ラズベリーパイ財団が約49.3億円調達、低価格PCとIoTの需要に応える

結果的に、新型コロナウイルス感染症による都市封鎖は、ハードウェアハッキングの室内ホビーにとってありがたい状況となっている。低価格マイクロプロセッサーであるRaspberry Pi(ラズベリーパイ)の母体である英国拠点の財団は、4500万ドル(約49億3000万円)の調達ラウンドを完了したことを現地時間9月20日に発表した。

(非営利の)ラズベリーパイ財団の取引部門に対するこの資金注入は、評価額5億ドル(約547億6000万円、調達前)で実施されたことを共同創設者のEben Upton(エベン・アプトン)氏が確認した。

調達ラウンドは、ロンドン拠点のLansdowne Partners(ランズダウン・パートナーズ)と米国拠点の民間慈善団体The Ezrah Charitable Trust(エズラー・チャリタブル・トラスト)がリードした。

「Lansdowne PartnersとThe Ezrah Charitable Trustを初の外部株主として迎え、当財団の次の段階の成長を支援していただけいることを喜んでいます」とアプトン氏は声明で語った。「仕事やエンターテインメントのために私たちのPCを使ってインターネットをアクセスする消費者の需要が高まっていることに加え、Raspberry Piを革新的IoTに応用する世界中の産業企業からの需要はいっそう早く成長しています。この資金調達によって、将来の需要に答えるための規模拡大が可能になります」。

「新たに迎えた出資者は、財団の戦略に価値を加えて成長を推進するだけでなく、私たちのビジネスモデルの原理と精神を理解しています。誰もがハードウェアとソフトウェアのツールを利用できるようにして、消費者向けPC体験をわずか35ドル(約3830円)から提供し、世界中のさまざまなOEMと提携することが財団の目標です」。

調達した資金は、すでに充実しているPiマイクロプロセッサーの製品ラインをさらに拡大するために使う、とPi財団はいう。

マーケティングでの資金利用も計画されており、消費者(「自分で作る」PC)と産業(IoT)両分野が対象だ。

現在財団の取引部門は年間700万台以上のデバイスを出荷している。

これまでに100カ国以上に4200万台以上の(Piベースの)PCを出荷したと財団は語った。

「都市封鎖の中でRaspberry Piに対する関心が明らかに高まっています」とアプトン氏はTechCrunchに語る。「自宅で勉強するためのマシンを必要としている若者たちに機材を提供できることをうれしく思っています。また私たちは、すばらしい慈善的支援(特にBloomfield Trustによる)を受け、英国の恵まれない若者たちにキットを配布しています」。

「現在の持続する需要の増加は、主としてコロナ禍からの景気回復による企業顧客によるものです」。

「短期的には、需要に応じるための生産とサプライチェーンへの投資が中心です」と資金利用の計画を詳しく語った。「長期的には、この資金によってプロダクト開発への投資を拡大することができます。プロダクトが高度になるにつれ、開発には費用も時間もかかるようになるので、エンジニアを増員することが今後の成長の鍵です」。

Lansdowne ParternsのPeter Davies(ピーター・デイビーズ)氏が次のように付け加えた。「長年見守り評価してきたRaspberry Pi財団に投資できることを大変喜んでいます。同財団が最初の10年間に成し遂げた商業的、人間的影響は卓越しており、新たな資金を得た財団のさらなる成長を支援をすることを楽しみにしています」。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ポストコロナに向けて、分散型ワークの実現に向けPatchはコワーキングスペースを英国の小さな町や郊外に広める

パンデミックは働く環境に多大な影響を与えたといえるが、他の変化がすでに進行している中での出来事でもあった。電子商取引の拡大による街頭での買い物の減少は、さらに拍車がかかっているし、リモートワークへの移行も急速に進んでいる。人々はもはや8時から6時までの通勤を望んでいない。しかし、私たちは、在宅勤務が評判ほどいいものではないことに気づきもした。その上、もし地域に似たサービスがあれば簡単にいけるのに、WeWorkのようなところで共同作業をするためだけに大都市に通勤することに意味を見いだすこともできない。問題は、特に郊外や小さな町に、地域のコワーキングスペースがほとんどないということだ。

自宅で仕事をするのではなく、家の近くで仕事をすることができれば、よりバランスのとれたライフスタイルを手に入れることができるだけでなく、多くの人(特に家族)が望んでいる仕事と家庭の分離も実現することができるのではないだろうか。

今回、英国のスタートアップが「Decentralized workspace(分散型ワークスペース)」のアイデアを発表し、英国全土での展開を計画している。

Patchは、従来の通勤者を対象とした「Work Near Home(家の近くで働く)」という提案とともに、地元の大通りの空き店舗を「共同文化スペース」に変える。英国には600万人の知識労働者がいると推定されており、Patchはこの会員からの月額利用料で運営される。

現在、Patchは110万ドル(約1億2000万円)の創業資金を複数のエンジェル投資家から調達している。例えば、LocalGlobeの共同創業者Robin Klein(ロビン・クライン)氏、Entrepreneur Firstの共同創業者Matt Clifford(マット・クリフォード)氏、Charlie Songhurst(チャーリー・ソンハースト)氏、Episode 1のSimon Murdoch(サイモン・マードック)氏、元Jack WillsのCEOでGreat Portland EstatesのNEDであるWendy Becker(ウェンディ・ベッカー)氏、サステナブル投資家Eka Venturesの創業パートナーのCamilla Dolan(カミラ・ドラン)氏、米国投資会社SequoiaのタレントディレクターであるZoe Jervier(ゾーイ・ジャービア)氏、Grabyoの創業者でアーリーステージの投資家Will Neale(ウィル・ニール)氏などだ。

「家の近くで働く」というアイデアは、ポストコロナの「ハイブリッドワーキング」の動きに対応したもので、Patchは「起業家精神、テクノロジー、文化的なプログラムに焦点を当てた」公共の場を作ることを計画している。

Patchの各拠点では、プライベートオフィス、コワーキングスタジオ「利用しやすい低コストのオプション」、無料の学問のための場所などを提供する。

Patchの最初の拠点は、11月初旬にエセックス州チェルムスフォードにオープンする予定で、2022年にはさらに複数の拠点が計画されている。また、チェスター、セント・オールバンズ、ウィカム、シュルーズベリー、ヨービル、ベリー、キングストン・アポン・テムズの人々からも要望が寄せられているという。

Patchの創始者であるFreddie Fforde(フレディ・ファード)氏は次のように語った。「働く場所と住む場所は、伝統的に異なる環境と見なされてきた。そのため、平日の大通りは空洞化し、オフィス街も同様に廃れてしまった。私たちは、人々が家の近くで仕事をすることを可能にし、仕事、市民、文化の交流が混在する新しい環境を作り出せるテクノロジーがこの状況を根本的に変えると考えている」。

ファード氏は、Entrepreneur Firstの元創設者であり、ロンドンやサンフランシスコのアーリーステージのテック企業でさまざまな役割を担ってきた社員でもある。プロダクト部門の責任者には、2015年にターナー賞を受賞したデザインスタジオAssembleの元共同設立者であるPaloma Strelitz(パロマ・ストレリッツ)氏が就任する。

Entrepreneur FirstおよびCode First Girlsのクリフォード氏は、次のようにコメントしている。「テクノロジーは、私たちが組織化し、ともに働く方法を常に変えてきた。Patchは、住んでいる場所に制約されることなく、才能のある人たちが自分自身の能力に基づいて働く機会を解放するだろう。私たちは、高スキルの仕事がどこでもできる国にいたいと思っており、Patchはその環境の実現ための重要な部分を担っている」。

Patchは、主要都市の中心部ではなく、町や小都市の住宅地をターゲットにしており、町の中心部にある利用されていないランドマーク的な建物を探すとしている。例えば、チェルムスフォードでは、ビクトリア朝の醸造所を最初のスペースとして利用する予定だ。

Grays Yard

経済開発・中小企業担当の副内閣メンバーであり、BID委員会の代表でもあるチェルムスフォード市のSimon Goldman(サイモン・ゴールドマン)評議員は、次のように述べている。「グレイズヤードに新しいコワーキングスペースが導入されることは、この街にとって本当にポジティブな計画だ。住民に地元で働く選択肢を提供することで、通勤時間が短縮され、ワーク・ライフ・バランスの向上につながることが期待される。家の近くで働くことは、個人やその家族だけでなく、環境や地域経済にも多くのメリットをもたらす」。

また、Patchはイベントスペースのピーク時の20%を、地元や全国の「公益に役立っている」コミュニティサービスの提供者に寄付する「ギビングバック」モデルも実施するとしている。初期の国内パートナーには、技術サービスを提供するCode First Girlsや、Raspberry Pi Foundationが運営するCoder Dojoなどがある。

画像クレジット:Patch workspace

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(文:Mike Butcher、翻訳:Yuta Kaminishi)

オープンバンキングを利用して信用度の低い消費者にローンを提供するKoyo

オープンバンキングを利用して、信用度の低い人にもローンを提供するフィンテックスタートアップのKoyo(コーヨー)は、Force Over Mass(フォース・オーバー・マス)が主導したデット(借入)とエクイティ(増資)の両方によるシリーズA資金調達ラウンドを5000万ドル(約55億円)でクローズした。このラウンドには既存投資家のForward Partners(フォワード・パートナーズ)、Frontline Ventures(フロントライン・ベンチャーズ)、Seedcamp(シードキャンプ)の他、新規投資家としてForce Over Massをはじめ、GoCardless(ゴーカードレス)の創業者でNested(ネステッド)の共同創業者であるMatt Robinson(マット・ロビンソン)氏や、銀行や金融業界のエンジェル投資家たちが参加した。同社は2019年に行われた前回の資金調達で、490万ドル(約5億4000万円)を調達している。新型コロナウイルス感染流行期間中に、多くの分野の人々が借金を重ねているが、通常は主要なローン会社に断られるような、この下層の消費者から、Koyoは利益を得ているようだ。

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このスタートアップ企業は、消費者向け融資のリスクを査定する際に、信用機関のスコアではなく、オープンバンキングのデータ(銀行取引データ)を使用しているという。言い換えれば、信用機関の評価ではなく、顧客が日々どのようにお金を使っているかを調べるということだ。このアイデアは、通常のサービスが十分に受けられない市場、つまり「シンファイル(thin file)」(クレジットヒストリーが短い、またはまったくない)とか「ニアプライム(near prime)」と呼ばれる顧客に、魅力的な金利と安価な借り入れを提供する。ニアプライムの市場は、英国では1300万人から1500万人に相当する。

Koyoの創業者であり、ロンドンのFrontline Ventures(フロントライン・ベンチャーズ)やベルリンのCavalry Ventures(カバルリー・ベンチャーズ)でVCを務めた経験をもつThomas Olszewski(トーマス・オルショウスキ)氏は、声明で次のように述べている。

新型コロナウイルスの世界的な感染流行が起こった頃に事業を開始したKoyoは、オープンバンキングのデータを革新的に活用することで、より良いリスク判断ができることを証明し、最終的には英国が直面した最も厳しい経済状況の中で事業を成長させることができました。伝統的な金融機関の多くが急速に融資を縮小した時期に、英国の多くの人々に競争力のある金利でクレジットの利用を提供し続けてきたことを、私は誇りに思います。

Force Over MassのパートナーであるFilip Coen(フィリップ・コペン)氏は、次のように述べている。「私たちは、変革をもたらす技術と強力なビジネスモデルを兼ね備えた企業に投資していますが、Koyoはその両方の部門で強くインデックスされました。Koyoは創業から1年半の間に一級品の基盤を築き上げており、私たちはその将来に関われることに興奮しています」。

画像クレジット:Koyo Loans team

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

月額料金で新品または再生品のSIMフリー端末をリースするスマホサブスサービスの英Raylo

英国を拠点とし、スマホサブスクリプションサービスを展開するスタートアップ企業Raylo(レイロ―)は、Octopus Ventures(オクトパスベンチャーズ)が主導するシリーズAラウンドで1150万ドル(約12億7000万円)を調達した。

今回の資金調達は、2020年の債務による資金調達に続くもので、2019年の創業以来、Rayloが調達した金額は株式発行と債務による調達を合計して4000万ドル(約44億円)になる。同社には、Macquarie Group(マッコーリーグループ)、Carphone Warehouse(カーフォンウェアハウス)のGuy Johnson(ガイ・ジョンソン)氏、Funding Circle(ファンディングサークル)の共同設立者なども投資を行っている。

調達した資金は「消費者がスマートフォンを所有するのではなく、月額料金を支払って新品または再生品のSIMフリーデバイスをリースする」サブスクリプションサービスの強化のために使用される。

Rayloによると、顧客数と売上高は前年同期比で10倍の伸びを示しており、今回の調達で、従業員の倍増やさらなる技術開発など、英国における成長の加速を計画しているという。将来的にはグローバルに展開することも示唆しているが、現時点では英国を軸に着実に成長したいという考えだ。

Rayloを通じた最新スマートフォンの購入では、契約終了時のハードウェアの所有権移転をともなわないので、ユーザーは希望小売価格よりも安い価格でスマートフォンを利用することができる。

環境への配慮はさることながら、数年前から10万円を超えているiPhoneの最上位機種のようなプレミアムスマホの価格を考えると、希望小売価格よりも安い価格というのはますます重要なポイントになるかもしれない。

さらに、スマートフォンに大金を支払える消費者はそれほど多くはないという事実もある。リースや返却という手段は、そのようなユーザーに高額なハイエンドモデルを利用する方法を提供する。

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一般的なRayloのサービスでは、ユーザーは12カ月または24カ月の契約期間終了後にデバイスを返却し、返却されたデバイスは2~3回リサイクルされて他のユーザーに利用される。

Rayloによれば、返却されたデバイスは同社のパートナーによってリサイクルされる。通信事業者による販売では、消費者は使用しなくなった古いデバイスを引き出しにしまい、デバイスが持つ潜在的な有用性を無駄にしてしまうのに対し、Rayloのサービスでは、デバイスを長く使うことで持続可能性を促進する循環型モデルを構築できるとしている。

使わなくなったデバイスを家族に譲ったり、売却や下取りに出したりする人も少なくないが、Rayloによれば、英国では約1億2500万台のスマートフォンが使われずに「冬眠」しているという。スマホユーザーの多くが、スマートフォンの第二の人生を気にしていないということだ。

Rayloは、1台の定額制リースを6~7年間で3人のユーザーに利用してもらえると考えている。これが実現すれば、英国でのスマートフォンの平均寿命(2.31年)は約2倍になる。

できるだけ長期間利用できるように、Rayloのすべてのスマートフォンにはケースと液晶保護フィルムが無料で提供される。

ユーザーは、リースされたスマートフォンを傷つけたり、高額な修理代や返却できなくなったりした際の料金をカバーできるように、保険に加入するかどうかを検討する必要がある。Rayloは、独自のデバイス保険をオプションとして販売しており、保険に加入すると月額料金は少し高くなる。

Rayloのサービスは通信事業者のサブスクリプションプランと競合するが、同社はリース方式の方が安いと主張する。契約終了の際、消費者はデバイスの所有権を持たない(すなわち、他の場所で売ったり下取りしてもらったりできる権利が付与されない)ので、当然といえば当然である。

契約終了時にデバイスを返却したくない(あるいは返却できない)場合、ユーザーはノンリターン(返却不可)料金を支払うが、この料金はスマートフォンの種類やリース期間によって異なる。例えばSmsungの「Galaxy S21 Ultra 5G」や「iPhone 12 Pro Max」(いずれも512GBモデル)を12カ月間使用した場合など、プレミアムモデルのノンリターン料金は600ポンド(約9万円)以上になることもある。

一方、契約終了後もアップグレードせずに同じデバイスを使い続けたい場合は、通常の月額料金を最長36カ月まで継続して支払うことが可能で、ノンリターン料金は1ポンド(約150円)になる。

Rayloのリースデバイスにはすべて24カ月間の保証が付いており、ユーザーによる破損や事故に起因しない故障については無償で修理を行い、修理ができない場合は代替機を提供するとしている。

今回のシリーズAラウンドについて、Octopus Venturesのアーリーステージフィンテック投資家であるTosin Agbabiaka(トーシン・アグバビアカ)氏は、声明の中で次のように述べる。「サブスクリプションエコノミーによって、商品やサービスへのアクセスは急速に変化しています。しかし、個人にとって最も価値のあるデバイスであるスマートフォンに関しては、消費者は所有権一体型のサービスの利用を余儀なくされています。ほとんどの人が買っては捨て、買っては捨てのサイクルに陥っていて、経済的にも環境的にも大きな負担となっています」。

「Rayloは、多くの消費者にプレミアムスマホを低価格のサブスクリプション料金で提供し、最新技術を利用できるようにすることでこの問題を解決します。一度使用された機器を再利用する同社のサービスは、この市場において消費者に支持される持続可能な選択肢となります。この市場には大きなチャンスがあります。私たちは、(Rayloの共同設立者の)Karl Gilbert(カール・ギルバート)氏、Richard Fulton(リチャード・フルトン)氏、Jinden Badesha(ジンデン・バデシャ)氏の3人には、スマートフォンの提供方法を進化させるビジョンと深い専門知識があると信じています」。

近年、ヨーロッパでは、多くの再生電子機器ビジネスが投資家の注目を集めており、欧州委員会でも「修理する権利」法の制定が検討されている。

この分野で最近行われた資金調達には、フランスの再生品市場スタートアップ「Back Market(バックマーケット)」の3億3500万ドル(約369億円)、ベルリンを拠点とする「Grover(グローバー)」の電子機器サブスクリプション事業に対する7,100万ドル(約79億円)、フィンランドを拠点とし、中古iPhoneの再生・販売を行う「Swappie(スワッピー)」の4,060万ドル(約45億円)などが挙げられる。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

ウェアラブルさく乳ポンプやケーゲルトレーナーのヘルステックElvieがシリーズCで約106.4億円調達

コネクテッドさく乳ポンプやスマート骨盤底面エクササイザーを開発した女性向けヘルステックのパイオニアであるElvie(エルビー)は、今夏初め(7月)に発表したシリーズCを上積みし、1270万ポンド(約19億3100万円)を追加して、資金調達額を7000万ポンド(約106億4000万円)に引き上げた。

2013年に設立されたこの英国のスタートアップは、2019年に4200万ドル(約46億3000万円)のシリーズB、そして2017年に600万ドル(約6億6000万円)のシリーズAを調達していたが、当時はフェムテック系スタートアップが今よりずっと珍しい時代だった。女性主導のスタートアップ各社が道を切り拓き、フェムテックにかなり大きな市場があることを示したことで、女性のために(そして多くの場合は女性により)デザインされた製品は、ここにきて大きな勢いを得ており、投資家も機会を逃すまいとしている

アナリストたちは今では、フェムテック業界は2025年までに500億ドル(約5兆5130億円)の市場になると予測している。

Elvieによると、今回のシリーズCエクステンションラウンドは、食品・健康分野に特化したプライベートエクイティ企業であるBlume Equityの共同設立者がスポンサーとなっているファンドに加え、既存投資家であるIPGL、Hiro Capital、Westerly Windsからの資金も含まれている。

7月に第1トランシェ(5800万ポンド、約88億1600万円)を発表した際にElvieは、シリーズCはBGFとBlackRockが主導し、Octopus Venturesを含む既存投資家が参加したと述べていた。

このシリーズCは、地理的な拡大(新規市場への参入を含む)や、女性の人生における他の「重要なステージ」をターゲットとした製品ポートフォリオの多様化など、さらなる成長のために使用されるとのこと。

これはつまり、製品開発をサポートするための研究開発費を惜しまないということだ。物理的なガジェットとソフトウェアを融合させたコネクテッドハードウェアは、依然として強いフォーカスとなりそうだ。また、さらなる規模拡大に備えて、オペレーションとインフラを強化していく予定だ。

現段階でElvieが販売している製品は、コネクテッドケーゲル体操トレーナー、ウェアラブルさく乳ポンプ(に加え電気を使わないポンプも2つ)の4つだ。

同社が製品の面で次に何を開発していくのか、注目したいところだ。

創業者兼CEOのTania Boler(タニア・ボーラー)氏は、声明の中で次のように述べている。「Elvieは、次の成長段階へ行く準備ができています。当社はすでに事業を展開しているカテゴリーに革命を起こしていますが、新しい領域で女性のためのよりよいテクノロジー製品やサービスを生み出す、未開拓の膨大なポテンシャルがあることを知っています」。

Elvieの目標は「あらゆるライフステージにおける女性の健康のための頼れる目的地」を作ることであり、ターゲットとなる女性消費者に「洗練された、的確で、パーソナライズされたソリューション」を販売することだと同氏はいう。

Elvieは製品販売による売上を明らかにしていないが、同社のさく乳ポンプ事業は米国で過去12カ月間に倍増しており、米国のAmazo(アマゾン)ではさく乳器のSKUで最も高い収益を上げているとのこと。

また、欧州事業の成長率は前年比139%と「好調」であることも同社はアピールしている。英国市場では、過去12カ月間で前年比31%の成長を達成したという。

画像クレジット:Elvie

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Aya Nakazato)

世界中の環境テックベンチャー対象の助成プログラムを英Founders FactoryとスロバキアのG-Forceが展開

英国のテックアクセラレーターFounders Factory(ファウンダーズファクトリー)はFounders Factory Sustainability Seedプログラムの立ち上げで欧州の同業と力を合わせる。スロバキアのブラチスラヴァに拠点を置きつつ広範に活動しているG-Force​(GはGreenからとっている)との提携のもとに立ち上げたプログラムは気候テックのスタートアップへの投資と振興を目的としている。

プログラムは世界の温室効果ガス排出を削減し、循環型経済への移行を加速させ、持続可能な住宅供給や製造のソリューションを生み出し、また気候に優しいモビリティ、食糧生産、二酸化炭素・メタン回収・貯留に対応できるスタートアップの起業家に​投資する。

主にブラチスラヴァ以外で活動しているG-Forceとともに展開するこのプログラムは、遠隔と対面のサポートを織り交ぜた「ハイブリッド」方式で展開される。世界の環境テックベンチャーがプログラムに申し込んで参加できるように、との意図だ。

Sustainability SeedプログラムでFounders FactoryのパートナーとなるG-Forceは財務面で、Boris Zelený氏(ボリス・ゼレニー、AVASTに14億ドル[1540億円]で売却されたAVGを創業した人物だ)、Startup GrindのMarian Gazdik(マリアン・ガズディク)氏、そしてアーリーステージ投資家のPeter Külloi(ピーター・キューロイ)氏やMiklós Kóbor(ミクローシュ・コーボー)氏を含む多数の東欧の投資家によって支えられている。

プログラムに選ばれたスタートアップは最大15万ユーロ(約2000万円)のシード投資、Founders Factoryチームによる6カ月のサポート、潜在的な顧客やパートナー、法人、投資家への紹介を受けられる。

Founders FactoryのCEOであるHenry Lane Fox(ヘンリー・レーン・フォックス)氏は次のように述べた。「起業家が創造を得意とするディスラプトを促進することで、すべての人にとってより良い、そしてより持続可能な未来を形成することができます。G-Forceとの提携で、Founders Factory Sustainability Seedプログラムは世界にポジティブな影響を与えるベンチャーの育成とサポートを約束する主要プレシードプログラムになります」。

G-Forceの共同創業パートナーであるMarian Gazdik(マリアン・ガズディク)氏は「Founders Factory Sustainability Seedプログラムとの提携での我々の野望は、G-Forceを欧州の中心を拠点とする世界クラスの持続可能なイノベーションハブにすることです」と述べた。

アイデアを進展させて、レーン・フォックス氏は「これまでは1つの法人パートナーと組み合わせるのが当社のモデルでしたが、この特異なケースではエンジェル投資家のグループをまとめて紹介し、純粋な金融投資家との取引にすることができます。これは実際にこの特異な部門にうまく合うと考えています。我々はまた、そうした企業がプログラムを最大限活用できるよう、早い段階でより多くの資金を提供します」と筆者に語った。

ガズディク氏は、英国ではなく欧州を拠点とすることでEUの助成プログラムを利用することができる、とも付け加えた。

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クリス・サッカ氏の気候変動対策ファンド「Lowercarbon Capital」が880億円を集める
画像クレジット:G-Force team

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

メルセデス・ベンツが買収したYASAの革新的な新型モーターはEV業界を変える

革新的な「axial-flux motor(アキシャルフラックス、軸方向磁束)」モーターを開発した英国の電気モータースタートアップ企業であるYASA(かつてはYokeless And Segmented Armature、ヨークレス・アンド・セグメンテッド・アーマチュアという名称だった)が、Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)に買収されたのは2021年7月のことだった。この買収は、発表された情報が少なかったため、それほどマスコミの注目を集めたわけではなかった。しかし今後、YASAは注目する価値のある存在となるだろう。

2009年にオックスフォード大学からスピンアウトしたYASAは、メルセデス・ベンツの電気自動車専用プラットフォーム「AMG.EA」用の超高性能電気モーターを開発することになる。YASAは完全子会社として英国に留まり、メルセデス・ベンツの他、Ferrari(フェラーリ)などの既存顧客にもサービスを提供していく。また、YASAのブランド、従業員、施設、所在地もオックスフォードにそのまま残る。

YASAの軸方向磁束モーターは、その効率性、高出力密度、小型・軽量であることが、EV業界の関心を集めた。

対照的に、今日の市販EVでは「ラジアル」電気モーターを使った設計が一般的だ。テスラでさえラジアル型モーターを採用しているが、ラジアル型モーターは40年以上前のレガシー技術であり、技術革新の余地はほとんどない。

しかし、YASAのアキシャルフラックス型は、セグメントが非常に薄いため、それらを組み合わせて強力な単一のドライブユニットにすることができる。これによって、他の電気モーターに比べて重量は3分の1になり、より効率に優れ、出力密度はテスラの3倍にもなる。

YASAの創業者でCTO(最高技術責任者)を務めるTim Woolmer(ティム・ウールマー)氏は、電気モーターの設計にこのような新しいアプローチを考案した人物だ。TechCrunchは、同氏にインタビューして次の展開を探った。

TC:これまでの歩みを教えてください。

TW:私たちが12年前に始めた時の検討事項は「電気自動車を加速させよう」「電気自動車をより早く普及させるためにできることをしよう」というものでした。私たちは今、20年にわたる革命の10年目に入っています。10年後に販売される新車は、間違いなくすべて電気自動車になるでしょう。技術者にとって、革命の時代ほどエキサイティングなものはありません。なぜなら、そこで重要なのは技術革新のスピードだからです。私たちにとってエキサイティングなのは、革新を加速させることです。それこそがメルセデスとのパートナーシップで興味深いところです。

TC:あなたが考え出したモーターは、何が違っていたのですか?

TW:私が博士号を取得した当初は、白紙の状態から始めました。その時に考えたことは、10年後、15年後の電気自動車産業が必要とし、我々がそれに応えることができるものは何か、というものでした。それはより軽く、より効率的で、大量生産ができるものです。2000年代には、軸方向磁束モーターはあまり一般的ではありませんでしたが、軸方向磁束モーターの技術に新しい素材を使ったいくつかの小さな工夫を組み合わせることで、私はYASA(Yokeless And Segmented Armature)と呼ばれる新しい設計に辿り着いたのです。これは軸方向磁束型の軽量な配列を、さらに半分にまで軽量化したものです。これにはローターの直径が大きくなるという利点もあります。つまり、基本的にトルクは力×直径なので、直径が大きくなれば同じ力でもより大きなトルクを得ることができます。直径を2倍にすれば、同じ材料で2倍のトルクが得られるということです。これが軸方向磁束型の利点です。

TC:メルセデスによる買収は完了しましたが、次は何をするのですか?

TW:私たちは基本的に完全子会社です。メルセデスの産業化する組織力を活用していくつもりです。しかし、重要なことは、自動車業界で技術がどのように拡散していくのかを見ると、まずはフェラーリのような高級車から始まり、それから大衆車に降りてきて、そのあと大量生産されて拡がっていくということです。この分野において、メルセデスは産業化に関して世界的に進んでいる企業です。今回のパートナーシップの背景には、そのような考え方があります。

TC:ここから先は、他にどのようなことができるのでしょうか?

TW:私たちは、高出力、低密度、軽量なモーターで、スポーツ性能と高度な産業化を両立させることができます。それによって私たちは、あらゆることに対応できる類まれな立場にあります。

将来の計画については語ろうとしなかったものの、ウールマー氏が電気自動車と電気モーターの分野で注目すべき人物であることは確かだ。メルセデスによる買収後、YASAは下のようなビデオを発表した。

画像クレジット:Oxford Mail

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

プロお墨付き音楽スタートアップのROLI、財政難を経て「Luminary」として再出発

2013年のSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)で、創業者兼CEOのRoland Lamb(ローランド・ラム)氏がSeaboardの鍵盤を叩いているのを見た途端に、私はROLI(ロリ)に魅了された。ロンドンを拠点とするこの会社は、2016年に発表したモジュール式のBlocksシステムをはじめ、長年にわたって独創的な音楽ソリューションを提供し続けている。

もちろん、クリエイティビティとスタートアップの爆発的な成功は、我々が思うほど一致しないものだ。Business Insiderによる同社のプロフィールは、ROLIの最近の苦境について「ニッチ」な製品群に言及しているが、これはおそらく妥当なことだろう。音楽業界や技術系メディアで知名度の高いファンを獲得したにもかかわらず、同社のデバイスはメインストリームでの成功を運命づけられていなかったようだ。

コロナ禍も相まって、ROLIは英国での管財申請という回避策を取らざるを得なくなった。ラム氏と彼の70人ほどの従業員は、Luminary(ルミナリー)というスピンアウト企業によってROLIの夢を生かし続ける。

画像クレジット:Roli

LuminaryがROLIの知的財産とその負債の両方を引き継ぐことはすでにわかっていたが、これが正確に何を意味するのか、ラム氏と彼の仲間にコメントを求めた。ROLIは、これまで総額7500万ドル(約82億円)超の資金を調達している。

Lambはインタビューでこう語った。「結局のところ、我々が最初に開発したプロ向けの製品は、その市場の範囲内では成功したものの、ベンチャーとしての軌跡を考えると市場の規模が十分ではなかったのです。急成長を目指していましたが、それは難しいことがわかりました」。

最近では、ROLIは「LUMI」キーボードを発表した。これは、ライトアップされた鍵盤を使ってユーザーにピアノを教えることを目的とした、従来よりもメインストリームの製品だ。この製品は、同様の名前を持つLuminaryのフォーカスとなる。また、オリジナルのSeaboard製品ラインも、新会社で引き続き提供する予定だ。

画像クレジット:Roli

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

2型糖尿病の治療など個人に合わせた健康的な食事・生活習慣アドバイスを提供するOvivaが約88.1億円調達

2型糖尿病の治療をはじめ、より多くの人がサポートを受けられるように、個人に合わせた食事や生活習慣のアドバイスをアプリで受けられるデジタルサポートサービスを提供している英国のスタートアップ企業Oviva(オビバ)は、シリーズC資金として8000万ドル(約88億1000万円)の調達を完了した。これにより、これまでの調達額は1億1500万ドル(約120億6700万円)となる。

ヘルステック事業が成長した「すばらしい1年」の後のさらなる拡大のために使用される、と同社が語る今回の資金調達は、Sofina(ソフィーナ)とTemasek(テマセク)が共同で主導し、既存の投資家であるAlbionVC(アルビオン・ヴェンチャー・キャピタル)、Earlybird(アーリーバード)、Eight Roads Ventures、(エイトローズ・ベンチャーズ)、F-Prime Capital(エフプライム・キャピタル)、MTIPに加え、数名のエンジェル投資家が参加している。

このような成長を支えているのは、富裕層では、肥満や2型糖尿病(食生活の乱れや運動不足が原因とされる)などの健康状態が増加し続けているという欧米の社会状況だ。一方で、一般的には、サービス提供にかかる費用の増加に対処するために、これまでの対応型ではなく予防型の医療の概念により注目が集まっている。

体重やそれにともなう健康状態(糖尿病など)をコントロールするための生活習慣管理の分野こそ、Ovivaの出番だ。Ovivaは、医療従事者が提供する個別のケアと、患者が食事内容を確認したり、サポートを受けたり、個々の健康目標に向けた進捗状況を把握したりするためのデジタルツールを組み合わせた複合サポートを構築している。

このアプローチを裏付けるように、23本もの査読付き論文が発表されており、肥満を抱える人々の6カ月後の体重が平均6.8%減少し、一方、専門家向けプログラムでは、12カ月後に53%の患者が2型糖尿病の緩和を達成しているという主要な結果が出ている。

Ovivaは通常、デジタルでのサポートプログラムを健康保険会社(または公的な医療サービス)に直接販売し、健康保険会社はその顧客や患者に同社のサービスを提供(または紹介)する。現在、同社のプログラムは英国、ドイツ、スイス、フランスで提供されているが、今回のシリーズCの目的の1つは、展開規模のさらなる拡大だ。

「当社が提供するダイエットや生活習慣の改善に対して、医療制度による償還が行われているヨーロッパの市場、特にデジタル償還のための具体的な経路が確立されている市場に規模を拡大していきます。励みになるのは、より多くの医療制度が、そのようなデジタル償還のための具体的な方針を作り始めているということです。例えば、ドイツではDiGAがあり、ベルギーでもここ数カ月の間に準備されました」とOvivaはTechCrunchの取材に語っている。

これまでに同社は20万人を治療してきたが、ヨーロッパの人口が高齢化していることもあり、対応可能な市場は明らかに巨大だ。Ovivaによると、現在3億人以上の人々が、食生活の乱れによって引き起こされているか、あるいは個人に合わせた食生活の改善によって最適化することができるような「健康上の問題」を抱えているそうだ。さらに、現在、デジタルケアを受けているのは「ごく一部」に過ぎないと指摘している。

Ovivaはこれまでに、医療機関、保険会社、医師など5000以上のパートナーと提携し、自社の技術をより多くの人に利用してもらうことで、さらなる規模の拡大を目指してきた。過去1年間で、治療を受けた人と収益の両方が「2倍以上」になったという。

今回のシリーズCでは、食生活や生活習慣に起因する健康障害でサポートを必要としているヨーロッパの「数百万人」の人々にサービスが届くようにすることを目標としている。

また、規模拡大戦略の一環として、2022年末までにチームを800人に拡大する予定だ。

デジタルケアと対面ケアの比較において、デジタルでサービスを提供することにともなう潜在的なコスト削減効果はさておき「最も顕著な利点」はその受診率と完遂率であるという研究結果が出ているとし「私たちは、労働年齢層やマイノリティなエスクニックグループなど、支援が難しいとされるグループにおいても、70%以上の受診率と80%前後の高い完遂率を一貫して保ってきました。一方、ほとんどの対面式サービスでの受診率および完遂率は50%未満なのです」と述べている。

競合他社について質問されたOvivaは、Liva Healthcare(リバ・ヘルスケア)とSecond Nature(セカンド・ネイチャー)をこの地域での最も近い競合他社として挙げている。

「WW(旧Weight Watchers)も、償還を受けることができる一部の市場では、デジタルソリューションの点で競合しています。他にも、新しい方法でこの市場に参入しようとする企業はたくさんありますが、それらは償還対応していなかったり、ウェルネスソリューションなのがほとんどです。ヨーロッパでは、他の多くのアプリと同様に、Noom(ヌーム)が自己負担の消費者向けのソリューション分野で競合しています。しかし、私たちの考えでは、彼らの市場は、医療費が支払われる私たちがいる市場とはまた別のものだととらえています」。と付け加えている。

シリーズCでの資金調達は、既存市場での存在力を高め、新たな市場にターゲットを絞って拡大していくことに加えて、M&Aの機会を通じて事業をさらに拡大していくことも視野に入れているとOvivaは語っている。

「新しい国に進出する際には、新しい組織を一から立ち上げることや、強力な医療ネットワークを持つ既存の企業を買収することのどちらも視野に入れていて、当社の技術が患者により優れた医療ケアと価値創造のために活用できると考えています」と語っている。

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画像クレジット:Danny O. / Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Akihito Mizukoshi)

PayPalは英国にまで暗号資産の購入、所有、売却のサポートを拡大

PayPal(ペイパル)は、暗号資産(仮想通貨)の購入、所有、売却を初めて米国以外のユーザーに提供する。同社は米国時間8月23日、英国のユーザーがBitcoin(ビットコイン)、Ethereum(イーサリアム)、Litecoin(ライトコイン)、Bitcoin Cash(ビットコイン・キャッシュ)の4種類から暗号資産を選び、連携している銀行口座またはデビットカードを使って購入できる新サービスを発表した。

同社は2020年秋、Paxos Trust Company(パクソス・トラスト・カンパニー)と提携して、まず米国内で暗号資産サポートをスタートした。サービスは2020年11月中旬には米国の全ユーザーに公開された。PayPal傘下のVenmo(ベンモ)も今春、暗号資産サポートを追加した。

英国で暗号資産を利用したい顧客は、PayPalのウェブサイトまたはモバイルアプリを通じて購入できる。そこでは事前に決められた購入額の中から選ぶか自分で額を入力できる。暗号資産は、ユーザーが望めば、1ポンド(約151円)から購入できる。ただし、 暗号資産の購入または売却には所定の手数料および為替手数料がかかる、と同社は注記している。手数料は売買される暗号資産の額によって異なる。

新しいサービスの内容そのものは米国内のサービスと概ね変わらないが、1つだけ例外がある。PayPalは、英国ユーザーの取引高制限の調整についてTechCrunchに語った。開始当初、1回の暗号資産購入の上限は1万5000ポンド(約225万7600円)に設定されている。米国では開始当初、1週間の購入限度を2万ドル(約219万4300円)に設定していた。しかし、2021年7月に限度額を10万ドル(約1097万1700円)に引き上げるとともに年間購入額制限を撤廃した。

また同社は暗号資産の最初の海外進出先が英国である理由について、当地がフィンテックハブであること、およびPayPalの世界第2位の市場であり、消費者顧客の大規模な基盤があるからだとTechCrunchに話した。

「私たちは英国の暗号資産エコシステムをさらに発展させる手助けができると考えています。米国でこのサービスに高い需要があることはわかっていました。それでも、PayPalのアプリ内暗号資産サービスに対する顧客エンゲージメントの大きさには初日から驚かされました」とPayPal広報担当者は語った。「サービス開始以来、当社ユーザーの驚くべき、かつ持続的なエンゲージメントが続いています。当社の米国プラットフォームで暗号資産を購入、所要、売却する消費者は、以前の2倍の頻度でログオンしています」と広報担当者は付け加えた。

暗号資産は、今後数カ月のうちに公開が予定されているPayPalの来るべき「スーパーアプリ」の主要機能でもある。

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他の暗号資産サービスをいつ、あるいはいつか英国でも展開するかについて同社はコメントしなかった。最近提供を開始した「Checkout with Crypto」(暗号資産でチェックアウト)がその1つで、ユーザーは所有する暗号資産を使って無数のオンラインショップでチェックアウトできるようになる(取引に必要な暗号資産は事前に不換通過に変換しておく)。しかしPayPaylは、英国で追加機能を提供する前に、まず新機能を使った暗号資産の購入、保持、売却を現地顧客がどう受け入れるかを観察、学習したいと語った。

自社アプリでの暗号資産サポートに加えて、PayPalのベンチャーキャピタル部門は過去数カ月間に暗号資産とプロックチェーンにいくつか投資を行った。暗号資産リスク管理ソフトウェアのTRM Labs(TRMラボ)のシリーズAに1400万ドル(約15億4000万円)、デジタル資産取引インフラストラクチャー会社、Talos(タロス)のシリーズAに4000万ドル(約43億9000万円)、および暗号資産税務ソフトウェア会社のTaxBit(タックスビット)のシリーズAに1億ドル(約109億7000万円)を投資している。

「パンデミックは私たちの生活全般にわたってデジタルの変化と変革を加速しました。金銭のデジタル化や消費者のデジタル金融サービス利用の拡大もそうです」とPayPalのブロックチェーン・暗号資産・デジタル通貨担当ゼネラルマネージャー兼パイスプレジデントであるJose Fernandez da Ponte(ホセ・フェルナンデス・ダ・ポンテ)氏が声明で語った。

「PayPalの世界展開力、デジタル決済の専門知識、および消費者と企業に関する知識に、堅牢なセキュリティとコンプライアンス管理が組み合わさることで、英国の人々が暗号資産を探求するのを手助けする独自の機会と責任が当社に与えられました。今後も英国および世界中の規制当局と密に協力することで、当社のサポートを提供し、将来の世界の金融と商業におけるデジタル通貨の役割を明確にするために意味のある貢献を続けていくことに注力します」。

現在PayPalは、英国以外に米国のハワイ、米国海外領土を除く地域で暗号資産をサポートしているが、世界中の認可・規制された暗号資産プラットフォームおよび中央銀行と提携を結ぶことでデジタル通貨の可能性を探求していくと語った。

画像クレジット:Dan Kitwood / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

英国の競争・市場庁が、NVIDIAのArm買収に「競争を阻害するおそれがある」との懸念を示す

英国の競争監視機関は、NVIDIA(エヌビディア)が計画しているチップ開発メーカーのArm(アーム)の買収について、深刻な懸念を示した。

この評価は現地時間8月20日、英国政府によって発表された。同政府は今後、競争・市場庁(CMA)に買収案の詳細な調査を依頼するかどうかを決定することになる。

CMAが政府に提出した報告書の要旨では、この買収が実行された場合、合併後の企業は、NVIDIAと競合する半導体チップおよび関連製品を製造する企業が使用するArmのIP(知的財産権のある設計データ)へのアクセスが制限することで、競合企業NVIDIAの競争力を損なう能力と動機を得ることになるという懸念が示されている。

CMAは、競争がなくなると、データセンター、ゲーム、IoT(モノのインターネット)、自動運転車など、多くの市場でイノベーションが阻害され、その結果、企業や消費者にとっては、製品が高価になったり、品質が低下したりする損害を招く恐れがあると懸念している。

NVIDIAが提案した行動的問題解消措置は、CMAによって拒否された。CMAは合併案について競争の面で詳細な調査を行う「第2段階」に移行することを推奨している。

CMAの最高責任者を務めるAndrea Coscelli(アンドレア・コシェリ)氏は、次のようにコメントしている。「我々は、NVIDIAがArmを支配することによって、NVIDIAの競合他社が重要な技術へのアクセスを制限されるという深刻な問題を引き起こし、最終的に多くの重要かつ成長している市場におけるイノベーションが阻害されることを懸念しています。その結果、消費者が新しい製品を入手できなくなったり、価格が上昇する可能性があります」。

「チップテクノロジー業界は、数千億円規模におよび、企業や消費者が日々利用している製品に欠かせません。これには、経済全体のデジタルビジネスを支える重要なデータ処理およびデータセンター技術や、ロボット工学や自動運転車などの成長産業にとって重要な人工知能技術の将来的な開発も含まれます」。

NVIDIAにコメントを求めたところ、以下のような声明が送られてきた。

私たちはCMAの最初の見解に対応し、政府が持つ懸念を解決することができる機会を楽しみにしています。当社では依然として、この買収がArmとそのライセンス企業、市場競争、そして英国にとって有益であると確信しています。

英国のデジタル・メディア・文化・スポーツ省は、同省のウェブサイトに掲載された声明の中で、英国のデジタル担当長官が現在「報告書全文に含まれる関連情報を検討中」であり、CMAに「第2段階」の調査を依頼するかどうかの決定を「そのうち行う」と述べている。

「この決定を下すための期間は定められていませんが、不確実性を低減するため、合理的に実行可能な範囲で、早急に決定を下す必要性を考慮しなければなりません」と、声明では付け加えている。

この買収案は英国内でかなりの抵抗に直面しており、Armの共同設立者の1人を含む反対派は、合併が阻止されることを求めている。

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画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

給料日を待たずに給与の一部が引き出せる新機能をRevolutが英国で導入

フィンテック(金融テクノロジー)スタートアップのRevolut(レボリュート)は「Payday(ペイデイ)」と呼ばれる新機能の導入を開始する。これはクレジットカードローンやキャッシングでお金を借りる代わりに、給料の一部を早期に受け取ることができるというものだ。企業がRevolutとの統合を決めれば、ユーザーは同社の金融スーパーアプリから、直接この機能を利用することができる。

現時点で、この機能は英国の企業に限定されているものの、欧州経済地域や米国でも導入が計画されているという。ここがややこしいところなのだが、給与をRevolutの口座に直接振り込んでもらっているすべての人が、Paydayを利用できるわけではない。

Revolutは、従業員がどの時点でいくら稼いでいるかを知るために、まず雇用主の給与システムに接続する必要がある。だが、Revolutによると、雇用主は給与システムを変更する必要はないという。

これが完了すると、従業員は好きなときに、これまで稼いだ給料の一部を受け取ることができるようになる。ユーザーはまだ支払われていない給料の最大50%までの金額を、給料日よりも前に引き出すことができる。この機能は企業にとっては無料だが、Revolutはユーザーに少額の定額料金を請求する。

「私たちは、すべての人が経済的健康でいられることの重要性を信じています。これには、経済的な安定が従業員の精神的な健康に与える影響を重視することも含まれます」と、Revolutの共同創業者でCEOのNik Storonsky(ニック・ストロンスキー)氏は、声明の中で述べている。「2020年の困難な状況を経て、いま従業員が最も忌むべきものは、経済的な不安やストレスです。多くの従業員が給料日ローンや高金利のキャッシングに依存している状況から脱却することが重要です。この依存は毎月の給料サイクルによってさらに悪化します」。

給料日から給料日へ綱渡りのような生活をしている人は、予定外の出費にPaydayを活用することができる。例えば急にクルマを修理しなければならなくなり、月末まで待っていられない人は、今すぐ給料の一部を引き出すことができる。

これは借金ではないし、クレジットスコアにも影響しない。自分で稼いだ給料の一部だからだ。ということは、月末の給料日には受け取る金額が少なくなるわけだが。

給料の前払い機能を使っていなくても、Paydayでは今月いくら稼いだかを確認することができる。多くの企業がこの機能を採用するかどうか、注目したいところだ。英国には何百万人ものユーザーがいるので、企業は自社の従業員からPaydayについて知ることになるだろう。

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画像クレジット:Revolut

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(文:Romain Dillet、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

CRANQは外部から移入したテキストソースコードのオーサリングを楽にするビジュアルIDE

CRANQの創業者たち

サードパーティー製のソースコードをテキスト状態でコピーしようとすると、それはたいへん面倒な作業になる。デベロッパーたちは現在、1日の大半を費やして「NPM」のパッケージなどをレビューしている。デベロッパーのためのライブラリやテキストコードのプラットフォームとしてJetBrainsやVisual Studioがあるが、それらが問題を完全に解決してくれるわけではない。しかし英国のスタートアップCRANQは、その答えを見つけたという。

CRANQは、ローコードのIDE(Visual Studioのような統合開発環境)で、再利用性の高いコンポーネントオーサリングが可能だという。標準化されたデータタイプとポートに重点を置いているため、意図を簡単に確認することができるという。同社は最近、VenrexとProfoundersから100万ポンド(約1億5000万円)の資金を調達した。

デベロッパーはこのIDEの中で、ドラッグ&ドロップによりビジュアルにコードを作る。これまでそれは、Educai.ioのバックエンドの別バージョンを作るために使われていたが、近くアルファテストを始める予定だ。

共同創業者はToby Rowland(トビー・ロウランド)氏とDan Stocker(ダン・ストッカー)氏で、CEOのロウランド氏は2003年のKing.comの共同創業者として知られている連続起業家だ。最近作ったMangahigh.comは、2018年にWestermann Publishingが買収した。その後ロウランド氏は、運輸輸送業界のための水素市場向けに、RyzeHydrogen.comを創業している。

CTOのストッカー氏は、経験豊富なデベロッパー、ソフトウェアアーキテクトそして発明者だ。中でも特に同氏は、2012年に、FacebookのReactと競合するGiantを作った。

CRANQが今後テストに力を入れていくことによって、必然的にPostman.comと競合することになるだろう。また、ZapierやN8Nのようなワークフローツールも、CRANQと重なる。

しかしCRANQの対象市場はとても大きい。マイクロサービスの市場は2023年に320億ドル(約3兆5314億円)と言われている。一部の予想によると、その年成長率は16%だ。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:CRANQ資金調達イギリス

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ガーデニングに特化した英国のマーケットプレイス「Sproutl」はアドバイスやアドバイスで園芸をもっと身近なものに

Sproutl(スプラウトル)は英国に住む園芸好きのためのマーケットプレイスで、アパレルeコマースのFarfetch(ファーフェッチ)の元幹部たちが創業した。このほど同スタートアップは900万ドル(約10億円)のシードラウンドを完了した。さまざまな用品やアドバイス、アイデアなどを提供してガーデニングをもっと身近にすることが目的だ。

シードラウンドをリードしたのはIndex Ventures(インデックス・ベンチャーズ)で、Ada Ventures(エイダ・ベンチャーズ)といくつかのビジネスエンジェルが参加した。この調達ラウンドは2021年4月に完了している。

「数年前、私たちはロンドンで小さな庭のある家を買いました。2人ともフルタイムで仕事をしていて小さな子どもがいます。この庭でガーデニングを始める方法があるだろうと思ってネットを探しました。私にはガーデニングの知識はほとんどありません。そして、新人園芸家に必要なものは何もないことを知りました。あるのは、もっと詳しい人たちのための情報ばかりだと感じました」と共同ファウンダーでCEOのAnni Noel-Jonhson(アニ・ノエル-ジョンソン)氏はいう。

YouTubeでガーデニングの動画を探したことのある人なら、自分には何の役にもたたない説明のついた長尺動画を見るはめになったことがあるだろう。同様に、ガーデニングに特化したeコマースサイトもあまりない。

しかしその市場機会は相当大きい。英国だけでも園芸好きは何百万人もいる。そして系列に属さないガーデンセンターや園芸店などもたくさんあり年間数百万ポンド(数億円)の売上がある。さらに重要なのは、売上のほとんどが実店舗によるものだということで、一度もオンライン販売をしたことのない店もある。

Sproutleはそんな店舗と手を組み、英国全土から新規顧客を見つけられるようにした。参加する店舗は商品リストをSproutlに登録すれば、Sproutlが梱包材料の手配や流通、配達などを引き受ける。

マーケットプレイスでは、屋内、屋外用植物、植木鉢、園芸用具、アウトドア生活用品などを買うことができる。現在のパートナーは、Rosebourne(ローズボーン)、Polhill(ポルヒル)、Millbrook(ミルブルック)、Middleton(ミドルトン)、Fertile Fibre(ファータイル・ファイバー)、Horticus(ホーティカス)などだ。

CEOのアニ・ノエル-ジョンソン氏はFarfetchで取引・戦略担当副社長を務めた。CTOのAndy Done(アンディー・ドーン)氏もFarfetchに在籍したことがありデータエンジニアリング担当ディレクターだった。

そして、Holie Newton(ホリー・ニュートン)氏もSproutlの重要メンバーになる。かつてベストセラーのガーデニング本「How to Grow」を書いた人物で、現在はSproutlの最高創造責任者だ。

このことはSproutlの成長戦略を理解する上で重要だ。同社はみんなの庭に関係するあらゆるものに関するコンテンツを提供しようとしている(すでにジャーゴン・バスター[専門用語や隠語の解説]を公開済)。今度Googleでガーデニングのアドバイスを探した時にはSproutlが見つかるかもしれない。

さらに同社は、Amazon(アマゾン)などの全方位eコマースプラットフォームとの差別化をはかろうとしている。ManoMano(マノマノ)のように1つの分野に特化した他のEコマース企業はかなりの成功を収めいてる。方向が正しければ、Sproutlはひいきの顧客もすぐに集められるかもしれない。

関連記事:アマチュア園芸家と町の園芸店をつなぐコミュニティの構築を目指すNeverlandが約3.2億円調達

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Sproutl園芸資金調達イギリス

画像クレジット:Sproutl

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nob Takahashi / facebook

監視カメラやAIビジョンシステムを合成人間のデータで訓練する英MindtechがIn-Q-Telなどから3.6億円調達

誰のプライバシーも侵害されず、巨大なデータベースに顔がスキャンされることもなく、プライバシー法が破られることもない世界があったとしたら?そんな世界がすぐそこまで来ている。企業は単に現実世界の監視カメラ(CCTV)映像を捨て、潜在的なシナリオを100万回以上演じる合成人間に切り替えることができるのではないだろうか?それが、有力な投資家から資金を集めている、英国の新しいスタートアップが示す魅惑的な展望だ。

英国に拠点を置くMindtech Global(マインドテック・グローバル)は、エンド・ツー・エンド合成データ作成プラットフォームを開発した。簡単にいえば、店内での人の行動や、道路を横断する様子など、視覚的なシナリオを想像できるシステムだ。このデータは、大手小売企業、倉庫業者、ヘルスケア、輸送システム、ロボット工学などの顧客向けに、AIベースのコンピュータービジョンシステムを訓練するために使用される。文字通り、合成世界の中で「合成」CCTVカメラを訓練するわけだ。

このたび同社は、英国の地域投資家である国家生産力投資基金(NPIF、National Productivity Investment Fund、Mercia Equity Finance)がリードし、Deeptech LabsIn-Q-Telが参加した325万ドル(約3億6000万円)のアーリーステージ資金調達ラウンドを終了したと発表した。

この最後の出資者は重要だ。In-Q-Telは、米国の諜報活動を支援するスタートアップに投資しており、(ペンタゴンのある)バージニア州アーリントンに拠点を置いている。

MindtechのChameleonプラットフォームは、コンピューターが人間同士のやり取りを理解し、予測できるように設計されている。周知のように、現在、AIビジョンシステムを学習させるためには、企業がCCTVの映像などのデータを調達する必要がある。このプロセスにはプライバシーの問題がともない、コストと時間がかかる。Mindtechによると、Chameleonはこの問題を解決し、顧客は「フォトリアリスティックなスマート3Dモデルを使って、無限のシーンやシナリオをすばやく構築することができる」という。

さらに、これらの合成人間は、AIビジョンシステムのトレーニングに利用でき、人間のダイバーシティやバイアスからくる人的要因を取り除くことができるとのこと。

MindtechのCEOスティーブ・ハリス氏(画像クレジット:Mindtech)

MindtechのCEOであるSteve Harris(スティーブ・ハリス)氏は次のように述べている。「機械学習チームは、トレーニングデータの調達、クリーニング、整理に最大80%の時間を費やしています。当社のChameleonプラットフォームはAIトレーニングの課題を解決し、業界はAIネットワークイノベーションのようなより価値の高いタスクに集中できるようになります。今回のラウンドにより、当社の成長を加速させることができ、人間同士や周囲の世界との関わり方をよりよく理解する新世代のAIソリューションを実現することができます」。

では、それによって何ができるのだろうか?次のような場合を考えてみよう。ショッピングモールで、子供が親の手を放して迷子になったとする。Mindtechのシナリオの中で動いている合成CCTVは、それをリアルタイムで発見してスタッフに警告する方法を何千回も訓練されている。別の例では、配達ロボットが路上で遊んでいる子供に出会い、どうすれば子供を避けることができるかを学習する。最後の例として、プラットフォーム上で乗客がレールに近づきすぎて異常な行動をしている場合、CCTVは自動的にそれを発見して助けを呼ぶように訓練されている。

In-Q-Telのマネージングディレクター(ロンドン)であるNat Puffer(ナット・パッファー)氏は次のようにコメントしている。「Mindtechは、Chameleonプラットフォームの成熟度と、グローバルな顧客からの商業的牽引力に感銘を受けました。このプラットフォームが多様な市場で多くのアプリケーションを提供し、よりスマートで直感的なAIシステムの開発における重要な障害を取り除くことができることに期待しています」。

Deeptech LabsのCEOであるMiles Kirby(マイルズ・カービー)氏は次のように述べた。「ディープテックの成功のための触媒として、当社の投資およびアクセラレータプログラムは、斬新なソリューションを持ち、世界を変えるような企業を作る意欲のある野心的なチームを支援しています。Mindtechの経験豊富なチームはAIシステムのトレーニング方法を変革するという使命感を持っており、我々は彼らの旅をサポートできることを嬉しく思います」。

もちろん、スーパーでの万引きを発見したり、過酷な労働環境にある倉庫作業員を最適化したりするような、よりダークな用途への応用も考えられる。しかし理論的には、Mindtechの顧客はこのプラットフォームを利用して、中間管理職のバイアスを排除し、顧客によりよいサービスを提供することができる。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Mindtech Global資金調達イギリスプライバシーコンピュータービジョン監視カメラ

画像クレジット:Mindtech’s Chameleon platform/Mindtech

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

唾液とアプリだけで迅速・正確な新型コロナの検査を可能にする英Vatic

新型コロナウイルスのパンデミックでは、デルタ型の感染が一気に拡大する局面を迎えている。しかし、世界中で予防接種が進む今、社会にとっての主なコストは、医療サービスが逼迫することではなく、企業の従業員が追跡システムによって自己隔離を強制されるためにその会社に生じる大規模な混乱だ。このように、職場(あるいはその他の環境)におけるバイオセキュリティが非常に重要になっている。

上の段落は、英国の著名な科学者たちがパンデミックの次の段階に関して最近政府に送った公開書簡の内容を言い換えたものだ。

職場のバイオセキュリティがより効率的でなければならないとすれば、より迅速で優れた検査方法が必要になる。英国のスタートアップが、この問題を解決したかもしれないと考えている。

バイオセキュリティ企業のVatic(バティック)は、新型コロナの「KnowNow」検査を開発した。同社は、この検査が、ラテラルフロー検査よりも正確で、より速く、より簡単で(必要なのは口の中に入れる綿棒だけ)、検査データの共有が可能で、さらにサービスや職場へのアクセスを可能にする「パスポート」のQRコードも作成できると主張している。

Vaticは今回、家庭用検査の展開のために637万ドル(約7億1000万円)を調達した。まず新型コロナウイルス向け検査から始める。

今回のシード資金ラウンドは、ロンドンのVCであるLocalGlobeとHoxton Venturesが主導した。

2019年創業のVaticは、家庭内でデータを生成することを目的とした唾液ベースの検査を開発した。同社によると、検査にかかる時間は15分以内で、身体が感染を撃退したことにともなう偽陽性を回避し、検査時に実際に感染している人を特定できるという。今までの抗原検査では、200人に1人の割合で偽陽性になる可能性があった。

Vaticの検査

Vaticによると、同社の検査は、人間の細胞表面を模倣することで感染性ウイルスを特定するもので、ラテラルフロー検査の開発方法を効果的に再設計し「その精度を高めている」という。

唾液のみによる新型コロナのスピード抗原検査KnowNowは、CEマークの承認を得て、実際に英国で使用されている。唾液検査とアプリを組み合わせることで、自宅での検査結果を医療機関や他のプラットフォームと即座に共有することが可能になる。唾液を使った検査は、喉の奥や鼻腔を綿棒でこする必要がある現在のラテラルフロー検査に比べ、はるかに簡単で不快感も少ないことは明らかだ。Vaticは現在、FDA(米食品医薬品局)から緊急使用許可を得るために米国で臨床試験を行っている。

Vaticの共同創業者でCEOのAlex Sheppard(アレックス・シェパード)氏は次のように説明した。「新型コロナのスピード検査導入が最近減少している理由の1つは、サンプリング技術にあります。今の検査は、受ける人にとって非常に不快でわずらわしいものです。今後、オフィスや学校、接客業などで新型コロナが発生した際の混乱を最小限に抑え、正常な状態に戻すためには、大量の検査を行う際の苦痛を取り除く必要があります。そのために私たちは、検査と一緒にバイオセキュリティ技術を開発し、ユーザーが独自のQRコードを作成して会場に安全に入場できるようにしました」。

どのような仕組みなのか。Vaticによると、同社の技術は、感染力の指標としてウイルスの「スパイク」を探すが、ウイルスの潜在的な変異に対しても免疫があり、どのような変異があっても新型コロナを検査することができるという。

シェパード氏によれば、このVaticの検査はまだ第1段階に過ぎないという。人間の細胞の表面を模倣することで、他の感染性ウイルスも検出できる。

「私たちは、新型コロナウイルスの中から、皮下注射針のようにスパイクを使ってヒトの細胞に侵入する部分を選びました」とシェパード氏は話した。「この部分が、今回の検査で基本的に相互作用する部分です。つまり、今回の検査では人間の細胞を模倣していることになりますが、これは完全にユニークなものです。通常のラテラルフロー検査とはまったく異なるエンジンを搭載していますが、それは動力源となる化学物質がまったく異なるからです」。

Vaticの検査のもう1つの特徴は、唾液の交換検査と連動したアプリを採用していることだ。検査が終わると、暗号化されたQRコードが表示される。

「NHS(英国民保険サービス)の検査とまったく異なるというわけではありません」とシェパード氏はいう。「しかし、完全に信頼ベースのシステムなので、健康データを危険にさらす必要はありません。政府のウェブサイトに自宅の住所を書き込むわけではないのですから。もちろん、通知可能な疾患の報告に関する政府の要件を満たしていますが、健康データを提供しすぎていないことを確認できるよう設計されています。安全なのです」。

シェパード氏と共同創業者のMona Omir(モナ・オミール)氏は、オックスフォード大学の2019年9月のアクセラレータープログラム「Entrepreneur First」で出会い、その後、ロンドンの投資家と、オックスフォード大学のOxford FoundryとInnovate UKからの助成金支援の両方から資金を調達している。

LocalGlobeのパートナーであるJulia Hawkins(ジュリア・ホーキンス)氏は、次のようにコメントした。「Vaticのテクノロジーは検査の未来です。英国の多くのトップ企業が率先して、従業員の検査を事業回復計画の最優先事項としていると聞き、すばらしいことだと思っています。今回の新たな投資は、英国内および海外でのKnowNow検査の展開を成功させ、中断を最小限に抑えて経済活動を再開させるための鍵となるでしょう」。

Hoxton VenturesのパートナーであるRob Kniaz(ロブ・ニアズ)氏は「綿棒で唾液のみの採取は、不快で厄介なスピード検査の世界では真のブレイクスルーであり、Vaticチームの市場への投入の速さは非常に印象的です。Vaticにとっては、この検査は旅の始まりに過ぎず、家庭での検査という市場に革新をもたらす機会は無限にあります」。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:Vatic新型コロナウイルスアプリイギリス資金調達

画像クレジット:Vatic founders, Alex Sheppard and Mona Kab Omir

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

普通のスクリーンをホログラフィックディスプレイに変えるVividQ

旧来のスクリーンにホログラムを描画する技術を持つ英国のディープテック企業VividQ(ヴィヴィッドQ)は、次世代のデジタルディスプレイやデバイスに向けた技術を開発するために、1500万ドル(約16億7000万円)の資金調達を行った。同社はすでに米国、中国、日本の製造パートナーを確保している。

シード延長ラウンドとなった今回の資金調達は、東京大学のベンチャー投資部門である東大IPC(東京大学協創プラットフォーム開発株式会社)が主導し、Foresight Group(フォーサイト・グループ)とWilliams Advanced Engineering(ウィリアムス・アドバンスト・エンジニアリング)の共同出資会社であるForesight Williams Technology(フォーサイト・ウィリアムス・テクノロジー)、日本のみやこキャピタル、オーストリアのAPEX Ventures(エイペックス・ベンチャーズ)、スタンフォードのベンチャーキャピタルであるR42 Group VC(R42グループ)が参加。以前から投資していた東京大学エッジキャピタル、Sure Valley Ventures(シュア・バレー・ベンチャーズ)、Essex Innovation(エセックス・イノベーション)も加わった。

今回の資金は、VividQのHoloLCD技術をスケールアップするために使用される予定だ。同社の主張によれば、この技術は一般的な民生機器のスクリーンを、ホログラフィックディスプレイに変えることができるという。

2017年に設立されたVividQは、すでにArm(アーム)をはじめ、Compound Photonics(コンパウンド・フォトニックス)、Himax Technologies(ハイマックス・テクノロジーズ)、iView Displays(アイビュー・ディスプレイズ)などのパートナー企業と協力して開発に取り組んでいる。

VividQの技術は、コンピューター生成ホログラフィによって「真の被写界深度を持つ本当の3D画像をディスプレイに投影し、ユーザーにとって自然で没入感のあるものにする」ことができるという。同社ではこの技術を、自動車用HUD(ヘッドアップディスプレイ)、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)、スマートグラスなどで活用することを目指している。同社はまた、通常の液晶画面をホログラフィックディスプレイに変える方法を発見したとも述べている。

「『アイアンマン』や『スター・トレック』のような映画でおなじみのシーンが、これまで以上に現実に近づいています」と、VividQの共同設立者でCEOを務めるDarran Milne(ダラン・ミルン)氏は語っている。「VividQでは、ホログラフィックディスプレイを世界に初めて提供することをミッションとしています。当社のソリューションは、自動車業界に革新的なディスプレイ製品を投入し、AR体験を向上させることに役立ちます。近い将来には、ノートPCや携帯電話など、パーソナルデバイスとの関わり方も変えるでしょう」。

画像クレジット:VividQ

東大IPCの最高投資責任者である河原三紀郎氏は「ディスプレイの未来はホログラフィです。現実世界と同じ様に見える3D画像を求める声は、ディスプレイ業界全体で高まっています。VividQの製品は、多くのコンシューマーエレクトロニクス事業者が将来に向けて抱く野心を、現実のものとするでしょう」と語っている。

APEX Venturesのアドバイザーであり、Armの共同設立者であるHermann Hauser(ヘルマン・ハウザー)氏は「コンピューター生成ホログラフィは、私たちの周りの世界と同じ3D情報を持つ没入型の投影像を再現します。VividQは人間のデジタル情報への接し方を変える可能性を秘めています」と述べている。

筆者による電話インタビューで、ミルン氏は次のように付け加えた。「私たちはこの技術をゲーミングノートPCに搭載し、標準的な液晶画面でホログラフィックディスプレイを利用できるようにしました。スクリーンの中で、実際に画像が奥行きを持って広がっているのです。光学的なトリックは使用していません」。

「ホログラムとはつまり、基本的に光がどのように振る舞うかを指示する命令セットのことです。その効果をアルゴリズムで計算し、それを目に見せることで、本物の物体と見分けがつかなくなります。それはまったく自然に見えます。現実と同じ情報を、文字通り目に与えているので、人間の脳や視覚システムは現実のものと区別することができません。だから、通常の意味でいうところのトリックは一切ありません」。

もしこれがうまく機能すれば、確かに変革をもたらす可能性がある。UltraLeapのような「バーチャル触感」技術とうまく融合させることも期待できそうだ。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:VividQ資金調達ホログラムイギリス東大IPC3Dディスプレイ

画像クレジット:VividQ founders

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

レシピから食事プランを作成、食材を自動的に買い物かごに入れてくれるLollipop AIのオンライン食料品マーケットプレイス

今回のパンデミックによって、オンラインで食料品を購入するようになって以来、私はいつも、なぜスーパーマーケットは、手作り料理に必要なアイテムを自動的に集めてくれるような、簡単な「レシピ」機能を提供しなかったのだろうと考えていた。それは、まだ手をつけられていないチャンスのように思えた。だがそれもこれで終わりだ。

英国の新しいオンライン食料品マーケットプレイス「Lollipop AI」(ロリポップAI)は、その機能を果たすパブリックベータ版を英国時間6月29日に公開した。このマーケットプレイスは、英国の成功したスタートアップ企業であるOsper(オスパー)、Monzo(モンゾ)、Curve(カーブ)の立ち上げに参加した英国人の連続起業家によって立ち上げられた。

創業者でCEOのTom Foster-Carter(トム・フォスター-カーター)氏が思い描くのは、複数のレシピから食事プランを作成し、食材を自動的に買い物かごに入れ、残りの生活必需品を提案するというプラットフォームだ。フォスター-カーター氏によれば、Lollipopは、健康上の目標を達成したり、料理スキルを向上させたり、食品ロスを最小限に抑えたりするために役立つだろうという。システムはマーケットプレイスとして構築されており、Sainsbury’s(セインズベリー)やBBC Good Food(BBCグッドフード)をはじめとする多くのパートナーと提携し、実際のフルフィルメントは小売のパートナーが行う。ビジネスモデルとしては、小売のパートナーから少額のコミッションを受け取り、消費財ブランドのオーナーなどからの広告も許可する予定だ。

サイトは無料で利用できるが、有料プレミアムプランも予定されている。ウェイトリストに登録した最初の1万人のベータテスターには、プレミアム機能へのアクセスが「生涯にわたって」提供され、価格は通常のスーパーマーケットと同じレートで提供されると、スタートアップは述べている。

フォスター-カーター氏は、自身の子どもが生まれた後、普通のスーパーマーケットを利用するのに何時間もかかっていることに気づき、このアイデアを思いついた。彼はこのアプローチで、一般家庭では週に数時間の節約になるはずだという(彼は、毎週の買い物をした後にこのようなサイトを作らなければならなかったという事実も簡単に指摘しておこう……)。Lollipopは、80%の家庭が1週間に1時間以上の時間をかけて食事の計画を立て、オンラインで食料品を購入していると述べている。

Lollipop MealPlanner(ロリポップ・ミールプランナー)

創業チームには、共同創業者のChris Parsons(クリス・パーソンズ)氏やIb Warnerbring(Ibワーナーブリング)氏などをはじめとして、Monzo、Farmdrop(ファームドロップ)、Amazon(アマゾン)、Sainsbury’s、HelloFresh(ハローフレッシュ)の元社員たちが名を連ねている。

フォスター-カーター氏は、このアプローチのためにどれだけの資金を調達したかについては口を閉ざしているが、JamJar Investments、Speedinvest、そして「食料品 / テクノロジー界の大物たち」であるIan Marsh(HelloFreshの元英国GM)や英国内外のオンライン食料品店の元リーダーや創業者たち、さらに「スーパーエンジェル」のCharles Songhurst(チャールズ・ソングハースト)氏やEd Lando(エド・ランド)氏たちが支援するプレシードラウンドを行ったという。

特に、ダイエットをしたい人にとっては、食事の計画が簡単になり、レシピボックス(レシピ提供)のスタートアップにも影響を与える可能性がある。

Lollipopのような野望を抱いている企業は他にもある。米国のJupiter.co(ジュピター.co)は 自身を「groceries on autopilot(食料品自動操縦)」と呼び、Jow(ジョー)は「recipe-led shopping(レシピを決めてお買い物)」を提供し、Side Chef(サイドシェフ)も同様のサービスを提供。またCooklist(クックリスト)は「食事の計画と料理のサポート」を米国で展開している。

フォレスター-カーター氏はこう語る「これはマーケットプレイスなので、私たちは従来のスーパーマーケット(Sainbury’s、Tescos、Waitroseなど)や、オンライン小売店(Ocado、Amazon)、農場直送 / オーガニック(Riverford、Farmdrop)、専用目的の単一商品(Oddbox、Milk & Moreなど)、レシピボックス(Gousto、Hello Fresh、Mindful Chefなど)、そして迅速デリバリー(Gorillas、Getir、Weezyなど)と提携することができます。

これは始まりに過ぎません。すべての食品に対するニーズを1カ所でまかなえるようにするのが私たちの計画です。Deliveroo(デリバルー)やレストランキット(Dishpatchなど)も当社から注文できるように致します。食料品はパートナーから届けられ、料理をする際には、料理用のコンパニオンアプリ(2021年7月公開予定)を使うことができます。将来的には、Lollipopを通じてお料理の腕を上げることができるでしょう」。

たくさんの商品(50~100個以上)を極めてすばやく購入できる機能を実現しているプレイヤーは、Amazonも含んでほとんど存在していない。もし上手く実現できたならそれはLollipopにとって独自の強みとなるだろう。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Lollipop AIイギリスレシピ食品ショッピング

画像クレジット:Lollipop AI

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(文: Mike Butcher、翻訳:sako)

英個人情報監督局が公共の場でのライブ顔認証による「ビッグデータ」監視の脅威に警鐘を鳴らす

英国のデータ保護規制当局最高責任者はライブ顔認識(live facial recognition、LFR)を公共の場で無謀かつ不適切に使用することについて警鐘を鳴らした。

公共の場でこの生体認証監視を使用することについて、個人情報保護監督官のElizabeth Denham(エリザベス・デナム)氏は「エンゲージメントの規則」と題する活動の開始点として見解を発表し、データ保護規制当局はLFRの利用計画に対して多くの調査を実施したが、すべてのケースで問題が発覚したと述べた。

「ライブ顔認証テクノロジーが不適切に、過剰に、あるいは無謀に使用される可能性について深く憂慮しています。機密性の高い個人情報が、本人の知らないところで、本人の許可なしに大規模に収集された場合、その影響は計り知れません」と同氏はブログの投稿で警告した。

「これまでの用途としては、公共の安全性の懸念に対応したり、生体認証プロファイルを作成して絞り込んだターゲットにパーソナライズされた広告を配信するといったものがあります」。

「調査対象となった組織の中でその処理を完全に正当化できた組織は1つもなく、実際に稼働したシステムのうち、データ保護法の要件に完全に準拠していたものは皆無でした。すべての組織はLFRの使用を中止する選択をしました」。

「CCTV(Closed-Circuit Television、監視カメラ)と違って、LFRとそのアルゴリズムは、映っている人を自動的に特定し、その人に関する機密性の高い情報を推測します。そして即座にプロファイルを作成してパーソナライズされた広告を表示したり、毎週食料品店で買い物をするあなたの画像を万引犯の画像と比較したりします」とデナム氏はいう。

「将来は、CCTVカメラをLFRで置き換えたり、ソーシャルメディデータやその他の『ビッグデータ』システムと組み合わせて使用する可能性もあります。LFRはCCTVの強化版なのです」。

生体認証テクノロジーを使用して個人をリモートから特定すると、プライバシーや差別のリスクなど、人権に関する重大な懸念が生じる。

欧州全体で、自分の顔を取り戻そうといった、生体認証による大衆監視の禁止を求めるさまざまな運動が起こっている。

顔認証にターゲットを絞ったもう1つのアクションとして、2021年5月、プライバシー・インターナショナルなどが、物議を醸している米国の顔認証企業Clearview AI(クリアビュー・エーアイ)の欧州での営業を停止するよう求める法的な異議申し立てを行った(一部の地域警察部隊も例外ではない。スウェーデンでは、2021年初め、Clearview AIの技術を不法に使用したという理由で警察がDPAによって罰金を課された)。

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欧州では生体認証監視に対して一般市民が大きな反対の声を上げているが、議員たちはこれまでのところ、この論争中の問題の枝葉末節をあれこれいじくりまわしているだけだ。

欧州委員会が2021年4月に提示したEU全体の規制では、人工知能の応用に関するリスクベースのフレームワークが提案されているが、法執行機関による公共の場での生体認証監視の利用については一部が禁止されているに過ぎない。しかも、広範な適用例外が設けられていたため、多くの批判を招いた。

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党派を問わずあらゆる欧州議会議員から、ライブの顔認証などのテクノロジーの公共の場での使用の全面禁止を求める声も上がっている。また、EUのデータ保護監督庁長官は、国会に対し、公共の場での生体認証監視の使用を、少なくとも一時的に禁止するよう求めている。

いずれにしても、英国はEUから離脱したため、EUが計画しているAI規制は英国には適用されない。英国政府が国のデータ保護体制を緩和する方向に舵を切るかどうかはまだわからない。

ブレグジット後に英国の規制体制の変更について同国政府が調査会社に依頼した最近のレポートでは、英国GDPRを新しい「英国フレームワーク」で置換して「イノベーションと公共の利益のためにデータを開放する」こと、そしてAIおよび「成長分野」に有利な修正を行うよう主張している。そのため、ブレグジット後、英国の官僚たちがデータ保護体制の修正に手を付けるかどうかが人権ウォッチャーたちの主要な関心事となっている。

「Taskforce on Innovation, Growth and Regulatory Reform(イノベーション、成長、規制改革に関するタスクフォース)」と題するレポートでは、自動処理のみに基づく決定に従わない権利を市民に与えるGDPRの第22項の完全削除を支持しており、(個人情報保護監督庁[INFORMATION COMMISSIONER OFFICE、ICO]からと思われる指導を受け)「自動化プロファイリングが合法かどうか、公共の利益を満たすものかどうかに焦点を移した表現」で置き換えることを提案している。ただし、英国政府はデナム氏の後任人事についても検討しており、デジタル相は、後任には「データを脅威ではなく、我々の時代の大いなる機会とみなす大胆な新しいアプローチ」を採って欲しいと考えていると述べた。つまり、公正、説明責任、透明性とはさようならということだろうか。)

プライバシー監視機関によると、現在のところ、英国でLFRを実装しようとする者は、英国のデータ保護法2018と英国一般データ保護規則(つまり、EU GDPRの英国版。ブレグジット前に国内法令となった)の条項に準拠する必要がある。具体的には、英国GDPR第5条に明記されているデータ保護原則(合法性、公正、透明性、目的の制限、データの最小化、保存の制限、セキュリティ、説明責任など)に準拠する必要がある。

この見解には、監督機関は個人が権利を行使できるようにしなければならないとも書かれている。

「組織は最初から高水準のガバナンスと説明責任を実証する必要があります。これには、LFRを使用することが、導入先の個々のコンテキストにおいて、公正、必要、かつ適切であることを正当化できることも含まれます。侵害性の低い手法は機能しないことを実証する必要があります」とデナム氏は書いている。「これは重要な基準であり、確固とした評価を必要とします」。

「組織はまた、潜在的に侵害的なテクノロジーを使用するリスクとそれが人々のプライバシーと生活に与える影響を理解し評価する必要があります。例えば正確性と偏見をめぐる問題によって、人物誤認が起こり、それにともなって損害が発生することを理解する必要があります」。

英国がデータ保護とプライバシーに関して進む方向についての広範な懸念という視点から見ると、プライバシー監視機関がLFRに関する見解を表明したタイミングは興味深い。

例えば英国政府が後任の個人情報保護監督官に、データ保護とAI(生体認証監視などの分野を含む)に関する規則書を喜んで破り捨ててしまうような「御しやすい」人物を任命するつもりだとしても、少なくとも、LFRの無謀で不適切な使用にともなう危険性を詳述した前任者の見解が公文書に記載されている状態では、そのような政策転換を行うのはかなり気まずいだろう。

もちろん、後任の個人情報保護監督官も、生体認証データがとりわけ機密性の高い情報であり、年齢、性別、民族などの特性を推定または推論するのに使用できるという明らかな警告を無視できないだろう。

あるいは、英国の裁判所がこれまでの判決で「指紋やDNAと同様、顔生体認証テンプレートは本質的にプライベートな特性をもつ情報である」と結論づけており、ICOの見解のとおり、LFRを使用すると、この極めて機密性の高いデータを本人に気づかれることなく取得できるという点を強調していることも当然認識しているはずである。

またデナム氏は、どのようなテクノロジーでも成功するには市民の信頼と信用が必要であるという点を繰り返し強調し、次のように述べている。「そのテクノロジーの使用が合法的で、公正かつ透明性が高く、データ保護法に記載されている他の基準も満たしていることに市民が確信を持てなければなりません」。

ICOは以前「警察によるLFRの使用について」という文書を公開しており、これがLFRの使用に関して高いしきい値を設定することになった(ロンドンメトロポリタン警察を含め、いくつかの英国の警察部隊は、顔認証テクノロジーの早期導入者の1つであり、そのために、人種偏見などの問題について法的苦境に陥った部隊もある)。

関連記事:人権侵害の懸念をよそにロンドン警視庁がNEC製の顔認証を導入

人権運動家にとっては残念なことだが、ICOの見解では、民間企業や公的機関による公開の場での生体認証監視の使用の全面禁止を推奨することは避けており、監督官は、このテクノロジーの使用にはリスクがともなうが、極めて有用となるケース(行方不明の子どもを捜索する場合など)もあると説明している。

「テクノロジーにお墨付きを与えたり禁止したりするのは私の役割ではありませんが、このテクノロジーがまだ開発中で広く普及していない今なら、データ保護に然るべき注意を払うことなくこのテクノロジーが拡散しまうのを防ぐ機会が残されています」と同氏は述べ、次のように指摘する。「LFRを導入するいかなる意志決定においても、データ保護と利用者のプライバシーを最優先する必要があります」。

また、デナム氏は次のように付け加えた。現行の英国の法律では「ショッピング、社交、集会などの場で、LFRとそのアルゴリズムを使用することを正当化するには、高いハードルをクリアする必要があります」。

「新しいテクノロジーでは、利用者の個人情報の使い方について市民の信頼と信用を構築することが不可欠です。それがあって初めて、そのテクノロジーによって生まれる利点を完全に実現できます」と同氏は強調し、米国ではこの信頼が欠如していたために、一部の都市で、特定のコンテキストでのLFRの使用が禁止されたり、ルールが明確になるまで一部の企業がサービスを停止することになったことを指摘した。

「信頼がなければ、このテクノロジーによってもたらされる利点は失われてしまいます」と同氏は警鐘を鳴らした。

このように「イノベーション」というもっともらしい大義を掲げて英国のデータ保護体制を骨抜きにする方向へと慌てふためいて舵を切ろうとしている英国政府だが、1つ越えてはならない一線があることを忘れているようだ。英国が、EUの中心原則(合法性、公正、均整、透明性、説明責任など)から国のデータ保護規則を「解放」しようとするなら、EUとの規制同盟から脱退するリスクを犯すことになる。そうなると、欧州委員会は(締結したばかりの)EU-英国間のデータ適合性協定を破棄することになるだろう。

EUとのデータ適合性協定を維持するには、英国はEUと実質的に同等の市民データ保護を維持する必要がある。このどうしても欲しいデータ適合性ステータスを失うと、英国企業は、EU市民のデータを処理するのに、現在よりはるかに高い法的なハードルを超える必要が出てくる(これは、セーフハーバー原則プライバシー・シールドが無効化された後、米国が今まさに体験していることだ)。EUのデータ保護機関がEU英国間のデータの流れを完全に停止する命令を下す状況もあり得る。

このようなシナリオは英国企業と英国政府の掲げる「イノベーション」にとって恐ろしい事態だ。テクノロジーに対する市民の信頼とか英国市民が自らプライバシーの権利を放棄してしまってよいと思っているのかどうかといったより大きな問題について検討する以前の問題である。

以上の点をすべて考え合わせると、英国政府にはこの「規制改革」の問題について徹底的に考え抜いた政治家が本当にいるのかどうか疑わざるを得ない。今のところ、ICOは少なくとも政府に代わって考える能力をまだ維持している。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:イギリス顔認識生体認証個人情報

画像クレジット:Ian Waldie / Staff / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

グーグルのトラッキングクッキーのサポート終了は英国の競争規制当局が同意しない限り実現しない

大きな決定だ。Google(グーグル)がサードパーティークッキーのサポート終了に向けて動く中、英国の競争規制当局はこれを阻止できるサイドブレーキを手にする模様だ。Cookieは現在オンライン上のターゲティング広告に使用されているテクノロジーで、進行中の廃止計画によって競争に悪影響が及ぶとされている。

今回の出来事は、Google独自の「プライバシーサンドボックス」について、2021年初めに競争・市場庁(CMA)が行った調査を受けてのものだ。

規制当局は、GoogleがChrome(クローム)上でサポートしているCookieを削除しようとした場合に、少なくとも60日間この動きを停止するよう命じる権限を持つことになる。そのためには、規制当局はGoogleが提示した法的拘束力のあるいくつかの契約に同意する必要があるが、当局は現地時間6月11日、契約に応じる意思を示す通知を発表した。

また、Googleにトラッキングクッキーの廃止を停止するよう命じた段階で状況が思わしくない場合、競争・市場庁は全面的な調査を再開することもできるという。

その上、競争に悪影響を及ぼさない形でGoogleの「プライバシーサンドバッグ」テクノロジーに移行することはできないと規制当局が判断した場合、規制当局はこの広範なテクノロジーの移行を全面的にブロックする権限も有する。しかし、競争・市場庁は本日の発表で、競争に関するこの計画の懸念点はGoogleが提示した一連の契約によって暫定的に解消されたとの見方を示している。

現在は協議委員会が設けられ、業界が同意するかどうかのフィードバックを7月8日まで受け付けている。

競争・市場庁のAndrea Coscelli(アンドレア・コシェリ)主席常任委員は、声明で次のようにコメントしている。

Googleをはじめとする巨大なテクノロジー企業の台頭により、世界各国の競合規制当局は新しいアプローチを必要とする新たな課題に直面している。

そのため、競争・市場庁は世界をけん引して強大なテクノロジー企業と連携し、消費者の利益のためにこれら企業の行動を方向づけ、競争を保護する取り組みを進めている。

Googleから受け取った契約に同意した場合、これらの契約には法的拘束力が生じるため、デジタル市場での競争を促進し、ユーザーのプライバシーを保護しながら、広告を通じてオンライン上のパブリッシャーが売上を確保する権利を保護する助けとなるだろう。

Googleが契約内容を概説したブログ記事には「Consultation and collaboration(話し合いとコラボレーション)」「No data advantage for Google advertising products(Googleの広告製品にデータのアドバンテージはなし)」、そして「No self-preferencing(自社に対するひいきはなし)」という3つの大筋の副見出しが並んでいる。この記事の中で、Googleは競争・市場庁が契約に同意した場合はこれを「世界中で適用する」としており、英国の介入を顕著に示すことになる。

英国のEU離脱によって生じた少々意外な変化の1つは、世界のデジタル広告の規則に関して英国が主な決定を下す立場となった点だろう(欧州連合も大手プラットフォームの運営に関する新しい規則の制定に動いているが、プライバシーサンドボックスに対する競争・市場庁の介入に匹敵するほどの動きは、まだ欧州連合本部からは見られていない)。

Googleが英国の競争介入を世界的に適用するとした決定は、非常に興味深いものだ。もしかすると、競争・市場庁を世界の模範のように見せることで、当庁に提示内容を承諾してもらおうというごますり的な要素もあるのかもしれない。

同時に、ビジネスが求めるのは運営の確実さだ。Googleが(そこそこ)大きな英国市場で認められる規則を最終的にまとめられるのであれば、英国内の監督機関と共同で規則を策定し、それを世界中に展開する形となるため、これは将来他の規制当局が強制措置を取るような事態を回避する近道となる可能性がある。

そのため、Googleは今回の件について、アドテック事業をポストCookieの未来へ移行させる上での、よりスムーズな道のりと捉えているのかもしれない。もちろん、全面的な停止を命じられる事態を避けたいという思いもあるだろう(いや、どうだろうか?どちらの結果でも、Googleにはプラスとなるだろう)。

さらに広く見れば、テンポの速い英国の規制当局と連携することは、Googleにとって政治的なこう着状態やリスクを回避するための戦略とも考えられる。実際、他の市場ではデジタル規制に関する議論でこのような事態が見られているからだ(特に本拠地の米国では、巨大なテクノロジー企業を解体しようとする声が大きくなっている他、実際にGoogleは現在独占禁止法に基づく調査複数受けている)。

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Googleが求めているのは、規制当局の認可を受けた「準拠」のハンコをもらい、自社が築いた広告の帝国を解体する必要はないと証拠で示すことなのかもしれない(あるいは、プライバシー重視の変更を行ってはいけないと規制当局から命令を受けることかもしれない)。

Googleが提示した契約からは、巨大テクノロジー企業の力に立ち向かおうと最もスピーディーに動いた規制当局が、世界中のウェブユーザーに適用される基準と条件の定義づけを支援する立場となることが如実に表れている。少なくとも、より極端な介入が巨大テクノロジーになされない限りはそうだろう。

プライバシーサンドボックスとは

プライバシーサンドボックスは、(ユーザーのプライバシー面で最悪という見方の多い)現行の広告トラッキング手法を代替インフラストラクチャに置き換えるものとして提案されたインターロッキング技術の集合体だ。Googleはこれについて、個人のプライバシー保護の観点ではるかにすぐれていながら、アドテック業界やパブリッシング業界が(Google曰く、今までとほぼ同じように)ウェブユーザーのコーホート(オンラインで閲覧するコンテンツに基づいて「似た興味関心のボックス」別に分類)ごとにターゲティング広告を表示させることで、収益を生み出せるインフラストラクチャだという。

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本提案(これには、Googleが提案する、協調機械学習により生成されたコーホートに基づいた新しい広告IDのFLoCや、Turtledoveを拡張したGoogleの新しい広告提供テクノロジー、Fledgeなどが含まれている)の完全な詳細は、まだ確定されていない。

とはいえ、Googleは2020年1月の時点で、2年以内にサードパーティークッキーのサポートを終了するつもりであることを発表しているため、この厳しいタイムフレームが反対の声を呼び寄せたと思われる。アドテック業界や(いくつかの)パブリッシャーからは、業界レベルの広告ターゲティングが失われると広告の収益に甚大な被害が及ぶおそれがあるとして抵抗の声が上がっている。

競争・市場庁は、Googleが考案した新しいインフラストラクチャへの移行はGoogleの市場権力を増大させるものにすぎないと苦情が上がったことを踏まえ、Googleが計画しているトラッキングクッキーの廃止について調査を開始した。これらの苦情では、サードパーティーが広告ターゲティング用にインターネットユーザーを追跡できないようサードパーティーを締め出しておきながら、Googleは(消費者ウェブサービスを独占しているため)膨大なファーストパーティーデータにアクセスでき、オンラインでのユーザーの挙動を高レベルで把握できるという点が指摘された。

競争・市場庁が本日発表した通知書のエグゼクティブサマリーには、規制当局による適切な監督がない場合、プライバシーサンドボックスが以下の影響を生じさせる可能性があると懸念が示されている。

  • サードパーティーに対してユーザートラッキングに関連する機能を制限しながらもGoogle側の機能を保持することで、広告インベントリを提供する市場、さらには広告テクノロジーサービスを提供する市場の競争をゆがめる。
  • Google独自の広告製品やサービス、さらにはGoogleが所有および運用する広告インベントリをひいきすることで、競争をゆがめる。
  • 個人データをターゲティングや広告提供の目的でどのように用いるかという点で、クロームウェブの各ユーザーが幅広く選択する権利を拒否することで、Googleが持つ明らかに独占的な地位を不当に利用することを容認する。

一方、インターネットユーザーへの広告トラッキングやターゲティングに対するプライバシー面での懸念から、Googleは間違いなくクローム(当たり前だが、ウェブブラウザの市場シェアを独占している)を一新するよう圧力を受けている。他のウェブブラウザが何年もの間トラッカーをブロックするなどしてユーザーをオンライン監視の目から保護する取り組みを自発的にしていることも、この圧力の理由だ。

ウェブユーザーは、不快な広告を非常に嫌がる。彼らがこぞって広告ブロッカーを使うのもそのためだ。データにまつわる数えきれないほどの大スキャンダルも、プライバシーやセキュリティに関する認知度を高めてきた。その上、ヨーロッパをはじめとする国では、ここ数年の間にデジタルプライバシー規制が強化されたり、新たに導入されたりしている。つまり、広告事業がオンラインで行うアクションの「許容ライン」が変わってきているということだ。

しかし、ここでの主な問題は、プライバシーと競争規制がどのように互いに作用(あるいは衝突)するかという点だ。考えが足りず、切れ味の鈍い状態で競争介入が行われた場合、ウェブユーザーのプライバシー侵害を根本的に固定化させてしまうリスクはその顕著な例である。つまり、オンラインプライバシー規制の実施が緩やかな場合、インターネットユーザーに対して同意のない過剰な広告トラッキングやターゲティングを行う事業が利益を拡大する事態を許容することになり、本来の目的が失われてしまうということである。

禁止令発令の権力を振りかざす競争規制当局と、緩やかなプライバシー規制の実施というコンビネーションは、ウェブユーザーの権利を保護する上で理想的とは言えないだろう。

一方、この状況を楽観視するには注意が必要だ。

先月、競争・市場庁と英国個人情報保護監督機関(ICO)は共同声明を発表し、デジタル市場における競争とデータの保護の重要性について述べたが、ここで競争・市場庁によるGoogleプライバシーサンドボックスの調査が、きめ細かな共同作業を必要とするケースの好例として取り上げられているのだ。

共同声明の内容はこうだ。「競争・市場庁と英国個人情報保護監督機関は、Googleやその他の市場参入者と連携してGoogleの提案に関する共通理解を醸成するとともに、提案の詳細が明らかになる過程でプライバシーと競争に関する懸念を払拭できるよう徹底的に取り組む」。

英国個人情報保護監督機関が過去に権利を踏みにじるアドテックに対して実施した措置は、はっきりいうと存在しない。当機関がアドテック業界のロビー活動に対して規制の不履行を選ぶ傾向にあることを踏まえると、英国のプライバシーおよび競争を監督する規制当局が「共同作業」すると述べた事実は、ほんの小さな楽観的要素も打ち消す力があるだろう。

(対して競争・市場庁は英国のEU離脱後に今までより大きな調査権限を手にして以来、デジタル領域に関して非常に積極的に取り組んでいる。ここ数年の間にデジタル広告市場の競争実態が明らかになってきたこともあり、当庁が有する知識は膨大だ。また、当庁は競争重視の制度を監督する新たな機関の立ち上げも進めており、英国はこの機関を通じて大手テック企業の行動を制限する意思を明言している)

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Googleが同意した契約とは

競争・市場庁はGoogleがプライバシーサンドボックスについて「大規模かつ幅広い」契約を提示したとし、その一部として以下を開示している。

  • 競争のゆがみ、またクロームユーザーにとって不公平な規約の強制を回避する形で提案を策定し、実施する義務を負う。目標を確実に達成するため、これには提案の策定時に競争・市場庁と英国個人情報保護監督機関を関与させる義務が含まれる。
  • Googleが提案内容の実施を進める際には、その方法と時期、さらには評価の基準を公表することでGoogleの透明性を向上させる。これには、代替テクノロジーの有効性に関する試験結果を一般に開示する義務が含まれる。
  • サードパーティークッキーの削除後、Googleがデジタル広告の目的で使用または組み合わせる個人のユーザーデータの範囲を大幅に制限する。
  • Googleがサードパーティークッキーの代替となるテクノロジーを設計および運用する上で、競合他社に対し、自社の広告およびアドテック事業に有利になるような不公平な取り扱いをしてはならない。
  • Googleがサードパーティークッキーの削除に着手する際には、着手前の少なくとも60日間を休止期間とする。これは、顕著な懸念事項をGoogleが解消できなかった場合に競争・市場庁が調査を再開し、競争への悪影響を回避すべく、必要であればあらゆる暫定措置を課す機会を確保するためである。

Googleはこのようにも述べている。「この過程で、私たちは競争・市場庁や業界とオープンかつ建設的で継続的な対話を続けていきます。その一環として、競争・市場庁および広範なエコシステムに対し、プライバシーサンドボックス案の開発に関するタイムライン、変更、および試験について積極的に情報を共有し、今まで行ってきた透明性確保のアプローチを踏襲していきます」。

Googleの声明はこのように続く。「競争・市場庁が英国個人情報保護監督機関から直接意見を取り入れる過程で、Googleは競争・市場庁と協力し、新しい提案に関する懸念事項を解消するとともに、試験に用いる評価基準を共同で策定していきます」。

Googleの契約は、競争に直接関連する複数の領域を網羅している。自社へのひいきや、差別撤廃、さらにはサードパーティーと比較して自社のアドバンテージになる可能性のある特定のソースからはユーザーデータを組み合わせないといった規定だ。

一方、競争に関する検討事項の中にはプライバシーも明示的に織り込まれており、競争・市場庁はこれらの契約によって(私たち側に)以下が実現されると述べている。

Googleの提案を計画、実施、および評価する際に考慮に入れる基準を策定する。これは、プライバシーサンドボックス案に関する以下の影響を含めた基準とする。データ保護の原則と照らし合わせた際のプライバシー保護の実態とコンプライアンス。デジタル広告における競争と、とりわけGoogleとその他の市場参入者との競争のゆがみが生じるリスク。パブリッシャーが広告インベントリから収益を生み出す可能性。ユーザーエクスペリエンスとユーザーデータの使用に関する管理権。

英国個人情報保護監督機関の報道官はまた、競争・市場庁の介入を受けてGoogleから受け取った契約のうち、最初に受け取ったものの1つが「プライバシーおよびデータの保護に注力したもの」だったとしきりに述べている。

声明の中で、データ規制当局は次のように補足している。

私たちが受け取った契約は、プライバシーサンドボックス案の評価に際する重要な節目と言える。これらの契約からわかるのは、デジタル市場における消費者の権利を最もよい形で守るには競争とプライバシーの両分野を合わせて考慮する必要があるということだ。

競争・市場庁との最近の共同声明で概説したように、私たちは消費者のデータを合法的かつ責任を持って使用し、デジタルイノベーションと競争を促進することが消費者の利益になると確信している。私たちは引き続き競争・市場庁との建設的かつ密接な関係を強化し、提案を評価する過程で消費者の権益を確実に保護していく。

競争・市場庁の調査に関するこの進展は大小さまざまな疑問を呼んでいるが、そのほとんどは将来の主要ウェブインフラストラクチャについて、またGoogleと英国の規制機関との間でまとめられた変更事項が、世界中のインターネットユーザーにどのような影響を及ぼすのかという疑問だ。

ここでのカギとなる問題は、1つの巨大テクノロジー企業が消費者向けデジタルサービスとアドテックの両業界を複占していることで生じた市場権力の不均衡を修正する上で、監督機関との「共同策定」が本当に最適な方法なのかという点である。

また別の人は、Googleと消費者向けテクノロジーとGoogleのアドテックを解体する他権力乱用を修正する方法はない、それ以外の方法は非常に何もしないのと同じだ、というだろう。

例えばGoogleは、実施前の議論や微調整がいくらあったとしても、結局は変更事項の提案そのものを統括する立場にある。結局船を操縦しているのはGoogleのため、オープンウェブに関してこのような管理モデルを導入するのは許容できないと考える人は山ほど存在している。

しかし競争・市場庁は、せめて今のところはGoogleに全面的に任せたいようだ。

と同時に、注目すべきなのは英国政府と競争・市場庁がより広範な競争重視制度を打ち出そうと動いていることだ。これはGoogleやその他の巨大プラットフォームの今後の運営方法について、より大規模な調査の実施につながるかもしれない。さらなる調査の発生は、まず確実だろう。

とはいえ、今のところGoogleは英国の規制当局と協力状態にあることに喜んでいるようだ。Googleが思いのままに(あるいはしかたなく)細かな変更を重ね、監督機関の気を紛らわせることができるのなら、事業解体を命じられる(実際、競争・市場庁は以前解体に関する意見を募集している)よりも、Googleははるかに安心して状況を見渡せるだろう。

私たちは、Googleに対しプライバシーサンドボックス契約に関するいくつかの質問を提出した(更新:以下にいくつかの回答を記載)。

英国インターネット広告局(IAB)のCEOであるJon Mew(ジョン・ミュー)氏は、進展を受けて発表した声明の中で次のように述べている。

インターネット広告局は、サードパーティークッキーの段階廃止について、広告で賄われるウェブを根本的に改善する機会だと以前から明白に述べてきたため、今回一般的なユーザーIDソリューションすべてが遵守すべきと考える明確な原則を策定した。私は、プライバシーサンドボックスに関する競争・市場庁の調査、加えて競争に与えかねない影響の懸念事項を対処するためのGoogleの契約は、この過程において重要かつ価値のある動きと考える。

これらの契約により、幅広い業界がGoogleの提案について、競争とプライバシーの両面での方針を考慮に入れ、競争・市場庁による規制監督を経て策定されているとの確信を得ることができる。サードパーティークッキーの段階廃止はデジタル広告業界が経験してきた変化の中で最も重大なものであり、この分野における計画が適切な精査を受けるべきなのは当然である。

より広範囲な質問

私たちの質問を受け、Googleからいくつかの追加の背景情報を得ることができた。これらの補足では、Googleはプライバシーサンドボックスのいかなる「共同設計」の提案も拒否すること、そしてこの契約はあくまで競争・市場庁による監督と当庁との連携に関するものだとしている。とはいえ、これはGoogleの屁理屈に過ぎないかもしれない。

Googleはまた、提示した(設計および試験に関する)契約にはプライバシーサンドボックスで提案されているすべてのテクノロジーが記載されていることを認めている。つまり、これは明らかにトラッキングクッキーに限定された契約ではなく、それを置き換える(あるいは置き換えない)すべてのテクノロジーに適用されるということだ。

さらに、Googleはこの契約が正式に合意に至った場合、英国の競争・市場庁に対する契約を世界的に適用すると認めている。

競争・市場庁がトラッキングクッキーを廃止してはいけないと命令した場合、代替案はあるのか、あるいはそうした命令はそのままプライバシーサンドボックスの死を意味するのかという質問に対しては、Googleは明言を避けた。

しかしながら、Googleはプライバシーに関するユーザーの期待に応えなければウェブを危険にさらしてしまうと確信していること、そしてプライバシーサンドボックスプロジェクトの進行に向けて全力で取り組んでいくことを約束した他、競争・市場庁との連携が、移行計画に関する業界の懸念を和らげる助けとなることを願うと述べている。

また、競争・市場庁の議論の結果を待って作業を中断するのではなく、今後もプロジェクトの進行を続けていくとしている。

ただし、規制当局による介入によってプライバシーサンドボックスの本来の実装タイムラインに(遅延などの)変更が生じているかという質問に対しては、回答が拒否された。

プライバシーサンドボックスの管理モデルについて、またGoogleがウェブインフラストラクチャのこれほど核となる部分を再設計するのは公平かどうかという質問については、Googleはワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム(W3C)などのフォーラムを通じ、業界と連携して進めていると主張した。

しかし、ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアムグループには、Googleの決定に影響を及ぼす力はない。そのため、実際にはGoogleがオンライン業界全体に適用される大規模な再設計を一方的に進めていながら「見せかけのコラボレーション」を行っているのではないかという懸念が一部で上がっているのだ。そして、英国の規制当局を提案の議論に引き込み、アウトリーチを広げる目的で連携を進めていながらも、提案と決定権を持っているのは結局のところGoogleである。

管理面については、独立した立場にあるプライバシーおよびサイバーセキュリティ研究員・コンサルタントのLukasz Olejnik(ルカス・オレイニク)博士(プライバシー保護システムの管理についての著書あり)からTechCrunchに次のような所見が寄せられた。「Googleは確かに最善を尽くしてコラボレーションを進め、さまざまな関係者からの意見を聞こうとしているようだ。例えば、ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアムグループの会場ではこのような場面が見られている。プライバシーサンドボックスに関する管理モデルがあるのかどうか、現時点でははっきりとは分からないが、私には存在しないように思われる。ここでの問題点は、契約の細かな点だ」。

「問題なのは、実装された変更や修正に関して同意する際のプロセスがなければならないという点だ。ふさわしい提案が出されたとして、それが本当に実装される保証はあるだろうか。また、提案に関する今後の維持管理や開発がどうなるのかも不透明だ。これを正当化していいのだろうか」。

「当然、Googleは自社のみが一方的に決定を下せるとは主張しない。その真偽についても、おそらく議論したくはないだろう。私が提案するのは、ユーザーやパブリッシャー、ユーザーエージェント、広告主、そしてプライバシーに関する専門家および研究員といった関係者から意見を受け付けたり、それを代表したりする準公式の管理構造だ。プライバシーを保護する広告システムの導入は今回が初めての試みとなるため、将来にも対応できるシステムにすることが重要だろう」。

他にも、TechCrunchはGoogleに対し、プライバシーサンドボックス案の広告配信について、そして提案されたアーキテクチャがどのようにユーザーのプライバシーを保護すると確信しているかについて伺った。

Googleからは詳しい回答は得られなかったが、トラッキングクッキーを使用した現行のシステム(個人レベルでのターゲティング)と比べ、タートルダヴ案ではプライバシー保護を強化できるとの示唆があった。タートルダヴでは、広告主が1つまたは複数の興味関心グループに基づいて広告を配信し、興味関心グループをユーザーのその他の情報とは組み合わせない仕組みとなっている。

また、この提案で述べられたフレッジはタートルダヴを基盤としており、信頼できるサードパーティーサーバーを導入することで、ブラウザ内に情報を保管することへの懸念に対応するとしている。

Googleは、プライバシーサンドボックスに関して競争・市場庁と協力する過程で、両方のテクノロジー提案の開発および試験についても積極的に連携していくとし、この過程で競争規制当局が英国個人情報保護監督機関から直接意見を取り入れることを補足した。つまり、繰り返しになるが、英国の規制当局は変更案が議論される際にはテーブルの最前列を確保できるということだ。

その上で、提示した契約が市場を安心させる大きな一歩であるとの確信が述べられている。

この「コラボレーション」がプライバシーサンドボックスの「競争重視」の面を促進しながらもユーザーのプライバシーを悪化させることになるのか、今後に注目だ。

そうなれば、競争・市場庁と英国個人情報保護監督機関が主張する(「プライバシーと競争に関する懸念を払拭」するための)共同作業は大きな失敗となってしまう。とはいえ、壮絶なロビー活動を行うアドテックの影響力を前に、ユーザーの権利が今までことごとくプライバシー規制当局に無視されてきたのは事実だ。

それでも、競争規制当局をこの議論に引き入れようとしていることから、アドテック企業は少なくとも主要な問題においては規制当局による措置を実行に移すかもしれない。ヨーロッパの他の地域では、プライバシーの侵害は競争の問題ともみなされている。どのような結末を望むのか、決定には注意が必要だ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:GoogleCookieイギリス競争・市場庁 / CMA広告プライバシー

画像クレジット:Tekke / Flickr under a CC BY-ND 2.0 license.

原文へ

(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)