Facebookの“出会い系”サービスを信用してはいけない7つの理由

今週Facebookは大きなプロダクトの提供を開始した。キャリアを重ねたソーシャルネットワークにとってそれは全く当たり前の動きかのように、塀で囲まれた庭でアルゴリズムによるデートサービスのスロットを回した。

これを聞いて浮かれた方は踊るダディのGIFをここから挿入できる。

Facebookのデートサービスへの参入はまるで中年の危機のようだー多くのアプリユーザーが、ソーシャルネットワークでの“ライフキャスティング”から、プライベートメッセージやグループ専用のメッセージ・共有アプリなどを使ったより広く共有できる形態のものに移行しつつある中で、このベテランのソーシャルネットワークはユーザーに受け入れられそうな戦略を必死になって模索している。

かつてのFacebookのステータスアップデート機能は、若いアプリユーザーにとって自由に選べるソーシャル手段の一つであるSnapchat(そして今やInstagramも)のストーリーに長い間お株を奪われてきた。もちろんFacebookは後者のプロダクトを所有していて、無情にもストーリーを模倣している。しかしFacebookは、インターネット時代にあって化石のようになっているその旗艦サービスを消滅させたいわけではない。

新しい目的をもたせたプロダクトとして復活させなければー。そうしてオンラインデートに行き着いた。

Facebook(いや、今や ‘Datebook’だろうか)はこのデートアプリの実験をベータマーケットとしてコロンビアで展開している。しかし明らかに、最近人気のオンラインデート分野で世界的メジャーになるという野心を持っている。eHarmonyやOkCupidのようなオンラインデートを長らく展開してきた会社、そして女性主導のアプリBumbleのように比較的新規で特化型のデートスタートアップと競合することになる。

しかしながらザッカーバーグはオンラインデートの代名詞的存在Tinderと競おうとしているわけはない。そして、単に“ひっかける”アプリにするつもりはないーFacebookがいうところのサブカテゴリーとは無縁でありたいと考えている。

それよりも、顔に平手打ちをくらうようなショックのあるBang with Friendsではなく、“石鹸カービング/犬のグルーミング競争/エクストリームスポーツなどに興味のある友達の友達と集う”的なものにしたいとFacebookは考えている(Bang with Friendsは6年ほど前にFacebookとセックスを組み合わせようとした実験的なスターアトップだーデートアプリを展開するシンガポール拠点のPaktorに買収され、再びその名を聞くことはないだろう。いや、Facebookがデートアプリ業界に参入するまでその名を聞くことはなく、今回いかにBang with Friendsが我々を笑わせたかを思い出させた)。

マーク・ザッカーバーグの会社はなにもわいせつなものを展開したいと考えているわけではない。違う、違う、絶対ダメだ。セックスなしでよろしく。我々はFacebookだ!

Facebookのデートサービスはセックスアプリと呼ばれないよう、注意深く立ち位置をとり、オンラインデート業界では風流なアプローチをとっている。たとえば、アプリはすでにつながっている友達同士をマッチングでくっつけないよう設計されている(しかしながら、Facebookは元カノ・元カレがきちんと除外されていない過去のコンテンツから‘フォトメモリー”をユーザーに見せる傾向があることを考えると、アルゴリズムで元カノ・元カレとマッチングされないというのは祈るしかない)。また、マッチングがうまくいった場合でも、ポルノ的なものがスルーするかもしれないため、フォトメッセージを交換することはできない。

FacebookがヌードNGなのは立派だ。しかし驚きはしないが、いや驚きかもしれないがそこからデートアプリを立ち上げた。‘オールドファッションの良き健全な’テキストベースのチャットつながりだけを(クリーンなFacebookコンテンツに関連するもの)ここではお願いしたい。

しかしながら、もしあなたが率直な結婚のプロポーズをテキストしたくなったらーソーシャルメディアでの紅茶占い、そしてミックスされた中から将来を共にする人生のパートナーを選び抜くFacebookのデータサイエンティストの腕前を100%信じるならーアルゴリズムはおそらくあなたに微笑みかけるだろう。

Facebookの言い分は、ネットワークのパワー(そしてそこから搾取されたデータ)で人々がより意義のある(新たな)関係を築くのを手伝うことで、結果として‘有意義な時間’を促進するという新たなミッションを果たすのにデートが有効、というものだ。

このミッションは、倫理的なもの、そして/またはモラルの成り行き(Bozが忘れなれないほどに記したように)を考慮せずに言うと、Facebookがこれまで展開してきた、この地球上の人間を同じく地球にいる別の人間とつなげるというものに比べるとはるかに高度だ。それはまるで、パゾリー二の映画「ソドムの市」のホラーを愛する精神を流そうと試みているようだ。または、人間ムカデかもしれない。

それはさておいて、最近Facebookは10代半ばの人に、大人なもの、少しは価値あるものととらえられたいようだ。なので、このオンラインデートでは‘カジュアルな出会い’というより‘結婚の材料’的に演出している。しかし、まあ、プロダクトがいつも意図した通りのものになるとは限らない。なので、このオンラインデートを活用するには勇気が必要かもしれないし、おかしなことにならないよう祈らなければいけないかもしれない。

ユーザーの観点から言うと、別の見方もある。近頃Facebookで必然的についてくる機能やサービスがどれくらいのものかというのを考えたとき、本当に急を要する問題というのは、良識のある人がマーク・ザッカーバーグにキューピッドの矢を放たさせるべきかということだろう。

彼は残念ながら、悪意あるクレムリンのプロパガンダと、ラテや赤ちゃんの写真のような通常のソーシャルネットワーキングとしての事業とを区別できなかった。ゆえに、彼が人の心の微妙なニュアンスをどうやって調整するというのだろうか。

オンラインデートというFacebookの戯れからできるだけ距離をおいた方がいいと我々が考えるその理由を下記に挙げる。

1.これは別のシニカルなデータ搾取だ 

Facebookのターゲット広告ビジネスモデルは、絶え間ないユーザーの追跡の上に成り立っているーつまりそのビジネスにはユーザーのデータが必要なのだ。シンプルに言おう。あなたのプライバシーがFacebookの生き血になっている。Facebookは巧みに虫が来た道を戻り、そして/または人々の生活に食い込むようないやらしさを抑えた方策を見つけ出そうとしていて、それゆえにオンラインデートというのは、別の大きなデータ搾取を覆うための手軽な薄板にすぎない。“意義ある関係”を育むために独身者をマッチングするというのは、どれだけの個人情報を彼らが扱っているかを人々に忘れさせるための程のいいマーケティング装飾だ。さらに悪いのが、デートサービスというのは、ユーザーが明るみに出してもいいと思うようなものよりもっと個人的な情報をシェアするようFacebookが尋ねてくることを意味するー繰り返しになるが、この会社のビジネスモデルは、オンラインかオフラインか、またウェブ上で囲われた庭の中にいるのか外にいるのか、そしてFacebookユーザーかどうかも関係なく、人々の行動を追跡することで成り立っている。

これはまた、Facebookの元祖ソーシャルネットワークのユーザーがFacebook疲れを見せていた時に、さらには大きなプライバシースキャンダル後にユーザーがFacebookサービスの使用方法を変えつつあるときにすら行われている。なのでFacebookがデートサービスを行うというのは、Facebookを中傷する人に注意がいかないよう、ユーザーの目からこれ以上うろこが落ちることがないよう、新たに気をそらすための方策を意図しているとみられる。アルゴリズムでハート型の約束をしたターゲット広告ビジネスモデルについて巻き起こっている疑念を覆い隠したいのだ。

そこに横たわっている本当の情熱というのは、あなたのプライベートな情報をお金に変えたいというFacebookの激しい欲望なのだ。

2.Facebookのプライバシーを踏みにじってきたこれまでの経緯から単に信用できない

Facebookは長らくプライバシーへの敵対行為をとってきたーセッティングで、プライベート設定だったものをパブリックにデフォルトで故意に切り替えたりしたことも含まれる(このラチェットを押しもどすには行政介入が必要とされてきた)ーなのでデートサービスでは完全に別のバケツにデータを溜め込むことを意味するだろう。また、このサービスでシェアされる情報はユーザープロフィールの外に出ることはなく、Facebookのあちこちにいる広告がらみの特定の人にも表示されないとしているが、この点はかなり懐疑的に考えるべきだろう。

FacebookはまたWhatsAppユーザーのデータがFacebookユーザーのデータと混ざって一緒になることはない、としているーしかし実際に起こっていることに目を向けてほしい。

さらには、Facebookがアプリデベロッパーにプラットフォームからユーザーデータを気前よく渡していたという経緯もある。そこには(何年にもわたる)‘friend data’も含まれる。まったく生ぬるい話だ。しかしFacebookのフレンドデータAPIは、Facebookユーザー個人がたとえ特定のアプリの利用規約に同意していなくても、データが抜き取られるような仕組みとなっている。これが、ユーザーの個人情報があちこちに散らばることになる理由だーここにはあらゆる種類のあるはずのないところも含まれる。(Facebookはこの点に関し、ポリシーを適用しておらず、ユーザーデーターの抜き取りをシステム的に悪用することにもなるこの機能を何らかの理由で実行している)。

長くも短くもあるFacebookとプライバシーの歴史は、情報は一つの目的のために使用される、はずだったのが結局全てのものに使用されている、ということに終わっている。全てのもの、の半分すら我々は知らない。また、Facebook自身もなぜいま、最大のアプリ監査をしているのかわかっていない。にもかかわらずこのまったく同じ会社が、恋愛や性的な好みなどかなり個人的な情報を教えてほしいと言っている。考えた方がいい、本当に。

3.Facebookはすでにオンライン上の注意の多くを集めているーさらに注意を向ける必要があるのか。特に独身者のデートに関しては、驚くほど多様なアプリが展開されているのに…

西洋諸国においては、Facebookという会社から逃れるためのスペースはさほど多く残されていない。友達が使っているソーシャルシェアリングツールを使えるようになりたいと思っていればの話だ。そうした理由でネットワークの影響は極めてパワフルで、Facebookが所有している、人気で圧倒的なソーシャルネットワークは1つだけではなく、ほとんどを握っているといってもいい。それはInstagramやWhatsAppを買収したことに表れている(加えてそのほかにも買収していて、いくつかは廃止した)。しかしオンラインデーティングというのは、現在のところ、Facebookにとって歓迎すべき一休みとなっている。Facebookが関わっていなかったこの分野が、あらゆるタイプや好みに対応するスタートアップやサービスによって展開されてきたといのは、間違いなく偶然ではないだろう。黒人の独身者向けのデートアプリもあれば、ムスリムの人をマッチングするサービスもあり、ユダヤ人向けのものもいくつかある。クリスチャン向けのデートアプリも多数あり、アジア人のマッチングに特化したデートサービスも少なくとも一つはある。その他にも、中国系アメリカ人向け、怪しい女性専用のデートアプリ男性向けのゲイデートアプリ(もちろんゲイも同様にアプリを利用している)。いくつかだが、マッチングゲームを提供するデートアプリもある。そうしたアプリは、思わぬものを発見する能力と、逸した機会(missed connections)を通じて知らない人同士をくっつける位置情報に頼っている。アプリでは、お試してしてマッチする可能性のある人とライブでビデオチャットをすることもできる。もちろん、アルゴリズムでマッチングをするアプリはたくさんある。こうしたデートアプリを使えば独身者はさみしくない。それは確かだろう。

だから一体全体どうして、独身者を楽しませるこの多様でクリエイティブな‘見知らぬ人とのやりとり”の業界を、ソーシャルネットワーク大企業に譲らなければならないだろうか。人々の注意を引くことではFacebookはすでに独占状態で、これを拡大させることができるだけだ。

どうしてこの豊富な選択肢を縮小させて、Facebookに利益アップさせる必要があるだろうか。もしFacebookのデートサービスが人気になったら、競合サービスに向けられていた注意をひきつけることになるだろうーおそらく小さなデートサービス事業者の多くが整理されることになり、よりスケールを大きくしようと統合し、重量800ポンドもあるFacebookゴリラに立ち向かうことになる。いくつかのサービス事業者は、より包括的に(そして大きく)独身者を囲い込むことを求めるマーケットのプレッシャーにより、これまでより特化度合いを緩める必要があると感じるかもしれない。また他の事業者は、事業を維持するのにこれ以上十分なニッチユーザーを集めることができないと感じるかもしれない。独身者が現在楽しんでいるデートアプリの選択肢が狭まるというのは泣きたいくらい恥ずべきことだ。これが、Facebookのサービス開始をここで冷たく扱う理由だ。

4.アルゴリズムによるデートサービスは空手形で、Facebookの監視をより人間的にしようというシニカルな試みだ

Facebookは、ターゲット広告を展開するために人々を追跡していたとして概して非難されている。人々を追跡することでユーザーに“関連のある広告”を提供することができるので人の役に立っていると主張している。もちろん、全てのディスプレイ上の広告が誰も見ようと選んだものではないことを考えると、それは紙切れ上だけでの議論で、それゆえにその人が本当に関わっているものから注意をそらすものが必要となる。

社会を分断するようなFacebookの広告Facebookを介した悪意ある政治的プロパガンダの広まり保護されるべきグループへの差別的なFacebookのターゲット広告、または実際に詐欺を広げているだけのFacebook広告など、Facebookの広告プラットフォームに伴う主要なスキャンダルにより、近年の緊張が高まるなかで出てきた議論もある。少なくとも、ターゲット広告会社が抱える問題のリストは長く、今後も増えるのは確かだ。

しかし、マッチング目的のデートとデータに関するFacebookの主張に目を向けると、Facebookはみんなの全行動を監視するという悪しき習慣を、愛を作り出すという形式に変えるアルゴリズム専門家を抱えていることになる。

なので、あなたに何かを売ろうという‘関連’広告を受け取るだけでない。Facebookの監視はあなたにとって大切な誰かを探すための特別なソースとなる。

正直、これは油断のならないこと以上の問題だ。(また文字通りブラックミラーエピソードだーこれは機能障害のサイエンスフィクションに違いない)。Facebookは、人々を監視するという不快なプラクティスをパッケージにして売るための新たな手段を必要としていて、そのためにデートサービスに参入する。ビジネスラインを正常化するための試み以上となることを期待している(たとえば監視は、人々がもしかしたらクリックするかもしれない広告をみせるために必要なものだ)ー広告プラットフォームが社会的問題のあらゆるノックオンを引き起こしていることを示していて、にわかに問題となっているーFacebookにあなたを毎日24時間監視させることで将来の幸せが確約されるかもしれない。というのも、アルゴリズムが絶えず1か0かで扱っているデータの中からあなたの好みに合いそうな人を選び、追跡しているからだ。

もちらん、これはまったくくだらない。何が、ある人に相手をクリックさせる(あるいはさせない)のかを決めるアルゴリズム的な決まりはない。もしあったとしたら、人がずいぶん昔に気づき、そして商売にしていただろう。(そして当然の帰結として恐ろしい倫理上の問題を抱えていただろう)。

人は数学ではない。人間というのは、パーツと興味の数が整然と合計されてできているわけではない。だからこそ人の暮らしというのは、Facebook上でみるものよりずっと面白いのだ。そして、だからこそ巷には数多くのデートアプリがあり、あらゆるタイプの人や好みに対応している。

残念ながら、Facebookにはこうしたことが見えていない。というか、認めることもできない。だから、デートアプリ立ち上げを正当化しようとする‘専門の’アルゴリズムマッチングと‘データサイエンス’に我々はナンセンスさを感じる。悪いが、それは全てマーケティングのためだ。

Facebookのデータサイエンティストが矢を放つキューピッドになろうとするという考えは、馬鹿げていると同時に不合理でもある。どのマッチングサービスにしても、そうした働きを放棄している。しかし、ランダムな結果の代償が絶え間ない監視だとしたら、このサービスはまったく不釣り合いなコストを伴うことになるー結果としてこれはユーザーにとってまったくフェアではなく魅力もない交換となる。繰り返しになるが、人々は見返りに何かを得るどころか、何かをあきらめることになる。

もしあなたが、同じ趣味を持つ人や同じ友達グループにいる人にフォーカスした方が“最適の人”を探すのは簡単だと考えているのなら、Facebookのデートサービスに頼らなくても、相手探しができる実在のサービスは山ほどある(クラブに入る。友達のパーティーに行く。または、趣味によるマッチングを行う既存デートサービスの結果からこれという人を選ぶなど)。

山にハイキングに行き、頂上で妻となる人に出会うことと同じだ(実際に私の知っているカップルがそうだったように)。愛に方式はないのだ。ありがたいことに。社会性のないデータサイエンティストがあなたのために素敵な人を見つけるとうたっているようなデートサービスをあなたに売りつけようとしている人を信用してはいけない。

Facebookの‘愛のマジック’の働きは、次のアプリベースのマッチングサービスと同じくらい良くも悪くもなる。‘デート可能’な独身者を引きあわせるだけでなく結びつけるのに方式はないー引きあわせるのはデートアプリやウェブサイトが何年も何年もうまくやっている。Facebookのデートサービスは不要だ。

Facebookはオンラインデートで、たとえばOkCupidよりもう少したくさんのことを提供できる。OkCupidはそれなりの規模で展開していて、マッチングにユーザーのロケーションと趣味を活用しているが、OkCupidにはなくてFacebookができることにイベントの組み込みがある。これは、実際にデートしようということで合意するより、よりくだけた環境でのお試しデートとなる。しかしながら、本当にこれらを計画して実行に移すというのはぎこちないことのように思われる。

Facebookのデートサービスへの包括的アプローチは、より特化したサービス(女性のニーズを満たすべくつくられたBumbleのような女性にフォーカスした事業者、または前述のとおり、同じ趣向を持った独身者に引きあわせるのにフォーカスしたコミュニティなど)の恩恵を受けている特定の独身者にとって物足りないものとなる。

Facebookは、デートサービスは規模の問題だととらえている向きがある。そして、さまざまなコミュニティに応えるサービスが展開されているこの業界で、Facebookは包括的に大きな存在となりたいようだ。多くの独身者にとって、全アプローチというのはタイプの人探しが難しくなるだけだ。

5.デートサービスはFacebookが取り組むべき課題をはぐらかしている

Facebookの創業者は‘Facebookを修理する’ことを今年の個人的な優先課題とした。これは、同社がいかに多くの問題が引き起こしてきたかをはっきりと示している。小さなバグ修理のことを言っているのではない。Facebookはプラットフォームにとんでもない量の地獄のような落とし穴を抱えていて、その過程でさまざまな人権を脅かしている。これは全くささいなことなどではない。本当にひどいものは、プラットフォームで暗渠のような存在となっている。

たとえば今年初め、国連はFacebookのプラットフォームがミャンマーで“けだもの”になったと非難したームスリム系少数派ロヒンギャに対する民族迫害を煽り、武装化させたというものだ。Facebookは、ミャンマーで民族憎悪や暴力を広めるのにソフトウェアが使われるのをやめさせようと十分な対策をとっていなかったことを認めた。人権団体は、ロヒンギャ難民の大虐殺を集団虐殺と表現している。

これは特異な例ではない。フィリピンでは最近、大きな人権危機がみられるー選挙運動でFacebookを利用した政府が、血まみれの‘麻薬撲滅戦争’で何千人も殺害しながら非難をかわすのにFacebookを使っていた。インドでは、Facebook傘下のメッセージアプリWhatsAppが複数の集団暴行や殺人に使われていたことが明らかになったーアプリを介して稲妻のように広がった嘘を人々が信じたのだ。そのようなひどい問題に反してーFacebookのプロダクトは少なくとも助けとはならないーFacebookが新たなビジネス分野に資源を注ぎ込み、全く新しいインターフェースとメッセージシステムを構築するのにエンジニアを使おうとしているのが見て取れる(メッセージシステムというのは、Facebookのデートサービスユーザーがテキストを交換できるようにするもの。いかがわしいものになるリスクをなくすため、写真やビデオは送れない)。

こうしたことから、Facebookがミャンマーで起こっていることに注意を払わなかったことは、本当に嘆かわしいー現地の機関は長い間、ひどい誤使用に歯止めをかけるためにプロダクトに制限を設けるべきだ、と要求してきた。

にもかかわらず、Facebookは5月にMessengerアプリに会話を報告するオプションを加えただけだった。

その時期にFacebookがデートサービス立ち上げに力を注いでいたというのは、いくつかのマーケットでプロダクトが人権侵害の暗渠となるのを防ぐのに十分な努力をしなかったことを意味し、これは少なくとも倫理に反するといえる。

Facebookのデートサービスを利用するだろうユーザーはそれゆえに、彼らのマッチングはザッカーバーグとその会社によって優先され、それにも増して、より強いセーフガードとガードレールがさまざまなプラットフォームに加えられるかもしれないと不安を感じるかもしれない。

6.デートサービスを利用してもらうことでFacebookはそれぞれのソーシャルストリームをミックスしている

Facebookのデートサービスで不安なのは、Facebookが既存ユーザーに(ほとんどが結婚しているか、長く付き合っているパートナーがいる)、包括的なソーシャルネットワークでは当たり前というようにデートのレイヤーをかぶせるのはまったく普通のことだと思わせることで、巧妙な動きを引き出そうと試みていることだ。

突然、場所が売りに出され、トレードされる。まるで人々が‘友情’を築いていたプラトニックな場所に、性的な機会が突然もたらされるかのように。もちろん、Facebookはデートをオプトインする要素をFacebookの中に隠すことで(そこでは、いかなるアクティビティもしっかりしまわれ、Facebookのメーンストリームには表れない[と言っている])、そうした欲望にかられた動きを完全に別のものとして区別しようとしている。しかしFacebookのデートサービスの存在は、Facebookを使っていて特定の付き合っている人がいるユーザーにデートアプリ会社と関わりを持たせることを意味する。

Facebookのユーザーはまた、オンラインデートに密かにサインアップする機会がつきまとうことになると感じるかもしれないーユーザーの配偶者がFacebookを利用しているかしていないかにかかわらず、配偶者にバレないように浮気のメッセージを密かに受けわたす役割を担うことをFacebookは約束した。

Facebookが不貞を支えることになるかもしれない、ということについてどう思うだろうか。どうなるのかはしばらく待ってみなければわからない。Facebookの役員は過去、Facebookは‘人々や時間を結びつける’ビジネスだと言った。なので、おそらく暗流として働く、そして人間のつながりの推進を駆り立てるようなひねりのきいたロジックがあるのだろう。しかし、Facebookはデートサービスの導入で自らの立場を“複雑なものに”するかもしれないというリスクを負うーそして結果としてユーザーの上に複雑な結果の雨を降らせる。(それは往々にしてビジネスの拡大という名のもとに行われる)。

なので、‘ストリームをミックスさせない’という代わりに、Facebookは近い平行線という形での社会的相互作用とは完全に反対のタイプの運営でデートサービスをスタートしようとしている。悪い方向に作用するかもしれない? または、‘別の’Facebookデートサービスの誰かがサービスで出会ってアプローチに応えなかった独身者を追いかけ回そうとしたらどうなるのか? (Facebookのデートサービスユーザーは本当のFacebookでの名前のバッジをつけることを考えると、‘超えて渡ってくる’のは簡単な試みとなるかもしれない)。そしてもし、秘密に保存されたところから感情の詰まったメッセージがFacebookメーンストリームに流れ込んだら、事はかなりめちゃくちゃな事態となり得るーそしてユーザーは強いられるというより、サービスによって二重に追い払われることになる。ここでのリスクは、Facebookがデートサービスとソーシャルネットワーキングを組み合わせようとしていることで巣を整えるより汚すだけに終わるということだ。(このさほど上品ではないフレーズもまた私の心に浮かぶ)。

7.ところで誰とデートしたいと思ってる?!

新興マーケット以外では、Facebookの成長は失速している。中年層におけるブームがあったが、ソーシャルネットワーキングは今や末期にあるようだ。と同時に、今日のティーンエイジャーはFacebookにまったく夢中ではない。若いウェブユーザーたちはビジュアルにかかわれるソーシャルアプリにもっと興味がある。そしてFacebookはこのトレンドに敏感な若い人たちを引きつけようと開拓作業を行うだろう。Facebookのデートサービスはおそらく悪い冗談のように聞こえるーあるいは子供にとってのパパのジョークのように。

年齢層についても少し述べるが、35歳以下はFacebookにほとんどひきつけられない。もしかしたら彼らはプロフィールは持つかもしれないが、Facebookはクールだとは思わない。一部の人は使用時間を減らし、ミニ休憩を取りさえするかもしれない。こうした年代の人が昔の学校のクラスメートといちゃつくのにFacebookを使っていた時代は過ぎ去った。また一部の人はFacebookのアカウントを完全に削除しているーそして振り返りはしない。このデートを最もする年代のグループが突然そろってFacebookのマッチング実験にはまるだろうか? それは疑わしい。

また、Facebookがデートサービスを米国外でデビューさせようとしているのは偶然ではないだろう。若くてアプリ大好きな人口を抱える新興マーケットというのは、漠然と面白いデートプロダクトをつくるのに必要な独身者を捕えるのにベストな環境だ。

しかしこのサービスのマーケティングとして、Facebookは20代後半の独身者をひきつけたいと願っているようだーしかしデートアプリユーザーはおそらくFacebookにとって最も気まぐれで扱いにくい人たちだ。そうすると、どういった人が残るか? まだFacebookを使っている、いずれ結婚する、結婚式や赤ちゃんの写真をシェアするのに忙しい、デートマーケットには入っていない、という35歳以上の人たちだ。またはもし彼らが独身であれば、デートアプリによく慣れている若いユーザーに比べてオンラインデーティングに関わろうとする傾向は少ないかもしれない。もちろん、デートアプリは人々が使ってこそ面白く、また魅力的なものだ。これは、競争相手がたくさんいるこの業界で成功するのにFacebookにとって最も大変なハードルとなるーというのも元祖のネットワークは若いものでもなければクールでもない、ヒップでもなければハプニングでもなく、しかも近年アイデンティティクライシスを抱えつつあるようだ。

おそらくFacebookは、中年の離婚経験者の中にニッチな需要を掘り起こすことができるだろうーそれはデジタルでかれらに手がかりを与え、デートゲームに戻ってくるよう手助けをすることでなし得る。(しかしながら、今週デビューしたサービスに何をしてほしいかという提案はゼロだ)。もしザッカーバーグが最も関心がありそうな若い独身者を本当に囲い込みたいのであればーFacebookのデートマーケティングから判断しているのだがー彼はInstagramにデートサービスを加えたほうが幸せだったかもしれない。つまり、InstaLovegramもあり得る。

イメージクレジット: Oliver Henze / Flickr under a CC BY-ND 2.0 license.

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(翻訳:Mizoguchi)

Oculus VRのコンテンツは将来のヘッドセットでも利用できる

Oculusは、次期バージョンのRiftが出てきたとき、デベロッパーの作っているゲームやコンテンツが陳腐化して欲しくない。そこで今日(米国時間9/27)のOculus Connect 5カンファレンスで、Facebook CEO Mark Zuckerbergは、「われわれの製品の将来のバージョンは、旧バージョンと互換性を保つ。Riftで使っているコンテンツはすべて次期バージョンでも使える」と語った。

Oculusヘッドセットの次期バージョンはQuest問を名前来春発売される。ワイヤレスでタッチコントローラーが同梱され、発売時点で50以上のタイトルが揃う予定だ。

この互換戦略は、VR業界でコンテンツ制作が維持可能になるだけの売上を見込むためには、ユーザー1000万人以上のハードウェアプラットフォームが必要、というZuckerbergの予想と一致している。VRの普及が遅いことについて昨年Zuckerbergは、OculusによってVRの目標ユーザー数10億人という目標が示されたと言った。彼はこの旅は「1%終わったところ」いや「たぶん1%以下だ」とジョークを言った。

現在ほとんどのVRタイトルはちゃちなインディーズスタジオで作られ、Oculusの今後10年でVRに30億ドル投資するといった取り組みによる資金提供を受けている。これは、ビジネスで利益を得られるほどコンテンツを買うヘッドセットユーザーがいないからだ。現在1100種類のRiftタイトルが作られているが、ハードウェアの進歩によってプレイが不可能になるリスクを抱えていた。

もちろん、もしOculusが本気で互換性を考えているなら、Playstation VRやHTC Viveと協力してプラットフォーム間での体験の移植を容易にすべきだろう。しかし現時点では、毎年コンテンツを作り直さなくてもよいとわかるだけで、デベロッパーはこの没頭型メディアのために安心して開発できるだろう。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

YouTubeのVRアプリがOculus Goにやって来る

ここしばらくGoogleのVR、 DaydreamでベストのコンテンツはYouTubeだった。 ここには大量の360コンテンツが用意されているが、FacebookのOculus Goヘッドセットでは見ることができなかった。

Facebookが開催しているOculus Connect 5デベロッパー・カンファレンスのキーノートで、今朝(米国時間9/26)、YouTube VRが発表された。このアプリが利用できるようになれば、定価199ドルという手頃な価格のOculus Goで大量のVRコンテンツを体験することができるようになるはずだ。

YouTube VRは各種のVRビデオのフォーマットをサポートしている。360 spheres、 360 livestreams、それにVR180プラットフォームで作動する3D立体視ビデオなどだ。

取材中…

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滑川海彦@Facebook Google+

Facebook、Oculus Questを発表――新しいワイヤレスVRヘッドセットは399ドル、来春出荷へ

デベロッパー向けVRカンファレンス、Oculus Connect 5のキーノートでFacebookのCEO、マーク・ザッカーバーグはOculus Questを発表した。この新しいヘッドセットは2019年の春に出荷され、価格は399ドルが予定されている。

Questはワイヤレス接続のスタンドアローンVRヘッドセットとして初めてのフル機能のポジション・トラッキングが可能な製品だ。ヘッドセット自体だけでなく、両手に握るコントローラーにもポジション・トラッキング能力が備わる。出荷時には専用ゲーム50種類以上がバンドルされる。

399ドルというOculus Questの定価は現行フラグシップモデルのOculus Riftと同じだ。ただしRiftの場合、最適な体験を得るためには相当強力なデスクトップゲーム機にケーブルで接続する必要がある。Questの場合は必要なバッテリーやチップを含め処理能力がすべてデバイス内に収められている。今年に入って199ドルでOculus Goが発表されているがQuestはスタンドアローン・ヘッドセットのプレミアモデルとなる。Goは最新のモバイル向けチップセットで動作しているが、ポジション・トラッキングが6自由度ではなく、動きに制約が感じられた。

Questではヘッドセット正面にセットされた4台の広角カメラのおかげで6自由度のポジショントラッキングが可能だ。ハンド・コントローラーのデザインはRiftにバンドルされているものとやや異なるようだが、ボタンのマッピングは同一だ。つまりデベロッパーは従来パソコンペースで作動していた既存のVRゲームをQuest向けに移植するのが簡単になる。ただしモバイル・チップセットに移植するための手間がどの程度軽減されてるのかはまだはっきりしない。

2年前、Oculusがデベロッパー・カンファレンスで最初にデモしたプロトタイプはSanta Cruzと呼ばれ、ポジショントラッキング機能を内蔵したスタンドアローンVRヘッドセットだった。Oculusはその後ポジショントラッキング機能を備えたハンド・コントローラーも追加した。これによりスタンドアローン・ヘッドセットのVR体験がRiftなみに改善されることが期待された。Santa Cruzの製品版であるQuestが出荷されるまで数ヶ月あるので、デベロッパーはこのプラットフォームに慣れる時間があるだろう。QuestはRiftの能力とGoの手軽さの間で最適のバランスを取ろうとするOculusの努力の現れのようだ。

取材中…

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滑川海彦@Facebook Google+

Instagramの共同ファウンダーがFacebookを去った理由――ファミリー企業運営の舵取りは難しい

 

マーク・ザッカーバーグはFacebookが世界最大のソーシャルメディアに成長した後すぐに、ユーザーは決して均一ではないし、Facebookのみによって世界一の座を永久に保持できるわけではないと気づいたようだ。そこで有力なライバイルを片っ端から買収してFacebookグループに加えるという戦略が生まれた。この「グループ戦略」はどちらにとってもメリットのあるウィン-ウィンとなるはずだった。

しかし今週、Instagramの共同ファウンダー、ケビン・シストロムとマイク・クリーガーは唐突に Facebookを離れた。これにより買収した企業を以前のまま独立に運営させるというある種の放任主義が結局は機能しないことがはっきりした。

大型買収がスムーズに進むことはめったにない。つまりInstagramを2012年に $10億ドルで買収した後、シストロムとクリーガーを6年間もグループ内に留めることができたのはFacebookの功績といわねばならない。

テクノロジー企業の買収に関していえば、6年というのは永遠に近い長い期間だが、一方で買収後もグループの枠内でスタートアップを成長させていくというFacebookのビジョンに照らせば短すぎる。

Facebookファミリー

スタートアップとエンタープライズという2つの世界の「いいとこどり」のアプローチが目指したのはこういうことだ。つまり、スタートアップがFacebookファミリーに加わっていれば自由な経営が許されると同時に、潤沢な資金に加えてエンジニアリングやマーケティングその他の経営リソースも確保されるはずだった。

WhatsAppの場合、 共同ファウンダーのJan Koum は4年、Brian Actonは3年半でFacebookを去っている。WatsAppを190億ドルで買収したのは2014年だったが、その後のVRのOculusを買収でも共同ファウンダーのPalmer Luckyを政治的紛争で、Brendan Iribe(人事刷新)でそれぞれ失っている。現在はGoogle出身で元Xiaomiのバイスプレジデント、Hugo BarraがFacebookのVR担当バイスプレジデントだ。

通常のテクノロジー買収なら6年といわず3年でも買収先スタートアップのファウンダーを引き止めておければ十分な成功だ。しかし多くのファウンダーは連続起業家であり、たとえ買収によって一生困らないほどの大金持ちになっても起業を止めることはない。何かを作ること、それを完全に自由に運営すること、急成長させることにはなんともいえないスリルがあるという。しかしこうしたことは買収後はすっかり変わってしまう。スタートアップのファウンダーは完全なボスだ。大企業の社員からファウンダーになるのも心構えの大きな変化を必要とするが、その逆となるとさらに難しい。買収されたスタートアップが親会社の成長戦略の重要な柱を担う場合はなおさらだ。

Facebookはグループ企業の自治を約束してこの衝撃を緩和しようとした。

事実2人の共同ファウンダーは大きな裁量権を維持し、シストロムはInstagramの顔の役割を果たしてきた。情報によれば、シストロムはすべての広告を自分で承認していたという。この点はFacebookの取締役に就任したKoumの場合も同様で、Koumは WhatsAppの買収を「提携」と呼んでいた。ファウンダーたちは Facebookの買収後も会社の運営権の掌握を強く求めていた。

WhatsAppのファウンダー、Jan Koumは買収後、Facebookの取締役会に加わったものの、巨大企業の管理圧力には勝てなかったと言われる

運営の独立vsFacebookの利害

しかし「経営の独立」は結局機能しなかった。

WhatsAppとInstagramの4人のファウンダーたちはやはりスタートアップを彼らのビジョンに沿って成長させようとし、その点を原因としてすべてFacebookを去ることとなった。【略】

InstagramでもWhatsApp同様、シストロムとクリーガーはFacebookの経営陣と対立することになった。TechCrunchのJosh Constine記者の詳しいリポートによれば、Facebookはスタートアップの「独立性を弱めようとした」という。これが共同ファウンダーの不満を呼び、最終的には唐突な辞職を招いた。

シストロムの辞職にあたっての短いメモはこの点をぶっきらぼうに強調したものとなっている。こうした離職声明にはザッカーバーグとシェリル・サンドバーグを始めとするFacebookのトップへの感謝の言葉が置かれるものだが見当たらない。その代わりシストロムは「クリーガーと私は好奇心と創造性を再び発揮して新しいプロダクトを作ろうと考えている」と述べている。

Facebookによる2012年の買収後もシストロムはInstagramの顔を務めてきた

全体としてみればFacebookはファミリー企業の独立性の維持に努力してきたほうだろう。しかし4人のファウンダーが去ったことでも分かるように優秀な起業家は檻に入れておくことも手なづけることもできないものだ。しかし数十億ドルの買収ともなれば支払った側はそれに見合うだけ長く人材を引き止めておきたいと考える。Facebookは少しルールを曲げてもスタートアップの独立性を尊重し、ファウンダーの引き止めを図った。しかし永久に重力に逆らっていることはできなかった。

ファウンダーを失ったといってもFacebookはInstagramの買収で空前の成功を収めている。 Instagramのユーザーは買収時点で3000万人程度だったが、今や10億人だ。WhatsAppも買収時の4億5000万人から15億人へと3倍以上に成長した。

今後の見通しにあたって重要な点はFacebookの生え抜きチームはファウンダーが去った後のファミリー企業を以前同様に成長させていけるかどうかだろう。ファウンダーが去ったことによる才能の空白もさることながら、企業文化が変化すれば大きな打撃になりかねない。買収した企業はあくまでFacebook本体とは異なる存在だとユーザーが認識させておく必要があるからだ。そもそもFacebookがこうしたスタートアップを買収したのはその点が狙いだった。ソーシャルネットワークをとFacebookがイコールになってはならない。そうなればユーザーは飽きてしまうだろう。

画像: Saul Loeb / AFP / Getty Images

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滑川海彦@Facebook Google+

欧州委、Facebookに警告「消費者権利に関する利用規約、年内見直しを」

【編集部注】米国版では現地時間9月20日に公開された

Facebookの対応にしびれを切らしつつある消費者問題を担当する欧州委員会のトップは、Facebookに対し利用規約が欧州連合(EU)の消費者保護ルールに沿うものになるよう、年末までにさらなる変更を加える必要があると警告した。

委員会はまた、Airbnbは12月までに利用規約に追加変更を加えることに同意したとも述べた。

欧州委員会はこの2年間、テックやソーシャルメディアのプラットフォームの利用規約が市民の消費者の権利を侵害していると、指摘してきた。

2月、消費者の権利を尊重する措置を拡充させる必要があると、多くの企業に対して警告した。7月には、委員会はEU消費者保護当局と一緒になってAirbnbに変更を促した。

同時に、委員会はEUの消費者ルールを近代化するためにアップデートを行なっている。EUの法律を改正するためには欧州理事会の賛同を得なければならないが、その欧州理事会を通じて欧州議会と加盟国のサポートも得られれば、と考えている。

「各国の消費者保護当局の取り組みには敬意を表するが、時として国単独の力は企業と協力して進めていく上で十分なものではない」とコミッショナーのVera Jourovaは今日ツイートした。「それゆえに我々が提案する#NewDealForConsumersは消費者保護当局の権限を強め、説得力のある制裁を持たせる」。

Reutersの報道では、TwitterもまたEUの消費者保護法に則って利用規約を変更しなければならないと委員会から警告を受けた。

委員会の広報は、Twitterにかかる懸念は、コンテンツの削除、アカウントの廃止、またそれらをいかにユーザーに知らせてアピールできるかに関連した規約だと述べた。

欧州共同体のテック大企業に対する無情ともいえる糾弾は、戦略的な政治的手段だ。というのも、原因を改め、ルール変更への理解を得るために注意をひきたいからだ。

しかし、明らかにソーシャルメディア大企業は現EU消費者保護ルールを遵守するためにさほど努力はしていないようだ。

“オンライン上でのEU消費者の公正な扱い”を確かなものにするための各社の取り組みについて、今日の記者会見Jourovaは新たな見解を示した。Airbnbの最近の利用規約はコストについて十分に明らかではなく消費者をまだミスリードしている、Facebookの利用規約はユーザーのデータがいかにサードパーティに渡されるか明らかではない、というものだ。

Jourovaは、この件で2年間も話し合いを続けてきて、“我慢も限界だ”とFacebook警告した。

Airbnbについては、ホストのいる施設での1泊あたりのトータル費用が“購入”する前に消費者によりわかりやすいものになるよう、年末までに変更を加えることにAirbnbは合意した、とJourovaは説明した。

「7月にあった質疑を経て、Airbnbは価格の透明性を高めると我々に通知してきたーこれにより、消費者が最終料金や追加料金を前もって知ることができる。Airbnbはまた利用規約にも変更を加える。たとえば、消費者は利用可能な法的救済策を使うことができるということ、個人に害を及ぼすようなことがあれば消費者はホストを訴える権利を有することを明らかにする」とJourovaは述べた。

「EUの消費者はまた、オフライン、オンラインどちらでの物の売買においても同様の権利を保障されなければならない」とも付け加えた。「我々はオンライン販売のための特別な規則は有していなかったが、我々が常々言っているのは、オフラインのルールがオンラインにも適用されるべき、ということだ。こうした考えのもとに、EU消費者にサービスを展開するための契約にまだギャップがみられることからAirbnbやFacebookに是正を求めている」。

Jourovaの声明での言及に対し、Airbnbの広報は我々に対し「Airbnbは信頼と透明性の上に成り立つコミュニティというのが、指摘の重要な部分だ。ゲストは予約する前にサービス料や税なども含めた全ての料金について知らされるべきで、ゲストのためにこれが一層クリアになるよう喜んで欧州委員会と協業する」と語った。

Facebookの場合、委員会はさらなる改善を求めている。特に、サービスの主な特徴と、Facebookがユーザーの情報を共有するサードパーティとの関係にかかる利用規約についてさらなる透明性を要求しているー実際に提供されているサービスが互いにどのようにリンクしているか言明すべきと言っている。ここでいうリンクとは、消費者データの利用は消費者がサービスを利用するにあたり当然のこととされているという事実と、商業利用を目的に行われているデータやユーザーコンテンツの搾取(ターゲット広のサードパーティーへの提供すによる)の関連性だ。

欧州委員会は、Facebookの利用規約では、ユーザーがFacebookをやめた後もユーザーのコンテンツに対しFacebookは永久的なライセンスを保有するということについても快く思っておらず、「これはフェアではない」と言っている。

加えて、ユーザーがアップロードしたコンテンツについてFacebookが有する権利についても、サインアップするときに十分に目立つように表記していない、と考えている。

他にもある。Facebookの規約では、ユーザーのコンテンツの削除や一時停止、アカウント廃止の義務について明確になっていないと非難していて、曖昧なフレーズしか利用規約に盛られておらず、消費者が前もって通知されるかどうかも明らかではない、と指摘する。

委員会はまた、消費者の選択肢が一部でははっきりとアピールされていない、と注意喚起もしている。

そして、Facebookが利用規約を自社に有利になるようにしているのも快く思っていない。これはEUの消費者保護ルールに反するとしている。その消費者保護ルールではあってはならない不公平な規約というものを、“販売者またはサプライヤーが契約に記載された正当な理由なしに一方的に契約規約を変更しようとすること”と定義している。

Jourovaは、FacebookとAirbnbが追加の変更を提案する期限は10月18日、としている。その変更は委員会と、この問題に取り組んでいるEU消費者権利の消費者保護コーポレーションネットワークによって吟味されることになる。10月18日期限というのは、12月までに最終的な履行の受け入れを視野に入れてのことだ。そして新たな規約は1月から発効する。

さらにJourovaはFacebookについて、直近のFacebookとのミーティングは“建設的”だったと述べたが、Cambridge Analyticaスキャンダルは“Facebookがユーザーの個人データをいかに扱い、そしてアプリやゲーム、クイズのクリエイターといったサードパーティーといかにつながっているかをそんなに多くの人が把握していなかったという正真正銘の注意喚起となった”と指摘した。

「Facebookがユーザーのデータをサードパーティーが利用できるようにしていたことを、多くの人は知らない。たとえば、Facebookはユーザーがアップした写真やコンテンツについて、それをユーザーがアカウントから削除した後ですら、完全な著作権をもっている。」とJourovaは続ける。そして、「Facebookの利用規約ではユーザーデータがFacebookに属するようになっていることを知り“とても驚いた”という多くのFacebookユーザーと語り合ってきた」とも述べた。

「だからこそ、Facebookにはユーザーに対し、サービスがどのように運営され、どうやって収益をあげているのかを完全に明らかにしてもらいたい。Facebookは欧州に3億8000万人ものユーザーを抱え、そうしたユーザーに対しより責任を持ってほしい」。

「Facebookにはまた、Facebookのサービスを使用することの重大性を理解しようとする人に対し真摯に向き合うことを期待したい」とも加えた。「私はこの件についてイライラしてきていることを隠すつもりはない。なぜなら、我々はFacebookと2年も話し合いを重ねてきた。求めているのは遅々とした進展ではない。そんなのはもう十分だ。ほしいのは結果だ」。

Jourovaの今日のコメントに対し、Facebookの広報は次のような声明を我々に電子メールで送ってきた。

人々はFacebookで貴重な一瞬を共有している。そして我々は皆にとって利用規約がクリアでアクセスしやすいものにしたい。我々はFacebookの利用規約を5月にアップデートしたが、これには消費者保護コーポレーションネットワークとEU委員会がその時点で提案してきた変更の多くが含まれている。当社のチームはいま、Facebook上で何が許され、何が許されないかについて、また人々が有する選択肢について、より明確に認識している。我々は消費者保護コーポレーションネットワークと委員会のフィードバックに感謝する。今後起こりうる問題を理解し、適切にアップデートするため、引き続き緊密に協力したい。

今日の記者会見でJourovaは、EUは“統一した制裁”を持つ必要がある(GDPRのおかげで、データ保護違反について制裁はある)として、拘束力を持たせるために消費者権利違反へのペナルティ制度を提起した。

統一した制裁は、4月に採用された委員会の消費者向けの新政策だーこれは現在、2つの欧州関連団体に検討してもらうため、そして(委員会の希望としては)サポートしてもらうために、提案されている。

Jourovaは、「提案は“広範にわたって消費者の権利の履行を改善させるもの”であり、これを来春までに実現させるためにも欧州議会や加盟国が規制や現状をただちに受け入れることを心から願っている」と述べた。

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(翻訳:Mizoguchi)

ウォルマートが17000台のOculus GoヘッドセットをVRによる作業訓練用に試験的に採用

作業訓練は以前から、企業が仮想現実を利用する最初の主要な分野になる、言われていた。Walmartはすでに、そのトレーニングセンターにVRハードウェアを導入してその方向性を見せていたが、今回同社は、その5000近いストアのすべてにOculus Goヘッドセットを送って、Walmartの社員の教育訓練の頻度を上げようとしている。

この大型店の巨人は、Walmartスーパーセンターの各店舗にヘッドセットを4つずつ、そしてNeighborhood Marketには2つずつ送る。それは全社員を教育訓練できるほどの大量ではないが、それでもWalmartともなれば全体で約17000台のヘッドセットが年内に発送されることになる。

昨年同社は、STRIVR Labsの協力により、同社の200あるトレーニングセンター“Walmart Academy”に仮想現実によるトレーニングを導入する、と発表した。今回はさらにその進化形であり、前のようにPCにつないだOculus RiftではなくOculus Goを使用し、単体VRヘッドセットによる社員教育の将来性をさぐる。今回の、各店におけるわずかな台数でのテストがうまくいけば、OculusとFacebookにとっても勝利になる。なにしろこれまでVRヘッドセットといえば、実際に順調に使用する時間よりも、トラブルシューティングの時間の方が長いことで、悪名高かったのだから。

Oculusで企業とのパートナーシップを担当しているAndy Mathisが、プレスリリースでこう述べている: “Walmartは、VRを利用して社員教育の充実を図った最初の企業のひとつだ。今後その利用は、どんどん拡大するだろう。この分野でVRが魅力的なのは、ふつうのやり方では費用が高すぎたり、難しかったり、そもそも不可能だったりするような教程やシミュレーションを、VRは可能にするだけでなく、今すぐ気軽にできるからだ”。

仮想現実では、プロセスや製品が実在する前にそれらを体験できる。社員にとってその体験は、既存のオプションよりもおもしろいから、居眠り効果などもなく、学習効果が上がるだろう。

STRIVR LabsのCEO Derek Belchはこう述べる: “VRはシミュレーションをベースとする体験的学習の機会を与える。それは、2Dの教材ソフトなどでは不可能だった。VRと教育学習の関係が、Walmartの先進性によりこれほど急速に進展していく様子は、見るだけでも感動的である”。

STRIVRのVR教材ビデオは主に360度ビデオを使用し、画面上に対話を促すプロンプトが出るので、社員は実際のインフラストラクチャが存在する前に、新しい店舗形態などに触れる機会を与えられる。Walmartは、ネットで買った物のための“Pickup Towers”〔日本語参考記事〕という具体例を挙げて、実際に店に据え付けられる前に、VRでそれらと対話する体験があれば、稼働開始も早い、と述べている。

ヘッドセットの店舗への発送は、来月から始まる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

アメリカ国民は選挙のセキュリティを懸念している

新たな大規模調査で、一般的な米国人は選挙への脅威が国の土台を揺らしかねない、と中間選挙に向けて懸念している様子が浮かび上がっている。

公共ラジオNPRとマリスト大学の研究者が、米国の幅広い地域の成人居住者949人を対象に固定電話と携帯電話で9月初旬に調査を行なった。この結果は、外国からの選挙干渉の可能性や選挙セキュリティ対策、ソーシャルメディア企業が社会の目をいかに反映させているかについて、最近の状況をにわかに表している。

FacebookとTwitterに対して

ロシアがソーシャルメディアプラットフォーム上で米国をターゲットに影響力を行使したことが明らかになったが、どれくらいの有権者がFacebookTwitterがこの問題への対策をとったと考えているのだろうか。まだ、納得していないようだ。

米国の中間選挙で“海外からの干渉なしとするために”これら2社が2016年以来どれくらい取り組んだかについての質問で、回答者の24%がFacebookは“かなりの対応”“十分の対応”をとったと回答した一方で、62%が“さほど対応していない”‘全く何もしていない”と答えた。

ツイッターについて同じ質問をしたところ、Twitterが目に見える取り組みを行なった、としたのはたったの19%で、57%がさほど取り組まなかったと答えた。今回の大規模調査で行われた他の質問と異なり、ソーシャルメディアについての質問では共和党、民主党の差がみられなかった。ソーシャルメディアを蔑みの目で見ているという稀な状況となっていて、これは今年顕著なものとなっている。

Facebookで目にする内容を信じるかどうかの問いでは、有権者の12%が“かなり”“大方”プラットフォーム上のコンテンツは真実だと確信しているが、79%は“さほど信じていない”または全く信じていないと回答している。しかしこれらの数字は2018年の選挙からはわずかに改善している。その選挙では、Facebookで目にするコンテンツが正しいと信じている、と答えたのは4%だけだった。

中間選挙について

秋に行われる中間選挙を安全で危険のないものにするための米国の備えについての質問では、回答者の53%がきちんと備えていると考えていて、39%が十分に備えていない、または全く備えていない、としている。予想通り、この質問への答えは支持政党で別れた。備えている、と答えたのは民主党で36%、共和党で74%だった(無党派層では51%だった)。

ロシアが中間選挙中に候補者についての偽情報を広めるのにソーシャルメディアを使うのはかなりあり得る、またはあり得ると有権者の69%もが考えているというのは、かつて信用していたプラットフォームに疑いの眼差しを向けて選挙シーズンを迎えつつあることを示している。

ハッキングについては、回答者の41%が中間選挙の投票者に対し“外国政府が混乱を起こす目的で有権者リストにハッキングする”のはかなりあり得る、またはあり得ると考えている。その一方で、55%が有権者リストへのハッキングはあまりあり得ない、全くあり得ないと回答している。小さいながらも意味のある数字だが、回答者の30%が、外国政府が中間選挙の“結果を変えるために投票数を改ざんする”のはかなりあり得る、あり得ると答えている。

選挙セキュリティについて

選挙セキュリティ実践についての質問に関して、政治的な隔たりが見られなかったのは驚きだ。国土安全保障省が州や地方の選挙を保護するための方策を導入しつつあるにもかかわらず、民主党、共和党、無党派の全ての有権者は、選挙の“実際の結果を守る”と州や地元自治体の当局に信頼を寄せているが、連邦政府をさほど信用していないことが示されている。

いくつかの質問では選択すべき正しい回答があり、幸いにもほとんどの人がその正しい回答を選んでいる。調査に参加した有権者の55%が、電子投票システムで米国の選挙は“干渉や詐欺”に弱くなった、と答えているーこれは攻撃されやすいデジタルシステムではなくローテクで行動記録が残る手法を提唱する選挙セキュリティ専門家の影響によるところが大きい。電子投票システムの方が安全だと誤って考えているのは、民主党では31%だけだったが、共和党では49%にのぼった。

他の(より透明性のある)選挙手法についての質問では、結果は圧倒的に紙による投票が好ましい、としなっているーこれだとかなり安全な選挙になると多くの専門家も広く賛同している。実に有権者の68%が紙による投票の方が“より安全”と考えている。残念ながら、現在の投票システムが広く導入されているのに対し、法律で全州に紙による投票を強制するには政治的障壁が多い。

選挙セキュリティ管理についての最後の質問では、回答者はまたしても正しい答えを選んだようだ。89%もの人が、オンライン投票は米国選挙のセキュリティに終止符を打つようなものだと考えているーこれは間違いだが、8%の人が選挙をインターネットで行う方がより安全と考えている。

こうした調査結果をより詳細に見たければ、結果全容はここにある。そこでより興味深い内容が発見できるかもしれない。または、米国の投票システムが、これまで米国で行われてきた選挙の中で、大統領選ではないものとしては最も重要なものとなる今回の選挙の結果を左右する可能性があると確信することになるかもしれないーその逆もありえる。

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(翻訳:Mizoguchi)

プライベートなソーシャルネットワークを提供するPath、ついにサービス停止

ふたたび、ソーシャルメディア・プラットフォームにさよならを言う日がやってきた。

今年初めにはKloutがサービスを停止したが、この度はPathが舞台を去ることが明らかとなった。かつてはFacebookのライバルとなるかという話もあったが、ついに閉鎖をアナウンスすることとなった(まだあったのかと驚いた人もいるかもしれない)。

8年間にわたってサービスを提供してきたPathだが、10月18日をもってサービス停止となるとのこと。App StoreおよびGoogle Playからは10月1日をもって削除されるようだ。利用している人は、10月18日までデータのダウンロードができるようになっている(ダウンロードはこちらから)。

Pathを開発したのは、Facebookでプロダクトマネージャーを務めたこともあるDave Morinと、Napster出身のDustin MierauおよびShawn Fanningだ。2010年にモバイル向けソーシャル・ネットワークサービスとして登場した。サービスはビジュアルと本当に親しい人とのつながりを重視して、50人までしか友達登録ができないという仕様になっていた。よりプライベートなつながりを求める人に向けたサービスを実現しようとしていたのだ。ただし、友人数の制限は後に緩められ、さらに撤廃されることにもなった。

ピーク時には1500万のユーザーを抱え、5億ドルの評価にもとずく資金調達などにも成功していた。誕生1ヵ月の頃には、Googleが1億ドルでの買収を狙ったほどだった。最終的にPathはシリコンバレーの大物であるIndex、Kleiner Perking、およびRedpointなどから5500万ドルの資金を集めていた。

FacebookはPathをノックアウトしたが、Pathから頂戴したアイデアもある。

ソーシャルメディアは、15億人のアクティブユーザーを抱えるFacebookの独壇場となっている。優れていると思えば、ライバルであったPathからアイデアを借用することも厭わず、今日の繁栄につなげてきている。

Pathのサービスは打開策を見つけられず、スタッフを失い、そして利用者および収益源(ないしはユーザーデータ)を失っていった。商業施設と利用者をつなぐサービス(Path Talk)に活路を見出そうとしたこともあったが、これもうまくいかなかった。結局はPathおよびPath Talkのサービスは、2015年に価格非公開で韓国のメッセージングおよび接続サービス大手であるKakaoに売却されることとなった。世界第4位の人口を抱え、Pathが400万人の利用者を獲得していたインドネシアでのサービス拡大を狙ってのことだった。ちなみにKakao自体は、東南アジア最大のインターネット関連ビジネスマーケットとなっているインドネシアで、大きな存在感を示すことに成功している。

そのような中でもPathの活路は見出すことができず、結局はPathおよびPath Talkはサービス停止を迎えることとなった。

「多くの方に愛していただいたPathのサービスを停止するのは残念なことです。Pathは2010年に、熱意あるそして優秀なデザイナーやエンジニアが作り上げたサービスです。ここしばらくの間は、なんとかサービスを継続する道を探っていました。テクノロジーおよびデザインの力で人々を幸せにし、有意義なコミュニケーションの場を提供するというミッションをなんとか果たし続けたいと考えていたのです」と、サービス停止のアナウンスには記されている。

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(翻訳:Maeda, H

HTTPSの証明書を無料で発行するLet’s Encryptが三歳の誕生日、これまで380Mの証明書を発行

お誕生日おめでとう, Let’s Encrypt!

この無料で利用できる非営利団体は2014年に、Electronic Frontier Foundation(EFF)の主唱で創設され、Akamai, Google, Facebook, Mozillaなどの大手テクノロジー企業/団体が支援してきた。3年前の9月14日に、同団体は最初の証明書を発行した。

その後、その数は爆発的に増え、今日までに1億2900万のユニークなドメインで3億8000万あまりの証明書が発行された。それにより同団体は、世界最大の証明書発行者になった。

たとえば今や、Let’s Encryptなどが公開しているデータによれば、Firefoxのすべてのトラフィックの75%がHTTPSだ。Let’s Encryptが創設されたころは、HTTPSで暗号化されている接続の上でサーブされロードされるWebサイトのページはわずかに38%だった。

同団体のスポークスパーソンによれば、“〔HTTPSは〕信じがたいほど速くそして大きく成長してきた。それはLet’s Encryptだけの功績ではないが、うちが刺激になったことは確かだ”。

HTTPSは、Webのパイプを安全に保つ。ブラウザーがグリーンでライトアップしたり、鍵のマークが表示されるときは、あなたのコンピューターとWebサイトの接続がTLSで暗号化されている。誰もそのデータを横取りしたり、Webサイトを書き換えたりできない。

しかしそれまでは、証明の市場は破綻していて、高価で使いづらかった。そして、EFFなどによる“Web暗号化”努力の結果、Let’s Encryptによる無料のTLS証明が大衆化した。

それによりブロガーや、シングルページのWebサイトやスタートアップなどが、インストールしやすい証明書を無料で入手できるようになった。本誌TechCrunchのHTTPS接続も、Let’s Encryptを利用して安全な接続を確保している。セキュリティのエキスパートで暗号化の普及運動家であるScott HelmeとTroy Huntは先月、上位100万のWebサイトのトラフィックの半分以上が、HTTPSであることを確認した。

Let’s Encryptは、その成長とともに、AppleやGoogle、Microsoft、Oracleなどの大手インターネット企業からも、証明書発行者として信頼されるようになった

Web全体が暗号化されるのは、まだ遠い先の話だ。しかしLet’s Encryptが毎日発行する証明書は100万近くに達しているので、それも実現可能になってきたと言える。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Facebookの「ロゼッタ」システムは、ミームの認識を容易にする

ミームはウェブの言語であり、Facebookはそれをもっと理解したいと思っている。

FacebookのAIチームはここ数年、コンピュータービジョンと自然言語認識の両分野で目覚ましい進歩を遂げてきた。今日(米国時間9/11)同チームは、ふたつの分野の進歩を融合する最新の成果を発表した。新しいシステムはコードネームを “Rosetta” といい、FacebookとInstagramで画像内テキストを認識して、被写体がなんであるかを理解し分類を容易にすることによって検索や不正コンテンツの識別に役立てる。

ミームばかりではない。ツールは10億以上の画像とビデオフレームを、毎日複数言語にわたってリアルタイムで解析する、と同社はブログに書いている。

Rosettaは光学文字認識(OCR)の最新技術を活用している。まず画像をスキャンしてテキストの存在を検出し、文字がバウンディングボックスの中に置かれる。つぎに畳み込みニューラルネットワークを用いた分析によって、文字を認識し何を伝えようとしているのかを判定する。

via Facebook

このテクノロジーはしばらく前から使われていたが——FacebookはOCRに2015年から取り組んでいる——同社の巨大なネットワーク全体に展開することは、狂気レベルのスケールを必要とするため、文字検出と認識に関して新しい戦略を考える動機が生まれた。

技術面に興味のある人には、チームの書いた論文がある。

Facebookには、ビデオや写真に写ったテキストに興味を持つ理由が山ほどある。同社のコンテンツモデレーション[コンテンツの監視]の必要性に関しては特にそうだ。

スパムの識別は、写真の説明テキストが”Bruh!!! ” や “1 like = 1 prayer” (いいね! 1回=祈り1回)のようなものなら比較的単純だが、Facebookの “time well spent”[有意義な時間]推進のためのアルゴリズム変更によって、タイムラインには似たような技巧を用いたビデオや写真が増えている。同じことはヘイトスピーチにも言える。あらゆるメッセージが1つの写真やビデオに埋め込まれていたらシェアは容易だ。字幕機能が便利なツールになる。

同社によると、現在このシステムは複数言語対応という新しい課題をもたらしている。現在は言語を統一したモデルによって動いていて、訓練データの大部分はラテン文字を使っている。同社の研究論文によると、現在既存データベースの最目的化によって新言語をサポートするための戦略を検討しているという。

Facebookは人間監視役の負荷を減らし、ニュースフィードアルゴリズムが分類結果に応じてコンテンツを選べるようしたいと考えている。こうしたツールは、Facebookが有害コンテンツを識別し、より興味深いコンテンツをユーザーに見せるうえで大きな可能性を持っている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

プリシラ・チャン、インタビュー――移民の両親の苦闘からチャン・ザッカーバーグ基金のビジョンまで

今回のTechCrunch Disrupt SFにはチャンプリシラ・チャンが登場した。チャンはFacebookのファウンダー、CEO、マーク・ザッカーバーグの妻だというだけの存在ではない。チャン自身が教師、小児科医であり、さらには世界最大の慈善家の一人だ。チャンは恵まれない人々を助けようとする断固たる決意を持っている。

Facebookがハーバード大学の寮の一室で誕生したことは広く知られているが、チャンのインパクト投資への決意は教師として経験した貧しい子どもたちの遊び場から始まっていたという。

チャンによれば、遊び場で見た歯の治療を受けていない子供がヘルスケアの問題に取り組もうと考えたきっかけだった。「どうやったらそんな悲しいことが起きないようにできるのか? 誰が悪いのか? きちんとヘルスケアを得ているのだろうか? ヘルスケアには痛みや感染の防止を含めて適切な歯の治療が含まれているだろうか? …こういう問題に取り組むためにもっと高い能力が必要だと私は思い知らされたました」とチャンは涙ぐみながら語った。

この決意がやがて慈善を目的する総額450億ドルのChan Zuckerberg Initiativeの設立へ、なかんずく疾病対策のための30億ドルの拠出へとつながる。 難民としてアメリカにやって来た中国系ベトナム人の両親が苦闘しながら娘を大学に進ませてくれたことに常に感謝しつつ、「誰かが私を難民の娘からすくい上げてハーバードに進ませてくれました。私は幸運でした。しかし助けが必要な子供たちがもっともっとたくさんいるのです」とチャンは述べた。

ここでチャンは明確な目標を持った慈善活動が重要だとしてビジョンを語った。チャンはFacebookの裏町ともいうべきボストンのベイエリア地区でヘルスケアの欠陥や家庭の問題によりスタートからハンティキャップを背負われている大勢の子どもたち見てきた。そうした子どもたちに機会の平等を保証するのがこの投資の目的だという。

CZI(Chan Zuckerberg Initiative)の非政治的アプローチについて説明し、政権の政策がどうあろうと、超党派的な協力を得ていくことが重要だと強調した。CZIは特定の政策を推進するために公職への立候補者に献金することはしないという。チャンはデジタル・ウェルビーイングの考え方についても触れ、祖父母にビデオを通話することは「スマートフォン中毒」ではないという例を上げた。チャンは幼い娘のマックス、オーガストにも正しい使い方を教えているという(今回のインタビューはマーク・ザッカーバーグの作り上げたプロダクトの是非を問うというよりプリシラ自身の生き方と動機を語ってもらうのが目的だった)。

特に重要なポイントは「誰もがその人に適切な方法で(チャリティーに)参加して欲しい」とチャンが述べたことだろう。誰もがチャリティーへの多額の出資確約をしたり、フルタイムで有意義な社会活動ができるわけではない。しかしシリコンバレーに大勢いる成功者たちに「もう少し深く」関与してもらいたいという。ある場合にはエンジニア、プロダクト・デザイナー、アーティストとしての能力を提供することが良いのかもしれない。問題を解決するための努力が長続きできることが重要だという。ときには富が少数者の手に集中することを支えている社会構造そのものと戦うという困難をもたらしかもしれない。チャンは「なんども既存のルールと戦っているうちに、そんなルールを作ったシステムのほうが壊れているのだと気づくのです」とチャンは結論した。

〔日本版〕CZIは節税可能な非営利団体ではなく、営利、政治活動も自由な有限責任会社(LLC)の体制をとっている。インパクト投資とはおおむね「利益を得つつ社会的に有意義な結果を得るような投資」を意味するとされる。

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滑川海彦@Facebook
Google+

Facebook、アジア地域初となるデータセンターを構築予定

Facebookが、初めてアジアにデータセンターを構築する。Facebookのアナウンスによれば、シンガポールに11階建てを建築する予定であるとのこと。サービスパフォーマンスおよび効率性の向上を狙ってのことだとのこと。費用はシンガポールドルで14億ドル見込みで、米ドルにすると10億ドル程度となる。

なお、この新しいデータセンターで用いる電源は、100%再生可能エネルギーとなるのだそうだ。さらに新しいStatePoint Liquid Coolingを利用し、水資源および電力の消費を最低限に抑えるようになっているとのこと。

Facebookによれば新データセンターの構築により、数百名の雇用を創出し、シンガポールおよびアジア地域におけるプレゼンスの拡大を実現することができるとしている。

建設予定データセンターの外観予想図

アジア太平洋地域における月間利用者数は8億9400万となており、全利用者中40%を占めている。これは地域ごとにみれば最高の割合となっている。ただし、収益面では他地域の後塵を拝している。Facebookの直近四半期のデータによれば、アジア太平洋地域での売上額は23億ドルで、全体の18%となっており、アメリカからの売り上げの半分にも満たない。サービスの効率性をあげることで、利用者シェアと売り上げシェのギャップを埋めたい考えもあるのだろう。

なお、アジアにデータセンターを構築する動きは他にもあり、Googleはシンガポールに3つめとなるデータセンター設立を予定しているようだ。Googleは、シンガポール以外に、台湾でもデータセンターを運営している。

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(翻訳:Maeda, H

ボイスメッセージ技術侵害でFacebookがBlackBerryを逆提訴

Facebook は、インスタントメッセージアプリのボイスメッセージ技術を盗用したとしてBlackBerryを提訴した。

サンフランシスコで火曜日に提出した118ページに及ぶ告訴状で、FacebookはBlackBerry が5つの特許を侵害したと主張している。その特許とは、GPSデータのトラッキングと分析、ボイスメッセージ技術、アプリ内でのグラフィックス・ビデオ・オーディオの表示方法に関するものだ。

告訴状で、Facebookは同社のMessangerとWhataAppのメッセージアプリへの侵害が“すでに起こり、そしてダメージを引き起こし続ける”と主張している。

Facebookは考えられるダメージについての被害額は載せていないが、同様の内容で訴えられたときに出したコメントを考えると、裁判そのものはややうわべだけの様相だ。

もしこのニュースを読んでどこかで聞いたことがあるような、と思ったとしたら、それはBlackBerryが3月にFacebookに対し同じような裁判を起こしているからだ。

その際、Facebookの副法律顧問Paul Grewalは「BlackBerryの訴訟は残念ながらメッセージビジネスの最近の状況を反映している」「イノベーションの努力を放棄し、BlackBerryは今や他社のイノベーションに難をつけようとしている」と非難した。

Facebookはコメントを拒否し、BlackBerryはコメント要求にまだ応えていない。

アップデート:Facebookのコメント対応がアップデートされている

イメージクレジット: Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

FacebookとTwitter:米国情報機関はもっと選挙妨害対策の力になれたはずだ

Facebook COO、Sheryl Sandbergは、プラットフォームとして海外からの選挙妨害防止に努力すべき点があったことを認めたが、政府も情報提供の強化に努めるべきだと語った。

これは米国時間9月5日に予定されている上院情報委員会公聴会を控えての発言だ。公聴会ではSandbergとTwitter CEO Jack Dorseyがソーシャルメディアプラットフォームの海外からの選挙妨害について証言する。GoogleのLarry Pageは招聘されたが出席を拒んだ

「われわれは、気づくのが遅すぎたし、行動も遅すぎた」とSandbergは用意された文書で語った。

この公聴会は、2016年大統領選挙でのロシアによる選挙妨害の後遺症といえる。ソーシャルメディア各社は、ロシア政府と密に協力していたとみられる外国人活動家らが誤情報を拡散し、選挙結果に影響を与えようとしたことを受け、にわかに注目を浴びている。選挙妨害は今秋の中間選挙も標的にしている。

FacebookTwitterの両社は、誤情報や偽ニュースの拡散に関わっていると思われるアカウントとボットをプラットフォームから削除した。Googleは昨年、同社サイトでロシアによる妨害行為を発見したことを報告した。

「われわれは、金銭目的の荒らし組織から高度な軍事情報作戦まで、敵を発見して戦うことに徐々に慣れてきた」とSandbergは言った。

しかしFacebookのナンバー2は、ソーシャルメディア各社がロシア妨害の全体像を理解するために、米国政府にはもっとできることがあったと語った。

「われわれは今後もサービス悪用の監視を続け、警察当局や他の業界にこれらの脅威に関する情報を提供していくつもりだ」とSandbergは言った。「2016年のロシアの活動全体に関するわれわれの知識は限られていた。それは米国政府やこの委員会がもつ情報や調査ツールを利用できなかったためだ」。

その後TwitterのDorseyも声明で自らの意見を述べた:「われわれが直面している脅威との戦いには政府パートナーや同業他社の多大な協力が必要だ」と言い、「われわれは、それぞれが他社のもたない情報を持っているので、情報を組み合わせることで脅威と戦う力はいっそう強くなる」と付け加えた。

SandbergとDorseyは両者ともに、政府のもつ民間企業が見ることのできない機密情報、すなわち国家機密とされる情報について微妙に言及した。

近年IT企業は、政府機関の保有する情報をアクセスする必要性が高まっている。増え続けるサイバーセキュリティーの脅威や国家レベルハッカーからの攻撃を防ぐために不可欠だ。背景にあるのは情報の共有 によって、豊富なリソースをもつハッカーに対抗することができるという考えだ。しかし、そのための法案導入には反対もある。脅威に関する情報を政府と共有することは、個人ユーザーのデータも収集され米国政府情報機関に送られるのではないかと反対派は恐れている。

それに代えてIT企業各社は、国家安全保障省の 情報アクセスを要求し、直面する脅威の理解を深め、各社が独立に将来の攻撃に備えようとしている。

報道によると、先月IT各社は秘密裏に集合し、海外からのプラットフォーム侵入に対抗する方法について検討した。しかし、Facebook、Twitter、Google、Microsoftらの参加者は、政府からほとんど洞察を得られなかったことに「落胆して会議を後にした」と語った。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

英国のメディア大企業、政府に独立したソーシャルメディア監視を要求

英国の主要な放送局やインターネットサービスプロバイダー(ISP)は政府に対し、ソーシャルメディアのコンテンツに独立した監視を導入するよう求めた。

規制の厳しい業界に身を置くメディアやブロードバンドオペレーターのグループは官営と民間の中間に位置するー。Sunday TelegraphへのレターにはBBC、ITV、 Channel 4、Sky、BTそしてTalkTalkのトップの署名が入っている。

彼らは、ソーシャルメディアに対する独立した監視が“早急”に必要だと主張している。テック企業がプラットフォーム上で何を許容すべきか(あるいは許容しないべきか)を決断しつつあることを考えると、彼らの提案するものは検閲に等しいだろう。

ソーシャルメディアの決断については、“責任と透明性”を確保するために独立した監視が不可欠と主張し、次のように書いている。「いかなる決断がなされるのか、独立した精密な調査と、さらなる透明性が早急に必要だ。これはインターネットの検閲のことをいっているのではない。そうしたソーシャルメディア企業がすでにとろうとしている決断に責任と透明性が伴っていることを確かめることで、最も人気のプラットフォームをより安全なものにすることをいっている」。

「我々は、インターネットやソーシャルメディア企業が、コンテンツがどんな内容なのか、許容されるものなのかを全て検討するのは、独立した監視なしには現実的でもなければ適当でもないと考えている」と付け加えている。

ソーシャルメディアプラットフォームへの規制を求める声はいくつかの地域や国で高まっていて、政治家は明らかにこの分野を取り上げるのは政治的意味があると感じている(実際、トランプの最近のオンライン上での攻撃対象はGoogleだ)。

世界の政策立案者が、非常に人気になり、それゆえにパワフルとなったプラットフォームをいかに統制するかという問題に直面している。(ドイツは昨年、ヘイトスピーチ発言に関してソーシャルメディアを規制する法律を制定したが、これは政府の行動としては先陣だ)。

英国政府はここ数年、インターネットの安全について一連の提案をしてきた。そしてメディアや電気通信事業のグループは、彼らがいうところの“オンライン上の有害となりうる全てのもの”ーさらにはソーシャルメディアによって悪化したものの多くも含めているーに対して行動をとる“絶好の機会”と主張してきた。

政府は、インターネットの安全性についての白書の作成作業を行なっている。Telegraphの報道では、現在内輪で議論されている可能性のある国の干渉としては、広告基準局(Ofcomの下部組織)に連なる機関を設置することが挙げられている。この機関はFacebookやGoogle、Twitterを監視し、ユーザーからの苦情への対応として対象となるものを排除すべきかどうかを決めることができるとしている。

Telegraphはまた、このアイデアの提案者は、そうした体制は任意のものだが、もしオンラインの環境が改善しなければ立法による取り締まりとなるかもしれないとみている(EUはヘイトスピーチ発言に関してはこのアプローチをとっている)。

今回のレターについてのコメントとして、政府の広報はTelegraphに対し、「オンライン上の悪に取り組むために、まだすべきことがたくさんあるのは明らかだ。我々はさらなる規制を任されている」。

一方のテックプラットフォームはというと、プラットフォームであり出版業者ではない、と主張している。

彼らのアルゴリズムは明らかに情報のヒエラルキーをつくった。ヒエラルキーは情報を広範に流す。同時に、テックプラットフォームは独自のコミュニティスタンダードのシステムやコンテンツルールを展開していて、適用は(概して完璧ではなく、また適当でもない)内容を修正した後となっている。

こうした見せかけの取り組みに入ったヒビはかなり明白だ。クレムリンが後ろ盾となってFacebookプラットフォームの大規模な操作を行うような明白な過ちか、または個人の節度の過ちのように小規模なものか。そうした企業が通常展開する自己規制には明らかに厳しい限界がある。

一方で、悪いコンテンツによる影響やコンテンツの節度維持の失敗はいよいよ明白になりつつあるー(特に)FacebookとGoogleのYouTubeのスケールの大きさからいえば当然だ。

英国では、民主主義についての偽情報を広めたソーシャルメディアの影響について調べてきた議会委員会が、テック大企業を取り締まるために第三者機関を設置することを最近提案した。ここで言うテック大企業とは、必ずしもプラットフォームか出版メディアかを問うものではなく、全社に対する責務を強化する。

今年の長く、ドラマの詰まった審理(Cambridge AnalyticaのFacebookデータの悪用スキャンダルのおかげで)の後に発表された委員会の最初の報告も、データ関連の不法行為を取り締まる英国のデータ保護ウォッチドッグの運用費のほとんどをソーシャルメディア会社に払わせるために税を課すことを求めている。

委員会はまた、市民がソーシャルメディアのプラットフォームから広まった物事を判断するのに必要なデジタルリテラシーのスキルにかかる費用もソーシャルメディア企業から徴収する教育課税で賄う案を提案した。

Sunday Telegraphへのレターでグループは、納税、オリジナルコンテンツの制作、高速ブロードバンドのインフラといった形で自国に投資してきたことを強調している。

一方、米国のテック大企業は、ビジネスの構造上、国の財源への貢献は少ないと非難されている。

税関連の批判についてテック会社の典型的な反応は、払うべき税は払っている、というものだ。しかし複雑な税法へのコンプライアンスは、今後彼らのビジネスが国に(貢献するより)何かしら流出させている、と広く受け止められるようになったときに苦しむ名誉ダメージを軽くすることにはならない。

それが、メディア企業やISP企業がいま動かそうとしている政治的レバーだ。

我々はFacebook、Twitter そしてGoogleにコメントを求めている。

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(翻訳:Mizoguchi)

反極右集会イベントを削除したFacebookの怪事件

ワシントンD.C.に住む活動家やオーガナイザーたちは、反対抗議集会のイベントを削除したFacebookの判断に異議を唱えている。この集会を呼びかけたのは、2017年に死傷者まで出したバージニア州シャーロッツビルの集会を計画した白人至上主義者ジェイソン・ケスラー(Jason Kessler)だ。

Facebookは、「No Unite The Right 2 – DC」(DCの右翼の結束を止めろ2)イベントを、そのなかのアカウントのひとつがFacebookが呼ぶところの「不正な行動との連携」を示しているとして削除した。同社はこの活動を「自らの正体や活動の目的を隠して他の人々を欺く目的で、人または組織がアカウントのネットワークを作るもの」と特定している。

あなたが参加しようとしている、または興味を持っているイベントは削除されました。ページは「No Unite The Right 2 – DC」という偽のアカウントで立ち上げられています。他のイベント主催者には通告されています。

 

論争の中心となっているFacebookページは「Resisters」(反政府主義者)という名称だった。このページは、ユーザーを欺くために偽のアカウントを準備する「bad actors」(大根役者)によって作られたとFacebookが特定したことを、TechCrunchは確認している。最終的にFacebookがUnite The Right 2 – DCの削除に踏み切ったのは、Resistersページとのやりとりや関与があることが判明し、そのページは最初から不正に作られていると判断したからだ。

Facebookは同社のブログ記事にこう書いている。

Resistersページも、8月10日から12日の抗議のためのFacebookイベントを立ち上げ、実在する支持者のリストを掲載している。……Registersページの偽の管理者は、このイベントを協賛している5つの不正なページとつながっている。

同社はまた、よく知られているInternet Research Agency(IRA)のアカウントも反抗議イベントに管理者として加わっていることも確認している。しかし、ここが管理者となっていたのは7分間だけだった(IRAは、ロシアの情報機関とつながりのあるプーチン支持者が立ち上げた「コンテンツ工場」であるとの疑いで、アメリカの情報当局の調査も入っている)。その上、IRAのアカウントは、2017年にResistersが主催したFacebookイベントをシェアしているとも指摘している。

ここで物事は、さらにややっこしくなる。このFacebookが削除したイベントは、いくつかの実在するワシントンD.C.の活動家グループに引き継がれた。これには、Smash Racism DC(民族主義を潰せ DC)、Black Lives Matter DC(黒人の命は大切だ DC)、Black Lives Matter Charlottesville(黒人の命は大切だ シャーロッツビル)、その他の地元グループが含まれ、「Shut It Down DC」(止めよう DC)という名のもとに連合している。彼らの行動や計画は、No Unite The Right 2 DCイベントから引き継がれたものではなく、たまたま合致しただけのことだ。それ以来、連合はFacebookイベント名を「Hate Not Welcome: No Unite The Right 2」(憎悪はお断り:右翼の結束を止めろ)と変更した。

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「BLMと数多くのグループが中心となり、ワシントンD.C.の本当の脅威に対抗するための結束を行っています。ロシアのための団体ではありません。私たちの愛する人たち、コミュニティー、地元の街を、制服を着た、または平服のファシストから守るために、この活動を行っています」

「そこで私たちは、新しいFacebookイベントを作りましたが、本当の結束は、近所の人たちと話し合うことで築かれます。そしてそれが、ワシントンD.C.での本当の抗議運動になります。それはジョージ・ソロスでも、ロシアでもありません。我々自身です」

TechCrunchは、ワシントンD.C.を拠点に活動する人たちに話を聞いたが、そのなかの一人、Shut It Down DCにも属するワシントンD.C.の活動家Andrew Batcherは、地元のオーガナイザーの連合が、ひとつのイベントとアカウントで結ばれて、Facebookから不正だと目を付けられる仕組みを明らかにしてくれた。

「それは、この問題に興味を持つ、たくさんのグループの草の根の集まりでした」とBatcherは話す。「たくさんのグループが、去年、シャーロッツビルに向かいました。シャーロッツビルは、ワシントンD.C.から南へわずか2時間の街です」

彼の説明では、それらのグループはケスラー自身が主催したイベントに惹きつけられたのであって、オーガナイザーたちが出会ったFacebookイベントではなかったとのことだ。

「組織化を始めたころ、私たちはFacebookページを作ろうと話し合ったのですが、それはすでに作られていたのです」とBatcherは言う。「大きなイベントが数多く開催されるワシントンD.C.では、よくあることです」

「私たちは、そのイベントの共同主催者に加えてもらい、私たちの情報も掲載して欲しいと要請しました」とBatcher。それには、動画による運動への参加呼びかけや、写真や、イベントの詳細など、いろいろなコンテンツがあった。「そして、却下されたのは、すべて私たちのものでした」

最初にプレースホルダーのページを作ったあと、Resistersのページは「まったく介在しなくなった」とBatcherは言う。「それによって、私たちはまるでロシアの駒であるかのように扱われました。私たちは、そうではありませんし、私たちがこれを準備してきた活動です」

彼やその他の左翼の活動家たちは、一般大衆と積み重ねてきた努力が台無しにされ、悪くすれば、ピザゲート事件のように、実際の暴力事件にまで発展しかねない陰謀説まで現れるのではないかと危惧している。

Facebookは、合法的なNo Unite The Right 2 – DCのオーガナイザーに、次のメッセージを送ったと話している。

まだ電話でのお話はできていませんが、今朝早く、あなたが共同主催者に名を連ねている「No Unite Righte 2 – DC」Facebookイベントを削除した旨をお伝えしたく存じます。理由は、そのイベントを立ち上げたページのひとつに、不正なアカウントを作り不正な活動の調整に関わっていたことでFacebookから削除されたResistersが含まれていたからです。

あなたが驚かれ、憤慨されているであろうことは理解しています。私たちは、これがあなたや、あなたのページには関係がないことを示す関連情報をお届けし、ご理解いただけるよう連絡差し上げた次第です。本日、この後より、このイベントに興味を示されたおよそ2600名のユーザーと、すでに参加をされている600名以上のユーザーに、イベントの削除に関する情報の提供を開始します。他のイベントの設定に関してご質問があれば、私たちの公的な連絡手段を用いて、喜んでご説明いたします。

Batcherによれば、Shut It Down DCのイベントのオーガナイザーをしていた人たちには、ほとんどなんの連絡もなく、一部の人が「2行」のメールを受け取っただけだという。

あなたが主催者になっているFacebookイベントについてご説明したく存じます。 より詳しい説明をお望みの場合は、( )までお電話をください。

 

Facebookが、オーガナイザーにほとんど連絡をすることなく、さっさとイベントを削除してしまったことで、グループは意気消沈してしまった。TechCrunchとのインタビューでは、彼も他のオーガナイザーたちも、Facebookに対する根深い不信感を示し、その行動を決断させた証拠となる情報をもっと多く見せて欲しいと望んでいる。ワシントンD.C.の複数のグループとつながっている一人のオーがナイザーなどは、疑わしい協調活動のためにVPN(プライベート仮想ネットワーク)が使われないよう、Facebookは、活動家の結束する意欲をくじこうとしているのではないかと疑っている。こうした心配があることを伝えると、Facebookは、同社の規定では、VPNの利用や一般的なプライバシー保護対策を行ったからといって、アカウントやページを削除する理由にはならないと説明している。

「何か悪いことをしたアカウントがあれば、そのアカウントは排除されます。それを、このすべての合法的な活動にまで押し広げて適用するべきではないと私は考えます」とBatcherは言う。「私たちが求めるのは、公的な謝罪であり、私たちは実在する人間であり、実際に活動を行っていることを世間に知らせることです」。さらに彼は、現実に協力し合ってイベントをまとめた人たちに与える損害に関して、Facebookには考慮する様子が見られないとも話している。

この不信感は、右翼左翼の双方に影響を与えた。右翼の側の、Facebookがコンテンツの検閲を行っているという心配は、アメリカ議会の公聴会でも持ち上がり、その主張を示す証拠はほとんどないまま、多くの右翼ユーザーの間に広がっている。左翼側は、Black Lives Matterの支持者からLGBTQコミュニティーに属するすべての人たちに影響を与えた不注意による検閲がときどき行われるグレーな歴史がFacebookにはあると考えている。こうした状況では、その通報ツールを悪用して、狙った相手に嫌がらせをするFacebookユーザーも現れるが、Facebookは、そうした問題に対処するポリシーの変更に消極的だ。

Facebookはまた、おおっぴらな嫌がらせや、民族主義的コンテンツの問題への対応も遅く、つい最近は、白人至上主義を禁止する一方で白人民族主義を許すという内部方針を批判されている。そして、これら2つの人為的な区別と広く知られるようになる考え方が生まれた。こうした災難は、Facebookだけの問題ではない。悪意のあるすべての人たちにとって、Facebookというプラットフォームは絶好の環境となった。

反抗議活動のオーガナイザーは、その後、新しいFacebookイベントを立ち上げ、活動を継続しようとしているが、状況はまったく落ち着かず、この世界最大のソーシャル・プラットフォームによる介入の強化に対する疑念は消えない。今回の新事実と、2017年の問題では、ソーシャルメディアによる影響合戦の新しい形、つまり偽アカウントが現実の普通の人たちの活動を悪用するという「混合型」には、まったく油断がならないことがわかった。

いわゆる「大根役者」は、合法的な動機につけいり、混乱を引き起こし、すべてを懐疑的にしてしまう。そうした活動が明るみに出たとしても、これはアメリカの政治情勢にさらなる不和と疑念を植えつけようと考えるあらゆる人間にとって、必勝方程式となる。それ以外の人たちには、勝ち目はなさそうだ。

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(翻訳:金井哲夫)

Google、Facebook、Twitterの幹部、上院情報委員会から呼び出される

【本稿のライターはZack Whittaker】
Twitterの最高経営責任者、Jack DorseyとFacebookのCOO、Sheryl Sandbergが、来週上院情報委員会の公聴会に出席することを同委員長が発表した。

Googleの親会社、AlphabetのCEO、Larry Pageも呼ばれているが、出席するかどうかは確認されていない。同委員会の広報担当がTechCrunchに伝えた。

Richard Burr上院議員(共和党・ノースカロライナ州選出)は、ソーシャルメディアの巨人たちは9月5日の公聴会で、海外からの影響に対する各社プラットフォームの責任について質問される予定だとリリース文で語った。

政府の情報および監視機能を監督する上院情報委員会が、企業を呼んで証言させるのはこれが2度目。しかし、上級幹部が出席するのはこれが初めてだ——ただし、Facebookの最高経営責任者、Mark Zuckerbergは4月に下院エネルギー商業委員会の公聴会に出席している。

これは、最近TwitterとFacebookが、イランおよびロシアの政治介入と繋がりがあるとされるアカウントを削除したことを受けてのことだ。ソーシャルメディア各社は、ロシアによる2016年大統領選挙への誤情報発信による介入以来、注目を浴びてきた。

Twitter広報は、委員会で予想される質問について発表できることはないと語った。TechCrunchはGoogleとFacebookにもコメントを求めているので、情報が入り次第続報する予定。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

フェイスブックを超える大きなデジタルドリーム「オープンブック」

大手ソーシャル系技術企業は、自身の強力なプラットフォームが持つ特性と、的確な舵取りと価値の創出に失敗したこと(自ら設定したと主張する規定にすら準拠できていないことが明らかになっている)の結果の両方によって生じたと反社会的な魔物と格闘を続けているが、それでも、よりよい方法があると夢見ている人たちがいる。人の怒りを食べて成長する広告技術の巨人、フェイスブックやツイッターを超えるソーシャルネットワークだ。

もちろん、「よりよい」ソーシャルネットワークを作る試みは数多くあったが、そのほとんどは沈没している。成功や利用度には差があるものの、今でも使われているものもある(スナップチャット、エロー、マストドンの3つは元気だ)。だが当然ながら、ザッカーバーグの王座を強奪できる者はいない。

その原因は、そもそもフェイスブックがイスンタグラムとワッツアップを買収したことにある。フェイスブックはまた同様に、自分たちよりも小さな成功の芽を持つライバル企業を買収して潰している(tbh)。そうやって、ネットワークのパワーと、そこから流れ出るリソースを独占することで、フェイスブックはソーシャルの宇宙に君臨している。それでも、もっと良いものを想像する人々の気持ちは止められない。友だちが作れて、社会に大きな影響を与えることができる、倫理的に優れ、使いやすいプラットフォームだ。

そんな、二面性のある社会的使命を持った最新の夢想家を紹介しよう。オープンブック(Openbook)だ。

彼らの理想(今はそれだけなのだが、自己資金で立ち上げた小さなグループと、宣言と、プロトタイプと、間もなく終了するキックスターター・キャンペーンと、そしてそう、希望に満ちた大志がある)は、ソーシャルネットワークを再考して、複雑で不気味なものではなく、より親しみやすく、カスタマイズができるオープンソースのプラットフォームを作ることだ。

営利目的のプラットフォームとしてプライバシーを守るという彼らのビジョンは、常に利用者を監視する広告やトラッカーは使わず、公正な料金設定(そしてプラットフォーム上で通用するデジタル通貨)によるビジネスモデルに立脚している。

彼らの中核にある考え方は、とくに新しいものではない。しかし、巨大プラットフォームによる大量にして目に余るデータの不正利用にさらされていると、その考え方が理にかなっていると思えるようになる。そのため、おそらくここではタイミングがもっとも重要なエレメントになる。フェイスブックは、度重なる舵取りの失敗、知覚評価の低下、さらに退陣する幹部役員のなかの少なくとも一人が、人を操作することに長け倫理に無関心であることから営業哲学が攻撃されるなど、これまでにない厳しい調査にさらされ、利用者数の伸び悩み知覚価値の低下を招いている。

より良い方向を目指すオープンブックのビジョンは、Joel Hernández(ジョエル・ヘルナンデス)が描いたものだ。彼は2年間ほど夢想を続けている。他のプロジェクトの傍らでアイデアのブレインストーミングを行い、周囲の似た考えを持つ仲間と協力して、彼は新しいソーシャルネットワークの宣言をまとめた。その第一の誓いは、正直な関与だ。

「それから、データスキャンダルが起きて、繰り返されるようになりました。彼らはチャンスを与えてくれたのです。既存のソーシャルネットワークは、天から与えられたものでも、不変のものでもありません。変えたり、改良したり、置き換えることができるのです」と彼はTechCrunchに話してくれた。

Hernándezによるとそれは、ちょっと皮肉なことに、昼食時に近くに座っていた人たちの会話を聞いたことから始まった。彼らは、ソーシャルネットワークの悪い点を並べ立てていたのだ。「気持ち悪い広告、ひっきりなしに現れるメッセージや通知、ニュースフィードに何度も表示される同じコンテンツ」……これに推されて、彼は宣言文を書いた紙を掴み取り、新しいプラットフォームを実際に作ろうと(というか、作るための金策をしようと)決意した。

現在、この記事を執筆している時点では、オープンブックのキックスターター・キャンペーンのクラウドファンディングは残り数日となったが、集まっているのは(控えめな)目標額の11万5000ドル(約1270万円)の3分の1程度だ。支援者は1000人をわずかに超える程度しかいない。この資金集めは、ちょっと厳しいように見える。

オープンブックのチームには、暗号文の神と呼ばれ、メール暗号化ソフトPGPの生みの親として知られるPhil Zimmermann(フィル・ジマーマン)も加わっている。開始当初はアドバイザーとして参加していたが、今は「最高暗号化責任者」と呼ばれている。そのときが来れば、プラットフォームのために彼がそれを開発することになるからだ。

Hernándezは、オランダの電気通信会社KPNが内部的に使うためのセキュリティーとプライバシー保護用のツールをZimmermannと一緒に開発していたことがある。そこで彼はZimmermannをコーヒーに誘い出して、彼のアイデアに対する感想を聞いたのだ。

「私がオープンブックという名前のウェブサイトを開いた途端、これまで見たことがないくらいに彼の顔が輝いたのです」とHernándezは話す。「じつは、彼はフェイスブックを使おうと考えていました。家族と遠く離れて暮らしていたので、フェイスブックが家族とつながるための唯一の手段だったのです。しかし、フェイスブックを使うということは、自分のプライバシーをすべて捧げるということでもあるため、彼が人生をかけてきた戦いで負けを認めることになります。だから、彼はフェイスブックを使いませんでした。そして、実際の代替手段の可能性に賭けることにしたのです」

キックスターターの彼らのキャンペーンページに掲載された動画では、Zimmermannが、営利目的のソーシャルプラットフォームの現状について彼が感じている悪い点を解説している。「1世紀前は、コカコーラにコカインが含まれていて、私たちはそれを子どもに飲ませていました」とZimmermannは動画の中で訴えている。「1世紀前の私たちの行動はクレイジーです。これから数年先には、今のソーシャルネットワークを振り返って、私たちが自分自身に何をしていたのか、そしてソーシャルネットワークで互いに傷つけ合っていたこと気づくときが来るでしょう」

「今あるソーシャルネットワークの収益モデルに代わるものが、私たちには必要です」と彼は続ける。「深層機械学習のニューラルネットを使って私たちの行動を監視し、私たちをより深く深く関わらせようとするやり方を見ると、彼らがすでに、ユーザーの関わりをさらに深めるものは、激しい憤り以外にないと、知っているかのようです。そこが問題なのです」

「こうした憤りが、私たちの文化の政治的な対立を深め、民主主義制度を攻撃する風潮を生み出します。それは選挙の土台を崩し、人々の怒りを増長して分裂を拡大させます。さらに、収益モデル、つまり私たちの個人情報を利用する商売で、我々のプライバシーが破壊されます。だから、これに代わるものが必要なのです」

Hernándezはこの4月、TechCrunchの情報提供メールに投稿してくれた。ケンブリッジ・アナリティカとフェイスブックのスキャンダルが明るみに出た直後だ。彼はこう書いていた。「私たちは、プライバシーとセキュリティーを第一に考えたオープンソースのソーシャルネットワークを作っています」と。

もちろん、それまでにも似たような宣伝文句は、ほうぼうから聞かされていた。それでも、フェイスブックは数十億という数の利用者を集め続けていた。巨大なデータと倫理のスキャンダルにかき回された今も、利用者が大挙してフェイスブックから離れることは考えにくい。本当にパワフルな「ソーシャルネットワーク」ロックイン効果だ。

規制は、フェイスブックにとって大きな脅威になるだろうが、規制を増やせば、その独占的な地位を固定化することになるだけだと反対する人もいる。

オープンブックの挑戦的なアイデアは、ザッカーバーグを引き剥がすための製品改革を敢行することにある。Hernándezが呼ぶところの「自分で自分を支えられる機能を構築すること」だ。

「私たちは、プライバシーの問題だけで、今のソーシャルネットワークから多くのユーザーを引きつけることは不可能だと、率直に認めています」と彼は言う。「だから私たちは、もっとカスタマイズができて、楽しくて、全体的なソーシャル体験ができるものを作ろうとしているのです。私たちは既存のソーシャルネットワークの道を辿ろうとは思っていません」

この夢のためであったとしても、データの可搬性は重要な材料だ。独占的なネットワークから人々を乗り換えさせるには、すべての持ち物とすべての友だちをそこに残してくるよう言わなければならない。つまり、「できる限りスムーズに移行ができるようにする」ことが、もうひとつのプロジェクトの焦点となる。

Hernándezは、データ移行のためのツールを開発していると話している。既存のソーシャルネットワークのアーカイブを解析し、「そこに自分が持っているものを開示し、何をオープンブックに移行するかが選べる」ようにできるというものだ。

こうした努力は、欧州での新しい規制が助力になっている。個人情報の可搬性を強化するよう管理者に求める規制だ。「それがこのプロジェクトを可能にしたとは言わないけど……、以前の他の試みにはなかった特別なチャンスに恵まれました」とHernándezはEUのGDPR(一般データ保護規制)について話していた。

「それがネットワーク・ユーザーの大量移動に大きな役割を果たすかどうか、私たちには確かなことは言えませんが、無視するにはあまりにも惜しいチャンスです」

製品の前面に展開されるアイデアは豊富にあると、彼は話している。長いリストを広げるように教えてくれたものには、まず手始めに「チャットのための話題ルーレット、インターネットの課題も新しいコンテンツとして捉え、ウィジェット、プロフィールアバター、ARチャットルームなど」がある。

「馬鹿らしく思えるものもあるでしょうが、これはソーシャルネットワークに何ができるかを見極めるときに、現状を打破することが狙いなのです」と彼は付け加えた。

これまでの、フェイスブックに変わる「倫理的」なネットワーク構築の取り組みが報われなかったのはなぜかと聞くと、みなが製品よりも技術に焦点を置いていたからだと彼は答えた。

「今でもそれ(失敗の原因)が支配的です」と彼は示唆する。「舞台裏では、非常に革新的なソーシャルネットワークの方式を提供する製品が現れますが、彼らは、すでにソーシャルネットワークが実現している基本的な仕事をするための、まったく新しい技術の開発にすべての力を注ぎます。数年後に判明するのは、既存のソーシャルネットワークの機能にはまだまだ遠く及ばない彼らの姿です。彼らの中核的な支持者たちは、似たような展望を示す別の取り組みに乗り換えています。そしてこれを、いつまでも繰り返す」

彼はまた、破壊的な力を持つ取り組みが消えてしまうのは、既存のプラットフォームの問題点を解決することだけに集中しすぎて、他に何も生み出せなかった結果だと推測している。

言い換えれば、人々はそれ自身が大変に面白いサービスを作るのではなく、ただ「フェイスブックではないもの」を作ろうとしていたわけだ(しかし最近では、スナップが、フェイスブックのお膝元で独自の場所を切り開くという改革を成し遂げたことを、みなさんもご存知だろう。それを見たフェイスブックがスナップの製品を真似て、スナップの創造的な市場機会を潰しにかかったにも関わらずだ)。

「これは、ソーシャルネットワークの取り組みだけでなく、プライバシーを大切にした製品にも言えます」とHernándezは主張する。「そうしたアプローチが抱える問題は、解決した問題、または解決すると宣言した問題が、多くの場合、世間にとって主流の問題ではないということです。たとえば、プライバシーがそうです」

「その問題を意識している人にとっては、そうした製品はオーケーでしょう。しかし、結局のところ、それは市場のほんの数パーセントに過ぎません。この問題に対してそれらの製品が提供する解決策は、往々にして、人々にその問題を啓蒙することに止まります。それでは時間がかかりすぎます。とくに、プライバシーやセキュリティーの問題を理解させるのは、そう簡単ではありません。それを理解するためには、技術を使いこなすよりも、ずっと高度な知性が必要になります。それに、陰謀説論者の領域に入って実例を挙げなければ、説明が困難です」

そうして生まれたオープンブックの方針は、新しいソーシャルネトワークの機能や機会を人々に楽しんでもらうことで、そしてちょっとしたおまけとして、プライバシーが侵害されず、連鎖的に人の怒りの感情に火をつけるアルゴリズムも使わないことで、世の中を揺さぶろうというものとなった。

デジタル通貨に依存するビジネスモデルも、また別の課題だ。人々に受け入れてもらえれるかは、わからない。有料であることが、すなわち障害となる。

まずは、プラットフォームのデジタル通貨コンポーネントは、ユーザー同士の不用品の売り買いに使われると、Hernándezは言っている。その先には、開発者のコミュニティーが持続可能な収入を得られるようにしたいという展望が広がっている。すでに確立されている通貨のメカニズムのおかげで、ユーザーが料金を支払ってコンテツにアクセスしたり、(TIPSを使って)応援したりできる。

つまり、オープンブックの開発者たちが、ソーシャルネットワーク効果を使い、プラットフォームから発生する直接的な支払いの形で利益が得られるという考えだ(ユーチューブのクリエイターなど、広告料金にだけ依存する形とは違う)。ただしそれは、ユーザーがクリティカルマスに達した場合だ。当然、実に厳しい賭けとなる。

「既存のソリューションよりも経費が低く、素晴らしいコンテンツ制作ツール、素晴らしい管理機能と概要表示があり、コンテンツの表示方法が細かく設定でき、収入も安定して、予測が立てやすい。たとえば、毎月ではなく、5カ月に一度といった固定的な支払い方法を選んだ人には報償があるとか」と、現在のクリエイターのためのプラットフォームと差別化を図るためのアイデアを、Hernándezは並べ立てた。

「そんなプラットフォームが完成して、人々がその目的のためにTIPSを使うようになると(デジタルトークンの怪しい使い方ではなく)、能力が拡大を始めます」と彼は言う(彼はまた、計画の一部としてデジタル通貨利用に関するその他の可能性についてMedium誌に重要な記事を書いている)。

この初期のプロトタイプの、まだ実際に資金が得られていない段階では、彼らはこの分野での確実な技術的決断を下していない。誤って反倫理的な技術を埋め込んでしまうのも怖い。

「デジタル通貨に関しては、私たちはその環境への影響と、ブロックチェーンのスケーラビリティーに大きな不安を抱えています」と彼は言う。それは、オープンブックの宣言に明記されたグリーンな目標と矛盾することになり、収益の30パーセントを「還元」プロジェクトとして、環境や持続可能性への取り組み、また教育にも役立てるという計画を、絵空事にしてしまう。

「私たちは分散化した通貨を求めていますが、じっくり調査するまでは早急に決めるつもりはありません。今はIOTAの白書を研究しているところです」と彼は言う。

彼らまた、プラットフォームの分散化も目指している。少なく部分的には分散化させたい考えだ。しかしそれは、製品の優先順位を決める戦略的決断においては、第一の焦点ではない。なので、彼らは(他の)暗号通貨コミュニティーからファンを引き抜こうとは考えていない。もっとも、ターゲットを絞ったユーザーベースのほうがずっと主流なので、それは大きな問題にはならない。

「最初は、中央集権的に構築します。そうすることで、舞台裏を支える新技術を考え出す代わりに、ユーザー・エクスペリエンスと機能性の高い製品の開発に集中できます」と彼は言う。「将来は、特別な角度から、別のもののための分散化を目指します。アプリケーションに関することで言えば、回復機能とデータ所有権です」

「私たちが注目しているプロジェクトで、私たちのビジョンに共通するものがあると感じているものに、Tim Berners LeeのMIT Solidプロジェクトがあります。アプリケーションと、そこで使われるデータを切り離すというものです」と彼は話す。

それが夢なのだ。この夢は素晴らしくて正しいように思える。課題は、独占的なプラットフォームの権力によって競争の機会が失われ、別のデジタルな現実の可能性を信じられる人がいなくなったこの荒廃した市場で、十分な資金と幅広い支援を獲得することだ。これを「信念の価値」と呼ぶ。

4月上旬、Hernándezはオープンブックのオンライン・プライバシーに関する説明と、技術コミュニティーから意見を聞くための簡単なウェブサイトへのリンクを公開した。反応は、予想どおり悲観的なものだった。「返事の90パーセントは批判と、気持ちが折れるような言葉で占められていました。夢を見ていろとか、絶対に実現しないとか、他にやることはないのか、とかね」と彼は話す。

(米議会の公聴会で、独占していると思うかと尋ねられたザッカーバーグは、「自分ではそんなつもりはない!」とはぐらかした)

それでも、Hernándezは諦めていない。プロトタイプを作り、キックスターターで資金を募っている。ここまで辿り着いた。そしてもっともっと作ろうと思っている。しかし、より良い、より公正なソーシャルネットワークが実現可能だと信じる人を必要な数だけ集めることは、何よりも厳しい挑戦だ。

しかしまだ、Hernándezは夢を止めようとはしない。プロトタイプを作り、キックスターターで資金を集めている。ここまで辿り着いた。もっともっと作りたいと彼は考えている。しかし、より良い、より公正なソーシャルネットワークの実現が可能だと信じる人たちを十分な数だけ集めることは、これまでになく大変な挑戦となる。

「私たちはオープンブックを実現させると約束しています」と彼は言う。「私たちの予備の計画では、補助金やインパクト投資なども考えています。しかし、最初のバージョンでキックスターターを成功させることが一番です。キックスターターで集まった資金には、イノベーションのための絶対的な自由があります。紐付きではありませんから」

オープンブックのクラウドファンディングの詳しい説明は、ここで見られる

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(翻訳:金井哲夫)

Facebook、2020年までに全世界事業の100%再生可能エネルギー化を誓約

本日(米国時間8/28)Facebookは、温室効果ガスを75%削減し、2020年までに全世界の運用に100%再生可能エネルギーを使用することを宣言した。

これでFacebookは、プラットフォームの海外からの介入を防ぐことには問題があるかもしれないが、少なくとも気候変動への影響を減らす努力はしていることになる。

Facebookは 再生可能エネルギーの導入ペースに関しては自画自賛している。同社は2013年に初めて再生可能エネルギーを購入して以来、ソーラーおよび風力エネルギーを3ギガワット以上購入している(過去12ヶ月だけでも2.5ギガワット)。

Facebookの再生可能エネルギー導入が特にすばらしいのは、これが単なるカーボンオフセットではないことだ。カーボンオフセットとは、従来の炭素由来燃料に依存する地元電力の購入を相殺するために、はるか遠方の再生可能エネルギーを購入することを言う。

「これらの風力およびソーラープロジェクトは新規プロジェクトであり、当社のデータセンターと同じ電力網にある」と同社は言った。「つまり、これらのプロジェクトそれぞれが、われわれを育むコミュニティーに職と投資と健全な環境を生み出すという意味だ——オレゴン州プラインビルやニューメキシコ州ロスルルナスからバージニア州ヘンリコやスウェーデンのルレオまで。

本日Facebookが公開した目標は、同社が “We Are Still In”[私たちはまだパリ協定にいる]運動を通じてパリ協定遵守宣言の一環だ。

Facebookにとって今回の発表はビクトリーランのようなものだ。去る2015年、同社は2018年までに設備に供給されるエネルギーの50%を再生可能エネルギーにする目標を立てた。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook