Dell、VMware統合など抜本的改革を検討中と確認――SECに公開文書で報告

今朝(米国時間2/2)、Dellは証券取引委員会(SEC)への提出書類中で抜本的な組織再編を真剣に検討しているとした報道について、事実だと確認した。この噂はわれわれも報じたとおり、先週浮上したた。Dellは2015年にEMCを670億ドルで買収した際に生じた巨額の負債を抱えており、この問題を解決する方策を検討するために取締役会の開催が予定されているという。

SECへの提出書類はこれらの情報を確認するもので、事実3つのオプションが検討されていることを明らかにしている。1つ目はDellが再上場するというものだ。Dellが最初に上場されたのは1988年だったが、ファウンダーのMichael Dellは2013年に240億ドルをかけてDellを非公開企業とした

2番目と3番目のオプションは「VMwareとの経営統合」と「何もしない」だ。新しい税制により、460億ドルの負債の利払いの損金算入が一部できなくなるため、Dellの負担は今後さらに増えるので3番目のオプションはありそうもない。

提出書類によれば、同社はこの件を社内のみで内密に検討する予定だったが、リークが続き、かつVMWareの82%の株主として受託者責任を問われる可能性が生じたためSECへの報告を余儀なくされたということだ。

提出書類には「われわれは通常、一定の結論を得るまでこの種の検討を内密にしてきたが、Dell TechnologiesがVMware株式の82%を所有していることに鑑み、合衆国証券取引委員会に対し公開の文書で〔本件を〕報告する必要が生じた」と書かれている。

VMwareもSECへの書類が公開された後、プレスリリースを出す必要に迫られた。これは組織再編が検討されているという情報で株主、顧客の間に広がった懸念を打ち消そうとするのが狙いのようだ。

DellはVMWareの大半の株式を所有しているものの、VMWareは独自のCEOと取締役会を持つ独立企業として運営されている。またDellとは別個の企業として上場され、株式が取引されている。

SECへの提出書類とVMwareのプレスリリースで、Dellは組織再編に関してまだ何ら方針が¥を決定していないことが明らかになった。いずれにせよ、先週は噂にすぎなかったものが事実であったことが確認されたわけだ。

SECへの提出書類の全文は下にエンベッドしてある。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

富士フィルムがXeroxを傘下に――人員削減は1万人規模

今週、日本の富士フィルムはXerox株式の過半数を取得することを発表した。このニュースは、長年アメリカのテクノロジーを代表してきた企業であり、写真複写機の代名詞にもなってきたXeroxがオフィスから紙が消えつつあることにより複写機でもプリンターでも苦戦を余儀なくされていることをあらためて印象づけた。今週、両社の取締役会は富士フィルムがXerox株式の50.1%を取得することを承認した。

富士フィルムとXeroxの提携がさまざまなプロダクトのブランド名に与えた影響は非常に複雑だが、ビジネスとしてみた場合、背景はだいたいこういうことだ。富士フィルムとXeroxは1962年に富士ゼロックスを合弁で設立した。この共同事業は主として日本・アジ太平洋地区で行われ、Xeroxはアメリカ、ヨーロッパででの事業に専念していた。現在の持ち分比率は富士フィルムが75、Xeroxが25だ。

今回の契約で、既存の富士ゼロックスはまずアメリカ Xeroxの子会社となる。新会社は―ここから面倒なことになるが― Fuji Xeroxという名称になる。そのFuji Xerox株の過半数を富士フィルムが保有する。混乱を避けるために新しいジョイント・ベンチャーは一時New Fuji Xeroxと呼ばれる。

下はプレスリリース中の経営統合の流れを示した図だ。これで多少わかりやすくなっただろうか? 

両社ともオフィスが急速にペーパーレス化する流れの中で利益を確保するために苦闘してきた。新会社についてひとつ確実なことは、大規模なレイオフが実行されることだ。新会社は、2020年までに主としてアジア・太平洋地区で、1万人以上の人員削減を実行する予定だ。

ではあるものの、富士フィルムは今後の見通しについて強気だ。プレスリリースによれば、「統合された新会社は2020年までに総額17億ドル(うち12億ドル分は2020年まで)のコスト削減を実現する」という。

画像: James Leynse/Corbis via Getty Images

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Amazon、JPモルガン、バークシャー・ハサウェイがヘルスケアへ――当面社員向けの福利厚生サービス

企業が非常にビッグになると従業員の医療でさえ既存の健康保険企業を頼る必要を感じなくなるらしい。すくなくともAmazon、Berkshire Hathaway、JPMorgan Chaseはそう考えたようだ。3社は共同して従業員のための新しいまったく独立の健康保険を立ち上げることにした。この会社は3社の従業員と家族向けにあらゆる医療とヘルスケアを提供していくという。

Wall Street Journalによれば、新企業設立の目的は社員の福利厚生の増進であり、「〔一般の保険会社と異なり〕利益追求の必要がないため長期的計画に基づいたサービスが提供できる」ことが特長だという。社員のヘルスケアにおいて損益計算書に利益を計上することを主たる目的とする外部の営利企業によるサービスを利用する必要を一切なくすくのが3社の最終的な目的だ。

新企業の設立を発表した声明で、Amazonのファウンダー、ジェフ・ベゾスは、「〔パートナーの3社は〕ヘルスケア市場に参入して自らサービスを提供することの困難さを十分認識している。最終的に、経済システムにおけるヘルスケアの負担を軽減し、従業員と家族に優れたサービスを提供することによってこの努力が報われるものとしたい」と述べた。

Berkshire HathawayのCEO、ウォーレン・バフェットはこれに加えて「ヘルスケアのコストの際限ない膨張はアメリカ経済に対して貪欲な寄生虫のような影響を与えている」と述べ、JPMorgan ChaseのCEO、ジェイミー・ダイモンも「アメリカにおけるわれわれの従業員と家族に優れたヘルスケア・サービスを提供し、ひいてはアメリカ全体に利益を与えたい」と付け加えた。

現在のところ新会社については、こうした理念と目的以外に詳しいことは分かっていない。しかしパートナーの3社は新会社設立にきわめて真剣だ。プレスリリースによれば、まだ「準備の初期段階」だというが、各社のトップを含む暫定経営陣が発表されている。近く長期的視野に立った組織が発足し、新本社も開設されるはずだ。

新会社の目的は、当然ながら、ヘルスケア・システムに最新のテクノロジーを導入することでサービスの質を向上させながら大幅にコストを下げるところにある。しかしダイモンのコメントにもあるように、もしこの新しいヘルスケア・システムが順調に機能すると見極めがついた場合には、3社連合は従業員と家族だけでなく、さらに広い範囲にサービスを拡大する意図があるかもしれない。

画像:JASON REDMOND/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Dellに関する噂に真実味――再上場ないしM&Aで巨額負債解消に動く可能性あり

Dellが抜本的な組織再編を検討しているという情報はすでに耳にしているかと思う。Dellは巨額の負債を解消するために思い切った手段を採る必要に迫られている。 赤字の大きな部分は2015年にDellが670億ドルでEMCを買収したことに起因している。

Dellに関する噂は先週金曜から流れ始めた。これにはいくつかのシナリオがあり、ひとつはDellが再上場するというもの、もうひとつは VMware株式の残りの部分も買い取るというものだ。しかしVMwareの完全買収が負債の解消にどのように役立つかは不明だ。そして今日(米国時間1/29)、CNBCは3つ目のシナリオを示した。それによるとVMwareが逆にDellを買収するという。

VMwareの株価はDellが買収するという情報で小幅ながらアップした

ともあれ私は金曜にDellに連絡してみた。予想通り、Dellの回答は「われわれは噂や憶測にはコメントしない」というものだった。しかし事情に通じた知人の話によれば、実際Dellは上記のシナリオ3つのをすべて検討しているが、まだ結論は出ていないという。

報道によれば、DellはEMCとの合併で生じた赤字を現在も460億ドル抱えているという。 BloombergのKiel Porterが指摘しているとおり、この額は利子の支払だけで20億ドルの負担だ。しかし新しい税制では利子支払の減価償却への参入が一部認められなくなるため、Dellの負担額の増大は実質では20億ドルよりかなり多くなるはずだ。利子支払はDellにとって前途に立ち塞がる暗雲であり、取締役会が抜本的対策を検討し始めたというのもおそらくこのあたりに原因があるだろう。

こう聞けば問題は赤字をあちこちに移すなにやら巧みな会計上の操作が検討されていると思うが、Gold and Associatesのプリンシパル、Jack Gold, のツイートによれば、トランプ政権による新税制と過熱気味の株式市場を組み合わせた有利な解決策を探っているのだという。

「株価は記録的水準に達しているが、これが将来も続くという保証はない。上がった株価はいつか最後に下がる。Dellはこのチャンスを利用して再上場し、キャッシュをかき集めようとしているのだろう。税制改革もこれを助けそうだ」とGoldはTwitterに投稿している。

2016年にDellがEMCを買収したとき、Dellがどうやってこのとき生じた負債を返済していけるかという疑問が生じた。そこでDellはEMCの事業の一部を売却するだろうと観測された。事実、2016年にDellはソフトウェア事業を20億ドルで売却した。また傘下のコンテンツマネジメント会社、Documentumも手放した。EMCは2003年にDocumentumを17億ドルで買収していたが、Dellは2017年1月に同社をOpenTextに売却した(額は不明)。驚いたことに、DocumentumはEMCとの提携関係を大部分維持した。

当時の観測は、DellはVMwareの8割を所有しているのだから、過半数の株式を所有し続けるものの、一部を売りに出すだろうというものだった。実際VMwareは株式市場では独自の企業として上場されていたのでこれは可能だった。 しかしDellはVMware株式を売却せず、噂によれば、残りの2割の株式も買収することを検討しているという。あるいは逆に小さいVMwareが巨大なDellを飲み込むことになるかもしれない。

つまりところ、問題はなぜDellはEMCを買収する必要を認めたのかという点に戻ってくる。一部ではこの大型買収が賢明だったか疑う声が出ていたものの、Oracleの会長、ラリー・エリソンは素晴らしい決断だと賞賛した。Oracleはクラウド化の過程にあり、巨額の資金を必要としたためEMCの買収には手がでなかったのが残念だったようだ。たしかにクラウド化には非常に巨大なデータセンターが必要なる。

もちろんここで述べたシナリオは現在のところ噂に過ぎない。Dellはまったく動かない可能性もある。しかしマイケル・デルと資金係のSilver Lake Partnersは大胆な手段を採ることで知られている。Dellが抱える巨額の負債は大胆な行動が必要だと示唆している。そこで近々Dellが上で述べたような手段、あるいはまだ噂に上っていない手段を採用したとしても驚いてはなるまい。

画像: Gary Miller/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

エンタープライズの世界とApple

2010年当時、Appleの顔であった共同創業者スティーブ・ジョブズは、エンタープライズ用途には全く興味がなかった。実際、ジョブズは「私がコンシューマー市場を愛している理由、そしてエンタープライズ市場をずっと嫌ってきた理由は、コンシューマー市場では、私たちは製品を生み出して、それを皆に伝えるべく努力し、その結果皆が自分の意志で選んでくれるからです」。

さらに彼はこう付け加えた「コンシューマー市場では『はい』か『いいえ』の勝負になります。そして、もし十分な数の『はい』を手に入れることができたら、私たちは明日もまた仕事を続けることになります。それがこの市場の仕組みなのです」。

それはジョブズが声明を出した当時には、ものごとの動きを十分正確に反映したものだった。その当時IT部門は、ブラックベリーやThinkPadのような機器を支給して、企業内を厳密に管理していた(当時好きな色を選ぶことはできた ―― それが黒である限り)。しかし2011年に亡くなったジョブズは、「個人の機器を持ち込むこと」(BYOD)や「ITにおけるコンシューマー機器利用」という、彼が亡くなる当時にようやく企業シーンの地平線上に浮かび上がって来ていた、2つの流れを目にすることはなかった。

私は彼なら、この2つの動きを歓迎しただろうと感じている。そしてその流れが、Appleの生み出したモバイル機器、iPhoneとiPadによって、色々な意味で促進されていることに大変満足したことだろう。人びとはそれらのデバイスを自宅で使い、そして徐々に仕事にも使うようになってきた。IT部門はそれを受け容れる他に選択肢はなかった。

この動きはAppleのエンタープライズ進化を促進するのに役立っている。時間が経つにつれ、Appleは、IBM、SAP、Ciscoといったエンタープライズの申し子たちと提携を進めてきた。Appleは、IT部門がそれらの「iデバイス」やMacをより良く管理するためのツールも提供している。そして(私たちが知る限り)エンタープライズを、そのビジネスに実質的に取り込むようになったのだ。

現在の状況は?

Appleのエンタープライズビジネスの規模に関するデータを見つけようとするのは難しい、なぜならその業績報告の中で、彼らがエンタープライズから得られた収益を分離して示すことは、ほとんど無いからだ。とはいえ、ティム・クックが2015年第4四半期の業績報告の中である程度の数字を発表しているので、このマーケットにおける雰囲気を掴むことはできるだろう。

当時クックは「私たちは、過去12ヶ月のAppleの収益のうち、エンタープライズ市場からのものを年間約250億ドルと見積もっています。これは前年に比べて40%多く、将来に向けての成長の大きな柱となることを示しています」と述べている。

2017年6月のブルームバーグのインタビューでは、クックは特定の数字を口にすることはなかったが、エンタープライズ市場を「あらゆるチャンスの母です」と呼んでいた。なぜなら、企業は機器の導入に際しては大量に買う傾向があり、そして社内でのAppleサポートシステムを構築するにつれ、内部ユーザーと会社の製品とサービスのユーザーの両方に向けて、今度はカスタムアプリケーションを提供するために、企業がMacを買うことになり、そのことでエンタープライズ市場の他の部分にも影響が及ぶからだ。

この関係は、ブルームバーグのインタビューでも見逃されることはなかった。「ほとんどの企業では、iOSがモバイルオペレーティングシステムとして好まれています。IOSは素晴らしいプラットフォームです。なぜならビジネスを効率的に実行したり、顧客と直接やりとりをする、役に立つアプリを書くことが容易だからです。現在とても多くの企業がアプリケーションを作成しています。さて、そのアプリケーションを書くのに何を使うでしょう?彼らはMacを使っています。 MacはiOS開発のためのプラットフォームなのです」とクックはブルームバーグに対して語っている。

写真:Justin Sullivan/Getty Images

このマーケットを見るための別の手段がJamfである。JamfはAppleのエンタープライズツールパートナーであり、大規模な組織内でApple機器の管理を行うことを助けている。iPadやiPhoneが登場するよりもずっと早い、2002年に誕生したこの会社は、飛躍的に成長してきた。現在は1万3000社の顧客がいると発表している。その成長の軌跡を眺めてみると、その顧客が6000社になるまでには13年が必要だったが、その後わずか2年半で、顧客の数が2倍以上の1万3000社へと急成長している。

JamfのCEO、Dean Hagerは、TechCrunchに対して「多くの人びとが、Appleはますますエンタープライズに焦点を当てていると言っていますが、実際にはAppleは、企業がもっとユーザーたちに集中できるように助けていて、それによってますます成功しているのです」と語った。「こうしたことは、Appleが人びとが仕事に持ち込みたくなるような素晴らしい製品を作り、実際に人びとが持ち込むことを望んだからこそ始まったことなのです」。

エンタープライズへの道のりをたどる

その個々人の勢いを過小評価することはできないが、一度企業に採用されたなら、AppleはIT部門に何らかの道具を与えなければならなかった。IT部門は常に、ハードウェアおよびソフトウェアのゲートキーパーとしての役割を果たしており、外部のセキュリティの脅威から企業を安全に保護している。

結局のところ、AppleはiPhoneとiPadを使って、エンタープライズグレードのデバイスを構築することはしていなかった。彼らは単に、その当時周囲にあるものよりも、より良く使えるデバイスを作りたかっただけなのだ。人びとがそれを使うことを本当に望み、それを仕事の場に持ち込んできたのは、そうした元々あったゴールの延長線上にあることなのだ。

実際、Appleのマーケット、アプリ、サービス担当副社長であるSusan Prescottは、最初のiPhoneがリリースされたときに同社に所属していて、同社のゴールを認識していた。「iPhoneでは、仕事中も含めて、人々が望んでいると分かっていたことを可能にするために、モバイルを完全に再考しました」と彼女は語る。

AppleのSusan Prescott。写真:Justin Sullivan/Getty Images

アプリとApp Storeという概念と、それを構築するためにあらゆる開発者たちを引き込んだことは、エンタープライズにとっても魅力的だった。IBMとSAPが関わり始めて、彼らはエンタープライズ顧客向けのアプリを構築し始めた。顧客たちは、審査済のApp Storeから、これらのアプリにアクセスすることができたが、これもIT部門にアピールした。Ciscoとの提携により、Ciscoの機器(ほとんどの企業が利用している)を利用しているネットワーク上での、Appleのデバイスに対してのより素早乗り換えが、IT部門にとって可能となった。

2010年のiPhone 4の基調講演では、ジョブズは既に、企業のIT部門にアピールできる種類の機能を宣伝していた。それらは、モバイルデバイス管理や、App Storeを通したワイヤレスアプリ配布などであり、さらには当時人気のあった企業向け電子メールソリューションMicrosoft Exchange Serverへのサポートさえ提供するものだった。

ジョブズは、表面的にはエンタープライズ用途に対して悪態をついていたかもしれないが、明らかに彼の会社のデバイスが、人びとの働き方を変える可能性を秘めていることを知っていた。それまで平均的な労働者には手の届かなかった、ツールとテクノロジーへのアクセスを提供することで、それが実現されるのだ。

Appleはまた、舞台裏では企業ユーザーたちと静かに話し合い、彼らが必要とするものが何かを、iPhoneの初期から、探り当てようとしていた。「早い時期から、私たちは企業やIT部門と協力してそのニーズを把握し、ソフトウェアのメジャーリリースごとに、エンタープライズ向けの機能を追加して来ました」と、PrescottはTechCrunchに対して語っている。

トランスフォーメーションを促進する

組織内の変化を促した要因の1つは、2011年頃にはモバイルとクラウドが統合されるようになって、ビジネスのトランスフォーメーションと従業員のエンパワーメントが促進されるようになったことだ。IT部門が従業員に使いたいツールを提供しない場合でも、App Storeや同様の仕掛けが、従業員たちに自分自身で行うためのパワーを提供した。それはBYODとITにおけるコンシューマー機器利用を促進したが、ある時点でIT部門は何らかの管理を行えることを望むようになった(たとえそれが昔行っていたような管理と同じようなレベルのものではなかったとしても)。

iPhoneやその他のモバイルデバイスは、ファイアウォールの保護の外で働くモバイルワーカーたちを生み出し始めた。電車を待っている間に、すぐにドキュメントを見ることができる。また顧客から次の顧客への移動の間に、CRMツールで更新することもできる。そして空港に行くために車を呼び出すことだってできる。こうしたことの全ては、モバイルクラウド接続によって可能になった。

それはまた、すべてのビジネスの中に、深い変化を引き起こした。とにかくもう、これ以上同じやり方でビジネスを続けることはできないのだ。高品質なモバイルアプリを制作して、それを顧客の前に提示しなければならない。それは企業がビジネスをやる方法を変えてきたのだ。

これは確かに、Capital One(米国の大銀行)が経験したものだ。彼らはもうこれ以上 「昔ながらのやぼったい銀行」ではいられないことと、コンピューティングに関わるあらゆる側面を自分たちで制御することはできないことを認識した。才能ある人材を手に入れようと思ったら、彼らはオープンでなければならない、そしてそれが意味することは、開発者たちに望みのツールを使うことを許さなければならないということだ。Capital Oneのモバイル、Web、eコマース、パーソナルアシスタントの責任者、Scott Totmanによれば、それが意味することはユーザーたちに仕事でもAppleデバイスを使わせるということだ(たとえそれが個人所有のものでも、もしくは会社支給のものでも)。

Capital Oneの従業員たち。写真: Capital One/Apple

「私がここにやってきた時(5年前)、AppleサポートグループはTravisという男性ただ1人でした。私たちは(その当時は)会社内では(それほど広範には)Appleを使っていませんでした」と彼は言う。今日では、4万台を超えるデバイスをサポートするために数十人の担当者がいる。

ニーズが変化しているのは会社内の人びとだけではなかった。消費者たちの期待も同時に変化しており、同社が作成した顧客対応のモバイルツールは、そうした期待に応えなければならなかった。つまり、そうしたアプリデベロッパーたちを会社に引きつけ、快適な仕事ができる環境を提供しなければならなくなったのだ。明らかに、Capital Oneはその点で成功し、組織全体でアップル製品を受け入れてサポートする方法を見出している。

ちょっとした助けを借りながら進む

Capital Oneはいかなる意味でも「特殊例」ではない、しかし、もしApple(の中心)が、今でも消費者向け会社であるならば、エンタープライズ市場を獲得し、大企業のニーズを理解するためには何らかの手助けが必要である。それこそがAppleがここ数年立て続けにエンタープライズに基盤を提供する企業たちとパートナーシップを結んできた理由だ。IBM、SAP、そしてCiscoと契約を締結し、プロフェッショナルサービスの巨人であるAccentureやDeloitteと手を結び、そして直近ではGEとも提携を結んだ。最後の提携は産業IoTマーケットへの足がかりをAppleに与えるものだ。一方GEは、その30万人以上の従業員を対象にiPhoneとiPadを標準として採用し、Macを公式のコンピュータとする。

Moor Insights & Strategyの社長兼主席アナリストのPatrick Moorheadは、こうした提携をAppleにとって健全なアプローチであると見ている。「Appleは自身がコンシューマー企業であることを認識しているので、エンタープライズ戦略を実行するためには、純粋なエンタープライズプレイヤーと提携する必要があります。それぞれの企業がその戦略に異なる要素を追加します。IBMとSAPはモバイルアプリで協力します。Ciscoは、高速ネットワーキングとエッジセキュリティに関してのもの。そしてGEはIoTソフトウェアに寄与します」とMoorheadは説明した。

J Gold Associatesの社長兼主席アナリストのJack Goldは、これらの企業はAppleに対して、エンタープライズ市場への切符を提供していると語る。「彼らはソリューションプロバイダーであって、部品サプライヤーではないのです。彼らとのパートナーシップがなければ、影響力を持つことは難しかったでしょう。パートナーシップを活用することで、コンポーネントベースで競争するのではなく、完全なソリューションレベルで競争することができるのです」とGoldは述べている。

IT部門からの結論はまだ出ていない

Appleは過去10年間にわたって、エンタープライズビジネスと内部および外部のサポートコンポーネントを構築してきたが、彼らがその過程で作り上げたパートナーシップは、単にエンタープライズの世界での信用を得ることだけではなく、彼ら単独では提供が難しかったであろうレベルの成果も提供できるようにした。

「IT部門は、主要なサプライヤと直接仕事をする際に、有利な条件でサポートを受けることに慣れています。Appleの場合にも、本当に大きな企業はそうすることができますが、多くは仲介業者を経由しなければなりません。それは必ずしも悪いことではありませんが、それはAppleにとって、限られた企業リソースを活用する1つの方法なのです」とGoldは述べている。

Constellation Researchの創業者兼主席アナリストのRay Wangは、Appleのエンタープライズ顧客にとっての、いくつかの課題を見ている。「Appleを採用する場合に彼らを待つ課題は、Dellのような企業が機器の管理を簡単にしてきたことに対抗して、Appleも同レベルのサービスを提供できるようにしなければならないということです。多くのIT部門にとって、ジーニアスバーに行くように言われることは、妥当な対応ではありません」と彼は語った。

公平を期すならば、AppleはエンタープライズレベルのAppleCareサポートを提供しているが、これは現在パートナーのIBMによって運用されている。Prescottは、Appleはより大きな顧客たちと、彼らの必要とするものを提供できるよう、協力している最中だと語った。「私たちは、顧客の方々が、Appleのデバイスを統合して管理することができるように、直接一緒に仕事をしています。私たちはAppleCareを通じてテクニカルサポートを提供し、Apple at WorkウェブサイトではIT部門の皆さまにリソースとガイドを提供しています。私たちは、エンタープライズ向けの努力を補完するために、世界規模の企業と戦略的に協力し、顧客の皆さまが、そのビジネスプロセスをモバイル中心で再考し始めるためのお手伝いを致します」と彼女は説明した。

Jamfが2016年に実施した調査の中で、携帯電話に関しては、回答者の79%がiPhoneを強く好んでいたという結果は、言及しておく価値があるだろう。

出典: Jamf 2016年調査

この調査は、世界各地の大中小企業の役員、マネージャー、そしてITプロフェッショナル480名の回答をまとめたものだ。調査結果を見れば、IT部門はいまやiPhoneやその他のApple製品をサポートする選択肢を提供せざるを得ないことがわかる。そしてAppleはそれをサポートする方法を見出しつつあるのだ。

スティーブ・ジョブズが2010年にエンタープライズに関してコメントして以来、Appleはエンタープライズで明らかに大きな進歩を遂げてきた。Capital One、Schneider、Lyft、そしてBritish Airwaysなどの事例を見れば、Appleが最大級の企業とも一緒に働くことができることは、既に示されていると言えるだろう。実際、巨大エンタープライズとのパートナーシップは、Appleがエンタープライズ市場での立ち位置を見つけるための役に立っているのだ。

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(翻訳:Sako)
FEATURED IMAGE: JUSTIN SULLIVAN/GETTY IMAGES

Slackのプライベート共有チャンネルを使うと複数の会社が非公開会員制で会話できる

数か月前にSlackがベータで立ち上げたShared Channelsという機能は、複数の組織(会社や団体)が共有できるチャンネルだった。たとえばあなたのスタートアップは、PR会社や法律事務所とチャンネルを共有できるだろう。

しかし二つの会社の会話が互いに全社に見られては困ることもあるので、今日(米国時間1/17)同社はPrivate Shared Channelsというものを、やはりベータで立ち上げた。これは、共有チャンネルだけれど招待制で文字通りプライベート、非公開だ。

この機能は、二つの企業が、合併とか買収とか投資とか、まわりに知られたくないことを議論するのに適しているだろう。

招待されてない社員は、そんなチャンネルがあることすら知らないし、その内容は検索に拾われない。しかもこのプライベートチャンネルは、会話のどちらか一方だけをプライベートにすることもできる。たとえば合併の話は両者でプライベートにし、法律事務所との話は会社側では全社公開、法律事務所側ではプライベートにできる。

プライベート(非公開)とパブリック(一般公開)の分け方は、下図でお分かりいただけるだろう。

そしてアドミンのチャンネル管理機能には、これらの共有チャンネルの状況を見る能力が加わった。たとえば、我が社のどの部課の連中がどこの会社のどの部課と共有チャンネルで会話しているか、なんてことが分かる。

目下、共有チャンネルは有料ユーザーがベータを利用できるだけだが、すでに有料ユーザーの1/3はベータに参加しているそうだ。また有料ユーザーの2/3は、ゲストアカウントを利用して、他の会社のユーザーが一時的に自分の会社にアクセスできるようにしている。つまり、複数の会社間でSlackを使いたい、という複数企業のコラボレーションニーズは、とても強いのだ。

Slackはベータ終了時期をまだ明らかにしていないが、有料ユーザーなら今でも全員が利用できる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

G Suite EnterpriseのSecurity Centerで、利用しているすべてのサービスのセキュリティ状況を一望できる

Googleが今日、G Suiteのアドミン用の新しいツールを立ち上げて、彼らの組織のセキュリティの状態をもっとよく見られるようにした。そのツールG Suite Security CenterはG Suite Enterpriseのユーザーだけが使えて、二つの主な部位がある。最初の部位はダッシュボードで、アドミンはその画面を見ながらさまざまなサービスのセキュリティ関連測度の現在値を概観できる。たとえばGmailなら受信メール中のフィッシングメールの有無やその数など。またGoogle DriveやMobile Managementなども、セキュリティが重要だ。第二の部位はセキュリティの健康診断で、現在のセキュリティの設定を概観するとともに、その改善のアドバイスを提供する。

Security Centerを担当するプロダクトマネージャーChad Tylerによると、現状では重要なセキュリティ関連測度がさまざまな個々のG Suiteプロダクトに分散しているが、それらを一つのサービスにまとめるべきだ、と彼らは考えた。それに加えて、ユーザーの安全を確保するためのリコメンデーションも、GoogleがG Suiteのために推奨するベストプラクティスを、個々のサービスごとではなく、すべてを一つの画面で見られるようにしたい。

しかしSecurity Centerの心臓部はあくまでもダッシュボードだ。アドミンはその画面を見ることによって、会社全体に何が起きているのかを素早く一望できる。Tylerによると、ダッシュボードに加わるサービスは今後もっと増えるが、たとえばそれを見ることによって、どの社員にフィッシングメールの急激な増加(スパイク)があるかもすぐに分かる。さまざまな測度がグラフや図表などで一望できる、という点では、ユーザー体験はGoogle Analyticsなどに似ている(上図および下図)。

Security Centerはすでに、全世界のG Suite Enterpriseのアドミンに向けて展開されている。全員に行き渡るのもかなり早いと思われるので、たとえばあなたががG Suite Enterpriseのアドミンなら、もうすでにご自分のアカウントで利用できるかもしれない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

GoogleとSalesforceの提携、第一弾登場――顧客データの統合ツール各種発表

昨年秋のDreamforceカンファレンスでSalesforceとGoogleは提携を発表した。今日(米国時間1/17)、両社はこの提携の第一弾を公開した。手始めとして、Google Analytics 360のユーザーはSalesforceのCRM〔顧客関係管理〕ツールからリード、売り込みチャンスなどのデータをインポートできるようになる。

これにより企業のマーケティング部門は有望顧客の発見、コンタクトからセールスの実現までの顧客関係をAnalytics 360で簡単に展望し、管理できる。これは顧客関係における成功を助けるために大きな効果があるだろう。もちろんSalesforce自身はMarketing CloudにSalesforce WaveやEinstein Analyticsなど独自の分析ツールをを持っている。

しかし今回の提携で、Googleのアナリティクス・ツールを利用しているユーザーはSalesforceのアナリティクスのデータを統合して処理できる。多くのユーザーは複数のアナリティクス・ツールを併用しており、これがそもそも両社の提携をもたらした背景だった。つまり複数のアナリティクスを比較することでさらに広い視野から顧客関係を見渡すことができる。

両社は提携の効果をアップするために、SalesforceのデータをGoogleののデータ・ウェアハウス・サービス、BigQueryで利用するためのコネクター・ツールを提供する。ユーザーは顧客関係データをBigQueryにアップして他のエンタープライズ・データと比較することが可能になる。

最後にSalesforceとGoogleの広告システムを結びつけ、適切な広告を適時に表示してセールスの完結を助けるツールも発表された。Googleの公式ブログではこれをAdvertising Linkと呼んで紹介している。【略】

今回発表されたいくつかのサービスはGoogleとSalseforceの広汎な提携の第一弾であり、今年は両社のシステムをさらに密接に深いレベルで統合するプロダクトが各種続くものとみられる。これにはユーザーが販売する特定のプロダクト別のデータの統合、リードが実際の販売に結びつく可能性やトータルでの顧客価値を算定するツールが含まれるはずだ。

画像;Andy Ryan/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

IBMがGlobal Technology Servicesグループの大変革を計画中か?


IBMはここ数年間調子が悪く、収益の減少が22四半期の間連続している。このような背景の中、米国時間11日にThe Registerが、同社のGlobal Technology Servicesグループに大きな変化が起こるかもしれないことを示唆する記事を発表した

Global Technology Services(GTS)は、インフラストラクチャーサポートとハードウェアコンサルティングを扱う、IBMのビジネスコンサルティング部門である。同社がクラウドに重点を移しつつあるため、GTSのハードウェアへの注力は、同社の今後に対しての重要性が下がっている。

この変化は、ITの変化する背景に照らして見る必要がある。実際のところ、多くの企業が自社のデータセンターを運営することをやめて、パブリッククラウドサービスに移行しつつある。このコンテキストの中では、ハードウェア導入に集中する10万人の従業員を抱えていることはあまり意味がない。

The Registerの記事によれば、同部門は焦点を大きく変えようとしており、これに従い従業員たちの大規模な再構成が行われようとしている。さらに、変更が非常に大きいために、同社はBainと契約し、整理作業への支援を受けることになった。レポートによれば、世界中で約3万人の人びとが影響を受けるという。

そのうちの9300人は、IBMが近年集中しているクラウドコンピューティングのような領域に異動する。またおよそ1万のポジションは、この先従業員がいなくなってもその空席が埋められることはない。The Registerの記事からは、残った人たちに何が起きるのかはさらに明らかではない。しかし現在外部と共同で、もしくは外部からサービスを受けている6000のポジションは移管されるか廃止されるようだ。残りの5000人ほどについては、彼らに何が起こるか、レイオフがあるのかどうかも含めてなにも説明されていない。

IBMのある広報担当者は、記事の正確性に関する質問に反応して、TechCrunchに対しこのように答えた:「みなさんもよくご存知のように、私たちは推測についてはコメントしません。多くのコンサルタントたちがIBMに何かを推奨してきますが、その多くは単なる推奨に過ぎません」。それは正確さを期すために慎重に選ばれた言葉だった。

広報担当者はさらに続けて以下のように説明した「あらゆるビジネスと同様に、IBMは新たなクライアント要件を満たすために、従業員を再教育します。GTSは、私たちの戦略的イニシアチブに重点を置くために、専門的な開発と技術トレーニングへの投資を大幅に増やしています」。言い換えれば、IBMは過去数年間、クラウド、セキュリティ、人工知能、分析などの分野に移行しつつあるため、GTSの人員もこれらの分野に移行させる必要があるということだ(ということは既にそれを実際に行っているということだろう)。

Constellation Researchの創業者で主要アナリストであるRay Wangは、これは会社が成し遂げなければならない変化だという。「IBMは大規模な再訓練の最中です。この目標は、新しいビジネスモデルのためにそのスタッフを再配置し、再訓練することです」と彼は言う。「GTSは旧来のサポートモデルとアウトソーシングモデルのために設立された会社です。これが噂に真実味を加えていますが、私たちはBainはそこに関わっていることを知っています」と彼は付け加えた。

良いニュースは、レポートでは大規模なレイオフについては言及されていないということだ。とはいえこの規模の部門ならば、おそらくはある程度のレイオフは行われることだろう。それでも、最初のレポートが正しいとするなら、焦点が当てられているのは従業員の他のポジションへの異動であり、解雇ではないようだ。もちろん、これがどのようになるかはこの先はっきりする。

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(翻訳:sako)

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IntelのSpectre-Meltdownのパッチでユーザーシステムがリブートしてしまう事故も

Intelにとってそれは、楽しい時間ではなかった。先週同社は、チップの脆弱性を二つ公表し、その後それらにはSpectreとMeltdownという名前まで付けられ、そしてさらにIntelだけでなくチップ業界全体の騒動になった。今週同社はパッチを発表したが、今日(米国時間1/12)は、それらをインストールした企業の一部がシステムの唐突なリブートを経験している、という情報がリークされてきた。泣きっ面に蜂、傷口に塩の不運な週だ。

Intelもそれを認め、同社Data Center GroupのVPでゼネラルマネージャーのNavin Shenoyが、この件に関するブログ記事を書いた。

そこにはこう書かれている: “複数の顧客から、ファームウェアのアップデートを適用したあとに高レベルのシステムがリブートする、という報告を受けている。具体的には、これらのシステムは、クライアントとデータセンターの両方でBroadwellとHaswellのCPUが動いている”。

“そのためにファームウェアアップデートの改訂が必要なら、その新たなアップデートは通常のチャネルから配布する”。

この問題はIntelがコントロールできないほど劇症化することはないだろう、とみんなが思っていたまさにそのときに、一層の劇症化が起きてしまった。Wall Street Journalが入手したIntelの極秘メモは、大企業やクラウドプロバイダーたちに、パッチをインストールしないよう指示している。一方Intelは消費者にはすべてのパッチをインストールするようアドバイスし、これはセキュリティの問題ではない、と指摘している。

ソフトウェアの不具合の問題にすぎないし、それは確実に直った、と言いたいところだったが、騒動の肥大化がプレッシャーとなり、ミスが生じたのかもしれない。

SpectreとMeltdownの問題は昨年、GoogleのProject Zeroのセキュリティチームが見つけていた。彼らは、セキュリティよりスピードを優先した設計により、現代的なチップのアーキテクチャに欠陥が生じ、チップのカーネルが露出した、と認識している。その場所にはパスワードや暗号鍵などの秘密情報が保存され、たぶん保護もされている。しかしその欠陥のために、保護がない状態になってしまった。

MeltdownはIntelのチップだけの問題だが、Spectreは今のチップのほとんどすべてにある…AMD, ARM, IBM Power, Nvidiaなどなど。この問題を抱えなかったのは、Raspberry Piだけかもしれない

今のところ、この脆弱性の悪用に関する情報や記録はない。Googleの昨日(米国時間1/11)のブログ記事によると、それは20年も前からチップに存在した脆弱性だが、しかしセキュリティの専門家たちによると、これまでのセキュリティ事故の、どれとどれがこの脆弱性の悪用であるかを特定するのは難しい。20年前からその存在を十分に知っていたとしても、事故原因としての特定は難しいだろう、という。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

音声インターフェースがビジネス向けに進出中

会社の会議にAmazon Echo(要するに音声操作デバイス)を持っていく、というシナリオはどうだろうか? つまり今月の南部地区での売上の数字が必要になったとしよう。今までならノートパソコンを開き、Excelを忙しく操作することになったはずだが、その代わりにEchoに尋ねるだけでいい。デバイスは即座に数字を答えてくれる。

ビジネス・シーンの主流になるにはまだ距離があるとはいえ、こういうシナリオは次第に現実化しつつある。

Amazon Echo(やGoogle Home Mini)が普及するにつれ、人々はコンピューターを音声で操作することに慣れてきた。過去の例に照らしても、消費者の態度に大きな変化をもたらすような現象は、やがて、ビジネスの場にも現れることが確実だ。

キーボード、タッチスクリーンに加えて音声も利用するAIセールス・ツールのTactのCEO、Chuck Ganapathiによれば、「われわれが利用するデバイスに革新が起きている。今後は音声を利用することが理にかなった方向だ」という。「スマートフォンにマウスは付属していない。電話するときにいちいちキーボードで入力しようとは思わないだろう。スマートウォッチもそうだ。それどころかAlexaデバイスにはスクリーンも必要ない。デバイスとのコミュンケーションはこれまでに比べてはるかに直感的になる」とGanapathはいう。

先月末のAWS re:InventカンファレンスのキーノートでAmazonの最高技術責任者、ワーナー・ヴォーゲルズは「われわれはこれまでテクノロジー上の制約のせいでコンピューターとのコミュンケーションがひどく不便なものになっていた」と指摘した。Googleで何かを検索しようとすればキーワードをタイプ入力するしかなかった、それしか方法がなかったからだ、ヴォーゲルズはいう。

「今後のデジタル・システムとのインターフェースは機械の都合が優先されることはなく、人間が中心となっていく。人間が自然に持つ能力を中心としたインターフェースをデジタル・システムに設けることで環境のあらゆる部分が活性化される」という。

Amazonはもちろんこの方向を後押しすることに熱心だ。re:InventではAlexa for Businessがクラウド・サービスとして発表された。もちろん他のクラウド企業も音声機能をデベロッパーに提供し始めている。 ビジネス・サービスやアプリに音声サービスを組み込みたいからだ。

AmazonがAlexa for Businessで初めてビジネス・シーンを直接のターゲットする動きを示したのに対し、他のスタートアップはこれより早く、Echoをビジネスに統合する実験を行っている。たとえば、ビジネス・インテリジェンスとアナリティクスのツールを提供するSisense2016年6月に早くもEchoをインターフェースに採用している。

しかし大手クラウド事業者が提供するサービスがいかに魅力的でも、社内データを外部に出すことを好まない企業も多い。このことはさる11月にCiscoがSpark向けにVoice Assistant for Sparkを提供したことでも明らかだ。企業がインハウスで音声を利用できるようにするこのテクノロジーは5月に1.25億ドルで買収したMindMeldが開発したもので、ビジネスの会議で一般に必要とされるタスクを音声で命令できるようにするのが狙いだ。

また11月にはビジネス向け音声駆動ソフトとハードを開発するスタートアップのRoxyは220万ドルのシード資金を得ている。同社はまず手始めに接客を重要な要素とするサービス産業をターゲットとしている。もちろんRoxyの狙いはサービス産業にとどまるものではないが、同社が最初に得た貴重な教訓は、社内情報をAmazon、Google、Apple、Microsoftのような大手外部企業に渡そうとしない会社も多いということだった。多くの会社は顧客データや顧客とのやりとりを社内のみに留めておこうとする。こうしたニーズに対してRoxyが提供する音声インターフェースは有力なソリューションとなるだろう。【略】

2018年を迎えてこうした実験は有力クラウド事業者のサービスとしても、スタートアップ企業の独自のソフトウェアとしてもも数多く出てくるだろう。もちろんキーボードとマウスがいきなり無用となるということではない。しかし音声が便利な場面で音声をインターフェースに利用するというのは自然な成り行きだ。多くの場面で音声はタイプの手間を省き、コンピューターとのコミュンケーションをさらに自然なものとするだろう。

画像: Mark Cacovic/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

巨額赤字のLeEco〔楽視〕ファウンダーに帰国命令――中国証券監督管理委員会が公開状

問題山積みのテクノロジー多国籍企業、LeEcoのファウンダーがさらに新たな頭痛を抱えることとなった。LeEcoグループの負債の処理に関連して中国証券監督管理委員会〔CSRC〕はファウンダーのJia Yueting〔賈躍亭〕に対し12月31日までに帰国するよう命じた。同委員会は月曜日、異例の公開状を発表し、LeEcoグループが債務を返済できないことは、「上場企業として法的責任を果たせないだけでなく、投資家の利益に対する深刻な侵害ととなる。また社会的にも非常に大きな悪影響を与える」と述べた。

LeEcoの親会社、Leshi Internet Information and Technology Corp〔樂視網信息技術(北京)股份有限公司〕は深セン証券取引所に上場しているが、この4月以降、リストラ案を審査するため取引が停止されている。楽視は2004年に賈躍亭によってビデオストリーミング・サービスとして設立された。2016年にはLeEcoブランドの下で野心的な事業拡張に乗り出した。これにはアメリカのテレビ・メーカーVizioを20億ドルで買収する合意が含まれていた(この買収は後にキャンセルされた)。同グループはさらにスマートフォン、スマート自転車その他消費者向けエレクトロニクス製品の製造に進出し、さらにロサンゼルスに本拠を置く電気自動車のスタートアップ、Faraday Futureとも提携した。これらの事業の資金としてLeEcoは 数十億ドルの借り入れを行った。この際に 賈躍亭は自らの楽視グループの株式を担保として証券会社に差し入れたという。

しかしLeEcoの事業拡張は成功せず、債権者からの圧力は日増しに強まっていた。今年7月、賈躍亭は楽視聴の会長を辞任すると同時に、ソーシャルメディア上で「LeEcoの負債は必ず返済する」と約束した。

中国証券監督管理委員会によれば、同委員会は賈に対し、中国に帰国するよう9月から要請してきたが、「現在までこれに応じようとするいかなる行動も見られなかった」という。今月初め、香港のPing An Securities Group〔平安証券集団〕に47000万元(7100万ドル)の債務が返済ができなかったため、賈は中国における債務不履行者の公式リストに掲載された。 先週、LeEcoの香港法人が同地の高等裁判所に精算手続きの開始を申し立てたと香港メディアはと報じた。

われわれはLeEcoに対しメールでコメントを求めている。

画像; Bloomberg/Getty Images

〔日本版〕賈躍亭宛の公開状には「北京證監局關於責令賈躍亭回國履責的通告」(原文は簡体字)とある。『ポケットプログレッシブ中日』は、「zélìng 【责令】[動詞]責任をもって任務を遂行するよう命じる」と説明している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

企業の紙の書類の山をロボット軍団を使ってデジタイズするRipcordにGoogle Venturesらが投資

8月に報じたRipcordの4000万ドルのシリーズBは、Google Ventures(GV)が率いる追加投資により6500万ドルに膨れ上がった。新たな資金は、このレコードキーピング企業の継続的な急成長をさらに支える意味で投じられた。ベイエリアに拠を置く同社は、100名を新たに雇用し、2018年にはさらに150名を加える予定だ。

同社は今年の3月にステルスを脱し、そのときシリーズAで950万ドルを調達したことを発表した。当時同社は、10億ドル企業のエンタープライズマネージメント大手Iron Mountainを、第一のコンペティターとして挙げた。

しかしRipcordのレコードへのアプローチは純粋にデジタルで、ロボットの軍団を使って重要な記録を取り出し、人間の10倍の速さでドキュメントをスキャンする。来年の終わりまでに同社がデジタイズする文書量は、一日平均で約5000万ファイル、と予想されている。

追加資金はサービスのスケーリングに充当される。それを目指して同社は今、さらに多くの有名企業に営業を仕掛けている。CEOのAlex Fieldingによると、GVが同社に着目したのは、情報をインデクシングするサービスに関心があったからだ、という〔Googleとの共通項〕。

Fieldingは語る: “Googleが今回のラウンドでうちと仕事をする気になった動機は、検索のインデクシングでは得られない情報へのアクセスに着目したことだ。コンテンツを検索する方法も、うち独特であり、それは彼らにとって新しくておもしろいはずだ。企業に山のようにある紙の文書には、GoogleのPage Rankのようなものはない。誰が書いたかも分からないし、その信頼性も分からない。それが参照しているリファレンスが、どんなものかも分からない…単純にリンクを貼れるようなものではない。

カリフォルニア州ヘイワードに本社を置く同社は、これまで累計7450万ドルを調達した。このたびGoogle Venturesが加わった投資家リストには、Con Ventures, Kleiner Perkins, Legend Star, Lux Capital, Silicon Valley Bank, Telstra Ventures, Steve Wozniakなどの名前が並んでいる。

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建設プロジェクトのコラボレーションプラットホームAconexをOracleが$1.2Bで買収

Oracleが今日(米国時間12/17)、建設工事におけるコラボレーションを支える、建設プロジェクト管理クラウドプラットホームAconexを12億ドルで買収することを発表した。メルボルンに本社を置くAconexは、クラウドベースのソフトウェアによって、建築工事に関わるチームのコラボレーションと文書管理を支える。買収価額は一株あたりオーストラリアドルで7ドル80セント(USドルで5ドル97セント)となり、トータルで12億ドルになる。この価額はAconesの金曜日(米国時間12/15)の終値AUD$5.29(USD約$4.05)の47%プレミアムとなる。

Oracleがクラウドベースの建設業ソフトウェアを買収するのは、これで二度目だ。昨年同社は、建設業における契約と決済を管理するプラットホームTexturaを6億6300万ドルで買収し、同社自身の建設管理ソフトウェアPrimaveraと組み合わせてOracle Construction and Engineering Global Business Unit(建設エンジニアリンググローバルビジネスユニット)と呼ばれる事業体を作った。

建設のプロジェクトは、可動部品が多い。下請けもサプライヤーも複数おり、建設関連の法規は複雑、そして山のように大量の紙の文書が作られる。それらすべてを正しく管理しようとすると、その金額費用と時間費用は膨大なものになる。しかしそのことは、テクノロジー企業にとっては機会でもある。過去数年間でも、建築産業を現代化しようとするスタートアップがFieldwire, PlanGrid, Net30, UpCodesなど続出した。

2000年に創業されたAconexは現在30か国にオフィスがあり、これまでに総額1兆ドルあまりの建設プロジェクトの管理に利用されてきた、という。これまで同プラットホームを利用して管理された建設プロジェクトはおよそ550万件、建設の進捗やさまざまな文書、安全性チェックリスト、などなどの管理がデスクトップとモバイル上で行われてきた。OracleによるとAconexは同社のクラウドベースの建設ソフトウェアの足りなかった部分を補うことになり、とくにプロジェクトの企画、管理、そして支払い決済の面でエンドツーエンドのソリューションを提供していく。買収の完了は2018年の前半を予定しているが、それ以降Acoenxは、Oracleの上述、建設エンジニアリングユニットの一部となる。

Aconexの顧客への書簡で協同ファウンダーでCEOのLeigh Jasperは、“AconexへのOracleの継続的投資により、機能性と能力容量の迅速な増強が期待される。また、Oracleのそのほかのプロダクトとのより有意義な統合や連携が可能になる”、と述べている。

世界最大のソフトウェア企業のひとつであるOracleは、1年に何度か買収を行う。Crunchbaseによると、Oracleは2017年にほかにも3社の買収の合意に達している: (1)API設計プラットホームのApiary、(2,3)デベロッパーツールのWerckerMoatだ。後者は広告のエンゲージメントを測定する。しかし昨年は93億ドルのNetSuiteやTextura(前述)など、計9社を買収しているから、もっとすごい。

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マルウェア入りコンテンツをユーザーに絶対渡さないMenlo SecurityがシリーズCで$40Mを調達

Menlo Securityは、独特のやり方で企業をマルウェアやフィッシング詐欺から護る。その同社がこのほど、4000万ドルのシリーズCラウンドを発表した。

Menloは、社員たちがマルウェアのあるWebサイトやメールの本物にアクセスさせないようにして、顧客企業を護る。オリジナルは別途保存し、クリーンな写像をブラウザーに表示するから、悪いものはすべて剥げ落ちている。つまり、マルウェアがあなたに届かなければ、あなたに危害を加えることはない、という理屈だ。

CEOで協同ファウンダーのAmir Ben-Efraimは、2015年の2500万ドルのシリーズBのとき、こう説明した: “Webページやメールはすべてクラウド(パブリックまたはプライベート)に隔離する。コンテンツを隔離すれば、それは絶対にエンドポイントに到達しない。これによってマルウェアを、アーキテクチャのレベルで排除する”。

それはとても効果的なやり方なので、Ben-Efraimによると、今では数百社の顧客企業に計100万人以上のユーザーがおり、全員が今日まで無感染だ。

このような結果に、顧客も投資家も前向きに反応している、と彼は語る: “現時点で数百社の顧客がおり、その多くはGlobal 2000社だ。これまで、非常に高い増加率だった。われわれのプロダクトのねらいが、的を得ていたということだろう。過去二年間の大きな被害例を見ると、エンドユーザーがマルウェアの餌食になるケースが多かった”。

今回のラウンドには、American Express Ventures, Ericsson Ventures, HSBCなどからの戦略的投資が目立つ。また、既存の投資家も参加している: JPMorgan Chase, General Catalyst, Sutter Hill Ventures, Osage University Partners, Engineering Capitalなどだ。同社の累計調達額は、8500万ドルになる。

HSBCのサイバーテクノロジー担当Tim Dawsonによると、同社はつねにセキュリティの革新的なソリューションを捜している。彼は声明文でこう述べている: “サイバーセキュリティはわれわれの最上位のプライオリティである。脅威はたえず進化しているのでわれわれは継続的に時間とリソースをそのチャレンジにつぎ込み、クライアントとスタッフを護る革新的な方法を探求している。今回の投資も、その取り組みの一環である”。

同社の社員は今125名だが、来年中には200近くにまで増やしたい、とBen-Efraimは言う。“シリーズCは市場拡大の資金になることが一般的に多い”、と彼は語る。彼は来年以降、全世界的な営業とマーケティングチームの構築に注力していく意向だ。

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企業はネットのインフラをどうやって買うのか、シードで$3Mを調達したInflectがそのための正しいデータを提供

企業が自社のためのインターネットのインフラストラクチャをもっと容易に買えるようにするサービスInflectが、300万ドルのシード資金を獲得した。そのサービスはまだプレビューだが、企業がデータセンターのための場所や、ネットワークサービス、エクスチェンジプロバイダーなどを買おうとしているとき、購買の意思決定をするために必要なデータを揃えてあげることが、メインのお仕事だ。

シードラウンドの投資家は、Greenpoint TechnologiesのJon Buccola Sr, WeeblyのCTO Chris Fanini, Server CentralのCEO Jordan Lowe, Global Communications NetworkのCEO Chris Palermo, そしてやや意外ながらCruise AutomationのCTO Kyle Vogt(Twitchの元CEO)だ。

Inflectの協同ファウンダーでCEOのMike Nguyenは、声明文の中でこう言っている: “この業界の買う側と売る側の両方をよく知っている方々からご投資いただいたことは、まことに幸運である。彼らは、コロケーションやマネージドサービス、ネットワークサービスなどを買うことの難しさを、熟知しておられる。業界のインサイダーである彼らは、正しいソリューションを得るために必要な正しいデータと、適正なサービスプロバイダーへのコンタクトが、欠落していたことに由来する失敗と損失を、全員が経験しておられる”。

Inflectはまだしばらくプレビューだが、しかしそこには、世界中の40あまりのサービスプロバイダーや約4000のデータセンターから得た検証済みのデータがある。同社の推計によると、これはグローバルに可利用でパブリックなインフラストラクチャの約80%に相当する。

なお、このようなデータの収集は難事業であり、それを集めたからといってAPIで他へ公開しようとする企業はあまりいない(Cruise AutomationのKyle Vogtは、この業界は“腹立たしいほど不透明だ”、と言う)。データサービスや通信サービスは手作業的に買うのが従来のやり方だったが、しかし、インフラストラクチャのベテランたちが創業したInflectは、それを変えようとしている。目下、データの収集が主な仕事だが、今後はユーザーが同社のカタログから直接、サービスを購買できるようになるだろう。

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Salesforceは今期も絶好調、新目標は年間売上200億ドル――トップ人事も発表

クリスマスを控えてSalesforce絶好調の四半期決算を発表した。売上は25%アップして26.8億ドルだった。同社は年間売上100億ドルという目標をすでに大幅に超える勢いで、今回は2022年度までに年間売上200億ドルを目指すと発表した。これは見逃せない大胆な目標だ。

またSalesforceではトップ人事にも大きな動きがあった。これについても後述する。

SalesforceはそもそもアンチIBMとして登場した。その敵、ビッグブルーは22四半期連続で売上がダウンしている。逆にSalesforceはこの数年着実に売上を伸ばしてきた。3年前にさかのぼると、2015年第3四半期は13.8億ドルだったから今期の26.8億ドルは倍近い伸びだ。

年間売上100億ドルに駆け上がるスピードは過去のあらゆるソフトウェア企業より早く、会長兼CEOのマーク・ベニオフが電話記者会見で何度も自慢してもその権利があったというべきだろう。

「年商100億ドルに最短で達したエンタープライズ向けソフトウェア企業として、われわれは次の目標をオーガニックな成長の結果として2022会計年度までに年商200億ドルを達成するというところに置きたい。そうなればこれは200億ドルを最速で達成するソフトウェア企業でもある」とベニオフは宣言した。

こうした大胆な成長を実現する方法の一つは国際展開だろう。CNBCの記事によれば、事実、Strategic Wealth PartnersのアナリストMark Tepperは「今回の四半期決算ではこの点について詳細に観察する」つもりだと述べていた。

Teppeは四半期レポートの内容に満足したに違いない。Salesforceの副会長、COO、プレジデントのKeith Blockは今年の新規採用の40%はアメリカ国外で実施されたものだと明かした。国外の成長がアメリカにおける成長を上回ったところからみて、こうした国際的拡張への投資は十分実を結んだようだ。

写真:: Salesforce

ベニオフはまたブレット・テイラーをプレジデント兼最高プロダクト責任者(CPO)に昇進させたことを発表した。テイラーはクラウドベースのワープロ、Quipのファウンダーで、昨年、7億5000万ドルで同社が買収されたときにSalesforceに加わった。「ブレット(Bret Taylor)はわれわれのプロダクトについてビジョン、デザイン、開発、マーケティング戦略の全般にわたって指揮をとることになる」とベニオフは説明した。いっぽう、これまでCPOだったAlex Dayonはプレジデント兼最高戦略責任者(Chief Strategy Officer)に昇進した。「Alexはわが社の戦略を指揮し、プロダクトの方向性や発展に関してこれまでより直接に顧客と接することになる」ということだ。

どちらの人事もトップの世代の若返りを狙ったもので、Salesforceが成功に安住して活力を失う危険性を防ぐだろう。もっともテイラーらの任命でプレジデントの人数はだいぶ増えた。前述のKeith Block、 CFOのMark Hawkins、最高人事責任者(Chief People Officer)のCindy Robbinsはいずれもプレジデントの役職を持っている。Saleseforceではプレジデントが他社のバイスプレジデントを意味するようだ。

Constellation Researchのファウンダー、プリンシパル・アナリストのRay WangはSalesforceの人事について、「同社には最高xx責任者が多数いるが、その中で重要な職はプレジデントの肩書を同時に保有しているかどうかだろう。いずれにせよ昇進の人選は順当、件数も最小限〔であり、同種の他社に比べてトップヘビーということはない〕」と説明している。

WangによればテイラーはQuippの買収後の社内での奮闘ぶりが認められたとし、Dayonは「新し役割」を担うと見ている。「Alex 〔Dayon〕はこれまで何年もプロダクトとサービスの洗練に専念してきたが、今後は全社的戦略を考えることになるだろう」という。

ただし、この四半期発表を受けて株価は今朝やや下げた。107.49ドル〔現在は106.83ドル〕は最近記録した高値〔109ドル〕にわずかに届かなかった。ウォールストリートが好調な決算になぜ(少なくとも今のところ)もっとポジティブに反応しなかったかは不明だが、Salesforceの長期的な将来は明るいと思われる。

画像: Justin Sullivan/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Facebookが分散ネットワーキング〜ルーティングソフトウェアOpen/Rをオープンソース化

Facebookはこれまでも、内製のさまざまなソフトウェアやハードウェアをオープンソースのコミュニティに寄贈してきた。そして、今日(米国時間11/15)またまた同社がオープンソース化したのは、同社のモジュール構造のネットワークルーティングソフトウェアOpen/Rだ。

Facebookは当然ながら、ネットワークの運用に関してFacebookならではの、ど外れたスケールのニーズを抱えている。何十億ものユーザーがリアルタイムでメッセージングし、絶え間なくコンテンツをストリーミングしている。そのため、独特の問題を数多く抱えるFacebookは、中でもとくに、ネットワークのトラフィックに関して、従来的なプロトコルでは間に合わないのでそれらを使わないルーティング技術が必要、と痛感していた。

Facebookの技術部長Omar Baldonadoは、こう説明する: “Open/Rは、分散ネットワーキングアプリケーションのためのプラットホームだ。それは、ネットワークの、さまざまな部分の上で動く。そしてそのために、これまでのルーティングプロトコルを使わずに、現代のさまざまなネットワークをプログラミングしコントロールする自由度をわれわれに与える”。

それは最初、FacebookのワイヤレスのバックホールネットワークTerragraphのために開発されたが、Facebookのネットワークバックボーンなどそのほかのネットワークでも使えることに、すぐに気づいた。Facebookのネットワーク本体の中でさえも、それは使える。

同社のトラフィックは常時きわめて大きいし、その条件も頻繁に変化している。そんなネットワーク上では、トラフィックをルーティングするための新しい方法が必要だった。“ネットワーク全体にわたるトラフィックの動的な条件を考慮に入れながら、アプリケーションごとに最良の経路を見つけたい(ルーティングしたい)、と思った”、とBaldonadoは語る。

しかし、社内だけでもそれだけの応用性があるのなら、パートナー各社やそのほかのネットワーク運用者、それにハードウェアのメーカーらは、このツールの能力をさらに拡張できるはずだ。このツールでは実際にJuniperやAristaなどのパートナーとすでに協働していたが、完全にオープンソースにすれば、デベロッパーたちが、Facebookが考えもしなかったことをその上に実装していくだろう。というわけでFacebookの技術者たちは、これをオープンソースにすることの将来性と、それがもたらす価値について、前向きに考えるようになった。

Facebookもそうだが、そのほかの大手Web企業も、ネットワーキングのソフトウェアやハードウェアをますます多くオープンソース化し始めている。最初は完全に自分たちのコントロールの下(もと)にソフトウェアを完成させ、そのあと、それをオープンソースにして、ほかの人たちの能力による改良を期待するのだ。

“このツールは、ネットワークの分散化〜非集積化(バラバラ化)という今および近未来のトレンドの一環だと思う。ハードウェアと、その上のソフトウェアの両方をオープンにすれば、それは誰にとっても利益になる”、とBaldonadoは述べている。

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今日のエンタープライズITは複雑多様な要素で構成、その全体的管理に挑戦するLightStepが$29Mを調達

アプリケーションのパフォーマンスを管理するツールを開発したLightStepが、2900万ドルの資金調達を経てついにステルス状態を脱した。

GoogleのエンジニアだったBen Sigelmanが創った同社は、エンタープライズの全域にわたる各種アプリケーションの稼働状況をチェックする一連のソフトウェアツールを開発した。

LightStepの声明文によるとSigelmanはGoogleで、毎秒20億のトランザクションを分析できる分散モニタリングシステムDapperの開発とオペレーションを担当した。また彼は、Cloud Native Computing FoundationのOpenTracingスタンダードの開発にも関与した。

同社の顧客リストすなわち初期からのユーザーにはDigital Ocean, Github, Twilio, Yextといったそうそうたる顔ぶれが名を連ね、それに感銘したSequoiaが最新の2000万ドルの投資に踏み切った。

またそれ以前には、Redpointと最初のシード段階の支援者Cowboy VenturesやHarrison Metalから750万ドルを調達している。

2015年に創業されたLightStepは、企業全体にわたって今生じているトランザクションのすべてをリアルタイムで追跡する能力を誇っている。それらのトランザクションは通常、数ダースものさまざまなサービスが、彼らのAPIで絡み合うことによって遂行されている。

同社のソフトウェアは分散的なアーキテクチャを持ち、データを、Sieglmanらが作ったOpenTracingスタンダードのネイティブな統合からか、または、そのほかのトレーシングコミュニティのオープンソースプロジェクトから取り込む。一点に集中化されているさまざまなアプリケーションやサービスのデータロギングや、またEnvoy, linkerd, haproxyといったメッシュ技術やロードバランサーからのデータも、モニタリングと分析の対象になる。

同社の統計エンジンが異状を見つけると、データフローのリプレイ、記録、そしてエンドツーエンドのトレースが行われる。それによって、それらのデータに触っているさまざまなサービスにまたがるコンテキストが提供され、問題の所在を突き止めることができる。

同社Enterprise Strategy GroupのアナリストDaniel Condeは、声明文の中でこう述べている: “今日のエンタープライズが日々実際に運用しているアプリケーション(‘プロダクションアプリケーション’)は、一つの鋳型で作られてはいない。マイクロサービスの集合があるかと思えば、モノリシックなアプリケーションもある。そしてデプロイメントは、ベアメタルのサービスとハイブリッドクラウドのプラットホームが混在している。これだけ多様なものが共存して互いに統合し合うことが、今日のエンタープライズのニーズであり、したがって現代のアプリケーションパフォーマンスモニタリングは、これらさまざまなモデルのすべてから、エンタープライズ全体にわたるデータを集めてくる必要性がある”。

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OpenStack FoundationがOpenStack以外のオープンソースプロジェクトもホストする方向へ

【抄訳】
最近の数年間で、Cloud Native Compute FoundationやCloud Foundry Foundationなど、オープンソース関連の団体がいくつか立ち上げられた。これらの多くはLinux Foundationの一員になっているが、その仲間に加わっていない大きなオープンソース団体のひとつが、OpenStack Foundationだ。ここは、少なくともこれまでは、クラウドコンピューティングプラットホームOpenStackの開発にフォーカスしてきた。

しかし、時代は変わりつつある。隔年で開催されるOpenStack Summitの最後の数日につき合ってみて明らかに感じたのは、OpenStack FoundationがOpenStackプラットホーム以外のものにも目を向け始めていて、将来この組織はLinux Foundationに似たものになるのではないか、という感触だ。ただしそのビジョンはもっとシンプルで、現在の関心に沿ったオープンなインフラストラクチャにフォーカスするだろうが、それらは必ずしもOpenStackプラットホームの一部である必要はなく、プロジェクトも今のガイドラインに縛られないものになるだろう。

OSFのこの多様化路線がうまくいけば、Linux FoundationやApache Foundationなどと並ぶ、大きくて総合的なオープンソース団体がもう一つでき、彼らのOpenStack関連の知識と経験がコミュニティをサポートしていくことになって、オープンソースのコミュニティに変動をもたらすだろう。またOpenStack Foundationが従来ならLinux Foundationに行ったようなプロジェクトもホストするようになると、二者間に興味深い競合関係が生ずるかもしれない。

その初期からOpenStackを採用しているMirantisの協同ファウンダーでCMOのBoris Renskiによると、OSFのこの新しい動きを引っ張るにふさわしい人物は、CTOのMark Collierと事務局長のJonathan Bryce、そしてマーケティングとコミュニティサービス担当のVP Lauren Sellだ。Renskiの見解では、OSFが多様なプロジェクトを手がけていくのは良いことであり、OpenStackが安定期に入りつつある現在は、新しいことに取り組む時期としても適している、と。

では、OSFが今後新たにフォーカスしていくべきテーマは、なんだろうか? Bryceによると、今計画に上(のぼ)っているのは、データセンターのクラウドインフラストラクチャ、コンテナのためのインフラストラクチャ、エッジコンピューティング(Collierがとくに関心を持っている)、継続的インテグレーション/継続的デリバリ、そして可能性としては機械学習とAIの分野だ。

Linux Foundationが主にLinuxユーザーの便宜のためにさまざまなプロジェクトを傘下に収めてきたのと同様、OSFも主にOpenStackでメインのシステムを構築しているユーザーの便宜を図っていく。だから団体の名称はOpenStack Foundationのままでよい、とBryceらは考えている。

【後略】

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