東南アジア拠点のフリマアプリCarousellが3500万ドルを調達

Southeast Asia based Carousell raises1  35M for its social commerce app   TechCrunch

Carousellはユーザーが品物を掲載して個人間売買できるアプリだ。Carousellを運営しているのは創業4年目のシンガポール発のスタートアップで、現在、東南アジアにおいてアプリを展開している。CarousellはシリーズBラウンドで新たな国への進出とプロダクト開発のために3500万ドルを資金調達した。

Carousellは、整い始めたシンガポールのスタートアップエコシステムから芽を出したスタートアップの内の1社だ。Carousellを創業したNUS(シンガポール国立大学)卒業生のLucas Ngoo氏、Marcus Tan氏、Siu Rui Quek氏ら3人は20代前半は「一般的な」仕事に就いていた。加えて、このシリーズBラウンドはシンガポール発のスタートアップにとって確実に注目に値する(そして最大の)ラウンドである。

当ラウンドは以前からの出資者Rakuten Venturesに率いられ、Sequoia(東南アジアの取引を担うインドのファンド経由)、Golden Gate Venturesと500Startupsが参加している。Carousellは以前の2014年のシリーズAラウンドで600万ドル2013年のシードラウンドで80万ドルの資金調達をしている。新たな調達ラウンドを早い段階から検討していたことが垣間見える。

実際、昨年12月TechCrunchは、CarousellがシリーズBラウンドで5000万ドルに近い額を出資者から調達しようとしていると記事で伝えた。当時、その記事に関してCarousellのコメントを得られなかった。そして、今回に関してもCEOのQuel氏はその記事に関しては「既存投資家の支援が得られることを非常に嬉しく思っています」と述べるに留まった。

Carousellのアプリは「私たち自身が抱えている問題を情熱を持って解決するプロジェクト」としてシンガポールで開始したとQuek氏はTechCrunchのインタビューで語った。簡単にCarousellを言い表すとiOS、Androidアプリ経由のモバイル版クレイグリストだ。写真をアップロードできる機能を持ったチャットスタイルのインターフェースを採用しており、品物の売買に興味のあるユーザー同士を結びつける。個々のユーザーが自ら販売、支払いの管理を行い、今のところCarousellはサービスから収益を得ていない。

Southeast Asia based Carousell raises 35M for its social commerce app TechCrunch

Carousell上には既に3500万の品物が掲載されており、1分間に70個の品物が新たに掲載されている。アクティブユーザーは平均で17分間アプリ内を回遊しているとCarousellは説明する。(これは悪くない数値だ。Facebookグループの3つのアプリFacebook、Instagram、Messengerでは、ユーザーは平均で1日50分間利用していると先日Facebookは公表した)。

Carousellは現在、シンガポール、香港、台湾、マレーシア、インドネシアの5カ国でサービスを提供している。さらにシェアを拡大する計画もあり、現在、重点を置く東南アジア以外の国への進出も含まれるとQuek氏は語った。

「Carousellが解決している問題はグローバルなものです」とQuek氏は説明した。「Carousellの事業は本質的に地域に縛られないものです。(Carousellが進出を予定している)次の市場は東南アジアの外であり、進出に向けて準備を進めています」。

Carousellは国際的な市場拡大に向けて、今年初めには東南アジアでAirbnbの事業を牽引してきたJJ Chai氏をヘッドハンティングした。

東南アジアにおけるEコマースの市場獲得を巡る競争は厳しい。オンライン市場は市場全体の3%未満を占めていると推定される。今年、Alibabaから10億ドルの資金調達を行ったLazadaの他にも東南アジアには各国固有のEコマース企業が存在する。ソフトバンクの支援を受けているTokopedia、インドネシアの小売コングロマリットLippoが運営するMatahari Mallなどだ。一方、ソーシャルネットワーク上で従来の枠に捉われないコマースも成長しており、Facebookも注力し始めている。アメリカの大手SNSは、Facebook Shopの機能と並行するソーシャル決済システムを検証している。これは、東南アジアのユーザーがFacebookの囲いから離れなくても、商品の売買をすることを促すものだ。また、いくぶん奇妙ではあるが、Rakuten Venturesの親会社である楽天はCarousellに似たRakumaという名前のソーシャルコマースアプリを東南アジアで展開している。

「Rakumaを開始したことを知りませんでした」とQuek氏は語る。「子会社のベンチャーキャピタルのRakuten Venturesを通じて楽天から出資を受けています。Rakuten VenturesのCarousellへの出資は本質的に戦略的な意味合いはありません。私たちは独立して事業を運営しており、楽天の戦略的な計画は把握していません」。

厳しい競争の渦中だが、今の段階でCarousellが収益についてあまり考えていないことは驚くことではないかもしれない。Quek氏は、Carousell(と出資者)は将来的にマネタイズを行うだろうが、今すぐそれを行う計画ではないという。現在はアプリをスケールさせることに重点を置いているとのことだ。

Quek氏は、その時が来たのならCarousellが利益を得ることに何ら問題もないと楽観的に考えていることを強調した。

「Carousellのビジネスモデルは、基本的にはマージン率およそ50%の旧来のクラシファイド広告と同じです」とQuek氏は言う。「ビジネスモデルを新たに発明しようとしているのではなく、新たな顧客体験を創造しようとしています。結果的にそれがマネタイズにつながるのです」。

「現在、重点を置いているのは、市場の国際展開、そして競争力のあるプロダクトとエンジニアチームの整備に力を入れて取り組むことです」とQuek氏は補足した。

Carousellには現在90人の社員がいて、そのうち24人はエンジニアだ。Quek氏は今年の末までに、エンジニアの人数を倍にしたいと語った。そのようなチーム体制によって検索の改善、売り手と買い手のマッチング、スパム的な商品掲載を減らすことを狙うと語った。

Carousellの最終的なエグジット戦略に関して、東南アジアで初の注目を集めるIPOになるかと気になるかもしれないが、それに関してコメントは得られなかった。

「私たちはCarousellのエグジットについてあまり議論してきませんでした。私たちが常に大事にしていることは大きなインパクトを生むことなのです」とQuek氏はTechCrunchにそう語った。「Carousellはちょうど動き始めたところです。国際展開が’最も重点を置くことの1つになるでしょう」。

原文

(翻訳:Shinya Morimoto)

広告をブロックするブラウザのBraveが450万ドルを調達 創業者は前Mozilla CEOのBrenden Eich

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ウェブブラウザBrave Softwareがシードラウンドで450万ドルを調達した。共同創業者は前Mozilla CEOのBrendan Eichだ。今回調達した資金は同社のオンライン広告やトラッカーをブロックするブラウザの開発費用にあてられる。通常のブラウザではサードパーティによるアドオンや拡張機能によってオンライン広告をブロックするのがほとんどだが、Braveのブラウザではその機能が標準搭載されている。これによってユーザーのプライバシーを保護できるだけでなく、動作スピードとパフォーマンスの向上にもつながるという。特にモバイルでウェブサイトを閲覧するときには顕著な効果があらわれる。

今回のラウンドにはFounders Fund系列のFF Angel、Propel Venture Partners、Pantera Capital、Foundation Capital、Digital Currency Groupが参加した。今回の資金調達により、同社はこれまでに合計700万ドルの調達を完了したことになる。

Braveから提供されたメトリクスによれば、デスクトップ版のブラウザでは従来の1.4倍から1.6倍、モバイル版では2倍から4倍のスピードを実現しており、自動的に広告やスクリプトをブロックすることでバッテリー消費量やデータ使用量を抑えることにも成功したという。

Braveのブラウザはセキュリティやセーフティに関する機能も数多く備えている。HTTPS Everywhereを利用した暗号化通信や、指紋認証機能、フィッシング防止機能、マルウェアのフィルタリング機能、そしてすでに述べたスクリプトのブロッキング機能などがその例だ。

さらに、Braveにはブラウザ上でビットコインによる少額決済ができるマイクロペイメント機能も備えられている。”Brave Ledger”と呼ばれるこの機能は、同社とBitGoおよびCoinbaseとのパートナーシップによって実現した。この機能を使ってお気に入りのウェブサイトに匿名で少額の寄付をすることも可能だ。

「この機能に利用されているテクノロジーはビットコインだけです。ユーザーが望まない限り、ビットコインのことを知る必要も学ぶ必要もありません」とBrave Software CEOのBrendan Eichは語る。「Braveを使用するユーザーは、ビットコインという存在を意識することなしにスムーズな決済機能を利用することができるのです」。

今年1月のアナウンスメントによれば、同社の収益源はブラウザに表示される独自の広告からの広告収入だ。その広告によってパフォーマンスが悪化することはなく、クラウド・ロボットによって検出された「標準的なサイズのスペース」に少数の広告が表示される。また、同社のターゲット広告ではユーザーを簡単に特定できるようなクッキーを利用しないため、ユーザーのプライバシーを保護することもできる(言い換えれば、匿名のターゲット広告だ)。このターゲット広告はデータに保存されたキーワードとマッチする広告を表示するというものだが、そのプロセスはすべてデバイス上で行われるのだ。

広告収入の55%以上はその発行元に支払われ、残りがBraveの取り分となる。そしてブラウザのユーザー数が伸びれば、その割合は7対3までスケールアップされる予定だ。また、長期的な目標としてコンシューマーにも収益が分配されるモデルが計画されている。それにより、分配された収益を使ってお気に入りのウェブサイトに寄付することなども可能になる。

もちろん、マイクロペイメントがどれだけ普及するのかは分からない。しかし、同社はその実験に前向きなようだ。

一方で、Braveの広告戦略に対する批判の声もある。今年4月には十数社の新聞社がBaveの広告戦略は「ずうずうしい違法行為である」との共同声明を発表した。声明を発表したグループにはGannett Co.,とthe New York Times、そしてWall Street Journalの発行元であるDow Jonesなどが参加している。Eichによれば、それ以降Braveとニューヨークの大手新聞社の間では話し合いの場が持たれており、Braveのブラウザ広告のコンセプトを示すために今年後半にはトレーラーを発表する予定だという。

「広告の役割というものが存在するとすれば、それは少ない数でも効果的なものであるべきです」とEichは語る。

Braveのバージョン1.0のリリースは9月に予定されており、現在はiOS、Android、Mac、Windows(32-bitおよび64-bit)、Linux(Debian、Ubuntu、Fedora、OpenSUSE)対応の開発版が提供されている。

Khan AcademyとMozilla出身のBrian BondyとEichによって共同創業されたBraveは、調達した資金を活用して同社のプラットフォームをさらに成長させることを目指す。サンフランシスコを拠点とし、現在14人の従業員を抱える同社は今回の資金をもとに人材を募集中だ。

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(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Twitter /Facebook

「ニュース共同作業」プラットフォームのCronycle、260万ドルを調達

cronycle

もしあなたが複数のアプリ、ニュースソース、ソーシャルメディア、プラットフォームをひっきりなしに切り替えて、自分のセクターに関連する重要なトピックスを常に探しているアナリストあるいはビジネスマンであるなら、それが時間のかかる、うんざりするような作業であることはご存知だろう。さらに、押し寄せてくる情報すべてについてチームと共同作業する必要があるとしたら、Slackなどにコピー&ペーストしていないだろうか? 実に非効率的だ。

英国に拠点を置くCronycleは、ユーザーがTwitterやRSSフィードの記事を絞り込んで特に興味深いコンテンツを探し出し、単一プラットフォームへのキュレーションを行えるようにするスタートアップだ。ほかにも数多のスタートアップがこれに挑戦し、消費者向けにはFlipboard、Feedly、Tweetdeck、Zyte、Evernoteなどがあり、共同作業用を含めればさらに山ほど存在する。したがって、これはおそらく「ニュース用Slack」のようなものと考えられるだろう。

Cronycleは、多くのチームが待ち望む企業向けプラットフォームを作り出すためにシリーズAラウンドでAndurance Venturesから260万ドルを調達した。同社はすでにシードラウンドで250万ドルを調達している。また、iOS向けおよびAndroid向けのアプリのローンチも発表した。

Cronycleは、マインドマッピングやブレインストーミングの時代に戻ろうとしている。チームは記事を追加し、コメントし、プラットフォームを離れることなく記事内の特定の情報を強調することができる。現在は、フリーミアムモデルを適用しており、2人目以降のユーザーには費用が発生する。

http://www.youtube.com/watch?v=7FZFmE0_LoA

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(翻訳:Nakabayashi)

肉眼で見えないドローンを見つけるDedroneがAirbusと組んで空港など広い領域でドローン発見に一役

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飛んではいけない、あるいは飛んでいてほしくない空域を飛んでるドローンを、人間の肉眼以上の能力で検出するDedroneが、民間航空機のメーカーAirbusの電子部門とパートナーして、広い空間や遠い場所におけるドローン検出機能を提供することになった。

Dedroneの技術がAirbusの長距離レーダー技術と統合される。後者は地上のセンサーと、クラウド上のデータ分析/報告ソフトウェアにより、構成されている。

そのレーダーと(それからのデータ)により、Dedroneのドローン検出システムのレンジが、無障碍の空間では最大3キロメートルまで拡大される。DedroneのCEO Joerg Lamprechtはそう語る。

Dedroneの標準のハードウェアは、主に分散的に利用されている。すべてのデータセンターにセンサーがセットアップされ、それらの周辺には木々や外国の大使館、企業の敷地、スタジアムなどもある。それらの中には、ドローンによる盗み見行為を禁じたい施設や敷地などもある。…広い範囲の分散利用が適しているケースだ。

しかし、空港や水処理施設、原発、自動車のテストコースなどの大規模施設では、分散よりもAirbusのレーダーが提供するような長距離の検出能力を、集中的なセットアップで利用したい。

Lamprechtによると、“わが社のシステムにはいつも、市場で手に入る最良の技術を統合している。監視カメラやマイクも使うし、周波数スキャナも使う。そして今回は、Airbusのレーダーの能力を使い、新しい業界に利用を広げる”、ということである。

Dedroneはドローンを見つけてモニタリングするだけで、撃墜や特定領域への進入妨害行為はしない。

システムをオープンにし、今回のAirbusの場合のように新しいハードウェアやデータソースを統合できるDedroneは、これからもますます、いろんな物理的ないし空域的なセキュリティシステムと併用されるだろう。たとえばドローンが重要なインフラに衝突する前に妨害する装置との、協働もありえる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

スタートアップでもソフトウェアの品質が優先か?

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今週私はSusa VenturesのLeo Polovetsによる「 Why Startup Technical Diligence Is A Waste Of Time.(なぜスタートアップの技術的勤勉さは時間の無駄なのか) 」という挑発的なタイトルの魅力的な記事と出会った。この記事をあなたも読むべきだが、その中心となる主張は単純である:「SaaSツールやAPI、そしてクラウド基盤が充実している現在の世界では…技術リソースによって成功が左右されることはほとんどない」。この主張は正しいだろうか?もちろん!しかし、同時に間違いでもある。

この世でもっとも美しく、エレガントで、パワフルなソフトウェアだったとしても、もし「製品と市場のマッチング(product-market fit)」に失敗したら成功することはできない。(もし、業界の独特な言い回しが気に入らない場合にはポール・グレアムの言い回しを使ってみよう:「人々が求めるものを作れ」)。現実的なビジネスモデルを持っていなければ、あなたの作るソフトウェアが成功することはない(「人々が強く求め、それに対してお金を払うものを作れ」と言い換えても良い)。そして、誰もあなたの製品を薦められることなく、耳にすることもなければやはり成功は覚束ない(すなわち、セールス/マーケティングの失敗)。

そして、もしそれらのハードルをなんとか乗り越えられたとき、ビジネスが成功するか失敗するかをソフトウェアの品質が握る分岐点にあなたは立つことになるのだ。私はソフトウェアコンサルテーション会社のHappyFunCorp のエンジニア(兼マネージャ、兼代表者、兼何でも屋)であるが、こうしたことは毎日たくさん見ている。スタートアップ企業たちがしばしば「スタートアップソフトウェア品質問題」を持ち込んでくるからだ。

スタートアップソフトウェア品質問題とは次のようなものである。あるスタートアップが「最小限の実行可能な製品」をなんとか構築して、公開さえできたとしよう。それも、たった一人の技術担当共同創業者そして/またはどこかにある安い開発会社のおかげで。それを立ち上げ、実際の人たちが本当に利用するやり方を見て、素早く強みを増強し弱みを修正しようとする、あるいは構築したものの新しい切り口に向かおうとするかもしれない − そしてそれが不可能だということに気がつく、なぜなら彼らは泥沼に足を取られてしまっているからだ。

アーキテクチャが貧困で、プログラムの記述も不確か、そして多大な技術的負債に溢れたソフトウェアが体現するもの、それがここで言う泥沼である。それはしばしば止まり、再現させることが難しいバグまみれで、利用者、開発者、そして共同創業者たちにもフラストレーションを与える代物である。

バグの修正には何時間も何日もかかり、修正や機能の変更には数日から丸々1週間を費やし、この停滞が速く仕事を進めたいと思う他の関係者を足止めし、あなたは技術的負債を解消する時間を取ることもできず、痛みが悪化するだけという悪循環に陥る。言うまでもないが、この悪循環はしばしば死のスパイラルになり得る。

最初の「最小限の実行可能な製品」は完璧にエレガントでスケーラブルであることはなく、またその必要もないというのは事実だ。しかし、もしそれが泥沼ソフトウェアで、あなたが人々が望むものを構築仕損なっていた場合には、対応はとても困難で遅々として進まず、目標を変えるのも高価についてしまうのだ。一方高品質のソフトウェアを持つ競争相手や新規参入者たちは次々と素早く取捨選択を進めていける。

もし仮に、人々が真に欲しがっているものを構築できていたとしても、あなたが新しいエンジニアを雇い全てのコードベースを書き直している間に、高品質ソフトウェアを持つ競争相手たちは同じ時間をあなたを打ち負かすために使うことができる。泥沼ソフトウェアの方向転換はあまりにも困難であるため、完全なゼロから書き直した方が、その一部を再利用しようとするよりも優れた選択肢であるという事態にしばしば直面する。言うまでもなく、何百時間もの労力と何千ドルもの資金をこの泥沼の構築に費やしてきた創業者たちは、こんなことは聞きたくもないだろう。

ソフトウェアの品質があなたの成功を決定付ける訳ではない。それは真実だ。しかし、それはあなたの速度を決定付ける。もし競争相手が全くいないなら、速度が遅いことには何の問題もない。しかし、もし全く競争相手がいない世界に住んでいるとあなたが思っているなら、痛みを伴う目覚めが待っている。動きと対応が遅ければ遅いほど、あなたのスタートアップはより早く死んでしまうことがあり得る。

Polovetsが指摘するように、人々の求める製品を作ることが最重要であることは間違いない(そしてそれを「アイデア」と「タイミング」の間に割り振っていくことができるのだ)。セールスはおそらくその次だ。ソフトウェアがあなたのスタートアップの命運を握る心肺ではない場合もあるかもしれないが、それでもあなたの息の根を止めることができる重要な臓器なのである。その場合はさらに悪いことに、病気はゆっくりと進行する。それも微妙に、長い闘病生活経ても、おそらくあなたはそれが近因であったことを認識しないままだろう。後で心配すれば良いからと、適当に片付けてはならない。それをやがてひどく後悔することは確実である。

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(翻訳:Sako)

「短期間で消えるタトゥー」のInkboxが100万ドルの資金を調達

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Inkboxの「2週間で消えるタトゥー」は昨年のKickstarterでのデビューで一躍注目を集めた。− トロントに拠点を構える創始者であるTylerとBradenのHandley兄弟は、時間が経つと消えるオーガニックボディーアートの発明によって、そのときはおよそ30万ドルを調達したのだ。これはオリジナルプロダクトの改良版で、プロダクトの適用に必要な時間を丁度10分まで縮めたものだった。それから1年。今回彼らはシード資金として100万ドルを調達した。投資家のリストにはお馴染みの名も含まれている。

The Biggest Loser(リアリティ番組)やDays of Our Lives(ドラマ)で有名なエミー賞ノミネート女優のアリソン・スウィーニーはinkboxの投資家の一人だ。また2000年のデビュー以来、テレビ番組Survivorの顔であり続けているリアリティ番組の司会者ジェフ・プロブストも投資家の一人でである。二人の投資家は、体に永久的な変化を与える決心を迫ることなく創造的な表現能力を人々に与えるというinkboxの前提にとても魅了されている。実際とても魅了されたあまり、プロブストにテクノロジースタートアップへの初めての投資の決心をさせたほどなのだ。

CEOのTyler Handleyによれば、プロブストが本気で関わる理由は、純粋にプロダクトを信じているからだ。なぜなら人々にタトゥーによる自己表現の利便性を与える一方で、ひょっとすると将来後悔するようになるかもしれない永久的な変化を残さないからだ。スウィーニーの場合も、今回が初めてのシード投資ではないが、製品とそれを支えるコンセプトに対して同じように強い信頼を寄せている。

「あらゆる手段で自己表現をするという考え方は大好きです。特に一度決めたら変えられないのではなく、その時その時で変えていけるものなので」とスウィーニーはメールで語った。「私がinkboxを知って、Tylerと会社のビジョンについての話を始めたときに、チームに参加してこの動きの一部を担いたい気持ちに駆り立てられました」。

Tylerとinkboxが作り上げたチームは同社の将来を握る鍵だが、その中でも最初に雇われたChris Caputo以上に重要な鍵となる人物は存在しない。彼は現在ハーバード大学のポスドクであり、カナダの最も注目されている若手化学者なのだ。こうしたリーダーの雇用は今回のラウンドと同様に、現在の製品は単にinkboxの最初ものに過ぎないという考えに基づいて行われているものだ。実際Handleyによれば彼らは現在30日持続する一時タトゥー技術を開発中で、それすらも単なる始まりに過ぎないということなのだ。

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「私たちは自分たちの企業のバックエンドは、何よりもまず第1級のバイオテック企業と位置付けています。そしてフロントエンドでは消費者向けのファッションアクセサリーを売るのです」とHandleyは説明した。「そして、そのことは正しい才能を持つ人を探すことを本当に難しいものにしています。なぜって、このようなプロダクトのために働くソフトウェア開発者をどうやって見つければ良いのでしょう?」。

雇用は、この若いスタートアップの唯一の課題ではない。Handleyによればプロダクトに利用するために技術の新しさ故に、彼らは「何もないところから作り上げる」ことを強いられている。消費者向けの製品開発では、プロトタイプや基礎的かつ試験的な科学の段階から、量産可能な製造可能段階へ持っていくのに最低6ヶ月は必要である。先週やっと一般向けの発売に漕ぎつけたところだ。

テンポラリータトゥーは一見ハイテク製品には見えないだろう、しかしinkboxはすでにサイエンス側にはCaputoを擁し、そしてスウィーニー、プロブスト、マーク・ベル、ジョー・ルース、そしてシカゴを拠点とする初期段階対応VCファームであるKGC Capitalといった面々を含むエンジェルたちによる新しいラウンドを手中に収めた。消費者への売り上げの期待と、次々に現れるであろう後続の製品を思えば、自然科学の世界でこの先動向が気になる会社である。

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(翻訳:Sako)

「東南アジアのStripe」日本人創業者の長谷川氏が率いるOmiseがシリーズBで1750万ドルを調達

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バンコクを拠点とし、Stripeに似た決済事業を展開するOmiseがシリーズBで1750万ドルを調達した。この資金を活用し、東南アジアでの事業を更に拡大する方針だ。

同社の決済ゲートウェイシステムを使えば、オンラインでのクレジットカード決済を簡単に導入することができる。東南アジアの主要6ヵ国ではそれぞれ異なる決済システムを導入する必要があり、オンラインのクレジットカード決済を導入するのは困難だった。それを解決するのがOmiseの決済システムなのだ。現状のところ、Omiseのサービスはタイと日本で利用可能だが(Omise CEOは日本人の長谷川 潤氏だ)、来月にはインドネシア、シンガポール、マレーシアにも事業を拡大する予定であり、同国でクローズド・テストを行っている最中だ。それに加えて、ベトナム、フィリピン、ミャンマー、ラオス、カンボジアへの事業拡大も視野に入れている。

今回のラウンドは東南アジアのフィンテック企業としては最大級の規模となる。日本のSBI Investmentがリード投資家を務め、他にもインドネシアのSinar Mas Digital Ventures(SMDV)、タイのAscend Money(通信会社Trueの子会社)、そして既存投資家のGolden Gate Venturesもラウンドに参加した。Omiseはこれまでに、2015年5月のシリーズAで調達した260万ドル、当時設立直後だったシンガポールのGolden Gate Venturesから去年10月に受け取った出資金(金額非公開)を合わせ、合計2500万ドル以上の資金調達を完了している。

Omise(日本語のように「おみせ」と発音する)は2014年に長谷川氏とタイ人のEzra “Donnie” Harinsut現COOによって設立された。二人は旅行中のホームステイ先で知り合った仲だという。

Omiseは東南アジアのEコマース企業のポテンシャルを引き出す役割をもつ。東南アジアのEコマースはリテール全体の5%にも満たないのが現状であるが、6億人以上の人口をもち、裕福な中間層が増え続けるこの地域のEコマースには大きな可能性が秘められている。Rocket Internet傘下のLazada(別名「Amazonのクローン」)をAlibabaが10億ドルかけて買収したのはそれが理由でもある。また、Googleが発表したレポートによれば、今後10年間の東南アジアの「オンライン・エコノミー」は毎年2000億ドルの規模となるだろうと予想されている。その東南アジアのオンラインショップで利用される決済サービスとしての地位を築くのがOmiseの目標なのだ。

ライバルは大勢いる。昨年に700万ドルを調達し、Facebookと共同してソーシャル・コマースを試験中の2C2Pなどがその例だ。Stripeも東南アジアで事業を展開している。ただ、完全なローカリゼーションというよりも、Atlasプロジェクトを通して海外からアメリカ国内へのEコマースを拡大するというのがStripeのアプローチのようだ。

東南アジアではオンライン決済の60%が現金決済であり、現地企業は現金決済にフォーカスしている。その一方で、Omiseが扱うのはデジタル決済のみだ。その理由としてHarinsutは、東南アジアにもキャッシュレスな未来がやってくるからだと話す。そして、完了までに何日もかかり、手動での操作も必要な現状の決算手段よりも速くて簡単なソリューションを目指しているのだ。

彼はTechCrunchとのインタビューで、「私たちは顧客から小売店への支払いだけでなく、小売店から業者への支払いにもフォーカスしています。現状では、(業者への支払いが完了するまでに)1日かかりますが、私たちが目指すのは即日送金です。すべてを自動化して、書類を作成して銀行に持っていくという手間も省きます。そのプロセスでは人間の手が一切必要ありません。そうすることで、ヒューマンエラー、時間、コストを減らすことを目指しています」と語った。

OmiseにとってEコマースは最も明らなビジネスチャンスだ。しかし、今後は大企業向けのビジネスにも注力していきたいと長谷川氏は語る。Omiseが日本で事業を展開しているのはそれが理由でもある。日本企業が東南アジアに進出するケースがとても多いからだ。

「Eコマース向けの事業は成長しています。しかし、私たちの収益の大半は大企業向けのビジネスから生まれています」と彼は話す。「小さなスタートアップ向けのビジネスはまだ発展途上です。サステイナブルなビジネスを構築するために、航空会社や保険会社、通信会社などの大企業向けの事業にフォーカスしています。それにはBDO-on-demandなどの会員制サービス、Eリテール、Eガバメントなども含まれます。そこが今のターゲット・セグメントなのです」。

Omiseは決算資料を公開していないが(頼んでみたもののダメだった)、Harinsutによれば来年には損益分岐点に達しそうだとのことだ。しかし問題はサステイナブルな水準まで利益を上げられるかどうかだと彼は語る。Omiseの収益は取引ごとに受け取る3.65%の手数料だ。100万タイバーツ(約303万円)未満の送金には約1ドルの料金がかかる。大口の顧客向けにはフレキシブルな料金パッケージも用意されている。

Omiseにとって東南アジアが最重要マーケットであることには間違いないが、将来的にはオーストラリア、ニュージーランド、韓国、香港などへの事業拡大も視野に入れている。

長谷川氏は「インド市場にもとても興味があります」と語る。「とても大きな市場ですし、今でもEコマースと金融機関には大きなギャップが存在しています。私たちが進出するスペースも残されているでしょう」。

このところOmiseは人員の増強にも力を入れている。June Seah(Visa APAC出身)とMichael Bradley(Visa子会社のCyberSource出身)がOmiseの顧問に就任したのだ。Bradleyは併せて同社の最高コマーシャル責任者(CCO)にも就任している。この2名に加えて、同じくVisa CyberSource出身のSanjeev Kumarが最高プロダクト責任者(CPO)に、Groupon APACのLuke Chengが最高財務責任者(CFO)にそれぞれ就任している。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Twitter /Facebook

東南アジアのaCommerceが1000万ドルを調達し、シリーズBに向けた足掛かりを得る

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バンコクを拠点とするスタートアップのaCommerceが1000万ドルを調達した。同社は東南アジア地域のEコマース企業の支援をする企業だ。今年後半にはシリーズBにて更なる資金調達も予定されている。

タイ、インドネシア、フィリピンで事業を展開する同社によれば、今回の資金調達をリードしたのはインドネシアの通信企業Telkom Indonesiaを親会社にもつMDI Venturesだ。他にも、オーストラリアを拠点とするファンドのBlue Skyや既存投資家のDKSHも参加している。スイスに本社を置く商社のDKSHは昨年12月、aCommerceに戦略的投資を行った。投資金額は非公開ではあるものの、TechCrunchでは2000万ドルから2500万ドル規模の投資だったと考えている。

今年の始めにはAlibabaがLazadaに10億ドル出資するなど、東南アジアのEコマースには大きな可能性が秘められている。Eコマース企業や小売店に対する支援事業を行うaCommerceは、在庫の保管や管理、流通支援、デジタルマーケティングなど様々なサービスを提供している。同社は2013年に創立され、2014年6月のシリーズAで調達した1070万ドルや、2015年5月のブリッジ・ラウンドでの500万ドル、同年12月のDKSHからの出資金などを合わせ、これまでに約5000万ドルの資金調達を完了している。

昨年5月のブリッジ・ラウンドで調達した資金と同様、今回調達した資金は今年後半に予定されている5000万ドル規模のシリーズBに向けた「つなぎの」成長の起爆剤となる。言い換えれば、aCommerceの銀行口座にはまだ資金は残っているものの、規模をさらに拡大して次のラウンドをより有利に進めるためにその資金を利用したいという思惑があるのだ。具体的には、マレーシアとベトナム、そしてシンガポールへの事業拡大のための資金だ。

「希薄化を最小限に留めながら、バリュエーションを最大化させたいと考えています」と語るのはaCommerce Group CEOのPaul Srivorakulだ。「(今の時点で)シリーズBでの資金調達を行うのではなく、その前に追加的な出資してもらうよう、投資家と交渉してきました」。

(ところで、すでに5000万ドルの資金を有しながら更にシリーズBを実施するというのは、東南アジア企業としては異例のことだ。Srivorakulは同社の資金調達の努力に値札をつけるつもりはないと話す。「ただ、私たちにとって都合のよい時に資金を調達しているまでです」)

SrivorakulはEnsogoとAdMaxの創業者でもある人物だ。その後、EnsogoはLivingSocialにAdMaxはオンライン広告のKomliに売却している。彼によれば、今回の資金調達についての話は前回のラウンドを行う以前からあったという。今回の資金調達はすでに予定されていたものだったのだ。しかし、シリーズBでは新たな出資者を募集する意向であり、そのためのピッチを行っていくと話している。

今回新しく出資者となったMDI Venturesとの関係は、同社にとってタイと並ぶ最大の収益源となったインドネシア市場において大きな戦略的価値を持つとSrivorakulは考えている。

「インドネシア市場には巨大な需要があります」と彼は話す。「その一方で、同国の商慣習やEコマースに関連する法律は年々複雑になっています。その点において、MDI Venturesの親会社であるTelkom Indonesiaは国有企業であり、彼らと協働すればインドネシアの商慣習に則ったプロダクトを生み出し、インドネシアで更なる成功を収めることができると考えたのです」。

aCommerceは2014年に撤退したシンガポール市場にも再度挑戦する予定だ。前回のシンガポール進出は時期尚早だったと認めつつも、今のaCommerceには新しい「パートナー」であるDKSHがついていると彼は語る。DKSHがもつコネクションによって新しい顧客を獲得し、それに他市場で獲得した既存顧客からの需要を合わせれば、今回のシンガポール進出が成功する可能性は高いと見ているのだ。

また、新興市場へ事業を拡大する際にはサステイナビリティを第一に考えるようになり、一時的にビジネスや資金調達が上手くいかなかったとしても、しばらく持ちこたえる自信があると彼は語る。

「今回調達した資金があれば、来年には損益分岐点に達することができます」と彼は話す。「今ある3つのマーケットを黒字化させることは可能です。しかし同時に、私たちは新たに3つのマーケットにも進出しなければなりません。今回調達した資金はそのために利用する予定です」。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Twitter /Facebook

生命科学研究分野のGoogleを目指すBioz、Esther Dysonから300万ドルを調達

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Biozは、研究者がインターネットに公開された何千という科学関連記事を流し読みするのにかかる時間を削減し、直ちに研究に関連性の高い知見を提供しようとする、生命科学実験専用の新しい検索エンジンだ。

カリフォルニア州パロアルトに拠点を置くこのスタートアップは、自然言語処理を用いて公開されている科学論文から記事を抜粋して提供することでこれを実現している。Biozは、製品の選択、実験の計画、論文の執筆、助成金の申請、共同研究、実験と創薬の迅速化などにおいて実験者を支援するプラットフォームとなる。

科学論文の全体検索を提供する検索エンジンは、Biozが初ではない。すでにGoogle Scholarや人気のPLOS ONEによってピアレビュー済みの文献から研究者が利用できる論文を探し出すことができる。しかし、Biozは同社のビジネスモデルが他社とは一線を画したものであると考えている。

Biozは、検索結果の利用に関連して研究者に請求を行わない代わりに、ベンダーに対してクリックごとに一定料金を請求するという。この仕組みの全体像については明らかになっていない。説明は極めて怪しげに聞こえるし、ベンダー向けの広告モデルに関しては無料の競合サイトが存在するが、広報から得た情報によれば、論文を検索している間にベンダーのサイトがクリックされると、ベンダーに料金が発生するのだという。

Biozのクリック単価は、いずれ一定額ではなく生命科学分野の製品のベンダーやメーカーが入札するというGoogle Adwordsと非常に似た形になる、と共同設立者のDaniel Levitt氏は言う。

Bioz検索エンジンは、自然言語処理と機械学習を利用して、ウェブ上に散在する、数億ページにもおよぶ複雑かつ構造化されていない科学論文のマイニングを行い、論文の概要をまとめて研究者が簡単に欲しい情報をクリックして読めるようにする。

「Biozは、検索技術に革命を起こし、研究者に焦点を絞って情報を提供する」と、投資家でCialisの開発者でもあるGary Wilcox博士はBiozプラットフォームについて述べている。

Biozは、40か国にまたがる1000を超える大学およびバイオ医薬品企業の学術研究ラボや産業R&Dラボなどに所属する3万人以上のユーザーが完全に無料で同社の検索エンジンを使用しているとしている。

Biozは、すでにEsther Dysonを含む投資家からシードファンディングとして300万ドルを調達したことを発表している。

「Biozのビジネスモデルは一見すでに購入可能なものに関連するものですが、背景には『すべてに注意を払うべきである』という不文律があります」と、Dyson氏は投資の理由を説明している。「Biozは、気づかれにくいそのような外的要因をすべて把握する助けとなるのです」

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(翻訳:Nakabayashi)

ウェブサイト構築プラットフォームBrandcastが1390万ドルを調達

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マーケッターやデザイナーが、コードを書くことなくモバイル対応ウェブサイトを構築できるようにするスタートアップBrandcastは、シリーズBで1390万ドルを調達したことを本日発表した

このラウンドを主導したのは、Shasta Venturesであり、SalesforceのCEOであるMarc Benioff氏と、Correlation Venturesも参加した(Brandcastの共同設立者/CEOのHayes Metzger氏はかつてSalesforceに努めていた経緯があり、Benioff氏はBrandcraftにすでに180万ドルを投資している)。

このようなプラットフォームは、多数のウェブサイトをローンチし、維持するニーズを抱えたブランドにとって特に重宝するものとなる(Forresterによれば、企業は平均で268個を超える顧客向けウェブサイトを保有している)。 Brandcraftを利用している組織としては、Lowe’s、Colliers、New York Fashion Weekなどの名が挙げられている。

これにより、Brandcastの合計調達額は1940万ドルとなった。

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(翻訳:Nakabayashi)

Volkswagenのレースゲーム、IKEAの拡張現実アプリにみる効果的な「顧客体験」創出の事例

Experiences generate clicks  not ads   TechCrunch

【編集部注:本稿の執筆者、Pratham MittalVenture Pactの共同創業者】

広告はもはや、あまり効果的でなくなっている。

まず第一に、あまりにも多くの広告が存在しているからだ。画面、生活の至る所に広告が溢れかえっており、企業、スタートアップはその他大勢の中で目立つことが恐ろしく難しいことに気づいている。

確かに、広告コピーによってクリエイティブであることは可能だ。ユーザーへの徹底的なリマーケティングで話題となり、共感を得ることもできる。しかし、結局は他の企業もそのまま同じようなことをしているところで未だに競い合って、ユーザーの視界から外れてしまう。

今日、経験豊富なマーケターはコンテンツ・マーケティングが非常に重要なものだと認識している。しかし、現実を見てみよう。一体どれだけのEブックとブログが座って読むに値するものだろうか?さらには、かなり良質なコンテンツを作ったとしても、競争の激しいキーワードで順位を獲得するのは簡単ではない。Eブックがバイラルになる、もしくはDharmesh Shah氏からElon Musk氏のような人が自社のコンテンツをツイートしてくれると思ってるなら、あなたの成功を祈るよ!

一般の消費者はオンライン広告・マーケティングに対して慣れきっている。どのようにしてこの状況を変えようか?消費者が広告に興味を持たないこの状況下で何が有効なのか?顧客がEメール、電話番号を渡すに値するとどのように証明しよう?

顧客の興味を引くのはデートに誘うときとそんなに変わらない。いかに自分が素晴らしいのか、もしくは月並みな口説き文句をいったりはしない。その人自身が特別な存在だと感じさせる、信頼を築くために一層の努力をする、本当に気にかけていることを示す、そしてさりげなく電話番号を聞くのだ!

今日の顧客は、あなたが顧客に対して気を配っていないこと、またいかにもなセールストークを言っているだけだと気づいている。
前述したことがあなたが顧客にすべきことだ。記憶に残る体験を構築すること、交流の機会を設けること、個々の顧客に合わせてカスタマイズを行うこと、付加価値を与えること、信頼を築くことだ。

それでは実際のこれらの顧客体験はどのようなものなのだろうか。

私たちは有名スタートアップとFortune500入りの企業に調査を行った。素晴らしい顧客体験のほとんどは後述の5つのデジタル体験のうちの1つに当てはまる。

カリキュレーター(計算機)

オンラインスクールに登録するもしくは、保険を購入する際にあなたが真っ先に知りたいのは「費用は一体いくらなのか」だろう。カリキュレーターがそんな喫緊の質問に答える手助けになる。費用は一体いくらなのか?投資対効果は何か?いくら節約できるのか?

現実に、購入決定のためのカリキュレーターを使った投資対効果、費用の計算が毎月数百万回実施されている。

カスタマーに平凡なランディングページを突きつけるのではなく、彼らの質問に直接答えられるようにしたらどうだろうか?インタラクティブなカリキュレーターの出番だ。

想像してもらいたいのだが、病院のサイトに「心臓病を患うリスクを計算しよう」というカリキュレーターがあればどれだけ顧客のエンゲージメントを高めることができるだろうか。もしくはオンラインスクールのサイトに「学問を修めるための費用をいくら節約できるか計算しよう」というカリキュレーターがあればどれだけコンバージョンを得ることができるだろうか。

レベル判定

顧客はいつも自分自身について知りたいと思っている。とりわけ自分がしている良くないことについて。もし成績をつけることができる場合、顧客は判定「A」を獲得するために努力することだろう。そして、その過程で顧客からの高いエンゲージメントと多くの顧客データを手に入れることができる。

一般の消費者はオンライン広告・マーケティングに対して慣れきっている。

SEOの判定、もしくはWebサイトのスピードの判定で自社のWebサイトをテストしている時のことを考えてみよう。一旦判定Aを獲得するためにしなければならないことがわかったら、そのために多くの努力をするだろう。

HubSpotを例に取ろう。Webサイトがマーケティングにしっかり対応しているか、ユーザーフレンドリーがどうかを判定するツールがある。インバウンド・トラフィックがどこで遅くなっているのかHubSpot の見込み顧客に伝えることで、信頼を築くだけでなく大量のWebサイトの情報を集めることもできている。
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Webサイトの判定が最も一般的なものだが、さらに他の可能性もある。大学は論文の成績判定ツール、IQレベル判定などを開発できる。ヘルスケア企業は腎機能値、BMI(肥満指数)などの人の健康データを判定するツールを利用できる。

