Twitterが「良いボット」を示す新ラベルのテストを開始

Twitter(ツイッター)は米国時間9月9日、アカウントが自分のプロフィールにラベルを追加して自らがボットであることを明らかにする新機能を発表した。この機能は、ニュースや公的機関の発表などをリツイートするボットのような自動アカウントと人間が運営しているアカウントを利用者が識別しやすくするために作られている。ただし、人間のふりをして誤情報やスパムを拡散することもある「良くないボット」を利用者が識別できるようには作られていない。

Twitterはボットにラベルを付けることを何年も検討してきた。

2018年にTwitterのCEOであるJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏は米上院情報委員会のヒアリングで、ユーザーにはTwitterプラットフォーム上で自分はボットと話しているのか人間と話しているかを「知る権利」があると考えているのかと質問された。ドーシー氏はツイートの背景をもっとわかるようにする必要があることに同意し、可能な範囲でボットの識別について検討しているとした。ただし同氏は、TwitterのAPIを利用しているボットに比べると、スクリプトで人間のように見せかけているボットは特定が難しいことも指摘した。

2020年にTwitterはついに計画を固め、人間が運営しているアカウントと自動化されているアカウントをユーザーが区別できるようにする新機能を今後導入すると述べた。2021年5月に同社がアカウント検証システムを開始したときに、憧れの青いバッジ以外にアカウントを区別する方法、つまりボットのラベルがまもなく登場するはずだとユーザーは思い出した。

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画像クレジット:Twitter

Twitterは今回の発表で「良いボット」であることを示す新しい「自動アカウント」のラベルは500以上の開発者アカウントで利用できるようになると述べた。対象となる開発者アカウントは、Twitterの開発者全体にこの機能が広く公開される前にテストをしてフィードバックを提供する。当面はテストであるため、ラベル付けは必須ではない。

ただしTwitterは2020年に開発者向けポリシーを更新し、アカウントはボットか、何のアカウントで誰が運営しているかについてアカウントのプロフィールまたは経歴で示すように開発者に対して求めている。アカウントのラベルがあれば、開発者はこうした情報を経歴に書くより簡単にこのポリシーに準拠できるようになる。

TwitterはTechCrunchに対し、今回の実験結果に応じて、この機能を広く公開したら自動アカウントを運営する開発者全員に対してラベルを必須にするかもしれないと述べた。

画像クレジット:Twitter

念のために書いておくと、Twitterは良いボットを運営している人をまったく問題視していない。自動化によってアカウントから有用で関連性のある最新情報、あるいは楽しい情報が提供されていることを理解しているからだ。Twitterは今回の発表の中で同社お気に入りのボットのいくつかを称賛してさえいる。公共サービスアカウントの@earthquakesSF、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の最新情報を提供している@vax_progress、議会に提出された最近の100本の法案について進行状況を知らせるボットの@last100bills、アクセシビリティをテーマにしたボットの@AltTxtReminder、そしてメトロポリタン美術館のドローイングとプリントの部門からパブリックドメインの作品を紹介する@met_drawingsやおかしな新作絵文字を紹介する@EmojiMashupBotのように独自のやり方で価値を提供しているものが取り上げられた。

ここに挙げたボットはすべて初期のテストに参加する。

Twitterは、消費者のアカウントがIFTTTのような他社製ツールを使ってリンクなどのコンテンツを投稿するような自動化についてもあまり懸念していない。

Twitterのポリシーには「利用者が自らのアカウントで行った行為の責任、またはアカウントに関連付けられているアプリケーションが自動的に実行した操作の責任は、最終的に利用者本人が負うことになります。サードパーティーアプリケーションにアカウントへのアクセスまたは利用を許可する際には、そのアプリケーションの詳細を十分に調べて、どのような動作をするのか把握してください」と記載されている。さらに、ユーザーは自動化を利用する場合でもTwitterのガイドラインに従わなくてはならないと書かれている。

Twitterは最近、怒涛の勢いで新機能を公開している。ここ数日で、コミュニティ絵文字リアクション横幅いっぱいの写真と動画、フォロワーの「ソフトなブロック」を公開した。

同社は自動アカウントのラベルを広く公開する前のテストをどの程度の期間実施するかについては言及していない。

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画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

お手軽なTwitter用ビデオダウンローダーボット

Twitter上のすべてのボットがスパマー民主主義ハッカーというわけではない。例えば長いスレッドを読みやすい形に「まとめて」くれるThread Readerアプリボットへのリクエストを見たことを思い出す人もいるだろう。

そして最近ではたくさんのTwitterユーザーたちが、ビデオの添付されたツイートに、新しいボット(@this_vid)をタグ付けしていることを気が付いているかも知れない。この便利なボット(別名DownloadThisVideo)は、ビデオとGIFの両方をより簡単にオフラインで視聴できるように、Twitterのサイトからダウンロードする方法を提供する。

@this_vidのアイデアは、ナイジェリアで生まれ育ち、現在はラゴスに住んでいる、バックエンド開発者のShalvah Adebayo氏によるものだ。Shalvah氏は、高校の最終年だった2013年に開発の道に入ったのだと言う。

「周りの人たちが畏敬の念をもって話している下級生がいたんです。『あの子はプログラミングを知っている!』ってね」とShalvah氏は説明した。「その時は、それがどういう意味なのかはわかりませんでした」と彼は続けた。「彼が作成したコマンドラインクイズアプリケーションを見て、感動しました。数ヶ月前にあるコンペでラップトップは手に入れていたので、翌日唯一知っていたコンピューターショップに行って、『プログラミングビデオ』が欲しいと言ったのです。店員はC++関連のビデオを渡してくれました。その日はそれを家で見て、翌日には本当のソフトウェア(IDE、統合開発環境)を買いに行きました。そうやってC++を書くことを始めたのです」と彼は語った。

それ以降、Shalvah氏はC++からAndroid開発に進み、そしてウェブ開発へと移った。彼は大学に行き、そして中退し、ハイテク産業で働き始めた。現在Shalvah氏は、南アフリカのエンジニアリングコンサルタントおよび製品設計会社であるDeimos Cloudの、リモートソフトウェアエンジニアとしてフルタイムで働いている。

彼はサイドプロジェクトとして空き時間にアプリケーションを開発している。これまでもリマインダーをツイートで設定できる@RemindMe_OfThisや、Facebookの「過去のこの日」のTwitter版であるTwitterThrowbackなどをオープンソースとして公開してきた。

しかし、Twitterのビデオダウンローダーボットは、彼の最も人気のある作品の1つとなって、現在1日あたり約7500(ピーク時には9500)のユーザー要求を受け取っている。

Shalvah氏は、このアプリのアイデアは、個人的な不満から思いついたものだと言う。彼が住んでいる場所でのインターネットアクセスは不安定で、Twitterアプリが提供するビデオ体験は理想的なものではなかった。彼はビデオをダウンロードしてオフラインで視聴したいと思ったが、そうするための簡単な方法を見つけることができなかった。

「それを実現するためのサイトとアプリがいくつかあることは知っていましたが、アプリをインストールするのは好きではありませんでした。またサイトを使う際の煩わしさも嫌いでした」と彼は言う。「それに、私は非同期処理を望んでいました。『ちょっと、こいつをダウンロードしたいな』と言っておいて、そのままTwitterをブラウズし続け、後でダウンロードするために戻って来られるようにしたかったのです」。

さらにShalvah氏は、誰かがビデオをツイートした人気スレッドのほぼ全てで、Twitterユーザーたちが、どうすればビデオをダウンロードできるかを尋ねている様子をたくさん見たのだという。

このボット(@this_vid)は、2018年5月から稼働している。まず最初に自分のフォロワーたちにそれを伝えた後、Shalvah氏はスレッド上でビデオを入手する方法を尋ねるひとをみかけるたびに、ボットについて知らせ始めた。このことによって、Twitter界隈でその人気が高まることになった。

「私はこれで本当にたくさんの人たちの問題を解決したと思います。だからこれほど人気が出たのでしょう。そして友人か見知らぬ人かを問わず、本当に多くの人たちが、このボットについてフォロワーたちに対してツイートしてくれました。それは一種有機的な成長でしたね」と彼は言った。

@this_vidがダウンロードできないビデオもいくつか存在している。これは投稿者、しばしばスポーツ団体(例えばThe NFLなど)だが ―― がダウンロードを制限しているからだ。しかしほとんどの場合には、元のツイートへの返信で@this_vidをメンションするだけでよい。そうすれば数分以内にビデオのダウンロードリンクを受け取ることになる。

このボットは、ツイートデータの問い合わせにTwitter APIを利用して、メディアのURLを取り出すことによって機能する。

Twitterは頻度制限がかかっているため、3時間あたり300回のツイートしか行うことができない。このためShalvahは、それぞれのユーザーが覚えやすいダウンロードリンクを用意した。アドレスはdownload-this.video/Twitterアカウント名だ。これを使えば、ボットが返信できない場合にもダウンロードにたどり着くことができる。

ボット自体は無料で使用できる。これはオープンソースで、Patreonからの寄付を通じてサポートされている。

このようなボットを使うことによって、第三者が勝手に権利を持たないビデオをダウンロードしたり、他の場所に自分の名前で公開してしまうのではという懸念がある。Shalvahは、このボットがTwitterの著作権ポリシー、開発者規約、またはルールに違反しているとは考えていないと語る。

これまでのところ、ほとんどの人はボットを個人的な用途で使用しているようだ。しかし、Twitterはサードパーティの開発者に対して、常に親切な態度をとってきたわけではないので、この先@this_vidがどのくらい続くのかは不明だ。

Shalvah氏は、@this_vidを無料のままにしておき、今後も開発を続けたいと語っている。

[原文へ]

(翻訳:sako)

中間選挙はボットに歪められた2016年の大統領選挙の尾を引くのか?

[著者:Tiffany Olson Kleemann]

Distil NetworksのCEO。SymantecとFireEyeの元役員であり、ジョージ・W・ブッシュ大統領の下でサイバーセキュリティー・オペレーション首席補佐官代理を務めていた。

ロシアのボットがソーシャルメディアに侵入し、2016年の米大統領選挙に影響を与えたという事実は、これまでにも数多く報道されてきたが、いまだにその手口の詳細を伝えるニュースが後を絶たない。

実際、10月17日、Twitterは、2016年に4611件のアカウントによる海外からの妨害があったと発表している。そのほとんどは、ロシアのトロル集団であるInternet Research Agencyによるもので、100万件を超える疑わしいツイートや、200万件を超えるGIF画像、動画、ペリスコープ動画配信があった。

現在、もうひとつの重要な選挙が行われているが、最近の世論調査では、アメリカ人の62パーセントが、2018年の中間選挙は人生でもっとも重要な中間選挙になると考えているという(公的機関も一般市民も、2016年の教訓を学んでいるのかを疑うのは自然なことだ)。こうした国家単位の不正行為を撃退するために、何ができるのだろうか。

ここに、いいニュースと悪いニュースとがある。まずは悪いほうからお話ししよう。

2016年の大統領選挙から2年が経ったが、ソーシャルメディアはいまだに『熱狂する広告塔』というリアリティー番組を流し続けているように見える。自動化されたボットが、特定の観点を誇張するコンテンツを生成し増幅させることなくして、この世界では大きな地政学的イベントは起こりえない。

10月中旬、Twitterは、ジャーナリストのジャマル・カショギ失踪に関するサウジアラビア寄りの話題を一度に大量にツイート、リツイートしたとして、数百件のアカウントを停止した。

10月22日、ウォール・ストリート・ジャーナルは、NFLの選手が国歌演奏中に片膝をついて抗議の態度を示したことに関する論争を、ロシアのボットが煽っていたと報じた。クレムソン大学の研究者が同紙に伝えたところによると、Internet Research Agencyに属する491のアカウントから、1万2000件以上の投稿があり、2017年9月22日、トランプ大統領が、国歌演奏中に片膝をついた選手はチームのオーナーがクビにすべきだと話した直後に、その数はピークに達している。

この問題はアメリカ国内だけにとどまらない。2016年のイギリスのEU離脱に関する国民投票にボットが影響を与えたと指摘された2年後、スウェーデンの総選挙を目前にした今年の春と夏に、移民に反対するスウェーデン民主党を支持するTwitterのボットが急増した

この他にも、ボットによる偽情報の問題は続いている。しかし、そんなに悲観することもない。前進している部分もある。

写真提供:Shutterstock/Nemanja Cosovic

第一に、問題解決には意識を変えることが第一歩となる。ボットによる妨害が新聞の大見出しを騒がせるようになったのは、ここ2年ほどのことであることを認識しよう。

ピュー研究所が今年の夏に、成人のアメリカ人4500名を対象に行った調査では、アメリカ人のおよそ3分の2がソーシャルメディアのボットについて聞いたことがあり、その人たちの大半が、ボットが悪用されることを恐れているという(ただし、偽アカウントを見破る自信があると答えた人は非常に少なかったことは気がかりだ)。

第二に、政治家も行動を起こしている。カリフォルニア州知事ジェリー・ブラウンは、9月28日、人工物であることを隠してボットを使用すること禁止する法律に署名した。これは2019年1月から発効される (選挙民の判断に影響を与えないように、またその他のあらゆる目的での使用を阻止するのが狙いだ)。これは、チケットを自動的に購入するボットを禁止する全国的な動きに追随するものだ。アメリカにおいて、チケット購入ボット禁止の先駆けとなったのは、ニューヨーク州だった。

政治家がこの問題を認識し関心を高めるのは良いことだと思うが、カリフォルニアの法律には穴があるように思える。通常、ボットネットワークを操っている人間を特定することは非常に困難であるため、この法律の実効性が疑われる。罰則も曖昧だ。国家的な、または国際的な事柄に攻撃を加える者に対して、ひとつの州ではそもそも力が及ばない。とは言え、この法律はよい出発点になるだろう。この問題を真剣に考えているという政府の態度を示すことにもなる。

第三に、2016年のボットの活動に適切に対処できなかったソーシャルメディア・プラットフォームは、議会の厳しい調査を受けることで、悪質なボットをピンポイントで特定し排除することに積極的に取り組むようになった。

TwitterもFacebookも、ある程度の責任はあるものの、それらも被害者であることを忘れてはならない。こうした商用プラットフォームは、悪い人間に乗っ取られて、彼らの政治理念や信条の宣伝に利用されたのだ。

TwitterやFacebookは、人間か、人間ではない偽の存在が人間を装っているのかを見破るための努力をもっと早く始めるべきだったと言う人もいるが、ボットは、つい最近知られるようになったサイバーセキュリティー上の問題だ。従来のパラダイムでは、ハッカーがソフトウエアの脆弱性を付いてセキュリティーを突破するという形だったが、ボットは違う。ボットはオンラインビジネスの処理過程に攻撃を仕掛けるため、通常の脆弱性検査方式では検出が難しいのだ。

Twitterの10月17日のブログには、2016年の偽情報の不正操作の範囲に関する情報が書かれていて、その透明性には素晴らしいものがあった。「情報操作と組織的な不正行為が収束することはないことは明らかだ」と同社は話している。「この種の戦術は、Twitterが生まれるずっと前からあった。地政学的な地域が世界に広がり、新しい技術が登場するごとに、彼らはそれに順応して形を変える」

これが、私が楽観視する第四の理由につながる。技術の進歩だ。

1990年代後半から2000年代前半にかけてのインターネットの黎明期においては、防護技術が未発達だったため、ネットワークは、ワームやウイルスといった攻撃を受けやすかった。今でも侵入事件は起きているが、セキュリティー技術はずっと進歩し、攻撃を許してしまう理由は、防護システムの不具合よりも人間の操作ミスのほうが多いという状況になっている。

ボットを検出し被害を抑える技術は進化を続けている。今日のメールのスパムフィルターのように、自動的に効率的にボットを排除できる技術がいずれ確立されるものと、私は思っている。今はネットワークの中だけで働いているセキュリティー機能の統合が進み、プラットフォーム全体に及ぶようになれば、より効率的にボットの脅威を検知し排除することが可能になる。

2018年のうちはまだ、ボットに気をつけなければならないが、世界はこの課題に本気で取り組でいて、明るい未来を予感させる素晴らしい行動が見え始めている。

健全な民主主義と、インターネットでの企業活動は、そこにかかっている。

[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)

Twitterのフェイクアカウント停止数は昨年の倍、5-6月は7000万に達した

人びとのあいだに不和を助長するような、政治的なナンセンスをツイートし続けているボットたちに、最後の日が訪れるかもしれない。The Washington Postが金曜日(米国時間7/6)に、Twitterは最近の数か月、同プラットホーム上にはびこり拡散している偽情報を摘み取るために、多くのアカウントを停止した、と報じた。

そのThe Washington Postの記事によると、Twitterは今年の5月から6月にかけて、7000万のアカウントを停止し、その勢いは7月に入っても衰えていない。同紙が入手したデータによると、5月半ばのボットの活動がとくに激しかった週には、1300万のアカウントを停止した。

同紙の情報筋によると、アカウント停止の急増は、各種ソーシャルプラットホーム上のロシア起源の偽情報に対する、議会の調査に呼応する動きだ。記事によるとTwitterは、“Operation Megaphone”と呼ばれる社内プロジェクトで、ボットなどの‘フェイクアカウント’を調査している。それにより同社は、疑わしいアカウントを買収して、それらのコネクション(つながり)を調べている。

TwitteはThe Washington Postの記事について関連情報を提供しなかったが、しかし教えてくれた先週のブログ記事には、同社のブログ退治努力に関するそのほかの数字が載っている。それによると、2018年5月にTwitterは、990万あまりの疑わしいアカウントを見つけたが、それは前年同月の3倍である。

チャート提供: Twitter

Twitterが、疑わしいと思われるアカウントを見つけたら、そこに電話をするなどして、それが本物の人間のアカウントであるか調べる。そのテストに不合格だったアカウントは不能にされ、パスしたアカウントは復帰する。

Twitterの最近のブログ記事によると、ボットは自分を本物と見せかけるために、フォロワー数を人工的に多くすることがある。

“これらの改良の結果、ご自分のアカウントの数値が正常に変わるようになった方もおられる”、とTwitterは警告している。同社によると、フェイクアカウントを取り締まることによって、“悪意のある人びと”が自分の数値を簡単に膨らまして自分のコンテンツやアカウントを宣伝することができなくなる。しかし、そうやってユーザーをプラットホームから追い出すと、一時的には、Twitterにとって重要な数字である月間アクティブユーザーが落ち込むリスクもある。

WP紙のその記事によると、Twitterの社内にも、ボット取り締まりの結果、今年のQ2のアクティブユーザー数が落ち込む、と予想しているスタッフがいる。でもそれは、あくまでも一時的で、ごくわずかな落ち込みである。Facebookもロシアのボットをめぐる不祥事とそれに対する、コンテンツとユーザー体験の‘大掃除作業’の結果、ユーザーエンゲージメントの落ち込みが予想される。それはどちらの場合も、有意義なトレードオフだ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

「フェイクニュース」拡散の原因はボットではなく人間だった――MITが発表

嘘の伝わる速さは何世紀にも渡って語り継がれており、1710年の時点で既にジョナサン・スウィフト(『ガリヴァー旅行記』の著者)が「まず嘘が広まり、真実はその後をノロノロとついていくものだ」という言葉を残しているほどだ。そうはいっても、このような事実を示す証拠というのはこれまでほとんど存在しなかった。しかし、ここ数年のソーシャルメディアの様子を見ると、嘘が真実に大きな差をつけながら信じられないほどの速さで広がっており、もはやそれが当然のようにも感じられる。

そしてこの度、MITが10年分ものツイートを分析した結果、嘘が真実よりも速く広まるだけでなく、ボットやネットワーク効果がその原因とは言い切れない――つまり、私たち人間が嘘を広めている――ということがわかったのだ。

3月9日、Scienceで発表された同研究では、ツイッター上で拡散された(もしくは拡散されなかった)10万件以上のニュース(第三者機関によって虚偽のニュースかどうかが判別されているもの)がどのように伝播していったかに焦点があてられている。結果はレポートの要旨(Abstract)に記されている通り、「どのカテゴリーにおいても、嘘は真実よりも遠く、早く、深く、広範囲に広がっていった」。

Image: Bryce Durbin/TechCrunch

この結果を見て、ロシアや時系列に並んでいないニュースフィード、選挙などを槍玉に挙げるのは早計だ。というのも、虚偽のニュース(政治的な意図をはらんだ、いわゆる「フェイクニュース」と区別するためにあえてこの言葉を使用する)がこんなにも速く拡散する背景には、私たち人間が存在するからだ。

「嘘が真実よりも広まりやすいのは、人間が正しい情報よりも虚偽のニュースをリツイートしやすいからだということを調査結果は強く示している」と同レポートの共同著者Sinan Aralは語る。

その一方で、彼は次のように注意を促す。

「もちろん、人の頭の中に入り込んで、何らかの情報を消費したり、リツイートしたりする過程を調査したわけではないので、本研究ではまだ問題の深層部にはたどり着けていない。そもそも、どのように虚偽のニュースがネット上で拡散するかについての大規模な調査はほとんど行われていないため、まだまだ継続的な努力が必要だ」

とは言うものの、「人間は虚偽のニュースを拡散しがちだ」というMITの研究結果からは、極めてストレートかつ強烈な印象を受ける。

残念ながら、人間はアルゴリズムや価格モデルのようにアップデートできるものでなければ、報道機関のように無視できるものでもないため、この結果にはある種の歯がゆさも感じる。というのも、レポート内でも指摘されているように、明確な解決策など存在しないのだ。だからといって、問題から目を背けるべきではない。

10年分のツイートを解析

MITの研究プロセスは次の通り。なお、共同著者の1人であるSoroush Vosoughiによれば、「フェイクニュース」に関する騒ぎが起きるずっと前から同研究は進められていたようだ。

まず研究チームは、2006〜2017年の間に公開された何百万件ものツイートを集め、6つのファクトチェッカー(Snopes、PolitiFact、FactCheck.org、Truth or Fiction、Hoax Slayer、About.com)の少なくともいずれかひとつで真偽判定が行われた12万6000件のニュースと関連があるかどうかを調査。その結果に応じてツイートを分類していった。

その後、ツイート・リツイート数、一定のエンゲージメント数に達するまでの時間、情報元となるアカウントから見たリーチ範囲といった指標をもとに、各ニュースがどのように広がっていったかを観察。

最終的に、各指標をもとに「滝」のようなグラフが生成された。例えば、急激に拡散された後、すぐに話題から消え去ってしまった情報は、横の広がり(=拡散度合い)はあるものの、深さ(おおもとのツイートから何層にわたってリツイートされたか)はほとんどなく、バイラル性も低い。

そして虚偽のニュースと真実の「滝」を比較したところ、少数の例外を除いて、虚偽のニュースの方がより多くの人に、より速く広まり、何層にも渡ってリツイートされていることがわかった。

しかもこれは数%といったレベルの差ではない。具体的な数値については以下を参照してほしい。

  • 真実は1000人以上にリーチすることさえめったにない一方で、虚偽のニュースのうち拡散度合いで上位1%にあたるものは、ほぼ常に1000〜10万人もの人びとにリーチしていた。
  • 真実が1500人にリーチするには、嘘よりも6倍近い時間がかかる。
  • 虚偽のニュースは広範に拡散し、グラフのどの箇所においてもリツイート数で真実を上回っていた。
  • 政治に関する虚偽のニュースはすぐに何層にもわたってリツイートされ、結果的に他のカテゴリーの虚偽のニュースが1万人にリーチするよりも3倍近い速度で2万人以上ものユーザーにリーチした。

以上の通り、どの角度から見ても虚偽のニュースの方が真実よりも何倍、もしくは何乗も速く、多くの人にリーチするということがわかった。

反対意見

上記の研究結果の考察や、研究者が考える解決策、将来の研究アイディアについて触れる前に、想定される反対意見について考えてみよう。

ボットが原因なのでは? 結論から言うとボットの影響はほぼない。研究者はボットを検出するアルゴリズムを使って、明らかにボットによると思われるツイートは事前に取り除いていた。また、ボットの行動パターンを別途精査し、収集したデータをボット有のパターンとボット無のパターンでテストしたが、先述の傾向に変化は見られなかったのだ。この点についてVosoughiは「ボットもわずかに真実より虚偽のニュースを広めやすいということがわかったが、我々の結論に影響を及ぼすほどではなかった。つまり拡散度合いの差はボットでは説明がつかない」と話す。

「虚偽のニュースの拡散にはボットが深く関係している、という最近よく耳にする説とは真逆の結果が研究から明らかになった。これはボットの影響を否定するものではないが、少なくともボットを嘘拡散の原動力と呼ぶことはできない」とAralもVosoughiに賛同する。

ファクトチェックサイトにバイアスがかかっているのでは? 確かにまったくバイアスがかかっていないファクトチェッカーというのは存在し得ないが、研究者が参照した6つのサイトに関し、ある情報が真実かどうかの判定は95%以上の割合で共通している。客観性や証拠を重視するこれらのサイトすべてに共通のバイアスがかかっていると考えるのは、もはや陰謀論の域とさえ言えるだろう。それでも納得できない人は次のAralのコメントを参照してほしい。

「ファクトチェッカーを含め、研究対象に選択バイアスが生じないよう私たちは細心の注意を払っていた。その証拠に、メインの研究とは別に1万3000件のニュースから構成されるもうひとつの対照群について独自に真偽を確認し、そのデータを分析したところ、ほぼ同じような結果が得られた」

このファクトチェックはMITの学部生3名が行ったもので、判定結果は90%以上の割合で共通していた。

虚偽のニュースの拡散には大規模なネットワークが関係しているのでは? レポートによれば、現実はその逆のようだ。

ネットワークの構造や各ユーザーの特徴から虚偽の情報が拡散しやすい背景を説明できるのでは、と考える人もいるかもしれない。つまり、虚偽の情報を広める人ほどフォロー数やフォロワー数、ツイート数が多く、認証バッジを取得している人や昔からTwitterを利用している人の割合も多いのではないかという説だ。しかし嘘と真実の拡散具合を比べると、実はその逆が正しいということがわかった。

虚偽のニュースを広めやすいユーザーの特徴は以下の通り。

  • フォロワー数が少ない
  • フォロー数が少ない
  • ツイートの頻度が低い
  • 認証ユーザーの割合は少ない
  • アカウントの保有期間が短い

「このような特徴が見られたにもかかわらず、虚偽のニュースがより速く、広く拡散した」と研究者は記している。

なぜ虚偽のニュースの方が速く拡散するのか?

この問いに対する答えは憶測でしかないが、少なくとも同研究に携わったMITの研究者の「憶測」は、データに支えられたものであるという事実は無碍にできない。さらに、嘘の大規模な拡散は最近見られるようになった現象で、十分に研究されていないとはいえ、幸運なことに社会学や心理学からはいくばくかの示唆が得られる。

「コミュニケーション学の分野では、特定のニュースが拡散する理由について、既に包括的な研究が行われている」と3人目の共同著者Deb Royは言う。「人はポジティブなニュースよりもネガティブなニュース、平和なニュースよりもショッキングなニュースを広めやすい傾向にあるというのは既によく知られているのだ」。

もしも本当に人が目新しくて(Royいわく「目新しさこそが最重要要素」)ネガティブ(「血が流れればトップニュースになる」現象)なニュースを広めやすいとすれば、残された疑問は虚偽のニュースが真実よりも目新しく、ネガティブかどうかという点だけだ。

Photo: SuperStock/Getty Images

そこでMITの研究者は、一部のユーザーのアクティビティを分析し、虚偽の情報が含まれるツイートと真実しか含まれていないツイートの目新しさを比較した。すると確かに、「目新しさに関するどんな指標と照らし合わせても、虚偽のニュースが真実を上回る」ということがわかったのだ。

また、ツイート内で使われた言葉や関連する感情に注目したところ、虚偽のニュースには驚きや不快感を示すリプライがついていた一方、正しい情報へのリプライには悲しみや期待感、喜びや信頼といった感情が込められていることが多いとわかった。

まだまだ多くの検証が必要とはいえ、本研究からは虚偽のニュースは真実よりも速く拡散し、前者は後者よりも目新しく、ネガティブだという結論が導き出された。あとは「目新しくてネガティブだからこそ虚偽の情報は速く拡散する」という両者の因果関係を証明するような研究の発表が待たれる。

私たちには何ができるのか?

本研究で示された通り、虚偽のニュースを人間が広めているとすれば、それを防ぐためにどうすればよいのだろうか? 冒頭のジョナサン・スウィフトの言葉通り、これは決して最近生まれたものではなく、人びとはこれまで何世紀にも渡ってこの問題に対して何らかの策を講じようとしてきた。しいて言えば、問題のスケールには違いがあるかもしれない。

「何百万人――複数のプラットフォームをまとめると何十億人――もの人びとが、リアルタイムでニュースの拡散度合いに影響を及ぼすというのは、これまでなかったことだ」とRoyは言う。「ネットワークで繋がった人びとの行動についてのみならず、それがニュースや情報の伝播にどのような影響を与えるのかという点についてはさらなる研究が必要だ」。

さらにRoyはこの問題を人間の健康状態のように捉えている。実はJack Dorsey(Twitterの共同創業者でCEO)も、Royが設立した非営利組織Corticoのブログポストを引用元として、同様の比喩を用いた以下のツイートを投稿していた。

我々はコミュニティー全体の健康状態やオープンさ、さらにはプラットフォーム上で交わされる会話のマナーの向上に努めるとともに、その進捗に責任を負うと約束する。

またRoyをはじめとする研究者たちは、TwitterはもちろんFacebookやInstagram、オンライン掲示板といったプラットフォーム向けの「健康診断機」の開発にあたっている。しかしRoyは、これらのプラットフォームは氷山の一角に過ぎず、インターネット全体の「体調」を向上するにはさらなる努力が必要だと指摘する。

この点に関し、Aralは経済的な活動を例に挙げ、「ソーシャルメディア上での広告活動が虚偽のニュースを拡散するインセンティブとなっている。というのも、広告主にとってはビュー数がもっとも大事な指標だからだ」と語る。つまり虚偽のニュースを減らせば広告料も減ってしまうため、プラットフォームの健全化に向けたインセンティブが生まれにくいということだ。

「短期的には虚偽のニュースの拡散を止めることで金銭的なデメリットが発生するが、だからといって野放しにしておくと長期的な問題が発生してしまう。例えば、あるプラットフォームが虚偽のニュースや不適切な会話で埋め尽くされてしまうと、ユーザーはそのプラットフォームを一切使わなくなってしまうかもしれない。そういう意味では、FacebookやTwitterには、長期的な利益を確保するためにこの問題に取り組むインセンティブがあると考えている」(Aral)

しかし問題の根幹に人間だけでなく、アルゴリズムや広告料も関係しているとするならば、どうすればよいのだろうか?

「大事なのは、ユーザーの手を一旦止め、自分たちの行動がどんな影響を持ちうるか考えさせることなのだが、行動経済学の世界でもよく知られている通り、これはとんでもなく難しいことだ」とRoyは言う。だが、もしもそのプロセスが簡単かつどこにでも導入できるとすればどうだろうか?

「スーパーへ買い物に行くときのことを考えてみてほしい。すべての食べ物には、製造工程や製造・販売元、ナッツが含まれているかといった情報を記したラベルが貼り付けられている。しかし情報にはそんなラベルは存在しない。『この会社は虚偽の情報を発信することが多いのか?』『このメディアは3つの独立した情報源と照らし合わせて真偽を判定しているのか(それとも1つだけか)?』『何人がこの報道に関わっているのか?』といった問いに対する答えはニュースには含まれておらず、私たち消費者はただメディアが提示する情報を消費するしかないのだ」(Aral)

さらにAralは、ある情報がTwitter上で拡散する前にその信頼性を測定できるようなアルゴリズムをVosoughiが考案したと語った(Vosoughi本人は謙遜からか、ただ忘れていたのか、取材時にはこの点について触れなかった)。ではなぜFacebookやGoogleのように、膨大なデータや機械学習・言語に関する知見を持ち、プラットフォーム上の情報や活動、エンゲージメント、さらにはサイト全体に関してさまざまな変革を経てきた企業が、Vosoughiのような取り組みを行わないのかという点については疑問が残る。

この問題について、議論は活発に行われているが、なかなかそれが具体的なアクションには繋がっていないようだ。さらにRoyは、TwitterやFacebookといったサイトからは、特効薬のような解決策は生まれないだろうと釘を刺す。

「ソーシャルメディアを運営するためには、さまざまな点に注意しなければいけない。プラットフォーム自体はもちろん極めて重要だが、それ以外にもコンテンツを作る人や広告主、インフルエンサー、そしてユーザーが存在する。彼らの役割はそれぞれ異なるため、ポリシーの変更や新たなルール・ツールの導入による影響は、ステークホルダーによって変化する」

「それ自体は悪いことではない。というのも、そうであるからこそ私たちのような研究者がとやかく言えるのだから」

データセットについても同じことが言えるだろう。なお、本研究で使われたデータは(Twitterの同意のもと)公開される予定なので、誰でもMITの研究結果を確認したり、さらに考察を深めたりできる。

今後、本問題についてさらなる研究が行われることを期待したい。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

企業のカスタマーサービスをAI化したボットで助けるAgent IQが$6.3Mを調達

人間のカスタマーサービスが電話に出る前に、顧客がボットの相手をしなければならない企業がよくあるが、けっこう、いらつくものが多い。基本的な仕分けをボットがやって、専門的な話を人間がするのは良いが、いつまでもいつまでも人間が出てこないのはアタマにくる。そこで、カスタマーサービス用のボットを作っているAgent IQは今日(米国時間2/22)、シリーズAの630万ドルの資金調達を発表して、同社のボットの質をさらに高めようとしている。

このラウンドはSierra Venturesがリードし、CRCMとRubicon Venture Capitalが参加した。これにより、同社への投資の総額は850万ドルになる。

Agent IQのルーツは、Nikeのマーケティングプログラムだ。顧客はそのチャットアプリに“Hey Nike”とタイプしてボットとコミュニケーションする。CEOでファウンダーのCraig Davisによると、初期のそのプログラムをベースにしてAgent IQを作っていった。そのとき悟ったのは、ボットやエージェントがただのボット/エージェントなら、顧客を満足させられない、ということだ。顧客が満足するカスタマーサービスは、テクノロジーと人間のブレンドだ。

彼が各社のカスタマーサービスセンターを訪ねてみて分かったのは、苦痛なのは顧客の側だけではない、ということだ。人間社員は、同じ質問の繰り返しで退屈しており、楽しくない。課題に挑戦するおもしろさもない。しかも、めったにない珍しい質問に答えるときには、会社のあちこちにばらばらに散在する、互いに異質な複数のシステムを調べる必要がある。画面をいろんなシステムのウィンドウだらけにして、互いに異なるコンテンツレポジトリを行き来し、問題への正解を見つけなければならない。これが、たいへんな作業である。

写真提供: Agent IQ

Davisは説明する: “ボットよりも人間を助けることが重要だ。過去の会話や、学習した新しい知識に基づいて、答を提案してやるのだ。調べる苦労を、軽くしてやる。Agent IQは、会話のコンテキストに基づいて知識ベースの記事を人間カスタマーサービスに提示する。記事の選択には、人工知能と機会学習を利用する。

Davisは、自分がSalesforceやOracleのような大物と競合していることは分かっているが、しかし彼によると、彼の会社のソリューションは最新の技術でゼロから作ったものだから、そういうおなじみの顔ぶれたちよりも進んでいる、という。“たとえばAIだけど、彼らは何年も後れているし、もともと彼らのルーツはカスタマーサービスのプラットホームだ。彼らはそこからシームレスな移行ができないし、うちが提供しているようなクローズドループなAI学習ができない”、とDavisは主張する。

彼はまた、同じような価値提案を提供しているスタートアップ、Digital Geniusなどとも競合関係にある。

同社は現在、社員20名で、顧客は14社、DavisによるといずれもFortune 1000社で、年に50万ドル以上を払っている。今度の資金で、営業の拡大とカスタマーサクセスチームの構築をしたい、という。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

大統領選に干渉したロシアのボットファームがMueller特別検察官により訴追

昨年の大統領選挙のときの、ロシアの行動を調べている特別検察官Robert Muellerが今日(米国時間2/16)、13名のロシア人と3つのロシア企業に対し、彼らの2014年までさかのぼる行為により、アメリカの大統領選挙を妨害した廉(かど)で起訴状を発行した。

起訴状は、アメリカ社会に分裂を作り出すための、偽(にせ)のアカウントの出所(でどころ)の一つとして、サンクトペテルブルグのボットファームで偽情報の〔載っている広告の〕散布も行っているInternet Research Agencyを指名している。それらのアカウントは当時、Facebook, Twitter, およびInstagram上でアクティブであり、起訴状は、これらのテクノロジー企業が議会に提出した内部レビューの具体的な例も引用している。

議会はこれらの広告とにその散布に関わった企業に強い関心を持ち、10月にはFacebookとGoogleとTwitterのトップを上院の司法委員会に喚(よ)んで証言をさせた。選挙妨害についてそれぞれ独自の捜査をしている下院と上院の諜報委員会は、これらの偽アカウントの中身と、それらの拡散に至った状況について調査した。

Muellerは、2016年のアメリカ大統領選挙を現在、広範囲に調べている。これら早期の訴追はロシア国民を対象としているが、Muellerはトランプの選挙運動に加わったメンバーにも関心を持っている。今マネーロンダリングで起訴されているかつての選挙参謀Paul Manafortも、その一人だ。

今回の起訴は、彼らが、外国の個人や法人がアメリカの連邦選挙に影響を与えるために金を拠出してはならない、というアメリカの法律に違反している嫌疑が中心だ。その訴追案件は複数にわたり、アメリカに対する詐欺行為の陰謀や、通信と銀行に関わる詐欺、6件の加重的本人性窃盗〔いわゆる‘なりすまし’〕、などが含まれている。

訴状の原文を、ここに転載しよう:

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Webが人間性を取り戻すとき、これまでのWebサイトとeコマースはすべて死ぬ

筆者: Rob LoCascioLivePersonのファウンダーでCEO)

あなたは私の会社LivePersonをご存じないかもしれないが、そんなあなたでも私の発明を使ったことはあるはずだ。1995年に私は、Webサイトの画面にポップアップするあのチャットウィンドウを発明した。今では世界中で2万近くの企業が、わが社のソフトウェアを使って彼らの何百万という顧客とコミュニケーションしている。その中にはT-Mobile, American Express, Citibank, Nikeなどの有名大企業もいる。1990年代の半ばにインターネットの誕生を目撃した多くのスタートアップのファウンダーたちと違って、私は今でも自分の会社のCEOだ。

長いことCEOの椅子に座っていると、これまでの20年間に起きた変化に対する、独自の見方を持つようになる。そして今私に見えている現在進行形の変化は、インターネットの姿をラジカルに変えるだろう。

90年代半ばにWebサイトを作ったときは、eコマースへの大きな夢があった。基本的に実店舗は消えてしまうであろうし、何もかもドットコムが支配するだろう。でもeコマースは、惨めにもその夢を打ち砕いた。今日、Webサイトやアプリから生じている商行為は全商業の15%足らずであり、しかも企業として成功しているeコマースはAmazon, eBay, Netflixなど数えるほどしかない。Webサイトをだめにした大きな構造的問題は二つある: それはHTMLとGoogleだ。

Webサイトは、これまで図書館に閉じ込められていた人類の大量のコンテンツの集まりを、デジタルなユーザー体験、すなわちWebサイトによって、多数の大衆的オーディエンスに開放するはずだった。最初のころ私たちは、“閲覧する”(browsing, ブラウジング)とか“索引を作る”(indexing, インデクシング)などのように図書館の用語を使い、そして多くの点でWebサイトの中核的技術であるHTML(Hypertext Markup Language)も、静的コンテンツを図書館の本のように表示するために設計された。

しかし小売店は図書館ではないし、図書館の形式をオンラインストアに適用することもできない。消費者は、買い物をするときのいろんなダイナミックな質問や会話ができる方法を必要とした。しかし今日のモデルでは、一連の静的なページを読んで質問への答を見つけなければならない。でもふつうは、店員や店主と質問と答の一連のやり取りをしてから、そのお店を信ずる気になり、いろんな物を買いたくなる。HTMLのWebサイトには、そんな、人間同士のリアルで動的な対話がない。

Webの第二の問題は、Googleだ。90年代にWebサイトを作り始めたときは、誰もが仮想ストアを自分独自のデザインでやろうとした。それによりストアはおもしろくてユニークになり、しかし一方ではスタンダードがないので見て回ることが難しく、それらを普遍性のあるカードカタログにインデクシングすることは、とてもむずかしかった。

Googleは、1998年ごろにやってきた。Googleは世界の情報を見つけやすくし、またそのPageRankアルゴリズムにより一種のルールを定めた。そのルールのせいで企業は自分のWebサイトを、それがGoogleの検索結果のトップに来るための、何らかの方法でデザインしようとした。でもそのルールの画一的な構造は結局、eコマースにとって有害だった。

今では、ほとんどすべてのWebサイトが同じに見えるし、成績(ビューワー数、集客力、等々)も不振だ。オフラインでは、各ブランドが自分たちのストア体験をユニークなものにして自己を差別化しようとする。オンラインでは、どのWebサイトも、…GucciからGapに至るまで…同じ体験を与える。トップからのナビゲーション、説明的テキスト、少々の画像と、そのほかの互いに似たような要素。Googleのルールは、ユニークなオンライン体験からその生命(いのち)を抜き取った。そしてeコマースが困れば困るほどGoogleはさらに強力になり、ひどいeコマース体験を強制して、ブランドと消費者の仲を冷たくし、無味乾燥にしつつある。

大胆な予想をしてみよう: 2018年には有名ブランドのWebサイトの最初の閉鎖が起きるだろう。

Webサイトの良くないデザインには、隠れた連鎖反応がある。今、企業のカスタマーセンターにかかってくる電話の90%は、そのWebサイトが原因だ。その典型的な旅路は: 消費者が答を求めてWebサイトを訪れる→混乱して電話をする。今やそれはまるで疫病だ。カスタマーセンターは1年に2680億件の電話に対応し、1兆6000億ドルの費用を発生させている。

比較のために全世界の広告費支出を挙げると、それは5000億ドルだ。だからカスタマーセンターは、企業のマーケティング支出の3倍のコストを生じさせている。しかも、混み合っていてお客を待たせるカスタマーセンターが多いから、さらにひどい消費者体験を与えている。Webサイトとアプリは、電話を減らすどころか増やしており、コストも大きくしている。暮らしが楽になるというデジタルの約束は、あっさり破られる。

質問に親切に答えてもらったら、喜んでお金を払う気になる、という私たちの心理は、人間に生まれつきあるものだ。今ボットやAIが話題になっているのも、そのためだ。現実世界で何かが実現し完了するのは、何の力に依(よ)っているのか。会話に依ってだ。ロボットやAIが人間の仕事を壊す、とメディアは力説するが、Webに人間性が大きく欠けている今ではむしろ、その欠陥を補い、本当に暮らしを楽にするインターネットやWebを探究すべきだ。可能なら、AIやロボットもその探究に活用して。

今改めてeコマースの現実を知ってみると、初期に私が抱いた希望や夢も錯誤だった、という気がしてくる。しかし今の私は、私が“会話的コマース”(conversational commerce)と呼んでいるものに大きな希望を抱(いだ)いている。メッセージングや、Alexaのような音声、それにロボットを、生きた、人間的な会話に活用できれば、われわれがかつて夢に見たような普遍的で大きな規模で、強力なデジタルコマースの約束を、ついに実現できるだろう。

これまで、およそ18000社の顧客企業の仕事をし、最近、会話的コマースの探究を開始した私が大胆な予想をするなら、2018年には有名ブランドのWebサイトの最初の閉鎖が起きるだろう。ブランドは、これまでのように単に顧客とコネクトすることから、会話することへと力点を移す。それはボットと人間の共同作業になり、SMSやFacebookなどのメッセージングがフロントエンドになる。私たちはすでに数社の著名ブランドと、その実現努力を開始している。

(上記予言の)最初のWebサイトが終わると、ドミノ現象が始まる。しかしそれは多くの企業にポジティブな効果を与え、eコマースと顧客ケアのやり方を抜本的に変える契機になる。でもそれは、Googleに壊滅的な打撃を与えるだろう。

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Twitterがロシアに結びついた選挙妨害ボットの数を13000から50000にアップデート

Twitterが、2016年の同プラットホーム上における、ロシアによる選挙妨害に関する調査結果の詳細をアップデートした。選挙関連のツイートをしたロシアと結びつきのあるボットの数13000あまりは、トータルで50000あまりとなった。同じく昨年秋の報告で1000だった、今や悪名高いInternet Research Agency(IRA)によるボットの数は、3800になった。

しかしそれでもTwitterは、これらのアカウントは重大な問題ではない、と言っている:

この追加調査の結果は、これまでの結果と整合している: ロシアに結びついている選挙関連の自動化コンテンツは、2016年の選挙に先立つ10週間におけるTwitter上の全アクティビティの、きわめて小部分を表しているにすぎない。

それが微小であると強調したいためか、Twitterのブログ記事は話題を変えて、Twitter全体としてのボットや不審なアクティビティに対する対策努力を述べている。

なお、それら3800のIRAのボットは、10週間のあいだに約17万6000回ツイートし、うち15000弱が選挙関連だった。同じ期間に67万7775名が、これらのアカウントのどれかをフォローしたりリツイートし、そして通知された。

Twitter上のIRAボットによるコンテンツの例。

しかしある意味でそれは、バケツの水の一滴にすぎない。

同社は曰く: “2017年12月に私たちのシステムは、一週間あたり640万を超える不審なアカウントを見つけ、対応した。2017年の6月以降、私たちは弊社の規則に違反している22万あまりのアプリケーションを削除したが、それらは合わせて22億あまりの粗悪なツイートを発していた”。

すべてを同列に扱うことはできないが、それらは本格的な攻撃ではなくて、マーケティングのプロモーションであることが多い。そんな単純なスパマーが数万のボットを作って展開できるのなら、ロシアの諜報機関がもっと大量にそれをやらかすのは、朝飯前だろう。

もちろん、Facebook上の数はもっと大きい。Facebook上でトロルのアカウントにやられた人は、約1億5000万人と推計されている。

最後にTwitterは、2018年の選挙〔中間選挙〕をもっと妨害に強くするための対策の一部を説明している。その妨害は、規模はそれほどでもなかったとしても、確かに予想以上に広範囲に及んでいた。

今年の同社の対策の中には、候補者全員の検証がある。また、なりすましやハイジャックを防ぎ、情報の操作やボットの仕業を防ぐために、選挙関連の会話を詳しくモニタしていく。

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Googleのチャットボット・ビルダーDialogflowに企業ユーザー向け有料バージョン登場

Googleが今日(米国時間11/16)、チャットボットやそのほかの会話的アプリケーションを作るツールDialogflowの、エンタープライズエディションの、ベータローンチを発表した

そして無料版も含めてDialogflowには、今や音声認識機能が内蔵されている。これまでデベロッパーは、その機能が欲しければGoogle CloudのSpeech APIや同様のサービスを使わざるをえなかった。当然ながら、内蔵化によって、一つのAPIを呼び出すだけになったので、スピードも(Google説では30%)向上した。

今のDialogflowにはさらに、GoogleのChatbaseサービスを呼び出すことによる、ベーシックなアナリティクスとモニタリングの能力もある。

Dialogflowは、Googleが昨年買収したときAPI.AIという名前だったけど、その後名前を変えた。でも変わったのは名前だけで、その基本的な考え方はなにしろ、会話的なエージェント(自律プログラム)やそのほかの、テキストや音声による対話を、使いやすい形で作りたい、と思ったときに使えるビルディングブロックを提供することだ。

このサービスはこれまでずっと、ユーザー獲得のために無料(ただし量制限あり)だったが、企業ユーザーは有料でもいいから24/7のサポートやSLA、企業向けのサービス規約、データ保護の約束、などがほしい。

そこで今度のDialogflow Enterprise Editionでは、これらすべてが得られる。Google Cloud AIのプロダクトマネージャーDan Aharonによると、このバージョンのDialogflowはGoogle Cloudの一員なので、前からGoogle Cloudを使っているユーザー企業なら、契約も使用開始も簡単だ。“もしもあなたがSpotifyなら、Google Cloudのプロダクトであるための要件をすべて、すでに満たしているから、Dialogflowをかなり容易に使える”、とAharonは語る。たとえばDialogflow Enterprise Editionのサインアップは、Google Cloud Platform Consoleのコンソールからできる。

有料とはいえ、テキストの対話一回につきわずか0.2セント、音声の対話リクエストは一回につき0.65セントだ。1セントにも満たない(量制限なし)。

これまでの無料バージョンのDialogflowは、どこにも行かない。エンタープライズエディションと同様、新たに音声認識も統合されており、14の言語をサポート、MicrosoftやAmazonなど、主なチャットや音声アシスタントのほとんどを統合している。その量制限は、1日に最大1000対話、1か月累計では15000対話までだ。

GoogleがAPI.AIを買収したとき、それはすでに、チャットボット作成ツールとして相当人気が高かった。そしてGoogleによると、その勢いは今だに衰えていない。GoogleのPRはAharonに、人気第一位のツールとは言うな、と釘をさしたらしいが、実際に人気一位であっても意外ではない。彼によると、無料バージョンだけの現状で登録ユーザー数(デベロッパー数)は“数十万”、今年のCloud Nextイベントを共有したデベロッパー数が15万だから、それよりずっと多いのは確実だ。

“顧客から何度も何度も聞く言葉によると、自然言語理解のクォリティーが高いので、Dialogflowはそのほかのチャットボットツールに大きく差をつけているそうだ”、とAharonは言う。“最良のツールでなければ、本番用(プロダクション用)には使えないからね”。(そうでない企業もあるみたいだが…。)

自然言語の理解以外にも、Cloud Functionsを利用してサーバーレスのスクリプトを簡単に書けるなど、Dialogflowはデベロッパーの自由度が大きい。ほかのアプリケーションへの接続も容易だ…それらがどこでホストされていても。だからたとえば、既存の受発注システムや発送システムと、これから作る会話的アプリケーションを統合することも可能だ。

Aharonによると、API.AIの機能をGoogle Cloudにポートするのに約1年かかった。そしてそれが完了した今では、このサービスはGoogleのAIや機械学習の機能をフルに利用できる。一方、今のGoogleはエンタープライズの顧客獲得が最重要の課題だから、Dialogflowをそのためのメニューの一員にするのも、当然なのだ。

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チャットやメッセージングを営業とマーケティングのツールにしたいHubSpotがチャットボット制作のMotion AIを買収

営業支援とインバウンドマーケティングの今や古参で大手HubSpot日本)が、チャットボット制作のスタートアップMotion AIを買収したことを、今朝(米国時間9/20)発表した。

Motion AIは2015にローンチし、チャットボットを作るためのエディターを提供している。そのチャットボットは、WebサイトやFacebook Messenger、SMS、Slackなどで動作し、ユーザーはコーディング不要で作成できる。実は、HubSpotのFree CRMにはMotion AIがすでに統合されている。

Motion AIのファウンダーでCEOのDavid Nelsonを含め、全員がHubSpotに加わる。さらに詳細は、来週(9/26)行われるHubSpotのイベントINBOUNDで発表するそうだ。

買収の発表声明の中でHubSpotのCEO Brian Halliganはこう述べている: “今やチャットとメッセージングのインパクトを無視することはできない。それはB2Bで重要なだけでなく、社会全体として重要だ。今はどの企業も大きな転換期にあり、それを好機として乗り切るためには、このような新しいプラットホームを積極的に導入して、ブランドからのより密接で常時つながってる状態のコミュニケーションを求める消費者を、前向きに受け入れて行かなければならない”。

数か月前にAIのKemviを買収したHubSpot は、そのときと同じく、買収の条件等を公表していない。Motion AIはCharge VenturesやCrush Venturesなどから資金を調達している。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Silent Echoを使えば、Slackの中からAlexaとチャットすることができる

Slack経由でAlexaとチャットしてみたいだろうか?Silent Echoという新しいボットを使えばこれが可能だ。ここでの着想は、AmazonのバーチャルアシスタントAlexaと対話する際に、音声を使いたくない場合があるだろうということだ。たとえば、部屋の中がとても騒々しくて、Alexaが適切に聴き取りを行えない場合や、とても静かに物事を進める必要がある場合などだ。

このサービスは、Alexaがほかのプラットフォーム(例えばEchoスピーカー)で提供している全ての機能にアクセスできるものではない。例えば、Silent Echoからは、Spotifyやその他の音楽サービスをコントロールすることはできないし、セッションタイムが短いため複数のやり取りが必要なAlexaスキルを使うこともできない。

しかし、スマートホームデバイスを制御したり、開発者が行う必要のあるテストの目的でAlexaのスキルと対話したりといったことは、Silent Echoから行なうことができる。

実際、Silent Echoのアイデアは、音声アプリケーションを開発するためのツールを提供するBespokenからやってきたものだ。Bespokenは、昨年インタラクティブ音声広告会社XappMediaを設立し、それ以降多数の多数のオープンソースのコマンドラインツールをリリースしている。それらのツールはおよそ700人の音声アプリ開発者に採用されてきた。これらのツールは、Bespokenが、同社のSaaS製品である、AlexaやGoogle Home向け音声アプリケーション用のロギング/監視ソフトウェアソリューションを周知させる手助けになる。

現在そのソフトウェアは約150顧客に採用されている。主に音声アプリケーションの大きなブランドを扱う代理店によってだ。

Bespokenの創業者兼CEOであるJohn Kelvieによれば、当初チームは車内の企業音声アプリケーションソリューションをサポートするために、Silent EchoのWebクライアントバージョンを構築していた。しかし、多くの人びとがSlackのバージョンを入手できるかどうか尋ねてきたため、それが動機となって新しいSlackボットの開発へとつながった。

Slackにインストールすると、Silent Echoボットに直接メッセージを送信したり、グループチャット内で@silentechoを指定して呼び出したりすることができる。

ボットはSlackでタイプされた内容をテキスト音声変換を使って音声に変換してから、AmazonのAPIを通してAlexaを呼び出している。そしてAlexaが返答した音声を今度は音声テキスト変換を施してテキストに変換しているのだ。

これはAlexaを使用するための非公式な手段だ。要するに技術的には、これはハッキングの一種だ。しかし、これらはすべて「オープンに利用可能なルーチン」だけを使用して行われている、とKelvieは語った。「イカサマをしたり、非公開のAPIや抜け道に頼ったりもしていません」と彼は説明している。

本質的には、Silent Echoは仮想Alexaデバイスのように動作するので、それはユーザーのAlexaアカウントに関連付けられている。すなわち、このボットは、ユーザーのAmazonアカウントと、ユーザーが追加した他のスキルにアクセスすることが可能なのだ。

しかし、セキュリティ上の理由から、グループチャットの内でのSilent Echoとのやりとりは、限られた特権を持つAmazonアカウントにリンクされた汎用Silent Echoインスタンスが使用される。スキルをこのバージョンに追加することはできるが、個人アカウントにリンクする必要があるスキルは追加できない。たとえば、ピザを自宅に届けるよう注文するスキルなどは追加することができない。

リクエストとレスポンスはBespokenのデータベースに保存されている。このデータが共有されることはないが、政府や法執行機関の開示要請の対象になる可能性があることには注意が必要だ。Alexaの音声を文字起こししたものを保存しておくべきか否かは、最近の議論のトピックの1つだ。Amazonはより良い音声アプリの開発助けるために、開発者たちへ文字起こしされた非公開データを提供することを検討しているという報告も挙がっている

しかし、Bespokenのケースに於いては、Echoスピーカーが拾ってしまうようなバックグラウンドノイズが書き起こされることはない。Kelvieによれば、入力された要求と文字化された応答のみを、ユーザーインターフェイスに表示する目的で保存するということだ。

Slackボットに加えて、Silent EchoはWebクライアント、あるいはSDKを介しても利用することができるが、明らかにSlackボットに人気が集まっている。

「私たちは既に35のSlackコミュニティに参加しています。そして1000以上のユーザーを獲得済です」とKelvieは7月中旬にベータ版に関するブログ記事を公開したばかりのSlackボットについて語った。

「使用例は急速に拡大しています」と彼は付け加えた。彼はもともと、このボットが一握り以上のSlackグループで使われるようになるとは思っていなかったのだ。

「このことはTwitter版でのユーザー獲得に向けて、気を少し楽にしてくれる結果です」とKelvieは語る。それはいつ登場するのか、と尋ねたところ、できれば来週にはという答を得ることができた。乞うご期待。

当面Silent Echo Slackボットは、ここから無償で利用できる。

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(翻訳:Sako)

一般庶民の日常的法律問題を助けるDoNotPayの訴訟書式チャットボットがついに1000種を超えた

[画像: 駐車券問題の対応]

自作のチャットボットDoNotPayが駐車券争いで役に立ち、一躍話題になった19歳のJoshua Browderはそれ以来、できるだけ多くの、よくある法律的ニーズをできるかぎり自動化して、司法を民主化したいという彼のクェストに、さらに没頭を続けた。その結果Browderは、アメリカのすべての州とイギリスで、これから訴訟を起こす人びとの訴訟文書の作成を助ける、およそ1000種あまりのボットを作ってしまった。

最初のDoNotPayボットは、徐々に新しい機能を加えていくにつれて、何のためにどうやって使うのかわからない、と訴えるユーザーが増えてきた。そこで彼はその路線をやめて、個々の訴訟案件タイプごとのアシスタント機能をできるだけたくさん作り、フルサービスの消費者向け法律ツールとして出直すことにした。

今日ローンチした新しいDoNotPayは、庶民がぶつかるあらゆる法律問題…出産育児休暇を認めないブラック企業、家主地主の契約違反、などなど…で、誰でも訴訟用のトランザクションフォームを書ける。その1000以上あるボットは、自然言語で検索できるから、ユーザーが自分の問題を述べれば、DoNotPayが自動的に関連のアシスタントへ連れて行く。

Browderはこのツールを作るときに、関連書式や法律の地域(州〜国)ごとの違いが膨大で、しかもそれらに対応しなければならないと覚悟した。今のDoNotPayはユーザーの位置を自動的に確認して、その地域に合った適切な情報を提供する。

[世界初のボット弁護士が今や1000種の案件をさばく]
[お困りの問題はなんですか?]
[出産休暇を延長したいんです]
[それはたいへんですね.やり方をお教えしましょう]

ここまで大きくなれば、誰もがVCからの資金や、収益化について考えるだろう。でもBrowderはVCには目もくれず、自分の作品が無料であることにこだわる。彼は今Greylockの社員起業家だから、給料もアドバイスも会社からもらえるのだ。

今後は、結婚、離婚、倒産などもっと面倒な法律処理にも対応したい、と彼は考えている。IBMはDoNotPayに対し、Watsonの利用をタダにしてくれている。ユーザーが自然言語で検索できるために、Watsonが必要なのだ。そんな技術も自分で作りたいが、今のところ彼の関心はほかのところ…訴訟関連とユーザー対策…にある。

今Browderがとくに力を入れているのは、エンゲージメントの増大だ。今のユーザーは数か月に一回ぐらいのペースで利用しているが、利用頻度がもっと増えても平気で処理できるほどの能力を、システムに持たせたい。

それが達成できたら、収益化が視野に入るだろう。Browderは、今でも自分が何をやりたいのかはっきりしていない、というが、一応構想としてあるのは、一部のボットには企業をスポンサーにできる、ということだ。たとえば駐車券問題のボットには、自動車販売店がスポンサーになりたがるかもしれない。

DoNotPay(そんな金払うな!)の語源となった駐車券問題ボットでは、人びとの930万ドルを節約し、37万5000件の紛争を扱った。今や、社会を変えたといっても過言ではない。そのツールは、AIの必要性を人びとが自然に理解できる理想的なケーススタディだ。技術的に革命的なところは、何もなくってもね。

VCたちがIPに私権の鎧を着せて、独創的なアルゴリズムや機械学習の博士号を守ろうとするのは当然だが、でも結局のところは、世界に対するAIのインパクトの多くは、既存の技術をうまく利用する、彼のような熱心な自由人の発想から生まれるのだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Facebook Messenger上で友だちとSpotifyのプレイリストが作れるように

今年に入ってから、Spotifyは友だちと楽曲がシェアできるFacebook Messenger用のボットを発表した。そして本日、同ボットに新たな機能が追加され、ユーザーはMessenger上で友だちと一緒にプレイリストを作れるようになった。しかも、グループ内の全員がSpotifyのアカウントを持っていなくてもこの機能は利用可能だ。

Group Playlists for Messengerというそのままの名前がついたこの機能には、既存のMessenger用のSpotifyアプリからアクセスできる。実際のFacebook Messengerのインターフェース上では、まずチャット画面を表示し、入力欄の左側にある青いプラスサインが書かれたボタンをタップする。するとMessengerアプリのリストが表示されるので、その中からSpotifyを選ぶ。

そこから、プレイリストの作成者(この人はSpotifyのアカウントを持っていないといけない)は、スクリーン下部にある”Create”ボタンを押して名前を付ければ、すぐにグループチャット内でプレイリストを共有できる。プレイストを共有すると表れるサムネイルには、プレイリストの名前と曲を追加するためのボタンが表示されるようになっている。

そして、この段階でグループチャットに参加している人であれば、誰でも好きな曲をプレイリストに追加することができるのだ。しかも、Spotifyによれば、プレイリストの作成者以外はSpotifyのアカウントを持っていなくてもこの機能を利用できるということだ。

しかし、非SpotifyユーザーはMessenger上でプレイリストの中身を見ることしかできず、実際に曲を聞くためにはSpotifyにサインアップして、アプリをダウンロードしなければならない。既にSpotifyのアカウントを持っているがFacebookとは接続していないという人は、MessengerのSpotifyアプリから両アカウントを紐付けられるようだ。

これまでにもSpotifyはデスクトップ版、iPhone版、iPad版、Android版の全てでコラボプレイリストをサポートしており、Spotifyからソーシャルサイトやさまざまなメッセージングアプリにプレイリストを直接共有できるようにもなっていた。

しかし、今回の機能追加により、ユーザーはMessenger上で直接プレイリストを作れるようになったのだ。

SpotifyはどのくらいのユーザーがMessengerアプリを使っているかについてはコメントを避けたが、同アプリを通じて「何百万曲」もの楽曲がこれまでに共有されていると語った。

なお、同様の機能が他のチャットプラットフォームでも公開されるのかについては、今のところわかっていない。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

スクープ:Facebook、F8カンファレンスでMessenger向けグループボット発表へ

FacebookはF8デベロッパー・カンファレンスで新しいグループチャット・ボットを発表する予定だと判明した。このボットはFaceook Messenger内で作動し、ユーザーにリアルタイムでニュースなど有用な情報を提供する。コンテンツにはスポーツの試合経過、通販の商品配送情報などが含まれるという。Facebookの開発状況に詳しい3人の情報源がこのことを確認した。

FacebookはMessengerボットの発表のためにトップクラスのチャットボットのデベロッパーと緊密に協力しているという。またFacebookはデベロッパーが独自にボットを作れるようAPIセットを公開する。もちろんFacebookの広報担当者は私の取材に対して「われわれは噂や推測にコメントしない」と決まり文句の返事をしてきたが、TechCrunchの情報源はわれわれがつかんだ事実を確認した。

たとえばフットボールのファンからなるMessengerグループの場合、スレッドにスポーツ・ボットを加えることができる。このボットは刻々の点数、ビッグプレイ、その他試合の進行に関連する情報を配信してくれる。eコマース・ボットであれば、職場にランチが配達されるところであると伝えてくれる。グループのメンバーはいつまでも腹を空かしている必要がないことを知って安心できるだろう。

Facebook MessengerにはすでにtheScoreのようなスポーツメディアやNBAのSacramento Kings、またピザ配達のDominosなどと協力してこうした情報を配信している。

グループ・チャットボットの発表はFacebookからMessengerボットが昨年のF8で公開されたときすでにTechCrunchが指摘した問題に対する解答だ。

まずこのグループ・ボットは「本物の人間のふり」をするのは止めて、リアルタイムのニュースメディアとして振るまう。そういう意味ではこれは「チャットの相手」という意味のチャットボットではない。他のチャットボットのようにユーザーが1対1で会話することはできないので、むしろ「インフォメーション・ボット」と呼んだほうがいいだろう。

AIテクノロジーが不十分なため人間の質問を正しく理解できず、ユーザーはFacebookのチャットボットに失望気味だ。FacebookのMessengerの責任者、David Marcusは TechCrunch Disruptで、「〔ボットの能力が〕あっという間に過大評価されてしまったのが問題だった。われわれが当初提供したボットの能力はもっと伝統的なユーザー・インターフェイスを上回るものではなかった」と認めた。

そこでグループボットの目的は人間のようにふるまうという圧力から解放され、「会話の相手」という役割にこだわらず特定の役割を効果的に果たす仕組に切り替えられた。

第2に、これまでボットというのは利用のきっかけが得にくいサービスだっため、グループチャットはバイラルにボットの利用を広げるプラットフォームととらえ直された。

現在ユーザーがボットを利用するにはMessengerの検索ボックスにボットの名称を入力する必要がある。どういうボットが利用可能なのか全体を眺める方法は事実上ない。そこで企業がボットを開発しても、利用してもらうためにはニュースフィードへの広告掲出などによってユーザーの頭に正しい名称を刻み込む必要がある。これはマーケティングとしてなかなか困難な目標だ。そこでサードパーティーによるBotlistのようなサービスが登場する。

今回のグループボットは1人が設置すれば他のメンバーにも見える。メンバーは自分の他のスレッドにも導入することになり、そのスレッドの他のメンバーもボットボットの存在を知ることができる。こうしたバイラルな発見によりボットのユーザーと同時にボット・プラットフォームそのものを拡大する。これはチャットボットの開発により多くのデベロッパーの参加をうながす効果があるだろう。

ただし、ユーザーがどのようにしてボットの存在を知るのか、Messengerのグループに追加するのか、具体的な手順はまだ明らかでない。Facebookには今のところボットストアや「おすすめのボット一覧」のようなサービスは存在しない。しかし来月18日、19日にサンノゼで開催が予定されているF8デベロッパー・カンファレンスではボットの発見を容易にするなんらかのメカニズムが発表されるはずだ。われわれはカンファレンスに参加してFacebookの発表について報告する予定だ。

将来は本当に人間と会話ができる人工知能も出現するだろうが、Facebookが当面、グループボットをメディア的な存在として扱うことにしたのは賢明だ。

画像: Bryce Durbin/TechCrunch

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Statsbotは、Slackにビジネスデータを取り込む際に役立つチャットボットだ

Statsbotは、企業にデータを見るための新しい方法を提供する。それもSlackのチャットルームの中で。

共同創業兼CEOのArtyom Keydunovによれば、この製品は彼がリモートエンジニアリングチームのリーダーをやっていた際に着想を得たということだ。そのとき「Google AnalyticsやMixpanelのデータを、共同作業の場所、つまりSlackへ引き込めれば役立つだろう」と思いついたのだ(StatsbotはSalesforceのデータも引き込むことができる)。

Statbotは昨年、500 StartupsとBetaworks Botcampに参加しており、既に2万社にインストールされていると言っている。また最近、シードラウンドで160万ドルを調達している。このラウンドを主導したのはEniac Venturesで、他にはBetaworks, Innovation Endeavors、そしてSlack Fundが参加した。

Keydunovは、Statsbotの中で最も人気のある利用法の1つは、会議中の利用だと言っている。「データをその場で見ることができることは、本当に素晴らしく、不可欠で、そして本当に重要なこと」になり得るからだ。例えば、利用者のサインアップの傾向についての議論を始めたならば、Statsbotを使ってデータを即座に取り込んで、あなたの論拠を検証したり補強したりすることが可能だ。

Statbotを使って通知を受け取ることもできる。例えば、ボットにユーザーのサインアップをモニターするように命じれば、急激な増加や減少があったときに通知を送ってくる。

将来に向けて、現在KeydunovのチームはStatsボットの通知機能をよりスマートかつアクション可能なものにしようとしていると語った。単にマーケティングキャンペーンが費用を無駄にしていると告げる代わりに、Slackから直接そのキャンペーンを中止したりリスケジューリングしたりできるようになる。彼はまた、Statsbotは企業データの理解に対してもっとスマートにならなければならないと語った。そうして「なぜ上手く行かないものがあるのかとか、なぜセールスのトレンドが変化したのかとか … そしてトレンドの変化の直接の原因は何か?」といったことを説明できるようにするのだ。

「私たちがここでやりたいことは、複数のデータソースを横断して動作するStatsbotを作ることです。異なるソースをマージして、その交わる所に更に価値のある洞察を与えるのです」と彼は語った。

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(翻訳:Sako)

米ドミノ・ピザのボットがパワーアップ、Messenger経由で全てのピザが注文できるように

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米ドミノ・ピザの注文受付ボットDomが、大きなテストに臨もうとしている。スーパーボウル開催直前にドミノ・ピザが、Facebook Messengerを通じてフルメニューから注文できる機能をローンチしたのだ。しかも、この機能は事前に設定が必要な「ピザ・プロフィール」無しでも利用できる。つまり今回のアップデートによって、普段あまりドミノ・ピザを利用しない人も、電話やウェブサイト経由での注文の代わりにボットを試しやすくなる。

今回がドミノ・ピザのボットのデビューではないので、誤解のないように。同社はAnyWhereオーダリングプラットフォームを使って、既に1年間以上も電話やウェブサイト以外からの注文を受付けている。例えば2015年の春には、Twitter経由の注文受付をスタートし、その後Apple TVGoogle HomeAmazon Echo、Ford Sync、SMS、サムスンのスマートテレビ、スマートウォッチ、アプリ内の音声アシスタントなど、様々な新興プラットフォームへも対応してきた。

しかし、これまでのAnyWhereを利用した注文方法の問題点は、顧客がまずドミノ・ピザのアカウントを作り、個人情報を入力した後に「Easy Order」と呼ばれるものを作らなければいけないという、実際の注文までにかかる手間だ。なお、このEasy Orderには、顧客のお気に入りのピザや、最も注文回数の多いピザなどの情報が含まれている。そして前述のようなプラットフォーム経由で注文するときは、このEasy Orderに含まれているものしか注文できず、フルメニューを見ることはできなかった。

その後ドミノ・ピザは、前回注文したピザを再び注文するリオーダリング機能を、AnyWhereプラットフォームを利用しているアプリに追加した。

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しかし、今回のMessengerボットのアップデートにより、今後はフルメニューを見ながらDomに注文をお願いできるようになる。一見大したことがないように思える変化だが、DomのようにECに特化したボットの使い勝手を考えると、これは大変重要なポイントだ。

ドミノ・ピザとの確認の結果、これまでDomはおろかドミノ・ピザを利用したことがない人でも、新しい機能は問題なく使えるということがわかった。住所や電話番号などの注文に必要な情報は、Domが顧客に尋ねるようになっているのだ。

しかし、ドミノ・ピザにすぐにでも解決してほしい、大きな問題がひとつある。Dom経由で注文すると、現金でしか支払いができないのだ。(もう誰も現金なんか使ってないのに!)特にピザをチャットボット経由で注文するのがカッコいい、と考えるようなアーリーアダプターが現金で支払を行う姿は想像しづらい。

昨年の秋にローンチしたMessengerプラットフォームには、チャットボット向けの決済機能が追加されていた。しかしローンチ当初、同機能はまだ限定ベータ版だったので、ピザを注文するためのボットは、その対象に含まれてなかったのかもしれない。

しかしドミノ・ピザも、将来的にはMessenger経由の支払機能追加を検討していきたいと話している。

Messenger経由で注文した商品は、配達だけでなく店舗で受け取ることもできるため、店舗受け取りを選択すれば、店頭で自分の好きな決済方法を選ぶこともできる。

ドミノ・ピザにとって、スーパーボウルサンデーは一年で最も忙しい日のひとつだ。当日はアメリカ中で1200万枚ものピザを販売する予定で、この数は普通の日曜日の5倍にあたると同社は話す。

そのため、チャットボットでの注文というのは少し馬鹿げて聞こえるかもしれないが、もしもMessengerのような代替ルートで注文する人が出てくれば、電話回線に余裕を持たせ、トラフィック過多でウェブサイトの読み込みが遅くなるのを防ぐことができ、ドミノ・ピザの利益に影響を与える可能性さえあるのだ。

Domを試したい人は、ドミノ・ピザのFacebookページを訪れるか、Messengerアプリで「Domino’s」と検索してみてほしい。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

テクノロジーの”見えない化”のススメ

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【編集部注】執筆者のElizabeth McGuaneは、Intercomのリードコンテントデザイナー。

プロダクト開発の世界では毎年バズワードが生まれているが、今年のバズワードは間違い無くボットだろう。

私たちはボットを含め、つくったものには通常名前を付ける。これはほとんどの人が疑問にも感じないようなプロセスだ。HAL 9000Herのようにボットは予め擬人化され、iPhoneにはSiriが、AmazonのEchoにはAlexaが、そしてFacebook MessengerにはPSL(Pumpkin Spice Latte)Botが搭載されているように、私たちがすぐにコンピューターとの関係性を構築できるように準備されている。

名前を付けることで、私たちは無機物に対して信頼感を抱くことができ、対象物を支配下においていると感じることができる。デザイン用語で言えば、名前はアフォーダンス、つまり私たちが掴むことのできる持ち手のようなものなのだ。

Intercomのプロダクトデザインチームで言語のエキスパートとして働いている私にとって、ものに名前を付けるということは日常業務の一部だ。メッセージ系のプロダクト上で動くボットを開発し始めたとき、私はブレインストーミングで男性っぽいものや女性っぽいもの、中性的なものや機能的なものなど、何百個もの名前を考え出すつもりでいた。

しかし私たちはまず最初に、ボットや言語や名前とユーザーとの関係性を理解するためにテストを行うことにした。その結果、ボットにアイデンティティを与えることが必ずしも最良ではないということがわかった。ボットをSiriと呼ぶことには、車をBessieやOld Faithfulと呼ぶことほど関係性を構築する力があるとは言えないのだ。

会話とタイピングは全くの別物

音声認識機能が搭載されたボットを使うときは名前があると何かと便利だ。「Siri」、「Alexa」、「OK Google」といった呼びかけには、実質的にGoogleのウェブサイトを開いて検索ワードを入力するのと同じ効果がある。ユーザーが検索欄を見ると、彼らの脳は「何か検索したいものがある」という考えから、実際のアクションへと思考を移していく。世界中で1秒間に4万回以上も検索が行われている今、実際にはシステムに質問を投げかけて何らかの回答を待っているとしても、私たちはシステムと対話しているというような印象を持っていない。

しかしテキストベースのボットやチャットボットにおいては、名前はアクションに直結しない。人気の仕事向けメッセージプラットフォームSlackに備わっているSlackbotでも、ユーザーは予めプログラムされた回答を取り出すために「Hey Slackbot」などと呼びかける必要はない。

検索内容を声に出すことで、検索するという目的自体は果たせるが、私たちの注意はシステムとの交流に向けられてしまう。これには良い面と悪い面の両方がある。声は文字に比べて、より”人間っぽい”ものだ。昨年の8月に行われた研究によれば、私たちは同じ情報を耳で聞いた場合と目で読んだ場合、耳を介して得た情報の方が人間によってつくられたものだと考えやすい傾向があるとわかっている。

今日のデザイナーの成功は、ユーザーがその存在を感じないようなテクノロジーをつくれるかどうかにかかっている。

しかし人間らしさは苛立ちにつながる可能性もある。一日に「OK Google」と75回言う方が、同じ回数だけ静かにノートパソコンを開いて検索内容をタイプするよりも疲れる気がしないだろうか。

プロダクトデザインの観点から言うと、ボットとメッセージングプラットフォームの本質は同じだ。つまり人間同士が会話するために設計されたシンプルな要素をそのまま利用して、メッセンジャー内にボットを組み込むことができるのだ。

そのため私たちは、ボットの開発に向けて色々と試していたときに、ボットとユーザーのやりとりにもメッセージングプラットフォームの要素を応用しようとした。具体的には、テスト用のボットに名前を付け、人間のように「こんにちは。私はIntercomのデジタルアシスタントのBotです」と自己紹介をさせるようにしたのだ。

ユーザーからの反応は意外なものだった。ボットに不快感や苛立ちを感じた彼らには、人間っぽいコミュニケーションが全く好まれなかったのだ。とても軽い内容のやりとりだったにも関わらず、ユーザーはボットを邪魔で、自分たちの(本当の人間に話しかけるという)目的を妨げるような存在だと感じていた。

ボットの声に変化をつけて、あるときはフレンドリーに、またあるときは控えめで機械的な対応をするように設定するなど色々と試したが、結果はほとんど変わらなかった。

しかし私たちがボットの名前を取り去り、一人称代名詞の使用や自己紹介をやめると事態は好転しだした。どの要素よりも名前が1番の原因だったのだ。

誰が持ち手を握っているのか?

私たちは一世紀以上にわたって、ロボットにまつわる恐ろしい物語を自分たちで広めてきた。そしてその物語の中で私たちは、ロボットという存在を哀れむと共に疑ってきた。前述の通り、人間は道具に名前を付けるときにその支配権を主張している。この背景には、自分が実際に道具を使ってものごとと関わりあい、仕事をする主体であると感じたいという私たちの思いが存在するのだ。

デジタルツールは実世界のツールとは心理的に全く異なる性質を持っている。デジタルツールには実際に握れる持ち手が存在しないのだ。職人が自分の手で修理できる金槌とカリフォルニア(Intercomで言えばダブリン)かどこかのデザインチームが設計・開発したチャットボットの間には大きな違いがある。

Intercomに務めるほとんどのライターとは違い、私の仕事はユーザーに気付かれないほど良いとされる。コントロール(または支配)とは、デジタルツールを設計する上で大変重要な概念だ。あるプロダクトの中でユーザーが目にする言葉のほとんどは、ライターである私ではなく実際にプロダクトを使うユーザーにコントロールを与え、プロダクトの理解を促すために存在する。ここでのゴールは、ユーザに直感的にプロダクトを使ってもらうことであり、スクリーンに表示される言葉は金槌の持ち手でしかない。

名前やアイデンティティが付加されることで、スクリーン上のツールは直感を越え、それまでとは違った仮想ツールとなり、ユーザーとの関係性にも大きな変化が生じてくる。しかしユーザーは必ずしもその変化を求めておらず、好ましいものだとも感じていない。

これは目新しさが原因なのかもしれない。時間が経てば仮想ツールという存在に慣れて、ユーザーもツールを信用するようになるかもしれない(最近のニュースの見出しを見ているとそんな気もしないが)。しかし何百という数のロボットに関する映画や本で描かれている内容に反し、テクノロジーに人間性を持たせるというのは、私たちがロボットに慣れるための方法としては適していないのかもしれない。

デザイン上の他の考え方として、テクノロジーとはほとんど目に見えないものだと主張する人もいる。SiriやAlexaがその例になるのかもしれないが、実際に”見る”ことができないため、ユーザーはバックグラウンドに隠れたボットに気づかないというのが彼らの主張だ。しかしこの考えが正しいとは言い切れない。

確かに人間は視覚的な生き物で、私たちは目で見たものに反応する。しかしそれ以上に人間は社会的な生き物で、私たちはコミュニケーションがとれるものに反応する。それゆえ私たちは持ち物に名前を付け、長い間妄想していたロボットに恐怖を抱いているのだ。

今日のデザイナーの成功は、ユーザーがその存在を感じないようなテクノロジーをつくれるかどうかにかかっている。テクノロジーはユーザーから見えなくなることで、本当の意味でのツールになれるのだ。そして言葉を扱うデザイナーの成功は、ユーザーが直感的にツールを使えるよう、言葉が前面に出てこないようなツールをつくれるかどうかにかかっている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

チャットをカスタマーサービスの主流にー、ニューヨーク発のReply.aiがトランスコスモスと資本業務提携

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カスタマーサポートに電話してもなかなかつながらず、イライラした覚えはないだろうか。近い将来、会社の問い合わせフォームや電話番号は全部ボットに置き換わり、必要な時にカスタマーサポートが受けられるようになるかもしれない。Reply.aiは法人向けにカスタマーとやりとりするためのボットの制作と運用をするツールを提供している。本日Reply.aiは、トランスコスモスとの資本業務提携を発表した。また、トランスコスモスはReply.aiの日本での独占販売権を取得し、日本でもReply.aiの展開を進める。

2016年はFacebook MessengerやLINEなどのボットAPIが公開されたことで、ボットの活用に注目が集まっている。Reply.aiはB2B2Cモデルで、法人がカスタマーサポートやマーケティングに使えるボットの構築と運用のためのツールを提供している。Reply.aiではFacebook messenger、SMS、Twitter、LINE、ウェブサイトのウィジェット、Kikのボットが制作可能だ。

Reply.aiではフローチャートを作る要領で、カスタマーのやり取りを想定したボットを作ることができる。開発者はゼロからボットを作る必要はなく、一回作った後でも簡単にボットの内容を変えることが可能だ。

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ボットは効率化、人は人にしかできない親身なサポートを担う

Reply.aiの最大の特徴は、ユーザーの対応をボットとオペレーターで切り替えることができる点だ。カスタマーサポートのボットなら、まずボットがカスタマーの課題を聞き取り、ボットで対応可能な質問はボットが対応する。カスタマーの質問が分からなかったり、対応できない内容の場合、ボットはオペレーターの応対に変えることをカスタマーに提案する。カスタマーがそれを承認するとオペレーターが同じチャットのスレッド内で応対を続ける流れだ。オペレーターはそれまでのカスタマーとボットとのやり取りを確認できるので、改めてカスタマーが問題を説明しなくともスムーズに対応することができる。カスタマーの課題が解決したらオペレーターはスレッドから抜け、チャットボットの機能が戻る。

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企業はReply.aiのダッシュボードからカスタマーとのやり取りを管理でき、ボットに関するアナリティクスデータも見ることができる。そこではどのくらいの頻度でボットが利用されているかやカスタマーの何割がオペレーターと話したかといった情報が分かる。それをもとにカスタマーの課題を知ったり、サービス改善やボットの最適化に役立てたりすることができるとReply.aiはいう。

Reply.ai のファウンダーでCEO、オメール・ペラ氏は「カスタマーにはこれはボットであると明示し、人が応対しているかのような誤解を与えないことが重要だと考えています」という。将来的にはボットは自然言語で様々なカスタマーの要望に対応できるようになるかもしれない。しかし、現状ではボットで効率化が図れる部分と人による親身な対応が必要な部分とを分け、それぞれが得意な部分を担うのが最適なカスタマーサポートの形であると考えているとペラ氏は説明する。

2015年8月にニューヨークで創業したReply.aiは、すでに自動車、金融、エンターテイメント、家電製品など幅広い業界の80社以上の企業で導入されているそうだ。また、Reply.aiはカスタマーサポートソフトウェアZendeskとも連携可能で、今後も他社のカスタマーサポートサービスと連携できるようにしていく計画だという。今回のトランスコスモスとの資本業務提携も、トランスコスモスが長年培ってきたカスタマーサポートの領域での知見を活かしたサービス展開をしていくためとペラ氏は説明する。

日本では、LINEが今年11月に法人向けのカスタマーサポートサービス「LINE Customer Connect」を来春にも提供を開始すると発表している。いよいよ、消費者はどこの法人と連絡を取るにもMessengerやLINEなどのチャットアプリを使うようになるかもしれない。

人工知能が企業のセールス業務に利用される例が増えている

Asian woman over microchip circuits

2016年は人工知能(AI)が非常に注目された年だった。人工知能の開発は何十年も前からはじまっていたが、パワフルなコンピューターを安価で利用できるようになったことと、アクセスできるデータの量が飛躍的に伸びたことで、今年になってやっと人工知能の時代が訪れたようだ。

AIによるビジネスの効率化が最初に始まったのは企業のセールス業務だった。毎日のように繰り返される営業ワークフローをAIによって効率化させようという試みだ。考えてみれば、企業の収入を直接的に左右するこの分野でAIの応用がはじまったのは、当然の成り行きだったと言えるだろう。AIがビジネスに与える影響を調査する、Constellation ResearchアナリストのAlan Lepofskyは、ベンダーたちがこの動向に注目しているのは確かだと話す。

彼によれば、人間は情報オーバーロードに苦しめられているという。私たちがより多くのデータを集めるにつれて、そのデータがもつ意味を理解するために私たちはコンピューターの処理能力に頼らざるを得なくなる。「AIが情報をフィルタリングしたり、タスクを自動化することで、その負担を軽減してくれることが期待されます」とLepofskyは話す。

AIはスタートアップ・コミュニティにも多大な影響を与えている。TechCrunchでも今週、AIによる営業アシスタントを開発するConversicaが3400万ドルを調達したことを報じたばかりだ。このAIアシスタントには自然言語処理(NLP)、推論エンジン、自然言語生成などの技術が使われている ― なかなか洗練されたテクノロジーだ。このAIが見込み客との初期コンタクトを自動化し、その後に人間の営業員に引き継ぐという仕組みだ。

一方、CRM業界のベテランが創業したTactは、営業員のスケジューリング管理などにAIを活用するスタートアップだ。同社もまた、今月初めに1500万ドルを調達したことを発表している。営業員が「CRMの奴隷」になってしまうことを防ぎ、AIを活用して彼らにロジカルで効率的な営業法を提供するというアイデアだ。

これらのスタートアップは、営業という分野のなかにある様々な側面をAIによって効率化させようとしている一方で、SalesforceOracleBaseなどといったCRM業界の巨人たちは単に顧客情報を記録するためのツールではなく、それに内蔵された「知性」によって営業活動を強化するというCRMツールを開発している。

従来型のCRMは顧客と営業員とのやり取りを記録するためのツールだったが、AIによってそれ以上のことが可能になったと話すのは、Bluewolfでカスタマー・エクスペリエンス部門のSVPを務めるVenessa Thompsonだ(BluewolfはSalesforceと提携するコンサルティング企業である)。

「AIはカスタマー・インタラクションがもつ力を引き出し、新たなデータが追加されるたびにツールはより賢くなります」と彼女は語る。

プラットフォームがもつ力を有効活用することで、営業員は顧客と接する時間を増やし、契約を獲得することだけに集中することができる。「営業員がどこに時間を費やすべきか、そして次に何をすべきかを予測するためには ― 彼らに適切なデータを、適切なときに与える必要があります。営業員はあらゆるソースからデータを取得する必要があり、彼らがそのデータを利用して意思決定をするためにはコグニティブなプラットフォームが必要なのです」と彼女は説明する。

AIをカスタマーサービスの分野に適用する企業も増えている。ボットを利用した初期コンタクトの自動化などがその例である。シンプルなタスクはボットにまかせ、より複雑なタスクは人間のオペレーターが対応するというアイデアだ。今週、SalesforceはLiveMessageをリリースした。これは、同社のService Cloudプラットフォームにメッセージング・アプリを組み込み、人間のオペレーターとボットの力を組み合わせるためのツールだ。

AIを営業やカスタマーサービス分野に適用する動きは、AIによるビジネス効率化の初期事例にすぎないだろう。コンピューターによって従業員の能力を拡張することが主流になりつつある今、今後数年間のうちにAIがさまざまなビジネス分野に適用される事例が増えていくことだろう。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter