを作って有料購読者だけに提供することは考えにくい。

Spotifyは、有料ユーザーのみが好きな曲をオンデマンドで聞けるが、広告支援ユーザーはシャッフルでしか聞けない。LinkedInでは、有料ユーザーは誰にでもメッセージを送ることができて、雇用者に対して「主要な志願者」として表示される。Netflixはそもそも有料ユーザーしか…使えない。

しかしFacebookはソーシャルネットワーキングを人間の権利だと考えているので、政治のニュースや赤ん坊の写真を取り除くニュースフィードフィルターなどの追加機能は全ユーザーに提供したいと思っているはずだ。またFacebookは、LinkedInの購読者が自分のプロファイルを見に来た人を知ることのできるような、プライバシーを侵す機能を売ることもないだろう。実は、Facebookが広告を外す以外にプレミアムのみの機能を提供することはないと私は思っている。しかし、そうなるとなかなか売るのが難しい。

一方、特定の地域年齢層全員にリーチしようとする広告主は、ユーザーが広告からオプトアウトできることを喜ばないかもしれない。新しい映画やレストラン・チェーン、選挙運動などを宣伝するとき、ターゲットユーザーに対する浸透率は高いほうがいい。購読モデルは、企業の利用をかきたててきたFaceook広告の高い遍在性に穴をあけることになる

反感か感謝か

しかし最大の問題はFacebookが広告の収益化に非常に長けていることだ。この会社はユーザーから料金を徴収することなく、膨大な金額を稼いでいる。2017年の売上は400億ドルだった。広告を見るかわりに現金を払うようにと人を説得するのは難しいかもしれない。そして、払うような人は平均よりずっと広告価値が高いかもしれない。

Facebookが1ユーザーあたり最も稼いでいる米国・カナダ市場を見てみよう。世界のどこよりも可処分所得が多い地域であり、広告料金も高くできる。米国・カナダのユーザーは毎月平均7ドルの広告収入を生み出す。しかし、購読料金を払う意志と能力のある人たちは平均的ユーザーよりもおそらく裕福なので、ぜいたくな企業は彼らに広告を打つために高い料金を払うだろうし、そんなユーザーは平均的ユーザーよりFacebookで過ごす時間が長いので、さらに多くの広告を見る。

びっくりするような値段になるかもしれない。なぜならFacebookが裕福なハードコアユーザーの広告収入を補てんするためには、月額11~14ドルくらい徴収する必要があるからだ。

ボーナス機能もないのに無料で使えるものに払う金額としては、あまりにも高い。払える人であってもその多くは正当性を見いだせないだろう。購読料を払っているほかのメディアと比べてFacebookに費やす時間の方がずっと長いのだが。そして、本当に払えない人たちはこれまで何年間も気にせずスクロールしてきたFacebook広告に対して突然嫌悪の念を抱くようになる。自分はFacebookのデータ源から逃げるお金を持っていない、ということを広告を見るたびに思い出す。

しかし、人々がその正反対の感情をもつ可能性も同じくらいある —— 高額な購読料金を払わないですむなら広告を見るのもそれほど悪くない。

概して人はタダで手に入るのものに価値を認めない。値札を突きつけられることによって、自分たちが参加しようとしている価値交換への認識が高まるかもしれない。ソーシャルネットワーキングの運用には金がかかるので、ユーザーは何かの形で支払わなくてはならない。広告を見ることがFacebookを存続させ、実験室いっぱいの未来プロダクトの開発を続けさせ、投資家を喜こばせる。

仮にFacebookがユーザーの4%か1%、いや0.1%しか購読料を払わなかったとしても問題ではない理由はそこにある。Facebookは購読という選択肢を用意することで、ユーザーを自分で選んだという気持にさせるだけでなく、すでに無料で得ているものの価値を見つめなおす機会も与えるからだ

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

郵便とAmazonの関係を非難したTrumpは米郵政公社の徹底調査を命令

大統領は昨晩(米国時間4/12)おそく、郵政公社(U.S. Postal Service, USPS)の評価を目的とする大統領令を発行した。その命令は、郵便サービスを“財政的に持続不可能”、と呼び、“特別調査団によるUSPSの財務と運営の徹底的な評価”を求めている。

Trumpはかねてから、郵便を標的にしてきた。その最初の攻撃的ツイートは2013年にさかのぼり、そのとき彼は、土曜日の郵便配達を廃止する計画を嘆いた。しかし最近では、郵便サービスは彼のAmazonに対するひたすらな攻撃の砲火を浴びてきたようだ。

12月にTrumpは、再びUSPSをTwitterで攻撃し、“1年に数十億ドルを失っているのに、Amazonなどに請求する荷物の送料があまりにも安く、Amazonをより裕福にし、郵便局をますます貧しく無力にしている”、と述べた。

ただしもちろん、AmazonとUSPSの関係は、それほど単純明快ではない

The New York Times言っているように、この大統領令はAmazonを名指ししてはいないが、しかしTrumpはこれまで、このオンラインリテールの巨人への攻撃を日に日に強めてきた。その怒りの多くはファウンダーのJeff Bezosに当てられたもののようで、彼はたまたまThe Washington Post紙のオーナーでもある。同紙はこれまで、大統領をおだてるような記事をあまり書いていない。

6月に彼は、Bezosをやっつけるときの二つのお気に入りの標的をくっつけたキャメルケース*のハッシュタグを作り、こう書いた: “ときどき、インターネット税を払わない(払うべきだ)Amazonの守護神と呼ばれる#AmazonWashingtonPostは、フェイクニュースだ!”。〔*: camel-case, 大文字小文字が入り混じって駱駝の背のこぶのようになっている綴り。〕

率直に言って、例をもっとたくさん挙げることは可能だが、でも先日本誌でTaylor Hatmakerが書いた記事のリンクをここに載せる方が簡単だ。この記事はTrumpのJeff Bezos攻撃ツイートを、すべて集めている。長いリストだから、のんびりくつろいでいるときにお読みいただきたい。ところで、大統領令の全文はここにある

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

私たちのデジタルの未来は中国からやってくるモバイル技術を手本に徐々に変容していく

【編集部注】著者のMichael JaconiはButtonの共同創業者兼CEO。かつてはRakuten LoyaltyのCEOを務めていた。

インターネットの黎明期以来、業界の大物たちは、ユーザーたちがオンライン体験を始める入口である「ポータル」を奪い合って来た。要するに「ブラウジング」を開始する場所だ。ダイヤルアップ時代が到来したとき、America OnlineはCDを米国の全家庭に送り付けた。そのバトンはYahooに渡されてカテゴリー別リストとなり、やがて全世界の情報をインデックス化するGoogleの野望に飲み込まれた。「ポータル」を制することが全てだったのだ。

モバイル革命が世界中で拡大し続けるにつれて、ポータルを巡る戦いが激化している。しばらくの間、人びとはそれを制するのはハードウェアだと考えていたが、やがて本当に大切なのはソフトウェアであることが明らかになった。その後、論争はオペレーティングシステム(AndroidかiOSか)へと移行し、やがて人びとがほとんどの時間を費やすソーシャルならびにメッセージングアプリケーションへと移行した。個人的には、現在それはアプリとオペレーティングシステムの間のどこかに漂っていると考えている。とはいえ、インターフェイスレイヤは常に進化していくだろう。

ロケットの発射台と同様に、ポータルはそのあとに続くものがあるから重要なのである。その切望された場所を巡る戦いは、しばしば他の理由が並べ立てられていることも多いが、要するにコマースのためのポータルになるための戦いなのである。

Google哲学には、利用者をなるべく早く「Googleのページから立ち去らせる」というものが含まれている…このことによって利用者たちに利用習慣をつけてもらい、繰り返しポータルに戻ってきて貰おうということだ。まあ私の考えでは、本当の(しかしやや隠された)目標は、ユーザーに買いたいものを検索させ発見させることだ。

もちろん、Googleは世界の情報を集約する一方で「悪いことは行わない」(do no evil)のだが、その代償として売上を、Priceline、ExpediaAmazon、その他のデジタルエコノミーに渡してしまっている。

一方Facebookは、利用者の時間、注意、データを独占することでポータルとなった。この努力によって、四半期ごとに記録が破られる広告ビジネスが打ち立てられた。

GoogleとFacebookという2大独占企業が、2017年に新しく支払われた広告費の89パーセントを占めているのである。彼らの優位性は他に類をみない…今のところは。

だが現在、消費者の習慣の変化、広告主のコストの耐え難い上昇、米国のデジタル経済を支配している広告モデルへの普遍的な不満などから寄せられる市場の力によって、急速な変化が求められているのだ。そのすべてがモバイルによって加速されている。オンライン上でのユーザーにとっての手酷い経験はいまでも存在し、そのことが広告主にとっての効果を下げ不正行為を蔓延させている。過剰な広告から逃れようとする動きを、象徴的に示しているのが、広告ブロッカーの爆発的な普及である。「この壊れた業界の是正の必要性」を示すさらなる証拠は、Oracleが広告を追跡監視する企業の買収に8億5000万ドルを喜んで支払ったということだ(おそらく私が知る最も優れた起業家がこの会社を経営しているので、この事は驚くようなことでもないが)。

起業家の1人として、私の仕事は未来を予測することだ。これまでの経験を通して学んだことを熟考することで、私たちのデジタル未来についての、よりスマートな意思決定を導いてくれる真理があることが明らかになった。

小売業者、広告主、ブランド、マーケティング担当者たちは、日々スマートになっている。このことが意味することは、ユーザーたちのために彼らが頼るプラットフォーム、パートナー、そして場所を、彼らが日々「パフォーマンス中心」にしていくということなのだ。より多くの商取引を目指して。

宣伝のためにビューを買ったり、ボットやその類のものに対して支払いをする行為は、時間と共に廃れていくだろう。(私見だが)世界で最も強力な企業であるAmazonが、そのアソシエイトプログラム(自社開発によるパートナーシップとアフィリエイトプラットフォーム)に大きく依存していることは秘密でもなんでもない。実際このチャネルは小売業者にとってもっとも効率の良い有償獲得手段であり、実際Amazonアフィリエイトプログラムの成功が、パートナートラフィックの急増となり、AWSの開発に繋がったのだという噂もあるほどだ。

上海の外灘を見下ろす中国国旗(写真:Rolf Bruderer/Getty Images)

私たちのデジタル未来を考えるときには、視線を落とし、そして東を見よう。まずは視線を落として手元の電話を眺めて感心してみよう ―― これは今後10年にわたるあなたのデジタル世界へのポータルとして機能するだろう。そして私たちのそれへの依存度はますます大きくなっていく。この大きさのデバイスの爆発的な普及は、これまでの歴史におけるあらゆる技術潮流の速さを凌駕し続けている。

さあ、では東を見て、中国で起きることが、最後にはここ西洋でも起きることを確認しよう。中国市場はPC主導のデジタル革命をスキップして、スマートフォンを使ったデジタル時代に突入している。本当にスマートな投資家の中には、この命題に基く戦略を立てて、静かにその先見の明を通した報酬を受け取っている者たちもいる。

中国は歴史的に、模倣品と海賊版で溢れた市場だと思われて来たが、しかし時代は変わったのだ。ここ10年の間に、世界で最も大きく、そして最も革新的な企業のいくつかが中国から出現した。中国の起業家精神(最近それは、おそらく世界で最も偉大な投資家であるMichael Moritzによって賞賛された)、その革新のスピード、そして十分な人口に素早く拡大して到達できる能力によって、中国企業は多くの米国のライバル企業の時価総額を飛び越えてきた。

中国のデジタル経済の成長における最も興味深い要素は、それらが米国の市場よりも基本的に「純粋」であるということだ。私はその要因として、中国市場が本質的に「取引中心」であることを挙げたいと思う。Andreessen Horowitzが書いているように、(中国で最も価値のある会社であるWeChatは、すべてのユーザー行動の「ポータル」でありハブとなっている。彼らの収益の多様性は、”Google”や”Facebook”よりもはるかに”Amazon”的であり、ずっと純粋だ。彼らはプラットフォーム上での取引でお金を稼いでいて、広告は戦略上それほど重要ではない。

2年前、テクノロジー産業がWeChatを複製しようとする執念に駆られたことがあった。そして見当違いの何らかの理由によって、誰もが優れたメッセージボットを作る必要があると考えたのだ。

忘れてはならないことは、中国で創造されているビジネスの純粋さと強さに対する、私たちの執念だ。中国のデジタル経済を結び合わせ、無限にみえる成長を育んだ基本構造は、コマースとモバイルの不思議な組み合わせである。中国版ブラックフライデーであるシングルズデー(独身の日)には、Alibabaでの売上は250億ドルに達した。そのうち90%がモバイルだった。

これまで米国と中国の両方で学んだことは「消費者がお金を使うこと」が、最も永続性のある消費者ビジネスを作り出すということだ。(様々な先進技術や英雄的ステートメントは脇に置いておくとして)結局Googleとはショッピングエンジンを搭載した「ポータル」なのである。もし納得いかない場合には、彼らの収益がどこから来ているのかを見て欲しい。

Googleが最近発表したShopping Actionsの発表と、その「1トランザクション毎の支払いモデル」への移行の動きは、デジタルエコノミーの風景を永遠に変えてしまう可能性のある転換点を示している。

Googleによる、Apple、Facebook、そしてAmazonに対する多方面の戦いには、重み付けが施されている。Amazonは最も脅威的だ。そのビジネスは4者の中で最も永続性のあるものだ。そしてそのモデルは2つの点で青天井である。(1)人びとがオンラインで買い物をすると、その売上の中からAmazonが過剰な手数料を抜いていく、そして(2)企業がさらなるクラウド計算パワー(さらなるサーバー)を必要とすると、その売上の中からAmazonが過剰な手数料を抜いていくのだ(私の知る人たちは皆ここに挑戦しようとしている)。

そして傷口に塩を塗るように、Amazonはポータルという意味でもGoogleを脅かしている。商品検索の55%が今やAmazonを起点としているのだ。わずか1年前には、これは30%に過ぎなかった

消費者の行動がモバイルでは変化した(検索が減った)こと、そして永続性と成長の観点でAmazonと比べたときに、自身のモデルが劣っていることをGoogleは認識し、対応する必要に迫られたのだ。Googleは、無限の成長をサポートするモデルと、Amazonとその販売業者との関係に似た広告パートナーのために「ウィン・ウィン」の関係を構築できるモデルを必要としていたのである ―― つまり自分自身の検索トラフィックの独占を利用して、小売業者の負担を引き上げ続けるモデルではないものということだ。

Googleは、Google.com、Google Apps、そしてAndroidなどの、ポータルとしての地位が、長期的に勝ち抜くためには、取引の一部とならなければならないことに気付いている。モバイルユーザーは、広告を少なくしてより多くの機能を要求する(ルック&フィールとして中国で普通に見られるような体験を要求する)、何はともあれGoogleは視線を落とし東を見る必要がある。取引の一部となるために、そしてその一部を得るために。

このままでは、Googleと彼らが収益源として頼っている小売業者との利害が衝突する日が近付いていたのだ。ユーザー1人あたりの検索アクティビティはモバイルで減少し、ユーザー獲得コストは四半期毎に増加していたからだ。これまで多くの企業がAmazonとの競争に敗退してきた。もしGoogleが小売業者たちにとって、経済的に成功の見込める成長モデルを作り出すことができなければ、コマースの圧倒的巨人に立ち向かえる者はいなくなる、小売業者たちもGoogle自身も。

私が長い間信じてきたように、取引の一部となることは、すべての当事者にとって最も望ましいビジネスモデルである。小売業者が物を売った時に関係者に収益がもたらされる。そして最も大切なことは、お金の発生がユーザーが欲しいものを見つけたとき「だけ」に起きるということなのだ。

その意味でShopping Actionsは関係者全て(売り手、買い手、仲介者)を満足させるためのGoogleの最初の野心的なステップなのだ。

よくやった。サンダー(GoogleのCEO、サンダー・ピチャイのこと)。

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(翻訳:sako)

画像クレジット: VCG

Jeff Bezosが完全招待制のロボット・カンファレンスでAmazonロジスティクスの未来を模索?

今日(米国時間3/19)から、Amazonが秘密秘密と大声で言っていた例年のMARS Conference(火星会議)がパームスプリングスで行われる。その意味は二つある:

  1. あなた(人間)は招待されていない。
  2. これから数日間、Jeff Bezosが彼の最愛のロボットたちと歩き回っている写真が大量にメディアに配信される。

昨年、このロボットが大好きな億万長者は、重量1.5トンのメカスーツに搭乗して現れ、その恐ろしげな出で立ちでインターネットを騒がせた。そうやって自分をEllen Ripleyに擬した彼なら、地球上の全生命の終わりを告げる黙示録的未来の大氷河を破れるだろう。しかし今年の最初のショットはやや穏やかで、Bezosが“新しい愛犬”を散歩させている。それはBoston Dynamicsの最新の四脚ロボット、SpotMiniだ。

もちろんそのロボットは、Bezosに飼われるまでは、芝生の上で昼寝するしか、やることがなかった。しかしBezosとその仲間たちは、着実にAmazon Roboticsを立ち上げ、ロジスティクスの自動化のために買収するつもりだったが、Boston Dynamicsは今年初めに、GoogleからSoftbankへとオーナーを変えてしまった

しかしこの完全招待制のカンファレンスには、ほかにもたくさんのロボットが、億万長者の歓心を買うべく集まっている。Bezosは瓶投げゲームでロボットアームに挑戦し、さらに、配達ロボットPiaggio Gita2台が、BezosのSpotMiniBezos自身を追う。おまけに、空にはドローンが飛んでいる。

もしもあなたが、Amazonの億万長者オーナーなら、あなたも、月曜日の朝の散歩を愛犬ならぬ愛ロボと一緒にしているはずだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

eBayのARツールを使えばその品物の発送にぴったりのサイズのボックスを見つけられる

拡張現実(augmented reality, AR)の実用的な用途は画面にPokémonを出すことだけではない、ということにやっと誰かが気づいたようだ。オークションの大手Ebayが今日(米国時間3/19)導入したAR応用機能は、売り手が自分の商品を発送するのに最適のボックスを見つけるお手伝いをする。同社によると、商品はバックパックでもキッチン用品でも自動車部品でも何でもよい。とにかくUSPS(≒“郵便”)の定額料金でそれを送れるのに最適な箱を早く見つけて、時間を節約してくれる。

Ebayによると、これにより売り手は、いちいち郵便局へ行って正しいサイズの箱を探す必要がなくなり、送料も発送作業の現場で分かる。

この機能は、GoogleのARCoreを使った初期のアプリのひとつで、現在はARCoreに対応しているAndroidデバイスでしか使えない。

ARCoreはAppleのARKitに対抗するGoogleのAR SDKで、今年の2月に一般公開され、今ではその1.0を全世界に1億台あまりあるAndroidデバイスが利用できる。その主な機種は、Pixel, Pixel XL, Pixel 2, Pixel 2 XL, Galaxy S8, S8+, Note8, S7, S7 edge, LGE’s V30, V30+(Android Oのみ), ASUS Zenfone AR, OnePlus 5などだ。

このARを利用した発送機能は、スマートフォンの距離計機能や地図機能を利用して現在地を知り、移動した距離や方向を知ることもできるそうだ。

使い方は、このアプリを開いたら“Selling”をタップし、次いで“Which Box?”をタップ、するとアプリは、品物を反射のない平らな面の上に置け、と指示する。テーブルや床の上でよいだろう。次に、その品物のまわりに仮想ボックスを作って、どの箱が合うかを見つける。緩衝材の必要な品物なら、そのぶんのスペースも考慮する。

品物に仮想のボックスをかぶせたら、その状態で箱の上下や左右を見て、はみ出しがないかチェックできる。

Ebayによると、このAR利用の発送機能は、同社の例年のハックウィークのときに作られ、今年いくつかあったAR応用作品の中で唯一採用された。iOS版も今作っているそうだが、スケジュール等は未定だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

eBayが日本のeコマースQoo10.jpを買収して日本でのプレゼンス強化に本気

eBayは、アジアにおける最新の投資により、日本でのプレゼンスを強化しようとしている。

アメリカのオンラインリテールの巨人であるeBayは今日(米国時間2/27)、汎アジア的eコマース企業Giosisの日本における事業Qoo10.jpを買収したことを発表した。買収の価額等は公表されていない。

eBayは最初、2010年に、韓国のGmarketと共にシンガポールの企業としてGiosisを設立したが、今日の取引の一環としてGiosisの日本以外の持ち分を放棄する。それはとくに、シンガポールとインドネシア、マレーシア、香港、そして中国をカバーするGiosisのeコマースサイトのネットワークのことだ。Giosisは2015年に、Singapore Press Holdingsなどから8210万ドルを調達した

eBayはアジアではこのほか、昨年インドのAmazonライバルFlipkartに、14億ドルの投資ラウンドの一部を投資し、それによりFlipkartはeBayの地元インドにおけるビジネスを引き継いだ。この取引は一種の転換点を表現しており、eBayは最初、インドではSnapdealに賭けていた。Snapdealは昨年、Flipkartによる買収を断り、その後操業が大幅に縮小した

eBayは、中国ではうまく行かず、2006年に撤退した

日本は、アジアの他の部分に比べると比較的明るかった。具体的な数字は挙げていないが、同社によると“数千もの日本企業”がeBayを介して世界中の1億7000万のバイヤーに製品を売っている。Qoo10.jpはそれに対して、日本国内の顧客に売るビジネスを育てる取り組みのようだ。eBayによると、Qoo10.jpの顧客は約200万だ。十分大きな数字だが、登録ユーザー数9000万弱で日本のeコマースを支配しているRakuten(楽天)には遠く及ばない。

しかもRakutenは、オンラインリテール以外に銀行や金融サービスを提供して、顧客のエンゲージメントを高めようとしている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Android PayはGoogle Payに生まれ変わる――利用も開発も非常にシンプル

先月TechCrunchが報じたとおり、Googleは各種の支払ツールをGoogle Payという単一のブランドに統合した。しかしAndroidでは、アプリとしてAndroid Payが残っていた。

この状態は今日(米国時間2/20)から変わる。GoogleはGoogle Pay for Androidを発表した。これによりAndroid PayはGoogle Payにアップデートされた。旧Android Payになかった機能も追加されており、Googleでは新しいGoogle Payが現実店舗でもインターネットでも広く利用されることを期待している。

これに加えてGoogle はGoogle ウォレット・アプリに支払いの請求、受け取りができる新しい機能を加え、Google Pay Sendと名付けた。ただしアメリカとイギリスのユーザーは近くGoogle Payアプリそのもので請求、支払いができるようになる。新しいユーザーはGoogle Payアプリを今日からダウンロードできる。既存のAndroid Payユーザーは数日中にアップデートを受け取ることになる。

一見したところ新しいGoogle PayアプリはAndroid Pay のデザインを変更しただけに見える。新しいデザインは従来に比べてGoogleのマテリアルデザインのガイドラインに近いものとなっている。 機能についてはさほど新しいものは見当たらない。ただし新しい機能で特に目立つ点は、ユーザーが所在する付近のGoogle Payで支払いができる店舗がホームスクリーンに表示されるようになったことだ。店舗のリストはユーザー別にカスタマイズされる。ユーザーの所在地の周辺で過去にGoogle Payで支払をした店舗が優先表示される。またホームスクリーンで最近の支払の一覧を見ることができる。またアプリに店舗の顧客カードを追加する機能もある。


Googleの支払管理プロダクト担当副社長、Pali Bhatは私のインタビューに対して、「われわれのチームはオンラインであれ現実店舗であれ、Google Payを使いやすいアプリにすることを目標とした。ユーザーが使い方に迷うなどのフリクションを最小限にすることに全力を挙げた」と述べた。つまり、Googleが提携している銀行、アメリカならBank of America、ポーランドならMbankなどのスマートフォン・アプリ中からGoogle Payをすぐにセットアップできる。いちいち別アプリとしてインストールしなくとも、オンラインでも店舗でもGoogle Payを使って支払いができる、という。

同様にサードパーティーのスマートフォン・アプリやウェブサイトがGoogle Payを利用したいと考えた場合、デベロッパーはアクセスしてきたユーザーがGoogle Payを利用可能であるかGoogle APIを通じて簡単にチェックすることができる(Google Payを通じて決済する場合でもデベロッパーはStripe やBraintreeといった既存支払プラットームを経由する)。

Bhatによれば「われわれは支払処理そのものを実行するわけではないので、デベロッパーがGoogle Payを利用するためのAPIはこの上なくシンプルなものになっている。Google Payはセキュリティーを十分に確保した上で認証情報その他必要な情報を実際に支払処理を行うプラットームに取り次ぐ。 DoorDash、Airbnb、Hotel Tonightその他の有力サービスがすでにGoogle Payの利用を開始している」ということだ。

画像: Bryce Durbin/TechCrunch

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

AmazonのPrime Rewards Visaカードを所有するプライム会員は、Whole Foodsでのカード利用で5%の返金を受け取る

既にAmazonは、買収した食料品チェーンWhole Foodsの買い物客に向けての割引を実施している。また、Whole Foodsの店頭にTreasure Truck(特売サービストラック)を派遣し、さらにプライム会員のためにWhole Foodsの食料品を配送し始めた。 そして今度は、Amazon Prime Rewards Visaカードを使って買い物をした場合には、Whole Foodsで買い物をするPrimeメンバーに、5%の返金サービスを提供する。

同社によれば、このサービスはWhole FoodsとChaseの協力の下に提供されるものである。Whole Foodsで対象のカードを使って買い物を行うと、Whole Foodsから返金が行われる。非プライムメンバーの場合は、Whole Foods Marketの購入金額の3%が返金される。非プライムメンバーはまた、Amazon.com上のすべての購入で3%の返金を得ることができる。そしてすべての対象カード所有者はガソリンスタンド、レストラン、そしてドラッグストアでは2%の返金、それ以外の購入では1%の返金を受け取ることができる。

カードを持っているプラ​​イムメンバーはすでにAmazon.comで5%の返金を受けていたが、返金対象がAmazon.com以外からの購入にまで拡大されたのは、今回が初めてだ。

Prime Rewards Visaカードは、1年以上前に、Amazonのサイトでの購入を奨励し、購買客たちを年会費99ドルのプライム会員に勧誘することを狙って導入された登。このカードは、Amazonによる ペイメント業界への最初の参入ではないが、それ以前のものはすべてAmazon.comでの購買を対象にしたもので、オフラインの購買に向けてのものではなかった。

このカードのその他の特典としては、年会費なし、旅行時あるいは海外商品購入時の外国為替手数料なし、旅行保険、年中無休24時間対応、免責額ゼロ、そして返金額に上限はなく、その返金の失効期限はない。

Whole Foodsの買収後、Amazonは同ストアでの価格を引き下げることを約束し、プライムメンバーは特別な割引やその他の店内特典が受けられると公表してきた。それらの約束は全店での価格引き下げという形でただちに実現され、そしてさらに、感謝祭の七面鳥バレンタインのバラなどの、季節限定割引を提供している。

しかし両社の統合に困難がなかったわけではない。

Amazonが導入を強制した新しい在庫管理システムによって、商品棚には欠品が生じ、Whole Foodsの従業員は、Amazonがいかに新しいやり方を押し付けて、チームの士気をくじいたかを詳しく語っているBusiness Insiderのレポートによれば、人びとは「泣き」、その結果辞めていったということだ。

こうした種類の問題は、まだ解決途上であり、新しいキャッシュバックカードでは対応できない部分の店舗の販売に、影響を与える可能性がある。しかし、それでもWhole Foodsで定期的に買い物を行うカード会員にとっては、この特典は歓迎されることだろう。

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(翻訳:sako)

Webが人間性を取り戻すとき、これまでのWebサイトとeコマースはすべて死ぬ

筆者: Rob LoCascioLivePersonのファウンダーでCEO)

あなたは私の会社LivePersonをご存じないかもしれないが、そんなあなたでも私の発明を使ったことはあるはずだ。1995年に私は、Webサイトの画面にポップアップするあのチャットウィンドウを発明した。今では世界中で2万近くの企業が、わが社のソフトウェアを使って彼らの何百万という顧客とコミュニケーションしている。その中にはT-Mobile, American Express, Citibank, Nikeなどの有名大企業もいる。1990年代の半ばにインターネットの誕生を目撃した多くのスタートアップのファウンダーたちと違って、私は今でも自分の会社のCEOだ。

長いことCEOの椅子に座っていると、これまでの20年間に起きた変化に対する、独自の見方を持つようになる。そして今私に見えている現在進行形の変化は、インターネットの姿をラジカルに変えるだろう。

90年代半ばにWebサイトを作ったときは、eコマースへの大きな夢があった。基本的に実店舗は消えてしまうであろうし、何もかもドットコムが支配するだろう。でもeコマースは、惨めにもその夢を打ち砕いた。今日、Webサイトやアプリから生じている商行為は全商業の15%足らずであり、しかも企業として成功しているeコマースはAmazon, eBay, Netflixなど数えるほどしかない。Webサイトをだめにした大きな構造的問題は二つある: それはHTMLとGoogleだ。

Webサイトは、これまで図書館に閉じ込められていた人類の大量のコンテンツの集まりを、デジタルなユーザー体験、すなわちWebサイトによって、多数の大衆的オーディエンスに開放するはずだった。最初のころ私たちは、“閲覧する”(browsing, ブラウジング)とか“索引を作る”(indexing, インデクシング)などのように図書館の用語を使い、そして多くの点でWebサイトの中核的技術であるHTML(Hypertext Markup Language)も、静的コンテンツを図書館の本のように表示するために設計された。

しかし小売店は図書館ではないし、図書館の形式をオンラインストアに適用することもできない。消費者は、買い物をするときのいろんなダイナミックな質問や会話ができる方法を必要とした。しかし今日のモデルでは、一連の静的なページを読んで質問への答を見つけなければならない。でもふつうは、店員や店主と質問と答の一連のやり取りをしてから、そのお店を信ずる気になり、いろんな物を買いたくなる。HTMLのWebサイトには、そんな、人間同士のリアルで動的な対話がない。

Webの第二の問題は、Googleだ。90年代にWebサイトを作り始めたときは、誰もが仮想ストアを自分独自のデザインでやろうとした。それによりストアはおもしろくてユニークになり、しかし一方ではスタンダードがないので見て回ることが難しく、それらを普遍性のあるカードカタログにインデクシングすることは、とてもむずかしかった。

Googleは、1998年ごろにやってきた。Googleは世界の情報を見つけやすくし、またそのPageRankアルゴリズムにより一種のルールを定めた。そのルールのせいで企業は自分のWebサイトを、それがGoogleの検索結果のトップに来るための、何らかの方法でデザインしようとした。でもそのルールの画一的な構造は結局、eコマースにとって有害だった。

今では、ほとんどすべてのWebサイトが同じに見えるし、成績(ビューワー数、集客力、等々)も不振だ。オフラインでは、各ブランドが自分たちのストア体験をユニークなものにして自己を差別化しようとする。オンラインでは、どのWebサイトも、…GucciからGapに至るまで…同じ体験を与える。トップからのナビゲーション、説明的テキスト、少々の画像と、そのほかの互いに似たような要素。Googleのルールは、ユニークなオンライン体験からその生命(いのち)を抜き取った。そしてeコマースが困れば困るほどGoogleはさらに強力になり、ひどいeコマース体験を強制して、ブランドと消費者の仲を冷たくし、無味乾燥にしつつある。

大胆な予想をしてみよう: 2018年には有名ブランドのWebサイトの最初の閉鎖が起きるだろう。

Webサイトの良くないデザインには、隠れた連鎖反応がある。今、企業のカスタマーセンターにかかってくる電話の90%は、そのWebサイトが原因だ。その典型的な旅路は: 消費者が答を求めてWebサイトを訪れる→混乱して電話をする。今やそれはまるで疫病だ。カスタマーセンターは1年に2680億件の電話に対応し、1兆6000億ドルの費用を発生させている。

比較のために全世界の広告費支出を挙げると、それは5000億ドルだ。だからカスタマーセンターは、企業のマーケティング支出の3倍のコストを生じさせている。しかも、混み合っていてお客を待たせるカスタマーセンターが多いから、さらにひどい消費者体験を与えている。Webサイトとアプリは、電話を減らすどころか増やしており、コストも大きくしている。暮らしが楽になるというデジタルの約束は、あっさり破られる。

質問に親切に答えてもらったら、喜んでお金を払う気になる、という私たちの心理は、人間に生まれつきあるものだ。今ボットやAIが話題になっているのも、そのためだ。現実世界で何かが実現し完了するのは、何の力に依(よ)っているのか。会話に依ってだ。ロボットやAIが人間の仕事を壊す、とメディアは力説するが、Webに人間性が大きく欠けている今ではむしろ、その欠陥を補い、本当に暮らしを楽にするインターネットやWebを探究すべきだ。可能なら、AIやロボットもその探究に活用して。

今改めてeコマースの現実を知ってみると、初期に私が抱いた希望や夢も錯誤だった、という気がしてくる。しかし今の私は、私が“会話的コマース”(conversational commerce)と呼んでいるものに大きな希望を抱(いだ)いている。メッセージングや、Alexaのような音声、それにロボットを、生きた、人間的な会話に活用できれば、われわれがかつて夢に見たような普遍的で大きな規模で、強力なデジタルコマースの約束を、ついに実現できるだろう。

これまで、およそ18000社の顧客企業の仕事をし、最近、会話的コマースの探究を開始した私が大胆な予想をするなら、2018年には有名ブランドのWebサイトの最初の閉鎖が起きるだろう。ブランドは、これまでのように単に顧客とコネクトすることから、会話することへと力点を移す。それはボットと人間の共同作業になり、SMSやFacebookなどのメッセージングがフロントエンドになる。私たちはすでに数社の著名ブランドと、その実現努力を開始している。

(上記予言の)最初のWebサイトが終わると、ドミノ現象が始まる。しかしそれは多くの企業にポジティブな効果を与え、eコマースと顧客ケアのやり方を抜本的に変える契機になる。でもそれは、Googleに壊滅的な打撃を与えるだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

キャッシュバックサービスのCardlytics、IPOで7000万ドル調達。株価は3%高

米国ジョージア州アトランタ拠点のCardlyticsは金曜日(米国時間2/9)、公開市場へのデビューを果たし、IPO価格の13ドルをわずかに上回る13.37ドルで引けた。同社は540万株を売り出し、7000万ドルを調達した。

Cardlyticsは、Bank of Americaを始めとする2000社の金融機関と提携してキャッシュバックプログラムを運用している。レストラン、小売店、旅行業者、食料品店、家庭用定期購入サービスなどのブランドと手を結び、割引サービスを提供する。現在Starbucks、Spotify、Airbnb、Hilton、Whole Foodsなどの店舗で銀行顧客が特典を受けている

同社は「消費者の購入行動に基づいてターゲットされた特典を提供している」と共同ファウンダー・CEOのScott Grimesが本誌に語った。また「オンラインだけでなく消費者を実際の店舗に送り込む」。

銀行の顧客は受けたい特典を選んでおくと、指定の店舗で買い物すれば自動的にディスカウントが適用される。これまでに2.3億人の顧客が利用したと同社は言っている

しかしCardlyticsはまだ利益を上げていない。2016年には1.238億ドルの売上があったが7570万ドルの損失だった。2015年は売上7760万ドル、損失4060万ドルだった。

「売上成長率を将来も維持できるかどうかはわからない」とIPO申請書の必須項目である「リスク要因」に警告が書かれている。

2016年、CardlyticsはIPOに備えた財務改善の取組みの一環として、15%近い人員整理を敢行した

共同ファウンダー・COOのLynne Laubeは、今後も広告パートナーを増やしていく予定であり、それは「提供するディスカウント1ドル当たり、売上30ドルに影響を与える」からだと説明した。

Cardlyticsは、2009年にDiscovery Capital、Canaan Partners、Polaris Venture Capitalらから、新株発行により約2億ドルを調達した。CEO Scott Grimesは、かつてCanaanの主任パートナーだった。

Bank of AmericaとJ.P. Morganのが引受銀行としてこのIPOを統括した。

昨年TechCrunchはCardlyticsのIPOを第一報で知らせた。CardlyticsのIPOは、今年初のベンチャーキャピタル支援によるテクノロジー系IPOだった。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Amazon、独自のQRコード風の”SmileCodes”を実験中

Amazon、独自のQRコード風の”SmileCodes”を実験中
QRコードはまだ米国では本格的に普及しているとはいえないが、それでもAmazonは類似のシステムに挑戦しようとしている。

Amazonは、独自のスタイルのコードを開発し “SmileCodes” と名付けた。

QRコードをスキャンしたことのある人なら、よく似たアイデアに見えるだろう。雑誌などでコードを見つけたら、スキャナー(Amazonアプリに内蔵される)を開いてカメラをコードに向けると何かが起きる。その何かはコードによって異なるが、製品ページに飛ぶ、ビデオ(映画の予告編や製品レビュー等)が再生されるなどなどだ。

ほかのバーコードと差別化するために、コードの中央右側には大きくAmazonのスマイルロゴが置かれている。”SmileCode” の名前はそこから来ている。

AmazonはこのコードをヨーロッパのポップアップストアとAmazon Lockers(写真上)でこの数週間テストしているが、2月にはいくつかの雑誌で米国デビューさせる予定だ(CosmopolitanとSeventeen)。

雑誌の広告からAmazonの商品ページにジャンプさせるだけでなく、Amazonならこのコードをもっと身近な物に載せると思うべきだ。あのAmazonボックスだ。これまでにもAmazonはこの箱に広告を載せたことが一度ならずある(2015年の鮮やかな黄色のミニオンと数カ月前の赤いGreatest Showmanの箱)。このコードはあの箱をクリック可能なリンクに変える確実で繰り返し可能な方法だ。もしスキャンしてもらえなくても、単にAmazonのロゴが増えるだけのことだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Googleがサードパーティ製のクラウドソフトウェアをショッピングできるストアを開店

Googleが、企業などの顧客にクラウド上のサードパーティ製ソフトウェアを売るためのデジタルストアを立ち上げる。このニュースを最初に報じたBloombergは、この動きはAmazon Web Servicesなどクラウドの先頭企業集団に、この検索大手が後れを取らないための最近の努力の一環だ、と言っている。

Googleが単独でストアを立ち上げるのではなく、MobileIronとパートナーする。後者は2014年に上場したモバイルのデバイス管理企業だ。この新しいストアに関するGoogleのブログ記事によると、このコラボレーションによって、Google Cloud上のコマースプラットホームOrbiteraに、MobileIronのアプリ配布やセキュリティ、アナリティクスなどの能力が統合される。

Googleによると、このホワイトレーベル方式のサービスには、複数のサービスを顧客の層別に同梱(バンドル)したり、独自のブランドを作ったり、顧客のデバイスやデータやサードパーティのクラウドサービスにアクセスできたり、ユーザーやアプリを限定するセキュリティ、利用状況のアナリティクスなど、いくつかの機能が最初から提供されている。

GoogleがOrbiteraを買収したのは2016年で、そのときは買収価額が1億ドルあまりと言われた。Orbiteraはクラウドベースのソフトウェアを売買するプラットホームを開発したが、Googleによる買収によって、AmazonのAWSやSalesforce, Microsoftなどと競合してクラウド上でエンタープライスサービスを売っていけるように改良された。

Googleのこの新しいイニシアチブにはコンペティターがいる。Bloombergの指摘によると、AT&Tは、ユーザーがVPNで安全に接続できるクラウドサービスを提供している。しかしそれでも、一回のアクセスで容易かつ簡単に多くのクラウドサービス〜クラウドソフトウェアの中から気に入ったものを選べるこのような‘ストア’は、ユーザーにとって便利だろう。あちこちアクセスして探すよりは。

うまく行けば、これはGoogleの新しい強みになるかもしれない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa