旅行業界の再活性化に向け、ホスピタリティ管理ソフトウェアのCloudbedsにソフトバンクが投資

日程を決めずに宿泊チケットを買えるECサイトStay by Tripi運営のトリピが3800万円のシード調達

2021年夏、米国のホテル稼働率は新型コロナウイルス流行前の水準に達した。ホスピタリティ業界は、人々が旅行を再開することによる活動の活発化に備えているところだ。

このような状況には追い風も吹いている。「今後増える旅行者で最大の母集団は1979年以降に生まれた人々であり、この10年間により多くのお金を貯めたことで、自由裁量の支出が増え、それを旅行に使いたいと考えている」と、Cloudbeds(クラウドベッズ)の共同設立者兼CEOであるAdam Harris(アダム・ハリス)氏は述べている。

「新型コロナウイルス流行は誰もが歓迎しない状況でしたが、旅行業界は1兆ドル(約114兆円)規模の産業であり、世界でトップ5に入る規模です」と、同氏は付け加えた。「2019年にあった需要は、それから1年半も家に閉じ籠もらざるを得なかったことで、今はさらに強くなっています」。

Cloudbedsのプロダクト(画像クレジット:Cloudbeds)

ハリス氏と共同創業者のRichard Castle(リチャード・キャッスル)氏が、2012年にサンディエゴで設立したCloudbedsは、独立系ホテルからバケーションレンタル(民泊)まで、宿泊事業者向けのホスピタリティ管理ソフトウェアを提供している。このソフトウェアは、運営、収益、流通、グロースマーケティングなど、これまで別々に行われていたビジネスの機能を、1つのクラウドベースのツールに統合する。

人々の蓄積されてきたエネルギーにより、今までにない数の旅行が実施されるようになると、ハリス氏は確信している。このチャンスを活かすため、同社は新たな投資家であるSoftBank Vision Fund 2(ソフトバンク・ビジョン・ファンド2)が主導した資金調達で、1億5000万ドル(約170億円)を確保した。

Cloudbedsとソフトバンクとの関係は2年前に始まったが、ハリス氏はこの投資会社が「世界で最も優れた旅行投資家の1つ」だと述べている。最近では、Yanolja(ヤノルジャ)、GetYourGuide(ゲットユアガイド)、Klook(クルック)などの旅行関連企業に、ソフトバンクは資金を提供している。

今日の市場では、ホテルが競争力を高めるためにテクノロジーを導入することが「重要」であり、世界的な新型コロナウイルス流行がその導入を加速させる要因になっていると、SoftBank Investment Advisers(ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズ)のディレクターであるAndrew Zloto(アンドリュー・ズロト)氏はメールで述べている。

「Cloudbedsは、この機会を利用して、ホスピタリティ業界におけるテクノロジーの利用方法を根本的に変えたと、我々は確信しています」と、ズロト氏は語る。「これまでサイロ化され、複雑に絡み合っていたテクノロジーサービスを、Cloudbedsは単一のプラットフォームに統合し、あらゆる規模の宿泊施設に最適なソリューションを提供しています。重要なビジネスツールを統合して簡素化することによって、同社は独立系ホテル経営者が活躍できる場を広げ、絶えず進化する市場で成長するための支援を行っています」。

今回の投資ラウンドでは、ソフトバンクに加え、Echo Street(エコー・ストリート)とWalleye Capital(ウォールアイ・キャピタル)が新たな投資家として加わった。さらに既存投資家として、Viking Global Investors(バイキング・グローバル・インベスターズ)、PeakSpan Capital(ピークスパン・キャピタル)、Counterpart Ventures(カウンタパート・ベンチャーズ)も参加。これにより、Cloudbedsがこれまでに調達したベンチャー資金の総額は、2億5300万ドル(約287億円)となった。

この資金を武器に、Cloudbedsは研究開発の拡大、教育およびアドボカシー活動への投資、エンジニアリング、プロダクト、セールスの各チームの拡大を進めていく。さらにプレIPOに向けてチームを整えることに重点を置き、リーダーシップを強化していくと、キャッスル氏は述べている。

ハリス氏は成長指標を公表しようとはしなかったものの、Cloudbedsは2020年、新型コロナウイルス流行にもかかわらず成長を遂げた、ほんの一握りの企業の1つであると語っている。同社は現在、157カ国で2万2000人以上のグローバルな顧客にサービスを提供している。

「私たちは、この会社が200億ドル(約2兆3000億円)規模の企業になれると信じています」と、ハリス氏は付け加えた。「競合他社との競争を見れば、当社はリードしています。しかし、現金を投入する必要があり、そのために私たちは夜も眠れません。現在、当社のビジネスモデルには予測可能性があり、目標はIPO候補となり組織を成熟させることです」。

画像クレジット:num_skyman Shutterstock

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

建築建材の総合検索サービスArch-LOGを提供する丸紅アークログが総額6.99億円の資金調達

建築建材の総合検索プラットフォーム「Arch-LOG」(アークログ)を提供する丸紅アークログは11月8日、第三者割当増資による総額6億9930万円の資金調達を完了したと発表した。引受先は長谷川コーポレーションと前田建設工業。調達した資金は、Arch-LOGのユーザービリティを向上させるための既存システムのバージョンアップをはじめ、建築・建設産業のDXにつながる各種機能のアイデアの実現、新機能開発などへ投資するとのこと。

Arch-LOGには、約120万点(2021年10月時点)の建築建材が登録されており、ガラス、石材、防水材といったカテゴリーや特定のメーカー名、キーワードなどで必要な建築建材を検索できる。さらに、複数のメーカー製品を比較選定することも可能なため、従来の膨大なカタログを手作業でチェックしていく必要がない。サンプル請求もワンクリックで行なえる手軽さを備えている。

また、Arch-LOGで選定した建材を用いたデジタルマテリアルボード作成機能や、高精細CG画像のリアルタイム生成が行なえるBIM(ビム。Building Information Modeling)レンダリング機能も搭載。施主や顧客へ3DCGでの使用提案ができるなど、ウェブベースでのプロジェクトの「見える化」を実現できる。これら機能によって、作業時間の大幅な短縮・生産性の向上が期待できるほか、紙カタログの削減によりSDGsにもつながるとしている。加えて、竣工前の企画から設計、施工に至るまでの進行管理、使用建材の各種データ(取扱説明書・耐用年数)など建物情報をデジタルベースで一元管理できる。

今後の予定として、竣工後も各製品の交換時期になると自動でアラートが鳴ったりメールでお知らせが届いたりすることで建物維持管理のメンテナンスや顧客へのリフォーム提案が可能になる「メンテナンスアラートサービス」、BIMと連動して設計から施工までのフローをシームレスにつなぐ「仕上表機能」を来期に実装するとのこと。

丸紅アークログは、プロジェクトの低い利益率や抵抗率、労働力不足などの課題を抱える建築・建設業界においてそれらの解決策となるデジタル化を進めるため、丸紅とログログが2019年6月に共同で設立。創業からの2年間で、Arch-LOGを全社的に活用することを目的に締結したアライアンスは、スーパーゼネコン5社を含めたゼネコンや設計事務所、デベロッパーなどの大手各社30社以上になるという。

SaaSやFinTechサービスのデータ連携が可能な財務会計領域iPaaS「ActRecipe」のアスタリストが5800万円調達

複数SaaSやFinTechサービスのデータ統合・連携が可能な財務会計領域特化クラウド「ActRecipe」(アクトレシピ)を提供するアスタリストは11月8日、第三者割当増資などによる総額5800万円の資金調達の実施を発表した。引受先はEast Venturesをはじめとする複数の投資家。調達した資金は、主にサービスの機能拡充や利用企業数拡大のために活用する。これにより、既存の契約企業やSaaSを利用している企業に新たな価値を提供し、アスタリストのさらなる成長につなげるとしている。

ActRecipeは、データ統合・内部統制に向けたiPaaS(integration Platform-as-a-Service。クラウド統合プラットフォーム)として2019年8月にサービスローンチ。2020年6月には電子決済代行業者の登録を完了したことで、銀行APIを通じてSaaSから銀行への自動送金や入出金明細の自動取得を行なう取り組みも開始した。

2013年11月設立のアスタリストは、「”Create time through innovation” (イノベーションによって時間を創る)」をミッションとするスタートアップ。ITの活用により企業の生産性向上や内部統制強化を支援する事業を行なっている。現在はActRecipeに注力しており、SaaSやFinTechサービスのさらなる活用とDXの推進を目指している。

 

今後、成功のために必要なプログラミングなどのスキルを教えるインドのBrightChampsが約58億円調達

インドのEdTechスタートアップBrightChamps(ブライトチャンプス)はK12(幼稚園から高校3年生まで)の学校から取り残された学習のギャップをなくそうとしている。このほど同社は、新たな調達ラウンドで5100万ドル(約58億円)を獲得したことを発表した。1年前にゴア州拠点の同社が10カ国以上への進出を目標に開業して以来、総調達額は6300万ドル(約72億円)になった。

Premji Investがリードしたこの調達ラウンドで5億ドル(約568億円)近い評価額を得た同スタートアップは、東南アジア、米国、カナダを含む10カ国以上で子どもたちにプログラミングなどのスキルを教えている、とBrightChampsの共同ファウンダーでCEOのRavi Bhushan(ラヴィ・ブーシャン)氏がTecnCrunchのインタビューで語っている。

自宅で教育を受け、不動産ポータルのPropTigerで最高技術責任者を務めたブーシャン氏は、世界の学校はこの時代で成功するために重要なスキルを子どもたちに教えていないという。「これはインドの問題ではありません。世界中の学校が、Microsoft Wordでテキストのスタイルを変更する方法をテクノロジーの名目で教えていません」。

数十万人以上の登録生徒を集めて黒字化を達成し、年間経常利益が1000万ドル(約11億円)に近づいている同社は「『多人数教育』の武器を作ることで破壊の波をリードして、インドを最新デジタル教育の最大輸出国にしようとしています」とGSV Venturesのマネージング・パートナー、Deborah Quazo(デボラ・クアゾ)氏が声明で語った。GSVはTechCrunchが報じた同社の以前のラウンドをリードした。

全世界で1000人以上の教員がBrightChampsに参加して子どもたちを教えている、とブーシャン氏は言った。「子どもたちは、自分の好きな現地語を選んで学習することができます」と彼は言い、現在提供内容の拡大を進めていることを付け加えた。近くカリキュラムに財政分野を追加する予定だという。

TechCrunchが入手した以前の投資家向けプレゼンテーションのスライド。出資者の中にはFlipkartの共同ファウンダーであるBinny Bansal(ビニー・バンサル)氏の投資会社およびBEENEXTもいる

ブーシャン氏は、スタートアップのこれまでの成長はすべて既存資源によるもので投資家から調達資金は使一切っていないと語った。「私たちは顧客から得た資金のみで成長しています」と彼は言った。

BrightChampsは過去1年間、インドで最も話題になったスタートアップであり、この国最大級のEdTech巨人から買収提案があったという情報もTechCrunchは掴んでいる。

先週、TechCrunchが調達ラウンドを確認するために接触したあと初めて話した時、会社は事業内容と資金調達について2020年発表するつもりだったが、国がパンデミックと戦っている時に節目を祝いたくなかったので延期したと語っ。

ブーシャン氏は、BrightChampsに寄せられた買収提案についてはコメントを拒んだ、スタートアップは非常に長期的なビジョンで作られており、短期的利益は目指していないと語った。「教育は、おわかりのように、私の子ども時代からの情熱なのです」と同氏は付け加えた。

BrightChampsが事業展開しているカテゴリーには大きな空白地帯がある、と新規資金の使い道を尋ねられたブーシャン氏は語った。「1つの分野は、子どもたちが相互に学び合う可能性です。いくつか実験も終えています。次はピアツーピア体験を提供するつもりです」と彼は話し、最終的に子ども向けStack Overflow(スタック・オーバーフロー)のようなプラットフォームを作りたいと付け加えた。「オリンピックやテック・ハッカソンを主催することも考えています」と彼は言った。

BrightChampsは、共通のミッションと感性をもつ会社を買収する機会もうかがっている。

「BrightChampsは開業から1年以内に、分野で最も成長の早いEdTech会社の1つになりました。世界に広がる人材を活用してパーソナライズされた体験を提供し、学習方法を超差別化するその独自の能力によって、BrightChampsはデータの力と学習を組み合わせることで結果を差別化できることを証明しようとしています」とPremji InvestのマネージングパートナーであるT Kurien(ティー・クリエン)氏が声明で語った。

画像クレジット:BrightChamps

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(文:Manish Singh、翻訳:Nob Takahashi / facebook

自動運転ユニコーンMomentaがシリーズCに約567億円を追加、中国AD分野では今年最大のラウンドに

MomentaのCEOであるCao Xudong(カオ・シュドン)氏とGM China社長のJulian Blissett(ジュリアン・ブリセット)氏(画像クレジット:Momenta)

9月にGeneral Motors(GM、ゼネラルモーターズ)から3億ドル(約340億円)の投資を受けた中国発の自動運転ソリューションプロバイダーであるMomentaは、中国時間11月7日、シリーズC追加ラウンドで5億ドル(約567億円)を調達したと発表した。

この新たな資金調達により、同スタートアップのシリーズCの総額は10億ドル(約1134億円)を超えた。Momentaは、GMなどの自動車メーカーやBosch(ボッシュ)などのTier1サプライヤーに先進運転支援システム(ADAS)を提供する一方で、真の無人運転、すなわちレベル4走行の研究開発を行うという、同社が言うところの二足のわらじ戦略をとっている。

このスタートアップには、中国の国有企業であるSAIC Motor(上海汽車集団)、GM、トヨタ、メルセデス・ベンツ、Boschなど、ヘビー級の戦略的投資家が集まっている。機関投資家としては、シンガポールの政府系ファンドであるTemasek(テマセク)や、Jack Ma(ジャック・マー)氏のYunfeng Capital(云锋基金)などが名を連ねている。

Momentaは、自動車メーカーとの提携により、自社でロボタクシーを開発するという資金のかかるルートを選択した他社との差別化を図っている。その代わりに同社は、自社のソリューションを搭載した量産車のネットワークからデータを得ることを重要視している。Pony.ai(小馬智行)とWeRide(ウィーライド、文遠知行)は最も近いライバルだが、彼らも多額の資金を調達している。

GMとの提携の場合、Momentaのソリューションは、コンシューマーグレードのミリ波レーダーと高精細カメラを組み合わせたもので、米国ではなく中国で販売されるGMの車両に搭載される。Momentaは最近、ドイツのパートナー企業との関係強化のために初の海外オフィスをシュトゥットガルトに開設したが、これはMomentaの技術が自国の市場以外にも広がっていく可能性を示唆している。

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

AIを活用したエンジニアリング卓越性プラットフォームのPropeloがシリーズAで約13.6億円を調達

ここ数年、DevOpsツールの数は飛躍的に増加しており、それにともない、企業がソフトウェア開発プロセスを改善するためにそうしたツールが生み出すデータの量も増加している。しかし、ほとんどの場合、これらのデータは単にダッシュボードの中でばらばらに分析されている。Propelo(旧社名:LevelOps)は、この混沌とした状況に秩序をもたらしたいと考えており、機械学習(ML)を活用した分析サービスとノーコードのロボティックプロセスオートメーション(RPA)ツールを組み合わせた「AI駆動のエンジニアリング卓越性プラットフォーム」を構築し、ユーザーがこれらのデータポイントを実用的なものに変えられるようにすることを目指している。

同社は米国時間11月4日、Decibel Partnersが主導するシリーズAラウンドで1200万ドル(約13億6000万円)の資金調達を実施したと発表した。このラウンドには、Fike Ventures、Eniac Ventures、Fathom Capitalも参加した。

Propeloの創業者兼CEOであるNishant Doshi(ニシャント・ドーシ)氏は、2015年にPalo Alto Networks(パロアルトネットワークス)が買収したSaaS型セキュリティサービス、CirroSecureを共同創業した経験がある。その後、Palo Alto Networksに数年間在籍し、シニアディレクターやエンジニアリング担当VPとして、DevOpsツールの爆発的な普及を身をもって体験した。開発プロセスをよりよく把握するために、チームはJira、GitHub、Salesforceなどのソースからデータをつなぎ合わせる必要があった。

画像クレジット:Propelo

「これは手作業が多く、多大なリソースを必要とします」と同氏は語る。「ビジネスの核心にフォーカスしていないのに、解決策を探そうとすると、いつも別のツールが必要になってしまうのです。また、それらのツールを手に入れても、何を測定すればよいのかわかりません。当社のような専用のソリューションがもたらす進歩にアクセスできず、さらに重要なのは、行動可能性がないということです」。

画像クレジット:Propelo

そして、最後の部分がキーポイントだとドーシ氏は強調する。優れたデータや分析結果があっても、その情報に基づいて実際に行動を起こすことができなければ、開発プロセスを改善することはできない。PropeloのRPAツールを使えば、ユーザー(同社によれば、主にエンジニアリング・リーダーシップ・スタックのユーザーを対象としている)は、企業内のDevOpsプロセスを改善するための多くのタスクやワークフローを簡単に自動化することができる。

このサービスは現在、Jira、GitHub、GitLab、Jenkins、Gerrit、TestRailsなど、約40種類のDevOpsツールと連携している。Propeloは、AIを活用することで、ユーザーが隠れたボトルネックを発見したり、スプリントが失敗しそうなタイミングを予測したりできる。実際、データの衛生管理やJiraチケットの更新は、ほとんどの開発者があまり考えたくないことなので、Propeloは定期的に開発者にそれを促すことができる。

現在のPropeloのユーザーには、Broadcom(ブロードコム)やCDK Globalなどがいる。Broadcomでセキュリティ技術とエンドポイントソリューションを担当するエンジニアリングVPのJoe Chen(ジョー・チェン)氏はこう述べている。Propelo は、DevOps の摩擦を減らし、無駄な動作を減らす方法について、スクラムチームごとの非常に細かいレベルで、データに基づいた洞察を提供してくれます。これは、追加技術投資の効率を最大化し、エンジニアのペインポイントを取り除くのに役立ちます」。

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Aya Nakazato)

あるスタートアップが消費者向けトレーディングのブームを変える

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

みなさん、お元気でお過ごしだろうか。今回は取り上げる話題が山のようにある。消費者向けフィンテック市場における魅力的なスタートアップのラウンドに関するメモ、AppianのCEOであるMatt Calkins(マット・カルキンス)氏と決算説明会に行ったインタビューによるローコードの世界に関するメモ、そしてIPOたち、Kidas(キダス)のベンチャーキャピタルラウンド、ビルの「公開」、NFTなどをすばやく紹介していく。では始めよう!

あるスタートアップが消費者向けトレーディングのブームを変える

Robinhood(ロビンフッド)は、投資やトレーディングに対する消費者の関心の波に乗り、株式を公開するまでに至った。最近では、いくつかの失敗があったものの、同社は株式の購入だけでなく、より魅惑的なオプション取引に対する市場の関心の高さも証明している。

今回話題にしたいのは後者だ。シカゴにゆかりのある分散型スタートアップOptions AI(オプションズAI)が、410万ドル(約4億6000万円)のシードラウンドを実施した。私はこの会社の創業メンバーを知っていたので、会社についでも以前から知っていたものの、これまであまり書く機会がなかった。

だがAkuna Capital、Miami International Holdings、Optiver Principal Strategic Investmentsの3社のリードインベスターなどから資金を調達したいま、取り上げる時期にきたといえるだろう。

基本的にオプションは複雑であり、トレーディングに臨む多くの人々は、手をつけようとする時に。良い選択をするためのツールや洗練された技術を持ち合わせていない。私の意見を疑うなら、トレーディングをやっている友人にオプション戦略について聞いてみると良いだろう。きっと複雑さが理解できるやりとりになる筈だ。

Options AIは、トレーダーが執行する前に対象のトレードをよく確認して、マルチレッグオプションなどを扱う際により良い選択ができるようなツールを開発した。これは非常に優れたツールで、以前からオプション取引の仕組みや価格付けについて漠然としか理解していなかった私にとっては、しっかり理解を深めるのに役立った。

しかし、Options AIが私の興味を引いた理由は、チャートが優れているということだけではない。もう1つの理由は、トレードに課金することだ。このスタートアップは、トレードコストを一律5ドル(約567円)としているため、Robinhood(ロビンフッド)やWebull(ウィブル)などが近年追求してきた無料トレーディングの流れに逆らって泳いでいることになる。

現在、Options AIは株式オプションを扱っているが、The Exchangeには、そのうち暗号資産や先物オプションを追加するかもしれないと語っている。同社は現在の状況を、これまで開発しテストしてきた場所から頭を出した状態だと述べ、初期の人気とユーザーデータから何かを掴んだと考えている。もちろん、新しい投資家たちもそう思っているだろう。

さらに話を進める前に、オプションに関するデータを。大手消費者向けトレーディングプラットフォームが、なぜオプション取引に興味を持つのだろうか?なぜなら、めちゃくちゃ儲かるからだ。例えばオプショントレーディングのおかげで、Robinhoodは2021年第3四半期に6400万ドル(72億6000万円)の収益をあげた。一方株式トレーディングの収益は5000万ドル(56億7000万円)だった。これはビッグビジネスなのだ。

また、一律手数料とPFOF(ペイメント・フォー・オーダーフロー)の収入があることで、Option AIは十分な数の人々を集めることさえできれば、かなり魅力的な市場ポジションを得ることができる。スタートアップのターゲットユーザーは誰だろう?トレードを始めてはみたものの、もう少し専門的なツールが欲しいという人に向いていると思う。そしてRobinhoodの数字は、そのようなユーザーが相当数存在する可能性を示している。

Option AIのトレーディングの成長データを得たときに続報をお知らせする。

SaaSの価格設定を揺るがす

これまでTechCrunchは、SaaSの価格設定の議論を、サブスクリプションとオンデマンドまたは使用量ベースの価格設定レンズを通して検討してきた。現在、多くのスタートアップ企業が、(オンデマンドの価格設定がより理にかなった)APIとして誕生しているため、このレンズは市場の進化を見る上で良い視点になっている。また、市場にはSaaS疲れも見られる。

そんな中、Appian(アピアン)は少し変わったことをしている。先週、同社のCEOであるMatt Calkins(マット・カルキンス)氏を決算説明会の後でつかまえて、ローコード市場、プロセスオートメーション、プロセスマイニングについての話を中心に聞いてみた。Appianは、顧客が自動化すべき点をプロセスから抽出し、必要に応じて設計や自動化を行うことができるソフトウェアセットを提供している企業だが、私たちはその内容はもちろん、価格についても話し合った。

Appianは、利用無制限の価格設定を用意している。これは、使用量に上限のないSaaSのようなものだ。SaaSはアカウントやアプリケーションごとに価格が設定されることが多いのだが、カルキンスらはSaaSとオンデマンドの良いところをミックスしたような試みをしている。もっと簡単に言えば、1年分のサービスを定額制にして利用制限を設けないことで、顧客にAppianのサービスをたくさん使ってもらい、そのプラットフォームにどっぷりとハマってもらおうとしているのだ。

カルキンス氏は、公開企業のCEOとしては不自然なほど「無制限プランは、一部のお客様にとって非常にお得なプランになるかもしれません」と明言した。カルキンス氏は、価格設定に「イノベーション」を起こしたいと口にする。彼は、利用無制限の価格設定モデルを提供することで、顧客がAppianの技術を使って多くのものを作り、他の価格設定メカニズムで支払うよりも少ない金額で済ませる可能性があるものの、それは顧客にAppianの技術を全面的に使ってもらうためのコストに過ぎないと強調した。

上手く行けば、Appianは利益率の高い高収益を生み出すことができる長期顧客を持つことになるだろう。悪い取引ではない。

IPOまとめ

  • HashiCorp(ハシコープ)が上場を申請したので、その数字を調べてみた。結果はこちらで
  • 消費者直販のAllBirds(オールバーズ)は、IPOの価格を予定レンジよりも高く設定し、取引開始時にはさらにポイントを上昇させた。価格情報はこちら、財務情報はこちら
  • NerdWallet(ナードウォレット)は、IPOの価格を中程度に設定したが、その後高値で取引された。その後、少しずつ価格は下がったが、それでも見事なデビューを果たしている。金融関連の報道はこちらこちら。(そして、元TechCrunchのFelicia Shivakumar[フェリシア・シバクマール]氏にもエールを送りたい。彼女はかつて、私がTCのためのビデオショーを立ち上げる際に手伝ってくれた。非常に優れた人間であると同時に、現在はNerdWalletで働いている!)。
  • Nubank(ヌーバンク)が株式公開を申請したことで、その経営の数字の一端が明らかになった
  • Bird(バード)のSPAC取引が完了したが、初日は ベストではなかった
  • そして最後に、Backblaze(バックブレイズ)は自社のIPOに向けて最初の価格設定を行った。これは、同社の手堅い収益規模を考えると魅力的なことだと思う。

その他のこと

  • 先週私の目に飛び込んできたKidas(キダス)は、親と協力して子どもたちがオンラインゲーム環境で安全に過ごせるようサポートするスタートアップだ。これまでの控えめな資金調達に加えて、今回200万ドル(約2億2700万円円)を調達した。同社はThe Exchangeに対して「親御さんにとっては、他の方法では得られない新しい情報が得られ、それによって好きなものを介してお子さんたちとより良い関係を築くことができます」と語っている。
  • 私は権力者が配下の者のデジタル活動の制約を強めるようなことは、決して良いことだとは思わない。しかし、ゲームの世界ではコミュニケーション手段が急速に多様化しているため、保護者は何らかの監視を必要とするだろう。
  • 注目すべきは、そのツールがゲームプレイを妨げないことだ、つまりアンチチートソフトウェアを反応させないということである。これは本当に本当に重要なことだ。
  • 会社の詳細はまた別の機会に紹介するが、本拠地はフィラデルフィアで、私はそこに惹かれた。
  • ビルが「公開」された:私たちのIPOのセクションとは関係しないが、私が動向を薄くトラッキングしているLEX Capital Markets(レックス・キャピタル・マーケット)というスタートアップが、1つのビルを債権化して公開した。この会社は、実にすてきなモデルを提供している。覗いてみる価値があるだろう。
  • そして最後に、最近のNFT(非代替性トークン)報告の延長だが、、Mythical(ミシカル)がNFTを取り入れたゲームのために1億5000万ドル(約170億円)を調達したところだ。NFTの風はそこに向かっているのかもしれない。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

代替肉ブームに乗って海藻をハンバーガーにしたAKUAが3.6億円獲得

世界の代替肉の市場規模は、2年前には45億1000万ドル(約5140億円)で、2027年までに倍増すると見込まれており、スタートアップを惹きつけている。AKUA(アクア)のような代替肉テック企業も含まれる。同社は、この新しい業界で、重要な地位を確立することを目指している。

テクノロジージャーナリストだったCourtney Boyd Myers(コートニー・ボイド・マイヤーズ)氏は5年前、Matthew Lebo(マシュー・レボ)氏と共同でAKUAを創業した。マイヤーズ氏は、後世に何かを残し、気候変動を食い止めるという使命を果たせる仕事を探していた。

フードマーケターの父のもとで育ったボイド・マイヤーズ氏は、ファストフードの食生活が人に与える影響を目の当たりにし、地球にも良い影響を与える、より健康的な食品を常に探していたと話す。

AKUAの共同創業者でCEOのコートニー・ボイド・マイヤーズ氏(画像クレジット:AKUA)

創業者らは当初、食品に関して持続可能性に欠ける部分、つまり工場的畜産を再生可能な海洋農業に置き換えることを考えていた。ボイド・マイヤーズ氏は友人からケルプの養殖場を見せてもらう機会があり、行ってみたところ、とても気に入り、それからAKUAが誕生した。

AKUAは米国時間11月5日、Vibrant Venturesのリードによる320万ドル(約3億6000万円)のシードラウンドを発表した。資金調達総額は540万ドル(約6億2000万円)となった。総額には、プレシード投資家やRepublicのキャンペーンからの投資や、共同創業者らの出資が含まれている。

また、今回のラウンドには、Pegasus Sustainable Finance、Halogen Ventures、Fifth Down Capital、Alumni Ventures Group、Karmagawa、ニューイングランド・ペイトリオッツのコーチで元ラインバッカーのJerod Mayo(ジェロッド・マヨ)氏、美容業界の創業者であるCristina Carlino(クリスティーナ・カーリノ)氏、SmartyPantsのCEOであるCourtney Nichols Gould(コートニー・ニコラス・グールド)氏、Sir Kensington’sの共同創業者であるBrandon Child(ブランドン・チャイルド)氏、Gellert Global Groupの社長であるAndy Gellert(アンディ・ジェラート)氏、SOAのSeabird Ventures、Blue Angelsといった面々が参加した。

2019年には、4種類のフレーバーを揃えた最初の商品「Kelp Jerky」を発売した。これはボイド・マイヤーズ氏が、海で養殖されたケルプを新しい形で人々に見てもらう良い試みだと考えた商品だった。

「運を天に任せてというところはありました。ですが、とにかくヘルシーです」と同氏は付け加えた。「パンデミックの際には新製品の開発に戻り、『The Kelp Burger(ケルプバーガー)』を考案しました」。

このバーガーは、ビーガン(完全菜食主義者)、非遺伝子組み換え、大豆フリー、グルテンフリーで、原材料として、海で養殖されたケルプ、クレミニマッシュルーム、エンドウ・プロテイン、黒豆、キヌア、クラッシュ・トマト、複数のスーパーフードが含まれる。

しかし、ジャーキーでは可能だった試食が実施できなかったため、フードクラブを立ち上げ、ハンバーガーのサンプルを送った。最終的には1000人の顧客が登録し、The Kelp Burgerは「英雄的商品」になったとボイド・マイヤーズ氏は話した。

肉の代替品には、化学的な保存料や耳慣れない成分が含まれていることが知られており、より健康的な選択肢を求める目的が損なわれてしまう。最近では、Shiruのように、この問題に注目しているスタートアップもある。同社は、より体に良い肉の接合剤の開発を目指し、1700万ドル(約19億円)を調達した

ボイド・マイヤーズ氏は、AKUAがケルプバーガーの原材料を考える際、そうした主張がヒントになったと話す。ケルプバーガーは15の原材料から成り、すべてが食品または食品由来だ。

「植物由来の食事の第1波は、Boca Burger、豆、豆腐でした」と同氏は付け加えた。「第2波はImpossibleとBeyondです。第3波はホールフードやクリーンな食事への回帰になるでしょう。これまでに存在したものがなければ、私たちは今日ここで、より優れた植物性バーガーを作ることはできなかったと思います」。

AKUAは5月に消費者への直接販売を開始し、現在はアラスカとハワイを除くすべての州に出荷している。ボイド・マイヤーズ氏は、同社には売り上げがあり、リピーターもいるものの、成長の指標を語るには時期尚早だと説明する。しかし、同社は小売店舗にも手を広げており、ニューヨークでは100店以上から予約注文を受けた。今後数カ月のうちに出荷し、続いてサンフランシスコとロサンゼルスの店舗にも出荷を見込む。

同社の品揃えには、ジャーキーやハンバーガーの他に、ケルプパスタもある。今回の資金調達は、代替肉や植物由来のシーフードの分野で、ケルプやそれ以外の食品、例えばレンズ豆などを使った新製品の研究開発に充てる。

同社は、ケルプのひき肉製品をソフトローンチした。2022年第2四半期にはケルプのクラブケーキを発売する予定だとボイド・マイヤーズ氏は話す。また、人材をさらに採用し、販売・マーケティング活動を強化する。

同氏は、Vibrant Venturesの創業者であるJarret Christie(ジャレット・クリスティー)氏と一緒に働けることをうれしく思うと語った。他の創業者から紹介されたという。Vibrant Venturesは、7月に発足したロサンゼルス発の新しい「植物由来志向」のファンドだ。

クリスティー氏はボイド・マイヤーズ氏を知るにつれ、同氏がコミュニティビルダーであると考えるようになった。工場的畜産から脱却し、気候変動と戦い、人々がより低価格で健康的な食品を手に入れられるような運動を起こしていると見ている。

「半年前には誰の目にも留まらなかったケルプですが、今では作物の飼料や包装資材、作物の肥料としても検討されています」とクリスティー氏はいう。「ボイド・マイヤーズ氏はケルプの生産者と手を取り合って働いています。これは始まりに過ぎないと思います」。

画像クレジット:AKUA / AKUA Kelp Burger

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

eスポーツ用トレーニングプラットフォームで高校のゲームリーグとの連携を開始したGwoopが約2億円を調達

2021年のはじめ、私はGwoop(グウープ)について書いた。ユーザーのビデオゲーム全般でのプレイ上達を目指したブラウザベースのゲームを開発しているミネソタ州のチームだ。彼らのゲームは、反応の速さ、マウスの正確さ、ランダムに配置されたターゲットを狙う速さなどを測定し、それらの統計情報をダッシュボードに表示して、時間の経過とともにどのように上達しているか(願わくば)を示してくれる。

前回、Gwoopの共同設立者であるGavin Lee(ギャビン・リー)氏と話をしたとき、彼はすでに、増え続ける高校のeスポーツチームのための分析・トレーニングツールになることを見据えていた。ますます多くの学校がeスポーツに真剣に取り組み始めている。他の種類のコーチと同様に、eスポーツのコーチも、誰が何を得意としているのかを確認したり、選手の成長を長期的に追跡したり、選手にウォーミングアップのための訓練させたりする方法を必要としているのだ。

Gwoopはすでにその面で確かな成果を上げているようだ。リー氏によると、Gwoopは現在「40州の約1000の学校プログラム」と連携しているという。このたび、その活動を継続するために、185万ドル(約2億1000万円)のシードラウンドを獲得した。

Gwoopのプラットフォームは現在、そしてこれからも、個人のプレイヤーは無料で利用することができる。これは、リー氏が重要だと考えていることだ。では、どうやって収益を上げるのだろうか?

画像クレジット:Gwoop

同社はここ数カ月「Gwoop Teams」機能を開発してきた。その名の通り、グループでのトレーニング用に開発されたものだ。Teamsを利用することで、コーチは、トレーニングの計画を立てたり、選手が練習しているかどうかを確認したり、各選手がどのように成長しているかを確認することができるようになる。

Teamsの基本バージョンは無料で、最大30人の選手と2つの「パーティ」に対応している。1つのパーティには「Rocket League(ロケットリーグ)」の選手、もう1つのパーティには「League of Legends(リーグ・オブ・レジェンド)」の選手、「Fortnite(フォートナイト)」の選手など、グループ化することができる。それ以上の人数を必要とするコーチには、Gwoopsの「Team Plus」を利用することで、人員リストを150人まで増やし、コーチが監督できるパーティの数を増やすことができる。リー氏によると「Teams Plus」の料金は年間350ドル(約3万9800円)程度だそうだ。

また、初期段階ではあるが、機械学習を利用して、プレイヤー(およびそのコーチ)が、既存のスキルや他の対戦ゲームでのランクに基づいて、得意なゲームを特定できるようにすることも検討しているとリー氏は話している。

今回のラウンドでは、モントリオールのAngels of Many(エンジェルズ・オブ・メニー)、Klein Investments(クライン・インベストメンツ)、および多くのエンジェル投資家が支援してくれたとリー氏は話してくれた。

画像クレジット:Gwoop

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(文:Greg Kumparak、翻訳:Akihito Mizukoshi)

魚やフジツボにも負けず海に浮かんでデータ収集する自律制御式センサーの増加をSofar Oceanが計画

海は広大で謎めいている……が、数千個もの小さな自律制御式のブイが毎日興味深い情報を報告してくれたら、そんな謎はかなり減るだろう。それこそがSofar Ocean(ソーファー・オーシャン)という企業の目的であり、同社は7つの海をリアルタイムで理解するというビジョンを実現するために、3900万ドル(約44億円)を調達した。

Sofar Oceanでは「オーシャン・インテリジェンス・プラットフォーム」と称しているが、本質的には海流、水温、天候など、さまざまな重要な海洋指標のリアルタイムマップを同社は運営している。これらの情報の一部は、人工衛星や海上の大規模な船舶ネットワークからいつでも簡単に得ることができるが、数千もの熱心な観測者が波に乗ることで得られる粒度やグラウンド・トゥルースは非常に明確だ。

昨日の測定値や通過する衛星による推定値ではなく、15分前のデータを得ることができれば、航路や天気予報(陸地でも)などについて、より多くの情報に基づいた判断を下すことが可能になる。もちろん、このような大量のデータは無数の科学的応用にも役に立つ。

現時点で、数千個の同社が「スポッター」と呼ぶものが海に存在しているという。

「海の大きさを考えると、この数はまだ少ないと言えるでしょう」と、CEOのTim Janssen(ティム・ヤンセン)氏はいう。確かに、他の誰も実現したことがない数ではあるが、まだ十分ではない。「私たちはすでに5つの海すべてをカバーしていますが、これからさらにギアを上げて、この分散型プラットフォームの密度を高め、可能な限りパワフルなセンシング能力を発揮できるようにします。そのために、今後数年間で急速に多くのセンサーを追加し、収集するデータを拡大して、より正確な海洋の洞察を得られるようになると我々は予想しています」。

SofarとDARPA(米国防衛高等研究計画局)は先日、人々が独自の海洋データ収集装置を設計する際にリファレンスデザインとなるハードウェア規格「Bristlemouth(ブリストルマウス)」を発表した。これは、海中で増え続ける自律機器を可能な限り相互運用できるようにすることで、重複しながらも互換性のなかったネットワークの問題を回避することを目的とするものだ。

フジツボに覆われ、魚にかじられ、風雨にさらされた、何千ものロボットブイのネットワークを運営する難しさは想像に難くない。ヤンセン氏によると、同社の「スポッター」は外洋での長期間の活動に耐えるように設計されているため「最小限のメンテナンス」しか必要としないという。「最近では、過酷な天候のために氷に覆われてしまったスポッターがありましたが、数カ月後に氷が解けた途端、自動的にデータの共有が再開されました」と、同氏は振り返る。スポッターが海岸に打ち上げられてしまった場合は、同社が発見者を支援し、必要な場所に戻す。

このデバイスは、手動のデータオフロードやメッシュネットワークではなく(それもオプションの1つだが)、イリジウム衛星ネットワークを介して報告する仕組みになっているが、ヤンセン氏によれば、同社は「Swarm(スウォーム)のような、衛星通信分野に革命をもたらす最新技術にも取り組み始めている」という。TechCrunchでも初期の頃から取材しているSwarmは、低帯域の衛星通信ネットワークで、消費者向けインターネットではなく、IoTタイプのアプリケーションに焦点を当てたものだ。現在、SpaceX(スペースX)が同社の買収を進めている。

海流などの海の状態を表示するSofarのインターフェース(画像クレジット:Sofar Ocean)

今回の3900万ドルを調達した投資ラウンドは、Union Square Ventures(ユニオン・スクエア・ベンチャーズ)とThe Foundry Group(ザ・ファウンドリー・グループ)が主導した。両社はプレスリリースの中で、海運業のような現在の事業においても、気候変動の研究のような将来に向けた仕事においても、より多くのデータが必要であることは明らかだと述べている。

「特にCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)の開催を受けて、気候変動に関する議論がようやく中心的なものになってきました。世界各国の政府が、ハリケーンや暴風雨の増加、海面上昇、サンゴ礁などの生態系の危機に備えて、調整や計画を進めています」と、ヤンセン氏は説明する。「気象パターンの変化、海流や気温の変化、繊細な海洋生態系の変化について、明確な情報を提供できるようにすることは、当社やそのパートナーにとってだけではなく、地球上の1人ひとりにとっても、刻々と迫る時間に間に合わせるために一丸となって取り組む上で、本当に有益なことなのです」。

政府が何かをすべきかと考えている一方で、もちろん、海運会社やサプライチェーン管理会社は、燃料使用量を最小限に抑えて物流全体を改善するためのより良い経路選択を期待し、Sofarのデータに喜んでお金を払う。

「リアルタイムのデータにアクセスできるようになることで、これらの業界全体の不確実性が低減し、より効率的で、より良いビジネス判断ができるようになり、さらに燃料を節約して炭素排出量を削減することができます。つまり、すべて持続可能性や将来に対する備えの向上につながるというわけです」と、ヤンセン氏は述べている。

画像クレジット:Sofar Ocean

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

家族と幼児教育者をつなぎ、子育ての多様な支援も行うラーニングポッドサービス「Guardians Collective」

子育てを楽にする技術的なソリューションの必要性に異議を唱える人はほとんどいないだろうが、その需要に実践が追いついていないのは明らかだ。子育ては大変で、子どもがボタンを誤って食べてしまったときや、リモートでの授業の間うつ病の初期症状が出たときなど、さまざまな瞬間にサポートが必要だ。親が直面する問題の多様性は、顧客サービスにとって悪夢のようなものなのだが、それこそが創業者のSaurabh Kamalapurkar(サウラブ・カマラプルカール)氏がGuardians Collective(ガーディアンズ・コレクティブ)を構築することに強い思いを抱く理由だ。

Guardians Collectiveでは、少人数の家族を集め、その家族と早期学習・開発プログラムでの勤務経験があるか、州の認可を受けてデイケアを運営している専門家である幼児教育者とを引き合わせる。この会社の使命、そしてより大きな目標は、正式なデイケアに頼らざるを得なかった家族にとって、幼児教育者をより身近な存在にすることだ。同社は早朝や深夜も含めたピア・ツー・ピアの学習を、サポート付きで提供している。

米国時間11月5日、Guardians Collectiveは、Impact America Fund(インパクト・アメリカ・ファンド)とGary Philanthropies(ゲイリー・フランソロピー)が参加し、Reach Capital(リーチ・キャピタル)がリードした、350万ドル(約3億9700万円)のシード投資ラウンドを発表した。

私の見解では、Guardians Collectiveは、新型コロナウイルス(COVID-19)の流行初期段階から話題となった「ラーニングポッド」というトレンドに新しい風を吹き込んでいる。マイクロスクール、パンデミック・ポッド、スモールグループ・ラーニングと同義のこの言葉は、学校での学習を代替または補完する目的で、個人指導員とペアを組む同年齢の子どもたちの小さな集団を指す。この傾向は、低所得層の生徒にとっては脅威であり、結果的に学習教材へのアクセスにさらに大きな格差が生じることになると批判されている。

Reach Capital(リーチ・キャピタル)で投資を担当したChian Gong(チアン・ゴン)氏は、Guardians Collectiveは単なる学習ポッドではなく、他の保護者とのWhatsApp(ワッツアップ)グループでもないと考えている。

「WhatsAppはすでに知っている人同士をつなげるものですが、Guardians Collectiveでは3〜5家族と幼児教育者が安全な空間に集まり、他では聞けないような質問をすることができます」とゴン氏は言った。「何千人もの子どもたちと接し、同じ年齢の子どもを持つ他の家族との対話を導くことができる教育者の知恵や洞察力、共感を得ることができるのです」。

画像クレジット:Guardians Collective

ゴン氏は、このプラットフォームの魅力は、専門知識、コンテンツ、コミュニティが一体となっていることだと考えている。ベンチャー企業が出資する幼児分野のスタートアップであるWinnie(ウィニー)は、親が近くのデイケアや幼稚園を探すのに利用できるチャイルドケアのマーケットプレイスだ。KaiPod Learning(カイポッド・ラーニング)は、ホームスクールをしている子どもたちに、地元の、補完的で、社会的な学習拠点を提供するために、数百万ドル(数億円)の資金を調達した

これらのスタートアップ企業は、それぞれ実行方法や戦略が異なるが、子どもたちの能力を高めるためのリソースへのアクセスを提供するという点では同じビジョンを持っているようだ。

Guardians Collectiveの戦略には、より多くの幼児教育者にプラットフォームに参加してもらうことも含まれている。ほとんどの州では、デイケアセンターを運営するためにはライセンスを取得する必要があり、その価格や偏見が、実際にそのプロセスを踏める人に影響を与えることを考えると、これは政治的な問題だ。このスタートアップは、免許を持っていないが何世代にもわたって子どもたちをサポートしてきた人たちと、品質保証のバランスをどうとるかを考えているところだ。

「多くのシステムでは、これらの人々を教育者とは呼びません」とカマラプルカール氏はいう。「しかし、彼らはただのおむつを交換する人なのではなく、教師でもあるのです」。教師の組織は、非同期型の仕事に参加するという考えに同意しており、Guardians Collectiveでは、40人の教育者を募集したところ、数日で470人の応募があった。

これまでにデトロイト、ニューオーリンズ、アラスカ、ナバホ・ネイション、オクラホマ、カリフォルニアのセントラルバレーなどで暮らす家族がGuardians Collectiveのアプリを利用している。カマラプルカール氏は、顧客の半数以上が低所得者であると述べている。このスタートアップでは、利用したい家族に手頃な価格を提供するために、スライディングスケールを用いたサブスクリプションモデルを採用している。

ベンチャー企業の資金を得たGuardians Collectiveは、ユーザーの維持と新たな成長への期待のバランスを取る必要がある。ベイエリアでは700以上の家族が同社のプラットフォームを利用しているが、2020年初頭からの全国的な成長率は16倍に達している。また、ユーザーの維持率は94%で、平日は94%のユーザーが毎日アプリを利用しているとしている。

カマラプルカール氏が注目している大きな指標は、家族が何について話しているのか、どこで会話が行われているのか、メッセージの何パーセントが有益な方法で回答されているのか、という捉えどころのないものだ。

「規模の拡大とは、利用者の数だけでなく、利用者にとって私たちのサービスが何を意味するのかということです」と彼は語った。

画像クレジット:Lisitsa / Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Yuta Kaminishi)

マーク・キューバン氏とOculusの元CEOが支援する3D型eコマースを推進するVNTANA

Faceook(フェイスブック)やApple(アップル)が複合現実型ヘッドセットの導入を計画するなど、コンシューマー向けウェブの3D化を推し進めている一方で、世の中のウェブコンテンツのほとんどは、いまだに2Dのままだ。3Dコンテンツが存在する、完全に別世界の「メタバース」を推し進める人もいるが、現在のユーザーがいる場所にリソースを投資したいと考えている既存のウェブプラットフォームにとって、それは難しいことだろう。

VNTANA(ヴィンタナ)は、コンテンツ管理システムを構築しており、eコマースの小売業者がサイト上で商品をきれいな3Dで紹介するのを支援するとともに、ユーザーが拡張現実でモノを見たり、バーチャルで商品を試着したりできるようにしている。2012年に設立されたVNTANAは、長年にわたり3Dコンテンツに注力してきたが、パンデミック前のライブイベントにホログラムを導入することから、今ではウェブ上の店頭に3Dコンテンツを導入することへシフトしてきた。

「消費者が意味のある方法で製品に関わることができるような、インタラクティブな方法を作ることが常に目的でした」とCEOのAshley Crowder(アシュリー・クラウダー)氏は述べている。

同社は、シリーズAで1250万ドル(約14億2200万円)の資金を複数回にわたって調達したとTechCrunchに報告している。このスタートアップの最新の資金調達の支援者には、Mark Cuban(マーク・キューバン)氏、Oculus(オキュラス)の前CEO、Brendan Iribe(ブレンダン・アイラブ)、Flexport(フレックスポート)、Anorak Ventures(アノラック・ベンチャーズ)などが含まれている。同社は、2019年に600万ドル(約6億8200万円)のシードラウンドを発表している。

同スタートアップのソフトウェア式には、大容量の3Dファイルを最適化して読み込み時間を短縮し、消費者が新製品をあらゆる角度から見ることができるようにする製品や、eコマースプラットフォームがすでに所有している3Dファイルを活用して、2Dのデジタルレンダリングによるショールーム画像や動画を作成し、マーケティングにかかる時間と費用を節約できるようにする製品が含まれている。また、同社は最近、卸売り管理プラットフォームのJoor(ジョア)やソフトウェアメーカーのPTCと提携し、事業拡大を図っている。

消費者は、同社のソフトウェアを利用することで、購入前に拡張現実(AR)を使って、実際の空間での商品の大きさや外観を確認することができ、返品の減少にもつながると、クラウダー氏は述べている。

Apple、Google、Facebookなどから大きな発表があったにもかかわらず、拡張現実を開発する機会というのは、数年前に関心が高まったときに多くの投資家が予想したよりも限られていた。しかし、VNTANAのような企業は、3Dコンテンツを利用した体験を提供することで、eコマースの小売業者が抱える既存の問題を解決するとともに、AR/VRの未来に向けた準備を整えている。

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(文:Lucas Matney、Akihito Mizukoshi)

高齢者転倒時の骨折リスクを軽減する床・マット「ころやわ」のMagic Shieldsが1.4億円調達、量産体制を拡大

⾻折予防床材「ころやわ」開発・販売のMagic Shieldsが約4000万円を調達、量産性向上と事業拡⼤を目指す

高齢者転倒時の骨折リスクを軽減する床・マット「ころやわ」のMagic Shieldsが1.4億円調達、量産体制を拡大


医療機関や介護施設において、高齢者の転倒による大腿骨の骨折リスクを軽減させる「転んだ時だけ柔らかい床『ころやわ』」を製造するMagic Shieldsは、第三者割当増資による1億4000万円の調達を発表した。引受先は、リード投資家のインクルージョン・ジャパン、またMonozukuri Ventures、信金キャピタル、グロービス。累計調達額は約1億8000万円となった。調達した資金により「ころやわ」の量産体制を拡大し、全国の病院・高齢者施設での普及と、転倒骨折ゼロを目指す。

2019年設立のMagic Shieldsは、自動車工学と医学をベースに新素材と構造「メカニカル・メタマテリアル」の研究開発、および製造・販売を行うスタートアップ。高齢者の転倒による骨折を減らすため、転んだときだけ柔らかい「可変剛性構造体」を使った「ころやわ」を開発。床やマットとして病院や高齢者向け施設へ提供している。高齢者転倒時の骨折リスクを軽減する床・マット「ころやわ」のMagic Shieldsが1.4億円調達、量産体制を拡大

同社の「ころやわ」は、従来両立が困難とされていた「歩行安定性」と「衝撃吸収性」という2つの性質をあわせ持つ新素材・構造を採用。120施設を超える医療機関・介護施設で導入されており、「ころやわ」上での骨折は確認されていないという(2021年11月1日時点)。

また「ころやわ」は、歩行時の踵やつま先、杖・車いす使用時の沈み込みが少なく、へこまない硬さであり、「歩行時/車いす移動時の安定性」を実現しているとした。

椅子やベッドからの転落、車いすへの移乗や歩行からの転倒時には、大きく沈み込み、大腿骨の骨折リスクを軽減する「衝撃吸収性」を実現。転倒時には、フローリングに対して約半分に衝撃を抑え、骨粗鬆症の大腿骨骨折の目安荷重(221kgf)を下回るという。

タップやスワイプを行動分析し詐欺・不正行為と闘うNeuro-IDがシリーズBで約40億円調達

私たちの生活の大部分はデジタル体験を中心に成り立っており、企業はコンバージョンを促進したり、詐欺スクリーニングを最適化する方法をますます模索している。米国時間11月4日、リアルタイムの行動分析ツールを構築したスタートアップが自社サービスへの需要の高まりを受けて、資金調達を発表した。

デジタル企業がデジタル顧客の意図を理解し、顧客との摩擦の根本原因を特定するために、大規模なスケールでリアルタイムの顧客行動を捉える分析プラットフォームを提供するNeuro-IDは、シリーズBラウンドとして3500万ドル(約39億8000万円)を獲得した。

今回の新たな資本は、2020年12月に調達した700万ドル(約8億円)のシリーズAに続くもので、2014年の設立以来、同社の累計調達額は4950万ドル(約56億3000万円)に達した。

今回のラウンドはCanapi Venturesがリードし、既存の投資家であり共同でシリーズAを主導したFin VCとTTV Capitalがそれに加わった。

Neuro-IDは評価額を公表していないが、CEOのJack Alton(ジャック・アルトン)氏は、メールで「強い顧客の牽引力」を背景にしたものだと述べている。

「Neuro-IDは、2021年には売上高、顧客数ともに3~4倍の成長が見込まれています」と同氏は付け加えた。「これは、顧客数と収益が3~4倍に増加し、モニターされたカスタマージャーニーが500%増加した、当社にとって大きな拡大の年に続くものです」とも。

Neuro-IDのヒューマンアナリティクスダッシュボード(画像クレジット:Neuro-ID)

同社の顧客リストには、Intuit(インテュイット)、Square(スクエア)、Affirm(アファーム)、OppFi、Elephant Insuranceなどが名を連ねており、Neuro-IDが独自に開発したHuman Analyticsソフトウェアを使用して、スワイプやタップによるユーザーの行動のすべてを実用的なインサイトに変換している。

この行動分析により、顧客は行動データを見て、既存のAI / MLモデルを最適化するために利用することもできる。顧客は平均して、コンバージョンを200%向上させ、過去の不正率を35%低減させることができたという。

アルトン氏は、今回の資金調達を、エンジニアリング人材の追加採用、製品主導の成長の加速、グローバルな事業拡大に充てる予定だ。過去1年間で、同社の社員数は約3倍に増え、現在は60名になっているという。

Canapi VenturesのパートナーであるWalker Forehand(ウォーカー・フォアハンド)氏は、メールで次のように述べている。「Neuro-IDは、ユーザーの意図や体験を分析するためのワンストップショップであり、新規顧客を分析する独自の機能を備えていることで、リピート顧客との対話に重点を置く他社との差別化を図っている」とのこと。

シームレスなカスタマージャーニーを実現することは、フィンテック企業にとっても銀行にとっても優先事項であり、フォアハンド氏は、デジタルジャーニーを開始してから完了する人はわずか10%未満であると述べている。また、従来のモデルでは、住所や生年月日などの物理的な属性を用いて認証を行っているが、Neuro-IDでは他の方法で顧客が本物か不正かを識別する。

フォアハンド氏はこうも述べている。「顧客の行動を大規模に把握するこの新しい見解は、詐欺を減らしつつ、優良顧客を早期に獲得してより多くの収益を上げるためのコンバージョンの改善、意図の測定の高度化、デジタル製品の設計品質の向上などの可能性を広げます。最もエキサイティングなのは、Neuro-IDの技術はフィンテックや銀行に適用できるだけでなく、大量のデジタルおよび自動意思決定に対応するあらゆる業界がNeuro-IDの顧客になりうるということです」。

画像クレジット:Neuro-ID

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(文:Christine Hall、翻訳:Aya Nakazato)

産業が求めるレベルまで自動運転技術を前進させる「レーダー」技術を開発するSpartan Radarが総額約28億円調達

大量の機械学習とわずかなレーダーセンサー、そして歩行者の大群をひき殺すことのない自律走行車を求めている市場を見てみよう。8月に1000万ドル(約11億4000万円)を調達したばかりのSpartan Radarが米国時間11月3日、Prime Movers Labが率いる投資家たちからさらに1500万ドル(約17億1000万円)を調達した。このラウンドには8VCとMac VCが参加している

2020年に創業された同社は、2年前には存在しなかった企業だがそれにしては立派だ。同社の同社自身による位置づけは、クルマのレーダーと、同じくクルマの自動運転技術が交差するところにいる企業群の仲間だ。同社によると、現在および次世代の自動運転車(autonomous vehicles、AV)のレーダー技術はかなり進歩しているが、まだ車両自身が、レーダーに「見えて」いるものに対して何をすべきかわからない場合が多く、そのために間違いを起こしてしまうという。

Spartan Radarの創業者でCEOのNathan Mintz(ネイサン・ミンツ)氏は次のように主張する。「自動車産業は低レベルのオートメーションへ移行しているが、それにより、レーダーがLiDARよりも魅力的なものになっています。LiDARは初期にはたくさんの約束を披露してくれましたが、その誇大宣伝の実現には失敗しています。しかし、高解像度システムに対するニーズは消えていません。処理能力も、リアルタイムの超解像度などの高度なアルゴリズムが使えるほど大きくなっているため、今やレーダーは自動車メーカーにとってはるかに優れた選択肢なのです」。

同社はその製品をBiomimetic Radar(生体模倣型レーダー)と呼び、人間の感覚処理を模倣してフォーカス(焦点)とコンテキスト(状況理解)を強化している。同社によると、そのアルゴリズムは処理速度をめざましく高速化し、低い解像度や検出過誤など従来のレーダーの欠陥を減らしている。それにより、自動運転車の安全性と商用展開の規格であるADAS level 2(レベル2)以上をクリアしている。

Spartan Radarのソフトウェアは、現存するほとんどすべてのレーダーシステム上で展開できる。同社は顧客について明言しなかったが、矢継ぎ早の2度の資金調達ラウンドが示すのは、顧客たちが行列を作っているということだ。

「残念ながら私たちが実際に目にしているエビデンスによると、LiDARを使用するシステムは、それが追放するはずだった注意力散漫な人間ドライバーのように振る舞うことがあります。Spartanのレーダーシステムは自動運転技術の前進であり、AVとADASのシステムを今日の産業が必要とするレベルに持ち上げます」と同社の取締役会に加わったPrime Movers LabのゼネラルパートナーDavid Siminoff(デビッド・シミノフ)氏はいう。

「AV企業にはこれまで数十億ドル(約数千億円)が投資され、一部は上場もしました。この業界は今やっと、R&Dの段階を脱して、ラストマイルのデリバリーやトラック、ロボタクシーなど実用ユースケースで大規模に商用化されようとしています。OEMやAV開発企業各社は、2022年の市場化に備えて安全で堅牢なセンサーソリューションを必要とし、そして私たちには、そのニーズに呼応する準備ができています」とミンツ氏は語る。

画像クレジット:Spartan Radar

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Hiroshi Iwatani)

保険会社と保険代理店間を結ぶ情報プラットフォーム「ソリシター君」を展開するSEIMEIが3億円のシード調達


保険会社と保険代理店間を結ぶ情報プラットフォーム「ソリシター君」を展開するSEIMEIは11月2日、シードラウンドにおいて第三者割当増資による総額3億円の資金調達を行なったと発表した。引受先はJAFCO。調達した資金はソリシター君の強化のほかInsurTech領域での新規事業開発へあてる。具体的には、保険会社が外部ベンダーに求めるセキュリティー基準をクリアーするための開発費および追加機能開発と、それに向けた人材採用としている。

ソリシター君では、保険代理店が複数の保険会社の業務情報を一括で検索できる機能を無料で提供。また保険会社には、保険代理店募集人にダイレクトにアプローチできる広告配信プラットフォームを提供している。電話コミュニケーションが主流となっている保険会社ソリシター(営業)と保険代理店募集人のコミュニケーションコストの削減と業務効率を改善し、保険会社・保険代理店双方の売り上げ向上に寄与するという。β版をリリースした2019年9月から約2年で、バイラルとオーガニック検索流入のみで保険代理店の導入企業数が200社を突破、保険代理店募集人の9100名超が活用している。

2017年5月設立のSEIMEIは、「テクノロジーを活用し、50兆円保険産業の礎となる」をミッションとして掲げ、ソリシター関連事業における業務非対面化とDXを進めている。今後は全保険会社の公認システムになることを目指し、保険業界にとって必須のインフラサービスを構築していくという。

ロボットにスナイパーライフルを装着させるという一連問題

ロボットに銃を装備させるというのは、実用的な四足歩行ロボットが登場して以来、我々が追い続けてきたトピックだ。先の展示会で、SWORD(スワード)と呼ばれる企業が設計した遠隔操作可能な狙撃銃がGhost Robotics(ゴースト・ロボティクス)のシステムに装着されているものがお披露目されたため、この問題がさらに重要性を増してしまった。

これはBoston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)がどうにかして自らを遠ざけようとしていた問題である。当然のことながら戦争マシンを作っているという事実は、一般的に見て企業イメージにもよろしくない。しかし、多くのロボット産業がそうであるように、DARPA(国防高等研究計画局)の資金援助を受けたBoston Dynamicsが恐ろしいSF映画のようなロボットを生み出しているという事実は事態を複雑にしている。

先のコラムでは、威嚇や暴力を目的としたSpotの使用に対するBoston Dynamicsのアプローチについて話をした。また、ロボットの背中に銃を取り付けることについての筆者自身の考えも少し述べたつもりだ(繰り返しいうが、私は銃やデスマシン全般に反対である)。記事を書く前にGhost Roboticsに連絡を取ったものの、返事をもらったのは記事が公開された後だった。

筆者はその後、同社のCEOであるJiren Parikh(ジレン・パリク)氏に、同氏が「歩く三脚」と呼ぶこのシステムについて話を聞くことができた。Ghostはペイロード、この場合はすなわちSWORD Defense Systemsの特殊用途無人ライフル(SPUR)を設計していないため、こういった呼び方をするのだろう。しかしここには重要な倫理的疑問が詰まっている。歩く三脚と同社は呼ぶが、実際の責任はどこに置かれているのだろうか。ロボット開発会社なのか、ペイロードを製造する会社なのか。またはエンドユーザー(例えば軍隊)なのか、はたまたこれらすべてなのか。

銃を装備したロボット犬の軍隊が誕生し得るという可能性があるのだから、これは非常に重要な問題である。

自律性の観点からお話を伺いたいと思います。

ロボット自体には、武器のターゲティングシステムのための自律性やAIを一切使っていません。システムを作っているSWORDについては、私からはお話しできませんが、私の知っている限りでは、武器は手動で発射されるトリガー式であり、ターゲティングも裏で人間が行っています。トリガーの発射は完全に人間がコントロールしているのです。

完全な自律性というのは、越えるべきでない一線だとお考えですか。

我々はペイロードを開発していません。兵器システムを宣伝したり広告したりするつもりがあるかと聞かれれば、おそらくないでしょう。これは難しい質問ですね。私たちは軍に販売しているので、軍がこれらの兵器をどのように使用しているのかはわかりません。政府のお客様にロボットの使い方を指図するつもりはありません。

ただし販売先に関しては境界線を設けています。米国および同盟国政府にのみに販売しています。敵対関係にある市場には、企業顧客にさえロボットを販売しません。ロシアや中国のロボットについての問い合わせは多いですね。企業向けであっても、こういった国には出荷しません。

貴社が望まない方法でロボットが使われないようにするための権利を留保していますか?

ある意味ではそうですね。弊社にはコントロール権があります。全員がライセンス契約にサインしなければなりませんし、我々が望まない企業にはロボットを売りません。弊社が納得できる米国および同盟国の政府にのみロボットを販売しています。ただし軍の顧客は、彼らが行っていることすべてを開示しないということを認識しなければなりません。国家安全保障のため、あるいは兵士を危険から守るために、特定の目的でロボットを使用する必要があるのであれば、私たちはそれに賛成します。

画像クレジット:SWORD

ロボットを使って何をするかではなく、誰がロボットを購入するかというのが審査対象という事ですか。

その通りです。このロボットを使って格闘技のビデオを作ったり、ロボットがとんでもないことをするリアリティ番組を作ったりしたいという声が寄せられています。しかし誰が使うかわからなければお断りしています。ロボットはあくまでも道具です。検査やセキュリティ、そしてあらゆる軍事的用途のためのツールなのです。

先に見た写真に関してですが、タイムラインはあるのでしょうか。

2022年の第1四半期後半には、スナイパーキットのフィールドテストを行う予定だそうです。

このケースにおける契約内容は何ですか?国防総省は御社やSWORDと個別に契約をしているのでしょうか。

契約はありません。彼らは市場機会があると信じているただのロングガン企業で、彼らは自分たちのお金で開発し、我々はそれが魅力的なペイロードだと思った。顧客がいるわけではありません。

画像クレジット:Reliable Robotics

さて、(少なくとも今回)軍用犬ロボットの話はここまでにしよう。陸上での案件から、海や空へと話を移したい。まずはベイエリアに拠点を置く自律型貨物機企業、Reliable Robotics(リライアブル・ロボティクス)が1億ドル(約114億円)を調達した。設立4年目の同社の総資金額は、今回のシリーズCラウンドにより1億3000万ドル(約148億円)となり、自律型トラック輸送モデルを空へと移行させるべく計画を進めている。

無人航空機といえば、Alphabet(アルファベット)の子会社であるWing(ウイング)が米国でのドローン配送を本格的に開始することを発表した。オーストラリアとバージニア州の小さな町でパイロット版に成功した同社。その後ダラス・フォートワース都市圏で自律走行による配達を開始するべく、Walgreens(ウォルグリーンズ)とのパートナーシップを発表したのである。

画像クレジット:Alphabet

Wingは規制面での取り組みについて次のように話してくれた。

2019年4月、Wingはドローン事業者として初めて米連邦航空局から航空事業者としての認定を受け、数マイル先にいる受取人に商材を届けることができるようになりました。この認定の拡大版として、2019年10月にバージニア州でローンチすることができました。現在この拡大版の許可に向けて作業を進めており、その一環として、今後数週間のうちにテストフライトを行い、この地域で新しい機能を実証する予定です。ダラス・フォートワース都市圏でのサービス開始に先立ち、私たちは地元、州、連邦レベルの当局と協力して、すべての適切な許可を確保してまいります。

画像クレジット:Saildrone

水上はというと、こちらでも1億ドル規模のシリーズCが行われている。科学的なデータ収集を目的とした自律航行船を開発するSaildrone(セイルドローン)は、すでにかなりの数の無人水上飛行機(USV)を配備しており、その総走行距離は約50万マイル(約80万Km)に達しているという。

最後に、パンデミックによる人手不足の中、ロボットウェイターを採用するというThe New York Times(ニューヨーク・タイムズ)の興味深い記事を紹介したい。ロボットウェイターというのは大して興味深いわけでもないのだが、おもしろいことに、この結果人間のウェイターが受け取るチップが増えたと報告されたのである。

Serviによってウェイターがキッチンを往復する手間が省かれ、常に忙しいウェイターは客と会話する時間を増やし、より多くのテーブルにサービスを提供することができたため、ウェイターはより高いチップを得ることができたのである。

自律型システムは既存の仕事を置き換えるのではなく、企業が現在の人員では補えない部分を補うものであるという、ロボット関連企業が以前から主張してきたことが、このニュースで裏付けられた形になった。自律型システムが既存の仕事を完全に取って代わる事はなく、現在の人員では補えない部分を補完するのだということがよく分かる。これが完全な自動化への一歩となるかどうかは疑問だが、人間がより人間的な仕事に専念できるようになることに、大きな意味があるのではないだろうか。

画像クレジット:SWORD

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(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)

介護保険外の訪問介護・家事・生活支援マッチングCrowdCareを運営するクラウドケアが総額1.1億円調達

介護保険外(自費)の訪問介護・家事・生活支援マッチングサービス「CrowdCare」(クラウドケア)を運営するクラウドケアは11月3日、第三者割当増資と融資による総額1億1000万円の資金調達を発表した。引受先はリード投資家のKII2号投資事業有限責任組合(慶應イノベーション・イニシアティブ)、またbasepartners2号投資事業有限責任組合(basepartners)。

調達した資金は、システム開発とカスタマーサクセスの強化に伴う人材採用、介護保険外サービスの認知度アップや依頼者獲得のためのマーケティング強化、首都圏以外へのサービス提供エリア拡大にあてる予定。これらの実現のため、今回初めて外部からの資金調達を行なったとのこと。

CrowdCareは、案件ごとに依頼者とヘルパーをマッチングして空き時間に働けるようにし、貴重な人材をシェアしていくという、シェアリングエコノミー型(クラウドソーシング)サービス。介護職として働いている方、介護の仕事から離れてブランクがある方、未経験の方も、隙間時間を使って自分のスキルや都合に合わせて働くことが可能としている。

治験・臨床研究文書の共有・管理クラウドを手がけるアガサが総額3.6億円調達、組織力とプロダクト強化

国立がん研究センターが8K腹腔鏡手術システムによる遠隔手術支援の有用性を確認

治験・臨床研究の文書をクラウド上で共有・管理するサービス「Agatha」(アガサ)を提供するアガサは11月4日、総額3億6000万円の資金調達を発表した。引受先は、リードインベスターのOne Capital、ダブルシャープ・パートナーズ、既存株主のモバイル・インターネットキャピタル、GMO VenturePartners。累計調達額は8億8000万円となった。今回調達した資金は、Agathaを一層強化するためのプロダクト開発・アガサの組織力強化に充当される予定。

Agathaは、医療機関と製薬企業の利用者が、治験・臨床研究の文書をプロジェクト単位で共有・保存・管理できるクラウドサービス。日本並びにグローバルで提供されており、日本国内では臨床研究中核病院の8割で利用実績がある。コロナ禍の影響で、治験・臨床研究の現場でも医療機関への訪問制限やリモートワークの実施が進んだことを背景に、従来の紙ベースでの業務を電子化して管理するシステムへのニーズが加速。国内利用者数は1万名以上増加している。

2015年10月設立のアガサは、医療機関、製薬企業、医療機器企業、CRO(医薬品開発受託機関)、SMO(治験施設支援機関)、臨床検査会社などにAgathaを提供することで、治験・臨床研究の効率化・省力化に貢献することをミッションに掲げるスタートアップ。

将来の日本の子どもが、日本の生活、文化、技術、医療が世界一と信じられる、誇りと感じられる世の中を作ること、そして日本中の研究機関から、新しい治療法や薬が創出される仕組み・基盤を作り、日本の技術や産業によって、世界中の人々の健やかな人生に貢献することをビジョンとしている。

ネコ車電動化キット「E-cat kit」・動力内蔵クローラ「CuGo」など手がけるCuboRexが約7500万円調達

タイヤ交換だけで農業用一輪車「ねこ車」を電動化するE-Cat Kitが広島県JA尾道市で販売開始

不整地で使える乗り物や運搬器具を製造開発するハードウェアスタートアップCuboRex(キューボレックス)は11月4日、プレシリーズAラウンドにて第三者割当増資による約7500万円の資金調達を完了させたことを発表した。引受先は、Open Network Lab、DRONE FUND、個人投資家らとなっている。これにより、シードラウンド以来の累計調達額は1億3000万円となった。

CuboRexは、ミカン農家や工事現場などで使用される一輪車、いわゆるネコ車を電動化するキット「E-cat kit」(イーキャット・キット)や、移動ロボットの開発を支援する動力内蔵クローラユニット「CuGo」を開発製造して販売しているが、こうした不整地に対応した機器による「不整地産業の課題解決」や、不整地対応ロボットの市場拡大を目指している。

今回調達した資金は、産業用サービスロボット事業の拡大、「E-cat kit」と「CuGo」の市場拡大と体制強化、研究開発においては資金不足になりがちな経営を安定させるキャッシュフロー基盤整備に充てられるという。現在、サービスロボット分野では、除草剤散布を自動で行う「除草剤サービスロボット」やプラント施設管理を省力化する「プラント施設管理ロボット」などのプロジェクトが進行している。