3Dプリントによる次世代小型バイオリアクターの開発でStämm Biotechが約20億円調達

この1年、細胞を使った食肉加工や微生物を使った医薬品製造など、バイオマニュファクチャリングが盛んに行われるようになっている。しかし、合成生物学は、バイオリアクターという重要な装置なしには成り立たない。生物学を利用した製造業の実現に向けて、世界中でさまざまな議論が行われているが、ある企業ではすでに最も重要な装置を再考に取り組んでいるしている。

2014年に創業されたStämm Biotechは、工業用やベンチトップのバイオリアクターにすら見られるタンクとチューブとつまみの集合体とはかなり異なっているデスクトップ型のバイオリアクターを開発している。ブエノスアイレスに拠点を置く同社はこのほど、1700万ドル(約20億円)のシリーズAを発表、これまでのシードとプレシードのラウンドを合わせると総調達額は2000万ドル(約23億円)になった。

Stämmが行っていることを理解するために、バイオリアクターは通常どのような形状で、その中で何をしているのかをまず知ろう。基本的には、工業用のバイオリアクターは、巨大な滅菌タンクだ。タンクの中に、特定のタイプの細胞や微生物を育てるための培地があり、それらが目的の製品を生産したり、あるいはそれ自体が製品そのものだ。

これらの細胞培養の工程はまず全体がモーターで撹拌され、冷却液を使って正しい温度を維持し、正しい量の酸素を供給、または無酸素状態を維持してその成長を促す。この工程はタンクではなく使い捨ての袋を使っても行うことができ、別のものを育てるときのタンクの滅菌作業を省略できる。

Stämmの方法は要するに、以上の工程からタンクと撹拌とチューブをなくしてしまう。その代わりに同社は、独自に開発した3Dプリントの基本装置を利用して、微小な流路の稠密なネットワークをプリントし、そこを細胞が通過する間に必要な栄養と酸素を供給される。そしてこの動きが、撹拌の役をする。

液体の流路が3Dプリントされる様子。細胞と酸素と栄養はさまざまな場所で加えられる。(画像クレジット:Stämm Biotech)

流路の設計はStämmのソフトウェアを使って行う。Stammの共同創業者でCEOのYuyo Llamazares(ユヨ・ラマザレス)氏によると、その工程全体を、クラウド上のCDMO(医薬品製造受託機関)と考えることができる。

「バイオ製品を開発する意志と、現在、市場に出回っているツールの能力との間に、大きなギャップがあることに気がつきました。そこで、それを自分の問題として解決しようと考えたのです」とラマザレス氏はいう。

バイオマニュファクチャリングは、製薬や化学、テキスタイル、香料、そして食肉に至るまで、多様な分野で、その細胞からものを作るという考え方が、次世代の生産技術として大きな関心を寄せられている。

たとえば150億ドル(約1兆7275億円)の評価額でIPOに至ったGinkgo Bioworks(時価総額は72億4000万ドル[約8338億円])は、製薬とそれ以外の分野の両方でバイオマニュファクチャリングの応用に積極的に取り組んでいる。しかしそんな、世界を変えるような製造技術も、エビデンスは少しずつ漏れてきている。

バイオマニュファクチャリングが約束していることはどれも、バイオリアクターがなければ実現しない。Stämmのアプローチは、マイクロ流体力学を利用してリアクターのサイズを小さくする。

3Dプリントされた部品の中を流れていく液体をCGで表現(画像クレジット:Stämm Biotech)

現在の同社の技術では、バイオマニュファクチャリングを行う設備の大きさを従来の数百分の一程度に縮小できる。しかしそれでも、これまでの大きなバイオリアクターに比べるとかなり小さい。Stämmのバイオリアクターの最大出力は約30リットルで、工業用に多い数千リットルではない。しかし、同社によると、そのプリントされた微小流路方式でも、理論的には約5000リットルまで可能だという。

技術のポテンシャルは大きいが、Stämmはまだ、その技術の商用化を始めたばかりだ。現在、同社はバイオシミラーの生産にフォーカスしているヨーロッパのバイオ製剤企業と協働しているが、他に検討しているパートナー候補は5社いる。計画では、同社が「パイロットスケール」に移行するのは2022年中となっている。

今は、パートナー企業が増えることがStämmの主な成功の証だとラマザレス氏はいう。「できるだけ多くのパートナーと直接の関係を持ちたいと考えています。それによって、私たちが開発した製品の有用性を確認したい」。

ビジネスの面では、まださまざまな問題がある。装置のコストについてラマザレス氏に確認すると、彼はコメントしなかった。そして彼は、クライアントが従来のマシンではなくマイクロ流体力学方式のリアクターを使い慣れて欲しいという。マシンとサービスの価格は未定だ。

「今は勉強の段階です。いろいろなビジネスモデルを理解し、クライアントとの対話に努めたいと考えています」とラマザレス氏はいう。

Stämmは、今回得た資金で社員数を倍増して200名にし、国際的なプレゼンスを拡張、さらに同社のマイクロ流体力学によるバイオリアクターとその制御に必要なツールの改良や開発を進めたいという。

このラウンドの新たな投資家は、リード投資家がVaranaで、他にVista、New Abundance、Trillian、Serenity Traders、Teramips、Decarbonization Consortium。そして彼らが仲間に加わった既存の投資家は、Draper Associates、SOSV、Grid Exponential、VistaEnergy、Teramips、,Cygnus Draper、そしてDragones VCもこのラウンドに参加した。

画像クレジット:Stamm Biotech

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(文:Emma Betuel、翻訳:Hiroshi Iwatani)

自宅から離れた好きな場所にホーム(オフィス)環境を提供するAnyplaceが6.1億円調達

リモートワークの時代、人々は好きな時に好きな場所で暮らせるよう、できる限りの柔軟性を求めている。

長期滞在の選択肢を増やそうと、スタートアップ企業が次々と登場しているのも当然のことだ。Anyplaceもそんなスタートアップの1つだ。自称「デジタルノマド」であるSatoru Steve Naito(内藤聡)氏によると、2017年にサンフランシスコに拠点を置くAnyplaceを共同設立したのは、自分自身がこのプロダクトを欲していたからだという。

その名の通り、Anyplaceは、ホテルやレンタカーを30日以上ほとんどどこでも予約できるマーケットプレイスとしてスタートした。当マーケットプレイスは今日、60カ国以上、450以上の都市で展開されている。そして現在このスタートアップ企業、Anyplaceは、最新の製品であるAnyplace Selectの提供を開始し、オペレーターとしての役割に移行しつつある。この製品は、リモートワーカーや企業の出張者が「完全に設備が整った」ホームオフィスなどの家具付きの部屋を利用して、どこでも仕事ができるようにするために設計されたものだ。

パンデミックが猛威を振るい、オフィスが閉鎖され続ける中、柔軟に移動できる人がかつてないほど増えた。Anyplaceは2021年、サンフランシスコ、ニューヨーク、ロサンゼルス、サンディエゴでSelectの提供を開始し、開始から7カ月で100万ドル(約1億1500万円)のランレートを達成したと、同社のCEOを務める内藤氏はいう。Selectのサービスの月次収益成長率は平均50%以上、今月現在、稼働率は90%以上となっている。

AnyplaceはGreystarやAvalonBayなどの不動産デベロッパーと提携し、マンションを借りて家具を揃え、Selectで価格を上乗せしてマスターリースしている。各部屋には「完全なオフィス設備」が揃っており、フレキシブルな期間契約(最低30日間)が可能だ。設備には高さ調節可能なスタンディングデスク、人間工学に基づいた椅子、約86cmの「超ワイド」モニター、プロ用マイク、ウェブカメラ、折り畳み式グリーンバック、パソコンスタンド、ドッキングステーション、キーライトなどが含まれている。

「Selectに掲載されているすべての部屋で、ホームオフィスと同等以上の生産性を実現します。全室1Gbpsインターネット対応なので、Wi-Fiの速度も問題ありません」と内藤氏は語る。

他の都市に住んでみたいというリモートワーカーは、なぜAirbnbで物件を借りないのだろうか?リモートワークのために家や部屋を用意することは、思っているほど簡単ではないと内藤氏は主張する。Wi-Fiの速度が遅い部屋もあれば、適切なデスクや専用のワークスペースがない部屋もある。

「現在の宿泊施設のほとんどは、パンデミック前の滞在に最適化されています。ホテルやAirbnbに滞在している間、人々は本当に1日中部屋で仕事をしていました。しかし、パンデミック後の世界では、Zoomコールをする時間が増え、部屋で仕事をするようになりました。だから私たちはパンデミック後の世界に最適化した宿泊施設を作っています」と内藤氏はいう。

確かに、サービス業の巨人Airbnbは昔から短期滞在に注力しているが、現在は、Airbnbのマーケットプレイスで長期滞在が増加している。つまり長期滞在の需要が増加している。2021年5月、AirbnbのCEOであるBrian Chesky(ブライアン・チェスキー)氏はYahoo Financeに対し、Airbnbの宿泊の24%がAnyplaceだったと語った(わずか2年前は14%)。さらにこのトレンドの裏付けとなるのは、Airbnbが最近、この分野の別のスタートアップ企業であるZeus Livingを支援しているということだ。同社は当初、企業の出張者向けの柔軟なオプションの提供に重点を置いていたが、現在はより幅広い潜在顧客層へと拡大している。

これまでAnyplaceはマーケットプレイスを運営していただけだったが、新たなSelectの提供により、現在はより幅広いビジネスの焦点をオペレーターにシフトしている。

内藤氏はTechCrunchに対し「Airbnbは競合ではなく、パートナーであり、実は最大の獲得チャネルの1つです。Airbnbが独自のインベントリーを持つオペレーターの領域に進出するとは思っていません。彼らの強みはプラットフォームビジネスです」と語る。

Anyplaceはインベントリーを他の市場に「積極的に」拡大し、機能改善を続けるために、シリーズAで530万ドル(約6億1100万円)を調達したと発表した。これはGA Technologiesが主導し、Jason Calacanis、Launch Fund、日本のサッカースターで(Will Smithとともに)Dreamers Venturesの共同設立者である本田圭佑、メルカリ共同設立者の富島寛、East Venturesが参加した。今回のラウンド資金調達で、Anyplaceは合計800万ドル(約9億2330万円)を調達し、現在は17人である従業員の増強にも充てられる予定だ。

内藤氏によると、当スタートアップはすでに次のラウンドの資金調達を開始しており「急成長とAnyplace Selectが提供する宿泊施設に対する需要の急増」によって、すでに「いくつかの投資の約束」を受けているという。具体的には、米国の主要都市、特にハワイ、マイアミ、オースティン、デンバーといった人気の高いリゾート地への進出を考えていると内藤氏はいう。

内藤氏はTechCrunchにこう語った。「デジタルノマドになるために、フルタイムの仕事を辞める必要はもうないのです。パンデミック以前は、ノマド的なライフスタイルを送るためには、会社を辞めてフリーランサーや中小企業のオーナーになる必要がありました。しかし今では、Google、Facebook、Twitterのようなハイテク大手が、従業員にフルタイムのリモートワークを許可しています。パンデミックは、多くの新しいタイプのノマドを生み出しました。つまり、これは人々の働き方における大きなパラダイムシフトなのです」。

本田圭佑はTechCrunchに、初めて会ったときに内藤の「気概」を感じたとメールで語ってくれた。

「彼は、どのようにしてJason Calacanis(ジェイソン・カラカニス) のような米国の有名な投資家からの資金調達に成功したのかを話してくれました。簡単ではなかったし、苦労もした。彼は、移民の創業者が直面する言語やその他さまざまな障壁を乗り越えたのです」本田氏はいう。スタートアップで成功するためには、気概が最も重要なものの1つだと思います。また、彼が望んだ製品を、彼自身が居住し、仕事をしている場所で作り上げたことにも感銘を受けました」。

さらに本田氏は、サッカー選手として多くの国を旅し「多くのホテルやAirbnbの部屋に宿泊した」という。

そしてこのようにTechCrunchに語った。「Anyplace Selectのように、オフィス環境が完備された宿泊施設は見たことがありません。明らかに自宅で仕事をする人が増えており、そのような人たちは1つの場所だけに住みたいとは思っていないのです。Anyplace Selectは、パンデミック後の世界において、そのような人たちの標準的な宿泊施設になるでしょう」。

画像クレジット:Anyplace

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)

花王とPFN、健康や生活など1600項目以上のデータを推定できる統計モデル「仮想人体生成モデル」プロトタイプを共同開発

花王とPFN、健康や生活など1600項目以上のデータを推定できる統計モデル「仮想人体生成モデル」プロトタイプを共同開発深層学習を中心とした最先端技術の研究開発を行うPreferred Networks(PFN。プリファード・ネットワークス)と花王は2月28日、「仮想人体生成モデル」のプロトタイプを共同開発したと発表した。1600以上のデータ項目で構成される人体の統計モデルで、ある項目のデータを入れると、別の項目の推定値が示されるというものだ。

たとえば、健康診断の結果から内臓脂肪量を統計的に推定できる。その他のデータと組み合わせて、その人のライフスタイル、運動や食事の習慣などに合わせた最適な健康管理方法を提案するといった使い方も可能だ。また、今の体重から2kg減ったら他の項目にどれだけの影響があるかを推定するといったこともできる。

1600の項目には、健康診断などで示される身体に関する情報のほか、食事・運動・睡眠などのライフスタイル、性格・嗜好・ストレスの状態・月経といった日常生活で関心の高いものまで多岐にわたって含まれる。これらのいずれかの項目にデータを入力すれば、他の項目の推定値が出力される。この項目も入出力可能だ。

これは、人の身体、心理、生活など多岐にわたって研究を重ねてきた花王の研究資産と、深層学習などPFNの最先端の計算科学技術によって生み出されたものだ。この仮想人体生成モデルは、協業する事業者や研究機関などにAPIで提供されることになっているため、事業者は自社製アプリなどに機能を組み込み、エンドユーザーにサービスを提供することができる。入力されたデータが収集されたり蓄積されることはなく、利用者のデータが二次利用される心配はない。花王とPFN、健康や生活など1600項目以上のデータを推定できる統計モデル「仮想人体生成モデル」プロトタイプを共同開発花王とPFN、健康や生活など1600項目以上のデータを推定できる統計モデル「仮想人体生成モデル」プロトタイプを共同開発

まだプロトタイプの段階だが、2022年中の実用化を目標に検証を進めてゆくという。2023年初頭にはAPI経由での提供し、新規デジタルプラットフォーム事業を開始する予定。

中国大手ソーシャルメディアが「不適切」なウクライナ関連コンテンツを削除

中国政府は、ロシアのウクライナに対する軍事行動を「侵攻」と呼ぶことやロシア政府を非難することを拒否する立場を固持しているが、人々はソーシャルメディアでこの戦争に関するそれぞれの思いを表現している。

ここ数日、ウクライナ関連のトピックがWeibo(ウェイボ)のトップトレンディングハッシュタグに入ってきている。中国インターネットにおける公開討論の傾向を示す指標だ。同時に中国のソーシャルメディア巨人は、ウクライナに関連する「不適切」あるいは「誤解を招く」情報を、ウクライナに対するロシアの攻撃が開始された数日後から取り締まり始めた。

中国版Twitter(ツイッター)のWeiboは、4000件以上の「戦争を誘発、戦争を茶化す、あるいは俗悪なコンテンツを拡散した」と見なされる投稿を削除したと週末の発表で語った。中国版TikTok(ティックトック)のDouyin(ドウイン)は「俗悪性、戦争を矮小化するコンテンツ、先導的情報、あるいは敵対的コメント」を含む動画3500本以上を削除した。

Weiboでは「ウクライナの美しい女性たち」に中国へ来るよう呼びかける投稿が数十件見られた。中には、ウクライナでの戦争に志願すれば「単位を取得できる」という偽情報をでっち上げたユーザーもいる、とWeChatの警告文に書かれている。Douyinには「ウクライナ」とタイプすると同アプリで「爆発エフェクト」が起きるとユーザーをだますクリック稼ぎ記事が数百件投稿された。

他のユーザーは、こうした無意味なコンテンツに惑わされず、ウクライナ戦争への思いの共感を訴えている。

「平和は容易には訪れません。私たちは命を尊重しその価値を重んじる必要があります」とWeChatは声明で語った。「私たちはすべてのオンラインユーザーに向けて、重大な国際問題に対する客観的で理性的な態度を保ち、議論に参加するときには分別をわきまえ、みんなが一体となって汚れのない明るいサイバー環境を維持していくよう呼びかけます」。

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Nob Takahashi / facebook

米政府機関が警告、ウクライナを標的にしているワイパー型マルウェアは他国にも飛び火する可能性

米国サイバーセキュリティー・インフラセキュリティー庁庁(CISA)および連邦捜査局(FBI)は、ウクライナ国内組織の攻撃に用いられているワイパー型マルウェアが米国内の企業に影響を及ぼす可能性があると警告する共同勧告を発表した。

週末に公開された勧告は、WhisperGate(ウィスパーゲート)およびHermeticWiper(ハーメティック・ワイパー)という最近ウクライナ国内組織に対する攻撃で使われたことがわかった2つの破壊的マルウェア種に関する情報を提供している。

WhisperGateはワイパー型マルウェアの一種で、ランサムウェアを装っているが、ファイルを暗号化するのではなく、システムのマスターブートレコードを破壊の標的にしている。このマルウェアを最初に見つけたのはMicrosoft Threat Intelligence Center(マイクロソフト脅威インテリジェンス・センター)で、去る1月にウクライナの政府、非営利団体、テック企業を含むターゲットに対する複数のサイバー攻撃で使用されていた。

もう1つの破壊的ワイパー型マルウェアであるHermeticWiperは、ロシアによる侵攻が開始される直前にウクライナ企業を標的にして使用された。セキュリティ製品企業のESETが発見したこのマルウェアは、コンピュータを制御不能に陥らせる。ESETが観察したウクライナ国内数百のコンピュータを標的としたその攻撃は、国のいくつかの重要なウェブサイトをオフラインに追いやった一連の分散型サービス妨害(DDoS)攻撃の数時間後に出現した。

共同勧告は、米国企業に対する脅威でロシア・ウクライナ緊張に直接結び付くものは見つかっていないが、各企業は防御体制を強化し、警戒を強める必要があると警告している。

「破壊的マルウェアは組織の日常業務に直接的脅威をもたらし、重要な資産やデータの利用に影響を及ぼす可能性がある」とCISAおよびFBIは勧告で言った。

「ウクライナ国内組織に対するさらなる破壊的サイバー攻撃が起きる可能性は高く、意図せず他国の組織に波及することもありうる。組織は警戒を強め、そのような事象に対する計画、準備、発見、対応の能力を確認すべきだ」と付け加えた。

米国は、一連のワイパー攻撃を正式にロシアに結びつけていないが、マルウェアを拡散する脅威の行為者は、ロシアの「いわれなきウクライナ侵攻」につながっている、と勧告は述べている。

CISAとFBIは、組織が破壊的ワイパー型マルウェアから身を守るためのセキュリティ侵害インジケーター(IOC)を提供するとともに、多要素認証を有効化し、アンチウイルス・アンチマルウェア・プログラムの導入、スパムフィルターの設定、あらゆるソフトウェアのアップデート、ネットワークトラフィックのフィルタリングなどの対策を講じることで、自らを保護するよう企業に要求した。

関連記事:ウクライナがロシアにハッキングで対抗する「IT部隊」を募集し反撃、テックリーダーにも参加を呼びかけ

画像クレジット:Justin Sullivan / Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Nob Takahashi / facebook

熟成期間が長いハードチーズを動物性原料を使わずに作るBetter Dairyが約25.3億円を調達

Better Dairyが同社のハードチーズ製品の溶け具合をテストする様子(画像クレジット:Better Dairy)

フードテック企業のBetter Dairy(ベターデイリー)は、シリーズAで2200万ドル(約25億3000万円)の資金を確保し、熟成期間の長いハードチーズのテスト段階に向け駒を進めた。

Jevan Nagarajah(ジェヴァン・ナガラジャ)氏が2019年に設立した英国を拠点とする同社は、精密発酵を用いた動物性の原料を使わないチーズを開発するR&D段階を続けている。我々がナガラジャ氏とBetter Dairyと最初に出会ったのは、同社がHappiness Capitalが主導するラウンドで160万ポンド(約2億4600万円)のシード資金を調達した2020年にさかのぼる。

当時、彼は動物を使った酪農が「非常に持続不可能」であり、わずか1リットルの牛乳を生産するために650リットルの水を必要とすることや、そのプロセスの結果、年間17億トン以上のCO2が大気中に放出されていることを説明してくれた。

代わりに、Better Dairyは精密発酵を利用して、従来の乳製品と分子的に同じ製品を製造している、とナガラジャ氏は語った。このプロセスはビールの醸造に似ているが、最終的に得られるのは乳製品だ。

他のフードテック企業がモッツァレラチーズや乳清タンパクのような柔らかいチーズに取り組んでいるのに対し、Better Dailyはより持続可能な方法で、より複雑なプロセスであるハードチーズをターゲットにしている。

画像クレジット:Better Dairy

「ハードチーズには、動物性原料を使わないステーキを作ろうとするのと同じような制限があると考えています」とナガラジャ氏。「製薬業界向けのタンパク質の製造に30年の専門知識を持つ最高科学責任者を含むチームを作ることで、私たちは複雑なことを意識的に行えると気づいたのです」。

Happiness Capitalは、今回はRedAlpineとVorwerkとの共同リードとして、シリーズAを再び主導した。Manta Ray、Acequia Capital、Stray Dog Capitalも今回のラウンドに参加した。

乳製品分野を狙っている企業は、Better Dairyではない。Clara Foods、NotCoClimax FoodsPerfect Dayといった企業が、動物性原料不使用のチーズや乳製品に取り組んでいる。しかしナガラジャ氏は、精密発酵技術の向上を目指した今回の資金調達によって、同社が競合他社に先んじ、この分野でハードチーズを発売する最初のプレーヤーとなることができると考えている。

同社はこの資金によって従業員を8人から35人に増やし、イーストロンドンにある6千平方フィート(約557 m²)の新しい研究所とオフィススペースに投資していくという。

Better Dairyは、食感とさらには熟成について科学的に解明し、すべての構成要素を1つの製品にまとめ、賞味期限を設定できるようにすることを目指している。ナガラジャ氏は、精密発酵プロセスにより、今後18カ月ほどで単位あたりの経済性、つまり同様のクオリティの手作りチーズと同等の価格を達成できると楽観視している。

「当社のサイエンスをアップグレードするには、適切なスペースと設備が必要です」と彼は付け加えた。「動物性原料を使用せず、持続可能であることだけでなく、おいしさも重要です。味が改善すれば、(非動物性の製品を選ぶのは)人々にとって簡単な決断になり、成功の指標となります。正しい方法で製品を作ることにはメリットがあります。でなければ、(植物性製品はまずいと思う観念など)すべてを巻き戻すのに長年かかってしまうかもしれませんから」。

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(文:Christine Hall、翻訳:Den Nakano)

【3月1日】掲載記事アクセスランキング・トップ5―1位はウクライナ侵攻への経済制裁によりロシア国内でApple Pay利用停止

【3月1日】掲載記事アクセスランキング・トップ5―1位はロシア国内でApple Pay利用停止、2位は2022年後半のポケモン新作

掲載記事のうち、3月1日午前7時現在集計で最もアクセスのあった記事5本を紹介。

第1位:ウクライナ侵攻に対する経済制裁により、ロシア国内でApple PayやGoogle Payなどが利用停止


ロシアのウクライナ侵攻を受けて、米国政府およびEUはロシアの大手銀行5行に対して外国為替取引の制限を含む経済制裁を実施しました。その結果、現地の主要銀行口座と紐付けられたApple PayやGoogle Payなどのデジタルウォレットがロシア国内で利用停止となったと伝えられています。

第2位:ポケモン新作「スカーレット・バイオレット」、2022年後半に発売


「ポケモンカフェ」はともかくとして、第9世代のポケモンが登場する。米国2月27日のポケモン公式YouTubeチャンネルの放送で、2019年末に発売された「ポケットモンスター ソード・シールド」に続く、メインシリーズのポケモンゲーム最新作「ポケットモンスター スカーレット・バイオレット」が発表された。Nintendo Switch用ゲームは2022年末に発売される予定だ。

第3位:ウクライナがロシアにハッキングで対抗する「IT部隊」を募集し反撃、テックリーダーにも参加を呼びかけ

ウクライナがロシアの一方的な侵攻に対抗するために現地の一般市民を動員し武器を与える中、ウクライナ国外で力になりたい人々は、バーチャルワールドでの戦いに参加するよう要請されている。

第4位:【コラム】創業者として成功に「大学なんて関係ない」というのはシリコンバレーの幻想だ

シリコンバレーは「ドロップアウト(中退)」を礼賛するのが大好きだ。伝統的な教育では、関連性のないことを教えられ、なかなか進歩できず、そして情報が簡単に手に入る世界では、もはやかつてのように学習リソースを提供できないため、自分には向いていないと判断した起業家が、着想を得ると考えられているからだ。

第5位:イーロン・マスク氏率いるスペースX、ウクライナの要請に応じスターリンク通信と端末提供―ただし有効性に疑問の声も

ロシア軍が侵攻してその動向が世界に注目されているウクライナ情勢に絡んで、イーロン・マスク氏はSpaceXの衛星インターネットサービスStarlinkをウクライナに導入したことを明らかにしました。マスク氏いわく「すでにウクライナでStarlinkサービスは有効になっている」「さらに多くの端末を送る用意がある」とのこと。

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LinkedInがイスラエルのウェブ分析Oribiを92〜104億円で買収、マーケティングテクノロジーの拡充を図る

専門分野に関して人々とつながり、仕事を探したい人のためのソーシャルネットワークで、8億1000万人以上のユーザーがいるMicrosoft(マイクロソフト)傘下のLinkedIn(リンクトイン)は、独自プラットフォーム上で長年、マーケティングや広告のビジネスをしている。同社は米国時間2月28日、インターネットのさらに幅広い範囲にわたる分析やインサイトを提供したいという同社の野望を示していると考えられる買収を発表した。LinkedInが買収したのは、マーケティングのアトリビューションテクノロジーを専門とするテルアビブのスタートアップ、Oribiだ。この買収により、LinkedInはイスラエルに初めてのオフィスを開設することになる。

買収を発表したブログ記事では条件は明らかにされていないが、情報筋によると買収額は8000万〜9000万ドル(約92億1600万〜103億6800万円)とのことで、他のメディアでもこの金額が報じられている。PitchBookのデータによると、OribiはSequoia、TLV Parnters、Ibexなどから2800万ドル(約32億2500万円)近くの資金を調達し、Google(グーグル)のローカルアクセラレーターとしても若干の資金を得ている。

この買収は2つの点で興味深い。1つめとして、これはLinkedInが同社の中で急速に成長している分野であるマーケティングと広告のサービスへの投資を続けていることの現れだ。最高プロダクト責任者のTomer Cohen(トマー・コーヘン)氏は米国時間2月28日のブログ記事で、マーケティングサービスの売上は対前年比で43%成長したと記している。しかしLinkedIn上では5700万社ほどの企業が「ブランドのページを作成」し、毎週2万4000件以上のバーチャルイベントが作成されていることを考えると、利用している企業にさらに機能とツールを提供すればさらなる成長の余地が大いにあることは明らかだ。ここ数年で、LinkedInはこの分野を拡大するための買収を1件しかしていない。その1件は、2019年Drawbridgeの買収だ。

そしてもう1つ、Oribiの買収はLinkedInのマーケティングに関する大きな変化をはっきりと示している。以前にTechCrunchでお伝えしたように、Oribiのミッションはウェブ分析を民主化することだ。つまり同社は、小規模な企業が簡単に独自の分析を構築、実行してマーケティング戦略の影響を測定できるようにすることを目指している。大企業ならそのためのチームがいるだろうが、小さい組織はリソース不足のためたいてい諦めざるを得ない。

Oribiの創業者でCEOのIris Shoor(アイリス・ショーアー)氏は以前にTechCrunchに対し「アナリティクス企業の多くは、ハイエンドを狙っています。もっぱら技術的なリソースや他とのインテグレーションに基づいたソリューションを提供しています。Mixpanels風、Heap Analytics風、Adobe Marketing Cloud風といったものです」と述べていた。

注目すべき点として、OribiはGoogle Analyticsなどと競合している。つまりLinkedIn(そしてこれに関連してMicrosoft)が、Googleの圧倒的なデジタル広告・マーケティングマシンに立ち向かっていくことにもなる。

米国時間2月28日にコーヘン氏は次のように記している。「Oribiのテクノロジーを我々のマーケティングソリューションプラットフォームに統合することで、お客様はさらに充実したキャンペーンのアトリビューションを利用して広告戦略のROIを最適化できるようになります。お客様は自動のタグとコードフリーのテクロノジーを活用して、ウェブサイトのコンバージョンを簡単に測定し効果的なオーディエンスを構築できます。しかもすべてプライバシーを最優先に設計されています」。

LinkedInはOribiの従業員が何人ジョインするかを明らかにしていない。ただし「創業者で経験豊かな起業家であるアイリス・ショーアー氏を含むOribiのチームの数人」がLinkedInにジョインして、LinkedInの新しいテルアビブオフィスで働くと記されている。

画像クレジット:LinkedIn China via Weibo

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Kaori Koyama)

冠動脈疾患・脳梗塞治療に向け医師がX線被曝なしにトレーニングできる血管内治療シミュレーター開発、小型化・コスト削減

冠動脈疾患・脳梗塞・脳動脈瘤の治療に向け医師がX線被曝なしにトレーニングできる血管内治療シミュレーター開発、小型化・コスト削減を実現

血管モデルの可視光による画像(左)と、非被爆血管内治療シミュレーターによるX線模擬画像(右)

理化学研究所は2月25日、通常は、医師がX線透視像を見ながら行う血管内治療のトレーニングを、放射線被曝しない形で簡便に行える「非被爆血管内治療シミュレータ」を開発した。テーブル上に設置でき、従来方法よりはるかに安価なため、いつでもどこでもトレーニングが行えるという。

冠動脈疾患、脳梗塞、脳動脈瘤などの治療には、血管内にカテーテルやステントを通す血管内治療が行われることが多い。奥行き情報のない2次元的なX線透視像で、器具の先端の動きを見ながら血管の中に器具を通しゆくため、高度な技術を要する。しかしそのトレーニングは実際にX線を使って行う必要があり、医師は放射線被曝が避けられない。また、実際のカテーテル室で行わなければならないため、時間的な制約があり、同時に複数の医師がトレーニングできないといった課題があった。

血管内治療の模式図。(A)術部へのカテーテルの誘導。(B)脳動脈瘤に対する血管内治療。(C)頚動脈狭窄に対する血管内治療。(D)脳血管閉塞に対する血管内治療。(E)心臓冠動脈梗塞に対する血管内治療

白色光源とビデオカメラを使ったトレーニングシステムもあるが、それでは血管の分岐部やガイドワイヤーの上下の動きなどが陰影から推測できてしまうため、平面的な映像だけが頼りの実際の治療とは条件が違ってしまう。そこで、理化学研究所(深作和明氏)は、琉球大学病院(横田秀夫特命教授、岩淵成志特命教授、大屋祐輔教授)と共同で、「非被爆血管内治療シミュレータ」を開発した。

このシミュレーターの特徴は、X線透視像と同じく、奥行き情報のない画像で訓練ができる点にある。このシステムでは、高感度カメラと波長選択フィルターを使い、透明な血管モデルを可視光で撮影するという方式を採っている。造影剤には液体の蛍光色素を使い、ガイドワイヤー、カテーテル、バルーン、ステントにも同じ波長の蛍光色素を塗り、血管内と器具の特定の部位だけが発光するようにした。それにより、X線透視像と同じく奥行きのない映像を作ることができるようになった。さらに、リアルタイムで画像処理を行い、実際の手術の際に用いられる、複数の映像を重ねたり輝度を反転させたり差し引いたりして作られるサブトラクション血管造影と同等の、デジタル化したサブトラクション血管造影(DSA)の機能も実現させた。

(A)造影剤を入れた血管の画像。(B)ガイドワイヤーとカテーテルの画像。(C)血管とカテーテルを重ねた画像。(D)一般のカメラで撮影した画像

そしてもちろん、X線を使わないため、トレーニングを行う医師に放射線被曝の心配は一切ない。装置は60cm四方の場所に設置できるため、いつでもどこでも安全にトレーニングが行える。コストも、従来方法よりもはるかに安価になるという。

研究グループは、同グループが開発した患者個体別血管モデリングシステムと組み合わせ、実際の患者の血管形状を反映した3Dモデルや、統計的に多発する病態モデルでのシミュレーションへの展開を目指すと話している。

フランスのFinaryは新たな創業理念でプライベートバンクの構築を目指す

フランスのスタートアップ企業であるFinary(フィナリー)が、800万ユーロ(約10億300万円)のシリーズA資金調達ラウンドを実施した。この会社は、富裕層が資産をトラッキングする際に全体像を把握できる包括的なアグリゲータを構築している。そしてそれは、Finaryが銀行口座に限定されないことを意味する。つまり、不動産から暗号資産や株式まで、多くの資産をトラッキングすることができるということだ。

そして、このスタートアップのビジョンは、筆者が初めてこの会社について記事を書いたときからあまり変わっていない。データの集約は、同社にとって最初の一歩に過ぎない。Finaryは、これまでと異なる創業理念でゼロからプライベートバンクを作りたいと考えている。

現在のプライベートバンキング業界について考えてみると、顧客と銀行の間にズレがあることがわかる。銀行は顧客から直接収益を得るのではなく、金融商品を販売し、その商品から収益を得ようとする。彼らはファイナンシャルアドバイスと称しているが、それは単なる胡散臭いセールスだ。

「当社は独立企業だから、何でも話せます。既存の業者は、自分たちに手数料が発生するようなソリューションしか提案しません」と、共同創業者でCEOのMounir Laggoune(ムーニエ・ラグーン)氏は筆者に語った。

次世代の富裕層はこれまでとは異なる体験を求めると、Finaryは確信している。彼らは情報を直接見て、自分自身で十分な知識を得た上で意思決定をしたいと思うだろう。つまり、もはや家族に送金するために銀行員に電話しなくても済むようになったように、Finaryは富裕層に適切なツールと情報を提供したいと考えているのだ。

Finaryの今回の資金調達ラウンドは、既存投資家のSpeedinvest(スピードインベスト)とY Combinator(Yコンビネーター)が主導した。また、Qonto(コント)の創業者であるSteve Anavi(スティーヴ・アナヴィ)氏や、Alexandre Prot(アレクサンドル・プロット)氏、Bitpanda(ビットパンダ)のEric Demuth(エリック・デムス)氏などのエンジェル投資家も参加した。

しかし、それですべてではない。Finaryは、新しいプライベートバンクを作るということは、最も活動的な顧客が同社の株式を所有できるようにすることだとも考えている。このスタートアップ企業は、まもなく株式のクラウドファンディングキャンペーンを開始する予定だ。

具体的には、フランスで近々立ち上げられるエクイティクラウドファンディング(株式投資型クラウドファンディング)プラットフォームを通じて、人々は10ユーロ(約1300円)から投資して株式や端株を購入することができるようになる予定だ。

「私たちは50万ユーロ(約6400万円)を割り当てましたが、多少のオーバーファンディングはOKです」と、ラグーン氏は言っている。

筆者が前回の記事を書いた以降、FinaryはiOSとAndroidの両方でモバイルアプリの提供を開始した。このアプリは現在、同社のサービスにアクセスするための一般的な方法となっており、ユーザーは平均して週に9回、つまり1日に1回以上、Finaryの口座をチェックする傾向があるという。

その後も同社はさらに統合機能を追加し、フランス、米国、カナダ、スペイン、イタリア、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグで1万種類の資産をトラッキングできるようになった。例えば、ユーザーは複数の銀行口座、株式取引口座を接続し、不動産、金、暗号資産ウォレットの公開アドレスなどを追加することができる。

Finaryは、Plaid(プレイド)やBudget Insight(バジェット・インサイト)など、いくつかのAPIベースのアグリゲータを使って口座をトラッキングしており、また、bitcoin(ビットコイン)やEthereum(イーサリアム)のノードを動かしてウォレットアドレスをトラッキングしている。

このスタートアップ企業は、全体で3万人のユーザーを集め、100億ユーロ(1兆3000億円)相当の資産をトラッキングしている。つまり、同社のユーザーは平均するとそれぞれが30万ユーロ(約3900万円)以上の資産をトラッキングしていることになる。同社は現在、月額10ユーロ(約1300円)のサブスクリプション料金で収益を上げている。

そして、これがこの製品の興味深いところなのだが、Finaryはデータを集約するだけでなく、レコメンデーション(推薦)もできる。例えば、投資信託の隠れた手数料を明らかにしたりする。ユーザーはパフォーマンスレポートを生成し、異なる地理的配分、セクター、リスクプロファイルなど、どのように投資を分散させることができるかを学べる。

今回調達した資金を使って、同社は英国、ドイツ、スイスの金融機関を完全にカバーすることを計画している。同社は他に、新たな追加機能の開発にも取り組んでいる。今後はファミリーモードや、より効率よくRSU(譲渡制限付株式ユニット、フランスではBSPCE)をトラッキングする方法、個人資産と職業資産を分離する機能などが加わる見込みだ。

Finaryはさらに25人の新規雇用も予定している。この先、多くの製品拡張も計画されており、例えばこのプラットフォームから、暗号資産を直接購入できるようになることもあり得るだろう。税務申告を支援するサービスも考えられる。Finaryは2022年末までにユーザーベースを10倍に拡大し、30万人のユーザーに到達することを目指している。

画像クレジット:Finary

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(文:Romain Dillet、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

法人カードPaildを手がけるHandiiが後払い機能の2022年5月頃リリースを発表、優先枠の登録受付を開始

法人カードPaildを手がけるHandiiが後払い機能の2022年5月リリースを発表、優先枠の登録受付を開始

法人カードのクラウド型発行・管理サービス「paild」(ペイルド)を提供するHandiiは3月1日、事前入金が不要となる(口座振替を実施)、後払い機能(クレジット支払い機能)を発表した。リリース予定は2022年5月頃。また「paild後払いに事前登録する」において、本日より優先枠の登録受付を開始している。

同機能の追加により、事前の入金なしに決済を行えるようになる。引き続き前払いを行うことにより、与信枠を超えた決済も可能。与信枠に関しては、デジタル情報を活用し、従来型の法人クレジットカードと比較して、最大10倍前後の与信枠を設定する予定だ。

同社CEOの柳志明氏によると、与信枠の設定と前払い残高を組み合わせた決済手段の提供により、中小企業が十分なカード決済ができない状態から解放し、法人カードの導入を通じた業務プロセスの改善を推進する戦略であるとのこと。paildでは、管理画面上から何枚でも即時に法人カードを発行できる機能を提供しており、従業員の経費精算の削減や部署の支出の見える化で効果を発揮しているという。

法人カードPaildを手がけるHandiiが後払い機能の2022年5月リリースを発表、優先枠の登録受付を開始

管理画面サンプル

paildは、無料登録から最短30分でVisaで使える法人カードを発行し、使うことができるサービスとして、2019年8月から提供を開始。サービス初期設定費用・年会費・バーチャルカードの発行手数料は全て無料。リアルカードの発行手数料は有料(税込1650円)だが、現在2022年4月末までの期間限定で、無料(0円)で発行可能とのこと。

2021年には、会計連携やSaaS管理機能といった会計業務の円滑化・効率化に向けた多くの機能をリリース。2022年に入って、カード業界ではまだ珍しい番号が券面に記載されていないナンバーレスリアルカードを発表したほか、ICチップ対応、Visaタッチ決済導入、3Dセキュア(本人認証)などに対応し、セキュリティの向上に向けた開発を進めている。

TikTok、動画の長さを従来の3分から10分に拡大

TikTok(ティクトック)は、ユーザーが最長10分の動画をアップロードできる機能を展開し始めたことをTechCrunchに認めた。Tiktokは過去数カ月に渡ってこの変更をテストしており、今回、正式な提供開始となる。これまでTikTokの動画は、2021年7月の変更で最長3分となり、それ以前は当初15秒でスタートした後に60秒が上限だった。

「当社は、コミュニティに価値をもたらし、TikTokの体験を豊かにするための新しい方法を常に考えています。2021年、動画の時間を伸ばし、コミュニティがTikTokで創造し、楽しむための時間を増やしました」とTikTokの広報担当者は声明で述べた。「今日、最長10分の動画をアップロードする機能の展開を開始したことをうれしく思います。世界中のクリエイターのためにさらに創造的な可能性を解き放つことを期待しています」。

この動画時間の拡大により、クリエイターは、料理の実演、美容チュートリアル、教育コンテンツ、お笑いコントなどを撮影する際に、より多くの時間と柔軟性を得ることができる。以前は、クリエイターはTikTokの制限を回避するために、動画シリーズのパート2以降を視聴者にフォローするよう促していた。この方法は時には有効だが、ユーザーにとっては、シリーズの適切な動画を見つけるためにクリエイターのフィードをスクロールしなければならず、フラストレーションがたまることがある。

今日の発表によりTikTokは、2021年に288億ドル(約3兆3150億円)の広告収入があったYouTube(ユーチューブ)のより強力な競争相手となる。しかし、YouTubeはTikTokの成長について十分に脅威を感じており、自社のアプリ「YouTube Shorts」で直接、短編動画のライバルを立ち上げている。ただ、短編動画のホストはTikTokの唯一の強みではなく、特殊効果のライブラリ、ARツール、音楽カタログなどの機能の組み合わせで知られている。また、ステッチやデュエットなど、クリエイターが他のユーザーのコンテンツとコラボできる機能も人気だ。

TikTokの脅威に気づいたソーシャルアプリはYouTubeだけでなく、Instagram(インスタグラム)も2020年にTikTokクローンであるInstagram Reelsを発表した。それ以来、InstagramはデュエットのようなRemix機能など、TikTokに類似したいくつかのReels機能を展開している。また、Facebook(フェイスブック)にもReelsを導入した。そしてSnapchat(スナップチャット)もPinterest(ピンタレスト)と同様、TikTokのような動画機能を開始した。

しかし、TikTokがYouTubeの広告収入を追いかける中、YouTubeはテレビ広告に注力している。Google傘下のYouTubeは最近、デジタルNewFrontsの代わりに、5月のTV Upfrontsの週に毎年恒例のBrandcast広告主イベントを開催することを発表した(ただし、デジタルNewFrontsではスポンサーを続ける予定だ)。

TikTokによると、アプリでより長い動画を撮影するオプションは、今後数週間で世界中のユーザーに提供される。アップデートを受信すると、ユーザーは通知を受ける。また、この機能を試す前に、最新バージョンのTikTokを使用していることを確認する必要がある。

画像クレジット:Nur Photo / Getty Images

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(文:Aisha Malik、翻訳:Nariko Mizoguchi

ウクライナ侵攻のなか、ロシア政府がアップル・Metaなど米ハイテク大手に検閲圧力を強化

ウクライナ侵攻のなか、ロシア政府がアップル・Metaなど米ハイテク大手に検閲圧力を強化

ロシアのウクライナ侵攻が続くなか、ロシア政府がアップルやGoogle、Twitterなどハイテク大手に現地オフィスを開設するよう義務づける法律を遵守するよう迫り、検閲キャンペーンを強化していると報じられています。

米The New York Timesによると、ロシア当局は「アップルをはじめとした企業に対し、国内に法人を設立することを義務付ける法律を遵守するよう警告した」とのことです。この通称「上陸法( landing law/現地に拠点を作らせるため)」により、企業や従業員がロシアの法制度や政府の検閲官の要求に対してより脆弱になる、との法律の専門家や市民団体のコメントも紹介されています。

この「上陸法」は2021年7月に、プーチン大統領が署名して成立したものです。それに基づき11月には対象となる企業のリストと、ロシアの要件を満たすため具体的に何をすべきかが明らかにされていました

ちなみにロシア当局は7月に、野党指導者ナワリヌイ氏が構想した選挙支援アプリにつき、アップルとGoogleにアプリストアから削除するように要請。さらに両社に対してアプリを削除しないと罰金を科すと脅したとの報道もありました

さてNYTによれば、今回の動きは「海外ハイテク企業に対するロシアの圧力キャンペーンの一部」とのことです。ロシア当局は罰金や(従業員の)逮捕、インターネット・サービスの遮断や速度制限の可能性をちらつかせ、クレムリン派(プーチン支持派)のメディアはそのままにして、ネット上の好ましくない素材を検閲するように企業に働きかけている、と伝えられています。

アップルはどう対応したかと言えば、すでに今月初めにモスクワにオフィスを開設して「上陸法」を遵守しているとの報道もあります。またウクライナ副首相がティム・クックCEOに対してロシア国内におけるアップル製品の販売停止とApp Storeへのアクセス遮断を要請しましたが、記事執筆時点ではクックCEOからの反応は確認されていません。

その一方で、Facebookの親会社であるMetaはウクライナ侵攻に際して、ロシア国営メディアが広告収入を得ることを禁止し、ファクトチェックを厳格にしていくとの対応を発表。これをロシア側は違法と主張し、同社のSNSへのアクセスを制限したことを明らかにしています。

ふだんアップルはプライバシーを基本的な人権の1つと呼び、ユーザー行動の追跡に基づくターゲティング広告が収益源のMetaおよびFacebookはその反対勢力と見られている印象があります。が、今回に限っては立場が逆転している感もあり、アップルに対して欧米の世論からの批判が高まるのかもしれません。

(Source:The New York Times。Via 9to5MacEngadget日本版より転載)

RightHandが約76億円を調達、白熱する倉庫ロボティクス分野に資金投入

新型コロナウイルス、サプライチェーン問題、人手不足、Amazon(アマゾン)。物流ロボット化に興奮する理由は数多く、そして今も増えている。RightHand Robotics(ライトハンド・ロボティクス)は、ウイルス感染流行によって事態が加速するかなり前から注目を集め、GV、Menlo(メンロ)、Playground Global(プレイグラウンド・グローバル)などの投資家からかなりの資金を調達していた。

そして多くの新規参入者とは異なり、ボストンを拠点とする同社は、そのピック&プレース・システムですでに多くの実働時間を記録している。その中で最も新しいシステムである「RightPick 3(ライトピック3)」は、日本の卸売業者であるPaltac(パルタック)や、欧州でオンライン薬局を展開するapo.com Group(アポ・ドットコム・グループ)を、国際的な顧客として抱えている。

同社は先週、6600万ドル(約76億円)のシリーズC資金調達を発表した。Safar Partners(サファー・パートナーズ)、Thomas H. Lee Partners, L.P.(トーマス・H・リー・パートナーズ)、SoftBank Vision Fund(ソフトバンク・ビジョン・ファンド)が主導したこの新ラウンドで、同社がこれまで調達した資金総額は約1億ドル(約115億円)となった。今回のラウンドには、GVとMenloも再び参加した他、Zebra Technologies(ゼブラ・テクノロジーズ)、Epson(エプソン)、Global Brain F-Prime Capital(グローバル・ブレイン・Fプライム・キャピタル)、Matrix Partners(マトリックス・パートナーズ)、そしてTony Fadell(トニー・ファデル)氏の会社であるFuture Shape(フューチャー・シェイプ)が出資に加わった。

なかでもゼブラは興味深いパートナーだ。同社は自社開発のロボットを提供していることに加え、2021年の中頃には倉庫ロボットのスタートアップ企業であるFetch Robotics(フェッチ・ロボティクス)を2億9000万ドル(約335億円)で買収している。

「Zebra Technologiesは、世界中の企業がサプライチェーンをデジタル化・自動化して、現場の労働者を補強できるよう、積極的に投資とソリューションの提供を行ってきました」と、同社のZebra Ventures(ゼブラ・ベンチャーズ)部門でマネージング・ディレクターを務めるTony Palcheck(トニー・パルチェック)氏は述べている。「消費財、小売、物流などの業界の顧客にとって、重要なのは、速く、正確に、安全に、コストを抑えて、注文を処理できることです。RightHand Roboticsは、これらの効率化の達成を支援します」。

今回調達した資金は、雇用、オフィススペースの確保、世界規模でのさらなる拡大など、一般的な用途に充てられる予定だ。

画像クレジット:RightHand Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ZendeskがSurveyMonkeyの買収計画を中止、自社投資家が拒絶

Zendesk(ゼンデスク)は米国時間2月25日、SurveyMonkey(サーベイモンキー)の親会社であるMomentive(モメンティブ)を41億ドル(約4740億円)で買収する案について、株主が拒否したため手を引くと発表した。この発表は、同社がプライベート・エクイティ・ファンドによる170億ドル(約2兆円)の買収提案を拒絶してから、わずか2週間後のことだった。

公式には、同社は次のように発表している。「Zendesk, Inc.は本日、Zendesk、Milky Way Acquisition Corp.(ミルキーウェイ・アクイジション・コープ)、および Momentive Global Inc.(モメンティブ・グローバル・インク)との間で合意および計画していた合併案について、2022年2月25日に開催された株主総会において、Zendeskの普通株式を発行する提案の採択に向けた株主の承認が得られなかったため、これを打ち切ったことを発表しました」。

SurveyMonkeyを含むMomentiveの事業は、Zendeskの中核であるカスタマーサービスをより広い顧客体験市場に押し出す手段になると考えていたCEO兼創業者のMikkel Svane(ミッケル・スヴァーン)氏にとって、これは厳しい打撃とならざるを得なかった。それでも同氏は、株主投票の結果を発表したブログ記事の中で、できる限り前向きな態度を示している。

「Momentiveの買収は、カスタマーインテリジェンスの未来を提供する当社の能力を加速させる方法として計画しました。この買収を進めることはありませんが、お客様がデータからより多くの価値を引き出せるよう、これまでと同様に支援することをお約束します」と、同氏は記している。

続けて同氏は、同社が今後も中核顧客にとって理に適った形でプラットフォームを拡張する製品の開発に挑戦し続けると述べている。これは買収する代わりに自社で構築することを意味しており、おそらく、高額な価格設定や顧客経験に対する戦略の転換を好まない株主にとって、より受け入れやすいアプローチとなるだろう。

Wall Street Journal(ウォールストリート・ジャーナル)は今月初め、投資家、特に同社株の3%を保有するJana Partners(ジャナ・パートナーズ)と5%を保有するJanus Henderson(ジャナス・ヘンダーソン)投資信託が、この買収とそれが同社にもたらす方向性に不満を持っていると報じていた。最終的には、積極的行動主義の投資家が勝ったようだ。

Momentiveの方では、Zander Laurie(ザンダー・ローリー)CEOが平静を装い「Zendeskの株主が買収承認に賛成しなかったことは残念ですが、私たちは今後の戦略に自信を持っています」と、声明で述べている。おそらく、新しい買い手を探すか、現在の製品ポートフォリオで単独でやっていく方法を見つけるのだろう。

いずれにせよ、この買収が見送られたことで、両社は今後、どのように進めていくかを決めなければならない。

画像クレジット:NurPhoto / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

暗号資産の寄付、ウクライナはどう活用するか

ウクライナ政府の公式Twitterアカウントは現地時間2月26日、2つの暗号資産ウォレットアドレス(ビットコインウォレットアドレスとイーサリアムウォレットアドレス)を共有した。「ウクライナの人々とともに立ち上がろう。現在、暗号資産による寄付を受付中。ビットコイン、イーサリアム、USDT」と@Ukraineは書いている。

しかし、これらのウォレットを誰が所有し、運用しているのかを確かめることは難しい。公開アドレスは、文字と数字の羅列にすぎないからだ。ウォレットの所有権を譲渡することは可能なので、厳密には誰のものでもない。

このようなツイートに対する最初の論理的な反応は、細心の注意を払って行動すべき、だ。これらのウォレットが政府のメンバー、政府機関、政府に代わって非公式に暗号資産の寄付を促進している政府外部の人物、または政府のメンバーのふりをしている人物によって運営されているかどうかは不明だ。

しかし、ウクライナ政府がこれらのウォレットアドレスで受け取った資金を管理している可能性は、低いというよりも高いと思われる理由がいくつかある。まず、このツイートは削除されておらず、つまり@Ukraineが悪用されている可能性はおそらく排除される。もし誰かがアカウントを乗っ取ったのであれば、政府の公式アカウントを運営している人たちは比較的早くこのツイートを削除しているはずだ。

次に、ウクライナの副首相兼デジタル変革大臣であるMykhailo Fedorov(ムィハーイロ・フョードロフ)氏をはじめとして、他の人々がこれらのウォレットアドレスを共有した。「ウクライナの人々とともに立ちあがろう。暗号資産の寄付を受付中」とフョードロフ氏は書いている

3つ目は、ウクライナのデジタル変革省の広報担当者が、@Ukraineのツイートが本物であることを確認したことだ。「これらのアカウントは国のもので、特別な暗号資産基金を作りました」と電子メールで筆者に述べた。

そして、多くの人がすでにこれらのアドレスに暗号資産を送っている。この点では、ブロックチェーンエクスプローラーに公開アドレスを入力するだけで、入出金取引のリストを見ることができるので、把握するのは簡単だ。

本稿執筆時点では、Etherscanでイーサリアムウォレットに約6800件の入金があったことが確認できる。同様に、ビットコインのウォレットアドレスに関連する取引は7000件超ある。

人々は153BTCと2230ETHを送り、現在それぞれ629万ドル(約7億2200万円)と627万ドル(約7億2000万円)の価値がある。また、一部の寄付者はUSDTやUSDCといったイーサリアムベースの暗号資産を送った。

暗号資産コミュニティの一部のメンバーも、独自の資金調達活動を開始したことは注目に値する。Michael Silberling(マイケル・シルバーリング)氏はDune Analyticsにダッシュボードをつくり、@Ukraineが支援するイーサリアムウォレットアドレスだけでなく、他のコミュニティ主導のプロジェクトに対する暗号資産寄付も追跡している。

取引に関しては、キエフに拠点を置く暗号資産取引所であるKunaに、すでに多額のETHが送金されている。

「Kuna.ioはウクライナの資金調達に技術的なサポートを提供しています」と、Kunaの広報担当者は電子メールで筆者に語った。「すべての資金は安全で、要請に応じて政府に送られています」。

Kunaの創業者Michael Chobanian(マイケル・チョバニアン)氏は主にTelegramで発信してきたが、最近自分のTwitterアカウントを作り、寄付の詳細を共有した(Kunaのチームは、このアカウントが正規のものであることをメールで確認した)。

チョバニアン氏は、資金調達活動の進捗状況の共有を始めた。

まだ未解決の懸念がいくつかある。暗号資産はどの通貨と交換されるのか? そして、これらの資金はどのように使われるのか?

TechCrunchはウクライナ政府に資金に関するより詳細な情報を求めている。また、Kunaのチョバニアン氏にも連絡を取ったが、執筆時点では返答がない。

つまり、この話題については、もっとフォローする余地がある。しかし、暗号資産ウォレットのアドレスが書かれた1つのツイートが、いかに数時間のうちに世界中から寄付者が集まる大規模な資金調達キャンペーンになったかは、すでに興味深いものだ。

画像クレジット:Ismail Ferdous / Bloomberg / Getty Images

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

Lenovo、新ThinkPadにQualcommのSnapdragonプラットフォームを採用

長い間ハイエンドモバイルプロセッサの世界をリードしてきたQualcomm(クアルコム)が、あなたに売りたいノートPCを手に入れた。2021年末に毎年恒例のSnapdragonサミットで発表したSnapdragon 8cx Gen 3シリーズで、同社はノートPCの部品の世界へ進出する。

名前からわかるように、Snapdragon 8cx Gen 3はノートPCに使用されるQualcomm製品としては第3世代だ。現在、Apple(アップル)はARMベースのチップを自社開発し、かなりのパフォーマンスを実現している。QualcommもモバイルのパフォーマンスをWindows 11 ProベースのノートPCに活かして、同じことを実現したいと考えている。

画像クレジット:Lenovo

QualcommのプラットフォームでMicrosoft(マイクロソフト)のSurfaceデバイスが開発されるという噂がある中、Lenovo(レノボ)はMWCでThinkPad X13sを発表した。このプラットフォームの利点はぱっと見ただけで明らかだ。ノートPCのフォームファクタでARMアーキテクチャに移行するという長年の約束が守られている。つまり、超軽量薄型で5G内蔵、バッテリー駆動時間が長く、Qualcommの数世代にわたるセキュリティの進歩をベースにしている。

Lenovoは最初のパートナーとしては理想的だ。まず、ThinkPadブランドは仕事用のノートPCとして多くの人に浸透している。また、Lenovoは新しい道を探ることにおいては最も熱心なノートPCメーカーかもしれない。

仕様を見てみよう。13インチで重量は2.35ポンド(約1.06kg)と、MacBook Airの2020年モデルよりも200gほど軽い。厚さは0.53インチ(約1.3cm)で、MacBook Airの0.41~1.61cmの範囲に収まっている。バッテリー持続時間は驚異的で、動画再生時に28時間とされている。ある経営幹部はイベントに先立って実施されたブリーフィングで、1泊の出張でニューヨークに持っていってまったく充電しなかったと述べた。これは確かに信憑性があるようだ。

Qualcommのメリットとして、コンピュータビジョンのプロセッサによりログイン認証が向上した点も挙げられる。筐体は90%リサイクルのマグネシウムで、これまでと同様にポインティングスティックもある。

ThinkPad X13sは5月出荷開始予定で、価格は1099ドル(約12万7000円)から。

画像クレジット:Lenovo

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(文:Brian Heater、翻訳:Kaori Koyama)

ウクライナ発の顔交換アプリ「Reface」が反戦プッシュ通知を追加

a16zが出資するウクライナ発の合成メディアアプリReface(リフェイス)は、世界中に抱える約2億人ものユーザーにロシアのウクライナ侵攻を知らせるプッシュ通知を追加し、アプリで作成した顔交換動画に透かしを入れるなど、人々に#StandWithUkraineを呼びかけている。

アプリで作成されたすべての動画には現在、ウクライナ国旗と#StandWithUkraineのハッシュタグの透かしが入る。

また、今回のアップデート後にアプリを開くと、キエフで避難する市民の画像が表示され、画像はロシアがウクライナを攻撃した「証拠」だとするキャプションが表示される。

メッセージはまた「戦争を止める」ために、ロシアを国際銀行決済システムSWIFTから排除するよう求めている。

Refaceによると、アプリの別の次期アップデートでは、すべてのユーザーに「ウクライナでの戦争に反対する声明を出す」よう促すという。

Refaceはまた、ウクライナをサポートできるリソースをユーザーに案内している。

画像クレジット:Reface

Refaceは2月最後の週末から反戦キャンペーンを開始し、これまでに900万通のメッセージが送信され、そのうち200万通はロシアのユーザーに届けられたという。

ユーザーの自撮り写真を有名人のビデオクリップにマッピングすることで、現実をファンタジーに変え、消費者に数秒間の想像上の楽しみを与えてきたこのアプリにとって、これは超現実的な展開だ。

しかし、Refaceの従業員がロシアの侵攻を直接体験していることから、チームは、この状況に対する世界的な認識を高め、人々に抗議を促すために何かする必要があると判断した。

画像クレジット:Reface

ウクライナからTechCrunchにメッセージを寄せたRefaceのCEOで共同創業者のDima Shvets(ディマ・シュヴェッツ)氏は、次のように語っている。「Refaceは大規模な情報キャンペーンを開始し、すべてのロシア人ユーザーにプッシュ通知を送り、我々の都市におけるロシアの攻撃の証拠を示し、ウクライナとともに立ち上がり、抗議行動に出るよう人々に呼びかけました。さらに、世界中のユーザーに対して、ウクライナを支援するためのアプリ内メッセージを追加し、現在、当社のアプリで作られたすべてのビデオには、#standwithukraineとウクライナ国旗の透かしが入っています」。

「我々はこのキャンペーンがいかに危険なものであるかを理解し、すべてのリスクを負っています。すでに多くの星1つのレビューや、真実を見る準備ができていなかった人たちからの報告を受けています」とも付け加えた。

Refaceは、ロシアにいる550万人のユーザーを対象に、抗議を促すプッシュ通知と、ウクライナ国内の戦争映像のスライドショー(焼け落ちた建物や爆撃を受けた建物、避難しようとする市民の写真など)へのリンクを送信する。

ロシアで展開されているスライドショーに添えられたキャプションには、次のように書かれている。「ロシアの顔に泥を塗れ」「一緒に戦争を止められる」「通りを埋め尽くせ」「我々が反対していることを世界に示せ」。

Refaceの広報担当者は「最初の目標は、ロシア人に本当の情報を広め、独立したメディアや信頼に値する情報源にアクセスできないロシアの人々に抗議を促すことです」と語った。

「リスクを理解し、そのすべてを負っていますが、それは我々の自由のために支払う小さな代償です。そして、App StoreとGoogle Playが我々をサポートすることを願っています」。

ロシア政府がロシアの主要メディアを支配しているため、ロシア国民は日常的に国家のプロパガンダにさらされている。例えば、ウクライナへの侵攻は「特別軍事作戦」であり、戦争行為や理不尽な侵略ではない、というプーチン大統領の主張などだ。

つまり、プーチン大統領の軍が隣国ウクライナを陸・空・海から砲撃し始めて以来、多くの一般ロシア人はウクライナ国内の映像を見たことがないことを意味する。

ロシア政府はまた、外国の主要ソーシャルメディアプラットフォームによって、プロパガンダの発信が制限されるのを防ごうと動いている。

同政府は2月25日、Facebook(フェイスブック)へのアクセスを一部制限すると発表した。明らかに、ソーシャルメディアプラットフォームがロシア政府とつながりのあるメディアに対して事実確認のラベルを貼ったことに対する報復だ。

関連記事:ロシア、国内でのフェイスブックへのアクセスを部分的に制限すると発表

ロシアのウクライナ侵攻を非難する立場を取ることで、Refaceはロシアのインターネット規制機関Roskomnadzorから同様の措置を受ける危険性がある。Roskomnadzorは、例えば、Apple(アップル)や Google(グーグル)のモバイルストアからRefaceアプリを排除するよう働きかけるかもしれない。

地下鉄に避難しているウクライナに残ったRefaceのスタッフ(画像クレジット:Reface)

ハイテク大手2社は9月、ロシア国家からの圧力に屈し、獄中のロシア政府批判者Alexei Navalny(アレクセイ・ナヴァルニー)氏の組織が作成した戦術的投票アプリをストアから削除した。

Roskomnadzorは、Smart Votingアプリを削除しないなら罰金を科すと脅した。

Roskomnadzorは以前にも、ロシア国民がローカルのアクセス制限を回避することを困難にしようと、VPNアプリを標的にしたことがある。

しかし、ロシアの情報形成のためのサイバー活動は、アクセス制限をはるかに超えて広がっている。Refaceに反戦メッセージが追加されて以来、突然星1つのレビューが殺到したのは、ロシア政府の支援を受けた偽情報屋が、反ウクライナ政策の一環として、アプリの評判を落として利用意欲を低下させようとする協調行動である可能性が少なくともある。

また、このほど新たな制裁を発表したEUは、悪名高いロシアのトロール工場(別名:インターネットリサーチ機関)とロシアの独裁者の出資者であるYevgeny Prigozhin(エフゲニー・プリゴジン)を、制裁対象の団体と個人の拡大リストに追加したことも注目される。

しかしRefaceは、反戦メッセージを公開して以来、同社のアプリに対する否定的なレビューが、ロシア政府への協調行動かどうかを判断するのは難しいと述べた(もちろん、もともと純粋な娯楽アプリであるRefaceが、反戦メッセージを送るという決定を下して、一部のユーザーを単に困らせたということは十分にあり得るし、おそらくかなりあり得ることだ)。

否定的な反応を受け、Refaceは「ウクライナの現状について世界に情報を提供し続ける」ことができるよう、人々に「App StoreとGoogle Play Storeでの評価を高く保つ」ことへの協力を呼びかけている。

つまり、アプリの評価さえも、サイバー戦争のプロパガンダの戦場として流用することができるようだ。

Refaceのチームが直面している現場の状況について尋ねると、チームのスタッフの多くは現在紛争地帯で仕事をしており、スタッフのほとんどがまだウクライナにいる、とRefaceは話した。ただし、12月以降、出国したり、海外でリモートワークをしている人もいるという。

男性の社員は、侵攻以来、政府の規制により国外に出ることができない。

Refaceの広報担当者はウクライナにいるスタッフについて、多くのスタッフはより安全な場所を求めてウクライナ西部に移動し、他のスタッフはキエフに留まって「防空壕から情報的・技術的に支援」していると話した。

また、自主的に国防軍に参加した人もいるという。

「チームは分裂を余儀なくされたものの、これほどまでに団結したことはありません」と広報担当者は語り、こう付け加えた。「私たちは勇敢で強く、ロシアの侵略者に滅ぼされることはないでしょう。しかし、世界からの全面的な支援なしには、この戦争を止めることはできません」。

ウクライナでの戦争中の別のReface従業員の仕事場(画像クレジット:Reface)

Refaceは世界の指導者たちに対して、ロシアに対してより厳しい制裁を科すとともに、ウクライナへの支援(武器など)を強化するよう求めている。

SWIFTに関しては、EUの首脳は禁止措置をめぐって揺れているように見えたが、2月25日、EUは他の多くの措置とともに、ロシアの銀行市場の70%を排除する制裁措置に合意した(ロイターより)。

EU委員長は週末に、ロシアの国営メディアであるロシア・トゥデイ(RT)とスプートニク(およびその子会社)に対し「前例のない」さらなる措置を講じると発表した

声明の中でEUのUrsula von der Leyen(ウルズラ・フォン・デア・ライエン)委員長は、ロシア政府の「メディア・マシンは…プーチンの戦争を正当化し、我々の連合に分裂をもたらすために、もはや嘘を流すことはできないだろう」と述べ、EUは「欧州におけるロシアの有害な情報操作を禁止するツールを開発中」だと付け加えた。

EUが何を意図しているのか、禁止令が実際にどのように機能するのか、テレビ局だけでなく、そのコンテンツをホストしているオンラインプラットフォーム(YouTubeなど)にも適用されるのか、あるいは、穴だらけの(誤)情報時代にロシアのプロパガンダマシンを阻止するという話に本当に意味があるのか、正確にはわからないが、EUが試みたいと言っているという事実は注目される。

デジタル政策の立案において、EUの議員たちは往々にして言論統制と非難される可能性のある措置を提案することに非常に慎重だ。しかし、プーチンはEUの議員たちにその一線を越えさせてしまったようだ。

画像クレジット:Alain Pitton / NurPhoto / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

グーグル、ウクライナでGoogleマップのリアルタイム交通状況ツールを無効に

Alphabet(アルファベット)は米国時間2月28日、取材に対し、ウクライナでGoogleマップのライブ交通状況ツールの一部を無効にしたことを明らかにした。Reuters(ロイター)が報じたこのニュースは、同国がロシア軍からの攻撃に直面している中で、同社が地元当局と協議した後に発表された。該当する機能に関して、広範なグローバルアクセスは無効になるものの、現地ドライバーのためのローカルターンバイターンナビゲーションは有効になっているとのこと。

人気の高い同社のマッピング技術は、ウクライナ侵攻の当初から意外な役割を担ってきた。カリフォルニア州のある研究施設では、ロシアの「特別軍事作戦」が公式に宣言される数時間前に、Googleマップの交通データと衛星画像を組み合わせて交通渋滞を発見し、ウクライナ国境に向かうロシア軍の接近を察知することができたという。

研究者のJeffrey Lewis(ジェフリー・ルイス)博士は、The Washington Post(ワシントン・ポスト)にこう語っている。「昔なら、現場で起きていることを教えてくれる記者に頼ったところですが、今日ではGoogleマップを開くと、キエフから逃げる人々を見ることができてしまいます」。

Alphabetの動きは、ロシア軍がウクライナ軍の動きを追跡するために、同様に情報を悪用する可能性があるという懸念からきているようだ。この件に関してAlphabetは、いつスイッチをオフにしたのか、他の世界的な紛争で同様の行動をとったことがあるのか、など具体的なことは何も述べていない。

現地では、ウクライナの人々はこの問題に対して、もっとはるかにオールドスクールなアプローチを取っている。同国の道路局であるUkravtodor(ウクライナ道路公団)は、ロシア軍を混乱させるため、道路標識を撤去し始めた

Ukravtodorは26日にソーシャルメディアに「やつらの地獄直行を手伝おう」と書き込んだ。「Ukravtodorは、すべての道路組織、領域共同体、地方自治体に、近くの道路標識の撤去を直ちに開始するよう呼びかけています」。

GoogleはTechCrunchの取材に対し、先週始まった侵攻に関しては直接のコメントを控えた

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(文:Brian Heater、翻訳:Den Nakano)

ツイッターがロシア国営メディアにリンクするツイートを特別にマーク、リーチの制限狙い

Twitter(ツイッター)は米国時間2月28日、ロシア政府がウクライナへの侵攻を続けていることを踏まえ、ロシア政府と結びついた偽情報の拡散を防ぐための新たな措置を発表した。

同社は、ロシア政府とつながりを持つメディアからのリンクを含むツイートに、その関連性を示すラベルを追加することを開始する。このラベルにはオレンジ色の感嘆符が付き、Twitterユーザーに「stay informed(情報に注意 / 情報源を知りましょうという意)」と警告している。

Twitterはまた、これらのニュース組織が幅広いオーディエンスにリーチする能力を弱めるため、プラットフォーム上でロシア国営メディアの可視性を低下させることを開始する予定だ。

ロシア政府とつながりのあるツイートに対する変更は、直ちに展開される。Twitterによると、今後数週間のうちに、他の「政府系メディアアカウント」についても同様のラベルを追加する予定だという。

「ロシアのウクライナ侵攻に関して、人々がTwitterで信頼できる情報を探している中、当社は自分たちの役割を理解し、真剣に受け止めています」とTwitterのサイトインテグリティ責任者であるYoel Roth(ヨエル・ロス)氏はツイートで述べている。「我々の製品は、あなたが見ているコンテンツの背後に誰がいるのか、そして彼らの動機や意図が何であるかを簡単に理解できるようにするべきです」とも。

Twitterは2年前に国営メディアのアカウントにラベルを付け始めたが、これらのタグはアカウントのプロフィールページに表示され、ツイート自体のラベルほどには目につかない。

同社は政府系メディアのアカウントによる広告を許可していない。これは、中国政府とつながりのある多数のアカウントが香港での抗議デモに関するプロパガンダを拡散したことを受けて、2019年に実施した変更だ。

ロス氏は、ロシアのウクライナ侵攻が始まった数日前から、ロシア政府系のメディアにリンクするツイートが1日4万5千件以上見られるようになったと付け加えた。同氏はこの新しいラベルを、Twitter上の会話に「有用なコンテキストを加える」方法であり、グローバルな選挙やパンデミックに関するツイートで同社が行っている取り組みと一致するもの、と位置付けた。

関連記事:ウクライナがロシアにハッキングで対抗する「IT部隊」を募集し反撃、テックリーダーにも参加を呼びかけ

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Den Nakano)