グーグル、インドの通信大手Airtelに最大約1152億円出資へ

Googleがインドの通信事業者Airtelに、最大10億ドル(約1152億円)の投資を行なう。それはこの国への100億ドル(約1兆1522億円)の積極関与の約束の一環として、世界で2番目に大きいインターネット市場にGoogleが張ってきた一連の賭けの、最新のものだ。

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Googleによると、同社は7億ドル(約807億円)を投資してAirnetの株の1.28%を取得する。Airtelはインドで2番目に大きい通信事業者で、契約者は3億人を超える。Googleは同社にさらに3億ドル(約346億円)を投じて、複数年の商業的合意の可能性を探る。

両社は「革新的なアフォーダビリティプログラム」を通じて、消費者に幅広いAndroid対応デバイスを提供するために、Airtelのサービスを拡大することに取り組むと述べている。また、GoogleとAirtelは、より手頃な価格のスマートフォンを作るために、スマートフォンメーカーとの提携を模索する予定だという。

GoogleとAlphabetのCEOであるSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏は「Airtelはインドのデジタルの未来を形作る主要なパイオニアであり、接続性を拡大し、より多くのインド人にインターネットへの公平なアクセスを確保するという共通のビジョンで提携できることを誇りに思います」と声明で述べています。

「Airtelへの商業投資および株式投資は、スマートフォンへのアクセスを拡大し、新しいビジネスモデルをサポートする接続性を強化し、企業のデジタル変革の旅を支援するGoogle for India Digitization Fundの取り組みを継続するものです」。

インドのコルカタのAirtelストア、2021年11月24日(画像クレジット:Debarchan Chatterjee/NurPhoto via Getty Images)

現地時間1月28日の発表は、AirtelとVodafoneがインド政府への数十億ドル(数千億円)の借款の返済で腐心しているときに行われた。Vodafoneは2021年1月の初めに所有権の35%ほどをニューデリーに渡し、インド政府が同社の最大の株主になった。

VodafoneとAirtelは、アジア最大のお金持ちであるMukesh Ambani(ムケシュ・アンバニ)氏が経営するJio Platformsと競合している。Jio Platformsは、その音声とデータの低料金により契約者数が4億を超えている。Googleは2020年にJio Platformsに45億ドル(約5185億円)を投資した。Facebookをはじめ10以上の企業がアンバニ氏のその他の企業を支援している。

GoogleとJio Platformsはコラボレーションにより、彼らが初め大衆向けと呼んでいたAndroidスマートフォンを作った。しかしそのハンドセットは一度遅れ価格も相当高いので多くは売れないとアナリストたちは考えていた。2017年のインドで行われたイベントでピチャイ氏は、インドのような市場は世界に多いが、そんな市場では、スマートフォンの大衆化のためには価格が30ドル(約3460円)以下でないとだめだ、と述べた。JioPhoneのいわゆる大衆機は87ドル(約1万20円)だった。

Airtelは1月28日に、Googleとは「大型の戦略的目標」を検討し、共同でインド固有のネットワークドメインによる5Gのユースケースやその他のスタンダードを作っていくという。

両社はまた、インドにおけるクラウドエコシステムの形成と成長でも協働していくという。Airtelはすでに同社のエンタープライズ接続性サービスを100万以上の中小企業に提供しており、クラウドによるデジタル化の採用が加速される、と金曜日に発表している。

Bharti Airtelの会長Sunil Bharti Mittal(スニル・バーティ・ミタル)氏は声明で「AirtelとGoogleは革新的なプロダクトでインドのデジタルの恩恵を育てていくビジョンを共有している。私達の未来指向のネットワークとデジタルのプラットフォーム、ラストマイルの配信、および決済のエコシステムにより、Googleとの密接な協力でインドのデジタルエコシステムの深さと幅を増大していきたい」と述べている。

6億のインターネットユーザーがいて、まだその他のもっと多くがオンラインでないインドは、米国のテクノロジーグループにとって最後で最大の成長市場だ。GoogleとFacebookはともに10年前から、数千万のインド人にインターネットへの接続を提供するためのさまざまな事業を展開してきた。

画像クレジット:Samir Jana/Hindustan Times/Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Hiroshi Iwatani)

【コラム】私たちのポートフォリオの50%が女性CEOの会社である理由

2022年を迎え、1つ確かなことがある。それは女性リーダーをともなう投資で数十億ドル(数千億円)の機会が熟していることだ。

私の会社、Astia(アスティア)だけで2021年に1103社、30億2400万ドル(約3490億円)を投資し、前年と比べて119%増加して「パイプライン問題」を巡る不満を解消している。しかし、過小評価されているファウンダー、中でも黒人女性ファウンダーに対するベンチャーキャピタル投資の憂鬱なデータは変わっていない。

2020年に女性が率いるスタートアップでベンチャー資金を受け取ったのはわずか2.3%で、その数字は黒人およびラテンアメリカ女性では0.64%に下がる。ベンチャーキャピタルにおけるこの不均衡は、起業家精神が生み出す富、雇用創出、そして技術革新の影響力から、根本的に有色人種女性を排除するものであり、構造的偏見を持続させている。

3年前、我々はそれを変えることを決意した。黒人女性率いる会社は当社のパイプラインに数多く存在し、投資を受けられない問題が彼らにとって唯一の問題であることに気づいたからだ。

ベンチャーキャピタルにとってのチャンスは、隠れた宝石を見つけることだ。クラスで最高のベンチャーキャピタルは、投資不足だが業績に優れ世界を変える可能性のある会社を探し求める。我々はそんな隠れた宝石を探す取り組みの中、1年前に同じことをしたつもりだったが、そんな宝石がすべて、我々の目の前にあることを発見した。

人種のことがなければ投資していたであろう会社がいくつもあったことを知って我々は深く失望したが、自分たちが完全な制御と力を持っているものを修正する機会を得たことを喜んだ。それは我々自身の投資判断だ。

このことは、当社が持っているデータを深く研究し、修正すべき行動を特定する取り組みにつながった。我々の投資活動における性別と人種の差別に関係することだからだ。それから3年、我々は投資パイロットプログラム、Astia Edge(アスティア・エッジ)を通じて見つかった重要課題の解決方法を実行してきた。結果は見てのとおりだ。

こうした自己反省と軌道修正の結果、現在、Astia Fundのポートフォリオの50%が黒人女性CEOであり、修正後にAstia Angel(アスティア・エンジェル)が拠出した資金の17%が黒人女性CEOのいる会社に投資されている。

ここに至る道のりには、多くの厳しい瞬間と内省があった。

当社の最新レポートでは、現在のベンチャーキャピタルモデルにおける人種平等に関わる重大な欠陥について、驚くべき考察がなされている。要約すれば、パイロット企業の契約は締結まで245日間を要したのに対し、Astiaの女性重視ポートフォリオでは161日だった。また、パイロットでは共同出資者を集めるために60件以上の外部紹介(Astiaのポートフォリオでは5件以下)と、擁護者として投資バイアスに直接対抗するために100時間以上の現場作業が必要だった。

より穏やかなデータも同じく失望させるものだった。このパイロットテストを通じて、黒人ファウンダー率いる企業が不均衡にAstiaを訪れ、シードラウンドや「友人と家族」ラウンドで投資された金額は少なかったが、限られた資金で大きな実績を上げている会社が少なくなかったことがわかった。この資金格差が、この国における貧富格差による系統的圧力によるものであると考えるのは普通だ。追い打ちをかけるように、投資家は起業家を「他に誰が投資したか」に基づいて評価し、本人の実績や気概や可能性を評価しない傾向がある。富へのアクセスもネットワークもない人々に対する偏見に根づく問題だ。

実際、我々投資コミュニティはこうした資金提供における人種格差の責任を負い、モデルと現状維持体質を再考しなければならない立場にある。データによると、黒人女性の17%が新しいビジネスを立ち上げようとしているのに対し、白人女性は10%、白人男性は15%だ。黒人女性ファウンダーは膨大な数が存在している。必要なのは彼女らを見つけ、公平に評価して投資することだけだ。

我々はこの現実認識する不快感を直に目撃してきたが、今は悪循環を断ち切る力を認識している。私たちはあらゆるベンチャーキャピタルに対して同じことをするよう求める。新しい年を迎え、今こそ新しいVC、ごく一部ではなく、すべての人々の利益のために働くVCが生まれる時だ。

編集部注:本稿の執筆者Sharon Vosmek(シャロン・ヴォスメク)氏はAstiaのCEOでAstia Fundのマネージングパートナー。

画像クレジット:Belitas / Getty Images

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(文:Sharon Vosmek、翻訳:Nob Takahashi / facebook

株式投資型クラウドファンディング「イークラウド」、サービス開始以降10案件すべての目標募集額を連続達成

株式投資型クラウドファンディング「イークラウド」、サービス開始以降10案件すべての目標募集額を連続達成

イークラウドは1月28日、株式投資型クラウドファンディング「イークラウド」において、2022年1月に募集を開始した案件が目標募集額を上回り、サービス開始以降10案件すべての目標募集額を連続達成できたと発表した。

イークラウドは、B2C・B2Bなどを問わず世の中の様々な課題に挑むベンチャー企業が個人投資家から少額ずつ資金を調達できる仕組みとして「株式投資型クラウドファンディング」を提供している。同サービスでは、非上場のベンチャー企業がインターネットを通じて1年間に1億円未満の資金調達を行える(個人投資家が投資できる金額は1社に対して1年間に50万円以下)。

2022年1月にイークラウドで募集を開始した案件が目標募集額を上回り、プラットフォームにおける調達額累計は約3億4000万円となった(1案件あたりの平均調達額は約3400万円)。株式投資型クラウドファンディング「イークラウド」、サービス開始以降10案件すべての目標募集額を連続達成

現在、投資家や起業家支援機能などのベンチャーエコシステムは東京に偏在しており、資金調達額のおよそ80%は東京に集中しているとされる(日本ベンチャーキャピタル協会調べ。2019年)。その中で、イークラウドは株式投資型クラウドファンディングを通じ、日本各地のベンチャー企業の資金調達の支援を実施。2021年5月には群馬銀行とも提携を行い、地方ベンチャーの支援体制を加速させているという。同社は、今後も地方銀行との連携を強化するとしている。

ゲーム内NFTの生成を専門に行う企業BreederDAOにa16zなどが出資

分散型の「Web3」企業が、中央集権的な従来の企業と比べてどれほど違うか、あるいは違わないかを、テクノロジー界の巨人たちが議論している間に、同じ投資家からの支援を含め、互いに結びついた企業のエコシステムが、急速に出現しつつある。

2021年の夏、Andreessen Horowitz(a16z)は、Yield Guild Games(イールド・ギルド・ゲームズYGG)という会社に投資した。この会社はブロックチェーンを使ったゲーム内のNFT(非代替性トークン)に投資し、それを使う人に貸し出して、その人がプレイすることで収益を得るというものだ。このようなゲームの中でも特に急成長しているのが「Axie Infinity(アクシー・インフィニティ)」だ。このゲームでプレイヤーは仮想生物を繁殖させて戦わせ、最終的にうまく戦うことができれば、適切な値段で売ることができる。

a16zは10月までに、Axieの開発会社であるSky Mavis(スカイ・メイビス)への大規模な投資を主導した。現在は、さらに別の構成要素にも資金を提供している。BreederDAO(ブリーダーDAO)という企業だ。同社は、Axie Infinity を含むブロックチェーンベースのゲームや仮想世界で使用されるデジタルアセットの「専門製作業者」として、数カ月前にフィリピンで設立された。

YGGの初期アドバイザー1人を含む若い創業者たちによって設立されたこの社員23名の会社は、a16zとDelphi Digital(デルファイ・デジタル)が共同で行ったトークンセールで、1000万ドル(約11億4000万円)のシリーズA資金を調達した。これにはHashed(ハッシュド)、com2us(コムツーアス)、Morningstar Ventures(モーニングスター・ベンチャーズ)、Mechanism Capital(メカニズム・キャピタル)、Sfermion(スフェルミオン)、The LAO(ザ・ラオ)、Emfarsis(エンファーシス)なども参加した。

なぜ、デジタル資産を作成することだけに特化した企業に資金を提供するのか。それは、まるで工場のラインで働く装置のようなものではないか?a16zゼネラルパートナーで、このような取り組みの多くを主導しているArianna Simpson(アリアナ・シンプソン)氏によると、その理由は単純で、NFTの需要が供給を上回り始めているからだという。「これらのゲームをプレイすることへの関心があまりにも高く、ゲームをプレイするために必要なAxiesやその他のエンドゲームアセットが実際に不足しているのです」。

ゲームメーカーは、ユーザーをゲームに夢中にさせておくために十分な流動性を確保するため、YGGをはじめとするいわゆるPlay-to-earn(プレイして稼ぐ)ギルドのようなサードパーティ企業との協力に前向きであることがすでに証明されている。これらの企業は、NFTのゲーム内資産を購入し、それらをプレイヤーに貸し出して収益を共有する。

今やこれらのギルドは、貸し出す資産をより多く、早急に必要とするようになっている。そのため、BreederDAOのような会社が誕生し、YGGをはじめとするReady Player DAO(レディ・プレイヤーDAO)、Earn Guild(アーン・ギルド)などの同じような企業が、この若い会社の顧客として契約しているのだ(YGGはBreederDAOの株式も所有している)。

シンプソン氏と彼女のパートナーは、より多くの顧客がすぐに列を作るだろうと確信している。a16zのデータによると、YGGやEarn Guildのような企業は、2021年5億3200万ドル(約608億円)の資金を集めた。しかし、これらの企業が資産を貸し出しているプレイヤーは、Axie Infinityに集まった約300万人のデイリーアクティブユーザーの2%にも満たないため、まだまだ成長の余地があると考えられる(BreederDAOのサイトによれば、同社は2025年までに5000のPlay-to-earnグループと協力することを目標としている。その時点ででそれだけ多くのグループが存在していると仮定しているわけだ)。

ブロックチェーンゲームで単純にNFT自体を増やすことを妨げる技術的な制限というものは、どうやら存在しないようだ。むしろ、Sky Mavisのような企業は、NFTを生成するためのエンジンを作ったものの、必ずしも事業としてその点に必要以上に注力したいとは考えていないと、シンプソン氏はいう。また、経済的にメリットがある限り、縄張り意識というものもない(例えば、Axie Infinityをプレイする人が増えれば増えるほど、そのゲームのトークンの価値は上がる)。

シンプソン氏は、このプロセス全体をサプライチェーンのように考えるべきだと言っている。「必ずしも1つの会社が最後から最後まですべてを生産するのではなく、サプライチェーンのさまざまな部分でさまざまな会社が、製品を完全に完成させるということです」。

現時点で、このサプライチェーンにおけるBreederDAOの担当は「Axie Infinity」をはじめ「Crabada(クラバダ)」「Pegaxy(ペガシー)」などのplay-to-earnブロックチェーンゲーム用のNFTを製作することだ。

工場のように、BreederDAOはこれらのNFTをあらかじめ設定された価格で販売しているが、これは時間の経過とともにレベニューシェア型契約に発展する可能性がある。「細分化は、今やっていることではありません」とシンプソン氏はいうが「将来的には」「誰にもわかりません」と付け加えた。

BreederDAOを率いるのは、フィリピン人の共同創業者であるRenz Chong(レンツ・チョン)氏、Jeth Ang(ジェス・アン)氏、Nicolo Odulio(ニコロ・オデュリオ)氏だ。

チョン氏は元経営コンサルタント、アン氏はフィリピンで数多くの企業を設立してきた。元商業パイロットのオデュリオ氏は、BreederDAOが自社内に擁するスマートコントラクトの専門家であり、Binance Smart Chain(バイナンススマートチェーン)やEthereum(イーサリアム)を含む複数のチェーンで暗号資産プロジェクトや分散型アプリを構築した経験があるという。

シンプソン氏をはじめとする投資家はすべて、BreederDAOのトークンが一般公開される前に投資を行っている。これはトークンが公開される前にチームを強化し、トークンが公開されたときに万全の態勢を整えるためだ。このシンジケートの参加者は、それぞれの投資額に応じた数のトークンを手にすることになる。

BreederDAOは、以前にも非公開のシード資金調達を実施している。このラウンドに参加したYGGの他、Infinity Ventures Crypto(インフィニティ・ベンチャーズ・クリプト)、Ascensive Assets(アセンシブ・アセッツ)、Bitscale Capital(ビットスケール・キャピタル)、FireX(ファイヤーエックス)、Mentha Partners(メンサ・パートナーズ)、Not3Lau Capital(ノットスリーラウ・キャピタル)などが支援者として名を連ねていた。

画像クレジット:Ralf Hiemisch / Getty Images

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(文:Connie Loizos、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

電動ピックアップトラックの戦いが過熱する中、GMがミシガンの4工場に約7970億円投資

General Motors(ゼネラルモーターズ)は、野心的なEV生産目標の達成を目指してバッテリーセルと電動トラックの製造に特化したミシガン州の4工場に70億ドル(約7970億円)超を投資すると発表した。ここにはパートナーのLG Energy Solutions(LGエナジー・ソリューションズ)との3つ目の工場も含まれる。

GMは、この投資計画で4000人の新規雇用を創出し、それとは別に1000人の雇用を維持するとしており、計画にはミシガン州ランシングにあるUltium Cellsバッテリーセル工場とミシガン州オリオンタウンシップのGMの組立工場の改造というすでに発表済みの2拠点への投資も含まれている。

3つ目の新しいUltiumバッテリーセル製造工場も、増え続けるEV特化施設のリストに加わる。26億ドル(約2960億円)が投じられるこのセル工場は、ミシガン州ランシングのGMから借りた土地に建設される予定だ。GMによると、280万平方フィート(約26万平方メートル)の施設の敷地造成が今夏開始され、工場は2024年後半にオープンする予定だ。この工場からミシガン州のOrion AssemblyおよびGMの他のEV組立工場にバッテリーセルが供給される。

LG EnergyとGMの合弁会社であるUltium Cellsは、この施設がフル稼働した場合、50ギガワットアワーのバッテリーセル容量になると予想している。2社はすでに、オハイオ州とテネシー州に建設中の2つのバッテリーセル製造拠点を計画している。

一方、オリオン工場はChevrolet SilveradoのEVと電動GMC Sierraの生産に使用される予定で、これはGMにとってフルサイズの電動ピックアップを生産する2つめの組立工場となる。GMのFactory Zero(旧称デトロイト・ハムトラック)は、GMC Hummer EVピックアップおよびSUV、Chevrolet Silverado電動ピックアップトラック、そして電動の自律走行ロボットタクシーCruise Originなど、GMが今後発売する一連のEVピックアップの生産も行う予定だ。

GMは、2025年末までに北米で100万台以上の電気自動車生産能力を持つことになると述べた。特に注力しているのはEVピックアップトラックで、これはGM、Ford(フォード)、そしてRivian(リビアン)のような新規参入企業が競合する分野だ。

画像クレジット:GM

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

世界的チップ不足の中、インテルは2.3兆円でオハイオ州に2つの半導体工場を建設

Intel(インテル)は米国時間1月21日、オハイオ州コロンバス郊外に2つのチップ製造施設を建設する計画を明らかにした。この計画はまだ初期段階だが、現在も続く世界的なチップ不足に対処するため、あるいは少なくとも将来起こりうる問題に対処するために、最終的に200億ドル(約2兆2750億円)を投じて工場を建設する。

同社は、最初の工場について、すぐさま計画に着手し、年内に建設を開始するという大まかなスケジュールを描いている。工場は2025年に稼働し、40年ぶりの新製造拠点となる予定だ。計画通りに進めば、このプロジェクトの敷地は1000エーカー(約4平方キロメートル)となる見込みで、最大で8つのチップ工場を建設できるほどの広さだ。

CEOのPat Gelsinger(パット・ゲルシンガー)氏はニュースリリースで「本日の投資は、米国が半導体製造のリーダーシップを回復するための取り組みをIntelが主導する、もう1つの重要な方法となります。Intelの取り組みは、より強靭なサプライチェーンの構築に役立ち、今後何年にもわたって高度な半導体への確実なアクセスを保証するものです。Intelは、世界の半導体産業を強化するために、最先端の機能と能力を米国に戻そうとしているのです」と述べた。

同社の発表によると、建設段階では7000人の雇用を創出し、稼働後は3000人を常時雇用する。バイデン政権下のホワイトハウスは、1月20日に発表した声明の中で、今回のニュースを「アメリカ経済の強さを示すもう1つのサイン」として宣伝している

オハイオ州リッキング郡に建設される2つの最先端Intelプロセッサー工場の初期計画を示す予想図。2022年1月21日に発表されたこの200億ドルのプロジェクトは、広さ約1000エーカーで、単一の民間投資としてはオハイオ州史上最大となる。2022年後半に着工し、2025年末に製造を開始する予定(画像クレジット:Intel)

ホワイトハウスはまた、機会に乗じて、新型コロナウイルス感染症によって世界的にサプライチェーンが逼迫する中で、国内の研究開発と製造の加速を目指す政策をアピールした。サプライチェーン逼迫は一部の人には政権の敗北として映っている。

「この進展を加速させるため、大統領は議会に対し、半導体を含む重要なサプライチェーンのための米国のR&Dおよび製造を強化する法案を可決するよう促しています」と政権は書いている。「上院は6月に米国イノベーション・競争法(USICA)を可決し、政権は上下両院と協力してこの法案を完成させているところです。この法案にはCHIPS for America Actへの全資金拠出が含まれており、民間部門の投資をさらに促進し、米国の技術面でのリーダーシップを継続させるために520億ドル(約5兆9110億円)を拠出します」。

両党はまた、米国でチップを製造することのセキュリティ上の利点を宣伝した。これは間違いなく、前政権の主要ターゲットとなったHuawei(ファーウェイ)などのメーカーに対する監視の強化にちなんだものだ。Intelは「オハイオ州の拠点はまた、米政府特有のセキュリティとインフラのニーズに対応する最先端のプロセス技術も提供します」と述べている。

今回のニュースは、IntelがSamsung(サムスン)などの企業との競争激化に対処する一方で、Apple(アップル)などの企業がファーストパーティーの設計を優先してIntel製チップの採用を取りやめることを選択した中でのものでもある。

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

史上最高のQBトム・ブレイディ氏のセレブNFTスタートアップ「Autograph」がトップ暗号資産投資家から193.5億円調達

著名アメフトプレイヤーのTom Brady(トム・ブレイディ)氏が共同創業に参加したNFT代理店のAutograph(オートグラフ)は、特にスターパワーの宝庫だ。同社はこのたび、このプラットフォームによって新世代のセレブリティとそのファンを、暗号資産コレクションの世界に引き込むことができると期待する暗号資産投資家たちから新たな資金を調達した。

スタートアップがクローズしたのはAndreessen Horowitz(a16z、アンドリーセン・ホロウィッツ)とKleiner Perkins (クライナー・パーキンス)が主導した1億7000万ドル(約193億5000万円)のシリーズBだ。ラウンドにはKatie Haun(ケイティ・ホーン)氏の新しいファンドとLightspeed(ライトスピード)のパートナーであるNicole Quinn(ニコル・クイン)氏も参加している。これは、01AとVelvet Sea Ventures(ベルベット・シー・ベンチャー)が共同で主導し、2021年7月にクローズしたシリーズAラウンドに続くものだ。今回の調達により、ホーン氏、a16zのArianna Simpson(アリアナ・シンプソン)氏、Kleiner PerkinsのIlya Fushman(イリヤ・フッシュマン)氏の3名が新たに取締役会に加わった。

彼らは、ブレイディ氏、Apple(アップル)のEddy Cue(エディー・キュー)氏、FTXのSam Bankman-Fried(サム・バンクマン=フライド)氏、The Weekndとして知られるアーティストのAbel Tesfaye(エイベル・テスファイ)氏などの有名人を擁する多彩な取締役会に加わることになる。

Autographは、恐ろしく騒がしいNFTの世界で、個人的な存在感を発揮したいと考えているセレブリティアスリートやエンターテイナーを仲介する代理店のような存在だ。有名人のNFTは、2021年初めに暗号化されたコレクターアイテムが人気を博して以来、さまざまな結果を見せている。ファンに報いるために考え抜かれたプロジェクトとともにこの世界に入ってきた人たちがいる一方で、多くの人に嘲笑されるような金儲けのためのプロジェクトも多数あったのだ。

これまで一般に暗号資産は、目の肥えた有名人が自身の評判(という資産)を失うことなく、世間に影響を与えたり利益を得るのは難しいとされていた。たとえばマット・デイモン氏は、2022年1月、つまらない暗号広告キャンペーンに出演したことで、かなりの嘲笑を浴びることとなった。今週初めには、キム・カーダシアン氏とフロイド・メイウェザー氏が、過去に2人が承認したトークンに対して投資した投資家から訴訟を起こされている。

他のNFTユニコーンであるDapper Labs(ダッパー・ラボ)は、NFL Players Association(NFL選手協会)やNBA Player Association(NBA選手協会)をはじめとする、米国の包括的なスポーツリーグの選手協会とパートナーシップを結んでいるが、これに対してAutographは、個々のアスリートと、彼らがプレーするチームや彼らが所属するリーグの文脈の外で、彼らをとりまく個人的な魅力に焦点を当てているようだ。Autographの初期のパートナーは主にスポーツ界だが、ブレイディ氏、タイガー・ウッズ氏、シモーネ・バイルズ氏、デレク・ジーター氏、大坂なおみ氏、ウサイン・ボルト氏、ウェイン・グレツキー氏、トニー・ホーク氏など、それぞれのスポーツ界で最も有名なアスリートたちが名を連ねている。

Autographの目的は、最高レベルの顧客が、より厳選された環境下で、暗号資産の世界へ関わることができる入口を用意することにあるようだ。

Autographは先の7月にDraftKings(ドラフトキングス)との提携を発表したが、同社はすでに多くのマーケットプレイスと提携してきたという。Autographは主に、Ethereum(イーサリアム)のインフラストラクチャを利用するPolygon(ポリゴン)ブロックチェーン上でNFTを提供してきたが、トランザクションあたりのエネルギー消費量はかなり少ない。これは、ブロックチェーン技術に対する環境批判に晒されることを警戒している有名人にとっては重要な要素だろう。

またスポーツ界以外では、The WeekndやSlam Magazine(スラム・マガジン)、ホラーシリーズのSaw(ソウ)の公式NFTなどを手がけている。

関連記事:NFTコレクターズマーケットプレイスの立ち上げ計画をDraftKingsが発表

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(文:Lucas Matney、翻訳:sako)

ByteDanceが戦略投資チームを再編し中国テック業界がパニック、政府の規制強化への対策か

中国のテック業界にとって、何と目まぐるしい日だったのだろう。TikTok(ティクトック)の親会社ByteDance(バイトダンス)が戦略投資チームを解散し、他社への投資によって積極的に拡大してきた他のインターネット大手に憂慮するようなメッセージを送った。

ByteDanceは2022年初めに「事業のニーズ」を見直し「最重要ではない分野への投資を減らす」ことを決定したと、同社の広報担当者は声明で述べた。

しかし、ByteDanceは外部投資を全面的に中止するのではなく、投資チームを「再編」し「事業の成長をサポートするためにさまざまな事業ラインに統合する」予定だ。

言い換えると、中国のスタートアップデータベース「IT Juzi」によると、これまでに169社に出資した(一部の案件は非公開)戦略投資チームの一部のメンバーは他の事業部門に配置され、そこで投資を継続することになる。

この「再編」は、それでもやはり業界にパニックを引き起こした。ロイター通信は情報筋の話として、中国のサイバー部門を管理する規制当局が「インターネット巨大企業」に投資や資金調達を行う前に承認を得ることを義務づける新たなガイドラインを起草したと報じた。また、一部の中国メディアも同様の規則案を報じた。

ロイターの情報筋によると「巨大企業」とは、ユーザー数が1億人以上、または収益が100億元(約1800億円)以上のインターネットプラットフォームを指すという。これが本当なら、この規則によりTencent(テンセント)から、Alibaba(アリババ)、Pinduoduo(ピンデュオデュオ)、JD.com(JDドットコム)、Baidu(バイドゥ)まで、中国のインターネット大手の多くが、投資活動で監視下に置かれることになる。特にTencentは「中国のソフトバンク」と呼ばれるほど、投資先が豊富なことで有名だ。

驚くべきことに、中国のサイバー分野を管理する規制当局は「インターネット企業のIPO、投資、資金調達に関して噂されているガイドラインは事実ではない」と発表している。さらに当局は「法律に基づき、関連するデマを広げた者を調査し、責任を追及する」とのことだ。

ByteDanceのチーム再編の動機は、確かに外部投資と内部事業の間でより多くの相乗効果を生み出すためかもしれない。確かなことはまだわからない。しかし、インターネット界の寵児に対する中国の独占禁止の措置は、終わりには程遠いようだ。

Tencentは最近、最も重要な盟友である中国のオンライン小売企業JD.comとシンガポールのビデオゲームとeコマース複合企業Seaのかなりの株式を売却した。売却の原因として独占禁止の圧力は挙げられなかったが、中国が最大のインターネット・プラットフォームの独占パワーを鈍らせ続けているとの憶測が飛び交っている。プラットフォームのいくつかは、反競争規則違反でさまざまな額の罰金を受けたが、投資ゲームの停止はより大きな結果をもたらすだろう。問題は、次にくるのはどの企業か、ということだ。

関連記事:Tencentは投資を続けつつも緊密な提携企業の株式を売却、中国政府のご機嫌とりか

画像クレジット:SOPA Images / Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

Tencentは投資を続けつつも緊密な提携企業の株式を売却、中国政府のご機嫌とりか

Tencent Holdings Ltd.のマーティン・ラウ社長と、ポニー・マー会長兼CEO(画像クレジット:Brent Lewin/Bloomberg via Getty Images)

中国のインターネット界の巨人Tencent(テンセント)は、その膨大なポートフォリオを売却している。現地時間1月4日、同社はシンガポールのインターネット複合企業であるSeaの30億ドル(約3480億円)以上の株式を売却する計画を発表し、Seaの株式を21.3%から18.7%に切り下げ、議決権を10%以下にすることを発表した。

この動きは、TencentがJD.comの株式1600万ドル(約18億6000万円)を株主に渡すことを決定してから1カ月も経たないうちに行われた。この移行により、JD.comにおけるTencentのポジションは2.3%程度に低下することになる。この取引の一環として、Tencentの社長兼CEOであるPony Ma(馬化騰、ポニー・マー)氏の最側近Martin Lau(マーティン・ラウ)氏はJD.comの取締役を退任することになる。

中国のeコマース事業者JD.comとシンガポールのエンターテインメントとeコマースグループのSeaは、Tencentの最も重要な戦略の一部だ。同じくTencentが支援するPinduoduoが台頭する以前、JD.comは拡大するAlibabaのeコマース帝国に対するTencentの主要な防衛策だった。Seaのゲーム運営会社Garenaを通じて、Tencentが所有するタイトルは東南アジア全域で展開されている。

関連記事:中国eコマースのPinduoduoが利益のすべてを農業に投資する理由

Tencentは、中国の独占禁止法違反の取り締まりと「共同富裕」キャンペーンを背景にこれらの売却を行った。そのため、Tencentは政府のご機嫌を取るために、自ら強固な同盟関係を解消したのではないかという憶測が飛び交っている。この主張は、Tencentが株主へのクリスマスプレゼントとして、JD.comの株式分配を行ったことの説明にもなりそうだ。ビッグテックの影響力を抑制しようとする中国政府の取り組みに対する同様の回答として、AlibabaはTwitterに似たWeiboの株式の約30%を国営コングロマリットに売却することを検討していると、Bloombergは2021年12月に報じている。

TencentによるSea株売却の根拠は、あまり明確ではないようだ。一部の投資家は、中国からの投資に対するインドの厳しい姿勢と関連している可能性を指摘している。Seaのeコマース部門Shopeeは、インド市場に参入するための準備を進めてきた

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Tencentは、他のハイテク大手に対する影響力を減らそうとしているにもかかわらず、Tencentは全体的な投資ペースは落としていない。中国のスタートアップデータアグリゲータであるIT Juziによると、創業23年となる同社はこれまでに1200社以上に投資している。2021年だけでも278社に1300億元(約2兆3732億円)以上を投入し、過去最高を記録している。フードデリバリープラットフォームのMeituan、動画共有サイトのBilibili、Pinduoduoなど、他の主要な盟友に対するTencentの影響力を削いでいくのかはわかっていない。

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(文:Rita Liao、翻訳:Katsuyuki Yasui)

2022年、注目すべき東南アジアのスタートアップ

東南アジアのスタートアップや資金調達の話を取材している私にとって、2021年を表す言葉としては、「whoa!(うわぁ!)」がぴったりだ。2021年は、世界の投資家がこの地域の技術エコシステムに注目し始めただけでなく、実際に資金を投入し始めた年でもあった。

国際的なパートナーに支えられて、Alpha JWCAC VenturesJungle Venturesなどの東南アジアに特化したVCが、過去最大の資金を調達した。

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The Kenの報道によると、Grab(グラブ)やSea(シー)のIPOのようなエグジットが東南アジアのスタートアップエコシステムへの関心を高める中で、米国のVCであるA16z、Valar Ventures、Hedosophia、Goodwater Capitalなども、地域事務所を設立している(あるいは設立を計画している)。Golden Gate Venturesの包括的なレポートでは、BとCラウンドの増加もあって、記録的な数のエグジットを予測している

「東南アジア」という言葉を使うのは、いつも少し気が引けているのだが、それはこの地域があまりにも大きく複雑だからだ。もちろん簡潔に表現したい場合には一番簡単な選択肢なのだが。東南アジアは11カ国で構成されていて、たとえばシンガポール、ミャンマー、ラオス、ベトナム、フィリピン、インドネシアの間には当然ながら大きな違いがある。

グローバルな金融センターとして知られるシンガポールのスタートアップエコシステムは、近隣諸国と比べると独自のカテゴリーに属していると言えるだろう。特にインドネシアは、世界第4位の経済大国であり、人口2億7350万人に達する東南アジアで最も人口の多い国であるため、特別な注意が必要だ。両国とも2021年にはかなりの数のユニコーンを輩出している。たとえばシンガポールでは、Ninja Van(ニンジャバン)、Carousell(カルーセル)、Carro(キャロ)、Nium(ニウム)などがユニコーンのステータスを獲得したスタートアップだ。

シンガポールのスタートアップは他の東南アジア諸国(Niumの場合は米国とラテンアメリカ)に焦点を当てる傾向があるが、一方インドネシアを拠点とする創業者たちは、中長期的な国際展開計画を持っていたのかもしれないが、私が話をした創業者の多くは、少なくとも来年は国内展開に焦点を当てる計画のようだ。インドネシアは広大なだけでなく、地理的にも複雑で、1万7000以上の島があり、そのうち約6000の島に人が住んでいる。通常スタートアップ企業は、グレーター・ジャカルタ地域で事業を開始した後、バンドンやスラバヤなどの主要都市に進出する傾向があったが、特にフィンテックやeコマースのスタートアップ企業を中心に、いまや多くの企業が小規模な都市に注目している。

以下にご紹介するのは、2021年に飛躍し2022年に注目すべきいくつかの分野だ。

投資用アプリ

ミレニアル世代や初めての個人投資家を対象とした多くの投資アプリが、2021年初めに小規模なアーリーステージのラウンドで調達を行ったが、数カ月後にはそれよりはるかに大きな追加調達が行われた。例えばインドネシアを拠点とする暗号資産に特化したPintu(ピントゥ)、ロボアドバイザーのBibit(ビビット)、Ajaib(アジャイブ)、Pluang(プルアン)、シンガポールを拠点とするSyfe(セイフ)などがある。

インドネシアでは、個人投資の割合はまだ比較的低いが、その数はパンデミック期間中のファイナンシャル・プランニングへの関心の高まりと、株式インフルエンサーの人気によって、一部の人たちからの懸念にもかかわらず、増加している

インドネシアの中小企業に特化したスタートアップがフィンテックを深化させる

政府の発表によると、インドネシアには6200万社の中小企業(SME)があるとされているが、複数の創業者から聞いたところによると、特に家族経営の企業や個人事業主は計上されていない可能性があるため、この数字は実際よりも低くなっている可能性があるという。その正確な数はともかく、中小企業の多くはエクセルや紙の台帳で会計処理をしているため、技術系のスタートアップにとっては絶好の機会が広がっている。

最も注目すべきは、競合する2つの簿記アプリのBukuWarung(ブクワルン)とBukuKas(ブクカス)が、2021年多額の資金を調達したことだ。両社とも、当初は中小企業のデジタル化を支援することに注力していたが、最終的には、ユーザーがソフトウェアに入力したデータを利用して信用力を判断し、運転資金の融資などの金融サービスに製品を拡大する予定であるという点で互いに似通っている。

中小企業を対象とした他のスタートアップには、賃金前払いや給与管理のプラットフォームのGajiGesa(ガジゲサ)やWagely(ウェイジリー)などがある。

ソーシャルコマース

インドネシアの大都市に住んでいる人には、eコマースのプラットフォームの選択肢が多いのだが、地方では選択肢が少なくなる。これは、物流インフラが細分化されていることが一因で、商品の受け取りにコストと時間がかかることが問題なのだ(ただし、SiCepat[サイセパット]、Advoctics[アドボクティクス]、Kargo[カーゴ]、Waresix[ウェアシックス]などのスタートアップ企業もこの問題に取り組んでいる)。

そこで、中国のPinduoduo(拼多多、ピンドゥオドゥオ)やインドのMeesho(ミーショ)の成功をこの地で再現しようと、Super(スーパー)、Evermos(エバーモス)、KitaBeli(キタベリ)といったソーシャルコマースのスタートアップが登場している。いずれも、日用雑貨や食品などの生活必需品を対象としていて、同じ地域に住む人たちがまとめて注文を行うことで、サプライチェーンをより効率的かつ安価にするソーシャルコマースモデルを利用している。その意味では、少なくとも部分的には物流のスタートアップと呼ぶことも可能だ。

eコマースアグリゲーター

Thrasio(スラシオ)のように、小規模なeコマースブランドを買収するスタートアップ企業は、数年前から欧米で多くの資金を集めてきた。しかし、このようなeコマースアグリゲーターが東南アジアに進出するには、ある程度の時間が必要だった。

2021年、2つのeコマースアグリゲーターがベンチャーキャピタルからの資金提供を受けて正式に発足し、数ヵ月後にはどちらも追加の資金調達ラウンドを実施した。多くのeコマースアグリゲーターがAmazon(アマゾン)の販売者を中心に活動しているのに対して、Una Brands(ウナ・ブランズ)は「セクターは問わない」としている。アジアパシフィックを横断する有力なマーケットプレイスが存在しないため、同社はTokopedia(トコペディア)、Lazada(ラザダ)、Shopee(ショッピー)、Rakuten(楽天)、eBay(イーベイ)などのプラットフォームからブランドを探すシステムを開発した。一方、Rainforest(レインフォレスト)は、アジアのAmazon販売者に焦点を当てているが、消費財のコングロマリットであるNewell Brands(ニューウェル・ブランド)のオンライン版を目指すことで、他のアグリゲーターとの差別化を図っている。アジアを拠点とするeコマースの販売者が多いことから、Una BrandsとRainforestの両方が成長し、他のアグリゲーターが登場することも期待される。

画像クレジット:Abdul Azis/ Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:sako)

【コラム】米国のスマート道路への投資は好景気への道を開くだろう

米国の交通システムが直面している課題は数多く、年々悪化している。米国の道路への需要が高まるにつれて、安全性、効率性、持続可能性の問題も増大している。

歴史的な1兆ドル(約114兆円)規模のInfrastructure Investment and Jobs Act(インフラ投資・雇用法)は、数十年間で最大かつ広範囲に及ぶインフラパッケージの1つであり、この国の投資ニーズに対する巨額の頭金となって、すべての州で数千もの重要なプロジェクトの鍵を握ることになる。しかし、公的資金だけでは、特に5年間に配分される場合、人口や都市、そして道路を毎日走る車両の新たなニーズに対応するには不十分である。

例えば、老朽化し荒廃した高速道路、橋、道路の補修に1000億ドル(約11兆円)が割り当てられている。残念なことに、米国は長年にわたり道路の財源を不足させてきたため、公共道路の43%が劣悪あるいは並以下の状態に置かれており、その結果、道路補修の必要額として4350億ドル(約49兆円)の未処理分が生じている。道路の修理に特化した公的資金をもってしても、私たちは依然として必要とされるレベルに達していない。

交通インフラ産業は歴史的にリスク回避の傾向があり、公共交通機関の資金の利用可能性によって制限されてきた。しかし、今日に至るまで私たちすべてが依存してきている初期のテクノロジーネットワークの歴史的な例がいくつかあり、それらは国民経済に劇的なインパクトをもたらしている。これらのプロジェクトは、公共投資によって促進され、地元の公共事業機関による地域での実施を必要とし、大部分は民間組織によって提供され、維持されてきた。

初期の自動車を支えるために舗装道路が導入されたのは、100年と少し前のことである。州間高速道路網は、Dwight D. Eisenhower(ドワイト・D・アイゼンハワー)大統領が1956年のFederal Aid Highway Act(連邦補助高速道路法)に署名して以来「史上最大の公共事業」として知られている。毎日の移動、商業、文化の手段となっている。

この記事をコンピューターやタブレット、スマートフォンの画面で読むには、全国的な電力網やケーブル、携帯電話ネットワークの恩恵が欠かせない。私たちがより多くの生活をテクノロジーに依存し、信頼し、そして放棄するようになるにつれ、交通機関の研究者やスマートインフラのプロバイダーの多くが、安全性、効率性、持続可能性を向上させる創造的な新しい方法を取り入れている。

米国には国を横断する400万マイル(約644万キロメートル)余りの公道が存在する。スマート道路は、次世代の車両、人、都市のインフラを変革するための、わかりやすくアクセスしやすいソリューションである。古いテクノロジーを改良するために新しいテクノロジーを発明するという頻度は非常に高くなっている。道路をネットワーク化することは、テクノロジーを可能にするソリューションの1つである。

道路をデータと通信のプラットフォームに変えることで、オンライン小売業者がインターネットのトラフィックから得るのと同じレベルで、実店舗が車両向けのインサイトを捕捉するために使用できるような匿名性の高いデータが収集されるようになる。オンライン小売業者には、顧客の人口統計、ショッピングおよび購買習慣、市場動向、そしてトラフィックパターンについての情報がもたらされている。インターネットのインフラとサービスにより、トラフィックデータが自動的かつ受動的に収集されるのである。

これに対し、実店舗は基本的に顧客ベースについて何も把握していない。起業家は数百万ドル(数億円)を現地経済に投資するが、その前に何カ月もかけて場所を見つけて調整し、在庫を確保し、人員を配置する。こうした一連の作業を経て、1つの取引が成立する。道路から収集された匿名データは、事業主がオペレーションを改善し、従来の小売業者がオンライン小売業者との競争力を維持するのに役立つだろう。

このようなスマートインフラサービスを活用すれば、道路はその新しいケイパビリティからのキャッシュフローに依存することで、自己資金を得ることができる。携帯電話やインターネットのインフラ市場が概ね自立しているのと同様の構図である。これは、一部の公道において持続可能な財源と自己資金調達が実現可能になることを意味しており、都市は限られた予算を道路から他のコミュニティのニーズに振り向けることができる。

ブロードバンドアクセスのための650億ドル(約7兆4200億円)のインフラ計画は、農村地域や低所得世帯、部族コミュニティのためのインターネットサービスを改善することを目的としている。この計画には、電気自動車の充電ステーションに75億ドル(約8560億円)が割り当てられており、気候変動を抑え、石油への依存度を減らすために電気自動車の普及を加速させることを目指している。

スマート道路が、5GワイヤレスアクセスやワイヤレスEV充電など、当初からソフトウェアアップグレードが可能なように設計されたケイパビリティのメニューを提供するなら、わが国の道路網は進化するテクノロジーに歩調を合わせることができるだろう。道路はすでに農村地域に整備されているので、新たに基地局を建設する必要はない。ワイヤレスEV充電機能を道路に組み込むことで、ガソリンスタンドのように充電ステーションを設置する必要はなくなる。実際、EVの所有者やドライバーは、道路を離れて充電に接続しなくても済むようになる。

こうした道路を介して提供される商用サービスの利用料金、すなわちネットワーク事業者が支払う通信サービス、自動車所有者が支払うEV充電やナビゲーション、あるいはそれらを利用する事業者が支払うデータサービスなどの利用料金を評価することで、スマート道路はこれらの新たなケイパビリティから得られるキャッシュフローに基づいて、自らの費用を支払うことが可能になる。

スマート道路導入の主な課題は、公金ではリスクをとることはできないし、とるべきではないというマインドセットにパブリックオーナーが陥っていることである。歴史的に公的資金はリスク資本であり、そしてこれらのオポチュニティにおける最初の資金でもある。私たちはこのリスクフリーのマインドセットからパブリックオーナーを脱却させ、公共機関がインフラを通じて経済発展を可能にすることはできないし、そうすべきではないという考えに立ち向かう必要がある。

大規模な経済開発を可能にするインフラ整備のオポチュニティに公共投資を投入することにより、私たちは100年前に舗装道路を、60年前に州間道路を建設した。したがって、それはすでに検証されているアプローチであり、米国人が毎日使用している顕著な実証ポイントもいくつか存在している。これらは新しい方法ではない。私たちが何度も行ってきた古いやり方であり、社会の新たなニーズに応じてアップデートされる形でパッケージ化されているものだ。

もう1つの課題は、いかに長期にわたる公共事業を市場活動と比較するかである。公共機関が道路工事許可証を発行するのに18カ月かかるが、ソフトウェアとハードウェアの世代全体が通り過ぎるのを見ることはできても、1つのショベルも地面を打つことはない。公共事業の速度が遅いということは、私たちがはるかに先を見なければならないことを意味する。短期的な目標はプロジェクトが設計段階を終える前になくなってしまうため、焦点を合わせることができない。公共事業の範囲、規模、速度(またはその欠如)は、私たちが非常に長い計画対象期間を設定しなければならないことを意味する。

わが国の道路への投資は、繁栄する経済を成長させる鍵であり、国の将来にとって不可欠である。各都市は現在、都市化への対応、交通流量の合理化、汚染の削減、安全性の向上という重圧に直面している。

スマート道路のテクノロジーは、都市計画者や政府がこれらの課題に正面から対処することに貢献する。交通管理から歩行者や車両の安全性、環境モニタリングに至るまで、モノのインターネット(IoT)は道路をよりインテリジェントに、効率的に、そして適切に管理できるようにする。

インフラ投資・雇用法は、わが国のインフラの現状に取り組むための第一歩である。この投資がどのように使われるかが変化をもたらす。もしそれが単に近年のやり方であるというだけの理由で、老朽化したプロセスに一時しのぎの解決策を適用するために配布されるならば、そのお金は急速に使い果たされ、意味のある改善もないまますぐに忘れられてしまうだろう。

だが、この投資を革新的なインフラプロジェクトの頭金として使ったとしたらどうだろう。その場合私たちには、より強固な未来に向かって前進し、新しいテクノロジーを容易かつ迅速に統合できる、一貫性のある有意義なアップグレードの適切なケイデンスを構築するオポチュニティが用意されている。

編集部注:本稿の執筆者はTim Sylvester(ティム・シルベスター)氏は建設業界で20年の経験を持つ電気・コンピュータエンジニアで、Integrated Roadwaysの創設者兼CEO。

画像クレジット:RBV T / 500px / Getty Images

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(文:Tim Sylvester、翻訳:Dragonfly)

オンライン貸付投資のFunds、三菱UFJ銀行に年利1%で間接的にお金を貸せる融資型クラウドファンディング公開

個人が1円からの貸付投資を行える「Funds」(ファンズ)を運営するファンズは12月24日、三菱UFJ銀行を借り手とする「Money Canvasファンド#1」を公開した。

Money Canvasファンド#1は、予定利回り1%(年率、税引前)、予定運用期間11カ月としており、借り手が三菱UFJ銀行になる。貸付けは直接にはファンズ子会社であるファンズ・レンディングが行い、投資家は同社に対して当該貸付けの原資を匿名組合契約に基づき出資する。複数ファンドの出資金が同一の借り手企業に1つの金銭消費貸借契約でまとめて貸し付けられるシリーズファンドとして、2022年2月上旬まで総額3億円の募集を予定している。

また同ファンドは、三菱UFJ銀行の総合サービス「Money Canvas」第1弾商品にあたる。Money Canvasは、超高齢化社会において老後の生活資金としての備えや、将来に向けた計画的な資産形成のサポートを目的としたサービスという。Money Canvasファンド#1は、双方のプラットフォームの価値向上を目的として、Funds上での募集に加えてMoney Canvas上でも詳細情報が提供される。

今後ファンズと三菱UFJ銀行は、Money Canvasユーザーのみに向けた投資家限定ファンドや、三菱UFJ銀行以外が借り手となるファンドの共同販売を実施するなど、ユーザーがメリットを享受できる取り組みを検討しているという。

2016年11月設立のファンズは、個人が1円から・1円単位で企業に対する貸付投資を行えるオンラインプラットフォームFundsを提供。これまで上場企業を中心とした48社が組成する147のファンドを募集し、分配遅延・貸し倒れは0件(2021年11月末日現在)となっているそうだ。

ラインナップしているファンドの利回りは1~3%台が中心。参加企業は、ファンズが定める財務状況や事業計画などの選定基準をクリアした企業に限定している。

ベンチャーキャピタルのデータ会社「Dealroom」が約7.8億円のシリーズAを調達

ヨーロッパのスタートアップで、ベンチャーキャピタルのデータ会社であるDealroom(ディールルーム)が、600万ユーロ(約7億7600万円)のシリーズAを調達したと、TechCrunchに語った。

同社は2020年初頭に275万ユーロ(約3億5500万円)を調達して以来、約2年での新たな資金調達となる。同社のデータベースは、PitchBook(ピッチブック)、CB Insights(CBインサイト)、そして私の元勤務先Crunchbase(クランチベース)など、北米の多くのライバルと競合している。

シリーズAはBeringea(ベリンジア)が主導し、以前同社に投資していたKnight Venture Capital(ナイト・ベンチャー・キャピタル)とShoe Investments(シュー・インベストメント)も参加した。このラウンドをよりよく理解するために、TechCrunchはDealroomの創業者でCEOのYoram Wijngaarde(ヨラム・ワインガールデ)氏にいくつかの質問を投げかけた。

Dealroomのビジネス

このスタートアップは、公開スクレイピングやパートナーシップを通じて、非公開の市場企業のデータを収集している。そして、そのデータをクリーニングし、同社のソフトウェアにかけることで、Dealroomの言葉を借りれば「実用的な予測を明らかにする」のである。

つまり、Dealroomはデータ収集、クリーニング、合成の3つのパートが連動している。

世界中に溢れかえる資金調達イベントに対応するために、より多くの資本が必要なのはわかるだろう。実際、Dealroomのような企業は、好景気のような波に乗りつつある。彼らの中核的な市場であるプライベート・コーポレートは急速に拡大しており、スタートアップゲームに参加している多くの企業が潤っている。そのため、Dealroomは多くの仕事を抱えており、また、それを売る相手もたくさんいる。

同社のビジネスには、企業や政府の顧客にAPIを提供したり、SaaSベースでプラットフォームへのアクセスを販売するなど、いくつかの方法で収益を上げている。また、同社は顧客調査も行っている。ワインガールデ氏によると、政府系APIの顧客は50社で「(同社の)収益の約3分の1を占めている」という。

より一般的には、同社の「収益ミックスは、投資家、B2B企業、政府の間でほぼ3等分されている」と、そのCEOは述べている。つまり、Dealroomの収益は一本足ではなく、3つの異なるグループが同社の提供するものを購入している。

Dealroomとそのライバルにとって好調な時期であるという話に戻ろう。Crunchbaseによると、Dealroomは2021年、およそ3800万ドル(約43億4100万円)のARRに達する見込みだ。Dealroomの収益の大部分を政府が占めているという事実は注目に値する。政府は、世界中に均等に広がっていくにつれ、スタートアップのゲームに注目し、地元の市場や周囲の市場をよりよく理解するために、喜んで支出をする。

資本面では、TechCrunchはワインガールデ氏に、同社がわずか600万ユーロ(約7億7600万円)しか調達できなかった理由を尋ねた。今日の市場において、これは控えめなラウンドだ!

ワインガールデ氏は、Dealroomが「ビジネスの必要性」と「資本の利用可能性に基づいて(自分たちを)あまり先取りしたくなかった」という事実の両方に基づいて、新しいラウンドの「サイズ」を決めたと述べた。また、Dealroomが「幸運にも、健全な資本効率と結びついた強力な成長収益を持っている」と付け加えた。このことは、短期的な資本増強の必要性、ひいては希薄化を抑制する。

次はどうなる?

Dealroom、Crunchbase、その他データゲームに関わる企業は、データを持つこと、データを収集すること、などデータに関して非常に優れている。Dealroomが、今後そのデータでやりたいことは、データをより賢く活用することだ。ワインガールデ氏は、今後の展望として「プラットフォームの予測能力を拡大し、顧客がより早い段階で有望企業を発見できるようにすることに重点を置いています」と答えた。

もし、それを実現できれば、同社は、少なくとも投資家向けに、価格設定ページにゼロを追加することができる。私が働いていた別の会社、Mattermark(マターマーク)は、同じようなものを作りたがっていた。これは、大きくて難しい問題で、正確で分刻みのデータを大量に必要とする。

長くなる前に、TechCrunchはデータ収集ビジネスにおけるある仕組みをもっと理解したいと思った。そこで、Dealroomに、データ収集とキュレーションを収益コストとしてカウントしているのか、それともマーケティング運用コストとしてカウントしているのかを尋ねた。ワインガールデ氏の返事は以下の通りだ。

データ収集は、一部は収益コストとして、一部は製品開発費として(営業費用に)計上しています。また人間主導の研究も多く、これは収益コストに計上されていますが、多くのコンテンツマーケティングを生み出していることから、マーケティング・コストと見ることもできます。

答えは、両方であることがわかった。このミックスをもっと理解したいし、プライベートマーケットデータビジネスの企業の1つが株式公開を申請すれば、もっと理解が深まるに違いない。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Alex Wihelm、翻訳:Yuta Kaminishi)

モデルナの主要投資元Flagship Pioneeringの新たな投資先、tRNAを用いて「何千もの病気」の治療を目指すAlltrna

米国時間11月9日、モデルナの主要投資元であるFlagship PioneeringはRNAに関心を寄せる企業のポートフォリオに新たな企業を追加したことを発表した。この1年、mRNAが話題になったわけだが、Alltrnaと呼ばれる新しい企業は転移RNA(tRNA)ベースの薬剤の開発に乗り出そうとしている。

メッセンジャーRNA(ModernaやPfizerの新型コロナウイルスワクチンに使用されているmRNA)が、細胞にある特定のアミノ酸を組み立てそれらを結合してタンパク質を作るよう指令する遺伝子情報であることを知る人は多いだろう。では、tRNAとはなにかというと、これはL型をした分子で、mRNAにより集められたアミノ酸を実際に組み立てる働きをする分子である。tRNAは人の細胞が遺伝子コードを取得し、それを体内で機能的なタンパク質に変えるための最後のステップの1つを実行する。

Flagshipの設立期からのパートナーでAlltrnaの共同創設CEOである Lovisa Afzelius(ロヴィサ・アフゼリアス)氏がTechCrunchに語ったところによると、Alltrnaでは、1つのtRNAを「何千もの病気」を治療するのに活用できると考えている。同社は、過去3年間プロトモードにあったのだが、その間、30人からなるチームでtRNA治療開発のための「プラットフォーム」を開発してきた。

「これは本当に重要な分子です。しかし現在まで、創薬手法としては完全に過小評価されてきました。当社が開発したのは広範囲にわたるtRNAプラットフォームで、これを使用することで、tRNAの生物学的側面全体を探求することが可能になります」と、アフゼリアス氏は語った。

ModernaやPfizerの新型コロナワクチンは、mRNAテクノロージの可能性について非常に説得的に証明してきた。しかし、2021年は他のRNAプロジェクトの資金調達に大きな動きのある年となっている。

5月、Flagshipは次の10年間で100種類のエンドレスRNA(eRNA)製品および薬剤プログラムの開発を目指す企業、Larondeに関する発表を行った(eRNAはFlagshipにより開発されたRNAの一種で、体内で特定の薬の治療効果を引き伸ばしたり、治療用タンパク質の「持続的な」発現を生み出したりするように設計されている)。

Larondeは2021年シリーズBでの資金調達で、Flagshipからの投資に加え、T. RowePrice、CPPinvestments、Fidelity Management and Research Company、Federated Hermes Kaufmann Funds、BlackRockが管理する資金とアカウントより、約4億4000万ドル(約501億円)を調達した

tRNAを用いた薬剤のアイデアは比較的新しいものだが、次第に注目され始めている。2021年9月にC&EN が報じたところによると、ReCode Therapeutics、Shape Therapeutics、Tevard Biosciencesの三つのスタートアップは、tRNAを用いた治療法の開発に向け、合わせて2億4000万ドル(約273億円)を調達した。

Alltrnaは、さまざまな病気に介入しうるtRNAの可能性を大いに喧伝している。Flagshipのプリンシパルで、共同創設兼Alltrnaのイノベーションオフィスの責任者でもあるTheonie Anastassiadis(セオニー・アナスタシアディス)氏は、 tRNAには「翻訳の多くの側面」を制御する機能があるという。

例えば「増殖tRNA」の一部は細胞分裂に関与している(またいくつかの研究では、 tRNAを下方制御することにより細胞の増殖を抑えることができ、癌への対応策となりうることが示唆されている)。

また、tRNAにより、遺伝子コードのエラーに起因する問題を修正することができる。一部の遺伝子には、早すぎる時点でタンパク質生成の停止を促す「終止」サイン(終止コドンとも呼ばれる)として機能する変異が含まれている。これらの終止サインは、特定のタンパク質について、それが完全に生成されきっていない状態であるのに、生成を停止するよう指示する。この時期尚早な終止コドンは遺伝性疾患の大きな要因であり、すべての遺伝性疾患または癌の10%から30%程に関係しているとされている。

アフゼリアス氏によると、tRNAエンジニアリングの背後にある考え方は、tRNAがそれらの終止サインを読み込んだ場合でも、完全なタンパク質を組み立てられるということである。

「何千という病気にこれらの終止コドンがまったく同様のかたちで関与している可能性があります。これらのタンパク質に挿入すべきアミノ酸は同一のものです。実際に広範囲に渡る遺伝性疾患に同一のtRNA薬剤を使用することが可能です」。とアフゼリアス氏は語った。

AlltrnaのtRNA に対するアプローチはtRNAベースの薬剤開発を実際に行うのに必要なツールを拡張するところから始まる。tRNAを発現させ、そのレベルを計測し、修正し、そして合成する基本的な手法は現在「非常に技術的に難しい課題です」とアナスタシアディス氏は述べた。

「プラットフォームの一部としてまず私たちが行ったのは、実際にこれらのAlltrnaの独自のツールを構築したことでした」。

tRNA治療のためのプラットフォームの開発は、計画にそって進んでいる。現在のところ、同社はどこと提携しているかや、どういった病気を治療対象と考えて開発に取り組んでいるかについては明らかにしていない。

Flagshipは現在までに、Alltrnaに5000万ドル(約54億円)を提供している。これは2021年FlagshipがLarondeに最初に提供した額と同額である。アフゼリアス氏は今後「適切な時期が来たら」外部からの投資も求めたい考えだと語った。

画像クレジット:LAGUNA DESIGN / Getty Images

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(文:Emma Betuel、翻訳:Dragonfly)

RivianがIPOで調達した資金のうち5650億円をジョージア新工場とバッテリー技術に投資

Rivian(リビアン)は、株式公開時に調達した137億ドル(約1兆5500億円)の一部をジョージア州の第2工場建設に回す。同工場は同社のイリノイ工場の2倍の生産能力を持つ。

米国時間12月16日に最初の決算報告の一部として発表した同社は、資金をイリノイ州ノーマル工場のEV生産能力を年間15万台から20万台に拡大するためにも使うという。第2工場はアトランタの東、モーガン郡とウォルトン郡に建設され、年間生産能力目標は40万台だ。

ジョージア工場ではバッテリーセルの生産も行う。建設は2022年夏に、生産は2024年に開始する見通しだ。同社は株主向けの書簡で、持続可能な事業運営、人材プール、サプライチェーンや物流への近さなどを総合して、この地を選んだと述べた。

「ジョージア工場は、持続可能な輸送手段の大規模な導入を加速するという当社の目標にとって、極めて重要になります」と書簡で述べた。さらに、同工場は同社の次世代車両の生産にも使われると付け加えた。

短期的には、次世代自動車の設計・開発にも資金を投入する。Rivianには現在、消費者向けのピックアップ「R1T」とSUV「R1S」、そして商用バンの3車種がある。同社の株式を20%以上保有するAmazon(アマゾン)は、Rivianにとって最初の商用バンの顧客で、まず10万台の注文を受けた。

また、Rivianは垂直統合に多額の投資を行うが、これは同社と創業者でCEOのRJ Scaringe(RJ・スカンジー)氏の過去数年間の戦略に従っている。具体的には、バッテリーセル化学の開発、原材料の調達、自社でのセル製造など、バリューチェーン全体にわたってバッテリー技術に投資するつもりだと、同社は株主向け書簡で述べている。そこに掲載された図を見てみると、こうした垂直統合の野望がよくわかる。

画像クレジット:Screenshot/Rivian

書簡によると、電気駆動システムも投資の優先順位の1つになるという。その目的は「より高い性能、改良されたパッケージング、低コストを提供する自社製の将来のドライブユニット」を進化させることだという。

売り上げの創出がTo Doリストの冒頭にくることはいうまでもない。Rivianは、顧客との関わりと体験に投資を続けることによって売り上げを増やす計画だ。その中には「体験スペース」、消費者向けのRivian会員プログラム、商用顧客向けのFleetOSというブランドのデジタル車両管理ソフトウェアなどが含まれる。

Rivianは、車両サービスと充電インフラの整備を計画していると明らかにした。2021年末までに60台以上の移動式サービスバンを稼働させ、カリフォルニア、コロラド、イリノイ、ニューヨーク、ユタ、ワシントンに8つのサービスセンターを設置する予定だという。

画像クレジット:Kirsten Korosec

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

Voodooは「Play-to-Earn」、遊んで稼ぐブロックチェーンモバイルゲームに約227億円超を賭ける

フランスのスタートアップVoodoo(ブードゥー)は、ブロックチェーンを活用したモバイルゲームに多額の投資を行う計画を発表した。同社は、今後数年間で2億ドル(約227億4000万円)規模の投資を行うことになると見積もっている。

2021年は暗号ゲームにとって重要な年となり、中でもAxie Infinity(アクシー・インフィニティ)はPlay-to-earn(ゲームして稼ぐ、P2E)モデルを普及させた。Mythical Games(ミシカルゲームス)のように、大規模な資金調達ラウンドを行い、メインストリームのブロックチェーンゲームに取り組んでいる企業もある。

サイドノートとして、ファンタジースポーツのNFTゲームも暗号ゲームと考えられる。その分野では、ファンタジーフットボールのSorare(ソラーレ)が6億8000万ドル(約773億3000万円)のシリーズBラウンドを調達し、NBA Top Shotを開発したDapper Labsは2億5000万ドル(約284億2000万円)を調達してNFT分野でのさらなる発展を目指している。

関連記事:レアル・マドリードやリヴァプールなどと提携するファンタジーサッカーNFTゲーム仏Sorareがソフトバンク主導で約743億円調達

Voodooは現在、ハイパーカジュアルゲームで最もよく知られており、50億のダウンロード数と3億人の月間アクティブユーザー(MAU)を抱えている。同社のゲームには「Helix Jump」「Crowd City」「Hole.io」「Paper.io 2」などがある。

Voodooは自社スタジオを持つ一方で、サードパーティのゲームスタジオのパブリッシャーとしても活動している。Voodooの秘伝のソースは、配信、ユーザーあたりの平均収益、絶え間ないイテレーションを最適化する技術スタックだ。

そして、モバイルゲームのエキスパートであるVoodooは、暗号ゲームに関しても何もせずじっとしているつもりはない。Voodooはすでに10の社内スタジオでブロックチェーンベースのゲームに取り組んでいる。2022年には、さらに20の暗号ゲームに特化したスタジオを開設する予定だ。

2021年、Voodooは8社を買収した。つまり、新しい暗号ゲームのスタジオは、買収から生まれる可能性があるようだ。

VoodooのAlex Yazdi(アレックス・ヤズディ)CEOは、声明の中で次のように述べている。「複数の業界を変革するような技術的ブレイクスルーを経験することは、人生においてほとんどありません。プレイヤーはすでにデジタル資産を購入することに慣れているため、ブロックチェーンは特にゲームに影響を与えるでしょう。この技術により、プレイヤーは自分のデジタル資産の真の所有権を得ることができ、ゲーム内のデジタル通貨やゲーム資産の収集、取引、販売などを通してプレイヤー同士の交流が深まり、楽しさやエンゲージメントが向上します。またこれにより、プレイヤーは自分の資産から利益を得ることができるようになり、新たな『Play-to-earn』モデルにつながります」。

つまり、今後のVoodooのゲームでは、取引可能なNFTが期待できるということだ。ユーザーがオンラインマーケットプレイスでNFTを売買できるようになれば、ゲーム外でも経済的価値を持つことになる。

Voodooの既存のスタックに加えて、同社はトークンの管理、NFTの作成、ウォレットアドレスの作成、(イーサリアムのような)レイヤー1ブロックチェーンやレイヤー2のソリューションと統合して取引コストを削減するための再利用可能なブロックチェーンスタックに取り組む予定だ。

画像クレジット:Afif Kusuma / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:Aya Nakazato)

ビットコイン「先物」ETFと何が違うのか?SEC、ビットコイン「現物」ETFは拒否

ビットコイン「先物」ETFと何が違うのか?SEC、ビットコイン「現物」ETFは拒否

編集部注:この原稿は千野剛司氏による寄稿である。千野氏は、暗号資産交換業者(取引所)Kraken(クラーケン)の日本法人クラーケン・ジャパン(関東財務局長第00022号)の代表を務めている。Krakenは、米国において2011年に設立された老舗にあたり、Bitcoin(ビットコイン)を対象とした信用取引(レバレッジ取引)を提供した最初の取引所のひとつとしても知られる。

ビットコイン先物ETFがニューヨーク証券取引所に上場してから約2カ月。米資産運用会社プロシェーアズが手がける米国初のビットコイン先物ETFの人気は衰えることはなく、取引量がすべてのETF取引量の2%に到達したとも報じられました。株式投資家にとって親しみのあるETFを通じたビットコイン投資が米国で解禁になったことについて暗号資産業界は大いに盛り上がりました。しかし、もう1つの悲願であったビットコイン現物のETF承認に関しては当局から「待った」がかかりました。11月14日、米証券取引委員会(SEC)が、米資産運用会社ヴァンエックが申請していたビットコイン現物のETFを拒否しました。

「先物」が良くて「現物」がダメな理由には何があるのでしょうか?ETFの基本的な概念を押さえつつ、解説します。

ETFとは?

ETF(上場投資信託)は、現在の株式投資家にとって親しみのある投資商品です。初めて登場したのは1990年ごろで、カナダはトロント証券取引所に上場された、TIPS35という株価指数に連動するETFと言われています。

1990年以前から、金融の世界では、投資家が直接投資を行うことなく、プロ(運用会社など)が代わりに株式や債券などに投資を行ったうえで、その投資損益を投資家が得る「投資信託」が一般的に行われていました。また、個別株や債券への投資ではある程度まとまった金額が必要になりますが、投資信託は少額でも購入可能な場合が多いため、投資信託は一般投資家の投資対象の拡大と利便性の向上に大きく貢献しました。

一方で投資信託は、信託報酬などの手数料が割高であったり、自由に購入・解約ができないこともあったり、市場での流通が限定されているので時価がわかりにくかったりと、いくつかの難点もありました。

こうした難点を投資信託を証券取引所に上場させることで解決したのが、「上場投資信託=Exchange Traded Funds」です。上場商品であるが故の比較的割安な手数料、高い流動性、価格の透明性などが確保されました。

ビットコインETFが証券取引所に上場されれば、証券市場に参加する投資家にとって暗号資産がトヨターやソニー株と大差ないものになり、暗号資産の普及が加速するとみています。ビットコインETFの誕生とは、既存の金融である証券と未来の金融である暗号資産が融合する歴史的な瞬間であるといえます。

ビットコイン先物ETFが承認された理由

2021年10月19日に上場したプロシェアーズのビットコイン先物ETF(BITO)は、シカゴマーカンタイル取引所(CME)に上場するビットコイン先物と連動しています。先物取引とは、将来の取引価格について現時点で約束をする取引です。実は、「CMEに上場するビットコイン先物」という点が非常に重要で、先物と現物の明暗を分けることになりました。

CMEのビットコイン先物は、SECと同様に資本市場の規制機関である米商品先物取引委員会(CFTC)によってすでに規制されており、2017年12月以降でしっかり取引が行われてきたという実績があります。しかも、現在のSECのゲーリー・ゲンスラー委員長は、CFTCの委員長を務めた経歴があります。

また、ゲンスラー委員長はマサチューセッツ工科大学(MIT)で暗号資産に関する講義を担当したこともあり、暗号資産に対する理解度が高いと業界から期待されています。2020年にSECの委員長に就任したばかりのゲンスラー氏は、実際、ビットコイン先物ETFに関して10月の承認前から好意的な発言をしていました。暗号資産という新たな投資商品であっても、自身が詳しい金融領域において秩序だって規制できるものに関しては規制を開始していくという、ゲンスラー委員長のスタンスの表れかもしれません。

ビットコイン先物の課題

しかし、ビットコイン先物ETFさえあれば事足りるという現状ではなさそうです。ビットコイン先物ETF投資に慎重な機関投資家も少なくないと聞きます。大きな理由の1つが、「コンタンゴ」(contango)です。

コンタンゴは、期日が遠い先物価格の方が期日が近い先物価格よりも価格が高くなる現象を指します。例えば原油や大豆などコモディティには在庫管理が必要であり、長く保管すればするほど倉庫代が高くなることから、期先の先物価格が期近の先物価格より高くなることは想像できます。問題は、在庫管理が必要でないはずのビットコインの先物市場においても、基本的にはコンタンゴが発生してしまっている点です。

先物市場では、取引できる期限の月(限月)が決まっています。ただ、先物型のETFに「期限切れ」というのはありえませんから、運用者は期近の先物を売って期先の先物を買うロールオーバーという行為を繰り返します。ここで、先程のコンタンゴが問題になります。期先の先物価格は割高ですから、先物型のETFの運用は「安く買って高く売る」という運用になってしまい、そのコストが投資家に跳ね返る仕組みになってしまっています。

ビットコイン支持派として知られるアーク・インベストメントのキャシー・ウッド氏も、コンタンゴを理由にビットコイン先物ETFには慎重な姿勢を示しています。

ビットコイン現物ETFが拒否された理由

現物のビットコインには、先物市場に特有のコンタンゴのような問題はありません。そういった意味でもビットコイン現物ETFを待ち望む声も多いのですが、そう簡単にはいかない事情があります。

ビットコイン先物市場とは対照的にビットコインの現物市場は、現在どのキャピタルマーケットの規制も受けていません。このため、規制当局から見れば、究極的にはビットコインという同じ資産が裏付けになっていますが、実質的にはビットコイン先物ETFとビットコイン現物ETFはかなり異なる商品となっているのです。

そして、SECがビットコイン現物のETFに難色を示している理由も、まさに規制されていないマーケットであるという点です。

これまでビットコイン現物のETFは、2017年以降、何度もSECに対して申請されましたが、その度、拒否されてきました。過去にSECがビットコインETFを拒否した際に挙げた主な理由は、1934年証券取引所法のとりわけ6条(b)項5が規定する「証券取引所は詐欺や価格操作を妨げるように作られなければならない」という部分と「投資家と公共の利益を保護する」という部分です。

そして、今回も同じ理由でSECはヴァンエックのビットコイン現物のETFを拒否しました

「委員会は、(ヴァンエックのビットコインETFが)取引所法および取引委員会規則が要求する国の証券取引所は『詐欺や価格操作』を防止し「投資家と公共の利益を保護」しなければならなりという義務を果たせないと結論づけた」

ビットコイン現物のETFを申請する米国資産運用会社はフィデリティを含めてまだ数多くあります。また、世界最大の暗号資産投資会社グレイスケールが、10月、同社のビットコイン投資信託(GBTC)をビットコイン現物のETFに変更するという届けをSECに出しました。

しかし、規制の観点から見たビットコイン現物取引に関する見解が短期間では変わるとは考えられないことから、年末年始にかけて、米国でビットコイン現物ETFが誕生するのは難しいかもしれません。

今後の展望

クラーケンの子会社であるCFベンチマークスは、ビットコイン先物取引を上場しているCMEが参照する指数(BRR)を提供しています。また、現在ウィズダム・ツリー・ビットコイン・トラストなどがSECに申請しているビットコイン現物のETFも、CFベンチマークスの指数を参照しています。

私は、CFベンチマークスのスイ・チャンCEOと密に連絡を取っていますが、ビットコイン先物ETF承認に関して「ビットコイン現物の承認に対して、あまり大きな影響を与えない」と慎重な見方を示していました。このため、先週ヴァンエックのビットコイン現物のETFが拒否されたことはサプライズではありませんでした。

2021年は、カナダやブラジルで初めてビットコイン現物の取引が開始した歴史的な年でした。そして、米国にとって初となるビットコイン先物ETF開始。暗号資産業界にとって大きな分水嶺になる出来事だったとみています。ただ、SECが現物のETF承認を真剣に検討するまでには多くの課題があるのが現状であり、チャンCEOも言うように「ビットコイン先物ETFは、ほんの最初の1歩」と考えています。

画像クレジット:Executium on Unsplash

【TC Tokyo 2021レポート】投資の民主化はスタートアップの成功とイノベーティブな未来につながる

12月2日から3日にかけてオンラインで開催されたスタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo 2021」。1日目午前10時50分にスタートしたセッション「多様化する資金調達」では、開かれた投資のチャンスを提供するRepublicのCEOであるKendrick Nguyen(ケンドリック・グエン)氏が登壇し、さまざまな階層の人が投資することの意義について解説した。モデレーターはOff Topicを運営する宮武徹郎氏が担当した。

米国で投資できるのは億万長者の特権だった

グエン氏は、証券訴訟担当の弁護士としてキャリアをスタートした。その後、スタンフォードのロースクールとビジネススクールで短期間学び、VCやエンジェル投資家向けウェブサイトを運営する米国のスタートアップAngelListに参加した。

「日本には、信用投資家という定義がなく、言ってみれば誰でも民間企業に投資できる。米国の事情についてに教えて欲しい」という宮武氏の問いに「認定投資家は億万長者でなければなれない」とグエン氏は答える。

「自宅を除いて、少なくとも100万ドル(約1億1300万円)の資産があるか、ここ数年の収入が25万~30万ドル(約2800万〜3400万円)あることが求められる。なぜなら、可処分所得が十分にある富裕層なら、投資についても十分な知識があるだろう、という前提のもとに法律が作られているからだ」とグエン氏。

しかし、グエン氏は「投資は誰にでも、しかも賢くできるものだ」という考えを示す。

そして、2016年の法改正を受けて同氏はRepublicをスタートした。これは、資産や収入の多少に関わらず、投資を行えるプラットフォームで、投資先は初期段階のスタートアップからSpaceXのような後期段階のものまで、またテクノロジー、暗号資産、不動産、音楽、映画などジャンルも多岐にわたる。

なぜこれだけさまざまな分野のスタートアップや投資先を揃えているのだろうか。グエン氏は「Republicの目標は、何かに興味を持っている人がそれにかなう投資先をRepublicで見つけられるようにすること。自分がワクワクするものに、いくらでも投資できるようにしたいのだ」と説明した。

同様のプラットフォームが台頭してきたことについては「脅威だと感じない」という。

「むしろ。少額でも投資できることを知らない人がほとんど。同じ目標を持つ、他のプラットフォームも、彼らに対してリーチし、彼らを教育するのに資する。自分たちでも投資に参加できる、と理解した人が、どのプラットフォームを使うかは彼ら次第だろう。地元スーパーで買い物をするのか、Amazonを使うのかはユーザーに任されている。それと同じで、自分たちのお金をどう使うかは、彼らが決定することなのだ。製品の特性や、バックにいるチームの違いを理解して、どこを使うかを決めるのは顧客なのだ」とグエン氏は語る。

宮武氏が、すべての人に投資の門戸を開いたという意味で、グエン氏を「投資の民主化運動のリーダーの1人だ」と紹介したのも納得だ。

個人のファンがコミュニティとなり熱意を持って投資する

投資にはリターンへの期待がつきものだが、グエン氏は「Ownership(所有権)に関する変化が見られる」という。それは「Ownership Economy(所有型経済)という造語で表現されており、情熱的に支持するもの、アートや、新しいテクノロジーなど何でも含まれるへ、自分たちのお金を投資することで、その成功を共有したいという考えだ」と説明する。

グエン氏は「もしかしたら5ドル(約570円)、10ドル(約1130円)といったリターンがあるかもしれないし、もっと多いかもしれない。しかし、それよりも、自分たちを取り巻く世界に関心を持ち、それを変えるものに自分が関わりたい、という情熱が所有型経済という形になって現れている」という。

このような投資という行為が民間に浸透することを「Retail penetration(小売浸透)」または「Retail Revolution(小売革命)」と呼ぶ。「民間市場やその周辺が民主化されている段階だ」とグエン氏。「また、これまで存在しなかったようなバリエーション豊かな投資商品が生まれてくると予想している」。

投資の民主化(一般の人が投資できるようになること)が生じると、事業が軌道に乗る前であっても、ファンとなる人は投資をしたいと考えるようになる。製品(有形無形問わず)のリターンがなかったとしてもだ。

そして、リターンがなかったとしても、それだけ受け入れられているということは「プロダクトマーケットフィットを意味しているため、ネガティブな要素になりえない」とも付け加えた。

グエン氏はそれらを「共有経済としての起業家精神の台頭のようなものだ」という。起業家本人や投資家だけでなく、従業員、顧問、顧客など、ステークホルダーとなる人たちの誰もが株主になれるようにすべきだと。「UberやAirbnbは、IPO(新規上場)する前に、ユーザーやドライバーが投資できるよう、SEC(証券取引委員会)掛け合ったが、現行法で対応するように言われてしまった。でも、今なら関係しているすべての人が早期に投資できる製品がある」。そして「今後数年のうちに、それが主流の認識となるだろう」とも語った。

これは、起業家にとって、何を意味するようになるのだろうか。

投資が民主化されることで起業家の成功も容易に

起業家が資金を調達するには、以前であれば借金、株式投資のいずれかの方法しか取れなかった。しかし現在では「ベンチャー債務、個人投資、収益分配(レベニューシェア)、あるいはそのビジネスの健全性いかんで、その他の資金調達法がある」とグエン氏。「10年前の世界に比べて、今は会社を成功させるのがずいぶん簡単になっている」という。

投資の民主化が起きることにより、ファンコミュニティから投資を受けられる他「名高いトップVCではなくても、莫大な価値をもたらす投資家が生まれてきている」とグエン氏は語る。

それは、トップインフルエンサーと呼ばれる人たちの集団だ。それは、人気歌手や映画スター、スポーツプレイヤーやエンターテイナーなど、大勢のフォロワーを持つ人たちだ。

「莫大な展開力を持つ彼らは、企業が人々にリーチするのを助けられる」とグエン氏。あくまでも、例えとしてビヨンセの名前を挙げつつ「もし、ビヨンセがある会社に投資するたびに、なぜ投資したいと考えたかをファンに共有したら、どうなるだろうか。彼女のファンのうち、わずか1%が100ドル程度を同じ会社に投資したら?その会社は、ベンチャーの一部の大手企業よりも強大な力を発揮するようになるのではないだろうか」と問いかけた。

「しかも、彼女は、莫大な展開力という能力を持つトップインフルエンサーの1人に過ぎない。これは、まだまださまざまなイノベーションが生じる可能性があることを意味している」とグエン氏はいう。

テクノロジーとアート、両端のニーズにもかなった個人投資

では、実際にRepublicを使って資金調達を成し遂げたどのような例があるのだろうか。それについて尋ねられたグエン氏は「Gumroadという企業と、Lil Pumpというミュージシャンの例が思い浮かぶ」と答えた。

Gumroadは、音楽や動画、イラストといったデジタルコンテンツを販売できるプラットフォームで、決済システムも提供している。創業者はSahil Lavingia(サヒール・ラヴィンギア)氏だ。

シリーズCとなる資金調達では、80%を個人投資家から、残りの20%をいくつかのVCやNaval Ravikantのような有名なベンチャーキャピタリストから調達した。

関連記事:富裕層以外の投資家にも道を開くエクイティクラウドファンディングをメインストリームに押し上げたいGumroad 

100ドルから投資できるとあって、7000人以上がエクイティクラウドファンディングに参加。100ドル、500ドル(約5万6800円)、1000ドル(約11万3500円)といった、投資家から見れば少額投資であったが、総額の80%である500万ドル(約5億7000万円)を、わずか1日で調達することに成功した。

Lil Pumpは、ラッパーだ。彼のYouTubeチャンネルの登録者数は1770万人。Soul ja Boyという、有名なラッパーとコラボした新曲のために資金調達を行い、2時間で50万ドル(約5700万円)の調達に成功した。「曲がヒットすれば、収益の一部がセキュリティNFTを通じて還元されるだろう」とグエン氏は付け加えた。

「一方はテクノロジー、他方は情熱的なファンド投資。この2つが融合し重なり合っているし、これからそれは顕著になるだろう。これは、投資の未来を象徴するものだと考えている」という。

未来を変えるお金に変える

Republicは、米国で生まれたサービスだが、世界のどの国からでも投資可能なプラットフォームだ。とはいえ、日本ではRepublicを通じて米国のスタートアップ企業に投資できることはあまり知られていない。

そこで、宮武氏は最後に投資の民主化の未来がどのようになるかといった展望や、東京の起業家たちやこの新しい方法での投資に少しの抵抗感を抱く投資家たちへのアドバイスを求めた。

起業家に対しては「コミュニティを制する者が、その業界を制することを知っておいて欲しい」とグエン氏。

「コミュニティを成長させ、構築するには彼らが投資できるようにするのが最良の方法。エクイティであれトークンモデルであれ、コミュニティにインセンティブを与え、ともに道を歩けるようにする必要がある。これにより、誰もが知るブランドを構築できる」とグエン氏。

また、投資家に対しては「あなたの投資するお金が未来を変える」ときっぱり。

「自分の信念に従って投資して欲しい。投資について本で学ぶだけでは不十分。実際に参加することで、大きな学びが得られる。ただし、大金は投じないように。失ったとしても問題ない額、5ドル、10ドル、20ドルで構わない。

投資のために使うのは、Republicでも他のプラットフォームでもいい。情熱をもって行った投資が、数世紀後の世界経済とイノベーションに貢献することを願っている」と締めくくった。

「PUBG」の韓国KRAFTONがMENA地域に初投資、モバイルゲームパブリッシャーTamatemの約12.5億円調達を主導

ヨルダンを拠点とするモバイルゲームパブリッシャーのTamatemは、人気バトルロイヤルゲーム「PlayerUnknown’s Battlegrounds(PUBG)」を開発した韓国のゲーム開発会社KRAFTON(クラフトン)が主導するシリーズBで1100万ドル(約12億5000万円)を調達したことを発表した。KRAFTONにとっては、中東・北アフリカ(MENA)で初の投資となる。このラウンドには、Venture Souq、Endeavor Catalyst、および既存の投資家も参加した。

今回のシリーズBラウンドにより、Tamatemの累計調達額は1700万ドル(約19億3000万円)を超え、評価額は約8000万ドル(約91億円)になると、Tamatemの創業者兼CEOであるHussam Hammo(フッサム・ハモ)氏はTechCrunchに語った。

Tamatemは、アラビア語のユーザーに適したゲームを取得した後、文化に合わせてローカライズし、配信している。

「ユーザーは、ある言語から別の言語に翻訳されただけではなく、自分のために作られたゲームだと感じる必要があります。Tamatemは、ゲームをエンドユーザーにとって文化的に適切なものにします」とハモ氏は語る。「親しみやすく楽しいモバイルゲームの需要はかつてないほど高まっており、当社の使命は、この地域のみなさまに最高のゲーム体験を提供することです」。

Tamatemは今回の資金調達により、アラビア語圏の市場に、より人気の高いタイトルを含むさまざまなゲームを提供することで、取り組みを強化していく。同社はさらなる拡大のために、サウジアラビアで現地の人材を雇用する予定だ。Tamatemのユーザーの約70%を占めるサウジアラビアでは、ゲーム業界が活況を呈しているとハモ氏は指摘している。

「この地域のモバイルゲーム業界は、大きく動いています。当社は、過去の成功体験を糧に、より多くの経験と気概を持って前進しています。MENA地域におけるモバイルゲームの大きな可能性を考えると、当社がしていることは氷山の一角であり、より多くの人々がこの業界と地域に投資してくれるたびに、私はいつも非常に感激します」とハモ氏は語った。

同社は、市場の成長と成熟を促すためにゲームアカデミーを立ち上げ、業界でのトレーニング、教育、雇用の促進を行う予定だ。

Tamatemは2013年以降、4本の主要なゲームを含む50以上のゲームを公開している。「VIP Baloot」「VIP Jalsat」「Fashion Queen」「Clash of Empire」が最も知られるタイトルだ。同社はポートフォリオ全体で1億2千万以上のダウンロード数を誇り、トップゲームでは350万人のデイリーアクティブユーザー(DAU)を抱えている。

同社の従業員数は現在75名で、今後6カ月間で2倍の規模に拡大する予定であるとハモ氏は述べている。

Tamatemは、今後もグローバルに事業を拡大し、世界中のあらゆる人材を採用していく予定だ。

「当社は米国、インド、エジプト、サウジアラビア、ドイツ、ハンガリー、ヨルダンに従業員を抱えています。2020年、サウジアラビアとエジプトにオフィスを開設しましたが、今後もさまざまな国に地域オフィスを開設する予定です」とハモ氏は語る。

KRAFTONのコーポレートデベロップメント(インドおよびMENA地域)担当であるAnuj Tandon(アヌジ・タンドン)氏は次のように述べている。「当社はMENA地域に大きな可能性を見出しており、Tamatemのような数多くのタイトルを配信しているパブリッシャーとともに、この地で投資の旅を始められたことをうれしく思います。我々はMENA地域にコミットしており、メディア・エンタテインメント分野全体に、より多くの投資をしていきたいと考えています。今回の投資は、スタートアップエコシステムへのコミットメントを強化する当社の取り組みと一致しています。今回の投資は、この地域における多くの投資の始まりに過ぎません。『PUBG:NEW STATE』をはじめとするさまざまなゲームのMENAユーザーに最高の体験を提供することに注力し続ける中で、現地の状況を深く理解しているTamatemとのコラボレーションは非常に有益なものとなるでしょう」。

画像クレジット:Tamatem

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(文:Kate Park、翻訳:Aya Nakazato)

インドのレイヤー2ブロックチェーン「Polygon」への投資をVCが検討中

Sequoia Capital India(セコイア・キャピタル・インド)、Steadview Capital(ステッドビュー・キャピタル)をはじめとする数多くの投資家が、Ethereum(イーサリアム)互換ブロックチェーンネットワークを構築、接続するためのフレームワークを運営するPolygon(ポリゴン)へのトークン購入を通じた出資を検討している、と本件に詳しい3つの筋から情報を得た。

投資家らは5000万から1億5000万ドル相当のトークンを購入しようとしている、と匿名を条件に情報筋は言った。この種のトークン取引では一般的だが、投資家はコインをやや割引された価格で購入できる(過去1カ月間のMATICの平均価格に対して20%割引、と私は聞いている)。

交渉は進行中のため、条件は変わるかもしれない。先週は誰からもコメントがなかった。

Polygonは以前Matic(マティック)の名前で知られていた会社で、最も人気のあるレイヤー2ソリューションとしての地位を確立してきた。同社の時価総額は140億ドル(約1兆5900億円)以上で、1日に750万件以上の取引を処理し、数千の分散型アプリが高額な手数料を払うことなくEthereumを決済レイヤーとして使用することを可能にしている。

Polygonは、Aave(アーベ)、Sushi Swap(スシ・スワップ)、Curve Finance(カーブ・ファイナンス)といった代表的優良プロジェクトを擁し、最大級のデベロッパーエコシステムを作り上げてきた(一部のレイヤー1のブロックチェーンと比べても引けを取らない)。

画像クレジット:Polygon

この数年、南アジア市場の著名ベンチャーキャピタルの支援を受けることに苦闘してきたインド拠点のPolygonにとって、1件の投資が同社に対する投資家の認識を変えるだろう(インドの多くのVCも、数四半期前までWeb3分野を積極的に追いかけていなかったことも注目に値する)。さらにPolygonは、弱気サイクルの際に初期出資者の一部が資金の返還を求めたという事例が少なくとも1件ある、と状況に詳しい人物2名が言っていた。

同社はいくつかの投資家に資金を返還し、生き延びた。「それはPolygonチームのテーマの1つです。彼らの忍耐強さはレベルが違います」と元従業員の1人は言った。

Polygonは2021年、起業家で投資家のMark Cuban(マーク・キューバン)氏の支援を受け、Ethereumの支配が続くことに期待する何十というサイドチェーンやロールアップネットワークの1つとして、Polkadot(ポルカドット)やMulticoin Capital(マルチコイン・キャピタル)とA16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)の出資を受けているSolana(ソラナ)など、多数のレイヤー1プロジェクトがひしめく中、この生まれたばかりで急成長中のデベロッパー・エコシステムでの成功を伺っている。

2021年、暗号資産ポッドキャストのBanklessで、Polygonの共同ファウンダーであるSandeep Nailwal(サンディープ・ナルワール)氏は、現在のWeb3デベロッパーエコシステムはEthereumを中心に回っており、ネットワーク効果はなくならないと期待していると語った。同じポッドキャストでナルワール氏は、もう1人の共同ファウンダーであるMihailo Bjelic(ミハイロ・ビェリック)氏とともに、Polygonは今後も提供サービスをさらに拡大してブロックチェーン基盤を作っていくつもりだと語った。

画像クレジット:Polygon

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(文:Manish Singh、翻訳:Nob Takahashi / facebook