イノベーションのためには携帯を捨てろ

われわれは今、過渡期を生きている。1980年代のはじめ頃には、デスクトップコンピュータの時代に入り、ドットコムの崩壊でクライマックスを迎えた。それは2000年問題に対応するためのコンサルティング料と、ハードウェアへの支出、さらにはPets.comなどの理不尽な繁栄に支えられた財政バブルだったのだ。その直近の過渡期は、コンピュータがより小さくより奇抜に、より薄く、そしてずっと強力になった時期だった。それは、長い退屈な時期を経て、われわれをモバイル時代へと導いた。それが今も続いている。次の10年間で革新を起こしたいのなら、以前のデスクトップPCがそうだったように、もはや携帯電話は行き止まりだということを認めるべき時が来ている。

われわれは、10年ごとに何かを創造しては、その後それを磨き続けることを繰り返している。その進歩の速度は増加しているものの、それは革新ではない。たとえば2007年のiPhoneと、現在のPixel 3との違いは信じられないほどだ。しかし、Pixelにできて、オリジナルのiPhoneやAndroid携帯にできないことが何かあるだろうか? あったとしても多くはない。

われわれは、現在の技術が可能にするユースケースに縛られている。1903年には、自転車は自転車であり、飛ぶことはできなかった。しかし、ライト兄弟や、その他の人々が、前進する機械的な動きから揚力を得ることに成功すると、われわれは離陸することができるようになった。2019年には、携帯は携帯であり、われわれと真にやりとりすることはできない。人間の体とは独立した部品に過ぎないからだ。そうした制限の先を見据える人が出てくれば、われわれは飛べるようになるかもしれない。

モバイル技術の未来を断定するつもりはないが、携帯電話を捨てて、この世界を見つめ直さない限り、注目に値するようなことは何もできないだろう、ということだけは言っておく。確かにきれいな写真が撮れるようになり、FaceTimeでやりとりできるようにはなった。しかし、そうした技術の限界に気付かなければ、それらの外の世界は見えてこないのだ。

もうすぐ新しい年(そして新しいCES)がやってくる。そしてまた、より多くの同じようなものがやってくる。画面−手−目の連携にとどまって、実質的に携帯電話を顔に押し当てるだけようなVRデバイスや、ほとんどテレビのようにしか見えない大画面のパソコンを作るのは、安全であり安心だ。しかし、その次に何があるのだろうか? そうしたデバイスはどこに行こうとしているのか? どのように変わるのか? ユーザーインターフェイスは、どのように凝縮され、形を変えるのか? そろそろ真剣に考えなければ、やがて身動きが取れなくなってしまうだろう。

たぶん、あなたはもう考えている。でも、急がなければならない。これまでもそうだったように、この時代も急激にガラッと変わるかもしれない。そうなれば、よく見積もっても得られるチャンスは限られる。なぜVRは軌道に乗らないのか? なぜなら、それはまだ辺境のものであり、モバイル思考に囚われた人たちによって探索されている段階だからだ。機械学習やAIの普及も、なぜこんなに遅いのか? それは、そのユースケースが、チャットボットと、より良い顧客応対に狙いを定めているからだ。われわれが、携帯電話の黒い鏡(この意味は分かるだろう)の向こう側に注目し始めなければ、イノベーションは失敗する。

起動するすべてのアプリ、スクロールするすべての写真、すべてのタップ、ダサいFacebookのちょっとした改良に期待して祈ることは、みんな予想を上回るより良い未来の到来に抵抗する砦を築くためのレンガなのだ。だから、来年こそは携帯から手を離して、何かを創ろうではないか。手遅れになる前に。

画像クレジット:Fuse/Getty Images

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

海外の目に映る日本のスタートアップエコシステム

左から、Antti Sonninen氏、Marvin Liao氏、Oranuch Lerdsuwankij氏、Casey Lau氏、Jerry Yang氏

2018年12月に金沢で開催されたテクノロジー・スタートアップの祭典Infinity Ventures Summitでは数多くの興味深いセッションが開催されたが、個人的に特に印象に残っているのは「Startup Ecosystems Around the World」と題され4人の海外ゲストが登壇したセッションだ。

Slush Tokyo Co-FounderのAntti Sonninen氏がモデレーターを務めた同セッションには、StartupsHK Co-FounderのCasey Lau氏、500 Startups PartnerのMarvin Liao氏、Techsauce Co-FounderのOranuch Lerdsuwankij氏、そしてHardware Club General PartnerのJerry Yang氏が登壇。1時間にもおよんだ同セッションでは、日本にもよく訪れるという上記4名から日本のスタートアップエコシステムに関しても少しだけ言及があったので紹介しておきたい。

500 StartupsのLiao氏は日本のスタートアップシーンを「ガラパゴス現象」という言葉を用いて説明した。「この国には独自の文化やインフラに基づき、日本でのみ生存しているスタートアップが存在していている。この国で成功したとしても他の国ではなかなか難しい。それは逆も同じだ。国際的で巨大なスタートアップやプラットフォームでも日本市場参入にはとても苦労する」(Liao氏)

以前に取材したY Combinator出身のTemplarbitも文化の違いなどからなる日本市場参入の難しさを説いていた。TemplarbitのCEO、Bjoern Zinssmeister氏は競争意識が強いアメリカと比べ日本では人間関係が重要で“推薦”が必要となってくるため、それが原因で多くの米国企業がこの国で苦戦するのでは、と話していた。

一方で日本に来る際には多くのアーリーステージのスタートアップや起業家に会うようにしているというYang氏は日本人の過労気味なワークスタイルを気に掛けているようだった。

Yang氏いわく「シリコンバレーのレイトステージのスタートアップでは残業をしている人たちはさほどいない。彼らは8時か9時ころには自宅で仕事しているか休んでいる。だが日本で出会った起業家たちはハードワークや長時間労働を尊重する傾向にある」という。

「“どれくらい”やるかではなく“どのように”やるかが重要だ。そういった意味ではアメリカなど海外のスタートアップ創始者たちのほうが、この国で出会った起業家たちよりもある意味で敏腕だと言えるのでは」(Yang氏)

Yang氏の言うことも一理あるが、いわゆる「持ち帰りサービス残業」により「定時あがり」が可能となっているという指摘もある、と一言加えておこう。

そのYang氏の発言に対し日本のスタートアップの肩を持ったのはLiao氏だった。Liao氏は日本の「エコシステムがまだまだ未熟」であることが根本的な原因なのでは、と述べた。

「アメリカやヨーロッパのエコシステムは長きに渡り存在し、多くの企業が成功を成し遂げてきた。それによって、次世代を見てみると、アーリーエンプロイーたちはまだハングリー精神が絶えないうちに会社をスケールさせるノウハウを学べている」(Liao氏)

ではその状況をどのように打破していくのか。どのように日本のスタートアップエコシステムを成熟させていくのかーーStartupsHKのLau氏はネットワーキングで海外からのアドバイスに耳を傾けることも重要なのでは、と説明。そして日本ではSlush Tokyoを始めとする大きな国際的テックカンファレンスが開催されており、日本と海外を繋げる重要な架け橋となっていると話した。

「香港でも最初は(そのようなイベントが)必要不可欠だった。「誰かが手を取ってくれて、スタートアップエコシステムを生成してくれるのではない」(Lau氏)だからこそ、カンファレンスなどで多くの人とネットワーキングし情報を共有することが重要だ、と同氏は言う。また、同氏は日本のスタートアップの情報を配信し、取材で各地を巡っているThe BridgeのMasaru Ikeda氏を賞賛し、会場は拍手に包まれた。

だが一方で、Lau氏は日本人起業家の英語力など言語力や社交性に関しては懸念を抱いているようだった。「唯一の不安材料はコミュニケーションレベル。タイやインドネシアでは誰もが社交的で、かつ英会話はごく一般的だ」(Lau氏)

タイで開催されているテックカンファレンス、Techsauceにはどれくらいの日本人が参加しているのだろうか。来客者数は1万人以上と説明されているが、Techsauce Co-FounderのLerdsuwankij氏いわく日本人の来場者は50人にも満たなかったという。

だがLerdsuwankij氏は代表取締役の長谷川潤氏がタイで創業したFinTechスタートアップOmiseを話題にあげ、タイは日本の起業家にとって優れた環境だと説明した。バンコクには日本人運営のコワーキングスペースMonstar Hubなどもあり、良好な日本人コミュニティーが存在しているのだという。だが成功には「文化の理解」と「プロダクトのローカル化」の徹底が不可欠だと同氏は話していた。

もし日本人VCや起業家が登壇していたらどのような議論が交わされていたのか気になるところだが、以上がIVSセッションにおける海外からの4名のエキスパートたちによる日本のスタートアップシーンに関する言及の一部だ。

コインチェックなど仮想通貨関連記事が上位に(2018年1月ランキング)

2018年にアクセス数の多かった記事を月別に紹介していく年末企画。まず2018年1月を振り返ってみると、仮想通貨(暗号通貨)関連の記事にアクセスがトップ4を独占した。TechCrunch Japanでは、仮想通貨やブロックチェーンに関する記事は1年を通じて人気があるが、1月のアクセスは異常ともいえる規模だった。

注目はやはり、1月26日未明に発生した仮想通貨の取引所であるコインチェックから仮想通貨MEMが流出した事件。コインチェックはこの後、マネックスグループ傘下となり取引所のセキュリティ体制を強化。日経報道によると、まもなく金融庁から仮想通貨の登録業者として認可される見込みだ。

5位に入ったのはiPhoneのバッテリー問題の記事。バッテリー劣化による突然のシャットダウンを回避するため、Appleが意図的に旧iPhoneの性能を落としていたことが発覚し大騒ぎとなった。その後、Appleは低価格でのバッテリー交換に応じる決断を下した。

1位 Bitcoin、Ethereum、その他ほとんどすべての暗号通貨が暴落
2位 コインチェックが580億円のNEM不正流出について説明
3位 仮想通貨の税金計算をサポートする「G-tax」ベータ版公開
4位 Bitcoinを150ドルから1000ドルに釣り上げたのは一人の仕業だったらしい
5位 iPhoneの29ドルのバッテリー交換はほとんど無条件になった

この腕輪は麻薬の過剰摂取を検出して死を未然に防ぐ

カーネギーメロン大学の学生たちのプロジェクトが、人命を救うかもしれない。HopeBandと名付けられた腕輪が、血中の酸素濃度が低いことを感知して、それが急を要するレベルならテキストメッセージとアラーム音を送る。

学生のRashmi Kalkunteが、IEEEにこう語っている: “友だちの誰かがいつも過量摂取を心配していたら、その使い方パターンを理解し、どんなときには誰に助けを求めるべきか知ってる人が近くにいるといいよね。HopeBandは、そんな人の代わりになることを目指して、設計したんだ”。

9月に行われたHealth 2.0カンファレンスでチームは、Robert Wood Johnson財団主催のOpioid Challengeコンペに応募して三位になった。彼らはその腕輪を、ピッツバーグの針交換事業*に送るつもりだ。売価は20ドル未満をねらっている。〔*: 注射針を新品の針に交換することでエイズなどの伝染を防ぐ。多くは地方自治体の公衆衛生事業の一環。〕

今年アメリカで過量摂取で死んだ人は72000人を超えている。こんなデバイスがあれば、人びとを少しは安全にできるだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

センサーをインターネットに接続して企業経営に貢献するSamsaraが評価額$3.6Bで$100Mを調達、米経済の冬に備える

センサーデータのプラットホームSamsaraが今日(米国時間12/28)、36億ドルの評価額で既存の投資家Andreessen HorowitzとGeneral Catalystからの新しい投資ラウンドを完了したことを確認した

このニュースを最初に報じたCheddarは、Samsaraの意図を開示しているデラウェア州のSEC提出文書を12月21日に見つけた。それによると、今年の3月の5000万ドルのシリーズDのときの倍以上の評価額で1億ドルのラウンドを調達したい、となっていた。

今回の資金調達の発表声明で、Samsaraのマーケティングとプロダクト担当VP Kiren Sekarが次のように述べている: “弊社の成長は、変化をもたらす新しいテクノロジーを製造系よりもむしろオペレーション系の企業が抱える問題の解決に導入することから得られている。その業種業態は経済の大きな部分を占めるにもかかわらず、これまで長きにわたってテクノロジーの恩恵をあまり被ってこなかった。しかし今日では、安価なセンサーと広帯域なワイヤレス接続、スマートフォン、クラウドコンピューティングなどにより、これらの企業も21世紀のテクノロジーの恩恵を全面的に享受できるようになっている”。

2015年に創業されたSamsaraは、そのインターネットに接続されたセンサーシステムにより、運輸交通、ロジスティクス、土木建設、食品製造、エネルギー、製造業など多様な業種をサポートして、彼らのデータ収集やデータからの知見の獲得、ひいては物理的オペレーションの効率改善に貢献している。

同社の協同ファウンダーSanjit BiswasとJohn BicketはかつてエンタープライズWi-FiスタートアップMerakiを立ち上げたが、それは2012年に、全額キャッシュ12億ドルの取引でCiscoに買収された

Samsaraの総調達額は、これで2億3000万ドルになる。PitchBookによると、同社のプライベート投資家はわずか2社で、それがAndreessen HoworitzとGeneral Catalystだ。そのためMarc AndreessenとGeneral CatalystのHemant Tanejaは、過去のいくつかのSamsaraの投資案件においても、リード投資家としてのVC企業を代表してきた。

サンフランシスコに拠を置くSamsaraによると、2018年には顧客ベースが5000に膨れ上がり、売上が250%増加した。今度の資金の主な用途は、社員を1000名増員し、AIとコンピュータービジョン技術への積極投資、そしてアトランタに初めてのイーストコーストオフィスを開くことだ。

同社はこの前の調達資金もまだ一銭も使っていないが、それは、他の多くのベンチャー資金頼りのスタートアップと同様明らかに、マーケットの下押し傾向が業界を襲う前に資本を手当しておきたいからであり、良好な評価額であっても資金調達はますます難しくなりつつあるからだ。

前出のSekarは、こうも述べている: “弊社のバランスシートはすでに健全ではあるものの、前回の資金調達ラウンドにはまだ手を付けていない。その新しい資本は長期的なプロダクト投資を加速し、新たな市場へと拡張し、同時にしかも強力なバランスシートを長期的に維持継続できるようにするものでなければならない”。

関連記事: Amid plummeting stocks and political uncertainty, VCs urge their portfolios to prepare for winter…株価激落と政治の不安定でVCたちは傘下企業に冬への備えを促す(未訳)

画像クレジット: Samsara

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ひとつの映画を1年かけて視るVery Slow Movie Playerってなんだか分からないがすごい

誰かが、Every Frame a Painting*〔直訳: どのコマも一枚の絵画だ〕を字義通りにとらえたのかもしれない: The Very Slow Movie Playerと呼ばれるこのデバイスは、映画を壁紙に換えて、1時間に1回ずつ映像を1秒間、前へ進める。家の中にとてもおもしろいオブジェクトがあることになり、よく知ってる映画ですら、新鮮に感じる。〔*: このチャネルは‘YouTube上の世界最高の映画学校’と言われる。〕

このアイデアは、デザイナーでエンジニアのBryan Boyerの脳に、われわれ全員がよく知っているあのときに生じた。家でじっと座って、遅いことの良さをうまく表現する方法を考えているときだ。

そのとき彼は、“映画を読書のスピードで消費することはできないだろうか?”、と考えた、ゆっくりと。“ものごとを極端に遅くしたら、それを正しく鑑賞する余裕ができる。…しかしその持続をもっと引き延ばすと、ものごととそれを視る者とコンテキストとの関係が変わり始める。映画を本来のスピードの1/3600のスピードで視たら、それはもはやとても遅い映画ではなくて、朦朧(もうろう)とした時計のようなものになる。でもVery Slow Movie Player(VSMP)で時間や時刻はは分からない。ただ、時間のにじみを背景にして自分自身を視るだけだ”。

Very Slow Movie Playerは、eペーパーのディスプレイをRaspberry Piのボードにくっつけたものだ。そこにムービーをロードすると、それを一度に一(ひと)コマずつ表示し、2分30秒経つと画面をアップデートする。〔==1時間で24コマ、すなわち映画1秒ぶんとなる。〕

通常の、毎秒24コマではなく、毎時間24コマを視ることになる。ふつうの映画の3600倍遅くて、1年に7千〜8千時間の絵が作り出されるだろう。〔2時間の映画なら7200秒、VSMPでは7200秒→7200時間=300日。〕

Boyerはプロジェクトを説明するポストで、こう言っている: “あまりにも遅いから、ふつうに映画を鑑賞することはできない。VSMPとにらめっこをしたら、あなたは毎回負けるだろう。それは、気づいたり、ちらっと見たり、調べることすらできるけど、ウォッチすることはできない”。

彼はそれを、Bill Violaの作品と比べている。その超スローモーションのポートレートも、最初から最後までウォッチすることはできない(よほど辛抱強い人でなければ)。そしてどちらも、映画(動画)と静止画像の中間に位置する冥界に存在する。

もちろん、画像そのものはもっと良くしてほしい。eペーパーの色深度は本質的に1ビット(黒/白)だ。だから映像の色や階調が表す微妙さはすべて、白か黒かのディザリングへと消えてしまう。

現状では場面のコントラストやゾーンは強調されるが、でも「裏窓」を映画として見たければいつでもできる。しかし、それを一つのプロセスとして、時間との関係として、現実世界と人生のコンテキストの中に存在するオブジェクトや画像として鑑賞したいなら、…そのためにVery Slow Movie Playerがある。

画像クレジット: Bryan Boyer

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Tesla、OracleのLarry Ellisonらを取締役に指名ーーSECの条件に対応

Teslaは独立取締役を役員会に加えた。Oracleの創業者で会長、CTOのLarry Ellisonと、WalgreensのエグゼクティブKathleen Wilson-Thompsonだ。これは、TeslaのCEO、Elon Muskの会社を非公開化するというツイートをめぐっての米国証券取引委員会(SEC)との和解条件の一つだった。

この2人は12月27日に役員会に加わった、とTeslaは金曜日早朝の声明文で明らかにした。Kathleen Wilson-Thompsonは現在Walgreens Boots Allianceで執行副社長兼グローバル人事責任者を務めている。彼女はまた、米国拠点の製造企業の公共委員会のメンバーの役も担っている。

指名およびコーポレート・ガバナンス委員会が率いるTeslaの取締役会は、再生可能エネルギーへの移行を加速させるというTeslaのミッションに強い個人的信条を有していて、なおかつ“幅広いスキル”を持つ世界中の候補を検討した、としている。

Ellisonは単なるTeslaの“信者”ではなく、Muskの友人であり、盟友である。Ellisonは10月のアナリスト会議でMuskの防衛の側に立ち、Teslaは彼にとって二番目に大きな投資先であることも明らかにしていた。Ellisonは今年初め、300万ものTesla株を購入した。

このOracle創業者はまた、2017年にTeslaのラナイ島における温室栽培プロジェクトのためのマイクログリッドエネルギーシステムに、190万ドルを費やしている。この栽培プロジェクトはSenseiと呼ばれる Ellisonの会社の一部でもある。Senseiは著作業・南カリフォルニア大学教授であり、Ellisonの友人でもあるDavid Agusと共同で設立された。

Senseiは、水耕農場の開発に注力している、L.A.を拠点とする新しいウェルネス・ブランドだ。最初のプロジェクトにはサイズ不明の水耕農場をハワイのラナイ島につくるというものが含まれている。これはEllisonが2012年に3億ドルで買収したものだ。Senseiの代表Dan GrunebergはTechCrunchに対し、この農場は1エーカーあたりの栄養にフォーカスし、セールスポイントはSensei農場ブランドでレストランや小売に販売される予定の果物や野菜だ。

「過去数カ月、幅広く検討し、我々は現在の取締役会を補足するようなスキルを持った独立取締役を追加することを模索した。 LarryとKathleenを指名することで、抜群の起業家と人事リーダーを取締役会に加えた。両名とも持続可能なエネルギーに情熱を持っている」とTeslaの取締役会は声明文で述べた。

この指名は、TeslaとMuskにとってドラマティックだった今年を締めくくるものだ。Muskは9月にSECと和解で合意し、和解の条件にはMuskが会長職を退くことと、罰金2000万ドルを払うことが含まれていた。SECは、Muskが1株あたり420ドルで株式を買い取って会社を非上場化するための“資金を確保した”と8月7日にツイートしたとき、Muskが詐欺を行なったとして提訴していた。

MuskはCEOにとどまり、まだ役員会のメンバーではある。Teslaもまた、この2人の独立取締役を役員会に指名することに同意した。

Teslaは、Muskとは別に2000万ドルの罰金を払った。Teslaに対する容疑と罰金は、情報開示義務とMuskのツイートに関する手続きの不履行に関するもの、SECはと述べていた。

TeslaのSECとの合意は、Teslaにとってコーポレート・ガバナンスの新時代の始まりを刻むものとなっている。これまで株主の一部はMuskによってあまりにもタイトにコントロールされ過ぎていると主張し、またMuskの弟のKimbal Muskのように別の株主はMuskの肩を持っていた。

2017年、Teslaは役員会メンバーの幅を広げ、21世紀フォックスのCEO、James Rupert MurdochやJohnson Publishingの会長でありCEOでもあるLinda Johnson Riceを加えた。

他の役員会メンバーは次の通りだ:Robyn Denholm、2014年就任;Brad W. Buss、2009年就任;Antonio Gracias;Ira Ehrenpreis、最も長く務めているメンバーで2007年就任。Denholmは10月にTeslaの会長職に指名された。

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(翻訳:Mizoguchi)

米粒よりも小さい体内センサーを開発するIota Biosciences、1500万ドルを調達

フィットネストラッカーや心拍モニターは素晴らしいものだ。しかし、もし体内の活動状況を知りたければ、その方法というのはたやすいものではない。Iota Biosciencesは、体内にほぼ永久的にとどまって検知した情報をワイヤレスで送る、長さがミリメートル単位のセンサーでそうした状況を変えたいと考えている。そして1500万ドルのシリーズAがそれをサポートする。

共同設立者のJose CarmenaとMichel Maharbizはカリフォルニア大学バークレー校で微小電極の改善に取り組み、そこでの研究でこのチームは生まれた。Iotaのデバイスは、神経や筋肉の組織をモニターして刺激するための医学実験に活用される。たとえば、微小電極を脳内に置くことで発作の初期サインを感知したり、心臓近くに置くと心組織のリズムを正しく測定するのに役立つかもしれない。

名称にはマイクロとあるが、実際にはさほど小さくない。もちろん、そうしたものは往々にして大きなマシーンに接続しているか、バッテリーパックで動くかで、合併症などの問題もあり体内に数週間もしくは数カ月とどまっていられることはほとんどない。

他の部門でどのようにやってきたかを考慮したとき、Carmena とMaharbizは小型化、製造技術、電力の効率化でもっといいものができるはず、と考えた。

最初のアイデアは、無線周波数による給電で脳内を自由に動く小さなものだった、とCarmenaは言う。しかし彼らは基本的な問題にぶちあたった。無線周波数は長い周波のために受信するために大きなアンテナを必要とする、ということだ。血液中を泳ぎ回ることが想定されたデバイスにとって、ずいぶん大きなアンテナとなりそうだった。

「全てがダメになったとき、ミーティングがあった。というのも、我々は必要とするものから100倍以上離れていた。しかしそこになかったのは物理学だった」と回想する。「そうだ、それだ!」。

しばらくしてMaharbizは“eureka”の瞬間を手にした。「奇妙に聞こえるかもしれないが、駐車場で思いついた。すべてのことがつながった」。

彼が思いついたのは超音波だった。

音速で充電する

おそらくあなたは診断装置としての超音波に馴染みがあるだろう。妊娠中の体内の様子をイメージ化するものとして、あるいは対象物の近くにくると“ピンっ”と鳴って知らせるツールとしてだ。最近、この重要な技術にかなり注目が集まっていて、科学技術者たちが超音波の新たな応用方法を発見している。

実際、ポータブル超音波の会社はラゴスで開催されたTechCrunchのバトルフィールドで優勝した。

しかしながら、Iotaのアプローチは従来の使い方とはほぼ関係がない。放射される波長をとらえるためにはそれに応じたアンテナを要するという原則をご存知だろう。超音波はミクロン(100万分の1メートル)の波長を有する。

だから、とらえることは可能で、しかもかなり効率的にとらえることができる。つまり、超音波アンテナは、接続したデバイスに給電するのに十分な波長を簡単にとらえることができることを意味する。

それだけでなく、画像での使用で想像がつくかもしれないが、超音波は体を透過する。RFを含む多くの放射線が、人体の多くを占める塩水に吸収される。

「しかし超音波ではそうならない」とMaharbizは話す。「あなたは単にゼリーで、超音波はあなたを透過する」。

このアドバンテージを生かすためにつくったデバイスは極めてシンプルで、しかも信じられないくらい小さい。片面は圧電性クリスタルと呼ばれるもので、力をーこの場合では、超音波だがー電気に変換する。小さなチップの真ん中、そしてエッジ周りには電極が走っている。

デバイスはかなり小さく、神経や筋繊維に取り付けることができる。デバイスを超音波のビームで起動すると、電極間に電圧が発生し、この微小電流には組織の電気活性が作用する。これらのわずかな変化は文字通り超音波パルスがいかに跳ね返ってくるかを表していて、リーダーはそうした変化から電気生理学的な電圧を得ることができる。

基本的に、彼らが送る波長がデバイスを給電し、神経や筋肉が何をしているかによってわずかに変わった状態で跳ね返ってくる。絶えずパルスを送ることで、システムは正確なモニターデータを絶えまなく集め、これにはまったく出血を伴わない(これは体内でデモンストレーションされている)。

外からの影響を受けにくく、埋め込んでも安全な容れ物に入っていて、これらの超小型“微片”は1つだけでも、12個でもインストールできる。そして心組織のモニターから、人工補綴のコントロールまで全てをこなすことができる。また、これらは電圧を届けることが可能なことから、おそらく治療目的での使用も可能だ。

はっきりさせておくと、これらの使用は脳の内側ではできない。この技術が中枢神経系でうまく作用しないという明確な理由はないものの、その場合おそらくもっと小型である必要があり、実験もかなり複雑なものになるだろう。最初の応用は全て末梢神経システムで行われる見込みだ。

とにかく、実際に行うためには、FDAの承認を得なければならない。

長い医療技術の道のり

想像できるかもしれないが、こうしたものは発明してすぐにあちこちにインプラントできるという類のものではない。インプラント、特に電子タイプは実験的な治療であっても、使用する前にかなり精密な検査を経なければならない。

Iotaにとっては幸運なことに、彼らのデバイスは、たとえば無線を活用したデータコネクションと5年持続する電池を搭載しているペースメーカーよりも多くのアドバンテージを持っている。一つには、唯一のトランスミッションは超音波であり、何十年もの研究でその使用の安全性は証明されている。

「FDAは、超音波を人体に使用する際の平均・ピークのパワーの上限を設定しているが、我々のものはそうした制限にあるような周波数やパワーを使用していない。これはまったく異なるものだ」とMaharbizは説明する。「エキゾティックな物質やテクニックも使っていない。コンスタントに低いレベルの超音波が続く限り、この小さな物体は本当に何もしない」。

投薬のポートやポンプ、ステント、ペースメーカーのような、よく使用されるデバイスと違って、“取り付け”は簡単でリバーシブルだ。

腹腔鏡でもできるし、小さな切開ででもできる、とCarmenaは言う。「もし取り出さなければならなくなったときは、取り出しは可能だし、出血もかなり少ない。小さくて安全なので体内にとどめておくこともできる」と話した。

Iotaの考えでは満点だが、テストは急いではいけない。彼らのデバイスの基礎は2013年に築かれたが、開発チームは技術を実験室の外に持ち出せるポイントにまで進歩させるのに多くの時間をさいた。

人体での実験を提案するところまで持ってくるのに、Iotaは1500万ドルの資金を調達した;このラウンドはHorizons Ventures、Astellas、Bold Capital Partners、Ironfire and Shandaが主導した(ラウンドは5月に実施されたが、このほど発表されたばかりだ)。

このAラウンドでIotaは、現在のプロトタイプから、その先のポイントにコマを進めることができるはずだ。おそらく18カ月以内に、製造準備ができたバージョンをFDAに提示するーその時点では、その後見込まれている実験を行うために、さらなる資金調達が必要となる。

しかしそれが医療技術の世界であり、全ての投資家はそのことを知っている。この技術は多くの分野でかなり革命的なものとなるかもしれない。しかし、まずはこのデバイスは一つの医療目的(Iotaはすでに決めているが、今のところ公開できない)で承認を受ける必要がある。

確かに長い道のりにはなるが、最終的には空想科学小説から抜け出ることが約束されている。あなたの体の中を駆け回る、超小型で超音波で動く装置を手にするようになるまでには数年かかるかもしれないが、しかし未来は確実にやってくる。

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(翻訳:Mizoguchi)

Porsche Taycanは最初の1年間の生産台数がすでに予約で売り切れ、多くがTeslaからの乗り換えだ

Porscheの初めての完全電動スポーツカーは、2019年のもっとも待ちに待たれた車になるのかもしれない。Teslaのオーナーですら、その虜(とりこ)なっている。

最近のCNETのインタビューでPorsche North Americaの社長でCEOのKlaus Zellmerは、すでに預託金を払っている予約購入者が全員実際に購入するとしたら、Taycanの最初の1年の生産量がそれだけで売り切れてしまう、と言っている。

そういう、初期の予約客って誰のことか? Zellmerによると、その半数以上は過去にも現在にもPorscheのオーナーではない/なかった人びとだ。もっと具体的に言うと、これらの潜在的顧客はTeslaから来ている。

CNETから引用しよう:

通常、他のブランドから来る人たちと言えば、それはAudiやBMW、Mercedesなどのブランドからだ。しかし今回のナンバーワンブランドは、Teslaだ。Teslaに関心を持つような人たちにとって、さらにもっと関心を持つ車があることは、たいへん興味深い。

Zellmerは、具体的な数字などを挙げなかった。何人の人が預託金を払ったのか、Taycanの1年間の生産台数は何台か。後者については、計画量2万台、という発表が前にあった。PorscheのCEO Oliver Blumeが11月にドイツの経済誌WirtschaftsWocheに語っているところによると、Taycanは需要が予想外に大きいので生産能力を増やすというが、やはり台数の言及はない。

Taycanは、2019年の年末に発売される。

画像クレジット: Porsche

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

アメリカでスマートスピーカーは2018年に臨界質量に達した(世帯普及率41%)

今年は、Alexaにとって良いクリスマスだった。そのアプリはApp Storeで連日トップだったし、Alexaを動かすサービスが新しいユーザーの殺到で一時的にクラッシュしたほどだ。でもAlexaにとっては、Google Homeなどそのほかのスマートスピーカーデバイスと共に、ホリデーシーズンだけでなく今年全体が良い年だった。アメリカのスマートスピーカーの世帯普及率は2018年に41%に達し、2017年の21.5%に比べて倍近い増加だ。

RBC Capital Marketsのアナリストたちが12月にリリースした一連のレポートによると、アメリカにおける世帯普及率の倍近い増加は主にAlexaとGoogle Homeデバイスによるものであり、AppleのHomePodの貢献は小さい。

アナリストたちによると、スマートスピーカー全体の普及率41%のうちその約3/4、31%はAlexa対応デバイスが占める。ただし1世帯複数保有もあるので、Google Homeデバイス等=(41-31)=10%とはならない…後述。

彼らの予測では、2021年のAlexa関連の売上は180ないし190億ドルで、Amazonの全売上の5%近くに達する。‘Alexa関連’というのは、デバイスの売上だけでなく、音声によるショッピングやそのほかのプラットホームの売上も含む。今アメリカでは、各家庭等にインストールされているAlexaデバイスは1億台を突破しており、レポートはそのことを指して、Alexaは‘臨界質量’に達した、と言っている。

RBCはAlexaの開発におけるAmazonの進歩にも触れている。取り上げられているのは、夜間の侵入者検出や、煙(初期火災)の検知機能、インターネットがダウンしたときのローカルな音声コントロール、位置対応のリマインダー、高度なルーチン、メールの統合、拡張通話機能などだ。

Alexaのサードパーティアプリのエコシステムも2018年に前年比150%成長し、スキルの総数は6万を超えた。それは5月には4万、2017Q3には25000、2年前にはわずか5000だった。

Google Homeも2018年には勢いをつけ、Googleデバイスの保有率は2017年の8%から23%に増えた。1世帯の保有デバイス台数は1.7台となり、これによりアメリカにおけるGoogle Homeのインストールベースは約4300万台、アメリカ以外が約900万台となる。

しかし今後数年間の売上ではGoogle HomeはAlexaの後塵を拝することになり、Google Home関連の売上は今年が34億ドル、2021年が82億ドル、とされている。

でもPixelやNest、Chromecastなどを含めたGoogleのハードウェア全体の売上は、2018年が88億ドル、2021年が196億ドルと予想されている。

AppleのHomePodがRBCの調査対象になったのは今年が初めてだが、同社の推計によるとアメリカのスマートスピーカー市場でそのシェアは小さく、Amazonの66%、Googleの29%に対してHomePodは5%とされている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

日本のVC・エンジェル投資家が予想する2019年のスタートアップ・トレンド(後編)

2019年のテック、スタートアップ業界はどうなるのか。昨日に引き続き、ベンチャーキャピタリストやエンジェル投資家による予測記事を公開する。

この記事では、昨年の同企画で回答を寄せてくれた投資家を中心にアンケートを実施。その結果をとりまとめた。アンケートの内容は「2018年に最も盛り上がったと感じる分野およびプロダクトについて(150文字以内、自由回答)」「2019年に盛り上がりが予想される分野やプロダクトについて(600文字以内、自由回答)」の2つ。回答順に紹介する(敬称略)。なおキャピタリストは通常カバー範囲が決まっている。各回答が必ずしもそのVCを代表する意見ではないことはご了承頂きたい(前編はこちら。昨年の記事はこちら)。

セールスフォース・ドットコム 執行役員/セールスフォース・ベンチャーズ 日本代表 浅田慎二

2018年の振り返り:年間調達総額が過去最高の約300億円となったSaaSスタートアップが、質・量ともに、最も盛り上がったと言えるのではないでしょうか。成長モデルを証明したSaaSスタートアップは10億円以上の調達も珍しくなく、SansanビズリーチfreeeトレタABEJAマネーツリーは調達後も急成長しています。

2019年のトレンド:引き続きSaaS系が盛り上がると予想します。不況期の耐性が強い事を米国企業がデータで証明しており、2019年もキチンと経営しているSaaS系スタートアップは調達できるでしょう。AI・ブロックチェーンで皆が言っていたような「Hype感」がやってくる年になることを期待します。

カスタマーサクセスを提供している証左である高い継続率とアップセルを実現しているスタートアップこそ評価されるべきで、Time to Sell、Use、Valueの3点の期間短縮をオペレーション改善で実行し、Product Market Fitを強烈に証明している会社の調達が増える事を祈念しています。分野としては、Sales Techの領域がまだまだ日本ではオープンです。日本の営業現場は「気合いと根性」が染み付いているケースが多く、結果としてお客様の迷惑を顧みないスパム系営業がまだ多いと感じます。営業する側・される側双方にとって最適なUXを実現するためにSaaSテクノロジーは適しています。フェーズ別で今後盛り上がって欲しいサービスを列記します。

・見込みPhase:テリトリー管理、予測管理、リードランキング、自動アポ調整
・商談Phase:ビデオ会議&分析、提案資料自動準備、見積り作成、営業員インセンティブ&モチベーション管理
・受注Phase:契約管理、リファーラル管理、電子署名
・顧客維持Phase:カスタマーサクセス

ヘイ 代表取締役社長 佐藤裕介

2018年の振り返り:17年に引き続き、スマホに慣れきって行動習慣、脳みそが変化した人たち向けのサービスが勃興。常時接続からくる無計画、価値の二階建て構造 (実質価値+ソーシャル価値)、クラウドによるケイパ拡大などがキーワード。そのあたりに適応した旅行系、ウォレット+決済系サービスなどが目立った。

2019年のトレンド:2019年も大きなテーマも引き続き、スマホがもたらした変化の後半戦という印象。無計画、生活、資金の軽量化は旅行領域だけでなく、不動産領域や求人領域にも押し寄せるのではないか。

数週間、数カ月間で超簡単に住み替えられる家。明日仕事に行くか行かないか、行くならどこに行くかを自分でコントロールできる仕事環境。希少で、今日消費しないと消費機会が次いつくるかわからないものに対して短期資金を1分で得られるスマホウォレット、など。

スマホでは出尽くし感があるが、これは「PC時代のものをスマホに置き換えるもの」という意味で2014年頃までにほぼ(プロダクトが)出揃ったことからきている。スマホの浸透、成熟から生まれる新しい需要は当然まだある。新規技術と一般化の狭間の時期である今年、来年は上述の機会がより目立つのではないか。

iSGSインベストメントワークス 代表取締役 代表パートナー 五嶋一人

2018年の振り返り:特に際立って盛り上がっていたと感じる分野はない。

事業ではないが、「SaaS」や「サブスクリプション」が、サービス提供や課金の重要な一形態として、スタートアップにノウハウ共有・蓄積が進んだこと、顧客側の「慣れ」が進んだことにより、新たな成長機会を得たり、より大きく早く成長した事業は多くあるだろう。

2019年のトレンド:「インターネット+リアルのサービス・ヒト・モノ・場所」といった領域が、より活発になると考える。

これまでのレガシー産業における「ラスト・ワンマイル」周辺の革新に加え、より上流工程に変革をもたらすスタートアップの成長が、物流業・製造業などから期待される。

ライブ・エンターテイメント分野:
音楽・スポーツの他、多人数が同時参加する各種イベント等の事業は、インターネット上のサービスやコミュニティとの連携を深化させる。細分化されたファンとその嗜好(しこう)性に応えるべく、新たなオンライン課金モデルや、定期購入やクラウドファンディング等を採り入れた物販モデルにより、成長領域になりうる。

ヘルスケア分野:
日本は「世界最先端の超高齢化市場」であり、へルスケア分野で日本発・世界で活躍する企業が現れることを期待している。

スポーツ分野:
ヘルスケア分野とのクロスオーバーがある「Doスポーツ」領域、さらに上記ライブ・エンターテイメント分野とも密接に関係するスポーツチーム運営やスポーツ興行においても、新たな成長モデルを創り出せる可能性があるだろう。

トレンドやバズワードに「乗っかる・踊らされる」のではなく、産業の変革やテクノロジーの進化を、我がものとして取り込み活用することで、新たな価値を創造し成長する——そんな「本質」を愚直に追求するスタートアップがより多く活躍できるよう、我々も活動していく。

アイ・マーキュリーキャピタル 代表取締役 新和博

2018年の振り返り:資金調達及びプロモーション投資額では圧倒的にFinTech。ユーザーの可処分時間の奪い合いという観点ではVTuber、TikTok、ライブ配信サービスが盛り上がった。

2019年のトレンド:■スポーツ×IT
この1年間で大手IT企業が続々とスポーツ分野への資本参加・スポンサーシップを発表しており、ITを活用したスタジアムおよびオンラインでの観戦体験に大きな変化が生まれそう。

■ヘルスケア×IT
日本の大きな社会課題かつ数少ない成長産業でもある医療・介護分野、ここにITが貢献できる余地は大いにある。国全体の社会保障給付費を抑え国民1人1人のQOLを高めるためには、ヘルスケアサービスの盛り上がりが必要。大手・スタートアップ問わず、長年のWebサービス・アプリ運営等で培った英知を結集させて、本気でヘルスケアをハックして欲しい。

■再びVR
2Dとは違う没入感が生み出すユーザー体験はもっと評価されるべき。まずはVtuberライブがキラーコンテンツとしてVR普及のきっかけとなりそうな予感。

Plug and Play Japan Chief Operating Officer 矢澤麻里子

2018年の振り返り:2018年、前半は仮想通貨ICOが賑やかでしたが、後半はInsurtechが少しずつ盛り上がりをみせたのではないかと思います。またBtoB・SaaSトレンドの傍ら、少しずつBtoCサービスも活気取り戻しました。特にTwitterやTikTokなどの若者向けのサービス人気はさらに加速しているように感じます。

2019年のトレンド:2019年は、引き続きフィンテック領域やブロックチェーンの技術を活用したサービス、そしてまだ負の大きいレガシー産業に対するスタートアップは増えていくと思いますが、特に昨年後半から少しずつ盛り上がりをみせていたMaaS(Mobility as a Service)領域は面白いのではないかと思います。

日本を代表する自動車メーカーや鉄道・交通機関事業体がこぞって移動の変革に取り組み、行政面や技術面の進歩などの後押しのもと急速に革新が進むと思います。

MaaSは、カーシェアや配車予約決済、観光地や地方都市などの移動、自動運転やそれに伴うセキュリティ等とても幅広いですが、そういった分断されているサービスをインテグレートする企業も見逃せません。

また、MaaS以外にはオリッピックに向けたインバウンド需要に向けたサービス、そしてスキルシェアなどのシェアリングエコノミー領域も気になります。なかなか儲かりにくいと言われる領域でもありましたが、これまで堅調に伸ばしてきたプレイヤーが2019年には一定の成果を出し、日の目を見る年になるのでは。

プライマルキャピタル 代表パートナー 佐々木浩史

2018年の振り返り:メルカリ、ブロックチェーン、Fintech、ベンチャーキャピタル、中国スタートアップ。

2019年のトレンド:・国内外問わず、未上場の大型スタートアップがどのようなExitになるのか。
・過去数年間の投資を振り返った時、以下のようなキーワードにまとまりました。来年以降もこれらのキーワードを中心にシード投資を頑張っていきます。
– Redesign/Restructure, Decentralization
– Personalize, AI/Machine Learning, Automation
– IoT/Smart Home, Connected ●●●, Mobile
・景気動向、米中テック企業の動向、資金供給の二極化、過剰成長の副作用等々、個別銘柄ではない話題がより多く取り上げられる1年になる気がします。

East Ventures Director 毛利洵平

2018年の振り返り:インフルエンサーが更に力を持った年だったように感じます。今年はネット発のインフルエンサーだけでなく、すでにテレビ等で活躍している芸能人も数多くネットに入ってきました。TikTokの流行、VTuberが1年でここまで飛躍したのも驚きです。他にはD2Cや決済サービス、旅行関連のサービスも印象的でした。

2019年のトレンド:ネットを利用した個人活動や商売といった流れは今後も加速しそうです。
そういった個人活動の収益化や周辺領域(管理ツールやレンディングなど)のサービスは2019年もたくさん出てくると思います。

ゲーム領域もとても注目しています。2018年は「荒野行動」や「マフィア・シティ」など中国ゲームが日本で大規模なマーケティングを絡めてヒットしました。2019年もこの流れは続くと考えており、中国を中心とした海外ゲームが2018年以上に日本へ押し寄せてくるという状況になると思っています。ゲーム実況などの周辺領域に関してもさらにに盛り上がると思うので、こちらも注目していきたいです。

ARにも来年は期待しています。先日リリースされた「ペチャバト」のような手軽にARを使って遊べるようなサービスはいくつか出てきそうだなと思っています。ARの用途はたくさんありますが、個人的にまずはゲームから広がっていくんじゃないかと考えています。2019年内に一気に盛り上がるかどうかは分からないですが、その先を見越してチャレンジしてもいい分野じゃないかなと思っています。

サイバーエージェント 社長室 投資戦略本部 投資戦略本部長(藤田ファンド)/サイバーエージェント・ベンチャーズ 代表取締役社長 近藤裕文

2018年の振り返り:仮想通貨と仮想通貨経済圏の熱狂と冷静。

2019年のトレンド:テクノロジーの観点でも”マスの脱却”の観点でも、個人への回帰がより一層進む1年になるかと思います。

すでにメディアやコンテンツにおいて個人のパワーが増したのはその証左であり、あらゆる産業で個人が持つパワーが再定義される世界が近づく中で、以下の領域に注目している。

(1)働く人の価値が向上している文脈
・超人手不足の領域に、空いてる個人のリソースを最適にマッチング(2018年にタイミーへ投資)
・SaaSを活用した業務効率系サービスの残り(売上Up / コストDown)

(2)個人の稼ぎ方の拡がりの文脈(企業視点ではマーケティング活動の進化文脈)
・情報銀行/個人情報を提供することで個人が稼げるサービス(歩く/移動によりポイント/お金が貯まる米国のMiles・韓国のcash walk

(3)購買を再定義するSubscriptionの文脈
音楽やソフトウェアから始まったSubscription→購買単価の高いプロダクトへの拡がり

(4)スマホ決済の普及に伴い新たに実現可能となるサービス、という文脈。中国等での先進事例や経験を参考に、
・購買データの価値増大、個人のIDが「どこで」「何を」「いくら」買ったのかと紐づく世界の実現で、消費者金融やカードローンの代替プレイヤー
・リアル店舗のオンラインへの融合

(5)Alexa等スマートスピーカー普及/音声認識の技術的向上の文脈
・優良コンテンツの音声化サービス

グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー 高宮慎一

2018年の振り返り:AI、ブロックチェーンなどの新技術が、ハイプカーブの「過剰期待のピーク」という意味では盛り上がった。但し、技術の新規性先行で盛り上がり、技術シーズが適切に市場ニーズと結びつき、本質的な事業に至るのはこれからと感じた。比較的過熱感が少なかったSaaSも盛り上がり、漸く日本でも本格普及の端緒が開かれた。

2019年のトレンド:2019年は、景気の調整局面の足音が聞こえつつ、一方でスタートアップ業界における過熱感が続く中、テーマ及び個社の選別が進むだろう。大局的には、テクノロジーライフサイクルを鑑みると、大きなものが生まれる直前の凪と捉えている。ITの成熟化による白地の減少と、AI、ブロックチェーン、IoTなど新技術の出口市場の模索が途上にある端境期と考えている。その意味では、2019年のテーマは、ここ数年のトレンドの延長線上で、ITの残された白地を取っていくコミュニティ型メディア/ファンビジネス、動画など、そしてより大きいのはITによる旧態依然とした業界の変革と考えている。

古い業界の変革は、技術進捗が業界の負に最適な解決策を提示するテック・ドリブンな動き、そして経済、法制度、消費者動態の変化がもたらす社会ドリブンの動きから事業機会が顕在化する。例えば、テック・ドリブンは国際物流のShippio、少額短期間の保険のjustInCase、社会ドリブンは遠隔診療のメドレー、時間外診療サービスのファストドクター、お葬式サービスECのよりそうなどがある。

業界の「負」の積み上がりや規制緩和などで変革の必要性が臨界点に達するタイミングの見極めが重要で、その点2019年は、医療・ヘルスケアに注目している。また、無為に既存の巨人や規制当局と戦うことなく、彼らを巻き込んでいく大人の戦い方とチーム組成が大事になる。

XTechVentures 共同創業兼ジェネラルパートナー 手嶋浩己

2018年の振り返り:働き方改革などを背景にヒトモノカネ(社会的リソース)のアンバンドリングが進み、需給両サイドでシェアリング/オンデマンドサービスがカジュアルに使われ始めた。界隈をミクロで見れば、SEOメディアの立上げ難易度が上がり、SaaS/月額課金とD2Cが方程式化しやすい起業の「型」として広がりを見せた。

2019年のトレンド:シェアリングサービスはますます伸び、以前は無理だったアイデアも成立するようになる。過去消えていった事業モデルの再チャレンジのような形も増える。シェアリング文脈ではひっそりとブロックチェーン技術を使った実証実験のようなものも増える。ブロックチェーンに社会的なリソースの一部が乗り始める。フィンテックに引き続き大きい投資が行われ、入り口でデータを大量に蓄積していきつつ、出口でのデータを生かし隙間を埋めるような新しい金融サービスがたくさん出てくる。

5G前夜の1年として、それを意識した投資が進む。動画関連でポジションを作ってきた会社にとっては来年以降、自然と大きい成長をしていく数年に。連動してテレビの影響力低下をにらみ、日本交通タクシー内広告のような生活動線の中で新しい動画アドスペースを創出するような動きが進む。テレビの影響力がアンバンドリングされていく。

エンターテイメントの分野では、eスポーツやバーチャルタレントなどを媒介にし、リアルなライブエンタテイメントとネット・VRサービスが入り乱れながらエコシステムができ、すみ分けが進み、市場が大きくなる。メディアやエンタテイメントの変化を受けて芸能人やブランドの概念がより大きく変化する。インフルエンサー/D2C事業の成長の源泉に。XTechVenturesとしては1号ファンド組成完了の目処ついたので、投資と育成に励む1年に。

XTech 代表取締役 西條晋一

2018年の振り返り:仮想通貨が年初をピークに不正流出、各国の当局規制などの影響で大幅下落。期待が大きかっただけに、各社が仮想通貨ビジネスの取り組み変更を余儀なくされた。一方、HEROZ、ラクスル 、メルカリなど中大型銘柄の上場成功が明るい話題となった。

2019年のトレンド:先日ソフトバンク・ビジョン・ファンドがAI投資に注力すると宣言したが、2019年はAI関連銘柄がさらに注目される1年になる。この10年でスマホシフトに乗れた会社と乗り遅れた会社で業績の明暗が大きく分かれたが、AIについてはそれ以上のインパクトが出てくると予想されるため、各社のAI取り組みがさらに本格化する1年に。

Google、Amazon、MicrosoftやIBMといったクラウドプラットフォームからAI・機械学習のサービスが充実してきたため、専門知識のないエンジニアでもAIを積極活用し、動画、画像、音声、翻訳などで新しいサービスが続々と登場する。QR決済の覇権争いが注目されるが、日本では中国のように2強というよりは上位4-5社で分け合う形で落ち着くだろう。ポイントに強みのある楽天、ドコモ、日常的にアプリで消費者接点のあるLINEは優位性が高いが、PayPay、メルペイなど後発組がどういった戦いを仕掛けてくるか注目。

上場マーケットは不透明感が漂うが、市況を見計らって未上場で数百億円のバリュエーションで大型調達した会社がいくつか上場してくるだろう。未上場マーケットはベンチャーキャピタルに潤沢に投資資金があるため、2018年同等にシード・アーリーには積極的に投資していくが、ミドル・レイターのバリュエーションにはシビアになるだろう。

アプリコット・ベンチャーズ 代表取締役/ジェネラル・パートナー 白川智樹

2018年の振り返り:・SaaS
・VC、CVC、エンジェルの増加・大型化

2019年のトレンド:・キャッシュレス戦争と周辺分野
・オリンピック準備に合わせた関連領域
・「働き方改革」の制度施行に伴う副業 ・学び・趣味・コミュニティの拡大
・人手不足に対する各種ソリューション
・より多様化するD2Cプロダクト

2019年は大手企業・事業会社から独立される方がますます増えると思いますので、引き続き微力ながらサポートしていきたいと考えています。ご連絡お待ちしております!

Photo by Marco Verch

書評:『FACTFULNESS 』賢い人ほど世界の真実を知らない ――TED講演再生3500万回のロスリング博士による世界の見方

著者が人々にショックを与えるために講演でよく使う質問の例が裏帯に載っている。「世界の1歳児でなんらかの予防接種を受けている子供はどのくらいいる? A:20%、B:50%、C:80%」

正解できただろうか? 仮にこの質問には正解できたとしても、著者が次々に挙げる例の半分に正しく回答できた人はごく少ないはずだ。著者はTED講演で「世界のトップクラスの金融関係者、ジャーナリストなどに尋ねてきましたが、ひどい結果です。チンパンジーに聞いたほうがマシなんです」と言って笑いを誘っていた。

3択問題を単に当てずっぽうに回答するなら正答率は33%になる。仮に正答率が8%だったとすれば「チンパンジーの4分の1の正答率」ということになる。ではなぜ十分な教育を受けた人々が「チンパンジー以下」になるのか? これが著者が提起する問題だ。

著者はスウェーデン人の医師でカロリンスカ医大の教授を長年つとめた。モザンビークで新しい病気を発見するなど大きな功績をあげており、医療と公衆衛生に関する世界的権威だ。著者は学生に数が少なかったり所得が低そうだったりする難病患者向けの医薬品が開発されない理由を尋ねる。学生は「医薬品メーカーが強欲だからです。メーカーの連中をぶん殴ってやればいい」と答える。著者は「そのメーカーのCEOはよく知っているから今度会ったらぶん殴ってやろう。そうするとメーカーは心を入れ替えて難病向けの医薬品を儲からないと分かっていても開発するようになるかな?」と尋ねる。

学生は「それなら悪いのは金持ちの株主どもです」という。著者は「金持ちは値動きの少ない製薬メーカー株なんかに投資しないよ。こういう固い株に投資してるのは誰だと思う?」とさらに尋ねる。そして製薬会社の主要な投資家は年金基金だと明かす。「つまりきみらのおばあちゃんの年金の原資だ。こんどおばあちゃんに会ったらぶん殴ってやるといい。お小遣いをもらっていたなら返すんだね」と諭す。語り口は軽妙だがここには非常に困難な問題が潜んでいることが分かる。

先週、ドイツの進歩派を代表するデア・シュピーゲルのスター記者が記事捏造を常習していたことが発覚して解雇された。反トランプ記事を書くことが目的になるうちに捏造という麻薬に手を出してしまったようだ。捏造は論外だが、ロスリング博士によれば、世界に関する事実認識で間違いがいちばんひどいグループにマスコミ関係者が入っていたという。

つまりニュースを読まないのが認識の誤りを生むわけではない。多くのジャーナリストの世界認識自体が間違っているのだという。ジャーナリストは、紙媒体であれオンラインであれ常に記事が注目され読まれることを目指す必要がある。これはやむを得ないが、注目され読まれること自体が目的になってしまうと危険だ。結論があってそれに合わせて記事を書くという本末転倒が生じる。そうなると知識はどんどん偏っていく。捏造まではほんの一歩だ。

本書では多数の具体例がわかりやすいチャートで説明されているので読むのに苦労するところはあまりない。世界の現状に関する正しい知識を得ると同時に、自分たちがなぜ間違うのかを考えるために非常に良いきっかけになると思う

優れた本だし、翻訳者も適任なのでぜひお正月休みにお読みいただきたい。脚注を抜いても352ページとかなり大部だが、時間の許す範囲で興味のあるところだけぱらぱらと拾い読みしてもいいと思う。表紙裏の見返しには所得、寿命、人口が国別にグラフ化されている。これを眺めているだけでもさまざまな感想が湧いてくる。

ところで著者が世界の専門家多数に問いかけた12の質問で「チンパンジーに勝った」人の割合はわずか10%だったという。「無知」が問題なのではなく、「誤った思い込み」が深く刷り込まれていることが本当の問題だった。われわれは何か見聞きしたとき、反射的に主張を始める前に「ソースは何か?」、「そのソースは十分信頼できるか?」を振り返る習慣を身につけるべきだろう。いつもできているとはとうてい言えないが、ともあれ努力してみたい。

著者のハンス・ロスリング博士は昨年2月にすい臓がんのため68歳で急逝し、子息のオーラ・ロスリング、その妻のアンナの両氏が原稿を整理補筆して本書に仕上げたという。訳者の上杉周作氏はカーネーギーメロン大学の学士、修士。Palantir Technologiesのエンジニアなどを経てフリーランス。関美和氏は慶応大学卒、ハーバードビジネススクールMBAで杏林大学外国語学部准教授、訳書に『ゼロ・トゥ・ワン』などがある。本種は紙版が店頭に出ているが、1月1日からは電子版もリリースされる。

FACTFULNESS ファクトフルネス 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣 ハンス・ロスリング(日経BP刊)

Gfycatの「GIF」が音声付きにできるようになった

GIF作成ツールとオンラインコミュニティを提供するGfycatが、GIFを作成する新しい方法を提供している ―― 音声付きにすることができるようになったのだ。”Gfycat Sound”と呼ばれるこの機能は、”GIF”を作成する際に、GIF作成ツールが元の動画の音声を残すオプションを提供するというものだ。Gfycatは、これが特にゲーマーたちの間で人気が出るだろうと考えている。

同社はこれまでも既に従来型ではない様々なGIFの実験を行ってきた。例えば、より長いGIF、AR GIF、HD GIF、360 GIFなどを使って、古くゴツゴツしたGIFを進化させようとしていたのだ。

もちろん、結果として得られているGIFは、現時点では”.gif”ではない ―― それらは短い形式のビデオに他ならない。

これは”Gfycat Sound”にも当てはまる。だが、エンドユーザーがGIFの技術的な基盤を気にする必要はない ―― ユーザーたちは単に、長いコンテンツから取得した短いクリップを作成して共有したいだけなのだ。

(だがもし興味があるのなら…Gfycatは音声付き(モノラルでもステレオでも)のビデオをWebMとMP4に変換していると言っている。そして、1つのGfycat毎に生成される、14個のファイルのいずれとも合成できるように、音声は独立したファイルとして保存される)。

同社は、今年の初めに、コミュニティに対して最も欲しい機能を問いかけた結果を受けて、音声サポートを提供する決定を行ったと語る。「音声付きGIF」が、ユーザーからの最大の要求として戻ってきたからだ。

追加されたサポートを利用するためには、GIFの作成者はGIFを作成する前にGfycatのアップロードツールのスイッチを切り替えてサウンドを保持するか削除することを選ぶことができる。これまでと同様にアップロードしたビデオや、YouTube、Facebook、Twitchその他の場所からペーストしたリンクを通してGIFを作成することができる。また、ユーザーが無音の.gifファイルまたはビデオをアップロードした場合には、ソフトウェアがそれを検出する。

そのGIF編集ソフトウェアを使うことで、ユーザーはGIFの開始時間と終了時間を選択したり、共有する前にキャプションを追加したりすることもできる。

GfycatのサイトにアップロードされたGIFは、右上のアイコンをクリックすることで音声をオンして観ることができる(ありがたいことに、サイト上では音声はディフォルトでオフになっている。突然の大音響に晒される心配はないだろう)。

これらの新しい「音声GIF」は、開始時点で全てのモバイルならびにデスクトップブラウザー上で動作し、開発者向けのAPIドキュメントが提供されることはもちろん、2019年にはGfycatの対応するiOSならびにAndroidアプリも登場する。

「クリエイターたちがGfycat Soundをまずゲーミングに重用していることを知っています。eスポーツが世界的現象になっていることがその理由ですね」と説明するのはGfycatのCEO、Richard Rabbatだ。「いまや、ゲーマーは彼/彼女が勝利した「瞬間」を音付きで共有することができるようになって、自身のコンテンツのより高い拡散性を達成することが可能になりました」と彼は語る。「私たちのスポーツコンテンツもまたGfycat Soundの恩恵を受けています。観客たちの感情を共有できるようになったからです」とRabbatは付け加えた。

Gfycatより

実際のGIFファイルには音声を含めることはできないが、従来の.gifのコレクションと一緒に短時間のビデオを提供するように拡張したGIFツールメーカーは、Gyfcatが初めてではない。同じことをImgurが5月に提供している。その理由もGyfcatの挙げた理由と同様のものだ ―― コンテンツを本当に楽しむには、クリップの音を聞くことも必要なことがある。さらに言えば、広告主たちもビデオが大好きだ。

その単純な性質にもかかわらず、現在GIFは大きなビジネスだ。今年Googleは、トップGIFプラットフォームであるTenorを買収している。その買収時点で、Tenorでは毎月120億件以上の検索が行われていた。

4月にGfycatは、月間アクティブユーザー数が1億8000万人、ページビューが5億だったと発表している。

[原文へ]
(翻訳:sako)

日本のVC・エンジェル投資家が予想する2019年のスタートアップ・トレンド(前編)

熱狂的とも言える仮想通貨ブームが起こったのはもう1年前のこと。仮想通貨の価格は下落したが、そのベースとなったブロックチェーンの活用が議論されるようになってきた。また、PayPayの大がかりなキャンペーンもあって、QRコード決済も盛り上がりを見せている。テック業界は毎年話題が尽きないが、2019年はどんな年になるのだろうか。

本企画では、ベンチャーキャピタリストやエンジェル投資家にアンケートを実施。その結果をとりまとめた。

アンケートの内容は「2018年に最も盛り上がったと感じる分野およびプロダクトについて(150文字以内、自由回答)」「2019年に盛り上がりが予想される分野やプロダクトについて(600文字以内、自由回答)」の2つ。回答順にご紹介する(敬称略)。なおキャピタリストは通常カバー範囲が決まっている。各回答が必ずしもそのVCを代表する意見ではないことはご了承頂きたい。また今回は昨年回答頂いた投資家を中心にアンケートを実施した(後編は明日掲載の予定。昨年の記事はこちら

起業家・エンジェル投資家 有安伸宏

2018年の振り返り:「マーケットプレースやバーチカルSaaSなど、ネットワークエフェクトが効く事業中心にシード出資した1年でした。スタートアップ目線で言えば、今年も非常に資金調達しやすい環境だったと思います。出資先企業のVC行脚に同行してみて、5年前、10年前とは隔世の感がありました。

2019年のトレンド:1つは、「Blockchain」 × 「hogehoge」。Blockchainを何に活用して、どんな信用創造をするのか。ハイプ・サイクルの幻滅期真っ只中ですが、冬の時代の今だからこそ事業の仕込み時期だぜ!という気概でありたい。日本固有の「ガラパゴス規制」によって産業成長が阻害されないこと、有力な起業家が海外へ逃げるようなことがないことを祈ってます。

2つめに、日本について言えば、Software is eating the world的な文脈での、既存産業の構造転換、SaaSへの置き換えです。先日10億円調達がリリースされた、製造業の受発注プラットフォーム「キャディ」はその典型例。その他の業界もジリジリとソフトウェアに「食われていく」と考えてます。「手書き・FAX・対面営業」が残る非効率な産業のうち、生き残りをかけたコスト構造転換が必要なところから、改革が進むと考えています。

最後に、FinTech領域の拡張。既存金融が十分に提供できない残りの巨大な領域、オルタナティブ・ファイナンスは全般的に面白い。小口の融資全般、ファクタリング(請求書の売却)、ABL(動産担保ローン)など、与信モデルの発明や既存ユーザベース活用によって参入余地が多く生まれるモデル。まだまだやりようがあるな、と思っています。

来年も、TwitterのDM経由で1人でも多くの起業家と出会うのを楽しみにしてます!

YJキャピタル 代表取締役 堀 新一郎

2018年の振り返り:(1)調達の大型化、IPO/Exit長期化、大型上場(メルカリ、ソフトバンク)
(2)SaaSの盛り上がり継続
(3)Vtuber市場の立ち上がり
(4)ブロックチェーン狂想曲の終わりと再出発
(5)モバイルペイメント合戦開幕
(6)ビジョンファンド旋風
(7)ヤフー、新経営体制スタート

2019年のトレンド:ありとあらゆるところにインターネットが浸透してきました。
オフィス、家、車、町。この不可逆的な流れは今後も続くでしょう。引き続きメディア、EC、決済をはじめとするインターネットサービスは積極的に投資していきます!

インターネット万歳!

グリーベンチャーズ 代表パートナー 堤達生

2018年の振り返り:ビジネスモデルという観点では新鮮味はないものの、良くも悪くもSaaS関連の会社が脚光を浴びてましたね。かつバーティカルSaaSが多かったです。投資家的な観点だと、実態以上に高いValuationの企業が多かったので、来年以降、真価が問われるのではないかと思います。

2019年のトレンド:3つのポイントを注目しております。1つには、インターネット産業自体が、生まれてから20年以上経っており、それ自体がレガシーになっているので、古いタイプのインターネットビジネスをリプレイスするというのも大きなテーマになると思います。最近だと、投資先ではありますが、コスメのコマースメディアを展開するnoin社は急成長していますね。

2つ目は、エンターテイメントテックですね。来年以降、おそらく経済全体の調整局面になると思います。不況期こそ人々は身近で安価なエンタメを欲しがります。ゆえに、Vtuberを筆頭にスポーツ等も含めた気軽に楽しめるエンタメコンテンツは益々需要があると思います。

3つ目は、これは来年というよりは少し中期的ではあるのですが、「トランスヒューマン」というワードで言われる人間の能力を強化・拡張するような技術に注目しています。バイオテックとITがより結びついていく世界ですね。この領域は今後の10年間で大きく発展すると思うので、かなり注目していますね。

Spiral Ventures アソシエイト 立石美帆

2018年の振り返り:B2B SaaSは大きく成長したと思います。業界で標準化されたKPIのみを追うのではなく、クライアントの売上、利益率向上に貢献する価値提供を始め、盤石な企業への進化が始まったと捉えています。昨年の予想に挙げたB2B/B2B2Cでの「VR」のサービス化はエンタメ、ライフスタイル領域の其々で進みました。

2019年のトレンド:(1)ユーザーの購買体験そのものが単なる簡便性追求ではなくなり、時間やお金の使い方が変化しつつある中で、ユーザーニーズを捉えたプロダクトを販売できる「D2C」に期待をしています。高利益率でマーケティングチャネルを確立しつつあるプレイヤーも出てきているので、よりユーザーのロイヤリティを高めるコミュニティ及びプラットフォームにまで昇華し、商品ラインナップを拡げ、クロスセルできるようなサービスに期待をしたいです(来年というか来年以降でしょうか…)。

(2)FinTechと一言にいうともう数年前からのトレンドで、最近はSMB向けのファイナンス領域が盛り上がり始めていますが、特定領域にフォーカスしたバーティカルなプレイヤーも出てくるのではと考えています。ファクタリング/融資のスキームを用いて、より実態に即した与信や事業展開を期待しています。建設、農業などの領域では十分市場規模は大きく、一方でこれまでの事業に脈略のないプレイヤーの参入障壁は高いと思います。

(3)また、昨年に引き続きですがサービスとしての「AI」は非常に注目しています。POCレベルで進んでいるものはいくつもあるので、本格的に既存産業のビジネスの効率化に導入され、ビジネスを期待しています。

BEENEXT Managing Partner 前田ヒロ

2018年の振り返り:2018年は「産業SaaS革命」が大きく進んだ年。様々な古い産業に向けたSaaSスタートアップが目立ちました。例えば、建設業界のANDPAD、食品工場向けのKAMINASHI、保険はHokan、カスタマーサポートはKarakuri、歯科医はDentalight、薬局はKakehashiなど。

2019年のトレンド:2019年はAIによる人類の様々な価値のシフトが始まる年になるのではないかと思います。もしAIが長年経験を持つ医者より病気の診断に優れているのであれば、医者の価値をどうシフトするのか。もしAIが人間より正確に顔認識ができるのであれば、セキュリティーの価値をどうシフトするのか。もしAIが人間よりデータ入力が優れているのであれば、BPOの価値をどうシフトするのか? IQよりもEQ、正確さよりも共感度など、ポストAIの世界で、人がどう働き、どんな価値が求められるのかを考え始める時期に入ります。 SaaSが様々の産業を変えているなかで、2019年はAIがもっと深い形で変化を起こし始める。

Draper Nexus Ventures Managing Director 倉林陽

2018年の振り返り:SaaS/Cloud推しで8年目。2018年はチームスピリットの上場やSansanの大型調達等、エンタープライズSaaSベンチャーのリーダーシップ確立が目立った。産業クラウド分野では昨年言及したカケハシ、オクト、サークルイン、atama+等、急成長や大型調達が実現され、VCの注目も高まっている

2019年のトレンド:2019年もSaaS/Cloud分野での投資を加速させる。エンタープライズ分野では引き続きDigital Marketing(フロムスクラッチサイカtoBeマーケティング)、Sales Tech(UPWARDマツリカ)、HR Tech(チームスピリットRefcome)を中心に、カスタマーサクセスを実現するSaaSベンチャーへの投資を増やしたい。

Industry Cloud分野は伝統的業界の先端ITによる課題解決ニーズの高い日本では、益々注目すべき領域。スタートアップが競合優位性を確立しやすいため、業界のペインを見極めPSF/PMFを構築できるチームかどうかがポイント。カケハシオクト同様、業界の変革に熱意とアイデアのある経営者の方との出会いに期待したい。製造業、物流、飲食等、労働人口の減少に伴う人手不足や人件費高騰が課題となる業界においては、ハードウェアを伴うIoT SaaSやロボティクス、AIによる自動化、効率化が進む。フレクト(車両管理)やコネクテッドロボティクス(調理ロボット)のような、技術力のあるベンチャー企業の課題解決を支援したい。

Samurai Incubate 共同経営パートナー Chief Strategy Officer 長野英章

2018年の振り返り:着実且つ持続性の高い明確な顧客価値の軸を持って産業やライフスタイルに浸透し始めている印象を持ったのはVertical SaaS、HR Tech、Fintech、Online SPAです。素晴らしい経営チームが完成度の高いプロダクト/サービスを日々改善し続けており、市場へ浸透していっている印象です。

2019年のトレンド:個人的に注目しているのは「第1次、第2次産業の分野でテクノロジーを活用して、産業の”いちプレーヤー”として参入し、顧客価値を高める事業」です。その中でも注目しているアプローチは

(1)テクノロジーを活用し垂直統合して参入するモデル(例:米国の建設業Katerra等)
(2)初期投資等のBSの重さをテクノロジーで極力保有しない形で参入するモデル(例:UberAirbnb等)
(3)人の労働占有率の高いバリューチェーンをテクノロジーで自動化/分散調達し参入するモデル(例:SalesHubInstacart等)

第1次、第2次産業は歴史も古く、テクノロジーの導入を決定する意思決定者が高年齢化している事に加え、サプライチェーンやバリューチェーンにおいて様々なステークホルダーが入り交ざっており、外部からツールを活用して産業を変革する難易度が高い産業が多く存在すると感じています。また、産業革命時代に必要だった初期投資の重さや業界のスタンダードになっているバリューチェーン上の労働力の必要性は、顧客視点での価値創造を考えるとTrade Offになる事があります。個人的に信じているテクノロジーで高められる揺るぎない顧客価値(安さ、早さ、簡単さ、選択肢の多さ、質(正確性等)の高さ)の原点に立ち戻った時に事業としての可能性や参入の機会があると考えており、注目をしております。

KLab Venture Partners 代表取締役社長/パートナー 長野泰和

2018年の振り返り:去年のこの企画でD2C注目と書いて2018年は結果的にD2Cにたくさん投資することになりました。今回も2019年の投資方針はここでの宣言に則って進めます!
2018年はなんといってもSaaSトレンド凄かったですね。ロジカルな構築できるこの領域は確実なニーズあるし、引き続きアツいと思われます。

2019年のトレンド:■次世代サービス
2018年で印象的だったのは“新世代のコンシューマーニーズ”でした。スマホシフトが済んでコンシューマーサービスは一旦掘り尽くしたとおっさん世代は思っていた気がします。しかし、ここにきてTikTok、Vtuber、ライブ系、インフルエンサー系などなど新基軸のコンシューマーサービスでZ世代の支持を得てヒットしたのが結構ありました。このトレンドを読めなかったのは痛恨の反省です。2019年も文化を創るようなコンシューマーサービスは引き続き続くと思いますし、投資対象として注目していきたいです。

■ダウントレンドにおける戦略変更
分野の話とはややズレますが、2019年はマクロのダウントレンドの真っ只中でスタートしそうです。

スタートアップエコシステムがこのダウントレンドをどうサバイブしていくかは大きなテーマでもあります。投資環境がより保守的になる可能性もあるので、それに備えて早期黒字化であったり、アーリーステージであれば確実に調達するためPMFの証明を必要以上に整理するであったり、レイターステージであれば相場回復までIPOのスピード感をコントロールするであったり、いくつかの戦略変更が求められると思います。

THE SEED General Partner 廣澤太紀

2018年の振り返り:漫画関連のサービス(漫画村、漫画アプリなど)、トラベル領域、D2C、後払い◯◯

2019年のトレンド: 業界経験を持った「インサイダー」が立ち上げる事業に注目しています。
特にスモール事業者を対象にしたマーケットプレイスの台頭には関心があります。
・ B向けマーケットプレイス
・卸、今まで専門商社が介在した領域
・中小事業者の在庫管理システム
・EC、クリニック、引越し業者など
・EC、販売者支援ツール
・OEM業者のオンライン化、共同購入サービス:販売者の仕入れを容易にするサービス。韓国「BUYON」、「sitateru
・タブレットPOSシステム:すでに広く普及しているが一層注目される

グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナーCOO 今野穣

2018年の振り返り:(1)Vertical SaaS:資本市場からも高評価。KPI標準化、垂直統合による拡張可能性。
(2)Fintech:上半期は仮想通貨、下半期はキャッシュレス。加えて、広義の金融の民主化・流動化。
(3)AI実装サービス:依然として期待値先行部分はあるものの、徐々にサービスへの実装が進む。

2019年のトレンド:年末に大きな経済環境の変化があり、2019年に入っても残念ながら重たいモメンタムは続く可能性あり。リーマンショックからの学びとして、即座に総悲観的に考える必要はないが、むしろ自社として、こういう機会に経営や製品や顧客、投資や支出などを見直して筋肉質な体制にできた会社がその後力強く成長した。

他方、当然ながら経済下降トレンドの影響を受けやすい対面市場(主にB向け)と相関性が低かった対面市場があったのも事実。 前者は4K(広告費、交際費、交通費、研修費)+人材採用市場、個人向け高額娯楽(宿泊費、飲食費)。後者はクラウドなどのB向けコストダウン(生産性向上)、ゲームなどの家庭内少額個人課金、自己啓発への投資。 加えて、2019年秋に予定されている消費増税は、より消費者にダイレクトに影響が出る可能性があるので注意が必要。

上記を踏まえての注目分野は以下の5つ。(1)明確なバリュープロポジションのあるクラウドサービス、(2)D2Cによる低供給コストかつ高付加価値プロダクト、(3)シェアリング/レンタルエコノミーによるマイクロペイメント 、(4)個人対個人による少額かつ「個人が稼げる」課金サービス、(5)景気の浮沈に関わらず、深刻な課題である社会保障制度改革文脈

最後に、個人的には、今回の下降トレンドによって、逆に大企業のオープンイノベーション(R&Dの外部化)が推進されることを願う。

D4V General Partner 伊藤健吾

2018年の振り返り:今年はVtuber盛り上がりましたね。
個人的にはその盛り上がりよりもサブスクリプションモデルに注目が集まり、結果としてSaaSが本格的に日本でも盛り上がってきたと感じられる1年でした。
同じ文脈と思ってるのですが出前のようなリアルのサービスがオンライン化して来たのも今年の傾向だったと思います。

2019年のトレンド:かれこれ3年くらい同じこと書いてる気がするのですが、スマホ・クラウド・IoTなどの普及により今までIT化されていない領域にこれらを活用した新しいサービスが生まれ浸透していくのだと思います。

2018年にも建設業界・保険業界・物流業界といったところに変革を起こすであろうスタートアップが数多く生まれ、そして資金調達に成功しています。 昨年の予想ではここにもっとBlockchainを組み合わせたアイデアが出てくると思っていたのですが、「一気に来る」という感じではなかったですね。

2019年は2018年末から兆候が現れている景気循環の後退期に入ることが予想されるので、スタートアップにとってはできるだけ早く潤沢な資金を手当しておくこととコスト面においては不要不急なものにお金を使わない引き締めを見据えることが大事な局面になりそうです。 一方で投資家にとってはこういったタイミングは好景気に支えられていたValuationが下落する傾向になるでしょうから、良いスタートアップへの投資の仕込み時になるのではないでしょうか。

ANRI パートナー 鮫島昌弘

2018年の振り返り:■がん免疫療法

本庶佑先生によるPD-1分子同定の研究がノーベル賞を受賞される等、がん免疫療法に注目が集まりました。免疫チェックポイント阻害剤に続く新たな治療法として遺伝子改変型T細胞療法をはじめとする様々ながん免疫療法が開発されています。米国でもCAR-Tを手掛けるAllogeneが上場しました。

2019年のトレンド:■原子力ベンチャー元年
世界中がESG投資にシフトし、環境に配慮したエネルギー源が求められる中、経済産業省からも次世代型原子炉の開発実用化に向けて原子力ベンチャーの育成が発表されました。また、MIT発のTransatomic Power(Founders Fundも出資)が廃業するという暗いニュースはありましたが、同じくMIT発のCommonwealth Fusion Systemsがビル・ゲイツ率いるBreakthrough Energyから出資を受ける等、世界は前進しています。

■Biotech is eating the world
2018年の米国IPO市場においてバイオ銘柄は過去最高の盛り上がりを見せ(58社上場、US$6.3Bの調達)、全体の約30%を占めるまでになりました。
特にメッセンジャーRNAによる治療薬を開発しているModerna(約5000億円)や老化細胞の治療法を開発するUNITY Biotechnology(約700億円)、次世代ゲノム編集技術のHomology Medicines(約700億円)などユニークな企業が上場を果たしました。2019年は特にユニコーンに代表されるSamumed(1兆2000億円)など、Longevity/Anti-agingが大きなテーマになるのではと考えています。

ほかにも量子科学技術、サイバーセキュリティーは注力領域です。

F Ventures 代表パートナー 両角将太

2018年の振り返り:VTuberは、少し前までは十数名でしたが、今や数千名の規模になっています。声優、歌い手、ゲーム実況者など「声」を武器とするコンテンツ提供者が増加してきました。また、投げ銭などのクリエイターをとりまく経済圏の創出、影響力の拡大に応じてIPを活かした様々な課金モデルが可能になりそう。

2019年のトレンド:

特に注目する分野は以下の2つです。

■MaaS
私は福岡市で実証実験している「メルチャリ」のヘビーユーザーでありますが、移動にまつわるサービスが増え、「移動」の心理的コストや経済的コストが大幅に低下してきていることを実感しています。LyftCREWなどのライドシェアについては、コミュニケーションや決済面に関し、これまで苦痛だったタクシーのUXを凌駕しています。さらには、電動スクーター等の新しいモビリティ、自動運転など、MaaS分野のさらなる盛り上がりが期待できそうです。

個人的にはバス版Uberと言われるChariotのような、複数人のバス乗車希望位置を解析した走行ルート提示サービスの出現に期待しています。また、移動ハードルの低下に伴い、働く場所や住む場所についての変化も見られる年になりそうです。私自身東京と福岡を行ったりきたりする二拠点生活で「移動」に課題を感じている人間の一人ですが、移動が楽になれば、複数地域に拠点を持つ人も増え、働き方の価値観も変わりそうです。常に東京にいる必要はない。

■D2C
ユーザーとの関係構築が容易になり、中間事業者を介する必要がなくなってきたため、ファッションやコスメ等ブランドを持つ生産者と消費者が直接取引するD2Cの流れがさらに加速しそう。

Drone Fund 代表パートナー/個人投資家 千葉功太郎

2018年の振り返り:立場的には当然ドローンの躍進。制御システム「エアロネクスト」社が数々のピッチコンテスト優勝し、国産ドローンメーカーの自律制御システム研究所が12月21日にマザーズIPO。空飛ぶクルマも政府から2023年実用化へ発表、ホンダジェット国内1号機納入など、空盛りだくさん。

2019年のトレンド:2018年は数々のドローン大切な実証実験が行われただけでなく、11月に福島で日本郵便がACSLの機体を使って実施したドローン自律配送レベル3の運用スタートや、JUTMによるドローン航空管制の大規模実験など、個別に飛ばすだけでない次の段階へ。また、12月21日には世界初・日本初となるドローン専業スタートアップ「自律制御システム研究所」が東証マザーズにIPOしました。その前日、12月20日の空飛ぶクルマ官民協議会にて、経産省世耕大臣より「日本で空飛ぶクルマを2023年までに事業化します!とてもアグレッシブな目標です」と力強く演説され、“2023年”と具体的な数値目標の入ったロードマップが公開されました。

もちろん、空は安全が第一です。東京大学・土屋武司先生もご指摘している通りで、大きなドローンはクルマではなく、航空機です。航空機の歴史が超えてきた様々な安全をハード、ソフト、オペレーションの3面に渡って磨き込んで行く必要があります。2019年はまさに、大中小問わず、圧倒的なドローンを実運用で全国各地で飛行させ、様々な飛行データを集め、さらなる安全改良へフィードバックさせる年になるのではないでしょうか。社会実験から実装社会へ、空が変わります。

エンジェル投資家 古川健介

2018年の振り返り:Vtuber。単なる一過性の流行ではなく、今後のインターネットの歴史を変える転換点だった。

2019年のトレンド:4度目のVR元年である2019年は、Oculus Questをきっかけにブレイクします。その上でVtuberによる本格的なライブ、VR上でのアバタービジネス、VR上でのコミュニケーションなど、今後10年の基礎となる体験をする人が増えてくるのではないかと思っています。

慶應イノベーション・イニシアティブ 代表取締役社長 山岸広太郎

2018年の振り返り:大企業との資本業務提携。今までベンチャーに投資してこなかったような重厚長大系の企業がMaaS/コネクテッドカー、航空宇宙、FinTech、バイオ、AI、ビッグデータなどの分野で、アーリーからレイターまで様々なステージで、本気の資本業務提携に乗り出し、一緒に事業開発を進めるケースが目立ちました。

2019年のトレンド:2019年は、引き続き大企業との提携、デジタル技術の活用をキーワードに、下記の分野のスタートアップが盛り上がると予想します。

(1)宇宙関連
人工衛星関連のベンチャーでは実証機の打ち上げが進み、事業のPoCに成功したところは、量産機の製造に向けて100億円規模の資金調達をするところが出てくる。セクター全体の盛り上がりに乗って、有人飛行、貨物輸送などの分野のベンチャーにも資金が流れるようになる。

(2)次世代バッテリー
乗用車のEV化の流れや、再生エネルギーの蓄電ニーズから、全個体/半個体/次世代Liなど新しい技術をもつバッテリーベンチャーへの投資が世界的に加速する。日本でも国プロの全個体電池以外の技術をもつベンチャーが登場する。

(3)再生医療
サンバイオを筆頭に、上場/非上場を問わず、間葉系幹細胞やiPS細胞を使った再生医療ベンチャーの開発フェーズが進み、治験や臨床研究で目に見える成果が出て、IPOやM&Aの事例も増えて、バイオ創薬セクター自体が更に活発化する。

(4)「AI」×「○○」
医療、バイオ、理化学などの分野で、従来、目視での解析や実験によって仮説検証を行っていた分野で、ビジョンレコグニションやビッグデータ解析による効率化/高速探索などを行うベンチャーが増えてくる。

Photo by Marco Verch

四足ロボットANYmalがチューリッヒの地下の下水路を冒険旅行する

CheetahbotやSpotのような複数脚のロボットの多様な用途については、すでに多くが語られてきたが、でも実際にそれらが実現するためには、分野ごとに多くの困難がある。そして、下水道の点検という重要な仕事の訓練のために、このスイス製の四足ロボットは地下深くへと下(お)りていった。今後の実際の仕事には、人命救助もありうるだろう。

ETH Zurich / Daniel Winkler

このロボットはANYmalと呼ばれ、スイス国立工科大学、略称ETH Zurichと、そこからのスピンオフANYboticsの長期的なコラボレーションだ。その最新の冒険は、大学のあるチューリッヒ市の地下にある下水道の旅で、最終的には、検査や修理の自動化を目指している。

多くのロボットプラットホームと同様、ANYmalも長年の開発史を抱えている。でもカメラや、ライダーのようなセンサー類が小型化高性能化したのはごく最近のことなので、暗闇の中での作業も可能になり、第一候補として下水管という汚い場所でテストされることになった。

多くの都市が延々と長い々々地下構造を抱えており、しかもそれらの点検は専門家にしかできない。危険でかったるい仕事だから、自動化の最右翼候補だ。人間がやると1年に1度しかできない点検を、ロボットなら楽々、一週間に一度できる、としたらどうだろう。おかしい箇所を見つけたときだけ、人間を呼べばよい。災害で人が行けなくなった場所や、小さすぎて人が入れない場所でも、活躍してくれるだろう。

関連記事: MIT’s Cheetah 3 robot is built to save lives(未訳)

しかしもちろん、ロボット軍団が(前に何かで見たように)下水路に住めるためには、その環境を経験し学習しなければならない。最初は最小限の自動化にとどめ、徐々にやれることを増やしていくのだ。

ANYboticsの協同ファウンダーPeter Fankhauserが、ETHZのストーリーでこう言っている: “研究室でうまくいっても、現実世界でうまくいくとは限らない”。

ロボットのセンサーやスキルを現実世界の状況でテストすると、エンジニアたちが取り組むべき新しい知見と大量のデータが得られる。たとえば、完全に暗い環境でもレーザーを利用する画像タスクなら行えるが、大量の水蒸気や煙が充満していたらどうか? ANYmalは、そんな環境でも正しい感知能力を発揮できなければならない。それが、最初からの設計目標だった。

ETH Zurich / Daniel Winkler

彼らはまず、脚にセンサーを付ける方式を試した。良い結果とまずい結果の両方が得られた。次に試したのが、ANYmalが手のひらを壁に触れてボタンを見つけたり、温湿度や壁の質感を得る方法だ。この方法は、操縦者の即興や機転が必要で、完全自動化にはほど遠かった。まず、ロボットにやらせることを、リストアップしよう!。

下のビデオで、チューリッヒの地下を旅する下水道検査官ANYmalをウォッチできる。

画像クレジット: ETH Zurich

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

サイバー情報漏洩は2019年に多発する

この著者による他の記事:

注目を集めるようなサイバー情報漏洩のニュースは、珍しいことにここ数ヶ月数が減っている。しかし最近では、Marriott International/Starwoodが長年にわたり、最大5億人に達する個人情報を盗まれていたことが発覚した。これに匹敵するのはYahooに対して行われた2013年と2014年の攻撃ぐらいである。

これは2019年のハッキング状況が悪化する前兆なのだろうか。

その答えは間違いないイエスだ。疑いようもなく、サイバー情報漏洩は、長年にわたり世界経済の巨大な悩みのタネだった。しかし、継続的に改良され続けるマルウェアが、より多くの分野でより積極的に展開されるために、新しい年にはそれらがさらに蔓延することが予想される。

さらに、各企業が、効率性を高め、コストを削減し、データ駆動型ビジネスを構築するために、デジタル化を追求するにつれて、結果としてサイバー攻撃の「標的」として浮上することになる。デジタルエコノミーが拡大するにつれて、自然と脅威の可能性も広がることになる。そして状況を悪化させているのは、ハッカーや他の悪者たちが自分たちの邪悪な行いを拡大しようとするときに、機械学習とAIを使用していることだ。

悪用されるAI駆動チャットボット、サービスとしての犯罪ソフトウェア(crimeware-as-a-service:CaaS)の大幅な増加、データの武器化の加速、ランサムウェアの再増殖、および国家規模のサイバー攻撃の大幅な増加などに注目して欲しい。また、いわゆるクリプトジャックと呼ばれる攻撃も増加している。これは目立たずより狡猾に利益を上げる手段である。疑うことを知らない犠牲者からウエブサイト上のスクリプトを使って計算リソースを奪う侵襲的な手法なのだ。

それから、特定の開発者たちを狙ったソフトウェア破壊行為や、ソフトウェアアップデートサプライチェーンへの攻撃なども大幅に増加するだろう。

以下に、最も心配される脅威をいくつか挙げることにしよう:

AI駆動チャットボットの出現。新年には、サイバー犯罪者やブラックハットハッカーたちが、ソーシャルエンジニアリングを用いて被害者たちを、リンクのクリック、ファイルのダウンロード、あるいは個人情報のシェアに導く、悪意のあるチャットボットを作成してくるだろう。ハイジャックされたチャットボットは、被害者を正当なリンクではなく、不正なリンクへと容易に導くことだろう。攻撃者はまた、正当なWebサイトのWebアプリケーションの欠陥を悪用して、悪質なチャットボットを無害だったサイトに挿入する可能性がある。

地下経済の新たな要素であるCaaS(サービスとしての犯罪ソフトウェア)による、都市への攻撃。敵は、とりわけデータの整合性を攻撃する新しいツールを利用して、強制的にハードウェア交換をせざる得なくなるようにして、コンピュータを使い物にならなくする。テロリスト関連のグループが主犯となる可能性が高い。

国家による攻撃の大幅な増加。ロシアは、より大きな目的の一環として標的型サイバーアクションを利用する、リーダーであり続けてきた。例えば、今年の初めにFBIは、ロシアの継続的攻撃者であるSofacyグループが、世界中のホームオフィスルーターやストレージに接続されたネットワークを遠隔操作するために、ウィルス感染を行ったことを暴露した。セキュリティの貧弱な何十億ものIoTデバイスに助けられて、同様のシナリオの遂行を狙う他の国家にも注目して欲しい。

データの武器化が増大。すでに大きな問題だが、技術大手によるユーザーのセキュリティとプライバシー強化にもかかわらず、それらがさらに悪化することは確実だ。マイナス面とプラス面のバランスを考えることで、何千万人ものWebユーザーたちが、果たしてインターネットからどれほどの利益を得ているのかと真剣に疑問視し始めている。

たとえば、個人データと「プライベートな」通信を利用して、毎年数十億ドルの利益を生み出していることを隠さないFacebookのことを考えてみよう。ユーザーは、興味あるものやブランドに対して積極的に「いいね!」を行い、個人情報を差し出している。このことによって、Facebookはユーザーベースのより完全なイメージ ―― 広告主にとっての金脈 ―― を提供することが可能になる。

さらに悪いことに、今年初めにFacebookは「感情的な伝染」実験を通して、ユーザーの気分を操作しようとした。これはユーザーたちに、その仲間たちに向かってその感情に影響を与えさせた。すなわちデータの武器化である。

ランサムウェアの再燃。WannaCryの流行と、それに続いた何件かの、知名度の高い被害者をターゲットとした攻撃によって、ランサムウェアは2017年のシーンに爆発的に広がった。FBIによると、米国でのランサムウェアに対するトータルの支払い額はここ数年で10億ドルを超えている。ここ数ヶ月は、ランサムウェアの有名な犠牲者はほとんどいなかったが、2019年にはこの問題の激しい揺り戻しが起きる可能性が高い。ランサムウェアは波状攻撃であり、次の攻撃も必須だ。

ソフトウェア開発プロセスの破壊とソフトウェアアップデートサプライチェーンへの攻撃の増加。ソフトウェア開発に関して言えば、マルウェアはすでに一部のオープンソースソフトウェアライブラリで見つかっている。一方、ソフトウェアアップデートサプライチェーンへの攻撃は、ソフトウェアベンダーのアップデートパッケージを侵害する。顧客がアップデートをダウンロードしてインストールすると、知らないうちにシステムにマルウェアを導入してしまう。Symantecによると、2016年には実質的な攻撃がなかったにも関わらず、2017年には毎月平均1回の攻撃があった。この傾向は2018年も続き、来年はさらに悪化するだろう。

衛星へのより多くのサイバー攻撃。6月にSymantecは、地理マッピングとイメージングに携わる東南アジアの通信会社の衛星通信を、無名のグループがターゲットにすることに成功したと発表した。Symantecはまた、防衛関連契約業者の衛星に対する、中国国内からの攻撃も報告している。

それとは別に、8月に開催されたブラックハットの情報セキュリティ会議では、インターネットに接続するために、船舶、飛行機、そして軍隊によって使われている衛星通信は、ハッカーによる攻撃に対して脆弱であることが示された。最悪のシナリオでは、ハッカーが衛星アンテナをいわば電子レンジのように動作する武器に変えることができる「サイバーフィジカル攻撃」を実行する可能性があると、その研究は述べている。

幸いなことに、2019年のサイバー概況は完全に厳しいばかりのものでもない。

サイバーセキュリティの側面では、パスワードのみのアクセスは放棄されて、多要素認証がすべてのオンラインビジネスの標準になると信じている専門家の数が増えている。さらに、多くの州では、欧州の厳格な「一般データ保護規則」(GDPR:General Data Protection Legislation)に準拠した規則の適用が予定されている。そのうちの1つ、カリフォルニア州では、2020年以降、データ漏洩が起きた際に消費者が会社を訴訟するのを容易にする法律を、すでに可決している。

結局のところ、個人、企業、政府機関は、サイバーセキュリティの状態を改善するために、できることは全て行う必要がある。そのことによって情報漏洩を根絶することはできないが、ある程度の回避を行ったり、被害を軽減する可能性を高めたりすることはできるのだ。

画像クレジット: vertigo3d

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(翻訳:sako)

スタートアップの資本構成を管理するCartaが創業6年でシリーズD $80Mを調達

スタートアップを支援するスタートアップが、VCからの支援を得て新しいジャンルを確立しつつある。

The WingThe Riveterのようなコワーキング(co-working)スペースが今年は資金をかき集めたし、またBrexの場合のようにスタートアップ専用コーポレートカードのプロバイダーも新たに資金を獲得した。

そして今度は、企業のキャップテーブル(cap table, 資本構成表)や評価額、ポートフォリオ投資、エクィティプランなどの管理を助けるCartaだ。同社はこのほど、評価額8億ドルで8000万ドルのシリーズDを発表した。前はeSharesという名前だった同社は、リード投資家のMeritechとTribe Capital, さらに既存の投資家たちから、この資金を調達した。

このラウンドでCartaの総調達額は1億4780万ドルになる。同社の既存の投資家には、Spark Capital, Menlo Ventures, Union Square Ventures, そしてSocial Capitalなどがいるが、Social Capitalは今回のシリーズDに参加しなかった。ただし新しいVC企業Tribe Capital(前掲)を立ち上げたArjun Sethiは、以前Social CapitalのCartaへの投資をリードし、また彼と共にSocial Capitalのパートナー三人組と呼ばれたJonathan HsuとTed Maidenbergは、VCを‘卒業’してテクノロジー企業専門のホールディングカンパニー(持株会社)を立ち上げた。一方Tribeは、自らの立ち上げファンド2億ドルを目下調達中と言われる。

2012年にHenry Ward(上図)がパロアルトで創業したCartaは、今回の資金を、同社のトランスファーエージェント(transfer agent, 名義書換代行業務)とエクィティアドミニストレーション方面のプロダクトとサービスの開発に充てて、スタートアップの公開企業への遷移をより良くサポートしていきたい、としている。また、投資家たちが自分のポートフォリオ企業からデータを集め、彼らのバックオフィス(事務管理部門)を管理していくためのプロダクトも、計画している。

Wardはラウンドの発表声明でこう述べている: “弊社は、プライベート企業のオーナーシップ管理を変えていく道のりをここまで歩んできた。その間、証券の電子化とキャップテーブル普及させ、監査対象となる409A*と組み合わせてきた。しかし弊社の意欲は、プライベートに保有されベンチャーが支援する企業のサポートにとどまるものではない”。〔*: 409A, 参考記事

Cartaの顧客にはRobinhood, Slack, Wealthfront, Squarespace, Coinbaseなどがいて、現在およそ5000億ドルのエクィティを管理している。今年Cartaは社員数を310名から450名に増やし、また取締役会管理やポートフォリオ分析などのプロダクトを立ち上げ、さらに#Angelsとの共同調査により、女性スタートアップの社員たちにおける大きなエクィティギャップという差別実態を明らかにした。

9月に発表されたその調査は、女性はスタートアップのエクィティ保有社員の35%を占めるにもかかわらず、女性のファウンダーと社員の保有額は9%にすぎないことを明らかにした。しかも、スタートアップのファウンダーの13%が女性なのに、彼女らはファウンダーエクィティのわずか6%、男性1に対し0.39ドルしか保有していない。

関連記事: The Gap Table: Women own just 9% of startup equity(未訳)

画像クレジット: Carta

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ポルシェのEV最上位モデルは「Turbo」の名を獲得、価格は13万ドル以上

Porscheの来年発売予定の全電動スポーツカーTaycanには、少なくとも3種類のバリエーションがあり、全輪駆動車もそのひとつだ。しかし、Taycan Turbo——Porscheがシリーズ最上位車種に与える名称——こそが、同社の戦略を明らかにする。

各モデルの名前——ベースモデルがTaycan、全輪駆動モデルがTaycan 4S、そして高性能モデルがTaycan Turbo——と価格帯についてコラムニストのAlex Royが最初に報じた。しかしRoyは、”turbo” は内燃機関モデルに使用される用語だと指摘する。

[Porsche Taycon EVの高性能モデルは “Turbo” ブランドになるらしい。
内燃機関車(ICE)の用語を使うことで顧客をEVに乗り換えさせやすくなるからだ。]

Porscheの親会社であるVolkswagen Groupは、Taycanの開発に10億ドル以上投資すると約束した。Taycanとはおおまかに 「元気な若馬」という意味で、同社の象徴的エンブレムに因んでいる。

新しい電気自動車はTeslaにとって脅威だと(一部で)言われている。Teslaは現在高級電気自動車市場を支配している。Porsche初の全電動車への大規模な投資によって、ドイツの自動車メーカーは賢明にも、EVを所有したことのない人がほとんどの既存顧客ベースにとって馴染みのある名称を使用している。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Epic Games、今年の利益30億ドルか――『フォートナイト』のヒットで絶好調

Epic Games

Epic Gamesが2012年に採用した大胆な戦略は実を結びつつある。 同社にとって2018年は素晴らしい年となった。フォートナイト(Fortnite)は世界でもっとも人気あるゲームとなり、会社評価額は150億ドルに達した。事情に通じた情報源がTechCrunchに述べたところでは、EpicはFortniteの成功で30億ドルの利益を上げたという。

Epic社にコメントを求めたが回答は得られていない。

Fortniteはバトルロイヤル・スタイルのゲームでプレイは無料だが、アプリ内で販売されるさまざまなデジタル・アイテムから収益を得るというビジネスモデルだ。

今やアメリカでナンバーワンのゲーム企業となったEpicが創立されたのは1991年とかなり古い。 EpicはスマッシュヒットしたForteniteの売上を公表していないが(プレイヤーは1億2500万)、30億ドルという利益は同社が6年前に行った大胆な方針転換が正しかったことを意味する。

今年9月に実行された資金調達ラウンドでは150億ドル弱の会社評価額を得ているとWall Street Journalが報じた。投資家にはKKR、Kleiner Perkins、 Lightspeedといった大型投資の常連が並び、Epicは12.5億ドルを金庫に収めたという。

しかしベンチャー投資はいつもEpicに有利に展開してきたわけではない。WeChatやゲームを運営する中国の巨大企業グループ、Tencentは2012年に初の外部投資家としてEpicに3億3000万ドルを投じ、引き換えに株式の40%を得ていいる。

当時、Epicはサードパーティー向けゲーム開発プラットフォームが主力プロダクトだった(その後も進化を続けて現在はUnreal Engine 4が提供されている)。

なぜEpicのようなすでに名声を確立した企業が40%もの株式をTencentに渡してしまったのだろうか? Epicの経営陣はゲーム業界には大きな変革が起きようとしており、同社に残された時間は少ないと考えていた。専用機向けゲームの開発費用がアップするのに反比例して利益は減少を続けていた。またスマートフォンの登場によりプレイヤーはライブ・ゲームにシフトする傾向をみせていた。

EpicのCEO、Tim SweeneyがTencentの投資についてPolygonのインタビューに答えている。つまりTencentからの資金によってEpicが売り切りの大型ゲームではなく、オンラインのフリーミアム型ゲームを提供する道が開かれたのだという。Sweeneyはこれを“Epic 4.0”と呼んでいる。【略】

またTencentからは巨額の資金だけでなく「有益なアドバイスを多く得た」という。ともあれTencentの投資でEpicは資金の心配なしにフリーミアム・モデルの確立に向けて進むことができた。【略】

ロサンゼルスのBanc of California Stadiumで6月12日に開催されたFortnite E3トーナメントで戦う、Ninja(左)とMarshmello(右)の2人(撮影Christian Petersen/Getty Images)

Epicは非上場企業であり、詳細な財務情報は固く守らている。30億ドルという数字(念のために言えば、これは利益であって売上などの収入ではない)を見ただけで、Fortniteが以下に巨大な金額を稼ぎ出しているか見てとれる。今年の夏、アナリストはFortniteが20億ドルの粗利となるだろうと予測していたが、これでも内輪すぎる見積もりだったかもしれない。

最近のデータとしてはSensor Towerの推計がある。これによればiOSユーザーは1日当たり123万ドルを支出しているという。Sensor Towerによれば、FortniteはAppleのiOSプラットフォームだけで年間3億8500万ドルの粗利を得ているという。

Fortniteはクロスプラットフォーム・ゲームであり、iOSに加えてAndroid、PlayStation,、Xbox,、Nintondo Switch、Windows PC、Macをサポートしている。こうした多数のプラットフォームでの売上を把握するのは非常に難しい。唯一参考になるのはSuper Data Researchが5月に行った調査でプラットフォーム合計の売上が3.18億ドルになるという数字だった。

この時点でFortniteはiOS版をリリースしたばかりでAndroid版は開発中だった。

Sensor Towerの11月のデータを信用するなら、EpicはiOSプラットフォームでこの4月から11月の8ヶ月に3.85億ドルの売上を得たはずだ。平均すると月4800万ドルとなる。EpicはGoogleのPlay StoreをバイバスしているためAndroid版の売上の推計は非常に難しい。アプリ自身は無料であるものの、アプリ内アイテム課金がPlay Storeを経由しないため、Googleは5000万ドルの手数料収入を逃したという推計があった。

さらにいくつかのはっきりしない要素がある。【略】

大きな問題は9ヶ月前に新規のゲームに許可を出さなくなかったことだ。これによってFortniteは中国での売上の大きな部分を失った。中国での流通はTencentが握っており、中国版をりりーしていたが、まだ利益を挙げることができていない。先週、中国政府は新規ライセンスの第一陣を近く発表すると述べている。しかしどのゲームが、いつ認可されるのか正確なところはまだ不明だ。【略】

もちろEpicはFortniteだけに頼っているわけではない。

これより地味だが重要なサービスとして、ゲームストアの開設がある。Epic Game StoreはValveが運営するSteamのライバルで、ゲーム配信のリーダーとなることを目指している。

Fortniteが稼ぎ頭であるとはいえ、Epicは他のゲームからも収益を得ている。Unreal EngineとEpic Game StoreもValveと戦う上で重要な要素だ。Epicのストアはデベロッパーに売上の88%を配分する。これはSteamが30%の手数料を得るのに対して大きなセールスポイントとなっている(ただしSteamでも成功したゲームには別の取り決めを得る道がある)。Epic Game Storeの加入者は2週間ごとに無料ゲームを得られる。

いずれにせよ、、EpicはFortniteを超える方向のビジネスモデルを拡張している。来年の利益率は今年の推計より高くなる可能性は十分ある。

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滑川海彦@Facebook Google+

Instagram、フィードの「タップして次へ」を誤って公開(修正済み)

Instagramは、本日(米国時間12/27)午前誤って公開されたフィード方式の重大な変更によって、従来のスクロール方式がストーリーズのような「タップして次へ」方式に置き換えられたことを正式に認めた。去る10月にTechCrunchは、Instagramがタップで次の投稿へ進む方式をExplore[発見]タブでテスト中だと報じた。しかし、今朝目覚めた多くのユーザーは使い慣れた縦スワイプで、メインフィード進められなくなったことにショックを受けた。その多くは直ちにこのジェスチャーが使いにくく鬱陶しいと苦情を訴えた。

「本日、バグが原因で一部のユーザーのフィードで表示方法が変わった。われわれはすぐに問題を修正し通常通りに戻った。混乱を招いたことをお詫びする」とInstagram広報担当がTechCrunchに伝えた。同社は今でもこのナビゲーションスタイルをExploreでテストしていることを認めている。

Instagramは同機能をごく一部のユーザーでテストするつもりだったが、バグのため予定より何桁も多くの人たちに広く公開されてしまった、とInstagramの責任者、Adam Mosseriがツイートした

「タップして次へ」は記事全体が常に表示され、スクロールのように上端や下端が切れないよう調整する必要がないため記事間の移動が容易だ。しかし、スクロール方式はまず投稿者がわかりその後コンテンツ、キャプションの順に表示されるので、合理的で直感的な閲覧方法だ。「タップして次へ」方式ではユーザーの視線が画面上を動き回るため極度に疲れる。しかしもっと重要なのは、人々が8年間Instagramのフィードをスクロールすることに慣れていたことだ。突然その行動パターンを乱すことが人々の怒りを買うのは間違いない。

将来Instagramがメインフィードに「タップして次へ」を導入する可能性はまだある。しかし、今回の怒りの反応を見る限り、その変更によってユーザーの滞在時間が伸びることをデータが示さない限り、考え直したほうがいいかもしれない。

以下に「タップして次へ」の動作と使い方を説明するユーザーへの告知を貼っておく。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook