ジョッシュ・クシュナーのThrive Capitalが10億ドル調達

ベンチャーキャピタリストJosh Kushnerにとってよい1週間だった。彼は、ユニコーンの医療保険会社Oscarの創業者であり、ドナルド・トランプ大統領の上級顧問Jared Kushnerの弟であり、そして不動産王Charles Kushnerの息子である。

スーパーモデルのKarlie Klossと結婚した数日後、彼のVC会社Thrive Capitalは新たな資本でもって6回目となるフラッグシップベンチャーファンドを10億ドルにてクローズした。レイトステージで6億ドルを、それより以前のステージで4億ドルを調達している。

ThriveはOscarやKushner兄弟によって共同設立された不動産ソフトウェア企業のCadre、Glossier、Warby Parker、Slack、Robinhood、そしてStripeと、ステージや業界に関係なく投資している。イグジットした案件としては、Spotify、Twitch、GitHubがあり、GitHubは今年初めにマイクロソフトが75億ドル相当の9%自社株で買収した。

Kushnerは、Instagramの前CEO、Kevin Systromの親友であり、FacebookがInstagramを買収する前にInstagramに投資し、わずか72時間で金を倍に増やしたのは有名な話だ。Kushnerは2009年にThriveを立ち上げ、創業者として、そして成功したベンチャーインベスターとして急速に存在感を高めた。

ニューヨーク拠点のThriveのファンドは順調に大きく成長してきた。5回目の資金調達は2016年に7億ドルでクローズしている。それ以前は、4回目として2014年10月に4億ドル、3回目として2012年に1億5000万ドル、2回目として2011年に4000万ドルで、デビューは2009年の1000万ドルだった。

10億ドルという規模は、これまでで最も大きい。

まだ33歳のKushnerは最も若い10億ドルファンドマネジャーの1人で、現在派手に資金調達している。Oscarは3月に1億6500万ドルの資金を確保した。これにより企業価値32億ドルとなり、累計の資金調達額は12億ドルだ。

最新の注入によりThriveが管理している総資産は25億ドルとなっている。

イメージクレジット: Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

ソフトバンク孫氏、サウジ投資会議での講演をキャンセル

ジャーナリストJamal Khashoggi氏殺害で世界からの非難の高まりを受け、サウジアラビアで開かれる投資会議を欠席するビジネスリーダーが相次ぐ中、ソフトバンクグループが最新のドロップアウトとなった。

Wall Street Journalは今日から3日間にわたってリヤドで開かれるフューチャー・インベストメント・イニシアチブ会議における孫氏の講演の土壇場での取りやめを報じている。

我々はソフトバンクにコメントを求めている。

会議への出席について先週ソフトバンクにたずねたとき、“今後どうなるのか成り行きを見守っている”とのことだった。

先週、サウジ側はようやくKhashoggi氏がイスタンブールにある総領事館の中で死亡したことを認めたーしかしながらKhashoggi氏がどのように死に至ったのかについての彼らの説明には世界から疑惑の目が向けられている。と同時に、トルコ当局からの露骨なリークでは、殺害は入念に準備され、極めておぞましいものだったとされている。

孫氏はサウジのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子と親しい関係にあり、孫氏の巨大なSoftBank Vision Fundはサウジから何十億ドルもの投資を受けている。同ファンドは1年前に930億ドルで発足した。

以来、複数の1000億ドル規模のファンド立ち上げに強気な姿勢を見せていた。しかしジャーナリスト殺害をめぐって地政学的に非難が渦巻く状況に直面し、ソフトバンクはいま今後の展望を控えめにしようとしているようにみえる。

広報担当者は金曜日、CNNに対し「Vision Fund 2は現在のところコンセプトにすぎない。タイミングや規模、詳細は決まっておらず、発表されていない」と語っている。

孫氏の会議辞退は、グループがサウジマネーと距離を置くという考えに傾かせることになる。そして、将来のVision Fundへのサウジからの何十億ドルもの資金注入がなければ、複数の“メガファンド”というソフトバンクの構想は実現から遠ざかる。

Khashoggi氏殺害の件で懸念が強まる中、多くの企業そして政治のリーダーたちが、サウジ投資会議への出席をとりやめた。その中にはUberのCEOも含まれている。この配車サービスは、近年サウジから何十億ドルもの投資を直接的に、そしてソフトバンクのVision Fundを通じて間接的に受けている。

こうした関係が今後どうなるのかは不明だ。

我々が先週報じたように、Khashoggi氏殺害の件は波紋を広げているー投資家たちがもしかすると期待しているかもしれない沈静化の兆しはみえない。

フューチャー・インベストメント会議のウェブサイトは昨日、ハッカーにより一時的に画像が変造された。

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(翻訳:Mizoguchi)

中国が米国のバイオテクノロジーの未来に資金を供給している

【編集部注】著者のArman TabatabaiはTechCrunchのコンサルタント

中国のVCは、中国最大の健康問題を解決するために、米国のスタートアップに何十億ドルもの投資を行っている

シリコンバレーは健康ブームの只中にいて、それは「東洋」医学によって推進されている。

米国の医療投資に関しては、今年は過去最高の年となったが、北京と上海の投資家たちは、米国のライフサイエンス企業やバイオテクノロジー企業にとって徐々に最大の取引相手となっている。実際、Pitchbookによれば、今年中国のVCは、中国内で行うよりも多い、300を超える投資を米国のライフサイエンス企業やバイオテック企業に対して行っている。メリーランド州に本拠を置く、炎症や自己免疫疾患の治療法を探るViela Bio社の場合は、中国の3社が主導したシリーズAで、2億5000万ドルの調達が行われた。

中国の食欲旺盛な新規資金は、中国国内にも流れ込んでいる。中国の医療スタートアップにとってもビジネスは活況を呈しており、今年はこれまでにないベンチャー投資の年になりそうだ。100社以上の企業が40億ドル以上の投資を受けている。

中国の投資家たちが、その戦略をライフサイエンスならびにバイオテックへとシフトするにつれて、中国は未来の世界の主要な健康機関に対して、大きな影響を及ぼす医療投資のリーダーの地位を、確かに獲得しつつある。

中国のVCたちは健全なリターンを求める

私たちは直接触れるものや、楽しませてくれるものについて語ることが大好きだ。そしてまた、9桁(1億ドル)の小切手がしばしば中国を出入りする様子をみることができるために、私たちはTencentやAlibabaなどに支援された、インターネット大企業やゲームリーダー、そして最新のメディアプラットフォームに目を奪われがちだ。

しかし、もしお金の流れを追っているならば、中国のトップベンチャーファームたちが、その関心を国内の不十分な医療システムに向けて来ていることは明らかだ。

中国の戦略転換における明確なリーダーの1つがSequoia Capital Chinaだ。同社は、今年だけでも複数の数十億ドルレベルのIPOに関わった(その1その2その3)最も著名なベンチャーファームである。

歴史的にみると、かつてのSequoiaは医療分野にあまり関心を持ってこなかった医療分野は、同社の最も小さな投資カテゴリーの1つであり、2015年から2016年にかけてはわずかに3件の医療関連の取引に参加しただけである。投資金額全体に占める割合は4%に過ぎない。

しかし最近は、ライフサイエンスがSequoiaを魅了していると、同社の広報担当者は語っている。Sequoiaは、2017年には6つの医療関連取引に参加し、2018年は既に14件に参加している。同社は現在、中国で最も活発な医療投資家のとしての位置に立っていて、医療分野そのものは、2番めに大きな投資領域になった。最近では、ライフサイエンスやバイオテクノロジー企業が、投資活動のほぼ30%を占めるようになっている。

Pitchbook、Crunchbase、およびSEC Edgarから集計された、2015-18年の医療関連投資データ

現在の中国の医療の中で、変革を必要とする領域が不足することはない。そして中国のVCたちによって、幅広い戦略が採用されている。インフルエンザへのアプローチを行う投資家たちがいる一方、高血圧糖尿病、および他の慢性疾患のための革新的治療法に焦点を当てている投資家たちもいるという具合だ。

例えば、Chinese Journal of Cancerによれば、 2015年には世界の肺がん診断の36%が中国で下されたが、中国国内でのがんの生存率は世界平均よりも17%低い。Sequoiaはその視点を中国の高いがん罹患率と低い生存率に向けていて、過去2年の投資のおよそ70%が、がんの検出と治療に焦点を当てたものになっている。

この動きの一部は、上海に本社を置き、革新的な免疫療法がん治療法を開発しているJW Therapeutics社に対して行われた、9000万ドルのシリーズA投資などによっても促進されている。同社は、中国のVCが国際的な経験と世界で学んだことを用いて、どのように国内の医療スタートアップを育てようとしているのかを示す典型例である。

米国のJuno Therapeuticsと中国のWuXi AppTecによるジョイントベンチャーとして設立されたJWは、Junosのがん免疫療法薬のトップ開発者としての経験と、医薬品の研究開発と開発サイクルのすべての側面に力を注ぎ、世界をリードする契約研究機関の一つとしてのWuXiの知見が、結集したものだ。

特にJWは、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)技術を用いた細胞ベースの免疫療法の、次世代がん治療に焦点を当てている(おっと失礼…!)健康情報サイトWebMDの熱心な読者や、背景医学知識が高校1年の化学レベルで止まってしまっている私たちのために言い添えておくならば、CAR-Tは基本的に体自身の免疫システムを利用して、攻撃対象のがん細胞を探す。

過去に現れたバイオテクノロジースタートアップたちは、しばしば動物の体内で作製された遺伝子改変抗体を使用していた。その抗体は効果的に「警察官」として行動し、悪性細胞の活動を止めたり静かにさせるために、「悪い奴」特定して取り付く。CAR-Tはその代わりに、身体のネイティブな免疫細胞を改変し、悪い奴直接攻撃して殺すようにするのだ。

中国のVCたちは、革新的なライフサイエンスやバイオテクノロジーのスタートアップに幅広く投資している(写真提供:Eugeneonline、Getty Images)

中国の新しい医療リーダーたちの国際的および学際的な系統は、組織自体にだけでなく、そうしたシーンを運営している側にも適用される。

JWの舵取りの位置に座るのはJames Liである。このJWの共同創業者兼CEOは、これまでの人生の中で、世界最大のバイオ医薬品会社(AmgenやMerckなど)の、中国内での展開の責任者の地位に就いていたこともある。またLiはかつて、シリコンバレーの有名投資家のKleiner Perkinsと、パートナーを組んでいたこともあった。

JWは知見と専門知識を取り入れることによって得られる利益を体現している。そして同国の賢明な資本がますます海外へと流れる中で、医療の未来を牽引する企業を見定める活動と言うことができるだろう。

GVとFounders Fundが、シリコンバレーの競争力を保つことを狙う

中国の有力ベンチャーキャピタルによる多額の投資にもかかわらず、シリコンバレーは米国の医療分野での投資を倍増させている。(AFP PHOTO / POOL / JASON LEE)

医療における革新は国境を超えている。残念なことに、病気と死は普遍的なもので、ある国で行われた画期的な発見が、世界中の命を救うことが可能である。

中国のライフサイエンス産業ブームは、高い評価額を残し国境を越えた投資や、中国の輸入規制は改善されてきた。

こうして、中国のベンチャーファームたちは、徐々に海外のイノベーションを探すようになって来ている。革新的な技術を提供できるより成熟した米国企業や、アジアに持ち帰ることができるより進んたプロセスに対して投資することで、拡大の機会を狙っている。

4月には、また別の中国の有力VCであるQiming Venture Partnersが、米国の早期段階医療に焦点を当てた1億2000万ドルのファンドを設立した。Qimingは医療スペースへの参加を拡大しており、2017-18年の間には24社に投資している。

この分野に飛び込んできた新しいVCたちは、(中国からの投資と同時に、米国の医療分野への投資額を倍増させてきた)ベイエリアの有力な投資家たちを恐れさせてはいない。

米国で最も影響力のあるVCのパートナーディレクトリには、元医師や医療に通じたVCたちが徐々に増えている。そのため最高の医療ベンチャーを発見したり、米国内でのベンチャー資金の流れにより大きな影響を与えることができる。

そのリストの一番上に載るのが、GV(旧Google Ventures)のゼネラルパートナーであるKrishna Yeshwantである。彼こそが同社の医療業界への積極的な参入を率いている人物だ。

TechCrunch Disrupt NY 2017のKrishna Yeshwant(GV)

医師でもあるYeshwantの関心は、リアルタイムの患者ケアへの洞察から、がんや神経変性疾患のための抗体と治療技術などの、多くの医学領域に広がっている。

PitchbookとCrunchbaseのデータによれば、Krishnaは過去2年間における、GVの最も活発なパートナーであり、総額10億ドル以上の投資に参加している。

Yeshwantその他の努力によって、医療業界はGoogleのベンチャーキャピタル部門にとって最も重要な投資分野の1つになり、2015年には投資額の15%だったのに比べて、2017年には約30%を占めている。

医療投資に対するGVの接近は、新しい方向を切り拓いたが、ライフサイエンスもまた同社のDNAの一部なのだ。他の多くの有名なシリコンバレーValley投資家と同様に、GVの創設者であるBill Marisも、長い間医療スタートアップに情熱を傾けていた。2016年にGVを去った後、Marisはバイオテクノロジー、ヘルスケア、ライフサイエンスに特化した自身のファンドSection32を立ち上げた

同じように、ライフサイエンスと医療投資は、Founders Fundのような大手米国ファンドの重要事項として取り上げられてきた。Founders Fundは少なくとも2015年以降、その提供資金のうちの25%以上をこの分野に一貫して割り当てて来ている。

とはいえ、この潮流は変化する可能性がある。対米外国投資委員会(CFIUS)によって最近行われた監視の強化は、米国の医療領域に対する中国の資本流入に対して、厳しい影響を及ぼす可能性があるのだ。

その拡大された権限の下でCFIUSは、バイオテックの研究開発を含む、27の重要な産業リストに分類される技術に関係し、生産、設計、テストに対して海外の事業者が関わるあらゆる投資と取引に関して、レビューを行う(そして阻止する可能性もある)。

拡張されたルールの真の意味は、CFIUSがどれほど積極的に、どのくらいの頻度で、その力を行使するかによって異なってくる。しかし、長いレビュープロセスと規制によるブロックの恐れは、中国の投資家の負担を大幅に増大させ、中国の資金流入を効果的に差し止める可能性がある。

CFIUSの動向がどうであれ、米国の医療市場における中国の積極的なプレゼンスは、シリコンバレーの主流となることを押し留めてはいない。中国の医療革新への取り組みは、中国の医療システムの厳しい崩壊と政府の後押しを受けた投資環境の改善によって、ますます強くなっている。

VCたちは悲惨な医療システムをターゲットにしている

中国の医療分野における欠陥は、歴史的にみると厄介な結果へとつながっている。現在、政府は支援政策を通じた投資のテコ入れをしている。(写真 Alexander Tessmer / EyeEm、Getty Imagesより)

彼らは成功したスタートアップたちが、解決を必要とする本当の問題を特定していると語る。非効率による傷害、悪い結果、そして消費者の複合した欲求不満など、中国の医療産業は問題を山積させている

一部の富裕層以外の市民は、混雑し人手不足にあえぐ都市部の中心の病院へ、大変な思いをして長距離を通うことを強いられている。受付エリアは名ばかりで、あらゆる空き場所はあっという間に、心配し、具合が悪く、恐れでへたり込む多くの人たちで埋め尽くされる。待ち時間は長く、数日に及ぶこともある。

そして患者がやっと診察受けられる段になっても、多くの場合には、過労か経験の浅いスタッフの診察を受けることになり、後に続く果てしない患者の列を相手にするために出入りを急かされる。

かつては、患者への診断が下されても、治療の方法は限られそしてあまり効果がなかった。なぜならば輸入に関する法律と、価格の問題により、世界的に認可されている薬が手に入らなかったからだ。

想像できるように、診察と治療が不十分であると、結果的に問題が生じる。世界銀行からの最近の報告書によると、心臓病、脳卒中、糖尿病、そして慢性肺疾患は中国の死因の80%を占めている。

不正行為、誤魔化し、不誠実な問題の繰り返しが、人びとの積み重なる不満を増幅させている。

ワクチンの誤った取扱によって病気が広がった過去の事件にも関わらず、中国のワクチン危機は今年の始めにある限界点に達した。25万人もの子供たちが、効果がない虚偽の狂犬病予防接種を行われていたことが発覚した。そして検査官がそれを何ヶ月も前に発見しながら見て見ぬふりをしていた事実も発覚したのだ。

医療に対する大衆の信用を破壊することは、深刻で、潜在的に不安定な影響を生み出す。また、中国の保健医療インフラの、ほぼすべての面に非効率性が浸透しているため、そこには大きな変化の機会がある。

これらの問題に対応して、中国政府は、医療革新の追求に重点を置いた。そのためには、医療スタートアップたちの成功のチャンスを引き上げると共に、投資家たちのコストとリスクを削減する政策を展開した。

数十億ドルの公的投資がライフサイエンス分野に流れ込み、特許研究助成金、そしてジェネリック医薬品の承認プロセスが容易になり、中国におけるライフサイエンスやバイオテクノロジー企業の設立が、より簡単になった。

中国のベンチャーキャピタリストたちにとっては、財政的インセンティブと高い成長を遂げる地方の医療セクターに加えて、薬物輸入法の緩和が、海外のイノベーションを通じて、中国の医療システムを改善する機会を拓いた。

世界的なヘルスケアへの関心が高まることで流動性も改善した。さらに、香港証券取引所が最近、まだ収益を上げていないバイオテクノロジー企業の上場を許可する変更を発表した

中国の主要機関で実施された変更は、効果的に中国の健康分野投資家たちに、より幅広い機会、より速い企業成長、より速い流動性、そして確実性の向上を、より低いコストで達成させた。

しかしながら、中国の医療システムの構造的および規制上の変化は、より多くの成長を伴った、より多くの医療スタートアップにつながったが、必ずしも質を向上させたわけではなかった。

米国と西側の投資家たちは、北京の同業者たちのような国境を越えるアプローチをとってはいない。業界の人びとと話してみたところ、中国のシステムのいい加減さやその他の理由によって、多くの米国投資家たちは海外のライフサイエンス企業に投資することに、疲れてしまったという。

そしてシリコンバレーが同様に、米国の強力な大学システムから生み出されるスタートアップに焦点を当てることで、バブル的評価が懸念され始めている。

しかし、世界中で何十億ドルもの投資を行う中国は、その国内の医療システムにあいた大きな穴を塞ぎ、自身を国際医療イノベーションの次世代リーダとして確立することを決意しているのだ。

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(翻訳:sako)

血まみれの金を受け取るということーサウジ記者殺害事件に寄せて

何年か前、僕はTechCrunchイベントで会ったインベンターにコーヒーに誘われた。こういうことはよくある。僕はウィークリーコラムニストで、オフィシャルメディアのインフルエンサーと思われている。人々は僕に何かしらの影響を与えようとするが、結局僕は彼らを無視して僕が面白いと思ったことを書く、ということに相手は気づく。しかし、僕はこのコーヒーの誘いに応じた。というのも相手の仕事が、悪い意味で例になく興味深かったからだー彼はクレムリンに近いベンチャーファンドの代表だった。

これは、ロシアが今日のように民主主義を操る敵対的な存在になる以前のことだ。しかし、ロシアが“同性愛禁止法”を可決した後のことで、怒りに満ちた反ロシア感情が非常に強い時だった。相手がこの話題で憤慨する様を見るのは僕にとってかなり面白かった:彼が言うには、彼はベイエリアの人間で、ゲイの人権のプロであり、ゲイの結婚のプロだ。しかしそれぞれの国がそれぞれのスピードで啓発されていくという現実を受け入れなければならない。そして我々の価値を促進するための最善策は、国と一緒に働き、正しい道を示すことだ、と。

言うまでもないが、このコラムはサウジアラビアについてだ。

サウジアラビアの残忍さを人々に気づかせるのにJamal Khashoggi殺害を要したのには、まったく驚きに近いものを感じる。もう3年になるが、サウジアラビアは不必要な紛争で何千人ものイエメン人を虐殺している。国連の言葉を引用しているBloombergの記事は「特にサウジアラビア主導の連合、そしてそれをイエメン政府がバックアップすることは、市民の命を見捨てることを意味し、おそらく戦争犯罪に等しい」と記している。かつてはイスラムの過激な解釈のワッハーブ派と同盟を結び、一国一党主義の絶対的な君主主義を長い間しいてきた。ワッハーブについてT.E. Lawrenceは100年前に、解しがたい“狂信的な異教”と表現しているーこの同盟関係の結果、多くの世界的惨事を引き起こしてきた。

ご存知のように、サウジアラビアは国際的な同盟関係を築き、米国のパートナーとなっている。米国の経済/軍事/コンサルティング/産業/石油関係は、かなり長い間サウジと懇意にしていて、そこには政治家も含まれる。テック業界におけるサウジの金がどうにも非常に悪いもので異なるもの、というふりはやめよう。悪いもの、そう、米国社会の全てと同じくらいかなり悪いものだ。長い間、米国のサウジに対する姿勢というのは、「もちろん、彼らは圧制的な独裁制をしいている。しかし彼らは我々の圧制的独裁制であり、王室一家はとても素敵で寛大で、石油の多くをコントロールしている」というものだった。

しかしながら、ようやく今、そうした態度が変わりつつあるようだ。それは、米国がサウジから石油の購入をやめるようとしている、ということではない。米国がサウジに兵器を売るのをやめる、ということでもない。20世紀(間違っても21世紀ではない)にみられたようなその時々の躊躇するようなステップにもかかわらず、これから誰もサウジアラビアが残忍極まりない圧制的な国であるというふりはしない。(この件に関し、僕の故郷カナダの先取りした姿勢を声高にアピールしたい)。何が進歩なのか。進歩に近いものと僕は想像しているが。

サウジアラビアと関係を続けていくのに、実益政策をとることもできる。5年前に僕が一緒にコーヒーを飲んだ相手がロシア政府と協働を続けるように。それがどのような結果になったのかを見るといい。それからロシアがいかに啓発的になり、進歩を見せ、ロシアの社会に貢献しただろうか。…いや、最悪、サウジアラビアは違うかもしれない;あまりにも広範に激しく批判したり過剰反応したりするには繊細な問題だ。というのも、基本的には崩壊しやすい国だからだ。シリアの崩壊と内戦が起こる前にそれを予想したNassim Talebは、サウジアラビアについても同じような運命を予言している。

トランプ政権が、人々の恐れや経済影響を鑑みて、サウジアラビアの新たな常軌を逸したリーダーシップをサポートし続けるとは思わない。“Trump’s razor(トランプのカミソリ)”:最も愚かしい理由がおそらく修正される。ここでは、政権がサウジのサポートに戻ろうと思わないことを意味する。サポートに戻ると、彼ら自身の弱さをさらけ出すことになると彼らは考えているからだ。同様に、我々がからかっている人たち、サウジから資金を受けているVCは、パックスアメリカーナを支えるために同じような対応はとっていない。それは純粋に、彼らは金が欲しいからであり、だれも450億ドルもの現金を放り出す準備はできていない。

しかしながら、現在、そして当面サウジの金は汚れ、血まみれだ。もしそれを受け取れば、Khashoggi殺害事件後の新たな社会的道義に反するという帰結になることを考えなければならない。それは長く続くのだろうか。誰がそう言えるのか。しかし、そう長く続かなかったにしても、あなたの倫理に反するということを考慮しなければならない。それは、どれだけの額の金になろうとも、昨年においても、来年においても真実である。

イメージクレジット: 401kcalculator.org (opens in a new window)Flickr (opens in a new window)under a CC BY-SA 2.0 (opens in a new window)license

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(翻訳:Mizoguchi)

ユーチューバーを育てるインキュベーターをNext 10 Venturesが立ち上げ、クリエイターも投資の対象だ

クリエイター経済にフォーカスしているロサンゼルスの5000万ドルのファンドNext 10 Venturesが、ユーチューバーを支援するインキュベーター事業を立ち上げる。

その名もEduCreator Incubatorは、25から40の新進ビデオクリエイターたちに、その場所などに応じて25000ドルから75000ドルのシード資金を提供し、彼らを12か月の指導教育事業に入学させる。唯一の要件は、作っているビデオが子どもや青少年を対象とする教育ビデオであることだ。

Next 10が最近雇用したマーケティング担当VP Cynthia So Schroederが、このインキュベーター事業を指揮する。彼女曰く: “YouTubeで教育コンテンツを増やせることがすばらしいのは、子どもたち、とくに新興国や途上国の第一世代である彼らは、今ではスマートフォンを持っていて、コンテンツを見ていることだ。彼らはそのコンテンツから、それまで自分たちがアクセスできなかった分野や話題を発見する。たとえば海洋学や物理学の存在を知るだろうし、そのわずかな知見を契機に、未来の宇宙飛行士やエンジニアが育つかもしれない”。

それまでeBayのグローバルコミュニティ開発&エンゲージメントのトップだったSo Schroeder写真)は、YouTubeでトップ・クリエイター・パートナーシップのグローバルディレクターだったBenjamin Grubbs(Next 10のファウンダー)および、Warner Brosでハリーポッターシリーズを担当していたPaul Condoloraらと組むことになる。

インキュベーター事業の参加者は全員が、その収益を共有する。このプールに溜まった資金は、来年度のEduCreator参加者の成長資金になり、また株式発行や追加投資については、事業の終わりに議論する。

EduCreatorは参加者たちに、同好者のネットワークや、コンテンツ開発とフォーマットにフォーカスしたプログラミング、そしてデジタルストーリーテラーのJay Shetty,WeCreateEduのファウンダーJacklyn Duffなどによるメンターシップを提供する。目標は、ユーチューバーたちが持続可能でスケーラブルなオンラインビジネスを構築することだ。

Next 10とは、何なのか? 同社の仮説によると、デジタル世界に精通したモバイルファーストのコンテンツクリエイターは大金を稼ぐだろう…少なくとも10年後には。そこからファンドの名前が由来している。Z世代の人びとの60%近くが、自分の好きな学習方法としてYouTubeを挙げる。そして昨年は、ストリーミングビデオの量が前年比で倍増以上だった。

Grubbsはこう言う: “YouTubeにいる間に総試聴時間は5倍になり、商業化と、そしてまさにグローバル化が進んだ。うちの子は9歳7歳4歳だが、うちでもメディアの消費の仕方は同じだ。次の10年を展望するなら、YouTubeはエンターテインメントの主役になり、また消費者たちは真実と知識と、そして人や世界との結びつきにアクセスするだろう”。

インキュベーターへの応募は、今日(米国時間10/18)から11月17日までだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

世界的に成長中のVCマーケット、主に中国が貢献

ベンチャーキャピタルのビジネスモデルが世界中でみられるようになった。まだ金融業界の特別クラブ的なものではあるが、今やワールドワイドに、そしてそれなりの規模で展開されている。

Crunchbaseニュースが2018年第3四半期に報じたCrunchbase推定によると、世界のVCディールと投資額はそれぞれ空前の記録となった。米国とカナダにおいて、ディールの件数は第2四半期よりわずかに減少したが、膨張しているディールのサイズが総投資額を過去最高へと押し上げた。

このVCマーケットの世界的な成長の大部分は、米国とカナダ以外のマーケットによるものだ。Startup Revolutionと米国起業家精神センターがコラボで行なった最近の研究では、中国・北京が世界のVC投資成長に最も貢献していることがわかった。

地域別を表示したディール件数を下に示している。世界のディール件数が一貫して成長傾向にあるのに比べ、米国とカナダのディール件数の成長パターンはやや途切れ途切れになっていることに気づく。(Crunchbaseがいかに、そしてなぜこのような予測を作成するのかについては、グローバルレポートの末尾にあるMethodologyセクションを参照してほしい)。

中国のような急激に成長しているスタートアップマーケットでは、ベンチャーディールの金額こそわずかに減っているものの(*注記1)、件数は過去最高となっている。アジア太平洋地域全体では、ベンチャーディール件数は昨年同時期に比べ約85%も増えている。レポートされた中国の件数は、4倍以上となっている。

中国のベンチャーマーケットの拡大は、世界都市別の予測でより鮮明だろう。下記に、第3四半期でスタートアップが最もアクティブだったトップ10の都市を示すチャートがある。(グローバルレポートのMethodologyセクションで“レポートされた”データとは何か、どのように使用されたかについての説明がある)。

チャートにある10都市は、3カ国で占められている、ベイエリアの件数を押し上げているシリコンバレーがなければ、北京が生の件数的にはサンフランシスコよりも上にきていたはずだ。(しかし、北京の人口はベイエリア全体の3倍にもなる)。

ディールの件数と金額を活発度合いのバロメーターとすれば(健全度ではない)、VCの動きの広まりはマーケット全体にとってよいことととらえることができるかもしれない。グローバルでのVCの動きの高まりは、世界的に全てのスタートアップマーケットを押し上げるている。しかしながら、そうした成長のほとんどは、いくつかの大きなマーケットに集中している。

シリコンバレーのベンチャーキャピタル投資モデルの世界的な拡大、そして当地での再解釈は、スタートアップ創業者が頭に入れておかなければならない現象となっている。創業者はこれまでになく大規模なラウンドで多くの資金を調達していて、投資家が成長マーケットの多くを買うのにさらに大金を投入することを期待している。同様に、投資家はそうした企業の飽くなきキャピタル欲を満たそうと、これまでにない規模の資金を調達している。

大きなトレンドの中で、変化著しいマーケットの状態に適応できない創業者はマーケットサイクルの終わりに消えていくことになる。

*注記1:金額が減ったのは、第2四半期の金額がAnt Financialによる140億ドルものシリーズCラウンドで大きくなったためだ。これは、これまでのところ最も大きなVCラウンドとなっている。

イメージクレジット: Li-Anne Dias

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(翻訳:Mizoguchi)

“ファン家のアメリカ開拓記”の兄弟、大麻やクリプトにフォーカスしたBatuキャピタル設立

レストランオーナーで談話家のEddie Huangは“Fresh off the Boat”(編集部注:台湾系アメリカ人一家を描いた米国ABCテレビのコメディードラマ、邦題は「ファン家のアメリカ開拓記」)に出てくる3兄弟の一人として知られる。ABCのシチュエーションコメディは彼の回想記がもとになっている。しかし、彼の兄弟EmeryとEvanは、ドラマをかなり熱心に視聴した人にとってすら、どちらかというとミステリアスな存在だ。この2人のキャラクターはドラマではかなりフィーチャーされていたが、実在の彼らはあまり表舞台には出て来ず、Eddieのソーシャルメディアにおける露出が目立っていた。

しかしながらEmeryとEvanは不動産投資に忙しく、最近はテックスタートアップ分野にも進出した。彼らの多家族経営の投資オフィスBatu Capitalは今年事業を始めたばかりだが、今週、彼らの初の投資先の一つ、大麻産業のためのソフトウェアデベロッパー企業MJ FreewayがMTechとの合併に合意し、今後Nasdaqに上場する親会社をつくるという、大きなマイルストーンを達成した。

The fictionalized versions of Evan and Emery Huang, portrayed on “Fresh off the Boat” by Ian Chen and Forrest Wheeler. (Photo by Vivian Zink/ABC via Getty Images)

TechCrunchとのインタビューで、この2人の兄弟は米国、中国、そして東南アジアで投資したいテック部門とスタートアップについて語った。Batu Capitalはビッグデータと同様、大麻やブロックチェーン、クリプト部門の企業探しにフォーカスしている。

大麻ビジネス向けの資源計画やコンプライアンス追跡ソフトウェアを企業に提供するMJ Freewayに加え、ポートフォリオにはイーサリアムでのビデオ広告を展開するという新たなアプローチを構築しているスタートアップVidyや、クリプトを使ったブロックチェーンとデジタル通貨ベンチャーファンドのSora Venturesも含まれる。Batu Capitalはシード期もしくはシリーズAステージの企業、またはシリーズCとIPO前に投資を行い、その平均的な規模は50万ドル〜200万ドルだ。

Batuは1家族によるオフィスではないものの、投資のためにパートナーのネットワークから資本を調達する代わりに、何世代にも及ぶ政治的そして社会的大変動を経て、家族の資産を守りたいというEmeryとEvanの願望が設立の動機となっている。

「長いストーリーを手短に言うと、僕らの家族は前の2世代で富を築き、失うということに5回以上も繰り返した。かなり率直に言うと、もし僕とEvanが生きている間にまたそんなことがあれば罵られるよ」とEmeryは語る。

第二次世界大戦前、Huang兄弟の父方の親戚は鉄道により富を築いたが、旧日本軍による南京占領中に富を失った。親戚は重慶市に逃れ、不動産で富を再び築き始めた。しかし今度は中国共産革命で台湾に逃げることを余儀なくされ、またもや全てを失った。一方、母方の祖父母も旧日本軍から逃れようと、中国から台湾へと避難した。彼らは以前、銀行業に携わっていたが、台北では繊維プラントに職を得るまでの数年間、路上で蒸しパンを売ってなんとか生き延びた。この繊維プラントでの労働はその後、自前の室内装飾材料ファッブリック工場へとつながる。

しかし、中国共産党を逃れた人たちの多くがそうだったが、兄弟の親戚も台湾で暮らしを再建したものの、また侵略があるのではないかと用心を怠らず、結局父方、母方どちらも米国に移った。そこで彼らの両親、LouisとJessicaは出会い、結婚し、3人の息子をもうけた。アジア系米国人が主役のプライムタイムのシットコム(編集部注:シチュエーションコメディの略)としては20年ぶりのものとなった “Fresh off the Boat”は、LouisとJessicaが兄弟が育ったフロリダでレストランビジネスを立ち上げるのに伴うHuang一家の浮き沈みをフィクション化したものだ。

新産業の主力に投資する

3人の兄弟は、Eddieが2009年にマンハッタンのロウワーイーストサイドで立ち上げた人気レストランチェーンBaoHausで働き、そこでビジネスの経験を積んだ。将来が期待されるライターに贈られる賞を受賞したEmeryはそのビジネスから早くに離れ、中国へと渡った。彼はそこで作家活動を行いたかった。しかしまた、新たな投資機会も探したかった。当時、Emery とEvanは彼らの両親がレストランビジネスをやめてリタイアする準備を手伝っていて、彼らは家族の資産を不動産、中国投資グループとニューヨークの土地オーナーを結ぶブローカーディールに投資し始めた。

Batu Capitalの名称は、彼らがモンゴルの歴史好きということで、モンゴルの支配者でジョチ・ウルス王朝を築いたBatu Khanにちなんでいる( 23andMeのテストのおかげで、両親の血統にモンゴルの血が混ざっていることが最近わかった)。

Batu Capitalは大麻にフォーカスしている。というのも、「疼痛管理と医学的な使用、そしてレクレーションとしての使用でかなりの需要が見込めるマーケットだからだ」とEmeryは言う。特に兄弟は大麻が170億ドルもある鎮痛剤マーケットに取って代わることを期待している。しかしそれは、麻薬乱用の広がりを引き起こすかもしれないという副作用を抜きにした話だ。クリプトに関しては、Emeryは「僕たちは、データストレージとデータフィデリティという意味での情報保管手段として、ブロックチェーンのテクノロジー、それは通貨だけでなくブロックチェーン全体、そしてスマート元帳全体に魅力を感じている」と語る。

それぞれのセクターでは、「“業界の全インフラ”のためのソリューション構築を考えている企業をBatuは探している」とEvanは話す。

たとえば、MJ Freewayは州や国の規則に則っていることを確認しながら栽培者や薬局がそれぞれビジネス展開するのをサポートする。一方、Vidyは出版社が広告を出す手法を新たなものにするのにブロックチェーンを使っている。自動のポップアップや埋め込みと違い、読者は指やカーソルをオンライン記事の文字の上に置くことでビデオを見るかどうか決められる(この動作はこちらのEsquire Singaporeの記事でピンク色にハイライトされたところに指やカーソルをもってくることで試せる)。ビデオのストリーミングを読者が簡単に選べるようにすることで、出版社がユーザーの動きの微妙な差異を理解できるようになれば、とVidyは願っている。MediacorpやMercedes-Benz、 DeliverooなどをパートナーとするVidyはまた、VidyCoinと呼ばれる独自のERC20ユーティリティトークンをつくった。このトークンでは、広告主は広告を出す費用を払え、読者はビデオを閲覧して稼ぐことができる。ブロックチェーンでの取引を記録することでVidyはクリックスパムのような異なるタイプのオンライン広告詐欺から守ることができる。

家族の過去の経緯から、Huang兄弟はポートフォリオに地理的多様性を持たせることにプライオリティを置いている。米国と中国に加え(Emeryは上海拠点、Evanは間もなく米国から北京に移ることを計画している)、Batu Capitalはまた東南アジアの成長マーケット、特にフィリピンとカンボジアに注目している。中国資金の恩恵があるだけでなく、投資家により透明性を提供できる、と彼らは言う。

「僕たちがスタートアップに最も求めるものは、エグゼクティブチームだ。その業界、または関連業界で会社を育ててきた経歴を持っていること、またはいかせる経験を持っていることを確かめたい。たとえば、ビッグデータ業界でどこに適所を持っているのか、戦略的なパートナーシップを抱えているか、といったことだ」とEmeryは語る。「クリプトや大麻でもそれは同じだ。僕らは何もないところには投資しない。投資するには投資先が際立っていることを確かめる必要がある」。

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(翻訳:Mizoguchi)

サウジアラビアの現状を見ないことが企業の成功の鍵なのか?

昨日、サウジアラビアのメディアは、Marc Andreessen、Sam Altman、Travis Kalanickといったシリコンバレーの大物が、サウジアラビアが国家計画として進めている5000億ドル(約56兆円)規模のメガシティー・プロジェクトのアドバイザーになっていることを伝えた。このプロジェクトは、未来都市がどのような世界になるか、その模範を示すものだと宣伝されている。

この発表は、1カ月前にプロジェクトへの参加を決めた19人にとって、いろいろな意味で、あまりいいタイミングではなかった。このとき、サウジの反体制派ジャーナリストJamal Khashoggi(ジャマル・カショギ)が1週間以上姿を消していた。そして、先週、イスタンブールのサウジアラビア領事館内で、サウジの王家の命令で殺害されたとトルコ当局者が話したことから、激しい批判が高まっている。彼はその後、骨のこぎりで細切れにされ、建物から持ち出されたとのこと。

想像するだに生々しく心乱される事件だが、注意すべきは、証明されていない点だ。だが、サウジアラビアの諜報機関がKhashoggiに何かをしたとする説が拡散されると(Khashoggiが建物を出たという証拠もない)、サウジアラビアの皇太子Mohammed bin Salman Al Saud(ムハンマド・ビン・サルマーン・アール・サウード)は、世界中の怒りの視線を集めることになった。たしかに、この顧問委員会の発表は、MBSという愛称で知られる皇太子が、アメリカに数多く暮らし、皇太子の実力を疑い始めていた同程度の人数のアメリカ人実力者の友人の心をかき乱すには、よい方法だったのかも知れない。

昨年6月に皇太子に即位し、MBSの名声を追い求める態度が封印されて以来、彼はずっと、批判に対してもライバルに対しても、短気になっていた。そのことを、私たちはもっと早く考えておくべきだった。MBSは、その改革派的な行動から賞賛を受けていた。「宗教指導者に反抗して、女性の自動車の運転、コンサートや映画の解禁など、息を飲むような社会改革を断行した」と、この夏のウォール・ストリート・ジャーナルの意見記事にあった。だが彼は同時に、イエメンに空爆を行い、数千人の一般人を殺害している(これはホワイトハウスが支持しているが、両政党の議員を落胆させた)。

またサウジアラビアは、この夏、女性の権利を求める活動家12名以上を拘束している。カナダ外務省が「深く憂慮している」と、逮捕に対してリヤドに激しい抗議を伝えると、サウジアラビアはカナダ大使を国外追放し、トロントとの航空路線を停止、カナダ在住のサウジ人がカナダの医療を受けることを禁止し、カナダとの数十億ドル規模の新規の貿易と投資を凍結した。さらに、サウジアラビアの奨学金でカナダに留学している学生を、カナダから退去させる計画もある。

その一方でMBSは、昨年、サウジアラビア当局に対して300人以上のビジネスマンと王家の家族を、数カ月間、監禁するように命じた。これは腐敗防止キャンペーンの一環という名目になっている。これにより、押収した1000億ドル(約11兆2000億円)の資産がMBSの支配下に入った。ニューヨーク・タイムズは後にこう報じている。拘留されている中の少なくとも17人は「身体的虐待を受け、1人は死亡したが、首がねじ曲がっているように見えた。体はひどく腫れていて、別の虐待があったことを示していると、遺体を目撃した人は語っていた」

こうした策略がアメリカのメディアで大きく報道されたが、その大騒ぎの1カ月後にMBSはアメリカを訪れ、大歓待を受けた。ドナルド・トランプは彼をホワイトハウスに招待し、両国の友好を深めた。それを国際関係学者たちは、「異常で下品」と評価した。

シリコンバレーのCEOたちも、MBSの春の訪米を歓迎した。そのときMBSは、Googleの共同創設者Sergey BrinとCEOのSundar Picha、Magic LeapのCEO、Rony Abovitz、Virgin Groupの創設者Sir Richard Bransonたちを訪ねている。彼らだけでなく多くの面々が、彼の社会的な進歩性を褒め称えた。彼らが本当に欲しているものは明らかだ。MBSは、サウジアラビアの石油依存度を下げるという野心を持っている。その手段のひとつとして、王国の資金をアメリカ企業に大量につぎ込むという考えがあるのだ。

事実、MBSのその他の振る舞いは、こと金に関する限りでは大きな障害はなかった。TeslaのElon Muskは、この夏のことは問題にしていないSoftbankも、気が咎めている様子がない。孫正義CEOは、Softbankの1000億ドル(約11兆2000億円)という巨大ファンドへの450億ドル(約5兆円)の投資を、MBSにわずか45分で決めさせたと自慢していた。そして先週、MBSは第二のビジョン・ファンドに450億円を投資すると話した。

最近までワシントン・ポストのコラムニストとして活躍していたKhashoggiの不穏な疾走で、こうした計算が狂ったとしても、それを口に出す者はいない。Softbankのビジョン・ファンドの代表者と、Softbankが支援しているおよそ10人の企業創設者に、昨日、コメントを求めたが、答えはなかった。

Softbankから資金を調達している数多くのベンチャー投資家にも、昨日、Softbankについて、また、Khashoggiの疾走がスタートアップの資金調達に対する考え方にどう影響するかについて質問したが、答えてもらえなかった。ビジョン・ファンドからレイターステージの資金を調達した2つのポートフォリオ企業(DoorDashと最近株式公開されたGuardant Health)を見てきたPear VenturesのPejman Nozadだけが、唯一返事をくれた。「技術分野では、シードからプレIPOまで、資本が溢れています。シード資金として50万ドル(約5600万円)を必要とする企業が300万ドル(約3億4000万円)を調達してしまいます。5000万ドル(約56億円)が欲しい企業は5億ドル(約560億円)を調達できます。これが健全なことかどうか、時間だけが知っています」とNozadは電子メールで答えてくれた。

長年、ボストンのFlybridge Capital Partnersでベンチャー投資家を続けてきたJeff Bussgangは、Khashoggiの件には特に触れずにMBSについて尋ねたとき、微妙なニュアンスの返事をくれた。ベンチャー投資家も未公開株式投資会社も、長い間、中東の資金源から資金を調達してきたことを踏まえ、「一般的に、起業家は政治や歴史のことを深く考えるのが好きではなく、資金の出所についても、あまり気にしていない」という。「PLOやイラン」は別として、とのことだ。

さらにBussgangは、電子メールにこう書いている。「そう、すべてのベンチャーキャピタルの金が貧しい未亡人や孤児から集まるのなら素晴らしいことだが、それはあり得ない。その金が公正な資金源からのものなのかを判断するのは、主観的な作業です。スターバックスの資金源は公正でしょうか?」

Bussgangは、フィラデルフィアのスターバックスで起きた事件のことを言っている。店員が警察を呼んだところ、店にいた2人の黒人男性が誤って逮捕されたことがあった。恐ろしいことだが、イエメンで罪のない市民が殺戮されたり、人権活動家を拘留したり、MBSの憂さ晴らしと言われているようなこととは比べ物にならない。

公正を期して言うなら、アメリカやその他の国々の多くの人たちは、Khashoggiが現れてくれることを待ち望んでいる。その可能性は、日を追うごとに低くなっているが、何が起きたかを知らずにいることは、人殺しの暴君ではなく、改革者と手を組みたいと考える多くの人間に最良の結果をもたらすに違いない。ワシントンポストのコラムニストKhashoggiの失踪は誤算だったように見えるが、日が経つにつれて、こんな言い方はなんだが、それは古新聞(過去の話)となる。そして、みんなは仕事に戻れる。

その同じ人たち、そくにシリコンバレーのリーダーたちが、性的多様性に逆行するメモを読んで激怒したという話は、まるで漫画だ。

とは言え、かなり気分が滅入る話だ。

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(翻訳:金井哲夫)

今、ブラジルのヘルステック分野が熱い

[著者:Manoel Lemos]
シリコンバレーのベンチャー企業Redpointのブラジル専門部門Redpoint eventuresの業務執行社員。

大勢の人が絡む大きな問題に取り組むことは、起業家と投資家の両方にとって絶好のチャンスとなる。たとえば近年のブラジルでは、フィンテックによる金融改革や、新しいオンデマンドのビジネスモデルに投資が集中しているが、ヘルステック関連のスタートアップも、ブラジルで爆発的な増加を見せている。全国民のうちの数千万人が、根深い不平等問題によって医療サービスが受けられず、深刻なまでに低水準な医療の質、重い負担、あらゆる面での非効率といった問題に苦しめられている。起業家の皿は、市場に届けたいヘルステックの改革案で山盛りの状態だ。

Liga Venturesの最近の調査では、現在ブラジルには健康に特化したスタートアップが250社位上あり、民間医療に年間420億ドル(約4707億円)以上を消費する世界で7番目に大きな健康市場になっているという。ただし、そのうち180億ドル(約2017億円)が効率の悪さのために浪費され、この5年間でブラジルの医療関連コストが倍に跳ね上がっているため(累積インフレ率38パーセント)、ブラジルの医療は崩壊寸前にある。ヘルステック系スタートアップは、サンパウロ南部のビラオリンピアに拠点を置く世界最大級の起業家ハブCUBOItaúでも、トップ5の業界に入っている。

昨年、中南米の民間投資を支援する非営利団体LAVCAが発表した「中南米の技術ブレークアウトの年」によると、中南米において、ヘルステックは2番目に急成長している技術分野になっている。2016年と比較して、ヘルステックの取り引きは250パーセントにまで拡大した。ブラジルに診療所を建設して安価に最高の医療を提供することを目的としたネットワークDr. Consultaへの5000万ドル(約56億円)の投資は、2017年のベンチャーキャピタルによる投資の中でも最大のものだった。

医療分野は、患者、仲介業者、診療所、代理店、サプライヤーの間で、人と仕事と製品を結びつけなければならない複雑な市場だ。そこで、技術革新を武器に、ブラジルでもっとも大きなインパクトを与え、この市場に新しいビジネスモデルをもたらす主要なカテゴリーと企業を紹介しよう。

オンデマンドの医療

公的医療機関が利用できるのは、ブラジルの人口(約1億5000万人)のうち、およそ75パーセントに限られている。しかし、そうした医療機関は運営管理が不十分で非効率だ。1回の診療や検査のために、患者が数週間から数カ月待たされることも少なくない。そこに技術力を背景にしたスタートアップが登場し、より広く、より高齢の人々にも、効率的に医療を受けやすくする機会を提供し始めた。

たとえば、低価格な診療所チェーンDr. Consaltaの施設は、この3年間で1軒から51軒にまで増えた。今では、100万人以上の患者から得た国内最大の医療データセットを持つと主張するまでになった。他の民間診療所では、診察料が少なくとも90ドル(約1万円)はするが、Dr.Consaltaは25ドルだ。同様のオンデマンド医療を提供する診療所として、ClínicaSimDr. Sem Filas、 DocwayGlobalMed.などがある。

テレヘルスとモバイル健康アプリ

医療上の助言、診断、モニタリングをより便利にするテレヘルス・サービスがブラジルで拡大している。たとえば、Brasil Telemedicinaは、医療検査、医師の診察、遠隔モニタリング、心理カウセリングなど、さまざまなサービスを24時間提供している。

患者のケアを改善するためのB2Bテレヘルス・サービスには、1日24時間年中無休で放射線画像解析を行うTelelaudo、心臓の健康状態のモニター、陰圧閉鎖療法、乳児の呼吸と健康状態のモニターのための特殊な機器を提供するVentrixなどがある。また、サンパウロに拠点を置くスタートアップNEO MEDは、心電図と脳波図の医学報告が簡単に素早く作成でき、それぞれの場所で柔軟に収入を増やしたいと考える診療所、研究所、病院、医師の協力を促すプラットフォームを開設した。

フィンテックのような急成長分野を
もうひとつ作れる重要な材料が
この国にはふんだんにある。

ブラジルでは、糖尿病と高血圧といった疾患の発生率の高さインターネットユーザーの多さから、モバイル健康アプリの人気が高まっている。たとえば、Dieta e Saude(栄養と健康)というアプリは、160万人以上のユーザーに、よりよい栄養食品を選ぶよう助言し、それを習慣づける動機を与えている。ブラジルで設立され、現在はサンフランシスコに拠点を移したYouperは、社会的不安の解消を手助けする情緒的健康のためのバーチャル・アシスタントだ。ユーザーの思考パターンを再構成して、心をより健康な状態にしてくれる。

AIとデータ解析

他の業界と同様、またブラジルに限らず、AIとデータ解析は、患者の診断のスピードアップから医療コストの管理に至るまで、医療を変革しつつある。

その中のイノベーターのひとつにGestoがある。データベースに蓄積した450万件以上の患者の情報を機械学習でふるいにかけ、有用な情報を引き出して、患者の治療を最適化すると同時にコストを管理し、企業にとって最適な保険プランの選択を助けてくれる。集中治療室の管理を専門とするブラジル最大手のIntensicareは、AIを利用して診断のための時間を短縮し、患者の滞在時間と死亡率の低減を目指している。レシフェに本拠地を置くスタートアップEpitrackは、クラウドソースのデータ、AI、予測分析を使って疫学をコンピューター化し、伝染病の大流行と戦っている。

電子カルテ

昨年、ブラジル政府は、国内4万2000箇所以上の公営診療所で扱う患者のカルテを近代化するプロジェクトを、2018年までに完了させると発表した。世界銀行によると、カルテの電子化によって、連邦政府の経費は68億ドル(約7630億円)削減できるという。昨年末の時点で、ブラジル人(2億800万人)のうち3000万人しか電子カルテを持っておらず、ブラジルの家族向け診療所の3分の2近くが、患者の電子カルテを作成する手段を持っていなかった。

SaaS電子カルテのプラットフォームであるiClinicは、医療の近代化に大きな影響を与えたブラジルでもトップクラスのスタートアップだ。医療の専門家によるカルテの分類を電子的に支援し、すべてのデータをクラウドに保管し、あらゆるデバイスで読み出せるようにする。iClinicは非常に使いやすいシステムであるため、医療の効率化、コストの削減、治療の質の向上が期待できる。現在、ブラジルの各地で利用されているが、ブラジル以外の20カ国以上にも利用者が広がっている。

処方箋のデジタル化

ブラジルでのデジタル化の遅れによるもうひとつの大きな問題として、70パーセント近くの処方箋に記述ミスの恐れがあるという点を世界保健機関(WHO)が指摘いている。そのためブラジルでは、投薬ミスの関連で年間数千人が死亡している。精査することで、かなりの人数が救えるはずだ。アメリカでは、すでに77パーセント以上の処方箋がデジタル化されている。

この生死の問題に対処するために、ブラジルの電子処方箋管理の中心的存在としてMemedが登場した。現在、ブラジルのすべての医療分野の5万5000人以上の医師がこれを利用し、アレルギーと薬物相互作用の照合を行っている。これにより、服薬コンプライアンスが容易になり、医療効果も高まる。同社は、ブラジルでもっとも充実した、信頼性の高い、最新の薬物データベースを開発している。

ブラジルのヘルステック関連のスタートアップは注視すべき分野として急成長しているのは確かだが、ヘルステック革新が解決に着手したこの国の問題は、まだまだ氷山の一角に過ぎない。フィンテックのような急成長分野をもうひとつ作れる重要な材料が、この国にはふんだんにある。ブラジルにおけるヘルステックは、今後長きにわたり、それを信じる起業家と投資家にとって、確実にホットな分野となる。

備考:Redpoint eventuresはMemedに投資しています。  

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(翻訳:金井哲夫)

Teslaの大株主、TeslaのライバルNioの株式11.4%を取得

Teslaの第2位の株主である英国資産運用会社Baillie Giffordは、最近公開会社となった中国電気自動車メーカーNioに関心を寄せていた。

そして今Baillie Giffordは、火曜日に公開された当局への提出文書によると、Nioの株式11.44%を保有している。Baillie Giffordは、8530万株を購入したことを明らかにした。これは月曜日の立会い終了時の価格で5億1500万ドルだ。

Baillie GiffordはTeslaの社外株主としては最大だ。CEOのイーロン・マスクが最大の株主で約20%を保有している。

この提出文書により、Nioの株価は今朝6.19ドルで始まり、7.39ドルで引けた。その後、時間外取引で株価はさらに7%上昇し、まだ上がり続けている。

Nioは先月、ニューヨーク証券取引所に上場したとき10億ドル調達した。

Nioは中国のTeslaにーそれ以上の存在になりたいと願っている。米国、英国、ドイツで事業を展開しているが、中国でのみES8を販売している。7人乗りのES8 SUVの価格は44万8000人民元、米国ドルにして約6万5000ドルだ。これはTeslaの車より安く、特に新たな追加関税によりモデルX SUVとモデル S セダンの価格は上昇している。

そうした関税の動き、そして海外からの輸送コストも加わって、Teslaは中国工場の建設計画を加速させている。

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(翻訳:Mizoguchi)

MITのSolveは本当に実効性のある社会改革コンテストの新しい形を示す

[著者:Ziad Reslan]

10年ほど前に、McKinsey&Companyが革新を促すためのコンテストの上手な活用方法を記事にして以来、業界全体が社会革新コンテストを中心に成長してきた。そうした「世界の救済」をテーマとしたコンテストも、形式化が進んだ。ドラムを鳴らして賞に話題を集め、大手企業と提携して資金を集め、著名人の審査員を並べる。世界中からできるだけ多くのアイデアを募り、そこから多くのメディアが注目するきらびやかなイベントで、ピッチを行うファイナリストを絞り込む。

最終選考のステージでは、ほんの数分間のピッチをもとに勝者が決まり、数百万ドルもの賞金が渡される。そんなコンテストを行うソフトウエア・プラットフォームをお持ちではない? 大丈夫。こうした作業を10ドルから数十万ドル程度の予算で代行してくれる業者がたくさん現れている。そんな業者は加速度的に成長し、賞金の額も1970年には2000万ドル(現在の相場で約22億7000万円)に及ばなかったものが、わずか40年後には3億7500万ドル(約426億円)にまで跳ね上がっている。

しかし、この賞金は世界を救済する目的のために、本当に役立っているのだろうか? それを示する証拠はあまりにも少ない。慈善活動のリーダーの中には、大きな疑念を抱いている人もいる。

その一方で、マサチューセッツ工科大学(MIT)は、Solveという、別のアプローチによる社会革新コンテストを実施している。コンテストで有効と思われるアイデアを選び、技術系アクセラレーター・プログラムを融合させるのだ。それには、結果を重視した受賞後の教育も含まれている。

Solveは、すでに過密状態にある社会革新コンテストの世界に参入を試みている。内容がかぶっている賞も少なくないが、どれもこの分野の「ノーベル賞」になろうと競い合っている。賞が増えれば騒ぎも大きくなる。注目を集めるために、賞金の額はどんどん吊り上げられる。

しかし、民間の裕福な企業は、賞金が革新的な良い結果に活用されるかどうかまでは保証していない。2004年、Bigelow Aerospaceは、有人宇宙飛行カプセルのアイデアを募る賞金5000万ドル(約56億9000万円)のSpace Prizeコンテストを開催したが、宇宙研究者たちの想像力を掻き立てるものを得ることができず、結局は勝者のないまま終わってしまった。2009年にはNetflixが、映画のお薦めを行うアルゴリズムを10パーセント効率化するアイデアに100万ドル(約1億1400万円)の賞金を出すNetflix Prizeコンテストを実施した。これは、プログラマーたちの競争を煽ったが、結局のところ、Netflixは社内でよりよい方法が開発されたために、計画自体が中止されてしまった。

全体的に社会革新コンテストは、派手でカリスマ性のあるプレゼンテーションに賞を贈るもので、英語が下手だったり、内気だったり、美しいスライドを作れない者には辛い場所になっている。

しかし、9月23日の日曜日、ニューヨークにて3年目の最終選考会を開催したSolveは、独自の方向性を示している。

あらかじめ内部で課題を決めている他のコンテストとは違い、Solveはまず、クラウドソーシングで課題を探るところから始める。Solveのスタッフは、何カ月もかけて世界中でハッカソンやワークショップを開催し、その年のコンテストの課題に相応しい、もっとも差し迫った問題を4つ選び出す。今年の課題は、教師と教育者、未来の労働力、健康の最前線、海沿いの街だ。

その課題が、世界中の参加者に公開される。申し込みの基準は低く設定してあるため、最終的に110カ国から1150件の応募があった(世界の60パーセントの国から少なくとも1件の申し込みがあったことになる)。

先進技術のためのGM賞の受賞者たち(写真:Adam Schultz | MIT Solve)

ただし、アイデアだけでは参加できない。実際に稼働するプロトタイプが必要だ。それは、成長、パイロット、スケールのどの段階でも構わないが、技術主体でなければならない。応募アイデアは、さまざまな業界、政府間組織、学界から選ばれた審査員によって吟味され、4つの課題ごとに15チームが決勝に進む。決勝では、合計60チームが丸一日をかけて細かな質問に答える。その後、アイデアが評価される。

翌日、最終選考に残ったすべてのチームは、それぞれ3分間のプレゼンテーションをステージ上で行う。重要なのは、勝者は1チームだけでなく、各課題ごとに8チームが選ばれることだ。

それぞれの勝者には、まず1万ドル(約114万円)の賞金が贈られ、さらに、General Motors、Patrick J. McGovern Foundation、Consensys、RISEといった協賛団体や企業から、何十万ドルという共同出資金が用意される。

たとえば今年、ウガンダの医療系スタートアップNeopendaは、Solveを通して3万ドル(約341万円)の追加資金を受け取った。これは、Citiがスポンサーを務める国連プログラムからの出資だ。また、親と教育者の個別指導技術の開発費用として、インテリジェント・メッセージ・アプリTalkingPointが、GMとセーブ・ザ・チルドレンの支援を受けた(今年の受賞者に関する詳細はこちらでご覧いただける)。

賞金をもらって終わりという「一度きりのコンテスト」と違うのは、参加者が「Solver」に選出されたときから本当の仕事が始まるといいう点だと、コミュニティー担当責任者Hala Hannaは私に話してくれた。Solveで優勝してSolverになると、12カ月間にわたりMITとのつながりが持て、支援が受けられる。「MITを始めとするネットワークを提供し、協力関係を仲介するところに、私たちの付加価値があります」と彼女は説明している。

Solveの方法が注目を集める最大の理由は、出資者が、支援のための追加資金を拠出する点にあるだろう。日曜日の閉会イベントでは、Solveの国際プログラム責任者Matthew Minorが、Solveの名前入り靴下を履いて上機嫌でステージに上り、大きな笑みを見せていた。彼は優勝者の名前を伝え、さらに追加出資の機会についても話をした。もともとのSolveの支援者のうち、Atlassian Foundationとオーストラリア政府の2つは、計画に取り組む企業に260万ドル(約2億9600万円)もの出資の継続を決めた。沿岸地域の復興を助ける非営利団体RISE Resilience Innovationsは、これまでも投資の見通しを見極めるためにSolveを密接に支援してきたが、沿岸地区復興に焦点を当てた企業に最大100万ドル(約1億1400万円)の出資を行っている。

オーストラリアは、過去の勝者に対してプログラム終了後の規模拡大のために出資を行っている。そのうちのひとつに、落ちこぼれた子どもたちが卒業証明書を受け取れるように必要な援助を行うインドネシアのデジタル・ブートキャンプRua​​ngguruがある。Solveに参加する以前、このスタートアップは、すでに100万人の子どもたちに支援を行っていた。今回のプログラムを通して資金を得たことで、昨年末までに300万人のインドネシアの子どもたちを支援できるようになった。Ruangguruの創設者の一人Iman Usmanは、Solveとパートナーシップを組むことで、単独では不可能だったインドネシア全土への拡大が実現したと私に話してくれた。

明らかにSolveは、多様性を重んじている。Solveのスタッフしかり、(おそらくそうした理由もあってか)勝者に選ばれた人たちもそうだ。Solveには20名の正規従業員がいるが、そのうち14名が女性だ。7つあるチームのなかで女性がリーダーを務めるのは6つ。そして(私が数えたところでは)、少なくとも4つの大陸から7カ国の人たちがスタッフに加わっている。

今年の最終選考に勝ち残った33のSolverチームは、15の異なる国からやって来た。その61パーセントは女性がリーダーだ。技術業界が多様性の拡大に苦労している中で、Solveの挑戦的なデザインと宣伝に見られる多様性を重視する態度が、参加者と優勝者にも通じている。それは、Solveが支援を目指す世界の映しでもある。

Hannaは、多様性の拡大は自然なことなので、難しくはないと言う。「正直言って、私たちは、そんなに頑張っているわけではありません」と彼女は話す。「技術界に女がいないなんて言う人がいたら、馬鹿らしい、と私は言い返します」

9月23日、Solve最終選考の日、ニューヨークのイベント会場Apellaからの眺め(写真:Adam Schulz | MIT Solve)

しかしSolveにも、ちょっとした問題はある。大きな問題を扱うため、コンテストの焦点がボケてしまうことがあるのだ。特別に難しい質問をされると、見当違いな答えを返してしまったりする。それを公正に比較するのは難しい。

また、賞金が1つのチームに集中しないのは良いことだが、出資者がどのチームを支援するかを決める方法は不透明だ。今年は優勝賞金を受け取ったチームが15組あったが、複数の賞金を受け取ったチームもあれば、残りの18のチームは最低限の賞金だけを持って家に帰ることになった。それは、最終選考でどのチームが勝ち残り、それに相応しい賞金を獲得するかを、出資者が決めているからだ。もちろん、最後に残った33のチームは、みな平等にSolveクラスのメンバーとして支援と教育を受けられることにはなっている。

もうひとつの問題は、オーディエンス・チョイス賞だ。最終選考の前にインターネットで行われる公開投票なのだが、それには具体的にどのような利点があるのか、はっきりしない。ひとつの例を示そう。メキシコに拠点を置くスタートアップScience for Sharing(Sci4S)の場合だ。彼らは、STEM(科学、技術、工学、数学)教育を専門とする教師を育成していて、すでに南アメリカで100万人の子どもたちを支援している。教育部門では他のチームを上回る419票を獲得し、オーディエンス・チョイス賞を単独で受賞した。しかしSci4Sは、最終的にSolverには選ばれなかった。ケニアから来た別の教育系スタートアップMoringa Schoolが、得票数は2票だったにも関わらず、Solverに選ばれた。Moringa Schoolも他のチームも、それなりに実力があり自力で勝ち残ったわけだが、Sci4Sも、一般聴衆からの得票数は忘れて、もっとプレゼンテーションに力を入れるべきだったと思うと悔やまれる。

つまりSolveは、他の社会革新コンテストが失敗したその場所から、多くのものを得ているわけだ。コンテストでたった1名の優勝者に聖なる油を注ぐのではなく、数十名のクラスを選び出す。それは、ひとつの単純な事実を映し出している。世界のもっとも強固な問題は、たったひとつのアイデアだけで解決できるものではない、というものだ。

教育機関によって開催され、参加できるのはそこの学生だけと決めているコンテストが多いが、Solveはオープンだ。決勝を勝ち抜いたら、そこでMITとの縁が終わるのではなく、そこから始まる。勝者は、1年間の個人的な支援、教育、指導が受けられるのだ。

正しく行えば、コンテストには喫緊の社会的問題に取り組む動機をスタートアップに与える効果があり、技術を主体とする解決策によって社会は本当の恩恵を受ける。しかし、コンテストのためのコンテストでは、騒ぎが大きくなるだけで、乏しい社会的資源が浪費され、起業家の関心も離れる。世界を変えると豪語する社会革新コンテストがますます増える中で、MITのSolveはそうした馬鹿騒ぎから一歩前に出て、効果的なコンテストに向かっている。

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(翻訳:金井哲夫)

コーポレートベンチャー投資、2018年通年で増加の見通し

【編集部注】筆者Jason RowleyCrunchbase Newsでベンチャーキャピタルとテクノロジーを担当するライター

多くの企業が将来をベンチャー投資ポートフォリオにかけている。イノベーション競争でスタートアップにかなわないのであれば、ファイナンシャルパートナーとしてスタートアップとビジネスを展開すればいい。

多くのテック企業が確固たるベンチャー投資イニシアチブを持っているーAlphabetが世界展開するベンチャーファンディングや実をたくさん結んでいるIntel Capitalのスタートアップ投資などが思い浮かぶーが、他企業はたったいまベンチャー投資を倍増させつつある。

過去数カ月、いくつかの大企業がコーポレート投資に資本を追加した。たとえば、軍事企業ロッキード・マーチンは6月に自社ベンチャーグループに資本として2億ドルを追加した。アヒルで有名な保険会社Aflacはコーポレートベンチャー基金を1億ドルから2億5000万ドルに増やした。Cigna2億5000万ドルの基金を立ち上げたばかりだ。日本の通信大企業ソフトバンクが自ら280億ドル拠出している本当に巨大なVision Fundは言うまでもない。

2018年はこのままいくと、米国企業がかかわるベンチャー案件数として記録を打ち立てることになりそうだ。米国拠点のトップ100の公開企業(記事執筆時点での株式時価総額によるランクづけ)のコーポレートベンチャー投資パターンを分析し、そうした結論に至った。下のチャートはステージ別を表記した2007年からの投資アクティビティを示している。

このチャートでいくつか目を引く点がある。

これら大企業が投資するラウンドの回数は今年、このまま行けば最多を記録する。今年はまだ四半期まるまる残っている。ホリデーシーズンは例年ベンチャーの動きがややスローダウンする傾向にあるとはいえ、おそらく前年を上回るだけの十分な動きはある。

そのほかに特記すべきこととして、コーポレートインベスターの一部はシードやアーリーステージの企業に繰り返し、そしてより多く投資している。2018年のこれまでのところ、シードまたはアーリーステージのラウンドはコーポレート・ベンチャーディールフローの60%超を占めている。より投資件数が増えればこの数字はさらに大きくなるかもしれない。(特に、エンジェル、シード、シリーズA案件はレポートとして上がってくるまでにタイムラグがある)。過去数年は同様の動きだ。

また、このチャートには優良会社の過去10年のリスク対応姿勢の縮図が現れている。リスクを伴うキャピタル投資の後退を引き起こした2008年経済危機時の恐怖や不確かさが見て取れる。

危機は2008年に始まったが、株式市場は2009年まで底を打たなかった。チャートでコーポレートベンチャー投資の動きが少なくなっているところが底だ。その後経済は回復するが、安い金利で元気付けられたのだろうか。パブリックそしてプライベートの投資家にとってはわずかに膨らんで弱っただけのマーケットを引き起こしたにすぎず、我々はいま、その真っただ中にある。

従来のベンチャー企業の多くがリミテッドパートナーに保有されていた一方で、投資家ベースでは異なった年金基金、寄付、投資信託ファンド、富裕層をターゲットにしたファミリーオフィスへと少しずつ広がっている。稀な例外もあるが、コーポレートベンチャー企業の投資家は、企業そのもの1社のみだ。

たいていそれは、コーポレートベンチャー投資はその企業の戦略と方向性は同じということになる。しかし企業はまた、投資家やエンジェルが行っているように、バラエティを豊かにするという理由でスタートアップにも投資を行う。それは将来を考えてのことだ。

データに関して

この記事の目的は企業の投資活動を可能な限りつまびらかにすることだったが、言うほどに簡単なことではない。

我々はなんとも不自然なデータセットで取り組み始めた。そのデータセットとは、米国に拠点を置く公開企業で、記事執筆時点での株式時価総額ランキングトップ100の企業というものだ。それから我々は、そうした企業のネットワーク下にあるサブ組織をCrunchbase データであたった。これにより、各企業が行った直接的な投資だけでなく、企業のベンチャーファンドや他の子会社が行った投資の動きも拾うことができた。

我々がAlphabetの世界的な投資を調べるときにとった手法と同じような方法だ。Alphabetの例でいくと、Alphabetの直接の投資に加え、サブ組織に関連する投資も把握できた。今回はこの作業を1社ではなく100社分行った。

これは決してパーフェクトなアプローチではない。企業はCrunchbaseに記載されるベンチャー部隊を持つことは可能だ。しかしどうしたことか、ベンチャー部隊は親会社のサブ組織として記載されない。加えて、リストにある企業の多くが米国拠点であるにもかかわらずグローバルで存在感が大きく、そうした企業のいくつかがレポートにあがってこない海外マーケットで投資を行っているというのはあり得る。

イメージクレジット: Li-Anne Dias

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(翻訳:Mizoguchi)

スタートアップは国際投資をいかに確保できるか

【編集部注】Jose DeustuaはペルーのアクセラレーターUTEC Venturesのマネージングディレクター。UTEC Venturesはペルー最大の投資イベントPeru Venture Capital Conferenceを開催している。

中南米でスタートアップが資金を調達するのは、砂漠のど真ん中で水飲み場を探すようなものだ。どこかにあるはずだ、というのは分かっているが、タイミングよく見つけるのは死活問題だ。

そうした状況であっても、この地域におけるベンチャーキャピタル投資はこれまでになく活発になっている。Andreessen HorowitzやSequoia Capital、そしてAccel Partnersなど主要各社がコロンビア、ブラジル、メキシコといったマーケットで創業への投資を行なっている。しかし同時に、スタートアップ創業者たちは彼らの周りで起こっている巨額投資のニュースにじれったい思いでいるかもしれない。というのもスタートアップ創業者のほとんどが投資ステージに近づくのだが、往々にしてそれは蜃気楼以外の何物でもないと認識する。

これは中南米だけの問題ではないだろう。世界中どこでもスタートアップは投資家探しに苦労している。ベンチャーキャピタルは次のユニコーンを探し出そうと果てしない追求を続け、これまでより少ない案件により多くの資金をつぎ込んでいる。米国欧州においてベンチャーキャピタルの案件数は減少していて、確立されたエコシステムに身を置く起業家ですら、ビジネスを展開するための材料を探そうと遠くに目を向け、起業家の多くは中南米などの新興マーケットに向かっている。

スタートアップ創業者が新興マーケットの人間であれ、外国人であれ、幸いにも会社を大きくするために必要な投資を海外から探し出す方策はある。以下、我々がペルーで展開しているUTEC Venturesアクセラレータープログラムに参加しているスタートアップに勧めていることを紹介しよう。これはあなたにも勧めたいことだ。

シード期の資金調達はまずローカルで

新興マーケットのスタートアップとして、ローカルからの投資を見つけ出すのは簡単なことではない。事実、だからこそまず海外からの投資をあたるのだろう。しかし、手始めにローカルからのシード投資を探すというのは、その後に控える海外からの投資確保にまず必要なことだ。

たとえば、ペルーでは昨年、スタートアップにシード資金として720万ドルが投じられた。そのうち100万ドルが海外ファンドからのものだった。これは、新興マーケットに関心のある海外投資家は、シードラウンドにおいてはそれほど活発ではなく、企業がそれなりの価値を示してからのラウンドに関心を持っていることを示している。

海外投資家の関心を集めたければ国際的なスタートアップであるべき

そのため、我々は全てのスタートアップにシード期における1回目、2回目の資金調達はペルーで行い、その後海外からの投資を模索するようアドバイスしている。これは他の新興マーケットにおいても言えることだ。

最初のラウンドで資金を調達するために最も重要なことは、確固としたチームを有していること、そして客を引きつけ、また地元の競争相手より優れたビジネスアイデアを持っていることを示すことだ。これらを満たせば、ローカルでシード資金を調達するのはそう難しいことではないだろう。ローカルのエンジェル投資グループとネットワーキングをする時や投資イベントの時に必要なのは、良い売り込み資料といくらかの忍耐力だ。

さらに大きく競争の激しいマーケットで成功するためには

もし海外の投資家をひきつけたいのなら、国際的なスタートアップでなければならない。言い換えると、国際的な投資機関のトップに向き合う前に、より大きく競争の激しいマーケットでプロダクトを売ることができると示す必要がある。ペルーと中南米における新興マーケットのスタートアップにとって、これは中南米で最も発展しているメキシコ、ブラジル、アルゼンチンのマーケットに進出することを意味する。

例として、コロンビアの配達サービスRappiを挙げる。Andreessen Horowitzが主導した、初の大きな国際投資で2016年初めに資金を調達したのち、Rappiはメキシコへと事業を拡大した。その1カ月後にシリーズBラウンドを実施。今年初めには、ドイツの食料配達会社主導のラウンドを実施し、そこにはたくさんの米国投資家も加わって1億3000万ドルを調達した。

同じことが、中南米以外の新興マーケットでもいえる。ベンチャーキャピタル投資で西欧諸国に遅れをとっている東欧では、多くの起業家が自国で商売を成功させるとすぐさま西欧に進出し、ビジネスを最初から立ち上げたりそこで拡大させたりする。成熟したマーケットからの資金調達をしたいと考えているなら、そうしたマーケット、少なくとも同規模のマーケットに拠点を置くべきというのはこれで明らかだろう。すなわち、国際投資を模索する際に最初にフォーカスすべきは、現地マーケットでローカル企業になることだ。それから、成熟したマーケットー米国やメキシコ、西欧または別のところーでそれまでに収めた成功を再現させればいい。

国際投資の全てが国際VCによるものとは限らない

国際ベンチャーキャピタルから目がくらむような投資を確保するというのに注意がいきがちだが、思いのままに国際投資を確保するには他にもたくさんの方法がある。

新興マーケットの政府は、経済成長のエンジンとなる自国のスタートアップエコシステムを活性化させるようなプログラムを急激に増やしている。国内でビジネスを立ち上げると決めた起業家に対しエクイティフリーの資金を提供するという形でサポートするなど、政府による多くのプログラムが展開されるようになっている。

中南米のような新興マーケットでは大企業による投資が重要

中南米だけでも例はたくさんある。たとえば、Start-Up Chileはチリから世界に進出するようなビジネスを立ち上げようとする起業家に最大8万ドルを提供する。プエルトリコのParallel18は同様の趣旨で7万5000ドルをあてる。ペルー政府も、スタートアップがペルーでソフトローンチするのを最大4万ドルの提供でサポートするプログラムを、きたるPeru Venture Capital Conferenceで発表する計画だ。

他にも手段はある。中南米のような多くの新興マーケットでは、コーポレートキャピタル、または大企業のスタートアップ投資が非常に大きな役割を果たす。事実、米国のテック大企業Qualcommの投資部隊、Qualcomm Venturesは中南米において最も活発なグローバル企業投資家となっている。 NaspersやAmerican Express Ventures、他企業のファンドもこの地域のスタートアップに盛んに関心を寄せている。

外国政府によるサポートの増加、そしてグローバル展開する大企業の関心も併せて、国際投資を確保することは実際に可能であり、あなたが思うほど難しいことではない。国際ベンチャーキャピタルから資金を調達するにはいくつかオプションがあるが、これから打って出ようとしているマーケットでどういう選択肢があるのか、時間をかけて検討した方がいい。

だから、新興マーケットでローカルの起業家なのかそれとも外国人の起業家なのかに関係なく、国際投資を模索しない手はない。鍵となるのは、グローバル視点で考えることと、直面している問題の解決にテクノロジーを使うことだ。その上で、まずは自国でそれなりの成果を出し、それを今度はさらに大きなマーケットで再現させる。一歩踏み出すと打開するための手段がある。それをうまくつかめれば、投資の井戸は結局枯渇しているわけではなかった、ということに気づくだろう。

イメージクレジット: Loskutnikov / Shutterstock

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(翻訳:Mizoguchi)

ディープリンクのマーケットリーダーBranchがシリーズDで$100Mあまりを調達、ユニコーンの仲間入り

Androidオペレーティングシステムの作者Andy RubinのPlayground Venturesが支援するディープリンク制作のスタートアップBranchが、今度の資金調達ラウンドで評価額が10億ドルになり、ユニコーンクラブのメンバーになりそうだ。

この4歳の企業は、企業のためにWebサイトとモバイルアプリとの間のリンクを作る。同社は、PitchBookの情報と確認によると、シリーズDの資金調達で1億2900万ドル相当の株式を売れることになり、そこに注入される資本は同社の価値をおよそ10億ドルと評価している。

今朝(米国時間9/7)のメールでBranchのCEO Alex Austinは、コメントを拒否した。

レッドウッドシティに本社のある同社は、2017年4月にPlayground率いる6000万ドルのシリーズCを完了し、調達総額が1億1300万ドルになった。そのほかの投資家は、NEA, Pear Ventures, Cowboy Ventures, Madrona Venturesなどだ。一方RubinはAndroidの協同ファウンダーであり、Essentialのファウンダーでもある。後者はスマートフォンメーカーだが、高く評価されたわりには、あまり売れなかった

Branchのディープリンクプラットホームは、企業のアプリの成長とコンバージョン(実買)とユーザーのエンゲージメント(積極関与)とリテンション(固定客化)を助ける。

ディープリンクは、Webサイトのページではなく、特定のコンテンツへユーザーを連れて行くリンクだ。たとえば、これはディープリンク、そしてこれはディープリンクでない。

[ディープリンク略史](未訳)

ディープリンクはWebやメールのコンテンツをアプリに結びつける。たとえばスマートフォンで買い物をしていてJet.com上のアイテムへのリンクをクリックすると、ユーザーのスマートフォンにインストールされているJetのアプリに連れて行かれる。従来のリンクのように、JetのWebページへ、ではない。モバイル上で見るWebページは、かなり貧弱なユーザー体験だ。

Branchを使っているアプリはほぼ40000あり、全体の月間ユーザーは30億に達する。Airbnb, Amazon, Bing, Pinterest, Reddit, Slack, TinderなどもBranchを使っている。

Austinによると、この前のラウンド以来同社は“ものすごく成長し”、次のラウンドを迎えることになった。

彼曰く、“だんとつのマーケットリーダーになれて幸運だった。ディープリンクに関してはまだまだやることがいっぱいあり、今回の資金もBranchのプラットホームの継続的な成長を支えるために使われる”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Disrup SF:サイアン・バニスターが高校中退からエンジェル投資家への道を語る

今日(米国時間9/5)、サンフランシスコで開催中のTechCrunch SF 2018でFounders Fundのパートナー、サイアン・バニスターが15歳のホームレスのティーンエージャーからトップクラスのエンジェル投資家になった驚くべき道筋を語った。バニスターはUber、Thumbtack、SpaceX、Postmates、EShares、Affirm、Nianticといった著名なスタートアップへの投資家だ。

バニスターは今朝のTC Disruptでストリートチルドレンの一人がベンチャーキャピタリストに転身することを可能にするカギとなったいくつかの重要なポイントを説明した。その一つは「次のステップ」に集中する漸進主義だ。。バニスターはティーンエージャーの頃、いつも次の食事、次のシャワーを得るために必死だった。そして個人主義、良いメンターを得ること、テクノロジー、飽くなき好奇心も大きな役割を果たした。

バニスターは「金を稼ぐこと」―つまり資本主義に夢中だった。それが結局自分の人生を救ったのだという。バニスターの「次の一歩」は食事やシャワーを得ることから始まったが、やがて職を得ること、新たなスキルを身につけることへ階段と上っていった。

バニスターはこうしたステップを「ゲームのレベルをアップしていくこと」と考えていた。

良きメンターに恵まれてテクノロジーに目を開くことができたのが次の大きな幸運だったとバニスターは言う。

バニスターはコンピューターの使い方を習い、やがてオンラインの世界に入り、プログラミングができるようになるとハッカー文化を知り、テクノロジー企業で初級の職を得ることができた。

「突然、生まれて初めて、私の頭脳はフル回転し始めました」とバニスターは言う。

こうして異例のコースをたどってテクノロジーの職を得たが、幸運なことに「決まりきったルール」を守らないことでクビになることはなかった。それどころか創造性を自由に伸ばすよう励まされた。彼女は昇進し、その結果LinuxやBSDを習うことができた。その後の2年でバニスターはインターネットの仕組みを学び、ルーター、DNSサーバー、メールサーバーのセットアップができるようになった。

バニスターは高校のドロップアウトであり、大学には一度も行ったことがない。

サンフランシスコに移ってスタートアップで働き始めたところ、折よくその会社がCiscoに買収され、バニスターも多少の恩恵を受けた。これを資金として彼女は有望そうなスタートアップへの投資を始めた。

「私の最初のエンジェル投資先はイーロン・マスクのSpaceXでした。とても怖かったんですが同時にエキサイティングな経験でした…以来、いってみれば、中毒してしまったといえるでしょう」とバニスターは言う。

賢明な投資が続き、バニスターはFounders Fundにパートナーとして迎えられた

「私はまったく新しい分野に飛び込み、知的にも全力を尽くして働くことができるようになりました」とバニスターは語った。

どうやってそんな成果を収めることができたのかと尋ねられて、バニスターは、「言えるのは私はいつも好奇心の塊だったということです。私は私より頭がよくて、もっと能力のある人達に囲まれて過ごすようにしました。これが私がプレイしてきたゲームです。今でもこのゲームを続けています」と答えた。

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滑川海彦@Facebook
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投資アプリRobinhoodからADR経由で外国の上場企業に投資できるようになった

アメリカ国内を対象とする投資と投機のアプリRobinhoodで、米国預託証券(American Depositary Receipt, ADR)を利用して外国で上場されている企業に投資する(株を買う)ことができるようになった。

ADRを利用すると、アメリカの投資家が、ニューヨーク証券取引所ナスダックなどアメリカの証券取引所に上場されていない外国企業に投資できる。そして同社(Robinhood)によると、今では同社からグローバル企業250社に投資できる。

同社が挙げる投資対象には、TencentやNintendo, Adidasなどが含まれている。そして中国や日本、ドイツ、カナダ、イギリスなどの、株式がアメリカで上場されている企業にも投資できるようになるだろう。

対象企業の完全なリストは、Robinhoodアプリまたはデスクトップアプリケーションのページで、“New on Robinhood”で検索すると見られる。

この部屋にもフランス大好き人間が何人かいるけど、LVMHやMichelin, Ubisoft Entertainmentなどフランスの企業も、近くRobinhoodから投資できるようになるそうだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

巨大AI企業SenseTimeがビデオ技術のMoviebookへ$199Mの投資をリード、その戦略的意図は…

SenseTimeは、45億ドルあまりの評価額で6億2000万ドルを調達し、評価額が世界最高のAI企業として知られているようだが、同社はしかし投資家でもある。この中国企業は今週、オンラインのビデオサービスをサポートする技術を開発している北京のMoviebookへのシリーズD、13億6000万人民元(1億9900万ドル)のラウンドをリードした。

Moviebookはこの前2017年に、シリーズCで5億人民元(7500万ドル)を調達した。今回のシリーズDは、SB China Venture Capital(SBCVC)が、Qianhai Wutong, PAC Partners, Oriental Pearl, およびLang Sheng Investmentらと共に参加した。〔SB==Softbank〕

SenseTimeによると、同社は投資と共にMoviebookとのパートナーシップも契約し、二社がさまざまなAI技術で協力していく。たとえば、エンターテインメント産業におけるAIの利用増大をねらった拡張現実技術などだ。

SenseTime Group Ltd.のオブジェクト検出/追跡技術が、2018年4月4日に東京で行われたArtificial Intelligence Exhibition & Conference(人工知能エキシビション&カンファレンス)でデモされた。このAIエキスポは4月6日まで行われた。写真撮影: Kiyoshi Ota/Bloomberg

声明の中でSenseTimeの協同ファウンダーXu Bingは、両社は、放送やテレビとインターネットのストリーミングなどからの大量のビデオデータを利用して、未来の多様な商機を開拓していく、と述べている。彼はまた、AIなどの新しい技術をエンターテインメント産業に導入していくことの持つポテンシャルを、強調している。

このような戦略的投資をSenseTimeが行なうのはこれが初めてではないが、今回がいちばん重要だろう。同社はこれまで、51VR, Helian Health, そしてリテールの巨人SuningからのスピンアウトSuning Sportsなどに投資している。

SenseTime自身は投資家たちから16億ドルあまりを調達しており、その投資家はAlibaba, Tiger Global, Qualcomm, IDG Capital, Temasek, Silver Lake Partnersなど、きわめて多様だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

SoftBankの投資戦略を検討する――WeWorkへの5億ドルもテーマの一つに過ぎない

〔この記事はJason Rowleyの執筆〕

今週、WeWorkは中国における子会社、WeWork ChinaがSoftBankTemasek Holdings他から5億ドルの追加投資を得たことを発表した。これにより中国法人の価値は1年前の10億ドル(投資後会社評価額)から50億ドルにアップした。WeWork Chinaは前回の投資ラウンドをほぼ1年前、2017年の7月に発表している

SoftBankが同一会社に複数回投資することはめったにない。この記事の執筆時点で、Crunchbaseのデータによれば、SoftBank自身は144社に175回の投資を行っている。このうち、2回以上SoftBankから投資を受けた会社は23社だ。 このうちWeWorkは、中国法人も加えて、合計4回の投資を受けており、SoftBankの投資として最多となっている。

こうした実績から判断すると、SoftBankの戦略は各ビジネス分野におけるトップ企業に投資することのようだ。株式の持ち分として会社評価額の何パーセントにあたるのか外部から判断しにくい場合もあるが、SoftBankからの投資は各企業における最大の投資であることが多い。

たとえばWeWorkの場合を見てみよう。WeWork本体と現地法人、WeWork China、WeWork Indiaなどを含め、SoftBankの投資は単独出資であるか、投資ラウンドをリードしているかだ。また投資シンジケートの一員である場合もその中で最大級の金額を出資している。

特に市場拡大のチャンスが大きい分野の場合、SoftBankはその地域でリーダーの会社に投資することが多い。 なるほど世界征服というのは難しい企てだが、SoftBankは非常に巨大なので、ある事業分野について各地域のトップ企業の相当部分を所有することができる。結果としてSoftBankがその分野の世界のシェアのトップを握るチャンスが生まれる。

これは大胆な戦略だ。リスクも大きいし、巨額の資金を必要とする。しかしSoftBankは多くの急成長市場で最大の金額をコミットする投資家となっている。

不動産は投資テーマの一つに過ぎない

WeWorkはSoftBankの不動産投資の一例だが、下に掲げた表に同社の不動産、建設関係の投資の代表的なものをまとめてある。 順位はSoftBank(単独の場合、シンジケートの一員の場合双方を含む)の投資額だ。また関与したラウンド中に占めるSoftBankの投資額の比率も掲げておいた。

しかし、成長中の大型市場で成功を収めているトップ・スタートアップに巨額の投資を行うというSoftBankの戦略は不動産分野に限られない。オンライン・コマース、ロジスティクス、保険、ヘルスケア、そして大きな注目を集めたところではライドシェアとオンデマンド交通機関にもSoftBankは大型投資を行っている。

また人工知能スタートアップ分野で大きなポートフォリオを持っていることも見逃せない。SoftBankはNvidiaImprobableBrain CorporationPentuumなどに投資している。またMapboxCruise Automationに投資していることはSoftBank自身の自動運転車プロジェクト、SB Driveにも有利だろう。

SoftBankは古いものもすべてリニューアルしていく戦略の一例だ。 1990年代後半、SoftBankとファウンダーの孫正義はすでにテクノロジー分野で最大の投資家の一人だった。当時も現在同様、孫正義はSoftBankのポートフォリオをいわばバーチャル・シリコンバレー化しようとしていた。つまり投資先企業同士が協力することによってビジネス上のシナジー生むプラットフォームの構築だ。投資テーマを絞り込むSoftBankの戦略を見ると、今日、こうした大胆で愛他的な構想が実現する可能性は十分にある。しかし孫正義はテクノロジー投資の第1ラウンドではドットコム・バブルの崩壊で多額の損失を被ったことが知られている。第2ラウンドでSoftBankが成功するかどうかは今後に待たねばならないだろう。

画像:Ufuk ZIVANA / Shutterstock

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

世界を57兆個の小さな区画に分割してそれぞれにユニークな名前をつけたwhat3wordsに投資が殺到

what3wordsは、世界全体を57兆個の、一辺が3メートルの正方形に分割して、そのひとつひとつに3つの言葉を割り当てている。その同社がこのほど、新たな投資家3社を開示したが、それらはどれも自動車業界方面からだ。

what3wordsは木曜日(米国時間6/28)に、中国最大の自動車グループSAIC Motorのベンチャー部門と、Formula 1のチャンピオンNico Rosberg、そしてオーディオとナビゲーションシステムのAlpine Electronicsが、ロンドンの同社に投資を行ったことを発表した。これまでの投資家Intel Capitalも、そのラウンドに参加した。

その資金は、新しい市場開拓と製品開発に充てられる。

調達額は公表されていないが、この投資は、ユーザー体験を単純化し、音声コマンドで容易に使えて、企業を自動運転車両の時代に向けて準備させてくれる技術への、主に自動車業界の関心を示している。このアドレッシングシステムではひとつの位置にユニークな(それ一つしかない)3語の組み合わせを与えるから、これまでの音声操作のナビゲーションシステムの多くが抱えていた重大な欠陥をなくしてくれる。それは、道路名の重複だ。

同社は、これら57兆個の正方形に、25000語のボキャブラリーを持つアルゴリズムを使ってユニークな三つの言葉から成る名前を割り当てた。そのシステムは、what3wordsアプリで誰もが利用でき、1ダース以上の言語に対応している。たとえば、パリのエッフェル塔の特定のコーナーにいる友だちに会いたければ、3語のアドレス、“prices.slippery.traps”を送る。Airbnbのホストは3語のアドレスを使って、ゲストを分かりにくい入口に案内する。自動運転車には3語のアドレスを与え、大きなスポーツアリーナの特定のエントランスへ行かせる。

what3wordsのCEO Chris Sheldrickはこう語る: “今回の資金でこの会社が進むべき方向が固まった。それは、車やデバイスや音声アシスタントなどに行き先を指示する方法だ”。

今年の初めにwhat3wordsは、Daimlerが同社の10%株主になったことを開示した。Daimlerの株の一件と、最近公開された投資家(前述)は、いずれも同社のシリーズCラウンドの一環だ。

同社の奇抜なグローバルアドレッシングシステムは、Mercedesの新しいインフォテインメントとナビゲーションシステム…Mercedes-Benz User Experience, MBUX…が採用し、まずこの春にアメリカ以外の市場で発売されたハッチバックの新型Mercedes A-Classに載った。セダンのA-Classはアメリカ市場に今年の後期に来る。

TomTomが先月発表したプランでは、今年の後半に同社のマッピングとナビゲーション製品にwhat3wordsが組み込まれる。TomTomのナビゲーションや交通技術製品を採用している自動車メーカーは、Volkswagen, Fiat Chrysler, Alfa Romeo, Citroën, Peugeotなどだ。

同社はそのほかの自動車メーカーとも商談を進めており、それは、車のインフォテインメントシステムにwhat3wordsを取り入れてもらうことが目的だ。

画像クレジット: what3words

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

オープンソースWebサーバーの雄NginxがシリーズCの$43Mでさらなる拡張を計画

オープンソースのWebサーバーNGINXを作っているNginxが今日(米国時間6/20)、Goldman Sachs Growth Equityが率いるシリーズC、4300万ドルの資金調達を発表した。

初期の投資家として取締役を送り込んでいるNEAも、このラウンドに参加した。今回はGoldman Sachs Merchant Banking DivisionのマネージングディレクターDavid Campbellが、同じくNginxの取締役会に加わる。同社によると、今回の投資でこれまでの調達総額は1億300万ドルになる。

このラウンドにおける同社の評価額は、公表されていない。

オープンソースのNGINXは評価が高く、著名な大手サイトも含め、全世界で4億のWebサイトを動かしている。一方、商用バージョンには1500の有料顧客がおり、同社は彼らに、サポートだけでなく、ロードバランシングやAPIゲートウェイ、アナリティクスなどの機能を提供している。

NginxのCEO Gus Robertsonは、名門の投資家たちから支持を得たことを喜んでいる。“NEAはシリコンバレーの最大のベンチャーキャピタリストのひとつであり、Goldman Sachsは世界最大の投資銀行のひとつだ。この両者が共同で今回のラウンドをリードしたことは、企業と技術とチームにとって、すばらしい評価だ”、と彼は述べている。

同社にはすでに、商用製品Nginx Plusを今後数週間かけて拡張する計画がある。“われわれには、イノベーションを継続して、われわれの顧客が分散アプリケーションやマイクロサービスベースのアプリケーションをデリバリするときの、複雑性を軽減する必要がある。そのために数週間後には、Controllerと呼ばれる新製品をリリースする。ControllerはNginx Plusの上のコントロールプレーンだ”、とRobertsonは説明する。Controllerは昨年の秋に、ベータでローンチした

しかし4300万ドルを得た今では、同社は向こう12-18か月でNginx Plusの本格的な‘増築’をしたい意向だ。また、世界各地にオフィスを開いて国際展開を本格化したいし、パートナーのエコシステムも大きくしたい。そしてこれらの取り組みの結果、年内に社員数を現在の220名から300名に増やしたい。

同社のオープンソースのプロダクトは最初、2002年にIgor Sysoevが作った。オープンソースのプロジェクトをベースに彼が商業的企業Nginx社を作ったのが、2011年だ。そしてその1年後に、RobertsonをCEOに迎えた。同社は2013年から今日まで、各年の前年比成長率100%を維持し、その軌道は2019年にも継続すると予想している。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa