トランジスタ以来の大発明?Menlo Microsystemsのスイッチはあなたが触れる全デバイスの電力供給を変える

従来の電気技術者は、信頼性が低くて遅い大電力スイッチか、大電力は扱えないが高速・高精度なスイッチのどちらかを選択しなければならなかった。Menlo Microsystems(メンロー・マイクロシステムズ)のIdeal Switch(アイデアル・スイッチ)は、そのような従来の電子設計のパラダイムを完全に覆す新しいタイプのスイッチだ。同社は、自らが「トランジスタ以来の大発明」と呼ぶものを開発し、さらなる変革を遂げるべく準備を進めている。ずいぶん大胆な主張だが、1億5千万ドル(約174億2000万円)の新規投資を集めたということは、少なくとも投資家の一部は同社が何かを掴んでいると考えているのだろう。

電気技術者でなければ、この会社の技術革新がどれほど大きなものかを理解するのは難しいだろうし、この技術がどれほど重要なものになるかを誇張して話すことも難しいだろう。このスイッチは、ある種の回路を100倍小さく100倍効率的にするという、非常に大きなインパクトを持っている。スマートライトのスイッチを自宅に設置したことがある人は、使われている電子機器が巨大で、力技とワセリンを使い悪態をつきながらでないと壁にスイッチを埋め込めないことにお気づきだと思う。これは、電源のON / OFFをリレーに頼っているためだ。同社の技術があれば、こうしたライトのスイッチを、大きさもコストもはるかに小さなものにすることができる。実際、同社の技術があと少し値下がりすれば、あなたが足を踏み入れるすべての設備、建物、車両に、同社のスイッチあるいはそれに相当するものが使われるようになる可能性がある。

フットプリントがはるかに小さいことに加え、Ideal Switchは作動に要する電力が大幅に少なく(1ミリワット未満)、通電時の消費電力も少なく、スイッチング速度がとても速く(10マイクロ秒未満)、数百万回の作動で故障することが多い通常のスイッチと比較して、数十億回の作動に耐えられるといわれている。つまり、これまでのコンポーネントとは大きく異なるタイプのコンポーネントなのだ。さらに同社は、それが数千ワット相当の電力を扱える部品であるとしている。

同社は米国時間3月9日、1億5000万ドル(約174億2000万円)のシリーズCを発表し、Menlo Microの累計資金調達額は2億2500万ドル(約261億3000万円)超に達した。Vertical Venture PartnersFuture Shapeが、このラウンドを主導し、既存投資家に加えて新規投資家としてFidelity Management & Research CompanyDBL PartnersAdage Capital Managementが参加した。今回の投資は、国内の製造とサプライチェーンの拡大に充てられる。

Menlo MicroのRuss Garcia(ラス・ガルシア)CEOは「今回の資金調達は、あらゆるものの電化を促進し、1000億ドルを超える21世紀のRF通信、電力スイッチング、保護デバイス市場を近代化する、Menlo Microの変革的技術に対する投資家のみなさまからの信頼を裏付けるものです」という。「今回の調達で、米国での生産を拡大し、世界の喫緊の課題を解決するためのパワーロードマップの開発を加速させることができるようになります。私たちは、世界の老朽化した電力網のアップグレード、スマートビルや工場の近代化、従来の電力インフラの非効率性を解消できる立場にいるのです」。

毎年200億台以上の配電盤が出荷されており、同社はこの広大な市場での変革を促進するための地位を得ようと躍起になっている。

「Ideal Switchは、電力を分配するすべてのスイッチに取って代わるものです」と、Future Shapeの立場でラウンド主導したTony Fadell(トニー・ファデル)氏は語る。彼はスイッチについては良く知っている。彼はしばしば「iPodの父」と呼ばれ、Nestの創業者および前CEOでもあった人物だ。「単純な話です。Ideal Switchは、都市、ビル、家庭、電気自動車から照明器具に至るまでの電力供給に関する基本的な計算を変えてしまうのです。また、エネルギー効率に優れているため、コスト削減、長寿命、スマートな動作、気候変動の原因となる排出物の削減が期待できます。Menlo Microは、現代最大の既存技術破壊者の1つなのです」。

世界が電化に向かう中、大幅な効率向上を約束する技術は、大きなインパクトを与えることができる。同社は、そのインパクトをある例で説明している:天井ファンは全世界に10億台以上ある。既存のファンコントローラーをIdeal Switchに置き換えることで、約17基の発電所が不要になるほどの省エネが実現できるのだ。

「ご想像の通り、これは最も普遍的なデバイスです。速度、コスト、性能の面で桁違いの向上が可能なデバイスを手にしたときには、スケーリングが最大の課題となります。今後2〜3年で非常に大きな成長を見込んでいます」とガルシア氏は予測する。「最初の成長は、ワイヤレスが中心に行われました。これはもっとも手を出しやすい分野でしたが、スマートな電力管理や制御の分野では、はるかに多くの普及が見込まれます」。

Menlo Micro CEOのラス・ガルシア氏。画像クレジット:Menlo Microsystems

このデバイスは、他のコンポーネントを単純に置き換えるものではないので、回路基盤は再考され再設計されなければならないが、同社の創業者たちは、そもそもサイズが違うために、既存の技術のピン配置に合わせて置き換えることには意味がないと主張している。

「Ideal Switchは、ほとんどの場合、大幅に小型化されたデバイスとなります。20アンペア、240ボルトの電気機械式デバイス、あるいは半導体デバイスと比較しても、かなり大きな違いがあることがわかります。同じ機能を10×20mmのプラスチックパッケージに組み込むことができるのです」とガルシア氏は説明する。「当社の製品を古いパッケージに入れて、エンドユーザーが信頼性と性能を活用できるようにしているお客様もいらっしゃいます」。

Menlo Microsystemsが生産を拡大し、競合他社が参入してくる中で、同社のボトルネックが何になるのかは興味深いところだが、1つだけ確かなことがある。それは消費者(ひいては環境)が最大の勝者になる可能性が高いということだ。

画像クレジット:Menlo Microsystems

原文へ

(文:Haje Jan Kamps、翻訳:sako)

Workbounceの「GoogleとSlackの融合」B2B営業チーム向けツール、Index Venturesから約3.1億円を調達

Workbounceの創業者たち(画像クレジット:Workbounce)

商用製品の販売は昨今かなり複雑なプロセスになっており、パンデミックはそれをさらにややこしくした。営業チームは、特にやりとりの多くがバーチャルであるハイブリッドな世界では、自社製品への信頼を築くことの難しさに阻まれがちだ。Highspot、Seismic、Showpadのようなレガシーセールスツールは、異なる時代に作られたということもある。

英国を拠点とするWorkbounce(ワークバウンス)は、複雑な製品に関する膨大な量のコンテンツを検索できるようにし、営業担当者が案件を獲得するために必要な情報を見つけられるようにすることが解決策になると考えている。これは、プラットフォームに依存せず、Googleドライブ、Slack(スラック)、Notion(ノーション)などのツールに接続することで実現される。同社は、この製品を営業チーム向けの「Google meets Slack(グーグルとスラックの融合)」と呼んでいる。

このたび同社は、Index Venturesとエンジェル投資家のグループから270万ドル(約3億1300万円)の初期段階の資金を調達した。この資金調達はタイムリーなものだ。Crunchbaseによると、セールスイネーブルメントツールへの投資は過去5年間で22倍に成長しており、2017年の2100万ドル(約24億3300万円)から2021年には4億7700万ドル(約552億6500万円)に増加している。

Rowan Bailey(ローワン・ベイリー)氏とAdam Smith(アダム・スミス)氏(2021年3月にWorkdayが7億ドル / 約811億円で買収した従業員フィードバック企業Peakonの最初の採用者の1人)によって2021年初めに設立されたWorkbounceは、営業チームが使用するすべての異なるナレッジハブへの単一のエントリポイントとして機能するという。

共同創業者兼CEOのスミス氏は声明でこう述べている。「企業が営業やカスタマーサービスチームを通じて顧客と1対1でエンゲージする方法は変化しており、それは顧客の期待の高まりと、我々の働き方のシフトの両方が原因です。次世代のB2B関係は、単に製品やサービスを販売するだけでなく、ソリューションに向けたコラボレーションが重要になるでしょう」。

Workbounceは、そのリモートファーストの構造は、ポストパンデミックの世界のために構築されているという。

「Workbounceは、営業ナレッジにアクセスし、B2Bの顧客関係を改善するための主要なツールになる可能性を秘めています」とIndex Venturesのパートナー、Hannah Seal(ハンナ・シール)氏は付け加えた。「職場が変化するにつれ、適切な情報を適切なタイミングで見つけることがますます困難になっています。Workbounceはこの問題を解決し、営業チームが顧客とエンゲージし、取引を成立させることを支援します」。

原文へ

(文:Mike Butcher、翻訳:Den Nakano)

NothingがSnapdragon搭載のスマートフォンを3月23日発表か、約81億円のシリーズB調達

Nothing(ナッシング)にとって、Mobile World Congress(MWC)は序曲だった。この若いハードウェアのスタートアップは、ミーティングルームで、舞台裏で、次に何が来るかを議論しながらショーを過ごした。会期中に述べたように、すぐに出る答えはスマートフォンであり、創業者のCarl Pei(カール・ペイ)氏は主要なモバイル企業幹部たちとの内密なミーティングで、このデバイスを喜んで披露していた。

英国時間3月9日、Nothingは3月23日に開催されるライブストリーミングイベントで、今後の動きについて説明すると発表した。このタイミングは、我々が最近の記事で指摘した「来月までに」というタイムラインと確かに一致しており、来るべきAndroidデバイスの最初の実物を垣間見ることができることを大いに暗示している。

画像クレジット:Nothing

また、EQT VenturesとC Venturesの共同出資による7000万ドル(約81億1000万円)の新たな資金調達もその方向性を示している。同社はリリースで「この資金は、Qualcomm Technologies(クアルコム テクノロジーズ)とそのSnapdragonプラットフォームとの提携による新しい製品カテゴリーの創出、および元Dyson(ダイソン)のデザイン責任者Adam Bates(アダム・ベイツ)氏が率いる新しいLondon Design Hubでの事業の拡大に使用されます」と述べている。

Qualcommは2021年10月、Nothingが5000万ドル(約57億9000万円)のシリーズAエクステンションラウンドを調達した際に、同社の戦略的パートナーとして発表された。

「今回の資金調達により、シームレスなデジタル未来という当社のビジョンの次の段階を実現するための燃料を得ることができました」とペイ氏は発表で述べている。「コミュニティと投資家のみなさまのご支援に感謝しています。当社の最初の年はウォームアップでした。今度のイベントで、Nothingで何を作っているのかを明らかにするのが待ち遠しいです」。

ペイ氏は、先週バルセロナで開催されたイベントでも、Qualcommの幹部らと一緒に写真を撮られている。もちろん、このチップメーカーは最近では携帯電話以外の部品も製造しているが、ペイ氏とSnapdragon、およびAndroidのアカウントとのTwitterでのやり取りで、さらなる裏付けを得られる。

この製品は、2021年のEar(1)ワイヤレスイヤフォンに続く、Nothingの第2弾となる。初報で述べたように、このスマートフォンは、筐体の一部に透明性を持たせるなど、前モデルとデザイン的な要素を共有することになる見込みだ。

「THE TRUTH」発表会は、米国東部標準時3月23日午前9時(日本時間午後11時)にキックオフされる。

画像クレジット:Brian Heater

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Den Nakano)

国際宇宙ステーションに代わる宇宙環境利用プラットフォームを開発するElevationSpaceが3.1億円のシード調達

国際宇宙ステーションに代わる宇宙環境利用プラットフォームを開発するElevationSpaceが3.1億円のシード調達

国際宇宙ステーション(ISS)に代わって宇宙での実験や製造が行える宇宙環境利用プラットフォーム「ELS-R」を開発する宇宙スタートアップElevationSpace(エレベーションスペース)は3月9日、シードラウンドとして、第三者割当増資による約3億1000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、Genesia Venture Fund 3号投資事業有限責任組合(ジェネシア・ベンチャーズ)をはじめとする6社。これにより補助金なども含めた累積調達額は3億5000万円となった。また、新たな社外取締役に、ジェネシア・ベンチャーズのPartnerおよびChief ESG Officerの河合将文氏が就任した。

国際宇宙ステーションに代わる宇宙環境利用プラットフォームを開発するElevationSpaceが3.1億円のシード調達ElevationSpaceは、東北大学吉田・桒原研究室で10基以上の小型人工衛星を開発してきた技術を基に、2021年2月に設立した東北大学発の宇宙領域スタートアップ。宇宙空間での実験・研究・製造などが行える小型宇宙環境利用プラットフォーム「ELS-R」の開発を行っている。2023年後半には技術実証機「ELS-R100」を打ち上げ、2026年にはサービス提供機「ELS-R1000」を打ち上げる予定だ。

ELS-Rでは、宇宙の微小重力環境を活かした研究、試験、製造が行える。実験などを行ったペイロードは地球に帰還させ、回収することができる。何かと利用が難しく、2030年には退役が予定されているISSに代わって、安価に素早く利用できるのが特徴だ。想定される利用例としては、基礎研究フェーズの他、創薬分野の高品質なたんぱく質結晶の生成といった応用研究フェーズから、宇宙旅行を見据えた化粧品・食品・家電品などの開発に関連する実証や試験フェーズ、地上では作れない新素材の宇宙製造といった量産フェーズなどが考えられている。技術実証機では、ユーグレナが、宇宙での食糧やエネルギー源となるミドリムシの培養実験を行うことが決まっている。

今回調達した資金は、ELS-R100の開発促進、さらにELS-R1000の研究開発と事業開発に向けた組織体制の構築に使われるとのこと。また今回、科学技術分野の企画、研究、コンサルティングを行うリバネスグループとの業務提携も発表された。同社が持つビジネスと科学領域の知見と産官学のネットワークを活かして、宇宙での新規材料製造マーケットの創出に取り組むという。

引受先6社は、ジェネシア・ベンチャーズ、みらい創造機構、既存投資家のMAKOTOキャピタル、リバネスキャピタル、東北大学ベンチャーパートナーズ、Plug and Play Japanとなっている。

歯の再生治療薬の研究・開発加速、歯科領域創薬の京大発スタートアップ「トレジェムバイオファーマ」が4.5億円調達

歯の再生治療薬の研究・開発加速、歯科領域創薬の京大発スタートアップ「トレジェムバイオファーマ」が4.5億円調達

歯科領域創薬の京大発スタートアップ企業「トレジェムバイオファーマ」(Toregem Biopharma)は3月8日、第三者割当増資による総額4億5000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、京都大学イノベーションキャピタル、Astellas Venture Management LLC、Gemseki、フューチャーベンチャーキャピタル、京信ソーシャルキャピタル、京都市スタートアップ支援2号ファンド。

調達した資金により、USAG-1中和抗体の非臨床安全性試験と治験用製剤の製造準備を進め、世界初の歯の再生治療薬の研究開発を一層加速させ、2023年度内の治験開始を目指す。

トレジェムバイオファーマは、京都大学大学院医学研究科口腔外科学分野の髙橋克准教授(現、同客員研究員、公益財団法人田附興風会医学研究所北野病院歯科口腔外科主任部長)による長年の研究成果に基づき、2020年5月に設立。

骨形成たんぱく質であるBMPなどの働きを阻害する分子「USAG-1」が歯の発生過程に関与し、USAG-1を抑制する中和抗体によって無歯症モデル動物で欠損歯が回復することを明らかにした。

一般的な歯の治療法である義歯やインプラントの人工歯に対し、抗体製剤(注射薬)など医薬品による自己歯の再生は根治的な治療法となりえる可能性があり、同社は、同研究で得られた中和抗体を新規医薬品として上市を目指すとしている。

また現在、先天性無歯症を最初の適応疾患として研究開発を進めているという。先天性無歯症では、患者が未成年で顎骨が発達期にあるため義歯やインプラントの適用が困難であり、成人するまで根治的な治療法の無い希少疾患となっている。現状は成人するまでの長期間を温存療法で耐えるしかなく、歯の欠損が栄養確保と成長に悪い影響を及ぼすため、根治的な治療法の開発が強く望まれている。

そこでトレジェムバイオファーマの開発物質により、先天性無歯症患者の自己歯を再生してQOLの改善を提供するという。さらに、USAG-1の中和抗体は永久歯の後の第三生歯を発生させることも期待されており、将来的には高齢者のオーラルフレイル(口腔内の虚弱)改善まで展開し、歯科治療に広く貢献したいと考えているそうだ。

ソーシャルコマースの「摩擦」を取り除くスタートアップOpaper

Opaperの創業者であるJoan McIntosh(ジョアン・マッキントッシュ)氏は、大学院在学中にオンラインベーカリーを経営していた。「朝3時、4時に起きて業務用のキッチンに行き、家々を回ってパンを届けたり食料品店に納めたりしていました」。大学院修了後はハイテクの道へ進んだ。データと機械学習プラットフォームのシニアプロダクトマネージャーとしてStreetlight Dataで、次にLacuna Technologiesでキャリアを重ねた。インドネシアで生まれ育った同氏は、東南アジアでソーシャルコマースが台頭したり、InstagramやWhatsAppなどのソーシャルメディアを使って人々が販売をしたりする様子を目にした。そして何年も前に自分がオンラインベーカリーを経営していた頃と変わらずに、何もかも手作業で運営されていることに驚いた。

「すべて、私がやっていた頃と同じです。何年もテック業界で働いた後だけに、当惑しました。なぜ誰もプロセスを改善しないのだろう?なぜ今もこんなにも手作業なんだろう?なぜ支払いをした後で、その証明として銀行振込のスクリーンショットなどを送信するんだろう?」とマッキントッシュ氏は語る。

Streetlight DataとLacunaに在職していた頃、マッキントッシュ氏は価格の最適化、物流とサプライチェーン、そして同氏が「物事を適切な方法で、適切なスピードで、適切なペースで運んでいくためのあれこれ」と説明するプロダクトに携わっていた。そしてソーシャルコマースの販売者にも同じ利便性を提供するためにOpaperを創業した。ソーシャルコマースの販売者がオンラインストアを開設できるMinimum Viable Product(実用最小限の製品)を作った後、同氏はユーザーのオンボーディングを開始し、シードラウンドで予定を超える100万ドル(約1億1500万円)を調達した。

投資したのはPrecursor Ventures、Ratio Ventures、OnDeck、そしてエンジェル投資家で、エンジェル投資家にはGFT VenturesマネージングパートナーのJay Eum(ジェイ・ウム)氏、Bill.com最高エクスペリエンス責任者のBora Chung(ボラ・チャン)氏、Googleに買収されたTenorの創業者で現在はGoogle幹部のFrank Nawabi(フランク・ナワビ)氏が名を連ねる。その後、1年経たずに27人のフルリモートチームとなった。

現在、OpaperはAndroidとiOSの両方で利用でき、公開後わずか4カ月で約100都市、1万9000の販売者に利用されている。

ターゲットとしているのは、たいてい1人か2人で運営していて現時点での販売額が2000〜5000ドル(約23万〜58万円)程度、これを成長させたいがWhatsAppで問い合わせに答えたり注文を取ったりするのに忙しくて成長できずにいる小規模事業者だ。マッキントッシュ氏は次のように語る。「小規模事業者には、商品に集中したりオフラインストアの開設やフランチャイズについて考えたりする時間が必要です。我々は最近、そのような顧客にさらに力を入れています。すでに3店舗を構えている人たちではありません。事業を始め、どうすれば成長できるかと苦闘している人たちです」。

Opaperは特定の分野に的を絞っているわけではないが、同氏によれば利用している事業者の多くは食品や飲料関係で、他社デリバリーアプリの高額な手数料を嫌う事業者もいる。販売者が購入者に対して提示できるように13社の配送業者と提携し、決済に関しては電子ウォレットや銀行振込にも対応している。

購入者にとっては、販売者と何度もメッセージをやり取りして購入したい製品を選んだり決済と配送の方法を調整したりする必要がなくなる。その代わりに、販売者のプロフィールに書かれているOpaperのリンク先に飛べば、他のオンラインストアと同様に商品を買い物カゴに追加できる。しかしOpaperは単にソーシャルメディアで商品を注文しやすくするものではない。販売者が「D2Cのエクスペリエンスを自分のものに」できるのだとマッキントッシュ氏はいう。

Opaperを利用することで販売者は購入者のデータを追跡できるため、これを利用してリエンゲージメントやリターゲティングができる。ソーシャルコマースでの販売の多くが予約注文であるため、今後は販売者向けにサプライチェーンや在庫管理のツールも構築していく予定だ。同氏は「私はベーカリーのオーナーだった頃、クーポンやポイントでリターゲットするために購入者ごとの購入金額を知りたいと思っていました。それは(他社の)マーケットプレイスでは容易に知ることができないのです」と述べた。

画像クレジット:Opaper

原文へ

(文:Catherine Shu、翻訳:Kaori Koyama)

身元確認、マネーロンダリング、詐欺の検知ツールを開発する英ThirdFortが22.7億円調達

英国では最近、マネーロンダリング(資金洗浄)が話題だ。同国は圧力に直面している。国内の一等地の不動産のような、巨額の資産に費やされた資金の出所を追跡するために規則を厳格にするだけでなく、ここ数週間のロシアへの制裁を受け、そうした規則を実際に適用すべきだという圧力だ。この国の首都は一部で「ロンドンの洗濯屋」と呼ばれている。

ロンドンのスタートアップThirdfort(サードフォート)が現地時間3月7日、1500万ポンド(約22億7000万円)の資金調達を発表した。同社は、プロフェッショナルサービス企業がより徹底したデューデリジェンスを行い、不審な点があれば警告できるようなプラットフォームを開発している。

今回の資金調達はシリーズAでBreegaがリードし、B2Bフィンテックに特化したElement Venturesの他、ComplyAdvantage、Tessian、Fenergo、R3、Funding Circle、Fidelの創業者らも出資した。

社長のOlly Thornton-Berry(オリー・ソーントン・ベリー)氏によると、同氏とJack Bidgood(ジャック・ビッドグッド)氏がThirdfortのアイデアを思いついたのは、友人がロンドンでアパートを購入する際にフィッシング攻撃を受けて2万5000ポンド(約380万円)を失ったことがきっかけだった。詐欺師が取引に関するデータを入手し、友人が購入手続きに使っていた法律事務所と似たようなドメインを作成し、友人の弁護士になりすまし、リンクを介して金額を送金するよう求めるメールを送ってきた。数週間後、その友人は同じ金額を、今度は本物の弁護士から要求されたため、皆は不正を疑い始めた。その友人がお金を取り戻すことはなかった。

ソーントン・ベリー氏は、この事件が、顧客が取引に入る前に専門サービス企業が要求する情報がいかに少なく、より巧妙な詐欺の試みに対して顧客がいかに保護されていないかを浮き彫りにしたと話す。

これがThirdfortという姿で結実した。同社は、LexisNexis、ComplyAdvantage、Companies Houseなど複数のリソースのビッグデータツールキットを提供する。ツールキットによって、複数のリソースを比べ(顧客が選び)、個人とその資金源に関するさまざまなデータポイントを提供できる。同社は、法律と不動産市場の企業のニーズに対応するツールをまず開発した。

現在の製品は2つの部分がある。まず、法人顧客向けに開発された「リスクエンジン」があり、これはKYC(know your customer)チェックだけでなく、企業がマネーロンダリング防止規制に準拠するためにも使用することができる。法律事務所のDAC Beachcroft、Penningtons Manches Cooper、Mishcon de Reya、不動産業のKnight Frank、Strutt & Parker、Winkworthなど、すでに約700社がこのプラットフォームを利用している。

第2に、そうした企業の消費者顧客向けに作られたアプリがある。このアプリは、オープンバンキングのインフラを利用して作られており、銀行自身の銀行アプリを経由して、企業と顧客の銀行を接続し、安全な方法で取引の決済を行うことができる。このアプリは、これまで約50万回ダウンロードされた。

米国のAlloy(この会社とThirdfortのどちらかが、もう片方の市場に参入すると、AlloyはThirdfortの競争相手となる)と同様、Thirdfortの売り文句はこうだ。しっかりやろうとすれば、本人確認や資金源調査にはもっと時間がかかり、多くは手作業になり、金もかかるというものだ。というのも、残念なことに、企業にとっては多くの場合、できるだけ早く取引を成立させることだけが利益となるからだ。そのため、資金が実際に届いたかどうかを確認する以上の徹底したデリジェンスを実行する意欲が失われてしまう。これが、決められたプロセスをきちんと実行させるための規制が重要となる理由の1つだ。

英国では長年にわたり規制強化が検討され、何度も押し戻されてきたが、世界情勢や世間の監視の目が厳しくなり、時代は変化しつつあるようだ。つまり、企業はより多くの業務をこなさなければならなくなり、Thirdfortのような企業にはチャンスとなる。

以前は、身元(ID)チェックは、大規模なIDデータベースのうちの1つを選択し、そのデータと一致することを確認していたが、ごまかすことは可能だった。また、銀行取引明細書が必要な場合、専門サービス会社にはファックスやPDFで送れば済んだが、偽物はオンラインで簡単に入手することができる(ここにサイトのリンクを貼ることはしない)。

「今、求められているのは、もっと多くのことです」とソーントン・ベリー氏は話す。「銀行から入手した明細で入出金の動きを見たり、顧客に具体的な質問をしたり、贈与された金額が明記されている場合には、それを精査をしたりと、徹底したデューデリジェンスを行う必要があるのです。AML(マネーロンダリング対策)の要求水準が高くなり、まったく新しい種類のワークフローが誕生しつつあります」。

Thirdfortは現在、主に詐欺の発見に焦点を当てているが(顧客の関わる約12件の疑わしい取引を止めることができたとソーントン・バリー氏はいう)、それはまた、AMLディリジェンスとコンプライアンス規制のために開発されたものでもある。もっと広く利用されれば、特に国際的な資金が絡む大きな取引で本領発揮する可能性がある。

「消費者とプロフェッショナルサービス双方にとって、詐欺のリスクとコンプライアンスの必要性は大きな負担となっています」とBreegaのプリンシパルであるMaxence Drummond(マクセンス・ドラモンド)氏はいう。「消費者は取引のたびに認証を受ける必要があり、規制を順守するプロフェッショナルらは顧客の確認とコンプライアンスに貴重な時間を費やしすぎているからです」。

原文へ

(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

ESGgoは企業のESG(環境、社会、ガバナンス)測定・分析を容易にするツールを提供

最近では、いくら倫理的に調達され、地元で生産され、持続的に育てられた魚の肉でも、ESG(環境・社会・ガバナンス)目標を達成せずに、企業の取締役会や年次報告書で振る舞うことはできない。しかし、目標を掲げて宣伝することは簡単だが、その目標に対して企業がどのような成果を上げているかを、実際に測定し、追跡することはずっと難しい。熱い空気と空約束に疲れた企業が、設定された目標を実際に実行することを容易にするために、ESGgoは登場した。同社はこのような状況を変えるためのソフトウェア群を開発し、700万ドル(約8億1000万円)を調達してランニングシューズを履き、本格的な活動を始めたところだ。

「ターゲットとしている顧客は企業です。基本的にはすでに株式を公開している会社や、あるいはこれから公開しようと考えている会社です」と、ESGgoのCEOで共同設立者のOrly Glick(オーリー・グリック)氏は説明する。

製品自体は、データ収集に焦点を当てたものだ。ESGgoは最初に話を聞いた50社から、そのために利用できるツールがないことを学んだからだ。現在、ほとんどのESGトラッキングは、スプレッドシートや共同のデータベースなど、非常に内密なシステムで行われていることがわかった。もちろん、外部の格付け機関は独自のツールを持っているかもしれないが、社内での使用には役に立たない。

「今のところ、ESGは口だけで行動がともわないという見方もある。ESGの重要性を説く経営者は何百人もいるが、いまだにESGのパフォーマンスを明確に理解するための普遍的なものさしがない」と、Bruce Dahlgren(ブルース・ダールグレン)氏は、2022年初めにTechCrunch+の記事の中で書いている。「それがなければ、何が正しくて何が間違っているのか、何が近視眼的な投資で何が有望な投資なのかを判断することは難しい」。

事業全体のESGに与える影響を完全に把握するために、GRIスタンダードやSASBスタンダードでは、組織全体で数百のデータポイントを追跡することを推奨している。データ収集は、だから特に重要であり、さまざまなデータソースから情報を収集し、照合、分析、報告することが必要だ。このデータを収集し、それを企業の目標に照らし合わせて測定することが、ESGgoの活動する領域となる。

「データ収集の人的側面、つまり、部門を越えて人の家をノックするところから情報を求めることを始めなければならないのは、楽しいことではありません。そこで、私たちのツールには、データそのものに加え、ワークフローを管理する機能も搭載しました。最終的に、私たちはすべてのデータの分析を行い、企業のESGの現状と過去のパフォーマンスを比較します。ギャップ分析や業界とのベンチマーキングを行うことで、同業他社や競合他社に対し、どのようにすればより良くなるかを確認できます。特に後者に関しては、AIによる最適化を行います」。

ESGgoは、イスラエルのベンチャー投資会社であるGlilot Capital(グリオット・キャピタル)の主導で、700万ドルの資金を非公開の評価額で調達した。

ESGgoアプリのダッシュボードのスクリーンショット

「Glilotはイスラエルでトップクラスのファンドであるだけでなく、優秀でグローバルなファンドです。運用経験、しかも厳格な運用経験を持つ、本当に剛毅な人々です。女性を登用し、驚異的な価値創造チームを擁しています」と、グリック氏は語る。「また、シリコンバレーから本当に非常に興味深いエンジェル投資家や、気候変動を本当に案じているトップテック企業も参加してくれました」。

現在、イスラエルとカリフォルニアにまたがる10人ほどのチームを率いているグリック氏は、Ido Green(イド・グリーン)氏と共同でこの会社を設立した。グリーン氏は、Google(グーグル)、 Netflix(ネットフリックス)、そして直近ではFacebook(フェイスブック)で、シニアレベルのエンジニアとして経験を積んできた人物だ。

「私たちは、ESGgoの初期のサポーターになれたことに興奮しています。オーリーはESG報告を改善するテクノロジーの使用についてすばらしい実績とビジョンを持っています。持続可能性と社会的責任への関心が、企業や投資家がリスクと機会を評価する方法を変えつつある今は、この破壊的ソリューションにとって絶好の時期です」と、Glilot Capitalの共同設立者兼マネージングパートナーであるKobi Samboursky(コビ・サンボアスキー)氏は述べている。「企業がESG姿勢を改善できるように支援することは、これまで以上に重要であり、オーリーは必要な変化を起こすのに絶好の人材です」。

今回調達したシード資金で、ESGgoはまず、イスラエルを拠点とするエンジニアリングチームから、雇用を加速させ、提供する製品の開発をさらに推進していくという。

画像クレジット:ESGgo

原文へ

(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

イーサリアム互換ブロックチェーン構築クラウドなどを手がけるG.U.テクノロジーズがプレシリーズAで2.6億円の追加調達

イーサリアム(Ethereum)互換ブロックチェーン構築クラウドサービスなどを手がけるG.U.テクノロジーズは3月8日、プレシリーズAとして第三者割当増資による2億6000万円の追加調達を実施し、総額3億6100万円の資金調達を完了したと発表した。

引受先は、Coral Capitalと自然キャピタル。調達した資金は、NFTなどWeb3種の領域、エンタープライズ・ブロックチェーン領域、ステープルコインなどフィンテック領域におけるソリューション提供へ向けた開発強化にあてる。

G.U.テクノロジーズは、金融やフィンテックのバックグラウンドを持つ稲葉大明氏と、ウェブブラウザーLunascape創始者の近藤秀和氏が、親会社G.U.Labsで進めていたブロックチェーン研究の成果を元に、2020年10月にスピンアウトする形で設立したスタートアップ。

同社は、独自のイーサリアム互換Layer2ブロックチェーンを構築できるソリューション「G.U.Blockchain Cloud」、DApps対応のイーサリアム用ウォレット「Lunascape Wallet Extension」を提供。Lunascape Wallet Extensionは、Google Chrome拡張機能として利用する。また、ブロックチェーン関連の情報サイト「G.U.net」も運営している。

DApps対応のイーサリアム用ウォレット「Lunascape Wallet Extension」

DApps対応のイーサリアム用ウォレット「Lunascape Wallet Extension」

今後は、エンタープライズ向けのイーサリアム互換Layer2コンソーシアム・ブロックチェーンの運営をはじめ、Web3時代を見据えたステーブルコイン、DeFi、NFTを含む様々な実証実験を提携企業と進める。また、顧客のブロックチェーンビジネスを支援するためのインフラやツール提供、コンサルティングや開発支援を強化していく予定。

レストランなどの食品調理業向け在庫管理マーケットプレイスを提供するブラジルのCayena

ラテンアメリカでは、商店の品揃えは楽な仕事ではない。発注は今でも、紙の伝票や電話で行われることが多く、お店の主人が卸屋まで車を運転して品物を手に入れることもある。

Cayenaを創業したGabriel Sendacz(ガブリエル・センダツ)氏とPedro Carvalho(ペドロ・カルヴァーリョ)氏、そしてRaymond Shayo(レイモンド・シャヨ)氏は、材料の確保にテクノロジーを利用すれば、彼らの母国であるブラジルやその他の地域で、レストランやバー、ベーカリー、ホテル、そしてダークキッチンなどの食品調理調製業がもっと楽になると考えた。

「ラテンアメリカのB2Bは巨大な市場ですが、その需要と供給は細分化しています。私たちの顧客も、約90%が中小の家族経営の独立店です。供給の側も、何千もの流通業者が、それぞれいろいろな品物を扱っていますが、マーケットシェアが1%に満たないところばかりです」とシャヨ氏はいう。

対照的に米国には、SyscoやU.S. Foods、Gordon Food Serviceのような大きなフードサービス企業がそれぞれおよそ10%のマーケットシェアを握り、食品から洗剤に至るまでのあらゆるもののワンストップショップを提供している。

Cayenaの共同創業者。左からペドロ・カルヴァーリョ氏、ガブリエル・センダツ氏、レイモンド・シャヨ氏(画像クレジット:Cayena)

そこで、シャヨ氏によれば、いくつかの問題が生じる。まず、ベンダー20社ぐらいで同じ品目の価格が最大で40〜50%も違う。クレジットカードがレストランに払うために30日かかることもあるが、一方レストランは自分の原料等の注文に前金を支払うため、運転資本の問題が生じ、特にレストランは材料費が最大のコストなので資金繰りが苦しくなる。

つまり、ラテンアメリカではレストランが慢性的に経営難を抱えることになる。そこで同社はB2Bのマーケットプレイスを構築し、年商1000億ドル(約11兆5400億円)といわれるラテンアメリカの食品卸業界を狙った。それによりユーザーは原材料などを一度に複数のサプライヤーからまとめて仕入れることができ、翌日に配達してもらえる。また、後払い販売(BNPL)といった新たな金融サービスを提供することもできる。

ユーザーは必要な品目の卸価格を複数の卸店にわたって比較でき、その品目の現在の相場を知ることができる。Cayenaのアルゴリズムは、サプライヤーの在庫品目と価格、ユーザーの予算を比較対照して、ベストマッチをユーザーにアナウンスする。配達には直送方式を利用して、注文が成立したら、そのオーダーを顧客に配達するようサプライヤーに通知が届く。

このマーケットプレイスを立ち上げた2020年以降は、顧客数が1年で10倍に増え、レストランの原材料の調達が困難になるにともない1回の購入単位額は4倍になり、Cayenaでの顧客の平均購入回数は1カ月で5回になった。

この急速な成長で資金が必要になった同社は、2021年後期にPicus Capitalがリードする350万ドル(約4億円)のラウンドを調達し、それが、その前にCanaryのリードで調達した55万ドル(約6300万円)に追加されることになった。

事業は順調で9月のシードラウンドのすぐ後にCayenaはそれまでの倍に成長し、2カ月で倍増というペースが続いたため、年商1億レアル(約22億6000万円)のマイルストーンに達した。同社の現在の商圏は、サンパウロ州の50都市となる。

こうした加速度的な成長が投資家の関心を集め、同社はVine Venturesが主導し、MSA Capital、Picus Capital、Canaan Partners、Clocktower Ventures、FJ Labs、Femsa Ventures、Gilgamesh、Astella、EndeavorおよびGraoVCの参加も得て、1750万ドル(約22億2000万円)のシリーズA投資を先取りすることになった。これにより、Cayenaは総額2100万ドル(約24億2000万円)強の資金を調達したことになる。

「今のところ極めてホットな市場ですが、世界中の投資家が成長企業を探している現状ではそれは良いことです。数年前、私たちは比較の対象にもなりませんでしたが、今ではどこが新しいアプローチと戦略で成長しているのか、誰の目にも明らかです」とシャヨ氏はいう。

Cayenaのビジネスモデルでは、倉庫やトラックや流通への投資はなくテクノロジーのみであるため、資金の多くが雇用に使われる。シャヨ氏の予想では年内に社員数は倍増して60名になるという。また、プロダクトとテクノロジーにもフォーカスしており、新たな金融プロダクトを作り、サプライヤーの地理的範囲も広げたいとのこと。

また、創業者たちはラテンアメリカ全体が商機だと捉えており、トラックなど1台も所有することなく次のステップでまず1〜3年後にブラジルで最大のフードサービスサプライヤーに、その次のステップでラテンアメリカ全体への拡張を考えているという。

画像クレジット:Cayena

原文へ

(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

YCが支援するBlocknomは「東南アジアのCoinbase Earn」を目指す

Y Combinator(Yコンビネーター)の2022年冬バッチに参加したBlocknom(ブロックノム)は「東南アジアのCoinbase Earn(コインベース・アーン)」になることを志す暗号資産稼ぎプラットフォームだ。同社は米国時間3月4日、Y Combinator、Number Capital(ナンバー・キャピタル)、Magic Fund(マジック・ファンド)からプレシード資金として50万ドル(約5800万円)を調達したと発表した。

Blocknomの共同設立者であるFransiskus Raymond(フランシスカス・レイモンド)氏とGhuniyu Fattah Rozaq(グニュ・ファタ・ロザク)氏によると、このアプリはユーザーに、年率最大13%の安定した高利回りの利息を得るための安全な方法を提供するという。同アプリは暗号資産インフラ企業のFireblocks(ファイアブロックス)と提携しており、ユーザーはいつでも手数料なしでお金を引き出すことができる。

2人の創業者は、新型コロナウイルス感染流行が始まった頃、2020年にオープンソースプロジェクトに取り組んでいるときに出会ったという。「ウイルス感染が流行している間に、私たちはインドネシアで暗号資産市場が活況であることに気づきました。その一方で、私たち2人はすでに暗号資産投資家でした」と、レイモンド氏はTechCrunchに語った。

「しかし、ユーザーと話してみると、誰もが取引でうまくいっているわけではないことがわかりました」。2人はDeFi(分散型金融)が安定的で高利回りの暗号資産による利得方法であることに気づいたものの、インドネシアには競合する製品がなかったため、自分たちで作ることにした。同社がDeFiで提携しているパートナーは、Compound(コンパウンド)、AAVE(アーベ)、Terra(テラ)、Cake(ケイク)などだ。

Blocknomにサインアップすると、銀行口座を持つユーザーはStablecoins(ステーブルコイン)を預金することができる。Stablecoinsは従来の銀行預金と最も同等であるため、新しい暗号資産ユーザーがアクセスしやすいように、同社の創業者たちが選んだ。

レイモンド氏によると、Blocknomが投資アプリと異なるのは、Stablecoinを保有して長期的に保持することを推奨している点であるという。

画像クレジット:DBenitostock / Getty Images

原文へ

(文:Catherine Shu、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

名刺・ウェブサイトから採用時のオンボーディングまで、様々なデザインの事例を集めたCocoda運営のalmaが1.3億円調達

デザインプロセスとデザインチームが集まるプラットフォーム「Cocoda」(ココダ)を運営するalma(アルマ)は3月7日、第三者割当増資により総額1億3000万円の資金調達を実施したことを発表した。引受先は坂田一倫氏(Mentally CEO)、関口裕氏(SmartHR コミュニケーションディレクター)、山下あか理氏(フリーランスデザイナー)といったエンジェル投資家。調達した資金は、プロダクト強化とマーケティング強化に向けた組織拡大にあてる。

Cocodaは、普段は見えにくい「デザインの裏側」をデザインケース(デザインの事例)として明らかにするプラットフォーム。2022年2月時点でのユーザー数は約3万4000人。掲載事例はウェブサイトや名刺のデザインをはじめ、採用時のオンボーディングデザイン、社内で運用するデザインシステムなど、見た目のデザインに限らない事例まで集まっているという。

デザインチームやプロダクトチームが利用者として参加しており、実際の設計過程やデザインの裏側をデザインケースとしてまとめ発信しているため、普段の業務における試行錯誤や制作プロセス、組織体制といった事例も知ることができるとしている。

また、チームのデザイン活動を支える新たなプロダクトも実験しているそうだ。そのうちの1つ「Cocoda Board」は、ユーザー情報をまとめ、ユーザーからの声や要望を集約し整理と可視化が行える管理するツールとなっている。

プロフィールサイト「lit.link」やコミュニティSNS「WeClip」を運営するTieUpsが1億円のシード調達

プロフィールサイト「lit.link」やコミュニティSNS「WeClip」を運営するTieUpsが1億円のシード調達プロフィールサイト「lit.link」(リットリンク)、コミュニティSNS「WeClip」(ウィークリップ)の開発・運営をするTieUpsは3月7日、シードラウンドとして、J-KISS型新株予約権の発行による資金調達を実施したと発表した。引受先は、Headline Asia、ANOBAKA、吉川徹氏(マイベスト代表取締役)。デットファイナンスを合わせ、シードラウンドでの資金調達は総額1億円となった。調達した資金は、lit.linkおよびWeClipの機能拡充、採用と社内体制の強化にあてる予定。

TieUpsは2020年4月に設立のスタートアップ。東日本大震災をきっかけに、SNSが日本のコミュニケーションインフラになるなど、ピンチの時こそ飛躍するサービスが誕生しやすい時だと認識していたので、世論の心理変化によるゲームチェンジが起きると確信し会社を設立したという。

2021年1月リリースのlit.linkは、現在ユーザー数70万人・月間アクセス数4500万PV超に到達。2021年10月リリースのWeClipは現在1000個以上のコミュニティが存在。2022年内にiOSアプリとビジネス機能をリリース予定としている。

「秀才1000人の信頼ではなく学生2000万人の納得が必要」Mosは急進的なフィンテックスタートアップを目指す

大学に進学する金銭的余裕がなかった人権活動家でMos(モス)の創業者であるAmira Yahyaoui(アミラ・ヤヒアウイ)氏は、学生と奨学金との橋渡しをするプラットフォームを立ち上げたとき、取り組んでいたイノベーションにひと区切りがついたと感じた。2017年の創業以来、Mosはコミュニティ内の40万人以上の学生に対し、1600億ドル(約18兆5000億円)以上になる学資援助プールへの自由なアクセスを提供している。

現在、ヤヒアウイ氏は、自身が直面したもう1つの金融の障壁を壊すことを目指し、Mosをチャレンジャーバンクへと拡大している。これは、Mosが、学生の大学受験や進学を支援するEdTech事業から、同じユーザー層の生活における複雑な要望をサポートするフィンテック事業へと進化したものだ。

「当社は、自分たちが行っていることとその理由について、かなり急進的に考えている」と同氏はいう。「エリート主義でもなく、ごく限られた人たちのためにやっているわけでもない。米国に根ざす銀行になりたいと真剣に考えている」とし、まずは学生を対象に「それを目標としている」と語る。

この目標は多くの投資家の共感を呼び、Mosの最新の資金調達ラウンドへの参加が競われた。今回のシリーズBでは、評価額が2020年5月時点の5000万ドル(約57億7000万円)から4億ドル(約461億円)に引き上げられ、4000万ドル(約46億1000万円)を調達した。ヤヒアウイ氏によると、このラウンドは、Tiger Global(タイガー・グローバル)の主導のもと、Sequoia(セコイア)、Lux Capital(ラックス・キャピタル)、Emerson Collective(エマーソン・コレクティブ)、Plural VC(プルーラルVC)などが24時間以内に集まり、複数の条件規定書を断ることもあったし、プレゼンのスライドも必要なかったという。

Mosの最初のデビットカードには、当座貸越料、遅延損害金、ネットワーク内ATM手数料が不要などいくつかの主な特徴がある。また、Mosの口座を開設するために最低残高も必要ない。

画像クレジット:Mos

「学生はお金をあまり持っていないため、当座貸越や詐欺など、あらゆる不利な条件に直面している」と同氏はいう。確かに、他のフィンテック企業も、学生の多くが卒業後も銀行を変えないことに着目し、脆弱ではあるものの定着性のある顧客層に同様のサービスを提供する機会があると考えているだろう。Stride Funding(ストライド・ファウンディング)LeverEdge(レバーエッジ)は学生ローン業界に参入しており、Thrive Cash(スライブ・キャッシュ)は合格通知に基づいて資金を提供し、学生向けの資金援助ツールであるFrank(フランク)はJPMorgan Chase(JPモルガン・チェース)に買収されたばかりだ。

「JPモルガンをはじめとするすべての銀行は、自分たちの未来が過去とは異なることを認識しているのだろう。銀行は学生との関係を強めようとしているが、学生は既存の銀行経由では奨学金を利用しない」と同氏は述べる。一方、Mosは、2021年までに15億ドル(約1730億円)以上の奨学金を学生に提供してきた。

Mosはこれまで、奨学金を通じて学生の購買力を高めることで、学生との信頼関係を築いてきたが、この関係が他のフィンテック企業との競争に有利に働くとヤヒアウイ氏は考えている。つまり、自分を信頼し、認めてくれる人たちのユーザー基盤を構築し、その人たちに響く言葉で商品やサービスを紹介するというものだ。

「当社は大人になったばかりの顧客にサービスを提供しているが、将来的には顧客が大学を卒業してアパートを借り、家賃を払うようになるため、当社も顧客と一緒に成長していくのだ」と付け加える。

Mosの創業者であるアミラ・ヤヒアウイ氏(写真提供者:Cayce Clifford)

今回のラウンドに参加したラックス・キャピタルのDeena Shakir(ディーナ・シャキール)氏は、銀行事業は常にMosの「ミッシングピース」だったと述べる。もともとMosは、情報公開の他の側面を担ったり、学生に特化した他の金融商品のプラットフォームになったりと、さまざまな方法で拡大できると考えていたという。今では、この最初の数年間に築いたネットワーク効果により、当然のように次のステップに進んでいると同氏は考えている。

「Mosは、金融アクセスや金融包摂の側面から関わるのではなく、学生にとってのメインバンク、クレジットカード、そしてホームとなるユニークな機会を得たと認識している」と同氏はいう。

当初のミッションを超え、このスタートアップの新しい目標は、確かな収益をもたらす可能性がある。Mosはもともと、奨学金へのアクセス料で収益を上げていた。現在、Mosは仲介手数料で収益を上げているが、その知識は口座を開設すれば誰でも無料で得られる。ヤヒアウイ氏は、Mosが以前のビジネスモデルで「数百万ドル(数億円)」の年間収益を得ていたと述べたが、現在の収益については語らなかった。しかし、チャレンジャーバンク路線を追求したことで、有効な市場が爆発的に拡大したといい「当社の時価総額は、以前の10倍になっている」と語る。

将来的にMosは、学生がお金を支払ってアクセスできる商品セットを作り、アドバイザーとのより実践的な相談や特定の銀行機能などを提供する予定だ。

最近のPayPal(ペイパル)の業績からも明らかなように、すべてのフィンテック企業にとって問題となるのは、長期的なユーザーの質だ。Mosは、デビットカード事業を開始してから数カ月後の11月頃に、成長率が大幅に上昇した。競争の激しいフィンテック業界であるため具体的な成長指標については明らかにしていないが、カードの開始後、最初の四半期に10万人以上の学生がMosに口座を開設したことを紹介する。同氏は、この成長によりMosが米国で10番目に大きなネオバンクになったと推定している。

その学生たちが固定客となるのか、それとも大学に通っている間の一時的な顧客なのかはまだわからない。景品や紹介ボーナスには魅力を感じるが、それは同社にとって長期的な利益につながるのだろうか。

Mosの第一期生となった大学生のJulieta Silva(ジュリエッタ・シルバ)さんは、テキサス州の小さな町で育った。彼女が通う500人規模の学校には、大学進学のためのカウンセラーが1人しかいなかったため、進学に関する相談は、ほとんどMosからTikTok(ティックトック)を介して行っていた(実際、Mosのソーシャルメディアプラットフォームのアカウントには、5万2000人以上のフォロワーがいる)。最初にこのプラットフォームに参加したのは2020年8月で、奨学金を申請するためだったが、このプラットフォームは「複雑な銀行システムの簡易版」を目指して成長してきた。現在、ノースイースタン大学の1年生である彼女は、今でもBank of America(バンク・オブ・アメリカ)のカードを使っているが、日々の生活ではMosのカードに頼っている。友達に登録してもらえば、紹介料を得ることもできるという。

「学内で使われているのはまだあまり目にしないが、私がカードを使うたびに[カードについて]聞かれる。だから、ちょっとした特典を全部教えてあげるが、実際に皆の関心を集めるのはMosのファイナンシャルアドバイザーと、学費のための資金援助だ」と彼女は話す。

画像クレジット:Mos

一方、創業者のヤヒアウイ氏は、NFT(非代替性トークン)やしゃれたロゴ(と重さ!)を施したクレジットカードなど、話題性に気を使ってきた。しかし、ベンチャーキャピタルの支援を得て、大衆向けの事業に乗り出すことにした。

「1000人の秀才の信頼が得られればよいと思っていた」と同氏は述べ、そして続けた。「しかし実際には、2000万人の学生を納得させる必要がある」。

画像クレジット:BreakingTheWalls / Getty Images

原文へ

(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Dragonfly)

ビールの醸造かすを生分解性フィルムに変えるMi Terroが1.7億円調達

あるやり手の起業家が、ビール醸造大手AB Inbev(ABインベブ)と家庭用品の大手Unilever(ユニリーバ)が主催する100以上のアクセラレータープログラムに参加し、あるパターンを発見した。醸造所には大量の醸造かすがあり、家庭用消費財にはプラスチック問題がある。この2つの問題の架け橋となるべく登場したのが、農業廃棄物をタンパク質に加工し、プラスチック代替品や飼料などとして利用できるようにするMi Terro(ミテロ)だ。同社は、生産規模を拡大するために150万ドル(約1億7000万円)を調達した。

Mi Terroの創業者Robert Luo(ロバート・ルオ)氏は「洗濯洗剤ポッドTide Podsを思い浮かべてみてください」と話す。「私たちの製品は、Tide Podsで使われているポリビニルアルコールに似ています。唯一Tide Podsと違うのは、マイクロプラスチックが含まれていないことです。私たちの製品は水溶性で、室温で水に分解することができます。また、生分解性を有してもいます。当社のデータでは、自然分解には1年ほどかかるとされています。工業用堆肥化施設では、180日以内に分解できます」と説明する。

ルオ氏は2018年に、中国の叔父の酪農場を訪れたことがきっかけで、会社を立ち上げた。そこでは大量の牛乳が廃棄されていた。そして、腐った牛乳をただ捨てるのではなく、何か価値のあるものを作れないか、と興味を持った。最初に開発したのは、牛乳の搾りかすを使った繊維製品だ。この繊維は10万ドル(約1100万円)分ほど売れ、今でも日本に顧客がいる。しかし、この分野ではB2Cモデルは非常に難しいことが分かった。そこで、アクセラレータに参加し、同様のプロセスで産業用途があることを発見した。

「中国のBudweiser(バドワイザー)とつながりができ、価値の低い醸造かすを大量に抱えていることを知りました。彼らは、メタンや地球温暖化の間接的な原因となる牛の飼料として処理するよりも、もっと良い利用方法を考案したいと思っていました」とルオ氏は説明する。「そこで、私たちが以前開発した方法を用いることで、農業廃棄物を堆肥化できる包装材に変える新しい解決策を導き出すことができました。そして、これが当社が2020年からやっていることです」。

AstanorがMi Terroの150万ドルラウンドのリードインベスターで、同社の価値を1000万ドル(約11億円)と評価した。Astanorは少し前に食品と農業技術を専門者とするファンドを立ち上げ自律走行トラクターマイクロプラスチックの除去植物由来の食品気候リスクの脅威分析、そして今週初めには温室用のAI技術など、さまざまな企業への投資でこの分野において急速にその名を知られるようになってきている。

Mi Terroの従業員は現在5人で、この中には中国にいる製品専門家も含まれる。同社は中国に製造拠点を設け、また米国にオフィスを設置する計画だ。今回の投資は主に生産規模の拡大に使われる予定で、ラボでのやり方に若干の変更を加えることになる。

プラスチックに代わる生分解性フィルムに入っているMi Terroのプロトタイプの洗剤ポッド(画像クレジット:Mi Terro)

「生産規模を拡大するためには、加工の方法が変わり、設備も変わってきます。そしてもう1つ、ビール醸造所から当社の施設まで醸造かすを配送するための物流コストも考慮しなければなりません」とルオ氏はいう。「そのために最適な場所を探す必要があり、生産拡大に向けてはその点も考慮しなければなりません。輸送費がかさみ過ぎないように、慎重にならざるを得ないのです」。

Mi Terroのプロセスには2つのステップがある。農業廃棄物からタンパク質、繊維、デンプンなどのポリマーを抽出し、ポリマーを分離した後、モノマーを結合して他の製造工程で使用できるポリマーにするというグラフト化で改良を行う。このようにしてできた素材は、パスタを作るのと同じように、液体のような素材をスリットから押し出し、形成できるため、現在プラスチックが使われている多くの用途に使用することができる。ストローや容器、箱などを作ることが可能だ。同社が最初に作る製品は、ビールのラベルやTide Podsなどのパッケージのようなフレキシブルフィルムだ。

「現在、顧客向けに2つのソリューションを開発しています。1つは水溶性で、水溶性が必要な用途に適しています。もう1つは耐水性です」とルオ氏は話した。

画像クレジット:Mi Terro

原文へ

(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Nariko Mizoguchi

セルフ型トラックレンタルマーケットプレイスFetchが事業拡大で約4億円調達

昔、筆者はトラックを所有していた。そのトラックが大好きだった。しかし、実際にトラックとして使うことはさほどなく、結局、そのトラックを売って、もっと日常的なニーズに合ったものを購入した。より「実用的」なものだ。今でもあのトラックが恋しい。

現在、年に数回、トラックをトラックとして使う必要があり、その場合、友達を説得して34回目の借用をさせてもらうか、大型ハードウェア店でレンタルを試みるしかない。店に着くまでに使えるトラックがあることを願い、列に並び、書類に記入し、保険証を忘れたために車まで走っていき、また列に並び直す。

数年前にTechCrunchが初めて紹介したFetch(フェッチ)は、このプロセスを少し簡単にする。近くにあるトラック(またはバン!)を探し、アプリで予約し、歩いて行って携帯電話からロックを解除すれば、すぐに出発することができる。今週、Fetchはチームと事業を拡大するために350万ドル(約4億円)を調達したことを発表した。Fetchを実現するために、とも言える(編集部注:Fetchは行って取ってくる、の意)。

Fetchは今のところ、いくつかの都市で事業を展開しているが、そのリストは急速に増え始めている。最初に地元アトランタで開始し、最近ではボルチモア、フィラデルフィア、ダラス、ワシントンDCに事業を拡大している。Fetchの共同創業者Adam Steinberg(アダム・スタインバーグ)氏によると、2022年末までに「さらに12都市」に進出する予定だという。

同社のビジネスモデルも、前回取り上げたときからかなり拡大している。以前は、Fetchで利用できるトラックはすべてFetchが所有していたが、最近は、空きトラックを持つ人なら誰でも貸し出せるマーケットプレイスとなっている(車両を抱える企業でも、空き車両を持つ個人でも、週7日レンタルに貸し出せれば利用できる)。

登録を済ませると、トラックの所有者は、承認された借り手が車両のロックを解除し、トラックを使えるようにするためにFetchのハードウェアを取り付ける。借り手は自分で保険に加入する必要があるが、Fetchはその保険契約を補うための二次保険も提供している。

レンタル料金は、サイズや運転距離など求めるものによって若干異なり、時間や日単位、あるいは必要な期間に応じて借りることもできる。例えば、アトランタで全長6フィート(182センチ)のピックアップトラックは、現在サイトでは1時間19ドル(約2200円)で、あるいは走行距離50マイル(80キロメートル)までなら1日70ドル(約8000円)で提供されている。

他にオンデマンドレンタカーサービスがある中で、なぜこのようなサービスを立ち上げたのだろう。理由はターゲット層だ。重量1000ポンド(約453キロ)の木材を動かしたり、古い机をオフィスから運び出したりしたいときに、休暇用のレンタカーアプリに飛びつくのは、ちょっと変な感じがする。「私たちの理想の顧客は、中小企業の経営者です」とスタインバーグ氏はいう。「ケータリング業者やイベントプランナーなど、定期的にトラックを必要とする中小企業です」。

スタインバーグ氏によると、同社は「レンタル1台あたりの収益性も達成」している。そして、現在「数百台のトラックをマーケットプレイスで稼働させていて」、その約半数がアトランタ地域にあるとのことだ。また、Home Depot(ホームデポ)とも提携し、一部の地域で同社のレンタル業務を受託している。

次の動きは?チームの拡大だ。同社の従業員は現在12人で、今後3カ月ほどで倍増させる計画だ。

今回の資金調達ラウンドはNextView Venturesがリードし、Knoll Ventures、Zeno Ventures、Nassau Street Ventures、その他多くのエンジェル投資家が参加した。

画像クレジット:Fetch

原文へ

(文:Greg Kumparak、翻訳:Nariko Mizoguchi

音声の文字起こし、要約、モデレートを行うオールインワンAPIのAssemblyAIが32.1億円を調達

ここ数年、音声や動画のコンテンツやインターフェースが爆発的に増えているのは明らかだが、それらのメディアを扱う方法はまだ発展途上だ。そんな中、AssemblyAIが2800万ドル(約32億1000万円)の新たな資金調達により、音声解析のための主要なソリューションとなることを目指す。同社の超シンプルなAPIを利用することで、一度に数千の音声ストリームの文字起こし、要約、その他何が起きているのかを把握することができる。

電話や会議がビデオ通話になり、ソーシャルメディアの投稿が10秒のクリップ動画になり、チャットボットが発話し、音声を理解するようになるなど、マルチメディアは信じられないほど短期間に多くのものの標準となった。数え切れないほどの新しいアプリケーションが登場してきているが、他の新しい成長産業と同様に、アプリケーションを適切に実行したり、アプリケーションの上に新しいものを構築したりするためには、アプリケーションが生成するデータを操作できる必要がある。

問題は、音声はもともと簡単に扱えるものではないことだ。音声ストリームの「検索」はどのように行えば良いだろう。波形を見たり、通して聴いたりすることもできるが、それよりもまずは文字に書き起こして、その結果得られたテキストを検索する方が良いだろう。そこでAssemblyAIの出番となる。音声文字起こしサービスは数多くあるものの、自社のアプリや業務プロセスには簡単に組み込めない場合が多い。

AssemblyAIのCEOで共同創業者のDylan Fox(ディラン・フォックス)氏は「音声コンテンツのモデレーションや検索、要約を行う場合には、データをより柔軟で、その上に機能やビジネスプロセスを構築できる形式に変換する必要があります」と語る。「そこで、Twilio(トゥイリオ)やStripe(ストライプ)のように、たとえハッカソンの場でも使えるような、誰でも使える超高精度の音声分析APIを作ろうということになったのです。こうした機能を組み上げるためには多くの支援が必要ですが、その際にあまりにも多くのサービスプロバイダーを組合せたくはありません」。

AssemblyAIは、極めてシンプルに(1、2行のコードで)呼び出せる数種類のAPIを提供しているが、そのAPIを利用することで「このポッドキャスト中に禁止されている内容がないかチェックする」「この会話の話者を特定する」「この会議を100文字以内に要約する」などのタスクを実行することができる。

コードして、コールして完了(画像クレジット:AssemblyAI)

だが、私もそうだったが、この仕事が一歩踏み込めばどれだけ複雑な作業になるかと考えると、果たして小さな会社がこれだけ多くのことを簡単にこなせる道具を作れるのかどうかと疑問に思うだろう。フォックス氏は、これが困難な課題であることを認めつつも「技術は短期間で大きく進歩したのです」と語った。

「特にここ数年で、こうしたモデルの精度が急速に向上しています。要約、勘定識別……どれも本当に良くなりました。そして、私たちは実際に最先端の技術を推進しています。私たちは大規模なディープラーニング研究を行っている数少ないスタートアップの1つですので、私たちのモデルは、世間一般のものよりも優れているのです。研究開発やトレーニングのためのGPUや計算資源には、今後数カ月間だけでも100万ドル(約1億1500万円)以上を投入します」。

簡単にはデモンストレーションできないので、直感的に理解するのは難しいかもしれないが、画像生成(「このXXは存在しません」の類)やコンピュータービジョン(顔認証、防犯カメラ)と同様に、言語モデルも進歩してきている。もちろん、GPT-3はその身近な例だが、フォックス氏は、書き言葉を理解し生成することと、会話やくだけた話し方を分析することは、実質的にまったく別の研究領域であると指摘する。よって機械学習技術の進歩(トランスフォーマーや新しい効率的なトレーニングのフレームワーク)は両者に貢献してきたが、多くの意味ではそれらはリンゴとオレンジの関係(同じ果物というだけで、それ以外の属性は異なっている)のようなものだ。

いずれにせよ、数秒から1時間程度の音声でも、APIを呼び出すだけで効果的なモデレーションや要約処理を行うことができるようになった。これは、ショートビデオのような機能を開発したり統合したりする際などにとても有効だ。たとえば1時間に10万件ものクリップがアップロードされることを想定した場合、それらがポルノや詐欺、パクリでないことを確認する最初のスクリーニングはどうすれば良いだろう?また、そのスクリーニングプロセスを構築するためにローンチがどれくらい遅れるだろう?

フォックス氏は、このような立場にある企業が、ちょうど決済プロセスの追加に直面したときと同様に、簡単で効果的な方法を選ぶことができるようになることを希望している。つまり機能をゼロから自分で構築することもできるし、15分で「Stripe」を追加することもできるということだ。これは、根本的に望ましいものだというだけでなく、Microsoft(マイクロソフト)やAmazon(アマゾン)などの大手プロバイダーが提供する、複雑でマルチサービスなパッケージの中の音声分析製品とは明らかに一線を画している。

インタビューに答えるフォックス氏(画像クレジット:Jens Panduro)

同社はすでに数百の有料顧客を数え、2021年1年間で売上を3倍に伸ばし、現在は1日100万件のオーディオストリームを処理している。フォックス氏はいう「100%ライブストリーム処理です。大きな市場と大きなニーズがあり、お客様からの支払いもあります」とフォックス氏はいう。

2800万ドル(約32億1000万円)のラウンドAは、Accelが主導し、Y Combinator、John(ジョン)とPatrick(パトリック・コリソン)氏 (Stripe)、Nat Friedman(ナット・フリードマン)氏 (GitHub)、そしてDaniel Gross(ダニエル・グロス)氏(Pioneer)が参加している。全額を、採用、研究開発インフラ、製品パイプラインの構築などに振り向ける計画だ。フォックス氏が指摘したように、同社は今後数カ月の間にGPUとサーバーに100万ドル(約1億1500万円)を投入する(大量のNVIDIA A100が、信じられないほど計算集約型の研究とトレーニングのプロセスを支えることになる)。もしそうしなければ、クラウドサービスにお金を払い続けることになるのだから、間借り生活から早めに脱却したほうが良いのだ。

採用に関しては、音声解析関連技術に力を入れているGoogleやFacebookと直接競合するため、苦労するのではないかと質問してみた。しかし、フォックス氏は楽観的だった。そうした大企業の文化が遅く窮屈なものであると感じているからだ。

「本当に優秀なAI研究者やエンジニアには、最先端で仕事をしたいという願望が間違いなくあると思います。そして同時に実用化の最先端にも関わりたいという願望です」と彼はいう。「革新的なことを思いついたら、数週間後には製品化できる…そんなことができるのはスタートアップ企業だけです」。

画像クレジット:AssemblyAI

原文へ

(文:Devin Coldewey、翻訳:sako)

インフラの保守を助けるGeckoのロボットとソフトウェア

Gecko Robotics(ゲッコー・ロボティクス)のミッションステートメントは「今日の重要インフラを守り、明日のインフラをカタチにする」ことだ。スタートアップの本拠地ピッツバーグでは、1月下旬にバイデン大統領がインフラについて話をするために訪れた日に、ファーン・ホロー橋が5台のクルマの重さで崩壊した。

Geckoが提供するロボットとソフトウェアソリューションは、ひび割れやその他の問題がもっと大きな問題になる前に発見できるように設計されている。具体的には、石油・ガス、電力、製造、防衛などの産業構造物を検査するための技術だ。これにはパイプラインから船舶、タンクに至るまで、あらゆるものが含まれている。

今週同社は、技術開発と展開を加速させるために、7300万ドル(約83億8000万円)の資金調達を発表した。このラウンドはXN LPが主導し、Founders Fund、Drive Capital、Snowpoint Ventures、Joe Lonsdale、Mark Cuban、Gokul Rajaramが参加している。2019年に行われた4000万ドル(約46億円)のラウンドに加えて、今回の調達で同社の総資金調達額は約1億2200万ドル(約140億円)に達した。

XNのパートナーであるTim Brown(ティム・ブラウン)氏はリリースの中で「Geckoのロボット、ソフトウェア、AIのユニークな組み合わせは、重要インフラの検査、保護、効率的なメンテナンス能力を根本的に改善します」と語る。「Geckoと提携することで、その強力なテクノロジーを新しい地域や業界に拡大し、顧客のみなさまが物理データを収集して解析し、資産の安全性とパフォーマンスを最適化できるよう支援できるお手伝いができることをうれしく思っています」。

この技術は、オートメーションの中でも特にダーティで危険な部類として知られている。極めて過酷で困難な環境下で、構造物の規模に対応できるように設計されているのだ。人間の目では確認できないような微細な損傷も、ロボットが発見し、Geckoのソフトウェアが潜在的な問題カ所を特定する手助けをする。

画像クレジット:Gecko Robotics

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:sako)

2024年のエアタクシーサービス開始に向けVolocopterが195億円調達

南ドイツ(ブルッフザール)で創業したスタートアップVolocopter(ボロコプター)は、電動の垂直離着陸機(VTOL)の開発と、この機体を都市部でタクシー形式で運用するビジネスモデルを推し進めてきた。商業展開に近づく中、同社はまたしても大型の資金調達を行った。1億7000万ドル(約195億5000万円)を調達し、この資金で同社初のエアタクシーサービスを開始し、おそらくシンガポール、ローマ、パリなどの都市での提供となると発表した。

広報担当者によると、サービス開始時期は、取得する認証の種類と認証をいつ取得できるか次第だ。2023年後半から暮れの間にすべてが完了すれば、最初の都市での商業開始は2024年になる可能性が高い。VolocopterのCEO、Florian Reuter(フロリアン・ロイター)氏は2021年3月に「サービス開始は2年後(つまり2023年)」と話していた。

「当社の目標は、2024年のパリオリンピックまでに商業運航を開始することです」と広報担当者は述べた。

調達した資金はシリーズEの一部で、Volocopterはこれが最初のクロージングだと表現している。プレマネーのバリュエーションは17億ドル(約1955億円)、ポストマネーでは18億7000万ドル(約2150億円5000万円)になるという。同社は筆者に、シリーズEの最終的な調達目標は3億〜5億ユーロ(381億〜635億円)だと認めた。「デューデリジェンス段階にある他の投資家もいますが、次のサイニングラウンドの時期も額もまだわかりません」と広報担当者は述べた。

今回の最初のトランシェは韓国からの新たな投資家であるWP Investmentがリードし、戦略的投資家のHoneywell(こちらも新規投資家)、既存投資家からはAtlantia、Whysol、btov Partnersなどが参加した。現在までにVolocopterは総額5億7900万ドル(約666億円)を調達していて、他の投資家にはGeely、Mercedes-Benz Group、Intel Capital、BlackRockが含まれる。

Volocopterは2017年、Intel(インテル)などの大企業の支援を受け、ドバイで初の自律型の空飛ぶ車のテストを実施し、自動運転車の分野で大きな注目を集めた(IntelもVolopterの自律飛行機能を導入し、自社の大げさなイベントで披露した)。

注目すべきは、現地時間3月4日の資金調達の発表では、自律性や自動運転機能については一言も触れられていないことだ。これは、Volocopterのサービスが開始に近づいていく中で、より現実的なフレームワークがあることを裏付けている。

同社は筆者に、最初の商業サービスが試験的に実施されることを認めた。「VoloCityは、商用サービス開始時に、クルーが乗り込んでの飛行、遠隔操縦、および自律飛行の技術的能力を備えていることになります」と広報担当者は話した。「しかし、パイロットによる飛行の方が、一般に受け入れられやすいと思います。アーバンエアモビリティ(UAM)が浸透し、都市がクルーなしの飛行形態を認める規制を設ければ、徐々に遠隔操縦や自律飛行に移行していくでしょう」。これも、各都市の規制次第だろう。

「今回の資金調達は、非常に魅力的な新興市場において、Volocopterが主導的な立場にあることを証明するものです。我々は、世界中の都市で大規模なUAMを実現するために、技術的にも商業的にも大きな前進を続けています」とロイター氏は声明で述べた。

Volocopterは現在、同社のエアタクシーに使われる3種の機体、VoloCity、VoloConnect、VoloDroneに注力している。欧州連合航空安全局(EASA)から設計組織承認(DOA)を取得した「最初で唯一の」電動垂直離着陸(eVTOL)企業だという。つまり、この分野での成功を狙うLiliumKitty HawkJoby Aviationなどの競合他社が参入する前に、うまくすれば単独ブランドの商業プロバイダーとして、あるいは他の都市交通企業のパートナーとして、市場参入できる可能性があるということだ。

今回のシリーズEはすべて株式による調達だが、Volocopterはより大きな航空機の建造のために多くを負債によっても調達している。2022年初めには、Aviation Capital Group(ACG)と10億ドル(約1150億円)の契約を結び、Volocopterの航空機の販売とリース運用のための資金調達を行った(時機が来れば最大10億ドル=約1150億円を借りられることを意味する)。これは、同社が航空機の完全な認証を取得した後に開始する。

これまでに同社は約1000回の公的および私的な試験飛行を終えている。

また、同社は今回の発表の中で、調達した資金調達で商業運転開始だけでなく、最終的には株式公開を目指す計画だと述べた。

「Volocopterには世界中からすばらしい投資家が集まっており、上場への道を歩み出す前に、いち早く認証を受け、いち早く市場に出るという戦略に集中できるすばらしい立場にあります」とVolocopterのCCO、Christian Bauer(クリスチャン・バウアー)氏は声明で述べた。

この先行者としての優位性と、過去10年間にわたる「空飛ぶ車」の開発努力が、まだ製品の市場性を証明していないにもかかわらず、投資家から今、多くの信用を得ている2つの要因のようだ。

「Volocopterは2021年、ソウルでUAMを飛ばし、世界の都市にいち早くUAMを導入することができると確信しています。ESG投資のリーダーとして、Volocopterを通じて都市の持続可能性を高められることをうれしく思います」と、WP Investmentの会長Lei Wang(レイ・ワン)博士は声明で述べた。また、同社の共同会長であるTiffany Park(ティファニー・パク)氏は、韓国も商業運転開始の一翼を担うことになると付け加えた。

画像クレジット:Volocopter

原文へ

(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

次世代いす型モビリティを手がけるLIFEHUBが1億円調達、進行方向を向いたままエスカレーターを利用可能など目指す

次世代いす型モビリティを開発するLIFEHUBが1億円調達、進行方向を向いたままエスカレーターを利用可能など「少し未来」目指す

二輪起立構造を実装した次世代型電動車いすを開発するLIFEHUBは3月1日、シードラウンドとして、第三者割当増資による約1億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、新規投資家のサイバーエージェント・キャピタル、既存株主のインキュベイトファンド。調達した資金は、「次世代のいす型モビリティ」の製品開発、経営基盤強化に向けた人材採用にあてる予定。また、2023年7月にイニシャルモデルの一般販売をスタートし、その後2024年中にも量産型の市販モデルを投入する予定。

2021年1月設立のLIFEHUBは、ロボティクスなど最先端テクノロジーを駆使し、すべての人が自由で豊かな生活を送ることをためらわない世界を作る「人類の身体的な制約からの解放」というミッション・経営理念を掲げるスタートアップ。

代表取締役CEOの中野裕士氏は、「日本市場および世界市場の車いすユーザーの方々に向けて、モビリティに搭乗したまま立ち上がって屋内や屋外を移動することができ、さらに進行方向を向いたまま健常者が利用するのと同じようにエスカレータを利用できる、電動車いすの少し未来の姿を提示したいと考えています。これは、人体の脚の機能をモビリティで再現するという、技術的にもビジネス的にも大きなチャレンジとなります」と述べている。

次世代いす型モビリティを開発するLIFEHUBが1億円調達、進行方向を向いたままエスカレーターを利用可能など「少し未来」目指す

同社が、次世代いす型モビリティの第1弾プロダクトとしてリリースを目指しているのは、二輪起立構造を実装した次世代型電動車いす「TRANSELLA」(トランセラ。仮称)。一般的な電動車いすに用意されているレバーやボタン、リモコンによる基本的な操作機能を備えるほか、重心移動による操作にも対応するよう研究を進めているという。

また、既存の車いすでは不可能な「歩く、立ち上がる、乗り越える」という動作の実現を目指しているそうだ。例えば起立機能では、車いすユーザーが店舗内の陳列された商品を眺める時や、レジやカウンターで用事を済ませたい時に、座ったままの状態で約60~80cm立ち上がれるようにする。この立ち上がりの実装については、周囲の人や物とぶつからないようレーザーによる接触防止機能や、転倒時にユーザーの身を守るエアバック機能、転倒を検知してスマートフォンに緊急アラートを通知する機能など、もしもの時に備えた安全装備についても実現できるよう準備を進めているという。

次世代いす型モビリティを開発するLIFEHUBが1億円調達、進行方向を向いたままエスカレーターを利用可能など「少し未来」目指す

さらに、テーブルや机の間といった狭いスペースで移動する際に、約1mの道幅でも360度自由に方向転換できる移動性能を持たせるとしている。

次世代いす型モビリティを開発するLIFEHUBが1億円調達、進行方向を向いたままエスカレーターを利用可能など「少し未来」目指す