ロケットエンジン分野における「インテル」的企業を目指すUrsa Major

ロケット打ち上げの分野には、ますます多くの参入が続いている。大手企業の多くは自社でロケットエンジンを製造しているが、宇宙関連スタートアップ企業のUrsa Major(ウルサ・メジャー)は、多くの新規打ち上げ事業者が自社でエンジンを製造するよりも外注したいと考えていることに賭けている。

SpaceX(スペースX)やBlue Origin(ブルー・オリジン)で推進機関エンジニアを務めてきたJoe Laurienti(ジョー・ラウリエンティ)氏が設立してから6年が経過したUrsa Majorは、事業規模を拡大する準備が整っている。そのために過去最大の資金調達をクローズしたばかりだ。8500万ドル(約96億5000万円)を集めたこのシリーズCラウンドは、主導したBlackRock(ブラックロック)が運用するファンドやアカウントに加え、XN、Alsop Louie(アルソップ・ルーイ)、Alpha Edison(アルファ・エジソン)、Dolby Family Ventures(ドルビー・ファミリー・ベンチャーズ)、KCK、Space Capital(スペース・キャピタル)、Explorer 1(エクスプローラー・ワン)、Harpoon Ventures(ハープーン・ベンチャーズ)などが参加した。

「私たちが市場に投入しようとしているものの多くは、その次のステップです」とラウリエンティ氏は説明する。「私たちは、この産業をより速いライフサイクルへと進化させたいと考えています」。

そのためにUrsa Majorは、迅速にエンジンを製造したいと考えており、2022年には週に1基、さらにその後は週に2基のペースでエンジンを製造することを目指している(現在は1人の従業員が1基のエンジンを組み立てるのに約5日、顧客への出荷準備には最大で数週間を要する)。同社はPhantom Space(ファントム・スペース)やStratolaunch(ストラトローンチ)など、いくつか民間企業の顧客を獲得し、政府と研究開発契約を結んでいるが、まだそのエンジンは宇宙に出ていない。

「宇宙には非常に多くのアクセスビリティが必要になるため、打ち上げにはかなり複雑なエコシステムが必要になるだろうということは、6年前からわかってました」と、ラウリエンティ氏はいう。

打ち上げコストが下がっていく一方で、宇宙への打ち上げサービスに対する需要は、この10年の間に増える一方であることが予想される。Fortune Business Insights(フォーチュン・ビジネス・インサイト)では、打ち上げ事業の世界市場規模が、2019年の126億7000万ドル(約1兆4400億円)から、2027年には最大261億6000万ドル(約2兆9700億円)に拡大すると予測している。

しかし、ロケットエンジンは最も開発が困難な装置の1つだ。Blue OriginがUnited Launch Alliance(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス)のためにBE-4エンジンを開発した際の労苦や、Elon Musk(イーロン・マスク)氏が従業員に宛てた「ラプター生産の危機」に関する手紙を見るだけでも、エンジン開発が簡単な仕事ではないことがわかる。

Ursa Majorは2つの製品を持っている。現在生産に入っている推力5000ポンドの液体酸素/ケロシンエンジン「Hadley(ハドレー)」と、その10倍の推力5万ポンドを発生する次世代エンジン「Ripley(リプリー)」だ。2022年には50基以上のHadleyエンジンを納入する予約を受けており、Ripleyエンジンは今後2、3年のうちに生産を開始すると、ラウリエンティ氏は語っている。

同氏はUrsa Majorを、常によりパワフルなプロセッサーを開発し、その専門知識をDell(デル)やLenovo(レノボ)などのブランドに供給しているIntel(インテル)のような企業に例えている。「私たちは、自分たちが技術開発の会社であるという考え方を好んでいます。現在ロケットを飛ばしている企業は、自分たちが10年前に設計したロケットと同じエンジンを飛ばすべきではなかったはずです。それが垂直統合のパラダイムなのです」。

同社はコロラド州にエンジンを製造する施設を持っているが、そのエンジンの大部分は3Dプリントで作られている。施設には3つのテストスタンドが併設されており、各々のエンジンは顧客に納品する前にそこでテストされる。

Ursa Majorは新たに調達した資金を使って、製造規模の拡大とさらなるエンジン開発に取りかかることを計画している。

画像クレジット:Ursa Major

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

多様な交通データを統一的に扱えるMaaSデータ統合基盤TraISAREを手がけるMaaS Tech Japanが3.2億円調達

多様な交通データを統一的に扱えるMaaSデータ統合基盤TraISAREを手がけるMaaS Tech Japanが3.2億円調達

MaaS Tech Japanは12月8日、第三者割当増資による3億2000万円の資金調達を発表した。引受先はリード投資家のDBJキャピタル、またゼンリンフューチャーパートナーズ、東京海上日動火災保険、三菱商事、SMBCベンチャーキャピタル、個人投資家など。

調達した資金は、プロダクト開発体制の強化、社会実装に向けた営業展開の加速、データアライアンスの拡大の拡大にあてる。また、出資を受けた事業会社との連携の下、プロダクトの機能向上と新サービス開発を進める。ゼンリングループが保有する鉄道・歩道・道路関連地図データを活用した様々なモビリティデータ連携の加速、東京海上日動火災保険との提携による保険商品の共同研究やデータ活用、三菱商事との提携によるモビリティサービスやスマートシティなどの分野での事業開発を推進する。多様な交通データを統一的に扱えるMaaSデータ統合基盤TraISAREを手がけるMaaS Tech Japanが3.2億円調達

  • プロダクト開発体制の強化:これまでMaaS Tech Japanは、事業者や自治体との共同プロジェクトにより、事業者・エリア毎のニーズ確認、プロダクト導入を進めてきた。今後はそれらの取り組みを通じて得られた知見やマーケットニーズを踏まえ、より多くの自治体・エリアに利用されるようプロダクトの機能開発を加速させるため、開発体制を強化する
  • 社会実装に向けた営業展開の加速:より多くの事業者・自治体の課題解決に貢献できるよう、社内だけでなく、パートナーも含めた営業体制の構築を進め、プロダクト展開を加速
  • データアライアンスの拡大:MaaSのサービス開発やPDCAを実行するためには、様々なモビリティデータの連携が必要となる。今後、今回出資を行った事業会社とのデータ連携を通じて、モビリティデータの拡充を行ない、MaaSデータ統合基盤、MaaSコントローラの取り扱いメニューを拡大する

2018年11月設立のMaaS Tech Japanは、「100年先の理想的な移動社会の基盤を構築する」をビジョンとして掲げ、理想的な移動社会の実現に向けて、プラットフォーム開発事業、コンサルティング事業を展開。都市・交通分野におけるモビリティデータの利活用による、都市・交通DXの推進を目的に、以下3つのプロダクトを開発し、現在様々な自治体・エリアで、これらプロダクトの展開を通じた課題解決を進めている。

  • MaaSデータ統合基盤「TraISARE」(トレイザー):鉄道、バス、タクシー、飛行機など交通に関する多種多様なデータ(モビリティデータ)をシームレスに統合し、統一的な取り扱いを可能とするデータ統合基盤
  • MaaSコントローラ:公共交通やモビリティサービスなど、様々なモビリティデータを組み合わせて分析し、交通事業者や自治体の交通サービスのプランニング、モニタリングを支援する分析ソリューション
  • MaaSアプリ:モビリティや目的地の検索・予約、クーポン・インセンティブ発行機能など、事業者や自治体がMaaSサービスを提供するために必要となる各種アプリケーション

中国のAmazonアグリゲーターNebula BrandsがLVMH系投資ファンド主導で約57億円調達

2021年は、エグジットを目指している中国のAmazon(アマゾン)ベンダーにとってバラ色の年となった。ロールアップ(ブランドアグリゲーター)は、中国の輸出向けEC市場に資本を投入し、販売者をすくい上げている。例えばシリコンバレーのMarkaiが、中国ブランドを買収するためにPear VCやSea Capitalなどの投資家からシードラウンドで400万ドル(約4億5000万円)を調達したように、ロールアップ企業自体もベンチャー投資に支えられている。

そして中国をターゲットにした他のアグリゲーターも、より多額の資金を調達している。北京に拠点を置くAmazonアグリゲーターであるNebula Brandsは、シリーズBで5000万ドル(約57億円)を超える資金を調達したと中国時間12月7日に発表した。このラウンドは、コンシューマーテクノロジーに特化したグローバルなプライベートエクイティ企業であるL Catterton(Lキャタルトン)のアジアファンドが主導した。

今回のラウンドには、NebulaのシリーズAの投資家であるMatrix Partnersと、エンジェル投資家のAlpha Startup Fundも参加した。同社はこれまでにおよそ6000万ドル(約68億円)を調達している。

Amazonが巨大企業に成長したことで、中国のサードパーティベンダーの多くも繁栄し、数百万ドル(数億円)規模のビジネスになった。これらの輸出業者は、成長を維持するために、より大きな資本と人材を必要としており、業績の良い業者には2つの選択肢が存在する。さらに規模を拡大するためにエクイティ資金を得るか、ビジネスを売却して次に移るかだ。後者の場合、ロールアップの出番となる。

Nebulaの共同設立者であるWilliam Wang(ウィリアム・ワン)氏は声明でこう述べている。「中国のサードパーティベンダー市場は急速な成長を遂げており、世界中のAmazonのお客様に高品質な製品を効率的に提供することができます」。

「フルフィルメントby Amazon(FBA)のベンダーを集約してオペレーションを強化するモデルは、欧米の一部の市場ではすでに非常に効果的であることが証明されており、Nebula Brandsが主導する中国でも広がっていくことでしょう」。

Nebulaは新たな資金を得て、Berlin Brands Group、Razor Group、Thrasioなど、中国の販売者を狙っている海外のアグリゲーター各社と競合することになる。5月に設立されたばかりのNebulaは、すでに1社を買収しており、年末までにさらに数社を買収する予定だとTechCrunchに述べている。

Nebulaは現在、中国で50人以上の従業員から構成されるチームを運営しており、そのスタッフは「有名なeコマース企業、テクノロジー企業、金融企業での勤務経験から、市場に関する深い知識と、現場でのソーシング、アンダーライティング、オペレーションに関する豊富な経験を有しています」と述べている。同社の共同設立者は「上場企業」でCEOを務めたRyan Ren(ライアン・レン)氏、Lenovo(レノボ)で統合マーケティング責任者を務めたWilliam Wang(ウィリアム・ワン)氏、Wayfair(ウェイフェア)でサプライチェーン部門長を務めたHardys Wu(ハーディーズ・ウー)氏の3名だ。

画像クレジット:VCG/VCG via Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

Uberからスピンアウトした歩道走行ロボットServe Roboticsが約15億円獲得

Uber(ウーバー)傘下のPostmates(ポストメイツ)から3月にスピンアウトした自動運転によるサイドウォークデリバリー(宅配)会社のServe Robotics(サーブ・ロボティクス)が、拡張シードラウンドを1300万ドル(約15億円)で完了した。得た資金で、成長に向け歩道走行ロボットを増産し、新たな顧客層や地域への拡大計画を加速する。

関連記事:Uberが配達ロボット事業を独立会社Serve Roboticsとしてスピンアウト

「当社の目標は、今後2~3年のうちに、米国の主要都市すべてにロボットを配備することです」と、Serveの共同創業者でCEOのAli Kashani(アリ・カシャニ)氏はTechCrunchに語った。

今回のラウンドには、Uberが戦略的投資家として参加した。また、Delivery Heroが出資するDX Ventures、セブン-イレブンのコーポレートベンチャー部門である7-Ventures、Wavemaker Partners傘下で、フードオートメーションのベンチャースタジオであるWavemaker Labsも参加した。本ラウンドは、Serveが3月に実施したシードラウンドを拡大したもので、ベンチャーキャピタルのNeoやWestern Technology Investmentなどの既存投資家に加え、起業家や、エンジェル投資家のScott Banister(スコット・バニスター)氏も参加した。

Serveは2018年から、ロサンゼルスの複数の地域でPostmatesの顧客に配達を行ってきた。その頃同社は、まだ「Postmates X」という社名で、配達プラットフォームPostmatesのロボット部門だった。2020年に商用サービスを開始した。同社のロボットは、ロサンゼルスとサンフランシスコの100以上の加盟店から、非接触型の配達を数万件実施したという。同社は11月の発表で、2022年初めからLAでUber Eats(ウーバーイーツ)の顧客に対し、オンデマンドのロボット配達サービスを提供すると明らかにした。

カシャニ氏は、シリーズAラウンドの前に新たな戦略的投資家を迎えることは意味のあることで、参加した投資家の顔ぶれに同社の2022年の動きに関するヒントが隠されていると述べた。

「Uber Eatsの顧客やPostmatesの顧客以外にも浸透しつつあります。2022年はLAで営業地域を拡大するとともに、新たな都市にも進出する予定です」とカシャニ氏は話す。「セブン-イレブンとDelivery Heroが出資しました。彼らとのコラボレーションについて今後ご紹介できると思います。他にも数多くのパートナーと協議中であり、準備が整い次第お伝えします」。

コンビニ大手のセブン-イレブンは、自動運転による配送に馴染みがある。同社は最近、Nuroと共同で、Nuroの自動運転車を使った商業配送の小規模試験を開始した。また、韓国のセブン-イレブンの運営会社が、同国のスタートアップNeubilityが開発した歩道走行ロボットの実験を開始した。2016年には、セブン-イレブンはネバダ州リノで、ドローン企業Flirteyと共同で自動運転配送の実験を行った。Delivery Heroも過去に歩道走行ロボットの実験を行った。2018年にはStarship Technologiesを起用して、デリバリー会社Foodoraの顧客にサービスを提供した

関連記事:セブン-イレブンとNuroがカリフォルニアで自律走行による配送サービスを試験的に開始

「Serve Roboticsは、米国の主要都市に自動運転による配送をもたらし、最先端の自動技術でロボット分野をリードしています」と、DX VenturesのパートナーBrendon Blacker(ブレンドン・ブラッカー)氏は声明で述べた。「この革命的な技術は、配送の未来を再構築する可能性を秘めています。私たちはアリ氏のビジョンと彼が集めたワールドクラスのチームに投資します」。

カシャリ氏によると、シードラウンドの完了以外にも、Serveは自主性の向上についてのニュースをいくつか予定しているが、具体的な内容には触れないという。Segwayのロボットプラットフォームを自社の将来の車両に採用する契約を締結したばかりのCocoのように、自動運転のためには人間の関与が重要だと主張する競合他社もある。一方Serveは、可能な限りリモートパイロットを方程式から排除することを目指している。

「私たちのロボットは、ほとんどの場合、自動運転モードで独立して動くことができます」とカシャニ氏はいう。「このことは、安全性と経済性に非常に重要な意味を持ち、当社の車両を商業運用できる理由の1つでもあります」。

人間が関与すると、海外のリモートオペレーターを使ったとしても、経済的にはうまくいかないとカシャニ氏はいう。ただし同氏は、人間に頼ることが合理的ではないケースは、1対1の関係、つまり1人の人間が1台のロボットをモニターするということを1つ1つ行う場合だけだと認めた。CoCoと同様、Serveの問題は、街中に配置した複数のロボットを、1人の人間がモニターするというところまで自律性を高めるにはどうすればよいかということだ。

「ロボットには、ネットワークが切断されたときや誰かがミスをしそうになったときに、自分自身を安全に保つためのオンボード機能が必要です」とカシャニ氏は話す。「ロボットが道路を横断するときなどは、ロボットを見守っていただきたいのです。それは単に、安全の観点から、そういう時に人間とクルマが関わるからです。ロボットが理解できない場合、人間にバトンタッチすることもあれば、そうでないこともあります。通常は、ロボットが自分で状況を把握しようと試み、それができなければ人間が介入します。そうするのは、1つには時間がかかるからです。時間に追われていると、待ちたくないですからね」。

歩道走行ロボットによる配達は、業界としての盛り上がりと、最も洗練された技術と最良の市場戦略を持つ企業間の競争が始まったばかりだ。今回の資金調達と、それにともなうパートナー企業の登場により、Serveはすでに規模拡大に向けて準備を整えつつある。

「セブン-イレブンは私たちと協業できるコンビニエンスストアの代表であり、Delivery Heroは私たちが協業できる配送プラットフォームだといえます」と、Serveの広報部長であるAduke Thelwell(アデューク・テルウェル)氏はTechCrunchに話した。「私たちは、レストランチェーンとの提携、将来的には医療品の配送、薬、アルコール、大麻なども視野に入れています。このように、私たちはさまざまな分野でパートナーシップを築いています」。

画像クレジット:Serve Robotics

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

「PUBG」の韓国KRAFTONがMENA地域に初投資、モバイルゲームパブリッシャーTamatemの約12.5億円調達を主導

ヨルダンを拠点とするモバイルゲームパブリッシャーのTamatemは、人気バトルロイヤルゲーム「PlayerUnknown’s Battlegrounds(PUBG)」を開発した韓国のゲーム開発会社KRAFTON(クラフトン)が主導するシリーズBで1100万ドル(約12億5000万円)を調達したことを発表した。KRAFTONにとっては、中東・北アフリカ(MENA)で初の投資となる。このラウンドには、Venture Souq、Endeavor Catalyst、および既存の投資家も参加した。

今回のシリーズBラウンドにより、Tamatemの累計調達額は1700万ドル(約19億3000万円)を超え、評価額は約8000万ドル(約91億円)になると、Tamatemの創業者兼CEOであるHussam Hammo(フッサム・ハモ)氏はTechCrunchに語った。

Tamatemは、アラビア語のユーザーに適したゲームを取得した後、文化に合わせてローカライズし、配信している。

「ユーザーは、ある言語から別の言語に翻訳されただけではなく、自分のために作られたゲームだと感じる必要があります。Tamatemは、ゲームをエンドユーザーにとって文化的に適切なものにします」とハモ氏は語る。「親しみやすく楽しいモバイルゲームの需要はかつてないほど高まっており、当社の使命は、この地域のみなさまに最高のゲーム体験を提供することです」。

Tamatemは今回の資金調達により、アラビア語圏の市場に、より人気の高いタイトルを含むさまざまなゲームを提供することで、取り組みを強化していく。同社はさらなる拡大のために、サウジアラビアで現地の人材を雇用する予定だ。Tamatemのユーザーの約70%を占めるサウジアラビアでは、ゲーム業界が活況を呈しているとハモ氏は指摘している。

「この地域のモバイルゲーム業界は、大きく動いています。当社は、過去の成功体験を糧に、より多くの経験と気概を持って前進しています。MENA地域におけるモバイルゲームの大きな可能性を考えると、当社がしていることは氷山の一角であり、より多くの人々がこの業界と地域に投資してくれるたびに、私はいつも非常に感激します」とハモ氏は語った。

同社は、市場の成長と成熟を促すためにゲームアカデミーを立ち上げ、業界でのトレーニング、教育、雇用の促進を行う予定だ。

Tamatemは2013年以降、4本の主要なゲームを含む50以上のゲームを公開している。「VIP Baloot」「VIP Jalsat」「Fashion Queen」「Clash of Empire」が最も知られるタイトルだ。同社はポートフォリオ全体で1億2千万以上のダウンロード数を誇り、トップゲームでは350万人のデイリーアクティブユーザー(DAU)を抱えている。

同社の従業員数は現在75名で、今後6カ月間で2倍の規模に拡大する予定であるとハモ氏は述べている。

Tamatemは、今後もグローバルに事業を拡大し、世界中のあらゆる人材を採用していく予定だ。

「当社は米国、インド、エジプト、サウジアラビア、ドイツ、ハンガリー、ヨルダンに従業員を抱えています。2020年、サウジアラビアとエジプトにオフィスを開設しましたが、今後もさまざまな国に地域オフィスを開設する予定です」とハモ氏は語る。

KRAFTONのコーポレートデベロップメント(インドおよびMENA地域)担当であるAnuj Tandon(アヌジ・タンドン)氏は次のように述べている。「当社はMENA地域に大きな可能性を見出しており、Tamatemのような数多くのタイトルを配信しているパブリッシャーとともに、この地で投資の旅を始められたことをうれしく思います。我々はMENA地域にコミットしており、メディア・エンタテインメント分野全体に、より多くの投資をしていきたいと考えています。今回の投資は、スタートアップエコシステムへのコミットメントを強化する当社の取り組みと一致しています。今回の投資は、この地域における多くの投資の始まりに過ぎません。『PUBG:NEW STATE』をはじめとするさまざまなゲームのMENAユーザーに最高の体験を提供することに注力し続ける中で、現地の状況を深く理解しているTamatemとのコラボレーションは非常に有益なものとなるでしょう」。

画像クレジット:Tamatem

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(文:Kate Park、翻訳:Aya Nakazato)

レストランやフードデリバリーの容器再利用を進めるDispatch Goodsが4.2億円を調達

プラスチック容器は、リサイクル品の受け入れを停止した国が増えているため、世界中の埋め立て地や海に捨てられている。これはとても深刻な問題だ。平均的な米国人は、毎年110ポンド(約50kg)の使い捨てプラスチックを使用・廃棄しているが、米国でリサイクルされているプラスチックはわずか8%だ。

レストランやフードデリバリーサービス、食料品店でもらうクラムシェル型のプラスチック容器はすべてリサイクル可能だと思うかもしれないが、現実としてはすべてのリサイクルセンターでそれらを受け入れられるわけではない。

Dispatch Goodsの再利用可能な容器のコレクション(画像クレジット:Maude Ballinger)

Dispatch Goodsの共同創業者でCEOのLindsey Hoell(リンジー・ホーエル)氏は、プラスチック容器やフリーザーパック、パッケージを回収するという重労働を引き受けるインフラを構築するために、2019年に同社を立ち上げた。容器類ははすべて同社の施設に運び込まれ、洗浄・消毒され、再利用のために再び販売される。レストランやフードデリバリーの顧客も、容器に記載されている番号をテキストで送信して、Dispatch Goodsによる回収を予約したり、容器を返却箱に入れたりすることができる。

会社を設立する前、ホーエル氏は医療関係の仕事をしていたが、カリフォルニアに移住してサーファーになることを夢見ていた。同氏は結局、カリフォルニアに移住し、そこでプラスチック危機を知ることになった。共同創業者のMaia Tekle(マイア・テクル)氏とは、Dispatch Goodsの立ち上げ時にSustainable Ocean Alliance(持続可能な海洋連合)を通じて出会った。当時、テクル氏はCaviarで西海岸のパートナーシップを担当していた。

ホーエル氏はTechCrunchに次のように語った。「リサイクルは人々に良いことをしているように思わせますが、もっと深く掘り下げてみると、流通市場での需要がなければ、必ずしも良いことをしているとは言えません。容器はダウンサイクルしかできませんが、容器を回収して処理する良いインフラがありません」。

Dispatch Goodsはそのインフラの構築に着手し、現在では週に1万〜1万5000個の食品パッケージを回収・処理している。また、DoorDashやImperfect Foodsなどの50社以上の顧客や、Bomberaをはじめとするベイエリアの50のレストランと提携している。ホーエル氏によると、Bomberaは夏にDispatch Goodsを利用し始めてから4000個の容器を交換した。

2021年に合計で約25万個の使い捨てプラスチックを交換したDispatch Goodsは12月6日、370万ドル(約4億2000万円)のシード資金調達を発表した。このラウンドはCongruent Venturesがリードし、Bread and Butter Ventures、Precursor Ventures、Incite Ventures、MCJ、Berkeley SkyDeckが参加した。今回のラウンドによりDispatch Goodsの資金調達総額は470万ドル(約5億3000万円)弱となった、とホーエル氏はTechCrunchに語った。

ホーエル氏とテクル氏は、トラックやフォークリフトの運転を学ぶほどの実践的な創業者だが、2020年9月に700ドル(約8万円)だった月間売上高が5月には2万ドル(約226万円)にまで成長したことを受けて、Dispatch Goodsは後押しを必要としていた。

2人は、チームを成長させ、サンフランシスコのマイクロハブを含む現在の施設を、その地域外で起きている成長やボルチモアの新施設に対応できるようにするために資本を探し求めた。

「このユースケースは以前には存在しなかったので、再利用のための施設をどのようなものにするか戦略化するまでの間、これを最大限活用します」とホーエル氏は話す。「私たちは今、戦略を構築している最中です」。

新たな資金は、地理的拡大、レストランとの提携拡大、新しいパッケージングの可能性の追求などに投資する予定だ。また、現在スタッフは9人だが、年内に3人加える。

Dispatch Goodsは、主にレストランとの提携を進めているが、先月、一般消費者を対象としたパイロットプログラムを開始した。一般消費者からの関心は寄せられたが、最終的な参入障壁を低くするために、企業への販売に徹するとホーエル氏は話す。

ホーエル氏は、成長の指標については具体的に説明しなかったが、収集したアイテムの数と立ち寄った回数を記録していると述べた。事業開始当初は、1回の立ち寄りで約4点のアイテムを回収していたが、現在では平均12点を回収し、立ち寄り回数も3回から9回程度に増加している。

一方、ホーエル氏とテクル氏は、Congruent Venturesの副社長であるChristina O’Conor(クリスティーナ・オコナー)氏を新しい役員会メンバーの1人として迎え入れることを楽しみにしている。

オコナー氏は「ゼロ・ウェイスト(ごみゼロ)運動は急速に拡大しており、持続可能な未来のためには、循環型パッケージングは避けて通れないものだと考えています」と声明で述べた。「リンジーとマイアは、再利用のために設計されたインフラを支える新しいシステムを構築するための熱意、戦略的洞察力、そして情熱を持っていることを証明しました」。

Dispatch Goodsのアドバイザリーチームには、DuContra Venturesの共同創業者で俳優のAdrian Grenier(エイドリアン・グレニアー)氏というスターパワーもある。グレニアー氏は、Dispatch Goodsの活動について「ずっと気になっていました」と語った。実際、同氏はプラスチック容器に反感を持っており、テイクアウトを極力避け、自分で再利用可能な容器を持ち込んだりさえする。

「私たちは、世界を再構築することがいかに困難であるかを知っています。テクノロジーが与えてくれたオンデマンドのライフスタイルに誰もが興奮していますが、どれほどの犠牲を払っているのでしょうか。Dispatch Goodsは、企業の利便性を高め、ビジネスモデルにおけるこの種の転換を可能にする機会を提供します」と同氏は述べた。

画像クレジット:Maude Ballinger / Dispatch Goods co-founders Maia Tekle and Lindsey Hoell

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

ブルーカラーに特化したHRテック企業のSenseにソフトバンク・ビジョン・ファンド2が出資

Sense(センス)は、世界最大級の人材派遣会社や人材紹介会社がタイムリーに人材を見つけて採用するための支援を行うHRテックのスタートアップ企業だ。同社が新たな資金調達ラウンドで評価額を5億ドル(約565億円)に拡大したと、関係者がTechCrunchに語った。

サンフランシスコに本社を置くこのスタートアップは、シリーズDの資金調達ラウンドで5000万ドル(約56億5000万円)を調達したという。SoftBank Vision Fund 2 (ソフトバンク・ビジョン・ファンド2)が主導したこのラウンドは、創立から5年半の間にSenseが調達した資金の総額を9000万ドル(約101億7000万円)に押し上げた。シリーズCラウンドを終了してからわずか6カ月で、同社の評価額が何倍にもなったことがTechCrunchの取材で明らかになった。

Senseは、ブルーカラーの労働者の要求に応えることに注力し、企業が人材のライフサイクル全体を管理することを支援する。

ナレッジワーカー(知識労働者)の採用には半年もかかることがあるが「倉庫の梱包作業者を雇用するような世界では、企業はその日中にその人を入社させる必要に迫られています」と、Senseの共同設立者であり最高経営責任者であるAnil Dharni(アンリ・ダルニ)氏はTechCrunchによるインタビューで説明した。同氏は、評価額についてはコメントを避けた。

現在、プロフェッショナルソーシャルネットワークなどの採用プラットフォームの大半は、知識労働者向けに設計されていると、ダルニ氏はいう。「しかし、Uber(ウーバー)のドライバーやAmazon(アマゾン)の倉庫作業員のような人々に、そのようなプラットフォームは関係ありません」と同氏は述べ、課題を表現した。

人材の適格審査に、自動化や人工知能、パーソナライゼーションを活用しているというこのスタートアップ企業は、600以上の企業を顧客に持ち、Amazon、Sears(シアーズ)、Vaco(バコ)、Kenny(ケニー)などの企業が、Senseプラットフォームを使って採用規模を拡大しているという。

Senseの顧客は同社のプラットフォームを利用することで、選考できる候補者の数が平均で263%増加し、採用にかかる時間が最大で81%短縮されたと、Senseは社内数値を引用して述べている。

「今回の資金調達は、今日の売り手市場の世界で、パーソナライズされた人材エンゲージメントの必要性を検証するというだけでなく、私たちが将来の仕事の形を変える手助けをするために、当社のプラットフォームをグローバルに加速させるものです」と、ダルニ氏は述べている。

Senseは、チャットボットをはじめとするさまざまなサービスを提供しており、企業が雇用慣行からバイアスを取り除くのに役立っていると、ダルニ氏は語る。

ダルニ氏によれば、この1年半の間に、同社のプラットフォームは医療従事者の雇用にも利用されるようになっているという。

ダルニ氏は前職の会社で人材採用の課題に直面したことがきっかけで、Senseを起ち上げる着想を得たという。同氏は以前、ゲーム会社のFunzio(ファンジオ)を共同設立している。この会社はGREE(グリー)に2億1000万ドル(約238億円)で買収された。

「人材が企業を左右することを実感しました。適切な人々を集めることができなければ、その会社は成功しないでしょう。TAM(獲得可能な最大市場規模)やビジネスモデルがどうであるかは関係ありません」と、ダルニ氏は語った。

「このような認識のもと、私たちが次に起ち上げるスタートアップは、人材確保のためのソリューションを提供するものにしようと決めました」。

ダルニ氏によると、Senseは2000億ドル(約22兆6000億円)規模の機会を狙っているが、そのほとんどがまだ未開拓だという。

Senseは過去1年間で売上高と従業員数を2倍以上に増大させた。今後は、西ヨーロッパを含むいくつかの市場で事業を拡大していく計画であると、ダルニ氏は述べている。

SoftBank Investment Advisers(ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズ)のマネージング・パートナーであるSumer Juneja(シュメール・ジュネジャ)氏は、声明の中で次のように述べている。「私たちは、顧客の企業が質の高い人材をより早く見つけて採用できるようにするために、Senseのプラットフォームが重要な役割を果たすことは明らかだと確信しています。それを国内およびグローバルに拡大していくとともに、企業がどうやって優れたチームを作り競争するかを、積極的に変革していく彼らの能力に疑いの余地はありません」。

画像クレジット:Sense

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(文:Manish Singh、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ラテンアメリカの「アリババ」を目指すMeru、海外から安全に商品を調達できるB2Bマーケットプレイスを構築

海外から商品を調達したり輸入したりする際には、どこかで問題が発生することがあり、企業は代金を支払った品を受け取れなかったり、あるいは何も届かないことさえある。

メキシコに拠点を置くMeru.com(メル・ドットコム)を共同設立したManuel Rodriguez Dao(マヌエル・ロドリゲス・ダオ)CEOと共同設立者のFederico Moscato(フェデリコ・モスカート)氏は、他社のために商品を調達する仕事をしていたとき、当初注文した商品を手に入れることができないなどの問題に直面し、このことを痛感した。

2020年、彼らはEduardo Mata(エドゥアルド・マータ)氏、Virgile Fiszman(ヴィルジール・フィスマン)氏、Daniel Ferreyra(ダニエル・フェレイラ)氏と共同で、中小企業が同じ運命を避けられるようにMeruを起ち上げた。同社は米国時間12月2日、シリーズAラウンドによる1500万ドル(約17億円)の資金調達を発表した。このラウンドは、Valor Capital(バロー・キャピタル)とEMLES Ventures(エムレス・ベンチャーズ)が共同で主導し、創業者グループによる個人投資も含まれている。これまでに同社は総額1700万ドル(約19億2500万円)を調達している。

Meruの技術には、シンプルなプロセスで、価格の非対称性なしに国内外のメーカーをサプライチェーンの他の部分と結びつけるマーケットプレイスとアプリが含まれており、まずは中国とメキシコの間で展開している。品質認証を受けた工場と直接取引していると、ロドリゲス・ダオ氏はTechCrunchに語った。

従来の調達方法では、中小企業は週に2日もの時間を費やし、最大5社の仲介業者を介して、取引しなければならなかった。しかも、平均して80%もの取引が詐欺に遭っていると、ロドリゲス・ダオ氏はいう。これに対し、Meruを利用する顧客は、数分で商品を選択して購入することができ、その際には商品を確実に、そして市場のベストプライスで受け取ることができるという保証も、同社で付けているという。

MeruはY Combinator(Yコンビネータ)の2021年冬のバッチに参加しており、今回の新たな資金調達は、最終的にはラテンアメリカのAlibaba(アリババ)になるという目標に向けて、Meruが中小企業のためのワンストップショップになることを支援すると、ロドリゲス・ダオ氏は述べている。

「私たちは中国でリモートワークを始め、グローバルな取引の中で、新興国でも同じような痛みが発生していることを知りました」と、同氏は続けた。

「私たちは、アリババのようにテクノロジーを駆使した流通によって、仕入れや調達を安全なものにしたいと考えています。そのために、サプライチェーン全体の関係者をつなぎ、彼らが割引価格を利用できるようにしています」。

Meruは開始からわずか1年で、すでに1万人以上の登録ユーザーを抱え、7つの商品カテゴリーを運営している。資金調達を支援するフィンテックのパートナーもいる。Meruがマーケットプレイスを起ち上げた2020年8月には6名だった従業員が、現在では中国とメキシコの両方で合わせて210名の従業員を擁するまでになった。

同社は今回の資金調達を、新たな業種やカテゴリーの追加、技術開発、チームの拡大に充てる予定だ。毎月の収益は40%から50%増加している。

「Meruは、ラテンアメリカの中小企業が、すべて単一のコンタクトポイントを通じて、アジアからより効率的に商品を購入できる統合的なB2Bマーケットプレイスを構築しています」と、Valor Capital GroupのマネージングパートナーであるAntoine Colaço(アントアーヌ・コラソ)氏は声明で述べている。「何千もの商品へのアクセスを提供し、すべての物流、請求、フォローアップのプロセスを管理し、金融ソリューションを組み込むことによって、Meruはラテンアメリカとアジアのグローバルなサプライチェーンのつながりを強化することに貢献するでしょう」。

画像クレジット:Meru.com

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

新素材「多孔性配位高分子PCP/MOF」を開発する京都大学発スタートアップAtomisが12億円のシリーズB調達

新素材「多孔性配位高分子PCP/MOF」を開発する京都大学発スタートアップAtomisが12億円のシリーズB調達

新素材「多孔性配位高分子PCP/MOF」を開発する京都大学発スタートアップAtomisは12月6日、第三者割当増資による総額12億円の資金調達を発表した。引受先は、リードインベスターの未来創生2号ファンド(スパークス・グループ運営)、クボタ、Mitsui Kinzoku-SBI Material Innovation Fund(三井金属鉱業とSBIインベストメントのプライベートファンド)、長瀬産業、MOL PLUS(商船三井100%子会社のCVC)、京銀輝く未来応援ファンド2号(京都銀行と京銀リース・キャピタルによる共同ファンド)の合計6社。また、事業会社4社と戦略的な業務提携に向けた取り組みに着手する。

業務提携

  • 三井金属鉱業:PCP/MOF素材の量産化、新用途開発
  • クボタ:水・環境分野におけるPCP/MOFの利活用
  • 長瀬産業:PCP/MOF素材の拡販、環境分野におけるPCP/MOFの利活用
  • 商船三井グループ:船舶向け水素サプライチェーン構築におけるPCP/MOFの利活用

Atomisは、調達した資金を活用し、多孔性配位高分子PCP/MOFの開発および量産に向けた新たな研究開発拠点を建設。また、環境領域(CO2分離変換)、エネルギー領域(次世代高圧ガス容器CubiTan)の開発を加速させ、今後も「気体を自在に操る技術」で持続可能な社会の実現に貢献するとしている。

Sounding Boardが管理職向けコーチングをサービスからSaaSへ移行

組織のリーダーと彼らに指導を行うコーチを結びつけるマーケットプレイスとしてスタートしたSounding Board(サウンディング・ボード)は、新型コロナウイルス流行初期の頃に、メンターシップの刷新が必要であることに気づいた。

「私たちはこれまで、伝統的なサービス形式でコーチングを提供してきました」と、Sounding BoardのCEOで共同設立者のChristine Tao(クリスティン・タオ)氏は語る。「そう、私たちはもうオフィスにはいません。だから人材やリーダーをどのように育てていくかについて、これまでとは違った話をする必要があるのです」。この洞察は、ユーザーをコーチと結びつけるだけではなく、ユーザーが継続的に目標を追うことができるソフトウェアプラットフォームの起ち上げにつながった。

画像クレジット:Sounding Board

このビジョンに基づき、シリーズA資金調達を成功させてから1年近く経った今、Sounding BoardはシリーズBを3000万ドル(約34億円)でクローズした。Jazz Venture Partners(ジャズ・ベンチャー・パートナーズ)が主導したこのラウンドは、Gaingels(ゲインジェルズ)の他、theBoardlist(ザ・ボードリスト)のSukhinder Singh Cassidy(スキンダー・シン・カシディ)氏、Ancestry.com(アンセストリー・ドットコム)のDeb Liu(デブ・リュー)氏、Udemy(ユーデミー)のYvonne Chen(イヴォンヌ・チェン)氏、DocuSign(ドキュサイン)のTammy Aguillon(タミー・アギロン)氏などのエンジェル投資家も参加した。これまでの投資家の中には、Canaan Partner(カナーン・パートナー)、Precursor Ventures(プレカーサー・ベンチャーズ)などが含まれている。

また、今回のラウンドでは、JAZZ Venture PartnersのJohn Spinale(ジョン・スピナーレ)氏が取締役に就任し、Sounding Boardの女性ばかりのチーム(および女性ばかりの取締役会)に加わることになった。「これは冗談ですが、私たちは実際に取締役会に多様性を加えなければなりませんでした……男性です」といってタオは笑った。

この資金調達は、Sounding Boardが過去7四半期にわたって、連続した成長を着実に遂げてきた結果によるものだ。タオ氏は収益の詳細については明らかにしようとしなかったものの、同社によると、過去の収益は「数百万ドル(数億円)」で、年間の予約件数は前年同期比で350%以上増加しているという。スティッキネス(粘着性)に関しては、Sounding Boardは同社の純収益維持率が200%を超えると主張。これはつまり、既存の顧客が時間が経ってもプラットフォームへの支払いを継続していることを意味する。

Sounding Boardの最大の競合企業であるBetterUp(ベターアップ)は最近、コーチングの背後にあるソフトウェアに、同じように焦点を移していることを示すような買収を繰り返している。Motive(モーティブ)を買収したのは、BetterUpのクライアントが、エンゲージメント調査や世論調査などですでに収集しているデータの背後にある感情的な背景を理解するために役立つからだ。このユニコーン企業はImpraise(インプライズ)も買収した。Impraiseは、リアルタイムのパフォーマンスレビューや、よりシームレスなフィードバックチャネルを通じて、管理職が直属の部下をよりよくサポートできるようにするためのテクノロジーを提供している。

BetterUpの成長は、投資家の間で、エグゼクティブトレーニングの重要性を高めることに貢献しているとタオ氏は考えているが、広範なコーチングツールよりも、よりリーダーシップに特化したサービスを提供できる余地がまだあると、同氏は見ている。Sounding Boardの共同設立者であるタオ氏は、2020年の間、精神的・感情的な状態をサポートすることで個人の能力を管理することに焦点を当てた多くのソリューションを目にしてきたという。例えばBetterUpの「care(ケア)」などだ。

「しかし、それと並行して、管理や効果的なコミュニケーションができる本物のスキルと能力も実際には必要です」と、タオ氏はいう。Sounding Boardでは、エグゼクティブトレーニングの能力面を解決することにより関心を向けており、現在のところはメンタルヘルス面に注力する計画はない。もちろんこれでは、競合他社が両方面に充実したソリューションを提供すれば、Sounding Boardからシェアを奪う可能性がある。今のところ、Sounding Boardの顧客はそちらの方面を意識してはいないようだ。

「(メンタルヘルスに関する)企業の福利厚生を考えると、それはもう少し無干渉なものではないでしょうか。用意されていれば、参加するかどうかを自分で選ぶという種類のものですが、それは従業員のためのものであるはずです」と、タオ氏はいう。「一方、能力開発に関しては、企業にとっての必要性があり、自ら投資したいと思うものであり、それを行う責任があるのではないかと私は考えます」。

Sounding Boardは現在、Plaid(プレイド)、Chime(チャイム)、Bill.com(ビル・ドットコム)など約100社ほどの顧客を持っている。

画像クレジット:Francesco Carta fotografo / Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

IoTやコネクテッドカーのセキュリティを手がけるKaramba Securityにベトナム自動車会社VinFastなどが出資

Karamba Security(カランバ・セキュリティ)は、IoTと自動車業界に特化したセキュリティをてがけるイスラエルのスタートアップ企業だ。同社は現地時間12月2日、2017年に実施した1200万ドル(約13億5000万円)のシリーズBラウンドを延長し、新たに1000万ドル(約11億3000万円)を調達したと発表した。この延長ラウンドは、ベトナムのコングロマリットであるVingroup(ビングループ)に属する新興自動車メーカーのVinFast(ビンファスト)が主導した。なお、Vingroup自身もVinFastのために10億ドル(約1130億円)の資金調達を目指していると報じられている

このラウンドには、既存投資家のYL Ventures(YLベンチャーズ)、Fontinalis Partners(フォンティナリス・パートナーズ)、Liberty Mutual(リバティ・ミューチュアル)、Presidio Ventures(プレシディオ・ベンチャーズ)、Glenrock(グレンロック)、Paladin Group(パラディン・グループ)、Asgen(アスゲン)に加えて、韓国のSamsung Venture Investment(SVIC、サムスン・ベンチャー投資)も参加した。これにより、Karamba社の資金調達総額は2700万ドル(約30億5000万円)となった。

「IoTデバイスやコネクテッドカーへのサイバー攻撃による国家的・個人的なリスクから、強力な規制要件が求められています」と、Karambaの共同設立者兼CEOであるAmi Dotan(アミ・ドタン)氏は語る。「IoTデバイスメーカーや自動車メーカーは、研究開発プロセスを変えたり、市場投入までの時間を遅らせたり、製品の製造コストを増加させることなく、こうした規制に早急に対応する必要に迫られています。Karambaがワンストップで提供する製品とサービスは、こうした自動車メーカーやIoTデバイスメーカーの強い市場牽引力となっています。これらの企業は、Karambaがデバイスのライフサイクルを通してシームレスなセキュリティを提供することに魅力を感じています」と、ドタン氏は続けた。

Karamba Securityの「XGuard」(画像クレジット:Karamba SecurityVinFast)

IoT、特に自動車業界からこのようなニーズがあることを考えれば、VinFastのような企業が同社への投資に興味を持ったのも当然と言えるだろう。Karambaは設立以来、メーカーの研究開発やサプライチェーンのプロセスを妨げることなく、デバイスのライフサイクル全体に渡って保護できるセキュリティソリューションを提供することに力を入れてきた。

最近、クラウドベースのインシデント分析サービスを起ち上げたKarambaは、現在、Fortune 500(フォーチュン500)に入る企業と80件の「成功した契約」を結んでいるという。最近の最大の案件の1つは、100カ国以上の地域で80万台のフリートのセキュリティをてがけるというものだった。

VinFastの副CEOであるPham Thuy Linh(ファム・トゥイ・リン)氏は、次のように述べている。「当社の市場に対する見解と広範な技術評価に基づきながら、Karambaのコア技術を直接目にして、さらに他のメーカーからも学んだ結果、私たちの会社がサイバーセキュリティへの道を飛躍的に進めるためには、Karambaの力を借りるのが、どんなに有利であるかということがわかりました」。

画像クレジット:Karamba Security

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

環境保護は企業の負担ではなく利益の機会とSpoiler Alertは主張する

私たちは食品の育成や加工、輸送、販売などに、とてつもない量のリソースを割いている。十分に食べられない人がいる世界で、米国では生産される食べ物の30から40%が消費されていないことは恥ずかしいことだ。Spoiler Alertはこの問題に焦点を当てた。同社は最近1100万ドル(約12億30000万円)を調達してその仕事の規模を広げ、もっと多くの食べ物を、祭壇の供物にすらならないことから救おうとしている。

Spoiler Alertの共同創業者でCEOのRichard Ashenfelt(リチャード・アシェンフェルト)氏の説明によると「食品の廃棄は企業の利益機会の大きな喪失で終わる問題ではなく、地球レベルの気候危機の最大の原因でもあります。私たちが最初から抱えているビジョンと仮説は、『食糧を大規模に生産している企業などに、良質な製品が廃棄物になることを防止するツールや英知、そしてネットワークへの接続を効果的な方法で提供するためには、何をどうすべきか』という点にあります。私たちは、大量廃棄や有機物リサイクルに頼る前に、このビジョンをできるだけ多くの消費者に届けようとしています」。

Spoiler Alertのプラットフォームを、現在、多くの世界の大規模加工包装食品メーカーが、彼らのB2B流動化プロセスのデジタル化のために利用している(従来廃棄物になっていたモノの現金化)。顧客は、NestléやKraft Heinz、Campbell Soup Company、Danone North Americaなどで、4社とも世界最大の食品と飲料メーカーだ。

Spoiler Alertの共同創業者でCPOのEmily Malina(エミリー・マリナ)氏は次のように語る。「私たちが固く信じていることは、もはや廃棄という処理方法は必要なものではなく、事業費用として容認できるものでもないということです。私たちが行っていることのすべては、そのままにしておけば腐敗するだけの食品在庫をできるだけはやく移動して、それらを企業とリテイラーと消費者とそしてこの惑星の利益に変換することです」。

それがどうして同社のミッションになったのか、アシェンフェルト氏の説明は続く。「世界の食べ物の、供給の30〜40%は、消費されずに終わる。さまざまな対気候変動ソリューションをリストし検証しているProject Drawdownの研究調査によると、地球規模の気候危機に対する有効性の大きい対策の1つが、食品の廃棄を減らし解消することだ。私たちの場合は、食べ物を埋立地行きから救いだせば救い出すほど、大気汚染は減少し、リソースはそのプロダクトをもっと良い方法で収穫し流通することに向けられる。それは究極的には、それらのプロダクトを売ることによって企業の利益にもなり、プロダクトの償却が減るので、廃棄費用も不要になります」。

Spoiler Alertの創業者リチャード・アシェンフェルト氏とエミリー・マリナ氏(画像クレジット:Liz Linder Photography

企業はSpoiler Alertの柔軟性が高くしかもプライベートな流動化プラットフォームを利用して、余剰在庫や短納期の在庫、陳腐化した在庫などをシームレスに販売することができる。それが企業の利益を増やすことにつながり、リテイラーやその他の在庫一掃チャネルにとって臨時在庫の強力な供給になる。しかも「遅すぎた」ということがない。Spoiler Alertの強さを感じるのは、同社が資本主義の枠内で操業してこの問題の解決に取り組んでいるためだ。

アシェンフェルト氏は「私の父は環境問題の弁護士で、学生および学者としての私はその全精力を、世界最大のエネルギーと環境の問題を、プライベートセクターがプライベートセクターでありながら解決できる方法の研究に捧げてきました。私は生まれながらの環境保護家ですが、商業的であろうと努めてきました。企業や消費者が環境に対して正しいことをするための、容易で具体的なソリューションを私は追究してきた。そんな私たちが強く感じているのは、持続可能な気候にフォーカスした投資へのベストアプローチは、企業がスケールできる本物のビジネスに根ざすものでなければならない、ということです」という。

この投資をCollaborative Fundがリードし、Acre Venture PartnersThe Betsy & Jesse Fink Family FoundationMaersk GrowthSpring Point Partners、そしてValley Oak Investmentsが参加した。

画像クレジット:Spoiler Alert

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ユーザーのホログラムを世界中にテレポート、新たなつながり方で働き方や遊び方を変えるPORTLが13.7億円調達

Zoom(ズーム)がすばらしいことは認めよう。しかしコンピューターの画面に並んだたくさんの二次元の人と話すことは、我々が夢見ていた未来ではない。これに同意するのが「If you can’t be there, beam there(そこにいないならテレポートしよう)」というキャッチーなスローガンとともに、ユーザーのホログラムを世界中にテレポートするという新しい市場を切り開くPORTL(ポータル)だ。同社は先日、True Capital Management(トゥルーキャピタルマネジメント)が主導した資金調達ラウンドで、高さ67m分の20ドル紙幣の束を、投資家たちの銀行口座から自社の銀行口座にテレポートしたと発表した。そう、1200万ドル(約13億7000万円)分の20ドル紙幣で、高さ67m。もっとも、ラウンドの参加者はトランク一杯の現金を持ってくるのではなく、ワイヤー送金したはずだが。

PORTLの操業者でCEO、そして発明家であるDavid Nussbaum(デビッド・ヌスバウム)氏は次のように話す。「CEO、ブランド、大学、そしてNFTアートクリエイターたちが、PORTLを使ってまったく新しい方法でつながり、コミュニケーションをとっています。これからはPORTLが、私たちの働き方、学び方、遊び方を変えていきます」「ビジョンを共有できる投資家がいることは非常に幸運です」。

PORTLは現在、約40名のチームで構成され、そのうち半数はエンジニアリングのスタッフである。同社はこれまでに約100台のフルサイズのPORTL(Epic)を販売し、一部は非常設の設置やキャンペーンのために貸し出している。近々デスクトップ向けに設計されたより小型のPORTL Miniもリリースされる。PORTLは、等身大の人と同じ体積を持つ4Kのホログラムプロジェクションとして、すでに20カ国以上で、さまざまなユースケースで利用されている。

ヌスバウム氏は次のように説明する。「教育現場のユースケースとしては、セントラルフロリダ大学に設置されたPORTLでは、医療従事者の卵たちが遠隔で患者の治療法・診断法の訓練を受けています。スポーツスタジアムでは、PORTLを通じてスポーツ選手がファンに語りかけています。さらに、多くの企業にコミュニケーションツールとして利用してもらっています」「世界最大規模の小売業者の数社が、パイロットプログラムでPORTLを購入しました。お店に入って、PORTLに近づいていく自分を想像してみてください。お店にマネキンはありませんが、自分の体と同じサイズや形のバーチャルマネキンが表示されたPORTLで、店内のあらゆる服を試着することができます。PORTLはバーチャルアシスタントや企業のコミュニケーションなど、さまざまな場面で活用されています。エンターテインメント分野ではレンタルが上手くいきました。Netflix(ネットフリックス)やHBO(エイチビーオー)などがPORTLを採用し、展示会のブースにPORTLを設置して集客に利用しています」。

PORTL Epicに表示されるラッパーのクエヴォとアメリカンフットボール選手のマーショーン・リンチ。手前はPORTLの創業者でCEOのデビッド・ヌスバウム氏(画像クレジット:PORTL)

シードラウンドから1年、PORTLは多くの称賛を集め、収益を上げることに成功した。Mobile World Congress 2021 Barcelona(MWCバルセロナ2021)ではReuters(ロイター)がNo.1イノベーションとしてPORTLを選出。最近では、CES 2022イノベーションアワードの3つの賞にノミネートされた。今回新たに調達した1200万ドルで、同社はより積極的な成長を推し進めようとしている。

「Tim Draper(ティム・ドレイパー)をシードラウンドに迎え入れたことは、非常に大きな収穫でした。彼は  『物事を正しく進める』という意味では伝説的な存在です。彼の勝率は非常に高く、彼が「次は君たちの番だ」と言ってくれたことで、私たちは多くのことを実現できました。ドレイパー氏がいることで他のメンバーを簡単に獲得することもできたのです。彼は達人です」とヌスバウム氏。「シリーズAラウンドにドレイパー氏が戻ってきてくれたことで、ラウンドが活気づきました。前回のラウンドで最後の参加者だったTrue CapitalがシリーズAに再度参加し、ラウンドを主導してくれました」。

今回調達した資金で次の成長に向けてスタートを切ったPORTLだが、ヌスバウム氏は今後の展開について壮大な計画を持っている。筆者が10年後の世界について質問したところ、すべてが計画通りに進んだ場合、として話をしてくれた。

ヌスバウム氏は彼のビジョンを次のように語る。「すべての家庭にPORTL Miniがあり、すべての会議室に大型のPORTL Epicが置かれます。私はPORTLは単なるコミュニケーションプラットフォームではなく、ブロードキャストチャネルだと信じています。10年後には、ブロードキャストやコミュニケーション、さらには旅行手段までもが変わる未来が来るはずです。すべての駅、空港、小売店、喫茶店のテーブル、医療センター、学校、会議室などにPORTLが1台ずつ設置されることになると思います」「私たちはハードウェアを設計していますが、本来は受信の手段としてハードウェアを使用するソフトウェアとテクノロジーを扱う企業です。今回のシリーズAラウンドと今後のラウンドで獲得する資金をテクノロジーに投入すれば、可能性の限界を押し広げることができます。スタートレックでおなじみのテクノロジーは私たちが考えているよりもずっと早く実現するはずです」。

PORTLのCEOデビッド・ヌスバウム氏と投資家のティム・ドレイパー氏(画像クレジット:PORTL)

資金調達をしている他の多くの企業と同様に、同社はエンジニアリングと営業・運営の両面で採用活動を行っている。

True Capital Managementの共同創業者兼CEOであるDoug Raetz(ダグ・レッツ )氏は次のように話す。「1年ほど前、ビジネスパートナーに「今すぐLAに飛んでPORTLのテクノロジーを見てこい」と言われました。私はそこで未来に遭遇しました。その後はPORTLのデモのたびに新しい人を連れてLAに通っています。最初はDante Exum(ダンテ・エクザム、オーストラリアのプロバスケットボール選手)、次はRGIII(ロバート・グリフィン3世、アメリカンフットボール選手)。その後、QuavoにPORTLを紹介したところ、翌日には彼から電話があり「次のアルバムは、いくつかの都市で同時にライブを行ってリリースしたい」と言われました。それを実現したのがPORTLです。私たちのコミュニケーションとコンテンツの楽しみ方は今後必ず変化すると確信しました」「私たちのクライアントはテクノロジー、特に自分自身が信じ、個人的に利用したいと考えるテクノロジーの大ファンです。私は彼らがPORTLを見て興奮するだろうと思っていましたが、実際に全員が大喜びしました。私はPORTLを支えるすばらしいチームと、ビジネス拡大に向けた彼らのビジョンを知り、全面的にバックアップすることを決断したのです」。

画像クレジット:PORTL

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

アジアの伝統的な食材を家庭に届けるUmamicartが約6.8億円調達

人々は好きな食べ物が並ぶ食卓に集まる、しかし、Umamicart(ウマミカート)の創業者兼CEOであるAndrea Xu(アンドレア・シュー)氏にとって、家族と一緒に食べて育った料理を作るための食材を見つけるのはいつも簡単ではなかった。

シュー氏の両親は中国人だが、スペインに移住し、自分たちの中華料理店を開いた。彼女は、スーパーに、アジア料理でよく使われるソースや薄切りの肉、野菜などが置いていなかったことを思い出す。大学進学のために渡米したときも、スーパーのアジア料理専用の通路に何がないか、友人たちと話していたそうだ。

Umamicartの創業者兼CEOのアンドレア・シュー氏(画像クレジット:Umamicart)

「食べ物はアイデンティティを再確認する手段ですが、私の家庭に普及している食べ物にアクセスすることは困難でした」彼女はTechCrunchに語った。「米国には2900万人のアジア系米国ホトがいますが、商品にアクセスするにはまだハードルがあります」。

最近は何でもデリバリーできるようになったので、シュー氏はアジアの食材でそれを試してみることにした。3月に、元FJ Labs(FJラボ)のWill Nichols(ウィル・ニコルズ)氏と共同で、アジアの伝統的な商品と独創的な商品を厳選して提供する、アジアのオンライン食料品・宅配サービスUmamicartを立ち上げた。

Umamicartは、家庭で料理をする人のためのあらゆる商品を取り扱うショップを目指しており、定番商品やパントリーの必需品、レシピのインスピレーション、休日のローストダックやDIYの寿司ナイト、火鍋や餃子作りなどの調理活動のための特別なキットを提供している。

注文は同社のウェブサイト(そして近日中にモバイルアプリ)ですることができ、ニューヨーク市のカスタマーには即日配達、ニューヨーク市以外のニューヨーク、ニュージャージー、コネチカット、マサチューセッツ、ペンシルバニア、デラウェア、バージニア、メリーランド、マサチューセッツ、ワシントンD.C.の郵便番号には翌日配達を行っている。

米国時間12月3日、同社は、M13とFJ Labsが共同で主導し、Picus Capital(ピカス・キャピタル)、Starting Line(スターティング・ライン)、Golden Ventures(ゴールデン・ヴェンチャーズ)、First Minute Capital(ファースト・ミニット・キャピタル)、Goldhouse Ventures(ゴールドハウス・ベンチャーズ)が参加したラウンドで、600万ドル(約6億7600万円)のシード資金を調達したことを発表した。これにより、100万ドル(約1億1200万円)のシードラウンドを含め、同社の資金調達総額は700万ドル(約7億8900万円)となった。

M13の投資家であるBrent Murri(ブレント・ミューリ)氏は、FJ Labsからシュー氏を紹介され、Umamicartは、食品のデジタル化を視野に入れた、彼の会社が通常投資している消費者向けテクノロジーの種類と一致していると述べた。M13は、これまでにThrive Market(スライブ・マーケット)やShef(シェフ)などの類似企業に投資してきた。

「シュー氏とニコルズ氏の共同創業者という組み合わせは、私が2021年に見た中で最も市場にフィットしている」ミューリ氏は言った。「シュー氏は両親から学び、食品流通業者との多くの関係を維持しており、ニコルズ氏はInstacart(インスタカート)のニューヨーク市場を率いていたため、彼は食料品ビジネスの規模を拡大する方法を知っています。これらの要素が彼らを際立たせています」。

同氏は、食料品の専門家が、2022年には米国の人口の半分が少なくとも1回はデジタルで食料品を購入すると予想していることを指摘した。しかし、食料品店のデジタル化はすべての人に平等ではなく、アジア市場は大部分がオフラインであり、Umamicartのような企業が厳選された食品を優れた顧客体験とともに提供する場を提供していることを挙げている。

今回の資金調達により、同社は配送範囲の拡大、チームの成長、商品カタログの追加、カスタマカーからの需要が多くなっているサービスエリアの拡大が可能になる。シュー氏は、東南アジアの料理をより多様に提供し、ユーザーが利用できるレシピの数を増やしたいと考えている。

「アジア料理を食べて育ったわけではないが、アジア料理を楽しんだり、料理をしたりするようになった人たちからも大きな関心が寄せられています」と彼女は付け加えた。

ResearchAndMarkets.comのレポートによると、世界のフードデリバリー市場は、昨年は約1110億ドル(約12兆5100億円)と推定され、2023年には1540億ドル(約17兆3600億円)になると予測されている。エスニック料理を作って食べることへの関心は、全体的に高まり続けている。米国のエスニック食品の小売売上高は、2013年の110億ドル(約1兆2400億円)から2018年には125億ドル(約1兆4000億円)となり、米国の中華料理店での年間消費額は、2020年には150億ドル(約1兆6900億円)強になると推定されている。

Umamicart自体は、3月のローンチ以来、前四半期比で313%のウェブトラフィックの伸びを示し、前月比で20%から30%の成長を遂げており、現在では3000以上の商品を取り扱っている。

今回のパンデミックで、アジア料理を作る際には新鮮なプロダクトが好まれるが、それらが手に入らないと料理に支障をきたし、人々は代替品を探そうとするという重要な洞察が得られたとシュー氏は述べた。

「また、コンシューマーは、インターナショナルやエスニックの通路にあるものを拒否し、より良い製品やブランドを求めています」と彼女は付け加えた。「私たちはそのことを大切にしています。ですから、彼らがUmamicartに来たとき、私たちが棚に並べるものは吟味された製品であり、試行錯誤された定番商品や、私たちが探し出すことができた最高の新しいブランドであることを知っているのです」。

画像クレジット:Umamicart

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(文:Christine Hall、翻訳:Yuta Kaminishi)

男性のポルノ断ちもサポート、あらゆるデジタル依存症を克服するツールを英Remojoが開発

男性のセクシャルヘルスをテーマにしたスタートアップが数年前から活発な動きを見せている。初期のテックビジネスには、勃起不全などの健康問題を治療するための医薬品への(より簡単な)アクセスを提供することを目的とするものや(例えばRoman)、抜け毛を減らしたり性欲を高めたりすることを謳ったホルモン検査やオーダーメイドのビタミン剤を提供するものもあった(Manualなど)。時間の経過とともにより広範な遠隔医療が提供されるようになり(Ro)、そして最近では、男性のメンタルヘルスにも関心が向けられるようになった。

関連記事:包括的メンズヘルスケア「Manual」が米国と欧州の投資家から33.1億円のシリーズAを調達

この展開を長い間待ち望んでいた人も少なくないのではないだろうか。

ここ英国は今、起業活動におけるちょっとしたホットスポットとなっているようだ。例えば9月の記事では英国を拠点とするMojoのシードラウンドを紹介した。同社は男性の性的ウェルビーイングのためのサブスクリプションサービスを提供しており、勃起不全の解決策として錠剤ではなくセラピーを提案している。

また、男性専用ではないが、英国のPaired(ペアード)はアプリを通したカップルセラピーを提供している。

さて、今回はMojoと同じ年(2019年)に設立され、男性の性的幸福とセルフケアに対するホリスティックなアプローチを提供している英国拠点のサブスクリプションサービスをご紹介したい。似たような名前が付けられたRemojoは、性の健康に関する悩みを抱える男性をサポートするための技術ツールやアプリ内プログラムを提供しているが、まず同社が最初に着目したのは「ポルノの放棄」である。

Remojoのウェブサイトを見てみると、ポルノをやめることで時間の節約や注意力の向上を期待できるだけでなく、個人的な人間関係が改善され、さらには勃起不全などの健康問題が解決する可能性があるなどさまざまなメリットが説明されている。同社には急成長中の男性のセクシャル・ウェルビーイング分野と一致するところがかなりあるようだ。

価格の違い(RemojoのサブスクリプションプランはMojoよりも安い)を除けば、まず最初の違いはどう男性に関心を持たせるかというところである。

勃起不全に悩む男性よりもポルノを消費する男性の方が多いのは当然だろう。しかし、Remojoのターゲットは、ポルノを見ていて、かつポルノをやめたいと思っている男性だ。しかし単独創業者であるJack Jenkins(ジャック・ジェンキンス)氏は、このサブスクリプションサービスがポルノ依存症男性のためだけのものではないと強調している。

むしろ同氏によると、単純な自己啓発を目的とする人(自分の内側をよりコントロールできるようになりたいと感じている人)から、ポルノ消費の習慣が日々の生活(や人間関係)の妨げになっていると感じている人の他、宗教的信念を持っていて、たとえめったにポルノを使用しないとしてもポルノを使用することに恥じらいを感じており、求められる精神的基準に沿って生活できるようにするための助けを求めている人まで、さまざまな理由でポルノ消費をやめたいと思っている人に対応できるよう設計されているという。

ジェンキンス氏によると、Remojoの主要ユーザーには、キリスト教徒、イスラム教徒、ヒンズー教徒がおり、宗教的理想を実現するための支援を求めている人々が多い。彼らが置かれている環境では通常話すことがタブーとなっている問題について取り組むため、偏見のないサポートコミュニティを求めている場合もあるという。

Remojoによると、同社のサブスクリプションプログラム(1カ月4.99ドル、約580円。3カ月間または1年間のプランに申し込むとそれ以下になる)には毎月約5万人が登録しており、世界中(少なくともインターネットへのアクセスが容易な場所)からユーザーが集まっているというから、ポルノの消費が非常に普遍的な問題であるということがよくわかる。

現在、Remojoにとって最大の市場は米国、英国、ブラジル、インド。アプリ内のコンテンツは英語のため、英語圏の他の市場でも成長しているとジェンキンス氏は説明する。同社の典型的なユーザーは16~35歳の男性で「いつでもポルノにアクセスできる環境で育った」デジタルネイティブだといえる。

このような支持を受け、当然のことながら投資家も放ってはおかない。

ジェンキンス氏によると、同社は過去12カ月間に160万ポンド(約2億5000万円)のプレシード資金を、元Techstars Berlin(テックスターズ・ベルリン)のマネージングディレクターでAngel Invest(エンジェル・インべスト)CEOのJens Lapinski(ジェンズ・ラピンスキ)氏、同じくTechstars BerlinおよびAngel InvestのJag Singh(ジャグ・シン)氏をはじめとする多数の事業家エンジェルの他、銀行・金融業界のエンジェルや(匿名の)創業者などから調達したという。

ジェンキンス氏によると、同社は現在シリーズAの調達を進めており、500万ポンド(約7億7000万円)から600万ポンド(約9億2000万円)を目標に「1月までに」ラウンドを終える予定だという(おそらくシードをスキップして、Aに直行するだろうと同氏は話している)。

Remojoのウェブサイトには、ポルノをやめるための「90 day reboot」というものがあるが、これは同社で最も人気のある契約プランだという。

同社の技術が本当に有効ならば、3カ月ごとにユーザーが大きく入れ替わることになるだろう。しかしオンラインポルノには粘着性があり、簡単にアクセスできるため、再発の危険性が高く、ブロッカーツールが役立つ可能性が高いとジェンキンス氏は主張する。そのため男性にポルノをやめさせるというミッションが成功することによっておき得る、収入の激減を心配することはなさそうだ。

同社はより広範で継続的な、実用性と魅力を兼ね備えたコースもアプリ内で提供しており、ポルノの消費に関連している(あるいは悪影響を受けている)可能性のある男性の性的健康と幸福におけるさまざまな側面をサポートしている(ただし、やめたら改善が続くとは限らない)。

当初、自ら資金を調達して事業を立ち上げたジェンキンス氏。創成期にはユーザーがスマートフォン上でコンテンツをカスタムブロックして、ポルノソースへのアクセスを遮断できるMVPを発表した。

現在同ソフトウェアは、Android、iOS、Windows、macOSに対応しており、クロスデバイスで利用が可能だ。オンラインポルノへのアクセスに文字通りバリアを設ける単純なアダルトコンテンツブロッカーだけでなく、前述の行動変容コース、CBTテクニック、幅広いサポートコミュニティなど多くの機能が盛り込まれている。

今後はAIを用いてポルノコンテンツの識別を行い、ソフトウェアのブロック/フィルタリング機能を強化しようとジェンキンス氏は計画しており、コンピュータービジョンとオーディオを使用してポルノ視聴を進行中に検知し、ソフトウェアがリアルタイムに介入できるようなモデルの開発に取り組んでいる。

現在は、カスタムメイドのブロック機能とサポートリソースがミックスされたアプリになっている。

「いくつかの要素を組み合わせたハイブリッドになっています。習慣形成や習慣破壊に関する研究を行い、その分野で得られた知見や原理を利用しています。アプリ内コンテンツディレクターであるNoah Church(ノア・チャーチ)は、ポルノ依存症から抜け出すためのコーチングを7年間にわたって行ってきました。彼はYouTubeチャンネルを持っており、長年そこで講座やコーチングを行っています」とジェンキンス氏はTechCrunchに語っている。

「弊社のアプリの基礎構造の1つは『選択モデル』です。これは、英国のポルノ・セックス依存症研究の第1人者であるPaula Hall(ポーラ・ホール)博士が開発した回復モデルです」。

Remojoはプログラムから得られるユーザーの実用的な洞察、他のユーザーによる匿名のサポートコミュニティへのアクセス、ユーザーが進展を確認したり、コミットメントやアカウンタビリティを維持したりするためのツール(アカウンタビリティ・パートナーやインストールPINプロテクションなど)も行動変容のミックスに組み込んでいる。

ユーザーを完璧に「Reboot(再起動)」させてしまうことからこのプログラムは開始する。つまりポルノの消費を持続的に控える期間である(ここでRemojoのブロックツールとアカウンタビリティー機能が重要な役割を果たす)。マインドフルネス、運動、(ポルノとは無縁の)趣味への参加など、ポルノを放棄したことで空いた穴を埋めるための、代替習慣を身につけるための時間を確保させることがここでの狙いである。

ジェンキンス氏によると、マインドセットや思考パターンを変えること、そして男性の自己啓発が主な目的であるため、コースの内容には、習慣の変更、依存症の回復、性機能障害の克服(Mojoとの重複)などの関連分野が含まれているという。

今後は、デートに関してやパートナーとの関係・性生活の改善など、より幅広い分野をカバーするコースの他、特定の宗教的信条に合わせたアドバイスを提供するコースなども予定している。

「また、より困難な状況にある人には、心の穴を埋めるためにポルノのようなものを必要としないよう、より充実した生活を送れるようにするための支援をしています」。

ポルノ利用者の中には、利用に関連するより深い心理的問題を抱えている人もいるかもしれないが(幼少期の虐待など)、ポルノの消費自体には「便利な存在」だということ以上の深い意味はないのではないかとジェンキンス氏は主張している。つまり、消費を心理学的に分析することは必ずしも必要ではないという考えである。

そのため同アプリは人を判断することを避け、男性が自分の時間と注意力をコントロールできるようにサポートすることに重点を置いている。そしてそのついでに、注意を散漫させるポルノ業界を批判している。

「ポルノの使用は、必ずしも深い心理的問題によって引き起こされるものではありません。ただ非常に刺激的で、非常に強迫的な物質であり、人々の基本的な進化の欲求を利用して乗っ取ってしまうものなのです。そのため人々はただそこにあるから、そしてとても魅力的だからという理由で、純粋にポルノを見てしまうのです」と同氏は話す。

「これは世界中で共通した問題です。世界中の35歳以下の男性なら、宗教への信仰深さを問わずほとんどの人が直面しています。非常に大きな問題のため、すべてを一括りにすることはできません」と、オンラインポルノの魔力について説明する。「1日に3時間から7時間も見てしまうような深刻な依存症の人もいれば、イスラム教徒で月に1度しか見ないにもかかわらず、イスラム教では許容されていないため彼にとっては大問題です。それが自尊心に影響を与え、神との関係を絶ってしまうようなことさえあります」。

「非常に広い範囲にわたった問題であるため一般化するのはとても困難です。ユーザーの人生がいかに変化したかについて、さまざまな話やコメント、評価を聞くことが私やチームにとっての最大の喜びです」。

より広い観点から見てみると、オンラインでのポルノ視聴は、英国政府も10年以上前から関心を寄せている問題である。ネット上の不適切なコンテンツに簡単にアクセスできてしまうことで、子どもたちに悪影響が及ぶのではないかという懸念から、閣僚たちは現在大規模なオンライン安全法を施行している。

関連記事:英国が子どものためのオンライン安全法案の草案を発表

同様に、幼い頃から無限のポルノにさらされている男性は、後にさまざまな性的ウェルビーイングの問題を抱えることになると同社は考えている(月に5万人の男性がユーザーになるというのだから、あながち間違いではないのだろう)。

英国政府が以前、アダルトサイトへのアクセスに年齢認証を義務付けようとしたことがあったのだが、セキュリティやプライバシーへの懸念、年齢チェックを課したり規制したりすることの実現性をめぐる反発を受け、2019年に挫折した。

自分専用のポルノブロッカーとポルノ断ちのサポートコミュニティ(有料)によって男性が自らポルノをやめることができれば、話はずっと簡単だ。

ジェンキンス氏は自身がポルノをやめようと決心した際、アプリを使った支援ツールを思いついた。特にポルノへの依存があったわけではないが「より良い生活と自身を生きるための、より意識的な選択」として決意したのである。

辞めるためのサポートを探していた際、あるサブレディットで100万人以上のユーザーが同じようなサポートを求めていたことを知り、同氏はそこからこの問題の大きさとビジネスチャンスの可能性を感じ始めた。

「ポルノを完全に自分の生活から遮断するため、スマホやパソコンのコンテンツをブロックしたり、フィルタリングしたりできるガードレールのようなものを探したのですが、あまりいいものがありませんでした」と同氏は振り返る。「私は起業家精神があるため、この問題をもっと掘り下げようと思ったのです。同じようなことをしたいと思っている人や、このように感じている人は私だけではないはずだと思い、Reddit(レディット)でポルノ断ちやポルノ中毒について、あるいはポルノに関する問題や生活への影響について積極的に話している人たちにDMで連絡を取り始めました」。

「彼らにインタビューを始めたところ、Redditでどれだけ多くの人がこの話をしているかに驚かされました。約130万人もの人々が、ポルノをやめることに特化したサブレディットに参加しているのです。彼らはとても熱心に私に話をしてくれましたし、彼らがどれほど強く解決策を求めているのかを知りました」。

「最初のユーザーディスカバリーを行った後、すぐに(2019年12月に)作業を開始しました。私がこれまでに持っていたどんなに良いアイデアでも、これほどのレベルの同意を得られたことはありませんでした」。

「最初はブロッキングが目標でしたが、次第に人々が直面している問題を理解するようになりました。実際に人々の行動を変える手助けをするにはどうしたらいいのか、また習慣や中毒を断ち切るには、行動や考え方を変えるべきなのではないかということが理解できるようになりました。つまりブロッキングだけでは不十分なのです」。

勃起不全の治療をきっかけに、男性に対してより幅広い治療(ポルノ依存症のサポートを含む)を提供したいと考えているMojoと同様に、Remojoもまた、そのツールをより広範囲へと広げたいと考えている。ポルノ用に開発しているアプリベースのフレームワークを、オンラインギャンブルやソーシャルメディア、コンピュータゲームの依存症など「誰も本気で取り組んでいない、現代的な行動的デジタル依存症や強迫観念」にも適用できるようにしたいとジェンキンス氏は意気込んでいる。

「弊社のフレームワークを使って、ギャンブルや衝動的なゲームプレイをやめたり、ソーシャルメディアを減らしたりするための支援をしていきたいと思っています。これらは別々のブランドになりますが、同じ技術、同じフレームワークを使って人々をより良い習慣に導いたり、完全にそれらを断ったりすることができるでしょう。枠組みはまったく変えずアプリ内のコースを変えるだけです。アプリ内のコースを変更するだけで、その他のシステムに関しては、習慣や行動に変化をもたらしたり、デジタル依存症を克服したりするために何が有効かという点ではまったく同じです」。

つまりひょっとすると、Remojoはそのうち女性をターゲットとしたプロダクトを作る可能性もあるということだ。

(それにしても「ポルノをやめる」と「Facebookをやめる」が同列に語られるというのは、ソーシャルメディアに対する考え方がいかにネガティブなものになっているのかを物語っている)

同社のもう1つの開発計画には、独自のカスタムOSの開発がある。本質的にミニマルなOSで、自分の注意を引こうとするデジタル界のあれこれを、ユーザー自身がコントロールできるようにするためのものである。

「アンドロイドのスマホやデスクトップ機器向けにカスタムOSを構築したい」と語る同氏は、近日中に予定されているシリーズAの資金の一部を使ってその作業を開始し、最終的には「デジタルミニマリスト向けに、デジタルウェルネスコントロールをすべてOSに組み込んだ携帯電話を発売する」ことを目標としているという。しかしそれはまだ先の話になりそうだ。

シリーズAにより資金が潤沢になると予想される今後1年間の計画として、メッセージ性を高めていくことも重要だ。

ポルノ消費に関するより多くの人々の考え方を変えるために「世界的な会話を始めていきたい」とジェンキンス氏はいう。ポルノをやめるという考えが、お酒を飲まないとかタバコを吸わないという考え方と同じように「ありきたり」でごく普通なことになるように働きかけていきたいと同氏は考えている。

「まずシリーズAで実現したいのは、このテーマに対するタブーをなくすことです。お酒を飲まない、タバコを吸わない、肉を食べない、といったことと同じように、普通に広く受け入れられるようにしたいと考えています。このライフスタイルの選択を、メインストリームの話題や選択肢として受け入れられるようにするのです」。

画像クレジット:Remojo

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

シフトワーカーと雇用主をマッチングするマーケットプレイスShiftsmartが107億円獲得

先に始まったホリデーショッピングシーズンの結果はいまひとつだったが、雇用主は依然として労働者を切望している。

The Great Resignation(大退職時代)」の影響もあり、労働市場が逼迫していることから、雇用可能な労働者と雇用主と結びつける、テクノロジーを駆使したツールの必要性が高まっている。

ニューヨークを拠点とする労務管理会社Shiftsmart(シフトスマート)は、投資家の関心をひき、シリーズBで9500万ドル(約107億円)を獲得した。同社は、さまざまな業種や仕事の時間給労働者を、空きがあるシフトとマッチングする労働力管理ソフトウェアを提供している。

2015年の創業以来、同社は50カ国以上で50万人以上の労働者のネットワークを築いてきた。労働者は、働く場所、働く量、給料を受け取るまでの期間を柔軟にコントロールでき、雇用者は、人材ニーズをカスタマイズして離職率を下げることができる。

「需要側にはすでにさまざまな要素が存在していましたが、供給側、つまり労働者にこそイノベーションがあると考えました」とShiftsmartの創業者でCEOのAakash Kumar(アーカシュ・クマール)氏はTechCrunchに話した。「私たちは、ソフトウェアを扱いやすくしました。ユーザーは、プロフィールの作成やアプリの起動ができますし、好きなときに作業できます。ギグエコノミーはポイント・ツー・ポイントの物流でした。私たちがこれから進めるのは、自分のスケジュールをコントロールできるようにすることです」。

今回の資金調達により、Shiftsmartの調達総額は1億1700万ドル(約132億円)となった。今回のラウンドは、D1 Capitalがリードし、Imaginary Ventures、Spieker Partners、Oakridge Management Group、S12Fの他、業界の経営幹部層や組織が参加した。

S12FのマネージングパートナーであるJeff Leventhal(ジェフ・レベンタール)氏は、労働者のエンパワーメントと待遇を信奉している。Shiftsmartのアプローチは、労働者の1日の中に柔軟性をもたらすだけでなく、さまざまな企業や役割で働く機会を与えてくれると考えている。

「『午後2時に出社しないとクビ』というようなシフトワークの日々は、もはや時代遅れの概念なのです」と同氏は話す。

「正しく対処するのが難しいことの1つに、ユーザーエクスペリエンスがあります。Shiftsmartは世の中の標準を設定します」と付け加えた。「この会社は独自の方法で正しく始めました。マーケットプレイスを構築し、機能させるのは難しいことですが、同社のテクノロジーは、雇用者と被雇用者の双方に柔軟性をもたらします」。

Shiftsmartの顧客リストには、Circle K、Humana、Deloitte、Airbnb、Small Business Administrationなどが名を連ねる。同社は約3年前にベンチャーキャピタルから資金を調達したが、売上高が毎年2〜3倍のペースで増加したため、新たな資金調達を検討する時期を迎えたとクマール氏は述べた。特に最近では、雇用者が労働力不足に直面していることもある。

「私たちは、雇用主に仕事をシフトレベルまで分解してもらい、市場全体の規模を拡大する手助けをしています」とクマール氏は付け加えた。「週40時間働いて2週間ごとに給料をもらう人を見つけるよりも、週に数回、3時間のシフトに入ってくれる人を見つける方が、はるかに確率は高いでしょう」。

今回の資金調達は、監査と契約、小売、国際物流などの新しい業種への拡大と、ヘルスケアなどの新しい業種への進出に充てられる。また、追加の採用も行う。現在の従業員数は60人で、1年前の約30人から増加した。

人材紹介のために開発されたテクノロジーの多くは、知識労働者を中心としたものだったが、Shiftsmartのように時間給労働者に焦点を当てる企業も、最近では投資家の注目を集めている。

例えば、11月には、シフト登録のためのメッセージングプラットフォームWhen I Workが2億ドル(226億円)という巨額のラウンドを完了した他、レストラン従業員向けツールのFountainSeasonedがそれぞれが8500万ドル(約96億円)と1870万ドル(約21億円)を獲得した。2021年の初めには、Homebaseが7100万ドル(約80億円)を調達し、ホームサービスのプロに特化したWorkizが1300万ドル(約15億円)を調達した。

こうした競合他社や、自社で時間給労働者を管理する企業がある中で、クマール氏は、Shiftsmartの差別化のポイントは、顧客との提携方法だと話す。顧客はShiftsmartの労働力と自社の労働力のいずれに関しても、このプラットフォームを利用することができる。

「今はこのビジネスにとってエキサイティングな時期です。世界的な労働力不足は危機的状況になっています」とクマール氏は付け加えた。「私たちの主な焦点は、需要をに応えるためにオペレーションをいかにスケールアップするか、そして労働者の行動をもっと学び、よりユニークな体験を生み出すことです」。

画像クレジット:picture alliance / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

過去ではなく未来で判断、学生ローン制度をひっくり返すための手段を講じるStride Funding

住宅ローンや自動車ローンを組もうとすると、銀行は審査用のメガネをかけて、あなたの過去を調べ始めるだろう。当然だ。ローンを返済できるかどうか、それなりに信頼できる指標となるからだ。学生ローンはこれとは少し違う。確かに過去の経歴も関係するが、多くの教育機関では、学位を取得することで将来の収入の可能性が大きく変わり、したがって返済能力も変わってくる。Stride Funding(ストライド・ファンディング)は、現在の学生ローン制度は、金持ちが金持ちを呼ぶ仕組みを永続させるものだという理念のもと、これまでとは異なるアプローチで事業を展開しており、先に1200万ドル(約13億5900万円)を調達した。

同社の中心となっているのは、教育の平等とアクセスの問題だ。これは経済的な上昇の機会を得られるかどうかの最も重要な指標の1つだ。当然のことながら、そこには特権的な要素(親がローンの支払いに協力してくれるかどうか)や、より具体的には制度化された人種差別が存在している。Stride Fundingは、向こう見ずの勇気で、現在1兆6000億ドル(約181兆円)相当のローンが残っている1300億ドル(約14兆円)規模の学生ローン業界に挑む。

2019年にシードラウンドを終了して以来、Strideは学生にコミットした資金を5000万ドル(約56億6200万円)以上に増やし、Silicon Valley Bank(シリコン・バレー・バンク)などの資本提供者は数百億円の追加資金の融資を求めている。同社の主な目的は、特にこれまで融資の確保に苦労してきた集団に対して、教育をより利用しやすくすることだ。

Stride Capital(ストライド・キャピタル)のCEOで設立者のTess Michaels(テス・マイケルズ)は「特に学生向け融資では、資本へのアクセスという点で大きなギャップがあります。プライベートローンの92%は連帯保証人を必要としますが、実際にアクセスできる学生は4分の1以下です」。と述べている。

同社は米国時間12月3日、Firework Ventures(Brigette LauとAshley Bittnerの共同設立者)が主導する1200万ドル(約13億5900万円)のシリーズA資金調達を完了したことを発表した。その他の投資家には、GSV Ventures(GSVベンチャーズ)、Slow Ventures(スロー・ベンチャーズ)、Sinai Ventures(シナイ・ベンチャーズ)の他、Juvo Ventures(ジュボ・ベンチャーズ)Graham Holdings(グラハム・ホールディングス)などのインパクトインベスターが名を連ねている。Stride Fundingのチームは、事業の中核に個人的な使命を持っている。

「私の両親は米国に移住しましたが、教育は経済的流動性を得るための手段でした。教育はドアを開くものです。残念ながら多くの歴史的理由により、多くの人々、特に社会的弱者が市場から取り残されていると思います」とマイケルズ氏は語り、この違いが持てる者と持たざる者の間のギャップをさらに増幅させていることを強調した。「私は、このミッションと非常に密接に結びついていると感じています。私たちは、難民やDACA(若年移民に対する国外強制退去の延期措置)の学生、女性、社会的弱者など、本当にすばらしい、刺激的な学生たちを幅広くサポートしてきました。学生たちからはいつも励ましの言葉をもらい、これはやる価値があることだと確信しています」と同氏は述べている。

画像クレジット:Stride Funding

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Akihito Mizukoshi)

決算開示業務を「最短・最適ルート」に導く「Uniforce」(β版)を手がけるstart-up studioが1億円のシード調達

決算開示業務を「最短・最適ルート」に導く「Uniforce」(β版)を手がけるstart-up studioが1億円のシード調達

決算開示業務のDX化を目指すサービス「Uniforce -決算開示業務ナビゲーション-」(β版)を手がけるstart-up studioは12月3日、第三者割当増資による1億円の資金調達を発表した。引受先は、イーストベンチャーズ3号投資事業有限責任組合、成田修造氏(クラウドワークス)、野口圭登氏(Brave group)、ほか個人投資家。2022年度の本格的な事業成長に向け、採用活動・開発体制の強化する。決算開示業務を「最短・最適ルート」に導く「Uniforce」(β版)を手がけるstart-up studioが1億円のシード調達

Uniforce -決算開示業務ナビゲーション-は、決算開示業務を「最短・最適ルート」へと導くというコンセプトの基、業務全体を見渡しながら正しい順序でナビゲーションし、細かなタスクの抜け漏れを防ぎ、スムーズで快適な業務を遂行できるDXソリューションサービス(2022年3月末日まで全機能を無料で試用可能)。経験豊富な公認会計士を中心とした、決算開示業務のスペシャリストのノウハウを集結して設計した最も効率的な業務(決算開示業務)フローで、これまで以上の正確性とスムーズな業務を実現するとしている。

バックオフィスを中心とした決算開示業務に携わる方にとって、決算開示業務における複雑さ・非効率さ・情報の網羅性や非対称性といった課題や属人化リスクに関する課題の解決策になるという。決算開示業務を「最短・最適ルート」に導く「Uniforce」(β版)を手がけるstart-up studioが1億円のシード調達

同社は、決算開示業務のスペシャリストとテクノロジーの力を融合させた新たなサービスとしており、先に挙げた課題を根本から解決し業界全体のDX化を牽引していくため、資金調達に至ったとしている。

スマートマグメーカーのEmberが新たに約26.5億円を調達、医薬品・母乳ストレージにも期待

2021年2月、Emberのコンシューマー部門CEOに就任した元Dyson(ダイソン)COOのJim Rowan(ジム・ローワン)氏は、TechCrunchに対し、同社の名前を冠した温度調節機能付きスマートマグカップ以外にも事業を拡大する計画を説明した。その際、ローワン氏は、コールドチェーン、特に医薬品の輸送が、今後の同社にとって重要なカテゴリーになる可能性があると述べていた。

その約束を果たし始める時が来たようで、Emberは、新たにシリーズEラウンドで2350万ドル(約26億5000万円)を調達し、累計資金調達額を約8000万ドル(約90億3000万円)に引き上げた。注目に値するのは、今回のラウンドを主導したのはFoxconn(フォックスコン)の子会社であるGOLDTekと、シンガポールのEDBIだということだ。後者は、Emberが国際的なプレゼンスを高めるために、東南アジアにR&Dセンターを開設する計画を発表したのを受けての投資だ。

Emberは2021年に入ってからチームを76%増員しているが、センターの開設でさらなる人員の拡大が必要となる。

創業者でグループCEOのClay Alexander(クレイ・アレクサンダー)氏は、リリースの中でこう述べた。「5年前にEmberを立ち上げて以来、当社の使命は、精密な温度制御に関する専門知識を用いて、お客様の現実的な問題を解決することでした。Emberは現在までに、温度制御、データ、および接続に関する129件以上の特許を取得しています。今回の追加資本は、今後数年間で、特にヘルスケアや乳児の授乳の分野で、当社の膨大な特許ポートフォリオの技術を実現するために役立ちます」。

コールドチェーンの分野では、同社は「初の自己冷蔵型クラウドベースの配送箱」の登場を示唆している。製薬業界を対象としたこの技術は、現在、かつてないほどの負担を強いられているグローバルサプライチェーンを対象としている。

画像クレジット:Ember

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

スニーカー・フリマ「スニーカーダンク」運営のSODAがSoftBank Vision Fund 2から資金調達、評価額約380億円に

スニーカー・フリマ「スニーカーダンク」運営のSODAがSoftBank Vision Fund 2からシリーズD調達、評価額約380億円に

国内最大級スニーカー&ハイブランドC2Cマーケットプレイス「スニーカーダンク」(SNKRDUNK。Android版iOS版)を運営するSODAは12月2日、シリーズDにおいて、第三者割当増資による資金調達を発表した。引受先はSoftBank Vision Fund 2。今回の資金調達により評価額は約380億円となった。

調達した資金は、シンガポール、オーストラリア、香港などのアジア市場獲得、国内事業の拡大および強化、AIを活用したロジスティクス、真贋鑑定、カスタマーサポートなどにあてる。

SODAは「世界中に熱狂的ファンを生み出すマーケットプレイスを。」をミッションに、スニーカーダンクを運営。スニーカーダンクは、個人取引の間に真贋鑑定を行うことで偽造品の流通を防ぎ、安心・安全に取引ができるプラットフォームとなっている。2019年9月にスニーカー売買からスタートし、現在ではストリートウェア、ハイブランド、ホビーなどファッション・コレクティブ領域のアイテムを取り扱っている。また、人気スニーカーやブランドアイテムの新作・発売情報を配信するメディアや、コーディネート写真など月間数万件以上が投稿されるコミュニティも提供している。