Rocket Labが宇宙船分離システム開発のPlanetary Systems Corporationを現金と株式で買収

買収戦略が相変わらず止まないRocket Labは、キャッシュと株の両方を投じてPlanetary Systems Corporation(PSC)を手に入れた。

このニュースが発表されたのは同社の2021年第3四半期の決算報告の直前だ。Rocket Labによると、同社は4200万ドル(約47億9000万円)の現金と普通株172万841株を支払ったが、株式は今後の業績により増える可能性がある。

PSCは宇宙船の分離システムを開発しているメリーランド州の企業だ。これまで100ほどのミッションが同社の機械式分離システムと衛星ディスペンサーを使用した。同社の「キャニスター型衛星ディスペンサー」は、宇宙船をロケットから分離し、打ち上げ時にはそれを保護する機構だ。PSCのハードウェアは、SpaceX、United Launch Alliance、かつてのNASA Space Shuttle、米国以外ではArianespace、Japan Aerospace Exploration Agencyといった主要各社の打ち上げ機がこぞって装備している。

この買収は、Rocekt Labの企業ビジョンが単なる打ち上げ屋ではなく、また衛星などをペイロードとして軌道へ運ぶだけでもなく、宇宙船本体を軌道に乗せることも含むフルの宇宙サービス企業であることの表れだ。Rocket Labは声明で、そのハードウェアは同社のSpace Systems事業部全体で使用、それにはPhoton衛星バスや、宇宙船の部位製品も含まれると述べている。

今回の買収は、Rocket Labの過去18カ月で3度目のものとなる。2021年10月、同社はコロラドのAdvanced Solutions, Inc.を買収したが、同社は宇宙船の飛行ソフトウェアを開発している。2020年にはSinclair Interplanetaryを買収、同社は宇宙ハードウェアのメーカーだ。

PSCのトップは現在のCEOであるMike Whalen(マイク・ホレン)氏のままだ。買収の完了は2021年第4四半期を予定している。

画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)

電動キックスクーター独TierがNextbikeを買収、マイクロモビリティ業界統一を予見させる大型買収

ドイツ・ベルリンを拠点とするヨーロッパ最大級の電動キックスクーター運営会社Tier Mobility(ティア・モビリティー)は、ドイツの自転車シェアプラットフォームNextbike(ネクストバイク)を買収した。この動きは、TierがライバルのLime(ライム)やVoi(ボイ)などと同じく既存の市場シェアを利用する複合アプローチの採用を示唆するものだ。またこれは、将来マイクロモビリティ業界がさらに統一されることを予見させる大型買収でもある。

2020年、LimeはUber(ウーバー)のマイクロモビリティ子会社であるJump(ジャンプ)を、UberのLimeへの1億7000万ドル(約194億1000万円)の投資の一環として、Jumpが所有するすべての電動自転車、電動キックボードとともに獲得した。そして2021年11月、Limeは5億2300万ドル(約597億3000万円)を調達し、上場を控えた最後のラウンドになるだろうと語った。

TierとNextbikeは契約条件を明らかにしていないが、Tierはこの買収に、2021年10月、同社が世界で複合市場企業としての存在感を高め、戦略的投資と買収を追究するためにSoftbank Vision Fund 2のリードで実施した2億ドル(約228億4000万円)のシリーズDラウンドで得た資金を充てたかもしれない。シリーズDの前には、2021年夏の6000万ドル(約68億5000万円)の債券による調達と2020年11月にやはりSoftbankがリードした2億5000万ドル(約285億5000万円)のシリーズCを実施している。

Tierは他にe-moped(電動スクーター)の車両も所有しており、6カ国への事業拡張の一環としてロンドンとストックホルムでサービスを開始するなど、ここ数カ月間電動バイクに大きく力を入れている。最近Nextbikeは、所有する車両の半数以上が盗難と破壊の被害に遭い、ウェールズのカーディフおよびヴェール・オブ・グラモーガンの運営を中止せざるを得なかった。現在の公共バイクシェア事業を2004年から運営している同社は、破壊された車両を修理、交換する必要に迫られており、状況が改善しなければ当地での事業を恒久的に中止するかもしれない。しかしこの問題は明らかにTierの手に余っている。

ヨーロッパと中東16カ国、160以上の都市で運営しているTierは、ウェールズにはまだ進出していない。Netbikeと合わせると、Tierは400以上の都市で25万台以上の車両を展開することになる。同社の車両には自転車、電動自転車、貨物自転車、電動キックボード、電動スクーターがあり、シェア方法はフリーフロート型、ステーション型、およびハイブリッド型があると同社は言っている。

「Netbikeと同社の数百都市にわたる類を見ない経験と関係性を獲得したことは、当社がバイクシェア事業を次の段階へと進め、より多くの人たちをクルマから降ろし、最も持続可能なモビリティソリューションを提供するまたとない機会です」とTierのCEOで共同ファンダーのLawrence Leushner(ローレンス・ルーシュナー)氏が声明で語った。「2組の強力な経営チームに共通する持続可能性と都市への敬意とTierの財務基盤と資本効率に支えられ、モビリティを永遠に変えるための飽くなき合同ミッションを追究していきます」。

画像クレジット:Tier Mobility

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nob Takahashi / facebook

セキュリティスキルをゲーム化して教える英Immersive Labsが米Snap Labsを買収、気候変動も考慮して

サイバーセキュリティのスタートアップであるImmersive Labs(イマーシブラブズ)は、最近7500万ドル(約85億6000万円)のシリーズCラウンドをクローズして相当な資金を獲得したが、同社は「数百万ドル(数億円)規模」の株式と現金を組み合わせた非公開の取引で、米国のサイバースタートアップSnap Labs(スナップラブズ)を買収するとのこと。Snap Labsは、今回の買収以前にはベンチャー資金を調達していないことがわかっている。

最新のサイバー脅威インテリジェンスを「ゲーム化」して企業の従業員にサイバーセキュリティのスキルを教えるImmersiveは、今回の買収により、組織が社内でサイバー知識を身につけることを支援するための新たな力を得られるとしている。

サイバーセキュリティは技術チームだけの問題ではなく、会社全体のビジネスクリティカルな問題へと変化しているため、Immersiveのアプローチは、国際的にも多くの新規ビジネスを獲得しているようだ。一方のSnap Labsは、現在Accenture(アクセンチュア)、Mandiant(マンディアント)、CrowdStrike(クラウドストライク)と提携しており、米国での実績も十分にあるため、Immersiveのサービスを大幅に強化することになるだろう。

Immersive LabsのJames Hadley(ジェームズ・ハドリー)CEOは次のように述べている。「Snap Labsの買収により、お客様は、直面するリスクにピンポイントで対応した詳細でリアルな体験を通し、より優れたサイバー人材を育成することができます」。

ペンシルバニアを拠点とするSnap Labsは、共同創業者のChris Myers(クリス・マイヤーズ)氏とBarrett Adams(バレット・アダムス)氏によって2016年に設立された。

マイヤーズ氏は「2つのプラットフォームは自然にフィットしており、組み合わせることで、お客様がサイバー脅威に対する耐性をさらに高められるよう支援できると期待しています」と述べている。

また、これには気候変動に関する側面もある。Snap Labsは「エラスティックコンピューティング」を採用している。これは、サーバー上で仮想環境を継続的に稼働させて電力を消費するのではなく、使用するときだけ仮想環境を起動し、使用しないときは直ちにシャットダウンするというものだ。これは、各サイバー攻撃シミュレーションのカーボンフットプリントにプラスの影響を与え、全体としても大きな影響を与える。

ハドリー氏は筆者との通話で次のように語った。「Snap Labsの技術を利用することで、企業が自社のネットワークを仮想的に再現するなど、非常にクールなことが可能になります。お客様は複雑な規模の独自ネットワークを構築し、複製することで、マルウェアやペネトレーションテストに対するチームの戦闘力を試すことができるようになります」。

Immersive Labsは、英国の退役軍人を対象にサイバー職業訓練を行うTechVetsという慈善団体を無料で支援している。

画像クレジット:Chainarong Prasertthai / Getty Images

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

ツイッターがスレッドをまとめて共有するアプリ「Threader」を買収

Twitter(ツイッター)は米国時間11月15日、ユーザーがTwitter上で長いスレッドを目にしやすくなるよう、Twitterのスレッドをまとめ、お気に入りを共有できるアプリThreader(スレッダー)の買収を発表した。ユーザーがスレッドに返信し、Threaderのプロフィールをタグ付けし「compile(まとめる)」という言葉を書き込むと、Threaderのボットがスレッドを記事のように読みやすい形式で表示するリンクを作成する。

「我々は、280文字(半角で)という制限の中で、より長い考えを表現するために努力しているTwitterユーザーが共有しているすばらしいコンテンツに気づきました。しかし、そうしたコンテンツは見つけにくく、読みづらいものでした。我々はTwitter上で共有されているこのようなすばらしいストーリーや知識にスポットライトを当てたいと感じていました」とThreaderはブログへの投稿に書いている。

ちょうど先週、Twitterプラットフォーム上でのユーザー体験を向上させる機能を提供する有料サブスクプロダクトTwitter Blueが米国とニュージーランドで始まった。そうした機能の1つがリーダーモードだ。Threaderアプリと同様の機能を持ち、スレッドを邪魔にならない形で表示する。Twitterによると、Threaderの共同創業者Marie Denis(マリー・デニス)氏がリーダー機能の構築に協力したとのことだが、TwitterはThreaderの実際のプロダクトを自社の技術スタックに統合しなかった。

買収の条件は明らかにされていないが、デニス氏はTwitterのLongformチームに加わり、リーダーなどの機能や他の類似プロダクトに携わる。買収の一環としてThreaderは30日以内にサービスを停止するため、同アプリのファンがThreaderのリーディング体験を維持したい場合は、月2.99ドル(約340円)を払ってTwitter Blueに加入する必要がある。

今回の買収は、Twitterが最近行ってきたいくつかの買収の1つに過ぎない。主な買収案件には、ニュースレター・プラットフォームのRevueと、Twitter Spacesの基礎を築いたBreakerがある。そしてTwitterは2021年10月に、グループチャットアプリのSphereを買収したばかりだ。

画像クレジット:Threader

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi

SpotifyがFindawayを買収、オーディオブックに進出

Spotify(スポティファイ)は、音楽以外の分野にも進出するため、数億ドル(数百億円)を投じてポッドキャスト事業を強化してきた。そこで、オーディオの別の形態に狙いを定め、デジタルオーディオブック配信会社であるFindaway(ファインダウェイ)を買収した。

Spotifyは、この買収の金銭的条件について明らかにしていない。買収は、規制当局の審査と承認を経て、2021年第4四半期に完了する予定だ。

2004年創業のFindawayは、世界中のリスナーに、より多くのオーディオブックを届けることに注力してきた。

同社は現在、さまざまなブランドや製品を展開しており、その中心は、コンテンツ制作者と再販業者をつなぐ大規模なオーディオブック配信事業だ。再販業者には、Apple、Google、Scribd、Audible、Nook、Rakuten Kobo、Chirp、Storytel(Spotifyのパートナー)、Overdrive、Audiobooks.comなどがいる。

Findaway傘下のブランドには、著者とプロのナレーターを結ぶFindaway Voices、一流の出版社向けにオーディオをプロデュースするAudioworks、図書館や学校に対しプリロードされたオーディオブック製品を提供するPlayaway、リスナーに多様なオーディオカタログを提供するOrange Sky Audio、開発者がオーディオブックの幅広いカタログを自社のプラットフォームに統合する際に必要なツールや技術を提供するAudioEngineなどがある。

Spotifyは、Findawayの約150人のチームを招き入れる。また、Findawayが行ってきたオーディオ業界への投資を活用していく予定だという。また、Spotifyの3億8100万人の月間アクティブユーザーへのアクセスに、オーディオブックを加えることも計画している。

「この買収をテコに、プラットフォームを拡大し、オーディオブック分野への参入を加速する計画です」とSpotifyのオーディオブック部門の責任者であるNir Zicherman(ニール・ジッカーマン)氏は話す。Spotifyのユーザーがオーディオブックにアクセスする場合、現在は他のプラットフォームを利用する傾向にあるが、今後はSpotifyのアプリの中でオーディオブックの消費を可能にしたいと考えている、とジッカーマン氏は説明する。当面、Spotifyのユーザーは、同社の新しいオープンアクセスプラットフォーム技術(OAP)と既存の認証情報を使って、Findawayや、Storytelなど他のオーディオブックパートナーのオーディオブックにアクセスすることになる。

だがOAPの用途はもっと広く、出版社が自社のビジネスモデルに合わせてコンテンツの販売方法を柔軟に選択できるようにするものだ。この先、消費者がSpotifyでオーディオブックのコンテンツを視聴するためのさまざまな方法が導入される可能性がある。

Spotifyによると、OAPが最初に統合されるのは2022年初めになる予定だ。

「業界として、オーディオブックには大きな可能性と成長が待ち受けていると考えています」とジッカーマン氏はいう。「SpotifyとFindaway、2社のすばらしいチームとすばらしい技術を組み合わせ、別々の会社だった場合よりも早く、そのような未来を実現したいと考えています」。

調査によると、オーディオブック業界は、2020年時点の33億ドル(約3800億円)から2027年には150億ドル(約1兆7000億円)に成長すると予想されている。Findawayに投資する価値があるとSpotifyが考えたのはそのためだ。また、Spotifyは、今回のFindawayの買収をオーディオブック分野での野心の始まりと捉えており、将来的にはさらにチームを拡大することも考えている。

Spotifyの計画では、Findawayは現在と同じように、さまざまなブランドやサービスを、同じスタッフやパートナーとともに、クリーブランド地域の本社から運営していく予定だ。このアプローチは、Spotifyが買収したポッドキャスト制作プラットフォームAnchorが、Spotifyの競合他社を含む他のプラットフォームへの配信を継続した例と似ている。

今回の発表の前に、Spotifyはオーディオブックへの関心を示していた。1月には「フランケンシュタイン」「ジェーン・エア」「説得」などの古典作品に著名人のナレーションをつけて、オーディオブックのフォーマットのテストを始めた。また、Daniel Radcliffe(ダニエル・ラドクリフ)氏、David Beckham(デビッド・ベッカム)氏、Dakota Fanning(ダコタ・ファニング)氏などのスターがナレーションを担当した「ハリー・ポッター」の第1作も提供している。

さらに5月には、オーディオブックのプラットフォームであるStorytelとの提携を発表した。これにより、Spotifyのユーザーは、同じくOAPを利用したSpotifyのアプリを通じて、オーディオブックにアクセスできるようになった(Findawayの買収が、同じような提携の話から生まれたのかどうかについてSpotifyは言及していないが、その可能性は高いと思われる)。

11月11日の買収は、Spotifyがオーディオという新たな投資分野を追いかけるために、ポッドキャストへのコミットメントから離れるというわけではない、ということのようだ。

「ポッドキャストは、今後も当社のビジネスにおいて重要な位置を占めます」とジッカーマン氏はいう。「これは、消費者が求めている、そして多くの場合、すでに聴いていると思われる新しいタイプのコンテンツへの進出です。そして、そのコンテンツをSpotifyでも楽しめるようにしたいと考えています」。

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

在宅ヘルスケア大手Roが家庭用精子保存サービスDadi買収に向けて交渉中

ヘルスケアのD2CであるRoは今やユニコーンで、投資家たちの評価額は50億ドル(約5710億円)に達する。同社に近い筋によると、現在Roは家庭で精子を保存できるサービスのスタートアップDadiを買収するという。これはRoにとって、Workpath、KitそしてModern Fertilityに続き、過去12カ月で4度目の買収になる。

買収は完了に近いが、それでもまだ不安材料はある。額面は明かされていないが某筋によると1億ドル(約114億円)に近いという。RoとDadiにコメントを求めたが、返事はない。

Dadiは2019年に創業し、温度管理された家庭用不妊検査と精子採取キットを発売した。共同創業者でCEOのTom Smith(トム・スミス)氏によると同社は「不妊は女性の問題ではない、男性と女性双方の問題である」というミッションを掲げている。Crunchbaseによると、同社はこれまでfirstminute Capital、Third Kind Venture Capital、そしてChernin Groupなど著名なベンチャーキャピタルから1000万ドル(約11億円)を調達している。

Dadiと並ぶ競合他社のLegacyも、精子の検査と冷凍保存で同様にベンチャー資本を調達している。Legacyは2018年のTechCrunchTechCrunch主催Disrupt Berlin 2018のStartup Battlefieldで優勝し、これまでにFirstMark、Y Combinator、Justin Bieberなどから約2000万ドル(約23億円)を調達している。

この買収は、Roの社内で緊張が高まっている時期にやってきた。同社では今、以前の社員と現社員が問題を提起し、成長目標にこだわりすぎると不平を述べている。従業員の一部は会社を辞めたが、我慢が限界に達したのは、成長のための買収が立て続けに行われるようになったときだという。同社に長く在籍する者たちは、企業文化と仕事の改善が先決だと主張した。

最近辞めた社員がTechCrunchのインタビューに応じ、同社の買収の頻度について「得体のしれない買収ばかりだった。買収した企業との統合は何もなかった。会社は一体、何をしてたのだろう?買収のせいでフォーカスは変わってばかりいた。上司たちは『成長企業ってこういうものだよ』という」と語る。

しかしRoの最近の2つの買収は、戦略としてDadiと合いそうだ。Roが6月に買収したKitは在宅診断を提供する企業で、指を刺して採血する血液検査キットや体重測定ツールなど、カスタマイズできるプロダクトがいろいろある。同社はDadi同様、消費者が気楽な自宅で楽に、予防や早期発見のための検査を行なう。

Roの共同創業者でCEOのZachariah Reitano(ザカリア・レイタノ)氏は、Kitの買収について「ヘルスケアには細分化現象があり、ケアのプロバイダーは分断化したデータの全体を把握できません。そのため、私たちのようなところの仕事が増えますが、Kitはそんなインフラの中では重要で不可欠なピースです。同じ屋根の下の患者たちに、さらに多くのケアを提供できる」。

2億2500万ドル(約257億円)でModern Fertilityを買収したことが示すように、このところRoは不妊治療にも力を入れているようだが、Dadiはその方面でも貢献するだろう。Carly Leahy(カーリー・リーヒー)氏とAfton Vechery(アフトン・ヴェチェリー)氏が率いるModern Fertilityは、女性用の在宅不妊検査を提供し、妊娠と出産に関わる健康の問題に、個人化されたサポートを多数提供している。

そしてもちろんRoは、勃起不全(erectile dysfunction、ED)をターゲットとする男性の健康問題でも事業を拡大しようとしている。今やこのヘルステックユニコーンの売上の半分が、ED関連だ。

画像クレジット:Dadi

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Hiroshi Iwatani)

フォックスコンがLordstownのオハイオ工場を約262億円で買収

電動小型トラックメーカーのLordstown Motors(ローズタウン・モーターズ)は、オハイオ州ローズタウンにある広さ620万平方フィート(約57万平方メートル)の工場を、Apple(アップル)のiPhoneの製造で知られる台湾のハードウェアメーカーFoxconn(フォックスコン)に正式に売却した。Lordstownの発表によると、この2億3000万ドル(約262億円)の取引は、2022年4月末までに完了する予定だ。

取引の条件は、両社が9月30日に締結した基本合意に沿ったもので、締結後にFoxconnは早速5000万ドル(約57億円)分の普通株を1株あたり6.8983ドル(約787円)でLordstownから直接購入した。Foxconnは11月18日までに1億ドル(約114億円)の頭金を、その後2022年2月と4月に5000万ドル(約57億円)を支払い、4月30日の手続き完了を目指している。

Lordstownの発表文によると、Foxconnは苦境にあるLordstownのピックアップトラック「Endurance」の製造を支援することにも合意した。両社はまた、北米および海外市場向けの商用車プログラムを共同で設計・開発する合弁会社も設立する。最後に、この取引が完了すると、Foxconnは今後3年間、1株あたり10.50ドル(約1200円)でLordstownの普通株式を購入できる170万のワラントを得る。Lordstownは、電気モーターの生産ライン、バッテリーモジュールとバッテリーパックの組み立てラインを維持する。

Foxconnは2021年初め、電気自動車スタートアップのFisker(フィスカー)と、FiskerのPEARプログラムに基づく新型車を北米で共同開発・製造する契約を締結した。その後、Lordstownが2019年にGeneral Motors(ゼネラルモーターズ)から購入したオハイオ州の工場でも、Fiskerの車両を生産することをFoxconnは示唆していた。今回の工場購入により、Foxconnは初の自動車工場を手に入れ、スマホやノートPCの製造以外の分野へ躍進することになる。

調査会社がEVトラックの予約台数を偽装していると告発したことで、米証券取引委員会と米司法省の両方から調査を受けているLordstownは、財政難に加えて、11月10日朝に辞任した社長のRich Schmidt(リッチ・シュミット)氏をはじめとする多くの幹部の逸失に直面している。Foxconnとの取引により、Lordstownは原材料や部品のコストを削減することができそうだ。Foxconnは、生産コストの削減や不安定なサプライチェーンに対応するために必要な強力なサプライチェーンネットワーク、ロジスティック能力、購買力を持っている。また、同社は電気自動車にとって非常に重要な、ソフトウェアとハードウェアの統合のエキスパートでもある。

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

MediumがグラフィックデザインツールのProjectorを買収、経営陣を強化

コンテンツパブリッシングプラットフォームのMediumが、Projectorという小さなスタートアップを買収する。これにともない13人のProjectorチーム全員がMediumにジョインし、Projectorの共同創業者でCEOのTrevor O’Brien(トレボー・オブライエン)氏がMediumの最高製品責任者になる。

Projectorについてご紹介しよう。同社はブラウザベースのグラフィックデザインツールを開発してきた。ポッドキャストのアートワーク、Facebookイベントのロゴ、Instagramのストーリーといったソーシャルの投稿に使うグラフィックスをわずか数回のクリックで作れる。

プロ級のデザインスキルがなくても、Projectorのテンプレートライブラリを利用し、テンプレートの画像とテキストを置き換えて自分のグラフィックスにすることができる。

ProjectorでアニメーションGIFやプレゼンテーションを作るユーザーもいる。他の人と一緒に作業をしたい場合はリアルタイムでコラボレーションできる。完成したら、プレゼンテーションやデザインをリンクで共有する機能もある。

Mediumは買収の条件を明らかにしていないが、Projectorは10万人のユーザーを抱え、3回の資金調達ラウンドで2300万ドル(約26億2000万円)を調達した。Projectorには、Upfront Ventures、Mayfield Fund、Foundry Group、Upside Partnership、Homebrew、Mantis VC 、Van Wickle Venturesが投資した。Mark Suster(マーク・サスター)氏とRishi Garg(リシ・ガルグ)氏がProjectorの経営陣として参加した。

画像クレジット:Medium

Projectorの共同創業者でCEOのオブライエン氏はこれまでにCoda、Twitter、YouTubeでプロダクトチームを率いてきた。同氏がMediumの最高製品責任者になるが、Mediumには今回の買収まで最高製品責任者はいなかった。

Projectorの共同創業者でエンジニアリング担当VPのLuke Millar(ルーク・ミラー)氏は、Mediumのエンジニアリング担当VPになる。

オブライエン氏は「Mediumは、長期的にはProjectorを独立したプロダクトとして運営し続けることはありません。Mediumのコアのプラットフォームに集中し、Projectorのテクノロジーと専門性を活かして世界有数のクリエイターツールと読者のエクスペリエンスを構築します」と述べている。

さらに同氏は「Projectorは、既存のお客様が今後の利用を停止し、停止前に作品を書き出せるようにするために、2022年3月まで運営を続けます」と補足した。

MediumがProjectorの実績を今後活用していけば、ユーザーが自分のMediumサイト、投稿、ニュースレターをカスタマイズするデザイン機能の充実が期待できるだろう。リアルタイムのコラボレーション機能も増えるかもしれない。

Mediumの投稿エディタは多くのコンテンツマネジメントシステムからヒントを得て、すっきりとした直感的なデザインになっている。Mediumが文章だけでなくさまざまなメディアのコンテンツにも同様にデザインを重視したアプローチをとるか、注目される。

画像クレジット:Medium

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(文:Romain Dillet、翻訳:Kaori Koyama)

ゲームエンジン開発Unityが数々の大作映画を手がけた視覚効果のWeta Digitalを約1850億円で巨額買収

ゲームエンジンの開発で知られるUnity(ユニティ)は、Peter Jackson(ピーター・ジャクソン)氏が共同設立した有名な視覚効果会社のWeta Digital(ウェタ・デジタル)を、16億2500万ドル(約1850億円)もの巨額で買収すると発表した。

その名前を知らなくても、Weta Digitalの作品を見たことがある人は多いだろう。「ロード・オブ・ザ・リング」から「アバター」や「シャン・チー/テン・リングスの伝説」など「ぜひ映画館で見るべきだ」といわれるような映画では、Weta DigitalがVFXで大きな役割を果たしている可能性が高い。

これまでWeta Digitalは、視覚効果を生み出すアーティストのチームであると同時に、アーティストが使用するツールの多くを開発するエンジニアのチームでもあった。Unityが買収するのは、これらのツールとエンジニアチームであり、その一方で視覚効果のアーティストチームは、独自の新しい組織に分割される予定だ。

今回の買収により、Weta Digitalの275人以上のエンジニアが、Unityに加わることになる。VFXアーティストは、ピーター・ジャクソン氏が引き続き過半数を所有する新会社「Weta FX」にスピンアウトする。両社は今後も協力関係を続けていく予定で、Unityはこの先、Weta FXが「メディア・エンタテインメント分野における最大の顧客」の1つになると見ているという。

その一方でUnityは、Weta Digitalの数多くの自社製ツールの開発を引き継ぐ予定だ。例えば「City Builder」(「キングコング」などの映画で破壊された巨大な3D都市をプロシージャルに生成する)「Manuka」(最終バージョンですべてが非常にリアルに見えるようにするために役立つ物理シミュレーションを行うカスタムレンダラー)「Gazebo」(より高速なリアルタイムレンダラーで、アーティストが時間のかかる最終レンダリングの前にシーンを正確にプレビューするために使用される)、そして他にも、キャラクターを動かすためのリギング、顔のアニメーションやレンダリング、モーションキャプチャーの処理、髪の毛 / 毛皮 / 煙 / 何千年も前に放棄された都市の景観に生え茂る植物などをシミュレートするためにチームが構築した独自の技術のすべてだ。

Wetaの「City Builder」ツール(画像クレジット:Unity/Weta Digital)

なぜWetaなのか?UnityのSVPであるMarc Whitten(マーク・ウィッテン)氏に電話して、彼の考えを聞いてみた。

「10年前を思い出してみてください」と、彼はいう。「これは2Dの話ですが、どれだけの写真が撮影されていたか。きっと膨大な数でしょう。しかし、それから10年後……今はさらに驚異的に増えています。3Dも同じようなものではないかと私は思います」。

「ただし、1つ違いがあります」と、彼は続けた。「10年前の私でも、写真を撮ることはできると思っていました。今、2Dで同じように写真を撮ることができます。しかし、実際にはそれは10年前と大きく異なります。なぜなら、私がiPhoneのシャッターボタンを押すたびに、iPhoneは私を(写真家に)変身させるために、おそらく500万行の超高度なコードを実行しているからです。しかし、3Dでは、現在、個人的に何かをモデリングすることはほとんどできません。これからの10年で私たちがやるべきことは、同じアプローチを取ることです。つまり、この信じられないほど深い技術を、簡単に使えるようにすることです」。

言い換えれば、つまり、Unityは3Dでの構築をより簡単にする必要性が高まっていると考えており、それはWetaが過去数十年を費やして追求してきたことなのだ。

この買収契約の一環として、UnityはWeta Digitalが長年にわたって構築してきた膨大なデジタル資産のカタログも取得することになる。それは、都市や自動車、人々の3Dモデルから、雨の中で火から出る煙の仕組みを決定するアルゴリズムや、動物の群れが木々の間をどのように移動するかのシミュレーションまで、1つ1つ挙げれば切りがないほど膨大だ。これらのすべてが、潜在的にはUnityの製品に組み込まれ、クリエイターがそれを基に制作できるようになる可能性があるというわけだ。もっとも、ウィッテン氏は「明確に認められるIP」は含まれないので、次に開発するゲームに(ロード・オブ・ザ・リングの)Gollum(ゴラム)をドラッグ&ドロップできるようにはならないだろうと指摘している。

これ以前にUnityが行った最大の買収は、2021年の8月にParsec(パーセク)を3億2000万ドル(約365億円)で買収したことだった。当時、ウィッテン氏はこの買収がUnityのより大きなクラウドへの野望の一環であることを示唆していたが、今回の買収にも同じことが言えるだろう。

「(Weta Digitalの)ツールは……まさにこのパイプラインです」と、ウィッテン氏は述べている。「それぞれのツールは個々に強力ですが、このパイプラインに沿って連携すると、すべてが実にうまく機能します。あるツールで変更を加えれば、他のツールで照明や合成を行ったときに、それが正しい形で現れます。複数の人が本当に簡単に一緒に作業できます」。

「その先に私たちが考えているのは」と、同氏は続けた。「アーティストがMaya(マヤ)やHoudini(フーディニ)、Unityの中で作業をするときに、これらのクラウド機能が直接接続できるようにすることです」。

「このパイプラインをクラウドで利用可能にして、どこにいてもすぐに接続できるようにすることが重要であると、私たちは考えています」。

Unityによれば、この買収は2021年の第4四半期中に完了する見込みだという。Weta DigitalのCEOを務めているPrem Akkaraju(プレム・アッカラジュー)氏は、新たに設立されるWeta FXのCEOとして留任し、CTOのJoe Marks(ジョー・マークス)氏は、Weta DigitalのCTOとしてUnityに移籍する予定だ。

画像クレジット:Unity/Weta Digital/20th Century Fox

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(文:Greg Kumparak、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

サイバーセキュリティMcAfeeを投資家コンソーシアムが1.59兆円で買収

サイバーセキュリティソフトウェア会社McAfee(マカフィー)の長く曲がりくねった歴史は、新たに興味深い展開を見せた。米国時間11月8日、6つの投資会社からなる投資家コンソーシアムが140億ドル(約1兆5850億円)で同社を買収すると発表した。

この買収額は、1株あたり26ドル(約2945円)という株価に基づくもので、11月4日の終値に対して22.6%のプレミアムがついているという。なお、11月5日の株価は20%上昇し、同日の取引終了時点での時価総額は110億ドル(約1兆2460億円)をわずかに超えたというのも注目に値する。

このコンソーシアムは、Advent International、Permira Advisers、Crosspoint Capital Partners、カナダ年金制度投資委員会、GIC Private Limited、アブダビ投資庁の完全子会社で構成されている。AdventとPermiraが買収を主導した。

McAfeeは1987年以来、さまざまな形で存在してきた消費者向けセキュリティ企業だ。同社は2021年初め、法人部門をSymphony Technology Groupに40億ドル(約4531億円)で売却した

McAfeeは長い歴史を持っているが、消費者向けセキュリティ事業はまだ成長している。11月8日発表された直近の四半期決算では、売上高は前年同期比24%増の4億9100万ドル(約556億円)、新規加入者数は64万人だった。加入者合計は2000万人を超え、これはものすごい数字であり、投資家グループが注目せずにはいられないものだ。

Permiraのテクノロジー部門共同責任者であるBrian Ruder(ブライアン・ルーダー)氏は、消費者市場においてセキュリティが大きな関心事となっている中で の今回の買収だと指摘した。「パーソナライズされた、革新的で直感的なオンライン保護サービスに対するニーズはかつてないほど高まっています」と声明で述べた。また、PermiraはMcAfeeのブランド認知度、パートナーネットワーク、忠実な顧客基盤にも好感を持ったと付け加えた。ルーダー氏は、PermiraがMcAfeeのような企業と協力してきた経験を活かし、これらのポジティブな特徴を生かして、さらに会社を成長させることができると考えている。

投資家グループの各社は、それぞれ資金と経営資源を提供する予定だ。それがどのように機能するのかは完全には明らかになっていない。McAfeeが多くのボスを持つことになるのは確かだ。McAfeeが今回の契約に「ゴー・ショップ」条項を組み込んだことは注目に値する。これは、より良い価格を模索するために45日間の猶予を与えるという、かなり一般的な慣行だ。そのような結果になる可能性は低いものの、この条項は、会社が株主のために最善の取引をしたことを株主に証明するものだ。

3月の法人部門売却の際にも書いたが、McAfeeには複雑な歴史があり、上場と非上場を行き来し、一時は社名まで変更した。

同社の歴史は複雑で、1980年代にファイアウォールソフトウェアの販売から始まった。最終的には株式を公開したが、2010年にインテルに77億ドル(約8722億円)で買収され、再び非公開になった。2014年にはIntel Securityに社名を変更したが、2017年にIntelが42億ドル(約4757億円)でTPGに株式の過半数を売却し、社名をMcAfeeに戻した。

今回の買収はMcAfeeの株主やさまざまな規制当局の審査を通過しなければならないが、これらのハードルをクリアできれば、2022年前半には買収が完了する見込みだ。買収のニュースを受けて、同社の今朝の株価は0.57%上昇した。

画像クレジット:Justin Sullivan / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

「機械学習データセットのためのGoogleフォト」実現加速のためScale AIがSiaSearchを買収

Scale AI(スケールAI)は、欧州でのリーチ拡大と最新製品の開発スピードアップに貢献する小規模なスタートアップを買収した。

買収にともなう合意条件は明らかにされていない。

欧州のベンチャースタジオMerantixからスピンアウトしたSiaSearchは、先進運転支援システムや自動運転システムが取得するペタバイト規模のデータの検索エンジンとして機能するデータ管理プラットフォームを構築している。すでにフォルクスワーゲンやポルシェなどの大手自動車メーカーと提携しているこのスタートアップは、車両群が収集した生センサーデータのインデックスを自動作成し、構造化することができる。

その機能は、Scale AIの既存の技術とうまく調和している。Scale AIは、ソフトウェアと人を使って、画像、テキスト、音声、ビデオデータにラベルを付け、機械学習アルゴリズムを構築する企業に提供している。Scale AIは当初、自律走行車メーカーに、機械学習モデルのトレーニングに必要なラベル付きデータを提供することを目的として設立された。これにより、ロボタクシー、自動運転トラック、倉庫やオンデマンド配送に使用される自動ロボットなどの開発・展開が可能になる。しかし、同社はデータラベリングにとどまらず、データマネジメントのプラットフォームとしての役割を果たしている。政府、金融、EC、エンタープライズなどの他の業界にもサービスを提供しており、現在はAirbnb(エアビーアンドビー)、DoorDash(ドアダッシュ)、Pinterest(ピンタレスト)などの企業と提携している。

ベルリンを拠点とするSiaSearchは、Scale AIの共同創業者兼CEOであるAlexandr Wang(アレクサンダー・ワン)氏が以前「我々の未来の最初の製品」と呼んだNucleusの構築において、特に有益な存在となり得る。ワン氏によると、SiaSearchチームをNucleusの活動に組み込むことを計画しているという。

Nucleusは、ワン氏が「機械学習データセットのためのGoogleフォト」と呼ぶAI開発プラットフォームだ。この製品は、膨大なデータセットを整理、管理し、モデルのテストやパフォーマンス測定などを行うための手段を顧客に提供する。SiaSearchによって、Scale AIは取り組みを加速させ、さらには機械学習のライフサイクル全体をサポートするために機能を拡張することができる、とワン氏はいう。

今後の目的は、SiaSearchの技術をNucleusに組み込み、自動車やAV技術以外でも、あらゆるAI開発者が使用できる完全なデータエンジンを提供することだ。これは、ロボットメーカーや自動車メーカーなど、データの取得、ラベル付け、整理だけでなく、自社製品のアルゴリズムを改善するために必要な新しい種類のデータを継続的に再定義するための追加ツールが必要な企業にとって、非常に有用なものとなるだろう。

ワン氏は、Tesla(テスラ)が同社の先進運転支援システム「オートパイロット」の改良のためにデータエンジンのコンセプトを率先して導入したことを指摘し、これはテスラが行ってきたことに似ています、と語った。

ワン氏は、自動車メーカーやロボットメーカーは、車両やロボットなどのフリートが拡大するにつれ、膨大な量のデータをどのように活用するかに頭を悩ませていると語る。これらのデータをすべてクラウドにアップロードするだけでも、文字通り何十億ドル、何百億ドル(何千億円、何兆円)ものコストがかかると同氏はいう。

「基本的に、すべてのAIチームが求めているのは、いかにして機械学習の開発を加速させ、Teslaのようにデータセットの取り組みを加速させるかということです」とワン氏。「当社は、Teslaが持っているのと同じように、モバイルフリートから最も関連性が高く、最も興味深いデータを使って、常にアルゴリズムをスーパーチャージできるというスーパーパワーを彼らに与えようとしているのです」。

画像クレジット:Scale AI

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Aya Nakazato)

ドイツの義肢装具メーカーOttobockが外骨格ロボットスーツのSuitXを買収へ

ドイツに本社をおく医療機器メーカーOttobock(オットーボック)は、ベイエリアを拠点とする外骨格スタートアップのSuitXを買収する契約を締結したと米国時間11月2日に発表した。今回の買収は、義肢・装具とともに独自の外骨格を製造しているOttobockにとって、理にかなったものだ。

SuitXは、カリフォルニア大学バークレー校の機械工学教授であるHomayoon Kazerooni(ホマユーン・カゼローニ)博士が設立した、バークレーロボティクスおよび人間工学研究所のスピンアウトベンチャーだ。同社を設立し、2012年にCEOに就任する前、カゼローニ教授は2005年にもEkso Bionicsを設立している。その会社は2014年に上場した。

OttobockとSuitXは同じカテゴリーで、作業支援と健康管理という2つの異なる目的のために設計されたロボット外骨格を製造している。SuitXは現在、3種類の作業用外骨格(腰、肩、脚)と、歩行補助用の「Phoenix」、医療スタッフが重い鉛エプロンを着用する際のストレスを軽減する「ShieldX」という2種類の医療関連システムを製造している。また、最近では「Boost Knee」と呼ばれるロボット膝装具の試験を開始した。

カゼローニ教授とOttobockのサミュエル・ライマー氏(画像クレジット:SuitX)

カゼローニ教授は、今回の発表に関連したリリースでこう述べている。「私は今、我々の人生を豊かにする医療用および産業用外骨格製品をグローバルに提供する立場に置かれており、大変幸運と感じています。この一歩は、SuitXだけでなく、世界中の人類のために起業家精神を最大限に育むカリフォルニア大学バークレー校にとっても成功だといえます。QOL(生活の質)の向上のために、Ottobockとともに我々の技術を国際的なコミュニティに提供することを楽しみにしています」。

Ottobockは、頭上での作業時に首、腰、肩をサポートするように設計されたPaexo Shoulderなどの外骨格を自社で製造している。外骨格デバイス(エクソスケルトン)は、2021年初めにSPAC経由で上場したSarcosの製品を含め、最近ホットな話題となっている。

今回の取引では、OttobockがSuitXの株式を100%取得する。なお、買収条件の詳細については公表されていない。

画像クレジット:Ottobock

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

CoinbaseがAI駆動型カスタマーサポートの印Agaraを約45億円超で買収へ

Coinbase(コインベース)は、AI駆動のカスタマーサポートプラットフォームを運営するスタートアップAgara(アガラ)を買収する。両社が米国時間11月2日に発表した。暗号資産(仮想通貨)取引所であるCoinbaseは、ユーザーがサービスを利用したりサポートを求めたりしやすくしようとしているようだ。

両社は買収に関する財務面での詳細を明らかにしなかったが、取引の規模は4000万〜5000万ドル(約45億〜56億円)の間だとこの件に詳しい2人が筆者に語った。Coinbaseの広報担当者はコメントを控えた。また、Agaraの共同創業者で最高経営責任者のAbhimanyu(アビマニユ)氏も、守秘義務契約を理由に取引規模についてのコメントを却下した。

データインテリジェンスプラットフォームのTracxnによると、インドで創業して4年目のAgaraは、今回の買収前にBlume Ventures、RTP Global、UTEC Japan(東京大学エッジキャピタルパートナーズ)、Kleiner Perkinsから約700万ドル(約8億円)を調達していた。

Agaraは機械学習と自然言語処理に関する深い専門知識を構築し、それをユーザー体験の向上に役立てている。40人以上の従業員を擁する同社は、世界中に複数の大口顧客を抱え、Salesforce、Shopify、Twilioなど多くの人気サービスに統合されている。買収後、AgaraはCoinbaseにフォーカスを移すとアビマニユ氏はTechCrunchとのインタビューで答えた。

「我々は、大きく分けて2つのことに注目して会社を立ち上げました。1つはカスタマーエクスペリエンスとサポート。2つ目は機械学習です。MLテックスタックを作り、それをカスタマーケアに応用するという考えでした」とアビマニユ氏は話す。「我々が行っている複雑な業務の中には、電話での問い合わせがあります。電話によるサポートのすべてではないにしても、その多くを自動化することに取り組んできました」と述べた。

同氏によると、Agaraのテックチームは、その大部分がインドで勤務しており、買収の一環としてCoinbaseに加わる。両社は年内に取引を完了する予定だ。今回の動きの数カ月前に、Coinbaseはインドにテックハブを構築する戦略を打ち出し、Google Payの元幹部であるPancaj Gupta(パンカジ・グプタ)氏を採用していた。

「Agaraの強力な技術を活用して、当社のカスタマーエクスペリエンス(CX)ツールを自動化し、強化する計画です。ここ数カ月でサポートスタッフの人数を5倍に増やし、年末までに24時間365日の電話サポートとライブメッセージを提供することを発表しました。今回の買収により、パーソナライズされたインテリジェントでリアルタイムなサポートオプションを顧客に提供することができるようになります」とCoinbaseのエンジニアリング担当EVPであるManish Gupta(マニッシュ・グプタ)氏は声明で述べた。

画像クレジット:TechCrunch / Flickr

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

Meta(元フェイスブック)がVRフィットネスアプリ「Supernatural」を開発したWithinを買収

Facebook(フェイスブック)が「Meta(メタ)」に社名を変更した翌日、同社はWithin(ウィズイン)の買収を発表した。ロサンゼルスに本拠を置くWithinは「Beat Saber(ビートセイバー)」スタイルのワークアウトアプリ「Supernatural(スーパーナチュラル)」を開発した企業だ。このアプリは、身体の動きをベースにした高負荷のカーディオエクササイズで、バーチャルリアリティフィットネスにおける本物のサクセスストーリーの1つとなっている。

Facebook改めMetaが、VRに関する野望をメタバースのようなものにまで広げようとしていることを考えれば、これは賢明な買収といえるだろう。Supernaturalはまた、新型コロナウイルスの影響によるジムの閉鎖やワークアウトの制約が広がった中で、より多くの人々が家庭用のソリューションに目を向けるようになったことから、この1年半の間に特に注目された商品であることも間違いない。

「Metaとのパートナーシップに私たちは興奮しています。なぜならそれは、私たちがより多くのリソースを得て、VRでより多くの音楽、よりクリエイティブなワークアウト方法、より多くの機能、そしてよりソーシャルな体験を、みなさまにお届けできるようになるということを意味するからです。もちろん、これからも引き続き、毎日新しいワークアウトを提供していきます」と、WithinのCEOであるChris Milk(クリス・ミルク)氏とフィットネス部門の責任者であるLeanne Pedante(リアン・ペダンテ)氏はブログで述べている。

Withinによると、同社のコーチ、コレオグラファー、マネージャーなどの既存スタッフは、買収後も引き続き在籍するとのこと。Supernaturalは、MetaのVR/AR部門であるReality Labs(リアリティ・ラボ)の下で運営されることになるという。

「私たちは、VRフィットネスアプリをサポートするために、将来のハードウェアを強化する方法も一緒に検討し、他の開発者たちがVRに新しいフィットネス体験をもたらすことを奨励します」と、MetaのPlay担当VPであるJason Rubin(ジェイソン・ルービン)氏は、Oculus(オキュラス)のブログで書いている(ちなみにOculusというブランドは、間もなく廃止されることになっている)。「VRではフィットネスが大きな成功を収め、複数のサードパーティによるフィットネス・アプリも成功できると、私たちは確信しています」。

2015年に設立されたWithinは、これまでに5000万ドル(約57億円)を超える資金を調達しており、最近では2017年に、4000万ドル(約46億円)を調達したシリーズBラウンドを実施している。このラウンドは、Temasek(テマセク)とEmerson Collective(エマーソン・コレクティブ)が主導し、Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)、21st Century Fox(21世紀フォックス)、Raine Ventures(レイン・ベンチャーズ)、WPP、Macro Ventures(マルコ・ベンチャーズ)などが投資した。

今回の買収の財務的な詳細は公表されていない。

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画像クレジット:Meta/Within

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

オンラインM&Aマッチング「M&Aクラウド」が約10億円調達、プラットフォームの開発加速と組織拡大に投資

M&Aクラウド

オンラインM&Aマッチングプラットフォームの「M&Aクラウド」を運営するM&Aクラウドは10月27日、総額約10億円の資金調達を完了したことを発表した。引受先は、リードインベスターのSTRIVE、既存投資家のSkyland Ventures、インキュベイトファンド、SMBCベンチャーキャピタル、新規投資家のSTRIVE、日本郵政キャピタル、博報堂DYベンチャーズ、MS-Japan(ハヤテインベストメント)、NORTH AND SOUTH。創業からの累計調達額は約12億4000万円となった。

調達した資金はM&Aプラットフォームの開発を加速させるほか、人材採用・組織拡大にあてる。

M&Aクラウドは、売り手企業が無料かつオンラインで買い手企業の情報を閲覧し直接打診が可能なM&Aおよび資金調達のマッチングプラットフォーム。昨今のM&A市場ではデジタル化促進を目的としたIT・ソフトウェア業界へのニーズが高まっており、買い手・売り手ともにさらなる需要の増加が予想されている。また、買い手側はいきなりM&Aを実施するのではなく出資を通じてより効果・効率的なM&A実施を希望する企業が増える傾向にある。M&Aクラウドではそれらのニーズにも対応できる機能を新たに実装し、マッチング件数を伸ばしている。

M&Aクラウドのサービススタートは2018年5月で、そこから3カ月で9億2000万円のディールが成立したという。直近では売り手の登録社数が約6000社、買い手の掲載社数が約400社となっている。売り手ユーザーが希望の買い手企業に出会えている率は84%にのぼるそうだ。

今後はソーシングからPMIまで総合的にM&Aをサポートできるプラットフォームの開発を加速するとともに、買い手が興味を持った各社それぞれに熱量を持ったアプローチと情報発信ができるシステムを構築していく。また、買い手側に向けたテクノロジーとファイナンシャルアドバイザーを融合したサポート体制を充実させて負担を軽減し、より円滑なM&Aの実現を目指す予定。

M&Aクラウドは、「テクノロジーの力でM&Aに流通革命を」をミッションに掲げ2015年12月に設立。従来の仲介するモデルから発想を転換し、求人型M&Aプラットフォームというビジネスモデルを構築した。

ツイッターの元企業開発責任者で、現在はVCに身を置くセクソム・スリヤパ氏に話を聞く

Seksom Suriyapa(セクソム・スリヤパ)氏は、ベンチャーファームに身を置く運命にあったようだ。スタンフォード大学ロースクールを卒業後、2つの優良投資銀行で勤務し、その後サイバーセキュリティ企業McAfeeに上級企業開発部門の従業員として入社した。さらにヒューマンリソースソフトウェア企業SuccessFactorsで6年間勤務した後、2018年にTwitterに加わり、6月まで12人の企業開発チームを率いた。

意外なのは、スリヤパ氏はロサンゼルスに拠点を置くベンチャーファームUpfront Venturesに加わったばかりなのだが、もっと早い段階で飛躍を遂げなかったことだ。「きっかけは、私にぴったりの会社を見つけたことでした」とスリヤパ氏はいう。

サンフランシスコのベイエリアに住むスリヤパ氏に、Upfrontでの新たな役割と、創業者のYves Sisteron(イヴ・シスタロン)氏とともに成長ステージのプラクティスを拡大していくことについて話を伺った。

同氏はまた、最近少しばかり買収に拍車をかけているTwitterが買収についてどう考えているかについても明らかにした。我々の会話は長さのために軽く編集を加えている。

TC(TechCrunch):Upfrontに参加した経緯をお聞かせください。

SS(スリヤパ氏):(Upfrontで長年パートナーを務める)Mark Suster(マーク・サスター)氏と私は、ベンチャー業界におけるビジネス上の共通の知人の紹介で出会ったのですが、長い年月の間に同氏のことを知るにつれ、本当にすばらしい人物であることが分かりました。同氏はビジネスそのものに対して思慮深い、卓越したブランドビルダーです。(Upfrontは)ロサンゼルスをベンチャーマップに載せたと言えるかもしれません。

TC:同社は長い間アーリーステージ企業だった時期もありましたが、現在は「バーベル」戦略をとっています。あなたの新しい仕事は、ポートフォリオ企業が成長していく中で、その株式を維持できるようにすることですか?あなたはそのポートフォリオ以外で買い物をすることができますか?

SS:私にとってのミッションは、規模を拡大しようとしているUpfrontの100社を超える既存のポートフォリオ企業の中で最も優れた企業をサポートすることであると同時に、プラットフォーム上の通貨ではない企業に投資することでもあります。そして(後者では)今後ますます多くのことが起こると予想しています。

TC:Twitterは、あなたが在籍していた数年間、企業開発の分野でより活発に活動していました。理由を教えていただけますか?

SS:私が2018年に同社に参加したとき、約3年間CEOを務めていたJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏は、パブリックな会話を促進するというコアミッションに真に注力していました。そのためにTwitterは多くの事業から身を引き、賢明な人たちからも距離を置くことになりました。

TC:2016年に従業員をレイオフしたと記憶しています。

SS:それから派生したことの1つは、新プロダクトの生産性がかなり下がったことです。そのため、私が加わる前の3年間、新規の買収はありませんでした。運動をしないと筋肉は萎縮します。(私の参加の前に)ジャック(・ドーシー氏)は経営陣を刷新しました。それまでは比較的重役の回転ドアのようなものでした。そして私は、数年間沈黙していた会社の開発を復活させるという使命に導かれました。(CFOの)Ned Segal(ネッド・シーガル)氏がGoldman Sachsの銀行員だった頃とSuccessFactorsに在籍していた頃のことを知っていたので、人づてにその役割について聞いたとき、私はコンタクトを取ったのです。

TC:Twitterは、ニュースリーダーサービスのScroll、ニュースレタープラットフォームのRevueを買収して、買い物を始めました。これらの決定はトップから下ってきたのでしょうか、あるいはその逆でしょうか?

SS:それを説明する最善の表現として、それはプロダクトニーズ主導型であった、と言い表せるでしょう。同社にはいくつかの異なる目標がありました。1つは、Twitterが広告主導型のビジネスであることに依存するのを多様化することでした。収益の80%は広告から来ているといった点です。

第2に、企業として機械学習(ML)と人工知能(AI)を強化すべきであるという、驚くほどの必要性が存在していました。会話の中の有害性を探す場合、そのために何万人もの人を雇うことはスケーラブルではありません。それを見つけるには機械学習が必要です。またTwitterは、ユーザーにとって最も興味深い会話を表示できるようにすることも上手く成し遂げていますが、そのためには、ユーザーがフォローしたり、読むことに時間を費やしたりしているものや、ユーザーがやり取りしているものからのシグナルを取得する必要があります。その中核はML AIです。(関連して)ジャック(・ドーシー氏)には、ネイティブ言語でツイートする人は誰でも、グローバルな会話の一部としてネイティブ言語で他の人と話すことができるようにする必要があり、そのために(自然言語処理)技術を大幅に拡充しなければならない、というビジョンがあります。

TC:コンシューマーアプリケーションへのフォーカスというものもありますね。

SS:それが3つ目の目標です。フォロワーとクリエイターがお互いとの会話に使えるツールは何でしょうか?そこで(Twitterは)ClubhouseのライバルであるSpacesを通じて音声を追加しました。SubstackのライバルであるRevueを買収しました。このようにして、Twitter上で見たり作成したりすることが期待されるコンテンツの種類に関係する多くのイノベーションが起こっています。

TC:これらの買収について、プロアクティブ(先見的)とリアクティブ(反応的)のどちらであると説明しますか?

SS:外から見ると、リアクティブに見えるかもしれませんが、実際には私たちは、Clubhouseが離陸する前からSpacesのようなものについて考えていました。注目すべきなのは、Twitterのような企業が、その領域に特化した企業と真っ向から対決するケイパビリティと新プロダクト領域を構築し、それがDay 1から競争力を持つようになったのを(Spacesの事例で)初めて見たことだと思います。TwitterがClubhouseを打ち負かしたのは、Android版にリソースが注ぎ込まれていたからであり、Twitterの仕組みやクリエイターがTwitterを利用しているという事実の多くが、このセグメントを勝ち抜くための絶好のスポットにTwitterを位置づけていると私は考えています。

Twitterはまた、ソーシャルメディアを利用しているときに警戒すべき有害性や事柄を発見するための膨大な専門知識を持ち合わせています。Clubhouseほどの規模の企業は、少なくとも創業当初は、そこまで到達するのにかなり苦労することになるでしょう。

TC:Twitterは、暗号資産や分散化など、非常に多くの関心事を抱えていますね。

SS:Twitterの優先事項に関しては、今後5年から10年の間に登場すると予想される技術の点では多くが秘匿状態にあります。ですが、暗号資産とそれを取り巻く基盤プロトコルのインパクトについて、そして人々のプライバシーを保護し、コンテンツがどこに保存されているかを人々が心配しなくて済むような分散型インターネットが置かれている、信頼性の低い無許可状態(の世界)にTwitterがどのように参加するかについて(に多くの考慮が払われている)でしょう。人々はTwitterを単なるコンシューマーアプリと捉えているかもしれませんが、内部には驚くべき多様性が秘められています。

TC:現在の規制環境の影響で、FacebookやGoogleに吸収されたかもしれない企業やプロジェクトと協業する上で同社は優位に立っていると思われますか?

規制環境という点では、FacebookとGoogleを等式から外しても、競争力のある買収者が存在し、それがステップアップして買い物をすることになりますので、この2社だけを考えるのは少し近視眼的だというのが現実的です。しかし、彼らが活動的だったときでさえ、私たちは(取引を)勝ち取っていました。私たちが買収した企業の多くはTwitterに入ることを自ら選んでいます。Twitterが象徴しているもの、そして組織を率いるジャック・ドーシー氏のやり方を気に入っていて、同氏が取っている方針と、同氏とその指導者たちが主唱している見解を信じているからです。

TC:あなたは今、まったく異なるブランドを体現しようとしています。Twitterで行ってきたことは、Upfrontを代表して取引を勝ち取る上でどのように役立つと思われますか?

SS:私は世界中にすばらしい起業家のネットワークを擁しています。自分のキャリアを通じて買収を支援したり、買収を試みたりした企業や、ビジネスを運営している人々のネットワークです。私はさまざまなステージにいるVCとも関係を持っていて、世界中のビジネスを積極的に見つけて(そして企業の開発チームに紹介して)います。Twitterにはダイバーシティとインクルージョンのプログラムがあり、今後数年間で25%のリーダーシップを多様化させようとしていることを知っている人もいるかもしれません。私のチームはしばしば、多様性のあるターゲットを見つけて獲得するための最善の方法を見出すことに関わってきました。私はまた、新興ファンドへの一連のLP投資を指揮しました。ラテンアメリカ系のファンドもあれば、女性が設立したファンド、黒人が設立したファンドもあり、地理的な観点からも多様で、遠く離れた場所にある企業をスカウトしているファンドもありました【略】。

TC:Twitterは直接投資も行っていますか?

SS:私たちは直接投資を行いましたが、(ファンドマネージャーを支援することは)よりレバレッジドなアプローチです。そのほとんどはシードファンドで、30社から60社への投資につながります。しかし、そうです、私は(インドの)ShareChatを含む遠く離れた場所の企業をスカウトしました。ShareChatでは、私は2年間取締役を務めています。(編集部注:TechCrunchは2021年初め、TwitterがShareChatの買収を検討していると報じた。同社はその後何度も資金調達を行っており、直近では投資家から30億ドル[約3300億円]近くの評価を受けている。)

TC:あなたは豊富なリレーションシップを築いていますが、他にも多くの組織が投資している中で、成長ステージの取引で競争するのは非常に厳しそうに思われます。どのように競うことを想定していますか?

SS:こうしたネットワークを利用して取引を見つけていくことは間違いないでしょう。Upfrontがすでに投資しているセクターに投資するつもりですが、最初のうちは、私が強い関心を持っている、クリエイターエコノミーのエコシステムを含む領域でダブルクリックしようと考えています。その多くにTwitterで携わっていましたし「Web 3.0」、この無許可の(Twitterもフォーカスしている進化の)地帯でもあるからです。しかし、私は自分を甘やかすことはしません。バリュープロポジションが何であるかを学ぶことにより、競合していくことができるのだと思います。Twitterでは、私の戦略は、スピードで勝利すること、人々をより早く知ること、そして(取引をまとめるために)Twitterのバリュープロポジションを強調することにありました。まだ実装していませんので私の(VC)戦略についてお話しできることはありませんが、メガファンドが提供しないような、起業家にとって最も興味深い何かを見つけ出す必要があるでしょう。

画像クレジット:Seksom Suriyapa

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

PayPal、Pinterest買収を検討か

あっと驚く買収劇だが、Bloombergの報道によると、PayPalはソーシャルメディア企業Pinterestの買収を検討しているという。

同記事によると、カリフォルニア州サンノゼに本社のあるPayPalは、買収の可能性をめぐって最近Pinterestに接近している。

匿名の情報筋によると、その場合PayPalは1株あたり70ドルを払い、Pinterestの評価額は約390億ドル(約4兆4464億円)になる。

この記事についてPinterestはコメントを拒否している。またPayPalは、本稿の締切までにコメントの要求に応じなかった。

このニュースを受けてPinterestの株価は約12%上昇し、10月20日の正午には62ドルを超える水準で取引された。これは、52週間高値の89.90ドルを下回っている。

噂されている買収価格は、Pinterestの現在の時価総額400億ドル(約4兆5600億円)に匹敵するものだ。一方、PayPalの時価総額は3080億ドル(約35兆1120億円)となっている。

2021年9月、PayPalは日本でのビジネスを強化するために日本のBNPL(Buy Now, Pay Later)サービスプラットフォームPaidyを、主に現金で約27億ドル(約3080億円)で買収することを発表した。2019年11月には、PayPalは安価な販売サイトを探す探すブラウザのアドオンやモバイルアプリケーションを開発するHoney Science Corporationを40億ドル(約4560億円)で買収する計画を発表している。

Pinterestを買収するというPayPalの計画は、想像以上に理に適っている。

ここ1年半ほどの間に、Pinterestはeコマースプラットフォームへの展開に力を入れ、いくつかの新機能を発表している。2020年4月、同社はプラットフォーム上での新たなショッピング方法を導入し、Pinterestユーザーは、検索やのボード上に新たに追加された「ショップ」タブから、在庫のある商品を閲覧できるようになっている。また、ビジュアル検索を改善し、ピンからより多くの商品をショッピングできるようにしている。

2021年10月初め、Pinterestは、広告主やブランドがサイト上のユーザーに自社製品を宣伝するための新機能を導入すると発表した。これは、Pinterestのプラットフォーム上でのオンラインショッピングや広告の拡大を目的とした最新の取り組みとなる。

米国時間10月14日、Pinterestは共同創業者のEvan Sharp(エヴァン・シャープ)氏が同社の常勤役員の座を離れることを発表した。彼は同社のデザインとクリエイティブの最高責任者だったが、Jony Ive(ジョナサン・アイブ)氏とともに彼の新しいクリエイティブ集団であるLoveFromに移籍している。Pinterestに関してはシャープ氏は同社の顧問として、会社の戦略やプロダクト、デザイン、ブランド、企業文化などの面に注力していく。Pinterestの取締役の座には留まる。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ツイッターがグループチャットアプリSphereを買収、さらに進む同社のプロダクト拡充

Twitter(ツイッター)は、その社名を冠したグループチャットアプリを運営するロンドン拠点のSphere(スフィア)を買収した。Twitterはこのところプロダクトを積極的に拡充しており、今回の買収はその最新の動きとなる。

Sphereは、Tomas Halgas(トマス・ハルガス)氏とNick D’Aloisio(ニック・ダロイシオ)氏によって設立された。ダロイシオ氏は、ニュース要約アプリSummlyを創設し、報道されたところによると17歳のときに3000万ドル(約34億円)でYahooにSummlyを売却したことで知られる。Summlyは、TechCrunchが最初に報じた最初の2回のラウンドでの1180万ドル(約13億円)を含め、少なくとも3000万ドルを調達したとされている。

Twitterの広報担当者はTechCrunchに対してSphereの買収を認めた。

Sphereはブログで「他の人と同じように、我々はコミュニティやSpace、そして安全性を促進する機能をリリースするなど、Twitterがコミュニティ構築への投資を増やしていることに注目し、賞賛してきました」と述べた

「Twitterのチームに会ったとき、彼らがどれほど真剣に関心事ベースのコミュニティを追求しているか、そしてその潜在的な影響力をどれほど信じているかに一層感銘を受けました」。

Sphereによると、この動きの一環として、2021年11月にはスタンドアロンのアプリを終了する予定だ。同社はこれまでに獲得したユーザー数や顧客数を公表していない。

「ここまでの道のりは長く、エキサイティングなものでした。多くのスタートアップがそうであるように、Sphereもまったく異なるミッションでスタートしました。『グローバルブレイン』の構築を通じて、誰もが即座に知識を見つけ、共有できるようにするというものです。我々は当初、世界中の有償の専門家を集めたマーケットプレイスを構築し、グループチャットでつなげていました」とブログ投稿に書いた。

「我々が気づいたのは、最も有益で知識豊富な会話は、メンバーがお互いに強い帰属意識を感じているグループから生まれるということです。言い換えれば、私たちの挑戦の核心は、すべての人が自分のコミュニティを見つけられるようにすることでした。この機会は巨大です」と述べた。

今回の買収は、Twitterがここ数四半期、提供するプロダクトを拡大するためにこれまでよりも積極的になっている中でのものだ。Clubhouse(クラブハウス)の買収を試みたTwitterは2021年、同様の機能を導入し、最近ではプラットフォーム上の無秩序な言論を抑制するためにいくつかの措置を講じた。

願わくば、Sphereが傘下に入ることで、Twitterのプラットフォーム上での個人やグループのメッセージで何らかの動きがあることを期待したい。

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画像クレジット:Sphere

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

ソフトバンク出資のトラベルテックYanoljaが韓国のeコマースInterparkを買収

韓国のトラベルテック企業Yanolja(ヤノルジャ)は、同国の電子商取引のパイオニアで上場企業のInterpark(インターパーク)の株式の70%を約2億5000万ドル(約285億円)で取得した。

Yanoljaは、今回の買収を機に、海外旅行業界へのさらなる進出を目指す。Interparkは、韓国語、英語、中国語、日本語を話す顧客を対象に、230カ国以上でオンライン旅行予約サービスや国際配送サービスを提供している。

海外旅行業界は、国外のトラベルテックプラットフォームが主流となっているが、Yanoljaは、ホテルや車両の予約、旅行関連のなどの現行のサービスに加え、Interparkが長年培ってきたライフスタイルサービスをより多く取り入れて「スーパーアプリ」を構築し、規模を拡大して対抗したいと考えている。Interparkのサービスは、ショッピング、レストランの予約、旅行チケット、アトラクション、ライブパフォーマンスなどをカバーしているとYanoljaの広報担当者はTechCrunchに語った。

Yanoljaは2021年7月にソフトバンク・ビジョン・ファンド2から17億ドル(約1938億円)を調達していた。Yanoljaへの投資は、ソフトバンクが韓国企業に投じた資金としてはCoupang(クーパン)への投資に次ぐ規模だった。Coupangは上場前にソフトバンクから約30億ドル(約3420億円)の出資を受けた。

Yanoljaのバリュエーションは10兆ウォン(約9576億円)以上と推定される。報道によると、2023年頃には米国と韓国での重複上場を目指す予定だという。この20カ月間、旅行・観光業界には大きな雲がかかっていたが、同社はしっかりと成長した。2019年、Yanoljaは1億8000万ドル(約205億円)のシリーズDラウンドを終え、10億ドル(約1140億円)以上の評価を受けた。同社は、評価額やIPOの計画についてのコメントを控えた。

韓国最大のトラベルテック・スタートアップであるYanoljaは、CEOのSuJin Lee(スジン・リー)氏が2005年に創業した。同氏は以前、モーテルのマネージャーだった。

Yanoljaは、直近の調達資金を利用し、グローバルトラベルプラットフォーム(GTP)への投資や、人工知能による自動化ソリューションの強化を行っており、ユーザーのためにパーソナライズされたソリューションを提供する技術の開発を目指しているという。

同社は7月、新機能であるB2Bオペレーションソリューション「Yanolja Cloud」の提供を開始した。パンデミックにより非接触サービスの需要が高まるなか、デジタルトランスフォーメーションを強化する。Yanolja Cloudは、オンラインおよびオフラインのオペレーションを自動化し、ホテル経営者が低コストでゲストにパーソナライズされたサービスを提供し、より多くの収益を上げることを支援する。同社は、東南アジアやアフリカ全域を含む170カ国、約3万社の顧客に、60種類の言語でYanolja Cloudを提供しているという。

同社は10月14日、Yanolja Cloudが9月時点で米国、インドネシア、フィリピン、インド、アフリカなどの海外市場で前年比170%の売上高を計上したと発表した。

同社は規模拡大のために他にも買収を行っている。2019年には韓国のDailyhotelとインドの宿泊管理プラットフォームeZee Technosysを、2018年には東南アジアを拠点とするホテルチェーンZen Roomsを買収した。

画像クレジット:Yanolja

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(文:Kate Park、翻訳:Nariko Mizoguchi

ロシアの大手Yandexがシェア型eスクーターWindのテルアビブ事業を買収、イスラエルでの事業を拡大

ロシアの大手ハイテク企業であるYandex(ヤンデックス)が、シェア型eスクーター企業Wind(ウィンド)のイスラエルでの事業を買収し、イスラエルにおけるモビリティ事業を拡大しようとしている。両社は取引条件を明らかにしていないが、イスラエルの金融紙Globes(グローブス)が、価格は4000万ドル(約45億4000万円)から5000万ドル(約56億7200万円)だと推定されると報じている

Windは、Lime(ライム)、Leo(レオ)、Bird(バード)といった競合他社と並ぶ、イスラエルでトップクラスのeスクーターシェアリング事業者だ。Yandexは、すでに2018年からイスラエル国内でモビリティプラットフォームYango(ヤンゴ)を運用しており、配車サービスを皮切りに、ラストワンマイルデリバリーやフードテックなどに取り組んでいる。Yandexによれば、Windを買収することで、幅広いラストマイルと交通手段のソリューションを提供することが可能になり、自社のエコシステムを拡大することができるという。

Yangoが、新しく増えた車両を活用して、配達サービスを拡大していくことも考えられる。例えば、最近Yandexは、テルアビブ市周辺のダークストア(EC流通センター)のネットワークを利用した、食料品の即時配達サービスYango Deli(ヤンゴ・デリ)を開始した。まずは14カ所のダークストアから始めて、11月末までには数を倍増させる予定だ。

今回の買収には、Windが保有する1万台以上のシェアリング用スクーター、イスラエル内のスクーターのインフラや運用システム、移動経路の最適化に関する研究開発などが含まれている。ベルリンとバルセロナを拠点とするWindは、今後も欧州での事業運営を継続していく予定だ。これまでに合計で7200万ドル(約81億7000万円)の資金を調達しており、現在テルアビブ都市圏の13都市で数万人の顧客にサービスを提供しており、累計で約400万回の移動が行われたという。

Yandexがロシア国内でYandex Go(ヤンデックス・ゴー)と呼ばれるスクーターシェアリングプラットフォームを開始したのは、今回のWindの買収のわずか数カ月前だった。ロシア国内でのスクーター保有台数は約5000台と言われているので、今回の合併でYandexの規模は倍以上になる。ロシアの顧客は、Windアプリからスクーターを予約できるようになるが、イスラエルでもYangoアプリからスクーターを予約できるようになる。

Yandexはまた、イスラエル、アナーバー、韓国自律走行型配達ローバーのテストも行っており、現地当局から関連する許可を取得次第、ロボットによる配達を開始できると述べている。

また近い将来、同社のロボタクシーをYangoプラットフォームに導入したいといっている。

Yandexの広報担当者はTechCrunchに対して「私たちは2019年初頭からテルアビブ市内やその周辺で自動運転車のテストを行っています。イスラエルには、他の実験地では得難い、技術を試すための条件や課題があるのです。例えばあらゆる種類のラウンドアバウト、無数の2輪車やマイクロモビリティ車両、そしてもちろん地中海の暑さと高い湿度です」と語っている。

Yandexによると、モスクワは寒冷地であるため、伝統的には自転車に適した都市ではないが、それでもロックダウン中およびロックダウン後にラストマイルデリバリーが急増し、モスクワの街には自転車に乗った宅配業者があふれたという。

Yandexの広報担当者は「幸いだったのは、私たちのクルマはすでに過酷な温度条件への対処方法を知っていたということです。テルアビブでの経験は、新型コロナ期間中のモスクワで大いに役立ちました」と語った。

画像クレジット:Wind

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:sako)