アプリ分析サービス「App Ape」運営のFULLER、4.2億円の資金調達でアジアに進出

Fuller共同代表の渋谷修太氏(左)と櫻井裕基氏(右)

Fuller共同代表の渋谷修太氏(左)と櫻井裕基氏(右)

アプリデータ分析サービス「App Ape」を展開するFULLERは7月19日、いばらき新産業創出ファンド投資事業有限責任組合、地方創生新潟1号投資事業有限責任組合、セガゲームス、VOYAGE VENTURES、Global Catalyst Partners Japan 投資事業有限責任組合(既存株主)、朝日新聞社(こちらも既存株主)を引受先とする総額約4億2000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

FULLERは、2011年11月の設立。高専から筑波大学に進学した代表取締役の渋谷修太氏らが茨城県つくば市で立ち上げたスタートアップ(現在は茨城県柏の葉にあるコワーキングスペース「KOIL」に拠点を置いている)。2012年9月にリリースしたバッテリー・メモリ管理アプリ「ぼく、スマホ」をリリース。同アプリは現在100万ダウンロードを達成。このほかにもスマホの端末管理アプリを国内・アジアで展開している。

またこれと並行してアプリ分析サービスのApp Apeを提供。こちらのサービスは現在2000社以上(無料版含む)が利用しており、「昨年度は年商で億越え。2年前から比較すると5倍。成長はすごいので、早期に2ケタ億円を目指したい」(渋谷氏)という状況だという。もともとAndroid向け限定の分析サービスだったが、現在は一部iOS向けの分析機能も提供を開始している。

Fullerが今回の資金調達で目指すのは(1)海外展開、(2)事業提携、(3)地方創生の3点だ。

(1)については、すでに5月より韓国でApp Apeの展開を進めているが、これと新規事業をアジア圏に広く展開していく予定だ。また(2)関しては今回Fullerに出資したセガゲームス、VOYAGE VENTUREの親会社であるVOYAGE GROUPなどと提携した事業を展開していく予定だという。詳細は明らかにされなかったが、例えばセガゲームスはゲームアプリ向けのマーケティング支援ツール「Noah Pass」などを展開しているので、このあたりでの連携を進めるのではないだろうか。

(3)では、渋谷氏の出身地である新潟県に拠点を設立することなどを検討しているという。渋谷氏によると、「地方に残って働きたい」という高専卒エンジニアは多く。彼らとの接点作りを目指しているという。確か代表が高専出身のjig.jpなども、福井県で同じような取り組みを行っている。

なおFullerでは今回の資金調達発表に先駆け、6月に渋谷氏と創業メンバーである櫻井裕基氏の共同代表制に移行している。今後渋谷氏は海外進出と新規事業を担当。櫻井氏が既存事業を担当する。

タクシーで「コンプレックス商材NG」な動画広告、日本交通とフリークアウトが新会社設立で

フリークアウトの本田謙社長(左)と日本交通の川鍋一朗会長(右)

フリークアウトの本田謙社長(左)と日本交通の川鍋一朗会長(右)

タクシーの広告といえば、消費者のコンプレックスに訴求するリーフレットを思い浮かべる人は多そう。例えば、飲むだけで痩せたり薄毛が治ることを謳うチラシ。僕も「ハゲの99%が治るって本当?」といったコピーに釣られ、手に取ったことはある。

いわゆる「コンプレックス商材」ではなく、大手のブランド広告を獲得しようと、都内タクシー最大手の日本交通がデジタルサイネージ事業に乗り出した。東京都心のタクシー100台にタブレット端末を設置し、全国規模で商品やサービスを展開する「ナショナルクライアント」の動画広告を配信する。

翌年に日本交通のタクシー3500台、2020年までに全国のタクシー5万台への導入を見込む。全国のタクシー会社に対してはタブレットを無償配布し、広告収益を分配することで普及を図る。

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大手ブランド広告を取り込む

日本交通とフリークアウトが合弁会社「株式会社IRIS」を設立し、動画広告商品「Tokyo Prime」を開発。都心でタクシーを利用する高所得者向けの「プレミアムメディア」という位置づけで、フリークアウトの顧客である航空会社や飲料メーカー、トイレタリー企業などを中心に販売していく。

デジタルサイネージは前部座席背面にタッチパネル対応の10インチタブレットを設置。乗客が運転手に行き先を告げてメーターが稼働した時点(つまり、もっともアテンションが集まるタイミングらしい)で、最長3分の動画広告を流す。丸の内や六本木のタウン情報なども提供する。

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僕も試してみたが、座って一息ついたタイミングで動画が流れると目を奪われる。見たくない場合はタブレットを操作して動画を消すことも可能だ

日本交通によれば、都内のタクシー平均乗車時間は18分間。その間に動画広告を流すことで、企業のブランドを深く浸透させられるとアピールする。

日本交通の川鍋一朗会長は、「都心のタクシー利用者は可処分所得が高く、繰り返し乗車するのが特徴。これまではこうした高所得者層へのマーケティングに注力できていなかった」と語る。

合弁会社のIRISでは広告掲載基準を厳格化。「コンプレックス商材」「ギャンブル」「美容整形」などの広告を掲載不可とし、大手のブランド広告を取り込む狙いだ。

デジタルサイネージ参入を支えた格安MVNO

ビーコンを使った「Physical Web(フィジカルウェブ)」にも対応し、車内で視聴した動画に関連するURLをスマートフォンにプッシュ通知する。この機能はスマホのGoogle Chromeで「フィジカルウェブ」とBluetoothを有効にしている場合のみ有効だ。

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タブレットはインターネット常時接続で、データ通信にはIoT向けの格安MVNOサービス「SORACOM Air」を採用した。通信料金が安い深夜に動画をダウンロードしたり、昼間はAPI経由で帯域制限するなどして、通信料を1台につき月額1000円以下に抑える。

このように低コストで運用できるサービスがあったことが、デジタルサイネージに参入できた要因でもあるようだ。

タクシーならではのターゲティング

日本交通とフリークアウトは今年1月、位置情報と連動するマーケティング事業で提携。日本交通子会社のJapanTaxiが提供する配車アプリ「全国タクシー」の位置情報を、フリークアウトの広告配信に活用する取り組みを始めていた。

フリークアウトにとって、デジタルサイネージは初の事業領域となる。本田謙社長は「今から行く場所がわかれば、乗車中に目的地に関連する広告が配信しやすくなる」と、タクシーならではのターゲティングに期待を寄せる。

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「全国タクシー」の位置情報をもとに、特定エリアにいる訴求したいターゲット層のみに対して、即座にオンライン上で広告を配信できる

フリークアウトは、広告主が広告を配信したいユーザー層を定義し、必要な広告枠をリアルタイム入札で買えるDSP(デマンドサイドプラットフォーム)を手がける。広告主は購買データや性別年齢、興味などでユーザーを絞り込めるが、これらに「今から行く場所」が加われば、より効果的な広告が打てるというわけだ。

ただし、「乗車時に目的地がわかる」というのは、配車アプリで降車地点を指定した場合に限られる。今後は、乗車時に運転手に目的地を伝える際、タブレットの音声認識で目的地を推定することも視野に入れている。

2020年までに多言語化、売上高100億円へ

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富士キメラ総研の予測によれば、2020年の国内デジタルサイネージ交通広告の市場規模は800億円。IRISは2020年までに全国5万台に導入し、売上高100億円を見込んでいる。インバウンド需要に向けて、デジタルサイネージの多言語化や決済対応も進める。

IRISは日本交通子会社のJapanTaxiが51%、フリークアウトが49%を出資。代表取締役には、JapanTaxi CMOの金高恩氏とフリークアウト経営企画室長の溝口浩二氏が就任した。

ファッションECのIROYA、自社ノウハウをもとにオムニチャネル基盤を提供——大和ハウスや東急など提携

毎月特定の「色」をテーマにしたセレクトショップとファッションECを展開するIROYA。これまでC向けにサービスを展開してきた同社が、大和ハウスグループや東急グループと組んでB向けビジネスを展開する。同社は7月12日、アパレルなど小売流通事業者向けのオムニチャネル支援に向けたプラットフォーム「Monopos」の提供を開始した。

IROYAは2013年10月の創業。代表取締役社長兼CEOの大野敬太氏は、学生時代に地元・神戸のアパレルショップの店員を経験。その後広告代理店やコスメ系IT企業、コーポレートベンチャーキャピタルなどを経てIROYAを起業した。

冒頭で書いた通り、毎月特定の色をテーマに、幅広いブランドを集めたセレクトショップ「IROZA」を展開。東京のほか京都、名古屋、博多などでポップアップストア(期間限定ショップ)を出店した後、現在は東京・渋谷の東急百貨店東横店に旗艦店を出店。同時にECサイトの「IROZA」も展開している。

IROZAの実績について

IROZAの実績について

そんな同社が展開するMonopos。これはIROZAの店舗、ECサイト運用の経験をもとに、倉庫や物流のマネジメントから在庫登録、配送、ECサイトの運用、店頭でのPOS利用、決済代行まで、サプライチェーンの行程を一元管理するプラットフォームだ。“オムニチャネル支援”とあるように、EC、実店舗むけそれぞれに機能を提供している。EC向けに自社サイト構築やウェブでの集客サービス、決済代行、配送といった機能を提供する一方、実店舗向けにはスマートフォンベースのPOSレジを提供するほか、集客支援などの機能を提供する。

この仕組みを実現するため、IROYAでは大和ハウスグループの大和物流(倉庫提供やフルフィルサービスを支援)、VOYAGE GROUP傘下のVOYAGE VENTURES(アフィリエイトによるウェブ集客支援)と資本提携業務提携を実施。また東京急行電鉄(東急電鉄)、東急百貨店(新規出店店舗向けにオムニチャネルサービスを提供)と業務提携、ヤマト運輸(配送連携および決済代行)とサービス連携を実施している。なお資本提携による調達額やバリュエーションは非公開となっている。

「Monopos」のサービスイメージ

「Monopos」のサービスイメージ

Monoposを利用するメリットの1つは、ECサイトと店頭の在庫を共有できること。これまではシステムが分かれているため、ECサイトと店頭で販売アイテムの在庫を分けて管理する必要がった。だがMonoposではそれを一元管理できるため、販売チャネルごとの在庫を用意する必要がなく、結果としてアイテムの消化率を高めることができるという。また、ECサイト向けのアイテム撮影や商品登録などのフルフィルメント業務はパートナー各社が対応。登録したアイテムは、IROZAに在庫シェアが可能。新たな販路を開拓することもできる。ユーザーにはそれぞれ固有のIDとQRコードを発行。このQRコードによって、ユーザーごとのEC・店舗両方の利用を管理できる。

今回の取り組みは、東急電鉄が手がけるスタートアップ向けアクセラレーションプログラム「東急アクセラレートプログラム(TAP)」がきっかけになっているという。プログラム発表の際にはその温度感が分からないところがあったのだけれど、今回の発表といい、クローズドで開催している着実に成果を出しているということだ。もちろん大和グループには倉庫の新しい利用用途の発掘、東急グループにはテナント誘致といった狙いはあるだろうが、小売流通事業者にとっても、EC・実店舗を1つのプラットフォームで管理できる意味は大きいはず。最近だとアパレル業界の不況について報じられることも増えているが、このプラットフォームを利用して事業の効率化を図るといったケースも今後出てくるんじゃないだろうか。

無印良品やFrancfrancも採用、インテリア試着アプリ「リビングスタイル」が2億円調達

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店頭で「インテリアの試着」

インテリア選びの失敗でありがちなのは、「部屋のサイズに合わない」「他の家具と相性が合わない」のどちらかだろう。こうした問題を解消すべく、3Dシミュレーターを使って接客する家具販売店が増えてきた。

タブレットやスマホを使って来店者の部屋の間取りを作成し、店頭で売っている家具を配置する。いわば「インテリアの試着」を体験してもらうことで、意思決定までの期間短縮や購買単価の向上につながるメリットがある。

無印良品が接客で利用するiPadアプリ。店頭で販売する商品でシミュレーションできる

無印良品が接客で利用するiPadアプリ。店頭で販売する商品でシミュレーションできる

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20ブランド、30万点を3D化

こうした3Dシミュレーターを家具販売店に提供するのが、2007年10月設立のリビングスタイルである。無印良品やFrancfranc、島忠など20ブランド、30万点の商品を3Dデータ化。商品を配置するシステムとあわせて提供する。

家具販売店の多くは、カタログ用の写真は撮影しても、3D化を前提とした写真は持っていない。リビングスタイルは各社の商品を1点1点、あらゆる角度から撮影し、フィリピンの協力会社を通じて3D化している。

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生地サンプルをスキャンすることで生地感を再現している

3D化に必要な写真は想像以上に多い。例えば、イスであれば正面、横、上、裏側、アーム部分、足の部分まで、多ければ30枚近くの写真を撮影することもある。生地のサンプルをスキャンすることで、生地感も再現している。

家具メーカーはシーズンごとに新商品を出したり、その反対に販売終了商品も出てくる。こうした商品の入れ替えにも対応し、店頭では販売中の商品で3D接客するためのデータベースを構築している。

「業界シェアは9割」

実際に、3Dシミュレーターを導入すると、どれだけ売り上げに貢献するのだろうか。リビングスタイルの井上俊宏社長によれば、導入企業の1社は売上高6億5000万円のうち、10%は3D経由で、購入者は約5000人に上るのだという。

「消費者は家具購入までに店舗と自宅を何度か往復し、部屋のサイズや床、壁の色、手持ちの家具の色などを確認する。これらを3Dシミュレーターに落としこむと確認作業が不要になるので、購入につながりやすい。」

リビングスタイルの井上俊宏社長

リビングスタイルの井上俊宏社長

店頭で3Dシミュレーターを使って接客する家具メーカーの9割は、リビングスタイルを選んでいると井上氏。「将来的に3Dデータを作り直す金額や、店頭スタッフに3Dシミュレーターの使い方を説明する手間を考えると、他社への乗り換えリスクも少ない」と強気だ。

リビングスタイルは3Dデータ制作費用、システム利用のための初期構築費と月額ライセンス費用が収益源となる。3Dデータは商品1点につき約1万円、月額ライセンス費は対応端末に応じて40〜50万円。

自宅で家具を置けるARアプリ強化

7月12日には、三井不動産のコーポレートベンチャーキャピタルファンド(CVC)とアコード・ベンチャーズの2社を引受先として、シリーズAとなる第三者割当増資を実施。調達は9月まで継続し、総額2億円になる見込み。この資金をもとに自宅で家具の3Dデータを仮想的に配置するARアプリ「RoomCo(ルムコ)」の開発を強化する。(App StoreGoogle Play

ルムコは、スマホのカメラ画面に映し出された空間に、家具の3Dデータを実寸で配置できるのが特徴。リリース前のアプリを見せてもらったが、タップ操作で家具の向きや色を変えられるので、自分の部屋にマッチするかがイメージしやすそう。

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開発中のARアプリ

似たアプリとしては、イケアの「IKEAカタログ」を思い浮かべるTechCrunch読者もいるかもしれないが、大きな違いはブランド横断で家具を選べる点だ。すでに3D化した家具メーカーの商品を配置でき、気に入った商品は各社のECサイトで買えるようにする。

家具以外にも、観葉植物や家電を扱うメーカーからの引き合いもある。今後はアプリ経由の商品の売り上げや店舗への送客に応じて、手数料を取るアフィリエイトモデルで収益化を検討する。

Pokémon Goで任天堂の株価は90億ドルアップ―さらに今週にも日本を含めて世界公開へ

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この週末、任天堂はPokémon Goを公開した国々ですでに大波に乗ることに成功している。東京証券取引所における任天堂の株価は急上昇し、今日の終値は280億ドル〔2.8兆円〕に近づいた

しかも株価はまだ上昇する気配だ。Pokémon Goが公開されたのはまだ数カ国に過ぎない。これからイギリス、ヨーロッパ、そしてピカチュウの故郷である日本そのものでの公開が控えている。Wall Street Journalの記事によれば、数日のうちにこれらの市場でも公開される。情報源は「このゲームについて詳しい筋」だという。

ここまでのPokémon Goの成績は? ReutersはSimilarWebのデータを引用し、アプリはアメリカのAndroidデバイスの5%以上にインストールずみだと報じた。これは出合い系アプリのTinderの普及率よりも高い。Pokémon Goの1日当たりアクティブ・ユーザー数(DAU)はTwitterを抜き、SimilarWebによれば1日あたり43分という利用時間はAndroidアプリの代表であるInstagramに費やされる時間より長いという。

Pokémon Goのリリースはいくつかの点できわめて特異だった。アナリティクス企業のSensorTowerからTechCrunchに送られたデータにそのユニークさが現れている。

  • GoはApp Storeのゲーム部門で4.5時間も首位にとどまった。最近のゲーム・アプリとして新記録だった。
  • アメリカ市場ですでにトータル5位のアプリとなっている。ローンチ後1日でClash of ClansやCandy Crushよりも上位となった(同じ任天堂のMiitomoは最高で総合73位までしか届かなかった)。
  • オーストラリアとニュージーランドではローンチ後2日でダウンロード数、売上ともにトップ。

Pokémon Goが任天堂にとって成功であることは明確となった。問題はこれが同社の将来の行動にどう影響するかだ。Miitomoはビジネスモデルとして似たような仕組みを持っている。しかしMiitomoはGoのような成功を収めることはできなかった。

ゲーム専用機以後の時代に入った任天堂にとって、Goの成功によって知的所有権を有する他のビジネスも活気づけられるというのが理想。しかしどの部分がビジネスを成功に導き、どの部分がそうでないかを見極めるのは依然として困難な作業になるかもしれない。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

FinTechスタートアップのカンムがVISAプリペイドカードを発行へ、その意図は?

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CLO(Card Linked Offer)事業を展開するFinTechスタートアップのカンム。同社は7月11日、VISAのプリペイドカード「Vandle」を今夏中にも発行することを明らかにした。クレジットカードの加盟店で利用できるプリペイドカードは、KDDIの「au WALLET」(Master)やLINEの「LINE Pay カード」(JCB)などの登場によってユーザーの認知も高まっている存在。スタートアップがこれを提供する意図はどこにあるのだろうか。

その前にカンムについてご紹介しておこう。同社の設立は2011年。シード期に独立系ベンチャーキャピタルのEast VenturesおよびANRIから、2015年末にアドウェイズ、iSGSインベストメントワークス、フリークアウト、三菱UFJキャピタル、TLMから合計1億2500万円の資金を調達している。

カンム代表取締役社長の八巻渉氏

カンム代表取締役社長の八巻渉氏

カンムでは2013年からは大手クレジットカード会社のクレディセゾンと提携してCLO事業を展開してきた。CLOとは、クレジットカードの利用履歴をもとに、カード会員の属性に最適な各種の割引情報や優待情報を提供するというもの。現在は大手小売店やEC、保険などの領域のクライアントを中心に取り扱い、送客手数料や送客後の成果報酬によって収益を得ている。カンム代表取締役社長の八巻渉氏によると、すでに事業単体で単月黒字化を達成している状況という。

だが一方で課題もある。提携カード会社と直接契約している加盟店以外はCLOを利用できない(ざっくり言うと、カード決済において、イシュアー(カード発行者)とアクワイアラ(加盟店)が異なる場合は、決済に関する情報の一部を確認できないことがあり、最適なオファーを提案できない)ほか、オファーUIをカスタマイズできない(クレジットカードのオンラインサービス上で固定のバナーを提供する程度)という課題があった。これを解決するためには自らが決済情報を把握でき、かつさまざまな形でカード会員にオファーを提案できるプラットフォームを築く必要がある。これがカンムがプリペイドカード発行に至る経緯だ。

Vandleは、あらかじめ金額をチャージしておけば、VISAのカードが使える店舗・インターネット決済どこでも利用可能なプリペイドカードだ。あらかじめチャージする必要があるため、年齢制限や与信審査も必要ない。専用のアプリをインストールし、会員登録さえすればすぐにカード番号をが付与されてECの決済に利用できる。決済情報はリアルタイムに通知されるほか、今日いくら使ったか? 今週いくら使ったか?といったデータをアプリ上で表示する機能も用意する。

「Vandle」のアプリやその上でのCLOイメージ

「Vandle」のアプリの利用イメージ

アプリ上からはバナー広告を一掃。CLOを用いて、ユーザーが興味あるであろう情報だけを提供するという。具体的には、行ったことある店舗の情報が関連付けて表示される、そのカードが店舗のポイントカードの代わりになるといったようなものになるという。

また、Vandleは企業などが独自ブランドでプリペイドカードを発行することも可能となっている。あくまで例だが、出資するiSGSインベストメントワークスの親会社であるアイスタイルが、「@cosmeプリペイドカード」を発行することだって可能なわけだ。さらに言えば、自社サービス上で提供するポイントと、Vandleを通じた独自プリペイドカードを組み合わせることができれば、ネットとリアル両方で利用できる新たなポイントサービスを生み出し、また裏側では様々な決済データをもとに、より精度の高いCLOを実現できる。どこまでの範囲での話かはさておき、カンムではすでに複数の大手企業との提携を進めているところだという。

カンムではまた、今回の発表に合わせて、決済やマーケティング関連の3つの特許も取得している。今後はCLOで培ってきた決済データ解析の強みを活かして、自社で与信モデルを開発。独自のクレジットカードも発行する予定だという。この新しい与信モデルでは、既存の与信方法ではカードを作れなかった層にもクレジット機能を提供していく予定。

東京銀行などから投資を受けたCoinbaseがシンガポールに次いで日本進出をねらう

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世界最大のbitcoin企業のひとつであるCoinbaseが、東京銀行やTwitterの日本進出を助けた企業など日本の一連の投資家たちから資金を獲得し、同社の市場としての日本にも焦点を定めた。

アメリカの企業であるCoinbaseは、 Bank of Tokyo-Mitsubishi UFJ(BTMU)とのパートナーシップを発表し、“その長期的な国際展開努力を支援していく”ことになった。つまり同社から見れば、サービスを日本に拡張する、という意味だ。Coinbaseはさらに、BTMU, Mitsubishi UFJ Capital(MUCAP), およびSozo Venturesからの投資を確保したことを開示した。Sozoはアメリカと日本にまたがるファンドで、TwitterやLinkedInにも投資している。

Coinbaseはbitcoinを買い入れるための消費者ウォレットサービスと、それを費消するための多様な商業者パートナーを提供しているが、同時にまた、機関投資家たちのためのプラットホームも運用している。これまで同社は投資家たちから1億ドル以上を調達しており、もっとも最近では2015年1月の、DFJがリードした7500万ドルあまりのラウンドがある。Reutersの記事によると、日本からの投資は1050万ドルだ。

サンフランシスコに本社のある同社は昨年、アジアの最初の拠点としてシンガポールに進出したが、アジア最初の取引所は日本に開く。シンガポールでの開設は、当局の認可を要するからだ。

“日本ではまだデジタル通貨の取引所サービスを提供していないが、弊社は国際展開の継続にコミットしており、BTMUとの協力のもとに、アジアとグローバルの主要市場を強力にサポートしていきたい”、とCoinbaseは声明文で言っている。

日本は2年前の、自爆したが窃盗や詐欺の噂もあるMt. Goxの一件で、bitcoinの世界で派手に有名になってしまったが、今ではBitflyer, Kraken, Quoine, Coincheckなど複数の取引所がある。Mt. Goxのメルトダウンに対応して日本は、bitcoinを監督するための新しい法律を今年成立させた。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

日本のDeNAがEasyMile製自動運転電気バスの運行開始へ

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単なるFOMO(fear of missing out 取り残されるのが怖い)かもしれないが、最近あらゆるインターネット企業が自動車・交通ビジネスに参入を図っている。日本のDeNAも例外ではなかった。ソフトウェア・メーカーとして有名なDeNAは東京でイベントを開催し、運輸事業を展開することを発表した(Reuters記事)。これには12人乗りの自動運転電気バスが用いられ、まず千葉の幕張地域のショッピングモールで来月から営業を開始する。

DeNAの名前はTechCrunch読者にはおなじみだろう。同社がTechCrunchでもっとも注目を集めたのはモバイルで人気の同社のゲーム・キャラクターとブランドが任天堂にパートナーとして選定されたことだったかもしれない。しかしDeNAはしばらく前からオートモーディブ事業部をスタートさせており、今回フランスの自動運転電気自動車メーカー、EasyMileのバスを使って営業を開始する運びとなった。投入されるのはEZ10ロボット・シャトルと呼ばれるコミュニティー・バスで、世界各地でテスト・プロジェクトが進められている。

EasyMile EZ10は最高時速40kmで、カメラ、GPS始め各種のセンサーを搭載している。ただし制約なしに公道を走るようにはデザインされていない。EasyMileの自動車は限定された私有地構内での運行を前提としており、大量の歩行者や他の交通などが引き起こす困難を避けている。.

DeNAの今回のプロジェクトの目的は主としてフランス製自動運転車が既存システムおよび現行の各種規制の範囲内で正常に運行できることを地元規制当局と協力しつつ確認することにある。また損害保険や自動運転電気自動車を購入したユーザーのための保守契約の提供も手掛ける。

AlibabaLGと同様、DeNAも自動車関連ビジネス参入にあたってスクラッチでハードウェアを製造する道を選ばず、経験豊富なサードパーティーと提携することとした。自動車製造がきわめて複雑であり膨大な資金を要する作業であることを考えれると賢明な選択だろう。

音楽が止まったときに空いている椅子を奪い合うゲーム同様、自動車ビジネスへの参入は非常に大きな賭けだ。ただしサードパーティーとの提携であれば、初期投資は少なくてすむし、賭けに失敗したと判明したときの撤退でも大きな損害を被らずにすむ。各種要素の正しい組み合わせを早期に発見した企業は大きな利益を得られるだろう。DeNAとEasymileが賭けに勝つことになるのか注目だ。

〔日本版〕国内のメディアの記事では自動車事業におけるDeNAとDoCoMoとの提携も報道されている。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

フォトシンスの新スマートロック「Akerun Pro」、交通系ICカードでの開錠・施錠にも対応

フォトシンス代表取締役社長の河瀬航大氏

フォトシンス代表取締役社長の河瀬航大氏

スマートロック「Akerun」シリーズを開発するフォトシンスは7月7日、オフィスや民泊物件などでの利用を想定して機能を強化した新プロダクト「Akerun Pro」を発表した。7月23日より契約者に対して順次発送を行う。本体価格は無料で、月額9500円のレンタルプランでのみ提供する。フォトシンスでは3年間で1万台の販売を目指す。

まずは従来のAkerun(7月7日開催の会見では「Akerun One」と呼ばれていたが、サイト上の表記に合わせて「Akerun」としている)についてご紹介。Akerunは2015年3月に発売された後付け型のスマートロック。一般的なドアの内側についた錠前の上に粘着テープで本体を貼り付けることで、専用アプリを通じた開錠・施錠が可能になるというものだ。

Akerun Proはこの従来機と比較して、バッテリー容量を2倍に拡大。またバッテリーに加えてACアダプタによる給電(停電時などはバッテリー駆動に切り換え可能)にも対応した。開錠・施錠速度は15倍にスピードアップしている。僕はこれまで従来機でのデモを何度も見る機会があったが、正直スピードの変化には驚かされた。

「Akerun Pro」のデモ

「Akerun Pro」のデモ

Akerun Proは本体に加えて、NFCリーダー(室内用と室外用の計2台)、ドアセンサーとBluetoothで接続して動作する。この組み合わせによってSuicaやPASMOをはじめとした交通系ICカードをはじめとしたNFC対応ICカードを使った開錠・施錠が可能になる(NFC搭載スマートフォンは非対応)。また専用のクラウドサービスで鍵や入退室の管理などもできる。ICカードを元にした勤怠管理なども実現している。

APIを提供することで、外部サービスとの連携も可能だ。例えば「その日最初の出社」を検知してオフィス全体の電気を付ける、「その日最後の出社」を検知してオフィスの電気を消す、なんてことも可能になる。

フォトシンス代表取締役社長の河瀬航大氏はAkerunについて「スマートロック」ではなく、「スマートロックロボット」だと強調した(ついでに言うと配布された資料にも「スマートロックロボット」と表記するよう指示があった)。例えば本体のボタンを押してドアを開錠したとき(内側からのみ本体操作で開錠可能)に本体スピーカーで雨が降っていることを知らせる、緊急地震速報をもとに自動開錠を行うといったことを実現するという。「(Akerun Proが)人間がすべきではない煩わしい仕事を奪う。クリエイティブな仕事ができるようにする」(河瀬氏)

フォトシンスでは3年間で1万台の販売を目指す。なおAkerun Proはレンタルでのみの提供となるが、個人利用などを想定して従来機も併売するとしている。

pairs運営のエウレカ、創業者の赤坂氏が代表退任——新代表にCOO・CTOの石橋氏

左からエウレカ新代表となる石橋準也氏、創業者で取締役顧問の赤坂優氏

左からエウレカ新代表となる石橋準也氏、創業者で取締役顧問の赤坂優氏

日本と台湾で400万ユーザーが利用するマッチングサービスの「pairs」、350万ダウンロードの恋人専用アプリの「Couples」を展開するエウレカ。2015年5月には世界各国でマッチングサービスや各種ウェブサービスを展開する米IACグループが100億円とも200億円とも言われる大型のM&Aをしたことでも話題になった同社だが、そのM&Aから1年弱で代表交代のニュースが入ってきた。7月下旬をめどに、創業者で現・代表取締役CEOの赤坂優氏が代表を退き取締役顧問に就任。現・取締役COO兼CTOの⽯橋準也氏が新たに代表取締役CEOに就任する。

赤坂氏は、2008年11⽉に共同創業者で取締役副社⻑を務める⻄川順氏とともにエウレカを設⽴。受託事業から始まり、デザイン特化のクラウドソーシングサービス「MILLION DESIGNS」、アプリシェアサービス「peepapp」、SNSを利用したアプリ検索サービス「Pickie」などを手がけてきた。MILLION DESIGNSはランサーズに売却しているが、これは「事業撤退」の意味合いの強い売却で、いずれの自社サービスも決して大きく成功したとは言えない結果だったという(同社のこれまで、そして2016年以降の戦略についてはこちらの記事をご参考頂きたい)。その後2012年10月にスタートしたpairsのヒットで会社の規模は大きく成長。世界各国でマッチングサービスを展開するIACグループのメンバーとして、日本・アジア圏でのサービス拡充を進めている。

エウレカでは今回の人事について、「今後のさらなる事業成⻑と組織拡⼤に向けた経営スピードの加速を⾒据え、⽯橋をトップとする経営体制に移⾏することが最適であると判断し、新たなステージへ進むことを決定いたしました」と説明している。

新代表となる⽯橋準也氏は、1987年⽣まれの28歳。大学では建築を専攻していたが、ITに興味を持ち⼤学を中退。制作会社での業務と個人での開発請負などを行い2013年にエウレカに⼊社。2014年に執⾏役員CTOに、2016年3⽉に取締役COO兼CTOに就任している。僕が聞いたところでは実はpairsは直近バックエンドの大規模なリニューアルを実施しているのだそう。同社では以前にそのリニューアルプロジェクトで失敗したことがあるが、執念でプロジェクト遂行までの指揮を執った人物こそが石橋氏だったという。

今回の代表交代について、赤坂氏、西川氏、石橋氏のコメント(一部要約)は以下の通り。なおコメントにもあるとおりだが、共同創業者である西川氏は引き続きエウレカの副社長としてメンバーをリードしていく。一方赤坂氏は、分散型動画メディア運営のエブリーへの出資をはじめとしたエンジェル投資家としての活動も開始している。エウレカでは、年内にもpairsのユーザー数500万人(日本と台湾の合計)を目指すとしている。

赤坂氏:

本当に沢山の方に支えられエウレカはここまで来ることができました。私が願うのは、エウレカがベンチャー企業とは一線を画し、創業者の存在など関係なく、永続的に発展を遂げる会社になっていくことです。これからは石橋新代表の元、事業を通じて未来を創って参ります。石橋はこれから組織が急拡大するのに必要な戦略性や課題解決力を持っており、経営者にとって最も必要な「執念」を持っているリーダーだと思っています。個人的には、エウレカの成長に寄与しながら、インターネット産業及び日本が経済的に発展するために、スタートアップへの投資や自分自身ができる事をしていきたいと思っています。

西川氏:

2008年、赤坂と二人で創業したエウレカが、USのMatchグループにジョインし、合計800万人のユーザーに支持され、100人を超える社員を抱えるようになるとは起業当時は想像も出来ませんでした。「創業者が経営者で居続けるべきか」は、様々な考え方があると思いますが、会社というのは生き物であり、ステージによって、最適な経営チームに変化していくことが必要だと、創業者でもある私は考えています。その点で、エウレカは、石橋という素晴らしい新CEOを輩出できたこと、赤坂が代表でなくなっても会社が成長し続けられる状態になったことを非常に感慨深く思います。私は、引き続き、取締役COO&CFOとして、新代表の石橋、取締役CSOの中村とともに、エウレカを世界に通用する企業にすべく、頑張ってまいりますので、今後ともエウレカをよろしくお願いします。

石橋氏:

私がエウレカに入社したのは2013年7月で、今から丁度3年前になります。当時はこんな日が来るとは思いもしませんでした。入社してからはいちエンジニアからpairsのリードエンジニア、執行役員開発責任者、執行役員CTO、取締役COO兼CTOと目まぐるしくロールが代わる中でとにかく目の前の課題に必死に取り組んできた3年間でした。創業者である赤坂から代表のバトンを受け取る、その重責を担うことを決めたのには2つ理由があります。1つは赤坂の覚悟の大きさを理解したこと。もう1つは赤坂や共同創業者の西川、取締役CSOの中村と話をしていく中で、私自身誰よりもエウレカの未来を明確に考えその実現に向けて執念を持てる人間だと自覚したことです。引き続きエウレカの成長とエウレカの成長を通した社会的価値の創出に全力を尽くして参ります。

 

Googleも投資した日米間高速海底ケーブルFASTERがいよいよ供用を開始

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Googleが海底ケーブルへの投資を始めたのは2008年だが、その中でも最大の投資は日本とアメリカ西海岸を結ぶFASTERケーブルへの、3億ドルの投資だった。2014年にGoogleは、NEC, China Mobile, China Telecom, Global Transit, KDDIなどから成る、二国間の接続を改良するためのコンソーシアムに参加した。そして同社の発表によれば、このケーブルが今夜(米国時間6/29)、供用を開始する。

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この9000キロメートル、6ファイバーペアのケーブルは、毎秒60テラビット(60Tbps)の帯域を提供する。Googleのテクニカルインフラストラクチャ担当SVP のUrs Holzleはそれを、“家庭のケーブルモデムの1000万倍速い”、と説明する。

Googleは一つのペアケーブル(10Tbps)を自社専用とし、それは日本の千倉および志摩とオレゴン州バンドン(Bandon)を結ぶ。後者は、同州内にある同社のThe Dallesデータセンターに比較的近い。

これと並行してGoogleは、同社のGoogle Cloud Platform(GCP)の東アジアリージョンを今年後半東京で立ち上げる。同社によれば、このたび専用帯域を得たことによって、“GCPの顧客は、全世界の顧客に対して、より高速なデータ転送とレイテンシーの減少を伴うサービス提供が可能になる”、という。

なお、Googleの発表はアメリカと日本間の接続を強調しているが、このFASTERのネットワークは日本と台湾間を二つのファイバーペア(当初能力20Tbps)で結ぶ。この、台湾と日本の二つのランディングサイト間の延長部分は、Googleが100%保有する(同社の100%子会社Google Cable Bermudaが保有)。

Googleはそのほかの海底ケーブルにも投資を続けている。たとえばアメリカ東海岸とヨーロッパ間には、Facebookとのパートナーシップにより、容量160Tbpsの、最高速の大西洋横断海底ケーブルを敷設する、と最近発表した。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

日本のLINE、7月の日米上場に向けて目標株価設定―10億ドルを調達へ

A smart phone is shown with messaging app Line in Seoul, South Korea, Wednesday, July 16, 2014. Naver Corp. said its subsidiary Line Corp. that operates a popular mobile messaging app is considering listing its shares in Tokyo or New York. Naver, South Korea's largest Internet company, said Wednesday that Line could sell shares in an initial public offering in both Japan and the U.S. (AP Photo/Lee Jin-man)

日本、タイ、台湾でメッセージ・サービスのメインストリームの地位を確立したLINE Corp.が来月に予定されている東京とニューヨークの証券取引所への上場を控えて、目標株価を発表した。その価格は一株当たり2700円から3700円、つまり26.50ドルから31.50ドルの範囲となっている。

今日のWall Street Journalの記事によれば、LINEがこうした目標価格での上場に成功すれば1120億円、あるいは10億9000万ドル前後の資金を調達できるだろうという。これは2016年で最大級のテクノロジー企業の上場となるもようだ。

最終的な売り出し株価は7月11日に発表される。

LINEのライバルとなる企業には、FacebookグループのWhatsApp、 中国のTencentホールディングスの WeChat、アジアで強い勢力を持つ韓国のKakao Talkなどがある 。ライバルと同様、LINEのビジネスモデルも単なるフリーミアムではなく、アプリ内課金、支払サービスなど多様な方法によって売り上げを確保する努力をしている。

TechCrunchのIngrid Lunden記者が 6月に入ってレポートしたとおり、 LINEが最初に東京証券取引所に上場を申請したのは約2年前だったが、このときは上場は延期された。今回LINEは東証だけでなくニューヨーク証券取引所にも同時に上場する。

先月、LINEは月間アクティブ・ユーザーが2億1800万人で、そのうち1億5200万人がアジアのトップ4市場によるものと発表している。

画像: Lee Jin-man/AP

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

BASE、オンライン決済サービス「PAY.JP」上でID決済の「PAY ID」を開始

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BASEは6月27日、自社で展開するオンライン決済サービス「PAY.JP」にて、ID決済の「PAY ID」の提供を開始した。

ID決済とは、あらかじめID情報と紐付くクレジットカード情報を登録しておけば、IDだけでスムーズにオンライン決済が可能なサービス。国内ではPayPalやLINE Pay、Yahoo!ウォレットや楽天ID決済、Amazonログイン&ペイメントなどの他、モバイルキャリア各社が同様のサービスを提供している。PAY IDでは複数のクレジットカードを登録可能で、目的によってカードを使い分けることができる。

BASEでは、ECサイトプラットフォームの「BASE」を展開。現在では個人や法人、行政機関などが合計20万店舗のECサイトを開設しているが、ここにPAY ID決済を順次導入する。ローンチしたばかりのID決済サービスではあるが、最初から20万店舗の加盟店舗持つことになる。なお、BASEのスマホアプリ(iOSおよびAndroid)でもPAY IDによる決済が可能だ。

「BASEで利用できるID決済だが、『BASE PAY』というブランドではなく、『PAY.JP』という決済サービスのブランドで展開することにはこだわった」——BASE代表取締役の鶴岡裕太氏はこう語る。

例えば大手のプラットフォーマーがID決済を提供する場合、そこで狙うのはユーザーの決済簡略化だけではない。IDと結びついた購買データを取得することで、ユーザーに最適な購買施策を行うことも重要になるのだ。だがPAY IDで狙うのは、あくまで質量を持った「現金」をリプレイスしうるプラットフォームを拡大するということなのだそうだ。PAY.JPはBASEが2015年に買収したサービスだが、その際にも鶴岡氏は「個人の与信をもとに、価値と価値の交換をなめらかにする」と話していた。

 

パナソニックがアクセラレーション、生体電位センサや言語解析の技術も開放

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大企業がスタートアップとコラボレーションして新しい事業を始める道を模索する——そんな動きはここ1、2年でかなり具体的なかたちになってきているのだけれど、大手エレクトロニクスメーカーのパナソニックもスタートアップとの共創を進めるのだという。パナソニックは6月27日、スタートアップのcrewwと共同で企業アクセラレータープログラム「Panasonic Accelerator 2016」を発表。同日より参加を希望するスタートアップの募集を開始した。エントリー期間は7月8日まで。

Panasonic Accelerator 2016では、パナソニックとスタートアップ企業、両者のリソースを掛け合わせたオープンイノベーションによる事業創出を目指すとしている。「家電・くらし」、「仕事」、「先端技術」という3点をテーマに、パナソニックとスタートアップによる革新的事業、マーケットの創造を目指すとしている。crewwは、スタートアップのマッチングから新規事業提案までをパナソニックと共同で行う。

と、これだけではよく分からないのでもう少し具体的に話を聞いたところ、ビエラブランドで展開するテレビや生活家電、レシピサイト「ウィークックナビ」とコラボレーションする事業や、グローバルで25万人のパナソニックグループ社員を対象にした新しい職場環境や福利厚生、採用効率化に向けた事業のプランを創出していくという。また、(1)脳や筋肉の活動をミリ秒オーダーで計測する生体電位センサ、(2)対話の記録や翻訳に欠かせない人工知能を用いた音声言語解析のノウハウ、(3)機械学習により医用画像の類似性を判定する画像診断支援システム——というパナソニックの保有する先端技術をスタートアップに開放する予定だ。

パナソニックではスタートアップごとに専任の担当者を割り当てて、上記の領域で具体的なプランを練り込んでいくという。最終的には採択スタートアップと協業の契約をして、フィールド実証や事業化の詳細検討を進める。詳細な条件等は明かされていないが、取り組みの内容次第では資金提供にも前向きだとしている。

クラウド会計ソフトのfreeeがAIによる自動仕訳の特許を取得、ラボも開設

左からfreee執行役員プロダクトマネージャーの坂本登史文氏とfreee CTOの横路隆氏

左からfreee執行役員プロダクトマネージャーの坂本登史文氏とfreee CTOの横路隆氏

様々な領域で利用に向けた研究の進む人工知能(AI)。FinTechの領域もその例外ではない。クラウド会計ソフト「freee」などを提供するfreeeは6月27日、自動仕訳に関するAI技術の特許を取得したことを発表。同時に、AIによるバックオフィス業務効率化をすすめる「スモールビジネスAIラボ」を創設した。今週中にもクラウド会計ソフトにAIを用いた自動仕訳機能を提供する。

クラウド会計ソフトfreeeは、銀行口座やクレジットカードなどと連携し、出入金を自動で取得、勘定科目を仕訳してくれるというもの。このデータをもとにして帳簿や決算書を作ったり、請求書や見積書を作ったりできる。

データは銀行口座などと自動で同期されるとは言え、勘定科目については当初キーワード単位でのルールで仕訳を行っていた。1つの例だが、「さくらインターネット」や「インターネットイニシアティブ」といったクラウド・インフラ企業への支払いが「インターネット」というキーワードをもとに「通信費」として仕訳される一方、本来ほかの勘定科目に仕訳すべき内容も「●●インターネット」という名称がついていた場合、「通信費」となってしまっていた。これを防ぐには、結局のところ、最終的に人間が勘定科目を確認・選択する必要があった。

AIを用いた自動仕訳機能のイメージ

AIを用いた自動仕訳機能のイメージ

だが仕訳登録AIを導入するより最適な勘定科目を推測できるようになるという。AIは学習エンジンを搭載しており、利用ユーザーが増えれば増えるほどにその精度は高まるのが特徴だ。開発を担当したfreee執行役員プロダクトマネージャーの坂本登史文氏によると、その精度は現在70%弱。今後は数カ月のベータ版運用を経て、90%程度まで精度を引き上げていく予定だという。

freeeのスタッフは現在200人以上。エンジニアの10%はラボのメンバーとしてAI関連の開発に従事しているという。デジタルインファクトの調査やMM総研の調査によると、freeeはクラウド会計、給与計算でシェア1位だという(とは言えそもそもクラウド化率が会計で11.1%、給与計算で12.5%という数字だ)。freee CTOの横路隆氏はこの数字を挙げて、「(freeeには)個人事業主や中小企業のデータが集まっている。このデータを利用すればイノベーションを起こせる余地はまだまだある。また我々は会社設立から会計、給与計算までの機能を提供している。パッケージされた業務システムを1つ1つ最適化するのでなく、すべてのサービスを1つのデータとして最適化できることは強み」と語る。

今後ラボでは、AIをもとにした不正データの検知や、チャットサポートの自動化、消し込み作業の支援といった経理作業の効率化に向けた機能を提供していく。また将来的には資金繰りのシミュレーションや経営分析など、経営意思決定の支援に向けた機能を提供していく。

ソフトバンクの次期CEOと目されていたニケシュ・アローラが退任

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今日、東京のソフトバンク本社は忙しい1日になった。フィンランドのモバイル向けゲーム・メーカー、Supercellの株式を売却することは事前に予想されていたが、ソフトバンク本社の代表取締役、COOを務めるニケシュ・アローラが退任することが発表されたのは驚きだった。アローラは孫正義によってソフトバンクのCEOの後継者に選ばれたものと考えられてきた。

ソフトバンクに加わる以前、Googleの上級副社長を務めた経歴を持ち、 昨年はサンフランシスコで開催されたTechCrunch Disruptで講演したアローラだが、今年に入ってからは匿名のソフトバンク株主グループからの圧力にさらされていた。このグループは「アローラは報酬が高額すぎ、パフォーマンスが低すぎる」としてアローラの解任を求める書簡をソフトバンクに送っていた。

こうした反対はあったものの、アローラの地位は安泰と思われた。昨日、ソフトバンクはアローラについて内部調査を行った結果、株主グループの書簡に述べられた批判には「根拠が認められなかった」と発表していた。 こうした信任を得たにも関わらず、ソフトバンクの役職から退くことが発表された。アローラはインド生まれで、年俸7300万ドル、おそらくは世界でも最高給の企業トップの1人と報じられていた。

ソフトバンクは短い声明を出し、CEO交代の時期に関してファウンダー、現CEOの孫正義とアローラの間で意見の相違があったことが退任の理由であると示唆した。〔日本版:以下は日本文の声明(PDF)から引用〕

当社代表取締役社長の孫正義は、アローラを有力な自身の後継者候補として考えていましたが、数多くのテーマに取り組む中で、当面は当社グループのトップとして指揮を執り続ける意向です。一方で、アローラは、数年のうちに孫に代わって当社グループのトップとして指揮を執りたいとの意向でした。こうした両者の時間軸のずれを踏まえ、アローラは当社の代表取締役及び取締役を任期満了に伴い退任し、次のステップに進むこととなりました。

アローラはソフトバンクのインドにおける大型投資を主導していたようだ。ソフトバンクははOla、Snapdeal、OYO Roomsなどのインド企業に加えて、アメリカのスタートアップにも投資している。こうした投資の責任者であったアローラが退任した後、ソフトバンクの投資戦略がどうなるのか注目される。

最近ソフトバンクはいろいろなな面で転換点を迎えている。Supercellの株式を86億ドル前後で売却、これに加えて別のゲーム企業、ガンホー・オンライン・エンターテインメント株式の大半も売却した。さらに史上初となったAlibaba株式の売却では79億ドルを手にしている。これらの株式売却は孫正義の“SoftBank 2.0”というビジョンに基づくもので、売却代金の大半は既存の負債の返済に充てられるらしい。同グループの負債は3月末日の時点で最高11兆9000億円(1070億ドル)に上っている。負債がこれほど巨額になったのはアメリカのモバイル・キャリヤ、Sprintの買収費用に関連があるとみられる。

今回、アローラはここ2年ほどの行動から大きく方向を変えた。アローラはソフトバンクグループの取締役に就任したのを機に4億8300万ドルのソフトバンク株式を「個人的な賭け」として購入している

なおアローラ自身がツイートで若干の新たな情報を確認している。それによると、孫正義が(おそらくは)当初アローラとの間で合意した時点よりも長くCEOを務めようとするようになったことが退任の引き金だったもようだ。

マサはさらに5-10年間CEOを続ける。(私はその意思を)尊重する。多くを学べた。詳細な調査の結果、取締役会からクリーンと判定された。新しい段階に進む時期だ。―ニケシュ・アローラ

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

メルカリで自宅発送が可能に、出品者の心理的ハードルを下げる

メルカリが6月20日、自宅から発送できるサービスを開始した。ヤマト運輸との提携で提供する配送サービス「らくらくメルカリ便」の利用者が対象。自宅にいながら出品できるようになったことで、「出品=面倒」という心理的なハードルが下がりそう。

従来の「らくらくメルカリ便」は、ヤマト運輸の営業所かファミリーマートに商品を持ち込む必要があった。今後は出品時に「らくらくメルカリ便」を選択し、配送時にアプリ内で「集荷」を選べば、ヤマト運輸のセールスドライバーが自宅まで商品を取りに来てくれる。

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「らくらくメルカリ便」の「宅急便」と「宅急便コンパクト」が対象。集荷時の料金は、商品持込時の料金と比べて、それぞれ30円高くなる。

サイズ別の料金(カッコ内は持ち込み時の料金)

宅急便コンパクト :410円(380円)

宅急便60サイズ :630円(600円)

宅急便80サイズ :730円(700円)

宅急便100サイズ:930円(900円)

宅急便120サイズ:1030円(1000円)

宅急便160サイズ:1530円(1500円)

「らくらくメルカリ便」は全国均一の料金設定で、ヤマトの通常料金より最大69%オフで利用できるのが特徴。名前や住所を開示せずに匿名で取り引きでき、配送トラブル時にはメルカリが商品代金を全額補償する。

いままでメルカリで1万円以上売り上げた人は177万人ーー。メルカリが6月16日に公開したデータだが、僕もその1人で「らくらくメルカリ便」愛用者でもある。落札後にアプリで生成したQRコードを店頭の端末にかざせば、宛名書き不要、しかもレジ会計不要で発送できるのは、僕にとって「出品=面倒くさい」という印象が大きく変わった。

ただ、唯一不満だったのは、店頭まで商品を持参しなければならなかったこと(重量7〜8kgの漫画全巻セットを運ぶのは、なかなかの重労働だ)。自宅発送が可能になることで、大きな荷物が送りやすくなるし、小さな子どもがいて外出できないという人も、気軽に出品できるようになりそうだ。

熊本発「シタテル」はアパレルの低価格・小ロット生産を実現する、全国の縫製工場と提携で

消費者の趣味が細分化する中、アパレル業に求められるのは多品種・少量生産。そんな時流に乗って、アパレルからじわりと熱視線を集めるサービスがある。オリジナル商品を作りたいアパレルブランドやデザイナーと、中小・零細の縫製工場とマッチングする「SITATERU(シタテル)」だ。

利用しているのは、個人デザイナーだけでなく、ビームスやユナイテッドアローズといった有名セレクトショップに商品を卸すブランド、パリコレに参加するハイブランドまで。会員登録数は前年比300%の約1800事業者と急増し、流通総額は5億円に上る。

中小・零細の繊維工場をネットワーク化

シタテルは全国120以上の縫製工場と提携し、これまで難しかった15〜100枚単位の発注を可能にした。アパレル事業者にとって小ロットの発注は単価が高くつくため、数百枚単位で発注するのが通例だった。

アパレル事業者は、電話かチャットで作りたい服を伝えると、目安の料金がわかる。生地が決まるとシタテル側でパターン(型紙)を作成。その後、サンプルを送ってもらい、問題がなければ本生産に移る流れだ。

アトリエは「マイ・アトリエ」という会員サイトを通じてシタテルとやりとりをする

アパレル事業者は「マイ・アトリエ」という会員サイトを通じてシタテルとやりとりをする

工場とのマッチングは独自アルゴリズムを使う。

データベース上には縫製レベル、対応可能アイテム、料金、リードタイム(発注から納品までの期間)、稼働状況といった情報があり、アパレル事業者の要望に応じて最適な工場をマッチングする。

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ここで気になるのが、縫製品質。メイドインジャパンの縫製技術は海外に比べると高いと言われるが、実際のところはどうなのだろう。この疑問についてシタテルの河野秀和社長はこう答える。

「総じて品質は高いが、工場ごとに差があるのも事実。そのため、工場に提出してもらうサンプルを元に、シタテルが5段階で評価している。これによって、縫製技術の難易度に応じた工場をマッチングできるようにした」

シタテル社内には、アパレル事業者の要望を聞くコンシュルジュや、デザインをCADでデータ化するパタンナーも在籍。すぐに稼働できる工場も把握していることから、通常3カ月かかるリードタイムを最短6日に短縮しているという。

シタテルのメンバー(右から2番目が河野社長)。お揃いのコートはもちろん、シタテルで作ったものだ。おしゃれ感が漂う

シタテルのメンバー(右から2番目が河野社長)。お揃いのコートはもちろん、シタテルで作ったものだ

工場の代わりに新規開拓

大手アパレルが海外に生産拠点を移したことで、国内の縫製工場は仕事が激減。特に営業力がない零細・中小の工場は新たな仕事の受注ができず、苦境にあえいでる。「国内の縫製工場は15年前の1万5000から、5000ほどに減ってしまった」と河野氏は言う。

「最近の円安傾向と中国の人件費高騰で、国内工場への回帰も進んだ。とはいえ、工場には繁忙期と閑散期があり、すべての工場が1年中稼働しているわけではない」

稼働していないなら小ロットでも受注すればいいと思うかもしれないが、工場側からすると効率が悪く、旨味のある仕事ではない。そこでシタテルは、工場が受注時に経由する卸売や企画会社を迂回することで、小ロット生産でも利益を確保できるようにした。

提携工場の中には、ふだんはレディース専門の縫製しかやっていなかったが、その技術をメンズ商品で生かすようなケースが少なくない。営業力のない工場にとってシタテルは、非稼働の時間を埋めるだけでなく、新規顧客を開拓してくれる存在ともいえる。

ディオールやコム・デ・ギャルソンといったハイブランド、有名セレクトショップに卸すブランドが発注する縫製工場とも提携する

ディオールやコム・デ・ギャルソンといったハイブランド、有名セレクトショップに卸すブランドが発注する縫製工場とも提携する

震災復興を後押しする熊本発スタートアップ

シタテルは2014年3月に創業した熊本県のスタートアップだ。

河野氏は熊本出身。前職は地元企業の相談に乗る経営コンサルタントだった。そこで気づいたのが、小ロットで商品を作りたいアパレル事業者が多いにもかかわらず、需要に応える工場がなかったこと。

この構造を変えようと、アパレルと縫製工場をつなぐ、現在のビジネスモデルにたどり着く。創業当初は地元の工場と提携し、全国から注文を受けては縫製を依頼。現在も熊本県内34の縫製工場と提携している。

4月の熊本地震直後は、県内で多くの提携工場が操業を停止したが、徐々に生産を再開。パリコレに参加する世界的な国産ブランド「アンリアレイジ」が県内の縫製工場に依頼するなど、復興を後押ししている。

アンリアレイジがシタテルで作ったコート。生地にはコード(!)が埋め込まれていて、ドットや市松模様、花柄やらが浮かび上がるそうだ。すごい

アンリアレイジがシタテルで作ったコート。生地にはコード(!)が埋め込まれていて、ドットや市松模様、花柄やらが浮かび上がるそうだ。すごい

シリーズA調達でアパレル・工場向けアプリ開発へ

6月17日にはオプトベンチャーズと三菱UFJキャピタルを引受先として、シリーズAとなる第三者割当増資を実施。金額は非公表だが、数億円程度と見られる。

調達した資金では、アパレルと工場が必要事項を入力する専用アプリの開発、双方がやりとりするクラウドプラットフォームの強化などにあてる。

シタテルは2014年10月にも、三菱UFJキャピタル、日本ベンチャーキャピタル、リブセンスから資金調達を実施。リブセンスとクックパッドがスタートアップを支援するプログラム「STARTUP50」の第一号のファンディング先でもある。

エウレカがパパママ社員に優しい新人事制度、英会話全額負担や「pairs婚」手当ても

恋愛マッチングアプリ「pairs」を運営するエウレカが15日、福利厚生プログラム「baniera(バニエラ)」を導入した。これまでも一般的な福利厚生制度はあったが、結婚や出産、育児に関する支援を中心に充実させた。主な内容は以下の通りだ。

バニエラとは、古代ギリシャ語で「お風呂」の意味。アルキメデスが浮力の原理を見つけた場所で、そのとき「エウレカ!(わかったぞ!)」と叫んだと言われている。「エウレカでのひらめき・成長を支える場所」という意を込めて、バニエラと名付けたのだという

バニエラとは、古代ギリシャ語で「お風呂」の意味。アルキメデスが浮力の原理を見つけた場所で、そのとき「エウレカ!(わかったぞ!)」と叫んだと言われている。「エウレカでのひらめき・成長を支える場所」という意を込めて、バニエラと名付けたのだという

・オンライン英会話学習の全額負担
米国とのやり取りがある社員、月間受講日数が15日以上の社員にはレッスン受講料を全額負担する。

・海外カンファレンス参加費用負担
WWDC/Google IO/F8の参加者に飛行機代、ホテル代、カンファレンスチケット代を全額負担する。

・結婚祝い
5万円+上限20万円までの家電をプレゼント。乾燥機付き洗濯機やお掃除ロボットなどで、家事の負担を減らしたいという思いがあるという。

・Happy pairs婚
自社アプリ「pairs」を通じて結婚したメンバーには、結婚祝いに加えて5万円分のギフト券をプレゼントする。

・出産お祝い金
10万円を支給。男性社員には、出産時に家族に寄り添えるように3日間の「出産応援休暇」を付与する。

・育休中1on1/育休中でも会議出席
産休・育休中も月例の上長面談を継続。育休中でも全社会や重要会議に参加できる。どちらも復職を支援することが狙いで、Skypeでの参加も可能。

・banier for ペット
ペットを病院に連れて行く際、年3回の半休を取得可能。ペットが死亡した場合には2日間の休暇を付与する。

エウレカのオフィスでは創業当初から、副社長の西川順さんの愛犬が会社の成長を見守っているそうだ。

エウレカにはCDO(Chief Dog Officer)の「ジョブ」がいる。共同創業者・西川順さんの愛犬で、創業当初から会社の成長を見守っているそうだ。

メガベンチャーの福利厚生のいいとこ取り

エウレカは2008年11月に設立。日本と台湾で400万人が利用するpairs、350万ダウンロード超のカップル向けコミュニケーションアプリ「Couples」を運営する。2015年11月には、MatchやTinderなどのマッチングサービスを世界展開する米IACグループの傘下となった。

新人事制度は従業員が100人に達したことをきっかけに、安心して働ける仕組みを整えた。家族向け制度の内容を考案したのは、まもなく社内で育休取得第1号となる人事総務部の進真穂さん。「メガベンチャーの福利厚生のいいとこ取りをして、私が欲しいものを作りました」と語る。

「エウレカは平均年齢が28歳。出産や育児中の社員は少ないですが、30代で子供を持つ社員も増えましたし、これから必要な人も出てきます。充実した福利厚生があれば、社員が安心して働けるだけでなく、会社としてもアクセルを踏んで事業拡大しやすくなると思います」

バニエラではこのほか、有料セミナー参加費負担や自己負担200円の育児シッター制度、待機児童対策の引越し金援助などがあり、今後も社員の要望に応じて随時充実させる。現在は従業員の健康のために、営業時間中に社内でヨガを実施することを検討している。

スタートアップの福利厚生としては、フリマアプリのメルカリが産休・育休の8カ月間も給与100%を保障する「merci box」が話題になった。大企業に引けをとらないスタートアップの福利厚生は、これからも増えていきそうだ。

マネーボール理論を企業でも、ビズリーチが採用管理システム「HRMOS」公開

映画「マネーボール」といえば、貧乏球団のアスレチックスを強豪チームに変えた実在のGM(ジェネラルマネージャ)、ビリー・ビーンの活躍を描いた物語である。

ブラッド・ピット演じる主人公のビリーは、野球のデータを統計学的に分析して、選手の評価や戦略を決める「セイバーメトリクス」という手法を採用。これによって、資金不足にあえぐ弱小チームを、ア・リーグ記録の20連勝を遂げるまでに育てあげた。

このセイバーメトリクスを企業人事で実践しようとしているのが、転職サイトを手がけるビズリーチだ。

ビズリーチが発表した戦略人事クラウド構想

ビズリーチが発表した戦略人事クラウド構想

人事業務のムダをなくす

人材の採用から育成、評価までをクラウド上で最適化する構想「HRMOS(ハーモス)」を6月14日に発表。第一弾として、求人媒体ごとの採用状況を一元管理するサービス「HRMOS 採用管理」をスタートした。

例えばリクナビやマイナビといった求人媒体からCSVファイルを取り込むと、ダッシュボード上で応募者のステータスを一覧表示する。ビズリーチの転職サイト経由の応募者情報は自動的に、人材紹介エージェントや社員紹介による応募者情報は手動で入力すれば、ダッシュボード上で一元管理できる。

設定済みの面接や要対応メールの有無などのタスクをダッシュボードでわかりやすく表示する

ダッシュボード上では、「書類選考」「最終面接」「内定」といった応募者のステータスがわかり、人事担当者はやるべきタスクがひと目でわかる。応募者とのメールのやり取りもHRMOS上で完結する。

応募者の情報や面接の進捗状況をExcelで管理して、そこからメールアドレスをコピペして連絡する……といった人事業務にありがちな面倒な事務手続きから開放されそうだ。

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応募者ごとの選考ステータス

応募経路別の採用単価をグラフ化する機能もある。求人媒体や人材エージェント、社員紹介によるリファラル採用などで、一人あたりの採用にかかるコストを比較することで、もっとも効率のよい採用方法に注力できる。

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応募経路別の選考状況

面接官が応募者に出した評価もグラフ化する。面接官の山田さんは内定者に「A評価」を出す傾向があるが、面接官の鈴木さんは内定者に「C評価」を出す傾向があるので、「山田さんの判断を重視すべき」といった意思決定を支援してくれそうだ。

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面接官別の選考評価レポート

企業経営でマネーボールの理論は実践できるか

採用管理サービスに続き、第二弾として「HRMOS 勤怠管理」を今秋、第三弾として「HRMOS 業績管理」を来春にリリースする。これらのモジュールが連動しながら、自社で活躍する人材の行動や成果を人工知能が学習し、戦略的な人材活用の意思決定を支援するという。

ビズリーチの南壮一郎社長は「人事関連のデータを活用した企業経営が実現できる」と意気込む。

「◯◯さんは現在、どれだけ会社に貢献していて、採用時はこんなパラメータだった、ということがわかるようになる。自社で活躍する社員のデータと照らし合わせることで、高い実績を残すハイパフォーマーの採用や育成にもつながる。」

とはいえ、企業の業績は市場環境や競合などの外部要因で左右するもの。南氏も「経営は野球ほどシンプルな指標で分析できない」と認めるが、人事領域では「採用したら終わり」で完結しているのが問題点だと指摘する。

「営業やマーケティングでは効果検証を行うにもかかわらず、なぜか人事領域は例外。採用した人材が3〜5年後にどんな成果を出したかを数値化し、次回の採用の改善に役立てている企業は少ない。」

プレイヤーが乱立するATS業界

HRMOSをリリースするにあたっては、セールスフォース・ドットコムと業務提携し、機能面での連携を視野に入れている。今年3月に実施した総額37億3000万円(37.3億円で「みなみ」ということらしい)の資金調達では、Salesforce Venturesからも投資を受けている。

スタート時は特別価格として月額5万円で提供。すでに試験提供を開始していて、スタートアップ業界ではRettyやSansan、ラクスルなどが導入済み。2019年6月までに、ビズリーチの利用企業を中心に2000社以上の導入を目指すという。

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ビズリーチの南壮一郎社長

クラウド型採用管理システムは、ATS(アプリカント・トラッキング・システム)と言われ、米国では大企業向けのOracle「Taleo」やSAP「SuccessFactors」が先行、スタートアップではairbnbやsnapchatが導入することでも知られる「greenhouse」がある。

国内でもTaleoやSuccessFactorsが先行するが、古株では2005年に開始した「リクログ」、2008年に開始した「ジョブスイート」、直近3年では「jinjer」や「talentio」、シンガポールに本拠を置く「ACCUUM」も日本市場に進出するなど、新興サービスの参入も相次ぐ。

ちなみにマネーボールの舞台となったアメリカでは、人事にもビッグデータを活用するのは当たり前という風潮になってきている。このあたりの話は過去記事「経験や直感による採用はもう古い、人材採用に広がるデータ・ドリブンなアプローチ」に詳しいので、興味のある方は読んでほしい。