持ち運びも簡単なスーツケースサイズの電気自動車用パワーバンク「ZipCharge Go」

ZipCharge(ジップチャージ)は、航続距離で不安を感じている人にガソリン車から電気自動車(EV)への乗り換えを納得させることができるかもしれない新しいタイプのEV用充電プロダクトを発表した。英国のスタートアップZipChargeは、Cop26気候サミットでZipCharge GoというEV用のパワーバンクを披露した。ZipCharge Goは、スーツケースほどの大きさで、重さは約50ポンド(約22キロ)。車輪と格納式ハンドルが付いているので、ユーザーはトランクに入れておいて、充電したいときには簡単に取り出すことができる。

同社によると、車にGoを30分間つなげると、最大20マイル(約32キロ)の走行が可能になる。さらに容量を増やしたバージョンでは、最大40マイル(約64キロ)走行分を給電できる。このデバイスは、タイプ2のソケットを備えたプラグインハイブリッド車とEVに対応し、30分から1時間で車をフル充電することができる。デバイスそのものの充電はコンセントに差し込むだけで簡単に行うことができる。また、ユーザーはアプリを使ってデバイスの操作やモニタリングを行い、充電をオフピークの時間帯に予約して電気代を安く抑えられることができる。

航続距離への不安は最近ではあまり問題にならなくなっているが、それでもまだEVへの乗り換えに踏み出せないでいる人がいる。この問題を解決するために、Gogoro(ゴゴロ)はスクーター用の交換可能なバッテリー技術を開発したが、EVのバッテリーは通常、交換できない。SparkCharge(スパークチャージ)にはRoadieというポータブルEV充電システムがあるが、Goのように持ち運びは簡単ではない。

とはいえ、ZipCharge Goはまだ発売されていない。InsideEVsによると、ZipChargeは、4kWhと8kWhのバージョンをリリースし、2022年の第4四半期に発送を開始する予定だという。最低月額49ポンド(約7600円)でリースすることができるが、1台分のお金を払うことを気にしないEV所有者や、充電設備を設置していないホテルなどの事業者は購入することもできる。ZipChargeはまだ価格を明らかにしていないが、The Sunday TimesのDrivingセクションによると、7.2kWの家庭用充電ポート設置と同程度の価格での販売を目指しているとのことだ。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のMariella MoonはEngadgetの寄稿者。

画像クレジット:ZipCharge

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(文:Mariella Moon、翻訳:Nariko Mizoguchi

自動化農業Iron Oxが従来の温室で使える移動・モニタリングロボットを発表

米国時間11月2日、Iron Oxはハウス栽培をアシストする移動式ロボットGroveを発表した。同社はベイエリアの屋内農業のアグリテック企業だが、この移動ロボットは最大450kgの荷物を持ち上げて運ぶことができるという。

Iron Oxでの主な積み荷は、180cm四方の屋内水耕栽培用のモジュールだ。そのモジュールをマシンのところに持って行き成長をチェックし、さらに、その他のケアや収穫の工程へ運ぶ。システムはLiDAR(ライダー)を搭載し、前方用と上方用のカメラが栽培スペースを上手にナビゲートする。

CEOのBrandon Alexander(ブランドン・アレクサンダー)氏は、プレスリリースで次のように述べている。「私たちはテクノロジーを利用して土地と水とエネルギーの使用量を減らし、増加する未来の人口を養おうとしています。短期的な目標は、農業系に対する気候変動の影響を抑えることです。そのための努力は、地球上の農産物生産部門がカーボンネガティブになるまで続けます」。

このロボットは、屋内農業への関心が高まり、スタートアップたちがもっと持続可能な方法で爆発的な人口増を養える農業を探している時期に登場した。この分野では垂直栽培が最もバズっているキーワードだが、Iron Oxのソリューションはより従来的な温室が対象となっている。ただし、最初から全面的な自動化を目指している。

カリフォルニアに本社のあるIron Oxは最近、テキサスに5万平方メートルの屋内農場を立ち上げた。2021年9月に同社は5300万ドル(約60億4000万円)のシリーズCを調達し、調達総額が9800万ドル(約111億6000万円)になっている。

画像クレジット:Iron OX

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

【コラム】スタートアップが口にするマーケティング策としての「インパクト」に投資家が惑わされないようにするための3つのサイン

2021年の初めに出されたEUの報告書によれば、42%の企業が自社の持続可能性のレベルを誇張していることがわかった。このような「グリーンウォッシュ」があまりにも横行するようになったため、ある団体が企業の真の環境負荷を計算し、誤解を招くようなマーケティングを避けるためのプラットフォームを立ち上げたほどだ。


現在、世界的なインパクト投資市場の規模は7150億ドル(約81兆5100億円)と言われており、成長を続けている。しかし、良いことをしているビジネスに資金を投入しようと躍起になっているベンチャーキャピタル、エンジェル、セレブリティたちは、十分なデューデリジェンスを行っていない。

創業者の中には、トレンドに乗って投資家の注目を集めるために、インパクトと自分を結びつける者もいる。自分のことを「インパクトプレナー」(impactpreneur)と呼ぶ者がいるのはそれが理由だ。

インパクトを与えることと、マーケティングのためにストーリーを押し出すこととは紙一重の差であるため、スタートアップの真正性を見誤ると投資家は資金と評判を失うことになる。多数のスタートアップ企業と仕事をする中で、私はスタートアップ企業が本当に変革を起こそうとしているのではなく、単にインパクトを利用して世間の注目を集めようとしているだけのことを示す3つの兆候を見出した。

インパクト指標を記録・追跡していない

もし企業が、自分たちが重視していると主張しているインパクトを測定していなければ、それは赤信号だ。本当にインパクトを与えようとしているスタートアップ企業なら、自分たちの目標は何か、どうやってそこに到達するのか、そしてその過程でどのような指標をモニターするのかを明確に定義している。

私の立ち上げたFounder Institute(ファウンダー・インスティテュート)では、スタートアップ企業がインパクトのステップを段階的に追跡するのに役立ついくつかの「インパクトKPI」を定義している。

例えば成功した女性創業者の数を増やすことを目的とした女性主導のアクセラレータープログラムなら、月ごと、年ごとの女性参加者数、事業を立ち上げた参加者数、それらの事業がどれだけの資金を得たかなどの評価指標を設けることができる。一夜にしてインパクトを生み出すことはできないものの、道筋を細分化することで、企業はインパクトへの道筋を切り拓き、改善していくことにコミットしていることを示せる。

また、そうしたインパクト指標を追跡することで、企業は公表しているインパクトに対して十分な説明責任を果たすことができる。実際の指標が悪くても公表を行う企業は、何が悪かったのかを深く追求し、状況を改善するための計画を立てていく姿勢を持つことが多い。

そのすばらしい例の1つが、2020年チームの多様性に関する目標を達成できなかったことを認める報告書を発表した、Duke Energy,(デューク・エナジー)だ。この指標を改善するために、同社は新たにチーフ・ダイバーシティ&インクルージョン・オフィサー(多様性並びに包含性担当責任者)を採用し、サービスを提供するコミュニティ内の平等性を推進するために400万ドル(約4億6000万円)を投じた。

私たち投資家はまた、スタートアップ企業が主張していることを実践しているのかどうかを見極めるために、そうした指標が企業全体に浸透しているかどうかを確認しなければならない。例えばより多くの人が教育を受けられるようにしたいと主張している企業なら、創業者は社内の研修プログラム、提供コース、開発計画、展開などに関する指標を提供することができるはずだ。

もし企業がこうした情報を持っていないとしたら、それはその会社のインパクトが外面的な目標のみを対象としていて、社内のオペレーションに組み込まれていないことの表れかもしれない。

CMOがインパクト戦略の責任者である

インパクトの責任は、最終的にはCEOの肩にかかっているはずだ。これは当たり前のように聞こえるかもしれないが、もしインパクトに関する会話や報告をする中心人物がマーケティング最高責任者(CMO)であるとしたら、それは極めて問題だ。

インパクトがマーケティングの立場だけから考えられていた場合、思いつきのインパクトやお手軽なインパクトが生み出されてしまう可能性は高い。インパクト戦略の直接的な成果ではなく短期的な成果を振り返って成功に満足しがちだからだ。例えばあるスタートアップ企業は、2020年にカーボン排出量を10%削減したと主張しているが、実際にはパンデミックの際に業務を停止したことによる減少だった。

同様に、スタートアップのインパクト目標があまりにも良すぎるように見える場合、それはたいてい見掛け倒しなのだ。マーケティング部門は世間に打って出ようとする際に大きく語りがちだ(Theranos[セラノス]のことを思い出そう)。しかし、インパクトを与えるためには、企業は月を目指す前に地に足をつけて行動しなければならない。

例えばExxonMobil(エクソンモービル)は、実験的に開発した藻類バイオ燃料を、輸送時の二酸化炭素排出量を削減する手段として宣伝した。だが消費者は、同社が二酸化炭素排出量を実質ゼロにできていないことを指摘した上で「よりセクシーな」インパクトのある代替品を求めた。

進捗ではなく予想である

創業者が資金調達をする際に、最も破壊的な側面を強調するのは当然のことだ。いわく、貧困をなくし、格差をなくし、気候変動の影響を減らすことができるなどなど。このような約束は投資家を驚かすかもしれないが、実現手段を担保したものでなければならない。

投資家なら誰でも、スタートアップのピッチデッキに書かれた財務予測のなかに盛り込まれた楽観的な気分を見て取ることができる。重要なのは数字ではなく、その背後にあるプロセスだ。インパクトの場合もまったく同じだ。

もしスタートアップを描き出すものが、インパクト目標の未来の数字だけならば、投資家は警戒すべきだ。数字よりも実現手段の方がはるかに多くを語ってくれる。

例えば、GSKは2030年までにネット・ゼロ・カーボンになるという野心的な計画を発表しているが、再生可能な電力、電気自動車、グリーンケミストリーへの切り替えといった主要な活動の内訳をみることで、同社が実際にそのインパクトに向かって動いているかどうかを確認できる。たとえトータル・ネット・ゼロに到達していなくても、意思は明確であり、やがて前進はしていくだろう──たとえペースは遅くとも。

Theranosの事例から学んだことがあるとすれば、企業が資金調達の際に、インパクトの魅力の嗅ぎ分けに敏感になったということだ。投資家が、真のインパクトとマーケティング上の策略とを見分けることができれば、自分自身を守ることができるだけでなく、その投資資金を実際に変化起こせる場所に投入することができる。

編集部注:著者のJonathan Greechan(ジョナサン・グリーチャン)は、世界最大のプレシードアクセラレーターであるFounder InstituteのCEOで共同創業者。

画像クレジット: alexkar08 / Getty Images

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(文:Jonathan Greechan、翻訳:sako)

マーク&リン・ベニオフ夫妻とSalesforceが気候変動対策で約340億円を寄付

Marc and Lynne Benioff(マーク&リン・ベニオフ)夫妻は米国10月28日、気候変動対策と他の人々に行動を促すために2億ドル(約227億円)を寄付すると発表した。マーク・ベニオフ氏の会社であるSalesforce(セールスフォース)がさらに1億ドル(約113億円)を追加し、寄付は計3億ドル(約340億円)だ。

ベニオフ夫妻の寄付金は2つに分けられる。1億ドルは「Benioff Time Tree Fund(ベニオフ・タイム・ツリー基金」に、残りの1億ドルは夫妻のベンチャー企業である「タイム・ベンチャーズ」に寄付され、気候変動に対処する製品やサービスを開発している有望な新興企業に投資される。

「Benioff Time Tree Fundは、新興国や発展途上国において、最もリスクの高いコミュニティや自然生態系への気候変動の影響を軽減するために、先住民族やコミュニティに根ざした森林管理に焦点を当てます」と同基金は声明で述べた。

マーク・ベニオフ氏は、気候変動に立ち向かうためには、さまざまな構成員が一致団結して努力することが必要であり、植林活動はそのための大きな要素だと話す。

「すべての政府、企業、個人が地球の保護と保全を優先すれば、気候変動の阻止に成功することができます。私たちは100ギガトンの二酸化炭素を分離しなければなりませんが、それを実現するためには森林再生が不可欠です」と述べた。

さらにTime Venturesの方では、エコに特化したスタートアップ企業に1億ドルを投資する計画だ。これは、夫妻の会社が2014年以降、DroneSeed、Loam Bio、Mango Materialsなどの企業に投資してきた1億ドルに上乗せされる。

Salesforceは、すでにネットゼロ(温室効果ガス実質ゼロ)を達成したことを表明しており、9月に開催された同社の顧客向けカンファレンス「Dreamforce」では、2021年3000万本の木を育てるというコミットメントを発表している。この追加の1億ドルは、生態系の修復や気候変動対策などの分野で活動する非営利団体を支援するための今後10年間の助成金など、いくつかの取り組みに分配される。さらに、気候変動対策に取り組んでいる団体に技術を提供し、250万時間のボランティア活動を行うことを計画している。

関連記事:Salesforceがバリューチェーン全体での温室効果ガス実質ゼロを達成

Salesforceのチーフ・インパクト・オフィサーであるSuzanne DiBianca(スザンヌ・ディビアンカ)氏は、ネットゼロの達成に向けた同社の活動は第一歩だが、今回の追加資金は他の団体を支援することを目的としていると話す。

「私たちは、気候変動対策を加速させるために活動している人々に力を与え、気候変動による影響を最も受けている人々を支援したいと考えています。二酸化炭素排出量を削減し、より健康的で回復力のあるネットゼロの世界を実現するためには、大胆かつ緊急の行動が必要です」と述べた。

同社は、再生可能エネルギーの使用と、それが不可能な場合はカーボンオフセットの購入を組み合わせてネットゼロを達成している。

画像クレジット:Andriy Onufriyenko / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

UberがテスラのEVを一挙に5万台レンタルしてドライバーに貸与、企業イメージアップを狙う

レンタカー大手Hertz(ハーツ)が大量のテスラ車を購入した理由は明らかだ。同社は最大5万台のテスラの電気自動車を、11月1日より米国のUberライドシェアのドライバーに貸与する。ロサンゼルスとサンディエゴ、サンフランシスコ、ワシントンD.C.の労働者は毎週334ドル(約3万7900円、今後299ドル[約3万3900円]以下になる)を支払うと、Model 3と保険、メンテナンスで構成されるパッケージを利用できるようになる。

格付けの星の数が4.7以上、これまで走行回数150以上が利用資格になる。この事業は、数週間後には全米に拡張される。


Uberは、Hertzとのこの1件により、環境とドライバーの収入に貢献できると考えている。排気ガスを減らすと同時に、EVの初体験者が増えると同社は述べている。車両の維持費も下がるだろう。なによりドライバーは燃料費を払わなくてよくなり、UberにはUber Greenというインセンティブ事業があるため、EVドライバーは1回の走行あたり最大1ドル50セント(約170円)の奨励金を受け取ることになる。

UberにはEVを採用すべき強力な理由がある。まず、2040年までに二酸化炭素排出ゼロという同社の目標を達成し、ライドシェアはCO2排出の元凶という悪評と戦う。エコフレンドリーな車両が路上を走り回ることにより、企業イメージを変えることができる。それにしても5万台は、クルマからの排出抑制とEVの採用という両面において大きな取り組みとなる。また、5万台はテスラの生産量としても大きく、1社の顧客としては最大となるだろう。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者であるJon FingasはEngadgetの寄稿ライター。

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(文:Jon Fingas、翻訳:Hiroshi Iwatani)

【コラム】気候変動の解決に向けたスタートアップの取り組み、私がNestを設立した理由

持続可能な変革を起こす最良の方法は、正しい行動が容易な行動でもある機会を作り出すことだ。今度の気候変動国際会議COP26は、それを可能にするためのさまざまな解決策を、新たな才能が採用し展開することを動機づけるまたとない機会だ。

一瞬の判断や習慣的行動になると、平均的消費者は常に便利な方の道を選ぶ。たとえそれが「正しくないこと」であっても。テクノロジーにユーザー体験への深い共感が組み合わさると、そこに消費者と出会う機会が生まれる。そこでは問題を解決する最低限の利便性を満たすだけではなく、より多くの人にとってよりよい方法で実現するソリューションを提供できる。

これまでに私は、テクノロジー関係でもそれ以外でも、企業がこの原則を見失うところを何度も目にしてきた。

長年制度化されている事例を挙げてみよう。リサイクルだ。リサイクルが無駄を減らし、その結果、気候変動を緩和するための鍵であることは誰もが知っている。私たちが今のペースでゴミを出し続けられないことは明らかだ。リサイクルは地球上の廃棄物負荷を軽減しようとする試みの1つだ。リサイクルのコンセプトは単純、古いものを新しい方法で再利用することだ。しかし、平均的消費者が青い分別箱(ガラス・金属・プラスチック用)と黒い分別箱(紙資源)の前で瞬時の判断を求められたとき、その品目の厳密な再利用性を調べるために必要な手順を踏むよりも、黒い箱に放り込む方がずっと簡単だ。

一方、我々Nest(ネスト)では、平均的世帯がサーモスタットを1日中同じ温度に設定していると莫大なエネルギーを無駄することを知っている。また我々は、忙しい人たち(あらゆる人は忙しい!)にとって一番やりたくないのが、サーモスタットの設定を天候パターンや時刻、エネルギー消費の急激な変化に基づいて忘れずに設定することなのも知っている

サーモスタットをオフにしなさい、なぜなら地球に優しいから、と人に勧める方法が1つ。もう1つの方法は、彼らのために自動的にサーモスタットをオフにしてあげることだ。当社が温度調節を最先端と感じられるようなオートメーションやエネルギー利用データ、アプリによる制御、デザインなどを導入した時、自分たちは持続的な変化をもたらすに違いない製品を作っていることを実感した。NestのLearning Thermostat(学習型サーモスタット)は、平均して世帯当たり暖房で10~12%、冷房で15%のエネルギーを節約している(詳しいデータはこちら)。

Nestは、たしかに家庭の省エネルギーをクールなものにした。しかしそれで終わりではない。個人だけでなく地球にとっての費用と便益を意識するよう顧客を教育している。Nestは、平均的消費者がより簡単で便利に正しい行動をとれるようにしている。

Nestよりもっと大きい話をしよう。

今はテクノロジーにとって大きな問題を解決するための重要な転機だ。その中でも最大かつ最も時期に迫られているのが気候変動だ。我々には、誰もが、そう、誰もが、地球を救う行動に参加するために過去数十年間に成し遂げた進歩を利用する機会がある。健康でいることに加えて、良いことを実際に成し遂げるテクノロジーを生み出し、支援し、推進していく必要がある。

私は投資家の1人として、この原則を受け入れているテック企業と無視しているテック企業の両方を毎日見てきた。数年前、私はSpan(スパン)のファウンダー、 Arch Rao(アーチ・ラオ)氏に会い、面倒な仕事を簡単にし、その過程で変化を起こす彼のアイデアに衝撃を受けた。現在、自宅の電力をまかなうことはかなり難しい。もちろん、ソーラーパネルや地下にバッテリーを設置することはできるが、家主にとってそれがどれほど省エネに貢献しているかを知るのは容易ではない。Spanは住宅内のあらゆる回路をスマートフォンアプリから遠隔制御できる電気制御パネルだ。Spanは、家庭の電力というあまり魅力的ではない分野にユーザー中心のデザインを持ち込んだ。

ここで疑問が生じる。もし人間中心のデザインとテクノロジーとすばらしいUX(ユーザー体験)と徹底したプロダクト思考をもっと他の分野(それがどんなに「退屈」でも)にも適用できたなら、どんなソリューションを構築できるだろう? どんな大きな問題を私たちは解決できるのだろうか?

我々はソーラーと再利用についてすばらしい進歩を遂げてきたが、まだ十分ではない。あらゆる産業を横断するソリューションに向かって計画を立てリソースを投入する必要がある。この問題提起はテック業界から始まるかもしれないが、投資家や非営利団体や政策立案者からの支援が必要だ。さらには、今月英国グラスゴーで開かれるCOP26に集結するリーダーたちがロードマップとインセンティブを策定する必要がある。気候変動の解決に特効薬は存在せず、1人の人間や1つのアイデアや会社が解決することもできない。我々全員が、そして我々全員のアイデアが必要だ。

端的に言って、人は正しい行動を起こす気持ちを持っている、ただしそれがより便利である限り。実行にあたり、我々は人間の特性を課題として受け入れる必要がある。利便性の試練に耐えうるテクノロジーは、結局持続する変革を推進する時の試練にも耐えるだろう。どうすれば、正しいことを正しくないことよりも簡単にできるようになるだろうか。それを解き明かし、同じことをするよう人に教えていけば、世界を救う足固めができるはずだ。

編集部注:本稿の執筆者Matt Rogers(マット・ロジャース)氏はNestのファウンダーとして、初の機械学習型サーモスタットを開発。以前はAppleのエンジニアとして10世代のiPhoneおよび初代iPadの開発に貢献した。

画像クレジット:Westend61 / Getty Images

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(文:Matt Rogers、翻訳:Nob Takahashi / facebook

物流・輸送業向け「炭素測定・除去」APIを開発するPledgeが約5億円調達

気候変動の危機が迫る中、多くの企業が自らの役割を果たしたいと考えている。しかし、顧客に「今回の配送にともなうCO2排出量をオフセットしてください」とお願いするのは、たいていの場合、木の実を割るのにハンマーを使うようなものだ。カーボンオフセット関する透明性はほとんどない。さらに、中小企業は高品質のカーボンクレジットにアクセスしたいが、同時に製品、サービス、取引レベルでの影響も計算したい。そして、非常に不正確な「スキーム」ではなく、カーボンクレジットを小さい単位で購入できるといいと考えている。

Pledge(プレッジ)は、貨物輸送、配車サービス、旅行、ラストマイルデリバリーなどの業界を対象としたスタートアップで、顧客の取引に関わるカーボンオフセットを提示することができる。

Pledgeは、Visionaries Clubがリードするシードラウンドで450万ドル(約5億円1300万円)を調達した。Chris Sacca(クリス・サッカ)氏のLowercarbon CapitalとGuillaume Pousaz(ギヨーム・プサ氏、Checkout.comの創業者でCEO)の投資ビークルであるZinal Growthも参加した。Pledgeは、これまでクローズドベータ版として運営されてきた。

同社は、Revolut(レボリュート)の草創期の従業員であるDavid de Picciotto(デビッド・デ・ピチョット)氏とThomas Lucas(トーマス・ルーカス)氏、Freetradeの共同創業者で元CTOのAndré Mohamed(アンドレ・モハメド)氏が創業した。まず物流業と輸送業を対象にスタートする。同社によると、企業はPledge APIを組み込めば、カーボンニュートラル達成に向け、出荷、乗車、配送、旅行にともなう排出量を測定・軽減することができるようになるという。このプラットフォームは、分析や洞察に加え、時間をかけて排出量を削減するために推奨する方法を顧客に提示することを目指す。

Pledgeによると、同社の排出量計算方法は、GHGプロトコル、GLECフレームワーク、ICAOの手法などのグローバルスタンダードだけでなく、ISO基準にも準拠しているという。

重要な点として、Pledgeのプラットフォームでは、個人投資家が株式の一部を購入するように、企業は炭素クレジットの一部を購入することができ、また、ETFのように異なる方法論や地域を含むバランスのとれたポートフォリオにアクセスできる、と同社は話す。

Pledgeの共同創業者でCEOのデビッド・デ・ピチョット氏は次のように説明する。「現在、どのような規模の企業も利用できる、自社の排出量を把握・削減するための簡単で拡張可能な方法は存在しません。従来のCO2測定やオフセットのソリューションは、コストが高く、導入が難しいため、限られた大企業だけが利用できます。私たちがPledgeを立ち上げたのは、どのような企業でも、高品質で検証済みの気候変動対策製品を、可能な限り簡単かつ迅速に導入できるようにするためです」。

Visionaries Clubの共同創業者でパートナーのRobert Lacherは次のように語る。「Pledgeは、あらゆる企業が環境への影響を測定・軽減するためのアプリケーションを立ち上げる際に必要とする導管を開発しています。金融インフラプロバイダーが続々と登場し、あらゆる企業がフィンテックになれるようになったのと同様、Pledgeは関連するツールとその基盤となるソフトウェアインフラを提供し、気候変動対策を実現する会社となります」。

Lowercarbon CapitalのパートナーであるClay Dumas(クレイ・デュマ)氏はこう付け加える。「炭素除去の規模を拡大する際の最大のボトルネックは、供給と需要を結びつけることです。Pledgeのチームは、世界のトップレベルの金融商品開発で学んだことを応用し、ユーロやドル、ポンドを使って、空から炭素を吸い取ることに取り組んでいます」。

ピチョット氏は、大手プライベートエクイティファームでESGチームに所属していたとき、LP(主に年金基金)から、投資先企業のESG、特に気候に関するKPIの透明性や報告を求める声が増えるのを目の当たりにした。同氏は、報告・計算を合理化し、高品質のカーボンクレジットにアクセスして、社内外のステークホルダーにさらなる透明性とツールを提供する方法があるはずだと考えた。

「炭素市場が構築されたメカニズムを調べれば調べるほど、金融サービス業界との類似性が見えてきました。我々は、FreetradeやRevolutのような業界をリードする企業を設立や、設立支援の経験により、気候変動の流れを変えるユニークな切り口を提供できるのではないかと考え、調査を開始しました」とピチョット氏は述べた。

画像クレジット:Pledge / Pledge founders

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

機械学習を使って作物の気候変動への適応を加速するAvalo

気候変動は世界中の農業に影響を及ぼしており、その解決策に単純なものはほとんどない。しかし、何千マイルも離れた場所に移動することなく、暑さ、寒さ、干ばつに強い作物を植え付けることができたらどうだろう?Avaloは、AIを利用したゲノム解析によって、この高温の世紀においてより丈夫な植物を育てるために必要な時間と費用を削減することで、こうした植物の実現を支援している。

アカデミアの世界に入る前にスタートアップを試してみたいと考えた友人2人によって設立されたAvaloは、極めて直接的な価値提案をしている。だがそれを理解するには科学的な知識が少し必要となる。

大手の種子会社や農業会社は、主要な作物の改良版の開発に力を注いでいる。トウモロコシや米について、暑さ、虫害、干ばつ、洪水への耐性を少しでも高めることで、農家の収量と利益を大幅に向上させることができる他、以前は育たなかった場所で植物を育てることも可能になる。

「赤道地域では収穫量が大幅に減少しています。それはトウモロコシの種子が少なくなっているからではありません」と共同創業者でCEOのBrendan Collins(ブレンダン・コリンズ)氏はいう。「塩水の侵入により農地が劣化しているため、農家は高地を移動しています。しかし、苗木を枯らす早春の霜に見舞われます。あるいは、湿度が高く湿った夏に発生する真菌に対処するには、さびに強い小麦が必要です。こうした新しい環境の現実に適応するには、新しい品種を作る必要があります」。

このような改良を系統的に行う上で、研究者は植物の既存の形質を強調する。これは新しい遺伝子のスプライシングではなく、すでに存在している性質を引き出すものである、ということだ。これまでは、例えば遺伝学入門編におけるメンデルのような感じで、いくつかの植物を育てて比較し、目的の形質を最も良く体現する植物の種を植え付けるという単純な方法で行われていた。

しかし現在では、これらの植物のゲノム配列が決定されており、もう少し直接的になる可能性がある。望ましい形質をもつ植物においてどの遺伝子が活性であるかを知ることによって、これらの遺伝子のより良い発現を将来の世代に向けた標的とすることができる。問題は、これを実現するには依然として長い時間を要することだ。10年単位の時間である。

現代のプロセスの難しい部分は、干ばつにさらされた状態における生存のような形質は単一の遺伝子によるものではないという問題からきている。それらは、複雑に相互作用する任意の数の遺伝子であり得る。オリンピックの体操選手になるための単一の遺伝子がないように、干ばつに強い米になるための唯一の遺伝子というものはない。そのため、企業がゲノムワイド関連解析と呼ばれる研究を行うと、その形質に寄与する遺伝子の候補が何百も出てきて、生きた植物でこれらのさまざまな組み合わせを苦労してテストしなければならない。しかもそれを工業的な比率と規模で行うには何年もかかる。

試験目的で栽培されている、遺伝子的分化を検出して番号付けされたイネ(画像クレジット:Avalo)

Avaloの共同創業者でCSOのMariano Alvarez(マリアーノ・アルバレス)氏は「遺伝子を見つけて、その遺伝子を使って何かを行う能力は、実際にはかなり制約されています。こうした形質はより複雑なものになるからです」と語る。「酵素の効率を高めようとするのは簡単で、CRISPRを使って編集すれば済みます。ですが、トウモロコシの収量を増やそうとすると、何千、ともすると何百万もの遺伝子がそれに寄与しています。干ばつに強い米を作るという大きな戦略を立てようとするなら(例えばMonsanto)、15年という時間と、2億ドル(約220億円)という金額を検討することになるでしょう【略】それは長期にわたる賭けのような取り組みになります」。

ここにAvaloが足を踏み入れる。同社は、植物のゲノムに対する変化の影響をシミュレートするためのモデルを構築した。同社によるとこのモデルは、15年間のリードタイムを2〜3年に短縮し、コストを同等の比率で削減できるという。

「そのアイデアは、より進化的に認識できる、より現実的なゲノムモデルを作り出すことでした」とコリンズ氏は語る。つまり、ゲノムと遺伝子をシステムの上でモデル化し、そのシステムに生物学と進化に由来するコンテキストが組み込まれていくというものだ。より優れたモデルでは、ある形質に関連する遺伝子についての偽陽性がはるかに少なくなる。ノイズ、無関係な遺伝子、マイナーな寄与因子などの除外をより多く行うからである。

同氏はある企業が取り組んでいる耐寒性を持つイネの例を挙げた。ゲノムワイド関連解析では、566個の「興味深い遺伝子」が発見され、各調査に要する費用は、必要な時間、スタッフ、材料を考慮するとそれぞれ4万ドル(約440万円)前後になることが示された。つまり、この形質を調査すると、数年間で2000万ドル(約22億円)もの資金が必要になる可能性があり、このような操作を試みることができる当事者と、時間と資金を投資する対象作物の両方が必然的に制限されることになる。投資収益率を期待するのであれば、アウトライヤー市場向けのニッチ作物の改良にその種の資金をつぎ込むことはできないだろう。

「私たちはそのプロセスを民主化するためにここにいます」とコリンズ氏はいう。同じ耐寒性のイネに関するデータ群の中で「興味深い32の遺伝子を発見しました。私たちのシミュレーションとレトロスペクティブ研究に基づき、これらすべてが真の因果関係を持つことがわかっています。そして、それらを検証するために、3カ月の期間で3つ、10のノックアウトを育てることができました」。

それぞれのグラフの点は、検査しなければならない遺伝子の信頼水準を表している。Avaloモデルはデータを整理し、最も有望なものだけを選択する(画像クレジット:Avalo)

ここで専門用語を少し明らかにしてみよう。Avaloのシステムは当初から、個別に調査しなければならなかったであろう遺伝子の90%以上を除外した。この32個の遺伝子は単に関連しているだけでなく、因果関係があり、形質に実際に影響を及ぼしているという確信が高かった。そしてこれは、特定の遺伝子をブロックし、その影響を研究する「ノックアウト」研究の簡潔版により立証されたものである。Avaloはその方法を「情報のない摂動による遺伝子発見」と称している。

ノイズからシグナルを引き出すという点では、機械学習アルゴリズムが本来持っている機能もその一部だが、コリンズ氏によると、同社は新しいアプローチでこの問題に取り組む必要があり、モデルが自ら構造や関係を学習できるようにする必要があったという。また、モデルが説明可能であること、つまり、その結果がブラックボックスの外に表示されるのではなく、何らかの理由で正当化されることも重要であった。

後者に関しては難しい問題だが、彼らは繰り返しシミュレーションを行い、興味深い遺伝子をダミーの遺伝子に相当するものと系統的に入れ替えることでそれを達成した。ダミーの遺伝子は形質を破壊することなく、各遺伝子が何に寄与しているかをモデルが学習するのに役立つ。

Avaloの共同創業者Mariano Alvarez(マリアーノ・アルバレス)氏(左)とBrendan Collins氏(ブレンダン・コリンズ)氏、温室のそばで撮影(画像クレジット:Avalo)

「当社の技術を使えば、興味深い形質のための最小限の予測育種セットを考案することができます。完全な遺伝子型をin silico(すなわちシミュレーション)で設計し、集中的な育種を行い、その遺伝子型を観察することができます」とコリンズ氏は語る。そしてコストが十分低いことから、小規模な作物やあまり人気のない作物、あるいは可能性に欠ける形質でも導入することができる。気候変動は予測がつかないので、今から20年後に耐暑性小麦と耐寒性小麦のどちらが優れているかは誰にもわからない。

「こうした活動にかかる資本コストを低減することで、気候耐性のある形質に取り組むことが経済的に実現可能な空間を解放するような役割を私たちは果たしています」とアルバレス氏は語っている。

Avaloはいくつかの大学と提携し、他の大学では決して日の目を見ることのなかった、回復力があり持続可能な植物の創造を加速させようとしている。これらの研究グループは大量のデータを保有しているが、十分なリソースを持ち合わせていないため、企業の能力を実証する優れた候補者にすぎない。

大学とのパートナーシップにより、大規模に利用する前にある程度の作業が必要な「十分に栽培品種化されていない」植物にもこのシステムを適用していくことが確立される。例えば、自然界に存在する大型の穀物に干ばつ耐性を付与しようとするのではなく、自然界に存在する干ばつ耐性を持つ野生の穀物を大型化する方が得策かもしれないが、それを解明するために2000万ドルを投じようとする者はいなかった。

商業面では、データ処理サービスを最初に提供することを計画している。つまり同社は、農業や製薬などの分野で実績はあるが速度に欠けている企業に、コストと時間の大幅な節約を提供する多くのスタートアップの1つとなる。うまくいけば、Avaloはこの種の植物を農業に持ち込み、種子ども給者にもなることができるだろう。

同社は数週間前にIndieBioのアクセラレーターを卒業したばかりで、すでに300万ドル(約3億3000万円)のシード資金を確保して大規模に活動を続けている。このラウンドはBetter VenturesとGiant Venturesが共同で主導し、At One Ventures、Climate Capital、David Rowan(デイビット・ローワン)氏、そしてもちろんIndieBioの親会社であるSOSVも参加した。

「ブレンダン(・コリンズ氏)は私に、スタートアップを始めることは教員の仕事に応募するよりもずっと楽しくておもしろいことだと確信させました」とアルバレス氏。「そして、彼は完全に正しかったのです」。

画像クレジット:Avalo

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

移動するだけでお得なポイントゲット、環境に優しい方法ならさらに倍々なアプリ「Miles」が日本上陸

米国シリコンバレー発のアプリ「Miles(マイルズ)」が本日、日本でもローンチされた。2019年に米国でサービスが正式にスタート、現在、140万人以上がアプリに登録したという「Miles」は、1マイル(1.609km)の移動に対して1マイルのポイントを貯めるサービスだ。

「Miles」の特徴として、移動手段で貯まり方に違いがあるという点がある。徒歩やランニングは10倍、自転車は5倍、バス・電車・スキーは3倍と、環境に優しい方法ほどよりより多くポイントが貯まる(ちなみにクルマの相乗りは2倍、クルマは1倍、飛行機は0.1倍)。ユーザーの移動手段はスマホのデータに基づきAIが自動で判定する。

貯まったマイルはギフトカードや割引クーポン(ファミリーマートやJALグループのアンカーやGarminでのプレゼントや割引。Amazonギフトカードへの交換など)や各種サービスの抽選(DAZNの6カ月ギフトコードなど)、そして寄付(森林保護や日本赤十字社などへ)として使うことができる。本稿執筆時で108も用意されている。

また、今後、一定期間内に「徒歩」「ランニング」「自転車」のいずれかで移動を一定距離移動した人を対象に特典を提供するイベントなども予定しているとのこと。さらに自治体と連携、渋谷区の清掃活動参加者にボーナスを付与する取り組みなども行うとのことだ。

新型コロナの流行による緊急事態宣言も解除され、十分な注意は必要であるものの外出しやすくなってきた。リモートワークになり、通勤の機会は少なくなったものの健康のためウォーキングをする人も増えている。「Miles」はその都度アプリで設定しなくても、インストール、登録さえしていれば、スマホを持って移動するだけでマイルを貯めることができるのはうれしい(バックグラウンドでの更新をオンにしている場合)。知らず知らずのうちに貯まることになる。

また、「Miles」はいつ、どこに、どのように行ったのか、トラッカーとしても使うことができる。

アプリはiOSAndroidともに配信中。誰でも無料で利用できる。

Tinderも導入したバーチャルコワーキングのSoWorkが17億円を調達

SoWork(ソーワーク)の共同創業者でCEOのVishal Punwani(ビシャール・プンワニ)氏は、偶然思いついた予感をもとにビジネスを構築している。

バーチャルコワーキングのスタートアップであるSoWorkは、プンワニ氏とその共同創業者が機械学習のEdTech企業を立ち上げると決めた後に始まった。その創業中のちょうど17年前、皮肉にも「World of Warcraft」をプレイしているときに出会った同氏のチームは、より良いコミュニケーションの方法を必要としていた。何かを作ることとゲームをすることが好きだった彼らは、バーチャルな世界にヒントを得て社内コミュニケーション製品を作り上げた。

彼らのチームの内部コミュニケーションツールは、外部向けのEdTechツールよりも急速に成長し始めた。このスタートアップは、最終的にSophya(ソフィア)という社名に変更し、転換した。同社は、すべての雇用主がいずれ、バーチャルな仕事体験に投資しなければならないというプレッシャーを感じるだろうという予感から始まった。従業員はそうした環境で、文化を修復したり、気候変動と戦うわけだ。

その予感は、このアーリーステージのスタートアップに投資すべきだと投資家を確信させるのに十分だった。SoWorkは現地時間10月12日、シードラウンドで1500万ドル(約17億円)を調達したと発表した。ラウンドは、英国を拠点とし、日常的にアーリーステージのスタートアップに小切手を切っているTalis Capitalがリードした。資金は採用や研究開発に使用する。SoWorkは、100社が参加するプライベートベータ版に1社の大きな顧客を迎えた。Tinder(ティンダー)だ。

Tinderは、バーチャルスペースを導入し、新旧の分散した社員に、コラボレーションルームからハッカソンなどの全社的なバーチャルイベントに至る同社のワークカルチャーを見せようとしている。オフィスのリニューアル計画が遅れたことが、同社がバーチャルスペースに興味を持つきっかけだったのかもしれないが、同社はこのテクノロジーが今後の鍵になると考えているようだ。

画像クレジット:SoWork

「従業員の働き方の未来を考える上で、Tinderのカルチャーを物理的な空間とバーチャルな空間のハイブリッドに拡張する、より永続的な方法を見つけることが非常に重要でした」とTinderのカルチャー&DE&I担当副社長であるNicole Senior(ニコル・シニア)氏は声明で述べた。

どんなバーチャルオフィスであっても、永続性は部屋の中の象のようなものだ。SoWorkは、TeamflowWithGatherといったバーチャルオフィスプラットフォームの列に加わる。バーチャルオフィスビジネスの最大の課題の1つは、雇用主、特に成長段階にある雇用主が、対面式のオフィスで十分なのに、成長中のチームをメタバースに移すことが現実的かということだ。また、Slack(スラック)が、すでに定着している同社のサービスにさらなる投資を行い、より自然な感じやハドルミーティングなどを持ち込もうとしているように、バーチャルオフィスサービスのスタートアップは、顧客が、特にゲームとともに育ったような人たちではない場合、オンラインの世界で生活や仕事をしたいと思っているのか検証する必要がある。

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「問題を認識していないのであれば構いません。しかしいずれ、SoWorkにせよ他のプラットフォームにせよ、そこに拠点を置く企業が増え、プラットフォームでのメリットが積み重なっていくでしょう。そのうち、ある日突然、雇用主にとって他では得られないメリットが現れるのです」とプンワニ氏は話す。「Twitter(ツイッター)のようなものです。最初は、『Twitterは欠かせない』という企業はありませんでした。しかし、Twitterがランダムなノイズを生む場所になると、企業は『関わりを持っておきたいから、Twitterを利用したい』というようになりました」。

Sophyaには、近接ベースのオーディオ(近くにいる人の声だけが聞こえる)や高品質のビデオ、アバターの自己表現、カスタマイズ可能なオフィス、自分の周りにいる人の視覚化など、体験を深めるための機能が数多く搭載されている。また、従業員がオフィスを飛び出してSoWorkのエコシステムに参加し、他社の従業員とネットワークを築いたり、コミュニティイベントに参加したりする方法も開発した。プンワニ氏によると、チームは週に25〜40時間、非同期のキャッチアップやリアルタイムのミーティングのために、バーチャルオフィスで仕事をしている。

画像クレジット:SoWork

それでも、このスタートアップの最大の差別化ポイントは、気候変動に対するチームの考え方かもしれない。市場に出回る多くのバーチャルオフィスとは異なり、SoWorkは、雇用主にオフィスではなくバーチャルで会社を成長させる方法を提供することで、気候変動に対処するという使命を声高に主張している。同社は、オフィスではなくSoWorkに入居した企業が、どれだけ二酸化炭素の排出量や通勤時間を削減できたかを試算して発表する予定だ。また、同社のカナダ法人では、化石燃料から100%脱却した銀行を選び、米国法人でも同じようにしようとしていると、同社の共同創業者は述べた。

「気候問題は、私たちが最も力を入れている問題です。だからこそ、私たちのキャッチフレーズは、『職場を地球からクラウドへ』です」とプンワニ氏は話す。「気候変動への影響を想像してみてください。二酸化炭素排出量、通勤、小規模な出張、そして無意味なビルや駐車場の建設が減るのです」。

また、競合他社と比較しても、チームの多様性は際立っている。プンワニ氏の他に、Emma Giles(エマ・ジャイルス氏)とMark Liu(マーク・リュー)氏という2人の共同創業者がおり、SoWorkのオペレーション、マーケティング、グロース、プロダクト、リサーチなど主要6チームのうち、5チームを女性が率いる。

SoWorkは、11月の第1週にプライベートベータ版を一般公開する。すでに1000社以上、人数にして30万人以上がウェイティングリストに登録している。

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Nariko Mizoguchi

Google Cloudがクラウド使用による二酸化炭素排出量を表示する機能を提供へ

Google Cloudは米国時間10月12日、ユーザーにカスタムの二酸化炭素排出量レポートを提供する新しい(そして無料の)機能を発表した。このレポートでは、クラウドの利用によって発生する二酸化炭素の排出量を詳しく説明する。

Google Cloudは以前から、2030年までに二酸化炭素をまったく排出しないエネルギーで稼働させたいと述べてきた。すでにエネルギー使用を再生可能エネルギーの購入とマッチングさせている。しかし、Google Cloudに限らず、今日では実質的にほぼすべての企業が、二酸化炭素排出量の目標を達成する方法を検討している。クラウドコンピューティングの役割を定量化することは非常に困難だが、ここでは企業が社内外でクラウドを利用する際の環境への影響を簡単に報告できるようにすることを目指している。

画像クレジット:Google

「顧客は、このデータを報告だけでなく、内部監査や二酸化炭素削減の取り組みに活用することができます。HSBC、L’Oreal、Atosなどの顧客と協力して構築した二酸化炭素排出量レポートは、顧客が気候変動に関する目標を達成できるよう、新たなレベルの透明性を提供します」と、CTOオフィスでGoogle Cloudの持続可能性のためのデータおよびテクノロジー戦略をリードするJenn Bennett(ジェン・ベネット)氏は話す。「顧客は、プロジェクトごと、製品ごと、地域ごとのクラウドの二酸化炭素排出量を長期的に監視することができ、ITチームやデベロッパーに二酸化炭素排出量の削減に役立つ指標を提供することができます。デジタルインフラの排出量は、実際には環境フットプリントの一部に過ぎませんが、各社が掲げる二酸化炭素削減目標に対する進捗状況を測定するためには、二酸化炭素排出量の計算が必要です」と語る。

画像クレジット:Google

ベネット氏が指摘したように、企業が正確な報告を行うことができれば、自然な流れとして、気候変動への影響を軽減するための提案を行うことが次のステップになる。具体的には、Google Cloudの「Unattended Project Recommender」に二酸化炭素推定値を追加したり「Active Assist Recommender」に持続可能性への影響のカテゴリーを追加したりすることになる。

画像クレジット:Westend61 / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nariko Mizoguchi

グーグルとYouTubeが気候変動を否定する広告と有料コンテンツを不許可に

米国時間10月7日、Google(グーグル)は気候変動を否定する広告や有料コンテンツを今後許可しないと発表した。この新しいポリシーは、コンテンツの発行者と広告主とYouTubeのクリエイターに適用され、彼らはもはや「気候変動の存在と原因をめぐる確立した科学的合意に反する」コンテンツから収益を得ることができない。

Googleはこの新ポリシーを、アルゴリズムによる検出と人間が行なう点検を併用して執行する計画だ。この新しいルールにはいくらかの解釈の余地もあるが、Googleによると「気候変動を誇大宣伝や詐欺と呼ぶコンテンツや、世界の気候が温暖化している長期動向を否定する主張、および温室効果ガスの排出など人間の活動が気候変動の原因であることを否定する主張」が不許可の対象になる。

Google Adsのチームはブログで、このポリシー変更は広告主の要望を反映していると述べている。「自社広告がそんなコンテンツの隣りにあるのは嫌だ」という。クリエイターと発行者は、気候変動を否定する広告が自分の動画に出ることも望んでいないが、Googleの動画プラットフォーム(YouTube)は虚偽情報の巣窟であるため、広告だけを排除する効果は疑わしい。

Googleの新しいポリシーは、気候の危機に関する間違った主張に強い姿勢で臨んでいるが、ソーシャルネットワークは気候関連の虚偽情報の拡散に果たす自分たちの役割を最近認め始めたばかりだ。YouTubeも、米国の選挙に関する虚偽の主張をはじめ、過去にはいろいろな問題で、虚偽情報の流れを止めるためのルールの導入が遅いことで悪名高いものであった。

このポリシーが改善であることは確かであり、すべてのプラットフォームが人類の存続の危機を加速するようなものに対しては強固なルールを設けるべきだが、今度のルールは、どんなに強力かつ根気よく執行されても、虚偽情報の界隈に影響を及ぼすだけだ。

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画像クレジット:Olly Curtis/Future/Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

フィリピンの環境情報プラットフォーム「Komunidad」が約1.1億円のシード資金調達

フィリピンは台風、洪水、火山、地震、干ばつなどの災害に見舞われやすい地理的条件を備えており、世界で最も災害が多い国の1つだ。Felix Ayque(フェリックス・アイク)氏は、IT業界で働いていた頃、サイクロンのレポートをまとめ、Eメールでコミュニティに警告を送る仕事を始めた。彼の仕事はその後、環境情報プラットフォーム「Komunidad(コムニダッド)」へと発展した。Komunidadは、政府や民間の情報源からデータを収集し、カスタマイズ可能な分析結果に変え、顧客が潜在的な災害に迅速に対応できるようにしてくれるものだ。

マニラとシンガポールを拠点とするこのスタートアップは、アジアでの事業拡大と2022年1月にリリースを予定しているセルフサービス版を含むプラットフォームの機能追加のために、100万ドル(約1億1000万円)のシード資金を調達したことを発表した。Wavemaker Partners(ウェイブメーカー・パートナーズ)が主導し、アジア開発銀行のベンチャー部門であるADB Ventures(ADB ベンチャーズ)が参加している。

2019年に設立されたKomunidadは、フィリピン、インド、カンボジア、ベトナムに顧客を持ち、公益事業、農業、鉱業、教育、地方自治体、ビジネスアウトソーシングセンターなど、複数のセクターにサービスを提供している。スタートアップを立ち上げる前のアイク氏は、国有のニュージーランドMetService(メットサービス)を含む複数の気象機関でIT開発者として働いていた。2013年に、少なくとも6300人の犠牲者を出した台風18号(通称スーパータイフーン・ヨランダ)がフィリピンを襲った後、コンサルタントとしてサイクロンレポートの作成を始めるようになった。

もともとこのレポートは、企業が自然災害に対してより迅速に対応できるようにするためのものだった。台風18号が襲ったのは、フィリピンでビジネス・アウトソーシングの分野が急成長していた時期で、当時多くの外国企業がフィリピンに複数のオフィスを設置していた頃だった。台風の際には、企業は通常、業務を被災していない地域のオフィスに移管する。アイク氏が最初に送ったメールは、サイクロンの可能性を手動で分析したものだった。

しかし、エネルギー供給会社をはじめとする企業が気候変動への対応を迫られる中、アイク氏のレポートに対する需要が高まっていった。Komunidadは、事業を拡大するのに十分な収益を上げるようになり、アイク氏は、気象学者、データサイエンティスト、ソフトウェア開発者、インドや東南アジアを拠点とするビジネス開発チームなどの従業員を雇用するようになった。今回の投資は、スケーラブルなプラットフォームの構築に使用される。

Komunidadのデータソースには、2015年にIBMが買収したThe Weather Company(ザ・ウェザー・カンパニー)や、ウェザーインテリジェンスプラットフォームのTomorrow.io(トゥモロー.io)などの大手企業の他、いくつかの小規模な環境・気象データプロバイダーが含まれている。

フィリピン・マンダルヨン市のプロジェクトで作成されたKomunidadダッシュボードの一例

このプラットフォームは、データを悪天候、太陽、海洋、土壌水分、大気の質など、顧客のニーズに関連するダッシュボードに変換してくる。「私たちは、関連するデータだけを持ってきて、これが最も重要なデータであると顧客に伝えるシステムインテグレーターの役割を果たしています」とアイク氏は述べている。Komunidadでは、顧客が独自の警報システムを構築することも可能だ。例えば、フィリピンでは、多くの顧客が、フィリピンで最も人気のあるメッセージングアプリの1つであるViber(バイバー)や、インターネット接続が不安定な地域に届くようにSMSを使ってアラートを送信している。

エネルギー分野の顧客には、Komunidadのツールを使って、気温に基づいて電力使用量などを予測することもできる。また、地方自治体が学校の休校を決定する際にも利用されている。パンデミックの際には、Komunidadは都市が人の密集度をモニターし、どの地域でより多くの人をコントロールする必要があるかを判断するのに役立った。

Komunidadの競争力の1つは、さまざまな分野でどのようなデータが重要であるかを理解しているということだ。例えば、Komunidadは最近、アッサム州災害管理局(ASDMA)と契約を結び、インドで最も雷が発生しやすい州の1つであるアッサム州の雷と雷雨に関する警報に焦点を当てて協働することとなった。

「すべての国がそれぞれ異なる状況を持っており、私たちのアプローチは、コミュニティに焦点を当てたものでなければならず、その上でビジネスに拡大していかなければならないということを理解しています」とアイク氏は語っている。

Komunidadの顧客は迅速に対応しなければならないため、技術的なバックグラウンドを持たない人には理解できないことが多い生のデータレポートから、わかりやすいビジュアライゼーションを作成している。例えば、シンプルな棒グラフ、緑、黄、赤の警告、6時間以内に大規模な気象・環境イベントが発生すると予想される場合は赤に変わる地図などがある。

Komunidadの資金の一部は、Wix(ウィックス)やWordPress(ワードプレス)でウェブサイトを作成するのと同様に、顧客がウィジェットをドラッグ&ドロップすることができるセルフサービス型のカスタマイズ可能なダッシュボードを来年開始するために使用される。今回の資金調達により、Komunidadは、インド、タイ、カンボジアなどでの新たなビジネスチャンスの獲得、営業チームの増強、データソースの追加などを行えるようになる。

画像クレジット:John Seaton Callahan / Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:Akihito Mizukoshi)

GMの米国工場は再生可能エネルギー100%への切り替えを5年前倒しで実施へ

ゼネラルモーターズ(GM)は2021年初め、2035年までに生産する車両、そして2030年までに生産方法の面でグリーン化を進める計画を発表した。このたび同社は「方法」という部分にいち早く取り組み、予定より5年早く2025年までに米国内の施設で再生可能エネルギーを100%使用することを述べている

この目標を達成するために、GMは、エネルギー効率を高め、施設に自然エネルギーを調達すると述べている。また、再生可能エネルギーを中長期的に貯蔵する技術を開発し「再生可能エネルギーの導入を支援するマイクログリッドを構築する」としている。

GMのサステナビリティ最高責任者であるKristen Siemen(クリステン・シーメン)氏は、次のように述べた。「当社は、気候変動対策が優先事項であり、すべての企業が脱炭素化をさらに迅速に進める必要があることを理解しています。それを実現するために、米国では(計画より)5年早く再生可能エネルギー100%を達成することを目指しています」。

また同社は、PJM Interconnectionという会社と協力して、その時々の送電網の炭素出力に基づいてエネルギー使用量を追跡する計画についても詳しく説明している。「GMは、供給されている電力のほとんどが化石燃料で構成されている場合、蓄えられている再生可能エネルギーの活用や消費電力の削減について、情報に基づいた判断を下すことができます」とも述べている。

生産する車両については、GMは2025年までに全世界でフルEVを30車種投入するする予定で、さらに「2035年までに新しい小型車(自動車、SUV、ピックアップ)のテールパイプ排出ガスをゼロにする」ことを計画している。この言い回しは水素自動車を含む可能性を示唆しているが、今のところGMは主にEVに焦点を当てているようだ。

しかし、GMの汚染削減計画は、政治的な風向きに左右され推移してきた部分もある。同社は、カリフォルニア州をはじめとする各州が独自に公害防止やゼロエミッションの要件を設定することを禁止するというトランプ政権の計画を支持したいくつかの自動車メーカーの1つだった。これにより、自動車メーカー各社は、前政権が要求していた年間5%の燃費向上を大幅に下回る、年間1.5%の燃費向上で許される。GMは、Joe Biden(ジョー・バイデン)氏が大統領に選出された直後に、この訴訟から撤退した。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Steve Dent(スティーブ・デント)氏は、Engadgetのアソシエイトエディター。

画像クレジット:Veanne Cao

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(文:Steve Dent、翻訳:Aya Nakazato)

Investibleがアーリーステージの気候変動対策テックスタートアップを対象とした約80.6億円のファンドを設立

Canva(キャンバ)をはじめとするオーストラリアのトップスタートアップ企業への投資で知られる、シドニーを拠点とする「Investible(インベスタブル)」は、1億豪ドル(約80億5900万円)のClimate Tech Fund(気候変動対策技術ファンド)を調達することを発表した。Investibleがセクターに特化したファンドを立ち上げるのは今回が初めてだ。2021年初めにクローズした5000万豪ドル(約40億2800万円)のファンドを含む最初の2つのファンドは、いずれもセクターを問わないものだった。

また2021年8月、Investibleは、シドニー市と共同で、気候変動対策技術を持つスタートアップのための成長とイノベーションの拠点とする「Greenhouse(グリーンハウス)」を立ち上げると発表した。2022年のオープン時には、Investibleのポートフォリオに含まれていない気候変動対策企業を含め、スタートアップ、研究者、学者、企業を集める予定だ。

気候変動対策技術ファンドの代表であるTom Kline(トム・クライン)氏は「スタートアップ企業がスケールアップするのを支援します。具体的には、技術を向上させるための研究を行ったり、何を求めているかを理解するために大手企業を巻き込んだり、次の顧客を見つけたりすることになるでしょう」と述べている。

このファンドは、シードラウンドにも投資する、資本金の半分はフォローオン資金として確保する。また、主にオーストラリアの企業を支援するが、最大で30%を海外の企業に充てる予定だ。このファンドは、国連環境計画が気候変動や地球温暖化の抑制に最も重要としている6つの分野、すなわち、エネルギー、輸送、産業、建物・都市、食料・農業、森林・土地利用に焦点を当てている。

ファンドは、再生可能エネルギー運用会社New Energy Solar(ニュー・エナジー・ソーラー)の元最高経営責任者であるクライン氏と、2014年からテック企業に投資し、2019年からは気候変動対策のテックスタートアップに特化した投資を行っているPatrick Sieb(パトリック・シーブ)氏が主導する。

「年を追うごとに、私たちはこの空間でもっと何かをしなければならないことに気づき始めており、Investibleでは、年間1500~2000件の取引が行われていますが、そのうち気候に焦点を当てたものが増えています」と、クライン氏はTechCrunchに対し語り、セクターにとらわれず、気候に焦点を当てたファンドを立ち上げることを決めたことについて語った。

クライン氏は、気候変動に関心を持つ人が増え、それが消費者の選択を促し、企業に透明性を求めるようになってきていると付け加えた。また、より多くの政府が、達成に多大な技術と資本を必要とする目標を設定してきている。

Investibleの気候変動ファンドは、通常、150万豪ドル(約1億2000万円)程度からのシードラウンドに参加し、最大で30%、つまり50万豪ドル(約4000万円)程度を拠出する。追加投資は、最大で数百万ドル(数千億円)になる可能性がある。

このファンドは、Investibleのセクター不問ファンドと同じ投資プロセスを採用するが、気候変動に焦点を当てた基準を設けることになる。例えば、どれだけの排出量を削減できるか、設立チーム、機会の大きさ、技術の開発と収益化にかかる時間などが考慮される。

「科学者たちは何十年も前から気候変動について語っており、多くの議論がなされてきました。しかし、ようやく議論が終わり、これは人為的なものであり、この10年間で本当に行動を起こさなければならないということを人々が認める段階になったと思います」と、クライン氏は述べている。

画像クレジット:Mint Images / Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:Akihito Mizukoshi)

Iron Oxのロボット温室は農業の環境負荷を大幅に減らす

ベイエリアを拠点に自動化農業の開発を手がけるスタートアップ企業のIron Ox(アイアン・オックス)は先週、5300万ドル(約59億円)の資金調達を実施したことを発表した。Breakthrough Energy Venture(ブレークスルー・エナジー・ベンチャー)が主導した今回のシリーズCラウンドで、同社の資金総額は9800万ドル(約109億円)に達した。

Iron Oxは人口増加、気候変動、労働力不足など、さまざまな問題が山積する21世紀の農業に革命を起こそうとしている数多くの企業の1つだ。同社のソリューションは、大規模な屋内農園から、従来の農園でもプラグアンドプレイで運用できる農場ロボットまで、多岐にわたる。

このスタートアップは、そのアプローチを「クローズド・ループ・システム」と呼んでいる。それは実質的に、独自の収穫技術を活用したロボット温室だ。収穫量について同社は、従来の農業とほぼ同等と、突飛な主張はしていないものの、環境への負荷を大幅に軽減し、一般的な農業よりも季節の変化に左右されないモデルを目指しているという。

Iron Oxのシステムでは、従来の農業に比べて水の使用量を約90%削減することができる。また、この種のシステムでは、すべてのプロセスにデータが統合されているため、栽培した農産物に関する多くの情報を収集し、将来の収穫量の向上に役立てることもできる。

「世界的な投資家たちは、人類の最も重要な課題は気候変動を食い止めることだと知っています。そのためには、持続可能な作物を少しずつ増やしていくだけでは足りませんし、消費者に味や利便性、価値の面で妥協を求めることもできません」と、共同創業者兼CEOのBrandon Alexander(ブランドン・アレクサンダー)氏は、今回のニュースに関連したリリースで述べている。「私たちは、増加する人口を養うために必要な土地、水、エネルギーの量を最小限に抑える技術を適用しています。Iron Oxのチームは、農業をカーボンネガティブにするという長期的な使命を果たすまで、決して立ち止まりません」。

同社によれば、今回の資金調達は、製造規模の拡大、米国での事業拡大、研究開発の強化、従業員の増員に充てられるという。

画像クレジット:Iron Ox

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

マイクロソフトはクラウドコンピューティングで自然災害モデルの再構築を目指すが課題は残る

気象予測は難しい分野として知られているが、地球の日常機能の理解のためには、この分野がますます重要になってきている。気候変動により、山火事や台風、洪水やサイクロンなどの自然災害の規模や被害が拡大している。災害がいつ、どこで発生するかを正確に知ること(あるいは数時間前に知らせること)は、被災者の状況に大きな違いをもたらす。

この分野を、Microsoftは、自社のクラウドコンピューティングサービスであるAzureにとって、利益を生むニッチな分野であると同時に、良いことをする機会でもあると考えている。2017年の立ち上げ時にTechCrunchが取り上げたAI for Earthプログラムを通して、Microsoftは一連のサービスを「Planetary Computer(プラネタリー・コンピュータ)」と呼ぶものにまとめた。このプログラムは、物体や動植物の種類を識別するためのAPIを含んでいる。AI for Earthは、科学者などが自らの研究やモデリングにAzureを利用するための助成金を提供しており、このプログラムは、AI for HealthAI for Accessibilityといった他のMicrosoftのクラウドイニシアチブに加わる。

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私はこの数カ月間、災害対応のあらゆる側面に注目していたため、Planetary Computerと呼ばれるものの性能はどうなのか、自然災害のモデリングを改善するための障壁はどこにあるのかに興味を持っていた。このプロジェクトのプログラムディレクターであるBruno Sánchez-Andrade Nuño(ブルーノ・サンチェス=アンドラーデ・ニーニョ)氏は、このプロジェクトの野望はこれまでと同様に強いものであると語った。

「目標は、誰もが地球の生態系を管理できるようにするためのPlanetary Computerを手に入れることです。それは災害が起きた時の唯一の有効手段ですから」。このプログラムは「削減、対応、復興」に焦点を当てているが、できるだけ早く決断を下さなければならない「対応」が最も興味深い段階だ。

サンチェス=アンドラーデ・ニーニョ氏は、ここ2、3年の間に、特に環境に関連する領域でAIが驚異的な速さで進歩していると指摘した。「AIは多くの人が考えているほど多くのデータを必要としないのです」と彼は言った。「アルゴリズムに多くの進展がありましたし、私たちは、AIを理解し、非常に効率的な深層学習(モデル)を構築する方法を人々に理解してもらうために、多くの仕事をしています」。

地球システムにAIを適用する際の大きな課題の1つは、モデリングを成功させるために必要な専門分野の数だ。しかし、多くの分野は互いに隔てられており、科学者とAI研究者の間にはこれ以上ないほどのギャップがある。サンチェス=アンドラーデ・ニーニョ氏は、地球が直面する最も困難な課題に立ち向かうために、このプログラムがあらゆる分野の人々を継続的に巻き込む機会になると考えている。

「科学者のコミュニティには、より多くの知識を生み出したいというインセンティブがありますが、モデラーにとっては、良い答えをすばやく生み出したいというインセンティブがあります」と彼は説明した。「どうやって不確実性の中で迅速な意思決定を行えるでしょうか?」。

このギャップを埋める方法の1つが「アップスキリング」と彼が呼ぶ、科学者にAIのトレーニングを提供することだ。「これはすべて、環境分析をより速く、より良く行えるようにするという、同じ戦略の一環です」。特に地理分析分野ほど難しいものはない。「コンピュータは一次元を得意としていますが、近くにある複数のものを扱うのは苦手です」。彼は、もともと宇宙物理学を専攻していたが、GIS(地理情報システム)の「アップスキル」をしたと語った。

高度なAIスキルを身につけるための労力は、ライブラリが拡充し、一般的なAIモデルがうまく動作するようになり、さらにAIモデルを理解するための膨大な教材が用意されるようになったことで減少している。「かつては博士号が必要でしたが、今では10行のコードが必要です」。

そのAIの能力の増大により、人々はAIがあらゆる惑星規模の問題を解決できると信じ始めている。しかし、それは不可能であり、楽観的な見方をするとすれば、少なくとも今はまだ不可能だ。「私たちはAIの誇大広告を減らそうとしています」と彼はいう。「AIとは何かを知らなければ、それを信用することはできません」。このAI for Earthでは、科学者とAI研究者が一緒になってモデルのアウトプットを理解できるように、多くの取り組みで説明可能性を重視している。

このミッションは、関連する政府機関との連携を強めている。最近、AI for Earthは、米国陸軍エンジニア研究開発センターとパートナーシップを結び、同機関の沿岸監視システムの改善に取り組んでいる。

やるべきことが多くても、多くのモデリングの成熟度は高まっている。サンチェス=アンドラーデ・ニーニョ氏はこう言った。「今はまだ、発展途中の段階です。多くのプロセスで、必要以上にアドホックな処理が必要になっています」。良いニュースは、ますます多くの人々がこの分野に足を踏み入れ、点と点を結びつけようとしていること、そしてその過程で世界の災害対応能力を向上させようとしていることだ。

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(文:Danny Crichton、翻訳:Yuta Kaminishi)

【コラム】レーザー主導の核融合は安全で安価なクリーンエネルギーへの道を開く

核融合発電を実現するという探求が最近飛躍的な前進を見せている。ローレンス・リバモア国立研究所にある国立点火施設(NIF)は、前例のない高い核融合収率の実験結果を発表した。単一のレーザーショットが1.3メガジュールの核融合収率エネルギーを放出する反応を開始させ、核燃焼の伝搬の痕跡を示した。

このマイルストーンに到達したことは、核融合が実際に発電の達成にいかに近づいているかを物語っている。この最新の研究結果は、進捗の急速なペース、特にレーザーが驚異的なスピードで進化していることを実証するものだ。

実際、レーザーは第二次世界大戦以降で最も影響力の強い技術的発明の1つである。機械加工、精密手術、消費者向け電子機器など、実に多様な用途で広く使用されているレーザーは、日常生活に欠かせないものとなっている。しかし、レーザーが正のエネルギー利得で制御された核融合を可能にするという、物理学のエキサイティングかつまったく新しい章の到来を告げていることはほとんど知られていない。

60年におよぶ技術革新の後、現在レーザーはクリーンで高密度、かつ効率的な燃料を開発する喫緊のプロセスをアシストしている。この燃料は、大規模な脱炭素化エネルギー生産を通して世界のエネルギー危機を解決するために必要とされている。レーザーパルスで達成できるピークパワーは、10年ごとに1000倍もの増加を示している。

物理学者たちは最近、1500テラワットの電力を生み出す核融合実験を行った。短時間で、全世界がその瞬間に消費するエネルギーの4〜5倍のエネルギーを生み出した。言い換えれば、私たちはすでに莫大な量の電力を生産できるのである。ただし、点火用レーザーを駆動するのに消費されるエネルギーをオフセットする、大量のエネルギーを生成する必要もある。

レーザーを超えて、ターゲット側でもかなりの進歩が起きている。最近のナノ構造ターゲットの使用は、より効率的なレーザーエネルギーの吸収と燃料点火を実現している。これが可能になったのは数年前のことだが、ここでも技術革新は急勾配を呈しており、年々大きな進展を遂げている。

このような進捗を目の前にして、商業的な核融合の実現を阻んでいるものは何なのかと不思議に思われるかもしれない。

2つの重大な課題が残存している。第1に、これらの要素を統合し、物理的および技術経済的な要件をすべて満たす統合プロセスを構築する必要がある。第2に、そのためには民間および公的機関からの持続可能なレベルの投資が必要である。概して、核融合の分野は痛ましいほどに資金が不足している。核融合の可能性を考えると、特に他のエネルギー技術との比較において、これは衝撃的である。

クリーンエネルギーへの投資は2020年に5000億ドル(約55兆円)を超える金額に達したものの、核融合研究開発への投資はそのほんの一部にすぎない。すでにこの分野で活躍している優秀な科学者は数え切れないほど存在するし、この分野への参入を希望している熱心な学生も大勢いる。もちろん、優れた政府の研究所もある。総じて、研究者と学生は制御核融合の力と可能性を信じている。私たちは、このビジョンを実現するために、彼らの仕事に対する財政的支援を確保すべきであろう。

私たちが今必要としているのは、目の前の機会の有効性を十分に発揮させる公共および民間投資の拡大である。このような投資にはより長い時間軸が存在するかもしれないが、最終的なインパクトは平行していない。今後10年間のうちに正味エネルギーの増加が手の届くところまでくると筆者は考えている。初期のプロトタイプに基づいた商用化は、非常に短期間で行われるだろう。

しかし、そうしたタイムラインは、資金および資源の利用可能性に大きく依存している。風力、太陽光などの代替エネルギー源にかなりの投資が行われているが、核融合を世界のエネルギー方程式の中に位置づけなければならない。これは、臨界的なブレークスルーの瞬間に向かう中で、特に顕著な真実である。

レーザー駆動の核融合が完成され商業化されることで、核融合が既存の理想的でないエネルギー源の多くに取って代わり、最適なエネルギー源となるポテンシャルが生まれる。核融合が正しく行われれば、クリーンで安全かつ安価なエネルギーが均等に供給されるのである。核融合発電所が最終的には、現在なお支配的な従来型発電所や関連する大規模エネルギーインフラのほとんどに置き換わると筆者は確信している。石炭やガスは不要となるであろう。

高収率と低コストをもたらす核融合プロセスの継続的な最適化により、現在の価格をはるかに下回るエネルギー生産が約束される。極限的には、これは無限のエネルギー源に相当する。無限のエネルギーが存在するなら、無限の可能性をも手に入れることができる。これで何が実現するだろうか?過去150年にわたって大気中に放出してきた二酸化炭素を取り除くことで、気候変動が逆転することは確かであると筆者は予見している。

核融合技術によって強化された未来では、水を脱塩するためにエネルギーを使うこともでき、乾燥地帯や砂漠地帯に多大なインパクトをもたらす無制限な水資源を作り出すことができる。総合的に見て、核融合は、破壊的で汚染されたエネルギー源や関連インフラに依存することなく、持続可能でクリーンな社会を維持し、より良い社会を可能にするものである。

SLAC国立加速器研究所、ローレンス・リバモア国立研究所および国立点火施設での長年にわたる献身的な研究を通じて、筆者は、最初の慣性閉じ込め核融合実験に立ち合い、その統制を担うという光栄に浴した。すばらしいものの種が植えられ、根付いていくのを目にした。人類のエンパワーメントと進歩に向けてレーザー技術の成果が収穫されることに、かつてないほどの興奮を覚えている。

同僚の科学者や学生たちが、核融合をタンジビリティの領域からリアリティの領域へと移行させることに取り組んでいるが、これにはある程度の信頼と支援が求められてくる。世界的な舞台において大いに必要とされ、より歓迎されるエネルギー代替品を提供することに対して、今日の小規模な投資は多大なインパクトを及ぼしかねない。

筆者は楽観主義と科学の側に賭けている。そして他の人々もそうする勇気を持ってくれることを願っている。

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(文:Siegfried Glenzer、翻訳:Dragonfly)

【コラム】気候変動を解決するのは米国のイノベーターであり規制当局ではない

Joe Biden(ジョー・バイデン)大統領は米国の温室効果ガス排出を2030年までに半分に削減することを誓約した。大統領は相次ぐ新たな予算と政府事業計画によってこの野心的目標を達成しようとしている。

しかし、炭素排出削減で我々が最も期待しているのは新たな財政支出ではない。それはテクノロジーの大転換であり、実現できるのは民間セクターだけだ。

実際、政府は排出削減テクノロジーが市場に出ることを妨げる規制を設けることで、気候変動の進展を遅らせている。もし我々の指導者たちが本当にこの惑星を救いたければ、実際にそれを実行できる起業家たちの邪魔にならないようにする必要がある。

政府に期待するのは、炭素汚染を削減する可能性のあるテクノロジーを支援することだ。そもそもバイデン大統領は自身の気候変動政策の中で、米国の技術革新を促進することを約束している。

残念ながら、最も有望なグリーンテックのブレースクルーの数々は、誤った、あるいは時代遅れの政策によって、厳しい逆風に曝されている。

そんなテクノロジーの1つで、イノベーターと規制の関係を描いた新しいドキュメンタリー「They Say It Can’t Be Done(みんな出来ないと言った)」で紹介されているのが、人工樹木であり、アリゾナ州立大学の物理学者・エンジニアのKlaus Lackner(クラウス・ラクナー)氏が開発した。その人造の木に含まれる特別なプラスチック樹脂は、二酸化炭素を吸収し、水に浸されると排出する。天然の木と比べて大気から二酸化炭素を取り込む効果は1000倍以上だ。捕獲された二酸化炭素は回収されて燃料に変換される。

ラクナー氏のデザインは、1台で1日当たり1トンの二酸化炭素を除去できる規模に拡大できる。主な障害は炭素捕獲テクノロジーを巡る明確な規制の欠如であり、特に捕獲した炭素の輸送と貯蔵が問題だ。

統一された枠組みができるまで、このテクノロジーを市場に出すためのプロセスはありえないほど複雑で、かつリスクをともなう

あるいは、大規模な畜産農業の必要性を低下させるテクノロジーを考えてみよう。数十億の鶏や豚や畜牛を育てるためには膨大な水と餌と土地が必要だ。その結果の炭素排出量は膨大で、年間約7.1ギガトンの温室効果ガスを生み出す。

ここでも新たなテクノロジーが排出量削減にひと役買う。研究者らは細胞培養肉をつくっている。飼育場ではなく実験室で生まれた鶏肉、豚肉、牛肉だ。代替タンパク質は安全で健康的で、従来の飼育食肉よりも炭素排出が少ない。

代替肉をつくっているスタートアップであるEat Just(イート・ジャスト)は、最近シンガポールで細胞培養鶏肉を販売するための認可を取得した。しかし、今も米国では規制当局の青信号を待っている。同社のファウンダーによると、米国の承認を得るまでには1年あるいはそれ以上かかるという。

関連記事:Eat Justが世界初の認証を取得しシンガポールで培養肉の販売を開始

代替肉生産のように大きな資本を必要とする業界では、このゆっくりとした承認プロセスによって、スタートアップが開業し、製品を市場に出すことが不可能になりかねない。

このようなハイテクソリューションこそ、気候変動の脅威から地球を守るために必要だ。果たして、代替肉が将来の持続可能食料なのか、それとも大気中の二酸化炭素を固定する最高のソリューションが人工樹木なのかはわからないが、参加しやすく公正な戦いの場は、最高のイノベーションの繁栄を可能にするはずだ。

気候変動に関することは政府だけの仕事だと信じている米国人があまりにも多い。事実は、持続可能なテクノロジーの大規模な導入の主要な障壁は、政府の介入が無いことではなく、過剰な、あるいは少なくとも誤った介入だ。

国の炭素排出量削減の約束を遂行するためには、それを実現する可能性のあるテクノロジーの開発と展開を、政府がいかに妨害しているかを、大統領とチームは認識する必要がある。

編集部注:本稿の執筆者Quill Robinson(キル・ロビンソン)氏は環境保護団体、American Conservation Coalitionの政府業務担当副社長。

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(文:Quill Robinson、翻訳:Nob Takahashi / facebook

Salesforceがバリューチェーン全体での温室効果ガス実質ゼロを達成

Salesforce(セールスフォース)はこれまで頻繁に、責任ある資本主義を説き、勧めてきた。そして同社は米国時間9月21日、年次開催の顧客向けイベントDreamforceでグローバル気候変動に対する取り組みでの顕著な成果を発表した。100%再生可能エネルギーで全バリューチェーンでのネットゼロ(温室効果ガス実質ゼロ)エネルギー使用を成し遂げ、それが可能でないときはカーボン相殺を購入している、と同社は述べた。

と同時に、同社は組織の気候変動の取り組みを管理するために組織に販売しているプロダクトSustainability Cloudのアップデートも発表した。このプロダクトでは組織は責任を果たしながらも資本主義者でいられる。米国時間9月20日のDreamforce Pressイベントに登壇した同社の最高影響責任者で企業関係担当EVPであるSuzanne DiBianca(スザンヌ・ディビアンカ)氏は、ポジティブなクライメートアクションを取る大企業の例となっていることを誇りに思っていると話す。

「今日ネットゼロ企業であるという当社のクライメートアクションの約束についてとても興奮しています。これは2030年でも2040年でもなく、未来のことでもありません。取り組みを加速させなければならないことは承知していて、スコープ1、2、3の全バリューチェーンを含め、当社は現在ネットゼロです。これを達成した企業は極めて少数です」とディビアンカ氏は述べた。

持続可能性に関する多くの専門用語があり、TechCrunchはより深く理解するためにSustainability CloudのGMであるAri Alexander(アリ・アレクサンダー)氏に話を聞いた。持続可能性のコミュニティは、スコープ1、スコープ2、スコープ3として知られる3つの主要エリアでの企業のカーボンフットプリント(二酸化炭素排出量)を測定する、とアレクサンダー氏は説明した。「スコープ1とスコープ2はあなたが所有するもの、動かすもの、コントロールするもの、そして事業を展開するためにどのエネルギーを調達するかです」と同氏は述べた。

スコープ3は業界用語で「バリューチェーンの上流と下流」と言及され、あなたの会社が関わるものすべてだ。「企業が責任を負っているエミッションの圧倒的大部分は実際には企業の直接的な業務のものではなく、商品やサービスを調達する上流のものです。あるいは他の産業ではそのプロダクトや寿命を迎えた製品を使用する下流のものです」と説明した。あなたが新しいスマホを入手するときに下取りに出すスマホに起こることが、下流の例として挙げられる。

なので、Salesforceがバリューチェーンの上流と下流もネットゼロだというとき、そこには同社がコントロールするものすべて、そして同社が事業を展開する上で関わる全企業が含まれる。Salesforceのコントロール外のところで多くの変数があるため、パートナーやベンダーが同社が定める基準を遵守していることを確認できなければ「高品質なカーボンオフセット」と呼ぶものを購入する、とアレクサンダー氏は話す。

「また、すぐに対応できないところでも、完全にネットゼロでいられるよう、その不足分を埋め合わせるために当社は高品質なカーボンオフセットを購入します。その一方で、当社はサプライチェーンにわたって絶対的なゼロへと削減するという真に重要な取り組みを今後も続けます」と述べた。

加えて同社は他企業に販売するために開発した商業ツールSustainability Cloudのアップデートを発表した。これはSalesforceが自社で使っているのと同じツールとテクノロジーだ。

「持続可能性は、あるといいものから、実際に事業変革そのものの核心へと変わりつつあります。我々が生きているこの時代の趨勢の1つであり、毎年指数関数的に成長しています。そしてそれが意味するものは、企業は気候危機に対応するためにかなりのリソースを動かしており、持続可能性を事業運営の中心に据えつつあるということです」とアレクサンダー氏は述べた。

同時に、同社はより持続可能な組織になるためのSalesforce Climate Action Planという独自の計画に基づく取り組みの詳細も公開した。この計画はオンラインで無料で閲覧できる。

同社はまた、植林の目標を2021年3000万本に増やす。植林の取り組みには他の企業も参加しており、10年で1億本を植林して育成・保全することを目標に掲げ、早く達成できるよう強力に推進している。

Dreamforceプレスイベントに登場したSalesforceの社長兼COOのBret Taylor(ブレット・テイラー)氏は、気候危機はあらゆる人に影響を及ぼしていて、Salesforceが他の組織のお手本になるよう取り組みつつ、自社の行いで意義ある影響を及ぼすことができると確信している、と述べた。

「我々は事業が変化のための最善のプラットフォームであると考えていることを認識するために、またあらゆる組織が信頼される企業になり、気候変動のような危機を解決するよう、刺激を与えるビジョンを描くためにDreamforceにいます」とテイラー氏は話した。

画像クレジット:Andriy Onufriyenko / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi