生き物であるかのようなサインを出して蚊をおびき寄せる捕虫器「モスキッター」

先の記事で別の蚊取り器を揶揄したが、バランスのためにも、今回のCESで展示されていた虫対策技術をもう1つ紹介しておこう。「Mosqitter(モスキッター)」は、蚊が産卵するチャンスを得る前にメスの蚊を引き寄せる、工業規模の蚊の殺虫器だ。そこから短期間で、見事に虫を退治することができる。

同社の説明によると、蚊が吸血活動を開始する前に誘引される自然要素は4つある。呼吸によるCO2、人間の体から出る熱のサイン、哺乳類が発する特定の波長の紫外線、そして香りだ。Mosqitterの製品は、魅力を最大限に引き出すようこれら4つの要素をさまざまなサイクルで駆使して、蚊を惹きつける。同社の製品は、どんな天候でも作動するように設計されているという。アプリを使って遠隔操作ができ、オプションでソーラーパネルを追加すれば、24時間365日の稼働も可能だ。

蚊を機械におびき寄せた後は、毒物を使用せずに殺すことができる。

「Mosqitterは生き物を模したもので、メスの蚊をおびき寄せ、装置の中に引き込みます。その結果は、初日から見ることができます。2〜3週間後には、蚊の繁殖サイクルが破壊され、テリトリーから蚊がいなくなります」と同社のCOOであるOlga Diachuk(オルガ・ディアチュク)氏は説明する。ただし厳密には、この機械は蚊を直接殺すのではなく、蚊を閉じ込めておくネットがあり、そこで結果的に蚊は餓死または乾燥死すると同氏は明確にした。

同社は2020年に販売を開始し、これまでに250台以上を販売したという。今後は、イタリア、インド、ジンバブエなど、この捕虫器が最も必要とされる地域で製造規模を拡大していくことを検討している。おそらく最も印象的なのは、同社がわずかな予算でこれらすべてを達成したことだろう。2019年に設立されて以来、同社は製品販売から得られる収入に加えて、Ukrainian Startup FundCRDF Globalからの8万5000ドル(約985万円)相当の助成金と、10万ドル(約1160万円)のエンジェル投資で運営してきた。

Mosquitterは現在、3つの異なるバージョンの製品を販売しており、家庭用の最も小さいバージョンは950ドル(約11万円)。ビジネス向けのバージョンは1150ドル(約13万3000円)で、公園や地方自治体などのより広い範囲を対象とした大型バージョンは2100ドル(約24万3000円)で販売されている。

画像クレジット:Mosqitter

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Aya Nakazato)

韓国Doosanがコンテンツクリエイター向けロボットカメラを発表、さらに約39億円を調達

Doosan Robotics(斗山ロボティクス)は韓国時間1月4日、Praxis Capital PartnersとKorea Investment Partnersが主導して3370万ドル(約39億円)を調達したことを発表した。この資金調達のニュースは、ソウルを拠点とする同社が、ラスベガスで開催中のCESに新製品を出展するのと時を合わせ発表された。

同社はこの資金調達により、研究開発を強化し、新しいパートナーを獲得して、世界的な事業拡大を目指すとしている。また、Doosanはリリースの中で、同社の協働ロボットシステム(コボット)が年間販売台数1000台に達し、韓国以外の地域(主に北米と西ヨーロッパ)での販売がその約70%を占めるようになったと述べている。同社はIPOも視野に入れているとのこと。

Junghoon Ryu(リュウ・ジョンフン)CEOはリリースでこう述べている。「今回の資金調達により、事業の成長を加速させたいと考えています。当社独自の技術を搭載した新製品やソフトウェアの競争力をさらに高め、世界のコボット市場でシェアNo.1の地位を獲得することを目指します」。

Doosanは協働ロボット(collaborative robot=cobot)で知られており、その用途は製造業や研究機関から、2021年末にデビューしたコーヒーを作るバリスタロボット「Dr. Presso」まで多岐にわたる。

今回の発表では、資金調達の他に「NINA(New Inspiration. New Angle)」カメラシステムも発表された。数週間前にCESイノベーションアワードを受賞した際の記事で言及したが、今週、3月に発売予定の同ロボットシステムの情報をさらに得られた。

同社はNINAを「プロシューマー」システムと呼んでいるが、複雑な撮影を比較的簡単にボタン操作だけで行えるようにするためだろう。その一部は、オブジェクトトラッキングなどの機能に加え、ユーザーがさまざまなショットをプログラムできるオープンプラットフォームによるものだ。

リュウCEOは別の声明で、次のように述べた。「NINAは、Doosanがエンターテインメントとコンテンツのジャンルにラインアップを拡大していく中で、当社にとってまったく新しい時代の到来を告げるものです。私たちの目標は、エンターテインメント、広告、ソーシャルメディア、その他の関連業界のプロのコンテンツクリエイターに、親しみやすく、かつ革新的なものを提供することでした。NINAはそれらすべての面で大きな成果を上げてくれると確信しています」。

画像クレジット:Doosan Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

コネクテッドフィットネス企業にとってパンデミックが続く2022年もビッグイヤー

毎年、CESの週は、筆者にとって健康的ではなかった。意図的でない断続的な断食はともかく、TechCrunchは展示会でのチームディナーで本当にそうする習慣がある。そしていうまでもなく、同僚のMatt(マット)はメキシコ料理レストランの「Tacos & Beer」に宗教じみた情熱を捧げている。

断っておくが、筆者は毎年、展示会の期間中は毎日必ず、何度も歩数をカウントしていた。ラスベガス・コンベンション・センターのホールを歩き回るテックジャーナリストならそうするはずだ。2022年は、TechCrunchがオミクロン関連の懸念からバーチャルでの参加にしたため、もちろん歩数は減った。

正直にいえば、筆者も同じ懸念のために、ジムに戻るべきか迷っている。そう思っているのは筆者だけではないだろう。2021年末、ジムなどの営業が再開したために、Peloton(ペロトン)のような企業の業績が後退したのは事実だ。しかし、パンデミックはまだ終わっていない。現在、全国の多くの地域で寒すぎて屋外で運動ができないとはいえ、狭い室内で息の荒い人たちと一緒に過ごすというのは、あまり理想的とはいえない。

この種のトレンドが長く続くかどうかを予測するのは常に難しいが、ここ数年でホームフィットネスの世界が大きく変化したことは間違いない。筆者は個人的に、こういったことがすべて終わった後(まあ、本当に終わると仮定しての話だが)、ジムに戻るつもりはないという多くの人と話をした。もちろん、すべてがパンデミックの結果というわけではない。PelotonやMirror(ミラー)といった企業は、私たちの多くが新型コロナウイルスというものを知る前から、多くの支持を得ていた。

もちろん、この手のことは、必ず度が過ぎる。この2年ほど、筆者の受信箱には、家庭用フィットネスサービスのメールが大量に送られてくる。できるだけ多くの企業がこのチャンスに便乗しようとしていることは明らかだ。Pelotonの収益やLululemon(ルルレモン)によるMirrorの買収などを前にしては、彼らを責めることはできないだろう。2021年の「オールバーチャル」CESでは、確かに盛り上がりを見せた。2022年も間違いなくそうなるだろう。

他の超ホットなテック分野と同様、生き残るのはごく一部だ。Pelotonは、CEOのJohn Foley(ジョン・フォーレー)氏による基調講演など、さまざまな形でこのイベントに大きく関与する予定だったが、今週初め、参加を見合わせる企業の長いリストに加わった。それにも関わらず、それを穴埋めする製品がたくさん登場した。

画像クレジット:LG

LGがこのカテゴリーで提示したのは、実用性よりもコンセプト性の方がはるかに高いものだった。どちらかといえば、同社のフィットネスバイクは、ホームフィットネスに同社の曲面モニター技術をどう取り込めるかを示すためにデザインされたものだった。自宅に運動器具を備えようとする多くの人にとってスペースと価格が割高であることと、この製品の大きさを考えると、選ばれることを自ら拒否しているように思えた。

2022年のホームフィットネス製品に「メタバース」という言葉があまり出てこなかったのが率直にいって驚きだった。VRフィットネスアプリのLiteboxer(ライトボクサー)は、そこで得点を稼いだ。「メタバースの夜明けは、より深いつながりの感覚への需要を示しています」と共同創業者でCEOのJeff Morin(ジェフ・モリン)氏はプレスリリースで述べた。「バーチャルリアリティでのワークアウトは、タブレット、電話、コンピュータといった二次元の画面よりも意味のある方法で人々をつなぎます。VRヘッドセットとあなたの勝利への意志さえあれば、誰でも最高のトレーナー、音楽、フィットネス技術とともに、世界のどこにいてもワークアウトができます」。

前述のプレスリリースでは「メタ」という言葉が4回出てくる。プレスリリースでは、ほぼ「VR」という言葉に置き換えて使われたようだ。Quest 2ヘッドセットの商品名だからだ。Liteboxer VRは3月3日にQuest Storeに登場し、月額19ドル(約2200円)のサブスクリプション制となる。

Echelon(エシュロン)は、Peloton(ペロトン)の高価格帯バイク「Bike+」に対抗するために設計した「EX-8s Connect Bike」を展示した。価格はBike+をわずかに下回る2399ドル(約27万8000円)だ。Walmart(ウォルマート)向けの超お手頃な製品も作っている会社としては、高い価格設定だ。この価格で、24インチの曲面1080pディスプレイが手に入る他、車輪部分のライトをカスタマイズできる。1月末に発売される予定だ。

画像クレジット:Wondercise

一方、Wondercise(ワンダーサイズ)はソフトウェアファーストのソリューションだ。同社は、離れた場所にいるエクササイズ愛好家同士を結びつけ、ジムから自宅への移動で生じる孤立感を解消するためのプラットフォームを提供することを目指している。以下は、同社のプレスリリースの資料から。

ライブリーダーボードでは、個人の技量に応じてスコアが表示され、セッションを楽しい雰囲気に演出します。画面上のカラフルなパワーバーやプロフィールは、ゲーム感覚で楽しめるよう意図的にデザインされており、ワークアウトに競争的な側面を加えています。Wonderciseは、いつでも誰でも必要とするパフォーマンス解析とデータが得られるよう、フィットネス業界にIoTを導入することに注力しています。

家庭用機器のカテゴリと同様に競争は激しくなっているが、ソフトウェアファーストのソリューションに比べれば、たいしたことはない。WonderciseはApple(アップル)やSamsung(サムスン)などのビッグネームと直接競合することになる。

一方、Hydrow(ハイドロウ)は家庭用ローイングマシンを代表する重要な企業の1つ。トレッドミルやバイクの先にある、これから本格的な成長が期待されるカテゴリーだ。自転車と比べると、漕ぎ手はより全身を鍛えることができるが、一般に消費カロリーは少ない。Pelotonが手漕ぎボートゲームに参入すると噂されているが、今のところHydrowがこの分野でのビッグネームとして存在感を示している。

画像クレジット:Echelon

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

映画字幕のように使えるWaverly Labsの対面式翻訳機「Subtitles」、レストランや小売店などのカウンターに最適

数年前からWaverly Labsを取材し、主に同社のウェアラブル言語翻訳機を紹介している。米国時間1月5日、CESでブルックリンに拠点を置くWaverly Labsはリアルな世界での対話のために設計され、インイヤーデバイスの共有が必要ない、同社技術の新たなフォームファクターを発表した(私たちが細菌を気にかけている現在、とてもポジティブなものに感じる)。

「Subtitles」と名づけられたその製品は、両面にタッチスクリーンのディスプレイがあり、レストランや小売店や銀行、空港、ホテルなどの場所でカウンターの上に設置する。ユーザーは自分の言語を選び、話をすると、その翻訳が反対側のディスプレイに「ほぼリアルタイム」で表示される。

翻訳だけでなく、聴覚障害者のための便利なツールになりそうだ。まるで、対面式のクローズドキャプションのように。Subtitlesという製品名は「字幕」という意味だが、同社はその使用体験を、翻訳された映画を見ることに例えている。

このシステムは、20の言語と42の方言を翻訳するWaverlyの技術に基づいて構築されている。英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、スペイン語、アラビア語、ギリシャ語、ロシア語、ヒンディー語、トルコ語、ポーランド語、中国標準語、日本語、韓国語、広東語、ヘブライ語、タイ語、ベトナム語、オランダ語など、20言語42方言に対応している。現在CESで披露されており、第2四半期のどこかの時点で登場する予定とのこと。価格は発表されていない。

また、Waverlyはオーバーイヤー型翻訳機「Amasaddor Interpreter」の新バージョンも紹介している。Waverlyは次のように語る。

音声認識ニューラルネットワークと組み合わせた高度な遠距離フィールドマイクロホンアレイを使用して、驚くほど明瞭なレベルで音声を捕捉します。その後、クラウドベースの機械翻訳エンジンを使用して音声をシームレスに処理し、高速かつ流動的で高精度な翻訳を実現します。

こちらは、179ドル(約2万760円)で販売されている。

画像クレジット:Waverly Labs

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

パナソニックが音声アシスタントAlexa対応のオーブンレンジ発表、100種類以上の音声コマンドを用いてハンズフリーで操作

パナソニックが音声アシスタントAlexa対応のオーブンレンジ発表、100種類以上の音声コマンドを用いてハンズフリーで操作このオーブンレンジ、声だけで操れるので、料理が捗りそうです──。

パナソニックが2022年1月5日に発表したのは米Amazonの音声アシスタント「Alexa」(アレクサ)で操作することが可能なオーブンレンジ「NN-SV79MS(以下、本製品)」。

一般的なオーブンレンジといえばボタンやダイヤルなどで操作するものがほとんど。例えばパンや魚を焼いたりするときにもプリセットされたメニューを物理ボタンで選ぶ必要があります。

本製品は100を超える音声コマンドを用いてハンズフリーで操作できるのが最大の特徴。

例えば「Alexa, reheat one cup of coffee.」(アレクサ、コーヒーを1杯温めて)と声で指示すれば、すぐに動作する様子が動画で伝えられています。ただ公式YouTubeの動画をよく確認しますと、オーブンレンジのそばにアレクサ対応のスマートスピーカーが置かれていることがわかります。両機器同士の連携によって動作するのかもしれません。

また音声操作だけでなく、20種類のオートメニューが備わり、ピザ、スープ、マフィン、ケーキなど、さまざまな料理にもしっかりと対応し、一般的な製品のようにボタンやダイヤルでの操作も可能なのだとか。

一見すると『いちいちメニューを覚えていられない』『もっとかんたんに扱える製品が欲しい』──という人に向けた製品でしょうが、「触らなくても使える」本製品は直接ボタンなどに触れるのをためらう人に打ってつけかもしれません。

なかなか収束を迎えないコロナ禍により、感染対策として注目されているのが触らなくても使えるATMやチケット購入機などです。空中に浮かび上がらせたボタンに指が触れると、それをセンサーで感知するような技術です。

音声操作タッチレス、その両方が今後、テクノロジーのキーワードとなりそうです。

(Source:PanasonicEngadget日本版より転載)

ごちゃごちゃしがちなスマートホーム機器を統合・連携、ユーザーにプライバシーのベールをもたらすHomey

ほぼすべてのスマートホームデバイスに接続することができて、さまざまなスマートルールを設定でき、多くのセキュリティ機能を追加することできると聞けば、おそらくHomey(ホーミー)が何を提供しようとしているのか、あなたはきっとある程度想像することができるだろう。Homeyは、スマートホームプロバイダーにデータを転送する代わりに、広告主にデータを盗まれないよう安全にデータを管理してくれることを約束している。

Homeyは、2014年からヨーロッパで事業を展開しており、米国時間1月5日のCESで米国での事業展開を発表した。この会社が解決する重要な問題は、多くのスマートホームソリューションが非常に継ぎ接ぎな状態で繋がっており、その過程で、それらが悪意のある目的にも使用できる巨大なデータコレクターになってしまっているということだ。これまで顧客は、それがスマートホームを持つためのコストであると受け入れさせられてきたが、ここに別の方法があると同社は考えている。同社は、顧客データを盗聴したり販売したりすることはなく、個人情報を使ってユーザープロファイルやターゲット広告を作成することもないと主張している。

スマートホームプロバイダー同士の目隠しに加えて、同社のスマートホームハブ「Homey Pro」は、楽しい新機能をいくつか携えてきている。IFTTT(If This Then That )で遊んだことがある人なら、きっと賢い自動化を思いついたことがあるはずだ。誰かがドアベルを鳴らすと電気をつける、夜10時以降はスピーカーの音量を下げる、などだ。Homeyのアプリは、このような機能をアプリのコアアーキテクチャに大量に組み込んでいる。同社はこうした自動化を「フロー」と呼び「カーテンを閉めたら寝室の照明を常に暗くする」「玄関の鍵をかけたらサーモスタットを自動的に下げ、照明を落とし、アラームを有効にする」など、さまざまな例を挙げている。

もちろん、フローはGoogle、Alexa、Siriショートカットなどの音声アシスタントを使って起動することも可能だ。また、モバイルやApple Watch用のウィジェットも提供されている。

音声コントロールやフローなど、あって当たり前の機能に加え、アプリはエネルギー使用をリアルタイムで分析するツールを提供し、さらなる節電方法を提案してくれる。例えば、洗濯機の「温水」サイクルと「冷水」サイクルのエネルギー消費を比較したり、最もエネルギー効率の良い(そして最も悪い)部屋がどれかを教えてくれたりする。

Homeyは、そのスマートハブが1000以上のブランドの5万以上のスマートホームデバイスと接続ができ、iOS、Android、ウェブアプリで全体のコントロールや設定を行うことができると謳っている。ハブは、Zigbee、Z-Wave Plus、Wi-Fi、Bluetooth、433MHz無線に加え、家中にコマンドを送信するための赤外線通信LEDを備えており、豊富な接続性を兼ね備えている。

Homeyアプリは、69ドル(約7980円)のHomey Bridgeを介して、またはHomeyハードウェアを必要としないアプリのみのソリューションとして、スマートホーム機器のコントロールに使用することができる。無料版のHomeyアプリでは最大5台のデバイスをコントロールできるが、プレミアム版では家庭全体で無制限にスマートデバイスを接続することができる。プレミアム版のアプリは、月額2.99ドル(約340円)で利用できる。

「家庭にはそれぞれ個性があり、一律に対応できるものではありません。今日のスマートホームシステムのほとんどは、単一のブランド、技術、またはユースケースが中心となっています。例えば、Philips Hueは照明には最適ですが、ただそれだけです」とHomeyのメーカーであるAthom(アトム)の共同創業者兼クリエイティブディレクターのEmile Nijssen(エミール・ナイセン)氏は語る。「その結果、スマートホームはあらゆる種類のアプリですぐに複雑になり、ごちゃごちゃしてしまいます。私たちがHomeyで目指しているのは、現状を変え、すべてのスマートデバイスを統一し、同時に消費者のプライバシーを確保する、オープンで手頃な価格のユーザーフレンドリーなシステムを作ることです」。

画像クレジット:Homey

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Akihito Mizukoshi)

CES 2022で発表された愛犬・愛猫向けの新しいテクノロジーをまとめて紹介

CESでは毎回、ペットオーナー向けの楽しいテクノロジーが紹介されるが、2022年も例外ではない。しかし、2022年は犬や猫を単なる愛すべき毛皮で覆われた友人としてではなく、独自の行動や感情、さらには自己表現の欲求を持つ知的な動物として扱うことに配慮したガジェットがいくつか出展されていた。

最も基本的なレベルとしては(数年前に比べればかなり進んだレベルといえるが)、飼い主が猫の日々の動きを把握するのに役立つ、猫用スマート首輪と体重感知プラットフォームを組み合わせた「Catlog(キャットログ)」がある。

この首輪は動きや振動を感知し、寝る、座る、前足を洗う、食べる、飲む、さらには動き回るといった「猫らしい行動」と関連付ける機能を持つ。これらの行動(毛づくろいも含まれる)は、IoTハブを通じてほぼライブで飼い主に送られる。そしていつ、どのくらい遊んだか、どのくらい寝たかなど、愛猫の1日を振り返ることもできる。

自分がいないときのペットの日常生活を明らかにするという、このデバイスの基本的な機能は、ペットが単なる膝の上のアクセサリーではなく、飼い主が見ていないときにも存在し、行動していることを理解するために最適な最初の一歩となるだろう。

Invoxia(インヴォクシア)は、犬の位置情報だけでなく、心臓や呼吸器の状態も追跡するスマート首輪を開発した。現時点でその効果を保証することはできないものの、人間の有害な事象や状態を検知するスマートウォッチやウェアブルデバイスが進歩していることを考えると、同様のものが犬用に開発されてもまったく不思議ではない。

動物も人間と同じように心臓や肺に問題を抱えていることがあり、悲しいことに犬種によってはその傾向がある。年に2回、獣医に連れて行って犬の呼吸を診てもらうのはもちろんだが、何かおかしいと思われる時には、飼い主に知らせてくれる首輪を装着するのもよいのではないだろうか。我々自身と同じように「予防のための努力は治療のための努力に値する」のだから。

画像クレジット:Inupathy

犬の背中に装着するバックパック型デバイス「Inupathy(イヌパシー)」は、単に生理的なサインを検知するだけでなく、さまざまな心理状態を検知できるとメーカーは主張している。とはいえ、現時点では過度な信用は禁物だ。この種のデバイスは、人間に焦点を当てたものもあるが、結果はまちまちだからだ。しかし、このInupathyを製造しているLangualess(ラングレス)は、次のようにその機能を説明している

動物の心臓は、穏やかなリズムで鼓動している状態であっても、その持ち主が緊張を感じ始めると鼓動のリズムを早めます。これは、活動時に働くとされる交感神経が活発化することで起こる現象です。私たちは、心拍の変動を独自に研究解析することで、さらに細かく持ち主の精神状態を読み解けることがわかってきました。

心拍数解析は、もちろん長く豊富な歴史を持つ分野であり、ヒット製品もあれば失敗した製品もある。しかし、犬がリラックスしているのか、一時的に興奮しているのか、あるいは長期的な怒りや不安の状態に入っているのかを見分けることができると考えるのは、理に適っていないというわけではない。同社の中核的な技術革新は、動物の心拍数を確実に検出し、解析するローカルセンサーと回路を開発したことである。

もちろん、尻尾の位置や体勢、声の出し方など、より外見的な要素からそれを知ることはできる。しかし、すべての犬がそれほど感情を表すとは限らない。ともかく、もう少しデータを追加してみるのもいいだろう。

データを追加するといえば、台湾最大の応用研究機関であるITRIは、犬の心臓発作を予防するためにデータに基づく早期警告信号を提供する「iPetWeaR(アイペットウェア)」というすてきなコンセプトを発表した。この低消費電力の生理学的検出レーダー技術は、ペットの肌に触れる必要がない無害なもので、ペットの首輪に取り付けたり、犬用ベッドに組み込むなど、柔軟なやり方でセンシングすることができる。

80ドル(約9300円)の基本パッケージには、センサーデバイス、多彩なオプションから選べる首輪、モバイルアプリが含まれており、猫と犬の両方に対応している。同社では愛くるしいデモ映像も制作しており、それは私たちがこの種の製品をまとめて紹介する理由にもなっている。

iPetWeaRによって収集された生理データは、Bluetoothによって飼い主の携帯電話に転送される。不規則な脈や呼吸が検知された場合は、飼い主がすぐに対応できるように通知が送られ、ペットの基礎的な健康状態の異常を早期に発見できることを、この製品は約束している。

しばらく前に登場したWagz(ワッグズ)の「Freedom Collar(フリーダム・カラー)」は、バーチャルなジオフェンスを導入することで、4本足の友達をその場所に留まらせておくことができるようになった。この首輪は、GPSトラッキングとフィットネス記録機能、そして「人道的」な矯正機能(電気ショックは使わない)を備えており、子犬のトレーニング用ソリューションとして人気を博している。しかし、CES 2022では新たに「Wagz Tags(ワッグズ・タグ)と呼ばれる製品が追加された。このアイデアは、犬を家の中で自由に歩き回らせる一方で、入ってはいけない小さな区域を設定するというものだ。犬に付けられた首輪がWagz Tagに近づきすぎると、ジオフェンシングが作動する。これは、愛犬を家具から遠ざけるための優れた、そして非常に賢い方法と言える。

Wagz Tagzでは、3フィート(約0.9メートル)から15フィート(約4.6メートル)までのカスタマイズ可能なKeep Out Zone(立ち入り禁止区域)を作成することができ、近づいてほしくない場所から安全にペットを遠ざけることができる。

画像クレジット:Wagz

せっかく一緒にいるのだから、犬と直接会話してみたらどうだろう?それがFluentPet(フルーエントペット)のアイデアだ。同社は犬に人間の語彙を使って自分を表現することを教えるためのボタンセットを製作している。下の写真のように、犬が前足でボタンを押すと、人間の言葉が出てくるという仕組みだ。

画像クレジット:FluentPet

明らかにFluentPetのボタンは、ソーシャルメディアで人気者となった、ボタンを押して自分の言いたいことを表現する犬、Stella(ステラ)とBunny(バニー)から着想を得たものだ。彼らの一見筋が通った言葉は、我々の予想以上に豊かな知的世界を示唆している。FluentPetのボタンは、あなたの愛犬が同じような才能を持っているかどうかを簡単に調べることができる(正直にいうと、すべての犬は優秀だが、すべての犬が確実に文章を作れるわけではない)。

数種類のセットが用意されているボタンキットには、個別の絵と文字で意味が書かれたさまざまなボタンが含まれており、ボタンを押すと「お外」や「ごはん」、そしてもちろん「大好き」などの言葉が出てくる。これらのボタンは、犬が目で見て簡単に覚えられるように、識別しやすい大きな発泡マット(味がしないことを祈る)に貼り付けて使う。

果たして犬は「大好き」という言葉の意味を本当に理解しているだろうか? おそらくそうではないだろう。好きであることは間違いないだろうが、そのボタンを押すと可愛がってもらえるというように理解しているのかもしれない。同様に「ごはん」のボタンを押すと夕食が早くなる傾向があり「お外」を押すとドアをじっと見ているよりも早く散歩に連れ出してもらえる。飼い主のあなたは、犬と完全な会話を楽しむことはできないかもしれないが、親友が自分自身を表現する方法を変える楽しい手段にはなるだろう。犬は時々、残念な方法で自分の気持ちを表現することがあるからだ。

画像クレジット:alfpoint Images / Getty Images

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(文:Devin Coldewey, Haje Jan Kamps、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

子どもを車内に置き去りにした親に警告を出すチャイルドシート用クッション「Tata Pad」

イタリアのスタートアップ企業であるFilo(フィーロ)は、欧州ではTile(タイル)のようなBluetoothトラッキングデバイスでよく知られている。その新製品である「Tata Pad(タタ・パッド)」は、チャイルドシートの上に置くクッションで、あなたがショッピングモールの涼しく爽やかなエアコンの風の中をのんびり歩いているときに、大事な赤ちゃんがクルマの後部座席に縛り付けられたままになっていると通知してくれるというものだ。イタリアではすでに発売されているが、今週ラスベガスで開催されているCESで米国での発売が発表された。

筆者のように親ではない者にとって、このTata Padは一見すると、まったくばかばかしい製品のように思われる。後部座席に自分の子どもがいることを忘れる親なんて、一体どのくらいいるというのだろうか?同社の説明によると、1990年代後半以降、暑くなった車内に置き去りにされた子どもが900人以上(年間平均38人)死亡していることを受けて、米国では車内に置き去りにされた子どもやペットに対して何らかの安全警告を必須とするための法律が制定されようとしているほど、この問題は深刻であるという。置き去りにされた子どもは「1人でも多すぎる」という標語のもと、同社は忘れっぽい親にテクノロジーによる解決策を提案している。

この製品は、基本的にTileのようなデバイスと同様に機能するクッションであり、子どもがクッションの上に座るとデバイスが起動する。そして親が3分以上その場を離れると、Tata Padは大切なものを置き忘れているという通知をスマートフォンに出す。それでもクルマに戻る気にならなかったら、電話をかけてきて「本気になって、子どもを連れてきなさい」と親切に注意を促す。さらにこの電話を無視すると、Tata Padはさらにエスカレートして、緊急連絡先に電話やSMSを発信し、子どもの居場所を知らせ、救助活動を開始できるようにする。

Tata Padは1つにつき最大2台の携帯電話を接続することができ、2個の交換可能なコイン電池で駆動する。電池の持続時間についてメーカーはコメントしていない。Filoでは、最初の4年間はメッセージと電話の発信を無料で提供することを約束しており、その後も延長サービスを購入すれば警告機能を使い続けることができる。

FiloのTata Padは、チャイルドシートに追加するクッションで、クルマから離れる際に大切な子どもを置いてきたことを通知する機能を備えている(画像クレジット:Filo)

Filoは、米国での販売が完全に認証されていることを示唆しており、CESで発表した後にプレオーダーの受付を開始している。CEOのGiorgio Sadolfo(ジョルジオ・サドルフォ)氏によると、同社では現在、米国市場で大きな成功を収めるために、パートナーや販売代理店を探しているとのこと。欧州では60ユーロ(約7850円)で販売されており、米国でも同程度の価格設定となるようだ。

画像クレジット:Filo

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

CES 2022でスマートホームデバイスの接続規格「Matter」に注目が集まっている理由

現在、ラスベガスで開催中の2022年CESテクノロジーショーで各社が新しいスマートホーム機器を発表する中、スマートホームデバイスは他のシステムとシームレスに統合され、安全で信頼できるものであるべきだという共通の信念に基づいて作られたオープンソース接続規格「Matter(マター)」が大きな話題になっている。

Deloitte(デロイト)によると、スマートホームデバイスを導入している家庭の割合は66%に上り、デバイス好きな人はおそらくきっとこの数字の中に含まれていることだろう。また、1つの会社やブランドにこだわらず、少なくとも6つの異なる会社からデバイスを購入されていることだろう。そのため、2022年スマートホームデバイスを発売する企業にとって、Matterのサポートはとても助かるものだ。

このプロトコルは、Apple(アップル)、Amazon(アマゾン)、Google(グーグル)といった大手テック企業やスマートホームデバイスメーカーによって開発されているだけでなく、断片化したスマートホームシステムに関する問題を最終的に解決し、すべてのデバイスを1つの場所から簡単にセットアップしてルーティングできるようにするために設計されている。

Matterは、ローカル・コントローラー・デバイスを介した、すべてのデバイスの通信を可能にするインフラ、パイプライン、言語となる。そのインターネットプロトコルは、デバイス認証のためのIPベースのネットワーク技術の特定のセットを定義し、メーカーがApple SiriやAmazon Alexa、Google Assistantと互換性のあるデバイスを製造できるようにしてくれる。Matterの最初のプロトコルは、Wi-FiとThreadのネットワーク層で動作し、コミッショニングにはBluetooth Low Energyを利用する予定だ。

最初のMatter認定デバイスのテストを組織しているConnectivity Standards Alliance(通信規格標準化団体、旧Zigbee Alliance)は、2022年のCESでブースや会議室、バーチャル会議においてMatterを展示または紹介している企業を20社以上特定した。その中には、NXP、Qualcomm(クアルコム)、Samsung(サムスン)SmartThings、Telink(テリンク)、Texas Instruments(テキサス・インスツルメンツ)、Universal Electronics(ユニバーサル・エレクトロニクス)が含まれている。

5月にGoogleは、MatterをAndroidとNestに導入すると発表し、米国時間1月5日、数カ月後にAndroidの「Fast Pair」機能を使って、新しいMatter対応スマートホーム機器を数クリックでホームネットワーク、Google Homeや他のアプリにすばやく接続できるようになると発表した。

関連記事:グーグルがFast Pair機能をヘッドフォン以外にも拡大、デバイスと生活で使うさまざまな機器をつなぐプラットフォームに

そして1月5日未明、Amazonは、その「フラストレーションフリーのセットアップ」ドキュメントが現在デバイスメーカーに公開され、インターネット接続がダウンしてもそれらをコントロールできるように、そのデバイスをMatterデバイスの第二管理者として追加するなど、セットアップ体験とAlexa機能の両方について多くの企業と協働していると述べている。

また、同社はシリコンベンダーと協力して、フラストレーションフリーのセットアップをサポートする「Matter System-on-a-Chip」となるものを開発中だという。これらはすべて、ほとんどのEchoデバイスがMatterをサポートし、第4世代のEchoとeeroデバイスがMatter Threadボーダルーターになるという2021年の発表に続くものだ。

その他、Matterに対応する新しいデバイスやサービスを発表した企業を紹介する。

  • Comcast(コムキャスト)は、スマートライト、スマートプラグ、スマートロックなどのIoTおよびホームオートメーションデバイスの中央コネクタとして機能するZigbeeおよびMatter互換の「未来のスマートホームのためのIoT」機能を備えた新しい「xFi Advanced Gateway Router」を発表しながらそれに言及した。
  • コネクテッドホーム製品を製造するEve Systems(イヴ・システムズ)は「Eve MotionBlinds」を制作し、同製品を「Threadに対応した市場初のコネクテッドブラインドとシェードモーター」だとアピールした。
  • ホームセキュリティブランドのArlo Technologies(アーロ・テクノロジーズ)は、セキュリティハブと統合キーパッドに対応した8種類の機能を持つセンサーセット「Arlo Security System」を、よりDIY的なセキュリティ監視ソリューションを求める小規模企業や消費者向けに発表した。また、スマートホームの分野で幅広い互換性を確保する姿勢を固めるため、Matterへのコミットメントも表明した。
  • エッジコンピューティング企業のVeea(ヴィーア)は、Matter、Thread、Wi-Fi 6のサポートを含む「Smart-home-as-a-Service」を発表した。これには「STAX」と呼ばれる家庭用Veea SmartHubメッシュ・ルーターが含まれる。
  • Belkin(ベルキン)がCESで発表した家庭向けのMatter対応製品の中には、AppleのHomeKitと連携する新しい「Wemo」スマートビデオドアベルや、Thread上でMatterと連携するスマートライトスイッチ、スマートディマーがある。
  • Mui Lab(ムイ・ラボ)は、スマートデバイスを「より落ち着いたもの」に変えるMatter対応の「muiPlatform」をデビューさせた。これにはAmazonのAlexaをより視覚的なインターフェースに変えるボードが含まれる。

Connectivity Standards Alliance(CSA)のマーケティング担当副社長であるMichelle Mindala-Freeman(ミシェル・ミンダラ=フリーマン)氏は、米国時間1月4日に発表されたSchlage(シュレージ)の新しいスマートWi-Fiデッドボルトに注目している。

彼女は、2022年はMatterにとって大きな年になるだろうと述べている。CSAとMatterの両方に関わっている企業は数百社あり、50社がすでに134の製品を持ち込んでいると、同氏ははTechCrunchに語っている。

CSAは、2022年の半ばまでに認証、仕様、テストツール、SDKをリリースする予定だ。これにより、企業は新しいハードウェアやイノベーションをより早く市場に投入することができるようになり、より幅広い消費者にリーチすることが可能になる。

ミンダラ=フリーマン氏は「根本的なレベルでは、CSAの仕事は、断片化をなくし、企業が成長し、消費者にとって価値の高い方法でそれを実現するのを支援することです。Matterのような標準規格は、それを実現するものであり、すべての船を上昇させる潮流であると信じています」。と述べている。

画像クレジット:Schlage / Schlage Encode Plus Smart WiFi Deadbolt

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(文:Christine Hall、翻訳:Akihito Mizukoshi)

BMWはクルマをプライベートシアタールームにする

2年前のCES 2020で、クルマに心地よいラウンジシートをフィットさせたBMWは、米国時間1月5日、同社の車載エンターテインメントの次なるステップを披露した。31インチ、8KスマートテレビにAmazon Fire TVサービスがついてくる(中国向けには国独自のストリーミングサービスを開発中)。後部座席に乗る人のために配置されたこの新しい32:9「My Mode Theatre(マイモード・シアター)」画面とBowers & WilkinsのDiamond Surround Sound Systemの組み合わせは、国道を走りゆく乗客に映画館のような体験をもたらすことを意図している。

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5G接続を利用して、このクルマでは最新のショーをオンデマンドでストリーミング視聴することが可能で、My ModeシステムはThe Expanseのエピソードを最新回まで一気見するムードを醸し出す。今のところ見るべき8Kコンテンツは多くないし、Fire TVもまだ対応していないが、少なくともそのときが来たら、あなたのクルマは準備完了だ。

画像クレジット:BMW

また、巨大画面にいつも視野を遮られたいわけではないため、スクリーンは天井に格納することができる。そのためのタッチコントロールは後部ドアに備え付けられている。

「私達は純粋なドライブの楽しみのために没入的なデジタル体験を開発しました」とBMW AG Developmentの研究開発責任者、Frank Weber(フランク・ウェーバー)氏はこの日の発表で語った。「シアターモードでは後部座席がプライベートシネマラウンジに変わります。31インチディスプレイと5G接続、8K解像度にサラウンドサウンドとストリーミングプログラムによって車載エンターテインメントの新しい標準を決める前例のない体験が作り出されます」。

映画を観るだけでなく限らず車内のムードを醸し出すために、BMWの最新のiDriveやOSはMy Modeを備えている。My Modeは運転とトランスミッションの制御を変更することで、車全体の運転挙動だけでなくディスプレイのテーマやサウンド、全体のライティングなどをユーザーの好みに基づいて変化させることができる。

画像クレジット:BMW

これまでにあったモードは「Efficient(効率的)」「Sport(スポーツ)」「Personal(パーソナル)」の3つだったが、この日のCESで同社は、新しいバリエーションをいくつか追加した。「Expressive(表現的)」「Relax(リラックス)」「Digital Art(デジタルアート)」および映画鑑賞のための「Theatre(シアター)」だ。これらの新モードは2022年の後半に提供される。ちなみにここで取り上げている新しいモードのほとんどはドライブの特性を変えるものではなく、クルマのテーマ変更に関するものだ。

デジタルアートモードに関して、BMWは中国のマルチメディアアーティストCao Fei(ツァオ・フェイ[曹斐])氏とパートナー契約を結び、人間と自然の深いつながりを象徴することを狙いとする新発表に向けて同氏が新しいアートワークを制作した。

画像クレジット:BMW

一方、サウンドデザインについては、BMWは映画音楽作曲家のHans Zimmer(ハンス・ジマー)氏と再び組んで、同社の電気自動車シリーズのために特別なサウンドを制作した。BMW IconicSounds Electric(BMW アイコニックサウンド・エレクトリック)は、2022年後半にBMW i4でデビュー予定で、ワイヤレスオンラインアップデートで提供される。

画像クレジット:BMW


画像クレジット:BMW

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nob Takahashi / facebook

子供がディズニーに夢中になれる「おはなしヘッドフォン」

本を読んでもらったことや、本に夢中になるために自分で読むことを覚えたことは、子どもの頃の大好きな思い出だ。ここで老人の愚痴をひと言叫ぶことを許して欲しい。「今や多くの子どもたちがこんなにもスクリーンに囲まれてしまって、昔のような体験をすることが難しくなっているのは残念だ!」。そんな中、2022年のCESでONANOFF(オラノフ)がStoryPhones(ストーリーフォーンズ)という製品を発表したのはうれしいニュースだった。このヘッドフォンは、オーディオ再生のために他の機器に接続することとは別に、ヘッドフォン自身の中にたくさんのオーディオコンテンツを保存することができる。妖精や魔法の迷宮に入り込むのに最適だ。

同社は、発売にあたり、ディズニーとのコンテンツコラボレーションが行われることも発表した。子ども向けのストーリーコレクションでは、子どもたちが大小のスクリーンで知っているようなキャラクターの話を耳にすることができる。ヘッドフォンは、ミッキーマウス、ミニーマウス、リトルマーメイド、アナと雪の女王、ライオンキング、トイストーリー、Mr.インクレディブル、モンスターズ・インクなど、ディズニーの代表的なキャラクターやストーリーを収録して出荷される。同社は、3歳以上の子どもたちに適した厳選コンテンツのライブラリーを持っていると述べている。

録音されたコンテンツに加えて、同社が「PlayShield(プレイシールド)」と呼ぶものにも対応している、これは親が自分で物語をモバイルアプリで録音し、それをヘッドフォンにロードして再生できるようにするものだ。同社は、祖父母や遠く離れた家族とつながり、ストーリーテリングを通して家族全員を近づける方法を提案している。

そして、本製品にはZenShield(ゼンシールド)という機能がある。これは「リラックスできる音声コンテンツが含まれていて、興奮し過ぎた子どもたちが落ち着き、リラックスし、さらには眠ることができる」というものだ。騒がしい子どもたちのための一時停止ボタンだと思えばいいのではないだろうか。含まれるサウンドは、ピアノ音楽、海の波、雨粒の音などだ。

このヘッドフォンには、敏感な小さな子どもの耳にダメージを与えないように音量を抑えるSafeAudio(セーフオーディオ)機能が内蔵されている、その結果、CES2022のイノベーションアワードの「Headphones & Personal Audio」(ヘッドフォン&パーソナルオーディオ)モンスターズインク部門と「Health & Wellness(ヘルス&ウェルネス)モンスターズインク部門の2つの賞を受賞した。

4GBのSDカードが4ドル(約460円)で手に入る時代に、このヘッドフォンは90分ほどのコンテンツをそのショボい64MBのストレージに保存することができる。なぜユーザーがアクセスできるストレージがこれほど少ないのかに私は当惑している。まあおそらく将来のヘッドフォンでは再考されるだろう。

まずはイタリア、スペイン、オーストリア、スイス、ドイツ、イギリス、フランスのヨーロッパ全域で、イタリア語、スペイン語、ドイツ語、フランス語、英語の5言語で発売される。欧州での推奨小売価格は84.99ポンド(約1万3000円)だ。また米国では、ヘッドフォンとミッキーまたはミニーのStoryShield(ストーリーシールド)がセットになったStoryPhonesバンドルが99.90ドル(約1万1600円)となる。StoryShieldsは単品でも購入可能で、価格は7.99ドル(約930円)から14.99ドル(約1740円)である。

画像クレジット:Oranoff

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:sako)

BMWが電気自動車の高性能モデル「iX M60」を発表

BMWのM部門(BMW M GmbH)は、このドイツの高級車メーカーの製品を、さらに数段上まで引き上げることを常に目指している。そして競合他社と同様に、BMWは長い間、電気駆動装置と進歩的な自動運転技術の組み合わせが、BMW Mのようなブランドにとって、どのような意味を持つかということについて考えてきた。BMW Mが手がけた最初の電気自動車は、2021年発売された最高出力544psのセダン「i4 M50」だった。しかし、今週ラスベガスで開幕したCESでは、同社のテクノロジーフラッグシップモデル「iX」の最強バージョンとなる「iX M60」を発表した。この最高出力619ps(スポーツ・モード選択時)を発揮する電気自動車は、BMWのテクノロジーを中核としたiXプラットフォームと、パフォーマンスを重視するMシリーズの伝統を、組み合わせることを目指している。

BMWは、iX M60が停止状態から100km/hまで3.8秒で加速すると約束している。これはローンチコントロールを作動させると2基のモーターが瞬間的に発生する合計1100Nmものトルクに寄るところが大きい。最高速度は電子制御リミッターにより250km/hに制限されるものの、超能力を持った悪の怪人から逃げるような状況でもなければ十分だろう。大きくて重いクルマだが、1回の充電で走行可能な航続距離は WLTPテストサイクルで最大566kmとされている(現時点の開発状況に基づく欧州仕様の予想値)。参考までに挙げると、Tesla(テスラ)の電動SUV「Model Y(モデルY)」は同じWLTPテストサイクルで最大507kmだ。iX M60の高密度バッテリーは、DC急速充電器を使えば10%から80%まで35分で充電できる。

画像クレジット:BMW

BMWは、iX M60に搭載されている2つのモーターには永久磁石がないため、レアアースを一切使用していないと明記している。代わりに「電流付勢同期機械」の原理を採用しているという。

標準装備の4輪アダプティブ・エア・サスペンションと電子制御式ショックアブソーバーは、どんな速度でも車高を適切に保つことを約束する(ドライバーが手動で車高を調整することも可能)。

画像クレジット:BMW

テクノロジー面では、運転支援システムやインフォテインメントシステムのために最新世代のセンサーとソフトウェアを採用し「自動運転や自動駐車を一貫して進化させる大きな可能性を秘めた」コンピューティング・プラットフォームを備えていることを、BMWは約束している。標準装備も充実しており「BMW Live Cockpit Professional(BMWライブ・コックピット・プロフェッショナル)」や「BMW Natural Interaction(BMWナチュラル・インタラクション)」「Bowers & Wilkins Diamond Surround Sound System(バウワース&ウィルキンス・ダイヤモンド・サラウンド・サウンド・システム)」「BMW Laser Light(BMWレーザー・ライト)」「Comfort Access(コンフォート・アクセス)」、運転席と助手席の「Active Seat Ventilation(アクティブ・シート・ベンチレーション)」などが含まれる。さらに、シートやステアリング、アームレストのみならず、真冬のスキー旅行に備えてドアパネルやダッシュボードも温めることができる「Radiant Heating Package(ラディアント・ヒーティング・パッケージ)」も標準で備わる。

画像クレジット:BMW

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ステランティスがアマゾンと提携、コネクテッドカー体験をアップグレード

世界的な自動車メーカーStellantis(ステランティス)は、ソフトウェアから年間225億ドル(約2兆6130億円)を生み出すという計画の一環として、2024年までに一連の車載製品とサービスを同社の車両に導入するため、Amazon(アマゾン)とタッグを組む。

米国時間1月5日に2022 CESで発表されたこの提携は、Stellantisのビジネスのほぼすべての側面に影響を与えるものと思われる。両社によると、Amazonの技術は、Stellantisの自動車開発、車載接続体験の構築、次世代の自動車ソフトウェア・エンジニアの育成に活用されるとのことだ。

この複数年契約の一環として、Stellantisは車両プラットフォームの優先クラウドプロバイダーとして、Amazon Web Services(アマゾン ウェブ サービス、AWS)を選んだ。最近、既存社員および新入社員向けのソフトウェア・アカデミーを立ち上げたStellantisは、AWSと協力してソフトウェア、データ、クラウド技術を網羅するカリキュラムの作成にも取り組んでいる。

Stellantisは12月にソフトウェア計画を発表したが、その時はAmazonには触れていない。Stellantisは、ソフトウェアと電動化に2025年までに337億ドル(約3兆9140億円)以上を投資すると発表している。この投資には、2024年までのソフトウェアエンジニア5000人の雇用も含まれる。

同社の最終目標は、2030年までに3400万台のコネクテッドカーを走らせ、消費者に販売した後も何年も収益を上げられるようにすることだ。この目標を達成するために、BMW、Foxconn(フォックスコン)、Waymo(ウェイモ)、そして今回のAmazonとのパートナーシップに傾注している。

Stellantisが自動車のソフトウェアを利用して乗客やドライバーに製品やサブスクリプションを販売する計画には、すでに開発が進んでいる3つの構成要素が含まれている。

それは、同社がSTLA Brainと呼ぶ、基盤となる電気およびソフトウェア・アーキテクチャから始まる。このシステムはクラウドと統合されており、車両内の電子制御ユニットを高速データバスで車両の中央高性能コンピュータに接続する。これにより、同社は「無線」、つまりワイヤレスで車両のソフトウェアをアップグレードすることができるようになる。

この「頭脳」に、Stellantisは「SmartCockpit」を追加した。これはFoxconnと共同で構築したプラットフォームで、ナビゲーション、音声アシスト、eコマースマーケットプレイス、支払いサービスなどのアプリケーションをドライバーに提供するものだ。最後に、BMWと共同開発した3つめの自動運転プラットフォーム「AutoDrive」で、Stellantisのソフトウェア計画は完了する。

同社は1月5日に、Amazonと協力してSmartCockpitプラットフォームをさらに発展させ、ドライバーと乗客にパーソナライズされた車内体験を提供できるアプリケーションを搭載すると発表した。Stellantisの14種の自動車ブランドのいずれにおいても、乗車する人はアプリストアにアクセスしてサービスやエンターテインメントを見つけることができるようになる。また、音声アシスタントAlexaもSmartCockpitに搭載される予定だ。

AmazonのAIテクノロジーは、顧客の行動や関心事を把握し、それに適応するのに使用される。これは、顧客が厳しい地形の道を走る前に車両を調整し、性能を最適化するのに役立つデジタルオフロード「コーチ」がJeep車に搭載される可能性があることを意味する、とStellantisは述べた。

車載ソフトウェアは、スマートホームやサービスなど、Amazonの他の製品とも連携し、ユーザーは車に乗ったまま自宅を監視・管理できるようになる。また、この機能は逆にも作用する。自宅のAlexa対応デバイスやスマートフォンのAlexaアプリにコマンドを送ることで、車に乗る前に車内の温度を設定することができるようになる。

画像クレジット: DENIS CHARLET/AFP / Getty Images

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

クリエイターの多様なガジェットを一度にチャージするPWRboardのユニバーサル充電デバイス

フォトグラファー、ビデオグラファー、オーディオマニアとして、自宅ですべての機器を充電することはしばしば混沌とした悪夢であり、もし機材を旅行に持っていくならば、さらに大変なことになる。プロとして恥ずかしいことだが、筆者も旅先で適切な充電器がなかったり、バッテリーを忘れていたり、ライトが思ったほど充電されていなかったことが、認めたくないほどの頻度である。言うまでもなく、CESでPWRboardが試作品を見せてくれたとき、私はその「あらゆるものを充電できるプラットフォーム」に興奮した。

簡単にいえば、PWRboardはモジュール式のユニバーサル充電デバイスで、カメラ、マイク、付属機器、その他の「まったく、Instagramの動画を撮るためだけに、こんなものまで必要なんだろうか」と思うさまざまな機材を組み合わせても、どんなものでもどんと来い、充電してみせますというものだ。

この製品には、交換機のような役割を果たす「ベース」が付属している。このベースには高効率電源ユニットが搭載されており、各モジュールへの電圧や電力の供給を調整する。各モジュールはクイックリリースファスナーでベースに接続できるので、充電器の組み合わせやバッテリーの種類を問わず、好きなように充電ステーションをセットアップすることができる。

同社は、2022年初頭にクラウドファンディングのキャンペーンを開始し、年内に製品を出荷する予定だが、より正確な時期はまだわかっていない。発売時、PWRboardは30以上のモジュールとともに出荷され、最も人気のある一眼レフカメラやミラーレスカメラ、アクションカメラ、ドローン、周辺機器など150種類以上のデバイスに対応するという。

PWRboardのベースボードは、ボードのサイズに応じて250~350ドル(約2万9000〜4万円)程度でKickstarterを通し販売される。充電器モジュールの価格は、1モジュールあたり15ドル(約1700円)程度を予定しているとのこと。ほとんどのサードパーティ製充電器がこれよりもはるかに安価であることを考えると、利便性のためにかなり高い金額を支払うことになるが、条件がジャストミートするユーザー層にとっては非常に意味のある出費ではないだろうか。

映像制作につきものの数えきれないパワーストリップやケーブルの束なしで、すばやく充電ステーションをセットアップできるという魅力はかなり大きい(画像クレジット:PWRboard)

同社は、ファンやサードパーティの開発者が独自のモジュールを作成できるように、開発キットを備えたオープンソースコミュニティを構築する予定だと話してくれた。

画像クレジット:Pwrboard

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Aya Nakazato)

スピーカーの新しいフォームファクタを提案するResonado、クルマやボートでも高音質を実現

従来のスピーカーでは、十分に機能するためのスペースが確保できない場所がたくさんある。従来の解決策は、より多くの小さなスピーカーを使用可能なスペースに配置することだった。Resonado Labsはこれとは異なるアプローチの「Flat Core Speaker」技術を発表した。このスピーカーは当初、Airstream(エアストリーム)のキャンピングカーや異なる自動車メーカーの車に搭載される予定だ。

「従来の丸型スピーカーは、過去100年間、業界の標準となっていました。しかし、家電製品の薄型化にともない、オーディオ業界では薄型製品にフィットするように楕円形やレーストラック型のスピーカーを開発してきました」とResonadoのBrian Youngil Cho(ブライアン・ヨンイル・チョー)CEOは同社の存在意義を語る。「しかし新しいスピーカーの形状に合わせて、これらのスピーカーに使用されているモーターが変わることはありませんでした」。

同社が開発したドライバーは、バーマグネットとフラットボイスコイルをフラットなレーストラック振動板に取り付けたもの。よりスムーズな力の配分を実現し、よりスマートなパッケージではるかに優れた音質を提供できるとしている。

今回のCESでは同社は、現代自動車のために制作したデモと、未来のリビングルームのための製品を展示している。その1つである「シネマティック・サウンド・エクスペリエンス」のスリムなサウンドバーは、別途サブウーファーを必要としないとしている。また、高級テレビ向けの超薄型サイドスピーカーアセンブリ、パワフルなスマートスピーカー、イマーシブな空間オーディオを備えた体験型アームチェアなども展示している。

Resonadoは、AirstreamのRV車に組み込まれたスピーカーシステムを披露した。より小さなパッケージで、より高品質なサウンドを約束する(画像クレジット:Resonado)

同社は2021年夏、RVメーカーであるAirstreamとのコラボレーションにより、初の市販製品を発売した。

Airstreamの営業担当副社長であるJustin Humphreys(ジャスティン・ハンフリーズ)氏は、今回のコラボレーションについてこう述べている。「当社は、RV車業界の先駆者として、お客様にとって最も重要なことを最適化するために、車両の細部に至るまで革新の限界を押し広げてきました。Resonado Labsの画期的なオーディオ技術を当社のツーリング車両に導入することで、製品設計に高い価値を置きながら、お客様に可能な限り最高のパフォーマンスを提供するという当社の伝統を引き継ぐことができました」。

画像クレジット:Resonado Labs

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Aya Nakazato)

AirPodsを収納できるiPhone用バッテリーケース「Power1」

PodCaseは時代を先取りしていたのかもしれない。iPhoneとAirPodsのためのワンストップポータブル充電ソリューションで、熱心なApple(アップル)ファンにとって確かに理に適っていた。血統書つきの製品でもあった。その血統には、Pebble(ペブル)の共同創業者であり、後にYCのパートナーとなるEric Migicovsky(エリック・ミギコフスキー)氏も含まれる。結局、このプロジェクトは、Kickstarter(キックスターター)での30万ドル(約3450万円)という高額な目標には届かなかった。

一方、ブルックリンを拠点とするPower1は、もっと地に足が着いた資金調達目標にとどめた。同社はKickstarterの目標額として2万ドル(約230万円)を掲げ、4万8342ドル(約556万円)を獲得した。すでに生産を開始しており、現在99ドル(約1万1500円)で予約受付中だ。

筆者は、CES会場でデビューする数週間ほど前から、いじり回している。このモデルは、まだ製品化されたわけではない。同社の創業者が筆者に語ったように「まだ継続中」だ。つまり、最終的な素材はまだ決まっていない。だがそれでも、現段階のモノを目にすれば、どんなものになるのか、かなり見えてくると思う。

ゴム製のケースまたはバンパーと、MagSafeを使ってパチンとくっつく追加の充電パーツに分かれている。このモジュール性はいい感じだ。筆者は主にバッテリーを取り外して使っている。以前のようにアパートから出ることが少なくなったからだ。

バッテリーは白と黒の2色で、輪郭のデザインは、Mophie(モフィー)のような会社が作っているバッテリーケースに似ている。バッテリーはデバイスの背面のほとんどを独占しているが、カメラモジュールのためのカットアウトがある。その右側にはAirPodsのケースがあり、フリップアップ式の透明な蓋が付いている。バッテリーはUSB-Cで充電され、底面には小さなオンオフスイッチがある。

サイズの都合上、万能なケースを作ることは不可能だ。そこで、発売当初はiPhone 12、12 Pro、13に限定され、AirPodsは最新モデルのみに対応、Proは対象外となっている。Power1がヒットすれば、製造元のAXSは販売方法を拡大するのではないかと推測される。本当に「その時がきた」アイデアなのか、すぐにわかるだろう。

画像クレジット:Brian Heater

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

BMWの製造施設に車両を自律走行させるV2XセンサータワーをSeoul Roboticsが導入

AIベースの知覚ソフトウェア会社Seoul Robotics(ソウルロボティクス)は、自動車やトラック輸送のファーストマイルおよびラストマイルの物流ハブを、1つのセンサータワーがオーケストラの指揮者のようにフリートの動きを制御し、数百台の車両を所定の位置に誘導するような集合体にしたいと考えている。

BMWとの2年にわたる試験的な技術提携を経て、Seoul RoboticsはCESで、ミュンヘンの製造施設における車両物流の自動化という、同社にとって初の商業展開を発表した。「インフラによる自律走行」と呼んでいる技術を展開する。

Seoul Roboticsの最新製品であるレベル5コントロールタワー(LV5 CTRL TWR)によって誘導される車両は、それ自体が自律走行するものではない。同社CEOでのHanBin Lee(ハンビン・リー)氏によると、必要なのは自動変速機とコネクティビティだけだという。

Seoul Roboticsの3D知覚ソフトウェア「Sensr」を搭載したセンサーとコンピュータの網が、施設内のインフラに戦略的に配置される。そして、そのインフラが車両を取り巻く環境の情報を感知し、計算を行い、予測を立て、車両に指令を送る。リー氏は、この作業を人間の安全オペレーターや人間がまったくループに入ることなく安全に行うことができると話す。

BMWでは、LV5 CTRL TWRは主に施設内に配置された約100個のLiDARセンサーに頼っているが、将来的にはセンサーの冗長性のためにカメラやレーダーも導入したいとリー氏は話す。

自動走行車企業の多くは、都市部や高速道路での走行を可能にする独自のセンサーや計算処理能力を備えた自動運転車の開発に全力を注いでいる。少なくとも自動走行貨物車の場合、開発企業は物流ハブ内の移動や、BMWの場合は新しく製造された車両を組立ラインから車両配送センターへ移動させるなど、特定の時点で人間が業務を引き継ぐ必要がある。

自律走行トラック運送会社のTuSimpleは、施設から施設まで80マイル(約128km)の高速道路を走行し、初のドライバーなしプログラムを成功させたばかりだが、同社はまだ地上での特定のオペレーションを管理するために人間を必要としている。Waymo(ウェイモ)は、人間のドライバーがファーストマイルとラストマイルの配送を担う自動運転とマニュアル運転を組み合わせたトランスファーハブモデルを促進するために、自律走行トラック輸送ハブを建設している

LV5 CTRL TWRは高速道路に配備されることを想定していない。むしろOEM、トラック運送会社、レンタカー会社、そして潜在的には空港のファーストマイルとラストマイルにおけるギャップを埋め、コストを削減することを目的としている。

「施設の性質上、駐車場は非常に狭く、この狭い施設内を多数の車両が走り回ろうとします。誰かがそれを指揮し、誰かがコントロールタワーとなって、車両が正しいタイミングで指定の場所に入ることを確認する必要があります」とリー氏はTechCrunchに語った。「たとえ車両がいつか自律走行するようになったとしても、レベル5のコントロールタワーは必要です。というのも、車両管理システムだからです。レベル4やレベル5はいうまでもなくかなり先の話ですが、一方でこのシステムは、基本的に非常に限られたスペースでロボタクシーとしてのメリットをすぐに提供しています」。

OEM、レンタカー会社、トラック運送会社は、自社施設内で車両をA地点からB地点に移動させるだけの作業に何千人もの従業員を割いている。これは不必要な労働力の使用であるだけでなく、高度な訓練を受けたドライバーではなく、アルバイトであろう地元の人々が混雑したスペースを運転することによって多くの損害や事故が発生していると、リー氏は話す。

トラックの後ろやコーナー周辺など、複数の視点から情報を提供することで、センサータワーの死角をなくし、これによって衝突を減らし、より信頼性の高いプロセスを構築することができる、とSeoul Roboticsは説明する。

V2X(Vehicle-to-Everything)ソフトウェアを開発する企業が直面する課題の1つに、レイテンシーの問題がある。世界では、V2Xの制御は公共の4Gや5G LTEを通じて車両と共有されているが、Seoul RoboticsはBMWが所有・運営するような私有地で展開しているため、自社のユースケースに専用の帯域を確保できるプライベートネットワークで情報を送信している。また、これらの施設の車両の最高スピードは、時速13マイル(約20キロ)までとなっている。

私有地での自動化に高度なV2Xを使用する利点は、ドライバーなし走行の許可を得るために政府とやり取りする必要がなく、交通弱者が事故に遭うリスクがほとんどないことだと、リー氏は指摘する。

また、V2X企業がこれまで特に公道で直面してきた課題は、ハードウェアの購入と設置にともなうコストだが、物流の観点からユニットエコノミクスがうまく機能しているとリー氏はいう。

「LiDARは最近ずいぶん安くなっていて、センサー1個あたりは1000〜2000ドル(約11万6000〜23万2000円)ほど、システムのフル展開には数百万ドル(数億円)かかります」と同氏は語る。「OEMはハードウェアの費用を前払いするので、ハードウェアや設置の費用はかかりません。システム設置後は、当社は基本的に設置費用と車両1台あたりのライセンス月額費用の支払いを受けます。OEMは人件費や潜在的な損害にかかる費用を節約できるため、ROIは最短で1〜2年です」。

他の企業も同様の技術に取り組んでいる。2019年にはBosch(ボッシュ)とDaimler(ダイムラー)が共同で自動バレーパーキングの試験を行った。リー氏によれば、まだ技術を公表していないものの、BMWのギグにも入札したスタートアップが多数存在するという。

画像クレジット:Seoul Robotics

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

BMWの製造施設に車両を自律走行させるV2XセンサータワーをSeoul Roboticsが導入

AIベースの知覚ソフトウェア会社Seoul Robotics(ソウルロボティクス)は、自動車やトラック輸送のファーストマイルおよびラストマイルの物流ハブを、1つのセンサータワーがオーケストラの指揮者のようにフリートの動きを制御し、数百台の車両を所定の位置に誘導するような集合体にしたいと考えている。

BMWとの2年にわたる試験的な技術提携を経て、Seoul RoboticsはCESで、ミュンヘンの製造施設における車両物流の自動化という、同社にとって初の商業展開を発表した。「インフラによる自律走行」と呼んでいる技術を展開する。

Seoul Roboticsの最新製品であるレベル5コントロールタワー(LV5 CTRL TWR)によって誘導される車両は、それ自体が自律走行するものではない。同社CEOでのHanBin Lee(ハンビン・リー)氏によると、必要なのは自動変速機とコネクティビティだけだという。

Seoul Roboticsの3D知覚ソフトウェア「Sensr」を搭載したセンサーとコンピュータの網が、施設内のインフラに戦略的に配置される。そして、そのインフラが車両を取り巻く環境の情報を感知し、計算を行い、予測を立て、車両に指令を送る。リー氏は、この作業を人間の安全オペレーターや人間がまったくループに入ることなく安全に行うことができると話す。

BMWでは、LV5 CTRL TWRは主に施設内に配置された約100個のLiDARセンサーに頼っているが、将来的にはセンサーの冗長性のためにカメラやレーダーも導入したいとリー氏は話す。

自動走行車企業の多くは、都市部や高速道路での走行を可能にする独自のセンサーや計算処理能力を備えた自動運転車の開発に全力を注いでいる。少なくとも自動走行貨物車の場合、開発企業は物流ハブ内の移動や、BMWの場合は新しく製造された車両を組立ラインから車両配送センターへ移動させるなど、特定の時点で人間が業務を引き継ぐ必要がある。

自律走行トラック運送会社のTuSimpleは、施設から施設まで80マイル(約128km)の高速道路を走行し、初のドライバーなしプログラムを成功させたばかりだが、同社はまだ地上での特定のオペレーションを管理するために人間を必要としている。Waymo(ウェイモ)は、人間のドライバーがファーストマイルとラストマイルの配送を担う自動運転とマニュアル運転を組み合わせたトランスファーハブモデルを促進するために、自律走行トラック輸送ハブを建設している

LV5 CTRL TWRは高速道路に配備されることを想定していない。むしろOEM、トラック運送会社、レンタカー会社、そして潜在的には空港のファーストマイルとラストマイルにおけるギャップを埋め、コストを削減することを目的としている。

「施設の性質上、駐車場は非常に狭く、この狭い施設内を多数の車両が走り回ろうとします。誰かがそれを指揮し、誰かがコントロールタワーとなって、車両が正しいタイミングで指定の場所に入ることを確認する必要があります」とリー氏はTechCrunchに語った。「たとえ車両がいつか自律走行するようになったとしても、レベル5のコントロールタワーは必要です。というのも、車両管理システムだからです。レベル4やレベル5はいうまでもなくかなり先の話ですが、一方でこのシステムは、基本的に非常に限られたスペースでロボタクシーとしてのメリットをすぐに提供しています」。

OEM、レンタカー会社、トラック運送会社は、自社施設内で車両をA地点からB地点に移動させるだけの作業に何千人もの従業員を割いている。これは不必要な労働力の使用であるだけでなく、高度な訓練を受けたドライバーではなく、アルバイトであろう地元の人々が混雑したスペースを運転することによって多くの損害や事故が発生していると、リー氏は話す。

トラックの後ろやコーナー周辺など、複数の視点から情報を提供することで、センサータワーの死角をなくし、これによって衝突を減らし、より信頼性の高いプロセスを構築することができる、とSeoul Roboticsは説明する。

V2X(Vehicle-to-Everything)ソフトウェアを開発する企業が直面する課題の1つに、レイテンシーの問題がある。世界では、V2Xの制御は公共の4Gや5G LTEを通じて車両と共有されているが、Seoul RoboticsはBMWが所有・運営するような私有地で展開しているため、自社のユースケースに専用の帯域を確保できるプライベートネットワークで情報を送信している。また、これらの施設の車両の最高スピードは、時速13マイル(約20キロ)までとなっている。

私有地での自動化に高度なV2Xを使用する利点は、ドライバーなし走行の許可を得るために政府とやり取りする必要がなく、交通弱者が事故に遭うリスクがほとんどないことだと、リー氏は指摘する。

また、V2X企業がこれまで特に公道で直面してきた課題は、ハードウェアの購入と設置にともなうコストだが、物流の観点からユニットエコノミクスがうまく機能しているとリー氏はいう。

「LiDARは最近ずいぶん安くなっていて、センサー1個あたりは1000〜2000ドル(約11万6000〜23万2000円)ほど、システムのフル展開には数百万ドル(数億円)かかります」と同氏は語る。「OEMはハードウェアの費用を前払いするので、ハードウェアや設置の費用はかかりません。システム設置後は、当社は基本的に設置費用と車両1台あたりのライセンス月額費用の支払いを受けます。OEMは人件費や潜在的な損害にかかる費用を節約できるため、ROIは最短で1〜2年です」。

他の企業も同様の技術に取り組んでいる。2019年にはBosch(ボッシュ)とDaimler(ダイムラー)が共同で自動バレーパーキングの試験を行った。リー氏によれば、まだ技術を公表していないものの、BMWのギグにも入札したスタートアップが多数存在するという。

画像クレジット:Seoul Robotics

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

クアルコムが自動車分野へのさらなる注力を表明、ボルボ、ホンダ、ルノーなど新規顧客を発表

大手テクノロジー企業のQualcomm(クアルコム)は2022年のCESで、自動車分野の技術をさらに発展させるという強い意志を示した。同社は、新しいOEM顧客を発表するとともに、最新のSnapdragon Digital Chassis(スナップドラゴン・デジタル・シャシー)で、欧州の自動車業界の顧客をサポートするために、ベルリンにエンジニアリング・ソフトウェア・オフィスを開設した。

「このオフィスの開設は、自動車分野に新しいエキサイティングな技術を提供するという当社の取り組みをさらに証明するものです」と、Qualcommの欧州 / MEA担当シニア・バイス・プレジデント兼Qualcomm Europe(クアルコム・ヨーロッパ)社長であるEnrico Salvatori(エンリコ・サルバトーリ)氏は、声明で述べている。

このSnapdragon Digital Chassisとは、自動車メーカーが全面的またはアラカルト的に採用できるクラウド接続の「プラットフォーム」群のことで、先進運転支援システム(ADAS)や自動運転に対応した「Snapdragon Ride(スナップドラゴン・ライド)」プラットフォームをはじめ、LTE、5Gコネクテッドサービス、セルラーV2X(Vehicle to X、車両とさまざまなモノとの相互接続)、Wi-Fi、Bluetooth、精密測位に対応した「Snapdragon Auto Connectivity(スナップドラゴン・オート・コネクティビティ)」プラットフォーム、そして次世代のデジタルコックピット / インフォテインメントシステムである「Snapdragon Cockpit(スナップドラゴン・コクピット)」などがある。

同社によると、Digital Chassisを含むQualcommの統合自動車プラットフォームには、130億ドル(約1兆5000億円)を超える受注パイプラインがあるという。現在のSnapdragonの背景にあるのは、2020年のCESで発表されたQualcommのCar-to-Cloud(カーツークラウド)サービスで、これは自動車を常にクラウドに接続させておくことを目的とした同社初の製品だった。これによって、より迅速な無線アップデートが可能になる他、車両や使用状況の分析データを収集し、同社とパートナーである自動車メーカーの両方に、新たな収益源を生み出すことができる。

「Qualcomm Technologies(クアルコム・テクノロジーズ)は、自動車メーカーが独自性と差別化を求めていること、そして自動車および輸送のビジネスモデルを再定義する大きな機会が到来していることを理解しています」と、Qualcommの自動車部門担当シニア・バイス・プレジデント兼ゼネラルマネージャーを務めるNakul Duggal(ナクル・ドゥガル)氏は、声明で述べている。「Snapdragon Digital Chassisのプラットフォームでは、ユーザーが車両を購入した後も継続的に新機能を利用することができ、自動車メーカーは顧客エンゲージメントの強化やサービスベースのビジネスモデルを実現するための新機能やサービスを生み出すことが可能です」。

Volvo Car Group(ボルボ・カー・グループ)は、自社の製品にSnapdragonを統合する多くの自動車メーカーの1つとなった。米国時間1月5日に行われた発表で、同社はボルボの次期型電気自動車SUVと、ボルボ傘下の高性能EVブランドであるPolestar(ポールスター)から登場する新型SUV「Polestar 3(ポールスター3)」に、Google(グーグル)のAndroid Automotive(アンドロイド・オートモーティブ)を搭載したQualcommのSnapdragon Cockpitプラットフォームと、Wi-FiやBluetoothをサポートする一連のワイヤレス技術が採用されることを明らかにした。これらの機能を搭載した車両は、2022年後半に発売される予定だ。

また、Honda(ホンダ)も同社の次期モデルにQualcommのデジタルコックピットを初めて採用する計画を発表。この新型車は2022年後半に米国で、2023年には世界各国で発売になる見込みだ。

Renault Group(ルノー・グループ)はすでに2021年9月に、電気自動車「Mégane E-Tech(メガーヌEテック)」にQualcommのデジタルコックピットを採用する計画を明らかにしているが、米国時間1月5日にはこのコラボレーションを、Auto ConnectivityプラットフォームやSnapdragon Rideプラットフォームなど、一連のDigital Chassisプラットフォーム全体に拡大する計画を発表した。

ボルボ、ホンダ、ルノーが加わり、数多くの自動車会社が名を連ねるQualcommのSnapdragon顧客リストは、2021年10月に同社が自動車技術会社のVeoneer(ヴィオニア)を買収した頃から本格的に活性化したように思われる。以来、QualcommはBMW、GM、Hyundai(ヒョンデ)、JiDu(ジドゥ、集度汽車)、Xpeng(シャオペン、小鵬汽車)、NIO(ニーオ)、WM(威馬汽車)など約40社の自動車会社と契約を結び、これらのメーカーの自動車にさまざまなSnapdragonプラットフォームを統合させている。

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QualcommのSnapdragonは、自動車のインフォテインメント機器を製造している他の企業の技術革新にも貢献している。今回のCESでは、同社はAlps Alpine(アルプス・アルパイン)と提携し、Snapdragon Cockpitを用いた「Digital Cabin(デジタルキャビン)」を開発すると発表した。このDigital Cabinには、周辺の視界を映し出すことで死角を改善するeミラー、大型の天井ディスプレイ、各乗員に個別の音楽を浴びせることができるサウンドゾーンなどの技術が含まれる。

Qualcommの顧客の多くは、コックピットやインフォテインメントシステムの強化を選んでいるが、おそらく同社が最も力を入れているのはRideプラットフォームだろう。そのシステムオンチップ(SoC)は、多くのADASや自動運転機能を実現するのに十分な強力なプロセッサーを提供する。Veoneerの自動運転ソフトウェア部門Arriver(アーリバー)が強化しただけで、Rideプラットフォームは、NVIDIA(エヌビディア)の「DRIVE Orin(ドライブ・オーリン)」SoCと直接競合できるようになった。NVIDIA DRIVE Orinは、Cruise(クルーズ)、Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)、ボルボ、Zoox(ズークス)、そして最近ではTuSimple(トゥーシンプル、図森未来)などの顧客が、同様の機能を開発するためにすでに使用している。

画像クレジット:Qualcomm Technologies

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

遠隔操作DriveU.autoがEasyMileの自動運転シャトルやCocoの配送ロボットをサポート

2021年ステルス状態から脱したイスラエルのスタートアップ企業DriveU.auto(ドライブUオート)は、自動運転シャトルバス企業のEasyMile(イージーマイル)と、歩道ロボット配送スタートアップ企業であるCoco(ココ)が、その業務を同社のテレオペレーションおよびコネクティビティプラットフォームに統合することになったとCESで発表した。

自動運転車の業界では、多くの企業がその実現を約束したり、先進運転支援システムの名称を決めたりしているものの、依然として完全な自動運転技術を商業化するまでにはまだ遠い道程がある。実際、ほとんどの国では、公道における自動運転走行中には、安全のために人間のオペレーターが介在することが義務付けられている。自動運転技術をてがける多くの企業は、より早く市場に投入し、一般の人々に無人運転車を受け入れてもらうために、緊急事態や異常事態、安全上の問題が発生した場合には、遠隔地にいるドライバーが無人運転車の操縦を取って代わることができるテレオペレーションを採用している。

「事故現場で、複数の警察官が身振り手振りで交通整理をしている状況を想定してみてください」と、DriveU.autoのAlon Podhurst(アロン・ポドハースト)CEOは、TechCrunchに語った。「車両に搭載されたAIは、これらの身振りや声による命令を解釈するために、あらゆる可能性の支援を求めます。そのため、遠隔操作オペレーターは、ロボットや自動走行車など支援する車両の周囲の世界を、リアルタイムで見る必要があります。そこで我々は、車両のセンサーから遠隔操作オペレーターのいる場所へフィードをストリーミングしたいと考えました。遠隔操作オペレーターが車両周辺における実際の状況に基づいて判断を下すためには、信頼性の高い高品質で低遅延のコネクティビティ(相互接続性)を確保する必要があります。これはセルラーネットワークを介して行われます」。

テレオペレーションを成功させるためには、映像、音声、その他のセンサーデータを転送するための高性能なコネクティビティが不可欠だ。DriveU.autoのコネクティビティプラットフォームは、安定したネットワーク接続を確保し、自動運転走行車を支援する遠隔操作を妨げる可能性のある遅延や「ダークスポット」と呼ばれる接続性の低下を回避することを目的としている。

「1つのセルラーネットワークでは、5Gでさえ、信頼性の高い遠隔操作に必要なパフォーマンスレベルを保証することができません」と、ポドハースト氏はいう。「つまり、車両には複数のカメラが搭載されているので、複数の高精細な映像フィードを、移動中の車両から、制約のあるセルラーネットワークを使って伝送しなければならないのです。結論として、1つのネットワークでは十分ではないということになります」。

DriveU.autoの技術は、フランスの医療施設にサービスを提供しているEasyMileの「EZ10」自動運転シャトルバスにすでに搭載されており、現在はEasyMileの全車両に統合する作業を進めていると、ポドハースト氏は述べている。

EasyMileのマネージングディレクターであるBenoit Perrin(ブノワ・ペラン)氏は「自動運転車のユースケースを次々と継続的に展開していく中で、遠隔監視は当社のソリューションにおける重要な要素になることが予想されます」と声明で述べている。

DriveU.autoのコネクティビティ・ソリューションは、Coco社が保有する約100台のコンセプト実証用のパイロット車両「Coco 0(ココゼロ)」にもすでに搭載されている。Cocoによると、このプラットフォームへの統合は、新たに1000台が出荷される配送ロボット「Coco 1(ココワン)」でも計画されているという。Segway(セグウェイ)がハードウェアベースを開発しているCoco 1は、2022年第1四半期中に米国のロサンゼルスおよび他の2都市で展開が予定されている。

DriveU.autoは、EasyMileとCocoの他にも、ロボットタクシーや自動運転トラック、その他の配送ロボットや特殊用途の自動運転車でもすでに運用を行っているという。これらすべてのパートナーシップはまだ秘密保持契約の下にあるものの、今後数週間のうちに公開したいと同社では述べている。DriveU.autoは最近、日本の自動車部品メーカーであるDenso(デンソー)との18カ月間におよぶ提携も発表している。

DriveU.autoは通常、車両のコンピュータに統合されるソフトウェア開発キットを顧客に提供する。顧客は、車両に搭載されている既存のセンサーやその他のハードウェアコンポーネントを利用して、テレオペレーションを含む車両の操作を行うわけだ。このソフトウェアのみを提供するというアプローチが、より迅速な統合を可能にするため、同社の市場牽引の鍵となっていると、ポドハースト氏はいう。

同社のソフトウェアベースのコネクティビティプラットフォームは、ダイナミックなビデオエンコーディング、低遅延アルゴリズム、セルラー結合という3つの技術の融合により機能する。融合されたデータパッケージは、送信時のネットワークのパフォーマンスに応じて、複数のセルラーネットワークを介して送信される。このデータは遠隔地のオペレーター側に届くと、ビデオフレームとして再構成される。さらに詳しく見ていくと、このプラットフォームは、車両のシステムに組み込まれたソフトウェアモジュールと、クラウドベースのソフトウェアコンポーネントおよび遠隔操作オペレーターのコンピューターに組み込まれたモジュールで構成されている。

「高度なコネクティビティソリューションを配送ロボットに統合するには、過酷な電力と計算のパラメータが要求されます」と、CocoのCOOであるSahil Sharma(サヒル・シャルマ)氏は述べている。「この分野における業界リーダー各社を評価した結果、DriveUのソリューションが当社の成長計画と積極的な配送スケジュールに最もマッチすることがわかりました」。

画像クレジット:DriveU.auto

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)