Nvidiaの新アルゴリズムでペットの顔を他の動物に変換

Nvidiaが開発した新たなアルゴリズムを使いペットの顔を他の犬種や動物に変換することができる。

その変換を可能とする「PetSwap」と呼ばれるプロジェクトは、Nvidiaの研究者たちが開発した、教師なしで少量のデータから画像変換を学習するアルゴリズムのFew-Shot Unsupervised Image-to-Image Translation(FUNIT)を使用する。

FUNITのフレームワークはGenerative Adversarial Networks(敵対的生成ネットワーク、GAN)が基となっている。リアルなニセ画像や動画、「ディープフェイク」の背後に存在するのがGANだ。

研究者たちはFUNITの論文で、人間は、例えば初めて虎を見た場合でも、虎がどのように寝そべるかは簡単に予想できる、と説明。猫や他の動物が寝そべっているところを見たことがあるからだ。

だが、機械学習のアルゴリズムにはそれは難しい。そこで開発されたのがFUNIT。

FUNITでは、アルゴリズムは「少量のサンプル画像」に基き、与えられた画像の変換後の姿を推測する。

FUNITは人間の持つ「蓄積された知識から物事を推測できる」能力にインスパイアされており、従来のアルゴリズムは膨大な訓練データを必要とし、「利用(シーンが)限られてしまう」ため、開発された。

僕の妹、シャーリーの画像を使ってPetSwapのデモを試してみた。結果は以下のとおり。画像1がシャーリー、2から16は変換後の画像だ。

僕の写真を使った場合、結果は以下のとおり。

なお、PetSwapのデモを使用することで、利用規約に書かれているように、Nvidiaに画像を利用するライセンスを与えることとなるので、注意が必要だ。

任天堂とソニーはE3を前にして新製品への期待を打ち消す

E3(Electronic Entertainment Expo)があと1カ月あまりに迫ってきたが、いつものようにこの時期のニュースからは、この巨大ゲーム見本市の会場では聞けないような内部情報が漏れてくる。昨年おそくにはソニーが、例年の大規模なプレスカンファレンスはやらないと発表した。それはこのほぼ四半世紀の中で初めて、このゲーム大手の大きな不在を示すものになり、代わりに同社は「2019年における我が社のコミュニティに関わるための新しくて親しみやすい方法を探求する」そうだ。

ゲーム業界をフォローしている人たちにとっては、このような感情はすでにおなじみのはずだ。数年前には任天堂が同じ動きを見せ、記者たちが実際に集まるプレスカンファレンスを避けてオンラインのNintendo Direct “Treehouse”で新しいトレーラー(予告編)を披露した。それ以降ずっと、任天堂はこのやり方だ。

ソニーが使わなくなったゴールデンアワー的な時間枠にはスクエア・エニックスがうれしそうに滑りこみ、今回のロサンゼルスのイベントではマイクロソフトが3大コンソール(ゲーム機)中で唯一生き残って、プレスカンファレンスをやることになった。もちろん、E3のようなビッグショウの死は毎年、大げさに言われている。こういうことには周期性があり、誇大に言われることの多くはとくに、新しいシステムの発表に結びついている。

マイクロソフトは今月、光学式ディスクを使わないXbox One S “All-Digital Edition”を発表し、ではいったい6月には何を発表する気か、とみんなが不思議に思った。一方ソニーは今週初めに、PlayStation 5がもうすぐ出るという話を打ち消した。詳細は例によってあいまいだが、同社によると次世代コンソールが今後の6カ月以内に出ることはない。

また任天堂の決算報告では同様に、Switchの廉価版が出るという噂を打ち消した。このコンソールは直前のWii Uの失敗でめげていた同社にとって狂喜の大成功になったが、売れ行きの鈍化は任天堂の長年の伝統である改良版ハードウェアの登場を示唆した。噂の多くは、ポータブルモードだけでプレイできる廉価版のSwitchを指していた。

というわけでここまでの話には新製品のプレビューがまったく出てこない。企業は通常、そうやって記者たちの関心をそそるのが好きだが、でも今回ビッグスリーは、ショウへの期待感を静めている。そうなると当然、ほかの選手たちがやる気を出す。E3は長年、ビッグスリーに支配されていた。開会前の今広まっている噂の中には、NVIDIAのゲーム用2-in-1(ツーインワン)タブレットがある。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

スケッチを数秒でリアルな写真に変えるNVIDIAのAI

米国時間3月18日、NVIDIA GTC 2019で、同社は驚きの画像作成機能を発表した。それは、GAN(Generative Adversarial Network=敵対的生成ネットワーク)を利用したもので、このソフトウェアのユーザーは、ほんの数クリックで写真のようにリアルな画像をスケッチすることができる。数本の線を、あっという間に麗しい山頂の夕日に変えてしまうのだ。これこそAI世代のMS Paintだ。

GauGANと呼ばれるこのソフトウェアは、NVIDIA(エヌビディア)のニューラルネットワークのプラットフォームによって可能になることの、ほんの一例に過ぎない。それは、人間が描く絵画のような画像を生成するように設計されている。スケッチを数秒で写真のようにリアルな画像に変換するのが目標だ。初期のデモを見る限り、その言葉通りに機能している。

GauGANには3種類のツールがある。ペイント缶、ペン、そして鉛筆だ。画面の底辺近くには、オブジェクトの名前が並んでいる。たとえば「Cloud(雲)」のオブジェクトを選択して鉛筆で線を引くと、ソフトウェアが細くたなびくリアルな雲を描き出す。もちろん、これは画像を貼り付けているわけではない。GauGANは、入力ごとに固有の結果を生成するのだ。円を描いてから、ペイント缶で塗り潰せば、ソフトウェアはふわふわした夏の雲を作り出す。

ユーザーが入力ツールを使って木の形を描けば、木が生成される。直線を引けば、裸の幹が描かれる。その上を丸で囲めば、ソフトウェアはその中を木の葉で満たし、立派な木になるというわけだ。

GauGANは、一種のマルチモーダルにもなっている。2人のユーザーが同じスケッチを同じ設定で描いたとしても、プロジェクトに組み込まれた乱数発生機能によって、ソフトウェアは異なる結果を生成するようにしている。

リアルタイムで結果を得るためには、GauGANはTensorコアを使った計算機プラットフォーム上で実行する必要がある。NVIDIAのデモでは、このソフトウェアをRDX Titan GPUプラットフォーム上で実行し、リアルタイムで結果を出力していた。デモのオペレータが直線を引くと、ソフトウェアは直ちに結果を生成することができた。しかし、Applied Deep Learning Research部門の副社長であるBryan Catanzaro氏によれば、若干の変更を加えることで、一般的なCPUなど、ほぼすべてのプラットフォーム上でGauGANを実行できるようになるという。ただし、結果が表示されるまでには、数秒かかるようになるはずだ。

今回のデモでは、オブジェクト間の境界はまだ完璧ではない。このプロジェクトを担当するチームは、今後それも改善されるとしている。2つのオブジェクトが接する部分に細い線が見えてしまうのだ。NVIDIAは、結果は写実的だと言うものの、よくよく見ると、説得力を欠いてしまうことになる。現状のニューラルネットワークが抱える問題として、学習に使ったオブジェクトと、学習の成果との間の違いがある。このプロジェクトでは、そのギャップを減らすことを目指している。

NVIDIAは、Flickr上にある100万枚の画像を、このニューラルネットワークに学習させた。そのほとんどは、Flickr上でクリエイティブ・コモンズとしてライセンスされているもの。Catanzaro氏は、同社は許可を得た画像のみを使っていると述べている。NVIDIAによれば、このプログラムは何十万種類ものオブジェクトを生成し、現実世界のようなオブジェクト同士の関係も再現できるという。たとえばGauGANでは、季節を変えることで、枝に葉がなくなるところまで再現している。そして、木の前に池があれば、その水面に木が映るのだ。

Nvidiaは米国時間3月18日、ホワイトペーパーを発行することにしている。Catanzaro氏によれば、それはあらかじめCVPR 2019に提出されたものだという。

Catanzaro氏は、このソフトウェアをNVIDIAの新しいAI Playground上でも使えるようにすることを目論んでいる。ただし、そのためにはもう少し仕事が必要だという。彼は、このようなツールをビデオゲームに応用すれば、より没入しやすい環境を作ることが可能になると考えてはいるものの、NVIDIAが直接、そうしたソフトウェアを開発することはないとしている。

このソフトウェアを使って、非道な目的のため、偽物の画像を生成することも簡単にできるということが心配になるのも無理はない。Catanzaro氏も、これは重要なトピックであり、1つのプロジェクト、あるいは1つの会社で扱えるようなものではないと考えている。「私たちも、そのことをとても気にかけています。この世界をできるだけよい場所にしたいですから」と、彼は言う。そして、これは信頼の問題であり、技術の問題ではないと付け加えた。われわれが、社会全体として対処すべき問題であるとも。

今回の限られたデモからも明らかになったのは、こうした能力を引き出すようなソフトウェアは、ビデオゲームデザイナーから建築家、そして一般のゲーマーまで、誰にとっても魅力的なものであること。NVIDIAとしては、このソフトウェアを商業的にリリースする予定はないものの、誰でも使ってみることができるよう、じきにパブリックトライアル版をリリースすることになるはずだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

NVIDIAがMellanoxを69億ドルで買収、スパコン向けチップ製造へ

ここ数日憶測が飛び交っていたが、NVIDIA(エヌビディア)はチップメーカーのMellanox(メラノックス)を69億ドルで買収することを正式に発表した。交渉はまだ続いているものの、1株あたり125ドルを現金で支払う。この統合ではスーパーコンピューター向けのチップを製造することになるが、これはクラウドサービスの時代、極めて重要なマーケットだ。

この買収は2019年末のクローズが見込まれる。

メディアを賑わせていたこのニュースでは、もともとはイスラエルで創業され、今はサンノゼを拠点とするMellanoxを巡り、NVIDIAとインテル、マイクロソフトが獲得戦争を繰り広げていると報じられていた。興味深いことに、最終価格は報道されていた最後の提示価格よりも低いものとなっている。最初にマイクロソフトがMellanoxに興味を示しているとの報道があった。そして、そこにインテルが60億ドルで買収する意向との報道が加わった。最後にNVIDIAが登場し、報道ではキャッシュ70億ドルでの買収を提示したとされている。

これらの提示額はすべて、金曜日時点でのMellanoxの終値に基づく59億ドルを上回っている。

このディールはプロセッサー業界で進んでいる統合を象徴するもので、NVIDIAにとってはマーケットシェアを伸ばすために、特に高性能コンピューティングとスーパーコンピューターの分野において重要なものとなる。2社の統合は、世界で最も大きなコンピューター500台の半分超、「メジャーなクラウドサービス事業者とコンピューターメーカーのすべて」をカバーする。

このディールは、同じマーケットにエネルギーを費やしている他のベンダーの手からMellanoxを奪い取るものとなった。他のベンダーの一つ、インテルはCascade Laekチップなど高性能コンピューティングに力を入れていて、一方でIBMは今年初め世界初の商業量子コンピューターお披露目するなどその取り組みを発表している。

NVIDIAはコンピューティングに力を注いできていて、かたやMellanoxはイーサネットや他のネットワーキング技術を通じた分野を専門とする。新たなコンピューティングやデータ移送を解決するこの2社の統合ではAI、クラウドサービス、スマホや他の接続デバイスの使用の拡大、自動運転車などまだ存在しない技術などに関するものに取り組むことになる。

「AIとデータサイエンス、何十億人という人が同時にコンピューターにつながるという状況の出現は、世界のデータセンターに対する需要をうなぎ登りにさせている」とNVIDIAの創業者でCEOのJensen Huang氏は声明文で述べた。「この需要に応えるためにはインテリジェントネットワーキングファブリックを介して膨大な数の高速コンピューティングノードを接続させる全体的なアーキテクチャが必要だ。次世代のデータセンター規模のコンピューティングソリューションを生み出すために、NVIDIAのコンピューティングプラットフォームを世界でも有数のMellanoxのネットワーキングプラットフォームと結合させることを楽しみにしている。特にMellanoxの先見性のあるリーダー、そして明日のコンピューターをつくる素晴らしい人たちと一緒に働くことに興奮を覚える」。

NVIDIAはまた「さらなるパフォーマンスや利用、顧客のための運営コスト低減を達成するために全コンピューティング、ネットワーキングにかかるデータセンター規模の作業量を最適化するという点で」特にMellanoxに関心を持っていると述べた。この2社はすでに協業したことがあり、中でも米国エネルギー省のための世界最速スーパーコンピューターSierraとSummit構築で共に働いている。NVIDIAはまた、多くのクラウドサービス事業者が2社と協業したことにも触れている。

統合完了後も、NVIDIAはイスラエルの人材に引き続き投資する意向だ。その一つが世界で最も重要なテクノロジーセンターだ。今回の統合によって顧客向けの販売やサポートに変更は生じない。

「我々はアクセラレーティッドコンピューティングに関してNVIDIAと同じビジョンを共有している」とMellanoxの創業者でCEOのEyal Waldman氏は声明で述べた。「2社の統合は、我々の長年のパートナーシップの自然な延長上にある。この合体はパワフルなテクノロジーや2社の社員にとって素晴らしい機会の創造を促すだろう」。

Image Credits: chombosan

原文へ、翻訳:Mizoguchi)

クラウドサービスのScalewayがGPUインスタンスを1時間1ユーロで提供

フランスのクラウド・ホスティング会社Scalewayは、Nvidia Tesla P100 GPUを使用した新しいインスタンスを公開した。同社はシンプルな価格体系を採用し、料金は1時間あたり1ユーロとした。

今や多くの会社がGPUインスタンスを使って機械学習ベースのアプリやサービスのモデルを訓練している。こうしたインスタンスを活用して3Dモデルを作ったり、その他のGPU主導タスクを実行している会社もある。高価なGPUを山ほど買わなくても、気に入ったクラウドホスティング会社でGPUをオンデマンドで使うことができる。終わったらそのインスタンスを閉じる。

ScalewayのRENDER-SインスタンスはNvidia Tesla P100に16 GBのHBM2メモリーを付けて使っている。RAM 45 GBと400 GBのストレージ(ローカルNVMe SSDなのでビデオ処理は超高速のはず)を備え10コアのIntel Xeon Gold 6148をAVX-512命令セットで使用している。ある程度長い期間使う予定があれば、料金は1時間1ユーロまたは月間500ユーロ(567ドル)のどちらか安い方になる。

Google Cloudでは、Nvidia P100のオンデマンド・インスタンスを1時間あたりアジア・ヨーロッパでは1.60ドル、米国では1.46ドルで使える。MicrosoftもP100 GPUのクラウド・インスタンスを1時間2.07ドルで提供している。Scalewayは、これらのサービスを主なライバルと見ているのだろう。

AmazonものAmazon Web ServiceにもGPUインスタンスがある。Nvidia Tesla V100というもっと強力な GPUを使うインスタンスもある。価格も高く1時間当たり3ドルだ(価格はデータセンターによって異なる)。古いGPUを使うAWSインスタンスもあるが、性能は落ちる。

OVHもTesla V100 GPUを使った インスタンスを1時間当たり2.30ユーロ(2.61ドル)で提供している。DigitalOceanとLinodeではGPUインスタンスを見つけることができなかった。

おそらく殆どの人にとってGPUインスタンスは必要ない。しかし、次のクラウドプロバイダーを探している会社にとっては、重要な要素になりうる。支払先を一箇所にまとめたければ、幅広いオプションのある会社を選ぶ必要がある。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

HPが、価格5000ドル、65インチのモンスターゲーミングディスプレイを発表

HP Omen X EmperiumはThe Office(英国のコメディドラマ)の再放送を視聴するためのものではない。もちろん視ることは可能だが。このディスプレイは、NvidiaのBig Format Gaming Display(BFGD)ファミリの、最初のディスプレイだ。従来の大型ディスプレイとは異なり、これらはNvidiaの認定を受けており、極めて滑らかな動を通して、最高のゲーム体験を提供すると言われている。

決して安くはない。Omen X Emperiumの価格は5000ドルで、発売は2月の予定だ。

昨年の夏、Nvidiaはこれらのディスプレイを製造するために、複数のメーカーと協力する意向を発表していた。今回の製品は、初めて発表されたもののひとつである。従来のテレビ市場にある同様のサイズのディスプレイに比べて遥かに高価格なものではあるが、十分な数のゲーマーたちが、信じがたい映像によってもたらされる利点を享受するために、現金を差し出すことだろう。

Emperiumの内部には、NvidiaのG-Sync HDRテクノロジを採用した、Nvidiaチップセットが搭載されている。ディスプレイ内のこのテクノロジーは、正しいリフレッシュレートを確保するためにコンピューター内のNVidia GPUと同期し、結果としてより鮮明で、滑らか、そして淀みのない映像を生み出す。

その画面は、デスクトップモニタに利用できるものの中では最高の、HPの素晴らしいQuantium Dot技術を利用している。またDCI-P3色域は95%にも達する。すなわち大量のカラースペクトルを表示する能力を持っていることを意味している。ディスプレイのリフレッシュレートは144Hz、そしてテレビよりもモニターに近い性格から、実際の素晴らしい性能が期待できる。

従来、Samsung、LG、その他のメーカーからの大型ディスプレイは、240Hz以上の速いリフレッシュレートをしばしば売り物にしていた。それは嘘ではないが、ソフトウェアの強化によってのみ達成されているもので、しばしば貧弱な映像へとつながっていた。個人的には直接このディスプレイを見てはいないものの、その宣伝文句が正当なものであることを信じている。

ディスプレイにはNvidiaのShield TVソフトウェアパックが内蔵されていて、所有者はNvidiaのストリーミングサービスを通じて、ほぼすべてのストリーミングサービスと幅広いゲームにアクセスできる。

良い音は良い画像と同じくらい重要であるため、サウンドバーがディスプレイに付属している。

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(翻訳:sako)

Nvidia、時価総額半減で厳しい局面に――暗号通貨、ライバル、中国、いずれも逆風

Nvidiaの株価は上場以来の最高値を付けた後、数週間後に最安値に転落した。

これほど短い期間に時価総額の半分近くを失うというのは容易ならざる事態だ。テクノロジー分野では瞬きするくらいのあいだに鉄壁とみえたビジネスが消え失せるという例の一つをNvidiaは実証した形だ。Nvidiaはチップ・メーカーとして確固たる地位を確立するためにビジネスのコアとなるプロダクトを拡大する長期計画を実行に移してきたが、ここに来て強烈な逆風に苦しめられている。

振り返ってみると、NvidiaはまずGPU(グラフィカル・プロセス・ユニット)の有力メーカーだった。Nvidiaの優秀なGPUはゲームからCADまでさまざまな並列処理に用いられた。プロダクトは機能、信頼性ともに高く、NvidiaがGPUマーケットで大きなシェアを得ることを助けた。

しかし高度ななグラフィカル・レンダリングを必要とするマーケットは比較的小さく、ここ数年Nvidiaは新しい応用分野の開発に熱心だった。この分野には人工知能、機械学習、自動走行車、暗号通貨などが含まれていた。これらはすべて強力な並列処理を必要とし、Nvidiaの得意とする分野だった。

この戦略はおおむね成功した。ここ数年、Nvidiaのチップは暗号通貨スタートアップでひっぱりだことなり、世界的なチップの供給不足を引き起こし、 コアなゲーマーの間に不満が高まったほどだった。

これはNvidiaの収入を大きく押し上げた。 2013年の8-10月の四半期の収入が10.5億ドルだったのに対し、2年後の同期は2015年は13.1億ドルと伸びはゆっくりしていた。これは成熟した市場のトップメーカーの場合珍しいことではない。しかしNvidiaが精力的に新応用分野の開拓を始めると成長は一気に加速した。今年の直近の四半期の収入は32億ドルと2013年の3倍になっている。これにともなって株価も急伸した。

ところがNvidiaの新分野への進出は多方面で障害に突き当たっている。中でも最悪の影響を与えたのがここ数ヶ月の暗号通貨価格のクラッシュだ。これによって暗号通貨市場そのものから火が消えた。打撃を受けたのはNvidiaだけではない。暗号通貨のマイニング処理に最適化したチップを製造していたBitmain暗号通貨バブルの破裂でいきなり失速している。今週、同社はイスラエル・オフィスの閉鎖を発表した。

Nvidiaの今年の収入を見ればこの問題の影響は明らかだ。今年、収入はこの3期続けて31億ドルから32億ドルであり、ほとんどフラットだった。一部ではこの状態はクリプト二日酔いと呼んでいるらしい。しかし暗号通貨はNvidiaが対処を求められている問題の一つに過ぎない。

高度な並列処理を必要とする次世代コンピューティング分野でNvidiaはスタートアップも大企業も含まれる強力なライバルの出現に悩まされている。ライバルには本来Nvidiaのユーザーと目される企業も入っている。たとえば、Facebookは独自の並列処理チップを開発中だと報じられたAppleは何年も前からそうしているし、Googleもこの分野に参入した。Amazonも精力的だ。Nvidiaにもちろんライバルと戦うノウハウがあるが、ライバル各社はそれぞれの応用分野を熟知しており、きめて優秀なアプリケーションを開発できる。このマーケットでトップを維持するには非常に激しい競争に勝ち抜かねばならない。

新分野におけるアプリケーションの開発競争に加えて、地政学的緊張の高まりもNvidiaに打撃となっている。2週間前にDan StrumpfとWenxin FanがWall Street Journalに書いているとおり、Nvidiaは米中貿易摩擦の高まりに直接影響を受けている。

…Nvidiaの昨年の収入、97億ドルのうち20%は中国からのものだった。 Nvidiaのチップは急成長中の中国のAI産業における各種プロダクト〔を始め〕各種のプロダクトに組み込まれて利用されている。

Nvidiaは両大国の緊張の高まりは…中国がアメリカ製品に対する依存度を下げるために独自チップの開発に力を入れる結果となり…Nvidiaの長期計画にとってマイナスの要素となると懸念している。

暗号、ライバル、中国。この三重苦がこの半月でNvidiaの時価総額の半分を失わせた理由だ。中国問題については次に述べる。

山積する中国問題

ハロン湾(ベトナム) 撮影:Andrea Schaffer/Flickr (Creative Commons)

South China Mornng Postによれば、アメリカを中心とするインターネット企業に現地法人の設立を要求する新しい法律をベトナムが制定したため、Googleが対応を検討しているという。Googleはベトナムの新法に対応すべく現地オフィスを開設しようとしていると報じられていた。同様の問題は中国でも起きるはずだ。

昨日、GoogleのCEO、スンダル・ピチャイが「当面中国に再参入する計画はない」と議会で証言したことは興味深い。ベトナムは、他の多くの国と同様、国家主権が個人情報にも及ぶことを明確にした法律を制定した。これによれば、ベトナムで得られたデータはベトナム国内に保存される必要がある。Googleの手は縛られることになる。中国は当面の悪役だが、ローカル・データへのアクセスを制限しようとする保護主義的動きは中国だけに限られたものではない。

報道によれば、日本の携帯大手3社がHuaweiとZTEの製品を、通信設備から排除する方針を固めたという。これにHuaweiの副会長の逮捕というニュースが続いた。これで日本のキャリヤの中国企業の製品の排除の方針はますます固まったはずだ。 Huaweiの排除はもともとFive Eyesと呼ばれる情報交換協定に加盟している英語圏5ヵ国(アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)が決定したものだが、日本はこれに加入していない。日本がHuawei、ZTEを排除することになれば、他のアジア諸国にも波及する可能性が出てくる。そうなれば影響は大きい。

一方、Baidu(百度)は中国を代表する検索エンジンを提供する企業だが、中国政府の監査により、他の80以上の中国企業と共に企業情報を偽っていたことが判明している。 これはBaiduにとって極めて思わしくないニュースであり、 ここ数日、株価は最低水準に落ちた。過去52週の最高値は284.22ドルだったものが、今日の寄り付きは180.50ドルだった。

情報を求む

パートナーのArmanと私は引き続きシリコンバレーのビジネスを取材している。過去数日、投資家やサプライチェーン関係者に取材した結果を上にまとめた。ただしNvidiaの状況は氷山の一角に過ぎない。さらなる情報や分析があれば、danny@techcrunch.comにご連絡いただきたい。

このコラムの執筆にあたってはニューヨークのArman Tabatabaiが協力した。

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滑川海彦@Facebook Google+

ドローンにオプティカルフローを教育して小さな穴を高速で通過させるテクニック

メリーランド大学の研究者たちが、鳥や虫が飛ぶときのテクニックをドローンに教えて、小さな穴を高速でくぐれるようにした。ドローンはわずかに数回、環境を調べて開口部を定義し、大きなドローンが不定形な穴を訓練なしで通り抜ける。

そのGapFlytと呼ばれるプロジェクトは、Nitin J. Sanket, Chahat Deep Singh, Kanishka Ganguly, Cornelia Fermüller, Yiannis Aloimonosの計5人が立ち上げ、簡単な昆虫のような目を使ってドローンを教育した。

彼らが使ったテクニックはオプティカルフローと呼ばれ、きわめて単純な単眼のカメラを使って3Dモデルを作る。各時点の像の中の特徴をマークすることにより、ドローンは各像(写真)の変化に基づいて穴の形と深さを知る。ドローンに近いものは遠いものより大きく動くから、ドローンは前景と遠景を見分けることができる。

ビデオを見てお分かりのように、研究者たちは自分たちのシステムをテストするためにかなり雑然とした環境をわざと作った。Bebop 2ドローンがNVIDIA Jetson TX2 GPUを搭載して、穴のまわりを蜂のように飛び回り、そして秒速2メートルという、まあまあのスピードで通り抜ける。遠くに似たような壁を作ってドローンを混乱させようとしても、彼らのテクニックはその新しい面倒な状況に影響されなかった。

メリーランド大学のPerception and Robotics Group(知覚とロボティクスグループ)の報告によると、ドローンはさまざまな開口部を85%の精度で通過できた。タトゥイーンのベガーズ・キャニオンを避けて飛ぶときのルーク・スカイウォーカーほど速くはないが、でも感動的なスタートだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Nvidia、次世代ゲーム用GPU、RTX 2080/Ti発表――RTはレイトレーシングの頭文字

Nvidiaはドイツで開催中のGamescomの会場でプレスカンファレンスを開き、次世代GPUを発表する。カンファレンスはドイツ時間で午後6時から開催予定〔開催ずみ。下のビデオで1:50前後からカンファレンスの模様が録画されている〕。

Nvidiaの今回の発表は先週のTuringアーキテクチャの発表に続くもので、次世代プロダクト、RTX 2080、RTX 2080 Tiなどの製品についてコンフィグレーションや価格を始めとする詳細が分かる。

カンファレンスには#BeForeTheGameというタイトルが付されている。これからするとNvidiaはコンシューマー向け製品、特にゲーム用GPUを発表するのだろう。GeForce GTX 1080は依然として高負荷ゲームを快調に作動させているが、Nvidiaは常にコンピューターのグラフィックス能力を一歩先へ拡大する努力を続けてきた。

Next INpactの情報によれば、今日、2種類のプロダクトが発表されるという。GeForce RTX 2080はCUDAコア数2944、8GBのGDDR6メモリで、GeForce RTX 2080 TiはCUDAコア4352、11GBのGDDR6メモリを備えるという。

Nvidia先週、プロ用途のワークステーション向けとしてQuadro RTXを発表している。同社は新世代GPUで大幅な処理能力の改善を行う。特にレイトレーシングに最適化されていると期待されている。RTXのRTはray tracingの頭文字だ。

レイトレーシング自体は新しいテクノロジーではないが、現在のハードウェアでリアルなレイトレーシングを実行するのは非常に困難だった。RTX GPUはこの処理に特化したハードウェアだ。

ちなみに、暗号通貨の発掘ブームが一段落したおかげでGPUの購入もやや楽になるはずだ。

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滑川海彦@Facebook Google+

Teslaが自動運転車用のAIチップを内製している、計算性能はNvidiaの10倍

“これについては、最近の2〜3年間、ややステルスだった”、と今日(米国時間8/1)の決算報告でElon Muskは述べた。“でもそろそろ、猫を袋から出してよいころだろう”。

その猫とは: ‘Teslaコンピューター’だ。“Hardware 3”とも呼ばれるそれは、Tesla製のハードウェアで、Model S, X, そして3に搭載され、これらの車の自動運転能力を大きく前進させる。

Teslaはこれまで、NvidiaのDriveプラットホームに頼ってきた。なぜ、今、それを変えるのか?

Teslaによると、内製することによって同社独自のニーズにフォーカスでき、効率をアップできる。

“自分でやることの利点は、自分のニューラルネットワークについて、今後のことも含め、いちばんよく知ってるのは自分だ、ということ”、とHardware 3プロジェクトのディレクターPete Bannonは語る。そのBannonによると、ハードウェアのアップグレードは来年始まる。

Elonが言葉を足す: “重要なのは、ニューラルネットワークを、基本的なベアメタルのレベルで動かすことだ。そういう計算は、回路本体の中で行なう。エミュレーションモードなどでは、だめだ。それなら、GPUやCPUの仕事だ。大量の計算をするために、メモリーが必要になる”。

Elonが語るその最終結果は、相当ドラマチックだ。TeslaのコンピュータービジョンのソフトウェアはNvidiaのハードウェアではおよそ200fpsを扱えるが、専用チップなら2000fpsは行ける。しかも、“十分な冗長性とフェイルオーバーを伴ってね”。

また、AIアナリストのJames Wangによると、Teslaが自分の未来を自分自身でコントロールできるようになる:

[動機はAppleのSoC内製と同じで、競合が始まる前に競合に大きく勝っておくこと。]

内製することによって、重要なチップを完全に自分のニーズに合わせられる。なにかアップグレードが必要になっても、ハードウェア屋さんが対応するのを待たずに、自分ですぐに直せる。もちろんそれは、簡単にできる仕事ではないが、採算内で完成すればその経営効果は大きい。Elonは経費について、現在のそのほかのハードウェアと同じだ、と言っている。

既存のTeslaに載せる件については、Elon曰く、“コンピューターを容易に交換できるように作ってある。だから、単純に差し替えるだけだ。古いのを抜いて、新しいのを差し込む。コネクターの互換性は、完璧だ”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Nvidiaで生まれた怪獣HGX-2はHPCやAIのサーバーを単一アーキテクチャでまかなう

Nvidiaが昨日(米国時間5/29)発表したモンスターHGX-2は、ギークの夢の実現だ。それはクラウドサーバー専用機と称され、しかもハイパフォーマンスコンピューティングと人工知能の要件をひとつの強力なパッケージで満足させている。

まず、誰もが気になる仕様から。プロセッサーは16x NVIDIA Tesla V100 GPUsで、処理能力は低精度のAIで2ペタFLOPS、中精度なら250テラFLOPS、最高の精度では125テラFLOPSだ。標準メモリは1/2テラバイトで、12のNvidia NVSwitchesにより300GB/secのGPU間通信をサポートする。これらにより、総合性能は昨年リリースされたHGX-1のほぼ倍になる。

図提供: Nvidia

NvidiaのTeslaデータセンタープロダクトを担当するマーケティングマネージャーParesh Kharyaによると、これだけの通信スピードがあれば、複数のGPUを一つの巨大なGPUのように扱うことができる。“それによって得られるのは、膨大な処理能力だけでなく、1/2テラバイトのGPUメモリを単一のメモリブロックのようにアクセスできる能力だ”、と彼は説明する。

図提供: Nvidia

残念ながらこのボックスをエンドユーザーが直接買うことはできない。売り先はもっぱら、ハイパースケールなデータセンターやクラウド環境をエンドユーザーに提供する、インフラのプロバイダー、いわゆるリセラーたちだ。これによりリセラーは、ワンボックスでさまざまなレンジ(幅)の精度を実現/提供できる。

Kharyaはこう説明する: “プラットホームが統一されるので、企業やクラウドプロバイダーなどがインフラを構築するとき単一のアーキテクチャだけを相手にすればよく、しかもその単機がハイパフォーマンスワークロードの全レンジをサポートする。AIやハイパフォーマンスなシミュレーションなどで、各ワークロードが必要とするさまざまなレンジを単一のプラットホームで提供できる”。

彼によると、このことがとくに重要なのが大規模なデータセンターだ。“ハイパースケールな企業やクラウドプロバイダーでは、スケールメリットを確実に提供できることがきわめて重要だ。そのためにも、アーキテクチャがバラバラでないことが有利であり、アーキテクチャが統一されていればオペレーションの効率も最大化できる。HGXを使えば、そのような単一の統一的プラットホームへ標準化することが可能だ”、と彼は述べる。

そしてデベロッパーは、そういう低レベルの技術を有効利用するプログラムを書くことができ、必要とする高い精度を一つのボックスから得ることができる。

HGX-2が動くサーバーは、今年後半にLenovo, QCT, Supermicro, Wiwynnなどのリセラーパートナーから提供されるだろう。

画像クレジット: Nvidia

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Google、NvidiaのTesla V100 GPUをクラウドで提供開始

Google は今日(米国時間4/30)、Nvidiaの高性能GPU Tesla V100がCompute EngineおよびKubernetes Engineで利用可能になったことを発表した。現在はまだ公開ベータだが、GPU作業でGoogleの完全サポートを必要とする利用者には、やや性能の低いNvidia P100 GPUがベータを終え一般公開された。

V100 GPUは、今もNvidiaの高性能コンピューティングのラインアップの中で最も強力なチップだ。登場からしばらく時間がたっており、Googleはやや遅れた参入となった。AWSIBMはすでにV100を顧客に提供しており、Azureではプライベートプレビューを行っている。

GoogleはNvidiaのマルチGPUプロセッシングのための高速インターフェースであるNVLinkも使用していることを強調しているが、ライバル各社もすでにこれを使っていることは指摘しておくべきだろう。NVLinkはGPU-to-GPUのバンド幅を従来のPCIe接続より9倍速くすることで作業によっては40%性能が高くなるとGoogleは約束している。

もちろん性能のためにはお金が必要だ。V100の使用料は1時間につき2.48ドル、P100が1.46ドルだ(これは標準価格であり、Preemptible仮想マシンは半額で利用できる)。これ以外に通常の仮想マシンまたはコンテナを動かすための料金を払う必要がある。

現在V100マシンは、1 GPUまたは8 GPUの2種類の構成で利用可能で、将来は2または4 GPUの構成も加わる予定。P100には、1、2、または4GPUが用意されている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

NvidiaのGPUによる高速化技術がついにKubernetesをサポート

やっと、という感じだが、NvidiaのCEO Jensen Huangが今日(米国時間3/27)、彼のGTC(GPU Technology Conference)キーノートで、Googleで生まれ育ったコンテナオーケストレーションシステムKubernetesをNvidiaのGPUでサポートする、と発表した。

その意味は、何百何千ものGPUが機械学習処理の高速化などのために使われているような、いわゆるハイパースケールなデータセンターでGPUの使用を最適化し、デベロッパーがコンテナをなんの変更も加えずに複数のクラウドへデプロイできるようにする、ということだ。

Jensenはこう言った: “今やフレームワークは高速化し、コードも高速化した。では、それをデータセンターの世界へデプロイするにはどうするのか? そうだ、そこにはうまい具合に、Kubernetesというものがある。良かった!すごく良かった!”。

NvidiaはKubernetesのGPUによる高速化技術とそのコードを、オープンソースのコミュニティに寄贈する。機械学習のワークロードは、計算とデータの両方で巨大なものになりがちだ。Kubernetesはそんなワークロードのオーケストレーションを助け、そして今や、その仕事にGPUを使える。

Huangは次のように述べて、会場からの笑いを誘った: “Kubernetesは今やGPU対応だ。DockerのコンテナはGPUが加速する。そして私がこれまで名を挙げたようなフレームワークはすべて、GPUで加速される。そしてまた、みなさんが抱え込んでいる推論のワークロードもGPUが加速する。そしてこれらのクラウドのすべてでNvidiaのGPUが動く。そしてさらに、すばらしいオーケストレーションのレイヤとしてKubernetesがある。完全に満たされた人生だね”。

KubernetesのGPUによる高速化は、今日の発表以前にもある程度サポートされていた。たとえばGoogleは、そのKubernetes EngineですでにGPUをサポートしている。

 

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メルセデス・ベンツの新しい車内アシスタントMBUXとスマートUIが素晴らしい

私がCESで自動車メーカーのインフォテインメントシステムやマルチメディアシステムのアップデートに注目することは稀だ。通常は自動運転、電動化、モビリティサービスなどに興味を持っていかれているからだ。しかし今年、メルセデス・ベンツは、このショーで最も興味深い発表を行った。新しいMBUXスマートマルチメディアシステムと車内音声対応アシスタントだ。

MBUXは、ここ10年ほど自動車メーカーたちが消費者に売り込んできた、非力で存在感の薄い音声入力システムではない。そうではなく、Nvidiaの強力なGPUテクノロジに基づいて構築された、学習型のスマートなコネクテッドプラットフォームである。私が車内インフォテインメントシステムを使って、真に楽しい気持ちを感じたのは、おそらくこれが初めてだ。これまでは利用者体験の尺度からは、せいぜい「ダメ」から「まあまあ」程度だったのだ。

その理由の一部は、システムを駆動するコンピューターが、高フレームレートの画像を、高解像度のままスクリーン上に表示できるところにもある。あまりにも長い間、自動車のインフォテインメントシステムは、出力を力不足の安価なチップに頼り、自動車メーカーで働くソフトウェア開発者たちに、本当はアラームクロックを走らせるべきではないシシリコンチップの上に、気乗りのしない仕事の結果を押し込む努力をさせていた。走行中に利用する、重要なアプリや情報システムなどに対しても同様である。

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MBUXシステムのダッシュマウントされた2つのディスプレイ(1つは中央に、もう1つはハンドルの向こう側に)の、スクロールとアニメーションは極めて滑らかで、タッチ入力に対し、まるで iPhone のように機敏に反応する。これは典型的な自動車メーカー製タッチスクリーンの性能に比べて、大幅な改善である。

MBUXは、操作性の点でも簡潔性に焦点を当てている。多くの選択肢と機能を提供しているものの、実行したい多くのものを最上位の主画面から呼び出すことが可能だ。たとえば自宅へ帰る、お好みの音楽チャネルを再生する、天気を問い合わせるなどだ。

より深い位置にある特定の機能を呼び出したい場合でも、ショートカットが提供される。MBUXは利用者の好みを学習し、それを主画面から1タップで移動できる”Suggestions”(お勧め)というショートカット画面の中に提示する。提示されるのは、目的地、音楽、室内の温度調整、その他の利用者の習慣を学習した設定、スケジュール、そしてその他の設定項目などだ。そうしたデータはドライバー毎に管理されており、そのプロフィールに紐付けられている。このことで、もしMBUXを装備したメルセデス車に乗り換える場合には、設定がドライバーについてくることさえできるのだ。

もちろん、音声入力の機能もある。これはいつでも「ヘイ、メルセデス」と言ったり、ハンドルのボタンを押すことで起動することができる。これによって、音声コマンドを自然言語で発することが可能になる。例えば温度を上げるために「寒い」と言ったり、地元の天気予報を聞くために来週ビーチサンダルを履けるかどうかをたずねたりするということだ。

実際には、ラスベガスの携帯電話サービスは常に快調とは言えなかったものの、音声コマンドはうまく動作した。メルセデス・ベンツはそのスピーチアシスタントを、連続した接続性のない状況でも使えるように構築しているが、たとえクラウドに接続していない最中でも、多くのことを行うことができる。たとえば車内ライトの調整をしたり、接続したUSBドライブから特定の楽曲を再生するように指示したりということだ。

その能力は、時間とともに成長するようにもデザインされている。このスマートアシスタントはNvidiaを利用したAIテクノロジの上に構築されており、ローカルに成長することもできれば、クラウドからプッシュされるソフトウェアと機能アップデートによっても改善される。メルセデス・ベンツはまた、車の全ライフサイクルに渡って、重要な機能追加を行っていく計画も立てている。Nvidia GPUを使用したことは、実際にそれらのアップデートをサポートするための余剰コンピューティングパワーがたくさんあることを意味している。

NvidiaのCEO、Jensen Huangはインタビューで、同社がダイムラーと2年間直接協力してこれを実現しようとしていると説明し、専用のエンジニアリングチームがこの目的のために設立されたと語った(ダイムラーはメルセデス・ベンツの親会社)。また、ダイムラーのデジタルビークル&モビリティ副社長のSajjad Khanは、Nvidiaと協力することは、現在の成果物を達成するための鍵であったが、成長する余地はまだまだ沢山あると付け加えた。

まとめると、MBUXは驚異的な代物だ。エキサイティングで、パワフルで、テクノロジーの観点からも非常にうまく作られた、自動車メーカー提供のインフォテインメントシステムだ。もし誰かが1週間前に、私のCESのお気に入りの1つは、自動車メーカーのインフォテインメントソフトウェアになると言ったら、笑い飛ばしていただろう。しかし実際にはこの通りだ。

MBUXは、まず今年後半に、全く新しいAクラスに搭載されるが、その後新しいメルセデスの車両たちに展開される。

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(翻訳:sako)

NvidiaのAutoSIMは「インセプション」ばりの自動運転車用仮想環境だ

Nvidiaは今回のCESで、沢山の新しいものを発表しているが、そのほとんどは車を中心にしたものだ。その中でも最も興味深い発表の1つがAutoSIMだ。これは、これまで世の中で実際の車を使って実際の路上で行われたものよりも、遥かに多くの時間が使われた、シミュレーションのための仮想テスト環境だ。

NvidiaのCEO、Jensen HuangはプレスQ&Aの席で、AutoSIMを(夢の中の夢を描いた映画である)「インセプション」のような仮想環境だと語った。とはいえNvidiaのAutoSIMの構造は夢ではない。仮想化されたAIエージェントが、より大きな仮想環境の中で動作するものであり、仮想化された拡張現実ソフトウェアも実行されている。

AutoSIMは本質的に、非常に強力なNvidia DGX GPUベースのスーパーコンピュータ上で実行される巨大な仮想世界なのだ。その中には、複数の仮想都市とそれらの都市の仮想道路を周遊している仮想車両があり、生成された都市環境を仮想の歩行者、サイクリスト、動物などが共有している。

「私たちは本質的に、こうした仮想車両が走り回る仮想世界を、膨大に所有することになります」とHuangは語った。さらにViveヘッドマウントVRディスプレイのようなものを使うことで、こうしたシミュレーションの中への「ワームホール」を実現することが可能で、そこでは例えば、Nvidiaの新しい車載拡張現実プラットフォームであるDrive ARなどを、観察したりテストしたりすることが可能になる、と付け加えた。

AutoSIMの本当に凄い部分はどこか?仮想都市の仮想道路上を走るそれらの仮想車両それぞれが、Nvidiaの車載自律スーパーコンピュータープラットフォームDriveの仮想版を実行しているということだ――つまり、アンドロイドたちは本当に電気羊の夢を見ているが、その羊たちは自動運転車ということだ。

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(翻訳:sako)

Nvidiaと建設重機大手Komatsuがパートナーして現場の安全性をAIで強化

Nvidiaが、建設や鉱業用重機の世界最大のメーカーのひとつであるKomatsu(小松製作所)と組んで、現場の安全と効率の向上のために、AIを導入していくことになった。

NvidiaのCEO Jensen Huangはこのパートナーシップを今日(米国時間12/13)、GTC Japan(GPU技術のカンファレンス)で発表し、NvidiaのGPUを現場で稼働する重機の仮想的な‘脳’として提供して、その上で、AIに制御されるNvidiaの組み込みプラットホームJetsonが動く、と説明した。

両社の協働関係は、Komatsuが2015年から動かしている、インターネットに接続されたスマートワークサイト事業SMARTCONSTRUCTIONの発展的継続として展開される。これからはNvidiaの技術がKomatsuによる建設現場全体の3D視覚化の構築を助け、現場で仕事をしている人と機械の状況をリアルタイムで把握できるようにする。

視覚化のための画像はSkyCatchのドローンが提供し、Jetsonが画像処理を担当する。そのためのカメラは重機の各所に据え付けられ、それらにより適切なエッジコンピューティングが行われる。

Nvidiaはこれまでも同社の技術が産業用や商用のアプリケーションに数多く利用されており、その経歴も、今回の建設業における安全と効率の向上に寄与貢献するだろう。その成功のためには、十分に広範囲な実装が期待される。

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Nvidiaの2999ドルのTitan VはAI処理のための110テラフロップスのGPUだ

Nvidiaのカードは機械学習のワークロードを動かすためのデファクトスタンダードだが、今日(米国時間12/8)同社は、また新たな、ハイエンドのコンピュート専用型カードを陣容に加えた。Titan Vがそれだ。このカードはNvidiaのVoltaアーキテクチャがベースで、211億個のトランジスタを載せた815平方ミリメートルのチップだ。計算性能はきっちり110テラフロップスである。

もちろん、これだけのパワーはお安くない。12GBのHBM2メモリを搭載したタイプで小売価格は2999ドルだ。でも単独のパワーで比較すると、1299ドルだった前の機種Titan Xpの9倍となる。

しかしそれでもこれは、Nvidiaの最強のカードではない。その栄誉は今でも112テラフロップスのTesla V100が握っている。その小売価格は1万ドルに近い。でもそれは、Nvidiaの最強のPC用GPUだ。Titan VとV100は、共通している部分も多い。Titan VのコアはV100 GPUだが、メモリが少なくてメモリバスも狭い。

