【コラム】屋上レンタル、米国の不動産所有者は5Gキャリアと手を結ぶべきだ

5Gインフラを敷設する動きが活発になり各社の競争が激しくなるに連れ、レストラン、ホテル、住居用建物、さらには病院や教会の屋上までもがインフラ敷設場所として注目されている。5Gテクノロジーを人口密度の高い地域に確立したいと考えるテレコミュニケーション会社にとって、こうした屋上は急速に重要な不動産ターゲットとなりつつある。

事実、次世代のワイヤレス展開から得られるリース収入は、今後5年間で、米国内のリース収入の大きな部分を占めると考えられており、不動産所有者や事業主にとって大きなチャンスとなる。

バイデン政権は、5Gインフラの拡大を国の主要課題として位置付けている。1.2兆ドル(約137兆円)のインフラ投資法では、農村部やサービスが十分行き届いていない地域でも高速回線を利用できるようにするための財源として650億ドル(約7兆4000億円) が確保されている。5Gは他のワイヤレステクノロジーと比べて高速で大容量のデータを処理できるが、カバーできる範囲は最大で 約1500フィート(約457メートル)と、ぐっと狭い。

5G テクノロジーは、次世代ワイヤレスネットワークとしてはアンテナが短いため、既存の建物の屋上に敷設するのに非常に適している。

大手ワイヤレス通信プロバイダーに加え、5Gの展開競争には新たにケーブル会社やビックテック企業も含まれている。これらの企業は、5Gマクロおよびスモールセルサイトを配備するために、合わせて2750億ドル(約31兆円)を投資すると予測されている。必要な量の配備を効果的かつ効率的に行う唯一の方法は、既存の建物を利用することである。言い換えれば、5G競争を乗り切るには、屋上配備戦略の採用が鍵になるのだ。

歴史的に言って、ワイヤレス通信市場は不動産所有者やその他の事業主にとっては厳しい市場だった。ワイヤレスキャリアとタワー企業が長期契約を結んでおり、不動産所有者にとって有利とはいえない状況になっていたのだ。

多くの地域では、新しいタワーを立てることに強い反対の声があり、さらに建設、ゾーニング、許可プロセスには時間がかかる。しかし、5G テクノロジーは、次世代ワイヤレスネットワークとしてはアンテナが短く、既存の建物の屋上に敷設するのに非常に適している。現在5Gキャリアにとって、ワイヤレスに関する不動産要件を満たすには、タワー企業より大手不動産業者のほうが、迅速に効率よくソリューションを提供してくれる相手となっている。

屋上配備戦略は、5Gキャリアにとっても不動産所有者にとっても互いにメリットがある。キャリアは使用量の多い地域でできる限り迅速にインフラを配備するという目的を達成することが可能であり、一方不動産所有者は、屋上からリース料を得、すでに所有する不動産を新たな方法で収益化するという経済的利益を得ることができる。

不動産所有者の経常利益に与える影響と、30年リースで生み出されるであろう利益は相当なものであり、不動産所有者は資本へアクセスしやすくなる。さらに不動産所有者は、5Gキャリアに屋上を貸すことで使用料を得ることができるだけでなく、高速回線への接続という意味で、テナントにより質の高いサービスを提供することもできる。

5G展開競争で問題になっている事柄

米国にとって、競争に遅れを取らず国際的な競争力を保つためにも5Gインフラの展開は非常に重要である。5Gは高速での接続、キャパシティの増加、ゼロ遅延をもたらすが、5Gにより期待されるのは、自動運転車や遠隔医療の拡大、製造や農業の効率化、サプライチェーン管理の改善まで、さまざまな事業サービスを可能にするイノベーションの推進である。

これらのイノベーションから生み出される利益すべてを考慮すると、5Gは2025年までに米国のGDPのうち、1兆5000億ドル(約170兆円)以上をもたらすと予測される。

またバイデン政権は、5Gテクノロジーとユニバーサルブロードバンドを、地方に暮らす人々に経済的な平等もたらす手段と考えている。政策声明によると、農村部では都市部と比較して信頼のおけるインターネットの利用が10分の1に限られているとのことである。

最近バイデン大統領が署名したインフラ投資法においては、大統領も国会も農村部におけるブロードバンドインフラへの投資を優先し、十分サービスが提供されていない地域でのインターネットへのアクセスを拡大し、デジタル上の分断を是正したい考えだ。このため、農村部の不動産所有者は5Gインフラの展開からより多くの利益を得ることができるだろう。

強力な5Gネットワークを米国内に確立するには時間がかかるだろう。5Gプロバイダーやワイヤレスキャリアと手を結ぶ不動産所有者は、5Gテクノロジーのサイバーセキュリティにまつわる考慮事項について、しっかり情報提供を受け、それを理解しなければならない(これらの考慮事項が、提携の足かせになると考える必要はない)。というのも不動産所有者は5Gインフラを自身の不動産に配備し、そこからのワイヤレスネットワークを入居者に提供することになるからである。

最近2,300人以上のリスク管理者および他の責任者を対象にAonが行った調査では、サイバーリスクは現在のそして将来予想される世界的リスクの第一位として位置付けられた。5Gが普及し接続性が高まることは確実である。つまり、サイバーセキュリティ業界は機械学習や人工知能を改善しそれを広く活用し防御を強化する必要があるのである。

また最近では、不動産業界におけるサイバーセキュリティ強化を促進するためのガイダンスやフレームワークを提供する Building Cyber Securityといった組織も立ち上げられている。

不動産所有者が効率よく屋上を収益化し5G競争に参画するには、政府や民間企業が5G敷設要件の審査をタイムリーに行うことも含め、引き続き迅速な5Gインフラの配備に向け協力して作業を進めていく必要がある。

これに加えて、州や地域レベルでも、5Gアンテナの敷設に関するゾーニングや認可プロセスを改善する作業をもっと進める必要がある。多くの州議会がすでに州民の利益になる5G戦略を策定するための法案を検討中であり、これにより、不動産所有者にも新たな機会が提供されることが見込まれる。

5Gの競争を促進するためは、より多くの政策や技術的な作業が必要だが、不動産所有者が利益を手にする機会は、目の前に手に取れる形で存在している。新型コロナウイルス感染症によって経済的打撃を受けたレストラン経営者やホテル業者が立ち直ろうとする中、屋上の収益化は、店を閉じるしか選択肢がなかった状態との違いを生み出すことになるだろう。

編集部注:本稿の執筆者James Trainor(ジェームズ・トレーナー)氏は、FBIのサイバー部門の元アシスタントディレクターで、Aonのシニアバイスプレジデント。Rick Varnell(リック・ヴァーネル)氏とMatt Davis(マット・デイビス)氏は、いずれも5G LLCの創設者であり、プリンシパル・パートナー。

画像クレジット:skaman306 / Getty Images

原文へ

(文:James Trainor、Rick Varnell、Matt Davis、翻訳:Dragonfly)

【コラム】米国のスマート道路への投資は好景気への道を開くだろう

米国の交通システムが直面している課題は数多く、年々悪化している。米国の道路への需要が高まるにつれて、安全性、効率性、持続可能性の問題も増大している。

歴史的な1兆ドル(約114兆円)規模のInfrastructure Investment and Jobs Act(インフラ投資・雇用法)は、数十年間で最大かつ広範囲に及ぶインフラパッケージの1つであり、この国の投資ニーズに対する巨額の頭金となって、すべての州で数千もの重要なプロジェクトの鍵を握ることになる。しかし、公的資金だけでは、特に5年間に配分される場合、人口や都市、そして道路を毎日走る車両の新たなニーズに対応するには不十分である。

例えば、老朽化し荒廃した高速道路、橋、道路の補修に1000億ドル(約11兆円)が割り当てられている。残念なことに、米国は長年にわたり道路の財源を不足させてきたため、公共道路の43%が劣悪あるいは並以下の状態に置かれており、その結果、道路補修の必要額として4350億ドル(約49兆円)の未処理分が生じている。道路の修理に特化した公的資金をもってしても、私たちは依然として必要とされるレベルに達していない。

交通インフラ産業は歴史的にリスク回避の傾向があり、公共交通機関の資金の利用可能性によって制限されてきた。しかし、今日に至るまで私たちすべてが依存してきている初期のテクノロジーネットワークの歴史的な例がいくつかあり、それらは国民経済に劇的なインパクトをもたらしている。これらのプロジェクトは、公共投資によって促進され、地元の公共事業機関による地域での実施を必要とし、大部分は民間組織によって提供され、維持されてきた。

初期の自動車を支えるために舗装道路が導入されたのは、100年と少し前のことである。州間高速道路網は、Dwight D. Eisenhower(ドワイト・D・アイゼンハワー)大統領が1956年のFederal Aid Highway Act(連邦補助高速道路法)に署名して以来「史上最大の公共事業」として知られている。毎日の移動、商業、文化の手段となっている。

この記事をコンピューターやタブレット、スマートフォンの画面で読むには、全国的な電力網やケーブル、携帯電話ネットワークの恩恵が欠かせない。私たちがより多くの生活をテクノロジーに依存し、信頼し、そして放棄するようになるにつれ、交通機関の研究者やスマートインフラのプロバイダーの多くが、安全性、効率性、持続可能性を向上させる創造的な新しい方法を取り入れている。

米国には国を横断する400万マイル(約644万キロメートル)余りの公道が存在する。スマート道路は、次世代の車両、人、都市のインフラを変革するための、わかりやすくアクセスしやすいソリューションである。古いテクノロジーを改良するために新しいテクノロジーを発明するという頻度は非常に高くなっている。道路をネットワーク化することは、テクノロジーを可能にするソリューションの1つである。

道路をデータと通信のプラットフォームに変えることで、オンライン小売業者がインターネットのトラフィックから得るのと同じレベルで、実店舗が車両向けのインサイトを捕捉するために使用できるような匿名性の高いデータが収集されるようになる。オンライン小売業者には、顧客の人口統計、ショッピングおよび購買習慣、市場動向、そしてトラフィックパターンについての情報がもたらされている。インターネットのインフラとサービスにより、トラフィックデータが自動的かつ受動的に収集されるのである。

これに対し、実店舗は基本的に顧客ベースについて何も把握していない。起業家は数百万ドル(数億円)を現地経済に投資するが、その前に何カ月もかけて場所を見つけて調整し、在庫を確保し、人員を配置する。こうした一連の作業を経て、1つの取引が成立する。道路から収集された匿名データは、事業主がオペレーションを改善し、従来の小売業者がオンライン小売業者との競争力を維持するのに役立つだろう。

このようなスマートインフラサービスを活用すれば、道路はその新しいケイパビリティからのキャッシュフローに依存することで、自己資金を得ることができる。携帯電話やインターネットのインフラ市場が概ね自立しているのと同様の構図である。これは、一部の公道において持続可能な財源と自己資金調達が実現可能になることを意味しており、都市は限られた予算を道路から他のコミュニティのニーズに振り向けることができる。

ブロードバンドアクセスのための650億ドル(約7兆4200億円)のインフラ計画は、農村地域や低所得世帯、部族コミュニティのためのインターネットサービスを改善することを目的としている。この計画には、電気自動車の充電ステーションに75億ドル(約8560億円)が割り当てられており、気候変動を抑え、石油への依存度を減らすために電気自動車の普及を加速させることを目指している。

スマート道路が、5GワイヤレスアクセスやワイヤレスEV充電など、当初からソフトウェアアップグレードが可能なように設計されたケイパビリティのメニューを提供するなら、わが国の道路網は進化するテクノロジーに歩調を合わせることができるだろう。道路はすでに農村地域に整備されているので、新たに基地局を建設する必要はない。ワイヤレスEV充電機能を道路に組み込むことで、ガソリンスタンドのように充電ステーションを設置する必要はなくなる。実際、EVの所有者やドライバーは、道路を離れて充電に接続しなくても済むようになる。

こうした道路を介して提供される商用サービスの利用料金、すなわちネットワーク事業者が支払う通信サービス、自動車所有者が支払うEV充電やナビゲーション、あるいはそれらを利用する事業者が支払うデータサービスなどの利用料金を評価することで、スマート道路はこれらの新たなケイパビリティから得られるキャッシュフローに基づいて、自らの費用を支払うことが可能になる。

スマート道路導入の主な課題は、公金ではリスクをとることはできないし、とるべきではないというマインドセットにパブリックオーナーが陥っていることである。歴史的に公的資金はリスク資本であり、そしてこれらのオポチュニティにおける最初の資金でもある。私たちはこのリスクフリーのマインドセットからパブリックオーナーを脱却させ、公共機関がインフラを通じて経済発展を可能にすることはできないし、そうすべきではないという考えに立ち向かう必要がある。

大規模な経済開発を可能にするインフラ整備のオポチュニティに公共投資を投入することにより、私たちは100年前に舗装道路を、60年前に州間道路を建設した。したがって、それはすでに検証されているアプローチであり、米国人が毎日使用している顕著な実証ポイントもいくつか存在している。これらは新しい方法ではない。私たちが何度も行ってきた古いやり方であり、社会の新たなニーズに応じてアップデートされる形でパッケージ化されているものだ。

もう1つの課題は、いかに長期にわたる公共事業を市場活動と比較するかである。公共機関が道路工事許可証を発行するのに18カ月かかるが、ソフトウェアとハードウェアの世代全体が通り過ぎるのを見ることはできても、1つのショベルも地面を打つことはない。公共事業の速度が遅いということは、私たちがはるかに先を見なければならないことを意味する。短期的な目標はプロジェクトが設計段階を終える前になくなってしまうため、焦点を合わせることができない。公共事業の範囲、規模、速度(またはその欠如)は、私たちが非常に長い計画対象期間を設定しなければならないことを意味する。

わが国の道路への投資は、繁栄する経済を成長させる鍵であり、国の将来にとって不可欠である。各都市は現在、都市化への対応、交通流量の合理化、汚染の削減、安全性の向上という重圧に直面している。

スマート道路のテクノロジーは、都市計画者や政府がこれらの課題に正面から対処することに貢献する。交通管理から歩行者や車両の安全性、環境モニタリングに至るまで、モノのインターネット(IoT)は道路をよりインテリジェントに、効率的に、そして適切に管理できるようにする。

インフラ投資・雇用法は、わが国のインフラの現状に取り組むための第一歩である。この投資がどのように使われるかが変化をもたらす。もしそれが単に近年のやり方であるというだけの理由で、老朽化したプロセスに一時しのぎの解決策を適用するために配布されるならば、そのお金は急速に使い果たされ、意味のある改善もないまますぐに忘れられてしまうだろう。

だが、この投資を革新的なインフラプロジェクトの頭金として使ったとしたらどうだろう。その場合私たちには、より強固な未来に向かって前進し、新しいテクノロジーを容易かつ迅速に統合できる、一貫性のある有意義なアップグレードの適切なケイデンスを構築するオポチュニティが用意されている。

編集部注:本稿の執筆者はTim Sylvester(ティム・シルベスター)氏は建設業界で20年の経験を持つ電気・コンピュータエンジニアで、Integrated Roadwaysの創設者兼CEO。

画像クレジット:RBV T / 500px / Getty Images

原文へ

(文:Tim Sylvester、翻訳:Dragonfly)

【コラム】米国は対中国競争でも「スプートニク・ショック」が起こせるだろうか?

TechCrunch Global Affairs Projectは、テクノロジー部門と世界政治のますます複雑になっている関係を検証する。

1957年10月4日、旧ソビエト連邦がカザフスタンの草原から世界初の人工衛星を宇宙に打ち上げ、宇宙時代の幕が開けた。ビーチボールほどの大きさの、小さなアルミニウムの球体であるスプートニク1号の打ち上げは、米国にとって変革の瞬間となった。それは、米ソの宇宙開発競争の引き金となり、新しい政府機関を生む推進力となり、連邦政府の研究開発費とSTEM(科学・技術・工学・数学)教育に向ける財政的支援を大幅に増やすきっかけとなった

スプートニクが刺激を与える力となった。米国の科学技術基盤の革新に必要だった、衝撃と勢いをもたらしたのだ。近年、政府高官や議員らは、新たな「スプートニク・モーメント」(米国が技術的に他国に追い抜かれる瞬間・衝撃)を求めている。彼らは、経済面と技術面で中国に対抗するにはどうすべきかを考えている。スプートニク・モーメントはまだ訪れていないが、ワシントンでは、米国が中国に遅れをとっている、あるいは遅れをとる危険性があるとの認識が広がっている。

米中間の競争は多くの点で新しいものだが、だからといって米国の対抗手段も斬新でなければならないというわけではない。米国のイノベーションの推進者としての比類なき役割を取り戻すために、米政府はスプートニク後と同じように奮起しなければならない。中国との競争において成功を収めるために、米国の優れた才能、制度、研究開発資源を動員するのだ。

まず、約60年前のことを振り返ることが重要だ。スプートニク打ち上げ後の数カ月の間に、米政府は2つの新しい機関を設立した。1958年7月、議会は国家航空宇宙法を可決し、NASA(米航空宇宙局)を創設するとともに、国の宇宙開発計画にシビリアンコントロール(文民統制)を敷いた。NASAの主な目的は、人類を月に着陸させることだった。そのために多くの資金が注ぎ込まれた。NASAの予算は1961年から1964年の間にほぼ500%増加し、ピーク時には連邦政府支出のほぼ4.5%を占めた。NASAは米国人を月に連れて行き、また、商業的に広く応用されることになった重要技術の開発に貢献した。

さらに連邦政府は、高等研究計画局(現在の国防高等研究計画局、DARPA)を設立した。将来、技術面でのサプライズを防ぐことが使命だった。そこでの研究開発がGPS、音声認識、そして最も重要なインターネットの基礎的要素など、米国の経済競争力にとって不可欠なさまざまな技術に寄与した。

スプートニクの打ち上げは、1958年の国防教育法(NDEA)成立の動機にもなった。NDEAは、STEM教育と外国語教育に連邦政府の財源を充当し、国内初の連邦学生ローン制度を確立した。NDEAは、教育の振興を国防のニーズと明確に結びつけた。教育を米国の国家安全保障に不可欠な要素だと認めたのだ。

スプートニクは、連邦政府の研究開発費の大幅増加に拍車をかけ、今日の強力なテック企業やスタートアップのコミュニティ形成に貢献した。1960年代までに、連邦政府は米国の研究開発費の70%近くを負担するようになった。これは世界の他の国々を合わせた額よりも多い。しかし、それ以降の数十年間、政府の研究開発投資は減少した。冷戦が終結し、民間企業の研究開発支出増加に伴い、連邦政府の研究開発費の対GDP比は1972年の約1.2%から2018年には約0.7%に低下した

政策立案者は、米国が中国に対して技術的、経済的、軍事的にどう対抗すべきかを審議する際、スプートニク・モーメントで学んだ教訓を心に留めるべきだ。

第一に、スプートニクは新しい制度の創設と、研究開発支出・教育支出の増加を促す政治的資本を提供したが、こうした取り組みの多くはすでに土台ができ上がっていた。NASAは、その前身である全米航空諮問委員会の仕事を引き継いだ。NDEAの条項の多くは、以前から準備が進められていた。スプートニクは衝撃をもたらし、急を要したが、仕事の大部分とその勢いは、すでに始まっていた。米政府は今、科学技術基盤への持続的な投資に注力すべきだ。そうした投資により、米国が将来どのような課題に直面したとしても揺るがない、イノベーションの強固な基盤が確保される。

第二に、連邦政府は、技術投資を導く明確な国家目標を設定し、優先事項に貢献するよう国民を動機づけるべきだ。ケネディ大統領による月面着陸の呼びかけは、あいまいさがなく、感動的だった。そして研究開発投資の方向性を示した。政策立案者は、重要性が高いテクノロジーセクターに対し、測定可能な指標をともなう具体的な目標を設定しなければならない。その上で、そうした目標が米国の国家安全保障と経済成長をどう支えるのかを説明する必要がある。

最後に、政府の研究開発投資は目覚しい技術進歩の創出に貢献したが、その支出を配分・監督するアプローチも同様に重要だった。Margaret O’Mara(マーガレット・オマラ)氏が著書「The Code:Silicon Valley and the Remaking of America(コード:シリコンバレーとアメリカの作り直し、邦訳未刊)」で説明しているように、連邦政府の資金は「間接的」かつ「競争的」に流れ、テックコミュニティに「未来の姿を定義する驚くべき自由」を与え「技術的可能性の境界を押し広げた」。米政府は、その投資により技術競争力を強化するよう、再び注意を払わなければならない。投資が、広範で非効率な産業政策だと思われるものに変質させてはならない。

「スプートニク・モーメント」という言葉が、政府の行動や国民の関与を促そうと、しばしば引用される。実際、スプートニク後に取られた対応は、米政府のアプローチを1つにまとめ、明確な目的の下に推進した場合、何が達成できるかを示した。だが、米国のイノベーションの基盤が、その時ほどまでに改善したことはほとんどない。米政府はスプートニク後、人材、インフラ、資源に投資して、科学技術基盤を再活性化させた。それが最終的に米国の技術的覇権を確立した。今日の新しい「スプートニクの精神」は、将来にわたり米国の技術競争力を高める原動力となり得る。事は一刻を争う。

編集部注:寄稿者Megan Lamberth(ミーガン・ランバース)氏はCenter for a New American Security(CNAS)のテクノロジー・ナショナルセキュリティプログラムのアソシエイトフェロー。CNASのレポート「Taking the Helm:A National Technology Strategy to Meet the China Challenge(舵を切る:中国の挑戦に対抗する国家技術戦略)」の共著者

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

原文へ

(文:Megan Lamberth、翻訳:Nariko Mizoguchi

メルクのコロナ飲み薬「モルヌピラビル」米FDAが緊急使用許可、抗ウイルス剤として2番目

Pfizer(ファイザー)の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)抗ウイルス剤は、米国ではすでにいくつかの競争相手がいる。AP通信の報道によれば、米食品医薬品局(FDA)はMerck(メルク)の経口治療薬「Molnupiravir(モルヌピラビル)」について、緊急使用許可を出したという。この治療薬は、理想的には発症からすぐに投与し、ウイルスの遺伝コードに「エラー」を挿入することで、SARS-CoV-2ウイルスの複製を抑制し、リスクの高い患者の軽度または中等度の症例が重症化するのを防ぐというもの。

しかし、この薬は、PfizerのPaxlovid(パクスロビド)のようには広く使用されないかもしれない。若い患者の骨や軟骨の発達に影響を与える可能性があるため、Merckの薬は18歳以上の大人にしか使用できないが、Pfizerの製品は12歳以上の患者に使用できる。また、薬が胎児に影響するリスクがあるため、妊婦や妊活中の服用は推奨されていない。FDAは、治療中も治療後も避妊具を使用し、(妊娠を試みる前に)女性は数日、男性は3カ月待つべきだとしている。

さらに、MolnupiravirにPaxlovidほどの効果は期待できないようだ。Pfizerのソリューションが入院や死亡を90%減少させたのに対し、Merckの飲み薬は30%しか減少させることができなかった。この薬は、特にPaxlovidが使用できない場合の第二の選択肢となるかもしれない。両社の製品は変異したスパイクタンパク質をターゲットにしたものではないため、同ウイルスのオミクロン変異株にも引き続き有効だと考えられる。

それでも、新型コロナウイルスによる入院や死亡を最小限に抑えるためには、これも有効な手段の1つとなるかもしれない。米国が1000万人の患者に対応できるだけの量を発注した場合、Pfizerの薬が最も入手しやすくなるが、Merckの薬は310万人に対応できるだけの量があるという。たとえ効果が限定的であっても、それによって何十万人もの人々の命がこの病気の最悪の事態から救われるかもしれない。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者Jon FingasはEngadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Merck

原文へ

(文:Jon Fingas、翻訳:Aya Nakazato)

米FDAがファイザーの新型コロナ経口薬を12歳以上に認可

米食品医薬品局(FDA)は、Pfizer(ファイザー)の抗ウイルス剤Paxlovid(パクスロビド)を緊急認可し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の軽度から中等度の症例を治療する最初の経口療法となった。この治療法は、重症化のおそれのある12歳以上のリスクの高い患者だ。FDAは数日以内に使用を認めているため、オミクロン株の襲来に対して有効かもしれない

Paxlovidは処方箋のみで入手可能で、新型コロナの症状に気づいてから5日以内に服用することになっている。Pfizerのテストによると、高リスクの患者でも入院や死亡を88%防ぐことができる。この治療薬は、ワクチン接種者と非接種者の両方に処方することが可能で、30錠を5日間かけて服用する。タンパク質阻害剤であるニルマトレルビルと、その阻害剤が体内で分解されないようにするリトナビルが含まれており、副作用として味覚障害、高血圧、下痢、筋肉痛などがある。

FDAの医薬評価調査センターのディレクターであるPatrizia Cavazzoni(パトリツィア・カヴァッツォーニ)博士は「この認可により、新たな変異種が登場したパンデミックの緊急事態において、新型コロナウイルスと戦う新しいツールを提供し、重症化のリスクの高い患者に抗ウイルス治療へのアクセス性を高めることができた」と述べている。

ニューヨーク・タイムズによると、これまで米国は1000万人分の薬を注文している。同社は、1週間以内に6万5000人の米国人をカバーするのに十分な錠剤を納入する予定だ。その後、2021年1月に15万個、2月に15万個と生産が拡大される予定となっている。この薬は唯一の抗ウイルス剤というわけではない。Merck(メルク)の対抗となる治療薬も間もなく承認される見込みで、Pfizerよりも容易に入手できるようになる可能性が高い。ただし同社の治療薬ははるかに効果が低く、入院や死亡を30%しか防ぐことができない(それでも、何も治療しないよりはましだ)。

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者のDevindra HardawarはEngadgetのシニアエディター。

画像クレジット:Pfizer

原文へ

(文:Devindra Hardawar、翻訳:Hiroshi Iwatani)

オミクロン株でCES出展者が参加を迷う中、主催は断固開催の意向

少々MWCのようになってきた。もちろん、2020年にバルセロナで開催が予定されていたMobile World Congress(モバイル・ワールド・コングレス、MWC)とは、これまでのところ少し異なる展開になっている。その理由は明らかだ。当時、パンデミックは事実上、未知のものだった。2年近く経った現在、我々は少なくとも、パンデミックをより把握しており、より効果的なツールを手に入れている。たとえ、すべての人がそうした方法を選択していないとしてもだ。

CES 2020は、世界的な封鎖という点では、ぎりぎりのところで間に合った。2021年の展示会では、主催者のCTA(全米民生技術協会)は(非常に賢明にも)そのリスクを回避し、完全にバーチャルで開催することを選択した。CES 2022は、多くの関係者にとって一種のハイブリッドイベントとして、控えめながら復活の道を歩んできた。

これまでのところ、バルセロナで見られたような根本的なドミノ倒しにはなっていない。しかし、オミクロン変異株の急速な広がりは、主催者にとって大きな脅威となっている。ホリデーシーズンの旅行関連の感染者急増(その数値的な影響はCESが終わるまでわからない)が非常にあり得ること、そしてラスベガスの一般的な予測不可能性(友人が最近述べたように、カジノを通らないと中心地のストリップのどこにも行けない)と相まって、なぜ最近多くの人が怖じ気づいたかは理解できる。また、イスラエルなどの国々の渡航制限も難しさに拍車をかけている。

CTAは声明の中で、計画どおり進めることを堅持している。CTAはTechCrunchに、これまでのところ、出展者のキャンセルはフロアスペースの7%に達しており、最新の変異株にもかかわらず、展示会に出展する企業は増え続けていると語った。

CES 2022は、強力な安全対策を取りながら米国時間1月5日から8日までラスベガスで開催されます。また、ラスベガスに行きたくない、あるいは行けない人々のために、デジタルでの参加も用意されています。私たちの使命は、業界を結集させ、実際の会場で参加できない方々にもCESの魅力をデジタルで体験していただくことにあります。

このほど42社の出展キャンセル(展示フロアの7%未満)がありましたが、12月17日以降、実際の会場への出展で新たに60社が加わりました。デジタルアクセスとラスベガスでのイベントの両方への登録はここ数日で数千件増え、力強い勢いを見せています。

CES 2022では世界の健康と安全、モビリティ、問題解決のための重要なイノベーションが展示されるため、計画通り進めます。さらに、何千もの中小企業がビジネスのためにCESに依存しています。出展者数は2200社以上に増え、12月21日に発表したように、両政党から選出された多くのトップがCESに参加します。

ワクチン接種の義務化、マスク着用、新型コロナ検査提供といったCESの包括的な健康対策、そして出席者数の抑制、社会的距離対策と合わせて、参加者、出展者は社会的距離を置きながらもラスベガスでの有意義で生産的なイベントに参加し、我々のデジタルアクセスで実りある体験ができると確信しています。

T-Mobile(Tモバイル)は米国時間12月21日、この展示会会場から撤退する最初の主要スポンサーとなった。同社は、資金面でのスポンサーとしての役割を果たし続けるが(おそらく契約無効化のようなことはまだ起きていない)、チームの大半を派遣しないことにし、CEOのMike Sievert(マイク・シーベルト)氏は対面でもバーチャルでも基調講演を行わない予定だ。奇妙なことに、WeezerはどうやらT-Mobileの祝福を受けながら、中心地ストリップで無料コンサートを行う

WeezerのボーカルであるRivers Cuomo(リヴァース・クオモ)氏のプレスリリースには「大好きなラスベガスに戻り、2021年の壮大なドローンレーシングリーグのラスベガス選手権レースにT-Mobileと一緒に参加できることにとても興奮しています」とある。

Meta(メタ)、Twitter(ツイッター)、Amazon(アマゾン)、Pinterest(ピンタレスト)は最初から手を引いている。しかし、いずれもビッグネームではあるものの、伝統的にこの展示会では目立つ存在ではない。

12月20日の週の初めには、The Verge、CNET、Engadget、PCMag、Gizmodo、Tom’s Guide、TechRadarと同様、TechCrunchもこの展示会にチームを派遣しないことを発表した。私たちとしては、簡単な決断ではなかった。この2年間でオンライン会議の世界へ移行するという著しい変化があったことは事実だが、我々にとってCESのような展示会にはまだ価値がある。

特に、Eureka Park(エウレカパーク)を歩き回り、そうでもしなければ騒音に満ちた受信トレイに埋もれてしまうような新しいスタートアップを直接見ることができるのは、大きな価値がある。筆者は、Venetian(旧Sands)エキスポホールのフロアで多くの企業を発見してきたので、前年の休みを経て再び同じことができることを非常に楽しみにしていた。

CES 2021は、世界(より具体的にはCTA)がすべてオンラインで開催されるハードウェア展示会に対応できるかどうか、大きな試金石となった。自身の体験からいうと、時期尚早だったと思う。バーチャルCESの体験はさほど良いものではなかった。特に、これらの展示会で最も難しく、重要な要素である「発見」に関してはそうだった。

2022年の展示会でどれだけのものが実際に展示されるかは別として、効果的なオンライン開催が必要だ。すでに多くのメディアが遠隔からの取材を計画している。また、このパンデミックが終息すると仮定した場合、今後どのように展示会をカバーするのか、多くの人が疑問に思っているはずだ。

CTAはこれまでのところ、こうした事態に揺るぎない態度を示している。CTAは、新しい健康プロトコルを導入しつつ、予定どおり展示会を開催すると繰り返している。ワクチン接種証明とマスク着用に加え、参加者には無料の迅速検査キットを配布し、参加者は会場に入る前の検査で陰性であることを証明する必要がある。

CESのソーシャルメディアアカウントは、ラスベガス・コンベンション・センター内部の画像や新しい講演者の発表に専念している。講演者には現在のところ、運輸長官のPete Buttigieg(ピート・ブティジェグ)氏や「NFT、WTF?!?!」というパネルでブロックチェーンについて話すことになっているParis Hilton(パリス・ヒルトン)氏などがいる。

Google(グーグル)、HTC、John Deere(ジョン・ディア)、TCL、BMWなどは「状況を注視し続けている」と語っている。NVIDIA(エヌビディア)を含む他の企業は、バーチャルの記者会見を行い、出展は行わないという、十分に警戒することを最初から選択した。

画像クレジット:Photo by ROBYN BECK/AFP / Getty Images

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

テック企業のロビー活動を行ってきた米国のInternet Associationが解散

シリコンバレーの大手企業を代弁する業界団体が解散することになった。テクノロジー業界がワシントンで規制監視の新時代に突入する中でのことだ。

Internet Association(インターネット協会)は、過去9年間、ワシントンでテック企業の利益のために戦ってきたロビー活動グループだ。Facebook(フェイスブック)、Amazon(アマゾン)、Google(グーグル)、Airbnb(エアビーアンドビー)、Uber(ウーバー)、Twitter(ツイッター)、eBay(イーベイ)、Spotify(スポティファイ)、Zillow(ジロウ)など、特に知名度の高い大企業から下位の企業まで、合わせた利益を発展させるために議員に働きかけてきた。この団体が店仕舞することになったと、Politico(ポリティコ)が最初に報じた

「インターネット協会が10年近く前に設立されて以来、私たちの業界は驚異的な成長と変化を遂げてきました。この進化にともない理事会は2021年末に組織を閉鎖するという困難な決定を下しました」と、同グループが発表した声明文には記されている。「【略】インターネット協会は、自由でオープンなインターネットを通じて、イノベーションを育み、経済成長を促進し、人々に力を与えるという使命において、大きな進歩を遂げてきました」。

近年、インターネット協会のメンバーの中には、ポリシーに関する問題で直接対立している企業もある。この不和は、インターネット協会で最大の企業同士でさえ、特徴的な題目に関しては拡大しているようだ。インターネット協会は、通信品位法(Communications Decency Act)の第230条を現状のまま維持することを支持しているが、インターネット協会のメンバーで現在のFacebookの親会社あたるMeta(メタ)は最近「第230条の保護を得る」ために、法律を変えることに前向きであると議員に語っている。

この団体はAI、ブロードバンド、コンテンツ・モデレーション、プライバシーなどの問題についてメンバー企業を代理しているものの、業界の最近の歴史の中では最も関連性が高く、結果的に重要なポリシーを巡る対話になる独占禁止法についての議論に対しては、明らかに避けていた。

議員たちがテック企業に新たな規制を課そうとしている独占禁止法についての問題は、テクノロジー業界の大手企業と、市場支配に関する懸念を指摘する中小企業の両方に影響を与えるような、他のほとんどのポリシーに関する懸念を凌駕し続けることだろう。

2014年にインターネット協会に加盟したYelp(イェルプ)は、かつて意見の相違により同団体を脱退した。「この団体は、何年も前に時価総額が5億ドル(約5700億円)を超える企業(GAFA)を追い出すことで、自らを救うことができたはずです」と、Yelpのシニア・パブリック・ポリシー・バイスプレジデントであるLuther Lowe(ルーサー・ロウ)氏はツイートした。「数年前に協会の上層部にこの提案をしたのですが、却下されたので脱退しました」。

Yelpは、独占禁止の問題について議会で証言し、以前はインターネット協会で仲間だったGoogleが、不当に自社製品に検索結果を優遇させる独占的企業であると主張している。

2020年、インターネット協会の会長を長年務めてきたMichael Beckerman(マイケル・ベッカーマン)氏は、退任してTikTok(ティックトック)のパブリックポリシー責任者に就任した。先月にはMicrosoft(マイクロソフト)とUberが同協会を脱退している。これは現在のテクノロジー業界におけるポリシーの問題に関しては、インターネット協会の有用性が薄れていることを示している。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

原文へ

(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

LINEが米韓で新組織「LINENext」設立、グローバルNFT市場サービス来春開始に向けて準備中

Zホールディングスの完全子会社で、メッセージングアプリを提供する日本の企業LINE株式会社(ライン、LINE Corporation)は、新組織「LINENext」を通じて、日本を除くグローバル市場で企業や個人がNFTを取引するためのマーケットプレイスを提供するため、2022年からNFTサービスを開始する。LINEは別途、日本市場に適合した「LINE BITMAX Wallet」を通じてNFT市場のベータ版を運用していると、LINEの広報担当者は述べている。

LINEは先週、グローバルなNFTエコシステムの拡大に注力するため、韓国と米国にLineNextを設立したことを発表した。

約100名の従業員を擁する韓国のLineNextでは、グローバルNFTプラットフォームの戦略・企画、米国のLineNextでは、NFTプラットフォーム事業の開発・運営を行っている。広報担当者によると、米国オフィスの従業員は55名だという。

LineNextはプラットフォームプロバイダーであるため「トランザクションの仲介手数料が主な収益源となり、将来的には他の追加収益源も予定しています」と広報担当者はTechCrunchに語った。

LineNextは現在、約20社のグローバルパートナーと提携の可能性について協議していると同担当者は述べている。

LineNextの新しいグローバルNFTプラットフォームは、世界中の企業やクリエイターが市場を構築し、一般ユーザーがNFTを取引するためのコミュニティやエコシステムを構築することをサポートする。

LINENextのCEOに就任したLINEアプリ製品(およびLINEフィンテック企業)のチーフプロダクトオフィサーYoungsu Ko(コ・ヨンス)氏は、こう述べている。「NFTは、デジタル分野を変革し、コンテンツ、ゲーム、ソーシャル、コマースなどのあらゆる分野でユーザーエクスペリエンスを革新する、一種の技術インフラです。LINEはイノベーターとして10年以上の実績があり、アジアで最も人気のあるテック企業の1つとなっています。当社はグローバルパートナーとともに、エキサイティングな新分野であるNFTにおいても同じことを目指していきます。韓国オフィスはNFTプラットフォームのグローバル戦略、米国オフィスはNFTのビジネス面に注力します」。

LINENextは、メッセンジャーやブロックチェーンサービスを開発・成長させてきたLINEの豊富な経験を活かし、企業、クリエイター、ユーザーのNFT体験を変革することを目指している。

LINEは、2018年にLINE Blockchain Labを設立して以来、暗号資産「LINK」を発行し、暗号資産取引所であるLINE BITMAXを日本で、BITFRONTをグローバルで運営している。また、ブロックチェーンサービス開発プラットフォームである「LINE Blockchain Developers」を運営し、日本ではLINE BITMAX Wallet上にNFTマーケットのベータ版を開設している。

すでに130万件以上のNFTが、ZEPETO(ゼペット)や電通などさまざまなブロックチェーンパートナーによって発行され、知的財産やコンテンツ、ゲームなどが紹介されているという。

画像クレジット:screenshot / LineNext

原文へ

(文:Kate Park、翻訳:Aya Nakazato)

【コラム】バイデン大統領は本当に技術独占を取り締まることができるだろうか?

ジョー・バイデン大統領は2021年7月、米国経済における「競争促進」の行政命令を出した。この命令の中で、大統領は特に大手テクノロジー企業に対して「現在、少数の有力なインターネットプラットフォームがその力を利用して、市場新規参入者を排除し、独占的利益を引き出し、自分たちの利益のために利用できる個人の秘密情報を収集している」と述べている。

米上院は11月、ハイテク企業の反競争的買収を規制する法案を提出した。米国ではこの20年間、重大な独占禁止法事案はなかったが、最近の勢いは、現政権が運用の透明化を望んでいることを示唆している。

これまでのところ、独占禁止法違反を適用するためには、ルールや市民の間に曖昧な領域があまりにも多かったが、アプローチへのいくつかの変更で、大衆の意見が、新しい政策、罰則、さらには起訴につながる可能性がある。

この1世紀の間に、独占禁止法はその効力を失い「消費者福祉」という曖昧な基準の下に、より大きな目標は放棄されてきた。1980年代に確立された独占禁止法適用の判断基準はすべて、疑惑の独占行為が消費者物価の上昇をもたらしたかどうかだけに還元されていた。

だが独占禁止法の運用を、こうした1つの経済的影響テストに帰すこの手法は、過度に単純化されていることが証明されている。独占禁止法に対するこの特異な消費者価格ベースのアプローチの擁護者たちは、現在の技術の価格低下が公正な競争が支配的であることの明白な証拠だと主張している。

技術独占の解体は容易ではないが、それは以下の3つのアプローチで実現できる。すなわち、反競争的なM&Aを阻止すること、政策を書き換えてデータを市場の力として位置付けること、そして市民が独占禁止政策に関心のある政治家を選ぶことができるようにこのトピックへの公共の関心を駆り立てることだ。

キラーM&A

非常に緩い金融政策が長期化し、株価が非常に高騰しているこの金融緩和の時代にあっては、将来の競争相手を高値で買い取ることが現在のビジネス戦略の一部となっている。

テクノロジーの世界には例がたくさんあるが、たとえばFacebook(フェイスブック)によるInstagram(インスタグラム)とWhatsApp(ワッツアップ)の買収は議論の余地のない例だ。過度の規制はイノベーションを殺すが、自由市場が公正で自由なままでいるためには規制が必要だ。

現行法では、9200万ドル(約104億4000万円)以上の取引は、ほとんど例外なく、審査のために米連邦取引委員会(FTC)と司法省(DOJ)に報告しなければならないと定められている。

バイデン命令の意図の1つが、M&Aに対する監視の強化であることを考えると、この先消費者は「競争を大幅に減少させる」取引を阻止するための法的措置を目にすることになるかもしれない。

提案された、特定の買収を阻止する法案は、これまでその濫用があったことを両陣営が認識している証拠だが、データの独占が反競争的だと広く考えられていない場合は特に、違反認定の基準は依然として高いままだ。FTCとDOJは、ビッグテックに対して独占禁止法を適用する能力を発揮できるようになる必要があるが、これは、今回の新しい法律でより適切に行うことができるだろう。

データ=お金=市場支配力

一部のテック大企業にとって、無料の製品を提供することは、その他の資産を蓄積するための秘密裏の戦略であることが判明している。特にその中には、無意識のうちに「無料」で使う顧客の個人情報が含まれていて、それらの資産は数十億ドル(数千億円)規模の莫大な利益をもたらしただけでなく、そうした資産の独占も行われている。検索エンジンマーケティングとソーシャルメディア広告はまさにこの方法で構築された。このようなデジタル資産は現在、他のすべての企業にマーケティング予算に対する税金として貸し出されている。これは市場支配力の明白な例である。

私たちはほとんどの産業で前例のない集中に出会っている。集中が高まっている産業の企業は、市場支配力をより容易に行使できるため、実際には投資を減らしてさえいるのだ。

しかし、少し天候が悪くなると、自分で規則を変える都合の良いときだけの友たちはチームをすぐに変えて、連邦準備制度がパンデミックの最中に市場を支えるために臆面もなく行った、複数の異常な市場介入を支持するだろう。

バイデンの大統領命令で歓迎されたのは、オンライン監視とユーザーのデータの蓄積に関する新しい規則を確立するようFTCに促したことだ。独占的なテクノロジーの巨人たちは、このゲームのルールをあまりにも長い間作り続けていて、騙されやすい議員たちの目を、笑えるような自己規制の誓いでくらましている。

データの大量収集と管理が市場支配力として適切に分類されるまで、正義の手段は消費者ではなくビッグテックの手に握られ続ける。この場合、新しい政策と法律は、国民の抗議の声が立法者を動かしたときのみ実現するだろう。

大衆意識の変化を

緩い独占禁止法の執行と緩い政策の影響を最も受けているのは、消費者と市民だ。個人情報が取り込まれたり、サービス料を払い過ぎることになったり、商品を選択できなかったりするという形で、独占は消費者の福祉を侵害する。しかし、消費者にできることはあるだろうか?

バイデンの大統領命令は、米国内の独占禁止法をめぐる世論の圧力の高まりを直接反映したものだ。同じことが新しい上院法案にも当てはまる。ますます民間企業たちは、選出された公務員が多くいる州裁判所で、独占に対して訴訟を起こすようになっている。

今はバカげているように聞こえるかもしれないが、独占禁止法は、政治家が挑戦しなければならない主要なトピックになる可能性がある。有意義な独占禁止政策改革は、政治団体によって選出された改革派によってもたらされる。そのため、独占禁止法の執行に対する意見に基づいて候補者を選出することは、現状を変えるために極めて重要である。

私たちは今、より強力な独占禁止法とプライバシー規制を必要としている。私たち市民のプライバシーと幸福が危機に瀕しているからだ。チャリティーのように、独占禁止法への取り組みは身近なところから始めなければならない(訳注「チャリティはまず身近なところから始めよ」という諺のもじり)。

関連記事:サードパーティーがユーザーデータを知らぬ間に収集する副次的監視の時代を終わらせよう

編集部注:著者のVijay Sundaram(ビジェイ・サンダラム)氏は、大手テクノロジー企業と競合しつつ、消費者のプライバシーをポリシーの最優先事項としているビジネスソフトウェア企業Zoho Corporation(ゾーホー・コーポレーション)の最高戦略責任者。

画像クレジット:Glowimages / Getty Images

原文へ

(文:Vijay Sundaram、翻訳:sako)

ベトナムの自動車メーカーVinFastが電動クロスオーバー2車種を皮切りに米国市場への進出を目指す

Vingroup(ビングループ)傘下のベトナムの自動車メーカーVinFast(ビンファスト)は、消費者に印象を残そうと2021年のLAオートショーに参加した数多くのニューカマーの1社であった。

同社はこのショーで全電動クロスオーバー2車種を披露した。そして自動車業界へ新規参入する多くの企業がそうであるように(VinFastの場合は米国への新規参入)、両車種ともまだ生産に入っていない。

2022年後半に米国で登場予定のこの車両の仕様について、VinFastは詳細をほとんど明らかにしていない。同ショーを訪れた人は、Typeform(タイプフォーム)を介して登録することで、このクルマをいち早く「体験」し、購入に関心があることを示すことができる。

「今すぐ人々に登録してもらいたいと思っています。そして【略】顧客がどこにいるのか、誰が興味を持っているのかを把握するために、データベースを収集し構築したいと考えています。その上で、当社が提供しようとしているプロダクトやサービスの進捗状況について、人々に継続的に最新情報を発信していく予定です」と、VinFast USのCEOを務めるVan Anh Nguyen(ヴァン・アン・グエン)氏は木曜日のTechCrunchとのインタビューで語った。

興味のある顧客は、2022年第1四半期に、デポジットを払って希望のクルマを8色のうちの1色で予約することができる(更新情報:グエン氏はデポジットは500ドル[約5万7000円]だと語っていた。広報担当者はその後、この数字は正しくなく、顧客が予約に対して支払う金額は決定していないと説明し、適切な時期が来たらすぐに発表するとしている)。

グエン氏によると、数カ月後に車が利用可能になった時点で、関心のある顧客は試乗してそのデポジットを購入に充てるかどうか判断できるようになるという。仕様や詳細の情報は乏しいものの、VinFastは米国市場への参入計画を急速に進めているようだ。

工場、本社、および60店舗

VinFastの米国での計画は、電動クロスオーバーの販売に留まらない。同社はロサンゼルスに米国本社を置くために2億ドル(約227億円)超を投資するという野心的な計画を発表した。また、2022年までに、60を超える販売拠点、多角的な展開のサービスセンター、いくつかのモバイルサービスサイトの開設を計画している、工場もリストに挙がっているが、2024年後半まで開設の予定はない。

VinFastにとっては、多額の資本とスタッフを必要とする迅速な準備段階だ。

グエン氏は、米国に滞在してまだ14カ月しか経たないが、VinFastのモデルを米国市場に投入するチームの編成に取り組んでいるという。しかし、その製造施設がどこにあるかについては明らかにすることを控えた。

また、VinFastはReuters(ロイター)に対し、同社は今後数年のうちに米国株式市場に上場する計画だと述べている。

韓国のHyundai(ヒョンデ、現代自動車)やKia(キア、起亜自動車)、日本のトヨタ、スバル、マツダなど、他のアジアの自動車メーカーが米国市場に進出している中、VinFastはベトナム企業として初めてこの試みに乗り出すことになる。BYD(ビーワイディー、比亜迪)のような中国企業は、米国市場への参入を試みたが失敗した。

VinFastはどのような企業

VinFastは、1993年にスタートしたベトナムの民間コングロマリットVingroupの一部である。Vingroupは、不動産、ホスピタリティから産業、テクノロジー、さらには教育まで、幅広い分野に事業を展開している。

その自動車部門であるVinFastは、2018年のパリモーターショーで、同社初の内燃機関搭載車を発表した。同社はその後すぐに、各種の電動スクーター、Lux SUV、そしてベトナム市場向けの自動車の販売を開始した。同社によると、1年も経たないうちに、同社の車両はベトナムで最も早く売れるクルマになったという。

そして2021年、同社はベトナムで全電動バスとさらなるスクーターの販売を開始し、先のLAオートショーでSUV2車種の覆いを取り去って、グローバル車両になると同社が述べているVinFast VFe35とVFe36を発表した。いろいろな意味で、VinFastはHyundaiグループと類似しているように見受けられる。他の主要事業の中で自動車事業が占める割合はとても小さい。

VingroupはVinAI(ビンAI)も所有している。VinFastがショーで公開した新型SUV2台の脇に置かれた小さなディスプレイによると、VinAIは独立した法人で、車載AIと思われるものに取り組んでいる。運転席でのユーザーの動きを追跡して、ユーザーが注意を払っているか、スマートフォンを見たり、眠気を催したりしていないかを判断するものだ。このシステムはまた、センサーとカメラを使って車外の歩行者やスクーターなどの障害物を特定し、衝突を回避することにも役立つ。

グローバル市場向け電動SUV2車種

どちらも電気自動車であるVinFast VFe35とVFe36は、ベトナムにあるVinFastの90%自動化された大規模製造施設で作られる予定だ。この2車種は自動車ブランドのPininfarina(ピニンファリーナ)と提携して設計された。Pininfarinaは、クラシックフェラーリや、200万ドル(約2億2600万円)の電気スポーツカーPininfarina Battista(バッティスタ)の設計で知られている。

VinFastによると、SUVは1回の充電で約300マイル(約483km)走行できるということだが、充電や容量の詳細は明らかにされていない。グエン氏は、各車種にはEcoとPlusの2つのバージョンがあると付け加えた。VFe35の航続距離は、Ecoモデルで約285マイル(約459km)、Plusモデルで約310マイル(約499km)。より大型のVFe36のEcoモデルは約310マイル、Plusは約420マイル(約676km)になると同氏は述べている。

LAオートショーのステージに登場した2台のSUVはいずれもプロトタイプである。スペックシートによると、VFe35とVFe36のプロトタイプは、402hp(約300kW)の出力と472lb-ft(約640Nm)のトルクを発揮し、さまざまなエアバッグ、バーチャルアシスタント、そして「VinFastアプリによるリモートコントロール」機能を備え、eコマースサービス、ビデオゲーム、車内オフィス、さらにはロケーションベースの行動ターゲティング広告と呼ばれるものを搭載しているようだ。

VinFastは複数のパートナーと緊密に連携しているとグエン氏は話す。バッテリーの供給元については明かさなかったが「非常に有名な会社」のものだという。

バッテリーパックはベトナムのVinFastの施設で作られる。「私たちはProLogium(プロロジウム)のようなバッテリーパートナーと密接に協働しており、他の数社とも同様に協力関係を築いています」と同氏は言い添えた。「当社は、バッテリー技術に関して非常に優れた経験豊富なパートナー各社を選定しています」。

ProLogiumは、台湾を拠点とするソリッドステートバッテリーのメーカーである。

VinFastによると、両車種には標準的な先進運転支援システム、フルカラーヘッドアップディスプレイ、15.5インチのタッチスクリーンが搭載され、指をスワイプするだけでお気に入りの写真を「Zenモード」で表示できるという。

LAオートショーでは、どちらのクルマのドアも開けることはできなかった。小型のVFe35は本物の内装のように見えたが、ステアリングホイールの前にデジタルクラスタはなく、一方VFe36は内装を備えていなかった。

VinFastは、米国では電気自動車のみの販売を計画している。自動車生産への4年間という急速な道のりは、自動車業界ではほとんど聞いたことがない。車両の配送は2022年末に開始されると同社は述べている。すべてがどうなるかを見るには、来年まで待たなければならない。

画像クレジット:Abigail Bassett

原文へ

(文:Abigail Bassett、翻訳:Dragonfly)

【TC Tokyo 2021レポート】酔っぱらいたくない新世代に届けたい、米国の酒販D2CブランドHausの「誰のまねもしなかった」起業ヒストリー

12月2日から3日にかけてオンラインで開催されたスタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo 2021」。2日目午後0時30分から1時00分には、D2Cブランドについてのセッションが行われた。ゲストは米国でネットを介して食前酒を販売するスタートアップ「Haus」の共同創業者兼CEOであるHelena Price Hambrecht(ヘレナ・プライス・ハンブレヒト)氏が登壇。硬直した米国酒販業界でどのように後発組として成功してきたかについて語ってくれた。モデレーターはライター / 翻訳家の大熊希美氏だ。

IT屋とワイン屋の夫婦から生まれた新しいサービスHaus

ハンブレヒト氏は、シリコンバレーでFacebook(現Meta)、Fitbit、Google、インスタグラム、Microsoft、Pinterest、Square、Twitterなどさまざまなブランドの立ち上げにPRという立場で関わってきた、いわば「IT屋」だ。

そこで新世代の消費者が、製品の原料を強く意識していること、製品の信ぴょう性、販売者の透明性を重視していることを知った。

なかでも、アルコール類への不満が多いことに気づいたハンブレヒト氏は「高カロリーで、酩酊性が強く、眠りが浅くなるうえ、二日酔いもひどい。合成原料やさまざまな添加物など、摂取を控えたいようなものを含んだ飲料しかなく、その他の選択肢がないことへの不満の声だった」という。

共同創業者は元夫のWoody Hambrecht(ウッディ・ハンブレヒト)氏。ワイン醸造農園主の三代目だ。

関連記事:酔っ払いたくないミレニアル世代は仕事の飲み会で何を飲む?

そのこともあり、アルコールにまつわる業界の態度と消費者のニーズに強い興味を持ったハンブレヒト氏は、さらにミレニアル世代やZ世代のニーズを調べ、そこでアルコール業界の真実を知ることとなる。

「米国だけでも280億ドル(約3兆1790億円)という巨大産業が硬直したまま革新的なことをしてこなかった。新しい世代は、自分たちの飲むアルコールに関して変化を求めていた」(ハンブレヒト氏)

そこで、欧州で何世紀も愛されてきた実績があり、米国内でも人気が出てきたアルコール度数が低く、たくさん飲んでも酩酊することの少ないアルコール飲料である食前酒を開発し、販売するためにHausを立ち上げたのだった。

型破りな解決策

Hausが販売する食前酒は、従来のリキュールと異なり、甘みや苦味が薄く、新鮮な天然の原料から造られる。ブドウを主原料にさまざまなハーブをブレンドした蒸留酒で、飲み口が優しいのが特徴的だ。

フレーバーは8種類あり、カンパリやアペロールといった、従来のリキュール類と異なり「グレープフルーツハラペーニョ」「レモンラベンダー」など、名前だけでどのようなフレーバーなのかをイメージしやすくなっている。

「ロックでも、ソーダ割りでも、低度数カクテルとしても飲むことができる。さらにはそのままでも洗練されたカクテルのような味わいのある飲みやすいお酒だ」とハンブレヒト氏は説明する。

販売方法は、今のところオンラインのみで、基本はサブスクリプション制。会員は、月1本、2本、6本のコースを選べ、本数によって割引を受けられる。フレーバーも自分で選択でき、一時停止も可能だ。会費、送料ともに無料。限定フレーバーやセールの案内も受け取れる。

起業するに当たり、障害となったのは「禁酒法時代から変わりのない酒販への厳しい規制と、フィジカルなものづくりに必要な費用の準備」だった。

酒類販売には厳しい規制があるため、ネットで注文があると「受注したウェブサイトでは、宅配業者を手配し、その宅配業者が注文品を買って配送する」という複雑な手を使うのが一般的であるという。

「製造業者、卸売業者、消費者が購入するための酒類販売店がある。酒類販売には、こうした重層的な制度を使うしかなかった」(ハンブレヒト氏)

しかし、Hausはオンラインで直販している「酒販業として、米国で唯一の」D2Cブランドだ。それが実現した理由を「ブドウを主原料とする低度数のアルコール飲料はネット通販が法的に可能だったから」と説明する。

オンライン直販を全米で開始するためにかなりの資金をかけたというが「史上初のD2C酒販業となれたし、目立った競合もいない」と、その成果を語る。

Hausの製品は自社製造のため、インフラ整備に莫大な費用がかかった。米国の酒造業界では、小企業が製造委託を行う仕組みがないからだ。

製造設備、包装設備、倉庫などを用意せねばならなかったが、酒販スタートアップへの出資を禁止しているファンドが多く、VCは非協力的。「シリコンバレーとファンドに知人が多かったものの、投資家のほとんどが手を出さなかった」と振り返る。

そこで取った方法が、少額でも多数の出資家を募ることだ。

10社のファンドと100人の個人投資家から450万ドル(約5億1000万円)を調達することに成功した。「面談に面談を重ね、理念に共感してくれる出資者を探した」と、ハンブレヒト氏。「初期のスタートアップは、資金調達先を絞るのが定石といわれているが、何事も固定概念に縛られてはいけない。創造的に、これまでにない解決策を探していけば、驚くような答えに巡り会えるものだ」。

「出資者を絞らなかったおかげで、その人の人格に悩まされるというよくある話とも無縁だったし、何より全員が応援してくれるようになった。資金調達の方法が増えれば監視の目はゆるくなり、起業や成長、イノベーションの機会が広がる。

消費者向けブランドの場合、出資者、つまり利害関係のある人が多いことは、顧客になる可能性のある人が増えることを意味している。クラウドファンディングならなおさらだ。大勢から出資を受ける方法にはメリットしかない」(ハンブレヒト氏)

手を抜かないものづくりのために、かさんでしまう初期費用を無事に調達し、生産性の高いインフラを完成させた。しかも、理念に共感し、応援してくれるたくさんのファンを生み出すことにも成功したのだ。

2019年6月にローンチしてからの販売ペースについて大熊氏から尋ねられたハンブレヒト氏は「起業からの2年間で数十万本が売れた」と回答。「業界人から無謀だと思われていたし、反感を買いやすい製品だと自分では考えていたので、これほど早く全米に波及するとは予想外だった」と振り返る。

成功の秘訣は、ハンブレヒト氏が新興企業のPRを経験しており、ブランド創出に詳しかったこと、製品自体が注目を集めやすくメディアが取り上げたこと、また「なぜその製品が必要なのか」を宣伝したこと。

それまで、酩酊性と二日酔いの強いアルコール飲料しか選べず、不満をいだいていたZ世代からミレニアル世代、さらにはベビーブーマー(WWII後のベビーブーム時代に生まれた世代)までもが顧客になっているという。

パンデミックの影響を最小限に抑えられた理由とは

コロナ禍の影響については「強かった」とハンブレヒト氏。「Hausは、人とのつながりで広がっていく製品。共有したいと思うような飲み物だ。しかし、人の交流が途絶え、口コミも止まってしまった。仲間と飲んでいたのが、突如として1人きりで飲むようになり、消費も鈍った」。

しかし、追い風になったこともあるという。

「酒類のネット購入が増加傾向にあった。これはHaus創業時に意識していたこと。それを最大限に活かし、オンライン宣伝を開始。これにより、かなりの成功を収めることができた」(ハンブレヒト氏)

なお、酒類卸売業界全体では停滞が見られたが、Hausは卸との関係が薄かったため、その影響を受けることがなかったという。口コミという強力なマーケティングの有効性がなくなったときに、すぐさま変化に対応するスピーディーさも悪環境を事態を好転させられた理由の1つだろう。

顧客の課題解決を優先し誠実さを示す

現在は、配送先を米国内に限定し、かつオンラインでの直販という形をとっているHausだが、卸売や、将来的には国外への販売も視野に入れているという。

「大手の傘下に入らなければ、全国的な流通網に乗せられず、独立業者は地元のレストランにしか商品を売れない。そこで、D2Cを足がかりに、全国に顧客網を広げた。人気や需要の高さをデータで視覚化できれば、卸売進出へ有利になる。

今は、飲食店や小売店、販売店から前代未聞とも思える数の引き合いがききている。卸売のテスト販売は、まだカリフォルニアでのみ行っているが、2022年には多くの市場に本格参入する予定だ」(ハンブレヒト氏)

Hausが米国で最初で唯一の酒販のD2Cとなったことで、米国の酒販に関係した法律が変わる可能性も出てきた。というのも、重層的な流通体制や前述のような配送仲介を通したネット通販では収益性が低いからだ。D2Cの収益性を目にし、規制緩和への声が高まる可能性がある。

「ネット通販では売れない、と硬直していたのは消費者ではなく販売側」とハンブレヒト氏。「しかし現実はそうではなかった。飲食店で店外用の酒類販売も認められるようになった。厳格な規制が緩み始めた。規制緩和への明るい材料がそろってきたと考えている」。

このように、前例のない事業を展開してきたハンブレヒト氏は「顧客の価値観を最優先させる魅力的なD2Cブランドを尊敬し、さまざまな企業のロードマップを参考にしてきたが、誰の真似もしていない」と言い切る。「その企業が起業した当時の環境に合っていたから成功しただけかもしれず、再現性があるとは限らない。1つの企業だけを手本にしてもいいことがない」。

最後に、これから起業する人へ向けて次のようなメッセージで締めくくった。

「資金調達の方法は1つではない。大手ファンドやVCがだめだったからとあきらめず、個人投資家やクラウドファンディングなどさまざまな方法を探して欲しい。挑戦し続けて欲しい。

D2Cブランドの創業は、以前より難しくなっている。だからプロダクトには十分な配慮が必要だ。粗悪な原料を使わない、ズルをしない、手を抜かない、他社の真似をしない。顧客を優先させ、顧客の持つ課題を解決するように努めて欲しい。その誠実さは、消費者に伝わり、さまざまな障害を克服する助けとなるに違いない」(ハンブレヒト氏)

TechCrunch Tokyo 2021は、12月31日までアーカイブ視聴が可能だ。現在、15%オフになるプロモーションコードを配布中だが、数量限定なのでお早めに。プロモーションコード、およびチケット購入ページはこちらのイベント特設ページからアクセス可能だ。

銃撃や爆破予告、暴力行為を警告するTikTok上の噂で米国各地で学校閉鎖・警戒

TikTok(ティックトック)をはじめとするソーシャルプラットフォーム上で、米国時間12月17日に米国各地の学校が暴力の脅威に直面していることを示唆する、不吉で具体性のない噂が拡散した。多くの学校がこの動きに対応して学校を閉鎖したが、多くの地域の警察機関と少なくとも1つの連邦法執行機関が、この脅威には裏づけがないと発表している。

米国土安全保障省(DHS)は、学校に対する脅威の可能性について報告を受けたことを認識しているが、「具体的で確かな脅威」は見つからなかったと述べている。しかし、同省は「地域社会が警戒を怠らないように」と呼びかけている。

TikTokは16日にこの噂を初めて取り上げ、同社は法執行機関と連絡を取り合っているが「そのような脅迫がTikTokを介して発生したり拡散した証拠は見つかっていない」と述べた。脅迫自体はTikTokに見当たらないのは事実だが、12月17日に暴力行為が行われる可能性があるという恐怖心を煽る投稿が多く見られ、それらの噂が全国的に急速に広まったと思われる。

関連するTikTokのハッシュタグには「I luv you guys pls stay safe on Dec 17(みんな愛してる、どうか12月17日には安全でいてね)」と書かれていた。コメント欄には、この動画の制作者が「(状況を知らず)混乱している人へ、12月17日に米国各地の学校で銃撃や爆破の脅迫があって、私の学校は2回も脅迫されました」と説明している。フォロワーからは、自分の学校で最近起こった爆破予告の話が続々と寄せられた。

TikTokは17日の朝にこの状況を再確認し、FBIやDHSと連携しても、噂の発端となるような信頼性の高い脅迫を突きとめることはできなかったと述べた。

米国各地の学区や警察は、この噂を受けて注意を促す一方で、具体的な脅威が表面化していないことを強調した。フロリダ州リー郡の保安官は、自らもTikTokの動画で、米国の多くの学校が頻繁に受けている爆破予告のような「偽の脅し」をやめるよう呼びかけた。

イリノイ州グレンビュー市の警察は16日、このようにツイートした。「この脅威がイリノイ州の学校に関連しているという信憑性のある情報はありません。グレンビュー警察は、毎日、すべての学校の敷地をパトロールしており、今後もそれを続けていきます。みなさまには、引き続き警戒していただき、不審な行動を報告していただくようお願いいたします」

噂の真偽は定かではないが、カリフォルニア州テキサス州ミネソタ州コネチカット州など、多くの州で17日に学校が閉鎖された。開校した学区では、用心のためにリュックサックを家に置いておくように指示したところもあった。

全米の地方自治体および連邦政府の法執行機関は、引き続き事態を監視している。

画像クレジット:AaronP/Bauer-Griffin/GC Images / Getty Images

原文へ

(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Aya Nakazato)

TikTokが動画でバズった料理をユーザーに届ける宅配レストランを全米展開、3月に約300店舗オープン

TikTok(ティックトック)は、アプリで見たバイラルな食べ物動画を実際に食事としてオーダーし味わえるようにする新サービスの開始を準備している。同ソーシャルアプリはVirtual Dining Conceptsと提携し、「TikTok Kitchen(ティックトック・キッチン)」ブランドのデリバリー専用レストランを2022年、米国各地で立ち上げる予定だとBloombergが最初に報じた。レストランのメニューはTikTokで最も人気のあるバイラルフードを参考にしており、ユーザーはそれらを自宅に届くよう注文できる。両社は、3月に約300店舗をオープンしてデリバリーを開始し、2022年末までに1000店舗以上の出店を予定しているという。

当初のメニューには、ベイクドフェタパスタ、スマッシュバーガー、コーンリブ、パスタチップスなど、TikTokでバイラルレシピとなった料理が含まれる。特にベイクドフェタパスタはこの1年TikTokで絶大な人気を博し、Google(グーグル)が2021年に最も検索された料理として報告している。今後、各店舗のメニューは四半期ごとに、人気の出始めた新しい料理を取り入れて変更される予定だという。なお、TikTokがベイクドフェタパスタのような人気メニューを常設メニューにするかどうかはまだ不明だ。

TikTokはTechCrunchに、クリエイターがメニューの中の料理に対してクレジットを受け取り、パートナーシップの中で目立つように紹介されることを確認した。

「TikTok Kitchenの売上は、メニューのきっかけとなったクリエイターを支援するとともに、ユーザーの創造性を刺激し、喜びをもたらすというTikTokのミッションに沿って、他のクリエイターがプラットフォーム上で自己表現することを奨励・支援するために使用されます」とTikTokは述べている。

しかし同社は、これはTikTokの料理をファンに届けるためのキャンペーンであり、TikTokがレストラン事業に進出するわけではないと説明している。つまり、同社はこれを長期的なビジネスというよりも、マーケティング活動の一環として捉えているようだ。TikTokは、この「キャンペーン」がどのくらいの期間行われるのか、また注文方法やメニューアイテムの選択・更新方法などの詳細については言及していない。

2018年に設立されたVirtual Dining Conceptsは、複数のデリバリー専用ゴーストレストランを運営しており、YouTubeセレブのMrBeast(自身のバーチャルレストラン事業MrBeast Burger」を運営)、Guy Fieri(ガイ・フィエリ)氏、Steve Harvey(スティーブ・ハーベイ)氏、Mariah Carey(マライア・キャリー)氏、ラッパーのTyga(タイガ)氏など、多くの著名人と提携している。また、同社はデジタルメディア企業Barstool Sportsとも提携している。Virtual Dining Conceptsは、10月にシリーズAで2000万ドル(約22億7000万円)の資金を調達し、この投資を、新しい技術の導入、企業インフラの強化、マーケティングやカスタマーサポートの追加に充てる予定だと述べていた。

TikTokは、食のトレンドを作り出すことで広く知られており、同アプリに投稿された多くのバイラルレシピがTwitter(ツイッター)、Instagram(インスタグラム)、Facebook(フェイスブック)などの他のSNSプラットフォームで再共有されている。今回の提携は、この人気を利用して、TikTokブランドと、アプリ上で料理コンテンツを提供しているクリエイターたちの認知度をさらに高めようとする動きだ。

画像クレジット:Virtual Dining Concepts

原文へ

(文:Aisha Malik、翻訳:Aya Nakazato)

米FTCが大手テックのアルゴリズムによる差別と商業的監視に対する規則を検討中

連邦取引委員会(FTC)が、ユーザーを侵害的に追跡したり他の者にそれをさせているデジタルプラットフォームを対象とする規則の検討に備えているようだ。「Trade Regulation Rule on Commercial Surveillance(商業的監視行為に対する規制規則)」は、まだ極めて初期的段階だが、FTCの新委員長Lina Khan(リナ・カーン)氏による最初の大手テクノロジー企業に対する大型規制になるかもしれない。

現在のところ、大統領府総務部の予算概要書に載っているだけだが、FTCが今後の規制の可能性について情報を伝えたことを意味している。リストによると、規則は「粗略なセキュリティ慣行を阻止し、プライバシーの濫用を制限し、アルゴリズムによる意思決定が不法な差別に結果しないようにする」とある。規則の一般公開された草案はまだないし、まだ構想段階の可能性もある。

FTCの広報担当者は「FTCには、その権能のすべてを駆使して有害な商業的監視行為と戦い、米国人のプライバシーを保護する用意がある」というコメントをくれたが、それ以上の話はない。

Brian Schatz(ブライアン・シャーツ)上院議員はこの文書への関心を示し、これに(尚早ながら)取り組んだ機関を褒め称えた。「カーン委員長とその機関が一歩を踏み出し、差別的なアルゴリズムを使っている企業を取り締まろうとしていることは喜ばしい。それは、私たちが絶対に取り組まなければならない課題だ」とシャーツ氏はいう。

本規則の策定はFTC基本法18条の「非公正または欺瞞的な行為や慣行の規制」に準じるものになるだろう。それは、FTCがいろいろな要件や禁忌を定めようとするときの、権限の拠り所となる条文だ。

規則は、ソーシャルメディア企業やインターネットプロバイダーといったあらゆるものの侵食から消費者を守ろうとするさまざまな試みの中でも、特に廃案になったBroadband Privacy Act(ブロードバンドプライバシー法)の系統になるのだろう。

もちろんFTCが規則を無から発明することは不可能であり、いくら規則を作っても、産業の新旧交替や現業界の変化によって、正しい理由で作られた規則が迂回されることも多い。

例えばヨーグルトのラベルに無脂肪とあるのに検査で脂肪が見つかったら、それは当然、虚偽の表示だ。しかし、ソーシャルメディア企業が例によって「あなたのデータはあなたに所有権があります」などといっても、それをダウンロードできなかったり、売ることも、プラットフォームから完全に削除することもできなかったら、それは虚偽の表示だろうか?FTCが規則とガイダンスを改訂して、そういう行為を含めないかぎり、虚偽にはならないだろう。

また「不法な差別」は、アルゴリズムに不正な構成のデータが供給されたことによって、宗教や人種や医療の状態などの保護を要する状況に基づいて、人びとの特定の集団が厚遇されたり非遇されたりする場合にも起きうる。現時点では、人を審査するアルゴリズムに公式の要件はほとんどないのに、データやそのソースは企業秘密であったり、公表や問い合わせから遮蔽されていることも少なくない。FTCの規則はこれを、任意ではなく要件にできるだろう。

そのような取り組みを議会や大統領府などが支えることもあり、カーン氏は、テクノロジー大手に介入する暗黙の権威をホワイトハウスから認められている。大統領府の法務アドバイザーに過ぎなかった彼女が急に国の行政機関のトップになったのも、このような規則制定に対する暗黙の支持があったからだ。

ただし現時点では、FTCのまばたきのようなサインにすぎないが、予算概要書に載っているため2022年に優先扱いになる可能性はある。中間選挙なので、現政権はその力を誇示しなければならない。ただしテクノロジー大手に対する攻撃は現存する数少ない超党派努力の1つであるため、かなりの数の政治プラットフォームがこの話題を取り上げるだろう。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

原文へ

(文:Devin Coldewey、翻訳:Hiroshi Iwatani)

米政府がドローンメーカーDJIなど中国企業8社を投資ブラックリストに追加

米国政府は、イスラム教徒の少数民族ウイグル族の監視に関与した疑いがあるとして、ドローンメーカーDJIを含む中国企業8社を、米国からの投資を禁じるブラックリストに追加する方針だとFinancial Timesが報じた。これらの企業は、米国時間12月16日に財務局の「中国軍産複合体企業」リストに追加されると報じられており、米国市民はいかなる投資も禁止されることになる。

DJIはすでに米商務省のエンティティリスト(禁輸リスト)に登録されており、米国の企業はライセンスがない限り、同社に部品を販売することができない。当時、米国政府は同社が「不正な遺伝子収集や分析、ハイテクを駆使した監視によって、中国国内での広範な人権侵害を可能にした」企業に含まれていると述べていた。しかし、DJIのドローンはHuawei(ファーウェイ)などの製品とは異なり、米国での販売は禁止されていない。

今回の動きは、新疆ウイグル自治区でウイグル族やその他の少数民族を弾圧している中国を制裁しようとするJoe Biden(ジョー・バイデン)米国大統領の取り組みの一環である。その他、新疆ウイグル自治区で事業を行うクラウドコンピューティング企業や顔認識企業などがリストに加えられる予定だ。

米国時間12月14日、米国の上下両院は、企業が強制労働を使用していないことを証明しない限り、新疆からの輸入を禁止する法案を可決した。休日休会前の上院での投票が予定されている。

Xiaomi(シャオミ、小米科技)は2021年1月に同じ投資禁止対象リストに追加された。しかし、Xiaomiはこの決定に対して、同社のオーナーたちはいずれも中国軍と関係がなく、米国からの投資がなければ「即時かつ回復不能な損害」につながるとして、争った。2021年5月、米国政府は禁止令の解除に同意した。

2020年、DJIは消費者向けドローン市場の77%という大規模なシェアを獲得した。この2カ月間で、同社は大型センサードローン「Mavic 3」と、ジンバルとLiDARフォーカスシステムを内蔵したフルフレームのシネマカメラ「Ronin 4D」という2つの主要製品を発表した。1年前、DJIは「エンティティリストに載ることを正当化するようなことは何もしていない」「米国の顧客は引き続きDJI製品を普通に購入、使用できる」と述べていた。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Steve Dent(スティーブ・デント)氏は、Engadgetのアソシエイトエディター。

画像クレジット:Matthew Burns / TechCrunch

原文へ

(文:Steve Dent、翻訳:Aya Nakazato)

中国のAI・顔認識大手SenseTimeが米国のブラックリスト入りでIPOを延期

中国で最も価値のあるAIソリューションプロバイダーの1つであるSenseTime(商湯科技、センスタイム)は、7億6700万ドル(約872億円)の株式上場を保留すると香港時間12月13日に発表した。

この発表は、香港証券取引所がSenseTimeのIPOにゴーサインを出してから3週間後のことだ。12月10日、米財務省は同社を「中国軍産複合体企業」のリストに加え、同社が「対象者の民族性を判断できる顔認識プログラムを開発し、特にウイグル族を識別することに重点を置いている」と述べた。

前政権時には国防総省と財務省が共同管轄し、財務省のみの管轄へと変更されたこのブラックリストは、米国の投資家がSenseTimeの有価証券を購入または売却することを禁止している。

米国政府の決定を受けて、SenseTimeはIPOを延期し、潜在的な投資家の「利益を守る」ために、新たな上場スケジュールを記載した補足目論見書を発行するとのこと。

SenseTimeは声明の中で、次にように述べた。「当社は、今回の指定およびそれに関連して行われた非難に強く反対します。これらの非難は根拠がなく、当社に対する根本的な誤解を反映しています。地政学的な緊張の渦中に巻き込まれたことを遺憾に思います」。

2019年、SenseTimeは、米国企業との取引を制限する「エンティティリスト」に登録された。

SenseTimeのビジネスの概要については、以前の記事でご覧いただける。

関連記事
ムスリム少数民族に対する人権侵犯に加担した8つの中国企業が米商務省の禁止リストに載る
中国のAI・顔認識大手SenseTimeが香港でのIPOを準備中

画像クレジット:Getty Images(Image has been modified)

原文へ

(文:Rita Liao、Catherine Shu、翻訳:Aya Nakazato)

米政府機関が禁止措置をすり抜け中国の監視技術を購入、Lorexは人権侵害に関与するメーカーDahuaの子会社だ

軍を含む少なくとも3つの米国連邦機関が、連邦政府での使用が禁止されている中国製の映像監視機器を購入した。

TechCrunchと映像監視ニュースサイトのIPVMが得た購入履歴情報によると、これらの各機関は、Dahua Technologyの完全子会社であるLorexが製造した映像監視機器の購入に数千ドル(数十万円)を費やしていた。Dahuaとは、中国政府のスパイ活動に役立つ技術であるとの懸念から、2019年国防費法により連邦政府への販売が禁止されている中国系企業の1つである。

関連記事:米、政府内でのHuaweiやZTEの機器使用を新国防法で禁止

またDahuaは、イスラム教徒のウイグル人が多く住む新疆ウイグル自治区の少数民族を弾圧する中国の行為に関連しているとして、2019年に米国政府の経済貿易制限リストに追加されている。米国政府によると、中国はウイグル人を監視するための監視装置の供給に、Dahuaが一部製造した技術を用いたとしている。バイデン政権は新疆での人権侵害を「ジェノサイド」と呼び、中国によるウイグル人の監視、弾圧、大量拘束を通した「人権侵害と虐待に関与している」と同社を非難している

関連記事:ムスリム少数民族に対する人権侵犯に加担した8つの中国企業が米商務省の禁止リストに載る

この禁止令が発効した後に、連邦機関が連邦政府の請負業者からLorexの機器を購入したという記録が残っている。

記録によると麻薬取締局(DEA)は2021年5月、ワシントンD.C.を拠点とする技術サプライヤー、I. S. Enterprisesを通じて監視システム用のLorex製ハードディスクを9台購入している。DEAの広報担当者であるKatherine Pfaff(キャサリン・パフ)氏は、この購入は米国共通役務庁(GSA)が運営する政府のショッピングポータル(通称GSAアドバンテージ)を通じて行われたと述べ、GSAに関するコメントを留保したが、Lorexの機器の使用を停止したかどうかについては言及を拒否している。

回答を求めたところ、GSAの広報担当者であるChristina Wilkes(クリスティーナ・ウィルクス)氏はメールで次のように答えている。「GSAは連邦調達規則(Federal Acquisition Regulation:FAR)に基づいて、GSAアドバンテージで販売されているベンダーや製品を審査する手段を複数保持しています。請負業者は対象となる技術を販売しているかどうかを明記することを求めるFARの条項および規定に準拠しなければなりません。遵守していないことが確認された製品は、GSAアドバンテージから削除されます」。

GSAは、禁止された製品が禁止令発効後も購入可能であった理由について明かさなかったが、市販の既製品が2019年の禁止規定に準拠していることを明確化する、新たな検証済み製品ポータルを立ち上げるなどして改善を進めているという。

2019年の禁止規定は、国防権限法(National Defense Authorization Act、NDAA)の第889条という特定の条項として署名されたもので、連邦政府機関がHuawei(ファーウェイ)、Hikvision(ハイクビジョン)、Dahuaなどの特定の中国企業およびLorexなどのその子会社が製造した電子機器を調達および購入することを違法としている。また、889条は連邦政府の請負業者が禁止された電子機器を連邦政府機関に販売することも禁止している。国防総省は、第889条に基づき、食料品や衣料品などのリスクの低い物品を購入するための一部の例外を認める免除措置を受けているが、電子機器や監視装置は認められていない。

また購買記録によると、国防総省の財務管理と軍人への支払いを担当する、米国防総省国防予算経理局(Defense Finance and Accounting Service、DFAS)が2021年7月、ニューヨークのFocus Cameraという店を通じてLorex製のビデオ監視カメラを購入していた。

DFASの広報担当者であるSteve Lawson(スティーブ・ローソン)氏は、eメールで次のように述べている。「2021年7月、DFASの一拠点において建物内の孤立したエリアを監視するためのセキュリティカメラの必要性を確認しました。2019年ジョン・マケイン国防権限法(NDAA)の889条(a)(1)(A)と、特定の通信や映像監視サービスおよび機器に関連する制限を認識していたため、GSA契約を利用して調査を行いました。また、購入した製品や部品がFY19 NDAAで制限されていないことを証明する情報を提供するようサプライヤーに要求しています。今回のご連絡を受け、慎重を期してさらなる分析が行われるまでカメラとコントローラーを無効化いたしました。ご指摘をいただきありがとうございました」。

またこの記録によると、陸軍省が2019年から2021年にかけて、I.S.Enterprises、Focus Camera、そしてカリフォルニア州グレンデールを拠点とするJLogisticsという3つのベンダーからLorexの映像監視カメラと録画機器を購入している。

陸軍はメールによる声明で、これに関する責任は機器を提供した請負業者にあるとほのめかしている。

陸軍報道官のBrandon Kelley(ブランドン・ケリー)中佐によると「2020年8月13日、国防総省は2019年国防権限法889条およびPublic Law 115-232の禁止事項を実施しました。連邦契約でプロポーザルを行う企業は、Public Law 115-232で要求されるものを含む連邦調達規則および国防省の補足条項の遵守をSystem for Award Managementのウェブサイトで表明する必要があります。米国コードのタイトル18、または虚偽請求取締法に基づく民事責任は、企業が虚偽の表示をした場合に適用されます」とのことだ。

下院軍事委員会の民主党広報担当者であるMonica Matoush(モニカ・マトウシュ)氏は声明の中で、委員会は「国防総省がこれらの報告を調査し、立証された場合には被害を軽減し、将来の問題を防ぐために適切な行動をとることを期待する」と伝えている。

また、購入記録によると、禁止令が発効した後も他の連邦政府や軍の機関がLorexの機器を購入したとされている。TechCrunchはこれらの機関に問い合わせてみたが、返答してくれた機関の広報担当者は購入記録がいつ提供されたかについてすぐには確認できず、コメントも得られなかった。ある軍事機関は、回答には「数週間」かかると述べている。

上院情報委員会の委員長であるMark Warner(マーク・ワーナー)上院議員(D-VA)は、TechCrunchに対して次のように話している。「今回のケースの詳細は聞いていませんが、政府の省庁が購入する商用機器の出所をもっと正確に理解する必要があり、こうした購入の意思決定をする人がリスクを認識しているということを確認する必要があると考えています。議会が2019年の法案にこれらの条項を盛り込んだのはこのためなのです。簡単に言えば、安全保障上のリスクがある企業や、中国のウイグル人などの少数民族に対する弾圧キャンペーンを助長するなど、人権侵害に積極的に関与していると判断された企業を、連邦政府の購買により支援することは絶対にあってはなりません。この主張が事実であれば、このようなことが二度と起こらないようにしなければなりません」。

I.S.Enterprisesの共同設立者であるEddie Migues(エディ・ミゲス)氏に今回の購入について尋ねたところ、同社はこの問題を調査中であると回答。Focus CameraとJLogisticsはコメントを求めても応じてくれなかった。

禁止された機器を政府に提供した請負業者は契約を失う可能性もあるが、この禁止令が発効する前、連邦政府の請負業者には遵守するための準備期間がほとんど与えられなかったと業界団体は主張している。

2020年、米国情報技術工業協議会は「このような広範囲にわたる要求事項の規則の策定に時間がかかったため、請負業者は法の方針を一貫して満たすことができない可能性がある」と伝えている

コメントを求めたところ、Lorexの広報担当者はTechCrunchに次のように回答してくれた。「Lorexの製品は、一般消費者および企業向けに設計されており、NDAAの対象となる米国連邦政府機関、連邦政府出資のプロジェクトおよび請負業者向けではありません。LorexはNDAAの対象となるいかなる個人や組織にも直接販売しておらず、購入者にはこれらの規制を熟知し、遵守することを推奨しています」。

関連記事:本記事はビデオ監視ニュースサイトIPVMとの提携によるものとなる。

画像クレジット:R. Tsubin / Getty Images

原文へ

(文:Zack Whittaker、翻訳:Dragonfly)

【コラム】米国特許商標局はイノベーションを推進するために今すぐ行動すべきだ

近年、発明を促進すべき米国の特許システムの乱用がはびこりイノベーションを阻止している。即刻刷新が必要であり、そこにはあらゆる規模のイノベーターと起業家のためにシステムが働くように変える「今すぐ」実行可能な決定的修正方法がある。

バイデン政権が米国特許商標庁(USPTO)長官に指名したKathi Vidal(カシー・ビダル)氏は最近、上院司法委員会で指名承認公聴会を行った。両党の上院議員(民主党のバーモント州選出Patrick Leathy[パトリック・リーヒ]氏と共和党ノースカロライナ州選出Thom Tillis[トム・ティリス]氏)がともにビダル氏に質問したのがNHK-Fintivルールに関連する問題だった。これは米国特許商標庁の前長官が強要したルールで、議会で承認された超党派法案と真っ向から対立する。NHK-Fintivとは、特許商標庁における専門家による透明な侵害請求レビュープロセスの利用を制限し、イノベーターが費用のかかる訴訟や和解に関与することを強要するものだ。

短時間の公聴会の中でこの質問が際だっていたことは、USPTOおよび米国にとってこの問題がいかに重要であるかを示している。就任が承認されれば、次期長官はほぼ間違いなくNHK-Fintivのさまざまな問題に取り組まなくてはならない。しかし、特許商標庁は待つべきではない。米国のイノベーターたちを守るために今すぐ行動を起こすことができるのだから。

10年以上前、米国発明法によって米国特許商標局における当事者系レビュー(IPR)プロセスが生まれた。IPRは、特許侵害申請が偏見のない専門家審査員による透明な方法で解決されることを可能にするもので、企業はしばしば根拠のない訴訟や和解に巨額の費用と時間を割く必要がなくなる。このレビューが極めて重要なのは、誰もが特許侵害申請に善意で携わっているわけではないからだ。近年、特許訴訟の 60%近くに、特許不実施主体(NPEs)、いわゆる「特許ゴロ」グループが関わっている。

特許ゴロはダミー会社(その多くをヘッジファンドなどの訴訟資金提供者が支援している)で、使われけていない広範囲の特許を買い取り、米国の真っ当なイノベーターたちに対する武器として使用する。特許ゴロには、購入した特許を使って価値ある物を作る意志が一切ない。自分たちの出資者のために、価値ある商品を作っている企業から判決と和解金をゆすり取るためだけに存在している連中だ。

我々Intelは、相当数の特許ゴロに直面している。しかしこれは大メーカーだけの問題ではない。ゴロたちは数千通もの同一の要求書を小さな会社に送りつけることを、まるでネットビジネスを運用するように日々行っている。彼らは、多くの小企業が高額な費用のかかる訴訟に関わることを避けて和解金やライセンス費用を支払うことを当てにしている。さらに、時折専門知識のない陪審員が都合の良い判決を下して大当たりクジを引くことも期待している。

特許ゴロ訴訟は米国企業に深刻な影響を与えている。標的にされた企業は、年間総額290億ドル(約3兆2931億円)の現金支出を強いられ、和解金の平均は650万ドル(約7億4000万円)に及んでいる。これは本来であればビジネスを成長させ、新たな労働力を雇い、研究開発に使われるべきだったものであり、費用と時間のかかる裁判に関われる会社は多くない。IPRプロセスはこの種の搾取行為に対する効果的な保護措置であった。

不幸なことに、米国特許商標局前長官がNHK-Fintivルールを強制した結果、状況は特許システムを乱用する者たちに有利な方向へと逆戻りしてしまった。NHK-Fintivの下では、係争中の訴訟がある場合、当事者系レビュー(IPR)は拒否され、侵害申請の内容すら吟味されない。これは、IPRによって無効な特許や侵害申請に高価な訴訟を減らすことを目的とした米国発明法を無視するものだ。さらに、ビダル氏の公聴会でリーヒ議員は、最近の分析によると、USPTOがこれらの「自由裁量による拒否」を発行する際に基づいていた公判期日の90%以上が不正確だったことを指摘した。

議会が意図したIPRプロセスを復活させるために、NHK-Fintivは破棄されるべきだ。これはビダル氏の承認プロセスが進行する中で今後も重要事項として扱われるべきだが、商務省と特許商標庁には、米国のイノベーターたちを守るために「今すぐ」行動を起こす権限がある。

彼らはこれ以上待つべきではない。特許ゴロが米国のイノベーターを食い物にする時期は1日たりとも延びてはならない。

編集部注:本稿の執筆者Steven R. Rogers(スティーブン・R・ロジャーズ)氏は、
Intel Corporation(インテル・コーポレーション)の執行副社長兼法務顧問。上級幹部チームに属し、同社の法務、政府および貿易グループを担当している。

画像クレジット:Supawat Kaydeesud / EyeEm / Getty Images

原文へ

(文:Steven R. Rogers、翻訳:Nob Takahashi / facebook

MetaのVRマルチプレイヤーワールド「Horizon Worlds」が米国・カナダで18歳以上向けに一般配信開始

かつてFacebook(フェイスブック)と呼ばれた企業が、我々をメタバースへと導くという同社の目標に向けて一歩を踏み出した。Second Life(セカンドライフ)またはMinecraft(マインクラフト)のMeta(メタ)VRアプリ版のようなものであるHorizon Worlds(ホライズン・ワールド)が、招待制ベータから拡大し、米国とカナダの18歳以上のすべてのユーザーに開放された。これは、2019年に最初に発表された同アプリにとって大きなマイルストーンだ。

関連記事:FacebookのHorizonは巨大なVRマルチプレイヤーワールド

この無料アプリは、ソーシャル要素のある仮想世界を構築するプレイグラウンドだ。アプリに入ると(初めての場合は短いチュートリアルの後)、プレイ(ゲーム)、アテンド(イベント)、ハングアウトの3つの選択肢が表示される。Meta自身が作ったエクスペリエンスに加えて、誰でも作れるコミュニティ生成スペースを探索することもできる。2021年10月に同社は、これらのVR体験を構築するクリエイターに1000万ドル(約11億3500万円)の資金提供を発表し、ユーザーが新しいゲームやハングアウトを作るインセンティブを与えた。

画像クレジット:Meta

これらの仮想空間に入る前に、同プラットフォームは、あなたが交流する相手は誰もが実在の人物であることを忘れないようにしてください、と通知する。

左手首を見てアクセスするプライマリーメニューには、セーフティボタンがあり、これを押すとすぐに「セーフゾーン」と呼ばれるプライベートルームに移動し、そこで休憩したり、ユーザーをブロックしたり、ミュートしたり、問題人物を報告することなどができる。

ユーザーが最初に遭遇するであろうハングアウト空間のひとつが、Metaが作ったPlaza(プラザ)というスペースだ。我々の足のないアバターは、知らない人と一緒に紙飛行機を投げたり、コミュニティのモデレーターと話したりした。モデレーターは、初めての人とおしゃべりしたり、操作方法を説明したりしてくれる(直感的に操作はできるが、慣れるまでには数分かかる)。近未来的な風景を眺めながら、周りの人たちがアバターの服装についてメタバース的な世間話をしているのを聞くのは、奇妙で楽しい体験だった。

しかし、ユーザー生成スペースでは、何か問題が起きたときに介入できる人間のモデレーターが常に存在するわけではない。Horizon WorldsのすべてのスペースにMetaの担当者がいることを期待するのは現実的ではないし、もし実際にいたら少し不気味に感じるかもしれない。だがメタバースは、人々のオンラインでの安全を守るための新たな課題を引き起こすことになりそうだ。

画像クレジット:Meta

Metaは、Facebookからヘイトスピーチや暴力的な画像を削除するのに苦労しており、同社のアプリであるInstagram(インスタグラム)が、10代の若者にとって精神衛生上危険であることを示す内部文書が流出した影響で動揺している。さらに米国時間12月8日には、Instagramの責任者であるAdam Mosseri(アダム・モセリ)氏が、子どもと10代の若者のオンラインの安全性について議会で証言したばかりだ。しかし、メタバースの世界では、より没入感のあるオーディオビジュアル体験ができるため、さらなる課題がある。Clubhouse(クラブハウス)はライブオーディオルームのモデレートに苦労しており、Twitter(ツイッター)でも最近はSpaces上の有害なコンテンツが問題になっている。Twitchストリーマーも「ヘイトレイド」と呼ばれる荒らし行為に悩まされている。

ユーザーエクスペリエンスの面では、Horizon Worldsは、Metaの没入型イベントプラットフォームであるHorizon Venuesよりも大幅にステップアップしている(Worldsがベータ版からグローバルにアクセスできるようになれば、Venuesは廃止されるかもしれない)。

現在、Venuesを使用すると、映画館の廊下のようなブロック状の入口エリアにドロップされる。いくつかの部屋が用意されていて、ピクセル化されたBillie Eilis(ビリー・アイリッシュ)の録画コンサートをループで見られるなどの機能がある。Worldsはすでに、Venuesよりも魅力的で期待できそうに感じる。しかし、これから何百万人ものユーザーがHorizon Worldsに参加していくにつれ、Metaは、ソーシャルプラットフォームを安全に維持する能力があることを証明する必要がある。

Horizon Worldsを実行するには、Quest 2デバイスに無料アプリをダウンロードする必要がある。2022年1月13日以降、Quest 1ではサポートされなくなる。

画像クレジット:Meta

原文へ

(文:Amanda Silberling、翻訳:Aya Nakazato)

フェイスブックがクリエイターのプロフィールで新しい「プロフェッショナル」モードを試験導入

Meta(メタ、旧Facebook)は米国時間12月8日、ユーザープロフィールに新たに「プロフェッショナル」モードを導入する。これは、同ソーシャルネットワーク上でフォロワーを増やし収益化を図りたいと考えているクリエイターが利用するためのものだ。この新モードは、まず米国の一部クリエイターに提供され、これまでFacebook(フェイスブック)ページでのみ提供されていた収益化の機会やインサイトをクリエイターに提供する。

その中には、新しいボーナスプログラム「Reels Play」への参加も含まれており、短編動画コンテンツの再生回数に応じて、クリエイターによっては毎月最大3万5000ドル(約400万円)まで稼ぐことができるという。ただし、このプログラムへの参加は当面の間、招待制となっている。つまり、どのクリエイターがボーナスを得る資格があるかは、Metaが決定するというわけだ。

Metaは、今後利用できる他の収益化オプションについては明らかにしなかったが、ページオーナーが利用できるものと同様に、プロレベルのインサイトをこれらのクリエイターにも提供すると明らかにした。これには、投稿、オーディエンス、プロフィールに関するインサイトへのアクセスも含まれる。例えばクリエイターは、自分の投稿のシェア、リアクション、コメントの総数を確認したり、フォロワー数の推移を確認できるようになる。これにより、クリエイターは、自分が投稿するコンテンツや、そのコンテンツがオーディエンスにどのように響くかについて、より良い情報に基づいた判断を下すことができるようになる。

画像クレジット:Meta

多くのクリエイターは、ファンやフォロワーを獲得するために、すでにFacebookページではなくFacebookプロフィールを使用しているが、Metaは、この新しいエクスペリエンスにオプトインするクリエイターは、同SNS上でより世間に知られる有名人のような立場になると警告している。つまり、誰もがそのユーザーをフォローし、フィードに投稿された公開コンテンツを見られるということだが、非公開プロフィールの場合と同様に、投稿を公開または友達限定にすることはできる。

一方、現在Facebookページを利用しているクリエイターは、代わりに新しいFacebookページ体験にオプトインされる。このダッシュボードは、管理者がページのパフォーマンスを確認したり、専門的なツールやインサイトにアクセスするための中心的な場所となる。また同社は、Facebookページの2ステップコンポーザーをテストしている。これにより、クリエイターは投稿をスケジュールしたり、グループにクロスポストができる。

今回の変更は、Metaがクリエイターのユーザーベースに重点的に投資している時期に行われた。Metaは、クリエイターサブスクリプションや「スター」と呼ばれる投げ銭機能などから得られる新たな収益ストリームに期待している。同社は12月7日、Apple(アップル)とGoogle(グーグル)に手数料を支払う必要のない新しいウェブサイトを通じて、Facebookスターをアプリストアを介さず利用できるようにしたばかりだ。TikTik(ティックトック)やYouTube、Twitter(ツイッター)、Snapchat(スナップチャット)などのソーシャルアプリとの競争が激化する中、同社は以前、Reelsボーナスなど10億ドル(約1140億円)の報酬でクリエイターを誘致する計画であると述べていた。

Metaによると、新しいプロフェッショナルモードは、今のところ米国の一部クリエイターを対象にテスト中だが、今後EMEA地域(欧州、中東およびアフリカ)を含め、より広範囲に展開していく予定だという。

画像クレジット:TechCrunch

原文へ

(文:Sarah Perez、翻訳:Aya Nakazato)