IT部門をクラウドから支援するElectricが01 AdvisorsとSlack Fundから7.6億円調達

IT部門をクラウドに置くことを目的とするプラットフォームのElectric(エレクトリック)は、2020年初めのシリーズBの延長に続く資金調達を発表した。

01 AdvisorsのDick Costolo(ディック・コストロ)氏とAdam Bain(アダム・ベイン)氏およびSlack Fund(スラック・ファンド)が、700万ドル(約7億6000万円)の資本注入に応じた。

Electricの創業者兼CEOのRyan Denehy(ライアン・デネヒー)氏によれば、01 Advisorsが大部分の500万ドル(約5億4000万円)を出資し、Slack Fundが100万ドル弱(約1億1000万円弱)、その他の既存投資家が残りをカバーしたという。

Electricの資金調達状況は少し変わっている。同社は2019年1月にGGVがリードするシリーズBラウンドで2500万ドル(約27億円)を調達した。ロックダウン直前の2020年3月には、コストロ氏とベイン氏からの投資のために、より高いバリュエーションでシリーズBを再開し追加で1450万ドル(約15億6000万円)を調達した。

そして新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックが世界を揺さぶった。3月9日の月曜日に株式市場が揺れを感じ取り、一時的に取引が停止された。翌週の金融市場は完全にカオスとなった。

ベイン氏が再びデニー氏に声をかけたのはその時だった。彼らは、この激動の時代におけるElectricの可能性について意見を戦わせた。

「リモートワークが劇的に増える」とデニー氏はベイン氏との会話を引き合いに出しながら語った。「大企業は予算に対してもっと工夫するようになる。ITのようなバックオフィス業務の予算をより効率的に使う方法を見つけることが急務だ。Electricを使えば大きなIT部門を構築するより金額的に数段効率が良いため、Electricの魅力は増している」。

4月の最初の週にベイン氏は再びデニー氏に電話をかけ、01 AdvisorsからElectricにもっと投資したいと語った。

Electricは、組織内のIT部門をサポートするために設計されたプラットフォームであり、場合によっては外部委託されたIT部門の機能に置き換わるものだ。IT部門の責任のほとんどは、ソフトウェアプログラムの管理、配布、保守に重点を置く。ElectricはIT部門が社内のすべてのマシンにソフトウェアをインストールすることを可能にし、組織内のITに関する状況を俯瞰できる。IT部門が実際の問題解決とトラブルシューティングのタスクに集中する時間を増やすことも可能だ。

IT部門のスタッフは、自分のマシンから権限の付与や取り消しや役割の割り当てを行い、全従業員のソフトウェアを最新の状態に保つことができる。

ElectricはDropboxやG SuiteなどのトップソフトウェアプログラムのAPIとも統合されているため、IT部門はElectricのダッシュボードを介して日常業務のほとんどを処理できる。さらに、ElectricはSlackとも統合されており、組織内の人々が問題にフラグを立てたり、普段最もよく使うプラ​​ットフォームから質問したりできる。

「Electricの最大の課題は需要に対応することだ」とSlack FundのJason Spinell(ジェイソン・スピネル)氏は述べた。Electricのシードラウンドでの投資を見送ったことにも言及し、「その間違いを修正できることに興奮している」と述べた。

Electricはまた、ドックに設置できる新しいセルフサービス製品を追加した。これにより従業員は組織がリモートオフィスから提供するすべてのソフトウェアアプリケーションを見ることができる。

「多くのIT部門で現在、大量の仕事を少数のメンバーでこなす必要に迫られ、負荷がかかっている」とデネヒー氏は述べる。「また、ITプロバイダーにアウトソーシングしていて、彼らに週に何回かオフィスに来てもらっていた会社もあるが、それは突然機能しなくなった」。

デネヒー氏によると、Electricは現在のエコシステムの中でマーケティングに資金を使い続けているが、受注見込みのある潜在的なクライアントからの関心が180%増加したという。

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(翻訳:Mizoguchi

遠隔医療で鎮痛剤の断薬と中毒の予防をサポートするLusic Laneのサービス

4年前の2016年に、新しい中毒予防サービスLucid Lane(ルーシド・レーン)の創設者Adnan Asar(アドナン・アサー)氏は、Livongo Health(リボンゴ・ヘルス)を創設し最高技術責任者として順調に出世街道を歩んでいた。それはShutterfly(シャッターフライ)に長く勤めた後に数々の企業で続けて上席技術役員を務めてきた中でも、いちばん新しい仕事だ。そこで彼は、慢性病管理用の一連のソフトウェアとハードウェアの開発を通じて会社を率いてきた。

だがアサー氏の妻が非ホジキンリンパ腫と診断されると、彼はテクノロジーの世界から足を洗い、妻の治療を続ける間、家族とともに過ごすことを決めた。

その当時、この決断がLucid Lane創設に結びつくとは彼自身も気づいていなかった。この会社の使命は、痛みと不安に対処する薬を処方されている患者に、薬を絶って中毒を予防する方法を提供することにある。闘病中に服用していた処方薬を断つ際に苦労する妻を見てきたことから、この目標が生まれた。

それはアサー氏の妻に限ったことではない。米疾病予防管理センターのデータによれば、2018年に米国ではオピオイドの処方箋が1億6820万通も書かれている。Lucid Laneでは、手術後または癌治療に合わせて、毎年5000万人にオピオイドが、それ以外の1300万人にベンゾジアゼピンが処方されていると推測した。だが、これらの極めて中毒性が高い薬剤の管理や減薬のプランは示されない。

アサー氏の妻の場合、癌治療の一環として処方されたベンゾジアゼピンが問題となった。「妻はひどい離脱症状に見舞われたのですが、何が起きているのか私たちにはわかりませんでした」とアサー氏は話す。担当医に相談すると、医師は即座に断薬するか、薬を続けるかの2つの選択肢を示した。

「妻は断薬を決意しました」とアサー氏。「それは家族全員にとって大変な消耗戦でした」。

9カ月の治療と精神科医の定期的な診察により、投薬量と減薬の調整が行われたとアサー氏はいう。その体験がLusid Laneの創設につながった。

「私たちの目標は、薬物療法と依存症の予防と管理です」とアサー氏。

同社の遠隔医療ソリューションは、個別の治療プランの積極的なモニタリングを伴う、毎日の継続的なサポートと介入を提供する独自の治療プロトコルの上に成り立っている。すべてが継続的に行われるとアサー氏はいう。

しかも新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックにより、遠隔医療サービスの需要は加速する一方だ。「新型コロナウイルスは、遠隔医療を自由に選べるサービスから絶対に必要なサービスに変えました」とアサー氏。「不安、抑うつ、物質使用障害、投薬乱用が急増しています。私たちに助けを求める患者も急増しています」。

アサー氏は、Lucid LaneのライバルはLyra Health(ライラ・ヘルス)やGinger(ジンジャー)などの企業、つまり不安や抑うつを察知するデジタル診断を構築するポイントソリューションだと考えている。しかし、依存症や常習行為の治療のために創設された一部の企業と異なり、アサー氏は自身のスタートアップを依存と中毒を予防するものと認識している。

「多くの人が、診察室で医師が行う1つの行為を通じて中毒に陥っています」とアサー氏。「私たちのソリューションでは、そうした薬物の処方箋は出しません」。

同社は、パロアルト退役軍人病院での臨床研究の準備を進めており、Battery Ventures(バッテリー・ベンチャーズ)やJerry Yang(ジェリー・ヤング)氏が創設した投資会社AME Cloud Ventures(AMEクラウドベンチャーズ)などを含む投資家たちによるシードラウンド400万ドル(約4億2700万円)を調達した。

「私たちは、現代社会が抱える最大の問題のひとつにスケーラブルなソリューションを開発したLucid Laneに、非常に大きな可能性を見いだしました」と、Battery VenturesのジェネラルパートナーDharmesh Thakker(ダーメッシュ・タッカー)氏は声明の中で述べている。「遠隔医療ソリューションは、複雑な問題に対処する高い能力を備えたものとして台頭してきましたが、Lucid Laneは最初から遠隔医療に取り組んできました。それは、いつでもどこでも患者が必要とする瞬間に医療が提供できるようデザインされています。これが、回復と再発とのバトルに大きな変化をもたらします。無数の人々をよりよい人生に導くことができると、私たちは確信しています」。

アサー氏のもとに集まった医療のプロからなる経験豊富なチームも、会社の発展と治療プロトコルの開発を支えている。サンタクララ・バレー医療センターの正式麻酔専門医であり(提携先の)スタンフォード大学薬学部麻酔学助教授でもあるAhmed Zaafran(アーメッド・ザーフラン)博士、米国防総省と退役軍人省の協力でオピオイド被害に対処する米保健福祉省対策本部の顧問を務めるVanila Singh(バニラ・シング)氏、テキサス大学MDアンダーソン癌センターで麻酔学、周術期薬学、疼痛医学の教授を務めるCarin Hagberg(キャリン・ハグバーグ)博士、テキサス医療委員会の会長、米保健福祉省の疼痛管理サービス小委員会対策本部や同省の疼痛クリニカルパス委員会など、疼痛管理のための数々の国内委員会で議長を務めるSherif Zaafran(シェリフ・サーフラン)氏などが名を連ねる。

「Lucid Laneは、手術後に化学療法を止めようと勇敢な決断をした患者に最良の臨床結果をもたらす、患者第一のソリューションを提供します」とシング博士は声明の中で述べている。「短期間のオピオイドやベンドジアゼピンの投薬を必要とする大勢の患者に対して、Lucid Laneの治療法はそれらの薬物への依存が長引くことを防ぎつつ、効果的な疼痛管理によって生活と体機能の質の向上をもたらします」。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(翻訳:金井哲夫)

新型コロナは世界をどう変えるか? Parliaでならそれがわかる

Is Greta Thunberg a hypocrite?(グレタ・トゥーンベリは偽善者か?)」とググると、何千もの結果が得られる。それは、インターネットの上では「Q&A」というモデルがほとんど壊れていることの証明だ。かつてはYahoo AnswersやQuoraが、Web 2.0の「Read/Write Web(リード/ライトウェブ)」の若き希望の星ともてはやされたが、今は大量の検索結果のカオスがあるだけだ。率直にいって、Q&Aを革新しようと試みた人は多かった(「Mahalo」を覚えている人はいるかな?)けど、成果は乏しく、多くがゾンビサイトになってしまった。

でもよく見ると、何かに気づくだろう。Parliaというサイトが、「グレタ・トゥーンベリは偽善者か」の検索で3位に登場する。しかしParliaは、2019年10月にステルスでローンチしたばかりだ。ではなぜ、検索で上位にヒットするのか?

このQ&A分野の新人は最近、Bloomberg BetaやTiny VCなどからのシードラウンドを完了した。資金の額は公表されていない。

創業者で元ジャーナリストのTuri Munthe(トゥリ・ムンテ)氏によると、Parliaは「オピニオンの百科事典」を目指している。

ムンテ氏は「Parliaは一種のWiki(参加型共同編集サイト)であり、ニュースや現在行われている議論に対するすべての視点を整理し紹介する。神は存在するか? や、メッシは本当にロナルドよりも優れているのか? といった永遠の疑問も扱う。サイトの構築の仕方とその目標は、今日の社会の分極化や暴言、情報の引きこもり蛸壺化を解決することだ」と語っている。

Q&Aサイトの多くは、X対Yという対立項が登場して理性的な議論を進めるが、Parlia(議会、討議場)はすべての意見を整理しながら載せる。地球平面説も排除しない。規範的であるよりも記述的(ありのまま)を目指し、QuoraよりもWikiに近い。前者は、自分をエキスパートとして売り込もうとする人が多い。

Parliaのサイトはすでに活気がある。今の時代にとても合ってるような気がする。

現在、上位の話題は「How to stay healthy during quarantine at home?(家に隔離されていて健康を維持する方法)」や「What are the effects of spending long periods in coronavirus isolation?(新型コロナウイルスで長期間孤立したときの影響)」、「Will the coronavirus crisis bring society together?(コロナウイルスの危機は社会をまとめるだろうか?)」などだ。ユーザーは議論を静観したり、関心を示さなかったり反論したりとさまざまだ。

「2016年に、政治的コンセンサスの時代は終わったと気づいた。英国のEU離脱をめぐって大量の言葉が氾濫したが、離脱に賛成し反対する理由は、どちらもせいぜい片手で数えられるぐらいしかない」とムンテ氏はいう。

Brexitのような国を分かつような大きな問題でも、それをめぐってごく少数の有限の数の議論しかないため、あらゆることについてそうだろうと彼は考えた。だから例えば銃規制や避妊の是非、新型コロナウイルスへの対応、AIの脅威などなどの問題でも、すべての議論をマップに落とせるはずだ。

しかし、何のためにそんなことをするのだろうか? もちろんそれ自体が良いことだし、人びとが自分以外の人びとの考えを理解し、世界中の意見の分布や構成も理解するだろう。

ビジネスモデルには事欠かない。広告を載せられるしスポンサーもつく、会員制や寄付もありうる。また、データそのものが売れる。やり方が正しければ、文字通り意見や考え方の世界地図が得られるだろう。

ムンテ氏は、ユーザーはすべてGoogle検索からやってくると考えている。そしてParliaの「メディアとしてチャンスの総量は月間ページビュー換算で1億にはなる」という。

共同創業者のJ. Paul Neeley(ジェイ・ ポール・ニーリー)氏は英王立美術院の元教授で、ユニリーバのサービスデザイナーや英国内閣府も経験している。ムンテ氏自身は、メディアのエコシステムにおけるシステム的な問題をしばらく研究していた。最初はレバノンで小さな雑誌を創業し、2003年にはイラク戦争を報道、その後ネット上の写真代理店であるDemotixを創業してエグジット、次いでメディアにフォーカスするVC North Base Mediaを立ち上げた。

商業化すると、偏向が生じる恐れもある。しかしムンテ氏は「政党とは絶対に仕事をしないし、独自の倫理顧問委員会を設ける。しかし多様な意見のマップを知ることは、マーケティングリサーチや、さまざまな研究機関の役に立つだろう」という。

というわけで、Parliaのサイトでは「How coronavirus will change the world(新型コロナウイルスで世界がどう変わるか)」ということもわかるのだ。

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

建設業や飲食業などデスクレスワーカー向け求人サービスのWorkstreamが約10.7億円調達

デスクレスワーカー(教育、建設、接客などデスクワークではない労働者)は世界の労働力の80%を占めているが、Desmond Lim(デズモンド・リム)氏にとってその労働者は世界のすべてだ。

リム氏はシンガポールで育った。父は週6日、毎朝5時に起きて運転手の仕事に向かった。清掃員として働いていた母とリム氏は、時々父の車に乗ることがあった。リム氏は、時間給労働者やデスクレスワーカーが仕事をすばやく見つける簡単な方法が必要だと考えた。

リム氏はWorkstreamの創業者だ。Workstreamは、中小企業が空きポジションを埋めたいときに使えるエンドツーエンドのソフトウェアソリューションとなる。同社は米国時間5月7日に、シリーズAラウンドで1000万ドル(約10億7000万円)を調達したことを発表した。これまでの調達総額は1250万ドル(約13億3000万円)となった。

ベイエリアに拠点を置く同社の主な顧客は、ホスピタリティ、レストラン、スーパーマーケット、デリバリービジネスなど、売上高が大きい業界における採用担当マネージャーだ。

Workstreamは、通常数週間にわたって行われるプロセスの多くを自動化する。同社のテクノロジーにより、企業は採用にかかる時間を70%節約できるという。また、透明性も加わる。求職者が会社に足を踏み入れ、応募用紙に記入し、良い結果を期待するといったプロセスに代わり、求職者と雇用者の会話を促進するプラットフォームを提供する。

Workstreamのプロダクトには2つの部分がある。まず求職者は、プラットフォームで仕事の検索から仕事を確保した後の入社手続きまで行うことができる。しっかりした仕事を探せるこの無料のワンストップショップは、かつてリム氏の父親がシンガポールで直面した課題に取り組んでいる。求職者のダッシュボードには面接日程を常に把握できるリマインダーもある。

もう1つの部分は採用側に関するものだ。従業員の退職率が高い企業は、突然辞めてしまうことのないような信頼できる人材を見つけるのに苦労している。採用側はWorkstreamにつなぎ、ワンクリックで最大24の地域の求人掲示板に投稿できる。また、リアルタイムメッセージング、テレビ会議、面接のタイミングや事務処理などに関するテキストメッセージによるリマインダーを通じて、採用側が求職者と直接やり取りできる。

Workstreamの重要な特徴は、電子メールではなくテキストメッセージによる求職者とのコミュニケーションに重点を置いていることだ。デスクレスワーカーは電子メールアドレスを持っていないことが多く、また率直にいって時間もないため、労働市場で最も「つながりにくい」グループだといえる。外出先で長い時間を過ごす人に対しては、ローテクかつ包括的な方法でリアルタイムに更新情報を届ける必要がある。デジタルデバイドは現実のものだ。Workstreamはモバイルベースのテキストメッセージに重点を置いているため、その日に従業員を雇うことができる。

例えば応募者は求人に応募するたびに、採用側から追加情報が記載されたテキストメッセージを受け取る。テキストには、企業文化についての説明や選択式の質問などが含まれている。忙しく、時には掛け持ちをしている労働者を念頭に置いた質問となっている。質問の重点項目は、職場からの距離や信頼性の高い交通手段へのアクセスなどだ。

同社は採用する会社に対し、選択した機能と年間の雇用数に基づいて料金を請求する。

Workstreamは競争の激しい求人プラットフォームのマーケットに参入しようとしている。成功するとすれば小規模事業者に特化している点が勝因かもしれない。シリコンバレーから生まれるLever(レバー)やX(エックス)などの多くの求人プラットフォームは知的労働者向けに構築されていると同社は述べる。対照的にWorkstreamは小規模事業者に狭く深く焦点を合わせている。父親のバンで何時間も過ごしたリム氏の幼少時の経験からの答えだ。

新型コロナウイルス(COVID-19)に伴う外出禁止命令のため、小規模事業者は以前に比べて顧客対応が減っており時間に余裕がある。そのため新しいソフトウェア、非接触型の採用活動、ビデオメッセージングなどを試すことに対して、よりオープンになっているとリム氏は言う。このスタートアップは現在、Jamba Juice(ジャンバ・ジュース)やDunkin’ Donuts(ダンキンドーナツ)などのフランチャイズビジネスを含む5000社の採用担当マネージャーを顧客に持つ。同社には医療業界や製造業からの引き合いもある。

「ビデオ会議のやり方がわからないという人は非常に少なくなっている」とリム氏は語る。「採用側はシステムを考え直している」。

こうした要因が同社を助け、投資家らを引き付け、パンデミックによって遅延することなく資金調達ラウンドを完了した。

今回のラウンドはFounders FundとBasis Set Venturesがリードした。その他の投資家として、AffirmのCEOであるMax Levchin(マックス・レブチン)氏、DoorDashのCEOであるTony Xu(トニー・スー)氏、LatticeのCEOであるJack Altman(ジャック・アルトマン)氏、LucidchartのCEOであるKarl Sun(カリ・サン)氏などが参加した。Slack、Brex、Airbnb、Instacart、Pinterestなどの企業のリーダーらからも資金を集めた。

ラウンドを積み重ねていけば浮き沈みがあるものだが、オールスターな企業陣の参加は、既存のシリコンバレーネットワーク出身ではないリム氏のような創業者にとって、役立つ実績となる。

同社は今回の新たな資金調達ラウンドでバリュエーション、売上高、収益性を明らかにしなかったが、同社によると投資家は同社に対してもっと資金を投入して成長に再投資するよう促しているという。

このアドバイスは、市場が混乱してランウェイの延長を求める声が増える中、投資家から最近耳にすることとはまったく対照的だ。おそらくそれは、市場が最悪の状況であってもWorkstreamの事業には自身に賭ける余裕があることを意味している。

画像クレジット:Klaus Vedfelt / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

Waymoが米国フェニックスでの配車事業を来週にも再開へ

新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で3月末に事業を一時停止していたWaymoは、5月11日にアリゾナ州で配車ビジネスを再開すると発表した。

Waymoはサンフランシスコやデトロイト、ロサンゼルスなどの他の都市で事業を再開する前に「当社のチーム、パートナー、地元住民および州当局」との話し合いの結果、フェニックス地域で配車事業を再開することを決定したと述べている。

アリゾナ州での自宅待機命令は5月15日までだが、学識経験者は同州がまだ新型コロナウイルス拡大のピークに達していないとの懸念を示しており、州政府に協力していた一部の関係者は最近、予測やモデル化作業を「一時停止」するよう求められたと、ワシントン・ポスト紙に語っている。

同社の発表によると、これは「安全に事業を再開するための段階的なアプローチ」の第1段階であり、テスト車両から始まり、最終的には自動運転車による配車サービスであるWaymo Oneまでの提供を再開するという。

Waymoは地方自治体や州政府、米疾病予防管理センター(CDC)による安全ガイダンスに従っていると述べた。同社が実施した安全対策には、1人で車両を運転している場合を除き、車両内や施設ではフェイスマスクを着用することを従業員に義務付けることや、AutoNationとの提携により1日に数回車内を清掃することなどが含まれる。

またWaymoによると、最大キャパシティを制限したり、作業エリアにソーシャルディスタンスのガイドラインを取り入れたり、チームのための安全性と衛生トレーニングを作成したり、産業医療従事者と協力して施設に入る前に人々をスクリーニングしたりするとしている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

Airbnbは新型コロナで売上大幅減を予想する中、従業員1900人の解雇を発表

旅行者と宿泊先をマッチングする企業として知られるAirbnbは2020年5月5日午後、従業員の4分の1を解雇すると発表した。TechCrunchが確認したメモの中で、同社は売上の減少とコスト削減の必要性を挙げた。

AirbnbのCEOで共同創業者のBrian Chesky(ブライアン・チェスキー)氏が書いたメモには、同社の全従業員7500人の25.3%にあたる1900人が解雇される、とある。解雇は交通やAirbnb Studiosといった多くの内部プロダクトグループ、今後のための取り組みそして今後「縮小」するであろうHotelsとLuxに影響する。

TechCrunchとの電話の中でAirbnbは国ごとの解雇者数を明らかにはしなかったが、従業員解雇は「企業向け部門に多い」とメモには書かれている。同社は取り組みを縮小しつつ基幹のオペレーションにフォーカスし、実験的で費用のかかる試みを減らすようだ。

チェスキー氏の手紙によると、Airbnbは2020年の売上高が2019年の半分以下になると予想している。同社の2019年の売上高はおおよそ48億ドル(約5100億円)だった。

Airbnbはこれより前に、旅行業界に影響を及ぼしている新型コロナウイルス(COVID-19)のためにレイオフはあり得ると認めていた。同社は2つの10億ドル(約1070億円)の債券発行を含め、ここ数週間で資金を確保した。世界の身動きが取れなくなり、旅行者は足を止め、グローバルで旅行支出が激減する中、資金調達でいくらかの流動性を保てる。

この冬眠期間を生き延びられるようマーケットプレイスの需要と供給を健全に維持するために、Airbnbはユーザーがペナルティなしで予約をキャンセルできるようにし、ホスト側には経済援助を提供した。おそらく調達した資金の一部はこうした取り組みにあてられ、また同社が2021年まで健全運営できるだけの資金となる。

同社は以前、2021年のIPOを約束していた。2020年までに十分強固な経済基盤を持っていたため、多くの人が資金潤沢で時折黒字となっていたAirbnbは従来のIPOの代わりに直接上場を選ぶだろうと予想していた。それは今となっては昔のことだが、同社はメモの中で事業はすぐに「完全復活する」と予想している、と明記した。

そして疑問となるのが、その復活がいつになるのかということだ。同社は長い間、バリュエーションが大きく、資金豊富な典型的なシリコンバレーのユニコーンとされてきた。そして収益をあげ、好きなように上場できるだろうともいわれた。ここにはパンデミックなどは盛り込まれていなかった。

解雇される従業員は14週間分の給与を受け取り、さらに勤続1年につき1週間分の給与が加算される。同社はまた、保有期間12カ月未満の株式を持つ従業員がベスティングオプションを実行できるよう1年の縛りをなくす。加えて、米国ではCOBRAを通じた12カ月間の健康保険を、米国外では年内のヘルスケアを提供する。

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(翻訳:Mizoguchi

ソフトバンクも巨額出資する3400億円企業、Flexport創業物語

「このビジネスを始めて1年になるまで『貨物フォワーダー』という言葉の意味を知らなかったんですよ」。物流スタートアップのFlexportが直近で32億ドル(約3420億円)の評価を受けたことを考えると、2016年にCEO兼創業者のRyan Petersen(ライアン・ピーターセン)氏に初めてインタビューしたときのこの言葉に、今となってはいっそう驚きを禁じ得ない。

しかし、そこに同氏がテック産業で最も才能のある、エキサイティングな経営者の1人である理由が透けて見える。何といっても、彼は学ぶ。謙虚に。休むことなく。果たす役割が大きくなると、それに必要なことは何でも学ぶ。

まさに今なら、旅客機の座席に人が座っているように箱をシートベルトで固定すると医療用マスク115万枚を搭載できることを学ぶ、という意味だ。Flexportはこれまでに個人用防護具約6200万個を輸送している。そのうち1000万個以上が同社のFlexport .orgの働きにより資金提供されたものだ。 一方でピーターセン氏とFlexportはFrontline Responders Fund(最前線対応者支援ファンド、FRF)の設立に協力し、同ファンドは新型コロナウイルス(COVID-19)対策支援のために700万ドル(約7億5000万円)の資金調達を行った。

Flexportが輸送する300万個のウイルス防護具

Flexport.orgは300万個の個人防護具を梱包して空の旅客機に積み付け、最前線で対応する人々に向けて送り出した。

「彼は私が知る中で最も印象的な創業者の1人ですよ」と語るのは、FRFを率いる仲間でScienceの共同創業者のPeter Pham(ピーター・ファム)氏。「ライアンは本当に私欲なく、ただ問題を解決したいと思っているのです」。

これを踏まえて、TechCrunchがこれまで4年間にわたり行った6回のインタビューから、13億ドル(約1390億円)の調達と数億の収益を達成してきたピーターセン氏の歩みを振り返る。

面倒なことを無視しない

ピーターセン氏はほどなく、「貨物のフォワーディング」が出荷と引き渡しの諸々を調整し、そこにある商品のパレットやコンテナを、トラックや船、飛行機を使って地球の反対側にいる販売業者へと届けることだと知った。それまでに、Flexportは2014年のY Combinatorに参加し、1兆ドル産業の貨物業界に参入する準備をしていた。

Flexport創業者のRyan ピーターセン氏

Flexport創業者のライアン・ピーターセン氏。

「問題の規模が大きすぎて、解決できると思えなかった」と同氏は振り返る。「どうやって世界貿易を修正すればいいんだろう? だいぶ経ってから、とにかくやってみよう。壊れっぱなしというわけにはいかないだろう、と思うようになったのです」どうしてか、当時の貨物フォワーディングの世界というのは、ファックスの記録と紙の積荷目録だらけで、Excelファイルか電子メールを受け取れればその顧客は運が良いほうだった。

貨物フォワーディングは多くの起業家の悩みの種であったが、誰もこのことに取り組もうとしなかった。困難が大きすぎて克服できないことから、YCの共同クリエイターのPaul Graham(
ポール・グラハム)氏が名づけた「schlep blindness」(面倒な仕事を無視すること)を引き起こしているようだった。

「面倒な仕事を無視することとは、あまりにも大変すぎるので脳がそのことを考えないようになってしまう、ということです。私たちの脳には必要な機能だと思います。そうでなかったら、座って死について一日中逡巡して、何もできなかったということになるでしょう」とピーターセン氏はいう。「Stripeが現れるより前にインターネットで何かを販売したことがある人なら、恐ろしく面倒な決済の手続きをしたことがあると思います。インターネット起業家なら100%その問題を経験していて、それぞれの方法ででやってきたと思います」。100年前からあって今なお現役の貨物輸送手続きと、山のような規制当局の頭文字語。参入したい人なんているのだろうか。

「Ryanは私が呼ぶところの『徹甲弾』ですよ。他の人が諦めるような障壁を乗り越え続ける創業者です」とグラハム氏は言う。同氏はFlexport.orgの新型コロナウイルス対策支援に100万ドル(約1億1000万円)を寄付している。「彼は意思が固いというだけじゃない。他の人に見えないものが、彼には見えるんです。貨物ビジネスは巨大でありながらものすごく前近代的で、けれど何千人もスタートアップ起業家がいて、誰がそのことに気づいたでしょうね」。

Flexportイメージ画像

ピーターセン氏が腹を立てていたのは、顧客の貨物が最適とは言いがたいルートで輸送されているのに、そのことが価格やスケジュールにどれほど影響しているかを顧客に知られたくないと、大手貨物フォワーダーが考えていたことだった。「全体がどう機能しているかを私自身が理解できないことで、彼らはお金を儲けていたわけです。それで、当時は、この分野にまだ疎い起業家にありがちなことなのだろうと思っていたのですが、実は大企業でさえこのことに苦労していることがわかったのです。貨物利用運送事業者に利用されてしまうのではないかと恐れていたのです」。

ところが、ピーターセン氏はそれほど世間知らずではなかった。実のところ、それまでずっと貨物ビジネスと関わりがあったのだ。

ソーダの売買からスタートアップの創設へ

「母はたぶんそうとは知らずに、私たちを起業家として育てたのだと思います」とピーターセン氏は振り返る。同氏と兄のデビッドの母親は生化学者であり、食品安全ビジネスを手がけていた。父親はその会社のプログラミングを担当していた。「子供の頃の会話といえば、ソフトウェアを活用し、どうやって政府規制をもっとアクセシブルにするか、ということばかりでした」。Flexportが最終的に、米国の43もの貿易規制当局を突破したのも、同社のCEOにしてみれば自然な成り行きだった。

Ryan ピーターセン氏、2015年撮影

Ryan ピーターセン氏、2015年撮影

ピーターセン氏が発散している行動的なエネルギーからは、いつも次の難題を待ち望んでいるような印象を受ける。「その頃は、何もかも飽き飽きしていて」それで、母親の職場に連れて行かれた。「母は私にオフィスに買い置きするソーダを納品させて、報酬を払ってくれたんです。Safeway(セイフウェイ)まで父の車に乗せてもらい、ソーダを1ケース4ドルで買って、9ドルで会社に販売しました」。同氏は笑いながら、ふと考えて「それって、子供のお小遣いを非課税にする方法だったかもしれませんよね」と語った。

ほどなく、ピーターセン氏はもっと大きな商品をもっと遠くへ輸送するようになった。中国でスクーターを買い付け、米国内でオンライン販売した。2005年までピーターセン氏は、サプライチェーンに近い場所にいるため中国で暮らしていた。その翌年、同氏は兄とMichael Klanko(マイケル・クランコ)氏と共同でImportGeniusを創業した。そこで彼らが気づいたのは、紙の積荷目録には膨大な量の価値ある情報が詰まっているということだった。そこで、輸入者と輸出者が競合会社の動向をチェックできるよう、スキャンしたデータを販売し始めた。

ピーターセン氏が初めてスポットライトを浴びたのは、2008年に偶然Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)に出会ったときだった。ImportGeniusは、Apple(アップル)が大量の「電子コンピュータ」を出荷しようとしていたことを掴んだ。これは同社で初めての出荷分類品目だ。 「iPhone 3Gの発売を、公開積荷目録データからスクープしたのです。スティーブ・ジョブズが米国税局に連絡し、国税局から私に連絡が来ました」と2016年のインタビューで語った。

ImportGeniusは結局頭打ちになったが、ピーターセン氏はここで知識を蓄え、後に自らの「面倒な仕事」を突き止め、それを無視することなく打ち砕くことを学んだ。 「最大の難問が本丸から私をじっと見ているようでした。世界貿易は難しすぎて、管理できるソフトウェアがありませんでした」と同氏は振り返る。「その頃、この業界では中小企業向けのソフトウェアが不足しているだろうと予想していました。しかしその後分かったのは、この業界には本当にまったくそのソフトウェアがないということでした」。

最初はImportGeniusの社内で後のFlexportを立ち上げたかったが、既存の投資家にリスクを取るよう説得するのは困難だった。何か別のことを始めるのは怖いが、エキサイティングでもある。「兄は私の親友で、最良のアドバイザーでもあります」とピーターセン氏は言う。お互いに嬉々として競争している2人 — ライアンのTwitterハンドルは「@TypesFast」だ。一方のデビッドは「@TypesFaster」である。

それで、Davidがまず動いた。後に2300万ドル(24億5000万円)を調達するBuildZoomを創業し、工事業者手配の兵站を固めた(このパターン、お気づきでしょうか)。その後2013年にライアンが退社する。「自分の城を出て自分を試したいと……1人で陣頭指揮を執れることを証明したいと望む自分がいたと思います。本当にすごく大きな挑戦でした。その日が来て、初めて味わうような解放感があって、すばらしい気分でした」。

「笑いのタネ」が10億ドルを調達

規制当局の認可をすべて受け、Flexportの商品の基盤を構築するのに数年かかった。Founders Fundからの早期の資本で、ピーターセン氏は待望の貨物ソフトウェアを構築した。それでも「大企業の経営者からは笑いのタネに。私たちのことを(映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の)Emett Brown(エメット・ブラウン)博士と次元転移装置に例えた人がいて。でもその人は、博士はタイムマシンを発明して、それは実際に動いたということを忘れていたのだと思います」。

2016年までに、Flexportは64カ国で700社のクライアントにサービスを提供した。僕が以前書いた記事のなかで、「Flexportはイノベーションを寄せ付けない退屈な巨大産業に立ち向かう、最もセクシーでない1兆ドル産業のスタートアップ」とFlexportのことを表現したことがある。それからコンシューマー向けスタートアップが飽和状態になり、投資家はこれまで触れられなかった市場で進化しているテクノロジーに目を向けるようになった。2017年の資金調達後、企業価値9億1000万ドル(971億2000万円)と算定されたFlexportは、DSTが主導する1億1000万ドル(117億4000万円)の資金調達ラウンドを実施し、シリコンバレーの目に留まり始めた。

Flexportのダッシュボード画面

Flexboardプラットフォームのダッシュボードは、地図、通知、タスク一覧、そしてFlexportの顧客がサプライヤー工場との間で使えるチャットを提供している。

幸運なことに、Flexportが1800社の顧客と取引し月間7000件の貨物を取り扱うようになっても、まだ貨物業界の巨人たちは笑って見ていた。「スタートアップのライバルは気にしていません。大手が私たちのことをジョークだと思わなくなったら心配です」と同年ピーターセン氏は語っていた。ほどなく、創業25年の中国の民間物流大手S.F. ExpressがFlexportと業務提携し、2018年の追加の1億ドル(106億7000万円)のラウンドにつながった。一方で、Flexportは老舗のライバルたちのようになろうと努力していた。 当時ピーターセン氏は「スタートアップという言葉を外したいと考えていました。(当社のお客様は)成長を助けてくれる企業を求めているのであって、地に足のつかないスタートアップは求めていませんでした」と話していた

その点、ピーターセン氏は貨物ビジネスか魅力的かどうかは気にしていなかった。「セクシーとも、セクシーでないとも考えたことがありませんでした。世界経済のバックステージパスだと考えていただけです」と後に同氏はそう説明した。それでも、サウジアラビアを後ろ盾とするソフトバンクのVision Fundには魅力的に映った。その頃Flexportは、販売業者が数カ月後に販売予定の商品の決済を完結できる貨物ファイナンス機能を追加していた。自社で航空機をチャーターし、自社の倉庫を運用するようになった。その倉庫では、入庫するすべての貨物のサイズをスキャンしてその先の輸送を最適化できる次世代ロジスティクスの実証実験を行った。

Ryan ピーターセン氏

それまでに、Flexportには数多くのイグジットの選択肢があった。しかし、ピーターセン氏は運転を楽しんでいたのだ。「ただおもしろいのです。目的があれば興味深いことに引き込まれる。ビジネスを売却してしまえば、ただのどこにでもいるお金持ちです。ビジネスを売却したいとはまったく思いません」。幸いにも、貨物フォワーディングでの利益拡大の見通しから、ソフトバンクは2019年前半、Flexportに仰天の10億ドル(約1067億円)を投資することに同意し、資金調達後の企業価値は32億ドル(約3415億円)になった。

「当社の役員会でも物議を醸しました。これは大きな希薄化だと考えられていました。しかし、これからやってくる上がり下がりの波で、サイクルを乗り切るのにキャッシュが必要だと説得しました。私の考えでは、世界は不確実なものです。あらゆる出来事に準備ができていなければならない」とピーターセン氏はいう。嵐を乗り切れさえすれば「やがて将来勝利するということです」。

この戦略はほどなく当たった。国内で新型コロナウイルスの感染が拡大したために中国との貿易が事実上停止し、Flexportの取り扱いコンテナ数は激減したが、他の後発スタートアップ企業のように大規模な解雇をせずに済んだ。2月4日に、先を見越して減速が予測される採用部門を中心に従業員の3%にあたる約50人を削減した。「社員を落胆させるのは本当に辛いこと」とピーターセン氏は打ち明ける。

Flexportのチャーター機

Flexportはここ数年自社のチャーター便を運用して輸送している。

不況時代のCEOとして舵をとること、そして思いやりを持って人員を削減することが、ピーターセン氏の新しい目標になった。「そのことに私が個人的な責任を負っているということを、社員に知って欲しかったのです。ここには透過性があることを」と同氏は語る。事態の深刻さに、その声に力がこもる。「社員は不安を感じるとリーダーに目を向ける。そのときリーダーが不安を感じていないと分かると、いっそう不安が増すのです。でも、社員が不安を感じていて、『ああ、リーダーもやっぱり不安なのかな?』と思えば、その時は大丈夫。彼らもきちんと行動してくれます」。

新型コロナウイルスの国内感染拡大前に素早い決断力で行動したことで、Flexportの推進力は強く、滑走路は開かれた。ピーターセン氏は、不況でも好況期と同じように同社を導けるだけのちからを証明しつつある。

Flexportのマネジメント術

「この18カ月ほどで得た最大の学びは、全部はできないということです。やりたいことは何でもできるけれど、全部はできないのです」とピーターセン氏は説明する。「良いアイデアが浮かんで『やろう!』というでしょう。するとすぐ手を広げすぎになってしまう。物事に『ノー』という、何らかのトップダウン的な規律が必要なのです。創業後の数年間、私たちにはそれが欠けていました」と彼は苦笑いしながら話した。

規律の探求によって同氏は、顧客ニーズと企業文化維持の優先度付けのための、2つの重要なフレームワークを開発し、今はそれに従っている。Flexportは従業員1800人、14拠点、6つの倉庫、そしてSonos、Kleen Kanteen、Timbuk2など1万社の顧客を獲得するまでに成長したのだから、それらのフレームワークは決定的に重要だ。

ホワイトボードで自身のマネジメントフレームワークを説明するRyan ピーターセン氏

ホワイトボードで自身のマネジメントフレームワークを説明するライアン・ピーターセン氏。

最初のフレームワークは、ピーターセン氏のメンターである米国ビジネス界の大御所であるCharlie Munger(チャーリー・マンガー)氏からヒントを得たものだ。ビジネスが成功するために満足させなければならない6種類のステークホルダー、または「お客様」を明らかにする。ピーターセン氏が述べるにはこうだ。

  1. 顧客:お金を払ってくれる人たち。Flexportにとっては、輸入者と輸出者の両方だ。
  2. ベンダー:自分が支払う相手。Flexportの場合、航空機、船舶、トラックの所有者。
  3. 従業員:彼らの待遇を必ず良くすること。Win-Winな関係でなければならない。
  4. 投資家:自分の投資のリターンを得る資格がある人たち。リスクを取っているから。
  5. 規制当局:誰に免許を与えるかを決める人たち。Flexportにとっては、輸入製品に関係するもので、米国内だけでも43の規制当局がある。
  6. コミュニティ:事業を行っている場所。いつかこれは、グローバル社会になるかもしれない。

Charlie Munger氏、Ryan ピーターセン氏が提唱する「6種類の満足」

「すべての項目でBグレード以上、できればAを取れなければ、長期に持続可能ではありません」とピーターセン氏は説明する。そこで働くべきか、投資すべきか、取引すべきか、または自分で導いて向上させられるか、会社を評価するときに誰でも使えるスマートレンズだ。

Airbnbを例に取ってみよう。顧客は概してこのホテルの代わりのサービスを好んでいるし、従業員の採用も継続的に有効にできている。そして、投資家は数十億ドルのオファーを提示し、同社が新型コロナウイルスの災禍を生き延びるよう資金を注入している。ただし、ベンダーであるホストとその近隣住民は問題のあるゲストに手を焼いていて、コミュニティと規制当局は住宅供給に与える影響を巡ってこのスタートアップと衝突している。この「6種類の満足」で、Airbnbが何をもっと頑張らないといけないかが分かるだろう。

2つめのフレームワークは、ピーターセン氏が自ら開発したもので、事業の拡大期に会社のコアバリューを確実に維持する方法に関するものである。6種類の文化的な問いが与えられる。

  1. Why:なぜ自分は存在するのか。自分の目的、ミッション、ビジョン、影響力は?
  2. Who:誰を雇用していて、どのような価値観と行動を求めているか。
  3. What:自分は何に焦点を合わせているか、成功の尺度にどのような指標を使っているか
  4. How:どうやって意思決定していて、どのようにして改善のためのフィードバックループを短くしているか。
  5. When:いつまでにやり終えて、商品はいつ出荷しなければならないのか。
  6. Where:自分のチームはどこに帰属意識を持っていて、自分はどうすればもっと多様性を受け入れられるのか。

ピーターセン氏はこれらの理念を医学的な状況への対処になぞらえる。リーダーが早くからチームの文化にそれらを組み込んでおけば、あとで直そうとするよりもずっと簡単だ。「どの会社でも、これらを正しくできれば、競争に勝てる」と同氏は考えている。

これらを実践するために、ピーターセン氏は身近な人たちでチームを編成した。チームは「当社のOKR(目標と主な結果)は明確か、きちんと文書化され、多様性を受け入れた会議をしているか、社員が自ら責任をもって業務しているかを確認すること、それだけです」。この方法はアマゾンの企業スタイルに大きく影響を受けている。ピーターセン氏は2019年に「英語には官僚制を意味するポジティブな言葉がないですよね」と語っていた。

プロセスを真面目に捉えるCEOは従業員にも好評だ。「ライアンの元で働いたおかげで、この10年でキャリアが大きく前進しました。彼は人に能力を最大に発揮させるような、不思議な力を持っているのです」と語るのは、Flexportの元商品担当副社長を長年勤め、後にPlacementを創設したSean Linehan(ショーン・リネハン)氏である。「ライアンは、オペレーション集約型のテックビジネスの戦略を作り上げているのです。グローバルロジスティクスの巨大企業を一から作るのは、頭がおかしくなるほど複雑な仕事です。でもライアンは複雑さの中で成長しています。ほとんどの起業家がだめになってしまう状況で、彼は本領を発揮するのです」。

現在直面している経済的な向かい風の中でFlexportが上場を目指すならば、ピーターセン氏にはこの推進力が必要だろう。ご想像どおり、同氏はそのことについても学んでいるところだ。「年次報告書を読むのが好きなのです。趣味みたいなものです、特に競合会社の報告書が」とピーターセン氏は言う。「上場したいです。ただし、利益を出せるようになってからです。ウォールストリートの気まぐれに流されたくありません。上場していて損を出して、そのとき自社の株がウォールストリートに嫌われたら、死のサイクルに入ってしまいます」

他をしのぐ会社のCEOであることで、新しいメンターへの扉も開かれた。エグゼクティブコーチのMatt Messari(マット・メッサリ)氏と、マイクロソフトのSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏である。ピーターセン氏はナデラ氏に「学びと成長を測定可能にする方法はないか」と相談した。レドモンドの実力者の答えは「すべてを測定しなくてもよい」だった。ピーターセン氏はメモを取った。自分が正しいと思うことをすればいい時もある。

戦時CEO

真心を持って率いてきたFlexportは、新型コロナウイルス対策支援に大規模に参加することに舵を切った。「私たちはただ温かい毛布にくるまってベッドで寝ているためにここにいるのではない。世界のために何かするときがやってきた」とピーターセン氏はツイートした。

Flexportの対応は2020年1月に始まり、週に数回ブログに記事を投稿して、新型コロナウイルスが世界貿易に与える影響、支援組織がサプライチェーンの問題に対処する方法、そして政府や企業が支援する方法を明らかにした。そして、Frontline Responders Fundを立ち上げ、Flexport.orgへの寄付をすべてこのチャリティーに回し、必要ならばいつでも貨物フォワーディング費用の大幅割引を提供して個人防護具の入手を支援した。

Frontline Responders Fundの立ち上げ

Flexport.orgがFrontline Responders Fundを立ち上げ。

「今回受け取った寄付は100%、最前線の人々にできるだけ速くマスクを輸送することに直接費やされます。お受けした寄付は1セントでも無駄にしないことをお約束します」とピーターセン氏はツイートした。自分のビジネスもまた世界貿易と需要の混乱における自身の問題に直面している中で、同氏はすべての時間をFlexport.orgの運営とFRFの支援を行うことにした。Arnold Schwarzenegge(アーノルド・シュワルツェネッガー)氏やEdward Norton(エドワード・ノートン)氏のようなセレブの支援もあって、700万ドル(約7億5000千万円)以上の資金を調達した。FRFはこれまでにマスク690万枚、 ガウン24万着、人工呼吸器1000台、手袋15万5000枚、そして社会的に弱い立場の人々の食事25万食を届けている。

ピーターセン氏は多くのリーダーに声をかけ人道支援を説いて回ることに躊躇がない。救援活動を妨げている主なボトルネックの広範なガイドを記している。「慈善活動家たちもステップアップして、個人防護具を受注したものの、代金を前払いで受け取らないと仕入れの資金がないという組織に対し、資金提供するべきです。パンデミックが落ち着いたらお金は戻ってくるのだから、今できる慈善活動で最も効果の高い方法のひとつです」。

同氏の意欲が従業員たちの心を動かし、彼らも腕まくりを始めた。「危機の中で、リーダーたちは彼らが体現する価値観を如実に示しています」とFlexport.orgの責任者Susy Schöneberg(スージー・シェーネベルク)氏は語る。「新型コロナウイルスの大流行後、ライアンは民間企業と非営利団体の顧客を支援するために、すぐに多くのリソースを提供してくれました。ここ数週間、私の1日は彼との会話に始まり、彼との会話で終わるという状況でした。時刻が何時だろうが構わずにです」。

Ryan ピーターセン氏

ピーターセン氏の立場を利用することに加え、同氏には利益を得るために危機を利用しようとしている人を見抜く特別な視力がある。「どの病院システムまたは最前線緊急事態対応者に提供するかを明らかにされないお客様からのご依頼の場合、Flexportは個人防護具を輸送いたしません。このことは即時有効とします」とピーターセン氏はつづった。「個人防護具は世界的に不足しています。簡単にお金を稼ぎたい起業家に戦争で儲けさせるような行為は、非道徳的です」。

連邦政府レベルの適切な危機管理の欠如により、ピーターセン氏は対新型コロナウイルス戦線の事実上の総司令官になった。「問題の規模が甚大であること、そして先に説明した市場の失敗の複雑さを考えれば、米国政府がみずからこの問題を解決できるとは思いません。それでも、障壁を取り払い、民間セクターの対応を調整するようなリーダーシップは発揮できるし、そうしなければなりません」それまで、ピーターセン氏は全速力で今すぐ必要な戦時CEOになることを学んでいることろだ。

ピーターセン氏は故Kobe Bryant(コービー・ブライアント)氏の言葉を借りて「自分のゴールがわかっているとき、世界は全部図書館になる」と締めくくった。

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関連記事:1億1000万ドルを調達して貨物輸送帝国を夢見るFlexportの壮大な計画

Category:ネットサービス

Tags:Flexport Softbank Vision Fund 物流

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(翻訳:Dragonfly)

デザインコラボプラットフォームのFigmaが約53億円調達、新型コロナ禍でも需要増

コラボワークやクラウド作業ができるデザインプラットフォームのFigma(フィグマ)は4月30日、5000万ドル(約53億円)のシリーズDのクローズを発表した。本ラウンドはAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)がリードし、パートナーのPeter Levine(ピーター・レヴィン)氏と共同創業パートナーのMarc Andreessen(マーク・アンドリーセン)氏がディールをまとめた。既存投資家のIndex、Greylock、KPCB、SequoiaそしてFounders Fundとともに、Durable CapitalのHenry Ellenbogen(ヘンリー・エレンボーゲン)氏を含む新たなエンジェル投資家も本ラウンドに参加した。

本ラウンドによりFigmaのバリュエーションは20億ドル(約2140億円)になったとForbesは報じている。Figmaの創業者でCEOのDylan Field(ディラン・フィールド)氏は、Andreessen HorowitzとFigmaの話し合いは実際には2019年2月にクローズした資金調達シリーズCの終わり頃から始まっていた、とTechCrunchに語った。

「できちゃった結婚みたいな感じがした」とフィールド氏は語り、それでも両社は互いをよく知ることにした、と説明した。両社は2019年に関係を構築し、シリーズDのクローズに至った。フィールド氏はまた、本ラウンドに参加した他の投資家には直接顔を合わせておらず、ディールの大半はZoom越しに行われたとも語った。

「シリコンバレーの将来を考えたとき、シリコンバレーの資本インフラ、そしてシリコンバレーにいなければアクセスできな人、という点で興味深い疑問がある。私は今回オンラインでのディールがいかにうまくいくかを目の当たりにした。より多くの投資家がシリコンバレーにいるかどうかを気にしなくなると思う」とフィールド氏は話した。

Figmaはステルスモードで6年近くかけて準備された後、2015年に創業された。デザインのGoogleドキュメントとなるような、コラボができてクラウドベースのデザインツールをつくる、というのが目的だった。

以来、Figmaは個人のデザイナーや中小企業、大企業の使い勝手が良くなるようなプラットフォームを築いてきた。例えば同社は2019年にプラグインを開発した。デザイナーが取り組んでいるレイヤーに新たに名前をつけたり整頓したりといったことが自動的にできるプラグイン(Rename.it)のようなものをデベロッパーが自分のツールで構築できるようにする。また自動的に見つけて後に置き換えるプレイスホルダー・テキストをユーザーが加えることもできる(Content Buddy)。

同社は、Communityという教育用プラットフォームも立ち上げた。このプラットフォームではデザイナーが自分の作品をシェアし、他のユーザーがそのデザインを「リミックス」したり、単にどんなふうに作られたのかをチェックしたりすることができる。

同社の広報担当はTechCrunchに対して、今回のディールは機会に恵まれたものであり、資金調達前でも資金は豊富だった、と述べた。新型コロナウイルスが猛威を振るう現在では、多くの企業が購入を控えたり将来が見込まれる企業の成長が緩やかになったりしており、新たな資金調達はこの不確実な時代にFigmaの取り組みを拡大させるものとなる。

Figmaはチームがクラウドでコラボするように作られているため、同社のデータは企業の購入活動を語るものになるとフィールド氏は説明した。

「販売面に目を向けると、大きな取引がどんどん進んでいる」と同氏は述べた。「Figmaは今すぐ役立つルールだ」。新型コロナウイルス蔓延の中で興味深い変化の1つは、Figmaでのコラボ作業でユーザー利用時間が飛躍的に伸びたことだ。また、企業がデザイナーチーム内だけでなく組織全体でコラボ作業を行うツールとしてFigmaを利用し始め、ホワイトボード作業、ノート取り、スライド作成、図表の作成などが増えた。

今回のラウンドにより、Figmaがこれまでに調達した資金は1億3290万ドル(約140億円)になった。同社はまだ黒字化できていないが、成長するためにアグレッシブに展開し、新規採用を行っても今回の資金調達で今後3、4年の事業費を賄える、とフィールド氏は述べた。

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(翻訳:Mizoguchi

ARMは若いスタートアップにチップ設計への無料アクセスを提供

今年はハードウェアメーカーにとって、すでに波乱のスタートとなっている。新型コロナウイルス(COVID-19)が最終的に市場にもたらす本当のインパクトは、まだ見え始めたばかりだ。Apple(アップル)からQualcomm(クアルコム)、さらにSamsung(サムスン)まで、多くの会社が使うチップのベースを提供する英国の会社であるARMは、そうしたチップの75%におよぶ設計情報を、選抜されたスタートアップに提供することで開発を促進しようと考えている。

画像クレジット:PAU BARRENA/AFP/Getty Images

この戦略は、同社のFlexible Access(フレキシブルアクセス)と呼ばれるプログラムを拡張するもの。それによってARMは、まだ初期段階にあるスタートアップに対し、同社の持つ知的財産へのアクセスを提供する。大手企業の場合、そうした情報を得るためにARMに多額の料金を支払う必要がある。しかしそうした費用は、これから事業を始めようとする会社にとっては法外なものとなりかねない。

「現在のような困難なビジネス環境では、イノベーションを可能にすることが不可欠です。卓越したアイデアを持つスタートアップは、成功し、拡大していくための最速かつ最も信頼できる手段を、今はこれまで以上に必要としています」と、ARMの上級副社長、ディプティ・ヴァチャニ(Dipti Vachani)氏は声明で述べている。「ARM Flexible Access for Startupsは、半導体業界への新規参入者に、プロトタイピングを成功させるための高速でコスト効率の高いパスを提供します。その結果として、将来の資金調達のため、投資家からの信頼を強化することができるでしょう」。

これは、これからスタートアップを始めようとする人にとって心強いアクセスとなるはずだ。もちろんARMは、単なる良心からこうしたことを行っているわけではない。この業界は、ここ数年、投資と成長の勢いが増していた後で、今、前例のない減速に見舞われている。そうした中で同社は、ハードウェアのスタートアップの育成を支援することに強い関心を持っているのだ。

この話に興味のある人は、ここから利用可能な知的財産の完全なリストにアクセスできる。ARMは、Flexible Access for Startupsの制度によって、企業が製品を市場投入できるまでの期間を最大1年は短縮できると考えている。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

DevOpsのためのモニタリングと試験プラットフォームのChecklyがシードで2.4億円相当を調達

DevOpsチームのためのモニタリングと試験のプラットホームを開発しているベルリンのChecklyが米国時間4月28日、Accelがリードしたシードラウンドで225万ドル(約2億4000万円)を調達したことを発表した。エンジェル投資家でInstanaのCEOであるMirko Novakovic(ミルコ・ノバコビッチ)氏やZeitのCEOであるGuillermo Rauch(ギジェルモ・ラウフ)氏、Twilioの元CTOであるOtt Kaukver(オット・カウクバー)氏らも、この投資に参加した。

同社のSaaSプラットホームを利用することでデベロッパーは、彼らのAPIエンドポイントとウェブアプリケーションをモニタし、異変の警告を受けることができる。そのトランザクションモニタリングツールを使えば、フロントエンドのウェブサイトの試験を定期的に繰り返し行うことが容易になり、コードは一行も書く必要がない。この試験ソフトウェアはGoogleのオープンソースのPuppeteerフレームワークを使っており、そしてその商用のプラットフォームを開発するためにChecklyはさらに、Puppeteer Recorderというものを開発して、エンドツーエンドの試験スクリプトをローコードツールの中に作り込んでいる。デベロッパーはそれに、Chromeのエクステンションからアクセスする。

モニタリングツールの市場は混み合っているが、Checklyのチームはエンドツーエンドの試験とアクティブモニタリングの組み合わせ、およびモダンなDevOpsチームへのフォーカスが自分たちの強みだと考えている。

創業者のTim Nolet(ティム・ノレット)氏は 「モニタリングの市場の1人の顧客として、それらのツールは90年代にずっと行き詰まりになっていて、チームをJavaScriptでサポートし、DevOpsのチームの中のいろんな役割で使えるツールが必要だと感じていた。自分で作り始めてみてすぐに気づいたのは、モニタリングと同様に試験も重要だということだ。Checklyで開発したのは、顧客が以前からずっと求めていたような新しいタイプのツールだ。評価は口コミですでに相当広がっている。DevOpsのチームに信頼されるプラットフォームというビジョンの今後の構築に向けて、Accelをパートナーにできたことは非常にうれしい」と語っている。

Noletの共同創業者は、TestObject(後にSauce Labsが買収)を創ったHannes Lenke(ハネス・レンケ)氏と、Saucd LabsのEMEA担当営業部長だったTimo Euteneuer(ティモ・オイチューニア)氏だ。

同社によると現在の顧客は約125社で、同社のプラットフォーム上で1日に100万回のチェックを行なっているとのこと。料金は個人デベロッパーなら月額7ドル(約750円)から、小さなチームのためのプランは月額29ドル(約3090円)となっている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

デジタル金融サービスのインフラを構築する香港のOrienteが約53億円を調達

香港に拠点を置くOriente(オリエンテ)は、デジタルクレジットなどのオンライン金融サービスのテックインフラを開発するスタートアップだ。今回のシリーズBラウンドで5000万ドル(約53億3000万円)を調達した。香港最大の不動産開発会社の1つであるHenderson Land(ヘンダーソンランド)の共同会長であるPeter Lee(ピーター・リー)氏がラウンドをリードし、ウェブサイト開発プラットフォームのWix.comなどの投資家が参加した。

Orienteは、2017年にSkypeの共同創業者であるGeoff Prentice(ジェフ・プレンティス)氏と、Hubert Tai(ヒューバート・タイ)氏、Lawrence Chu(ローレンス・チュー)が立ち上げた。既存の金融機関がサービスを提供していない市場に注力している。新しく得た資金はOrienteの既存市場であるフィリピンとインドネシアでの成長と、ベトナムを含む新規市場への拡大に使う。

調達した資金は、Orienteのテクノロジーの開発継続にも向けられる。同社のテクノロジーはビッグデータ分析によって小売業者がセールスコンバージョンを向上し、リスクを低減するのに役立つ。Orienteは、2018年11月のラウンドで調達した1億500万ドル(約111億9000万円)を含め、これまで1億6000万ドル(約170億5000万円)を超える金額を株式と負債で調達した。

Grab、Google、Facebook、Amazon、Uber、Apple、Samsungなど多くの大手テック企業が検討しているデジタル決済といったオンライン金融サービスにはテクノロジーのインフラが必要であり、さまざまな市場で規制対応を支援してくれるパートナーも必要だ。

Orienteは決済プロバイダーとは競合しない。プレンティス氏はTechCrunchに「オフライン、オンラインを問わず、小売業者のデジタルクレジットソリューションの迅速な立ち上げを可能にするテクノロジーを開発し、『サービスとしてのクレジット(Credit as a Service)』を創造する」と語った。

同氏はまた、Orienteが「エンドツーエンドのデジタル金融サービスインフラの開発に注力している唯一の企業だ」と述べた。同社にはコンシューマー、オンラインおよびオフラインの小売業者、法人クライアント向けのサービスがある。

同社は現在消費者向けに、フィリピンではCashalo、インドネシアではFinmasという2つのアプリを提供しており、合計で500万のユーザーと1000を超える小売業者を抱えるという。サービスには、中小企業向けの現金ローン、オンラインクレジット、運転資金提供が含まれている。

Orienteによると、2019年に取扱高は前年比で700%増加し、サービスを提供する新規ユーザーは400万人を超え、販売パートナーの販売量は20%以上増加した。

Orienteは今後数カ月にわたり「Pay Later」のデジタルクレジット機能を拡張し、資金調達を必要とする中小企業向けに新しい成長資本ソリューションを立ち上げる予定だ。同社はまた、大企業向けのエンタープライズソリューションを拡張するために、いくつかのパートナーシップを結んでいる。

Orienteはベトナムで、CashaloやFinmasと同様のコンシューマープラットフォームのベータテストを行っている。オンラインクレジットやファイナンスだけでなく、現地の企業と提携して他のサービスも提供する。

同社はまた、新型コロナウイルスパンデミックの間に企業にサービスを提供する方法を検討し始めた。多くの小売業者が売上高の減少、ユーザーの逸失、キャッシュフローの問題に直面しているからだ。

「過去数週間にわたり、当社は企業戦略に優先順位をつけて、各市場における最大の機会に焦点を当ててきた。また現在および将来の市場の状況とより焦点を絞った戦略に基づき、オペレーションとファイナンスの効率を最適化するため、組織を再構築するさまざまな措置を講じている」とプレンティス氏は説明した。

「当社の目的は、予想される流動性の危機を緩和することだけでなく、不況下で当社のビジネスが市場で勝利をおさめ抜きん出る能力を証明し、将来にわたって株主価値を高めることだ」。

画像クレジット:Oriente

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(翻訳:Mizoguchi

デジタルキーカードのProxyがスマートリングのMotivを買収

Motivに感銘を受けているのは我々だけではなかった。Motivはフィットネストラッカーのテクノロジーをリングに詰め込むことで、ウェアラブルの概念を覆した。今週、サンフランシスコの「デジタルアイデンティティ」スタートアップであるProxyがMotivの買収を発表した。

Proxyのウェブサイトにはもったいぶった言葉が散見されるが、同社はデジタルキーカードを専門とする。会社や自宅に入るのにスマホのようなデジタルデバイスを使う手段を提供するものだ。Motivが近年何に取り組んでいたかを知らなければ、エクササイズ用リングのメーカーとProxyというのは奇妙な組み合わせに映るだろう。

小さなハードウェアのプラットフォームに追加されたものには、NFC決済、紛失したスマホの追跡、歩行モニタリングを通じての二段階デバイス認証がある。Proxyがフィットネスリングの製造と販売に興味があるかどうかは別として、Proxyの興味を引きつける技術がMotivにはたっぷりとある。

「我々のテクノロジーに対する需要は増えるばかりで、物理的なものとデジタルでIDを認証することは重要だとはっきり認識している」とMotivはブログで述べた。「鍵、アクセスカードそしてパスワードは、セキュリティと利便性を大きく向上させる生体認証に急速に取って代わられている」。

Motivのアプリは引き続きダウンロードできる(どれくらいの期間サポートをするのかについては言及がない)。ただ、買収によりMotivのオンライン販売は終了となり、パートナー小売は在庫を売り切ることになる。

一方、Proxyはウェアラブル部門の未来としてリングを信じてきたと話す。「今回の買収でProxyはデジタルIDシグナルを初めてスマートリングに搭載する計画で、人々が周りの世界とかかわるためのテクノロジーの使用方法に革命を起こす」と同社は書いている。「人々が物理的な世界と接するためにいかにウェアラブルを使用するかという点において、パラダイムシフトを引き起こすことが可能だと確信している。人々はこれまでにない経験ができるはずだ」。

注目せずにはいられないものでありながら、フィットネスリングは過去3年間、ウェアラブルカテゴリーを席巻していない。このカテゴリーは引き続きスマートウォッチとヘッドフォンにほぼ独占されることになりそうだ。リングという形状を支持する人のためにいうと、Motivは近年、主に睡眠トラッキングのためのリングOuraのような企業と競争を展開していた。

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(翻訳:Mizoguchi

香港で初めてのネットネイティブのペット保険が誕生、飼い主の安心のため新型コロナも対象

香港の保険テクノロジーのスタートアップOneDegreeが今日(米国時間4/23)、最初のプロダクトをローンチした。それは、Pawfect Careと名付けた一連のペット向け医療プランだ。同社は今後、サイバー保険や人間の医療保険なども出す予定で、すべてが完全にオンラインのそれらが出揃うのは今から12か月後だそうだ。

2016年に創業されたOneDegreeは、昨年シリーズAで3000万ドルを調達した。投資家はBitRock Capital、Cyperport Macro Fund、そしてCathay Venturesなどだ。

共同創業者でCEOのAlvin Kwock氏によると、香港では規制が厳しく保険の免許をもらうのが難しいので、Pawfect Careの立ち上げまでに2年を要した。

香港で初めてインターネットを利用する保険に免許が下りたのは、既存の保険企業Sun LifeのBow TieとAsia InsuranceのAvoの2例だ。香港の保険監督機関は、既存企業のデジタル進出には熱心だ。既存企業とは無縁の独立企業としてネット保険の免許が下りたのは、OneDegreeが初めてである。

OneDegreeは来年、サイバー保険と人間の医療保険を徐々に立ち上げるつもりだ。Kwock氏によるとCOVID-19のパンデミックが「パラダイムシフト」を起こした。人が顔と顔を合わせることが、激減したからだ。保険監督機関も今ではネット保険に免許を出すようになったし、いろんなネット製品の登場を許容している。

同社がペット保険から始めることに決めたのは、ペットの医療は高いにもかかわらず、香港では飼い主の3%しか医療保険に入っていないからだ。OneDegreeでは、顧客が保険証書を買って管理するのも、保険金を請求するのも、モバイルアプリからだ。請求の約90%は支払いが2営業日以内に行われるそうだ。

パンデミックへの対応としてPawfect Careのペット保険はCOVID-19関連の医療費もカバーしている。ただしOneDegreeが強調するのは、ペットを検査してウイルス陽性になった例がきわめて少ないことだ。実際にキャリアが見つかった証拠もない。でもペット保険にそれを入れたのは、飼い主を安心させるためだ。

画像クレジット: OneDegree

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Linux VMインフラのパフォーマンスを最適化するGranulateが13億円相当を調達

最近の企業は経費節減にますます熱心なため、その波に乗ってイスラエルのアーリーステージスタートアップGranulateは、インフラストラクチャの使い方を最適化する巧妙な方法を提案しようとしている。同社は米国時間4月22日にシリーズAで1200万ドル(約12億9000万円)を調達した。

このラウンドはInsight Partnersがリードし、TLV PartnersとHetz Venturesが参加した。投資に伴う合意により、Insight PartnersのマネージングディレクターのLonne Jaffe(ロン・ジャフェ)氏がGranulateの取締役会に加わる。Granulateによると、これで同社の調達総額は1560万ドル(約16億8000万円)になる。

同社は、オンプレミスでもクラウドでもインフラストラクチャのコストを20%から最大80%カットできると主張している。現在、世界の経済が大波乱に陥っているため、かなり意義のある節約率となる。

Granulateの共同創業者でCEOのAsaf Ezra(アサフ・エズラ)氏によると、同社はLinux仮想マシンについて徹底的な研究を行なった結果、その効率化技術に到達した。6カ月あまりの実験により、ボトルネックを取り除き、Linuxのカーネルが効率を大幅にアップするためにやっていることの利用の仕方を学んだ。

Linuxはリソースの公平性を目指して最適化をしていることが判明しているが、Granulateの創業者たちはその発想を逆転して、公平性ではなく反復性に着目した。多くのファンクションに公平にリソースを割り当てるのではなく、1つのファンクションに集中させる。

「実際のプロダクションシステムでは、マシンの中に大量の反復性がある。ユーザーは、1つのことをしっかりやって欲しいと考えている」と彼は語る。

またエズラ氏は、VMである必要はないと指摘する。コンテナやKubernetesのポッドで十分だという。ここで忘れてならないのは、Linuxに固有のインタラクティビティや公平性はもはや気にしないということであり、むしろ重要なのは、マシンがある特定のものに向けて最適化されていることだ。

「そのプロダクションシステムのユーティリティファンクションが何かを教えていただきたい。すると我々のエージェントが、そのユーティリティファンクションを用いるすべての意思決定を最適化する。つまり、そういう利益を得るために何一つコードを書き換える必要がない」とエズラ氏は説明する。

しかも、そのソリューションは機械学習を利用して、さまざまなユーティリティファンクションがどのように機能しているかを理解し、長期的にもっとパフォーマンスを向上するためのさらなる最適化を提供する。

InsightのJaffe(ジャフィ)氏は、そんなソリューションのポテンシャルと適時性をよく認識している。

「パフォーマンスの高いデジタル体験とインフラストラクチャの低いコストの両立が今ほど厳しく求められている時代はない。Granulateの機械学習を利用する高度に差別化されたプロダクトは、構成管理やクラウドリソースの購入などのレベルに依存していない」とJ声明で述べている。

エズラ氏も、このようなプロダクトが特に今、役に立つことを理解している。「我々は現在、ユニークな立場にいる。我々のプロダクトは現在、人を解雇せずにコストを節約することによって、沈滞期における企業の生存を助ける」と彼はいう。

同社は2018年に創業され、現在は20名の社員がいる。年内に倍増する予定だ。

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隔離生活で求められる自然発生的なコミュニケーションを生むソーシャルアプリたち

次世代版ソーシャルネットワーク、Clubhouse(クラブハウス)

カレンダーからの招待はもういらない。気軽に会話に飛び入りで参加しよう。これが新型コロナウイルス(COVID-19)による隔離で空白になってしまった我々のスケジュールを、商売の種にできないかと考えている新しいソーシャルスタートアップ企業に推進力を与えているコンセプトだ。しかし、こうしたソーシャルアプリはオンラインによる集いやオープンオフィスプランなど流動性あるアドホック、その場に応じた臨時的なコミュニケーションを実現することよって、新型コロナウイルス収束後の我々の働き方や人付き合いのあり方を変える可能性もある。「Live」は高性能ストリーミングの代名詞となっているが、これらの新しいアプリがスポットライトを当てているのは、目前のタスク、ゲーム、ディスカッションに加え、複数のユーザーである。

Clubhouse(クラブハウス)の「部屋」

Clubhouseの「room」

これらのスタートアップ企業の中で最も注目されているのが、ユーザーがいつでもチャットルームに参加できるオーディオベースのソーシャルネットワークであるClubhouseだ。ユーザーは自らがフォローするすべての人の部屋を確認し、ラベルの付いていない部屋を見つけたら、興味の赴くまま、会話に参加したり、ただ話に耳を傾けたり、といったことが可能である。活気のある部屋は多くのユーザーが集まるし、活気がなければユーザーは他のチャットサークルへ移っていく。

Clubhouseは先週末、人々が限定招待を求めて争奪戦を繰り広げたり、メンバーシップについて謙虚を装いながら自慢したり、人々のFOMOをからかったりするなど、VCのTwitterで大騒動を引き起こした。現在のところ、公開アプリやアクセスはない。Clubhouseという名は、人々が限定的な集団に属していたいと願う気持ちを完璧にとらえている。

Clubhouseは、Paul Davison(ポール・デイヴィスン)氏によって開発された。彼は過去にオフラインでの出会いを目的とした位置情報アプリHighlightおよびカメラロールすべてを公開するアプリShortsを開発した(2016年にPinterestが彼の開発チームを買収)。2020年に彼は、Alpha Exploration Coスタートアップスタジオを発表し、またラジオ形式の視聴者参加型番組を即座に放送可能なTalkshowを立ち上げた。新しい友だちを作る、生活をシェアする、考えを伝える、議論する。デイヴィスン氏の取り組みに通底するのが「スポンテニアス(自然発生的)」という概念だ。

Clubhouseはまだ始まったばかりの段階だ。ウェブサイトさえない。よく似た名前のClubhouse.ioと混同しないようにしよう。Clubhouseがどのようなものになるのかについての説明や、正式にリリースされるのか、またそれがいつになるのかは一切発表されておらず、またデイヴィスン氏も共同創業者のRohan Seth(ロハン・セス)氏もコメントを拒否している。しかし、肯定的な評価は、Twitterがテキストで行ったことを進化させるような、より即時的でマルチメディア的なアプローチに対する欲求があることを示している。

サプライズのない隔離生活

この隔離生活でわかったのは、皆と離れて1人になると、自然発生的な交流の機会を失うということだ。オフィスにいるなら、給湯室で偶然顔を合わせた同僚と軽い会話を交わしたり、インターネットで見つけたおもしろおかしいことを声に出してコメントしたりできる。パーティーではぶらぶら歩いて、1人でも知り合いがいるグループがあればそこに混じってみたり、興味をひく話が耳に飛び込んできたら、会話に参加したりできる。家にこもっているとこうした機会が失われる。相手の邪魔にならないテキストと違い、緊急性がないにもかかわらず手当り次第に友達に電話をしたりすることを我々は非難してきた。

Clubhouse(クラブハウス)の創業者ポール・ダビソン氏

Clubhouseの創業者ポール・デイヴィスン氏  画像クレジット:JD Lasica

日時の決まったZoomによる通話、実用的なSlackのスレッド、際限のないEメールのやり取りでは、意外性や、人々が互いのアイディアを交換し合う中で生まれる会話による喜びを捉えることができない。しかし、スマートアプリ開発者たちは、自然発生的というコンセプトがユーザーの生活やワークフローを絶えず妨害するものではないと考えている。ユーザーは会話に参加するかしないかについて決定権を持ち、また構わないで欲しい場合にはそれを表示することで、望む場合にのみ社会的つながりを持つことができる。

AppAnnieによるHousepartyのランクを示すチャート

AppAnnieによるHousepartyのランクを示すチャート

Housepartyはこの自然発生的というコンセプトを体現している。このアプリは新型コロナウイルスによる隔離が続く中、ユーザーがアプリを開いた瞬間に気分の赴くままに友だちとグループのビデオチャットルームに参加できるようにすることで、大ヒットしている。毎月5000万回のダウンロードがあり、一部の地域では新型コロナ以前の70倍を超える数に増加している。これは、米国を含む82カ国でソーシャルアプリ部門の第1位になり、16カ国でアプリ全体で第1位となった。

Discord本来はゲーム用に開発されたアプリだが、ユーザーはいつでも開いているビデオ、音声、およびチャットルームを通じて自然発生的に他のユーザーと交流を持つことができる。カリフォルニア州、ニューヨーク州、ニュージャージー州、ワシントン州など、早期に外出を禁止した州での使用の急増もあり、米国において日常的にDiscordの音声機能を使用するユーザーの数は50%増加した。モバイルゲームにオーバーレイされたビデオチャットアプリのBunchもまたランクを上げ主流になってきている。主なユーザー層は1日の総会話時間が150万分にのぼる女性にシフトしてきている。これらのアプリを使用することで、友達と合流し一緒に選んでプレイするのが簡単になる。

モバイルゲームにオーバーレイされたビデオチャットアプリ、Bunch

Bunch

即席オフィス

企業のビデオチャットツールは、強引でかつ事前準備のいるZoom通話に代わり、自然発生的コンセプトを取り入れたものになっている。これはZoomに対する反動で、終日ビデオチャット続きで何も成し遂げられないことに人々が気づいたためだ。

Loomを使用すると、ビデオクリップを簡単に録画して同僚に送信でき、同僚は時間のある時にそれを見ることができる。ビデオは撮影と同時にアップロードされるため、会話のスピードがアップする。

Loomを使用すると、ビデオクリップを簡単に録画して同僚に送信できる

Loom

Aroundでは、画面の上部に小さな円形のビデオウインドウが表示されるので、デスクトップの大部分を実際の作業のために使用しつつ、同僚と即座にコミュニケーションを取ることが可能だ。

Aroundでは、画面の上部に小さな円形のビデオウィンドウが表示される

Around

Screenは画面共有を起動できる小さなウィジェットである。全員が共有ウィンドウをコントロールできるカーソルを持ち、その場でコーディング、設計、書き込み、注釈を付けることができる。

Screenは、画面共有を起動できる小さなウィジェット

Screen

Pragliはアバターベースの仮想オフィスで、ユーザーは誰がカレンダーミーティングに参加しているか、その場にいないか、時間があるかを確認できるので、全員の空き時間をわざわざ探す必要なく、ボイスチャットやビデオチャットチャンネルを同時に開くタイミングを把握することができる。しかし、Slackのように自宅にまで追いかけて来ることなく、Pragliでは仮想オフィスにサインインまたはサインアウトして、1日を開始、終了することが可能だ。

Pragliはアバターベースの仮想オフィス

Pragli

声を届ける

ビジュアルコミュニケーションは、我々がいる場所が示せる携帯電話の画期的な機能だったが、外出できない現在、我々に表示するものはあまりない。これが、手数をかけずに自然発生的なコミュニケーションが取れるツールが流行するチャンス拡大のきっかけとなっている。リモートパーティー、迅速な問題解決など用途を問わず、Clubhouse以外の新しいアプリには、ビデオだけでなく音声機能が組み込まれている。音声を使えば迅速な情報交換が可能で、その場に居合わせているような臨場感もある上、仕事中にディスプレイが占拠されたり注意を全部持っていかれることもないし、見栄えを気にする必要もない。

High Fidelityは、Second Lifeの共同創業者であるPhilip Rosedale(フィリップ・ローズデール)氏が現在携わっている、資本金7200万ドル(約77億4000万円)のスタートアップ企業だ。High Fidelityは最近、バーチャルリアリティのコワーキングツールの構築から離れ、音声とヘッドフォンベースのオンラインイベントプラットフォームおよび人々が集うためのギャザリングスペースのテストを開始した。初期のベータ版ではユーザーは地図上で自身を示すドットを動かし、空間オーディオで彼らの近くにいる人物の声を聞くことができる。相手に近づけばその声は大きくなり、通り過ぎると消えていく。ユーザーは気分の赴くまま、小さなドットの集まりに近づいたり離れたりしながら、声の届く範囲で様々な会話を聞くことができる。

High Fidelityによる初期テストからの非公式な原寸模型

High Fidelityによる初期テストからの非公式な原寸模型 画像クレジット:DigitalGlobe / Getty Images

High Fidelityは現在テストマップとしてバーニングマンの衛星写真を使用している。実際のオフラインイベントと同じように思い思いの場所にDJが陣取り、リスナーはDJの間を行き来したり、友達と歩きながら会話したりする。バーニングマンは2020年の開催がキャンセルとなったため、High Fidelityはバーニングマンのオーガナイザーが約束したバーチャルバージョンを開催する候補者となる可能性がある。

Housepartyの元CEOであるBen Rubin(ベン・ルビン)氏と、Skypeエンジニアリング部門の統括部長であるBrian Meek(ブライアン・ミーク)氏は Slashtalkと呼ばれる自然発生的なチームワークツールを開発中だ。ルビン氏が去り、Housepartyは2019年中頃にFortnite-maker Epicに売却されたが、このゲーム業界の巨人は最近の隔離生活で成功の波に乗るまで、このアプリを放置していた。

Slashtalkは、迅速で分散型の会話を旨とする会議不要のツール

彼の新しいスタートアップ企業のウェブサイトには「Slashtalkは、迅速で分散型の会話を旨とする会議不要のツールです。我々は、適切な人員が適切な時に適切なトピックについて必要十分なだけ話し合えれば、ほとんどの会議は不要だと確信している」と書かれている。このツールを使えば、瞬時にボイスチャットまたはビデオチャットを始めることができ、日時の決まった共同セッションを待たずして、物事の段取りをつけることができる。

TechCrunch Disrupt NY 2015に出席したSlashtalk共同創設者ベン・ルビン氏

TechCrunch Disrupt NY 2015に出席したSlashtalk共同創設者ベン・ルビン氏

仕事にせよ遊びにせよ、これらの自然発生的な集いの場を提供するアプリは我々に縛りの少なかった若かかりし時代を思い起こさせる。カフェテリアや校庭をぶらぶらする、ショッピングモールに誰かいないかチェックする、部屋のドアが開け放たれた大学の学生寮の廊下を歩く、学生会館や広場でおしゃべりする。大人になる一歩手前の時代には、偶発的な交流の機会がたくさんある。

年を重ねてそれぞれが自宅を持つようになると、我々は文字通り壁を作って偶発的なコミュニケーションができるというシグナルを受ける能力を自ら制限してしまう。Down To LunchやSnapchatが買収したZenlyといったアプリや、Facebookが準備中のMessengerのステータス機能は、こうしたバリアを打ち破り、オフラインで誘うときの気まずさを感じないように設計されている

関連記事:隔離中だからこそ、メディアが真に「ソーシャル」な存在に

実世界での交流や共同作業には、通常、交通手段や計画が必要になってくるが、ここで取り上げた新しいソーシャルアプリはたちどころに我々に集まる場所与えてくれる。前もってスケジュールする必要はない。妥当な距離圏内にいる人以外とつながることを阻んでいた地理的な制限もやはり消え去った。デジタルでなら、自らのネットワーク内から相手をよりどりみどりで選択可能だ。隔離生活で我々のカレンダーの一部は空白になってしまったが、これにより我々の選択肢が広がった。

様々な制限が取り除かれた今、必要なのは我々の意思だけだ。我々は繋がりを持ちたい相手と繋がり、望みを達成することができるのである。スポンテニアス(自然発生的)なアプリによって、瞬発力ある人間本来の性質は輝く。

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Dragonfly)

Tags: ビデオチャット チャットアプリ ソーシャル 新型コロナウイルス COVID-19

機械学習のモデルの管理を効率化するComet.mlがシードに次いで5億円相当を調達

いろんな仕事の新しいやり方、いわゆるニューノーマルを取り入れていくとき、新しいソフトウェアサービスを導入しようとする企業にとっては、あらゆることのもっと効率的な方法を探すことが何よりも重要になる。機械学習も、その例に漏れない。そこで、より効率的な機械学習プラットホームを作ろうとしているスタートアップComet.mlは今日(米国時間4/22)、450万ドルの新たな資金調達を発表した。

同社は以前、230万ドルのシード資金を調達しているが、今回の投資家もそのときと同じく、Trilogy Equity PartnersとTwo Sigma VenturesおよびFounder’s Co-opだ。

同社の共同創業者でCEOのGideon Mendels氏は次のように語る: 「われわれはセルフホストでクラウドベースの、メタ機械学習プラットホームを提供し、データサイエンスのAIチームと組んで、自分たちの実験とモデルを試行し説明し最適化しようとする彼らの作業を管理する」。

競合他社がどんどん増えている分野だが、Mendelsによると、複数のプラットホーム間を容易に移動できる能力が、同社のいちばん重要な差別化要因だ。

彼はこう説明する: 「われわれは基本的に、インフラストラクチャを特定しない。だから顧客は自分のモデルの訓練を、ラップトップでも、プライベートなクラスターでも、あるいは、あまたあるクラウドプロバイダーのどれかでも、どこでやってもよい。どこでやるかは関係ないし、それらを切り替えてもよい」。

同社のプロダクトにはコミュニティバージョンともっと高度なエンタープライズバージョンがあり、後者はBoeingやGoogle、Uberなどが顧客だ。両プロダクト合わせて、同社プラットホームのユーザーはおよそ1万だ。

Mendels氏によると、Cometはそのプラットホームの人気を利用して、顧客が一般公開しているデータをベースにモデルを構築できた。その最初のものは、モデルが訓練疲労をいつ見せ始めるかを予測した。コメットのモデルはそれがいつ起きるかを当てることができ、データサイエンティストたちに、そのような疲労が通常起きるタイミングよりも30%早く、モデルをシャットダウンするよう合図することができた。

同社は2017年にシアトルで行われたTechStars/Alexaでローンチした。コミュニティバージョンのプロダクトがデビューしたのは、2018年だ。

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クラウドの自由にIaCによるガバナンスを結びつけるEnv0が創業1年半で公開ベータへ

各社におけるインフラストラクチャアズコード(Infrastructure as Code, IaC)のデリバリーに何らかの秩序をもたらしたいと願うEnv0が今日(米国時間4/21)、同社の最初のプロダクトのベータをリリースし、並行して330万ドルのシード資金の獲得を発表した。

Boldstart VenturesとGrove Venturesがこのラウンドを共同でリードし、これにSnykのGuy Podjarny氏など数名のエンジェル投資家が参加した。

同社の共同創業者でCEOのOhad Maislish氏によると、デベロッパーがコードをはやくデリバリーできる能力は祝福でもあり呪いでもある。そしてEnv0は、コードがいつ、どのようにコミットされるかを、ITがある程度コントロールできるようにする。

「企業が今抱えるチャレンジは、クラウドネイティブなやり方の中で、クラウドリソースのセルフサービスと管理との間で適切なバランスを実現することだ。そしてバランスのとり方には可視性と予測可能性と、いちばん重要なクラウドのセキュリティとコストをめぐるガバナンスが必要だ」、とMaislish氏は言う。

同社のプロダクトを使うとユーザー企業は、デベロッパーがコードをデリバリーしてよいタイミングとその費用を定義でき、何でも・いつでも・いくらかかっても主義から脱皮させる。そのためには工程の全体的なコントロールをアドミニストレータに与え、彼/彼女がテンプレートとプロジェクトを定義する。テンプレートは、どのクラウドベンダーにはどのリポジトリーとプロダクトを使うのかを定義し、そしてプロジェクトをテンプレートにアクセスしてよいユーザーに関連付ける。

画像クレジット: Env0

Boldstart Venturesの創業者でマネージングパートナーのEd Sim氏によるとEnv0には、今日の継続的デリバリーをベースとする環境でデベロッパーが必要とするガバナンスとスピードの間の良質なバランスを見つける能力がある。Ed Sim氏は声明でこう述べている: 「Env0は、基本的にセルフサービスであるクラウド環境に統一的なガバナンスをもたらすことによって、これらのニーズのすべてを満たすことのできる、初めてのSaaSソリューションだ」。

今のような経済状況の中でアーリーステージの企業を立ち上げるのは容易ではないが、でもMaislish氏が信じているのは、セルフサービス型の開発をコントロールする方法を提供できる、という同社の独特の位置づけと能力だ。デベロッパーが家で仕事をしていて、ITの視界とセキュリティの外にいる今のような時期は、それがなおさら重要だ。

同社がローンチしたのは18か月前で、これまでずっと非公開ベータだった。そして今日が、公開ベータの初日となる。今の社員数は10名だ。

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VCがいま新規事業に出資することはないが、1カ月後には何かが変わるかもしれない

法律事務所のFenwick & Westは米国時間4月9日、ベンチャーキャピタル業界の最新動向を把握するために、Eniac Ventures創設者でジェネラルパートナーのHadley Harris(ハドリー・ハリス)氏、Primary Venturesの共同創設者でジェネラルパートナーのBrad Svrluga(ブラッド・スヴルーガ)氏、GreycroftのパートナーEllie Wheeler(エリー・ウィーラー)氏の3人とバーチャル座談会を開催した。いずれもニューヨークで活動する投資家である。

彼らは皆、新型コロナウィルスによるロックダウンの影響を受けているが、個々の状況は当然ながら三者三様である。しかし、仕事の話になると全員が口をそろえて「現在の状況でVCが新規事業に出資することはない、ということを起業家たちに認識してほしい」と言う。

プライベートでは、ウィーラー氏は第一子の出産を控えており、ハリス氏は奥さんとのランチを毎日楽しんでいる。スヴルーガ氏は「こんなに毎日連続して子どもたちと食事をしたのは本当に久しぶりだ。もう10年以上こんなことはなかった」と話す(彼は今の状況をご褒美だと思っている)。

仕事面では、プライベートとは反対に苦戦を強いられており、3人ともこの数週間忙殺されている。どのスタートアップが一番危ういか、この状況でも救済する価値のあるスタートアップはどれか、予想外のビジネスチャンスに恵まれる可能性のあるスタートアップはどれかといったことを検討し、それぞれのケースに対応する方法を考える必要があるからだ。

あまりにも忙しすぎて、いま初めて出資を募ってきた起業家がいたとしても、誰も小切手を切る余裕などないだろう。実際にハリス氏は、この危機の中でも起業家たちの売り込みに対して門戸を開いていると話す投資家たちに対して異議を唱える。「多くのVCがこの状況の中でも出資の申し込みを受け付けていると話していることは知っている。しかし私は、Twitterでもかなりズバッと発言したように、今のような状況で出資を続けられるなんていうのはほとんどデタラメだし、起業家たちに間違ったメッセージを送ることになると思う」とハリス氏は語る。

「現時点でVC業界には新規投資案件を扱うための余力はまったくない。既存の投資先企業に対してやるべきことが山積みだからだ。余力がないことが今一番の足かせだ。資金の問題ではない」。

余力が回復したらどうなるのだろうか?そうなっても、直接会社に出向くことなくオンラインのみで起業家とやり取りすることが、出資判断において的確、正常、あるいは有効な方法だと考えているVCなどないという点は覚えておかねばならない。

「豊富な実績を持つ一部のアクセラレータやシードファンドが多数のスタートアップに対して、何らかの方法や形で短期的にリモートでの出資判断を行っている例はあるが、直接会ったことがない人物に対する出資を検討するなど、賢い方法とは思えない」とウィーラー氏は言う。

「出資先の調査で最初に行うことはいつも決まっている。何も難しいことではない。スタートアップのチームと会い、その会社に出向き、こちらのチームにも会ってもらう。これをオンラインでやるのは無理がある。正式な場あるいは仕事外のカジュアルな場で一緒に時間を過ごすことから得られる情報をオンラインで得られるとはとても思えない。そこをわかっていない人が多い。現在の状況が長引くほど、その点を認識する必要がある」とウィーラー氏。

いずれにしても、今の状況で何をVCに売り込めばいいのか。3人とも、新型コロナウィルスによって一変した世界とあまり関連のない分野にはほとんど興味がない。「例えば、今は実店舗ビジネスについて新しいアイデアを提案する時期ではない」とハリス氏は言う。ウィーラー氏は別の視点から、この数週間で多くの人が「分散型チームとリモートワークは思っていたよりも実行可能かつ持続可能である」と気づいたようだと指摘し、Greycroftは引き続きこうした環境を実現するソフトウェアに注目していることを示唆した。

Primary Venturesも、よりシームレスなリモートワークを実現するソフトウェアに注目しているとスヴルーガ氏は言う。在宅勤務については「当社の18人の社員でしばらく行ってみたら自然に受け入れられた」と同氏。

必然的な流れとして、3人はダウンサイジングについて、この座談会のモデレータであるEvan Bienstock(エヴァン・ビエンストック)氏から質問を受けた。この質問については3人とも一様に、スタートアップが今すぐにランウェイを引き伸ばすには、ダウンサイジングはほぼ不可避だと指摘した。「最悪だよ。今、人々は職を失っている。(新しい事業を育てるのに最適な環境だった)60日前と同じ組織でチームの運営を続けるなんて不可能だ」とスヴルーガ氏。

3人はまた、人員削減を余儀なくされている管理部門に対するアドバイスについても話し合った。そこでは、2回目を行わずに済むように最初の人員削減で思い切って切るべきだという意見で一致した。

一緒にやってきた人たちを誰も好んで切りたいとは思わないが、「『しまった。人員カットをやり過ぎた』と言ったCEOに会ったことは今までに一度もない」と、自身も二度の不景気を経験したことのあるスヴルーガ氏は言う。彼の知っているCEOの「少なくとも30%」は、企業文化も守りながら事業を保護できる状態まで人員削減を行えていないと認めたという。

「二度目の人員カットはもっと大変になる。大なたを振るうことになるのは二度目のレイオフだ」とウィーラー氏は付け加えた。

今後については、3人とも「既存の投資先がレイオフ、バーンレート、ランウェイ予測に関する業務がひと段落したら、起業家の新しいアイデアを受け入れられるようになるだろう。それに加えて、新しい経済対策をスタートアップが最大限に活用できるようにサポートしていく」と答えた。

それがどのくらい先になるのかについては、「1カ月後にはこの混乱も少し落ち着いているかもしれない」とウィーラー氏とスヴルーガ氏は指摘する。「起業家たちも、4週間くらいあれば自分たちが抱えているさまざまな問題点を調整するために必要な時間を確保できるはずだ」。

ハリス氏も同じ意見だ。「少しずつやっていくことになるだろう。来週どうなるかはわからないが、1か月経ったらぜひ連絡して欲しい。新規出資を再開できる状態かどうか伝えるよ」。

画像クレジット:Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳: Dragonfly)

Y Combinatorが本年夏季からアクセラレーターのクラスを全面的にリモートへ移行

先月はCOVID-19の全国的なアウトブレークで急遽、リモートのデモデーを余儀なくされたY Combinatorが今日(米国時間4/20)、次回は全セッションを完全にリモートで行う、と発表した。

Y CombinatorのCEO Michael Seibel氏は同社のサイトへのポストで、その発表を行なった。そこで彼は、「2020年夏季はリモートで行うと決定した。COVID-19の危機のさなかでは、創業者たちとYCのスタッフの安全が優先されるからである」、と述べている。

2020年夏季を受ける創業者たちは、面接も執務時間も夜の会合もすべてビデオ会議で行う。ということは、まだ発表はないが、彼らのデモデーもリモートになるのだろう。最前のクラスではスタートアップたちが、ステージ上のローンチを今後のデモデーに延ばしてもよい、というオプションを与えられたが、今後それはないだろう。

YCがオンライン化されると当然、創業者としてはクラスの質が気になる。従来、YCのアクセラレーター事業に参加する創業者たちは、15万ドルの資金を得てその見返りに会社の所有権の7%をYCに提供していた。そしてその後は、YCのネットワークやアドバイザー集団にアクセスできるようになる。

Y Combinatorのクラスは、今ではとても大きいが、今回はその形の全体が変わることになる。今度の夏季のサイズはまだ確定していないが、前回は240のスタートアップが参加した。これだけの数にオンラインで対応するためにYCは、スタートアップをグループ化するやり方や、彼らが投資家にプレゼンするやり方などを工夫しなければならない。前回も対面のデモデーがなくなって創業者たちは、このイベントに集まるVCたちの大きな集団に生身の自分を紹介する機会を失った。

先週TechCrunchは、YCが、その比例案分制の投資をやめて、スタートアップへの投資をケースバイケースで行う、と報じた。既存の持ち分に応じての比例的なシード資金やシリーズAの投資は、これまでの同社の伝統だった。

関連記事: Changing policy, Y Combinator cuts its pro rata stake and makes investments case-by-case…Y Combinatorが比例案分制をやめてケースバイケースの投資に移行(未訳)

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

英政府が新型コロナで苦戦するスタートアップ向けの330億円ファンド新設を発表

英国のテックスタートアップエコシステムからのプレッシャーが高まり、英政府は4月19日に多くの議論を経て「Future Fund(未来ファンド)」を新設する計画を発表した。英国の高成長企業、つまりスタートアップが十分な額の投資を受け、新型コロナウイルス危機の間も存続できるようにする。

まず、政府が税金を財源として合計2億5000万ポンド(約330億円)をBritish Business Bankを通じて新ファンドに拠出する。企業が投資として引き出すには、英国に登記された民間企業であること、民間の投資家から同額かそれ以上のマッチング資金を確保していること、過去5年間に少なくとも25万ポンド(約3300万円)を民間から調達していることが条件だ。「投資」の形式はコンバーチブルローンノート(株式に転換可能だが事前に転換価格が決まっていない貸付金)のようだ。

Future Fundは5月に設立される予定で、要件を満たすスタートアップに政府が12万5000ポンド(約1700万円)から500万ポンド(約6億7000万円)を投資する。ファンドの規模は引き続き「検討中」。つまり、将来もっと多くの税金が投入される可能性があるということだ。申請はまずは9月末まで可能だ。

一方、Future Fundのコンバーチブルローンが実際にどう機能するかについては混乱がある。英財務省の初期計画には「ローンが返済されない場合は株式に転換される」と記載されていたため、次の資金調達ラウンドで強制的に株式に転換されるのではなく企業に借入返済の選択権があると考える人もいる。

しかし批判する向きは、返済オプションがあるなら、英国の納税者はアップサイドはほとんどまたはまったく取れずに、ダウンサイドリスクに全面的にさらされると指摘している。理論的には、すばらしい業績を上げた企業は借入返済を選択する可能性が高く、すばらしくない業績の企業(または何とか破綻を免れている企業)は株式への転換を選択することになる。

簡単にいえばコンバーチブルローンノートは強制転換される方が有利だ。政府は、破綻しないスタートアップの株式を割安で取得し、破綻するスタートアップの株式と価値を相殺できる。

当初の議論がお粗末だったり、政府内で多くの人が返済オプションを主張したりしたにも関わらず、財務省の計画を知る情報筋によると、ありがたいことに、おそらく企業側がかなりのプレミアムを払うような特定の場合を除いて、株式への転換が強制されることになりそうだ。そのプレミアムは「100%返済プレミアム」で、借入が転換されずに返済される場合、納税者は利息も含めると2倍以上のリターンを得ることになる。

筆者は英財務省広報局に正式な説明を求めた。返信があり次第この投稿を更新する。なお、財務省が公表したタームシートで骨子の詳細がわかる。

約1000億円の研究開発支援資金

英政府はFuture Fundとは別に「研究開発を重点的に行う中小企業」を対象とする7億5000万ポンド(約1000億円)の支援も約束した。資金は、Innovate UK(イノベートUK)の助成金と融資に関する既存の制度を通じて提供される。

「国の研究開発助成機関であるInnovate UKは、英国の2500の既存支援先の要望に応じて最大2億ポンド(約270億円)の助成金と融資をすみやかに提供する」と英財務省は述べた。

「既存支援先へのサポートを厚くするため追加で5億5000万ポンド(約730億円)を用意した。また現在Innovate UKの資金を受けていない約1200の企業に対し17万5000ポンド(約2300万円)を提供する」

Innovate UKによる最初の支払いは「5月中旬」までに行われるとのことだ。

画像クレジット:Carlos Delgado / Wikimedia Commons under a CC BY-SA 3.0 license.

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(翻訳:Mizoguchi