新生Microsoftの展望―市場は引き続きサティヤ・ナデラのリーダーシップに好感

Microsoftがサティヤ・ナデラをCEOに選んだのは3年前になる。以來、Microsoftは運命の逆転を果たした。10年間にわたる不完全燃焼状態を脱し、成長株の地位を取り戻した。昨年もその勢いは続いた。

2016年にMicrosoftはクラウド・ベースのサービス提供企業への変身を続け、そのために複数の新たなプラットフォームをサポートした。LinkedInを262億ドルで買収するという大胆な賭けに出た。ハードウェアではSurfaceデバイスの拡充が続いた。こうした動きはすべてウォールストリートに歓迎された。Microsoftは Surface StudioでAppleのお株を奪った。デザイナーや各種のプロ向けデスクトップ機はこれまでAppleが独占的な強みを見せている分野だった。またHololensもVRの世界にMicrosoftが確固たる足場を築く努力として注目された。

株式市場は 2016年のMicrosoftをコアとなるサービスの運営に加えて、未来の分野にも大規模な投資をて行い巨大テクノロジー企業への道を歩んでいると見たようだ。

実際投資家のこうした考えは数字に反映されている。力強いリーダーの下で力強い成長がMicrosoftに2017年に向けての勢いをつけた。Azureクラウド・サービスは堅調だ。クラウド化の進行はAmazon AWSもテコ入れし、ウォールストリートも珍しく興奮した。Office生産性ツールはWindows以外のプラットフォームのサポートに本腰を入れるにつれてさらに快調だ。

ナデラのMicrosoftがいかに徹底的に変身したかは昨年11月にLinux Foundationに参加したことでもわかる。市場もMicrosoftがこれまでのしがららみを大胆に振り捨て、伝統と決別するつもりであることを認めた。 新戦略の採用には当然大きなリスクも伴うが、これまで企業の根幹を支える生産性ツールとして利益を産んできた会社に新しい成長の可能性を与える。

ナデラはMicrosoftの変身が必至になった時期にCEOに就任した。 モバイル・ビジネスは失敗し、全社的なりソースの再配分が避けられなくなっていた。変革は始まっていたが、ごく初期段階だった。改革は株価に対して上向きのようだった。しかし他社(Googleでさえ)と同様、賭けが結果を出すまでには時間がかかる。この間、Microsoftの売上の伸びはさほど目立つレベルではなかった。

大きな賭けには大きなリスクが伴う。2016年11月にMicrosoftは急成長中のビジネス・チャットのスタートアップ、Slackに対抗してTeamsというコラボレーション・ツールをリリースした。2016年初めにMicrosoftはSlackを80億ドル前後で買収することを検討していた。しかし結局資源を社内のSkypeとTeamsに振り向けることにした。Microsoftがエンタープライズ・コラボレーション分野に取り組むのはこれが初めてではない。2012年にはTwitterのエンタープライズ版、Yammerを12億ドルで買収している。だがMicrosoftはこの分野への参入で目立った成果を挙げていない。Slackが現在得ているような賞賛や清新なイメージを得ることに失敗している(なるほどSlackの成長はやや減速しているし、好印象はシリコンバレー所在企業だという点も影響しているだろう)。

MicrosoftはGoogleの失敗を教訓としているかもしれない。GoogleはNestやGoogle Fiberのような互いに関係が薄い垂直統合的分野に莫大なリソースを投じた。その結果、GoogleのCFO Ruth Poratはこうした新たな分野への投資にあたって「今後さらに慎重でなければならないだろう」と述べるに至った。Microsoftの新分野への賭けは、これに比べると同社のコア・ビジネスとの親近性が高い。そうであっても、エンタープライズ・チャットというような過去に失敗した分野への再参入にあたって非常に慎重な判断が求められるだろう。

そのような側面はあるが、株価は結局、成長率の問題となる。ウォールストリートでは新分野への賭けにGoogleやAppleのようになるのではないかと懸念する声があったが、Microsoftの成長をそうした声を吹き飛ばした。2016年にMicrosoftの株価は12%もアップした。過去2年では34%の上昇だ。それ以前、ほぼ10年にわたって時間が止まったような停滞状態にあり、投資家を失望させてきた大企業にしては驚異的な復活といえる。

2016年にMicrosoftは伝統的なエンタープライズ向けの巨人であるだけでなく、 コンピューティングがパソコンというデバイスの外に大きく拡張する時代に適合した未来をデザインする企業に生まれ変わった。Microsoftは自社OSが独占するハードウェアの世界に閉じこもった企業ではない。あらゆる主要プラットフォーム上で作動する多数のプロ向けサービスをサポートし、文字通りインターネット世界のバックボーンのひとつになろうとしている。

これに加えて、今やこの業界のほとんどプレイヤーが実験を始めている機械学習というトレンドがある。2016年9月のMicrosoft Igniteカンファレンスでナデラは基調講演のほとんどすべてを機械学習にあてた。ナデラは既存のデータを機械学習テクノロジーに適用し、Office 365のようなサービスを大幅に効率化するMicrosoftの計画を説明した。またMicrosoftは昨年初めに独自のバーチャル・アシスタントCortanaの利用をサードパーティーのデベロッパーに開放した。

こうした動きにはMicrosoft独自の部分もあるが、20017年にはGoogle Assistant、Amazon Alexa、Apple Siriなどのアシスタントの利用が急速に拡大し、ユーザーとの対話性に変革がもたらせることが予想させることに対するMicrosoftの回答といえるだろう。今年は既存サービスに機械学習の成果をシームレスに接続することでユーザーにとっての利便性を大きく高めることが各社にとって2017年の勝敗を決するカギとなるだろう。

Microsoftにとってこの部分は逃げ道のない主戦場であり、コアとなるサービスの改善のために避けて通れない道筋だ。昨年初めにMicrosoftはAIによる入力予測に基づくキーボード・テクノロジーのスタートアップ、SwiftKeyを買収した。 Officeのような企業業務の根幹となる大型の生産性ツールの改良には巨大な資源が必要だ。ことに自然言語処理能力を備えたツールのとシームレスな統合が強く必要とされている。

他社の戦略と比較した場合、Microsoftのやり方は多様性に富んでいる。Amazonはクラウド化に賭けている。Appleは新しいハードウェアと、たとえばApple Musickのようなオンライン・サービスの拡大で成長の勢いを引き続き維持するつもりだ。株式市場は多様性を好む。ナデラのMicrosoftが株式市場に好感される理由は多様性のあるアプローチにも大きな理由があるだろう。

〔日本版〕Graphiqの対話的グラフは2番目が「一時的に表示できない」とされた。この株価グラフはTechCrunch Japanトップ・ページのタイトル脇サムネールに画像として貼っておいた。対話的に操作するには原文参照。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

マイクロ投資アプリのStashがシリーズBで2500万ドルを調達

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金融知識をあまりもっていない人でも簡単に株式投資ができるアプリを開発しているStashは、シリーズBで2500万ドルを調達したと本日発表した。8月に925万ドルのシリーズAをクローズした直後に行われたこのシリーズBでは、既存投資家のValar Venturesがリードインベスターとなり、Breyer Capital、Goodwater Capital、Entrée Capitalがラウンドに参加していた。

Stashのほかにも、なるべくリスクを避けつつ株式投資に手をだそうとしているミレニアル世代を主なターゲットとしたマイクロ投資アプリはいくつか存在する。具体的にはAcorやRobinhoodなどが競合として挙げられ、特にRobinhoodは、これまでにNEA、Index Ventures、Andreessen Horowitzなどから6600万ドルを調達している。

競合他社同様、Stashは株の売買時やユーザーが口座からお金を出し入れする際には手数料をとっていない。その代わりに、残高が5000ドル未満の口座からは毎月1ドル、5000ドル以上の残高がある口座からは年間0.25%の口座維持費をとっている。

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定期的に手数料が発生するという意味では、口座に余っているお金に対する金利や、プレミアムラインのRobinhood Goldに含まれている新製品のマージンアカウントから収益を挙げているRobinhoodほど、Stashの料金形態は思い切ったものではない。

ビジネスモデルの違いはあれ、Stash、Acorn、Robinhoodの3社は、資産運用に重きを置いている旧来の投資業界には相手にされなかった人々という、同じターゲットを狙っている。

「Stashのゴールは、保有資産額に関わらず、できるだけ多くの人にプラットフォームを利用してもらうことです。私たちは既存の投資会社に過小評価されている、一度に少額の投資しかできない、そして投資額を少なくすべき人たちを主なターゲットとしています」とウォールストリート時代の仲間であるEd RobinsonとStashを共同設立したCEOのBrandon Kriegは説明する。

「私たちは顧客に対して、自分のリスク許容度や、金銭的な目標、意見、興味を反映した金融商品を使って、長期的に資産を運用するよう勧めています。何十億ドルもの資産を運用している投資マネージャーの多くは、顧客の長期的な財政状態を顧みずに、販売手数料や売買手数料を目的とした資産集めに走っているため、顧客と投資会社の利益が相反してしまっていることがあります」と彼は付け加える。

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Stashは既存の金融商品とは異なるプロダクトを提供しており、それが功を奏したのか、毎週1万人以上もの新規ユーザーを獲得していると同社は話す。さらに過去1年間の新規ユーザー数は、30万人以上に及ぶ。

マイクロ投資ツールの中には、利用者に代わって全てをこなすものもあるが、Stashではユーザーの意見やゴール、リスク許容度から割り出されたオススメ株の情報をもとに、ユーザー自らがポートフォリオを構築するようになっている。

ユーザーは、Stashが選んだ30銘柄以上の上場投資信託から、自分が投資したいものを選ぶことができる。また、候補となる銘柄は、過去の運用成績や手数料の割合、リスク内容、組入比率などを勘案したモデルをもとに選ばれる。

投資サポートと共に、Stashは投資に関するアドバイスやヒントを提供することで、ユーザーに投資の基礎知識を身に着けてもらおうとしている。

今日までに、Stashのユーザーは合計2500万ドル以上をアプリ経由で投資しており、その数は増え続けている。

Stashのようなサービスは、運営企業にとっては良いビジネスである一方、大きな収益をあげようと考えている顧客には、旧来の投資方法と比較して物足りなく映るかもしれない。Stashのようなアプリのおかげで、株式投資のハードルは下がっている可能性がある一方、ユーザーは数ドルからでも投資ができ、毎月維持費がかかるため、多額の現金を運用しない限り、ユーザーは投資というよりも株遊びをしていることになってしまう。

今回の調達資金は、アプリの強化や新機能の追加、オンライン教育ハブの「Learn」のような新製品の開発に充てられる予定だ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

1000億ドル目標のSoftBank VisionファンドにAppleも参加を検討

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Wall Street Journalの記事よれば、Appleは日本のSoftBankの1000億ドルのファンドに10億ドルを出資することを検討しているという。

総額1000億ドルの資金を集めることを目標としているSoftBank Vision FundにAppleも出資するとなれば、世界最大のテクノロジー・ファンドに世界最大のテクノロジー企業が参加するわけだ。SoftBank自身は250億ドルを出資し、サウジアラビア政府も450億ドルを出資する。

このファンドはドナルド・トランプ次期大統領が先週いくぶん不正確に自分の手柄として紹介したのと同じものだ。このファンドの組成は選挙戦以前に報じられていたが、トランプはSoftBankのCEO、孫正義氏と会談した後、SoftBankが500億ドルをアメリカに投資するとツイートしていた。

SoftBankのファンドは人工知能やIoTなどの新しいテクノロジーを中心に投資を行う。Appleも参加するのであれば、こうした分野のイノベーションに有力な知見が加わることになるだろう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ゲイツ、ベゾス他18人のリーダーがグリーンテック・ファンド、Breakthrougに10億ドル出資

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ビル・ゲイツ、ジェフ・ベゾス、ヴィノド・コースラ、ジャック・マ、ジョン・ドーアとさらに15人の著名なビジネス・リーダーが新しいBreakthrough Energy Ventures(BEV)に出資することを決めた。このファンドは向こう20年で新しいクリーン・テクノロジー企業に総額で少なくとも10億ドルを投資する。

Breakthroughのウェブ・サイトによれば同社の目的は「世界中の人々に信頼できて安価な電力、食料、製品、輸送機関を温室効果ガスの排出なしで届けること」だという。

BEVはシード資金から上場直前まで含めてあらゆる段階のグリーンテックのスタートアップに投資する。主として関心を持つ分野や発電、製造、農業、建築、運輸の各部門だ。

クリーンテックは以前シリコンバレーでブームになったことがある。2008年にはベンチャーキャピタルの投資総額が61億ドルになったが、その後〔リーマンショックの〕不況に襲われてしまった。ベンチャーキャピタルの出資や政府の各種の補助を受けようとする起業家にとってクリーンテックはタブーに近くなった。

これにともなって多数の企業が地球を救う上で(あるいは出資者に還元する利益で)見るべき貢献をすることに失敗して消えていった。自動車用の高効率の太陽光発電パネルの開発を試みたSolyndraApteraやリサイクル燃料のKiorなどがそうだ(誰かこういう会社を覚えているだろうか?)。

しかし世界の人口が増え続け、それに従ってエネルギー需要も拡大する中で、クリーン・エネルギーの重要性が見直されてきた。クリーンテックは再度関心を集めており、ベンチャーキャピタリストもクリーンテックを毛嫌いする態度を改めつつある。

BEVは2015年にパリで開催された気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で発足した Breakthrough Energy Coalitionというグループの公式なベンチャー投資機関だ。

BECはテクノロジー、金融分野の有力メンバーをこぞったグループで、クリーンテックの公的援助、調査研究活動に力を入れている途上国のスタートアップを中心に2020年までに総額300億ドルを投資することを約束している。

BEVはベンチャーキャピタルを正式に発足させたことを発表すると同時に、Landscape of Innovationと名付けられたイノベーシュンのロードマップをリリースした。これは「公的組織、民間組織が温室効果ガス排出の削減への取り組む際のガイドライン」となることを意図しているという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

VCファンドの組成額が大幅に増加ーースタートアップ投資の現状を投資家が語る

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11月17日から18日にかけて渋谷ヒカリエで開催されたTechCrunch Tokyo 2016。初日の夕方に、「変化するスタートアップ投資、その最新動向」と題し、村田祐介氏(インキュベイトファンド 代表パートナー) 、有安伸宏氏(コーチ・ユナイテッド ファウンダー) 、中西武士氏(KSK Angel Fund パートナー)のパネルディスカッションが行われた。モデレーターは、TechCrunch編集部の岩本有平が務めた。

村田氏は、”First Round, Lead Position” を投資哲学とし、スタートアップへの投資を行うインキュベイトファンドの代表パートナーを務めながら、JVCA(一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会)の企画部長も務め、ベンチャーキャピタル業界の調査や業界地位向上に関わっている。

有安氏は、プライベートコーチサービス「cyta.jp」を運営するコーチ・ユナイテッドのファウンダーで、同社をクックパッドに売却する以前から、個人でエンジェル投資を行っている。また、IPOやM&A等でイグジットした起業家が8名から成る「TOKYO FOUNDERS FUND(TFF)」のメンバーでもある。

中西氏はプロサッカー選手の本田圭佑氏が設立したKSK Angel Fundのパートナーを務める。日本ではまだ馴染みのない、セレブによる投資ファンドに注目が集まっている。彼らは「貧困をなくす」という思いのもと投資活動を行なっているという。2016年6月に正式にファンドを設立し、すでに中高生向けのプログラミング教育事業を展開するライフイズテックを始め、6〜7社に対し、500万円〜1億円程度の投資を実施している。

スタートアップ投資にそれぞれ異なる角度から関わる3人を迎え、スタートアップの動向を見ようというのが本パネルディスカッションの趣旨だ。JVCAを通してスタートアップの投資関連レポートを発表している村田氏のスライドに沿ってディスカッションを行った。

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そもそもスタートアップに投資するお金、つまりベンチャーキャピタルファンドに流れるお金はどのように推移しているのか。最近ではスタートアップの大型調達のリリースを耳にする機会も増えているので、ベンチャーキャピタルの資金も増えているはずだ。1年間のベンチャーキャピタルファンドの組成額は、ここ数年2000億円付近を推移している。ピークと言われる2006年は3500億円に達していたが、その後2008年のリーマンショックから続く金融危機の影響を受け、2009年、2010年は250〜300億円と10分の1まで落ち込んだ。

そのような時期を経て、やっと回復してきているという。村田氏の調べによると、2016年上半期の組成額はすでに2500〜2600億円程で、今年度は3500億円に達するのではと予想する。一方、アメリカの組成額はおよそ2兆円と、やはり大きく規模が異なる。日本とアメリカの差は絶対値で見ても、GDP対比で見ても大きい。

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スタートアップに目を向けると、起業という選択肢が身近になったと肌感覚で感じている人も多いと思う。大企業出身者が起業したり、東大の学生が進路としてスタートアップを選んだりする方向に変わってきていると村田氏は言う。「ベンチャーキャピタルファンドは、基本的に8年で運用する。その期間の半分の4年で組入れを完了しなければならないというルールがあるので、直近の組成額から7000億円程度は数年以内にスタートアップへ投資される」と村田氏は言う。

注目すべきは、調達額は増えているが、社数は減っている点だ。今年100億円以上の大型ファンドがすでに10本以上も発表されており、ポートフォリオ管理の観点から少額の投資はできず、1社に対しての投資額が増えていると村田氏は説明する。つまり、創業期の会社よりも、より後のステージの会社に投資が集中しやすいということだ。

調達額のグラフを見ると、10億円を超える超大型調達が一昨年は20社、昨年は25社だった。メルカリの84億円調達も記憶に新しいが、今年上半期に超大型調達を実施したスタートアップは30社を超えているという。

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投資家の属性は5つに分けられるが、これは日本特有のことだという。日本では金融機関の1つの機能としてのエクイティ投資が発達してきた背景があるが、アメリカでは金融系という分類は一般的ではない。日本における金融系VCの存在は変わらず大きいが、リーマンショック後から変化を見せている。様々なバックグランドの投資家が設立した独立系、そして事業会社が自社の既存事業とのシナジー投資などを行うCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)が台頭し、昨年には金融系、独立系、CVCのファンドレイズ額が均衡するまでになっていると村田氏は話す。

それらに加え、エンジェル投資も増えてきている。パネルディスカッションに登壇した有安氏をはじめ、数は少ないが、起業家として成功した人たちが投資を行うという流れもある。また学内の技術や研究成果の事業化を目指し、旧四帝大(東京大学、京都大学、東北大学、大阪大学)などの大学系・政府系VCも広がってきている。このように数年で大きな変化を遂げた業界だが、2016年の変化としては「金融系VCが大型のファンド組成を行ったことだ」と村田氏は言う。

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独立系VCも引き続き勢い付いている。このスライドにある独立系VCの3分の2以上は、ベンチャー投資の谷であったリーマンショック以降に設立された。金融系VCやCVCで力をつけたキャピタリストが独立し、ジェネラルパートナーとなって設立している独立系VCが多いそうだ。

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2000年前後、大企業のCVCが50〜100億円ファンドの組成が活発で、その後、上場したインターネット系の事業会社がCVCを組成する流れがあったと村田氏は言う。一時期低迷していた大企業系CVCだったが、近年勢いを取り戻しているという。「少し前のガラケー時代は自社サービスとうまく紐付けられず、大企業がスタートアップと手を組み、オープンイノベーションを目指すということに消極的だった。だが、今ではスマホが普及したことによりIoT分野との相性がよくなってきている」と村田氏は説明する。

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産業革新機構などは独立系VCなどに多くの金額を出資しているが、大学・政府系VCの中にはスタートアップに直接投資する人もいるという。また前にも触れたように、エンジェル投資家の盛り上がりも著しい。個人としてスタートアップに投資する場合にも、5000万円〜1億円という規模感で投資したり、ベンチャーキャピタルにLPとして出資したりしているエンジェル投資家もいる。

「エンジェル投資家のコミュニティがあり、協調投資をするケースも多い」と有安氏は言う。有安氏は、自身の経験からコンシューマー向けのウェブマーケティングでサービスを伸ばせる会社に関わることが多く、投資額は250〜2000万円と幅広いそうだ。投資先との関わり方は、株主のメンバーや投資額により様々だという。

エンジェル投資の日本とアメリカの環境の違いについて、有安氏はスピード感をあげた。「アメリカは洗練されていて早い。優先株、法務面のチェックなど日本では非常に時間がかかるが、アメリカではフォーマットが決まっていて、乗る/乗らないの選択のみでシステマチック」と言う。エンジェル投資に関する話は、昨年のTechCrunch Tokyo 2015でコロプラ元取締役副社長の千葉功太郎氏と有安氏の対談記事もあるので、気になる方は是非見てほしい。

エンジェル投資において、日本とアメリカの違いを挙げるとすれば、存在感と注目度の大きいセレブ投資の存在もある。俳優のアシュトン・カッチャーはAirbnbなど名だたるスタートアップに投資していることでも有名だ。アメリカのセレブ投資について中西氏は「SNSの存在が大きい。セレブは自分たちでモノを売ることができるようになった。セレブには2つのタイプがあり、1つはアシュトン・カッチャーのように、スタートアップと他の企業を繋ぐなど、BizDevも担うタイプ。もう1つはセレブをフォローしている人向けに商品を訴求するタイプ」と言う。

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アメリカには芸能人、スポーツ選手などで投資を行う人がいるが、日本にはごくわずかだという。共同での投資実績もある村田氏は本田氏について「投資家が使うような言葉も使うし、会社の価値判断基準もほぼ同じ。スポーツ選手としてバリューアップしやすそうな会社だけでなく、VRやAIなども面白いと言っていた」と話す。中西氏いわく、本田氏は関心分野があるとすぐに大学教授などにもコンタクトを取ったり、関心分野に関する本を何冊も読んだりして投資先について勉強するそうだ。

日本においてセレブリティ投資がまだ未熟な点について中西氏は、セレブがスタートアップに投資するための情報が足りていないという。「アメリカでは各分野にセレブ投資を行う人がいるというのが広まった。日本でも時間の問題だと思う」と話した。

Accel Indiaが記録的な速さで4億5000万ドルのファンドを新たに組成

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約2年前に組成された3億2500万ドルの第4号ファンドに続き、Accel Indiaが5号目となるファンドを4億5000万ドルで設立した。これがインドのバブルを象徴しているのか、同国の本当のチャンスを表しているのかについては、未だ議論の余地があるものの、2011年からAccelに参加し、バンガロールを拠点に活動しているAccel IndiaパートナーのShekhar Kiraniに、メールで本件に関するインタビューを行ったので、その様子をご紹介したい。

TC: Kirani氏は2005年からインドでの投資活動を活発化し、不動産プラットフォームのCommonFloorやオンラインショッピングのFlipkart、カスタマーサポートサービスのFreshdesk、ファッション・ライフスタイルECのMyntraといったインドでも有名なスタートアップを含むポートフォリオを構築してきました。今回のファンドの設立にかかった期間は、これまでで最短といって問題ないでしょうか?普段Accelは、3〜4年周期でファンドを設立しているように記憶していますが。

SK: 今回のファンドは確かにかなりの速さで資金がまとまりましたね。これはインド市場の長期的なビジネスチャンスや、LPのサポート、私たちのポートフォリオに含まれる企業の質の現れであるとともに、インドにフォーカスして投資先を絞った私たちの投資戦略や、Accel Indiaのチームの力でもあると考えています。

TC: Accel Indiaのチームはこれまでにどのような変遷を辿ってきたんですか?

SK: Accel Indiaの母体となるErasmic Venture Fund(2008年にAccelが買収した)は、Prashanth Prakash、Subrata Mitra、Mahendran Balachandranによって設立されました。そしてAccelによる買収後、Anand Daniel、Dinesh Katiyar、Subrata Mitra(そしてShekhar Kirani自身)のリーダーシップもあり、チームは順調に成長しました。さらに、私たちはインド国内にポートフォリオサービスチームを立ち上げ、彼らがプロダクト管理やスタッフの採用、データサイエンス、テクノロジー、デジタルマーケティングなどの面で投資先企業のサポートを行っています。

TC: Accel Indiaは、ベイエリアのAccel Partnersとはどのくらい密接に関係しているんですか?Accel Partnersの投資家がAccel Indiaのファンドにも投資したり、ベイエリアのチームとお互いに関係のある投資案件について話をしたりすることはあっても、それ以外の面では独立して(Accel Londonのように)運営されているのでしょうか?

SK: 全てのAccelオフィスは、お互いのネットワークや情報、ベストプラクティスを共有し、投資先企業にも私たちのネットワークを活かしてもらいながら、協力し合って業務を進めています。Accelのゴールは、世界中の素晴らしい起業家を発掘し、ポートフォリオに含まれる企業を、どこで設立されたかに関わらず、全てのステージを通してサポートしていくことです。

TC: 大体いつもどのくらいの金額を各企業に投資しているんですか?また、特にどの段階にある企業にフォーカスしていますか?

SK: 私たちはアーリーステージの投資家なので、基本的には投資先企業にとって最初の機関投資家になりたいと考えています。初回の投資額は200万ドル以内に収まることが多いですね。

TC: インドのスタートアップシーンは最近盛り上がってきていますよね。スタートアップによる資金調達の加速化は、評価額にどのように反映されているのでしょうか?例えば2年前と比べて、各ステージにある企業の評価額に何か変化はありますか? 

SK: 2015年に過度な投資が行われていたとき、成長期にある企業の評価額はつり上がっていました。しかし、シードステージやアーリーステージにある企業への影響はそこまでなく、2015年を通して見ても、彼らの評価額は適正といえる範囲でした。

私たちは評価額よりも、健全なファンダメンタルを持つ、強固で統制のとれたビジネスを投資先企業と作り上げることに注力しています。ここ数年の間に、いくつかのカテゴリーのオンライン化がこれまでにない速度で進んでいます(EC、映画チケット、タクシー予約、生鮮食料品販売、フードデリバリー、ローカルサービス、マーケットプレイスなど)。さらに、以前はスケールするのに最大5年を要していたようなカテゴリーが、2〜3年でスケールし始めています。私たちはこのような企業を支援し続け、彼らの成長を促そうとしているんです。

TC: インドに過度の投資が集まっているという心配はありますか?最近アメリカの投資家のChamath Palihapitiyaは、なぜ彼の率いるSocial Capitalが、これまでひとつのインド企業にしか投資していないかという話をThe Times of Indiaにしていました。その中で彼は「採用や人材、サポート環境の観点から見て、インドのスタートアップエコシステムの大部分は、シリコンバレーに劣っています」と語り、さらにインドを拠点とするスタートアップは「適切な人材やガバナンス、メンターを持っておらずつまづいてしまっている」と話していました。彼は、”最後の審判の日”のようなものが向こう12〜18ヶ月の間に起きて、スタートアップの評価額が急激に下落すると考えているようです。このような彼の見解には同意しますか?

SK: まず、2015年には確かに過度の資金がインドに流れ込んでいました。しかし、だからといって、インドのスタートアップが健全な状態にないとは言えません。インドの起業家は、スケールと成長と利益の相互作用について理解しています。さらにスタートアップのエコシステムも、これまでにないほどしっかりしています。ファンダメンタルを見てみれば、インドのマクロ経済はとても良い状態にあると分かります。ビジネスに理解のある政府によって経済の形式化、デジタル化が進み、インド経済自体もよいペース(7%のGDP成長率)で成長してるほか、通貨もとても安定しています。さらに、市場はモバイルユーザーで溢れているので、以前に比べて、新たに設立されたスタートアップの成長スピードがかなり上がってきています。

私たちがどのサイクルにあったとしても、ファンダメンタルには常に気を配る必要があります。その点に関して言えば、インドでは消費者や大企業、中小企業の間でモバイル化が進んだ結果、8億7000万人以上がモバイル契約を結び、2億人以上がスマートフォンを利用しているほか、1億5000万人以上がソーシャルメディアを使い、6000万人以上がさまざまな商品をオンライン上で購入しています。つまり、インドにはテック系スタートアップが誕生・スケールする環境が整っているんです。

TC: 未だインドの人口の大半が住むとされる”ルーラル・インディア(インドの農村地域)”への投資は現在行っていますか?例えばMayfield Indiaは、ベンチャーレベルのリターンをベンチャー投資よりも小さなリスクで狙うことができると、建設業者などのローテクビジネスに最近投資していたと記憶しています。彼らの言うようなチャンスはまだ存在するのでしょうか?また、Accel Indiaはそのチャンスを追い求めているのでしょうか?もしもそうだとすれば、どのくらいの時間を都市部と農村部それぞれにかけているのか、理由も併せて教えてください。

SK: テック企業の投資家として、私たちはいつも、サービスの利用のしやすさ、使い道、価格を含むいくつかの側面に気を配っています。

ルーラル・インディアでも、最近モバイル端末の利用者が増えてきています。1億人以上の人々が住むルーラル・インディアは、上記の3つの側面を考慮しても、これからとても有力なマーケットになるでしょう。新しいファンドのテーマのひとつが、インドの新興地域での”next 100 million(1億人以上の新たなネットユーザーがルーラル・インディアから生まれるという予測)”です。現在投資している企業を見ても、インドの新興地域が今後伸びていくことが分かります。

例えば、近年のスタートアップエコシステムを活発化してきたインフラの大部分をつくったのは、Flipkartでした。初のオンライン・モバイル決済サービスや物流インフラといった、オンライン・オフラインに関わらず、アメリカでは当然のものとされている商業インフラのほとんどを彼らが構築してきたんです。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

YCombinatorに客員パートナー制度―スタートアップをさらに密接に指導する

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Y CombinatorはプレジデントのSam Altmanの下でさまざまな実験を行ってきた。このアクセラレーターの最新の試みは臨時あるいは客員パートナー制度だ。このポジションに就いたパートナーはそれぞれ自分の経験、知識を活かし、YCの特定「クラス」(batch)専属となってアドバイスを与える。

臨時パートナーはYCが2011年に設けたパートタイム・パートナーと少し似ているが、こちらは更新可能な6ヶ月の任期で、多くのパートタイム・パートナーは任期を更新し続けている。

新制度の出発にあたって、YCは3人の客員パートナーを任命した。うち2人はYCの卒業生で、Aaron Epsteinと Gustaf Alströmerだ。もう一人はLyle Fong。

Epsteinはデジタル・コンテンツのマーケットプレイスであるCreative Marketを開発し、2010年にYCを卒業している。Creative Marketは、金額は公表されていないが、2014年にAutodeskに買収された

AlströmerはAirbnbのグロース・プロダクトの責任者だ。Airbnb以前にはコミュニケーション・アプリの企業、Voxerでグロース担当副社長を務めた。またHeysanの共同ファウンダーでもある。こちらはメッセージ・サービスで、YCの2007年のクラスを通じて生まれ、2009年にGood Technologyに買収されている(額は不明)。

一方、Fongはモバイルゲーム・スタジオのHobo Labsの共同ファウンダー、CEOだ。Fongはソーシャルメディアのソフトウェア開発企業、Lithium Technologiesのファウンダーでもある。ソーシャルメディア上の影響力を点数化するという点が賛否を呼んだサービス、Kloutを2014年に買収したことは一部で有名だ。.

シリコンバレーのマウンテンビューに本拠を置くYCは来年1月に冬学期のクラスをスタートさせる前に、YCは10数名のパートナー陣にさらに3人のパートタイム・パートナーを加える予定だ。Immand Akhund、Kevin Hale、Marcus Segalの3人のうち2人はやはりYC卒業生だ。

Akhundはモバイル広告のHeyzapのファウンダーで、2009年のYCのクラスに参加している。会社はRNTS Mediaに4500万ドルで売却された。Akhundは2007年にもYCのクラスに参加しており、この際にユーザーのオンライン上の身元を管理するClickpassを共同で創業している(この会社は翌年買収されているが、これは人材獲得目的の買収(aqcui-hire)の典型的な例だった)。

YCのネットワークではHaleはさらに有名だ。Haleはオンライ書式設定のスタートアップ、Wufooを携えて2006年にYCに参加している。2011年にSurveyMonkeyが同社を3500万ドルで買収した。その後HaleはYCのパートナーとして3年過ごしたが、新会社を設立するため来年からはパートタイム・パートナーとなる。

Segalの最近の職はZyngaのグローバル事業担当上級副社長だった。それ以前には 課金プラットフォーム、Vindicia( Amdocsが買収)の最高財務責任者、 またeMusicの最高執行責任者 (Universal Music Groupが買収)を務めたことがある。

われわれは昨夜、YCのパートナー、Michael Seibel とAdora Cheungにインタビューする機会があった。Seibelは最近YCのCEOへの任命が発表されたばかりだ (Sam Altmanは引き続きグループ・プレジデントとしてYC全体を代表する)。Cheungは昨年スタートアップのHomejoyを閉鎖し、現在はパートタイム・パートナーの世話を担当している。

YCネットワークにはクラスの卒業生を含めて多数のファウンダーや投資家がおり、きわめて強力なものとなっている。この中で「客員パートナー」制度をスタートさせてた意味についてCheungは「われわれはそれぞれのクラスにもっと多数のアドバイザーを『エンベッド』したいと考えている。これはその実験の一つだ」と説明した。客員パートナーは「クラスでのアドバイスにパートタイム・パートナーよりも多くくの時間を費やしてくれることになっている」という。

Seibelは以前、Justin.TVとSocialcam(Autodeskが6000万ドルで買収)のCEOを務めた。Seibelによれば、客員パートナーは多くの時間をYCでの活動にあてることを期待されているものの、YC全体における役割は「パートタイム・パートナーのようなものではない」という。また客員パートナーもパートタイム・パートナーも指導するスタートアップに投資する権利を何ら保証されているわけではないという。

YCはどのように客員パートナー、パートタイム・パートナー(あるいはどんな種類の職についても)を選任しているのかという質問に対して、Seibelは「公募しているわけではない」と述べるにとどまり、すぐに新メンバーの説明に戻った。

ところで、YCでは冬学期のクラスへの参加申し込みをまだ受付中だ。実はYCのクラスへの参加申し込みは常時可能だという。ぎりぎりになってからの応募も「(内容を審査している)ということだ。

〔日本版〕今日(11/18)のTechCrunch JapanのカンファレンスではY CombinatorのQasar Younis COOがキーノートに登壇する予定。西村編集長の記事ではY Combinatorについても詳しく解説されている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ヘッジファンドが医療スタートアップのTheranosを訴える―「虚偽、重大な説明の誤り」と主張

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サンフランシスコに本拠を置くヘッジファンドのPartner Fund Management (PFM)は、 2014年に9600万ドルを血液検査スタートアップのTheranosに出資したと報じられているが、昨日(米国時間9/10)、同社はTheranosとそのファウンダー、エリザベス・ホームズを訴えたことが明らかになった。

PFMは契約締結にあたってTheranosが「一連の虚偽の説明をし、重要事項について誤った説明をし、また説明を省いたこと」によって不当に投資に誘い込まれたとしている。同時にPFMは「Theranosは証券詐欺その他の法律違反を含むこれら不法行為によってPFMに投資を決定させ、継続させた」と主張している。

PFMが名を連ねている 1億9800万ドルのシリーズC-2ラウンドの資金調達の結果Theranosは90億ドルの企業価値と評価されことになった。Fortuneは2014年6月にこのラウンドに関連してエリザベス・ホームズに好意的論調の記事を書いている。Forbesは後にこの記事に長文の訂正を追加した。

Wall Street Journalによれば、月曜にPFMが投資家に送った書簡で同社がデラウェア州の裁判所に訴を起こしことが明らかになった。PFMは「ホームズと他の経営幹部はPFMNに対して『Theranosが独自に所有権を有し、有効に稼働するテクノロジーを開発した』という明白極まる虚偽を告げた」としている。またTheranosはこのとき「行政の承認は間もなく得られる」と語ったという。

Theranos側では「この訴には根拠がなく、Theranosは断固として争う」と述べた。

先週、Theranosはラボ業務を閉鎖し、 340人(全社員の40%)を解雇した。同社は血液検査ではなく小型の医療検査機械の開発に集中していくとしている。

しかしこのミニチュア・ラボは8月にフィラデルフィアで開催されたカンファレンスで発表されたものの、科学者や医師その他の医療関係者からの評価は低かったTechCrunch記事)。

画期的とされる新テクノロジーの内容がどの専門誌の記事、論文によっても裏付けられていないことに気付いた専門家がTheranosに疑問を呈し始めたのは1年以上前になる。その後、Wall Street JournalはTheranosのテクノロジーは現実に使われているのかというさらに深刻な疑問を抱いた。連邦政府の機関がTheranosを精査した結果、この7月にホームズは、すくなくとも向こう2年間、医療検査業務に携われることを禁止された

Wall Street Journalを含む多数の記事によれば、2003年に公式に設立されて以來、Theranosは7億5000万ドルの資金を調達している。CrunchBaseには初期の投資者として、DFJ、ATA Ventures、Continental Ventures、Tako Venturesなどの名前が上がっている。2015年10月のFortuneの記事によると、レイト・ステージの投資家には、BlueCross BlueShield Venture Partners、Continental Properties Co.、Esoom Enterprise(台湾)、Jupiter Partners、Palmieri Trust、Dixon Doll、Ray Bingham、B.J. Cassinらが含まれる。

Wall Street Journalがインタビューした情報源によればPFMは投資の返還と損害賠償を求めている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Greylockが15番目のファンドを組成、新たに10億ドルをスタートアップに投資する

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Greylock Partnersは、新たに10億ドルをスタートアップに投資する。この息の長いベンチャーキャピタルは15番目のファンドを発表した。彼らは累計35億ドルを管理していることになる。

約50年の投資経験があり、Greylockは法人向けITとコンシューマー向けインターネットカテゴリーを牽引する企業に投資してきた。その中にはLinkedIn、Dropbox、Facebook、Airbnbが含まれる。彼らのリミテッドパートナーは、過去の成功事例と同じように、Greylockが次に大成するスタートアップを見つけることを期待している。

「割と一貫した戦略をとってきました」とGreylockのパートナーであるJosh ElmanはTechCrunchに話す。彼らのチームは常に「人々の暮らしを良くするプロダクト」を探してきたという。

Greylockはシードラウンドからレイターステージまで、どのタイミングでも投資することができるが、たいていの場合、その中間で投資を行ってきた。14個のファンドの95%以上の投資案件はシリーズAかBでの投資で、15番目のファンドでもこのアプローチを変えるつもりはないという。

探しているのは、「30人から1000人」に倍増しようと転換期にあるスタートアップとElmanはいう。Greylockは「小規模な若い会社から本当に大きく成長し、スケールが得られる」ような拡大しているチームに投資するという。Greylockは最近、注目を集めるGoFundMemusical.lyに投資した。

また、法人やコンシューマー向けビジネス以外にもGreylockは、メッセージング、仮想現実、機会学習、ロボティクスといった新興分野にも目を向ける計画だという。ElmanはAmazon Echoのようなボットや音声関連のプロダクトには特に期待しているという。

しかし、最も良いスタートアップに投資しようと同じように考える投資会社が多いと、その中で目立つのは難しくなる。Greylockの投資チームにはLinkedInの共同ファウンダーReid HoffmanやMozillaの前CEOであるJohn Lillyがいる。Greylockは彼らの業績と経験が他社との差別化になることを期待している。

他の最も優秀なベンチャー投資企業と同じように、Greylockも社内に人材パートナーグループを持っていて、このグループはスタートアップのチーム作りを助けている。 Jeff MarkowitzとDan Portilloが率いるGreylockの人材グループは、プロダクト、デザイン、開発で経験のある採用候補者やCXOクラスの役員に適した人材を探す。

「Greylockは会社と本当にパートナーシップを結ぶというアプローチを取ります。採用、プロダクト計画、戦略面を含めてです」とNextdoorの共同ファウンダーであるSarah Learyは言う。Learyは、Greylockでアソシエイトとして勤めた経験があり、Greylockは「私たちと同じ起業家として、同じような状況を経験したことがあるパートナーを多く抱える数少ない投資会社のうちの1つ」と話す。

170のIPOと120の「有益」な買収があり、Greylockの投資案件のいくつもが身を結んだ。近年のエグジットにはApptioPure StorageQuipTellApartがある。

しかし、どのベンチャーキャピタル同様、いくつかの投資がうまくいかないことも勘案し、多様性のある投資先ポートフォリオを築くことが成功の鍵だ。Greylockが投資した中で報われなかったものの中にはDigg、Cuil、ArsDigitaなどがある。

困難に直面した時、Greylockはスタートアップが助けを求めることができる存在になりたいと考えている。「どんな時も、1日の中でいつでも、連絡できる相手になりたいと考えています」とElmanはいう。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website

ビヨンセがスタートアップ投資家にーーコンサート会場でのグッズ販売を効率化するSidestepに出資

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スヌープドッグ、アシュトンカッチャー、ジャスティンビーバーに加わり、愛称クイーンビーで知られるビヨンセも彼女の卓越したビジネススキルをテック業界へと持ち込む。ビヨンセと彼女が創業したマネジメント会社Parkwood Entertainmentは、Sidestepに15万ドルを投資した。Sidestepは、コンサートで販売されるグッズを購入し、列に並ばずともショーで商品を受け取れるアプリだ。

SidestepはもともとビヨンセのFormationワールドツアーでTシャツやポスターを販売していた。Sidestepの2週間に渡るツアーでの成果を見て、ビヨンセとParkwoodはSidestepのシードラウンドに出資することを決めた。

SidestepのCEOであるEric Jonesは「彼らはビヨンセのツアーをテクノロジーに焦点を当てたものにしたいと言っていました」そして、「小さくてどうしようもなスタートアップが世界でも最大級のツアーに参加している」というアイデアを気に入ったようです。

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ビヨンセは、過去にスイカの飲み物会社 WTRMLN WTRに投資している。また、ビヨンセはジュース機械メーカーJuiceroとの仕事関係があるとしているが、同社はそれについて語ることを拒んでいる。ビヨンセはストリーミングサービスTidalのステークホルダーでもある。彼女は自身の楽曲の早期アクセスをTidalに提供したことによるものだ。今回のビヨンセのSidestepへの投資は、より直接的にアーティストが収益をあげることを助けるかもしれない。

薄利なストリーミングサービスのロイヤリティーで金持ちになることを夢みているミュージシャンは考え直した方がいい。ストリーミングで有名になった後、コンサートチケットやグッズの販売でこそ金持ちになれるだろう。

しかし、コンサート会場のグッズ販売ブースに長い列ができていては、多くの人はショーに遅れないようにTシャツや他のグッズの購入を諦めてしまう。そこでSidestepの出番だ。

このスタートアップは、ツアーで販売されるグッズの注文をスマホアプリから受け付ける。グッズはツアーの前、ツアー中、さらにはツアー後でも購入可能だ。注文したら、会場ではグッズブースの列を飛ばし、専用のグッズ受け取り場所でQRコードをかざせば、商品をすぐに受け取ることができる。自宅へ配送を依頼することも可能だ。これがあれば、欲しいTシャツのぴったりのサイズを購入することができ、売り切れの憂き目に会う心配も減る。

ビヨンセ以外には、 Guns N’ Roses、Fall Out Boy、Selena Gomez、Weezer といったアーティストのグッズもSidestepで購入することができる。このスタートアップはアーティストに対し、どういった人がグッズを購入しているかのデータを大量に提供する。Sidestepはカスタマー側に手数料10%を課金して収益を得るモデルだ。

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Sidestepはビヨンセ、俳優のJared Leto、レディー・ガガの前マネージャーTroy Carter、Culture Ventures、LADodgersの前CEOを含む複数の投資家らから総額170万ドルを調達した。このアプリはすでに200万ドル分の売り上げがあり、それは去年の10倍の額だ。同社は、今年開催されたTechCrunch 1st And Futureスポーツスタートアップ・ハッカソンに参加している。

Sidestepは他のグッズ関連スタートアップMerchbar、Amazon風のウェブサイトを持つYoshirtなどと競合することになる。Yoshirtでは、ファンはブランドのロゴや写真を使ってデザインし、カスタマイズしたアイテムを購入することができる。また、10%も高くなるのなら、列に並んだ方がいいと考える人もいるだろう。しかし、ストリーミングのロイヤリティーでアルバム売上の減速分の埋め合わせができないのなら、アーティストは何が何でもシャツの売上を上げようとするかもしれない。そうなれば、こういったスタートアップは繁盛するだろう。

一方で、ビヨンセといった投資もするトップパフォーマーは、ハリウッドだけでなくシリコンバレーにもお金を積むようになってきたようだ。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website

転機を迎えつつあるハードウェアスタートアップへの投資

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【編集部注】執筆者のChris Quinteroは、Boltでアソシエイトを務めている。同社はシードステージの企業を支援するファンドで、資本のほかにも、スタッフやプロトタイピング施設、専門知識などを、ハードウェアとソフトウェアどちらの開発も行っているスタートアップに対して提供している。

私たちは、まだハードウェアルネサンスの初期段階にいる。開発コストの低下や、製品を市場に届けるまでの期間の短縮、また、ハードウェアビジネスの性質が、コモディティ化した家電製品から定期収益型のソフトウェアサービスへと移行したことなどを背景に、VCはハードウェアスタートアップへの投資を加速させてきた。

昨年TechCrunchでは、ハードウェアスタートアップへの投資資金の爆発的な増加に関する記事を公開し、投資額が4年前と比べて30倍以上になっていることがわかった。その後何が起きているのだろうか?ハードウェア業界は、盛り上がりに見合った成長を遂げているのだろうか?以下が私たちの調査結果だ。

増加を続ける投資額

全体で見たときには、VCによる投資額の伸びが鈍化している一方、ハードウェア企業は引き続き資金調達に成功している。2016年の上半期には、120もの案件に17億ドルの資金が投入されており、この数字は過去10年間のどの期間と比べても1番多い。しかし、投資額が伸びている一方で、案件数は横ばいとなっている(2015年上半期:123件、2016年上半期:120件)。これらの数字から、ハードウェア業界が成熟しつつあり、投資家は初回投資に自信を持ち、どの企業がうまく事業を運営しているかを消費者が理解していく中で、同業界は踊り場に差し掛かろうとしていると考えられる。

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2016年7月1日時点のデータ。公に発表されている100万ドル以上のラウンドのみを記録。Xiaomi、 Magic Leap、Jawboneのような異常値は含まれていない。出典:Bolt、Crunchbase

つまずくGoProとFitbit

昨年のハードウェア業界の寵児であるGoProFitbitは、成長を維持するのに苦労しており、現在の両社の時価総額は、ピーク時の約4分の1にまで落ち込んだ。興味深いことに、この2社が苦労している理由は、競合の登場による製品のコモディティ化ではなく、それぞれの市場が飽和状態にあることなのだ。既にGoProやFitbitを持っていれば、最新の良いモデルを購入するインセンティブが働きづらくなる。両社が、来年新たな製品ラインで成功を掴むことができるか見るのが楽しみだ。

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GoProの時価総額推移

引き続き控えめな企業買収とIPO

昨年は、SquareMisfitWithingsWhistleJaybirdなどを含む、たくさんの企業がイグジットに成功した。2014年に比べると、数十億ドルの規模に達するサクセスストーリーの数は少ないものの、この分野でイグジットしている企業がいるというのは喜ばしいことだ。

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出典:Bolt

サンフランシスコが依然ハードウェア企業への投資を支配

ボストンとニューヨークのコミュニティが大きな成長を遂げた一方で、両都市の数字を合わせても、サンフランシスコの半分程にしかならない。ベイエリアの(100万ドル以上の資金調達を公に行った)ハードウェアスタートアップの数は、私の計算だと現時点で161社で、昨年の110社から増加している。ニューヨークは、調達総額と資金調達に成功したハードウェアスタートアップの数どちらに関しても、最近ボストンを追い抜いた。

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100万ドル以上を調達した企業の分布。出典:Bolt、Crunchbase

ハードウェアに特化したベンチャーファンドの増加

昨年、Eclipseは、初となる1億2500万ドルのファンドを組成し、すでに新たなファンドの設立に向けて動いていると言われている。パリに拠点をおくHardware Clubも、自社ファンドの募集を終えようとしている。しかし、どのVCがハードウェアの分野で1番良い成績をおさめているか、というのを判断するにはまだ早い。これまでで最大のイグジットを行った企業(Fitbit、Square、Nest)は全て、ハードウェア業界への投資が盛り上がり出した2011年以前に設立された。誤解しないでほしいのが、VCは既に多額のリターンを受け取っている(SoftTechTrueはFitbitから、KleinerShastaはNestから、KhoslaはSquareから)ものの、VCからの投資を受けたハードウェアスタートアップのほとんどが、設立からまだ2〜4年しか経っていないのだ。

過去数年間がハードウェアスタートアップへの期待の時代だったとすれば、今後数年間は、彼らの実行力の時代になるだろう。

VCによるハードウェアスタートアップへの投資件数の増加は、必ずしも彼らがこの分野に注力していることを意味しているわけではない。例えば、a16zLux Capitalと比較して、これまでに50%も多くのハードウェア関連の投資案件に参加してきた。しかし、a16zのポートフォリオの中で、私たちが”ハードウェア”と分類するものの割合は8%以下しかない一方、Lux Capitalのポートフォリオにおけるハードウェア企業の割合は25%以上だった。

考察

ハードウェア業界への投資は、過去1年半の間に盛り上がってきたが、市場が成熟するにつれて投資額の伸びは踊り場に達しようとしている。そして、2013年、2014年に市場を騒がせた製品の数々が、ようやく出荷されはじめたところだ。大半の企業に関してはまだ判断が難しいものの、突出した勝ち組(Eero)と負け組(Skully)も現れはじめた。

過去数年間がハードウェアスタートアップへの期待の時代だったとすれば、今後数年間は、彼らの実行力の時代になるだろう。新たなファンドやアクセラレーターが次々と誕生する中、アーリーステージのハードウェア企業が資金調達を行うのは、これまでにないほど簡単になっているかもしれないが、スケールのためのその後の資金調達段階はデスバレーのままだ。

ハードウェアの定義は人によってそれぞれだが、この記事内の”ハードウェア企業”とは、インターネットに接続されたデバイスのハード・ソフトウェアの開発を行っているスタートアップを指している。ロボットやウェアラブルデバイス、IoTデバイスなどを開発する企業が、このカテゴリーに含まれる一方で、ほとんどの消費財企業は含まれていない。Casper、Warby Parker、Bonobosといった消費財企業は、ハードウェア企業と言うよりも、流通面にイノベーションをもたらすECブランドと考えている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

ベンチャー資金―使い方を誤ればスタートアップの麻薬になる

Long exposure of cars traffic at night

この記事はCrunch NetworkのメンバーのEric Paleyの執筆。PaleyはFounder Collectiveのマネージングディレクター。

この数年、巨額の金がスタートアップにつぎ込まれている。資金を集めるのが簡単でコストがかからないというのはもちろん有利だ。ファウンダーは単に多額の資金を得られるようになっただけでなく、以前だったら資金集めが不可能だった巨大なプロジェクトを立ち上げることができるし、中には実際ユニコーン〔会社評価額10億ドル以上〕の地位を得るものも出ている。

このトレンドの負の面については、「これはバブルだ」という議論が常に持ち出される。こうした警告は主として経済環境やビジネスのエコシステムのリスクに関するものだ。

しかしスタートアップのファウンダーが日々するリスクについての分析はめったに行われない。簡単にいえば、こういうことだ―より多くの資金はより多くのリスクを意味する。問題はそのリスクを誰が負うのかだ。物事がうまく行かなくなってきたときどのようなことが起きるのか? なるほど資金の出し手は大きなリスクを負う。しかしリスクを負うのはベンチャー・キャピタリストだけではない。

ベンチャー・キャピタルでファウンダーのリスクは増大する

短期的にみれば、ベンチャー資金はチームの給与をまかなうために使えるのでファウンダーが負う個人的リスクを減少させる。ファウンダーは開発資金を確保するためにクレジットカードで金を借り入りるなどの困難に直面せずにすむ。しかし、直感には反するかもしれないが、ベンチャー資金の調達は、次の2つの重要な部分においてリスクを増大させる。

エグジットが制限される

ベンチャー資金の調達はスタートアップのエグジット〔買収などによる投資の回収〕の柔軟性を奪うというコストをもたらす。またバーンレート〔収益化以前の資金消費率〕をアップさせる。実現可能性のあるスタートアップのエグジットは5000万ドル以下だろう。しかしこの程度ではベンチャー・キャピタリストにはほとんど利益にならない。ベンチャー・キャピタリストはたとえ実現性が低くてはるかに大型のエグジットを望むのが普通だ。

ベンチャー資金というのは動力工具のようなものだ。動力工具なしでは不可能が作業が数多くある―正しく使われれば非常な効果を発揮する。

巨額のベンチャーを資金を調達したことによって引き起こされた株式持分の希薄化に苦しむ起業家は非常に多い。巨額の資金調達は、実現性のあるエグジットの可能性を自ら放棄することを意味する。その代わりに、ほとんどありえないような低い確率でしか起きないスーパースター的スタートアップを作ることを狙わざるを得ない状態を作りだす。何十億ドルものベンチャー資金が数多くの起業家にまったく無駄に使われている。スタートアップに巨額の資金を導入しさえしなければ現実的なエグジットで大成功を収めたはずなのに、実現しない大型エグジットの幻を追わされた起業家は多い。.私のアドバイスはこうだ―実現するかどうかわからない夢のような将来のために現在手にしている価値を捨てるな。

バーンレートが危険なレベルに高まる

エグジットが制限されるだけでなく、ベンチャー資金の導入はバーンレートのアップをもたらすことが多い。 スタートアップのビジネスモデルが本当に正しいものであれば、バーンレートの増大は有効な投資の増大を意味する。ところが、スタートアップがそもそも有効なビジネスモデルを持っておらず、増大したバーンレートが正しいビジネスモデルを探すために使われることがあまりに多い。残念ながら正しいビジネスモデルは金をかけたから見つかるというものではない。そうなれば会社はすぐにバーンレートそのものを維持できなくなる。CEOは節約を考え始めるが、そのときはもう遅すぎる。すでにベンチャー・キャピタリストの夢は冷めており、熱狂を呼び戻す方法はない。

導入された資金はすべて持分を希薄化させるものだということを忘れてはならない。粗っぽく要約すると、スタートアップは資金調達後の会社評価額を2年で3倍にしなければならない。1ドル使うごとに2年以内に3倍にして取り返せるというか確信が得られないなら、そういう金を使うべきではない。というか最初からベンチャー資金を調達すべきではない。

繰り返すが、ベンチャー資金は動力工具だ。つまり使用には危険が伴う。しかし未経験な起業家はどんな夢でも常に叶えてくれる打ち出の小槌と考えがちだ。チェーンソーがなければできない作業は数多い。しかし間違った使いかをすれば腕を切り落とされることになる。

ベンチャー・キャピタリストには10億ドルのエグジットが必要―起業家はそうではない

10億ドルのエグジットはもちろん素晴らしい。しかし起業家は最初からそれを成功の基準にすべきではない。ユニコーンを探すのはベンチャー・キャピタル業界特有のビジネスモデルではあっても、スタートアップの成功はそういうもので測られるべきではない。

10億ドルのベンチャー資金の背後にあるビジネスの論理を簡単に説明しよう。

  • ベンチャー・キャピタリストが10億ドルのファンドを組成する。成功とみなされるためにはそれを3倍に増やさればならない。
  • ベンチャー・キャピタリストは30社に投資する。
  • ベンチャー・キャピタリストは10社についてブレーク・イーブン、10社について全額を失う。すると残りの10社は平均して3億ドルの利益をファンドにもたらす必要がある。。
  • ベンチャー・キャピタリストのスタートアップの持分は通常2割から3割だ(それより低いことも珍しくない)。このビジネスモデルでは、1社10億ドル以下のエグジットではベンチャー・キャピタリストにとって成功とはみなせないことになる〔10億ドルのエグジットならVCの利益は2-3億ドルとなる〕。

こういう仕組みがあるのでベンチャー・キャピタリストは10億ドルのエグジットを求める。10億ドルのエグジットがたびたび起きないことが事実であっても、大型ベンチャー・ファンドのビジネスモデルがそれを要求する。
単に10億ドルのレベルだけの問題ではない。ベンチャー・キャピタリストのビジネスモデルは2.5億ドルのエグジットについても同じことを要求する。

資金に洞察力はない―それは単なる金に過ぎない

おおざっぱに言って、スタートアップのエグジットは資金の元となったファンドの総額以上でなければベンチャー・キャピタリストにとって重要な意味があるとはみなされない。これはもちろん「尻尾が犬を振る」ような本末転倒だ。ベンチャー・キャピタリストはファウンダーに「ビッグを目指せ。でなければ止めろ」という非合理な行動をけしかけている。誰も表立って言わないが、「ビッグを目指せ。でなければ破滅だ」というのが裏の意味だ。

もしスタートアップが失敗したら―これは多くのスタートアップがたどる道だ―30社に投資しているベンチャー・キャピタリストはあとの29社に期待をつなぐことができる。しかし起業家には自分のスタートアップ以外に後がない。スタートアップを育てるために注ぎ込んだ努力と時間はまったくの無駄になる。つまりベンチャー資金の調達ラウンドでは、通常、資金の出し手より受け手の方がはるかに大きなリスクを負う。

もちろん一部のファウンダーにとってベンチャー資金は必須のものだ。しかし―フェラーリは確かに優れた車だが、普通の人間が家を抵当に入れてまで買う価値があるかは疑問だ。通勤やスーパーで買い物するためならトヨタ・プリウスを買うほうが賢明だろう。

エグジット額は見栄の数字

もしファウンダーの目標の一つに金を稼ぐことが入っているなら、エグジット額に気を取られるのは愚かだ。スタートアップを10億ドルで売却したにもかかわらず手元に残った利益は1億ドルで売ったときより少なかったということはしばしばある。

身近な例でいえば、Huffington Postは3億1400万ドルでAOLに売却され、ファウンダーのアリアナ・ハフィントンは1800万ドルを得たという。一方、TechCrunchのファウンダー、マイケル・アリントンは同じAOLにTechCrunchを3000万ドルで売却し、2400万ドルを得たと報じられた。ベンチャー・キャピタリストの立場からすればTechCrunchの売却は「大失敗」だ。ベンチャー・キャピタリストならマイケルに「そんな値段では売るな」と強く勧めただろう。ところがマイケル・アリントンはこの取引でアリアナ・ハフィントンより多額の利益をえている。

起業における練習効果

私がベンチャー・キャピタリストから何度も聞かされた議論は、ファウンダーはポーカーでいえばオールインで、全財産をつぎ込むのでなければスタートアップを成功させることはできないというものだ。これはもちろんナンセンスだ。スタートアップを10億ドルに育てるためにはまず1億ドルにしなければならない。起業家は一足飛びに10億ドルに到達できるわけではない。現金化のレベルに到達するまでにはさまざまな段階を踏まねばならない。次の1歩に集中していてもなおかつ、結局はスケールの大きいエンドゲームにたどりつくことはできる。

まだ実現してい将来のために現在を売り渡してはならない

これは本質的に重要な点だ。成功したとみなされるスタートアップを見てみるとよい。WayfairBraintreeShutterstockSurveyMonkeyPlenty of FishShopifyLyndaGitHubAtlassianMailChimpEpicCampaign MonitorMinecraftLootCrateUnityCarGurus and SimpliSafe等々。こうしたスタートアップはどれも最初から「10億ドルか死か」というような考え方と無縁だった。にもかかわらず、このリストには10億ドル以上の企業が多数含まれている。こうした企業はスタート当初はほとんど、あるいはまったくベンチャー資金を導入していない。プロダクトにニーズがあり、市場に適合していることが明らかになり、さらに需要な点だが、ファウンダーが企業を拡大するためにどのように資金を使ったらいいかわかるようになってからベンチャー資金を調達している。なかにはベンチャー資金に一切頼らなかったスタートアップもある。

上に挙げたようなスタートアップは最初の1日から資金の使い方が非常に効率的だった。こうしたスタートアップには上場したものもあるし、10億ドル以上の金額で大企業に買収された会社もある。私は外部資金に頼らない起業、いわゆるブートストラップを特に推奨するものではない。しかし資金を賢明に使って企業を育てたファウンダーのやり方には学ぶべき点が多々あるとはずだ。

賢いのは人間で、金ではない

私は10億ドル起業のファウンダーとなることを目指すこともできたかもしれないが、事実は起業した会社を喜んで1億ドルで売却した。スタートアップを10億ドルに育てることも1億ドルに育てることも同じくらいの確率で実現するという誤った思い込みをしている起業家が多すぎる。なるほど10億ドルでエグジットするというのはファウンダーの夢としてはすばらしい。しかし5億ドルのエグジットなら間違いなくホームランだし、1億ドルのエグジットは驚くべき成功だ。
5000万ドルのエグジットでも大勢の関係者の生活を一変させるようなインパクトがある。そもそも100万ドル程度の「はした金」の現金化でファウンダーには大きな影響がある。

要するに、エグジットの可能性を早まって売り渡してはならない。持分やオプションを売るのは、スタートアップの将来価値が現在よりはるかにアップするという確信が得られてからにすべきだ。いかに多額の資金を導入しても洞察力が増すわけではない。堅実なビジネスを宝くじの束などと交換してはならない。

会社をスケールさせる必要があるからといっても道理に合わない多額の資金を調達することはビッグ・ビジネスを作る道ではない。起業家は大きく考え、大きな夢を持つべきだ。ベンチャー・キャピタリストの助力を得ることはよい。だがベンチャー資金をステロイドのように使うのは致命的だ。「効率的なスタートアップ運営」をモットーにすべきだ。断っておくが、私は起業家は小さい会社を作るべきだかとか小さい問題だけを解決すべきだとか言っているわけではない。正しい理由があるならなんとしてもベンチャー資金を調達すべきだ。しかしベンチャー資金ラウンドの華やかな見かけのために将来を売り渡してはならない。ベンチャー資金はファウンダーの自由を奪い、不必要に高いバーンレートをもたらす可能性がある。

実は大部分のスタートアップにとってベンチャー資金の導入は正しい選択ではない。正しく使われればベンチャー資金はきわめて有効だ。しかし残念ながら、多くの起業家は正しい使い方をしていない。

画像:xijian/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

米ドローン市場の今後の動き、法整備が進み投資は拡大していくのか

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先週起きたアメリカ国内のドローン市場にとってのマイルストーンとなる出来事をうけ、米ドローンテック企業に対する投資への期待が業界内部で高まっている。しかし、実際に投資が加速するには少し時間がかかるかもしれない。

先日の記事で報じた通り、アメリカ合衆国運輸省(DOT)とアメリカ連邦航空局(FAA)はパート107(小型無人航空システムに関するルール)を施行し、ようやくドローン業界に関する規制がある程度明確化された。

パート107では、夜間の商業用ドローンの利用が認められていないほか、人の頭上や視界を超えたドローンの飛行は禁じられている。そのため、企業はビジネス目的で禁止項目にひっかかるようなドローンの利用を行う場合、その都度連邦当局から例外使用の許可を得なければならない。

DOTとFAAなどの関連省庁が、どれだけ速やかに例外使用申請に応じるかによって、パート107はドローンによる配達サービスや、報道目的でのドローン利用、夜間や人の多いエリアでの監視・調査目的のドローン利用の普及を遅らせてしまう恐れがある。

ワシントンD.C.にある法律事務所Hogan LovellsでGlobal UAS Practiceの共同議長を務め、Commercial Drone Allianceでは共同エグゼクティブ・ディレクターを務めるLisa Ellmanは以下のように語っている。

「もちろんシリコンバレーの動きは早いですし、関係当局は官僚らしいペースで動いています……それでも、FAAやDOTなどの組織は規制を草案する前に多くの情報が必要なため、その状況も理解できます」

次の段階として、ドローン技術やドローン関連サービスを提供している企業がもう一歩前進し、出しうる限りのデータを規制機関だけでなく一般にも公開することで、もっと一般の人にもドローンに秘められた利点について知ってもらいたいとEllmanは話す。

さらに彼女は、現状のパート107でさえ、ドローン業界(特にドローンテクノロジー教育や安全関連のテクノロジーの分野)でのさらなるイノベーションや、同業界への投資を促す力になると考えている。

ドローンテックベンチャーのFlirteyや、ドローン探知システムの開発を行うDeDroneに投資を行っているMenlo Venturesでマネージング・ディレクターを務めるVenky Ganesanもその意見に賛同している。「どの業界でもゲームのルールが明確化することで投資活動が盛り上がってきます。投資家がルールを理解することで、どのようにプレイしていくか決めることができるということです」

Ganesanは、バーティカル市場や産業用に特化したドローンテックスタートアップ・ドローンサービスへの投資が、パート107の直接的な影響で増加していくと考えている。

「朝目を覚まして、今日から仕事でドローンを使うぞと言う人なんかいませんよね。まず、企業はビジネス上の問題を解決したり、自分たちの農場やパイプラインの周辺で何が起きているのかを調べたりしたいと考えています。ドローンはそういった企業をサポートすることができる一方、利用者の多くはドローンサービスを提供する企業や専門家の力に頼らざるをえません」

長期的にみて、自動飛行や障害物回避といった遠隔操作システムを備えたドローンが、オペレーターの視界を超えて飛行することを規制団体が許可するようになれば、多額の資金がドローンテック企業に流れ込むとGanesanは予想する。

さらに彼は、まだドローンテック企業に目をつけていない企業は、ドローンテクノロジーが持つ長期的な影響をひどく過小評価しているかもしれないと考えている。

シリコンバレーで語り継がれる決まり文句として、「たいていの場合、新たな一大テクノロジーの短期的な影響は過大評価され、長期的な影響は過小評価される」というものがある。

以前ボーイングに航空エンジニアとして勤務しており、現在はSubtraction Capitalのジェネラル・パートナーを務めるPaul Willardは、「各企業がどうやって越えればいいかわかるくらいの高さのバーを設定する」ことこそ、アメリカをドローン業界のリーダーにする上で、規制機関がとれる最も重要なアクションだと語る。

さらに彼は、「アメリカが業界の最前線に立つには、まだまだハッキリさせていかなければならないことがたくさんあります。しかし、アメリカ以外の市場では、既に多くの企業が資金を調達しつつレースに参加し始めています」と付け加えた。なお、Subtraction Capitalは、ルワンダで医療品配達用のドローンサービスをローンチしようとしているZiplineに対して投資を行っている。

また、Willardはドローンテック市場を医療機器や医薬業界になぞらえている。

医療機器や新薬は、しばしばアメリカ以外の地域で研究・販売されており、しばらくしてから多額の資金を投資ラウンドで調達し、アメリカの厳しい規制に対応するという動きをとっている。

スタートアップのファウンダーや、ドローンテックの投資家の中には、商業用ドローンに関する規制の下で、そのようなテック企業が特例許可をとる必要がでてくると、気付かないうちにドローン界の勝ち組に利益をもたらし、許可をとるのが遅れたり、そもそも許可がとれなかった他の企業にとっての障壁を生み出すことにつながりかねないと心配している人もいる。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

私たちがあなたの会社に投資しない11の理由

Close-Up Of Pencil Crossing On Checklist

【編集部注】著者のPhil Nadel氏はBarbara Corcoran Venture Partnersの共同創業者でディレクター。

ほとんどのVCと同じように、私たちは毎週しばしば数十件に及ぶ案件をレビューする。私たちは、私たちの一般的な投資基準(例えば業界、ステージ、モデル)に適合しないものを、素早く排除することができるフィルターを開発した。

この初期選考プロセスを生き残った案件は、更なる精査と適性評価の対象となる。このプロセスは様々な観点を含んでいる。財務諸表と収益予測;創業者、顧客、他の投資家との議論;その会社、製品、そして業界に関連するサードパーティ情報のレビューなどだ。このプロセスの様々な段階で、企業は更なる考慮から除外されていき、最後に、残されたレビュー対象の少ない割合の案件に対して、最終的な投資を行うのである。

ある会社に投資しないことを決定するとき、私たちは常に創業者たちに、不採用の決定の理由を説明するための時間を設けている。この記事の目的は、私たちが企業に投資しない決定をした主要な11の理由についてのレビューを提供し、これからの創業者の方々の資金の調達のチャンスを向上させることである。

透明性/率直さの欠如。 私たちは創業者が率直ではない場合には、直ちに興味を失う。ベンチャー投資は信頼関係に基づいているのだ;不透明であることは関係に対する不吉の始まりである。

占有性/防御性の欠如。 もし企業が、潜在的な競合相手に対抗するための独自性を占有していない場合、その成功はやがて没落に繋がる。

これが何を意味するのか?堀がなければ、会社の成功は簡単に模倣されてしまう。成功すればするほど、より多くの競合を引き寄せてしまうのだ。しかしもし、その会社が秘密のソースを持っていたなら ば ‐ 技術、プロセス、知識、関係、その他などが含まれる – 持続的な成長のオッズは遥かに高くなる。先発であることの利点は、初期の段階では有用だが、それは長期的には通常あまり助けにはならない(例えばMySpace)。

実績がありスケーラブルな有償マーケティングチャネルの欠如。 私たちは、当社の資本を収益成長の燃料として使うことができる企業に投資することを好む。もし対象企業がまだ、スケーラブルでコスト効率の高いマーケティングチャネルを見つけていない場合には、それらを見つけるための実験とテストに私たちの資金を燃料として使うことになりがちだ。

私たちは、実績あるチャネルを拡大するために私たちの投資を使用できるように、少なくとも既にそうした初期テストを十分に行っている企業に投資することを好む。有償顧客の獲得を心の底から理解していて、私たちの成長に関する質問に「グロースハッカーを雇いますから」と答えない創業者たちに、私たちは強く惹かれる。

自身の主要業績評価指標(KPI)を知らない。 私たちは創業者によるその企業自身のKPIに対する知識の深さと、会社の成功との間には、直接的な相関関係があることを発見した。

私たちは、創業者がその会社に全てを捧げていることを確認したい。

まず、創業者たちは彼らのビジネスに、どの指標が重要であるかの理解を示さなければならない。次に、彼らはそれらのメトリックスを適切に測定し、計算していることを示さなければならない。最後に、彼らは各KPIに影響を与えるにはどのレバーを引くべきか、ビジネスを成功させるためには、どのKPIを微調整する必要があるのかについて熟知していなければならない。

短い予算計画。 私たちが企業に投資する場合、少なくとも12ヶ月分の月次予算計画を持っていることを望んでいる。資金の調達には多くの時間と労力が費やされ、ビジネスの成長から創業者たちを遠ざけてしまう。私たちは、会社がすぐに別の資金調達ラウンドにとりかかる心配なしに、チームが成長に注力することを可能にする十分なリソースを持っていることを望んでいる。そしてまた、もし会社が12ヶ月分のKPIの改善と成長を示すことができれば、次の調達ラウンドは、はるかに容易になるだろう。

月次予算計画を計算するには、創業者は、現在の出金速度を知っている必要があり、そしてどのように調達した資金を利用していくのか、毎月末毎にどのくらいの現金を使っていくのかに関する、詳細な予測を立てなければならない。この計算は以下の仮定で行うことができる:(1)ゼロ収益、(2)ゼロ成長で、現在の収益が続く、または(3)これまでの傾向に基づく合理的な収益の成長が望める。

TAM(総市場規模)が小さすぎる。 私たちはしばしば、比較的小さなグループが直面している問題への、革新的で時に独創的な解決策を持っている企業をみかける。買収されることを目指す起業は、その収益可能性を買収者にとって意味のあるものにするために、十分に大きな市場にアプローチする必要がある。もしある企業が、同社のソリューションが対象としている市場の大きさが妥当であることを示すことができない場合(私たちの場合、それは通常年間10億ドルの市場である)、私たちは通常は見送ることにしている。

未発売または未出荷。 私たちは企業が製品を売り始めたときに、その評価の高まりに伴ってはるかに投資リスクが低くなることを知っている。言い換えれば、企業が売上のない状態を卒業して、顧客が喜んでお金を払う製品の製造と出荷に移行したら、その評価の高まり以上にリスクが減少するということだ。したがって私たちは、対象企業が最初の販売を行い製品が市場に受け容れられる初期の証拠を示した後に投資をすることは賢明だと考えている。

ビジョンがない。 私たちは、現在の会社を100倍のサイズにするための、明確な成長のビジョンを持っている創業者の企業に投資するのが好きだ。実際にその成長を成し遂げるためには、そのビジョンからの逸脱も必ず必要になるのだが、一方ビジョンを欠いていてはその達成ははるかに遠ざかってしまう。激しい嵐の中でも、北極星が創業者たちに道を示してくれるのだ。

競合相手をきちんと理解していない。 多くの企業は、しばしば私に「私たちには競合がありません」と言ってくる。一般にそれは信じがたいことなので、こう返答するようにしている「あなたが対象とする市場では、あなたが対応しようと考えている課題を現在はどのように解決しているのですか?それがあなたの競合相手ですよ」。

この初歩的な知識を超えて、創業者は競合他社がどの市場セグメントに取り組んでいるのか、そしてどのように売り込んでいるのかを睨みつつ、競合他社によって提供されているソリューションを徹底的に理解しておく必要がある。企業の潜在的な顧客は、その製品を他の利用可能なソリューションと比較する。そして頭の良い創業者たちはその製品を正しく位置付けるのだ。

こうした他のオプションについて精通していないこと、そして自らの製品を差別化できないことは、すなわち失敗のレシピである。

偏った創業者チーム。 製品は作られる必要があるし、また製品は売られる必要がある。これらのタスクは1人ではほとんど賄うことのできない、非常に異なるスキルを必要とする。私たちは、エンジニアリングと開発から販売とマーケティングまでの、様々な専門性をもつ創業者チームに会うのが好きだ。

会社の創立時からあらゆる専門性をしっかりと持つことは、偉大な製品を作ること、売れる製品を作ることを確実にする。もちろん、企業は欠けている部分の人材を雇用することができるが、その補った部分は企業のDNAの一部にはならない。加えて、雇用した働き手を管理する側の人間が、関連領域での経験を積んでいることが常に好ましい。

リスクを負っていない。 私たちは、創業者たちがその会社に全てを捧げていることを確認したい。最低でも、彼らはフルタイムでそのビジネスでに従事する必要がある。理想的には、彼らには同時に、自分のお金の比較的大きな部分を会社に投資していて欲しい。ポール・グレアムはかつて、創業者たちがそうすることによって「失敗を死ぬほど恥ずかしいと考えるようになり」、すぐに「倒れるまで戦うことを誓う」ようになるのだと書いた。全く同意する。

このリストは網羅的ではないが、なぜ私たちが(そして恐らく他の初期ステージ投資家たちが)案件を採用しなかったのかに関わる、ありがちな理由を示して、これからの創業者たちがそうした問題に確実にアプローチするための役立つチェックリストになることを期待している。ところで、もしあなたがこうしたことをもう全て正しくやっているというなら、是非話を聞かせて欲しい。

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(翻訳:Sako)

ソーシャル投資サイトInstavestが170万ドルを調達

Businessman Celebrating

Y Combinatorの2015年度冬プログラム卒業生であるInstavestは、個人で行うことが普通の投資という行為をソーシャルなものに変えようとしている。

1年半ほど前にローンチされた同社は、普通の個人投資家が投資経験豊富で株式市場に詳しい他の投資家から学ぶ手助けをしようとしている。

そして本日、InstavestはY CombinatorやSkype共同設立者のJaan TallinnCherubic Venturesなどが参加したシードラウンドで170万ドルを調達したと発表した。

Instavestの元々のサービスとして、経験豊富な投資家は自分たちの取引内容(やその根拠)をサイト上で共有し、他の投資家はその情報を参照の上、必要に応じて内容をコピーすることができた。そして株価が上がれば、サイト上の情報を参照していた投資家が、情報提供を行った人たちに対して儲けの一部を「寄付」する仕組みが備えられていた。

しかしInstavestのサービスには何かが欠けていた。それはユーザーが保有する証券口座とのリンクだ。そのため、投資家はマニュアルで証券会社に取引の実行を指示し、その後Instavestに戻ってプロファイル上に取引情報を入力しなければならなかったのだ。これは間違いなく手間のかかるプロセスであると同時に、ユーザーがInstavestのプラットフォーム上に表示されている株式をシームレスに購入するのを妨げる余分なステップだった。

しかし、Instavestは人気オンライン証券会社10社との提携に関する発表も行い、これでユーザーは同社のサイトから直接株式の売買が行えるようになった。提携先の10社には、E*TradeOptionsHouseのほか8社の人気プラットフォームが名を連ねる。Instavestは証券会社ごとのAPIを利用してサイトに接続しており、ユーザーはワンタイム認証でInstavestから移動することなく好みの証券会社を通じて株の売買ができる。

この証券口座との連携は2週間ほど前にソフトローンチされ、Instavestによればその後ユーザーが保有する株式の総額が10倍(または1000%)に増加した。この驚くべき増加率から、ユーザーに一気通貫のサービスを提供することが、同社にとってどれだけ重要かということがわかる。この機能が導入される以前、ユーザーは恐らく証券会社のサイトに移動して取引を実行するという手間を理由に株の購入を見送っていたと考えられるのだ。

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さらにInstavestは、同社のプラットフォーム上で経験豊富な投資家が儲けられる仕組みを新たに導入する予定だ。寄付制度はこれまで上手くいっている(そして今後も継続される)一方、ユーザーが儲けの一部を還元しないという選択もできることから摩擦が生まれていた。

そこで同社は、熟練投資家が有料ニュースレターを配信できる機能を導入し、月50〜100ドルの料金を支払ったユーザーに対して取引関連情報を提供できるようにしようとしている。この情報はInstavestの一般(無料)ユーザーに対してもニュースレターの配信から数日後に公開されるが、有料ユーザーは情報が一般公開される前に株を売買することで優位に立てるチャンスがある。

知識を持ったユーザーに対して、このように追加で利益を生み出す手段を提供することは、Instavestのプラットフォームを成長させるにあたって欠かすことのできないステップだ。UberやPostmatesといったオンデマンドサービスにおいて、実際にサービスを提供する人が日中の仕事をやめてギグ・エコノミーに参加しようと思える程の安定した収益を確保する必要があるのと同様に、Instavestが投資アドバイスの中心地になりたいのであれば、より多くの有能な投資家をひきつけると同時にとどまらせる工夫をしていかなければならない。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

東南アジア拠点のフリマアプリCarousellが3500万ドルを調達

Southeast Asia based Carousell raises1  35M for its social commerce app   TechCrunch

Carousellはユーザーが品物を掲載して個人間売買できるアプリだ。Carousellを運営しているのは創業4年目のシンガポール発のスタートアップで、現在、東南アジアにおいてアプリを展開している。CarousellはシリーズBラウンドで新たな国への進出とプロダクト開発のために3500万ドルを資金調達した。

Carousellは、整い始めたシンガポールのスタートアップエコシステムから芽を出したスタートアップの内の1社だ。Carousellを創業したNUS(シンガポール国立大学)卒業生のLucas Ngoo氏、Marcus Tan氏、Siu Rui Quek氏ら3人は20代前半は「一般的な」仕事に就いていた。加えて、このシリーズBラウンドはシンガポール発のスタートアップにとって確実に注目に値する(そして最大の)ラウンドである。

当ラウンドは以前からの出資者Rakuten Venturesに率いられ、Sequoia(東南アジアの取引を担うインドのファンド経由)、Golden Gate Venturesと500Startupsが参加している。Carousellは以前の2014年のシリーズAラウンドで600万ドル2013年のシードラウンドで80万ドルの資金調達をしている。新たな調達ラウンドを早い段階から検討していたことが垣間見える。

実際、昨年12月TechCrunchは、CarousellがシリーズBラウンドで5000万ドルに近い額を出資者から調達しようとしていると記事で伝えた。当時、その記事に関してCarousellのコメントを得られなかった。そして、今回に関してもCEOのQuel氏はその記事に関しては「既存投資家の支援が得られることを非常に嬉しく思っています」と述べるに留まった。

Carousellのアプリは「私たち自身が抱えている問題を情熱を持って解決するプロジェクト」としてシンガポールで開始したとQuek氏はTechCrunchのインタビューで語った。簡単にCarousellを言い表すとiOS、Androidアプリ経由のモバイル版クレイグリストだ。写真をアップロードできる機能を持ったチャットスタイルのインターフェースを採用しており、品物の売買に興味のあるユーザー同士を結びつける。個々のユーザーが自ら販売、支払いの管理を行い、今のところCarousellはサービスから収益を得ていない。

Southeast Asia based Carousell raises 35M for its social commerce app TechCrunch

Carousell上には既に3500万の品物が掲載されており、1分間に70個の品物が新たに掲載されている。アクティブユーザーは平均で17分間アプリ内を回遊しているとCarousellは説明する。(これは悪くない数値だ。Facebookグループの3つのアプリFacebook、Instagram、Messengerでは、ユーザーは平均で1日50分間利用していると先日Facebookは公表した)。

Carousellは現在、シンガポール、香港、台湾、マレーシア、インドネシアの5カ国でサービスを提供している。さらにシェアを拡大する計画もあり、現在、重点を置く東南アジア以外の国への進出も含まれるとQuek氏は語った。

「Carousellが解決している問題はグローバルなものです」とQuek氏は説明した。「Carousellの事業は本質的に地域に縛られないものです。(Carousellが進出を予定している)次の市場は東南アジアの外であり、進出に向けて準備を進めています」。

Carousellは国際的な市場拡大に向けて、今年初めには東南アジアでAirbnbの事業を牽引してきたJJ Chai氏をヘッドハンティングした。

東南アジアにおけるEコマースの市場獲得を巡る競争は厳しい。オンライン市場は市場全体の3%未満を占めていると推定される。今年、Alibabaから10億ドルの資金調達を行ったLazadaの他にも東南アジアには各国固有のEコマース企業が存在する。ソフトバンクの支援を受けているTokopedia、インドネシアの小売コングロマリットLippoが運営するMatahari Mallなどだ。一方、ソーシャルネットワーク上で従来の枠に捉われないコマースも成長しており、Facebookも注力し始めている。アメリカの大手SNSは、Facebook Shopの機能と並行するソーシャル決済システムを検証している。これは、東南アジアのユーザーがFacebookの囲いから離れなくても、商品の売買をすることを促すものだ。また、いくぶん奇妙ではあるが、Rakuten Venturesの親会社である楽天はCarousellに似たRakumaという名前のソーシャルコマースアプリを東南アジアで展開している。

「Rakumaを開始したことを知りませんでした」とQuek氏は語る。「子会社のベンチャーキャピタルのRakuten Venturesを通じて楽天から出資を受けています。Rakuten VenturesのCarousellへの出資は本質的に戦略的な意味合いはありません。私たちは独立して事業を運営しており、楽天の戦略的な計画は把握していません」。

厳しい競争の渦中だが、今の段階でCarousellが収益についてあまり考えていないことは驚くことではないかもしれない。Quek氏は、Carousell(と出資者)は将来的にマネタイズを行うだろうが、今すぐそれを行う計画ではないという。現在はアプリをスケールさせることに重点を置いているとのことだ。

Quek氏は、その時が来たのならCarousellが利益を得ることに何ら問題もないと楽観的に考えていることを強調した。

「Carousellのビジネスモデルは、基本的にはマージン率およそ50%の旧来のクラシファイド広告と同じです」とQuek氏は言う。「ビジネスモデルを新たに発明しようとしているのではなく、新たな顧客体験を創造しようとしています。結果的にそれがマネタイズにつながるのです」。

「現在、重点を置いているのは、市場の国際展開、そして競争力のあるプロダクトとエンジニアチームの整備に力を入れて取り組むことです」とQuek氏は補足した。

Carousellには現在90人の社員がいて、そのうち24人はエンジニアだ。Quek氏は今年の末までに、エンジニアの人数を倍にしたいと語った。そのようなチーム体制によって検索の改善、売り手と買い手のマッチング、スパム的な商品掲載を減らすことを狙うと語った。

Carousellの最終的なエグジット戦略に関して、東南アジアで初の注目を集めるIPOになるかと気になるかもしれないが、それに関してコメントは得られなかった。

「私たちはCarousellのエグジットについてあまり議論してきませんでした。私たちが常に大事にしていることは大きなインパクトを生むことなのです」とQuek氏はTechCrunchにそう語った。「Carousellはちょうど動き始めたところです。国際展開が’最も重点を置くことの1つになるでしょう」。

原文

(翻訳:Shinya Morimoto)

ヤフーとYJキャピタル、テック領域特化の新ファンド「YJテック」を組成

ヤフーと100%子会社であるコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)のYJキャピタルがテック領域での投資を強化する。両社は7月27日、ビッグデータやAI、サイバーセキュリティ分野特化の投資ファンド「YJテック投資事業組合(YJテック)」を5月に組成。あわせて国内外2つのファンドへのLP出資を決定したことを発表した。

YJテックは2016年5月末時点で35億円規模(持分割合ではヤフー98.6%、YJキャピタル1.4%)の資金を運用する投資ファンド。米国やイスラエル、日本などで最先端技術を保有するスタートアップ企業への投資を行い、最先端の知見や技術トレンドをYahoo! JAPANが提供するサービスに活用していくことを目指すという。

ファンド組成にあたり、ヤフーコーポレート統括本部企業戦略本部総合事業企画室長/データ&サイエンスソリューション統括本部D&S事業開発室長を兼任する谷口博基氏が専任パートナーに就任する。これに加えて、Yahoo! JAPANの技術領域の3人の執行役員が助言を行う。

またYJテックでは米Data Tribeおよび慶應イノベーション・イニシアティブの両ファンドに対してのLP出資を決定したとしている。Data Tribeはサイバーセキュリティ、アナリティクス、ビッグデータ領域のスタートアップに特化した投資を実施している。また慶應イノベーション・イニシアティブはグリー共同創業者で元副社長の山岸広太郎氏が手がける7月設立の慶應義塾大学初のファンド。IT融合領域、デジタルヘルス、バイオインフォマティクス、再生医療の4分野を中心にして、大学の研究成果を活用したスタートアップへの投資を行うとしている。

Slackが200万ドルをSlack Fund経由で14社のSlackbotスタートアップへ投資、アプリ数は600に到達

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Slackは、同僚間でのチャットや、ファイル共有、仕事を邪魔するためのGIFの送り合いなどに使われ人気を博している。この度Slackは、もっと広い意味での生産性向上プラットフォームに成るべく、幾つかの大きな施策を行った。今現在、Slack上には600ものアプリが存在し、簡単で短いコードを使うだけで、他サービスのコンテンツをSlack上で他のユーザーに共有することができる。そして今、Slackはプラットフォーム戦略の別の部分を拡大しようとしている。

本日(米国時間7月19日)Slackは、これまでに合計197万ドルを14社のスタートアップに投資したと発表した。最近投資が行われた11社についても明らかとなり、全てがボット関連サービスを提供するスタートアップだった。投資資金は、2015年12月にはじめて発表された8000万ドル規模の投資ビークルSlack Fund経由でまかなわれた。Slackは、Slack Fundでトップレベルのベンチャーキャピタル数社と組み、アーリーステージ投資の一部として、将来有望なスタートアップへの投資を行っている。

今回名前が明かされたスタートアップは、AbacusAutomatBirdlyButter.aiCandor, Inc.GrowbotKonsusLatticeMyra LabsSudoそしてWade & Wendyだ。11社のこれまでの合計資金調達額は約3000万ドルにおよぶ。

7ヶ月ほど前に、SlackがSlack Fundのローンチと共に投資先として発表した3社(Awesome.aiBeginHowdy)を加え、同社はこれまでに14社のスタートアップに対して投資を行ってきたこととなる。

小さなプログラムでできているボットは、人間同士の交流をAIと機械学習で代替し、人の代わりに何かをしたり、必要な情報を素早く入手したりといったことができる。そして急速に高まるポッド人気というのは、これまでもしばらく追い続けてきたトピックだ。

今では何100社ものスタートアップがボットを開発しており、その中には既存のアプリ向けのものもあれば、スタンドアローンのボットアプリとしてそれ自体を利用することができるものもある。General Catalystのようなベンチャーキャピタルは、ボット開発を行う見込みあるスタートアップ探しに必死になっており、実際にGeneral Catalystは、Slackの投資先と同じ3社(Butter.ai、Growbot、Begin)に対してその資金を投じている。

300万人のデイリーアクティブユーザーと93万人の課金ユーザーを擁するSlackにとって、Slackbotと呼ばれるこれらのサービスへ投資やサポートを行うのには、いくつかの明確な理由がある。

第一に、もともと開発者用(Slackの開発者は、Slack誕生前にGlitchやその他メッセージサービスを利用していた)のコミュニケーションツールとして使われていたサービスを生み出した企業として、開発者との良好な関係を保ち、彼らを熱心なユーザーと同じように扱う目的がある。

次に、Slackがスタートアップに投資やサポートを行うことで、Slack専用につくられたもっと面白いサービスをみつけることができる。その結果、Slack自体が課金ユーザーにとってもっと便利で魅力的なサービスとなるのだ。同社によれば、Slackの有料サービスを利用しているチームの90%が、「活発に」Slack上のアプリを利用している。

「Slackのようなエコシステムは共有の精神から成り立っています。プラットフォームとしてのSlackの影響力は、本質的にそして必然的に、私たちのパートナーや開発者の成功に結びついているのです」とSlack自身もつづっている

投資にあたって何社のスタートアップがSlackにプレゼンを行ったかということに関しての回答は得られなかったが、今後も投資活動は続けていくとのこと。

以下が、Slack自身による各アプリの概要説明だ。
Abacusは、インテリジェントな経費報告書作成ソフトで、レポート作成と承認をSlack上で行うことができる。

Automatを使えば、誰でもチューリング・テストに合格するようなボットを簡単につくることができる。現在プライベートベータ板が公開中。

Birdlyは、SlackとSalesforceを接続し、誰でもあるアカウントに関する必要な情報にアクセスすることができる。

Butter.aiは、会社に蓄積された情報へのアクセスを簡単にするパーソナルアシスタントボットで、プライベートベータ板が公開されている。

Candor, Inc.は、完全に率直なフィードバックをもとに、スタッフ間の関係性向上を目指している。CandorのSlackアプリは現時点では一般公開されていない。

Growbotは、良い仕事をしたチームメイトを褒めたり、励ましたりするのに使える便利なボットだ。

Konsusを使えば、Slackを通していつでも必要に応じてフリーランサーに仕事を頼むことができる。

Latticeは、目標設定機能や週ごとのOKR(Objectives and Key Results=目標と主な成果)報告機能、さらにはフィードバック機能を備えた、Slackチーム内で利用できるボットだ。

Myra Labsを使えば、そのまま使える機械学習モジュールを備えたAPIを利用して素晴らしいボットを作ることができる。現在プライベートベータ板が公開中。

Sudoは、営業スタッフをデータのマニュアル入力から解放するCRM(顧客管理システム)管理ボットだ。現在プライベートベータ板が公開中。

Wade & Wendyは、2種類のインテリジェントな人材採用アシスタントだ。Wadeは、キャリアコンサルタントとして仕事探しを手伝ってくれ、Wendyは採用チームの候補者探しをサポートする。Wade & Wendyはまだ公開されていないが、ウェイティングリストに加わることができる。

以前の投資先

Awesome.aiは、チームが歩調を合わせたり、要点をまとめたり、何が重要か検討したりするのをサポートする。

Beginは、ユーザーの集中力と効率性を向上させるサポートをして、全ての業務を掌握する手助けをする。

Howdyは、共通のタスクを自動化することでチームをサポートする、フレンドリーで訓練可能なボットだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

無料のオンラインプログラミングスクールCodecademyが3000万ドルを新たに資金調達

Codecademy  the free online coding school  raises another  30M led by Naspers   TechCrunch

Codecademyは1600万人の登録ユーザーを持つオンラインのコーディングスクールだ。これまでサービスを利用するのに生徒に一銭も課金しないという経緯を辿ってきた。今、Codecademyがいつ、どのようにサービスをマネタイズするかと疑念が湧く中、3000万ドルの新たな資金調達をCodecademyが発表した。これは同社が次にどうするかを示す出来事かもしれない。

南アフリカに拠点を置く(営利目的の)巨大メディア企業、NaspersがシリーズCラウンドを率いる。CodecademyはシリーズCラウンドで調達した資金を、引き続きCodecademyのサービスを世界に普及させ、モバイルなどなプラットフォームでも使えるよう開発に充てると語っている。

ラウンドに参加する投資家には以前のラウンドにも参加したUnion Square Ventures、Flybridge Capital Partners、Index Ventures、Sir Richard Bransonを含む。Codecademyは評価額を開示していないが、私たちは探り出そうとしている。Codecademyが調達した資金は合計で4250万ドルだ。

Codecademyの共同創業者でCEOのZach Sims氏はインタビューにおいてCodecademyは有料の「プロフェッショナル」サービス(月額約20ドル)からすでにいくらかの収益を生んでいると語った。プロフェッショナルサービスではコーディングの独習コンテンツにプラスしてメンターへの相談、成績の評価が可能だ。

しかし、Sims氏は今年度初頭のインタビューでTechCrunchに対し、Codecademyには1600万人の登録ユーザーベースをマネタイズできる他の手段があると示唆した。

「プロシューマー(製品の開発にも携わる消費者)層、追加コンテンツ、メンターへの相談、さらにはユーザーがゼロから仕事を得るまでの支援とそれに対する課金」が今年度初頭にフィリピン・ダバオで開かれたWorld Economic Forumでのインタビューの中でSims氏が言及したすべての手段だ。

コーディングトレーニングプログラムにとって問題となってきた仕事斡旋の領域にCodecademyの長期的なビジョンがある。他の高額な競合サービスは多くのことを約束するが、学習が終わった後、最終的に仕事まで提供できるところはほとんどない。

オンラインのトレーニングプログラムを通してCodecademyはユーザーに関するすべてのデータを収集する。そして、そのデータの活用で、長期的にはCodecademyは他のスクールよりも卒業生を有望な仕事とつなげることが可能だとSims氏は考えている。そしてSims氏はそれでマネタイズができればと期待している。

実際に、Codecademyはカリキュラムの卒業生をアドバイザーとして雇い、Codecademyの主張通りのことをすでに実践している。現在、アドバイザーはプロフェッショナルサービスの料金を払っている人のためのメンターとして従事している。

「私たちは自社のことを経済的な機会への入り口として捉えています」とSims氏は語った。採用候補者の能力に関して十分に理解していない担当者が門番を務める業界において、Codecademyのようなサービスは、必要とする企業が選りすぐりの人材を見つけるための助けとなるとSims氏は言う。

26歳の共同創業者Sims氏はCodecademyの成長につれて、そのオンライントレーニング・プラットフォームを別のデジタル分野に拡げていくことを望んでいる。

コーディングの時代の波に乗る

ニューヨークに本社を置き、2011年のY Combinatorに参加したCodeacademyが本腰を入れて着手している市場は巨大だ。

クラスで教えている内容、仕事の現場で理解している内容、そしてどの職に人材を充てるべきか(あるいはどのようなビジネスを構築するか)においてそれぞれテクノロジーギャップが存在する。現在、テクノロジーはいたるところに存在している。それが意味するのは私たちはすべての産業、すべての段階の仕事がテクノロジースキルを必要としているいうことだ。

これに加え、今では30億人以上の人がオンライン上にいる。対象となる大きな市場が存在するのだ(Codecademyには現在1600万人の登録ユーザーしかいないことを思い出してほしい)。

現在、CodecademyはHTML/CSS、Javascript/jQuery、Python、Ruby、PHP、APIなどのプログラミング言語やコンポーネントに重点を置いている。Codecademyの前提は単にレッスンを習うだけではなく、書いたコード、成果物へのフィードバックをプラットフォーム上で他のユーザーから受けることができる教室のような環境を再現していることだ。

人々がコードを習うのを支援しているオンライン・プラットフォームはCodecademyだけではない。同じ分野で展開するサービスは他にもLinkedInが所有するLynda.com、Thinkfuk、Code.org、Coursera、Udacity、Pluralsight、Khan Academy、Treehouseなどがある。

さらに教育が専業の企業からAmazonのような企業まで、オンライン学習ツールを開発している企業は数多く存在する。これらの企業もCodecademyが解決することを目指すスキルギャップの解消を目的にしたコンテンツを開発準備中だ。

競争の渦中にいるCodecademyのユニークな売りの1つは無料で使用できることだ。ある人たちは、Codecademyの教育では十分には学べず、よりプログラミング学習に真剣な生徒は最終的には別のオンラインプラットフォームを見つけなければならないと指摘している。しかし、Codecademyは何か試してみたいという好奇心のために入門の敷居を低くしているのだ(深い専門性やレベルの高いスキルを学ぶ教育コンテンツにおいては、マネタイズが確実にできるだろうとSims氏も述べている)。

端的に言えば、多くの競合が出てきたということは、コンピューター・プログラミングの機能を学ぶことへの関心の高まりにCodecademyが乗ってきたことを示している。

「2011年にCodecademyを設立して以来、21世紀の教育の鍵となる科目としてコード学習への関心が爆発的に高まっている様を見てきました」とCodecademyのZach Sims氏は声明において語った。「数百万の月間ユーザー、米国外に50%以上のユーザーがいるので、Naspersとパートナーを結ぶことは最高の機会です。幅広い学習コースを多くの言語で、新たな地域に提供していくことでビジネスを拡大させ、誰もが経済的な機会にアクセスできる教育を創造していきます」。

ラウンドの一環として、Naspers VenturesのCEOのLarry Illg氏がCodecademyの取締役に就任した。

「従来の大学は、テクノロジーを学ぶ生徒や雇用者の要求の変化に対応するには不十分な備えしかありません。Codecademyは市場において重要で埋める価値のあるギャップを解消させることができるでしょう」とLarry Illg氏は語った。「Codecademyの製品の質とチームの実行力で海外展開を進め、今後の拡大に向け、確固たる地位を築くことができています」。

Naspersは米国の教育界に長いこと関わってきた。NaspersのCodecademyへの投資は米国のEdTech(教育テクノロジー)において3回目の投資となる。Naspersの投資先にはBrainlyやUdemyが含まれる。

今年度初頭のSims氏へのインタビューはこちら

原文

(翻訳:Shinya Morimoto)

インドの家具・家電レンタルサービスRentomojoが500万ドル調達

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インドで家具を揃えるための革新的な方法を考案したスタートアップのRentomojoが、さらなる事業の拡大を目的とし、500万ドルの資金を新たに調達した。今回投資を行ったAccelとIDG Venturesは、昨年11月に同社が行った200万ドルの調達でも資金を提供していた。

設立から18ヶ月が経ったRentomojoは、インドに住む多くの人にとって、自分たちの家用に家具や家電を購入するのは意味がないとシンプルに主張する。その代わりにRentomojoは、人々を家具の所有に伴う重荷やお金の問題から解放し、必要なものをレンタルできるようにしようとしているのだ。

レンタルの仕組みは、家具という商品カテゴリーでは一般的ではないものの、その安さや家具の保有に伴う責任がなくなるという利点から、インドで注目を集めるトレンドを後押ししていると、Rentomojoの設立者兼CEOのGeetansh Bamania氏はインタビューの中で語った。

彼の説明によれば、インド人労働者の平均的な可処分所得は少額(6000〜7000ルピー=約105ドル)のため、高価な商品を買うのは難しい。さらに、彼らは定期的に引っ越しを繰り返す可能性が高く、一般的に若い労働者は2、3年おきに住居を変えるとのこと。そのため、ものを所有しても、引越し時に新しい住居へ運びこむか、引越前に中古品として売るかという選択を迫られることになっててしまい、実用的ではない。

しかし、Rentomojoのサービスを使えば、消費者は借りた家具や家電を返却し、事前に合意したレンタル契約の残りの事項に従うだけでいい。契約上の平均的な支払期間は8ヶ月に設定されており、Bamania氏によれば、一般的な顧客はレンタル品に対して月々30ドルを支払っているとのこと。

Rentomojoは、国内6都市に合計1万人のアクティブユーザーがいると発表している。Bamania氏は、来年の終わりまでにレンタルアパートの数を1000万戸(つまり、合計1000万世帯にレンタル家具を提供する)に到達させようとしている。

Rentomojoが解決しようとしている問題以外に、この企業に関してほぼ間違いなく一番興味をそそられるのが、多額の資金が必要な可能性のある商品の仕入をどのように行っているかという点だ。当初Rentomojoは自社で在庫を購入し管理していたが、途中で心変わりし、商品を投資として扱えないかと考え始めたと、Bamania氏は語った。

その後Rentomojoは、自社のビジネスモデルを根本から覆すアイディアを基に、銀行と資産金融に関して手を組み始めた。つまり、銀行が在庫仕入時に支払を行い、ひとつひとつの商品が生み出すレンタル料金の一部を返済にあてるというモデルを確立したのだ。平均して、100ドルの投資が月に10ドルの売上を生み出しており、そこから一定の割合(具体的な数字は明らかにされていない)を銀行に支払い、残りがRentomojoの売上になっている。

「サブスクリプションモデルでのレンタルには多額の資金が必要だったため、私たちは設備投資を運営費用に転換し、フィンテックモデルを作り上げました」とBamania氏は説明した。「このモデルを利用すれば、資産の保有者と借り主の間でwin-winな関係が成り立ちます」

さらに、今回調達した資金は、資産金融と商品の管理を行うRentomojoのテクノロジープラットフォームの強化や、ほとんどが現場に出ている現在160名のチームの拡大に使われる予定だとBamania氏は付け加えた。

また、彼は「この業界では、資金力はそこまで必要とされず、私たちは必要のない資金を調達したくありませんでした」と説明した。

財務状況について、Rentomojoは「単位経済あたりでポジティブ」、つまり各商品のレンタルで赤字を出していない状態にあり、「すぐに」年間の売上ランレートを1200万ドルに到達させたいとBamania氏は語った。また、現在の年間売上ランレートは300万ドル程とのこと。売上はプラットフォームの全面的な見直しに使われ、ランレートにはパートナー企業への支払分も含まれている。

「(私たちが直面している)一番大きな障壁が、消費者の意識です」とBamania氏は同社の課題について付け加えた。「ディスラプションが起きる前に、まず消費者の意識を変える必要があります。サブスクリプションモデルが売り買いに基づいたモデルを代替し、そのうち購入という概念を塗り替えることになるでしょう」

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter