LAオートショー2021の高揚感としらけムード

LAオートショーは、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック下で初めて戻ってきた室内自動車ショーだ。ニュースに乏しく、いつも以上にベーパーウェアが多い中、それでも、いくつかのクルマやテクノロジーや企業が、イベントに先立って行われた2日間のプレスデーで目立っていた。

以下に、2021年のロサンゼルスで良くも悪くもTechCrunchの目に止まったクルマとテーマを紹介する。

グリーン&クリーンへと変わるストーリー

画像クレジット:Kirsten Korosec

米国時間11月17日正午前に行われた少数の主要なニュースカンファレンスでは、持続可能性と気候変動が中心テーマだった。そこには企業の偽善的環境配慮と実際の行動が入り混じっていた。

Hyundai(ヒョンデ)とKia(キア)は、環境の認識がいかに大切かを訴える短編動画を流したあと、全電動コンセプトカーとプラグインハイブリッド車を披露した。Fisker(フィスカー)は海洋保護について話した。長年グリーン化に取り組み、国立公園から動物保護まであらゆる活動の支援に多額の資金を投入してきたSubaru(スバル)も、環境保護の支援を継続していくことを強調した。

これは過去においても珍しくなかったことだが、自動車業界全体が二酸化炭素排出量低下に重い腰を上げ、持続可能な生産と調達に革新を起こし、有効な寿命を終えた部品や車両リサイクルと再利用の方法を探求していることは銘記しておくべきだろう。人類の気候変動への影響を減せる時間はあと10年しかないという恐怖の警告は、ショーで行われた複数のプレス会見で言及されていた。

ハリウッドモード

画像クレジット:Kirsten Korosec

2021年特に目立った発表の1つが、Fisker Ocean(フィスカー・オーシャン)の量産間近なバージョンだ。全電動SUVが備える17.1インチ巨大スクリーンは、180度回転可能で、同社が「ハリウッドモード」と呼ぶ横位置のランドスケープモードから縦位置のポートレートモードへ回転できる。

横位置モードでは、Oceanが駐車あるいは充電中に、ゲームをプレイしたりビデオを見たりできる。Fiskerは、このスクリーン回転技術の特許を取得していると述べた。

画像クレジット:Kirsten Korosec

電化、電化、電化

画像クレジット:Kirsten Korosec

2021年のLAオートショー全体のテーマは、(驚くに当たらないが)あらゆるものの電化だ。展示場にはICE(内燃エンジン)駆動の車両が数多く見られたものの、バッテリー電力の世界にいくつもビッグニュースがやってきた。

Nissan(日産)の全電動SUV、Ariya(アリヤ)、Toyota(トヨタ)bz4xと双子車Subaru Solterra(ソルテラ)から、TechCrunchのお気に入りである全電動Porsche(ポルシェ)Sport Turismo(スポーツ・ツーリズモ)セダンの最新モデルとマジックルーフ付きワゴンまで話題は尽きない。

健康被害からあなたを守るテクノロジー

画像クレジット:Kirsten Korosec

現行パンデミックが3年目を迎える中、自動車メーカーは利用者を病気から守る方法を考え始めている。HyundaiがLAオートショーで披露した SUVコンセプトカーSEVEN は、垂直空気循環、抗菌性の銅、紫外線殺菌装置などの機能を提供している。

電動化レストモッドがやってくる

画像クレジット:Kirsten Korosec

2021年のLAオートショーで目についたトレンドの1つが、何台かの古い車体に電動パワートレインを積んだレストモッド(レジストレーション&モディフィケーション)モデルだ。内燃エンジンのような直感的体験を与えることはないかもしれないが、クラシックカーの新しい楽しみ方を提供するものだ。

自動車製造のスタートアップ、Cobera(コベラ)が展示していたC300は、懐かしいShelby Cobraとよく似た外観だ。しかし、ボンネットの中にはV8エンジンに代わってC300を時速0〜62マイル(0〜約99.8km)まで2.7秒で加速すると同社がいう全電動パワートレインが入っている。Cobera C300は、ハンガリーの乗用車とキャンピングカーの製造に特化した会社Composite-Projects(コンポジット・プロジェクト)が設計・製造した。車両のスイッチを入れると、合成されたサウンドが出て、昔のV8に少しだけ似た音が聞こえる。

Electra Meccanica(エレクトラ・メカニカ)は、LAオートショーで三輪自動車Solo(ソロ)(詳しくは下で解説)も発表している会社だが、もう1台、Porsche 356 Speedsterに似た電動車、eRoadsterを披露した。エアコンディショニング、パワーウィンドウ&ロック、最新インフォテイメントシステムなどを備える。

画像クレジット:Kirsten Korosec

新たなパワートレインを搭載したレストモッドを披露したのは比較的無名で小さなメーカーだけではない。Ford(フォード)は11月初旬のSEMAショーに登場した電動化したF-100を持ちこんだ。1978 F-100 Ford Eluminator(フォード・エルミネーター)はFordの電動モーター、E-crate(イークレート)を備えたレストモッド機能で、ユーザーはこれを購入して自分の車両に取りつけられる。

F-100は前輪と後輪に1台ずつモーターを備え、最高出力480馬力、最大トルク634lb-ft(860Nm)を誇る。室内には新型インフォテイメントシステムのスクリーンとデジタル・ダッシュボードがある。

画像クレジット:Kirsten Korosec

三輪車

画像クレジット:Kirsten Korosec

例年、会場には少なくとも数台の三輪自動車が登場するが、2021年はいつもより多かった。Biliti Electric(ビリティ・エレクトリック)が持ってきた電動&ソーラー駆動トゥクトゥクは、Amazon(アマゾン)やWalmart(ウォルマート)が世界の人口密集都市のラストワンマイル配達に使える、と同社は言っている。

同社のGMW Taskmanは、すでにヨーロッパ、アジアの各所で使われていて、これまでに1200万個の荷物を配達し、延べ2000万マイル(3200万km)を走ったとファンダーが言っていた。

画像クレジット:Kirsten Korosec

Electra Meccanica のもう1台、Soloは同社が2016年のこのショーでも披露したsharyou

で、プレスデーにテスト乗車を提供していた。同社によるとSoloは1回の充電で最長100マイル(約161 km)走行可能で、最大出力82馬力、最大トルク140lb-ft(約190N-m)、最高速度は80mph(約128 km/h)。定員1名で荷物スペースを備え、近距離の移動や都市圏での通勤のために作られている。Soloの価格は1万8500ドル(約211万円)で、アリゾナ州メサで製造されている。

Sondors(ソンダーズ)の三輪電気自動車は、3人乗りで航行可能距離は約100マイル(約160km)と同社はいう。このクルマは、100万ドル(約1億1400万円)以上を集めて成功したクラウドファンディングの後に開発されたもので、33 kWhのバッテリーパックを備え、最大出力170馬力、最大トルク323 lb-ft(約438N-m)を発揮する。

Imperium (インペリウム)も三輪電気自動車、Sagitta(サギッタ)を披露した。ショーに登場した三輪乗用車の中では最大で、4人まで乗ることができるスペースをもつ。Sagittaは車両のスペックを発表していないが、2022年中頃から予約を開始すると同社は述べた。

バービー

画像クレジット:Abigail Bassett

ことしのLAオートはには、バービーまで登場した。Mattel(マテル)はBarbie Exra(バービー・エクストラ)カーの実物大バージョンを公開した。2021年式Fiat(フィアット)500のシャシーに載せたファイバーグラスのボディーはキラキラの白い塗装で飾られ、ウィング式ドアと後部にはペット用プールもある。

ソーラーパワー

画像クレジット:Kirsten Korosec

2021年のショーには、興味深いソーラー充電オプションを備えたクルマがいくつかあった。中国のエネルギー会社、SPI参加のPhoenix Motor Inc.(フェニックス・モーター)が発表したピックアップトラック、EF1-Tの収納可能なソーラーピックアップベッカバーは、最大25〜35マイル(約40〜56km)の走行距離を追加できると同社はいう。EF1-TおよびバンバージョンのEF1-Vは、いずれも巨大な車両で、明らかにまだプロトタイプであり、機能や利用形態について顧客の意見を聞いているところだと会社は述べた。

大きな虫のような外観のEF1-Tは、1回の充電で380〜450マイル(約612〜724 km)走行可能で、2025年の発売に向けて予約を受け付けているという。ずいぶんと遠い話だ。

原文へ

(文:Abigail Bassett、翻訳:Nob Takahashi / facebook

スバル初のグローバル展開、新型電気自動車「ソルテラ」がLAオートショーで米国デビュー

SUBARU(スバル)は、2021年5月にチラ見せしていたクロスオーバー型電気自動車の全貌を、11月11日に世界初公開した。そして米国時間11月17日、この「SOLTERRA(ソルテラ)」と名づけられた同社初のグローバル展開となる電気自動車は、ロサンゼルスオートショーで米国デビューを果たした。

ソルテラは、スバルとトヨタの共同プロジェクトから誕生したサブコンパクトクラスのバッテリー駆動クロスオーバーで、トヨタが4月に発表した電動クロスオーバー「bZ4X」とほとんど双子に近い兄弟関係にある。つまり、従来の「スバル BRZ」と「Toyota 86(トヨタ86)」の関係と同様だ。

このクルマを一文でまとめると次のようになる。ソルテラは、アメリカ人の飽くなきクロスオーバーへの欲求をターゲットにしており、トヨタの協力を得てスバルがEV市場に参入する足がかりとなる。

この2年間は、半導体不足により生産が滞ったにもかかわらず、スバルにとっては非常に良い年だった。米国では過去最高の販売台数を記録している。

四輪駆動の中型SUVとして知られる「Forester(フォレスター)」は、販売台数でセグメントをリードしてきたものの、2021年10月の販売台数では、小型クロスオーバーの「Crosstrek(クロストレック)」が最も売れていると報じられている(販売台数ベース)。スバルによると、フォレスターと「Outback(アウトバック)」のオフロード志向を強めたバリエーションである「Wilderness(ウィルダネス)」を販売店に留めておくことは難しく、メーカー希望小売価格より5000ドル(約57万円)も高いプレミアム価格が付けられているとのこと。

トヨタは2019年9月からスバルの20%を保有しているが、その提携は、GMがスバル(当時の富士重工業)との関係を解消した2005年にさかのぼる。トヨタとスバルの提携は、スバルが得意な四輪駆動システムの専門知識をもたらし、トヨタがハイブリッドや電気パワートレインを提供するという形で、双方にとって有益なものとなっている。2つの日本企業は、両社とも新しい領域に踏み込む際には保守的で慎重になる傾向があるが、ソルテラはスバルが考えるオフロード性能を備えた電動クロスオーバーの将来像を示すという意味でも興味深い。

全輪駆動の共有プラットフォーム

ソルテラは、スバルがトヨタと取り組んだ共同プロジェクトであるため、デザイン(特にインテリア)はトヨタに少々似ているが、エクステリア、シャシー、全輪駆動システムはすべてスバルによるものだ。トヨタはバッテリーの調達も担当している。

このバッテリーは、71.4kWhのリチウムイオン電池で、前後車軸の間に格納されており、フロントとリアに搭載された合計2基の電気モーターに接続されている(日本版編集部注:モーターをフロントに1基のみ搭載する前輪駆動仕様もあり)。一度の充電で走行可能な航続距離は460km前後(WLTCモード、日本国内向け基準)になる見込みだという(日本版編集部注:前輪駆動モデルは530km前後)。最大150kWのDC急速充電に対応し、0~80%までわずか30分程度で充電できる。

モーターの最高出力は、前後とも80kWで合計160kW(約217.5ps)。最大トルクは246lb-ft(約333.5Nm)で、低回転から十分な力を発揮するため、いわゆるソフトローダーとしては十分な動力性能が期待できるだろう。(日本版編集部注:前輪駆動モデルは1基のモーターのみで150kW[約204ps]を発生)。

画像クレジット:Kirsten Korosec

オートショーに先駆けて郊外で行われた発表会では、小さな岩が転がる道を登ったり浅い池を越えたりしながら、集まった報道陣の前で写真撮影を行い、軽めのオフロード走行を披露した。

ソルテラには、スバルのトレードマークである左右対称の全輪駆動システムに加え、滑りやすい路面でトラクションを高める「X-MODE(エックスモード)」が搭載されている。1輪が宙に浮くような状況では、ブレーキを自動的に調整して障害物を乗り越えていくことができるため、適度なオフロード性能を備えたEVと言えるだろう。210mmの最低地上高は、同じ電動小型クロスオーバーである「Volkswagen(フォルクスワーゲン)の「ID. 4」やTesla(テスラ)の「Model Y(モデルY)」よりも優れていると、スバルはLAオートショーにおける発表の際に強調していた。

先の発表イベントでは、スバルはソルテラが階段やオフセットランプのようなオフロードの障害物でテストしている映像を流し、この小型クロスオーバーがどれほどの性能を備えているかを示した。さらに「Jaguar I-Pace(ジャガー・アイペース)」のような競合車と、同じ障害物テストで対決までさせてみせた。

価格はまだ正式には発表されていないものの、スバルによれば、米国では3万9000ドル(約450万円)前後から購入できる見込みとのこと。ソルテラは2022年中旬までに日本、米国・カナダ、欧州、中国などの市場で販売が始まる予定だ。

画像クレジット:Kirsten Korosec

原文へ

(文:Abigail Bassett、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

トヨタの電気自動車 「bZ4x 」が2022年半ばに米国登場、最大航続距離402km

トヨタ自動車の新ブランドbzの最初の電気自動車であるbZ4xは、2022年半ばに米国で発売される予定で、推定航続距離は最大250マイル(約402km)だ。

bZ4xは、米国時間11月17日に開幕したロサンゼルスオートショーでともに発表されたスバルのSolterraとほぼ同じモデルだ。bZ4xとSolterraは、トヨタとスバルの電気自動車専用プラットフォームの共同開発という提携で生まれたクルマだ。この2つの車には、テールライトをはじめとするいくつかの小さな違いがある。しかし、一般の人からするとbZ4xとSolterraを見分けるのは難しいかもしれない。

画像クレジット:Kirsten Korosec

トヨタは10月に日本市場向けのbZ4x生産モデルを公開した。米国版は、右ハンドルという点を除いて基本的に同じだが、航続距離の数値が新たに明らかになった。この数値はトヨタの社内推定値であり、生産日近くになって発表されるEPA公式値ではない。航続距離250マイルは、bZ4xの前輪駆動モデルであるXLEのものだ。全輪駆動モデルの航続距離は明らかにされなかった。

bZ4xは、トヨタの二酸化炭素排出量削減に向けた「上記のすべて」アプローチの一環であり、業界が電気自動車中心のアプローチに傾いている中、トヨタはこのスタンスを堅持している。今週行われたイベントでトヨタの幹部は、マイルドハイブリッド、プラグインハイブリッド、バッテリー電気、水素燃料電池の車両を幅広く提供するという戦略を繰り返し述べた。

画像クレジット:Kirsten Korosec

GM(ゼネラルモーターズ)をはじめとする他の自動車メーカーは、将来的にバッテリー駆動の電気自動車に完全に移行することを約束しているが、トヨタはそれを譲らないようだ。同社は、2025年までにグローバルで約70種類の電動化モデルを提供する計画を発表している。そのうち、15種が電気自動車で、ここにはbZ(beyond zeroを指す)ブランドの7種が含まれる。

2020年代末までに、同社は年間販売台数1000万台のうち200万台がバッテリー駆動車になると見込んでいる。また、200万台は内燃機関を搭載する。残りの800万台、つまりポートフォリオの80%はハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、水素燃料電池車になる。

画像クレジット:Kirsten Korosec

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

トヨタの新型EV「bZ4X」はスバルとの共同開発、一充電走行距離460kmでルーフソーラーパネルも選択可能

2021年4月、トヨタ自動車は、2025年までに発売する7台の「Beyond Zero(ビヨンド・ゼロ)」完全電気自動車の第1弾であるbZ4X(ビー・ズィー・フォー・エックス)を発表した。その際、スバルと共同でSUVを開発していることや、次期パワートレイン「e-TNGA」を搭載することを明らかにした以外、同社はbZ4Xの詳細については多くを語らなかった。しかし、金曜日、トヨタはその状況を一変させ、その市販車版を発表した。

bZ4Xには、FWD(前輪駆動)とAWD(全輪駆動)の2種類のモデルがある。前者は、150kWの出力を持ち、8.4秒でゼロから100km/hまで加速することができる。また、WLTC基準では、71.4kWhのバッテリーを搭載したFWDモデルの1回の充電での走行距離は約500kmとされている。なお、この数値は、米国環境保護庁によるテストが行われた後に減少することが予想される。なお、この数値は日本仕様のものであり、トヨタが米国で発売するモデルとは異なる仕様になる可能性がある。

画像クレジット:Toyota

このバッテリーは150kWのDC急速充電に対応しており、約30分の充電で充電切れの状態から80%まで回復することができる。AWDモデルでは、80kWのモーターを2つ搭載し、それぞれの車軸に1つずつ、合計で160kWの出力を実現する。ゼロから時速100kmまで7.7秒で加速することができる。トヨタは、AWDモデルの1回の充電での走行距離として、460kmを想定している。両モデルとも、バッテリーをシャーシに内蔵することで、低重心化とシャーシ剛性の向上を図っている。

また、bZ4Xには、いくつかの便利な機能を搭載する予定だ。その1つがルーフソーラーパネルで、約1120マイル(約1800km)分の電力を無料で供給できるという。また、ステアリングホイールと前輪の間のメカニカルな結合のないステアバイワイヤシステムも搭載する。これらの機能は一部のモデルに搭載される予定だ。

bZ4Xは、2022年半ばに米国およびその他の市場でデビューする。

画像クレジット:Toyota

原文へ

(文:Igor Bonifacic、翻訳:Yuta Kaminishi)

トヨタが米国でも車載用電池生産に約3800億円投資を発表、新会社を設立し2025年稼働を目指す

Toyota Motor(トヨタ自動車)は、他の大手自動車メーカーと同様に、電動化に向けて巨額の資金を投入している。同社は米国時間10月18日、米国での車載用電池生産に、今後約10年間で約34億ドル(約3800億円)を投資すると発表した。

この投資はトヨタの北米部門を通じて行われるもので、その第一歩としてトヨタの北米事業体であるToyota Motor North America, Inc.(TMNA)が、トヨタグループの総合商社である豊田通商とともに、米国で車載用バッテリー工場を新会社として設立する。2025年の生産開始を目指すというこの工場には、2031年までに約12億9000万ドル(約1430億円)の投資が予定されており、現地で1750人の従業員を新規雇用する見込みだという。なお、工場の場所は現時点では発表されていない。

今回の計画は、トヨタが2030年までに世界全体における電池供給体制の整備と研究開発を行うため、約1兆5000万円(約135億ドル)を投資するという大きな目標の一部であり、すでに電池開発の促進とラインナップの電動化に向けて巨額の投資を約束している他の自動車メーカーに追いつくためのものでもある。General Motors(ゼネラルモーターズ、GM)など他の大手自動車メーカーも同様の、しかしさらに大きな投資を発表している。例えばGMは、2025年までに350億ドル(約4兆円)を投じて、電気自動車の生産能力を増強し、30車種の新型EVを世界市場に投入することを計画している。

関連記事:GMが3.8兆円をEV開発へ投資、従来の計画に8850億円上乗せ

トヨタはこの新工場で、まずはハイブリッド車用のバッテリーを製造すると述べている。新工場の生産能力は明らかにされていない。

トヨタの新工場建設計画は、他の自動車会社が最近発表した計画と足並みを揃えるものだ。Ford(フォード)は電池メーカーのSK Innovation(SKイノベーション)と共同で、114億ドル(約1兆3000万円)を投じて、米国内に2カ所のEV用バッテリーの製造拠点を設けると発表している。また、Fiat Chrysler(フィアット・クライスラー)とGroupe PSA(グループPSA)の合併により誕生した自動車会社のStellantis(ステランティス)も、LG Energy Solution(LGエナジーソリューション)と予備的な契約を結び、北米でバッテリーセルとモジュールを生産すると発表したばかりだ。

しかし、今回のトヨタの発表は、これら他の自動車メーカーとは少々異なる印象を与える。トヨタが他の電池メーカーと提携せず、車載バッテリーの完全な内製化を計画していることを明確に示すものだからだ。

トヨタは他の自動車メーカーと比べると、電気自動車の展開で遅れを取っている。同社は現在、米国でBEV(内燃機関を搭載せず、バッテリーだけで走る純粋な電気自動車)を販売しておらず、いくつかのプラグインハイブリッド車やハイブリッド車をラインナップに揃えているだけだ。しかし、2021年6月にはクロスオーバーSUV型BEVのコンセプトカー「bZ4X」を公開し、2022年にその量産モデルを発売すると発表した。同社は2025年まで世界全体でBEVのラインナップを15車種へと拡大することを目指している。

関連記事:フォードとSKが1.27兆円をかけEVとバッテリーに特化した2つの製造キャンパスを米国に建設

画像クレジット:HECTOR RETAMAL/AFP / Getty Images

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ぶどうを畑から包装場まで運ぶ農業用自律走行ロボットのBurroがトヨタなどから約12億円調達

Burroと最初に出会ったのは、アグリテック企業である同社が、2020年に開催されたTechCrunchロボティクスイベントのピッチオフに参加したときだった。この(以前はAugeanという、今ほど楽しくない名前で活動していた)会社は、今週、シリーズAで1090万ドル(約12億1500万円)の資金を調達したことを発表し、着実にステップアップしているようだ。今回のラウンドは、S2G VenturesとToyota Ventures(トヨタ・ベンチャーズ)が主導し、既存投資家であるRadicle GrowthとffVCに加えて、F-PrimeとADM Capitalが参加した。

Burroの主な製品は、農作物を畑から移動させるための自律走行ロボカートだ。Burroは、同社が「ポップアップ自律性」と呼ぶ、トレーニングなしで空間を移動できるシステムを活用している。このシステムは、現在不足している農園作業員を補充するために使用することができる。

画像クレジット:Burro

同社はすでに約90台のロボットを現場に投入しており、それらはブドウを運搬しながら1日に約100~300マイル(約161〜483km)移動し、週6日運用されているという。今回の資金調達は、既存および新規顧客向けの生産拡大のために使用され、2022年には世界で500台以上のロボットを導入する計画だ。

Charlie Andersen(チャーリー・アンダーセン)CEOはリリースでこう述べている。「農業分野に参入した多くの自律化企業は、まず自律走行トラクターや自律除草、収穫などに焦点を当て、非常に難しい技術的作業を包括的に自動化しようとしてきましたが、多くの場合、大規模な市場への参入には苦戦しています。このアプローチのすばらしさは、最も労働集約的な農業分野におけるどこにでもある問題を中心に、今日、スケールアップできる点にあります。また、我々のプラットフォームがデータを取得し、多くの環境について学習することで、他の数え切れないほどのアプリケーションにスケールアップするための基盤を提供します」。

画像クレジット:Burro

アグリテックは、パンデミックの際に労働力不足が顕著になったことで、関心が加速したいくつかのロボティクス分野の1つだ。自社の技術を迅速に実用化することで、Burroが投資家の関心を集めたことは間違いない。

画像クレジット:Burro

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

トヨタ傘下のウーブン・プラネットが先進的な車両OS開発加速のため米Renovo Motorsを買収

トヨタ自動車の子会社であるWoven Planet Holdings(ウーブン・プラネット・ホールディングス)は、自動運転のような未来の交通技術への投資、開発、そして最終的には市場への投入を目指して、1年足らずで3件目の買収を行った。

今回の買収対象は、2015年にスタンフォード大学と共同開発した自動運転のデロリアンが自律的にドリフト走行をする動画を公開して大きな話題となった、シリコンバレーに拠点を置く自動車向けOS開発企業のRenovo Motors(レノボ・モーターズ)だ。買収の条件は公表されていない。Renovoはシリコンバレーのオフィスを維持し、1240人の従業員を持つウーブン・プラネットの事業に統合される。

ウーブン・プラネットは、2021年初めに高精度マップ生成スタートアップのCarmera(カーメラ)や、Lyft(リフト)の自律走行部門であるLevel 5(レベル5)を買収したが、Renovoを買収したのは、AVドリフトの技術のためではない。同社はRenovoの車両OSに興味があり、それが自社の取り組みを加速させるのに役立つかもしれないと考えているのだ。

関連記事
トヨタのウーブン・プラネットが高精細地図スタートアップCarmeraを買収
トヨタのウーブン・プラネットが配車サービスLyftの自動運転部門を約600億円で買収

Renovoは、自動運転や地図、その他のモビリティサービスに関連するアプリを車内で動作させるためのOSを開発した。同社の「AWare OS」は、Google(グーグル)のAndroidが、スマートフォン市場でアプリ開発者がサービスを提供できるようにするのと同じような仕組みになっている。またある意味、Amazon Web Services(AWS)が提供するオンデマンドのクラウドコンピューティングプラットフォームと比較することもできる。このミドルウェアは、セキュリティを犠牲にすることなく柔軟に設計されており、他の企業がソフトウェアを展開するためのプラットフォームを提供する。

急成長し、今では統合されつつある自律走行車業界の中で、わずか30人の従業員を抱えるRenovoは小さな存在だった。しかし同社のOSは、Cruise(クルーズ)に買収されたVoyage(ヴォヤージュ)をはじめとする多くのAV開発者の注目を集めた。また、Verizon(ベライゾン)をはじめとする複数の投資家を惹きつけた。

Renovoの共同創業者兼CEOであるChris Heiser(クリス・ハイザー)氏は、最近のインタビューでこう語っていた。「Renovoが開発したIPは、自動車メーカーが将来やりたいことの中核をなすものだと認識されるようになってきたと思います。このような関係を構築し、どのようにして規模を拡大するのかを理解しようとしたとき、巨大な規模を実現するためには、自動車メーカーのリソースと後ろ盾を持ち、何百万台もの車を発売できるパートナーを見つけなければならないことが次第に明らかになりました」。

ウーブン・プラネットは、RenovoのOSを、2025年までに市場に投入する予定の自社のオープンな車両開発プラットフォーム「Arene」の商業化を支援する手段と考えている。

ウーブン・プラネット・ホールディングスは、トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント(Toyota Research Institute – Advanced Development, Inc.、TRI-AD)を傘下に置き、投資部門であるウーブン・キャピタル(Woven Capital, L.P.)と、相互接続されたスマートシティの実験都市であるウーブン・シティ(Woven City)を運営している。トヨタ自動車は2月、富士山の麓に位置する裾野市の東富士工場跡地に着工した。

2021年初め、ウーブン・キャピタルは、8億ドル(約893億円)規模の戦略的ファンドを立ち上げるにあたり、自動運転配送車両のNuro(​​ニューロ)への投資を発表した。

画像クレジット:Renovo

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Aya Nakazato)

GMも中国初の自動運転ユニコーンMomentaに約330億円投資

General Motors(GM、ゼネラル・モーターズ)は、トヨタや中国国有企業SAIC Motor(SAICモーター)、Mercedes-Benz AG(メルセデスベンツAG)などを含む、中国の自動運転スタートアップMomenta(モメンタ)を支援する多くの大手自動車メーカーの輪に加わった。

車両販売という点で米国最大の自動車メーカーであるGMは米国時間9月21日、今後中国でのGM車両の自動運転テックの開発を加速させるためにMomentaに3億ドル(約330億円)を投資すると明らかにした。GMの上級副社長でGM China社長であるJulian Blissett(ジュリアン・ブリセット)氏は、今回の投資が「中国における(GMの)消費者のために作られたソリューション」をもたらすのに役立つ、と声明で述べた。

このニュースは、Momentaが約5億ドル(約554億円)の資金調達ラウンドをクローズしてから6カ月も経たない中でのものだ。そのラウンドにはSAIC、トヨタ、 Mercedes-Benz AG、Bosch(ボッシュ)が参加した。TechCrunchのRita Liaoが指摘しているように「巨大な投資ラウンドは資本集約的な自動運転車両の業界では当たり前になった」。しかしMomentaは、ソフトウェアを搭載した車両を2021年末までに大量生産することを目指していて、商業化に近づきつつあるようだ。

関連記事

トヨタ、ボッシュ、ダイムラーが中国の無人運転の未来に賭けてMomentaの550億円のラウンドに参加

GMが3.8兆円をEV開発へ投資、従来の計画に8850億円上乗せ

この出資はGMが次世代のテクノロジーに積極的に投資する最新例だ。同社は6月、2025年までに電動とAVのベンチャーに350億ドル(約3兆8760億円)をあてる、と述べた。米国では、自動運転テクノロジーへのGMの関心は自動運転の子会社Cruise(クルーズ)を介してよく知られている。CruiseはこのほどGMの金融会社から50億ドル(約5540億円)の与信限度額を獲得した。

しかしGMはまた、世界最大のEVマーケットでの足がかりを模索する中で、中国でかなりの提携も行ってきた。中国で最も売れている電気小型車であるWuling Mini EVはSAIC-GM-Wulingが生産していて、社名からわかるように、GM、SAIC、Wuling Motors(ウーリンモーターズ)の合弁会社だ。SAIC-GM-Wulingは人気のブランドBaojunも手がけている。

中国の自動運転スタートアップの幹部が6月にあったTC Mobilityで指摘したように、同国の地方自治体もまた、自動運転に対して積極的だ。

「中国では、各地方自治体の政府が我々起業家のように行動するよう動機づけられています」とMomenta欧州のゼネラルマネジャーであるHuan Sun(フアン・サン)氏はイベントで述べた。「地方自治体は地域経済の発展でかなり進歩しています。我々が感じているのは、自動運転テクノロジーが(地方自治体の)経済ストラクチャーを改善し、アップグレードできるということです」。

GMは、Momentaの技術がいつGM車両に搭載されるのかについては明らかにしなかったが、広報担当は2社の提携が米国でのGM車両生産と販売にはつながらないことを認めた。

画像クレジット:Momenta

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

トヨタとホンダは米自動車メーカーに有利なEV税制優遇措置拡大に反発

Toyota Motor(トヨタ自動車)とHonda(ホンダ)は、米国内で労働組合員が製造した電気自動車の税制優遇措置を拡大する法案を、否決するようにと議員たちに要請している。

この法案は、米国内で労働組合員によって製造された自動車に対する連邦税の優遇措置を7500ドル(約82万円)から最大1万2500ドル(約137万円)に拡大するというもので、トヨタは議会に提出した書簡の中で「明らかに偏っている」「法外だ」と非難している。さらに、米国内で製造されたバッテリー搭載車には優遇措置が500ドル(約5万5000円)上乗せされる。この法案が可決された場合、トヨタ、ホンダ、Tesla(テスラ)などの自動車メーカーの車両は優遇措置の対象外となるが、デトロイトの「ビッグ3」と呼ばれるメーカーはすべて対象となる。

トヨタは議員に宛てた書簡の中で、「現在の法案は、組合に加入しないという選択をした米国の自動車労働者を差別し、電動車両の普及を加速させるという目的を二の次にする」と述べ、「これは不公平であり、間違っています。この明らかに偏った提案を否決してくださることを求めます」と嘆願している。

さらにトヨタは、この法案は富裕層、つまり電気自動車の購入に公的資金を必要としない人々を優遇するものだと述べている。この法案には、調整後所得が40万ドル(約4400万円)までの個人、または80万ドル(約8800万円)までの世帯に、優遇措置の適用を制限するという所得調査の条項が設けられている。所得制限を設けるかどうか、あるいはその所得制限をどのようにするかは、議会の民主党と共和党の間で大きな争点となっている。

テスラのElon Musk(イーロン・マスク)CEOは、この法案を「メキシコで電気自動車を製造しているFord(フォード)  / UAW(全米自動車労働組合)のロビイストが書いたものだ。これがどれだけ米国の納税者のためになるのかはわからない」とツイッターで批判した。

Whole Mars Catalog

労働組合のために4500ドル(約49万円)に引き上げ、米国製に対してはたったの500ドルに減らしたことには、開いた口が塞がりません。

労働組合への2500ドル(約27万4000円)はすでに馬鹿げていました。しかし、新提案ではそれを4500ドルに拡大するとは?!? 彼らは明らかに1つの企業をターゲットにしています。

Elon Musk

メキシコで電気自動車を製造しているフォード / 全米自動車労働組合のロビイストが書いたものです。これがどれだけアメリカの納税者のためになるかはわかりません。

この法案は、EVに対する最大7500ドル(約82万円)の税額控除が10年以上前に施行されて以来、初めての増額となる可能性がある。また、この法案では20万台以上のEVを販売した自動車製造業者の車両を控除の対象外とする規定が廃止されるため、General Motors(ゼネラルモーターズ)やテスラのクルマも再び対象となる。

GM、フォード、そして旧クライスラー(Chrysler)のStellantis(ステランティス)という、全米自動車労働組合に代表される従業員が働く大手自動車メーカー3社は、この法案を賞賛している。

この法案は米国時間9月14日に下院歳入委員会で審議される。この税控除拡大は、現在議会で審議されている3兆5000億ドル(約383兆6000億円)規模の巨大な予算調整法案の一部に過ぎず、その中には他にも教育、医療、気候変動などを対象とした社会的に進歩的な提案が多数含まれている。

画像クレジット:Toyota

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アフリカでワクチンなどの必要物資を自社開発の自律走行型電動ドローンで届けるZiplineが278億円調達、物流ネットワークを拡大

アフリカ全土に医療用品を配送する事業として創業し、ドローンによる配送サービスを提供するスタートアップ、Zipline(ジップライン)が新たに2億5000万ドル(約278億円)の資金を調達した。今回の資金調達により評価額が27億5000万ドル(約3060億円)となった同社は、アフリカと米国における同社の物流ネットワークの拡大を今後さらに押し進める予定だ。

当初はルワンダで名を馳せたZipline。その後ガーナにも手を伸ばし、自律走行型電動ドローンを使って血液、ワクチン、救命薬などの必要物資を届けている。2014年に設立されたZiplineは、垂直統合型の企業である。つまり、無人のドローン、物流ソフトウェア、それに付随する発射および着陸システムの設計と製造をすべて自社で行なっている。TechCrunchの取材にて、ZiplineのCEOであるKeller Rinaudo(ケラー・リナウド)氏はこれは必要に迫られてのことだったと述べている。同社がドローン技術の開発を始めた当初、既製のものでは信頼性が低く、うまく統合することができないということにすぐに気づいたと同氏は振り返る。

「結局、フライトコンピューター、バッテリーパック、機体など、基本的にすべてのものをシステムから取り外さなければなりませんでした。そしてそれらすべてをゼロから作らなければなりませんでした」。

Ziplineは自らをドローン企業とは考えておらず、むしろ即席の物流プロバイダーであると同氏は強調している。また、同社は自律型ドローンのモデルを継続的に改善し続けているものの、過去5年間における成功の多くは、物流ネットワークの構築に関するものだった。困難に満ちていたとリナウド氏がいう初年の2016年に、ルワンダで事業を開始したその後、同社はルワンダにて物流会社のUPSとの提携を実現。日本でトヨタグループと提携し、またナイジェリアのカドゥナ州とクロスリバー州との連携も開始している。米国ではノースカロライナ州のNovant Health(ノヴァント・ヘルス)と提携して医療機器や個人用防護具を提供している他、小売大手のWalmart(ウォルマート)とも提携して健康・ウェルネス商品を提供している。

関連記事:米小売大手ウォルマートが医療品配達スタートアップのZiplineと提携、米アーカンソー州でドローン配送テストを拡大

パンデミックで打撃を受けた多くの企業とは異なり、Ziplineは個人用防護具だけでなく新型コロナウイルス(COVID-19)のワクチンの納入という同社の事業をさらに加速させる明白な機会を得た。同社によると、年内に240万回分の新型コロナ用ワクチンを納入する予定だという。

同社は、処方箋などの医薬品を人々の家に直接届けるいうようなサービスも今後視野に入れていこうと考えているという。「テレプレゼンスを完成させるためには、即席物流サービスの存在がとても重要だと病院は考えているようです。電話一本で医者と話せるようになっても、それでは必要物資はどうしようかという事になるからです」と同氏は話す。

画像クレジット:Zipline

同社は現在、パンデミックのため規制当局から与えられた緊急免除の下での運営から、完全な商業運営の認証に移行するため、連邦航空局(FAA)に働きかけている。FAAの認証プロセスにおいてZiplineが競合他社より有利な点は、Ziplineのシステムが安全であるということを示す何千時間もの飛行データを同社が持っているという点だ。成功すれば、同社はこのような認証を受けた初のドローン配送会社の1社となる。

長期的に見れば他の産業にも目を向ける可能性はあるが、現時点では医療分野に焦点を当てているとリナウド氏はいう。同氏によると、ここ数カ月だけでもナイジェリアで5件、ガーナで4件、新しく配送センターとのサービス契約を結んだ他、米国の病院システムとも「複数の新規サービス契約」を結んでいるという。今回の資金調達は、Baillie Gifford(ベイリー・ギフォード)が主導し、以前も投資したTemasek(テマセク)とKatalyst Ventures(カタリスト・ベンチャーズ)、新規投資家のFidelity(フィデリティ)、Intercorp(インターコープ)、Emerging Capital Partners(エマージング・キャピタル・パートナーズ)、Reinvest Capital(ラインベスト・キャピタル)の支援を受けて行われている。調達資金は新規契約のためのインフラ構築に使用される予定である。

今後3年ほどで、全米の一戸建て住宅の大半にZiplineのサービスを提供するというのが同社の目標だとリナウド氏はいう。

「トヨタやウォルマートなどの大企業がこの即席物流分野に大きな投資を始めているという事実は、人々がこの分野の到来を認識しているということの明確な表れだと思っています。変革の波が押し寄せているのです。これは医療システムや経済システムのあり方を大きく変えるものであり、物流によって人々に平等にサービスを提供できるようにするというのは、本当にエキサイティングなことです」。

画像クレジット:Zipline

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Dragonfly)

【レビュー】2022年新型トヨタGR 86はすべての愛好家を魅了するマストドライブの逸品

スポーツカー市場は排他的なクラブのように思えるかもしれない。非実用的な情熱にあふれる買い物をするのに十分なお金とガレージスペースを持つ人々の、専用クラブのようなものだ。

こうしたプレステージアイテムには大抵の場合、威圧的なパワー値と、同じように脅威的な価格が表示されており、どちらも暗黙的に購入希望者に挑戦をしかけてくる。乗りこなせるのか?手に入れる余裕があるのか?

Daft Punk風の「harder better faster stronger(よりハードに、より良く、より速く、より強く)」というスポーツカー業界のマントラは、参入するのに十分な財力がある人やサイドラインからの応援を楽しむ人にとってはすばらしいものだが、グラウンドフロアでアクションを起こそうとする人にとっては昨今、マツダのMiata(ロードスター)ではない、3万ドル(約330万円)を切るパフォーマンスに特化したクルマを見つけるのは難しいだろう。

「パフォーマンス」は高速で高馬力のマシンに限って言及するものだという過度な誤称は、まったくもって未熟なマシンや単にそれを必要としないマシンを追い払ってしまう。また会えたね、ロードスター。

初代トヨタGT 86(旧サイオンFR-S)の導入が重要な意味を持ち、その次の世代であるGR 86が期待を抱かせる理由はここにある。庶民に向けたパフォーマンス、すべての人のためのスポーツカーだ。

基本

GR 86は2+2クーペで、2.4リットルのフラットな4気筒ボクサーエンジン(水平対向エンジン)を搭載し、228馬力、184ポンドフィート(約250Nm)のトルクを生み出す。

この構成に馴染みのない方のために説明すると、従来的なV字直線よりも優れたバランスを実現するレイアウトだ。動力は6速トランスミッション、マニュアルまたはオートマチックを介して後輪に送られる。

フロントにマクファーソンストラット式、リアにマルチリンク式の独立懸架サスペンションを採用。トリムレベルに応じて、GR 86は17インチまたは18インチのホイールを備える。

トリムに関していえば、GR 86にはベースとプレミアムの2つのタイプがあり、プレミアムには前述の18インチホイール、ダックビルリアスポイラー、適応型フロントLEDヘッドランプ、ちょっとした視覚的アクセントに加えて、8ステレオスピーカーへのアップグレード(標準は6)が含まれる。

すべてのトリムとして、エンターテインメントと接続性を追求した8インチのタッチスクリーンディスプレイ、7つのエアバッグを備えた標準的な安全装置、そして安定性制御、期待されているアンチロックブレーキシステム、さらにブレーキアシストとブレーキ力配分で構成されたToyota Star safety systemが装備されている。

自動ギアボックスを搭載したGR 86には、衝突前ブレーキ、車線維持支援、アダプティブクルーズコントロールに対応する、アクティブセーフティシステムという付加的な利点も備わっている。

GR 86は、契約制のコネクテッドサービスを提供するアプリを通じて、エンジンの始動やドアのロック、クラクション鳴動などのリモート接続機能に加え、車両のヘルスレポートの提供や、クルマの基本的なペアレンタルコントロール(ジオフェンシング、スピード警告、さらには夜間外出禁止など)の設定も可能だ。

レースで培われたテクノロジー

GR 86のようなシンプルさを追求したスポーツカーには、テクノロジーを駆使したランボルギーニ・フラカンや、近縁のアウディR8のような高級な輝きはない。

こうしたクルマはゲーム用PCよりも多くのハードウェアを搭載しているのに対し、GR 86はコンピューターによる力量が少ない。「ピュアリストのスポーツカー」と銘打たれているこのクルマは確かに、活発なドライビングセッションとなるとアシストが足りない。

安定性はオフにすることができ、ドライブモードの「スポーツ」と「トラック」ではブレーキとスロットルへのインプットレスポンス性が高まる。これらのモードはまた、より積極的なエンジンマッピングに近い形で、自動ギアボックスの効果を向上する。

GR 86はこのように小型のパッケージのため、差をつけるテクノロジーを見出すには特定の領域における入念な精査が必要だ。トヨタによると、このクルマはレースで培ったテクノロジーを活かして開発され「GR」(トヨタのモータースポーツ部門GAZOO Racingの頭文字)というブランド名を冠しているという。

外部では、安定性に大きな違いをもたらすエアロダイナミックタッチが注目に値する。これは、車両の制御を補助するために空気を高速で流通させる機能的な通気口があるフロント部分から始まり、リアホイールウェルの上の成形品がバックエンドでこの作業を継続するよう形成されているリア部分に続いている。

構造的には、GR 86は前バージョンに比べてフレームの剛性を高め、前後の主要部分の補強を行うとともに、高強度鋼を採用している。

興味深いことに、このクルマは現行モデルよりも少し重くなっており、トランスミッションによって77ポンド(約35kg)から117ポンド(約53kg)程度増えている。アルミルーフやフェンダーなどの軽量化対策がこれを緩和しているものの、重量を減らすことよりも慎重に重量配分することに力が注がれた。

シートベルト装着

GR 86のハンドルを握るところから見ると、インテリアは抜本的な変更というよりもアップグレードであることがわかる。アナログゲージクラスターは姿を消し、ドライブモードによって変化する7インチTFTデジタルスクリーンが採用されている。

オートマチック仕様のGR 86sには、最適な使用のために可視情報をシフトする3つの独立したスクリーンがある。マニュアル車では2つになっている。

例えば「ノーマル」スクリーンでは1時間あたりの走行距離が表示され「トラック」スクリーンでは現在のギアが3色のRPMインジケータの上に表示される。これはトヨタを閉鎖的コースで走行させようとする人には有用だ。現在の速度と比較して「その瞬間に」知るべき重要な情報だからだ。この表示を拡大してインターフェイスに鮮明なオレンジ色の光を与えることで、データをひと目で確認できるようになっている。ドライバー周辺にも情報が届くだろう。

画像クレジット:Alex Kalogiannis

インフォテインメントスクリーンも若干アップグレードされている。視覚的にはより良く統合されている印象で、旧バージョンでその魅力を減じていたピアノブラックのプラスチック製ベゼルから解放されている。

インターフェイスはシンプルでラジオ、メディアソース、メンテナンスデータへのアクセス、ロードサイドアシスタンスへのコール、そして音楽ストリーミングサービスなどのインストール可能な他の統合アプリへのアクセスを可能にするアイコンがある。

アプリは好みに合わせて調整することができるが、全体的に見ると、真に機能するためには外部デバイスに依存している。このクルマがターゲットとしているハイパーコネクテッドオーディエンスに対して、トヨタはほとんどのユーザーがAndroid AutoとApple CarPlayを主として利用することを想定しているという感がある。

パフォーマンスのプレイグラウンド

GR 86でトラックに向かうと、捕獲された生き物を元の環境に戻すような気分を味わう。トヨタはこのGR 86とその先代モデルを試乗と連続比較のためにMonticello Motor Clubに持ち込み、全長4.1マイル(約6.6 km)のコースでクルマのパフォーマンスに挑む20周を設定した。GR 86はストリートカーではあるが、その性能を十分に発揮しながらワイルドに走ることができるトラック上に放たれた。

先代モデルのパワーは賛否両論を呼び、ファンはそのクルマの目的に合ったサイズだと感じていた一方、他の人たちはそれが不足していることに気づき、価値があると感じていたターボチャージャーをトヨタが最終的に取り付けることを期待した。

GT 86のボクサーエンジンの改良は目を見張るものがあり、両陣営を満足させるはずだ。

変位の増加やその他の機能強化は、実際にパワーをわずかに高めており、ターボを追加することなく、特にパワーの適用において、諸事をシンプルかつ均一に保持している。

さらに重要な点として、このパワーは回転バンドにおいて早期に有効になるため、GR 86はより迅速にスピードを上げることができる。比較すると、重量のあるGR 86の方が軽く感じられるのに対し、先代モデルは積み荷のレンガを引っ張っているように感じられる。

重量バランスとサスペンションの改良により、クルマの制御量が増大した。旧86の決定的な特徴の1つは、信じられないほど地面に埋め込まれているかのように感じられたことだ。

限界を超えてクルマを押し出すことは難しく、そのために新旧のドライバーたちは、自分たちの真下に何かが入り込む心配は無用の運転を促された。GR 86でも同じことがいえるが、俊敏性には若干の調整が必要だ。

画像クレジット:Alex Kalogiannis

お気に入りのビデオゲームをプレイしながら、コントローラーの設定を今までよりもずっと高くしていくような感じだ。GR 86は、ハンドルを握り、リバランスされたパワー出力と組み合わせることで、驚くほど満足感が得られる状態でコーナーを回ることができる。

ステアリングとスロットルは軽いタッチに反応するかもしれないが、ブレーキに関しては別だ。それ以外の点ではしなやかなGT 86は、大幅な減速や停止の際に重い足の踏力を必要とする。高速ブレーキだけでなく、通常のスピード調整の場合でも、ブレーキを踏むことは、見た目ほど軽くないドアを押し開けるのと同じような不確実さをもたらす。

異なるトランスミッション間において、それは最終的に、トラックまたはストリートのどちらかの好みに帰着する。

マニュアルの操作は少しゆるい感じがするが、滑らかで軽い。クルマのハンドリングと同じように、ギアボックス自体もパターン全体をすばやく動かすことができるように設計されている。それ以外の点では、マニュアルであることから、オートマチックとは対照的にドライバーはフルコントロールの状態にある。

一般的に、オートマチック車はカジュアルからスポーティーな運転に向いているが、それを超えて、使いこなすというより克服するシステムになりつつある。

「スポーツ」モードは、オートマチック式GR 86sのスロットルレスポンスとギアボックスの挙動を処理するものであり、その違いは実際の適用において顕著である。「ノーマル」で速く走ろうとすると、ペダル操作時に一気に加速するが、ギアボックスはドライバーが加速を最大にするように低い位置にとどまるのではなく、できるだけ早く高いギアに戻ろうとする。スポーツでも、しばらくはギアを入れたままだが、最終的には自らの役割を果たすようになる。運転している人のフラストレーションに大きく影響するだろう。

ストリートビート

ストリートで元気なドライブをするとき、GR 86の才能はその欠点をはるかに凌いでいく。

トランスミッションの挙動はオートマチック車ではまだ邪魔になっているが、バックロードのカーブの感覚はトラックの時とは異なり、その荒々しい加速感とハンドリングは、前方の道路がどのように見えても、ほぼ確実に良い時間を保証する。

楽しいセッションの合間に、トヨタは十分に要求に適っていることを実感した。3万ドル以下のクルマに期待される性能よりも優れているが「すごい」要素(「wow」 factor)はない。悪くいえば、そこそこの内部タッチポイントを備えた安価な通勤車のように感じられるが、決して耐えられないものではない。

オートマチックでは、アダプティブクルーズコントロールなどの運転支援機能を利用できる。アダプティブクルーズコントロールは、高度が変化したり、クルマの存在が検知されたときに、設定速度を維持すべく積極的に動作する。

車線逸脱警告などのその他の設定のほとんどは、このデジタルゲージクラスターの1つのセクションからアクセスできるメニューの中に隠され、その使い方は、特に移動中は扱いにくい。これが作動すると、検知は的外れで、時にははっきりと無視される。筆者の場合、意図的に車線を逸脱してみたところ、同じ道を戻ってくるときだけ過度に反応した。

ライバルたち

価格面では、GR 86は、当然ながらマツダのMX-5を除けば、他に対抗するスポーツカーは多くない。アクセスしやすさ、手頃な価格、動的な振る舞いは似ているが、その使命と姿勢はそれぞれ異なっている。

ミアータは、遊び心のあるドロップヘッドの表現力でドライバーに愛されている気前のいいロードスターだ。GR 86も同じように遊び心があるが、コミカルでもなければ威圧的でもなく、やや厳粛性が高い印象だ。

最終的にはユーザーの好みとユースケースによるだろう。筆者なら、沿岸部のドライブにはミアータを選び、一方でGR 86はトラック用の小型車といったところだろうか。

実際、GR 86は自らに対抗しているだけである。ある面では、それは外向的な自己よりも優れたものになろうと努力しているのであり、ほとんどのドライバーたちは、GR 86がそこで成功していることに同意するだろう。

別の面では機械式ツインのスバルBRZと真っ向から勝負している。トヨタとスバルが提携してこれを実現したのは有名な話だ。このクルマを際立たせているものには、外観やチューニングなどがあるが、それ以上のものはない。愛好家たちがどちらに惹かれるかを見るのは興味深い。

GR 86は、トヨタの現在のモータースポーツへの取り組みと、文化的に重要な意味を持つスポーツカーの遺産へのコミットメントを示す重要な車両である。これを疑問視する人は、同社の構造のトップに目を向けてみて欲しい。トヨタの豊田章男社長は、スポーツカーに熱中しているだけでなく、経験豊富なドライバーでもあり、GR 86の開発にも個人的に関わってきた。要するに、自分自身が満足しない限り車は前に進まず、個人的な投資の度合いは重要でないことには注がれないのだ。

GRというサブブランドへのエントリーポイントとして(スープラに加わり)、GR 86は、新規の、そして経験豊富な愛好家に、パフォーマンスドライブの旅へのすばらしいスターティングポイントを提供する。GR 86にはドライバーとして、全米モータースポーツ協会の1年間の会員資格が付属しており、そこではハイパフォーマンスのドライビングイベントが1つ用意されている。

この86はまた、スープラやGRの前身であるAE 86のようなクルマの改造やメンテナンスを行っているアフターマーケットのチューナーにとっても白紙の状態である。結局のところ、GR 86は路上やトラックにおいて最速あるいは最強のクルマではないかもしれないが、学習曲線と価格面の両方において、そのアクセシビリティが優れているといえるだろう。

編集部注:本稿の執筆者Alex Kalogiannis(アレックス・カロジアンニス)氏は自動車関連ライター、エディター、司会者。

関連記事
フォードが完全EV版に先駆けてハイブリッドの「2021 F-150」発表、オプション満載モデルから見える同社のEVトラック戦略
オール電化のアウディ2022年モデル「e-tron GT」と「RS e-tron GT」は未来ではなく今を見据えるグランドツアラー
ポルシェのアプローチの正しさを納得させるフルEVワゴン、パワーと実用性を備えた新型Taycan Cross Turismo
画像クレジット:Alex Kalogiannis

原文へ

(文:Alex Kalogiannis、翻訳:Dragonfly)

トヨタの自動運転車「e-Palette」が横断歩道を横断しようとしたパラリンピック選手と接触事故、選手は負傷で欠場に

トヨタの自動運転車「e-Palette」が横断歩道を横断しようとしたパラリンピック選手と接触事故、選手は負傷で欠場に

Reuters

トヨタは、東京オリンピック / パラリンピック選手村で運行している自動運転車 e-Palette(イーパレット)が26日に起こした、パラリンピック選手との接触事故を受けて、選手村でのe-Palette運行をいったん取りやめました。豊田章男社長は運行再開について問われ「絶対に安全だといえる立場ではない」と、慎重な姿勢を示しています。

事故はe-Palletteが選手村内のT字交差点を右折しようとした際に発生しました。朝日新聞によれば、e-Palletteは横断歩道の前で一旦停止したあと「オペレーターが手動で発進した」直後に、車内のオペレーターから死角の位置にいたパラリンピック柔道代表の北薗新光選手に接触したとみられるのこと。視覚障害をもつ北薗選手は接触によって転倒し、頭などに全治2週間のけが。28日の試合も欠場することになってしまいました。

豊田社長は「パラリンピックの会場で、目が見えないことや耳が聞こえないことへの想像力を働かせられなかった」と事故原因について説明したとのこと。説明どおりなら事故の発生はオペレーターの判断ミスが原因で、責任もオペレーターにあるということになります。

またレベル4の自動運転と宣伝されていたはずの自動運転車が、交差点で一旦停止したあと手動で発進する必要があるというのは釈然としないところで、どういう運行状況、手順だったのかも非常に気になります(レベル4は、決められた条件下で全ての運転操作を自動化と定義されています)。

トヨタは、e-PaletteはEVでエンジン音がないため、接近を知らせるスピーカー音量を2倍に大きくするなどの対策を検討するとしています。なお、パラリンピック開催期間は9月5日までありますが、選手らはe-Paletteがなくても他の手段で選手村を移動できるため、特に困ることはない模様です。

トヨタの自動運転車「e-Palette」が横断歩道を横断しようとしたパラリンピック選手と接触事故、選手は負傷で欠場に

高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議「官民ITS構想・ロードマップ2020」より。JSAE(自動車技術会)によるJASO(日本自動車技術会規格)テクニカルペーパー「自動車用運転自動化システムのレベル分類及び定義」(2018年2月1日発行)を基にしたもの

(Source:朝日新聞DigitalReutersEngadget日本版より転載)

バイデン大統領のEV販売目標達成に向けて、自動車メーカーが政府の投資拡大を要請

Joe Biden(ジョー・バイデン)大統領は、2030年までに米国の新車販売台数の半分を低エミッションまたはゼロエミッション車にするという意欲的な新目標を発表するが、この計画について、ビッグ3の自動車メーカーは、政府による多額の支援が必要であるとしながらも、一定の支持を表明している。

General Motors(ゼネラルモーターズ)、Ford(フォード)、Stellantis(ステランティス、旧Fiat Chrysler)の3社は現地時間8月5日に共同声明を発表し、10年後までに新車販売台数に占める電気自動車の割合を40~50%にするという「共通の目標」を掲げた。ただし、この目標は「ビルド・バック・ベター(より良い復興)プランで政府が約束した一連の電化政策が適切に展開される場合にのみ達成できる」と注記されている。

具体的な投資としては、消費者へのインセンティブ、米国全土の「十分な量」のEV充電ネットワーク、研究開発への資金提供、製造・サプライチェーンへのインセンティブなどが挙げられている。

現地時間8月5日に大統領令として発表される予定のバイデン大統領の目標は、拘束力はなく、完全に自主的なものだ。この目標には、バッテリー、水素燃料電池、プラグインハイブリッドを搭載した車両が含まれる。

ホワイトハウスで開催される新しい目標に関するイベントには、自動車メーカー3社の幹部と全米自動車労働組合の代表者が出席。Elon Musk(イーロン・マスク)CEOのツイートによると、テスラは招待されなかったようだ。

ホワイトハウスが同日発表したファクトシートによると、バイデン大統領は、トランプ大統領の任期中に緩和された2026年までの乗用車および中・大型車の新しい燃費基準も強化する。この新基準は、米国運輸省と米国環境保護庁の管轄下で策定されるが、自動車メーカーにとっては驚きではない。この新基準は、すでにバイデン大統領の、いわゆる「Day One Agenda(初日のアジェンダ)」に含まれており、気候変動への取り組みの基礎となっている。

新基準は、2020年カリフォルニア州で可決された、自動車メーカー5社(BMW AG、Ford、本田技研工業、Volkswagen AG、Volvo AB)の連合体と協力して決定された基準を参考にしていると思われる。これらの自動車メーカーは8月5日、ホワイトハウスの排出量削減計画を支持するとした別の声明を発表したが、ビッグ3と同様、排出量削減目標を達成するためには、米国政府による「大胆な行動」が必要であるとしている。

2030年への道のり

Edmunds(エドモンズ)のインサイト担当エグゼクティブディレクターであるJessica Caldwell(ジェシカ・コールドウェル)氏は、声明の中で、バイデン大統領の拘束力のない命令は象徴的なものに過ぎないが、目標は達成可能であると述べ、自動車業界のリーダーたちは、誰が大統領であろうと、電化に関しては「以前から『壁に書かれた文字(不吉な警告の意味)』を見てきた」と続ける。

製品開発のリードタイムが比較的長いこともあり、大手自動車メーカーの多くが、少なくともこの10年の半ばまでは、EV(電気自動車)やAV(自動運転車)に数十億ドル(数千億円)規模の投資を行うことをすでに発表している。General MotorsFordは2025年までにそれぞれ350億ドル(3兆8000億円)、300億ドル(約3兆3000億円)の投資を発表しており、Stellantisも同様の発表を行っていることはいうまでもない。フォルクスワーゲンはバッテリーの研究開発に数十億ドル(数千億円)を投じており、さらにVolvo Cars(ボルボ・カーズ)は2030年までに全車を電気自動車に移行するとしている。

関連記事
GMが3.8兆円をEV開発へ投資、従来の計画に8850億円上乗せ
フォードが電動化への投資を3.3兆円に引き上げ自社バッテリー研究開発を加速、30年までにEV比率40%に
多国籍自動車会社ステランティスが2025年までに約3.9兆円を電気自動車に投資
Volvoが2030年までにEVへ全面移行、販売もオンラインに

これらの膨大な数字は、自動車メーカー各社の販売目標に沿ったもので、ほぼバイデン大統領の目標と一致している。

一方で、燃費規制については、これまで自動車メーカーの反応は芳しくなかった。General Motors、Stellantis(当時はFiat Chrysler)、トヨタ自動車の3社は、カリフォルニア州が独自の排ガス規制を設定する権限を剥奪しようとするトランプ大統領時代の訴訟を支持していたが、各社とも最終的には180度方針転換し、バイデン大統領は2021年、独自の基準を導入できることとなった。

本質的には、バイデン大統領の発表は気候変動と同様に地政学的な意味合いが強い。彼もまた、電気自動車に関しては「不吉な警告」を見ているのだ。バイデン政権は、ファクトシートの中で、電気自動車や電気自動車用バッテリーの材料について「中国が世界のサプライチェーンを支配しつつある」と指摘し「(中国を筆頭とする)各国は、電気自動車の販売目標を明確に設定することで、部品・材料から最終組立に至る製造部門に民間投資を呼び込む存在となっている」と述べている。

国際エネルギー機関(IEA)によると、米国では2020年、2016年の3倍の電気自動車が登録されたものの、電気自動車の市場シェアではヨーロッパや中国に後れをとっている。

このニュースにはさまざまな反応があり、その中には政権側にもっと断固とした行動を求める環境保護団体もある。Ceres(セレス)の交通部門シニアディレクターCarol Lee Rawn(キャロル・リー・ローン)氏は、将来的な規制は、二酸化炭素排出量を60%削減し、2035年までに電気自動車の販売を100%にするという「明確な軌道」を目指すべきという声明を出している。

現地時間8月5日にホワイトハウスでバイデン大統領と同席する全米自動車労働組合は、Ray Curry(レイ・カリー)会長が声明を出し「(同組合は)厳しい期限やパーセンテージではなく、米国の中産階級の心と魂を支えてきた賃金と福利厚生を維持することに焦点を当てている」と述べた。

画像クレジット:Getty Images

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Dragonfly)

トヨタ、BMW、ブリヂストンの迷い、環境に配慮したモビリティは必要だがそのコストは誰が払う?

国連が採択したSDGsや、ESG投資に注目が集まる中、自動車業界にも環境への配慮が求められるようになってきた。フロスト&サリバン主催「インテリジェントモビリティサミット2021 ゼロへのイノベーション」においても、今後のモビリティを考える上で「循環型経済」がテーマとして挙げられている。同サミットでは、トヨタ・ダイハツ・エンジニアリング&マニュファクチャリング上級副社長兼一般財団法人トヨタ・モビリティ基金アジア・パシフィック地区担当プログラムディレクターのPras Ganesh(プラス・ガネシュ)氏、BMW Groupサーキュラーイニシアチブ担当役員のIrene Feige(アイリーン・フェージュ)氏、ブリヂストンGサステナビリティ推進部門長の稲継明宏氏、フロスト&サリバンヴァイスプレジデントのVijayendra Rao(ヴィジャンドラ・ラオ)氏が対談。フロスト&サリバンでアジア太平洋地区モビリティ部門担当アソシエイト・パートナーを務めるVivek Vaidya(ヴィヴェック・ヴァイジャ)氏をモデレーターとなり、循環型経済の重要性や実現可能性について語った。

本記事はフロスト&サリバン主催「インテリジェントモビリティサミット2021 ゼロへのイノベーション」中のセッションの一部講演を編集、再構成したものとなる

循環型経済は何から手をつけるべきか

対談はヴァイジャ氏の「循環型経済にはどんな意味があるか?」という問いから始まった。

ガネシュ氏は「循環型経済は、トヨタで30年以上テーマとなっています。二酸化炭素の削減には部分的なアプローチではなく、より大きな視点での全体的なアプローチが必要です」という。さらに同氏は、トヨタが持続可能な社会の実現に貢献するための新たなチャレンジ「トヨタ環境チャレンジ2050」を2015年に発表したことに触れ「循環型経済はトヨタにとっては新しいものではありません」と強調した。

では、循環型経済を実現するにあたり、何から着手すべきなのか。

稲継氏は「循環型経済はブリヂストンにとって、ビジネス機会だと捉えています。そこで重要になるのが資源の効率化です。当社のパートナーと協力し、必要なエコシステムを構築する必要があります」と話す。

一方、ガネシュ氏は車両寿命とリサイクルに注目すべきだと考える。車両寿命は地域ごとに差があり、アジアの車両寿命は10〜20年だという。同氏は「現状、使わなくなったクルマをリサイクルに出すよりも、売り払った方が所有者にとって得なことが多い。それでは循環が進まないので、政府のサポートを得ながら、リサイクルを促進したり、リサイクルしやすいように車体を分解しやすいデザインにしていくことが重要です」という。

フェージュ氏は、使用する材料を減少させるためのエコシステムの見直しの必要性を重要視している。同氏は「着手しやすいのは、金属の再利用です。もちろん、再利用品であれ、新品であれ、質が高くなければいけないのは大前提ですが、今後のクルマの生産では金属を再利用し、新品の金属を使用する際には、それを正当化するような仕組みが必要です」と語る。

リサイクルの壁

ヴァイジャ氏の次の質問は「循環型経済を考えた時、EV(電気自動車)はどういう意味を持つのか?」だった。

フェージュ氏は「持続可能性はEVによってもたらされます」と断言。車体やバッテリーの分解・再利用を視野に入れ、サプライチェーン全体を見直さなければいけないと見ている。

ガネシュ氏もリサイクルの重要性を認め「バッテリーのリサイクルモデルができ上がれば、クルマの価格を下げることに繋がります」と話す。しかし、同氏はリサイクルには壁もあると考える。例えば、アジアではほこりや湿度の関係で、バッテリーの再利用に限界がある。さらに、リサイクルに関わるテクノロジーはまだ発展途上で、変化が多い。生産からリサイクルまでのプロセスを最初から考えなければいけないという。

稲継氏は「ブリヂストンにとっては、クルマに関わるリサイクルというと、タイヤのリサイルを意味します。そしてタイヤリサイクルはビジネスだと捉えています。リサイクルとは、資源の循環ですので、やはりパートナーとの協力関係の構築と、エコシステムの見直しが鍵ですね」という。

循環型経済へのマイルストーン

ここまでで循環型経済に向けた課題が見えてきた。しかし、実現までのマイルストーンはどう設定していけば良いのか。

ガネシュ氏は先述の「トヨタ環境チャレンジ2050」を挙げ、トヨタは循環型経済の実現目標を2050年に定めていることに言及した。同時に、実現のために考えなければいけないことは多いとも語る。

同氏は「実現には戦略が不可欠です。例えば、カーボンニュートラルはどれくらいの規模でやるのか?トヨタだけでやるのか?政府と組むのか?何か他の組織と協力するのか?など考えなければいけません。トヨタには26カ国 / 地域に50の海外製造事業体があります。それぞれの国にはそれぞれの状況があります。つまり、カーボンニュートラルは一度やっておしまいではなく、それぞれの国でそれぞれの段階で進めなければいけません」と話す。

一方フェージュ氏は「カーボンニュートラルはBMWのゴールです」という。マイルストーンとしては、使用する金属の見直しや、市場の金属供給の精査がまず必要だという。

では、日本のモビリティにおけるカーボンニュートラルのマイルストーンはどうなのだろうか。

ガネシュ氏は、日本政府のサポートが強いことを指摘する。天然資源にそれほど恵まれていない日本では、循環型経済は喫緊の課題であるため、政府の支援も受けやすいという。

稲継氏は「日本の政府とコラボレーションするということは、規制のあり方を考えることでもあり、重要なことです」とガネシュ氏を補足した。

誰がコストを払うべきか

循環経済を実現するには、リサイクル技術の開発や、これまでと異なるプロセスを組み込むことでコストが発生する。ヴァイジャ氏は「こうしたコストや、コストによる自動車価格への影響はどうするべきなのでしょうか」と他の参加者に質問した。

稲継氏は「エコシステム全体でコストを分かち合う必要があると思います」と回答。

フェージュ氏は「素材の再利用で全体プロセスにかかるコストは下げられると思います。新品の素材でも再利用の素材でも、同じ質を担保することが課題となります」と答えた。

ガネシュ氏は「循環型経済のために自動車の価格が変動したら、その変動分を調整しないといけません。では誰が調整するのか?政府でしょうか?顧客でしょうか?自動車メーカーでしょうか?」と問題を提起。さらに、循環型経済は素材の再利用でコストが下がる可能性もあると指摘し「循環型経済で増加したコスト」と「循環型経済で下げられたコスト」のバランスがしばらく変化し続けるだろうと予測する。

さらに、同氏は発展途上国での循環型経済実現はより難しいであろうとも考える。そういった地域では、ロジスティクス用の車両を農業用に作り替えるなどして、1台のクルマに対し1回目の使い方、2回目の使い方、といったふうに複数回の用途を考えることが着手しやすいと指摘した。

「ただし、顧客がこういった車の使い方を望んでいるのか?お金を払いたいのか?というのも考えないといけません」とガネシュ氏は最後に付け加えた。

関連記事
コネクテッドカーのビジネスモデル予測、日産、富士通らのキーマンはどう考える?
コロナ禍でモビリティも変化、いま押さえておくべき5つのトレンドとは?

カテゴリー:モビリティ
タグ:トヨタBMWブリヂストン循環型経済二酸化炭素リサイクル電気自動車

トヨタのウーブン・プラネットが高精細地図スタートアップCarmeraを買収

トヨタ自動車が自動運転などの将来に向けた交通技術に投資し、開発を進め、最終的に商業化するために設立した企業であるWoven Planet Holdings(ウーブン・プラネット・ホールディングス)は、高精度地図のスタートアップ企業であるCarmera(カーメラ)を、非公開の金額で買収すると発表した。2021年4月末にウーブン・プラネットは、Lyft(リフト)の自律走行車部門であるLevel 5(レベル5)を5億5000万ドル(約604億円)で買収することで合意に至ったと発表したばかりだ。

関連記事
トヨタのウーブン・プラネットが配車サービスLyftの自動運転部門を約600億円で買収
NVIDIAが高精度マップスタートアップのDeepMapを買収、自律走行車テクノロジーを強化

また、これは6月に発表されたNVIDIA(エヌビディア)によるDeepMap(ディープマップ)の買収に続く、高精度地図スタートアップの買収でもある。

今回の買収により、Carmeraはウーブン・プラネットの完全子会社となる。ウーブン・プラネットの代表取締役CEOであるJames Kuffner(ジェームズ・カフナー)氏によれば、Carmeraで働く50人のチームはニューヨークとシアトルのオフィスを維持し、最終的にはウーブン・プラネットの1000人を超えて成長を続ける事業形態に統合されるとのことだ。

Carmeraは、ウーブン・プラネットの事業会社で東京に本社を置くWoven Alpha(ウーブン・アルファ)の米国拠点となり、同社のAMP(Automated Mapping Platform、自動地図生成プラットフォーム)チームと協業する。Carmeraの共同設立者兼CEOであるRo Gupta(ロー・グプタ)氏は、AMPを統括するMandali Khalesi(マンダリ・カレシー)氏の直属となる。

Carmeraは、商用フリート会社に無料で提供しているサービスから収集したデータを、主要な地図製品の維持・拡大に利用するバーター型のビジネスモデルとして、2015年に設立された。Carmeraの主要かつ最初の製品は、自動車メーカーやサプライヤー、ロボタクシーなど、自動運転車を手がける顧客向けに開発された高精細な地図である。自動運転車開発のスタートアップであるVoyage(ヴォヤージュ)は、2021年3月にCruise(クルーズ)に買収されたが、Carmeraの初期の顧客だった。また、Baidu(百度、バイドゥ)はCarmeraの技術を使って、オープンソースの自動運転基盤「Apollo(アポロ)」におけるマッピングプロジェクトをサポートしている。

Carmeraは、車両やドライバーのリスク管理や安全性の向上を図りたいフリート事業者のために、テレマティクスおよびビデオを使ったモニタリングサービスを提供しており、それら多数のフリート車両から得られたクラウドソースのデータを、自動運転に役立つ高精細地図の更新に利用している。カメラを搭載した人間が運転するフリート車両は、都市部で日常業務を行う際に得た日々新たな道路情報を、自動運転用地図に提供しているというわけだ。

これまでCarmeraは、時間をかけて製品ラインアップを進化させてきた。自動運転用地図にリアルタイムイベントや変更管理エンジンを追加し、都市および市街地計画者向けに空間データや街路分析などの製品を開発した。2020年、同社はいわゆるChange-as-a-Service(サービスとしての変更)プラットフォームを発表した。これは、変化を検出して他のサードパーティの地図に統合できる一連の機能を備えた製品群だ。

リサーチ&アドバイザリ企業のGartner(ガートナー)でVPアナリストを務めるMike Ramsey(マイク・ラムゼイ)氏は「高精細地図の会社で常に問題となるのは、このような機能を持っているのはすばらしいことだが、それをどのように拡張し、提供し、更新し続けるかを考えないと、『誰かに売れそうなソフトウェアのよくできた一部分を持っているだけ』という状態に陥ってしまうことです」と述べている。「今回の買収は、Carmeraの拡張に関する問題を解決するものです」。

画像クレジット:Carmera

Carmeraはウーブン・プラネットに比べて規模も資本も小さいが、業界を注視してきた人はこの合併を予測していたかもしれない。

Carmeraは、ウーブン・プラネットの前身となったToyota Research Institute-Advanced Development(トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント)と、3年前から協業してきた。このスタートアップが最初に参加したのは、日本で行われた実証実験で、車載カメラを使って都市部や路面の高精細地図を自動生成する方法を開発した。このパートナーシップは2020年に拡大し、日本だけでなくミシガン州のデトロイトなどの道路の地図作成も行われている。

「この関係に多くの投資をすることは実に簡単なことでした」と、グプタ氏は2018年にCarmeraがトヨタと初めて提携したときのことを振り返る。「ビジョンが非常によく似ていたのです。5年前に考えた我々のシードデッキと、ウーブン・プラネットの全体的なビジョンや、地図の自動生成に対する彼らのビジョンを比べると、あまりにも似ていて不気味なくらいでした」。

ウーブン・プラネット(ひいてはトヨタ)は、すでに衛星を使って作成した地図と、現在走行中の何百万台もの車両から得られる膨大なデータを持っている。Carmeraは、ウーブン・プラネットのポートフォリオに、ダイナミックな地図の変更と、フリート事業者や安全性に関するビジネスの経験をもたらすことになる。

「Carmeraとはすでに一緒に実証実験に取り組んできた、近い将来に利用可能なアプリケーションがあります。これらは、まだ発表していませんが、安全性や自動運転の分野に応用できます」と、カフナー氏は語っている。そして、この自動車メーカーの新型Lexus LS(レクサスLS)とToyota Mirai(トヨタ ミライ)に、高精細地図を利用した「Teammate(チームメイト)」と呼ばれる先進運転支援技術が搭載されたことに言及し「私はこれらの次世代の製品にとても期待しています。特に商用フリート車両では、高精細地図には多くの用途があります」と語った。

ウーブン・プラネットが織りなすもの

画像クレジット:Woven Planet/Toyota

LyftとCarmeraの買収は、ウーブン・プラネットが2021年1月に設立されてから行ってきたさまざまな活動の一端を表すものだ。それはトヨタ自動車が、既存のライバル企業や新興企業に対して、特にソフトウェア面での競争力を高めようとしていることも示している。トヨタ自動車の子会社で東京に拠点を置くウーブン・プラネットには、Woven Alpha(ウーブン・アルファ)とWoven Core(ウーブン・コア)という2つの事業会社と、Woven Capital(ウーブン・キャピタル)というVCファンドを擁している。また、この持株会社は、あるゆるモノやサービスが相互接続されたスマートシティのプロトタイプとして、新技術の実験場となるWoven City(ウーブン・シティ)と呼ばれるプロジェクトをてがけている。トヨタは2021年2月、富士山麓にある静岡県裾野市の東富士工場跡地で、このWoven Cityの建設に着工した。

2つの事業会社であるウーブン・アルファとウーブン・コアは、トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメントの事業をさらに発展・拡大するために、新体制に移行して設立された。ウーブン・コアは地図作成ユニットを含む自動運転技術に焦点を当てており、ウーブン・アルファはWoven Cityを含む新しいコンセプトやプロジェクトの開発を担当している。

そしてウーブン・キャピタルは、これらの次世代モビリティ・イノベーションに投資を行う。このVC部門は、2021年3月に8億ドル(約880億円)規模の新たな戦略的ファンドを起ち上げ、その第一号案件として、無人自動運転車による配送に特化したロボティクス企業であるNuro(ニューロ)に出資すると発表した。6月には、カーシェアリング、ライドシェアリング、自動運転技術企業などの車両管理を支援するためのプラットフォームを開発した交通ソフトウェアのスタートアップ、Ridecell(ライドセル)に非公開額の出資を行っている。

関連記事:トヨタの投資ファンドWoven Capitalが自動配送ロボティクスNuroに出資

カテゴリー:モビリティ
タグ:トヨタ自動車Woven Planet買収地図自動運転

画像クレジット:Carmera

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

セコムがトヨタ開発中の巡回警備用パーソナルモビリティー「歩行領域EV」で公道実証運用を開始

セコムがトヨタ開発中の巡回警備用パーソナルモビリティー「歩行領域EV」で公道実証運用を開始

セコムは6月28日、トヨタ自動車と連携して、トヨタが開発中の「歩行領域EV(警備実証用モデル)」を使用した巡回警備の実証運用を、東京都江東区青梅のテレコムセンターと青梅フロンティアビル周辺の公道(車道と歩道・横断歩道)で開始した。

セコムがトヨタ開発中の巡回警備用パーソナルモビリティー「歩行領域EV」で公道実証運用を開始

セコムでは、警備業界の負担軽減、労働環境の改善における解決策の1つとして、広域エリアの巡回警備を効率化する「歩行領域EV(警備実証用モデル)」の活用検討を行っている。これまで、大型商業施設や空港など、道路交通法の適用外となる私有地での実証実験を重ね活用実績とノウハウを蓄積してきたものの、法律の制約により「公道での巡回警備の実情に沿った形での走行」ができないことが課題だった。

これに関連して東京都は、セコムの事例を含む「公益的な事業等における搭乗型移動支援ロボットの活用」という規制改革提案を国に提出。2020年12月には警視庁から「『搭乗型移動支援ロボットの公道実証実験』等に係る取扱いについて(通達)」が出され、2021年5月には国土交通省が「公道実証実験事業に用いる搭乗型移動支援ロボットの基準緩和認定要領について」の一部改正を行ったことから、国家戦略特区内での「歩行領域EV(警備実証用モデル)」の公道走行が、一定の条件下で可能となった。

条件は、警備員資格を保有し、あらかじめ乗車訓練を受けた警備員で、原動機付自転車の運転に必要な運転免許を保有している者のみが運転すること。また事前に許可を得たエリアに限定し、最高速度は時速6キロ以下などとなっている。

「歩行領域EV」の利点は、広域の移動が容易になることばかりではなく、視点が高くなることから視野が広がり、目立つことから犯罪抑止効果が期待できるという。また、AEDや拡声器などの装備品を携帯して移動できるといった長所もある。

セコムがトヨタ開発中の巡回警備用パーソナルモビリティー「歩行領域EV」で公道実証運用を開始

「歩行領域EV(警備実証用モデル)」の主なスペックは以下のとおり。

  • 全長:700mm
  • 全幅:450mm
  • 全高:1200mm
  • ステップ高さ:160mm
  • 最高速度:時速2/4/6/10km ※切替可
  • 連続走行距離:約14km
  • 連続走行時間:2.5時間
  • 充電時間:2.5時間
  • 乗員要件:身長130~185cm、体重100kg以内

関連記事
電動マイクロモビリティシェアの「LUUP」アプリが大阪梅田・難波・天王寺で電動キックボードシェア導入
スマートシティ創造に向けたアクセラレータ「SmartCityX」が1年目の成果を発表、6つの共創事例を紹介
四足歩行ロボット「ANYmal」は階段を上り人の代わりに現場を24時間パトロールする

カテゴリー:セキュリティ
タグ:セコム(企業・サービス)電動自転車 / eバイク / 電動モペッド(用語)トヨタ自動車(企業)マイクロモビリティ(用語)モビリティ(用語)日本(国・地域)

eVTOL企業Joby Aviationがアジアや欧州でも早期に事業開始を計画

電動垂直離着陸型旅客機のスタートアップ企業であるJoby Aviation(ジョビー・アビエーション)は、最初の商業展開を北米で開始することを目指しているが、同社創業者でCEOのJoeBen Bevirt(ジョーベン・ビバート)氏は、アジアや欧州でも早々に存在感を示すことができると期待している。

米国時間6月9日に開催された「TC Sessions:Mobility 2021(TCセッション:モビリティ2021)」に参加したビバート氏は、最初に商業活動を行う場所は明らかにしなかったが、最近の発表によればロサンゼルス、マイアミ、ニューヨーク、サンフランシスコ・ベイエリアに絞られているようだ。しかし、最初の都市がどこになるかについては慎重に言葉を選んだ。

「3つの地域にそれぞれ初期の市場を設定することになると思います」と、同氏は語った。「最初に事業を起ち上げる市場については、私たちのチームの多くが現在活動している地域に近いという理由から、北米になる予定です。しかし、すばらしい好機や都市は世界中にあります。私たちはできるだけ早く、多くの人々にサービスを提供したいと考えています。そのために、製造規模の拡大に力を入れているところです」。

Joby Aviationは、Toyota(トヨタ)の協力を得て設計された45万平方フィート(約4万1800平方メートル)の製造施設の建設を、2021年後半に始める予定だ。同社はすでに先行生産用の施設を完成させている。

かつては秘密主義的なスタートアップだったJobyは、この半年間に多くの衆目を集めてきた。2021年2月には、Reinvent Technology Partners(RTP)と合併することで同意に達したと発表。RTPは、
著名な投資家でLinkedIn(リンクトイン)の共同創業者であるReid Hoffman(リード・ホフマン)氏、Michael Thompson(マイケル・トンプソン)氏、Zynga(ジンガ)創業者のMark Pincus(マーク・ピンカス)氏によって設立された特別買収目的会社(SPAC)だ。ホフマン氏は、ビバート氏とともにTCセッション:モビリティ2021にも参加した。

SPACによる買収以前にも、Joby Aviationは長年にわたりeVTOLの開発で注目を集め、投資家を獲得してきた。トヨタは重要な支援者・パートナーとなり、2020年1月には6億2000万ドル(約679億円)の資金を調達したシリーズCラウンドを主導した。その約1年後、Jobyは複雑な取引の一環として、Uber(ウーバー)の空飛ぶタクシー事業であるElevate(エレベート)を買収している。

関連記事:Uberが空飛ぶタクシー事業ElevateをJoby Aviationに売却、最後の夢の事業から撤退

現在のJoby Aviationは、2018年から取り組んできた米国連邦航空局(FAA)の認証取得に加え、eVTOL(電動垂直離着陸機)の製造に注力しているところだ。同社はまた、どこでどのように運用するかというピースを組み合わせ始めている。従業員数も過去1年間で2倍に増やし、現在は約800人を雇用している。

Joby Aviationは2021年6月初め、まずはロサンゼルス、マイアミ、ニューヨーク、サンフランシスコ・ベイエリアを中心としたバーティポート(垂直離着陸用飛行場)のネットワークを構築するために、国内最大級の駐車場運営会社であるREEF Technology(リーフ・テクノロジー)および不動産買収会社のNeighborhood Property Group(ネイバーフード・プロパティ・グループ)と提携することを発表した。

2024年の運用初年度には、1〜2都市で事業展開することをビバート氏は想定している。

「私たちは、消費者のみなさまに変革をもたらす体験をお届けするために、十分な範囲のサービスを提供したいと考えています」と、ビバート氏はいう。「新しいサービスが開始されても十分な供給がないと、お客様は不満を抱くことがありますからね。私たちは、少なくとも需要の一部に確実に応え、お客様に本当に満足していただける体験を提供したいのです。私たちが企業として本当に大事にしている要素は、お客様を当社の熱狂的なファンにすることだと、私は考えています」。

関連記事:Joby Aviationが空飛ぶタクシー乗降場所として立体駐車場に注目

カテゴリー:モビリティ
タグ:Joby AviationeVTOLトヨタエアタクシー

画像クレジット:Joby Aviation

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

名称変更したToyota Venturesが先行技術やカーボンニュートラルに取り組む企業への約330億円投資を発表

トヨタ自動車の独立系ベンチャーキャピタルファンドであるToyota AI Ventures(トヨタAIベンチャーズ)は「AI」がなくなり、単にToyota Ventures(トヨタ・ベンチャーズ)として生まれ変わった。この新名称を記念して、3億ドル(約330億円)の資金を追加投入し、Toyota Ventures Frontier Fund(トヨタ・ベンチャーズ・フロンティア・ファンド)とToyota Ventures Climate Fund(トヨタ・ベンチャーズ・クライメイト・ファンド)という2つのファンドを通じて、将来の実用化が期待される先端技術や、カーボンニュートラルに取り組む企業に投資する。

この2つのファンドの規模はそれぞれ1億5000万ドル(約165億円)ずつで、Toyota Venturesの運用資産は5億ドル(約550億円)を超えることになる。これまでAI、自動運転技術、モビリティ、ロボティクス、クラウドを中核としてきた同社の投資分野は、Frontier Fundへの新たに資本注入により、スマートシティ、デジタルヘルス、フィンテック、エネルギーなどの分野も加わることになる。投資アプローチは変わらないが、投資先として検討するスタートアップ企業の範囲が広がるわけだ。

「AIの全体に占める割合が縮小するような感じです」と、Toyota Venturesのマネージングダイレクターを務めるJim Adler(ジム・アドラー)氏はTechCrunchに語っている。「Frontier Fundの最初のミッションは、トヨタにとっての次を発見することです。トヨタは1930年代には自動車を中核にしていましたが、今後は他の事業でも成長していくでしょう。スタートアップは市場での実験であり、我々はイノベーションがどこから生まれるかを理解し、それに慣れることができるのです」。

グローバル企業としてのトヨタは、37万人以上の従業員を雇用し、金融テクノロジーのように投資から会社全体が利益を得ることができるさまざまな事業部門をカバーしている。Frontier Fundはモビリティの域から一歩踏み出したものだ。エマージングテクノロジーを市場にもたらすだけでなく、顧客として、あるいは買収によって、新たなイノベーションを引き込むことを目的としていると、アドラー氏は語っている。

「私が思うに、この会社のビジョンは、機械はこれからも存在し、人間のできることを増幅させるものだということです。そしてトヨタは、機械が人間を増幅して社会に利益をもたらすということを理解しています。これは非常に陳腐に聞こえるかもしれませんが、トヨタは本当にそれを信じているのです」と、アドラー氏はいう。

同じ意味で、新たに設立されたClimate Fundは、トヨタが2050年までにカーボンニュートラルを達成するという目標を加速させるのに役立つスタートアップ企業に投資することを目指している。トヨタは、何年も前から水素への投資を行っており、日本の燃料会社であるENEOSとの最近の提携もその一環だ。だが、アドラー氏によれば、カーボンニュートラルの達成に役立つものであればどんな技術でも受け入れるという。

「再生可能エネルギーが大きな役割を果たすと、私たちは考えています」と、アドラー氏は語る。「水素の製造、貯蔵、流通、利用が重要な意味を持つことになるでしょう。炭素の回収と貯蔵も重要です。私たちは水素に関して何十年もやってきましたが、もしかしたら状況が変わるかもしれないので、独断的になるつもりはありません。水素はこれまで市場がなかったため、スタートアップコミュニティでクラウドソーシングされていませんでした。しかし、市場は生まれつつあると思います」。

このファンドは、アーリーステージの資金調達を希望する起業家からの売り込みをウェブサイト上で受け付けている。Toyota Venturesはまた、製品開発から多様性や人材採用まで、あらゆる面で助言を求める創業者のためのリソースとして、新しいアドバイザー・ネットワークと協力することも発表した。

Boxbot(ボックスボット)の共同創業者でCEOのAustin Oehlerking(オースティン・オーラーキング)氏は、声明で次のように述べている。「Toyota Venturesは、2018年のシードラウンドに投資していただいて以来、Boxbotにとってかけがえのないパートナーです。コンセプトから製品 / 市場適合までの道のりにおいて、複雑で実存的な課題を乗り越えるために、彼らは大きな力となって私たちを助けてくれました。ジムとチームは、ベンチャー企業との提携を成功させるためには、コーポレートベンチャーキャピタルがどのように機能すべきかをよく理解しています」。

アドラー氏は、彼と彼のチームが起業家出身であることから、テーブルの反対側がどのようなものであるかを理解していると、同氏はいう。Toyota Venturesがアーリーステージのスタートアップに焦点を当てているのは、そこから最も興味深いイノベーションが生まれると信じているからだ。

「アーリーステージのベンチャーキャピタルは未来への望遠鏡だと、私は強く信じています」とアドラーはいう。「そうして私たちは、すべての人々のためになる価値のあるイノベーションを見つけることができるのです」。

関連記事
トヨタ自動車とENEOSが協力し実験都市「Woven City」における水素エネルギーの利活用ついて検討開始
トヨタのウーブン・プラネットが配車サービスLyftの自動運転部門を約600億円で買収
トヨタが圧倒的に信頼性が高いApex.AIの自動運転ソフトウェア開発キットの使用を発表

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:トヨタ自動車Toyota Ventures日本ベンチャーファンドカーボンニュートラル

画像クレジット:Toyota Ventures

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

トヨタのウーブン・プラネットが配車サービスLyftの自動運転部門を約600億円で買収

配車サービスのLyft(リフト)は、その自動運転車部門をトヨタの子会社であるWoven Planet Holdings(ウーブン・プラネット・ホールディングス)に5億5000万ドル(約600億円)で売却した。自動運転車技術の商品化にかかる大量の費用と時間に対処しようと各企業の買収合戦が続いているが、これはその最新の動きだ。

米国時間4月27日に発表された買収の条件によると、LyftのLevel 5(レベルファイブ)と呼ばれる部門がWoven Planet Holdingに統合される。Lyftは5億5000万ドルを現金で受け取るが、そのうち2億ドル(約220億円)が先払いされる。残りの3億5000万ドル(約380億円)は5年をかけて支払われることになる。LyftのLevel 5に所属していたおよそ300人の従業員は、Woven Planetに移行する。2020年初頭には、米国、ミュンヘン、ロンドンで400人以上を数えていた同チームのメンバーだが、彼らは引き続きカリフォルニア州パロアルトのオフィスに勤務する。

2021年第3四半期に締結完了を予定しているこの契約により、4年近くにおよんだLyft独自の自動運転車開発は、公式に終了することとなる。

この買収で、Lyftは膨大な年間経費を削減できる。同社は、Level 5を売却することで、年間のnon-GAAP(公式な会計基準に沿わない)運営費は純額1億ドル(約108億円)の削減を期待しているという。収益性を追求するLyftにとって、この節約は極めて大きい。共同創設者で社長のJohn Zimmer(ジョン・ジンマー)氏は今回の発表で、この点を特に強調していた。

「契約が予定期間内に完了し、新型コロナからの回復が順調に続けば、2021年の第3四半期の調整EBITDA(償却前営業利益)では収益性が向上すると確信しています」とジンマー氏は声明で述べている。

この年間経費から解放されがLyftは、同社が創設以来ずっと本気で目指してきたもの、つまり、頼りになる配車ネットワークと、種類を問わずあらゆる商用ロボタクシーサービスが利用できる車両管理プラットフォームになることに資源を集中できるようになる。Lyftはすでに、自動運転車の開発企業数社との提携関係を結んでいる。とりわけ、40億ドル(約4340億円)規模のHyundai(ヒュンダイ)とAptiv(アプティブ)の合弁事業Motional(モーショナル)とWaymo(ウェイモ)だ。その目的は、他者の封じ込めだ。今回の買収では、Woven Planetは、Lyftのプラットフォームと車両管理データを使う商業契約も交わしている。

Lyftは、このWoven Planetとの取り決めは、独占契約ではなく、Motioalなど他企業との提携は今後も継続されると話している。MotionalとLyftは、すでに3年以上も提携を続けているが、これはそもそも、2018年にラスベガスで開催された技術見本市CESの期間中に、Lyftネットワークの自動運転車の試乗会を1週間だけ共同で行うことを想定したパイロット・プログラムだった(実際この提携は、Hyndaiとの合弁事業よりも前からある)。安全のために人間のドライバーを乗せて行われたこの短期の実験は、結局今日まで延長され、継続している。2020年2月には、同プログラムが提供したLyftのアプリを使ったAptive(今はMorional)の自動運転車による賃走が、10万回を超えた。Motionalは2020年12月、Lyftの配車ネットワークを使ったロボタクシーによる完全な無人運転での運行を米国の主要都市で2023年に開始すると発表している。

Lyftは、この新しくなった目標に向けた組織改編の最中だ。自動運転車の配車手配と乗車の顧客体験開発に取り組むエンジニア、製品マネージャー、データサイエンティスト、UXデザイナーは社内に残し、Jody Kelman(ジョディー・ケルマン)氏が彼らを率いることになる。このチームはLyft Autonomous(オートノマス)と呼ばれ、レンタカーとExpress Drive(エクスプレス・ドライブ)プログラムで使われる1万台以上の車両を管理する同社のフリート部門に組み込まれる。2019年に設立され、Cal Lankton(キャル・ランクトン)氏が率いていたLyft Fleet(フリート)は、2030年までに同社ネットワークの車両を100パーセント電気自動車に移行する事業も牽引することになる。この組織改編の狙いは、シェア、電動化、自動運転への取り組みをすべて1つ屋根の下で行うことにある。

その他にも、戦略的な改変がトヨタのWoven Planetで起きている。Level 5、Toyota Research Institute(トヨタ・リサーチ・インスティテュート)、Woven Planetは、1200人の従業員からなる1つのチームに統合される。Woven Planetは、Level 5の買収はLyftから自動運転部門を切り離し、自動運転技術の安全性の加速的な向上に注力させるためのものであり、自動運転スタートアップAurora(オーロラ)など、トヨタの他のパートナーとの関係には直接影響しないと話している。

Woven Planet Holdingsは、すでに大きな波紋を呼んでいる新企業だ。これは、Toyota Research Institute Advanced Development Inc.(TRI-AD)に組み入れられた持ち株会社であり、Woven Capital(ウーブン・キャピタル)として知られる投資会社、相互接続されたスマートシティーの実証都市Woven City(ウーブン・シティー)もここに含まれている。2021年2月、トヨタは富士山の麓、静岡県裾野市にある東富士工場跡地でWoven Cityの建設を開始した。

2021年の初め、Woven Capitalは8億ドル(約866億円)の戦略的ファンドを開設し、自動配送車両のメーカーNuro(ニューロ)への投資を発表した。

関連記事:トヨタの投資ファンドWoven Capitalが自動配送ロボティクスNuroに出資

カテゴリー:モビリティ
タグ:トヨタウーブン・プラネットLyft買収自動運転

画像クレジット:Lyft

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:金井哲夫)

トヨタが圧倒的に信頼性が高いApex.AIの自動運転ソフトウェア開発キットの使用を発表

電気自動車やハイテク車へシフトしつつある自動車メーカー各社は、ソフトウェア、さらにいえばバグがなくワイヤレスでアップデートできるソフトウェアの開発が、顧客獲得に向けて超えなければならないハードルになっていることに気がついた。この問題は、Volkswagen(フォルクスワーゲン)の「ID.3」や、近々発売されるVolvo(ボルボ)の「XC40 Recharge(XC40リチャージ)」、Ford(フォード)の「Mustang Mach-E(マスタング・マッハE)」などの新型電気自動車でもメーカーを苦心させている。

Apex.AI(エイペックスAI)は、Bosch(ボッシュ)で自動化システムを手がけていたベテランエンジニアであるJan Becker(ジャン・ベッカー)氏とDejan Pangercic(デヤン・パンガーシック)氏が設立したスタートアップ企業で、車両内のソフトウェアを統合し、すべてのアプリケーションを確実に動作させるフレームワークとなるロボットオペレーティングシステムの再構築に4年を費やしてきた。同社は最近、そのソフトウェア開発キット(SDK)が、量産車に使用できるほど洗練されていることを証明する安全認証を取得したばかりで、この度トヨタ自動車と日本の技術系スタートアップのTier IV(ティアフォー)をパートナーとして迎えることになった。

トヨタの先進技術開発部門から2021年1月に新事業体として設立されたWoven Planet Group(ウーブン・プラネット・グループ)は、Apex.OS SDKを自社の車両開発プラットフォーム「Arene(アリーン)」に統合すると発表した。Apex.OS SDKは、車両の安全性に関わる重要なアプリケーションを処理し、自動運転ソフトウェアの開発を加速させ、最終的に量産車への搭載を目指す。米国時間4月14日に発表された別の契約では、オープンソースの自動運転ソフトウェア「Autoware(オートウェア)」の開発元として知られるTier IVが、Apex.AIのソフトウェア・スタックを、安全性が最重要視される自動運転システムに使用すると述べている。

「この1年で明らかになった傾向は、自動車メーカーがTesla(テスラ)に勝つために、Software-Defined Vehicle(ソフトウェア定義自動車)と呼ばれるものを目指していることです」と、ベッカー氏は最近のインタビューで語っている。自動車メーカーは、車両のあちこちに100基の電気制御ユニット(コンピュータ)を配置する従来の考え方から離れ、代わりに数台の高性能コンピュータを搭載してすべての機能をソフトウェアで実現しようとしていると、ベッカー氏は説明する。

このような変化は、1台のクルマに何百人、何千人ものソフトウェア開発者が携わる可能性が生じることを意味する。「そのためには、ソフトウェア開発者が同じインターフェースを使い、各部署が連携できるようにする必要があります」と、ベッカー氏はいう。「それを可能にするのが、我々のSDKです。Apex.OSでは、車両のほぼすべての機能に対応できる共通の抽象化レイヤーやSDKを初めて実現させました」。

Apexのツールキットは、個人投資家や戦略的投資家の注目も集めている。2018年、同社はシリーズAラウンドで1550万ドル(約16億9000万円)を調達した。それ以降、同社はAirbus Ventures(エアバス・ベンチャーズ)、JLR(ジャガー・ランドローバー)のInMotion Ventures(インモーション・ベンチャーズ)、そしてトヨタやボルボ・グループから、戦略的投資を受けている。これらの投資額について、ベッカー氏は明らかにしなかったものの、同社が現在、シリーズBの資金調達を行っていることに言及した。

関連記事:ボルボが自動運転車両OS開発のApex.AIに投資

Apex.OSのルーツは、研究開発プロジェクトや自動運転車の開発に広く使われているオープンソースのROS(ロボットオペレーティングシステム)だ。Apex.OSの目的は、そのコードを機能安全とリアルタイム処理に対応するように書き換えることだった。このSDKは先日、TÜV NORD(北ドイツ技術検査協会)による機能安全認証を取得した。これは、この技術が量産車に適用できると認められたことを意味する。

ベッカー氏によると、オープンソースのコードは認証を受けられないというのが長年の常識だったという。同社は1年かけて認証を取得した。

「自分のノートPCでソフトウェアがクラッシュしたら面倒ですが、自動車の安全性に関わる重要な機能でソフトウェアがクラッシュしたら大惨事になりかねません」と、ベッカー氏は語る。「だからこそ私たちは、システムのクラッシュや操作ミスから保護される信頼性の高いソフトウェアを開発しようとしたのです。今回の認証取得は、当社のソフトウェアが目標としている統計的に表れないほど低い故障率を達成できたことの証明です」。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Apex.AIトヨタ自動車Woven PlanetTier IV自動運転

画像クレジット:Apex.ai

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)