Titan Vのローンチは、かなりのサプライズだった。NvidiaのCEO Jen-Hsun HuangはNIPSカンファレンス(12月4-9日)のキーノートで、新しいハードウェアの発表をすると期待されていなかったようだ。

でも、Titan Vは発表された。Huangは述べる: “Voltaのビジョンは、ハイパフォーマンスなコンピューティングとAIの限界を押し広げることだった。その新しいプロセッサーアーキテクチャでは、プロセッサーの命令や数値の形式、メモリのアーキテクチャ、プロセッサーのリンクなどで新しい地平を開いた。そしてTitan Vでは、Voltaを世界中の研究者や科学者の手に渡したい。彼らによる画期的な発見が、待ち遠しい”。

このカードもまさしく標準的なPCI-Eのビデオカードだから、PUBGをプレイすればごきげんだと思うが、でも主な想定ユーザーは科学的シミュレーションや機械学習のモデルの構築にこのような並列処理のパワーを求めていた研究者たちだ(もちろん暗号通貨のマイニングにも使えるだろう)。Titan Vは5120のCudaコアを載せているだけでなく、機械学習ワークロードの高速化に向けて最適化された640のTensor Core〔行列演算器〕もある。

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Nvidiaが作った本物のホロデッキで製品デザインや設計のコラボレーションができる

NvidiaのCEO Jensen Huangは以前、同社でいちばんやってみたいのは、本物のホロデッキ(Holodeck)を作ることだ、と言っていた。そして今まさにNvidiaがやってるのが、デザイナーやデベロッパーのための、細密にリアルなVRプラットホームとして、ホロデッキを作ることだ。

名前もまさにNvidia Holodeckであるこのプロジェクトは、このGPUメーカーが作った“インテリジェントな仮想現実プラットホーム”であり、コラボレーションのための仮想環境で、現実世界の物理現象をシミュレートできる。そこでは、超細密なグラフィクスにより、実物大の詳細モデルを作れる。ピカード大佐のそっくりさんを作ることはできないが、デザイナーたちが新製品のプロトタイプを作り、そのデザインを磨いていくために利用する。VRでは結果がはやいから、製品を市場に出すための期間を短縮できるだろう。

このホロデッキでは、AIを利用できる。たとえば一定のエージェントを訓練しておき、デザイナーが作ったデザインを現実の状況に照らして評価させられる。また仮想オペレーターや人間のスタッフがプロトタイプの各部と対話しながら、最終設計へ仕上げていくこともできる。

すでにリリース前のテストでは、NASAのエンジニアや最先端のデザイナーなどから、高い評価を得た。そして今日(米国時間10/10)からはさらなる洗練を目指して、より広い層へ公開される。

コラボレーションのできるVRデザインツール(設計ツール)は、自動車業界でも採用が進んでおり、今は各社がそれらを試行している。もちろん自動車以外の業界でも、デザイン〜設計のコラボレーションを実物大のVRでできるメリットは大きい。そんな最近の動向の中で、グラフィクスとAIという二つの重要な要素に強いNvidiaは、このようなシミュレーター的環境製品でも市場のリーダーになれそうだ。

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NvidiaがスマートシティプラットホームMetropolis AIでAlibabaやHuaweiとパートナー

NvidiaのスマートシティプラットホームMetropolis AIは、まるでDC Comicsのスーパーマンの漫画にあったような名前だが、実際にはそれはGPUを使用するインテリジェントなモニタリングツールで、渋滞の解消とか、行政サービスの適正配分、迷子の老人や子どもの発見など、さまざまな業務を助ける。このほど同社は、Mtropolisの本格的な普及を目指してAlibabaおよびHuaweiとパートナーし、またMetropolisの一般供用バージョンにはそのSDK、DeepStreamを含めることになった。

Metropolisはビデオを使用し、2020年までには10億台以上の、インターネットに接続されたカメラを世界中の都市に据え付けて、警察や都市計画などあらゆる行政サービスをアシストするデータ分析AIアプリケーションを稼働させる。

Nvidiaは今日北京で行われた同社のGTXカンファレンスで、そんなアプリケーションの一端を紹介した。たとえば中国のHikvision Research Instituteのプロジェクトは、Jetson, Tesla P4, DGX-1といったNvidia製品〔主にディープラーニング関連〕を組み合わせて、顔画像と個人プロフィール情報のマッチングを90%の確度で行う。

こういった監視システムにはオーウェルの‘ビッグブラザー’的な気色悪さがつきまとうが、円滑で安全な都市交通ネットワークのための自動化情報システムが実現するためには、それが必要な第一歩だろう。たとえばAlibabaが考えているのは、都市計画部門における行政サービスの改善だ。またHuaweiなどは、もっぱら警察用アプリケーションに注力している。後者はそれこそ、ビッグブラザー問題を内包するかもしれない。

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ビデオのストリーミング視聴は4Kの時代に――Apple TV 4Kに対抗してNvidia Shield TVに低価格新製品

NvidiaのShield TVはAndroid TVをベースにしたガジェットで、テレビで4K動画のストリーミングを楽しみたい向きには最良の選択肢の一つと考えられている。このほどShield TVに価格を下げた新製品が加わった。これはゲームコントローラーを省き、リモコンのみ同梱したパッケージで、16GBモデルが179ドルだ。現行Shield TVより20ドル安く、明日発売される32GBのApple TV 4Kと同一の価格となる。

Nvidiaのこのセットトップボックスは4K HDRのストリーミングを提供する。コンテンツのソースとしてはNetflix、Amazon Prime Video、Google Play Storeからのレンタルないし購入がカバーされる。Nvidiaのガジェットは今年始めの発売当初から4Kをサポートしており、私の使用体験からするときわめて快適に動作する。

ひとつ付け加えておくなら、Apple TVはAmazon Primeのストリーミングをサポートしていない(ただし開発中だという)。YouTubeアプリも4K再生ができない(これも将来はできるようになる可能性が高い)。Nvidiaはゲームのプレイに好適な機能を各種提供している。自宅のゲーム・パソコンからローカル配信ができるし、リモコンにヘッドフォンジャックが内蔵されているので「1人で音声を楽しむ」ことができる。

私はまだApple TV 4Kを自分で試すチャンスがないが、今のところNvidiaのストリーミング・ボックスは私のお気に入りのメディアセンターとして活躍している。そういうわけで低価格の新製品はApple TV 4Kの強力なライバルになるはずだ。ユーザーがAndroidのエコシステムにすでに多額の投資をしている場合は特にそうだろう。

新しいパッケージは現在予約受け付け中で、出荷は10月18日からとなっている。既存モデルについては価格その他変更はない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+