薬剤のリリースをコントロールして治癒を早めるスマート包帯をMITなどが共同開発

切り傷や擦り傷の治療は通常、包帯や救急絆などを何度か取り替えながら、その都度軟膏などを塗って行う。でも、傷薬(きずぐすり)の要らない包帯があったら、どうだろう?今、ネブラスカ大学リンカーン校とハーバード大学とMITが共同開発しているスマート包帯が、まさにそれなのだ。

従来からよく使われる、消毒綿などの繊維と違って、この傷口保護材は“感熱性のドラッグキャリアを含んだヒドロゲルで電熱ヒーターを包んだ複合繊維”で作られている(右図)。実は、これですべてを言い表しているのだ。

傷口を保護するなどの包帯としての機能は同じだが、そこに切手大のマイクロコントローラーが付いている。アプリやタイマーや織り込まれたセンサーなどによってそのマイクロコントローラーが起動すると、繊維に電気を送って温め、ヒドロゲルの中で寝ていた薬剤を活性化する。

その薬剤は、麻酔剤や抗生剤、あるいは治療を加速する成長ホルモンなど、何でもよい。電圧が高いとより多くの薬剤が活性化し、また、それぞれ薬剤の異なる複数の複合繊維を、ひとつのスマート包帯に使ってもよい。

“これは薬剤の投与量に依存しない治療が可能な初めての傷口保護材である”、とUN-LのAli Tamayolがニューズリリースで言っている。“リリースプロファイルの異なる複数の薬をリリースできる。これはほかのシステムに比べて大きな利点だ”。

チームはジャーナルAdvanced Functional Materialsに発表したペーパーで、動物に適用したときの良好な治癒効果を述べている(人間でのテストはまだこれから)。また、熱が薬剤の効果を妨げないことも、確認している。

ふつうの擦り傷なら普通の包帯や救急絆などの傷口保護材(bandage, 池の向こう岸のお友だち(イギリス人)ならplaster)で十分だが、人が頻繁に世話できない負傷者とか、包帯の頻繁な交換が難しい患部を持つ人には、このシステムが最適だろう。

さらにテストを重ねてFDAの認可が得られたら、今度は繊維とセンサーの統合という課題がある。血糖値やpHなど、治癒過程が分かる測度が包帯から得られれば、それを包帯の上のディスプレイに、プログレスバーで表示できるようになるかもしれない。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

キーホルダーぐらいの小さなデバイスが食品中のさまざまなアレルゲンを検出してくれる

レストランや食品生産者が正しく対応していないことの多い、恐ろしいアレルギーのある人にとっては、食べ物を口にすることが命がけだ。Harvard Medical Schoolが開発したデバイスは、本人が自分で人体実験をしなくてもよいように、食べ物に含まれている一般的なアレルゲンを検知する。

それは、外因性抗原総合検査システム(integrated exogenous antigen testing system, iEAT)と呼ばれる。略語が“I eat”なのは、たまたまだろう。研究者たちが書いたペーパーは、ACS Nano(アメリカ化学学会の機関誌)に発表されている。〔*: 名前に‘総合’とあるのは、多種類のアレルゲンに対応するため。〕

最初に、少量の食品を“抗原抽出デバイス”(antigen extraction device)の上に置く。それは一回使って使い捨てのスライド(載物器)で、化学的に自然に分解する。それをiEATのデバイスに挿入するが、それはキーホルダーぐらいに小さくて軽く、食品サンプルを分析するための電子回路が収まっている。

ケースに収められたデバイスと、複数の電極のあるアタッチメントのプロトタイプ(非売品)。

このデバイスは10分で、アレルゲンの有無と、その量を検出できる。時間はややかかるけれども、今ある方法は、もっと遅かったり、サイズが大きすぎたり、あるいは危険すぎたりする(これは本人が食べる場合!)。しかもiEATは、これまでの検査よりずっと少量でアレルゲンを検出する。ほかにNimaという製品があるが、こちらはグルテンだけが対象で、しかも高価だ。そしてまだプロトタイプ段階のAllyは、ラクトースを検出する。

現在のiEATは、ピーナッツ、ヘーゼルナッツ、小麦、牛乳、卵を検出できるが、貝類、農薬など、ほかのものを加えることは容易である。研究者たちはいくつかのレストランについてテストし、“グルテンフリー”のサラダにグルテンを見つけたり、ビールに卵のタンパク質を見つけたりした(ひどいね)。

本体は40ドルを予定しているが、もちろん抗原抽出デバイスは今後たくさん要る。バルクで安く買えるといいのだが。しかしいずれにしても、喉が詰まったり、おそろしい発疹が出たりせずにすむのは、ありがたいよね。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

拡張現実を歯科で活用する

大掛かりな歯科治療や再建手術を受ける人が、その後どのように見えるようになるかを視覚化することは難しいかもしれない。プラスティックスやロウで型をつくることもできるが、それはいささか…19世紀的だ。ということでスイスのスタートアップが、言われてみればもっともな、拡張現実ソリューションを生み出した。患者に結果の仮想的なスマイルを提示するのだ。

その会社Kapanuは、スイス連邦工科大学チューリッヒ校のスピンオフで、CEOのRoland MörzingerはDisney Researchと協力して医療目的の拡張現実エンジンを作り出した。そして歯科が最初の適用対象として選ばれたのだ。

これは人間の口腔の3Dスキャン(既に多くの歯科医が行っている)を、用意された良い歯のセットのスキャンに対してマッチさせることで動作する。ソフトウェアがユーザーの口や歯の位置を決定すると、その上に改善後の歯が重ねられる。そこからがお楽しみの始まりだ。そこから利用者は様々調整をすることが可能だ。例えばお互いの歯の近さや、様々な形状、歯間距離などなど。全ての変更がその場で表示される。

患者がカスタマイズされた歯を完成させて、AR「仮想ミラー」でプレビューを行い、最終決定を行ったあとで、結果のモデルが義歯製造のために送られる。

このシステムは昨年の冬ドイツのケルンで開催された国際歯科展示会でお披露目され、大きな注目を集めたようだ。これは健康業界におけるこの領域の大企業たちに非常な感銘を与えた。この6月にKapanuはIvoclar Vivadentに買収された。条件については公表されていないが、会社は独立して運営されている。

これは、しばしばおもちゃ程度の扱いしかされないアプリケーションへと追いやられている、拡張現実の素晴らしい成功事例の1つだ。人びとに、目に見える便益をもたらす日常的なアプリケーンを使った本当のビジネス —— 想像して欲しい!

[ 原文へ ]
(翻訳:Sako)

遺伝子検査種目の増えた23andMeが研究開発拡大のため$200Mを調達

複数の情報筋によると、一般消費者向け遺伝子分析サービスの23andMeが、Sequoiaがリードするラウンドにより、2億ドル近い資金を調達している。このラウンドには、Fidelityも参加しているようだ。

ここしばらく、このパーソナル・ジェネティクス企業が研究部門の拡大と新製品開発のために資金を求めている、という噂が漂っていた。

新たに得られたキャッシュによって、23andMeはIPOのプレッシャーからも当面自由になり、成長のための努力に邁進できる。ふつう、どの企業も、上場は最後の資金調達ラウンドから一年以降後に行われることが多い。協同ファウンダーでCEOのAnne WojcickiはIPOにあまり乗り気でないらしいが、そうやって初期の投資家や社員たちに流動性を提供するのが、後期段階のベンチャー支援企業がたどる標準的な道筋だ。しかし23andMeに関しては、大手製薬企業などによる買収、という線もありうる。

23andMeは2013年に、同社の個人に対する遺伝子検査を売り物にすることをやめるよう、FDAに命じられて行き詰まった。それ以降同社は、研究努力に注力してきた。当時FDAは、同社のやり方がFDAの基準に合わない、と言った。その結果23andMeは、新たな顧客たちに遺伝子健康情報を売ることをやめ、別の売上源を探した。

その後同社は医学研究に力を入れ、科学者の雇用を増やし、複数の遺伝子関連企業とパートナーして高度な研究活動を続けた。たとえば女性の受胎能力について研究している遺伝子企業Celmatixは、同社と協働して女性の妊娠能力に影響を及ぼす遺伝子について研究している。

FDAは2015年に規制をやや緩め、ブルーム症候群のための遺伝子検査を認めた。そして今年初めには、唾液検査が許される疾病リスクが、後発性アルツハイマー病やパーキンソン病など、10種類に増えた。少なくとも一つの情報筋によれば、今同社は、乳がん関連の遺伝子BRCA-1とBRCA-2も検査に加えられるよう認可を求めている。認可が下りれば、同社はColor Genomicsなどと競合することになる。

23andMeはほかにも、たとえば家系調査のための遺伝子検査企業Ancestry.comなどとも競合している。

FidelityとSequoiaにコメントを求めているが、Sequoiaはコメントを断(ことわ)った。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

IBMが世界中のスーパーコンピュータのボランティアネットワークにより人体のマイクロバイオームと免疫疾患の関係を解明へ

体内の細菌が人間の健康に及ぼす影響は、まだその全貌と詳細が解明されていない。IBMは、World Community Gridと名付けたクラウドソースなスーパーコンピューター群の“コミュニティ”を利用して、人体のマイクロバイオームと、それが自己免疫疾患にもたらす役割に、光を当てようとしている。

このプロジェクトでIBMがパートナーしたのは、ハーバード大学のBroad Institute, MIT, Massachusetts General Hospital(マサチューセッツ総合病院), カリフォルニア大学サンディエゴ校, そしてSimons FoundationのFlatiron Instituteだ。プログラミング学校も開設しているFlatiron Instituteは、人間の腸内のバクテリアの300万種の遺伝子の、染色体上の位置を解明しようとしている。

この研究は、これらのバクテリアが1型糖尿病や橋本病、クローン病、潰瘍性大腸炎などの疾患にどのように寄与貢献しているのかを、科学者たちが知る手助けになることを目指している。

腸の健康問題に取り組もうとしているのは、もちろんIBMだけではない。むしろそれは今、テクノロジー企業のあいだで流行になってるようだ。4月には、Alphabetのライフサイエンス部門Verilyが、10000名の協力者から得た腸とDNAのサンプルにより、マイクロバイオームに関する情報を集めるプロジェクトをローンチした。テクノロジー世界の億万長者Naveen Jainは、2016年に創ったViomeで、同様の研究を開始した。過去2年間で、このテーマでVCの資金を獲得したスタートアップが数社ある

IBMの研究は、上述の大学等の科学者を起用するだけでなく、世界中のボランティアが提供する膨大なコンピューティングパワーによってデータを分析し、それらの分析結果と所見を一般に公開する。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

遺伝子検査のColorが、これまでのガン検査に加えて心臓血管も検査対象に

ガンと心臓病は、米国における主要な2つの死因だ。これまでのところ、Color Genomicsは、特定のガンに対する高いリスクにつながっている、遺伝子の突然変異検査に焦点を当ててきた。しかし、本日よりこの創業4年の会社は、心臓血管の健康検査のために、遺伝子検査の新しいカテゴリーを導入する。

新しいColor Hereditary High Cholesterol Test(遺伝性高コレステロールテスト)は、冠状動脈性心疾患につながる、高いコレステロールレベルを引き起こす遺伝的状態である家族性高コレステロール血症(FH)と呼ばれる遺伝子変異を特定する。

世界中では約3400万人の人びとが、この病気の影響を受けている可能性がある。高コレステロールの50人中1人はこの突然変異を持っている。問題は何か?遺伝子突然変異を持つほとんどの人は、致命的になる可能性のある心臓発作を起こすまで、自分自身がそれを持っていることを知らないのだ

ガン検査と同様に、早期に突然変異を検出することで、疾患を予防し、生存率を改善し、医療費を削減することができる。そして、そここそがColorが新しいテストで支援しようとしているところだ。

Colorのマーケティング責任者であるKatie Jacobs StantonはTechCrunchに対し「私たちがまずガン検査から始めたのは、それが主たる死因の1つだったからということと、遺伝とガンの関係の科学が良く確立されていたためです」と語った。「同様に、遺伝学心血管疾患に関する確立された科学もあります…心臓血管疾患も主要な死因であること(そしてガンと合わせると1兆1000億ドルを超えるコストがかかっていること)を考えると、これから私たちは遺伝的な心臓疾患状態の進行リスクを人びとに知ってもらい、心臓の健康状態を積極的に管理できるようにしてもらうお手伝いができると考えています」。

23andMeのような自宅で行える遺伝子検査とは異なり、この検査は医師を通して依頼を行う。新規顧客向けのテストの価格は249ドルだ。しかし、既にColorのガン検査を受けた人は、この心臓血管検査を150ドルの追加で購入することができる。

[ 原文へ ]
(翻訳:Sako)

本人が何も装着せず、電波の反射波を利用する非侵襲型(当人が意識しない)の睡眠モニタをMITで開発

MITの研究者たちが、睡眠をワイヤレスでモニタする新しい方法を公開した。それは反響定位法(エコーロケーション, echolocation)に似ていて、電波を睡眠者に当てて反射波を捉え、体の影響による電波の変化を調べる。

チームはこれまでも、低出力の電波をモニタリングに利用する方法をいろいろトライしてきたが、今回のはその最新の成果だ。今回はAIを利用することによって、睡眠者の体のわずかな動きでも、電波の変化の中に捉えることができた。それにより、睡眠ステージ(浅い深い、REM/NREM)、睡眠中の運動、呼吸率など、睡眠のパターンに関する有意味な情報を得ることができた。

テストは25名のボランティアに対し、100晩かけて行われた。研究の指導教授Dina Katabiによると、そのシステムは80%の正確度で睡眠パターンを検出できた。それは業界標準の睡眠テストEEGにほぼ匹敵する。

睡眠の追跡調査はFitbitやApple Watchのようなウェアラブルでもある程度行われているが、それらはもっぱら、スマホが内蔵している加速度計を使って体の動きを検出し、それにより睡眠のパターンを判断している。

“ウェアラブルもいいけど、われわれのねらいは、目に見えないものを捉えることだった”、とKatabiは語る。“それは家庭の中で、みんなが忘れてしまうぐらい目立たないが、しかしそれと同時に、ワイヤレスの信号だけを使って健康上のあらゆる問題をモニタできる”。

そのワイヤレスシステムは、取り上げる要素がウェアラブルよりずっと多い。動きだけでなく、呼吸や心拍も捉える。それでいて、まったく生活の邪魔にならず、ベッドから数メートル以内の棚や壁に目立たない形で置ける。

使用する電波はWi-Fiよりずっと弱く、一家の中で複数台を複数の人に対して使える。調整などは要らない。被験者にとって、まったく気にならない存在であることも、本機の理想的な性質だ。

本人がその存在を忘れている状態で長期の検診ができるから、パーキンソン病やアルツハイマー病のような睡眠障害と関係の深い疾病のモニタにも向いている。ただし、そこまで一般化大衆化するためには、まずFDAなどの認可が必要だ。結果はすでに良好だから、それも大丈夫だと思えるが。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

顕微鏡で観察する‘微小ロボット’のモジュールが、形をさまざまに変えてたった一つの細胞を捉える

ノースカロライナ州立大学とデューク大学が発表したビデオでは、顕微鏡の下で5つの小さなキューブが自由に浮遊している。突然、二つのペアがくっつき合い、最後には5つすべてが一体化する。いったんくっつくと、彼らは蝶番のように折れ曲がり、パックマンのあごのように密着し合う。キューブたちは小さな円形のオブジェクト…一つのイースト菌の細胞…に接近し、蝶番の開閉を利用して前進していく。やがて彼らは閉じた形状になり、そこにイースト菌を閉じ込め、その後また開いて、菌を自由にしてやる。

研究者たちはこれらのポリマーのキューブを“microbot origami”(微小ロボットの折り紙)と呼び、その小さなモジュール的なオブジェクトは、さまざまな形に構成変えできる。各キューブは一面のみが金属でコーティングされ、彼らの周りに置かれた一連の電磁石によって形や動きを操作される。このデバイスは、自然界に見られるタンパク質ストランドの折りたたみ現象を模倣するために設計され、タンパク質の場合と同じく、微小ロボットの形状でその折りが決まる。

短期的には、この微小ロボットは研究用のツールとして利用できる。顕微鏡の下のオブジェクトと対話することによって、これらのブロックは未知の物質の性質を明らかにする。“今のところこれは、素材を微小レベルで調べるためのツールだ”、とペーパーの共著者Orlin Velevは説明する。“大きな素材や物質に対してありとあらゆる機械的な試験をするのはきわめて容易だが、小さな小胞(ないしベシクル)一つだけをつまむのは、すごく難しい”。

このような小さな折り紙的ロボットはMITなどでも開発され、どれもよく似た性質を持つ。もっと小さな、マイクロメートルサイズの研究に利用されているものもある。そしてそれらのプロジェクトと同様、この微小ロボットも、今後の医療方面の用途が展望される。医師がオブジェクトを小さなスケールで操作したり、テスト目的で一つの細胞を隔離したりできるだろう。

研究者たちはさらに、人工筋肉のようなバイオメディカルのデバイスに応用され、細胞レベルの動きが必要なケースで使われることもありえる、と考えている。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

高校生が3Dプリントと機械学習を利用して祖父のための網膜診断システムを制作

もしもあなたが、ぼくと同じように、自分はこれまでの人生でまだたいしたことしてないな、と日頃思っているなら、Kavya Kopparapuのこのプロフィールを読まない方がよいかもしれない。このティーンエイジャーはまだ高校生なのに、ぼくが大学卒業後これまでにやったことよりも、すごいことをやってのけた。いちばん最近では、彼女は祖父の、誰にでもよくある目の不具合を診断する、安くてポータブルなシステムを作った。その症状は気づかれないことが多く、しかし放置すると失明に至る。

3Dプリントで作ったマウントに装着したレンズが、iPhoneで網膜をスキャンし、何千もの網膜画像で訓練された機械学習システムが、一般公開されている既存のサービスをいくつか使って診断をする。彼女はその作品を、先月行われたO’Reilly’s AIカンファレンスで発表した。

もっと詳しく知りたい人は、IEEE Spectrumの記事彼女のブログを読んでみよう。ぼくは、Kopparapuの次のプロジェクトを知りたいね。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

米国の科学者たちがCRISPRを使い、人間の胚から遺伝性心臓疾患の要因を取り除いた

先週、米国の科学者グループが、初めてヒト胚に対してCRISPRを行なったという報告が出てから、様々な憶測が渦巻いた。その最初の研究成果が公表されたが、その発見は極めて驚くべきものだ。

オレゴン健康科学大学のShoukhrat Mitalipovと彼の同僚は、CRISPR Cas9遺伝子編集技術を用いて、胚の中の遺伝性の心臓変異の要因を取り除いたのだ。

これまで、CRISPRを人間に使用した研究の報告はいずれも国外からのものであり、その結果はいずれも良好なものではなかった。中国はこの技術を人間に使用することについて特に大胆だった。中国の科学者たちは、2015年に人間の胚にCRISPRを用いた同様の実験を行ったが、これらの胚への適用は、DNAへの変更が一部の細胞だけに適用された際に見られる「モザイク現象」という標的外遺伝子変異(off-target genetic mutations)の結果に終わったと言われている。この問題は、この技術の人間に対する使用に関する、国際的な倫理的議論を呼び起こした。

そして、畏れを知らない四川大学の科学者たちは、今度は完全に成長した成人を対象にして、悪性の癌の治療に対するCRISPRの使用を試みている。

しかし、オレゴンの実験における胚の結果は、遥かに優れているようだ。

「この結果は、アプローチが効果的であり、CRISPR-Cas9の対象選択が非常に正確であることを示していて、安全上の懸念に関するいくつかの裏付けを提供するものである。さらには、標的外変異(off-target mutations)の形跡もなかった。これらの知見が示すものは、このアプローチは、着床前遺伝子診断(PGD)と組み合わせることにより、胚の中の遺伝性変異の修正への応用の可能性があるということである」。本日(米国時間8月2日)出版されたNatureの中では、科学的発見がこのように述べられている。

Mitalipovと彼の同僚たちは、Cas9酵素(DNA断片に対してハサミのように働く酵素)を精子と卵子に同時に注入することで、中国の科学者たちが既に犯していたミスを回避することができた。どの位の数の胚を上手く扱うことができたのかは不明だが(問い合わせ中)、この手法は上手く行ったようだ。

このリリースによれば「標的外変異はなかった」ということだ。

しかし、CRISPRを用いた生殖細胞系編集の実践は、依然として激しい論争の的だ。昨年、米国議会は、臨床試験で胚を編集するために、CRISPRを使用することを禁じた。オレゴンのチームは、議会による禁止にもかかわらず、胚を数日間成長させただけで、この発見をすることができた。彼らは、胚を子宮内に移植することや、人間の赤ちゃんに成長させることは決して意図していなかった。

しかし、多くの科学者たちは、モザイク現象への懸念を超えて、生殖細胞系編集そのものを非倫理的とみなし、デザイナーベイビーの誕生につながる可能性があると主張している。

そしてその対極には、赤ん坊が最初の呼吸をする前に、致命的な疾患を消し去ることができる可能性がある。Mitalipovの研究室で取り除かれた心臓疾患である、肥大性心筋症(HCM)は500人に1人の割合で影響を及ぼしている。

これらの初期結果に続く、CRISPRを用いた実験を、米国内でさらに見ることができるだろうか?それは分からない。しかし、この研究が有望であり、ハクスリーの「すばらしい新世界」(Brave New World)にさらに近付くものであることは間違いない。

[ 原文へ ]
(翻訳:Sako)

FEATURED IMAGE: CHRISTIAN DARKIN/GETTY IMAGES

オンデマンド獣医サービスのVettedが330万ドル調達――ペットの健康も家庭で管理

ペットを診察に連れて行くことほど面倒なことはない。

犬や猫を動物病院まで移動させるのも骨が折れるが、それに加えて治療時間の割にかなりの治療費がかかる。

Vettedがこの状況を変えようとしている。同社はオンデマンドの獣医サービスを提供しており、ユーザーは99ドルの一律料金を支払えば獣医に家まで来てもらえるのだ。Vettedはこの度、Foundation CapitalやAmplify LA、Sterling.VC、Reimaginedが参加したシードラウンドで合計330万ドルを調達した。

彼らのビジネスの鍵は、ユーザーの家で本当に十分な獣医サービスを提供できるかどうかだ。しかしVettedの共同ファウンダーでCOOのAli Shahidは、皮膚や耳、目、消化系のトラブルを含め、通常動物病院で行われる治療の89%は家でも施すことができると言う。さらに、万が一無菌室や専門的な医療機器が必要になった場合は、Vettedが選別した近くの動物病院を紹介してくれる。

つまり、Vettedは全ての問題を解決できるわけではないものの、ユーザーは大方の疾患については、わざわざ動物病院を訪れる必要がないということだ。さらに同社によれば、毎回アポイントメントが設定されると、担当者が電話で飼い主と症状について話し合うようになっているため、家で対処可能な問題かどうかが事前にわかるのだという。

99ドルの料金には、検査、問診、爪切り、耳掃除(通常の動物病院では追加料金がかかる)、さらには診察後のビデオ電話または電話でのフォローアップが含まれている。予防注射や処方箋の発行といった追加サービスには別途料金がかかるが、これも従来の動物病院に比べれば25〜40%安い。オンデマンドサービスの中には料金やマネタイズ方法が不明瞭なものもあるが、Vettedは違う。彼らは病院を構えておらず、賃貸料やメンテナンスコストといった固定費がかからないため、この料金を実現できるのだ。

もちろんVetted以外にもペット医療の市場で事業を展開するスタートアップが存在する。サンフランシスコのTreatも99ドルの一律料金でサービスを提供しており、ユーザーは往診前に獣医とチャットで症状について話すこともできる。イギリスのPawSquadも同様だ。しかし、アメリカ市民は年間600億ドルものお金をペットに使っているという統計もあり、市場規模や現在これらの企業が地域的に散らばっていることを考慮すると、複数の企業が生き残っていくだけのスペースは残されている。

今のところVettedはウェストロサンゼルスでのみ営業している。そのおかげもあり、所属獣医の手が空いてさえいれば、連絡を受けてから獣医がユーザーの家を訪れるまでには最大90分しかかからない。今回の調達資金は主に西海岸地域への事業展開に使われる予定で、彼らはロサンゼルス全域、さらにはオレンジカウンティーへと徐々に進出先を広げようとしている。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake

救急車が入れない僻地災害地などに細動除去器を運ぶドローンをロシアの産学協同で開発

モスクワ工科大学のロシア人科学者たちが考えた、このドローンの有効利用技術では、細動除去器(defibrillator, AEDなど)をドローンに搭載して飛ばし、心肺蘇生処置を必要としている遠隔地の人を助ける。

いわば空飛ぶ救急車だが、ヘリなどに比べるとずっと安上がりだ。

このプロジェクトはモスクワ工科大学の航空宇宙研究所と、ロシアの医療機器企業Altomedikaのコラボレーションだ。

ドローンの救急利用は、オランダの設計者による2014年のプロトタイプあたりからある。しかし細動除去器を専用のドローンで遠隔の患者に送ることより重要なのは、それを一般的な市販製品にして、現存の救急体制が実際に導入し利用すること、そして、遠隔地に飛ばすにあたって安全性の基準が満たされることだ。

このロシアのドローンは最大飛行距離が50キロメートルで、最大荷重が3キログラムだ。設計者たちは、“コンパクトなサイズ”であることと、AEDの輸送にかぎらず、用途が多様であることを誇っている。

“操縦者のコントロールのもとに、このドローンは細動除去器を迅速に空輸できる。また手動操作ほかに、自動飛行もできる”、とチームは言っている。

ただしもちろん、着陸地点にはその機器を操作して蘇生処置のできる人間がいなければならない。あるいは未経験者に音声で使用インストラクションを手取り足取り教えることができる場合もある。

“細動除去器は患者の心電図を分析し、医師のためにデータを保存し、必要な場合には心肺蘇生処置の国際的な推奨手順に従って一連の放電を行う”、とチームは説明している。

チームのスポークスパーソンによると、ドローンは至近の救急車や救急センターから飛ばす。その方が、救急車が行くよりもはやい、という。

“最初に採用してくれる機関は、ロシア緊急事態省とロシア連邦保健省だろう”、と彼は言う。

彼曰く、このドローンは一般の輸送用、とくに荷物の配達にも使える。ただし最大積載は3キログラムだが。

“救急目的に限定しても、細動除去器のほかに医薬品や生体適合物質なども運べるし、カメラとスピーカーホンを載せれば医療相談などもできる”、ということだ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

ネットいじめに関するイギリスの大規模調査によると、InstagramとFacebookがいじめ最多の場所

イギリスのいじめ防止団体Ditch The Labe今年度の調査によると、2017年でネットいじめがもっとも多いサイトはInstagram、そしてFacebookが僅差で二位だ。今年の調査は12歳から20歳までの標本10020名の回答を集めたが、統計学的にはこれだけの標本数があれば、ネット上の有害な疫病の広がりの現状を、正確に反映したデータが得られたと言える。

いじめ被害の経験者の比率は、Instagramではユーザーの42%、Facebookでは37%、Snapchatでは31%だった。利用経験が92%と最大のYouTubeでは、いじめ経験は10%と比較的低い。

そのほかに、こんなデータもある:

  • 回答者の50%がいじめの被害を経験している。
  • 10%が、先週、いじめ被害を経験している。
  • いじめ被害経験者の50%は容姿についていじめられている。
  • いじめ被害経験者の24%が個人情報をネット上で共有している。
  • 27%が自分の意に反して写真やビデオを共有されている。
  • 18%が正しくないプロフィール情報を流布されている

この調査報告書には、いじめる側の心理に関する深い探究もある。調査はいじめを客観的に定義していないが、そんな主観的な回答において、回答者の12%が、誰かをいじめたことがある、と答えている。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

がん専門医が正しい最新知識を得るためのQ&AサービスTheMednetがシードで$1.3Mを調達

TheMednetはY Combinatorから今年の春にローンチし、最初はがんから始めて、良い処置に関する最新の研究を専門医が調べる手助けをする。同社はこのほど130万ドルのシード資金を獲得して、広く医師たちからの知名度と利用を高めようとしている。

投資家はEndure Capital, Lumia Capital, The Hope Foundation, The Bonnie J. Addario Lung Cancer Foundation, そしてエンジェル投資家のCharlie Cheever(Quora), Jared Friedman(Scribd), Paul Buchheit(YC), Peter He, そしてPeter Pham(Science)らだ。

協同ファウンダーのNadine Housriは放射線腫瘍医、そして弟のCEO Samir Housriは以前本誌に、YCとThe Hope Foundationから助成金や投資を受けたことがある、と語った。

このようなスタートアップが重要なのは、通常医師たちが、小さな狭い人間関係の中でアドバイスの授受をしているからだ。つまり、医師たちの情報ネットワークは、デフォルトではとても小さい。そのネットワークをもっと広く大きくして、何千もの医師たちが情報で助け合うネットワークにする必要がある。そうすれば、良い情報に無縁なままの医師は、減るだろう。

“検査などのデータからがんの処置方針を決めることが多いが、しかしデータは、イコール知識ではない。データは臨床体験や専門知識によってフィルタされ、その結果を患者に適用すべきだ”、とSamirは語る。“私たちは、医師たちを最強の情報ネットワークに接触させ、いろんな大学の研究センターにいるときのように、専門家たちの意見が身近に得られるようにする”。

専門家/専門医の意見を得られる点では、TheMednetはFigure1やUptodateに似ている。でもTheMednetは現状で4000あまりの腫瘍医や、500名のエキスパートを抱えている。そしてこのネットワークを、これまで、アメリカの腫瘍医の25%が利用している。大学のがんセンターの、がん治療の経験のある教授たちも、TheMednetのコンテンツに貢献している。

今度得られた資金は、もっと到達範囲を広げることに使われる。アメリカの腫瘍医のT少なくとも50%に到達することと、そして、医師たちの知識がつねに最新であるようにするために、テクノロジーを利用して情報を正しくキュレートする(整理加工する)ことが目標だ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Googleのライフサイエンス部門Verily社が細菌に感染した蚊2000万匹をフレズノに放つ

Googleの親会社Alphabet傘下のライフサイエンス企業Verilyが、研究室で育てて、細菌に感染させた蚊2000万匹を、カリフォルニア州フレズノにリリースする計画を準備している。そしてそれは、良いことなのだ!

実は、ジカ熱を媒介するネッタイシマカがその地域に蔓延している。今年の初めには、ある女性がフレズノで、ジカ熱の最初の感染者と確認された。それは、それまで旅をしていたパートナーとの性的接触によるものだった。今では、何か対策をとらないかぎり、感染の流行が避けられないおそれがある。VerilyのDebug Projectと呼ばれるそのプランは、ジカ熱を媒介する蚊の人口(生息数)を一掃して今後の感染を防ぐ、というものだ。

蚊の人口をいじると予期せざる弊害はないのか? それはない。この種類の蚊は、2013年に初めてその地域に入ってきたのだ。既存生態系の一部ではない。

では、どうやって退治するのか? Verilyの雄の蚊はボルバキア菌に感染していて、人間には無害だが、雌の蚊と交配すると感染し、卵子を発生不能にする。

おまけに、雄の蚊は噛まないから、フレズノの住民が今以上に痒さを我慢することにはならない。

費用に関する発表はないが、蚊をリリースするチームのエンジニアLinus UpsonがMIT Technology Reviewで、次は同じことをオーストラリアでやる、と言っている。

“環境が変わっても同じ効果があることを、証明したいんだ”、と彼は同誌に述べている。

Verilyの計画では、フレズノの面積300エーカーの地域社会二箇所に、20週間にわたって、毎週100万匹の蚊を放つ。ボルバキア菌に感染している蚊をリリースする規模としては、アメリカでは過去最大である。

Fancher Creek地区の住民は今日(米国時間7/14)から、Verilyのバンがやってきて小さな虫たちの健康的な大群をリリースする様子を、目にすることになるだろう。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

糖尿病患者のリモート管理プラットホームGlookoがシリーズCの$35Mを調達、業容の拡大を目指す

Glookoは、患者のデータを遠くから医師がモニタできる、その際使用するデバイスの種類を問わない、というデータ管理型のヘルスケアサービスを提供している。とくに現在最大に力を入れているのが、糖尿病とその患者および医療スタッフだ。その同社が今日(米国時間6/28)、シリーズCで3500万ドルの資金を調達した。これまでの調達額3600万ドルを合わせると、トータルで7100万ドルになる。

前回本誌が取り上げたときは聞けなかったが、今回は協力的で、これまでの対象患者数100万あまり、彼らのデータをモニタした医師等の数は6000あまり、ということだ。この分野にはDexcomやMedtronicなど先輩の大手もいるので、競争に伍していくためにはさらに急速な拡大が必要だ。

Glookoの計画では、資金は営業とマーケティングと開発チームの増員、および、フランス、ドイツ、イギリス、アジア、中東における商用化努力の強化に充てる、という。

今回のラウンドを指揮したのはトロントのGeorgian Partners、これに新たな投資家Insulet CorporationとMayo Clinicが参加した。既存の投資家Canaan Partners, Social Capital, Medtronic, およびSamsung Nextも参加した。

GlookoのCEO Rick Altingerはこう述べる: “今回の新たな資金によって、私たちのミッションである糖尿病患者の生活改善の、さらなる追究が可能になった。今後は臨床的ソリューションへの投資により、薬服用サイクルの遵守、個人化されたインサイトの提供、それを契機とする生活改善の推進などに取り組んでいきたい。また、何千もの臨床医と看護師等による臨床的意思決定を支援して、糖尿病患者が自宅等医療機関の外にいるときのサポートを充実していきたい”。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

不妊治療関連サービスの市場はいまや30億ドル規模に拡大

2016年の統計で出産した人の年齢をみると、30歳代の人が初めて20歳代の人を上回ったのだそうだ。高齢出産のリスクについてはさまざまな調査が行われているが、出産の高齢化に伴う「問題」はそれだけではない。CDCの統計によると、アメリカでは8組のうちの1組のカップル(年齢問わず)が、何らかの原因による不妊に悩んでいるのだとのことだ。ますます多くの人が体外受精などの不妊治療を行うようになっているのだとのこと。

医療の進歩により、不妊に対処する可能性は増えてきているわけだが、しかしこうした治療は非常に高額になることが多い。アメリカにおける体外受精には1万2000ドルないし2万ドル程度の金額が必要だとのこと。無事妊娠できた場合にも、胎児の遺伝子検査などでさらに数千ドルの費用が必要となる。これでは平均的な収入レベルで手を出せるものではない。

それをなんとかしようとするのが、ベイエリアに拠点をおくスタートアップのFuture Familyだ。妊娠可能か否か、どの程度の時間が残されているのかを自宅で検査できる妊娠可能年齢テストなど、比較的安価な不妊検査/治療手段を提供している。

設立したのはSolar Cityを運営していたClaire TomkinsとEve Blossomだ。Claire Tomkinsは自身でも6度の体外受精を行なって、出産にいたるまでに10万ドルを費やしたのだそうだ。この自身の経験から、より多くの女性ないしカップルが利用できる不妊治療手段を提供したいと考えるようになったわけだ。

「治療費はあまりに高額で、大いに悩むことになりました」とTomkinsは述べる。「これまで医者にかかるようなこともなかったのですが、不妊治療を経験することで、経済的な負担を心から感じることになりました」。

他の女性も困っているのではないかと、自身と同様の治療をうけた人たちにインタビューするなどして、Future Familyの起業を決意したのだとのこと。

不妊治療を資金面からサポートしようとする仕組みは他にもある。医院でも、保険に応じた資金サポートを行なっているところが大半だ。中には不妊治療をまかなえる保険もあるので、治療を受ける際にはきちんとチェックしておくことが必要だ。Google検索でも、さまざまな費用オプションを見つけることができる。しかしFuture Familyでは休みなしの24時間体制で相談窓口を設けている。また体外受精や卵子凍結費用については頭金なしのローンなども提供している。さまざまな治療オプションについて検討して、可能な限り費用をおさえようとする提案も行なってくれる。ちなみにFuture Familyの提供する妊娠可能年齢検査は、一般的な金額の半分である300ドルで提供している。

卵子の凍結保存は、月額75ドルからの金額となっている。この金額には、1年間にかかる検査、治療、および保存のための費用がすべて含まれるのだそうだ。体外受精費用も、必要な額をすべて含んで月額換算125ドル程度から可能となっているようだ。

不妊治療関連を手がけるサービスは、最近になって数多く登場してきている。しかし市場規模も30億ドル近くにまで成長してきており、ビジネス的な可能性は大きいといえそうだ。

原文へ

(翻訳:Maeda, H

医師向けのInstagram――Figure 1が1000万ドル調達

Figure 1は血を見るのが苦手な人向けではないが、どうやら投資家の心は上手くつかんだようだ。同プラットフォームは100万人以上の医療関係者が登録するソーシャルネットワークのようなもので、ユーザーは珍しい症状や新しい治療法、さらには治療事例を投稿できるようになっている。この度、運営元のFigure 1, Inc.はシリーズBで1000万ドルを調達した。

医師向けのInstagram」とも呼ばれるFigure 1が行った今回の資金調達では、Kensington Capital Partnersがリードインベスターを務めた。さらに、Samsung NEXTや保険コングロマリットのJohn Hancock(アメリカ以外ではManulifeとして知られている)、スタートアップ向けに貸出を行うWTI、カナダの投資会社Hedgewood、そして既存投資家のUnion Square Ventures、Rho Canada Ventures、Verison One Venturesらがこの度のラウンドに参加した。

先週、Figure 1のファウンダーでCEOのGregory Leveyと話す機会があり、最近のオペレーションについて聞いてきたので、以下にその様子をお伝えしたい。なお、トロントを拠点に4年前に設立され、今では50人の社員を抱えるFigure 1は、これまでに合計で2000万ドルを調達している。

TC:Figure 1に登録できるのは医療関係者だけというイメージが広がっていますが、そうではないんですよね?

GL:はい、誰でも登録できます。実際にサービスに興味を持ってくれているのは、ジャーナリストとVCばかりだと冗談を言っているくらいですから。でも写真やコメントを投稿できるのは医療関係者だけです。それ以外のユーザーは、投稿内容を見ることはできますが、何かを投稿することはできません。医療関係者だという認証を受けたユーザーは、その他にもさまざまな機能を利用できます。

TC:”医療関係者”というのは、医師と看護師のことを指していますよね。学生はどうですか?

GL:プレメディカル(医学部進学課程)の生徒は対象に含まれませんが、看護学生は例外的に医療関係者とみなしています。さらに、アメリカ中の医学生の約70%がFigures 1に登録しています。

TC:つまりユーザーのほとんどがアメリカ国内にいるということですか?

GL:全体の約3分の2がアメリカに住む人たちで、その次にエンゲージメント率が高いのが南米のユーザーです。彼らのニーズに応えるため、(ブラジル人を大量に雇った結果)オフィスの一部がポルトガル語圏のようになっています(笑)。アプリもスペイン語版・ポルトガル語版の両方が準備されています。あとは、イギリスやオーストラリアのユーザーが多く、新興国の人たちもFigure 1を気に入ってくれているようです。ただ、新興国では回線スピードの問題がありますし、一般に販売されている携帯電話の記憶容量が少ないため(Figure 1のアプリを)インストールしておくのもなかなか難しいようです。

TC:具体的な登録ユーザー数やアクティブユーザー数についてはいかがでしょう?

GL:今は次なるマイルストーンに向けて努力を重ねている段階ですが、以前データを公開した時点では登録者数が200万人強、MAU(月間アクティブユーザー数)は数十万人でした。ちなみにアメリカの医師の総数は80万人です。

TC:エンゲージメントに関してはどうですか? 他のソーシャルネットワークのように、一部のユーザーが積極的に情報を発信していて、他の人たちはただ単にそれを覗き見ているという状況でしょうか?

GL:他のソーシャルネットワークとそこまで大差ないと思いますが、もしかしたらFigure 1の方がユーザー同士の議論が活発に行われているかもしれません。最近では、事例をテキストベースで投稿できる機能をローンチし、写真撮影の許可がとれない人たちでも文字で何が起きたかを共有できるようになりました。精神医療を専門とする人たちもこの機能を使って事例を投稿していて、プラットフォーム上の情報量が一気に増えました。

サービスが成長するにつれて、ユーザー行動についても色んなことを学びました。当初私は、ユーザー全員が事例を投稿するべきだと思っていましたが、最近ではFigure 1のサービスはTwitterよりもYouTubeに近いと気づき始めたんです。これはどういうことかというと、私はYouTubeに動画を投稿したことは一度もありませんが、いつも視聴者として動画を楽しんでいます。同様にFigure 1のユーザーも、投稿されている情報に価値を感じている一方で、全員が自分の治療事例を共有したいと思っているわけではありません。でもそれでいいんです。

TC:専門分野によってコンテンツに偏りがでないよう何か対策をとっていますか? それとも、そこはユーザーにまかせていますか?

GL:最初は専門分野をひとつに絞ろうという話をしていたんですが、結局かなり門戸を広げ、臨床検査技師から精神科医までさまざまな専門の人をユーザーとして迎え、そこからは自然と増えていきましたね。意識的にある専門分野に特化していこうとは考えていません。

TC:最近はマネタイズに向けた実験を開始し、スポンサードコンテンツの掲載を始めましたよね。企業の支援の下、ある医師が他の医師にプラットフォーム上で治療法などについて教えるプログラムもあるようですが、そちらの調子はいかがですか?

GL:上手くいってますよ。まだ始まったばかりですが、かなり多くの企業から問い合わせをもらっていて、私たちでは手に負えないほどです。もちろんそれは良いことなんですけどね。また、コンテンツの質にはかなりこだわっているので、今のところユーザーの反応も上々です。むしろユーザーが投稿したコンテンツよりも、スポンサードコンテンツのエンゲージメント率の方が高いくらいです。

TC:今後はFigure 1主導のコンテンツの数を増やしていく予定ですか?

GL:私たちはメディア企業になりたいわけではないので、そうしないように気をつけています。Figure 1の中心はあくまでユーザーです。

TC:調達資金の使い道について教えてください。

GL:まずはユーザーベースの拡大です。現状マネタイズも上手くいっているので、収益面も(さらに)強化していきたいですね。サービス内容の拡充や新しい収益源の獲得も検討しています。4年前の設立時、Figure 1は新しくてワクワクするようなサービスでしたが、今後もそうあり続けたいと思っています。例えば治療事例にはとても価値があるので、このコンテンツを活用するために先日機械学習の専門家をチームに迎えました。これまで私は(一般的に企業が設定している)マーケティング予算について全く理解していませんでしたが、スポンサードコンテンツも収益面で大きな可能性を秘めているとわかりました。さらに、スタッフ向けの特別機能を開発することに興味をもっている医療機関とも話を進めています。

TC:他分野への進出も考えていますか?

GL:笑い話ですが、「競馬業界でも同じサービスをやるべきだよ!」と言う友人がいて、私は「いやー、それはどうかな」と返していました。一方で、歯科業界には独自のニーズがありそうなので、そちらへの進出については現在検討中です。あとは私自身が犬好きということもあり、獣医学にも興味を持っています。Figure 1にもたくさんの獣医が登録してくれていますが、彼らは自身は事例を投稿することができません。でも彼らの中には、(人間の事例に対して)「これは猫科の動物にも見られる症状ですね」といったコメントをする人がいて、他のユーザーから「ここから出て行け」といった具合で追い払われてしまっています。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

ネット上で初めて性の健康コンサルを提供するBiem、45ドルと高いが有資格の専門家が対応、検査も受けられる

性の健康、という話題は、あまり人気がない。性やデートにテクノロジーが大々的に関わっている今日ですら、ネット上に性の健康に関する情報は乏しい。そこを突いたのが、Biemだ。

Biemのアプリとサービスを使って、性に関する保健医療の専門家と気軽に話をしたり、検査を受けたりできる。またユーザーはこのアプリとサービスに対しては匿名のまま、コンサルの結果や試験結果で異状が明らかになったら、そのことを性的パートナーに通知できる。

協同ファウンダーのBryan Stacyは、STD(性行為感染症)の検査には恐怖や不安が伴うことを感じ、それを緩和するためにBiemを創った。

“性の健康について教育されていないから、みんな怖がるんだ”、と彼は言う。“でも恐怖に負けて知識や情報が不足したら、本人の命にかかわることもある。精巣癌やクラミジアも、知識がなければ重症になるまで放置される。アメリカでSTD患者が異様に多いのも、みんな恐怖に負けて、正しい知識を得ようとしないからだ。われわれの目標は、みんなが性の健康について平然淡々と会話できるようになること。恐怖に圧倒されたり、複雑な検査や医療にびびったりしないようになることだ”。

このサービスはすでにニューヨークでは臨床段階であり、国の規制をクリアすれば全国展開できる。今同社は、シリーズAの資金調達中だ。

とてもシンプルなシステムで、アプリ経由で性の健康に関する有資格の専門家と話をすると45ドル、オプションとして検査も受けられる。

“検査は自宅または、うちのパートナーの検査部門で受けられる”、とStacyは語る。“診断はすべて、FDAとCLEAの規格に準拠している。伝承等による自己検査や、商品化されている検査キットは、FDAの規準に合わないし、正確でもない。しかも、専門家の判断がないので、今後の処置について正しい指針が得られない”。

同社は、デートアプリとパートナーして、性の健康やその診断についてコミュニケーションと理解を広めたい、と考えている。性を楽しむにしても、そこに恐怖や不安や混乱がないようにしたいものだ。

〔参考:性の健康、日本の関連機関

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

ワイヤレスで歩行速度を測るMITのWiGaitはセンサーを使うウェアラブルより正確でストレスフリー

MITのコンピューターサイエンスと人工知能研究所が、歩行速度を95から99%の精度で測定する方法を考案した。それは、ウェアラブルや体につける測定器具は使わない。その技術は、チームが“WiGait”と呼ぶワイヤレスの信号を利用し、それを家の中でルーターのような装置から送信して、一定時間内の歩行速度と歩幅を調べる。

このWiGaitシステムは屋内で使用し、目立たない場所にセットアップできる。ユーザーは、いちいち腕輪などの充電を要する器具を思い出して身につけなくても、そのままでいつでも自分の歩行を測れる。歩行速度の測定は臨床研究に大いに役に立ち、健康状態の予測予言に利用できることが、最近ますます立証されつつある。また歩幅の変化は、パーキンソン病などの診断に役に立つ。

WiGaitはそのほかの体調診断方法に比べて、体に何もつけないし、カメラのような気になる器具も使わないから有利だ。たとえば歩幅測定にカメラを使うと、副産物としてプライバシーの心配が生ずる。患者は歩行距離を測るセンサーなどがない方が気楽だし、自分を見張っているカメラがあるより、WiGaitのように壁に目立たないアンテナがある方が余計な緊張をしない。

  1. zach-kabelac-dina-katabi-chen-yu-hsu-and-rumen-hristov-led-the-development-of-wigait-photo-credit-tom-buehler.jpg

  2. wigait-uses-wireless-signals-to-continuously-measure-a-person_s-walking-speed-photo-credit-jason-dorfman.png

  3. phd-student-chen-yu-hsu-was-lead-author-on-the-new-paper-about-the-wigait-device-in-background-photo-credit-jason-dorfman.jpg

この開発は、長期的な介護や老人医学にとって大きな診療的意義がある。この二つの分野は、人間の長寿命化と社会の高齢化とともにますます重要だ。この技術のいちばん良いところは、一度セットアップすれば、患者の適応努力に伴うストレスがゼロであることだ。ウェアラブルだと、この適応努力がいつもたいへんである。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))