クラファンIndiegogoが信頼確保に向け正当なキャンペーン運営者に「信頼証明バッジ」発行へ

Indiegogo(インディーゴーゴー)は信頼面で問題を抱えている。それは同社が痛感していることだ。このプラットフォームは長年、Kickstarter(キックスターター)の最初の審査に通らなかったキャンペーンが集まる場所と多くの人に考えられてきた。

CEOのAndy Yang(アンディ・ヤン)氏は、2021年夏のインタビューでこう語った。

私たちのサイトでは、キャンペーンが実現しなかったり、キャンペーンが支援者と不通になったりといった失敗が何度もありましたし、私たちもそれを認めています。この2年間は、信頼と安全の観点から何ができるかを考えることに重点を置いてきました。クラウドファンディングはショッピングではないということを、支援者に理解してもらうための教育から始まりました。私たちの精算サイトでは非常にわかりやすく説明しています。しかし繰り返しになりますが、Amazon(アマゾン)や他の企業では、ボタンをクリックすれば2時間後に商品が届くと人々は教育されています。信頼という点では、これまで被害に遭われた方々のことを考えると、その通りだと思います。私たちはそのことを認めています。

Indiegogoは「支援者がより多くの情報を得た上で意思決定できるようにする」ことを目指し、数々の新しい取り組みによって、これまでの欠点に対処しようとしている。その中で、新しいTrust-Proven Badge(信頼証明バッジ)は大きな変化ではないが、企業と支援者の間に作りたいと同社が考えてきた信頼のようなものを育むための一歩となる。

「過去10年間、我々は何千ものキャンペーンを成功させてきました。そして、これらの起業家と築いた関係は、決して小さな偉業ではありません」と、Indiegogoは新機能を発表したブログポストで述べている。「我々は、Trust-Provenバッジを使用して、キャンペーン運営者の成功の記録を強調し、この情報をキャンペーンページで直接提供することで、支援者がより多くの情報に基づいた意思決定ができるようにしたいと考えています」。

同社によると、現在は最もアクティブなキャンペーン運営者の実績を確認している最中で、履行状況、キャンペーン管理、支援者からの好意的なフィードバックなどに基づいて、バッジの授与を開始する予定だ。この動きはIndiegogoのTrust & Safetyチームのより広範な徹底点検の一部で、サイト全体の関係を改善することを目的としている。今回のニュースは、クラウドファンディングが激変している中でのものだ。12月にはKickstarterがプラットフォーム全体を分散型ブロックチェーン技術に移行する計画について、幅広いユーザーから反発を受けた。直近では、長年のリワードフルフィルメントプロバイダーであるTopatoCoが、独自のクラウドファンディングサービスTopatoGoの立ち上げを発表した。

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TopatoCoの創設者でCEOのJeffrey Rowland(ジェフリー・ロウランド)氏は、新サービスについて次のように語っている。「私たちはこのサービスを長く続けてきましたが、そろそろ中間業者を排除し、自分たちですべてを行うことで関係者全員が楽になる時期だと考えています。長年にわたり、何十万個もの荷物を発送してきた私たちはそれを得意としています。毎日働く優秀な人材と、2つの倉庫、数十台のコンピューター、バン、フォークリフトを有しています。『取り扱い注意』のシールもたくさんあります。クラウドファンディングとフルフィルメントを完全に自社で行うことで、クリエイターはもっと良い取引ができ、社内プロセスを合理化し、コミュニティにより多く投資し、なぜかブロックチェーンを使わないことで環境にも貢献できます」。

画像クレジット:Brian Heater

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

さらば「powerlanguage.co.uk/wordle」、これまでの「Wordle」

米国時間2月10日午後をもって、powerlanguage.co.uk/wordle(人気のインターネット日刊ワード・パズルのややこしいURL)へ行こうとした人は、The New York Times(ニューヨーク・タイムズ)のウェブサイトにリダイレクトされる。そこでは不思議なほど見慣れたようでいて、どこか違った感じのするウェブページがみんなを出迎えてくれる。よく見ると「Wordle(ワードル)」のタイトルはNew York Times特有のフォントになっていて、懐かしのHelvetica(ヘルベティカ)ではなくなっていることに気づく。

画像クレジット:TechCrunchによるスクリーンショット

あれはつい先週のこと、New York TimesはJosh Wardle(ジョシュ・ウォードル)氏の爆発的ヒット作品を「7桁の低い方」の金額で買い取った。しかし、この伝統的新聞社はもう動き出している。URLをリダイレクトした! つい3時間前、New York TimesはWordleのヒントと小技ページまで公開したのだが、そこには従来の「power language」のURLへのハイパーリンクが書かれている。おそらくライターたちは我々同様ノスタルジックなのだろう。

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こうなることはわかっていたし、ゲームに加えられた変更はごくわずかですぐには気づかないかもしれない(右上隅にハンバーガメニューがあり、New York Timesの別のゲームに飛べる)。しかし、少なくともここTechCrunchでは、あの奇妙なURLを溺愛していた。

我々はpowerlanguage.co.uk/wordleが好きだった、なぜならあまりにも直感的でなく、バイラルにするつもりがまったくなかったからだ。誰1人検索エンジン最適化や発見されやすさに悩んだことがなく、それでも大ヒットした。友達からWordleについて聞いたとしても、Google検索してあの「power language」ウェブサイトが果たして自分の行くべきところなのかどうか悩んだかもしれない。本当はアプリなのだろうと思い、間違って偽物をダウンロードした人もいるだろう。

なぜpowerlanguageなのか?幸いTechCrunchは、2022年1月にウォードル氏をインタビューしたとき、彼のオンラインペルソナの由来を聞くことができた。突如引っ張りだこになったプログラマーにとって、それは一昔前のことのように感じることだろう。

「あれはオンラインで長い間使っているユーザー名で、元々は人の言葉を聞き間違えたことから来ているんです。若い頃、友人と私はある人にひどく られました。お互いに悪態をついていたことで られたんです。私はその人が『power languge(パワーランゲージ)』と言ったと思いました。思い起こしてみると、その人は『foul language(汚い言葉)』と言っていたのを聞き違えたのです。しかし私は、悪態をつくことを『power language(強力な言葉)』と呼ぶ考えをとても気に入って、16歳かそこいらの時にするように、それをなんとなく引き継いだのです」。

残念なニュースもある。ウェブが移行してもゲームプレイの統計は維持されるが、連続記録はリセットされるようだ。気に入らないが、これは完璧である必要性から我々を解放するいい機会なのかもしれない。明日は本当に悪い言葉を初手に選んで、言語のパワーに浴することにしよう。どうして文字を並べて並べ直すことがこれほどの喜びをもたらし、友達とシェアすることが毎日の儀式になるのだろう。ときには怒りのツイートになることもあるだろうが、それもまた良し。

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画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nob Takahashi / facebook

YouTubeがNFTやライブショッピングなどクリエイターツールを拡充へ、TikTokやInstagramに対抗

YouTube(ユーチューブ)のCEOであるSusan Wojcicki(スーザン・ウォジスキ)氏は2022年初め、クリエイターがファンと異なる方法でつながるためのNFT(非代替性トークン)の導入を検討していることを強く示唆するなど、動画界の巨人である同社が今後1年間に計画していることの概要を明らかにした。そして米国時間2月10日、同社の最高製品責任者Neal Mohan(ニール・モナハン)氏は、このアイデアに賭けることをブログに投稿し、2022年全体としてクリエイターのためのツールをより多く構築するというYouTubeの大きな目標について詳細に説明している。

このブログ投稿は多くの項目からなる本当に長いリストだが、YouTubeがいかに大企業になったか、そしてYouTubeの最大の競合他社がビデオによる広告事業を補完するものとしてNFTに独自に取り組んでいるという事実を考えたとき、NFTがおそらくリストの最も興味深い部分であるように思われる。

「NFTは、共通の趣味を持つコミュニティの運営に利用されたり、クリエイターのためのより良い資金調達を可能にしたり、アーティストが自分の作品を検証可能な方法で作って販売し、将来の売上に対するレベニューシェアを獲得できるようにするなど、多くの興味深い応用例を目にしています」と広報担当者は語った。「当社は、この分野で人々がすでに行っていることに、YouTubeが多くのユニークな価値を加えることができると考えています」。

他の新機能には、買い物ができるビデオLive Shopping(ライブショッピング)と「アプリ全体で」多くのショッピングの機会を導入するなど、ショッピングに関するより多くの機能が含まれる、とモナハン氏は書いている。YouTubeの動きを注視している人は驚かないだろう。同社はここ数カ月、こうした機能をテストしている。Walmart(ウォルマート)などとのテストでは、200万回以上の再生と140万件のLive ChatメッセージがあったとYouTubeは説明した。

ライブストリーミングは、新しいひねりが加えられるもう1つの分野だ。そのひねりとは、コラボレーションだ。クリエイターがインタラクティブなストリームで一緒にライブすることができるようになり、これは、非常に型通りのビデオフォーマットになったものを一新したり、新鮮味を加えるための1つの方法だ。

また、クリエイターにとって重要なアップデートとなるのが、ビデオエフェクトとアナリティクスの分野で、ビデオエフェクトは自分の作品をより良いものにするため、そしてアナリティクスは人々が見ているものが好きかどうかを知るためのものだ。モナハン氏は、2022年の新しいツールには、より多くのビデオエフェクトや編集ツールが含まれると話した。これらのツールの多くはすでにYouTubeで構築されているため驚くものではなく、クリエイターがコンテンツを別のところに投稿するもう1つの口実を与えている。YouTubeのネットワークにクリエイターを確実に留めておく興味深い工夫の1つは、近々Shorts(TikTok、Snapchat、Instagramに対抗するYouTubeの短編動画)において動画上でコメントに返信できるようになることだ。

クリエイター経済、そしてより一般的なユーザー生成コンテンツは、今日すべてのアクションがある場所であり、ますますお金がともなうようになっている。YouTubeがこれを追求し、クリエイターを魅了し続けるツールを構築する明確な理由がある。有名なクリエイターだけでなく、より大衆的なユーザー生成ビデオの拠点として非常に人気があるTikTok(ティクトック)は、eコマース企業と緊密に連携しているあるフィンテック企業によると、リファラル数ですでにPinterest(ピンタレスト)やSnapchat(スナップチャット)を上回っていて、そこにYouTubeとMetaのアプリ軍団が続くようだ。

YouTubeにとって、今はまさに板挟み状態だ。というのも、競争の反対側では、Instagram(インスタグラム)とその親会社のMeta(メタ)が、NFTを中心とした大きなビジネスの構築と、それをサポートするための通貨について本腰を入れているとされている(ファイナンシャル・タイムズは1月にこの取り組みが進行中だと報じたが、TechCrunchはこの報道が氷山の一角だと聞いている。いずれにせよ、Metaは問題を抱えたNoviプロジェクトのためにすでに行ってきたすべての仕事にホームを与える)。

広報担当者によると、Google(グーグル)は「クリエイターと視聴者のための最高の場所であるという使命を深めるのに役立つ」NFTやWeb3のような新しい技術を模索しているのだという。「YouTubeの特徴は、クリエイターとファンの関係であり、これらの新しい技術は、それを補強する役割を果たすことができると考えています」。

広報担当者は、Googleがパートナーと協力するか、またはゼロからマーケットプレイスを構築しようとしているかどうかについての「現時点の」コメントを却下した。しかし、アイコン的なYouTubeのコンテンツがすでにNFTの波に乗って、YouTube広告以外でのさらなる収益化に成功している例は非常に多いため、Googleが既存のマーケットプレイスなどと組むのはおもしろいかもしれない。

「我々のクリエイターはすでにNFTと関わっているので、この分野を理解し、クリエイターと視聴者にとって良い方向に導く手助けをすることが重要だと考えています」と広報担当者は述べた。「当社はすでに代替の収益化製品でこれを行いました。人々がアイテムを販売しているのを見て、製品を作りました。クリエイターはすでにNFTと関わっており、我々はそれをより簡単に、より良くする手助けをしたいのです」。

導入されればNFTは、Super ChatやSuper Stickerなど、YouTubeの有料デジタルグッズを含む、広告の代替としてすでに存在する収益化ツールの小さな下支えの輪に加わる。「これらはクリエイターやファンの間で非常に人気があることがわかりました」と広報担当者は話した。「そして、この多くは、支援と、お気に入りのクリエイターを財政的にサポートしたいと考えているファンのためのものです。ですので当社は、クリエイターにお金を稼ぐ新しい方法を提供しつつ、クリエイターとファンとのつながりを深めるもう1つの方法として、NFTを検討しています」。

画像クレジット:Olly Curtis/Future / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

Udemyの幹部たちが、より良いUdemyを作るために退社した理由

Darren Shimkus(ダレン・シムカス)氏は、企業向けの学習ビジネスであるUdemy(ユーデミー)を、5年かけて年間経常収益100万ドル(約1億1500万円)から1億ドル(約115億4000万円)にまで成長させた。だがUdemyが上場する8カ月前、シムカス氏は自分の直感を確かめるためにUdemy Business(ユーデミービジネス)の社長を辞任した。

「教育業界にもたらすことができるイノベーションがあると思ったからです」と彼はいう。「しかし何を考えても、何を見てもそこにはまず自分が出てきてしまって、世界の見方も偏っていました」そこでシムカス氏は、6カ月の間、データ、人材開発、エンジニアリングの責任者たちにインタビューを行い、教育の世界で共有されている重要課題の把握につとめた。「私が気づいたのは、学習プロセスに人間的なつながりを取り戻すことがいかに重要かということでした」と彼はいう。

この結果、皮肉な話だが、シムカス氏はUdemyの元CEOであるDennis Yang(デニス・ヤン)氏とチームを組み、出身母体とはまったく異なるアプローチで、世界最大の企業向け教育会社の設立に再挑戦することになった。

米国時間2月9日、初めて公表されたModal(モーダル)は、企業が既存の従業員に新しいスキルを習得させたり、専門分野を変えたりするために利用できる、グループ型の学習プラットフォームだ。シムカス氏によれば、彼とヤン氏は、Signalfire、Norwest Venture Partners、Learn Capital、Bling Capitalなどから680万ドル(約7億8000万円)の資金を調達することに成功した。

この同社の最初の製品は、スタートアップ企業におけるデータリテラシーの向上に焦点を当てている。そこでは、教育対象の従業員を30人から40人のグループに分けて、非同期のプロジェクトやライブイベントを含む8週間の学習体験をさせる。

カリキュラムについては、Modalは大規模に公開オンライン講座を提供するやりかたではなく、専門家とともにすべての教材を社内で開発している。

「私たちは、外部講師がやってきてプラットフォーム上で何かを提供するようなモデルを採用するつもりはありません」と彼はいう。「私たちが作っているコンテンツはすべて私たちのものです」。最終的には、自然言語処理、Python、データストーリーテリングなどのスキルを教えるプラットフォームになる。

同社は、売上目標、顧客数、顧客名などの情報を開示していない。古典的な企業向けB2B販売モデルで収益を上げる。

ModalのビジョンとUdemyのミッションの重なりは、無視できない。両社とも、人材の流出や教育の遅れを危惧する企業に対し、スキルアップサービスを販売している。シムカス氏は「私たちはUdemyのような巨人の肩の上に立っているのです」と直接的な競争を否定する一方で、彼の認識している同社の人材システムがModalを「かなり有利にしている」とも認めている。

高いレベルで見れば、Modalの製品はシンプルである。スキルアップやスキル再構築をする企業向けの資金調達ラウンドが活発に行われていることを考えると、明らかに世の中では従業員に対するリフレッシュが求められている。ここではEdTechのベテランたちは、人々が情報を理解する方法の未来に向けて、非同期学習ではなく、キュレーションされたグループベース学習というコンセプトに賭けている。

Udemy出身者が、Udemyのプラットフォームからスピンアウトして、グループ型クラスのプラットフォームを構築したのは今回が初めてではない。Udemyの共同創業者であるGagan Biyani(ガガン・ビヤニ)氏は、AltMBA(アルトMBA)の共同創業者であるWes Kao(ウェス・カオ)氏と共同で開発している最新製品Maven(メイブン)のために、3000万ドル(約34億6000万円)以上の資金を調達した。シムカス氏は、Mavenはユーザー生成コンテンツに重点を置いているが、Modalは従業員やHRリーダーのために作りたいと考えているという。

また、シムカス氏とヤン氏がModalを設立した数カ月後に、Udemyは「グループベースの没入型学習体験を提供するオンラインリーダーシップ開発プラットフォーム」であるCorpU(コープ)を買収した。これまでUdemyは、グループ型クラスのプラットフォーム戦略について、詳細を明らかにしていなかった。

一方、シムカス氏は、パンデミック、分散型勤務、リモート・ラーニング、大規模辞職などの現在の状況が、自分のビジョンの進路にどのような影響を与えるかを考えている。

彼は「2年前にはこの会社を作ることはできなかったでしょう」と語る。「人生に求めていること、そして会社に期待していることに対して、人びとが新しい価値を見出したからこそ、今この会社を立ち上げることができたのです」。

画像クレジット:Utamaru Kido / Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:sako)

Redditのライブオーディオプロダクト「Reddit Talk」にウェブ版が登場

2021年4月にClubhouseによく似たReddit Talkを公開したReddit(レディット)が、この機能にエンゲージメントの強化を狙う新機能を追加する。新機能にはウェブ互換、過去のセッションの録音、トーク中のライブコメントがある。また、ホームフィードの上部にライブチャットがどこで開催されているかを表す、Twitter(ツイッター)に似たライブバーも追加される。

Redditは同社ブログに「この3カ月間でReddit Talkのデイリーアクティブリスナーは250%以上増えています」と記している。さらに、r/cryptocurrencyで開催された投資家のKevin O’Leary(ケビン・オレアリー)氏のトークや、r/moviesで開催されたテレビ番組「Jackass」(ジャッカス)のスタントマンとのセッションなど、1000を超えるサブレディットでライブオーディオチャットが開催されたことも紹介している。

画像クレジット:Reddit

Redditでのライブオーディオルームは、第一印象としてはあまり直感的ではないと感じられるかもしれない。Reddit利用者の多くは匿名でこのプラットフォームに集まっているからだ。しかしライブ中にコメントしたり絵文字を送ったりする機能があれば、シャイな(あるいは匿名のままでいたい)ユーザーはこれまでより簡単に話に参加できるようになるだろう。これまでは、リスナーは(画面上で)挙手して発言するしかなかった。また、ウェブ互換、ライブバー、非同期の聴取といったライブオーディオの発見につながる機能により、Redditのこの新しいコンテンツに関わりやすくなる。

トークを作成できるのはRedditのiOSとAndroidのアプリだけだが、2月中にはデスクトップからも開始できるようになるとRedditは述べている

現在、ライブのトークを開始できるのはRedditのモデレーター(サブレディットの秩序を守る活動をするボランティア)だけだ。モデレーターはGoogle(グーグル)フォームからトークを実施するための申請をすることができる。TwitterスペースClubhouse(クラブハウス)などのプラットフォームが直面するコンテンツモデレーションの問題を考えれば、このやりかたは今のところ、Redditが制御する上では良い方法だろう。

Redditの広報はTechCrunchに対し「ライブオーディオ機能をモデレーター以外のRedditユーザーに拡張する計画はありません」と述べた。

画像クレジット:Reddit

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Kaori Koyama)

アップルが独自のブッククラブ「Strombo’s Lit」を米国などのApple Booksアプリ内に立ち上げ

Oprah、そしてReese、では次はAppleか?iPhoneのメーカーがこのほど、そのApple Booksアプリの中に直接、独自のブッククラブを立ち上げた。米国とカナダと英国とオーストラリアの読者に、Appleが選んだフィクションやノンフィクションが提供される。ただしApple PodcastsやApp StoreにあるAppleのその他の編集者的サービスと違って、無名の編集者たちが本を選ぶのではなく、カナダ人のメディアパーソナリティでApple Music HitsのホストであるGeorge “Strombo” Stroumboulopoulos(ジョージ・ストロンボロ・ストロンボロポロス)氏が選ぶ。

そのため実はこのブッククラブは「Strombo’s Lit」と呼ばれている。

ストロンボロポロス氏はApple Musicのチームにいるが、ブッククラブは音楽関連の本を優先しない。むしろStrombo’s Litのテーマはかなり幅広くて、世界をもっとよく見るためのレンズを提供する、とApple(アップル)はいう。読者層の定義は漠然としており、世界の最良の著者のコンテンツを読んで勉強したいと思っている人なら誰でもとなっている。

画像クレジット:Apple

ネット上のブロードキャストとラジオを長年やってきたストロンボロポロス氏は、パンデミックの最中の2020年8月にAppleに入った。彼は今、ライブのApple Music Hitsの「Strombo」という番組で、アーティストとリスナーをつなごうとしている。米国時間2月8日に放送された最近の番組で彼は、Strombo’s Litのローンチを発表した。

このブッククラブは、生涯の本好きであるストロンボロポロス氏が新型コロナウイルスの蔓延によるロックダウンの間に大量の本を読み、好きな本のことを友だちに話したくなって始めたものだという。もちろんクラブでは、彼が個人的に選んだ本にもっと多くの読者がアクセスできる。この新しいブッククラブに関心がある人は、iPhoneやiPadやiPodタッチ、Apple WatchなどのApple Booksアプリで見つけるか、ユーザーネーム@stromboで彼自身のソーシャルチャンネルからジョージをフォローするとよい。クラブでは、彼が選んだ本にアクセスできるだけでなく、インタビューなど、その他のコンテンツもあり、その一部をソーシャルメディア上で共有もできる。

やあ、みなさん、元気かな。すごいことがあるんだ。これから、ブッククラブでお友だちを作るのさ。会話もある。つながりができる。プレゼントもある。ぜひ、来て見てちょうだい。最初の本はNeal Stephensonの「Termination Shock」です。

最初の「Strombo’s Lit」のおすすめは、Neal StephensonのSFスリラー「Termination Shock」だ。彼はベストセラーの「Seveneves」や「Anathem」「Reamde」などを書いてる。これらは、Apple Booksにもある。

Appleは新しいブッククラブによって、今あるApple Booksの本の選択がなくなるわけではない、と明言している。Apple Booksの編集者たちは本の選択を続行し、それらをApple Booksアプリの「Book Store」タブにある多様なコレクションに収める。クラブの方は、ストロンボロ氏が個人的に選んだ本が単純に提供される。

しかし、Appleがなぜ、こんなブッククラブを立ち上げるのだろう?それは、ブッククラブの成功が個人の人気や個人崇拝に基づいていることが多いからだ。そんな個人とは、たとえばOprah Winfrey(オプラ・ウィンフリー)氏やJenna Bush Hager(ジェンナ・ブッシュ)氏だ。ストロンボロ氏はオンラインのフォロワーが多く、Twitterのフォロワーは86万人いる。彼は、誰もが知っているというタイプのキャラクターではない。しかしそれでも、Appleのような巨大テクノロジー企業がブッククラブをやる例は他にもある。Netflixは10月に、は連続ドラマや映画の原作になった本を紹介するためのブッククラブを発表している。

画像クレジット:egal/iStock

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Republicのメタバース不動産部門が分離独立、Everyrealmにリブランド

2021年にメタバースプラットフォームの上位4社で5億ドル(約580億円)以上の不動産が売却されたことがデータで明らかになっている。DecentralandやSandboxのような仮想世界の土地の区画に権利を主張するために集まっている多くの投資家の中には、従来の不動産会社が含まれている。メタバースブームにおいて、どのプラットフォームやユースケースが勝利を収めるのか、重要な疑問が残るが、1つはっきりしていることは、メタバースに資本が急速に流入しており、いわば「非現実的な不動産」も例外ではない、ということだ。

代替資産クラウドファンディングプラットフォームのRepublic(リパブリック)は、Janine Yorio(ジャニン・ヨリオ)氏が2020年6月から率いるRepublic Realm部門を通じて、メタバース不動産物件への投資を積極的に行ってきた。そして現在、ヨリオ氏はRepublic Realmを独立させ、Everyrealm(エブリリアルム)という私企業にしたが、Republicは少数株主として残るとヨリオ氏はTechCrunchとのインタビューで述べた。

関連記事:デジタル証券の第二取引市場を目指す投資プラットフォームRepublicが171億円超を追加調達

Everyrealmは「メタバースのエコシステム全体へのゲートウェイ」になることを望んでいるという。同社は25の異なるメタバースに投資しており、現在3000以上のNFT(非代替性トークン)を所有しているとヨリオ氏は話した。

「当初はメタバースに投資していましたが、今ではそれ以上のことをするようになりました。自社をメタバースコンテンツの開発者だと考えていて、ただ受動的に投資して他の人が何かを作るのをじっと待っているわけではありません」と同氏は話す。例えば、2週間前にDecentralandで小売店のコンセプトを立ち上げたが、これは他のメタバースプラットフォームにも拡大する予定だという。実際、この店舗では1万点のバーチャルアイテムが1時間で売り切れたと同氏は付け加えた。

Everyrealmはまた、Somnium SpaceメタバースでRealm Academyというバーチャルキャンパスを運営しており、ユーザーはオンラインコースを通じてWeb3のコンセプトについて多くを学ぶことができる。同氏によると、初回のクラスには1000ドル(約11万6000円)を支払った生徒500人が参加しているとのことだ。

ヨリオ氏は、このような例は、ユーザーがメタバースでの体験に喜んでお金を払うことを証明していると話す。また、同氏はEveryrealmが販売した資産がOpenSeaのようなセカンダリーマーケットのプラットフォームでどのように評価されているかも牽引力の指標として見ている。

メタバースにおけるコンテンツ開発は、そのインタラクティブかつ無限の性質から「ほとんどの場合、ビデオゲームよりもさらに複雑」だと、ヨリオ氏は指摘する。

「これらのプラットフォームがスタートし、成熟するのを待つ間、我々はオンラインコミュニティを構築し、メタバースとは何か、またメタバースでどのように仕事を得ることができるか人々を教育し、彼らが実際に構築者になれるようにしたいのです。というのも、 Web3はコンテンツクリエイターがコンテンツ消費者になることが目的だからです」。

Everyrealmは独立企業となり、成長資金として6000万ドル(約69億円)を調達した。同社によると、これは女性のCEOが率いる企業のシリーズA調達としては最大規模だという。Andreessen HorowitのArianna Simpson(アリアナ・シンプソン)氏が新規投資家としてこのラウンドをリードし、ベンチャー企業のCoinbase Ventures、Lightspeed、Dapper Labs、さらにParis Hilton(パリス・ヒルトン)氏、Lil Baby(リル・ベイビー)氏、Nas(ナス)氏といった有名エンジェル投資家を含む新旧の投資家が参加した。

画像クレジット:Vadmary / Getty Images

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(文:Anita Ramaswamy、翻訳:Nariko Mizoguchi

植物性由来のミールキットを配達するSplendid Spoonが約13.8億のシリーズB資金を獲得

消費者がより体に良い食品を求めるようになり、食事宅配サービス会社に多くのベンチャーキャピタルが流入している。

オンラインミールキットデリバリー市場は、2022年末までに70億ドル(約8000億円)、そして今後5年間で3倍の産業に成長するといわれている。そのため、ベンチャーキャピタルが注目し、最近、自宅料理用の食材を配達するShef(シェフ)WoodSpoon(ウッドスプーン)、ベビーフード分野のLittle Spoon(リトルスプーン)やSerenity Kids(セレニティ・キッズ)などの資金投入につながった。

このカテゴリーにいち早く飛び込んだ企業の1つが、植物性のスープやボウル、スムージーに特化した食事宅配サービスのSplendid Spoon(スプレンディッド・スプーン)である。Nicole Centeno(ニコル・センテノ)氏が同社を設立したのは2013年。当時、彼女は忙しい母親であり、厳しい仕事に就いていたため、思うように健康的な食生活を送ることができなかったという。

彼女は料理学校に通い始め、食事の準備や調理を必要としない、ヴィーガン、非遺伝子組み換え、グルテンフリーのオーガニックスープとスムージーのラインを作った。ブルックリンのマーケットで販売した後、彼女はFresh Direct(フレッシュ・ダイレクト)に製品を供給するために卸売り業者と提携し、2015年に全国展開した。

それ以来、センテノ氏と彼女のチームは消費者への直販型のサブスクリプションモデルを構築し、2018年には同社の初期の愛用者の1人であったElise Densborn(エリス・デンスボーン)を共同CEOとして採用した。

Splendid Spoonの共同CEOのNicole Centeno氏とElise Densborn氏(画像クレジット:Splendid Spoon)

「私たちはこの3年間、私たちが『筋肉』もしくは『フードテックビジネスの赤身肉』と呼ぶもの、つまり食品そのものに事業を集中してきました。そして、私たちの食品ができるだけすばらしい味になるために必要なものはすべて揃えるようにし、体にも良い新鮮な食品という約束を実現してきました」と、センテノ氏は付け加えた。

現在、同社は米国本土の全州に配送し、50以上の植物由来の食材を揃え、顧客がサブスクリプションに申し込まずにオンデマンドで買い物できる機能を備えている。同社は2020年から成長率を2倍に高め、現在までに2万人を超える登録者を抱えている。

そして最近、Splendid Spoonは1200万ドル(約13億8700万円)のシリーズB資金を確保した。このラウンドはNicoya(ニコヤ)が主導し、Danone Manifesto Ventures(ダノン・マニフェスト・ベンチャーズ)、Torch Capital(トーチ・キャピタル)、Reddit(レディット)共同創業者のAlexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏、Rent the Runway(レント・ザ・ランウェイ)共同創業者のJennifer Fleiss(ジェニファー・フライス)氏、Tasty Bite(テイスティ・バイト)の創業者Ashok(アショック・ヴァスデヴァン)氏とMeera Vasudevan(ミーラ・ヴァスデヴァン)氏が参加した。Torchとオハニアン氏は、以前のラウンドでも投資している。センテノ氏は、2018年の非公開のシリーズAを含む、同社の総資金額を明らかにしなかった。

自身の健康のコントロールを取り戻したいという消費者行動の変化と、そのための簡単な方法への需要が、Splendid Spoonの最新の資本注入の原動力の2つだった。

「健康は、私たち消費者の原動力です」とセンテノ氏はいう。「おそらくあなたも聞いたことがあるであろう、怖い統計結果が出ています。例えば、CDCの調査によると、米国人の10人に1人しか野菜を摂取していないことが明らかになりました。現在、85%の米国人がより健康的な食生活を送ろうと努力しています。パンデミックによって、ダイレクト・ツー・コンシューマーの試みが加速され、人々は、『あれ、この食事を家に届けるのはもっと簡単じゃないか』と思えるようになり、その答えはイエスだったのです」と述べる。

センテノ氏とデンスボーン氏は、今回の資金調達で、同社の主力製品群を拡大するとともに、新製品やカテゴリー、食事プログラムを追加する予定だ。Splendid Spoonは、創業以来、デンスボーン氏が「小さいけれども強力なチーム」と呼ぶチームで活動してきたため、採用も優先事項となるだろう。

現在34人で、2021年初頭の15人から増えている。小さなチームが実際にどれほど強大かを示すために、近年Splendid Spoonに投資した1ドル(約115円)に対して、同社は15ドル(約1730円)の収益を上げたと、デンスボーン氏は付け加えた。全体として、前年比平均100%の成長を続けているのだ。

同社が次に取り組むべきことは、チームの強化に加え、サプリメントや他の食品、消費者直販以外のさまざまなチャネルでの試用機会について、戦略策定と市場参入の戦略を検討することだ。

「私たちはまだ表層しか見ていないと思っています。今後12カ月の間に、多くの創造が起こるでしょう」とセンテノ氏は語る。

画像クレジット:Splendid Spoon

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(文:Christine Hall、翻訳:Akihito Mizukoshi)

植物性由来のミールキットを配達するSplendid Spoonが約13.8億のシリーズB資金を獲得

消費者がより体に良い食品を求めるようになり、食事宅配サービス会社に多くのベンチャーキャピタルが流入している。

オンラインミールキットデリバリー市場は、2022年末までに70億ドル(約8000億円)、そして今後5年間で3倍の産業に成長するといわれている。そのため、ベンチャーキャピタルが注目し、最近、自宅料理用の食材を配達するShef(シェフ)WoodSpoon(ウッドスプーン)、ベビーフード分野のLittle Spoon(リトルスプーン)やSerenity Kids(セレニティ・キッズ)などの資金投入につながった。

このカテゴリーにいち早く飛び込んだ企業の1つが、植物性のスープやボウル、スムージーに特化した食事宅配サービスのSplendid Spoon(スプレンディッド・スプーン)である。Nicole Centeno(ニコル・センテノ)氏が同社を設立したのは2013年。当時、彼女は忙しい母親であり、厳しい仕事に就いていたため、思うように健康的な食生活を送ることができなかったという。

彼女は料理学校に通い始め、食事の準備や調理を必要としない、ヴィーガン、非遺伝子組み換え、グルテンフリーのオーガニックスープとスムージーのラインを作った。ブルックリンのマーケットで販売した後、彼女はFresh Direct(フレッシュ・ダイレクト)に製品を供給するために卸売り業者と提携し、2015年に全国展開した。

それ以来、センテノ氏と彼女のチームは消費者への直販型のサブスクリプションモデルを構築し、2018年には同社の初期の愛用者の1人であったElise Densborn(エリス・デンスボーン)を共同CEOとして採用した。

Splendid Spoonの共同CEOのNicole Centeno氏とElise Densborn氏(画像クレジット:Splendid Spoon)

「私たちはこの3年間、私たちが『筋肉』もしくは『フードテックビジネスの赤身肉』と呼ぶもの、つまり食品そのものに事業を集中してきました。そして、私たちの食品ができるだけすばらしい味になるために必要なものはすべて揃えるようにし、体にも良い新鮮な食品という約束を実現してきました」と、センテノ氏は付け加えた。

現在、同社は米国本土の全州に配送し、50以上の植物由来の食材を揃え、顧客がサブスクリプションに申し込まずにオンデマンドで買い物できる機能を備えている。同社は2020年から成長率を2倍に高め、現在までに2万人を超える登録者を抱えている。

そして最近、Splendid Spoonは1200万ドル(約13億8700万円)のシリーズB資金を確保した。このラウンドはNicoya(ニコヤ)が主導し、Danone Manifesto Ventures(ダノン・マニフェスト・ベンチャーズ)、Torch Capital(トーチ・キャピタル)、Reddit(レディット)共同創業者のAlexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏、Rent the Runway(レント・ザ・ランウェイ)共同創業者のJennifer Fleiss(ジェニファー・フライス)氏、Tasty Bite(テイスティ・バイト)の創業者Ashok(アショック・ヴァスデヴァン)氏とMeera Vasudevan(ミーラ・ヴァスデヴァン)氏が参加した。Torchとオハニアン氏は、以前のラウンドでも投資している。センテノ氏は、2018年の非公開のシリーズAを含む、同社の総資金額を明らかにしなかった。

自身の健康のコントロールを取り戻したいという消費者行動の変化と、そのための簡単な方法への需要が、Splendid Spoonの最新の資本注入の原動力の2つだった。

「健康は、私たち消費者の原動力です」とセンテノ氏はいう。「おそらくあなたも聞いたことがあるであろう、怖い統計結果が出ています。例えば、CDCの調査によると、米国人の10人に1人しか野菜を摂取していないことが明らかになりました。現在、85%の米国人がより健康的な食生活を送ろうと努力しています。パンデミックによって、ダイレクト・ツー・コンシューマーの試みが加速され、人々は、『あれ、この食事を家に届けるのはもっと簡単じゃないか』と思えるようになり、その答えはイエスだったのです」と述べる。

センテノ氏とデンスボーン氏は、今回の資金調達で、同社の主力製品群を拡大するとともに、新製品やカテゴリー、食事プログラムを追加する予定だ。Splendid Spoonは、創業以来、デンスボーン氏が「小さいけれども強力なチーム」と呼ぶチームで活動してきたため、採用も優先事項となるだろう。

現在34人で、2021年初頭の15人から増えている。小さなチームが実際にどれほど強大かを示すために、近年Splendid Spoonに投資した1ドル(約115円)に対して、同社は15ドル(約1730円)の収益を上げたと、デンスボーン氏は付け加えた。全体として、前年比平均100%の成長を続けているのだ。

同社が次に取り組むべきことは、チームの強化に加え、サプリメントや他の食品、消費者直販以外のさまざまなチャネルでの試用機会について、戦略策定と市場参入の戦略を検討することだ。

「私たちはまだ表層しか見ていないと思っています。今後12カ月の間に、多くの創造が起こるでしょう」とセンテノ氏は語る。

画像クレジット:Splendid Spoon

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(文:Christine Hall、翻訳:Akihito Mizukoshi)

中国生まれの音声ネットワーキングアプリ「Tiya」、国際的な事業展開を進めるべくシンガポールに本社を設立

TikTok(ティックトック)は、おそらく中国から生まれた最も成功したアプリであり、国際市場への印象的な進出を果たしている。しかし、中国で開発されたより小規模なエンターテインメントアプリにも、海外で事業を展開しているものが数多くある。

Tiya(ティヤ)もその1つだ。中国のポッドキャスティングプラットフォームであるLizhi(リーチ)から生まれたこのアプリは、音声ベースのリアルタイムなネットワーク体験を提供する。その名前に聞き覚えがあるかもしれない。そう、TiyaはよくClubhouse(クラブハウス)と比較されているのだ。そして、そのClubhouseが2021年流行したおかげで、2021年春にLizhiの株価は急上昇した。

しかし、Tiyaの背後にあるアイデアは、Clubhouseの隆盛(と没落)よりも先行していた。2019年にローンチしたこのアプリは、Clubhouseとはかなり違った人々を魅了しており、その多くは一緒にゲームをしながらチャットをするために利用している。2013年に設立された親会社のLizhiは、早くから音声コンテンツにインタラクティブな機能を取り入れ、リスナーがクリエイターにメッセージを送ったり、バーチャルギフトを購入したりできるようにした。バーチャルアイテムを販売するというビジネスモデルは、すぐに収益の柱となった

Tiyaはこの3年間、デビューした米国で着実に人気を博してきたが、さらに海外展開を進めようとしている。同社は現地時間2月7日、シンガポールの中央ビジネス地区に、Yahoo(ヤフー)やGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)などの大手企業と並び、1万平方フィート(約930平方メートル)の本社を設立したことを発表した。

このオフィスの開設にともない、早ければ2022年の第1四半期にはシンガポールで同アプリのダウンロードが可能になる予定だ。Tiyaは全世界で約2000万件のダウンロードを記録しているものの、そのうちアクティブユーザーがどれほどいるかは明らかにされていない。

中国のテック企業が、国際的な事業展開を進める中で、海外に拠点を置くことは自然な流れだ。例えば、TikTokは世界的に普及が進むにつれて、中国国外での運営体制を大幅に強化し始めた。TikTokは、ユーザーのデータをシンガポールに保存しているというが、これは西側の規制当局がデータセキュリティへの懸念を強めているためだ。中国の新しいデータセキュリティ法では、企業が海外にデータを移動する方法についても規制を厳しくしているため、企業にとっては国内外のデータを分離することが得策となる。

関連記事:長きにわたるマイクロソフトの中国ローカライズの結果

Tiyaのシンガポール本社には、ビッグデータ、人事、ユーザーリサーチ、管理、運営などの機能を担当する部署が置かれ「技術プラットフォームと製品開発計画」を支援するチームになると、同社は今回の発表で述べている。同社は、2022年末までにこの都市国家で「完全に運用可能なチーム」を持つことを目指しており「最新バージョンのアプリを世界各地で順次展開する」計画を立てているという。採用活動の一環としては、南洋理工大学とパートナーシップを結び、新卒者を募集する。

Tiyaの会長であり、Lizhiの創業者でもあるMarco Laii(マルコ・ライ)氏は「Tiyaをシンガポールに導入し、世界に通用する才能を持った現地のチームと協力することで、我々はこの地域でより大きな成功を収めることができると確信しています」と語っている。

画像クレジット:The Tiya app. Photo:App Store

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(文:Rita Liao、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

キャノンやLGも襲ったMaze、Egregor、Sekhmetランサムウェアの復号キーが公開される

Maze、Egregor、Sekhmetランサムウェアファミリーのデクリプターが公開された。これはサイバー犯罪者が最近の法執行機関の動きに脅かされていることを示している。

関連記事:ランサムウェアの潮目が変わった、米国当局が勝ち目のないと思われた戦いにわずかながら勝利を収めた

Mazeは、かつて最も活発で悪名高いデータ窃盗ランサムウェアグループの1つとされていた。2019年5月に活動を開始したこのギャングは、ハッカーがまず被害者のデータを抽出し、身代金を支払わなければ盗んだファイルを公開すると脅すという、二重恐喝モデルを導入したことで悪名を馳せた。典型的なランサムウェアグループは、ファイルを暗号化するマルウェアを被害者に感染させ、ファイルを人質にして暗号資産を要求する。

2020年11月に閉鎖を発表したこのグループは、Cognizant(コグニザント)、Xerox(ゼロックス)、LG、Canon(キャノン)など、数多くの著名企業を被害者にした。

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Egregorは2020年9月、Mazeの活動が停止し始めた頃に現れ、前身と同じ二重恐喝の手法を採用した。Ubisoft(ユービーアイソフト)、Barnes & Noble(バーンズ・アンド・ノーブル)、Kmar(Kマート)、バンクーバーの地下鉄システムなど、多くの被害者を出したものの、2021年2月にEgregorのメンバー数名がウクライナで逮捕されたため、活動は短命に終わった。

2020年3月に活動を開始したSekhmetは、MazeやEgregorと多くの類似点を持っている。後者よりも先に登場しているが、サイバーセキュリティ研究者は、類似した戦術、難読化、APIコール、身代金要求メッセージを観察している。

米国時間2月9日、これら3つのオペレーションの開発者を名乗る「Topleak」と名乗る人物が、Bleeping Computerフォーラムへの投稿で、3つすべてのランサムウェアファミリーの復号鍵を公開した。

Topleak は「多くの疑惑を招くことになり、そのほとんどが虚偽となるため、強調しておく必要がありますが、これは計画的なリークであり、最近の逮捕やテイクダウンとは何の関係もありません」と述べ、チームメンバーの誰もランサムウェアに戻ることはなく、ランサムウェアのソースコードはすべて破棄したと付け加えた。

復号鍵が正規のものであることを確認したEmsisoft(エムシソフト)は、Maze、Egregor、Sekhmetの被害者が無料でファイルを復元できるようにデクリプターをリリースした。

Emsisoftのランサムウェア専門家であり、脅威アナリストであるBrett Callow(ブレット・キャロウ)氏は、復号鍵の公開は、サイバー犯罪者が動揺していることを示す1つの兆候であるとTechCrunchに語っている。

「復号鍵を公開したことは、最近のREvilの逮捕とは何の関係もないとギャングは主張していますが、そんなわけありません。現実には、彼らのコストとリスクがともに増加しているのです」とキャロウ氏はいう。「ランサムウェアがこれほど大きな問題になったのは、サイバー犯罪者がほとんど完全に無罪放免で活動できたからです。しかし、もはやそれは通用しません。問題が解決されたわけではありませんが、リスクとリターンの比率において、(犯罪者にとって)より多くの『リスク』が存在するようになりました」。

関連記事:米司法省がテック企業Kaseyaを攻撃したハッカーを起訴、別件の身代金6.9億円も押収

画像クレジット:Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Aya Nakazato)

暗号資産企業がこれだけお金を費やすなら、いっそ11番目のF1チームを作ってくれないだろうか?

高額なコストがかかることで有名なレースシリーズであり、独裁的な政府にとってはイメージのロンダリングとしても知られるF1に、テック企業の資金が流入している様子を追うのは、ここ数年、楽しいゲームになっている。

資本と権力を持つテック事業がF1チームやF1ブランドに資金を投入しているのは、そうする余裕があるからであり、F1には世界的なファンベースがあるからだ。F1に資金を投入すれば、それなりにグローバルな露出が得られる。

だから、米国時間2月10日、Aston Martin Aramco Cognizant F1 Team(アストンマーティン・アラムコ・コグニザント・フォーミュラワンチーム、そう、これが本当の名前だ)が新車を発表するのを見て、新しいF1マシンにCrypto.com(クリプトドットコム)のステッカーが貼ってあるのに気づいても、驚くことではなかった。また、IT・コンサルティング大手のCognizant(コグニザント)がチームの主要スポンサーの1つであることも思い出した。

また、Oracle(オラクル)がRed Bull(レッドブル)のチーム(現在はORACLE Red Bull Racing、オラクル・レッドブル・レーシングと呼ばれている)と5年にわたる契約を結び、年間約1億ドル(約116億円)を支払うと言われていることも驚きではない。Oracleは以前からスポンサーだった。今ではドリンク企業であるRed Bullを除けば、トップスポンサーとなっている。新しいチームカーには、Oracleのロゴがかなり大きく入っている。

他には?そうそう、Ferrari(フェラーリ)のF1チームがPalantir(パランティア)と契約を結んだことが発表された。

まだまだある。Mercedes(メルセデス)のF1チームは、TeamViewer(ティームビューワー)、AMD、CrowdStrike(クラウドストライク)の支援を受けている。McLaren(マクラーレン)のF1チームは、Webex(ウェベックス)、Splunk(スプランク)、Alteryx(アルテリックス)、DataRobot(データロボット)、Smartsheet(スマートシート)など、あらゆる企業が支援している。私の大好きなレーシングサーキットには、すでに多くのハイテクマネーが投入されている、というわけだ。

しかし、新しいアストンマーティンにCrypto.comのブランドが付いていることで、私は考えさせられた。ブロックチェーン分野の別の企業であるTezos(テゾス)は、マクラーレンとレッドブルを支援しており、FTXはメルセデスなどを支援している。つまり、従来のテクノロジー企業からの資金だけでなく、F1スペースにはすでにそれなりの量の暗号系資本が存在しているということだ。

いい考えがある。Binance(バイナンス)がForbes(フォーブス)のSPAC合併に2億ドル(約232億円)を投入するというニュースや、暗号資産取引所のテレビ広告などを考えても、他の多くの企業が失敗してきたことを、大胆なブロックチェーン企業が成功させるときが来ている。新しいF1チームの構築だ。

どうだろう、すばらしいアイデアではないだろうか?テック企業はこれまで、F1チームと協力するだけで満足しており、時には小切手とともに技術を持ち込むこともあった。しかし、暗号資産企業は、今、大きな成功を収めようとしている。ちまちましたことはやめて、本気で資金を投入したらどうだろうか。

Crypto.comは、5年間にわたってF1のスポンサーとして1億ドル(約116億円)以上を費やした。それも悪くない。しかし、もっとクールなのは、Crypto.comのF1チームを持つことだ。あるいは、Coinbase F1チーム。それかBinance F1チーム。FTX F1チームでもいい。さあ、スタジアムの名前を決めることや、配当金を払わないことよりも、もっと大きな夢を見ようじゃないか!

ブロックチェーンは、確固たる信奉者にとっては、経済の多くの部分の未来を担うものだ。その期待が持続するのであれば、いずれは暗号資産に支援されたF1チームが登場するのは間違いない、と考えていいのでは?それなら、先手を打ってチームを始めてはどうだろうか。

トークンへの信念だけじゃなくフィアットで証明し、11番目のチームを設立しよう。もし実現したら、私はマスコットに志願する。バカげたコスチュームだって着てみせる。レッツ・ゴー!

画像クレジット:William WEST / AFP / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Aya Nakazato)

Bilibiliコンテンツモデレーター過労死疑惑で中国テック業界の長時間労働文化の議論が再燃

中国で先週、オンラインコンテンツのモデレーターが急死したことで、インターネット時代に生まれた職業の労苦に焦点が当たっている。

中国の動画配信サイト「Bilibili(ビリビリ、哔哩哔哩)」でコンテンツを監視していた25歳の男性が、春節(旧正月)中の2月5日に突然亡くなった。この件に詳しい人物から情報を得たというWeibo(ウェイボー、微博)ユーザーの投稿によると、春節の連休中、午前9時から午後9時までの12時間シフトで働いた後のことだったとされている。

この投稿は数時間のうちに何万回も閲覧され、中国のテック業界に蔓延する長時間労働文化に対して、ネット上で新たな抗議の波を引き起こした。

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従業員の死や過酷な労働時間への批判をよそに中国のeコマースPinduoduoの株価・ダウンロード数に揺るぎなし

2009年のサービス開始以来、Bilibiliはサブカルチャーのためのニッチな安息地から、2021年9月時点で月間アクティブユーザー数(MAU)2億7千万人を誇る人気動画共有サイトへと変貌を遂げた。

コミュニティが拡大しているということは、それだけ審査すべき動画が増えているということでもある。中国の広大なネット検閲体制の背後には、WeChat(ウィーチャット、微信)、TikTok(ティックトック)、Weiboなどのコンテンツプラットフォームに雇用されている大勢のモデレーターが存在する。これらのモデレーターは、しばしばコンピュータの前で長時間作業し「違法・有害な」ユーザーの投稿にフラグを立てて削除する。その過酷な労働条件から、インターネット時代の「生産ライン」とも呼ばれている。また、工場での仕事と同様に、一日中コンテンツをパージする作業は、労働者の健康を損なうことにつながる。

過労死疑惑に対してBilibiliは、従業員が亡くなる前の1週間、彼は1日8時間、週5日という標準的な労働時間で働いており、同社は法律に基づいて休日出勤した彼の給与を3倍にしていたと主張している。

「彼が担当していたコンテンツセキュリティモデレーションの仕事は、24時間体制の特別な業務です。他の公共サービスと同様に、コンテンツセキュリティは旧正月であっても止めることはできません」と同社は声明で述べた。

もちろん、このような説明では激昂した世論を鎮めることはできない。「悲劇を繰り返さない」ために、Bilibiliは、コンテンツ監査チームの健康状態を「積極的に改善する」と述べている。そのために、2022年中に1000人のモデレーターを追加して「平均的な仕事量を減らす」とともに、同部門のスタッフに「強化された健康チェック」を導入する予定だという。

Bilibili従業員の死について最初に投稿したWeiboユーザーは、動画配信大手である同社の弁護士から手紙を受け取ったと投稿している。スクリーンネームを「Wang Luobei」とするこのユーザーは、Weiboで500万人近いフォロワーを抱えている。Bilibiliは、この弁護士の手紙についてのTechCrunchの問い合わせには応じていない。

画像クレジット:Gao Yuwen / VCG / Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

サイバーセキュリティにとって厳しかった2021年は関連スタートアップには記録的な年に

2021年は、サイバーセキュリティにとっては厳しい年だったかもしれないが、セキュリティ関連のスタートアップ企業にとっては記録的な年となった。

セキュリティ業界の財務アドバイザリー会社であるMomentum Cyber(モメンタムサイバー)が発表した新しいデータによると、2021年のサイバーセキュリティ関連スタートアップ企業がベンチャーキャピタルから調達した資金の総額は295億ドル(約3兆4000億円)と「記録的」な数字だったという。これは2020年に調達した120億ドル(約1兆4000億円)の2倍以上であり、過去2年間の合計額を上回る。

投資家たちは、この記録的な金額の資金を1000件以上の案件に注ぎ込み、そのうち84件が1億ドル(約116億円)を超えていた。その中には、産業用サイバーセキュリティのスタートアップであるDragos(ドラゴス)が獲得した2億ドル(約232億円)のシリーズD、Claroty(クラロティ)の1億4000万ドル(約162億円)のプレIPO調達パスワードレス認証のTransmit Security(トランスミット・セキュリティ)が調達した5億4300万ドル(約625億円)のシリーズAが含まれる。資金調達額の合計は前年比138%増となったことが、Momentum社のデータから明らかになった。

Momentumによると、この歴史的な投資額は、業界におけるイノベーションの活性化と、新型コロナウイルス感染流行の影響から悪化したサイバー脅威の爆発的増加によってもたらされたもので、2021年には記録的な数のセキュリティスタートアップがユニコーン企業となった。前年はわずか6社だったのに対し、2021年はWiz(ウィズ)、Noname Security(ノーネーム・セキュリティ)、LaceWork(レースワーク)など、30社以上のスタートアップが10億ドル(約1158億円)以上の評価額を達成した。

同様に、M&Aの件数も2020年の3倍以上に急増。2021年には286件の合併・買収が行われ、取引額の合計は775億ドル(約9兆円)となった。2020年には178件の買収があり、合計額は197億ドル(約2兆3000億円)に過ぎなかった。Momentum社のデータによると、これらの買収のうち十数件が10億ドルを超えた評価額となっており、その中にはAdvent(アドべント)がMcAfee(マカフィー)を買収した際の141億ドル(約1兆6000億円)、Thoma Bravo(トーマ・ブラボー)がProofpoint(プルーフポイント)を買収した際の123億ドル(約1兆4000億円)、NortonLifelock(ノートンライフロック)がAvast(アバスト)を吸収合併した際の80億ドル(約9300億円)、Okta(オクタ)がAuth0(オースゼロ)を買収した際の64億ドル(約7400億円)などが含まれている。

このような成長は、Momentum CyberとNightDragon Security(ナイトドラゴン・セキュリティ)の創業者兼マネージングディレクターであるDave DeWalt(デイヴ・デウォルト)氏が「サイバーの黄金時代」と呼ぶものを反映しており、すぐには減速しそうもない。Momentum社によると、脅威の増加にともない、業界は「さらに大きな」2022年に向けて準備を進めているという。

画像クレジット:Yulia Reznikov / Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

カリフォルニア州当局がテスラを人種差別とハラスメントの疑いで提訴

カリフォルニア州公正雇用住宅局(DFEH)は米国時間2月9日、人種差別とハラスメントの疑いでTesla(テスラ)を提訴した。州裁判所に提出された訴状では、カリフォルニア州フリーモントにあるTeslaの製造工場での問題が指摘されている。

同当局は「労働者からの数百件の苦情」を受け、フリーモント工場が「黒人労働者が人種差別的な中傷にさらされ、仕事の割り当て、懲罰、給与、昇進で差別され、敵対的な職場環境を作り出している分離された職場」である証拠を確認したと、同当局の長官Kevin Kish(ケビン・キッシュ)氏が声明で述べた、とウォールストリートジャーナルは報じている

Teslaがハラスメントや差別の訴訟に直面するのは、今回が初めてではない。2017年には元工場労働者のMarcus Vaughn(マーカス・ヴォーン)氏が、フリーモント工場でヴォーン氏がマネージャーや同僚から繰り返し「Nワード」を浴びせられたという苦情をTeslaが調査しなかったとして、同社を相手取って集団訴訟を起こした

数カ月前にはTeslaは、同じ工場での差別と人種的虐待を見て見ぬふりをしたと訴えた黒人の元契約社員に、1億3700万ドル(約125億円)の損害賠償を支払うよう命じられたばかりだ。この訴訟で労働者のOwen Diaz(オーウェン・ディアス)氏は、人種差別的な中傷を受け、Teslaの従業員が人種差別的な落書きやかぎ十字、不快な漫画などの絵を同氏に残し、監督者はそれを止めるのを怠ったと主張した。

2021年末には複数の女性が、まさに同じ工場でTeslaがセクハラ文化を醸成していると告発した。女性たちは仕事中に差別、冷やかし、好ましくない言い寄り、身体的接触を受けたという。

関連記事:さらに6人の女性がテスラを職場のセクハラで訴える

Teslaは訴訟が起こされる前に公開したブログ投稿で、差別やハラスメントに強く反対していることを強調し、同社が苦情に対応し、多様性や公平性、包括性に取り組むために取ったとする対策を誇示して自社を擁護した。

「Teslaはこれまで、人種差別やハラスメントを行う従業員を含め、不正行為を行った従業員を懲戒解雇してきました」と投稿には書かれている。

「Teslaはまた、カリフォルニア州に残る最後の自動車メーカーです」と、同社が以前から指摘している点に言及した。「しかし、製造業の雇用がカリフォルニアから失われつつある今、公正雇用住宅局は建設的に協力するのではなく、当社を訴えることにしました。これは不公平であり、特に数年前の出来事に焦点を当てた申し立てであるため、逆効果です」。

Teslaは2021年に、CEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏が「今後のTeslaの扱い」次第ではカリフォルニアでの製造活動を一切停止する可能性があると脅した後、本社をカリフォルニアからテキサス州オースティンに移した。同社は2020年5月、新型コロナウイルス感染症の拡散を阻止するためにフリーモントにある同社の製造施設を閉鎖した件でアラメダ郡を提訴していたが、この訴訟は後に取り下げられた。

DFEHはWSJに対し、黒人労働者はTeslaの監督者やマネージャーが人種差別的な言葉を使うのをしばしば聞いたり、工場内で人種差別的な落書きを見たりした他、肉体的により過酷な職務を割り当てられ、より厳しい処分を受け、職業上の機会も除外されたと述べている。

Teslaは2020年12月に初の多様性報告書を発表し、米国内の労働力の10%が黒人・アフリカ系米国人であることを明らかにした。取締役レベルでは黒人の割合は4%にすぎない。ヒスパニック・ラテン系の従業員は全従業員の22%で、ディレクタークラス以上では4%にとどまる。アジア系従業員は全従業員の21%で、このグループはディレクターレベルの従業員の4分の1を占めている。

WSJによると、DFEHは2月10日朝に訴状をオンラインで閲覧できるようにするという。

画像クレジット:David Paul Morris / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

不動産売却プラットフォーム「いえうり」のNon Brokersが仲介手数料無料で家が買える「チョク買い」サービス開始

不動産売却プラットフォーム「いえうり」を運営するNon Brokersは2月10日、仲介手数料無料の不動産購入ポータルサイト「チョク買い」をローンチしたことを発表した。不動産の売却と購入が連携したプラットフォームを構築することで、家を売りたい人と買いたい人が直接マッチングできる不動産売買の新たなエコシステムの実現を目指す。

現在、不動産の購入希望者の9割以上が不動産ポータルサイトを活用するとされる。ただし、ポータルサイトは物件数が多いというメリットがあるものの、例えば「現状渡し(仲介物件)」と「リフォーム済み(買い取り再販物件)」が混在していたり、「仲介手数料3%」と「仲介手数料ゼロ」の物件が混在していたりといった状況が多々ある。また、同じ物件を複数社が掲載(一般介在契約)している場合もあり、不動産購入経験がない人にとって混乱する要素が多いという課題がある。

売り手側である不動産会社側も、物件を掲載しても多々ある物件情報に埋もれる、限られた項目・情報量の中でポイントをまとめる必要があるなど、情報を伝えきれないケースも少なくないそうだ。

これに対して「チョク買い」では、不動産会社が売主となっている物件に特化し掲載する不動産購入ポートルサイトとすることで課題を解消している。全国の不動産会社が売主となっており、仲介会社を介さないことから、購入者は仲介手数料無料で物件を購入可能という。

また不動産会社が売主であるため、売却した不動産に問題があった際に売主が買主に対して負う瑕疵担保責任も充実。個人売主では2~3カ月程度が一般的なところ、中古物件で2年、新築物件では10年となっている。取り扱い物件は、中古・新築のマンション、中古・新築の戸建て、土地で、住み替えサポートも充実しているそうだ。購入検討者に対して新着物件をレコメンドする「チョク買いロボ通知」といった機能も採用している。

Non Brokersは、「いえうり」に加えて「チョク買い」の提供を開始することで、さらなる不動産売買の合理化を実現するという。

まず「いえうり」の役割としては、売主を集客し売却活動が成功するよう、最適な不動産会社とマッチングを⾏う。ここでは、仲介会社は媒介獲得を⽬的とし、買取会社は直接買い取ることを可能とする。また「チョク買い」の役割は、リフォーム住宅に興味を持つ買主候補を集客し、買取会社が買い取った物件にマッチングする。

さらに「チョク買い」では、チョク買いロボにより多数の買主データベースを蓄積できるため、「いえうり」で媒介を獲得した仲介会社に対し、条件が⼀致した場合の紹介が可能となり、仲介でも早く売れる世界観を作れると考えているそうだ。

Non Brokersは、不動産を売却したい人は買主が見つかるまで待つしかなかった世界から、売却したい人と購入したい人をマッチングするプラットフォームを構築し、不動産売買における「仲介と買取」「売却と購⼊」のベストプラクティスを提供するとしている。

RevCommの音声解析AI電話MiiTel、会話におけるネガティブ・ポジティブな感情を可視化する音声感情認識機能を採用

RevCommの音声解析AI電話MiiTel、会話におけるネガティブ・ポジティブな感情を可視化する音声感情認識機能を採用RevComm(レブコム)は2月9日、音声解析AI電話「MiiTel」において、話し手のポジティブ・ネガティブな感情を可視化する音声感情認識機能をリリースしたと発表した。これにより、会話の当事者以外でもクレームなどに気づけるようになるという。

MiiTelは、日本発の音声解析AI電話サービス。電話営業やコンタクトセンター業務などで、会話内容を解析するとともに高精度のフィードバックを行うことで、商談成功率・成約率の向上につなげるというもの。顧客と担当者が「なにを」「どのように」話しているのかわからないというブラックスボックス状態を解消するほか、アナログな議事録作成といった負荷も自動文字起こし機能により軽減できる。

RevCommは音声感情認識について以研究を重ねており、その成果の一部は、筑波大学との共同研究による音声感情認識関する論文として、2021年8月に音声処理トップカンファレンス「INTERSPEECH 2021」で発表している。今回追加された音声感情認識機能は、発話音声の音声特徴と音声認識器により得られる単語と単語信頼性を入力として、DNN(Deep Neural Network)を用いて発話音声の感情を推定する、音声感情認識アルゴリズムとしている。

具体的には「納得していない」「不満を覚えている」「乗り気ではない」「迷っている」「相手の過失や失礼な態度を攻めている」ような話し方の場合には「ネガティブ」と判定される。一方「喜んでいる」「感謝している」という話し方の場合は「ポジティブ」と判定される。結果はMiiTelの解析画面にオレンジとブルーのグラデーションで帯として表示さる。

クレーム電話を例に挙げると、会話の当事者(ユーザー)は、顧客側の感情の遷移を確認することで不満を解消できたかどうかを判断できる。また、ネガティブな感情を伴った顧客の発話を確認することで、顧客がどういったことに不満を持っているのかを素早く知ることが可能になるという。さらにMiiTelであれば、会話の当事者以外でも、ネガティブな内容の会話に早く気づけるとしている。

ライフイズテック、ディズニーの世界で学べる児童向けプログラミング教材「テクノロジア魔法学校」を2週間限定で無料公開

ライフイズテック、ディズニーの世界で学べるプログラミング教材「テクノロジア魔法学校」入門・基礎編を2週間限定で無料公開

中高生向けのITおよびプログラミング教育サービス「Life is Tech!」(ライフイズテック)を運営するエドテック企業ライフイズテックは2月9日、ディズニーの世界で創造的に学べるオンライン・プログラミング学習教材「テクノロジア魔法学校」(1章〜4章)を2週間限定で無料提供すると発表した。2020年の休校期間も実施し、1万人以上が学んだものという。

申し込みを受け付けは、2月16日まで。申し込みは「「テクノロジア魔法学校」無料開校お申込み」から行える。

「テクノロジア魔法学校」は、魔法学校を舞台にしたオリジナルストーリーに加えて、「リロ・アンド・スティッチ」や「塔の上のラプンツェル」など8つのディズニー作品をテーマにしたレッスンを収録している。冒険をしながら、ウェブデザイン、ゲーム制作、メディアアートの3つのコースでプログラミングを学ぶことができる。ディズニー作品をテーマにしたタイピングレッスンもあり、PC初心者にも対応している。オンライン自宅学習では、子どもたちが飽きてしまうことが最大の課題とされているという。この教材は、「速く・深く・大量に」学べる「3秒ステップ・バイ・ステップ式」を取り入れるなどして、特に持続性を重視して作られた。

本来は月額2958円(税込)の有料コースなのだが、2022年2月17日から3月2日までの2週間限定で無料提供される。内容は、「テクノロジア魔法学校」入門・基礎編全76レッスン。対象は小学生以上(推奨年齢は12歳以上)。

九州大学ら研究チーム、水素による破壊を防止し高強度アルミニウム合金をさらに高性能化する方法を確立

九州大学ら研究チーム、水素による破壊を防止し高強度アルミニウム合金をさらに高性能化する方法を確立

九州大学(戸田裕之主幹教授、王亜飛特任助教)は2月7日、岩手大学京都大学高輝度光科学研究センターと共同で、高強度アルミニウム合金に脆弱化をもたらす水素に対処し、さらなる高性能化をもたらす手法を確立したと発表した。これにより、20世紀初頭からあまり進んでこなかったアルミニウム合金の高強度化が大きく発展することになる。

金属に水素が入り込むと、「水素脆化」という現象により強度が低下するという。アルミニウムも水素脆化の影響を受ける。水素を取り除くことができれば強度は増すが、水素はもっとも小さな元素であるため、その存在の可視化や解析は極めて困難であり研究は進まず、1900年代初頭から飛躍的に強度を増した鉄鋼に対して、アルミニウムの進化は鈍かった。

九州大学ら研究チーム、水素による破壊を防止し高強度アルミニウム合金をさらに高性能化する方法を確立

金属材料の強度向上の歴史

そんな中、同研究グループは2020年、大型放射光施設SPring-8で3D画像を連続的に撮影する4D観察と、スーパーコンピューターによる原子シミュレーションにより、水素脆化を引き起こしているのがナノ粒子であることを突き止めた。このナノ粒子には、アルミニウム内のほとんどの水素が集まっていた。その水素の集中によりナノ粒子は自発的に崩壊し、アルミニウムが破壊される。アルミニウムから水素自体を取り除くことはきわめて難しい。そこで研究グループは、ナノ粒子よりも水素を引く付けやすいものを添加することを考え、研究を進めた。その結果、意外にもアルミニウム、鉄、銅という平凡な元素を含むミクロ粒子に、水素を強力に引きつける力があることがわかった。

この「水素脆化防止剤」を導入すると、ナノ粒子に引きつけられた水素は、94.5%から34.6%に減少した。しかし、今度は大量の水素を引きつけたミクロ粒子が水素脆化を引き起こすのではないかと疑問を抱いた研究グループは、再び4D観察によりミクロ粒子の破壊挙動を確かめたところ、水素脆化防止剤による破壊は見られなかった。

九州大学ら研究チーム、水素による破壊を防止し高強度アルミニウム合金をさらに高性能化する方法を確立

特に航空産業では、アルミニウムに代わって炭素繊維複合材料が使われるようになっているが、製造・加工・修理のコストと信頼性の面から、軽量で高強度なアルミニウム合金への期待は高い。この手法を用いることで、アルミニウム合金はより強くなり、より薄く延ばすことも可能となり、利用価値は高まる。

また、リサイクルされたアルミニウムの場合、どうしても鉄が混入しアルミニウムの性能を落とすという課題がある。そのためにアルミニウムのリサイクルが拡大しない要因になっているという。しかしこの研究成果を応用して、「リサイクル時に増える有害な鉄を有益な水素脆化防止剤として活用することで、高強度なアルミニウムのリサイクルを促進する効果も期待されます」と研究グループは話す。

現在は、アルミニウムの水素脆化を防ぐさらに有効なミクロ粒子を探すべく、原子レベルの大規模シミュレーションによる探索を進めているとのことだ。

アーティストに大きなチャンスをもたらすはずだったWeb3、蔓延する作品の盗難や肖像権の侵害で評価に傷

Jillian C. York(ジリアン・C・ヨーク)氏はNFT(非代替性トークン)にはなりたくなかった。

ベルリン在住の作家で活動家ヨーク氏は、電子フロンティア財団のInternational Freedom of Expression(言論の自由を守り促進することを目的とするNGO)でも中核を担っている。どういうわけか、彼女の名前はいわゆるCypherpunk(サイファーパンク)の1人としてウィキペディアにも掲載されている。Cypherpunkはセキュリティ、暗号技術、プライバシーを推奨する活動家だ。ヨーク氏はこの3つを支持してるが、それらを自身の最も重要な関心事としたことはない。

「もちろん、ウィキペディアのリストから自分を削除することはできません。ですが私は、暗号技術を支持してはいますが、自分をCypherpunkだと思ったことはありません」と同氏はいう。同氏はウィキペディアの編集ルールを尊重しているため、自身が参加したくもないグループに強制的に参加させられてしまったわけだ。

ところが、2021年のクリスマスイブに、ウィキペディアに掲載されているヨーク氏と多数のセキュリティ賛同者およびCypherpunkたちがトークンマーケットOpenSea(オープンシー)にNFTとして登場したのだ。これらのトークンには、そのCypherpunkの想像画が含まれている。ヨーク氏のトレーディングカードには、回路や指紋とおぼしき背景から彼女の署名のトレードマークである坊主頭がちらっとのぞいている。またヨーク氏は、自分が参加したくないもう1つのグループにも属してしまっている。自分のアートや作品を盗まれてNFTを作成されてしまった人たちのグループだ。同氏は激怒している。理由は2つある。1つは、クリエイターが使用した写真は著作権保護されており、実は彼女の資産ではなかったこと。

もう1つは、名前のスペルが間違っていたことだ。

トレーディングカードはプロの写真家が撮影した写真をもとにしたもので、Jillion Yorkという名前が入っていた。また、こうしたNFTコレクションには、ヨーク氏と同氏の仲間たちに加えて、セキュリティ界隈ではすでに忘れ去られたRichard Stallman(リチャード・ストールマン)やJacob Appelbaum(ジェイコブ・アッペルバウム)などの名前もあった。トレーディングカードに描かれたヨーク氏と数人の人たちは、そうした人たちと一切関わりたくないという考えだった。

「私はこうしたものを一切認めていませんし、削除して欲しいと思っています」とヨーク氏は12月26日にツイートしている。他の多くの支持者や被害者も同様のコメントを寄せている。OpenSeaとNFTクリエーターの間で何度もやり取りが行われた末、ItsBlockchain(イッツブロックチェイン)という会社が要求に応え、すべてのNFTを削除した。

分散化資産を破壊するために中央の管理会社にアクセスする必要があるという現実を多くの人達が皮肉だと感じている。

「まったくばかげているし、疲れます。Web3のデジタル資産という新たな領域では、他人のアイデンティティーをその人の許可なくトークン化し、取引可能な商品として営利目的で販売できるというのですから」とNew Republic(ニュー・リパブリック)の編集者Jacob Silverman(ジェイコブ・シルバーマン)は書いている

ヨーク氏の試練は始まるのとほぼ同時に終わった。NFTのクリエーターHitesh Malviya(ヒテシュ・マルビヤ)氏がヨーク氏や他の被害者たちと連絡を取り、NFT画像を取り下げることに同意したのだ。数日後、これらの画像は削除され、代わりにMedium(ミディアム)の投稿が掲載された。この投稿でマルビヤ氏は次のように述べている。「我々のチームは暗号技術に関する若者達のコミュニティに、Cypherpunkという存在が、今日までにブロックチェーンテクノロジーの発展において果たした重要な役割について知ってほしかったのです」。

「残念ながら、多くのCypherpunkたちがこの考えに反対し、どのような形であれ参加を拒否しました。ですから我々はすべてのCypherpunkたちに、彼らに無許可でNFTを作成したことを謝罪しました」と同氏は説明した。

筆者がNFTについて、また個人の写真と情報、とりわけ他人のアートを金もうけに使うことができると思った理由を尋ねると、マルビヤ氏は不機嫌そうに次のように語った。

「我々はNFTにおける肖像権保護法については認識していませんでした。市場は規制されていないからです」と同氏は直接のメッセージで語った。「我々は3カ月間、人手と時間をかけて教育用のシリーズとこのNFTコレクションを作成しました。今回のことはいい教訓になりました。質問の答えになっていれば幸いです。コメントは以上です」。

今回の事態とそれに関するさまざまなコメントは、拡大しつつも混乱を招いているWeb3の一側面を表している。すべてのものが許可を必要としないなら、誰かの肖像、アート、データを使う際に許可を必要とするのは一体どのような場合だろうか?何より、Tシャツのデザインから裸体まで、何でもNFTに変えようとする輩に歯止めをかけるにはどうすればよいのだろうか?

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残念ながら、ヨーク氏のようなケースは決して今始まったことではなく、クリエーターを一攫千金狙いのNFTクリエーターから守ることを目的とするまったく新しい産業とツールチェーンが作成されている。

2021年4月、NFTを使った別の大規模な窃盗事件が発生した。アーティストQing Han(ここではQuinni[クイニー])の作品が盗まれ、ヨーク氏のケースと同じプラットフォーム、OpenSeaに再投稿されたのだ。クイニーは健康と慢性病に対する芸術的な見方でファンから愛されていたが、2020年2月にがんで亡くなった。クイニーの死後も、彼女の兄と仲間のアーティストZe Han(ツェ・ハン)氏がクイニーのソーシャルメディアアカウントを維持し、彼女の作品を投稿した。

1年後、泥棒たちがクイニーの作品を匿名で投稿した。ファンからの激しい抗議の後、作品はOpenSeaを含むさまざまなNFTをサイトから取り下げられ、表面上はすべての作品がブロックチェーンから削除された。クイニーの兄はこの件の後、NFTサイトへの参加を拒否している。

「今回の件では、クイニーのアート作品が無許可で販売されていたことを確認のため申し上げておきます」とハン氏はTwitterに書いている。「クイニーのアートが販売されている合法的な場所はありません」(これは今後変わるかもしれないが)。

今回の件で、多くのクリエーターたちがNFTに関して教訓を学んだ。デベロッパーたちは暗号資産にまったく興味のない多くのクリエーター向けにたくさんのツールを作成した。こうしたツールは、彼らが盗まれたアートに気づけるように、窃盗が発生していることを強調するTwitterのフィードをポップアップ表示する

オンライン共有コミュニティDeviantArt(デヴィアントアート)のある重要人物は、大規模なアート盗難に詳しい。

「当社はこのプラットフォーム上で5億点を超えるアートをホスティングしています」とDeviantArtのCMOであるLiat Karpel Gurwicz(カーペル・ガーイッジュ)氏はいう。「当社は何年にも渡って、盗難事件を扱ってきました。別に今始まったことではありません。実際の規制がかけられる前から、オンラインアートコミュニティとして、盗難には常に対処してきました」。

最近同社はブロックチェーン上のユーザーアートを検索するボットを開発した。このボットは、OpenSeaなどの人気のNFTサイトに掲載されているアートを、登録済みユーザーの画像と比較する。また、機械学習を使用して、DeviantArtのサーバーにすでに投稿されているアートに似たアートを見つける。さらには、アーティストにOpenSeaやその他のプロバイダーへの連絡方法を表示することで、削除プロセスも簡素化する。

DeviantArtのCOOであるMoti Levy(モティ・レビー)氏によると、このシステムはまだ、正規所有者によって投稿されたアートと窃盗犯によって投稿されたアートを識別しないという。

「ほぼ完全に一致するアートを見つけた場合は、ユーザーに最新情報を伝えます」と同氏はいう。「そのアートが、そのユーザーのNFTである場合もあります。誰が作成したのかはわかりません」。

このDeviantArt Protect(デヴィアントアートプロテクト)というツールは成功しつつある。すでに8万件の著作権侵害ケースを見つけており、2021年11月から12月半ばまでに送信された通知は4倍増となっている。DeviantArtは、NFTクリエーターたちがすべてのアートをまとめて盗むことができないようにボット対策ツールも追加した。

皮肉にも、NFTを販売している分散化市場は1つまたは2つのプロバイダーの周りに集約され始めている。最も人気のあるプロバイダーOpenSeaでは、ヨーク氏やクイニーのようなケースに専念する完全削除チームを設置した。

DeviantArtは、2022年1月初めの3億ドル(約346億円)のラウンドの後、評価額が130億ドル(約1兆5592億円)に達し、軌道に乗った。同社はNFT市場では並外れた最大のプレイヤーで、アクティブユーザー数は推計126万人、NFTの数は8000万点を超える。DappRadar(ダップレーダー)によると、DeviantArtで過去30日間に行われた取引の総額は32億7000万ドル(約3776億7000万円)、取引件数は2億3300万件に達する。ライバル会社Rarible(ラリブル)の同期間の取引総額は1492万ドル(約17億2000万円)だった。

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OpenSeaはエコシステムにおける自社の立場をオープンにしており、アーティストからの取り下げ要求にもできる限り迅速に対応していると主張している。

「他人のパブリシティー権を侵害するNFTを販売するのは、当社のポリシーに反しています」とOpenSeaの広報担当者はいう。「当社は、肖像権の侵害であるという通知を受けた場合にアカウントを停止したり使用禁止にするなど、こうした違法行為に対して定期的に複数の方法で対応してきました」。

興味深いことに、OpenSeaはディープフェイクについても断固たる措置を取っているようだ。同社はディープフェイクを同意なしの私的画像(NCII、non-consensual intimate imagery)と呼んでいる。この問題はまだ広く表面化していないが、インフルエンサーやメディア界のスターにとっては有害なものになる可能性がある。

「当社はNCIIに対しては一切容認しない方針で対処しています」と同社はいう。「NCIIまたはその類の画像(ある人物に故意に似せて修正された画像も含む)を使用したNFTは禁止しています。またそうした作品を投稿したアカウントは迅速に使用禁止にしています。当社は顧客サポート、信頼性、安全性、サイト保全性を維持するための取り組みを積極的に拡充し、コミュニティとクリエーターを保護し支援できるように迅速に対応しています」。

しかし、こうしたOpenSeaの取り組みに対し、多くのアーティストたちは満足していない。アーティストたちの多くは、自分たちの作品や仲間の作品がNFTプラットフォーム上で盗まれる事態になる前から、NFTに対して懐疑的だった。多くのユーザーたちが依然としてOpenSea上に自分たちの作品を見つけており、これに対して公に苦情を申し立てると、OpenSeaなどのプラットフォームの正式な窓口担当者と称するサポート詐欺師たちが押し寄せてくるという。

こうした混乱のため、DeviantArtのレビー氏によると、同社はNFTを探索してはいるものの提供するのは断っているという。実際、同氏はユーザーはNFTを欲しがっているとは思わないと考えている。

「長期的には、Web3は興味深いですし可能性もあると思いますが、アーティストを保護し支持するようなもっと良い方法で展開すべきです。アーティストを危険にさらすような方法には絶対に賛成できません」。

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(文:John Biggs、翻訳:Dragonfly)