ドミノ・ピザがヒューストンで無人のピザ配達を開始、自律配達車両スタートアップNuroと提携

4月12日の週から、米テキサス州ヒューストンでDomino’s(ドミノ・ピザ)にピザを注文する顧客の一部は、人間と接することなく商品を受け取れるようになる。

米国時間4月12日、Domino’sは自律配達車両スタートアップのNuroと提携し、顧客はNuroのR2ロボットから家の前でピザを受け取る方法を選べるようになると発表した。

Domino’sのシニアVP兼最高イノベーション責任者のDennis Maloney(デニス・マロニー)氏は発表の中で「我々には自律配達の分野で学ぶべきことがまだたくさんあります。このプログラムによって我々はお客様の反応、お客様とロボットとのやりとり、ストア運営への影響をもっと理解できるようになるでしょう」と述べた。

いずれかの時点で、Domino’sのウェブサイトでWoodland Heightsストアに注文するとR2を選べるようになる。R2はレーダー、360度カメラ、赤外線画像により動きを制御する。ロボットの場所や、ピザを受け取るためにロボットのタッチスクリーンに入力するPINコードは注文者にテキストメッセージで通知される。

コロナ禍で非接触の自律食品配達業界は急速に成長し、現在Nuroはこの分野のリーダーになりつつある。

Nuroの共同創業者で社長のDave Ferguson(デイブ・ファーガソン)氏は発表の中で「Nuroのミッションはロボットで生活を向上させることです。我々の自律配達ロボットをヒューストンでDomino’sのお客様に使っていただけることになり、たいへんうれしく思っています。お客様の感想を楽しみにしています」と述べた。

ヒューストンの公道で電動の無人自動運転車両が料理を配達するのはこれが初めてだ。住宅地であるWoodland Heightsはヒューストンでは最も古い歴史的地区の1つで、高速道路のI-45とI-10にはさまれている。この街のDomino’sはメインの大通りであるHouston Avenueに面しているため、このテクノロジーのテストをするには相当難しい場所だ。

Nuroは元々、Domino’sとの提携およびヒューストンでのテストを2019年に発表していた。同年には、ヒューストンとアリゾナ州フェニックスでスーパーのKrogerの配達サービスを開始した。2020年末にはカリフォルニアの公道でのテストが許可され、ウォルマートやCVSなどのパートナーから商品を配達している。Nuroは米運輸省から無人運転車両に関する安全規定適用除外を承認された初の企業だ。

Nuroがレストランの配達に大規模に進出するのはDomino’sが最初のようだが、間違いなくこれが最後ではないだろう。NuroはシリーズCで5億ドル(約547億円)を調達したと発表したばかりで、メキシコ料理チェーンのChipotleがこのラウンドで出資した。イノベーションにフォーカスするトヨタ自動車の子会社Woven Planetの投資部門であるWoven Capitalも出資した。

関連記事:Nuroの無人運転配達車がカリフォルニア州初の商業運用許可を獲得、2021年早々にもサービス開始予定

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画像クレジット:Nuro

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Kaori Koyama)

その求人情報からNYCとロンドンの電動キックスクーターパイロット参加企業が見えてきた

Twitterでのつぶやき、そして求人情報からLime(ライム)やSuperpedestrian(スーパーペデストリアン)といった企業が、スクーターシェアリングサービスにとって最後のフロンティアであるロンドンとニューヨーク市でのサービス展開の準備を進めていることがうかがえる。

求人情報をチェックすると、企業のウェブサイトやLinkedInでLimeやDott(ドット)がロンドンでのサービス開始を準備していて、一方でLimeとSuperpedestrian、そしておそらくSpin(スピン)もニューヨークでの立ち上げを準備している。求人情報はこうした企業が切望している事業許可を与えられたという決定的な証拠ではないが、どの企業が許可を勝ち取りそうかは示している。

都市居住者が社会的距離が取れる移動手段を模索していた2020年夏に、ロンドンの交通当局とニューヨーク市議会はそれぞれ電動スクーターのパイロット事業を承認した。ロンドンのパイロット事業は2021年初めに開始するはずだった。そしてNYCはもともと3月1日に立ち上げられる予定だった。しかしいずれの都市もどの企業に許可を与えるかまだ決まっていない。情報筋によると、ロンドンは5月6日の市長選が終わるまで発表しないようだ。NYCの交通当局はコメントを却下した。

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ロンドンではDott、Tier、Lime?

ロンドンのパイロット事業では、Dott(ドット)とLime、そしておそらくTier(ティア)が展開することになるとの憶測がある。DottとLimeのウェブサイトにある情報、LinkedInプロフィール、そして採用ページでロンドンのポジションで募集をかけている。業界情報筋はTechCrunchに、すでになくなっているが、Tierのホームページにはロンドンでの求人が掲載されていたと話した。

英国でまだ事業を展開していないDottは「英国でゼロから事業を立ち上げる」ための英国居住のオペレーションマネジャーを募集している。同社はまた「Dottの英国マーケットのための声」となる公共政策マネジャーも募集している。

Dottのウェブサイトにあるサービスエリアを示すマップでは、ロンドンのところに小さな黄色い旗が立っている。旗をクリックすると「ページが見つかりません」のエラーメッセージが表示される。

世界をあっという間に席巻しているようにみえるモビリティ企業Limeは、すでにJumpの電動自転車という形態で昨夏からロンドンで事業を展開している。LinkedInの新たな求人からするに、Limeは事業拡大の準備をしているようだ。

関連記事:需要増を受けLimeがJumpの電動自転車をロンドンに再配備

同社のLinkedInページではロンドン拠点のゼネラルマネジャーを募集していて、業務には「英国のマーケット成長を支える運用インフラ」の構築・実行がある。この求人は1週間前に投稿され、同社は積極的にLinkedInで人材募集をかけている。

約1カ月前に、Limeはロンドン拠点のオペレーション・マネジャーの職の募集をかけ、まだリクルート中のようだ。

LinkedInでの求人からするに、Voiもまだパイロット事業のレースに残っているかもしれない。4月8日に同社はロンドンで6カ月限定のアンバサダーとスーパーバイザーの募集を追加した。これは現場での役割のようで、その職務が一時的であるというのはロンドンでの1年間のパイロット事業と関係があるかもしれない。同社が展開している英国の他の都市を管理するためにロンドンに置く人材を探しているだけ、ということもあり得る。

Birdはすでにロンドンのオリンピック公園で夏からサービスを展開しており、道路や歩道でのスクーター使用に関するロンドンの規制を変更するためのロビー活動を積極的に行った。オリンピック公園で展開しているためにBirdのサービス展開マップはロンドンを目立たせているのかもしれないが、同社がロンドンでのオペレーションと英国全体のオペレーションを管理するオペレーションアソシエートを募集していることがことをややこしくしている。

ニューヨークはLime、Superpedestrian、その他

画像クレジット:Lime

LimeはNYCにすでに馴染みがある。同社jは電動自転車をクイーンズのロックアウェイで展開してきた。そして現在、メカニックオペレーションスペシャリストの2つの職種で求人をかけている。Lime電動スクーターのマネジメント、メンテナンス、展開・回収と業務説明にはある。

マサチューセッツ州ケンブリッジ拠点のSuperpedestrianは自社ウェブサイトとLinkedInで4件の求人をかけている。NYC居住を理想とするCEO補佐役を探している。また、ゼネラルマネージャーの職も募集していて、この職には「ニューヨークとニュージャージーにおけるスクーターシェアリングを成長・成功させること」が求められている。

LinkedInでSuperpedestrianはNYCでの2つの職種で求人を出している。まず1つが1週間ほど前に投稿された、スクーター充電や安全点検、スクーターの展開、スクーターの修理・組み立てを管理するオペレーションアソシエートだ。もう1つが1カ月前に投稿されたスクーターメカニックだ。しかし公平を期していうとこの求人には「当社がNYCでのオペレーションを許可された場合」という注意書きが含まれる。

Spinもまた(1週間ほど前)ニューヨーク拠点のオペレーション人材の求人を出した。職務は「Spinの日々のオペレーション、ドライバーとメカニクスの管理、高効率なオペレーションチームの構築」だ。Ford傘下のSpinがNYCのパイロット事業の認可を得たことを正確に示してはいないが、募集をかけている職は立ち上げ業務に関わっているようにみえる。求人情報はまた、新規採用がSpin車両の構築・展開につながっていることをにおわせている。

欧州では大規模に展開しているが米国では今からというVoi(ボイ)はNYCが米国参入の足がかりとなることを望んでいる。同社はNYCの業務の求人を一切出していないが、求人情報にある勤務地のドロップダウンメニューにはNYCが含まれている。

最後にBirdだが、同社はニューヨーク勤務の求人2件をLinkedInに出し、推測の混乱に輪をかけている。4週間前に投稿され、今も積極的採用をかけているゼネラルマネジャーの職はかなりニューヨークに関われる人物を求めているようだ。4月7日に投稿されたオペレーションアソシエートの職務がNYCでの勤務になるのかどうかについては、やや曖昧なものとなっている。

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画像クレジット:Photo by TOBIAS SCHWARZ/AFP via Getty Images / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

ホンダとベライゾンがドライバーの安全性向上に5Gとエッジコンピューティングの活用を検討

Honda(ホンダ)とVerizon(ベライゾン)は、5Gとモバイルエッジコンピューティング(MEC)が、現代のコネクテッドカーと将来の自動運転車の安全性向上にどう役立つかについて検証を行っている。

米国時間4月8日に提携を発表したこの2つの企業は、ミシガン大学にあるコネクテッドカーと自動運転車のための試験場Mcity(エムシティー)で、さまざまな安全シナリオを試験中だ。このベンチャーの目的は、5G接続とエッジコンピューティングの組み合わせをどのように使えば、自動車、歩行者、道路インフラ間の高速通信が可能になるかを研究することにある。要するに、高速通信により、衝突や危険を回避してより安全なルートを自動車が判断できるようにすることだ(TechCrunchはVerizonのVerizon Mediaの所有している)。

5Gのテストは、まだ予備研究の段階であり、ホンダはこの新技術を使った機能を製品に実装する予定はない。Verizonは、2021年中に少なくとも4つの都市で5G対応車の公道テストを計画していると、同社技術開発上級マネージャーでありこのプロジェクトのリーダーの1人Brian Peebles(ブライアン・ピーブルス)氏は話している。

この提携事業は、ホンダが2017年から開発を進めているSAFE SWARM(セーフスウォーム)車載AI技術の上に成り立っている。これには、C-V2X(Cellular Vehicle-to-Everything)通信が利用されている。その名が示すとおり、C-V2Xは、クルマとその他の道路利用者との通信を行うための標準技術だ。

以前にも、DSRC(Dedicated Short Range Communications)という同様の通信技術があったが、これは基地局を介してクルマ同士の通信を行うというものだった。一方、V2Xと5Gの組み合わせには、デバイス間の直接通信が可能になるという優位性がある。もちろん、FCC(米連邦通信委員会)も承認している。

「そもそも、V2Xは車両同士が対話をするものです」と、ホンダ先進技術研究部門の研究グループリーダーEhsan Moradi Pari(エサン・モラディ・パリ)博士はTechCrunchに話してくれた。「車両は、互いに現在位置、速度、その他のセンサー情報を提供し合い、各車両は他車との衝突しないかどうかといった脅威の査定を行います。この(5GとMECという)技術により、私たち全員が自身の情報をネットワークに提供することで、事故の恐れがないかどうかをネットワークが教えてくれるようになります」。

ホンダとVerizonは、この技術なら車載コンピューターよりもずっと速く通信を処理できるという前提に立っている。クルマに搭載されている非力なコンピューターにネットワーク処理を任せるのではなく、コネクテッドカー、歩行者、道路インフラで生成された情報を5Gネットワークに送信する。そうして、ネットワークのエッジで(つまりクラウド内ではなく)コンピューター処理をリアルタイムで行わせる。

センサーとソフトウェアに依存した車両では、ドライバーが何かにぶつかりそうになったと感知してからブレーキをかけることになるが、MECの場合は道路のずっと先で何が起きているかを確認しコミュニケーションをとることで、ほぼ未来を予測できる。そこが利点だ。

ピーブルス氏によれば、通信速度は際立っており、Verizonの5GネットワークからMECとの間の往復の遅延テストでは、50ミリ秒以下という成績が得られたという。

Verizonとホンダがテストを行った安全シナリオには、信号無視もあった。彼らは、スマートカメラ、MEC、V2Xソフトウェアからのデータを使うことで、赤信号を無視して突っ込んでくる車両を感知し、視覚的な警告メッセージをその交差点に近づきつつある他の車両に送ることに成功した。同様のシナリオを用いて、建物の陰に歩行者が隠れていることや、大音量で音楽をかけていてサイレンが聞こえないドライバーに緊急車両の接近を知らせるテストも行った。

「すべての道路利用者間の確実なアルタイム通信は、自動運転環境に極めて重要な役割を果たします」とパリ氏。「こうしたネットワーク接続を用いた安全技術により、潜在的な危険をはらむ状況をリアルタイムで感知し、ドライバーや自動運転システムに警告を発することが可能になります」。

この研究の初期段階には、人が運転する車の安全性を向上させる技術も含まれているが、ホンダとVerizonの提携関係は、将来の自動運転車の5G利用に向けた下地を作ることになる。このテストでコネクテッドカーの安全性が証明されたなら、やがてはより効率的なネットワークが生み出され、交通渋滞の緩和と、ひいては大気汚染の減少につながっていくはずだ。

「私たちの第1の目的は、クルマの安全と人の安全の向上です」とピーブルス氏はTechCrunchに語った。「米国内だけでも、年間4万2000人以上が交通事故で亡くなり、200万人が怪我をしています。人間が運転する時代から進化するためには、テクノロジーの重要性はさらに高まります。その移行は、安全で総合的なやり方、つまりすべてのものが協調して動くとった方向で進めなければなりません」。

現在公道で走行テストが行われている自動運転車は、5Gもエッジコンピューティングも必要としないものだ。自動運転車のメーカー各社も、5Gの可能性に注目しているが、彼らは今の技術をベースに車両を開発している。

5GとMECの組み合わせには、課題もある。これほどのレベルの相互接続性は、ハイウェイ全般と、すべての交差点にセンサーを配置して初めて機能する。5G対応の車両やデバイスは相互通信が可能だが、歩行者や道路インフラとコミュニケートするためには、スマートカメラがそれらの存在に気づき、その情報をネットワークで共有できなければならない。しかも、センサーは完ぺきではない。

これには巨大なインフラ投資が必要であり、さらに、必要なあらゆるセンサーの設置には、州、都市、地方自治体の住民の支持と協力が欠かせない。だが、1つのユースケースとして中国に目を向ける人もいるだろう。中国では、5Gネットワークへの早急な移行を国策にしており、同国の多くの自動運転車メーカーは、開発には、5G通信と高度な計算能力が極めて重要であることに気づいている。

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:金井哲夫)

半導体チップ不足によりGMがさら多くの工場を操業停止に

General Motors (ゼネラルモーターズ)は、インフォテインメント、パワーステアリング、ブレーキシステムなど、自動車で無数の動作を制御するために使用される半導体チップが引き続き不足しているため、より多くの工場を休止させることにした。すでに操業停止となっている北米の他の施設でも閉鎖を延長している。

GMは米国時間4月8日、8つの組立工場が一時的に閉鎖されていることを明らかにした。この一時的な工場閉鎖については、CNBCが最初に報じている。TechCrunchが問い合わせたところ、GMはこの閉鎖を認め、ミズーリ州のウェンツビル組立工場では来週から生産を再開する予定だと付け加えた。

「GMは、利用可能なすべての半導体を活用して、フルサイズトラックやSUVなど、最も人気があり需要の高い製品の製造・出荷をお客様に向けて続けています」と、広報担当者は電子メールに書いている。「私たちは、これらの工場で失われた生産量を可能な限り補うことに力を尽くしています」。

世界的な半導体チップ不足が長引く中、GMやフォードなどの自動車メーカーは工場を休止し、SUVのような利益率の高いクルマの生産にリソースを振り分けざるを得ないでいる。GMによれば、フルサイズトラックやフルサイズSUVの工場では、チップ不足による操業停止やシフト削減は行っていないという。また、自動車メーカーは、特定の部品を使わずにクルマを製造する方策も取るようになっている。例えば、GMは2021年3月、一部のピックアップトラックに、最大限の燃費向上を可能にするフューエルマネジメントモジュールを装着せずに生産すると発表した。

自動車メーカー各社は、この部品不足が2021年の業績にどのような影響を与えるかについてのガイダンスを発表している。フォードは、半導体不足のシナリオが2021年上半期まで延長された場合、コスト回収や下半期における一部の生産補填を差し引いても、10億ドル(約1093億円)から25億ドル(約2732億円)の収益減少になる可能性があると述べている。

GMは2021年2月、半導体の世界的な供給不足により、2021年の生産、収益、キャッシュフローに短期的な影響が出ると発表した。

Cadillac(キャデラック)XT5とキャデラックXT6、GMC Acadia(アカディア)を製造しているGMのテネシー州スプリングヒル組立工場は、4月12日から2週間にわたって操業を停止する予定だ。GMは4月19日から始まる週に、メキシコのラモス組立工場におけるChevrolet Blazer(シボレー・ブレイザー)の生産と、ミシガン州ランシングデルタタウンシップ組立工場でのChevrolet Traverse(シボレー・トラバース)およびBuick Enclave(ビュイック・エンクレーブ)の生産ラインを一時的に停止する。

GMはまた、ミシガン州ランシンググランドリバー組立工場の休業を4月26日の週まで延長した。キャデラックCT4とキャデラックCT5およびChevrolet Camaro(シボレー・カマロ)を生産しているこの工場は、3月15日から操業を停止している。

同自動車メーカーは、カナダのCAMI組立工場と、Chevrolet Malibu(シボレー・マリブ)やキャデラックXT4を生産しているカンザス州フェアファックス組立工場の操業停止を5月10日まで延長すると発表した。GMによると、両工場とも2月8日の週から停止しているという。

韓国にあるGMの富平2組立工場は2月8日から生産量を半分に減らしており、ブラジルのグラヴァタイ工場では4月と5月の間は休業期間となっている。

関連記事:フォードが世界的なチップ不足を理由に特定の部品を使わずにF-150トラックを生産

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Polestarが2030年までに温暖化ガスの排出量をすべて見直して初の「クライメートニュートラル」なEV開発を目指す

Volvo(ボルボ)からスピンアウトしたスウェーデンのEVブランドPolestar(ポールスター)は中央ヨーロッパ時間4月7日、2030年までに初のクライメートニュートラルな自動車を開発するという「ムーンショット・ゴール」を発表した(moonshot=困難だが実現する価値のある壮大な取り組み)。そのためには、植林などの一般的に行われているオフセット手段ではなく、新型EVの製造方法を根本的に変えていくという。

それは、材料の調達から製造、さらには車両のエネルギー効率の向上まで、サプライチェーンのあらゆる要素を見直すことを意味する。

Polestarのサステナビリティ部門の責任者であるFredrika Klarén(フレデリカ・クラレン)氏は、TechCrunchのインタビューに応じ次のように述べた。「当社は、今日多くの人が頼りにしているようなオフセットではなく、排ガスを削減し、除去することでこれを実現しようとしています。オフセットは憂慮すべき戦略だと考えています。製品を生産する際の排出量をオフセットできるかどうか、科学的な裏付けは実際ありません」。

直接的な成果となるのは「Polestar 0(ポールスター0)」と呼ばれる新型車だが、製造工程を全面的に見直す必要があり、最終的にはPolestarの他のモデルにもプロセスが適用される可能性がある。Polestarの全車両が2030年までにクライメートニュートラルになることはないが、同社と親会社のVolvoは、2040年までにPolestarを含む全事業でクライメートニュートラルになるという目標をすでに設定している、とクラレン氏は語った。

Polestarの現行モデルであるPolestar 1(ポールスター1)とPolestar 2(ポールスター2)は、いずれも中国で生産されている。Polestar 0の詳細はまだ決まっていないが、同様に中国製となることを希望しているとクラレン氏は述べた。中国はいまだに石炭への依存度が高いものの、持続可能な技術や製造業は大きく発展していると同氏は指摘した。

「もし私に投票権があるのなら中国での生産を継続しますが、そうは言ってもPolestar 0はどういったソリューションを用いるのかまだ特定されておらず、どこで生産するのか、どんな材料を取り入れるのかなど、以前は考えられなかった新しい方法で考える必要があります」とクラレン氏は述べている。

また、内部システムも定まっていない。Volvo CarsとPolestarの親会社であるGeely AG(ジーリー、吉利汽車)は独自の内部コンピューター・バッテリプラットフォームを開発しているが、Polestarの新モデルにこのシステムを採用するかどうかは決まっていない。

EVの製造工程の中で、クライメートニュートラルに移行するために最も困難な部分は素材であり、具体的にはアルミ、鉄、バッテリー部品がそれにあたると同氏は語った。

「我々は、生産にともなう排出物に取り組む必要があります」と彼女は説明している。鉄やアルミ、そしてリチウムバッテリーに使われる基本的な材料を生産する際の環境負荷は依然として大きい。

Polestarはこの新型車の発表と同時に、Polestar 2および今後発売されるすべてのモデルのカーボンフットプリントを明示するという製品サステナビリティ宣言も発表した。

PolestarのCEOであるThomas Ingenlath(トーマス・インゲンラート)氏は声明の中でこう述べた。「オフセットは言い逃れでしかありません。完全にクライメートニュートラルなクルマを作るために自分たちを奮い立たせることで、当社は今日の可能性を超えることを余儀なくされます。ゼロに向かってデザインするためには、すべてを疑ってかかり、革新し、急成長技術に目を向けなければなりません」。

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タグ:Polestar電気自動車二酸化炭素Volvoカーボンオフセット

画像クレジット:Polestar

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:TechCrunch Japan)

飛行モビリティWisk Aeroが特許侵害と企業秘密盗用の疑いでArcher Aviationを提訴

Kitty Hawk(キティ・ホーク)とBoeing(ボーイング)の合弁会社で、飛行モビリティを手がけるWisk Aero(ウィスク・エアロ)は、米国時間4月6日、Archer Aviation(アーチャー・アビエーション)を相手取り、特許侵害と企業秘密の横領を主張する訴訟を起こした。

Wisk Aeroは訴状の中で、Archer Aviationが機密情報と知的財産の「大胆な窃盗」を行ったと主張している。この訴訟では、2021年2月にArcher Aviationが初めて発表した電動航空機のデザインが、Wisk Aeroの潜在的なデザインの1つをコピーしたものであると指摘。そのデザインは2020年1月に米国特許商標庁に提出されており、類似点があまりにも多く、偶然の一致ではないとWisk Aeroは主張している。

さらにWisk Aeroは、Archer Aviationが同社の元エンジニア10名を雇用した後に行われた捜査で、そのうちの1名が退職前に数千ものファイルを密かにダウンロードしていたことが明らかになったと主張。別のエンジニアもファイルをダウンロードしていたと訴えている。

盗まれたファイルに含まれる情報には、システム設計、テストデータ、航空機のデザインなどが含まれていると、Wisk Aeroは4月6日に投稿したブログ記事で述べている。

「訴状で説明しているとおり、Archerが公開したデザインには、Wiskの長年による実験とモデリングに基づいた広範な空力試験と評価データに関する内部知見が反映されています」と、同社はブログ記事で述べている。「航空機全体のデザインが類似していることから、航空機の推進機関、電力管理、航空電子工学、飛行制御、製造方法に関連した特徴を含む、さらに詳細な設計上の特徴を、Archerが利用していることは明らかです」。

Archer Aviationは2021年、特別買収目的会社であるAtlas Crest Investment Corp.(アトラス・クレスト・インベストメント)との合併を2月に発表し、時価総額が38億ドル(約4171億円)に達するなど、いくつかの大きな勝利を掴み取っている。同じ2月に、このカリフォルニア州パロアルトを拠点とするスタートアップ企業は、顧客および投資家としてUnited Airlines(ユナイテッド航空)から10億ドル(約1100億円)の注文を獲得している。

関連記事:eVTOL開発のArcherがユナイテッド航空から受注、SPAC経由で上場も

Archer Aviationの広報担当者は、TechCrunchに宛てたメールで次のように述べている。「Wiskが、従業員数名の離職の原因となったビジネス上の問題から目を逸らすために、訴訟を起こすことは遺憾です。原告がこれらの問題を提起したのは1年以上前ですが、徹底的に調べた結果、Wiskの独自技術がArcheに渡ったと信じるに足る理由はありませんでした。私たちは精力的に自らを弁護するつもりです」。

また、同社の広報担当者は、次のように続けた。「当社では、政府による調査と、ある従業員に対して出された捜査令状に関連して、その従業員を休職させました。この捜査は、その従業員が当社に入社する前の行為に焦点を当てていると、我々は考えています。Archerと、当該従業員が一緒に働いていた他の3名の従業員も、この捜査に関連した召喚状を受け取っており、全員が当局に全面的に協力しています」。

この刑事捜査のニュースを受けて、Wisk Aeroの広報担当者は「Archerがこの件に関する刑事捜査を開示したことは承知しており、当社は政府に全面的に協力しています。現時点ではそれ以上のコメントはありません」と述べた。

この訴訟は、カリフォルニア州北部地方裁判所に、ケースNo.5:21-cv-02450として提訴されている。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

GMが航続距離640km超の電動ピックアップ「シボレー・シルバラード」を生産へ

2025年までに世界で電気自動車(EV)100万台超を販売する計画を進めているGM(ゼネラルモーターズ)は、ラインナップに電動のChevrolet Silverado(シボレー・シルバラード)ピックアップトラックを加える。

GM社長のMark Reuss(マーク・ルース)氏は米国時間4月6日、電動でフルサイズのシボレー・シルバラードピックアップは同社のUltiumバッテリープラットフォームをベースとし、フル充電時の航続距離は400マイル(約643キロメートル)超だと明らかにした。これはGMの推定距離であり、正式なEPAの数字ではないことは留意しておくべきだろう。

GMはフルサイズのピックアップを消費者と商用の両マーケット向けのものと位置づけている。シルバラードEVピックアップはさまざまなオプションやコンフィギュレーションで提供される、とルース氏は話した。

「特に初期においてEVマーケットの重要な部分であるフリートと商業分野の潜在可能性にかなり興奮しています」とルース氏はデトロイトのハムトラックにある同社の組立工場Factory ZEROでのプレゼンテーションで述べた。

電動のシルバラードはFord(フォード)が将来販売する電動F-150と競合する。そして新規参入のRivian(リビアン)は商用マーケットをターゲットとしないが、同社の電動R1Tピックアップでこの分野に参戦する。RivianはR1Tを2021年夏発売する予定だ。

今回のニュースは、GMのUltiumバッテリープラットフォーム、商用客を専門とする(まずFedExで開始)の新たな部門BrightDropの立ち上げ、電動・コネクテッドプロダクトのエコシステムなど、過去18カ月にあった一連の発表に続くものでもある。BrightDropは、EV600という推定航続距離250マイル(約402km)の電動バンと、EP1と命名されたポッドのような電動パレットの2つのメーンプロダクトで事業を開始する。

GMは2020年、EVとAVのプロダクト開発に270億ドル(約2兆9640億円)を投資すると約束した。ここには2021年に注入する70億ドル(約7684億円)が含まれ、2025年までに世界で30種のEVを発売し、うち3分の2を北米で展開する計画だ。

電動ピックアップトラックのシルバラードはミシガン州デトロイト・ハムトラックにあるFactory ZERO組立工場で生産される、とルース氏は話した。週末に発表されたGMC Hummer EV SUVも同じ工場で生産されることも明らかにした。GMは2020年10月にデトロイト・ハムトラック組立工場の名称を「Factory ZERO」に変え、その後さまざまなタイプの電動トラックやSUVを生産するために同工場に22億ドル(約2415億円)投資すると発表した。

450万平方フィート(41万8000平方メートル)に拡大し、全面的改修と設備一新が行われている同工場ではGMC Hummer EVピックアップと、シェアリング自動運転専用の電動車両Cruise Originも生産される。GMC Hummer EVピックアップの生産は2021年後半に始まる予定だ。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

ティム・クック氏が自動運転技術とApple Carについてヒントを出す

Apple(アップル)のCEOであるTim Cook(ティム・クック)氏は、米国時間4月5日に公開されたインタビューで、大きな期待を集めるApple Carと、その重要な機能となるであろう自動運転技術の方向性について遠回しに語った。

「自動運転そのものがコア技術だと私は考えます」とクック氏はポッドキャスト「Sway」(スウェイ)でKara Swisher(カラ・スウィッシャー)氏のインタビューに応えて話した。「一歩下がって見れば、このクルマ、いろいろな意味でロボットです。自動運転車はロボットなのです。そのため自動運転では、いろいろなことができます。そこに、Appleがするべきことが見えてきます」。

多くを語らないよう言葉を控えるクック氏は、Appleが自動車を生産するのか、あるいはその車載技術を開発するのかというスウィッシャー氏の質問には正面から答えなかった。ただ同氏は、Project Titan(プロジェクト・タイタン)は中間地点に達していることをほのめかした。

「私たちは、ハードウェアとソフトウェアとサービスを統合して、その交差点を探し出すことを身上としています。そこに魔法が起きるからです」とクック氏。「そして私たちは、そこに関わる主要技術をぜひとも手にしたいのです」。

これに対してスウィッシャー氏はこう尋ねた。「よろしければ、自動車に関してその点をお聞かせ願えませんか。自動車のことが知りたいのです」。

私も知りたい。

マイクロモビリティー業界では、電動スクーターは車輪がついたiPhoneみたいなものだと考える人間が多い。だが、Apple Carは、もっと実質的に車輪つきiPhoneになるはずだ。Appleは、ハードウェアとソフトウェアのすべてを所有することでよく知られている。そのため、Apple Carの開発のためにAppleのエンジニアが自動車メーカーと密接に作業を進め、いつかその中間業者を排除して自分たちが自動車メーカーになったとしても、別段驚きはしない。

いわゆるProject Titanは、2019年の大量一時解雇のために、一般の目に触れる前に頓挫する危機に瀕しているかに見えた。しかし、最近の報告によれば、プロジェクトは現在も健在で、2024年までに自動運転電気乗用車を生産する予定に変わりはないという。

関連記事:「アップルカー」の噂が再燃、2024年発売を示す新たな報道

2021年の初め、AppleとHyundai(現代自動車)傘下のKia(起亜自動車)は、ジョージア州ウェストポイントにあるKiaの工場でAppleブランドの自動運転車を生産するための契約を間もなく締結するとCNBCが伝えた。AppleがHyndaiに興味を示している件に詳しい情報筋は、Appleは、クルマに搭載されるソフトウェアとハードウェアの主導権を握らせてくれる自動車メーカーと提携したいのだと聞かせてくれた。

この契約は合意に達することなく、2021年2月に交渉が打ち切られたとを複数メディアが伝えている。しかし、Appleは日産などの自動車メーカーや、さらにはスタートアップも含むサプライイヤーと、以前から繋がりを作っているなど、Appleとその計画に関する大量の噂や報道が、それで止まることはなかった。

Apple Carがどのようなかたちになるかはまだ不透明だが、ロボタクシーや配送トラックではなく乗用車ということで、Tesla(テスラ)などと競合することになるのだろう。

「彼が作り上げた企業には大きな賞賛と尊敬の念を抱いていますが、イーロンに話を持ちかけたことはありません」とクック氏。「Teslaは、EV分野の主導権を確立しただけでなく、実に長い期間それを維持するという快挙を成し遂げました。なので私は、彼らを大変に評価しています」。

Project TitanはDoug Field(ダグ・フィールド)氏が率いている。彼はTeslaでエンジニアリング上級副社長を務め、Model 3発売の立役者となった人物だ。

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タグ:AppleTim Cook自動運転EVApple CarTesla

画像クレジット:David Paul Morris / Bloomberg / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:金井哲夫)

自動運転技術のオーロラがボルボと提携、高速道路を自律走行するトラックの製造を目指す

自動運転車のスタートアップ企業であるAurora Innovation(オーロラ・イノベーション)は、Volvo(ボルボ)と自動運転セミトラックを北米向けに共同開発することで合意したと発表した。

両社によると、この数年に渡る予定の提携は、ボルボの自動運転ソリューション部門を通じて行われ、同社の顧客が利用するハブ間の高速道路を自動運転で走行できるトラックの製造に焦点を当てたものになるという。オーロラが開発した、自動運転ソフトウェア、コンピュータ、センサー類を含む「Aurora Driver(オーロラ・ドライバー)」と呼ばれる技術スタックが、ボルボのトラックに搭載されることになる。

今回の発表は、オーロラがUber(ウーバー)の自動運転子会社を買収したことや、トヨタ自動車と自動運転ミニバンの開発で提携を結んだことに続くものだ。米国で販売されているクラス8トラックは、半数近くが3社のトラックメーカーによって占められているが、オーロラは現在、そのうちのPaccar(パッカー)とボルボの2社と提携している。

関連記事:Uberが自動運転部門Uber ATGを売却、購入したAuroraの企業価値は1兆円超え

「パッカーなど以前発表したパートナーとの提携は、ボルボとの協業と並行して継続します」と、オーロラの広報担当者はTechCrunchに語った。「パッカー初の自動運転技術パートナーとして、我々の提携の独自性は、安全のために運転手を乗せることなく運用できるパッカー初の大型トラックを製造して、それを市場に初めて投入し、広範囲に展開することを可能にします」。

オーロラによると、同社が買収したBlackmore(ブラックモア)とOURS Technology(アワーズ・テクノロジー)による周波数変調連続波LiDARは、長距離トラックの自動運転を解決する鍵になるという。LiDAR(ライダー)とは、light detection and ranging(光による検知と測距)レーダーのことで、自動運転システムに必要なコンポーネントと考えられている。オーロラの技術は、従来のTime of Flight(光の飛行時間から計測する)方式とは異なり、危険を察知してから停止または減速するのに十分な時間を確保できる長距離の認識が可能であることを売りにしている。

関連記事:自動運転のAuroraがLiDARスタートアップを買収、自動運転トラックの普及へ向け開発加速

今回の発表は、ボルボの自動運転車部門であるVolvo Autonomous Solutions(ボルボ・オートノマス・ソリューションズ)にとっても、大きな加速を示すものだ。同事業部にとって、これが自動運転トラックを公道に導入する初の案件となる。

2017年の創設以来、オーロラは急速に自動運転技術をリードする企業の1つとなり、Amazon(アマゾン)、Sequoia Capital(セコイア・キャピタル)、Greylock Partners(グレイロック・パートナーズ)からの支援を集めている。同社は、Uber、Tesl(テスラ)、Google(グーグル)の元幹部らによって設立された。

カテゴリー:モビリティ
タグ:自動運転Aurora InnovationVolvoトラック電気自動車

画像クレジット:Aurora

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Optimus Rideがパワースポーツ車両メーカーPolarisと提携、キャンパスから自律走行EVの商業化を目指す

自律型電動モビリティサービスを提供するOptimus Rideは、パワースポーツ車両メーカーのPolaris(ポラリス)と提携し、完全自律走行型のGEM電気自動車(EV)を市場に投入すると発表した。両社は、Optimus Rideの自律走行ソフトウェアとハードウェアを完全に統合した、Polaris GEM低速車両の新しいラインアップを販売していくという。

このマイクロトランジット車両は2023年後半に発売される予定で、企業や大学のキャンパス、複合施設など、ジオフェンスで囲まれた限定地域の環境で展開されることになる。

道路を走る電動の自律式車両は、Polaris GEMだけではない。Alphabet(アルファベット)傘下のWaymo(ウェイモ)、Uber(ウーバー)、Ford(フォード)、Motional、GMの子会社であるCruise(GMクルーズ)などの大企業が、都市部での配送やライドシェアサービスに使用する自律走行車に投資している。しかし、Optimus RideのCEOであるSean Harrington(ショーン・ハリントン)氏は、まず限定地域のジオフェンス環境でスタートし、技術が安全に開発されたら、それを外に拡大していくことにより市場の優位性を得られると考えている。

ハリントン氏はTechCrunchの取材に対し「マイクロトランジットは自律走行の出発点として最適であり、AV(自律走行車)が浸透し始める場所になるでしょう」と語った。「低速で局地的な環境の中で短距離の移動に集中することにより、自律型モビリティソリューションを最も迅速に展開し、優れた体験を提供できるようになります。一方ロボタクシーの場合は、技術的な課題が無限にあります」。

Optimus Rideは同社の自律走行技術を搭載したPolaris GEMを、ブルックリン、ボストン、カリフォルニア、ワシントンD.C.、北バージニアでのライドシェア事業、またはテストの一環として、すでに30台ほど導入している。ボストンのシーポートにある本社の近くにテストサイトがあり、マサチューセッツ州のSouth WeymouthにはUnion Pointと呼ばれる無人トラック環境がある。

近い将来、不動産大手であるBrookfield PropertiesのワシントンD.C.オフィスなど、現在のパートナーシップを継続的に拡大するとともに、新しい市場にも進出していく予定だという。またハリントン氏は、次のステップとして大学キャンパスを示唆した。

ブルックリン海軍工廠では、固定ルート上のマイクロトランジットで従業員が移動するためにPolaris GEMが配備されている(画像クレジット:Optimus Ride)

GEMは、来校者やキャンパス内の居住者、そして職員に、施設周辺の固定ルートとオンデマンドの移動手段を提供し、場合によっては地域の交通機関のハブや近隣地域への移動も可能にする。

「ワシントンD.C.のBrookfieldキャンパスでは、Opti Rideアプリを利用して、ユーザーが配車の予約をしたり、シャトルの座席を確保したりすることができます」とハリントン氏は語る。「そしてブルックリン海軍工廠では、固定スケジュールと固定ルートを運行しています」。

時速25マイル以下で走行するマイクロトランジット車両は現在4人乗りで、最前列には安全のためにオペレーターがいる。同氏によると、次世代のGEMでステアリングホイールとブレーキペダルを取り外せば、車両は6人乗りになるという。

現在のGEMも次世代のモデルもレベル4の自動運転が可能で、人間の操作を必要とせずに走行できる。ジオフェンスに囲まれた環境という制約はあるが、ハリントン氏によれば、これらの車両は環境を完全に認識して対応できるとのこと。

「この車両は、LiDARとコンピュータビジョンを活用した完全な知覚スタックを備えており、状況認識、物体の分類と追跡、フルプランニングとモーションコントロールのアルゴリズムにより、与えられた環境内で安全に動作することができます」とハリントン氏は述べている。「ジオフェンスの利点は、その場所のHDマップを開発し、トラフィックの観点から予想されるすべてのことを決定づけられることです。特定の環境で制約を受けるということは、いかなる状況でも動作することを期待された制約のない車両ではなく、高い安全性と性能レベルを迅速に実現することを意味します」。

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タグ:Optimus RidePolaris自律運転電気自動車

画像クレジット:Optimus Ride

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Aya Nakazato)

Phantom Autoの遠隔操作フォークリフトがGeodisとの提携でフランスに到着、自動運転車から物流にピボット

世界的な物流企業であるフランスのGeodis(ジオディス)は、数百キロ、時には数千キロ離れた場所にいる人間のオペレーターが遠隔操作できるフォークリフトの導入を促進するため、スタートアップのPhantom Auto(ファントム・オート)と提携した。

Geodisによると、この技術を利用することで、オペレーターの疲労やそれによる怪我を減らし、倉庫内にいる人間の数を減らすことを目的としているとのこと。遠隔操作式フォークリフトの使用は、従業員に取って代わるものではなく、働く場所を置き換えるものだという。都心から離れた場所で事業を展開することが多いGeodisにとって、このようなディテールは魅力的だ。

Geodisの西ヨーロッパ・中東・アフリカ事業CEOであるStéphanie Hervé(ステファニー・エルヴェ)氏は、TechCrunchの取材に対し、遠隔操作のフォークリフトを使用することで、身体障害者を含む新しい労働者グループを獲得することができると述べている。この意図は、労働者を他国にアウトソースすることではなく、地域内でより多くの労働者を見つけることにあるという。

このパートナーシップの下、Phantom Autoの遠隔操作ソフトウェアがKION Groupのフォークリフトに組み込まれた。フォークリフトには双方向オーディオが搭載されており、Geodisが「デジタルドライバー」と呼ぶ遠隔オペレーターは、倉庫内の同僚とコミュニケーションを取ることができる。

画像クレジット:Geodis

Phantom AutoとGeodisは、2年以上前からフランスのルヴァロワとルマンでパイロットプログラムを実施し、協力関係を築いてきた。今回の発表は、Phantom Autoにとって有益になり得る、より深い関係の構築を示している。

当初はフランス国内での展開を予定している、とエルヴェ氏は語った。今のところPhantom Autoのソフトウェアは、最初のパイロットサイトであるルヴァロワとルマンでフォークリフトの遠隔操作に使用され、向こう1年の間にフランス全土に拡大していく予定だ。Phantom Autoの共同設立者であるElliot Katz(エリオット・カッツ)氏によると、初期の2つの拠点で働くGeodisの従業員は、すでにフォークリフトを遠隔操作するトレーニングを受けているという。

Geodisのフットプリントはフランス国内にとどまらない。同社は、120カ国に約16万5千の顧客を抱えている。世界各地に300の倉庫を所有し、Amazon(アマゾン)やShopify(ショッピファイ)など、他の何千もの顧客にもサードパーティロジスティクスサービスを提供している。

Phantom AutoがGeodisと提携したことは、同社が当初注力していた自律走行車以外のビジネスを模索していることの一例だ。2017年に設立された同社は、フォークリフトやロボット、トラック、乗用車などの無人車両のフリートを遠隔で監視して介入するための、車両に依存しないソフトウェアを開発した。

同社はAV(自律走行車)業界に隣接している。AV事業者が遠隔操作の必要性を公に語ることはほとんどないが、ロボタクシーを商業的に展開する際や、その他のAVアプリケーションに必要なサポートシステムとして捉えられている。しかし、自律走行車の開発者たちが技術を商業化するためのスケジュールを先送りにしたため、Phantomは新しい分野に進出したのである。

これまでに2500万ドル(約27億7000万円)を調達したPhantom Autoは、歩道、倉庫、貨物ヤードなど、今日、自律走行や遠隔操作が導入されている場所を対象とした物流事業を展開している。

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タグ:Phantom AutoGeodis物流遠隔操作フランス

画像クレジット:Geodis/Francois Bouriand

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Aya Nakazato)

glafitの電動ハイブリッドバイクを自転車・電動バイクに切り替えて道路を自由に走れるようにする「モビチェン」販売へ

glafitの電動ハイブリッドバイク「GFR-02」

和歌山県に本拠地を置くハードモビリティベンチャーのglafit(グラフィット)は2021年夏を目途に、glafitのバイクに後付けすることでバイクと普通自転車の切り替えを可能にする新機構「モビチェン」(モビリティカテゴリーチェンジャー)の販売を始める。これにより、glafitのペダル付き電動ハイブリットバイクは、法律上の区分において原付としてだけではなく、普通自転車としても街を走れるようになる。現行法では、状況を問わずペダル付き電動バイクは「原付一種」扱いとなるが、glafitは日本で唯一、バイクにも普通自転車にも切り替えられるという特例を得ている。glafitの鳴海禎造代表にglafitのバイクや起業の経緯などについて話を聞いた。

折りたたみ式の電動ハイブリットバイク「GFR」

glafitは折りたたみ式の電動ハイブリットバイク「GFR‐01」を2017年に販売し、現在までに5000台を売り上げている。2020年にはGFR‐01をフルモデルチェンジした「GFR‐02」を発表。2021年2月に行った先行予約販売分はわずか1時間で完売するなど、人気を集めている。

GFR‐02は普通自転車のようにペダルを漕いで走ることも、スロットルを回してバイクとして走ることも可能な折りたたみ式の電動ハイブリットバイクだ。価格は税込19万8000円で、本体の重さはバッテリー込みで約20kgとなる。

全長は1250mmで、折りたたみ時には650mmになり、クルマのトランクやマンションのベランダなどにも簡単に置くことができる。最高速度は時速約30kmで、走行距離はおよそ25kmとなる。リチウムイオンバッテリーのため、家庭用コンセントから充電可能。100%電動で動くカーボンフリーのエコなモビリティだ。

家庭用コンセントで充電可能

GFR‐02は01と比べて、ペダル走行時の走行速度の高速化のため、クランク側のチェーンリングの大型化を図った。また、折りたたみが楽にできるよう変更し、より安定してGFR-02が自立できるようになっている。鳴海氏は「電動ハイブリットバイクとして大きく進化しました」と胸を張る。

しかし、普通自転車としての側面はあるものの、モビチェンを後付けしなければ法律上の区分では原付であるため、車道しか走ることができない。

1台で普通自転車とバイクを切り替えるモビチェン

画像は機構の仕組みを説明するもので、今後の販売モデルのデザインとは異なる

モビチェンのイメージ(販売モデルのデザインとは異なる)

電動バイクと普通自転車の切り替えを可能にする新機構「モビチェン」は2021年夏以降に、オプションとして販売をする予定で、まずGFR-02に後付けできるようにしていく。GFR-01のモビチェン後付けについては今後対応を検討していく。

glafitは2019年に内閣府のサンドボックス制度で認可された実証実験を経て、モビチェンを後付けしたglafitのGFRシリーズは「バイクの電源を切り、ナンバープレートを覆った時は道路交通法上、普通自転車」として取り扱えることが認められた。これによりユーザーは、電動バイク時は原付、自転車時は普通自転車として乗ることができるようになる。

鳴海氏は「現状、glafitのGFRシリーズのみに認められた特例になります。他のハイブリットスタイルのペダル付き電動バイクは、原付扱いしか認められていないため、ペダルを漕いで走る場合も車道しか走ることができません」とした。

モビチェンはナンバープレートを覆うカバーの構造になっている。モビチェンの切り替え作業は、電源をオフにし停車したときに手動で行わなければならない。モーターの駆動は電子制御だけではなく、この必ず電源をオフにして行う作業を入れることで担保している。モビチェンには交通標識デザインに沿った普通自転車のピクトグラムが描かれており、切り替え時に普通自転車であることが通行人らに明確に伝わるようになっている。

モビチェンを後付けしたGFR-02は、電動バイクとして車道走行も、普通自転車として歩道や自転車レーン走行も可能になる。ユーザーは状況に合わせて柔軟に走り方を変更できるのだ。これでバッテリーが切れた時なども快適に進むことができるだろう。なお、普通自転車が歩道走行するには、歩道に「普通自転車歩道通行可」などの標識がある場合など、一定の条件が定められている。モビチェンを取りつけたglafitのバイクも同様だ。

サンドボックス制度を活用した特例

2018年に始まったサンドボックス制度は、関係省庁の既存の規制を受けずに、新技術の実証ができる環境を整えるものだ。glafitが2017年に販売を始めたGFR-01は原付に区分されるため、通行できるのは車道だけだった。このため、glafitはサンドボックス制度の認可を受けて、2019年11月から2020年1月までの3カ月間、和歌山県和歌山市の公道で普通自転車としての走行や安全性などを実証してきた。

鳴海氏は「交通量が多く、自転車レーンがある場合など、最適な道を選択できる幅をglafitのバイクにも持たせたいと考えていました。私のわがままではなく、ユーザーの声としてもありました。つまりユーザー代表として我々が国に声を届けたということです。実はここが重要で、これまでは法律が変わらなければ、サービスが開始できないといった議論が多くありました」と語る。

glafitはすでに、現行法の下でプロダクトを提供してきていた。鳴海氏は「法律の解釈を変えることができれば、国民がより安全、快適に生活できることに繋がります。単なるサービス開始のための法改正といった願望だったら、国も相手にしてくれなかったかもしれません」と振り返る。

実証実験の結果、参加者の約8割から、ペダル走行時のglafitのバイクを普通自転車として認める規制緩和をすべきという回答を得た。glafitは実証実験の結果も踏まえ、普通自転車として取り扱われるよう国にモビチェンによる安全性の担保などの説明し、今回の特例を受けることができた。

glafitのバイクができるまでの長い道のり

glafitの鳴海禎造代表

glafitの鳴海禎造代表

鳴海氏はシリアルアントレプナーだ。これまでglafitを含めて5社立ち上げている。鳴海氏は15歳から自力でビジネスを始め、自作で組み立てたオリジナルPCの販売などを行っていた。18歳でクルマの免許を取るとその魅力に取りつかれた。愛車を改造する度に出た交換部品をネット販売すると、買い手が多かった。この経験がきっかけとなり、鳴海氏はカービジネスにつき進んでいく。

2003年に自動車販売店を個人創業し、そこで新規事業としてカー用品事業を立ち上げる。2007年には同事業を独立させて「FINE TRADING JAPAN」を設立した。さらに2008年には単身海外に出て、ゼロベースから中国本土にカー用品などの製造請負会社と、この貿易を担う貿易会社を香港に立ち上げる。

鳴海氏は「中国の製造請負会社はglafit製品における部品の製造管理も行っており、ものづくりの重要なハブになっています」と説明する。

ターニングポイントとなったのは2011年、鳴海氏が30歳を過ぎたころだ。フォーバル創業者で会長の大久保秀夫氏と出会い、弟子入りをした。鳴海氏は「大久保さんに手とり足とり教わる中で言われたのが『100年ビジョンを持て』ということでした」と振り返る。

鳴海氏は悩んだ末、21世紀を代表する自動車メーカーを目指すことを決めた。FINE TRADING JAPANの新たなプロジェクトとして、2012年に「glafit」が生まれる。プロジェクトは電気自動車を作ろうと始めたが、まず二輪自動車から作ってみようと、2015年に社員から「GFR」の案が出た。鳴海氏は「私が考えるバイクとはまったく違うものでした。クルマ好きな私もおもしろいと思ったので、これはいけると直感しました」と語った。

鳴海氏は2017年に、Makuakeに電動ハイブリットバイクのプロジェクトを公開する。結果、目標金額の300万円をプロジェクト開始からわずか3時間で達成した。最終的に約1億2800万円が集まり、当時の国内クラウドファンディングにおける資金調達額の最高記録を樹立した。

鳴海氏は「プロダクトは高い評価を得ることができました。それならばスピンアウトして、会社として独立しようと決断しました」という。そして2017年、現在のglafitが立ち上がった。

また、国内で小型電動モビリティ事業を展開するglafitをはじめとした6社で2020年9月「日本電動モビリティ推進協会」(JEMAP)を設立した。鳴海氏は同協会の代表に就任している。同協会では次世代に向けた電動モビリティの在り方の提言や普及を進めていく考えだ。今後、glafitなどの小型電動モビリティスタートアップが、モビリティ領域を大きく変革させていくかもしれない。

関連記事:国内小型電動モビリティ系スタートアップなど6社が「日本電動モビリティ推進協会」を設立

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タグ:glafit電動自転車日本電動モビリティ推進協会日本

画像クレジット:glafit

バイデン大統領のインフラ計画は米国のEV市場拡大に19.3兆円の投資を提案

Joe Biden(ジョー・バイデン)大統領は、国内に電気自動車サプライチェーンを構築するという野心的なインフラ計画に1740億ドル(約19兆2600億円)の予算を計上し、米国の自動車メーカーがEV市場でより大きなシェアを獲得するためには「グローバルに競争」することが不可欠であると述べている。

これらの資金は、複数のセクターにまたがる2兆ドル(約221兆4300億円)のインフラ投資を求める野心的なバイデン大統領の計画の一部にすぎない。同計画のファクトシートには、中国に関する言及が6カ所含まれている。そのうちの1つは、中国のEV市場の規模が米国の国内市場の3分の2も大きいことに関連している。Apple(アップル)の主要サプライヤーである台湾Foxconn(フォックスコン)は、2021年2月にウィスコンシン州の工場でのEV生産を検討していると発表したが、これは新興企業からSPACとなったFiskerのEV生産に暫定的に合意した数週間後のことだった。

関連記事:フォックスコンが次期EV製造で米Fiskerと提携に暫定合意、年25万台超を生産へ

米国人が国産EVを実際に購入するようにするために、バイデン大統領は米国製EVの購入に対する販売奨励金と税制上の優遇措置を設ける計画も立てているが、その控除額は明らかにされていない。顧客にはすでに電気自動車に対して7500ドル(約83万円)の連邦税控除が適応されているが、20万台以上の電気自動車を販売した自動車メーカーには適用されず、例えばTesla(テスラ)を購入しようとしている人は控除の対象にならない。新しい税額控除が自動車メーカーの販売台数制限を引き上げるのか、廃止するのかは不明だ。

またこの計画では、2030年までに全国に50万カ所のEV充電ネットワークを構築するために、資金の一部を使用することを提案している。Consumer Reportsの最近の調査によると、公共の充電ステーションの有無が次の自動車購入時にEVを検討する際の大きな懸念材料となっている。

交通機関については、バイデン政権は環境保護庁が管理する新しいプログラムを通じて、5万台のディーゼル車両の置き換えと、スクールバスの少なくとも20%の電動化にも資金を投入するとしている。

この計画は米国の労働者に高賃金の仕事を提供することに大きな重点が置かれているが、まだその道のりは長い。この計画が法律として成立するには、議会の承認が必要だ。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:塚本直樹 / Twitter

ヒュンダイの電気自動車IONIQ 5がMotionalとLyft初のロボタクシーに

Motionalは同社の自動運転技術を現代自動車の新型完全電動SUVに統合し、Motional初のロボタクシーを開発する。2023年初頭には一部の市場の顧客かLyftアプリを介してこの完全電動・完全自動運転タクシーを予約できるようになる。

2021年2月に公開され、2021年後半に一般発売が予定されているHyundai IONIQ 5は、Motionalの無人運転システムに完全に統合される。LiDAR、レーダー、カメラなど、レベル4の自動運転機能に必要なハードウェアとソフトウェアが装備され、車両のセンシングシステムは360度の視界を提供し、300メートル先まで見通すことができる。このレベルの無人運転技術は、人間が運転を引き継ぐ必要がなくなることを意味する。

Motionalの広報担当者によると、車内の居住空間は民生用モデルと同様だが、ロボタクシーの運転に必要な機能が追加されているという。同社は車両にハンドルが搭載されているかどうかは明らかにしておらず、またロボタクシーの画像も公開していない。

MotionalのIONIQ 5ロボットタクシーはすでに公道とクローズドコースでテストを開始しており、Lyftのプラットフォームに導入される前に、さらに何カ月ものテストと実世界での経験を経なければならない。Motionalはロボットタクシーが人間のドライバーよりも安全であると確信した時点でテストを完了するとしている。

MotionalはAptivと現代自動車が40億ドル(約4400億円)を投じて設立したジョイントベンチャーで、2020年12月にLyftとの提携を発表し、その計画にLyftが主に関与することを示した。Motionalは最近、ラスベガスの公道で無人運転技術のテストを開始したとも発表している。現代自動車のIONIQ 5はMotionalが公道で無人運転を行う2番目のプラットフォームだ。

関連記事:2023年から米国主要都市でロボタクシー展開へ、MotionalとLyftが提携

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:塚本直樹 / Twitter

EV充電ステーションの稼働を支援するChargerHelp!が約3億円を調達

今後、電気自動車が普及すれば、何千台もの充電ステーションが必要になる。それらは単に設置されるだけではなく、機能していることが求められる。しかし、現在のところそれは実現されていない。

何か問題が起きて機能が果たせなくなった時、充電ステーションがエラーを発信したり、ドライバーが報告しないと、ステーションの運営会社は気がつかない可能性もある。電気自動車用充電ステーションのオンデマンド修理アプリ「ChargerHelp!(チャージヘルプ!)」を共同設立したKameale C. Terry(カミール・C・テリー)氏は、こうした問題を目の当たりにしてきた。

ある顧客の充電ステーション運営会社は、その充電ステーションの利用率が低いのは、そこの地域に電気自動車が少ないからだと思い込んでいたと、テリー氏は最近のインタビューで振り返っている。しかし、問題はそこではなかった。

Evette Ellis(エベット・エリス)氏と共同で設立した会社でCEOを務めるテリー氏は「そこには誰も乗っていないクルマが停まっていて、ステーションの周りは泥だらけでした」と語る。

ChargerHelp!のサービスに対する需要は、顧客や投資家を惹きつけている。同社はTracks VC(トラックスVC)、Kapor Capital(ケイパー・キャピタル)、JFF、Energy Impact Partners(エナジー・インパクト・パートナーズ)、The Fund(ザ・ファンド)などの投資家から、275万ドル(約3億300万円)を調達したと発表した。今回のラウンドで、2020年1月に設立されたこのスタートアップは、ポストマネー(資金調達後)で1100万ドル(約12億1300万円)と評価されている。

この資金は、同社のプラットフォームの構築や、現在の27人を超える新たな従業員の雇用、サービスエリアの拡大に使用される予定だという。ChargerHelp!は、充電器メーカーや充電ネットワークプロバイダーと直接連携している。

「今のところ、ステーションが故障しても、トラブルシューティングのガイダンスは実際ありません」と、テリー氏はいう。具体的な問題を把握するためには、誰かが現場に出向いてステーションの診断を行う必要があると、同氏は指摘する。現場に着いたら、技術者はデータを事業者と共有し、適切な補修部品を注文する、という手順を踏むのが一般的だが、現状ではこれがしばしば行われていないという。

ChargerHelp!は、オンデマンドの修理アプリであると同時に、顧客のための予防保守サービスとしても機能する。

パワーアップ

ChargerHelp!のアイデアは、テリー氏がEV Connect(イーブイ・コネクト)でカスタマーエクスペリエンスの責任者やプログラムのディレクターなどを務めた経験から生まれた。この期間に彼女は12社の充電器メーカーと仕事をしたことで、充電器の内部構造やよくある問題点などの知識を得ることができた。

関連記事:電気自動車充電インフラの世界標準化を目指すEV Connectに三井物産などが戦略的投資

ここで彼女は、EV充電器市場のあるギャップに気づく。

「充電ステーションが故障しても、なかなか現場に人を向かわせることができないのです。というのも、問題のほとんどは通信の問題、破壊行為、ファームウェアの更新、部品交換など、電気的なものではないからです」とテリー氏は語る。

だが、充電ステーションの問題を解決するには、電気工事業者を使うのが一般的だった。テリー氏によると、これらの電気的でない問題を修理するため、電気工事業者を現場に呼ぶまでに30日もかかることがあったという。

テリー氏は、彼女が働くロサンゼルスにある充電ステーションで問題が発生した場合、自分の手で解決することもあった。

ソフトウェアや修理に関する知識はなかったが「交換しなければならない部品があれば、自分で交換していました」と、テリー氏はいう。そして次のように続けた。「私にできることなら、誰にでもできると思ったのです」。

2020年1月、テリー氏は会社を辞め、ChargerHelp!を起ち上げた。初めて起業家となった同氏は、Los Angeles Cleantech Incubator(LACI、ロサンゼルス・クリーンテック・インキュベーター)に参加し、EV充電器の修理方法を教えるカリキュラムを開発した。そこでLACIのキャリアコーチであり、ロングビーチのジョブコープセンターにも勤務していたエリス氏と出会う。エリス氏は現在、ChargerHelp!のチーフ・ワークフォース・オフィサーを務めている。

その後、テリー氏とエリス氏はElemental Excelerator(エレメンタル・エクセレレーター)のスタートアップインキュベーターに受け入れられ、約40万ドル(約4400万円)の助成金を調達。Tellus Power(テラス・パワー)と予防保守に重点を置いたパイロットプログラムを開始し、EV Connect、ABB、SparkCharge(シャークチャージ)などのEV充電ネットワークやメーカーと契約を結んだ。テリー氏によると、現在は7人の従業員からなるコアチームを雇用し、最初の技術者を育成しているという。

採用方針

画像クレジット:ChargerHelp

ChargerHelp!では、従業員を見つけるために人材育成のアプローチをとっている。同社では、コホート(グループ)単位での採用しか行っていない。

テリー氏によると、電気自動車サービス技術者の最初の募集では、1600人以上の応募があったという。そのうち20人がトレーニングを受け、18人が最終的にカリフォルニア、オレゴン、ワシントン、ニューヨーク、テキサスなど6つの州でサービス契約を結ぶために採用された。トレーニングを受けた人には奨学金が支払われ、2つの安全ライセンスを取得できる。

このスタートアップ企業は、4月に第2回目の募集を開始する予定だ。すべての従業員はフルタイムで、時給30ドル(約3300円)が保証されており、会社の株式も与えられる。ChargerHelp!は、同社が技術者を必要とする地域の労働力開発センターと直接連携している。

関連記事:次世代のEV充電ネットワーク構築を目指すSparkCharge

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タグ:ChargerHelp!電気自動車充電ステーション資金調達

画像クレジット:ChargerHelp

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

エイプリルフール用をうっかり誤発信「Volkswagenが米国法人を『Voltswagen』に社名変更」

【更新】Wall Street Journalによると、これは事実ではなくエイプリルフールのジョークが誤って流出したものだった。VW USAはコメント要求に応じていないが、VW Europeは報道に対してこれがジョークだったことを認めた。この発表を伝えるリリースは現在も米国のVW公式メディアサイトにあり、事実ではないことを示唆する記載はない。Reutersも同じことを報じており、匿名の情報源を3つ挙げている

自動車メーカーのVolkswagen(フォルクスワーゲン)は、電気自動車への取り組みが本気であることをみんなに知って欲しいと思っている。そのために米国ではダジャレのような再ブランドを正式に行う。同社は「Volkswagen of America”」から「Voltswagen of America(ボルツワーゲン・オブ・アメリカ) 」へと社名変更することを 3月30日にプレスリリースで発表した[日本時間3月31日8時現在削除済み]。

Voltswagen(旧名Volkswagen)は変更の理由について「Eモビリティーの新しい未来への投資」への意気込みを明確にするものであり、つまり電気駆動計画に極めて真剣であることを示していると語った。元々「Volkswagen」はドイツ語で「国民のクルマ」という意味であることから、Voltswagenは……「ボルトのクルマ」?

そのようなことだが、ちょっと違う、とVWはいう(これだっていいじゃないか!)

「当社は、電化の未来への転換を始めた時から、作るのはミリオンズ(数百数千万人)のためのEVでありミリオネアだけのためではないと述べてきました」とVWのCEOであるScott Keogh(スコット・キーオ)氏は社名変更の発表文で語った。「この変更は、国民のクルマという過去の私たちへの挨拶とともに、当社の未来は国民の電気自動車になることだという固い決意を表しています」。

この発表は、Volkswagenが全電動SUV、ID.4を米国で出荷し始めた直後のことだった。価格は国の奨励金・税制優遇前で3万3995ドル(約375万円)と、現在の米国電気自動車市場では手頃な価格に位置している。将来は価格に敏感な消費者のための新たな選択肢も計画されており、同社は二酸化炭素排出量削減のために、2025年までに全世界でEV100万台を達成し、2029年にはVWおよびサブブランド全体で70以上のモデルをラインアップすると宣言している。

関連記事:2021年フォルクスワーゲンID.4はただ1点を除けばかなりいい仕上がり、高度な技術と長い航続距離を手が届く価格で実現

Voltswagenブランドでは、すべての電気自動車にブルーのトーンを明るくしたVWロゴを使用するが、ガソリン車は従来のダークブルーを維持する。「Voltswagen」の単語そのものはイニシャルロゴに加えてEVで使用され、今後米国では従来ロゴはガソリン車のみのブランドとなる。

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nob Takahashi / facebook

シャオミがEV事業に参入、10年で1.1兆円の投資目標

数週間にわたる噂の後、Xiaomi(シャオミ、小米科技)がEV(電気自動車)事業への参入を正式に認めた。中国のスマートフォンおよびIoT企業である同社は、スマートEV事業を運営するための完全子会社を設立すると、投資家に宛てた告知で中国時間3月30日に発表した。

シャオミはこの子会社に当初100億元(約1700億円)を投入する。今後10年間の投資目標は総額100億ドル(約1.1兆円)だという。シャオミの創業者兼CEOであるLei Jun(レイ・ジュン、雷軍)氏が、この新しいEV事業のCEOを兼務する。

シャオミがこれまでの多くのハードウェアデバイスと同様に、自社ブランドで自動車を販売し、生産はメーカーに委託するのかどうかは、告知からは不明だ。シャオミは以前から、ライトアセットのビジネスモデルを持つ「インターネット企業」を自称してきた。同社のゴールは、価格の安い無数のハードウェア製品を動かすサービスを販売することにより、利益の大部分を得ることだ。

シャオミの担当者によると、今回の告知以上の詳細な情報はないとのこと。

シャオミは、過熱しているEV業界に参入する最新の中国ハイテク企業だ。中国の検索エンジン大手Baidu(百度)は、2021年1月に自動車メーカーのGeely(吉利汽車集団)の協力を得てEVを製造すると発表したばかり。2020年11月には、Alibaba(アリババ)と中国の国有自動車メーカーSAIC Motor(上海汽車集団 )が手を組んでEVを生産すると発表した。配車サービス大手のDidi(ディーディー)とEVメーカーのBYD(比亜迪)も、ライドシェア用のモデルを共同設計している。

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これらのテック巨人たちは、XPeng(小鵬汽車)、Nio(上海蔚来汽車)、Li Auto(理想汽車)など、すでに複数のモデルを発表し、しばしばTeslaと比較される、より専門的なEV新興企業の数々と競合している。EVメーカーは車内エンターテインメントから自律走行まで、さまざまな機能に投資して差別化を図ろうとしている。

シャオミにとって自動車メーカーとしての明らかな強みは、広大な小売ネットワークと国際的なブランド認知度だろう。また、スマートスピーカーや空気清浄機など、同社のスマートデバイスの一部は、セールスポイントとして車に簡単に組み込める。もちろん、真のチャレンジは製造にある。携帯電話の製造に比べ、自動車産業は資本集約的で、長く複雑なサプライチェーンを必要とする。シャオミがそれを成し遂げることができるかどうか、見守っていきたい。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Xiaomi電気自動車中国

画像クレジット:Zhe Ji / Contributor / Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

トヨタの投資ファンドWoven Capitalが自動配送ロボティクスNuroに出資

イノベーションにフォーカスしたトヨタ自動車の子会社Woven Planet(ウーブン・プラネット)の投資部門Woven Capital(ウーブン・キャピタル)は、シリコンバレー拠点の自動運転デリバリー車両のNuro(ニューロ)への投資を発表した。新たに設立された8億ドル(約878億円)の戦略的ファンドの第1号案件だ。Woven Capitalの投資と買収の責任者George Kellerman(ジョージ・ケラーマン)氏によると、同ファンドは安全なモビリティの未来を構築するというミッションの推進に向けていつの日かパートナーになったり買収対象となったりするかもしれないグロースステージのテック企業に投資する。

Woven Capitalの出資は2020年11月に発表されたNuroの5億ドル(約549億円)のシリーズCラウンドの一環だ。同ラウンドにはChipotle、そしてT. Rowe Price Associates, Incが運営するファンド、新規投資家としてFidelity Management & Research CompanyとBaillie Giffordも参加した。各ステークホルダーの具体的な投資額は明らかにされなかった。

トヨタは2020年9月に、自動運転モビリティや機械学習、人工知能、オートメーション、コネクティビティ、データ・分析などのテクノロジー分野に投資することを目的とする8億ドルの投資プールを発表した。

「Nuroは良い出発点でした。というのも、当社が行っている業務の多くは自動運転の乗用車の開発にフォーカスしているからです。ですので、これは当社にとってローカルの商品配達にピンポイントでフォーカスしているパートナーを通じて学習して発展させる方法です」とケラーマン氏はTechCrunchに語った。「Nuroから学ぶ多くの機会があり、潜在的には今後コラボしたりNuroがグローバル展開するのをサポートしたりする機会もあるかもしれません」。

Nuroの貨物専用自動運転の車両は、すでにカリフォルニアの車両管理局から公道でのテスト実施の許可を得てKrogers、Domino’s、Walmart、 CVSといったパートナー企業の商品を配達しており、この分野でリーダーとなるチャンスをNuroは手にしている。Woven CapitalはNuroのリーダー的な立場の加速・強化をサポートする機会を見出し、一方でNuroとの間で戦略的知識共有の取り決めを結んだ。

「(Woven Capitalは)未来に向けて野心的な目標を掲げるすばらしいチームを招集しました。そして我々は人々の暮らしをより良いものにするために暮らし方や移動の仕方を変革するという共通目的を共有しています」とNuroの共同創業者で会長のDave Ferguson(デイブ・ファーガソン)氏は声明で述べた。「当社は引き続きチームを拡大し、すばらしい自動走行配達プロダクトを構築するのに、新たな資金と世界最大の自動車会社からのサポートを使います」。

トヨタ・ウーブンシティのコンセプトレンダー(画像クレジット:Toyota)

オートメーションはWoven Capitalのポートフォリオの大きな部分を占めることになる。これはWoven Cityなど親会社Woven Planetの活動をサポートするためだ。Woven Cityは相互接続するスマートシティプロトタイプでセットされる新しいテクノロジーの試験場で、トヨタは2021年2月に富士山の麓、静岡県裾野市東富士で着工した。

「Woven Cityについて考えるとき、自動走行モビリティとオートメーションをより広範にとらえます」とケラーマン氏は話した。「それを促進するため、人工知能や機械学習、データ・分析、コネクティビティが必要になります。ですので我々はそうした分野に投資するポートフォリオを形成するつもりです」。

モビリティ産業では、モビリティを単に人々や商品の動きとしてではなく、情報やデータの動きとしてとらえる傾向が強まっている。Woven Planetはこれを認識し、特に自動車についてはソフトウェアファーストのアプローチを取っている。従来の自動車産業のデザインとハードウェアファーストのアプローチに取って変わっていて、車両を動かすのにソフトウェアに組み込み、まずソフトウェアで開始してソフトウェア中心にハードウェアを構築することを意味する。

ソフトウェアファーストのアーキテクチャを構築することは、将来のイノベーションに多くのフレキシビリティをもたらす。ハードウェアが変わってもコードを書き直す必要はなく、別の応用を加えるだけでいい。Woven Planetが開発しているすべてのソフトウェアは可能な限り多くの応用で使えるはずだとケラーマン氏は述べた。

真に強固で統合されたソフトウェアを持っていることは、コネクテッドモビリティにとって論理的な次のステップでもあり、車両の輸送のポテンシャルを再考する道を開く。Nuro車両は配達しているあらゆるグローサリーのための車両というだけでなく、交通の流れや気候パターンなど走行中に収集してクラウドに送るすべての情報のための車両でもある。それゆえにその価値は、AからBへのユーティリティというより情報のインターチェンジとなる。

Woven Cityですぐさま活用できるかもしれないNuro車両によって集められた情報の一部は通りの安全に関するものだ。Nuro車両は人を運ばないのでデザインは車両の外にいる人の安全性、人中心の都市計画において有用となるかもしれない集計データにフォーカスしている。

結局、Woven Capitalの長期的な視点は常に将来のM&Aに向けた潜在的なプロセスだとケラーマン氏は話した。

「トヨタは歴史的に買収欲の強い会社ではありませんが、Woven Planetの中でいかに戦略的買収を通じて当社のビジョンとミッションを加速させることができるかをにらみながら経営企画チームを作っています」と述べた。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Woven PlanetNuro投資トヨタ自動車自動運転

画像クレジット:Toyota

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

2021年フォルクスワーゲンID. 4はただ1点を除けばかなりいい仕上がり、高度な技術と長い航続距離を手が届く価格で実現

かつては電気自動車の分野において素人だったVolkswagen(フォルクスワーゲン)が今、その未来をテクノロジーに賭けている。3万3995ドル(約370万2700円、連邦政府または州による補助金の適用前の価格)から入手可能な5人乗りフル電動クロスオーバーである新しいフォルクスワーゲンID.4は、EVを主力製品にしようとするフォルクスワーゲンが初めてグローバル市場を目指して取り組んだ成果であり、2050年までにカーボンニュートラルを実現するというさらに大きな目標への一歩でもある。

結論から言えば、VW ID.4は、バランスよく融合されたテクノロジー・快適性・デザインをより手頃な価格で提供しており、Tesla Model Y(テスラ・モデルY)のような手頃な価格帯のモデルが少ないために空白地帯が残っている市場の一部を攻略しようと狙っている。VW ID.4のテクノロジーは堅実なもので、現実離れしすぎてクロスオーバーの平均的な購入者がしり込みするということはないが、1つ問題がある。充電拠点が不足しているために、他社の充電ステーションを見つけてそこに行かなければならないのだが、それがかなり面倒で、手間がかかるのだ。

VWの製品担当シニアマネージャーであるMark Gillies(マーク・ギリース)氏はTechCrunchのインタビューに対し「当社は、富裕層だけでなく、他の何百万人もの人々にも乗ってもらえる大衆向けの電気自動車メーカーになりたいと思っています」と述べた。

その言葉に偽りはないだろうが、ちょっとした問題がいくつかある。例えば、インフォテインメントシステムの反応が少し遅い。これは近日中に予定されているアップデートで改善されるだろう。また、前述のように充電拠点が不足している。もしフォルクスワーゲンがこれらの問題に取り組むことができれば、VW ID.4は活況を呈するクロスオーバー市場にしっかりと食い込む可能性がある。しかし、大衆がガソリン車に近いドライビング体験を提供する完全電動自動車を望み、VW ID.4が「大衆向けのクルマ」になる未来は実現するだろうか。

画像クレジット:Volkswagen

2021年のフォルクスワーゲンID.4クロスオーバーは、VWブランド初のグローバル市場向け全電動自動車だが、VWグループ全体としては以前にも消費者向け電気自動車を発売したことがある。VWグループは、2013年にすでにカリフォルニア州限定のフォルクスワーゲンe-Golf(e-ゴルフ)を発売しており(2020年販売中止)、同社のラグジュアリーパフォーマンスブランドPorsche(ポルシェ)では、2019年に全電動Taycan(タイカン)の販売を開始した。

発売当時のe-Golfは、同社にとってはどちらかというと二次的な位置付けで、カリフォルニア州限定で販売された。カリフォルニア州では電気自動車や充電インフラのインセンティブ、環境規制が比較的しっかりしている。対照的にID.4は「Beetle(ビートル)以来最も重要なフォルクスワーゲンの市場デビュー」の1つであり、全米で販売される予定だ。

際立つテクノロジー

画像クレジット:Volkswagen

ID.4のダッシュボードレイアウトや車内の雰囲気を見ると、フォルクスワーゲンは、ガソリン車のデザインをベースにしたのではなく、テスラを参考にしたようだ。

ID.4のインテリアデザインは、自動運転の未来を感じさせる。ステアリングコラムもインフォテインメントシステムも、完全に無くなる日を思い浮かべることができる。モジュール式カップホルダー、収納スペース、ワイヤレス充電パッドを備えたセンターコンソールも、いずれは改造して乗客スペースを増やし、ID.4のインテリアのフィーリングを今よりもっとオープンで広々としたものにできるかもしれない。

ID.4にはPro(プロ)、Pro S(プロS)、1st Edition(ファーストエディション)の3つのトリムがある。Proには10インチのタッチスクリーンが付属しており、Pro Sと1st Editionでは、12インチのインフォテインメント用タッチスクリーンがダッシュボードの中央にマウントされている。

画像クレジット:Abigail Basset

センタースクリーンの方に手を伸ばすと、システムに近づく手の動きを室内カメラが感知して、スクリーン内のアイコンが反応する。ID.4の車内にある数少ないハードタッチ式ボタンはどれも、どちらかというと医療機器グレードの触覚感知ボタンで、空調やオーディオから、オプションの固定式パノラマガラスルーフの遮光スクリーンの開閉や、ドライビングモード、ドライバーアシスト機能まで、あらゆるものをコントロールできる。コツをつかむまでに少し時間がかかるが、慣れてしまえば、スライダー式ボタンのように機能し、押す強さを少し変えたり、左から右に少しスライドしたりして、音量や温度を調整できる。

「ハロー、I.D.」

フォルクスワーゲンはこの新しいID.4で、ボタンの代わりにハンズフリーの音声コントロールを採用したが、我々が試乗したときは、このシステムはまだベータ版のように感じた。

ドライバーも同乗者も、タッチスクリーンまたは特定の音声コマンドを使って、ID.4の一般的な機能やインフォテインメントの多くを利用できる。「Hello I.D.(ハロー、I.D.)」というと、車内のどの方向から声が発せられたのか(同乗者なのかドライバーなのか)をシステムが感知して、フロントガラス下部の細長いライトが点灯し、その話者が次に発するコマンドに対応する準備ができたことが示される。

画像クレジット:Abigail Basset

今のところ、使えるコマンドはかなり限られており、キーフレーズ(「ハロー、I.D.」)を言うか、ハンドルにある音声コントロールボタンを押して起動する必要がある。ナビゲーションコマンドなどの基本的なことに加えて「寒い」とか「ジョークを聞かせて」といったこともいうことができ、ID.4のシステムは、声が発せられた側の温度を上げたり、シートベルトにまつわるジョークを言ったりして反応する。

試乗したのはロサンゼルスやロングビーチの界隈のみだったのだが、システムの反応は他の市販の音声システムと比べてとても遅く、Sirius XM(シリウスXM)のチャンネル変更などの操作で、接続の確保がスムーズにできなかった(特定のチャンネルの数字や名前が見つからない、という音声が繰り返し流れた)。システムが機能しなくなることもよくあり、コマンドを認識できない場合や接続できない場合に最終的に音声コントロールシステムをキャンセルするのにも、約10秒かそれ以上かかった。

反応の遅いナビ

また、ID.4のナビゲーションシステムも少し反応が遅く、精度も良くなかった。それで、元に戻ってGoogle(グーグル)マップやワイヤレスAndroid Auto(アンドロイドオート)システムをナビとして使った。ちなみに、GoogleマップとワイヤレスAndroid Autoは、Apple CarPlay(アップルカープレイ)とともにID.4の全ラインアップに搭載されている。しかし、ID.4に搭載されたナビゲーションシステムには、曲がり角に近づくとフロントガラスに沿った細長いライトの右側または左側が光って、進むべき方向を示してくれるという便利な機能がある。

インフォテインメントの画面は、ちょうど携帯電話かタブレットの画面のようだ。アプリのページやウィンドウをスワイプしていくと、目的のページにたどり着く。残念ながら、反応の遅いネットワーク接続(インフォテインメントシステムでは4G接続のバーが3~5本表示されているのにも関わらず)と、時間のかかる読み込みが相まって、ページをスワイプしているときに時々画面がフリーズし、次のページを読み込んでいるときにページの半分のみが表示されることがあった。

ここで補足説明をしておく。筆者は幸運にも、ロサンゼルスの記者のために用意された試乗用車両のうち複数台について、十分な時間をかけて試乗する機会が3回あったのだが、遅延やフリーズを経験した車両は1台だけであった。フォルクスワーゲンの広報担当者の話では、試乗車のソフトウェアは顧客が受け取る最終バージョンではなく、オーナーに届く前にアップデートされるので、筆者が経験した奇妙なもたつきや音声コマンドの問題は解決されるはずだという。

画像クレジット:Abigail Basset

ID.4には、Car-Net(カーネット)サービスを通じて2021年中にAlexa(アレクサ)の機能も搭載される予定だ。これには、離れた場所からクルマをモニタリングするのに役立つ、シンプルで使いやすいアプリが含まれる。オーナーはこのアプリにログインして、自分のID.4の位置、バッテリー残量、充電状態を確認できる。

VWは、メイン計器パネルや変速レバーの配置を含め、ID.4車内のデザインについて数多くの興味深い選択をしている。通常のクルマのようにこれらのアイテムをダッシュボードやセンターコンソールに取り付けるのではなく、直接ステアリングコラムに取り付けた。ハンドルを動かすと、計器パネルとトランスミッションつまみも一緒に動く。ハンドルに取り付けられた5.3インチの画面上で、スピードや移動方向から、航続距離、走行距離、基本的なナビゲーション情報まで、あらゆる情報が提供される。運転モードの切り替えには、標準的なボタンやシフトレバーではなく、ハンドルの右側にあるひし形のつまみを使う。

ID.4の始動・停止ボタンはコラムの右側のあまり目立たない所にあるが、そのことはあまり問題ではない。クルマを開錠して運転席に座ると、ID.4の電源が入り、運転の準備ができる。シートベルトを外して車から出ると、ID.4の電源が切れる。クルマに友人や家族がいるときにちょっとした用事で外に出る場合などは少し面倒だが、ID.4の乗客は、ドライバーが車内にいなくても、インフォテインメント画面に表示されるコントロール項目を使って、少しの間エアコンや暖房などを続けて使うことができる。

画像クレジット:Abigail Basset

EVへの乗り換え

フォルクスワーゲンは、自社の調査でクロスオーバーオーナーの約30パーセントが電動クロスオーバーを検討することがわかった、と述べている。ID.4が参入するのは、トヨタRAV4やホンダCR-Vなど、ガソリン車やハイブリッド車の超人気モデルがひしめく競争の激しいクロスオーバー市場だ。フォルクスワーゲンは、自社の調査に基づいて、消費者はまったく航続距離の心配をしないはずだと述べている。ほとんどのクロスオーバーオーナーの走行距離は1日あたり約60マイル(約97キロメートル)で、バッテリーシステムの航続距離はEPA推定で約250マイル(約402キロメートル)だからだ。ID.4は、125キロワットで、5パーセントから80パーセントまで38分で充電できる。

家でのフル充電には約7.5時間かかると推定されているが、外出時の場合、フォルクスワーゲンはID.4のオーナーに、最初の3年間はElectrify America(エレクトリファイ・アメリカ)のDC急速充電器を無料・無制限で使える特典を提供している。良い話だが、少し補足説明が必要だ。フォルクスワーゲンは、ほとんどの人が通常の住宅電源で一晩充電すると予測していると述べており、オーナーが外出先で公共の充電ステーションを使う頻度はそれほど高くないと同社が予測していることは明らかである。なぜなら、少なくともID.4の発売時点では、利用可能な充電ステーションをスムーズに見つけることは難しいからだ。

画像クレジット:Volkswagen

エレクトリファイ・アメリカはVWの子会社だが、その営業体制はフォルクスワーゲンとは完全に切り離されている。エレクトリファイ・アメリカは、全国で550の充電ステーションと2400を超えるDC急速充電器を運営しており、ID.4の車載ナビでも「充電ステーション」を検索できるが、ナビには近くの充電ステーションがすべて表示され、どれがオンラインで利用可能かはわからない。オンラインで利用可能なエレクトリファイ・アメリカの特定の充電器を見つけるために、オーナーは携帯電話を取り出して、エレクトリファイ・アメリカのアプリを開く必要がある。それから、特定の充電器の位置情報をAndroid AutoやApple CarPlayに送ってナビゲートできる。残念ながら、現時点では、エレクトリファイ・アメリカのアプリはAndroid Autoに表示されない。

このプロセスはかなり面倒で、充電ステーションに向かう前に安全に終わらせるには、オーナーはクルマを路肩に止める必要がある。少なくとも現時点ではそうだ。フォルクスワーゲンは、2021年中に実現する無線アップデートによって、エレクトリファイ・アメリカのステーションと車載ナビがもっとシームレスに統合されると述べている。

朗報がある。Pro Sモデルと1st EditionモデルのEPA推定換算燃費は、市街地走行で104 MPGe(ガソリン換算でリッターあたり約44キロメートル)、幹線道路走行で89 MPGe(同約38キロメートル)、市街地走行と幹線道路走行の組み合わせで97 MPGe(同約41キロメートル)である。

ID.4の際立った特徴の1つは、運転方法だ。ID.4のトランスミッションモードには、Bモードつまりブレーキモードが含まれている。これはどの電気自動車にもある、ことの他便利な設定で、1つのペダルで運転ができる。ブレーキから足を放すと、ID.4は少しスピードダウンし、電気を再生してバッテリーに送り返す。これは、交通渋滞にはまったときに真価を発揮する優れた機能で、フォルクスワーゲンは意図的に、ワンペダル運転を他の電気自動車ほど挑戦的なチューニングにはしていない。初めて電気自動車のオーナーになる人が馴染みやすいようにするためだ。

路上では、ID.4は安定感があり、見かけほど大きくは感じない。俊敏だが、出足が速すぎるわけではなく(VWは0~97キロメートル毎時のタイムを公表していない)、手に汗握るということはない。確かに、タイヤから煙を出して走ったり、ロケットのように駆け抜けるクルマではない。

かなり丸みを帯びた形をしているので、路上でスピードを出すとわずかに風切り音がするが、乗り心地は快適で安定感がある。時速32キロメートルを下回るスピードでは(バックにしたときも)、あの特徴的な電気自動車の音を出して歩行者に注意を促す。ウィンドウが閉まっていると車内では気づきにくいが、ガレージで車の手入れをしている隣人のそばを通ると、きっと家に着いたときに「宇宙船のような音がするクルマを運転していたのはあなたですか」と尋ねるメッセージが届くかもしれない。

ADAS(先進運転支援システム)の形式と機能

画像クレジット:Abigail Basset

VWのTravel Assist(トラベル・アシスト)は、同社のレベル2自動運転システムのブランド名である。このシステムは時速0~153キロメートルの範囲で機能する。Travel Assistは、適応可能なクルーズコントロールと車線維持システムの両方を使って、前方の道路と他車に追従する。オートバイが突然車線に入ってくれば、計器画面上でオートバイの画像が車の直前に表示される。そのオートバイがランダムに急ブレーキをかける場合、ID.4はそれに対応して自動的にブレーキをかける。前方の交通が停止した場合、ID.4のTravel Assistは流れが再開するまで待機する。Travel Assistは、交通の動きに対する人間の反応に非常に近い反応を示す。異常に長く待って車間距離が開きすぎる(車列が間延びする原因になる)ことも、加速しすぎることもない。

このシステムは、ひどい交通状況での長時間運転を耐えやすいものにしてくれる。筆者は、ラッシュの時間にロサンゼルスの405号線で激しい渋滞にはまり、通勤に1時間かかったが、その間も、システムを稼働させ続けるために静電容量方式のハンドルに軽く手を置いておくだけでよかった。

スケートボード型パワートレイン

VW ID.4には、MEB(モジュラー・エレクトリック・ドライブマトリックス)と呼ばれる新しいスケートボード型プラットフォームが採用されており、201馬力、310ニュートンメートルのトルクを発生するAC永久磁石同期モーターがクルマの後部、後軸の上に搭載されている。これは旧型ビートルによく似ている。発売時点では後輪駆動モデルしかないが、2021年の終わりまでには302馬力の四輪駆動モデルが発売される予定だ。

フォルクスワーゲンは、ID.4のバッテリーをパナソニックから購入し、82キロワット時、12モジュール、288パウチセルのバッテリーパックを中国とドイツの自社工場で組み立てる。間もなく米国の工場で生産が始まる予定で、電気モーターもフォルクスワーゲンが自前で作る。

画像クレジット:Volkswagen

すべてが詰まったVW ID.4によって、電気自動車は、Jaguar I-Pace(ジャガー・Iペース)、Tesla Model Y、Polestar(ポールスター)、Audi e-tron(アウディ・eトロン)など、高価でラグジュアリーな全電動クロスオーバーを買う余裕のないクロスオーバー購入希望者層にも手の届きやすいものになる。

さらに、VW ID.4には7500ドル(約81万6000円)もの割戻金が支払われる可能性を考えると、ホンダCR-VやトヨタRAV4をはじめとする人気の高いガソリン車クロスオーバーにも十分対抗できる。VW ID.4が真に際立っているのは、先進のテクノロジーと手頃な価格が、航続距離を心配する必要のない魅力的なEVの中で融合している点である。VW ID.4は「大衆向けのクルマ」になるだろうか。その答えが出るまで、今しばらく見守ることにしよう。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Volkswagenレビュー電気自動車

画像クレジット:Volkswagen

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(文:Abigail Bassett、翻訳:Dragonfly)

配送サービスの急増で混雑する道路の路肩スペース管理を請け負うスタートアップAutomotusに投資家も注目

荷物の積み下ろしをする商用車やギグ・エコノミー・ワーカーの配達業務によって、道路の路肩スペースはますます狭くなっている。この問題は、新型コロナウイルスの影響でオンデマンドの配送サービスが増えたことで、さらに深刻化している。

この需要と供給の問題を解決するため、近年はCoord(コード)やcurbflow(カーブフロー)などのスタートアップ企業が続々と登場している。3年前に創業したAutomotus(オートモータス)もその1つだ。同社はサンタモニカ、ピッツバーグ、ワシントン州ベルビュー、イタリアのトリノなどの都市で事業を展開し始めており、ロサンゼルスでもプロジェクトが進行中だ。

投資家もそれに注目している。都市の路肩を監視・管理するためのビデオ解析技術を開発したこの会社は、2021年2月にQuake Capital(クウェーク・キャピタル)、Techstars Ventures(テックスターズ・ベンチャーズ)、Passport(パスポート)に買収されたNuPark(ニューパーク)の共同創業者でCEOのKevin Uhlenhaker(ケビン・ウーレンヘイカー)氏、Baron Davis(バロン・デイビス)氏らが主導するシードラウンドで、120万ドル(約1億3000万円)を調達したと発表した。同社CEOのJordan Justus(ジョーダン・ジャスタス)氏は、総調達額が230万ドル(約2億5000万円)になったと、TechCrunchに語った。新たな投資家には、Ben Bear(ベン・ベア)氏、Derrick Ko(デリック・コー)氏、マイクロモビリティ企業Spin(スピン)のZaizhuang Cheng(ツァイツァン・チェン)氏などがいる。

このスタートアップはまだ小さく、フルタイムの従業員はわずか11人。しかし、ジャスタス氏は新たに調達した資金を、新しい市場への進出や従業員の増員に充てると述べている。

Automotusは、コンピュータビジョン技術を用いて、ゼロエミッション車や商業配送車専用に指定されている駐車スペースの映像を記録する。同社のソフトウェアは、リアルタイムで路肩の使用状況を分析したり、違反駐車している車両があれば取締担当者に通報するなど、さまざまな機能を備えている。都市の職員はウェブアプリケーションを使ってこれらの分析結果にアクセスできる。その一方で、事業者の商用車は、オープンAPIやモバイルアプリを利用して、駐車可能なスペースの情報を得ることができるという。

画像クレジット:Automotus

例えば、新たに発表されたサンタモニカ市とLos Angels Cleantech Incubator(ロサンゼルス・クリーンテック・インキュベーター)によるパイロットプロジェクトでは、同市の1平方マイル(約2.59平方キロメートル)のゼロエミッション配送区域を監視する。Automotusは、配送効率、安全性、混雑、排出量について、ゾーンの影響を評価するための匿名データを提供し、ゼロエミッション配送区域のドライバー全員がリアルタイムで駐車可能なスペースの空き状況データを利用できるようにする。

2017年末に設立され、Techstarsの卒業生でもあるこのスタートアップは、主にそのエンフォースメント機能の収入分配で収益を上げている。つまり、商用車が特定の区域に駐車する際に自動的に請求される支払いの一部や、駐車違反の罰金の一部を得ているわけだ。分析機能は、都市が政策を設定したり送迎ゾーンを指定する際には役立つかもしれないが、ジャスタス氏のいう「最大の機会」はエンフォースメント機能から提供される。

ロサンゼルスのLoyola Marymount University(ロヨラ・メリーマウント大学)は、Automotusの技術を使って、駐車場の取締りを完全に自動化した。Automotusによると、これによって取締りの効率と収益は500%以上向上し、さらに駐車場の回転率が24%向上、交通量は20%減少したという。

「商用車のオペレーターにとって、エンフォースメントの要素は非常に重要です。なぜなら、路肩の駐車可能なスペースが効率的にうまく管理されていればこそ、彼らの本来の目的である商業での利用が可能になるからです」と、ジャスタス氏は語っている。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Automotus交通資金調達

画像クレジット:Automotus

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)