街の「にぎわい」など任意エリアのKPIを可視化しSNSトレンドと組み合わせ変化要因を示唆する「clarea」提供開始

データサイエンスで企業と社会の課題を解決するDATAFLUCTは6月15日、エリアに関連するデータを活用し「にぎわい」などのエリアKPIを可視化・モニタリングし、SNSなどのトレンドを掛け合わせることでその変化の要因も示唆する「clarea」(クラリア)の提供開始を発表した。

現在、「魅力的な街づくり」は、生活者、街の運営を担う企業や自治体の双方にとって重要なテーマとなっている。そのため、ディベロッパーや鉄道会社、自治体などは、街の魅力を創出するためにエリアに対して独自のKPIを設定し、施設建設、テナント誘致・イベント開催、交通改善など様々なエリアマネジメント施策を展開している。

しかし、エリアマネジメントの領域においては、関連するデータの膨大さや煩雑さから、KPIの定量把握から施策の評価・検証まで、データ活用が進んでいないのが現状という。

そこで、データサイエンスで企業と社会の課題を解決することを目指すDATAFLUCTは、ビッグデータをもとに、エリア独自のKPIや施策の効果、課題を可視化し、街づくりに関わる企業や自治体がデータドリブンな意思決定をするためのツールとしてclareaを開発した。同サービスは、都市のサステナビリティをテーマに同社が開発を進めるサービス群『DATAFLUCT smartcity series.』(データフラクト スマートシティシリーズ)の1つとしている。

また同サービスは、デジタルガレージが運営するアクセラレータープログラム「Open Network Lab Resi-Tech」を通し、ディベロッパー複数社との共創で開発を進めているという。現場担当者のニーズを基に、「15分単位での細やかな時系列比較が可能な人流分析」「人流の変化に影響を与えた要因の推定」など、施策を細かに分析する機能も搭載した。

clareaは、主な機能として人流分析・回遊分析・インサイト分析を搭載しており、ダッシュボード上の操作で、エリアマネジメント施策の評価・検証が可能だ。単一のデータによる分析ではなく、複数のデータを掛け合わせることで「いつ、どこに、どのような人が、なぜ増えたのか」という要因分析までカバーし、データドリブンな意思決定をサポートする。

エリアのにぎわいを把握するのに役立つデータは、人流データ(GPS)、IoTデータ(カメラなど)、購買データ、SNSデータ・POIデータなど多数あるものの、それらを自社で収集・蓄積することは難しく、異なる形式のデータを組み合わせて分析するには高度な技術が必要という。そこでclareaでは、データ分析サービスを幅広く展開するDATAFLUCTの知見をもとに、データ活用に関する知識のない場合でも直感的に操作でき、必要な情報を得られるようデザインしているという。

また、にぎわいの重要要素である人流・回遊の状況をマップに表示し、グラフを用いた時系列比較(エリア・時間帯)が可能。変化が気になるポイントについて、SNSデータを活用したインサイト分析機能により、人流の増減をSNSのトレンドワードと紐付け「なぜ人流が変化したのか」要因の推定や、施策の名称を指定して「その施策がどの程度/どのような文脈で話題になったか」を表示する「イベントの効果推定」が可能としている。

今後DATAFLUCTでは、自社データのインポート機能や社内共有機能、エリア内の決済情報の時系列分析など、エリアマネジメント施策のクオリティをさらに向上させる機能の追加を予定しているという。にぎわい以外のエリアに関する他のテーマもカバーし、観光・防犯/防災・モビリティ・サステナビリティ・エネルギーなど多面的にエリアのKPIを可視化するサービスとしての展開も計画しているそうだ。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:DATAFLUCT(企業)日本(国・地域)

10種類以上のセンサーを一元管理可能な現場管理支援SaaS「Canvas」を手がけるIoTBASEが8000万円調達

IoTで企業のデジタル変革を支援するIoTBASEは6月16日、プレシリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資および社債発行による約8000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、インキュベイトファンド、グロービス、あおぞら企業投資。調達した資金は、業務プロセスにおける課題解決ニーズに対応するためのプロダクト開発に投資する。

IoTBASEは、現場管理を支援するSaaS型クラウドサービス「Canvas」を提供している。これは、車両や設備の状態監視センサーのデータや、作業ステータス、現場写真など、現場の様々なセンサー情報をクラウド上で一元管理可能なIoTデータダッシュボードサービスという。従来現場に人が向かい確認しなければならなかった業務を削減し、現場業務の生産性向上をサポートする。

Canvasの特徴としては、10種類以上のセンサーを統合管理するIoTプラットフォームである点や、現場の設備状態や作業状況を離れた場所からリアルタイム把握可能、関係者への通知や外部共有も直感的な操作で簡単に設定できるなどが挙げられる。

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カテゴリー:IoT
タグ:IoT(用語)IoTBASE建設 / 建築(用語)日本(国・地域)

AI契約審査プラットフォーム「LegalForce」が知産関連契約書のレビュー対応類型を拡充、累計10類型に

AI契約審査プラットフォーム「LegalForce」が知産関連契約書のレビュー対応類型を拡充、累計10類型に

AIを活用し企業が交わす契約書内容を審査するAI契約審査プラットフォーム「LegalForce」(リーガルフォース)を提供するLegalForceは6月17日、同プラットフォームの知的財産に関連する契約書のレビュー対応類型を拡充したことを発表した。6月現在で10類型となった。

LegalForceは、AIによる契約書の「自動レビュー」、条文検索などの機能に加え、契約書のひな形や書式集なども提供し、企業の契約書作成を支援するプラットフォーム。2019年4月に正式版をリリースし、この2年間で800社を超える企業や法律事務所が利用している。

「国際競争力の強化、知的財産権侵害案件の増加といった昨今の知的財産権の重要性の高まり」から、知的財産部門のある大手企業などの要望を受け、レビュー対応類型を拡充し、6月現在で10類型となった。また6月中には著作物ライセンス契約、7月以降にはキャラクター商品化許諾契約、商標ライセンス契約が追加される予定。

LegalForceで利用できる知的財産関連契約書のレビューポート対応類型は次のとおり。

  • 共同研究開発契約(対大学・研究機関)
  • 共同研究開発契約(対企業)
  • 共同出願契約
  • 特許ライセンス契約
  • ソフトウェアライセンス契約
  • クラウドサービス利用規約
  • キャラクターライセンス契約
  • ソフトウェア開発委託契約
  • 英文共同研究開発契約(対企業)
  • 英文ソフトウェアライセンス契約

LegalForceは、大手法律事務所出身の弁護士2名が2017年に創業したリーガルテック領域のスタートアップ。独自のAI技術と弁護士の法務知見を組み合わせ、企業法務の質の向上、効率化を実現するソフトウェアの開発・提供するほか、京都大学との共同研究をはじめ学術領域にも貢献している。LegalForce以外にも、2021年1月よりAI契約書管理システム「LegalForceキャビネ」正式版を提供してる。

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カテゴリー:リーガルテック
タグ:契約書(用語)法務 / リーガル(用語)LegalForce日本(国・地域)

希少生物が戻り農作物も育つ日本初の「植生回復」も実現する太陽光発電所の生態系リデザイン事業開始

1922年に創業、間もなく100年目を迎える再生エネルギー事業のETSホールディングスと、京都大学発のベンチャーであるサンリット・シードリングスは、国内初となる太陽光発電所の敷地における生態系リデザイン事業を開始、6月16日にその発表会を行った。

経済産業省資源エネルギー庁は2050年カーボンニュートラルを目指すにあたり、省エネルギー、再生可能エネルギー、脱炭素への取り組みを掲げており、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギー導入拡大は必要不可欠なものとされている。

今回のETSホールディングスとサンリット・シードリングスによる事業は、その太陽光発電所を増やして再生エネルギーによる発電量を支えるだけでなく、そのために「緑の砂漠」と化した土地を希少生物の生息地に転換させ、さらに発電所敷地内で農作物栽培を行うことによる収益性の向上、地表を覆うことでの土砂流出を抑えることなどを目指すというものだ。

再生可能エネルギー増加と森林保全を両立

太陽光発電所の建設では、山林や農地、大規模未使用地などの土地が利用されるが、以前より樹林地の伐採や土地の造成などによる地形や地質、動植物や生態系への影響が指摘されている。特に30年後、50年後、100年後に稼働終了となる太陽光発電所跡地の扱い、生態系を維持した状態での原状回復、理想的な自然への回帰方法については、事業者および開発の許認可権を持つ自治体にもノウハウが備わっておらず、適切な対応に着手できていないという。そのため本事業では、太陽光発電所の設計から、稼働が終了した土地を、理想的な姿で自然に戻すための生態系・土壌作りまでフォローしていく。

分担としては、ETSホールディングスが太陽光発電所設備の設計・施工・管理運営を、サンリット・シードリングスが太陽光発電所周辺の土壌解析、太陽光発電の発電効率を維持した状態での生態系の管理方法やデザイン、評価を行う。これにより、太陽光発電を行いながら、発電所敷地内での生物多様性の保全や希少動植物の育成などに寄与する未来の生態系構築を目指す。

生物多様性のある理想状態からバックキャスト

理想の生態系については、土地ごとの理想状態からバックキャストし、微生物や菌の管理を設計。土壌設計、防災などの観点からも、土地関連の指標化とその改善を目指す。人間視点からの利便性なのか、生来の生態系視点からの保全性なのか「理想」は主体によって揺らぐこともある。サンリット・シードリングス創業者で、京都大学で准教授を務める東樹宏和氏は「草木が生い茂り日照環境が偏っている、一部の生物が極度に繁殖している、それにより土砂災害が起こりやすくなっているなど、誰にとってもよくない状態にある山林からまず着手したい」と語る。また同社代表取締役CEOの小野曜氏も「最適状況については自治体などと意思疎通しながら設計を進めたい」という。

自治体にはすでに山林管理義務が課せられるようになっているというが、ただ伐採するだけではコストがかさむばかりで、対応に悩むところもあるという。そのため発電による収益化含め、まずは困っている自治体と小規模な発電所設立をする形で連携していく。あわせて、すでに土壌にいる菌を調べDNA解析し、菌株コレクション化していった後、地域由来の菌をベースに木の根を強化して、土砂災害を防いで防災につなげる狙いもある。既存の発電所改善にも取り組んでいくが、今後は提携事業者や自治体を増やして対象先拡大を検討している。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:太陽光発電ETSホールディングスサンリット・シードリングス再生可能エネルギー日本

豚の個体数や体重・健康状態を把握できる養豚農家向けAIカメラシステム「PIGI」がベータ版公開

豚の個体数や体重・健康状態を把握できる養豚農家向けAIカメラシステム「PIGI」がベータ版公開

IoT技術とAIを活用し養豚の「地産地消エコシステム」確立を目指すコーンテックは6月15日、豚の成長管理が可能な養豚農家向けAIカメラシステム「PIGI」(ピギ)のベータ版を公開したと発表した。養豚施設に設置したカメラの映像解析から豚の個体数を特定、さらには体重を判別し、これらの推移データを出荷予測などに活用可能だ。

従来の畜産業界ではアナログな業務管理が多く、体重測定・管理方法では豚を1頭ずつ体重計に乗せて計測したり、目視で計測したものを台帳に記入したりなど、人が介在し多くの時間をかけてきた。しかしコーンテックによると、人材確保が難しくなっている昨今の労働背景や防疫の観点から、人の介在を減らすことが重要となっているという。

PIGIは、養豚農家向けに豚の成長管理をサポートするために開発された。監視カメラやセンサーを施設導入することで人の目を代替し、コーンテック独自開発AIにより豚の行動を解析。独自の解析データに基づき豚の個体数や体重測定・健康状態を把握できるほか、施設の気温・湿度の監視などのデータ管理やアラート通知が可能になるという。新規の施設建築や大きな設備投資をしなくても、IoT・AIを活用した家畜管理が行えるとしている。豚の個体数や体重・健康状態を把握できる養豚農家向けAIカメラシステム「PIGI」がベータ版公開
コーンテックは、勘と経験に頼らず、人の介在を減らす畜産DXをサポートするとしている。

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カテゴリー:フードテック
タグ:画像解析(用語)コーンテック(企業)日本(国・地域)

NFTマーケットプレイスを手がける暗号資産取引所コインチェックがCyberZとエンタメ領域で協業

暗号資産取引サービス「Coincheck」を運営するコインチェックは6月15日、サイバーエージェント子会社のCyberZとNFT事業において協業を開始すると発表した。両社は、エンターテインメント領域におけるNFT活用を推進する。

コインチェックは2021年3月、NFTマーケットプレイス「Coincheck NFT(β版)」を提供開始。Coincheck NFTは、NFTの取引において課題となっているネットワーク手数料(Gas代)の高騰、複数サービスを介した難しい取引などの解決を目指したサービスだ。

一方CyberZは、スマートフォン広告における運用・効果検証、交通広告やウェブCMの制作など、幅広いマーケティング事業を展開。ライブ配信プラットフォーム「OPENREC.tv」、eスポーツ事業として、国内最大級のeスポーツイベント「RAGE」を運営しいる。

両社は、タレント・アーティスト・アニメ・ゲームなど、多くのエンターテインメント事業者に対してCoincheck NFTとの連携を推進し、NFTビジネス創出を推進する。またCyberZのこれまでの知見やノウハウを活用し、Coincheck NFTを通じたエンターテインメントの新しい体験の創出を目指す。

これによりコインチェックとCyberZは、事業者収益機会の多様化や新たな顧客体験の創出を支援していくとしている。

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カテゴリー:ブロックチェーン
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常夏の沖縄で「わさび」栽培のワケは? NEXTAGEが沖縄の植物工場で試験栽培を開始

沖縄で「わさび」栽培のワケは? アグリテック領域スタートアップのNEXTAGEが沖縄の植物工場で「わさび」試験栽培を開始

ビジネス推進支援事業と並行し「わさび」の自動栽培に取り組むアグリテック領域スタートアップ「NEXTAGE」(ネクステージ)は6月15日、わさびの植物工場栽培と出荷を目的とした試験栽培施設「NEXTAGE 沖縄R&Dセンター」を沖縄県中頭郡西原町に開設し、本格始動すると発表した。

自然環境における国産わさびの栽培環境減少を目の当たりにしたNEXTAGEは、「日本の食だけでなく、文化や技術を伝え、様々な企業の方々と繋がり、日本が誇る『わさび文化』の継承と発展、100年後の未来の子供たちに『本物のわさび』を残していきたいという想い」から、2019年、屋内での人工光を使ったわさび栽培の研究を開始した。そして、一定の品質確保と栽培期間短縮の目処が立ったことから、沖縄での試験栽培に踏み切った。そもそも涼しいところで栽培されるわさびを温暖な沖縄で収穫できれば、世界中どのような環境でも「自然栽培と同等品質」のわさびが作れるようになるというのが、沖縄で行う理由だ。

これまでNEXTAGEは、気温・光・水質・水流などわさび栽培に不可欠な要素について、環境やわさびの成長度合いに合わせて調整するノウハウを蓄積してきた。それを活かして、高品質なさわび栽培の実現を目指すという。NEXTAGEが育てているのは、国産わざびの最高峰といわれている「真妻種」。

今後は、沖縄での栽培環境に関するデータを独自開発の栽培管理システムに集約し、遠隔地からの栽培進捗管理や、剪定作業などの判断が行える環境を整備するとともに、カメラやIoTセンサーなどから得られるデータセットを活用した情報分析によるPDCAサイクルの高速化、AI活用による栽培環境の制御・収穫・出荷などを含めた一部作業の自動化を目指すという。

「ALL JAPAN MADEの植物栽培ソリューションを世界へと展開していきたい」とNEXTAGEは話している。

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タグ:植物工場(用語)NEXTAGE(企業)農業 / アグリテック(用語)わさび(用語)日本(国・地域)

生命保険の約款や学校教材における漢字の誤読を低減、正確なイントネーションで音声合成を自動生成するAIシステム

生命保険の約款や学校教材における漢字の誤読を低減、正確なイントネーションで音声合成を自動生成するAIシステム

大日本印刷(DNP)とグループ会社のDNPコミュニケーションデザイン(DCP)は6月15日、人間の音声を人工的に作り出す「音声合成」の制作時に起きる読み間違いを減らし、人が読むナレーションのイントネーションやアクセント、間合いに近い自然な音声を自動生成できるAI(人工知能)活用音声合成システムを開発したと発表した。

今回開発したシステムは、音声合成の制作時に起きる漢字の「誤読」や、「橋/箸/端」(はし)など同じ読み仮名で異なる「イントネーションの違い」に関し、読み間違いを約50~70%削減したという(従来のDNPの音声合成の制作と比較)。これにより、高齢者や身体障がいの有無に関わらず、誰でも必要な情報に簡単にたどり着けるアクセシビリティの向上が期待される。また、音声合成が利用されている学校教材や電子書籍、生命保険・損害保険の約款や契約書、e-Learningや研修教材などへも広く活用できるとしている。

現在、多様な人々にわかりやすく情報を伝達する機器やサービスの開発が進み、その利用が拡大している。例えば、文字などを読むことが困難な人のための国際標準規格DAISY(デイジー。Digital Accessible Information System)に準拠したデジタル録音図書をはじめ、様々な手法で人間の音声を人工的に作り出す音声合成は、交通情報や施設のナビゲーション、電話の自動音声ガイダンスなどで幅広く利用されている。

ただ、音声合成の精度は年々向上しているものの、漢字の誤読や発音・イントネーションの間違いが依然として発生していることが課題となっているという。この課題に対してDNPとDCDは、多くの企業のマニュアルや約款、研修用コンテンツなどで音声合成を制作してきた技術・ノウハウを活かし、「単語の読みや発音で、間違いのない音声データ」を機械学習させて、誤読が少なくスムーズな発音の音声合成を自動生成できるDNP独自のAIシステムを開発した。

具体的には、DCDが保有する読み間違いのない音声データをAIに機械学習させることで、正確な読みを自動付与できるようになった。これにより、約款や契約書、自治体・行政機関等の公式文書、製品の解説書といった正しい情報提示が必要でテキスト量が多いものへの利用に適しているという。

また、イントネーションとアクセントについて文章の文脈を加味して自動生成するため、従来の方法と比較して、人が読むナレーションに近い自然な音声を生成できる。両社は、特に正しい読みやナレーションを重視する学校教材や電子書籍などに最適としている。

さらに、既存音声データに加え、追加学習によってデータを増やすほど、読みの正確性やイントネーション・アクセントの精度が向上するという。複数の生命保険会社の約款で汎用性の検証を実施したところ、「読み」「アクセント」「間」について約85%以上の正確性を確認したそうだ。

DNPとDCDは今後、AIの精度向上と適応分野の拡大に努めるとともに、AIを活用した音声合成の付加価値を高め、幅広い分野に向けてサービスを提供するとしている。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:インクルージョン(用語)AI / 人工知能(用語)大日本印刷 / DNP(企業)ダイバーシティ / 多様性(用語)日本(国・地域)

群衆カウント技術のセキュアが既存監視カメラで人数計測可能な混雑状況配信サービスをALSOKと共同開発

セキュアは6月14日、綜合警備保障(ALSOK)とライセンス契約を締結し、AI画像解析により混雑度のリアルタイム計測が可能な「SECURE群衆カウントソリューション」(群衆カウント)の技術を提供し、「ALSOK混雑状況配信サービス」の共同開発を行なったと発表した。

セキュアの群衆カウントとは、既存の監視カメラで人物のカウント計測を可能にし、エリアの混雑度を可視化するクラウド型ソリューションだ。

従来のカウントシステムは、専用の人数計測器の設置、あるいは専用の解析サーバーの現地設置といった必要があったため、導入コストが課題となっていた。これに対して群衆カウントでは、先進のAI画像解析技術、および世界最速級Deep Learning推論エンジンをクラウドに実装することで、既存監視カメラの設置角度で人物をカウントすることを実現。サブスクリプションサービスとしての提供を可能とした。

そして今回、群衆カウントの技術をベースにALSOKと共同開発を行い、「ALSOK混雑状況配信サービス」として6月11日よりサービスの提供を開始した。

ALSOK混雑状況配信サービスでは、事務所から総合施設・イベント会場まで小規模から大規模の環境をサポート。撮影映像から人数をカウントし、あらかじめ設定した設定値に従い混雑状況を5段階で配信する。また1カメラあたり最大4エリアまで分割可能となっており、必要な場所を測定することも可能だ。映像解析はクラウド側で実装しており、カメラ映像をセキュアクラウドサーバーに送信することで、サービスを利用可能となる。

なお2020年6月30日から、イベント時最大収容人数約2000人の新宿住友ビル 三角公園において、ALSOK混雑状況配信サービスを利用しイベントの混雑状況モニタリング実証実験を実施中だ。広場に対して検知エリアを複数箇所設定しており、密を検知すると係員に即時アラームを発する。管理担当者は、リアルタイムでの混雑状況の把握と、係員の業務負荷の軽減を評価しているという。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:AI / 人工知能(用語)画像解析(用語)クラウドコンピューティング(用語)日本(国・地域)

10分で満充電にできるEVバッテリー交換のAmpleがENEOSと日本国内での交換インフラ展開、運営で提携

電気自動車のバッテリー交換を行うスタートアップのAmple(アンプル)は、何年にもわたって技術開発に取り組んできたが、2021年6月、日本とニューヨークへの拡大を促進するための2つのパートナーシップを締結した。2014年に設立され、先の3月にステルス状態を脱したこのスタートアップは、日本の石油 / エネルギー企業であるENEOS(エネオス)と提携し、日本国内でバッテリー交換インフラを共同で展開・運営することを米国時間6月15日に発表した。

両社は今後1年間、配車サービス、タクシー、自治体、レンタカー、ラストワンマイル配送などの企業を対象に、Ampleの全自動交換技術を試験的に導入する。また、AmpleとENEOSは、交換ステーションがエネルギーグリッドのバックアップ電源などの、他の用途にも使えるかどうかも評価する。まだパートナーシップは立ち上げの段階で、発表されていることは少ない。たとえばAmpleは、パイロットプログラムいつ日本のどこで始まるのかについては明らかにしていない。しかし、詳細には乏しいものの、ENEOSが関心を見せたことは、(少なくともAmpleの)バッテリー交換技術が信奉者を集めつつあることを示している。

今回のENEOSの発表は、Ampleが配車サービス、タクシー、ラストマイル配送用のEV(電気自動車)レンタル会社であるニューヨーク市のSally(サリー)との提携を行った数日後に行われた。Ampleの創業者でCEOのKhaled Hassounah(ハレド・ハッソウナ)氏によると、AmpleとSallyは、2021年の第4四半期までにニューヨークで5~10カ所のステーションを展開し、2021年には他の市場にも進出する予定だ。

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AmpleとSallyのパートナーシップは、数カ月後にはサンフランシスコにも拡大する。サービスを利用するコストにもよるが、少なくともカリフォルニア州では、配車サービスのドライバーにとっては有利な取引になるかもしれない。カリフォルニア州では2030年までにUber(ウーバー)とLyft(リフト)のドライバーの90%がEVに乗る必要があるとする法令が出されたばかりだ

「最終的には、交換ステーションをガソリンスタンドのようにどこにでもあるものにすることが目標です」とハッソウナ氏はTechCrunchに語った。

Ampleはこの3月に、ベイエリアで5カ所の交換ステーションの発表を行うと同時にステルス状態から抜け出した。また、Uberとの提携により、ドライバーはAmpleのバッテリー技術を搭載したクルマをAmpleから直接借りることができる。

Ampleのポリシー兼国際支援担当副社長のLevi Tillemann(レビ・ティルマン)氏は、TechCrunchの取材に対して「Ampleアーキテクチャは、あらゆる最新の電気自動車に統合できるよう設計されています」と答える。「一般的な電気自動車では、バッテリーパックをクルマから取り外すことは想定されていませんが、Ampleシステムを使えば、純正のバッテリーパックとまったく同じ寸法のアダプタープレートを備えたバッテリーパックと交換することができます。そのアダプタープレートこそが、バッテリー交換を可能にするためのアーキテクチャなのです」。

Ampleの標準化されたバッテリーモジュールは、Ampleプラットフォームで動作するように設定されたどの車両でも動作します、とティルマン氏はいう。今回のAmpleとSallyの提携により、Ampleはビジネスモデルを実証するために立ち上げた、自社による車両運行からの脱却を始めることができる。同社は、Sallyをはじめ、将来的にはおそらく他のフリート会社やレンタル会社とも協力して、Ample対応の車両を作っていく予定だ。

「Ampleのバッテリー交換技術は、どんな電気自動車にも対応していて、純正バッテリーとの置き換えが可能で、しかもクルマの改造(ハードウェア、ソフトウェアのいずれも)を必要としないので、EVインフラの導入にかかるコストと時間が劇的に削減されます」とハッソウナ氏はいう。

配車サービスのドライバーがEVへの乗り換えを躊躇する理由の1つに、バッテリーの充電時間がある。ハッソウナ氏によると、バッテリー交換には現在10分しかかからないが、年内には5分に短縮することを目指しているそうだ。より効率的でシームレスなプロセスを実現することで、配車サービスのドライバーや物流企業が切り替えを行う後押しをすることができるだろう。

「現在、ドライバーはエネルギーも含んでスワップサービスに対して1マイルあたり10セント(約11円)を支払っています。航続距離は車種やバッテリーサイズによって異なります」とハッソウナ氏は語る。「サービスの価格は電気料金によって変わりますが、ガソリンに比べて1~2割程度安くなることを目標にしています」。

ドライバーがバッテリーを交換したいときは、Ampleのアプリを使って近くのステーションを探し、自動交換を始める。各ステーションでは、1時間あたり5~6台程度のサービスが可能だが、年内にはその倍のサービスが可能になると見込まれている。とはいえ、これは各ステーションでの利用可能電力量にもよる。

ティルマン氏は、Ampleの拡大に伴い、既存のOEMパートナーと協力して、生産ラインで新車にAmpleの製造用プレートを取り付けるという選択肢を消費者に提供できる日を目指しているという。

彼は「私たちのユニットのコストは、バッテリースワップシステムにとって非常に有利なものです」という。「展開に大きなコストがかからないために、比較的少数の車両でも、バッテリー交換アーキテクチャーは経済的で収益性が高くすることができるのです」。

以前にAmpleに投資を行ったENEOSは、同社によれば、次世代のエネルギー供給に取り組んでいるとのことだ。同社はまた、水素についても検討しており、最近ではトヨタが日本で建設中の未来型試作都市「Woven City(ウーブン・シティ)」と提携した。同市は水素を使って電力を供給する予定だ。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Ample日本ニューヨークEVバッテリーENEOS

画像クレジット:Ample

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(文: Rebecca Bellan、翻訳:sako)

セガがゲーム業界における三角関数や虚数の重要性を伝授する約150ページの社内勉強用数学資料を一般公開

セガがゲーム業界における三角関数や虚数の重要性を伝授する社内勉強用資料を一般公開

セガは6月15日、公式ツイッターアカウントで「サインコサインタンジェント、虚数i……いつ使うんだと思ったあなた。じつは数学は、ゲーム業界を根から支える重要な役割を担っているんです」とツイート。セガ社内勉強会用の数学資料「基礎線形代数講座」約150ページを無料公開したと発表した。

この勉強会は、「高校数学の超駆け足での復習」から始めて「大学初年度で学ぶ線形代数の基礎」を学び直し、「応用としての3次元回転の表現の基礎の理解」をすることを目的としている。

線形代数は3DCGの基礎であり、ゲーム開発には欠かせない。しかし、SEGA TECH BLOGによれば、「ゲーム開発においても分業化・専業化の流れは著しく、ゲームアプリケーション(みなさんに遊んで頂いているゲームそのもの)を開発する際、いわゆるゲームエンジンや各種ライブラリを用いるのが当たり前になっています」という。つまり、今やエンジンやライブラリーを使えば高等数学の知識がなくてもゲームは作れてしまうということ。ところが、数学の知識がないと、エンジンやライブラリーをカスタマイズして使いたいときに行き詰まってしまう。当然、エンジンやライブラリーを開発する人や、もっと高度なプログラムを組みたいと考える人には、どうしても必要となる。

この資料の構成は次のとおり。

第1講 イントロダクション
第2講 初等関数
第3講 ベクトル
第4講 行列 I:連立一次方程式
第5講 行列 II:線形変換
第6講 行列 III:固有値・対角化
第7講 回転の表現 I
第8講 回転の表現 II

この資料の「まえがきに代えて」の最後には、こんなメッセージが添えられている。
「学生の方へ、このような異端の書(笑)で学ぼうという奇特な方がもし居たら、言うまでもないことですが、本書を読んだあと講義で指定されている教科書を改めて読み直してみましょう。きっと今まで以上に理解が深まるのではないかと思います。未来を担う皆さんにとって、本書が少しでもお役に立てれば幸甚です」

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カテゴリー:EdTech
タグ:エンジニア(用語)ゲーム(用語)数学(用語)3D / 3Dモデル(用語)セガ(企業)プログラミング(用語)日本(国・地域)

相続による不動産の名義変更手続きをネット完結させる「そうぞくドットコム不動産」のAGE technologiesが2億円調達

相続手続きのDXに取り組むAGE technologies(旧マーク・オン)は6月16日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による2億円の資金調達を実施したと発表した。引受先はDGベンチャーズ、カカクコム。

AGE technologiesが運営する「そうぞくドットコム不動産」では、相続で発生した自宅や土地などの不動産の名義変更手続きサービスを提供する。戸籍の取得、申請書の自動作成など、あらゆる手続きがオンラインで完結でき、また煩雑な相続手続きをネットで簡単に、相続手続きの負担ゼロを目指した新しいウェブサービスだ。2020年の正式リリース以降1年で、登記された不動産の数は5000件を超えており、利用者の平均年齢は58歳、30代〜70代まで幅広い世代が利用しているという。

一方、所有者不明の土地の問題は年々深刻化しており、その面積は日本全体の2割に上るとされる。また2021年4月の国会では、「相続登記を義務化する法案」が参院本会議で可決、成立した。このような社会的背景により、今後手続きの義務化に伴う需要拡大が予想できることから、AGE technologiesは今回の資金調達を機に、さらなるマーケティングの拡大、新規プロダクト開発への先行投資を強化するとしている。

さらに、デジタルガレージグループが持つ顧客基盤を軸に、ライフエンディング領域事業者との連携や、銀行や自治体など手続きの対応機関へ向けたサービスの提供、また共同事業の開発推進などを通じ、既存事業領域の拡充、周辺領域への事業拡大を加速する。

2018年3月設立のAGE technologiesは、AgeTech(エイジテック)を最大市場と捉え、まずは国内における課題が最も強い「相続」から取り組んでいる。長期では「高齢社会にテクノロジー革命を起こす」というミッションの実現のため、人生100年時代を支えるNo.1テックカンパニーを目指すとしている。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:AGE technologies(企業)遺産相続(用語)資産管理(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)

「のど」撮影画像の解析で診断、アイリスがインフルエンザを判定可能な感染症診断AI搭載医療機器を日本初承認申請

医療機器の研究開発・製造、機械学習の技術開発を手がけるアイリスは6月16日、咽頭(のど)画像の解析を基にインフルエンザ判定を行うAIアルゴリズムを開発し、咽頭カメラを含むAI搭載システムを「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法)に基づき、厚生労働大臣宛て医療機器製造販売承認申請をしたと発表した。

今回申請した機器では、AIプログラムのみならず、AI解析に適した咽頭画像を撮影するための咽頭撮影専用カメラも自社で設計・開発。これにより既存の内視鏡などを用いずに口腔内・咽頭を鮮明に撮影することを実現した。

今回申請の機器では、専用カメラで撮影した患者の咽頭写真を基に、体温などのデータと組み合わせて人工知能(AI)がインフルエンザの「陽性」「陰性」を短時間で判定する。患者にとっては侵襲性の低い検査法となり、また医療機関での診療プロセスを工夫することで医療者が患者由来の唾液飛沫を浴びる場面を減らしながら効率よく診察できることを目指している。この仕組みには、日本人医師の宮本医師が発見したインフルエンザ濾胞(ろほう)の知見も活かされているという。

アイリスによると、前向き試験としてAI医療機器の有効性検証治験が実施し承認申請を行う日本初の事例となり、承認後は、全国の医療機関での導入や医療現場での活用が可能となる。ちなみに米国FDA(アメリカ食品医薬品局、医療機器の認可を行う機関)認可の130のAI医療機器においても、4製品のみとしている。

既存のインフルエンザ検査法は、発症早期では診断精度が十分に発揮されず、現場で実践した際の精度が6割程度との研究報告があるという。また、検査時に綿棒を鼻腔内に挿入する行為は、患者の痛みを伴うと同時に、検査時の医療者に対する飛沫感染リスクが懸念されているそうだ。

アイリスはこれら課題を解決すべく、2017年11月の創業時から研究・開発に取り組んできた。これまでに6名の医師を含む9名の医療従事者や厚生労働省・経済産業省出身者、医療AI領域に特化したデータサイエンティスト、大手医療機器メーカー出身者など多数の専門職が揃い、医療現場、技術(ハードウェア・ソフトウェア・AI)、規制を深く理解したうえでAI医療機器をスピーディに開発する体制を構築している。

2018・2019年度には、自社開発の咽頭カメラを用いて、臨床研究法における特定臨床研究として大規模な前向き研究を実施。のべ100医療機関・1万人以上の患者に協力してもらい、50万枚以上の咽頭画像を収集し、独自の咽頭画像データベースを構築した。また、同データベースの活用によりインフルエンザ判定AIプログラムを開発。これをもって2020年に治験を実施し、機器の有効性・安全性などの検証を行ったという。

アイリスは今後、機器の製造販売承認取得後に向けた販売体制の構築を進める。さらに、世界でも研究報告の前例がない、咽頭画像からインフルエンザ判定が可能なAIアルゴリズムとして、日本から世界への展開を目指す。同時に、咽頭画像を活用することでインフルエンザ以外の感染症や感染症領域以外の疾病判定が可能となるよう、大学病院、クリニック、学会などと引き続き連携の上、次なる医療機器の開発をより加速する。

アイリスは医師の技術や医療の知見を集約させ、デジタル化することで、医療技術を共有・共創できるような医療の姿を目指して、これからも研究開発を続ける。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:医療(用語)ヘルスケア(用語)アイリス日本(国・地域)

スマートロック「bitlock」やHome・Work・Experienceコネクトプラットフォームを手がけるビットキーが32億円調達

スマートロック「bitlock」やHome・Work・Experienceコネクトプラットフォームを手がけるビットキーが32億円調達

新しい分散テクノロジーで世界をつなぎ、「誰にも改ざんできないインフラストラクチャー」を構築するビットキーは6月16日、プレシリーズBラウンド1stにおいて、第三者割当増資による32億円超の資金調達を実施したと発表した。引受先は、オカムラ、サンケイビル、ダイキン工業、東京建物、日鉄興和不動産、パナソニック、プライム ライフ テクノロジーズ、スパークス・グループが運営する「未来創生2号ファンド」。現在は、プレシリーズBラウンド2ndを進めている。2018年の創設から2年9カ月で累計資金調達額が約90億円となった。

ビットキーは2019年、サビスクリプション型のスマートロック「bitlock」シリーズの提供を開始。2020年には「住宅やオフィスなど多様な領域において、人・モノ・サービス・空間をつなげることで新しい価値を生み出すプラットフォーム事業」として、サービスとモノの間にある分断を排除し、IoT家電・置き配・家事代行など、あらゆるサービスを自宅でシームレスに利用できるコネクトプラットフォーム「homehub」(ホームハブ)と、さまざまな職場用に機能を充実させた「workhub」(ワークハブ)をリリースした。

これらは、ビットキーの根幹である「分散システム」「分権所有」という考え方に基づくコア技術であり、「世界中のあらゆるものを柔軟につなぐID連携・認証、権利処理のデジタルキープラットフォーム」としての「bitkey platform」に支えられている。

「これらはインフラ事業であり、あらゆる業種の企業やそのアセット、サービス、プロダクトとの連携により創る必要があります」と話すビットキーは、今回資本業務提携を結んだ8つの企業と事業共創を進めてゆく。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:ビットキー資金調達(用語)日本(国・地域)

ファミマの商品陳列を自宅から、遠隔操作ロボット開発のTelexistenceが目指す人とロボットの新たな働き方

私たちにとって、いまや「リモートワーク」は特別なことではなくなった。世界中どこにいてもインターネットにさえ接続すれば仕事ができる。一方で、エッセンシャルワーカーともいわれるコンビニやスーパーで働く人たちは、当然ながら「その場」にいなければ仕事ができない。

この現状を変えることを目指すスタートアップがTelexistence(テレイグジスタンス)だ。「遠隔操作ロボット」を開発する同社は、2021年6月15日モノフルのグループ会社などから約22億円を調達したと発表した。

ターゲットは日本全国のコンビニ

「これまで不可能だったブルーカラーのリモートワークを実現する」と話すのは、同社CEOの富岡仁氏。VRヘッドセットとグローブを装着すると、インターネットを経由して遠く離れた場所にいるロボットを「自分の体のように」操作できる。「自分が左手を動かすと、ロボットの左手も同時に動く」という感覚はまるで、離れた場所にいるロボットへ自分が「憑依」するかのようだ。

上記動画のロボット「Model-T」は、2020年10月より「ローソン Model T 東京ポートシティ竹芝店」に導入され、飲料(ペットボトル、缶、紙パック)をバックヤードから補充、食品(サンドイッチ、弁当、おにぎり)を並べるといった業務を行っている。合計22の関節を持ち、5つのパターンに変化する手を持つこの人型ロボットは、約200形状・約2200SKUにおよぶ商品を「しっかりと掴んで、任意の場所に置く」ことが可能。このModel-Tを遠隔操作することで、従業員は商品陳列作業を自宅からでもできてしまえるのは、なんとも不思議な感覚だ。

また同社は、Model-Tの改善点を踏まえてより機能を向上させたロボットを開発。2021年10月から「ファミリーマート経済産業省店」に導入し、回転率の高い飲料を中心に商品陳列を行っていく。富岡氏は「基本的に、日本のコンビニは店舗フォーマットが決まっていて、扱っている商品も似通っている。つまり1店舗でも問題を解決できれば、日本全国にあるコンビニ5万6000店舗の問題も解決できるというスケーラビリティがある」という。同社は2024年度までに2000店舗に2000台の同社ロボットを導入することを目指している。

マニラから日本のコンビニで作業する

遠隔操作ロボットの登場は、店舗運営の効率化だけでなく、労働市場にも大きな影響を及ぼすかもしれない。「2022年の夏からは、フィリピンのマニラにいる従業員がロボットを操作して、日本のコンビニの商品陳列作業を行っていく予定」と富岡氏。当然、日本のスタッフに比べるとマニラのスタッフは人材コストが低いため、企業にとっては大きなメリットといえる。このように今後、労働力の移転が「小売業のスタッフ」にまで広がっていく可能性を考えると、遠隔操作ロボットのインパクトの大きさは計り知れない。

また同社は陳列什器メーカー大手のオカムラと提携し「ロボットの動きに最適化された什器」の開発にも着手。「例えば、棚の奥までロボットの手が届かない場合は、棚に少し傾斜をつけ商品が滑り落ちるようにするなど工夫をする。こうすることで、大きなコストをかけずにロボットを店舗運営に導入できるようになる」と富岡氏はいう。

同社ロボットの活用場面は店舗での商品陳列にとどまらない。今回の資金調達先であるモノフルと提携し、物流業者向けにもサービスを展開。物流施設内の業務に携わる労働者がロボットを遠隔操作することで、倉庫にいなくても商品の積み下ろしができるようになる。

一方で「人間が遠隔操作するのは私たちが目指す最終型ではない」と富岡氏。同社のロボットはすでに、コンピュータビジョンを活用することで商品陳列作業の約8割を自動的に行うことが可能。また同時に、人が遠隔操作するモーションデータをクラウドに蓄積し、これを教師データとしてロボットに機械学習させている。これらにより、いずれは人の操作さえも必要としない「完全にオートマティックなロボット」を完成させることが狙いだ。

画像クレジット:Telexistence

自動化の恩恵を「個人」へ

テレイグジスタンスが掲げるビジョンは「世界に存在するすべての物理的な物体を、我々の『手』で1つ残らず把持(はじ、しっかり掴むこと)する」こと。「これが実現すると、世の中のあらゆる物理的な仕事をロボットが代替できるようになる」と富岡氏はいう。

しかし同社は、ただ企業の業務効率を上げることのみを目指しているわけではないという。同氏は「これまで産業用ロボットによるFA(工場自動化)の恩恵は、現場で働く労働者ではなく、ロボットを所有する大企業の株主が得ていました。しかし私たちは、究極的には企業ではなく『個人』がロボットを所有する未来を実現したい」と話す。

つまり同氏が目指すのは、労働者である個人がテレイグジスタンスのロボットを所有し、さまざまな現場に派遣して遠隔操作(あるいは自動化)しながら金を稼ぐという未来。同社はハードウェアからソフトウェア、自動化技術までを自社で一貫して開発する稀有なスタートアップだが、その「ビジネスモデル」も既存のものには当てはまらないようだ。

自分は旅行でニューヨークまで来ているけれど、ロボットは東京にいて代わりに仕事をしてくれている……そんな世界はすぐそこに来ているのだろうか。テレイグジスタンスが「掴む」ことを目指す未来に、思わずワクワクしてしまうのは私だけではないはずだ。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:Telexistence遠隔操作資金調達コンビニエンスストア日本エッセンシャルワーカーテレイグジスタンス

画像クレジット:Telexistencem

「酒粕」廃棄素材によるクラフトジン生産や再生型蒸留所を手がけるエシカル・スピリッツが1.4億円調達

「循環経済を実現する蒸留プラットフォーム」をモットーに、「酒粕」廃棄素材を使用したクラフトジンの生産や、再生型蒸留所を運営する蒸留スタートアップ「エシカル・スピリッツ」は6月16日、第三者割当増資として1億4000万円超の資金調達を実施したと発表した。引受先は、Beyond Next Ventures。

エシカル・スピリッツは2020年3月、日本酒生産工程の最後に生成され本来は廃棄される素材「酒粕」を再蒸留して、クラフトジンを生産・販売。その利益から酒米を酒粕提供元の蔵元に提供し、再度そこから日本酒を生産するという世界初の循環型「エシカル・ジン・プロジェクト」を始動した。

その第1弾のエシカル・ジン「LAST」を同社は「飲む香水」としており、至高のアロマを実現したフレーバード・ジンになっているという。LASTシリーズは生産方法のみならず、ウイスキー業界で最も権威のある品評会WWAのジン部門「World Gin Awards 2021」において、国別の最高賞や、権威ある品評会のひとつ「The Gin Masters」ではゴールドとシルバーを受賞している。なお同シリーズは公式オンラインショップでも購入できる。

また2021年1月には、エシカル生産・消費に特化した世界初の再生型蒸留所「東京リバーサイド蒸溜所」を東京蔵前に建設(7月上旬グランドオープン予定)。東京都で3カ所目となるスピリッツ製造免許を取得した企業となり、蒸留所内には自社で運営するクラフトジンに特化したバーもオープンした。

調達した資金は、新たな再生型蒸留所の建設と海外販路の拡大に主に投資する予定。また現在はベーススピリッツの蒸留をパートナー会社と連携して実施し、自社の蒸溜所でそのベーススピリッツを使用したジンを含むスピリッツを蒸留しているが、今後は「酒粕そのものをベーススピリッツに変える」最新型の設備を導入する。これにより、従来自社でベーススピリッツの生産が難しかった中小規模の酒蔵との連携が可能となり、全国1400の日本酒蔵すべての酒粕がベーススピリッツの対象となる。

他にも、国立森林総合研究所の研究成果を基にした民間事業者としては初となる、「木の酒の蒸溜所」の立ち上げ、「木のお酒『WoodSpirits』」の製品化・販売にも挑んでいる。さらに、国際的なスピリッツ市場のハブである英国に2021年中での拠点開設を目指し、その後にドイツやスペインなどへの展開も予定しているという。

エシカル・スピリッツは、「Crafting the New Luxury」(新たな嗜好価値を象る)をミッションに掲げ、世界をリードするサステイナブルなスピリッツブランドを目指すとしている。

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カテゴリー:フードテック
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日本で唯一Clubhouseアクセラレータファイナリストに選ばれた三木アリッサ氏が予期するP2Cの世界

2019年11月にロサンゼルスで開業した和菓子のD2Cを行うMISAKY.TOKYO(ミサキ・トウキョウ)。代表の三木アリッサ氏は、先日、Clubhouseのクリエイター向けアクセラレータープログラムに出場している。

日本の伝統技術を世界へ

三木氏の母親は、アーティストとして活動している。そのため三木氏は、アーティストがマーケティングや財政管理といった創作活動以外のこともしなければ成功が難しい現状に対して懸念を抱いていた。どうやったらクリエイターの広報活動を支援できるのだろうかと考え、三木氏は新卒でネスレへ入社し、同社初の新卒マーケターとしてCM制作などを学んだ。日本酒の会社やフローリストのマーケティング支援も経て、自らも日本発のラグジュアリーブランドを手がけるクリエイターになろうと思ったという。注目したのは日本の伝統技術。当時、グローバルで活躍している日本の伝統技術はほぼ見当たらなかった。起業の前に三木氏はイスラエルでグローバルローカライゼーションを学び、2019年の8月にロスへやってきたという。

三木氏は「事業を維持するには高額商品か高所得者層の顧客が必要。高額商品から手がけるのはハードルが高いため、まずは単価の低い食品を介して富裕層にリーチし、クロスセルしていく事業計画を立てました」という。宝石のような見た目の和菓子は、1粒8ドル(約880円)、送料込みだと約10ドル(約1100円)。ヴィーガン向けの和菓子は、病気が原因でグルテンを摂取できないという友人の悩みから着想を得て、グルテンフリーでもある。

三木アリッサ氏が創業したMISAKY.TOKYOの和菓子

彼女は、見た目にも華やかで健康にも良い和菓子に、グローバル市場での競争優位性を感じているという。Kim Kardashian(キム・カーダシアン)氏などセレブとのコラボレーションも実現。TikToの公式キャンペーンにも選ばれ、30社のみ参加可能なClubhouseアクセラレータに日本代表としてオーディションを勝ち抜き支援されることとなった。

「スター誕生」を目指すClubhouse

日本ではブームがひと段落したと見る人もいるClubhouseだが、英語圏ではTikTokをはじめ、個人による情報発信、マネタイズ可能なプラットフォームのユーザ数は伸びているという。

クリエイターファーストを掲げているClubhouse。「スター誕生」やNizi Projectのように、Clubhouseからスターを輩出するためのオーディションが2021年3月に実施された。全世界から応募があり、53組から20組に絞られる中で、彼女は日本人唯一の公式クリエイターに選ばれた。

MISAKY.TOKYOでの活動と平行して三木氏は、日英でスタートアップニュースを解説するというトークルームを運営している。このスペシャル版である「最新版デジタルアートの未来」では、日本から落合陽一氏、海外からは5分で3億円デジタルスニーカーを売り上げたRTFKTを招いた。5月16日に1時間の番組を実施し、海外のClubhouse評論家からも高い評価も得ている。

Clubhouseで番組を持つクリエーターのうち、1次選考に残った人々(画像クレジット:Clubhouse)

Clubhouseはオワコンなのだろうか。彼女は音声コミュニティの可能性を感じている。「今、Clubhouseのアクティブユーザー数が低下している理由は、クリエイター側がマネタイズできないからと考えています。多くのSNSの黎明期はこのような状態にあるものです」と三木氏はいう。今回のオーディションもクリエイター誕生の場としてClubhouseが育つ一助と考える。

「事業を開始する頃からも感じていましたが、Clubhouseのオーディションを通して、日本人であること、女性であることが、いかに世界でプレゼンスが弱いかを痛感しています。オスカーの前夜祭で選ばれるのも、その多くが白人男性。日本の伝統文化は質としてすばらしいものが多いので、世界でのプレゼンスを上げるために活動を続けたい。その一歩として、ファンを作るには、Clubhouseは有益なプラットフォームであると感じている」という。

P2Cの世界がやってくる

英語圏においては、D2Cはすでに過去のものとして認識されている。「今、期待されているP2C(Person to Customer)という概念です。米国ではTikTokなどを介して、個人が自身のプロデュースしたプロダクトを売っていくのが主流。D2Cも流行し、2020年には寝具のCasperがIPOしましたが、この先は続かないと考えられています」という。企業広告に疲れた消費者たちは、どうせなら好きなものにお金を落としたいという気持ちが強まっており、ファン心理をついたマーケティングが効果的になっていくという。

MISAKY.TOKYOのようなスタートアップにとっても、ファンをつないでくれるClubhouseのようなサービスは、これまで以上にとても重要なものになる。

「新型コロナウイルスの影響もあり、商品とのファーストコンタクトがデジタルシフトしつつある。現物の品質を確認できないため、中長期的ファン獲得に繋がるかはさておき、購入フックはオンライン上での訴求力となってきている」と語る。一個人への共感でものが広まる時代がやってきている。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:MISAKY.TOKYOP2CClubhouse和菓子日本マーケティング

代替肉のネクストミーツが約10億円を調達、日本発ブランドとして世界展開を推進

代替肉によって過剰な畜産を減らし気候変動問題の解決を目指すネクストミーツは6月16日、約10億円の資金調達を2021年4月末時点で完了したと発表した。引受先は、大手製薬会社、食品用生産設備設計会社、海外向け物流ソリューションなど、シナジーが見込める複数の企業。今後同社は、バイオテクノロジーとメカトロニクスの領域で研究開発を加速し、日本発の代替肉ブランドを世界で急速展開させる予定だ。

ネクストミーツは2017年から共同創業者2名が研究を始め、プロダクト完成の2020年6月に法人化。2021年1月には米国証券市場OTCBBにSPACスキームで「NEXT MEATS HOLDINGS」として上場、時価総額が最高値で40億ドル(約4400億円)を超えたユニコーン企業という。

現在は日本だけでなくアメリカ、シンガポール、台湾、ベトナムなど海外10カ国以上に進出している。また、世界初の焼肉用フェイクミート「NEXT焼肉」シリーズ、100%植物性の牛丼「NEXT牛丼」や鶏肉タイプの代替肉「NEXTチキン」などをこれまでに発売してきた。

今回の資金調達と出資各社との連携により、ネクストミーツの研究体制を強化し、代替肉の原料および製品のクオリティ向上、そして生産効率やサプライチェーンの質を上げるとしている。また新潟県長岡市にある研究室「NEXT Lab」には、世界から各分野の博士が集まり、バイオテクノロジーの分野で微生物や遺伝子の研究、メカトロニクスの分野では植物性タンパク質の物性変化やファクトリーオートメーションの研究を進めている。

ネクストミーツはさらに世界展開を加速するため、現在10カ国においてスタッフが常駐し生産体制を固めている。「2050年までに世界中で全ての肉を代替すること」をミッションとして、新しいマーケットである代替肉市場で世界的プラットフォーマーを目指すとしている。

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カテゴリー:フードテック
タグ:ネクストミーツ代替肉 / 植物由来肉(用語)日本(国・地域)

AI搭載した遠隔操作ロボットのTelexistenceが22億円のシリーズA2調達、製品開発チームを拡大

AI搭載した遠隔操作ロボットのTelexistenceが22億円のシリーズA2調達、製品開発チームを拡大

AI(人工知能)搭載の遠隔操作ロボットを開発するTelexistence(テレイグジスタンス)は6月16日、シリーズA2ラウンドにおいて、約22億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、既存投資家のモノフルのグループ会社(モノフル)はじめ、Airbus Ventures、KDDI Open Innovation Fund、DEEPCORE、東大IPC、複数の新規投資家(非公開)など。2017年創業以来の資金調達総額は約45億円となった。

調達した資金は、製品開発チームの拡大や、オフラインの小売店舗・物流分野で広がる顧客層への製品開発・展開の加速に活用する。

またTelexistenceとモノフルは、物流施設業務向けの拡張労働基盤(AWP。Augmented Workforce Platform)の開発、商用運用や社会実装をさらに進めるため、パートナーシップを強化した。

遠隔操作ロボット技術を核とするAWPは、物流施設内の業務に携わる労働者が倉庫に物理的に立ち会うことなく労働力を提供できるプラットフォーム。倉庫内に設置されたロボットをインターネット経由で操作できるほか、在宅のままパレタイズ(パレットへの積みつけ)やデパレタイズ(パレットからの荷下ろし)などの作業に参加可能という。Telexistenceは、AWPの構築により労働者により安全に、より低コストで、より便利に世界の労働市場に参加できる基盤を提供するとしている。

今回のパートナーシップはその一環となっており、国内最大級の物流業者をパートナーとし、物流分野向けに開発した遠隔操作ロボットのトライアル導入の準備と製品試作を進める。

現在、ロボット(主に産業用ロボット)は、主に自動車・総合電気メーカーの工場内でしか普及していないという状況にある。Telexistenceは、ロボットの活躍の場を工場の外にまで広げ、社会の基本的なあり方を変革することを目指しているという。最終的には、人間が複数の空間的・時間的スケールのネットワーク構造を介してつながり、相互作用し、進化していく社会の創造を目指す。

モノフルは、先進的物流施設のリーディングプロバイダーである日本GLPのグループ会社の出資により2017年11月に設立。社名には、「物(mono)であふれている(full)」という物流の現状を表す意味に加え、同社が目指す未来の物流の姿である「単一の(mono)プラットフォームで遂行させる・実行する(fulfill)」という意味を込めている。

2017年設立のTelexistenceは、「ロボットを変え、構造を変え、世界を変える」をミッションとし、遠隔操作・人工知能ロボットの開発およびそれらを使用した事業を展開するロボティクス企業。世界中から高い専門性をもつ人材が集まり、従業員の国籍は10を超え、ハードウェア、ソフトウェア、自動化技術を一貫して自社で開発している。半自律型遠隔操作ロボットとAWPを通じて、人々が場所を問わず労働参加できる基盤構築を目指す。

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職場向けの置き菓子サービス「オフィスグリコ」が全国で利用可能になる「どこでもオフィスグリコ便」の受付開始

職場向けの置き菓子サービス「オフィスグリコ」が全国で利用可能になる「どこでもオフィスグリコ便」の受け付け開始

江崎グリコ子会社「グリコチャネルクリエイト」は6月14日、職場向けの置き菓子サービス「オフィスグリコ」が全国で利用可能になる「どこでもオフィスグリコ便」の受付開始を発表した。申し込みは、公式ページより行える。

オフィスグリコは、2002年から始まったサービス。職場に、菓子、食品、飲み物の専用ボックスを設定し、利用者個人が代金を払うというもの。従来はサービススタッフが職場を訪問して商品管理や代金の回収を行っていたため、サービス地域が限定されていたが、専用ボックスと商品を職場に発送し、支払いはQR決済のみに限定したことで、全国展開が可能になった。サービススタッフによる訪問がないため、部外者の立ち入りが禁止されている場所でも利用できる。

導入、運用に際して利用企業に経費はかからない。30名以上在籍している職場ならば、沖縄と離島を除く全国どこでも申し込める。決済方法は「PayPay」と「d払い」のQR決済のみ。現金を扱わないので管理者および利用者側の負担が少ない。また、職場内で気軽に食品を購入できるため、コロナ禍における不要な外出の抑制にもつながるほか、災害備蓄のローリングストックとしても役立つとしている。

オフィスグリコはサービス開始当初は首都圏、中京、近畿、九州の主要都市からスタートしてエリアを拡大してきた。2021年現在のサービス拠点はおよそ10万カ所。東日本大震災以降は、ローリングストックが可能なBCP(事業継続計画。災害備蓄)として、また2020年以降はコロナ対策としての新たな価値が生まれているという。

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