FigmaがUIデザインにもたらしたものを建築デザインで実現したいと考える「Arcol」

Arcolは、ブラウザ上で動作する設計・文書化ツールの構築の初期段階にある。

Paul O’Carroll(ポール・オキャロル)氏は、建築家である彼の父親が、建物の設計に使えるデジタルツールが不足していることに不満を抱いているのを見て、2021年1月に同社を立ち上げた。彼は、父親が鉛筆と紙を持って机に向かい、6カ月後に実現し始める建物をスケッチしているのを見て育った。

Arcolに入社する前、オキャロル氏はデジタルデザインスタジオで、大企業向けのデザインツールを作っていた。彼は、使われている技術が何十年も前のものであることを知り、Autodesk(オートデスク)のようなレガシーツールに挑戦したいと考えた。

「このような中で、建物の設計に使われるツールがいかにひどいものかを身をもって知り、建築家、エンジニア、請負業者のためにもっと良いツールがあるべきだと思ったのです」とオキャロル氏はTechCrunchに語った。「FigmaがUIデザインの分野で成し遂げたことを、建築デザインでやりたいのです」。

Arcolの創業ストーリーについては、オキャロル氏のブログでより詳しく知ることができる。同社は2Dスケッチを3Dモデルに変換するウェブベースのツールを開発中で、これにより、小さなビルから超高層ビルまで、クリエイティブでコラボレイティブなキャンバスを使って設計することが可能になる。

この製品は現在開発中で、2022年後半に発売される予定だ。オキャロル氏によると、ウェイティングリストは8000人を超えたところだという。彼は、この技術は構築が複雑で、製品は今後数カ月でクローズドアルファに入り、5月頃に20件の顧客を対象にプライベート展開される予定だと語った。年末までには、一般に公開する予定だという。

Arcolの創業者ポール・オキャロル氏(画像クレジット:Arcol)

この勢いを維持するため、同社はCowboy Ventures、FigmaのCEOであるDylan Field(ディラン・フィールド)氏、Figmaの企業開発・戦略責任者であるLauren Martin(ローレン・マーティン)氏、元MozillaのCEOでFigmaの取締役でもある投資家John Lilly(ジョン・リリー)氏、ProcoreのCEOであるToey Courtemanche(トワ・コートマンシュ)氏、元AutodeskのCEOであるAmar Hanspal(アマル・ハンスパール)氏、Not Boring Capitalの創業者でエンジェル投資家のPacky McCormick(パッキー・マコーミック)氏が支援する360万ドル(約4億2700万円)のシード資金を調達した。これにより同社は、2021年150万ドル(約1億7800万円)のプレシード資金を獲得したのを含め、累計500万ドル(約5億9300万円)強の資金を調達したことになる。

今回の資金調達は、経営陣の充実と現在5名のArcolの従業員の増員に充てられる予定だ。

オキャロル氏はこう述べている。「市場の不満がピークに達しているため、製品を迅速に構築する必要があります。建築家にとって実現されていなかったことであり、そのためにクリエイティブな側面が失われてしまいました。私たちは、魔法をよみがえらせたいのです」。

画像クレジット:

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(文:Christine Hall、翻訳:Den Nakano)

タンポポの種のように風に乗せてばら撒ける超軽量センサーをワシントン大学の研究者が開発

100平方マイル(約259平方キロメートル)の森林で温度、湿度、日射量をモニターしようとしたら、さまざまな機器を結びつけてシステムの森を構築するのに長い時間がかかる。しかし、タンポポやニレの種を撒くように、センサーをばら撒くことができたらどうだろう?ワシントン大学の研究者は、必要な機器を風で運べるほど軽いデバイスにまとめあげた

このプロジェクトは、小規模で特定の目的に特化したコンピューティングの境界を押し広げるものだ。まだごく初期の試作品に過ぎないが、組込み電子機器が進むべき興味深い方向性を示している。

「私たちの試作品は、ドローンを使ってこれらの数千個のデバイスを、一度に投下できる可能性を示唆しています。これらのデバイスは、すべて少しずつ異なる方へ風で運ばれていき、基本的にはこの1回の投下で、1000個のデバイスネットワークを構築することができます」と、ワシントン大学の教授であり、多くのデバイスを製作しているShyam Gollakota(シャム・ゴラコタ)氏は語る。

この電子機器はバッテリーを一切使用しないため、全体の質量を大幅に削減することができる。数個の小さなセンサーと無線トランシーバー、そして数個の小さな太陽電池を搭載したこのデバイス自体の重さは、30ミリグラムにも満たない。

風を受ける部分の構造は何十回も試行錯誤を繰り返し、最終的にこの自転車の車輪の形に辿り着いた。これによってデバイスは、出発地点から遠くまで移動できるだけでなく、95%の確率でソーラーパネルを上向きにして着地できるという。ドローンでばら撒く場合は、100メートルほど移動して着地する。

一度着地すれば、明るいうちは常に動作し、後方散乱高周波信号を利用して周囲や互いに信号を跳ね返し、制御装置で収集することができるアドホックネットワークを構成する。

重さ1ミリグラムの驚異的に軽いタンポポの種が何キロメートルも移動できるのに比べれば、今はまだそれほどの機動力はない。しかし、自然界ではその設計を完成させるのに測り知れないほど長い年月がかかったが、ワシントン大学のチームは最近始めたばかりだ。もう1つの課題は、もちろん、本物の種はやがてタンポポになるか、朽ちて無に帰すという事実である。これに対し、1000個のセンサーは、拾われるか粉々に砕かれるまで残るだろう。生分解性エレクトロニクスの分野はまだ新しいが、研究チームはこの点に取り組んでいるという。

もし、電子機器廃棄物という観点(そして、おそらくそれを食べる動物という観点)を解決できれば、絶滅の危機に瀕した生態系を監視しようとする人々にとって、非常に有益なものになるはずだ。

「これは最初の一歩であり、だからこそ、とてもエキサイティングなのです。ここから私たちが進むことのできる道はたくさんあります」と、筆頭研究者のVikram Iyer(ヴィクラム・アイヤー)氏は語っている。この研究成果を記した論文は、米国時間3月16日発行の「Nature(ネイチャー)」誌に掲載された。

画像クレジット:Mark Stone/University of Washington

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ウクライナのゼレンスキー大統領が降伏するフェイク動画をMetaが削除

ウクライナ大統領Volodymyr Zelensky(ウォロディミル・ゼレンスキー)氏が軍に降伏を命じているフェイクビデオを、Metaは米国時間3月16日に削除した。動画は、ロシアによる隣国ウクライナへの残忍な侵攻と並行して行われている情報戦争において警戒を要する最新の出来事だが、以前からウクライナ政府とソーシャルメディア企業が予期瞬間でもある。

MetaのセキュリティポリシーのトップであるNathaniel Gleicher(ナサニエル・グレイチャー)氏の説明によると、そのコンテンツは「操作されたメディア」に対する規則を破っているため削除された。マルチメディアによる偽情報の形式の1つで、公人が実際には口にしていないことを言ってるように編集した動画で表現されている。

このビデオは、誤解を招く操作されたメディアに対する、弊社のポリシーに違反しているため迅速に検討して削除し、他のプラットフォームの同僚たちにも通知した。

この誤解を招く動画のMetaによる削除はかなり早かったが、ロシア版FacebookであるVKontakte上ではすでに広まっているようだとAtlantic Councilのデジタル犯罪捜査研究所はいう。同研究所はさらに、Telegramのロシア寄りチャンネルが3月16日にゼレンスキー氏が国の降伏を呼びかけているディープフェイクを掲載したともいう。

国営テレビネットワークのUkraine 24も、ニュース表示が3月16日に同じ目的でハックされたと報じている。その表示は、Zelenskyからと称するメッセージがウクライナ国民に、ロシアの侵略軍への抵抗をやめるよう呼びかけている。

ロシアのハイブリッド戦争が始動。Ukraine 24のテレビチャンネルがハックされた。ニュース表示がゼレンスキー大統領の偽の降伏宣言を表示されるようになった。@ZelenskyyUaはすでにこのフェイクに反論して、彼が武器を置けと要求できるのはロシア軍に対してだけだと述べている。

ウクライナの大統領はすばやくその偽情報を否定して、侵攻の開始以来ゼレンスキー氏のコミュニケーションのスタイルとなったセルフィービデオで、Telegram上でメッセージした。

2022年3月初めにウクライナの戦略的コミュニケーションセンターが、ロシアは変造したビデオを使って侵攻の一般大衆の受け止め方を歪曲するかもしれないと警告した。そのセンターはウクライナ政府の文化情報政策省に属し「外部の脅威、中でも特にロシア連邦の情報攻撃を阻止する」ことに注力している。

同センターは3月2日にFacebookページで次のように述べている。「ウォロディミル・ゼレンスキーがテレビで降伏声明を述べているところを、自分が見ていると想像してみよう。姿も見えるし声も聞こえるからそれは事実だが、しかしこれは本当ではない。用心しよう。これはフェイクだ!」。

画像クレジット:Drew Angerer/Getty Images/Bloomberg, Getty Imagesより/Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

【レビュー】「静かさ」も魅力、Mac Studioは卓上のモンスターだ

Mac Studio。今回テストしたのは、M1 Ultra(GPU64コア版)、メモリ128GB・ストレージ2TBのモデル。74万1800円(税込)とかなり高価な製品だ

Mac Studio。今回テストしたのは、M1 Ultra(GPU64コア版)、メモリ128GB・ストレージ2TBのモデル。74万1800円(税込)とかなり高価な製品だ

最高性能のMacである「Mac Studio」のレビューをお届けする。

感想はシンプル。「重いがデカくない」「パワフルだが静か」もう、この2つに尽きる。

テストに使用したMac StudioとStudio Display。セットで総額98万4600円(税込)

テストに使用したMac StudioとStudio Display。セットで総額98万4600円(税込)

Appleシリコン世代としてのハイエンドを目指した製品だが、それにふさわしい性能になっている印象だ。

Mac miniを「ハイパワー化するために巨大にした」ような設計

その昔、「Power Mac G4 Cube」という製品があった。

パワフルでコンパクト、ディスプレイとセットでクリエイターが使うことを想定したマシンだった。そうそう、あのディスプレイも「Studio Display」だった。

Mac Studioは立方体ではないが、パッケージが見事に「立方体」でちょっと昔を思い出させる。

Mac Studioのパッケージ。ほぼ立方体だ

Mac Studioのパッケージ。ほぼ立方体だ

Studio Displayのパッケージと一緒に。流石にディスプレイが大きいので、パッケージサイズが霞む

Studio Displayのパッケージと一緒に。流石にディスプレイが大きいので、パッケージサイズが霞む

中身はどちらかというとMac miniに近い。キーボードやマウスは付属せず、入っているのは本体と電源ケーブルくらいとシンプルだ。

パッケージはiMacなどと同じく紙。パカっと開く構造になっている

パッケージはiMacなどと同じく紙。パカっと開く構造になっている

本体の他に付属するのは電源ケーブルくらい。キーボードやマウスは別売だ

本体の他に付属するのは電源ケーブルくらい。キーボードやマウスは別売だ

本体の設置面積はMac miniと同じだが、高さ9.5cmとかなり分厚くなっている。そして、意外なほどの重さに驚く。今回試用したM1 Ultra搭載のモデルは、重量が3.6kgもあるのだ。Mac miniが1.2kgなので、ちょうど3倍になる。

正面から。Thunderbolt 4端子が2つとSDカードスロットが前面に付いたのがありがたい。Mac miniと比べるとかなり厚みが増している

正面から。Thunderbolt 4端子が2つとSDカードスロットが前面に付いたのがありがたい。Mac miniと比べるとかなり厚みが増している

Mac Studioは、M1 Ultra搭載モデルとM1 Max搭載モデルとで重さが異なる。前者が3.6kgであるのに対して後者は2.7kg。その違いは、冷却に使われるファンやヒートシンクが銅製になっているからだという。

Appleの発表会映像を見る限り、Mac Studio内の3分の2程度が冷却機構で占められており、ボディの後ろ側にもかなりの面積の排気口がある。

Appleの発表会映像より。内部のかなりのスペースが、エアフローのための仕組みになっている

Appleの発表会映像より。内部のかなりのスペースが、エアフローのための仕組みになっている

背面。上3分の2が排熱口。その下にインターフェースが並ぶ

背面。上3分の2が排熱口。その下にインターフェースが並ぶ

底面にはロゴを囲むように吸気口がある。そういえば、MacBook Proの底面にもロゴが付いているのだが、Appleはこのパターンをハイエンド製品の定番デザインにするつもりだろうか。

底面。ロゴの周囲を吸気口が囲むようなデザインになっている

底面。ロゴの周囲を吸気口が囲むようなデザインになっている

Mac miniから大きく変わったのがインターフェースだ。

Mac miniは背面に

  • Thunderbolt 4/USB Type-C×2
  • USB Type-A×2

だったが、

Mac Studioは

  • Thunderbolt 4/USB Type-C×4
  • USB Standard-A×2

になり、さらに前面にも

  • Thunderbolt 4/USB Type-C×2(M1 Max搭載機ではUSB Type-C×2)
  • SDXCカードスロット(UHS-II)

が搭載されている。

「M1 MaxじゃMac Studioの意味が……」と思っている人もいそうだが、単純にインターフェースの増えたMacとして選んでもいいのかもしれない。

特に前面の端子は、今回も試用中にも大変お世話になった。当たり前の話だが、アクセスしやすい場所にあるインターフェースがあるのはとてもありがたい。

速さは圧倒的、コアの数だけ性能アップ

ではパフォーマンスをチェックしていこう。

今回は比較対象として、M1搭載のMacBook Pro・13インチモデル(2020年モデル)とM1 Pro搭載のMacBook Pro・14インチモデル(2021年モデル)も用意している。一部マルチプラットフォームで試せるものについては、自宅で使っているWindowsのゲーミングPC、ASUSの「ROG Zephyrus G14」(2021年モデル、CPUはAMD Ryzen 9 5900HS、GPUはNVIDIA GeForce RTX 3060 Max-Q)での結果も合わせて見ていただきたい。以下、「ROG Zephyrus G14」を便宜上「ゲーミングPC」と呼称する。

まずは定番の「Geekbench 5」から。

CPUについてはシンプルにわかりやすい結果だ。基本的にはCPUコアの数だけ速くなっている。1コアあたりの速度差は、M1とM1 Pro・Ultra、Ryzen 9で当然あるのだが、コア数による速度差を比較すると小さなもの。20コアを搭載したM1 Ultraが圧倒的に速い。

Geekcbench 5のCPUテスト。コア数の分だけ速い、というわかりやすい結果が出た

Geekcbench 5のCPUテスト。コア数の分だけ速い、というわかりやすい結果が出た

同じくCPUの速度をチェックするため、「Cinebench R23」も使ってみた。これはCG演算の速度を測るもので、主にCPUに依存する。

Cinebench R23。CPUでのCG演算の速度を計測するものだ

Cinebench R23。CPUでのCG演算の速度を計測するものだ

こちらの値も、基本的にはGeekbench 5のCPUテストと傾向が同じである。CPUコアの分だけスピードが出ている。

Cinebench R23の結果。こちらも、CPUコア数に応じたテスト結果になっている

Cinebench R23の結果。こちらも、CPUコア数に応じたテスト結果になっている

他のCPUの結果と比較すると、上にいるのは32コアの「Ryzen Threadripper 2990WX」や24コアの「Xeon W-3265M」といったところであり、もはやコンシューマ向けとは言い難いレベルである。

Cinebench R23には過去にテストされたCPUごとの値も提示されているのだが、M1 Ultraより速いものは、よりコア数の多い超ハイエンド2つだけになった

Cinebench R23には過去にテストされたCPUごとの値も提示されているのだが、M1 Ultraより速いものは、よりコア数の多い超ハイエンド2つだけになった

GPUについてはどうだろう?

まず、Geekbench 5。こちらはマルチプラットフォーム性を考えて「OpenCL」でテストしている。M1 Ultraがかなり速いが、RTX 3060での値を超えてはいない。

Geekbench 5によるGPUテスト。OpenCLを使ってのテストだが、RTX3060を搭載したゲーミングPCの方が上と出ている

Geekbench 5によるGPUテスト。OpenCLを使ってのテストだが、RTX3060を搭載したゲーミングPCの方が上と出ている

ただ、Geekbench 5のGPUテストはGPUの全ての要素を反映する訳ではないので、そちらを考慮して別のテストもしてみた。「3DMark」のマルチプラットフォーム対応テストである、「3DMark Wild Life Extreme」だ。Extremeとあるように、スマホまで想定したWild Lifeの中でもハイパフォーマンス向けである。それを、フレームレート制限をかけない「Unlimited」モードでチェックした。

マルチプラットフォームの3Dベンチマーク、「3DMark Wild Life Extreme」でもテストを行なった

マルチプラットフォームの3Dベンチマーク、「3DMark Wild Life Extreme」でもテストを行なった

結果は、M1 Ultraの圧勝だ。多くのビデオメモリを活用できることもあり、ソフトの作り方によって相当な差が出るのであろうことが予想できる。

「3DMark Wild Life Extreme」でのテストスコア。Mac Studioの値は35159と他を圧倒している

「3DMark Wild Life Extreme」でのテストスコア。Mac Studioの値は35159と他を圧倒している

「3DMark Wild Life Extreme」でのフレームレートスコア。Mac Studioが210フレーム、ゲーミングPCが75フレームと差がかなり開いている

「3DMark Wild Life Extreme」でのフレームレートスコア。Mac Studioが210フレーム、ゲーミングPCが75フレームと差がかなり開いている

じゃあ、実際の作業ではどのくらいの速度になるのか?

ここでは、Macのビデオ編集ソフト「Final Cut Pro」を使い、4K/HDR撮影の映像をグレーディング・手ぶれ補正などの処理を施した上で2分51秒に編集した映像を、同じく4KのH.264形式で圧縮して書き出すまでの時間を計測した。これまでのグラフとは違い、「棒が短いほど性能がいい」のでその点ご注意を。また、アプリの関係上、Macのみでの比較になる点をご了承いただきたい。

Appleのビデオ編集ソフト「Final Cut Pro」を使い、4K/HDRのビデオを書き出すまでの時間を計測

Appleのビデオ編集ソフト「Final Cut Pro」を使い、4K/HDRのビデオを書き出すまでの時間を計測

こちらも、当然ながらM1 Ultraは速い。そこそこ重い処理なのだが、M1の半分の時間で終わっている。M1とM1 Proでは12%しか速度が変わっていないが、M1とM1 Ultraの比較では93%以上高速になっている。この差は大きい。

書き出し速度の比較。短いほど良い結果なのにご注意を。M1からM1 Proでは劇的な差にならなかったのに、M1 Ultraでは半分くらいまで時間が短縮されている

書き出し速度の比較。短いほど良い結果なのにご注意を。M1からM1 Proでは劇的な差にならなかったのに、M1 Ultraでは半分くらいまで時間が短縮されている

性能は重要、より重要なのは「速くてしかも静か」であること

ただ、テスト中に感じたのは「速さ」だけではない。

どのプロセッサも負荷の高い処理を長く行うと発熱が大きくなり、冷やすためのファンの動作も大きくなる。

M1シリーズはモバイル向けプロセッサが出自ということもあってか、比較的発熱が小さい傾向にあり、ファンなども回りにくい。だが、ベンチマークのようなことをすると、どうしてもアルミボディが熱くなってくる。

ゲーミングPCについてはいうまでもない。特に今回のテストは、パフォーマンス重視の「TURBOモード」設定で行なったため、発熱もファンの動作音も大きい。掃除機並み(55dB程度)の音になることも珍しくない。

一方、Mac Studioは全然音がしない。

アクティビティモニタで負荷を見ると処理負荷は天井に張り付いている状態なのに、ファンの回る音もほとんどしないし、排気もそこまで熱くはなっていない。手を排気に当てると、ほんの少し暖かい程度。これは、プロセッサの発熱が少ないだけでなく、相当に排熱機構が優秀ということだろう。

Mac Studioは高価な製品で、ここまでのパフォーマンスを必要とするのは一部のプロフェッショナル・ワークだろう、とは思う。

だが、高い負荷をかけてもこれだけ静かである、というのはそれだけで大きな魅力である。誰だって、作業を騒音や発熱で邪魔されたくないはずだ。

プロセッサとGPUの組み合わせによって、もっと高性能なPCを作ることもできると思う。PCアーキテクチャのサーバーなどではそうした機器が必要になる。だが、ここまで静かで「普通に卓上に置いて使えるのに、パワフル」な製品は少ない。Mac Studioが圧倒的に優れているのはその点だ。

(西田宗千佳。Engadget日本版より転載)

温室栽培の作物を見守るロボットを開発したIUNU(ユーノウ)が約28.4億円を調達

正直なところ、IUNU(「ユーノウ」と発音)という社名はわかりやすいとは言えない(さらに同社の「LUNA(ルナ)」と呼ばれるロボットの存在が問題を余計に混乱させている)。しかし、このアグリテック企業は堅実な事業に取り組んでおり、シリーズBラウンドで見事な信任を得たばかりだ。米国時間3月16日のニュースでは、シアトルに拠点を置く同社が、2400万ドル(約28億4000万円)の資金を獲得したことが明らかになった。このラウンドは、Lewis & Clark Ventures(ルイス&クラーク・ベンチャーズ)が主導し、S2G Ventures(S2Gベンチャーズ)、Ceres Partners(セレス・パートナーズ)、Astanor Ventures(アスタナー・ベンチャーズ)などが参加した。

IUNUがターゲットにしているのは温室の世界だ。同社のLUNAロボットシステムは、温室の屋根の上を移動し、コンピュータビジョンを使って作物をチェックする。このシステムが問題のある場所や収穫可能な場所を検出できるので、農家は農作物の上を歩いたりしゃがんだりする必要がない。これは農場の規模が大きくなると問題になり始めることだ。

これまで我々が見てきたこの種のシステムは、より大規模な自律型ロボットの一部として、より一般的な農場に展開されるケースが多かった。しかし、確かに温室はこのような技術にとって理に適っている。屋根の上に設置したレールの上を効果的に行き来することができるからだ。

IUNUによると、同社は現在、米国の温室栽培の葉物野菜生産者の4分の1と取引しているという。従業員は現在60名で、この半年間で1.5倍に増加した。今回調達した資金は、グローバルな事業の拡大や、新製品の研究開発を強化するために使われる予定だ。

「今回の投資ラウンドは、機関投資家の当社に対する信頼を反映したものです」と、Adam Greenberg(アダム・グリーンバーグ)CEOはリリースで述べている。「この1年で農作物栽培の自動化に関する話は加速しており、我々はその先頭を走っていることを誇りに思っています」。

この手の技術では常にデータが大きな役割を果たすが、IUNUは現在、既存の展開に基づく「業界最大の生産データセット」を持っていると主張する。このような大きな資産は、作物にとって大きな問題となる前に潜在的な問題を特定するアルゴリズムを作成するために重要だ。

2021年9月、同社は2015年のStartup Battlefield(スタートアップ・バトルフィールド)で優勝したAgrilyst(アグリリスト)、後に社名を変えてArtemis(アルテミス)となったアグリテックのスタートアップ企業を買収し、データ収集能力を強化した。

画像クレジット:IUNU

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ハンバーガー調理ロボットに続き、Miso Roboticsからトルティーヤチップスを調理するロボットが登場

ハンバーガーを調理するロボットアーム「Flippy(フリッピー)」を開発した会社から、トルティーヤチップスを調理するロボットアーム「Chippy(チッピー)」が登場した。Miso Robotics(ミソ・ロボティクス)は米国時間3月16日、ファストフードのメキシコ料理レストランチェーン「Chipotle(チポトレ)」と提携し、トルティーヤチップスを揚げて味付けするシステムを開発すると発表した。もっとも、同社の「Flippy 2(フリッピー2)」が2021年、ファストフードチェーン「White Castle(ホワイト・キャッスル)」のフライドポテトを調理する方法を発見したことを考えれば、それほど大層なこととは思わないが。

この新しいロボット / AIシステムは現在、オレンジ郡にある同チェーンの食品研究所「Cultivate Center(カルティベイト・センター)」でテストされている。2022年後半には、南カリフォルニアのレストランで試験運用を開始する予定だ。その前に展開されたFlippyの時と同様に、Chippyのメーカーはこの試験期間中に、従業員や顧客にとって何が有効で、何が有効でないかを見極めることになるだろう。

このシステムは、バスケットを高温の油槽に浸すだけでなく、塩とライム汁でチップスに味付けもできるように設計されている。Chipotleは、ちょっとしたカオスが、調理に人間らしさを取り戻す鍵になるという。

「誰もがチップスに、ほんの少し塩味が濃い方がいいとか、もう少しライムを効かせて欲しいとか、注文を付けたくなるものです」と、Chipotleの料理担当バイスプレジデントであるNevielle Panthaky(ネヴィール・パンタキー)氏は語る。「当社の料理体験の背後にある人間性を失わないように、私たちはChippyを広範囲に訓練し、当社の現在の製品を反映した、お客様が期待する味の微妙なバリエーションを提供できるようにしています」。

Miso RoboticsのChippyは、ハンバーガー調理ロボットのFlippyと、ソフトドリンクディスペンサーの「Sippy(シッピー)」に加わることになる。この先、給仕ロボットの「Tippy(ティッピー)」や、マリファナ調合ロボット「Trippy(トリッピー)」なども登場するのだろうか?

画像クレジット:Miso Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Android 13ではプッシュ通知がオプトインに、グーグルが開発者プレビュー第2弾を公開

最近のAndroid開発は月単位で行われているため、Google(グーグル)がAndroid 13の最初の開発者プレビュー(コードネーム「Tiramisu」と開発者向けドキュメントでは時折呼ばれている)を発表してから約1カ月後に、開発者向けプレビュー第2弾をリリースしたのは驚くことではない。

これらのプレビューは通常まだ多くの粗削りな部分を持ち、開発者向けであるため、最初のプレビューと同様に、無線インストールオプションはない(ただし、最初のプレビューをインストールした場合は、無線アップデートとして2番目のプレビューを入手することができる)。Googleは、Pixel 6 Pro、Pixel 6、Pixel 5a 5G、Pixel 5、Pixel 4a(5G)、Pixel 4a、Pixel 4 XL、Pixel 4と、Android Emulator向けにシステムイメージを公開した。

最初のプレビューではAndroid 13でのユーザーエクスペリエンスを少し垣間見ることができたが、米国時間3月17日のアップデートは、開発者向けの機能が中心となっている。

画像クレジット:Google

その中でユーザーが気づくであろう例外は、アプリが通知を送信する許可を求めなければならなくなったことだ(ただし、Googleは今日これを強調しているが、以前からAndroid 13の機能として知られていたものだ)。他のパーミッションと同様に、アプリは通知を送信できるかどうかをユーザーに尋ねる必要があり、これはオプトインプロセスだ。もしあなたが今までアプリをインストールして、そのアプリがすぐに大量の通知を送ってきた経験があったら、これを気に入ることだろう。一方、開発者は、オプトインしてもらうために、ユーザーに対して十分なコントロールとコンテクストを提供する必要がある。

パーミッションに関しては、開発者はアプリのパーミッションが不要になった場合、ダウングレードすることもできるようになった。Android 13には、これを簡単に実行できる新しいAPIが搭載される予定だ。

また、新バージョンのOSでは、開発者が明確に望んでいない限り、アプリが他のアプリからメッセージを受信できないようにする新機能が導入される。

今回のプレビューでは、MIDI 2.0規格のサポート(ミュージシャンにはうれしい)により、MIDI 2.0ハードウェアをUSB経由でAndroidデバイスに接続できるようになる。さらに、Bluetooth LE Audioのサポートにより、オーディオの共有や放送、情報およびアクセシビリティのための公共放送へのサブスクリプションといった機能がもたらされる。そしてその名の通り、消費電力が少なくなる(LE=Low Energy)。

Android 13は、COLRv1フォーマットに準拠したベクターフォントもサポートし、Googleはシステム絵文字もこのフォーマットに移行する予定だ。これらはベクターであるため、ファイルサイズがより小さく、どのようなサイズでもピクセル化されることなくレンダリングできる。

COLRv1ベクター絵文字(左)とビットマップ絵文字(画像クレジット:Google)

非ラテン文字を使用する人のために、Android 13ではタミル語、ビルマ語、テルグ語、チベット語などの言語の表示を改善し、各言語の行の高さを適応してクリッピングを防止するようにしてある。また、日本語や中国語などの表音文字の入力メソッドを使用するユーザーのために、Android 13では新しいテキスト変換APIが導入され、日本語ユーザーはひらがなを入力するとすぐに漢字の検索結果が表示されるようになり、現在のような複雑な4ステップのプロセスを省略することができる。

画像クレジット:Wanwisa Hernandez / EyeEm / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Den Nakano)

ウェブベースのコラボデザインツールFigmaが日本法人を設立、今後数カ月をめどに日本語版をリリース

ウェブベースのコラボデザインツールFigmaが日本法人を設立、今後数カ月をめどに日本語版をリリース

ブラウザー上で共同編集できるデザインプラットフォーム「Figma」(フィグマ)を提供するFigma,Inc.は3月16日、アジアで初の拠点となる日本法人Figma Japanの設立を発表した。今後数カ月をめどに日本語版をリリースする予定。Figma製品が英語以外で公式に利用できるようになるのは、今回が初。またカントリーマネージャーとして、ブライトコーブのシニアバイスプレジデントおよび日本法人代表を務めていた川延浩彰氏が就任する。

これまでサンフランシスコとロンドンにオフィス拠点を設けてきたFigmaは、日本国内でも採用活動を強化するという。
Figmaの日本進出への背景には、2019年末にFigma本社の製品並びに営業チームが日本へ市場調査に訪れたことや、直近1年間で(ユーザーの登録数ベースで)約2倍に拡大した活発なデザイナーコミュニティの存在がある。

同社によると、日本について、デザインとテクノロジーのグローバルリーダーとしてのポジションだけでなく、デザイン思考を持つ多くの顧客が存在する重要な市場と位置付け。このため、アジア最初の拠点として日本でのFigma Japan設立を決定したという。

Figma共同創業者兼CEOのDylan Field(ディラン・フィールド)氏は、「日本法人を設立し、日本市場向けのローカライズを行うことにより、この重要なコミュニティにFigmaがより一層普及し、『すべての人がデザインを利用できるようにする』という私たちのビジョンの実現に近づけてくれると考えています」と述べている。

アマゾンが約1兆円でMGMの買収を完了、「007」「ロッキー」「ロボコップ」などがプライム・ビデオで配信予定

Amazon(アマゾン)は85億ドル(約1兆円)でのMGM(メトロ・ゴールドウィン・メイヤー)の買収を完了したと、米国時間3月17日に発表した。この買収完了により、4000本以上の映画と1万7000本以上のテレビ番組が、Amazonのストリーミングサービスであるプライム・ビデオの一部となる予定だ。

このリストには「007」や「ロッキー」シリーズ「ファーゴ」「ロボコップ」「羊たちの沈黙」などの名作が含まれている。これらの新タイトルは、Netflix(ネットフリックス)、Hulu(フールー)、HBO Maxなどのライバルに対して、プライム・ビデオを優位に立たせることになる。

2021年5月に初めて発表されたこの取引は、2日前に欧州連合の反トラスト規制当局から認可を受けた。規制当局は、AmazonとMGMの重複が限定的なため、この取引が競争を著しく低下させることはないだろうと判断した。Amazonは、米連邦取引委員会が合併に異議を唱える3月中旬の期限が切れた後、取引を進めている。

「MGMは、100年近くにわたって優れたエンターテインメントを生み出してきた歴史があり、私たちは、世界中の視聴者に幅広いオリジナル映画やテレビ番組を提供するという彼らの取り組みを共有しています」と、プライム・ビデオおよびAmazon Studioの上級副社長Mike Hopkins(マイク・ホプキンス)氏は声明で述べた。「我々はMGMの社員、クリエイター、タレントをプライム・ビデオとAmazon Studiosに歓迎します。我々のお客様に質の高いストーリーテリングを届けるより多くの機会を創出するためにともに働くことを楽しみにしています」。

Disney(ディズニー)+のようなスタジオストリーミングプラットフォームの立ち上げに見られるように、この契約により、既存の契約が終了すれば、競合するサービスからコンテンツが引き抜かれる可能性もある。

「MGMとその象徴的なブランド、伝説的な映画やテレビシリーズ、そして我々のすばらしいチームとクリエイティブパートナーがプライム・ビデオファミリーに加わることに興奮しています」と、MGMの最高執行責任者であるChris Brearton(クリス・ブレアトン)氏は声明で述べた。「MGMは、過去 100年間で最も有名で高い評価を得た映画やテレビシリーズの制作を担ってきました。私たちは、この伝統を引き継ぎ、次の章に向かい、プライム・ビデオとAmazon Studiosのすばらしいチームと協力して、今後何年にもわたって視聴者に最高のエンターテインメントを提供していきたいと考えています」。

Amazonはここ数年、大きな成功を収めているが、MGMはそれ以上の困難を経験している。2010年、同スタジオは、何度も手を変え品を変え、連邦破産法第11章の適用を申請した。スタジオは再建され、債権者が経営権を握った。

Amazonは、100年近い歴史を持つこのスタジオが、プライム・ビデオとAmazon Studiosのコンテンツを補完し、両者が協力することで、加入者により質の高いエンターテインメントの選択肢を提供するとしている。

さらに、Amazonは自社の制作スタジオや配給を通じて、オリジナルコンテンツへの積極的な取り組みを進めている。映画分野では、アカデミー賞脚本賞を受賞した「マンチェスター・バイ・ザ・シー」など注目作を制作している。また、9月2日に公開予定の「ロード・オブ・ザ・リング」を題材にしたシリーズ「ロード・オブ・ザ・リング 力の指輪」にも着手している。このシリーズは、プライム・ビデオが現在提供している「マーベラス・ミセス・メイゼル」「フリーバッグ」「ザ・ボーイズ」「ジャック・ライアン」などの人気テレビ番組と合流する予定。

画像クレジット:Amazon

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(文:Aisha Malik、翻訳:Yuta Kaminishi)

MetaがVRヘッドセット発売から3年近く経ちようやく基本的な保護者向け管理ツールを追加

Meta(当時はFacebook)が最初にVRヘッドセットをリリースしたのは2019年5月だったが、ここにきてようやくMeta Questに保護者向け管理ツールを追加する。

Metaは2021年に驚きのリブランドをして以来、VRへの投資は社名変更の価値があったことを証明しようとしていると注目されている。しかし米国政府の最上層部が安全性を重要視する中で、Metaはさまざまな保護者向け管理ツールを公開することで子どもたちにとってより安全なプラットフォームにしようと取り組んでいる。

Meta Quest 2は2021年の年末商戦で販売数を大きく伸ばし、クリスマス後の2週間でOculus Questのモバイルアプリはおよそ200万回ダウンロードされたと推計される。しかしMetaのヘッドセットが普及するにつれ、ペアレンタルコントロール機能の欠如が問題視されるようになった。英国個人情報保護監督機関はこのヘッドセットがオンラインでの子どもの安全規定に違反している恐れがあるとして圧力を強めている。

画像クレジット:Meta

現在、Questヘッドセットではデバイスへのアクセスに関してパスコードなどのロック解除パターンを設定することができる。Metaによれば、4月にこの機能を拡張して特定のアプリに適用できるようにするという。つまり、保護者が共有使用しているヘッドセットで子どもに特定のゲームをプレイさせたくないなら、そのアプリ専用のロック解除コードを設定できるようになる。

同社は5月には、IARC(International Age Rating Coalition、国際年齢評価連合)がその年齢層には不適切とみなしたアプリを10代がダウンロードできないように自動でブロックする機能を追加する予定だ(QuestのプロフィールがFacebookアカウントと関連づけられて年齢が判断される)。ティーンが保護者のログイン情報と関連づけられているアカウントを使用している場合は、この保護機能は動作しないかもしれない。

今後数カ月かけて、MetaはQuestのペアレンタルコントロールを強化していく方針だ。Oculusのモバイルアプリで保護者はペアレントダッシュボードにアクセスし、このダッシュボードで子どものアカウントとリンクする。

Metaはさらに、ツールや保護者向けリソースを集めたファミリーセンター公開した。

画像クレジット:Meta

Metaはブログ記事でアカウントのリンクに関し「プロセスを開始するのはティーンで、保護者とティーンの双方がエクスペリエンスに同意する必要があります」と記している。

モバイルアプリにVR管理ツールを含めるのは、VRヘッドセットよりもモバイルアプリの操作に慣れている保護者にとってはスマートな方法だ。保護者はこのモバイルダッシュボードでティーンのアカウントに対し、例えば全年代向けアプリのダウンロードを事前に承認するというようにレーティングをもとに子どもがダウンロード可能なアプリを管理できる。ティーンが有料アプリを購入したい時に、保護者はそのリクエストを承認または拒否する設定もある。ウェブブラウザや、ヘッドセットをPCのVRゲームに接続するLinkアプリといった特定のアプリを子どもが利用できないようにブロックする機能もある。さらに、保護者が子どものスクリーンタイム、フレンドリスト、ダウンロード済みアプリを見ることもできる。

Questヘッドセットは13歳以上のユーザーを対象にしているが、もちろん13歳未満の子どもも必然的にバーチャルリアリティを利用するようになるだろう。ただし13歳以上のティーンであっても、MetaのソーシャルVRアプリである「Horizon Worlds」や「Horizon Venues」など一部のアプリには年齢制限がかけられている。

「Horizon Worlds」のウェルカムプラザだけは人間のモデレーターがいるが、モデレーターはメタバースでのセルフィーの撮り方に関する質問をするユーザーのサポートに忙しいようだ。

「Horizon Worlds」はすでにコンテンツモデレーションシステムの不備を悪用されている。BuzzFeedによれば、Qアノンの陰謀説のようなFacebookやInstagramで禁止されているコンテンツが満載のテスト用のワールドを作っても、Metaのコンテンツモデレーションシステムはガイドラインに違反していないと判断したという。このプラットフォームでセクハラや痴漢行為に遭ったと報告しているユーザーもいる。この種のハラスメントは残念ながらテキストベースのウェブのフォーラムでも起きるが、没入型の不慣れなバーチャルワールドではことさら強烈に感じられることもあるだろう。これまでMetaはこうした行為を抑制するための試みとして、オプションで他人との距離を一定以上に保つ個人境界機能を導入した。

TechCrunchはMetaに対し、多くのユーザーがすでに子どもたちがこのプラットフォームをうろついていると報告し、Quest Storeのアプリのレビューでは行儀の悪い子どもたちにつきまとわれたという苦情が散見されることから、18歳未満のユーザーが「Horizon Worlds」などのアプリを利用できないようにする方法についてコメントを求めた。

Metaの担当者はTechCrunchに対し「現時点では長いジャーニーの第一歩を踏み出したところであり、今後さらにオプションを増やしていく予定です」と述べた。Metaはアプリごとのロック解除パターンは解決策としてあり得るとしているが、これは保護者に知識と予見があれば18歳以上向けのプラットフォームを子どもが使えないようにするだけのものだ。Metaは「保護者とティーンが当社のプラットフォームに対して何を必要としているかをさらに把握しながら、保護者向け管理ツールの機能を引き続き開発し拡張していきます」と述べた。

結局のところ、ペアレンタルコントロールは保護者とティーンがそれをきちんと使って初めて効果を発揮する。しかし、こうしたガードレールの設置はMetaにできる最低限のことだ。

画像クレジット:Meta / Facebook

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Kaori Koyama)

Netflixが同一世帯以外のアカウント共有に追加料金を試験導入

Netflix(ネットフリックス)は、会員が同一世帯の人以外とサービスを共有する場合、追加料金を支払わせる新しいオプトイン機能のテストを開始する。この機能では、Netflixの正規料金を下回る料金で最大2つの「サブアカウント」を追加できる。この新しいオプションはまずチリ、コスタリカ、ペルーでテストされ、今後数週間かけてこれらの市場で展開される。同社は、この機能が全世界の会員に展開されるかどうか、またいつ展開されるかは明らかにしていない。

テスト市場のNetflixのスタンダードとプレミアムの会員には、サービス開始時に、同居していない人に対しサブアカウントを追加するオプションが提供される。各サブアカウントは、通常通り独自のプロフィールを持ち、パーソナライズされた「おすすめ」が提供される。しかし、この機能の特徴はサブアカウントにも独自のNetflixのログイン名とパスワードが用意されていることだ。さらに、サブアカウント利用者が自分の名前と請求先情報を使って自分のNetflixサービスを設定する場合、視聴履歴、ウォッチリスト(「マイリスト」)、パーソナライズされた「おすすめ」が引き継がれる。

この機能を実現するために、NetflixはGPSのような位置情報ベースのデータは使っていない。代わりに、IPアドレス、デバイスID、および家庭内のNetflixアカウントにサインインしているデバイスに関するその他の情報など、現在エンドユーザーにサービスを提供するために使用している情報と同じものを活用する。そうした情報を利用することで、Netflixは同一世帯外で継続してアカウントが共有されている場合、それを特定することができる。

新しいサブアカウントを有効にするために、メインアカウントの所有者はコードが記載された電子メールを受け取る。そのコードは、追加のデバイスが世帯の一部であることを証明するために必要となる。

テスト市場において、世帯外の追加ユーザーの料金は、チリで2380ペソ(約350円)、コスタリカで2.99米ドル(約350円)、ペルーで7.9ソル(約250円)だ。これは、Netflixのフルアカウントプランよりも安いが、これまで誰かのNetflixアカウントをタダで共有していた場合はそれより高い。Netflixは、追加ユーザーがサブアカウントの料金をNetflixに対して支払うことはないと述べている。つまり、Netflixからの請求書はこれまで通りメインアカウント所有者に送られる。メインアカウント所有者が追加ユーザーに料金を請求したい場合、その処理と回収はその人次第だ。

Netflixは以前、ユーザーが自分のNetflixアカウントを肉親以外の友人や家族と共有するという一般的な慣習にほとんど目をつぶっていた。実際、当時CEOだったReed Hastings(リード・ヘイスティングス)氏は、アカウント共有は新しい人々がサービスの魅力を発見するチャンスであり、「ポジティブなこと」だと話したこともある。「ストレンジャー・シングス」や「イカゲーム」など、Netflixが提供する番組の多くは世界的な人気を博している。一方、同社の真の課題は競争の激化に直面しながらも、会員と収益を増やし続けることだ。例えば、同社の年末の四半期はここ数年で最も低い会員数の伸びとなり特に厳しかった

理論的には、今回の新たな移行オプションによって、追加ユーザーが正規会員になる道を開くことは、Netflixの有料会員数を長期的に増加させることにつながるだろう。しかし、短期的には、他人のアカウントを使用したままでは、追加ユーザーが会員としてカウントされないことに留意する必要がある。

Netflixはこれまで、アカウント共有を喜んで受け入れてきたが、現在の立場は異なる。Netflixの現在の利用規約では、共有は世帯内で行われるべきものであり、世帯間で行われるものではないとしている。また、同社は2021年3月に「パスワード共有制限機能」なるものをテストしており、おそらくより広範な制限措置が課されることを示唆している。

しかし、Netflixはこの新しいテストを制限だとは考えていないようだ。これは1つのオプションで、会員にとって合理的かどうかを確認したいだけだという。ユーザーから反発を受ければ、同社はこのアイデアを棚上げし、代わりに別の方法を試す可能性もある。あるいは会員がこの機能を取り入れれば、より広範囲に展開すると決めるかもしれない。いずれなのかは後からわかるだろう。

「私たちは、人々には多くのエンターテインメントの選択肢があることを理解しています。従って、どんな新しい機能であっても、会員にとって柔軟で有用なものにしたいと考えています。なぜなら、会員の購読料が私たちのすばらしいテレビや映画を資金的に支えているからです」とNetflixの製品革新ディレクターのChengyi Long(チェンギ・ロング)氏はブログ投稿に書いた。「世界の他の場所で変更を実施する前に、これら3カ国の会員向けに2つの機能が機能するかを理解するべく取り組みます」とロング氏は付け加えた。

画像クレジット:Krisztian Bocsi / Bloomberg / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

RFIDを利用した使い捨て可能な介護用排尿検知センサーC-Letter、介護現場での排尿記録を自動化し自立を支援

RFIDを利用した使い捨て可能な介護用排尿検知センサーC-Letter、介護現場での排尿記録を自動化し自立を支援

センサーを取り付けたオムツ。センサーは名刺サイズの大きさという

総合部品メーカーNOK(エヌオーケー)は3月16日、おむつに装着して排尿を検知し、無線で知らせる排尿検知センサー「C-Letter」を開発したと発表した。介護の現場での排尿記録を自動化し、要介護者の自立を支援するという。

人材不足が進む介護業界では、ITや介護ロボットといったテクノロジーの活用に期待が集まっている。特に、1日のうち何度も必要となる排泄ケアは、作業の効率化が求められる。また、介護される側の尊厳とプライバシーに大きく関与するデリケートなことでもある。テクノロジーをうまく使って排泄を検知し、記録をつけ、それを分析することで、要介護者の生活の質を高め、自立を促す介護計画の策定につなげることが重要となる。

NOKは、フレキシブルプリント基板(FPC)の技術を持つグループ会社の日本メクトロンと共同でC-Letterを開発した。濡れ検知機能とRFID(無線タグ)を組み合わせた濡れ検知デバイスを不織布で挟んだもので、両面テープでおむつに固定して使用する。これを介護施設の見守りシステムや記録システムと連動させれば、使用者の排泄タイミングを自動で記録できるようになる。

今後は介護現場での実証実験、連携する介護システムの拡大、収集した記録データを分析して排泄ケアに貢献するソリューションの開発を進め、事業化を目指すとしている。

大阪大学、薬剤耐性菌・非耐性菌を電子顕微鏡画像と深層学習により形で判別することに成功

薬剤耐性菌(左)と非耐性菌(右)の電子顕微鏡画像。耐性菌は外膜の形状が変化し、一部ブレブ構造(矢頭)も認められる。白矢印は異染顆粒

薬剤耐性菌(左)と非耐性菌(右)の電子顕微鏡画像。耐性菌は外膜の形状が変化し、一部ブレブ構造(矢頭)も認められる。白矢印は異染顆粒

大阪大学は3月16日、薬が効かない薬剤耐性菌を画像で判別できることを明らかにした。顕微鏡画像と深層学習により、耐性の獲得による形態の変化を検知し、さらにその特徴に寄与する遺伝子の紐付けにも成功した。薬剤耐性化の過程での細菌の形態変化、遺伝子や耐性化因子の変化が、機械学習によって複合的に理解できるようになるという。

抗菌薬に長い間さらされることで耐性を獲得した薬剤耐性菌による感染症が問題になっている。薬剤耐性菌が出現するメカニズムについては盛んに研究されているものの、耐性化の抑制に欠かせない総合的な理解は進んでいない。大阪大学産業科学研究所の西野美都子准教授、青木工太特任准教授、西野邦彦教授らによる研究グループは、複数の薬が効かなくなる多剤耐性に関する研究を行っており、その過程で、耐性を獲得した細胞は遺伝子だけでなく形も変化させていることを発見した。そこで細菌の顕微鏡画像と深層学習を用いて形態からの薬剤耐性菌・非耐性菌の判別を試みた。

電子顕微鏡解析の流れ

研究グループは、薬剤耐性菌であるエノキサシンを用いて、急速冷凍固定法で凍結して電子顕微鏡用のサンプルを作り、細菌の細胞内部構造が観察できるようにした。これを1万枚以上撮影し、深層学習で判別したところ、90%以上の正解率で耐性菌と非耐性菌の判別ができた。Grad-CAM(勾配加重クラス活性化マッピング)法で耐性菌の形態学的特徴を可視化すると、外膜領域に注目領域が集中していて、目視の所見と一致した。さらに、抽出された画像的特徴量と遺伝子発現データとの相関を計算すると、外膜を構成するリポタンパク質など、膜の構成に関わる遺伝子との高い相関が認められた。

Grad-CAMによる特徴の可視化。判別の根拠となった注目領域をヒートマップにて可視化。耐性菌(図左)の外膜に注目領域が集中している。非耐性菌(図右)は顆粒に集中している

顔認証など深層学習による画像判別技術は発展しているものの、微生物(肉眼では見ることのできない生物)、特に薬剤耐性菌を対象にした研究は、ほとんど例がないという。将来的には、細菌の形態から薬剤耐性能を自動的に予測する技術の開発につながることが期待されると研究グループは話している。

お店のキャッシュレス決済サービス「STORES 決済」が自動入金の振込手数料を完全無料化

お店のキャッシュレス決済サービス「STORES 決済」が自動入金の振込手数料を完全無料化

STORES(ストアーズ)プラットフォームを運営するへイ(hey)は3月16日、お店のキャッシュレス決済サービス「STORES 決済」(ストアーズ決済。Android版iOS版)において、2022年3月分の売上入金時より、「自動入金」の振込手数料を完全無料化すると発表した。従来売上合計に応じて必要だった振込手数料の完全無料化することで、長引くコロナ禍の影響を受ける事業者の負担を軽減し、より柔軟なキャッシュフローを提供する。

STORES 決済は、お店の方向けのキャッシュレス決済サービス。クレジットカード、電子マネー、QRコード決済に対応しており、インターネット環境があれば屋内外問わず、いつでも・どこでも・誰でも利用できる。

STORES 決済では、「手動入金」「自動入金」の2種類の入金サイクルを提供しており、両サイクルとも売上合計が10万円未満の場合は200円の振込手数料を事業者が負担する必要があったが、今回の対応により「自動入金」の振込手数料が売上合計に関わらず無料になる。

お店の売上規模や事業状況にあわせて、着金までのサイクルが短い「手動入金」と、振込操作が不要な「自動入金」を効果的に活用することで、さらなるお店のキャッシュフロー改善に役立てることが可能としている。

また今後も、多様化する店舗・中小事業者のニーズに応え、入金に関する改善を行うことで、お店のキャッシュフロー改善およびデジタル化を促進するとしている。お店のキャッシュレス決済サービス「STORES 決済」が自動入金の振込手数料を完全無料化

「自動入金」振込手数料の無料化について

  • 対象売上:2022年3月分の売上から適用(入金日:2022年4月20日)
  • 対象入金サイクル
    ・自動入金
    ・自動入金の場合、振込手数料が売上合計金額に関わらず無料
    ・口座の制限はなく、地方銀行・ゆうちょ銀行を含めた国内すべての金融機関に対応
    (手動入金は、従来通り売上合計が10万円未満の場合200円の振込手数料を事業者が負担)
  • 入金方法の設定:初期設定は手動入金。用途に合わせて設定変更が可能
  • 自動入金への設定変更方法:手動入金から自動入金に変更する場合は、ウェブ管理画面かアプリで切り替え操作が必要。すでに自動入金を設定している場合は、変更は不要。振込手数料の無料化は自動的に適用される
  • 詳細売上の入金について

【レビュー】iPad Air(2022)はアップルのM1チップを入手するための最も手頃な方法

正直に言えば、このiPad Airには最初少し戸惑った。AppleのiPadのラインナップは、追加されるたびに、さらに多くの価格帯を埋め尽くし、競合他社が参入する余地を少なくしている。しかもそれだけではなく、ラインナップも複雑化させている。

適正なデバイスを買おうとしている消費者にとって、2022年のiPadは少し戸惑いを招く。もし安価なものが欲しいなら、普通のiPadを買えばよい。子ども用に買うものだ。ハイエンドならiPad Proを黙って選ぶだけだ。オフィスで使う人やクリエイティブな仕事をしている人、ノートパソコンの代わりとして使っている人などがその対象となる。

今回登場した、AppleのM1チップを搭載したiPad Airは、これまでの機種以上にパワフルなものになった。最も厳しいものを除くほぼすべての操作で、iPad Proに匹敵する性能を発揮する。ベンチマークの結果をみる限り、中間程度のグレードが欲しい人にとって、iPad Proより200ドル(約2万4000円)安い新しいiPad Air(日本では税込7万4800円から)は、最高のパフォーマンスオプションになる。では、200ドルと引き換えに何を失っているのか?(なお日本のストアでの価格差は2万円)。ディスプレイには、円滑な表示を行う120hz対応のProMotion(プロモーション)技術が搭載されていない。iPad Proの強化されたカメラアレイも搭載されていない。

また、ストレージ量もおおよそ半分だ。おそらくこれが、iPad Airをラインナップに並べる際の最大の弱点だろう。まあ次のiPadとの価格差がこれだけあれば、基本構成で64GBのストレージしか搭載していない理由も納得だ。しかし、基本構成より上を考え始めると、iPad Proに飛びつかない理由を見つけることはすぐに難しくなる。

そのことは後で少し考えることにして、まずは新しい機能と仕組みについて整理しておこう。

まず、Appleの第1世代「インハウス」シリコンであるM1が手に入る。これはすごい。2021年M1を採用したiPad Proのラインアップと基本的に同じ性能ということだ。そして従来のiPad Airと比較して、約60%のスピードアップ が果たされている。この性能は、M1版MacBook Airに匹敵するもので、それほど驚くべきことではない。だが、ミドルレンジのiPadで大きな性能ロスがないのはうれしい。

フロントカメラも12MPにアップグレードされ、以前のAirから確実に改善されている。FaceTime(フェイスタイム)には、2021年のiPad Proで採用されたセンターフレーム機能の強化が施されている。他のレビューでも書いたように、これはビデオチャットを頻繁にする人にとっては、かなりの改善につながる。iPad Airをランドスケープモードにしたときに、自動トリミング機能とトラッキング機能によって、カメラの片側が空く奇妙な配置が軽減されるからだ。全体的に角度が自然で、ぎこちない感じがしない。色合いやコントラストに関わるビデオ通話品質も向上している。

画像クレジット:Matthew Panzarino

以上のことから、iPad Airは、Appleが現在市場に出しているFaceTimeデバイスの中でも高性能で多機能なものの1つになった。

2022年のカラーも注目すべきだ。私はブルーモデルを試用したが、これまでのブルー仕上げの中でも特にきれいで良い仕上がりだった。明るく、きらびやかで、本当にきれいに仕上げられている。基調講演を見ていたときには色に少し疑問を感じたが、実際に見てみるととても良いものだ。

画像クレジット:Matthew Panzarino

Touch IDはこれまで同様に高速に動作し、起動時に2本の指を登録するよう促されるため、初めてのユーザーにとっては、縦向きでも横向きでも、腕を捻ることなしに簡単にiPadのロックを解除できるようになるはずだ。利便性やシームレスさではFace IDに勝てないが、Touch IDが電源ボタンに搭載されたことで、ほとんどのユーザーにとっては大きな違いを感じさせないものになった。

AppleのiPhone以外のポータブルラインナップでのUSB-Cへの切り替えは、2020年のiPad Airで行われた。USB-Cの普及にともない、必要ならどこでもiPadを充電することがこれまで以上に簡単にできるようになった。デスクトップとの同期・転送を試したところ、Lightning対応デバイスよりもはるかに速いことがわかった。でも、これを行うカジュアルな消費者の数は日々減っていると思う。それよりも、MDMソリューションを使用してメンテナンスと導入を行うために、ドッキングされたiPadを定期的に消去して再インストールする可能性のある法人顧客にとって、これははるかに重要な問題だ。そのような顧客は、今回のiPadがより速く、より汎用的なポートを手に入れたことを大いに喜ぶだろう。

最後のポイントは、iPad Airの位置付けに関する質問の核心を浮かび上がらせる。iPad Proを800ドル(日本では税込9万4800円)で買う代わりにiPad Airを600ドル(日本では税込7万4800円)で買う顧客は誰だろうか?

Creative Strategies(クリエイティブ・ストラテジーズ)のCEOで主席アナリストのBen Bajarin(ベン・バジャリン)氏は、iPad Airの市場について「iPad Airは、高等教育機関や最前線で働く人々や高度なモバイルワーク環境で働く人々が有能なタブレットを必要とする一部の企業で、良い市場を見つけたと思います」と語る。

「M1を搭載した新しいiPad Airは、性能の向上と優れたバッテリーライフによって、さらに多くの法人購入者にアピールするでしょう」。

画像クレジット:Matthew Panzarino

さて、200ドル(約2万4000円)が200ドルであるということも重要なポイントだと思う。これは決して少なくない金額だ。また、バジャリン氏が指摘するように、このデバイスの顧客の多くが大規模なデプロイメントのために購入するのであれば、その差額の累積はすぐに大きなものとなる。

また個人で購入する場合、予算が限られていて、Proとの価格差にどうしても抵抗がある場合には、これとキーボードがあれば、Proが提供する機能の9割は手に入れることができる。これまでProMotionを使ったことがなければ、おそらく物足りなく思うことはないだろう。しかし、もし使ったことがあるなら、大きな喪失を感じることになる。iPad Proと並べてテストしたところ、ProMotionは、特に長時間のブラウジングやゲーム、ドローイングなどを行う際の使い勝手で、明らかに優位であることがわかった。高級なディスプレイほど高価で、実現が難しいのには理由があるのだ。とにかく優れている。しかし、AppleのLiquid Retina(リキッドレティナ)ディスプレイの色再現性などは、ここでもしっかりと発揮されている。

iPad Airと11インチのiPad Proは価格も性能も近く、iPad Miniも価格的にはそれに続いているため、400ドル(約4万7000円)を超えるあたりから、ラインナップが少し混み合ってくる感じがする。しかし、価格的な位置付けはさておき、iPad Airは非常に高機能で、しっかりした感触があり、使い心地の良いデバイスだ。繰り返しになるが、ProMotionを搭載したスクリーン、特に10インチ以上のスクリーンを使う機会がない方は、ここでは違いを感じないかもしれない。

画像クレジット:Matthew Panzarino

現在、iPadのラインナップが少し混雑していると感じる理由の1つは、AppleのiPad Proの2022年版モデルがどのようなものかまだ見えていないことだ。第3四半期になったら、新しいモデルが登場し、機能強化が図られ、小型のiPad ProとiPad Airの価格差が少し広がる可能性は十分にある。

2021年登場したiPad miniに、ヒントを見ることができるかもしれない。もちろんマジックキーボードはないが、主に本を読んだり、ビデオを見たり、メディア消費のための携行デバイスとして使ったりしている人にとっては、miniはすばらしい選択肢だ。iPad miniは最安のモデルではないので、低価格のiPadとまったく競合することなく、高価で高機能なものにすることができる境界に居るという点で興味深い。しかしiPad Airは、上のProと下のminiに同時に競合している。

そして2022年も、毎年と同じように、Appleのタブレット端末のラインナップは、市場で購入する価値のある唯一の製品であるという事実に立ち返ることになる。たとえ日頃はAndroidを中心とした携帯電話を使っていたとしても、他のプラットフォームを試してみたいと思っても、iPadのような機能、使い方、信頼性を提供するタブレット端末の選択肢は他にない。

そのためAirは、価格は似ているものの、(依然として売れ筋の)エントリーレベルの第9世代iPadを除けば、Appleのベストセラーの1つになる可能性があるので興味深い。とはいうものの、11インチiPad Proは、ストレージ容量とより良い画面を考えると、予算に敏感なユーザーの一部を誘惑するのに十分な価格に近い存在だ。

関連記事:【レビュー】iPhone SE(第3世代)は観念的なスマートフォンの理想像

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画像クレジット:FMatthew Panzarino

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(文:Matthew Panzarino、翻訳:sako)

成人10万人分のデータを機械学習アルゴリズムで睡眠解析し睡眠パターンを16に分類、新たな不眠症診断法に期待

成人10万人分のデータを機械学習アルゴリズムで睡眠解析し睡眠パターンを16に分類、新たな不眠症診断法に期待

東京大学は3月15日、腕の加速度から覚醒と睡眠を判別する機械学習アルゴリズム「ACCEL」を開発し、約10万人の加速度のデータを解析したところ、睡眠が16種類のパターンに分類されることがわかったと発表した。その中には睡眠障害との関連が疑われるものもあるため、腕時計型ウェアラブルデバイスと「ACCEL」を組み合わせることで、睡眠障害の新たな診断方法や治療法の開発につながるものと期待されている。

ライフスタイルの多様化により、遺伝的に持っている睡眠パターンと相容れない生活が強いられると、不眠症となり健康リスクが高まる。例えば夜型の人は、昼間に学校や会社に通うといった社会的義務感により平日の睡眠時間が短くなり、平日と休日の睡眠時間が違ってくる傾向にある。これは「社会的時差ぼけ」と呼ばれ、肥満、高血圧、精神的なストレスといった健康への悪影響が心配される。実に現代人の60〜70%は睡眠不足を感じているという。その解消には正確な不眠症の診断と適切な治療が大切だが、そのためには週単位の睡眠パターンを把握しなければならず、その方法は問診などによる主観的な指標に頼っているのが現状だ。

そこで東京大学大学院医学系研究科機能生物学専攻システムズ薬理学分野の上田泰己教授、香取真知子氏、史蕭逸助教らによる研究グループは、簡単に正確に1週間以上の長期にわたる睡眠測定を行い、その結果を定量的に解析できれば、より詳細な診断ができると考えた。そして2022年に、腕の加速度から睡眠と覚醒の状態を判定するアルゴリズム「ACCEL」を開発した。

研究グループは、英国の遺伝情報や健康情報を含む研究用データベース「UK Biobank」にある、30〜60代の成人10万人分の加速度データから睡眠データを生成し、それを「ACCEL」で解析した。睡眠データを21の睡眠の指標に変換し、次元削減法とクラスタリング法という分析手法を用いて睡眠パターンを8種類のクラスターに分類。さらに、睡眠指標の中の睡眠時間や中途覚醒時間など、睡眠障害に関係が深いとされる6つの指標において、一般的な睡眠から大きく外れるデータを同様に解析したところ、新たに8種類のクラスターが分類された。こうして、不眠症診断に用いられている現行方式では判定が難しい社会的時差ぼけや、生活習慣に関連するクラスターを定量的に分類することに成功した。

今後は、睡眠障害と診断されている人のデータを用いて、各クラスターと睡眠障害の関係性をより正確に解明することで、定量的な指標に基づく新たな診断方法の開発が期待できるという。また、睡眠障害をより詳細な分類による適切な治療法の確立も期待される。

解析された16のクラスターは以下のとおり。

    • 1:中途覚醒を持つ(不眠症に関連)。合計睡眠時間は多い
    • 3a:中途覚醒を持つ(不眠症に関連)。合計睡眠時間は一般的
    • 3b:中途覚醒を持つ(不眠症に関連)。合計睡眠時間は少ない
    • 2a:不規則な睡眠スケジュールを示す
    • 2b:断片的な睡眠を繰り返し、合計睡眠時間が少ない
    • 3b-1:合計睡眠時間が短く、中途覚醒が長い(不眠症に関連)
    • 3b-2:合計睡眠時間が短く、長い中途覚醒と短い中途覚醒の両方を持つ(不眠症に関連)
    • 4a:1日の睡眠覚醒リズムが24時間よりも長いと推定される
    • 4b:平均的な睡眠を持ち、データ総数がもっとも多い
    • 4b-1:長眠型
    • 4b-2:朝型
    • 4bー3:1日の生活リズム(睡眠覚醒リズム)が24時間より短い
    • 4b-4:合計睡眠時間が短く、短い中途覚醒を持つ(不眠症に関連)
    • 4b-5:合計睡眠時間が一般的であり、少ない回数の長い中途覚醒を持つ(不眠症に関連)
    • 4b-6:夜型
    • 5:日中の睡眠を持たない

アイドルの握手会で、握手の感触を遠隔化―モーションリブの感触伝送技術リアルハプティクス採用

アイドルの握手会で、握手の感触を双方向で遠隔化―モーションリブの感触伝送技術「リアルハプティクス」採用

慶應義塾大学発スタートアップのモーションリブは3月17日、「スカパー!アイドルフェス! ~Think of SDGs~」(3月16日開催)における「さわれるVR握手会」において、リアルな感触が遠隔地に伝わるリアルハプティクス装置を提供し、アイドルとのソーシャルディスタンスを保ちつつ、握手の感触の双方向ライブ体験を実現したと発表した。コロナ禍で接触コミュニケーションの機会が減少する中、新時代の非対面接触コミュニケーション手段として期待される。

今回「スカパー!アイドルフェス! ~Think of SDGs~」では、モーションリブが提供するリアルハプティクスという感触伝送テクノロジーを用いて、離れた場所にいるアイドルと直接握手しているかのような感覚を得られる「さわれるVR握手会」を開催した。

リアルハプティクスとは、慶應義塾大学で発明された、人の力加減や物の感触を正確に遠隔地に伝送できる制御技術。アクチュエーターの⼒加減を⾃在に制御可能で、VRなどの画像技術・音声技術と組み合わせることで、より没入感のある体験を創造できるという。アイドルの握手会で、握手の感触を双方向で遠隔化―モーションリブの感触伝送技術「リアルハプティクス」採用

モーションリブは、機械が力触覚を自在にコントロールするために必要なリアルハプティクスについて、機械への実装を可能にするための研究開発から、キーデバイスである「AbcCore」の製造販売まで行うスタートアップ。AbcCoreは、同社が開発した、リアルハプティクスの実装を簡便にする汎用力触覚ICチップにあたる。力センサーや特殊なモーターなどを必要とせず、市販モーターを使って力加減や力触覚伝送の制御を実現する点に技術的優位性を持つという。すでに70社ほどの企業に先行提供しており、共同研究や実用化が始まっているそうだ。

またモーションリブは、共同研究を行う「ソリューション事業」、AbcCoreを提供する「デバイス事業」、技術を提供する「ライセンス事業」の3事業を柱に、顧客企業の製品企画から量産販売までをサポートできる体制を構築している。

今後もモーションリブは、力触覚技術リアルハプティクスを通して、Withコロナ社会における新たなコミュニケーション手段を提供するという。アイドルの握手会で、握手の感触を双方向で遠隔化―モーションリブの感触伝送技術「リアルハプティクス」採用

 

生産者から直接届く果物サブスク「食べチョクフルーツセレクト」リニューアル、1人暮らしでも楽しめるレギュラーコース新設

生産者から直接届く果物サブスク「食べチョクフルーツセレクト」がリニューアル、1人暮らしにもおすすめのレギュラーコース新設

産直通販サイト「食べチョク」(Android版iOS版)を運営するビビッドガーデンは3月16日、旬の果物が生産者から直接届く定期便「食べチョクフルーツセレクト」をリニューアルしたことを発表。これまでの「プレミアムコース」に加え「レギュラーコース」を新設し、料金プランが選べるようになった。

食べチョクフルーツセレクトは、食べチョクが厳選した高品質のフルーツをユーザーが毎月選択できる果物の定期便。今回のリニューアルで、3人以上で暮らす家庭に合った量のプレミアムコース(月額4480円から。送料込・税込)と、単身世帯や2人暮らしの家庭でも楽しめる量のレギュラーコース(月額3780円から。送料込・税込)のどちらかを選択できるようになった。新設されたレギュラーコースは、量は少なめ・低価格で、フルーツの品質はプレミアムコースと同等。ビビッドガーデンは、ライフスタイルに合わせて旬のフルーツが届く生活を楽しんでもらいたいという。

  • 生産者直送で、新鮮なフルーツが届く:一般的には早めに収穫して出荷されることが多いフルーツ。一方食べチョクでは、生産者直送だからこそ、畑で食べごろの直前まで熟されたフルーツが届く
  • 毎月2〜3つのフルーツの中から好みのフルーツを選べる:例えば、4月のフルーツはいちご、不知火、マスクメロンの中から選択可能。夏にはパイナップル、秋にはシャインマスカットなども選べる
  • 季節ごとにいちばん旬のフルーツが届く:食べチョクに登録している全国6700軒の生産者の中から、その時期で旬のおいしいフルーツを選んで届けるという
価格は、レギュラーコース月額3780円から(送料込・税込)、プレミアムコース月額4480円から(送料込・税込)

価格は、レギュラーコース月額3780円から(送料込・税込)、プレミアムコース月額4480円から(送料込・税込)

Bored ApesのNFTプロジェクトに公式の「ApeCoin」トークンができた

最速成長中の暗号資産スタートアップ界にあっても、Yuga Labs(ユガ・ラブズ)は特別に爆発的な一年を過ごした。

NFT(非代替性トークン)プロジェクト、Bored Apes Yacht Club(BAYC、ボアード・エイプス・ヨット・クラブ)を運営する同スタートアップは、2021年4月にスタートしたばかりながら、たちまちのうちに時価総額で最大価値のNFTプロジェクトになった。現在ある1万枚の画像の最も安いものでも、暗号資産のEthereum(イーサリアム)で24万ドル(約285万円)相当の価値がある。同社は評価額50億ドル(約5942億円)で銀行から資金調達する計画だと報じられているが(広報担当者は金額についてのコメントを拒んだ)、Yuga Labsは将来を見据えて、大きな話題となったApeCoin(エイプコイン)をベースにしたPay-to Earn(P2E、遊んで稼ぐ)ゲームのために新たな提携を結ぶことを明らかにした。

数百万ドル(数億円)のサルの画像やMonkey Moneyは、将来シリコンバレーVCの注目を一手に引き受けるものにはなりそうもないが、Yuga Labsは、新しいゲームとトークンが、自分たちの知的財産に基づく主要な暗号経済のきっかけになることを期待している。そしてYugaは先週、Larva labs(ラーバ・ラブズ)から資産を買収した結果、高い評価のCryptoPunks(クリプトパンク)やMeebits(ミービッツ)などを獲得して、自社のNFTコレクションをさらに拡充した。

関連記事:Yuga LabsがCryptoPunksのNFTコレクションの権利をクリエイターLarva Labsから取得

このエコノミーを立ち上げるためには、規制遵守を確実にするための特別な法的工作が必要だ。SEC(証券取引委員会)は、NFTプロジェクトとは概して距離をおいているが(ただしまったくというわけではない)、無記名証券のように振る舞うトークンを売っている暗号スタートアップ各社は、以前から取り締まり対策に余念がない。

そういうわけでYuga Labsは非常に注意深く、公にはトークンの公開から自らを切り離している。代わりにトークンは、このNFTプロジェクトとつながりのある諮問委員会メンバーからなる、ApeCoin DAO(エイプコイン・ディー・エー・オー)と呼ばれる組織が発行するが、メンバーの中にはYuga Labsの社員も役員いない。APE Foundation(APEファウンデーション)と呼ばれる組織も作られ、ApeCoin DAOの決定事項を監視する。さらに、DAOはBAYCプロジェクトの公式ブランディングも扱う。これはYuga Labsが、Boared Apesの青いロゴの1/1(One of One) NFTという形で「gifting(贈呈)」するものだ。

ここまで読んでややこしいなと思った人へ、2022年の暗号資産の世界へようこそ。

ApeCoin DAO諮問委員会のメンバーには、Reddit(レディット)共同創業者のAlexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏、FTXのAmy Wu(エィー・ウー)氏、Sound Ventures(サウンド・ベンチャーズ)のMaaria Bajwa(マーリア・バジュワ)氏、Animoca(アニモカ)のYat Siu(ヤット・スー)氏、Horizen Labs(ホライズン・ラブズ)のDean Steinbeck(ディーン・スタインベック)氏らがいる。

トークン所有者は、DAOの決議に投票することが可能で、委員会が「コミュニティの決定を実行する」と広報担当者はいう。Yugaは公式にはEthereumベースのトークンを発行しないが、同社およびBAYCプロジェクトの設立メンバーは、同トークンの総供給高の1/4近くの所有者となり、Bored ApesとMutant ApesのNFT所有者は、合わせてトークン総割当高の15%を受け取る

Yuga Labsの広報担当者は、Apeトークンが、Coinbase(コインベース)、FTX、eToro(イートロ)、Kraken(クレークン)、OKX、Gemini(ジェミニ)、Binance(バイナンス)およびBinance USを含む主要交換所で「近々」取引が開始されるという。Yugaの幹部は誰1人としてインタビューに応じることがなく、会社はApeCoin DAOとYuga Labsの関係についてそれ以上の詳細を明らかにすることも拒んだ。

10億APEコインの割当状況の詳細は以下の通りだ。

  • 8%がBored Apes Yacht Clubの創業者チームへ
  • 16%がYuga Labsチームへ(そのうち総トークン供給高の1%に当たる部分はJane Goodall Foundation Legacy Foundationに寄贈)
  • 14%が「創立貢献者」へ。これはYugaのパートナーおよび出資者からなると思われる
  • 15%がBored Apes and Mutant Apesコレクションの所有者へ
  • 47%が今後DAOの「エコシステムファンド」の一部として提供される。

画像クレジット:BAYC

このトークンが実際、何をするのかについて全貌はまだ明らかではないが、ApeCoinがYuga Labsが開発中のタイトルでゲーム通貨として使われることはわかっている。タイトルには、サンフランシスコ拠点のゲームスタジオ、nWay(エンウェイ)と共同開発している未発表タイトルも含まれる。nWayは、Power Rangers(パワーレンジャーズ)、WWEなどの会社から知的財産をライセンスして、バトルゲームをいくつか公開している。

名前のないそのタイトルは、play-to earnと呼ばれる暗号ゲーム機構を活用すると見られ、ユーザーはタイトルをプレイするために注ぎ込んだ時間と努力に応じてトークンを獲得する。この仕組みは、「Axie Infinity」というゲームが普及にひと役買っていて、同ゲームでは2021年数十億ドル(数千億円)の取引があり、親会社のSky Mavis(スカイ・メイビス)が30億ドル(約3563億円)の評価額で資金調達することにつながった。

新タイトルは2022年中に公開される、とYuga Labsはいう。

このタイトルが、2021年末発表されたAnimoca Brands(アニモカ・ブランズ)と共同提供されるplay-to-earn型ゲームタイトルに加えてリリースされるというのは興味深い。同社はさらに、Animocaの既存タイトル「Benji Bananas」でもApeCoinを利用できるようにすると話した。

The Block(ザ・ブロック)の記事によると、同社は別にMetaRPGというゲームタイトルも計画していて、いくつかのNFTプロジェクトと互換性があるという。さらには2022年中にバーチャル土地の販売にも手を広げる計画があり、これらの取り組みによって2022年の純売上は4億5500万ドル(約540億円)に達すると同社は予測している。

NFTは2021年に爆発的ヒットとなり、すでに主要テック企業からの支持も取り付けている。Twitter(ツイッター)はNFTプロフィール写真の限定的サポートを開始し、Facebook(フェイスブック)は最近Instagram(インスタグラム)にNFTを組み込む計画を表明し、Stripe(ストライプ)はNFTのための暗号サポートを開始した。

関連記事:マーク・ザッカーバーグ氏、InstagramにNFTを近々導入すると発言

NFTは、消費者の強固な反発も招いており、特にゲーマーの間では、NFTが実際にはゲームのオーナーシップを民主化することはなく、むしろマイクロトランザクション(少額取引)を加速することを恐れている。他に、NFTの発行にともなうブロックチェーン操作のエネルギー依存の高さから、環境への影響を懸念する人たちもいる。

Yugaのゲーミング業界への参入が、BAYCブランドの成長戦略の一大要素であることは間違いないが、ブロックチェーンゲームは未だに明らかなニッチであり、同社はこれを拡大することを望んでいる。

「Bored Ape Yacht Clubがどこまで大きくなるのかわかりませんが、それは私が大きくなると思っていないという意味ではありません。むしろ私は、できるなら、Yugaがビッグになることで私たちがユニークで特別なものをたくさん作れるようになり、より大きなコミュニティにさまざまな形で話ができるようになることを願っています」ととYugaのCEOであるNicole Muniz(ニコール・ムニス)は、2022年2月に行われたD3 Networkのインタビューで語っている。

画像クレジット:BAYC

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(文:Lucas Matney、翻訳:Nob Takahashi / facebook

サーバーのクロックを同期するClockworkがその技術の応用プロダクトをローンチ

膨大な数のサーバー隊列のクロックの同期は、解決済みの問題と思われるかもしれないが、実は今なお難しい問題で、特に要求がナノ秒クラスの精度という場合は難しい。そしてこのことはまた「クロックの時間に基づくシステムを作ってはならない」という命題が、コンピューターサイエンスの公理であり続けている理由でもある。米国時間3月16日、2100万ドル(約25億円)のシリーズAの資金調達ラウンドを発表したClockwork.ioはこれを、ハードウェアのタイムスタンプでは5ナノ秒、ソフトウェアのタイムスタンプでは数百ナノ秒という同期精度でこの状況を変えようとしている。

その技術に基づいて同社は本日、ユーザーにクラウド上やオンプレミスそしてハイブリッドの環境で、レイテンシーが極めて地裁データを提供する最初のプロダクトLatency Senseiをローンチした。ユーザーはそのようなデータを使って自分のネットワークのボトルネックを見つけ、チューンナップすることができる。同社の顧客にはすでにNASDAQやWells Fargo、RBCなどがいる。

画像クレジット:Clockwork

同スタートアップはYilong Geng(イーロン・ゲン)氏とDeepak Merugu(ディーパック・メルグ)氏、そしてスタンフォード大学の「VMwareの創業者たちのコンピューターサイエンス教授」と呼ばれるBalaji Prabhakar(バーラージー・プラバカール)氏らが創業し、VMwareの共同創業者でスタンフォードのコンピューターサイエンス教授であるMendel Rosenblum(メンデル・ローゼンブラム)氏が取締役およびチーフサイエンティストになっている。この由緒正しい顔ぶれからもわかるように、Clockworkのシステムは、チームがスタンフォードで行った学術的な基礎研究がベースとなっている。

今日の多くのコンピューターがクロックの同期に使っているNetwork Time Synchronization Protocol(NTP)と呼ばれる標準形式は至るところで使われているが、あまり正確ではない。その改良はこれまでも行われており、たとえばFacebookは2021年、ハードウェアによるソリューションをOpen Compute Projectに寄贈したが、Clockworkのチームは、それよりもはるかに高い精度を自負している。

プラバカール氏の説明によると「データセンターの中で1秒の違いが生じることもある。私のスマートフォンとこのベースステーションの秒はおそらく合っているでしょう。しかし、もっと細かく、マイクロ秒やナノ秒になると、それらを合わせることは難易度は上がります。2つのクロックが指す時刻を、ナノ秒まで正しくすることは、とても難しいことです。しかも、同期は一瞬実現するだけでなく、両者の同期を維持しなければなりません。気温の変化や振動の影響を受けない高精度のクロックをサーバーに装備することは可能ですが、そんなクロックはすぐにサーバー本体よりも高価なものになります」。

画像クレジット:Clockwork

この問題を解決するためにチームは、タイムスタンプが任意のサーバーに到着するのに要する時間を極めて正確に計測できるシステムと機械学習のモデルを開発した。NTPとそれほど違わないものだったが、チームはさまざまなタイムスタンプ使って改良し、さらにクロックのオフセットと周波数の相対的な違いも考慮に入れた。そして、それらすべてを機械学習のモデルに入れる。そしてチームは、異なるクロックが互いに会話して、同期してないことや自分たちが正しいことを検出できるシステムも開発した。

信頼できるタイムスタンプがないため、これまでの分散システムはクロックのない設計に依存してきた。しかしそれによって、複雑なシステムがさらに一層複雑になった。Clockworkのチームは、彼らの仕事によって研究者たちが、データベースの一貫性とか、イベントの正しい順序、コンセンサスのプロトコル、各種の台帳など、多くの問題領域で時間をベースとする新しいアルゴリズムを実験できるようになる、と期待している。ローゼンブラム氏とプラバカール氏のチームによる最初の研究は、分散システムでクロックを信頼できるなら何ができるか、という問題に集中していた。

「現在、GoogleのSpannerやCockroachDBなど、あるいは一部のデータベース関連の仕事をしている人以外は時間を使っていない。しかし、今後は時間が重要な課題があちこちで出てくるでしょう。それらにうまく対応するためには時間の同期が重要であり、正しく行う方法を私たちは研究開発しています。そこで私たちは、このようなシステムを別の方法でプログラミングするようになるのではと考えています」。

同期化の問題を解決したと信じているClockworkは、今度のLatency Senseiを嚆矢として、それを利用するプロダクトを作ろうとしている。しかしプラバカール氏が念を押すのは、チームはすでに、データセンター内の渋滞を容易に検出できるプロジェクトに取りかかっているということだ。彼によると、TCPはワイドエリアネットワーク(WAN)には向いているが、データセンターの中で使うのはまったくの浪費だ。しかしネットワークとそのレイテンシーについてもっとよく知れば、データセンターの中でパケットをルートする最良の方法を同社のシステムで見つけて、TCPプロトコルにヒントを与えることができるかもしれない。同社のシリーズAをリードしたのはNEAで、さらに著名なエンジェル投資家であるMIPSの共同創業者John Hennessey(ジョン・ヘネシー)氏、初期のGoogleの投資家Ram Shriram(ラム・シュリラム)氏、そしてYahooの共同創業者Jerry Yang(ジェリー・ヤン)氏が参加した。

画像クレジット:MirageC/Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)