SpaceXのISS補給船がドッキングに失敗―金曜に再挑戦

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今日の明け方(米国時間2/22)、GPSに問題が起きてSpaceXのDragon補給船はISS〔国際宇宙ステーション〕とのドッキングに失敗した。補給船はISSから800メートル程度の距離まで接近していたが、ドッキングは中止された。NASAによればDragon補給船、ISSおよび乗員の安全に問題は生じていないという。

再挑戦は木曜日〔日本時間金曜〕に行われる。SpaceXがISSへの補給ミッションを中断さぜるを得なくなったのはこれが最初だ。SpaceXはISSへの補給任務を2012年から開始している。偶然だが、数時間前にロシアの補給船がカザフスタンの基地から打ち上げられている。こちらの補給船は金曜日〔日本時間土曜日〕にドッキングが予定されている

SpaceXのDragon補給船は予定では今朝ドッキングし、宇宙から地球大気のオゾン層をモニターするために特別に製作された機器などの物資をISSに移すことになっていた。GPSの不具合によりDragon補給船のシステムは自動的にランデブーを中断してISSから距離を取った。

今回のSpaceXの補給船はケネディー宇宙センターの39発射施設から打ち上げられた。ここはアポロ計画で用いられ、またスペースシャトルを発射した発射施設でもある。NASAにとっては大きな歴史的な意義のある場所だ。SpaceXではこの発射施設から2018年上半期にも有人宇宙船を打ち上げたいとしている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Instagramに写真とビデオのカルーセル―10本まで一度に投稿できてスワイプで閲覧

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SnapchatクローンのStoriesが大当たりしているInstagramだが、メインのフィードをさらに改良する努力も怠っていない。今日(米国時間2/22)、Instagramは最大10本までの写真、ビデオを共有できるカルーセルをリリースした。ユーザーはカルーセルを左右にスワイプすることで自由に閲覧できる。

ユーザーにとってはなんらかのテーマに沿った写真、ビデオをまとめて共有できる便利なアルバムだ。メインのフィードなので24時間で消えるということはない。この機能はiOS版、Android版に追加され、世界のユーザーに数週間かけて順次公開される。

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Instagramの発表によれば、「ユーザーは体験を共有するに当って撮影した写真やビデオからベストの1枚を選ぶ必要がなくなった」ということだ。ファウンダーのKevin SystromはInstagram Storiesをスタートさせるにあたって「体験のハイライトを手軽に共有する」ためと述べていたが、メインのフィードではやや違った角度から体験の共有を進めているようだ。

StoriesのヒットによってInstagramのメインフィードは「ベストの1枚を選ぶ」というやり方を改良する必要を感じていたかもしれない。アルバムをまるごとアップロードできるカルーセルの追加は月間6億人といわれるユーザーからさらに多くのコンテンツを集めるのに役立つだろう。

Instagramのユーザーはフィードで体験を共有しようとするとき、最高10件までのコンテンツをボタンで選択できるようになる。写真、ビデオはそれぞれ編集可能だ。あるいはすべてのコンテンツに同一のフィルターを適用することもできる。順序を選択し、それぞれに友達をタグづけできる。ただしキャプション、場所、「いいね!」、コメントについては、カルーセル全体を1つの投稿して扱うことになる。現在のところ、すべての写真は正方形にトリミングされる。

フィードで共有された場合、友達は青いドットが表示されるのでカルーセルだと分かる。ユーザーは画面を左右にスワイプして望みの場面を見ることができる。最初の写真と青いドットからユーザー・プロフィールを見ることが可能だ。

Instagramでは「この機能を使って「愉快な体験を共有しましょう。友達の誕生日にサプライズ・パーティー企画したときなど、準備から友達が部屋に入ってきて驚くところまでカルーセルにまとめてアップできます。ケーキづくりのレシピを段階を追って説明するにも便利です。プロフィールからいつでも開けるようにできます」と勧めている。

Instagramでは2015年に広告写真のカルーセルを発表しており、昨年はこれにビデオを含めることができるよう拡張した。現在広告カルーセルは当初の5件のイメージから10件に拡大されている。

カルーセル機能を一般ユーザー向けに導入したことで、Instagramは写真やビデオをスワイプして次々に見ていくという習慣を根付かせようとしているのかもしれない。これは広告カルーセルの視聴にも好影響を与える。一方でInstagramのカルーセルでビデオや写真を共有するのが普通になれば、ユーザーがSnapchatを使わねばならない理由を一つ減らすことにもつながるだろう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


http://jp.techcrunch.com/archives/20160802silicon-copy/

Appleの新本社は4月にグランドオープン―名称はApple Park

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長らく建設中だったAppleの新本社の名称とオープニングの予定が決まった。新本社はApple Parkと呼ばれる。引っ越しは今年の4月だという。

1万2000人のApple社員が新本社で働くことになる。これほどの規模となると引っ越しも簡単ではない。すべてが完了するには半年程度かかるもようだ。4月にはグランド・オープニングのセレモニーが用意されているが、内装その他の作業はその後も夏過ぎまで続くという。

新本社にはオフィス区画に加えて1000席の規模の劇場も併設される。スティーブ・ジョブズの功績(特に新製品を紹介するときの天才的な巧みさ)を讃えて、この施設は『スティーブ・ジョブズ・シアター』と呼ばれる。

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Foster + Partnersがリーダーとなって建設されている新本社の外観はジョブズの当初のアイディアとほぼ同様だ。ジョブズは新本社のアイディアをクパチーノ市議会に2011年に説明した。ジョブズはその数ヶ月後に亡くなったので、Apple Parkの説明がジョブズ最後のプレゼンとなった。

Appleはビルの内部デザインについてはきわめて秘密主義だ。そのためFacebook本社のように広いオープンスペースがあるのか、もっと伝統的な多数の小さいオフィスに区画されているのかなどは一切不明だ。

26万平方メートルといわれる屋根はソーラーパネルで覆われており、これによりApple Parkでは100%再生可能エネルギーが用いられる。

ビルはAppleのデザインの審美性に沿ったもので、巨大なガラスパネル、ミニマリスト的で幾何学的な外観を備える。大量の木々が植え込まれ、フィットネス・センター、ビジター・センター、Appleストア、カフェなども併設されるはずだ。

私が注目しているのはベンチレーション・システムだ。ビルの環境は自然吸排気によって維持され、1年のうち9ヶ月はエアコンを作動させる必要がないという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

QualcommのLTE統合Snapdragon 210がGoogleのIoT OS、Android Thingsをサポートへ

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12月にAndroid Thingsを立ち上げたときGoogleは、そのAndroidベースのIoTオペレーティングシステムのための、ハードウェアパートナーをいくつか発表した。それらは、Intel Edison, NXP Pico, Raspberry Pi 3などだ。当然仲間に加わりたいQualcommは、Googleの発表に対し独自の、率直だけれどちょいと曖昧な応答をリリースした: 題して、“QualcommはAndroid Things OSに関しGoogleと協力して、迅速でスケーラブルでセキュリティにフォーカスしたIoT開発を推進して参りたい”。

と、いうわけでした。

さて、Mobile World Congressが間近に迫った今日このごろ、同社は、やや具体的な意図を明らかにして、そのSnapdragon 210チップが生まれたばかりのIoT OSをサポートし、このプロセッサーに統合されているLTEのサポートにより、ビデオカメラや決済システム、電子看板などのデバイスを動かす力になりたい、と発表した。

このサンディエゴのコンポーネントメーカーは、IoTの消費者的側面をとくに意識しているようで、Google Cast Audioのサポートや家庭用の器具類、スマートアシスタントなどに210チップを持ち込もうとしている。関連して言語処理や画像分析、データ処理などの機能もクラウドではなく、ハードウェア上でサポートする意向だ。

これらのサポートが具体化する今年後半にはこれが、LTE内蔵のプロセッサーが新しいIoT OSをサポートする最初の例になる、とQualcommは考えている。なお、来週のMobile World Congressでは、早くもこれらの技術のデモを行う。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

信用管理サービスを提供するアラームボックスがみずほキャピタルやKLab、デジハリなどから資金調達

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取引先の信用リスク管理は、特に財務体力のない中小企業にとっては、経営存続に関わる大きな課題だ。でも小規模な企業ほど、与信専任の担当者などいないし、信用管理に関する知識も乏しい、というのが実情だろう。アラームボックスは、そうした企業向けに、独自の信用リスク判断のアルゴリズムを利用した取引先のリスク管理サービスを提供する、FinTech領域のスタートアップだ。

そのアラームボックス社が2月15日、みずほキャピタルおよびKLab Venture Partnersが運営する各ファンドとデジタルハリウッドなどを引受先とする第三者割当増資の実施を発表した。調達額は非公開だが、増資により資本金は1億円となる。

アラームボックス社代表取締役社長の武田浩和氏は、2010年にNISリースからスピンアウトする形で、売掛保証サービスのトラスト&グロースを設立。その後、東証一部上場企業ラクーンの100%子会社となった同社の代表取締役社長を2016年に退任し、6月にアラームボックス社を設立している。アラームボックス社には他にも、信用保証会社やメガバンク出身のメンバーがそろい、アルゴリズムで解析された信用リスクの最終判断などを担当しているという。

アラームボックス社は、2016年10月に開始した売掛保証サービス「セキュアボックス」に続き、2月20日には信用リスク管理の新サービスとして、登録した取引先をモニタリングし、信用状況の変化やリスクを解析・発見して通知してくれる「アラームボックス」を正式リリース、サービスを開始している。

武田氏によれば、アラームボックス開発のきっかけは、売掛保証サービスの利用企業から「取引先倒産のリスクを保証し、損失を補填してくれるだけでなく、倒産の兆候をはじめとしたネガティブな信用情報を事前に教えてほしい」という声があったことだという。

本来、信用リスク管理は取引先の定常的なモニタリングも含めて行うものだが、従来のサービスは高度な知識や高い利用料が必要な大企業向けで、中小企業にはハードルが高いものだった。「でも実は信用管理のニーズは、一度の焦げ付きで吹き飛んでしまうような財務体力のない中小企業の方が高い。そこで、そうした企業の方でも直感的に利用できるようなインターフェイスのサービスを、スマートフォンとPCで提供することにした」(武田氏)

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アラームボックス サービスページのサンプル

アラームボックスの通知設定は、1取引先までは無料。5社まで登録できる月額980円のライトプランと、20社まで登録できる月額3800円のビジネスプランとがある。

信用リスクの判断に独自アルゴリズムを利用していることについて、武田氏は「そもそも売掛金の保証や取引の審査などで、顧客である取引先に決算書をもらうということは基本的にはできないことが多い。決算書のない状態でも、さまざまな側面情報から審査を行って取引を開始する状況になる。そうした中で、ネット上のデータを側面情報の一つとして利用している」と話す。

参照するネット上のデータについては、「例えば飲食店の場合なら、口コミやレーティングサイトの情報なども一つの指標となる。レーティングを見てお客さんが来店行動を決めていることから、そうした評価も集客と実績に影響するので、倒産とレーティングとの間には実は一定の関係がある。これはTwitter上のバイトによる炎上などでも同じような傾向が見られる」と武田氏は言う。

「それらの情報に加えて、他の取引先による評判や業界内の情報、与信会社の情報も参照して、最終的には判定基準に基づいて信用リスクの判断を行っている。こうした判定は機械学習が強みを持つところでもあるので、今後、機械学習によってさらに精度をアップしていきたい」(武田氏)

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今回の調達資金は、このアラームボックスの開発体制、デザインやシステムの強化に全力でつぎ込む、という武田氏は「2年後には、アラームボックスに登録されるアラーム(取引先)の数を1万件にしたい。また、今後も資金調達を予定している」と話している。

「お金のデザイン」のシリーズC調達額が15億円に、THEOを使う社員のポートフォリオも公開

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資産を預けるとアルゴリズムが自動で資産運用を行ってくれるロボアドバイザーサービスはウェルスナビやエイト証券のクロエなどいくつかある。お金のデザインが提供するグローバル資産運用サービス「THEO(テオ)」もその内の1つだ。TechCrunch Japanでは2016年9月、お金のデザインがシリーズCラウンドで8.1億円の第三者割当増資を実施したとお伝えしたが、今回新たにFenox Venture Capitalが出資に参加し、調総額は15億円になった。

THEOは10万円から資産運用を始めることができるサービスだ。9つの質問に答えると、THEOは各ユーザーに最適な資産ポートフォリオを世界86の国と地域における1万1000銘柄以上の海外ETFから組成する。

お金のデザインは2013年8月に創業し、2016年2月にTHEOをローンチしている。2015年12月には東京大学エッジキャピタル、グロービス・キャピタル・パートナーズ、伊藤忠テクノロジーベンチャーズらから総額約15億円を調達した。2016年9月には、ちばぎんキャピタル、静岡キャピタル、ふくおかテクノロジーパートナーズ、丸井グループ、ベネフィット・ワン、東京短資株式会社によるシリーズCとなる第三者割当増資を発表した。このシリーズCには、後に山口キャピタル、ぶぎんキャピタル、京都銀行グループの「京銀輝く未来応援ファンド投資事業有限責任組合」、東邦銀行、百五銀行、 リクルートホールディングス、日本交通株式も参加した。さらに今回Fenox Venture Capitalが参加し、調達総額が15億円になったという経緯だ。創業からの累計調達額は約33億円を超える計算となる。

お金のデザインの担当者はFenox Venture Capitalからの資金調達について、「THEOはグローバル展開を視野に入れていて、Fenox Venture Capitalとはアジアやグローバルでのネットワーク作りなどで協力していきたいと考えています」と話す。THEOでは若いユーザー層に向けたエッジの利いたサービスを展開し、日本の金融機関や非金融機関との提携により得た知見を活かし、ゆくゆくは海外市場で展開することを目指しているという。

また、ローンチから1年経った2017年2月には、THEOへの申込者数が2万人を超えたという。お金のデザインは2月17日、THEOのローンチ1周年を記念して、THEOのユーザー数や属性などをまとめたインフォグラフィックスを公開している。それによるとTHEOのユーザー20代(15%)、30代(37%)の若い世代が多く、全体の89%が投資経験がそう多くない層だという。預け金額は、10万円のユーザーが39%と最も多い。

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また、THEO全体における預かり金額は50億円を超えているとある。これは2016年9末時点の日本投資顧問業協会の統計資料によれば、日本国内の投資一任契約型のロボアドバイザーの中で最も預かり資産額が多いという。

インフォグラフィックスの他に、お金のデザインの社員19名分のTHEOの資産運用状況も公開している。担当者は、「ロボアドバイザーの資産運用は実際どうなんだろうと疑問に思う人も多いかと思います。想定される運用実績を出すこともできますが、よりリアルな情報を出すことで、身近に投資のユースケースを感じてもらえると考え、公開しました」と説明する。

社員のポートフォリオを見てみると、その多くで資産の10%近い上昇が見られる。ただ、THEOは海外ETFによる資産運用のため、為替変動による影響も少なからずあり、円建ての数値を鵜呑みにすることはできないだろう。2016年11月の米大統領選挙以降に円安が進んだが、ポートフォリオの中にはその影響がはっきり出ているものもある。

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ただ、このようにロボアドバイザーの運用実績を公開するというのは、ユーザーが投資に関心を寄せるきっかけになりそうだ。誰かと資産運用で投資しているだなんて、おおっぴらに話すのにはなんとなく抵抗感があるし、ましてや他人の資産運用状況について知る機会なんてほとんどないだろう。お金や投資についてオープンに話す機会が増えれば、投資に対する世間の印象も徐々に変わっていくのかもしれない。

GoogleのTilt BrushがOculus Riftに対応

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仮想現実のクリエイターになりたい人は、ツールの少なさを嘆いている。そこで今日Googleは、Oculus Rift用のTilt Brushを発表した。この仮想お絵かきアプリケーションは、これまでHTC Viveでしか経験できなかったけど、これからはRiftのTouch Controllersでより自然な対話ができるから、GoogleはTilt Brushを、Facebookが保有するVRプラットホーム〔==Oculus〕にも提供することに決めたのだ。

コントロールはTouch Controllers用になっているから、この完全にタッチ対応のハードウェアでは指をボタンに乗せただけでツールチップが出る。BrushesはOculusのヘッドフォーンも利用して、おもしろい音をイマーシブなサラウンドモードで出す。音で、今何を描いているかが分かるのだ。

このRiftバージョンのTilt Brushを数分使ってみたが、HTC Viveのころよりずっと成熟したツールになってることが分かる。対話的な操作が、とても軽快だ。OculusにもRift用のクリエイティブなスケッチや彫刻アプリケーションはあるけど、でもBrushesで道具がさらに増える。Touch Controllersがあるために、HTCからRiftに引っ越す仮想アーチストも、きっといるだろうね。

Tilt BrushはOculusのストアで29ドル99セントで買える。〔日本円: 2990円〕。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

改造ハッカーたちが、NES Classic Editionを万能レトロゲームマシンに改造中

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もしこの前のホリディシーズンで運良くNES(米国版ファミコン) Classic Editionを手に入れることができていたなら、(私同様に)そのエミュレーションの質の高さに、きっと感心していたことだろう。これでもう少し沢山ゲームが載っていたら、あるいはSNES(米国版スーパーファミコン)版が手に入るなら本当に良いのに。実は、その夢が叶おうとしている。まあ、ある意味ではということではあるが、ともあれ。

ハッカーたちがこの小さなコンソールのメモリを書き換える方法を発見してから、レトロゲームの勇敢なファンたちがその限界をテストし続けてきた。まずいくつかのゲームを追加し、そしてその数が数百に増え、今や他のコンソールのゲームも追加されるようになって来ている。

これは主に、”Cluster”のハンドルネームを持つロシアの開発者、Alexey Avdyukhinの仕事だ。彼は、コンソールのメモリを書き換えるプロセスを、文鎮化(フリーズして復活しなくなること)を避けながら簡略化するツール、Hakchi2を開発した。その「文鎮化を避けながら」という部分が重要だ。

しかし、元々は注意深い操作を必要としたハッキングの産物だったアプリは、はるかに使いやすいものとなり、さらには拡張さえ可能になっている。最初にClusterがGitHub上で発表したのは、RetroArchという名のマルチコンソールエミュレーターだ。これは同じプロジェクトで働く他の開発者MadMonkeyによって移植されたものである。

それは自動的にサポートされていないNESゲームを検出し、ディフォルトのエミュレーターに代わってそれらを立ち上げます。メニューの表示、状態のセーブなどは、普通に動作します。またそれは(もちろんクラシックコントローラを使って)SNES、Genesis(米国版メガドライブ)、GBA、そしてNintendo 64をエミュレートすることができます。N64とGenesisのゲームをNESの上でプレイできるのは奇妙な気がするという意見には同意します。それが、それらをオプションでダウンロード可能な拡張として用意した理由です。

人びとはコンソールのルック・アンド・フィールを失うことなく、既に複数のシステムの数十または数百のゲームを自分のデバイスに取り込んでいる。その様子はこのDan the Manによるデモビデオで見ることができる。

あなたが慌てて駆け寄って、狂ったようにNES Classic Editionの内部を下手に弄り始める前に一言。このプロセスはまだ気軽にできるようなものではないし、明快に合法的とは言えないものだということに注意して欲しい。任天堂は、海賊版ROMを使おうとして回復不可能な損傷を与えた場合には何の面倒も見てはくれない。そしてともかくこのコンソールに対する数多くのゲームはまだテストされていないし、おそらくは動作しない場合もあるだろう。

最善の策は — 少なくとも私はそうしているが — 様子を眺めながら待つことだ。これは1ヶ月でツギハギから立派に動作するソフトウェアに育って来た、近いうちには誰でも扱えるようになるかもしれない。ところで、既に組み込みの30個のゲームはコンプリートしただろうか?本当に?Ghosts ‘n Goblinsも? 嘘はいけないな。

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(翻訳:Sako)

混成現実のビデオをもっと自然で親しみやすく見せるGoogleの工夫…ユーザーの顔を画面中に捕捉

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一般消費者向けのVRは1年近く前から出回っているが、その回りには山のように大量の疑問があり、業界の最優秀な人たちですら、ためらいを見せている。しかし、それらの疑問の中である程度答が得られたのは、消費者がVRを実際に体験しなくても、VRとはどういうものかを、知る方法だ。

研究者がそのために手早く作り上げたのが、混成現実(mixed reality, MR)という構成だ。背景にグリーンのスクリーンを張り、いろんな技術的工夫を凝らして、ヘッドセットを装着したVRユーザーを仮想環境の中に‘住まわせる’。

YouTubeにはVRのための混成現実スタジオというものがあり、本誌のこの記事中のビデオでは、著名なテレビ司会者Conan O’BrienがVRをプレイしている。それを見ると、混成現実というものが、お分かりいただけるだろう。

ゲームを作っているOwlchemy LabsRadial Gamesなどは混成現実にもっと深入りしてて、その経験から見つけたことをゲームデベロッパーのコミュニティで共有している。デジタルの世界の中で生きた人間のアバターを見分けることにはいろいろな問題があり、彼らはそのための努力の数々を紹介しているが、しかし今日Googleが発表したブログ記事には、そんなMRビデオをもっとリアルにするための工夫が載っている。それは、ユーザーの実際の顔をビデオの中に入れてしまう、という、ちょっと奇妙なやり方なのだ。

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GoogleのMachine Perception(機械知覚)のチームは、フェイシャルキャプチャ(facial capture, 顔だけを捉える)のプログラムと視線追跡とコンピュータービジョンのちょっとしたトリックを使って、改良型のVRのヘッドセットから顔が“透(す)けて見える”ようにし(右図下)、そして目の動きが参加者のアクションに従うようにした。

もちろんこの“ヘッドセットをなくしてしまう”ソリューションは、VRコンテンツの作者や共有者にとって大事件ではないけど、多くの消費者が問題とは思わなかったような問題の解決に、Googleが時間をかけて取り組んだことはクールだ。VRがユーザーの目を取り戻しただけでも、VR特有のよそよそしさがかなり減って、消費者にとって親しめるものになった、と言えるのではないだろうか。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

MIT、電力を小出しにできるスマート電源を開発

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MITの研究チームは、小型電子機器がエネルギーを「すする」ことのできる電源を開発した。電気を一定の流れではなくパケットにして送り出す。

ほとんどの電源装置は一定の電圧を供給する。これは、センサー等の常時電力を必要としない小型デバイスにとっては一般に効率がよくない。MITのMicrosystems Technologies Laboratoriesは、電力を要求に応じて供給し、それ以外は「休止」状態になる電源を作った。

「一般に電源コンバーターは、実際に電流を供給していない間も電力を消費している」と元MTLに所属していたArun Paidimarriは言う。「このため、例えば静止電力がマイクロアンペアなら、負荷電力がナノアンペアでも、マイクロアンペアの電流を消費することになる。このコンバーターは広い範囲の電流で効率を保つことが可能だ」。

コンバーターは最大3.3 V の入力を0.9 Vに降圧する。「これらのエネルギーのパケットに基づいて動作する。電源コンバーターの中には様々なスイッチと、インダクター、コンデンサーが入っていて、基本的にこれらのスイッチをオン/オフしている」とPaidimarriは言う。

これは、センサーがオンになり、何かの状態をチェックした後オフになれることを意味している。これが何度も繰り返されれば、IoTデバイスは極くわずかな電力(センサーと計算に必要なだけ)しか使わないですむ。

実に賢い解決策だ。要するに、デバイスがセンサー以外何も使っていなければ、少量のエネルギー「パケット」だけを供給する。デバイスが通信を行うときは「1秒間に100万パケットを供給する必要があるかもしれない」。つまりデバイスの低消費電力部分のみを動かし、高エネルギー部品は必要な時だけ活動させることができる。研究チームは最終的に50%の省電力を見込んでおり、実現すればIoTデバイスを限られたエネルギーで動作させることが容易になる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

GoogleのCloud PlatformがGPUをサポート

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3か月前にGoogleは、2017年の早い時期に、機械学習などの特殊なワークロードためにハイエンドのグラフィクスプロセシングユニット(graphics processing unit, GPU)のサポートを開始する、と発表した。2017年の早い時期とは今のことだから、Googleは言葉に違(たが)わず今日から、Google Cloud Platform上でGPUを使えるようにした。予想通りそれはNvidiaのTesla K80で、ユーザー(デベロッパー)はひとつのCompute Engineマシンで最大8つを動かすことができる。

GPUベースの仮想マシンを使えるのは当面、三つのデータセンター、us-east1, asia-east1, そしてeurope-west1だけだ。ひとつのK80コアに2496のストリームプロセッサーと12GBのGDDR5メモリがある(K80ボードには2つのコアと24GBのRAMがある)。

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複雑なシミュレーションを動かしたり、TensorFlow, Torch, MXNet, Caffeeなどのディープラーニングフレームワークを使っているときには、計算力はどれだけあっても過剰ではない。GoogleがこれらのGPUインスタンスでねらっているのも、ハイエンドマシンのクラスタを常時動かして機械学習のフレームワークを駆動しているようなデベロッパーだ。このGoogle Cloud GPUは、GoogleのCloud Machine Learningサービスおよび同社のさまざまなデータベースとストレージのプラットホームに統合される。

GPUの利用料金単価はアメリカでは1時間70セント、ヨーロッパとアジアのデータセンターでは77セントだ。時間単価としてはお安くないが、Tesla K80の2コア/24GB RAMのアクセラレータは、たちまち数千ドルの節約を稼ぎだしてくれるだろう。

この発表から数週間後にGoogleはサンフランシスコで、Cloud NEXTカンファレンスを開催する。そこではおそらく、同社の機械学習をもっと多くのデベロッパーに使ってもらうための企画が、発表されるだろう。

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〔参考記事: AWSのGPUインスタンス

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

トランプ大統領、マクマスター陸軍中将を安全保障補佐官に―未来志向の学者肌だが大のスライド嫌い

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マイケル・フリンの突然の失脚から1週間後、トランプ大統領は新しい国家安全保障担当補佐官を任命した。大統領は各方面との関係修復を図るつもりなのか、新補佐官は、少なくとも前任者よりも多くの人々に受け入れられそうだ。

ハーバート・マクマスター陸軍中将は戦士にして学者とももっとも珍しい種類の軍人とも評されてきた。セルゲイ・キスリャク駐米ロシア大使と会談していたことに非難が高まる中で辞任したフリンが断固たる信念のタイプだったのに対してマクマスターは正反対だ。

マクマスターはよく「軍を代表するフューチャリスト」と呼ばれるが、テクノロジーに対する態度は複雑で、単純な擁護者ではない。マクマスターはテクノロジーが戦争さえ解決するという「テクノロジー万能の傲慢」に陥ることを強く批判する。マクマスターは2013年のニューヨークタイムの意見コラム(op-ed)欄に「テクノロジーによって迅速、安価に勝利をもたらすことができるから戦争をその政治的本質から分離できるというコンセプトは強く疑うべきだ」と書いている。この記事、The Pipe Dream of Easy War〔安楽椅子の戦争〕では次のように続く。

アフガニスタンやイラクの戦争はリモコンで操作することはできない。予算削減の圧力とテクノロジーの魅惑は一部に「われわれが知っていた戦争は終わりを告げた」という主張を呼び起こしている。先進テクノロジーは戦争に勝つための不可欠の要素ではあるが、テクノロジーを賞賛するあまり、精密攻撃であるとか外科手術的作戦であるとかテクノロジーによって敵を局限できるという幻想は軍事の本質を混乱させ、より大きな戦争目的の達成を妨害するものだ。

テクノロジーに対する深い考察はマクマスターの著書、Dereliction of Duty〔責任の放棄〕という議論を巻き起こしたものの全体として高い評価を受けた本にも反映されている。この本は ベトナム戦争の拡大に関して当時のアメリカ指導部、特にジョンソン大統領、マクナマラ国防長官、統合参謀本部の責任を分析している。マクマスターのこうしたアカデミックな気質は前任者のフリンと鋭い対象をなしている。フリンはイデオロギー的であり、反イスラム過激派感情が強すぎると批判されていた。

陸軍の改革に関して、 2015年4月のシンポジウムでマクマスターは軍事テクノロジーに依存しすぎることから生ずる危険について講演した。「われわれが直面することになる最大のリスクは、必ず長引くことになるという戦争の本質に矛盾するコンセプトの拡大だ。戦争の複雑な本質を単純化して将来の戦争を攻撃対象を選択する演習のようなものにしてしまおうという動きをわれわれは目撃している。次世代テクノロジーは次の戦争をこれまでの戦争と本質的に異なるものにしてくれるに違いないという考え方だ。

その数ヶ月後、ロンドンにおける防衛問題のカンファレンスでマクマスターはテクノロジーの進歩は伝統的なマンパワーを代替するものではないと述べている。派手な新しいテクノロジーは短期的なメリットしかもたらさないとして次のように強く警告した。「将来の戦争では[次世代テクノロジーが]決定的役割を果たすというのは幻想にすぎない。…テクノロジーはわれわれが敵に優越する要因のごく一部だ。しかもテクノロジーは敵もわれわれと同様に使いこなすことになる可能性がもっとも高い要因だ」

マクマスターはもちろんテクノロジー恐怖症ではない。しかし楽観的なテクノロジー万能論をを強く拒否する。マクマスターは「将来の戦争からその政治的本質、人間性、不確実性、勝利への決意を切り離そうとすることは間違いだ」という。

もう一つ興味深いのはマクマスターが心底PowerPointを嫌っていることだ。 「PowerPointは〕状況を理解しコントロールしているというありもしない幻想を作り出すので危険だ」とマクマスターはニューヨーク・タイムズで述べている。「ある種の問題はブレット印を打ってリスト化できはしない」というのはトランプ大統領にも念を押しておいてもらいたい。

トランプ政権でマクマスターがどういう役割を果たすことになるのかを知るにはまだ時間がかかるだろう。トランプの最側近サークルというよりその外側のサークルの一員に落ち着くのかもしれない。しかしマクマスターが著書でも示したような安全保障問題に関する国家の指導部の責任を厳しくチェックする態度は今後とも重要なものとなるだろう。

元アメリカ陸軍将校であり中東専門家のアンドルー・エクサムはAtlanticに次のように書いている。

マクマスターの著書で特に注目すべき点は、ケネディー、ジョンソン政権における国家安全保障政策の決定がきわめてずさんに行われていたという指摘だ。この傾向は特にケネディー政権で顕著であり、政策決定は大統領側近のごく少数のグループに委ねられていた。ここでは本来大統領を補佐すべき堅牢な政策チェックの過程が失われていた。

マクマスターのようなアメリカ軍を代表する思想家にとって、外部の意見に耳を傾けず側近政治に傾斜する大統領は批判の対象になるはずだ。トランプがマクマスターの考えを受け入れるか、それとも多くの共和党人脈の有力者同様、高い地位に就けて塩漬け状態にしてしまうのかは今後を見守る必要がある。

どういう役割を果たすことになるにせよ、ジェームズ・マティス国防長官、ジョン・ケリー国土安全保障長官、そしてハーバート・マクマスター大統領安全保障担当補佐官といういずれも尊敬される軍人だった3人が新政権の安全保障政策を形づくることになる。

画像: National Infantry Museum/Flickr UNDER A CC BY 2.0 LICENSE

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

MIT等の研究チームが、耳の有毛細胞を再生して聴覚消失を防ぐ方法を発見

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年齢を重ねると共に、耳の中の有毛細胞は ― われわれと同じように ― 徐々に死んでいく(嫌な書き出しだ)。その結果片方の耳で約1万5000個の有毛細胞が損傷を受け、大きな音やある種の薬品によってさらに悪化する場合もある。これが聴覚障害の主要な原因となっている。損傷された細胞は自然に再生することがない。

MITとBrigham and Women’s Hospital、およびMassachusetts Eye and Earの合同チームが発表した新技術がそうした損傷の修復に役立つかもしれない。ある種の動物の毛髪再生能力を模倣することで、聴覚消失の過程を阻止できる可能性がある。

新技術はマウスの蝸牛から得た細胞を利用する。細砲が成長して成熟した有毛細胞になる課程で新たな分子を追加することによって、既存技術の60倍の効果が得られた。

「必要な手順はこうした補助的細胞の増殖を促進することだけであり、あとは体内にあるシグナル伝達カスケードが細胞の一部を有毛細胞に変える」とBWHのJeffrey Karp准教授は説明する。

研究チームは、この技術の単純な応用プロセスはヒトへの適用に理想的だと考えており、18ヵ月以内にはMITからのスピンオフ、Frequency Therapeuticsの協力を得て試験を開始する予定だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

鳥類学者が個体数調査にドローンを使用―、人が入れない地域の調査も可能に

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自然保護活動家がフィールドリサーチにドローンを使うときは、野生生物やその生息地の様子を上空から撮影する「空飛ぶ目」としてドローンを利用する場合がほとんどだ。しかしペンシルベニア州にあるGettysburg Collegeの鳥類学者たちは、アパラチア山脈(Appalachian Moutains)の鳥の鳴き声を録音するための「空飛ぶ耳」としてドローンを利用している。

今週発売された学術誌The Auk:Ornithological Advancesに掲載されている彼らの研究によれば、ドローンを使って集めたデータからは、地上で専門家が集めたデータと同じくらい正確に鳴鳥の数を導き出すことができたという。「無人航空機を使った鳴鳥の個体数確認の可能性について(The feasibility of counting songbirds using unmanned aerial vehicles)」と題されたこの論文は、Gettysburg Collegeで環境学を教えるAndy Wilsonと、彼の研究室に所属している学部生のJanine BarrおよびMegan Zagorskiによって共同執筆された。

A male Cerulean Warbler.

セルリアンウグイスのオス

Wilsonは、何ヶ月か前にアパラチア山脈でセルリアンウグイスの調査をしているときに、ドローンを使って鳥の鳴き声を録音するというアイディアを思いついたと話す。「私たちがいたエリアはとても険しくて、山の頂上からほとんどの調査を行っていました。そのため、周辺エリアに関しては素晴らしいサンプルを収集できたんですが、私たちがいた場所の両側にある急な斜面の情報は手に入れることができませんでした」

各地で野生生物の研究をしようとしている科学者の行く手を阻む障害物には、急な斜面のほかにも、ドロドロの沼地や凍結した場所、さらには高速道路やダムといった人工物などがある。鳥類学に関して言えば、「ある地帯を横断しようとすると、鳥が鳴くのを止めてしまうことがあります」とWilsonは語る。

鳴鳥は自分の縄張りを主張したり、交尾の相手をひきつけたりするために鳴き声をあげるが、継続的に鳴き続けるのにはかなりの体力を消耗する。そのため、特に人間の活動による騒音などで、自分の鳴き声が聞こえなさそうだと感じると、鳴鳥は体力を節約するために鳴くのを止めてしまうことがあるのだ。つまりRachal Carsonの著書「Silent Spring」が描いているように、鳥の鳴き声が聞こえないということは、最終的には人間の命にも関わってくるような環境問題が進行していることを示している。

Wilsonのチームは、ドローンから8メートルの釣り糸を垂らし、その先にくくりつけられたレコーダーを使って鳥の鳴き声を録音した。なお8メートルという釣り糸の長さは、マイクがドローン自体の騒音を拾わない距離をもとに決められた。このセットアップのおかげで、ドローンは調査対象の鳥からある程度離れた状態でホバリングすることができる。調査に使われたドローンは、長い距離を飛行する代わりに上空をホバリングし、ポイントカウント法と呼ばれる手段で個体数を調べる鳥類学者の代役を担っていた。ポイントカウント法とは、観察者が立っている地点から一定の時間内に見聞きできる全ての鳥について記録を残し、そこから個体数を求める手法を指している。

なお彼らは、DJIの4翼ドローンMatrice 100を使って調査を行った。大型農業ビジネスで使われているような研究レベルのドローンを使えればよかったが、学術目的で使うには値段が高すぎたとWilsonは話す。

ドローンを使って録音した鳴き声から導き出された個体数は、地上で研究者が集めたデータをもとにした個体数とほぼ同じだったが、中には例外もあった。まず、ドローンはナゲキバトのような周波数の低い鳴き声をうまく拾うことができなかった。また、ネコマネドリの鳴き声は絶え間なく続くため、音声から個体数を特定するのが難しかった。しかし、その他のアパラチア山脈でよく見られる鳥の個体数は、問題なくドローンが録音した音声から導き出すことができた。

今後もWilsonの研究室では、ドローンを使った個体数調査の可能性について実験を続けていくと彼は話す。そして現在Wilsonは、鳥がドローンに反応するか、そして反応する場合はどのくらいまでなら近づけるのかというテーマの研究を行おうとしている。例えば、50〜60メートルもしくはそれ以上離れたときに、鳥はドローンに何かしらの反応を示すのか?反応を示すとすれば、どのような反応なのか?といったことを彼のチームは研究しようとしているのだ。さらにWilsonは、地上で録音した音声とドローンを使って録音した音声から得られる鳴鳥のデータを比較してみたいと言う。

また彼は、環境科学者の多くは研究にドローンを使いたがっているが、もっと利用例を増やすために必要なことがふたつあると話す。ひとつめはバッテリーの寿命だ。最上位機種を晴天時に飛ばしたとしても、ひとつのバッテリーかカバーできる飛行時間は22分ほどだとWilsonは言う。そしてふたつめが騒音問題だ。未だにドローンから発される騒音は大きく、科学者はドローンが野生生物を刺激してしまうのではないかと心配している。「科学者に限らず、一般的な消費者も今より静かなドローンを求めていると私は思います」Wilsonは話す。

確かに、大きな鳴き声をあげるロボットが頭上を飛んでいるのを喜ばしいと感じる人はいないだろう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Uberの元エンジニアが上司の度重なるセクハラ行為を暴露

FILE - In this Dec. 16, 2015 file photo a man leaves the headquarters of Uber in San Francisco. Uber and advocates for the blind have reached a lawsuit settlement in which the ride-hailing company agrees to require that existing and new drivers confirm they understand their legal obligations to transport riders with guide dogs or other service animals. The National Federation of the Blind said Saturday, April 30, 2016, that Uber will also remove a driver from the platform after a single complaint if it determines the driver knowingly denied a person with a disability a ride because the person was traveling with a service animal. (AP Photo/Eric Risberg, File)

以前Uberでサイト・リライアビリティ・エンジニアを務めていたSusan Fowlerは、本日(米国時間2月20日)公開したブログポストの中で、セクハラの蔓延や人材管理上の怠慢について同社を非難した。

今回の事件を含め、Uberの企業文化に深刻な問題があることを示唆する出来事は、これまでに複数件発生している。

Fowlerは、トレーニング修了後の初出勤日に、上司から社内チャットを通じて性的な関係を迫られた。彼女は即座にメッセージ画面のスクリーンショットを撮り、Uberの人事部にその画像を送った。通常であればこのような問題はすぐに解決できるはずだが、Fowlerはその後もセクハラ行為が続き、彼女の昇進も妨げられてしまったと記している。

「上層部は、セクハラ行為に及んだ上司は『パフォーマンスが良い』ため、恐らく悪気はなかったであろうミスを理由に彼を罰したくないと私に言いました」とFowlerはブログポストの中で説明する。

この段階で、彼女は同じチームに残って「低い人事評価」を受け入れるか、他のチームに異動するかという選択肢を与えられたとFowlerは言う。

「そして私は(1)2度と上司と顔を合わせなくて良いように他のチームに移るか(2)同じチームに残るかという2択を迫られました。さらに上層部は、ふたつめの選択肢を選んだ場合、上司は私に低い人事評価をつける可能性が高いが、自分たちはそれに関して何もできることがないと言い放ったんです」とFowlerは付け加える。

彼女は自分にもっとも適性があると感じていたポジションを離れたくなかったが、結局他のチームへ異動することにした。そして新しい仕事にも慣れてきた頃、彼女がよく話していた女性の同僚から、人事部の怠慢に関してFowlerのケースと似たような話を聞き、さらにその同僚も同じ上司からセクハラ被害にあっていたという信じられない話を耳にしたのだ。そこで彼女は何人もの同僚を引き連れ、人事部に対してセクハラ行為が蔓延していることを再度伝えることにした。しかしFowlerによれば、Uberは同上司のセクハラ行為については、1度しか報告を受けていないと言い張ったという。

社内政治の混乱が続く中、Fowlerは転部希望を提出したが、それが受け入れられることはなかった。良好なパフォーマンスを残していた彼女は、転部希望が却下された理由を理解できないでいた。

「担当者からは『仕事はパフォーマンスが全てではなく、ときに仕事以外のことやプライベートなことも仕事に関係してくる』と言われました」とFowlerのブログポストには書かれている。

最終的に、彼女は次の人事評価まで同じ仕事を続けることにした。しかし2回目の異動希望も通らず、彼女の「人事評価は修正され」た上、Fowlerには「上向きのキャリアパスを描こうとしている兆候が」見られないという評価までなされ、彼女のフラストレーションが解消されることはなかった。結果的に彼女は、Uberが成績優秀な社員に授与している、スタンフォード大学コンピューターサイエンス学部修士課程の奨学金の選考にも落ちてしまった。

それ以外にも、Fowlerはブログポストの中で、Uber社内には性差別が広がっていると記した上で、金額が高いという理由で女性サイズのジャケットの購入を断った社員の話にも触れている。彼女がどれだけ苦情を申し立てても、人事部は全ての苦情は彼女に関することだとほのめかすだけだった。さらに、それ以上Fowlerが人事部に苦情を届けないよう、彼女に脅しをかける人までいたという。

Fowlerのブログポストに応える形で、Uber CEOのTravis Kalanickは事件の真相究明を約束した。KalanickはAxiosに対する声明の中で、これまでに報告されているような行為と、彼がUberの企業文化のコアにあると考えているものは全く別物だと語っている。

「Susan Fowlerのブログポストをたった今読みました。彼女が体験したという行為は許しがたいもので、Uberが支持している考えや、信じていること全てに反しています。私がこのような話を耳にするのは初めてだったので、新しい人事部長のLiane Hornseyに早急に疑惑の真相を解明するよう指示しました。Uberはあくまで人が働く場であり、Fowlerが被害を受けたとするような行為は言語道断です。セクハラ行為や性差別を助長するような行為をした人、さらにそのような行為を容認するような人は解雇します」

メディア界の大物でUberの取締役も務めるArianna Huffingtonは、本件に関し”独立調査”を行うとツイートし、何か情報を持っている人が連絡をとりやすいよう、自身のメール・アドレスを公開した。

先ほどTravisと話をしました。私はUberの取締役として、Lianeと強力しながら独立調査を今から開始します。

セクハラはシリコンバレー中に蔓延しており、残念なことにそのほとんどは記録さえされていない。Fowlerによる苦情を抑え込もうとしたというUberの動きが本当だとすれば、同社の企業文化は恐ろしいほどひどいものだ。

Uberが企業文化に関してネガティブな注目を浴びたことはこれまでにもあった。しかもその内容は、人間関係に留まらず、ビジネスモデルや競争の激しい交通サービス業界とどのように折り合いをつけるかといったことにまで及ぶ。2014年には、ある幹部(この人物は今もUberに在籍している)が部屋いっぱいのジャーナリストに対して、Uber批判を繰り返している人のオポジションリサーチ(政治的に対立する相手を攻撃するための調査)を行うと発言した。なお糾弾されたジャーナリストの1人は(多くのジャーナリスト同様)、Uberが乗客の安全を真剣に考えていないと批判していた。

実際のところ、乗客の安全や他社との競合に関して、Uberはこれまでにも複数の事件に関わっており、Uberの運営方法が批判されたり、地域によっては営業を禁じているところまである。顧客情報へのアクセスに関するプライバシー侵害で非難されたこともあった(既に解決している問題もあるが、今でも議論にあがるものもある)。

Uberは採用情報を公開していないため、どのくらいの女性エンジニアが同社に在籍しているかはわからないが、Jesse Jacksonは他の事項に優先してこの状況を変えようとしている。しかし、たとえKalanickが事件に加担していなかったとしても、Fowlerの身に起きたことから、Uberは社員の道徳や良識よりもパフォーマンスを優先しているということがわかる。

TechCrunchでは、現在UberとCEOのTravis Kalanickにコメントを求めているので、何か新しい情報が入り次第、本記事をアップデートしていく。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

広告効果測定から自閉症の診断まで―、アイトラッキングテクノロジーの可能性

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【編集部注】執筆者のBen DicksonはTechTalksを立ち上げたソフトウェアエンジニア。

人間の目の動きを測定したり、目の動きに反応したりするテクノロジーは以前から存在するが、最近テック業界ではアイトラッキングテクノロジーに注目が集まっている。大企業アイトラッキング関連のスタートアップを買収する動きは至るところで見られ、同テクノロジーを搭載したデバイスやソフトもいくつかリリースされている。

「アイトラッキングセンサーを使うことには、主にふたつの利点があります」とアイトラッキング企業Tobii Techでヴァイスプレジデントを務めるOscar Wernerは話す。「まず最初に、アイトラッキングデバイスは常にユーザーが何に興味を持っているかというのを把握することができます。そしてふたつめに、アイトラッキングテクノロジーによって、他のものは何も変化させずに、コンテンツとの新しいふれあい方が生まれます。つまりユーザーとデバイス間でやりとりする情報の量が増加するんです」

近いうちに、アイトラッキングが新しい世代のスマートフォンやノートパソコン、デスクトップモニターの標準機能として導入され、ユーザーとデバイスのコミュニケーションの形が変わってくるかもしれない。

「アイトラッキングテクノロジーはここ1年で、将来有望な技術という存在からさまざまな分野のコンシューマー向け製品に採用されるまでになりました」とWernerは付け加える。

デジタル広告会社Impax MediaのCEOのDominic Porcoは、安くて高機能なハードウェア、オープンソースの新しいソフトウェアプラットフォーム、そして以前よりも簡単に速くデータを収集してアルゴリズムを訓練できるような方法が誕生したことで、アイトラッキングテクノロジーが進歩したと語る。

「NVIDIAのような企業が、強力なGPUを搭載した製品を競争力のある価格で販売し、画像認識のスピードアップに貢献しています」と彼は言う。

さらにPorcoは、Amazon Mechanical Turkのような人気のクラウドソースサービスが登場したことで、これまでよりも大量で広範なデータを使って画像認識アルゴリズムを訓練できるようになったと言う。「このような技術の進歩のおかげで、アイトラッキングテクノロジーの進化の速度は大幅に向上し、研究者やディベロッパーは実験から実装までにかかる時間を短縮することができています」

特定のニーズやユースケースを満たさない限り、どんなテクノロジーも成長することはできないが、アイトラッキングに関して言えばそんな心配は無用のようだ。

仮想現実(VR)

Businessman in virtual computer room.

ユーザーがより没入できるプロダクトを開発するために、VRヘッドセットメーカーはアイトラッキングテクノロジーの分野で大規模な投資を行っている。アイトラッキングテクノロジーは、さまざま観点から見てVRを補完するような存在だと考えられているのだ。

「VRは没入感が全てです」とTobiiのWernerは語る。「しかしVRヘッドセットにアイトラッキング機能がなければ、システムが勝手にユーザーはおでこの向いている方向に立っているキャラクターへ話しかけようとしていると判断してしまいます。つまり、ユーザーの注意はおでこと同じ方向に向けられていると理解されてしまうんです。でもそうではないですよね。私たちは目で見ているものに注意を向けていて、顔の方向と目で見ているところが一致しないというのはよくあることです。そのため、没入感を高めるためには、ユーザーの目の動きを計算に入れないといけないんです」

さらにアイトラッキングはフォビエイテッドレンダリング(Foveated Rendering)に欠かせない技術だ。フォビエイテッドレンダリングとは、中心窩(細かなものを認識する網膜の一部)で認識される箇所だけを高画質でレンダリングする手法のことを指す。

フォビエイテッドレンダリングを使えば、描画しなければならないピクセル数が30〜70%減少し、処理能力を節約することができるため、フレームレートを上げることができ、人間の視界を再現するには24Kくらいの画質が必要とされる中、4K対応のヘッドセットでも高画質な映像を楽しむことができるようになるとWernerは言う。

またWernerいわく、VRグラフィックをレンダリングするときに目の動きを勘案していないと、画像に歪みが発生することがあるが、これもアイトラッキングテクノロジーを使えば抑えることができる。

KickstarterプロジェクトのFoveは、初めてアイトラッキングを標準装備したVRヘッドセットだ。他社も彼らに追いつこうとしており、ここ数ヶ月のうちにGoogleとFacebookが、アイトラッキングスタートアップのEyefluenceEye Tribeをそれぞれ買収し、今後彼らの製品にアイトラッキングテクノロジーが搭載されるようになると考えられている。

さらに、アイトラッキングテクノロジーの分野においてはリーダー的な存在にあるSMIも、スタンドアローンのVRヘッドセットやスマートフォンを挿入できるVRゴーグルに同テクノロジーを搭載するため、さまざまなプロジェクトや他社との協業に取り組んでいる。

またアイトラッキング機能は、現在開発中のKhoronos VR APIと呼ばれるオープンな規格にも含まれる予定で、OculusやGoogle、NVIDIAといった企業がこの動きを支援している。

「アイトラッキング機能が第2世代VRヘッドセットの重要な要素になる、と多くのメーカーが考えており、その結果、同テクノロジーの開発やイノベーションが促進されています」とWernerは言う。

PCゲーム

Another successful VR demo, at HTC, that showed room scale gaming that actually worked.

HTCはまた新たに、部屋全体を使ったゲームが上手く機能することを証明するようなVRデモを実施した。

何十年にもわたって、私たちはゲームパッドやジョイスティック、キーボード、マウスといった周辺機器を使って、ゲームのキャラクターの向きを変えてきた。ここでもアイトラッキングが使われれば、ゲーム機が勝手にプレイヤーの向いている方向を感知し、反応できるようになる。

「気になるモノがあれば、目を向けてボタンを押すだけでよくなります」とWernerは言う。「コンピューターはアイトラッキングテクノロジーを利用して、プレイヤーが気になっているモノが何なのかわかるので、プレイヤーはマウスやコントローラーを使ってわざわざ目で見ているものを指し示さなくてもよくなります」

気になるモノを調べるときや狙いを定めるとき、キャラクターの進む方向を決めるときや、単にカメラ位置を切り替えるときにも、アイトラッキング機能が備わっていれば、プレイヤーの操作はもっと楽になるかもしれない。マウスやコントローラーの高度な操作が必要になるゲームは、特に大きな影響を受けるだろう。

その結果、これまで難しいと思われていたゲームが急に簡単になってしまう可能性がある一方で、もっと動きの速いゲームが誕生する可能性もある。

また、UIもこれまでよりクリーンで邪魔にならなくなるだろう。

「グラフィックアーティストは、長い時間をかけて美しいゲームの世界をつくりあげていきます。その一方で、UIデザイナーは彼らの作品の上に没入感を損なってしまうようなUI要素を設置しなければいけないため、両者の間には常に争いが起きています」とWernerは語る。

しかしアイトラッキングを導入すれば、普段はUIを隠したり透明にしたりして、プレイヤーがUIの方を見たときだけ表示する、といったことが可能になるとWernerは説明する。「そうすれば没入感はさらに高まり、グラフィックアーティストとUIデザイナーの争いもなくなります」と彼は言う。

さらにゲーム内でのシミュレーションや仮想世界に関し、アイトラッキングテクノロジーを使えば、視線を感知するオブジェクトをつくることができるので、ゲーム内のアイテムやキャラクターがプレイヤーの視線に反応し、やりとりがもっとリアルになるとWernerは話す。そうなれば、お気に入りのRPGをプレイするときに、酒場で傭兵のカバンをジッと見ないように気をつけないといけない。

Tobii Techは、拡張型のアイトラッキングデバイスや、アイトラッキング機能が搭載されたノートパソコンなどを販売しているほか、ゲーム会社と協同でRise of the Tomb Raider、Deus ExWatch Dogs 2といった人気ゲームにアイトラッキング機能が追加されたバージョンをリリースしてきた。

アイトラッキングがすぐにコントローラーに取って代わることはなさそうだが、Wernerいわく、この技術のおかげで、「PCゲームは人間の目という、情報をやりとりする上で最も強力な手段を使えるようになり、プレイヤーは、マウスやコントローラーの補助として自分の目を使えるようになります。その結果、他の要素はそのままに、もっと自然にゲームをプレイできるようになるでしょう」

医学とアクセシビリティ

Medicine doctor hand working with modern computer interface as medical concept

アイトラッキングテクノロジーの長所は、コンシューマー向けプロダクトの世界を超えて、データを解析したり調査結果を得たりするのに目の動きの測定が欠かせないような分野にまでおよぶ。

「アイトラッキングを神経発達症の診断、さらには治療に使っていこうという考えが広まってきています」とバイオメトリクス関連の調査会社iMotionsでサイエンスエディターを務めるBryn Farnsworthは話す。「例えば、赤ん坊は一般的に、人の顔が大きく映ったソーシャルな要素のある画像を好む傾向にあります」

彼によれば、将来的に自閉症になる可能性の高い赤ん坊は、幾何学的図形が中心の画像を好む傾向にある一方、ウィリアムズ症候群の子どもの状況は全く逆で、通常よりもソーシャルな画像を好む傾向にある。

つまり、「目の動きを解析することで、神経発達症の初期段階での診断が可能になるかもしれない」とFarnsworthは言う。

カリフォルニア大学サンディエゴ校の生徒が発表した研究では、目の動きは年齢や発達レベルに関係なく計測することができるため、アイトラッキングテクノロジーが自閉症の初期症状を見つけるための客観的な手法になり得るとされている。

iMotionsのような企業は、効率的かつ正確に患者の状態を判断・理解するため、研究者がアイトラッキングデバイスを通じてデータを収集するサポートを行っている。

RightEyeという企業は、アイトラッキングテクノロジーを使って、単純な脳震とうからアルツハイマーや失読症まで、内科医がさまざまな疾患の検査をする際や、その兆候を見つける際のサポートをするとともに、自閉症の子どもの治療にも助力している。

さらにアイトラッキングは、身体的な障害を持つ人の生活にも大きな変化をもたらす可能性があり、特に安価なコンシューマー向けデバイスが市場に出回ればその可能性はさらに広がる。「これはアイトラッキングの発展的な使われ方で、現在も研究が進められています」とTobiiのWernerは話す。さらに彼は、目線を感知するキーボードや、アイトラッキング機能を備えたコントローラーが誕生すれば、脳性麻痺の患者や脊髄を損傷してしまった人が新たなコミュニケーション手段を手に入れることができ、彼らは身の回りのものを操作できるようになるほか、セラピーを通じて色んなスキルを伸ばせるようにもなると指摘する。

広告

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現状では、インプレッション数やクリック数が広告効果に関する最良の指標とされているが、このような数字は、広告キャンペーンの効果を正確には反映できていない。というのも、インプレッション数としてカウントされるものの多くは、人間の手によるものではないのだ。しかしこの状況も、アイトラッキングテクノロジーの導入で変わってくるだろう。

「広告効果を測定する世界共通の指標について、広告業界では現在大きな混乱が起きています」とImpax Media CEOのPorcoは言う。「広告ブロッカーが広まり、ボットによるトラフィックが増加する中、時代に合った形で広告効果が測定できるよう『可視性(Viewability)』のコンセプト全体が現在見直されています」

ここでもアイトラッキングテクノロジーを使えば、オンライン広告企業は、ウェブページに表示された広告を何人が実際にその目で見たかというのを測定できるようになる。現実的には、全てのコンピューターとモバイルデバイスにアイトラッキング機能が搭載されるまで、本当の意味で正確なデータを集めることはできないが、同技術を使うことで、少なくともユーザーと広告の関わり方についての洞察を得ることはできる。

しかし、オフラインでは既にアイトラッキングを使った仕組みが効果を見せはじめている。

「市場調査会社は、消費者調査を目的に、小売店内の広告のような家の外にある広告に触れている人から直接生体データを計測し、その人たちについて分析しようとしています」とPorcoは言う。

彼がCEOを務めるImpax Mediaは、自社で開発した屋内用の広告スクリーンからお店を訪れたお客さんの注目度を測定するために、最近アイトラッキングテクノロジーをはじめとしたコンピュータビジョンの分野に重点的に投資している。「そのうち広告業界は、インプレッションではなく注目度に関する指標を重視するようになると私たちは考えています。そして注目度を測定する上では、アイトラッキングが1番有効な手段であることは間違いありません」とPorcoは話す。

彼によれば、広告主や広告の掲載場所を提供しているお店は、アイトラッキングから得られたデータをもとに、さまざまな角度からお客さんが興味を持っていることについて知ることができる上、場所や時間、デモグラフィックといった別のデータとお客さんの関心事の相関関係も導き出すことができるようになる。「限られた予算で最大限の効果を得ようとしている広告主も、在庫やスタッフのシフトを管理しなければならない店舗のマネージャーも、アイトラッキングを使って有益な情報を得ることができます」とPorcoは話す。

小売企業は顧客情報を集めることで常に何かを得ることができるものの、顧客情報を集めること自体はグレーエリアでたびたび物議を醸しており、個人情報に関する法規制の対象となり得る。しかし個人と結びついた情報を集めなくても、年齢、性別、視点、どのくらいの間広告を眺めていたかといった匿名データを入手できれば、十分有用な洞察が得られるとPorcoは強調する。

市場調査

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マーケットリサーチャーにとっては、「全ての販路とタッチポイントで、製品やサービスに対する消費者の思いや関わり方を評価すること」が大事だとイタリアの市場調査会社TSWでUXリサーチャーを務めるSimone Benedettoは話す。

さらに彼は、最近のアイトラッキングテクノロジーの進歩によって、ニューロマーケティングの実験に(研究所内外どちらで行われる実験についても)新たな可能性が出てきたと説明する。

「製品やサービスの設計・評価にあたって、ユーザーの意見は欠かせません」とBenedettoは話す。「しかしこの意見という言葉には、ただユーザーが質問に答えた内容だけでなく、製品やサービスに触れたときの彼らの目や脳から得られる客観的なデータも含まれています」

TSWはモバイルアイトラッキング機器やその他のウェアラブルデバイスを使って、デジタル(オンライン広告、モバイルアプリ、ウェブサイト、ソフトウェアやデバイスの操作画面など)とフィジカル(印刷物、製品パッケージ、車、家具、小売店舗など)の両方で、さまざまな製品やサービスに対するユーザーや顧客の反応を正確に計測しようとしている。

ユーザーと製品・サービスの自然な触れ合いの様子を測定することができれば、ユーザビリティ上の本当の問題点や、ユーザーのフラストレーションがたまりやすい箇所を特定できるようになり、顧客満足度やエンゲージメントの向上にむけた施策や、設計に関する判断を下す根拠となるような情報を集められるようになる。

「この業界における昨年の動きで最もインパクトがあるのが、モバイルアイトラッカーから収集したデータの解析に、オブジェクトトラッキングが導入されたことです」とiMotionsのFarnsworthは話す。ここで彼が言っているのは、人の目が向いた先にあるモノを背景とは切り離して認識し、それぞれのモノがどのように観察されていたかという情報を記録するプロセスのことだ。

「例えば、ある被験者が小型のアイトラッキングメガネをかけていつも通り過ごした場合、身の回りにあるものにどのように注意を向けていたか――外を歩いているときにどのくらい地図を眺めていたかや、通り過ぎた広告に気づいたか――ということを、自動的に分析することができるんです」とFarnsworthは語る。「どこに、どのように注意が向けられているかということが自動的に分析できれば、人間についての理解が深まるだけでなく、もっとさまざまな可能性が広がっていくでしょう」

「個人的には、UXやニューロマケティングの調査にアイトラッキングテクノロジーを利用したいというニーズはかなりあると思っています」とBenedettoは言う。「アイトラッキングを使えば、バイアスをできるだけ排除した形でユーザーの行動を測定できる上、その測定結果を客観的かつ量的なデータに変換することができます。これまで長い間、私たちは主観的なデータに頼ってきましたが、この状況を変えるときがきました」

アイトラッキングテクノロジーの未来

Close Up of blue eye with computer circuit board lines, digital composite

回路が埋め込まれた青眼の拡大写真(デジタル合成)

TobiiのWernerは、この先コンピューターの使い方が大きく変化すると言う。タッチスクリーンやマウス・タッチパッド、声、キーボードに続く5つめの入力手段として目が使われるようになり、他の入力手段と目を組合せて使うことで、生産性や直感的な使いやすさがさらに向上していくと彼は考えているのだ。「マウスやキーボード、声などを使ったどんな操作にも視線は先んじるため、今後アイトラッキングを利用したもっとスマートなインターフェースが誕生すると思います」とWernerは話す。

視覚は五感の中でもっとも情報摂取量が多いため、目の動きをデジタルにトラックして測定できるようになれば、意識的かそうでないかはさておき、コンピューターへの意思の伝え方が大きく変わってくるだろう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

イギリスのMonzoがシリーズCのクローズへ―、ヨーロッパで増え続ける”チャレンジャーバンク”

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最近増えているネット専門銀行(またはチャレンジャーバンク)のひとつで、イギリスに拠点を置くMonzoは、現在シリーズCのクローズ間近で、早ければ今週中にも資金調達が完了する予定だ。

複数の情報筋によれば、アメリカのThrive Capitalがこのラウンドのリードインベスターを務めているようだ。しかし調達額についてはまだわかっておらず、3000万ポンドという情報もあれば、それより少ないが2000万ポンドは超えるという情報もある。さらに、Monzoが近いうちに2回目のエクイティクラウドファンディングのキャンペーンを開始するということもわかっている。

Monzoの共同ファウンダー兼CEOのTom Blomfieldに、シリーズCの存在やリードインベスターについて尋ねたところ「現段階ではコメントすることはできません」という反応が返ってきた。

興味深いことに、イギリス人のシンガーソングライターTom OdellがMonzoに投資しているかもしれないという情報も入ってきている。ラッパー・プロデューサー兼テック起業家のWill.I.amが、イギリスの別のチャレンジャーバンクAtomとチームを組もうとしており、さらにAtomへ投資するかもしれないというSky Newsの報道を考えると、この話は一層面白くなる。

Monzo以外にも、ニューヨークに拠点を置くThrive Capitalから投資を受けたヨーロッパのフィンテック企業は存在する。Josh Kushnerが設立したThrive Capitalは、最近行われた独RaisinのシリーズCでもリードインベスターを務めていた。なおRaisinは、ヨーロッパ全体で利用できる貯蓄口座を提供している

Monzo(以前はMondoという名前で活動していた)はインターネット専門銀行、もしくはBlomfieldの言葉を借りれば「スマートバンク」として、今年中にユーザーが当座預金口座を開設できるよう準備を進めており、昨年8月にはイギリスの規制団体FCAおよびPRAから「条件付きで」バンキングライセンス取得した。

現在のところ、10万人以上のユーザーがMonzoのプリペイド版のMasterCardと、iOS・Android両OSに対応したモバイルアプリを利用している。Monzoユーザーは、リアルタイムでの出金記録や、カードの利用場所の地図表示、支出金額のカテゴリー別け、全ての出金情報がまとまったタイムラインといったサービスも利用できる。

Monzoはこれまでの資金の一部をクラウドファンディングから、そして大部分をロンドンのアーリーステージVCであるPassion Capitalから調達しており、累計調達額は1280万ポンドに及ぶ。昨年10月に公表されたブリッジファンディング(つなぎの資金調達)では480万ポンドを調達しており、その際の評価額は5000万ポンドだった。

一方で昨年末には、Monzoが大手銀行からの巨額買収提案を却下したと噂されていた。先週のインタビュー中にBlomfieldにこの件を尋ねたところ、彼はこの話が真実だと認めた。

提案を却下した理由について彼は、「彼らには別の目的がありましたし、そもそもとても厄介な会社なんです」とその銀行の古びたITシステムや、文化、考え方などを例に挙げながら話した。「古い体制が残っているとリスクをとらなくなり、根本的にはイノベーションが止まってしまいます。これこそが問題なんです」

さらにBlomfieldは、売却の可能性は完全には否定できないものの、スタートアップ銀行にとって早い段階で他社に事業を売却するということは、救済策をとることに等しいと言う。「早い段階での売却は、設立当初の目的を達成できなかったと言っているも同然です」

一方でシリーズCは依然進行中のため、Blomfieldや彼のチームの前にはまだ長い道が続いている。

Monzo共同ファウンダーTom Blomfieldとのインタビューの様子はこちらから。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

ボーイング、3Dプリントで衛星の小型化、製造の効率化へ

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宇宙航空産業のボーイングは衛星の小型化、組立工程の省力化を進めようとしている。Wall Street Journalの記事によれば、ボーイングは衛星を運用可能にするまでの複雑な手順の多くをオートメーション化して製造を効率化するという。

衛星打ち上げ事業のSpaceXやナノ衛星開発のスタートアップ、PlanetKepler Communicationsなど、効率に優れた身軽な新企業の参入はボーイングのような既存の大企業に圧力を与え始めているようだ。

以前から(宇宙航空に民間企業が関与し始めた当初から)、宇宙空間はボーイングのような政府との契約に大きく依存する少数の大企業が独占していた。こうした企業は長年にわたってコストに利益を上乗せすることができる政府契約に守られて楽なビジネス運営を続けてきた。しかしSpaceXのようなスタートアップの参入で事情が大きく変わった。効率的な経営のSpaceXはロケットの打ち上げ費用を大きく引き下げ、これはボーイングの宇宙事業の利益を大きく圧迫した。つまりレガシーの宇宙航空企業もそのあり方を根本的に見直す必要に迫られていたといえる。

ボーイングの衛星事業部の責任者、Paul RusnockはWSJのインタビューに答えて、同社は可能な限りあらゆる部分に3Dプリンティングのような最新テクノロジーを取り入れていくとしている。また衛星自体の設計も見直し、可動パーツを最小化することで組み立ての工数を減らし、信頼性をアップさせていくという。

ロケット同様、衛星もこれまでは個別に特注された部品によって組み立てられていた。こうした部品は非常に高価であり製造にも長時間を要した。これに対して、可動部分を減らし、汎用部品を多用したモジュラー化が進めば衛星の製造コストは劇的に減少する。WSJの記事はさらに、衛星の作動テストについても触れ、コンピューター・シミュレーションをもっと取り入れること、また衛星自身に自己テスト機能を組み込むことでさらに効率化が可能になるはずと指摘している。こうした面でもボーイングなどの大企業には努力の余地が多いにあるようだ。

スタートアップは今やボーイングなどの既存企業が請求していた金額の100分の1程度の価格で同様の機能の衛星を製造可能だとしている。また衛星の開発、製造の期間も数分の一に短縮されると主張している。ビジネスという否応ない現実がボーイングに新しい考え方の採用を迫っている。いずにせよ小さなスタートアップが既存の巨大企業に自己変革を迫るような影響を与えるのは素晴らしい。こうした刺激が産業を前進させていくのだと思う。

画像: Wesley Nitsckie/Flickr UNDER A CC BY-SA 2.0 LICENSE

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

トランプが安全でないAndroidスマートフォンを使っていることに関し一部の議員が調査を要求

CHARLESTON, SC - FEBRUARY 18: Republican presidential candidate Donald Trump talks talks on the phone while making a stop for lunch between campaign events at Fratello's Italian Tavern in North Charleston, SC on Thursday Feb. 18, 2016. (Photo by Jabin Botsford/The Washington Post via Getty Images)

新大統領になりたてほやほやのトランプが、安全でないAndroidスマートフォンを、いったんは捨てたけど、実は捨ててなかったらしい、という話はその後どうなったのか? しかし2017年の政治はその後も狂気の大洪水だから、スマホの件など忘れ去られてしまったようだ。

でも今日(米国時間2/17)それは、再び頭をもたげてきた。カリフォルニア州選出の下院議員Ted Lieuが、トランプが今でも安全でないAndroidスマートフォン(Samsungの昔の機種Galaxy S3らしい)を使っているので、大統領のセキュリティが破綻している、という一連の報道について調査をするよう提案したのだ。

Lieu議員は、“大統領は常識的なセキュリティ対策を全面的に無視しているという言語道断な失態により国のセキュリティを危険にさらしている”という報道を下院の政府改革委員会が調査するよう、求めている

彼のその書簡に付随するプレスリリースは、トランプが私邸の晩餐会で核戦略について語っている、という報道にも言及している。書簡の文面はこうだ: “サイバーセキュリティの専門家たちの意見は、大統領がシークレットサービスからの度重なる警告にも関わらず使用しているとされる、通常のAndroidスマートフォンは、容易にハックできる、という点で一致している。それは、国のセキュリティに対する言語道断の侮辱である”。

この書簡には彼のほかに15名の議員の署名があり、ホワイトハウスのスタッフが安全でないメールアカウントを使用した、という選挙期間中に話題になったおなじみの問題にも言及している: “クリントン長官による私的メールの使用をめぐる共和党議員の懸念も、ここであらためて想起したい。そのような通信の安全性と、法が求めている記録手続きの適切性を確定するために、公聴会が必要である”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

セキュリティや特化型クラドソーシングを展開するココン、SBI FinTechファンドなどから総額5億円を調達

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サイバーセキュリティ事業と特化型クラウドソーシング事業を展開するココン。同社は2月21日、SBIホールディングスの子会社のSBIインベストメントが運用するFinTechビジネスイノベーション投資事業有限責任組合などのファンドを引受先とした第三者割当増資を1月31日付で実施。総額5億円の資金調達を完了していたことを明らかにした。ココンによると、同社はこれまでにVCや個人投資家から合計12億円以上の資金を調達しているという。

調達した資金は、サイバーセキュリティ分野でのプロダクト開発の強化、既存事業における投資およびM&Aに充てるとしている。また、同社が展開するモバイルアプリ、Webサイト、IoTデバイスのセキュリティ診断サービスなどがSBIグループ各社およびSBIグループの提携先の企業に導入される見込みだ。

ココンは2013年2月の創業。当時はPanda Graphicsという社名で、2Dイラストと3Dコンピューターグラフィックスの特化型クラウドソーシングサービス「Panda Graphics」を手がけていた。2014年6月に3DCGモーション制作を展開するモックス、2015年1月にUX設計、UIデザイン事業を展開するオハコと資本業務提携。2015年5月にGroodが展開していた音声クラウドソーシングサービス「Voip!」を譲受するなど、事業領域を拡大してきた。

事業の多角化に伴い、2015年6月に社名をPanda Graphicsからココンに変更。その後、セキュリティ診断事業を展開するイエラエセキュリティ、セキュリティなどの情報技術における研究開発支援、コンサルテーションを行うレピダムを完全子会社化。サイバーセキュリティ事業に進出するとともに、Panda Graphics、Voip!を運営するクラウドソーシング本部を分社化し、Panda Graphics(旧社名と同じだが別法人)を新設。両事業を主力事業と位置付け、事業展開を行ってきた。