都市問題に挑戦するスタートアップを育てるアクセラレーターが7社を選定

世界の都市問題を解決するスタートアップを育てることを目的とするアクセラレーターUrban-Xが、その第6次の育成グループとして7社を選んだ。

BMWのMini事業部の設計部門とVCのUrban.USをパートナーとして、7社は各15万ドルの資金を受け取り、Urban-Xの20週間の育成事業に参加する。その途上でBMWの技術者やデザイナー、ソフトウェアデベロッパー、ポリシーや営業の専門家、そしてマーケティングの指導者たちとの接触がある。

今回選ばれたスタートアップは、以下のとおり:

  • 3AM Innovations:緊急時におけるファーストレスポンダー(初動救援要員)のための捜索ツールを提供する
  • Cove.Tool:ビルの設計の初期段階においてパフォーマンスのモデリングを自動化するツールキットを提供する
  • Evolve Energy:リアルタイムの料金計算やコネクテッドホームデバイス、再生可能エネルギーなどを利用して家庭のエネルギー費用を節減する
  • Food For All:レストランの今後廃棄されそうな食材を回収して一食4ドルの食事を作る
  • OurHub:公共のスペースを利用するアウトドアレクリエーションによるアウトドアエクササイズのネットワーク
  • Pi Variables:交通整理のソフトウェアサービス
  • Varuna:水質監視サービス

Miniは3年前に、そのイノベーションとブランド戦略の一環としてUrban-Xを立ち上げた。支援対象となるスタートアップは主に、モビリティや効率的なエネルギー利用、都市のインフラストラクチャ、住宅、食料廃棄などに関連したサービスだ。

これまでに同アクセラレーターを卒業したスタートアップは44社、その85%がその後新たな資金調達を行っている。

Urban-XのマネージングディレクターMicah Kotch氏は「都市と新興のテクノロジー企業は最大の都市問題を解決して行く上での強力なパートナーだ。今回の第6次育成グループについても、彼らのソリューションを、都市生活にインパクトを与えているさまざまな産業に向けてスケールしていきたい」とコメントした。

画像クレジット: Walter Bibikow

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Beyond NextがインドC-CAMPと提携で相互支援、海外投資も本格化

独立系アクセラレーターのBeyond Next Ventures(BNV)は6月3日、インド・バンガロールのインキュベーターCentre for Cellular and Molecular Platforms(C-CAMP)との業務提携を発表した。

写真右から2人目:BNV代表取締役社長 伊藤毅氏

C-CAMPが拠点を置くバンガロール(ベンガルール)はインドの南部に位置し、「インドのシリコンバレー」と呼ばれるテック企業の集積地であり、技術系大学や医大など、インド有数の大学が数多く集まる都市でもある。C-CAMPはその地に2009年、インド政府科学省によって設立されたインキュベーターだ。

これまでに100を超えるスタートアップを支援してきたC-CAMP。ライフサイエンス分野を中心とした最先端の研究開発、投資、メンタリングの実施や、インキュベーション施設の提供などを通して、インドのスタートアップの事業化・成長支援を推進してきた。

BNV代表取締役社長の伊藤毅氏は、C-CAMPについて「シェア型ウェットラボを運営するなど、我々と似た活動をしているアクセラレーター」と説明する。インドには政府が政策として、予算を付けてバックアップするインキュベーターも多く、再生医療の分野などでアカデミア発のベンチャーの事業化を支援している。C-CAMPもそのひとつ。バンガロールにあるライフサイエンス領域のインキュベーターでは、中核的な存在だという。

BNVも2014年8月の創業時から、アカデミア発のスタートアップ支援を行うアクセラレーターで、2018年10月には2号ファンドを設立。1号ファンドとの累計で150億円近い額となるファンドを運営し、ライフサイエンス分野を中心とした技術系スタートアップへのインキュベーション投資や事業化・成長支援を実施する。今年2月には東京・日本橋に開設されたシェア型ウェットラボの運営を開始した。

今回の業務提携では、両社がインドおよび日本の起業家育成、双方のアクセラレーションプログラムを通した人材・テクノロジーの交流などを目的としたコンソーシアム「C-CAMP Beyond Next Ventures Innovation Hub(CBIH)」を設立。インドにおける技術系スタートアップへの投資やハンズオンサポートなどを組み合わせ、インドと日本双方のイノベーションの創出を目指す。

より具体的には、BNVが日本で投資するスタートアップがインドで事業を展開したり、ラボへ入居したりする際にはC-CAMPがサポートを実施。C-CAMPがインキュベートを手がけるインドのスタートアップには、BNVが日本でのパートナーや投資家の紹介、アクセラレーションプログラムへの参加などで支援する、といった形で両社の経験やネットワークを生かしていく。

また、これを機にBNVでは、インドへの投資を本格展開していく予定だ。BNVが投資を行う現地のライフサイエンス領域のスタートアップについては、C-CAMPがデューデリジェンスや育成をサポートする。

「インドは人口も多く、世界第3位のスタートアップ大国でもある。中でもインドのシリコンバレーと言われるバンガロールは投資機会に恵まれた地域だ。また、インドは今後も発展を続け、中長期的には大市場となる。我々の投資先であるスタートアップにとって、海外の展開先としても有望な国だと考えている。学力や教育レベルも高く、ITエンジニアだけでなく、ライフサイエンス領域でも優秀な人材が多い。今は日本の方が優れた研究もあり、論文も多いかもしれないが20〜30年後、中長期的にはそれが変わっていくとみている」(伊藤氏)

今年8月には創業5年を迎えるBNV。現在、海外では2社のスタートアップに出資しているが、今回の業務提携をきっかけに、インドだけでなくアジア諸国、海外への投資を加速していく考えだ。

ダイレクトリスティングを控えてSlackは売上が順調に増加し損失率は低下

職場のメッセージングは、いまやSlackで決まり。そのSlackが、6月20日と予想されているダイレクトリスティングに備えて米証券取引委員会(Securities and Exchange Commission、SEC)に、修正S-1を提出した。

その文書でSlackは今後の黒字化への道のりもやや改定し、前期2019年Q1の決算は売上1億3480万ドルに対し損失3180万ドルと報告している。売上は前年同期比67%の増で、2018年Q1では8090万ドルの売上に対して損失が2480万ドルだった。

2019年1月で終わる会計年度では、同社の売上は4億60万ドルに対し1億3890万ドルの損失だった。前会計年度では売上2億2050万ドル、損失が1億1億4010万ドルだった。

Slackは今、ニューヨーク証券取引所におけるダイレクトリスティングに必要な準備過程の最後の段階に来ている。ちなみに同取引所におけるSlackのティッカーシンボルは「WORK」になる。ダイレクトリスティングは株式市場へのアプローチの仕方のひとつで、それにより有名企業は、新株を発行する代わりにインサイダーや社員、投資家などが持つ既存の株を市場に直接売り出す。この方法だと企業は、会社説明など売り出しにあたってのロードショープロセスを省略でき、またウォール街に相当な額のIPO手数料を取られずに済む。

Spotifyは2018年にダイレクトリスティングを完了し、もうひとつの価値の高いVC支援企業Airbnbも、2020年にダイレクトリスティングを行うと噂されている。

Slackは現在、70億ドルの評価額とされている。これまで同社は累計12億2000万ドルを、Accel(同社の株式24%を保有)、Andreessen Horowitz(13.3%)、Social Capital(10.2%)、ソフトバンク、T. Rowe Price、IVP、Kleiner Perkinsなどから調達している。

関連記事: The Slack origin story(Slackの起源、未訳)

画像クレジット: TechCrunch

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

脅威インテリジェンスのスタートアップがプライベート・エクイティ会社に戦略的身売り

あなたがもしかして気づいていなくても、セキュリティ企業は今どきのホットな商材だ。米国時間5 月29日は、Palo Alto Networksが2つのセキュリティスタートアップを買った。今週初めには、FireEye(JP)がVerodinを2億5000万ドルで買った。そして本日、プライベート・エクイティ企業であるInsight Partnersが、脅威インテリジェンスのベンダーのRecorded Futureを7億8000万ドルで買ったことを発表した。

Insightが買ったRecorded Futureは、顧客企業が今直面している外部からのサイバー脅威をよく理解するための情報を生成する。今日の世界でそんな企業に、買うだけの価値があることは容易に理解できる。同社は、GlaxoSmithKline(グラクソ・スミスクライン)やMorgan Stanley(モルガン・スタンレー)、The Gap(ギャップ)、 Verizon(ベライゾン)など顧客数400社を誇っている。

当然ながらRecorded Futureにとって今回の身売りは、自分が成長を続けるための方法だ。CEOのChristopher Ahlberg氏は声明でこう述べている。「Insightとの関係が進化して、Recorded Futureは現在と未来のクライアントにもっと良く奉仕できるようになった。当社の技術的ロードマップのすべてのポテンシャルを有効活用できるし、また、当社のソフトウェアが、当社のコミュニティが直面しているもっとも困難でユニークなインテリジェンスのチャレンジに、真のソリューションを提供できるようになったからだ」。

同社は2009年に創業され、Crunchbaseによればこれまでに5800万ドルを調達している。最新のラウンドは2017年の2500万ドルで、それはほかでもないInsight Partnersがリードした。彼らは同社が気に入ったらしくて、会社全体を欲しくなったのだ。

今回の買収は、これまでの投資家、GV(Googleのベンチャー部門)、In-Q-Tel(CIAのベンチャー部門)、IA Ventures、Balderton Capital、Mass Mutual Venturesなどからの投資も買い上げることになり、彼らに大きなリターンを与える。

Palo Alto Networks to acquire container security startup Twistlock for $410M(Palo Alto Networksがコンテナのセキュリティを提供するTwistlockを4億1000万ドルで買収、未訳)

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

インドで新鮮な魚や肉、野菜を提供する電子商取引プラットフォームのFreshToHome

シャン・カダビル(Shan Kadavil)氏は、テックサポート企業であるSupportのマネージャーを務めたあと、ゲーム会社Zyngaのインド事業を率いていた。そんな彼が自分の息子が生まれたときに、天命のようなものを感じたのだと言う。カダビル氏は、インドで売られている食肉の多くが健康的ではないことに気が付いたのだ。傷みやすい食品たちが化学物質漬けにされ、表面的には6カ月もしくはそれ以上に消費期限を引き伸ばされていた。彼はその状況を改善したいと考えたのだ。

それから4年。本日カダビル氏は100%純粋で新鮮な魚、鶏肉、その他の食肉を提供するFreshToHomeが、シリーズAで1100万ドル(約12億円)を調達したと語った。同社は、これまでに1300万ドル(約14億2000万円)を調達している。

このラウンドはCE Venturesの主導によって行われ、Das Capital、Kortschak Investments、TTCER Partners、Al-Nasser Holdings、M&S Partners、そしてその他のアジアやシリコンバレーを拠点とする投資家たちが参加した。FreshToHomeの支援者の中には、Google東南アジアの元責任者であるラジャン・アナンダン(Rajan Anandan)氏、GVのCEOであるデビッド・クレーン(David Krane)氏、そしてZyngaの会長であるマーク・ピンカス(Mark Pincus)氏なども含まれている。

FreshToHomeはすでに、インドの4都市、 バンガロール、デリー首都圏(デリー、グルガオン、ノイダ、ファリダバード、そしてグレーターノイダ)、チェンナイ、ケララ(コーチ、トリバンドラム、カリカット、そしてトリチュール)で40万人の顧客を集めている。またスタートアップは、バックエンドでは125の沿岸地域で1500人の漁師たちと取引をしている。

TechCrunchとのインタビューで、カダビル氏はスタートアップが「インドの農民と漁師の皆さんを『Uber化』しようとしています」と述べた。「私たちは彼らに、商品取引のためのアプリを提供しています。なおこれに関しては米国特許を取得済です。農民や漁師の方々が行うことは、アプリを使って私たちに対して電子的な入札(地元の法律で定められている)を行うことです」生産者と直接やりとりを行うことによって、スタートアップは半ダースもの仲介業者を排除してコストを削減している。

またスタートアップは独自のサプライチェーンネットワークを構築している。「私たちは1000人の従業員、100台のトラック、40の収集ポイントを保有しています」。スタートアップはまた、列車や飛行機も使って在庫を移動させている。このことで、同社は航空会社であるIndigoとSpiceJetの最大の顧客の1つになったと彼は付け加えた。カドビル氏によれば、FreshToHomeは食肉を扱う最大の電子商取引プラットフォームでもあり、総流通総額(GMV)は毎月173万ドルに達するということだ。

もしこれが良く練られた戦略だと思えるならば、それはこれを運営している人たちの努力の賜物だ。カダビル氏が、一緒にFreshToHomeを設立したマシュー・ジョセフ(Mathew Joseph)氏は、30年以上にわたって魚の輸出に取り組んできた業界のベテランだ。ジョセフ氏は2012年に、SeaToHomeという名のインド初の魚と肉の電子商取引事業を開始した。

FreshToHomeは、共同農場を営んでいる農家にとっての、マイクロVCとしての性格も見せ始めている。そのモデルの中では、FreshToHomeは農家が特定の種類の魚を捕獲するために、最新の技術を使うように指導している。現時点では月間で、共同農場で生産され市場で販売される食材は60トンを超え、スタートアップが販売する全体の量は400トンを超える。

FreshToHomeは、新しく得た資金を使ってサプライチェーンネットワークを拡大し、8500軒もの新しい農家とつながり、野菜の配達を開始する。既にバンガロールでの野菜の配送は始まっている。カドビル氏は、さらにムンバイとプネの2都市に拡大する予定だと語った。

FreshToHomeの数少ない競争相手は、これまでに3500万ドル以上を調達しているLicious、ZappFresh、そして今月初めに15000万ドルを調達した BigBasketなどである。インドのコールドチェーン市場は、今後5年間で370億ドル(約4兆円強)に成長すると推定されている。

準備された声明文の中で、CE Venturesのディレクターであるチュシャ・シンビ(Tushar Singhvi)氏は、次のように述べている。「インドの食肉およびシーフード市場は、500億ドル(約5兆5000億円)規模の市場であると考えられています。しかし私たちは、それが極めて断片化された市場であることを忘れてはなりません。FreshToHome.comは、業界を合理化しようとしているだけでなく、テクノロジーを使って業界が機能する方法を刷新しようとしているのです。そしてサプライチェーンを単純化し、仲介業者を排除して、漁師や農民と市場モデルの中で直接取り引きを行い、大衆が新鮮で化学物質を含まない食材を手に入れられるようにするのです」。

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(翻訳:sako)

資金調達を行った創業者を多く輩出した米国の公立大学はUCバークレー

高等教育における経済的負担を軽減するために、多くの学生たちが公立大学に通っている。連邦政府による最新の集計では、米国の公立単科大学や総合大学の授業料の年平均額は約6800ドル(74万円ほど)である。これは、平均3万2600ドル(357万円)に達する私立大学の費用よりは、大幅に安い。

それでも公立大学の場合には、「あなたは支払ったものに見合ったものを手に入れる」という古い格言は、明らかに当てはまらない。特に一流の公立研究大学には、うらやましいほど知識が豊富で成功した卒業生を輩出してきたという実績がある。その中には、資金調達に成功した多くの創業者たちも含まれている。

こうして私たちの最新ランキングは生まれた。Crunchbase Newsでは、ここ数年の間、卒業生の出身校とスタートアップ資金の関係を追跡してきた。先週初めに発表された報告書の中で、私たちはここ1年ほどでは、どの大学が100万ドルもしくはそれ以上の資金を調達したスタートアップ創業者を輩出したのかを調査した。

この記事の中では、公立総合大学に限定してお伝えする(報告書の中には公立私立を合わせたランキングが掲載されている)。一流の研究大学のリストから始めて、私たちはどの大学が最も多くの資金調達を行った創業者を輩出したかを見ていった。

公立/私立リストに対するものと同じ基準を採用して、2018年5月以降に100万ドル以上の資金を調達したスタートアップに焦点を当てた。ただし、公立のリストはビジネススクールの卒業生を区別していない。

まあこれ以上ごたくを並べるのはやめよう。以下がそのリストである:

主たる調査結果

上記のリストを見ると、いくつかのことが際立っている。まず第一に、トップであるカリフォルニア大学バークレー校は資金調達を行った創業者の数に関しては他校を何倍も上回っている。

バークレー校はSTEM教育で卓越しており、VCが多数存在するサンフランシスコのベイエリアにあり、一般的に入学が難しい学校だ。そのため、リストの先頭に載っていることは必ずしも驚くべきことではない。しかしその突出ぶり ―― 次点のUCLAの資金調達創業者数の約3倍 ―― が注目を集めるのは当然だ。

ミシガン大学イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校が、3番目と4番目のスポットを争うなど、中西部の有名校も好調だった。

より広範にみれば、このリストには、東海岸、西海岸、南部、中西部、南西部を含む、すべての米国地域の学校も含まれている。よって、特定の地域で資金調達を行う起業家の卒業が妨げられているということもない。それも特に驚くようなことではないだろう。しかし、その考えを裏付けるために、いくつかの数字を手にしておくことは良いことだ。

【編集部注】

著者のJoanna GlasnerはTechCrunchの寄稿者である。この著者による他の記事。

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(翻訳:sako)

「ユニコーン」の価値が薄れた今、本当に「稀」なのは何か?

米国時間5月22日、ユニコーンがいくつか生まれた。聞いていたとしても、たぶん名前はもう忘れているに違いない(答えはMarqetaIvalua)。

責めているのではないのでご心配なく。これは最近の市場にユニコーンが多すぎて(2019年中に100を超える)、追いかけるのが困難だからだ。

実際、あまりにも多くの会社が該当するので、われわは「ユニコーン」の定義を当初よりも厳しくするようになった。現在は「アンダーコーン」と「デカコーン」に分けられている。これにミノタウロスと馬とケンタコーンが加わったら、みんなうんざりするだろう。

アシモフの言葉を借りれば、ショックが連続すると衝撃は減る。そしてユニコーンという単語の意味も薄れてきた。以前私が冗談で言ったように、いまやユニコーンの意味はほとんど「ミドルエイジのスタートアップ」だ。われわれが再定義した「スタートアップ」は、時価総額数十億ドルの会社も該当するが、あれは間違いだったかもしれない。

今日の超巨大調達ラウンドの時代には、ユニコーンをでっち上げることが不可能ではない。実際みんなやっている。

では、どうすればいいのか?

今や「ユニコーン」は、時価総額を表す記述子にすぎない。もはや稀なものを暗示する意味は持っていない。つまり我々に必要なのは、「ユニコーン」を再定義して希少度を高くするか、まったく新しいコンセプトを作ることだ。「ユニコーン」の意味を変えるにしても、新しい用語を発明するにしても、並外れた会社をふつうに良くできた会社と区別するための指標が必要だ。

利益。

ZoomはIPO前から黒字で爆発的に成長していた。TransferWise利益を上げて成長中であることを最近知った。時価総額10億ドルの成長中で黒字の会社をほかに知っているだろうか?私は知らない。つまりそれは「希少」だという意味だ。

TechCrunchのKate Clarkと私はポッドキャストのEquityでこれについて話し合い、おおむね合意に達した(Kateのツイートはこちら)。本当の希少価値を生むのは「利益」だ。時価総額が高いだけではない。後者を実現するための資金はいくらでも出回っている。しかし、前者を手にするには?それこそが伝説であり容易には見つからない。

ユニコーンのように。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

B Dash Camp 2019 SpringのPitch Arena優勝はAI搭載型クラウドIP電話サービスのRevcomm

独立系ベンチャーキャピタルのB Dash Venturesが主催するスタートアップの祭典「B Dash Camp」が5月23日、24日に北海道・札幌で開催された。その目玉企画の1つであるピッチイベント「Pitch Arena」(ピッチアリーナ)は2日間に渡って熱戦が繰り広げられた。

今回は12社が初日のファーストラウンドに参戦。通常は6社が2日目のファイナルラウンドに進むのだが、今回はファーストラウンドで同点となった企業が出たため、異例の7社選出となった。

ファイナルラウンドで審査員を務めたのは以下の5名で、激戦を勝ち抜いて見事優勝を飾ったのはAI搭載型クラウドIP電話サービス「MiiTel」(ミーテル)を開発・提供するRevcomm(レブコム)。準優勝にあたるスペシャルアワードは、農作物の自動収穫ロボットを開発し、RaaS(Robot as a Service)モデルで提供するinahoだった。

  • 江幡智広氏(mediba社長)
  • 木村新司氏(DasCapital代表)
  • 國光宏尚氏(gumi創業者/CEO)
  • 佐藤裕介氏(ヘイ代表取締役社長)
  • 玉川 憲氏(ソラコム代表取締役社長)

以下、優勝のRevcomm、準優勝のinahoを含めファイナルラウンドに登壇した各企業をピッチ順に紹介していこう。

モノグサ

2016年8月設立。知識習得のための問題作成から習得判定までを自動で行うサービスを開発・提供する。具体的には、解いて覚える記憶記憶アプリ「Monoxer」を提供している。このアプリは、解答を入力するだけでAIが誤答の選定も含めて作成してくれるのが特徴だ。

利用者の学習状況から知識の定着度を計測し、問題の出題頻度や難易度を自動で調整する機能も備える。現在は学習塾を中心に10社40万人ほどが利用しており、月間アクティブユーザーは3000人程度とのこと。個人には無料で提供、法人向けの利用料金は、スタンダードプランは無料、プレミアムプランは1ユーザーあたり年額3000円。プレミアムプランでは、進捗の確認や非公開スクールの作成が可能だ。

今後は、会計や法律、トークスクリプトなど学習塾以外の企業への導入も計画している。

Nature Innovation Group

2018年1月設立。傘のシェアリングサービス「アイカサ」を昨年12月に東京・渋谷エリアでスタート。1日70円で傘を借りられるサービスで、専用アプリを必要とせず、LINEでアイカサと友だちになることですぐに使えるのが特徴だ。アイカサスポットに設置されている施錠状態の傘に張られているQRコードをスマホで読み取ることで解錠・決済が可能。

LINE Payとも連携しており、クレジットカードとともに決済方法として選べる。直近では福岡市やLINE Fukuokaとの連携を発表。すでに福岡市内で1000本の傘のシェアリングを開始している。

inaho

2017年1月設立。画像処理とロボットアームの技術をベースに、アスパラやきゅうりといった農作物の自動収穫ロボットを開発。

従来は、農家が目視で収穫可能かどうかを判断する必要があった農作物を、機械学習によってAIが自動判断してロボットアームが収穫する。赤外線センサーを内蔵しているので、夜間作業も可能とのこと。

ロボットは売り切りではなく、RaaS(Robot as a Service)として提供。ロボットには重量を量るセンサーも備わっており、農家が収穫量した野菜の市場取引価格の15%を同社が手数料として徴収するというマネタイズモデルだ。15%という手数料は人件費に比べると安価とのこと。しかもinahoのロボットはRaaSモデルのため、稼働していない時期は手数料が発生しないのもポイント。センサーやカメラなどの性能が向上した場合はロボットのアップグレードなども追加費用なしで受けられる。農業従事者は季節雇用のケースも多く、不安定な労働条件を強いられる。そのためなかなか人が集まらず、収穫量はもちろん農家の収入も落ち込む。inahoは、そういった課題をロボットで打破する。

A1A

2018年6月設立。見積査定に必要なデータを一元管理することで、企業の購買担当者が最適な価格で購買できるようにする「RFQクラウド」と呼ばれるサービスを提供。

100人を超える現役購買担当者へのインタビューを通して抽出した「見積査定に必要な明細項目がそろっていない」「過去の類似品目の見積が残っていない」「データの保管場所が散在している」といった課題を解決する。購買担当者の業務負荷を軽減しつつ、将来のAI活用経営に向けた下地作りをサポートするとのこと。

実際の現場では、仕入れ先では部品点数が多く見積もりフォーマットも統一されていないため、同じ材料を使った同じ製品でも価格が異なるという問題が発生していた。購買側が統一フォーマットを用意して発注することで、原価低減やコストの最適化を進めていけるとしている。相見積もりや過去の見積もりとの参照も簡単になる。

ネクストイノベーション

2016年6月設立。女性向けの遠隔診療サービスを提供。生理などの悩み相談を受け付けるサービス「アレのスマルナ」では、診断後にピルの処方・発送までを実現。婦人科での診察に抵抗がある若年層を中心に、重い生理痛で学業や仕事に支障をきたすといった問題を解決する。

もちろん、避妊などの相談も可能だ。意図しない妊娠を避けるためのアフターピルを処方してもらうこともできる。同社によると、最近は副作用が少なく女性の身体に負担がかからないピルが主流だが、ピルにはいまだ昔の悪いイメージがあり日本ではなかなか普及しない。オンラインで気兼ねなく受診してピルを入手できるルートを確保することで、女性がより活躍できる社会を目指す。

RevComm(レブコム)

2017年7月設立。電話営業や顧客対応を可視化する音声解析AI搭載型クラウドIP電話サービス「MiiTel」(ミーテル)を提供。電話営業や電話での顧客対応の内容をAIがリアルタイムで解析することで、成約率を上げつつ、解約率と教育コストの低下を目指す。

顧客管理システムとの連携も可能で、顧客名をクリックするだけで簡単に発信できるほか、着信時に顧客情報を自動表示するいった機能もある。電話での会話内容は顧客情報に紐付けてクラウド上に自動録音されるため、すぐにアクセスできる。一部を抜粋して共有することも可能だ。

現在のコアターゲットは人材会社だが、今後は教育目的やコンプライアンス目的など多く業界で幅広く活用できるとしている。さらに世界進出時にまず狙う国はインドネシアとのこと。

AiLL

2016年10月設立。人とのコミュニケーションをAIがナビゲートとするマッチングサービスを提供。出会いから相手の気持ちの変化、自分の行動による結果などをAIがリアルタイムで分析できるのが特徴だ。

相手への好感度をAIが分析し、上がったのか下がったのかがすぐにわかるほか、相手をデートを誘うまでの会話をAIがアシストすることで効率よくコミュニケーションが取れる。「フラれて傷つくのが怖いので人に声をかけにくい」という不安をAIが払拭する。

現在は、大企業の20~30代の共働き志望の正社員独身者を対象に、企業の福利厚生サービスとして試験導入されている。

ファーウェイ排除で米国は貿易戦争には勝ったがネットワーク戦争に負ける

米国政府関係者は、低価格で高性能なネットワークを提供するファーウェイと、中国のその他のハードウェアメーカーとの戦争に勝利したことを祝っているに違いないが、より大きな世界規模の電気通信技術と顧客の獲得競争において、米国は大幅に遅れをとるリスクを背負ってしまった。

それは米国が敗北を認めたがっているレースかも知れないが、米国内での事業活動能力を完全に奪ったところで 、ファーウェイの影響範囲はますます広がっていることには注意しなければならない。

実際、ファーウェイのエグゼクティブディレクターであり、同社の投資審査委員会議長でもあるDavid Wang(デイビッド・ワン)氏はBloomberg(ブルームバーグ)にこう話している。「私たちの米国での事業はそれほど大きなものではありません。私たちはグローバルな事業を展開しています。今後も安定的に事業が行えるでしょう」。

ワン氏は正しい。ただし、ある1点においてはだ。年始に発表された2018年の会計報告によれば、ファーウェイの売り上げは、そのほとんどが国際市場からのものだが、同社の機器は、技術的に米国の半導体メーカーに大きく依存している。その供給が止まれば、ファーウェイはかなり厳しい状況に追い込まれるのは確かだ。

ファーウェイの年末会計報告によれば、現在の収益の柱は消費者向けデバイス事業であるが、その収益の大半は米国市場以外で上げられている。

そして米国には、ファーウェイが同社のネットワーク技術を普及させようとする努力を妨害しなければならない理由がある。それを投資家のAdam Townsend氏が、Twitterのスレッドで説得力をもって見事に言い表している。

https://platform.twitter.com/widgets.js

中国のファーウェイに関するスレッド。諜報活動と第5(g)世界大戦
あなたは中国諜報機関の長になる。権力者となり、あらゆる喧嘩に勝利するようになる。
では始めよう……

そもそも中国は、次世代の無線通信技術への支援として、基本的に無限の資本を投入し、次世代スタートアップやイノベーターを買収している。そのすべてが、米国が初期段階のリスクを背負って生み出したものだ。同時に、抵抗する恐れのある規制当局者や業界の専門家を、無限の資金を使って懐柔している。

ファーウェイは、中南米、東ヨーロッパ、東南アジア、アフリカといったネット接続の需要が高まる新興市場の国々への侵入を続けている。それらは、米国が多大な戦略的利害を持つ地域でありながら、強い動機や選択肢を提供できずにいるために、中国のネットワーク企業に対抗するよう世論を動かしたり政府を説得する力が大幅に制約されている。

米国の海外援助や投資を600億ドル(約6兆6000万円)のパッケージで活性化させるBUILD法が2018年10月に成立しているが、2018年に欧州だけで470億ドル(約5兆1700億円)近くを投資した中国の支出額の前では影が薄い。中国によるその他の直接投資の総額は、American Enterprise InstituteのデータをForeign Policy誌がまとめたところによると、アフリカと中東に494億5000万ドル(約5兆5400億円)、南米に180億ドル(1兆9800億円)となっている。

こうした投資により、本来強力な政治同盟で結ばれていたはずの国々は、米国の立場への支持を渋ったり、建前上いい顔を見せるだけになっている。たとえば、米国とブラジルの関係を見てみよう。長年にわたり強力な同盟関係にあるブラジルと米国は、どちらも超保守派リーダーの主導のもとで、ますます関係が深まるように見えていた。

しかし、Foreign Affairs誌によれば、米国と歩調を合わせて中国の経済的拡大阻止に協力して欲しいというトランプ大統領の要請に、ブラジルは難色を示しているという。

「ブラジルの経済団体は、すでに中国との密接な貿易関係を擁護する態勢に入っており、中国を封じ込め、米国を再びブラジルの最も重要な貿易相手にしようという望みは、もはや非現実的な郷愁に過ぎない」と、Foreign Affairs誌の特派員であるOliver Stuenkel(オリバー・スタンキル)氏は書いている。「強力な軍部同士が手をつないだこの事業連合は、この地域からファーウェイを追い払うことで生じる5G稼働の遅延を一切許さない方向に動いている」。

この記事は一読の価値があるが、要は、ファーウェイと中国経済の浸入は経済発展途上国にとって国家安全保障上の脅威だと吹聴する米国政府高官の声は耳に届いていないという内容だ。

これは単にネットワーク技術だけの問題ではない。中南米諸国と米国で投資を行っているあるベンチャー投資家は、TechCrunchに匿名でこう話した。「米国と中国の関係が中南米の今後にもたらす影響には興味があります。中国はすでに、金融面で非常に積極的になっています」。

中国の巨大ハイテク企業は、事業者として、また投資家として、南米大陸にも興味を示している。CrunchBaseの記事の中で、南米と中国に特化したベンチャー投資家Nathan Lustig(ネイサン・ラスティグ)氏は、その傾向を強調していた。実際には、こう書いている。

民間分野と公的分野の両方で、中国は中南米への支援を急速に増やしている。金融技術の専門知識を有する中国は、世界の発展途上市場への影響力と相まって、中南米のスタートアップや起業家の戦略的パートナーになりつつある。これまで、中国の対中南米投資の大半はブラジルに向けられていたが、にも関わらず、中国は投資家として中南米で手を広げ、地方の技術エコシステムとの親密さを増してゆく傾向にある。その可能性がもっとも高いのがメキシコだ。

1月にDidi Chuxingがブラジルの99を買収したのに続いて、中国企業はブラジルのフィンテック系スタートアップに対する巨額の投資を開始した。今年、特に目立つのがNubankStoneCoだ。

実際、中国には、安価なテクノロジーと、国有と民間の投資会社による経済支援策の総合カタログがあり、受け入れ国を援助すると同時に、新興市場での多方面にわたる技術的リーダーとしての中国の地位を固めようとしている。

米国がそれに対抗するならば、内向きな保護主義を脱して、より大きな海外の経済発展に真剣に寄与する覚悟が必要だ。税収は減少傾向にあり、見上げるほどの巨大な赤字の山が築かれると予測されるなかでは、ファーウェイに取って代わるものを世界に提供する余裕はない。それにより米国はますます孤立を深める。取り残されることで、さらに大きな問題が生じることになるだろう。

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(翻訳:金井哲夫)

ユニコーンIPO時代をドットコムバブル時代と比較してみる

テクノロジーIPO市場を表すグラフならいくらでも描くことができる。しかし、未知の領域に対する我々の強い不安を取り除いてくれるものはない。

これほど多くの高収益、高評価額の企業が上場し、巨大な損失を続けている状態はかつてなかった。もしあなたが「成長がすべて」タイプの投資家なら、IPOの国は最高の時を迎えている。もしあなた、利益を重視する古いタイプの投資家なら、今はじっとしているほうがいいかもしれない。

利益よりも市場支配優先の信者たちは、先週最大のIPO機会を得たことだろう。Uberが待ち焦がれた市場デビューを果たした。640億ドル前後をさまようUberの時価総額は、当初噂されていた目標額の1200億ドルよりはるかに低い。それでも、Q1決算で売上30億ドルに対して損失10億ドルを計上した企業としては十分高すぎると主張する人もいる。

では、Uberの売上、損失、評価額は最近のユニコーンIPO集団の中でどのような位置づけにあるのだろうか?わかりやすくするために過去3四半期に上場したテクノロジー・ユニコーン15社を表にまとめてみた。評価額および2018年の売上と損失を比較したのが下の図だ。

これらの企業を全部ひっくるめてまとめると、巨大な赤字スーパーユニコーンが1頭出来上がる。このリストを何四半期後かにもう一度見てパターンの変化や黒字会社が増えているかどうかを比べたら面白いだろう。

歴史

これを10年前のドットコムバブルと比べるのは簡単だが、今回は様相が異なる。ドットコムバブルの頃には、こんなリード文が書かれていた。

「インターネットIPOの時代にテーマソングを作るとしたらこうなるだろう。There’s no business like no business(商売がなくていいほど素敵な商売はない)」

設立から数年後のまともな利益もないうちに上場していたバブル時代の企業にはぴったりの言葉だ。

その件は今回使えない。ユニコーンIPO時代のテーマソングを作るとしても、同じようにそそるものは作れそうにない。せいぜいこんな感じだろうか、「There’s no business like lots of business and lots of losses too.(たくさんの商売とたくさんの損失ほどすてきな商売はない)」。

私はそのミュージカルのチケットを買うつもりはない。しかし、IPO株を買うとすれば、ユニコーンの提案は2000年頃よりも少々魅力的だ。つまるところ、市場シェアを支配している企業がいずれ利益を上げるのは十分ありそうなことだ。売上をゼロから数百万ドル、数十億ドルへと成長させるほうがずっと難しい。投資家が連続する損失への投資を嫌うようになればなおさらだ。

もちろん、ドットコムバブルとユニコーンIPOには共通するテーマがある。「投資家は将来の可能性の楽観的ビジョンに賭けている」ことだ。もし期待が実を結ばなければ、株価も後を追うことを覚悟しなくてはならない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

シード資金の真空地帯を埋める企業ファンドのススメ

過去5年間の間に、シード投資は明らかに落ち込んだ。それに先立つ2010年から2014年の間には、シードキャピタルを専門とするマイクロVCたちの流入が続いていたが、それ以降、流れは徐々に減少していた。

この現象の主要な理由の1つは、そうしたマイクロVCたちが成功したことだ。シード段階で投資することは、リターンを生み出すための非常に強力な戦略であることははっきりした。彼らのポートフォリオは高い成績を収め、その結果、はるかに多額の2番目や3番目の資金調達を行うことができたのだ。

残念ながら私の見るところ、ファンドの規模が7500万ドルを超えると、シード段階に焦点を当てることは非常に困難になる。その資金全額に見合う、素晴らしい機会を、十分な数だけ見つけることが非常に難しくなるからだ。結局少額の小切手を多数書くのではなく、より高額の小切手を書く必要に迫られる。そうするために、ファンドはより後期のラウンドに集中し始める。これがシードステージに真空地帯が生まれる原因である。だがシードステージこそが最もエキサイティングなものなのだと私は言いたい。

そうした理由から、私はここに、企業ベンチャーファンドたちが埋めることができる、素晴らしい機会があると信じているのだ。私たちは、投資会社dunnhumbyで、ここ何年もの間、投資を成功裏に進めてきた。そして、ここで言う成功とは、(投資に対してはるかに大きなリターンは得てはいるが)単なる財政的なものを指しているだけではない。戦略的な成功も意味しているのだ。シード段階で投資することには、驚くほど戦略的な利点があるのだ。

イノベーション

シードステージは最高のイノベーションが起こっている場所だ。私たちは、私たち自身の戦略的方向性を知らせ、私たち自身の事業に影響を与える前に新しい技術やビジネスモデルを特定するために投資を行う。また、いつの日か素晴らしいパートナーになれるスタートアップを特定し、しっかりと取り込むためにも投資を行っているのだ。

最近企業によるイノベーションへの取り組みが急増している中で、ベンチャー投資は十分に活用されていない。生き残りのために日々イノベーションを行っている企業と付き合うこと以上に、イノベーションに晒される方法はあまりないし、2人のチームが100人以上のチームに成長するのを見ること以上に刺激を受ける機会も存在しない。共同作業を行うことで動きの遅い企業が引っ張られることもしばしばだ。

コラボレーション

初期段階の企業には、コラボレーションを促進する柔軟性と意欲がある。彼らは、自身の確立した官僚主義を持つほど大きくはなく、一緒に働くことを積極的に望んでいる。多くの場合、彼らがストラテジックパートナーからの資金を受け入れるのは、その関係から資金以上の何かを得ることができることを期待しているからなのだ。

多くの場合、これらの相乗効果はすぐには現れることはない。しかし、私の経験から言うならば、果実を生み出し始める2つの会社の密接な関係は、投資後約1年ほどで形つくられるものだ。

スタートアップにとっては、投資家の顧客基盤やリソースへ触れる機会が増えることになる。企業側にとっては、スタートアップのビジネスモデル、技術、そして市場での成功への直接的な知見を得ることができる。ここから、パートナーシップと買収の機会が生まれる。

M&Aとパートナーのパイプライン

こうした投資は、背後に戦略的な性質を持っているため、将来のパートナーシップと買収のためのインキュベーターとしても機能する。

シード段階に関わることで、会社が成長する過程を観察するユニークな機会を持つことになる。例えば、市場の要求とはどのようなものであり、他の企業がそのチャンスに気がつく前に参入できるようなチャンスは存在するだろうか?という問いかけを行うことができる。多くの場合、私たちは取締役または取締役会のオブザーバーとしての立場をとることになる。これにより、彼らの業績だけでなく、より密接な関係の可能性についてのより深い洞察を得ることができる。

また、ほぼ同様に重要なことは、相手の会社文化と自社の文化の整合性についての深い知見までも得ることができるということだ。多くの場合、こうした議論は初期のコラボレーション段階から発生する。そこでは、自分たちのより幅広いチームが、彼らと交流して、独自の文化を形成する機会を得ることになる。それがパートナーシップであろうと完全な買収であろうと、この文化的な整合作業は、成功の可能性を高める。

価値

シード段階への参加には、大きな資本拠出を必要としない。1つの後期ステージへの投資金額で、3件から4件のシード投資を行うことができる。これによって上にも述べてきたようなものに触れる機会が増え、貸借対照表上の財政的影響を大幅に減らすことができる。もしうまく行けば、4年から5年以内に、ファンドはそれが注ぎ込まれたコストより、はるかに多くの見返りを返すようになるだろう。

これは、企業にとって、1つのシードラウンド全体に資金を供給すべきであることを意味しているのだろうか?通常はそうではない。実際、これまでのほぼすべての投資案件について、私たちは投資家のシンジケートの一部として参加している。多くの場合、こうしたシンジケートは他の企業投資家(しばしば「ストラテジック=Strategic」と呼ばれる)で構成されている。これにより、このステージでの各投資家のリスクと経済的負担が軽減される。ここでの目的は、テーブルに着席する場所を得ることだ。戦略的な目的のためには、この段階で5%を所有しているのか20%を所有しているのかの間には、ほとんど違いがない。会社が大きくなったときに、この力学は変わることになる。

おわりに

これまでにdunnhumbyが投資したのは、会った企業の2%未満である。私達はどこに投資するかについて熱心に検討している。だが私たちが見送った98%も、同じくらい重要であると私は思っている。私たちは投資部門を持っているので、シード投資戦略を欠いているほとんどの企業が目にすることのない、さまざまな業界にわたる、信じられないほどのイノベーションに出会っている。少なくとも、手遅れにならないうちに気がつくことができている。投資によって私たちはテープルに着席することができる。

この記事が提供している話題は、私たちの投資業界だけでなく、私たちの顧客の業界にも見られる新たなトレンドである。私たちが投資を見送ったとしても、しばしば関係はそこで終了とはならない。多くの場合、そこからスタートアップにとっては同じように有益である、パートナーシップの議論や、レファレンス、そして紹介など通じるからだ。

チャンスはそこにある。企業が、ただそれをつかむ必要があるだけだ。

【編集部注】著者のKyle Fugereは、dunnhumby Venturesの代表である。

画像クレジット: amenic181 Shutterstock (画像は変更されている)

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(翻訳:sako)

入社した学生の奨学金を企業が肩代わりするマッチングサービス

ソーシャルアントレプレナーズアソシエーション(SEA)が運営するSEAソーシャルベンチャーファンドは5月16日、Cronoへのシード投資を発表した。金額は非公開。また今回の投資に併せて、SEA代表理事の荻原国啓氏がCronoの新取締役に就任する。

Cronoは、若年層向けの奨学金提供、および貸与型奨学金の返済を肩代わりする企業との人材マッチングサービス事業を計画している。同社によると近年、大学・専門学校に通う学生の約40%が貸与型奨学金を借入しており、数百万円の債務を抱えた状態で卒業。返済が困難にケースが増えているという。同社は、奨学生の生活圧迫や自己破産を防ぐだけでなく、債務が挑戦の障壁になっている問題を解決する。

Crono奨学金の仕組み

具体的には、債務のために挑戦を諦めざるを得ない若年層の学生に対して、Cronoが奨学金を貸し付ける。学生が将来的に加盟企業に入社・勤続することで、貸し付けた奨学金の返済を企業が肩代わりする仕組み。

Cronoのサービスを利用する学生の応募資格としては、就職活動に近い年制大学の2、3年生もしくは大学院生など。もちろん、同社のサービスの「本気で挑戦する人を支援したい」という理念を理解していることが最低条件となる。この奨学金システムを立ち上げた背景には、同社のスタッフが学生時代に経済的な理由で留学できなかった経験が基になっているそうだ。将来的には、就活解禁によって各種ルールが取り払われたあと、大学1年生や高校生・中学生などに奨学金を提供する環境を作る考えもあるとのこと。

奨学金返済支援マッチング

企業と奨学生のマッチングについては、オフラインとオンラインの両方がある。オフラインでは、奨学金をサポートする企業を集めた就職イベントなど開催。オンラインでは、企業側から学生側にオファー、学生側から企業への応募、Cronoシステム内で双方へレコメンドする仕組みなどを準備しているそうだ。

なお、Cronoの奨学金を受けている学生が就職後に離職した場合、奨学金はその学生自身が返済を続けることになる。加盟企業への入社によって債務が企業に移るわけではなく、あくまで肩代わり。ただし、転職先の企業がCronoの加盟企業であれば、奨学金の返済は引き続き企業側が請け負ってくれる。加盟企業は非公表だが、すでに約10社程度が賛同しているという。

なお、奨学金の返済方法は企業ごとにカスタマイズ可能にする予定とのこと。例えば20年間で完済の奨学金の場合、入社時に総額の半分を一括返済、10年後に残りの半分を一括返済とすることで、同じ企業に長く働いてもらうためのインセンティブにすることもできる。企業奨学金の提供条件として、加盟企業のインターンシップに参加することが条件になるケースも考えられるそうだ。

今後は、海外留学のプログラムを提供している機関やエンジニアスクール、資格取得専門学校とアライアンスを組み、経済面で諦めざるを得ない学生にCronoが資金面をサポートし、各スクールがコンテンツを提供する座組みも進めていく予定とのこと。

UberのIPO不調と米中貿易戦争でソフトバンクグループの株価も下落

Uberの最大の株主ソフトバンクグループは、このライドシェア企業の株式市場へのデビューに大きく期待していた。ところがこの日本のコングロマリットの株価は、IPOが期待外れに終わったUberと肩を並べるように下落した。ソフトバンクグループの株価は、UberがIPO価格をその下限に設定した先週末から落ち始めた。金曜日朝の取引開始時にソフトバンクグループの株価は1万1700円(約106.69ドル)から14.4%下げて1万20円(約91.37ドル)になった。

2018年の初めにUberの投資家になったソフトバンクグループは、その市場デビューによって30億ドルの利益得るはずだった。IPOの申請書類によると、ソフトバンクグループはUberの最大の株主で、IPO前の株式の16.3%をそのソフトバンク・ビジョン・ファンドにより保有していた。

2日目になっても株価の下落が続くので、UberのCEOを務めるDara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏は社員に宛てたメモで、「どんな企業でも移行期には浮き沈みを経験する。ご存知のように当社の株式はIPO前に期待したほどには売買されなかった。今日も市場は厳しい1日となり、当社の株も同じ困難を経験するだろう」と述べている。

中国と米国の貿易戦争が継続的に激化し、先週米国が中国の品目の関税を上げたあと、今度は中国が米国からの輸入品の関税を上げようとしていることから、米国時間5月13日には主な市場指数のすべてが下落した

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画像クレジット: Tomohiro Ohsumi

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

グリーベンチャーズ共同パートナーが150億円規模を目指す新ファンド「STRIVE」を設立

天野雄介氏と堤 達生氏、そしてグリーベンチャーズは5月14日、新ファンドとして「STRIVE III有限責任事業組合」(STRIVE III)の1次募集を完了したことを発表し、運用を開始した。STRIVE IIIは2019年末をメドにファンド規模を150億円まで拡充していく予定とのこと。

STRIVEは、共同代表パートナーの天野雄介氏と堤 達生氏の投資家2名とグリーベンチャーズとの共同事業。天野氏は、東京およびシンガポールに拠点をおくベンチャーキャピタルファンドを運用する人物。堤氏は、グリーベンチャーズの代表パートナーを務める。

STRIVE IIIの主な出資者は、独立行政法人中小企業基盤整備機構、グリー、みずほ銀行、みずほキャピタルなど。グリーベンチャーズによると、STRIVE(ストライブ)は「努力する、励む、闘う」などを意味する英単語だが、起業家の野心やそれを実現するための努力や汗、積極的なハンズオンといった同社の弊社のスローガンや投資スタイルに近いニュアンスを持たせているとのこと。

STRIVE IIIの投資先は、従来のファンドと同様に日本や東南アジア、インドで事業を展開するにアーリーステージのスタートアップ企業。投資先の経営に深く関わる「ハンズオン投資」となり、STRIVE IIIからは新たにハンズオン専門のチームを設立して、採用やコミュニティ運営などの投資後のバリューアップ支援をさらに強化する方針とのこと。

すでにいくつかの投資先が決まっており、国内でe-KYCによる本人確認APIサービス「TRUSTDOCK」を提供するTRUSTDOCK、インドで塾向け管理ツール「Classplus」を提供するBunch Microtechnologiesに出資している。

Betaworks Ventureが感じる「シンセティックリアリティー」の可能性と「ディープフェイク」の脅威

Betaworks Venturesのパートナー、Peter Rojas氏

「シンセティックリアリティーの可能性」

GizmodoとEngadgetのファウンダーとして知られるPeter Rojas氏。現在はBetaworks Venturesのパートナーだ。

2007年にニューヨークで創業され、スタートアップスタジオを展開してきたBetaworksでは、「コンシューマーITの未来」に対してシード投資を行ってきた。ポートフォリオにはtumblrやKickstarter、Mediumなどが含まれる。

そしてRojas氏がパートナーを務めるBetaworks ‘Ventures’は2016年の創業だ。シードラウンドを対象に5000万ドル規模の1号ファンドを運営する。Rojas氏いわく、Betaworks Venturesが最近で特に注目している領域は「シンセティックリアリティー」。

Betaworks Venturesの言うシンセティックリアリティーとは、デジタルの世界と現実の境界線が曖昧になった第3の世界、というコンセプト。

例えば、Betaworks VenturesのポートフォリオカンパニーであるMorphinが提供するアプリ「Morphin」では、ユーザーはセルフィーを撮影し、好みのGIFを選ぶだけで、自身の化身であるCGIを「ポップカルチャー」の世界に投入することができる。

僕は全ての犬に愛されているため、このGIFが「フェイク」であることは一目瞭然だ。

ブログを使い、誰でも「簡単かつ低コスト」で記事コンテンツが投稿できるようになった。同じように、リアルなCGI(コンピューター生成画像)の制作を「簡単かつ低コスト」で実現、これはシンセティックリアリティー領域のテクノロジーの1例だと、Rojas氏は言う。

「『よりリアルなキャラクター』を思い通りに作り操れるツールが続々と登場し、民主化されてきている」(Rojas氏)

Betaworks Venturesは他にもソーシャルAIの「Hugging Face」(Facehuggerではない)にも投資。この「親友チャットボット」アプリでは、これまでに4億回ものメッセージのやりとりが行われてきたという。もはやBFF(Best Friends Forever)でさえ人間でもAIでも関係なくなってきている。

Betaworks Venturesでは、シンセティックリアリティー領域のスタートアップ向けに「Synthetic Camp」なるものを運営しており、現在ニューヨークで開催されている最中だ。

僕のBFF、Jane

「ディープフェイク」の脅威

一方で、Betaworks Venturesは「ディープフェイク」のリスクに関しても承知している。

2018年、4月にBuzzFeedが投稿した、前アメリカ大統領のバラク・オバマが「トランプ大統領は救いようのないクズだ(President Trump is a complete and total dipshit)」と発言するディープフェイクが話題となった。

加えて、ベルギーの政党Socialistische Partij Andersが投稿したトランプ大統領のディープフェイク動画も大きな混乱を巻き起こした。女優スカーレット・ヨハンソンの顔をポルノスターのものと入れ替えたディープフェイクも報道され話題となった。

だからこそ、Betaworks Venturesはディープフェイクに特化したセキュリティーを提供するスタートアップ、Deeptraceにも出資している。

Deeptraceはニュース組織やソーシャルメディアなどのプラットフォームにセキュリティーのソリューションを提供。ネット上のディープフェイク動画を検出し、どのようなAIソフトウェアが使用され、どの部分が加工されているのかなどを識別する。

芸術家のサルバドール・ダリをAIで蘇らせたダリ美術館のように、ディープフェイクをポジティブに活用するケースも徐々に出てきている。

だが、もう一方で、「ソーシャルメディアでは、人々がフェイクニュースを投稿したり、勘違いしたり、嫌がらせをしたり。シンセティックリアリティーにも同じようなリスクがある」(Rojas氏)

だからこそ、Betaworks Venturesでは引き続き、「可能性とリスク」の双方を探究し続ける、とRojas氏は話していた。

新たな資金調達によってUnityの評価額はほぼ倍増して約6600億円に

世界で最も人気のあるゲームエンジンの1つを支えているUnity Technologiesは、新しい資金調達を経て、伝えられるその評価額を倍増させるかもしれない。

Prime Unicorn Indexによって発見され、TechCrunchによって確認された、デラウェア州への株式申請書によれば、同社はシリーズEラウンドによる、最大1億2500万ドルの株式承認申請を行った。もしUnityが、承認される満額の調達を行った場合、評価額は59.6億ドル(6600億円弱)に達する。

Unityの広報担当者は、文書の内容を認めている。

このサンフランシスコの会社は、ゲームメーカーたちが、タイトルを開発して、コンソールやモバイル、そしてPC上に展開するための開発者ツールを提供している。新しいゲームの半数以上がこのプラットフォームを使って開発されている。プロジェクトが一定の規模に達したなら、顧客たちはプラットフォームの代金を、開発者の人数に応じて支払う。

Unityの競合他社としては、Fortniteを開発したEpic Gamesが挙げられる。同社は大ヒット作の利益に支えられて、過去2年間の間に素早くスタートアップやゲームスタジオを買収することができた。

Unityが最後に行った調達は、Silver Lakeが主導したシリーズDで、そのときの調達額は4億ドルだったが、その大部分は永年勤続者と初期の投資家の持つ株式の購入にあてられた。このときのラウンドで、同社の評価額は30億ドルを超えた。2003年に設立された同社は、現在までに6億ドル以上を調達している。

同社に対してこれまで投資を行った者の中には、Sequoia、DFJ Growth、およびSilver Lake Partnersなどが含まれる。

今年のはじめにCheddarが、Unityは2020年のIPOを目指しているというレポートを出したが、同社はこのレポートについてコメントしていない。

Facebook mulled multi-billion-dollar acquisition of gaming giant Unity, book claims

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(翻訳:sako)

サイバーセキュリティ保険のCoalitionがシリーズBで44億円調達

サイバーセキュリティ保険のCoalitionが直近のラウンドで4000万ドル(約44億円)を調達した。このラウンドはフィンテック投資大手のRibbit Capitalが主導し、Greenoaks CapitalとHillhouse Capitalも参加した。

Coalitionの保険では、罰金や違約金など第三者に対する法的責任から発生する費用のほか、詐欺、侵害への対応、恐喝、ランサムウェアからの回復、デバイスの交換などの費用もカバーされる。同社は米国の顧客に対し、警告、脅威インテリジェンス、脆弱性の修正といった改善のためのアドバイスを基にその企業のサイバーセキュリティに関する体制をわかりやすく提供することも目指している。

同社はこのシリーズBで、企業のセキュリティ体制の評価に使用するデータ分析プラットフォームの拡充を目指しているという。また、この資金でエンジニアリングとインシデント対応のチームも充実させる予定だ。Coalitionの評価額は明らかにされていないが、2018年2月には1000万ドル(約11億円)を調達している。

サイバーセキュリティ保険は気まぐれな分野だ。侵害やデータ漏洩の脅威が絶えない中で、会社を復活させるための保険契約を結ぶことは賢明だ。しかしサイバーセキュリティ保険でカバーされると考えられていたのに実際にはカバーされなかった企業は多い。海運最大手のMaersk(マースク)はNotPetyaランサムウェア攻撃で3億ドル(約330億円)の被害を受けた。このとき保険会社のZurich(チューリッヒ)は、ロシアが関与した攻撃は戦争行為であるとして、支払いをしなかった。

保険会社が支払いをするにしても、万能薬ではない。Coalitionはデータの侵害とそれに伴う出費を防ぐためのセキュリティ対策に積極的に取り組んでいる。これは費用を節約する方法のひとつだ。この方法で、世界規模のサイバー攻撃がまた起きたときに対応できるだろうか?その答えがわかる事態が起きないことを望む。

画像:Getty Images

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(翻訳:Kaori Koyama)

有機無農薬にこだわったシンガポールのフードデリバリースタートアップが約11億円を調達

クラウドキッチンはフードデリバリーの重要分野だ、元Uber CEOのトラビス・カラニック氏が新たなビジネスでその分野に参入している、それはアジア、特に東南アジアに重点を置くものだ。そうした中で新参者にもかかわらず、よりしっかりとした事業を進めるシンガポール発のスタートアップが、地域拡大を目指して巨額の資金を調達した。

2014年に設立されたGrainは、クリーンフード(有機無農薬などの素材を使ったものを指す)に特化しており、カラニック氏のCloudKitchensや、Deliveroo、FoodPanda、GrabFoodなどのフードデリバリーサービスとは異なるアプローチを打ち出している。

人気のない不動産をキッチンとして活用し、配達にデリバリーサービスを使うクラウドキッチンモデルを採用してはいるが、それらを自分自身で運営しているのだ。CloudKitchensやその他の会社が、オンデマンドデリバリー顧客に向けて安価に調理を行うために、調理を行う会社に自社の作業所を賃貸している一方で、Grainは自社の調理人、メニューそしてデリバリーチームを使って運営している。もし陳腐になったテクノロジー用語を使うことをお許しいただけるなら、いわゆる「フルスタック」モデルということだ。

そしてなにより、Grainは利益を生み出している。新しい調達ラウンドは後述するように、成長を狙ったものだが、スタートアップ自身は昨年から利益を挙げていたと、CEOで共同創業者のイ・サン・ヨン(Yi Sung Yong)氏はTechCrunchに語った。

現在同社は、プロダクトをすべて支配下におくそのモデルの利点を享受している。他の会社がレストランや配達人を含む連携の複雑さを抱えている事情とは一線を画しているのだ。

私たちは以前、Grainが2016年にシリーズAで170万ドルを調達した件は報告していた。今回はタイのSingha Ventures(ビール会社の投資部門だ)が主導する1000万ドル(約11億円)のシリーズBを公表した。他にも多くの投資家たちが参加している。例えばGenesis Alternative Ventures、Sass Corp、K2 Global(Impossible Foods、Spotify、およびUberなどをサポートしているシリアル投資家Ozi Amanatが経営している)、FoodXervices、そしてMajuvenなどだ。既存の投資家であるOpenspace Ventures、Raging Bull(Thai Expressの創業者Ivan Leeの会社)、およびCento Venturesも参加している。

このラウンドには、株式だけではなくベンチャー融資も含まれているが、The Coffee Bean & Tea Leaf(Sassoon Investment Corporation)のオーナーの家族オフィスが関わっていることは注目に値する。

Grainはシンガポールの個人はもちろん、ビュッフェもカバーする。

前回と今回のラウンドの間の3年は長い年月だった、OpenspaceとCentoはその間にブランド名を変更している。そしてこの期間には非常に様々なことが起きていた。サン氏は、この期間のうちに、危うく資金がショートしそうになったこともあったが、資金が底をつく前にビジネスの基礎にテコ入れを行ったと語る。

事実、同氏によれば、現在100名を超えるスタッフを擁する同社は、自前で資金をまかなえるような準備を整えていたのだという。

「シリーズBでの調達は考えていませんでした」と彼はインタビューで説明した。「そうする代わりに、私たちは事業そのものと利益を挙げることに集中していました。私たちは投資家に完全に頼ることはできないと思っていたのです」。

それが、皮肉なことに、VCたちは自前で資金をまかなえる企業が大好きなのだ(なにしろビジネスモデルが上手く行くことが証明されているのだから)、そして資金調達を必要としないスタートアップに投資することは、魅力的な案件であり得る。

最終的には、利益を挙げられる力こそが魅力的に見える。特に食品分野では、無数の米国スタートアップが閉鎖に追い込まれていることを思えばなおさらである(MuncherySpigなどがその例だ)。だがこれまでの事業への集中はGrainにとってその拡大を棚上げすることを意味していた。だが同社は2017年に傷んだカレーによって20人の顧客に食中毒を起こしたことによって、内省する時間を得ることになる。

サン氏はこの事件について直接コメントすることは避けたが、現在会社はビジネスを全面的に拡大するための「インフラストラクチャ」を開発し、そこには厳しい品質管理も含まれていると述べている。

Grainの共同創業者兼CEOのイ・サン・ヨン氏(LinkedIn経由の画像)

Grainは現在、唯一の市場であるシンガポールで1日当たり「何千」もの食事を提供しており、その年間売上高は数千万ドルに及ぶと彼は言う。去年の成長率は200%だった、とサン氏は続け、いまや国外に目を向けるべきときだと語る。GrainのCEOによれば、Singhaと組むことで「バンコクで事業を立ち上げるために必要なすべてのもの」が手に入ると語る。

マレーシアを拠点とするライバルであるDahamakanが最初の拡大に選んだタイは、現在考えられている唯一の拡大先だが、サン氏は将来的には変わっていく可能性もあると語る。

「もし事態がより速く動くならば、私たちはより多くの都市へ、おそらく1年に1つのペースで拡大して行くでしょう」と彼は言う。「しかし、私たちは自分たちのブランド、私たちの食べ物、そして私たちのサービスをまず整える必要があります」。

その1つの要素は、供給者からの原材料や食品のより良い取引を確保することかもしれない。Grainは、街中で顧客になるべく速く提供を行えるように戦略的に配置された、その「ハブ」キッチンを拡大している。またデリバリーに用いる温蔵庫ならびに冷蔵庫を備えたトラック群の数も増やしている。

Grainの歴史は、この地域のスタートアップが試練と苦難を乗り越えることが可能なことを証明しているが、事態が悪化したときには基本に集中し、コストを削減することができることが大切なのだ。コストが積み上がったときに何が起きるかは、同じシンガポールに拠点を置いているHonestbeeに何が起きたかを見るといいだろう

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(翻訳:sako)

サムライインキュベートが短期集中事業創造プログラムの募集を開始

創業期のスタートアップ支援を中心としたベンチャーキャピタルであるサムライインキュベートは5月10日、短期集中事業創造プログラム「『The First Movers』Hands “In” Batch Program」の第2回の募集を開始した。プログラム自体は6月1日から始まる。

このプログラムは3カ月の期間で、フェーズ1「アイデア創出」、フェーズ2「リーン検証」を実施することで事業創造を支援する。プログラムのテーマは、物流、ヘルスケア、リテールテック、フィンテック、建設、MaaSの6領域。これらは、同社が運営するSamurai Incubate Fund 6号投資事業有限責任組合(6号ファンド)の投資テーマでもあり、本プログラムにはこの6号ファンドの出資企業の担当者もメンターとして参加する。具体的には、京急急行電鉄、住友生命保険、セイノーホールディングス、ダイキン工業、前田建設、丸井グループ、モノフルの7社だ。

なお、1月に募集したThe First Moversの第1回では、75組が応募し17組が参加。最終的には5組がフェーズ1を通過して、シード投資を受ける予定となっている。さらにフェーズ2で追加投資の可能性もある。

スタバの後を追う中国Luckin Coffeeが米国でのIPOで660億円超の調達を目論む

Luckin Coffeeは、スターバックスの後を追う野心的な中国のスタートアップ。間近に迫った米国でのIPOで6億ドル(約660億円)近くを調達する可能性がある。この金額は、Luckin Coffeeが公表した株式公開時の価格帯から算出したもの。

Luckinの申請によれば、3000万株を15〜17ドルの価格帯で売り出す計画だという。これにより、4億5000万ドル(約495億円)から5億500万ドル(約605億円)の資金調達が可能になる計算だ。ただし、引受会社が450万株の追加割当を受けた場合には、この金額はさらに膨れ上がることになる。全株が提示された価格帯の最高値で買われたとすると、総計は5億8650万ドル(約645億円)に達する可能性もある。

Luckin Coffeeは、ナスダックに「LK」として登録されることになっている。

Luckinは、先月に株式公開を申請したばかり。ニューヨークの未公開株式投資会社Blackrockが率いる1億5000万ドル(約165億円)のシリーズB+の資金調達ラウンドを完了してからわずか数週間後のことだった。この取引ではLuckinの市場価値が29億ドル(約3190億円)と評価された。またその結果、Lukinは創業から3年で、投資家から合計5億5000万ドル(約605億円)を調達したことになる。

Luckinは、これまでに膨大な額の現金を費やして、スターバックスに匹敵するブランドを短期間で構築することを企て、スターバックスが過去20年間に中国で確立してきた存在感にも対抗しようとした。攻撃的なプロモーションとクーポン発行の費用がかさみ、Luckinは2018年に4億7500万ドル(約523億円)の損失を計上した。1年間フルに営業したのはまだ2018年だけだが、その1年の売上は1億2500万ドル(約138億円)となっている。2019年第1四半期について見れば、7100万ドル(約78億円)の売上に対して、損失は8500万ドル(約94億円)だった。

スターバックスのCEOであるKevin Johnson氏は、こうしたLuckinの戦略を「非常な大安売り」であるとして、その現実性を声高に否定している。

「私たちは資本を投資して、年間600店舗を新たに展開しています。投資した資本に対して、それに見合う利益を生み出しており、今後何年もこのペースで新たな店舗を追加し続けていくことが持続可能であると信じています」と、最近のCNBCのインタビューに答えて語っている。

スターバックスは全世界で3万店もの店舗を構えるとしている。中国でもすでに20年間営業していて、2022年までに中国内で6000店の開設を目指している。一方のLuckinは、ベンチャーキャピタルからの資金で活動していて、2年に満たない期間で急速に2370店舗を展開した。さらに今年中に2500店を追加する計画だ。そうなれば、スターバックスを追い抜くことにもなる。スターバックスは現状で中国の150都市で計3600店舗を持っている。ただし、こうした数字の比較は、偏った印象を与えることになる。というのも、Luckinはオンラインで注文を受けて、オンデマンドで配達することに注力しているのに対し、スターバックスはあくまで店頭で注文、販売するモデルを採用しているからだ。

画像クレジット:FRED DUFOUR/AFP/Getty Images

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(翻訳:Fumihiko Shibata)