電動キックボードのLuupとmobby ride、規制緩和に向け“規制官庁の認定を受けた”シェアリング実証へ

日本で電動キックボードのシェアリング事業の社会実装を目指すLuupmobby rideの2社は10月17日、規制の見直しに向け、規制官庁の認定を受けた実証を行うことを発表した。Luupは12月までを実証期間とし、横浜国立大学の常盤台キャンパス内の一部区域で電動キックボードのシェアリング実証を。mobby rideは10月24日に九州大学の伊都キャンパス内で同社の「mobby」の実証を開始する。

この両社の実証計画は17日、「規制のサンドボックス制度」に認定された。規制のサンドボックス制度は、事業者が規制官庁の認定を受けた実証を行い、得られた情報やデータをもとに規制の見直しに繋げていく制度だ。

日本の現行規制上では、電動キックボードは原付自転車として扱われる。そのため、公道で走行するには国土交通省が定める保安部品を取り付け、原動付自転車登録をし、免許証を携帯する必要がある。だが、国や地域によってルールに差があるものの、電動キックボード事業が普及し人気を集めている理由は「アプリで機体を探し解錠して乗るだけという」という手軽さだ。免許証の携帯が必要性の場合、ユーザーを限定してしまう。加えて、原付自転車としての扱いの場合、車道のみ走行可であり路側帯には入れないため、また、車と比較し速度が遅いため、安全面が懸念される。単に公道を走れる状態にした電動キックボードも販売されているが、前述の理由などから、これではいつ事故が起きてもおかしくない、との指摘もある。

一方、Luupがメインの事業として目指しているのは販売ではなく、自治体と連携し「街の機能の1つ」としての役割を果たすシェアリング事業だ。同社はテクノロジーにより「歩道か車道、どちらを走行しているか」などは検知できるが、「どのような道がどれくらい危ないか」の知見はない、と代表取締役兼CEOの岡井大輝氏は話す。だが、自治体や地元の警察はどこでどれくらいの事故が起きているかや、混雑しやすいエリアや時間帯を理解している。そのため、「望ましくない特定の状況下ではサービスを提供しない」などとし、街、そして利用者にとって安心で安全なサービスを展開するには、自治体との連携が不可欠だと岡井氏は言う。

Luup、そして同じくシェアリング事業の社会実装を目指すmobby rideの2社のテックカンパニーは、「日本における電動キックボード事業のあり方」を模索している最中だ。そのような2社にとって、これまでに行なってきた実証実験や体験会とは違った、大学構内で行う自動車や歩行者が通るなど実際の公道に近い形で電動キックボードのシェアリング事業の実証は、大きな意味を持つだろう。

Luupは「電動キックボードのシェアリング事業の安全な社会実装」にはどのような走行条件が必要なのか、走行データを取得し、主務省庁に提出する。そうした上で、関係省庁と継続的な協議を行いながら、「サービス内容や機体、走行状況のあり方」の検討を進める。mobby rideは「検証結果および関係官庁からの見解をもって、福岡市内での公道走行に向けて国をはじめとする関係各所と協議してまいります」としている。

規制のサンドボックス制度は2018年6月に施行された「生産性向上特別措置法」に基づき、「新しい技術やビジネスモデルを用いた事業活動を促進するため」創設された。実証後、「当該実証計画に規定された新技術等関係規定を所管」する大臣は、規制の特例措置の整備および適用の状況、諸外国における同様の規制の状況、技術の進歩の状況を踏まえ検討を加え、規制の撤廃や緩和に必要な法制上の措置やその他の措置を講ずるものとされている。

Pixelbook Goは教育市場を狙わない、Google純正の低価格版Chromebook

Chromebookは、Googleにとってヒット商品となっている。少なくとも、Googleのハードウェアパートナーにとってはそうだ。低価格のデバイスが市場に溢れ、教育市場については、ほぼ完全に支配している。その一方で、Googleの純正マシンは、そうしたサードパーティの製品とは異なる、独自の路線を歩んできた。

これまでのPixelbookやPixel Slateといった製品には、1000ドルを超える価格が付けられていた。これはGoogleが、Chrome OSの高級路線での可能性を実証しようとしたものだった。それに対してPixelbook Goでは、クラウドベースのOSの長所を、これまでよりもずっと手軽な価格で引き出そうとしている。

関連記事:Googleから約7.5万円のChromebook最新版Pixelbook Goが登場

Goの価格は、649ドル(約7万500円)からで、Chrome OSの基本に立ち返ったような価格設定となっている。ただし、もっとも贅沢なオプションを選択すれば1400ドル(約15万2000円)にもなる。それはともかくGoは、Chromebookのユーザーが、もっと手軽な価格帯の製品を求めていることに目を向けた製品だ。ともあれ、Chromebookの存在意義は、最初からずっとそこにあったのではないだろうか。

もちろん、手頃な価格には妥協はつきものだ。デザインの観点からすれば、オリジナルのPixelbookを非常に興味深いものにしていた、いくつかの特徴を失うことを意味する。もっとも顕著なのは、ラップトップとしても、タブレットとしても使える、コンバーチブルなディスプレイ部分だ。もっと安価なシステムに採用された例もあるものの、なにしろ、360度開くヒンジは、かなりコストがかかる。そうしたヒンジを廃止したため、ペン入力機能は省略された。ただし、タッチ式のスクリーンは維持している。

オリジナルのPixelbookと同様、GoもUSB-Cポートは左右側面に1つずつ、2つしか装備しない。これによって、拡張性はかなり制限される。価格上の制約もあって、これ以上のポートは追加しないことを選択した。Googleから直接聞いたところによれば、Chromebookのコアユーザーのほとんどが、USB-Cポートは2つあれば十分だと言っているという。たぶん、大多数のユーザーにとっては、そうなのだろう。

それ以外の点では、デザインはなかなか凝っている。特に底面は、カラフルで、一面にリブが施されている。デバイスを片手で持ちやすいよう、考慮した設計だ。本体の軽量化もありがたい。気軽にバッグに入れて持ち運べるラップトップとなっている。

キーボードも改善されている。発表イベントの説明でも強調されていたように、音も静かだ。実際には、私はまだかなりうるさい環境でしか使っていないので、どれくらい静かなのかはよく分からない。キーのタッチは比較的ソフトだ。特に、タイルでも叩いているように硬いMacBookに比べれば、違いは大きく、なかなか良い感触を実現している。少なくともその点に関しては、これを自分のメインコンピューターにすることに、何の抵抗もない。

Chrome OS自体も、初期の頃から比べれば、大幅に進化している。特に、Androidアプリが使えるようになっているのが大きい。ただし、より専門的な作業には制限がある。低価格のGoは、その弱点を浮かび上がらせることになる。私の体験では、たとえばオーディオ編集をしようとした際に、問題に突き当たることがあった。

低価格帯を実現するために、エントリーモデルのスペックは低めに設定されている。プロセッサーはCore m3、RAMは8GBだ。CPUは、Core i5や同i7も選択でき、RAMも16GBまで実装できる。もちろん、その分価格は高くなる。そうこうしているうちに、オリジナルのPixelbookの価格帯に重なってしまうことになる。

ところで、オリジナルのモデルの販売も継続されている。2年も前の製品なのに、スペックは変更されていない。とはいえ、新製品も発表された今、いかにも賞味期限切れの感があるのは否めないだろう。

価格だけを考えても、Googleは、オリジナルのPixelbookより、かなり多くのGoを販売しようと考えているのは間違いないだろう。そこは、市場のおいしい部分であり、低価格帯の製品を求めている消費者を引き寄せる領域だ。Goは、すでにChromebookとして成功を収めている、教育市場に的を絞った製品というわけではないだろう。Googleによれば、この価格でも、K-8(幼稚園から中2)の生徒には高過ぎるという。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Googleのスマートスピーカー「Home Mini」は「Nest Mini」に改名

Google(グーグル)は、米国時間10月15日、待望のHome Miniの後継機を発表した。かなり広範囲の人気を誇るエントリーレベルのスマートスピーカーの最新バージョンの名前は、Nest Home Miniに変更された。これは、同社の他のスマートホーム製品のブランドのリフレッシュに合わせたもの。新しいバージョンは、外観こそ前モデルによく似ているものの、内部にはいくつかのアップグレードが施されている。

中でも重要なものとしては、音質の改善、機械学習機能の内蔵がある。これにより、デバイスは使用状況に応じて自動的に電力を調整する。また新バージョンは、インターホンや会議用スピーカーとしても利用できるようになった。Google Duoを使って、デバイスに直接電話をかけることも可能だ。

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さらに、壁掛け型として設置できるようになったのも便利だ。これまでは棚に置いていたデバイスを、壁に取り付けることができるので、家の中での配置の自由度も、かなり高くなるはずだ。Nest Miniも、これまでの製品同様、布地でカバーされている。これはリサイクルしたペットボトルから作られる。今回の発表イベントでも述べられたように、これはGoogleの持続可能性に対する関心の高まりを示すものだ。

新しいMiniは10月22日に発売される。価格は魅力的な49ドル(約5300円)で、好調な売上を記録した前任機と同じに据え置かれている。この価格であれば、まだまだ大量に販売できると、Googleは踏んでいるのだろう。新しいMiniに加えて、同社は新製品のNest Wifiにも、スマートスピーカー機能を搭載する。こちらは、来月初めに発売予定だ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

初めて直接観測された恒星間彗星「ボリソフ彗星」とは?

太陽系を新たな星間物体が訪れた。ただし宇宙人の乗り物でないことは間違いない。これは星間空間から来たこと確認できた初めての彗星であり、ハッブル宇宙望遠鏡はその驚くべき画像をキャッチした。これは素晴らしいことだ。なぜならその彗星は二度と戻ってこないから。

おそらく読者は、恒星間天体といえば数多くの見出しを飾ったオムアムアを思い出すだろう。記事のほとんどはエイリアンの宇宙船か何かだという発想だった。もちろんその仮説が報われることはかったが、それは別世界からの使者でなくても十分興味深い物体だった。

この新たな彗星、2I/Borisov(ボリソフ彗星)は、今年8月クリミアに住むアマチュア天文家のGennady Borisov(ジェナディ・ボリソフ)氏が最初に見つけた。地球近傍天体の専門家らが軌道を解析た結果、実際に星間空間から来たものであるという結論に達した。

どうしてわかるのか?例えば、その物体は時速17万7000kmで動いていた。「あまりに速いため太陽の存在を気にかけないほどだった」とボリゾフ彗星を観測するハッブルのチームを率いるUCLAのDavid Jewitt(デビッド・ジュイット)氏が語った。
【編集部注】上のGIF動画に見られる軌跡は物体の速度を表すものではなく、地球の自転によるもの。

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基本的に、飛んできた角度や速度から考えて、太陽の超長軌道にすら存在せず、ただ通り過ぎた確率が高い。そして12月初旬には、太陽から200万マイル以内を通過する。幸い何かにぶつかる恐れはない。それは純粋に宇宙の偶然であり、数カ月後にはいなくなる。

しかし、この短期間の滞在は彗星の組成を研究する重要な機会であり、どうやら我々の「地元」の彗星とよく似ているらしい。ボリソフ彗星が超神秘的ならクールだったかもしれないが、地球との類似性もまた大いに興味深い。これは、太陽系以外の恒星系でも彗星の組成が異なるとは限らないことを示唆している。
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ボリソフ彗星は、黄道を極めて急角度、超高速で通過しており、これは太陽を周回しているという考えを除外するのに十分な証拠である。

一方、ボリソフ彗星はオムアムアとは大きく異なっている。オムアムアは不活性で長細い岩石のように見えた。彗星はそれ自身非常に興味深いものであり動的でもある。粉塵の雲であったり小さな核を氷が包んでいるものだったりする。絵に描いたように美しいが、しっぽはみんなが期待する方を向いているとは限らない。

実は、こうした星間物質は珍しいものではなく、太陽系のある瞬間におそらく数千は存在している。しかし、検出、研究できるほど大きくて明るいものはめったにない。

ハッブル宇宙望遠鏡は来年1月、おそらくそれ以降もボリゾフ彗星の観測を続ける。決して帰ってくることはないので、可能である間はできる限りデータを集めたい意向だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

デザインツールのCanvaが約11億円調達、企業向けバージョン提供へ

オーストラリア拠点のデザインツールメーカーであるCanvaは米国時間1016新たに1000万ドル(約11億円)を調達し、バリュエーションが32億ドル(約3480億円)になったと発表した。5月時点でのバリュエーションは25億ドル(約2720億円)だった。

投資家には、Mary Meeker’s BondGeneral CatalystBessemer Venture PartnersBlackbirdSequoia Chinaが名を連ねる。

新たな資金調達とバリュエーションの発表とともに、Canvaは「Canva for Enterprise」を立ち上げて企業分野にも進出することを明らかにした。

これまでCanvaは、マーケティングやセールスの飾り、ソーシャルメディアの材料、そのほかプロダクトデザインにほとんど関係のないデザインプロダクトを作るための軽量のツールセットをユーザーに提供してきた。というのも、プロダクトデザイナーを除き、ほとんどの組織が使用している材料でブランドの価値を維持するのに苦慮しているからだ。

Canvaは個人ユーザー向けには無料で提供されているが、ブランド価値を維持したいという組織の増大するニーズにはCanva Proで対応してきた。Canva Proはプロダクトのプレミアムバージョンで、月12.95ドルで利用できる。

そしていま同社は、Canva for Enterpriseを立ち上げて組織向けサービスを拡大しようとしている。新しいプロダクトはブランドキット(Design Systemと呼ばれている)を提供するだけでなく、マーケティングとセールスのテンプレート、承認ベースのワークフローを提供する。また、Canvaの膨大な量のデザインライブラリーを隠し、従業員が承認されたブランドアセット、フォント、カラーなどだけにアクセスできるようにする。

Canva for Enterpriseはまた、整頓という要素も備えている。コメントやり取りでのコラボ、チーム作業や役割分担を管理するダッシュボード、チームフォルダーなどが利用できる。

「我々は幸運な立場にある。というのも、マーケットの競争が緩やかになってきているからだ」とCanvaCEOで創業者のMelanie Perkins(メラニー・パーキンス)氏は話す。「消費者が抱える困難についての我々の考え方は、人々がブランドと相容れない考えるものだ。組織内にはかなりの非効率な部分があり、それゆえに人々はCanvaにこのプロダクトを作るよう、文字どおりリクエストしてきた」。

毎月、190カ国超で2000万人以上がCanvaにサインインしていて、同社によるとFortune 50085%の企業がCanvaを利用している。

最終目標は、インターネットとデザインにアクセスする世界中の人がCanvaのプラットフォームを利用するようになることだとパーキンス氏は語った。

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(翻訳:Mizoguchi)

Uberがパリで電動スクーターシェアのCityscootと連携、アプリにサービス統合

Uberは、複数のサービスを1つのサービスを提供するアプリから提供してスーパーアプリになりたいらしい。そのため同社は、フランスのスタートアップCityscoot(シティスクート)との統合を発表した。

Cityscootは、置き場所などが決まっていない電動スクーター、いわゆるモペットのサービスだ。浮遊型だからアプリをオープンして最寄りの車を見つけたら、それをアンロックして乗れる。

それにCityscootは目下好調で、パリに4000台のスクーターがある。資金は4000万ユーロ(約48億円)を調達して、ニースやミラノ、ローマにも進出した。

数日後にはUberのCityscootとの統合がアプリにも現れて、Uberアプリからスクーターを見つけてアンロックし、そのまま決済もできるようになる。Cityscootの乗車賃は1分0.29ユーロ(約35円)だ。

Cityscoot Uber

これでCityscootの利用者は増え、Uberの売上も増える。もちろん両社の間には、利益折半などの契約があるだろう。

Uberはパリでは今や、単なるライドシェアのアプリではない。すでに自転車とスクーターサービスのJumpをローンチしている。しかも今後は、パリの公共交通機関に進出する計画がある。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

希少疾患の治療法をAIで探るHealxが約61億円を調達

AIを使って希少疾患の新しい治療法を探るスタートアップであるHealx(ヒーレックス)が、シリーズB投資で5600万ドル(約61億円)を調達した。

このラウンドを率いたのは英国ロンドンに拠点を置くベンチャー投資企業Atomico(アトミコ)だ。そこに、 Intel Capital(インテル・キャピタル)、グローバル・ブレイン、btov Partners(ビートゥーヴィー・パートナーズ)が加わった。さらに、 前回投資を行ったBalderton Capital(バルダートン・キャピタル)、Amadeus Capital Partners(アマデウス・キャピタル・パートナーズ)、Jonathan Milner(ジョナサン・ミルナー)氏も参加している。

Healxは、今回調達した資金で同社内に治療法パイプラインを開発し、国際的なRare Treatment Accelerator(希少疾患治療アクセラレーター)プログラムを立ち上げたいと話している。このプログラムは、患者グループと手を組み希少疾患のための創薬の効率化を図るものだ。

さらに、新しい治療法を発見し「24カ月以内に」臨床試験に持ち込む体制を整えることも目指す。現状からすると驚くほどの短期間だ。しかも、希少疾患の多くは、治療法開発の目を向けられることすらない。

「世界には、7000種類の希少疾患があり、4億人が罹患しています(半数は子ども)。その95%には、いまだに認証された治療法がありません」とHealxの共同創設者でCEOのTim Guilliams(ティム・ギリアムズ)氏はTechCrunchに語った。

「新薬の発見と臨床開発の従来モデルでは、費用、スケジュール、有効性の面での負担が膨大です。通常、新薬を市場に送り出すまでには、20〜30億ドルの費用、12〜14年の開発期間、95%の失敗率を負うことになります」。

特に患者数の少ない疾患では、現状のモデルは使えないとギリアムズ氏は言う。新薬の発見と開発にかかるコストが大き過ぎるため、薬の売り上げでは単純に投資の元が取れないからだ。そこでAIを使って既存の医薬品の別の使い道を探るという「抜本的な方向転換」が必要になる。

「認証された医薬品に注目し、AIの能力をうまく使うことで、希少疾患のための治療薬の発見プロセスを、高速で高効率なものにできました」と彼は主張する。「それ以来、私たちは、2025年までに100種類の希少疾患の治療法を臨床試験に持ち込むことを使命にしています」。

もちろん、AI技術を創薬に応用しているのはHealxだけではない。また、AIの使用はそれほどの大冒険でもない。例えば、BenevolentAI(ベネボレント・エーアイ)は数多くの大ニュースで世間を驚かせているが、直近では、評価額の引き下げを行ったと報道された。しかしギリアムズ氏は、Healxのアプローチが、Recursion Pharmaceuticals(リカージョン・ファーマスーティカルズ)や Insilico Medicine(インシリコ・メディシン)といった同業他社とは異なっていると話している。

「私たちの目標とアプローチはまったく違います。私たちは希少な遺伝性疾患に特化していて、世界的な希少疾患の生医学のナレッジグラフを所有しています。さらに私たちは、新しい分子を開発するのではなく、すでに認証されている医薬品の価値を最大限に高めているのです」。

加えてギリアムズ氏は、Healxの技術はデータ駆動型であり「仮説に依存しない」ため、従来型の標的を定めた創薬とは大きく異なるとも話している。「私たちは医薬品の組み合わせを予測し、大変な短期間で臨床に持ち込むことができます。そして私たちは、戦略的パートナーであり疾患の専門家でもある患者グループと密着して作業を進めます」と彼は言い足した。

Healxの共同創設者で、バイアグラの発明者の一人でもあるDavid Brown(デイビッド・ブラウン)博士が、いくつもの医薬品を発明し市場に送り出した人物であることも付け加えておくべきだろう。彼の医薬品は、400億ドル(約4兆3500億円)以上もの利益をもたらした。「そのやり方を私たちは知っています」とギリアムズ氏。

Healxは、その革新的なモデルの正当性をFRAXA Research Foundation(フラクサ研究財団)で立証したと主張している。脆弱X症候群は自閉症の大きな原因のひとつとされる遺伝子異常だが、その治療法で認証されたものはまだひとつもないとのことだ。その状況を、HealxとFRAXAが変えられるかも知れない。まもなく、複数の治療法を組み合わせた臨床試験が開始される。その他の希少疾患の治療法の臨床試験も、2020年後半にはスタートする。

Atomicoのアイリーナ・ハイバス氏

私は、AtomicoのプリンシパルであるIrina Haivas(アイリーナ・ハイバス)氏にも話を聞いた。投資の決め手となったHealxの魅力と、こうした企業を支援する際のリスクについて、Atomicoを代表して話してもらった。創薬とはわらの山から針を探し出すようなものであり、さらにその発見を製品化にまで持っていかなければならない。言い換えれば、未知の要素が非常に多く、市場に送り出すまでに大変な時間がかかるということだ。

「Atomicoを支援すると決めた理由のひとつは、まさに、うまくいけばHealxは希少疾患に苦しむ4億の人たちの人生を劇的に改善できると信じ、その大胆で長期間におよぶ賭けに物怖じしないところでした」と彼女は話してくれた。

「もちろん、そのような野心的な賭けには、ある程度のリスクが伴います。しかし同社の場合、その“途方もない探し物”問題を、これまでのように人が行うよりも、AIでうまく解決できることを示す兆候が、初期のあらゆるサインの中に見られたのです。もちろん、最終的にそれが証明されるのは、治療法が製品化されたときですが」

そうは言いつつ、彼女はHealxのようなスタートアップは、企業の新しいカテゴリーを創出するとも警告している。なぜなら、それは従来型の技術でも、従来型のバイオ製薬でもないからだ。

「投資家の観点からすると、別の枠組みが必要になるでしょう。それに慣れるまでに時間がかかる投資家もいるかもしれません」と元外科医の投資家である彼女は言っていた。

著者:Steve O’Hear

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(翻訳:金井哲夫)

ロケットラボが9機目のエレクトロン・ロケットを打ち上げ

Rocket Lab(ロケットラボ)は7台目のエレクトロンロケットを米国時間10月16日に打ち上げた。発射時間は協定世界時(UTC)の午前1時22分(日本時間の10月16日の午前9時22分)。「As The Crow Flies」と名付けられたこのミッションは、ニュージーランドのLC-1発射施設で実施され、Astro Digital(アストロ・デジタル)の積荷を載せて軌道へ向かう。

この打ち上げは元々別の衛星を低地球軌道に飛ばす予定だったが、打ち上げ直前に積荷が変更された。ロケット打ち上げでは異例なことであり、Rocket Labは自社の商業サービスモデルの柔軟性を誇示する結果となった。 Rocket Labのもう1社の顧客は遅延を余儀なくされたが、Astro Digitalは画像用衛星群「Corvus」(コルウス)の1基を軌道に乗せることになり、結果的に打ち上げ時期が早まった。

Rocket Labは予定どおり発射準備が進められ、発射予定時刻の20分前ほどからライブ中継された。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

アーティストがビデオ配信と同時にグッズ販売可能に、YouTubeとMerchbarと協業

YouTubeがMerchbar(マーチバー)をパートナーして新しい機能を組み込み、世界中のファンにアーティストが配信する映像と一緒にグッズを販売できるようになる。これで映像の作者は、広告収入やサブスクリプション(会費)以外にも収益源を持てることになる。

昨年YouTubeは、作者が売上を得るための一連の機能強化を発表した。それらは、チャンネルメンバーシップ(有料会員制チャンネル)やプレミア公開、マーチャンダイズ(物販、YouTube Merchandise Store、略称Merch)などだ。

特に目立つのがマーチャンダイズ機能で、それにより作者は映像配信画面に下に商品棚を置いてファンに直接売ることができる。例えば、自分のブランドのシャツや帽子などがある人は、それらを売れるのだ。

YouTubeもまずシャツに目をつけて、オリジナルTシャツのメーカーであるTeespringをパートナーした。パートナーは今年になってさらに増えCrowdmadeDFTBAFanjoyRepresentRooster Teethなどが加わった。

そのときYouTubeは、Merch(物販)やスーパーチャット(プレミア公開、投げ銭機能のあるチャット)、チャンネルメンバーシップなどの機能を組み込んで何千ものチャンネルが売上を倍増した、と発表した。

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今回のMerchbarとのパートナーシップは、主にアーティストのコミュニティが対象だ。Merchbarには今、3万5000名のアーティストからの100万件あまりのアイテムがあり、音楽と物販を組み合わせるサービスとしては世界最大だ。Official Artist Channel(公式アーティストチャンネル)のあるYouTubeアーティストは、自分の音楽ビデオの画面の下で商品を宣伝できる。マーケティングの機会に目ざといミュージシャンのMarshmello(マシュメロ)は、早くもMerchbarとYouTube専用のサッカーユニフォームを作った。

この前の物販機能と同じく、Merchbarの商品棚も映像の下に表示される。ユーザーはそこからクリックしてアーティスト自身のMerchbarサイトへ行くこともできる。売れたら、例によってYouTubeが小額の手数料を取る。MerchbarとYouTubeとの契約内容は公表されていない。

今回のローンチのタイミングは、GoogleがYouTube Musicに力を入れ始めた時期と一致する。同時期にライバルのSpotifyやApple Musicは音楽とビデオの両方を提供し、ライブやリミックスの中にはよそで聴けないものもある。最近GoogleがYouTube MusicをAndroidのデフォルトの音楽アプリにしたのも、その注力の一環だ。

米国内に品物を配送できるMerchbarのストアのあるアーチストは、YouTube Studioからその商品棚を登録しセットアップできる。米国以外の国にも、徐々に展開していく予定だ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

SpaceXがStarlink衛星3万台追加打ち上げの申請書を提出

SpaceXは、同社の衛星ブロードバンドプロジェクトであるStarlinkのために、3万台の衛星を追加打ち上げする申請書を国際電気連合(ITU)に提出とSpaceNews reportsが伝えた。ITUは世界の帯域利用を管理しており、これまでに1万2000台の打ち上げ許可を取っている。なぜこんなに多く打ち上げるのか?SpaceXはこれについて、ネットワークが予想される需要に「責任を持って」答えるためだと言っている。

「高速で信頼性の高いインターネットに対する需要が世界中で高まる中、特にネットワークが存在しなかったり、高価であったり、信頼性が低い地域のために、SpaceXはStarlinkのネットワーク総容量とデータ密度を責任を持ってスケールすることで「予想されるユーザーニーズ」の高まりに段階を踏んで答えようとしている」とSpaceX広報担当者がTechCrunch宛てのメールで語った。

ITUへの申請は、SpaceXが今すぐ3万台の衛星を打ち上げるという意味ではない。実際には来年打ち上げるのは数百台程度の予定だ。しかしSpaceXは、低遅延大容量ブロードバンドの需要が全世界で急速に高まると予測しており、初期の展開計画はそうした需要のごく一部しか満たさない。加えて、軌道からの通信への関心が高まる中、今後数年間で爆発的な需要増加が予想される。

当初Starlinkは米国北部およびカナダの一部にサービスを提供する計画で、ネットワークが開通する来年早々には開始する予定だった。その後計画は拡大し、約24機の衛星を打ち上げた段階で全世界をカバーするよう変更された。現在のカバレージ対応モデルは、初めてブロードバンドが設置される地域のことを勘案していないため、需要を満たすには最適なノード配置を行う必要がある。

SpaceXは、Starlinkの密集内での運用にも備えている(衛星群すべてが同じ軌道領域にいるわけではなくが、これまで宇宙に打ち上げられた飛行体が累計で約8000体であることを考えると、かなりの追加だ)。SpaceXが想定している対策は、自動衝突回避システムの開発、軌道離脱計画の策定、衛星の軌道情報の共有などで、これまで確立されていた業界標準を満たすか上回るものだと同社は言っている。

天文学者たちの懸念に対応するために、SpaceXは将来のStarlink衛星の地球に面したベース部分を回収する計画だ。 天文学者は衛星群の反射光が天体観測や研究に影響を及ぼすことを心配している。SpaceXは、衛星軌道についても科学研究に重大な影響を与えないよう配慮すると言っている。

Starlinkは5月に最初の衛星群60基を打ち上げた。それぞれ約230kgの衛星が相互に協力しながら地上基地局と通信することで一般利用者はブロードバンド・ネットワーク信号を受けとれるようになる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

米FCCがT-Mobile/Sprint合併を承認

米国時間10月16日、米国連邦通信委員会(FCC)はT-Mobile(Tモバイル)とSprint(スプリント)の合併について投票し3対2で正式に承認した。The Vergeによれば、承認が共和党3、反対が民主党2と政党の方針どおりに賛否が分かれた。

TechCrunchではFCCにコメントを求めている。

今年4月8日、T-MobileとSprintは260億ドル(約2兆8267億円)の大型合併で合意したが、当然ながら反トラスト法に違反するのではないかという議論を呼び起こした。当事者企業はAT&TとVerizon(TechCrunchの親会社)というモンスター企業と競争するうえで合併は必須だと主張した。かなりのやり取りの後、7月に入って合併は司法省の承認を受けた。FCCの承認を受けたことにより、残るハードルは他国籍の訴訟だが、両社とも合併手続き完了以前に解決することを約束している。

The Vergeの記事によれば、民主党側のJessica Rosenworcel(ジェシカ・ローゼンウォルセル)委員とGeoffrey Starks(ジェフリー・スタークス)委員は反対票、共和党側のAjit Pai(アジット・パイ)委員長、Brendan Carr(ブレンダン・カー)委員、Michael O’Rielly(マイケル、オリリー)委員は賛成票を投じたという。

民主党側のローゼンウォルセル委員はこの決定に反対票を投じたとして、次のような声明を発表している。

このような合併によりマーケットが寡占的になれば何が起きるか我々はよく知っている。航空業界でも荷物の料金はアップしシートは狭くなった。製薬業界では数少ない巨大企業が生命に関係する薬剤を高価なままにしている。携帯電話企業が例外であると考えるべき理由はない。T-MobileとSprintの合併は競争を阻害し、料金を高騰させ、品質を下げ、イノベーションを妨害すると考えるべき証拠が圧倒的だ。

画像:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

障害物回避ロボットのRealtime Roboticsに三菱電やオムロンが12億円超を投資

ロボットテクノロジーの開発で最も困難な課題のひとつは、ダイナミックな環境で動作するロボットが人間や他の障害物に衝突するのを防止することだ。ロボットは予期せぬ障害物を検知し、それらを避けて移動する経路を発見しなければならない。

ボストンに本拠を置くスタートアップ、Realtime Roboticsはこの問題の解決に当てるためにシリーズAのラウンドで1170万ドル【約12億7200万円)の資金を調達したことを発表した。

SPARX Asset Managementがラウンドをリードし、三菱電機、現代自動車(ヒュンダイ)、オムロン・ベンチャーズなどの企業が戦略的投資を実施した。トヨタ自動車グループのToyota AI Venturesをはじめ、Scrum Ventures、Duke Angel Networkなどが既存投資家だ。米国時間10月15日には、今年に入ってから実施された数回の総投資額が1290万ドル(約14億円)と発表された。

Realtime RoboticsのCEOであるピーター・ハワード氏はTechchCrunchに対し、同社のソリューションは高度なロボティクス・テクノロジーを利用しているとして次のように述べた。

我々のソリューションは2016年にデューク大学でロボティックモーションプランニングと呼ばれるプロジェクトで開発されたテクノロジーをベースとしている。これは6ないし7自由度を持つロボットが障害物を避けながら空間を移動する方法を発見するテクノロジーだ。

それ自身としても難しい課題だが、人間の作業者や他のロボットなどが付近で動きまわるダイナミックな環境では解くのがことに困難となる。これは障害物いつどこに割り込んでくるか予測できず、従ってロボットがどのように行動すべきか事前に決定できないからだ。Realtime Roboticsはこれに対してRapidPlanとRapidSenseという2つのテクノロジーによる解決を図っている。同社ではこのダイナミックな衝突防止テクノロジーにより「複数のロボットを同一の作業区域内で協調動作させることが可能となる。これには高価なセーフティーシステムや時間のかかる複雑な事前のプログラミングを必要としない」という。このソリューションには同社独自のハードウェアとソフトウェアが用いられてロボットを安全に動作させる。

開発はまだ初期段階にあり、13社の顧客と共同でコンセプトの有効性を実証する作業が進められている。最終的には現在の顧客がOEMとして同社のプロダクトを製造販売できるようになることが最終目標だ。ハワードCEO氏によれば、有力ロボティクス企業と同時に自動運転車を開発している自動車メーカーとも協力しているという。自動運転の実現には有効な衝突回避テクノロジーが欠かせない。実際、トヨタが最初期からの投資家であり、今回のラウンドには韓国の現代自動車も加わっている。

「衝突回避テクノロジーは農業、食品製造、土木建設など他の産業分野でも有効だ。人間が自身の身体能力を使って仕事をしている分野ならどこでもわれわれのテクノロジーが利用できる。(この種のテクノロジーにとって市場への)参入の機はかなり熟している」とハワード氏はビジョンを述べた。

【Japan編集部追記】Realtime RoboticsはScrum Connect 2018に参加し、ハワードCEOが来日して講演、デモを行っている。TechCrunch Japanでも詳しいレポートを掲載している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ギグワーカーに柔軟な保険を提供するThimbleが約24億円を調達

中小企業やフリーランサーが短期でも加入できる柔軟設計の保険を提供するThimble(シンブル)は、IACがリードするシリーズAラウンドで2200万ドル(約24億円)を調達したことを発表した。

以前の社名はVerifly(ベリファイ)だった。本業だったドローンパイロット向け保険にちなんだ名前だ。創業者兼CEOであるJay Bregman(ジェイ・ブレグマン)氏は、同社が顧客の需要に応えてさまざまなビジネスに新しい保険を提供してきたと語った。広くなった会社のビジョンを反映するため社名を変更した。なお同氏は、以前ライドシェアリングの会社Hailoを創業したことがある。

Thimbleの顧客はギグエコノミーの労働者(ギグワーカー)だとまとめてしまうのは簡単だが、ブレグマン氏はUberを運転したりPostmatesで配達する人たちだけが対象ではないと指摘する。同社の顧客のうち自身をギグワーカーだと認識しているのは4%にすぎないとのことだ。

「ギグエコノミーと呼ばれる大きなマーケットがある。その担い手であるギグワーカーたちは自身が決めた条件で柔軟な働き方をしている」とブレグマン氏は言う。

Thimbleは100を超える職業の顧客に賠償責任補償を提供しているという。便利屋、造園業者、DJ、ミュージシャン、美容師、犬の散歩代行などの顧客もいる。保険は、時間、日、週、月、年単位でThimbleのウェブサイトまたはアプリから直接加入できる。

「細切れの仕事を繰り返し請け負うようになると、年単位の保険に加入する意味がなくなる」とブレグマン氏は言う。例として同氏は、Thimbleの顧客の75%が以前は保険に加入していなかったこと、50%が1日未満の保険に加入していることを指摘する。同社は年末までに10万口の保険販売を見込む。

Thimbleの保険はMarkelが引き受ける。ブレグマン氏が「インフラと人材」が優れていると称賛した保険会社だ。

同氏は「我々はこれまでプロダクト自体の所有者であって、基本的に保険代理店と協力してプロダクトを市場に投入してきた。そのようなやり方は今後プロダクトが成熟していくと変わるかもしれない」と述べた。

Thimbleは、これまでに48州で保険販売に関する規制当局の承認を受けた。ギグワーカーが被雇用者なのかをめぐる広範な政治的議論が同社のビジネスに影響を与えるかと尋ねられたブレグマン氏は、同社の顧客の大多数は自身がギグワーカーであるとは考えていないと改めて指摘した。

「唯一恐れているのは、長期のギグワーカーに特有の問題を議論しているのに、関連する法律が意図せず正当なフリーランサーを心配させたり網にかける可能性があることだ」とブレグマン氏は言う。

IACの最高戦略責任者であるMark Stein(マーク・スタイン)氏は今回の投資に関して、デジタルメディアホールディング会社である同社がアーリーステージの会社へのマイノリティ出資をこれまであまり行ってこなかったことを認めた。だが同氏は今回の投資を「種をまく」ようなものだと語った。

「IACが考えているのは次の2つだ。どうすれば将来の成長の種をまくことができるのか?次のANGI HomeservicesやMatch Groupになるのはどういった会社か? 」。スタイン氏は、将来のスピンオフが取り沙汰されているIAC所有の2つのビジネスを引き合いに出し「その2つのように見込みが高く大きな市場機会を見出す必要がある。狙いは将来業界を変える大企業に育てることだ」と述べた。

既存株主であるSlow Ventures、AXA Venture Partners、Open Oceanもラウンドに参加し、Thimbleのこれまでの調達資金は2900万ドル(約32億円)となった。

画像クレジット:Thimble

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(翻訳:Mizoguchi)

Googleから約7.5万円のChromebook最新版Pixelbook Goが登場

Googleは、毎年恒例のハードウェアイベントで、米国時間10月15日、純正Chromebookシリーズの最新版、Pixelbook Goを発売すると発表した。価格は649ドル(約7万500円)から。昨年の180度開くヒンジを備えたPixelbookや、2in1のPixel Slateの後を受けたモデルは、ノーマルなラップトップ型に戻った。

Goは、16:9で13.3インチのタッチスクリーンを備え、HDまたは4Kのいずれかの解像度のディスプレイを搭載するモデルを用意する。USB-Cポートを2つ備え、Titan-Cのセキュリティチップも内蔵する。メモリは最大16GBのRAMと、最大256GBのストレージを実装可能。CPUは、インテルのCoreシリーズで、ローエンドがm3、ハイエンドがi7を搭載する。本体の色は黒と「非ピンク」の2種類。予約注文はすでに始まっているが、今のところ選べるのは、黒だけとなっている。「非ピンク」も、近々入手可能となる予定。

底面は波打つような仕上げで握りやすい。従来のPixelbookシリーズよりも静かだとされる「Hush Keys」と呼ばれるキーボードを備える。音について言えば、Goは「オーケーGoogle」に応えるための遠距離用マイクを内蔵している。

「私たちは、薄くて軽くて、しかもけっこう速く、バッテリーも1日中持つようなラップトップを作りたいと思っていました。それはもちろん、見ても触っても美しいものでなければなりません」と、Googleのアイビー・ロス(Ivy Ross)氏は、イベントの発表で述べた。ロス氏はまた、Pixelbook Goは大容量のバッテリーを内蔵するにも関わらず、ボディをマグネシウム製にすることで、軽量化できたと強調した。

MicrosoftのSurfaceシリーズとは異なり、これまでのGoogle製のラップトップは、常にChromebookシリーズのハイエンドを定義する、野心的なデバイスのように思えるものだった。しかし649ドルのPixelbook Goは、この分野におけるこれまでの同社の取り組みとは異なり、明らかに手頃な価格の路線を狙ったもの。やはり、もう少し売れるものにしたいと考えているようだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

NASAアルテミス計画用の宇宙服は体格に関係なく月面歩行が楽になる

NASAは、Artemis(アルテミス)世代のミッションのための新しい宇宙服を公開した。アルテミス計画は、2024年までに最初の米国人女性と次の米国人男性を月面に送ることを目指している。この新しいデザインの最大の特徴は、基本的にあらゆる点における動きやすさと柔軟性にある。NASAは、月面での船外活動用のフルスーツと、月の軌道上を移動する際のフライトスーツの両方を披露した。

NASAのジム・ブライデンスタイン長官に導かれ、NASAは初めて宇宙飛行士が月面で使用する(この改良型が火星でも使用される)宇宙服のデモンストレーションを行った。xEMU変形型と呼ばれるこの宇宙服は、宇宙服と聞いてみんなが頭に思い浮かべるであろう形とそっくりそのままだ。しかし、アポロ計画で宇宙飛行士たちが月面を訪れたときに着ていたものとは、いろいろな面で大きく違っている。

これは本当のムーンウォークを可能にするものだ。月面活動のために作られた最初の宇宙服は体の動きの制約が大きく「ニール・アームストロングとバズ・オルドリンが月面で基本的にカンガルージャンプで移動するしかなかった」というのはブライデンスタイン長官の言葉だ。この新しい宇宙服なら、より活動的に体を動かせる。普通に歩いたり、腕もさまざまに動かせる。新しいグローブでは指も自由に動かせるようになり、地面の石も比較的楽にを拾える。

「新しい宇宙服は、1パーセンタイル順位の女性から、99パーセンタイルの男性まで実質的に宇宙飛行士になりたいすべての人の体に合わせられるようにデザインされている」とNASA先進宇宙服エンジニアKristine Davis(クリスティン・デイビス)氏は話していた。彼女は米国時間10月15日に開催されたイベントのステージ上で、xEMU異形型を来てデモンストレーションを披露した。

「宇宙に行きたいという夢を持つすべての人が、こう言えるようにしたいのです。そう、みんなにチャンスがあるよってね」とブライデンスタイン長官は、この宇宙服のインクルーシブデザインに触れて、そう言い加えた。

NASAでは、再び月を訪れたときに、持続可能性を確認したいと考えている(実際に作業場を建設して滞在する計画を立てている)ため、宇宙服は北極と南極、さらには赤道付近の温度変化に対応できるように耐熱性能に大きな幅を持たせてある。このxEMUの場合、マイナス156.6度からプラス121.1度まで耐えられる。

NASAはまた、国際宇宙ステーション(ISS)で現在使われている宇宙服からも、大きく進歩していると話していた。ひとつには、この宇宙服には実際に使える脚が付いている。ISS用の宇宙服は、無重力や微小重力の環境で使用するために脚には保護の役割しかない。新しい宇宙風の腕の接続部分にはベアリング使われているため、前述のとおり手を伸ばしたり物を掴んだりと可動域がずっと大きくなっている。

もうひとつの宇宙服はOrion Crew Survival Suit(オライオン乗員救命スーツ)と呼ばれ、打ち上げと着陸のときに着用する軽量な宇宙服だ。通常の使用中は減圧されているが、事故による減圧が起きた際には体を守るように作られている。これをデモンストレーションしたのは、オライオン・スーツのプロジェクト・マネージャーであるDustin Gohmert(ダスティン・ゴーマート)氏だ。彼によると、xEMUほどで強力ではないが、熱と宇宙放射線を防御できるという。

大きなxEMUスーツは、アップグレードが可能なようにも作られている。ちょうどPCのマザーボードのように、新しい改良されたテクノロジーが使えるようになったとき、わざわざ地球に戻って作り直さなくても宇宙空間でアップグレードして使うことができる。

ブライデンスタイン長官は、今月の初めにNASAが発表したとおり、アルテミス計画用宇宙服の製造で民間のパートナーと提携していることを繰り返し伝えていた。また、それらの企業からは、この宇宙服に使われているテクノロジーの今後の発展やアップグレードをどうすべきかに関する助言やアイデアの提供も求めてゆくことを検討していると話していた。

全体としてブライデンスタイン長官は、商業化について、またNASAがアルテミス計画や宇宙全般で民間のパートナーの協力を求めていることについて、熱っぽく語っていた。

「これまでにNASAは、国際宇宙ステーションの補給の権限を民間企業に与えました。【中略】今は民間のクルーを受け入れています。来年の初めには、2011年にスペースシャトルが退役して以来初めて、米国人宇宙飛行士を、米国の土地から、米国製のロケットで打ち上げる予定です」と彼は言った。「これは我が国にとって、非常に建設的な進歩になりますが、それは民間企業によって行われます。【中略】そしてもちろん、地球の低軌道にたくさんの確固とした商業拠点が生まれることを期待しています。最終的に、私たちの活動を可能にしているものは、次に納税者から預かった資産を活用して、月を、火星を目指すことになりますが、そこでも常に商業化を見据えてゆきます。私たちの目標は、これまで以上に、人類の活動を宇宙に広げることにあります」。

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(翻訳:金井哲夫)

英国のバイオテックスタートアップMogrifyが革新的な細胞療法を市場投入へ

再生医療などの分野で、革新的な細胞療法開発の体系化を進めている英国ケンブリッジに拠点を置くバイオテック系スタートアップであるMogrify(モグリファイ)が、1600万ドル(約17億4000万円)という最初のシリーズA投資を決めた。

Ahren Innovation Capital(アーレン・イノベーション・キャピタル)、Parkwalk (パークウォーク)、24Haymarket(トゥエンティーフォー・ヘイマーケット)による今回の投資に先立ち、2月には400万ドル(約4億3500万円)のシード投資を受けており、今日までの合計で2000万ドル(約21億7400万円)の資金を調達している。

Mogrifyのアプローチを簡単に説明すると、大量のゲノムデータを分析し、成熟細胞を、幹細胞の状態にリセットすることなく、ある細胞種から別の細胞種に転換させるのに必要な特定のエネルギーの変化を識別するというものだ。多種多様な治療使用事例に応用できる可能性が非常に大きい。

私たちがMogrifyで行おうとしているのは、そのプロセスを体系化して、これが元の細胞、これが目標とする細胞、これがそれぞれのネットワークの違い。そしてこれが、成熟細胞を別の成熟細胞に幹細胞ステージに戻すことなく転換させなければならない治療介入点である可能性が最も高い場所だとわかるようにすることです」とCEOで投資者のDarrin Disley(ダリン・ディズリー)博士は話す。

博士によると、今のところ15回試して15個の細胞転換に成功しているという。Mogrifyの事業は3つの大きな柱で構成されている。細胞療法のための内部プログラム開発(現在開発中の細胞療法には、増殖軟骨移植の強化、眼損傷の非侵襲性治療法、そして血液疾患の治療が含まれる)。また、免疫療法に使用する細胞の普遍的な供給源の開発も行っている。ディズリー博士によると、それは疾患を食うものとして働くそうだ。

もうひとつの柱は、投機的な知的財産の開発だ。「私たちは特定の細胞の転換を核とし、治療範囲をごく短時間で特定できる立場にいます。テクノロジーの体系的な性質のため、それら細胞の周囲には知的財産が急速に発生し、知的財産の領域が築かれていきます」と彼は言う。提携関係は3番目の柱だ。同社は開発や標的細胞療法の市場投入を他社と共同で行っている。ディズリー博士は、すでにいくつかの提携が決まっているが、まだ社名は公表できないと話している。

Mogrifyはゲノミクスにおけるこの10年間分の研究結果を基礎にしているが、特にFantom 5と呼ばれる国際的な研究活動で得られたデータセットに依存している。その創設者は、優先的にデータセットが利用できることになっている。

「私たちは、その膨大なFantomデータセットからスタートしました。これが基盤です。背景と言ってもいいでしょう。それは米国の2つの都市、シカゴとニューヨークに例えられます。元になる細胞があり、目標となる細胞がある。そして、それぞれのネットワークの背景データ(すべての建物、すべての超高層ビル)をすべて手にしているとします。この2つを比較すれば、その遺伝子発現の差異を識別できます。従って、どの要素がそれらの遺伝子の大きな配列を調整しているのかを特定できます。そうして2つの差異の特定が開始できるのです」とディズリー氏は説明している。

「そして私たちは、その膨大なデータセットにDNAタンパクとタンパク質間相互作用を追加しました。それにより、すべてのデータを重ねて見ることができます。さらにその上に、新しい次世代シークエンスデータとエピジェネティクスのデータを重ねました。そうして、膨大なデータセットが出来上がりました。それは、あらゆる細胞種のネットワークマップを手に入れたことと同じです。これを使えば、細胞の状態を転換させるのに、何回どのような介入が必要かがわかります。しかもシステマチックに。ひとつだけが提示されるのではありません。ランキングが示されます。数百件になることもあります。重複することもあります。なので、例えばひとつの気に入ったものを試してみて、思ったようにいかなかったときは、最初に戻って別のものを選んで試すことができます。もしその要素に知的財産権の問題が関連しているときは、そのネットワークは忘れて別のルートを使用します。そして、ひとたび標的の細胞に辿り着けたなら、そしてそれが調整を必要としていたなら、実際にシークエンスを変更して、最初の状態に戻して再出発ができます。そしてまた、この最適化プロセスを実行します。すると、結果として特許が得られます。物質特許を構成する小さな分子のようなものですが、それが癒しになります。目的が達成できなくても、細胞の構成要素は得られるのです」。

概念から出発して、新しい細胞療法を発見し、市場に送り出すまでに要する時間は、ディズリー博士の話から察するに4年から7年程度のようだ。「GMPに準拠した製造工程の基礎となる細胞種を特定できれば、治療指標に従って調整が行えるようになり、細胞療法を開発し、5年以内には市場に送り出せます」と彼は話す。「小さな細胞が市場で本格的な治療に使われるようになるまで、10年、15年、20年もの時間を要した時代とは違います。患者を治療する際、ほかに治療法がない場合はフェーズ2に進み、安全性および有効性の研究を行います。彼らの疾病という点では、すでに実際の治療が始まっています。もし適切に行えれば、早めの認証が得られます。それがダメでも条件付きの認証が得られます。なのでフェーズ3(試験)に移行する必要すらありません」。

「私たちは人工知能は一切使っていません」と彼は、偏りのないアプローチで使用するのが最も望ましいと主張する巨大で極端なデータ領域の中の企業に投資した経験から強調した。「私が思うに、AIはまだその道を探っている段階です」と彼は続けた。

「本質的にそれは、わずかな量のデータから答えを導き出そうとするものですが、学習に使用したデータ以上の答は出せません。しかもAIの危険な部分は、あなたが認識して欲しいものを認識するように教育されるところにあります。AIは、自分が何を知っているかを知らないのです。このような膨大な細胞ネットワークのデータなどを生成し続けるなら、それと組み合わせることで、機械学習やAIの側面を取り入れてもいいでしょう。しかし、そのデータを持たないAIでは、Mogrifyは決して成り立ちません。データはどうしても必要です。そしてそのデータは非常に複雑であり無数の組み合わせが発生します。それらの遺伝子の規則という面だけでも2000種類の転写因子があります。しかもそれらはネットワーク上でタンパク質間相互作用のために関わり合いを持ちます。そこにはエピジェネティクスの面もあり、後に細胞の微生物叢の効果も加わります。したがって、細胞の表現型に影響を及ぼす可能性のある要素が無数に生み出されるのです。なので、AIを使う際には少々注意が必要です。システムの中で十分な信頼が得られるようになれば、最適化のためのツールとして活用できるでしょう」と語る。

シリーズA投資で得た資金は、Mogrifyの経営の強化と社員の増員に使われる予定だ。これには、業界からの上級管理職や専門家のスカウトも含まれる。また、治療法開発計画の予算にも回される。ディズリー博士によれば、その一環として、Jane Osbourn(ジェーン・オズボーン)博士を会長に迎え入れることが決まっているという。

「私たちは、大手製薬会社から細胞療法の経験を持つ人材を数多く招くつもりです。同時に、製造と配送の経験を持つ人たちも招きます。私たちは、単なる技術系企業では終わりません」と彼は言う。「すでに私たちは大変に大きな力を持っています。技術と早期の創薬のサイドではすでに35名が働いていますが、さらに30名を増員する予定です。しかし、製品を市場に送り出すために、大手製薬会社、細胞療法開発、製造での経験を持つ人間を今後も増やしていきます」。

シリーズAの資金の使い道として、提携先探しも大きな柱になっている。「私たちは、適切な戦略パートナーを探しています。提携関係の中で複数のプログラムが行えるような戦略パートナーと出会いたいと思っています」と彼は言い足した。「そして、細胞転換で特定の問題を抱えている領域との一連の戦略的な取引を重ねます。必要ならば、これらはターンキー契約にできます。それでも私たちは、最前線に立ち、道標となり、特許がありますが、その数は多くありません」。

現在は、今後2年から2年半までの間の十分な資金があるものの、シリーズAをオープンにしたまま、これから12カ月の間にラウンドを最大で1600万ドル(約17億4000万円)まで拡大させることも可能だ。

「興味を示してくれる投資家が大勢います」とディズリー博士は私たちに語った。「今回のラウンドでは、私たちは実際にオープンにはしませんでした。内部の投資者と以前一緒に仕事をしていたとく親しい人たち、そして列を作っていた投資家たちから資金を調達した際には、そうしていました。そのため私たちは、今後12カ月間で額を増やしたくなったときに増やせるようにオープンのままにしています。これがもしシリーズAなら、最大でさらに1600万ドルを調達できたでしょうが、私たちは先に進むことを決めました。できるだけ早く成長して、より大きなシリーズBを目指します」。

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(翻訳:金井哲夫)

Googleは2020年春発売予定の完全ワイヤレスイヤフォンPixel Budsをチラ見せ

Google(グーグル)は、噂されていた次世代のPixel Budsについて、ちょっとだけヒントをくれた。すでに同社は、左右がケーブルでつながれたワイヤレスイヤフォンを発売していたが、期待が高かっただけにこれにはかえってがっかりさせられた。今度は完全なワイヤレスとなる。その新しいイヤフォンは、見た目もなかなかいい。Pixelのスマホ本体にも採用されているような、パステルカラーのスキームを取り入れている。

ただし、発売までにはまだ間があって予定では来年の春だ。Googleとしては、このカテゴリに対する興味をまだ失っていないことを世界に知らしめたかったに違いない。ただ、その市場はすでに、Apple(アップル)、Samsung(サムスン)、ソニーといったメーカーに、ほとんど押さえられてしまっているのが実情だ。このイヤフォンは、ロングレンジのBluetoothを採用していて、屋内なら最大3部屋離れても使える。また屋外では、フットボール場全体をカバーできるほどの距離でも動作する。

Pixel Budsの内蔵マイクは、周囲の環境に応じて自動的に調整される、適応的な音声入力を可能にする。電話で会話する際には、マイクは話者の声に焦点を合わせ、風の音など、周囲の雑音を除去できる。バッテリーの充電には5時間かかるが、付属のバッテリーケースと合わせて24時間使える。そのケースは、アップルのAirPodsに付属するものをさらにスリムにしたような感じで、当然ながらBeatsのケースのようにかさばるものではない。

この新しいPixel Budsは、来年には179ドル(約1万9400円)で販売される。今回のGoogleのハードウェアイベントで、かなり曖昧ながら示されたことが本当に実現されるなら、それほど高い感じはしない。やはりGoogleは、この製品でもソフトウェア機能に注力している。その点は、Microsoft(マイクロソフト)が最近発表したSurfaceイヤフォンとは異なった部分だ。そもそも、イヤフォンで使える機能としては、Googleのマップや翻訳といったものの方が、オフィスに比べてはるかに便利だろう。

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これは、おそらく2度目の正直といったものになる。実際のところ、ワイヤレスイヤホン市場は、初代のPixel Budsが登場したときに比べて、ずっと成熟したものとなっている。それに応じて、Googleが使える技術的な基盤も進化した。もちろん、それと同時に競争も激化している。特に、Android版のAirPodsを目指すなら、なおさらだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Amazonが100以上の消費者サービスをOracleからAWSに移行

AWSOracle(オラクル)は互いにやり合うことが好きだが、このところAmazon(アマゾン)の優勢が続いているから、実はAmazonはOracleの顧客だったと認めざるをえない状況になってしまった。というのも、米国時間10月15日のAWSのブログ記事で同社は、Oracle for AWSを廃止して最後のOracleデータベースを実質的に閉鎖したと発表した。

それは具体的には、7500近くのOracleデータベースに保存されていた75PB(ペタバイト)のデータだ。この移行を発表するブログ記事でAWSのJeff Barr(ジェフ・バー)氏で「このデータベース移行作業が完了したことをご報告できてとても嬉しい。Amazonの消費者事業がついに、その最後のOracleデータベースを廃止した。ただしOracleと密接に結びついている一部のサードパーティアプリケーションは移行しなかった」と書いている。

これまで数年かけて同社はデータベースのOracle離れを進めてきたが、Amazonほどの巨大企業になると移行は容易な作業ではない。しかし、バー氏によると移行すべき理由がたくさんあったという。「何千ものレガシーのOracleデータベースを管理しスケールするために費やす時間があまりにも大きすぎた。データベースの管理者たちは、差別化のための高度な仕事ではなく、データの保存量が増えトランザクションレートが高くなると、とにかく無事に動いていることを確認するだけのために大量の時間を消費した」と彼は書いている。

100あまりの消費者サービスがAWSのデータベースに移された。その中には、AlexaやAmazon Prime、Twitchなど顧客対応のツールもある。AdTechやフルフィルメントのシステム、外部決済、発注など社内的ツールも移った。これらはいずれも、Amazonの中核を支える重要なオペレーションだ。

それぞれのチームが、OracleのデータベースをAmazon DynamoDBやAmazon Aurora、Amazon Relational Database Service(RDS)、Amazon RedshiftなどAWSのデータベースに移した。どれを選ぶかは、それぞれのニーズや要求に応じて各グループに任された。

Oracleに問い合わせたが、この件についての回答はなかっった。

関連記事:AWSはアグレッシブに世界制覇を目指す――エンタープライズ・コンピューティングで全方位路線

画像クレジット: Ron Miller

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

GoogleはPixel 4のカメラでハードと画像処理AI/MLを融合、写真の新しい水準を実現

Google(グーグル)が発表した新しいPixel 4に写真機能の強化だけでも大量のテクノロジーが投入されている。こGoogle Researchでカメラ開発の指揮をとってきたMark Levoy(マーク・レヴォイ)教授が登壇してこの点を詳しく解説してくれた。この記事では広角から望遠まで高解像度で撮影するスーパーハイブリッドズーム、HDRをライブでプレビューするテクノロジーを含め、カメラの新機能を紹介する。

被写体、照明、レンズ、ソフト

レヴォイ教授はフォトグラファーの間に以前から伝わる格言から説明を始めた。つまり良い写真と撮るために必要なのは、まず被写体、 次に照明、つぎにレンズ、カメラボディーの順序となる。教授は「我々はこの格言には多少の修正が必要だと気づいた。つまりカメラボディには処理ソフトを含めて考えねばならない」と語った。

Screen Shot 2019 10 15 at 10.59.55 AM

もちろんレンズは依然として重要であり、Pixel 4では現行広角レンズに加えて望遠レンズを加えた。レヴォイ氏は「通常望遠のほうが広角より役立つ」と指摘したが、これはApple(アップル)がiPhone 11 Proに超広角レンズを加えてカメラ3台のアレイを構成したことに対する批判だろう。

Google Pixel 4 Camera

このコンテキストで説明するなら、Googleの「コンピュテーショナルフォトグラフィー」というコンセプトはスマートフォンの筐体に収まる小さい撮像素子(貧弱な画像しか撮影できない場合が多い)に対して強力な処理を加えることによって驚くべき高品質の画像を生み出すテクノロジーといっていいだろう。

レヴォイ氏によればPiexl 4に搭載されているのは「ソフトウェアによって定義されたカメラ」だという。つまり常時複数の画像を撮影し、それらのデータをコンピュータがバックグラウンドで合成することによってユーザーに複雑な操作を要求せずに優れた最終画像を得る仕組みだ。

Screen Shot 2019 10 15 at 11.07.56 AM

Pixel 4でどこが新しくなったのか?

コンピュテーショナルフォトグラフィーにより、Pixel 4ではいくつかの重要な機能が利用できるようになった。ひとつはライブHDRプレビューとデュアル露出コントロールだ。これにより、ユーザーはリアルタイムでHDR(広ダイナミックレンジ)処理を適用した写真をプレビューすることができる。これまではHDR写真を撮影する前のプレビューは撮影後の実画像とかけ離れているのが普通だった。Pixel 4では画像の高輝度領域と低輝度領域をリアルタイムで常に別個に調整することが可能になった。ユーザーは作画意図によって被写体をシルエット化したり逆光でも明るく描写したりできる。

機械学習によるスマートホワイトバランス機能はて適切なホワイトバランスの取得という問題を扱う。 レヴォイ氏によれば、Googleは現行Pixel 3で夜景モードを導入したとき、低照度条件でホワイトバランスを得る方法を開発したという。 Pixel 4ではこの機能が強化され、夜景モードだけでなくあらゆる条件で作動するようになった。逆光などの困難な撮影条件ではホワイトバランスがオレンジやイエロー側に振れる現象が起きやすいが、スマート・ホワイトバランスは白いものは白く描写できる。

Screen Shot 2019 10 15 at 11.02.01 AM

新しいポートレート・モードでは背景に加えるボケなどをいっそう正確にコントロールできるようになった。これは2つの撮像素子から得られるデュアルピクセル画像を処理することで奥行き情報を得て人物と背景の距離差を検出し、人物のみを鮮明に描写する。これにより人物がかなり離れた場所にいても人物に焦点を合わせ、背景をやわらかくボケさせることが可能になったという。人物の描写で髪の毛の一筋一筋や毛皮の衣服などデジタル一眼でも撮影が難しい対象を鮮明に描写できる。

複数カメラの採用により、当然ながら夜景モードも根本的なアップデートを受けた。新しい星空モードを利用すれば夜空を撮影して星や月を見たままに近く描写できる。星空モードが提供する夜の空は非常に魅力的だ。このモードでは数分にわたって撮影を続けることができるが、星の動きの追跡も含めて合成処理は処理はコンピュテーショナルフォトグラフィーが行うのでユーザー側で煩瑣な設定をする必要はない。

google pixel 4 sample images

さらに…

GoogleはPixel 4はスマートフォンの小型センサーに内在するさまざまな限界を打ち破ったカメラだとしている。写真界における世界的な巨匠であるAnnie Leibovitz(アニー・リーボヴィッツ)氏との共同撮影プロジェクトを続行中だ。レイボヴィッツ氏も登壇し、Pixel 3とPixel 4で撮影した写真を何枚か披露した。ただしとりあえずインターネット記事にフィードされる写真と最終成果物の写真集の写真とはかなり違うだろう。


レヴォイ氏はPixel 4の撮影能力はハードウェアのリリース後もカメラソフトウェアのアップデートによって引き続き改良されていくと述べた。つまりPixel 4のカメラはまだ始まったばかりということだ。現行Pixel 3のカメラはスマートフォンとしてトップクラスだが、ステージで披露されたデモ写真を見ただけでもPixel 4の写真はこれを上回っていた。今後実機を手にしてAppleのiPhone 11のカメラと比較してみるのが楽しみだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

DatabricksがDelta LakeプロジェクトをLinux Foundationに移管

Apache Sparkのオリジナル開発者が創業したビッグデータ分析サービスであるDatabricks(データブリックス)は米国時間10月15日、データレイク(構造化データや非構造化データ、バイナリなどのファイルを含めて一元的に格納するデータリポジトリのこと)の構築に使われるDelta LakeオープンソースプロジェクトをLinux Foundationへオープンガバナンスモデルの下に移管することを発表した。同社は今年の初めにDelta Lakeのローンチを発表した。比較的新しいプロジェクトにもかかわらず、すでに多くの組織に採用され、Intel(インテル)、Alibaba(アリババ)、Booz Allen Hamilton(ブーズ・アレン・ハミルトン)などの企業からの支援を受けている。

画像クレジット: Donald Iain Smith / Getty Images

「2013年に、私たちはDatabricks社内で、SQLをSparkに追加する小さなプロジェクトを行っていました、それはその後Apache Foundationに寄付されました」と語るのはDatabricksのCEOで共同創業者のAli Ghodsi(アリ・ゴッシ)氏だ。「長年にわたって、多くの人たちが、Sparkを実際に活用する方法を変えてきました。そしてようやく昨年くらいからでしょうか、私たちが最初に想定していたものとは、全く異なるパターンでSparkが使われ始めていることに気が付き始めました」

彼によれば、そのパターンとは、企業がすべてのデータをデータレイクに投入し、このデータを使用してさまざまなことを行うというものだ。もちろん機械学習とデータサイエンスは明らかな応用パターンだ。しかも企業はまた、ビジネスインテリジェンスやレポートなど、従来はデータウェアハウスに関連付けられてきたことも行っているのだ。ゴッシ氏がこの種の利用法を指すために使う言葉は「Lake House」(レイクハウス)だ。Databricksは、Sparkが単にHadoopを置き換えたりETL(Extract、Transform、Load)に使われるだけでなく、上記のような目的にますます使用されるようになっていることを理解している。「私たちが目にしたこの種のレイクハウスパターンが、より頻出するようになってきたので、私たちはそれに倍賭けしようと考えたのです」。

本日リリースされたSpark 3.0は、プラグインなデータカタログをSparkに追加できる新機能に加えて、上記のようなユースケースの多くを可能にし、大幅にスピードアップしたものになっている。

ゴッシ氏によれば、Delta Lakeは本質的にはレイクハウスパターンのデータ層に相当するものだと言う。たとえば、データレイクへのACIDトランザクション、スケーラブルなメタデータ処理、およびデータバージョン管理のサポートをData Lakeは提供する。すべてのデータはApache Parquet形式で保存され、ユーザーは自分でスキーマを適用することができる(必要に応じて比較的簡単にスキーマを変更することもできる)。

Linux FoundationがApache Foundationをルーツに持つことを考えると、DatabricksがこのプロジェクトのためにLinux Foundation選択したことは、興味深い。「彼らと提携できることをとてもうれしく思っています」とゴッシ氏は口にして、同社がLinux Foundationを選んだ理由について以下のように語った。「彼らは、Linuxプロジェクトだけでなく、多くのクラウドプロジェクトを含む、地上最大のプロジェクトたちを運営しています。クラウドネイティブのものはすべてLinux Foundationの中に置かれています」。

「中立的なLinux FoundationへDelta Lakeを移管することによって、このプロジェクトに依存しているオープンソースコミュニティたちが、オンプレミスとクラウドの両方で、ビッグデータを保存および処理する技術を開発しやすくなります」 と語るのはLinux Foundationの戦略プログラムVPであるMichael Dolan(マイケル・ドーラン)氏だ。「Linux Foundationは、データストレージと信頼性の最新技術を向上させて業界の幅広い貢献とコンセンサスの構築を可能にするオープンガバナンスモデルを、オープンソースコミュニティたちが活用しやすくなる手助けをいたします」。

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(翻訳:sako)