コミュニティー

業界フォーラム、コミュニティーはまだ手がつけられていない有用かつ有望な分野だ。買い手は何か買う前に、ほとんどいつでも他の人からの意見を求めている。意見の交換ができるフォーラムはかなり価値が有るだろう。

すぐに、しっかりした回答をもらうことができる業界フォーラムを立ち上げることができたら、業界に関することを質問するための行きつけのサイトになることができる。そして、しっかりSEO対策をしている場合、フォーラム上での質問も検索に引っかかり多くの検索トラフィックを得ることができるだろう。
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最高の見本となるのはクラウドに関する意見をもらうことができるGartherのCloudAdviceフォーラムだろう。GartherはIT分野の調査・研究を行う企業だ。ITに関わる人のためのコミュニティーを作っており、そこで技術的な質問を投稿したり、課題となっていることを議論することができる。このフォーラムによってGatnerは見込み顧客に自社の存在を認知してもらえるし、また彼らをその業界の権威として確立することができる(示すことができる)。

Gartnerはフォーラムに「Weekly Heroes」というカテゴリーを設けゲーム感覚を追加している。ユーザーに報酬を与え、投稿を続けてもらえるようにインセンティブを設けているのだ。

ゲーム

ポイントサービスから実際のモバイルケームのようなゲーム体験はユーザーがゴールを達成したいように仕向ける。正しく使えば、ユーザーのエンゲージメント向上に役立ち、ブランドを印象づけることができる。
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チョコレートを販売する企業のKinder Joyは5〜12歳の子供向けのアプリの提供を開始した。アプリでクイズ、パズル、教育ゲームなどがある教育環境下に子供を置くことができる。コンテンツを楽しんでいる間、子供は継続的にKinder Joyのブランドに接することになる。子供の親がアプリの利用時間、接続を管理することができるので、信頼できるブランドという印象をあたえることができる。

これだけ大勢の企業がごっだ返している中では、最高のセールストークも効果的でない。
他の例にはVolkswagenがあげられるだろう。Volkswagenの車でレースができるクラッシクカーのレーシングゲームのアプリを作った。アプリ自体は非常にシンプルなものだが、ユーザーはゲームで新しいモデル、パーツを手に入れるために奮闘しながらVolkswagenのすべての車に詳しくなっていくのだ。

AR(拡張現実)

AR(拡張現実)とVR(仮想現実)は顧客のエンゲージメントを高めることにつながる新たなタイプの体験となる。お気に入りの例の1つはL’Oréalの「Makeup Genius」アプリだ。このアプリを使うことで、スマートフォンの画面上でL’Oréalの様々な化粧品を仮想で顔に試すことができる。報告によるとアプリは2000万回以上ダウンロードされているそうだ。

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2000万人もの潜在顧客を深くブランドにエンゲージするというのはマーケティングの世界で未曾有のことだ。L’Oréalは正確にあなたがどのアイライナーが好きなのか、あなたの顔がどんなタイプか、その他様々な情報を把握しているということだ。販売において、どれほど個々の顧客にカスタマイズした販売が可能になるか想像してほしい。

IKEAはAR(拡張現実)の利用成功例を持つ企業だ。IKEAのアプリは仮想でリビングスペースに家具を置くことができる。外出することなく数百万の机、椅子、洋服だんすを試してみることができるのだ。そしてここにIKEAにとって素晴らしいメリットが存在している。IKEAはあなたが何色の机を好きかといった情報だけでなく、家の間取り、部屋数、その他いろいろな情報を集めることができるのだ。

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このアプリという特効薬によって、IKEAがまるで顧客の家に上がりこむのと同じだけの多くの情報を得ることができ、大きな価値をもたらしている。

今日の顧客は、あなたが顧客に対して気を配っていないこと、またいかにもなセールストークを言っているだけだと気づいている。これだけ大勢の企業がごっだ返している中では、最高のセールストークも効果的でない。

それゆえ顧客を獲得する競争は広告への入札や誇大広告でクリックを誘ったりすることではなくなる。顧客との相互の交流、個々の顧客にカスタマイズしたやり方で真の価値をもたらすテクノロジーの最新の手法を駆使できた人が勝者になるだろう。

マーケティングのあり方が大きく変わっていることを考慮して、マーケティング部門は自社の「デジタル指数」は何かについて、そしてそれを最大化するにはどうすれば良いのか考え始めるべきだ。テクノロジーに精通した自社専属の科学技術者を雇い、IT/テクノロジー部門にもより力を入れ、熱心に製品開発に取り組むとよいだろう。

マーケティングが新たなITとなる日はそんなに遠くない。

原文

(翻訳:Shinya Morimoto)

あなたの節約を実現するために、個人向けファイナンスボットTrimが220万ドルを調達

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これまでUberに毎月いくら払っているか気にしたことはあるだろうか?新しくリリースされた Trim charbot答をSMSで教えてくれる。

Trim は各種のサブスクリプションを管理する手助けもするし、支出のアラートを設定したり、銀行の残高のチェックもしてくれるのだ。しかしアプリは提供されていない。ただボットを介してのみSMSやFacebookに連動することができるのだ。

「モバイルバンキングアプリでできることのうち、お金を動かすこと以外はTrimを使って行うことができますよ」と語るのはCEO兼共同創業者のThomas Smythだ。彼は仲間のエール卒業生Daniel Petkevichと一緒にビジネスを設立し、サンフランシスコに拠点を置いた。

アシュトンカッチャーはこのコンセプトを信用し、Sound Venturesを通して彼らの220万ドルの資金調達ラウンドに参加している。ラウンドはEniac Venturesが主導していて、Version One VenturesとCore Innovation Capitalも一緒に参加している。

Trim

Trim

「私は平均的なアメリカ人家族のために熱意を持って資産管理を提唱し、状況に変化をもたらそうとするThomasとDanielのようなチームの支援が大好きなのです」と語ったのはEniacのジェネラルパートナーであるTim Youngだ。

Trimは7か月前に開始されたが、当初は不要なサブスクリプションを特定してキャンセルすることに焦点を当てていた。チームは、これまでTrimの利用者たちは600万ドルの節約をできただろうと見積もっている。

今回より多くの機能を追加して、Smythは彼らのサービスがバンキングアプリだけではなく、個人ファイナンスアプリの代わりにもなることを期待している。彼は「人はメッセージング・インターフェースを使うのが好き」という信念を持っているからだ。

このサービスは無料だが、Smythは最終的にはプレミアム機能に課金することによって収益を上げるつもりだと語った。

Facebookがchatbotsを立ち上げて以来、わずか数ヶ月しか経っていないが、 多くの企業は、それがヒットするかどうかを見るためにコンセプトを色々試しているところだ。顧客サービスからニュースダイジェストまで、利用者はロボットとのコミュニケーションを介してAIによって裏打ちされた応答を得ることができる。

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(翻訳:Sako)

IndieBioデモデーでバイオ系スタートアップの最新動向をチェック!

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場所はサンフランシスコのダウンタウンにあるFolsom Street Foundry、今日の午後はその一室でIndibioの3度目のデモデーが開催されており、最新のイノベーションについて興味津々の人たちでごった返していた。

アクセラレーターのデモデーは一大イベントとなり、今ではTechCrunchもライブストリーミングを行っている

しかし、真の意味で純粋なバイオテックアクセラレーターがSOS Venturesからローンチされたのはほんの2年前のことだ。それ以来多くのアクセラレーターやベンチャーがバイオテックの分野に強い関心を持つようになったが、それでもなお、Indiebioはその業界で、特に奇妙で興味深いアイディアが披露されるという点において皆の注目を集める存在であり、そう言ったアイディアは、例えば動物の体の部位を3Dプリンターで製造するとか、微生物に卵白をつくらす、バイオリアクターを使ってビールを美味しくする、などだ。

3回目の今回も例外ではなく、キノコの皮で服を作ったり、チューインガム一枚のサイズのジカウィルス検出装置や、実験室でヒトのミルクを製造するなど、奇抜なアイディアを披露するスタートアップが次々に登壇した。ここではIndieBioの3度目のデモデーで登場した15のスタートアップ全てについて紹介しよう。

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Mycoworks– Mycoworksは皮革の天然の代用品としてキノコを使おうとしている。その素材は機能的改良が加えらえており、動物を使わず、環境に優しく、価格競争力も強い。同社は靴とファッション業界の3社とパートナー関係を結んでいる。デモデーの日、同社は牛のサイズの「キノコ皮」をお披露目した。これは牛1頭丸ままの皮革に相当し、3週間で培養したという。

SyntheX Labs– SyntheXは現在治療不可能なガンを、いわゆる「合成致死性」を利用して治療する会社だ。同社の開発したプラットフォームでは、たった一枚のペトリ皿で一度に1000万のタンパク変異体をテストできるという。同社は現在複数の製薬会社と連絡をとりながら、将来有望なデータをすでに手にしている。その中でも、新規に改良を加えた、がん細胞を死滅させる新しい方法に関する論文は向こう数カ月内に出版される見込みだ。

Ava Labs– Avaのミッションは最高級ワインをブドウを使うことなく再現することだ。その方法とは、選り抜きのワインの分子レベルの素性を分析し再構成することで、1万1000ドルの1973年製Chateau Montelena Chardonnayのような最高級ワインと同じ飲み口を再現することだ。Avaの先行発売の「複製」ワインは完売し、同社は既に250万ドル調達して最初の顧客には半年以内にワインを発送する予定だ。

Knox Medical Diagnostics– Knoxは子供の喘息を、発症する前に予防することを目指している。同社によると、病院レベルの喘息管理ツールを開発することで、家にいながら喘息の発症可能性に関する洞察を得ることができる。同社はこれまで喘息患者80人を使って研究を行い、UCSFと共同でさらに500人の患者を使った研究を開始した。その結果を製品発表と共に公開し、2017年春までにFDAの承認を得る予定だ。

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AstRoNA Biotechnologies– 食中毒は今日、世界的に懸念されている問題であり、毎年6人に1人以上の割合で食中毒にかかると言われている。AstRoNAは持ち運びできる小型の食品検査装置を開発した。これにより、汚染されている可能性のある食品を食品生産のどの段階においても直接装置を持ち込んで検査することが可能になる。同社によれば、これにより「現場からテーブルまで」この検査装置を使うことができ、正確な結果を得ることが1時間以内に可能だ。また、同社な試験的なプログラムを食品会社4社と立ち上げた。今年度末までに最初の大規模な製品販売を行う為に170万ドルを調達したいとしている。

BioNascent– BioNascentは母乳で育てられていない赤ん坊の為に、母乳と生理的に同等なフォーミュラを製造している。同社はヒトの母乳に含まれるタンパク質を合成し、現在使われている乳製品ベースの幼児用フォーミュラに取って代わる製品の製造を目指す。同社は既に最初の製品を販売するための販路を開拓しており、研究とマーケティングに注力しつつFDAによる認可を3年以内に取り付ける予定という。

Amaryllis Nucleics– AmaryllisはRNAの発見を加速することで研究の効率化を目指す。同社のテクノロジーはRNA配列決定に要する時間を半分に、また費用を8分の1にする。それにより、ガン診断、薬剤の開発、食の安全の確保が促進されるだろう。Amaryllisはこれまで、セールスにおいて25万ドル以上の資金を調達し来年までに国際的に販売を行うことを目指している。

MiraculeX– MiraculeXは次世代の、健康で美味しいタンパク質ベースの甘味料を植物に作らせるべく、研究を行っている。このスタートアップを支えるチームによると、同社の甘味料はゼロカロリーで、苦味は無く、砂糖より美味だという。MiraculeXは同社初のタンパク甘味料を今年度末までに発表し、さらにその他のタンパク質ベースの甘味料を翌年までにリリースしたいとしている。

OneSkin Technologies– OneSkinは研究室で本物の人間の皮膚の合成に成功したという。OneSkinによると、同社は人種と年齢に応じて皮膚を複製し、個人のニーズに合ったスキンケア製品を開発するという。同社は既に大きな化粧品会社と最初の顧客関係を結び、個人のニーズに合ったスキンケアと同社独自のアンチエージング化粧品のラインアップを1年以内に発表したいということだ。

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Willow Cup– Willow Cupは植物を使って乳製品を製造する会社で、まずはラテ用のミルクの泡を手掛ける。同社は特許を取得済みの植物のタンパク質ライブラリーを使って植物由来のミルク産業に革新をもたらそうとしている。同社によると既にサンフランシスコ内の代理店10社と提携販売を行い、全国の市場に販路を広げる予定だという。

Endura Bio– カリフォルニアは依然干ばつで苦しんでおり、当地では水は貴重だ。Enduraは農業用スプレーを製造しており、そのフォーミュラの使用により作物の干ばつ耐性を活性化し、水の使用を33パーセント抑えることが出来る。現在そのテクノロジーを検証すべくカリフォルニアで野外試験を実施中だ。

Ardra– 天然香味料と香水は急速に成長している市場でその市場規模は230億ドル以上にもなるという。Ardraによると同社の酵素テクノロジーにより香味料を他の天然に存在する同等品と比較して、より低コスト高マージンで製造できるという。同社によると最初の4ヶ月の内に手がけた最初の製品において商業収量を達成することに成功し、通常の製品開発サイクルにかかる何年もの期間を短縮することが出来たという。

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mFluidX– ジカ熱は妊娠した母親が感染した場合胎児に小脳症を引き起こす可能性のある恐ろしい病気だ。ブラジルは今年の8月世界が夏のオリンピックで集結しようとするまさにその時、その病気の渦中にいる。mFluidXは診断用のチップを開発したが、そのサイズはこれまでのDNAやRNA分析用の大きな研究室用装置とは違い、ほんのガム1パックのほどの大きさで、ジカウィルスを野外で検出出来るという。同社によるとその検出チップは電源要らずの使い捨てのチップで既存のテクノロジーの1000分の1の費用しかかからず、どこにいても感染病の診断に素早く使用可能だという。同社とパートナーシップを締結した最初の人物はブラジルでZikaウィルスを同定したウィルス学者だ。

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Jungla–  Junglaによると、同社はゲノム上でこれまで重要性が不明だった変異の役割を類推することにおいては世界最高のテクノロジーを保有し、機械学習と同社の専売特許であるタンパク機能マップを組み合わせ、まずガンの分野で応用するという。同社は核酸のシークエンスサービスの分野で著名な企業やゲノム診断の第一線を行く会社、アメリカで最大の心臓専門病院と提携関係にあるという。

Qidni Labs– Qidniは移植可能な人工肝臓だ。同スタートアップはブタを使った最初の臨床前試験を成功させ、来年には臨床前試験の全ての工程を終了し、次の5年以内にそのテクノロジーを市場に出す予定だ。

 

[原文へ]

(翻訳:Tsubouchi)

「ニュースをより簡単に」Discorsが120万ドルを調達

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銃規制は必要ない(いや、必要ある)。EUに加盟することは素晴らしいことだ(いや、最悪だ)。トランプ氏は天才だ(いや、地球上で最悪の人間だ)。世間に出まわるニュースは複雑で、ある意見があれば常にその逆の意見もある。本日(現地時間7月14日)、資金調達の完了とiOSアプリの公開を同時に発表したDiscorsを使えば、世界中で起こる様々な出来事を深く理解することができるだろう。

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現地時間7月14日、DiscorsのアプリがiPhoneとiPad向けにリリースされた

「私たちのミッションとは、世界中の優れたジャーナリズムの敷居を低くすることで、忙しい日常の中でも簡単に情報が入手できるようにすることです」。そう話すのは、Discorsの共同創業者兼CEOのBasil Enanだ。今日公開されたアプリでは、Discorsが独自に報じるニュースに加えて、それに対する洞察やコメント、分析、そしてエキスパートたちの意見を読むことができる。

彼らのアプリに掲載されるトップニュースは、あるアプローチに基づいて掲載されている。それは、「事実だけを頂きます、よろしく」というものだ。同アプリに掲載される記事は世界最大級のニュース通信社であるAssociated Press、Reuters、AFPなどを情報源とし、その後自社の編集チームによって選別されたものだ。

創立間もない同社はさらに、エンジェル投資家や創業者、Matter Venturesなどから120万ドルの資金を調達したことを発表した。この資金によって出版社とのパートナシップを強化する方針だ。

「どのようにすれば読者に分かりやすく、かつ効率的にニュースのwho、what、where、whenを伝えられるのか。私たちは6ヶ月もの時間をそれを考えるのに費やしました。」とEnanは語る。「しかし、ニュースを理解するということは、同時に”なぜ?それで何?”を理解することでもあり、それこそがDiscorsの強みなのです」。

Discorsはコメンテーターやアナリストとタッグを組むことで、記事により深みを持たせようと試みている。彼らは皆、The Economist、CNN、The Guardian、Bloomberg View、Foreign Policy、Tronc、The Washington Postなどに在籍する一流のエキスパートたちだ。

「私たちが考えるに、ニュースを理解するための最良の方法とは、有識者の意見を聞くことなのです」とEnanは話し、自分の意見を持つことの重要性も強調した。

同社はニュースの提供元とパートナーシップを結んでいるため、ユーザーは個々の出版社の記事を購読するために追加的な料金を支払う必要はない。Discorsの記事はすべて全文読むことができる。なんとも嬉しい限りだ。

現在のところ、同アプリは無料でダウンロードすることができる。しかし、今年末には会員制の料金体系が導入される予定となっている。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Twitter /Facebook

電気式給湯装置のISI Technologyが500万ドルを調達

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本日(現地時間7月15日)、ISI TechnologyがWave EquityがリードするシリーズAで500万ドルを調達したことを発表した。ISIはHeatworksという電気式の給湯装置を製造する企業だ。

アメリカの一般家庭では毎朝このような光景が見られる。蛇口をひねって水をだし、Eメールのチェックをする。そして歯を磨くか、もしくはお湯が出てくるまで洗面台の前をふらふらして数分過ごす。その間に無駄にしてしまう水の量は約22~44リットルかそれ以上にもなる。アメリカ中の家庭全体で無駄にされている水の量を考えれば、それは膨大な量だ。

お湯が出てくるまでに時間差がでてしまうのは、水を温めるための現状の方法に問題があるからだ。それは冷水がコンテナの中に注がれた後、その中にある発熱体が水を加熱するという方式だ。この方法では水が温まるまでに時間がかかってしまうだけでなく、正確な温度調節ができないという欠点がある。さらに、水を温める発熱体が度重なる加熱によって故障してしまうこともしばしばだ。

2014年、ISI Technologyはニューヨークで開催されたDisruptでHeatworks Model1を発表した。Model1は現存する給湯装置とは違い、水の電気抵抗を利用して水を温める。そのため、コンテナ本体の温度を上げることなしに水を温めることが可能になり、シャワーや蛇口から瞬時にお湯を出すことができるのだ。

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2014年以降、Model1を商品化したISIは、Kickstarterや同社のウェブサイト、そして彼らにとって最大のリテール・パートナーであるLowe’sを通して数千ユニットを販売した。ISI Technology創業者は、Blue Rhinoの創業者でもあるJerry Callahanだ。彼によれば、同社の製品を買い求める人のほとんどは、家を改修する個人や、省スペースでより効率的な家族向けの住宅の開発を目指す建築業者だという。

今年4月、米国エネルギー省はNational Appliance Energy Conservation Act(NAECA)の一部であるNAECA3を承認した。これは家庭の消費電力について新しい省エネ基準を定義したもので、その基準は厳しく、おもなターゲットは給湯装置だ。その結果、給湯装置の容量がこれまでの80ガロン(約363リットル)から50ガロン(約227リットル)に制限されることとなった。

ISIはそれに対応し、Model1xと呼ばれる新製品を開発した。Model1xは現在のスタンダードとなった50リットルのタンクに接続するようにデザインされており、気温には左右されるものの、これまでの1.5倍から2倍のお湯を給湯できるようになった。

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Model1とModel1xともに、Google傘下のNest Labsが提供するスマートホーム・プラットホームの”Works With Nest”に接続できるようになっている。ISIは今後、流通網の拡大を目指すと同時に、より軽量で安価な給湯装置を製品ラインナップに加えることを目指している。それに加えて、Heatworksを洗濯機や食器洗浄機などの他の家電にも導入するための新しいパートナーシップとライセンスの機会を模索中だ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Twitter /Facebook

オンデマンド型の営業員マッチングサービスのUniversal AvenueがシリーズAで1000万ドルを調達

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ストックホルムを拠点とするUniversal Avenueは、現地に住むの営業員を必要な時に必要な人数だけ採用できるサービスを展開するスタートアップだ。普段は顧客企業の手助けをする同社であるが、同社が今回発表したディールは、彼ら自身のためのものだ。現地時間7月11日、Universal AvenueはシリーズAにおいて1000万ドルの資金調達を完了したことを発表した。約1年前に行われた、シードラウンドの「延長戦」で調達した500万ドルなどを合わせると、同社の合計資金調達額は1700万ドルとなる。

今回のラウンドをリードしたのは、Fidelity Internationalの自己勘定投資部門であるEight Roadsだ。他にも、Universal Avenueの既存出資者であるNorthzoneやMOORなども今回のラウンドに参加した。

Universal Avenueの共同創業者兼CEOのJohan Jiljaとの電話インタビューによれば、同社のマーケットプレイスには3つの参加者が存在する。まず第一に、現地に住むセールスパーソンたちだ(同社は彼らを「ブランド・アンバサダー」と呼んでいる)。Universal Avenueを通してセールスの仕事を手に入れ、そこから歩合制の収入を得ることが彼らの目的となる。次に、B2Bのオンライン/デジタル企業だ。SaaSを提供する企業などがその例であり、新しいマーケットへの進出を考えていたり、マーケット調査をしたりする際にUniversal Avenueを利用するのだ。そして最後の参加者は、そのようなデジタル・サービスを購入することでメリットを得る可能性のあるローカルのビジネス・オーナーたちだ。

ほとんどの場合、B2Bのビジネスが対面の営業抜きで相手の意思決定者にアプローチするのは難しい。このことがSaaSを提供する企業やスタートアップがビジネスを拡大する際の足かせとなっており、Universal Avenueはこの問題を解決することを目指しているのだ。

B2Bビジネスが事業を拡大する際、進出先の国や地域に支社を構えたり、地元のエージェンシーにアウトソーシングするという手段が一般的だ。このような方法にはコストやリスクが伴ってしまう一方で、Universal Avenueのオンデマンド・モデルではそのリスクを抑えることが可能なのだ。

Universal Avenueはプラットフォームを利用する顧客企業と、それに見合ったレベルの営業員をマッチさせるためのマーケットプレイスだ。だがLiljaによれば、それぞれのクライアントには専属の営業員がつくようなシステムになっているという。それを考えると、そのようなシステムでは人材を有効活用できず、純粋なオンラインのマーケットプレイスよりもスケーラビリティに欠けるのではないかという意見もありそうだ。しかしLiljaによれば、いったん第一回目のトライアルが終わったあとは、比較的スムースにリピートを獲得することができているという。

新しいマーケットで自らの製品やサービスをテストしようとしている企業に対して柔軟な選択肢を提供しているという点で、Unibersal Avenueが他企業の事業拡大の手助けとなっていることは間違いない。Universal Avenueのユーザーは、顧客を実際に獲得することができて初めて利用料金を支払う必要がある。このオンデマンド・モデルによって、通常であればユーザーが負うべきリスクを代わりにUniversal Avenueが、ひいては歩合制で報酬を得る営業員が背負うことになるからだ。

Universal Avenueは今回調達した資金によってイギリス市場でのさらなる成長を目指すと当時に、今年後半にはアメリカ市場にも進出する予定だとしている。同社はイギリスの他にも、スペイン、ギリシャ、スウェーデン、ノルウェー、フィンランドでビジネスを展開中で、これまでに顧客としてSpotify BusinessやDripApp、Shopifyなどを獲得している。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website / Twitter /Facebook

DIY.CoがCartoon Networkと共同で子供向け学習プラットフォームJAMをローンチ

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Vimeoのデザイナーで共同設立者であるZach Kleinの率いる、教育系のハイテクスタートアップDIY Co.は、JAM.comという新しい子供向けの学習プラットフォームをローンチした。

KleinがTechCrunchに語ったところでは、同社は2015年の暮れに400万ドルのベンチャー基金をひっそりと調達した。そのラウンドはJAMの開発をサポートするためのもので、Learn Capitalがリードを務め、Spark Capitalの参加で行われた。

DIYの新サイトであるJAMのコースは14歳までの子供が対象だ。「子供にとって学ぶ価値があるが、学校では教えてくれないスキルの数は膨大で、フルタイムの教師でなくても子供にそう言ったスキルを喜んで教えたいという先生はたくさんいる」と、Kleinは言う。

これまでのところ、JAMのコースには「自分だけの機械を発明するには」、「料理のプロになろう」、「アニメーターになるには」などがある。

DIYがCartoon Networkと共同で開発、プロモーションを手掛けるアニメーションのコースは、サインアップした子供とその親に無償で提供される。他のコースは1コースにつき99ドルで、1年間アクセス可能だ。始めるにあたって7日間の無料体験期間がある。

Cartoon NetworkのアニメシリーズAdventure Timeの製作における中心人物の一人、 Julia PottはJAMのアニメコースの開発を手伝った。PottはJAMのコースのビデオの部分にも実際に出演している。

JAM features a How to Become a Pro Chef course for kids.

JAMの料理コース、「料理のプロになろう」

DIYはJAMコースの製作にあたり、厳選した講師陣を揃えた。それらの講師はDIYのスタッフであったりPottのようにその分野のエキスパートであったりする。同社はコースを販売することで収入を得ている。

Kleinは同社のアプリとサイトを完全に無広告にすると決めており、ユーザーデータも売却されたりしないということだ。

Cartoon Network社長のChristina Millerによると、このコースに参加した生徒のうち、少なくとも3人の作品がCartoon Networkによりオンライン上でプロモートされ、もし出色の出来であればインタースティシャルとして実際に放映されるという。

Pottは生徒の作品をレビューして、どの作品がそのようなCartoon Networkのプロモーションに使われるかを決定する。

Turner Broadcastingの所有するこのネットワークは3000万ドルをかけJAMコースを支援し、子供や視聴者に対してSTEAMに関する技能と概念の促進を図る。STEAMとは、科学(science)、テクノノジー(technology)、工学(engineering)、芸術(art)および数学(math)のことだ。Cartoon NetworkはこれまでもこのSTEAMのイニシアチブを通してDIY Co.をパートナーに取り組んできた。

「プログラミングが現在科学と工学の分野で重要であるように、将来は芸術においても大変重要になります。我々は今、将来のアニメーター育成の種を蒔き、子供達をインスパイアしなくてはいけないのです。我々がDIYに話を持ちかけたのは、DIYがコミュニティーで行っている活動が気に入ったからです」と、Millerは言う。
Learn CapitalのRob Hutterによると、同社がDIYに投資する理由の一つはJAMのローンチを支援するためだ。今後、このニューヨークを拠点とするスタートアップがさらにコースを充実させ、コースで既に学んでいる家族からのフィードバックを集めることを期待している。

投資家も気づいている通り、DIY Co. はモバイル中心のアプローチを採っている。これは普段、学校の外ではタブレットやスマホを使ってインターネットに接続している最近の子供達にアピールするだろう。

Madison Watkins teaches kids how to become a pop singer via JAM.com.

Madison WatkinsはJAM.comで子供にどうすればポップ歌手になれるかを教えている

JAMのコースは、他のもっと単純なアプリに見られる、単なるビデオや双方向的なクイズ以上のものだ、とKleinは付け加えた。

子供達はボットを介してJAMのコースと交流する。ボットは基本的な質問について答え、新しいスキルを終了、習得する際にどんな演習が必要か案内してくれる。

子供達は時々、ボットとコース内容によっては、コンピュータ画面を離れて実際の世界で問題を解決することが要求される。これは、今日子供達がほとんど過剰なまでの時間をコンピュータ画面の前で過ごしている現代において、とても重要なことだ。

加えて、子供がJAMのコースを履修するとき、子供は同時にそのオンラインのコミュニティーに参加することとなる。子供達がコースで行う演習はみんなが見ることができる。子供がコースの新規課題やセクションに挑戦するとき、JAMではまず他の子供達の作品を見て刺激を受けることが推奨されている。

「親達は子供がコンピュータの前に座っているときは、その時間を有益なことに使って欲しいと思うものですが、我々は親のその思いを実現する手助けをしたいと思っているのです。子供達がコンピュータから離れ、現実の世界で何かをすれば、コンピュータに戻ってきたときにそのことについてオンラインのコミュニティーに報告することができます」と、Kleinは言う。

将来的には、DIY Co.はそのボットのインターフェースをもっと洗練したものにしていきたいと考えている。人工知能を活用することで、子供が一見関係なさそうな質問を思いついてもコースを中断してJAMボットに話しかけることができるようになる。これはまさに、子供が親や教師など理解のある人たちに対して行うのと同じような感覚である。

JAMは同社に元からある、子供のためのソーシャルネットワークサイトDIY.orgとは別物だ。DIY.orgもJAM同様に、子供の学習、創造性、知的興味を育てることに主眼を置いたサイトだ。DIY.orgは完全に無料のサービスで、広告もなく、JAMのコースの履修の有無に関わらずどんな子供にも門戸が開かれている。
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(翻訳:Tsubouchi)

DeNA、Preferred Networksと組んでAIベースのソリューション事業に参入——合弁会社「PFDeNA」を設立

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1年ほど前にはZMPと組んで、自動運転技術を使ったタクシーを手がける「ロボットタクシー」を設立したディー・エヌ・エー(DeNA)。新領域のビジネスを続々と手がける同社が、今度はAIをベースにしたソリューション事業に参入する。

DeNAとPreferred Networks(PFN)は7月14日、合弁会社「PFDeNA(ピー・エフ・ディー・エヌ・エー)」を設立したことを発表した。資本金は3000万円で(出資比率はDeNA:50.0%、PFN:50.0%)、代表取締役社長にはDeNA代表取締役社長兼CEOの守安功氏が就任。取締役にはPFN代表取締役社長 CEOの西川徹氏、PFN取締役副社長の岡野原大輔氏、DeNA取締役の川崎修平氏ほか1名が就任する。

PFNは検索やレコメンドなどを開発するPreferred Infrastructureから2014年にスピンオフした技術系のスタートアップ。現在はIoT領域を中心に機械学習技術を用いたソリューションを手がけている。2015年12月にはトヨタ自動車が出資。モビリティ領域でのAI技術の共同研究を行うと発表したことでも話題を集めた(提携自体はPFN設立時の2014年に発表されていた)。

PFDeNAでは、AIを活用した企業向けのソリューション提供をする予定。対象領域はゲームやヘルスケア、自動車・交通関連をはじめ、大規模データを扱うあらゆる産業としている。両社は発表で「DeNAがインターネットサービスの運営を通じて蓄積してきたデータや複数事業領域での経験と、PFNのAI技術を組み合わせることで、DeNAあるいは顧客企業の持つ様々なデータの価値の最大化を図る」とコメントしている。

“企業向けのソリューションを提供”なんて聞くと、「DeNAがSIerにでもなるの?」なんて疑問も出たりするのだけれど、PFDeNAのサイトを見る限りはまだ具体的な内容は何も分からない状態。まずは今後の展開を待ちたい。

タクシーで「コンプレックス商材NG」な動画広告、日本交通とフリークアウトが新会社設立で

フリークアウトの本田謙社長(左)と日本交通の川鍋一朗会長(右)

フリークアウトの本田謙社長(左)と日本交通の川鍋一朗会長(右)

タクシーの広告といえば、消費者のコンプレックスに訴求するリーフレットを思い浮かべる人は多そう。例えば、飲むだけで痩せたり薄毛が治ることを謳うチラシ。僕も「ハゲの99%が治るって本当?」といったコピーに釣られ、手に取ったことはある。

いわゆる「コンプレックス商材」ではなく、大手のブランド広告を獲得しようと、都内タクシー最大手の日本交通がデジタルサイネージ事業に乗り出した。東京都心のタクシー100台にタブレット端末を設置し、全国規模で商品やサービスを展開する「ナショナルクライアント」の動画広告を配信する。

翌年に日本交通のタクシー3500台、2020年までに全国のタクシー5万台への導入を見込む。全国のタクシー会社に対してはタブレットを無償配布し、広告収益を分配することで普及を図る。

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大手ブランド広告を取り込む

日本交通とフリークアウトが合弁会社「株式会社IRIS」を設立し、動画広告商品「Tokyo Prime」を開発。都心でタクシーを利用する高所得者向けの「プレミアムメディア」という位置づけで、フリークアウトの顧客である航空会社や飲料メーカー、トイレタリー企業などを中心に販売していく。

デジタルサイネージは前部座席背面にタッチパネル対応の10インチタブレットを設置。乗客が運転手に行き先を告げてメーターが稼働した時点(つまり、もっともアテンションが集まるタイミングらしい)で、最長3分の動画広告を流す。丸の内や六本木のタウン情報なども提供する。

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僕も試してみたが、座って一息ついたタイミングで動画が流れると目を奪われる。見たくない場合はタブレットを操作して動画を消すことも可能だ

日本交通によれば、都内のタクシー平均乗車時間は18分間。その間に動画広告を流すことで、企業のブランドを深く浸透させられるとアピールする。

日本交通の川鍋一朗会長は、「都心のタクシー利用者は可処分所得が高く、繰り返し乗車するのが特徴。これまではこうした高所得者層へのマーケティングに注力できていなかった」と語る。

合弁会社のIRISでは広告掲載基準を厳格化。「コンプレックス商材」「ギャンブル」「美容整形」などの広告を掲載不可とし、大手のブランド広告を取り込む狙いだ。

デジタルサイネージ参入を支えた格安MVNO

ビーコンを使った「Physical Web(フィジカルウェブ)」にも対応し、車内で視聴した動画に関連するURLをスマートフォンにプッシュ通知する。この機能はスマホのGoogle Chromeで「フィジカルウェブ」とBluetoothを有効にしている場合のみ有効だ。

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タブレットはインターネット常時接続で、データ通信にはIoT向けの格安MVNOサービス「SORACOM Air」を採用した。通信料金が安い深夜に動画をダウンロードしたり、昼間はAPI経由で帯域制限するなどして、通信料を1台につき月額1000円以下に抑える。

このように低コストで運用できるサービスがあったことが、デジタルサイネージに参入できた要因でもあるようだ。

タクシーならではのターゲティング

日本交通とフリークアウトは今年1月、位置情報と連動するマーケティング事業で提携。日本交通子会社のJapanTaxiが提供する配車アプリ「全国タクシー」の位置情報を、フリークアウトの広告配信に活用する取り組みを始めていた。

フリークアウトにとって、デジタルサイネージは初の事業領域となる。本田謙社長は「今から行く場所がわかれば、乗車中に目的地に関連する広告が配信しやすくなる」と、タクシーならではのターゲティングに期待を寄せる。

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「全国タクシー」の位置情報をもとに、特定エリアにいる訴求したいターゲット層のみに対して、即座にオンライン上で広告を配信できる

フリークアウトは、広告主が広告を配信したいユーザー層を定義し、必要な広告枠をリアルタイム入札で買えるDSP(デマンドサイドプラットフォーム)を手がける。広告主は購買データや性別年齢、興味などでユーザーを絞り込めるが、これらに「今から行く場所」が加われば、より効果的な広告が打てるというわけだ。

ただし、「乗車時に目的地がわかる」というのは、配車アプリで降車地点を指定した場合に限られる。今後は、乗車時に運転手に目的地を伝える際、タブレットの音声認識で目的地を推定することも視野に入れている。

2020年までに多言語化、売上高100億円へ

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富士キメラ総研の予測によれば、2020年の国内デジタルサイネージ交通広告の市場規模は800億円。IRISは2020年までに全国5万台に導入し、売上高100億円を見込んでいる。インバウンド需要に向けて、デジタルサイネージの多言語化や決済対応も進める。

IRISは日本交通子会社のJapanTaxiが51%、フリークアウトが49%を出資。代表取締役には、JapanTaxi CMOの金高恩氏とフリークアウト経営企画室長の溝口浩二氏が就任した。

「Eメールとチャットの良いとこ取り」RedKixが1700万ドルを調達

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これまで、多くのスタートアップがEメールに変革をもたらそうとしてきた。なかにはSlackのように、私たちの仕事のあり方を変えるようなサービスが生まれることもあった。だが結局のところ、今でもEメールは盛んに使われているし、コミュニケーション・ツールを会社全体で有効活用するためには、皆が同じプラット・フォームを選択しなければならないという問題がある。

本日、RedKixはプライベート・ベータ版の公開と、シードラウンドにおける1700万ドルの資金調達の完了を発表した。Slackなどのコミュニケーション・ツールの利点と、シンプルで皆が使っているというEメールの利点を組み合わせた同社のサービスが著名な投資家たちの興味を引いた結果だ。同社の出資者には、Salesforce Ventures、Wicklow Capital、SG VC、Oren Zeev、Ori Sasson(VMwareの出資者でもある)などが名を連ねる。

シードラウンドのスタートアップが1700万ドルもの資金を調達することはめずらしい。しかし、RedKixの共同創業者兼CEOのOudi Antebiは、複雑なテクノロジーを必要とする同社のサービスを実現させるためには、この規模の支援が不可欠だったと語っている。

 

これまでにも、「Eメールの再発明」というビジョンを掲げてきた企業は多く存在する。では、彼らとRedKixとの違いはなんだろうか?RedKixは既存のEメール・アカウントをベースに動作する(現状では、Microsoft Exchange、Office 365、Google Appsのアカウントに対応している)。そのため、連絡する相手がRedKixを利用していようとなかろうと、相手のEメールアドレスさえわかればRedKixを通じたコミュニケーションが可能になるのだ。

仮に相手側もRedKixを利用していた場合には、既読の通知、タイピング中の通知、ユーザー間のリアルタイム・メッセージングなどの機能を利用することができる。その一方で、RedKixを利用してない相手には通常のEメールが送られるのだ。つまり、RedKixを利用することによって、通常のEメールが即席のチャットルームでの会話へと様変わりするというわけだ。

RedKixを使って、Eメールのような件名ありきのコミュニケーションができるのはもちろん、Slackのチャンネルでの会話のようなサブジェクト・レスなコミュニケーションをすることも可能だ。この機能もまたEメールをベースに構築されており、Eメールでいうところのメーリングリストにあたる、グループ・メッセージングを利用することもできる。

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現行のバージョンのRedKixは、同社が実際に欲しいと思っていたサービスを体現したものだとAntebiは話す。「Eメールでのコミュニケーションにリアルタイム性を取り入れることは、大きなチャレンジでした。用途別のインボックスなどがその例です」。

RedKixは企業での利用を想定されている。そのため、企業にすでに存在するEメールのセキュリティやその保持に関する企業方針にサービスが適応できるように配慮されている。「私たちのサービスは、とてもITフレンドリーなサービスです。RedKixは既存のEメールサービスと完全に調和するのです」とAntebiは話す。加えて、同サービスのエンタープライズ版では、企業がサービスの機能を制御できるツールも提供する予定だと話した。

コアとなるプラットフォームが完成した今(初期のベータ版ならではのバグは時々発生するが)、RedKixが視野に入れているのは、Slackも力を入れるサードパーティ・サービスとの統合だ。

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Antebiはその例として、JIRAのサービスと連携した機能の初期デモを見せてくれた。これに加えて、RedKixはChromeプラグインの開発にも着手している。このプラグインを利用することにより、あるウェブサイトにメッセージを貼り付けることが可能になる。そうすることで、そのウェブサイトを開いた状態で同僚とコミュニケーションを取ることができるという。

現在はベータ版であるRedKixのデザインはすでにスタイリッシュであり、Eメール・サービスに似たデザインをもつため(むしろ、RedKixも基本的にはEメール・サービスなのだが)、RedKixに初めて触れるユーザーでもストレスを感じることはないだろう。

RedKixはブラウザで動作するアプリだが、OS X/MacOSとWindowsのユーザーはデスクトップ・アプリを利用することもできる。今後数週間のうちにモバイル版のアプリもリリースされる予定だ。

RedKixの従業員は現在27名であり、そのほとんどはイスラエルを拠点としている。

パブリック・ベータ版の公開は秋の終わりごろを予定されている。その頃になれば、RedKixの料金体系も決まっていそうなものであるが、Antebiは、基本的なサービスは無料で提供し、追加的な機能は有料で提供するという形をとる可能性が高いだろうと話している。

私は常に、「Eメールの再発明」と謳うコミュニケーション・サービスには懐疑的だ。しかし、RedKixを利用するためにユーザーが自身の環境を変える必要はなく、同僚がRedKixを利用していなかったとしてもサービスのメリットを十分に受けられる事を考えれば、他の同種のサービスと比べた成功の確率は格段に高いだろう。RedKixは、近いうちにEメールがこの世から消え去ることはないと賭けたのだ。そして、過去を振り返ればそれは正しかった。私がこのアプローチに反対する理由もないだろう。

RedKixのクローズドβテストへの参加はここからできる。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Twitter /Facebook