ダンボールやプラスチックの廃棄物を減らすリユーザブルパッケージングのReturnityが3億5千600万ドル相当を調達

簡単な試験問題です: ダンボール箱をリサイクルするのが良いですか?それとも丈夫な包装袋を、それがその作り手に再び出会うまで何度も何度も使うのが良いですか? Returnityなら、後者と答えるだろう。そして同社はこのほど、Brand Foundry VenturesXRC Labsなどから310万ドルを調達して、すでにEstée LauderやNew Balance、Rent the Runway、Walmartなどに提供しているワークをさらに継続し、拡張していくことになった。

ReturnityのCEO、Mike Newman氏は次のように回想する。「かなり長くかかったね。最初は再利用できるショッピングバッグを作って、リサイクルショップThredUpの共同創業者でCEOのJames Reinhardt氏なんかがそのバッグを買ってくれた。彼は、輸送用にも良いバッグが欲しい、と言った。そこから、すべてが始まった。今日まで、そればっかりやっている。」

「再利用できるショッピングバッグなら、うちに前からある。それはとてもクールだと自分でも思っている。でもそれだけでは発展性がない。私たちは、パッケージングが単なる製品ではなく、本当はシステムであることを、学ばなければならなかった。リユーザブルなパッケージングをサポートするシステムがなければ、それはプレスリリースだけで終わってしまう事業だ。スケールしないし、サステナブルでもない。私たちの発想がビジネスになり、リユーザブルという考え方そのものがビジネスになるためには、それがスケーラブルでサステナブルでなければならない。そうでなければパッケージングを改革することはできない」。

同社の挑戦は巨大だ。米国だけでも毎年200億以上の小荷物が配達されている。世界全体では1000億になり、5年後にはその倍になる。そして大量の材料が廃棄されている。しかしリユーザブルなパッケージングは理にかなっている。とくに、送ることと返却が自然にセットになっている業界でそう言える。ファッションのレンタルや、食料品の定期的配達、そのほかの定期的な配達や荷受けのある業界だ。

でもご存知にように最近は、レンタルの扱い量が急に減ってしまい、人びとはハイエンドのファッションをレンタルしてリビングに放っておくことをしなくなった。そこでReturnityには、2020年に厳しい目覚めが襲った。

Newman氏はこう言う: 「2020年には大きく成長するはずだった。でもパンデミックによるシャットダウンで売上の80%が一晩で消えた。往復性が本質的にある業界を超えて、うちのビジネスが成り立つためには、何をすべきか、考えなければならなくなった。それが見つからなかったら、今の弊社は存在していないだろう。いちばんつらかったのがそこだし、超えるべき試練でもあった。私たちは、企業には何を提供すべきかという、基本的な問題に直面せざるをえなかった」。

今同社はかなりの数のパイロット事業とケーススタディがあり、それらを発表してもいる。その一部は、前向きの企業と共同で行っている。たとえばウォルマートには、家庭に食料品を配達するためのリユーザブルバッグを供給し、パッケージングのクリーニングと再供給も行っている。

New Balanceに対しては、そのNew Balance Team Sports事業のためのリユーザブルな輸送パッケージングの実装展開を先導し、効率的で環境にやさしいシステムによりパートナーとのサンプルの送受を行っている。このリユーザブルなパッケージングにより、使い捨てのダンボール箱が10000以上発生する従来のやり方が変わった。排ガスの量も63%に減少した。

ヘアケアのAvedaでもこのやり方が功を奏し、使い捨てだった1リットルの瓶をReturnable Shipper Programによるパッケージングの再利用に変えている。また返品処理サービスのHappy Returnsは、ストアと倉庫間の物の移動を、同社の“Return Bar”ネットワークで改善した。お店はeコマースの商品の交換や返品を、印刷や再包装や対人接触なしで処理できる。


Returnityが作っているリユーザブルなパッケージングは、大量のダンボールやプラスチックがリサイクル行きになるのを防ぐ。画像クレジット: Returnity

今回の310万ドルでReturnityは顧客開拓努力を拡張し、また、プロダクトとこれまでできなかったマーケティングの改善を行なう。さらに、オンボーディング(顧客登録)プロセスを標準化して、より本格的な成長を可能にする。

Newman氏曰く、「顧客には、三つのグループがある。ひとつは付き合いの長い顧客で、Happy ReturnsやRent the Runwayなどは頻繁にうちを利用し、弊社に愛着がある。第二のグループはWalmartやEstée Lauderのようにパイロットを終えたばかりで、これからの成長に備えている。そして最後のグループはアーリーステージブランドの長い々々リストで、パッケージングの共同開発は数か月後にやっと始まり、発表もできるだろう」。

「このラウンドで私たちはパイプラインを築くことができ、リユーズの重要性を自覚しているけど着手できなかった企業のための仕事を加速できる」。

編集注記: この記事の最初のバージョンではReturnityの投資家としてXRC Labsが抜けていた。また引用したプレスリリースの草案ではSustainable Oceans Allianceがラウンドに参加となっているが、SOAはReturnityへの投資に参加していない。以上2点を本稿では改定した。

(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: Returnity & Rent the Runway

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Metriportは自分の様々な行動を数値化し相関性を探って自己改善を図れるアプリ

Metriport(メトリポート)というアプリは、あなたのさまざまな数値化されたデータを1つの場所に集約し、気分のトラッキング、薬のトラッキング、ジャーナリングなどの優れた機能を提供する。プライバシー保護のため、あなたのデータはすべて端末内に保存され、アプリはあなたのデータに相関性を見つけ出して、あなたがより良い自分になるための手助けをしてくれる。

カロリー計算、歩数の集計、気分の測定、購入した物の割合、睡眠時間の測定、運動量の集計など、自分の行動を定量化することは、スマートウォッチやコンピューターなどの記録ツールがその作業の負担を軽減してくれる現在、ますます容易になってきている。

しかし、課題もある。記録にこだわる人は、相互に連携していないアプリをいくつも実行しているため、そこから行動パターンを見分けることは困難になる。月経がランニング後の痛みに影響するか?その日の気分が食事の量に影響するか?コーヒーを飲む量や歩く量と、睡眠の質には相関関係があるのか?Metriportはそれらを追跡し、これまで不透明だった行動パターンのベールを取り払うことができる。

「私たちはこれを、トラッキングアプリのスイスアーミーナイフだと考えています。これまでは、気分追跡アプリ、ジャーナリングアプリ、生理を記録するアプリ、健康状態を記録するアプリなど、7つの異なるアプリが必要でしたが、私たちはMetriportを、すべてが1つのプライバシーを重視したプラットフォームに集約される、個人データのダッシュボードというコンセプトで作っています」と、Metriportの共同設立者であるColin Elsinga(コリン・エルジンガ)氏は語っている。「これまで、私たちは外部から投資を受けずにMetriportを開発してきました。友人のDima(ディマ)と私は中学時代からの知り合いで、2人とも開発者であり、健康やフィットネス、特にメンタルヘルスに情熱を持っていました。2人ともさまざまなトラッキングアプリを使っていましたが、それらにはかなり制限があることに気づいたのです」。

この会社は、広告トラッキング技術の使用を拒否しており、すべてのユーザーデータを暗号化してデバイス内にローカルに保存している。このアプリの開発者本人であっても、ユーザーのデータを入手することはできない。同社が提供するプレミアムプランでは、ユーザーのデータを同社のサーバーに保存することも可能だ。

「当社のクラウドバックアップでは、携帯電話を紛失した場合や新しいデバイスに移行したい場合に備えて、データを保持することができます。当社のサーバーにデータを保管したくない場合は、それをオプトアウトすることもできますし、いずれにせよ、データはすべて暗号化されています。本人以外の誰もデータを見ることはありません」と、エルジンガ氏は述べている。「私たちは、自社のマーケティングを犠牲にしても、多くのことを行ってきました。私たちは、お客様にここで完全にコントロールされていることを知っていただくために、できるだけ透明化したいと考えています」。

Metriportは今までのところ、ブートストラップで運営を続けている。しかし、ユーザー数が増えてきたら、より多くの資金を必要とする計画を立て、ベンチャーキャピタルからの投資を受けることも考えている。

「私たちにとって、実際の製品に関して言えば、成長は大きな目標の1つです。私たちは、たくさんのエキサイティングな新機能に取り組んでいます。実際、本日配信したアップデートでは、天気のトラッキング機能が追加されました。私はずっと慢性的な偏頭痛に悩まされてきましたが、これでようやく気圧が頭痛に影響するかどうかを追跡できるようになりました。相関性のインサイトを実行するだけで、大きな影響があるかどうかを確認することができます。

Metriportの開発はまだ初期段階だが、チームはiOSAndroid用のアプリですばらしいスタートを切った。標準で用意されている測定やデータ同期の機能に加えて、ユーザーは自分でカスタマイズした測定値を作成し、例えば、片頭痛の程度、食べたパンケーキの枚数、ピアノを弾いた時間などを、相関性のトラッキングに含めることができる。

画像クレジット:Metriport

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

暗号資産企業Circle、SPACとの取引見直しで評価額が2倍の約1兆350億円に

暗号資産企業のCircle(サークル)は、上場している特別買収目的会社(SPAC)のConcord Acquisition Corp.とのこれまでの契約を解消したことを発表した。同時に、Concord Acquisition Corp.と新たな合併に向けた契約を締結した。この取引が成立すれば、Circleは90億ドル(約1兆350億円)の評価額で上場企業となる。

もともと2021年7月に発表されたこの合併は、2021年第4四半期に完了することになっていた。そして、Circleは45億ドル(約5180億円)で評価された最初の取引に満足していなかったようだ。同社は2022年4月3日の終了日を待たずに契約を破棄し、新たな契約を交わした。

CircleはCoinbase(コインベース)とともにCentreコンソーシアムの創設メンバーの1社としてよく知られている。このコンソーシアムは、人気のステーブルコインのUSDコイン(USDC)の管理を担当している。どの時点でも、1USDCは常に1米ドルの価値がある。

その裏付け資産は、現金、現金同等物、短期米国債のみだ。それらの準備金は、監査法人によって定期的にチェックされている。この方法では、暗号資産の変動にさらされることはないが、コードを使用して1つのウォレットから別のウォレットにお金を送ったり受け取ったりすることができる。それは通常の暗号資産取引のように機能する。

USDCはいくつかの異なるブロックチェーンで利用可能だ。各ブロックチェーンは、手数料、スピード、利便性に関してあなたが探しているものに応じて、異なる利点と欠点を提供する。USDCは現在、Ethereum、Algorand、Solana、Stellar、Tron、Hedera、Avalanche、Flowで利用できる。

そして、USDCの利用は急速に増えている。2021年7月、Circleは250億ドル(約2兆8760億円)相当のUSDCが流通していると発表した。その数字は、USDCの流通額が525億ドル(約6兆400億円)に達し、2倍以上になっている。

Circleは、準備金関連の収入に加え、複数のAPIや利回り商品を提供している。例えば、簡単なAPIコールで決済を処理し、支払いを促すことができるようサポートしている。カード決済、銀行送金、ACH(電子小切手決済)など、多くの古典的な支払い方法に対応している。

開発者は、それらのサービスを活用して、暗号資産製品の出入り口を作ることができる。そして、それらの「取引と財務サービス」は、Circleの収益の大部分を生み出している。Circleの取引とトレジャリーサービスを使用している企業にはDapper Labs、Compound Labs、FTXなどが含まれる

直近では、CircleはCircle Yieldの提供を開始した。Circle Yieldを利用する企業は、1〜12カ月の短期投資を通じて確定利子を得ることができる。また、Circleは株式クラウドファンディングのプラットフォームであるSeedInvestを所有していることも注目すべき点だ。

Circleがこの新しい取引で最終的に上場するかどうか見てみよう。TechCrunchのAlex Wilhelmが2021年書いたように、Circleは今後まだ成長ポテンシャルがあると考えている。過去の収益に賭けるのではなく、同社は投資家に将来の機会に賭けて欲しいと考えている。

画像クレジット:Chaitanya Tvs / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

FBIが新たに「ランサムウェアの爆発的増加」に対応する暗号資産犯罪ユニット立ち上げ

米国連邦捜査局(FBI)は、暗号資産関連犯罪やランサムウェアによる利益を追跡するための専門部署を新たに立ち上げることを発表した。

Lisa Monaco(リサ・モナコ)司法副長官は、今週開催されたMunich Cyber Security Conference(MCSC)での講演で、Virtual Asset Exploitation Team(VAXU、仮想資産搾取ユニット)の設立を発表し、この新部署は「市場がイノベーションを生み出すのと同じ速さで、それを悪用する脅威の行為者」に米国政府が対応するのに一役買うと述べた。

さらにモナコ氏は、FBIが現在100種類以上のランサムウェアの亜種を追跡していることを指摘し「ランサムウェアの爆発的な増加と暗号資産の乱用」も同チームの担当に含まれると述べた。Chainalysisの報告によると、詐欺師が2021年に世界の被害者から奪った暗号資産は77億ドル(約8860億円)以上で、前年に比べて80%増加しているという。

FBIのVAXUユニットは、暗号資産の専門家、ブロックチェーン分析、暗号資産の押収を1つにまとめ、捜査を行うとともに、FBIの他の部署にトレーニングを提供する。この専門部署は、デジタル資産の犯罪利用を調査するために2021年末に創設された米国司法(DOJ)の部門である国家暗号資産執行チーム(NCET、National Cryptocurrency Enforcement Team)の一部を構成し、特に暗号資産取引所や、暗号資産の悪用を可能にしたり犯罪行為を助長するその他の技術に重点を置いていく。

モナコ氏はこう述べている。「ランサムウェアやデジタル恐喝は、暗号資産を利用した他の多くの犯罪と同様に、犯罪者が支払いを受ける場合にのみ機能します。つまり、彼らのビジネスモデルを破壊しなければならないということです。通貨は仮想かもしれませんが、企業に伝えたいメッセージは具体的です。『私たちに報告していただければ、お金の流れを追うことができ、あなたの組織を助けるだけでなく、うまくいけば次の被害者が出るのを防ぐことができます』」。

また、モナコ氏は今週、サイバー犯罪者の検挙経験を持つ連邦検事のEun Young Choi(チェ・ウンヨン)氏をNCETの初代ディレクターに任命したことを発表した。

「NCETは、デジタル資産を取り巻く技術が成長・進化する中で、あらゆる種類の犯罪者による不正利用に対抗するための取り組みを司法省が加速・拡大していく上で、極めて重要な役割を果たすことになるでしょう」とチェ氏は述べている。

今回の発表は、2016年に暗号資産取引所Bitfinex (ビットフィネックス)のハッキングで盗まれたとされる9万4000以上のBitcoin(現在の価値は36億ドル / 約4200億円)を司法省が押収し、同省による「史上最大」の金融資産押収となった数週間後に行われた。

関連記事:米司法省がハッキングで盗まれた4160億円相当のビットコインを押収、ロンダリングの疑いで技術系スタートアップ関係者夫婦を逮捕

画像クレジット:Stefani Reynolds / Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Aya Nakazato)

放射線科のITを根本から再構築するNinesのAIアルゴリズムをSirona Medicalが買収

デジタル放射線科のための「OS(オペレーティングシステム)」を開発しているSirona Medical(シロナメディカル)は、米食品医薬品局(FDA)が認可した分析およびトリアージのアルゴリズムの開発元Nines(ナインズ)を買収した。この買収は、AIを使った放射線技術がやや不安定な時期に行われた。しかし、Sironaはこの動きによって「臨床ワークフローにAIを導入するためには、物事を一から作り直す必要がある」という同社の考えが証明されることに賭けている。

SironaとNinesがどの部分で一緒になってうまくいくのかを理解するには、放射線治療の背後にあるITをレイヤーケーキに見立てて考えるといい。そのケーキの最初の層は、医療画像データベースでできている。2つ目の層は、閲覧や報告のソフトウェアなど、放射線科医が日常的に接するソフトウェアだ。3つ目の層は、これらの画像のパターンを検索したり、医師の意思決定を支援したりするAIアルゴリズムで構成されている。

Sironaの主力製品であるRadOSは、この下の2層をまとめ、その上にAIアルゴリズムを重ねられるようにすることを目指していて、NinesのAIはの下の2層で大きな進歩を遂げた。

Ninesは、実際に医師の意思決定をサポートできるとするアルゴリズムを作り出した。そのうちの1つは、科学者が肺の結節(異常な増殖)の大きさを測定し、呼吸器疾患の発見に役立てるというアルゴリズムだ。もう1つのアルゴリズムは、脳のCT画像を分析し、頭蓋内出血や腫瘤の兆候を検出するものだ。医師が患者をトリアージするのを支えることを目的としている(両アルゴリズムともFDAの510(k)認可を取得している)。

RadOSプラットフォーム(画像クレジット:Sirona Medical)

今回の買収は、臨床医のワークフローにアルゴリズムを真に統合するためには、第1層と第2層を統合する必要があるからだとSirona MedicalのCEO、Cameron Andrews(キャメロン・アンドリュース)氏はTechCrunchに語った。RadOSは、その問題を解決する準備ができているという。

ヘルスケア分野におけるAIは、最近混迷を極めている。一方で、1月にIBM Watson Healthがスピンオフし、AI放射線科の楽観論者に打撃を与えた。しかし、熱意は冷めていない。同じ月に米国最大の外来画像診断プロバイダーであるRadnet(ラドネット)は、がん、肺疾患、神経変性のAI画像解析に投資する2社を買収した。

そして、誰もが触れない点がある。それは、期待されるAI放射線科革命は、まだ到来していないということだ。米放射線学会の会員約1400人を対象に2021年に行われた調査で、現在臨床でAIを使用している放射線科医はわずか30%であることが明らかになった。AIを使用していない人の20%は、5年以内の新AIツール購入を計画していた。

Sironaの主張は、放射線科でのAI活用を阻んできた問題は、業界のレガシー技術に深く食い込んでいるというものだ。前述の「層」はすべて一緒に機能するように設計されていない。

臨床支援アルゴリズムを追加する前でさえ、放射線科医はすでに3つか4つの異なるソフトウェアで作業している、とアンドリュース氏は話す。そして、AI機能を採用した新しいソフトウェアを追加しようとすると、それらのソフトウェアにさらに別のものを追加しなければならない。「Radiology Artificial Intelligence」のあるレビュー論文によると、堅牢なAIソフトウェアは、個々のワークステーションにベンダー固有のソフトウェアをインストールする必要があるとのことだ。このプロセスは、新しい技術を採用する際に複雑さをさらにもたらすことになる、と同論文は指摘している。

「私たちは、基礎となる放射線科ITスタック自体、そしてより広範な基礎となるイメージングITスタックは、放射線科医が抱えるタスクと、サードパーティのAIおよびソフトウェアベンダーが今後10年間に要求するタスクの両方を根本的に処理できないと認識しました」とアンドリュース氏は述べた。

そう考えると、SironaがNinesを買収したことで、それらのトップ層のアルゴリズムがRadOSに統一されることになる。それは医師にとって、実際にどのような意味を持つのだろうか。注釈付き画像からレポートへのシームレスな移行が可能になる、ということだ。肺結節をクリックし、Ninesのアルゴリズムで測定し、さらにクリックすれば、その測定値をレポートに反映させることができる。

「これは、とてもシンプルです。しかし、それにもかかわらず「実現不可能でした」とアンドリュース氏はいう。

RadOsのプラットフォームを利用したメモ帳アプリケーション

「AIやコンピュータビジョンは、ピクセルと言葉を関連付ける能力であり、自然言語処理は、言葉をピクセルそのものに関連付ける能力です」と同氏は説明する。「報告書を作成するためのソフトウェアと画像を見るためのソフトウェアが機能的に分離しているため、このような双方向の接続を今日実現することはできません。そして、それらはアルゴリズムから完全に分離されているのです」。

SironaはNinesの臨床データパイプライン、FDA認可の2つのアルゴリズム、機械学習エンジン、放射線科ワークフロー管理・分析ツールのみを買収した。興味深いことに、同社はNines AIの遠隔放射線の部門を買収していない。Ninesはリモートで働く放射線科医も雇用しており、その専門知識を病院やクリニックに提供している。

Sironaは「放射線科サービス事業を行っていない」ため、遠隔放射線部門はSironaになじまなかったと、アンドリュース氏は話した。しかし、同氏買収の詳細を明らかにするのは却下した。

今回の買収の発端は、投資家の重複と相互のつながりにある。8VCは両社に出資していて、SironaはNinesの投資家であるAccel Partnersとつながりがある。Sironaはこれまでに6250万ドル(約72億円)を調達している。

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(文:Emma Betuel、翻訳:Nariko Mizoguchi

ロボットが昼食のサラダボウルを調理してくれるようになる日は近い

Hyphen(ハイフン)という企業については、8月に同社がステルス状態から脱した際に、筆者のニュースレター(翻訳されているので是非ご覧いただきたい)で簡単に紹介した。食事の準備を自動化することは、今後、大きな意味を持つことになるだろう。新型コロナウイルス感染症が流行し始めた初期の頃、多くの人がそう予想した。外出自粛要請やウイルス感染への不安が拡がった時、多くのレストランオーナーは、最終的にどの程度のプロセスを自動化できるだろうかと考えていた。

だが、多くの人がそれは一時的な問題になると考えていたのではないだろうか。ウイルス感染拡大から2年が経過した今、人々の「一時的なもの」に対する予想は、多少変化したと言ってもいいだろう。しかし、一部の地域では感染拡大が収まっているものの、低賃金であることが多い外食産業の人材確保は、依然として問題となっている。

このような理由により、業務用厨房の自動化を実現する企業には、多くの投資家から関心が集まっている。数年前から盛り上がっていたロボットによるフードデリバリーに、この分野も追いつきつつあるようだ。当初は、自動化が比較的容易な食品に、特に注目が集まるだろう。ピザは、そのシンプルさと、そして多くの人がピザを好むという事実から、当面は間違いなく最初に選ばれる対象となるはずだ。

サラダボウルも有力な候補だ。サラダボウルは完結型の料理で、コンピューターの画面から離れられる時間がますます減っている労働者にとって、手軽なランチの選択肢として人気が高まっている。

Hyphenが提供する「Makeline(メイクライン)」は、カウンターの下で行われるベルトコンベアのようなプロセスを通して、ボウルの調理を自動化するモジュール式のソリューションだ。そのカウンターの下に収められているという仕様は、とりわけ興味深い。このような企業の多くは、自動化を外に向けて見せるものと位置づけているからだ。見方によっては、ロボットが自分のランチを作ってくれるというのは、クールな、あるいは少なくとも斬新な、アイデアだと思われるかもしれない。しかし、Hyphenのシステムは、人間が顔を出して顧客と対話するというような、人間を前面に出すことを前提としている。

サンノゼを拠点とするHyphenは先日、2400万ドル(約27億6000万円)のシリーズA資金調達を実施したことを発表した。Tiger Global(タイガー・グローバル)が主導したこのラウンドによって、Hyphenの資金調達総額は3440万ドル(約39億6000万円)に達した。この新たな資金は、研究開発の強化、生産設備の増強、市場の拡大など、ロボット関連の資金調達に予想されるとおりの用途に使われる。同社は、今後2年間でMakelineシステムを5つの市場に展開することを想定しているというが、具体的な内容についてはまだ発表していない。

画像クレジット:Hyphen

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ペット向けの遠隔医療プラットフォーム「Dutch」が事業拡大に向けて約23億円調達

バーチャル獣医サービスを提供するプラットフォームDutchが、Forerunner VenturesとEclipse VenturesがリードするシリーズAの投資ラウンドで2000万ドル(約23億円)を調達した。サンフランシスコの同社のこの最新のラウンドは、立ち上げから7カ月後であり、調達総額は2500万ドル(約29億円)になる。Dutchは専門の獣医師を起用して、ペットとその家族にデジタルのヘルスプラットフォームを提供し、誰にとっても利用しやすいペットケアを目指している。

このプラットフォームは2021年7月に、創業者でCEOのJoe Spector(ジョー・スペクター)氏の個人的な体験がヒントになって創業された。スペクター氏がTechCrunchに語ったところによると、彼の兄が飼っていた病気かもしれない犬が放置されているのを見て、もっと簡単に治療を受けることができる現代的な動物病院が必要だと感じた。彼によると、ペットの症状が見てわかるほど重くなってから医療の必要性を意識する飼い主が多く、そんなときでも1回の受診と1回の治療費で済ませようとすることが多いが、これからの飼い主は、そんなことをすべきでない。

「何千万人もの米国人の1人として、妻と私は子犬の世話を引き受けた。ロックダウンの間、自分たちや子どものためにはテレメディスン(遠隔医療)を利用しましたが、私たちの新しい子犬に医療が必要になれば獣医の元まで連れて行く必要があります。それにはお金だけでなく、時間もかかります。人間は、赤ちゃんでさえ医師とオンラインでチャットして処方箋をもらえるのに、ペットはそれができない。日常的でよくある軽い病気なら、もっと現代的で利用しやすい、そしてクオリティが高くて信頼できる獣医さんへのニーズがあるのだと気がつきました」。

Dutchはサービス開始以来、100名の獣医師と2万5000匹以上のペットにサービスを提供している。このプラットフォームを利用するには、ペットの飼い主にいくつかの情報を提供してもらい、その後、ビデオ通話の時間を設定することができる。初回訪問を終えたら、プラットフォームを通じていつでも獣医師と再接続することができる。Dutchの獣医師チームは、かゆみ、震えや震え、脱毛、1人でいることへの恐怖、食事や栄養、新しい場所や人への恐怖、皮膚の赤みや炎症、嘔吐など、数多くの問題を解決することができる。

画像クレジット:Dutch

新たな資金の用途としてスペクター氏が考えているのは、同社の知財保護の確立、そしてペットたちの医療履歴をデータベースに保存して飼い主が閲覧したり、ペットのデータや処方を共有できるようにしたいという。また、獣医だけでなく薬剤師のネットワークを大きくして、同日または翌日配達を可能にすること。さらにまた、多様な人材の協力を求めて顧客獲得ツールを作り、同時に、現在の獣医ネットワークをもっと拡張したいとのことだ。

将来的には、会員特典を充実させるとともに、ペットの状態に合わせて顧客がコミュニケーション方法を選べるようにする予定だと、スペクター氏はいう。

「私たちにとっての究極の目標は、ペットの健康を消費者の手に委ねることです」と、スペクター氏はいう。「消費者を中心に考え、できるだけ多くのサービスを消費者の手元で、消費者の時間に合わせて提供することに力を注ぎたいと思います。商品提供や価格の透明性を高め、高い価値とカスタマイズ性を実現したい」。

DutchのシリーズA投資は、昨年発表されたJimmy Fallon(ジミー・ファロン)氏の支援による500万ドル(約5億7000万円)のシードラウンドに続くものだ。このシードラウンドはForerunner Venturesが主導し、Bling CapitalとTrust Venturesが参加している。

画像クレジット:Dutch

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hiroshi Iwatani)

フォードとボルボがカリフォルニア州でEV用バッテリーの無償リサイクルプログラムに参加

Tesla(テスラ)の元CTOであるJB Straubel(J・B・ストラウベル)氏が創業したスタートアップRedwood Materials(レッドウッド・マテリアルズ)は、カリフォルニア州で電気自動車のバッテリーリサイクルプログラムを開始する。Ford(フォード)とVolvo(ボルボ)が設立パートナーとなる。EVの材料調達に圧力が高まっていることが背景にある。

基本的な計画は、Redwood Materialsがカリフォルニアのディーラーや解体業者と協力し、ハイブリッド車や電気自動車の使用済みバッテリーパックを回収するというものだ。ストラウベル氏によると、このプログラムはバッテリーを持ち込む側にとっては無料だ。バッテリーを回収し、適切に梱包して、ネバダ州北部にあるRedwood Materialsのリサイクル施設に輸送する費用は、パートナー企業であるVolvoとFordとともに、Redwood Materialsが負担する。同社は、車種に関係なく、カリフォルニア州内のすべてのリチウムイオン電池とニッケル水素電池を受け入れる予定だ。

「今は混乱していて、人々にとってすばらしい、つまり明白で明確な解決策がないのです」とストラウベル氏はいう。「これは、私たちが変えたいことの本当に重要な部分です。最初はアメリカの誰もが、そしてゆくゆくは世界の誰もが、非常に簡単にバッテリーをリサイクルし、材料がかなり高い割合で回収されるようにしたいのです」。

同社は、スクラップ回収業者やディーラーがバッテリーの回収を組織化するために利用できるポータルを立ち上げた

このパイロットプログラムはまだ初期段階にあり、いくつかの部分は明確に定義されていない。

「強調したいのは、私たちはこのすべてにおいて学習中であり、これはちょっとした西部劇だということです」とストラウベル氏は話す。「少し複雑であることが、これまで実現しなかった理由の一部かもしれないと考えています」。

Redwood Materialsは、循環型サプライチェーンの構築を目指し、2017年に創業した。同社は、携帯電話のバッテリーやノートパソコン、電動工具、パワーバンク、スクーター、電動自転車などの家電製品だけでなく、バッテリーセル製造時に出るスクラップもリサイクルしている。そして、これらの廃棄物を加工し、通常は採掘されるコバルト、ニッケル、リチウムなどの材料を抽出し、それらを再びパナソニックやAmazon(アマゾン)、Ford、テネシー州のAESC Envisionなどの顧客に供給している。

目的は、クローズドループシステムを構築することで、最終的に電池のコストを削減し、採掘の必要性を相殺することにある。

現在市販されている電気自動車には、リチウムイオン電池が搭載されている。電池には2つの電極がある。一方がアノード(負極)で、もう一方がカソード(正極)だ。真ん中に電解液があり、充放電の際に電極間でイオンを移動させる運び屋として働く。アノードは通常、黒鉛でコーティングされた銅箔でできている。

自動車メーカーが電気自動車の生産を拡大し、やがて内燃機関を搭載した自動車やトラックに取って代わるようになると、電池とその材料の需要が急増すると見込まれる。自動車の電動化に取り組む主要自動車メーカーのほぼすべてが、バッテリーセルメーカーやその他のサプライヤーと提携を結び、サプライチェーンの強化に努めている。

2022年初め、既存のパートナーであるパナソニックは、Redwood Materialsとの関係拡大の一環として、Teslaとともに運営するギガファクトリーで製造するバッテリーセルに、2022年末までにリサイクル材をもっと使うと発表した。

Redwood Materialsは、バッテリーセルのアノード側の重要な構成要素であるリサイクル材から製造された銅箔のパナソニックへの供給を始める。Redwood Materialsは2022年前半に銅箔の生産を開始する。銅箔はパナソニックに送られ、年末までにセルの生産に使用される予定だ。

画像クレジット:Screenshot/Redwood Materials

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

メタ、グローバルコミュニティ開発責任者が未成年者との性交渉ビデオに撮影され辞任

Facebook(フェイスブック)の親会社であるMeta(メタ)は、グローバルコミュニティ開発マネージャーを務めていたJeren A. Miles(ジェレン・A・マイルズ)氏が、小児性愛者を捕まえる目的で素人が行ったおとり捜査に登場する様子を撮影した動画がYouTubeで拡散され、その後Reddit(レディット)などにも転載されたことを受けて、現在は同社と雇用関係にないことをTechCrunchに確認した。

「PCI: Predator Catchers Indianapolis」というアマチュアグループがYouTubeに投稿した2時間のビデオには、マイルズ氏が性行為をしていたり、特定の性行為を認めたり、性行為を実行する意図を認めたりする様子は描かれていない。また、このビデオによる法的な影響があるとすれば、それは明らかではない。

しかし、この動画では2人の人物がマイルズ氏を尋問しており、同氏はその過程で、13歳の少年と生々しい不適切なコミュニケーションをとったことを認めている。マイルズ氏はその後、FacebookTwitter(ツイッター)などのSNSで自身のソーシャルプロファイルを削除しており、また、解雇されたのか自発的に辞職したのかは別として、この問題をめぐってFacebookでの役割を辞めるのに十分なほど、のっぴきならない不利な内容となっている。

「これらの疑惑の深刻さは決して無視できません。この人物については、当社との雇用関係は終了しています。当社はこの状況を積極的に調査しており、現時点ではこれ以上のコメントはできません」と、Metaの広報担当者であるDrew Pusateri(ドリュー・プサテリ)氏は声明で述べた。なお、プサテリ氏は声明文をTechCrunchに送る前に、通話でこの記事のニュース性について(公開する価値はないと)筆者を説得しようとし、他の報道機関がこの記事を取り上げていないことを指摘した(アドバイスに感謝する)。

データ保護やプライバシーに関する話から、問題のある製品の実行、エンゲージメント数の低下まで、Metaはここ何年も論争の波に襲われているように感じる。未成年者のセックススキャンダルでさえ、この時点では目新しいニュースではない。

世界中の何十億人もの人々が、Facebook、Instagram(インスタグラム)、Messenger(メッセンジャー)、WhatsApp(ワッツアップ)、Workplace、Oculusなどを含むMetaの製品ポートフォリオの常連ユーザーであることを考えると、これらはすべて、Metaのように大きくて露出度が高い企業であることの一部だといえるかもしれないが、いずれにしても良いことではない。

折しも、同社は元英国政治家のNick Clegg(ニック・クレッグ)氏をグローバルアフェアーズ担当社長に任命するなど、PRオフェンスの刷新を図っている。彼らには、大きな仕事が待ち構えている。

画像クレジット:Chesnot/Getty Images / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Aya Nakazato)

遠隔地採用のスタートアップDeelの新機能は企業が暗号資産でペイロールを蓄えるオプション

2019年、Alex Bouaziz(アレックス・ブアジズ)氏とShuo Wang(シュオ・ワン)氏は、企業がコンプライアンスに基づいて世界中の人材を遠隔地から雇用し、給与を支払うことを目指すスタートアップ、Deel(ディール)を設立した。

2人のミッションは真剣そのものであり、リモートワークがこれからは主流になるというビジョンは、新型コロナの大流行よりも先にあり、新型コロナは同社の提供するサービスへの需要を一層高めることになった。

Deelは、企業が現地法人を介さずに5分以内に従業員や契約社員を雇用することを可能にすると主張している。また「ワンクリックで」で150以上の通貨でチームへの支払いが可能だとのことだ。

「私たちは、企業がどこでも誰でも雇用できるようにしたいのです」とブアジズ氏はTechCrunchに語っている。「才能はどこにでもありますが、チャンスはそうではありません。だから、我々はそれを少し平準化し、企業が誰でも採用できるようにしたいのです。ただ、もっと重要なのは、出身地に関係なく、彼らにふさわしい経験を提供することです」と語る。

ブアジズ氏は、これまで「一度もオフィスで働いたことがない」と告白するなど、確実に有言実行している。

ブアジズ氏とワン氏は、明らかに何かを掴んでいた。10月のDeelは、シリーズDで4億2500万ドル(約489億円)を調達し、55億ドル(約6331億円)と評価された。ブアジズ氏は12月に、2021年の同社が「400万ドル(約4億6000万円)から5000万ドル(約57億5500万円)以上のARRになり、60カ国以上で50人から550人以上に……そして6億ドル(約690億円)以上を調達した」と公に語っており、その成長ぶりは驚くほど透明である。

2021年、Deelは契約者向けに「Crypto Withdrawals(クリプト・ウィズドローワル)」を開始し、Deelを通じて支払われた人は、支払いの一定割合をビットコイン、イーサリアム、USDC、ソラナとダッシュで直接Coinbaseアカウントに引き出し、ほぼ瞬時に出金できるようになった。

しかし、これまでDeelを利用する雇用主は、遠隔地の従業員への支払いに暗号資産を使用するオプションを持っていなかった。

現在、このスタートアップはその使命をさらに一歩進め、企業に暗号資産で給与資金を確保する方法を提供しようとしている。まず、ブアジズ氏によると「最も急速に成長しているステーブルコインであり、ドルに固定されているため、変動する余地が少ない」ことからUSDCを利用することにした。企業がインターナショナルなチームに対して暗号資産を使って支払いを行うことは、Coinbase(コインベース)、Shopify(ショッピファイ)、Dropbox(ドロップボックス)など、Deelの6000を超える既存顧客の多くに歓迎されそうなオプションである。

Deelチームによると「柔軟性は、どこで雇うかだけでなく、どのようにチームに支払うかということでもあるはずです」とのことだ。

共同創業者のシュオ・ワン氏、アレックス・ブアジズ氏(画像クレジット:Deel)

この新しい製品機能は、暗号資産で資金を引き出すことを労働力に任せるのに対して、雇用者がUSDCでチームに即座に支払うことができるようになるという点で「Crypto Withdrawals」とは異なるものだと同社は述べている。

具体的には、USDCで資金を保有している企業は、グローバルチームの給与や支払いをまかなうために、Coinbaseのアカウントを介してDeelに直接支払いを行うことができる。企業がDeelにお金を払い込むと、契約者は暗号資産を含む150以上の通貨で出金することができる。

Deelによると、企業が主に暗号資産で業務を行っている場合、従業員に支払う前に、例えば米ドルに変換するための為替手数料を支払うことを心配する必要もない。暗号資産で直接支払えばいいのだ。

「これは、取引手数料や通貨手数料が少ないエンド・ツー・エンドの暗号資産支払い体験であり、さらに、企業や請負業者が銀行口座にお金を保持する必要性を排除します」と述べている。

Deelにとって、この動きは暗号資産の主流化における次のステップだ。

「これは暗号資産企業にとって画期的なことです」とBouazizは述べている。

Deelによると、この動きは、会社の暗号資産残高を使用してチームに支払いを行いたい企業と、暗号資産で支払いを受けたいというチームメンバーの両方からの「急増」した需要によって促されたとのことだ。例えば、同スタートアップによると、暗号資産給与支払いに対する需要は前月比10%増となった。

その他、同社が発表した愉快な統計データをいくつか紹介しよう。2021年の7月から12月の間に、支払いの2%が暗号資産で引き出された。2021年12月にDeel経由で約470万ドル(約5億4100万円)が暗号資産で従業員に支払われ、2021年11月から49%増加した。興味深いことに、暗号資産の出金の地域別内訳は、ラタム(52%)、EMEA(ヨーロッパ、中東およびアフリカ、34%)、NAM(北米)(7%)、APAC(アジア太平洋、7%)とのこと。

画像クレジット:cokada / Getty Images

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Akihito Mizukoshi)

フォルクスワーゲンがファーウェイの自動運転部門を買収する方向で交渉中との報道

自動運転の分野で、2つの大企業の「結婚」が見られるかもしれない。Volkswagen(フォルクスワーゲン)がHuawei(ファーウェイ)の自動運転部門を数十億ユーロ(数千億円)で買収するためにHuaweiと交渉していると、ドイツの月刊ビジネス誌Manager Magazinが2月17日に報じた

HuaweiはTechCrunchの取材に対し、直ちにコメントすることはできないと述べた。VW Chinaもノーコメントとした。

合併の可能性は強力なものになる。Huaweiの自動運転部門は、通信機器とスマートフォンの巨人であるHuaweiが2019年に立ち上げたばかりの「スマート・ビークル・ソリューション」事業部門の下に位置する。smart car BUの設立は、Huaweiが自社で自動車を開発するのではないかとの多くの憶測を呼んだが、同社は製造計画を繰り返し否定し、代わりに「中国のBosch(ボッシュ)」に、つまり自動車ブランド向けの部品供給業者になりたいと述べた。

Huaweiは、少なくともこれまでのところ、この戦略を堅持しているようだ。深センに拠点を置く同社は2021年、中国の自動車メーカーBAIC傘下の新しい電気自動車ブランドであるArcfoxの量産セダンにプリインストールされた自動運転ソリューションを展示した。Huaweiは、この電動セダンのチップセットと車載OSを供給した。

VWにとって、自動運転機能を持つテック企業は、明日の自動車を作るという野望を前進させるのに役立つかもしれない。実際、VWはFord(フォード)とVWが出資するピッツバーグ拠点のスタートアップArgo AI(アルゴAI)と提携している。2021年9月、この2社は共同開発の最初の製品である自動運転電動バンを発表した。

2020年時点で最大の市場である中国で、VWが同様の技術パートナーを探していたとしても、誰も驚かないだろう。中国の自動運転車企業の多くは、すでに自動車メーカーと深い関係を築いており、Baidu(バイドゥ)はGeely(ジーリー)とDidi(ディディ)はBYDとジョイントベンチャーを結成している。

今回の買収報道は、HuaweiのAVチームにとって微妙な時期でのものだ。同社の自動運転プロダクトの責任者だったSu Jing(スー・ジン)氏は、Tesla(テスラ)のAutopilotの致命的な事故が「人を殺す」と非難した後、1月にHuaweiを去った。この発言について、Huaweiは「不適切なコメント」とした。

退社後、スー氏の次の一手は多くの憶測を呼んだ。わかっているのは、スー氏がロボタクシーを嫌っていることだ。2021年のインタビューで、歯に衣を着せないこのエグゼクティブは「ロボタクシーを最終的な商業目標とする企業は絶望的です。ロボタクシーを提供できるのは、乗用車に取り組んでいる企業でしょう。そのマーケットは間違いなく私のものになります。まだそうなっていないだけです」。

Huaweiの自動運転事業の買収は、決して安くはないだろう。同社のスマートカー部門は、2021年に研究開発に総額10億ドル(約1150億円)を費やす計画だった。また、スタッフ5000人を誇る研究開発チームの構築を目指していて、そのうち2000人超が自動運転に専従している。ここで疑問がある。Huaweiはすでにスマート運転に多額の投資をしており、顧客も増えているなかで、なぜこの芽生えつつある事業を手放すのだろう。

画像クレジット:Arcfox Alpha S powered by Huawei

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

夜型人間も夜型人間も平日の活動量に差がなく、社会的要因が影響しているという世界初の研究

夜型人間も夜型人間も平日の活動量に差がなく、社会的要因が影響しているという世界初の研究

夜型20人と朝型61人の学生それぞれの活動量平均値をプロット。土曜日と日曜日午前は、夜型の活動量が朝型よりも低下する。しかしこれ以外の時間帯は、活動量に差はなかった(平日は金曜日と月曜日だけを図示したが、火曜日から木曜日も同様に差がない)

島根大学京都医療センター臨床研究センター金沢大学の研究グループは、遺伝子で決まる朝型と夜型の人の活動量が、平日においては差がないことを明らかにした。これまで夜型生活者は活動量が相対的に低いとされてきたが、差が表れるのは土曜日のみで、遺伝的要因と社会的要因が大きく関わっていることが世界で初めて示された。

ヒトには「朝型タイプ」「夜型タイプ」があり、その違いの約半分は、遺伝的(先天的)に規定されている。その規定遺伝子が、2017年のノーベル医学生理学賞の対象となった「時計遺伝子」であり、その個人差である時計遺伝子多型であることが知られている。

夜型の生活習慣を持つ者(夜型タイプ)は、朝型に比べて身体活動量が低く、睡眠時間が短く、食生活が乱れることが多いために、肥満や糖尿病の罹患率が高いことが広く報告されてきた。しかし、そうした研究では、調査は1日だけ(24時間程度)に限られており、社会的制約が異なる平日と休日の両方で調査しなければ「健康増進へのエビデンスとして不十分」だと研究グループは考えた。そうして、この比較研究を行うことにした。

研究グループは、大学生男女81人を対象に、朝型とされるTの遺伝子多型を持つ人(TT者)と、夜型とされるCを含む遺伝子多型を持つ人(TC+CC者)とに分けて実験を行った。学生たちには、7日間連続して、起床時から就寝時にかけてデジタル加速度計を装着してもらい、活動量を計測した。その結果、平日は両者とも活動量に大きな差はなく、土曜日と日曜日の午前中にのみ、TC+CC者の活動量の低下が見られ、起床時間と就寝時間が大幅に遅くなることがわかった。ここから、平日は通学などの社会的な制約のために夜型も朝型と同じ行動をとらざるを得ず、差が見えなくなっていると推定された。

また、実験の際に行ったアンケート調査から、「自分は朝型」や「自分は夜型」といった主観は、遺伝子による分類とは関係がないこともわかった。つまり、自分の遺伝子の型を理解することで、自分にとって最適な活動時間を把握できるということだ。研究グループは、子どもの生活指導を行う人は、社会的制約のない週末の子どもの行動を観察して、適切にその生活習慣を理解することが大切だと提言している。また、勉学、スポーツ、ビジネスに取り組む際には、遺伝的な朝型か夜型かの個性を考慮することで、最善のパフォーマンスを発揮できるとも指摘している。

HIKKY、5年以内に世界100都市をメタバース化する「パラリアルワールドプロジェクト」発足

大規模VRイベント「バーチャルマーケット」をはじめVRサービスの開発ソリューションを提供するHIKKYは2月17日、5年以内に世界100都市をメタバース化しオープンメタバース上で提供する「パラリアルワールドプロジェクト」の発足を発表した。実在する都市のメタバース化・パラリアル化を通じて、人々の創造力がより一層発揮される社会の実現を目指す。

HIKKYが提唱するパラリアルとは、「パラレルワールド」(並行世界)と「リアル」(現実世界)を合わせた造語で、リアルとメタバースに並行して存在することを指すという。パラリアルワールドプロジェクトでは、現実世界に実在する都市をメタバース上の都市として解釈し直すことで、現実の良さとメタバースならではの表現を両立させ、新たな都市をデザインする。

HIKKYは2021年、渋谷と秋葉原をVRイベント「バーチャルマーケット2021」においてメタバース上で再現した。ここで使われたパラリアル渋谷とパラリアル秋葉原の常設化を皮切りに、2022年度中には大阪とニューヨークをメターバス化してパラリアルの都市として再現する。その後5年以内に世界100都市をメタバース化し「誰もが自由に解釈し、自由に利用できるパラリアル都市」をオープンメタバースの場で提供することを目指す。


メタバース空間への出店、メタバース都市のイベント・広告ジャック

パラリアルワールドでは、パラリアル都市にメタバース店舗を設けることが可能。出店する店舗は、実在の店舗を模したデザイン以外にも、物理法則を無視したメタバースならではのデザインも採用できる。また、都市全体を丸ごとジャックするような超大型イベントについても、機材や時間、人員といった要因にとらわれずに開催可能。

VR法人HIKKY、5年以内に世界100都市をメタバース化する「パラリアルワールドプロジェクト」発足

メタバース観光地とメタバース旅行

物理的な距離の影響を受けないメタバースでは、家から出ずに遠く離れた観光地を訪れることも可能。パンデミックや震災の影響を受けやすい観光業界の支援を目的としているという。

パラリアルワールドの未来

同社は、パラリアルワールドの未来として、メタバース空間上行政手続きを行えるようにすることで移動・行列などから高齢者層など人々を開放することや、どこからでもアクセス可能なメタバースの特徴を活かし教育の地域格差やパンデミック時に失われる教育機会の補填といった教育問題の課題解決を挙げている。

 

「YouTubeの将来を語るうえでメタバースに触れないわけにはいきません」YouTubeがメタバース参入検討、Web3も示唆

「YouTubeの将来を語るうえでメタバースに触れないわけにはいきません」YouTubeがメタバース参入検討、Web3の可能性も示唆

YouTubeは2月18日、日本版YouTube公式ブログのエントリー「2022年の展望:コミュニティ、コラボレーション、コマース」を公開した。「クリエイター向け」「視聴者向け」「パートナー向け」に2022年の展望を掲載しており、新たなサービスやツールのリリースを予定していることを紹介。Web3、メタバースについても触れている。

Web3については、クリエイター向けの話題の中で「Web3もまたクリエイターに新たな機会をもたらします」と紹介。「ブロックチェーンやNFTのような新しいテクノロジーによって、クリエイターはファンとより深い関係を築くことができるようになるでしょう」としている。「このような新しいテクノロジーには、責任を持って取り組むべきことが沢山ありますが、同時に素晴らしい可能性も秘めていると考えています」という。「YouTubeの将来を語るうえでメタバースに触れないわけにはいきません」YouTubeがメタバース参入検討、Web3の可能性も示唆

メタバースについては、視聴者向けとして採り上げている。「より没入感の高い視聴体験をどうすれば提供できるか」を考えているという。まずはゲームへの適用を検討しており、「ゲームにもっとインタラクションを持たせ、よりリアルな体感を導入することを目指します」としている。

環境移送スタートアップのイノカ、サンゴ礁の海を人工的に再現した水槽内でサンゴに真冬に産卵させることに世界初成功

環境移送スタートアップのイノカ、サンゴ礁の海を人工的に再現した水槽内のサンゴに真冬に産卵させることに世界で初めて成功

産卵中のエダコモンサンゴ

環境移送企業のイノカは2月18日、人工的にサンゴ礁の海を再現した閉鎖系水槽(東京虎ノ門)においてサンゴ(エダコモンサンゴ)の産卵に2月16日に成功したと発表した。季節をずらしたサンゴ礁生態系を再現することで、通常日本では年に1度6月にしか産卵しないサンゴを真冬に産卵させることに成功した。

同実験の成功により、サンゴの産卵時期を自在にコントロールできる可能性が見込まれるという。また研究を進めることで、年に1度しか研究が行えなかったサンゴの卵、幼生の研究がいつでも可能となる。今後は、サンゴが毎月産卵するような実験設備を構築し、サンゴ幼生の着床率を上げるための実験や高海水温に耐性のあるサンゴの育種研究につなげる。

イノカでは、水質(30以上の微量元素の溶存濃度)をはじめ、水温・水流・照明環境・微生物を含んだ様々な生物の関係性など、多岐にわたるパラメーターのバランスを取りながら、IoTデバイスを用いて特定地域の生態系を自然に限りなく近い状態で水槽内に再現するという同社独自の「環境移送技術」により、完全人工環境下におけるサンゴの長期飼育に成功している。完全人工環境とは、人工海水を使用し、水温や光、栄養塩などのパラメーターが独自IoTシステムによって管理された水槽(閉鎖環境)のことを指す。

今回の実験では、環境移送技術を活用し沖縄県瀬底島の水温データを基に、自然界と4カ月ずらして四季を再現することで、日本では6月に観測されるサンゴの産卵を2月にずらすことに成功した。また今回、同社の管理する水槽で3年以上飼育したサンゴを使用している。

環境移送スタートアップのイノカ、サンゴ礁の海を人工的に再現した水槽内のサンゴに真冬に産卵させることに世界で初めて成功

産卵実験に使用した水槽

研究手法

  • 環境移送技術を活用し、サンゴを長期的・健康的に飼育できる人工生態系を構築。海水温を24度にキープしていた水槽の水温制御を2021年8月23日より開始
  • 2021年8月23日より沖縄県瀬底島の12月の海水温と同期
  • 飼育を継続し、2022年2月17日未明、エダコモンサンゴの産卵を確認することに成功

イノカは、日本で有数のサンゴ飼育技術を持つアクアリストと、東京大学でAI研究を行っていたエンジニアが2019年に創業。アクアリストとは、自宅で魚や貝、そしてサンゴまでをも飼育する、いわゆるアクアリウムを趣味とする人々を指すという。自然を愛し、好奇心に基づいて飼育研究を行う人々の力とIoT・AI技術を組み合わせることで、任意の生態系を水槽内に再現する「環境移送技術」の研究開発を行っている。

コントレアが動画によるインフォームド・コンセント支援クラウドMediOSに麻酔科向けサービスを追加、麻酔説明を半自動化

動画を活用したインフォームド・コンセント支援クラウド「MediOS」(メディオス)を提供するContrea(コントレア)は2月18日、新たな疾患領域に対する展開として麻酔科向けサービスのリリースを発表した。内容としては、MediOSおよび麻酔科向け動画コンテンツとなっており、2月18日から提供を開始する。2024年4月、働き方改革に関する法律により医師の時間外労働に上限が設けられ、医療業界では医療現場の効率化が急務となっている。MediOSは、患者の理解度向上と医師の働き方改革を両立させるとしている。

日本病院会によると、安全な手術には麻酔科医による麻酔管理が重要だが、全診療科の中で麻酔医が最も不足しているという(「2019年度 勤務医不足と医師の働き方に関するアンケート調査 報告書」)。そうした不足をカバーするため、大学病院では40%、一般病院では60%もの施設が外部に麻酔科医の派遣を定期的に要請している(麻酔学会「麻酔科医のマンパワーに関する調査」)。

これは手術件数が急増し需要が拡大していることや、麻酔業務以外に集中治療・救急医療・ペインクリニックなど担当範囲が拡大している点が理由として挙げられる。そうした業務量の拡大に加えて、術前の麻酔説明に多くの時間が取られることも麻酔業務を多忙にする要因となっている。

ただ、現場における麻酔説明は多くの時間がかかるものの、その内容は麻酔の概要や合併症といった定型的な内容が多くを占めているという。そこでMediOSの麻酔説明動画コンテンツでは、入院までの準備や各種麻酔方法と合併症、術後の覚醒、PCAポンプの使い方など約50分の内容を用意。またこれら動画は、京都府立医科大学の佐和貞治先生と柴﨑雅志先生、京都大学の松村由美先生・加藤果林先生による監修の元で制作したそうだ。

この麻酔科向けのサービスにより、麻酔科医の不足という課題を解決し、患者理解度や質問を事前に取得するクラークの役目を担うことまでできるという。システムは動画の準備から管理、患者への動画共有、視聴データ解析まで一気通貫で運用可能。定型的な部分を効率化することで、麻酔科医は患者個別性の高い説明やハイリスクな患者への事前準備、手術の麻酔管理など本質的な業務に集中でき、手術の安全性向上にもつながるとしている。

MediOSとは、インフォームド・コンセント(医療従事者が患者に診療目的・内容を説明し患者の同意を得ること)における定型的な内容をアニメーション動画にし、事前に患者が説明を受ける機会を提供するサービス。大学病院をはじめ200~700床の病院で導入されており、医師の説明時間が患者1人あたり33%短縮されたそうだ。また患者側の平均理解度が5段階中4.6を取得といった効果も得ているという。

凸版印刷、アバターの真正性を証明する管理基盤AVATECTを開発、メタバースでのアバター不正利用やなりすまし抑止

凸版印刷、アバターの真正性を証明する管理基盤AVATECTを開発、メタバースでのアバター不正利用やなりすまし抑止

凸版印刷は2月18日、メタバースへの社会的な関心の高まりを受け、自分の分身として生成されたアバターに対し、唯一性を証明するアバター生成管理基盤「AVATECT」(アバテクト)を開発したと発表した。2月より試験提供を開始する。

凸版印刷は、写真1枚で3Dアバターを自動生成できる同社サービス「MetaCloneアバター」や、構築したメタバースの中で様々なビジネスを行う事業者などに向けて、AVATECTの試験提供を実施。複数のメタバース事業者間における同一アバターの行動分析や、それに伴うプライバシー保護の有用性の検証を経て、2022年9月までにアバター管理事業を開始し、2025年度までにメタバース関連事業として100億円の売り上げを目指す。

昨今、メタバース市場への関心が高まる一方、本人の許可や確認のない映像などによりアバターが生成されてしまう危険性や、アバターのなりすまし・不正利用がメタバース普及の大きな課題になっているという。また凸版印刷は、メタバース上でアバターの行動に対する倫理規定が進んでおらずディープフェイクのようなリスクが生じる危険性があると指摘。

凸版印刷は、メタバース普及に伴うそれらセキュリティリスクを低減させるため、アバターの出自や所有者情報を管理すると同時に、NFTや電子透かしによってアバターの唯一性・真正性を証明できるアバター生成管理基盤として、AVATECTを開発した。

アバターに関するメタ情報を管理

アバターを生成した際に「モデル情報」(氏名・身体的特徴・元となる顔写真など)、「モデルが当該アバター生成に対して許諾しているか(オプトイン)の情報」「アバター生成者(もしくは生成ソフトウェア、サービス)情報」「アバター生成日時情報」「現在のアバター利用権情報」などを、メタ情報として記録。「アバター生成管理基盤」に、アバター本体とメタ情報を紐づけて保管する。

NFT化と電子透かしで唯一性と真正性を証明

生成したアバターをNFT化することで、アバターに唯一性を示す情報を付与する。一方、NFT化だけではアバターの不正コピーや二次加工は防止できないため、AVATECTでは、目視では判別できない情報「電子透かし」を埋め込むことで、オリジナルかコピーされたものかを判別できるようにし、アバターの真正性を証明する。凸版印刷、アバターの真正性を証明する管理基盤AVATECTを開発、メタバースでのアバター不正利用やなりすまし抑止

アバターの本人認証(2022年度実装予定)

凸版印刷が提供する「本人確認アプリ」との連携により、アバターの登録やメタバースへのアバターのアップロードロード権限を、本人確認された利用者のみに限定することを実現する。またこの本人確認アプリでは、地方公共団体情報システム機構(J-LIS)が提供する公的個人認証システムと連携し、マイナンバーカードを使って本人確認を行う。

将来的には、メタバース内で提供される会員入会申込みやオンライン決済のような本人確認が必要なサービスにおいて、アバターと本人確認された利用者を紐づけることで、サービス事業者が本人確認書類の確認プロセスを経ずにサービス提供を行えるようにする。

Ibex Inversterの最新のファンドはモビリティ革命に賭けている

Ibex Investors(アイベックス・インベスターズ)のファウンダー、CEOであるJustin Borus(ジャスティン・ボラス)氏が運輸業界とそこに迫りつつある技術変革に目を向けた時、彼は人生最大のチャンスを見つけた。そして今、アーリーステージモビリティ企業向けの1億1300万ドル(約130億円)のファンドでチャンスに賭けようとしている。

「次の5年から10年の間に、過去100年以上の変化が起きるでしょう」とボラス氏は、自動運転車へのシフトをはじめとする輸送業界における変化について語った。「私はこのファンドを1996年か1997年のインターネットファンドと同じように見ています」。

Ibex Investorsは、コロラド州デンバー拠点で、ニューヨークとテルアビブにオフィス構える会社で、2003年に「マルチステージ」と「マルチストラテジー」の投資戦略を掲げて設立された。これが意味するのは、シードステージからIPOまであらゆる段階で、企業に投資する会社だ。

この会社の構造は、伝統的ベンチャーキャピタルとは異なる。厳密には、Ibexは投資アドバイザーとして登記されているが、投資銀行ではない。Ibexはいくつかの特化したVCファンドを保有しており、イスラエル拠点のあらゆる分野のスタートアップを対象にした1億ドル(約115億円)のアーリーステージファンド、イスラエルに焦点を絞ったヘッジファンド、モビリティに特化した株取引を主とするヘッジファンドなどがある。他にもIbexは、Revel(レベル)のような後期ステージのモビリティスタートアップへの1回限りの投資も行っている。全体で同社は、約12億ドル(約1382億円)の資産を管理している。

今回の最新のファンドはアーリーステージのモビリティスタートアップに焦点を当てているが、イスラエルやその他の地域には限定していない。これによってIbexは、新たに膨大な数のモビリティスタートアップに門戸を開く。

Autotech Ventures(オートテック・ベンチャーズ)から最近Ibexに移ったJeff Peters(ジェフ・ピーターズ)氏は、ファンドはシェアリング、コネクティビティ、電動化、および自動運転のスタートアップを対象にしていると語った。

ずいぶん広いカバー範囲だ。Ibexはこのファンドの開始にあたって2件の投資を行った。その1つのAifleet(アイフリート)は、テキサス州オースチン拠点のスタートアップでトラック輸送の待ち時間をなくすためのソフトウェアを開発した。もう1つの投資先、Visionary AI(ビジョナリーAI)は、イスラエルのデジタル画像処理会社だ。ボラス氏は、トラック輸送は自動運転技術が最初に破壊的変化を起こす分野の1つだと信じているとTechCrunchに語った。

Aifleetの共同ファウンダー、CEOであるMarc El Khory(マーク・エル・コーリー)氏は、Ibexに惹かれた理由の1つは、この会社のリミテッドパートナーだと語った。

「彼らは、自動車業界のかつての幹部に私たちを紹介してくれました」と語り、その1人は大手トラック製造メーカーの元社長だったことを明かした。「私たちはテクノロジー企業ですが、トラック輸送事業も行っているので、あのようなつながりは会社にとって驚くほど価値があります」。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nob Takahashi / facebook

【コラム】創業者の派手な発言は会社のためになっているのか?

1年前には、2014年に設立されたチェックアウトテクノロジー企業であるBolt(ボルト)というブランドも、その創業者であるRyan Breslow(ライアン・ブレスロー)氏もほとんど知る者はいなかった。ブレスロー氏は一見すると典型的なシリコンバレー型人物で、スマートで意志が強く、スタンフォード大学を中退してわずか2年で起業したのだ。

それが2022年1月から始まった一連の派手な発言により、Boltは突然注目の企業となり、ブレスロー氏も記者や投資家、創業者の注目を集めることとなった。

疑問は、これほどまでの論争を引き起こすことがBoltのためになっているのかということだ。

ブレスロー氏の最新の宣言は、今週の米国時間2月14日にTwitterで発表された。すでに他の企業よりも従業員にストックオプションを行使するための期間を長く提供しているBoltが、すべての従業員に対してストックオプションを行使するために会社からお金を借りる機会を提供するというものだ。この前例のない「過激」な提案は、一般社員が株式を購入する際にも、上級管理職と同じように税制上の優遇措置を与えるというものだ(早めに株を買っておけば、株の価値が上がり続ける限り、理論的には税金を減らすことができる)。

この動きを称賛する創業者は多く、その中には、継続的な収入源を持つ企業に先行投資を行うことで急成長を遂げているPipe(パイプ)の創業者でCEOのHarry Hurst(ハリー・ハースト)氏も含まれている。「はい、当然ですね!自分たちも2020年に同じことをしましたが、すばらしいものでした。正しいやり方です」とハースト氏はツイートした。

しかし、このアイデアは斬新でも賢明でもないと主張した人も多い。このような融資は、会社の株価が下落した場合、従業員を非常に不安定な財政状態に置く可能性があるというのだ。

GGV Capital,のマネージングディレクターであるJeff Richards(ジェフ・リチャーズ)氏もその1人だ。昨日コメントを求められたリチャーズ氏は我々にメールでこう返信してきた「通常は創業者の『アドバイス』スレッドにコメントすることは避けているのですが、今回は黙っていられませんでした。これは文字通り、創業者仲間に与えることのできるアドバイスの中でも最悪のものの1つです。多くの人が、ローンを抱えた社員が避けられない負の局面に対処することを助けるという、悪夢のようなシナリオを経験しています。これはただ悲しいことなのです。最も重要なのは、ライアン氏のツイートに関わらず、これは『新しい』ことではないということです。たくさんの企業がすでにこれを行っています。優れた企業がそれをしなくなったのには理由があります。それはひどいアイデアだったからです」。

SecfiのエクイティアドバイザリーシニアディレクターであるVieje Piauwasdy(ビジェ・ピアワジー)氏も同意見だ。ただしSecfiは中立な立場ではない。同社はストックオプションファイナンスの会社であり、ノンリコースローンを提供している。これは、後から一気に返済することを条件に、前もって従業員にお金を渡すというものだ。だが、PriceWaterhouseCoopers(プライスウォーターハウスクーパース)に5年間勤務した経験を持つSecfiのピアワジー氏は、ブレスロー氏が提案しているようなローンは「非常にリスクが高い」と指摘する。

「Boltが成功することを祈るだけです」とピアワジー氏はいう。「ライアン(ブレスロー氏)は、Boltが従業員の味方であることを望んでいます。しかし、将来を予測することはできません。もし、株式の価値がゼロになったとしても、何らかの形でリコースローンを返済しなければならないのです」。

27歳のブレスロー氏は2月14日月曜日のツイートで、VCが「これは災難だというだろう」と予測したが、従業員への株式ローンに関する大げさなスレッドは、これまでプレスロー氏が行ってきた他の発言を象徴しているようだ。2週間前には、やはり賞賛と軽蔑の両方を集めたスレッドで、彼は決済会社のStripe(ストライプ)がY Combinator(YC、ワイコンビネーター)のメッセージボードを支配しているという間違った非難を行い、YCはStripeのライバルたちに資金を提供する気がない(実際にはYCは提供を行っている)と主張し、Lyft(リフト)をYCの仲間だと言った(LyftはYCのアクセラレータープログラムには参加していない)。

このツイートの嵐への反響を受けて、ブレスロー氏はCEOを退任し、かねてから計画していたというエグゼクティブチェアマンに就任した。

明らかにブレスロー氏はこの勝負に賭けている。Boltは2022年1月、BlackRock、General Atlantic、Willoughby Capitalなどの有力企業から110億ドル(約1兆3000億円)の評価額の下に資金調達を完了しており、ブレスローはその25%の株式を保有していると言われている。しかし、ブレスロー氏のツイッターゲームが、顧客や投資家から会社の評価を得るためにどのように役立っているのかはわかりにくい。投資家は、140億ドル(約1兆6000億円)の評価額で会社にさらに資金を投入しようとしているとも報じられている。

ブレスロー氏の今回の発言は、非常に厳しい市場において求職者を惹きつけることを目的としたものである可能性が高いが、同時に、このチェックアウトスタートアップの中で誰が本当の責任者なのかということについて混乱を招くシグナルを、潜在的な求職者に送っているに違いない(また、同社の新CEOである元アマゾン幹部のMaju Kuruvilla(マジュ・クルブラ)氏にも、どのようなシグナルが送られているのかも気になるところだ)。

今週初めにブレスロー氏に話を聞こうとしたみたところ、彼は当面「オフライン」だという返答だった。それでも、ブレスロー氏はツイッターで話題を振りまくことをやめないだろう。今や書類上では米国最年少の億万長者であるブレスロー氏は、そのツイートの最後に、読者にフォローを求めた上で、スタートアップの作り方についての「過激な」アイデアを発表することを約束すると語っている。彼のプロフィールには、2月9日のツイートが貼り付けられていて、その使命が強調されている。

その内容は「先月はすごかった。30日でフォロワーが5万人増えた。ちなみに、フォロワー数が4000人になるのには8年かかった。教訓:自分の真実を語ると聞く人は喜ぶ」というものだ。

画像クレジット:Bet_Noir / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:sako)

スーパーボウル広告で暗号資産アプリのダウンロードが279%増加、Coinbaseがけん引

スーパーボウルの広告スポットは、露出だけでなく、アプリのインストール数においても、多くのハイテク企業に利益をもたらしたことが、新たなレポートで示された。しかし、昔のDVDスクリーンセーバーのような黒い画面にQRコードをバウンドさせただけのCoinbase(コインベース)のバイラル広告が他企業を凌駕し、2月13日のスーパーボウル・サンデーの広告放映後にインストール数が前週比で309%増え、翌日には286%増となった。

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この新しいデータは、アプリ分析会社Sensor Tower(センサータワー)が、スーパーボウルの試合中に広告を出したモバイルファーストのブランドにとって、スーパーボウル広告がどの程度のパフォーマンスを発揮したのか、数字をもとに分析したものだ。同社は、クライアントとの秘密保持契約により、実際のダウンロード数を公開することはできないが、そのデータからこれらの広告がどのような影響を及ぼしたかを知ることができる(データは米国のアプリストアのみを対象としている)。

結果として、暗号資産アプリの中でCoinbaseだけが成功を収めたわけではない。広告によってダウンロード数が大きく伸びた上位5つのアプリのうち、3つが暗号資産アプリだった。Coinbaseに加え、暗号資産取引プラットフォームのeToroは、2月13日にアプリのインストール数が前週比132%増となり、翌14日は82%増だった。一方「Curb Your Enthusiasm(ラリーのミッドライフ クライシス)」のスター、Larry David(ラリー・デヴィッド)氏を広告に起用した暗号資産取引所FTXは、13日にダウンロード数が前週比130%増、翌日には81%増となった。

Coinbase、eToro、FTXを合わせると、2月13日の米国でのアプリインストール数は前週に比べ279%も増加した。この傾向は翌日も続き、前週比のダウンロード増加率は252%に達した。

スーパーボウル・サンデーでトップ5に入った他のアプリは、スポーツブックだった。DraftKings Sportsbookアプリは、2月13日のダウンロード数が前週比197%増と、Coinbaseに次いで伸びた。Caesars Sportsbookは147%増でトップ3に入った。

トップ10には順番に、オンライン車購入プラットフォームVroom (ダウンロード111%増)、子ども向けフィンテックのGreenlight(89%増)、別のオンライン車購入プラットフォームCarvana(53%増)、ストリーマーAMC+(38%増)、そしてMetaのOculus(25%増、奇妙で陰気な広告だったことを考えると意外だ)が入った。

ダウンロード数の伸びは広告の成功を示すものだが、もう1つの指標はアプリのランクだ。こちらはダウンロード数やベロシティ、その他の要素を組み合わせて測定される。

ブランドのスーパーボウル広告が新規インストールの即座の増加を促したケースもあるが、すべての広告が同じように恩恵を受けたわけではない。さらに、スポーツベッティング(スポーツを対象にした賭け)のアプリ、PeacockやYouTube TVのような用途がより実用的なアプリなど、広告費とは関係なくインストール数が増加したと思われるアプリもあった。

しかし、ランクは、広告が放映される前にこれらのブランドがどれだけ人気があったかを示す。

例えばOculusは、Apptopiaのデータによると、2月12日に米国のiOS App Storeで総合102位だったのが、翌13日には100位になり、14日には175位に下がった。これは、Sensor Towerが指摘するように、ダウンロード数で25%の伸びを見せたとしても、多くの新規ユーザーにアプリを試用させるまでには至らなかったことを示している。

一方、Coinbaseは13日に総合124位だったのが、その後膨大なトラフィックの増加によりクラッシュした。しかし、14日には米国のApp Storeで第2位となった。その他、14日にはPeacock TV(1位)、HBO Max(6位)、FanDuel Sportsbook(12位)、DraftKings Sportsbook(25位)、Disney+(31位)、YouTube TV(42位)などが上位に入った。

2022年のスーパーボウル広告でもう1点興味深いのは、これらのデジタルブランドが従来のテレビ広告を取り入れたのと同じように、従来のブランドもデジタル広告に目を向けていることだとSensor Towerは指摘した。

Pathmaticsのデータでは、Peacock、Paramount+、HuluなどのOTTビデオプラットフォームでの支出額上位10社の広告主は、ほとんどが従来型のブランドだった。例えば、Weight Watchersは、これらのストリーミングサービスでのマーケティングに約140万ドル(約1億6200万円)を費やし、Volvoは100万ドル(約1億1500万円)超、Nikeは62万3000ドル(約7200万円)をつぎ込んだ。食料品トラッカーのBasketful(トップ10で唯一モバイルファーストのブランド)は約48万6000ドル(約5600万円)を、続いてGeicoが約41万3000ドル(約4760万円)を費やした。

画像クレジット:Sensor Tower

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi