【編集部注:本稿の執筆者、Mario Hergerはコンサルティング会社Enterprise GarageのCEO】
この子はLiam, 最近ちょうど1歳の誕生日をお祝いしたばかりだ。可愛いだけじゃなくて、彼で人が運転免許を取るは最後になるんだ。
それはないって?我々が生きているうちはまだ無理?
そうだね。Liamが運転免許を取る最後の人になるかは実際分からない。SophiaかもしれないしEthanかもしれない。その人はあなたの近所の曲がり角に住んでいるかもしれない。しかし確かなことがひとつある。最後の運転免許を受け取る人は既に生まれている。テクノロジーの発展速度と最近の幾つかの発表からその点は確実だ。
デジタル系企業からの参入
カリフォルニアのDMVだけでも自律走行技術の実走試験のライセンスを既に13社に発行した。グーグルのみで全米に渡り58台の試験車を保有しており、それは全登録車両の80%になる。グーグルの自律走行試験車はこれまでになんと通算160万マイルの走行距離をこなしており、その距離は毎週1万から1万5000マイルずつ上積みされている。全てを合わせると、この数字はカリフォルニアにおける総テストマイルの90%にもなる。グーグルの1月のレポートによれば、その数字にはさらに毎日のシミュレーション走行でこなす3万マイルが加わるということだ。
一方でテスラは、昨年10月の自動操縦モード発表以来自社の乗用車が延べ1億マイルもの距離を自動で走行したことを明らかにした。そしてイーロン・マスクが最近発表したところによるとテスラは2年以内に完全な自律走行車を完成させるらしい。さらにデジタル系企業からはUberとBaiduが自律走行車の開発を手がけている。
そして、テクノロジー自体も急速に進歩している。これまでの総走行距離と事故総数から判断すると自律走行車は既に人間の運転する車と同等の安全性を達成している。グーグルに関して言えば、これまでの160万マイルの路上試験走行で発生した事故は12件で、そのうち自律走行車側に非があるものはたったの2件だけだ。つまり事故の頻度は13万3000マイルに1件で、これは報告と非報告分を合わた、物損を伴う人的事故の発生頻度と同率である。
自動車会社の挑戦
従来型自動車会社は暫くの間自律走行車開発への歩みを止めていたかのようであったが、ここに来てデジタル系企業の送り出す新型車に追いつくべく本腰をいれつつある。ホンダ、メルセデス、アウディ、フォード、GMは全て試験車を開発し、必死になってテクノロジーを習得し、GMとフィアットのように協力関係を結んでいる。供給会社であるボッシュでさえテストライセンスを取得しているほどだ。さらにBMWの発表によれば、同社のiシリーズはその重点を自律走行車にシフトしていく予定で、一般販売は2021年を見込んでいる。
シンギュラリティ効果
Ray Kurzweilのシンギュラリティに関する発言によれば、自律走行車のAIにおいて必要となるデジタルパワーと知性の発展は指数関数的にもたらされるという。保守的アプローチに則り過去の経験から線形的に将来を予想したとすれば、実際の変化はその指数的要素により予想を上回る速さでもたらされるといったことになりかねない。
その他の参入者
AUTOSARは車載電気制御ユニット標準化のためのシステムアーキテクチャーだが、2018年にはバージョン4.4のリリースが予定されており、そこでは自律走行に必要なものすべてが盛り込まれるはずだ。このシステムはパートナー企業の開発する車に2020年までに標準装備されることになっており、そこにはBMW、フォード、GM、ダイムラー、フォルクスワーゲン、ボルボなどが名を連ねる。
センサーテクノロジーも急速な進化を遂げており、その価格は急速に下落している。現在の車には何百ものセンサーが搭載されており、その中にはレーダー、カメラ、GPS、加速度計などが含まれる。さらに必要となるLidarなども今後数年内に数百ドル位で手に入るようになると考えられる。
技術調査会社であるVision Systems Intelligenceが自律走行へのソリューションや技術の推進に関わる全ての企業のリストを作成したが、その数は注目に値する。なんと200以上の企業が自律走行テクノロジーの開発に取り組んでおり、他のホットな業界の例になぞらえれば、さらに多くの企業が参入してくるだろう。
人が運転する車は法律で禁止されるか囲われたサーキット内のみに限定されるかもしれない
安全な自律走行車の実現を可能にする技術的側面は重要だが、保険会社と規制機関が迅速な普及を推進する可能性がある。94%の事故が人的過失によるという事実を鑑みて、自律走行車の事故発生率は低くなることが予想される。結果として人の運転する車に対する保険料は法外なものになる可能性がある。今日、自動車を運転している人の大半はまだ機械に車のコントロールを明け渡すということについて懐疑的だが、実際に自分自身で自律走行車を体験し、人間の運転する車に対する保険料の上昇を目の当たりにすれば、その考えは急速に改まるだろう。次に来るのが法的規制だ。人が運転する車は法律で禁止されるか囲われたサーキット内のみに限定されるかもしれない。
最後のドライバー
このように有力な企業が共同で労力と資産をつぎ込んだ取り組みを見せている中、Liam、あるいはSophiaかEthanかもしれないが、この子たちが2031年に16歳の誕生日を迎えた際、運転免許を取る必要はないし、場合によっては免許の取得は許されないかもしれない。特にその年代の子供の運転履歴の悪さを考慮すれば尚更だ。彼らの方でも取り立てて免許を欲しいとは思わないかもしれない。運輸省によれば10代の間で免許取得者の割合は減少傾向にあり、これは他の国でも見られる傾向だ。
これらの技術的進展を前にして我々は再び問うことになる。車の本当の役割とはなんだろうか?車メーカーの言っているような「運転することの喜び」とか「自由」とかではなく、移動や交通問題を解決するわけでもない。車はいわばコネクターだ。車は我々が他の人や場所、物と結びつく手助けをしてくれる。しかしながら、そのコネクターとしての役割において車と競合関係にあるものがポケットの中に存在する。そう、スマートフォンだ。
昔の10代の子供は競って車の運転をしたがったが、今では運転を人に押し付けたがる。同乗者はスマホを使って他のみんなと繋がっているが、運転に集中しなくてはいけないドライバーだとそうはいかない。自律走行車ならば、現実、仮想を問わず皆があらゆるモードで繋がっていられる。
そして、これがLiam(もしくはSophiaやEthan)が運転免許にそれほど魅力を感じず、DMVでテストを受ける最後の人になる理由だ。
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(翻訳:Tsubouchi)