FirefoxブラウザーにWebサイトの侵犯通知機能が加わる、開示義務により侵犯情報の最新化も期待

MozillaのWebブラウザーFirefox Quantum*に、新しいセキュリティ機能が加わる。それは、最近データ侵犯が報告されたWebサイトを訪ねようとすると、ユーザーに警告する機能だ。〔*: 2017年のv57以降の設計が一新されたFirefoxブラウザーを、開発者のMozillaがFirefox Quantumと呼んでいる。〕

Firefoxのユーザーが最近侵犯されたWebサイトを開くと、通知のポップアップが表れて侵犯の詳細を告げ、ユーザーの情報が漏洩しなかったかチェックするよう勧められる。

Mozillaの発表によると、“このようなプライバシーとセキュリティに関する機能へのユーザーの関心が高まっているので、Firefoxのユーザーにこの通知警告機能を提供することになった。この新しい機能は、今後数週間で、Firefoxの全ユーザーに展開される”、とある。

侵犯を通知するポップアップとその上の情報は、こんな感じだ:

FirefoxのWebサイト侵犯通知機能, 画像提供: Mozilla

Mozillaはこの、サイトの侵犯通知機能を、今年初めにローンチしたメールアカウントの侵犯通知サービスFirefox Monitorに統合しようとしている。今日(米国時間11/14)の発表によると、それは26の言語で利用できる

Firefoxのユーザーが、サイトの侵犯を告げるポップアップが出たときクリックしてMonitorへ行けば、メールアカウントの侵犯についても知ることができる。

Firefox MonitorでMozillaは、侵犯されたWebサイトのリストを、パートナーであるTroy Huntの先駆的な侵犯通知サービスHave I Been Pwnedから得ている。

ユーザーをあまりにも多くの情報でうんざりさせないために、Mozillaは侵犯の通知を一サイトにつき過去1年に起きたもの一つに限定している。〔全部知りたければFirefox MonitorやHave I Been Pwnedを使えばよい。〕

データ侵犯はデジタル生活の不運な定番で、最近はビッグデータサービスの登場により、増加傾向にある。そして、人びとの関心も高まっている。ヨーロッパでは5月に導入された厳しい法律により、侵犯の普遍的な開示義務と、データ保護の失敗や怠慢に対する罰則が制定された。

そのGDPRフレームワークは、データをコントロールしたり処理したりする者たちにセキュリティシステムの改良を勧奨するために、彼らにはさらに重い罰を課している。

法律や罰則の強化によってセキュリティへの投資が増えたとしても、それが実際に侵犯の減少として効果が実っていくためには、時間がかかるだろう。どれだけ法が、その効果を期待していたとしても。

でもGDPRの初期の功績のひとつは、企業に侵犯の開示を義務付けたことだ。そのため今後は、このようなセキュリティツールが利用する侵犯情報も、より多く、そしてより最新のものになるだろう。一般ユーザーのためにも、この法律はポジティブな効果を上げているようだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

その危険性に気づき警告を発する以前に子どもたちはデータ化されている

イギリスの児童コミッショナーは、その報告書で、民間公共を問わず、子どもたちのデータが収集され拡散されている状況に懸念を示している。

Who knows what about me?』(自分の何を、誰が知っているのか?)と題されたその報告書で、Anne Longfieldは、ビッグデータが子どもたちの人生にどう影響するかを「立ち止まって考える」べきだと社会に訴えている。

ビッグデータの使い方によっては、子ども時代の足跡によって将来が決められてしまうデータ劣位世代が生まれると、彼女は警告している。

大人になる前の子どもたちをプロファイリングすることが、長期的にどのような影響を及ぼすかは、まだわかっていないと彼女は書いている。

「子どもたちは、ソーシャルメディアだけでなく、人生のさまざまな場面で『データ化』されています」とLongfieldは言う。

「今、成長中の子どもたちと、それに続く世代は、個人データの収集量が単純に増えることから、プロファイリングの影響をより強く受けることにります」

子どもが13歳になるまでの間に、その両親は、平均1300点の写真や動画をソーシャルメディアで公開していると、報告書は伝えている。その子どもたち自身がソーシャルメディアを使い始めると、1日平均で26回投稿するようになり、そのデータ量は「爆発的」に増えて、18歳になるまでには、総計でおよそ7万点に達する。

「今、これが子どもたちの人生にとって何を意味するのか、大人になったときの未来の人生に何をもたらすのか、立ち止まって考えるべきです」とLongfieldは警鐘を鳴らす。「こうした子どもたちに関する情報が、どのような結果をもたらすかは、はっきり言ってわかっていません。そんな不確実性の中で、私たちはこのままずっと、子どもたちのデータを収集し拡散していってよいのでしょうか?」

「子どもと親は、何を公開するか、その結果として何が起きるかを、もっと真剣に考えるべきです。アプリやおもちゃなど、子どもが使う製品のメーカーは、トラッカーを使った子どもたちのプロファイリングを停止し、子どもにわかる言葉で利用規約を示す必要があります。とりわけ、政府は、こうした状況を監視し、子どもたちを守るために、とくに技術が進歩してゆくことを考慮して、データ保護法を改正することが重要です」と彼女は言う。

報告書は、子どもに関するどのような種類のデータが収集されているのか、どこで誰が集めているのか、それが短期的または長期的にどう利用されるのか、それが子どもにどのような利益をもたらすのか、またはどのような危険性が隠れているのかを注視している。

有用性について、報告書は、子どものデータを有用に使えるであろものとして、まだ早期の実験段階にあるアイデアをいつくか紹介している。たとえば、データが問題ありと指摘した部分に焦点を当てて調査する、子どものためのサービスがある。自然言語処理技術で大きなデータセット(英国児童虐待防止協会の国営事例調査データベースなど)の解析が速くなれば、共通の課題の検出や、「危害を予防して有益な結果を生み出す」ためにはどうすればよいかという理解も深められる。子どもと大人から集めたデータを使って予測解析ができれば、「子どもを保護するための潜在的危険を社会福祉指導員に伝える」ことが、より低コストに行えるようになる。また、子どものPersonal Child Health Record(個人健康記録)を今の紙ベースからデジタル化すれば、子どもに関わるより多くの専門家が閲覧できるようになる。

Longfieldは、データが蓄積され利用できるようになることで「多大な恩恵」が得られると説明しながらも、大きなリスクも現れてくると明言している。それには、子どもの安全、福祉、発達、社会的な力学、身元詐称、詐欺などが含まれ、さらに長期的には、子どもの将来の人生のチャンスに悪影響をもたらすことも考えられる。

実質的に子どもたちは、「大勢の大人たちがそれに気がつくより先に、またはそれを緩和する戦略を立てる前に、その問題に直面する、社会全体のための、いわゆる炭鉱のカナリア」なのだと彼女は警告する。「私たちはその問題への意識を高め、対策を立てなければなりません」

透明性が欠けている

この報告書から明確に学べることに、子どものデータがどのように収集され使われているかが不透明であるという点があり、そのことが、リスクの大きさを知る妨げにもなっている。

「収集されたあとの子どものデータがどう使われるのか、誰が集めて、誰に渡され、誰が集約しているのかをよく知ることができれば、そこから将来に何が起きるかを推測できます。しかし、そこの透明性が欠けているのです」とLongfieldは書いている。新しいEU一般データ保護規制(GDPR)の構想の中で、もっとも重要な原則となっているのが透明性の確保であるにも関わらず、それが現実だと言う。

この規制は、ヨーロッパでの子どもの個人データの保護を強化するよう改定されている。たとえば、5月25日からは、個人データの利用に同意できるのは16歳以上とするといった規制が施行された(ただしEU加盟国は、13歳を下限として、この年令を変更できる)。

FacebookやSnapchatなどの主要ソーシャルメディア・アプリは、EU内での利用規約を改定したり、製品を変更したりしている(しかし、以前我々が報じたように、GDPRに準拠したと主張されている保護者の同意システムは、子どもに簡単に破られてしまう)。

Longfieldが指摘するように、GDPRの第5条には、データは「個人に関して合法的に公正に、透明性をもって扱われなければならない」と記されている。

ところが、子どものデータに関して透明性はないと、児童コミッショナーの彼女は訴える。

子どものデータ保護に関して言えば、GDPRにも限界があると彼女は見ている。たとえば、子どものプロファイリングをまったく規制していない(「好ましくない」と言ってるだけだ)。

第22条には、法的またはそれに準ずる多大な影響を被る場合には、子どもは、自動処理(プロファイリングを含む)のみに基づく意思決定に従わない権利を有する、とあるが、これも回避可能だ。

「これは、どこかで人が介在する判断には適用されません。その介在がどんなに小さなものであってもです」と彼女は指摘する。つまり企業には、子どものデータを回収するための回避策があるということだ。

「自動処理による意思決定に『それに準ずる多大な影響』があるかどうかを見極めるのは困難です。その行動が何をもたらすのか、私たちはまだ、完全にわかっていないからです。子どもの場合は、さらに見極めが難しいでしょう」と彼女は言う。

「第22条が子どもにどのような効力を発揮するかは、まだまだ不確実です」と彼女は懸念する。「この問題の核心は、広告、製品、サービス、そしてそれらに関連するデータ保護対策に関するあらゆる制限に関わってきます」

提案

報告書でLongfieldは、政策立案者にいくつかの提案を行っており、学校に対しては「自分たちのデータがどのように回収され利用されているか、自分のデータの足跡をどのように自己管理するかを教える」よう訴えている。

彼女はまた、政府に対しては、18歳未満の子どもから集めたデータに関しては、「自動処理による意思決定に使用されるアルゴリズムと、アルゴリズムに入力されたデータを透明化するよう、プラットフォームに義務付けることを考えて欲しい」と要求している。

コンテンツを作成しプラットフォームで大々的に配信するAIの仕組みがまったく不透明な主流のソーシャルメディア・プラットフォームこそ、その対象となるべきだ。18歳未満のデータは保有しないと公言しているプラットフォームは、あるにはあるが、非常に少ない。

さらに、子どもをターゲットとする製品を扱う企業は、もっと説明の努力をするべきだと彼女は主張し、次のように書いている。

子ども向けのアプリやおもちゃを作っている企業は、子どもの情報を集めているあらゆるトラッカーについて、より透明にするべきです。とくに、子どもの動画や音声を収集するおもちゃにおいては、パッケージにそのことをよくわかるように明記するか、情報を公表すべきです。そのおもちゃの中に、または別の場所に映像や音声が保存される場合、またそれがインターネットで転送される場合は、その旨を明記する必要があります。転送される場合、保護者にはそれが送られるとき、また保存されるときに暗号化されるのか、そのデータを誰が解析し、処理し、何の目的で利用されるのかを知らせなければなりません。その情報が与えられない場合、または不明確な場合は、保護者はメーカーに問い合わせるべきです。

もうひとつの企業への提案は、利用規約を子どもがわかる言葉で書くということだ。

(とは言え、技術業界の利用規約は、大人が表面的にざっと読むだけでも難しい。本気で読もうとすれば何時間もかかってしまう

写真: SementsovaLesia/iStock

BuzzFeed Newsに掲載された最近のアメリカの研究では、子ども向けのモバイルゲームは、たとえばアプリ内の有料アイテムを購入しないと漫画のキャラクターが泣き出すといったふうに、巧妙に子どもの心を操るようになっているという。

データ処理にまつわる重要で際立った問題は、それが見えないという点にある。バックグランドで処理されるため、その危険性はなかなか見えづらい。人々(そしてまさに子どもたち)の情報に何をしているのかを本当に知っているのは、データ処理機能だけだ。

しかし、個人データの取り扱いは、社会的な問題になってきた。それは、社会のあらゆる場所や場面に関わるようになり、子どもが危険に晒されていることへの関心も、明確に高まってきた。

たとえば、この夏、イギリスのプライバシー監視団体は、一般の人たちがそうと知り、受け入れる前に、データが利用されてしまう危険性が大きいことを示し、政治キャンペーンでのインターネット広告ターゲティング・ツールの使用は倫理的に止めるべきだと呼びかけた。

また同団体は、政府に対しても、長年保ち続けた民主主義の基準が失われないように、デジタルキャンペーンの行動規範を作るべきだと訴えている。

つまり、児童コミッショナーNatasha Lomasの、みんなで「立ち止まって考えよう」という主張は、政策立案者に向けた、データ利用に関する懸念を叫ぶ声のひとつに過ぎない。

ただ言えるのは、社会にとってのビッグデータの意味を定量化して、強力なデータマイニング技術が、すべての人にとって倫理的で公正に使われるようにと願う方向性は、変わらないということだ。

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(翻訳:金井哲夫)

MailchimpがSquareと提携してユーザーのランディングページにeコマース機能を導入

メールによるニューズレターなどのマーケティングサービスを提供しているMailchimpが今日、Squareとのパートナーシップを発表して、これからはユーザーのランディングページにeコマースの機能を載せられるようになった。そういう、買い物機能のあるランディングページは、限定版のグッズを売ったり、期間限定のプロモーションなどを展開するチャネルとして、ふさわしいだろう。

Mailchimpのランディングページサービスはかなり前からあるけど、これまではメールアドレスを入手したり、人びとをお店へリンクすることが、主な目的だった。今回のパートナーシップでユーザーは完全なショッピングフローを構築でき、そこに決済機能も設けられる。

ユーザーが簡単にそんなランディングページを作れるために、Mailchimpは完成したデザインのテンプレートをいろいろ提供している。またドラッグ&ドロップによる決済ブロックビルダーもある。Squareは定額の料金を課金するが、Mailchimpのサービスとしては無料だ。

  1. 01-mc-choose-product

  2. 02-mc-design-page

  3. 03-mc-sell-stuff


しかし現状では、ひとつのランディングページでひとつの製品しか売ることができない。つまりショッピングカートの機能がないけど、そのぶん、セットアップはは簡単だ。だから同社はこの機能を、限定品を売るのに適している、とあえて言っている。でも今後は、ページの機能性を増やしていく予定だ。

Mailchimpによると、今では売上の50%がeコマースからだ。同社のユーザーは、2018年の前半に220億ドルあまりの製品を売った。

なお、Mailchimpは今年の初めに、ブランドイメージの一新を図った。それは、機能の多様化に伴い、メールサービスというイメージからぬけ出すためだ。今回の買い物できるランディングページも、そのために導入した機能の一環だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Facebook Messenger、「一緒にビデオを見る」機能を開発中

“Netflix and chill”[Netflix見ながらいちゃいちゃ]のリモート版? Facebook Messengerはビデオの同時ビューイング機能を内部テスト中だ。ユーザーが気に入った仲間たちと同じビデオを見る機能で、グループチャットしながら語り合ったりジョークを言い合ったりできる。”Watch Videos Together”[一緒にビデオ見よう]と呼ばれる新機能は、ユーザーのMessenger利用時間を増やすとともに、一人でビデオを見る受け身のゾンビビューイングよりも有意義でポジティブな体験の共有を可能にする。Facebookは Watch Partyというグループ視聴機能もテストしていたが、ニュースフィードやグループ、イベントなどよりもメッセージングを通じて行うアプローチの方が自然かもしれない。

この機能をMessengerのコードベースで最初に見つけたのはデッドライン管理アプリTimeboundのファウンダーAnanay Aroraと、TechCrunchの常連タレコミ屋としてモバイル調査をしているJane Manchun Wongのふたりだ。Aroraが見つけたコードには、Messengerで「タップして今すぐ一緒に見る」あるいは「同じビデオについて同じ時間にチャットする」ことができたり、チャットスレッドのメンバーが共同ビューイングが始まった通知を受けることなどが記述されている。「このチャットの全員がビデオをコントロールできて、誰が見ているかを見ることができる」とコードに書かれている。

Facebook広報担当者はTechCrunchに、これは「内部テスト」けであり現在これ以上公表できることはないと語った。しかし、過去にMessengerのコードで発見された Instagramと連絡先を同期などの機能は最終的に正式公開されている。

FacebookにはWatch Partyがあるが、チャット機能に取り込んだ方がよく使われるかもしれない

共同ビューイングで気になる疑問は、みんなで見るためのビデオをどこで見つけるかだ。Facebookで見つけたビデオのURLを打ち込むか、Messenger向けにシェアするか。新しいビデオ検索機能がメッセージ作成かディスカバータグに入るかもしれない。あるいは、もしFacebookがチャットベースの共同視聴に本気で取り組みたいなら、ビデオパートナー、理想的にはYouTubeと提携することも考えられる。

ビデオの共同視聴はMessengerにとって新たな収入源になるかもしれない。予告編などのスポンサー付きビデオをおすすめすることも考えられる。あるいは、ビデオの合間にビデオ広告を挟むだけかもしれない。最近FacebookはMessengerやInstagramなどの子会社に対して収益化のプレッシャーを強めている。ユーザー成長が停滞し、ニュースフィードの広告スペースが限界に達していることから広告売上が鈍化しているためだ。

過去にはYouTubeのUptime(その後中止)やFacebookの初代プレジデントSean ParkerのAirtime(結局公開されず)などのアプリが共同視聴を流行らせようと試みては失敗している。問題は、友達との同期体験のスケジュール調整が難しいことにある。同時ビデオ視聴をMessengerに直接組み込むことによって、Facebookはこれをリンク共有と同じくらいシームレスにできるかもしれない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

コードの各所に関するデベロッパー同士の議論をコメントのように残せるCodeStream、最初はVS Codeをサポート

コードにコメントを入れることは、昔から誰もがやっているが、でも、コードの特定部分に関する同僚などとの会話スレッドを残せるとしたらどうだろう。Y Combinator出身のCodeStreamを使うと、まさにそれができる。

コンテンツに関する議論は、そのコンテンツの直後にある方がよい。Google Docsのアノテーション(注釈)やPowerPointのコメント、Wordのリビジョン(変更履歴)などは、だからとても便利だ。何もかもSlackの上で議論するのは、やめた方がいい。

しかしそれでも、二人のデベロッパーのコラボレーションは、Slackの上のプライベートな会話で始まることが多い。CodeStreamはgit commitやコード中に書くコメントに代わるものではなく、コードの上に便利な会話の層を加える。

誰かと関わりたくなったら、まずテキストをセレクトして議論を開始する。そして、当のコーディングブロックを最初のポストとするスレッドが作られていく。CodeStreamを今使ってるSlackにリンクしたら、Slackのチャネルの中でスレッドが始まる。誰かを@-mentionしたり、数行のコードをコピペしたりもできる。

mentionされたデベロッパーは、そのスレッドをクリックすると、CodeStreamはそのファイルをその行があるところで開く。二人のデベロッパーが同じブランチ上にいなくても、どちらもコードの同じ行を見る。どっちかに新しいコードがあっても。

数か月後にコードベースが進化していても、会話スレッドは残っている。いつでも、過去の会話を見て、なぜそこがそうなったのか、理解できる。

今は、CodeStreamはVS Code(Visual Studio Code)をサポートしている。CodeStreamをインストールしたら、IDEを縦2画面に分割して、左にコード、右にCodeStreamの会話スレッド、という状態にするとよい。

今後は、もっと多くのIDEをサポートしていく予定だ。Visual StudioやJetBrainsエディター、そしてAtomなども。今CodeStreamはベータなので無料だ。

同社は最近、S28 Capitalが率いるラウンドで320万ドルを調達した。それにはPJCが参加した。そのほかに、Y Combinator, Steve Sordello, Mark Stein, David Carlickなども投資に加わった。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

東京の2018 TechCrunch Battlefieldは蠅で食糧危機を解決するMuscaが優勝

TechCrunchは今、日本の首都にいる。私たちは、スタートアップのコンペBattlefieldで東京の優秀な起業家たちが競うピッチに耳を傾けた。そして決勝に残った20社がジャッジたちの前で最後のプレゼンテーションを行い、TechCrunch Tokyo 2018の勝者が決まった。

優勝はMuscaだ!

このスタートアップはありふれた生物であるイエバエを、世界の食糧危機のソリューションとして利用する。彼らの技術は、従来の方法よりもずっと迅速に高品質な有機肥料と家畜の飼料を作り、飢餓を根絶できる。同社の秘密兵器はある特定種の蠅で、同社によるとそれはより強靭で実効性も良い。その蠅の幼虫が動物の排泄物の分解と乾燥を促進し、それを高規格な肥料として利用するとともに、幼虫は鳥や魚の飼料になる。その過程はちょうど1週間だが、ほかの方法なら2〜3か月はかかる。

Muscaは最初のプレゼンテーションでわれわれの専門家ジャッジたちに強い印象を与え、して二度目のプレゼンテーションで、Job RainbowKuraseruAeronextPol、そしてEco-Porkらとともに決勝のステージに立った。

Muscaは、100万円の優勝賞金と、日本の最高の若きスタートアップであることを自慢できる権利を獲得した。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

千葉大発ドローンスタートアップのACSLがマザーズ上場へ

千葉大学発のドローンスタートアップである自律制御システム研究所(ACSL)は11月16日、東京証券取引所マザーズ市場に新規上場を申請し承認された。上場予定日は12月21日。

同社については1月に未来創生ファンド、iGlobe Partners、みずほキャピタル、Drone Fund、UTECらから21.2億円の資金調達を実施した際に紹介したけれど、2013年11月に当時千葉大学の教授だった野波健蔵氏により設立された大学発スタートアップだ。

かねてから研究室で取り組んでいた独自の制御技術とドローン機体開発・生産技術をベースに、大手企業向けの産業用ドローンを開発。2016年にインフラ点検、測量、物流などさまざまな用途で使える汎用性の高いドローン「ACSL-PF1」、2017年には非GPS環境にも対応した「PF1-Vision」などをリリースしている。

ビジネスの特徴としては、機体の販売だけではなくクラウドや点検AI、レポートUIなどと合わせ「業務組み込み型ドローンシステム」として一気通貫で提供していること。顧客との関わり方も、ドローン導入の打診に基づき概念検証(PoC)のフェーズからサポートし(ステップ1)、用途に応じたシステム全体の仕様策定や特注システム開発を実施(ステップ2)。量産機体の販売までを手がける(ステップ3、4)。

ソリューションを構築するシステムインテグレーターと量産供給を行う製造業の2つの役割を担っている点がポイントで、基本的には各ステップごとに収益を獲得するモデル。特注ドローンシステムのユーザー事例としては、楽天ドローン「天空」やNJSの「Air Slider」などがある。

有価証券報告書によると同社の2017年3月期(第5期)における売上高は1億5688万円、経常損失が4億8641万円、当期純損失が4億8881万円、2018年3月期(第6期)における売上高は3億7018万円、経常損失が4億5415万円、当期純損失が4億6041万円だ。

株式の保有比率についてはUTEC3号投資事業有限責任組合が19.93%、代表取締役の野波健蔵氏が14.23%、楽天が12.81%、菊池製作所が9.96%と続く。

近年TechCrunchでもドローンスタートアップの資金調達ニュースを紹介することが増えてきたけれど、国産ドローン銘柄のIPOに関するニュースは初めて。これを機に今後さらにこの領域が盛り上がっていきそうだ。

Bitcoinと暗号通貨の市場がまた大暴落、原因不明

Bitcoinを持ってる人にとって良い年ではなかったが、最近の24時間(米国時間11/14)はそれも忘れさせる。この暗号通貨は、この1年あまりの間としては初めて、時価総額が1000億ドルを割った。

10月の終わり…正確には29日…までさかのぼる必要がある。最後にBitcoinの市場総流通量が1000億ドルを下回ったのが、その日だ。

このレートが24時間維持されたのも、これが初めてのようだ。業界人の多くが価格の不安定性を嘆いていたが、もうそんなレベルではない。願いは、もっと適切で現実的な願いであるべきだ。

この急落は、Bitcoinの価格が今年初めて6000ドルを割った直後に起きた。その後それは、5600ドル以下に落ち込んだ。そしてそれが引き金になってアルトコイン(altcoin, 代替通貨)市場が大荒れ、上位100のトークンがほとんどすべて二桁パーセント急落した。トップテンの中では、Cardanoが14%、Litecoinが13%、EthereumとEOSは12%下がった。その結果RippleのXRPトークンがEthereumを上回り、価値第二位の暗号通貨に。その上にはあと、Bitcoinしかない。

例によって、この沈滞の原因を突き止めるのは難しい。

ハードフォークをやろうとしていたBitcoin Cashが、原因としてもっとも怪しい。

Bitcoin Cashはハードフォークによって二つの異なるチェーンになろうとしていた。Bitcoin Cash ABC(BCHABC)とBitcoin Cash SV(BCHSV)だ。そしてそれによって、市場に大きな不確実性がもたらされた。

この状況が、Bitcoinの価値の下落を起こしたのかもしれない。それによって、自分のトークンをより安いBitcoinと交換しようとするアルトコインのオーナーを引き寄せるのだ。その動きが、Bitcoinと、交換されるアルトコインの両方にネガティブな影響を及ぼすこともある。

もちろん、何が起きたのかに関してはたくさんの理論がある。ひとつだけ確実なのは、今日市場は相当ひどく出血したことだ。

注: 筆者は少量の暗号通貨を保有している。それは勉強のためにはなる量だが、人生を変えるほどの量ではない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

日本発売間近!中国でもコピー不可能なSpireのヘルスタグとは——#tctokyo 2018レポート

左からEngadget中文版編集長のRichard Lai氏、Spire CEOのJonathan Palley氏

TechCrunch Japanは2018年11月15日から2日間、スタートアップイベント「TechCrunch Tokyo 2018」を都内で開催した。本稿ではDay2のFireside Chat「充電不要、洗濯可能——-Appleも認めるスゴいヘルスタグ」で語られた内容を紹介する。モデレーターはEngadget中文版編集長のRichard Lai氏が務めた。

本誌でも既報のとおり、各国のAppleストアを通じて「Spire Health Tag」の販売を開始している。日本でも数週間後となる12月からの発売を予定していることから、Spire CEOのJonathan Palley氏が当日15日に来日し、TechCrunch Tokyo 2018に登壇した。Palley氏は既存のウェアラブルデバイスを「1.0」と定義しつつ、「ヘルスモニタリングやウェアラブル1.0は期待どおりに提供されなかった」と語る。読者諸氏もご承知のとおり、人の活動をモニタリングするデバイスは数多く登場した。だが、充電や取り外し、見た目といった課題が山積すると同時に、センサーの低精度に伴う取得データの限定性や洞察の難易度といった課題がある。筆者も多くの腕時計型ウェアラブルデバイスを試してきたが、特に精度の問題から四六時中身に付けることを諦めてしまった。

これらの課題に対する回答が、Spire Health TagだとPalley氏は語る。「医者から(従来型の腕時計型ウェアラブルデバイスを)身に付けろと言われても患者は受け入れない。医者に言われるとやりたくなるのが人間だ。さらに(既存デバイスで取得できる)データの価値が低い。健康を維持するには歩数にとどまらず、呼吸パターンや睡眠、心拍数などメトリクス(測定基準)を持ったリッチなデータが必要だ。例えば呼吸の変化から病気を未然に防ぐといったソリューションに活用できる」(Palley氏)。さらに前述した”見た目の問題”に対しては、”見えないデバイス”という解決策を示した。「洋服1つ取っても皆異なるスタイルのため、スマートシャツでは毎日取り替えることは難しい。Spire Health Tagは男性なら下着、女性ならブラウスなどに取り付けるだけだ。そのまま洗濯機や乾燥機に入れても問題ない」(Palley氏)という。なお、Spire Health Tagは胸部の動きを測定するが、モデレーターの設置場所に対する疑問について、Spireは「腰につけても構わない。深く呼吸するときは腹筋が緊張する。このわずかな動きをセンサーで取得し、アルゴリズムで検知できる」(Palley氏)と回答した。

Spire Health TagからBluetooth LE経由で取得したデータは一度スマートフォン上のアプリで取り込み、その後クラウドにアップロードする。アプリは取得データを元に睡眠やストレス、心拍数や活動を可視化し、利用者に洞察や特定の活動を提示。このあたりはウェアラブル 1.0と同じだが、気になるのはバッテリー駆動時間である。「バッテリーの寿命は1年半から約2年。バッテリーが切れたらサブスクリプションの『Spire+Membership』加入者(10ドル/月)には無償でお送りする」(Palley氏)という。米国ではSpire Health Tag単体(49ドル)ではなく、8つ入りのフルパック(299ドル)を購入する利用者が多いらしいが、モデレーターの「複数のSpire Health Tagを検知した場合は」の質問にSpireは、「呼吸や心拍数をPPG(反射型光電脈波)で計測して判断する。例えば呼吸しているのに心拍数が計測されないタグは除外する仕組みだ」(Palley氏)。

Spireは本製品を通じて2つのビジネスモデル展開を目指している。1つは消費者だ。4年前に発売したSpire Stoneは日本のAppleストアでも販売中だが、Spire Health Tagも前述のとおり発売される。モデレーターがApple Watchとの競合について尋ねると、Spireは「我々とAppleは競合関係にはない。私の立場では推測の域を出ないが、腕時計型ウェアラブルデバイスとSpire Health Tagは相互補完の関係にある」(Palley氏)と、2014年にAppleがFitbitの販売を停止した例を引用しつつ勝算を語った。

もう1つはヘルスケア市場である。同社技術はスタンフォード大学における7年間の研究が基盤となり、「米国政府からインフルエンザの流行を予防するプロジェクトに参加した。150人前後の被験者に身に付けてもらい、就寝中の呼吸変化を測定して、その変化で感染したか否かを報告している」(Palley氏)。また、米最大規模の某ヘルスケア企業と協業し、研究や次の展開を進めているという。「日本でも先月の発表以降、数社からの関心をいただいた。新たな協業の可能性にワクワクしている」(Palley氏)。

Spireは「人々は病気のことを考えたくない。テクノロジーを活用して人々のあり方を変えたい」(Palley氏)と目標を語りつつ、今後も身に付けることを意識させないウェアラブルデバイスの実現に取り組むことを表明。最後にモデレーターが「類似品登場のリスク」について尋ねると、「我々が4年前に(Spire Health Tagの)アイデアを話すと『クレイジー』と言われてきた。だが、各分野のエキスパートによる知見を持ち寄り、Spire Health Tagを作り上げた。仮に中国の方が持ち帰って分析しても、同様のセンサー精度やバッテリー寿命を再現するのは無理。(Spire Health Tagの)強みはアルゴリズムにある」(Palley氏)と強い自信を見せた。

(文/写真 阿久津良和/Cactus

“トラクターのナビアプリ”で農家を支える農業情報設計社が2億円を調達、自動操舵システムも開発中

トラクターの運転支援アプリを始め、農業におけるICT技術の活用や農業機械の自動化・IT化に関する研究開発に取り組む農業情報設計社。同社は11月16日、農林漁業成長産業化支援機構、ドローンファンド(1号・2号両ファンドから)、DGインキュベーション、D2 Garage、住友商事を引受先とした第三者割当増資により総額2億円を調達したことを明らかにした。

調達した資金を活用して、運転支援アプリに対応したトラクターの直進・自動操舵装置の開発を進める計画。直進運転をアシストすることで作業の効率化や負担の軽減、資材コストの低減を目指す。

農業情報設計社が現在提供している「AgriBus-NAVI(アグリバスナビ)」は“トラクター版のカーナビアプリ”のようなサービスだ。畑の中で「どの方角に向かってどのように走れば効率がいいか」を位置情報などを基にガイドする。

解決したいのは、トラクターなどの農業機械を用いた農作業における「作業の跡が見えづらい」「まっすぐ、等間隔で走るのが難しい」という課題だ。農業情報設計社CEOの濱田安之氏によると、肥料や農薬を散布する際にどこまで作業したかがわかりづらいため、結果的に重複して作業してしまうケースが多いのだという。

効率的に作業をする上では“まっすぐ等間隔で”トラクターを走らせることが重要なポイントになるが、そう簡単なことではない。

「仮に10mの作業で1m分重複してしまうと、それだけで10%のロスが生まれる。かといって間隔を空けすぎると(農薬の場合)空いたところから病気が発生したり、全滅に繋がるケースもある」(濱田氏)

濱田氏の話では、アメリカのほとんどの農家の営業利益率が10%以下という同国農務省の統計もあるそう。農家にとっては資材コストの削減が収入にダイレクトに響いてくるため、重複作業や作業漏れによるちょっとした無駄、ムラを防止したいというニーズがある。

AgriBus-NAVIではアプリ上で作業した場所を見える化することで「どこまで作業したかわからない」問題を解決し、基準線と現在位置を照らし合わせることで「まっすぐ、等間隔で走る」ことをアシスト。累計ダウンロード数は10万件を超えていて、ブラジルやスペインを始め約140ヶ国で利用されている(ちなみに国別のDL数では1位がブラジル、2位がスペイン。DL数の95%が日本国外なのだそう)。

現在はAgriBus-NAVIに対応した直進・自動操舵装置(GNSS装置と自動操舵機器)を開発中。トラクターに取り付けることで、位置と方向を高い精度で把握しながら自動操舵によって直進運転をサポートできるプロダクトを目指している。実用化されれば作業の効率化や負担の削減に繋がるだけでなく、経験の浅い農業者を支える強力なパートナーにもなりうるだろう。

開発中のGNSS装置「AgriBus-G+」、自動操舵機器の「AgriBus-AutoSteer」

すでに似たような技術自体は存在しているものの、導入費用がネックになって全ての農家が手を出せるわけではないのだそう。市販の製品だと一式を揃えるのに250〜300万円かかるところを、農業情報設計社では100万円以下に抑えて提供していくことで、より多くの農家を支援していく計画だ。

試作のプロダクトはすでに進んでいて、北海道の農家で実証試験にも着手済み。2019年の春頃の販売を予定している。

なお濱田氏はもともと農業機械の研究者(現在の国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構で研究に取り組んでいた)。当時研究していたロボットトラクターの技術や経験が、現在提供しているプロダクトのベースになっているのだという。

「TRAVEL Now」光本氏、「ズボラ旅」有川氏に聞く新型旅行サービス誕生のトリガー

写真右からバンク代表取締役/CEO 光本勇介氏、HotSpring代表取締役 有川鴻哉氏、プレジデントオンライン編集部 岩本有平氏

東京・渋谷ヒカリエで開催中のTechCrunch Tokyo 2018。2日目の11月16日には、今年注目の旅行分野サービスを提供するスタートアップ2社が登壇し、「2018年は新型旅行サービス元年だったのか、旅領域のキーパーソンに聞く」と題してパネルディスカッションを行った。登壇したのは「TRAVEL Now」を提供するバンク代表取締役/CEOの光本勇介氏と、「ズボラ旅 by こころから(以下、ズボラ旅)」を提供するHotspring代表取締役の有川鴻哉氏。モデレーターは元TechCrunch Japan副編集長、現プレジデントオンライン編集部の岩本有平氏が務めた。

Hotspringが旅領域における新サービス、ズボラ旅を発表したのは2018年5月のこと。LINEチャットで旅をしたい日付と出発地を伝えるだけで、旅行プランを提案、予約までしてくれるズボラ旅は、旅のプランを考えることすら面倒な“ズボラ”な人でも気軽に利用できるサービスとして注目を集めた。

そして6月には、即時買取サービス「CASH」でスタートアップ界隈をにぎわせたバンクが、旅行領域に進出することを発表。与信の手続きなしで、後払いで旅行に行ける新サービス、TRAVEL Nowをスタートさせた。

ほかにもメルカリが旅行業へ参入、LINEがTravel.jpとの提携でLINEトラベル.jpをスタートするなど、今年は旅行分野でさまざまな動きが見られる年だ。その大きな渦の中、2社が旅という分野に注目した理由はなんだったのか。なぜこのタイミングだったのか。

光本氏も有川氏もシリアルアントレプレナーとして、複数の事業を立ち上げてきた人物。その2人がなぜ、今、旅行に注目したのか、まずは話を聞いた。

光本氏は「旅行領域の市場はでかい。OTA(Online Travel Agent)には巨大プレーヤーが海外にも国内にも大勢いて、楽天とじゃらんだけでも1.5兆円の規模がある。でもこの市場はお金がある人のためのもの。旅行に行きたい人はいっぱいいて、来月、再来月にはお金があるかもしれない。そういう人に旅行に行く機会を提供すれば、下手をしたら今の市場よりでかい市場があるかもしれない。『市場を作ってみないとわからない』というなら、作ってみたいと思って」と話す。

また光本氏は「個人的には毎年テーマを作っている」として「去年はお金がテーマだったので、CASHだった。今年は旅行がテーマだと思って、TRAVEL Nowを作った」とも述べている。

「なぜかといった理由がロジカルにあるわけではない。世の中、いろんな業界があって、各業界のトッププレーヤーがそれを牽引して、それなりの規模のビジネスを5年10年やっている。つまり以前に作られたメイン事業としてずっと同じことをしているわけだが、世の中や消費者はビックリするぐらい変化している」(光本氏)

光本氏は「テクノロジーやデバイスの変化に比べて、トッププレーヤーのビジネスは大きく変わっていない。既存の業界の変化もフラットに進んではいるが、世の中は想像以上に進んで変化している。そのギャップができたとき、新しい仕組みにグルッと入れ替わるんだと思う」という。

「それが去年は金融、今年は旅行と思っていたら、やはり今の消費者や世の中、デバイスに合わせた新しい旅行を提案するサービスが出てきている。タイミングだったのかな」(光本氏)

TRAVEL Nowも「思っていた以上に需要がある」と光本氏。「もっと突っ込んでいく価値がある」とサービス開始から3カ月の所感として感じているそうだ。

ちなみにバンクの光本氏はつい先日、DMMからの独立(MBO)を発表したばかりだが、事業のスピード感を上げたい、と感じたのは、このあたりの感覚もあったのかもしれない。会場では、MBO発表時のプレスリリース以上のコメントは聞くことはできなかった。

一方の有川氏も「光本さんも話すとおり、消費者とサービス提供側に差分があると感じたことが、ズボラ旅リリースのきっかけになっている」と話している。

「オンラインで旅行を買っている人は、全体の35%。服とかなら試したい、というのはわかるが、旅行は試着も何も試せないし、オフでもオンでも変わらないはず。なのにまだ3割台なのは何でだろうと考えた」(有川氏)

有川氏は「オンライン旅行サイトを触ると、いきなり目的地や日にち、人数を入れなければいけなくて、それから探し始めることになる。でもその時には行き先は決まっていないのでは?」とその理由について考えを説明している。

「友だちと会話していて『来月ぐらい温泉行きたいねー』といった感じで、旅行ができればいいのに、と思った。OTAはそことのギャップが激しい。光本さんの言う、お金がなくて旅行に行けない、という人がいるのだとしたら、申し込みがめんどくさくて行けなくなった人も、メチャメチャいるのではないか。そこでLINEのチャットで簡単に『どこかへ行きたい』と言えば予約まで行けるといいな、と思ってズボラ旅を立ち上げた」(有川氏)

現在のサービスの手応えについて有川氏は「会話で、相手が何となく見えると相談を詰めていけるので、コンバージョンは高いのではないか」と述べる。「今はサービスフローが成立して、行けるな、と思っているところ。ズボラ旅はスタッフがチャットで対応するサービスなので、オペレーションが重要。スタッフがユーザーの旅行を作っていけるのかどうか、お客さんの数を絞って検証していた。これから、ようやく増やしていくぞ、というタイミング」(有川氏)

2人ともIT畑の出身。リアルの代理店から始まっているOTAと比べて、メリットや不利と感じる点はどういうところだろうか。

光本氏は「僕たちの強みは“ド素人”なところ」という。「どのサービスでもそうだと思っているが、これまでに手がけた金融(CASH)でもオンラインストア(STORES.jp)の時も、対象にしているのはド素人の方々。旅行のド素人がド素人の方のためにサービスを作れば、気持ちをわかって作ることできる。それが強み」(光本氏)

業界ならではの知識やネットワークなどの面で弱みはあるとは思う、としながら、「いろんな企業の力を借りたり、自分たち自身が学んでカバーしている」と光本氏は話している。

「TRAVEL Nowでも情報はそぎまくった。記入するのがめんどくさい部分は、業界の人がビックリするぐらい取っちゃった。提携先の旅行会社の人からは、当たり前のように『あの情報もこの情報もほしい』とフィードバックが来たが、本当に必要かと聞くと『あったほうがいいからです』みたいな理由で。なくても予約できるし旅行はできる。ユーザーとしてはない方がいいし、実は成り立つじゃん、ということになった」(光本氏)

光本氏は「みんなが思っている以上に、旅行をガマンしている人はいると思っている」と話す。「2万円、3万円ぐらいの旅行なら行けばいいじゃないか、とよく言われるが、そういうことを言ってくるのはお金を持っている人。全国的な観点でいったら、安い温泉宿へ行くというのでもガマンしている人がいっぱいいる。『結婚記念日だから』『子どもの誕生日だから』今月旅行に行きたい。来月ならお金はどうにかなるかも。そういう人がちょっとしたお金がないから、このタイミングに旅行するのをガマンするのは悲しいし、残念だ。そういう人が旅行に行ける機会を作りまくりたい」(光本氏)

CASHもTRAVEL Nowも性善説で運営し、後払いをサービスに取り入れているが、悪用するユーザーもいるのではないか、という懸念もある。危ない人が利用するケースは「ゼロではない」と光本氏も認める。だがこの性善説で提供するサービスの領域に「興味があってチャレンジしたい」と語る。

「人を疑うのはコストでしかない。想定以上にきちんと払ってもらえるなら、ビジネスとして成り立つし、我々は疑うというコストをセーブできる。性善説に基づいたマスのサービスは世の中にない。そこに可能性と面白さがある。今はいろいろと実験しているところ。もう少し突き詰めたい」(光本氏)

有川氏は既存の旅行市場は「特殊」という。「OTAはITサービスを15〜6年やっている。ITサービスとしては長い方だ。そこには技術的負債もあり、リニューアルはされているけれど、全く新しいものではない。そこへモバイルシフト、スマートフォンの台頭とかが起きている。今このタイミングで新しく参入するからこそ、今までになかったものが出せる」とその考えを説明する。

LINEを入口としていることで、ズボラ旅のユーザーには若い人が多いのかと思いきや、お客さんの幅は広いようだ。「OTAサイトが使えない、使い方がわからない人も多い。今までインターネットが触れなかった人、60代の方が子どもに聞きながら使う、ということもある」(有川氏)

認知の部分でもLINEをベースにすることで、クリアできているようだ。今は旅行メディアとの連携により、記事を読み終わったところで申し込みできる入口を増やしているところだという。

今後、2社が考える旅行サービスの展開はどのようなものなのだろうか。

光本氏は「ポテンシャルが大きすぎるので、直近数年のイメージだが」として「超カジュアルにハードル低く、旅行に行く機会を提供しまくってみたい」と言う。

有川氏は「手段はチャットであってもなくても、旅行の相談窓口であり、オススメ場所でありたい」という。「我々が提供しているのは“レコメンド事業”だと思っている。商品はたくさんあるので、それを合う人にマッチングしていく、というサービスだ。そこでデバイスは何でもいいし、音声アシスタントを使うという方法もあると思う。形は問わなくなっていくのかな」(有川氏)

ズボラ旅はイベントが行われた11月16日、サービスを大きくリニューアルした。ホテル・旅館の予約だけでなく、新幹線や特急券、航空券などの旅行手段、現地の公園や美術館などの施設のチケット、レストランなど、何でもLINEで相談すれば、まとめて予約することが可能になったのだ。

また、2019年初にも、海外旅行への対応を予定しているという。有川氏は「飛行機もホテルも現地アクティビティーもレストランも、全部日本語でLINEで会話するだけで予約して、行って帰ってこられるようになる」として「オペレーションは大変だけれど、やる価値はあると思っている」とサービスに自信を見せる。

来年にかけて、有川氏は「何も考えなくても、どこかへ行きたいね、というのがかなう世の中を実現するために、今ないものを作っていく。今、日本で1年あたりの旅行回数は2.6回と言われているが、旅行を簡単にして、その数字を増やしていくためにインパクトを与えたい」(有川氏)

光本氏のほうは、「金融」「旅行」に続いて、来年は「不動産」に注目しているという。「これもロジカルな理由はないが、単純にこれまで変わっていなかった業界。世の中が変わっている中で、今の世の中に合った新しい不動産サービスは出てくるべき。世の中と業界とのギャップが開ききるタイミングじゃないか。(自分がやるかどうかはともかく)新しい価値をもたらすような不動産サービスが、来年は出てくるような気がしている。もし本当にそうなったら、褒めてください(笑)」(光本氏)

レガシーソフトウェアを”マイクロアプリ”と接続するSaphoを、Citrixが2億ドルで買収

大きな組織が、これまでのソフトウェア資産の全てを破棄することなく、現代的なやり方に適応していく作業に苦労している中で、そうした組織と協力しているある企業が、そうしたプロセスを助けるための買収を行った。本日(米国時間11月15日)Citrixは、レガシーソフトウェアのための「マイクロアプリ」を開発するスタートアップSaphoを買収したことを発表した。Saphoのソフトウェアは、企業の従業員たちが、従来のソフトウェアを、クラウドやモバイルを通して、あたかも現代的なアプリケーションのように利用することを可能にする。

買収は全額現金で2億ドル前後であったと伝えられている。これは良いリターンだ。Saphoは2014年以来、AME Cloud Ventures、Louie Alsop、そしてFelicis Venturesなどの投資家から、わずか2800万ドル以下の資金調達しか行っていなかった。共同創業者のFouad ElNaggarとPeter Yaredを始めとして、ベイエリアを中心とした90名の従業員チームとプラハの開発オフィスがCitrixに加わる。

Citrixは現在、約140億ドルの時価総額を有しているが、これはエンタープライズITの世界における大きな流れに従い、主に仮想プライベートネットワークサービスから、よりハイブリッドなクラウドモデルへ焦点を切り替えた、新しいCEOのDavid Henshallの下で上昇してきたものだ。

Citrixは、Saphoの既存のビジネスと製品のすべてを提供する。ElNaggarによれば、両社は既に顧客ベースが大きく重なっており、Citrixのサービスへのより高度な統合を望む顧客たちの存在が、CitrixによるSaphoの買収を促したのだという。

「世界最大の企業たちがCitrixを利用していて、その従業員たちにより魅力的な体験を提供する必要がある大規模なハイブリッド環境を構築しているのです」とインタビューに答えたのは、Citrix社の事業戦略EVPかつCMOであるTim Minahanである。「でもそれは、全てを捨て去り新しいソフトウェアを投入することを意味しません。Saphoはそうした既存のインフラストラクチャを活用し、意思決定においてより洞察的なものとするための、素晴らしい手段を提供するのです。私たちはこれを、エンタープライズアプリケーションがその環境の中で果たす役割を再考する手段だと考えています」。

現在Saphoが、レガシーソフトウェアを活用して統合を提供している典型的なタスクには、経費精算、セールスソフトウェア、ITサポートチケット、そして人事管理などがある。こうした既存のシステムから吸い上げたデータを、Microsoft Teams、Microsoft Dynamics、Oracle EBS、Salesforce、SAP ERP、Workday、そしてGoogleドライブなどのサービスへ供給するのだ。

なお今回CitrixがSaphoを買収する前には、IBMとMicrosoftが、Saphoが成し遂げたこと、獲得した取引、そして埋めている市場の空隙に着目して、買収に向けた予備交渉を始めていたことを、私たちは耳にしていた

[原文へ]
(翻訳:sako)

Canonicalはまず外部資金の調達を初体験してから将来のIPOに備えたいという

【抄訳】
Mark Shuttleworthが自分の投資でCanonicalとそのUbuntuプロジェクトを創業してから14年になる。当時はもっぱらLinuxのディストリビューションだったが、今では同社はエンタープライズサービスの大手としてさまざまなプロダクトサービス提供している。これまではShuttleworth自身がプロジェクトに資金を提供し、外部からの資金には関心を示さなかった。しかし今、それが変わろうとしている。

Shuttleworthによると、最近の彼はIPOを真剣に考えるようになり、そこへのひとつの過程として外部投資家を求めている。同社が最近エンタープライズへとフォーカスを変え、Ubuntu Phone(Ubuntuブランドのスマートフォン)やデスクトップ環境Unityを廃棄したことは、誰もがすでにそう思っていたように、どれもそれに結びついていた。Shuttleworthは外部資金の調達を、その方向へ向かう一歩と見なしている。そうやって、会社を徐々に、上場にふさわしい形に整えていくのだ。

“第一段階は、未公開株式だろう。外部投資家を募り、取締役会に外部のメンバーができたら、報告義務も生ずるし、それらはIPOに向かうプログラムの一部になる。私が考えてきた手順としては、未公開投資家たちが求めていたことにまず応じてから、そのあと、上場へ向かうべきだ。両者は、まったく違う文化だからね”。

最近はよく目立つひげを生やしているShuttleworthは、前はこれ〔未公開外部資金〕にも反対していたし、そのことを彼自身も認める。“それは私に関する正しい性格付けだった、と私も思う。私は、自分の独立をエンジョイしており、自分で長期の経営を構想できることも好きだ〔四半期決算報告などの短期的義務が生じないこと〕。今でも自分にその能力があると感じているが、人の金に対して責任が生じるのもすごく良いことだ。それが自分の金でなければ、金の使い方もやや変わるだろう”。

【後略】
〔IPOの前段としての未公開株式投資に関しても、投資家、金額、スケジュール等すべて未定。現状は、すべてShuttleworthの頭の中の構想である。〕

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Toyota AI Venturesが考えるモビリティーは3次元的なソーシャル——#tctokyo 2018レポート

Toyota AI VenturesマネージングディレクターのJim Adler氏

11月15日(木)に開始されたTechCrunch Tokyo 2018 Day1冒頭のFireside Chatは、Toyota AI Venturesでマネージングディレクターを務めるJim Adler氏の招いてのセッションとなった。同社は、2017年7月に設立されたトヨタグループのベンチャーキャピタルファンド。人工知能やロボティクス、自動運転、データ・クラウド技術の4分野においてスタートアップの発掘と投資を行っている。

登壇したAdler氏は、Toyota AI Venture設立時からのマネージングディレクターであり、またVoteHereという電子投票のスタートアップを創業した起業家でもある。同セッションでは直接的な言及は少なかったものの、参加者は多くのヒントを得られたハズだ。

人工知能やロボティクス、自動運転、データ・クラウド技術の4分野に注目しているといいつつも、会場に到着するまでにGPSシグナルが弱く、迷子になったエピソードを交えつつ、マッピングのローカリゼーションとデータサイエンスの重要性に触れた。例えば、ドライバーのクセとGPSシグナルを組み合わせたらどうなるのか。セッションは知見とヒントを散りばめたものだったともいえる。

まずToyota AI Venturesの方向性について。同氏は、TOYOTAのイメージであれば車となるが、モビリティー全体を見ており、あらゆる交通手段に関わると語った。車から見れば、ほかの交通機関の影響はあり、その逆でも同様だ。また車はソーシャルであり、その国の文化に応じた約束事の存在にも触れた。

同氏曰く「ソーシャルコントラクト」。自動運転の安全レベルを設計するにあたり、地域ごとの決まり事をAIに教えるにはどうしたらいいのか、歩行者によって配慮を変えなくてはいけない。親子の場合、自転車の場合、スケボーの場合で異なる。また自動運転の安全レベルについても、社会として答えを出す必要があり、コミュニティーで答えを出していけるのではないか、さらに安全とはなんだろうかといった疑問の提示もあった。またAdler氏はモビリティー全体に関わるため、テックに留まらず、パッケージとして考える必要があるとも語った。

そこにイノベーションが必要であり、スタートアップによるアクションをサポートしていくというのが、Toyota AI Ventureのスタンスになる。スタートアップを市場に投入して、反応/判断を得えて、また次のステップへ。Toyota AI Ventureは、投資だけでなく生産から安全設計までサポートをする。

投資基準はどうだろうか。Adler氏自身も起業家であった経験から、起業家の視点や気持ちがわかると踏まえたうえで、最終的には技術も大事だが、スタートアップチームの性能や社内文化を見ていると述べた。市場に投入したのちの市場反応を受け入れる姿勢だけでなく、一度社会文化が出来ると変更しにくく、フローを実行しやすい文化形成の推奨のほか、アドバイスとしてハードとソフトの入念なチェックや、競合のいる市場を選ぶといった話も出た。競合はライバルでもあるが、友人であるといった点であり、競合のいない市場はオススメしないそうだ。

最後に再び、社内文化の重要性を触れてAdler氏のFireside Chatは終了した。

(文/写真 林祐樹)

米国展開とメルペイに注力——上場後のメルカリの今、そしてこれから

東京・渋谷ヒカリエで開催中のTechCrunch Tokyo 2018。初日の11月15日には、メルカリ取締役社長/COOを務め、国内事業を率いる小泉文明氏が「上場を果たしたメルカリ、これから目指すもの」と題し、メルカリ上場までのストーリーや国内戦略、今後注力していく事業・サービスなどについて語った。聞き手はTechCrunch Japan編集統括の吉田ヒロが務めた。

米国メルカリの課題は「認知」

まずは上場前後の話から。6月19日に東証マザーズ市場に上場を果たしたメルカリだが、上場のタイミングはどのように決まったのだろうか。

小泉氏は「中長期戦略の中で、メルペイの準備を始めた時期だったことが大きい。今後ペイメントや新しいチャレンジを考えている中では、社会的信頼が重要になってくる。上場するにはちょうどいいタイミングだった」と答えた。

上場による調達資金をはじめとした資金の投下先について、小泉氏は「決算説明会の資料にもあるとおり、日本は黒字だがUSは赤字、ペイメントはまだ売上がない。日本での収益とファイナンスをUSとペイメントに投資している」と説明。「まずはビジネスを当てることが大事」と言う。

米国メルカリの立ち上がりは「やはりそんなに簡単じゃない」という小泉氏。「アメリカのスタートアップでもしんどいと思う。彼らも(収益の上がりやすい)B2Bサービス、SaaSへ移っていて、コンシューマー向けサービスを提供するところは減ってきている。資金力とユーザー滞在時間を呼び戻すのが、みんなの課題となっている」(小泉氏)

米国ではアプリDL数は4000万。小泉氏によれば「継続率は日本ほど良くなっていないので改善が必要だ。また認知率が課題で、日本のようにテレビCMで5億、10億投下したら何とかなるというものじゃない」と米メルカリの課題について打ち明けた。「認知率についてはSNS広告やビルボード(屋外看板)なども行っていたが、時間がかかっている」(小泉氏)

小泉氏は一方で「アプリ内の(ユーザー遷移などの)数値はかなりいい」とも述べている。「CVCとか、日本と変わらないぐらい。プロダクトの中は良くなってきたから、認知に投資して、認知率が上がれば数字(売上)は上がるのではないか」(小泉氏)

3月に「思い切り変えた」というUSメルカリのアプリUIは、赤がキーカラーの日本と違って、米国では青が基調。タイムライン上にアイテムがずらっと並ぶ日本のUIに対し、USではジャンルである程度見せるよう、縦と横で切り口が違う見せ方になっているという。

「ある部分、日本より進んでいる、アメリカにマッチしたUIに変えている」(小泉氏)

米国で展開する広告では「Selling App(売るアプリ)」をうたっているメルカリ。ラジオ広告やビルボードで『売るだけ』をフィーチャーしてあおっているとのことだ。小泉氏は先日乗ったUBERの運転手にも「知ってるよ、“売るアプリ”だろう? ラジオで聞いてた」と言われたそうだ。

米国でのメルカリの仕組みの浸透については、小泉氏もそれほど心配していないようだ。「中古マーケットではeBAYがあるが、PCベースでの利用が中心で、日本でYahoo!オークションがあったのと同じ。スモールビジネスの売り手がいるというのも、日本に近いんじゃないか。フリマアプリ領域での競合も減ってきた。女性向けアプリなどが残っているが、オールジャンルをカバーするものではなく、もともとフリルがあった日本と同じような構造がある」(小泉氏)

「日本で普通の主婦が使っているのと同じように、20代の女の子とかが普通に使うアプリになってきている。テクノロジーにフィーチャーさせない方がいいかと思って、全ジャンル対応したものにしている」(小泉氏)

小泉氏は「システムが受け入れられるには、スマートフォンでいかになじむか、が大切。米国ならではのチャレンジはあるが、新しいコンセプトが必要、という感じではない」と話している。

アメリカへの投資については「ここが取れるか取れないかで全世界への展開に影響するから」と小泉氏は述べる。「アジアへの進出もよく言われるが、まずはアメリカ。PLや企業革新(の速さ)が変わってくる。実現できないと次のステージに会社として全然行けない」(小泉氏)

休止サービスの見極め方とメルペイへの意気込み

上場によって社内で変わったことは「特にない」という小泉氏。どちらかと言えば上場というよりは「ペイメントが入ることで、お金を扱うサービスとして信頼性を高める必要があると認識されるようになった」という。

ほぼ全社員がストックオプションを保有しているメルカリだが、上場で辞めたという人もほとんどいないとのこと。「まだまだメルカリの可能性はあるとみんな感じている。楽しんでいる」と小泉氏は言う。

今年に入ってメルカリでは、5月に「メルカリ アッテ」を終了、「メルカリNOW」「teacha」「メルカリ メゾンズ」の3サービスを8月に終了し、年内に「メルカリ カウル」を終了すると発表している。

休止サービスについて小泉氏は「山田(代表取締役会長兼CEOの山田進太郎氏)も自分もそもそも、スタートアップをたくさん作ってきた人間。『新規サービスはそう簡単には当たらないよね』というのが合い言葉のようになっている。無責任にサービスを延命してリソースを取られるのは避けた方がいい。メルペイのような重要なところへリソースを配分し直す、という考えだ」と語る。

サービス休止の見極めは「初動を見て」行うとのこと。「大きなチャレンジがたくさん出てきている中で、数値、そして感覚で見極める。経営会議で担当役員や事業責任者の話を聞きながら、冷静に判断している」(小泉氏)

当該サービスを担当していた社員は辞めてしまうんじゃないかとも思えるが「全然辞めない」と小泉氏は言う。「サービスが好きか会社が好きかで言えば、会社と会社のミッション、バリューが好きという社員が多い。(サービス休止で)会社に貢献できるなら、それはいいよねと思ってもらっている。いろいろ思うところはあるとは思うけれども、みんな比較的次の仕事に邁進しているという印象だ」(小泉氏)

「サービスを閉じるにあたっては、『いいチャレンジだったね』として学びを得ながら、成仏させて次のチャレンジをさせるようにしている。そうした情報はメルカン(メルカリの社内の取り組みを伝えるメディア)でも共有して、リソースを配分している」(小泉氏)

一方で車のコミュニティ「CARTUNE」を10月に買収しているメルカリだが、取り入れるサービスの線引きはどこにあるのか。

小泉氏は「メルカリのカテゴリ戦略の中で自動車カテゴリは大きい。CARTUNEは短期間で熱量の高いコミュニティができあがっている。創業者(福山誠氏)としての優秀さと事業の魅力が際立っている。いいパートナーがいてくれたと思っている」とCARTUNE子会社化に至った理由について説明する。

「CARTUNEはメルカリとは別で持って行く(成長を目指す)。彼らのコミュニティをきちんと大きくしていく。メルカリのカテゴリをその過程で大きくすることはあるが、短期的にマージすることは考えていない」(小泉氏)

また、メルペイでサービス同士をつなぐ、という発想も「なくはない」という小泉氏。「リアルな店舗で使えるだけでなく、オンラインでも使えるようにしていく」と話している。

「カテゴリーに特化するためのM&Aは今後もあるだろう。(自社は)IPOで調達しているが、M&Aも否定せずにやっていく」(小泉氏)

休止したサービスと似たようなものをまたやる可能性もある、という小泉氏は「メルカリが1回目で当たったのは奇跡。メルペイにも大変なチャレンジが待っているはず。中途半端にやっても大きな山には登れない」と語る。

今後フリマ以外で注力したいのは「やはりペイメント。ペイメントはフリマアプリとあわせることで、エコシステムが生まれてくると思うから」と小泉氏は言う。

ペイメント系サービスに関しては、LINE Payをはじめ、さまざまな先行サービスがあり、今年に入ってからもPayPayなど新規サービスも増えている状況だ。メルペイはどのように勝負していくつもりだろうか。

小泉氏は「メルカリとメルペイの連携が非常に大事」と言う。「単純にペイメントサービスを使ってください、ではハードルが高い。手数料競争になっても意味がない」(小泉氏)

「メルカリはメルペイの強み。(メルカリでアイテムを売った)アカウントに対してお金が振り込まれたら、それが店舗で払えるようになっていく。LINEにもYahoo!にもそれぞれ良さがあるのと同じ。銀行口座やクレジットー度を登録させて……というよりは、すぐ店舗で使えるようにする。それがあれば、さらに『メルカリでものを売ろう』という動きにもなる。ユーザー活性化のモチベーションにもなっていく」(小泉氏)

シナジー、ということでいえば11月にアプリがローンチされた「メルトリップ」とメルカリとの連携はあり得るのか。

小泉氏は「今はそれぞれスタンドアローン」と言いながら、「将来的には連携も可能ではないだろうか」と話している。「メルペイのように近いサービスはいいが、新規サービスを作るときに既存サービスを意識しすぎると複雑化したり、重くなったりする。大事なところ以外をケアしなければいけない、ということはあってはいけないことだ。お客さまに親しまれるサービスにしてから連携しようと考えている」(小泉氏)

個人としては「ノーロジック」で投資

小泉氏には、個人投資家としての顔もある。直近では10月17日に、クラウドファンディングサービス「Readyfor」を展開するREADYFORへ個人として出資している。

メルカリの社長という激務の中で、個人投資家として活動する理由について、小泉氏に尋ねると「経営者としてやりたいことはいくつかあるが、身体は一つ。『こういう未来になってもらいたい』という夢を託すためにお金を投資している」という答えが返ってきた。

「ストラテジーがあって投資をする千葉さん(Drone Fundの千葉功太郎氏)と比べると、今までに投資しているREADYFORやファームノート(酪農農家向けIoTサービス)とかはバラバラに見えると思う。また、儲かる案件をスルーしていることもある。そういうのは僕じゃなくても誰か出してくれる人がいるだろうと思って」(小泉氏)

「(これまでに参画している)メルカリとかミクシィも個人をエンパワーメントする流れ。READYFORなどのクラウドファンディングとかはそういう感覚でいいと思う。ファームノートについては、僕が兼業農家の子どもで農家のことはよく見てきたから……。そういう感じで脈絡なく出資している」(小泉氏)

今後も比較的「ノーロジック」で投資していくだろう、という小泉氏。「(投資しませんかという)ディールはよく来る。期待されているな、ということはスタートアップからも感じる。普遍的に人やお金は大事だ。プロダクトについては事業をやっている人は一番考えていると思う。それに対して応援団として背中を押したい」(小泉氏)

ギフトガイド:旅行向け携行グッズ10選

TechCrunchの2018年ホリデーギフトガイドへようこそ!ギフトアイデアがさらに必要?ギフトガイドハブもご覧あれ。

今年は出張の多い年だった、実際これまでで一番多かった。それは楽しみと苦しみの両面を伴った。その状況を与えてくれたTechCrunchには感謝したい。実際のところ、この記事を書いている場合ではなく、おそらくアジアに向かうために荷造りを始めなければならないのだが、読者のために調べることにしよう。

普通のトラベルガイドとホリデーギフトガイドを書くのではなく、それらを1つにまとめることにした。なぜなら効率性こそが、読者の時間を最大に活用させるための鍵だからだ。技術は、荷造のプロセスを合理化し、旅行を最大限に活用する上で重要な役割を果たすことができる。

もちろん、全ての場合と同様に、過剰な技術は悪いものになるかもしれない。私は、自分自身があまりにも多くのガジェットを詰め込んでいることや、持ち込み手荷物の中で絡み合うケーブルが、事態を悪化させていることを知っている。

以下に紹介するのは、旅行から最大の苦痛のいくつかを取り除くためにデザインされたガジェット、アクセサリーなどだ。一泊でもそれ以上でも読者の旅行を便利にしてくれるだろう。

Amazon Kindle Oasis

オーケー、おそらくここにKindleを含めるのは少々インチキかもしれない。しかし電子書籍リーダーほど私の旅をより良いものにしてくれるデバイスもない。そしてOasisは現在入手できる最善のものなのだ。私が機内持ち込み手荷物の中に、ペーパーバックを何冊も詰め込んでいたのはそれほど遠い昔ではない。私は時々本物の本の手触りを恋しく思うことがあるが、しかし旅行をする際には、数千冊の書籍を座席の背ポケットに詰め込むことのできる能力に代えられるものはない。

価格: 249〜279ドル
入手先: Amazon


Anker 40W 4ポートUSBウォールチャージャ

近代的なホテルの多くは、USBポートについて改善されている。私は最近、iPhoneを充電できる場所が各部屋についているLAのホテルに滞在していた。しかし、それはまだ危険な賭けだ。特に知らない街へ出張するときには。それに、個人のデバイスを正体のわからないポートに差し込むことを避けられるなら、ますます良いことだ。

数年前から私は別途購入したミニタップ兼USBハブを使って来たが、Ankerの40W 4-Port USBウォールチャージャーはそれよりもはるかにコンパクトなソリューションだ。壁に直接4つのUSBポートを設置することができる。何より素晴らしいのは、他の全てのAnker製品のように、それはとても安価だ。

価格: 26ドル
入手先: Amazon


BUBMケーブルバッグ

私は何年もの間、ガジェットのブログ内で本当に数多くのケーブルオーガナイザーを試してきた。それを使うことでやっと、私の旅行カバンがインディアナジョーンズのヘビの穴になるのを防ぐことができる。結局のところ、それらは最終的には同じ種類のジレンマで悩むことになった。様々なガジェットを詰め込むための沢山のポケットを持つか、よりコンパクトなものを選んでカバンの中に余裕をもたせるかだ。

結局のところ、私は後者の方向に向かう傾向がある。特に機内持ち込み手荷物となると、スペースを空けることができるものが基本的には何でも望ましい。最近私は、BUBMのこれを見つけた。それはしゃれた外観で、その折りたたみデザインによって貴重なバッグの中の空間をより広く使うことができる。

価格:12ドル
入手先: Amazon


Calmサブスクリプション

これは確かに奇妙な選択だ。確かに旅行専門のアプリは、世間に沢山存在しているが、旅のストレスを和らげる役に立つという観点から見た場合には、Calmアプリは手始めとしては良いものだ。これは実はとても心配性の旅行者から届いたものだ。恐れるべきは飛行の部分ではない、その部分は大丈夫だ。問題はその他の全てなのだ。空港に向かうことから、長蛇の列、3ドルの空港の水、そしてたまに遭遇する両側を挟まれた座席に至るまで。

私は熱心な瞑想者ではないが、スマートフォン上でマインドフルネスを追求するために、それこそ沢山のアプリを試した。その結果Calmがすば抜けて私好みだったのだ。ガイドされる瞑想セッションは素晴らしく、より自由度の高いものも同様に素晴らしいのだ。知らない都市のホテルの部屋で目を覚ました後に、気持ちを整えるための素晴らしい手段も与えてくれる。

1年間のサブスクリプションは60ドルだが、心の平安のためには安い買い物だ。

価格: 60ドル
入手先: Calm


Harman KardonのTravelerスピーカー

この品物は、間違いなく他のものに比べて贅沢なものに感じられるが、小さなBluetoothスピーカーがどれほどホテルでの滞在生活を改善してくれるかを過小評価してはならない。大多数のラップトップの組み込みスピーカーは酷いものが多いため、たとえ中級のBluetoothスピーカーでも改善効果は大きい。

Harman KardonのTravelerは、十分な機能を備えている上に、手荷物に対してそれほど嵩張ったり重かったりすることもない。また、テレカンファレンス(遠隔会議)のためのマイクも内蔵されている(出張者のためには有り難いボーナスだ)。またデバイスを充電するための電池としても利用可能だ。2500mAhのバッテリーはそれほど大きくはないが、移動中の場合には、小さな一滴でも有り難いものだ。

価格: 150ドル
入手先: Harman Kardon


HyperDrive USB-C Hub Attach

私はたくさんのガジェットを持って旅行する。それが私の仕事のようなものだ。このように、充電ポートが不足していることが、常に一貫したテーマであるという事実は間違いない。HyperDrive USB-C Hub Attachは、Twelve Southを象徴するPlugBugを使ってMacbookの充電アダプタに直接複数のUSBポートを追加する巧みな仕掛けだ。3番目のUSB-Cポートはデータ転送に利用することも可能だ。より大きいバージョンを50ドルで買うことができる、これはTwelveSouthの価格と同じだ。
価格: 50ドル
入手先: HYPER


Luna Display

私が先月書いたように、Luna Displayは万人向けのものではない。しかしそれを必要とする人にとっては、まさしく救命用具となるだろう。この親指の先サイズの80ドルのデバイスをMacBookに差し込めば、近くのiPadにWi-Fiを通して接続し、タブレットを第2画面として使えるようになる。

私は移動中でも自宅でも、これを使っていることがしばしばである。仕事中は完全にモニターに依存するようになってしまった。現在はコーヒーショップのテーブルの上にラップトップとタブレットの両方を広げる奴になってしまっている。記事を執筆中に、RSSフィードを同時に眺めることができることには大きな価値がある。

価格: 80ドル
入手先: Luna


RAVPowerワイヤレスポータブル充電器

最近のバッテリは安いものだが、RevPowerはその中でも最も巧みなものを作っている。それらの中から絞り込むことは難しいが、これはQiチャージパッドを内蔵するという点で私のリストに残ったものだ。これを使えば互換性のある機器をこのデバイスの上に置くことで充電することができる。

いくつかの航空会社と空港では、バッグに入れることができるバッテリーのサイズが制限されているので、もし贈ろうと思っている相手が例えば中国へ頻繁に行くような人の場合には、制限についてよく調べること。まあ多くの場合この10400mAhのバッテリーは問題ないのだが。

価格: 50ドル
入手先: Amazon


Timbuk2 Never Check拡張可能バックパック

私はいつでももうバックパックからは卒業したいと考えていたが、2000年になった最初の10年の間に少々メッセンジャーバッグに浮気した位で、ずっとバックパックを使い続けてきた。もちろんどの2つも同じではなく、もし知り合いに頻繁に旅行をする人がいるならば、信頼できるバックパックは世界中で役に立つだろう。

Timbuk2は真に素晴らしいバッグを作った。Never Checkは確かにその要件を満たしている。一泊の旅行に必要な衣類、靴、その他のものを収納する余裕がありながら、頭上の収納場所や前席の下に入れることができるほどの小ささを実現しているのだ。

価格: 200ドル
入手先: Timbuk2


Twelve South AirFly

本当にそれに直面するまで本当には理解できない旅の懸念がある。Bluetoothイヤフォンは好きだろうか?素晴らしい。しかしもし飛行機の中で映画の音声も聞けたら素晴らしい。Twelve Southは、その無限の知恵を使って、ヘッドフォンジャックに差し込むことのできる小さなワイヤレストランスミッターをデザインした。これを使えば飛行機のエンターテイメントシステムを自分のワイヤレスヘッドフォンで楽しむことができる。それはまた、テレビやホテルのジムでも便利に使うことができる。

ここで最大の欠点は価格設定だ。30ドルという価格はそれほど高いもののようには思えないが、現在有線のヘッドフォンはとても安価に購入できるのだ。

価格: 30ドル
入手先: Amazon

TechCrunchギフトガイド2018 banner


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(翻訳:sako)

UberがLinux Foundationに加盟してオープンソースツールへのコミットを強化

Uberが今日の2018 Uber Open Summitで、同社がLinux Foundationにゴールド会員として加盟し、オープンソースのツールの利用と寄与貢献にコミットしていくことを発表した。

UberのCTO Thuan PhamにとってLinux Foundationは、同社がオープンソースのプロジェクトを育(はぐく)み開発していくための場所だ。“オープンソースの技術はUberの中核的サービスの多くを、そのバックボーンとして支えている。会社の成熟とともに、これらのソリューションはますます重要になっている”、と彼はLFへの加盟を発表するブログ記事で述べている。

意外なのは同社が参加したことでなく、それまでに要した年月の長さだ。Uberはかなり前から、その中核的ツールにオープンソースを多用していることで知られていたし、同社の資料によると、これまで320あまりのオープンソースプロジェクトとリポジトリに関わり、1500名のコントリビューターが70000あまりのコミットに関わっている。

Uberのスポークスパーソンは次のように語った: “Uberは何年も前から、オープンソースによる共有的ソフトウェア開発とコミュニティのコラボレーションに有意義な投資をしてきた。その中には人気の高いオープンソースプロジェクト、分散トレーシングシステムのJaegerへのコントリビューションもある。また2017年にはLinux Foundation傘下のCloud Native Computing Foundationに加盟している”。

Linux Foundationの事務局長Jim Zemlinも、Uberの加盟を喜んでいる。声明文に曰く: “彼らの専門的な技能や知識は、これからクラウドネイティブ技術やディープラーニング、データ視覚化など今日のビジネスにとって重要な技術の、オープンなソリューションを進めて行かなければならないわれわれのプロジェクトにとって、きわめて有益である”。

Linux Foundationは数多くのオープンソースプロジェクトがその傘下にある支援組織で、Uberのような企業がオープンソースのプロジェクトをコミュニティに寄与貢献しメンテナンスしていくための、組織構造を提供している。そしてその傘の下には、Cloud Native Computing Foundation, Cloud Foundry Foundation, The Hyperledger Foundation, そしてLinuxオペレーティングシステムなどの専門的組織が並んでいる。

これらのオープンソースプロジェクトをベースとして、コントリビューターの企業やデベロッパーコミュニティが改良やフォークを重ね、自分たちのビジネスに活かしていく。Uberのような企業はこれらの技術を使って自分のバックエンドシステムを動かし、サービス本体は売らないけどオープンソースのオープン性を利用して自社の将来の要求も満たしていく。その際はコントリビューターとして貢献することになり、取るだけでなく与える側に回る。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Tesla、トラック輸送会社を買収して12月31日前の納車能力を強化

Tesla CEO Elon Muskは木曜日(米国時間11/15)、同社が「トラック輸送能力を手に入れた」とツイートした。連邦税優遇が減額される12月31日までに同社のModel 3の納車能力を強化するためだ。

当初Muskは「トラック輸送キャパシティーを手に入れた(acquired)」の意味を説明しなかった。同社は買収(acquire)に関する法的書類を提出しておらず、TechCrunchの質問にも回答しなかった。

後にMuskは、Teslaがトラック輸送会社を買収するとともに、「前四半期の輸送能力不足の失敗を避けるために」大手運送業者と契約を結んだとツイートした。

Teslaにとって年が終わるまでにできるだけ多くの車を送り出すことはことは絶対条件だ。国の電気自動車優遇税制によって電気自動車を買った顧客は7500ドルの税額控除を受けられる。しかし、ひとたびある自動車メーカーが電気自動車を20万台売ると、その会社の税額控除は減額されていく。

今年10月、Teslaは20万台目の電気自動車を納車した。この実績によって7500ドルの税額控除のカウントダウンが始まった。現行規則の下では、Teslaの顧客が税額控除の全額を受けるためには、Model S、Model XまたはModel 3を12月31日までに受け取る必要がある。

ここで「受け取る」が重要な用語だ。納車期限を守れない場合、税額控除を期待して滑り込みで購入した客たちの激しい反発が起きる可能性がある。

そして、Model 3の生産を増強中の同社にとって輸送は大きな課題だ。同社の第3四半期にとって物流は大きな弱点だった。顧客からは新しいModel 3の納車遅延や受け取り方法に関する報告が相次いだ。結局何百人というTeslaオーナーが、あちこちのTeslaショールームに足を運び、そこではModel 3が手渡され顧客たちは同社の目標達成に一役買うこととなった。

トラック輸送業界の複数の情報源が、Teslaは小さなトラック輸送会社を1社から2社以上買ったのではないかと憶測している。Teslaが以前取引きしたことのある会社が有力だという。

画像クレジット:Smith Collection/Gado /Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

不動産の“時間貸し”当たり前にーースペースマーケットが東京建物とタッグ、VCらからの調達も

写真左から、東京建物代表取締役社長執行役員の野村均氏、スペースマーケット代表取締役社長の重松大輔氏、XTech Ventures共同創業者の西條晋一氏

「今までは“売買”と“賃貸”しかなかった不動産市場で、新しい選択肢として“タイムシェア(時間貸し)”の文化を作っていく。不動産の運用のあり方を根本から変えるようなチャレンジをしていきたい」

そう話すのはスペースマーケット代表取締役社長の重松大輔氏だ。同社では2014年4月より、さまざまなスペースを1時間単位で貸し借りできるプラットフォーム「スペースマーケット」を運営。現在は会議室や撮影スタジオ、映画館、住宅などバラエティ豊かなスペースが1万件以上も掲載され、個人・法人問わず幅広い“場所探し”のニーズに応えるサービスへと成長している。

そんなスペースマーケットが不動産の利活用にさらなら変革を起こすべく、業界の大物とタッグを組むというニュースが飛び込んできた。その相手は創立から120年を超える東京建物だ。

スペースマーケットは11月16日、東京建物と資本業務提携を締結したことを明らかにした。合わせてXTech Ventures、オプトベンチャーズ、みずほキャピタル、千葉功太郎氏を引受先とした第三者割当増資を実施したことも明かしている。

今回の資金調達は同社にとってシリーズCラウンドの一環という位置付け。具体的な調達額は公開されていないけれど、数億円規模になるという。

ローンチから4年半、幅広い用途で使われるプラットフォームに

TechCrunchで最初にスペースマーケットを紹介したのはサービスローンチ時の約4年半前のこと。当時は会議や研修、イベントなどのビジネス用途が多く“ビジネス向けのAirbnb”と紹介していたけれど、今ではパーティーやスポーツ、個展などプライベートでの利用も増えている。

重松氏の話では特にここ1〜2年で利用者の層や数も広がったそう。たとえば最近は働き方改革の波にも乗って、フリーランスや副業講師のレッスンやセミナーのスペースとして活用されるケースが増加。ヨガスタジオやトレーニングジム、多目的イベントスペースなどが人気だ。

背景にはそもそもユーザーが借りたいと思うスペースが増えたことがある。ローンチ時は“お寺”や“球場”などユニークなスペースを借りられるのがひとつのウリだったけれど、近年は幅広い用途で使えるおしゃれなクリエイティブスペースが集まってきた。

その結果として写真やロケ、CMの撮影場所として頻繁に使われるスペースも出てきているそうだ。

ここ数年で利用者の“シェアエコ”サービスに対する距離感も変わってきた。重松氏も「メルカリを始めさまざまなシェアリングサービスが登場し、他のユーザーと直接モノを売買したりシェアしたりすることへの抵抗感も減ってきているのではないか」とトレンドの変化が利用者層の拡大にも影響しているという。

そのような背景もあり、スペースマーケット自体もリリースから4年半の月日を重ねる中で“空きスペースのシェアリングプラットフォーム”としてのポジションを徐々に確立し、貸し借りのサイクルが回るようになってきた。

とはいえ重松氏が「自分の周りでも徐々に使われるになってきてはいるものの、認知度調査などを実施してみてもまだまだ認知度が低い」と話すように、世間一般で広く知られている状態にはまだ至っていない。

同社にとって今回の資金調達はこのサイクルをグッと加速させるためのものでもある。調達した資金を活用して今後大規模なマーケティング施策を実施する計画だ。

不動産大手にも広がる“シェアエコ”の波

ここ数年で変わってきたのは一般の消費者だけではなく、企業も同じ。特に大企業のシェアリングに対する考え方が一気に変わってきたというのが重松氏の見解だ。不動産関連では日本でも最近WeWorkの話題を耳にすることが増えてきたけれど、それに限らず大手ディベロッパーがコーワキングスペースを開設するなどシェアエコの波が広がり始めている。

冒頭でも触れた通り、従来の不動産市場においては売買と賃貸の二択が基本路線で、そこに時間貸しという概念が入ってくることはほとんどなかった。結果的にそのどちらも難しい場合は“遊休不動産”として使われずに放置されてしまっているのが現状だ。

時間貸しすることで有効活用できるポテンシャルがあるのは、遊休化したスペースに限らない。個人の自宅やオフィス、店舗などにも使われていない時間帯や空間が存在する。実際スペースマーケットではそのようなスペースの貸し借りが活発に行われてきた。

「ビッグプレイヤーが参入してきてこそ、この流れが本物になる。実は昔から大手のデベロッパーと話をしたりはしていたが、当時はなかなか具体的な話になるまでに至らなかった。(東京建物とタッグを組むことで)不動産の時間貸しをさらに加速させられると考えている」(重松氏)

東京建物が2018年10月20日にグランドオープンした「Brillia 品川南大井」のモデルルーム。今後このスペースをスペースマーケット上に掲載して貸し出す予定だ

不動産の時間貸しを当たり前にする挑戦

今回、東京建物側の担当者である古澤嘉一氏にも少し話を聞くことができたのだけれど、興味深かったのが「不動産の活用について“柔軟性”と“契約期間”の2軸でマトリクスを作って考えてみると、両社は真逆にいるようなプレイヤーだ」という考え方だ。

東京建物の場合は基本的にある程度長いスパンで顧客に不動産を提供し、従来からの伝統的なスタイルで顧客と関係性を築く。一方のスペースマーケットは登録されたスペースが1時間単位で、かつさまざまな用途で活用される。

「この間には不動産の活用方法に関する無数の選択肢がある。たとえばウィークリーマンションのようなものもそのひとつだし、ホテルに関しても家族が長期間宿泊することにフォーカスを当てたものがあってもいい。いろいろな答えを探っていくなら、完全に逆サイドのプレイヤーと組むのが1番おもしろいと考えた」(古澤氏)

ちなみに東京建物がスタートアップに直接出資を行うのは初めてのことなのだそう。両社では今後さまざまな角度から不動産活用の選択肢を模索していくようだけれど、まずは足元の取り組みとして東京建物の保有するアセットをスペースマーケット上で運用していく方針だ。

一例としてマンションのモデルルーム内のスペースを休業日に貸し出したり、再開発エリアにある未利用の開発用不動産を活用したりといったことから取り組む。賃貸不動産や商業施設などのシェアスペースを取り入れた空室活用や、シェアスペースを前提とした新しい不動産の開発も検討するという。

八重洲の再開発事業の対象エリアにあるヤエスメッグビル。同ビル内の地下音楽ホールもスペースマーケット上で有効活用する計画

「事例ができれば可能性も広がる。まずは事例を積み重ねて、業界の中でもシェアエコの話や不動産の時間貸しの話が普通に交わされるようにしていきたい。2〜3年後、“設計の段階からシェアすることを前提とした不動産”が作られるような段階が訪れた時に、いち早くその考え方を取り入れ業界を盛り上げていけるような存在になれれば」(古澤氏)

「自分たちの中では、これから不動産のタイムシェアが当たり前になると思って事業に取り組んでいる。歴史のある業界のガリバーと組んで、不動産業界を変えていくための第一歩にしたい」(重松氏)

Facebook、政府によるユーザーデータ要求命令を公表

Facebookは、過去13件のユーザーデータを要求する国家安全保障書簡の詳細を公開した。

難題続きのソーシャルメディア巨人は、書簡は2014年から2017年にかけて送られ、FacebookおよびInstagramの複数のアカウント情報を要求するものだと語った。

こうしたデータ要求は事実上の召喚状であり、FBIが一切の司法審査なしに発行し国家安全保障捜査で名前の上がった個人のデータの一部を提出するよう企業に強要する。これには議論がある——なぜなら書簡には口外禁止命令が課され、企業はその内容はおろか、書簡の存在すら公表することが許されないからだ。

企業は多くの場合、ある人物がやりとりをした相手全員のIPアドレス、オンライン購入情報、メール記録、携帯電話位置情報データなどの提出を求められる。

しかし、エドワード・スノーデンの暴露の結果自由法案が通過して以来、FBIは定期的に口外禁止規定を見直さなければならなくなった。

FacebookのChris Sonderby法務部長代理は、今年に入って政府は書簡の守秘義務命令を解いたと語った。

「われわれはアカウント情報に関する政府の要求を常に精査し、法的に有効であることを確認している」とSonderbyは言った。

Facebookが国家安全保障書簡を公表したのはこれが初めてではない。2016年に公表した最初の書簡は2015年に発行されたものだった(公開済みの国家安全保障書簡はすべてここで読むことができる)。

Facebookが国家安全保障書簡の情報を公開したのは、New York Timesが極めて批判的な記事を書いた翌日のことだった。記事はここ数年Facebookがさまざまなスキャンダルから目をそらすために行ってきたいかがわしい戦術の数々、たとえば活動家や抗議者の信用を失墜させようとした企みなどを暴いている。

Facebookの最新の透明性レポートによると、政府のデータ要求の件数は、全世界で前年の8万2341件から10万3815件へと26%急増した。

米国政府による顧客データの要求は30%増の4万2466件で、7万528アカウントが影響を受けた。同社によると、その半数以上が口外禁止条項を伴っており会社はユーザーに通知することができない。

法的命令のほとんどは裁判所が認めた捜査令状だ。

最近の報告期間について、Facebookはその他の国家安全保障命令の件数が前年の2倍以上に増えたことも語った。2016年7~12月の1万2500~1万2999アカウントから、2017年1~6月は2万5000~2万4999アカウントに増えた。

現行の司法省報告規則では、企業は6ヶ月間の報告猶予期間を与えられている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook