センサー搭載のIoTルアー「スマートルアーα」が登場!

代表取締役社長の岡村雄樹氏が冬の札幌で「4ヵ月間、 1匹も魚が釣れない」という悲しい経験をしたことをきっかけに設立したスタートアップ、スマートルアー。4ヵ月も釣れないほうが逆にスゴいのでは…とは思うが、釣れたほうが楽しいに決まっている。そんなスマートルアーは11月6日、同社いわく“世界初”のIoTルアー「スマートルアーα」を完成させ屋外環境での実証実験を開始したと発表。

スマートルアーαの形状や重さは市販のルアーとほぼ同じだが、中にはセンサーが搭載されている。自然湖や実験水槽でのテストでは加速度や温度、照度などを計測。これまでは高速度カメラのような特殊な機材がなければ確認できなかった“ルアーの詳細な動き”のデータ化に成功している。スマートルアーαに搭載されているセンサーモジュールは低コストでの調達・製造が可能な汎用パーツを使用し、自社開発しているそうだ。

スマートルアーでは、釣りをした日時やルアーをキャストした位置、天候、水温、濁りの状況、ヒットした数などがわかる、ルアーと連動したスマホアプリも開発中だ。ルアーのキャストごとの情報をまとめた画面では、実際にセンシングしたデータを元に、ルアーがどの深さにいたか、どの深さでヒットがあったか、水温や濁りはどうだったかを表示する。

同社は2019年中の製品販売を目標に複数のルアーメーカーと協議を進めている。「キャストするだけで、魚がどんな環境にいて何に反応するのか、データで把握できる」そんなプロダクトを目指しているそうだ。

2017年3月に設立されたスマートルアーは水中環境や気象条件、釣り人の行動をビッグデータ化し、釣り人向け情報サービスを提供するスタートアップ。同社は今回の発表に際し「釣りは、先進諸国だけで7兆円の市場規模があり、1億人が楽しんでいるレジャーですが、これまでは個々人の勘と経験だけが頼りで、“自分で考えて釣る楽しさ”を支える仕組みが不足していました。スマートルアーは、釣り人にとってキーとなる水中環境の把握や釣りの記録の分析を軸に、世界の釣り人をサポートする仕組みを作り上げることをミッションとしています」とコメントしている。

動画もカワイイので気になる方はチェックしてみてほしい。

スマート家電が見聞きした情報を政府に開示するかどうかメーカーに聞いてみた

10年前には、ほぼすべての家電製品がインターネットにつながることなど想像もつかなかった。今では、スマートではない家電製品のほうが大変に貴重になっている。だが、スマート家電は、普段、私たちが考えてもいない新しいデータを大量に吸い上げているのだ。

暖房の温度調節器は部屋の温度を知っている。スマートカメラとセンサーは、家の中で誰かが歩き回われば、それに気づく。スマートアシスタントは、我々が何を求めているかを知っている。スマート・インターホンは、誰が来て誰が出て行ったかを知っている。クラウドのお陰で、そうしたデータはどこからともなくやって来る。スマートフォンを使えば、ペットの様子を見たり、ロボット掃除機が仕事をしているかを確かめることが可能だ。

スマート家電のメーカーは、そうしたデータを蓄積したり利用したりできる。そこで、犯罪解決のためにそれを利用できないかと、警察や政府機関は考え始めている。

スマート家電が、我々を監視するために使われているかどうか、などという質問にはメーカーが答えるはずがない。

何年もの間、技術系企業は透明性に関するレポートを発表してきた。彼らは、ユーザーのデータを提出するよう政府から要求されたり依頼された回数を、半定期的に公開している。最初は2010年のGoogleだった。その他の企業も、ユーザーをスパイするよう政府から協力を求められているとのエドワード・スノーデンの暴露騒動に押されて追従するようになった。盗聴国民の通話記録を提供して政府に加担してきた電話会社ですら、信頼を取り戻そうとその件数を公表するようになっている。

スマート家電が普及し始めると、警察も、これまで持ち合わせていなかったデータの新しい入手方法に期待するようになった。警察は、殺人事件の解決のために、Amazonから提供されたEchoのデータを検証した。Fitbitのデータは、養女を殺した容疑で90歳の男性を起訴する手助けとなった。最近では、Nestが監視映像の提出を強要され、これがギャングのメンバーに窃盗事件の有罪答弁をさせることにつながっている。

しかし、大手スマート家電メーカーの中で、データ提供の要請の件数を公表したのはGoogleの傘下であるNestただ一社だ。

あまり知られていないNestの透明性レポートだが、先週、Forbesは、多くのことは示されていないと指摘した。2015年半ばから、500件分のユーザー情報を約300回提出したという内容に留まっている。またNestによれば、テロやスパイなど国家の安全保障に関連する秘密の依頼は、今日まで受けていないという。Nestの透明性レポートは、地方や政府からの合法的なデータの要求案件を開示したApple、Google、Microsoftの詳細な報告書と比較すると、かなり曖昧だ。

Forbesは「スマートホームは監視ホームだ」と書いているが、その規模はどれほどなのだろう。

我々は、市場でよく知られているスマート家電メーカー数社に、透明性レポートを発表するか、またはスマート家電のデータを提出するよう要求された数を公表するかを聞いてみた。

その返事は、ほとんどが泣きたくなるような内容だった。

最大手4社の返事

Amazonは、Echoのデータの提出要請の数を公表するかという質問には答えなかった。去年、データ提供のニュースに関連して広報担当者に質問した際も、Echoのデータに関する報告は行うが、そうした数字は公表しないと話していた。

Facebookは、透明性レポートには「Portalに関連するすべての要求」が含まれると話している。Portalは、Facebookが先日発売を開始したカメラとマイクを搭載したディスプレイ装置だ。新製品ではあるが、広報担当者は、このハードウエアに関するデータ提出要請の件数を公表するかについては答えなかった。

Googleは、Nestの透明性レポートについては話したが、Google自身のハードウエア、とくにGoogle Home製品に関連するレポートの開示については答えていない。

Appleは、HomePodなどのスマートホームに関する数字の公表は必要ないという立場だ。なぜなら、報告するような事例がないからだそうだ。Appleによれば、HomePodへのユーザーからの命令にはランダム・アイデンティファイアが割り当てられるため、個人の特定は不可能だという。

最大手以外の重要なスマート家電メーカーの場合

スマートロックのメーカーAugustは、「透明性レポートは作成していないが、外国諜報活動偵察法に基づく国家安全保障に関する書簡も、ユーザーのコンテンツまたは非コンテンツの情報の提出を求められたこともありません」と言っている。しかし、召喚状、令状、裁判所の命令の件数については答えていない。「Augustは、あらゆる法律に準拠しており、裁判所からの命令や令状があったときは、応じる前に、かならずその内容を吟味しています」と広報担当者は話していた。

ルンバのメーカーiRobotは、「政府から顧客データの提出を求められたことはありません」と話しているが、透明性レポートを将来公表する予定はあるかとの質問には答えなかった。

Netgearのスマートホーム部門であったArloと、Signify(旧Philips Lighting)は、透明性レポートは作成していないとのこと。Arloは将来についてはコメントせず、Signifyは作成の予定はないと話している。

スマートなドアホンやセキュリティー製品のメーカーRingは、なぜ透明性レポートを作成しないのかという我々の質問には答えなかったが、「市民に適正な利益をもたらす合法的で法的義務が伴う要請がなければ、ユーザー情報は提供しません」と話している。さらにRingは、「当然のことながら、利用範囲が広すぎたり不適切な要求は受け入れません」とのことだ。さらに尋ねると、将来的には透明性レポートを公表する計画はあると答えたが、いつとは言わなかった。

どちらもスマートホームのセキュリティー製品を製造販売しているHoneywellCanaryの広報担当者は、こちらが指定した期限までには返事をくれなかった。

スマートセンサー、トラッカー、インターネットに接続できるテレビなどの家電製品を製造販売しているSamsungは、コメントの依頼に応じなかった。

スマートスイッチとスマートセンサーのメーカーEcobeeだけは、「2018年末に」最初の透明性レポートを公表する計画があると話してくれた。「2018年以前、Ecobeeは政府機関から、いかなるデータの提供の依頼または要請も受けたことがありません」と広報担当者は強調していた。

ともかく、家の中の家電製品が、自分たちのためではなく、政府を助けるためにあると考えるとゾッとする。

スマート家電はますます便利になるが、それが収集するデータがどれだけ広範囲に及ぶものか、さらに使っていないときもデータを集めているということを理解している人は少ない。スマートテレビにスパイ用のカメラが付いていなかったとしても、我々がいつどんな番組を見ているかは把握している。それを使って警察は、性犯罪者を有罪にできる可能性がある。殺人容疑者が家庭用警報装置のリモコンキーのボタンを押したというデータだけで、殺人罪が確定してしまうかも知れない。

2年前、元米国国家情報長官James Clapperはこう話していた。政府は、スマート家電を諜報機関が調査を行うための新しい拠り所として視野に入れていると。インターネットに接続された家電製品の普及が進めば、それは普通のことになってしまう。情報通信アドバイザリー企業Gartnerは、2020年までに200億台以上の製品がインターネットに接続されると予測している。

インターネットに接続された居間のカメラや温度調節器を通して、政府が我々の行動をスパイする可能性は低いだろうが、不可能だと考えるのはお人好し過ぎる。

スマート家電のメーカーは、それをユーザーに知らせようとはしていない。少なくとも、大半のメーカーは。

‘Five Eyes’ governments call on tech giants to build encryption backdoors — or else


アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドのいわゆる「ファイブアイ」国家同盟は、大手技術系企業に対して、ユーザーの暗号化されたデータの解読を可能にする「バックドア」を作るよう秘密裏に要請していた(本文は英語)

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(翻訳:金井哲夫)

IoTを駆使した狩猟罠センサーの新モデル、獣害対策とジビエ利用拡大を支援

狩られる側からすると決してスマートではないのだが、狩猟罠に装着できるIoT機器の新モデルが登場した。2017年9月創業のhuntechが開発した「スマートトラップ2」だ。3G通信モジュールの刷新などでバッテリー駆動時間が伸び、最長2カ月の連続利用が可能になったのが特徴。税別の販売価格は1台あたり3万3800円で、システム利用料は月額980円。同社のウェブサイトで注文できる。

スマートトラップ2は、ワイヤーで足を縛り付ける「くくり罠」や獲物が入ると檻が閉じる「箱罠」に取り付け可能で、罠が作動すると磁気センサーが検知して管理者に通知メールが送信されるという仕組み。もちろん、メールは複数人に送ることが可能。野生鳥獣による農作物の被害軽減に役立つほか、シカやイノシシなどを食材にする「ジビエ」の利用拡大にも寄与するという。

具体的には、罠の設置者に義務付けられている見回りの頻度を毎日から週1回~月1回程度にまで削減できることで、高齢化が進む猟師の負担軽減になる。また、捕獲後すぐに獲物を回収できるため、良好な状態で食用肉として流通させることが可能になる。

スマートトラップ2はGPSを内蔵しているので罠の設置場所も記録できる。3G回線を通じて気象情報なども取得可能だ。そして、これらのデータを組み合わせ、いつ、どこで、どんな状態で獲物を捕獲したかがデータベースに自動蓄積されていく。猟師の長年の経験を基に仕掛けていた罠を効率よく配置できるようになる。

現在、政府がジビエの利用拡大を推進しており、今年3月には捕獲から搬送・処理加工、販売を手がけるジビエ利用モデル地区を全国から17地区選定、2019年度にはジビエの消費量を倍増させる方針だ。huntechでは2019年夏までに、LPWA(Low Power Wide Area)通信への対応を予定、モバイル回線が届かない山間部などでの導入を目指すとのこと。また、捕獲後の食肉加工・流通プロセスのログを保存・管理するトレーサビリティ管理プラットフォームの開発など、ジビエの流通体制に関わる事業を拡大していく予定だ。

東大発の無線通信技術で“IoTの足かせ”なくすーーソナスが3.5億円を調達

IoT向け無線通信プラットフォーム「UNISONet(ユニゾネット)」を展開するソナスは10月9日、シリーズAラウンドでグローバル・ブレインとANRIから総額3.5億円を調達したことを明らかにした。

同社は東京大学で省電力無線センサネットワークの研究開発を行ってきたメンバーを中心に立ち上げられたスタートアップ。橋梁や建造物のモニタリングなど、土木・建設業界の企業を中心に無線センサを軸としたソリューションを提供してきた。

ソナスでは資金調達と合わせて、これまで限定的に展開していた加速度モニタリングシステム「sonas xシリーズ」の一般販売を始めることを発表。調達した資金を基に組織基盤を強化するとともに、工場やプラントなど同プロダクトの適用領域の拡大を目指すという。

最新技術を採用し無線センシングの抱える課題を解決

ソナスが展開する「sonas xシリーズ」

“IoT”という言葉が広く使われるようになり、様々な業界の課題解決に活用できるのではないかと注目を集めるようになってから数年が経つ。現状ではそこまで本格的に普及しているとは言えないように思うが、その理由のひとつに「質の高いデータを集める仕組み」がまだ十分に整っていないことがありそうだ。

少なともソナスでは「IoTが真に社会の礎となるためには、無線での高品質センシングを実現することこそが必要である」という思いを持っていて、有線と同等のクオリティを持つ無線システムの研究開発を進めてきた。

同社が手がけているのは乾電池で動く省電力の無線通信規格だ。近年はIoTの要素技術としても使われているもので、ほかにもSIGFOXやLoRa、Dust、ZigBeeなど様々なタイプがある。

従来、この無線通信規格においては「省電力と通信範囲、通信速度」がトレードオフの関係となり、これらを同時に満たすものがないことがひとつの課題となってきた。

たとえばDustは消費電力効率が高い点が強みである一方で電波環境やトラフィックの変動には弱かったり、省電力かつ長距離の転送を実現するSIGFOXやLoRaにも速度面で課題があったり。これらを兼ね備えている無線通信規格はなかったため、「アプリケーションによって無線規格を選んでいる」(ソナス代表取締役CEOの大原壮太郎氏)のが現状だという。

一方ソナスのUNISONetではある技術を採用することで、省電力、マルチホップ、時刻同期、ロスレスデータ収集、高速収集、低遅延な双方向通信といった性能を同時に実現。温度や湿度など小容量のセンシングから、加速度・画像など大容量のセンシングまで無線のチューニングを行うことなく実用的なシステムを構築できるのがウリで、アプリケーションを問わず幅広い用途で使えるような仕組みを作った。

その“ある技術”というのが、無線通信の常識を変えた「同時送信フラッディング(同時送信によるマルチホップ)」だ。

UNISONetのコアとなる同時送信フラッディング

省電力で、かつ通信範囲を伸ばしながら速度も落とさない無線方式の手法は以前から研究されてきた。データをバケツリレーのように運ぶ「マルチホップ」もそのひとつだが、大原氏によると「ルーティング(バケツリレーの経路の決め方)が複雑で難しかったこと」がボトルネックとなり、なかなか流行らなかったのだという。

同時送信フラッディングが画期的なのは、このルーティングをせずにデータを効果的に届けられる点だ。

同時送信フラッディングでは、上の図のようにまず最初の一台が自分の通信範囲にデータを送信し、そのデータを受け取った各ノードがそれをそのまま即座に転送する。

大原氏によるとこの点がユニークなポイントで、「(これまでの無線の常識では)複数のノードから電波を受け取る場合、コリジョン(衝突)が起きて受信できないと考えられていた」けれど、「同一データを同一時刻に受信するとコリジョンが起きない」現象がわかってきたのだという。

この工程を繰り返すことで、データを高速にネットワーク全体へ伝搬できるのが同時送信フラッディングの特徴だ。UNISONetではこの同時送信フラッディングを上手くスケジューリングすることにより、簡単な制御で効率的かつ高性能なネットワークを組める環境を作っている。

少数のルートのみを選ぶルーティングベースの通信とは違い、同時送信フラッディングでは経路を定めないために電波環境の変動の影響を受けにくいほか、従来は難しかった“省エネと高速”の両立も可能。時刻情報をネットワーク内で容易に共有できるため、同一タイミングでセンサの値を取得できる(時刻同期)といったメリットもある。

また上りのトラフィック(散らばった各センサーからゲートウェイへデータを集める)だけでなく、下りのトラフィック(ゲートウェイ側から指示を出す)にも対応することで、データのロスが発生しても即座に再送制御し、漏れなくデータを収集できる。

これによって「有線から無線に変えた結果、データの抜けがあって解析できなくなってしまった」といった課題に直面することもない。

インフラのモニタリングや工場での予知保全が軸

現在ソナスでは、無線センサ・ゲートウェイ、現場で測定指示やノードの設置補助ができるWindowsのソフトウェア、遠隔からクラウドベースでデータの閲覧や分析ができるアプリケーションをひとつのソリューションとして提供することを軸としている。

製品ベースではsonas xシリーズ(加速度のセンシング)がすでに複数のゼネコンで利用実績があるそう。橋梁や建物のモニタリングなどインフラ領域の課題解決に使われていて、ワイヤレス振動センサによって軍艦島にある建築物の揺れを遠隔から常時モニタリングする取り組みなどを行なっている。

「取ってくるデータの品質が良いのは最低条件。(ゼネコンなどでは)自分たちの持つ分析技術を生かしたいというのが根底にある。データが抜けていればそれだけで分析できなくなってしまうし、同期が取れていなくても話にならない。そのニーズに応えられるものがずっと求められていた」(大原氏)

またソナスの共同創業者でCTOの鈴木誠氏によると、インフラ領域では省電力もかなり重要視されるそう。地震のモニタリングなどはまさにその典型で「ずっと現場に置いておいて地震が発生した時だけデータが欲しいという要望がある。これまでは同期のとれた橋全体の挙動を見ることができなかったので、それが見られるようになった点を評価してもらえている」という。

ソナスではインフラ領域に加えて、工場やプラントでの展開を2つめの柱として考えているそう。他社とも協業しながら「設備の予知保全」ニーズに応えていく計画だ。

無線の足かせ外し、いろんな人がIoTを使える世界に

写真左からANRI鮫島昌弘氏、ソナス代表取締役CEO大原壮太郎氏、同CTO鈴木誠氏、グローバルブレイン木塚健太氏

冒頭でも少し触れた通り、もともとソナスは東京大学での研究をベースにしたスタートアップだ。CEOの大原氏とCTOの鈴木氏は同じ研究室の先輩後輩の間柄(鈴木氏が先輩)。創業前、大原氏はソニーで半導体エンジニアの職に就き、鈴木氏は東大で省電力無線の研究を続けていたという。

「飲んでいる時に(起業をして)一緒に勝負をしてみないかという話になったのが創業のきっかけ。以前から鈴木がUNISONetの原型となるものを作っていることは知っていて、この技術なら世界でも勝負できるんじゃないかということで、挑戦することを決めた」(大原氏)

その話が出たのが2015年の秋頃。もう一人の共同創業者である神野響一氏も含めた3人でソナスを立ち上げ、1年ほど大学で技術を温めたのち、2017年4月から事業をスタートした。同年11月にはANRIから資金調達も実施。複数の領域で実績を積み上げてきた。

「現場に出て話をしてみると『無線なんていらない』と言われることもある。先端技術に積極的な人ほどまだ成熟しきる前の無線通信規格を試していて、『現場に入れたら全然飛ばなかった』『マルチホップと言ってるのに全然ホップしない』といった経験をしている。そういう人たちにこそ、使ってもらえるようにアプローチをしていきたい。ソナスでは(鈴木氏の研究を軸に)これまでの歴史的経緯や課題も踏まえて、UNISONetという規格を作り上げた」(大原氏)

今回の資金調達は同社にとって約1年ぶりとなるもの。調達した資金は組み込みエンジニアやビジネスサイドのメンバーを始め、組織体制の強化に用いる。また直近は同社のソリューションがフィットする領域を模索しながら、ゆくゆくは電機メーカーなど製品パートナーに対して無線単体での提供や、世界の人たちに無線通信規格として使ってもらえるように標準化やIP化にも取り組むという。

「IoTはバズワードになっていて『なんでもできる』と思われがちだけれど、実際に使ってみると使いづらかったり、可能性がすごく狭いところに止まっているのが現状だ。まずは無線の領域でIoTの足かせとなるものを外して、いろいろな人がIoTを使える世界を支えていきたい」(大原氏)

カリフォルニア州でデバイスのデフォルトパスワードを禁ずる法律が成立

良いニュースだ!

California州が2020年から、すべての新しい消費者電子製品に、“admin”, “123456”, あるいは古くからお馴染みの“password”といった、デフォルトのパスワードを設けることを禁ずる法律を成立させた。

その法律によると、ルーターやスマートホーム製品など、同州で生産されるすべての新しいガジェットは、最初から“リーズナブル”なセキュリティ機能を持っていなければならない。とくにパスワードについては、各デバイスが、あらかじめプログラミングされたユニークな(他機と共通でない)パスワードを持っていなければならない。

また、新しいデバイスはどれも、ユーザーがデバイス固有のユニークなパスワードを入力してそれを最初に使用するとき、新しいユーザー固有のパスワードの設定を求め、その設定を終えたあとにのみ、最初のアクセスを認めるものでなければならない。

何年も前から、ボットネットたちが、セキュリティのいい加減なデバイスを利用して、大量のインターネットトラフィックでサイトを襲撃してきた。その大量のトラフィックによる攻撃は、分散型サービス妨害攻撃(distributed denial-of-service, DDoS)と呼ばれている。ボットネットが目をつける‘いい加減なセキュリティ’の典型が、デバイスに最初から設定されている、そしてユーザーがそれを変えることもない、デフォルトパスワードだ。上に例を挙げたような、よく使われるデフォルトパスワードは、そのリストがどこかに公開されているので、マルウェアはそれらを利用してデバイスに侵入し、そのデバイスをハイジャックする。そして、ユーザーの知らないうちにそのデバイスは、サイバー攻撃の道具にされてしまう。

2年前には、Miraiと呼ばれる悪名高きボットネットが、何千台ものデバイスを悪用してDynを攻撃した。Dynは、多くの大型サイトに、ドメインネームサービス(DNS)を提供している。DDoSでDynが麻痺してしまうと、これに依存しているサービスに誰もアクセスできなくなる。被害サイトの中には、TwitterやSpotify, SoundCloudなどもいた。

Miraiは、比較的単純素朴な、しかし強力なボットネットで、デフォルトパスワードを悪用していた。今度の法律でデフォルトパスワードというものがなくなれば、このタイプのボットネットは防げるが、でもセキュリティの問題はほかにもたくさんある。

もっと高度なボットネットは、パスワードには見向きもせず、個々のIoT(物のインターネット)デバイスの脆弱性につけこむ。その典型的なデバイスは、スマート電球、アラーム、家庭用電子製品などだ。

IT評論誌The Registerの指摘によると、今回のカリフォルニア州法は、バグが見つかったときのソフトウェアのアップデートを、デバイスのメーカーに義務付けていない。大手のデバイスメーカー、Amazon、Apple、Googleなどはソフトウェアを常時アップデートしているが、無名に近いブランドの多くはやっていない。

しかし、そんな現状でも、この法律は、何もないよりましである。今後もっともっと、改定していただきたい。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Samsung、Tileに対抗する忘れ物防止タグ発表――スマート・トラッカーはLTE-M対応

Samsungだけに、すでに普及しているTileと同程度の機能のスマートトラッカーでは満足しないようだ。同社の新製品は一見したたところではTileその他の忘れ物防止タグに似ているが、LTE対応も含めて可能なかぎりのスマート機能が盛り込まれている。

このトラッカーは位置判定にあたってGPSベースの他にIoTデバイス向けのLTE-M接続能力を備えている。バックパックや鍵など重要なアイテムに取り付けておいた場合、従来のBluetooth接続のトラッカーと比較してはるかに多様な状況に対応できる。つまり屋内や地下などGPS信号が届かない場所でも遠距離からのトラッキングが可能になる。

このデバイスはSamsungの既存のSmartThings(同社のIoT製品全体をカバーする商標だ)アプリに対応し、Android版とiOS版が利用できる。トラッキングはリアルタイムで更新される。またジオフェンス機能もあり、特定の区域に入ると接続する。スマートホームの場合、自動的にシステムに帰宅を告げることができる。またペットの首輪に装着しておくと設定した区域が出たことを教えてくれる。

このスマート・トラッカーは9月14日から出荷される。アメリカでは当面AT&T版が先行するが、Verizon版も年内に発表される予定だ。価格はさほど安くない。99ドルだが、料金には12ヶ月分のLTE-Mサービスの契約が付属している。無料期間終了後は月5ドルとなるので注意が必要だ。

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滑川海彦@Facebook Google+

ブロックチェーンを使用するIoTデバイスの開発が簡単にできる組み込みボードElkrem

スマートフォンをArduinoのボードに接続するツール1Sheeldを作った連中が、さらにおもしろいものを作った。彼らの新製品Elkremは、ブロックチェーンのIoTデバイスを作るためのスマートキットで、彼らはこのプロジェクトのためにEndure CapitalとConsensysから25万ドルを調達した。

ファウンダーのAmr SalehとIslam MustafaはTechCrunch Disrupt 2013で1Sheeldを発表し、その後120か国で数万台を売った。そして今度の彼らの製品は、完全にブロックチェーンがベースだ。

[Bitcoinを使用するキャンディーの自販機]

Salehは説明する: “Elkremは、ブロックチェーンハードウェアを開発するためのボードだ。ブロックチェーンのデベロッパーはハードウェア開発の詳しい知識がなくても、これを使って、ハードウェアのプロトタイプをDapps(分散型アプリケーション)に容易に統合できる。また電気工学のエンジニアやハードウェアのデベロッパーが、ブロックチェーンの詳しい知識がなくても、自分のハードウェアプロジェクトにブロックチェーンを接続できる。どちらもスマートコントラクトでアクチュエータをトリガでき、またセンサーのデータをスマートコントラクトへログできる”。

ボードはArduinoに似ていて、二つのプロセッサーとストレージとWi-Fiがある。プロセッサーのひとつはLinuxの彼ら独自の変種が走り、Ethereumや, IPFS, Swarm, Whisper, Bitcoin, Status.imなどへインタフェイスする。他方のプロセッサーは、もっぱらユーザーに対応する。

Salehは曰く、“うちの強みは、速い開発と速いプロトタイピング、そして速い市場投入だ。このボードがあれば、プライベートで分散型のIoTメッセージをピアツーピアの通信で送れる”。

つまり、このボードがあれば、ブロックチェーンを使うハードウェアの開発が簡単になる。Koynというライブラリを使って、Bitcoinによる決済をわずか1行のコードで処理でき、彼らはすでにサンプルプロジェクトとして、Bitcoin対応のキャンディーマシンや、Bitcoinで料金を払える電源コンセントなどを作っている。このボードは、年内にKickstarterにも登場する予定だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

月額500円のねこIoTトイレで愛猫のヘルスケアを変革、「toletta」が世界猫の日に一般販売スタート

ほんのつい最近知ったことなのだけど、今日8月8日は“世界猫の日”なのだそうだ。日本では猫の日といえば「ニャン・ニャン・ニャン」で2月22日のイメージが強いけれど、 International Cat Dayは8月8日。

試しにGoogleで「International Cat Day」と検索してみると、確かに8月8日と表示される。

ということで、今日はこんな日にぴったりのプロダクト「toletta(トレッタ)」を紹介したい。

tolettaはねこ専用のIoTトイレとスマホアプリによって愛猫の体調変化を見守ることができる、“ねこヘルスケア”サービス。開発元のハチたまでは世界猫の日に合わせて、本日より同プロダクトの一般販売をスタートした。

ねこが抱える課題(ねこの飼い主が抱える課題でもある)に、腎不全や尿結石、膀胱炎といった病気にかかりやすいということがある。中でも腎不全は特に高齢の猫がかかりやすく、死因のトップにもなっているもの。どのタイミングで発見できるかによってその後の寿命が変わってくるため、「いかに早い段階でその兆候に気づけるか」が重要になる。

ハチたまはこの課題にねこ専用のIoTトイレというアプローチで取り組むスタートアップだ。なぜトイレなのか、それはねこの場合、腎不全をはじめとする病気のサインが「おしっこ」や「体重」に表れるからなのだという(腎不全の場合は多尿・体重減少に目を光らせておく必要がある)。

つまり、愛猫の日々の体重や1回のおしっこの量、トータルのおしっこの回数の増減を日々観察しておくことがポイントになるというわけだ。

とはいえ人間が24時間ねこに張り付き、常に目を光らせておくというのは限界がある。動物病院で定期的にチェックしてもらうという手段もあるが、「血液検査などをするとだいたい1万円前後はかかってくる」(ハチたまの担当者)ことに加え、ねこに負担がかかる可能性もある。

そこでtolettaではトイレをIoT化することで、飼い主に変わって24時間365日ねこのトイレの様子を観察できる環境を構築した。

同サービスではねこがトイレに入るだけでおしっこや体重を自動で計測。そのデータは飼い主用のスマホアプリからいつでも閲覧することができる。ハチたまの担当者によると「中には愛猫のおしっこの記録をこまめにノートにつけている人もいる」そうだが、tolettaであればその作業もより正確に、より簡単になるはずだ。

またtolettaには画像認識技術(AI)を基にした「ねこ顔認識カメラ」が搭載。これによって「トイレに入ったのはどのねこか」を識別できるようになる。

ねこに関しては多頭飼いをしている飼い主が多く、ねこを見分ける技術として首輪にタグをぶら下げる方法が一般的に使われているそう。ただ当然ながら首輪を嫌がるねこもいるし、ずっと首輪をし続けるのは負担にもなりかねない。

そこでねこに余計なストレスを与えることなく識別する手段として、ねこ顔認識カメラという手段を採用したのだという。そのほか「ねこが24時間おしっこをしていない」など異常を検知し、アラートする機能なども備えている。

tolettaは初期費用が0円(ただし送料は2200円かかる)、月額サービス利用料が500円というサブスクリプション型の料金体系を採用。契約期間は2年となっていて、途中で解約する場合には違約金が発生する。

初期費用が0円ということもあり、これで利益がでるのか気になる人もいるだろう。ただその点は他のヘルスケアデバイスと共通するかもしれないが、tolettaのビジネスのキモになるのはIoTトイレを通じて蓄積されるねこの健康データだ。

たとえばハチたまではすでにペット保険最大手のアニコムグループと共同研究に取り組んでいる。ねこの詳細な健康データを活用すれば、個々に合った保険の開発・提供もできるはずだ。ハチたま担当者の話ではデータの展開の一例として「(データに基づいた)フードの開発」などもありうるということだった。

とはいえ、これらのビジネスを実現するには、まずはIoTトイレを普及させていくことが前提。ハチたまでは「まずは2018年中に2000台の提供」を目標に販売を促進していくそうだ。

同社では今回tolettaの一般販売開始と合わせて、エンジェル投資プラットフォームであるKEIRETSU FORUM JAPAN 、個人投資家、日本政策金融公庫より総額で7500万円を調達したことを発表。3月に調達した6000万円、2017年に調達した4000万円を加えると累計の調達額は1億7500万円となった。

今回調達した資金をtolettaの量産資金とし、「ねこが幸せになれば、人はもっと幸せになれる」というビジョンの実現に向け事業を進めていくという。

ArmがIoT事業というパズルの最後のピースとしてデータ管理のTreasure Dataを買収

あなたがたぶん今でもARMという名前で覚えておられる思う半導体企業Armが今日(米国時間8/2)、大企業向けのデータ管理プラットホームTreasure Dataを買収したことを発表した。買収価額等は公表されていないが、今朝のBloombergの記事は6億ドルと言っている。

この買収は、Armの新事業であるIoTのサポートが目的だ。Treasure Dataの得意技は、IoTなどのシステムが吐き出す大量のデータストリームの管理である。IoTのほかにも、CRMやeコマースなどのサービスがやはり、Treasure Dataが扱うような大量のデータストリームをコンスタントに作りだす。

これよりも前にArmは、IoTの接続性管理のためにStream Technologiesを買収している。そこで同社は曰く、Treasure Dataの買収は、IoTの実現というパズルの“最後のピースだ”、と。その完成したパズルはArm Pelion IoT Platformと呼ばれ、StreamとTreasure DataとArmの既存のMbed Cloudを一つのソリューションにまとめ、IoTのデバイスとそれらが作りだすデータを接続し管理する。

Treasure Dataは以前と変わらず操業を続け、新しいクライアントと既存のユーザーの両方に奉仕する。そしてArmによると、“IoTの重要な部分として新しい複雑なエッジとデバイスのデータにも対応していく。そして顧客の総合的なプロフィールの中で彼らのプロダクトを個人化し、それらの体験を改良する”、のだそうだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

iPhoneやiPad、Apple Watchを医療現場で活用ーーOchsner Health Systemが目指す“ヘルスケア変革”

国際モダンホスピタルショウで公演を行うOchsner Health SystemのRichard Milani氏

医療機関が抱える数々の問題をAppleのiOSデバイスなどを連携しアプリを導入することで解決へと導く。それがOchsner Health System(オシュナー・ヘルスシステム)のRichard Milani氏が抱えるミッションだ。

Ochsnerは、30の病院、プライマリケアを含む80を超えるクリニックからなり、急性期および慢性期医療を提供するアメリカ南部沿岸地域で最大規模の非営利大学医療センター。Milani氏はドクターでありながら、病院経営を改革すべくChief Clinical Transformation Officerとして病院の改革に注力する。現場にiPhoneやiPad、Apple Watchを導入し、医療のIoT化でヘルスケアの変革を推進している。

そのMilani氏が7月12日、東京ビッグサイトで開催された「国際モダンホスピタルショウ」にて「iPhoneやiPad、Apple Watchを活用したヘルスケア変革の実現」と題された国内初の特別公演を行った。

その公演の一部をTechCrunch Japanの読者にも共有したい。

Milani氏の話だと、医師は1日に平均にして約2300メートル、病院内を歩くのだという。「患者の情報を得る必要がある度に固定のワークステーションに立ち寄る手間を想像してみてほしい」と同氏は話した。病院は果てしなく広く、部屋数も膨大だ。施設内を移動中、どこでも必要な情報を得られることは医師や看護師だけでなく、もちろん誰よりも患者にとって大きなメリットとなるだろう。

Ochsnerでは現在、医師や看護師はiPhoneやiPadを操作することで患者のカルテやヘルスケア関連のデータを閲覧し、緊急時などにはApple Watchで通知を受け取っている。

Epic Systemsのアプリ「Haiku」を使い、勤務前に、前夜に入院した新しい患者の情報、担当患者の状況について確認。院内では「Canto」アプリを使い、カルテや検査結果、ラボからの報告、バイタルサイン、トレンドレポートなどの確認を行っている。こうすることで、医療機器を操作したり、紙のカルテをチェックしたり、などの手間を省くことに成功している。

また、患者は入院時にiPadを渡され、「MyChart Bedside」アプリを使うことで検査結果や服用中の薬、担当ケアチーム、スケジュールなどを確認することができる。医師や看護師の顔を覚えることが簡単になり、メッセージを送ったりすることで従来以上に密なコミュニケーションを図ることも可能だ。

日本でもOchsnerと同様の取り組みは実際に行われてる。例えば、新百合ヶ丘総合病院では2017年11月20日より、同院いわく「国内初」の試みとしてApple Watchを本格導入した。2014年8月電波環境協議会が出した「医療機関における携帯電話等の使用に関する指針」により、院内における携帯電話の利用が事実上解禁され、デバイスを医療・看護の現場で活用しようとする動きが高まった、と同院は言う。

Oschsnerの技術的革新はiOSデバイスやアプリの導入だけにとどまらない。2018年2月18日に発表しているとおり、EpicとMicrosoft AzureのAIとクラウドの技術を使い、急な心停止や呼吸停止、敗血症などを事前に察知する取り組みを開始している。これはカルテや検査・診断結果などの電子化によって成し得たと言っていいだろう。

AIは全ての患者のトータルで10億にもおよぶ医療情報を網羅し、次の4時間以内に起こり得る急な病状の悪化を察知するのだという。その短い時間内に対応するため、Ochsnerでは特別な医療チームが編成されている。チームのメンバーはApple Watchを身につけており、通知を受け取ることで急な対応を行うことが可能だ。「これがデジタルトランスフォーメーションの成果だ」とMilani氏は語る。「患者のケアを人類が今まで成しえなかった形で行うことができる」(Milani氏)

慢性疾患の退院後のモニタリングにもAppleデバイスはその力を発揮する。Milani氏は退院後、多くの患者が必要な服薬をしないのだという。だがHealthKitとEpicアプリ導入済みのApple Watchは患者に服薬のリマインドを通知。血圧や心拍数を計測してモニタリング目的のためクリニックにその情報を送信する。

続けて、OchsnerがなぜAndroidでなくAppleのiOSデバイスなどを採用しているのかを説明したい。何故ならその理由が単に「林檎のマークが格好いいから」というだけではないからだ。公演後、Milani氏はその理由を別室でのグループ・インタビューで詳しく解説してくれた。

インタビューに応じるMilani氏

Milani氏はAppleのデバイスは「操作が簡単・セキュリティーが高い・ハッキングが難しい」と公演中繰り返していた。それとは別に、「Android端末は作っている会社も機種数も多い」という点も、Appleのデバイスに限定している理由なのだという。グループ・インタビューに同席したAppleのWorldwide Healthcare Markets担当者Afshad Mistri氏は「Androidと聞くと1つの大きなファミリーに思えるかもしれない」と話し、だが実際には14000以上のAndroid端末が存在する、と説明。各Android用にインターフェイスを作るとコストが嵩んでしまうとMilani氏は語った。

Ochsnerが行なっているiPhoneやiPad、Apple Watchの導入による医療現場のIoT化は医師や看護師の負担を軽減しているだけでなく、患者のとのコミュニケーションや急な病状変化への対応、退院後のフォローアップにも大いに役立っている。日本でも今後、医療現場のイノベーションがさらに加速することを期待したい。

中国製ロボット掃除機に脆弱性――ハッカーに家中を覗かれる可能性あり

スマートホーム製品というのはなるほどそこそこ便利だが、家に呼び入れたデバイスのWiFiを誰かが悪用しようと考える可能性があることは知っておく必要がある。

しかし多くのユーザーはロボット掃除機もこのカテゴリーに入るとは考えなかっただろう。

エンタープライズ・セキュリティーを提供する企業、Positive Technologiesの研究者2人はDongguan Diqee 360シリーズのロボット掃除機に存在するセキュリティー上の脆弱性に関して詳しい情報を公開した。このロボット掃除機は広東省東莞市のスマートホーム・デバイスのメーカー、Diqee
Intelligence(缔奇智能)の製品で、 WiFiと360度カメラを備えている。これにより家の中を動き回って監視するダイナミック・モニタリングが可能だというのが売りだ。しかしこの機能に悪用の危険性があるといいう。

CVE-2018-10987として知られるリモートでコードが実行される脆弱性により、デバイスのMACアドレスを知っているハッカーはシステム管理者の権限を乗っ取ることができる。今回のレポートによれば、脆弱性はREQUEST_SET_WIFIPASSWD関数内に存在する。この関数を使用するためには認証が必要だが、デフォルトのユーザー名/パスワードはadmin/888888という弱いものだった。

脆弱性が確認されたのはDongguan Diqee 360ロボット掃除機だが、研究者は同じビデオ・モジュールを使っている他のデバイス、屋外監視カメラやスマートドアホン、デジタルビデオレコーダーなどにもこの脆弱性があるのではないかと懸念している。Diqeeではロボット掃除機を他のブランドでも販売しており、研究者はこうしたOEM製品にも同様の脆弱性があるだろうと考えている。

Positive Technologiesはロボット掃除機には別のリモートコード脆弱性、CVE-2018-10988も存在することを発見したが、これを悪用するためには掃除機のSDカードスロットに物理的にアクセスする必要がある。

ロボット掃除機には「プライバシーカバー」が付属する。Diqeeによればこれは物理的にカメラを覆って情報のリークを防ぐものだ。Positive Technologiesはメーカーに脆弱性について通報したが、今のところまだ修正パッチは発行されていない。TechCrunchではDiqeeに取材を試みているが、この記事を執筆している時点では回答がない。

Positive Technologiesのサイバーセキュリティー責任者、Leigh-Anne Gallowayは「このロボット掃除機を含め、IoTデバイスはすべて乗っ取られてボットネットに組み込まれ、DDoS攻撃の足場に利用される可能性がある。しかしまだそれなら所有者に直接の被害は及ばない。ところがナイトビジョン・ウェブカメラ、スマートフォンによるナビゲーション、WiFiをハッカーが悪用すれば所有者を密かに監視することが可能になる。最大の監視能力を持った、いわば車輪付き盗聴器だ」と述べた。

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あらゆる物のインターネット化を可能にする貼れる/剥がせる薄膜状電子回路

パーデュー大学とバージニア大学が開発した、“小さな薄膜状の電子回路は、物の表面に貼ったり剥がしたりできる”。それは、目立たない(unobtrusive)物のインターネット(IoT)を作るための第一歩だ。そのはがせるステッカーは物の表面の全面に貼ることができ、センサーやワイヤレス通信システムとして利用できる。

これらのステッカーと従来のソリューション〔薄膜トランジスタなど〕との最大の違いは、シリコンウェハーを使わずに製造できることだ。回路全体をステッカーに転写できるので、かさばるパッケージは要らないし、回路は必要に応じて剥がしたりまた貼ったりできる。

パーデューのChi Hwan Lee助教授は語る: “たとえばセンサーを作ってドローンに貼り、事故現場などの危険なガス漏れを検出させることができる”。プレスリリースは、こう言っている:

ニッケルのような延性のある金属を電子回路薄膜とシリコンウェハーの間に挿入すると、水中でも剥がすことができる。これらの薄膜状電子回路は、切って整形し、どんな表面にも貼れるので、物に電子的機能を持たせられる。

たとえばステッカーを植木鉢に貼れば、植物の生長を左右する温度変化をセンスできる。

回路の“プリント”は、回路をまずウエファ上にエッチングし、そしてその上に薄膜を置く。すると、少量の水を使って薄膜をはがすことができ、それをステッカーとして利用できる。彼らはこれらの知見を、Proceedings of the National Academy of Sciences(全米科学アカデミー会報)に発表した。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ShippableとARMとPacketがパートナーしてARMベースのサーバーにCI/CDプラットホームを提供

継続的インテグレーションとデリバリー(CI/CD)の市場は、その大半がハイエンドのx86サーバーにフォーカスしているが、しかしARMベースのサーバーの出現により、ARMサーバーの上でネイティブに動くソリューションへの需要も芽生えてきた。そしてその気運に乗ったCI/CDプラットホームShippableは今日(米国時間7/9)、ベアメタルのホスティングプラットホームPacketおよびARMとパートナーして、まさにそのようなソリューションを提供しようとしている。

そのパートナーたちは、ARMベースのサーバーの採用が増えているのだから、デベロッパーはそれらをネイティブにサポートするCI/CDプラットホームが必要だ、と主張する。“正しいインフラストラクチャの上でテストできることが、楽しめるビルドプロセスと苦痛なプロセスをわける境界だ。エッジやIoTなど今急成長中の分野につきものの、多様なハードウェア環境ではとくにそう言える”、とPacketのCEO Zac Smithは言う。“Shippableは最初からARMをサポートしているので、その速いビルドとシンプルなワークフローの組み合わせは、他に類がないほど強力だ”。

Packetは現在、比較的強力なARMベースのマシンを1時間$0.50(50セント)で提供しているが、競合他社も多くて、たとえばScalewayはメニューがもっと豊富だ。

当然ながらShippableはPacketのARMマシン上に同社がホストするCI/CDプラットホームを提供し、その上でデベロッパーは32ビットおよび64ビットのアプリケーションを構築できる。オープンソースのプロジェクトを動かしているなら、そのワークフローのビルドとテストに無料でアクセスできる。

このようなコラボレーションがここでも再度強調しているのは、Packetのようなセカンドティアの(== あまりメジャーでない)クラウドプロバイダーと、彼らの周辺にあるデベロッパーツールのエコシステムは、パートナーシップを武器としてAWS, Google, Microsoftのようなハイパースケールなクラウドベンダーに対抗する、というパターンだ。たとえばPacketは最近、このほかにPlatform 9やBackblazeなどともパートナーシップを組んだ。今後このような動きが、さらに多くなると予想される。

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古い家電もスマート化するIoTリモコン「Nature Remo」に低価格モデルが登場

家電をインターネットに接続してスマホアプリ経由で操作できる、Natureのスマートリモコン「Nature Remo(ネイチャー リモ)」。その機能を絞って価格を抑えた「Nature Remo mini(ネイチャー リモ ミニ)」が発表された。6月11日より予約受付を開始、正式発売は6月下旬〜7月上旬を予定している。

以前もTechCrunchで紹介した発売中の上位機種Nature Remoは、温度・湿度・照度・人感センサーを備えた家庭用のIoTプロダクトで、専用のスマホアプリを使って、エアコンをはじめとした家電のリモコン操作を戸外からも行える。また、Google HomeやAmazon Echoと連携して声で家電を操作することも可能だ(以前の記事ではIFTTTを利用する方法を紹介していたが、現在は直接設定ができるようになっている)。

新製品のNature Remo miniは、温度センサーのみを搭載することでコンパクトなサイズとなった。価格もNature Remoが1万3000円のところ、Nature Remo miniは8980円となっている。また現在は数量限定の特別価格、6980円で予約を受け付けている(価格はいずれも税抜)。

Nature Remo、Nature Remo miniでは、スマホアプリとのペアリング、Wi-Fi設定、リモコンの学習(製品に向けて家電の赤外線リモコンを発信し、信号を認識させる)といった設定をすれば、アプリ経由でリモコンの操作が可能になる。旧式のエアコンやテレビであっても、リモコンで動くものであれば「スマート家電」化することができる点がミソだ。

Natureではさらに、iOS版アプリのリニューアルを6月下旬に、Android版を7月中旬に予定している。リニューアル後は、Nature RemoやNature Remo miniのセンサーを使ったルールの設定が可能になるという。これにより例えば「温度が25度を超えたらエアコンをつける」といった自動制御もできるようになる。また複数家電を一括で操作する「シーン機能」も追加される予定だ。

クルマを買えない世界の20億人を救う、新たな金融の仕組みーーGMSが11億円を調達

自動車の遠隔起動デバイスを活用したプラットフォームを通じて、これまで金融にアクセスできなかった人たちに向けた新たな金融サービスを提供しているGlobal Mobility Service(GMS)。同社は6月8日、イオンファイナンシャルサービスなど10社を超える東証一部上場企業から11億円を調達したことを明らかにした。

今回GMSに出資した企業は次の通り。

  • イオンフィナンシャルサービス
  • 川崎重工
  • 凸版印刷
  • 大日本印刷
  • 双日
  • G-7 ホールディングス
  • バイテックグローバルエレクトロニクス
  • そのほか非公開の一部上場企業

各企業とは資本業務提携を締結し、事業の拡大へ向けて取り組んでいくという。なお同社は2017年4月にもソフトバンク、住友商事、デンソー、クレディセゾン、グロービス・キャピタル・パートナーズ、SBI インベストメントなどから総額約7億円を、2015年8月にもSBI インベストメントから3億円を調達している。

与信審査の概念を変える新たなファイナンスプラットフォーム

GMSが取り組んでいるのは、既存の与信審査の仕組みでは自動車を手に入れることのできない人達を救うためのデバイスとプラットフォームの開発だ。

同社代表取締役の中島徳至氏によると「リースやローンといったモビリティファナンスが利用できない人が世界に20億人いる」とのこと。特に新興国では劣化した車両を長年使い回すことにもつながり、騒音や排気ガスといった新たな問題の原因にもなっているという。

前回の調達時にも紹介したとおり、GMSでは自動車を遠隔から起動制御できる車載IoTデバイス「MCCS」を開発。月額の料金支払いがないユーザーの自動車を遠隔で停止、位置情報を特定できる手段を作ることで、従来とは異なる新しい金融の仕組みを構築した。

これまでの与信審査を省略することで、より多くの人が自動車を手に入れるチャンスを掴めるようになる。

中島氏によると、現在GMSのサービスは2000台を超える車で利用されていて、毎月導入台数が200台ペースで増えているとのこと。中心となっているのはフィリピンの三輪タクシーで、日本やカンボジアでもすでに事業を展開している。

最近フィリピンではGMSの仕組みを利用して三輪タクシーを手に入れたユーザーが、1回目のローンを完済した上で、次は自動車を入手するべく2回目のローンを組む事例も増えているそう。新たなエコシステムが生まれてきているだけでなく、三輪タクシーから車に変わることで金額も一桁変わるため、ビジネス上のインパクトも大きい。

日本でも年間約190万人がローンやリースの審査に通過できないと言われている。従来は金融機関が保証会社を通じて審査をするのが一般的だったが、GMSの仕組みを使って自分たちでやってしまおうという企業もでてきた。

すでに西京銀行やファイナンシャルドゥとは業務提携を締結済み。今後も金融機関やメーカー系のディーラーと連携を深めていくという。

「今までは台数を重視するというよりも『この仕組みでビジネスが成り立つのか、そもそもユーザーからニーズがあるのか』を検証しながら関係者とのパートナーシップを進めてきた。結果として新興国のファイナンスではデフォルト率が15〜20%が一般的と言われている中で、(GMSでは)1%以内に押さえることができている」(中島氏)

事業会社10数社とタッグ

これまでは技術開発と市場開発に加え、金融機関からの理解を得るために話し合いや実証実験に時間を費やし、少しずつ体制が整ってきたという。たとえば今回出資しているイオンファイナンシャルサービスとは実証実験からスタート。手応えがあったため資本業務提携に繋がった。

同社以外にも今回のラウンドには東証一部に上場する各業界の事業会社が10社以上参加している。GMSによると「国内Mobility、IoT、FinTech の各業界における未上場ベンチャー企業の中では最多」とのことで、各社とは業務提携を締結し事業を推進していく方針だ。

「たとえば初めのベンチャー投資となる川崎重工は、GMSの中で最も取り扱いの多いバイクを開発している企業。今後はタッグを組むことでさらにサービスの価値を向上させていきたい。また当社の事業において『セキュリティや個人認証』が大きな鍵となる。凸版印刷や大日本印刷とはお互いのナレッジやリソースを活用しながらサービスを強化していく」(中島)

今回調達した資金をもとに、GMSでは組織体制を強化しプラットフォームの機能拡充とともに、ASEAN各国での事業開発を加速する計画。直近ではインドネシアでの展開を予定しているという。

「GMSが取り組んでいるのは『Financial Inclusion(金融包摂)』と呼ばれる、これまで金融にアクセスできなかった人たちをサポートする仕組み作り。その点では、導入台数を増やすというよりは、どれだけの雇用を創出していけるかを大事にている。20億人がローンを組めないという中で、まずは1億人の雇用を生み出せるようなサービスを作っていきたい」(中島氏)

MicrosoftはWindows IoTデバイスのアップデートを10年間保証

もしWindows 10 IoT Core Serviceを実行する重要なIoT機器を持っていたとしたら、ある一定期間はそのセキュリティやOSのパッチに関して、心配したくはないだろう。Microsoftはこの種のデバイスを運用している顧客に対して、10年間アップデートを保証する新しいプログラムを提供することで安心させようとしている。

基本的なアイデアは、サードパーティのパートナーがWindows 10 IoT Core Service上にアプリケーションを構築する際に、Microsoftに支払いを行うことで、開発機器に対するアップデートを10年間受けられることが保証されるというものだ。これは、パッチの適用されていないアプリケーションによって、対象となる重要機器が脆弱となることが起きないことを顧客に保証する役を果たす。

とはいえ、このサービスはアップデートの提供以上のことも行う。OEMに対して、アップデートを管理し、デバイスの健康状態を評価することもできるようにするのだ。

「Windows IoT Core Serviceは、パートナーたちが、業界をリードするサポートによってバックアップされた、セキュアなIoTデバイスを商品化することを可能にします。したがって、デバイスメーカーは、OS、アプリケーション、およびOEM固有のファイル設定のアップデートを管理する能力を持つことなります」と、新興市場向けビジネス開発のディレクターであるDinesh Narayananは説明する。

このことにより、OEM企業はヘルスケア機器やATMのような機械向けのWindowsベースのアプリケションを開発し、その機能を長期間に渡って維持していくことが可能になる。こうしたデバイスは、例えばPCやタブレットなどに比べて、長期間に渡って使われる傾向があるため、こうした長期間のアップデートサービスは特に重要なのだ。「私たちは、長いライフサイクルを持つこれらのデバイスのために、サポートを延長し、そのサポートに長期にわたり取り組んでいきたいと思っています」とNarayananは言う。

長期のサポートが提供される中で、顧客たちはDevice Update Centerにアクセスし、いつどのようにデバイスがアップデートされるかをカスタマイズすることも可能だ。また、 Device Health Attestation(デバイス健全性認証)と呼ばれる別レベルのセキュリティも含まれている。これによってOEMは、機器のアップデートを行う前に、サードパーティのサービスを用いてその信頼性を評価することができる。

これらのすべてが、成長するIoT分野でMicrosoftに足がかりを与え、これらのデバイスの増加と共に、オペレーティングシステムを提供できるようにデザインされている。場合によってかなり異なる場合があるが、ガートナーは2020年には少なくとも200億台の機器がオンラインになるだろうと予想している。

これらの機器すべてがWindowsによって動作したり、高度な管理機能を必要とするわけではないが、ベンダーは、デバイスを管理しアップデートを行うこのプログラムを利用することで、高度な管理機能を手に入れることができる。そしてIoTの文脈で考えたとき、それはとても重要な点となるだろう。

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(翻訳:sako)

画像クレジット: Prasit photo / Getty Images

より安価にIoTを実現する「BLEルーター」開発のBraveridge、5億円を資金調達

無線技術を軸にIoTデバイスなどの開発・製造を行う福岡市のスタートアップBraveridgeは5月23日、BLE(Bluetooth Low Energy)端末をLPWAやLTEなどの広域通信網に中継できる「BLEルーター」シリーズを発表した。インターネット環境のない場所でも安価なBLE端末を設置して、BLEルーター経由でIoTサービスを使うことができるようになる。

IoT普及にあたっては、“あらゆる場所”に機器を用意するための費用やインターネットへの接続コスト、消費電力が課題となる。Braveridgeでは、最新のBT5.0-Long Rangeモジュールを開発。低コスト・低消費電力・1Kmまでの長距離通信を実現した。

最大20台まで接続可能なBLE端末が取得したデータは、BLEルーターに集約された後、LTE網(3G、LTE、Cat-M1/NB-IoTなど)や各種LPWA網(LoRa、Sigfoxなど)へと中継され、インターネットにダイレクトにつながる。OSではなく独自ファームウェアで制御するため、ハッキングや不正侵入の心配もないとのことだ。

利用料金は、LTEと接続する「BLE to LTEルーター」の場合で2年間のSIM通信費込の価格が1万5000円から(月額契約は不要)といったモデルを検討しているという。

BraveridgeではBLEルーターの導入で、ネット環境がない場所での高齢者や児童の安否確認、火災検知、開閉探知、牧場管理などが安価に実現できるとしている。たとえばオフィスビル内の複数(20カ所まで)のトイレの使用状況をスマートフォンから確認するといったことが数万円のハードウェア投資で可能になるという。

BLEルーターシリーズの発表と同時にBraveridgeでは、ジャフコが運営するファンドを引受先とする総額5億円の第三者割当増資を実施したことを明らかにしている。

Braveridgeは資金調達により、各種デバイスやサービスの開発・提供を加速し、実証実験不要で「真のIoT」を容易に実現できるシステム提供を目指す。

AT&Tの、LTEに対応したAmazon Dashスタイルのボタンが利用可能に

私たちがAT&TのLTE-Mボタンについて初めて説明したとき、その情報はAWS Re:Inventの発表の洪水に埋もれてしまっていた。今週初めにそれが利用可能になったことを発表したテレコムの巨人は、もう少しだけ積極的だった。

とはいえ、それは消費者に直接販売されるデバイスではない。現在金魚の餌や、洗剤などを購入するためにAmazonから選んで手に入れることのできるプラスチックボタン(Dashボタン)とは異なり、このAT&Tのボタンは、現在のところ自分たちでシステムを作ろうとする企業の開発者向けのものである。しかし、これが狙っているのは、機器が安く運用コストも安価で済む4GであるLTE-Mの利用だ。これは将来のIoTデバイスを支えることが期待されている。

このことが意味することは、このボタンもDashボタンが支援できるようなアクティビティに利用できるということである。顧客がボタンを1押しすれば補充を依頼することができる ―― そして通常のWiFi電波の届かないエリアで、より興味深いシナリオの実装に使うことも可能なのだ。AT&T自身も幾つかの用例を示しているが、たとえば公共スペースでの顧客からのフィードバックや、通常の自宅やオフィスのWiFiが選択肢にならない建設現場などでの利用が考えられる。

もちろん、直接的な小売のフィードバックループはないので、これはDashのライバルではあり得ない。そもそもAWSそのものがこの運用に用いられているので、Amazon自身も運用から収益を得ることになる。ああ、もちろん価格も問題だ。このボタンの価格は1個30ドルからで、それだけでも洗剤が沢山買えてしまう。このようなことから、私たちがこのボタンが急速に普及するところを見ることはなさそうだ。しかしAT&Tが屋外でのIoTを推進するためにLTE-Mを利用しようとしていることから、これは興味深い利用手段となるだろう。

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(翻訳:sako)

AWSがIoTデバイスのワンクリックでLambdaファンクションを実行するアプリを発表

Amazonが2015年にAWS Lambdaを導入したときには、サーバーレスコンピューティングという概念がまだよく知られていなかった。デベロッパーはそれによってソフトウェアを、それを実行するサーバーの管理等をせずに配布できる。サーバーはAmazonが管理し、そのインフラストラクチャは何かのイベントが要求をトリガしたときだけ動く。今日同社は、AWS IoT 1-Clickと呼ばれるアプリをiOS App Storeにリリースして、サーバーレスコンピューティングの概念をさらにまた一歩、前進させた。

その名前の“1-Click”の部分はちょっと大げさだが、とにかくこのアプリは、ラムダのイベントトリガーへのさらに素早いアクセスをデベロッパーに提供する。それらは、バッジを読むとか、ボタンを押すといった単純な目的のデバイスに向いている。たとえばそのボタンを押したらカスタマサービスやメンテナンスにつながるなど、そういった単純なシナリオだ。

そもそもAmazonにその好例といえるダッシュボタンがある。それは(Wi-Fiなどインターネットのある環境で)、ワンプッシュで特定のもの(洗剤、トイレットペーパーなど)を一定量注文できるボタンで、AWS IoT 1-Clickでデベロッパーは、自分のデバイス*にそんなシンプルな機能を持たせることができる。〔*: ローンチ直後の現状でサポートされているデバイスはボタン2種のみ、今後増える予定。〕

この機能を利用するためには、最初に自分のアカウント情報を入力する。利用するWi-Fiを指定し、デバイスとそのデバイスのLambdaファンクションを選ぶ。今サポートされているデバイスは、汎用ダッシュボタンとも言えるAWS IoT Enterprise Buttonと、AT&T LTE-M Buttonだ。

デバイスを選んだら、Lambdaファンクションをトリガーするプロジェクトを定義する。単純に、メールやSMSを送らせてもよい。イベントをトリガーするLambdaファンクションを選びNextをタッチすると、構成画面になるのでトリガーアクションを構成する。たとえば、会議室にいるときそのボタンを押したらIT部門を呼び出し、IT部門は送られてきたページから、どの会議室からヘルプの要請があったか分かる、など。

そして、適切なLambdaファンクションを選ぶ。それは、あなたの構成情報どおりに動くはずだ。

これらの指定、選択、構成などのプロセスはもちろんワンクリックでは済まないし、テストや構成変えも必要になるだろう。でも、シンプルなLambdaファンクションを作るアプリ、というものがあれば、プログラミングのできない人でもボタンを単純なファンクションで構成できるだろう。ちょっとした学習は必要だが。

このサービスはまだプレビューなので、アプリは今日ダウンロードできても、現時点では参加を申し込む必要がある。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Microsoft Build 2018:キーワードはAIとエッジ――Azure IoT Edgeを大幅アップデート

この月曜(米国時間5/7)からシアトルでBuild 2018デベロッパー・カンファレンスがスタートした。Microsoftはここで人工知能とエッジ・コンピューティングに多大な力を入れている。特に目立ったのは、倉庫管理用の大型産業機器や油井をリモートコントロールするツールなどを含むエッジ・デバイスで作動する多くの既存のAzureサービスへの機械学習の適用だ。

こうしたサービスはひっくるめてAzure IoT Edgeと呼ばれているが、Build 2018で大幅なアップデートが発表された。IoT EdgeはAI、Azure、IoTデバイス向けカスタムアプリ各種からなる。

Microsoftが今日発表したAzure IoT EdgeはMicrosoftのIoT Hubサービスをベースとしているが、Event Grid やKubernetesコンテナのサポートと同時に同社のCognitive Services APIのサポートが発表された。 加えてMicrosoftはAzure IoT Edgeのランタイムをオープンソース化した。つまりデベロッパーは必要に応じてランタイムをカスタマイズすることができるようになる。

今回のハイライトは、エッジ・コンピューティングに対するCognitive Servicesのサポート開始だろう。現在このサービスは限定版となっており、Custom Visionの視覚サービスのみが利用できる。しかし将来は他のCognitive Servicesに範囲を広げる計画だ。このサービスの魅力は明らかだ。大型の産業用機器からドローンまで各種のデバイスがインターネット接続なしに機械学習を応用したサービスを利用できる。視覚サービスの場合であれば、オフライン状態でも機械学習モデルを使った対象の認識が可能になる。

AIに関しては、エッジ・コンピューティングをリアルタイムAI化する新しいBrainwave深層ニューラルネットワーク・アクセラレータ・プラットフォームが発表された。

MicrosoftはQualcommと提携し、IoTデバイス上で機械学習に基づく推論を実行できるAIデベロッパー・キットを発表した。 最初のバージョンはカメラの利用を中心としたものとなる。
Qualcommが最近独自の ビジョン・インテリジェンス・プラットフォームをスタートさせたことを考えれば驚くには当たらない。

IoT Edgeは機械学習関連以外の分野でも多数のアップデートを受ける。Kubernetesのサポートが開始されるのは大きい。またスマートな決断でもある。デベロッパーはKubernetesクラスターをビルドすることによってエッジ・デバイスとクラウドサーバーの双方にまたがるソフトウェアを容易に開発できるようになる。

Microsoftのイベント・ルーティング・サービスであるEvent Gridがエッジでサポートされるのも順当だろう。サービスを協調動作させるためにいちいちリデータセンターのサーバーを経由するのでなしに、エッジで直接ルーティングができればレイテンシーははるかに少なくなるはずだ。

この他、 IoT Edgeではマーケットプレイスの開設も計画されている。このマーケットプレイスではMicrosoftパートナー、デベロッパーがエッジ・モジュールを共有し、収入を得ることができるようになる。また新しいハードウェア認証プログラムでは、デバイスがMicrosoftのプラットフォームと互換性があることをメーカーが保証できる。IoT Edge、 Windows 10 IoT、Azure Machine Learningでは近くDirextX 12 GPUによるハードウェア・アクセラレーション・モデルの評価をサポートするようになる。DirextX 12 GPUはほぼすべての最新のWindowsパソコンで利用可能だ。

〔日本版〕Build 2018のセッションのライブ配信はこちら。Kevin ScottはMicrosoftのCTO。上のアニメでは1982年、高校時代のKevinが登場してマイクロコンピューターこそ未来だと主張する。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+