東南アジアのGrabがトヨタから10億ドルを調達、評価額は100億ドル

今年の初めにUberの東南アジアビジネスを買収した配車サービスのGrabが、新規の資金調達を行うことを発表した。調達は自らも10億ドルを出資するトヨタによって主導される。Grabに近い関係者がTechCrunchに語ったところによれば、この案件におけるGrabの評価額は100億ドルを超えているということだ。

資金提供と引き換えに、トヨタは取締役会に席を得て、幹部をGrabのチームに送り込む機会が与えられる。Grabは新しい投資家と協力して「東南アジアの巨大都市における交通混雑を緩和するための、より効率的な輸送網を作り」、そのドライバーたちの収入を増やすことを目指すと語っている。特にそのために、ユーザーベースの保険、新しいタイプのファイナンスパッケージ、予測的な自動車メンテナンスなどの分野に取り組むトヨタモビリティサービスプラットフォーム(MSPF)との緊密な連携が予定されている。

「Grabと協力しながら、私たちは東南アジアの顧客にとって、より魅力的で安全で安心できるサービスを生み出して行きます」と語るのはトヨタ専務役員である友山茂樹である。

トヨタは昨年、次世代技術基金(Next Technology Fund)を通じて資金をGrabに投入したが、今回は親会社から直接資金が提供される。現代(Hyundai)自動車もまたGrabを後押ししている

今回の新ラウンドは、ソフトバンクと中国のDidiが共同で主導した25億の投資ラウンドに続くものである。長期投資を行う両社は、昨年まず20億ドルの投資を行った。そのラウンドは2018年の初めに静かに終了したことをGrabは認めたが、結局誰が追加資金を提供したのかについては明らかにしていない。

同社の評価額は60億ドルであったが、Uberの取引以降、トヨタの投資を得て、さらに40億ドルが積み増しされたことは驚くべきことではない。

Grabによれば、現在シンガポール、インドネシア、ベトナム、タイなどアジア8カ国でアプリが1億回以上ダウンロードされているということだ。同社は、その年間予測収益額が10億ドルを突破したと公表したが、損益の数字に関しては回答を拒んだ。

地域の事業を買い取ることによって、Uberを排除はしたものの(ただし、その買収は当初の計画ほどは円滑には進んでいない)、その動きは新規参入各地域に招くこととなった、特にインドネシアではGo-Jekが主要なライバルとして登場している。現在約45億ドルと評価されているGo-Jekは、最近、4つの新しい市場に拡大する計画を発表し15億ドルに及ぶ多額の調達を行った。

こうした競争とは別に、シンガポールに本拠を置くGrabは、最近ポイントツーポイントのタクシーサービスやプライベートな配車サービス以外のサービスにも拡大を進めている、たとえばモバイルペイメント、フードデリバリー、そして(ドックレスの)レンタル自転車などだ。今月初めには、Grab Venturesを正式に発表した。これは投資とメンタリングによって、エコシステムの構築を支援することに焦点を絞った部門だ。

Grab VenturesはVC専任組織ではないが、この先の2年間で8から10件の投資を行うことを計画している。またそれは「成長段階」のスタートアップに対してのアクセラレータープログラムも提供する予定だ、ただしそこには現金による株式投資は含まれていない。当部門はまた、新しいビジネスアイデアのインキュベーションにも注力する。これには、様々な企業のオンデマンドバイクを集約し最近開始されたGrab Cycleも含まれている。

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(翻訳:sako)

Bitcoin価格急落――しかし取引は続く

最近Bitcoinマーケットを見ていなかったなら驚いたはずだ。笑った人もいるかもしれない。Bitcoinは1万9000ドルという過去最高値を付けた後で急落した。この記事を書いている時点で6785ドルあたりを低迷している。そこでBitcoinという実験は終わりだと考えたものも多い。しかしもっと多くの人間がこれは何かの始まりによくある現象に過ぎないと考えている。

もちろんこの暴落で痛手を受けた話にはこと欠かない。ルーマニアの起業家から聞いたところによると、友達がクレジットカードで目一杯BTCを買った末、ひどい苦境に陥っているという。Bitcoinブームのテールエンドにようやく滑り込んだつもりの人間は努力が水の泡となるのを見ただろう。私の友人は仕事中のウェイターが1万8000ドルでBitcoinのトレードをしていのを目撃した。暴落前にポジションを処分していることを祈る。

しかし暗号通貨を積んだ列車は止まる気配をみせていない。 世界中のスタートアップはICOを検討し、実行している。初期からの暗号通貨のマイナーやトレーダーは十分な利益を確保しており、あらゆる形で投資することができる。ブロックチェーン・サービスのR3が苦境に陥っていることに対してBitcoinコミュニティーは冷淡だ。金融機関は「重要なのはブロックチェーン・テクノロジーであってBitcoinではない」といった意見にはあまり興味を示さない。金融機関は伝統的な証券やコモディティ商品と同様、Bitcoinも重要な金融マーケットの一つであると認識し始めている。.

もちろんマーケットにおける取引も活発に続いている。これは重要なことだ。Coindeskのレポートも指摘しているように、何を扱う市場であれ、市場というのは乱高下するものだ。リスクを取ることをいとわない参加者にとって暴落はチャンスとなる。

私の言うことを鵜呑みにする必要はない。下に掲載したのはほぼすべての主要なマーケットにおけるこの7日間の取引量だ。

Bitcoinは過去に例を見なかったレベルで組織的かつ国際的に富の再編、移転をもたらすという点が本質だ。これまでこうした富の再編は、相続や事業合弁によって徐々に行われてきた。しかし暗号通貨取引は世代も遠近も問わず、ほとんど即時にパートナーを形成することができる。これは非常に興味深い経済的な仕組みであり、近い将来に無用になるとは思えない。

価格は急上昇することもあれば急降下することもある。賢明な参加者でありたいなら市場の本質として覚えておくべき点だろう。市場の心電図は激しく動いており、決して水平なラインを示していない。患者は死んでいない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

米、中国のハイテク商品に25%の関税発動へー制裁タイムラインを発表

米国と中国の貿易問題をめぐる協議はここ数カ月行ったり来たりしていてたが、ホワイトハウスは中国のハイテク製品に関税を課し、また中国からの米国企業への投資にも厳しい制限を設ける方針を明らかにした。

今朝(米国5月29日朝)のホワイトハウスの発表によると、トランプ政権は“産業的に重要な技術”を含んでいる500億ドル相当の中国のハイテク製品に対し、25%の関税を課す。これは、中国による知的財産権の侵害に関する調査を経て発動された通商法301条に基づくものだ。どのような製品を対象とするかはこれまで検討が続いていたが、最終リストは6月15日に発表される。今回の課税は、今年初めに発表された鉄鋼とアルミニウムへの関税とは異なるパッケージとなる。

中国企業による投資の制限については、その内容を6月末までに公表する。知的財産の保護を巡る世界貿易機関(WTO)への提訴はそのまま続行する。

こうした発表は、関係当局向けに行われるべきものだろう。とういうのも、ホワイトハウス内部、そして中国政府との一連の交渉における最新カードにすぎないからだ。

米国が産業保護を目的に中国に対しどれくらい強硬に出るか、ホワイトハウスはさまざまな意見で揺れていた。Steven Mnuchin財務長官のような財務分野の人は柔軟な策をとるべきとしているのに対し、通商代表部のRobert Lighthizerや国家通商会議ディレクターのPeter Navarroは攻めの姿勢をみせている。こうした人々がそれぞれの考えを大統領に吹き込み、案が出ては消えるという状態だった。

外に目を向けると、米国と中国は貿易を巡り長い多次元的交渉を続けてきた。米国サイドでは、クアルコム社のNXP買収の承認問題、中国サイドではZTEへの輸出再開の許可問題などを抱える。これらの交渉はまだ継続しており、数週間内に何らかの声明、または報復措置などが発表されることが見込まれる。

企業やスタートアップにとって、これらの関税方針は不安定かつ非常に不透明で、対応が難しい。新方針が発表されれば製品のロードマップやサプライチェーンを見直さなければならず、今後の新商品の展開も難しくなる。テック業界では誰も関税など求めていないが、関税が設けられると考えるのが賢明だろう。

より難しいのは、発表が迫っている投資制限だ。通常、ベンチャーキャピタルのラウンドはデューデリジェンスのために数週間かかることを考えると、新投資規制の発表のデッドラインは6月末となる。シリコンバレーの創業者たちは、ワシントンから投資制限の通達が届くことを見越し、中国のベンチャーキャピタルの資金受け入れを躊躇していることだろう。

私は以前、国家保障と中国ベンチャーキャピタルを関連づけて考えるのは大げさだと書いた。しかし結局、トランプ政権は新ルールを導入しようとしている。新たな情報がない限り、中国関連企業からの投資はなくなる。貿易をめぐって、米国と中国は駆け引きを続けており、さらなる展開が予想される。

イメージクレジット:JACQUELYN MARTIN/AFP / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

ジャーナリストから投資家への転身――元TechCrunch社員がたったひとりで立ち上げたVCファンドDream Machine

5年ほど前、Alexia Bonatsos(旧姓Tsotsis)はTechCrunchの共同編集長として働いており、スタートアップ界では名のしれた存在だった。さまざまなスタートアップやファウンダーとも顔見知りだったBonatsos。しかし彼女が本当にやりたかったのはスタートアップ投資だった。

「私はかなり早い段階でPinterestやWish(当時はまだContextLogicという名前だった)、Uber 、Instagram、WhatsAppの記事を書いていた。そのため、自分はいいタイミングにいい場所にいる(つまりラッキーだった)か、うまく自分に情報が流れるようになっているんじゃないかと感じるようになり、『もし投資したらどうなるんだろう?』と考えずにはいられなかった」と語るBonatsos。

それから彼女は複数のベンチャーキャピタル(VC)と話をしたが、それが具体的な仕事につながることはなかったため、やりたい仕事を自分で作ろうと考えた。まずBonatsosは2015年にTechCrunchを去り、スタンフォード大学ビジネススクールの1年制修士プログラムへの参加を決める(Bonatsosいわく、他の投資家と「対等に話せるくらいの知識を身につけたかった」とのこと)。そして修士課程在籍中も修了後も、Bonatsosはさまざまな起業家と面談を繰り返し、ストーリーの伝え方や情報発信のやり方、多くのフォロワーを抱える人の説得方法など、彼女がTechCrunchで培ったスキルを彼らに伝えていった。

彼女は単にネットワークを広げようとしていたわけではなく、それと同時に個人投資家から資金を集め、徐々に第一号ファンドの準備を進めていたのだ。そして昨年12月、Bonatsosは遂にサンフランシスコにDream MachineというVCを立ち上げ、2500万ドルをファンドの目標金額としSEC(証券取引委員会)への登録も完了させた。

しかしたとえ2500万ドルという調達目標に近づこうが到達しようが、(元ビジネスジャーナリストらしく)規制上のリスクを考慮して彼女は資金調達に関する情報を公にするつもりはないようだ。とは言いつつも、先日話したときに彼女はすでに7社に投資した(うち1件はトークンセールへの参加)と教えてくれた。さらに投資先の共通点については、未だに成長を続けるシェアリングエコノミー、そして最近盛り上がっている非中央集権というトレンドがヒントだと語った。

そんなDream Machineの投資先のひとつが、先週TechCrunchにも関連記事が掲載されたTruStoryだ。CoinbaseやAndreessen Horowitzでの勤務経験を持つPreethi Kasireddyが最近立ち上げたこの会社は、ブログやホワイトペーパー、ウェブサイトの情報、ソーシャルメディアの投稿などをファクトチェックできるプラットフォームを開発している。彼らは「ブロックチェーンを使い、情報のヒエラルキーを確立するシステム」を構築しようとしているのだとBonatsosは言う。なおTruStoryの株主には、True VenturesやCoinbaseの共同創業者Fred Ehrsamなども名を連ねている。

さらにDream Machineは、サンフランシスコを拠点にオンデマンドの貸し倉庫サービスを提供する、設立4年目のOmniにも投資している。倉庫に持ちものを預けるだけでなく、Omniのユーザーはプラットフォーム上で所有物を貸し借りできるため、家でホコリを被っているものを使ってお金を稼ぐことができるというのが同社のサービスの売りだ。Bonatsosも最近Omniを利用し、投資家仲間が一度着たきりクローゼットの奥にしまっていたドレスを借りたのだという。なおプラットフォームに掲載される写真はOmniが撮影し、ユーザーは知り合いだけに貸し出すか、赤の他人にも貸出を許可するか選べるようになっている。

そして3社目となる投資先がFable Studiosだ。おそらくこの企業がBonatsosの夢でもある「サイエンスフィクションを現実にするチーム」にもっとも近い。Oculus Story Studio出身者で構成されFable Studiosは、一言で言えばAR・VRコンテンツ専門のクリエイティブスタジオ。彼らは今年のサンダンス映画祭でそのベールを脱ぎ、会場では同社の初期プロジェクトのひとつである三部作構成のアニメシリーズ『Wolves in the Walls』が上映された(トレーラーはこちら)。

Fable Studiosはこれまでの調達額を公開していないが、Dream Machineの他にもShasta Venturesや起業家兼投資家のJoe Lonsdaleらが同社に投資している。

普段どのように投資先を見つけるのか尋ねたところ、Bonatsosは自分がネットワーキングをまったくためらわないタイプであることが助けになっていると答えた(実は先日ある業界イベントに参加した彼女の様子を私たちは観察していた)。

さらにBonatsosは、彼女のように唯一のジェネラル・パートナーとしてファンドを運営する人が、まだわずかではあるものの最近増えてきており、彼らとの協業や情報交換も役立っていると話す。

Product Huntの創業者Ryan Hooverもそんな“ソロVC”を立ち上げたひとりだ。現在彼はWeekend Fundという300万ドル規模のファンドを運営しており、昨年の設立以来、10社前後のスタートアップに投資している。他にもProduct Huntの初期の社員で、現在はShrug Capitalで300万ドルを運用するNiv Dror、「技術面には明るいがネットワーキングが不十分な起業家」を支援するプレシードファンドのBoom Capitalを立ち上げたCee Cee Schnugg(Boom Capital以前は、Google元CEOのエリック・シュミットが立ち上げたInnovation Endeavorsファンドで4年半勤めていた)がいる。

さらに今年に入ってからシードファンド22nd Street Venturesを設立したKatey Nilanは、ファンド立ち上げ以前、さまざまな分野でマーケティング・広報関連の仕事に6年間携わっていた。

Dream Machineをはじめとするこれらのシードファンドが、今後成長はおろか生き残れるかどうかも、もちろんまだわからない。有名なシードファンドで働くあるベンチャーキャピタリストは、シードステージ投資が「狂乱状態」にあると話す。現在、大手のシードファンドやアクセラレータープログラム、新進気鋭のファンドなどから膨大な資金が流入しており、日を追うごとに将来有望なスタートアップに投資するのが難しくなっているというのだ。

しかしBonatsosは特に心配していないようだ。ちなみにDream Machineの初回投資額は平均30万ドルほどで、投資先候補の創業者の起業経験は問わないのだという。

というのも彼女には、起業家との広大なネットワークやシード投資家の知り合いからのサポート、そしてTechCrunch時代から培ってきた直感がある。またBonatsosは、他の投資家よりもずっと早い段階での投資もいとわないと語る。

「心配するのをやめ、野心的なビジョンを持って投資に臨むだけ」とBonatsosは言う。何年間もスタートアップ界にいる彼女がよく知っている通り「不確実性が高い投資こそリターンが期待できるのだ」。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

アシュトン・カッチャーが語るスタートアップ投資の目的と戦略

【編集部注】筆者のアシュトン・カッチャーは俳優兼投資家で、Sound Venturesの共同創業者でもある。

注:本稿の英語原文はAtriumの記事を転載したもの

これまで何度も投資先の選び方について訊かれたことがある。投資先のステージは? 収益指標は? どのセクターか? と。

しかし私は企業のステージにこだわるのではなく、難しい課題を解決しようとしている優秀な人たちに投資する気持ちでいる。

明日をより良いものにするための力を備えた、素晴らしい投資家を見つけるというシンプルなゴールに集中することこそが、私の投資戦略のキモだ。

アシュトン・カッチャー流投資の「公式」

多くのベンチャーファンドはリターンの最大化に注力している。彼らは複雑な経済モデルを使い、各投資先候補について良いケース、悪いケースの両方で最終的に株式がどれほど希薄化するかといったことを計算しているのだ。

しかし私はそんなことはしない。ただ最高に優秀な人たちに投資するだけだ。

さまざまな難しい課題に挑む、世界中の頭脳明晰な人たちと一緒に仕事をするのはとても楽しいし、往々にしてそうすることでリターンが生まれる。

なお、投資判断では以下の2つの要素を重視している。

  • リターン
  • 幸福度

まずはリミテッドパートナー(LP)のためにも、期待リターンを精査する。5年から8年、もしくは10年で6〜10倍のリターンが得られる可能性はあるか? もしもその答えがNoならば、時間とお金をかけるまでもない。

しかしこれが唯一の判断基準ではない。

もしも私たちが投資先企業を喜んでサポートしたいと感じられ、さらにLPにもある程度のリターンを提供できると自信を持って言えれば、その企業には投資する価値がある。

一見直感に反するように映るかもしれないが、実際に第一号ファンドのリターンは8〜9倍の水準にある。

ちなみに投資額すべてが無駄になったこともあるが、そうでないことの方が多かった。

100倍ものリターンを叩き出す企業はそうそうないが、5〜6倍のリターンで大事な課題を解決できた企業はいくつも存在する。だからこそ、金銭的なリターンと、問題解決までの道のりを投資先と一緒に旅することで得られる幸福感の両方を考えることで、投資結果の全体像を掴むことができるのだ。

Image: Bryce Durbin/TechCrunch

無知の知

数字の壁で自分を囲ってしまうと素晴らしい企業を見逃してしまいがちだし、数字だけに頼るのは長期的に見て良い戦略とは言えない。

というのも投資判断の時点では、どのプロダクトが「金のなる木」になるかを予測するのは難しいことがあるからだ。

しかしユーザーに十分な価値を提供できているから、そのうちマネタイズもできるだろう、と考えられるからFacebookのような企業に投資できるのだ。

もしも数字だけを見ていれば、そうはできないだろう。

8年ほど前に、メンターのひとりと話をしていたときにこんなことがあった。彼はある10社の名前をホワイトボードに列記して、私に「まずバリュエーションが高いと思う順に企業をランク付けしてみろ。そしてその次に収益額が大きいと思う順に再度ランク付けしてみろ」と言うのだ。

私はどちらのリストについても、1位と5位と7位に同じ企業の名前を書いた。

しかし実は収益額が一番小さい企業のバリュエーションが一番高く、逆に収益額が一番大きい企業のバリュエーションが一番低かったのだ。

Image: Lee Woodgate/Getty Images

創業者に求めるもの

どのスタートアップに投資するときも、私は以後5〜10年は創業者と一緒に仕事をすることになる前提で考えている。

魔法の公式とまでは到底呼べないが、私が投資を決める際の条件として設定している4つの要素が以下だ。

1. 専門知識

良い創業者というのは、自分が取り組もうとしているビジネスの分野について独自のインサイトを持っており、それがスタートアップの武器になる。そして専門知識とは以下の3つのどれかを指す場合が多い。

  1. 消費者行動に関する深い理解
  2. 時間軸に沿ったインサイト
  3. データ

通常、創業者からは何かしらの鋭い洞察をハッキリと感じることができる。だからこそ投資家はその人が課題解決に必要な専門知識を持っていると自信を持てるのだ。

2. 粘り強さ

想像できないほど辛い場面でも耐えぬける粘り強さが創業者には要される。

その証拠に、すべてが計画通りにいったという起業家の話はこれまで一度も聞いたことがない。

そのため何か予想外の事態が起きたときに、その苦難を頑張って乗り越えようという気持ちと能力があるかというのが重要なのだ。

これはなかなか判断が難しい資質でもある。普段私は創業者と面と向かって会ったときの直感を信じるようにしている。

3. 目的

3つめは、投資先候補がつくろうとしているものは、創業者が個人的に情熱を抱いているもっと大きな目的と何かしらの関係があるか、という点だ。

これはつまり、どんなプロダクトであっても、そこに創業チーム自身や彼らの考え方、信念といったものが反映されているかどうかということだ。何か問題があったときや困難な壁に立ち向かうときにこそ、創業者の信念が重要になってくる。

4. カリスマ性

素晴らしい創業者には一定のカリスマ性がある。特にCEOになろうとしている人物であればなおさらだ。

真の意味のカリスマ性を持った創業者に会うと、私は今の仕事をやめてでもその人と一緒に働きたいと感じる。そもそも投資家が今の仕事をやめてでもチームに加わりたいと思えなければ、その企業が雇おうとしている人がそう感じるわけもない。

採用はCEOの一番難しい仕事だ。

CEOは自分自身やビジョン、そして会社を売り込まなければならない。もしも私さえ説得できないほどのカリスマ性であれば、恐らく誰にも相手にはされないだろう。

Image: Boris Austin / Getty Images

私が警戒する創業者のタイプ

望ましくない創業者のタイプというのはいくらでもあるが、私が特に注意しているのは以下のような人たちだ。

1. 行動指針に問題がある

私は基本的に行動指針や主義をとても重視している。

特に男女や人種間の平等については自分なりの判断基準を持っているし、人間として尊敬できる人と働くことにしている。そのため、投資先企業やその創業者にも私と似たような行動指針を持っていてほしいのだ。

これは私が自分の会社を代表するように自分たちの会社を代表する人たちとつながっていたいと言い換えることもできる。

人は色んな数値やモデル、予測に簡単に惑わされてしまうものだが、だからといって定量的な情報の重要性が変わるわけではない。

むしろ私は数字と一緒にビジネスを構築する人間を見ている。とにかく私は人間として信頼でき、他者に敬意を払い、モラルがある人と仕事がしたいのだ。

2. 専門知識の欠如

もしも創業者が数字に関する質問に答えられなければ、すぐにその企業からは手をひいたほうがいい。

よく私は、投資先候補の分野について創業者に何度も質問をする。これまで見たこともないような、まったく新しくてディスラプティブなビジネスを実現しようとしている人はたくさんいるが、その目新しさに興奮して経済的な側面を見失ってはいけない。

業界の状況や仕組みについての理解がなければ、すぐにその人に専門知識がないということがわかる。

そしてもしも業界を理解せずに独自のインサイトを持ってるとしても、その人は特別なプロダクトを生み出すことはできないだろう。

3. 他人の時間を大切にしない

自分のプロダクトを売り込むのに必死な人は、基本的な他者の理解というとても大切なことを忘れがちだ。

賢い人はいつどのように連絡すればいいのかをよく心得ている。

実際に私は、何の紹介もなく突然送られてきたメールであっても、内容がよく練られていて、私自身や私の時間に敬意を払っているものには応えている。

エレベーターピッチに応じたこともある。

赤の他人とミーティングをしたこともある。

あなたの時間にさえ気を払わない人が、他人の時間を大切にすることはないだろう。そんな人のビジネスがうまくいくはずはないと私は考えるのだ。

創業者や企業から連絡があっても、私の時間や私が興味を持っていることに対する敬意や思いやりが感じられないと、彼らの無礼さに気付かずにはいられない。

Image: Bryce Durbin/TechCrunch

スタートアップの成長に関する投資家としての役目

資金を差し出すだけが投資家の仕事ではない。私たちの仕事は、専門知識や業界の情報、コネクションを投資先に提供することでもあるのだ。

スタートアップの成長ステージは(紙の上では)以下のようにまとめることができる

    1. 初期の仮説検証
      • ビジネスアイディアの考案
      • MVP(実用最小限のプロダクト: minimum viable product)の開発
      • MVPを顧客に届ける
    2. フィードバックループの確立
      • 顧客がプロダクトを気に入っているか確認
      • 顧客を巻き込んだフィードバックループを確立し、顧客の意見に沿ってプロダクトを改善できるようにする
    3. 会社設立
      • 必要最小限の人員を採用
      • プロダクトマーケットフィット達成
      • ターゲット全員にリーチできるようマーケティング
      • チームを作り上げる
    4. 追加の資金調達

これまでの12年間におよぶ投資活動のなかで、私は各ステージにいる企業を見てきた。それぞれのステージで求められるものは違うため、次のステージへ移るには新たな課題を解決しなければならない。

そこで創業者は、これまでに各ステージを経験して理解し、何を心得るべきか、そしてどうすれば次のステージへと移れるかといったことを知る人を仲間にすべきだと私は考えている。

そこで投資家が力を発揮するのだ。

Image: Shutterstock

例えば自己資金ですべてをまかないつつ、スケールするというのはなかなか難しいことだ。

多くのファウンダーが初期に陥る失敗として、組織に多様性や専門性をもたらす人よりも、自分に似た人を採用するというものがある。

初期の採用活動が終わった後は、スタートアップの中にスタートアップを構築するつもりで、マイクロマネジメントからマイクロマネジメントへと移行し、組織がスケールする上で必要になるさまざまな部署を充実させていく。

似たような道のりをたどった企業へ投資したことがある投資家であれば、各マイルストーンを達成する上で注意すべき点をアドバイスできるのだ。このようなアドバイスを受けられなかったために道をそれてしまったアーリーステージ企業はたくさん存在する。

成長ステージに移ってからも資金調達は一筋縄ではいかない。数々のチェックポイントを通過し、ようやく追加資金を調達した後は、その資金を使ってプランを実行していかなければいけない。

最終的に上場するか誰かに事業を売却することになったとしても、これもまた信じられないほど困難なプロセスで、ここまでの時点で心の準備ができている創業者というのは珍しい。

もちろん個々の企業の事情はそれぞれだ。

もしもあなたの会社が2、3人の小さなチームであれば、投資家を10人ほどチームに迎えることを考えてもいいかもしれない。そのときは、各投資家が異なる経験を持っていて、違う会社に属しているようにした方がいいだろう。

名の知れた企業から資金を調達しようとする創業者がたくさんいるが、本当に必要なのは自分たちのニーズや課題を理解し、適切なアドバイスをしてくれる個人であって、その人がどの企業出身なのかは関係ない。

最後はやはり目的と行動指針

誤解のないように伝えておくと、私は数値に関しても厳しい判断基準を設けている。

TAM(市場規模:Total Addressable Market)やNPV(正味現在価値:Net Present Valut)、IRR(内部収益率:Internal Rate of Return)といった指標もチェックする。

しかし大多数の投資家に比べると、私はビジネスが持つ人類への影響やCEOの能力に重きを置いている。

今後投資活動を続けるうちに、私の判断基準がもっと厳しくなる可能性もあるだろう。

しかしそれまでのあいだは、現在のように私が興味のある課題に取り組んでいる優秀な人たちと仕事をしていくつもりでいる。

結局のところ難しい課題を解決しようとしている素晴らしいチームを見つけられれば、お金は後からついてくるものなのだ。

注:本稿の英語原文はAtriumの記事を転載したもの。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

あるVCがファンドの規模を急激に拡大しないワケ――業界の流れに逆行するEmergence Capital

テック業界への投資を強化しようとする機関投資家が増えたことで、シリコンバレーでは実績のあるベンチャーキャピタル(VC)が資金調達で困ることはない。今年の3月にはSECに提出された書類によって、General Catalyst13億7500万ドルのファンドを立ち上げたことがわかった。これは同社の18年におよぶ歴史の中でも最大規模だ。設立から35年が経つBattery Venturesも、今年に入ってから2つのファンドを組成し、合計調達額は同社史上最大だった。さらにSequoia Capitalは、複数のファンドを通して合計120億ドルを調達中だと報じられており、これは同社だけでなくアメリカ中のVCを見渡しても、これまでになかった規模だ。

設立から15年のEmergence Capitalもやろうと思えば彼らのように巨額の資金を調達できただろう。同社はエンタープライズ向けのプロダクトやSaaSに特化したアーリーステージ企業への投資を行っており、その実績には定評がある。Emergence CapitalのポートフォリオにはストレージサービスのBox(上場済み)やソーシャルネットワーキングのYammer(2012年にMicrosoftが12億ドルで買収)、生命科学や医薬業界向けのCRMで有名なVeeva Systemsなどが含まれている。Veevaにいたっては、2013年の上場でEmergenceに300倍以上ものリターンを生み出したと言われている(Emergenceは650万ドルの投資で手に入れた31%の株式をIPOまで保有し続けた上、彼らはVeevaの株主の中で唯一のVCだった)。

そんなEmergenceであれば、第5号ファンドで何十億ドルという資金を調達できたはずなのに同社はそうしなかった。カリフォルニア州サンマテオに拠点を置く彼らは、その代わりに2015年に設立された3億3500万ドルのファンドから調達額を30%だけ増やし、先週の金曜日に4億3500万ドルの投資ビークルを設立した。

先日、Emergenceの共同創業者Jason Greenと話をする機会があった。彼は4人いるジェネラル・パートナーのひとりでもあり、同社の要と言える存在だ。私たちが特に聞きたかったのは、なぜ在シリコンバレーの他のVCのように、前回のファンドから調達額を大きくひきあげなかったのかという点。この質問に対しGreenは「私たちは プロダクトマーケットフィットを目指すアーリーステージ企業のなかでも、一緒に仕事がしやすいコアメンバーがいる企業に絞って投資を行っている」と答えた。このターゲット像が変わっていないため、ファンドの規模も変える必要がないと彼は言うのだ。

とは言っても社内ではいくつかの変化があった。2016年にはKaufman FellowsからEmergenceに移って3年のJoe Floydがパートナーに昇格。なお、Kaufman Fellowsは2年間におよぶベンチャーキャピタリスト育成プログラムを運営している。またEmergence Capital共同創業者のBrian Jacobsは、このたび新設されたファンドにはタッチしないのだという。そこでGreenにJacobsは仮想通貨投資を始めようとしているのか(最近よくある動きだ)と尋ねたところ、彼は「Jacobsはそれよりも慈善活動に取り組もうとしている」とのことだった。

Emergence初の投資先はSalesforceだった。それ以外にも、2016年にServiceMaxをGEへ9億1500万ドルで売却し、昨年にはIntacctをSage Groupに8億5000万ドルで売却。新しい企業への投資は年に5〜7社といったところだ。続けて私たちはEmergenceがどうやってその5〜7社を選んでいるのかという問いを投げかけた。

するとGreenはまず、Emergenceは「テーマを重視している」のだと答えた。そして、同社は設立当初からSaaSやクラウド、ホリゾンタル(業界を問わない)なアプリケーション、そしてエンタープライズ向けプロダクトに特化してきたが、今後は関連分野の中でもう少し業界を絞っていこうとしているとのことだ。最初のターゲットは「コーチングネットワーク」とGreenが呼ぶプロダクト群で、これはエンタープライズ向けの機械学習テクノロジーと読み替えることができる。たとえば彼らの投資先でシアトル発のTextioは、AIを搭載したツールでビジネスライティングの可能性を広げようとしている。また、営業電話の音声を分析し、営業チームにリアルタイムでフィードバックを送るシステムを開発するChorusもEmergenceの投資先だ。Greenがこのようなプロダクトを総称して「コーチングネットワーク」と呼ぶのは、システムが人間を代替するのではなく、人間の仕事のパフォーマンスを上げるための手助けをしているからだという。

またEmergenceは、“デスクレス”労働者にも注目している。デスクレス労働者とは、世界の労働者の80%にあたる、オフィスの外で仕事をしている人たちのことを指す。これは決して新しいトレンドではないが、「早いイニング」だとGreenは語り、関連テクノロジーは「世界中のチームで徐々に浸透し始めている」のだという(急成長を続けるビデオカンファレンスシステム企業Zoomへの投資も恐らくこのカテゴリーに入るのだろう)。

Greenは具体的な投資額については明言しなかったが、従来のVCのようにEmergenceは投資先の株式の20%以上を保有するようにしており、「シリーズAから(イグジットまで)通して」企業をサポートしているのだという。

また最新のファンドで新たに加わった投資家がいるのかという問いに対しては、「財団法人や基金への寄付など、リターンを世のために使うだろうと私たちが信頼できる何社/人かをリミテッドパートナー(LP)に選出した」と答えた。

現在の流れとして、巨額の資金を調達しないことが「だんだんと珍しくなってきている」とGreenは語る。「今は簡単に多額の資金を調達して思いっきり投資できてしまうため、かなりの自制心がいる。そんななかEmergenceはずっと軸をブラさずにいることを誇りに感じている」

結局のところは「自分がやっていて楽しいことがすべて」だと彼は続ける。「私たちは単にお金を賭けているわけではなく、事業に直接関わるのを心から楽しんでいるのだ」

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(翻訳:Atsushi Yukutake

現場労働者をハイテク化するParsable、シリーズCで4000万ドルを調達

人工知能、機械学習、ロボットなどのテクノロジーによるオートメーション化が産業労働者の職を奪うという懸念が日々メディアで語られている。これに対してサンフランシスコのスタートアップ、Parsableは別の未来像を考えている。Parsableでは、オートメーション化に取り残されかねない何百万人もの産業労働者にデジタル・テクノロジーを自由に利用できるソリューションを提供しようとしている。

ParsableはConnected Workerと呼ばれるプラットフォームを開発した。これは現在印刷ベースのマニュアルを利用している各種の現場労働者にデスクトップ・パソコンなしで情報テクノロジーの進歩の成果を利用できるようにする。今日(米国時間5/16)、同社はシリーズCのラウンドで4000万ドルのベンチャー資金調達に成功したことを発表した。

今回のラウンドはFuture Fundがリードし、B37やLightspeed Venture Partners、Airbus Ventures、Aramco Venturesなどの既存の投資家も参加した。シリーズCの4000万ドルを加えて同社が調達した資金総額は7000万ドルとなる。

Parsableのプラットフォームはほとんどすべてのスマートフォンとタブレットで利用可能だ。デスクトップ、ノートその他の伝統的パソコンを使うことが不可能な作業環境で、たとえば機械の間を歩きながらでも、労働者はモバイル・デバイスをタップしたりスワイプしたりすることで必要な情報をインプットできる。

写真提供:Parsable

現場労働者はテクノロジーの進歩に追いつくために十分な手立てを与えられてこなかったと同社は考えている。Parsableは2013年に創立されているが、CEOのLawrence Whittleは「われわれは当初からコンピューター・エンジニアが必要と考えるものではなく、産業労働者自身が実際に必要とするプロダクトを作ろうと努めてきた」と語った。ただしこれを実現するためには長期にわたる予備調査が必要だった。

同じ作業を25年も続けてきたベテラン労働者に使ってもらうためには、プロダクトはこれ以上ないほどシンプルである必要がある。同時にテクノロジーを利用する度合いがもっと高い若い労働者にも違和感を抱かせないものでなければならない。つまりFacebookやSMSのような親しみやすいユーザー・インーフェイスが必要だと判明した。

Whittleの説明によれば「われわれは紙ベースのマニュアルやメモ帳の代わりに、さらに高機能、高効率でしかも事故を防止するなど安全面でも優れたデジタル版を提供しようとしている」という。

Whittleはこの努力を機械にセンサーを取り付けて機能をアップさせることに例えた。ただしParsableの場合は、新たな能力は機械ではなく労働者に付加される。「われわれはセンサーやインターネットへの接続能力を機械ではなく労働者に付与して仕事の効率化を図る」という。

同社はプラットフォームに柔軟性をもたせ、テクノロジーの進歩に合わせて新しい機能を追加できる仕組みにしている。たとえば、Pasableプラットフォームはスマートメガネをサポートしており、Whittleによればこれはプラットフォームの作業の10%を占めるまでになっている。テクノロジーがどのように進歩するかは予測不可能なため、新しいテクノロジーが現れた時点でそれを取り入れることができる柔軟性がプラットフォームには必須だという。

現在Parsableには30社の大企業ユーザーがあり、3万人がプラットフォームに登録している。ユーザーにはEcolab、Schlumberger、Silgan、Shellなどの著名企業が含まれる。同社の社員は現在80名前後だが今年の第3四半期末までには100になるとWhittleは語った。

画像:タブレットを利用してオートメーションの状態をチェックする女性エンジニア Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

GoogleはGoogle Assistantのアプリケーション開発振興のためスタートアップを育てる投資育成事業を開始

Google Assistantのエコシステムをどうしても育てたいGoogleは、ついにそのために自腹を切ることになった。今日(米国時間5/2)の同社の発表によると、Assistantのアプリケーションを作る初期段階のスタートアップに、資金やそのほかのリソースを提供していく新しい事業をこれから立ち上げるようだ。

新製品に関してそのエコシステムを育てたい企業が、こんな事業を発表することはよくある。しかしGoogle Assistantの場合はすでにかなりの数のサービスが開発されているにもかかわらず、同社は“このクリエティビティをもっと鼓舞するために”、新しい事業を立ち上げるのだ、という。

Googleの、検索とGoogle Assistant担当VP Nick Foxも、こう言う: “Google Assistantでは、デベロッパーやデバイスのメーカーやコンテンツでのパートナーたちが新しいユーザー体験を作っていけるための、オープンなエコシステムの育成に力点を置きたい。Google Assistantに関してはすでにデベロッパーたちの多くのクリエティビティが見受けられるが、それをさらに促進するために、初期段階のスタートアップのための新たな投資事業を始める”。

投資だけでなくGoogleは、彼らスタートアップにメンターシップ(個人指導)や、技術者、プロダクトマネージャー、デザイナーなどからのアドバイスを提供する。そしてこの事業の対象になったスタートアップは新しい機能やツールにいち早くアクセスでき、またGoogle Cloud Platformとプロモーションの支援にもアクセスできる。これはまさに、アクセラレーターないしインキュベーターと呼びたいような事業だが、Googleはそう呼んでいない。

Foxによると、投資額に上限はない。“ふさわしいと思われる額を投資して、デジタルアシスタントのアプリケーション(ハードウェアもありうる)開発という、この新しい分野でスタートアップが成功できるように努めていく。しかも資金を提供するだけでなく、これらのスタートアップと積極的にパートナーして、彼らのプロダクトが市場で成功するよう、わが社の強みも生かしていく”。

この事業の対象となる最初のスタートアップGoMomentは、ホテルのためのコンシエルジュサービス、そしてEdwinは英語の個人教授、BotSocietyPulse Labsはデベロッパーツールだ。

これらのスタートアップは、Googleのねらいをよく表しているようだ。Foxによると、Googleが求めているスタートアップは、“旅行やゲームなど、Assistantをおもしろく活用できそうな特定業種をエンドユーザーとする”デベロッパーたちだ。Googleは一部のパートナーシップについてはその関わりをより深めると同時に、一方多くの場合は単純に、Assistantのような技術に関心のあるスタートアップを求めているのだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

インターネットを監視不可能な層で覆うOrchid Labsが$125Mの資金調達過程に入る

インターネットの上に監視のない層を作ろうとするサンフランシスコのOrchid Labsが巨額の資金調達を行い、SECに提出された報告文書によれば、この1歳のスタートアップはこのたび、3610万ドルのラウンドを完了した。同社はこれよりわずか5か月前に、Yes VCなどの投資家と、Caterina FakeやJyri Engeströmなどのシリアル・アントレプレナーから450万ドルを調達したばかりだ。

同社のサイトによれば、初期の支援者にはAndreessen Horowitz, DFJ, MetaStable, Compound, Box Group, Blockchain Capital, Sequoia Capitalなどがいる。

同社が宣言しているOrchidの目標は、世界中の人びとに匿名化されたインターネットアクセスを提供することだ。その典型的な想定ユーザーとしては、政府が国民の閲覧やショッピング行為を監視している国の個人が挙げられる。

その目標にはまた、ユーザーのデータを私物化して売っているような多くの企業からユーザーを隔離することも含まれるようだ。そんな企業の著名な例としては、FacebookやAT&Tのようなウォールド・ガーデン(高い塀のある庭)が挙げられる。〔Facebookが…売ってる、は象徴的な意味合いか〕

データの悪用に関しては、Cambridge Analyticaのスキャンダルのような事件が氷山の一角にすぎない今の世界では、このプロジェクトの投資家にとっての魅力も容易に理解できる。上記SEC文書によると、同社は3610万ドルをSAFTで調達している。それは、暗号通貨の開発者たちが認定投資家たちに与える投資契約だ。〔SAFT参考記事

当文書によると、これまで42名の個人が参加している。しかしながらその目標額は$125,595,882〔約1億2560万ドル〕であり、今ブロックチェーンは急速にその人気が過熱している(今週初めのBasisの例を見よ)から、今でなくてももうじき、同社にはもっと多くのお金が流れこむだろう。それもまた、この文書上のすごいターゲットだ。

今本誌は、同社に詳しい情報を求めている。読者は、このホワイトペーパーを勉強してもよろしい。

Orchidの5名のファウンダーは、その経歴がおもしろい:

Stephen BellはTrilogy Venturesで7年間マネージングディレクターを務め、その後中国に機会を探し、2015年にアメリカに帰国した

Steve Waterhouseは長年、デジタル通貨専門のPantera Capitalの投資家だった。

Gustav Simonssonは、元Ethereum Foundationのデベロッパーだ。

Jay Freemanは、ソフトウェアエンジニア。

Brian Foxは1995年に世界で初めての対話的オンラインバンキングソフトウェアをWells Fargoのために作った、とクレジットされており、また伝説のプログラマーRichard StallmanのFree Software Foundationの最初の職員でもあった。

金額、ミッション、そしてファウンダーたちの顔ぶれからして、これは大物のようだ。今後に注目しよう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

おつり投資の「トラノコ」が楽天、東海東京FHなどから資金調達、異業種間での連携進める

買い物のおつりで投資ができる「トラノコ」を運営するTORANOTECは4月12日、楽天キャピタル東海東京フィナンシャル・ホールディングスだいこう証券ビジネスパラカ東京電力エナジーパートナーを引受先とする第三者増資を実施したと発表した。金額は非公開(2017年6月のサービスリリース時の資本金1億3100万円から、現在は7億3788万円に増えている)。

先日、20代後半で同年代の友人たちと話していたら、「資産運用は、必要なのは分かるけど、難しいよね」という話になった。トラノコは、そんな資産運用のハードルを下げてくれるサービスだ。

トラノコでは、クレジットカードや電子マネーなどを使った買い物の“おつり”を、最低5円から1円単位で資産運用にまわすことができる。このおつりは仮想的なもので、サービスであらかじめ設定した金額(100円、500円、1000円)から、実際の支払額を引いた金額を資産運用に回せるという仕組み。たとえば、設定額が100円で、10円のお菓子を買ったら90円だ。

実際の資産運用は、100%子会社のTORANOTEC投資顧問が行う。同社はユーザーのリスク特性に応じて3種類のファンドを用意。組み入れアセットも米国株式や新興国債券など多岐にわたり、気軽に分散投資ができるようになっている。トラノコの利用料金は月額300円。そのほか、投資ファンドの運用に対する信託報酬の年率0.3%、ファンドの監査費用などの手数料(年率0.1%が上限)、ファンドの組み入れ証券の売買委託手数料がファンド資産から控除される。

事業会社との連携進める

今回の資金調達ラウンドで特徴的なのは、投資家リストに多くの事業会社を含む点だ。証券会社である東海東京フィナンシャル・ホールディングスなどをはじめ、コインパーキングのパラカ、東京電力エナジーパートナーなど、異業種の事業会社の名前もある。

TORANOTECはこれまでにも、ANAとのコラボレーションNTT東日本との提携など、異業種とのパートナーシップを積極的に推進し、トラノコユーザーに限定で割引特典を提供するなどのメリットを打ち出してきた。今回の資金調達後も、そのようなサービス連携がさらに進むことが予想される。

TORANOTEC代表取締役のジャスティン・バロック氏は、「「事業間協力および事業連携は、フィンテックの成功には欠かせない重要な要素。資産形成を人びとの日々の生活の一部にしていく上で、様々な業種の事業会社および金融機関との連携を幅広く深めていくことが大いなる力を発揮するものと確信している」と語る。

Robo Wunderkindで子どもたちがスマート・ロボットを組み立てられる――LEGO Mindstorm的だがもっとシンプル

LEGO Mindstormsは現在市場に数多く出ているプログラミングができるおもちゃのパイオニアだ。オーストリアのスタートアップRobo WunderkindはMindstorm方式のレゴ的なプログラマブルおもちゃを提供している。このスタートアップは2015年のTechCrunch Disrupt SFでデビューし、アクセラレーター、ベンチャーファンドのSOSV、企業育成のためのオーストリアの国営投資銀行、Austria Wirtschaftsservice Gesellschaft他の投資家からから120万ドル(100万ユーロ)を調達した。

他のプログラマブルおもちゃと比べるとRobo Wunderkindはブロックを組み合わせる方式を採用している。これはレゴ的だが、シンプルなブロックを組み合わせて何かを作る面白さを他のおもちゃは忘れているかもしれない。

Robo Wunderkindの核心となるのは単なるレゴ的ブロックの固まりをスマート化する特別なブロックだ。これには光、近くの物体、自身の移動などを検知する一般的なセンサーの他にWunderkindが開発した独自のセンサーを備えている。このブロックには超小型カメラ、赤外線発光/受信装置、小さいLEDモニターなどを組み込んでプログラムすることができる。

楽しいのはRobo WunderkindはLEGOアダプターが含まれており、独自ブロックの他に各種のLEGOブロックを利用してロボットを組み立てられることだろう。

Wunderkindでは2種類のアプリを販売している。 Robo Liveはロボットをリアルタイムでリモートコントロールする。もうひとつのRobo Codeは新しいユーザー・インターフェイスで子どもたちがロボットをプログラムするのを助ける。

Robo CodeはRobo Wunderkindでいちばんユニークな部分だろう。子どもたちはiPad上で仮想ブロックを組み合わせることで複雑なアルゴリズムを実現できる。これはループや条件分岐といったプログラミングの基礎を教えるのにすばらしい方法だ。

LEGO Mindstormsで作成されるような高度なロボットを作るのは難しいが、ロボティクスの基礎を学ぶにはRobo Wunderkindのほうが入門しやすい。子どもたちの成長に合わせてArduinoやRaspberry
Piに移行するのも容易だ。

Robo Wunderkindは2015年にKickstarterで25万ドルを集めることに成功している(プロジェクトは終了ずみ)。現在スターターキットは250ドルから入手できる。さらに多機能なプロ・キットも近く発売される予定だ。

 

〔日本版〕Robo WunderkindのSHOPページにはチャットボックス(画面右下隅のアイコン、言語は英語)が用意され、マーケティング担当者がリアルタイム(またはメール)で質問に答える。日本にも配送可能とのこと。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

いまさら聞けない中国預託証券(CDR)入門 ―― 1兆ドル規模の投資市場の誕生か

中国預託証券で、中国政府は莫大な富を生み出すだろう

先日、中国政府は新たに、1兆ドル規模の投資市場の創出を発表した。もちろんエイプリルフールの冗談ではない。

AlibabaやTencentのような、中国の巨大テクノロジー企業が世界で最も価値のある企業であることや、Xiaomiのような次世代スタートアップがIPOを控えていることは実に喜ばしい。中国の人びとの多くが興奮することになるだろうが、それらの成功とは裏腹に、そこには深刻な皮肉が横たわっている。これらの中国のハイテク企業の株式を、実際に中国の証券取引所で購入することはできないし、中国の個人投資家たちもそれらの株式を購入することはできない。

中国人労働者がこれらの企業を築き上げ、その価値はアメリカの資本家に集まるのだ(おそらく「中国的社会主義のせいで」?)

現在、中国中央政府は、中国預託証券(CDR)を導入することで、そうした企業たちを中国本土に呼び戻す新しいルールを提案しようとしている。これは大きなニュースである。世界のいくつかの大手テクノロジー企業の時価総額を完全に変えてしまうだけでなく、ニューヨーク証券取引所や、香港、上海、深センなどにある中国国内証券取引所との競争も激化させることになるからだ。

ではCDRとは一体何だろう?その詳細に入る前に、まずはそれらが必要とされる理由を理解する必要がある。

国内のバイヤーたちが国内株式を買うことは、中国では本当に本当に難しい

経済学の理論には、自由貿易と効率的な市場という概念の輝かしい例証として証券取引所が取り上げられている。各企業は標準ユニット(株式)を販売し、その価格は透明に開示されていて、買い手と売り手は中央市場(取引所)で、有価証券を任意の価格で売買することができる。

もちろん実際には、政府が金融証券を強く規制することで、それらの取引所が整然と運営されることを保証している。米国の証券取引委員会は、国の取引所の運営と事業を規制する複数の公的機関ならびに民間機関の1つに過ぎない。

さて中国に目を向けた場合、その規制は100倍厳しいものだと考えて欲しい。証券取引所への上場には、中央政府の承認を受けなければならず、それに加えて規制当局は過去数年間にわたり積極的に上場を阻止してきたのだ強力な資本規制により、中国市民は国内の証券のみを購入することが可能で、外国の証券取引所を通じて中国国外の企業に投資することはできない。同様に、外国人投資家は、過去20年間にわたる自由化プログラムにもかかわらず、中国国内企業への投資には極めてハードルの高い難題に直面している。政府は、貿易の停止その他の手段によって、上海証券取引所と深セン証券取引所の運営に定期的に介入している 。国内証券規制は負担の大きなものとなり、企業には「共産党支援」活動が強いられる

個人投資家から資本を調達しようと考える中国企業にとっては、2つの道が考えられる。1つは、異なる場所で取引される複数のタイプの株式を提供することだ。これまでこれに相当していたのは、上海で取引され、地元の人びとだけが購入できる「A株」と、外国人のみが取引可能な「B株」だった。中国国内の証券取引所の証券規制がない香港で上場する「H株」を選択する企業もあった。これらの異なるクラスの株式は価格も独自に決まり、それらの間に大きな食い違いがあることも見られた(伝統的にA株は他のタイプの株式に比べて高い価値を持ってきた、しかし研究者たちは、いまだにその正確な理由を知らない)。

この経路は複雑なので、AlibabaTencentなどを始めとする中国の大企業たちは、国内の証券要件を回避でき、外国資本市場へのアクセスも与えられるケイマン諸島のような場所に会社を設立してきた。オフショア法人設立専門法律事務所であるWalkersの分析によれば、香港上場株式のほぼ半分はケイマン諸島を拠点とし、他の4分の1はバミューダを拠点としている。こうしたやりかたは、経営陣にとっては財務的に賢明な判断だが、中国当局にとっては認めがたい手段である。このことで企業に対する影響力が失われ、海外取引所に上場された際にこれらの株式が獲得する将来的な成長も失われてしまうからだ。

では中国預託証券(CDR)とは何なのか?

そこで中国預託証券(CDR)が登場するというわけだ。ほぼ100年前に発明されたアメリカ預託証券(ADR:American Depositary Receipts)をお手本として生まれた中国預託証券(CDR:Chinese Depositary Receipts)は、国内の買い手たちが、国内の証券規制を守りつつ取引の困難さを軽減しながら海外の株式を所有できる手段である。

銀行は、海外の発行者と地元の買い手との間の仲買ブローカーとして機能する。預託者として知られるこの機関は、信用できる企業の外国株式を保有していて、その預託株式に比例した数の証券(例えば6株当たり1証券など)を、国内で新しい証券として発行する。さて、ここで2種類の証券が登場している。1つはレシート(Receipt)と呼ばれる証券で、預託銀行に紐付けられる形で証券購入者が持つものである。そしてもう1つはオリジナルの海外株式で、これは海外発行者の発行したものを銀行が保有している証券である。

ここが「魔法」の起きる場所だ。ここで証券規制は、国内の買い手を対象に、新しく発行された証券に適用され、オリジナルの会社の株式には適用されないのだ(実際には何千ページにわたる政策と法律が関わっているので、話はもっと込み入っているが、ともあれ基本となるアイデアはこのようなものなのだ)。取引が仲介されることで、誰でも便益を受けることができる。国内の買い手は国内の規制を守りながら、海外投資にアクセスすることができるのだ。

ここではあまり深入りしたくない膨大な特性があることを指摘しておくことは重要だ。対象株式の管理と取引を行うための費用を捻出する必要があるために、通常の株式取引に比べてより多くの手数料が発生する。税務上の影響やその他の会計上の問題は、投資家によっては相当複雑になる可能性がある。

しかし、このような複雑さにもかかわらず、預託証券は米国ではとても人気がある。米国最大の預託銀行であるBNY Mellonによれば、2016年の市場規模はおよそ2.9兆ドルで、取引されている銘柄はおよそ3500種あり、その年にさらに数十銘柄が追加されている。いくつかの経済指標では、中国経済が既に米国を追い抜いていることを思えば、CDR市場の規模は優に1兆ドルを超える可能性がある。

国内で富を分かち合う

預託証券の背後にあるコンセプトは、新しいものではないかもしれないが、その利用はこれまで中国国内では正式には認められておらず、それが変わろうとしているのだ。先の金曜日(3月31日)中国中央政府は、国内証券取引所で中国預託証券を発行することを可能にする、新しい証券規制方針の草案を発表した。

China Banking Newsによれば、今回主に関心の対象となっているのはテクノロジー企業のようである。「世論は、戦略的新興産業の一部のハイテク企業や大企業が、株式の発行や預託証券を通して上場を果すことを望んでいる。そうしたことが期待される産業分野は、ビッグデータ、クラウドコンピューティング、人工知能、ソフトウェア、集積回路、ハイエンド製造業、そしてバイオテクである」。技術に焦点を当てることは、中国共産党の他の動きにもマッチするものだ。特に、同国が技術的優位性を狙うための、中国製造2025(Made in China 2015)と呼ばれるロードマップには良く合致している。

CDRが整備されれば、現在海外に上場している中国企業たちは、それを利用して国内の買い手たちに購入する権利を開放せよという、大きな圧力に直面することが予想される。すでに、 Baidu、Sogou、Alibaba、Tencent、そしてXiaomiといったな企業たちは、本土に戻るためのチャンネルが見つかることに興味があると公表している(Xiaomiの場合、少なくとも部分的に初期提供を開始する可能性がある)。Bloombergが1ヵ月前に書いたように「巨大企業を国内での上場に誘うことで、気まぐれな規制、不安定性、そして恒常的な政府の介入によって悪名高い、中国の2大証券取引所である上海と深センの評判も、向上することだろう」。

さらに、より多くの国内の中国人株主を得ることで、これらの国内企業への統制を中国当局の手に留めることを可能にする。中国共産党は、この面で特に積極的であり、トップ企業の株式を取得し、企業の役員に共産党幹部を送り込むことを提案している 。これらの企業の株主構造を変えるということは、共産党による民間部門への支配の延長とみなされるべきものである。

変化はまだ進行中だが、私たちはそうした企業たち ―― 特にテクノロジー分野 ―― の大きな資本構造の変化に備える必要がある。AlibabaとTencentを合わせた時価総額は1兆ドル近くに上る。他にも数多くの中国株が、米国や西側の取引所に独占的に上場されているが、もしCDRが普及すれば、巨大な市場になる可能性があるだろう。最終的な規制の公表に向かい、CDRは今年後半の主要なニュースストーリーの1つとなるだろう。

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(翻訳:sako)

AWS Lambdaのイベントトリガを使いやすくしてWebサイトの開発方法を改革するNetlify

Webプロジェクトの継続的なデプロイメントを支援するサービスNetlifyのビジョンは、Webサイトの作り方を変えることだ。とくに、フロントエンドのデザインとバックエンドで実行されるサービスとの結合を、もっとシンプルにしたい。今日同社は、そのビジョンの実現に向かう次の一歩として、NetlifyのサービスにAWS Lambdaのファンクションを導入した。

同社のねらいは、Web開発に伴う多くの複雑性を、できるだけ減らすことだ。たとえば、ユーザーがHTMLとJavaScriptでフロントエンドをデザインすると、Netlifyはそれをさまざまなサービスに結びつける。決済ならStripe、メールによるニューズレターの管理ならMailChimp、というように。このやり方でNetlifyは、Webサーバーという概念を抽象化(実体のないものに)してしまう。デプロイが遅くてセキュリティもスケーリングも困難なあのあれが、消えてなくなる。そして、一枚岩的なWebサイトから、スタティックなフロントエンドとバックエンドのマイクロサービスという組み合わせへ移行し、それによりセキュリティとスケーリングの問題を解決、そしてサイトを従来よりも相当早くユーザーに渡せるようになる(デリバリが早い)、と同社は信じている。

ユーザーは、サイトの構築に何を使ってもよい。ユーザーが作った設計/デザインを渡されたNetlifyは、バックエンドのコーディングのすべてをエッジに置き、コードはエッジで実行される。その意味で同社のサービスは、半分はContent Delivery Network(CDN)、残る半分はデベロッパーの自動化エンジンだ。

この、より動的なWebサイトをより早く作るというNetlifyの能力がAndreessen HorowitzのパートナーPeter Levineの目に留まり、昨年8月に同社の1200万ドルのシリーズを彼がリードした。Levineは曰く、“彼らの、マイクロサービスとAPIsを活用して柔軟性に富む動的な(ダイナミックな)Webサイトを作る、という考え方はすばらしいアイデアだ。しかも、エッジへデプロイすることによって、さらにハイパフォーマンスなユーザー体験を作れるし、GitHubを統合することによってアプリケーションを容易に作成し管理できる”。

今日の発表は、同社のサービスのそんなアプローチをさらに一歩前進させる。Lambdは、AWSのいわゆるサーバーレス・ツールだ。デベロッパーはファンクションを作り、それが特定のイベントにトリガされて実行される。デベロッパー側には、サーバーを24/7動かし管理しメンテナンスする苦労がない。これは、NetlifyのWeb開発アプローチとぴったり相性が良い。つまりそれは、AWS Lambdaと同じく、WebのパブリシングプロセスからWebサーバーを取り除くから。

そしてNetlifyは、Lambdaのファンクションを、もっと容易に実行できるようにした。同社によると、Webデベロッパーは確かにイベントトリガーという考え方を気に入っているけど、AWSのワークフローは複雑すぎる。イベントトリガーをデベロッパーのアイデンティティで容易に作れるようになれば、Lambdaをもっと気軽に利用できるだろう。

同社の協同ファウンダーChristian Bachは、こう説明する: “Lambdaが良いことは自明だが、それを軸とするワークフローがないために、使いづらい。われわれにはフロントエンドをパブリシングするワークフローがあるので、サーバーレスもそれと同じようにしたい、と考えた”。

“Lambdaのトリガのひとつひとつが小さなマイクロサービスになり、ブラウザーからそれらにアクセスできる”、と彼は述べる。たとえばStripeを使って決済をする場合なら、Stripeの秘密の認証情報のコードで決済のゲートウェイに入る。“従来なら、この小さな呼び出しのために、どこかでサーバーを動かす必要がある。この小さな機能だけのために、Railsのアプリケーションを作るだろう”、Bachはそう述べる。

しかしNetlifyのやり方では、認証情報を数行のコードでタイプし、それからLambdaのトリガとNetlifyの糊的なコードを少々使うだけだ。これにより、そのコードをどこに置くか、それをどうやって管理するか、という問題が解決する、とBachは言う。

かねてからエッジコンピューティングをテクノロジーの大きな駆動因として見ているLevineがNetlifyのシリーズAをリードし、同社の取締役会に加わったたのは、たぶん偶然ではない。

Levineは曰く、“かなり前からエッジコンピューティングには注目しているし、Netlifyは、エッジにおけるサービスという大きなトレンドの一部だ。同社は、現代的なWebサイトを構築しデプロイする方法を開発した”。

同社は、2015年に創業され、これまでに1410万ドルを調達している。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Amazonが市場価値でAlphabetを抜く、Appleのダントツは揺るがず

Amazonは現在、マーケットの現在価値ではAppleにつぎ世界で二番目に大きい企業である。同社の時価総額は7632.7億ドル(NASDAQ:AMZN)、対してAlphabet(NASDAQ:GOOG)は7629.8億ドル“しか”ない。

Amazonは、前四半期(1710-12)がすごかった。株価は1月の初め以降29%も上がった。対してAlphabetの株価は高下した。

今日(米国時間3/20)だけを見ると、Amazonは2%上がり、Alphabetはフラットだ。今日の最終結果はまだ分からないが、たぶん逆転はないだろう。

現在、Amazonよりも時価総額が大きい唯一の企業はAppleだ。Appleの市場現在価値は8920億ドルだから、差は相当大きい。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

アメリカの富豪投資家たちは富士フイルム/ゼロックス合併条件に大不満

Carl IcahnとDarwin Deasonの二人はベテランの富豪投資家で、良くない取引や契約はそれを見たときに分かる。そんな彼らは、先月発表されたFujiとXeroxを結合する61億ドルの取り決めが断じて気に入らない。今日のブログ記事(米国時間2/12)で彼らは、投資家仲間である株主たちに、そのオファーを拒否するよう勧めている。

そもそも先月、Xeroxは売りに出すべしと要求したのは、両社の株を合わせて15%持つご両人だった。そしてそう言いながら両者は、CEOのJeff Jacobsenを即刻解雇することも求めた。二人とも、ぐずぐずすることが嫌いだ。

そこでよく考えた結果Xeroxは、売れという要求に従った。しかしIcahnとDeasonは、その条件が気に入らない。その条件はFujiにとって不当に有利であり、その合併の仕方には投資家が公正なリターンを得られる保証がない。…彼らは、そう見た。

IcahnのWebサイトに載った共同声明で二人の富豪は、その‘とんでもない’契約をこっぴどく叩いている: “この取引の構造は、無理と作為に満ちているが、いちばん的を得ている要約は、Fujiの会長でCEOのShigetaka KomoriがNikkei Asian Reviewで言っている、彼らのブログ上の自慢の言葉、‘この方式によりわれわれは一銭も金を出さずにXroxのコントロールを握ることができる’、だ”。

二人は、Fujiのこれまでの業績には無関心だが、しかし彼らの関心は、企業統治云々ではなく、純粋に経済の問題だ。“われわれの投資対象に対する今後のコントロールやガバナンスの問題以上に、この取引の基本的な経済性は、われわれの犠牲の上でFujiを不公平に厚遇している”、と彼らは書いている。

彼らは、XeroxとFujiのこれまでのパートナーシップに対しても批判的だ。“悲しいことに、われわれもよく知ってるように、XeroxがFujiとひどい契約を交渉したのはこれが初めてではない”。しかも契約の条件が長年、株主に対して非公開だった、と彼らは言っている。そこで、中に入れてもらえずに庭先でキャンプするしかなかった彼らは、嬉しくない。

共同声明は、この契約を拒否せよ、という株主たちへの呼びかけで終わっている。“現在の取締役会はXeroxの故意の破壊を看過し、われわれが何もしなければ、この最新のFuji方式がXeroxの最後の弔鐘になる。株主のお仲間たちよ、Fujiにこの会社をわれわれから盗ませないようにしよう。正しいリーダーシップの下(もと)なら、独自の価値を実現する巨大な機会が今でも存在している”。

【以下抄訳】
これに対しXeroxのスポークスパーソンは、Fuji Xeroxの結合が、Xeroxの株主に価値をもたらす最良の道だ、と反論している。二人は以前から、Xeroxは売れ、と主張していたのであり、今回は、その売り方/売られ方が気に食わないのだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

SoftBank Vision Fund、すでに350億ドルを世界のテクノロジー・スタートアップに投資

昨年5月にSoftBankは1000億ドルを目標とするVision Fundになんと930億ドルもの出資を確保して組成を完了した。このニュースはテクノロジー界に大きな衝撃を与えた。しかも日本のテレコムの巨人は第2次の組成の準備を進めている。またSoftBankの発表(PDF)によれば、Vision Fundの総額の3分の1がすでに投資されている。

先月、この投資の大きな部分、77億ドルがライドシェアリングのUberに投じられた(SoftBankも12億ドルを直接投資している)。これに先立って2017年には、45.8億ドルを投資することで中国のDidi(滴滴)と合意している。ただし、この後者の投資はVision Fundの兄弟分でVision Fundの投資先と競合する可能性がある企業への投資を扱う総額60億ドルのDelta fundからとなる。

今朝発表された資料にはVision Fundが275億ドルを投資済みだとあるが、これは2017年12月31を終期とする9ヶ月におけるデータなので最近のUberへの投資は含まれていない。アメリカのライドシェアリングへの投資を加算すると、投資総額は350億ドルとなる。

Uber以外の企業への投資には、ARM、Nvidia、Flipkart、Paytmの親会社One97 Communication、OYO Rooms、Improbableなどが含まれる。最近の投資には犬の散歩アプリ、Wagへの3億ドルドイツの中古車マーケットプレイス、Auto1への5.6億ドルがある。どちらも今年に入ってからの投資であるためSoftBankが発表した資料には含まれていない。

Vision Fundは「 300年間成長し続ける会社」にするというSoftBankの戦略の一部だ。このため各カテゴリーごとに世界市場での勝者を発見し、支援するというコンセプトだ。SoftBankは投資先企業と協調しテレコムとAIに関連するサービスとテクノロジーの発展を目指す。Vision Fundの投資家はApple、Qualcomm、UAE〔アラブ首長国連邦〕のMubadala Investment Company、サウジアラビアのPID上場ファンド、Foxconn、Foxconn傘下のSharpなどだ。

Vision Fundという巨人が登場したことはアメリカにおける後期ステージのベンチャー投資の構図を大きく変えた。Sequoiaなどの有力ベンチャーキャピタルは急ぎ大型ファンドの組成を始め、Vision Fundに対抗しようとしている。

Vision Fundの影響はすでに各方面に感じられている。Wagへの投資の場合、Vision Fundは投資額を3億ドル以上にすべきだと強く主張したため、NEA(New Enterprise Associates)とKleiner Perkinsはラウンドへの参加を断念したという。両社とも当初Wagに強い関心を示していた。結局、Vision Fundは単独で投資を行ったが、他の投資案件でも同様の例が見られるという。

テクノロジー投資の分野では前代未聞の額のファンドだが、もちろん「先んずれば人を制する」ともいう。

Battery Venturesのジェネラル・パートナー、Roger LeeはTechCrunchのインタビューに対して、同社の最新の大型ファンドについて説明する中で、Vision Fundは「投資における優れたパートナーであり、あるカテゴリーのリーダーとなる可能性のある企業にとって(出資者として)重要な候補となる」と述べている。Battery VenturesはWagに当初から投資していた。

Leeはまた「SoftBankが投資しているジャンルには数多くのライバルが活動しており、それぞれ大きな価値を生んでいる。また〔出資者を探す場合も〕SoftBankが唯一のオプションというわけではない。上場を控えた後期ステージのスタートアップへの投資を専門としてきた投資家は多数いる」とも語っている。

SoftBankによれば、Vision Fundはすでに23億ドルの利益を上げているとしている。これは主としてNvidiaの株価上昇によるものだ。1000億ドルのファンド全体が目指すリターンはもちろんはるかに大きいものだろう。

画像:Tomohiro Ohsumi/Getty Images

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CPGこそベンチャー投資の未来だ――消費者向けパッケージ商品スタートアップへの投資のポイント

この記事の執筆者はRyan Caldbeck(消費者向けパッケージ商品のスタートアップへの投資マーケットプレイス、CircleUpのCEO) 。TechCrunch投稿記事:消費財業界で起きようとしているM&Aの雪崩Unileverが10億ドルでDollar Shave Clubを買収した理由

6年前、われわれが創立したCircleUpのための資金集めをしていたとき、大勢の投資家が「消費者」という言葉を聞くと目をそらした。

われわれのプラットフォームは小規模なCPG(消費者向けパッケージ商品)の会社にのみ投資すると説明すると、投資家たちは居心地悪そうに身じろぎし、視線をあちこちにさまよわせたものだ。「エナジーバーなんか作っている会社はスケールするわけがない」、「ベビーフードではタカがしれている」といった懐疑的なコメントを何度も聞いた。傑作だったのは、「消費者向け商品を作っている会社の名前なんか一個も思い出せない」だった(あるベンチャーキャピタリストが本当にそう言った)。

今ではさすがに空気が変わっている。テクノロジー関連のニュースをブラウズすればGreylock PartnersがCPGスタートアップを賞賛している。Sequoiaのマイケル・モリッツは化粧品のCharlotte Tilburyの取締役に就任しているし、Lightspeed VenturesはVMG Paratnersと共同で中規模の消費者向け企業に投資している。

シリコンバレーのベンチャーキャピタリスト間では、AI、ブロックチェーンと並んでテクノロジーを活用するCPGへの投資が確固としたトレンドになってきた。 CPG市場に流れ込むテクノロジー VCの投資額が急増している理由の一つは、VC間の競争が猛烈に激しいせいでもある。投資先が飽和ぎみのところにCPGには長年高い配当実績があり、中でも中小のメーカーが市場で好調なことに気づき、VCが殺到し始めたのだろう。

消費者向けプロダクトは市場が巨大だ。下のグラフを見てもわかるとおり、テクノロジー市場の3倍の規模がある。

市場の規模が大きいにもかかわらず、従来この分野へのアーリーステージの投資は低調だった。その原因はいくつもあるが、投資市場が非効率だったせいが大きい。 消費者向けブランドには地理的な偏りがあり、ブランドに関する組織的な情報提供システムの欠如している。消費者向け製品のシリコンバレーはないし、Crunchbaseのようなデータベースも今のところ整備されていない。

理論的には最近のVC投資はCPGにもVCにもwin-winの関係をもたらすはずだが、実際のVC投資は方向を間違えており、それどころか悪影響をもたらしている場合もある。投資家は金をを失うだけですむが、起業家は生涯をかけて築いてきた会社を失うことになる。

CPGスタートアップに投資する場合、投資家も起業家も共に益するような結果を求めるなら、留意すべき点がいくつかある。

この市場は「一人勝ち」にはならない

ベンチャーキャピタリストのCPG企業への投資における根本的な誤りは ある分野を1社が独占できると思いこんでいるところにある。これはテクノロジー市場の場合から類推しているわけだ。たしかにテクノロジーの場合、UberやAirbnbのように「一人勝ち」になることが多い。1社か2社がその市場のシェアの70%を占めることはよくある。しかしこれがCPG市場にもそのまま当てはまると思うなら、その推論には根本的な欠陥がある。

この5年から10年、ユニークで明確なターゲットを持ったプロダクトに消費者の好みは着実にシフトしてきた。現在はビールであれハンドローションであれ、消費者は嗜好を明確化するようになった。そのためブランドは特定のニッチ向けに細分化される傾向にある。したがってプロダクトの規模は以前より小さくなる。一方、巨大上場企業はニッチで成功を収めたスタートアップを急いで買収しようとする。PWCのレポートによれば、2017年におけるテクノロジー市場におけるM&Aは1700億ドルだったのに対し、消費者向けプロダクト市場とリテール市場におけるM&Aは$3000億ドルに上った。

マーケットのセグメント化が進み、小規模ないし中規模のブランドが多数生まれている中で、あるブランドのエナジーバーやベビーフードが市場の70%を獲得できるなどという幻想は捨てる必要がある。

企業価値の評価が高すぎたり、投資金額が大きすぎるのは有害

繰り返すが、CPGスタートアップに投資する際、「将来この市場を独占できる」と前提するのは非現実的なだけでなく、非生産的でもある。起業家はこの高すぎる評価額に追いつこうとして不自然かつ有害な行動に走りがちだ。おそらく次回の資金調達では評価額の引き下げを余儀なくされるだろうし、もっと悪いことに、素性怪しげな投資家でも構わず投資を募ろうとするかもしれない。起業家は会社の売却に必死になるが、はかばかしい結果は得られない…。現実のプロダクトが用意できていないスタートアップがインフレ評価額に押されて非現実的な成長を求めると、さらに苦境に陥るという悪循環に陥る。

UnileverがトレンディーなHonest Companyではなく、似たようなプロダクトを提供するSeventh Generationを買収した理由は関係者なら誰でも知っている。Honest Companyの会社評価額が高すぎたのが主な理由だ。ハリウッド・スターのジェシカ・アルバが創立したHonest Companyに投資したVCは会社の基本的な実績を無視して評価額をつけた。消費者向けパッケージ・プロダクトの会社はたとえ3000万ドルでも調達すべきではない。3億ドルなどもってのほかだ。その結果、Honest Companyは大企業による買収のチャンスを逃し、コスト削減を始めとするリストラを迫られるこになった。同社の将来に関して社員の間で不安が高まっているという。

一言でいって、CPG企業は成長のために巨額の資金を必要としない。そもそも、小資本で運営できるという点がCPGの美点だった。 消費者向けグッズのスタートアップが年間売上1000万ドルを目指すには400万ドルから800万ドル程度の資金で十分だ。これで十分利益を上げて会社を維持できる。テクノロジー企業が年間売上1000万ドルを達成するためには通常4000万ドルから5000万ドルの資金を必要とする。しかもそれだけの売上があっても利益を出せないことが始終だ。SkinnyPopRXBarSir Kensington’sNative Deodorantなどは着実に利益を出しているCGP企業の例だ。

優れたブランドを築くのは容易でない――しゃれたサイトを作ってD2Cを始めるよりはるかに複雑

昨年20人くらいののベンチャーキャピタリストが連絡してきて、「コンシューマー市場に投資したい。しかしテクノロジーを利用している企業でないとまずい。出資者にこのファンドはテクノロジー企業に投資する言ってあるのでね」という意味のことを言った。その結果が、VCはD2C〔Direct to Consumer = インターネット経由で消費者に直接販売する〕企業ばかりに高すぎる評価額で多すぎる金額を投資するようになった。

D2Cというのは一つの販売チャンネルではある。これはコンビニ( セブン・イレブンなどだ)や会員制販売(Costco)、スーパーマーケット((Walmart)、生鮮食品(Safeway)などがそれぞれ販売チャンネルであるのと同じことだ。当然D2Cにもメリット、デメリットがある。万能薬ではない。この分野に経験の浅いVCはよく「D2Cは流通コストが低い」というようなことを言う。しかし現実にはD2Cスタートアップは法外な会社評価額をベースにオフラインで同規模の営業をする会社と比較して10倍から30倍もの資金を集めている。D2C起業家にこのチャンネルはオフラインと比べて安上がりかどうか尋ねてみるとよい。この3年から5年、CAC(顧客獲得コスト)が急速に値上がりしたため、もはや安上がりではないという答えが返ってくるだろう。D2Cがそれほど安上がりなチャンネルなら、Bonobosが1.27億ドルDollar Shave Clubが1.64億ドルCaspeが2.4億ドルもの資金を集めねばならなかったのはなぜだろうか?

D2Cは一つのチャンネルだ。しかし消費者向けパッケージ製品(CPG)の販売で成功するために必要な基本が変わるわけではない。そのジャンルの利益率、チームの優秀さといった問題を別にすれば、ブランド価値、流通組織、プロダクトの差別化といった基本に戻ることになる。この中で差別化というのは必要な要素ではあるが、成功を保証するものではない。プロダクトはユニークであるだけでなく、それが消費者に利益をもたらすものでなければいけない。健康食品でいえば、Kind BarはClif Barより食べ物らしく見える。 エナジードリンクで長時間効果があるのは5 Hour Energy だ。低カロリー・アイスクリームなら「1箱食べても太らない」と主張するHalo Topがある。おかしなキャッチフレーズだと思うかもしれないが、どれも10億ドル企業であり、どれも同規模のテクノロジー・スタートアップにくらべて調達した資金額は非常に少ない。つまりシード投資家はその後のラウンドでの株式持ち分の希釈化を受けにくい。

これが将来の進路だと期待

消費者向けパッケージ製品は非常に大きな可能性を持った市場だ。巨大であり、無数のジャンルがある。投資家にとって有望なスタートアップを発見し、助ける可能性の宝庫だ。ベンチャー投資家がこの市場で成功したいなら、まず時間をかけて消費者市場の基本を理解しようと努める必要がある。そうした投資家が増えれば、優秀な起業家が適切な額とタイミングで資金を得ることができるようになるだろう。私は消費者市場でスタートアップの成功が相次ぐことを強く期待している。

画像:RAL Development Services/Davis Brody Bond

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

GoogleによるHTCのスマートフォン部門の部分的買収が完了、台湾にGoogleの技術拠点誕生

Googleが、HTCのハードウェア事業のかなり大きな部分を11億ドルで買う買収を完了した、と発表した

買収が発表されたのは昨年の9月だったが、このほどやっと法的承認も得られて完結した。HTCが抱える技術者の約1/5、2000名あまりがGoogleに移籍するほか、GoogleはHTCの知財の所有権ではなく利用権を受け取る。HTCのVive部門はHTCに残り、また同社は独自のスマートフォンを作り続ける、と昨年確認された

言うまでもなくGoogleは、HTCのスマートフォン開発チームの一部を手にすることによってそのハードウェア事業を強化する。そのチームの多くは、HTCにアウトソースされたPixelのハードウェアと、評判は良いけどあまり売れないHTC自身のデバイスを作ってきた連中だ。

そしてGoogleはHTCのある台湾の台北に新たに技術的拠点を持つことになり、そこがアジア太平洋地域におけるGoogleの最大の開発と生産のベースになる。今後はそこから、新製品が次々と登場してくることだろう。

Googleハードウェア部門のSVP Rick Osterlohがブログにこう書いている: “HTCとの契約が正式に締結したことは喜ばしい。そのすばらしく有能なチームを歓迎し、共にこれからは、さらに優れた、さらに革新的な製品を作っていきたい”。

“この新しい仲間たちはこれまでの数十年にわたり、とくにスマートフォンの業界において、いくつもの“初めて”を達成してきた。たとえば2005年には初めての3Gスマートフォンを市場に投じ、2007年には最初のタッチタイプのフォーンを世に送った。そして2013年には、世界で初めての一体成型オールメタルのスマートフォンを発売した”。

この買収の完了はここ数か月におけるGoogleのアジアにおける事業展開の、またひとつの重要な一歩となる。

昨年12月には中国における初めてのAI研究所を北京に開設することを発表し、次はハードウェアの世界におけるシリコンバレーと呼ばれる都市深圳に拠点を開いた。また投資家としてのGoogleは中国のストリーミングサービスChushouと、アメリカと中国にまたがるバイオテク企業XtalPiに投資した…後者はAIと機械学習を利用して新薬の設計をしている。また最近では、インドネシアのライドシェアサービスGo-Jekにも投資している。

またアメリカなどグローバル市場への進出をねらっている5000億ドルの巨大企業Tencentとはパテントのクロスライセンス契約を結び、それのGoogleのハードウェアおよびアジアにおける事業展開との関連が注目される。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Appleはこれからの5年間で、米国内で3500億ドルの投資をすることを誓った

Appleは、この先5年で3500億ドルという投資を行い、米国経済に大きな後押しを行おうとしている。その一部として、今年単年で550億ドルの投資を確約し、その期間内に2万人の新しい雇用を増やす計画だ。Amazonに続いて、Appleは今年、米国内の何処かに新しいキャンパスを設置することも計画している。

沢山のニュースがある。まずは3500億ドルという大規模投資の話から始めよう。Appleによれば、この金額の中には、従業員の給与やApple製品の売上から発生する税金は含まれていない。

しかしその中には、Appleが海外に持つ、現在2560億ドル規模の現金を、米国に送金する際の税金は含まれているということだ。米国への送金によって発生する税額は380億ドルと予想されているが、その大部分は同社の資本支出となる。

手始めに、300億ドルが沢山のプロジェクトへ資金提供されるが、その中には前述のキャンパスの建築費用も含まれている。これにはまず、顧客のためのテクニカルサポートを収容する計画だ。Appleはこの新しい施設の場所を、今年の後半にアナウンスすると述べている。その際に作られる建物は、再生エネルギー源を全面的に採用したものになる予定だ。

しかし、これで終わりではない。現在既に稼働中あるいは計画中の7つのデータセンターに加えて、新しいデータセンター群のために、さらに100億ドルを投資するのだ。なおその7つとは、もうすぐアイオワに開設されるもの、ネバダ州リノで着工されたばかりのもの。そして既に稼働中のノースカロライナ、オレゴン、ネバダ、およびアリゾナのデータセンターの5つだ。(この数には、Appleが所有しておらず、運用もしていないコロケーション施設も含まれている)。

同社はまた、昨春に始めた先進製造業支援基金を、10億ドルから50億ドルに増額する計画も立てている。ここでのアイデアは、先進的な製造業務を米国中部地域(保守的で伝統的な価値観が支配的な地域)に持ち込むことだが、既にケンタッキーとテキサスでプロジェクトに資金提供を行っている。

最後に、Appleはコーディングへの取り組みを拡大し、K-12(小学校から高校まで)の生徒や教師たちや、全米のコミュニティカレッジの学生たちが価値あるコーディングスキルを身につけられるようにすることも計画している。

明らかにこの発表には、大規模な広報要素が含まれているものの、1民間企業の提供する投資額としては真に驚異的なものである。これにより新しい雇用が生まれ、地域の経済が刺激され、次世代の仕事のために学生たちを教育することができるだろう。これを否定することはできない。

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(翻訳:sako

FEATURED IMAGE: JOSH EDELSON/GETTY IMAGES

Softbank、Auto1に4.6億ユーロ投資と発表――オンライン自動車販売プラットフォームをドイツから世界へ拡大

SoftbankのVision Fundがまた新たな大型投資を実行した。日本のITコングロマリット傘下の投資ファンドはベルリンを本拠とするオンライン自動車ディーラーのAuto1に4億6000万ユーロ(5.6億ドル)を出資することに合意した。

今日(米国時間1/15)、中古自動車の流通プラットフォームを運営するAuto1はこの投資を確認するプレスリリースを発表し、この投資により会社評価額は29億ユーロ(36億ドル)となったと述べた。またSoftBankの投資の半額は新株の発行によると付け加えた。

FTの記事によれば、Softbankは今回の投資により、Auto1の20%を所有することになる。ただしAuto1の広報担当者は会社所有権の具体的内容を明らかにすることは避けた。

SoftBankのAkshay Nahetaは投資の一環としてAuto1 Groupの取締役に就任する。

NahetaはSoftBankの投資について声明を発表し、「年間3000億ドル以上の価値がある自動車の流通市場はこれまで細かいセグメントに分断されていたが、Auto1 Groupはここに効率的かつ透明性が高いオンライン・システムを構築し、データ・プラットフォームを急速に発達させてきた。SoftBank Vision Fundの投資とわれわれのマーケットプレイス・ビジネスの運営に関する専門的能力はAuto1が世界的な存在となることを助けるはずだ」と説明した。【略】

Auto1は2012年に創立され、現在では30カ国以上をカバーしている。Auto1によれば、同社は 3万5000以上の自動車ディーラーをパートナーとしており、月に4万台以上を販売している。Auto1が提供するアナリティクスとロジスティクスが需要と供給を分析し、マッチングすることにより中古車に対する適正な価格づけが可能になるという。

Crunchbaseによれば、Auto1はSoftbankの投資以前に、 5億2000万ドル前後の資金を調達している。直近の資金調達は昨年5月に実行された3億6000万ユーロのシリーズEラウンドだが、これは株式発行と借り入れを組み合わせたものとなっている。Auto1は、この資金は同社の活動をヨーロッパ全域に拡大するために用いられると発表した。

Softbankの自動車関連投資はこれが初めてではない。昨年暮にVision Fundはライドシェアリングの大手、Uberに巨額の投資を実施している。

Softbankの孫正義CEOは、昨年、ファンドの背後のビジョンを説明し、人類は30年以内にスーパー知性を持った人口知能の開発に成功すると確信していると述べ、これが大型投資を急ぐ理由だとした。孫CEOは2017年にファンドのパートナーに向けたスピーチで100本脚のムカデ型ロボットに言及したが、ファンドの初期の投資はそれよりずっと実務的なものが多かった。

画像: Tomohiro Ohsumi/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+