非動物由来のプロテイン製品開発に成功したThe EVERY Co.、卵市場に変化をもたらす

エッグプロテインという非動物由来のタンパク質を作る精密発酵技術を開発したThe EVERY Co.の2021年の業績が好調だ。

以前はClara Foodsとして知られていた同社は、4月にAB InBevの投資部門であるZX Venturesの投資先であるBioBrewと契約を結び、非動物由来のタンパク質を大規模に醸成することに成功した。EVERYの初の非動物性エッグプロテインは、2021年後半に最初の小売顧客との共同ブランド食材として発売される予定だ。

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そして米国時間12月7日、募集額以上に申し込みのあったシリーズCラウンドで1億7500万ドル(約198億8600万円)が集まったことを発表した。この投資は、新規投資機関のMcWinと既存投資機関のRage Capitalが共同で行い、ラウンドにはTemasek、Wheatsheaf Group、SOSV、TO Venturesなど、新規および既存の投資機関が参加した。EVERYによれば、Prosus Venturesも今回の資金調達に貢献しており、合成生物学への初の投資となった。

今回の投資により、EVERYの資金調達総額は2億3300万ドル(約264億8200万円)に達した。TechCrunchでは、2015年にEVERYが170万ドル(約1億9300万円)のシード資金を調達した際に紹介した。その後当社は、2019年にはシリーズAでさらに1500万ドル(約17億円)、シリーズBで4000万ドル(約45億4600万円)の資金を確保している。10月にはThe EVERY Co.に社名を変更した。

その際、CEO兼創業者のArturo Elizondo(アルトゥーロ・エリゾンド)氏は、プレスリリースを通じ「私たちの新しいブランディングは、21世紀のフードシステムを根本的に変革し、あらゆる場所のあらゆる人間が、その過程で地球や動物に害を与えることなく、慣れ親しんだ好きな食べ物を楽しむことができるようにするという私たちのビジョンを届けるものになっています」と語った。

The EVERY Co.の創業者兼CEOアルトゥーロ・エリゾンド(画像クレジット:The EVERY Co.)

社名変更に加えて、11月には初の非動物由来のエッグプロテイン「EVERY ClearEgg」を発売し、コールドプレスジュースブランドPressedとのパートナーシップによりEVERYの製品が入ったスムージーを作り、小売デビューを果たした。

エリゾンドは、これは同社の7年間の仕事の集大成だとTechCrunchに語った。そして2019年のシリーズBは技術を証明するためのもので、今回のシリーズCでは、製品を市場に投入し、資本を活用して規模の拡大を推進することができると付け加えた。

また、この2年間でEVERYは、収益予測値だった状態から収益を得るようになり、従業員が30人から60人に増え、すべての製品に対し米食品医薬品局の承認を得て、米国、欧州、アジアで販売するようになった。

今回の資金調達により、同社は生産規模の拡大、パイプラインのさらなる製品の商業化、そして技術の新たな食品用途への拡大を図ることができる。

エリゾンドはこう語る。「私たちは今、導入促進のためのスケールアップに注力しています。B2Cについては多くの報道がなされており、Kellogg’sやGeneral Millsのような企業も追いかけてこの種の製品を発売しようとしていますが、インフラが追いついていません。これらの技術が機能し、変化を可能にするためには、それに見合った規模が必要です。当社では、その配備を始めています」。

一方、卵市場はいまだに動物由来の卵に支配されている。世界で年間1兆3000億個以上の卵が生産されているが、EVERYはその卵市場に変化をもたらそうとしている。当社の調達額の大きさは、その技術が機能し、支持を得ているということを示している。

EVERYは、Simply Egglessや今夏の初めに2億ドル(約226億7600万円)を調達したEat Just、ベルリンに拠点を置くフードテック企業で、2022年第1四半期に鶏を使わないエッグ製品を発表したPerfeggtなど、同様の動物由来でないエッグ製品に取り組んでいる企業の仲間に加わっている。Perfeggtは11月に280万ドル(約3億1700万円)を調達している。

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エリゾンドは、この分野の企業が増えることは、競争ではなく「上げ潮はすべての船を持ち上げる」ものだと考えている。それよりも、認知度を高め、本物の卵と同じ割合で使用されるようにできるかが勝負だ。

「卵はほとんどすべてのものに使われている機能的な食材ですから、ただおいしいだけの製品を作っても上手くいきません。市場を席巻するためには、消費者が代わり、1:1の比率にならなくてはなりません。そうすれば既存の企業と対抗する最大のチャンスになります」と彼はいう。

Rage CapitalのマネージングパートナーであるGabriel Ruimy(ガブリエル・ルイミー)は声明文の中で「100年以上の歴史を持つ業界に革命を起こしたと確信をもって主張する企業は稀です。しかし、EVERYのアルトゥーロやそのチームは、まさにそれを実践しています」と述べている。

また、McWin Food Ecosystem Fundと世界で2300のレストランを運営するAmRestの創業者であるHenry McGovern(ヘンリー・マクガバン)は「レストラン業界は、新しい食品技術をいち早く取り入れ、消費者に紹介します。McWinは、レストランに深く根ざし、代替タンパク質のリーディングカンパニーに多くの投資を行ってきたことから、EVERYの製品を世界中のメニューに導入するという野心的な計画をサポートできる独自の体制が整っています。卵はどこにでもあるものであるだけでなく、代替することが非常に困難なものでもあります。EVERYの革新的な技術には大きな可能性を感じています」と述べている。

画像クレジット:The EVERY Co.

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(文:Christine Hall、翻訳:Dragonfly)

曲がった笑顔を矯正、3Dプリントされたカスタムメイドの歯列矯正用ブラケットを提供するLightForce Orthodontics

歯並びは人それぞれ異なることから、従来の歯科矯正学は芸術性と医学的な魔術性を兼ね備えるものだった。1990年代後半、インビザラインはカスタマイズ可能なアライナーで業界を一変させたが、結局アライナーは歯科矯正患者の30%にしか対応していないことがわかった。それ以外の患者には、あまり革新的な技術はなかったーだがLightForceが登場し、状況を一変させた。LightForce Orthodonticsは「あなたにフィットするカスタムサイズ」という洒落たスローガンを掲げ、3Dプリントされたカスタムメイドの歯列矯正用ブラケットと装着トレーを製作している。カスタマイズの程度が大きければ大きいほど良い。患者にとっては治療期間が短縮され、矯正医にとっては1000分の1mm単位の精度の矯正治療計画を提案できるようになるからだ。

LightForce Orthodonticsは、過去1年間で収益が500%、チームが300%成長するなど高度な成長を遂げた。これには投資家も注目しており、特にある投資企業は、この会社に食いつき、資金調達に参入したがった。その名もKleiner Perkinsで、同社は25年前に歯科矯正ビジネスに参入し、インビザラインへの投資で巨額の資金を得た。同社は今回のチャンスにも参加しており、今回のシリーズCラウンドでは、Matrix Partners、Tyche Partners、AM Venturesなどの過去の投資企業の参加を得て、LightForceに5000万ドル(約56億7300万円)を投入した。

LightForceのCEO・共同設立者であり、今でも矯正歯科医として月に4日診療しているAlfred Griffin III(アルフレッド・グリフィンIII)博士(DMD、PhD、MMSc)はこう説明する。「当社でいつも話していることは、すべての決定において患者さんを第一に考えるということです。私たちが行うすべてのことは、常に『患者さんにとって最善かどうか』という観点で考えられています。全員参加のミーティングでさえも患者さんから始まり、どうやって誰かを助けたのかを考えます。私たちが開拓している市場は、米国の全症例の75%を占める10代・思春期の市場です。思春期の心理を考えてみてください。子どもたちは自己意識を形成する時期です。矯正歯科医として個人的に見てきた中で、母親があれやこれやのせいで『うちの子がいじめられているんです』といってくるケースをどれだけ見てきたかわかりません。LightForceを使えば、そのような患者さんをより早く治療することができ、診療回数や学校を休まなければならない期間を減らすことができます。テクノロジーを活用することで、より良い結果を得ることができるのです」。

同社はちょうど1年前に1400万ドル(約15億8800万円)のシリーズBラウンドを実施したばかりで、さらなる資金を求めていたわけではなかった。しかしKleiner Perkinsからの連絡を受け、LightForceはその声に応え、資金調達の可能性があるかどうかを探ることにしたのだ。

LightForceのカスタムブラケット(左)は、歯に合った形状であることに加えて、サブミリ単位の精度で配置・整列できる。右は従来のブラケット(右)(画像クレジット:LightForce Orthodontics)

グリフィンによると「当社は、計画していたよりも少し早く資金調達を行いました。過去に当社を知った非常に有名なベンチャーキャピタルが見守ってくれていましたが、彼らと取引するのは私たちには少し早すぎました。Kleiner Perkinsは、ぜひ一緒に仕事をしてみたいと常に思っていた会社の1つです。特にWen Hsieh(ウェン・シェー)氏は、3Dプリンティングやハードテクノロジーに精通しており、ハードテック分野の優れた案件を数多く手がけています。Kleiner Perkinsは、歯科矯正分野で大きな実績を残している唯一のベンチャーキャピタルグループでもあります。20年前のことですが、Align Technologyは歯科矯正を良い方向に変えたと思います。Align Technologyでは2つの価値が生まれました。1つは審美的なメリットで、これにより成人層の需要が高まりました。2つ目は、彼らが行っていることのデジタル性です」。

「このようなイノベーションの多くは、業界の人間ではない人から生まれます」と、今回の投資を主導したKleiner Perkinsのパートナー、シェー氏はいう。「アルフレッドは自分自身が歯科矯正医であり、それが世界を変えることになりました。アルフレッド自身が歯科医であるため、ワークフローのどこに導入すればいいのかをすでにわかっているのです。通常のワークフローのどの部分が不要になるのか、どの部分が強化されるのか、時間配分をどうするのか、歯科技工士にどのような影響を与えるのか、クリニックの面積にどのような影響を与えるのか、患者さんの来院頻度にどのような影響を与えるのか、などなど。一方でアルフレッドは、シミュレーションや3Dプリントなど、他の分野の知識も取り入れています」。

なぜインビザラインだけを使って矯正を終わらせることができないのかと頭を悩ませている人がいるかもしれない。私も非常に似たような疑問を持っていた。分かったのは、アライナーは押すだけで、引っ張ることはできないということだ。歯を引っ張って他の歯と並べるのは、歯科矯正が得意とするところだが、アライナーにはそれができない。もう1つはコンプライアンスの問題だ。アライナーは1日22時間装着しなければなりませんが、人間にとってはこれは苦手なことだ。グリフィンは次のように指摘する。「母親は、治療が遅々として進まない場合、子どもを怒ることはありません。親子して、歯科矯正医を責めるでしょう」。

LightForceのブラケットやトレーは3Dプリントされる。これにより、矯正医はブラケットを歯の上の必要な位置に正確に装着することができる。新しいブラケットは半透明であるため、歯と同じ色に見え、目立ちにくくなっている(画像クレジット:LightForce Orthodontics)

この投資は、歯のある人にとって朗報だが、3Dプリントファンにとっても朗報だ。歯科矯正は、3Dプリント技術の世界最大の商用ユーザーの1つであり、現在、インビザラインは世界最大の3Dプリント企業だ。LightForceが膨大な数のプリンタを自ら購入できるだけの資金力を手にした今、この傾向は変わらないだろう。

今回の5000万ドル(約56億7300万円)の資金投入により、歯科矯正のための戦いが本格的に始まる。この新しい資金は、LightForceの運営と市場開拓のために使用される。当社は米国内の多くの歯科矯正医院が、アライナー治療のデジタルな利点と、歯列矯正の歯を動かす効率と質を組み合わせることができるように取り組んでいく予定だ。これはワクワクするが、複雑な過程になるだろう。ハイブリッドのセラミック矯正装置を顧客ごとにカスタムプリントする事業を拡大することは、論理的にも運営的にも非常に困難だ。

「規模拡大やマスカスタマイゼーションは、理論的には語られることはあっても、実際に取り組んだことのある人はほとんどいない、非常にユニークな問題です」とグリフィンは認める。「今、当社には約200人の社員がいますが、来年にはおそらく倍になるでしょう。営業とエンジニアリングが最大の経費となるでしょうが、人員の面では、物理的な製造とデジタル製造の両方において、製造技術者を一番に増やす必要があります」。

画像クレジット:LightForce Orthodontics

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

垂直農法スタートアップInfarmがカタールに果物の栽培センターを計画

欧州の垂直農法企業であるInfarm(インファーム)は今週、シリーズDラウンドで2億ドル(227億円)を調達したことを発表した。カタール投資庁(QIA)の主導した今回のラウンドは、2020年の1億7000万ドル(約193億円)の資金調達に続くもので、これにより社の資金調達総額は6億ドル(約680億円)を超えた。評価額も10億ドル(1134億円)を「大きく」超え、欧州初の垂直農法ユニコーン企業としての地位を確立している。

関連記事:垂直農業ネットワークの構築継続に向けInfarmが株式と負債で170億円超を調達、日本の紀ノ国屋でも買える

「気候変動に強い垂直農法でグローバルな農業ネットワークを構築することは、Infarmの中核的な使命です。だからこそ、今回の資金調達を発表できることに私たちは興奮しています」と、共同創業者兼CEOのErez Galonska(エレツ・ガロンスカ)氏はリリースの中で述べている。「今回の戦略的な投資は、当社の急速なグローバル展開を支え、研究開発を強化するものです。それによって私たちは、欧州、アジア、北米、中東の消費者の近くで、より多くの種類の作物を栽培できるようになります。それは、近い将来、果物と野菜のバスケット全体を栽培し、高品質な生産物を手頃な価格ですべての人に提供するという当社の野望を達成するための新たな一歩です」。

今回調達した資金の多くは、米国、カナダ、日本、欧州などを視野に入れたInfarmの国際的な事業拡張計画に充てられる。また、同社はアジア太平洋地域や中東へのさらなる拡大も予定している。

QIAが今回のラウンドに参加したことが、後者の大きな原動力になることは間違いない。今回の提携の一環として、同社はカタールにトマトやイチゴなどの果物を栽培するための栽培センターを設立する計画を発表した。制御された屋内環境で比較的容易に栽培できることから、これまで主流であった葉物野菜やハーブの栽培からの脱却を目指している多くの垂直農法企業にとって、果物は強力な後押しとなっている。

「責任ある長期投資家として、QIAの目的は将来の世代のために価値を創造することです。私たちは、垂直農法を、世界のあらゆる地域の食糧安全保障を向上させる手段であると考えています」と、QIAのMansoor bin Ebrahim Al-Mahmoud(マンスール・ビン・エブラヒム・アル・マフムード)氏は、同じリリースで述べている。「私たちは、Infarmと協力してカタールに同社初の栽培センターを開発し、カタールの食糧安全保障と経済の多様化に貢献できることを楽しみにしています」。

垂直農法は確かにこの地域にとって理に適っている。生産者は、標準的な農法よりもはるかに少ない水で、気候制御された建物内で作物を生産する能力を得られるからだ。2018年には、Crop One(コープ・ワン)が、UAEに13万平方フィートの農業施設を開設すると発表している。もちろん今後、このような懸念は、1つの地域に留まるものではなくなるだろう。

画像クレジット:Infarm

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

国際貿易の見積査定業務を効率化するPortXを展開するJapanFuseが7500万円のシード調達

国際貿易の見積査定業務を効率化するPortXを展開するJapanFuseが7500万円のシード調達

国際貿易における見積もり査定業務をDXする「PortX」(ポートエックス)を開発・運営するJapanFuseは12月14日、シードラウンドにおいて7500万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、新規引受先のALL STAR SAAS FUND、ANOBAKA、既存投資家のSamurai Incubate。調達した資金により、「国際貿易市場」のバリューチェーン全体の業務コストの削減および効率経営の実現を目指す。

PortXは、見積もりの規格を統一し、データ化・共有化・再利用することによる「原価低減」と「業務コスト削減」を実現するサービス。各運送事業者に対して見積依頼をワンクリックで送信でき、空き状況や価格を軸に、回答の自動集計・即時査定を行える。国際貿易の見積査定業務を効率化するPortXを展開するJapanFuseが7500万円のシード調達

JapanFuseは、「国際貿易の産業構造を再定義する」をミッションとして掲げ、3PL・フォワーディング事業者の見積査定業務をDXするPortXを提供している。3PL・フォワーディング事業者とは、荷物を運びたい実荷主に変わって国際貿易における輸送手配業務を代行し、船会社、トラック会社、倉庫会社などの複数の運送事業者を組み合わせて、実荷主に対し一貫輸送を提供する貨物利用運送事業者を指す。

国際貿易市場において、コンテナスペースなどアセットの仕入れは、営業利益率に直結する企業競争力の源泉となっているものの、多くの3PL事業者において、市況に左右されリアルタイムで価格が変わるスペースの仕入れにより以下の3つの大きな課題が生じているという。これら課題によって、原価低減への難易度が飛躍的に上昇しているそうだ。国際貿易の見積査定業務を効率化するPortXを展開するJapanFuseが7500万円のシード調達

・各サプライヤー(船会社、ドレージ、倉庫会社)から返ってくる見積形式が各社異なることで生じる、表計算ソフトへの転記などの労務負荷
・案件が属人化していることで生じる、引き継ぎの業務負荷
・過去見積や類似ルートの見積がデータ化されていないことで生じる、見積の妥当性検証への参照・検索コスト

PortXでは、スペース仕入れにおける見積査定の課題から取り組み、3PL・フォワーディング事業者の業務コストの削減および効率経営を実現するという。

専門性・希少性の高い有識者の知見を時間単位で提供する「エキスパートナレッジシェア」のArchesが1.8億円調達

専門知見を有する有識者を探し出し時間単位で知見提供を行う「エキスパートナレッジシェア」サービスをグローバルに展開するArches(アーチーズ)は12月16日、第三者割当増資により1億8000万円の資金調達を完了したことを発表した。引受先はユーザベース、博報堂DYベンチャーズ、グローブアドバイザーズベンチャーズ、ロッキングホース、ほかエンジェル投資家8名。

調達した資金により、ベトナムでさらに強固なエンジニアチームを組成、および各国で多国籍なプロフェッショナルチームを組成し、独自のリクルーティングシステムを強化する。また、世界各国の潜在顧客にサービスを同時展開するためセールス&マーケティングの強化、有識者知見を再利用できる形で蓄積し多くのユーザーに届けるプロダクトの開発にあてる。

エキスパートナレッジシェアとは、新領域進出や既存事業の課題解決のため特定の高度な業界知識を求めるクライアントに対し、適合する有識者を探し出しその知見へのアクセス機会を提供するサービス。同社は、ベトナムに有するエンジニアチームが開発した「エキスパートハント」テクノロジーによって、専門性・希少性の高い有識者を市場から的確に探し出しているという。インタビューアレンジやレポート作成を通じ、クライアントが求める知見を提供する。

Archesは、2019年5月に設立したスタートアップ。「Share knowledge, Empower Asia(知識の民主化を通じてアジアを活気づける)」をミッションに掲げ、ホーチミン、東京、シンガポール、上海、ウズベキスタンの5拠点でエキスパートナレッジシェアを展開。アジアにおいて5万人以上の有識者データベースを構築しているという。

同社は、エキスパートナレッジシェアは時代の主流になると考えているものの、有識者知見を提供する事業者は国内では数社のみ、アジアの新興国でも数える程度しか存在していないため、まだまだアクセスできる有識者の地域や業界が限定的であると位置付けているという。今後もデータベースに依存することなく、クライアントのニーズにあった有識者を市場から即時に探し出すエキスパートハントにより、有識者知見とクライアントをつなぐとしている。

税理士向けシステム開発などのBesoが3000万円のプレシード調達、税理士業務の効率化を支援するZooUの事前登録受付開始

税理士向けシステム開発などのBesoが3000万円のプレシード調達、税理士業務の効率化を支援するZooUの事前登録受付開始

税理士向けシステム開発などを展開するBesoは12月14日、プレシードラウンドにおいて第三者割当増資による約3000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、オンタムリープベンチャーズ(QXLV)が運営するQXLV投資事業有限責任組合。調達した資金により、税理士業務の効率化と品質を向上させるプロダクト「ZoooU」(ゾー)の開発と採用強化を進める。またZoooUのティザーサイトを公開し、事前登録受け付けを開始している。ローンチは2022年3月予定。税理士向けシステム開発などのBesoが3000万円のプレシード調達、税理士業務の効率化を支援するZooUの事前登録受付開始

現在税理士業務は、レガシーなオペレーションによる属人化により、顧問先担当者ごとのサービス品質のバラつきや、ベストプラクティスの再現性がない点が課題となっているという。またBesoは、税理士法人化の加速により業務をデジタルで仕組化していくことが必須となる可能性を指摘している。同社は、ZoooUによりこうした課題を根本から解決し、税理士業界の変革とDX化を牽引していくため、資金調達を実施した。

ZoooUは、属人化を解消することでサービス品質向上・業務の標準化を行い、業務の可視化およびコミュニケーションも含めたデータをナレッジとして蓄積・活用できるDXソリューションという。Beso groupの税理士事務所Besoにおいて実証実験を実施し、ノウハウを基に設計と開発を行ったことから、実際の税理士業務に即したプロダクトとなっているそうだ。税理士向けシステム開発などのBesoが3000万円のプレシード調達、税理士業務の効率化を支援するZooUの事前登録受付開始

税理士向けシステム開発などのBesoが3000万円のプレシード調達、税理士業務の効率化を支援するZooUの事前登録受付開始

コンピュータービジョンを利用するStreetlogicの電動自転車用衝突警告システム

Streetlogic(ストリートロジック)は、電動アシスト付きスポーツ自転車のライダーがより安全に道路を走行できるようにしたいと考えている。同社は、210万ドル(約2億3800万円)のプレシード資金を調達するとともに、主力製品であるサラウンドビューカメラの発売を発表した。このサラウンドビューカメラは、前方、側方、後方からの衝突を予測してライダーに知らせ、事故を未然に防ぐというものだ。

米国、カナダ、欧州では、2021年11月23日より、Streetlogicの電動自転車用先進運転支援システム(ADAS)の先行予約を30ドル(約3400円)の頭金で開始した。Streetlogicの創業者でありCEOでもあるJonathan Denby(ジョナサン・デンビー)氏によると、最終的な小売価格は300ドル(約3万4000円)から400ドル(約4万5000円)程度になる予定で、同システムの最初の量産ロットは2022年末までに納品される予定だ。Streetlogicの拠点であるサンフランシスコの購入者は、2022年初頭から招待制の限定的なベータ展開プログラムを通じて、いち早く同システムを試すことができる。

マイクロモビリティのADASシステムを考案したのは、Streetlogicが最初というわけではない。2020年、イスラエルのスタートアップであるRide Vision(ライドビジョン)は、同様のAIベースのシステムを発表した。このシステムは、ライダーの周囲の交通状況をリアルタイムに分析し、前方衝突警告、ブラインドスポットモニタリング、後方からの近接車両の警告などを提供する。Streetlogicと同様に、ライドビジョンのシステムは、走行を記録するだけでなく、安全に関わる事故の記録を保存して後から見直すことができるドライブレコーダーとしても機能する。

関連記事:AIベースのオートバイ用安全システムのイスラエルRide Visionが約7.3億円を調達

最近では、Luna(ルナ)やDrover AI(ドローバーAI)などのコンピュータービジョン企業が、同様のテクノロジーをVoi(ヴォイ)やSpin(スピン)などのシェアマイクロモビリティ事業者が運用するeスクーター向けに開発している。このテクノロジーは似通っているが、ターゲットとする市場が異なる。

デンビー氏はTechCrunchに対し「違いは、当社がビジョンシステムをカスタマイズして、電動自転車のライダーにスマートな安全機能を提供しているのに対し、LunaやDrover AIはビジョンシステムを使って、eスクーターのライダーが街中をより快適に走行できるようにしていることだ」と説明する。また「それらの機能は、歩道の検知や駐輪システムのルールを守ってもらうためのものであり、eスクーターのライダーが適切にシェアシステムを利用していることを示すために必要なものだ。一方、当社のADASシステムの機能は、ライダー自身の安全を重視している。例えば、交通量の多い道路を走っているときに、自分と衝突する恐れのある車を検知した場合には、早期の警告によりライダーは安全を確保できる」と述べる。

もう1つの大きな違いは、ライダーが歩道を走るなど不適切な走行をしていると、LunaやDrover AIのシステムはスクーターのOSに接続し、減速して停止させることができることだ。Streetlogicの製品は、厳密には衝突警告システムだが、特に都市部では非常に有用なツールとなる。

「安全の面では、常に周りを見ているわけではありません。無理ですよね。また、通勤途中は、自分のめい想時間のようなもので、よく考え事をしてしまいます。少なくとも私の場合、安全については考えていません。仕事に行くことや、その日にすべきことに思いを巡らしています」と、Streetlogicの初期のベータテスターの1人で、毎日電動自転車で通勤しているTaylor(テイラー)氏は、同社のウェブサイトに掲載されている体験動画の中で述べている。

米国における回避可能だった自転車の死亡者数は、2010年の793人から2019年には1089人と6%増加しており、そのうち843人は自動車との事故で亡くなっている。電動自転車の販売が伸びても、自転車に関わる死亡事故の78%が発生する都市部では、自動車は依然としてマイクロモビリティの導入を妨げる脅威だ。自動車から電動自転車への乗り換えを検討している消費者は、ADASシステムのような安全機能が備わっているかどうかを確認するとよいだろう。

デンビー氏はTechCrunchに対し「道路や都市部に自動車よりも多くの電動自転車が走っているようなすばらしい世界、ユートピアのようなビジョンを持っている」と述べる。そして「ある程度の自動車は必要だが、大部分は自転車に置き換えることができるはずだ。電動自転車を日常生活における主要な移動手段として、より頼りになるツールにすることが、ユートピアを実現するための鍵になると考えている」と続ける。

Streetlogicのシステムは、自転車の前部と後部の両方に実装されており、すべてデバイス上で処理されるコンピュータービジョンに基づいている。ライダーを取り巻く車両の動きを追跡し、ライダーが車両と衝突する可能性がある場合には早期に警告を発する。これらの処理や警告は、完全にローカルなデバイス上のシステムで行われるため、クラウドへ接続する必要はない。また、サービスが提供されていない地域にいても機能する。

ライダー目線で見たStreetlogicのコンピュータービジョン製品。自動車との衝突を警告している(画像クレジット:Streetlogic)

ライダーはまず、デバイスが発する音声による警告を聞くことになる。これは、例えばライダーの後ろにクルマが急接近してきた場合に「Car Back(後方にクルマ)」といった内容のものだ。ライダーのスマートフォンには、障害物となる可能性のある方向がひと目でわかるシンプルな視覚的警告が表示される。ただし、この機能は、ライダーがハンドルバーのホルダーにスマートフォンを装着している場合にのみ有効になる。

LunaやDrover AIは、すでに歩行者や車線などの物体を検知するシステムを持っているが、eスクーターのライダーに衝突の可能性を積極的に警告することはない。しかし、両社のテクノロジーを持ってすれば、不可能ということはないだろう。

ドローバーAIのCEOであるAlex Nesic(アレックス・ネシック)氏は、TechCrunchに対し、電動自転車の警告システムは、ハイエンド市場における「次のレベル」の機能としては意味があるものの「当社が現在注力しているシェアマイクロモビリティ用途に必要な低いコストに抑えることは難しい」と述べる。

Streetlogicにとってはまだ始めたばかりだが、デンビー氏によると、アルファテストではこのテクノロジーは「驚くほどうまく機能した」という。また、サイクリストにとって自動車との衝突やニアミスが最も多い問題であるため、今のところシステムは自動車のみを追跡しているとのことだ。

「しかし、コンピュータービジョンの良いところは、後から機能を追加できることだ」と同氏はいい「例えば、他の自転車や歩行者、道路にできた穴やひび割れ、道路に飛び出す動物などを追跡することができるようになるだろう。これらはすべて、そのうち組み入れることができる。自動車の追跡だけでも、大部分の事故を防ぐことができた」と述べる。

Streetlogicでは、これらの検知機能を組み入れるために、さらに多くのデータを収集して機械学習モデルを学習させる必要がある。今回の資金調達の主な目的はそのためだ。同社によると、プレシードラウンドには、LDV Capital(LVDキャピタル)、Track Venture Capital(トラック・ベンチャー・キャピタル)、およびLyft(リフト)の元自律走行担当副社長であるLuc Vincent(リュック・ビンセント)氏などのエンジェル投資家らが参加し、調達した資金はチームの規模拡大のために使用されるという。先週、2名のチームメンバーを新たに雇用し、現在はフルタイムの従業員6名で構成されているが、予約注文に対応することに加え、システムの成熟度向上に向けた生産性確保のために、従業員を拡充したいと考えている。

「ハードウェア面ではApple(アップル)とUber(ウーバー)から、ソフトウェア面ではCruise(クルーズ)から、精鋭が集まっている」と、デンビー氏は語る。

デンビー氏自身もUberの出身で、後にLime(ライム)に買収された同社のスクーター「Jump(ジャンプ)」のコンピュータービジョンシステムのアドバイザーを務めた他、360度アクションカメラ「Rylo(ライロ)」の開発チームを率いていた。

Streetlogicは、早期に軌道に乗せるためにB2C製品として立ち上げたが、将来的には自転車メーカーとの統合を進めていきたいと考えている。

画像クレジット:Streetlogic

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

企業のXRデバイス管理を支援するプラットフォーム「ManageXR」

ManageXR(マネージXR)は米国時間12月16日、Rally Ventures(ラリー・ベンチャーズ)が主導するシードラウンドで400万ドル(約4億5000万円)を調達し、ベンチャーパートナーで前回のリードエンジェル投資家であるJay Borenstein(ジェイ・ボーレンスタイン)氏が同社の取締役会に加わったことを発表した。

この資金を使って、ManageXRはチームの拡大とGo-To-Market戦略を推進する予定だ。同社は2019年11月にベータユーザーに提供を開始し、2021年4月に正式にローンチして以来、急速に成長を遂げている。このスタートアップ企業は、世界中でハードウェアおよびソフトウェア企業のパートナーネットワークを拡大する方法を引き続き模索していくと、創業者兼CEOであるLuke Wilson(ルーク・ウィルソン)氏はTechCrunchに語り、2022年は大企業により注力するつもりだと付け加えた。

ManageXRは、組織の中核インフラとして機能するVRおよびARデバイス用に設計された企業向けデバイス管理プラットフォームを構築した。このプラットフォームは、企業のXR展開を拡張し、アプリやファイルの配布、ホーム画面のユーザーエクスペリエンスのカスタマイズ、デバイスの状態や使用状況の追跡など、XRデバイス群のあらゆる側面をリモートで制御できるようにする。

「デバイス管理ソリューションは何年も前から存在していましたが、最近までVRやARデバイスのための有効な選択肢はありませんでした。私たちは、産業の変曲点にいる企業のために、その問題を解決します」とウィルソン氏は述べている。

ManageXRは、XRHealth(XRヘルス)やBrink’s(ブリンクス)など、中小企業や中堅企業が使用する数千台のVR・ARデバイスで、これまでに20万以上のセッションを促進してきた。また、最近では、VR・ARハードウェアメーカーのPico Interactive(ピコ・インタラクティブ)と提携し、米国で販売されるすべてのPico製デバイスにManageXRをプリロードしている。

Accenture(アクセンチュア)が6万台のヘッドセットを導入したことからもわかるように、企業がXRを非常に大規模に、従業員へ提供する傾向が増大しています。これらの企業は、XRを利用して従業員のオンボーディング、トレーニング、スキルアップを図るとともに、メタバースをコミュニケーションやコラボレーション、業務遂行の新しい場として活用する新しいワークフローを導入しています」と、ウィルソン氏は述べている。「これらの企業にとって、デバイス管理は新しい概念ではありません。テクノロジーを拡張性のある安全な方法で使用するために、この種のインフラがいかに重要であるかを理解しているのです」。

ウィルソン氏は2018年、病院内の小児患者向けにVR体験を構築する目的でManageXRを設立した。当時、同社は医療環境でコンテンツを配信するために、基本的なデバイス管理プラットフォームを独自に開発しなければならなかったと、ウィルソン氏は語った。2019年後半、同社は他のあらゆる企業が、ManageXRのように、同じ問題を自力で解決しなければならないことに気づき、2020年初頭にManageXRのみに注力するように社の方向を転換した。同社のチームは、XRを大規模に使用する際の課題を、深く個人的なレベルで理解しており、それが会社の運営方法に大きな違いをもたらしているとウィルソン氏は言う。

画像クレジット:ManageXR dashboard / ManageXR

その競合他社には、携帯電話やノートPC向けに同様のツールを構築している既存のモバイルデバイス管理会社や、一部のデバイスメーカーがある。しかし、XRは発展途上で動きの速い市場であり、これらの企業には対応できない様々な要件があると、ウィルソン氏は続けた。

「これらのハードウェアメーカーは、独自に基本的なデバイス管理システムを作成していますが、機能性や使いやすさの点ではことごとく的を外しています。このようなメーカー純正の管理システムは、ユーザーに1つのメーカーのハードウェアのみを使用することを強要し、市場にある多種多様なハードウェアを顧客が使用することを妨げます」と、ウィルソン氏は述べている。

ウィルソン氏によれば、同社の顧客はデバイスごとに、月額または年額の料金を支払っているという。製品層によって異なるが、ライセンス費用は1デバイスあたり月額7〜10ドル(約795〜1135円)。その中でも、1台あたり月額10ドルのプレミアム製品層が、群を抜いて最も人気が高い。

「最近ではいくつもの大手ハイテク企業がこの分野に投資を行っており、企業はVRやARを従業員のトレーニングから患者の治療、販売促進まであらゆる用途に使用しています。企業における拡張現実は、大規模導入の入り口にあるところです。私たちは、Rally Venturesが仲間に加わってくれることに心を躍らせています」と、ウィルソン氏は述べている。

「XRは、事業の運営や協業のやり方、そして仕事や私生活における世界の体験を根本的に変えるものですが、導入が進むにつれ、企業がプログラムを首尾よく実行するために直面する課題も増えています」と、Rally Venturesのベンチャーパートナーであるジェイ・ボレンスタイン氏は語る。「企業がXRデバイスを大規模に管理することで恩恵を受ける方法を加速させ、最終的に企業規模のXRを普及させるために、ルークと彼の成長を続けるチームを支援できることを非常に嬉しく思います」と、ボレンスタイン氏は締め括った。

画像クレジット:ManageXR

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(文:Kate Park、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

インターステラテクノロジズが17.7億円のシリーズD調達、超小型人工衛星打上げロケットZEROの開発を加速

インターステラテクノロジズが17.7億円のシリーズD調達、超小型人工衛星打上げロケットZEROの開発を加速

「低価格で便利な、選ばれるロケット」をミッションに、観測ロケット「MOMO」と超小型人工衛星打上げロケット「ZERO」を独自開発・製造しているロケット開発ベンチャー「インターステラテクノロジズ」は12月17日、シリーズDラウンドとして、第三者割当増資による総額17億7000万円の資金調達を実施したと発表した。

引受先は、藤田誠氏(INCLUSIVE代表取締役社長)、INCLUSIVE、サイバーエージェント、シリアルインキュベート、セブンスターズキャピタル1号投資事業有限責任組合、サンコーインダストリー、中島瑞木氏(coly 代表取締役社長)、中島杏奈氏(coly 代表取締役副社長)、山本博士氏(スマレジ 代表取締役)

同社「ねじのロケット(MOMO7号機)」「TENGAロケット(MOMO6号機)」は2021年7月に2機連続で宇宙空間に到達。2019年5月の「宇宙品質にシフト MOMO3号機」を含め、3度の宇宙空間到達を達成した。国内民間単独での宇宙空間到達は唯一となっている。MOMOは実証から事業化の段階に入り、並行して2023年度の打上げを目指すZEROの開発を本格化させている。

今回調達した資金は、ZEROの開発をさらに加速させるための研究開発・設備投資・人材採用・材料費などにあてる。「誰もが宇宙に手が届く未来をつくる」というビジョンの実現に向け、今後も低価格、高頻度な宇宙輸送の観点から日本の宇宙産業をリードするとしている。

同社ZEROについては、一般的には複雑で高額となるエンジンシステムを独自設計するなどコア技術を自社で開発。設計から製造、試験・評価、打上げ運用までを自社で一気通貫させた国内唯一の開発体制、アビオニクス(電子装置)への民生品活用などにより、低価格で競争力のあるロケットを実現するという。

ZEROの燃料には低価格で性能が高く、環境にも優しい液化メタンを選定。エア・ウォーターと協力し、牧場から買い取ったメタンガスで製造した液化バイオメタンをロケットに使うことを計画している。インターステラテクノロジズが17.7億円のシリーズD調達、超小型人工衛星打上げロケットZEROの開発を加速

また東と南が海に開かれた世界有数の好立地、かつ本社から7.5kmの近距離に射場を有することも、世界的に見て大きなアドバンテージとしている。2021年1月には人工衛星開発の100%子会社「Our Stars」を設立しており、日本初の「ロケット×人工衛星」の垂直統合による、革新的な衛星サービスの開発を目指す。

 

荷主と配送パートナーのマッチングプラットフォームPickGoなど運営のCBcloudが約60億円調達

荷主と配送パートナーのマッチングプラットフォームPickGoなど運営のCBcloudが約60億円調達

ITを活用し運送業界における新たな価値の創出を目指すCBcloudは12月17日、第三者割当増資(シリーズCラウンド)および大手金融機関からの追加融資枠設定により、総額約60億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、国内・海外の機関投資家や事業会社。2016年9月からの融資を含む累計調達額は約80億円となった。

CBcloudは、2013年の設立以来「『届けてくれる』にもっと価値を。」のビジョンの下、荷主と配送パートナーを直接つなぐマッチングプラットフォーム「PickGo」、運送会社向け業務支援システム「SmaRyuトラック」、宅配事業者向け業務支援システム「SmaRyuポスト」を提供。配送パートナーの価値が正当に評価される仕組み作りと配送現場の生産性改善に取り組んできた。PickGoの二輪車・軽貨物の個人パートナーは合わせて4万人、一般貨物の協力運行会社は1000社を超えているという。SmaRyuトラックの導入社数は880社以上、SmaRyuポストは2021年度末までに全国750局の郵便局への導入を予定している。

調達した資金は、これらプロダクト強化やマーケティングをはじめ、事業を成長させるための人材採用にあてる予定。また、多様な業界の企業とのアライアンスを通じて、ポストコロナ時代に適したモノの流れを実現することで、顧客企業のビジネス拡大を支援する。

具体的にはまず、CBcloudのプラットフォームの特徴を活かした緊急・即日配送サービスを「PickGoエクスプレス」(Android版iOS版)と再定義し、従来の法人・ウェブ経由に加えて、個人がアプリ経由でも依頼できるようにした。これにより、発注時の利便性がさらに高まることに加え、従来未対応だった買い物代行以外での個人の配送ニーズの取り込みも図る。

また、「PickGoエンタープライズ」を新たに定義。PickGoの配送パートナー、飛行機、鉄道などのアライアンスを含む配送インフラネットワークやテクノロジーをフル活用することで、顧客企業の個別ニーズに応じた物流を構築・提供する。ネットコンビニやネットスーパーなど、従来は難しかった短いリードタイムでの配車や、予測しにくい需要変動への対応が可能となるという。PickGoエンタープライズを通じ、顧客企業の物流費用削減、売上成長や新たな事業の創出なども支援する。荷主と配送パートナーのマッチングプラットフォームPickGoなど運営のCBcloudが約60億円調達

さらに、今後は軽貨物領域に留まらず、ラストワンマイルを含めた物流全般に関して、CBcloudのプラットフォームをインフラとして利用できるよう、これまで以上に多様な業種の企業とのアライアンスを加速させるという。

脱炭素対応に追われる大企業にCO2マネジメントを提供する仏SweepがシリーズAで約25億円を調達

企業の二酸化炭素排出量を測定するエンタープライズSaaSは今ホットな分野だ。つい最近、PlanetlyはOneTrustに非公開の条件で買収された。また、Plan A、Watershed、Emitwiseなど、この分野には多くのスタートアップが参入しており、それぞれが独自のアプローチで市場を開拓している。

FTSE500レベルの大企業を対象としたカーボンマネジメント事業を展開しているフランスのSweepは、業界をリードすることを目指し、シリーズAで2200万ドル(約25億円)を調達した。同業他社と比較しても最大級の規模となる今回のラウンドは、英国のBaldton Capitalが主導し、New Wave、La Famiglia、2050が参加した。Sweepは設立から1年足らずで、総額2700万ドル(約30億7000万円)の資金を調達したことになる。

Sweepは、明らかに満たされていないニーズに応えようとしている。11月、BCGは、90%以上の企業が排出量を正確かつ定期的に測定していないと報告した。ESGとカーボンが企業の課題として取り上げられるにつれ、企業は解決策を求めて奔走しており、特に今後のサステナブルレポーティング規制を考慮している。

Sweepの共同設立者兼CEOであるRachel Delacour(レイチェル・デラクール)氏はこう述べている。「当社のエンタープライズグレードのツールは、カーボンデータの収集、セキュリティ、分析をシームレスかつ自動化し、企業がカーボンフットプリントの削減とグローバルなネットゼロ活動への貢献に集中できるようにします」。

Sweepの取締役会に加わった、Balderton CapitalのマネージングパートナーであるBernard Liautaud(ベルナール・リアトー)氏はこう述べている。「Sweepのミッションとビジョンは、我々が掲げる『持続可能な未来への目標』と完全に一致しています。市場を調査したとき、Sweepのチームの強さと、製品の思慮深さと成熟度に非常に感銘を受けました」。

正式なB CorpとなったSweepは、英国内閣府の「Tech for Our Planet」プログラムでCOP26でのプレゼンテーションに選ばれた数少ない企業の1つだ。

またSweepは、フランスの投資銀行であるBpifranceと協力して、同行が投資している2つの企業(通信事業者のOrangeとEdTech企業のOpenclassrooms)のフットプリントを測定した。

デラクール氏は、Zendeskが4500万ドル(約51億円)で買収したBIME Analyticsの共同設立者でもある。TechCrunchの取材に対し、彼女はこう語った。「カーボンはネットワークの問題です。正しいデータを追跡・分析するだけでなく、製造材料を選択するパートナーから、夜間に機械の電源を切るスタッフまで、企業のフットプリントに貢献するすべてのステークホルダーと関わる必要があります。気候変動に関する目標を達成するためには、スコープ3に該当するものも含め、企業の炭素排出量を構成するすべての活動を継続的に追跡する必要があります。ネットワークが大きくなればなるほど、影響も大きくなります。だからこそ私たちは、バリューチェーン上のすべてのステークホルダーをつなぎ、協力して効率的に削減活動を行えるようにSweepを構築しました」。

画像クレジット:Sweep team

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

気候変動に強い作物づくりの技術を開発するPhytoformが6.5億円調達、人工知能を使ってゲノム編集

気候変動は農家の作物栽培に影響を及ぼしており、英国の厳しい栽培条件を知り尽くしたPhytoform(ファイトフォーム)は、作物をより気候変動に強いものにすることを目指している。

ロンドンとボストンに本社を置くこのバイオテクノロジー企業は、作物の改良を目的とした人工知能ゲノム編集技術の拡張のために、Enik Venturesがリードするラウンドで570万ドル(約6億5000万円)を調達したと発表した。

Phytoformは、William Pelton(ウィリアム・ペロトン)氏とNicolas Kral(ニコラス・クラール)氏が博士号を取得する過程で2017年に興した会社だ。CTOのクラール氏は植物発生生物学を研究し、CEOのペロトン氏は作物科学者だ。祖父が農家で、英国の天候などで作物が失敗する話を聞いて育った、とペロトン氏はTechCrunchに語った。

Phytoformの共同創業者ウィリアム・ペロトン氏とニコラス・クラール氏(画像クレジット:Phytoform)

「私たちは、遺伝学の分野で幸運に恵まれています」とペロトン氏は話す。「数百ドル(数万円)で植物全体のゲノムができ、ゲノムの合成もできるのですから。ニックと私は博士課程の学生だったのですが、技術を取り入れ、私たちが目にするいくつかの問題に適用してみることにしました」。

現在の作物改良のための育種法は、通常、開発に数十年かかり、遺伝子組み換え生物の技術も限られている、と同氏はいう。

気候変動に強い新しい作物を開発するPhytoformのアプローチでは、機械学習とゲノム編集技術で植物のDNA配列の組み合わせの可能性数を決定し、新しい特性を特定しつつ、農業の気候変動への影響を軽減している。そして、それらの特性は、フットプリントフリーのCRISPRゲノム編集を用いて作物品種に直接実装される。

農業におけるCRISPR技術の成功は、植物ゲノムを操作して害虫や気候への耐性を高め、より安定した製品を栽培する方法として、長年にわたってよく知られている。

国連食糧農業機関は毎年世界の食糧の14%が失われていると推定しており、今後数年間は干ばつや酷暑、害虫が増加する中で気候変動が悪化する一方のため、この技術を植物に活用することが急がれるとペロトン氏とクラール氏は話す。

今回のラウンドに参加したのは、Wireframe Ventures、Fine Structure Ventures、FTW Ventures、既存投資家のPale Blue Dot、Refactor Capital、Backed VC、そしてJeff Dean(ジェフ・ディーン)氏、Ian Hogarth(イアン・ホガース)氏、Rick Bernstein(リック・バーンスタイン)氏を含むエンジェル投資家のグループだ。

「Eniacは、これまでVenceやIron Oxなどに投資しており、持続可能な農業の未来を大いに信じています。気候危機が深刻化する中、我々は、計算ゲノム学を活用することで食料廃棄を減らし、より質の高い多様な農産物を市場に送り出すことができることを目の当たりにしてきました。我々は、Phytoformの創業者であるウィルとニックの、植物の遺伝学に関する深い機械学習とゲノム編集を組み合わせて消費者に最適な農産物のポートフォリオを提供するというアプローチにすぐに惹かれました」とEniac Venturesのゼネラルパートナー、Vic Singh(ヴィック・シン)氏は述べた。

今回の資金調達により、Phytoformはチームを拡大し、トマトやジャガイモに特性を導入し、食品サプライチェーンに沿ってより大きな収穫量と作物の損失を少なくするための取り組みを強化することができるようになる。

2人の創業者は、トマトとジャガイモのプログラムを市場に投入する準備をしており、2022年は同社にとって「すばらしい年になる」と話す。また、他の3つのプログラムにも取り組んでいて、地域も米国だけでなくオーストラリアと英国にも広げている。

加えて、種苗業者や生産者といったサプライチェーンの初めに位置する個人や企業とのパートナーシップに力を入れており、将来的にはそれを食品製造業者にも広げていく計画だ。

一方、初期ビジネスモデルは種子の販売によるロイヤルティ収入となるが、顧客基盤が消費者まで進化するにつれてビジネスモデルが変化することを期待していると、ペロトン氏は述べた。

Phytoformは2021年、従業員6人でスタートしたが、現在その数は倍増していると、クラール氏は話す。さらに、ソフトウェアとウェブラボの機能の両方でAIプロセスのコンセプトを実証し、技術的にも良い成長を遂げた。

「トマトプログラムの開発後期にたどり着くには、まだかなり大きなプロセスが控えていますが、今後もさらに試行錯誤を続けます。現在の技術では新品種の生成に10年かかっていますが、我々はそれを短縮できることを証明しています」と同氏は付け加えた。

画像クレジット:Pgiam / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

ゴミの山からプラスチックに代わる素材を作るUBQ Materialsがインパクト投資家TPG Rise主導で約193億円調達

100%分別されていない家庭ゴミだけで作られた、プラスチックのような素材を開発したとするイスラエルのスタートアップUBQ Materials(UBQマテリアルズ)は、TPGのグローバルインパクト投資プラットフォームであるTPG Riseが主導し、同社の気候変動投資専用ファンドであるTPG Rise Climateと、マルチセクター・インパクト投資ファンドであるThe Rise Fundsを通じて、1億7000万ドル(約193億2000万円)の資金を調達した。

今回の資金調達ラウンドには、既存の投資家であるBattery Venturesをはじめ、英国を拠点とするM&GのCatalyst Strategyなどが参加した。

UBQ Materialsは、通常なら埋め立て地に送られる有機物を含む都市固形廃棄物を、石油由来のプラスチックに代わる持続可能で、かつリサイクル可能な素材に変えることができるとしている。「UBQ」の名を冠した同社の製品は、建設、自動車、物流、小売、さらには3Dプリントなどの分野で、単独または従来の石油系樹脂と組み合わせても使用することができるという。

The Rise Fundsの共同代表パートナーであるSteve Ellis(スティーブ・エリス)氏は次のように述べている。

UBQの素材ソリューションは、都市ゴミを機能的な熱可塑性プラスチックに変換するだけでなく、エネルギー効率が高く、加工過程で水を使わず排水も出さないため、産業およびコンシューマアプリケーションにおいて、幅広い用途に利用することが可能です。

UBQがどのようにこれらを実現しているかについては曖昧だが、同社の主張を興味深く見守っていきたいと思う。

画像クレジット:UBQ Materials

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

オンラインの部屋を作って集まれるサービスcoromを運営するworkeasyが5000万円調達、スマホ版を強化

オンラインの部屋を作って集まれるアプリ「corom」(コロム)を開発・提供するworkeasyは12月15日、5000万円の資金調達を行ったことを発表した。引受先は千葉道場ファンド、Gx partners。調達した資金は、誰もが利用しやすくなり場所を選ばずコミュニティに参加できるようスマートフォン用アプリの開発にあて強化する。

coromは、オンラインの部屋を無料の作れ、会話を楽しめるというコミュニティアプリ。2021年2月にリリースされた「workle」を前身としている。workleはリテラシーの高いIT企業のリモートオフィスを市場参入ターゲットとしていたのだが、「みんなで集まって話す」「近づいてコソコソ話す」「手を振って合図する」といったリアルに近いコミュニケーションが取れるUXにこだわったことから、「お悩み相談」「占い」などビジネスシーン以外でのコミュニティ形成の手段として利用されるようになったという。

これを受け同社はcoromへとリブランディング。これまでのウェブ版に加えてスマートフォンアプリ(Android版iOS版)をリリースした。今後は、「誰でも簡単にオンラインの部屋をつくって集まれるアプリ」として、ユーザーの獲得、ユーザビリティの改善、東南アジアへの進出などを行う。

coromでは、同じ部屋に入るだけで音声通話が始まり、その場に居るように同時に複数ユーザーで会話できる(マイク必須)。また、ユーザーを示すアイコンの距離によって音量が変わるようになっており、他のユーザーに近づくだけでコソコソ話も行え、ちょっとした悩み事やプライベートなことも話しやすい。これら会話にはカメラが必要ないためお互い気軽に話しやすく、拡声器機能で部屋にいるユーザー全員に話しかけることもできる。

培養したヒトのリンパ節で医薬品開発貢献を目指すPrellis Biologicsが約16億円を調達

3Dプリント臓器を作成するツールを開発しているPrellis Biologics(プレリスバイオロジクス)は米国時間12月15日、1450万ドル(約16億円)のシリーズBラウンドを発表した。Prellisは何年もかけて組織エンジニアリング能力を開発してきたが、最近は特にある種の構造の開発に注力してきた。

これまで同社は、企業が薬物試験や最終的には移植のために健康で酸素の豊富な人間の臓器(またはオルガノイドと呼ばれるミニチュア版)を育てられるよう、スキャフォールド(細胞培養などの基盤となる足場)を3Dプリントすることにフォーカスしてきた。しかし最近、EXIS(Externalized Immune Systemの略)と呼ばれる新製品を発表した。これは、実験室で培養したヒトのリンパ節だ。

関連記事:3Dプリント臓器の商用化まであと数歩

リンパ節は人間の免疫システムの重要な部分であり、特定の免疫細胞を貯蔵し、体が免疫反応を起こすのを助ける。このリンパ節オルガノイドが、新しい治療法に対する人間の免疫システムの反応を模倣することで、医薬品開発に貢献するというのが理想だ。そして、おそらく、その過程で新薬の開発にも役立つ。

創業者でCEOのMelanie Matheu(メラニー・マテュー)氏は「この免疫システムを培養することで、治療薬が人間に投与される前に免疫反応を引き起こすかどうかを実際に試すことができます」とTechCrunchに語った。

「当社の強みは、(EXISが)箱から出て、完全に人間に使えるということです」。

2016年に設立されたPrellis Biologicsは、これまでに約2950万ドル(約33億円)を調達している。今回のシリーズBラウンドは、Celesta Capitalと既存投資家のKhosla Venturesがリードした。さらに、CelestaのアドバイザーでBerkeley Lightsの元CSO、Kevin Chapman(ケビン・チャップマン)氏を最高科学責任者として招く。また、元J&J Innovation社員のYelda Kaya(イェルダ・カヤ)氏がビジネス最高責任者として加わる。

薬物や病原体に対するリンパ節の反応は、免疫システム全体がどのように反応するかを予測する方法として知られている。それに応じて、チップ上のリンパ節から扁桃組織からのリンパ球オルガノイドの成長まで、ヒトリンパ節の体外モデルの開発に取り組んでいる学術研究機関は多い。

Prellisは、リンパ節オルガノイドの成長に必要な酸素と栄養の交換を促進するためにスキャフォールドを用いることで、この争いに参入した。マテュー氏によれば、この方法によってPrellisは「ヒトの免疫システムをヒトの外で再現する」ことができるのだという。

このようにリンパ節に注目することで、Prellisは抗体医薬の開発という新たな切り口を手に入れた。

新しい抗体医薬を開発し、臨床試験でどのように作用するかを予測することは、競争が激しい分野になってきており、現在、いくつかの異なるアプローチが進行中だ。

その中には、計算機によるものもある。1100万ドル(約12億円)を調達したばかりのNabla Bioは、自然言語処理を使って抗体を設計している3億7000万ドル(約422億円)のシリーズB資金を調達したばかりのGenerate Bioも機械学習によるアプローチをとっている。

Prellisのアプローチは、免疫システムをミニチュアでモデル化し、免疫反応をマイニングして薬剤候補の候補を開発するというものだ。マテュー氏は、これを人工知能ではなく「自然知能」と呼んでいる。

1回の採血で1200個のオルガノイドを作り、それらの免疫システムに特定の抗原を投与し、各免疫システムから何が出てくるかを見ることができる。このプロセスは、異なる免疫システムの特徴を持つ異なる血液ドナーを用いて行うことができ、分析するために多くの反応を作り出すことができる、と同氏はいう。

「このタンパク質と結合するかどうかという問題に対して、10人全員が同じ抗体のソリューションを出すことは非常に稀です。そのため、1人の人間から平均して500〜2000のユニークな抗体が得られ、それを人数でかけ合わせると、これらはすべて標的結合抗体になります」。

Prellis Biologicsの資料によると、採血から「抗体ライブラリー」作成まで約18日かかる。

画像クレジット:Prellis Biologics

マテュー氏によると、同社はSARS-CoV-2、インフルエンザA、マールブルグ出血熱に反応する抗体を開発している(これらの結果は公表されていない)。また、製薬会社5社と提携したが、マテュー氏は社名を明かさなかった。

Prellisは今回のラウンドで、研究開発主導型から製品重視型に移行することを計画している。つまり、より多くの医薬品会社との提携を進め、プラットフォームの能力を実証することを意味する。

成功に向けた大きな指標は、抗体治療を臨床に持ち込むことだとマテュー氏はいう。そのためには、製薬会社との提携が必要だが、自社で医薬品パイプラインを作ることも否定はしていない。

同氏は具体的なこと明らかにしないが、Prellisは治療用パイプラインをサポートする「内部技術」を開発中だと話す。

「技術開発が進めば、その方向へ進んでいくでしょう」と同氏は述べた。

画像クレジット:PIXOLOGICSTUDIO/SCIENCE PHOTO LIBRARY / Getty Images

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(文:Emma Betuel、翻訳:Nariko Mizoguchi

難聴ケアを身近なヘッドフォンやテレビで、Mimiが聴覚ウェルネスプラットフォームのボリュームを上げる

TechCrunch Battlefield NY 2014の最終選考に残ったMimi Hearing Technologiesは、シリーズBラウンドで2500万ドル(約28億5000万円)を調達し、聴覚の健康というミッションを世界中の耳に囁き続けている。同社は最近、Skullcandy(スカルキャンディー)、Cleer(クレール)、Beyerdynamic(ベイヤーダイナミック)との一連の注目すべきパートナーシップを発表し、MIG CapitalATHOSからの新たな資金注入により、さらに前進しようとしている。

関連記事:オーディオを「パーソナライズ」するMimi、Skullcandyなどの本技術搭載ヘッドフォンを徹底検証

Mimiの創業者の1人で、同社の研究開発を率いるNick Clark(ニック・クラーク)氏は、しばらく前に私にこう語った。「聴覚障害だけでなく、より幅広いことに対応できるソフトウェアベースのソリューションの可能性は大いにあります。ユーザーの聴力の違いによって、より多くの人々に役立つ微妙なことを始められます」。

Mimiは、毎月約5万人が聴力検査をするのに使う、最も人気のある家庭用聴力検査アプリの1つだ。同社は、同じ技術をSDKとしてヘッドフォンメーカーに提供した。それにより、同アプリはユーザーの聴覚プロファイルを利用して、聴力に合わせてカスタマイズされた音声出力を実現できる。つまり、難聴と思われる部分を補うため、音量を上げなくてもよく聞こえるようにすることが可能なのだ。これにより、さらなる難聴を防ぐことができるという理論だ。

「例えばSkullcandyのヘッドフォンを購入し、アプリをダウンロードすると、そこで自分のプロフィールを作成することができます」と、Mimiの創設者兼CEOであるPhilipp Skribanowitz(フィリップ・スクリバノヴィッツ)氏は説明する。「このプロフィールは、他のパートナーとも互換性があり、他でも使うことができます。Philips(フィリップス)のテレビでのテストも開発しましたので、その場合ソファーに座ってテレビでテストできます」。

今回の資金は、同社の技術へのさらなる投資、特にヘッドフォンやテレビとの統合を通じた提供の拡大に充てられる。また、米国とアジアでの販売・マーケティング業務の拡大も強化する予定だ。

「シリーズBコンソーシアムの主要投資家であるMIG、ATHOS、Salviaは、2020年、NASDAQに上場しているドイツのバイオテック企業であり、Pfizer(ファイザー)と共同で最初の新型コロナウイルスワクチンを開発し、現在約700億ドル(約7兆9840億円)の評価を受けているBioNTech(バイオンテック)の設立投資家として国際的に注目されました」と、MimiのMoritz Bratzke(モーリッツ・ブラッツケ)CFOは指摘する。「彼らのMimiへの投資は、ドイツのベンチャーキャピタル環境の深さと幅だけでなく、Mimiのビジョンの重要性と多大な商業的可能性を示すもう1つの証といえます」。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Aya Nakazato)

グローバルな政府入札プラットフォームで発見・申請・管理を支援するCube RMが約9.1億円調達

世界各国の政府が毎年発表する入札や公共セクターの契約は数百万件にのぼる。その金額は約5兆ドル(約570兆4600億円)と推定され、2025年には、PaaS(Procurement as a Service、サービスとしての調達)の市場規模は90億ドル(約1兆264億円)に達すると予想されている。そしてもちろん、パンデミックは政府調達のデジタル化の必要性を急速に高めている。

しかし、政府調達のポータルをナビゲートすることは、容易な作業ではない。現在、これらの入札をすべて閲覧できるグローバルなプラットフォームは存在せず、申請プロセスを支援するのはレガシーツールだけだ。だが数年前、欧州と北米のほとんどの国がオンライン入札ポータルを作成し、大規模なスクレイピングが可能になった。そして、あるスタートアップがそれをやってのけた。

Cube RMは、入札の申請と管理を1つのプラットフォームに統合している。同社は、企業が世界中の入札を発見し、入札し、落札するのを助けると主張している。このたびCube RMは、Runa Capitalが主導し、既存の投資家であるMarathon Venture Capitalの参加を得て、800万ドル(約9億1000万円)のシリーズAラウンドを完了した。

同スタートアップは製薬・医療機器のグローバル企業を主なターゲットとしており、今後、他の業種への展開も予定している。これまでのところ、Boston Scientific(ボストン・サイエンティフィック)、Takeda(武田薬品工業)、Kemira(ケミラ)、Bavarian Nordic(バヴァリアン・ノルディック)などが顧客として名を連ねている。

同社はグローバルに入札案件の発掘を支援するだけでなく、自然言語処理による入札の優先順位付け、公開される入札の予測、Salesforce.comでの入札機会の提供、入札準備と提出の促進、落札者と競合情報の追跡なども行うとしている。

共同設立者のCostas Economopoulos(コスタス・エコノポウロス)氏はこれまでB2Bソフトウェア企業を数社設立し、データサイエンティストのGeorge Boretos(ジョージ・ボレトス)氏はビジネスソフトウェア業界で、Philip Kytinos(フィリップ・カイティノス)氏は経験豊富なソフトウェアエンジニアとして活躍してきた。

エコノポウロス氏は次のようにコメントしている。

グローバルなライフサイエンスのお客様と仕事をする中で、売上の25~60%が公的機関向けの入札によるもので、数兆ドル(数百兆円)規模の市場を考えると、非常に重要であることがわかりました。以前は、世界規模で日々公開される新しい入札を発見し、それらの企業が最新のAI技術を駆使して見積書作成のプロセスを管理し、落札するための最適な価格を見出すためのソフトウェアシステムは存在しませんでした。

入札のニーズは、これまでModelN、Apttus/Conga、SAPなどの大規模な収益管理ソリューションのいずれかでカバーされていた。

Runa CapitalのパートナーであるKonstantin Vinogradov(コンスタンチン・ビノグラードフ)氏は、次のように述べている。

当社は2011年から規制産業向けのソフトウェアソリューションに投資していますが、今こそライフサイエンス産業における入札の自動化に最適な時期だと考えています。一方では、パンデミックによって予算が増え、この業界全体の重要性が高まったこと、他方では、大企業におけるデジタル化の欠如と非効率的な官僚的プロセスの多さが浮き彫りになったことが挙げられます。我々は、これを大きなチャンスと捉えています。

画像クレジット:designer491 / Getty Images

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

音楽のNFT販売を支援するプラットフォーム「Sound.xyz」がa16zから5.7億円調達

2021年、私たちはNFT(非代替性トークン)がビジュアルアート販売の経済を揺るがす証拠を山ほど見てきたが、アート世界の別分野、たとえば音楽の経済をWeb3がひっくり返す、という動きはあまり見ることがない。

Sound.xyzは、ミュージシャンがNFTを通じて収益をあげるためのコミュニティを作ろうとしているスタートアップで、ミュージシャンたちを、いわゆる「web3 fold」(ウェブスリー・フォールド)と呼ばれる集団に導くための一連のツールを開発している。2021年12月、同社は最初の製品、Listening Parties(リスニング・パーティーズ)を公開した。アーティストが新曲のリリースにタグ付けされたNFTを販売できるようにするツールだ。

同社はAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)がリードしたシードラウンドで500万ドル(約5億7000万円)調達したことをTechCrunchに伝えた。ラウンドには他に、Variant Fund、Weekend Fund、Scalar Capital、Flamingo、Packy McCormici、および21 Savageらが参加している。

同スタートアップは新進アーティストがNFTを活用し、自分たちの作品をより効率的に収益化できるようすることで、Spotifyなどのプラットフォームで得られるストリーム当たり1セント(約1円)以下の利益を乗り越えて欲しいと思っている。

「私たちはアーティストが自分たちの楽曲を新しい方法で収益化するためのツールセットを作っています」とSoundのCEOであるDavid Greenstein(デビッド・グリーンスタイン)氏がTechCrunchに話した。「私たちが解決したい問題は、『音楽を聴いてもらい、アーティストにお金が入るにはどうすればよいか?』です」。

スタートアップは、コミュニティに参加している数多くの「暗号化に理解のある」レコーディングアーティストたちとパートナー契約を結んだ。早期の作品は、数十曲の限定エディションNFTで、すぐに完売した。1万ドル(約114万円)分のNFTを売ることは、100万ドル(約1億1410万円)のセールスに慣れている業界にとって注目に値しないと感じるかもしれないが、同じ金額をSpotifyで稼ぐために数十万回のストリームが必要なアーティストにとっては大きな違いだとグリーンスタイン氏はいう。同社はアーティストの楽曲に結び付けられたNFTの需要を測定しているので、アーティストはコミュニティにさらにNFTをリリースするインセンティブがある。同社がNFTの販売手数料をとっていないことは注目に値する。

チームは他にも、NFT所有者がストリームにコメントを書いてアーティストに読んでもらう、といった機能も実験している。いずれは、ミュージシャンがファンのクラウドファンディングで新しい作品を作ったり、新しいプロジェクトに挑戦できるツールや、収集家が新しい作品を発見したり自慢するための新しいインセンティブモデルを作ろうとしている。

SoundはNFT音楽分野で唯一のプレイヤーではない。2021年11月、a16z Cryptoは、ロイヤリティをトークン化してファンに販売するNFT音楽プラットフォームであるRoyal(ロイヤル)に投資した。ブロックチェーンを利用した音楽ストリーミングプラットフォームAudius(オーディウス)は、General Catalyst(ゼネラル・カタリスト)とCoinbase Ventures(コインベース・ベンチャーズ)らから、1350万ドル(約15億4000万円)以上の資金を調達た。

関連記事:NFT音楽著作権のスタートアップRoyalがa16z Cryptoの主導で63.1億円調達、前ラウンドからわずか3カ月

画像クレジット:Sound

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(文:Lucas Matney、翻訳:Nob Takahashi / facebook

AIを活用したVFXスタートアップ「Wonder Dynamics」がシリーズAで11.4億円を調達

Wonder Dynamics(ワンダー・ダイナミクス)は、AI(人工知能)とクラウドサービスを使って「リビングルームレベル」のクリエイターが「ブロックバスターレベル」のビジュルエフェクトを作れるようにすることを目標にしているが、その内容はベールに包まれている。豪華なアドバイザーを誇る秘密主義の同社は、2022年の製品公開を前に1000万ドル(約11億4000万円)のシリーズAラウンドを完了した。

同社を創業したのは、Nikola Todorovic(ニコラ・トドロビッチ)氏と俳優のTye Sheridan(タイ・シェリダン)氏だ。2人は数年前、映画で一緒に仕事をした際に映画製作ツールの民主化が必要だという信念を共有したことから力を合わせることになった。もちろん、高解像度カメラとコンピューティングパワーによる編集や色調整など、すでに多くのツールは価格も難易度も下がっている。

しかし、本格的VFX(ビデオエフェクト)は別物であり、昨今のカメラとディスプレイの高解像度化とCG(コンピュータグラフィックス)の質向上によって、費用と参入障壁は高いままだ。

Wonder Dyanamicsは、AIとクラウドサービスを利用して、この状況を改善するVFXプラットフォームだが、その正確な内容は未だ秘密裏に隠されている。

「私たちのプラットフォームはまったく新しいプロセスを利用していて、CGやVFXコンテンツを作るのに必要な技術知識をもたないコンテンツクリエイターのための完全なソリューションです」とトドロビッチ氏は説明した。「プロフェッショナルなアーティストのために、制作物は既存のワークフローやソフトウェア(Unreal、Blender、Mayaなど)にエクスポートすることができる。機能はポストプロダクション(撮影後の編集作業)に特化していますが、ハードウェア要件や制作に必要な追加作業を劇的に減らします」。

関連記事:インディーズ映画制作者にAIを活用したVFXを提供するWonder Dynamicsが2.7億円を調達

2022年のSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)で実物を見れば詳細がわかるだろうが、心配な人はそれまでの間、アドバイザーとしてSteven Spielberg(スティーブン・スピルバーグ)氏とJoe Russo(ジョー・ルッソ)氏の名前があることに慰められるかもしれない。もちろん、2人ともベテラン監督であり、作品の見栄えにはうるさい。特にルッソ氏(および兄のAnthony Russo[アンソニー・ルッソ]氏)は、絶対必要な場面以外、CGよりも操演(特撮の一種)を好むことで知られている。

「開発を進めるにつれ、これはビジュアルエフェクトだけのソフトウェア以上のものになるとわかりました」とシェリダン氏がプレスリリースで語った。「当社のプラットフォームは映画、テレビだけでなくビデオゲームやソーシャルメディア・コンテンツ、さらにはメタバースでも利用できる可能性があります」。

後半の用途は、新たな出資者であるEpic Games(エピックゲームズ)とSamsung Next(サムスン・ネクスト)にとってさらなる正当化材料になるだろう。今回1000万ドルのラウンドをリードしたのはHorison Ventures(ホライゾン・ベンチャーズ)で、シードラウンドで出資したFounders Fund(ファウンダーズ・ファンド)とMaC Venture Capital(マック・ベンチャー・キャピタル)も参加した。

画像クレジット:Hiretual

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ジャックフルーツを使った代替肉の普及を目指すjack & annie’sが約26.3億円調達

jack & annie’sの創業者アニー・リュウ氏(画像クレジット:jack & annie’s)

ジャックフルーツ(パラミツ)を原料にするサステナブルな代替肉ブランドJack & annie’sが、米国時間12月14日に2300万ドル(約26億3000万円)のシリーズBの調達を発表した。

ラウンドはCreadevとDesert Bloomがともにリードし、Wheatsheafと既存の投資家Beta AngelsおよびInvestEcoが参加した。同社の創業者でCEOのAnnie Ryu(アニー・リュウ)氏は、TechCrunchに対して、以前のラウンドは発表しなかったし、これまでの総調達額も公表しないが、今回は「これまでのラウンドの合計より大きい」と語った。

ジャックフルーツの製品化のアイデアを思いついたのは10年前、リュウ氏がハーバードの医学部大学院の学生時代だった。彼女は弟と一緒に会社を起こし、インドでジャックフルーツを知った。

リュウ氏はこの果実が干ばつに強くて収量も多いことを知ったが、現地の人たちが好きなだけ食べても70%が未使用であることもわかった。世界の健康が研究テーマだったリュウ氏は、この果実の利用量を増やすことで地域の貧困を終わらせたいと考えた。今日では彼女のブランドは1000戸の農家と協力して、彼らの収入の10〜40%を提供している。

その後、リュウ氏は「ジャックフルーツ最大のサプライチェーンの開拓」を始めた。最初に作ったブランドは2015年に厚い果肉を利用し、コクのあるフレーバーでタンパク質や食物繊維など栄養価も高かった食品を提供した。現在、The Jackfruit Co.は約10種類の製品を、主にベジタリアン向けに販売している。当初はWhole Foodsが販路だったが、その後、拡大している。

2020年にローンチしたjack & annie’sは、リュウ氏によれば「とても親しみやすい」ブランドだという。同社は10種類の冷凍食品をそぼろやミートボール、ナゲットなどの原料として売っている。小売価格は、冷凍製品が4.99〜5.99ドル(約570〜約680円)、冷蔵製品が6.99ドル〜7.99ドル(約800〜910円)となっている。

ジャックフルーツを原料とする植物性の代替肉食品を扱う企業がいくつか登場している。2020年はシンガポールのKaranaが170万ドル(約1億9000万円)を調達して、植物性の豚肉代替食をこの果実で開発している。UptonのNaturalsThe Very Good Butchers、そしてNative Forestなども、この果実を使った代替肉食品を作っている。

関連記事:ジャックフルーツで人工肉を作るシンガポール拠点のKaranaが1.8億円調達

しかしリュウ氏のブランドは1年足らずで1500ほどのリテイラーに広がり、その中にはWhole FoodsやSprouts、Meijer、Wegman’s、Hannaford、Target、Giantなどもいる。同社はまた、植物性代替肉の冷凍製品では3番めに大きいブランドだ。また自然食品の流通チャネルでは同社は、SPINS Natural Channelによると、10月3日までの12週でナゲットのトップだった、とリュウ氏はいう。

同社の売上は前年比で倍増というペースを続けており、今度の資金はパートナーシップの構築の継続と、新たなイノベーション、各店におけるシェルフスペースの拡大、総流通量の拡大に投じられる。

リュウ氏によると「ジャックフルーツはビーフやポーク、チキン、シーフードなどのようにしやすため、これまで行ってきたことは氷山の一角にすぎないでしょう。リーダーとしてやるべきことは、多くの顧客のイノベーションパートナーであることです。彼らがジャックフルーツの肉のような食感を利用し、素性がわかる良質な原料だけで美味しい製品やメニューを開発しているときは、私たちがボウルダーにあるR&Dセンターを利用して協力することができます」という。

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)