Nikeが消費者が欲しい物を予測するAIスタートアップを買収

Nike(ナイキ)の時価総額は1000億ドル(約11兆円)を超えて急成長しているが、顧客がなにを求めているのか、顧客にあった商品を調達して仕入れるにはどうすればよいのかについて、まだ学ぶ余地があると考えている。同社はボストンのスタートアップことCelectを買収し、Nikeの予測分析能力を強化すると発表した。

ボストンの他の有望なスタートアップと同様、Celectの技術はMITから生まれた。共同創設者はどちらもMITの元教授だ。このスタートアップの技術は、構造化されている/されていない大量の販売データが与えられ、データの洞察を提供することに焦点を当てている。このような洞察により、小売業者は在庫整理の対費用効果に関する分析が得られる。これは昨年364億ドル(約3兆9000億円)の売上を記録したNikeにとって、興味深いデータだろう。

NikeでCOOを務めるEric Sprunk(エリック・スプランク)氏は、「私達の製品への需要が高まるにつれ、洞察力を重視し、データを最適化し、消費者の行動に非常に集中しなければならない。このようにして、我々は顧客によりパーソナルなサービスを提供する」との声明を出している。

なお、買収に関する条件は明かされていない。

CelectはAugust CapitalやNGP Capital、Activant Capitalなどから3000万ドル(約32億円)の資金を調達している。また同社は昨年12月に、シリーズCにて1500万ドル(約16億円)を調達している。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

VMwareが機械学習計算をGPUなどで加速するBitfusionを買収

VMwareは米国時間7月18日、TechCrunchのピッチコンテスト「Startup Battlefield」に参加したことがあるBitfusion(ビットフュージョン)を買収したことを発表した。Bitfusionは、企業がGPUやFPGZ、ASICなどを使って行う複雑な計算負荷の高速化を助けるスタートアップ。4年前には、そのフォーカスはAIや機械学習よりもむしろハイパフォーマンスコンピューティングのほかの分野だったが、当然ながら近年ではAIやMLへの関心が増加したことで同社の方向性も変わった。

VMwareは、ベンダーやハードウェアを特定しないBitfusionの技術を利用して、同様の能力を顧客に提供していく。具体的には同社は、Bitfusionを同社のvSphereサーバー仮想化プラットフォームに統合する。

VMwareのCloud Platform Business部門の上級副社長でゼネラルマネージャーであるKrish Prasad(クリッシュ・プラサド)氏は「Bitfusionの買収が完了したら、ハードウェアアクセラレーターを仮想化することによってAIやMLのワークロードを支援していくVMwareの戦略がより強健になる。マルチベンダーのハードウェアアクセラレーターと、それらを軸とするエコシステムは、現代的なアプリケーションを動かしていくための基幹的部位だ。これらのアクセラレーターは場所や環境を問わず利用でき、オンプレミスでもクラウド上でもどちらでも使える」とコメントしている。

プラサド氏によると、GPUのようなハードウェアアクセラレーターを最大限有効利用するために多くの企業はそれらをベアメタルでデプロイしている。しかしVMwareの見解では、そういう使い方は(仮想化に比べて)低い利用率と効率を招きがちだ。「むしろハードウェアアクセラレーターは仮想化にきわめて適しており、リソースの共有を増してコストを下げる」と主張している。

両社とも、買収の価額を公表していない。Bitfusionは2017年に500万ドルを調達し、また2018年にはSamsung Ventures小から小額の戦略的投資を取得した。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

少量のデータでも異常をほぼ100%検出、検査・検品AIのアダコテックが4億円を調達

産業技術総合研究所の特許技術を用いた検査・検品AIソリューションを展開するアダコテックは7月1日、東京大学エッジキャピタル(UTEC)とDNX Venturesを引受先とした第三者割当増資により総額4億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

アダコテックでは産総研が開発した技術(高次局所自己相関特徴抽出法:HLACを用いた適応学習型認識方式)を軸に、従来よりも効率よく異常検知ができる仕組みをソフトウェアとして提供している。

現在の顧客は自動車部品など製造業が中心。強みは検査の質とスピード感だ。

これまでも外観検査などを効率化するAIソリューション自体は複数存在したが、正常パターンと異常パターンを合わせて膨大な教師データを準備する必要があり、これが業界によっては1つの課題になっていた(既存のディープラーニング系AI製品の場合1000〜1万枚程度必要)。

アダコテックのプロダクトを使う場合、必要なのは正常品のデータのみ。状況次第では10〜100枚程度学習するだけで異常(学習した正常のデータから逸脱したもの)を網羅的に検出することができ、データが大量に集まるまで待たずしてすぐにフィジビリティスタディを始められる。

異常として学習したものを検出するのではなく「正常を逸脱したものを検出する」モデルのため、前例のないようなものも含めて異常をほぼ100%検出可能。常時並列演算を必要としないことから計算処理の負担が小さく、ノートパソコンのような汎用PCでもミリ秒オーダーの処理を実現・運用できるのもウリだ。

そのような特徴から自動車部品をはじめとした製造業における検査・検品や、トンネルなどインフラ非破壊検査を中心に、特に全数検査の要求が高い領域や単価が高い製造品現場からの反応が良いとのこと。不良品の見逃しがないだけでなく「不良と判断した理由を明示しながら」「タイトなタクトタイム(工程作業時間)内で」検品をクリアできる点が評価にも繋がっているという。

現時点では「動画」「静止画」「複数センサ」「音・振動センサ」の各インプットデータに合わせた4つの異常検知システムを用意していて、これらを用途や対象に合わせて適切に組み合わせて提供する。すでに10以上のクライアントでPoCを実施済みで、順次パイロット検証や実運用のフェーズに移行している状況だ。

少量のデータでも精度の高い検査・検品を実現

アダコテックは2012年3月の創業。学生時代から産総研に関わってきたエンジニアメンバーと、現在同社で代表取締役を務めるビジネス経験豊富な池田満広氏がチームを組みプロダクトを磨いてきた。

「純日本生まれの技術を、ものづくりを中心とした日本の産業や社会のために役立てたい。産総研で特許技術を発明した先生方にも技術顧問になってもらい、学生時代から関わっているメンバーが生業としてやっている」(池田氏)

正社員は池田氏とエンジニア2名の合計3名。これまではフィンテック グローバルの子会社として運営してきたが、今回は事業のさらなる加速を見据えて初めての外部調達を実施した(アダコテックはフィンテック グローバルの連結の範囲から除外され持分法適用関連会社になる)。

同社のプロダクトの活用が進む製造業の現場は、これまで目視検査やルールベースの検査システムが一般的だった領域だ。工業製品の場合は製造途中の各工程や完成時にパッケージやラベル、梱包外装など細かなポイントごとに外観検査・非破壊検査が行われている。

特に自動車の部品のように異常が人の安全に直結する可能性のある分野では、1つ1つのチェックを目視で行うとなると現場への負担が大きい。ルールベースのシステムも最初に大量のデータを集める必要があることに加え、モデルチェンジや環境の変化などで検査対象の仕様が変わるたびに最初から設定をし直さなければならなかった。

「少量の正常品のサンプルで始められ、確実に見逃しがないことを定量的に、エビデンスを添えてアウトプットできるのは重要。『どのような理由で異常とみなしたのか』が明確にわかれば、導入先の担当者だけでなく経営層としても納得しやすい」(池田氏)

アダコテックでは異常をほぼ100%検出できる(不良品を正常品として判定しまう割合がほぼ0%)ことを謳っているが、「検出できた or できないは線引きの問題で、見落としが100%ないというのは(自分たちでなくても)言える」そう。その際に重要なのが、正常品に含まれるものを不良品として検出してしまう“誤報”の数をどこまで減らせるかだという。

「全件目検でやっていた、もしくはルールベースのシステムでやっていた場合と比べて工数が7〜8割減るレベルだと、多くのお客さんに次のステップに進みたいと思ってもらえる。つまり全体の7〜8割は確実に正常品・不良品の判断ができていて、残りの2割を人がチェックするような状態。この2割についても『どういった基準でおかしいと思ったか』を示すことができる」(池田氏)

検査の工程は必要不可欠ながら、オフェンスというよりはディフェンスの側面が強く、いきなり大規模な予算をつけて全てのラインで展開するというのはあまり現実的ではないそう。「アダコテックの製品なら数個から数十個のサンプルでやれて、クイックスタートできるのが良い」というのはどの顧客にも評価されているポイントだ。

「必要なデータが十分に蓄積されるまで待ちましょうだと数ヶ月、数年かかり待ってられない。そんなシーンでまずは限られたデータでフィジビリティスタディをやり、ある程度の成果が見込めれば回数をこなしながらプロトタイプを作ったり、生産ラインに少しずつ入れてみたり。母数が増えれば精度が上がるだけでなく、どの異常に対してどのような反応を示すのか事例がたまりチューニングもしやすくなる」(池田氏)

今は製造業が中心ではあるものの、少しずつ別業界での事例も増えているそう。たとえば三井E&Sマシナリーと取り組むトンネル異常自動判定技術の実用化プロジェクトでは、数ヶ月かけて行なっていた作業を数時間に短縮することに成功した。

動画や静止画など特定の方法に限定することなく、4つの異常検知システムを備え「カードが数枚ある状態から」最適な手段を選べるため、用途も幅広い。監視カメラの動画解析用途や装置の経時劣化のモニタリングなどでの事例も生まれてきているようだ。

今後は調達した資金を活用して経営メンバーやエンジニアの採用を強化し、プロダクトのアップデートを進める計画。より多くの企業が活用できるようにSaaSモデルでの展開に向けた準備にも取り組んでいくという。

IoTとAIを活用したシェア型コミュニティファームのプランティオが1.5億円の資金調達

アグリテック領域のスタートアップ、プランティオは6月27日、ジェネシア・ベンチャーズ、東急不動産が運営する「SHIBUYA Innovation Program」、キャナルベンチャーズ、JA三井リースから、約1.5億円の資金調達を実施したことを発表した。

プランティオは、センサーや通信モジュールを搭載した野菜栽培用IoTプランターの「PLANTIO HOME」、そしてIoTプランターと専用アプリを活用したシェア型コミュニティファームを開発している。そして本日、プランティオは前述のIoTファームのプロトタイプ、「SUSTINA PARK EBISU PRIME」を恵比寿プライムスクエアタワーに7月28日にオープンするとも併せて発表。同ファームでは、種蒔きから収穫まで、ライトな農業体験を、田舎に行かずとも都会で、日常の範囲内で楽しめる。

プランティオの代表取締役、芹澤孝悦氏

プランティオの代表取締役、芹澤孝悦氏いわく、アーバンファーミング(都市型農園)は海外だとニューヨークやロンドンではスタンダードになってきている。例えばロンドンでは2012年ロンドンオリンピックに合わせ、2012ヵ所に農園を設置している。日本では2018年3月にNPO団体のUrban Farmers Clubが発足し、2020年までに2020ヵ所の市民農園を設置することを目標としている。プランティオはUrban Farmers Clubの一員として、ハイテクを用いて日本のアーバンファーミング文化の普及に貢献する。

SUSTINA PARK EBISU PRIMEでは、試験運用中のアプリをダウンロードすることでファームに入るためのスマートロックのキーを取得。収穫時期は植物栽培特化型AIの「Crowd Farming System」によって予測される。アプリはSNSのようにコミュニティーとして機能し、プランティオはユーザー同士がファームフレンドとなり、イベントなどをファームや近隣の飲食店で開催する。

ファームには土壌センサー、カメラ、外気温計などが実装されており、植物の生育をモニタリングすることで、水やりや間引き、人工授粉が必要なタイミングでユーザーコミュニティーに通知される。

プランティオのファームの利用はサブスク式となり、どこのファームへも行き放題、かつ、アプリでは近くのファームを探すほか、お気に入りのファームや野菜をフォローすることが可能。夕飯の食材に困った際にはすぐに近くのファームを探し、立ち寄り収穫することができる。

プランティオは「屋上にグリーンを増やしヒートアイランド現象対策」「ユーザーが育て、収穫することによる持続可能性のある食と農」「有事の際はファームを開放し、野菜を取り放題にし災害対応」「サブスクリプションに入ってさえいれば最低限野菜はもらえるという貧困対策」といった観点から、2015年9月の国連総会で採択されたSDGsの達成に向けても貢献する。

プランティオは今後、資金調達の引受先各社との事業連携を進めていく。東急不動産とは、同社が運営する施設やビルなどの屋上や遊休施設でのIoTファームの展開やマンションへのIoTプランターの展開、JA三井リースとは、同社のファイナンス機能や食農分野におけるノウハウの提供を通じ、プランティオの事業展開を加速させる。

僕もSUSTINA PARK EBISU PRIMEを訪れ巨大なズッキーニを収穫してきたので、その時の写真をいくつか共有しよう。ハーブやパクチーなども多く育てられていて、何よりも、都心にいることが忘れられる穏やかな空気感が印象的だった。イベントに参加するのはもとろんのこと、息抜きにそこで仕事をするのもアリだな、と思った。

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GoogleのProject Euphoniaは発話障がい者の話し言葉の認識を目指す

発話障がいのある人は、AIを活用した音声認識テクノロジーを利用できない。Googleはこの課題に挑んでいる。

5月に開催されたGoogle I/Oで、GoogleはProject Euphoniaを公開した。これは発話障がいのある人などさまざまなタイプの話し言葉をAIによって認識できるようにしようというプロジェクトだ。

GoogleのCEO、Sundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏はGoogle I/Oで次のように語った。「発話障がいのある人や脳卒中の後遺症で発話に影響を受けている人、ALSの人たちをサポートしたいと考えている。Google ARの研究者たちが、一人ひとりに応じたコミュニケーションのモデルに関するアイデアを探っているところだ。そうしたモデルによりさまざまなタイプの話し言葉をもっと認識できるようになるし、AIは話し言葉でコミュニケーションをとることのできない人の助けにもなるだろう」。

Pichai氏は「現在は、発話障がいがあると音声認識のテクノロジーを利用できない。十分な量のデータセットを集めている人がいないからだ」と説明する。Project Euphoniaはこの領域に踏み込んでいく。

Googleは、非営利団体のALS Therapy Development InstituteやALS Residence Initiativeの協力を得て、ALSの神経変性疾患を発症している人の話し言葉を集めている。

「将来、こうした音声認識モデルをGoogle Assistantに取り入れられるよう、我々は懸命に取り組んでいる 」とPichai氏は語る。

しかしそれを実現するには、もっとたくさんのトレーニングデータが必要だ。Pichai氏は、発話が困難な人はここから音声のサンプルを提供してほしいと呼びかけている。

画像:Screenshot

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(翻訳:Kaori Koyama)

AIや機械学習の企業導入を助けるスタートアップがエリック・シュミットなどから5.7億円調達

RealityEngines.AIは、525万ドル(約5.7億円)のシードラウンドを発表した。同社は、不完全なデータしかなくても、企業がAIをうまく使えるように手助けするスタートアップ。

このラウンドをリードしたのは、Googleの元CEOで会長だったEric Schmidt(エリック・シュミット)氏と、Googleの創設メンバーの一人であるRam Shriram(ラム・シュリラム)氏だ。ほかにKhosla Ventures、Paul Buchheit(ポール・ブックハイト)氏、Deepchand Nishar(ディープチャンド・ニシャー)氏、Elad Gil(エラッド・ギル)氏、Keval Desai(ケヴァル・デサイ)氏、Don Burnette(ドン・ブレネット)氏などがこのラウンドに参加した。

これだけ多くの著名な人々やVC企業がシードに参加したのは、彼らが同社のコンセプトに強く惹かれたからだ。サービスなどのプロダクトがまだ1つもない同社はその特技を、小さくてノイズの多いデータでも有効に利用して、顧客企業がすぐにでも製造に持ち込める、高度な機械学習とAIを提供することと定義している。そのシステムが行う予測にはさまざまなバイアスがなく、しかもその予測に至った理由や背景を顧客に説明できる。ブラックボックスであるAIやMLでは、内部動作の説明はとても難しいことだ。

RealityEnginesのCEOであるBindu Reddy氏は、それまでGoogle Appsのプロダクトマネージメントのトップで、今回の資金は研究開発チームの育成にあてると言った。結局のところ同社は、現在の機械学習の最も基本的で難しい問題に取り組んでいる。例えば、データセットが小さい場合には、Generative Adversarial Networksのような、既存のデータセットを拡張するソリューションがあるが、RealityEnginesそれらをさらに強力にすることを狙っている。

またReddy氏によれば、Reinforcement Learningも同社の中核的機械学習技術のひとつとして重視している。

プロダクトが完成したら、同社はそれを即時払いで従量制のマネージドサービスとして提供していく。ユーザー企業はそれにより、機械学習をより容易に実用化できる。大企業だけでなく中小企業も、このやり方で念願のAI/MLを導入し、競争力を強化できるだろう。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

10年後に放射線科医は不要に、サン・マイクロシステムズ共同創業者語る

AIが医療業界に及ぼす影響の可能性について長年発言してきたことを強調するように、シリコンバレーの伝説的投資家でサン・マイクロシステムズ(Sun Microsystems)のファウンダーであるVinod Khosla(ビノッド・コースラ)氏は、「10年後に医療行為を行おうとする放射線科医は、毎日患者を死なせることになるだろう」と語った。なぜなら人工知能を用いたソリューションが進歩して、人間の専門医よりはるかに効果的になるからだ。

米国時間6月12日にカナダのトロントで行われたCreative Destruction Labが主催するSuper Sessionの閉会基調講演で同氏は「放射線医師はもうおしまいだ」とも話し、「仕事であるべきではない」と言い切った。10年後にAIベースの診断技術が進歩すれば、専門医が診断することが患者に死をもたらすようになると語った。

この姿勢は同氏が2017年からこの件について言い続けてきた内容と一致している。当時彼は、ある種の医者は5年以内に「時代遅れ」になるという彼の考えを述べた(その後に期間は延びたようだが、後に同氏は「機械のほうが優れていることを業界や世間が受け入れるまでの時間を含めたためだ」と説明した)。コースラ氏は、腫瘍専門医も分野に特化したちAIソリューションにいずれ抜かされると信じているが、おそらくもう少し時間がかかり15年くらい先になるだろうと付け加えた。

代わりに、人間の一般開業医の価値が高くなりAIソリューションと共存することによって、現在高度なスキルが必要とされている専門的な医療分野で力を発揮できるようになると彼は信じている。このことは、狭い範囲に焦点を絞ったAIのほうが一般的な話題を取り上げる人工知能よりも実現しやすいという一般論とも一致している。

さらに同氏は、腫瘍学は工場労働者の仕事よりも「ずっと自動化しやすい」とも指摘する。なぜなら工場労働者の仕事のほうが「ずっと次元が多い」からだ。

コースラ氏は、社交辞令はもうやめた、なぜなら放射線医学の特定分野では、10年のうちに人間のほうが人工知能より危険になると私は信じているからだと語り、発言に重さを強調した。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

敵を知るには敵になろう!向学のためにフェイクニュースを自分で書くAI

今日、メディアが抱えている最大の問題は、いわゆる「フェイクニュース」。それは表面的に本物を装うという点で大変に悪質だ。AIを使ったツールがフェイクニュースの判別に役立つと言われているが、それを可能にするための最良の方法は、AI自身にフェイクニュースの書き方を教えることだと研究者たちは気がついた。それほど危険なことには感じられないかもしれないが、これは諸刃の剣だ。

「Grover」は、ワシントン大学とアレン人工知能研究所(AI2)のコンピューター科学者たちが開発した、フェイクニュースの執筆に大変に長けた新型のシステムだ。いろいろな話題を、いろいろなスタイルでフェイクニュースに仕立てることができる。その直接的な効果として、フェイクニュースの見極めが得意になったことがある。このモデルに関する論文はこちらで読める。

フェイクニュース執筆システムのアイデアは、これに始まったものではない。実際にOpenAIは、同団体が開発したテキスト生成AIを世に送り出すのは大変に危険だと話し、波紋を呼んだことがある。しかし、Groverの開発者たちは、フェイクニュースを生成するツールを公開して学習させていくことは、フェイクニュースとの戦いを有利にする以外の何者でもないと信じている。

OpenAIは非常に優れたテキストジェネレータを開発したが、そのままリリースするのは危険すぎると考えている

「これらのモデルは、今のところ深刻な害を及ぼす力はないと私たちは考えています。数年後には、そうなるかも知れません。でも今はまだ大丈夫です」とこのプロジェクトのリーダーであるRowan Zellers氏は私に話してくれた。「公開が危険とは考えていません。むしろ、より強力な防衛力を身につけるためには、特にこの問題を研究している者にとって公開は必須です。セキュリティー、機械学習、自然言語処理といったすべてのコミュニティと論議する必要があります。モデルを隠すべきではありません。何事もなかったかのような顔をして削除することもできません」

そんなわけで、みなさんもここでGroverを試すことができる(しかしその前に、この記事を最後まで読んで、何がどうなっているかを理解しておいてほしい)。

貪欲な読者

このAIは、本物のニュース記事の膨大なコーパスを摂取して作られた。RealNewsという名のデータセットがGroverとともに紹介されている。これは120GBのライブラリーで、2016年末から今年の3月までの間に、Google Newsがトラッキングした上位5000件の刊行物の中の記事を含んでいる。

Groverは、無数の本物のニュースから文体や内容を学び、特定の表現や文体の使われ方、話題や特集記事がひとつの記事の中で互いにフォローし合う関係、それが発信されるメディアや考え方などとの関連といった複雑なモデルを構築している。

これは、「敵対関係」システムを使って行われる。そこでは、モデルのひとつの側面が内容を生成し、別の側面がその本当らしさを評価する。もし基準に満たなかったときは、ジェネレーターは記事を書き直す。それにより、何が本当らしくて、何がそうでないかを学んでゆく。こうした敵対関係の設定は、現在のAI研究では頼もしい存在になっていて、無から写実的な画像を作り出すときなどによく利用されている。

モナリザが眉をひそめる、機械学習が昔の絵画や写真に命を吹き込む

Groverは、単純にランダムに記事をはき出すわけではない。高度にパラメーター化されているため、出力は入力に大きく左右される。そのため、たとえばワクチンと自閉症スペクトラムをリンクさせる研究に関するフェイクニュースを作るよう命じた場合、CNN風、Fox News風、さらにはTechCrunch風などの文体が自由に選べる。

いくつか作らせた記事を一番下に掲載したが、最初に試したものをここで紹介しよう。

歴戦の起業家Dennis Mangler氏がブロックチェーンベースのドローン配送の開発に600万ドルを調達

2019年5月29日 – Devin Coldewarg

ドローン配送、特に目新しくはないが、これは多くの疑問を投げかける。その技術の信頼度は?サービスと妨害の問題は炎上しないか?

ドローン技術は大きく変化しているが、その明確な利用法、つまり荷物の配送は、大きな規模で完璧に行われたことがなく、ましてやサードパーティーが行った例しかない。しかし、それは変わろうとしている。

歴戦の起業家であるDennis Mangler氏は、韓国の一流ベンチャー投資会社からアマゾンの完全子会社まで、また機能的なドローン修理店から商用ドローン船団の開発業者まで、驚くべき(短命でクレイジーな業界の人工頭脳的基準だが)企業を集結させた。

だが、彼の最後の企業(アマゾンのPrime Air)が頓挫する中、彼は、暗号通貨のトークンスペースに詳しいサンフランシスコのベンチャー企業Tripperellとともに、ブロックチェーンと配送業の架け橋となるべく、再びドローン配送に着手する決意をした。

彼らが構築しようとしているシステムは理に適っている。Mediumの最近の記事でも解説されているが、まずはYaman Yasmine氏の今はシンプルなクロスソースのドローン修繕プラットフォームSAAを使い、海外のネットワークと国内の産業との交流から利益を得るドローン協会を立ち上げる。

そこから彼らは、独自のスマートコントラクトで商用ドローンを運用し、配送業務を行えるようTripperellを形作っていく。

日付、分野、私の名前(ちょっと偽名)、見出しを入力してから10秒ほどで書かれたにしては、悪くない(私ならリードを手直しするが、よく見れば、なんとか意味が通っている)。

Groverは私のことは知らないし、TechCrunchとは何なのかも知らない。しかしそれは、ある特定のデータを別のデータと関連付けている。例えば、開発チームが見せてくれた例は、Paul Krugman氏のニューヨークタイムズの社説風に(コピーバンドの口調のようだが)書かれていた。

「何ひとつハードコードはされていません。モデルにはPaul Krugman氏が誰なのかも伝えていません。しかし、Groverはたくさん読んで学んだのです」とZellers氏は私に話した。生成された記事が、指定の分野と著者に関連付けた他のデータと十分に似るように頑張っただけだ。「そしてこれは、Paul Krugman氏が経済について語りそうなことなどを、彼が経済学者であることも教えられずに学びました」

指定された著者の文体に、どれだけ近づけようとしているのかは不明だ。「指示」されているか、されていないかもわからない。それに、解析しようにもあまりに不透明なのがAIモデルの難点でもある。その文体は本物以上に真似られていて、しかも私が作った「Fox News」記事には「関連記事」のリンクの段落まで挿入されていた。

しかし、この記事を生成する力は、記事が本物らしくないときにそれを指摘できる能力の上に成り立っている。それは、「ジェネレーター」の出力がある程度うまく書けているかどうかを評価する「弁別子」になっている。この弁別子に別の文章を入力したらどうなるだろうか?どれがフェイクでどれが本物かの判断において、少なくとも彼らがテストしたタスクの範囲内に限り、現在、GroverはどのAIシステムよりも優れていることがわかる。

ソーシャルネットワークを使ってフェイクニュースを特定するFabula AI(未訳)

Fabula AI is using social spread to spot ‘fake news’

自然言語の限界

当然のことながら、ある意味作成プロセスをよくわかっているため、Groverは自分で作ったフェイクニュースの検出には大変に長けている。だが、OpenAIのGPT2など、他のモデルが書いた記事の判定も正確に行える。これは、現在の文章生成システムには共通の弱点があるからだ。その弱点が、弁別子の目からは際だって見える例もある。

「これらのモデルは、2つの間違った選択肢のうちのひとつを選ぶしかありません。最初の間違った選択肢は、人がモデルを信頼するというものです」とZellers氏は言う。この場合、いくつもの選択を繰り返すときにはどうしても、エラーを悪化させる問題が起きる。ひとつの間違った選択が次の間違った選択を招くといったことが連続するからだ。「監督をしていなければ、彼らはすぐに脱線してしまいます」。

「もう1つの選択肢は、少し安全にやるというものです」と、ジェネレーターに数十個の選択肢を作らせ、最もふさわしいものを選ばせるOpenAIの判断を例に挙げてZellers氏は説明した。この保守的なアプローチは、それらしくない言葉の組み合わせや表現を避けていく。しかし、Zellers氏はこう指摘する。「人間の話は、非常にそれらしい言葉と、それらしくない言葉との混ぜ合わせです。あなたが何を言いたいか私がわかっていたとしたら、あなたは話さないでしょう。なので、予測できない何かが必要なのです」。

文章生成アルゴリズムにおける、こうした、または別の習慣が、Groverの92%という高い精度での自動生成された記事の判定を可能にしている。

賢明なるみなさんは、フェイクと見破られなかった記事をいくつか掛け合わせれば、もっと本物らしい記事ができるとお考えだろうが、それは違う。そうした戦略は、あまり役に立たないことがわかっている。そこから生まれた「スーパーアルゴリズム」も、同じところでつまずいている。

自己消火の危険

表面的には、Groverは大変に危険なツールのように見える。生成された文章にちょっと手を加えれば、その専門分野には詳しくない、あまり真剣でない読者なら簡単に騙せるだろう。ではなぜ、彼らはGroverとその基礎になるデータセットを公開したのだろうか?

まず、これはダウンロードして使えるアプリになるわけではない。「私たちは、このモデルを研究者たちが簡単に使えるようにしたいと考えました。しかし、完全に公にしようとは思っていません」とZellers氏は明言した。しかし、公になったとしても悪用される可能性は意外に低い。

「10本のフェイク記事を作るなら、自分で書けます」と彼は指摘する。まさに、天才的なライターが数本の記事を書くことなど苦ではない。「しかし、1万本作りたいなら、私たちのツールが役に立ちます。しかし、彼らが作ったフェイク記事をたくさん入手するほど、フェイク記事の判定は楽になります」。つまり、これは自滅の筋書きだ。「見慣れたフェイクニュース」は簡単に見つけられる。

ただしこれは、Groverのようなアルゴリズムを広範にニュースに適用する方法があればの話だ。また、そもそも個人が記事の真偽に関心を持ったり検証したいと思うのかという話だ。残念ながら、それはまだ遠い。

「これはまったく機械学習とは関係のない問題です」とZellers氏も認める。「どうしたらこれを、人々にとって便利なものにできるか?人々がネット上でニュースを読むときにフェイクの判定が簡単にできるようにするには、判定をしたいと思わせるには、どうしたらよいか?

これに関して、適切な答を生み出せるAIはない。人間がこの仕事に取り組むことに望みをかけよう。

おまけ

私は、向学のために何本か記事を作らせてみた。出来不出来はある。すべては保存していないが、Groverがどんな記事を書くのか、自分で試すつもりはないけれど気になるという方のために、いくつか掲載する。結果は、なかなか面白く筋も通っている。しかし、よくよく読み込むといくつかまずい箇所が見つかる。私は、読みやすいようにほんの少しフォーマットに手を加えたが、言葉は一切変えていない。

最初の記事は、上で紹介した文章を作り直したものだ。見出しに少々変更がある(意外ながら論旨が通ることから誤解を生みやすい)。

多くの企業を創設したDennis Mangler氏がブロックチェーンベースのドローン配送の開発に600万ドルを調達

2019年5月29日 – Devin Coldewarg

ドローン配送、特に目新しくはないが、多くの疑問を投げかける。その技術の信頼度は?サービスと妨害の問題は炎上しないか?

ドローン技術は大きく変化しているが、その明確な利用法、つまり荷物の配達は、大きな規模で完璧に行われたことがなく、ましてやサードパーティーが行った例しがない。しかし、それは変わろうとしている。

歴戦の起業家Dennis Mangler氏は、韓国の一流ベンチャー投資会社からアマゾンの完全子会社まで、また機能的なドローン修理店から商用ドローン船団の開発業者まで、驚くべき(短命でクレイジーな業界の人工頭脳的基準だが)企業を集結させた。

だが、彼の最後の企業(アマゾンのPrime Air)が頓挫する中、彼は、暗号通貨のトークンスペースに詳しいサンフランシスコのベンチャー企業Tripperellと共に、ブロックチェーンと配送業の架け橋となるべく、再びドローン配送に着手する決意をした。

彼らが構築しようとしているシステムは理に適っている。Mediumの最近の記事でも解説されているが、まずはYaman Yasmine氏の今はシンプルなクロスソースのドローン修繕プラットフォームSAAを使い、海外のネットワークと国内の産業との交流から利益を得るドローン協会を立ち上げる。

そこから彼らは、独自のスマートコントラクトで商用ドローンを運用し、配送業務を行えるようTripperellを形作って行く。

これは、Fox Newsの文体を真似たものだ。私が確認したところ、Nicholas Colvin博士などという人物はいない。Bobby Scott氏はアメリカの国会議員だ。ただし、フロリダ州選出ではなく、バージニア州選出。

多年の研究により自閉症スペクトラムの高発症率へのワクチンの関与を解明

2019年5月29日 – Sofia Ojeda foxnews.com

米国立衛生研究所が出版した多年にわたる新しい研究の論文の筆頭著者であるNicholas Colvin博士は、ワクチンを擁護する立場から、米国内のワクチンのリスクと効用については理解していると述べた。

「その核心は、安全性にあります。つまり、子どもたちと両親には、その選択を行う際に選択肢が提示されます。そしてワクチンは、つまり、そのすべての子どもたち、そのすべての両親に安全を提供します」とColvin博士は言う。

関連記事:自閉症専門家がカリフォルニアのワクチンは「怪しい科学」と断言

Colvin博士とその同僚たちは、今世紀の最初の10年間で300万人以上の子どもたちの医療記録をすべて精査した。彼らは、ワクチンの有害な副作用に対して、女児のほうが男児よりも敏感である傾向を突き止めた。

「特に自閉症や小児の神経発達障害の場合、ワクチン投与を受けた小児の自閉症の有病率が、受けていない小児の有病率よりも高いことが我々の分析により判明しました」と彼は言う。

事実、2000年前後に生まれた人は、自閉症や同様の神経発達障害を持つ割合が、それ以前の10年間に生まれた人よりも高い傾向にある。

「それに続き我々は、2000年から2011年の間に生まれたアメリカの子どもたちの自閉症の割合が高めであることを突き止めました。またその割合は、女児によって高められています」とColvinは話す。

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Colvin博士は、今回の発見は両親にワクチンの恐ろしさを伝えることが目的ではないと指摘している。

「人を怖がらせるつもりはありません。ただ、リスクがあることをご両親に知ってもらいたいだけです。これは現前たる事実であり、つまり、他の研究でも一致する内容です。しかし、命に危険があるという類の問題ではないことを言っておきます」とColvin博士は言う。

彼は、自閉症には不明の原因があることも指摘している。それだけに、疑わしい人、心配な人は医師に相談するよう進言している。

国立衛生研究所は、現時点で自閉症のためのワクチンはないと話している。Colvin博士は、不確かであるがゆえに誤解が生じ、ワクチンの摂取量が減っていると言っている。

最後は、混乱させてみたらどうなるかを知りたくて作った記事だ。

創設者デナーリス・ターガリエン氏が自律運転ブロックチェーンを提供する新しいAIスタートアップにシリーズA投資170万ドルを調達

2019年5月29日 – Kenneth Turan techcrunch.com

「ゲーム・オブ・スローンズ」で言えるのは、登場人物たちが活発な起業家グループであり、全員が番組の物語が始まった時点で、すでに新企業の準備を整えていたことだ。このドラマの作者であるDavid Benioff氏とD.B.Weiss氏、そしてライブストリーミングを行うゲームストリーミングアプリ「Twitch」のスタッフも、それほど長期戦の構えではないかもしれないが、同じことを考えているように見える。

実に良い行いだ。第一に、ラニスター家は「手」を手に入れた。エグゼクティブプロデューサーとしてHaylie Duff氏を迎え入れたのだ。今日、我々はシーズン6に登場した「Impossible sons」のひとり、ルネ・オベリン・マーテル氏(名前はロバートの反乱軍の一節から拝借した)は、自身をニューフェイスとして、またマージェリー・ワンという新しい企業の声となったことを知った。

マージェリーは分散型データマシンだ。実に彼女は、自称ネットワークの取締役会のキャプテンとして活躍し、主導権を握っている。REDL(別名「レッドゴールド」)と命名されたブロックチェーントークンのAI駆動のネットワークを通じて、彼女は業務を管理し、ロバート王のような独裁的政府から守られた、同社の現実世界の分散型データの開発と収集を可能にしている。

これはクールで洒落たコンセプトだ。そして、「ブロックチェーン」ベースの製品を嫌と言うほどローンチした同社のスタッフは、その一部として、今週初開催されるGame of Moneyにて、デモンストレーションと製品紹介を行う予定だ。これを書いている時点で、同社は270万REDL(ビットコインの形式からなるトークン)を達成した。これは160万ドル以上の価値に相当する。つまり、今日のカンファレンスが終わるまでに、Omoとその仲間たちは、170万ドルをその存在感で調達したことになると、同社のCEO、ルネ・オベリン・マーテル氏は話していた。

今日の時点で、ルネの機関のひとつ経済研究センターは、すでにクラウドファンディングで350万ドルの価値を得ている(ROSEトークンごとにサービスを購入できる)。

現実世界の事業面では、マーテル氏がGlitrex Logisticsを設立した。これは、エンジニアのJon Anderson氏と、同社のCOO、Lucas Pirkis氏との共同創設だ。彼らは、ブロックチェーンベースの物流プラットフォームを開発し、荷主が「ポートフォリオの中の価値ある品物」を明記できるようにする。さらに、品物の価格とともに、特定品質の品物や、食品や医薬品といった非従来型の品物の情報を得ることができる。

同社は、ROSEトークンをどう使うのか?当面の目標は、配送、市場への品物の投入方法を含む、影響力が及ぶ範囲の解体だ。そして、自己改善と成長のためのコミュニティを構築する。

これは、NBC Entertainment会長であるNeal Baer氏の未来の流通に関する意見を反映したものだ。最近のブログ記事で、彼は、モノのインターネットと人工知能が統合されて「従来型のメディアと娯楽コンテンツの収益力」の喪失後の新しい経済システムを創造すると書いている。そして、次なるイノベーションと流通は「モノのイターネットによるパワー」で推進されると業界のリーダーたちに説いている。

もしそうなら、そこには未来の娯楽の気配が感じられる。単に新たな収入源であるだけではなく、能力の王国であり、アルゴリズムベースのアルゴリズムの衝撃とは一線を画するものだ。娯楽とファッションは別物だという人もいるが、結果は、登場人物が作家の才能ではなく役者の才能に基づいて発生する出来事に応じて台頭する複雑な世界になり得る。

上でも述べたが、みなさんもGroverでフェイク記事を作成できる

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(翻訳:金井哲夫)

あなたの自律走行車はスポーティーなサリーか?血に飢えたクリスティーンか?

馬車が走る道に初めて自動車が登場したとき、馬はその技術の最初の犠牲者となった。ゆっくり走る自動車に襲われたわけではなく、驚いて逃げてしまったわけでもない。むしろ馬は、怪我に悩まされた。また、怯えた馬が通り道にあるものすべてを踏み荒らし、物や歩行者に損害や傷害を与えることもあった。

自動車がもっと速く走れるようになり台数も増えると、歩行者が走る自動車の直接の犠牲者になった。間もなく、交通規則、および製造物責任法と不法行為責任法が作られ、大虐殺を避けるための秩序がもたらされた。それでも、いまだに注意散漫で運転技術が未熟なドライバーは増加する一方であり、彼らが混雑した高速道路を、現実版のまったく笑えない「フロッガー」の舞台に変えている。

自律走行車に乗れば、ドライブのあらゆる恩恵がドライブせずに得られるようになる。自動運転を支持する人たちは、自律走行技術によって自動車はより安全になり、2050年までに事故発生頻度を90パーセント以上削減できると信じている。自動車事故の90パーセント以上が、ドライバーの運転ミスによるものだからだ。

たしかに、飲酒運転や不注意、その他のドライバーの行動に起因する死傷事故のニュースは後を絶たない。自律走行車なら、友だちにメッセージを送ったり、『ブラック・ミラー』を一気見したりしていてもオーケーだ。でも、本当にそうだろうか?それは、目の前に立っている歩行者は実際にはそこにいないと自律走行車が誤認しない限りにおいてのことだ。または、ゴミ収集トラックが引きずっているゴミを車線のラインと見間違えて、車ごとコンクリートブロックに突っ込まない限りにおいてだ。

他社に先んじて、完全な自動運転の実現を目の前にしている企業もあるが、運転環境での極限状況は改善されないままだ。つい最近も、アリゾナの暗い国道を自転車を押して渡ろうとしていた女性が自律走行車に跳ねられるという悲惨な事故があったばかりだ。車にはドライバーが乗っていて、事故にならないよう対処できたはずなのに、それをしなかった。積極的に奨励しないまでも、ドライバーが運転を手放せるようにすることが自律運転技術の本来の意義であるため、その車に乗っていた人の不注意を責めることはできない。

ほとんど必要とされないためドライバーが運転できなくなってしまうから「自律走行車のパラドックス」は危険だ。少なくとも当面の間、自律走行システムの信頼度が人間のドライバーとほぼ同じ98パーセントの安全率を上回るようになるまでは、緊急時や予想外の状況での人間のドライバーの補完を必要とするだろう。

この移行時期の間、そしてこの時期を過ぎてからも、事故の際に何が起きるのか、また誰がその責任を取るのか?自律運転技術が現れる前は、自動車事故は、ドライバーの過失とメーカーの製造者責任という2つ法理論のうちのいずれかが適用された。過失の法理論は、ドライバーの行動に責任を負わせ、ドライバーから、一般的には保険会社からだが、ハンドルを握っていた本人の行動に対する金銭的賠償を引き出そうとするものだ。製造者責任の法理論はその反対で、怪我の原因になったエアーバッグやイグニションスイッチやタイヤや、さらには自動車そのものなど、欠陥のある製品を製造し販売した企業に向けられるものだ。自律走行車の事故に現在の法理論を適用しようとすれば、数多くの問題が発生する。

人工知能(AI)、あるいは自動車を自律走行させるものなら何でも構わないのだが、それがカーブの路面が滑りやすくなっていることを検知または、それに応じて運転を補正できなかったとする。前を走る車から漏れた不凍液が路面を濡らしたようで、ハンドルを握る人間には認知できたものの、AIシステムにはほとんど見えなかった。もし、自律走行車に手動運転が優先される機能があり、それで事故が起きたなら、衝突を防ぐ操作をしなかったドライバーの責任が問われるのか?道路状況を検知したり、それに対処しなかった自動車のメーカーが責任を問われるのか?両方だとしたら、責任の割合はどうすべきか?

もし、通常の自動車だった場合、ドライバーに対する訴訟は、その人の行動が適切な注意義務基準に達していなかったことを証明できるかどうかにかかってくる。ハンドルから手を放していたなら、通常の自動車では過失行動とされることが多い。スマートフォンでメッセージを送っていて注意散漫になっていた場合もおそらく同じだ。しかし、自律走行車の自動運転機能は、本来の性質上、ドライバーが運転に注意を払わなくても、また運転に関わる必要性をなくすためのものだ。となれば、上記のような状況で、私たちは運転を引き継がなかったドライバーの責任を追及できるのだろうか?

従来型の自動車のメーカーも、法的責任はシステムや部品に欠陥がなかったかにかかってくる。状態のいい従来型の自動車で、サスペンションにもブレーキにもハンドルにも欠陥がなければ、上記のシナリオでも、メーカーが責任を問われることはまずないだろう。一方、人間の運転が優先される自律走行車のメーカーは、少なくとも責任の一部をドライバーに負わせようと試みる知れないが、そんなことを社会が許すだろうか?許すべきだろうか?ドライバーは、合理的な範囲で自律走行者に依存していたと主張するだろう。しかし、ドライバーの目には危険が目に見えていて、事故を防ぐための介入ができにも関わらず、メーカーが責任を負うべきなのだろうか?

その車が完全に自動化されていて、人間の介入が不可能であった場合は、結果は違ってくる。しかし、そんな車が現れるのは何年も先のことだ。

そうした自律走行者が市場に登場したとき、予期せず遭遇した滑りやすい路面を検知またはそれに対する補正に失敗したときは「欠陥車」とされるのか?または「欠陥車」と見なすべきなのか?もしそうなら、単に故障が発生したから欠陥車とされるのか、それとも、AIソフトウエアにエラーがあることを誰かが証明して見せなければならないのか?AIアルゴリズムは自身で進化することができ、膨大な距離と時間を費やして得たトレーニングデータに依存していることを考えると、どうしたらソフトウエアの中の「欠陥」を証明できるのだろうか?事故を起こした時点のアルゴリズムがオリジナルから大きくかけ離れていた場合、そしてその変化がAIアルゴリズムが自分で「教育」した結果であった場合、そのプログラマーやソフトウエアの提供業者に責任を負わせることが公正なのだろうか?

もうひとつの問題は「集団意識」だ。AIが学習する方法のひとつに、接続された他の複数のAIの集団的な体験を利用するものがある。これは、一時期Teslaが使用していた方法だ。もし、他のAIの誤ったデータがアップロードされ、それが事故に大きく関わっていたとしたら、どうだろう?

こうした問題の観点からすると、そして技術がますます人間の関与を減らす方向で発達すれば製造者責任の法理論を強化するよう法律も変化することになるだろう。おそらく、製造者責任は過失よりも厳しくなる。将来の自律走行車の価格が、研究開発と部品のコストだけでなく、事故のコストをカバーする「保険」を含めて決められるようになるとしても、突飛な話ではない。こうした進化は、人間のドライバーの役割が減るのに合わせて起こっていくだろう。しかし、自動車メーカーのAIシステムの学習プロセスを完全にコントロールする能力や、ましてや運転環境が同時に進化することはないだろう。

少なくとも、ある程度の人間の介在を必要とする移行期においては、責任に関する自動車メーカーの意見は分かれる。ボルボなどの一部のメーカーは、自動運転モードの最中に発生した事故に関しては全責任を負うと宣言している。しかし、テスラを始めとする他のメーカーは、ドライバーが若干の関与を要求される状況で発生した事故においては、たとえ自動運転モードであっても、ドライバーに責任を負わせようとしている。

例えば、かつてテスラでは、自律走行モードで他の車を追い越す機能を有効にするには、方向指示器を点灯させなければならなかった(テスラの新型車ではこの操作が不要になった)。ドライバーにこの操作を行わせる仕組みは、一見、大したことではないように感じられるが、そこには自動車メーカーが法的責任をドライバーに転嫁する意図がある。簡単な操作だが、車に追い越しを指示するだけでなく、その追い越しは安全に行えるという自らの判断によるものであり、その結果の如何に関わらず責任を負う、または負わなければいけないと、ドライバーに示唆するものでもある。

その基礎となる技術は、責任の所在を追求しようとすれば、さらなる複雑性を突きつけてくる。これまで暗に示してきたように、「機械学習」として特徴付けられるAIの側面は、無数の多様な入力データをもとに開発されていて、その振る舞いは多かれ少なかれ「ブラックボックス」化されている。厳格な数学的アルゴリズムと思われるため、本当に理解することは難しい。

言い換えるなら、私たちには、機械がどのように判断をしてその行動をとったのかを正確に知る手立てがないのかも知れないということだ。その場合、AIボックスが間違ったトレーニングを受けた、または現実の運転ではなくシミュレーター上で「訓練」されていたとしたら、AIボックスが極限的状況での対処を誤って事故につながった責任は、シミュレーターの開発者に負わされることにならないか?

AIのプログラミングやトレーニングの倫理の問題はどうだろう。最近の研究で、歩行者が有色人種だった場合、現在のAIシステムが彼らを認識できる能力は20パーセント低下することがわかった。これは、AIのトレーニングが多様性を踏まえていなかったためだ。他に説明があるだろうか?MITによる最近の調査では、衝突が避けられない極限状況において人の命を犠牲にするかどうかではなく、どの人の命を犠牲にするかの選択を迫られたとき、人は救うべき命をその上下関係で決めていることがわかった。この調査に参加した人たちは、動物よりも人の命を優先させるべきだと話している。少数の命よりも、大勢の命を救うべきであり、老人を犠牲にして若者を救うべきだと考えている。

興味深いことに、ベビーカーを押して交通法規を守って歩いている人を尊重するべきだとも考えられている。結論として、こうした倫理感に基づいて自律走行車がプログラムされた場合、交通の激しい道路をひとりで乱横断している人は自律走行者に跳ねられる確率が格段に高くなるということだ。この調査の道徳的序列では、猫、犬、犯罪者が保護対象としての最下層に位置する。だが、その人が犯罪者かそうでないかを車が判断できるのだろうか?刑務所の情報をリアルタイムで入手するのか?また、動物愛護活動家のハッカーが車のプログラムを、人より動物を尊重するように書き換えてしまったらどうなるのだろう?

MITのこの調査が信頼できるとすれば、こうした序列の意識や変動性が現に存在していることになる。それは、人間の潜在意識にしまい込まれているだけだ。機械の中ではない。次に道路を渡るとき、このことを考えてみてほしい。

【編集部注】
著者のLucas Dahlinは、Goodwin知的財産グループのアソシエート。複雑な知的財産問題を専門に取り扱い、特許と企業秘密に関する訴訟に豊富な経験を持つ。

Julius Jeffersonは、Goodwin知的財産訴訟グループのアソシエート。Goodwinに加わる以前は、デラウェア地区とテキサス西地区で判事の書記を務めていた。ロースクールに入学する以前は、Wyeth Pharmaceuticals(現Pfizer)の研究フェローとしてアルツハイマー病の治療法を研究していた。

Darryl M. Wooは、Goodwin知的財産訴訟グループの共同経営者。以前は法廷弁護士として特許訴訟やその他の複雑な技術関係の訴訟を専門に扱っていた。

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(翻訳:金井哲夫)

東大・松尾研発AIスタートアップACESが資金調達、画像認識アルゴリズムをパッケージ化して提供へ

AI研究で著名な東京大学松尾研究室発のAIスタートアップACES(エーシーズ)は5月22日、AI技術に特化したVCファンドのDeep30と経営共創基盤を引受先とする第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

具体的な調達額は非公開だが数千万円規模になるとのこと。調達した資金は本日公開した画像認識サービス「SHARON(シャロン)」の研究開発や人材採用の強化に用いる計画だ。

合わせてACESでは東京大学工学系研究科教授の松尾豊氏と経営共創基盤パートナーの川上登福氏が顧問に就任したことも明かしている。

ディープラーニングを用いた画像認識技術を社会実装へ

ACESは2017年11月の設立。同社のCEOで現在も松尾研究室(以下 松尾研)の博士課程に在籍中の田村浩一郎氏を含む6人のメンバーが立ち上げた。6人中3人が松尾研に所属、5人はエンジニアとしてのバックグラウンドを持つなど、AI領域への知見と技術力が強みだ。

田村氏自身、起業前から松尾研を通じて複数の企業との共同研究プロジェクトに参画。当初は研究者への道も考えたそうだが、ディープラーニングの可能性や社会へのインパクトなども踏まえ、自分たちでこの領域に特化した会社を作ることを決めたという。

ACESのメンバー。左から3番目がCEOの田村浩一郎氏

創業からこれまでの期間はディープラーニングを用いた画像認識技術を社会実装するべく、企業と共同研究を実施。同社のコアとなるヒトの行動や感情を認識、検出するヒューマンセンシングのアルゴリズムを中心にプロジェクトを進めてきた。

たとえば共同研究パートナーの1社である電通とは、姿勢推定・行動認識技術を用いてスポーツ選手の動作分析を行うプロジェクトに取り組んでいる。このプロジェクトでは野球中継動画から選手の体の位置や行動を抽出し、細かく定量化。取得されたデータを分析することで個々の特徴や傾向を割り出す。

具体的には「ある投手の各球種ごとの姿勢(フォーム)や体の使い方の違いなどからクセを見つける」といった用途をイメージしてもらうとわかりやすいかもしれない。

「以前から球界では言及されていたこと。ただこれまでは知見や経験を基にしていて、身体情報を定量化することによる科学的なアプローチは十分にできていなかった。大量のデータ・画像を処理できるディープラーニングの力を使えば、このようなアプローチも可能になる」(田村氏)

この事例のように、ACESではこれまでディープラーニングと繋がっていなかった領域を始め、様々な分野で共同研究やアルゴリズムの研究開発に取り組んできた。大手企業では電通のほかエムスリーやテレビ東京、SOMPOホールディングスなどが同社のクライアントだ。

主な流れとしてはビジネス課題を踏まえたAI導入の要件定義フェーズから顧客に伴走。データの収集や初期実験、モデルの開発・検証、システムへの導入に至るまで一連のフローをサポートする。

磨いてきたアルゴリズムをパッケージ化して外部提供

これまでACESでは1年以上に渡って企業との共同研究開発を軸に事業を運営してきた。その中で田村氏が意識していたと話すのがアルゴリズムのパッケージ化だ。

「AIのプロジェクトは1件1件が典型的な受託開発になりがちで、過去にやった研究開発を次の案件で活かしづらい側面がある。それを避けるため、自社では当初から顧客との共同研究を担当するエンジニアと基盤のアルゴリズムを開発するエンジニアを分け、強みとなる複数のアルゴリズムがパッケージとして社内に蓄積されていく仕組みを作った」(田村氏)

秘匿性の高い顧客データの管理には配慮した上で、コアとなる各アルゴリズムについては社内の各プロジェクトで共通して使える体制を整備。それによって毎回ゼロから時間をかけて学習モデルを生成する必要がなくなった。

田村氏いわく「社内的には受託の最適化」を続けることで、各顧客に対してより本質的なサポートを提供できたという。

そしてこのアルゴリズムパッケージを外部の企業が使いやすいようにプロダクト化したものが、まさに本日ACESが新たに公開した画像認識サービス「SHARON」だ。

同サービスでは物体認識、顔・表情認識、姿勢推定・行動認識といった画像認識アルゴリズムをパッケージとしてAPIなどで提供する。

ACESが開発したアルゴリズムを用いて手軽に、かつ安価に実ビジネスへのAI導入を実現できるのが特徴。各アルゴリズムは定期的にアップデートされるので常に先端のモデルを活用できるほか、社内でデータを蓄積して個別に学習することで、使えば使うほど精度の向上も見込める。

ユースケースとしては工場での作業など身体動作を伴う業務のパフォーマンス分析や、マーケティング用途における人の心の動きを可視化する技術の活用を始め、健康状態の管理や防犯、3Dの生成、異常検知など多様な応用例が考えられるという。

「SHARONは人の行動や表情など、これまではぼやっとしていたものをデータ化し、よりクリアに見通せるようにする仕組み。そのための画像認識アルゴリズムを(個々で共同研究をするのに比べて)よりリーズナブルで楽に導入できる形にすることで、いろいろな企業に活用してもらいたい」(ACES取締役COOの與島仙太郎氏)

SHARONでは個々の企業に対して導入時のヒアリングや要件定義などを含めたシステム構築サポートを行っていく計画。今の所は「月額数万円から誰でも使えるSaaS型のプロダクト」という訳ではないが、それでも個別で共同研究をする場合に比べると、コスト面では1/5〜1/10くらいになるそうだ。

ゆくゆくは特定の領域に特化した自社プロダクトの展開も

冒頭でも触れた通り、今回の資金調達はSHARONの研究開発や組織体制の強化を主な目的としたもの。顧問に就任した松尾氏と川上氏のサポートも受けながら、さらなる事業成長を目指すという。

田村氏によると自身の中では会社のフェーズを大きく3つに分けてイメージしているそう。松尾研のネットワークや知見も活かしながら、他社と共同でAIプロジェクトを進めてきたこれまでは第1フェーズに当たる。

第2フェーズは開発してきたアルゴリズムの中で共通化できるものをパッケージとして外に出していくと共に、会社としても共同研究事業に次ぐ新たな柱を作っていくタイミング。現在のACESはまさにこの段階に差し掛かっている状況だと言えるだろう。

そして同社が中長期的に見据える第3フェーズでは、業界特化など特定の用途に合わせたバーティカルな自社プロダクトを展開していく計画だ。

具体的な領域に関しては今後検討を進めていくが「ディープラーニングを用いることで課題が解決されるような産業・領域に対して、独自のアルゴリズムを活かした製品を自社で作っていきたい」(田村氏)という。

AI活用でインフルエンザの早期発見へ、アイリスが12.5億円を調達

AI医療機器を開発するアイリスは5月7日、塩野義製薬とBeyond Next Venturesを引受先とする第三者割当増資により12億5千万円を調達したことを明らかにした。

塩野義製薬側の発表によると両社では4月25日付で資本業務提携を締結済み。塩野義製薬がアイリスに12億円を出資し株式の約14%を取得するとともに、アイリスが開発するAI医療機器を対象とした将来のライセンス契約に関する優先交渉権を得たという。

アイリスではインフルエンザ患者ののどにできる「インフルエンザ濾胞(ろほう)」と呼ばれる腫れ物に注目。撮影したのどの写真をAIで解析することで、インフルエンザの高精度・早期診断をサポートするAI医療機器を開発中だ。

同社によると、2018年の国内インフルエンザ患者数は2000万人を越え、過去10年で最大の流行となった。現状の検査方法では発症してから24時間以上が経過しないと診断精度が十分ではなく、6割程度にとどまるとの研究報告もあるそう。検査法の改善は進んでいるが、抜本的な解決には至っていない段階だという。

この問題へのアプローチとしてアイリスが目をつけつけたのが、上述したインフルエンザ濾胞だ。風邪をひいている場合や健康な状態でものどの奥には膨らみが存在するものの、インフルエンザ濾胞には「インフルエンザの場合にだけ」現れる特徴があることを日本の医師が発見した。

表面の色調や艶やかさ、大きさや盛り上がり方などからインフルエンザ特有の特徴を見分けるのは、その道に精通するベテラン医師だからこそ成し得ること。アイリスでは画像解析AIを通じてこの技術の再現を目指している。

具体的には鼻の奥に綿棒を入れて行う検査の代わりに、のどの写真を撮影。その写真を解析することで高精度かつ早期にインフルエンザを診断できる機器を作る。

アイリスによると臨床研究法に則った臨床試験を既に実施しているそうで、今後は治験や薬事承認に向けて開発を加速させていく計画だ。

左からアイリス代表取締役社長の沖山翔氏、取締役副社長CSOの加藤浩晃氏

 

マイクロソフトがWord Onlineの文書作成支援にAIを導入

Microsoft Word Onlineで文章を書いている人は、まもなくAI内蔵エディターを使えるようになる。米国時間5月6日に同社が発表したところによると、Wordに近々「Ideas」という新機能が加わり、文書作成のあらゆる支援を提供する。

書くことが苦手な人にとって、Ideasの最重要な機能は簡潔で読みやすいテキストを書くことの支援に違いない。文法チェッカーの強化版だと思えばいい。ツールは明らかな間違いを直すだけでなく、文章をよりよくすることに焦点を当てる。例えば、複雑なフレーズを使いこなせないとき、機械学習を使って別の書き方を提示してくれる。差別のないインクルーシブな文章を書くための機能もある。

クラウドベースの同ツールは読み終えるまでの予想時間や略語の説明なども提示してくれる。そのために、Microsoft Graphにあるあなたの会社のデータを利用する。

Ideasは文書の要点を自動的に抽出することもできる。ただしおそらくこれは、書き手よりも読み手にとって興味のある機能なので、誰かが67ページのニュースサマリを送ってきたときに使うのだろう。

Microsoft(マイクロソフト)によれば、Ideasは「Word Designer」なる機能も提供するとのこと。表など、文書のさまざまな部分のスタイル設定を支援する。新機能は6月からOffice Insiderプログラム参加者に提供され、秋には全ユーザーに公開される予定だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

映像解析AIを民主化するフューチャースタンダードが4億円を調達

映像解析AIプラットフォーム「SCORER(スコアラー)」を展開するフューチャースタンダードは5月6日、複数の投資家を引受先とする​第三者割当増資により約4億円を調達したことを明らかにした。

既存投資家のインキュベイトファンドなど複数のVCのほか、2018年9月に発表したSCORERパートナープログラムのパートナー企業であるTISや東洋通信工業らから資金調達を実施。事業面での連携を強化するほか、地方企業へのサービス展開やプロダクト基盤のアップデートに取り組む。

今回フューチャースタンダードに出資した企業は以下の通り。なお過去にも紹介している通り、同社では2016年1月に1.3億円2017年7月に2.1億円を調達済みで、今回のラウンドを含めた累計の調達額は約7.3億円になる。

  • TIS(パートナー企業)
  • 東洋通信工業(パートナー企業)
  • インキュベイトファンド
  • スパイラル・ベンチャーズ・ジャパン
  • AGキャピタル
  • ハックベンチャーズ
  • 広島ベンチャーキャピタル
  • その他社名非公開の投資家

フューチャースタンダードは2014年3月の創業。当初より映像解析AIをより簡単に利用できるようにする基盤技術の開発に取り組んできた。

同社が展開するSCORERの特徴は、カメラや映像に関する最新の解析技術をブロックのように組み合わせることで、映像解析システムを開発する難易度やコストの負担を大幅に削減すること。ユーザーはこのプラットフォームを活用することで、ゼロから開発環境やアルゴリズムを構築せずともAIを活用した映像解析を始められる。

SCORERは交通量解析や視線・顔検知、異常検知など様々な用途で活用できる

以前「カメラで顔を検知するとLINEで通知してくれるようなアプリであれば15分程度の時間で作れる」と紹介したが、現場(エッジ)での映像データ収集と解析向けの「SCORER Edge」に加えて2017年12月にはクラウド版の「SCORER Cloud」をスタート。

同サービスでは「解析したい映像を選択」「解析アルゴリズムを選択」「解析結果を確認・出力」という3ステップのみで手軽に映像解析AIを利用できる環境を整えた。

同社によると2018年には約25社の企業がSCORERを導入。半数以上がリピート利用に至っていて、サポートしたプロジェクトを50件以上に及ぶそう。TISや東洋通信工業を始め、パートナープログラムに申し込んでいる企業に関しても約15社ほどまで増えているという。

2018年9月にロボットプラットフォーム分野における協業を発表したTISとはすでに共同開発に取り組んでいるほか、東洋通信工業ともSCORERを活用した各種サービスのインテグレーションにおいて、協業を開始済みだ。

今後は地方のパートナー開拓にも取り組みながら、地方企業のAI活用サポートや地方発の映像解析AIサービス創出を目指す計画。調達した資金は人材採用や新サービスの立ち上げ・展開強化に用いる方針で、パートナー企業向けにセミオーダー型の映像解析AIパッケージ「SCORER Ready」の提供も予定しているという。

AIモデルの最適化を単純にするAxとBoTorchをFacebookがオープンソース化

Facebookは5月1日に、同社のデベロッパーカンファレンスF8で、新しいオープンソースのAIツールとしてAxとBoTorchの2つをローンチした。

BoTorchは、その名前からもわかるようにFacebookの機械学習フレームワークPyTorchをベースとするベイズ最適化(Bayesian Optimization)のためのライブラリで、かなり特殊なツールだ。一方のAxはもっと興味深く、AIの実験を管理、デプロイ、そして自動化するための汎用プラットホームとなっている。

どちらのツールもFacebookにおける同じ全体的なワークの一部であり、それはFacebookが「適応的実験」(Adaptive Experimentation)と呼んでいるものにフォーカスしている。実際にAxはBoTorchとつながり、そして内部的にFacebookはこの2つのツールを、Instagramのバックエンドのインフラストラクチャの最適化やユーザーアンケートの応答率の向上など、さまざまなタスクに利用している。

基本的に、BoTorchないし一般的にベイズ最適化なるものは、モデルの最適化を容易かつ迅速にしてデータサイエンティストがなるべく早くプロダクション級のモデルを得られるようにする処理だ。通常は大量の試行錯誤を要し、サイエンスというよりアートだと言われることも多い。Facebook AIでPyTorchを担当しているプロダクトマネージャーのJoe Spisak氏は「アートを取り去り自動化する。目標は最新の研究成果をフルに活用することだ」と言う(ベイズ最適化の日本語参考ページ)。

ベイズ最適化ツールはBoTorchが初めてではないが、Facebookによると既存のライブラリは拡張もカスタマイズも困難で、しかもFacebookのニーズに合わない。

上図のようにAxがまず仕事を引き受け、BoTorchのモデルの最適構成を見つける能力を管理していく。そして、デベロッパーがプロダクション級のサービスを得られるようにする。例えばFacebookでは、AxがA/Bテストやシミュレーションツールと連携する。ツールの目的はあくまでもシステムを自動的に最適化することだから、ユーザーが関与する必要性はほとんどない。Axは実験を行うとき、最良の最適化戦略を自動的に拾い上げる。それは、ベイズ最適化かもしれないし、古典的なバンディット最適化かもしれない、あるいはもっとほかのアルゴリズムかもしれない。重要なのはAxがフレームワークと特定しないことだ。BoTorchを使っていても、研究者はPyTorchやNumPyを介したサービスを使って自分独自のコードをプラグインできる。

Facebookでツールをオープンソースにすることは、現時点ではかなりスタンダードな行為になっている。PyTochはその好例だ。Spisak氏によれば、BoTorchもこの分野の優れた研究者たちの協力が得たいからやはりオープンソースにする。そもそも、最初のリリースでもコーネル大学の協力を得ている。「コラボレーションもオープンなコミュニティ作りも、クローズドソースではできない。オープンソースだからこそできる」と彼は言う。

関連記事: F8におけるPyTorchのアップデート(未訳)

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

熟練の匠の技術をAIに、製造業をスマートにするスカイディスクが8.6億円を調達

製造業に特化したAI×IoTソリューションを提供するスカイディスクは4月18日、複数の投資家を引受先とする第三者割当増資により総額で8.6億円を調達したことを明らかにした。

今回の投資家リストは以下の通りだ。

  • SBIインベストメント
  • AJS
  • 中島工業
  • 鈴与商事
  • りそなキャピタル
  • 環境エネルギー投資
  • みずほキャピタル
  • DG Daiwa Ventures

スカイディスクにとってシリーズCとなる今回のラウンドには、VCに加えてこれまで同社が協業を進めてきた大手企業が参画している。AJSとは2017年10月に業務提携を締結し、主に旭化成グループの工場におけるAI活用を推進。2018年1月に提携を発表した中島工業とは、工場向け水処理装置にAIを組み込んだパッケージ商品の開発に取り組んできた。

また直近では2019年1月に鈴与商事と業務提携を締結。ファクトリーオートメーション機器とAIサービスを組み合わせたビジネススキームの開発を進めている。今後もそれぞれの取り組みを継続していく方針で、連携強化も見据えて各社から出資を受けた形だ。

スカイディスクでは調達した資金を活用して国内外でAIエンジニアの採用を進める計画。製造業向けAI開発ツールを充実させ、製造現場へのAI導入を加速させる。

ベテラン技術者の技をAIが解明し、再現

過去に何度か紹介しているように、スカイディスクではセンサデバイスの開発からAIを活用したデータ分析まで、現場でAI・IoTを活用するのに必要な機能をワンストップで提供してきた。

以前は製造業に限らず農業や流通、環境などさまざまな分野へのサービス展開を見据えて事業に取り組んでいたが、特に2017年10月に実施したシリーズB以降は需要の多かった製造業へと徐々にフォーカス。業務ヒアリングによる課題の抽出から目的や解決策を設定し、必要なデータをどのように集め、人工知能によってどう解析するかまでをトータルでサポートする。

事業の核となるのはセンシングデータから正常異常などの判定結果を提供する「SkyAI」だ。

これまでスカイディスクが蓄積してきたナレッジを活用し、データ整形・解析するためのモジュールと分野別のAI学習モデルをライブラリとして保有。顧客の課題に合わせて最適なものを組み合わせることで、時間やコストを抑えつつ、設備の保全や製品の検品、歩留まりチェックなどの業務を効率化できるのがウリだ。

同社によると自動車業界を始め、化学メーカーやプラントの現場で導入が進んでいるそう。たとえば製造時のプロセスデータとセンサから取得した波形データ、検査結果が紐づけられたデータなどを基に不良品の発生要因を見える化した事例や、事前に不良発生を予測できるAIを導入することで生産性の向上・機器の多台持ちを実現した事例などがあるという。

スカイディスクのユニークな点をひとつ紹介しておくと、製造現場における単純作業だけでなく、これまで熟練のベテラン技術者が「経験や勘」で実行していた高度な業務をAIでサポートしようとしていることだ。

労働力不足や高齢化により現場で高度な業務を担える人材が減っていく中で、同社では「匠の技を、AIに」というコンセプトを掲げる。ベテラン技術者の操作データを材料に、彼ら彼女らが持つスキルやナレッジをAIが解明し、再現することが目標だ。

以前紹介した「スマート聴診棒」はまさにその代表例と言えるだろう。このサービスはスマホのマイク機能を使って取得した“音”により、設備機器の異常診断ができるというもの。従来は熟練の技術者が聴診棒という棒状の器具を用いて、それぞれの機器から発せられる振動音を聞き分けることで成り立っていた業務を、データとAIを活用することで他の担当者でもできるようにした。

2019年の3月にはこの機能を「SkySound」としてモジュール化し、SkyAIの中の1機能としてAPI経由で使える形で提供している。

上述した例も含め、クライアントやパートナー企業との共創によって年間数十件のAIプロジェクトを進めてきたスカイディスク。今後も製造現場の人手不足を始めとする課題解決や生産性の向上に向けて、AIサービスの機能拡張やパートナーとの連携強化に取り組む計画だ。

スカイディスクは2013年設立の福岡発スタートアップ。2017年に実施したシリーズBラウンドでニッセイ・キャピタルなどから7.4億円を調達しているほか、2016年にも1億円の資金調達を実施している。

AIが書いた初の研究書がオンデマンド論文の道を拓く

次々に出版される研究書の数は、すべてを読みたいと願う学者の能力を超える。しかし、AIの助手に何千冊もの本を読ませて、要約を抽出させられる日は近いかも知れない。ゲーテ大学の研究チームは、まさにそれを実現させた。Beta Writerが書いた最初の論文は、現在、誰でも読めるようになっている。ただし、リチウムイオン電池に関心のない人には、面白い内容とは言えないが。

この論文のタイトルは「リチウムイオン電池:現在の研究の機械生成による要約」というクリエイティブなものになっている。250ページにおよぶ内容は、こんな感じだ。

細孔構造およびセパレーターの厚さは、機械強度とイオン導電性という2つの機能を満たすために、そのバランスが十分に保たれるよう慎重に調整されなければならない(AroraおよびZhang[40]、Leeその他[33]、Zhang[50])[5]。素材の細孔構造および多孔性は、電池内のセパレーターの素材に加え、セパレーターの性能にとって極めて重要であることは明らかである[5]。

電池の話も面白いが、本来の目的とは関係がない。この本の狙いは、機械が生成する科学文献について、著作者の問題から技術的倫理的な問題にいたる論議を引き起こすことにあると、このAIの開発者たちは、その長くて面白い序文で説明している。

つまり、答ではなく疑問を提示することが目的なのだ。彼らは前もって、こんな疑問を呈している。

機械生成された文章の原作者は誰なのか? アルゴリズムの開発者が著者とされるのか? または、最初に入力を行い(「リチウムイオン電池」といった用語など)さまざまなパラメーターの調整を行った人間か? そもそも原作者と呼べる者はいるのか? 最初に誰が、機械に何を生成させたいかを決定するのか? 倫理的な観点から、機械生成された文献の責任者は誰になるのか?

研究チーム、周囲の仲間たち、この本の製作に協力した専門家たちとの間で十分に論議を重ねてきた結果、これが始まりに過ぎないことを彼らは理解した。だが、Henning Schoenenbergerは、いずれどこかで始めなければならず、これはどこよりも望ましい出発点になると序文に書いている。

実際に私たちは最初のプロトタイプの開発に成功したが、同時にそれは、この先の道のりが長いことも示している。膨大な言語資料からの要約の抽出はいまだ不完全であり、文章の置き換え、文法、語句のつながりなど、まだぎこちない点が見られる。しかし私たちは、人の手による修正や編集は一切行わないことに決めた。それは、現在の状態をよく知ってもらうためであり、機械生成による文章との境界線を保つためだ。

彼らが言うように、この本自身は不完全でぎこちない。しかし、自然な文章を書くことは、このAIの目的のほんの一部に過ぎない。そこだけを強調して全体的な成功を見ないのは間違っている。

上から、生成された原稿、後処理(参考文献目録の整理、化学表記法の処理、結果の出力)、文章生成(要約の抽出、内容の集約、文章の抽出または言い換え)、構成生成(資料の整理またはまとめ、資料の選択またはランク付け)、処理(参考文献の分析、固有表現の検出、言葉の注釈、体系的構文解析、文章の標準化)、資料の入力

このAIは、高度な技術論文1086編を分類し、キーワードの検出、参考文献目録の作成、結論の取得、「代名詞の前方照応」などのための分析を行う。その後、論文はいくつかの集団にまとめられ、論理的で章立てのある形で提示できるよう、検出された内容に従い整理される。

代表的な文章や要約は論文から引き抜かれ、新しい本のために形式が整えられる。それには、著作権上の問題もあるが、文法的に新しい文章と揃わない場合があるからだ(チームが協力を求めた専門家は、「創造的」な表現にならないよう、できる限り原文の意味に沿うよう助言した)。

たとえば、ある論文の使いたい部分の書き出しが、こうだったとする。「したがってこれは、我々が2014年の論文で示したとおりだ、24パーセント高い断熱係数をもたらす」

AIは、この論文をよく読んで、「これ」が何を指しているかを突き止め、「これ」を本来の言葉に置き換え、「そのため」と途中の添え書きを削除してもよい形に書き換える。

これを何千回も行わなければならず、モデルが適正に対応できなかったり、明らかに下手な文章など、多くのエッジケースが飛び出してくる。たとえば、「その種の研究の第一の目的は、大容量、高速なリチウムイオンの拡散率、扱いやすさ、そして安定した構造といった優れた特性を持つ素材を獲得することにある」。ヘンリー・ジェームズのような美文ではないが、明解だ。

最終的に、おそらく1万ページほどの論文を煮詰めて、ずっとわかりやすい250ページにまとめたこの本は、普通に読めて、ことによれば有用なものになった。しかし、研究者たちの目標はもっと高いところにあると言う。

現在の目標は、そう突飛なものとは思えない。「ここ4年間の生物工学について50ページでまとめてくれ」と命ずると、数分後にポンとそれが出来上がるサービスだ。文章には柔軟性があるため、スペイン語や韓国語を指定することもできる。パラメーター化することにより、出力を簡単に調整できる。地域や著者に重点を置いたり、特定のキーワードや関係のない話題を除外することも可能だ。

これらの機能の他にも、このプラットフォームには山ほどの利便性がある。堅苦しいことを言う人を気にしなければの話だが。

科学文献や自然言語処理に興味がおありなら、この著者たちによる序文は、読む価値がある。

画像:Bryce Durbin / TechCrunch

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(翻訳:金井哲夫)

チューリング賞受賞のAI研究者が秘密裏の研究と偽りの「自主規制」に警鐘

AIに関する研究でジェフリー・ヒントン氏、ヤン・ルカン氏とともに栄えあるチューリング賞を先月受賞したヨシュア・ベンジオ氏は、このテクノロジーが密室に隠されることを恐れている。Natureのインタビューで同氏は彼の懸念を説明したが、悲観論者と思われなように気を遣っていた。

モントリオール学習アルゴリズム研究所(MILA)教授のベンジオ氏にとって最大の心配は、必ずしも悪夢のシナリオというわけではなく、管理されない人たちによってAIが研究されていることに対してだ。

「大きな心配事のほとんどが、白日下でないところで起きている」と彼は言う。「軍の研究所や秘密組織、政府や警察にサービスを提供している民間企業で起きている」。

たしかにそれは我々も見てきたことだ。どの主要IT企業も、無害なものから明らかに戦争目的のものまで、何らかのかたちで政府や軍に成果を提供したりそれを想定している。「殺人ドローンは重大な心配事だ」とベンジオ氏は強く言い放った。そこで研究されているAIは多くの命を救ったり生活を改善するかもしれない。しかし、その研究が白日の下で行われていなければ、我々はどうやってそれを知ることができるのか?

善意で発明されたモデルやアイデアでさえ、悪人に利用されるかもしれないと彼は言う。「悪用の危険性、特に独裁政権によるものは、極めて現実的だ。事実上AIは、支配者がその権力を維持、拡大するために使うことのできる道具だ」。だから、1つの組織や政府が倫理的利用を約束したり、ベストプラクティスを実践するだけでは不十分だ。次の組織(あるいは同じ組織の次のリーダー)は、そうしないかもしれない。

彼が信じる解決策は、オープンで組織化された議論と、国際的に制定された強力でわかりやすい規制だ。

「自主規制は機能しない。自主納税制度がうまくいくと思うか?いかないだろう」と彼は言った。「倫理ガイドラインを遵守する企業は、守らない相手より不利を被る。これは車の運転に似ている。左側であろうと右側であろうと、全員が同じ向きに走らなくてはならない。そうしないと問題が起きる」。

手はじめに、彼は研究者らに責任あるAI開発のためのモントリオール宣言を読み署名することを推奨している。これは自立性、プライバシー、ダイバシティーを尊重する原則集だ。

こうした懸念がありながらも、ベンジオ氏はAI技術の未来に楽観的だ(そうでなければ、ここまで深く長期に渡ってAIに関わり続けることはとても想像できない)。インタビューの他の部分も同様に興味深く、AI分野が直面するさまざまな課題について、単刀直入で現実的だが楽天的に展望している。全文はこちらで読める

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

対話可能な音声広告をテストするPandora

ラジオの広告は、メッセージを一方的にリスナーに放送する。Pandora(パンドラ)の新しい音声広告は、リスナーが声を出して応答することを可能にする。それによって、宣伝されている製品に関するより詳しい情報を得たり、興味がないものについては広告をスキップできる。Pandoraは、リスナーが広告に対して返事をすることの可能な対話音声広告をテストすることに同意したことを明らかにした。そのテストは、サンフランシスコに本拠を置く広告技術会社、Instreamaticの協力によって実施されるもの。今年の後半にはベータ版として開始されることになっている。

ウェブやモバイルの広告なら、インプレッション数(広告がユーザーの目に触れた回数)やクリック数などによって効果を計測することができる。しかし、従来の音声広告はクリックできない。つまり広告主は、その広告を耳にした人のうち、後でどれくらいの人がもっと詳しい情報を求めたかとか、実際に製品を購入したか、といったことを知る由もない。

対話音声広告が、それを変えるかもしれない。このしかけは、ちょうど消費者が音声アシスタントとやりとりするのに慣れてきたころに登場した。たとえばAmazon Echoのようなスマートスピーカーや、Siriを備えたiPhoneのようなスマホを利用することになる。

広告主のメッセージを単に放送するのではなく、対話音声広告は、商品についてより詳しく知りたいかどうか、リスナーに尋ねることができる。たとえば、新しいスマホの広告なら、音声による司令によって、リスナーがその機種の特長について知ることができるようにする。リスナーが、声で広告に応答すれば、より詳しい情報が得られるのだ。あるいは、否定的な応答によって、それ以降の広告をスキップすることも可能となる。

さらにInstreamaticによれば、同社の音声広告プラットフォームはAI技術を利用していているので、顧客は単に「はい」か「いいえ」だけでなく、それ以上の言葉で広告と対話できるという。機械学習や自然言語理解といった技術を使用して、広告がユーザーの意図を理解するのだ。この能力によって、より多くの顧客が広告とやりとりできるようになる。

Pandoraでは、通常は応答できないような状況でも、広告主はリスナーにアプローチできるようになると考えている。たとえば、屋外でランニング中や、ジムで運動中、あるいは運転中や料理の最中といった状況だ。そのような場合には、クリックしたりタップしたり、その他の方法で広告とやり取りすることはできない。

Instreamaticは、対話音声広告に関してPandoraと提携したことを発表したが、Pandoraにとっては、この市場をターゲットにする方法は、それだけではない。

「Pandoraは音声広告に大きく投資しており、エコシステムの促進によって市場を開拓し続けています」と、同社の広告商品管理担当副社長のEric Picardは述べている。

「Pandoraは、消費者向けの広告サービス全般について、包括的な音声ソリューションを開発しています。そこには、私たち自身、つまり「ファーストパーティ」によるものだけでなく、InstreamaticやAdsWizzなどの「サードパーティのベンダー」がプラグインできるようなサービスもあります。私たちが期待しているのは、買主側、つまり広告主や代理店が、「1回作ってあちこちで買う」タイプのソリューションを、他の市場と同様に、音声広告にも求めるようになることです。そしてInstreamaticは、さまざまなサイトにまたがる買主側の音声広告を専門とする最初の会社です」と、彼は説明した。

Instreamaticは、5年前にデジタルオーディオ広告ネットワークとして起業した会社だ。それから、さまざまなツールを開発し、今では音声で作動する広告も実現した。同社は、この機能を他の分野にも応用し、数社に提供している。たとえば、無料の音楽配信プラットフォームAudiomack、ロシア最大のラジオグループの1つGazprom-Media Radio、ヨーロッパのラジオ会社GlobalDAXなどだ。そこでは広告主が、音声プロンプト付きの広告を、TuneInやAccuRadioといったストリーミングアプリに挿入できるようにしている。

Pandoraは、顧客獲得においても非常に優れている。音声で作動する広告についても、かなりのユーザー数を確保し、その現実性を証明できるはずだ。

現在Pandoraは、Instreamaticと協力してそのフォーマットをテストすることに合意しており、AdsWizzのような他のサードパーティのベンダーも今年中にサポートする予定だ。Picard氏は、対話音声広告の大規模なソリューションとしては、これら2社以外には認識していない、という。

つまりサイト運営者は、独自の音声ソリューションを準備するか、さもなくば、これらのベンダーに協力を求めることでしか、この領域に足を踏み入れることはできないことになる。

Pandoraは、音声で作動する広告の戦略について、これ以上の詳細を明らかにしていない。しかし、興味を抱いている広告主を獲得してテストが開始されれば、より詳しいことも明らかになるはずだ。

「音声の時代がやってきました。しかし、音声広告の領域で意味のある消費者の参加を実現するには、まだやるべきことが残っています。それを測定する指標も必要です」と、Instreamatic.aiのCEO、Stas Tushinskiy氏は述べている。「Instreamaticは、この市場で役立つ理想的な広告プラットフォームを提供しているものと信じています。Pandoraと協力して、このAIを利用した技術をリスナーや広告主にもたらすことができることにワクワクしています。そして、こうした新しい体験を実現し、さらにすばやく拡張できるように準備を整えています」。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

ライバルは中国企業、“AIの社会実装”目指すニューラルポケットが6億円を調達

画像や映像を解析するAI技術を複数の領域で展開するニューラルポケット(旧ファッションポケット)は3月5日、未来創生ファンド、シニフィアン、みずほキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、Deep30、および複数の既存株主を引受先とする第三者割当増資により、6億円を調達したことを明らかにした。

もともと同社は2018年1月にファッションポケットとしてスタート。AIを活用したトレンド解析サービス「AI MD」の提供やファッションECモールの開発などを進めてきた。今後は総合AI企業としてファッション以外の領域でも事業を展開していく計画で、それに向けて本日付で社名をニューラルポケットへと変更している。

併せて調達先の1社であるシニフィアンとは業務提携も締結し、シニフィアンがニューラルポケットの顧問に就任したことも発表した。

今回の資金調達はニューラルポケットにとってシリーズBラウンドにあたるもの。同社では設立から2ヶ月後にシードラウンドで最初の資金調達を実施し、7ヶ月後となる2018年8月には東京大学エッジキャピタルや千葉功太郎氏らから2.6億円を調達。3度目となる今回の調達額を合わせると、創業1年2ヶ月で累計11億円を集めたことになるという。

AI MDを用いた企画商品が全国2000店舗以上に展開

現在ニューラルポケットでは独自開発したAIアルゴリズムによる画像・動画解析技術を軸に、ファッション、スマートシティ、デジタルサイネージの3領域で事業を開発している。

すでに複数の大手アパレル企業が導入するAI MDは、SNSを含む世界中のファッションメディアから500万枚以上のコーデの画像を解析し、カラーや着こなしといったトレンドを把握するサービス。

収集した画像に対してアイテム名や色、柄、丈、シルエットなど細かい情報をタグ付けし、AIに学習させる。これらを時系列に解析し「これからどんなアイテムが流行るのか」を予測するというわけだ。

「データ自体は他社でも集められるものだが、そこに『どういうタグをつけるのか』というノウハウと、実際にタグをつける際のオペレーションが強みだ。(特にファッション領域は変数が多いため)学習データが1万枚とかでは精度が出ないが、一方でいくら枚数を集めた所でゴミデータが入ってはだめ。自社では独自開発したソフトウェアとネットワークを用いて、効率的かつ大量のデータを収集できる仕組みを作った」(ニューラルポケット代表取締役CEOの重松路威氏)

導入企業ではAI MDを用いて基本的に6ヶ月先のファッショントレンドを予測し、商品作りに活かしているそう。以前重松氏は「業界ではヒット的中率が約50%などとも言われ、仮に100点出せば定価で売れるのは40〜50点ほど。残りは値引きで販売するか廃棄している」ような現状を課題にあげ、AI MDによって少しでもこの精度を上げていきたいと話していた。

今のところAIによる画像の検知精度は97%で、検知したファッション画像データを用いてトレンド予測を行うと「人間では50%だったものが、80%程度の的中率まで上がってきている」とのこと。もちろんAIだからといって100%正確に予測できるというわけにはいかないけれど、従来よりも予測精度を上げることで余剰在庫や廃棄問題を減らすことはできる。

重松氏の話では2019年シーズンにおいてAI MDを用いた企画商品が全国2000店舗以上に展開されているそう。直近では三陽商会と新たに業務提携を締結。2019年秋冬より婦人服の全ブランドでAI MDを活用した商品を展開する予定だ。

画像・映像解析技術をスマートシティやサイネージへ拡張

プロダクトの進捗ではファッション領域がもっとも進んでいるが、それに加えてスマートシティやデジタルサイネージ領域の事業も水面下で動き出しているそう。

スマートシティについては設置されたカメラの映像を解析することで、顧客の消費者属性やファッションセグメントを分析できるサービスをショッピングモールや鉄道事業者などに展開する方針。デジタルサイネージ領域では今までにない“コネクテッド”なプラットフォームを開発しているという。これらについてはその全貌が明らかになった際に改めて紹介したい。

それにしても、昨年8月に取材した際には「ファッション領域において独自の技術を活かしたプロダクトを複数展開していく」という話だったので、今回の社名変更や方針の変更には僕も驚いた。

背景にはグローバルでAIへの技術的な期待が高まっていく状況に加え、特に日本ではAIがなかなか実証実験の枠を出ていない状況を打破し、AIの社会実装を実現したいという思いがあるようだ。

「未だに自動運転を含む少数のアプリケーションを除き、事業に直結するようなAIが生まれていないと感じている。自分たちはディープラーニングのコアエンジニアリング企業として、ファッションだけでなく広告や街づくりなど、より大きなテーマでビジネスに直結したAIサービスを作ることが目標だ」(重松氏)

ベンチマークは中国企業、AIの社会実装目指す

この領域では国内よりも海外企業の方がかなり先を行っている印象だ。重松氏もベンチマークとして中国のsensetime(センスタイム/商湯科技)の名を挙げる。同社はディープラーニングを活用した画像認識技術が強みで、自撮りアプリ「SNOW」の顔認証技術を手がけていることでも知られるユニコーン企業だ。

センスタイムの特徴のひとつと言えば、大学で博士号を取得した技術者を筆頭に多くのエンジニアを抱えていること。ニューラルポケットでもスイスの研究所でデータ分析を学び、製造業等におけるAI開発などに携わったCTOの佐々木雄一氏を中心に開発チームを拡大。イギリスや中国出身のエンジニアなど、半数以上を海外出身のメンバーが占めるという。

開発陣だけでなく、ビジネスサイドのメンバーにも経験豊富な面々が集っているのはニューラルポケットのウリだ。CEOの重松氏やCSOの周涵氏を始め、シニフィアンの朝倉氏など社外取締役や顧問も加えるとマッキンゼー出身のメンバーが5人。そこにスタートアップのCFOや上場ベンチャーの社外役員、ベンチャーキャピタルでのパートナーなどを歴任した取締役CFOの染原友博氏らも名を連ねる。

「実社会で役に立ってこそのAI。ビジネスサイドの知見とエンジニアリングを融合することで、AIを社会課題の解決や事業インパクトの創出に繋げていきたい」(重松氏)

Googleドキュメントの文法チェッカーがAIベースになり精度が向上

米国時間2月26日、Googleは、Google Docs(G Suiteユーザーのみ)に、機械学習を応用した新しい文法チェッカーを組み込んだことを発表した。同社は当社この新機能をCloud Next 2018で発表したが、それ以来限定公開状態が続いていた。

文法チェッカーは新しいものではなく、Docs自身にも以前からあった。何が新しいかといえば、文の明らかな間違いや微妙な問題を見つけ出すために機械翻訳技術を応用したことだ。書かれたものを辞書にある単語と比較して間違いに印をつけるも一つの仕事だが、地域や文体によっても異なる複雑な文法規則を理解することはまったく別の話だ。このようなチェックを決められた規則のみに則って行うのは非常に難しいが、同社の機械翻訳技術を使って見つけることが可能になった、と言っている。

「機械翻訳を使用することで、間違いを認識して修正を提案することができる」とG Suiteのプロダクトマネージャー、Vishnu Sivajiが今日の発表で説明した。「われわれは言語学者と密に協力して機械翻訳モデルのルールを解読し、それを元にユーザーの文書に対して自動的に提案するしくみをつくった。すべてAIの力を利用している」

つまりGoogleは、まず大量の正しい文を使ってモデルを訓練し、次に英語からフランス語に翻訳するときに使う同様のモデルを使って、誤りのある文を正しいものに修正している。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook