Facebookは新しい機械学習技術で870万件の児童搾取ポストを削除したと主張

Facebookが今日(米国時間10/24)、前四半期には新しい技術により、児童搾取の規則に違反している870万件のコンテンツを削除した、と発表した。同社が昨年来開発してきた新しいAIおよび機械学習の技術は、それらのポストの99%を、誰かがそれを報告する前に削除した、とFacebookの安全性担当のトップAntigone Davisがブログ記事で述べている。

その新しい技術は、児童のヌードなどの搾取的コンテンツをそれらがアップロードされた時点で見つけ、そして必要ならば、写真と説明文書をNational Center for Missing and Exploited Children(失踪および搾取された児童のための全国センター)に報告する。Facebookはすでに、写真マッチング技術を使って、新たにアップロードされた写真を児童搾取やリベンジポルノの既知の画像と比較していたが、新しいツールは、それまで特定されていなかったコンテンツ(既知でないコンテンツ)がFacebookのプラットホームから広まることを防げる。

その技術は完全ではなく、多くの親たちが、自分たちの子どもの無害な写真が削除された、と不平を言っている。Davisはブログ記事の中でそのことを認め、“虐待‘かもしれない’ものでも排除する方針なので、子どもがお風呂に入っているような一見無害で性的でないコンテンツも対象にしている”、と書いている。そしてこの“幅広いアプローチ”のために、前四半期には大量のコンテンツが削除された、という。

しかしFacebookのコンテンツ調整が完全には程遠くて、多くの人たちが、それは悉皆的でも正確でもないと思っている。家族のスナップ写真だけでなくFacebookは、ベトナム戦争の悲惨さの象徴となった1972年のPhan Thi Kim Phucの、“Napalm Girl”(ナパームの少女)と呼ばれている写真まで削除した。最重症のやけど第三度熱傷を負った少女は、村を南ベトナムのナパーム弾で焼かれ、裸で走って逃げていた。FacebookのCOO Sheryl Sandbergは、後日、その写真を削除したことを謝罪した

昨年、同社のコンテンツ調整ポリシーは、イギリスの国の機関である児童虐待防止協会から批判された。その団体は、Facebookは独立の調整機関の下に置かれるべきであり、ポリシーへの違反には罰金が課せられるべきだ、と主張した。Facebook Liveのローンチもときには同社とその調整者たち(人間とソフトウェアによるモデレーター)にとって逆風となり、性的暴行や自殺、殺人などのビデオが批判された。生後11か月の赤ちゃんが父親に殺されるビデオすら、放送されてしまった。

しかしソーシャルメディアのコンテンツの調整は、AIによる自動化が人間労働者の福利に貢献しうることの顕著な好例である。先月、FacebookのコンテンツモデレーターだったSelena Scolaは、何千もの暴力的な画像を調べさせられたために心的外傷後ストレス障害(post-traumatic stress disorder, PTSD)に陥ったとして同社を告訴した。モデレーターの多くは契約社員だが、その多くが、彼らの仕事の精神的重荷について語り、Facebookは十分な教育訓練とサポートや金銭的補償を提供しない、と言っている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

AIアプリケーション開発プラットフォームのPaperspaceが1300万ドルを調達

Paperspaceは、GPUやその他の強力なチップに支えられた、ソフトウェア/ハードウェア開発プラットフォームを使って、人工知能ならびに機械学習アプリケーションの開発者たちを支援することを狙っている。本日(米国時間10月16日)、このY Combinatorの2015年冬クラス卒業生は、1300万ドルのシリーズAを発表した。

ラウンドを主導したのはBattery Venturesであり、参加したのはSineWave Ventures、Intel Capital、Sorenson Venturesである。これまでの投資家Initialized Capitalも参加した。本日の投資によって、投資総額は1900万ドルに達した。

Battery VenturesのゼネラルパートナーであるDharmesh Thakkerは、現在のPaperspaceの立ち位置を、有利なものとみている。AIや機械学習が始まると、開発者はそれを処理するために一連のツールやGPU搭載ハードウェアを必要とする。「主要な半導体やシステム、ウェブコンピューティングのプロバイダーたちは、深層学習を真にデータ駆動組織から利用可能なものにするために、クラウドベースのソリューションと連携ソフトウエアを必要としています。そしてPaperspaceはその提供を助けようとしているのです」とThakkerは声明の中で述べている。

Paperspaceはこの点に貢献するために、独自のGPU搭載サーバを提供するが、共同創業者でCEOのDillon Erbは、大きなクラウドベンダーと競争しようとはしていないと言う。彼らは、顧客に対してハードウェアソリューション以上のものを提供する。昨年の春同社は、AIや機械学習のワークロードの展開と管理を容易にする、サーバレスツールのGradientをリリースした

Gradientをサーバレス管理ツールにしたことで、顧客は基盤となるインフラストラクチャについて考える必要がなくなった。その代わりに、Paperspaceが全ての必要なリソースを顧客のために用意するからだ。「私たちは多くのGPUコンピューティングを行っていますが、現在私たちが注力し投資家の皆さんに今回の資金調達で買っていただいたのは、ソフトウェアレイヤーを構築し顧客のために多くのインフラストラクチャーを抽象化することのできる、とてもユニークなポジションに私たちがいるという点なのです」とErbはTechCrunchに対して語った。

彼は、インフラの一部を構築することは初期の重要なステップだったが、クラウドベンダーたちと競争しようとはしていないと語る。彼らは、開発者たちが複雑なAIならびに機械学習アプリケーションを構築することを助ける一連のツールを提供しようとしているが、それが実行されるのは彼ら自身のインフラストラクチャーの上であろうと、Amazon、Google、あるいはMicrosoftなどの主流クラウドプロバイダーの提供するインフラストラクチャーの上であろうとも構わないのだ。

さらには、GPUの利用に止まらず、AIや機械学習ワークロードをサポートするために開発された強力なチップの利用もサポートする。おそらくそれが、Intelがこのラウンドに投資家として参加した理由の1つだろう。

彼はこの資金調達が、彼らが2014年に着手し、Y Combinatorを卒業する際に立ち上げたこの仕事に対する、一種のお墨付きだと語った。その当時は、プレゼンテーションの中で、そもそもGPUは何かというところから説明する必要があったのだ。今ではもはや彼がそこから説明する必要はないが、この分野にはまだまだ大きな成長の余地が残されている。

「これは本当に、未着手のチャンスなのです、私たちは皆が、インテリジェントなアプリケーションの開発に、インフラストラクチャーを心配することなく着手できるような、頼りになるプラットホームになりたいと願っています」。1300万ドルを手にした彼らは、その道を進んでいると言っても間違いないだろう。

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(翻訳:sako)

画像クレジット: metamorworks / Getty Images

企業のクラウド化を助けるServiceNowが自然言語検索のFriendlyDataを買収、データ駆動の裾野を広げる

企業のクラウドサービスの導入や管理を助けるServiceNowが今日(米国時間10/10)、FriendlyDataの買収を発表した。これにより同社のNowプラットホーム上のアプリケーションが、自然言語による検索をできるようになる。2016年に創業されたFriendlyDataの自然言語クエリ(natural language query, NLQ)技術により、企業顧客は、専門用語を知らないユーザーでも技術的な質問ができる検索ツールを、作れるようになる。

FriendlyDataのNLQ技術は、ユーザーが何を言おうとしているのかを推察し、答をテキストや、分かりやすい視覚化データで提供する。ServiceNowによると、同社はFriendlyDataの技術をNow Platformに統合して、そのサービスメニューの充実を図る。同プラットホーム上には今、企業のITや人事、セキュリティ、カスタマーサービスの管理、などのアプリケーションがある。FriendlyDataの技術は、デベロッパー用のプロダクトや、ServiceNowのパートナーからも利用できるようにする。

ServiceNowのdevops担当SVP Pat Caseyが、声明で述べている: “ServiceNowはNow PlatformにNLQを導入して、企業が技術的質問を日常的な英語でできて、答をすぐにもらえるようにする。これによって誰もがデータに基づく意思決定をできるようになり、生産性の向上と企業のより速い成長に資することができる”。

ServiceNowはこれまでも、さまざまなAIツールで企業顧客におけるサポート業務の円滑化を図ってきた。FriendlyDataの買収も、その一環だ。たとえば同社は5月に、チャットボット構築ツールVirtual Agentを立ち上げたが、これによって同社の企業顧客は、SlackやMicrosoft Teamsのようなツールを内製でき、機械器具の購買リクエストなど、ルーチンのインクワイアリを自動的に処理できるようになる。同じ時期に同社は、チャットボットにNLP(自然言語処理)を導入しているParloを買収した

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AppleにもGoogleのスクリーンコールのような機能が必要だ

Googleは、携帯電話を所有する人を悩ます問題の解決策を提供することでAppleを出し抜いた。その問題とはスパムコール(迷惑電話)だ。Googleの旗艦AndroidスマホPixel 3は、Googleアシスタントを使ってかかってきた電話をスクリーニングするという、この手のものとしては初のスマホとなる。このスクリーニングサービスでは発信者の電話のリクエストをリアルタイムに画面に表示し、これによりユーザーは電話をとるべきかどうかを決められる。

Googleの新たなハードウェアについては発表前からかなりのリークがあったが、このスクリーンコールと、ユーザーに代わってレストラン予約するサービスDeplexの提供開始は、昨日行われたGoogleのハードウェアについてのイベントで大きなサプライズだった。

間違いなく、これらは嗜好性の強い新たなカメラの機能より重要な開発だーGoogleの新たなスマホに加わったグループセルフィーやトップショット機能がいかにクールだとしてもだ。

Appleの端末にはこうしたコールをスクリーニングする機能はなく、あるのはサードパーティの受信ブロックアプリのみだーこのアプリはもちろんAndroid携帯でも利用できる。

現在のところSiriはユーザーに代わって電話をとり、かけてきた相手に丁寧に主旨を尋ね、相手の反応を即座に表記するということはできない。早くキャッチアップする必要がある。

2019年、かかってくる電話の半分がスパムになる

GoogleのDeplex技術に基づくスクリーンコールはスマートデバイスにとって大きな一歩となる。というのも、スマートデバイスはさまざまなタスクをこなすのに何かを尋ねたり、その日のニュースや天気情報を調べたりするだけのものでなく、電話のアシスタントが現実の世界の問題に対処するのを手伝うところとなる。

テーブルに空きがあるかどうかを聞くためにレストランに電話をかけるのに加え、アシスタントは増えつつあるスパムコールから我々を守ってくれる。

スパムコールはすべてのスマホユーザーに関わる問題であり、これまでのところモバイル業界が解決できていない大きな問題だ。

来年、携帯電話にかかってくるコールの半分が詐欺電話となる。こうした詐欺電話はここ数カ月、悪質さを増している。

詐欺電話の発信元は往々にしてIRS(国税庁)、銀行、政府機関などと偽る。そして彼らは、あなたが法的問題を抱えているかのように言う。あるいは、誰かがあなたの銀行カードを盗んだと言う。または、支払うべき税金を払っていないと言う。しかも、彼らはあなたが電話をとるように仕向けようと、ローカルの電話番号が表示されるよう、電話番号をだます手口を使っている。

米国の勧誘禁止電話登録はこの問題をまだ解決できていない。FCC(連邦通信委員会)の大きな罰金が設けられているにもかかわらず、詐欺電話は増えるばかりだ。

AIがスパム発信元をさばく

その解決策として、GoogleはAIに目をつけた。

このシステムでは、予約の電話をかけたり、電話を取って開口一番に“どなたですか?”と尋ねたりするなど、我々がしたくないような仕事をより自然にこなすようにデザインされている。

昨日Googleが説明したように、Pixelデバイスを持っている人は、ボタンを押してかかってきた電話を新たなサービスにつなげることができる。Googleアシスタントがあなたに代わって電話をとり、「こんにちは。あなたが電話をかけた相手はGoogleのスクリーニングサービスを使っていて、この会話はコピーされています。お名前と電話の目的をおっしゃってください」と話す。

そして発信者の応答はリアルタイムに端末のスクリーンに表示される。

この対応表示は現在のところ保存されないが、将来的にはコール履歴に保存することができるようになる、としている。

コールの対応について、ユーザーは発信者と会話するのか、電話を切るのか、いくつかの用意されたボタンを押して操作できる。デモやサポート説明によると、「どなたですか?」「こちらからかけ直します」「詳細を教えてください」「理解できません」「急を要しますか」といった応対が含まれる。

また、デモにあるように「Report as spam(スパムとして報告する)」ボタンを押して、アシスタントに「この電話番号をあなたの連絡先リストから除外してください。どうも。それでは」と言わせることができる。

Googleボイステクノロジーはかかってくる電話をスクリーニングできる一方で、スクリーンコールは発信者に名前を尋ねる以上のことができる。穏便にコールをさばくという、ワンランク上のものだ。

これらすべてAIを使ってデバイスで行える。Googleいわく、Wi-Fi接続やモバイルデータは使用しないとのことだ。

スクリーンコールが浸透するにつれ、Googleは効率的にスパムコールの発信元のデータベースを構築できるようになる。そうすると、将来OSレベルの機能でユーザーに代わってスパムコールやテレマーケターを確実にブロックできるようになるはずだ。

「あなたがテレマーケターと話す必要はなくなる」。GoogleプロダクトマネジャーのLiza Maは、昨日のイベントで拍手喝采を浴びた後こう語ったー静かな記者発表の場で、出席者が拍手した数少ないシーンの一つだった。

Googleにはより良いAI電話がある

スクリーンコールと、より広いサービスのDuplexのニュースはAppleに向けて放たれた砲弾だ。

スマホのハードウェアは基本的に十分良いもので、そうなってから久しい。AppleとGoogleの最近のスマホでは素晴らしい写真も撮れる。カメラのさらなる開発は平均的なユーザーというより写真に熱心な人向けのものだ。電話そのものもよし、カメラもよし。では、電話に他に何ができるか。

スマホでの次のバトルはAIテクノロジーについてだ。

Appleはそれに気づいている。

6月、Appleは“A.I. phone”なるものを発表したーデバイスをパーソナライズし、より良いアシストをするためにSiriの賢さを浸透させたiPhoneだ。このiPhoneでは、ユーザーはタスクをオートメーション化するためにA.I.パワーを使ったワークフローをつくったり、彼らが開発したコマンドでより自然にSiriに話しかけたり、アプリに邪魔するようなノーティフィケーションを送らせる代わりに提案をさせたりすることができる。

しかしSiriができることのほとんどが、ユーザー側の操作に頼っている。

アプリをコントロールするためにカスタムのSiri音声コマンドを録音する(使うためにはそのSiriキャッチフレーズが何だったかを覚えておかなければならない)。ワークフローは、別のSiriショートカットアプリに一緒にピンしとかなければならない。

確かに、これらはiPhoneユーザーにとって素晴らしい機能ではあるが、シームレスという点では正確には自動A.I.テクノロジーではない。それは、A.I.がiPhoneを使う大きな意義になるよう、Appleがとる最初のステップとなる。

一方、スクリーンコールはユーザーを教育したりマニュアル操作したりしする必要がないA.I.の活用法だ。たとえ、存在を知らなくても、電話が鳴った時に“screen call”ボタンを押すというのは、かなり単純だ。

しかもこれはPixel 3の機能、ということだけではない。

Googleによると、これらの機能をまず最初に使えるのは米国のPixel 3ユーザーとなる。そして来月にも古いPixelデバイスに対象を広げる(英語のみ)。しかし推測するに、初期のテストが終わった時、Androidそのものにも搭載されることになるだろう。

結局のところ、モバイルOSバトルが今後A.I.に移るとすれば、A.I.の発展をGoogleのハードウェアデバイスにだけ縛り付けておくというわけにはいかない。

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(翻訳:Mizoguchi)

コードよりもデータが重要なSoftware 2.0の時代に向けて企業を助けるMachinifyが$10Mを調達

データは価値を生み出す。ただしそれは、データへのアクセスの仕方と、その正しい読み方を知ってる企業に限る。そしてその両方をお助けするのが、Machinifyだ。人工知能企業である同社は今日(米国時間10/8)、Battery VenturesがリードするシリーズAのラウンドで、1000万ドルを調達した。これには、GV(元Google Ventures)とMatrix Partnersが参加した。

MachinifyのファウンダーでCEOのPrasanna Ganesanはこう語る: “われわれの基本的な考え方として、今日の企業は大量のデータを集めているが、それを経営の意思決定に活かして効率を上げているところはきわめて少ない、という認識を持っている”。

Machinifyを利用する企業は、そのシステムにローデータを放り込み、データを何に利用したいのか(例:売上のアップ)を指定する。するとマシンが、では何をどうすべきかを示唆する。また、過去の意思決定に基づいて、今後の方向性を決める。

Machinifyを利用する好例が、ヘルスケアの分野にある。そこでは医療機関や保険企業などがMachinifyのツールを利用して請求処理の精度とスピードを上げている。そしてその結果もちろん、売上の増加やコスト削減を実現している。

GVのゼネラルパートナーAdam Ghoborahは、声明でこう述べている: “企業がいわゆるSoftware 2.0の時代に対応していくためには、解決しなければならない重要な問題がいくつかある。Machinifyはそれらのひとつひとつに的(まと)を絞って最適解を見つける。Software 2.0は、もはや人間が書く従来的なソフトウェアではなくて、AIのモデルと企業の大きなデータセットによって動的に駆動される。だからSoftware 2.0は、これまでとは完全に違うアプローチを要求するが、Machinifyには、そこから価値を取り出すための鍵がある”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

“ディープラーニングで解決できない課題”に独自AIで挑むハカルスが1億円を調達

“スパースモデリング”という技術を機械学習に応用し、独自のAIソリューションを開発するハカルス。同社は10月5日、イノベーション・エンジン、加賀電子、PALTEKを引受先とした第三者割当増資により総額1億円を調達したことを明らかにした。

ハカルス代表取締役CEOの藤原健真氏によると今回の資金調達は7月に実施した1.7億円の調達に続くもので、トータルで総額2.7億円のシリーズAラウンドが完了。それ以前のラウンドも含めた累計調達額は3.7億円になる。

7月の調達では大原薬品、エッセンシャルファーマ、メディフューチャーなど医療系の企業から出資を受け、医療分野において事業を強化する旨を発表していたハカルス。今回は同社にとってもうひとつの軸となる、産業分野での事業展開を見据えたものだ。

具体的にはFPGAの受託設計・開発支援を行う半導体商社のPALTEKなどとタッグを組みながら、ハカルスのAIエンジンを搭載したFPGA製品とボックスコンピュータの開発に取り組む計画。オフラインのエッジ端末上で動くAIを作ることに資金を投じていくという。

医療領域と産業領域に特化したAIソリューションで事業拡大

これまでも何度か紹介している通り、ハカルスの技術的な特徴はディープラーニングを一切使っていない点にある。少量のデータからでも特徴を抽出できるスパースモデリング技術を機械学習に応用することで、「ディープラーニングでは解決できないような課題」に対してAIソリューションを提供しようというのが同社のビジネスだ。

もともとこの技術を用いた健康管理アプリを開発していたこともあり、まずは対象領域を広げる形で医療・ヘルスケア領域でサービスをスタート。同様のニーズがあったため、コアとなる仕組みを産業領域にも広げてきた。

藤原氏によると、ディープラーニングを軸にしたソリューションを現場に導入する際にネックとなるのが、「多くのデータ量が必要になること」や「AIの意思決定プロセスを説明できないこと」なのだという。

「(ディープラーニングは)大量のデータがそもそも手に入らないためにつまづくということが多い。またAIのロジックが完全にブラックボックスとなっていて、なぜAIがそのような結果を出したのかが設計した本人でさえもわからない場合もある。医療分野なら『なぜ目の前の患者を手術するべきか』の理由が説明できないと現場での導入は難しい。そこはある意味、精度以上に重要視されている部分でもある」(藤原氏)

たとえば医療の場合、患者数が多い三大疾病などの病気であれば多くのデータが集まるだろう。一方で年間の患者数が100人や200人といったように、そもそも発症数が少ない希少疾患だとデータが少なくディープラーニングでやるのは難易度があがる。結果的には「そういった病気に対するAIを作ろうと思うと別の技術が必要になる」(藤原氏)そうだ。

産業領域も同様で、現代は少量多品種の時代のため一つひとつの製品に関するデータが限られ、大量のデータを集めるのが難しくなっているという。また品質管理が厳しい自動車や航空機に搭載する部品工場などでは、不良品の検知にAIを使うにしても「なぜOKか、なぜNGかの説明」が求められる。

「産業分野のお客さんに関しては、約半数が『もともとディープラーニングを活用したシステムを導入していたものの、データ不足の壁に直面して一向にAIの精度があがらない』という悩みを抱えていた」(藤原氏)

ハカルスではこのような医療領域、産業領域の課題を抱える企業に対して、同社のソリューションを強提供していく方針。また独自のAIエンジンを搭載した半導体を開発し、産業分野で展開していく計画だ。今回調達した資金もデータサイエンティストや組み込み系のエンジニアを始めとした開発人材の強化などに用いる。

「(AIが)クラウドを使わないエッジ端末の中でどういうことができるかはまだ未開の領域。今回はオフラインで、エッジ端末上で動くAIを開発するところに資金を使っていく。具体的には一切インターネットにつながずに学習と推論をできるAIを作っている」(藤原氏)

推論部分だけでなく学習部分まで含めてエッジ側でできるようにすることで、AIがその場でエッジ端末の設置された環境を学習し、「AI自身が環境に合わせてアジャストして、最適化を行う」ソリューションの構築が可能になる。このAIをいろいろな分野で使ってもらうことを目指していくという。

エッジ端末上で動作している人物検知のデモの様子

間もなくFacebookはMarketplaceに対して、カテゴリー化、価格提案、そしてビジュアル検索のためにAIを導入する

Facebookは、そのFacebook Marketplace(Craigslistの競合相手)の2周年の記念日を、AIで支援された新しい機能のリリースと共に祝っている。同社によれば、それは具体的には販売を容易にするための、価格帯の提案や自動カテゴリー化機能である。また同社は、製品のお勧めをするためにAIを利用するカメラ機能をテスト中であるとも語っている(訳注:Facebook MarketplaceはメルカリやeBayのように物品を売買する仕掛けだが、日本ではまだ開始されていない)。

しかし、価格帯の提案やカテゴリー化を自動化することは、Facebook独自のものではない。例えば今年の初めにeBayは、そのモバイルアプリに、構造化データや予測分析などの技術を使って出品作業を簡単にする機能を導入した し、Letgo(中古品売買アプリ)では一般化された価格提案も行うことが可能だ。

Facebookの場合には、アイテムのカテゴライズを写真と説明に基いて行うことが可能で、その後売り手が選択できる価格帯の範囲(例えば50ドル〜75ドルなど)を提案するとしている。同社によれば、この自動提案機能が有効になっている場合には、売り手が出品を諦める可能性が低いということが分かったという(この機能が有効になる前は、売り手のうち9%が出品作業を諦めていたと指摘している)。


MarketplaceとAI(Facebookの投稿より)

Facebookはまた、AIを使用している他のいくつかの機能にもスポットを当てている。例えば売り手がアップロードした写真のライティングを自動的に改善したり、不適切なコンテンツを検出して削除するといった機能だ。

また、AIベースではないが、同社は新たな売り手と買い手の評価についても説明している。これを使えば、ユーザーたちは経験を評価し、感想を残すことができる。

さらに将来的には、もっと面白い機能が導入されるかもしれない。Facebookは、スマートフォンのカメラを使うことで、Marketplaceを欲しいものを見つけるためのより強力なツールへと変身させる計画をほのめかしている。たとえば、同社はそのブログ記事の中で、お気に入りのもの(例えば友人のクールなヘッドホンなど)にカメラを向けて写真を撮れば、Marketplaceが似たようなアイテムを、出品リストから探してくれるようになるだろうと書いている。

こうしたビジュアルな検索技術は、もちろんeBayや、Pinterest、さらにはGoogleでさえ採用する(その1その2)一般的な機能だ。Facebookはここしばらくの間、それに追い付こうとしてきた。

さらに進んで、Marketplaceに対するFacebookの計画は、Pinterestに対してより直接的に対抗するものになっている。彼らは将来的にはユーザーのホームデザインをAIを使って支援したいと語っている。例えばリビングルームの写真をアップロードすると、買うべき家具の提案を受けることができるといったものだ。家のデザインとインスピレーションは、もちろんPinterest、Houzzなどのサイトにつきもののの機能であり、最近はHutchなどの新規業者も参入している。

とはいえ、幾つかの機能が現在欠けているとしても、Facebook Marketplaceは無視できるものではない。Facebookのサイズと影響力のおかげで(そしてユーザーにアイコンをタップし続けることを強制する、Marketplaceのしつこい赤いバッジ表示のおかげで)、いまや毎月全米の3人に1人が使うまでに成長したと同社は語っている。

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(翻訳:sako)

Disrupt SFで語られたAIの現状に関する5つの注目点

[著者:Taylor Nakagawa]

人工知能(AI)に期待されていることは計り知れないが、そのゴールに至るまでのロードマップはいまだ不透明だ。TechCrunch Disruptサンフランシスコのステージでは、AIを専門とする知識人たちが、現在の市場での競争の様子、アルゴリズムが差別主義を助長させないための方法、未来のマンマシン・インターフェイスといった課題について意見を述べ合った。

そこで、2018年のDisruptで語られた、AIの現状について注視すべき5つの点を紹介しよう。

1. アメリカがAIで中国に参入しようとすれば多くの障害に遭遇する

SinnovationのCEO李開復(リー・ カイフー)(写真:TechCrunch/Devin Coldewey)

中国がAIに力を入れて華々しい発展を遂げていることは、各方面で数多く報道され、もはや無視できない存在にまでなっている。AlibabaやTencentのような巨大企業が国産ビジネスに何億ドルもつぎ込んでいるため、アメリカ企業がAIで中国に参入しても、動き回ったり拡大できる余地はだんだん狭くなっている。AI投資家でありSinnovationのCEO李開復(リー・ カイフー)は、AI開発においては、中国とアメリカは「並行宇宙」に生きていると話している。

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Sinnovation会長にしてCEO李開復は、AIに関しては中国はアメリカを超えたと話す。

Googleの中国進出を助けた李は、「AIを電気と同様に考えるべき」だと説明している。「トーマス・エジソンもAIの深層学習も、どちらもアメリカ生まれですが、彼らはそうした技術を発明し、寛大にも公開しました。今や中国は、最大のデータ量を誇る最大の市場として、従来型のビジネスのあらゆる場所、インターネットやその他のあらゆるスペースに価値を加えるために、AIを実際に使っています」

「中国の起業家エコシステムは巨大です。現在、コンピュータービジョン、音声認識、ドローンの分野でもっとも価値の高いAI企業は、すべて中国企業です」

2. AIの偏見は古い問題の新しい顔

9月7日、カリフォルニア州サンフランシスコにて。モスコーンセンターで開かれたTechCrunch Disrupt第3日目のステージで討論する(左から)Ken Goldberg(UCバークレー教授)、Timnit Gebru(Google AI研究者)、Chris Ategeka(UCOT創設者、CEO)、Devin Coldewey(司会)(写真:TechCrunch用にKimberly White/Getty Imagesが撮影)

AIは、数多くの仕事から、つまらない単調な作業をなくし、人々に生産性と効率性をもたらすと約束されてきた。しかし、多くのAIシステムの学習に使用されるデータには、人間が持つ偏見が植え付けられていることがあり、それを放置すれば、所得格差や人種差別といった体系的問題をはらむコミュニティーを今よりも疎外することにつながりかねない。

「社会的経済地位の低い人たちは、より監視が強化され、さらにアルゴリズムで調べられることになります」と、Google AIのTimmit Gebruは言う。「なので、地位の低い仕事の求職者ほど、自動化されたツールで処理される可能性が高くなります。現在、こうしたアルゴリズムがさまざまな場所で使われていますが、機会均等法のような法律に準拠しているかを確かめることすらできていません」

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アルゴリズムの偏見は、所得格差と人種差別に根をもつ古い問題の新しい顔だ。将来のより客観的なアルゴリズム構築のためのステップの概要を示すTimmit Gebru(Google AI)、Ken Goldberg(UCバークレー)、Chris Ategela(UCOT)

危険なアルゴリズムが広がりを阻止できる可能性のある解決策を、UCバークレーのKen Goldbergが解説した。彼は、複数のアルゴリズムとさまざまな分類子が共同して働き、ひとつの結果をもたらすアンサンブル理論の概念を引用している。

しかし、不適切な技術のための解決方法が、よりよい技術であるかどうかを、どうやって確かめたらよいのだろう。Goldbergは、適正なアルゴリズムを開発には、AIの外の分野から来た、さまざまな経歴を持つ人間が欠かせないと語る。「機械の知能と人間の知能には、深い関連性があると思われます」とGoldbergは説明する。「異なる視点を持つ人は非常に貴重です。ビジネスの世界でも、そうした人が認められつつあるようです。それはPRのためではなく、異なる経験値と多様な視点を持つ人がいれば、よりよい決断が下せるからです」

3. 未来の自律走行は、人と機械の協力に依存することになる

UberのCEO、Dara Khosrowshahi(写真:TechCrunch/Devin Coldewey)

運送会社の多くは、移動が高度に自動化されて、人間が介在することがかえって有害になる近未来の夢の世界を想像している。

UberのCEO、Dara Khosrowshahiは、そうはならないと指摘する。人間を隅に追いやろうと競い合う時代では、人間と機械が手を取り合って働くほうが現実的だと彼は言う。

「人間もコンピューターも、それぞれ単独で働くより、一緒に働いたほうがうまくいく。私たちには自動化技術を導入する能力があります。サードパーティーの技術、Lime、私たちの製品は、すべてが協力してハイブリッドを構成しています」

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「未来の自律走行は、人と機械の協力に依存することになると、UberのCEO、Dara Khosrowshahiは言う」

Khosrowshahiが最終的に描いているUberの未来では、エンジニアがもっとも危険の少ないルートを監視し、乗客のための最適なルートが自動的に選択されるという混合作業になるという。この2つのシステムを組み合わせることが、自律走行の成熟には大変に重要で、乗客の安全を守ることにもなる。

4. アルゴリズムを「公平」だと判断するための合意による定義は存在しない

9月7日、カリフォルニア州サンフランシスコにて。モスコーンセンターで開かれたTechCrunch Disrupt第3日目のステージで話をするHuman Rights Data Analysis Group の主任統計学者Kristian Lum(写真:TechCrunch用にKimberly White/Getty Imagesが撮影)

昨年の7月、ProPublicaはある報告書を発表し、その中で機械学習が、独自に偏見を芽生えさせる危険性を強調している。調査によると、フロリダ州フォートローダーデールで使われていたAIシステムは、黒人の被告が将来再び犯罪を犯す可能性は、白人の被告の2倍あると誤った指摘を行った。この歴史的な発見は、公正なアルゴリズムの構築方法に関する論議を呼び起こした。

あれから1年、AIの専門家はまだ完全な構築方法を見つけていないが、アルゴリズムにおける、数学と人間というものへの理解を組み合わせた文脈的アプローチが、前に進むための最良の道だと考える人は多い。

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公正なアルゴリズムをどうやって作るか? Kristian Lum(Human Rights Data Analysis Group)は、明確な答えはないが、AIの文脈的なデータトレーニングによると言う。

「残念なことに、公正とはどんなものか、に関する定義の普遍的な合意が得られていません」とHuman Rights Data Analysis Groupの主任統計学者Kristian Lumは話す。「データをどのように刻んでゆけば、最終的にアルゴリズムが公正でないとわかるのか、ということです」

Lumの説明によれば、この数年間、数学的な公正さの定義を巡って研究が進められてきたという。しかし、このアプローチはAIの道徳に対する見識と相容れない場合が多い。

「アルゴリズムの公正さは、大いに文脈に依存します。それは、トレーニングに使用するデータに依存するということです」とLumは語る。「問題について、深く理解しておく必要があります。そして、データについても深く理解しておかなければなりません。それができたとしても、公正さの数学的定義への意見は分かれます」

5. AIとゼロトラストは「理想的な縁組」であり、サーバーセキュリティーの進化の鍵となる

9月6日、カリフォルニア州サンフランシスコにて。モスコーンセンターで開かれたTechCrunch Disrupt第2日目のステージで話をする(左から)Mike Hanley(DUOセキュリティー副社長)、Marc Rogers(Oktaサイバーセキュリティー上級ディレクター)、司会のMike Butcher。(写真:TechCrunch用にKimberly White/Getty Imagesが撮影)

前回の大統領選挙で、私たちは、個人情報、金融資産、民主主義の基礎を守るために、セキュリティーシステムの改良が喫緊の課題であることを学んだ。Facebookの元主任セキュリティー責任者Alex Stamosは、Disruptサンフランシスコにおいて、政治とサイバーセキュリティーの現状の厳しい見通しを示し、次の中間選挙でのセキュリティーのインフラは、2016年当時からそれほど良くなっていないと話した。

では、セキュリティーシステムの改善に、AIはどれくらい役に立つのだろうか。OktaのMark RodgersとDuoのMike Hanleyは、AIと「ゼロトラスト」と呼ばれるセキュリティーモデルの組み合わせに期待を寄せている。本人確認ができないかぎり、どのユーザーもシステムにアクセスできないという仕組みだ。それが、人を介さず侵入してくる相手を積極的に排除できるセキュリティーシステムの開発の鍵になるという。

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AIとゼロトラストが組み合わせた将来のセキュリティーシステムの仕組みを説明するMarc Rodgers(Okta)とMike Hanley(Duo)

「ゼロトラストの背景にある考え方全体が、自分のネットワーク内のポリシーを自分で決めるというものなので、AIとゼロトラストは理想的な縁組なのです」とRodgersは話している。「AIは、人間に代わって決断を下すことを得意としています。これまで人間には不可能だったほどの短時間で判断します。ゼロトラストが進化して、ゼロトラストのプラットフォームにAIが組み込まれるようになることを、私は大いに期待しています」

この大きな仕事を機械に任せられるようになれば、サイバーセキュリティーのプロは、もうひとつの差し迫った問題を解決する機会を得る。それは、これらのシステムを管理する資格を持つセキュリティーの専門家の配属だ。

「必要な仕事を実際に熟せる有能なセキュリティーのプロが、大幅に不足してます」とHanleyは言う。「それは、セキュリティーを提供する企業にとって、片付けなければならない仕事が特定できる非常に大きなチャンスとなります。この分野には、解決されていない問題が、まだたくさんあります。なかでも、ポリシーエンジンは面白いチャレンジになると思います」

Disrupt SF 2018


Disruptサンフランシスコ2018のその他の記事(英語)

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(翻訳:金井哲夫)

Googleが日本で複数のAI関連事業を立ち上げ、UNIQLOとパートナーシップ

Googleが今日(米国時間9/18)東京で行われたCloud Next 2018イベントの場を利用して、日本市場にフォーカスした二つのイニシアチブを発表したのは、当然のことだ。このイベントはメインのカンファレンスがサンフランシスコで行われ、複数の国際的イベントが東京など各地で行われる。

発表には、ベーシックなアップデートとしていくつかの日本語ローカライゼーションも含まれ、その中には、CourseraのコースMachine Learning with TensorFlow on Google Cloud Platformの日本語化や、クラウド技術者の資格検定Associate Cloud Engineerの日本語化、50種のクラウド実践演習(各30分)Qwiklabsの日本語化などがある〔日本語化の例はここで〕。

さらにGoogleは、東京にAdvanced Solutions Labを立ち上げる。同様のラボは、アイルランドのダブリンとカリフォルニアのサニーベール、そしてニューヨークにもある。それらはGoogleのエキスパートたちによる4週間の機械学習教育訓練コースを軸として、機械学習のさまざまな学習オプションとコラボレーションによる演習経験を提供する。

(写真: Hitoshi Yamada/NurPhoto via Getty Images)

Googleは今日、新しいテクノロジーの採用をめぐって、ユニクロの親会社Fast Retailingとのパートナーシップを発表した。社名が示すように同社は小売業の高速化に関心があり、成長の加速化のためにGoogleのG Suiteや機械学習ツールを利用していきたいようだ。このパートナーシップ事業の名前は、’Ariake’である。

Fast RetailingのCEO Tadashi Yanaiはこう言っている: “全社員が情報にアクセスできるようにすることが、Ariakeプロジェクトの基盤のひとつだ。それによって社員たちは、論理や判断、共感といった人間の特性を生かした意思決定ができるようになる。毎シーズン、事業計画を書いているが、G Suiteのような共同作業ツールを使えば、それらを全社員が共有できる。Google Cloudとのパートナーシップは、需要予測のようなものをとっくに超えて、全社員の協働的な仕事のやり方を抜本的に変えた”。

画像クレジット: Tomohiro Ohsumi / Getty Images

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ドローンにオプティカルフローを教育して小さな穴を高速で通過させるテクニック

メリーランド大学の研究者たちが、鳥や虫が飛ぶときのテクニックをドローンに教えて、小さな穴を高速でくぐれるようにした。ドローンはわずかに数回、環境を調べて開口部を定義し、大きなドローンが不定形な穴を訓練なしで通り抜ける。

そのGapFlytと呼ばれるプロジェクトは、Nitin J. Sanket, Chahat Deep Singh, Kanishka Ganguly, Cornelia Fermüller, Yiannis Aloimonosの計5人が立ち上げ、簡単な昆虫のような目を使ってドローンを教育した。

彼らが使ったテクニックはオプティカルフローと呼ばれ、きわめて単純な単眼のカメラを使って3Dモデルを作る。各時点の像の中の特徴をマークすることにより、ドローンは各像(写真)の変化に基づいて穴の形と深さを知る。ドローンに近いものは遠いものより大きく動くから、ドローンは前景と遠景を見分けることができる。

ビデオを見てお分かりのように、研究者たちは自分たちのシステムをテストするためにかなり雑然とした環境をわざと作った。Bebop 2ドローンがNVIDIA Jetson TX2 GPUを搭載して、穴のまわりを蜂のように飛び回り、そして秒速2メートルという、まあまあのスピードで通り抜ける。遠くに似たような壁を作ってドローンを混乱させようとしても、彼らのテクニックはその新しい面倒な状況に影響されなかった。

メリーランド大学のPerception and Robotics Group(知覚とロボティクスグループ)の報告によると、ドローンはさまざまな開口部を85%の精度で通過できた。タトゥイーンのベガーズ・キャニオンを避けて飛ぶときのルーク・スカイウォーカーほど速くはないが、でも感動的なスタートだ。

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NvidiaがローンチしたTesla T4は最速のデータセンター用推論プラットホームだ

Nvidiaが今日(米国時間9/1)、データセンターにおける機械学習と推論のための新しいGPUを発表した。そのTesla T4 GPUs(TはNvidiaの新しいアーキテクチャTuringを指す)は、クラウドコンピューティングのメジャーなプロバイダーのほとんどが現在提供しているP4 GPUsの後継機種だ。Nvidiaによると、GoogleはT4 GPUsをクラウドプラットホームで採用する最初の企業のひとつだ。

Nvidiaによると、T4はP4よりも相当に速い。たとえば言語の推論では、T4はCPUを使うよりも34倍速く、P4より3.5倍速い。T4のピーク時性能は4ビットの整数演算で260TOPS、浮動小数点演算で65TOPSだ。T4は、標準的な75ワットのLow Profile PCI-eカードに載っている。〔関連記事

しかしもっとも重要なのは、Nvidiaがこれらのチップを、AIの推論専用に設計したことだ。NvidiaのVPで同社のTeslaデータセンター事業部のGM Ian Buckはこう語る: “Tesla T4が推論用としてこれほど効率的なGPUであるのは、Turingアーキテクチャの新しいテンソル・コアのせいだ。CEOのJensen Huangがすでに述べたように、そのTensorコアはゲームやレンダリングやAIにも有効に利用できるが、設計の前提は推論だ。トータルでこのチップには、320のTuting Tensorコアと2560のCUDAコアがある”。

Nvidiaは今回、新しいチップのほかに、同社のソフトウェアTensorRTの、ディープラーニングのモデルを最適化するアップデートをローンチした。この新しいバージョンには、TensorRT推論サーバーも含まれており、それはデータセンターの推論のための完全にコンテナ化されたマイクロサービスとして、既存のKubernetesインフラストラクチャにシームレスに接続する。

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東京にあるAI企業を地図化した「Tokyo AI Map」公開、本郷・渋谷に拠点が集中

AI専門メディアの「AINOW」は9月12日、東京で人工知能関連ビジネスを展開する企業を地図上にマッピングした「Tokyo AI Map」を公開した。

このマップは東京都内にある、AI関連企業169社をピックアップしたもの。AINOWによれば、2018年9月現在、都内でAI企業が密集している地域は、本郷、渋谷、有楽町の3エリアだという。

東京大学のキャンパスもある本郷は、大学構内にアントレプレナープラザがあり、AI関連スタートアップが入居する。5月に資金調達を行ったAidemyなど、UTEC(東京大学エッジキャピタル)が出資する企業も多い。またディープコアが開設したAI特化型インキュベーション拠点「KERNEL HONGO」が存在するのも、このエリア。昨年、東証マザーズに上場したPKSHA Technologyも、本郷に拠点を持つ。

7月に「SHIBUYA BIT VALLEY(シブヤ・ビットバレー)」プロジェクトが始まり、Googleが再びオフィスを移転する渋谷にも、多くのAI関連企業がオフィスを構える。現時点では特に道玄坂上方面に、LeapMindfluctSELTECHといった企業が集中。ほか、8月に資金調達を行ったAI-OCRツールのAI insideやファッションAIのSENSYなども渋谷にある。

また大手企業や外資企業が集まる有楽町エリアには、最先端のAI技術を駆使する大手企業と、AI業界で勢力を加速する新興AI企業が共存しているという。

最近スタートアップが集まり、五反田バレーとして注目される五反田にも、マツリカレッジ空色などのAIを活用する企業が存在。今後、ほかのAI関連企業の進出も増えるかもしれない。

AINOWでは、昨年9月にもB向け人工知能業界をまとめたカオスマップを公開している。今回公開されたTokyo AI MapはAINOWのサイト内で、2019年のカレンダー付きPDFとしてダウンロードすることができる。

Adobe Photoshopの‘コンテンツに応じた塗りつぶし’が性能アップ、おかしな失敗が減少

Adobe Photoshopの“コンテンツに応じた塗りつぶし”(content-aware fill)が登場したときは、誰もが感激した。退屈な名前だけど、すばらしく便利な機能で、画像のセレクトした範囲内にAIが選んだ画像の破片をリプレースして、そのまわりと同じ本物らしく見せかける。しかしAIは万能ではないから、ときどき、おかしな、笑えるような結果になった。でも今度の新しいツールでは、AIの失敗がほどんどなくなるそうだ。

今日(米国時間9/10)発表された予告編ビデオでは、コンテンツに応じた塗りつぶしの設定項目が大量に増えたから、修正作業が楽しくなるかもしれない。フォトグラファーは元々、加工や修正が好きな人種だが、修正のメニューが増えればそれだけ結果も良くなる。

以前は、どうだったか…

…ときどき、こんな結果になった…

[コンテンツ対応の失敗]

…今度からは右側に大量のオプションが並ぶのでそこから選ぶ。

いちばん重要な違いは、ユーザーが範囲指定をした領域内でどの部分を塗りつぶすべきかを、AIが選べることだ。上の失敗例では、馬の部分を塗りつぶそうとして、ほんの一筆(ひとふで)か二筆(ふたふで)ぶん、除外している。しかし正確である必要はない。人間の手とマウスによる指定が1ピクセルの精度で間違っていても、今度のアルゴリズムは正しく判断する。

改良されたアルゴリズムはさらにお利口になり、使用する成分の回転や縮小拡大も臨機応変に行なう。その方が良い、と判断したら、コンテンツの鏡像も使う。

塗りつぶしを、別のレイヤ(層)に出力できるので、アーチストにとって重要な「非破壊的編集」ができる。これは、前からあるべきだった、とぼくなどは思うね。

ここまで強力な修正をやると、純粋な人はしらけるかもしれない。でも、実際に手元にある写真を使うしかない場合もあるし、ちょっと牛の数が多すぎる、ということもあるだろう。手作業による写真修正の名人ではない人が、大きな修正をしなければならないときには、使ってもいいことにしておこう。

今回の新しいアップデートは“もうすぐ提供”ということだから、アップデートの通知によく注意していよう。

画像クレジット: Adobe

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

人気瞑想アプリHeadspaceがAlpine.AIの買収でAIを装備へ

3100万人のユーザーを擁し、評価額3億2000万ドル(約356億円)の瞑想アプリHeadspaceは、他の健康関連商品と差をつけようと、音声認識とAIの技術を倍掛けしようと考えている。同社は本日(米国時間9月4日)、デジタル・アシスタント市場の黎明期から活躍していた企業Alpine.AI(元VoiceLabs)を買収したと発表した。それには、Headspaceの主要アプリの音声による操作を高度化する狙いがある。

「現在、瞑想アプリはいくつかありますが、自分が今どの段階にあるかを的確な音声ガイドで教えてくれるものができれば、他社製品を大きく引き離すことができます」と、Headspaceの新CTO、Paddy Hannonは話している。彼は、Alpineから来た4人を率いて、Headspaceのサンフランシスコのオフィスに加わることになっている。

買収の条件は公表されていないが、Headspaceによると、その人材と技術の両方を引き継ぐとのこと。その中には、Alpine.AIの共同創設者でCTOのAlexandre Linaresと3人の技術者が含まれている。Alpine.AIのCEO、Adam Marchickは、今後は顧問として残る予定だ。

VoiceLabsは、長年にわたり、音声をベースにしたさまざまな製品を試してきた。その中には、Amazonに潰された音声を使った広告製品、音声アプリ開発者のための分析サービス、そして最近では、小売業者のカタログを読み込み、AIで顧客の製品に関する質問に答えるという、音声による買い物アプリを構築するためのソリューションもあった。

後にAlpine.AIと社名を変更したこの会社に、Headspaceは強い興味を示した。

Alpine.AIは、小売業者のためのソリューションを開発してきた。それは、顧客がボイス・アシスタントと自然に会話ができるようにするものだ。たとえば、マスカラについて尋ねると、ボイス・アシスタントは「何色にしますか?」とか「防水にしますか?」と聞いてくれる。

Headspaceは化粧品を売るつもりではないが、Alpine.AIの機械学習技術を自分たちの分野に応用する可能性に期待を寄せている。

現在、Headspaceの主要なインターフェイスには音声が使われている。瞑想セッションでは、心地よい、穏やかで、特徴ある声がユーザーをガイドする。この声は、共同創設者で、元チベット仏教僧のAndy Puddicombeのものだ。

これを基礎にして、Alpine.AIの技術を導入することで、ユーザーは音声によるインタラクティブな操作が可能になり、Headspaceの別の瞑想セッションを開拓したり、より丁寧な個別の指導を受けられるようにするという計画だ。

たとえば、ユーザーが「ストレスで参っている」と言えば、アプリは、その人のアプリ内の履歴を参考に、適切な瞑想法を推薦してくれる。

Alpine.AIの技術を追加することで、Headspaceは、参入企業が多くひしめき成長過程のこのセルフケア・アプリの世界で、大きな競争力を持つことになるだろう。Headspaceは、いちばんのライバルであるCalm.comに、評価額の面でわずかに優位に立っている。PitchBookのデータによれば、Calm.comの評価額は、およそ2億2700万ドル(約253億円)だ。

Headspaceの音声アプリを改良するという、第一の利点のほかにも、Apline.AIの技術には別の使い道がある。iOSとAndroidのアプリでは、ユーザーのアクションによって(音声コマンドではなく)、個別の助言を提示するという機能も考えられる。

Hannonによると、Alpine.AIには、その成り立ちによる魅力もあると言う。

「彼らはすべてをAmazonの上で作りました。Dockerを使用しています。大変に魅力的な買収だった理由には、それもあります」とHannonは説明している。「彼らは、私たちが内部で作っていたのと同じパターンでソフトウエアを作っていたのです。私たちが使っているのとほとんど同じデータベース技術も利用していました。彼らも私たちと同じ、RESTサービスを使ってます。なので、インフラの観点からすると、とてもわかりやすいのです」

「いつ面白くなるかと言えば、私たちの音声コンテンツを、彼らのテキストベースのシステムに加えたときです。しかし、AmazonがLexのようなサービスで提供しているのを見てわかるとおり、テキストから音声へ、または音声からテキストへ変換するシステムは数多くあります。そうしたものを使えば、実装は可能だと私は考えています」と彼は言っている。

今回の買収には、ボイス・コンピューティングの未来に賭けるという意味もある。音声で操作するデジタル・アシスタント機器の数は、この2年半の間に、世界中で10億台を超えるまでになっている。アメリカの家庭の20パーセントが専用のスマートスピーカーを所有していて、その数は増加すると見られている。

収益性の高いセルフケア・アプリ市場での人気アプリのひとつとして、Headspaceのユーザー数は、現在のところ3100万人に達している。そのうち、190各国にわたる100万人が有料加入者だ。また、同社は大企業とその従業員に瞑想エクササイズを提供するB2Bビジネスにも力を入れていて、250社以上の企業が契約をしている。

買収の時点で、Alpine.AIは、The Chernin Group、Javelin Venture Partners、Betaworksといった投資会社から「数百万ドル」を調達したシードステージの企業だった。しかし、音声で使えるスマートスピーカーの人気が確かなものになってはいるが、音声ベースのインターフェイスを開発する数あるスタートアップの中で、規模を拡大し、Nuanceや、Apple、Google、Amazonといったその他のプラットフォーム大手と肩を並べるようになったものは、まだない。それもまた、Alpine.AIの買収が魅力的だった理由だ(しかもイグジットに対してもオープンだった)。

Alpine.AIは、その製品を利用していたPetcoなどの少数の小売店との関係を縮小し、個別の移行プランを提示している。

「私たちのこれまでの努力が、ユーザーの健康的な習慣を指導したりガイドすることに特化できることを、とても嬉しく思っています」とAlpine.AIのCEO、Adam Marchickは、買収について話している。「Alpineの機械学習能力は、Headspaceの取り組みを加速し、新しい会話エクスペリエンスを市場にもたらすでしょう」

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(翻訳:金井哲夫)

AI車両管理プラットフォームで2年後のモーダルシフトに備えるAvrios

スイスのスタートアップAvriosは、企業が一人の人間に一台の車という従来の考えにとらわれず、状況に応じた移動方法を受け入れることにより、業務上の移動手段がもっと面白くなるはずだと考えている。

また、内燃機関からグリーンな代替動力への切り替えを加速することで、進歩的という評価を得たいと企業が考えるようになると同時に、新しい都市型移動手段が数多く生まれ、個人輸送のための幅広いマルチモーダルな選択肢として顧客に提示できるようになった。したがって、従業員が使える車種の選択肢が少ない企業は、もう長くは存続できない、というのが彼らの主張だ。

しかし、バランスをとりながら選択肢を増やすことは、車両管理の業務をさらに難しいものにする恐れがある。なぜなら、供給業者(全体の数が増えて、小さな業者も多くなる)との交渉、コストと有用性の把握、輸送ソリューションを業務の目的や従業員の要求に合理的にマッチさせるといった作業が重なるからだと、Avriosは話している。そこで、ますます多様化する複雑な車両の管理作業においては、AIが鍵になる。

現段階では乗客輸送用車両と小型トラックに焦点を絞ったAvriosのプラットフォームは、ヨーロッパを中心とした、7万台ほどの車両を運用する700あまりの企業に採用されているが、すでに機械学習技術を導入し、車両のリース費用に関する情報を把握しつつ、車両管理業務を助けている。

しかしAvriosにとって、これはまだ基礎作りの段階だ。電気自動車の技術に人気が集まり、業務用車両にも電気自動車が導入され始めている今、同社はそのプラットフォームを、近く起きると想定される大転換に対応するものとして位置づけている。

都市圏における個人の移動手段が豊かに多様化する兆しは、配車サービスの大手Uberが電動バイクや電動スクーターに目をつけるといった行動から、すでに消費者サイドで見え始めている。

もちろんビジネスの側も、立ち遅れまいと考えている。そのため車両管理プラットフォームは、そうした新しい、きめ細かい移動手段に対応するべく挑戦を続けてゆく必要があると、AvriosのCEO、Andreas Brennerは話している。

2015年に設立されたスタートアップAvriosは、昨年、自社の顧客を対象に調査を行った結果、現在、ヨーロッパの企業がエンジン車両に費やしている年間予算は600億ユーロ(約7兆7300億円)あり、今後5年間で別の動力を利用した車両に移行すると見積もった。

この調査では、大半の企業(80パーセント)が、現在、スプレッドシートとAccessデータベースで、迫り来る移行に対処しようとしていることもわかった。そこでAvriosは、市場の大改革に適応できるよう、援助の機会を伺っている(主な競合相手はスプレッドシートになると同社は話している)。

車両管理プラットフォームSaaSの最初の役割も(立ち上げ当初はダッシュボードと呼ばれていたが、2017年秋からプラットフォームと呼ばれるようになった)、業務の支援だった。彼らは、送り状や車両リースの書類を、車両管理者のために取り込んで処理をするシステムを構築した。それが今では、ほぼ完全に自動化されているとBrennerは言う。

「信じられないでしょうが、たとえば、大手のリース企業で、送り状やリースのデータの読み込みを行うAPIを持っているところは、ほとんどありません。そのため、そうした契約書や送り状を処理できるシステムを、根本から作らなければなりませんでした」と彼は言う。

「初期のころは、すべて手作業から始めました。しかし今では99パーセントの書類を完全に自動処理できています。これは、通常の構造化フォーム認識だけでは実現できません。本格的なAIシステムが貢献しています。魔法は、そのAIの中で起きているのです」

「私たちの仕事の特徴は、顧客の複数の言語による構造化されていないデータを、すべて読み込める点にあります。それには、車両管理には欠かせない非常に多くの情報が含まれていて、時間を大幅に節約できます」と彼は付け加えている。

彼が見据えている将来は、フランス語のPDF形式の送り状を自動的に処理するといった程度の技術ではない(それはそれで便利だが)。より豊富できめ細かい移動手段を取り混ぜて利用する方針に業界が移行するという、もっとエキサイティングなものだ。

もうひとつ、彼らは調査を行なった。顧客のデータから、走行距離と車両の種類をもとに、車両がどのように使われているかを調べ「車両の使用事例を推論」したとBrennerは話している。

「私たちは、動いていない車両や荷物を運んでいない車両は、経済的な視点からは、なんの意味もないという前提に立っています。そこが、他のオプションに入れ替えるべき第一候補でした。少なくとも電気自動車の場合、街中で1日に10キロから20キロしか走らなかったとしたら、内燃機関の車に比べて、経済的な意味がまったくありません」と彼は指摘する。

そこから彼らは、今後5年以内に、内燃機関の車の30パー円とがシフトすると予測した。

彼らは、顧客がすでに電気自動車を加えた車両の運用方針を実施していることを知った(「進歩的な企業は、2019年には特定の割合を電気自動車に切り替えるという方針を実行しています」と彼は話している)。

彼らはまた、社内カーシェアリングの「大きな需要」があることも発見した。そこで彼らのプラットフォームには、カーシェアリングを管理する予約モジュールも組み込まれた。

さらに面白いことに、一部の顧客は、従業員に電動バイクを提供するといった、非常に柔軟性の高い実験を行なっていることもわかった。

「ドラバーの働く意欲と定着率を高めるために、新しい可能性をどのように利用したらよいかを、みんなは真剣に考えています」とBrennerは言い、移動手段のマルチモーダルな選択肢を従業員に与えることが魅力的な企業としての利益につながると提言している。「しかも、こうした車両運用方針は、より多くのグループに広がります」

「見習い従業員が電動自転車に乗れるとしたら、それは大きな意欲につながります」と彼は続ける。「私たちのお客様も、このことはよく理解されています」

とは言うものの、この程度の柔軟性も、今のヨーロッパではまだ試験段階に過ぎない。

しかし、ヨーロッパの運送業界が、来年、車両運用方針に電気自動車を組み入れるのは「確かなこと」と彼は見ている。さらに、あらゆる種類の移動手段の変化が、あと7年以内に起きる可能性があるという。

「2019年には、もっとクリエイティブで、もっと進んだ選択肢の実験が行われるでしょう。そしてその結果によって、2020年にはさらに大変革が起こると、私たちは見ています」と彼は断言し、それにより生み出される車両管理業務の課題を具体化している。

「車両管理担当者の立場に立ってみましょう。これまでにやり方は、だいたい2社か3社の馴染みの大手リース会社を持ち、彼らと条件を話し合い、だいたい15車種ほどのモデルと、いくつかの装備のオプションから、従業員が車両を選べるようにします。それが従来の方法であり、これにメンテナンスのオプションや、資金繰りなどを加えれば、それだけでもう十分に難しい仕事です。私たちが第一に取り組むべき課題は、それです。彼らの車両運用方針を理解することです」

「しかし、より専門的で小規模な供給業者を加えると、途端に細かい交渉が始まります。諸経費はかさみます。さらに供給業者の数が増える、というのが今起きていることです。レンタカー会社は、もっと個人の利用事例に沿った提案をしてくれます。カーシェアの場合は、さらに絞り込んだ使用事例に適応した、特別な提案をしてくれます。車両管理担当者として、そこまで従業員の要求に応えようとすれば、管理すべき契約の数、車両運用方針に加える項目数、意思決定や従業員への引き渡し方法の複雑さが爆発的に増加してしまいます」

「車両管理担当者の仕事とは、そういうものです。そこを私たちが手助けしたいと思っているのです。コストの管理と、従業員が私たちのプラットフォームを使って、直接、車両の予約ができるようにすることです。私たちのプラットフォームを通じて、レンタカーやリース車両を、直接、注文できるのです。そうして、すべてが自動的に車両運用方針に整合するようになります」

同社は、そのプラットフォームを利用することで、現時点で、車両管理費用が最大30パーセント、車両コストが最大10パーセント削減できると主張している。さらに、データ機密性は向上し、環境や所有者の責任に関する法律にも準拠できる。

未来予測が示すとおり、移動手段の種類や数が大幅に増え、選択肢が、微妙な差異の特定分野に細分化されるようになると、コスト管理、コンプライアンス、複雑化する運用方針に対処するプラットフォームの重要性が際立ってくる。多くの従業員と車両を抱える企業においては、なおさらだ。

Avriosは、現在、おもにヨーロッパで事業を展開している。顧客には、保険会社、小売業者、ファッション系企業、機械製造業者、専門のサービスを提供する企業などがある。

Brennerによれば、数は少ないものの、アメリカ、中東、アフリカの顧客もあるという(その多くは世界的な輸送網を有しているとのこと)。

競争力としては、「本当の車両管理プラットフォーム」を提供していると彼は強調する。Avriosは、こうしたプラットフォームを提供する最初の企業であり、長年のライバルは、車両管理ソフトや車両運用サービスを提供しているに過ぎないと彼は話している(AFleetLogistics、Leaseplan、Arvalといった既存のインターネット・ポータルは、彼によれば「透明化を提案しているが、本当の意味での透明化はなされていない顧客囲い込みツール」だとのこと)。

「私たちは、プラットフォームという形でアプローチしています。そこには、ソフトウエア提供業者の要素(データの構造化や報告など)も含まれますが、FleetLogisticsのような車両管理サービス提供業者の要素(調達の自動化、他の車両と比較した標準コストの算出、新しい車両の調達やリースにおける入札プロセスの最適化)もあります」と彼は話す。「私たちは中立の立場で、どこで本当に損をしているかをお客様に理解してもらう手助けをしています」

TechCrunchに明かされた資金調達の情報によれば、2015年12月にシード投資、2017年7月にシリーズA投資、2018年7月には400万ドル(約4億4600万円)の拡大/加速ファンドを獲得している。これらはすべて、非公開だった。今日までの投資総額は1400万ドル(約15億6000万円)にのぼる。投資家には、Lakestar、Notion、Siraj Khaliq(Atomico)、Andrew Flett(Fleetmatics)などの名前があがっている。

Brennerによれば、シリーズAの拡大ファンドは製品開発に使われ、「車両管理ダッシュボードから、より多くの移動オプションを追加したものへの移行の加速」を目指すとのことだ。

また、最初に計画していたよりも早く事業規模を拡大するためにも使われる。「今は成長ステージに入ったと思っています。なので、成長ステージのスタートアップとして定石どおり、製品と売り込みとマーケティングです」と彼は語っている。

「今、私たちは、自分たちの筋道を理解できるようになりました。長期的にこの会社をどの方向に進めたいか、誰が顧客なのか、市場での我々の立ち位置はどうかなども理解できるようになりました。なので、市場に対して、もっと公的に話をするいい時期が来たと感じたのです」と、これまで投資について公にせず力を貯めてきた理由を、彼は説明している。

「とにかく、何よりも顧客と製品開発に集中したかったのです」

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(翻訳:金井哲夫)

Lockheed Martinがドローンレースのチームと組んでAI自律ドローンの勝利に懸賞

Lockheed MartinDrone Racing League(DRL)が協力して、操縦者のいないドローンを今よりもずっとお利口にしようとしている。商用ドローンをAI化するそのプロジェクトは、“自律航行のドローンが人間が操縦するドローンとレースをして勝つこと”、を目指している。

今日(米国時間9/5)サンフランシスコで行われたTechCrunch Disruptで、Lockheed MartinのCTO Keoki Jacksonが、優勝者の賞金は200万ドル、と発表した。

“Lockheed Martinでは、ドローンに高度なAIを搭載して、これまで不可能だった困難な仕事をやらせることを目指している。それらは、山火事の消火や、自然災害における人命救助、深宇宙の最深部の探検などだ”、とJacksonは語る。“そこで今回は次世代のAIイノベーターたちを招待して、弊社のAlphaPilot Innovation Challengeに挑戦していただきたい。参加者たちは、自律航行とAIの未来を定義する役割を担い、世界がその将来性ある技術を利用して、より明るい未来を構築できるだろう”。

参加者はドローンのAI部にNVIDIAのJetson組み込みモジュールを使用し、しかもそのドローンは、“事前のプログラミング不要、人間の介入不要”でなければならない。レースのコースは、三次元的である。人間が操縦するDRLのドローンに“ドローンの知能テスト”でも勝つと、さらに25万ドルをもらえる。それは、アマチュアのドローン対、Lockheedの知識量の多いドローンプログラムとの勝負だ。

Lockheed Martinは今回、Drone Racing Leagueと協働して、未来のドローンレースにAIを持ち込もうとしている。目標は、人間操縦士よりも上手に飛べる自律ドローンを作ることだ。

懸賞の詳細はここにあり、レースは11月に行われる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

「ルトロン」の技術を活用したAI自動動画作成ツール「VIDEO BRAIN」提供開始、運営は総額15億円を調達

動画メディア「LeTRONC(ルトロン)」や動画広告サービスなどを運営するオープンエイトが、AIによる自動動画生成機能「LeTRONC AI(ルトロンAI)」を発表したのは2017年10月のこと。同社で内々に活用されてきたこの機能がついに8月28日、「VIDEO BRAIN(ビデオブレイン)」の名で、一般企業向けにクラウドサービスとして提供開始された。

オープンエイトが運営するルトロンは、観光スポットやレストラン、イベントといったおでかけ情報や、美容、ファッションなど、女性向けの動画を配信するメディアだ。2016年5月のウェブ版公開を皮切りに、SNS、アプリなど複数チャンネルで配信される分散型メディアとして、オリジナルコンテンツを展開。アプリは100万ダウンロード超、SNSファン数はのべ約700万となり、提供する動画コンテンツは約8000本を数える。

ルトロンでは、AIを活用してユーザーの視聴履歴などを分析し、ユーザーごとの趣味嗜好に合った動画コンテンツを自動生成している。そのテキストマイニングや画像解析、自動編集など動画に関する技術を応用して、提供するのがVIDEO BRAINだ。

VIDEO BRAINで動画を作るのに、特別な知識は要らない。PowerPointでプレゼン資料を作ったことがある人なら誰でも、いや、もしかしたらそれよりもずっと簡単に、動画が作れるかもしれない。

写真・動画やテキストなどの素材を画面から入力していくと、AIエンジンがデータを分析し、100種類以上ある動画フォーマットから、おすすめを提案してくれる。動画や画像の長さ・大きさは編集が可能。入力したテキストからテロップとして配分される文言なども微調整することができ、最短3分で動画を書き出すことができる。

テキストと画像の入稿から、編集、プレビューと動画の書き出しまで、VIDEO BRAINを操作するところを見せてもらったのだが、「すごい」と思わず声が出たのは、画像に合わせてテロップテキストの配分が自動で終わったところ。動画を説明する文章として、5000文字ぐらい入力ができるそうなのだが、それらが各画像の内容に沿って、何となくいい感じに割り振られるのだ。

もちろん、自動の割り当てで気に入らないところは、自分で手を加えることもできる。テロップの修正以外も、画像サイズやシーンの入れ替え、秒数の調整などを「パワポ」レベルの操作でできるので、本当に動画制作の経験は必要ない。

TechCrunchに掲載されているものでも短めの記事なら、動画や画像素材を取り込んで、ちょっとした動画コンテンツが簡単に出来上がりそうだ。実際、クローズドでサービスを導入しているメディア企業で、ニュース記事を動画化しているケースもあるということだった。

オープンエイト代表取締役社長 兼 CEOの高松雄康氏によれば、クローズドで先行導入している企業は大手を中心に約10社。外部向けコンテンツや広告動画だけでなく、CSR活動や、飲食業でのオペレーションマニュアルといった従業員教育にも使われているそうだ。

高松氏は「広告など、動画の活用は広がってきたが、まだまだ予算が小さく、体制がないために取り組めないという企業は多い。また、社内向けマニュアルなど、そもそも大がかりな編集が不要で、必ずしも外部へ制作を依頼するほどではない場合もある。そういうケースでも、小さな予算で簡単に動画ができて、効果が試せる、という状況をVIDEO BRAINで提供したい」とサービス開始の背景について説明。「いろいろ試してもらって、動画を利用しようという企業の裾野を広げたい」と語った。

利用料金は月額15万円(契約期間1年間)。今後、素材のより適切なマッチングができるよう、さらにデータの学習・AIエンジンの改良を行っていくという。また高松氏によると「今秋には英語・中国語への対応を、年内には音声データへの対応も予定している」とのことだった。

オープンエイトでは、VIDEO BRAINの開発と推進を目的として、WiL未来創生ファンドを引受先とする約15億円の第三者割当増資を実施したことも明らかにしている。また動画事業のアドバイザーに江端浩人氏を迎え、VIDEO BRAINの機能強化や販売促進、海外展開を推進するという。

事故や災害の損害査定にAIを活用するスタートアップTractable

[著者:Steve O’Hear]
「私たちの展望と活動の説明に10分間付き合っていただき、嬉しく思います。しかし、これから15分間で、私たちが今、何を得たか、何を達成したか、私たちのAIは何をするのかを解説します」と、Tractableの共同創設者でCEOのAlexandre Dalyacは、数週間前、私がかけたビデオ通話で言った。「もっと短くなりませんか」と私は冗談を返した。

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(翻訳:金井哲夫)

高栄養価の代替食品でチリから革命を起こすNot Company

食料のグローバル化と工業化によってもたらされる栄養不良、資源不足、公害という三重の危機に出資する機会を味わいたい技術系の投資家たちは、新しい持続可能な資源を謳い、スタートアップに投資している。

この5年間、ベンチャー投資家や投資企業は、全世界で2100件、95億ドル(約1兆550億円)を投資しているが、CB Insightsのデータによれば、すべては食料の従来型の栽培、飼育、生産、加工、流通に置き換わるか、それを補完するものを目指している。

サンディエゴのダウンタウンから22分の、街の南東の隅に本社を置くNot Companyは、そうした巨大な代替食品ビジネスの中に現れた有望な新顔たちとは、ちょっと毛色が違う。CEOのMatias Muchnickと2人の共同創設者は、食品革命の恩恵を中南米に、そしてゆくゆくは全世界にもたらしたいと考えている。

いくつもの企業を立ち上げてきたMuchnickにとって、Not Companyは2つめの食品関連事業だ。その前に創設したのは、植物ベースのドレッシングとマヨネーズを販売するEgglessという会社だ。

Egglessで食品関連事業に参入し、その味を知ったMuchnickは、あることを学んだ。食品業界での研究開発が、じつに原始的で非効率であることだ。

その問題を解決しようと、Muchnickはカリフォルニア大学バークレー校で食品業界について研究を始めた。

「バークレーで、そのデータと科学について学ぼうと生物化学学部に入ろうと決めた」とMuchnickは話す。「しかし薬学のほうが、うまく解決してくれるとわかりました。そこで私は、医薬品業界で今何が起きているのかを調べまくり、それを食品業界で研究しました」

バークレーからハーバードに移ったMuchnickは、恒星内部の動きをデータ科学と機会学習とで探っていた宇宙物理学者のKarim Picharaを引き抜いた。データ科学者を仲間に入れたMuchnickは、次にカリフォルニア大学デイビス校で植物のゲノミクス研究をしていたPable Zamoraを第三の共同創設者に加えた。

こうして、Not Companyのドリームチームが結成された。

Not Companyの共同創設者、Karim Pichara、Matias Muchnick、Pable Zamora。

 

Not Companyの活動の中心は、驚くほど潤沢な資金を持ち、一度はトラブルに陥ったアメリカの競合相手Just(かつてはHampton Creekと呼ばれていた)と同じく、機械学習技術を使い、植物の遺伝子的な類似性をマッピングして、その動物体内での結果を調べることにある。

「レンズ豆でもなんでも、遺伝子をマッピングできます」とMuchnick。「どんな種類の豆も、動物性タンパク質をエミュレートできるかどうかを簡単に調べて予測できます」

3人の創設者は、みなアメリカに住んでいるが、故郷のチリに戻ってビジネスを立ち上げることを決めている。Muchnickにとって、サンティアゴに拠点を置くことは、費用も安く済み、研究者も豊富に揃っているところが強みだった。シリコンバレーから離れているから、それを好む求職者もいる。

「我々は目立つ存在となりました」と彼は言う。

しかし、サンティアゴの拠点は、中南米の市場を支配して、喉から手が出るほど欲しがっている人たちに、健康な食品を届けるというNot Companyの最初の戦略的目的を叶えるものでもあった。

栄養不足の形を変える

Muchnickが故郷に拠点を置いた理由は、中南米に溢れている高カロリー、低コストな食品と戦うためでもある。それが世界の国々の栄養不足の原因であり、そこを改善したい。

この新興市場で、栄養不足の問題がどのように作用しているかを知るには、ネスレ、ゼネラル・ミルズ、ペプシコ、ファストフードのマクドナルドやKFC傘下のヤム・ブランズといった企業の状況の変化を見るとよい。

アメリカやヨーロッパではすでに遍在している大手の栄養不足食品企業は、成長を求めて新興市場に目を向け、低収入層の顧客に合わせた製品やビジネスモデルを売り込んでいる。

そうした企業の製品は安価だが、栄養価値はほとんどない。飢えないだろうが、他の健康上の問題が引き起こされる。

「広く信じられている話です。安い食べ物がどこでも手に入るという、実現しうる最高の世界。深く考えなければ、筋が通っています」と、カナダ・オンタリオ州のゲルフ大学食品経済学教授のAnthony Winsonはニューヨークタイムズに語っている。現実はもっと難しいと、Winsonは言う。「厳しい言葉で言えば、食事に殺される、ということだ」

調査結果がそれを示している。The New England Journal of Medicineの2017年の調査によれば、世界人口のおよそ10パーセントが肥満だという。6億400万人の成人と、1億800万人の子どもだ。そして、新興市場では、人の肥満率が急速に増加している。

栄養不足は、工業化された食品ビジネスが新しい土地に進出したときの副作用に過ぎない。それらの企業は、サプライヤーの工業化も目論んでいるとタイムズは伝えている。それは大規模農場への転換を促し、森林伐採を進める。

こうした問題は、ネスレやゼネラル・ミルズといったお菓子メーカーだけに限らない。ファストフード業界の肉の需要は、新興市場の国々の牧畜の工業化も進め、それが地球温暖化の大きな原因となる。

そのような問題を、環境への悪影響がずっと小さい低コストな食品で 、Muchnickの会社は解決しようとしているのだ。

Not製品

Muchnickたちは、2015年の会社設立以来、数多くの製品を開発してきた。同社の当初の目的は、既存の製品に代わる健康な食品を研究開発して企業にライセンスすることにあった。

「私たちは技術系企業です。食品会社ではありません。他の企業のための研究開発に資金を投入したいのです」とMuchnickは2016年に語っていた。

いろいろな製品を熱心に開発するようになったのは、それからだとMuchnickは言う。

「マヨネーズを作りました。チョコレートを作りました。ミルクを作りました。ソーセージ、バーガー、シュラスコ(ローストビーフみたいなものだが、まずい)などの肉の代替品も」と、製品開発に熱くなっておいたころを振り返ってMuchnickは話す。ついには、ハンプトン・クリークの後を追う形で、Not Companyはマヨネーズの販売に乗り出した。

チリは、世界で3番目に大きなマヨネーズの市場なので、そこで販売を始めたのは理にかなっていたとMuchnickは言う。彼らのロードマップに描かれた、より意欲的な製品よりも、簡単に製造できたという点もある。

Muchnickによれば、店に置かれるようになってわずか8ヶ月で、(あまり大きいわけではないが)チリのマヨネーズ市場の10パーセントを獲得したという。ロードマップの次なる製品は、9月に発売を予定しているミルクの代替品だ。2019年にはNotヨーグルトとNotアイスクリームも登場する。

2020年までには、Not Companyはソーセージとひき肉の代替日も発売すると、彼は言っている。

これらの製品の陰では、PicharaとZamoraが開発した、動物と植物のタンパク質のつながりを探る機械学習ソフトウエア「Guiseppe」(ジュゼッペ)が活躍している。

「私たちは7000種類の植物をマッピングしました。もうこれで十分だと思っています」とMuchinickは話す。「それをアミノ酸構造にマッピングしたところ、動物性タンパク質によく似ていました」

Guiseppeは、7つの異なるデータベースと7つの異なるアプローチを操るとMuchnickは説明する。食品とその材料の分子データ、食品とその材料のスペクトル画像、それに、社内の味覚テスターが収集した、味、食感、後味、刺激、酸味といったデータがある。「山ほどのパラメータがあります」とMuchnickは話している。

ロードマップが完成したことで、同社は市場拡大のための追加投資を受けた。チリ国内だけでなく、中南米全体に打って出る。

Not Companyはこのほど、Kaszek VenturesとSOS Venturesから、工場の拡張のための資金として300万ドル(約3億3300万円)の投資を受けた。

ほんの2年前には、あからさまに否定していた方向への大転換だ。「私たちはブランドカンパニーを目指しています」と今のMuchnickは言う。「Not Companyにはソーシャルカレンシーがあるんです」

それを実現させるには、サプライチェーンの開拓が必要だ。同社はすでに毎月64トンのマヨネーズを生産しているが、ミルクやヨーグルトやアイスクリームや、さらには肉の生産を視野に入れると、工場を拡大し続けなければならない。

「私たちは、現地生産のための工場を建てようと決めました」とMuchnickは話している。「これから、ブラジルとアルゼンチンに製品の輸出を始めます。市場シェアが5パーセントから8パーセントに達したら、現地生産に切り替えることにしています」

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(翻訳:金井哲夫)

Adobeのマーケティングツールはメールを送るベストのタイミングをAIが教えてくれる

Adobeの機械学習ツールAdobe Senseiが、マーケティングのためのメールを送る最良のタイミングを教えてくれるようになる。Adobe自身のの研究開発部門Adobe Researchから生まれたこの新しい技術は、近い将来に実用化されるようだ。

マーケターは、AdobeのメールマーケティングツールAdobe Campaignに、キャンペーンの開始日と終了日を教えると、Senseiが、メールが相手の受信箱に到着すべき最良の日時を見つける。そういうメールは消されたり無視されることが多いので、ツールは開封率の最大化を目指して最適化される。

Adobe Researchはさらに、メールの受信者がメッセージにどのように反応したかに基づいて、彼らを自動的に分類分割する技術にも取り組んでいる。これによりマーケターは、コミュニケーションの正しい頻度を判断できる、という。

これら二つのツールはどちらもまだ研究開発の段階だが、今日(米国時間8/22)ローンチしたいくつかの機能は、ユーザーが即利用できる。まず、ドラッグ&ドロップでメールのメッセージをデザインできる機能。そしてAdobe Campaignの動的レポーティング機能。さらに、Adobe Campaignのプッシュ通知の多言語化と高速化により、マーケターは短い時間により多くのメッセージを送ることができるようになった。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa