バックオフィス業務をクラウドで支援するBizer、スタートアップの株主関連業務を効率化する新サービス

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投資家やVCから出資を受けて成長を目指すスタートアップにとって、会社運営の節目ごとに必要となる重要な業務が株主総会の手続きや株主管理だ。しかし立ち上げて間もない企業にとって、専任で株主関連業務を担当する人員を最初から確保するのは、なかなか困難なことも多いだろう。

中小企業向けのバックオフィスサービスを提供するBizer(バイザー)は3月1日、外部株主から資金調達をするスタートアップや中小企業を対象に、クラウド上で株主関連業務や株主とのやり取りをワンストップで行えるサービス「Bizer IR」の提供を開始した。

Bizer IRでは、株主名簿の作成、株主への株主総会招集通知や招集手続、総会関連情報や報告書の共有、総会議事録の共有等、株主総会に関わる業務をまとめて管理できる。また、株主とのファイル共有・連携が可能な「バインダー」機能により、必要なファイルがまとめて保管・閲覧できるため、必要な書類が漏れなくシェアでき、企業側のファイルのやり取りなどの業務負荷が軽減できるほか、VCなど、多忙な株主にとっても出資先とのやり取りや管理を効率化できるという。

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Bizer IRのベースになるサービス「Bizer」は、会社設立をはじめ、総務・人事労務・経理などのバックオフィス業務をまとめて管理できるクラウドプラットフォームだ。このBizerに含まれる「ToDoリスト」機能を活用することで、株主総会開催に必要な手順・業務も、抜け漏れなく遂行できる仕組みとなっている。

Bizer社代表取締役の畠山友一氏は「多くのスタートアップにBizerを使ってもらう中で、定時株主総会の開催はしたとしても議事録を株主と共有するといったコミュニケーションや、そもそも誰が何株保有しているのかといった株主管理を行うツールがないことが分かってきた。また、議事録などの書類や株主管理の必要性が理解されていなくて、シリーズBぐらいになって出資を受ける際に、過去の議事録を求められて困った、というケースもある」と言う。

2016年10月以降、商業登記の申請には、株主総会議事録とあわせて株主リストの添付が義務付けられ、株主管理の重要性は高まっている。一方で、株主総会招集のネットでの通知については、現在は株主の同意が義務付けられているが、同意なくネットで提供できるようにするための会社法改正の議論が進められ、株主関連業務のあり方も変わろうとしている。

これらの背景をもとに「株主関連業務や株主との情報共有で『これさえやっておけば大丈夫』というスタンダードになるサービスを作ろうと思った」と畠山氏は話す。

Bizer IRのリリースにともない、Bizerにもバインダー機能が組み込まれ、税理士、社会保険労務士といった士業の外部パートナーとの業務管理やファイル共有などの連携が、Bizer上で一括して行えるように強化されている。Bizer IRの利用料金は、Bizerと同じ月額2980円(税込)だが、今後、このバインダー機能を利用できる招待ユーザー数によって、料金が変動するプランを4月から取り入れるそうだ。「順調に調達が実施できて、士業パートナーのほかにもコミュニケーションする株主が増える、シリーズA〜Bぐらいのフェーズの企業からは上のプランを使ってもらうことを考えている」(畠山氏)

Bizer社では2月より、VCから資金調達をしているシリーズAフェーズまでのスタートアップ企業約100社を対象にBizer IRのβ版を先行公開し、モニター提供していた。その多くはバインダー機能を株主のほか、顧問税理士や顧問弁護士とのやり取りに利用していたそうだが、面白い利用方法があったと畠山氏は言う。「産業医と、これまではメールで行っていた社員の健康診断情報のやり取りに利用していて、なるほどと思った。10人、50人規模の会社では産業医が付くことはないだろうけれども、150人規模ぐらいになると、そうしたニーズもあるのかと。自分自身、スタートアップの経営者として自分が欲しい機能やサービスを作ってきていて、Bizerのヘビーユーザーとしての自負もあるけれど、これは他にも利用できるケースがあると思う。そうしたニーズに合わせて、Bizer IRに続くサービスを作っていって、Bizerを中堅規模の企業にも広めていきたい」(畠山氏)

HR Techの最前線を知る―、3月14日にTechCrunch Schoolを開催、参加者募集開始!

TechCrunch Japan主催のミニイベントを3月14日火曜日の18時半から外苑前で開催するのでお知らせしたい。「TechCrunch School #9:HR Tech最前線 presented by エン・ジャパン」と題して、登壇者、参加者の皆さんとHR Techの現状と未来について語ろうと思う(これまでのTechCrunch School開催分はこちらを参照)。

ナントカTechといえば、最近はFintechという言葉を聞くことが多い。もともと金融は数字やデータの世界なので、ITと相性が良いからファイナンスとテクノロジーの融合は自然な流れだ。もっとも、この場合に「テクノロジー」が指すものはクラウドやスマホ、あるいはビッグデータやAIに代表される新しいソフトウェア開発手法や配布形態を指していると考えたほうがいいのだろうけど。

ともあれ、Fintechと同様に農業とテクノロジーの融合領域を「AgriTech」と呼んだり、広告分野を「AdTech」、教育へのテクノロジーの適用を「EdTech」などと呼ぶことがある。この流れでいま注目を集め始めているのが人材分野(ヒューマン・リソース)でのテクノロジーの適用、つまり「HR Tech」だ。

狭義には人材の採用、教育、評価、配置、福利厚生など人事関連の業務を、クラウドやデータを使って可視化もしくは効率化するものをHR Techと呼ぶ。広義には給与計算や面倒な労務関連の業務まで含めてHR Techと呼んでいいだろう。後者はバックオフィス系事務だが、これらはいずれつながっていくだろう。人材評価と給与計算は繋がっているべきだし、入社手続きと保険関連の労務手続きは地続きであるべきだろう。企業財務のFintechと重なる領域で成長するスタートアップも出てくるだろうし、B2B2Eモデルで社員の健康管理・増進のためのサービスやデバイスを提供するヘルステック系もHR Techと定義していいのかもしれない。

さまざまな切り込み方で立ち上がるHR Tech系スタートアップのニュースは日々お伝えしているが、その一方で、以前TechCrunch Japanに掲載した「HR Technology Conferenceに見る人材領域イノベーションと日米温度差」にある指摘のように、日本は米国に対してどうもHR Techでは数年から10年ほど遅れを取っているようにも思われる。

そこで今回、日本のHR Tech関連のスタートアップ企業の経営者らに自社プロダクトや業界動向、予測を語っていただくことで、HR Techの未来を占うような議論が深められればと思う。「お題目は美しいんだけどね、いや、現場で使えないんだわー」というような、生っぽい声も聞きたいので、HR Techを実際に使用する立場にある人事担当者からも導入例やニーズなどを聞ければと思う。

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写真左上から時計回りに石黒卓弥氏(メルカリ)、寺田輝之氏(エン・ジャパン)松田晋氏(サイダス)、宮田昇始氏(SmartHR)

スピーカーは、一昨年のTechCrunch Tokyoスタートアップバトルで優勝した「SmartHR」を提供するKUFU代表取締役の宮田昇始氏、組織内の人材の可視化と最適配置を実現する「サイダス」の代表取締役の松田晋氏、5分で採用ページが作成できて利用が無料という「Engage」を提供するエン・ジャパンのデジタルプロダクト開発本部本部長の寺田輝之氏、それから会社全体が急成長をしていて攻めの採用をしているスタートアップ企業、メルカリ HRグループの石黒卓弥氏にもご登壇いただく予定だ。

HR Techでの起業や新規サービスを検討している人はもちろん、現場の人事担当者、採用担当者の方々にも是非会場に足を運んでいただければと考えている。事前の参加登録は必須だが、参加自体は無料。軽食をご用意してTechCruch Japanスタッフもお待ちしているので遊びに来てほしい。参加申し込みはこちら


TechCrunch School #9 「HR Tech最前線」 presented by エン・ジャパン

【開催日時】3月14日(火) 18時半開場、19時開始
【会場】エウレカ セミナースペース(外苑前)
東京都港区南青山2-27-25オリックス南青山ビル6F(地図)
東京メトロ銀座線 外苑前駅 1a 出口 徒歩1分
【定員】100人程度
【参加費】無料
【ハッシュタグ】#tcschool
【主催】 AOLオンライン・ジャパン株式会社
【協賛】エン・ジャパン株式会社
【事務局連絡先】tips@techcrunch.jp【当日イベントスケジュール】
18:30 開場・受付
19:00〜19:05 TechCrunch Japan挨拶
19:10〜20:30 パネルディスカッション
20:30〜20:40 転換
20:40〜22:00 懇親会(アルコール、軽食)【スピーカー】
KUFU 代表取締役 宮田昇始氏
サイダス 代表取締役 松田晋氏
エン・ジャパン デジタルプロダクト開発本部本部長 寺田輝之氏
メルカリ HRグループ 石黒卓弥氏
TechCrunch Japan編集長 西村賢(モデレーター)

10ドルのRaspberry Pi Zero Wは最初からWi-FiとBluetooth内蔵の超便利なラズパイだ

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5ドルのRaspberry Pi Zeroが出たときには、みんなが大歓迎して、ありとあらゆるものにそれをくっつけようとした。1GHzのシングルコアのCPUで動く超小型ゲーム機が作られたり、Pi専用のアドオンボード(ブレークアウト基板)Hatをいろいろ作って、ロボットやセンサーを動かす人たちもいた。そして今度からは、Wi-FiやBluetoothのドングルを使わなくても、それらすべてができるようになった。

その10ドルのPi Zero Wは、ワイヤレスを内蔵したZeroだ。mini-HDMIとmicro-USBのポートがあり、Hat用の40ピンのヘッダもある。コンポジットビデオやCSIカメラのコネクターもある。

Raspberry Piを作ったEben Uptonはこう書いている: “ほとんどの場合、ハブは必要だから、汎用のコンピューターとしてはこの方が使いやすい。Bluetoothの周辺装置を使いたい人にとっては、USBのポートだけあっても嬉しくないからね。しかもこれなら、いろんなIoTアプリケーションの実験ができる”。キーボードやマウスも、ワイヤレスを使えるから便利だ。

Pi Zero Wには使いづらい面も多少はある。ZeroもZero Wも同じLinuxコンピューターだが、Zeroはとても小さいからデスク上などには実装しづらいだろう。しかしIoTには格好で、先輩のArduinoにも劣らない。なお、フルサイズのUSBポートがないと、初心者は困るかもしれない。

Wには、シャーベットカラーのケースがついている。ケースはボードによくフィットしており、ピンやポート用の切れ込みもある。カメラ用のリボンコネクタもある(下図)。

Wi-Fi内蔵のマイコンが10ドルは、かなりの労作である。しかもこんな小さなボードが年月とともにさらにどんどん小さく(そして強力に)なるのも、快挙だ。ぼくはツイートの自動化と印刷をPiにやらせているが、何かがおかしくなったら、簡単に交換できるのも気軽で良いね。Piファンが作ったこのビデオを見てみよう。とにかく、すばらしい。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

日本のVRスタートアップ、ダズルが2億円を調達 ― VR分析ツール「AccessiVR」を6月に正式リリースへ

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「Dazzle VR ROOM」の様子

「VR元年」と呼ばれた2016年も、あっという間に過ぎ去ってしまった。でも、VR業界の注目度は高いままだ。

VRプロダクト向け分析ツールの開発を手がける日本のダズルは3月1日、施工図作図や技術者派遣を行う夢真ホールディングス、およびグループの夢テクノロジーから総額2億円の資金調達を完了したと発表した。同社は2016年5月に同じく夢真HDから1億5000万円を調達しており、累計調達金額は3億5000万円となる。

これにともない、ダズルの監査役に夢真HDの佐藤義清氏、そしてスマートフォン向けサービス開発を手掛けるアクロディアの永山在郎氏が就任。また、経営顧問にスカイマーク元代表取締役会長の井出隆司氏が就任する。

ダズルはこれまでに、スマホゲームやVRゲームなど数点のゲームコンテンツをリリースしてきた。なかでも、スマホRPGの「ヴァリアントナイツ」は累計140万ダウンロードを達成している。そして、本日からクローズドβを開始するのが、VRプロダクト向け分析ツールの「AccessiVR(アクセシブル)」だ。今回調達した資金もこの開発費用に充てられる。

AccessiVRは、VRプロダクトの分析および運用サポートサービス。同ツールを利用することで、ユーザーがどこでコンテンツから離脱したか、そして、ユーザーがコンテンツのどこを見ているのかをヒートマップで確認することなどが可能だ。このヒートマップは、ユーザーが向いている方向の中心を視点とするかたちで作成されているそうだ。Unity5、Unreal Engine4など、国内外で使用される主要な開発言語に対応していて(Unreal Engineは正式版から)、対応デバイスもOculus Rift、Gear VR、HTC Viveなど幅広い。 data2

具体的な料金プランは未定だが、導入費用と初月利用料は無料で提供される見通しだ。正式版のリリースは6〜7月頃を予定している。

VRプロダクト向け分析ツールの例として挙げられるのが、バンクーバーの「cognitiveVR」だ。また、開発ツールであるInstaVRでもヒートマップ分析機能などが利用できるようになっている。コンテンツメーカーだったダズルがAccessiVRをリリースすることで、それらの分析ツールと直接的な競合関係になるわけだ。代表取締役CEOの山田泰央氏は、「日本企業として地の利を生かし、まずは日本、次に中国、そしてアジア諸国というかたちでアジアのマーケットを素早く獲得していく。アジアはVRにとって重要なマーケットになると思う」と今後の戦略について話す。

また、AccessiVRはプロジェクトの予算やKPI目標の設定、そしてその管理などが可能な「運用サポート機能」が備わっていることも差別化要因の1つだと山田氏は語る。加えて、「ライトなSDKをつくるという点にはかなり注力していて、他の分析ツールと比べてFPSのロスが少なくなるように開発している」そうだ。

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CEOの山田泰央氏(写真左)とCOOの出口雅也氏

今後、コンテンツメーカーだったダズルが分析ツールという新しい分野にビジネスを拡大していく。中長期的には、分析ツール開発事業がダズルの柱になっていくようだ。「分析ツールを開発して提供するためには、僕らでもコンテンツをつくって社内でもPDCAサイクルを回さないと顧客と対話できない。だからこそ、現在はVRゲームの開発も行っている」と山田氏は話す。

それと、TechCrunch Japanの読者であれば、少なくとも1ヶ月に1度くらいは日本のVR企業に関する記事が公開されていることにお気づきのことだろう。この市場に対する注目度は高いし、ポテンシャルも大きい。Goldman Sachs Asset Managementは、2025年にVR/AR市場は約800億ドルへと拡大し、PC・スマートフォンに続く第3のプラットフォームとして市場を形成する可能性があると予測している

僕たちが最近取り上げたものだけでも、CADデータを使ったVRコンテンツの「ワンダーリーク」VRアプリ開発ツールの「InstaVR」ヘッドマウントディスプレイ(HMD)の「FOVE」VR特化型インキュベーション施設の「Future Tech Hub」VR触覚コントローラーの「H2L」などがあり、日本のVR業界全体の温度が徐々に上がりつつあるように感じる。2016年に約12億円を調達したFOVEや今回のダズルをはじめ、日本のVR業界でも大型の資金調達も増えてきている。

ところで、VR業界全体の構造がある程度形成されるにつれて、「Oculus Store vs SteamVR」というコンテンツプラットフォーム争いの構図が生まれた。これについては、以前FOVEの小島由香氏も言及している。これまでVRコンテンツを製作してきた山田氏に意見を聞くと、「Steamにはコアなゲームユーザーが多く、それだけHMDを持っているユーザーの率も高いと思う。また、長年ゲームプラットフォームとしてやってきただけあってコンテンツメーカーへの対応も優れていて、結果的にリリースまでの時間が短いのもSteamだ」との話があった。多少、Steam有利の感はあるのだろうか。

かつてフリーランスエンジニアだった山田氏が、「クリエイターが楽しく働ける環境を作りたい」という思いで2011年に立ち上げたのがダズルだ。そして、同社は2015年にVR事業を本格化。現在は40人の従業員をもつ。また、「VR元年と呼ばれた2016年を過ぎた今年だからこそ、VRに触れる機会を提供したい」というアイデアがきっかけで、同社は3月22日までオフィスの一部を開放。「Dazzle VR ROOM」と銘打ってVR体験スペースを提供している。

GoogleのノートアプリKeepがG Suiteに統合、Google Docsからも利用やアップデートが可能

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Google Keepは、EvernoteやMicrosoftのOneNoteなどと競合するノートアプリだが、今日(米国時間2/28)からはそれが、Googleのオフィスアプリケーションの集合体G Suite(元の名: Google Apps for Work + Google Apps for Your Domain)に統合される。これによりKeepはユーザーのワークフローの一部として、アイデアをメモる、リマインダーやトゥドゥを備忘する、何かのチェックリストを作る、会議でメモを取る、などなどのことができるようになる。Keepが単独でG Suiteに加わるだけでなく、これからはGoogle Docsにも統合される。

Docsとの統合により、Keepの内容を仕事のそのほかのドキュメントへドラッグ&ドロップする、などのことができるようになる。それができるのはWeb上のみだが、Keepを利用するドキュメントは最初にブラウザー上に開いていなければならない。そして、そのドキュメントの[Tools]メニューからKeepにアクセスする。Keepの内容はDocsのサイドバーに表示される(下図)。

そしてそこから、画像やチェックリストなども含めて、Keepの内容を作成中の文書へ持ち込める。

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Google DocsからKeepを検索することもできる。またDocsで作業中にKeepの内容を更新できる。ドキュメント中のテキストをセレクトして、右クリックのメニューから“Save to Keep notepad”を指定するとよい。

この統合がお利口なのは、そうやってKeep上にコピーしたテキスト中に元の文書のリンクがあることだ。

いろんな職場ですでに日常的にKeepは使ってると思うから、今回の‘ビジネス的統合’は良いことだ。それによりKeepは、ユーザーのドメイン内に安全にキープされるようになる。管理やサポートも、そして検索も、G Suiteの一部として行われる。

Keepは今日(米国時間2/28)からG Suiteのユーザーに提供される。使えるのは、Android, iOS, Chrome, またはWeb上からだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Google Playストア、ランキングの決定にユーザー定着率も考慮

Nexus 5X smartphone, co-developed by LG Electronics Inc. and Google Inc., and manufactured by LG Electronics, sit on display at the NTT Docomo Inc. unveiling in Tokyo, Japan, on Wednesday, Sept. 30, 2015. Docomo, Japans largest mobile-phone carrier by subscribers, introduced 10 smartphone models today. Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg via Getty Images

GoogleはアプリストアのGoogle Playに大きな変更を加え、ユーザーが最高のゲームを見つけやすくする。Game Developer Conferenceでの発表によると、最近同社はGoogle Playのアルゴリズムを変更し、ダウンロード数だけでなくユーザーエンゲージメント(定着率)も考慮するようにした。これによってインストールされたままのアプリより、よく使われる質の高いアプリが優遇されることになる。

ゲーム業界はこの動きによって、マーケティング方法に深刻な影響を受けるかもしれない。多くのゲーム会社は、Google Playのランキングを上げるためにユーザーの端末にインストールされることだけを目的とした広告キャンペーンを打っているからだ。

中にはアプリのインストール数自体が疑わしいものもある。エンドユーザーによる真のダウンロードではなく、ランキングアップのために作られたツールを使った偽ダウンロードのことだ。今回のランキングアルゴリズムの変更によって、順位の操作は難しくなるはずだ。

screen-shot-2017-02-27-at-9-09-43-amGoogleがブログで説明している:

「…すばらしいゲームが陽の目を見ず、しかるべき注目を欲びないことがよく起きている…これはGoogleが質の高いアプリに報る方法の一つであり、ゲームメーカーは使われ続けるアプリを作らなくてはならないことを意味している。定着率のほかに「星」の数等の伝統的な基準も考慮される」

ブログ記事にはアルゴリズム変更の詳細は書かれていない。Googleは同時にPlay Storeの新しい編集部ページ(Editorial Page)を今月中に開設することも発表した。これは編集者の目で選んだタイトルをユーザーに紹介するもので、Appleが現在やっていることと似ている。

それでもGoogleは、アルゴリズム変更がPlay Storeのトップチャートおよびジャンル別のチャートに向けたものであることをTechCrunchに明かした。

Googleも(ライバルの)Appleもランキングのアルゴリズムについて詳しく語っていないが、両者ともダウンロードの数とスピードを重視して順位を決めている。またAppleは、レーティングやレビュー、利用データ等の測定値も考慮すると言っている。

アルゴリズム変更以外にも、プロモーション用の抹消線付き価格や、新しい編集部ページ等、、Androidデベロッパーに関係のある数多くの変更が発表された。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

トランプの元選挙参謀の家族のテキストメッセージがハックされ闇サイト上で公開

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トランプの選挙戦とロシアとの関係をめぐる疑問が高まる中、大統領の元側近の少なくとも一人が、DNC的扱い*を受けたようだ。〔*: DNC, Democratic National Committee, 民主党全国委員会; DNC的扱い, ハックされたこと〕

Politicoの記事によると、今闇サイト(dark web)に出回っているデータダンプの中には、Paul Manafortの娘Andreaが送受した28万あまりのテキストメッセージがある。Manafortは2016年の8月までトランプの選挙参謀だったが、ウクライナの親ロシア派たちとの仲が明らかとなって以降、退いた。

そのテキストの中でAndrea Manafortは、彼女の父親の“ウクライナにおける仕事と報酬は法的にも疑義がある”と述べ、彼がウクライナの前大統領Viktor Yanukovycとの関係を通じて蓄積した富を “血で汚れた金(blood money)”と呼んでいる。Yanukovycは現在ウクライナで国事犯として訴追され、ロシアに逃亡している。

このハックはAndrea ManafortのiPhoneのデータにアクセスして行われた、と見られており、そのデータはローカルに保存されるか、またはiCloudのアカウントへシンクされていたもののようだ。Politicoの記事は、ファイルをポストした“活動家ハッカー集団(hacktivist collective)”の名を挙げていないし、自分たちが最初の発見者だとも言っていない。先週のPoliticoの記事は、Manafortがトランプの大統領選に仕えていた間、恐喝されていた、と報じている。これも、今回のテキストと同じWebサイトがニュースソースのようだ。

8月にPaul Manafortは、娘の一人がフィッシングによりハックされたと疑い、Andreaにこう警告したらしい: “お前の姉〔妹?〕がハックされた。今日彼女から来たメールは、‘重要なドキュメント’があった、Googleのスプレッドシートを共有した、と言っている。もちろん、それを開いてはいけない!”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Fordのコンセプト、自動運転バンは配達ドローンの移動基地

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Fordが新たに発表した“Autolivery”バンのコンセプトは、名前はひどいが中身は興味深いアイデアでいっぱいだ。このバンはFordの社内チャレンジプロジェクト “last mile mobility” の成果の一つだ。電動自動運転バンに無人ドローンを積み、顧客の戸口まで最後の何メートルかの配達を受け持つ。

Fordのこのバンはまだ全くのコンセプトであり、 Mercedesの物理的コンセプトや2月に発表されたUPSの配達ドローンよりもリアルに遠い。現在はどう動くかを見られるのはVRだけで、しかもバルセロナのMWCに行かなくてはならない。それでもこのアイデアは多くの自動車メーカーや運送会社にとって大きな意味があるだろう。

技術的には間違いなく興味深いし、コストや効率についても理にかなっているが、この種のしくみが実現するためには多くの規制をクリアしなければならない。それでも自動運転トラックは渋滞で待たされてもイライラしないし、自動飛行ドローンは、シフトの終りが近いからとか工事車両で通行止めだからとか言って配達を諦めたりしない。

Fordは2021年までに自動運転車を市場に投入する計画もあるので、仕事の半分はそれで完了する。車載ドローンがそこから飛び立てるようになるのは時間の問題だろう。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

NASA、SpaceXの月旅行支援を発表―さらなる野心の現れだ

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SpaceXが来年乗員2名を月周回軌道に往復させるという計画を発表して世界を驚かせたのに続いて、NASAがSpaceXのプロジェクトを支援するという声明を発表した。短い声明だが言外の意味は大きい。民間企業の宇宙進出は政府機関の宇宙開発も拡大させる追い風となるようだ。

この声明は、「民間企業に協力することは宇宙の商用利用(という付随的任務)からNASAを解放し、次世代ロケットや宇宙船の開発、月以遠の宇宙の探索という本来の任務に専念することを可能にする」としている。

これはつまり「そこなら行ったことがある!」というたぐいの旅行の自慢話的な任務からNASAを切り離すという宣言だろう。「月? クールだね。なるほど1969年には最前線だった。SpaceXが再訪するというのはけっこうなことだ。初めて行く人は興奮するだろう。われわれは火星や木星に集中できる。惑星探査は素晴らしい任務だが、とてつもなく時間と資金を食う。SpaceXが月に行くのを引き受けてくれるなら素晴らしい」という意味に違いない。

NASAははるか昔から民間企業が宇宙を自由に利用できるエコシステムを建設しようと努力してきた。商用利用の主役が民間企業になれば、NASAは限られた資源を深宇宙の探査に振り向けることができる。実際これがNASAの本来的使命でもある。もっともSpaceXなどの民間企業自身が火星以遠への旅行について興味を示しており、ライバルになる可能性がある。

ともあれ宇宙マニアにとっては目が離せない展開になってきた。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

日産がロンドンで自動運転車のテストを開始

Nissan Motors' autonomous drive vehicle is displayed at the company's showroom in Yokohama on May 13, 2015. Nissan on May 13 said its fiscal-year net profit soared 17.6 percent to 4.2 billion USD, crediting a weak yen and new model rollouts for buoyant results that drove past its own earlier forecasts.  AFP PHOTO / TOSHIFUMI KITAMURA        (Photo credit should read TOSHIFUMI KITAMURA/AFP/Getty Images)

Nissanが初めてヨーロッパの道路で自動運転車の試験を行っている。2月28日にロンドンで始めた。Reutersによると試験には電気自動車のNissan Leafにセンサー、車載コンピューター等を装備した車両が用いられている。最高時速50マイル(80 km)で狭い地方道路から複数車線の幹線道路までを行き来する。

ロンドンがヨーロッパで最初の試験場所に選ばれたのは、同市の自動運転に対するかなりオープンな姿勢によるものだとReutersは伝えている。ロンドン交通局と警察は試験に関してNissanと密に協力している。つまりNissanは、あらかじめ試験ルートを当局に知らせておき、走行記録もすべて提出する必要がある。

Nissanはすでに東京とシリコンバレーで自動運転の試験を行っている。かなり前から無人運転技術を手がけている同社は、様々な分野から人材を集めて他社より抜きん出ようとしており、NASAもライバルの一つだ。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ブロックチェーン技術mijinを電子行政へ、ベルギー アントワープ市で適用実験

ベルギーのアントワープ市の電子行政システムに適用するためのPoC(Proof of Concept、適用実験)の対象として、プライベートブロックチェーン技術mijinが選ばれた。今後1年ほどかけてPoCを実施、評価レポートを発行する。レポートが公開されるかどうかは未定。選定のため開催されたハッカソンで在欧の開発者が成果を出したことがmijin選定の決め手になったとのことだ。人口50万人規模の自治体を対象にプライベートブロックチェーン技術を電子行政システムに適用するための本格的な実験が行われることになる。

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ベルギー アントワープ市の電子行政システムのコンセプト図。基幹システムにAPIを公開、スタートアップや開発者コミュニティによる外部のアプリケーションをプラグインしていく構想である。

ブロックチェーン技術の検証を実施するのは、ベルギーのアントワープ市とゲント市が出資する団体「Digipolis」である。同団体の目的は両自治体のためのITの評価で、240名のスタッフを抱える。市の電子行政システムの技術を機動的に評価検討するIT部隊といった位置づけだ。このDigipolisが立ち上げた「Blockchain Lab」がブロックチェーン技術の評価を担当する。

選定では各種ブロックチェーン技術をプレゼンとハッカソンにより評価し、結果としてmijinの開発効率と実用性が評価された。今後、1年ほどかけて検証を実施する。検証の内容は、(1)住民の出生・生存証明、(2)住民票の管理、転居の簡素化や情報開示先の管理、(3)生涯学習のサポート、(4)公共意思決定プロセスの透明化の4分野を予定している。各分野を担当する情報システムへのブロックチェーンの適用について詳しく評価していく形となる。

行政システムへの適用実験をするブロックチェーン技術をハッカソンで評価

mijinを推進するテックビューロによれば、2016年11月にDigipolisからmijinに関する問い合わせがあったことで、地方自治体へのブロックチェーン適用を検討していることを知ったとのこと。その後、2016年12月19日にDigipolisのBlockchain Labがミートアップが主催し、107名が参加した。

「ミートアップでは、ハッカソンでHyperledgerやEthereumなど10製品ほどが成果を競った。その中でmijinが選定された」(テックビューロ代表取締役 朝山貴生氏)。在欧のNEM/mijin開発者コミュニティのメンバーがミートアップに参加し、選定を勝ち取ったという経緯のようだ。

背景として、NEM/mijinの公式ウォレットソフトが最近実装した機能であるApostille(アポスティーユ)が有効だったとのことだ。これはブロックチェーンを文書の公証所や登記所のように利用する機能である。デジタル文書のハッシュ値、記録者の電子署名、タイムスタンプをブロックチェーンに記録することで「誰が、いつ、当該文書を登録した」ことを証明する。またマルチシグ(複数の電子署名の組み合わせ)の活用で所有権移転の仕組みを容易に構築できる。所有権管理のシステムに求められる機能の中核部分をmijinでは標準機能として提供する点が、開発効率に寄与すると評価された。

アントワープ市は「ACPaaS(Antwerp City Platform as a Service)」と呼ぶコンセプトを掲げ、行政サービスのAPIと、スタートアップを含む民間企業によるサービスを組み合わせる試みに取り組んでいる(上の図を参照)。また、新しいテクノロジーへのチャレンジを継続的に行う方針を取っている。別の国の例になるが、電子政府で有名なエストニアは技術の更新をIT戦略に組み込んでいる(ノーレガシー政策)。アントワープ市のIT戦略にも「新技術を常に取り入れる」との考え方があり、最新技術であるブロックチェーンも評価検討することになった訳だ。

プライベートブロックチェーンmijinに関しては、TechCrunch Japanで過去何回か取り上げてきた。特にベンチャー企業による実証実験の報告が多かった(関連記事)。最近はどうかというと「去年(2016年)の秋から大手企業からの問い合わせが多い。業種も幅広いが、公表できない案件が増えた」(朝山氏)。最近の例では日立ソリューションズと、会員数1億5000万人のポイント管理に適用する実証実験を行うとの発表がある(発表資料)。こうした検証や導入の事例は、案件の規模が大きくなるほど情報が外部に出にくくなり、また外部に出たとしても時間が必要になる傾向がある。

mijinに限らず、プライベートブロックチェーンの実像に関する情報は、率直にいってまだ乏しい。別の製品の例では、最近bitFlyerのプライベートブロックチェーン技術Miyabiに関して3大メガバンクでの評価が進んでいるとの情報が出てきたが(関連記事)、その詳細は守秘義務の壁の向こう側だ。壁の外側からはその実像はなかなか見えにくい。

今回のアントワープ市らのPoCは、プライベートブロックチェーンに関する本格的な検証であると同時に、検証結果の情報が開示される可能性があるという点でも興味深い例といえるだろう。

月額4.99ドルで1億2000万曲を聞き放題―、SoundCloudが新プランを発表

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SoundCludは、昨年の有料メンバーシップのローンチから1年も経たないうちに、料金の見直しを行い、新しく低額プランを発表した。

ベルリンに拠点を置く同社は、有料ユーザーの増加を目指し、昨年3月に発表された月額9.99ドルのプランよりも安い、月額4.99ドルの新プランを本日発表。一方で月額9.99ドルのオプションはそのまま残し、今後は両方のプランをSoundClound Go、SoundCloud Go+として提供していく。

SoundCloud Goユーザーは、1億2000万楽曲を広告なしで楽しめるほか、オフライン時にも曲を聞けるようモバイル端末へ楽曲をダウンロードすることもできる。そしてSoundCloud Go+ユーザー向けには1億5000万曲が準備されており、ユーザーは全ての曲を(プレビューだけでなく)フルで楽しむことができる。SoundCloud Goのメンバーだとどの楽曲が聞けなくなるかについてはハッキリしていないが、さらにGo+の価値を高めるために、「Go+ユーザー限定の追加機能」が今年中に発表されるとSoundCloudは話す。

2種類のプランを用意するというのは効果的な戦略であり、恐らくSoundCloudは有料プランのローンチ時からそうするべきだっただろう。まず低額プランを導入することで、SoundCloudはApple MusicとSpotify(どちらも有料プランは月額9.99ドル)に価格で勝ることができる。さらにSoundCloudは、これまで1億7500万人ものユーザーを抱えながらも収益化に苦しんでいたため、低額プラン導入によって有料サービスの利用を促進し、ようやく売上を伸ばすことができるかもしれない。収益化に苦しむSoundCloudは、今年の1月にFinancial Timesの取材に対し、昨年夏にTwitterから評価額7億ドルで調達した7000万ドルに続き、新たなラウンドを計画していると話していた。

2016年はSoundCloudにとって動きの多い1年だった。Spotifyによる買収話は同社のIPOに向けた不安のせいもあって12月にようやく消滅し、SoundCloudはさまざまな施策に取りかかりはじめた。広告収益の増大を狙ってアメリカではプログラマティック広告を導入し、新たなCTOを迎えてチームの再編を図ったほか、本日のニュースは、同社のビジネスを長期的に継続するための新たな作戦のように見える。

「有料プランを拡充することで、私たちはSoundCloudのユーザーエクスペリエンスを向上するだけでなく、新しい収益機会を生み出し、クリエイターに対してさらに売上を還元していこうと考えています」とCEOのAlex Ljungは声明の中で語った。

もちろんSoundCloudは、オンライン音楽業界でSoptifyやApple Music、Pandoraといった競合企業と厳しい戦いを繰り広げている。しかし、Spofiyは有料ユーザー数が4000万人を超え、登録ユーザー数は昨年1億人に達したと発表し、Apple Musicも昨年12月に有料ユーザー数が2000万人に達したとしている一方、SoundCloudはこれまで有料ユーザー数について具体的な数字を発表したことがない。

SoundCloud GoとSoundCloud Go+は、今のところアメリカ、イギリス、アイルランド、フランス、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、ドイツで利用可能だ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

スウェーデンの現金使用率は2%―、キャッシュレス社会への賛否

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【編集部注】執筆者のChristoffer O. Hernæsは、チャレンジャーバンクかつノルウェイ初のオンライン専門銀行であるSkandiabankenのチーフデジタルオフィサー。

銀行取引や社会の電子化に関する話の中でも、キャッシュレス社会というアイディアは熱い議論を呼びがちだ。まず現金は、汚職や税金逃れ、マネーロンダリングといった違法行為と結びつけられることが多い。しかし、現金の匿名性が地下経済を支えている一方で、その匿名性が低下してしまうと、ジョージ・オーウェルの著書「1984年」のような監視管理社会が誕生し、個人の自由が制限されてしまうのでは、と懸念している人も多くいる。

キャッシュレス社会に向けた動きの最前線にいるスウェーデンでは、国家が電子決済に関する施策を推し進めるにつれて、国民の間には現金の利用頻度が減っていくことに対するネガティブな感情が広まっている。オーストリアやドイツといった国では、今でも現金が主要な決済手段として使われているものの、世界全体で見ると現金を使う機会は減ってきている。

消費者がモノやサービスを購入する際の決済手段として、現金が全体の3分の1を占めるアメリカでさえ、現金の使用頻度は減少傾向にある。しかし同時に、現金の発行額は増えてきている。40年前は約800億ドルだった現金の流通額が、今日ではおよそ20倍の約1兆5000億ドルにまで増えているのだ。また、1970年台半ばには25%だった全紙幣の発行額に占める100ドル紙幣の割合は、今では約80%に達している。

まずインフレの影響が頭に浮かぶが、発行額の増加率はインフレ率を大きく上回っている。経済学者のKenneth Rogoffは、世界中に現金が溢れているせいで貧困が広まり、生活上の安全も損なわれてしまっていると考えている。Rogoffは彼の著書「The Curse of Cash(邦題:現金の呪い)」の中で、先述の現象はアメリカだけでなく、世界で広く使われている通貨全てに関して言えることだと主張する。さらに彼は、現金が地下経済での決済手段として好まれているいることが、その主な原因だと説明しているのだ。それではどんな解決方法があるのかというと、彼は高額紙幣の廃止を提案している。

もしかしたらインドの首相は、Rogoffの提案内容を最後まで読まずに、高額紙幣の廃止は数年かけて行わなければいけないという箇所を飛ばしてしまったのかもしれない。昨年11月にインド政府は、500ルピーと1000ルピー紙幣を廃止すると発表し、その数時間後には両紙幣が使えなくなってしまったのだ。国内には混乱が広がったものの、この政策は「ショック療法」の一部として施行され、現金重視の地下経済を解体すると共に偽札をなくし、経済の電子化をさらに進めることで、もっと多くの国民を課税対象となる正規の経済に参加させることが目的だった。

突然かつ急速な高額紙幣の廃止のせいでインド国内には混乱が生じたが、他にも同じことを行おうとしている国は存在する。ECB(欧州中央銀行)は、2018年中に500ユーロ紙幣の発行を取りやめようとしており、スウェーデンもほぼ誰にも気付かれることなく段階的に高額紙幣を廃止した。そもそも、スカンディナビア半島の国々では、現金がほとんど使われていないのだ。スウェーデンの中央銀行によれば、2015年にスウェーデン国内で発生した全ての取引の決済手段に占める現金の割合(決済額ベース)は、2%しかなかった。さらにノルウェーでは、通貨の流通高における現金の割合は3%しかないと同国の中央銀行が発表している。さらにスカンディナビア半島の各国は、世界的にも汚職が少なく、透明性が高い社会だと評価されている。

彼らのような社会を目指すには、洗練されたデジタルインフラが不可欠だ。その証拠に、ノルウェーの決済インフラはGDP比で考えると世界でも指折りの費用対効果があり、消費者や商店、そして社会全体にとって利用金額の大小に関わらず、電子決済が最も経済的な支払方法となっている。

個人の自由を守る分散型の安全機能なしに現金を廃止するべきではない。

電子決済にはさまざまな利点があるものの、現金を完全になくしてしまうには心配な点もある。今日の決済システムのまま現金が廃止されてしまうと、銀行や政府や決済業者が全ての取引内容を把握できるようになってしまうのだ。さらに現金には、マイナス金利に対抗して金融政策の効果を薄める力がある。中央銀行や政府の目からすれば、これは現金の短所として捉えられるが、逆に中央銀行や政府による支配への対抗手段として現金を見ている人も大勢いる。

現金がなくなったからといって、私たちの住む世界がジョージ・オーウェルの描くようなディストピア社会に一晩で変わってしまうことはないが、一旦完全なキャッシュレス社会に切り替わってしまうと、政府がこれまでにないほどの力で市民をコントロールできるようになる可能性がある、ということは心に留めておいた方が良いだろう。

個人の自由を脅かすことなくキャッシュレス社会を実現するため、各国の中央銀行の中には、ブロックチェーン・分散型台帳技術を電子マネーの発行に使えないか研究を進めているところもある。匿名性を保証する物理的な通貨を電子化する、というアイディアに反対する声も挙がっている一方で、ノルウェー中央銀行はこの可能性を模索している。

実際に物理的なお金を電子マネーに置き換えるとすれば、個人が必要に応じて自分のお金をコントロールできて匿名性も確保できるよう、ブロックチェーン技術を採用するのがベストな選択だろう。ブロックチェーンシステムの下では、ユーザーだけがアクセスできる口座にお金を保管することになるため、自分のお金を自分で管理できるようになる。

しかし実際にこれを実現するのはそう簡単なことではない。理論上ブロックチェーン技術には全体を管理する組織が必要ないとはいえ、実際には理想と現状の間くらいの制度に落ち着くことになるだろう。しかし市民が中央銀行の発行した電子マネーを受け入れるためには、ネットワークに参加している全員のプライバシーが保護されなければいけない。中には、ブロックチェーン技術を導入しても犯罪行為の解決にはつながらないと言う人もいるかもしれないが、ビットコインのような仮想通貨であっても、マネーロンダリングができる可能性は限られており、資金流に関する情報を完全に消すためには一旦現金を電子化して、さらにもう一度そこから現金化しなければならない。

物理的なお金を廃止するというのは、犯罪防止の観点からは名案のようにも見えるが、その先にある、まだハッキリとは見えていない可能性についてもしっかり考えていかなければならない。多数決の原則は守らなければいけないし、もはや「現金は王様」という言葉は通用しないのかもしれない。それでも、個人の自由を守る分散型の安全機能なしに現金を廃止するべきではない。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

1200万人の科学者が集うソーシャルネットワーク―、ResearchGateが5260万ドルを調達

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プロフェッショナルの世界では、LinkedInがソーシャルネットワーク最大手の座に君臨し続けているが、それぞれの業界に絞ってLinkedInに対抗しようするサービスも増えてきた。ベルリン発のスタートアップResearchGateは、科学者たちがつながり合い、研究に関する議論を交わせるようなソーシャルネットワークサービスを提供している。同社はシリーズDで5260万ドルを調達したと本日発表し、これでResearchGateの累計調達額は1億ドルを超えた。

最新のラウンドには、戦略投資家から金融機関までそうそうたる顔ぶれが揃い、Wellcome TrustやGoldman Sachs Investment Partners、Four Rivers Group、Ashton Kutcher、LVMH、Xavier Niel、Bill Gates、Benchmark、Founders Fundなどが参加していた。なお、この中には(Bill GatesやBenchmarkFounders Fundなど)以前のラウンドに参加していた投資家もいる。

ResearchGateは、既に調達資金を使ってProjectsなどの新機能を開発し、プラットフォームの機能拡大に努めている。

「既に調達資金を使って」というのは重要なフレーズだ。というのも、ResearchGateの共同ファウンダーでCEOのIjad Madischによれば、実はシリーズDは2015年の11月の時点でクローズしていたのだ(さらに、科学者が進行中の研究をアップロードしたり更新したりできる先述のProjectsという機能は、2016年3月にローンチされていた)。それにも関わらず、同社はこれまで資金調達には触れず、この度2015年の決算をまとめなければいけない段階(ドイツでは全ての企業が対象となっている)になって初めて詳細が明らかになった。

ユーザー数という観点で見れば、ResearchGateの1200万人という数字は、LinkedInのユーザー数4億6700万人には遠くおよばない(なお、ResearchGateのサービスは全て無料で、同社は求人などの広告から収益を挙げている。そして広告主はResearchGateを利用することで、自分たちがリーチしたいと考えているターゲットに直接広告を表示することができる)。

しかしユーザー数で劣っている部分は、エンゲージメントの高さや素晴らしいターゲット層、さらには科学論文に対する新たなアプローチ、情報共有といったサービスの質でカバーされている。ResearchGateのユーザーである科学者には、一般的に「科学」というカテゴリーに含まれるさまざまな分野をカバーした、営利・非営利両団体の学者や学生、研究者や博士が含まれており、月々にアップロードされる論文の数は250万本におよぶ。

Madischは同社が急速に成長を続けていると話しており、実際に250万本という研究論文の数はResearchGate設立から4年間の間にアップロードされた論文の数と同じだ。そういう意味で、同社は科学者向けのソーシャルサービスでありながら、データのレポジトリとしても利用されている。

(そう考えると、科学者にとってResearchGateは、LinkedInのようなサービスに比べると大変便利なものだ。というのも、LinkedInのコンテンツは、彼らの仕事の核となるデータよりも、仕事探しであったり、考えやイメージを形作るところに重きが置かれている)

次に重要なのがコンテンツの性質だ。科学者がアイディアを共有したり、議論を交わしたり、他の科学者の研究内容にアクセスしたりできるようなサービスは、もちろんResearchGate以外にも存在する。具体的には、オンライン・オフラインの学術誌や、Google Scholarなどが彼らの競合にあたるだろう。しかし、これまでの科学の世界では、成功した研究を公開することが重視されてきた一方で、ResearchGateは失敗した研究の内容も共有できるプラットフォームであり、そこが他のサービスとは違うのだとMadischは説明する。

「ResearchGateのファウンダーは全員科学者で、私たちは今日の学術誌の問題点を理解しています。数ある問題の中でも1番大きなものが、一般に知れ渡っている成功例ではなく、公になっていない失敗例が共有されていないことなんです。ResearchGateはまさにその問題を解決しようとしています」と彼は話す。それを可能にする機能のひとつがProjectsだ。ユーザーは現在取り組んでいる実験内容をアップロードし、その進捗を公開することができるため、結果がどうなるかは誰にもわからない。

なぜこれまで誰も失敗に終わった研究を公開してこなかったのだろうか?「それは難しい質問ですね。少なくとも言えるのは、科学者としてどの研究を発表して、どれを発表しないかというのを決めなければならず、これまでは失敗したものよりも、成功したものに価値があると考えられてきました」と彼は語る。「しかし個人的には、その考えはおかしいと思っています。失敗経験は、成功経験と同じくらい大切で、これこそ私たちが変えようとしている考え方なんです」。

ResearchGateは、これからも科学者の考え方を変えることに注力していく傍ら、将来的には他のどのような分野に進出していきたいかということについても考えはじめている。そしてターゲット候補には、教育や法律以外にも、テクノロジーなどの分野が含まれている。その一方で彼らが進出を検討している分野は決して目新しいものではなく、ある分野「専門」のソーシャルネットワークというもの自体も以前から存在しており、釣りからコーディングまで、共通のトピックについて語り合ったり、データを収集・共有したりしている強固なコミュニティは見渡せばいくらでもある。

しかし、それだけ他のサービスが存在するということはチャンスがある証拠でもあり、投資家はそこに注目しているのだ。

「ResearchGateは革新的かつ広範に利用されているプラットフォームで、世界中の研究者たちをつなぎ合わせています。研究のアイディアや結果を共有できるスペースを提供することで、彼らは科学者が研究を発展させ、社会のためになる応用方法を開発する手助けをしているんです」とWellcome Trustの投資部門のシニアメンバーであるGeoffrey Loveは声明の中で語った。

「科学の世界におけるイノベーションの発生過程は、個々人による実験からネットワークを活用したコラボレーションへと急速に変わってきています。1200万人ものユーザーを武器に、ResearchGateはこの変化を促進する主要なプレイヤーへと成長しました」とGoldman Sachs Investment Partners Venture Capital & Growth Equityの共同代表であるIan Friedmanは声明の中で語った。「研究方法と同じくらい重要な事項に変化をもたらそうとしているチームとパートナーを組むというのは、めったにない機会ですし、科学の進歩のスピードを加速させるというミッションをResearchGateが実現していく手助けができることを、大変光栄に思っています」。

「ResearchGateのように、ネットワーク効果がビジネスモデルの核にあるような企業が成功するためには、いかに提供するサービスがユーザーのためになるかということを常に念頭に置かなければいけません」とBenchmarkジェネラルパートナー兼ResearchGate取締役のMatt Cohlerは声明の中で語った。「そして同時に、彼らは収益もあげなければいけません。ResearchGateは自分たちのミッションに忠実に、科学が進歩する場としてのネットワークの成長に寄与する、持続可能なビジネスモデルをつくり上げてきました」。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

YouTubeの1日当たり視聴時間、10億時間の大台に

A picture shows a You Tube logo on December 4, 2012 during LeWeb Paris 2012 in Saint-Denis near Paris. Le Web is Europe's largest tech conference, bringing together the entrepreneurs, leaders and influencers who shape the future of the internet. AFP PHOTO ERIC PIERMONT        (Photo credit should read ERIC PIERMONT/AFP/Getty Images)

数十秒、数分といった短いビデオでも積み上げればたいへんな時間になる。YouTubeにアップされたビデオは平均的には短い。しかしトータルの1日当たり視聴時間は10億時間の大台に乗ったという。これはユーザー1人当たりYouTubeを毎日8.4分間見ている計算になる。

これを実感と比較してみるとこういうことが言えそうだ。鍵穴から部屋を覗くようなせせこましいYouTubeのビデオを何時間にもわたって視聴する「スーパーユーザー」は決して珍しい存在ではない。われわれ平均的ユーザーはあちこち数分ずつしか見ていないが、それらを合算するととてつもない時間になるらしい。ともあれ友達がFacebookでYouTube動画をシェアすることはよくある。アカデミー賞のセレモニーで大しくじりがあったと皆が話していれば話題に遅れないために見に行ってしまうことになる。

Googleによれば、10億時間のビデオを1人で見ようとすればプレイリストの再生時間は10万年になるという。しかし―上の計算のように―世界がますますインターネットでつながるようになっているため平均的なユーザーの視聴時間はそれほど長くはならない。とはいえ、YouTubeがメディアのメインストリームに確固たる地位を占めていることを示す大きな数字であることは間違いない。Facebook始め、ビデオ市場でそれぞれ分け前を得ようとしてるプラットフォームはいっそう努力する必要があるだろう。

画像: ERIC PIERMONT/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

AWS S3 US-EAST-1がダウン、アメリカは大混乱―Amazonは原因を突き止めたらしい

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AmazonのAWS S3クラウドストレージに広汎な障害が発生している。S3を利用している多くのウェブサイト、アプリ、デバイスが一部あるいは完全に作動しなくなっている。AWSは多くのサイトの実行イメージあるいはサイトそのものをホストしている。アプリのバックエンドとして利用しているサービスにはNestも含まれる。

「US-EAST-1のS3に高頻度でエラーが発生する」という障害が発生していることがAmazon AWSサービスのヘルス・ダッシュボードで確認されている。 当初、Amazonでは「プログラムを修正中」と発表したのみで原因など詳しい状況は不明だった。

影響を受けているサイト、サービスにはQ&AのQuora、ニュースレター配信サービスのSailthru、ニュースサイトのBusiness Insider、Giphy、S3が画像をホスティングしている各種yメディア、Slackにおけるファイル共有など多数だ。スマートサーモスタットなどホームIoTのパイオニアであるNestにも障害が発生しており、デバイスのコントロールが不可能になっている。

SimilarTechのトラッキング・データによれば、Amazon S3は14万8213のウェブサイトが利用しており、 12万1761のドメインを運用している。コンテンツのホスティング・サービスとしての利用はアメリカに集中している。ただし利用の絶対量は上位100万サイトの0.8%に過ぎず、たとえばCloudFlareの世界のトップ100万サイトについて6.2%という数字に比べてかなり小さい。それでもAWSのダウンは大きな影響を与えている。

驚いたことに、AWSサービスの健康状態を示すダッシュボードのグラフィックス自体がS3のストレージを利用しており、したがってこの大混乱にもかかわらず「平常通り」の緑のランプが点灯しているという。

われは状況を注視しており、さらに情報が得られしだいフォローする。

アップデート: (11:40 AM PT): AWSはヘルス・ダッシュボードについては問題を修復した。ダッシュボードは 作動の低下やダウンを正しく表示している。Amazonは復旧の努力中。

アップデート (11:57 AM PT): AWSはS3がダウンした「根本的な原因を発見」したもよう。「修正に全力を挙げている」という。ただしそれ以上の詳細は発表されていない。

取材を続行している…

〔日本版〕日本ではSlackのファイル共有を含めて目立った影響は出ていない。US-EAST-1を利用していない場合は正常に作動するもよう。
なおQuoraは”504. Gateway Timeout.”のエラーとなる。Business Insider(英語版)はテキストそのものは表示されるがウェブページとして正しく表示されない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

iPhoneプレミアムモデルは曲面OLEDを採用(全モデルでポートはUSB-Cに)

CUPERTINO, CA - SEPTEMBER 09:  Apple CEO Tim Cook models the new iPhone 6 and the Apple Watch during an Apple special event at the Flint Center for the Performing Arts on September 9, 2014 in Cupertino, California. Apple unveiled the Apple Watch wearable tech and two new iPhones, the iPhone 6 and iPhone 6 Plus.  (Photo by Justin Sullivan/Getty Images)

iPhoneが登場して10周年を迎えた今年、iPhoneには特別モデルが用意されるだろうという話が広がっている。それにともないさまざまが流れている。そうした中、WSJに詳細な記事が掲載されている。記事のもととなった匿名の情報源によれば、プレミアムモデルは他のモデルとハードウェア的にずいぶん違ったものになるとのこと。

記事によれば、iPhoneのプレミアムモデルでは、SamsungのGalaxy S7 edge同様の曲面OLEDスクリーンを搭載するそうだ。曲面ディスプレイはSamsungが製造するものとなるらしい。

このハイエンドモデルの価格は、1000ドルが見込まれている。iPhone 8ないしiPhone 8 Plusとは別の特別モデルとして販売されることになる。

尚、すべてのモデルではライトニングポートを廃してUSB-Cを搭載することになるようだ。もしこれが本当なら、iPhoneとして初めて独自規格を捨ててAndroidなどのライバル機種と同じ標準規格を採用することになる。これは最新のMacBook Proなどをみれば、たしかにありそうな話だ。

USB-Cは電力、データ、音楽、ビデオなどを、LightningないしUSB 3規格よりもはるかに高速に転送することができる。MacBook Proでも、この規格の優位性を認めたからこそ、MacBook Proにおける唯一のI/OインタフェースとしてUSB-Cを採用したわけだ。しかしこのせいでiPhoneをMacBook Proと直接つなぐことができなくなったのは問題ではあった。USB-CとLightningを変換するケーブルが必要だたのだ。iPhone側にもUSB-Cを搭載することで、こうした状況が変化することとなる。

話を戻して、WSJのレポートが実現するのなら、iPhoneには従来と異なる新たなエコシステムが生まれることとなる。iPhone 8およびiPhone 8 Plusとは別に用意されるという噂のiPhone Xだが、ハードウェア的な仕様も異なるものとなるわけだ。このプレミアムモデルの登場で混乱する消費者も生じることだろう。しかしプレミアムモデルの販売は、たしかにAppleを潤すこととなるのだろう。
USB-C化)
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(翻訳:Maeda, H

今や無視率の高いネット広告、フィジカルな郵便物を併用して消費者のエンゲージを高めるPebblePostがシリーズBで$15Mを調達する好成績

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PebblePostは、印刷物のはがきやカタログにマーケティングの大きな機会がある、と信じている。

しかも同社は今日(米国時間2/27)、シリーズBで1500万ドルを調達した。このラウンドはRRE Venturesがリードし、Greycroft PartnersとTribeca Venturesが参加した。RREのJim Robinsonが、PebblePostの取締役会に加わる。

PebblePostは自分たちのサービスを、“プログラミングされたダイレクトメール(DM)”と呼ぶ。見込み客のネット上のアクティビティに基づいて特製されたフォローアップを送るのだ。たとえばあなたがどこかのお店のWebサイトを見ていたら、数日後にはそこの商品を紹介するはがきが来る。たぶんディスカウントもあるだろう。

CEOのLewis Gershは以前、シード投資専門のVC Metamorphic Ventures(今の名はCompound)のファウンダーだった。彼によるとそこでは、ターゲティング広告のこの国最大のポートフォリオを作った。つまりユーザーのネット上のビヘイビアを使って広告のターゲティングを行う企業だ。広告企業はiSocket, Mass Relevance, Movable Inkなどに投資していた。でも彼が悟ったのは、デジタル広告が今では“ジャンクメールの一種”になっていることだ。マーケターたちの競争激化で、広告が多すぎるのだ。

PebblePost

Gershが気づいた問題点は、“今はそれどころじゃない”という状況の人たちにも勝手に広告が表示されることだ。当然、それらは無視される。一方、フィジカルな郵便物は、どこかに重ねておいて、ひまなときに見る、というアクセスをされる。すなわち、意思が見る人の側にある。だから、ブランドのメッセージに目を留めて、実際に買い物をする確率も高い。勝手で一方的なネット広告よりは、断然良いメディアだ。

ただし、ユーザーがネットで見ていた品目を、はがきでまた念押しする必要はない。むしろ関連商品を紹介した方が、好感を持たれる。フィジカルな郵便物でも、しつこいのは嫌われる。同じ品目が来ると、気味悪いと思う人もいる。

Gershは曰く、“ユーザーが製品に関心を持ってくれたら、そこは到達点ではなくてむしろ、そこから対話が始まる。PebblePostでは、ブランドが消費者とのそういう対話を継続することができる”。

また印刷物の郵便物には、ネットで問題になる詐欺などのトラブルがない。郵便物はネット広告と違って誰もが一応見てチェックするし、ボットが郵便受けに侵入することはない。そう、彼は主張する。

PebblePostのフィジカルな郵便物はその7〜10%が購買に結びついているそうだから、たいへん好成績だ(上で述べたように、品目の選定が重要だが)。同社はこの前800万ドルを調達し、また顧客はBoxed, Saatchi Art, ModClothなどのショッピングサイトが主だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

手書きの内容も人工知能でデータ化する「Tegaki」の開発元が13億円を調達

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申込用紙やアンケート用紙など手書きのものが多いが、それを有効活用するには、まずは手書きの情報をデータ化しなければならない。Cogent Labsは、人工知能による手書きの認識サービス「Tegaki」を開発している。Cogent Labsは本日、シリーズAで総額13億円の第三者割当増資を実施したことを発表した。引受先はSBIインベストメント、トッパン・ フォームズだ。

手書き文字を読み取りと言えば、OCR(光学的文字認識)を思い浮かべる人も多いだろう。Googleドライブでも画像やPDFをアップロードするとOCRで文字データを抽出することができる。けれど、OCRでの日本語の識字率はそう高くないとCogent Labsの担当者は説明する。日本語の漢字やカタカナにはパーツが分かれている文字が多いので、OCRでの読み取りが難しいのだそうだ。Cogent Labsでは、ディープラーニングで精度の高い識字率を実現しているという。TegakiとGoogleの機能を比較したところ、Googleは約7割、Tegakiでは99%の識字率だったそうだ。

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Tegakiは4月下旬に正式リリース予定で、APIも用意している。クレジットカードの申込用紙やアンケートなど手書きで情報を取得している企業は多いだろう。Tegakiを利用することにより、企業はデータ入力にかけている時間と人件費を減らせるという。

今回調達した13億円は、 組織体制の強化 、Tegakiのサービス開発、次世代人工知能の研究・開発に充てる。引受先となったトッパン・フォームズは通帳や帳票といったビジネスフォームやDPS(データプリントサービス)、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)などを提供していて、トッパン・フォームズとのシナジーが発揮できることに期待しているとCogent Labsは話す。

Cogent Labsの目標は「日本発の卓越した人工知能で、人々の生活の質を高めること」であり、今後文字認識サービス以外にも音声や画像認識におけるサービス開発も視野に入れているという。

クラウド・人工知能を搭載した電力小売供給基幹システム「Odin」、運営元が11.8億円の資金調達

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2016年4月にスタートした電力自由化。これまでは地域で決められた電力会社としか契約できなかったが、いまでは契約先や料金プランを自由に選べるようになった。そのような背景から、大手通信キャリアを筆頭に電力サービスの提供に乗り出すなど小売電気事業者の数も少しずつ増えてきている。

そんな中、小売電気事業者を対象にしたサービスも誕生している。電力小売供給基幹システム「Odin(オーディン)」を展開するパネイルは2月28日、インキュベイトファンドSMBCベンチャーキャピタル大和企業投資DGインキュベーションドーガン・ベータ広島ベンチャーキャピタルみずほキャピタルYJキャピタルを引受先とする総額11.8億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

電力小売供給業務の効率化を目指す

電力小売供給基幹システムと言っても、ピンと来ない人がほとんどだろう。Odinは小売電気事業者を対象に、顧客管理や需給管理、請求管理といった電力小売業務に必要な機能を一括で提供することで、電力小売供給業務の効率化を目指すというもの。

パネイル代表取締役の名越達彦氏によると、電力自由化の開始以降、小売電気事業者の数は増え続けており、現在(2017年2月28日時点)では300社を超えているという。市場環境は大きく変化しているものの、これまで10社が独占していた領域とあってアナログな部分は多く残る。

例えば、顧客の契約状況や問い合わせ状況を一元管理できずにいたし、何より発電量と顧客の消費電力量のバランスを人の目で常に管理しなければならず、とても非効率だった。Odinはこうした問題をクラウドコンピューティング環境と人工知能を活用し、顧客管理機能、需給管理機能、請求管理機能を提供することで課題を解消。電力小売供給業務の効率化を目指している。

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CRM機能内包することで顧客情報を一元管理でき、請求書の作成、送付も全自動で行うことができる。また特筆すべきは日本初(2016年4月時点)のRubyベースで構築されていること。電力の30分確定使用量データを自動で取り込め、リアルタイムに処理できるという。

同社が提供している人工知能(AI)を活用した電力の需給予測エンジン「Odin Gungnir(オーディン グングニル)」と組み合わせれば、人を使わずとも電力の需給管理が行えるようになる。

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今後、パネイルは調達した資金をもとに、需給予測の精度向上などOdinの開発強化を行っていくとしている。