ロシアのスマホ市場でシェア1位のサムスンが同国向け製品出荷を停止、家電や半導体も

Samsung Electronics(サムスン電子)は現地時間3月5日「現在の地政学的情勢のため」ロシアへの全製品の出荷を停止していることを明らかにした。

同社は「次のステップを決定するため、この複雑な状況を積極的にモニターし続ける」と述べている。

Samsungは、ロシアでのサービスを停止する予定があるかどうかについてのコメントを避けた。事情に詳しい関係者がBloomberg(ブルームバーグ)に語ったところによると、輸出停止対象はスマートフォンや半導体、家電などを含む全製品だという。

制裁に参加したMSCやMaersk(マースク)などの世界的な海運会社がロシアの港での全運航を停止することを決定し、ロシアへの航路やフライトが停止している。韓国の海運会社であるHMM(旧称:現代商船)も先週、サンクトペテルブルクへの貨物サービスを停止し、Samsung、LG、Hyundai(現代)などの韓国企業がロシアに製品を送ることができなくなった。

4日、ウクライナの副首相兼デジタル相のMykhailo Fedorov(ミハイロ・フェドロフ)氏は、サムスンのJong-Hee Han(ハン・ジョンヒ、韓宗熙)副会長宛てに送った手紙で、ロシアでのサービスや製品の供給を一時的に停止するよう促した。

フェドロフ氏は、4日にツイートした手紙の中で「歴史の一部となり、このような異常事態に協力して頂きたいのです」と述べている。「そうした行動がロシアの若者や活動的な人々を動かし、不名誉な軍事侵略を主体的に阻止することにつながると信じています。私たちは貴社の支援を必要としています。2022年、住宅地、幼稚園、病院を狙う戦車、多連装ロケットランチャー、ミサイルに対して、近代的な技術はおそらく最良の応酬となるでしょう。ウクライナとともに立ち、何百万人もの罪のない命を救ってください!」。

サムスンは声明でこう述べている。「私たちの思いは、影響を受けたすべてのみなさまとともにあります。全従業員とその家族の安全を確保することを最優先に考えています。当社は、難民のための援助を含む、この地域の人道的努力を積極的に支援する予定です」。

同社は、100万ドル(約1億1500万円)相当の家電製品を含む600万ドル(約6億9200万円)を現地の人道支援活動に寄付する他、従業員からの自発的な寄付も行っている。

ロシアにおけるスマートフォン市場は、Statcounterのデータによると、2021年にはSamsungが約26.6%のシェアを獲得してトップに立ち、23%を占めるApple(アップル)と19.9%のXiaomi(シャオミ、小米科技)がそれに続いている。

このニュースは、ウクライナ侵攻を受け、多くのテック企業がロシアでのサービス運営を停止する決定を下した数日後に発表された。

Apple(アップル)は先週、ロシアでの製品販売を停止したことを発表した。Microsoft(マイクロソフト)も、ロシアでの新規販売製品・サービスをすべて停止したと発表している。

画像クレジット:Karlis Dambrans / Getty Images

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(文:Kate Park、翻訳:Den Nakano)

サムスン、ハッカーによる社内ソースコード流出を確認

Samsung(サムスン)は、ハッカーが生体認証のロック解除操作に関するさまざまな技術やアルゴリズムのソースコードを含む約200ギガバイトの機密データを入手し、流出させたことを確認した。

NVIDIA(エヌビディア)に侵入し、その後数千人の従業員の認証情報をオンラインで公開したのと同じハッキンググループ「Lapsus$」が、この情報漏洩に関わっている。Lapsus$は、Telegramチャンネルへの投稿で、Samsungの携帯電話が機密処理を行うために使用するTrustZone環境にインストールされた信頼できるアプレットのソースコード、すべての生体認証ロック解除操作のアルゴリズム、最近のSamsung Galaxyデバイスすべてのブートローダーのソースコードを入手したと主張している。

また、盗まれたデータには、米国で販売されるSamsungのスマートフォンにチップセットを供給している米国のチップメーカーQualcomm(クアルコム)の機密データも含まれているとされている。

ソースコードにアクセスすることでハッカーは、他の方法では容易に発見できないセキュリティ上の脆弱性を見つけることができ、影響を受けるデバイスやシステムが悪用やデータ流出のリスクにさらされる可能性がある。

SamsungとQualcommの広報担当者にコメントを求めたがすぐに返事はなかった。しかし、ブルームバーグと共有した声明の中で、Samsungは特定の社内データに関する「セキュリティ侵害」を確認したが、ハッカーによる顧客や従業員の個人データへのアクセスはないと述べた。

「当社の初期分析によると、情報漏えいはGalaxy端末の操作に関連する一部のソースコードに関係していますが、当社の消費者や従業員の個人情報は含まれていません」とSamsungの声明にはある。「現在のところ、当社の事業や顧客への影響はないと考えています。我々は、このようなインシデントを防止するための措置を実施しており、混乱することなく、顧客にサービスを提供し続けます」。

Lapsus$が、NVIDIAに向けて奇妙さを増している要求をしたのと同様に、データを流出させる前にSamsungに身代金を要求したかどうかはまだ明らかではない。このハッカー集団はNVIDIAに対し、物議を醸したLite Hash Rate (LHR)機能を無効にするよう求め、さらにはmacOS、Windows、Linux デバイス用のグラフィックチップドライバのオープンソースを要求した。

この要求の期限は3月4日だったが、ハッカー集団はまだその脅しを実行していない。

画像クレジット:David Paul Morris / Bloomberg

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(文:Carly Page、翻訳:Nariko Mizoguchi

位置情報ビッグデータのクロスロケーションズが主要13業界別の人流変化トレンドを公開、推計来訪数値データ販売も開始

位置情報ビッグデータを扱うクロスロケーションズは3月7日、ビッグデータ解析エンジン「Location Engine」を使用し主要業界の店舗・施設周りの日々の人流変化をグラフ化した「主要13業界別人流トレンド」を公開した。13種類の業界を扱っており、各業界の全国の店舗位置情報データを網羅している。また、公開されているグラフの基となる「業界別推計来訪数値データ」は、ビジネスデータとして活用できるよう3月中に販売を開始する予定。

業界別人流トレンドに登録されている業界は、コンビニエンスストア、スーパー、ホームセンター、ファミリーレストラン、ドラッグストア、家電量販店、テーマパーク、百貨店、ファストフード、ガソリンスタンド、自動車販売店、ホテル・旅館、大型ショッピングモール。データを基としたトレンドのグラフは日々更新し、業界別の人流トレンドの昨日比と昨年比を「見える化」している。同サイトでは全国主要60都市の「主要都市人流トレンド」も公開されている。

各業界別の店舗・施設数

各業界別の店舗・施設数

同社人流データは、スマートフォンアプリのGPSデータ(ユーザーから個人情報を紐づけない形で分析利用することを目的に、第三者利用について許諾を得たデータのみを利用)の位置情報を、Location Engineにより地図・施設情報と連携させて解析した推計データという。これを基に、Location Engineの数値データを利活用するプラットフォーム「Location AI Platform」の推計来訪速報機能によりグラフ化している。

こうした人流データそのものはすでに、マーケティング、店舗開発、投資情報、交通路線開発、屋外広告などに利用される動きが広まっている。都市・地域別の人流データについては取り組んでいる企業もあり、国土交通省などからデータを取得可能である。クロスロケーションズによると、業界別のトレンドデータは他になく、全国の各店舗位置情報データを基にした分析データは国内初という。

業界別の推計来訪数値データは、ユーザーの動向分析や各業界の店舗周りでの人流の違いが把握できるなど、リアルとデジタルを連動させた取り組みが可能になるため、様々な業種業態でのサービス向上につながるとしている。

業界別人流トレンドで表示されているグラフの基となる推計来訪数値は、業界別合計日別データとして提供する。販売価格は1業界につき6カ月で税込1万9800円、月々3300円から。オプションで過去のデータ提供も可能。

クロスロケーションズは2017年11月に設立。「多種多様な位置情報や空間情報を意味のある形で結合・解析・視覚化し、誰でも活用できるようにすること」をミッションとしている。位置情報をビッグデータをAIが解析・視覚化する独自技術Location Engineと、それをビジネスに活かすプラットフォームLocation AI Platformの開発・提供により、ロケーションテックを推進している。

名刺・ウェブサイトから採用時のオンボーディングまで、様々なデザインの事例を集めたCocoda運営のalmaが1.3億円調達

デザインプロセスとデザインチームが集まるプラットフォーム「Cocoda」(ココダ)を運営するalma(アルマ)は3月7日、第三者割当増資により総額1億3000万円の資金調達を実施したことを発表した。引受先は坂田一倫氏(Mentally CEO)、関口裕氏(SmartHR コミュニケーションディレクター)、山下あか理氏(フリーランスデザイナー)といったエンジェル投資家。調達した資金は、プロダクト強化とマーケティング強化に向けた組織拡大にあてる。

Cocodaは、普段は見えにくい「デザインの裏側」をデザインケース(デザインの事例)として明らかにするプラットフォーム。2022年2月時点でのユーザー数は約3万4000人。掲載事例はウェブサイトや名刺のデザインをはじめ、採用時のオンボーディングデザイン、社内で運用するデザインシステムなど、見た目のデザインに限らない事例まで集まっているという。

デザインチームやプロダクトチームが利用者として参加しており、実際の設計過程やデザインの裏側をデザインケースとしてまとめ発信しているため、普段の業務における試行錯誤や制作プロセス、組織体制といった事例も知ることができるとしている。

また、チームのデザイン活動を支える新たなプロダクトも実験しているそうだ。そのうちの1つ「Cocoda Board」は、ユーザー情報をまとめ、ユーザーからの声や要望を集約し整理と可視化が行える管理するツールとなっている。

東京大学が人体のデジタルツイン作成を完全自動化、ビデオ映像入力から運動解析・筋活動解析・データベース化まで

東京大学が人体のデジタルツイン作成を完全自動化、ビデオ映像入力から運動解析・筋活動解析・データベース化まで

ゲームエンジン「Unity」を用いた専用アプリで、骨格運動と筋活動の3次元データを可視化

東京大学は3月3日、複数のカメラで撮影したビデオ映像から人体のポーズをコンピューター上に3次元再構成し、運動解析、筋活動解析の後、ただちにデータベース化して可視化するまでを完全自動化するサービスを開発したと発表した。スポーツ、介護、医療など幅広い分野での運動データの利用が可能になるという。アバターやロボットの全身運動のデータ取得にも使えるとしている。

同研究は、東京大学大学院工学系研究科 人工物工学研究センター 社会連携講座「ヒューマンモーション・データサイエンス」の中村仁彦上席研究員、東京大学大学院情報理工学系研究科 池上洋介助教、東京大学大学院工学系研究科 人工物工学研究センター HERNANDEZ Cesar特任研究員、東京大学大学院情報理工学系研究科 櫻井彬光氏ら研究グループによるもの。人の体のデジタルツイン(コンピューター上に再現された「双子」)を作成しデータベース化するためのビデオ映像入力から筋活動出力までの工程を、完全自動化することに成功した。

東京大学が人体のデジタルツイン作成を完全自動化、ビデオ映像入力から運動解析・筋活動解析・データベース化まで

カメラ4台を用いたモーションキャプチャーの様子

研究グループはこれまでに、モーションキャプチャーで得られた骨格の運動から関節に働く力や筋活動を推定する技術、骨格モデルを対象者の体型に合わせる骨格スケーリング、複数カメラで撮影した映像から骨格運動を3次元に再構成し筋活動解析を行う技術などを開発してきた。また、モーションキャプチャーにおいては、体にマーカーを装着することなく行える効率的な方法も編み出している。

今回の研究では、映像入力から筋活動の出力までを支える一連のアルゴリズムを統合し、全体の計算をパッケージ化してAmazon Web Services(AWS)上に実装することに成功した。また、計算を完了しデータベースに記録されたデータは直後から検索が可能になり、可視化システムによりグラフ表示も行えるようになる。さらに、ゲームエンジン「Unity」を用いた専用アプリで運動を3D表示することも可能となった。

東京大学が人体のデジタルツイン作成を完全自動化、ビデオ映像入力から運動解析・筋活動解析・データベース化まで

グラフ化された運動解析データ

以前は、計算段階で人手による例外処理を必要とするなど、生産性に限界があったため、特定のアスリートに限った運動解析しか行えなかったが、この全自動化されたシステムを用いれば、多くの人の運動解析が可能となる。研究グループは、「青少年スポーツ選手、競技スポーツの選手からスポーツ愛好家、リハビリや健康ために運動を行う高齢者まで、広い世代の多くの方々に運動解析や筋活動解析を使ってもらえるようになった」と話す。今後は「チーム競技のデジタイズとチームプレイの解析、計算の効率化・高速化、スポーツ・データサイエンティストの養成」などの研究に取り組み、東大発スタートアップでの商用実施を目指すとのことだ。

アストンマーティン、Britishvoltと電池セル技術を共同開発

英国の高級車メーカー、アストンマーティンが、リチウムイオン電池技術会社であるBritishvolt(ブリティッシュボルト)と覚書を締結した。両社は、高性能車向けのバッテリーセル技術の開発に向けて協力する。

アストンマーティンは、2025年に同社初のバッテリー式電気自動車を発売する計画で、現行のスポーツカーの1つを直接置き換えることになると見られている。また、2026年までにはすべての新商品ラインに電動パワートレイン(動力伝達装置)の選択肢を提供し、2030年までには中心ラインナップを完全電動化することを目標としている、と同社はいう。

完全電動化へのロードマップはまだ公表されていない。

アストンマーティンとBritishvoltの共同研究開発チームは、特注モジュールとバッテリー管理システムを含むバッテリーパックの設計、開発、量産化を共同で行う。この共同研究開発がどこで行われるのかについての問合せに、両社はまだ回答していないが、現在Britishvoltは、ノーサンバーランド州カンボワにある45GWhのギガプラントに取り組んでいる。同プラントは2027年にフル稼働する予定で、年間45万台の電気自動車用の電池パックを生産できるようになる予定だ。

2022年の1月、Britishvoltはこのプロジェクトのために英国政府から23億ドル(約2642億円)の資金を確保した。この資金を使って、Britishvoltは大量生産を後押しするために、ニッケル含有量の高いバッテリーとエネルギー密度の高い材料の開発に注力することになる。さらに先月には、Britishvoltはコバルト採掘の巨人Glencore(グレンコア)から5400万ドル(約62億円)の投資を受けてシリーズCを開始した。このラウンドでは合計2億6400万ドル(約303億3000万円)の調達が目指されており、その一部は計画中のバッテリー工場と研究開発センターに向けられる予定だ。

Britishvoltは先月、4つの自動車メーカーと契約を結んだことも発表しているが、そのうちの1つは英国の自動車メーカー・ロータスだ。アストンマーチンもその4社のうちの1社である可能性があるが、Britishvoltはそのことについて回答していない。

アストンマーティンは電動化ロードマップの一環として、同社初のプラグインハイブリッドカー「Valhalla(ヴァルハラ)」の納車を2024年初頭までに開始する予定だ。Valhallaに、Britishvoltのバッテリーが搭載されるかどうかについては明言されていない。

画像クレジット:Aston Martin

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:sako)

遠隔操作・AIロのTelexistence、物流施設の低温エリアなどで自律制御・遠隔操作による新型ハイブリッドロボの実証実験

遠隔操作・AIロのTelexistence、物流施設の低温エリアなどで自律制御・遠隔操作による新型ハイブリッドロボの実証実験

遠隔操作・AIロボットの開発・事業を手がけるTelexistence(テレイグジスタンス。TX)は3月4日、独自AIシステムによる自動制御と人による遠隔操作のハイブリッド制御ロボット技術を核とした新たな物流オペレーションの開発を目的に、実証実験を開始した。

実証実験を行うのは、低温物流のニチレイロジグループ本社と、物流事業を展開するセンコーの2社。第1弾として、ニチレイロジグループの物流施設にある冷蔵エリアにおいて、遠隔操作ロボットがカゴ台車にさまざまな荷物を積み込む(混載積み付け)実験を行った。2022年秋には、センコーの大手小売業向け物流施設にて実験を行う予定だ。

実験に使用されたロボットは、協働用ロボットアーム、自律走行搬送ロボット(AGV)、エンドエフェクター、遠隔操作機構で構成されたもの(協働用ロボットアームとAGVは他社製を採用)。

パレットへの積み付けや積み下ろし(パレタイズ、デパレタイズ)を行うロボットは、一般には床に固定される。そのため稼働範囲が限定され、ロボット作業の前後の工程にその他の移動用機器(マテハン機器)を準備する必要がある。これに対してTX製ロボットは、電源を搭載しているため移動をともなう作業にも対応し、また時間帯に応じて作業場所を変えるなどの柔軟性がある。同時に、オペレーターが遠隔で荷物や積み付け場所を目視で確認するため、保冷カバー付きのカゴ台車への積み付けのような複雑な作業を要する場面でも、最適な形で効率よく荷物を扱うことができる。

遠隔操作・AIロのTelexistence、物流施設の低温エリアなどで自律制御・遠隔操作による新型ハイブリッドロボの実証実験

段ボールを側面から把持した状態でのカゴ台車への積み付け

遠隔操作・AIロのTelexistence、物流施設の低温エリアなどで自律制御・遠隔操作による新型ハイブリッドロボの実証実験

遠隔操作オペレーターとコックピットビュー

この実証実験は、「労働者からすべての身体的労働作業を解放する」というミッションに合致するものだとTXは話す。これは、身体への負担が大きい冷蔵エリアでの作業や重たいケースの運搬をロボットに代替させ、労働環境の改善と生産性の向上を目指す実験だとしている。

またニチレイロジグループは、人手不足への対応や作業者の負担軽減、さらには現場作業の「誰でもできる化」を目的とした業務革新に注力。人間と機械の双方の特性を活かした最適な作業体制の構築を進めている。冷蔵エリアの作業を人が事務所から遠隔で行うことで、「物流センター作業におけるリモートワークとストレスフリーな作業環境構築の可能性」を検証するという。

秋に実証実験を予定しているセンコーは、すでに2014年にパレタイズアームロボットを導入し、その後もAGVや省人化、省力化機器の導入を積極的に進めているが、TX製ロボットに期待するのは、その移動性だ。

時間帯や業務の都合に合わせて移動できるため「ロボットの稼働時間が飛躍的にアップする」という。また遠隔操作で人が常時監視するため、トラブル発生時に迅速な対応が可能になる点も挙げている。夏場の作業などをロボットに担わせ、「ワークライフバランスを図りながら、時間や場所に限定されない働き方をより多くの人々に提供すること」を目指すということだ。

プロフィールサイト「lit.link」やコミュニティSNS「WeClip」を運営するTieUpsが1億円のシード調達

プロフィールサイト「lit.link」やコミュニティSNS「WeClip」を運営するTieUpsが1億円のシード調達プロフィールサイト「lit.link」(リットリンク)、コミュニティSNS「WeClip」(ウィークリップ)の開発・運営をするTieUpsは3月7日、シードラウンドとして、J-KISS型新株予約権の発行による資金調達を実施したと発表した。引受先は、Headline Asia、ANOBAKA、吉川徹氏(マイベスト代表取締役)。デットファイナンスを合わせ、シードラウンドでの資金調達は総額1億円となった。調達した資金は、lit.linkおよびWeClipの機能拡充、採用と社内体制の強化にあてる予定。

TieUpsは2020年4月に設立のスタートアップ。東日本大震災をきっかけに、SNSが日本のコミュニケーションインフラになるなど、ピンチの時こそ飛躍するサービスが誕生しやすい時だと認識していたので、世論の心理変化によるゲームチェンジが起きると確信し会社を設立したという。

2021年1月リリースのlit.linkは、現在ユーザー数70万人・月間アクセス数4500万PV超に到達。2021年10月リリースのWeClipは現在1000個以上のコミュニティが存在。2022年内にiOSアプリとビジネス機能をリリース予定としている。

急成長するウガンダのスタートアップ、Y CombinatorとGoogleも魅了

現在アフリカ大陸におけるスタートアップ・エコシステムは、ナイジェリア、ケニア、南アフリカ、エジプトのBig 4(ビッグフォー)が支配している。多額のベンチャーキャピタルやその他の投資を受けている国々だ。

しかし、この状況は大陸の他の国々からも注目すべきスタートアップが出現し、投資家がビッグ4以外にリスクを分散すべく新たな機会を探すようになって徐々に変わりつつある。

ウガンダは、アクセラレータのY Combinator(ワイコンビネーター)や、早期および成長期のスタートアップを対象に昨年10月設立されたGoogleの5000万ドル(約57億円)アフリカ投資ファンドといった著名なテック・プログラムに波紋を起こしている国の1つだ。

2021年12月、ウガンダのマルチ・サービス・デジタル決済プラットフォーム、SafeBoda(セーフボーダ)は、Googleの同ファンドから投資を受けた大陸で最初のスタートアップになった。さらに、この国で最初にY Combinator(2022年冬)に入ったスタートアップとなったフィンテックのNumida(ニュミダ)も上流階級に仲間入りした。NumidaはアフリカからY Combinatorの冬学期に入った15番目のスタートアップとして、シリコンバレー投資家の眼鏡にかなう機会を得た。

「すばらしく大きな会社を作り成功した人たちとつながりをもち、フィードバックを受けられることは、私たちのステージにとっては特に、かけがえのない機会です」とNumidaの共同ファウンダー・CEOのMina Shahid(ミナ・シャヒド)氏が、YC参加に関するTechCrunchのインタビューで語った。

Numidaの星は、昨年初めてシードファンドで230万ドル(約2億6000万円)を獲得して以来、輝き続けている。同スタートアップはウガンダの零細企業にリスクベースの融資を提供しており、迅速なビジネスローンの需要の高まりによって、開業以来月々30%成長している、とシャヒド氏は語る。

Numidの与信限度額は3500ドル(約40万円)だが、小企業に対する金額は増額され、利息は借り手のリスク特性に基づいて決められる。同フィンテックは今年中にガーナに進出する計画だ。

ファンディング

上記2件の大型発表以外にも、ウガンダのテック業界は繁栄を続けており、モビリティ、Eコマース、Eヘルス、クリーンテック、フィンテックなどの分野に次々とスタートアップが出現し、あらゆるタイプの投資家をひきつけている。ウガンダは昨年アフリカで大規模な株式ファンドを受けた15か国の1つだったと、Partech(パーテック)のレポートが報告している。

昨年12月、ケニアで運用する資産金融会社、Tugende(ツゲンデ)は、1700万ドル(約19億円)の債務投資を獲得した。同年はそれ以前に、Mobility 54 Investment SAS、豊田通商のベンチャーキャピタル子会社、およびCFAOグループなどの著名な投資家から360万ドルのシリーズA拡張ラウンドを完了している。2012年にMichael Wilkerson(マイケル・ウィルカーソン)氏が設立したTugendeの主要製品は、ウガンダで人気の輸送手段であるバイクタクシーの「リースして所有する」プランだ。ほかにもボート、自動車、販売器具などの収益を生む資産を購入するための融資を行っている。

しかし2021年、Mobility 54はDOB EquityとInfraCo Africaと共に340万ドル(約3億9000万円)を電動バイクのスタートアップ、Zembo(ゼンボ)に投資した。Zemboはウガンダの首都、カンパラでバッテリーの充電・交換ステーションも運営しており、この国の電動バイクの普及の高まりから期待できるビジネスだ。

スタートアップのEnsibuuko(エンシブーコ)も昨年、FCA Investmentsから100万ドル(約1億1500万円)のシード資金を調達した。Gerald Otum(ジェラルド・オータム)氏が2014年に設立した同社独自のデジタル・インフラストラクチャは、信用組合や貯蓄団体の業務自動化を支援する。

現状、この投資ブーム最大の受益者はモビリティとフィンテックといえるだろう。モビリティ・テックでは、東アフリカの国々で人気の輸送形態であるバイクタクシー分野に注目が集まっている。

現在ウガンダの首都、カンパラだけで20万台以上のバイクタクシーが走っていると推定されている。当地では住民が慢性的交通渋滞を回避するために利用している。Bolt(ボルト)、Uber(ウーバー)、SafeBodaといったマルチサービス・アプリは、オートバイのライドシェアリングやデリバリーの市場ですでに活用されている。

ウガンダのEコマース業界も急成長している、と同国の情報通信技術省による2021年の調査結果が示しており、この分野の収益は2025年までに4億2100万ドル(483億円)へと倍増し、ユーザー浸透率は29.1%になると予測している。企業の中には(例えばSafeBoda)、この分野の上昇に乗ずるべく戦略計画を修正しているところもある。

SafeBodaはここ数年、シングル・サービス・プロバイダーから、統合マルチ・サービス・スーパーアプリへと戦略を転換し、ライドシェアリング、オンライン・ショッピング・デリバリーおよび決済(代金支払い、送金授受)サービスを提供している。 Gojek(ゴジェック、GoToが支援するスーパー・アプリ)もナイアガラで利用可能で、他の市場にも目を向けている。

「私たちは東アフリカ以外でも通用するグローバル・プロダクトを作っています」とSafeBodaの共同ファウンダー・CEO、Ricky Rapa Thomson(リッキー・ラパ・トムソン)氏が最近のインタビューで本誌に語った。

一方、ウガンダのテック・エコシステムの成熟と、この国の若者たちとスマートフォンの普及に合わせて、アフリカ大陸全体から何十社ものスタートアップが新たな成長への道を求めてこの国に進出している。
2021年10月、ガーナ発の成長著しいEヘルス・スタートアップで最近3500万ドル調達したmPharma(エムファーマ)がウガンダ市場に進出し、同国最大の医薬品小売業、Vine Pharmace(バイン・ファーマシー)の株式の55%を買収した。ケニアのB2Bマーケットプレイス、Marketforce(マーケットフォース)とSokowatch(ソコウォッチ)およびEコマース・プラットフォームのCopia(コピア)は、ナイジェリアのMaaS(マース、サービスとしてのモビリティ)スタートアップ、Treepz(トリープズ)と組んで、すでにカンパラで運用を開始している。ほかにも、ケニアの物流スタートアップ、Amitruck(アミトラック)をはじめ何十という企業がこの市場を狙っている。

ウガンダは今年注目すべき国の1つである。この国では、世界最長のCOVID学校閉鎖を含むロックダウンが解除されたことを受け、あらゆる分野の活動が再開した。

画像クレジット:mathisworks / Getty Images

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(文:Annie Njanja、翻訳:Nob Takahashi / facebook

くら寿司、「AI桜鯛」を3月11日から数量限定で全国販売―ウミトロン開発のAI搭載スマート給餌機で生育した真鯛を商品化

くら寿司、「AI桜鯛」を3月11日から数量限定で全国販売―ウミトロン開発のAI搭載スマート給餌機で生育した真鯛を商品化

「【愛媛県産】AI 桜鯛(一貫)」。販売期間は2022年3月11日~3月15日(なくなり次第終了)

ウミトロンは3月4日、AI・IoT技術を活用したスマート給餌機「UMITRON CELL」(ウミトロンセル)で育成した真鯛が、回転寿司チェーンの「くら寿司」において販売されることを発表した。「【愛媛県産】AI 桜鯛(一貫)」として、3月11日から3月15日まで数量限定で全国で取り扱う(なくなり次第終了)。価格は110円。同養殖技術で育てた魚を大手外食チェーンで商品化するのは初めての試み。

ウミトロンは、水産養殖にAIやIoT、衛星リモートセンシングなどの技術を活用することで、持続可能な水産養殖の実現に取り組むスタートアップ企業。同社のUMITRON CELLは、スマートフォンなどから生け簀の魚をリアルタイム動画で確認したり、遠隔操作での餌やり操作を行えたりできる水産養殖者向けスマート給餌機。くら寿司、「AI桜鯛」を3月11日から数量限定で全国販売―ウミトロン開発のAI搭載スマート給餌機で生育した真鯛を商品化くら寿司、「AI桜鯛」を3月11日から数量限定で全国販売―ウミトロン開発のAI搭載スマート給餌機で生育した真鯛を商品化

また、AIが魚の食欲を判定して餌量やスピードを最適化・制御できるため、水産養殖者の労働負荷削減、魚のサイズや品質を保つための給餌をはじめ、海への餌の流出を防ぐなど環境面での配慮にも貢献。現在、近畿・四国・九州地域を中心に、主に真鯛、シマアジ、サーモントラウトなどの魚種に導入されている。

くら寿司は、2010年より「漁業創生」をテーマに様々な活動を行なっており、2021年11月には業界初の水産専門会社である子会社「KURA おさかなファーム」を設立。漁業における人手不足と労働環境の改善を目指し、UMITRON CELLを導入した「スマート養殖」の実証実験として、2021年春から愛媛県内で真鯛の委託養殖を開始した。今回販売するAI桜鯛は、このスマート養殖で育てた真鯛で、大手外食チェーンでの商品化は初の試みとなる。

ウミトロンは、UMITRON CELLを活用した真鯛の委託養殖事業を、KURAおさかなファームとの協業で2021年6月頃から本格始動する予定。養殖用の稚魚や餌を委託養殖事業者に提供し、スマート養殖で寿司ネタにできる大きさまで生育してもらい、養殖した魚の全量をKURAおさかなファームが買い取る計画となっている。今後もくら寿司およびKURAおさかなファームとの協働により、クオリティの高い商品の安定供給と、養殖生産者の経営リスクや労働負荷の軽減・収入の安定化に貢献したいという。

TikTokがロシアの「フェイクニュース」法を受け同国内での投稿を停止

TikTok(ティックトック)はロシアの新たな「フェイクニュース」法に対応して、この国でのライブストリーミングと新規コンテンツの配信を停止すると3月6日に発表した。

ロシア下院議会が3月4日に承認した同法は、政府が同国のウクライナ侵攻に関する誤情報とみなした投稿をした者は誰であれ懲役刑に処すると脅している。ロシア軍に関する誤情報を拡散したことで有罪になった者は最長15年の懲役または150万ルーブル、1万4000米ドル(約160万円)の罰金を課せられる。

TikTokは他のいくつかのニュース機関と共に、同国での運用を中止する決定を下した。「人々が深い悲しみと孤独に直面している戦争下に、安らぎと人とのつながりを提供」するためにアプリを使うユーザーおよび社員の安全を確保するため、と同社はツイートした。

ロシア政府はウクライナにおける行動を「特殊軍事作戦」および「平和維持活動」であると説明しているため、それに反するあらゆる記述は危険である。この法律やFacebookを禁止したロシアの決定は、政府の公式声明に相反する言動、あるいは同国軍隊が人道的危機を引き起こしていることを暴露する行為のすべてを抑圧しようとする政府の意図を実証している。

さらに言えば、同法はいかなる反論も圧迫しようとするロシアの行動を象徴している。現在この国では反戦抗議行動が噴出しており、3月6日には53の都市にわたり4000人近くが拘束された。モスクワだけでその数は1400人に上る。

TikTokユーザーはらは、抗議行動あるいは、経済制裁がいかにロシア人の日常に影響を与えているかなどの状況を現地から報告してきた。こうしたサービスの停止は、政府に反対する国民の行動を世界に知らしめる手段をまた1つ減らすことになる。

直近の危機は、ロシア国民がTikTokを政治的戦場として使った最初の事例ではない。1年前、若者たちは、言論の自由を支持し、反権威主義、反プーチン、反腐敗の政治家で活動家のAlexei Navalny(アレクセイ・ナワリヌイ)氏に対する政府の扱いに反対するビデオを制作した。さまざまな政治紛争の中で、ナワリヌイ氏はプーチン政府による複数回の投獄、被毒に直面し、以前の仮釈放違反の罪に問われた。

ナワリヌイ氏の支援を盛り上げ、ロシア政府によるCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)パンデミックや弱体化した経済への対策に対する怒りと不満を表現するために、TikTokはティーンエージャーらがパスポートを切り刻んで投げ捨てるビデオや抗議活動のハウツーを伝えるビデオであふれかえった。

TikTokの停止を受け、こうした情報を投稿していた一部のTikToker(ティックトッカー)らは、新たな聴衆を集めたりストーリーを届ける手段を失ったことを嘆いたが、Instagram(インスタグラム)やYouTube(ユーチューブ)を使って情報を拡散する決意を固めた、ただしこれらのプラットフォームがロシア・ユーザーを遮断しなければの話だ。彼らは聴衆をTelegram(テレグラム)のチャンネルにも呼び込んでいる。

関連記事:
ロシアのウクライナ侵攻へのテック業界各社の対応

画像クレジット:Nur Photo / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nob Takahashi / facebook

近畿大学、大豆イソフラボンを与えチョウザメをすべてメスにすることに成功―キャビア生産の安全な効率化に期待

近畿大学、大豆イソフラボンを与えチョウザメをすべてメスにすることに成功―キャビア生産の安全な効率化に期待

近畿大学水産研究所新宮実験場(和歌山県新宮市)で飼育研究しているコチョウザメ

近畿大学は3月4日、大豆イソフラボンを含んだ飼料を与えることで、コチョウザメをすべてメスにすることに成功したと発表した。これにより、キャビアの生産の効率化と、オスの活用という問題が大きく改善される。

コチョウザメは、東ヨーロッパからロシアにかけて分布するチョウザメの一種で、チョウザメ科の中ではもっとも成長が早く、3年ほどでメスの体重は1kgに達し卵を持つようになる。コチョウザメのキャビアは「スターレット」と呼ばれ、小粒ながら稀少な品種として珍重されている。

しかしチョウザメは、オスとメスが1対1の割合で生まれるため、キャビアの生産効率が低い。そこで、近畿大学水産研究所新宮実験場の稻野俊直准教授を中心とする研究ブループは、 2021年5月から、大豆イソフラボンを用いたコチョウザメのメス化の研究を行ってきた。研究グループは、ふ化後2カ月のコチョウザメを25匹ずつ5つのグループに分け、その3つに大豆イソフラボンの一種であるゲニステインを含んだ飼料を、ゲニステインの配合量を変えて180日間与え、その後70日間にはゲニステインを含まない一般的な飼料を与えた。1つのグループには180日間女性ホルモンを含む飼料を与え、残る1つのグループには一般的な飼料を与えた。

その結果、ゲニステインを少量含む飼料のグループではメス化は見られなかったが、もっとも多く(1gあたり1000μg・マイクログラム)を含む飼料を与えたグループの中から8匹を抽出して調査した結果、コチョウザメのすべてがメス化していた。また、遺伝的にはオスでありながら卵巣を持った個体数の割合も100%だった。

研究グループは、この研究に先立ち、大豆イソフラボンを溶かした水につけナマズをメス化する実験にも成功しているが、大豆イソフラボンの経口投与でコチョウザメをメス化させたのは日本で初めてとなる。今後は、大豆由来の飼料原料によるチョウザメのメス化の研究に取り組むということだ。

【3月7日】掲載記事アクセスランキング・トップ5―NVIDIA社員のパスワード流出、2位はロシアが米向けロケットエンジン販売禁止

【3月7日】掲載記事アクセスランキング・トップ5―NVIDIA社員のパスワード流出、2位はロシアが米向けロケットエンジン販売禁止

掲載記事のうち、3月7日午前7時現在集計で最もアクセスのあった記事5本を紹介。

第1位:NVIDIA社員のパスワード数千件がネットに流出、ハッカー集団から奇妙な要求


半導体製造大手のNVIDIAから1テラバイト分のデータを奪ったと主張するランサムウェア集団は、一味のますます奇妙な要求に応じなければ、同社の「最も厳重に守られた秘密」をすぐにでも公開すると脅迫している。

第2位:ロシアが米国向けロケットエンジン販売禁止、「自分たちのほうき」で宇宙へ飛ぶことを提案


ロシアと米国の間で(他の国はいうに及ばず)緊張が高まる中、ロシアの国営宇宙機関Roscosmosは米国へのロケットエンジンの出荷を停止すると発表した。Roscosmoを率いるドミトリー・ロゴージン氏は、国営放送で「何か他のもの、自分たちのほうきにでも乗せて飛ばせばいい、何になるかは知らないがね」と述べた。

第3位:単純なセキュリティバグが大学キャンパスの「マスターキー」になっている


そのアプリはかなり重要で、彼の通っている大学の学生は、これを使って食事代を払ったり、イベントに参加したり、さらには寮の部屋や研究室を始めキャンパスのさまざまな施設の鍵を開けることもできる。GET Mobileと呼ばれるそのアプリを作ったのはCBORDというテクノロジー企業で、病院や大学にアクセス制御や決済のシステムを提供している。

第4位:Google Playで発見されたデータ窃盗アプリ、数千回ダウンロードされる


オンライン詐欺の管理および防止ソリューションを提供するCleafyの新しいレポートによると、現在、AnatsaやToddlerとしても知られるTeaBotバンキングトロージャンは第2段階の悪意のあるペイロードを介して配布されるように進化しており、ロシア、香港、米国のユーザーを標的にしているとのことだ。

第5位:規制上のハードルをすべてクリアし、マイクロソフトが2.3兆円のNuance買収完了へ

Microsoftは2021年に、200億ドル(約2兆3000億円)でNuance Communicationsを買収すると発表した。Microsoftはヘルスケア分野への進出を実現しようとしたが、規制がますます厳しくなる中、確実に買収できるというわけではなかった。しかし、ようやく規制上のハードルをすべてクリアし、同社は米国3月4日、買収が成立したと発表した。

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EAがロシアとベラルーシでのゲーム・コンテンツ販売を停止、Origin、EA Appでの購入不可に

EAがロシアとベラルーシでのゲーム・コンテンツ販売を停止、Origin、EA Appでの購入不可に

Brendan McDermid / Reuters

ゲームパブリッシャーのEAは現在、ロシアとベラルーシでのゲームの販売を停止しています。ロシア・ベラルーシ国内からは、ゲーム内ストア、EA AppやEAが運営するゲーム販売プラットフォームOriginを通じてのゲームやコンテンツその他の購入がブロックされます。

EAは「ウクライナで起きている戦争に衝撃を受けており、世界中の多くの声とともに平和を願い、侵略行為の停止を訴える。我々はウクライナの人々と連帯感を持って行動する」「まずは現地にいる人々、特異に我々の同僚やパートナーの継続的な安全が第一であり、すでに実行に移している我々のプログラム以上に彼らを支援する最善策を検討している」としています。

先日、EAは人気スポーツゲーム『FIFA』および『NHL』シリーズからロシアチームを削除する措置をおこないました。これはFIFAおよびNHLそれぞれの運営団体がいずれも、ロシアおよびベラルーシのチームの国際大会への傘下を禁止したのを受けてのこと。そしてEAはそれだけでなく「我々が取り得る手段の検討を続けている」としていました。

ウクライナのムィハーイロ・フョードロフ副首相兼デジタル担当相は、ゲーム開発企業やeSports団体などに対して、ロシアおよびベラルーシのプレイヤーアカウントの停止などといった措置を呼びかけています。すでに、ポーランドのCD Projekt RedとBloober Teamはゲーム販売を停止する対応を行い、マイクロソフトも、Xbox本体を含めたゲーム全般のロシア国内での販売を停止しています。一方『Rogue Company』の配信元であるHi-Rez Studiosは、ロシア国内の3~4月分の収益を全額、ウクライナの子ども支援のためにUNICEFに寄付すると発表しています・

ゲームとロシアのウクライナ侵攻の間にはあまりつながりがないようにも思えますが、SWIFTからの締め出しをはじめとする世界各国による経済、消費活動の面からの包囲網は着実にロシアとベラルーシを追い込みつつあるようです。

(Source:EAEngadget日本版より転載)

保育園・幼稚園の成長と経営を支援するマーケットプレイスをWinnieが提供

Winnie(ウィニー)を2016年にSara Mauskopf(サラ・マウスコフ)氏とAnne Halsall(アン・ハウサール)氏が創業した当初は、親向けに開発した育児ソリューションに取り組んでいた。

「育児分野における他のSaaSソリューションは、まずサービス提供者を念頭においていますが、非常に分散した市場のため、推進力を得るのが本当に困難でした」とマウスコフ氏は話す。「私たち自身が親として本当に必要性を感じていたため、マーケットプレイスこそが、自分たちが最もよく理解しており、本当に勝てる場所だと判断しました」。

数年の間に全国の親からの要望を集めた。その後、このスタートアップは、信頼と、家庭のニーズに対する理解を活用して、サービスの提供側をもっと改善したいと考えた。そこで同社は、保育園の規模拡大を支援する製品「Winnie Pro(ウィニー・プロ)」を発表した。同社のサービスは、単に定員の空きを埋めるだけでなく、保育園・幼稚園の成長と経営を支援することを目指す。

まず、これは、小規模な事業者がプロフィールやランディングページを立ち上げ、情報を一カ所に集約するのを支援するというシンプルなものだ。Winnieによると、同社のプラットフォーム上にある25万所の保育園・幼稚園の半数以上は、自らのウェブサイトを持っておらず、親が保育園・幼稚園を探すとき、Winnieのプロフィールが唯一の手段となっている。同社はまた、すでに自らのウェブサイトを持つ顧客に対しても、親たちがすでに認知しつつあるランディングページを提供することにより支援できると考えている。ランディングページは、レビュー、プログラムの詳細、教育のタイプ、ライセンス情報、認証などの機能を備える。

Winnie Proは、マーケティング、登録、スタッフ配置の支援も行う。「ビジネスにとって常に役立つサービスを組み込むことで、サービス提供者が募集を必要とするときだけでなく、常に価値を提供できるようになります」とマウスコフ氏は付け加えた。

新計画は、Unusual Ventures、Homebrew、Day One Ventures、Reach Capitalから投資を受けた同社が、ビジネスモデルを拡大したことも意味している。同社は現在、SaaSのようなモデルを追求している。そのモデルでは、同社の新しいサービスに対し、保育園・幼稚園の規模に応じた月額料金を請求する。

Winnieは以前、保育園や幼稚園に何人の親を紹介したか、つまり「pay-per-lead(ペイ・パー・リード)」のモデルで収益を上げていた。この戦略は、パンデミック時に力を発揮した。Winnieへのアクセスが急増し、売上は8倍になった、とマウスコフ氏はいう。

「サブスクリプション収益とは異なり、ペイ・パー・リードは紹介する親の数に応じて毎月変化します」とマウスコフ氏は話す。「最近の傾向として、多くのサービス提供者が人材不足のため、『今はこれ以上紹介を受けられない」というような制約があります」。

同社は現在、SaaSのような月額で料金を請求するモデルを追求している。料金は保育園や幼稚園の規模に応じて変わる。そして、マーケティング、登録、さらには人材採用を支援する。ベータ版の顧客向けには、Guidepost MontessoriIzziが含まれている。

画像クレジット:Winnie

「サービス提供者がより効率的にビジネスを行うためのバックエンドツールを開発することだけが目的ではありません」とマウスコフ氏は語る。「特に、9〜5時の保育だけでなく、この変化する世界において、親が保育を見つける方法をより良く、より効率的にすることが目的です」。

このビジネスモデルの転換は、同社にとって自然な進化といえる。同社は現在、親から寄せられる要望に基づいて、保育園や幼稚園にコンサルタント的なアドバイスを提供することもできる。例えば、同社がある保育園に対して、その地域の親たちがドロップインケア(スポットで子どもを預かるサービス)を渇望していることを伝える。そして、保育園や幼稚園が需要に応じて採用を行い、最終的に収益を上げるようアドバイスするのだ。

マウスコフ氏にとってこの新製品は、すでに検証済みだ。人とケアをつなぐシンプルなマーケットプレイスだけでは不十分だという事実があるからだ。

「パンデミック以前は、『すべての雇用主が保育施設を併設していたらどうだろう』と、雇用主が提供するヘルスケアと同じようにできないかを常に考えていた部分がありました」とマウスコフ氏は話す。「今、私たちは、その答えは『イエス』だと、これまで以上に確信しています。というのも、人々は毎日オフィスに通うわけではありませんし、ケアの種類も一律ではありません。そして、雇用主は、ほとんどの場合、家族の課題を解決するために、真の意味で貢献していないからです」。

画像クレジット:Sue Barr / Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Nariko Mizoguchi

「秀才1000人の信頼ではなく学生2000万人の納得が必要」Mosは急進的なフィンテックスタートアップを目指す

大学に進学する金銭的余裕がなかった人権活動家でMos(モス)の創業者であるAmira Yahyaoui(アミラ・ヤヒアウイ)氏は、学生と奨学金との橋渡しをするプラットフォームを立ち上げたとき、取り組んでいたイノベーションにひと区切りがついたと感じた。2017年の創業以来、Mosはコミュニティ内の40万人以上の学生に対し、1600億ドル(約18兆5000億円)以上になる学資援助プールへの自由なアクセスを提供している。

現在、ヤヒアウイ氏は、自身が直面したもう1つの金融の障壁を壊すことを目指し、Mosをチャレンジャーバンクへと拡大している。これは、Mosが、学生の大学受験や進学を支援するEdTech事業から、同じユーザー層の生活における複雑な要望をサポートするフィンテック事業へと進化したものだ。

「当社は、自分たちが行っていることとその理由について、かなり急進的に考えている」と同氏はいう。「エリート主義でもなく、ごく限られた人たちのためにやっているわけでもない。米国に根ざす銀行になりたいと真剣に考えている」とし、まずは学生を対象に「それを目標としている」と語る。

この目標は多くの投資家の共感を呼び、Mosの最新の資金調達ラウンドへの参加が競われた。今回のシリーズBでは、評価額が2020年5月時点の5000万ドル(約57億7000万円)から4億ドル(約461億円)に引き上げられ、4000万ドル(約46億1000万円)を調達した。ヤヒアウイ氏によると、このラウンドは、Tiger Global(タイガー・グローバル)の主導のもと、Sequoia(セコイア)、Lux Capital(ラックス・キャピタル)、Emerson Collective(エマーソン・コレクティブ)、Plural VC(プルーラルVC)などが24時間以内に集まり、複数の条件規定書を断ることもあったし、プレゼンのスライドも必要なかったという。

Mosの最初のデビットカードには、当座貸越料、遅延損害金、ネットワーク内ATM手数料が不要などいくつかの主な特徴がある。また、Mosの口座を開設するために最低残高も必要ない。

画像クレジット:Mos

「学生はお金をあまり持っていないため、当座貸越や詐欺など、あらゆる不利な条件に直面している」と同氏はいう。確かに、他のフィンテック企業も、学生の多くが卒業後も銀行を変えないことに着目し、脆弱ではあるものの定着性のある顧客層に同様のサービスを提供する機会があると考えているだろう。Stride Funding(ストライド・ファウンディング)LeverEdge(レバーエッジ)は学生ローン業界に参入しており、Thrive Cash(スライブ・キャッシュ)は合格通知に基づいて資金を提供し、学生向けの資金援助ツールであるFrank(フランク)はJPMorgan Chase(JPモルガン・チェース)に買収されたばかりだ。

「JPモルガンをはじめとするすべての銀行は、自分たちの未来が過去とは異なることを認識しているのだろう。銀行は学生との関係を強めようとしているが、学生は既存の銀行経由では奨学金を利用しない」と同氏は述べる。一方、Mosは、2021年までに15億ドル(約1730億円)以上の奨学金を学生に提供してきた。

Mosはこれまで、奨学金を通じて学生の購買力を高めることで、学生との信頼関係を築いてきたが、この関係が他のフィンテック企業との競争に有利に働くとヤヒアウイ氏は考えている。つまり、自分を信頼し、認めてくれる人たちのユーザー基盤を構築し、その人たちに響く言葉で商品やサービスを紹介するというものだ。

「当社は大人になったばかりの顧客にサービスを提供しているが、将来的には顧客が大学を卒業してアパートを借り、家賃を払うようになるため、当社も顧客と一緒に成長していくのだ」と付け加える。

Mosの創業者であるアミラ・ヤヒアウイ氏(写真提供者:Cayce Clifford)

今回のラウンドに参加したラックス・キャピタルのDeena Shakir(ディーナ・シャキール)氏は、銀行事業は常にMosの「ミッシングピース」だったと述べる。もともとMosは、情報公開の他の側面を担ったり、学生に特化した他の金融商品のプラットフォームになったりと、さまざまな方法で拡大できると考えていたという。今では、この最初の数年間に築いたネットワーク効果により、当然のように次のステップに進んでいると同氏は考えている。

「Mosは、金融アクセスや金融包摂の側面から関わるのではなく、学生にとってのメインバンク、クレジットカード、そしてホームとなるユニークな機会を得たと認識している」と同氏はいう。

当初のミッションを超え、このスタートアップの新しい目標は、確かな収益をもたらす可能性がある。Mosはもともと、奨学金へのアクセス料で収益を上げていた。現在、Mosは仲介手数料で収益を上げているが、その知識は口座を開設すれば誰でも無料で得られる。ヤヒアウイ氏は、Mosが以前のビジネスモデルで「数百万ドル(数億円)」の年間収益を得ていたと述べたが、現在の収益については語らなかった。しかし、チャレンジャーバンク路線を追求したことで、有効な市場が爆発的に拡大したといい「当社の時価総額は、以前の10倍になっている」と語る。

将来的にMosは、学生がお金を支払ってアクセスできる商品セットを作り、アドバイザーとのより実践的な相談や特定の銀行機能などを提供する予定だ。

最近のPayPal(ペイパル)の業績からも明らかなように、すべてのフィンテック企業にとって問題となるのは、長期的なユーザーの質だ。Mosは、デビットカード事業を開始してから数カ月後の11月頃に、成長率が大幅に上昇した。競争の激しいフィンテック業界であるため具体的な成長指標については明らかにしていないが、カードの開始後、最初の四半期に10万人以上の学生がMosに口座を開設したことを紹介する。同氏は、この成長によりMosが米国で10番目に大きなネオバンクになったと推定している。

その学生たちが固定客となるのか、それとも大学に通っている間の一時的な顧客なのかはまだわからない。景品や紹介ボーナスには魅力を感じるが、それは同社にとって長期的な利益につながるのだろうか。

Mosの第一期生となった大学生のJulieta Silva(ジュリエッタ・シルバ)さんは、テキサス州の小さな町で育った。彼女が通う500人規模の学校には、大学進学のためのカウンセラーが1人しかいなかったため、進学に関する相談は、ほとんどMosからTikTok(ティックトック)を介して行っていた(実際、Mosのソーシャルメディアプラットフォームのアカウントには、5万2000人以上のフォロワーがいる)。最初にこのプラットフォームに参加したのは2020年8月で、奨学金を申請するためだったが、このプラットフォームは「複雑な銀行システムの簡易版」を目指して成長してきた。現在、ノースイースタン大学の1年生である彼女は、今でもBank of America(バンク・オブ・アメリカ)のカードを使っているが、日々の生活ではMosのカードに頼っている。友達に登録してもらえば、紹介料を得ることもできるという。

「学内で使われているのはまだあまり目にしないが、私がカードを使うたびに[カードについて]聞かれる。だから、ちょっとした特典を全部教えてあげるが、実際に皆の関心を集めるのはMosのファイナンシャルアドバイザーと、学費のための資金援助だ」と彼女は話す。

画像クレジット:Mos

一方、創業者のヤヒアウイ氏は、NFT(非代替性トークン)やしゃれたロゴ(と重さ!)を施したクレジットカードなど、話題性に気を使ってきた。しかし、ベンチャーキャピタルの支援を得て、大衆向けの事業に乗り出すことにした。

「1000人の秀才の信頼が得られればよいと思っていた」と同氏は述べ、そして続けた。「しかし実際には、2000万人の学生を納得させる必要がある」。

画像クレジット:BreakingTheWalls / Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Dragonfly)

会社がなくても問題……ない?激化するスタートアップ企業への投資とVCのアイデア

これまで好調だった伝統的なベンチャー業界は転換期を迎えているのではないか、と思える理由はいくつもある。最も明白な兆候は、ここ数年、上場前に投資したVCが得た利益が非常に大きい一方で、公募された株式ではそれほど上手くいっていないということにある。2月1日に発表されたWSJのデータによると、過去13カ月間に上場したベンチャー企業の最有力候補たちの株価は初日の終値を下回り、DoorDash(ドアダッシュ、-40%)、Oscar(オスカー、-81%)、UiPath(ユーアイパス、-47%)、Compass(コンパス、-56%)、Robinhood(ロビンフッド、-59%)、Coupang(クーパン、-28%)となっている。

上場前の投資の方も、状況はそれほど健全ではない。1月27日の記事でTechCrunchが指摘したように、シード、シリーズA、シリーズBの各ステージにある企業の収益は、この数四半期は過去数年に比べてはるかに少ない。おそらく、スタートアップ企業の資金調達のペースが格段に速くなっていることが原因だろう(数カ月ではたいして進展することはできない)。一方で、投資家の姿勢も今まで以上に緩く、進展がなくてもそれほど問題ではない、と考えているように見える。「創業者に賭ける」ことが重要なのだ。

VCにリセットが必要かもしれないことを示す最も強力な指標は、まだ起業していない人に投資しようとするVCの熱意である。General Catalyst(ジェネラルカタリスト)のマネージングディレクター、Niko Bonatsos(ニコ・ボナツォス)氏は、これは新しいトレンドではない、としながら次のように続ける。「プレシードやシードが急増したことで、(トレンドは)より顕著になっています」「膨大な数のジェネラルパートナー、ファンドの大型化、ディールの増加、そして私たちは資本を投資することで報酬を得るのですから」。

Upfront Ventures(アップフロント・ベンチャーズ)のMark Suster(マーク・サスター)氏は、それを実行している。2021年秋、同氏は次のように発言している。「例えば、Riot Games(ライアットゲームズ)、Snapchat(スナップチャット)、Facebook(フェイスブック)、Stripe(ストライプ)やPayPal(ペイパル)で仕事をするあなたを知っていたとしたら、私たちは起業時、つまり設計時からあなたを支援します」。

Foundation Capital(ファウンデーションキャピタル)のマネージングディレクター、Ashu Garg(アシュ・ガーグ)氏も、1月20日(日本版は1月25日)のTechCrunchの記事で同じような戦略を話している。「誰かがまだ会社を立ち上げる準備をしているときに、その人とコンタクトをとるというのが私たちの目標で、それが私たちのビジネスのやり方です。まだ会社が創業されてなくても、これこそが私たちのビジネスモデルなのです」。

他の多くのVCも同じ意見のはずだ。

2013年に「SignalFire(シグナルファイヤ)」というVCを設立したChris Farmer(クリス・ファーマー)氏は「定量的」なベンチャー投資を最も早くから提唱し、広く知らしめた人物の1人だ。同氏はSignalFireのプラットフォームであるBeaconを利用し、特許、学術論文、オープンソースへの貢献、財務申告など、200万ものデータソースから得られた5兆以上のデータポイントを追跡し、エンジニアリングの人材の動向を把握しようとしていた。

その当時、このデータをマーケティングツールとして利用していたのはファーマー氏だけだったが、その後、多くの企業が(Beaconほど強力ではないとはいえ)同様のシステムを採用し、公的、私的なデータを使って、仕事を続けている個人、仕事を辞めたものの計画を発表していない個人、あるいは最初のステップとして会社の登記だけを行った個人を追跡している。

中には非常に簡単なデータ収集方法もあり、ボナツォス氏はそれについて次のように話す。「データの中には、何年も追跡できるものもあります」「誰かがTwitterやLinkedInで経歴を変更したら、それは人材を探している人たちに『私は何か新しいことをしています』というシグナルを送っていることになります」。

大手のVCでアナリスト数人といくつかの基本的なスクリプトがあれば、カリフォルニア州などで興味を持ちそうな企業にフラグを立てることが比較的容易になっている。「主要な同業者のうち、少なくとも6社は同じことをしています」「創業者にメールを送ると、時々『おかしいな、今日は何社もメールもくれたよ』と言われます」とボナツォス氏。

実際、今はVCが才能ある個人をストーキングする方法が数多くある。資金を調達し、会社を創業し、それを売却したことでVCの目に留まる人もいる(創業者や初期の従業員はすぐに別の会社を立ち上げようとするだろう、というのがVCの考え方だ)。

エンタープライズ製品の開発経験者は特に狙われやすい。GitHubのようなコード共有プラットフォームを見れば、開発者コミュニティでどのようなプロジェクトが人気かを、投資活動に先駆けて知ることができるからだ。

スカウトプログラムの増加もこの傾向に関連している。VCはディールフローを改善するために、事業会社の幹部やスタートアップの創業者との関係を構築するが、これには、スカウトの対象者が自身のスタートアップを立ち上げた際、最初に連絡して欲しいという期待も存在する。

もちろん、このような方法に意味があるかどうかには疑問が残るし、イノベーションや特定の洞察力(あるいは腹いせ)といった有機的な方法でビジネスを立ち上げた人よりも、VCに起業をすすめられた個人が優れているかどうかは、まだ十分なデータがない。

それでも資本力が大きいVCはこの戦略を続けている。

ボナツォス氏は、人材を探す際「会社を売却するなどして財を成した人が、まだハングリー精神を持っているかどうか」を考え、その人材の考え方が「本当に斬新なのか、それとも焼き直しなのか。過去にやったことをもう一度やろうとしているのか」を見極めようとしている。さらに同氏は「再チャレンジする人材は見つけやすいが、その分立ち上がるまでのコストが余計にかかる」と指摘する。

一方ファーマー氏は、できるだけ早い段階で創業希望者にアプローチすることも続けていて「資金調達市場が活発化している現在は、これまで以上にその必要性が高まっている」と指摘する。

ファーマー氏の説明によると、創業間もないスタートアップへの「参入コスト」は、この2年間で200%高くなっているという。「つまり、オーナーシップを得るためには、より高い評価額でより大きな小切手を切る必要がありますが、逆張りをするなら、超初期段階のリスクを取る方が理にかなっています。なぜなら投資家のリスクは時期が早ければ早いほど少なく、投資はプレミアム付きで戻ってくるからです」。

これは単純な計算だ、とファーマー氏は続ける。「同じ資産に3年前の3倍の価格を支払っているなら、リターンは3倍低くなる可能性があります。もし、ほとんど実績のないスタートアップアクセラレーターの卒業生に2000万ドル(約23億円)を払うのであれば、(創業者の)アイデアがまとまっていなくても、もっと早い段階の創業者を探した方が割に合います」。

多少おかしな話に聞こえるかもしれないが「本当におかしい」のは「投入されるお金の量」だとファーマー氏は観ている。同氏は、いずれにしても、SignalFireはこの方法で資金を投入して企業を存続することができる、と示唆し「いったん成功のシグナルが出てしまえば、(VC同士の)激しい競争に晒されることになる」と話す。

「競争はまさしく血みどろの戦いです」。

画像クレジット:Liyao Xie / Getty Images

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

ヘビーユーザーだからこそ生まれたメタバースでの時間をリッチにするShiftallの新製品

ShiftallのCEOの岩佐琢磨氏は、多い日は6時間以上メタバースに滞在し、VRゴーグルを装着したまま眠ってしまうことがあるほどのヘビーユーザーだ。

そんな岩佐氏は、メタバース内で時間をより快適なものにするプロダクトを同社で開発している。

先に開催されたCESではVR、メタバースの展示は日本での盛り上がりを考えると少なめだったというが、現状、それでも仮想現実に入っていくにはVRゴーグルをはじめとしたガジェットが必要だ。

「ヘッドマウントディスプレイが重いから装着が面倒くさい、家族がいる環境でしゃべりづらいから無言にならざるを得ないといったような課題をなくしたい、もっと快適にメタバース内で生活したい」と岩佐氏はいう。そんなユーザー視点をもとに、Shiftallはメタバースでの生活を快適にする製品を生み出している。

関連記事:自らもメタバースの住人で専用デバイスも開発、Shiftall岩佐氏に聞く「メタバース周りの現状」

メガネなしでもOKで軽量なMeganeX

VRを一気に身近なものにした「Oculus」ブランドのVRゴーグル製品群。最新モデルはOculus Quest 2(現在はOculusではなくMeta。以下、Meta Quest 2)となる。

Meta Quest 2は前モデルと比べて解像度がアップ、30gほど軽くなっているが503gと500mlのペットボトル1本分の重量だ。下を向く、うなずくといった動作で、ズルリとヘッドバンドが外れてしまうこともある。また、決して「軽い」とはいえない重量であるため、長時間使っていると疲れてしまう。

そんな悩みを解決するのが、販売予定価格10万円未満(税込)の『MeganeX』(メガーヌエックス)だ。

MeganeXは「年間2000時間(約5時間半 / 日)以上をメタバース内で過ごすといわれるヘビーユーザー」が快適な体験を得られるようにした、超高解像度、超軽量のメガネ型(ゴーグル型ではない)のVRヘッドセット。折りたたんで持ち運ぶのもラクラクだ。

Meta Quest 2と比べるとその大きさの違いがわかる

両目5.2K(5120×2560)/10bit HDRと高解像度なので、ドット感のないリアルな体験をユーザーに与える。実際にかぶってみたが、(メタバース内の)部屋から見える景色が、本物のそれを見ているような錯覚が生じるほど。約250gと軽いので装着感がない……というのは言いすぎだが、Meta Quest 2に比べると、やはり軽く「ゴーグルをかぶってこの景色が見えている」という感じはしない。

個人的にありがたかったのは、視力0.XXの私がメガネなしで装着できること。Meta Quest 2では、公式で度付きレンズが販売されているが、コンタクトレンズを使うこともある筆者は、ゴーグルのレンズを取り替える手間を考え、購入していない。しかし、メガネをかけたままゴーグルを装着すると、かぶり方によってはお互いに干渉したり、メガネがずれたりして、プチストレスになっていたのだ。

MeganeXでは、レンズの瞳孔間距離を変えられるだけでなく、レンズの下に度数調整を行うノブがあり、かなりの近視でも、メガネなしでくっきり見えるよう調節できる。これなら、年齢とともに視力が変化しても対応可能。メガネを買い換える必要のある現実世界より、メタバースの世界に、どっぷりハマってしまいそうだ。

メタバース内の温度を感じることができるPebble Feel

Pebble Feel(ペブルフィール)は、小石(Pebble)のようなサイズ感のウェアラブルデバイスで、販売予定価格は2万円(税込)前後。肌側(専用ベルトで装着するため、実際に肌に直接触れるような使い方はしない)にあるプレートが、ペルチェ素子により暖かくなったり、冷たくなったりすることで、メタバース内の環境をリアルに持ち込むことができる。

手のひらサイズのPebble Feel

肌側のプレート。ここが冷却されたり加熱されたりする

実際は、このように専用ジャケットを着用する

ペルチェ素子とは、通電することで一端の熱を他端に移動させる特性があるため、その方向を入れ替えることで、プレートを熱したり冷却したりすることが可能。ネッククーラーなどにも採用されているが、Pebble Feelでは、その中でも高性能タイプのものを搭載しているため、わずかな時間で温冷が入れ替わり、移動先のワールドが熱帯でも雪国でも瞬時にその場に合った体験が得られるようになっている。

デモでは、橋を隔てて雪だるまのある雪の降るワールドとストーブのあるワールドを往復させてもらうことができた。セーターなどを着込んでおり、専用ベルトを装着できなかったため、首筋に直接当てて試したのだが、橋の中央では熱くも冷たくもなかったPebble Feelが、ストーブのそばでは熱を帯び、雪だるまの前ではキンキンに冷える、という体験をすることができた。見えているものとのミスマッチがないので、高い没入感を得られるだろう。

家族が寝静まったあとでもメタバースに浸れるmutalk

せっかくメタバースの世界にいるのに、まったくしゃべらない人がいる。「無言勢」と呼ばれる人たちだ。なぜしゃべらないのか。一緒にいる家族に気を使うため、というのが理由の1つにあるという。

それを解決するのが「mutalk」だ。これは、一種のBluetoothマイクで、楕円柱状をしており、口元を覆うことで音漏れを防ぐことができる。

マイクは顔から最も離れた位置に設置されているため、息継ぎの音や、不快な破裂音などが相手に伝わることはない。

実際に、Shiftall 広報 深谷友彦氏を話者として試してもらったところ、通常のボリュームだけでなく、ささやくような声でもクリアに伝わってきた。これなら家族が寝静まったあとでもメタバースの世界に浸れるし、音声チャットを楽しむこともできる。

Windows、macOS、iOS、iPadOS、Androidなどさまざまなデバイスに対応しているので、メタバース内のチャットだけでなく、オフィスの自席、カフェなど、周りに人がいる状況でも会話内容の秘匿性を保ったまま、オンラインミーティングや通話を行える。もちろん、周りに迷惑をかけることもないだろう。

専用バンドで顔に固定できるので、両手にコントローラーを持っていても心配なし。もちろん、外出先では、手に持った状態で、必要なときだけ口元に当てる使い方のほうがスマートだろう。mutalkの販売予定価格は2万円(税込)前後となっている。

バンドで顔に固定。手が自由になる

売り切れ状態が続くほど大人気なフルトラッカー『HaritoraX』も

2020年5月に発売し、予約開始とともに予定数を販売しきってしまうほど人気を博しているアイテムが『HaritoraX』だ。

Meta Quest 2では、ヘッドセットを装着している頭と、コントローラーを持つ両手の計3点をトラッキングするが、HaritoraXを追加で装着することでは腰や足の動きまでトラッキングできる。

地磁気センサー、加速度センサーを搭載したバンドを腰、太もも、ふくらはぎ(または足首)に装着するからだ。まさに「メタバース内にいるのに、布団で寝てしまうこともある」岩佐氏ならではの発想だろう。

「メタバース内でラジオ体操のために集まることがあるけれど、手や頭だけでなく、腰の動きや足の動きもトラッキングできるから、屈伸や、上体そらしなども“やってる感”がある。正座、お辞儀、ヤンキー座りなど、日本人ではおなじみの姿勢をメタバース内で再現できるので、『欲しい!』という人が増えたのだろう」と深谷氏はいう。

Windows PCが必要だが、SteamVRに対応したヘッドセットであれば利用可能。内蔵バッテリーで駆動し、4時間半の充電で約10時間動作する。

半導体不足などにより、製品出荷をした2021年7月からながらく売り切れ状態が続いているが、岩佐氏によれば「数万台単位で作れるだけの部品を発注した」とのこと。販売再開が待ち遠しい製品だ。

今回紹介した製品は以下のものだ(カッコ内は販売予定価格または販売価格。いずれも税込

  • MeganeX (10万円未満)
  • Pebble Feel (2万円前後)
  • mutalk (2万円前後)
  • HaritoraX (2万7900円)

最終回は、岩佐氏が考える、メタバースで生まれると予測されるビジネスや今後求められるガジェット、加熱するNFTとの関連についてお届けする。

ウクライナ、APIスタートアップ、スタートアップの評価額

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

みなさん、こんにちは!このメールのために残しておいた話題があったのだが、予定がずれ込んでしまったので、それは数日後にご紹介する。ということで、本日の分に少し余裕が出たのは良い点だ。

では、ウクライナに対するテック業界の反応、APIスタートアップ、スタートアップの評価額について話すことにしよう。おもしろい内容だと思う。

勇気を見せるテック業界

ロシアがウクライナに侵攻したとき、世界はその泥沼に関わろうとしないのではないかと心配していた。しかし幸いなことに、事態はほぼその逆の様相を見せている。そしてさらに、テック業界が立ち上がった。

しかも、滑稽で悲劇的な今回の侵略に対する、ポジショニングや言葉だけの対応ではなく、ビジネスに影響を与えるような対応だ。Microsoft(マイクロソフト)などがロシアでの販売を中止したり、Airbnb(エアビーアンドビー)が撤退したり、大小さまざまなハイテク企業が騒ぎ立てていたりしていることには、励まされる。

その行動の積み重ねは、どのような結果になるのだろうか?その答はまだわからないが、ロシアも同じように、国民が実際に何が起こっているのかを把握するために利用するかもしれない国内のソーシャルサービスを禁止している。そのため、ロシア国内外からの技術製品・サービスのブラックアウトが起きているのだ。ロシアが、地理的にも経済的にも世界のどれほどの地域と関わっているかを考えると、私たちは実験的な状況を見ていることになる。

おそらく、このテック業界の動きは、より大きな国際的制裁の推進を補完するものとなるだろう。しかしこうした動きは、軍事力を行使して小国を壊滅させようと考えている他の国に対しても、そのような侵略行動への反応は国民国家からだけ起こされるものではないことを示していて、好戦的な国家に少しばかり冷水を浴びせる役目を果たしているかもしれない。

テック業界が、独裁的な帝国主義と手を切りつつあるというニュースを、この先も聞き続けられることを期待したい。

APIスタートアップ

やれやれ。今週は、GGVの新しいAPIスタートアップインデックスについての記事を書いた。それはGGVの新しいプロジェクトだが、好感が持てた。簡単に言えば、GGVは、クールな非公開APIスタートアップのデータベースのようなものを構築しているのだ。当然、VC(GGV)はAPIの話題の中心にいたいので、この取り組みはリサーチプロジェクトであると同時に、ある種のコンテンツマーケティングでもある。

しかし、約8392社のAPIスタートアップ、または自身のモデルに強力なAPIコンポーネントを持つスタートアップを、リストアップする良いきっかけになっている。そして、さらに多くのスタートアップが追加され続けている。そのようなスタートアップの1つがHighnote(ハイノート)だ。同社は他社がカード発行サービスを自社製品に組み込めるようなAPIを開発している。

私は、先の記事を書く際にすべてのリンクを探すために腱鞘炎を患ってしまったので、記事で紹介したAPIスタートアップに新しい名前を追加するつもりはなかったのが、Highnoteの特性の一部が私の目を引いた。同社のウェブサイトでは、同社のサービスを利用することで、カード発行の迅速な立ち上げが可能になると説明されている。そう、それこそが、APIによって提供されるサービスのポイントであり、(問題ではなく)製品が必要とされる場所での複雑さを取り除いた簡潔さを提供するのだ、

そう、そして2日間かけて企業ベンチャーの世界を掘り下げているうちに、ここには似たような部分があることに気が付いた。Airbase(エアベース)がAmex Venturesから資金を調達し、同社のソフトウェアをAmexの顧客に提供する契約を結んだ際、Amexの関心の1つは、基本的に市場投入までの時間だった。Airbaseがすでに作り上げていたものを独自に開発するよりも、提携・出資した方がより迅速に進めることができたからだ。

どこかで聞いたような話では?ある意味、APIスタートアップは、あらゆる企業がこれまで以上に迅速に製品を生み出しテストすることを可能にしている。これは、作るべきか買うべきかの議論を、これまで以上に迅速かつ明確に進められるようになったということも意味する。つまり、中小企業にとってのAPI製品は、既存企業にとってのコーポレートベンチャーキャピタルということだろうか?まあそんな部分もあるということで!

週末に考えたことだが、気になったので共有しよう思った。

みんながやられた

締めくくりは、悪いニュースだ。SaaSの成長率は、中堅企業でも1桁台まで圧縮されてしまった。このことが意味するのは、スタートアップが2桁の収益(ARRなど)伸び率を目標とするならば、ほぼすべての同業他社よりも速く成長しなければならないことを意味する。新型コロナウイルス(COVID-19)の時にソフトウェア会社が得た利益を、株式市場は基本的に失ってしまったのだ。評価額の観点からは、以前もしくはより悪化している。

ARRの100倍に達するリッチラウンドを調達できたスタートアップのみなさん、ご健闘を。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

ビールの醸造かすを生分解性フィルムに変えるMi Terroが1.7億円調達

あるやり手の起業家が、ビール醸造大手AB Inbev(ABインベブ)と家庭用品の大手Unilever(ユニリーバ)が主催する100以上のアクセラレータープログラムに参加し、あるパターンを発見した。醸造所には大量の醸造かすがあり、家庭用消費財にはプラスチック問題がある。この2つの問題の架け橋となるべく登場したのが、農業廃棄物をタンパク質に加工し、プラスチック代替品や飼料などとして利用できるようにするMi Terro(ミテロ)だ。同社は、生産規模を拡大するために150万ドル(約1億7000万円)を調達した。

Mi Terroの創業者Robert Luo(ロバート・ルオ)氏は「洗濯洗剤ポッドTide Podsを思い浮かべてみてください」と話す。「私たちの製品は、Tide Podsで使われているポリビニルアルコールに似ています。唯一Tide Podsと違うのは、マイクロプラスチックが含まれていないことです。私たちの製品は水溶性で、室温で水に分解することができます。また、生分解性を有してもいます。当社のデータでは、自然分解には1年ほどかかるとされています。工業用堆肥化施設では、180日以内に分解できます」と説明する。

ルオ氏は2018年に、中国の叔父の酪農場を訪れたことがきっかけで、会社を立ち上げた。そこでは大量の牛乳が廃棄されていた。そして、腐った牛乳をただ捨てるのではなく、何か価値のあるものを作れないか、と興味を持った。最初に開発したのは、牛乳の搾りかすを使った繊維製品だ。この繊維は10万ドル(約1100万円)分ほど売れ、今でも日本に顧客がいる。しかし、この分野ではB2Cモデルは非常に難しいことが分かった。そこで、アクセラレータに参加し、同様のプロセスで産業用途があることを発見した。

「中国のBudweiser(バドワイザー)とつながりができ、価値の低い醸造かすを大量に抱えていることを知りました。彼らは、メタンや地球温暖化の間接的な原因となる牛の飼料として処理するよりも、もっと良い利用方法を考案したいと思っていました」とルオ氏は説明する。「そこで、私たちが以前開発した方法を用いることで、農業廃棄物を堆肥化できる包装材に変える新しい解決策を導き出すことができました。そして、これが当社が2020年からやっていることです」。

AstanorがMi Terroの150万ドルラウンドのリードインベスターで、同社の価値を1000万ドル(約11億円)と評価した。Astanorは少し前に食品と農業技術を専門者とするファンドを立ち上げ自律走行トラクターマイクロプラスチックの除去植物由来の食品気候リスクの脅威分析、そして今週初めには温室用のAI技術など、さまざまな企業への投資でこの分野において急速にその名を知られるようになってきている。

Mi Terroの従業員は現在5人で、この中には中国にいる製品専門家も含まれる。同社は中国に製造拠点を設け、また米国にオフィスを設置する計画だ。今回の投資は主に生産規模の拡大に使われる予定で、ラボでのやり方に若干の変更を加えることになる。

プラスチックに代わる生分解性フィルムに入っているMi Terroのプロトタイプの洗剤ポッド(画像クレジット:Mi Terro)

「生産規模を拡大するためには、加工の方法が変わり、設備も変わってきます。そしてもう1つ、ビール醸造所から当社の施設まで醸造かすを配送するための物流コストも考慮しなければなりません」とルオ氏はいう。「そのために最適な場所を探す必要があり、生産拡大に向けてはその点も考慮しなければなりません。輸送費がかさみ過ぎないように、慎重にならざるを得ないのです」。

Mi Terroのプロセスには2つのステップがある。農業廃棄物からタンパク質、繊維、デンプンなどのポリマーを抽出し、ポリマーを分離した後、モノマーを結合して他の製造工程で使用できるポリマーにするというグラフト化で改良を行う。このようにしてできた素材は、パスタを作るのと同じように、液体のような素材をスリットから押し出し、形成できるため、現在プラスチックが使われている多くの用途に使用することができる。ストローや容器、箱などを作ることが可能だ。同社が最初に作る製品は、ビールのラベルやTide Podsなどのパッケージのようなフレキシブルフィルムだ。

「現在、顧客向けに2つのソリューションを開発しています。1つは水溶性で、水溶性が必要な用途に適しています。もう1つは耐水性です」とルオ氏は話した。

画像クレジット:Mi Terro

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Nariko Mizoguchi