金融教育サービス「ABCash」などを展開するABCash Technologiesが約12億円のシリーズC調達

金融教育サービス「ABCash」を展開するABCash Technologies(エービーキャッシュテクノロジーズ)は3月30日、シリーズCラウンドとして、第三者割当増資による総額約12億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は三菱UFJイノベーション・パートナーズ、SBIインベストメント、Aflac Ventures LLC(Aflac Ventures Japan)、SV-FINTECH Fund、Hamagin DG Innovation投資事業有限責任組合(横浜銀行、デジタルガレージ)、マネックスグループ、FFGベンチャービジネスパートナーズ。

調達した資金は、データ・テクノロジーの活用強化、ブランディング強化、FinTechサービス拡大にあてる。2022年4月より高等学校で金融教育が開始されるなど社会全体での金融教育のニーズの高まりを背景に、金融教育FinTech事業の推進強化を目的とする資金調達を実施したという。金融機関や親和性の高い株主と事業レベルの連携を深めつつ「貯蓄から投資へ」という流れを加速していくとのこと。

2018年2月設立のABCash Technologiesは、「お金の不安に終止符を打つ」をミッションとして掲げるFinTechスタートアップ。個人向けのお金のパーソナルトレーニングサービスのABCashと、法人向けお金の福利厚生サービスABCareを2本の柱にしてサービスを提供している。

NFTやDeFiにとっても逆風?米国のステーブルコイン規制の最新情勢と論点整理

NFTやDeFiにとっても逆風?米国のステーブルコイン規制の最新情勢と論点整理

編集部注:この原稿は千野剛司氏による寄稿である。千野氏は、暗号資産交換業者(取引所)Kraken(クラーケン)の日本法人クラーケン・ジャパン(関東財務局長第00022号)の代表を務めている。Krakenは、米国において2011年に設立された老舗にあたり、Bitcoin(ビットコイン)を対象とした信用取引(レバレッジ取引)を提供した最初の取引所のひとつとしても知られる。

今や220兆円を超える市場に成長した暗号資産ですが、2022年、業界全体を揺るがしかねない問題として注目されているのが、ステーブルコインに関する規制です。ステーブルコインに対して厳しい規制がかけられれば、最近ブームとなっているNFT(ノン・ファンジブル・トークン)やDeFi(分散型金融)にとっても逆風になるという見方もあります。

本稿では、クラーケンの本社がある米国におけるステーブルコイン規制の最新情勢と論点の整理を行います。

そもそもステーブルコインとは?

ステーブルコインは、暗号資産エコシステムにおける潤滑油的な存在です。ビットコイン(Bitcoin)のような資産性はありませんが、機関投資家が暗号資産取引を行うときに入れる担保であったり、NFTやDeFiといった新たなサービスにおける決済や担保手段として使われています。

代表的なステーブルコインは、米ドルと連動するUSDT(テザー)とUSDC(USDコイン)です。ブロックチェーンデータ企業CoinMetricsによりますと、ステーブルコイン市場は1400億ドル(約21兆円)。そのうちUSDTとUSDCは90%近いシェアを持っています。

NFTやDeFiにとっても逆風?米国のステーブルコイン規制の最新情勢と論点整理

ステーブルコインの市場規模

「銀行並み」の規制

2021年から米国ではステーブルコインに対する規制の必要性を訴える声が多く聞かれるようになりました。例えば、米証券取引委員会(SEC)のゲンスラー委員長は、2021年9月、ステーブルコインについて「ポーカーのチップのようなもの」と独特の表現でリスクに警鐘を鳴らしました

そして2021年11月、大統領直下の金融市場ワーキンググループ(PWG)がステーブルコインに関するレポートを公開してから、規制をめぐって雲行きが怪しくなりました。PWGのレポートは、米議会議員に対してステーブルコインの発行体を「銀行のような機関」として規制する法律を通すように提案しました。その中で特に注目されているのが、保険加入金融機関(IDI)のみにステーブルコインの発行を許可するという部分です。

2022年2月、PWGレポートの主な執筆者である財務省の幹部が、上院の公聴会で、ステーブルコイン発行体に対する銀行並みの規制案に関して、柔軟に対応すべきであると発言し、これまでのスタンスから軟化したといわれていますが、詳細は明らかになっていません。

暗号資産業界の反応

2021年11月のPWGレポート公開後、米国の暗号資産関連の業界団体ブロックチェーン協会(Blockchain Association)は、すぐにPWGレポートの分析レポートを公表しました。同協会は、ステーブルコインの流動性の向上や担保となる資産の証明といった観点から規制を歓迎する一方、ステーブルコイン発行体を保険加入金融機関として規制することには明確に反対しました。理由として、数多くのステーブルコインがある中で特定のステーブルコインを規制面で優遇することになること、大手銀行などが競争上の優位性を持ってしまうことを挙げています。

「そのような規制はイノベーションを窒息させて、新しいステーブルコインプロジェクトが米国に来なくなり、現在のフィンテック企業に対する規制の流れと逆行することになるだろう」

この他、PWCによる規制案は「ステーブルコイン発行体に必要不可欠な活動をするすべてのエンティティ」も規制の対象としていますが、同協会は、この定義はあいまいであり、「マイナーやソフトウェア開発者」も含まれてしまうのではないかと懸念しています。

クラーケンは、ステーブルコイン規制の動向を注視しています。グローバル市場でUSDT、USDC、DAI、PAXGという4つの主要ステーブルコインを取り扱っており、ステーブルコインの暗号資産市場における役割の大切さを実感しています。ブロックチェーン協会同様に、「古いルール」を新しい市場に無理矢理導入するといったような拙速な対応はするべきではなく、まずはステーブルコインついて正しく理解することが先決と考えています。

また、米国以外で英国やEUでもステーブルコインの規制が検討されていますが、国ごとに異なるルールと基準が設けられる「つぎはぎの規制」を避けるため、国際的な協調関係の強化が重要になるとクラーケンは考えています。

2021年末から日本でもステーブルコインの発行体に対する規制について議論があり、2022年の通常国会に資金決済法改正案の提出を目指すと報じられ、2022年3月に入り実際に提出されました。ただ、米国をはじめ世界各国では規制当局と業界側の対話が続いている状態であり、日本でもステーブルコインの発行体や暗号資産交換業を含む様々なステークホルダーの意見を取り入れて議論を続ける必要があると考えています。

画像クレジット:Tezos on Unsplash
CoinMetrics

法人カードPaildを手がけるHandiiが後払い機能の2022年5月頃リリースを発表、優先枠の登録受付を開始

法人カードPaildを手がけるHandiiが後払い機能の2022年5月リリースを発表、優先枠の登録受付を開始

法人カードのクラウド型発行・管理サービス「paild」(ペイルド)を提供するHandiiは3月1日、事前入金が不要となる(口座振替を実施)、後払い機能(クレジット支払い機能)を発表した。リリース予定は2022年5月頃。また「paild後払いに事前登録する」において、本日より優先枠の登録受付を開始している。

同機能の追加により、事前の入金なしに決済を行えるようになる。引き続き前払いを行うことにより、与信枠を超えた決済も可能。与信枠に関しては、デジタル情報を活用し、従来型の法人クレジットカードと比較して、最大10倍前後の与信枠を設定する予定だ。

同社CEOの柳志明氏によると、与信枠の設定と前払い残高を組み合わせた決済手段の提供により、中小企業が十分なカード決済ができない状態から解放し、法人カードの導入を通じた業務プロセスの改善を推進する戦略であるとのこと。paildでは、管理画面上から何枚でも即時に法人カードを発行できる機能を提供しており、従業員の経費精算の削減や部署の支出の見える化で効果を発揮しているという。

法人カードPaildを手がけるHandiiが後払い機能の2022年5月リリースを発表、優先枠の登録受付を開始

管理画面サンプル

paildは、無料登録から最短30分でVisaで使える法人カードを発行し、使うことができるサービスとして、2019年8月から提供を開始。サービス初期設定費用・年会費・バーチャルカードの発行手数料は全て無料。リアルカードの発行手数料は有料(税込1650円)だが、現在2022年4月末までの期間限定で、無料(0円)で発行可能とのこと。

2021年には、会計連携やSaaS管理機能といった会計業務の円滑化・効率化に向けた多くの機能をリリース。2022年に入って、カード業界ではまだ珍しい番号が券面に記載されていないナンバーレスリアルカードを発表したほか、ICチップ対応、Visaタッチ決済導入、3Dセキュア(本人認証)などに対応し、セキュリティの向上に向けた開発を進めている。

【コラム】フィンテック創業者の教訓、B2BでCを解決する

消費者にとっての大きな問題を解決しようとするフィンテック企業の創業者は、ほとんどの場合「人を助けたい」という善意でスタートを切る。しかし、その目標を大きく外してしまうことがあり、その結果他のフィンテック企業の創業者は消費者にどれだけ効果的に役立つことができるのかに疑問の目が向く。ベンチャー企業で営利を目的としたフィンテックのスタートアップ企業に「Altruis(利他主義)」という名前をつけるとしたら、ある種の健全な懐疑論がつきまとうことは確かだ。

フィンテックの世界は、さまざまな意味で内部対立の上に成り立っているため、その懐疑的な見方は理解できる。フィンテックの創業者の大半は、収益性の低い目標を達成するための超高収益ビジネスモデルの力と価値を深く理解している。また、金融機関出身者が多いため、金融ツールや金融機関が消費者の利益にならず、時には搾取している点を見抜くことができるという内部者的な強みがある。

創業者たちは問題をすばやく特定し、それを解決するスキルを持っているため、人々を支援するためのソリューションを構築し始める。彼らの意図は、概して利他的だと言える。

しかし、フィンテックの創業者にとっては、ここからが複雑だ。解決しなくてはいけない問題の特定に役立った業界のノウハウやビジネスへの理解がきっかけで、多くの人が当初の使命を放棄する道に走るからだ。

では、利他的なフィンテック創業者はどこで道を踏み外すのか。どんな市場の力によって、彼らの「破壊」が同じ古風なビジネスモデルに変わってしまうのだろうか。そして、最も重要なことだが、それらをどのように避けることができるのだろうか。

搾取の道を回避

フィンテックの創業者が取るべき最初のステップは、対応可能な市場規模を適切に設定することだ。これは単に広範なニーズを特定することではない。「人々が貯蓄を始めるのをサポートしたい」というのはすばらしいミッションステートメントだが、創業者はこのニーズを実現する方法については現実的でなければならない。

もしビジネスモデルが、対応可能な市場から200ベーシスポイント以上の収益を上げなければならないというものならば、サポートを提供する顧客に対してコストが大きすぎるかもしれない。要するに、正しい計算をしなければならないのだ。

ビジネスのユニットエコノミクスは、あまりにも多くのお金がかかるためにその顧客の資産に基づいて顧客を獲得することができなくなっている。その計算を成り立たせるためには、膨大な顧客生涯価値を生み出さなければならず、助けたい顧客は十分なお金を持っていないため、巨額の手数料を徴収しなければならない。

多くの消費者向けフィンテック、特に貯蓄型商品のビジネスモデルを実際に見てみると、その手数料は実質的に年率5%であることが多い。それは略奪的な融資に近いものだ’。

事実上彼らは「私たちの製品を使ってもらい、あなたが本当は利益を得ることができないことに気づかない程度の少額の取引手数料をいただきます」と言っているのだ。

さらに悪いのは、多くの創業者がこのような搾取的な道を、気づかないうちに進んでいることだ。正しく計算することが最初のステップだが、別の道がないか、もう一度じっくりと検討するのに悪いタイミングはない。

ベンチャー企業のプレッシャーと注意を逸らすもの

対応可能な市場の「計算」が間違っていると、フィンテック創業者の次の危険な罠、つまり「手っ取り早い成長」プログラムに巻き込まれる可能性がある。

ベンチャー市場によって、フィンテック事業は浅薄なものとなった。そして同じ作戦で組織をスケールアップし、多くの資金を集めなければならないという大きなプレッシャーがある。残念ながら、このアプローチでは、しばしば顧客が干からびてしまう。

例えば、投資、購入、消費を自動化するある大手フィンテック企業は、崇高な使命を掲げており、全資産に対して1%の収益を見込んでいることも公言している。これは高額な手数料であり、多くの非デジタル・プラットフォームのほぼ2倍である。

しかし、本当に計算して、正に「破壊的な」4分の1の手数料を取るなら、50億ドル(約5775億6250万円)の資産は1200万ドル(約13億8615万円)のビジネスにしかならない。投資家は小さな会社を作りたがらないし、1,200万ドルは小さな会社なのだ。だが1%になると、突然、世界を変える力を持ったユニコーンになれる。

このようにすばやく大きくなることは、消費者の足を引っ張る高値の製品や「ミッションクリープ」につながる可能性がある。人々がお金を貯めるのを助けようとした創業者が高額の暗号資産投資サービスを製品に付加する創業者になってしまうかもしれない。なぜか?暗号資産は、その当時、成長と資金調達への近道を提供したからだ。

資金調達に躍起になることも、道を踏み外す早道だ。創業者が迅速な資金調達ラウンド(金庫証券や従来の優先株式の調達)を何度も行うと、気がつけば自分の会社の最小限の割合しか所有していないことがよくある。

その時点で「どんな犠牲を払ってでも成長する」ことに縛られてしまい、利益を得るためにはモンスターを作り上げなければならなくなる。

B2B化でCを解決する

もちろん、このコラムを読んでいる創業者の中には、すでに計画の真っ最中である人もいるだろう。可能な限り市場規模を把握し、必要な資金を調達し、投資家を選択したことだろう。上記のようなリスクを管理するために、あなたができることはほとんどないかもしれない。

しかし、利他的な創業者が消費者を支援するための無視されがちな道もある。結果ではなく、原因にアプローチするのだ。

消費者のお金との関係ほど複雑で個人的な問題はない。多くの企業が、消費者が抱える1つの苦悩を切り離すことで、何らかの形でシステム的な変化をもたらし、誰かのためにより良い金融生活を実現できると考えている。彼らは消費者の問題を特定し、その解決策は消費者との直接取引でなければならないと考えているのだ。

貯蓄、予算、投資のどれをとっても、これらの解決策は善意に由来し、上手く実行されているが、これは不眠症を布団で「解決」するのと同じようなものだ。

消費者の問題を無視しろとは言わまいが、一般的な人が日常生活で対処していること以外にも視野を向けることで、最も消費者を助けることができるかもしれない。

お金を貯めることの難しさは、新しい銀行システムを開発することで解決できるかもしれない。給料日に振り込みを間に合わせるのが難しい人は、雇用者と協力して給与計算のソリューションを改善することで解決できる可能性がある。資産運用の苦労は、アドバイザーが顧客を支援するための優れたテクノロジーを提供することで軽減することができる。

そして何より、ビジネス上の問題を解決することは、フィンテック創業者が陥りがちな問題を回避することにつながる。B2Bソリューションの対応可能なマーケットを適切な大きさにすることで、誇大妄想に陥る可能性は低くなる。B2Bの世界には、注意を逸らすような美味しい話や「急成長」の罠がはるかに少ないのだ。B2Bフィンテックを支援する投資家は、ランウェイやARRに対して、より忍耐強く、合理的な期待を持っている傾向がある。

いずれは消費者向け製品をリリースすることになるかもしれないが、その時までには消費者に効果的にサービスを提供するための適切な安定性と規模を獲得しているだろう。

多くの場合、消費者を支援するための最良の道は、消費者以外を見つめることなのだ。

編集部注:Jason Wenk(ジェイソン・ウェンク)はAltruistのCEO兼創設者。

画像クレジット:sorbetto / Getty Images

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(文:Jason Wenk、翻訳:Dragonfly)

手持ちのモノを売り支払いに充てられる決済プラットフォームTwigが約40.3億円調達、「グリーン」を謳うがそのサステナビリティにはほころびが見える

Z世代と若いミレニアル世代の消費者をターゲットとし、電子マネーアカウントで衣類や電子機器を売って即座に換金できるロンドン本拠のフィンテックTwig(トゥイグ)が3500万ドル(約40億3000万円)のシリーズAラウンドをクローズした。

今回のラウンドを率いたのは、フィンテック投資専門のFasanara Capital(ファサナラキャピタル)で、Twigによると、LVMH、Valentino(バレンチーノ)、Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)の現幹部や旧幹部など、他にも数多くの匿名の戦略投資家たちが参加したという。

Twigは2020年創業の新興スタートアップで2021年7月に英国でサービスを開始したばかりだが、英国内で急速に成長しており(Twigのアプリのダウンロード回数は月間10万回を超えており、iOSのApp Storeでファイナンス関連アプリの第6位にランキングされた)、すでに海外進出に向けて準備を開始している。

Twigは、シリーズAで獲得した資金で、米国(2022年第1四半期)およびEU(第2四半期。まずはイタリア、フランス、ドイツを予定)に進出すると目されている。また、Web3とデジタル収集品の流行に注目して製品の機能拡張も予定している。

現時点では、Twigのアカウントは英国内でのみ使用できる。創業者兼CEOのGeri Cupi(ゲリー・クピ)氏によると、現段階で約25万人のユーザーを確保しているという。

同氏によると、典型的なユーザーは大学を卒業したばかりの22歳の働く女性だ。こうした女性は、おそらくワードローブに着れなくなった衣類が山のようにあり、いつでも売りたいと考えているからだ。

Twigでは、他の金融機関のアカウントに送金すると1ユーロの手数料を請求されるが、Twigアカウント同士の送金では手数料はかからないため、口コミで広がり成長したことが初期段階での急成長を加速させたようだ。

また「your bank of things(モノの銀行)」というマーケティングスローガンを掲げているものの、Twigは実際には銀行ではないことも指摘しておく必要がある。Twigのアカウントは「電子マネーアカウント」だ。このため適用される規制に関して銀行とは大きな違いがある(例えばTwigのアカウントは英国の預金保証制度の対象にはならない)。

正式な銀行ではないため、Twigは新市場でいち早く成長することができる。銀行業務ライセンスを取得する必要がある場合に比べて、提供サービスに適用される規制が軽減されるからだ。クピ氏によると、現時点では性急に正式な銀行になるつもりはないという。

数十年前、インターネットおよびオープンバンキングを背景とするフィンテックブームなど存在しない時代の昔ながらの銀行は、バッグ、文房具、音楽などの無料のおまけをつけることで学校を出たばかりの新社会人に営業して口座を作ってもらっていた。最近のフィンテックスタートアップは、最も魅力的な機能セットを競って提供することで若い年齢層の顧客を捕まえようとしている。

ただし、お金を口座に入れてもらうことが依然として主たる目的であることは間違いない。

とは言え、TwigはB Corp認証を取得申請中だ。B Corp認証は社会的目的と環境への配慮、透明性、説明責任を重視していると認められる企業に与えられる。クピ氏によると、同社は、申請の最終段階にあり、現時点では保留状態だが、第一四半期には完全な認証を受けられる見込みであるといい、ユーザーにブランド品を捨てる代わりに売るよう勧めることでサステナビリティと経済循環性を実現していることを強くPRしている。

Twigのウェブサイトでも、環境への影響を抑えるためにカーボンオフセットの取り組みを行っており、その他のイニシアチブにも参加していることが掲載されている。

要するに、人類が気候災害を回避するには、世界レベルでのCO2排出量、つまりは全体的な消費の削減が必要となる。そこで疑問視されるのが「サステナビリティ」を再販売というコンセプトに無理矢理結びつける主張の信憑性だ。再販売には、すぐに査定してもらって現金が手に入るため、逆に消費量が増すリスクがあるからだ。

現在所有しているモノを売って現金が手に入るなら、一度購入したアイテムを手放さずに長く使う場合に比べて、消費者はお金をどんどん使って新しいモノを買うよう仕向けられる可能性がある。別の言い方をすれば、消費を削減してCO2排出量を削減するつもりなら、循環経済とモノの寿命をセットで考える必要があるということだ。再販売に必要な面倒な手続きが削減されることで消費者がモノを買わなくなるかどうかはわからない。逆にもっとモノを買うようになる可能性もある。

これがTwigの謳うサステナビリティにほころびが見える点の1つだ。

この難題をクピ氏にぶつけたところ、同氏は次のような議論(いくらか循環論法的ではあるが)を展開して巧妙に解決して見せた。「中古品の流動性を高めるというTwigの目的はサステナビリティの向上と消費量削減の推進を実現します。というのは、より多くの中古品が買えるようになるからです。その結果新しいモノに対する需要が減り、より多くのアイテムがこの(より活発な)中古品経済を介して循環するようになる。

「基本的に、当社のビジネスは、消費者が自分が持っている古いアイテムをお金に変えられるようにすることで、その古いアイテムに新しい命を与えるというものです。これによって、少なくとも中古市場の供給が増大します」と同氏はいう。「中古市場の需要はずっと増え続けています。当社が中古市場の供給側だけでやっていけるのは、現在、中古市場には供給の追加を求める大きなニーズがあるからです。消費者が手持ちの中古品を売ってお金を得たとしても、そのお金で別のモノを購入するとは限りません」。

「これは当社のユーザーの行動からわかることですが、Twigに送られてくる資金のうち約42%は新しい経験、つまり旅行や経験主導の活動に使われています。ですから、流動性が向上したからといって、必ずしもモノの消費が増大して環境に悪影響を与えるとは限りません。それがこれまでのユーザーの行動から分かっていることです」。

クピ氏はTwigのビジネスを非常にシンプルな次の宣伝文句に集約させている。「当社は資産をトークン化します」。

「Twigでは、例えばGucci Marmont(グッチ・マーモント)のハンドバッグをプラットフォーム上にアップロードします。そして、アップロードされた資産をトークン化して、その価格を提示します」と同氏は説明する。

「当社の目標はこの仕組を外部でも使えるようにすることです。そこで役に立つのが、ブロックチェーンです。当社は資産の流動性を向上させて、消費者が物理的なモノを売って仮想的なモノを入手し、その仮想的なモノを使って物理的なモノや体験を購入するという行為を簡単に行えるようにします」。

「基本的に、ユーザーが簡単に取引できるようにすることが目的です」。

クピ氏にはブロックチェーンと循環経済に関するバックグラウンドがある。例えば、2018年には、デニムのアップサイクルビジネスをLevi’s Albania(リーバイス・アルバニア)に売却している

Twigのホワイトペーパーによると、よく売れる物理的なモノとしては、Nike(ナイキ)、Gucci(グッチ)Chanel(シャネル)、Hermes(エルメス)、その他の高級品メーカーのブランド品などがあるという。このペーパーには「所有の未来の再定義」と「 循環型ライフスタイルで生活を送るためのパワーをZ世代に付与」という内容が記載されている。

クピ氏によると、Appleの電子機器も中古市場で高値がついているという。同氏は、購入対象中古品に、不要になった衣類だけでなく電子機器も追加したところ、それまで女性が9割以上だったTwigの利用者構成が、女性7割男性3割くらいに変化したと指摘する。

Twigは中古品の再販売に関する手続きを代行する。具体的には、中古品を即座に査定して、Twigがその中古品の購入を承諾するとすぐに現金が手に入るので何でも好きなものを買える(Twigでは極めて詳細な購入対象品リストを用意している)。

Twigまでの配送料は無料なので、Twigのサービスを利用することで、Vinted(ヴィンテッド)Depop(ディポップ)といった中古品マーケットプレイスにアイテムを自分で直接販売する場合に発生する面倒な手続きやリスクは基本的に排除される(ただし、自分で直接販売した場合よりも売値は低くなる)。

Twigの倉庫に到着したアイテムが品質チェックに引っかかると、ユーザーは返送料を請求される(そして、おそらく即金で支払われた代金も全額Twigに返金される)。アイテムが売れなかった場合は、アップサイクルとリサイクルが適切に行われているかどうかが確認され、どちらの方法でも対処できない場合は、慈善団体に寄付される。環境に悪いため、ごみ廃棄場送りにはしない。

クピ氏によると、Twigは現在成長重視フェーズであるため、再販ビジネスで大きな利益を出すことは考えていないという。

提示する買取価格は、動的に変化するさまざまな要因によって変わる。前述のホワイトペーパーによると、Twigは「市場ベースの価格設定アルゴリズム」を使用して、中古市場の100万点を超える商品を分析し「ブランド、アイテムのカテゴリー、市場セグメントに応じた適切な再販価格を提示している」という。

その前提の中核をなすのは、消費者にとっての総所有コストという概念を再販価値の変化に織り込むという考え方だ。これは購入パターンをシフトさせるパワーを秘めている可能性がある(例えば消費者は、環境的なダメージを与える低再販価値のファストファッションではなく、高級ファッションを選択してその価値を長期間に渡って楽しむ選択をするようになるかもしれない)。

Twigは銀行のような機能(Twigの口座を作るとTwigVisaデビットカードが発行され、国内および国際送金を行うことができる)と本業の中古品再販サービスを組み合わせたものというが、ターゲットであるZ世代と若いミレニアル世代向けの宣伝文句だ。こうした世代の若者たちは中古品市場の倹約性とサステナビリティの両方にますます強い関心を寄せている。

Twigがターゲットとする年齢層を見れば、同社のマーケティングが循環経済による環境への配慮に重きを置いている理由がわかる(「Twigは循環経済を簡単に実現し、サステナビリティの高いライフスタイルを選択できるようにします」とグラフィックを多用したレトロ風のウェブサイトは謳っている)。

特にZ世代はサステナビリティ世代と呼ばれ、この世代の若い消費者は「モノを所有することよりも使うことを優先する」とTwigのホワイトペーパーに書かれている。

こうしてみると、銀行の機能を、文字どおり経済的価値を保存する場所ではなく、再販価値の交換所および仲介者として捉え直すことが非常におもしろく見えてくる。消費者は、あらゆるモノを擬似通貨に変えて、所有したいモノややりたいことの支払いに充てることができる(ハイテクによるバーター取引の再発明と言ってもよいだろう)。

しかし、Twigのビジネスにブロックチェーンが深く組み込まれていることを考えると、同社の主張するサステナビリティには別のほころびが見えてくる。

Twigのテクノロジーは最初からブロックチェーンを基盤として構築されているが、同社のウェブサイトのユーザー対面型の説明からそのことに気づくのは難しい。TwigのシリーズAで公開されたプランでは、Z世代向けの環境配慮型マーケティングがまったくうまくいかない危険がある。というのは、PRでは、Twigを「世界初のWeb3対応グリーン・ペイメント・インフラストラクチャー」と称し、その立ち上げに、最近のWeb3ハイプをうまく利用しようとしているからだ。

この来たるべき機能により、ユーザーは、実世界の資産を「トークン化」して「数秒で取引可能にできる」と、リリースノートには書かれており、さらに次のように続く。「Twigを使用すると、デジタルアイテムと物理アイテムをマネタイズして新しい方法で取引できます。このアプローチにより、ユーザーはチェックアウトページで手持ちのアイテムを売って、暗号資産を購入したり、衣類や電子機器を売ってNFTを購入したりできます」。

暗号資産とNFTの取引が「グリーン」に行われることが本当に希望のあることなのかどうかはよく考えてみる必要がある。

結局、暗号資産に使われるエネルギーコストそれ自体、地球に壊滅的な悪影響を与える要因のように見えなくもない。

例えばケンブリッジ大学が2021年行った研究は、1つの暗号資産(ビットコインなど)だけで、アルゼンチン全体の年間エネルギー消費量を超えていることを示している。

2021年3月に実施された別の研究によると、ビットコインはノルウェーと同じ量のエネルギーを消費したとし、ビットコインのCO2排出量はまもなくロンドンの大都市圏全体で生成される排出量に匹敵するようになると予測している。

要するに、ブロックチェーンベースの暗号資産(もちろんトランザクションを承認するためにプルーフ・オブ・ワークを必要とするもの)の悪名高い非効率性は、サステナブルとは程遠いものに思えるということだ。

しかもブロックチェーンはもっとひどいエネルギーの浪費に関わっている。すなわち、NFT(代替不可能なトークン)の台頭である。NFTでは、ブロックチェーンの上にデジタル収集品を取引するレイヤーを追加することで、エネルギー集約的なトランザクションが必要となり、そうしたトランザクションが促進される。

(ファッションやステータスシンボルとしての)NFTをめぐる現在の騒動と そうしたデジタル資産の小売取引、およびエネルギーを燃やして収集品ピクセルをシフトさせることで非常に手っ取り早くお金を作り出すことができるという提案によって、このエネルギーの焚き火にさらなる燃料が注入されている。

2021年、あるデジタルアーティストの分析によって、1つの平均的なNFTは、EUに住んでいる1人の人間の1カ月分の電力消費量に相当するCO2を排出することが示された。以前と同様、ユーザーにトークン化とモノ(または、デジタル収集品)の取引で忙しくするように促す機能を、どのような形であれ「グリーン」に稼働させる方法を思いつくのは難しい。

しかし、クピ氏はこの反論にもひるまない。

第一に、Twigが基盤としているブロックチェーンインフラストラクチャーは他のブロックチェーンよりもエネルギー効率が高いと同氏はいう。

「ブロックチェーン自体はテクノロジーとして環境に悪いわけではありません。ブロックチェーンにはさまざまな応用事例があります」と同氏はいう。「当社の基盤となっているHyperledger Sawtooth(ハイパーレッヂャーソートゥース)というブロックチェーンは、他のソリューションに比べてエネルギー消費量が極めて小さいという特長があります」。

「つまり、当社はエネルギーを大量に消費するソリューションの使用を最小限に抑えたいと考えています」。

また、Twigは内部のエネルギー消費量を計算して、環境への影響を数量化しており、対抗策としてカーボンオフセットの取り組みも行っているという。

さらには、大気圏からCO2を排除するプロジェクトも支援している。

ただし、個々のプロジェクトがどの程度実行可能で信頼できるものかは、まったく別の問題だ。

Twigは自社のエネルギー消費を最小化し、CO2排出量をオフセットしようとしているかもしれないが、それより大きな環境への影響が、二次使用つまり、TwigのユーザーとサプライヤーがTwigを利用した結果として発生する消費、エネルギー使用、CO2排出量によって起こる可能性がある。

こうした関連のある間接的な影響(サステナビリティレポートの用語でScope 3排出量と呼ばれる)を計算することは、企業の直接的なエネルギー使用を内部的に監査するよりもはるかに難しい。とはいえ、Scope 3排出量は企業のCO2排出量の大きな部分を占める傾向があることも確かだ。このため、そうした間接的な取引、排出量、影響をなきものとして片付けてしまうことはできない。

Twigは、カーボンオフセットによって商品の配送にともなうCO2排出量を相殺するなど、明確な姿勢でScope 3排出量対策に取り組んでいる。また、B Corp認証を取得しようという野心も称賛に値する。

しかし、Twigによって拡大も縮小もするかもしれない消費者需要やトレンドに基づいて、最終的に発生するエネルギーコストを予測するのは非常に難しい。

ユーザーに暗号資産を購入し、NFT取引を始めるよう促すことによってエネルギーコストが発生することは間違いない。そして、たとえTwigが中古品の流動性を高めることで、消費者が新品を購入する需要が低下し、新製品の実質生産量を削減することができるとしても、このような大量のエネルギー消費にともなうコストによって環境へのプラスの影響が相殺されてしまう危険がある。

とはいえ、支払いに使用できるものがこのように根本的に見直されると(あらゆるモノで支払いができる。トークン化された価値の世界では、理論上、消費者は実際のお金を使う必要がない)、消費活動の大きなシフトにつながり、循環経済に実際に目立った変化をもたらすことができる。その結果、数十年に渡る資本主義を特徴づける使い捨て消費の悪循環から抜け出すことができる。

別の言い方をすれば、(認証をサポートすることで偽物に対抗できる)ブロックチェーンベースのトークン化と(分散台帳インフラストラクチャによって完全な所有履歴を把握することで実現される)安定度の高い査定のおかげで、モノの再販時の価値をもっと確実に予測できるなら、消費者は、持っているモノを丁寧に扱う気持ちになるかもしれない。モノの寿命が維持されれば高い売値がつくからだ。そうなれば、世界の産業はそもそも現在の半分だけモノを作れば足りるようになり、資源の枯渇によって地球が機能不全に陥る重圧から解放される。

これには確かに一理ある。

あらゆるモノを売って極めて簡単に支払いができるようにすることでお金の価値が重要視されなくなることは、価値、所有、富に対する考え方を修正するために必要な最初の一歩になるかもしれない。

クピ氏は次のように説明する。「現金を使う代わりに、自宅にある不要になったモノを使ってNFTを買うことができます。例えば使わなくなった古いiPhone(アイフォーン)を売ってNFTや暗号資産を買ったり、体験を買うことができます。ニューヨークまでの旅行費用に充てたり、次回の職業教育コースの支払いに充てたりできます。つまり、Twigの目的は、市場の流動性を高めることです。人々が使わなくなった資産を売ることでその資産に新たな第二の命を与えることなのです」。

「当社の信念は、財布にも地球にもやさしい結果をもたらすことです」。

Twigのビジョンは自身を支払いプラットフォームに変えることです。ユーザーや顧客の代わりに物理的なモノを支払い代金に変えるプラットフォームです。

「現時点では、Twigは単なるB2Cプラットフォームに過ぎませんが、ゆくゆくはB2B2Cプラットフォームにしたいと考えています。将来的には、さまざまなプロバイダーの決済ゲートウェイとして接続する予定です」とクピ氏はいい「いくつかの大手小売業者」とTwigのインフラストラクチャへの接続を許可する契約を結んでいると話した(小売業者の名前は明かしていない)。

「当社がやろうとしているのは、要するに、富の定義の再発明です」とクピ氏は付け加え、お金の概念が大きく様変わりしていると説明する。「自分が所有しているものがすべてお金として扱えるとなると、富の見方も変わってきます」。

「富とは、従来の定義では、家や車など、大きな資産の価値です。しかし、たとえばワードローブの価値は通常資産の一部とはみなされません。我々はこれを変えたいのです。すべてのモノに即時の流動性があれば、モノを現金とみなすことができます。現金だろうとGGマーモントのハンドバッグだろうと違いはないのです。ポンドで何かを買いたい場合、現金でもハンドバッグでも使えるのです」。

Twigが普及すれば、決済の未来は今よりずっとビジュアルで物質的なものになる可能性があります。例えばeコマース決済ウインドウに鋳造しておいたNFTをドラッグアンドドロップして中古のiPhoneを購入する。

あるいは、限定版のナイキのシューズを売って、ずっと楽しみにしていた都市滞在型の春休みを取る。

ダイヤモンドで覆われたすばらしい宝石を売って高級不動産を買うといった具合だ。

若い消費者たちはコモディティ化された価値交換可能なモノの世界をすでに違和感なく受け入れているようだが、年配の消費者たちはどうだろう。クピ氏は、ブーマー世代やX世代が大枚をはたいて買ったモノを手放して支払いに充てるという新しいやり方に納得できると考えているのだろうか。

サイン入りの初版本や貴重なビニールのレコードが将来の決済方法の一部に取り込まれることになるだろうか。

「正直、その答えは私にもわかりません」とクピ氏はいう。「現時点では、Twigに対するZ世代の反応は極めて良好です。また、英国のミレニアル世代、我々がターゲットとしている20代の若者たちの反応も上々です。英国外の市場に進出した際には状況は変わるかもしれません」。

画像クレジット:Twig

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

スペインの給与前払いスタートアップPayflowが約10.4億円獲得、スーパーアプリの成長戦略を促進

バルセロナを拠点とし、ネオバンクへの進化を目指すYC出資の給与前払いフィンテック企業Payflow(ペイフロー)が、シリーズA資金調達ラウンドで910万ドル(約10億4200万円)を調達した。それにより、事業設立の2020年1月からの調達額は1360万ドル(約15億5800万円)に達した。

このラウンドの投資家には、Payflowの新たな支援者であるスペインのSeaya Ventures(シーヤ・ベンチャーズ)や、C. Entrepreneurs Fund(C. アントレプレナーズ・ファンド)を通じたCathay Innovation(キャセイ・イノベーション)が共同リードを務め、Force Over Mass Capital(フォース・オーバー・マスキャピタル)、Y Combinator(Yコンビネーター)、Rebel Fund(リベル・ファンド)が参加するなど、国内外のファンドが混ざり合っている。

このスタートアップは、雇用主が従業員に提供するための給与前払いサービスを販売している。(他の給与系スタートアップが行っているように)給与の一部を早期に引き出すために利用者に手数料を課すのではなく、技術に対して雇用主に手数料を課しているのである。

Payflowによれば、このモデルは労働者評議会や労働組合の支持を得ているという。

また、同社は、このモデルは他の給与前払い系のスタートアップとの差別化要因であるとアピールしている。

共同創業者のAvinash Sukhwani(アビナッシュ・スクワニ)氏は「我々が他のオンデマンド型企業と異なるのは、従業員にサービス利用料を請求したことがないことです(我々のサービスは、全額会社負担の、初の真の従業員福利厚生です)」と語る。

また、共同創業者のBenoît Menardo(ブノワ・メナルド)氏は「(Payflowは)ユーザーにとって無料であり、今後もそうあり続けるでしょう。私たちのビジョンは、ブルーカラー労働者のための初の真の福利厚生を提供することであり、従業員がそれを支払わなければならないのであれば、それは本当の特典とは言えないと考えています」と述べている。

ユーザーの間ではダウンロード率が平均40%、一部のクライアントでは90%と、高い普及率を示しており、他のオンデマンド給与プラットフォームや他の社会福利厚生に比べて5〜10倍高いとしている。

また、同社のアプローチは、雇用主にとっても適切な条件を満たしているようで、すでに175以上のクライアントが契約している(10万人のユーザーをカバー)。

本製品はSaaS型のビジネスモデルで、利用する従業員の数に応じて段階的に料金を徴収する。

Payflowは大企業をターゲットにしている。同社によれば、顧客はあらゆる業界にわたるが、予想通り、ブルーカラー労働者の間で最も利用が多いとのことだ。

「レストランからスタートアップ、病院まで、あらゆる業種に対応していますが、ブルーカラーの人たちが一番利用しています」とスクワニ氏はいう。

給与前払い制度は、低所得者にとっては、急な出費に備えて月に何度も給与を受け取ることができるため、借金をする必要がなくなる。しかし、給料をすぐに受け取れるということは、例えば、給料をすぐに使ってしまい、月末にお金がないといった負のスパイラルに陥る可能性がある。

この点についてPayflowは「利用を制限したい場合に備えて」雇用主のダッシュボードに「安全限度額」を設けているという。

「ほとんどの企業はこの上限を50%程度に設定し、従業員が毎月の給与で少なくとも残りの50%を常に受け取れるようにしています」とメナルド氏はいい「そうすれば、家賃など毎月の必要経費を十分に確保することができます」と付け加えた。

同社のシリーズAの資金調達は、Payflowの海外展開に充てられる。

また、ネオバンクへの進化という目標を達成するために、製品開発にも費やす予定だ。

もちろん、ネオバンクの中には、給与前払いを追加機能として提供する企業もある(例えば、Revolutなど)。

フィンテックの場合、スタートアップの勝負は、顧客の取り込みを最大化するためのさまざまな戦略やアプローチに集約される。その後、十分な牽引力があれば、人気のある機能のユーザーを、先の機能の成功によって資金を得た、より本格的な銀行サービスにアップセルするチャンスがあるのだ。

つまり、フィンテックの競争は非常にダイナミックであるということだ。

特定のユーザー層は、他のユーザーよりも忠実で乗り換えが少ないかもしれない。もし、そのような層に、同社のサービスを知ってもらい、忠誠心を高めるような粘着性の高い機能を通じて銀行サービスを売り込むことができれば、今後何年にもわたって一連のサービスをクロスセルできる、解約の少ない銀行顧客基盤ができるかもしれない。もしくは、それがフィンテックの夢というものだろう。

製品開発の面では、Payflowは「スーパーアプリ」を開発し、機能セットの拡張を始めている。

「2022年には、ブルーカラーの従業員にファイナンシャルウェルネスをもたらすことを通じて、B2Bの価値提案を強化する2つの機能が追加されます。その後、多くのB2C機能を開発することで、(アプリの計画は)本質的にネオバンクに変わります」とメナルド氏はいう。

Payflowは、給与前払いSaaS事業を消費者直結のネオバンクに進化させるスケジュールを明らかにしていないが、メナルド氏は、顧客ベースを10倍以上に拡大したいと示唆し「このコンセプトは、数百万人のユーザーを獲得したときに、特に威力を発揮します」と述べた。

「2022年中に最初のD2C機能を開始する予定です」と彼は付け加えた。

スペインで顧客基盤を5倍に拡大することを目標に、市場統合のために新たな資金調達のうち300万ドル(約3億4300万円)を費やす計画である自国市場から、かなり大きな成長を期待している。

市場拡大の面では、Payflowは、すでにサービスを提供しているチリとコロンビアに加え、スペイン以外の2つの市場に進出することを計画している。

拡大は欧州と中南米が中心になる予定だ。

現在、イタリアとポルトガルで試験運用を行っている。また、ラテンアメリカでも2022年中にもう1市場開設する予定というから、2022年中に(現在の)3市場から合計5市場に拡大することになりそうである。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Akihito Mizukoshi)

ベンチャーウォーター、フィンテック、バイオテックへの投資

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

みなさん、再び仕事の世界へようこそ。デスクへと無事にたどり着き、暖かく健康であることをお祈りしている。現時点の新型コロナウイルス感染症の隆盛は非常に困った事態だが、ロックダウン、大量死、抱擁の欠如という不安の中で、生産性を取り戻すために苦労するのはおそらく2022年が最後だろう。そう願っている。

ともあれ、今日は世界情勢をつかの間でも気にせずに済むような楽しいネタをたくさん用意した。

今日はまず、Liquid Death(リキッド・デス)についてお話ししよう。この見事な名前の会社は、その名の通り、喉の渇きを水で「殺して」くれる企業だ。それがこの会社の簡潔な説明である。Liquid Deathは缶入りの水を販売しているが、反プラスチックのスタンスと一般的なヘビーメタルの雰囲気に合わせて作られている。うまいやり方だ。

しかし、Liquid Deathは今週7500万ドル(約86億7000万円)の調達もしていて、最近は何を作るにも金がかかるものだと思わずにはいられない。なぜ水販売の会社が1回の投資でプレシード資金をすべて調達する必要があるのだろうか?何のためにそのお金が必要なのか?研究?水を売っているだけなのに!

数年前には、スタートアップを作るのがかつてないほど安くなったという一般的な見方があった。既製のソフトウェア、クラウドコンピューティング、最新のフィンテックのバックエンドといった現代のビジネス要素を組み合わせることは、ますます速くそして安く行うことができるようになった。ソフトウェア開発者を雇うコストの高さを除けば、スタートアップ企業はより少ないコストでより多くのことを行うことができるようになるように見えた。

それなのに、スタートアップたちは、かつてないほど多くの資金を調達しているのだ。The Exchangeは来週、ベンチャーキャピタルのデータを調査する予定だが、ベンチャーキャピタルやスタートアップクラスが嬉々として資金を動かし続けていることは明らかだ。そうした中で、Crunchbaseのデータによれば、Liquid Deathはこれまでに1億3000万ドル(約150億2000万円)以上を調達している。

スタートアップコストの削減とメガラウンドの実現、できるものなら見せて欲しい。マーケティング費用を自己資本から調達しているのだろうか?そうだとすると、ちょっと心配になる。

(なお、Liquid Deathは利益率が高く、経済的にも優れた凄いビジネスである可能性があるが、私はその数字を知らない。しかし、もしそんなに調子が良いのなら、なぜ7500万ドル[約86億7000万円]も必要になるのか?何か私がまだ知らないことがあるのだろうか?)

Levelが資金調達

メモ帳を掘り起こして、Level(レベル)についての簡単な説明をしよう。Levelは、2021年2月に記事で取り上げた会社だ。そのときこの会社は、150万ドル(約1億7000万円)の資金調達を行ったばかりだったが、私たちはその事業内容を「現在のフリーランス収入をもとに、従来なら不可能だった前借りを行えるような信用供与を行う」と説明した。

多くの人々が、働いてはいるものの資産重視のライフスタイルを送っていない世界では、キャッシュフローではなく資産に基づく融資は少々ばかげているので、これはすばらしいモデルだった(もちろんこれは総論賛成各論反対のブーマーたちを皮肉る丁寧な言い方だ)。

ともあれ、Levelは2021年の終わりに今度は700万ドルのシリーズAを行った。Anthos Capitalがこのラウンドを主導し、NextView Venturesやその他の既存投資家も資金を提供した。今回の資金は、同社のデータによれば「10倍」の規模に成長した後に得られたものだ。

Levelのニュースで最も注目すべき点は、同社がより多くの資金を調達したという点ではなく、その目標設定が非常に大きいという点だ。同社は「マイクロビジネスのための金融OS」を構築したいのだという。

伝統的な金融機関は小規模ビジネスを相手にしたがらないので、これはよく理解できる。フィンテックは、技術を応用して壁を壊し、より多くの人々に価値をもたらす手法であるべきだと私は考えている。Levelは、その線に沿った活動をしながら、ベンチャー企業に役立つビジネスを構築しているように見える。すばらしい!

PsyMedがバイオテックファンドを組成

a16zがベンチャー、グロース、バイオテック投資のために90億ドル(約1兆円)の新規ファンドを設立したというニュースを聞くと、市場には小規模なファンドも存在することを忘れそうになる。また、その中には実際かなり新しいものもある。

バイオテック分野では、PsyMed Venturesが2500万ドル(約28億9000万円)のファンド組成に奔走しており、その第一次分の800万ドル(約9億2000万円)が銀行に入金されたところだ。私は彼らのモデルについてもう少し掘り下げるために、金曜日(米国時間1月7日)にこのグループと対話をした。

まずは基本。PsyMedには3人の投資パートナーがいる。Dina Burkitbayeva(ディナ・ブルキトバエワ)氏、Greg Kubin(グレッグ・キュービン)氏、Matias Serebrinsky(マティアス・セレブリンスキー)氏だ。最初のファンドサイズの目標からもわかるように、この会社は、麻薬医療分野とその関連分野での初期段階の投資を行う。このグループは共同作業は初めてではなく、以前にもAngelList(エンジェルリスト)の技術を使って投資グループを結成し、これまでに約1500万ドル(約17億3000万円)の投資を行っている。

PsyMedについて少し考えてみよう。まず、医療用にテストするものの対象の境界を広げていることに興奮する。私の国では、慎重さがこの種の仕事を妨げ、私たちに不利益を与えている。第二に、バイオテックへの投資は、たとえば企業向けソフトウェア市場で見られるようなものよりもずっと早く上場する企業が多く、私にとって興味深いものだ。そのため、より多くの企業を、よりすばやく、より頻繁に見ることができる。

バイオテック企業へのベンチャー投資家にとっては、今日のユニコーン時代によく見られるような流動性の可能性よりも早い時期に流動性が得られることを意味する。

ブルキトバエワ氏、キュービン氏、セレブリンスキー氏と話していると、規制、科学、医学の進歩の面で合流点に近づいているという印象を受けた。この合流点では、人間の厄介な問題に対する多くの優れた新しい治療法が生み出される可能性がある。たとえばPTSD、治療抵抗性うつ病など、そして個人的に気に入ったのは薬物利用障害だ。

ともあれ、このグループが新しいファンドをどのように活用し、初期段階の製薬スタートアップをどれだけ早く公開市場に送り出すことができるかに注目していきたい。2022年も来年も、バイオテックのS-1申請書類をたくさん読めることだろう!

最後に

来週からEquityは週3回のペースに戻るので、お好きなポッドキャストアプリでお会いしよう。ではまた!

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

【TC Tokyo 2021レポート】「自分の成長が止まることへの危機感」「巨大市場でド本命の事業を」―スマートバンク・堀井氏と令和トラベル・篠塚氏に聞く連続起業家

【TC Tokyo 2021レポート】「自分の成長が止まることへの危機感」「巨大市場でド本命の事業を」―スマートバンク・堀井氏と令和トラベル・篠塚氏に聞く「連続起業家」

12月2、3日にオンラインで開催された「TechCrunch Tokyo 2021」。そこで行われた「日本でも増える連続起業家」をテーマにしたセッションのレポートをお伝えする。登壇者は、日本を代表する連続起業家(シリアルアントレプレナー)であるスマートバンク代表取締役の堀井翔太氏と、令和トラベル代表取締役社長の篠塚孝哉氏。TechCrunch Japan編集部の安井克至が進行を務めた。このセッションでは日本を代表する連続起業家である2人に、再び起業を行うというのはどういった気持ちや目的からなのか、さらに2回目では以前の経験がどう活きたのかを聞いた。

堀井翔太氏(スマートバンク 代表取締役)

堀井氏はVOYAGE GROUPへ入社したのち、最年少で子会社社長へと就任。その後、日本初のフリマアプリである「FRIL」を運営するFablicを創業している。さらに2016年には同社を楽天に売却後、2018年まで代表取締役CEOを務めた。2019年にはVisaプリペイドカードと家計簿アプリがセットになった新しい支出管理サービス「B/43」(ビーヨンサン。iOS版)を開発・運営するスマートバンクを設立している。

堀井翔太氏(スマートバンク代表取締役)

堀井翔太氏(スマートバンク代表取締役)

【TC Tokyo 2021レポート】「自分の成長が止まることへの危機感」「巨大市場でド本命の事業を」―スマートバンク・堀井氏と令和トラベル・篠塚氏に聞く「連続起業家」

篠塚孝哉氏(令和トラベル 代表取締役社長)

篠塚氏は、2011年にLoco Partnersを創業し2013年に宿泊予約サービス「Relux」をスタート。2017年春にはKDDIグループにM&Aにて経営参画し、最年少(当時)となる子会社社長に就任。2020年にLoco Partnersの社長を退任した後、2021年4月に海外旅行のDTA(デジタルトラベルエージェンシー。オンラインのみの旅行代理店)として令和トラベルを創業。第一種旅行業免許(観光庁長官登録旅行業:第2123号)を取得した。旅行体験のアップデートを目指し、海外旅行予約アプリNEWT(ニュート)のティザーサイトを公開。優先登録の受付も開始した。

篠塚孝哉氏(令和トラベル代表取締役社長)

篠塚孝哉氏(令和トラベル代表取締役社長)

 

同世代がまだまだ活躍しており、自分自身の成長が止まってしまうことに危機感

まず2回目の起業を行った理由を堀井氏に伺うと、Fablicを起業し楽天傘下でのCEOを退任後、1カ月ほど休みを取っていたが、特にすることがなく飽きてしまったという。そんな中で、同世代の人間がまだまだ活躍しているという現状に触発されたほか、自分自身の成長が止まってしまうことへの危機感が強くなり、再び起業を行おうと思ったそうだ。

また何より、Fablicという、ユーザーや取り扱い規模の大きなサービスを経験したことから、もう1度ゼロから作り上げてみたいという気持ちが強くなったことが大きかったとしている。

さらに巨大なマーケットで「ド本命の事業をやってみたい」

国内旅行を事業とするLoco Partnersを起業した篠塚氏は、M&AによりKDDI子会社での社長を経て退任。その1年後ほどに海外旅行事業に取り組みたいと思い令和トラベルを創業した。ミッションとして「あたらしい旅行を、デザインする。」またビジョンとして「令和時代を代表する、デジタルエージェンシーを創る。」掲げている。

同氏は創業の理由として、「2回目の起業をするからには、もっと巨大なマーケットでチャレンジしたい」と考えたという。海国内旅行対象のオンライン旅行事業は4000億円ほどのマーケットだが、海外旅行市場はさらに巨大な4兆4000億円(コロナ禍前)規模のマーケットとなっており、ここで「ド本命の事業をやってみたい」ということで始めたそうだ。【TC Tokyo 2021レポート】「自分の成長が止まることへの危機感」「巨大市場でド本命の事業を」―スマートバンク・堀井氏と令和トラベル・篠塚氏に聞く「連続起業家」

またコロナ禍により、ホテルや航空会社の稼働率が低くなっており、ピーク時では仕入れが難しかった施設からも仕入れ可能で「ある種のボーナスタイム」であること、国内競合企業が財務体質を大幅に悪化させており、現在であれば財務優位が作れること、後発の新規参入者であるため身軽にすべてを実現できることを挙げた。海外旅行自由化以来の、1度あるかないかの参入チャンスであると捉えて起業したという。【TC Tokyo 2021レポート】「自分の成長が止まることへの危機感」「巨大市場でド本命の事業を」―スマートバンク・堀井氏と令和トラベル・篠塚氏に聞く「連続起業家」

「ヒト・モノ・カネ・管理の4区分について、社長の仕事において何に時間を使うべきなのか」を考えていた

一口に「連続起業」とはいっても、業種が変わった堀井氏と同業種である篠塚氏では考えが違うのではないか。また両名に2回目だからこそわかった・大変だったことについても尋ねていた。

篠塚氏は、過去に積み重ねてきた「信頼残高」をフルに使えた点が非常に有利だと感じたそうだ。具体的には、Relux運営時代のクライアント・株主・社員・会員に提供してきたものの実績が、資金調達や人材採用の面で影響したという。

また「ヒト・モノ・カネ・管理の4区分について、社長の仕事において何に時間を使うべきなのか」を考えていたことが役に立ったとも述べた。篠塚氏によると、多くの成長するユニコーンはモノに集中にしているものの、創業期は「ヒト・カネ・管理」に時間がかかるそうだ。そこで最初のうちに負荷をかけることにして、ヒトは人事のヘッドとしてCHRO(Chief Human Resource Officer)を採用しよう、カネは最初から22億円を資金調達しようと決めて実行したという。管理についても、この半年間として一気に投資して体制を構築してきたそうだ。これらにより結果としてモノに集中する時間を作れるとみているとした。

創業1年目から資金調達面でブーストできたが、異業種での起業ならではの苦労も

堀井氏は、サービスを作る原点として「課題を見つけて、その課題を解決するプロダクトを作る」ことを会社と個人のポリシーとしており、その内容が違っただけという認識だという。特に異業種だからどうこうといった感覚はないとしていた。

また信頼残高が使える点が大きかったという。プロダクトをまだリリースしていない時期でも、以前の実績から大きな金額を集めることが可能だった。1度目の際はそうした実績がなかったためヒトと資金調達に苦労したが、2回目は創業1年目から資金調達面でブーストできたことが大きいと語った。

またヒト・モノ集め、プロダクト作成のプロセスは、1回目と2回目の創業で踏襲できたものの、異業種であるため解決する課題が変わり、事業に対するアプローチや戦略が違うことから、その点は苦労したという。金融関連の免許を取得するために1年程度かかるなど金融関連の法律・規制に従う必要があり、どうしてもまったく知識がないものが出てきたそうだ。【TC Tokyo 2021レポート】「自分の成長が止まることへの危機感」「巨大市場でド本命の事業を」―スマートバンク・堀井氏と令和トラベル・篠塚氏に聞く「連続起業家」

連続起業と信頼残高

堀井氏と篠塚氏の両者とも、連続起業においては、信頼残高を積み重ねておくことが重要だと口にしている。いわゆる「チート」「ハック」のようなものはないという。「サービスを伸ばした」「M&Aなどの形で投資家にリターンを返した」「社員にもリターンが出た」など、結果による実績の積み上げでしか貯められないものだという点も共通だ。両名とも「起業家は、結果でお返しするしかない」「とにかく数字を出す」としていた。

もし、そうした信頼残高のない人が連続起業を行う場合のアドバイスとしては、堀井氏は、その本人の得意なやり方のうち、(他の人のなど)うまくいっている成功体験を試してほしいと語った。篠塚氏は、1回目の失敗を恥じることなく、何を学んだのかを確認すること、また大きく始めるのは難しいため小さな実績を積み上げていくしかないと指摘した。その積み上げを貯めて、次につなげることを繰り返すことを勧めていた。

また新たな起業を行うことあるのか

最後に「また新たな起業を行うことあるのか」と問うと、両名とも現在の会社を大きく成長させることしか考えていないと答えた。とはいえ、堀井氏は、将来現役でいたいと考えており、もし今後現在手がけている会社をリタイアしたらまた何かしたいと語った。篠塚氏は、他社との協力など今の会社・事業を伸ばすため何らかの新事業を行う機会があればぜひやりたいとしていた。

2022年、注目すべき東南アジアのスタートアップ

東南アジアのスタートアップや資金調達の話を取材している私にとって、2021年を表す言葉としては、「whoa!(うわぁ!)」がぴったりだ。2021年は、世界の投資家がこの地域の技術エコシステムに注目し始めただけでなく、実際に資金を投入し始めた年でもあった。

国際的なパートナーに支えられて、Alpha JWCAC VenturesJungle Venturesなどの東南アジアに特化したVCが、過去最大の資金を調達した。

関連記事:インドネシアのVC、Alpha JWCが490億円の第3号ファンドを組成、東南アジア最大のアーリーステージ対象のVCファンドに

The Kenの報道によると、Grab(グラブ)やSea(シー)のIPOのようなエグジットが東南アジアのスタートアップエコシステムへの関心を高める中で、米国のVCであるA16z、Valar Ventures、Hedosophia、Goodwater Capitalなども、地域事務所を設立している(あるいは設立を計画している)。Golden Gate Venturesの包括的なレポートでは、BとCラウンドの増加もあって、記録的な数のエグジットを予測している

「東南アジア」という言葉を使うのは、いつも少し気が引けているのだが、それはこの地域があまりにも大きく複雑だからだ。もちろん簡潔に表現したい場合には一番簡単な選択肢なのだが。東南アジアは11カ国で構成されていて、たとえばシンガポール、ミャンマー、ラオス、ベトナム、フィリピン、インドネシアの間には当然ながら大きな違いがある。

グローバルな金融センターとして知られるシンガポールのスタートアップエコシステムは、近隣諸国と比べると独自のカテゴリーに属していると言えるだろう。特にインドネシアは、世界第4位の経済大国であり、人口2億7350万人に達する東南アジアで最も人口の多い国であるため、特別な注意が必要だ。両国とも2021年にはかなりの数のユニコーンを輩出している。たとえばシンガポールでは、Ninja Van(ニンジャバン)、Carousell(カルーセル)、Carro(キャロ)、Nium(ニウム)などがユニコーンのステータスを獲得したスタートアップだ。

シンガポールのスタートアップは他の東南アジア諸国(Niumの場合は米国とラテンアメリカ)に焦点を当てる傾向があるが、一方インドネシアを拠点とする創業者たちは、中長期的な国際展開計画を持っていたのかもしれないが、私が話をした創業者の多くは、少なくとも来年は国内展開に焦点を当てる計画のようだ。インドネシアは広大なだけでなく、地理的にも複雑で、1万7000以上の島があり、そのうち約6000の島に人が住んでいる。通常スタートアップ企業は、グレーター・ジャカルタ地域で事業を開始した後、バンドンやスラバヤなどの主要都市に進出する傾向があったが、特にフィンテックやeコマースのスタートアップ企業を中心に、いまや多くの企業が小規模な都市に注目している。

以下にご紹介するのは、2021年に飛躍し2022年に注目すべきいくつかの分野だ。

投資用アプリ

ミレニアル世代や初めての個人投資家を対象とした多くの投資アプリが、2021年初めに小規模なアーリーステージのラウンドで調達を行ったが、数カ月後にはそれよりはるかに大きな追加調達が行われた。例えばインドネシアを拠点とする暗号資産に特化したPintu(ピントゥ)、ロボアドバイザーのBibit(ビビット)、Ajaib(アジャイブ)、Pluang(プルアン)、シンガポールを拠点とするSyfe(セイフ)などがある。

インドネシアでは、個人投資の割合はまだ比較的低いが、その数はパンデミック期間中のファイナンシャル・プランニングへの関心の高まりと、株式インフルエンサーの人気によって、一部の人たちからの懸念にもかかわらず、増加している

インドネシアの中小企業に特化したスタートアップがフィンテックを深化させる

政府の発表によると、インドネシアには6200万社の中小企業(SME)があるとされているが、複数の創業者から聞いたところによると、特に家族経営の企業や個人事業主は計上されていない可能性があるため、この数字は実際よりも低くなっている可能性があるという。その正確な数はともかく、中小企業の多くはエクセルや紙の台帳で会計処理をしているため、技術系のスタートアップにとっては絶好の機会が広がっている。

最も注目すべきは、競合する2つの簿記アプリのBukuWarung(ブクワルン)とBukuKas(ブクカス)が、2021年多額の資金を調達したことだ。両社とも、当初は中小企業のデジタル化を支援することに注力していたが、最終的には、ユーザーがソフトウェアに入力したデータを利用して信用力を判断し、運転資金の融資などの金融サービスに製品を拡大する予定であるという点で互いに似通っている。

中小企業を対象とした他のスタートアップには、賃金前払いや給与管理のプラットフォームのGajiGesa(ガジゲサ)やWagely(ウェイジリー)などがある。

ソーシャルコマース

インドネシアの大都市に住んでいる人には、eコマースのプラットフォームの選択肢が多いのだが、地方では選択肢が少なくなる。これは、物流インフラが細分化されていることが一因で、商品の受け取りにコストと時間がかかることが問題なのだ(ただし、SiCepat[サイセパット]、Advoctics[アドボクティクス]、Kargo[カーゴ]、Waresix[ウェアシックス]などのスタートアップ企業もこの問題に取り組んでいる)。

そこで、中国のPinduoduo(拼多多、ピンドゥオドゥオ)やインドのMeesho(ミーショ)の成功をこの地で再現しようと、Super(スーパー)、Evermos(エバーモス)、KitaBeli(キタベリ)といったソーシャルコマースのスタートアップが登場している。いずれも、日用雑貨や食品などの生活必需品を対象としていて、同じ地域に住む人たちがまとめて注文を行うことで、サプライチェーンをより効率的かつ安価にするソーシャルコマースモデルを利用している。その意味では、少なくとも部分的には物流のスタートアップと呼ぶことも可能だ。

eコマースアグリゲーター

Thrasio(スラシオ)のように、小規模なeコマースブランドを買収するスタートアップ企業は、数年前から欧米で多くの資金を集めてきた。しかし、このようなeコマースアグリゲーターが東南アジアに進出するには、ある程度の時間が必要だった。

2021年、2つのeコマースアグリゲーターがベンチャーキャピタルからの資金提供を受けて正式に発足し、数ヵ月後にはどちらも追加の資金調達ラウンドを実施した。多くのeコマースアグリゲーターがAmazon(アマゾン)の販売者を中心に活動しているのに対して、Una Brands(ウナ・ブランズ)は「セクターは問わない」としている。アジアパシフィックを横断する有力なマーケットプレイスが存在しないため、同社はTokopedia(トコペディア)、Lazada(ラザダ)、Shopee(ショッピー)、Rakuten(楽天)、eBay(イーベイ)などのプラットフォームからブランドを探すシステムを開発した。一方、Rainforest(レインフォレスト)は、アジアのAmazon販売者に焦点を当てているが、消費財のコングロマリットであるNewell Brands(ニューウェル・ブランド)のオンライン版を目指すことで、他のアグリゲーターとの差別化を図っている。アジアを拠点とするeコマースの販売者が多いことから、Una BrandsとRainforestの両方が成長し、他のアグリゲーターが登場することも期待される。

画像クレジット:Abdul Azis/ Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:sako)

後払い決済「クラーナ」がブラウザー機能拡張を公開、支払いとクーポン利用が可能

フィンテックスタートアップKlarna(クラーナ)は、同社のモバイルアプリが提供するさまざまな機能をデスクトップPCでも使えるようにするブラウザー機能拡張を公開した。Klarnaの決済を管理する以外に、チェックアウトページに進むと自動的にクーポンコードを適用することができる。

Klarnaはこの自動クーポン機能のためにPiggy(ピギー)を買収した。Piggyが最初に作ったのは、何かを買った時にクーポンやキャッシュバックの存在を知らせるブラウザー機能拡張で、FinancerFWDが最初にこの買収を報じた。Klarnaは契約条件を公表していない。

Klaranaのこの動きは興味深い、なぜならつい最近PayPal(ペイパル)がHoney(ハニー)を買収したばかりだからだ。Honeyもチェックアウトページでクーポンコードを使うためのブラウザー機能拡張を作った会社だ。言い換えると、PalPalとKlarnaは、ショッピング用ブラウザー機能拡張を支配するための開発競争をしている。

既存のPiggyユーザーは新しいKlarna機能拡張に移行される。Klarnaのアカウントを新規作成する際、既存のPiggyのデータを移行するか、1から始めるかを選ぶことができる。現在Piggyでは70人の従業員が働いていて、買収前時点で120万人のユーザーがいた。チームはKlarnaに加わり、現在Piggyのクーポン機能を他のKlarna製品に統合する作業に取り組んでいる。

Klarnaではクーポン集約機能の他に、ユーザーはキャッシュバックやギフトカードを貯めることもできる。対象は国によって異なり、米国とドイツでは報酬をキャッシュバックの形で受け取り、英国とフランスではギフトカードを受け取る。

画像クレジット:Klarna

画像クレジット:Klarna

しかしKlarnaの新製品は、単なるHoneyライクな機能拡張ではない。Karnaの後払い決済(BNPL)を使うためにも使える(そもそもKlarnaは分割払いでよく知られている)。現在、高額の買い物の支払いを分割するためにKlarnaの機能を利用するにはいくつかの方法がある。

Klarnaボタンの付いているチェックアウトページにいる時は、Klarnaアカウントでログインして、後払いを選ぶことができる(Klarnaアカウントを使って今すぐ払うこともできる)。

Klarnaは、店舗内購入でもBNPLを使えるオプションも提供している。一部の地域では、最大30日後に支払えるカードも提供していて、オンラインでも店舗内でも使える。

しかし、元々Klarnaをサポートしていないオンラインストアで後払いしたいときはどうすればいいか?Klarnaのモバイルアプリを開いてチェックアウトページ内でワンタイムカードを作成することができる。カードは普通のVisaカードのように使えるが、分割払いでカードに請求される。

Klarnaの新しい機能拡張を使うと、ワンタイムカードをデスクトップブラウザーで作ることができる。支払いの段階でカード情報を決済画面にコピー&ペーストすればよい。

モバイルアプリとブラウザー機能拡張は同期されている。例えばデスクトップで保存した項目をモバイルアプリで追跡することができる。現在この機能拡張はGoogle ChromeとMicrosoft Edgeで利用できる。

同社はFirefoxとSafariでも機能拡張を提供する予定だ。米国、英国、ドイツ、およびフランスのユーザーが同機能拡張をダウンロードできる。他の国々にもいずれ展開する予定だ。

この新製品によって、KlarnaはB2B決済ビジネスだけでなく、消費者向け商品も作りたいことを改めて示した。PayPalはデジタルウォレット業界の明らかなリーダーだ。果たしてKlarnaがPayPalに挑んで、消費者がオンラインで支払うときの習慣になれるのだろうか、その成り行きは興味深い。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nob Takahashi / facebook

銀行口座を持たないインドネシアの労働者向けサービスGajiGesaが約7.4億円調達、給料日前に給料を引き出せるEWAに注力

GajiGesaの給料日アクセス機能のユーザーフロー

インドネシアの労働者向けサービスに特化したフィンテック企業であるGajiGesa(ガジゲサ)は、プレシリーズAで660万ドル(約7億4500万円)の資金を調達したことを発表した。このラウンドは、MassMutual Ventures(マスミューチュアル・ベンチャーズ)がリードし、January Capital(ジャニュアリー・キャピタル)、欧州のEWA(給与サイクルの終了前に未払い賃金の一部を利用することができる金融サービス)会社のWagestream(ウェイジストリーム)(EWAはGajiGesaの主要機能)、Bunda Group(ブンダ・グループ)、Smile Group(スマイル・グループ)、Oliver Jung(オリバー・ジョン)氏、Patrick Walujo(パトリック・ワルジョ)氏を含むNorthstar Group(ノーススター・グループ)のパートナー、Nipun Mehra(ニップン・メーラ)氏(UlaのCEO)、Noah Pepper(ノア・ペッパー)氏(StripeのAPAC責任者)が参加した。戻ってきた投資家には、defy.vc(ディファイ.vc)、Quest Ventures(クエスト・ベンチャーズ)、GK Plug and Play(GK プラグ&プレイ)、Next Billion Ventures(ネクスト・ビリオン・ベンチャーズ)などがある。

GajiGesaの詳細については、250万ドル(約2億8200万円)のシードラウンドを実施した2月のTechCrunchによる同社のプロフィールを確認して欲しい。

アグラワル氏とマリノフスカ氏は、プレスリリースの中で、GajiGesaのチームは過去6カ月間で2倍の50人以上になったと述べている。このスタートアップは、今回の資金調達を、製品開発、インドネシアでの事業拡大、東南アジアの新市場への参入に充てる予定だ。

同社は、銀行口座を持たない労働者を対象としており、毎月の給料を待たずにすぐに給料を引き出すことができる「アーンド・ウェッジ・アクセス(EWA)」に注力している。

GajiGesaは現在、工場、プランテーション、製造業、小売業、レストラン、病院、テック企業など、さまざまな分野の120社以上の企業と取引している。同社は、顧客企業を対象とした調査によると、従業員の80%以上がEWA機能を利用したことで非正規の貸金業者の利用をやめるようになり、40%が請求書の支払いやデータリチャージなど、同社プラットフォーム上の他の金融サービスを利用しているとしている。

同社は「GajiTim(ガジティム)」と呼ばれる雇用者向けアプリを提供しており、これは東南アジアで「最初で最大の統合型従業員管理ソリューション」であると主張している。つまり、雇用主は、パートタイムやフルタイムの従業員、ギグワーカーなど、幅広い労働力の管理業務を行うことができるということだ。同社によると、GajiTimには現在20万人以上のユーザーがいるという。

今回の投資について、MassMutual VenturesのマネージングディレクターであるAnvesh Ramineni(アンヴェシュ・ラミネニ)氏は「(GajiGesaの)統合プラットフォームは、顧客中心の製品設計と世界クラスの技術インフラを組み合わせたもので、慢性的にサービスが行き届いていない市場に力を与え、東南アジアの何百万人もの人々の経済的回復力を高めるために、独自の地位を確立しています」と述べている。

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(文:Catherine Shu、翻訳:Akihito Mizukoshi)

地域金融機関や中小企業の補助金・助成金申請業務のDXを支援する「補助金クラウド」クローズドβ版が11月公開

Stayway(ステイウェイ)は10月28日、地域金融機関や信用金庫における補助金・助成金対応業務のDX(補助金テック)を支援する「補助金クラウド」のクローズドβ版について、11月1日にリリースすると発表した。同クローズドβ版は、地域金融機関・信用金庫に限定提供を開始する。2021年度の正式版リリースを前提に、サービスの改良と開発を推進する。

今回のクローズドβ版では、補助金・助成金情報の提供の自動化に特化した機能を搭載しており、地域金融機関等とともにPoCを進め、今後機能の強化を図る。オンライン中心の取引が広がる中で、従来アナログに管理・分散している補助金等情報や、融資手法をデジタル化することで、より短い時間で補助金の情報収集・申請支援・融資を達成するという。

補助金クラウドは、国や自治体ごとに公開され、情報が散在している補助金などの複雑な情報収集の一元化や、外部の専門家に外注しブラックボックス化しがちな申請支援業務、煩雑化した融資業務を一貫して支えるプラットフォーム。

地域金融機関などで属人的になっている補助金・助成金案内業務の自動化や、外注により不透明になっている補助金など申請支援業務の可視化、さらにはつなぎ融資のスピード感を向上させるなど、補助金・助成金対応業務のDXにより、地域金融機関などの戦略的・効率的な業務プロセスの構築が可能となるという。

クラウド上で稼働するいわゆるSaaS型となっており、地域金融機関などの利用企業は自社ロゴをオンラインでアップロードすることで、自社名義のサービス(OEM型)として、法人顧客に対して補助金などの情報の自動提供、架電・メール・Zoomによる補助金・助成金支援業務のプロセス管理、補助金採択後のスムーズな融資が統合的に可能になる。

業務のデジタル化による工数軽減や法人顧客の採択率の向上に加えて、補助金などを利用する法人顧客の満足度を高める仕組みも強く意識して設計しており、「何を利用してよいかわからない」「申請するのが難しい」といった多くの事業者が抱える補助金関連の課題を解決するGovTech(ガブテック)の側面も有している。

また補助金クラウドでは、導入を希望する地域金融機関・信用金庫に伴走し、補助金等情報提供業務の効率化や業務コストの抑制・新たな収益源の獲得支援など、当該企業の提供する補助金・助成金サービスの課題に沿った最適なプラットフォームを設計するという。導入後もStaywayメンバーが運用を支援することで、業務フローの定着と、補助金・助成金サービスの継続的な付加価値向上に必要な改善案を提案するとしている。

地域金融機関や中小企業の補助金・助成金申請業務DXを支援する「補助金クラウド」クローズドβ版が11月公開

世界中からの移民の人たちが金融サービスを利用できるよう支援するZolveが約45.5億調達

米国の移民が金融サービスを利用できるようにすることを目的としたネオバンキングのスタートアップ企業であるZolve(ゾルブ)は、サービスの展開を開始するにあたり、新たな資金調達ラウンドで4000万ドル(約45億5000万円)を調達したことを米国時間10月27日に発表した。

関連記事:母国の信用履歴利用を可能にする銀行取引プラットフォームZolveが15.8億円調達

DST Global(DSTグローバル)のパートナーが、ベンガルールに本社を置くこのスタートアップのシリーズA資金調達ラウンドを主導した。今回のラウンドでは、Tiger Global(タイガー・グローバル)、Alkeon Capital(アルケオン・キャピタル)、Lightspeed Venture Partners(ライトスピード・ベンチャー・パートナーズ)、Accel(アクセル)といった既存の投資家に加え、設立10カ月の同社を2億1000万ドル(約238億9600万円)と評価し、過去最高の5500万ドル(約62億5800万円)を調達した。


毎年、何万人もの学生や社会人が、高等教育を受けるため、あるいは仕事のために、インドから米国へと旅立っている。新しい国で数カ月過ごした後でも、現地の銀行からクレジットカードを発行してもらうのに苦労したり、その他のさまざまな金融サービスを利用するために割高な料金を支払わなければならなかったりする。

インドで注目されている起業家で、前職のスタートアップをライドハイリングの大手Ola(オラ)に売却したRaghunandan G(ラグナンダン・G)氏は、2021年の初めにインド人のためにこの問題を解決しようと決心した。

Zolveは2021年9月、2000人の顧客(それと、7万人を超えるウェイティングリストがある)にクレジットカードを提供したが、すぐに2つの気づきがあったとTechCrunchのインタビューで述べている。

それは、顧客がZolveのサービスを幅広く利用し、期限内に支払いを済ませているだけでなく、オーストラリア、英国、カナダ、ドイツなど他国から移住してきた人々の需要も有機的に取り込んでいたことだという。

「私たちの基本的な価値提案は、クレジットカードです。クレジットカードの他に、現地の銀行口座とデビットカードがあります。私たちは、お客様が自分の銀行口座にお金を預けることを想定していませんでした。入金されるとしても、数百ドル(数万円)、数千ドル(数十万円)程度だろうと考えていました。しかし、実際には何万ドル(数百万円)ものお金を預けて、この口座をメインの銀行口座として使っている人がいるのです。現在、私たちは200万ドル(約2億2000万円)の預金があります」と同氏は語ってくれた。

Zolveは、このような初期段階での人気を受けて、2022年早々には複数の国からの移民の人たちにサービスを拡大する予定だ。

Zolveは現在、米国とインドの銀行と提携し、保険料や保証金を支払うことなく、消費者がシームレスに金融商品を利用できるようにしている。Zolveがリスクを引き受けることで、海外の銀行がZolveの顧客にサービスを提供できるようになった。

Zolveは、インドの銀行と協力することで、個人を明確にし、保険責務を請け負うことができた。Zolveは現在、このモデルを他の国の顧客にも適用することを計画している。

ラグナンダン氏によると、Zolveは幸運にも希望する投資家を見つけ、参加してもらうができたという。DST Globalのパートナーの多くは移民であり、新たに加わった3人の投資家も、同じような分野で活動するいくつかのスタートアップ企業を支援してきたことを教えてくれた。

「お客様のニーズに合った公正な金融商品へのアクセスは、人々の生活に直接的かつ意味のある影響を与えます。Zolveに投資し、米国やその他の市場で世界水準の金融サービス商品や体験を移民の人たちに提供するというラグナンダン氏のビジョンを支援できることを大変うれしく思います」。と、LightspeedのパートナーであるBejul Somaia(ベジュール・ソマイア)氏は語っている。

「Zolveは、特に顧客の獲得と利用において急速に成長していますが、これはチームの実行力とZolveがターゲットとする顧客層の大きなニーズを反映したものです。今後の展開に期待するとともに、Zolveの将来の成功を確信しています」と述べている。

また、Zolveは積極的にチームを拡大する予定であると述べている。同社の従業員数は、2021年の初めにはわずか5名だった。その後、100人に増え、現在はいくつかの役割を担う150人の採用を検討している。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Akihito Mizukoshi)

化学業界向けマーケットプレイスのアジアなどグローバル展開のためBluePalletが5.7億円調達

メーカーと化学業界をつなぐオンラインマーケットプレイスBluePallet(ブルーパレット)が、石油化学製品販売会社Vinmar International(ビンマー・インターナショナル)の子会社であるVinmar Ventures(ビンマー・ベンチャース)が主導する資金調達ラウンドで、500万ドル(約5億7000万円)を調達したことを発表した。

また同社は米国時間10月19日に、Alibaba.com上で「正式に」運営される初のインダストリアルコマースプラットフォームとなったことを発表した。これにより、BluePalletの化学品メーカーや流通業者のネットワークが、eコマースサイトで調達を行う世界中の何百万人ものビジネスバイヤーの目に触れることになる。

今回の資金調達により、BluePalletの総調達額は1000万ドル(約11億4000万円)となる。また化学業界のベテランであるTerry Hill(テリー・ヒル)氏(Barentz[バレンツ]北米CEO)、Mathew Brainerd(マシュー・ブレイナード)氏(Brainerd Chemical Co.[ブレイナード・ケミカル]CEO)、Bruce Schechinger(ブルース・シェチンガー)氏(National Association of Chemical Distributors[NACD、全米化学流通協会]前会長)も投資に参加している。

BluePalletは、2020年に当時設立3年目の化学品マーケットプレイスEchoSystem(エコーシステム)とフィンテック企業Velloci(ベローチ)が合併して誕生した。BluePalletの目標は、その「マーケットネットワークモデル」を適用して、これまで技術的な意味で遅れをとってきた巨大産業の取引を近代化することだ(私は1990年代後半に石油化学業界を取材していたのでよくわかる)。

化学産業はおもしろみがないと思われがちだが、身近な消費財の製造や医薬品、農業など、私たちが依存している多くの分野を支えている。

BluePalletは、自身の電子商取引モデルが、産業界の買い手と売り手に対して幅広い市場へのアクセスを提供すると同時に、規制遵守と責任ある流通の要件を「厳密に厳守」しているという。その上で買い手と売り手がサプライチェーンをよりコントロールできるのだと主張している。

BluePalletのサイトでは、3つの製品が提供されている。TradeHub(トレードハブ)は、ユーザーがネットワークツールを使って商品を探したり、掲載したりすることができる許可制のマーケットプレイス。TradePass(トレードパス)は、膨大な運営上、商業上、財務上のリスクデータポイントを「継続的に」確認することで「ネットワークの完全性」を確保することを目的とした「独自の」ビジネス検証技術。そしてTradeCart(トレードカート)は、決済処理、認証、物流を統合した独自のチェックアウトシステムだ。

また、今回の資金調達に合わせて、BluePalletは本社をシカゴからテキサス州オースティンに移転することを発表している。その理由は、化学産業が盛んなヒューストンに近いことと、オースティンの「活気ある技術と起業家精神の溢れる環境」を利用できることにある。

(かつてEchoSystemsを設立した)BluePalletのCEOであるScott Barrows(スコット・バロウズ)氏は、今回の資金調達は、同社の提供するサービスが認められたことを意味すると述べている(バロウズ氏は、現在LiveNation[ライブネーション]とTicketMaster[チケットマスター]に採用されているチケッティング・プラットフォームのEpic Seats[エピック・シート]とZeroHero[ゼロヒーロー]を、共同創業した経験も持つ)。バロウズ氏はAustin Britts(オースティン・ブリッツ)氏、Kevin Fuller(ケビン・フューラー)氏、Brian Perrott(ブライアン・べロット)氏と共同でBluePalletを設立した。

バロウズ氏はさらに「成長を続ける中で、東洋に目を向け、アジア地域でのプレゼンスを迅速に確立することを目指しています」と付け加えた。

スコット・バロウズCEO(画像クレジット:BluePallet)

世界の化学品市場では、アジア太平洋地域が最大の地域であり、2020年には3兆3400億ドル(約382兆4000億円)規模の市場の49%を占めている。なお北米は2番目に大きい地域で、市場の17%を占めている。BluePalletはNACDと提携しており、NACDの会員企業250社とその顧客75万人にアクセスできるため、バロウズ氏はこのスタートアップに大きな成長の余地があると考えている。

バロウズ氏は「このようなB2B取引で何ができるのか、その限界に大いに挑戦しています」とTechCrunchに語っている。

同社はマーケティングネットワークプラットフォームの構築を進める中で、既存のフィンテック企業との提携を試みてきた。

バローズ氏はTechCrunchに対し「最大手の企業でも1回の取引の上限は10万ドル(約1145万円)に設定していたり、もしくは化学業界との取引はしたくないと考えていることがわかりました。これは馬鹿げた話です」と語る。「なので、5兆ドル(約572兆5000億円)の化学産業のために、この問題を解決して、自分たちでこの技術を開発しようと決めたのです」。

バロウズ氏が強力な差別化要因と考えているのは、BluePalletが最大10億ドル(約1145億円)の取引に対応できることだ。

「このようにお金を動かすことができるようになった今、私たちはますます多くの国際市場に進出していきます」と彼はいう。「私たちは、これこそが鍵であり、多くのスタートアップ企業が新たに提供するものの中に欠けているものだと考えています」。

またバロウズ氏は、BluePalletが単なる「マッチメイカー」ではないことも強調している。

「他のほとんどのサイトは、文字どおりマッチングをするだけでおしまいです。彼らには実際の取引を完了させる能力がなく、代わりに当事者同士がオフラインで取引を完了させる仕組になっています。なので、私たちは業界の人々の商取引のやり方を真に変え、改善していくのです」。

画像クレジット:seksan Mongkhonkhamsao/Getty Images

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:sako)

【コラム】組込型金融ですべての企業がフィンテック企業になるわけではない

ソフトウェアが世界を席巻し始めてから10年に満たない頃、エンベデッドファイナンス(組込型金融)のビジネスモデルの革新と成長によりあらゆる企業がフィンテック企業になりつつある、という見出しが現れた。

このナラティブは、金融サービスセクターで起きている進化を単純化しすぎている。規制された環境での資金の保管・移動や信用供与は難しい。また、自社のオファリングを既存の金融機関と差別化するには、表面的な調整だけでは不十分だ。

フィンテック企業の本質は、ユーザーインターフェイスの強化や、金融サービスをエンドカスタマーに提供することを超えたところにある。それは「水面下にある重要な要素」、つまりフィンテック企業が顧客のために真に革新することを可能にするフルスタックのアプローチにある。

組込型金融は、中核的な金融セクター以外の企業やブランドによる金融サービスの提供を支援するものだ。これには多様なレベルの労力が企業に求められる。例えばStarbucksはアプリ内で統合されたウォレットと支払い機能を提供し、Lyftはドライバーにデビットカードを提供しているが、そうした取り組みに付随するものだ。しかし、それはStarbucksやLyftのフィンテック企業を作るものではない。

誇張の背後にある誤った解釈

「あらゆる企業がフィンテック企業になる」というスタンスの投資家たちは、ホワイトラベルの金融サービス(数十年前から存在する)の復活と、増え続けるバンキング、ペイメント、LaaS(Lending-as-a-Service)のプレイヤーを組み合わせた複数のアプローチを融合させることに強気の姿勢を示している。後者のアプローチでは、企業は多くの中核的な金融サービス業務をアウトソーシングしながら、金融プロダクトのエクスペリエンスをカスタマイズできる。前者は、埋め込み型デリバリーによるシンプルな流通だ。

金融サービスプロバイダーとして完全に機能する上での中核的な原則として、顧客向けプロダクト、取引インフラストラクチャ、リスク管理とコンプライアンス、顧客サービスの4つの要素が挙げられる。融資の場合は第5の原則がある。企業も資本を管理できる必要がある、というものだ。組込型金融は、企業がフィンテックであることの本質の大部分を回避することに役立つ。

ホワイトラベリング対「フィンテックになること」

組込型金融サービスは最近注目を集めているものだが、ホワイトラベルの金融サービスは何十年も前から存在している。例えば、ブランド付きクレジットカードは、ホワイトラベリングの一般的なパラダイムである。それはすぐに消費者の忠誠心を刺激する永続的な方法となったが、金融サービスにおける真の取り組みやノウハウを示すものではなかった。UnitedとAlaskaは、カード所有者である顧客に対して、信用調査、請求の設定、紛争処理を行うことはなく、また、カードにロゴを刻印することによってリスクを負うこともない。パートナーシップは航空会社にとって主要な収益源だが、リスクは金融機関側(Chase、Bank of America、Visa)にある。American Expressによると、クレジットカードローン未払い額の21%は、数年前にDeltaのクレジットカードを所有していた人々によって占められているという。

このホワイトラベルによるアプローチは、他のサービスでも一般的になりつつあり、携帯電話会社のバンキングオファリングのような形式で提供されるようになってきている。金融サービスは複雑で、規制が厳しいため、ブランドはほとんどの業務を専門家に委ねることを選択する。そのため、United、Delta、T-Mobileはそれぞれのブランドで金融サービスを提供しているが、フィンテック企業になりつつあることは決してない。

これとは対照的に、金融サービスをゼロから構築する機会を見出している企業もある。WalmartがGoldman Sachsの人材を獲得し、金融分野(Ribbitがトップ)への進出をリードするという動きは、真のフィンテック企業へのスピンアウトを約束するものだ。

コンプライアンスとリスク管理の専門知識への投資により、導入当初から詳細で関連性の高いインフラストラクチャを構築できるポテンシャルが高まる。これは小売業者の既存の多くのホワイトラベル付き金融パートナーシップの先を行く、重要なステップである。

サービスとしてのプラットフォームの制限

非金融企業が金融アプリケーションを構築するのを支援するツールやターンキーソリューションは、最近になって登場したものである。VCは、APIやバックエンドツールを介して、支払いや融資、そして最近ではバンキングプラットフォームサービス(BaaSとも呼ばれる)を構築する新しいプレイヤーに積極的だ。

支払いサービスや台帳サービスを手がけるスポンサー銀行や処理業者が直接提供する金融インフラストラクチャサービスとは対照的に、これらのプラットフォームは基盤となるインフラストラクチャを抽象化し、使いやすいAPIでラップし、リスク管理、コンプライアンス、サービスなどの中核的な金融要素をバンドルする。こうしたプラットフォームは、企業が金融サービスを提供する際にある程度の自己効力感を提供するが、その主な制限として、設計上汎用であるという点がある。

フィンテックは、従来の金融サービスでは見過ごされ、十分なサービスを受けられなかった顧客に、専門化を通じてサービスを提供する機会を見出した。伝統的な金融機関は、数百のSKUを保有し、すべてのセグメントにサービスを提供するゼネラリストモデルを長い間適用してきた。この戦略は必然的に、銀行が最も収益性の高い顧客のためのサービスにより多くの投資をし、そうした顧客のニーズに向けて最適化すること帰結した。収益性の低いセグメントには、古くて画一的なオファリングが残された。

こうした十分なサービスを受けていないセグメントにおけるフィンテックの成功は、コア顧客の固有のニーズに対応し、顧客のために設計されたプロダクトとサービスの構築に、飽くなき追求と集中力を注ぐことに基づくものだ。この約束を実現するために、フィンテックは、プロダクトのエクスペリエンスや機能セットから、インフラストラクチャやリスク管理、サービスに至るまで、スタックのすべてのレイヤーを革新する必要がある。

UIは差別化には不十分であり、全体的なユニット経済性を考慮しながら顧客のニーズに対応することが重要である。これらの問題に対するあるフィンテックの選択は、異なるセグメントを対象としている場合、他のフィンテックとはまったく異なる可能性がある。例えば、大規模な中小企業ではなくフリーランサー向けに最適化すると、どのデータソースを使用するかを決定したり、オンボーディングとトランザクションのリスクのバランスを調整したりすることに違いが生じてくる。

対照的に、サードパーティのプラットフォームプロバイダーは、幅広い企業に動力を供給し、複数のユースケースを可能にする汎用性を備えている必要がある。これらのサービスと提携している企業は、プロダクトの機能レベルでは構築とカスタマイズを行うことが可能だが、インフラストラクチャと中核的な金融サービスについてはプラットフォームパートナーに大きく依存しているため、パートナーの構成と機能に制限される。

そのため、組み込み型プラットフォームサービスは、クレジットカード処理のようなコモディティ化された単純なタスクには適しているが、エンド・ツー・エンドの最適化を必要とするバンキングのような、より複雑なオファリングで差別化する能力には限界がある。

より一般的にいうと、顧客の視点から考えると、特定のユーザーフロー内に限定された金融サービスを提供して全体的なユーザーエクスペリエンスを向上させる場合は、組み込み型フィンテックパートナーシップが最も効果的と言える。

例えば、企業は販売時点で、第三者プロバイダーを通じてクレジットを提供して購入を可能にすることができる。しかしながら、汎用的な金融サービスや独立型の金融サービスを考えると、組み込み型フィンテックのメリットははるかに小さい。

選ばれるプロダクトの構築

組込型金融の最大の支持者が主張するのは、大企業やブランドは、そのブランド認知度とインストールベースの故に、自社のプラットフォーム上の金融アドオンで成功することができるということである。

しかし、それは市場における選択の現実を見落としている。顧客が会社とのビジネスの一面に携わっているからといって、必ずしもその会社をあらゆるもののプロバイダーにしたいと思うとは限らない。特に、そのサービスが他の場所で手に入るものより劣る場合はそうだろう。

フィンテック市場が活況を呈し、レガシーブランドがこの機会に乗り続ける一方で、垂直化されたフルスタックのフィンテックは、ジェネリックプロダクトに繰り返し勝利するだろう。組込型金融やホワイトラベリングのいくつかの側面は、支払い処理や「Buy Now, Pay Later(今買って後で支払う)」サービスのように、今後も新たなものが現れたり普及したりしていくと思われる。しかし、顧客は「すべての企業はフィンテックである」という誤った見方を退けながら、顧客のために、そして顧客独自のニーズに基づいて構築された銀行やネオバンク、貸し手やツールを引き続き選定していくだろう。

画像クレジット:Busakorn Pongparnit / Getty Images

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(文:Eyal Lifshitz、翻訳:Dragonfly)

暗号資産と中国:なぜ中国はデジタル人民元を推進しているのか

暗号資産と中国:なぜ中国はデジタル人民元を推進しているのか

画像クレジット: CARLOS DE SOUZA on Unsplash

編集部注:この原稿は、Chainalysis Japanのシニア・ソリューション・アーキテクトを務める重川隼飛(シゲカワ・ハヤト)氏による寄稿である。同氏は、2020年にブロックチェーン分析専門会社であるチェイナリシス(本社:米国)に入社。日本・アジアでの事業拡大に向けた営業活動や顧客サポートの提供とともに、講演やトレーニングを実施するなど、ブロックチェーン分析の知識・ノウハウの普及に従事している。

2020年4月、中国はデジタル人民元の実験を開始し、初めて中央銀行デジタル通貨(CBDC)を発行した政府の1つになりました。デジタル人民元のようなCBDCは、政府が発行するブロックチェーンベース版の国家通貨です。従来の暗号資産の多くと同様、通貨のブロックチェーンがあらゆる取引において永久で不変的な台帳として機能するため、CBDCは、市民の全体的な消費傾向について、より高い透明性を提供します。

中国は国有銀行やWeChat Pay、Alipayといったデジタル決済アプリを通じてデジタル人民元を展開していますが、これらのアプリは中国国内においては、欧米のものよりもはるかに広く利用されています。

現在、デジタル人民元の実証実験が進行中ですが、2022年の北京冬季オリンピックでは、訪中選手にデジタル人民元を発行することが予定されており、政府が新しいCBDCを世界に向けて発表する機会になると、多くの人が指摘しています。2021年7月の時点で、実証実験のユーザーは2000万件以上のデジタル人民元ウォレットを作成し、新しいCBDCで50億ドル(約5554億円)以上の取引を行っています。

特に、米国の経済的なライバルであり権威主義体制をとる現在の中国がCBDCを導入した場合には、国内政策と外交政策の両方に広範な影響を及ぼします。当社は、暗号資産投資会社Primitive Venturesの創業者でアジアの暗号資産市場の専門家でもあるDovey Wan(ドビー・ワン)氏に話を聞き、中国共産党がデジタル人民元で達成したいと考えていることについて尋ねました。Wan氏は重要な目標について説明しました。

その1つは、経済をより細かくコントロールするという、比較的穏やかなものです。現在すべての国で採用されている部分準備銀行制度の下では、中央銀行は金利の改定など、間接的にしか経済に影響を与えることができません。通貨供給がすべてCBDCの形で存在し、すべての取引が1つの中央台帳に記録されている場合、中央銀行は資金の流れをより細かくコントロールできます。「金融政策がプログラム可能になるのです」とWan氏は言います。

「たとえば、政府が株式市場の過熱を抑えたいと考える場合、数行のプログラムを書けば株式市場への資金の流入を阻止することができます」。

さらにWan氏は、現在一般的なモバイル決済アプリよりも、デジタル人民元は高齢者が使いやすいようになっていることを指摘し、CBDCがサードパーティーによる決済の必要性をなくすことで、小売業者にとって取引価格がより安くなる可能性があると述べました。

しかし中国共産党の手にかかれば、政府が所有する集約的な国民の取引台帳が、金融監視のツールになることは容易に想像がつきます。現在の銀行システムの下では、中国国民は金融面でのプライバシーを確保できていませんが、デジタル人民元が導入されれば、政府はいかなる違反行為に対しても、個人や企業を金融システムから排除することができるようになります。中国共産党がこの能力を使うかどうか、あるいはどの程度使うかはわかりませんが、デジタル人民元制度の下では「金融の死刑判決」が下される可能性があるでしょう。

また、デジタル人民元を研究し、2021年1月にこのプロジェクトに関する報告書を発表した、新アメリカ安全保障センター(CNAS)の非常勤シニアフェローであるYaya Fanusie(ヤヤ・ファヌシー)氏にも話を聞きました。Fanusie氏は、デジタル人民元が権威主義の道具になり得ることにはおおむね同意しましたが、中国共産党が持つ、国民のデータをできるだけ多く収集したいという広い願望のなかで、デジタル人民元が果たす役割をより強調しています。「政府がすべての国民の取引記録にアクセスできる集中型データベースは、これまで存在しませんでした」とFanusie氏は言います。

「確かに、中国はモバイル決済アプリにそのデータを要求することができますが、それには時間がかかりますし、時には反発されることもあります」。

またFanusie氏は、デジタル人民元によって生成される金融データを、中国の社会信用システムに組み込まれている他の種類のデータと組み合わせる方法についても説明しました。

「中国共産党は最近、国の制度に基づいた学校に子どもを通わせないモンゴルの家庭をブラックリストに載せるという通達を出しました。デジタル人民元があれば、政府は金融データとそのようなリストを組み合わせることができるのです」。

Fanusie氏は、中国共産党がすでにデジタル人民元を使って政府の腐敗を監視する意向を表明していることに触れました。妥当な目標ではありますが、こうした金融監視機能が一般市民に向けられる可能性があることは容易に想像できます。

デジタル人民元は米ドルの脅威となるか?

中国が米ドルとSWIFT取引システムへの依存度を下げるために、デジタル人民元の国際的な利用を促進するつもりではないかと多くの人が推測しています。実際、国有企業である中国グローバルテレビジョンネットワークが公開したビデオでは、制裁措置を回避し、世界貿易に対する米国の影響力を低下させる方法として、デジタル人民元を推進するという内容のものでした。

暗号資産と中国:なぜ中国はデジタル人民元を推進しているのか

画像クレジット: CGTV

Yaya Fanusie氏に、デジタル人民元を米ドルに対する脅威と見なすかどうかを尋ねました。彼は、中国共産党が中国国外でのデジタル人民元の利用を促進するまでにはしばらく時間がかかると考えており、短期的にはその可能性は低いと述べています。しかし長期的には、デジタル人民元や他の国が将来導入するCBDCが、世界の金融システムにおけるドルの地位を低下させる可能性があると考えています。

「中国は、他の国ともCBDC同士の交換を可能にするような取り決めをするのではないでしょうか。CBDCのアトミックスワップと考えてください」。

このような取り決めの下では、中国の誰かがマレーシアの誰かにデジタル人民元を送ると、その間に自動的に通貨交換が行われ、マレーシアのユーザーは自国の通貨に触れることなく、デジタルマレーシアリンギットを受け取ることができます。このような取引は、SWIFTシステムに依存しません。それが当たり前になれば、米国以外の国の人が米ドルを持つ必要はなくなるでしょう。「これは2022年のリスクではなく、おそらく2032年以降のリスクだと思われます」とFanusie氏は言います。

また長期的には、デジタル人民元は、米国が遅れをとる恐れのある大規模なデータ運用戦争の一環となると、Fanusie氏は見ています。

「これまでのところ、フィンテックに関しては、米国よりも中国の方が革新的であると言われています。ブロックチェーン技術でも同じことが起きた場合、米国経済はデータ駆動型の次のイノベーションの波に乗り遅れるリスクがあります」。

今日、これらのイノベーションが具体的にどのようなものになるかの想像することは難しいですが、CBDCが生成する大量のデータや、政府がそのデータを使って経済をより効率的に管理することを考えると、それらのイノベーションは非常に重要なものになるでしょう。

しかしFanusie氏は、このリスクを軽減するために、米国の政策立案者が単に独自のCBDCを作るべきとは考えていません。また、CBDCプロジェクトを排除すべきではないものの、米国はデジタルドルの先を考え、ブロックチェーン、フィンテック、金融政策のイノベーションを全面的に推進する必要があると考えています。

「米国の連邦準備制度は革新的です。他国の中央銀行とは異なり、米国には100年以上にわたって中央銀行に抵抗してきた特質と歴史的経験があるからです」とFanusie氏は述べています。つまり、イノベーションは他国の事例を参考にするのではなく有機的に展開する必要があると考えているのです。

Fanusie氏は、そのようなイノベーションを促進する方法として、米国が大学と提携して、ブロックチェーンプロジェクトを開発するためのサンドボックスを作ることを提案しています。

「そうやって米国はインターネットの発展をリードしてきたのです。大学に対して、軍が使用できるコンピュータネットワークシステムを作るようにという指示がありました。このインフラは、その後より広範に民間で活用され、ビジネス革新をもたらしました」。

1つはっきりしているのは、中国はデジタル人民元を開発して、当面は国内で使用し、将来的には国際的に使用しようと意図していることです。このプロジェクトの短期的な目標は、金融政策の改善と中国国民の金融監視ですが、長期的には他のCBDCとともにデジタル人民元を普及させることであり、それは世界の準備通貨である米ドルの地位を危うくする可能性があります。このプロジェクトや類似のデジタルドルの立ち上げに対する米国のいかなる対応においても、金融データの問題を考慮し、国民のプライバシーを尊重しつつ、より強い経済を構築し、経済競争における国の地位を維持するために、どのようにデータを利用できるかを検討する必要があります。

  • 中国は暗号資産の最大市場の1つであり続ける
    ・2021年1月以降、中国のユーザーが管理していると推定されるアドレスには、米国に次ぐ1億5000万ドル(約167億円)以上の暗号資産が送られています
  • 暗号資産を使用した犯罪における中国の役割(下記に米英の比較表を添付)
    ・2019年4月から2021年6月の間に、中国のアドレスは、詐欺やダークネットマーケット操作などの不正行為に関連するアドレスに22億ドル(約2444億円)以上の暗号資産を送信し、20億ドル(約2223億円)以上を受信しました
    ・しかし、不正なアドレスとの取引額は、金額面でも他国との比較でも、調査期間中に大幅に減少しました

中国における暗号資産業界とユーザーベースは、世界で最も活発なマーケットの1つです。2021年1月以降、中国のユーザーが管理していると推定されるアドレスには、米国に次ぐ1億5000万ドル(約167億円)以上の暗号資産が送られています。

暗号資産と中国:なぜ中国はデジタル人民元を推進しているのか

画像クレジット: Chainalysis

また、中国はこれまでも暗号資産のマイニングを支配してきました。中国を拠点とするマイニング事業者が、ビットコイン(Bitcoin)の全世界のハッシュレート(ビットコインのマイニングに使われるコンピューティングパワーの大きさを示す指標)の65%を支配していたこともあり、中国やアジア全体にサービスを展開する暗号資産サービスの流動性が高まる一方で、中国共産党がこの支配力を利用してビットコインネットワークに悪影響を及ぼすことも懸念されています。また、過去の取引データによると、中国の一部の暗号資産事業者、特にOTCブローカーが、暗号資産を使った犯罪に関与している人々のマネーロンダリングを促進する上で、大きな役割を果たしていることが示唆されています。

暗号資産を使用した犯罪における中国の役割

暗号資産エコシステム全体にとって重要な部分であったのと同様、中国はこれまでも暗号資産に関連する犯罪において大きな役割を担っていました。2019年4月から2021年6月の間に、中国のアドレスは、詐欺やダークネットマーケット操作などの不正行為に関連するアドレスに22億ドル(約2444億円)以上の暗号資産を送信し、20億ドル(約2223億円)以上を受信しました。

暗号資産と中国:なぜ中国はデジタル人民元を推進しているのか

画像クレジット: Chainalysis

注目すべきは、中国の不正アドレスとの取引額が、金額面でも他国との比較でも、調査期間中に大幅に減少していることです。その減少の原因の多くは、2019年に発生したプラストークン詐欺のような大規模な投資詐欺がなかったことにあります。この詐欺は主にアジア全域のユーザーを対象としており、収益の大部分が中国のサービスを通じてロンダリングされていました。中国は依然として不正取引額で上位の国の1つですが、かつては他の国に大差をつけていたことから、同国における暗号資産関連の犯罪は減少していると考えられます。

中国における不正な資金移動の大半は、暗号資産詐欺に関連しています。取引額の点で、暗号資産関連の犯罪のなかで圧倒的に多いのが詐欺であることを考えると当然ですが、ダークネットマーケットや盗まれた資金の移動も役割を担っています。

累計利用件数2.8億件のBNPLサービス「NP後払い」のネットプロテクションズが約10億円調達、株式評価額1060億円に

累計利用件数2.8億件のBNPLサービス「NP後払い」のネットプロテクションズが約10億円調達、株式評価額1060億円に

ネットプロテクションズホールディングスは9月24日、MY.Alpha Managementが運営するファンドを引受先とする、約10億円の第三者割当増資について合意したと発表した。MY.Alpha Managementは、投資運用会社York Capital Managementからスピンオフした投資顧問会社。

また、アドバンテッジパートナーズがサービスを提供するファンドからMY.Alpha Managementが運営するファンドに対して総額約17億円の既存株式譲渡を行う。

今回の資金調達および株式譲渡により、ネットプロテクションズホールディングスの2021年における資金調達の総額は80億円超となった。今回の資金調達を前提とした同社の株式価値評価額は1060億円超(1株あたり払込金額1098.211円に増資完了時の予定発行済株式総数(潜在株式を含む)96,521,000株を乗じたもの)となる。

調達した資金は、事業拡大にむけた新規機能開発、プロモーション活動の強化などに対応するための財務基盤強化などに活用する。

MY.Alpha Managementは、2021年9月1日時点で約100億ドル(約1.1兆円)の運用資産を持つ、York Capital Managementのアジア部門がスピンオフした投資顧問会社。このスピンオフに伴い、2021年9月1日時点で約35億ドル(約3900億円)の運用資産を持つ新運用会社となった。

ネットプロテクションズは、2002年より、未回収リスク保証型の後払い決済(BNPL)サービス「NP後払い」の提供を開始。2020年度の年間流通金額では前年度比約16%の成長率、年間ユニークユーザー数が1580万人(2020年4月1日~2021年3月31日における「NP後払い」の利用者のうち、氏名・電話番号の双方が一致する利用者)に達した。また、2021年3月までに累計利用件数が2億8000万件を突破したという。

また2011年より企業間取引向けに「NP掛け払い」の本格販売を開始し、2020年度年間流通金額では前年度比約27%の成長率で伸長した。

2017年には、BtoC向けカードレス決済「atone」(アトネ)の提供を開始した。2018年には、台湾においてもスマホ後払い決済サービス「AFTEE」(アフティー)をリリースしている。

これらの事業を通じて、顧客の購買歴・支払い歴をあわせた取得難度の高い信用ビッグデータを保有しており、今後は様々な領域でのデータ活用・展開を模索するとしている。

個人向け銀行ローンマッチングの「クラウドローン」がマイカーローン借り換えに伴う自動車名義変更の代行受付を開始

個人向け銀行ローンマッチングの「クラウドローン」がマイカーローン借り換えに伴う自動車名義変更の代行受付を開始

個人向け銀行ローンマッチングプラットフォーム「クラウドローン」を運営するクラウドローンは9月24日、信販系ディーラーローンから銀行マイカーローンへ借り換えの際に発生する、車の所有権名義変更の手続きに関する代行サービスをスタートしたと発表した。行政書士法人きずなグループとの提携により実施する。

開始日は9月25日10時から。代行費用は1万5000円から(手続内容に応じて追加費用あり)。申請するには、クラウドローンに依頼登録後、銀行からオファーがあった場合に表示されるアンケートフォームより申し込む。

クラウドローンは、貸し手である銀行と借り手である個人を、オンラインでつなぐマッチングプラットフォーム。提携の銀行から直接融資の提案を受け取ることができ、顧客が自分自身にピッタリのローン選びができる。

クラウドローンは、2020年1月のリリース以降ユーザー数1万9000名を超える登録があり、銀行マイカーローンを中心に多くの申し込みがあるという。特に、8~9%台の金利で利用されている中古車販売の信販系ディーラーローンに比べ、銀行マイカーローンの場合は2%前後の低金利で利用できるため、ローンの借り換えで申し込むケースがあるそうだ。高いローンであることを知らずに契約してしまった場合、残りの返済期間が長いほど借り換えのメリットがあるため、極力早い段階で借り換えることで、返済額の負担を大幅に削減できる。個人向け銀行ローンマッチングの「クラウドローン」がマイカーローン借り換えに伴う自動車名義変更の代行受付を開始

一方、必要な手続きとしては、銀行マイカーローンの契約に切り替える場合、信販系ディーラーローンの返済中は、ディーラーや信販会社に車の所有権が留保された状態であるため、借り換えには、所有権の名義を利用者自身に変更する必要がある。またこの名義変更は、陸運局で行う必要があり、書類の手配など煩雑な手続きに時間を要する場合があるという。

そこで、クラウドローンでは、全国で代行対応が可能な行政書士法人きずなグループとの提携により、オンラインで代行の依頼を行えるサービスを開始することにした。

代行費用は、基本費用(書類手配+名義書換)で1万5000円からの対応となるものの、銀行マイカーローンへの借り換えが成功した場合の返済総額の差分を考慮すると、ユーザーにとってメリットとなるものとしている。

代行の内容

  • 陸運局で行う手続:申請書の作成から新しい車検所の交付まで、陸運局で行うすべての手続きを現地行政書士が対応。名義書換を行う陸運局の営業時間は、平日8時45分から16時まで
  • 管轄警察署で行う手続:車庫証明記載の保管場所が変更となる場合には、管轄警察署での手続きが必要。保管証明書から、配置図・使用権原証明など必要書類を警察へ届け出る必要がある
  • ナンバープレートの付替え:現地行政書士がナンバープレートと車検証原本を顧客に回収に行き、支局に持ち込みナンバー変更と車検証の書き換えを行う。車を借りて支局に持ち込み、ナンバー変更と車検証の書き換えも代行が可能

特に、陸運局で行う名義変更の手続きは、営業時間が短いこともあり、混んでいる場合には2時間程待たされる場合もあるという。住所変更などがあれば、警察署への車庫証明の届け出や、ナンバープレートの付け替えも行う必要がある。これら煩雑な手続きを、全国の行政書士が対応するとしている。

Mintの元社長がギグワーカーに金融商品を提供するLeanに約5億円を出資

ギグワーカーや個人事業主は、金融商品に対するニーズがサラリーマンの人たちとは異なる。

Lean(リーン)」の創業者であるTilak Joshi(ティラック・ジョシ)氏は、Mint(ミント)の代表を務めた後、American Express(アメリカン・エクスプレス)やPayPal(ペイパル)でプロダクトの責任者を務めた経験から、この課題を痛感していた。

近年、米国では個人の労働者が増えてきているが、従来の金融機関はそれに「対応できていない」とジョシ氏はいう。

「個人労働者の70%はその日暮らしのような生活をしており、30%は十分な保険に加入していません。個人労働者は、まもなく米国の労働力の大半を占めるようになり、既存のやりとり、プラットフォーム、機関は、彼らをサポートするために急速に進化する必要があります」と彼はいう。

2020年にMintを退社したジョシ氏は、Eden Kfir(エデン・クフィール)氏、Ramki Venkatachalam(ラムキ・ヴェンカタチャラム)氏と共同でLeanを立ち上げ、ギグワーカーのニーズに合わせて「カスタムビルド」された金融商品へのアクセスを提供するプラットフォームで彼らをサポートしようとしている。そして米国時間9月8日、Inspired Capital(インスパイアード・キャピタル)が主導し、Atelier Ventures(アトリエ・ベンチャーズ)、Oceans Ventures(オーシャンズ・ベンチャーズ)、Acequia Capital(アセキア・キャピタル)が参加したシードラウンドで450万ドル(約4億9400万円)を調達したことを発表した。

このラウンドには、DoorDash(ドアダッシュ)の幹部であるGokul Rajaram(ゴクル・ラジャラム)氏、Instacart(インスタカート)の共同創業者であるMax Mullen(マックス・ミューレン)氏、Uber(ウーバー)の元CPOであるManik Gupta(マニック・グプタ)氏、Postmates(ポストメイツ)の元COOであるVivek Patel(ヴィヴェク・パテル)氏、Bird(バード)のCPOであるRyan Fujiu(ライアン・フジウ)氏など、マーケットプレイス業界の多くの企業が資金を提供している。今回の資金調達により、Leanのこれまでの調達額は約600万ドル(約6億5900万円)となった。他にも、Charlie Songhurst(チャーリー・ソンガースト)氏、Lightspeed Venture Partners(ライトスピード・ベンチャー・パートナーズ)(Stripeの元幹部)のパートナーであるJustin Overdorff(ジャスティン・オーバードルフ)氏、Coinbase(コインベース)のMarc Bhargava(マーク・バルガヴァ)氏、ANGI Homeservices(ANGIホームサービス)、Coinbase、Plaid(プレイド)の幹部など、注目を集めているエンジェル投資家が同社を支援している。

「個人労働者は、米国のどこよりも厳しい経済状況に置かれています。彼らが経済的な問題を解決するためにすることは、さまざまなギグマーケットプレイスで働くことです。そして、マーケットプレイスが労働者を引き留めてインセンティブを支払おうとすると、労働者はこれをうまく利用する方法を見つけ出します。すると、マーケットプレイスは頼りになる強力な労働力を持つという安定性がなくなり、労働者側も窮地に立たされるという、双方にとって非効率な結果となってしまいます」とジョシ氏はTechCrunchに語った。

画像クレジット:Lean

Leanは、マーケットプレイスと直接提携して金融商品や福利厚生を提供することで、個人労働者を支援することに狙いをつけている。その目的は、ギグワーカーに「コストのかからない資金」「即時支払い」、そして住宅ローンや「低コストから無コストの借り入れ」、HSA(米国の医療用貯蓄口座)や保険などの金融商品の選択肢を提供することで、各マーケットプレイスが労働者の獲得と維持ができるよう貢献することにある。

Leanは、ライドハイリング(ライドシェア)、宅配、医療、建設などの業界で働く1099(個人事業主)またはW2の労働者(会社で働く従業員)を雇用するあらゆる規模のマーケットプレイスと連携している。ジョシ氏は、Leanが労働者の獲得と定着を促進するだけでなく、マーケットプレイスが労働者の手数料からではなく、金融商品やインフラを通じて収益を得る扉を「開く」ポテンシャルをもっていると述べている。

Leanのプラットフォームは、どのマーケットプレイスにも2週間以内で統合できるように設計されているとジョシ氏はいう。同氏によると、Leanはマーケットプレイスとのパートナーシップを通じて、今後数カ月の間に国内の「数十万人」のギグ・ワーカーにサービスを提供する予定だそうだ。

マーケットプレイスにはコストはかからず、労働者側にもコストはかからない。Leanは、プラットフォームを介した金銭の移動にともなう手数料によって収益を得ることができると、ジョシ氏は述べている。現在、同社は6つのマーケットプレイスと取引をしており、さらにもう6つのマーケットプレイスとも取引の話が進行中だ。

同社は、今回の資金調達により、提供サービスを拡大し、マーケットプレイス間の取引拡大を進めていく予定だ。

Inspired CapitalのパートナーであるMark Batsiyan(マーク・バトシヤン)氏は、Leanに惹かれた理由として、Leanのチーム、市場のタイミング、アプローチを挙げている。

「ギグワーカーへのサービス向上には市場で大きな追い風が吹いており、マーケットプレイスは労働者を惹きつけ、維持するための方法を模索しています。また、ティラック(ジョシ)氏はもInspiredの私たちと同じような結論にいたりました。それは、マーケットプレイスがこれらのソリューションを自分たちで構築することはないだろうということです。利益をすぐに使えるソリューションにするためには、Leanのような仲介者が必要です」。と彼はメールで語っている。

バトシヤン氏は、LeanのB2B2Cアプローチがユニークであると考えている。

「プラットフォームとしてのLeanは、そのパートナーシップを活用して、末端労働者へのより効率的な流通を実現することができます」と述べている。

2021年初め、Mintの初代プロダクトマネージャーは、消費者の金融生活の「計画と管理」を支援することを目的としたサブスクリプション型プラットフォーム「Monarch(モナーク)」のために、480万ドル(約5億2700万円)のシード資金を調達した。

関連記事:消費者が家計の「管理と計画」を行うためのサブスク式の財務プラットフォーム「Monarch」が5.3億円調達

画像クレジット:Nattanitphoto / Shutterstock

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Akihito Mizukoshi)

対面式サービス業にBNPL式後払いを導入するWisetackが約49億円調達

「Buy Now, Pay Later(BNPL、今買って後払い)」方式は、アフリカ、ラテンアメリカ、アジアなど、世界各地でさまざまな企業が展開し、グローバルに成長している。

米国では、Affirm(アファーム)とKlarna(クラーナ)が大きなプレイヤーであり、Square(スクエア)は最近Afterpay(アフターペイ)の買収を発表した。

関連記事:Squareが3.19兆円で「今買って、後で支払う」後払いサービス大手Afterpayを買収

従来のBNPLは、消費者がオンラインや店頭で分割払いをする機会を提供するものだった。しかし、国内でも、分割払いの機能は、eコマースや小売業界以外にも広がっている。

Wisetack(ワイズタック)は、このBNPLサービスを対面式のサービスに導入するスタートアップだ。Wisetackは、Insight Partners(インサイト・パートナーズ)が率いるシリーズB資金調達ラウンドで4500万ドル(約49億3900万円)を調達した。

この資金調達には、既存の支援者であるGreylock Partners(グレイロック・パートナーズ)とBain Capital Ventures(ベイン・キャピタル・ベンチャーズ)も参加し、2018年の創業以来、同社の調達総額は6400万ドル(約70億2500万円)に達した。今回のラウンドは、WisetackがシードラウンドとシリーズAラウンドで1900万ドル(約20億8500万円)を調達したと発表してからわずか6ヵ月半後のことで、いずれもGreylockが主導したものだ。

サンフランシスコを拠点とするこのスタートアップは、ひと言でいえば、対面式のビジネスが消費者に融資を提供するのを支援している。共同設立者でCEOのBobby Tzekin(ボビー・ツェキン)氏によると、Wisetackは、企業がすでに構築して業務に利用しているソフトウェア・プラットフォームに、実際に融資の選択肢を組み込んでいる点で、他社にはないサービスだという。

その対象は、HVAC(冷暖房空調設備)や配管工など、サービスを提供する企業だ。例えば、エアコンが故障して交換に数千ドル(数十万円)かかる場合でも、業者がWistackのAPIをサイトに組み込んでいれば、消費者は分割払いのオプションを利用することができる。

これまでWisetackは、Housecall Pro(ハウスコール・プロ)やJobber(ジョバー)などの垂直型SaaSビジネスと提携することで急成長を遂げてきた。これらの企業は、それぞれの顧客に融資を提供しており、その中には何万人ものホームサービスのプロが含まれている。

Wisetackは、明らかにギャップを埋めているように見える。2021年の時点で、2020年と比較して売上高と融資額が「10倍以上」に成長している。そして、ツェキン氏によれば、何千もの加盟店と提携しているという。

同氏は「明らかに大きなニーズがある」と感じたため、2018年に仕事を辞めてWisetackを立ち上げ、Liz O’Donnell(リズ・オドネル)氏とMykola Klymenko(ミコラ・クライメンコ、Varo Bankの持ち株会社であるVaroMoneyの共同設立者兼CTOだった)氏とチームを組んだ。

Wisetackは、新たな資本を得て、自動車修理、選択的医療、歯科、獣医、法律サービスなど、サービスをベースとした他の分野にも進出する予定だ。また、今後1年間で現在40名のチームを倍増させる予定もある。

ツェキン氏は、この機会は非常に大きいと考えている。

サービス業の多くは中小企業であり、これまでは大手eコマース企業に比べてサービスを提供するのが困難だった。ハーバード大学のレポートによると、米国人は住宅のリフォームや修理だけで、年間4000億ドル(約43兆9100億円)以上を費やしている。また、米国の自動車修理・メンテナンスサービス市場は、2020年の2,010億ドル(約22兆650億円)から、2026年には2,500億ドル(約27兆4400億円)に達すると予測されている。

また、ツェキン氏によると、BNPLのオンライン取引の平均は数百ドル(数万円)だが、サービスを提供する企業への購入は平均で4000〜5000ドル(約43万9000〜54万8000円)近くになるそうだ。

ツェキン氏は、クレジットカードで購入するよりも「今買って、後で払う」方が魅力的だと考えている。1つは、消費者が3カ月から60カ月までの分割払いを選択できることだ。

「時間をかけて費用を分散することができるため、お金を出してより高品質な機器を購入することできるようになることが多いのです」と同氏は語る。

また、クレジットカードで支払う場合は、金利や返済期間によって金額が変わることがある一方、この方式だと購入の時点で長期的な支払い金額がはっきりしていると、ツェキン氏は付け加えた。

同社は、加盟店には処理手数料を、消費者には金利を課すことで収益を上げている。金利は0%から29%まで「信用度の高さ」によって変わると同氏はいう。

「しかし、クレジットカードは複利で請求されるのに対し、我々は単利で請求します」と付け加えた。

Insight Partners(インサイト・パートナーズ)のプリンシパルであるRebecca Liu-Doyle(レベッカ・リュー・ドイル)氏は、Wisetackを「業界の中でも際立った存在」と評している。

「Wisetackは、eコマースよりも複雑でサービスが行き届いていないようなユースケースに対応することを目的に構築され、組み込み型BNPLという点で差別化されたプラットフォームを持っている」とメールで語っている。

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Akihito Mizukoshi)